1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年四月十日(火曜日)
午後五時十一分開議
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○議事日程 第十一号
昭和五十九年四月十日
午後三時開議
第一 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特
別措置法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第二 物品税法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
第三 石油税法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
第四 国立学校設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、昭和五十九年度一般会計予算
一、昭和五十九年度特別会計予算
一、昭和五十九年度政府関係機関予算
以下 議事日程のとおり。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
抜山映子君から海外旅行のため来る十三日から十六日間の請暇の申し出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/1
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002・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
よって、許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) この際、日程に追加して、
昭和五十九年度一般会計予算
昭和五十九年度特別会計予算
昭和五十九年度政府関係機関予算
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/3
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004・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。予算委員長西村尚治君。
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〔西村尚治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/4
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005・西村尚治
○西村尚治君 ただいま議題となりました昭和五十九年度予算三案の予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
五十九年度予算は、歳出面において行財政の守備範囲を見直し、経費の徹底した節減合理化を行い、その規模を厳しく抑制しつつ、限られた財源の重点的、効率的配分を行うとともに、歳入面の見直しを行い、初年度八千七百億円の所得税減税を実施するほか、公債発行額は前年度当初発行額より六千六百五十億円を減額することとしておりますが、その内容は既に竹下大蔵大臣から財政演説において説明されておりますので、これを省略させていただきます。
予算三案は、二月八日国会に提出され、十日に竹下大蔵大臣より趣旨説明を聴取し、衆議院からの送付を待って三月十四日から審議に入りました。自来、本日まで審査が行われましたが、その間、三月二日に広島、大分、秋田の三市で地方公聴会、二十九日に中央公聴会を開き、二十四日以降三百間にわたって集中審議を行い、さらに委嘱審査を四月六日、七日、九日の三日間行うなど、終始慎重かつ熱心に審査を行ってまいりました。
以下、質疑のうち主なもの若干につきまして、その要旨を御報告申し上げます。
まず、政治倫理に関する質疑として、「世論調査の結果によれば、内閣にその熱意が感じられないと言われているが、総理の考えはどうか。田中元総理に対する辞職勧告決議のけじめはどうついているのか。さらに、閣僚の資産公開も、その基準は制約が多く、資産内容が不鮮明で、国民に不評判である」などの質疑があり、これに対し、中曽根総理及び藤波官房長官より、「政治倫理の問題は、第一義的には政治家個人の良心と責任の問題で、謙虚に、みずからをむなしゅうして国民に奉仕するよう行動すべきであるが、個人の自覚にまつべき事柄である。昨年暮れの総選挙で国民から熱いおきゅうを据えられたことを反省して、それ以来諸般の声明を行い、具体的に閣僚の資産公開を実行し、国会に政治倫理協議会をお願いし、自民党においても同様の委員会をつくるなど鋭意努力中である。田中問題のけじめについては、昨年の総選挙で、主権在民による最高、最終の国民の判定を得ており、これも一つのけじめである。資産公開の基本はプライバシーに属する事柄で、あくまで本人の意思による発表が筋で、閣僚の申し合わせによって行ったものである。しかし、内容がばらばらではまずいので、外国の例、また従来総理大臣が資産公開した例などを参考に基準をつくったが、御意見、御批判は将来の基準改正の場合に内閣官房で十分参考にしたい」旨の答弁がありました。
外交問題につきましては、三月二十三日から二十六日までの中曽根総理の中国訪問に関連して、「中国首脳との間で話し合われた朝鮮半島の緊張緩和、特に南北対話の環境づくり、中国首脳が提案した北朝鮮への仲介申し出に対する総理の態度、ソ連が極東に配備したSS20に関する日中の情報交換合意の内容、中国側の日本企業進出要請などの経済協力問題」等につき質疑がありました。
