1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年三月二十三日(金曜日)
午前十時二分開議
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○議事日程 第八号
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昭和五十九年三月二十三日
午前十時 本会議
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第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十九
年度地方財政計画について)
第二 地方税法等の一部を改正する法律案及び
地方交付税法等の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
第三 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特
別措置法の一部を改正する法律案、物品税法
の一部を改正する法律案及び石油税法の一部
を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
日程第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十九年度地方財政計画について)
日程第二 地方説法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以上両件を一括して議題といたします。
まず、自治大臣の報告及び趣旨説明を求めます。田川自治大臣。
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/1
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002・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 昭和五十九年度の地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
現下の地方財政は、巨額の借入金を抱え、これ以上の借入金依存は地方財政の基盤を揺るがせかねない状況にあり、今後の行財政改革の積極的推進と財政体質の抜本的改善が喫緊の課題となっております。このため、交付税特別会計における新たな借り入れは原則として行わず、当分の間、法律の定めるところによりまして地方交付税総額について必要な特例措置を講ずることといたしますとともに、既往の借入金につきまして、国、地方の負担区分に応じ、分割整理するなど地方財政対策の見直しを行うこととしました。
また、昭和五十九年度の地方財政につきましては、引き続き大幅な収支不均衡にあることにかんがみ、おおむね国と同一の基調に立ちまして、歳出面におきましては、経常経費、投資的経費を通じその抑制を徹底して行い、歳入面におきましては、地方税制の改正、受益者負担の適正化等により所要の地方財源を確保し、地方債依存度の引き下げを行うなど、経費支出の効率化と限られた財源の重点的配分に徹し、節度ある財政運営を行うことを基本としております。
昭和五十九年度の地方財政計画は、このような考え方を基本として策定しておりますが、以下その策定方針について御説明申し上げます。
第一に、最近における地方税負担の現状及び厳しい地方財政の実情にかんがみ、住民負担の軽減及び合理化を図るため、個人住民税につきまして、基礎控除等の所得控除の額の引き上げ、市町村民税所得割の税率及びその適用区分の調整、低所得者層に係る非課税限度額の引き上げ等の措置を講ずるとともに、法人住民税均等割の税率の引き上げ、自動車税及び軽自動車税の税率の調整並びに固定資産税等に係る課税標準の特例措置等の整理合理化等を行うこととしております。
第二に、地方財政の運営に支障が生ずることのないようにするため、昭和五十九年度の地方財源不足見込み額については、地方交付税の増額と建設地方債の増発により完全に補てんすることとしております。
第三に、抑制的基調のもとにおいても、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、その特性を生かした地域社会の形成を進めますとともに、住民生活に直結した社会資本の整備等を図るための諸施策を実施することとしております。このため、福祉施策及び教育・文化振興対策等の推進を図るための財源を充実いたしますとともに、投資的経費につきましても、個性的で魅力ある町づくり、地域づくりを積極的に推進するため新たに「まちづくり特別対策事業」を創設する等所要額を確保することとし、また、過疎地域等に対する財政措置を引き続き講ずることとしております。
第四に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化、一般行政経費の抑制及び国庫補助負担基準の改善を図るほか、年度途中における事情の変化に弾力的に対応できるよう必要な措置を講ずることとしております。
以上の方針のもとに昭和五十九年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は四十八兆二千八百九十二億円となり、前年度に対し八千三十二億円、一・七%の増加となっております。
次に、地方税法等の一部を改正する法律案につきましてその趣旨を御説明申し上げます。
明年度の地方税制の改正に当たりましては、最近における地方税負担の状況及び厳しい地方財政の実情にかんがみ、住民負担の軽減及び合理化を図ることを基本としております。
以下、その概要について御説明申し上げます。
第一に、地方税法の改正であります。
まず、個人住民税について、国民の強い期待にこたえ、平年度三千億円余の本格的な減税を実施することとし、基礎控除等の所得控除の額の引き上げを行うほか、低所得者層に係る非課税限度額の引き上げ、市町村民税所得割の税率及びその適用区分の調整等を行うこととしております。
次に、法人住民税均等割について、法人の事業活動と地域社会との受益関係等を勘案してその税率の引き上げを行うとともに、法人の住民税及び事業税の一部納付後の徴収猶予制度を廃止することとしております。
また、自動車税及び軽自動車税について、最近における所得、物価水準の推移等を考慮してその税率の調整を行うこととしております。
さらに、固定資産税等に係る課税標準の特例措置等について、引き続き整理合理化を行うこととしております。
このほか、地方税における納税環境の整備を図るため、所要の規定の整備を行うこととしております。
第二に、地方道路譲与税法、石油ガス譲与税法、自動車重量譲与税法及び航空機燃料譲与税法の改正であります。
地方道路譲与税等の地方譲与税につきまして、譲与時期及び譲与時期ごとに譲与すべき額の変更を行うこととしております。
第三に、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の改正でありますが、日本国有鉄道の公害防止設備に係る市町村納付金の特例措置の適用期限を延長することとしております。
そのほか、所要の規定の整備を図ることとしております。
これらの改正により、明年度におきましては、三百五十六億円の減収となる見込みであります。
次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案についてその趣旨を御簡明申し上げます。
第一に、地方交付税の総額に係る特例については、地方財政の健全化に資するため、昭和五十九年度以降、交付税及び譲与税配付金勘定における新たな借入金措置は原則として行わないこととし、当分の間、法律の定めるところにより、地方交付税の総額について、その安定的な確保に資するため必要な特例措置を講ずることとしております。
さらに、交付税及び譲与税配付金勘定の借入金十一兆五千二百十八億七千八百万円のうち国が負担することとされていた五兆八千二百七十七億六千三百万円に相当する借入金については、その償還時に一般会計から臨時地方特例交付金として繰り入れることとしていた制度を廃止し、当該借入金を一般会計へ帰属させるとともに、残った同勘定の借入金については、今後これに係る利子を含めて地方が負担することとし、あわせて当該借入金の償還期間を昭和六十六年度から昭和七十五年度までに変更することとしております。
これらの措置に伴い、昭和五十九年度から昭和七十五年度までの各年度分の地方交付税の総額は、地方交付税法第六条第二項の額から各年度における交付税及び譲与税配付金勘定の借入金減少額と同勘定における当該各年度分の利子の支払いに充てるため必要な額との合算額を減額した額とすることとしております。
なお、昭和五十九年度分の地方交付税の総額についてでありますが、借入金の償還期間の変更に伴い、その総額は、地方交付税法第六条第二項の額から昭和五十九年度分の利子の支払いに充てるため必要な額三千六百三十八億円を減額した額に、地方交付税の総額の特例措置額一千七百六十億円を加算した額とすることとしました結果、八兆五千二百二十七億円となり、前年度当初に対し、三千四百五十八億円、三・九%の減となっております。
また、昭和五十九年度の特例措置として加算される一千七百六十億円のうち三百億円に相当する額については、昭和六十六年度及び昭和六十七年度の両年度において、当該各年度の地方交付税の総額からそれぞれ百五十億円ずつ減額することとしております。
第二に、昭和五十九年度の普通交付税の算定については、生活保護基準の引き上げ、老人保健制度の実施等福祉施策に要する経費、教職員定数の改善及び私学助成等教育施策に要する経費、公園、清掃施設、市町村道、下水道等住民の生活に直結する公共施設の維持管理に要する経費等の財源を措置し、あわせて投資的経費については地方債振替後の所要経費の財源を措置することとしております。
以上が、昭和五十九年度の地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。稲村稔夫君。
〔稲村稔夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/3
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004・稲村稔夫
○稲村稔夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま審議に付された地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案並びにこれと深くかかわっている地方財政計画について、一括して総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと存じます。
そこで、まず、地方自治に対する政府の基本的考え方についてお伺いいたします。
最初に総理にお伺いしたいのでありますが、あなたの施政方針演説の中には、「地方公共団体の創造的努力と呼応」とか、そのほか地方自治についての耳ざわりのよい表現が幾つか述べられておりますが、残念ながらその基本的な考え方については明らかでありません。
我が党は、かねてから憲法第九十二条の精神に沿って、国と地方の行政事務、権限、財源等の見直しを行い、再配分すべきであると主張してまいりました。このことは、地方六団体もそれこそ具体的かつ詳細に提言しているところでありますが、憲法にうたわれている地方自治の本旨についてどう考えておられるのか、お聞かせいただきたいのであります。
二つ目は、現在、国が地方自治体の行政に深く介入している実態をどう考えておられるかということであります。
象徴的な一例を申し上げますが、最近、東京の中野区の教育委員準公選制に対して、文部省がこれをやめるよう通達した事実は御承知でありましょう。これは自治の立場を踏まえ、現行法のもとでの創意をこらし、手続的にも十分配慮した、それこそ総理の言葉のように創造的努力の所産であり、自治法上も手続上も適法であると思いますが、この事態をどうお考えでありましょうか。総理並びに自治大臣の御見解を承りたい。
今、一つの例を申し上げましたが、とにかく事業の許認可、財源配分等の権限を背景に、土木工事、施設建設、教育、福祉、環境整備、そのほか自治体行政全般にわたって国の指導という介入が
行われているのが現状であります。あえて介入と申し上げたのは、もしこの指導に逆らうときは財政的措置をとられることをも覚悟しなければならないからであります。このことは、私自身がかつて自治体の長としてつぶさに体験してきましただけに、ぜひ改めていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
また、これと関連して、政治倫理確立についての一定の御見解をお持ちであるやにうかがえる自治大臣のお考えが聞きたいと存じます。
今の国と地方の関係は必然的に地方を国への陳情に駆り立てます。そして、それがゆえに特定の政治家が利益誘導に介入する素地がつくられていると言えないでありましょうか。こうした利益誘導の余地をなくすることこそ政治倫理の観点から急務ではないかと私は思うのでありますが、あなたの政治理念に照らしての本音がお聞きしたいのであります。
基本的なことでの三つ目は、最近の行政投資の動向と経済見通し、とりわけ内需拡大問題についてであります。
政府は、経済見通しとして五・九%の名目成長を図り、内需を拡大するとしておりますが、私はこれに疑問を持たざるを得ません。政府、特殊法人及び自治体の投資等、行政投資トータルの国民への還元割合が最近著しく低下しているからであります。
過去最高の投資割合を示した昭和五十年度と五十六年度の比較では、五十年度には国民一人当たりの租税負担額二十万二千四百五十五円に対する行政投資額がその約七二・九%でありましたが、五十六年度はその割合が六〇・二%にと一二・七%も落ちているのであります。一方、租税負担率の方は二三・六%から二四%へと増高しております。ましてや、五十九年度には、国の公共事業はもとより、自治体の単独事業もマイナスということになれば、国民への還元はますます低下するばかりではありませんか。
しかも、事業別の投資額の面では、依然として道路投資が全体の二〇%を占め、厚生、福祉、住宅、環境衛生部門は横ばいか低下しているという旧態依然の行政投資の姿なのであります。
こうした中で、さらに五十九年度地方財政計画では、公共事業に対する国の負担割合の低下による自治体負担の割合の増大が示されているのでありますから、これでは内需拡大どころか、国民生活の不均衡拡大を招くばかりで、行政投資が何らの波及効果を持たないのではないかと思うからであります。経済企画庁長官の御所見を伺いたいと存じます。
さて、そこで、地方交付税法等の一部を改正する法律案並びに地方財政計画についてであります。
政府は、これ以上の借金依存は地方財政の基盤を揺るがせかねないとして、借金政策の継続をやめることが五十九年度地方財政対策の最大の特徴だとしております。確かに、交付税特別会計における借金は廃止されております。しかし、その一方では、一兆五千百億円の財源不足に対する一兆二千五十一億円の地方債での補てんがあります。この地方債補てんの割合は、五十八年度までの約二倍の七九・八%にもなるのであります。これでは自治体の自立自助に名をかり、借金政策拡大を自治体に転嫁したということになるではありませんか。
したがって、結果として地方財政計画における公債費の比率が一〇・七%に増大しています。都道府県と市町村の五十七年度決算を見ますと、その経常収支において政府が目のかたきにしている人件費の面では、対前年比一・九%並びに一・四%とそれぞれ減少しているにもかかわらず、公債費については一三・八%及び一四・八%と、それぞれ一・二%そして一%と対前年比が増大しているのであります。
このようなもとで、地方債の増発をもってする財源補てん策は、政府の言う健全化ところか、今後の財政運営において黄信号とされている一五%ラインを突破するおそれの方が心配される、そんな危険な対策だと思うのでありますが、政府の御所見を伺いたいと存じます。
加えて、五十九年度の地方財政対策にはもう一つ大きな問題があると思うのであります。それは、一兆五千百億円の財源不足に対して、地方債増発による補てんという措置のほか、交付税特別会計の借り入れ措置廃止のための代替措置として、特例措置分の千七百六十億円等三千四十九億円の交付税増額をするということであります。その中身たるや、実質三百億円にしかすぎないではありませんか。しかも、これも昭和六十六年度、六十七年度に返還するというのですから、国は全く痛くないということになるではありませんか。
そこでお尋ねいたしますが、それでは、これまで自治、大蔵両大臣が覚書を交わして地方財政へのしわ寄せを回避してきたというその経緯は、一体どこへ行ってしまったのでありますか。特に大蔵大臣の御答弁をいただきたいと存じます。
また、今回の特例措置や三百億円の返還という実質的な年度間調整の導入等が、将来交付税制度の根幹を変え、かつての地方財政平衡交付金のような制度に引き戻す布石になるとしたらゆゆしき問題だと思うのでありますが、制度改正を強調しておられる総理並びに大蔵大臣から今後への展望をお聞かせいただきたいと存じます。
次に、地方税制の改正について二点ほどお伺いいたします。
その第一点は、非課税特例措置廃止を引っ込めたのはなぜかということであります。私には、どうも今回の地方税改正というのは抵抗の弱い取りやすいところから税を多く取り立てようという、いわば行き当たりばったりのものに思えてなりません。三千百三十億円減税するが、もう一方では五千七百七十億円増税するという案を提示しながら、なぜ非課税特例措置の廃止をいとも簡単に引っ込めてしまったのでありましょうか。
この点については自民党総裁としての総理にもお伺いをいたします。この社会保険診療報酬及び新聞、放送事業等に対する非課税措置は、昭和二十年代後半に、緑風会が過半数を占めていた当参議院において議員立法として誕生したという経緯があります。そこで、この際、地方の財源確保という面からして、まず参議院における与野党協議によってこれに課税するという道も考えられますが、その御意思がおありになりますか、どうでありましょうか、お伺いいたします。
二点目は、今後の法人課税の問題であります。
二年間の暫定措置ということで法人税が一・三%引き上げられて、その国への配分割合が高くなるかわりに、地方への配分割合は〇・五%下が
り、三二%ということになります。このことは、昭和四十一年の三四・一%をピークに漸減傾向を示している地方への配分の割合の問題を放置しているために起こっているものであります。地方税を軽視しているものと言わざるを得ません。法人均等割の二・五倍引き上げで地方にも約一千億円の増収が期待できるといっても、これをもって配分割合の低下を補うなどということは本末転倒だと言わざるを得ません。
地方の税収の安定的確保を図るためには、本来、市町村には法人市民税の引き上げ、都道府県には法人事業税を外形標準課税への転換などによる施策が本筋であろうと思うのでありますが、政府の御所見を伺いたいと存じます。
以上の質問を申し上げながら、私には、政府が一体どれだけ地方の実態を掌握し理解しておられるのだろうかとの疑問がますます強まってくるのであります。
例えば、ことしの豪雪に関連して言えば、ことしの寒波は例外的な厳しさでありましたし、断続的に降雪が長く続いたわけでありますから、地方の住民と自治体は雪との闘いに悪戦苦闘してまいりました。殊に豪雪地帯では、三月半ばを過ぎてもなお除雪と取り組まなければなりません。これら除雪費をとうに使い果たした自治体に対して、政府も一応は五六豪雪を参考に対応されるようであります。
しかし、これらの自治体にとってみれば、国の対応は雪との闘いの一部への手当てをしていただくにすぎません。対象にならないが、やらねばならない事業もあります。豪雪地の中にあって対象から除外されてしまう場合もあります。これからの仕事として、雪崩の防止対策、損傷した道路の補修、経済活動を阻害されてきた地場産業へのてこ入れ、農作業のおくれ対策その他へと、なお大きな出費が自治体には待っているのであります。これらに対する財源確保については、一体どの程度に配慮していただいているのでありましょうか。
今、豪雪地帯のことしの実態の一部を例として申し上げましたが、要は自治体にとって減らすことのできない財政需要が多くある中で、今度の制度改正なるものが、国の都合で一方的に自治体財政を一層厳しいものに追い込むであろうことを憂うるのであります。
そこで、最後にお伺いいたします。
この際、国と地方の関係を根本的に見直して、地方六団体の提言もあることでありますし、その責任の範囲、分担等を明確にされるお考えはありませんか。真の地方自治、地方分権に向けての制度改正の意思と熱意をぜひとも示していただきたいと存じます。
これまで国の施策によって自治体の経費増になるとき、政府はしばしば交付税算入という、あたかも器を変えないで中の五日飯の具の数だけふやすような措置をとってきましたし、地方財政計画策定の経過を通じて自治体の税収見込みの推計を初め歳出の細かい点に至るまで指導してきたのでありますから、今国の財政が厳しくなったからといって、こうした指導をしてきた国の責任の回避は許されないと思うのであります。そのことを申し添え、総理並びに自治大臣の御答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/4
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005・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 稲村議員の御質問にお答えいたします。
まず第一は、地方自治の本旨についていかに考えているかという御質問でございます。
憲法第九十二条に規定する地方自治の本旨とは、地方公共団体の自主性と自律性が十分発揮できるよう地方自治の制度を定め運営することであると理解しております。そのためには、臨調答申も指摘しておりますように、できるだけ地域の仕事はその地域が、住民の身の回りの仕事はその住民の自主性においてこれを執行する、そういう方向で地方分権の趣旨に沿って制度を改革し運営していく、こういうような考えに立っておると思っております。
次に、東京の中野区の教育委員準公選制の御質問でございますが、今回の文部省の勧告は、中野区における教育委員の選任が法の規定に反するとの認識に基づいて行われたものであります。地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四条によりますと、「委員は、」「地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。」と、このように書かれておるのでありまして、この法律の趣旨をぜひ尊重してやっていただきたい。政府がとりました態度は、やむを得ず行ったものでありまして、不当な介入ではないと思います。
次に、国の地方に対する財政措置を伴う指導という介入について改むべきではないかという御質問でございますが、地方公共団体の指導は、その自主性を尊重しながら、地方行財政の健全かつ適切な運営を基本として行われるべきものであり、かつ地方公共団体におけるでこぼこ調整、そういう普遍性を維持するという意味もあって行われているものであると考えます。
次に、地方交付税制度の根幹を変えるようなことを今度やっているではないか、今後の展望いかんという御質問でございます。
今回の地方財政対策においてとられました地方交付税措置は、国と地方の厳しい財政状況を踏まえまして、地方財政の健全化、自主性、これらを考慮して行ったものでございます。したがって、国と地方との財源配分である地方交付税制度の基本的性格を変えるものではありません。今後とも行財政改革の徹底、地方財源の安定的確保等により、地方財政の健全化に努力してまいるつもりであります。
事業税の問題につきまして御質問がございました。
この社会保険診療報酬及び新聞、一般放送事業等にかかわる事業税の特例措置は、確かにお示しのように議員提案によって設けられたものでございます。これらの特例措置のあり方につきましては、今後とも国会における御論議、与野党協議の推移、あるいは税制調査会における審議等を踏まえまして、引き続き検討すべきものと考えております。
最後に、交付税の算入とか、あるいはそのほかの措置については、地方財政の健全化に向けてこれを阻害するものではないかという御質問でございますが、国は公経済の車の両輪として地方財政の円滑な運営を確保し、その健全化を図るために、今後とも毎年度の地方財政対策において最大限の努力を行っていく所存でございます。
残余の答弁は関係大臣から答弁させていただきます。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/5
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006・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 稲村議員の御質問にお答えをいたします。