これに対し中曽根総理及び安倍外務大臣より、「朝鮮半島の諸問題は南北両当事者がまず話し合うべき問題で、両当事者が賛成し承認することがすべての前提である。朝鮮半島の平和と安定には日本も重大な関心があり、そのことはアジアの平和、さらに全人類にとっても大事なことで、そうした観点から、関係の国々が環境譲成促進に協力し合うことが適切である。中国側からの善意ある北朝鮮への仲介のお申し出はありがたいが、ラングーンでの韓国要人の爆殺事件で、韓国の北朝鮮に対する不信感は非常に強く、国のメンツもあり、また我が国も制裁措置をとっていることなどを考慮し、当面、政治経済問題では仲介を頼むことはないが、人道上の問題では十分あり得ることを伝えた。極東におけるソ連の軍事力増強に重大な関心を持たざるを得ないことは、昨年の国連総会での安倍外相と呉学謙外相の間で一致しており、当時のSS20の配備百八基が、最近の確実な情報では百四十四基まで増強される状況で、これは日中両国の共通の関心事であり脅威でもあるので、日中で情報の交換を行い、お互いに核軍縮に向け努力していくことにしている。また、旧中間の経済協力の促進では、円借款四千七百億円、輸銀融資は二十億ドルを下回らない額、その他バンクローンなどを中国側に約束した。なお、中国側からの日本企業の進出要請に対しては、民間資本が安心して出ていけるように、そして民衆の生活向上と失業問題の解決に役立っためにも、経済特別区等幾つかの条件整備について助言をした」旨の答弁がありました。
次に、「我が国が国際的に公約した五年間倍増の政府開発援助計画の達成が危惧されているが、国際信用を傷つけ、まずいのではないか」との質疑に対し、「五年倍増の旗を掲げ努力してきたが、円安問題やアジ銀、世銀の増資問題未解決等日本の責任と言えない事情もあって、ドルベースの実績が落ちている。政府は財政難の中で、五十九年度予算では開発援助予算を九・七%とかなりの突出計上を行ったが、今後とも目標達成に一層の努力をしたい」旨の答弁がありました。
さらに、山村農林水産大臣の訪米で、懸案だった日米農産物交渉が妥結したことに伴い、「向こう四年間にわたり毎年六千九百トンの牛肉輸入増が農家に与える影響と保護対策、並びに間もなく始まる豪州との牛肉輸入交渉との絡みをどう考えるか」などの質疑があり、これに対し関係各大臣より、「日本の国益と農業を守る立場を堅持し、その上に立って対外関係、経済摩擦等の調整を図るため、日米双方が譲歩してようやく妥結にこぎつけた。輸入枠は今後四年間に二万七千六百トンで、毎年度需給状況を考慮し話し合うことにしている。今回の合意が農家に当面大きな悪影響を与えることはなく、今直ちに農家保護の措置は考えていない。しかし、日本農業を取り巻く内外の厳しさに耐えられる足腰の強い農家育成に今後とも一層努力したい。豪州との関係では、対米農産物交渉を豪州の犠牲で解決するようなことは考えていない。国内生産と需給の動向を勘案して交渉に当たる」旨の答弁がありました。
防衛問題に関する質疑として、「超緊縮予算編成の中で防衛費が六・五五%の異常突出となり、三木内閣以来遵守してきたGNP一%以内の枠突破は必至の状況にあるが、総理の認識を聞きたい。防衛費についてGNP一%枠にかわる新基準を示す考えはないか。最近の防衛費の使い方は正面装備調達に偏し、後方支援体制を初め大量の自衛隊員定員不足が生じており、有事の際に防衛目的が達成できないのではないか。さらに、今日我が国国民の防衛意識は低く、これで国の防衛ができるか心配であるが、政府の考えを聞きたい。アメリカ国防省の発表では、戦艦ニュージャージーを初め攻撃型原子力潜水艦にトマホークが装備され、これら艦船の日本寄港は核の持ち込みになり、非核三原則の国是に反するので、入港を拒否ないしは事前協議の対象にすべきではないか」等の質疑がありました。
これに対し中曽根総理並びに関係各大臣より、「防衛費は防衛計画大綱の水準達成及び防衛力の自主的整備の必要性を初め、防衛費と社会保障関係費の比較で見た主要国との対比、また昭和三十年度以降の教育関係費や社会保障費の蓄積との比較などから判断して突出批判は誤りである。我が国を取り巻く内外の諸情勢を勘案し、防衛を全うするための必要最小限の経費計上である。防衛費の枠は、GNPが年間を通じどのような動きをするか定かでなく、確定的なことは困難であるが、三木内閣の閣議決定の方針は守っていくよう努力中で、その先のことはそのときに考えることにしたい。防衛予算は後年度負担による装備調達の方式があって、正面と後方が十分バランスをとることは難しいが、本年度も教育訓練等に配慮した。自衛官の充足率を高めることに今後最大限の努力を払いたい。国の防衛は国民の認識、決意の上に成り立つもので、その一部として自衛隊や自衛力が考えられるが、その根幹部分に足らざるところがあるのは我が国国防政策の欠陥で、今後とも改善に大いに努力してまいりたい。トマホークには核、非核の二種類があって、搭載だけで核兵器保有とは言えない。日米両国は、安保条約を効果的に運用するという基本的立場で相互信頼の上に立っており、一つ一つの船についてチェックや事前の問い合わせなどはやらない。米国は日本の非核三原則を十分承知して行動している。ニュージャージーについては国会の論議を踏まえ、国民の関心も高いので、もし入港となった際は米国政府に非核三原則を確認すると同時に、日本の立場を明確に打ち出し、日米安保条約及び関連取り決めの遵守を確認することにしたい」旨の答弁がありました。