まず、文部省の中野区に対する勧告についての御質問でございますが、今回の文部省の中野区に対する勧告は、文部大臣が担任する教育事務について、中野区におきまして地方教育行政の組織運営法の規定の趣旨に反する運営が行われているとの認識のもとに、その是正のため適切と認める勧告を行ったものであると聞いているところでございます。国は一般に地方公共団体に対し適切と認める技術的な助言もしくは勧告を行うことが認められておりまして、今回の文部省の措置もそのような考えに基づいて行われたものと考えられまして、地方自治に不当に介入するものではないと考えておる次第でございます。
国への陳情に伴う政治家の利益誘導などについての御質問でございますが、地方公共団体が住民の要望にこたえて事業を実施するに当たりまして、国の行財政上の援助措置が必要とされる場合におきまして、地域の実情に詳しい国会議員がこれに協力することは意味のあることであると考えますが、その過程におきまして、もし政治倫理の観点から非難されるようなことがあるとすれば、これは問題であると思います。
なお、補助金の交付や許認可権限の行使により、地方公共団体が自主的に行財政を運営することが阻害されていることはこれまでも指摘されたところでありますので、私としても関係官庁の協力を得ながら、国庫補助金や許認可等の整理合理化を図るように今後とも努力をしてまいる所存でございます。
地方財政対策についてお答えをいたしますが、地方団体に対する財政対策は、国、地方を通ずる厳しい財政状況を踏まえつつ、地方団体の財政の運営に支障のないように所要の措置を講じておりまして、地方債依存も極力抑制することとしております。今回の地方財政対策におきまして、地方団体の行財政運営に対して、国の財政と同様、節度ある財政運営を求めることとしておりますが、これは中期的に見て地方自治の発展向上につながるものと信じておりまして、国から地方への責任転嫁とは考えてはおりません。
財源不足の補てんについてお答えいたしますが、地方財政の財源不足をどのように補てんするかにつきましては、地方財政全体の動向を勘案しながら、その円滑な運営に支障のないように所要の財源を確保することが基本でございます。五十九年度の地方財源の不足額の補てんに当たりまして、国における建設公債の活用との均衡にも配慮して建設地方債の活用をすると同時に、極力その抑制も図り、所要の地方交付税の特例措置を講ずること等によりまして地方財政の円滑な運営を確保したものでございます。
地方財政対策の経緯についてお答えいたしますが、現下の国、地方を通じました厳しい財政状況を踏まえ、地方財政の健全化に資するため、今回一連の見直し措置を講じたものでございます。その際、従来、大蔵、自治大臣の覚書等において確保された地方財政対策の経緯は尊重し、所要の措置を講じておる次第でございます。
交付税の特例措置等についてお答えをいたしますが、五十九年度におきましては、地方財政の健全化を図るため、交付税特別会計における新たな借入金をやめまして、これにかえて、地方交付税の総額の特例措置を講ずるなど地方財政対策の見直しを行ったところでございます。この措置は、五十九年度におきまして、国、地方の厳しい財政環境のもとで必要な地方交付税の総額を確保するために行ったものでありまして、交付税率を変えるようなことでは決してございません。また、地方財源の保障と財源の均衡化を図る地方交付税制度の基本的性格を変えたものとは考えておりません。
地方財政は巨額の地方債、交付税特別会計借入金を抱えておりまして、今後とも行財政改革の徹底、地方財源の安定的確保等によりまして、その健全化に向けて努力をしてまいる所存でございます。
一連の非課税措置等についてお答えをいたしますが、現行の事業税における社会保険診療事業に係る課税標準の特例措置、新聞、一般放送事業等に係る非課税措置は、これらの事業の公益性等にかんがみまして、昭和二十六年から二十九年にかけて議員提案によりまして設けられたものでございまして、創設以来かなり年月を経ております。
これらの非課税事業は、その間における社会経済の変化に伴って、その事業内容や事業量、収益等の面で著しい変化が見られますので、今回の税制改正に当たり、その見直しを検討いたしました。しかし、これらの事業はいずれも公益性の強いものでございまして、その特殊性を認めるべきであるという意見等がありまして、今回その見直しの実現を見ることができませんでしたけれども、これは今後とも引き続いて検討してまいりたいと考えます。
特に、新聞、放送事業、出版などの事業税の非課税措置は、これからまず実施をしていかなければならない、こういうものは取りやめていくべきであると私は強い決意で臨んでいるつもりでございます。
法人課税の配分のあり方につきましてお答えをいたしますが、今回の法人税の税率の引き上げにより、五十九年度におきましては地方への配分が若干低下することとなりますが、法人関係税の国と地方との現行の配分割合に基本的な変更を加えるものとは考えておりません。今回の税制改正におきましては、一方、法人住民税均等割の税率の引き上げを行うこととしておりまして、地方税源の確保についても配慮をしたものと考えておるわけでございます。
法人関係税の配分と法人均等割についてお答えをいたしますが、今回の法人住民税均等割の改正は、法人の事業活動と地域社会との受益関係等を勘案して所要の税率の引き上げを行おうとするものでございます。法人関係税の国と地方との配分割合は、法人均等割の税率引き上げを含めてみましても、五十九年度におきましては若干低下する見込みでありますけれども、国と地方との間における法人関係税の現行の配分割合を基本的に変更するものとは考えておりません。
法人に対する課税のあり方についてでございますが、市町村における法人課税の充実を図るためには、法人市町村民税の税率を引き上げることも一つの方法であると考えますが、法人の税負担のあり方については、国税、地方税を通ずる問題でございまして、法人に対する課税の基本的仕組み等との関係をも考慮して検討する必要がございま
すので、慎重に検討しなければならないものと考えております。
また、事業税の外形課税の導入につきましては、地方税源の安定的確保の見地からはこれを導入すべきであるとする考え方もございますが、昨年十一月の税制調査会の中期答申におきましても、「課税ベースの広い間接税との関連を考慮して、検討すべきである。」とされているところでありまして、この点につきましては今後も引き続き検討してまいるつもりでございます。
豪雪に対する財源措置でございますが、豪雪により除排雪費が多額に上る地方団体に対しましては、今回、国におきましては臨時特例措置を講ずるとともに、特別交付税により適切に対処しているところでございます。除排雪以外の事業及び対策に関しましては、各省庁と相談しながら、地方団体の財政運営に支障が生ずることのないように適切に処理してまいる考えでございます。
次に、国と地方との関係の見直しについてお答えをいたします。
地方六団体は、行政改革の推進に関しまして、国、都道府県、市町村の責任を明確にすること、国民に身近な行政は国民に身近なところで民主的かつ能率的に処理すること、これらを基本として国と地方との分担を定めるべきであると提言しておりますが、臨調の答申も、国と地方の関係については基本的には同じような考え方に立っているものと理解をしております。
五十九年の行革大綱におきましても、国、地方間の事務の再配分を図ること、あるいは機関委任事務や必置規制の整理合理化を進めること等を閣議決定しております。私もかねてから、この行政改革に当たりましては、国、地方を通じ簡素で効率的な行政を実現するとともに、地方分権を一層推進することが必要であると考えておりますので、閣議決定事項を早急に実現するとともに、今後とも地方自治を充実強化する方向で行政改革の推進に努力をしてまいる所存でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/6
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007・河本敏夫
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は二つございますが、その第一は、公共投資が抑制されておって、ことしは名目成長率を五・九%と設定しておるが、その実現は可能かと、こういう御質問でございます。
公共投資を含む政府の五十九年度総予算は、かねて申しておりますように、五十九年度の経済成長に対しは中立てございます。ということは、経済成長に対してはゼロの影響しかない、こういうことでございますから、公共投資だけで成長が達成されるとは私どもは考えておりません。民間経済中心の成長、このように判断をしておりまして、その第一は、世界経済が第二次石油危機から五年ぶりにようやく景気回復の方向に進んでおるという、そういう経済の環境の中におきまして民間の設備投資等が相当活発な動きをしておりますので、民間経済中心の経済成長と考えております。
ただ、政府の方といたしましては、やはり民間経済が活躍しやすい、伸びやすい、そういう環境をつくらなければなりませんので、経済運営の基本方針としては、まず物価の安定を図るということに注意を払いながら、財政と金融政策の機動的な運営、あわせて自由貿易体制を維持するための対外貿易摩擦の急速な解決、こういう政策を進めることによりまして、民間経済の活動を円滑ならしめるような、そういう政策を進めてまいりたいと考えております。
それから第二の御質問は、最近、国民の租税負担に対する行政投資の割合が下がって国民への還元が低下しておるが、それをどう考えるかということでございますが、統計に関する限りはそういう方向になっております。
しかし、また別の角度から、行政投資というのは大体公共事業に該当するものでございますが、政府といたしましては、そういう公共事業のほか、社会保障であるとか、教育、科学技術の振興に対する投資、それから中小企業、農林水産政策に対する投資、こういうさまざまな分野で財政支出を行っておりますが、そういう財政支出を全部含めましたものを一般政府総支出と言っておりますが、これと、租税、それから社会保障負担、社会保険料負担のことでございますが、これを含めました国民の総負担との割合を比較いたしますと、政府の一般行政総支出の方が伸びておる、こういう統計もございますので御参考までに申し上げておきます。
それから、あわせて公共投資の内容が道路中心になっておるではないか、こういう御指摘がございますが、確かに道路の分野は非常に大きな金額を占めておりますけれども、そのほかに住宅対策、それから防災安全対策、生活基盤施設整備、こういうものについても十分配慮を払っておるということも御参考までに申し上げておきたいと思います。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/7
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008・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
まず、毎年私どもと自治大臣とが交換いたします覚書、その趣旨から御引用なさいましての御質問でございます。
今回の地方財政対策の改革は、国と地方の財政運営の中期的な展望に立って、五十年度以来の地方に対する財源対策の方式を三つ改めたわけであります。一つは、地方の自主責任の原則を踏まえながら、地方行財政改革の徹底を期する。二つ目は、国の段階で借り入れを行い、これを地方交付税として配分するというやり方は改める。三つ目が、地方交付税について当分の間総額の特例措置を講ずるという、まさに抜本的なものでございます。
このことは、国と地方の財政運営の中期的な展望に立ちまして、国と地方の財政が公経済におけるいわば車の両輪である。したがって、ともに円滑に運営され、かつ着実な財政再建を確保するための改革でございまして、地方財政へしわ寄せするという考え方ではございません。また、五十八年度以前の地方財政対策におきますところのたびたび交わしております覚書、この趣旨、内容は、まさに五十九年度地方財政措置において、実質的にこれを実現の第一歩を見ておる、こういうふうに御理解を賜りたいと思うのであります。
それから二番目は、地方交付税の特例措置は、今回の地方財政対策の改革によりまして、五十年以来の、先ほど申し上げましたとおりの新しい方式として制度化されたものでございます。これは、国と地方との財政運営の中期的な展望に立ちまして、地方財政の健全化に資するとともに、
国、地方の円滑な着実な財政再建、これを確保するための地方交付税法六条の三第二項に基づく地方行財政制度の改正でございまして、国と地方の厳しい財政状況のもとで地方交付税総額の安定的な確保に資する、こういうためのものでございます。
そうして、今度は平衡交付金との関係のお尋ねがございました。
これは自治大臣からもお答えがあっておりましたが、地方交付税制度の基本を堅持しながら、その地方財源保障機能を弾力的かつ決定的に発揮させるための措置でございまして、地方交付税率を変更するものでは全くございませんし、また、かつての地方財政平衡交付金のような制度に戻っていく、こういう性格のものではございません。いわば地方交付税法に基づいて当分の間制度化されたものでございますが、その実施及び内容は各年度の地方財政対策において決められるものでありますので、地方交付税の年度間の調整、これを意図しておる制度ではないというふうに考えております。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/8
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009・木村睦男
○議長(木村睦男君) 中野明君。
〔中野明君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/9
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010・中野明
○中野明君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました昭和五十九年度地方財政計画並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず初めに、地方自治のあり方についてお伺いをいたします。
言うまでもなく、地方自治は住民生活に直結した行政推進の場として重要な役割を持っております。しかしながら、今日の地方行財政の実態を見たとき、自治体の事務の大半が国の機関委任事務で占められるとともに、財政についても補助金制度が自治体の事業の隅々にまでしかれているなど、国が権限、財源を一手に握っており、まさに自治体は国の下請機関化しているのが現状であります。このような仕組みでは、住民の多様化する要求にこたえることは難しいとともに、地方の自主性を発揮することは到底望めないのであります。これまでも地方の時代と言われ、地方自治充実が叫ばれてまいりました。しかし、いまだもって国偏重の行財政制度に対し根本的メスを加えようとしておりません。
総理は、地方自治の本旨にのっとりと、たびたび発言しておられますが、現在の国、地方を通ずる行財政制度をどう感じておられるのか、お伺いしたいのであります。
また、施政方針での総理の地方行政対策は、地方の行政機構の簡素効率化を強調しているのみで、地方自治改革に対する抜本的姿勢がうかがえないのでありますが、この際、総理の考えておられる地方自治の姿を示していただきたいのであります。
さらに、臨調答申をどう受けとめ、それをどのようなスケジュールで実行に移されるのか、あわせてお伺いしたいと思います。
次に、地方財政計画についてお伺いします。
地方財政は、五十年度以来毎年大幅な財源不足を続けてきたのでありますが、政府の財政対策は、交付税特別会計の借り入れ並びに財源対策債の増発によって補てんしてきたわけであります。その結果、交付税特別会計の借入金が十一兆五千億円、地方債の現在高と合わせると実に五十四兆円を上回る膨大なものとなったのであります。従来の交付税の借り入れを必要とした事態は、現在においても何ら改善されていない状況でありながら、五十九年度以降原則として交付税特別会計における新たな借り入れをやめることとしておりますが、いかなる理由でこのような措置をとろうとしているのか、お伺いいたします。
五十九年度の地方財政を見たとき、交付税の伸びは二一%と形の上では大きな伸びを示しておりますが、これは五十八年度に大幅に減少したことの反動によるものであり、地方交付税が実質的に伸びたものではありません。五十九年度は一兆五千億円の財源不足に対し、その八割に当たる一兆二千億円を地方債の増発によっているのであり、これは明らかに地方債への肩がわりではありませんか。このように地方財政に新たな状況変化がない以上、地方交付税法の精神にのっとり、地方交付税率の大幅引き上げ、ないしは交付税の特例措置の大幅増額を図るべきであると考えますが、政府の答弁を求めます。
また、五十九年度の地方財政の内容をつぶさに見ると、事務事業を残したままでの補助金の補助率の引き下げ、対象事業の縮少を初め、児童扶養手当の二〇%地方負担の導入、医療保険制度の改正に伴う国民健康保険の補助率の引き下げ、私学に対する国の補助削減の地方の肩がわり等々、制度の根本的見直しを行わないで財政負担のみを地方に転嫁するような措置がとられております。このような一方的な地方転嫁は、国、地方岡の財政秩序を乱し、地方財政の自主性、自律性を著しく損うものであり、このような地方への負担転嫁はやめるべきでありますが、いかがですか。
また、五十四兆円を上回る借金を抱えた地方財政の先行きを考えたとき、自治体は非常な不安を抱いているのであります。政府は国の財政再建を六十五年としておりますが、地方財政についてはどのような計画で財政再建を図るのか、明らかにすべきであります。この点につきまして、地方財政の中期展望ないしは中期財政再建計画を策定して今国会に提出されるお考えがあるのかどうか、あわせて伺いたいのであります。
次に、減税について伺います。
国民の強い要望を受けて私どもが強力に推進してまいりました所得税及び住民税の減税が、額としては不満でありますが、六年ぶりに提案されました。しかし、その財源を酒税、物品税、自動車関係税など大衆増税に求めているのはひどいではありませんか。このような措置は、景気浮揚に対する減税の効果を削減するものであります。また、税制改正による税の増減の見込み額によれば、平年度では国二百三十億円、地方三百十四億円の増収となっており、さらに税の負担率も上昇している現状からも、明らかに減税に名をかりた増税ではございませんか、お答えください。
しかも、住民税の課税最低限は百八十八万円に引き上げられたとはいうものの、それでもなお生活保護基準額の百九十三万九千円を五万九千円も下回っているのであります。さらに自動車税については一五%の引き上げを行っておりますが、今日の交通体系の実態から見て、自動車税の引き上げは明らかに大衆課税であります。住民税の課税
最低限と生活保護基準額の差については解消を図るとともに、自動車関係税については断じて引き上げるべきでないと考えますが、見解をお示しください。
ところで、一方では、地方税は国の租税特別措置及び地方税法によって減額措置がとられています。電気税、固定資産税を初め各種の非課税措置等が大幅にとられ、さらに住民税における利子配当所得の非課税措置等、地方税についての不公平税制の問題が何ら手直しされていないのであります。国の政策として減税を行うのであるならば、不公平税制の是正等を実行に移し、財源を確保するのが筋でありますが、いかがですか。今回のようなやり方は、増税なき財政再建の公約違反であることは明らかです。総理のこのような減税政策に対する見解を改めてお伺いしたいのであります。
次に、地方の自主財源の確保、強化の問題についてお伺いします。
地方自治の充実を期するためには、その基盤となる地方財源の充実が不可欠であります。ところが、現在の地方自治の実態は、三割自治に象徴されるように、自主財源である地方税の配分に対する根本的改革には手がつけられておりません。現行の国、地方の税源配分は国が二に対し地方は一となっておりますが、支出については、これと全く逆の国が一に対し地方は二になっております。この関係は、政府の統制が十分にきく補助金を主体とした行政の仕組みになっているためであります。地方の自主性を発揮した行財政の推進を図るために、国税の大幅地方移譲を行うべきであると考えますが、総理の見解をお示し願います。
また、地方税源の安定を図るために、法人事業税の外形課税の導入、さらに事業所税については課税団体の拡大を図るべきであると考えますが、いかがですか。
最後に、地方財源の充実に関して具体的にお尋ねをいたします。
国においては、電電公社に対し、昭和五十六年度から五十八年度までの間に特例中の特例として四千八百億円の国庫納付金を納付させ、来年度においてもさらに二千億円の国庫納付金を予定しております。その一方では、電電公社の市町村納付金については二分の一を減額する特例が設けられております。五十六年度から五十八年度までを計算してみても千六百四十六億円に上ります。これは、本来地方の固定資産税に相当するものであります。ところが、政府は前回、二度とこのようなことはしないとしながらも、来年度もまた特例法をつくってまで二千億円を召し上げるわけで、言いかえれば、地方の当然の固有の財源を国が横取りしたとしか言いようのないこのようなやり方は、地方自治を軽視しているとしか思われません。地方財政の現状を放置したまま、またまた特例法によって国に取り上げるその場しのぎのやり方について、大蔵大臣の見解をお伺いいたします。
また、このような理不尽な地方無視の措置を自治大臣はどう考えておられるのか。余りにも筋の通らない、横暴としか言いようがありません。このようなことを許すわけにはまいりません。自治大臣の確固たる見解をお示し願います。
以上、地方行財政等に関する緊急かつ重要課題について要点を絞り質問いたしましたが、総理並びに関係大臣の率直な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/10
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011・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 中野議員にお答えを申し上げます。
第一は、現在の国、地方を通ずる行財政制度をどう感ずるか、地方自治改革をいかに行うかという御質問でございます。
国、地方を通ずる行財政制度は、常に行財政を取り巻く環境の変化に適切に対応しつつ、かつ地方自治の本旨を踏まえたものでなければならぬと思っております。政府としては、臨時行政調査会あるいは地方制度調査会等の御意見を踏まえ、特に地方自治充実のために、国と地方との仕事の配分あるいは地方分権の方向への政策の促進、これらの諸点を踏まえまして今後とも努力してまいるつもりでございます。
次に、地方自治のあるべき姿を示せという御質問でございますが、地方自治は民主政治の基盤であり、内政のかなめであると思っております。しかし、最近の人口の高齢化あるいは安定成長経済への移行等を踏まえまして、地方公共団体の役割はますます重要になると同時に、財政的にも困難な状態を来していると思っております。自治のあるべき姿は、当然地方分権を推進して、地方公共団体が地域の問題を自主的に解決できるような行財政上の能力を持つようにすること、この方向に改革することであると思っております。
中央、地方との調整につきましては、今、出先機関の整理統合とか、あるいは事務の地方に対する移譲再検討とか、その他の点にも今積極的に努力しておるところであります。
臨調答申をどう受けとめるかという御質問でございますが、臨調答申は地方行政の簡素効率化とともに、住民の身近な仕事は地方自治体で行うようにというように原則を示しておるわけです。五十九年度の行革大綱におきましても、地方行政の減量化、効率化並びに事務の再配分の推進、機関委任事務や必置規制の整理合理化等につきまして閣議決定したところであり、今後もそれの推進を図っていくつもりでございます。
さらに、税の負担の問題の御質問がございました。
なるほど平年度におきまして、国は約二百三十億円、地方が三百十四億円の増収になっております。しかし、これは全般的に景況感が回復した中で、財政赤字の拡大による悪影響を排除しつつ、全体として経済に好ましい効果を及ぼすように税制制度も考えつつ行ったものであり、国の増収の問題は、法人税の欠損金の繰り戻し還付制度の適用停止による増収額六百億円を計上したものでございます。それから地方税におきましては、昭和五十九年度、六十年度の両年度を通じて計算してみますと、ほとんど増収にはなっておりません。
昭和五十九年度の租税負担率は、五十八年度に比べて若干上昇しておりますが、これはほとんど税の自然増収によるものであると考えております。
不公平税制の問題について御質問をしていただきました。