経済問題に関する質疑としては、「政府は財政再建にこだわり過ぎ、我が国経済を縮小均衡に追い込み、潜在成長力の発揮を不可能としているのではないか。景気が回復傾向にあるとはいえ、地域別、業種別のばらつきや倒産、失業の多い現状から、財政面からの施策が必要ではないか。また、最近の円高傾向等から見て、公定歩合を引き下げ、景気回復の一助にすべきではないか」などの質疑がありました。
これに対し中曽根総理及び河本経済企画庁長官より、「五十九年度経済見通しの政府支出の実質寄与度は〇%で、景気浮揚の効果を財政に期待することは大変難しい。しかし、公共事業費では、一般会計の対前年度比減を財投その他で幾らかでもふやすよう配慮と工夫をしている。今日の我が国の状況は、一時的な無理な景気対策を考えるより、景気回復が確実視されている今年度は、高度成長になれた我々の意識転換が必要で、今後必要なときに財政が対応できる体力を取り戻す第一歩となるようにしたい。しかし、この間にあっても、民間資金の導入を初め、国有地の有効活用等今までの手法ではない新たな手法で、民間活力による新たな成長を目指した経済運営を行いたい。景気の回復に跛行現象が見られるものの、過去三年周の三%台の成長が、世界経済の立ち直りに伴い、四%以上の成長が十分に可能な条件が熟しつつあると思う。予算の成立を待って、地域的な景気回復のおくれにどう対処するか検討したい。政府は、それぞれの時点で経済の状態を的確に判断し、財政、金融政策を機動的に運営していく所存である。円相場については、目下のところ非常に流動的で、円高が定着したとまでは判断しにくく、いましばらく様子を見る必要がある。さらに公定歩合政策及びその他の金融政策は、円相場のほか海外の金融政策あるいは金利状況等を十分に勘案しないと、資本の流出から円安の方向に行きかねないので、慎重に対処したい」旨の答弁がありました。
財政問題に関する質疑として、「増減税抱き合わせの五十九年度予算で、対国民所得比の租税負担率が上昇し、増税なき財政再建を言いながら、中期的な財政事情の仮定計算例の膨大な要調整額や、政府税調の課税ベースの広い間接税の検討などから見て、政府は一般消費税ないし大型間接税の導入をねらっているのではないか。また、これまで特例公債の現金償還を毎年度の特例法に規定し国民に公約しながら、今回借りかえ方式に転換したことは許されない。特例国債借りかえに伴う国債消化に問題はないか。これまでの財政再建は、歳出削減が計画どおり進んだのに税収及び歳入が計画を下回ったことが問題で、資本蓄積型税制の見直しが肝要ではないか」などの質疑がありました。
これに対し中曽根総理、竹下大蔵大臣等より、「増税なき財政再建は歳出削減を徹底するのに必要なかんぬきで、これを外すと財政的な乱費も起こり、政府は必死になってその枠内で努力していく決意である。そのために行財政の守備範囲を見直し、制度施策の根本にまで踏み込んだ改革を行い、個人、企業及び国と地方のそれぞれの役割分担見直しを推進していくことにしている。増税なき財政再建と税負担の関係では、政府は一般消費税を導入する考えはない。国民所得対比の租税負担率については、臨調答申の趣旨に沿い、新しい税目や新たな増税措置を行わないよう心がけ、特に流通の各段階に一度に投網をかけるいわゆる大型間接税は考えず、政府税調答申の物品税等間接税の分野で新たな担税力を求めて、個別的消費税を研究、検討することにしている。特例国債の借りかえは御指摘のとおりで、国債政策の大きな転換で、五十九年度発行特例国債の借りかえをすることにしたため、五十年度以降の既発特例国債とも整合性を図ることにした。ただし、財政運営の節度の点で、「償還のための起債は、速やかな減債に努める」との訓示規定を設け、これを念頭に置きながら国債の管理に当たることにしている。特例国債の借りかえ方式への変更に伴い、資金の偏在的影響が出ることが考えられるので、十分留意して対応していく。財政再建の経過を見ると、歳入面の落ち込みが認められるが、これは特に五十六、五十七年度の税収が世界経済の停滞により企業活動も消費も予想外に伸び悩んだためと思う。歳入面については、社会経済情勢の変化を踏まえ、資本蓄積を図る趣旨でつくられた租税特別措置の見直しはもちろん、公正適正な税制のあり方に不断の検討と努力をする」旨の答弁がありました。
中曽根総理が提唱する教育改革問題について、「総理の教育改革に関する基本的な考え方、教育改革を審議する臨時教育審議会の構成及び審議の公開並びに中教審との関係、さらに教育改革の実を上げるためには、人を採用する側の企業や国が採用方式を改める必要があるのではないか。制度面の教育改革も必要であるが、より礼儀作法を含む心の改革こそ重要ではないか」などの質疑があり、これに対し中曽根総理及び森文部大臣より、「戦後の教育で生徒が伸び伸び育ち、義務教育も九年に延長される等評価すべき面と、他方、硬直的過ぎる教育体系、入試制度にかかわる偏差値や共通一次のあり方、さらにに校内暴力、青少年犯罪の増加等多くの問題がある。将来を展望すると、高度情報化社会に向けての教育のあり方、国際社会で生きていく二十一世紀を担う子供の教育など、審議検討すべき課題が多い。臨時教育審議会は、憲法及び教育基本法のもとに教育改革を検討することとし、委員の人選は国民全部が納得してくれる人を慎重に選びたい。審議をすべて公開するとなると自由な議論展開に支障もあるので、審議の概要を国民の前に随時明らかにするよう工夫したい。中教審は我が国の教育、学術、文化に関する長い間の議論や積み重ねた蓄積があり、これらを踏まえながら、臨時教育審議会が新しい視点で教育を見直していく考えである。教育改革と就職の点は御指摘のとおりで、この点、企業や官庁の採用方法も、総理の諮問機関という審議会の性格から、幅広い検討が期待できると思う。礼儀作法を初め教える者と教わる者のあり方等の指導は学校でも行っているが、学校教育だけで徹底できるものでなく、社会や家庭にも大きな責任がある。文部省は、五十九年度に学校家庭連携推進校を設け、学校と家庭が一体となって子供たちが正しく育つ体制づくりに努力することにしている」旨の答弁がありました。
最後に、婦人差別撤廃条約の批准を来年に控え、国内条件整備の大きな焦点である男女雇用平等法案に関し、「職場における実質的な平等確保のため、募集、採用、昇進、職業訓練、退職などすべての分野で性差別を禁止し、法律で強制力を持たせるべきではないか。男女雇用平等の確立には、労働基準法の女性保護規定は原則として廃止し、母性保護に重点を置くべきではないか。婦人少年問題審議会の建議が両論併記となったが、法案取りまとめの労働省の考え方及び法案の国会提出のめど」などについて質疑があり、これに対し坂本労働大臣及び政府委員より、「男女の雇用機会均等、待遇平等の法制整備は、我が国の将来にとって大きな歴史的な転換であり、長い間の男性中心の年功序列、終身雇用制度の修正で、初めから余り厳しいものにしてはかえって目的を達せられないおそれもあるので、漸進的に改革を進める方が賢明である。母性の保護は、女性にとっても子供にとっても大事で、しっかり守っていくが、女性保護規定はややもすると女性が働くときのハンディキャップを背負うことになり、不利となるので、法案作成に当たっては十分気をつけたい。審議会の建議には、一本にまとまった部分と労働者側、使用者側双方の意見が述べられた部分があるが、これまで長い間御審議をいただき、その間の経緯や見解は十分承知しているので、よくかみしめて法案作成作業に臨みたい。法案は今国会に提出し、来年の条約批准に全力を挙げたい」旨の答弁がありました。
なお、質疑はそのほか広範多岐にわたって行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
本日をもって質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して佐藤委員が反対、自由民主党・自由国民会議を代表して藤井委員が賛成、公明党・国民会議を代表して中野委員が反対、日本共産党を代表して内藤委員が反対、民社党・国民連合を代表して伊藤委員が反対の旨それぞれ意見を述べられました。
討論を終局し、採決の結果、昭和五十九年度予算三案は、いずれも賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/5
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006・木村睦男
○議長(木村睦男君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。和田静夫君。
〔和田静夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/6
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007・和田静夫
○和田静夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度一般会計予算外二案について、反対の立場から討論を行うものであります。
日影内閣、直角内閣と世の厳しい批判を浴び辛うじて船出した中曽根政権一年四カ月の歩みは、総理が言う戦後政治の総決算に端的に示されているごとく、憲法改悪をもくろんだ軍備拡張路線であり、平和を志向する国民の気持ちを逆なでする以外の何物でもありません。加えて、根拠なき北の脅威を無責任にあおり、またアメリカのグレナダ侵攻にいち早く支持を表明するなど、レーガン政権の世界軍事戦略に我が国を巻き込もうとするなど危険きわまりないものとして強く糾弾されなければなりません。
国民の危機意識をいたずらに高める中曽根流軍拡政治は、金権腐敗、利益誘導型政治に対する批判と相まって、国民の厳しい審判を受け、昨年末の総選挙においては自民党の大敗北をもたらしました。これは初めから予測できた当然の結果なのであり、この際、再度中曽根政治の反省を求めるものであります。
一方、行政改革を一つの目玉と称する中曽根内閣は、第二次臨調答申のうち政府・自民党に都合のよいものだけをつまみ食いしているにすぎず、行革の名のもとに福祉、教育費の切り捨てを断行し、労働基本権、地方自治権などを軒並み侵害し、軍事費を異常突出させ、真に国民のための行革となっていません。私は、原子力船「むつ」に見られる行政のむだや、汚職の根源となる補助金制度、特権官僚による天下りなど、政・財・官の癒着には何ら手をつけようとはしない中曽根行革に対し、強い憤りを覚えるのであります。逆に、地方事務官問題のように、行政改革に逆行する施策すらとろうとしているのであります。
さらに、第二次臨調に味をしめた中曽根総理は、総理直属の教育臨調を設置しようとしております。入試制度改革は、偏差値教育の見直しなどと口当たりのよい言葉の陰で、その実、教育改革を改憲と結びつけ、民主教育を破壊し、差別、選別、エリート教育に手をかす危険を感ぜずにはおられません。
また、財界の賃上げ凍結発言に迎合した政府・自民党は、人事院勧告の完全実施を一方的に無視するとともに、個人消費拡大のための所得税減税についても、大衆増税でその財源を埋めております。これは勤労国民の購買力を減退させ、内需の停滞、雇用の悪化、福祉の後退等をもたらすことは明白であります。現在の景気回復は、アメリカの景気上昇による輸出の増加によるもので、中曽根総理が昨年のサミットで公約した内需主導の景気回復ではなく、貿易摩擦の激化をもたらし、国際的な非難を浴びるのは不可避であります。
以下、五十九年度予算に反対する理由を具体的に申し述べます。