税の負担公平は、国民の納税協力を確保するための不可欠の前提であります。このために不公平税制、いわゆる租税特別措置につきましては、社会情勢の推移に応じて必要な見直しを行ってきております。今後もこの見直しにつきましては、さ
らに積極的に検討を続けてまいりたいと思っております。
次に、国税の大幅地方移譲を行うべきであるという御質問でございます。
国と同様に、地方におきましても歳出の徹底した節減合理化等行財政改革の実現、減量化の促進をぜひお願いいたしたいと思っておりますが、税源配分の問題につきましては、地方税だけではなく、地方交付税、地方譲与税制度、国庫支出金のあり方、さらには国と地方との行政事務の配分のあり方等、総合的に考えて行わなければならないものでありまして、慎重に検討してまいりたいと思っております。
残余の御答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/11
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012・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 中野議員にお答えいたします。
まず、交付税特会の借り入れのことでございますが、今の地方財政は、巨額の借入金を抱えて、これ以上の借入金依存は地方財政の基盤を揺るがしかねない状況にあります。行財政改革の積極的な推進と財政体質の抜本的な改善が喫緊の課題となっております。このため、交付税特会における新たな借り入れは原則として行わないことにいたしまして、地方交付税総額について特例措置を講ずることとしたものでございまして、このような地方財政対策の見直しは、中期的な展望に立ちました場合には地方財政の健全化に資するものと考えております。
交付税の増額についてでございますが、地方財政が毎年度大幅な財源不足が生じている事態から見ますれば、地方財政の立場からは、地方交付税税率の引き上げあるいは交付税の特例措置の大幅増額を行うことは望ましいことと考えますが、今の厳しい国の財政事情を勘案し、建設地方債の活用と地方交付税の所要の特例増額措置によりまして地方財政の運営上支障のないように対処したわけでございます。
国と地方の財政秩序についてお答えをいたしますが、国、地方を通ずる行財政改革を推進するためには、事務事業の見直しを行うことなく単に財政負担を国から地方へ転嫁してはならないと考えております。本年度の予算及び地方財政計画等の策定に当たりましても、このような考え方のもとに関係各省庁と協議し、適切に対処してきたところでございます。
地方財政の中期試算についてでございますが、国の財政の中期展望との関連で、地方財政の状況がどうなるかにつきましては今検討しておりますので、地方交付税法等の一部を改正する法律等の今後の御審議の際に御説明させていただきたいと考えております。
住民税の課税最低限及び自動車関係税のことでございますが、今回の減税は、厳しい地方財政の状況のもと、限られた財源の中で可能な限り課税最低限の引き上げを行うこととしたのでございます。しかし、御指摘のように課税最低限が生活保護基準額を上回るようにするためには、さらに相当な財源が必要でございますので、その実施は困難でございます。
自動車税及び軽自動車税の税率調整は、現行税率設定以後の所得、物価水準等の推移に応じまして、税負担の実質的な低下を防止し、その負担の適正化を図ろうとするものでありまして、ひとつ御理解をお願いしたいのでございます。
固定資産税や住民税の非課税等の見直しについてでございますが、地方税の非課税等特別措置の整理合理化につきましては、従来からその見直しに努めてきたのでございますが、政策目的から見ましてなお存続を必要とするものもございますし、また、その整理によって得られる財源にはおのずから限度があることをひとつ御理解していただきたいのでございます。
なお、利子所得に対する課税のあり方などにつきましては重要な課題であると認識しております。今後、税制調査会の審議を煩わしながら十分検討をしてまいりたいと考えております。
法人事業税の外形課税の導入などについてお答えをいたしますが、事業税の外形標準課税の導入については、地方税源の安定的確保の見地から早期に導入することが望ましいと考えられますが、この問題は企業関係税、間接税等税制全般とも関連するものでございまして、今後引き続き検討すべき問題であると思っております。
事業所税の課税団体の範囲の拡大につきましては、社会経済情勢の推移、人口、企業の集積状況、都市施設の整備の必要性等を勘案しつつ、事業所税の性格等も踏まえながら、今後さらに引き続き検討をしてまいりたいと思っております。
最後に、電電公社の問題ですが、公社から株式会社への経営形態の変更後は、市町村納付金にかわりまして固定資産税の課税対象となることは当然でございまして、固定資産税の負担につきましては、私どもとしては全額課税することを基本方針として現在関係各省と折衝中でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/12
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013・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は、電電公社の市町村納付金問題でございます。
この納付金は、いわゆる不採算地域、不採算部門、これにつきましても公共サービスを均てんさせるという必要から、公社事業の公益性に着目をいたしまして、昭和三十二年以来恒久措置として、今日の時点では二分の一の軽減措置、これがとられておるわけであります。
一方、五十九年度予算編成におきましては、徹底的な経費の節減合理化等とあわせまして、税外収入、これの見直しを行いました。したがって、それをもって財政改革のあかしとしての公債減額を最大限に行う必要がある。そこで電電公社にお願いをいたしまして、五十八年度の利益から二千億円を国庫に納付することをお願いした、こういうことであります。したがって、臨時納付金は臨時納付金であって、地方の固有財源を横取りしたというよりも、そのものはまさに公益性に着目した恒久措置であるというふうに分けてお考えをいただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/13
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014・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/14
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015・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第三 酒現法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品理法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
三案について、提出者の趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/15
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016・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
初めに、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
まず、酒税法の一部改正について申し上げます。
昭和五十九年度の税制改正におきましては、国民各層の強い期待にこたえ所得税の大幅減税を行うとともに、現下の厳しい財政状況をこれ以上悪化させることのないよう、社会経済情勢の変化に対応した税制の見直し等により最小限必要な増収措置を講ずることといたしております。酒税につきましては、このような税制改正の一環として、物価水準の上昇等に伴いその負担水準が低下してきていること等に顧み、従量税率の引き上げ等を行うことといたしたものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、酒税の従量税率の引き上げを行うことといたしております。
すなわち、ビール及びウイスキー類特級について、その税率を一九・五%程度引き上げることを基本とし、その他の酒類については、最近における各酒類の消費及び生産の態様等を考慮して、引き上げ幅につき所要の調整を行い、それぞれ一四・八%から三四・五%程度引き上げることといたしております。
第二に、清酒等についてアルコール度数による減算税率が適用されるアルコール度数の下限を引き下げるほか、免税酒類の表示制度を廃止する等制度の整備合理化を行うことといたしております。
次いで、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正について申し上げます。
清酒製造業におきましては、昭和五十九年七月から昭和六十四年度を目標年度とする第四次近代化計画の実施を予定し、経営基盤の一層の安定に努めることとしておりますが、今回、このような清酒製造業の自助努力を実効あらしめるため、日本酒造組合中央会の事業範囲の拡大等を図ることといたしております。
第一に、昭和五十九年七月一日から昭和六十四年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し、給付金を給付するとともに、これに係る納付金を清酒製造業者から徴収することができるよう措置することといたしております。
第二に、近代化事業の運営に必要な経費の財源をその運用によって得るため、近代化事業基金を設けることができるよう措置するとともに、国は、同基金に充てる資金を無利子で貸し付けることができるよう措置することといたしております。
次に、物品税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
物品税につきましても、さきに申し上げました今次の税制改正の一環として、最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等に顧み、課税対象の追加及び税率の引き上げ等を行うことといたしたものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、録音用または録画用の磁気テープ、ビデオディスクプレーヤー等の物品について、所要の経過措置を講じた上、新たに課税対象に加えることといたしております。
第二に、小型乗用車及びカークーラー等の税率を一%、軽乗用車及びライトバン等の税率を〇・五%それぞれ引き上げることといたしております。
第三に、テレビの難視聴解消に資することとなる衛星放送受信用テレビジョンチューナーについて五年間の課税の特例措置を講ずるほか、物品税の納税手続を簡素化する等制度の整備合理化を行うことといたしております。
次に、石油税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
石油税収は、一般会計を通じ、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計に繰り入れられ、石油及び石油代替エネルギー対策の財源となっておりますが、昨年三月の原油価格の低下等に伴い大幅な減少を来しております。
しかしながら、現下の厳しい財政事情のもとで、石油及び石油代替エネルギー対策の着実な推進を図っていくためには、今後とも財源の安定的な確保が要請されるところであります。
このような状況に顧み、石油及び石油代替エネルギー対策の歳出内容を厳しく見直した上で、石油に係る税負担状況等に配意しつつ、石油税の税率を若干引き上げるとともに、課税対象の追加を行うことといたしたものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、原油等に対する税率を、現行の三・五%から一・二%引き上げ、四・七%とすることといたしております。
第二に、いわゆるLNG等の液化ガスを含むガス状炭化水素を課税対象に追加し、その税率を一・二%とすることといたしております。なお、このほか、課税対象の追加に当たりまして所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/16
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017・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。丸谷金保君。