反対理由の第一は、我が国の軍事大国化への道を進める極めて危険な防衛費の異常突出型予算となっていることであります。
政府は、一般会計の伸びを前年度比〇・五%増に抑え、さらに国債費と地方交付税交付金を除いた政策経費である一般歳出を、前年度に比べ三百三十八億円減額するという超緊縮型予算編成を行ったのでありますが、防衛関係費につきましては、前年度比六・五%増と四年連続の異常突出を断行しているのであります。
竹下大蔵大臣は、さきの財政演説の中でこう明言いたしました。「予算編成に当たりましても、聖域を設けることなく見直しを進め」「徹底した歳出の削減を行いました。」と。ところが、その内容たるやどうでしょうか。防衛費を聖域化していることはだれの目から見ても明白な事実ではありませんか。防衛費の削減を切に要望する国民の声を一切黙殺するような中曽根政権の危険な軍拡思想を私は許すことはできません。加えて、日米軍事同盟の強化をねらう中曽根総理は、レーガン政権の危機管理政策への従属化を一層鮮明にあらわし、我が国の自主的外交を放棄しているのであります。
我が国は唯一の戦時核被爆国であり、非核三原則を国是としておりながら、トマホークなどの核を搭載した米国艦船の入国に対しても、事前に核の存否について実効ある確認を怠り、非核三原則を空洞化させているのであります。絶対に容認することはできません。
五十九年度の防衛費は、既にGNPの〇・九九一%を占め、しかも、昨年度における人事院勧告積み残し分を加えると、今年度の防衛費予算は既にGNPの一%を突破したものとなり、三木内閣以来の自民党政権による防衛費歯どめの策は事実上破綻を来しています。
また、防衛費の異常突出は財政再建の趣旨からも問題とされなければなりません。防衛費の後年度負担額は初めて二兆円の大台を突破し、次年度以降防衛費負担の急増が完全に組み込まれ、財政再建の大きな足かせとなることは必定であります。憲法の精神を遵守し、平和国家の理念を追求するためにも、防衛費の大幅増額予算に反対するものであります。
反対理由の第二は、国民生活と密接に関連した福祉、教育予算の大幅圧縮を図るとともに、各種公共料金の一斉値上げを行うなど、驚くべき大衆収奪予算となっていることであります。
政府は、財界主導の臨調答申にのっとり、行財政改革の一環として医療制度の抜本的改革を行ったとしておりますが、今回の医療保険制度の改革は、被用者保険本人給付率を五十九年度以降九割に、さらに六十一年度以降八割へと引き下げる一方、高額療養費支給限度額を引き上げるなど、医療費抑制の処方せんを一方的に患者負担に求めるという社会保障制度への挑戦とも言うべき大改悪であります。医療費のむだを削ることは我々も再三再四指摘してきたところであり、乱診乱療に見られるむだをなくすためにも、薬価基準の厳正な見直しを行うなど、薬づけ、検査づけ体制の抜本的改正が最優先されるべきであり、拙速で場当たり的な改悪は到底容認することはできません。
加えて、来年度の各種年金改定率はわずか二%程度にとどまるなど不当に冷遇され、雇用保険給付の切り下げ、児童扶養手当の削減など、弱者に対する配慮は一切行われず、断じて許されません。
また、教育関係予算を見ても、四十人学級の実現が先送りされているばかりか、教職員定数の大幅削減、私立学校等助成費の大幅カット、育英事業への有利子制度導入など、家計における教育費負担は深刻な状態となっております。
その上、公共料金負担が家計に降りかかってきております。国鉄運賃、消費者米価、国立大学授業料、NHK受信料など一斉に値上げが強行されるのを初め、私鉄運賃、タクシー料金などの大幅値上げを認可し、地方公共団体関連の公共料金も引き上げられています。酒税、物品税、自動車税、石油税の増税による影響を含めると、五十九年度の消費者物価上昇率二・八%の約半分を公共料金関連で引き上げており、極めて不当な措置であります。
反対理由の第三は、所得税減税の見返りとして大衆増税が行われるとともに、人事院勧告の実施を組み込んだ予算となっていないことであります。
国民が切実に求めてきた本格的所得税減税が七年ぶりに実施されようとしておりますが、その減税財源として酒税、物品税、自動車税等大衆増税で賄うというのでは、減税効果など吹き飛び、何のための減税なのかと言わざるを得ません。
課税最低限の引き上げは当然の措置でありますが、最低税率を一〇%から一〇・五%へと引き上げる一方、最高税率を七五%から七〇%へ引き下げるこのやり方は、高額所得者優遇、低所得者冷遇以外の何物でもなく、不公平を助長する税制改悪と言っても当言ではありません。しかも酒税、物品税、自動車税などの増税は、間接税の持つ負担の逆進性から低所得者層への負担増をもたらすのであり、低成長経済における大企業と中小零細企業との賃金格差の拡大傾向とあわせ、家計負担の格差拡大をねらった極めて不当なものであります。また、利子配当所得制度や医師優遇税制の温存等、不公平税制の是正が何らなされていないことも指摘せざるを得ません。
人事院勧告の実施については、人事院勧告制度の趣旨に基づき、速やかに凍結損失分の回復と今後の完全実施を確約すべきであり、五十九年度予算に給与改定費が一%分しか計上されていないことは納得できません。
反対理由の第四は、景気浮揚に積極的施策が見られず、歳出削減偏重型予算となっており、かつ財政再建の展望が見られない予算となっていることであります。
既に指摘したように、内需拡大のための所得税減税は、その見返り増税により実質的効果はほとんどなく、人勧無視による公務員給与の抑制を断行し、さらに公共事業費を前年度マイナス二%に削減しようとするのでは、財政の景気浮揚効果はゼロに等しいのであります。これでは、政府が主張する内需主導型の景気回復など到底おぼつかず、対外経済摩擦の激化は必定でありましょう。こうした中で、我が国農業をいけにえとして対米貿易摩擦の解消を図ることは、断じて納得がいかないのであります。
一方、政府が繰り返し守ると主張してきた五十九年度赤字国債ゼロの財政再建目標は、我々が指摘したとおり破綻を来し、新たに六十五年度赤字国債ゼロを目標としたわけであります。これを達成するためには、少なくとも五十九年度において一兆円の赤字国債を減額する必要があったにもかかわらず、その財政再建目標は初年度から崩れ去り、赤字国債の減額幅は五千二百五十億円と目標額の半分程度にとどまったのであり、新しく掲げた六十五年度の財政再建目標は達成困難であり、非現実的な絵そらごとにすぎないのであります。
加えて、赤字国債は借りかえをしないと政府はかたく約束をしてきたにもかかわらず、なし崩し的に、いとも簡単に借りかえ導入を行い、国債発行の歯どめをまた一つ外したことは到底認めがたい措置であります。
政府が今回初めて国会に提出した「中期的な財政事情の仮定計算例」は、大型間接税導入を不可避とする試算であり、総理の言う増税なき財政再建とは明らかに矛盾するものであります。これほど国民を愚弄したものはありません。
最後に一言申し上げます。
我が党の強い要求によって、昭和五十九年度予算についてようやく政府は暫定予算を提出しました。過去の経緯を見ますと、予算の成立が四月へずれ込みながらも政府は暫定予算の提出を拒否し続け、法治国家にあるまじき財政法違反の支出行為を現実に行ってきたのであります。今後は、今回の例にならい、予算の空白期間が生ずる可能性があるときには、速やかにかつ必ず暫定予算を提出するよう強く警告を与えることとし、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/7
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008・木村睦男
○議長(木村睦男君) 亀井久興君。
〔亀井久興君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/8
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009・亀井久興
○亀井久興君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度予算三案に対し、賛成の討論を行うものであります。
今、我が国をめぐる国際情勢は、政治的には、ソ連のアフガニスタン進入以来、イラン、イラク、レバノンなどアジア、中東における緊迫した事態を初めとして、ヨーロッパにおける戦略核兵器削減交渉等の中断、米ソを中心とした東西陣営の対立激化と異常な軍備拡張が進んでおります。また、経済的には、石油危機による世界同時不況の最悪状態から脱し、アメリカ等の主要国における景気は回復基調にありますが、開発途上国の経済は依然として低迷しており、膨大な累積債務の処理に苦悩している国も見られます。
こうした国際緊張の激化、世界経済の停滞、経済摩擦の深刻化に対して、自由世界第二位の経済力を持つ我が国としては、自由主義国家群の一員として防衛力を整備するとともに、節度ある自由貿易を通じて世界経済を再活性化し、開発途上国の安定、発展に貢献すべきであります。
中曽根総理は、就任以来、既に韓国、アメリカ、ASEAN諸国、中国を歴訪、またウィリアムズバーグ・サミットに列席され、さらに近くインド、パキスタン訪問、ロンドン・サミットへの出席が予定されておりますが、このように関係国との揺るぎない積極的な首脳外交の展開は、世界の平和と繁栄に大いに貢献するものとして評価できるものであります。
一方、国内的には、我が国は戦後の大きな転換期を迎え、財政改革、行政改革、さらには教育改革の三大改革の断行に迫られておりますが、そのほかにも、景気回復の定着と拡大、防衛力整備、農産物問題を初めとする経済摩擦の解消、高齢化社会への対応など、まさに重要問題が山積いたしており、我が党政府に課せられた責任は重大であります。
さて、我が国経済は久しく停滞しておりましたが、政府の適切なる経済運営が功を奏し、景気は昨年後半から徐々に回復に向かっており、今年度は景気回復が着実に進むものと考えられます。しかしながら、長引いた経済の停滞の中にあって、景気の下支え及び国民生活の安定と向上を図るためにやむを得ず発行された公債の残高が、今や放置できない状況になっております。すなわち、こうした公債の発行残高の累増は、利払い等に必要な経費の増加を招き、五十九年度における国債費は社会保障関係費に迫る九兆千五百五十億円となりましたが、これは一般会計の歳出の一八%を占めており、今や財政の機動的運営に重大な支障を来しております。今後予想される高齢化社会等の新しい事態に対処していくためには、行政機構の簡素効率化と並んで、新たな要請にこたえ得る財政の対応力を確保しておくことが緊急の課題であります。
五十九年度予算は、こうした命題にこたえ、行財政改革の観点から歳入歳出両面にわたって徹底した制度の見直しが行われるとともに、財源の効率的配分が行われており、評価できる内容となっております。
以下、賛成の理由を簡単に申し上げます。
第一に、財政改革を推進するため徹底した歳出の削減を行い、一般会計歳出を前年度当初予算に比べわずか〇・五%増という昭和三十年度以来の低い伸びに抑制し、特に一般歳出については、前年度に引き続きその伸びをマイナスにしたことであります。