〔丸谷金保君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/17
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018・丸谷金保
○丸谷金保君 私は、日本社会党を代表して、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法、石油税法、物品税法の各改正案に対し質問を申し上げます。
まず第一に、円が急騰しました。円高が定着しますと石油価格に影響します。石油税法の課税客体である石油価格の算定基準は、ドルに対し円を幾らに見て計算したものであるか。
第二、円高傾向が続けばさらに原油の引き取り価格が下がり、五十九年度増収予測に狂いが生じます。この場合には再度、税率改正を行うのかどうか。
第三、政府は石油引き取り価格が下がったことを理由にこの増税案を提出しました。ところが、新聞報道によれば、この冬、一般消費者の灯油価
格が値上がりしました。これは一体どうしたことか。これに対し通産省はいかなる措置を行ったか、お伺いいたしたい。
次に物品税。総理は、中曽根内閣の続く限り大型間接税の導入はいたしませんと答弁しております。ところが、今回のように課税対象品目が安易にふえ続けていくことは、大型増税へのなし崩し的移行であると言わざるを得ません。
今回新たに加えられた物品名を見ましても、ぜいたく品であるというような一定のルールに基づいたものとは限りません。また新商品でもありません。生活必需品である電気洗濯機等に対し課税するのであれば、思いつきでいつでもどれだけでもどんどん課税対象をふやしていけることになり、どこにも歯どめがありません。総理、このような無原則な課税範囲の拡大は、結局公約違反の増税そのものではないでしょうか。
それから大蔵大臣、法四十二条は、その税額を明らかに「表示しなければならない。」と規定しております。しかし、表示して売られている物品は極めて少ない。政府は、この法律はいわゆる訓示規定だと言いますが、「表示しなければならない。」という文言は単なる訓示規定と受け取れません。物品税課税対象品目の表示義務につき、いかなる行政指導を行い、その実行に努力したか、明らかにしていただきたい。
そもそも、今回の物品税の安易な増税方針は、再三の否定にもかかわらず、大型間接税への国民の反応を打診する小当たり提案と言われております。かくのごとき小細工は断じて承服できないところであります。この際、提案理由における消費の実態や課税物件相互間の負担の権衡、課税品目の追加や税率の引き上げはいかなる物差しに基づいて決定されたかをぜひ明らかにしていただきたい。
次に、酒税。約百六十の独立国の中には、大蔵省の言うように日本より酒税の高い国、それはあるでしょう。しかし、少なくともサミットに出席した先進諸国の中で日本より酒税の高い国があるかどうか。他に付加価値税があるなどというごまかしを言わないで、純粋に酒税の比較をお答え願いたい。
また、大蔵省の資料によると、ウイスキーなどで特級離れを予測して、反面、清酒以外で大幅な消費増による三千二百億の増収を見込んでおります。しかし、大蔵大臣、こんなにうまくいきますか。
大体、お役所の方々は消費者の購買心理を軽く見過ぎております。例えばビールの税金を今度二十五円上げます。そうすると価格は三百十円になります。三百円というのは買いやすいのです。三百十円にすると買いにくい。これが微妙に消費拡大に影響しませんか。ウイスキーやブランデーにしても、端数をつければ買いにくいものです。増税分だけを現在の価格に上乗せすれば足りる、こういう考え方はお役所の机上計算にすぎません。消費者の値ごろ感、これを無視した今回の増税は相当に無理があります。もし、計画どおりの増収が見込めなかったならば、所得減税の財源を安易に酒税に求める限り、さらにまた酒税値上げを繰り返すことになりかねませんので、絶対に反対です。大蔵大臣の見通しをお聞きいたしたい。
もともと酒税法は、軍備費の財源確保を目的にした戦前の片仮名書きの法律を平仮名に書きかえて手直ししたにすぎません。私は、この際、次のような理由から酒税法の全面改正を要求するものであります。
第一、課税客体を蔵出し価格に統一し、酒類別、銘柄別、従価累進税率を採用し、従量税は廃止すること。
第二、農民が自分でつくった原料で自家消費の酒をつくることを禁止している国は極めて少ない。各国の例を見ても、税金さえ安ければ、手間がかかる自家醸造が無限にふえるということはありません。自分がつくった原料で自分が酒にしてこれを楽しむ、これを奪うことは憲法十三条の幸福追求の権利にも違反するのではないですか。
しかし、悪法といえども法は法ですから、したがって酒税法違反のどぶろくづくりには私はにわかに賛成するものではありません。ただ、こんな状態が続くと、国民は法に対して「免れて恥なし」ということになりかねません。一定の条件で自家醸造を認めてはいかがですか。大蔵大臣は答えにくいと思いますので、ここはひとつ憲法十三条の精神を踏まえて総理の見解をお伺いしたい。自家醸造を認めますと中曽根内閣の人気は上がりますよ。
第三、輸入ボトルとの逆ざやは一体どうしていただけるのですか。貿易の自由化ところか、増税で輸入ボトルとの逆ざやはさらに広がります。関税が高かった時代の法律は、この面からも改正する必要があります。
第四、現在の紋別制度、特級が優良で、一級が佳良で、二級はそれよりも品質が落ちる、こんなことがいかに現状に合わないか、一万円の二級酒、これを見ても明らかです。米一〇〇%の純水酒が二級でどんどん売られ、アルコールやブドウ糖を加えた三倍増酒が特級で売られております。ばかな話です。しょうちゅうの甲類と乙類、混合酒が幅をきかす時代に、こんな呼び方にも問題があります。
第五、酒の表示規定。公取以外に原材料の表示を取り締まる法律がなく、あとは業界の自主規制に任されております。ホワイトウイスキー、こんなものがまかり通る先進国がどこにありますか。これだけの税金を取っていながら、酒の品質については野放し同然です。税金だけ取れば消費者保護など全く考えていない大蔵省の姿勢は甚だ遺憾です。
以上、五点についてお答え願いたい。
さて、私は単に反対のための反対を申し上げているのではありません。我が党が年来主張している不公平税制の解消と歳出の見直しで、増税しなくても所得減税は可能です。
例えば歳出。原子力船「むつ」に約七十億の建造費をかけ、二十年間に約五百億の維持費を使い、今度は新母港関根浜に約一千億の投資をするということになっております。しかも、母港ができても、故障船「むつ」がまともな研究のできる見込みは立っておりません。あるのは、ただ浜の荒廃のみです。原子力平和利用についても、一兆円近くも研究費をかけながら、いまだ見るべき成果が上がっておりません。また、農用地開発公団を初めとして、各種公団の補助金にも問題があります。総理並びに科学技術庁長官の見解を求めます。
次に、酒の添加物の問題。シアン化水素が原料である合成乳酸あるいは酸化防止剤としての二酸化硫黄等が、有毒であるけれども人体許容量とい
うことで酒に許可されております。しかも、フランスで認められているという理由で日本でも同量の二酸化硫黄を認め、ドイツ・ワインからソルビン酸が検出されると、これも保存用として認可し、二酸化硫黄の量を一〇〇ppm減らしました。
ドイツ人、フランス人と日本人の肝臓機能は違うのですよ。いいですか、厚生大臣。こういうことを全然考えない。非常に心配です。マクガバン報告についても、総理は因果関係はないと先日答えましたが、政府はどこを調査してそうした結論を得られたのか、この際お伺いいたしたい。
最後に、総理、今回の訪中は大きな懸案事項のない、それが特徴だと言われております。それだけに、あらゆることが話し合われる可能性もあるわけです。そのとき、ぜひこのことだけは心していただきたい。
田中元総理が中国を訪問し、日本の犯した過ちを謝罪表明いたしました。それに対して中国は、国交回復に当たって莫大な賠償請求権を放棄しました。日本の経済界はほっとしました。しかし、我々はそれでは済まされないという気持ちを持ち続けることが必要だと思うのです。中国の人が、済んだことは早く忘れて仲よくしようと言ってくれても、私たちは、それを言えるのはあなた方です、被害を受けたあなた方です、私たち日本人は中国国民に与えたはかり知れない苦しみを片時も忘れてはいけないのですと、再三言うべきなのです。そうした謙虚な心がなければ、わずか六十億の無償援助など本当の意味の相互信頼に生かされるはずがありません。
また、必ず話題になるであろう朝鮮民族の統一問題についても、北だ南だと区別しないで、全体としての朝鮮民族にわびる気持ちを持ちながら、日本がアジアの一員としてどのように協力できるか、中国と虚心に話し合っていただきたいことを希望いたします。
中国の酒、茅台だけが代表酒じゃないのです。ひとつそういう点についても酒に関連して質問したかったのですが、時間が来ました。この点は割愛し、以上、終わりといたします。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/18
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019・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 丸谷議員にお答えをいたします。
いわゆる大型間接税について御質問をいただきましたけれども、御答弁申し上げましたように、中曽根内閣はこの大型間接税導入の考えを持っておりません。
物品税につきましては、個別的な物品を選択いたしまして課税していくという、これはある程度消費に着目しておるところではございますが、課税ベースの広いいわゆる間接税というものとは本質的に性格を異にしています。
酒の自家醸造について御質問をしていただきましたが、これを禁止しておりますのは、財政上重要な地位にある酒税について、その財政上の目的を達するため公共目的を持ってやっていることで、もちろん憲法違反ではございません。なるほど自家醸造している家庭の皆様方のお立場も考えられることは考えられるのでございますけれども、やはり財政目的達成という大きな目的のために御協力を願いたいと思っておる次第でございます。
不公平税制の解消、これにつきましては増税なき財政再建達成の一つの手段でもございまして、今後とも懸命に努力をしてまいるつもりであります。
なお、そのほか補助金の整理とか、あるいは税外収入の確保とか、あるいは経済政策等によりまして自然増収を考えるとか、さまざまな手段を講じまして目的を達するようにいたしたいと思います。
農用地開発公団の問題につきましては、農用地開発公団の行っている業務については計画の作成、事業の実施等の指導監督を行い、補助金の適切かつ効率的な使用に努めるよう政府は努力をしております。事業完了後の管理運営についても、関係団体と連携を図りまして適切な運営を確保するようにやっております。臨調答申を受けて、公団の事業量の縮減、新規入植者の限定を図っております。
「むつ」の問題でございますが、外航用の舶用炉の開発は必要であると考えておるわけであります。今党内で専門家を網羅いたしまして、この夏までに結論を待っておりまして、それによって処理したいと思っております。科学技術庁長官から御答弁申し上げます。
最後に、中国行きの御質問がございましたが、先般胡耀邦総書記の来訪に対する答礼の意味も兼ね、二十一世紀に向かって日中関係をさらに揺るぎなきものにするために、隔意なき協議、懇談をしてきたいと思っております。
日中関係が安定しているということは、世界とアジアの平和の大事な礎石であると考えておりまして大切にしていきたい、また、日本の大きな外交の重要な分野であると考えておるわけでございます。今おっしゃいましたお言葉、反省を込めて謙虚にやれというお言葉を外しまして、まじめに慎重にやってまいりたいと思っております。
残余の答弁は関係大臣からさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/19
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020・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
まず、五十九年度の石油税収のいわゆる為替レートの問題でございますが、政府経済見通し策定作業開始直前の実勢レート二百三十四円で計算をいたしておるところであります。
円高が続いた場合の税収減に対する御意見を交えての御質問でございます。