五十八年度予算におきましても歳出削減の努力が払われたところでありますが、五十九年度ではこれを一層推し進め、医療保険制度や地方財政制度の改革など制度の改革にまで踏み込んで歳出の徹底した削減が図られております。補助金につきましても、すべてこれを洗い直し、従来にも増して積極的に整理合理化を行い、総額において前年度より四千三百五億円減額しております。また、中央の十省庁の内部部局の再編合理化を断行するとともに、国家公務員の四千人近くもの大幅な縮減を図っており、行政改革に向けた努力がなされているのであります。
第二は、徹底した歳出の削減を図る一方で、社会的、経済的に弱い立場にある方々に対しては、重点的かつ効率的に福祉施策を推進していることであります。
すなわち、生活保護の改善が図られておりますほか、老人や心身障害者に対する在宅福祉の制度などには手厚い保護の施策がとられております。
第三は、所得税及び住民税についての大幅減税の実施であります。
今回、厳しい財政環境下にありながら、所得税、住民税合わせて一兆一千八百億円に上る大幅な減税に踏み切られたことは、国民の期待にこたえるものであり、また、景気の一層の回復にはずみをつけることから見ても適切な措置であります。
第四は、こうした大幅減税を行ったにもかかわらず、公債の発行額を減額したことであります。
五十九年度公債発行予定額につきましては、前年度当初に比べ六千六百五十億円の減額がなされておりますが、これは減税実施と重なったにもかかわらず、思い切った税外収入の確保や徹底した歳出削減といった努力のたまものであり、政府の財政改革に対する並み並みならぬ熱意があらわれているものと大いに評価するものであります。
第五は、経済協力について重点的に財源を配分した点であります。
経済大国となった我が国に対する各国の期待は大きく、それにこたえていくことは貿易立国として生きる我が国の経済の発展と繁栄にとって必要不可欠であります。経済協力費については削減の対象とせず、前年度比で七・九%増と防衛費の伸び率を上回る予算配分を行ったのは、国際社会への貢献の見地から適切な措置であります。
最後に、他の諸施策との調和を図りつつ、防衛計画大綱の水準達成のため質の高い防衛力の整備を行うこととしている点であります。
防衛関係費につきましては突出であると批判する向きもありますが、外国の侵略を排除し、国民の生命、財産を守ることは、国家に課せられた第一義的な義務であります。近年のソ連の軍事力増強を背景とした国際軍事情勢や自由主義国家群の一員としての国際的責任を考慮して、我が国の独立と平和を守るための必要最小限度の経費を計上することは当然のことであり、そのような批判は全く当を得ていないと言わざるを得ません。
以上、五十九年度予算に対し賛成する主な理由を述べてまいりましたが、この際、政府に対し、若干の要望をいたします。
行財政改革は、我が国の将来にかかわる緊急かつ重大な政策課題であります。今後とも国民の理解と協力のもとに、あらゆる困難に耐え、目標達成に向けてなお一層努力していただきたいのであります。
景気につきましては、その見通しが明るくなってきたとはいえ、地域及び業種間にはいまだ格差が見られる状態であり、倒産件数についても横ばいで、減少傾向にあるとは言いがたいものがあります。今後、機動的な経済、財政運営を行い、景気回復をより確かなものにするとともに、雇用の安定確保に向けて一層力を注いでいただきたいのであります。
終わりに、今日、世界の中の日本として期待される国力を築き、国民生活の向上を果たし得たのは、我が党が一貫して政権を担当し、国政の推進に英知と努力を傾注したことによるものと考えますが、これを支えたものは、国民の我が党に対する信頼と支持にほかなりません。我々は、選挙における国民の審判を厳粛に受けとめ、政治に対する信頼を確保し、真の責任政党として一層研さんし、国民の期待にこたえる決意であることを申し述べ、予算三案に対する賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/9
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010・木村睦男
○議長(木村睦男君) 峯山昭範君。
〔峯山昭範君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/10
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011・峯山昭範
○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
今日、政治に求められているものは、言うまでもなく政治倫理の確立であり、国民の政治に対する信頼の回復であります。
しかるに、中曽根総理は、昨年末の総選挙における自民党大敗北の原因をみずから自民党の政治倫理の欠如にあったことを認めるとともに、選挙後、田中元総理の影響力排除を総裁声明として国民に約しておきながら、今また再びその公約をほごにしようとしております。総理が総選挙の結果を厳粛に受けとめるというのであれば、まず金権腐敗政治を一掃し、国民の政治に対する信頼を取り戻し、議会制民主政治の再建を図るべきであります。総裁声明の中で政治倫理の確立を公約した総理が、他方で政治倫理にもとる政治行動を起こそうとしておる事実を我々は断じて容認するものではありません。
また、経済政策の面においても、中曽根総理に一言申し上げざるを得ないものであります。
当面する景気情勢は、徐々に明るさが見え始めたとはいえ、いまだ業種間、地域間の跛行性が色濃く、特に豪雪に見舞われた東北、北海道、北陸地方の景気は不況そのものであります。また、勤労者の所得は一向に伸びず、まして消費には減少の傾向すら見られるのであります。失業、倒産も依然として高水準のまま推移していることも重大であります。我が国の景気が果たして着実な回復の道を歩むことができるのかどうか、大いなる疑問を抱かざるを得ません。景気はよくなってきたとして強力な景気対策を要求する国民の声に背を向ける政府の態度は、厳しい現実に意識的に目をそらそうとしたものと言わざるを得ないものであります。