石油税収の見通しにつきましては、今後の円高の程度あるいは円高の定着度合い、そういうものにさらに原油輸入数量や原油価格への影響などが現時点では明らかでございません。したがって、今のところ何とも申し上げられない。今後のことにつきましては、税収の動向を見ながら適切に対処していきたいと思っております。
それから、物品税のいわゆる表示義務の問題の御質問であります。
物品税額の区分表示は、種々の問題があってその励行は大変難しい問題でございます。したがって、物品税の負担関係を明確にすることは望ましいことでございますので、物品税のPRを行う際に、課税物品の小売価格中に含まれておる税額を明示するなど、この規定の趣旨を生かす方向で運営をしていかなければならぬというふうに心得ております。
それから、物品税の提案理由についての問題で
ございますが、主としてそもそも奢侈品ないしは比較的高価な便益品、また趣味娯楽品、これが課税対象となっておりますが、五十九年度改正におきましては、このような考え方に従い、現行課税物品のバランスから見て課税することが適当と認められる新規開発物品を課税対象に追加する、こういう考え方であります。
自動車につきましては、便益性、価格面から見て、他の課税物品に比較するならばなお負担を求める余地があると考えたから若干の税率の引き上げをお願いしておるところでございます。
それから、少なくともサミット先進国における酒税は日本が高いと、こういうことでございます。
酒というのは、今のお話にもありましたように、まさに嗜好品としての性格に着目した税でございますので、比較的高率の負担を求めておるわけであります。それで、国によって、種類によって差異がございますが、ビールは我が国が高率であります。一方、蒸留酒になると各国とも酒類の中で特に高率の負担を求めておりまして、中には我が国より高税率になっているものも見られます。この問題は、今御指摘になりましたように、いわば付加価値税等を含めないもので見てまいりましてもそのような現象が見られます。
それから、酒税増税で三千二百億の増収を見込んでおるが、本当にうまくいくのか、こういうお話でございます。
これは、まさに酒税については物価水準の上昇等に伴ってその負担水準が低下してきている等にかんがみまして、負担の引き上げを行うこととしたものでありますが、嗜好品であり、その消費量は、おっしゃったとおり価格以外の要因によるところが大きいと考えられます。したがって、税収の見積もりは過去の実績等を勘案して適正に見積もったものでございますので、御心配いただいたようなことにはならないというふうに考えておるところであります。
それから、課税方式の御提案を含めた御批判もございましたが、酒類別、銘柄別従価税とすべきであると考えるかどうか、こういうことでございます。
この議論は絶えずある議論でございますが、昨年十一月の税制調査会の中期答申において、「税負担の公平確保等の見地から」「従量税と従価税を適宜組み合わせる仕組みが適当であると考えられる」、そこでどういうふうな組み合わせにするかを検討しろ、こういうことを言われたわけであります。この答申を踏まえまして、酒税の課税方式については各方面の意見を伺いながら今後とも検討を続けていかなければならぬ課題だ、今の御提案も私は一つの見識に基づく御提案であるということは肯定をいたします。
それから、輸入ボトルの逆ざや問題でございますが、輸入酒の税負担が比較的低いと言われますのは、いわゆる流通マージンが国産酒に比べて非常に高い、こういうことに問題があるわけでございます。したがって、この流通段階の問題等については今の制度ではいかんともしがたいということになろうかと思われます。
一万円の二級酒が出る、そのとおりであります。紋別制度というのは、上級酒には高負担、下級酒には低負担、こういうものでありまして、昭和十八年、すなわち戦争中以来、消費者、生産者双方になじまれてきた制度でございます。どの級で出すかはこれはメーカーの自由でありますし、そしてその他の問題としていわゆる官能審査、いわば勘で決める、こういうことでございます。そういう問題が指摘されておることは事実でございますので、これも確かに酒税の課税方式との関連等十分見きわめながら引き続いて検討しなければならぬ課題だというふうに考えております。
それから酒類の品質について、酒税法において原料、製造方法等について規定しておりますが、醸造試験所で酒造技術等の指導を行って酒の質の向上に努めております。
酒類の表示につきましては、酒類業組合法に基づく表示のほか、公正競争規約に基づく適正な表示を指導しておるところでございますので、今後とも十分これは指導してまいりたいと思います。
それから抜本改正の問題、先ほどもございましたが、確かにこれは酒税問題懇談会、また税制調査会において中長期的な観点から検討が重ねられて提言をいただいております。これを受けて掘り下げた検討を行ったところでありまして、今回の酒税法改正も、その検討結果を踏まえて提案したものではあるというふうに御理解をいただきたいものであると考えておるわけであります。酒税制度のあり方、これは酒類業界、消費者、さらには酒税収入に大きな影響与えるものでございますので、国会の議論等々を十分に踏まえながら今後とも慎重に検討を続けていくべき課題であるという認識をいたしております。(拍手)
〔国務大臣小此木彦三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/20
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021・小此木彦三郎
○国務大臣(小此木彦三郎君) お答えいたします。
石油製品価格につきましては、昨年三月OPECの臨時総会における原油価格引き下げを受けまして、昨年の四月に元売仕切り価格の引き下げが行われたのでありますが、石油業界の過当競争を背景に製品価格がさらに下落を続けたところであります。
こうした中で、灯油価格につきましては、需要期に入った後も引き続き値下がりを続けておりましたけれども、最近に至りまして、気候の影響などにより需要が伸びたこともあり、末端価格の値戻しが行われたものと承知いたしております。
通商産業省といたしましては、灯油価格の動向につきましては今後とも十分見守ってまいる所存でございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣岩動道行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/21
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022・岩動道行
○国務大臣(岩動道行君) まず、原子力平和利用について、多額な研究費をかけながらまだ見るべき成果が上がってないとの御指摘がございましたが、我が国の原子力発電は現在二十五基、約千八百万キロワット、電力供給の約二〇%を占め、その稼働率も研究開発等の成果を反映して昨年は七〇%と安定した実績を示すなど、国民生活において原子力は重要な役割を果たしております。
原子力の研究開発については、昭和三十一年以来、数次にわたる原子力開発利用長期計画に沿って総合的かつ計画的に進められているところでありまして、着実にその成果を上げつつあります。
例えば軽水炉について、また新型転換炉、さらに高速増殖炉、またウラン濃縮の国産化、このような研究開発が着々と進んでいるのでございます。また、核融合につきましても、大型臨界プラ
ズマ試験装置JT60の建設が六十年度運転開始を目途に進められております。
このように、国際的に見ても極めて高い水準で原子力の平和利用の研究が進められておるところでございます。今後ともこのような原子力の平和利用に関する研究開発は一層積極的に進めてまいる所存でございます。
また、原子力船「むつ」につきましては、当初の予定よりも大幅に遅延をして、いまだその所期の目的を十分に達してないことはまことに遺憾でございます。また、これにつきましては、さまざまな御意見を各方面からいただいておりますので、これを謙虚に受けとめてまいりたいと考えております。
しかしながら、長い目で見まして我が国の将来を考えるとき、今後とも舶用炉の研究開発は、どのような方法にせよ続けていくことが必要であり、このことはただいま総理からもお答えを申し上げたところでございます。「むつ」による舶用炉の研究開発については、今後の舶用炉の研究開発の重要な柱として進めてきたものでありますが、予算編成の段階において各方面の御意見も十分に拝聴いたしまして、今後政府・自民党において検討を行うことにいたしており、私どももそのような検討の結果を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣渡部恒三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/22
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023・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) お尋ねの食品に添加する乳酸の問題について、化学合成品も純度等に関して発酵品と同様の成分規格を設けて必要な規制をしており、その安全性は十分確保されておると考えております。その他、ソルビン酸等の添加物についても、使用基準により安全性を確保しておるところでございます。
また、マクガバン報告についてでありますが、食品添加物の入った加工食品の摂取と校内暴力、家庭内暴力との関係については、その後米国において追試が行われましたが、御指摘のような因果関係は確認されなかったと承知しております。
食品添加物を含め、食品の安全性の確保については、いつも先生から御心配をちょうだいしておりまして、その意を十分体して安全性の確保に努力してまいります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/23
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024・木村睦男
○議長(木村睦男君) 鈴木一弘君。
〔鈴木一弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/24
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025・鈴木一弘
○鈴木一弘君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました物品税法の一部を改正する法律案外二法案に対し、総理並びに関係大臣に質疑を行います。
戦後三十八年を経た現在、我が国のさまざまな制度について再検討の時期が来ております。特に、現行税制度については、直接税、間接税のいずれもが、本来の趣旨と現実納税実態の乖離が大きい問題とか、公平な税収を期待できない制度の不備など税制の是正は緊急を要しております。
我が国の経済が高度成長から安定成長へと移行した第一次オイルショック当時から、この現行税制の是正は再三言われていたにもかかわらず、今まで一部の手直しのみで今日まで来てしまったのであります。もはや諸般の事情から見て、これ以上先への引き延ばしは許されないはずでありますが、昭和五十九年度の税制改正でもまた抜本的改正は先送りという、極めて無責任な政府の姿勢は断じて許さるべきものではありません。総理、利益団体、圧力団体に左右されない税制改正のあり方をとって、抜本的制度の見直しをするべきときが来ていると思いますが、どう考えておられますか、お伺いをいたします。
次に、物品税の問題についてであります。
現行の物品税は、課税対象品目が八十品目という個別物品税であるため、我が国の経済情勢の変化に対応できない面が多くなってきております。例えば、今回課税対象に追加されなかったテレビゲーム、スキー板、OA機器と、追加課税される五品目の課税条件の相違の理由は必ずしも明確ではなく、また、高資産家の資産保有のため取引されている金・銀地金とか、書画骨とう品等について課税対象にはなっておらず、税制体系として疑問が残ります。こういう点、どう政府は考えているのか、御説明を願いたいのであります。
また、このことは、国民の生活様式の変化に沿って、新しい商品が次から次へと出ている現在では、これまでのように物品税の課税対象品目の追加とか税率の変更では追いつけないということになり、個別物品税制度は限界に来ていることを示しているわけであります。政府も、現行の個別物品税制度の不備を認めているようですが、政府の論法では、だから一般消費税のような大型間接税をということになるようでありますが、そのような短絡的な発想ではなく、国民の消費生活の態様に即応して、これまでの課税品目を非課税とすることをも含めて、物品税の抜本的見直しが必要ではないでしょうか。
総理と大蔵大臣の大型間接税導入に当たってのこれまでの発言は、導入するのかしないのか、全く理解できません。ここで改めて総理大臣、大蔵大臣の明確な答弁を求めるとともに、導入しないのならば、近い将来、現行物品税制にかわるどのような税制を考えているのか、明らかにしてほしいのであります。
次に酒税について、税体系の不合理をお伺いいたします。
酒税の中で清酒は特級、一級、二級という等級制度により課税されておりますが、純水酒など付加値額をわざと高くして税の低い二級で売り出すなど、等級制度による課税の体系が崩れつつある点であるとか、酒税収入の半分を占めるビールはその小売価格の半分が税金であるのに対し、そのビールの倍以上の高いアルコール度のワインは税負担は約五%にしかすぎないとか、種々の問題が指摘されております。このように、アルコール度数とか販売価格に応じた税負担のバランスが酒の種類間で失われてきております。今後の酒税のあり方についてどう考えているのか、示していただきたいのであります。
次に、石油税についてであります。
この石油税を含めた石油関係諸税は、自動車関係諸税と同じく目的税であります。国の財政が極めて厳しい中で、財源配分のバランス上から、これら目的税を見直す時期に来ていると思うのであります。今までとかく既得権のような形であった目的税について、これからの国民生活の変化とか産業政策の上から、一般財源に取り込むなど、目的税のあり方について総理と大蔵大臣はどうお考えになっているか、示していただきたい。
ここで、税が国民の生活へ及ぼしている影響について若干お伺いいたします。
今や我が国における自動車の位置は国民生活に欠かせぬものであります。自動車の保有台数は一世帯で一・一四台に達しており、また、自動車運転免許証所有者は実に四千八百八十一万人に達しており、十六歳以上の国民の五三%を上回っております。この数値は、自動車は国民の必需品であり、足であることを端的に示しております。しかるに、国民の必需品である自動車にかかる税金は余りにも多く、また高いのであります。
例として、一千六百ccの小売価格百十六万八千円の自家用車を持つと、物品税では十三万二千二百円、自動車取得税で五万八千四百円、自動車税で三万四千五百円、自動車重量税で一万二千六百円、さらに燃料に含まれている税金が一年間平均で六万四千五百六十円であります。耐用年数が六年でありますから、これを一年間に換算してみますと、実に十四万三千四百二十八円の負担をしているのであります。米国の場合は日本の三分の一以下の四万二千二百三十六円、西独でさえも十二万六千二百十二円であります。しかも、この税負担は、国民の平均所得の年間百九十七万三千三百三十八円の実に七・三%を占めているではありませんか。
自動車関係諸税の負担増は、まさに取りやすいところから取るという大衆課税にほかなりません。所得税の減税が自動車関係諸税の引き上げで相殺されるどころか、税負担増にさえなっております。この点、石油税、自動車関係諸税の引き下げを行うべきではないかと思いますが、自治、大蔵両大臣の答弁を求めます。
次に、国民に与える税以外の税金からきている問題について伺います。
例を砂糖に取り上げてみますと、現在、砂糖相場は極めて安値であるにもかかわらず、我が国の砂糖価格は高値のままであります。それは事業団の赤字補てんとか、国内砂糖生産者保護の名目で砂糖の流通業者に対し、安定資金とか調整金の名目でトン当たり四万四千五百八十五円も取っているからであります。関税四万一千五百円、消費税一万六千円に比べ大変に大きいものが税以外の税として取られているのであります。
まさに国民を欺いて高い砂糖を押しつけているとしか言えません。このような例は砂糖のみに限りません。むしろ安定資金とか調整金の名をやめて、砂糖消費税など消費税の名目一本にして、国民にわかりやすいようにするべきではありませんか。
総理並びに関係大臣の明快なる答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/25
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026・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 鈴木議員にお答えをいたします。
税制の基本的な課題について御質問をしていただきました。
まず、抜本的な税制改正を心がくべきではないかという御質問でございますが、御趣旨は私たちもよく理解できるところでございます。社会経済情勢の変化に対応して、公平かつ適正なものとすべく従来から適正な見直しを行ってきております。政府税調におきまして、今後も引き続きましてこの社会経済情勢の変化に対応すべく検討をしていただき、その答申をいただいて、これから適切なる措置をしてまいりたいと考えております。
次に、大型間接税の導入問題につきましては、はっきり申し上げておりますように、中曽根内閣におきましては大型間接税導入は考えておりません。重ねて申し上げる次第でございます。
次に、目的税を一般財源に取り入れてはどうかという御質問でございました。
石油税、揮発油税等をエネルギー対策や道路整備の特定財源としておりますが、これはエネルギー対策やあるいは道路整備等の現況から見て、現状では意味のあることであると考えております。しかし、この問題につきましては、党内外につきましてもさまざまな議論が既に出てきております。将来の財政構造等々も検討いたしまして、これはやはり検討に値する課題であると、そのように考えております。
砂糖に関する消費税について御質問をしていただきました。
なるほどお説のとおり一本にすべきでないか、簡素化すべきでないかという御趣旨も十分理解できる点でございますが、しかし、現在の安定資金、調整金は砂糖の価格政策の観点から輸入糖より徴収されているものでありまして、これを一般財源の確保という租税政策の観点から輸入、国産を問わず課せられる消費税に統合するということは、少し筋が違ってきて意味が違ってくるように思いまして、現状を維持するのが適当であると考えておる次第でございます。
残余の御答弁は関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/26
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027・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
まず、現行の物品税への御意見を交えての御提言でございました。
今年度の改正におきましては、現行の課税物品とのバランスから見まして課税することが適当であると認められる物品を新たに課税対象に追加することにしたわけでございます。今御意見の中に御指摘ございました物品は、的確な課税を行うことが技術的に難しいこと、または具体的な課税範囲についてなお検討すべき問題があること等から、今回は課税対象としなかったわけであります。
今後の物品税のあり方につきましては、税制調査会の中期答申を踏まえて、物品の使用、消費の実態やそれからもたらされる便益等から見て税負担を求めることができると認められるものを、産業経済に及ぼす影響等に十分配慮しながら課税対象とするという方向で今後も検討していきたいというふうに考えております。
それから二番目には、現行の個別物品税制度が限界に来る、言ってみれば大型間接税の導入に対する前ぶれではないかと、こういうような御意見でございました。
五十九年度の税制改正に関する税調の答申は、物品税の改正に関しては安定的に確保する上で問題を含んでおるので、したがって、中期答申にも述べたとおり、今後検討していく必要があると、こうされておるわけでございます。この問題は、やはり最終的にはまさに国民の合意と選択によって決められるべき問題でございますので、これからも国会、各方面の意見等を伺いながら幅広く論議をすべき課題であるというふうに考えております。
それから、現行の酒税法における紋別制度による課税の体系等についての御質問でございます
が、確かに酒税問題懇談会、税調の意見から検討が重ねられて、そうして提案をしておるわけでございますが、中には農業政策に関するものもございます。したがって、酒類業界や消費者、さらには酒税収入に大きな影響を与えますものでございますだけに、今後とも慎重に検討を続けていかなければならぬ課題だと思っております。
それから、目的税の問題についてのお尋ねでございました。
元来は、すべてが言ってみれば色のつかない財源、これが好ましいでございましょう。しかし、この目的税というものにつきましては、その都度都度の経緯からして今日これが現存しておるわけでございます。石油税、揮発油税、これをエネルギー対策あるいは道路整備の特定財源と、これは私は現状から見てはまだ目的税として意味のあるものじゃないか、こういうふうに理解をいたしておるところであります。
それから、我が国の自動車課税の問題についての御発言でございました。
これも結局、全体としての税負担水準を諸外国と比べてみても必ずしも高くない、こういうところに私どもいわゆる担税力を求めたわけでございます。
砂糖の問題につきましては、農林水産大臣からお答えがあろうかと思うのでありますが、要するに、一般財源の確保という租税政策の観点からかけていく消費税と、それからいわゆる価格政策の観点から徴収されておるものという相違からいたしますと、これらを一本化するということは現状では適当ではないではなかろうか、このように考えております。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/27
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028・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 自動車関係税についてお答えをいたします。
最近における自動車の急速な増加に伴いまして、地方道の新設とか改良など道路に関する経費が増加しておりますほかに、交通対策等自動車の走行に原因するいろいろな地方行政経費も大変増加しております。このような事情を考慮いたしますと、自動車に対しましてそれ相応の税負担を求めることが必要ではないかと考えております。
現行の自動車税及び軽自動車税は定額によって課税されている税でありまして、その税率は昭和五十四年以降すっと据え置かれておりますので、その間における自動車の販売価格の推移などを勘案いたしまして、今回その税率を自動車税につきましてはおおむね一五%、軽自動車税につきましてはおおむね一〇%を引き上げることにいたしたものでございます。(拍手)
〔国務大臣山村新治郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/28
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029・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 砂糖関係の御質問についてお答えいたします。
安定資金は、砂糖の価格安定等に関する法律、これに基づきまして、暴騰したり暴落したりします輸入砂糖の価格を一定の価格帯の中に安定させること、これを目的として輸入糖から徴収するものでございます。また調整金は、同法に基づいて、国内産糖の価格を支持する財源に充てるために輸入糖からこれも徴収するものでございます。
このように安定資金、調整金は、どちらも砂糖の価格政策の観点から徴収されるものでございまして、したがいまして、一般財源を得ることを目的として、輸入、国産、これを問わずにかけられます砂糖消費税とは本来的にその性格を異にするものと考えております。そのような意味から、これらを一本化すること、これは困難ではないかと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X00819840323/29
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030・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会
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