以下、具体的に反対の理由を申し述べます。
反対理由の第一は、七年ぶりに行われようとしている所得税減税が、我々の主張とかけ離れ、小規模に圧縮され、しかもその中に増税が隠されていることであります。
政府は、五十二年以降、国民の総意にもかかわらず減税実施を拒否し続けてきましたが、昨年二月与野党合意が成立し、ついに減税実施に追い込まれました。しかし、五十八年中に景気浮揚に役立つ相当規模の減税を行うとの合意を踏みにじり、五十八年度においてはわずかに所得税、住民税合わせて二千百億円が辛うじて実施されたにすぎなかったのであります。五十九年度においても、減税の規模は所得税で八千七百億円、住民税で三千百億円にとどめてしまったのであります。
長期にわたり課税最低限を据え置き、国民に実質増税を強いてきたことを考えると、少なくとも所得税、住民税合わせて一兆七千億円の減税は必要と言わなければなりません。厳しい国民生活の実情を無視する政府の態度は、到底認めることはできないのであります。
しかも、政府の所得税減税を含む税制改正の中には、増税措置が巧妙に隠されているのであります。低所得者はもとより、すべての納税者に適用される最低税率を一〇%から一〇・五%に引き上げ、これによって約一千億円の増収効果をもくろんでいるばかりか、逆に最高税率を引き下げることによって高額所得者を一段と保護しようとしているのであります。これこそ取りやすいところから取る弱者しわ寄せの税制改正と言っても過言ではありません。
なお、私はこの際、給与所得控除の最低限を二万円引き上げるという政府自民党の確約を速やかに実現するよう要求するものであります。
第二は、増税なき財政再建を公約しながら、大幅な増税を行っていることであります。
一億国民の悲願であった所得税減税が五十二年以来七年ぶりに実施される傍ら、法人税を初め酒税、物品税等を中心に総額九千五百億円余の増税が行われようとしております。政府は、増税なぎの意味を全体として税負担率が上昇しないことであり、不公平税制の是正はその範疇に入らないとの説明を繰り返しているものの、大幅な酒税や物品税の増税が果たして不公平税制の是正でありましょうか。酒税、物品税の増税、これこそは逆進性も甚だしい大衆増税そのものと言わざるを得ません。その結果、所得税減税が実施されるにもかかわらず、租税負担率は五十八年度の二三%台から一気に二四%台へとはね上がっております。
さらに、政府は、大型間接税導入は行わないと言いつつも、六十年度以降については明確な言明を避け、税の勉強という名のもとにその導入を虎視たんたんとねらっていることは火を見るよりも明らかであります。増税なき財政再建を看板に掲げながら、その一方で大衆増税をもくろむ政府の態度は断じて見逃しにできません。
反対の第三は、医療費抑制を理由に健康保険の保険給付率を十割から九割へ引き下げようとしていることであります。
財政逼迫を理由に、もしこの制度の導入を許すならば、福祉元年とうたわれた四十八年以降営々として築いてきた我が国の社会保障制度と、福祉国家建設を目指してきたこれまでの諸政策は、一体何だったのでありましょうか。がん治療を初めあらゆる疾病に対する給付の引き下げは、政府の受給者は減少しないとのたび重なる弁明にもかかわらず、総受給者の減少が不可避であるばかりか、これこそは総理の提唱するがん対策と真っ向から対立する施策であり、大きな矛盾であると言わざるを得ません。政府のこのような健保改悪は福祉国家建設に対する重大な挑戦であり、到底容認することはできず、国民の健康をじゅうりんする同案は直ちに撤回されるべきであります。
第四は、政府のこれまでの公約と法律義務を翻し、五十年度以降発行してきた特例国債すなわち赤字国債の借りかえ禁止条項を、過去にさかのぼってすべて外そうとしていることであります。
我々は、再三にわたり赤字国債の現金償還の困難性を指摘するとともに、その早期対策の必要性をただしてまいりました。それにもかかわらず、政府は、償還期限到来の節には一切の借りかえを行うことなく、赤字国債保有者にはすべて耳をそろえて現金償還すると強弁してきたのであります。また、赤字国債の現金償還が不可能と判明した時期はこの一年間の間と答弁しているのでありますが、少なくとも定率繰り入れ停止に追い込まれた五十七年度時点で、現金償還の不可能であることはだれが見ても明々白々であったのであります。しかも、借りかえ禁止条項の緩和は償還到来時に毎年度行うべきであるとの我々の主張には一顧だにしようとしておりません。このような政府の怠慢と財政民主主義を踏みにじる行為を我々は断じて容認することはできません。
あわせて、私は、国債整理基金への定率繰り入れを、五十八年度に続き三年連続停止しようとしていることについても反対を表明せざるを得ないものであります。
第五は、国鉄運賃を初め、米価、医療費など生活関連公共料金が一斉に値上げされようとしていることであります。
ここ二、三年、物価は安定化傾向を続けており、国民生活もようやく物価上昇の圧迫から解放されようとしているにもかかわらず、政府主導による見境のない公共料金の値上げによって国民生活は再び圧迫されようとしております。我が国経済が丸三年に及ぶ不況からようやく脱出し始めているとはいえ、国民所得の伸びが低迷を続けている状況下において、公共料金値上げラッシュは、大幅増税とともにますます国民生活を萎縮させ、再び景気拡大の芽を摘んでしまうおそれがあり、到底認めることはできません。
最後に、防衛関係予算の突出や、防衛費GNP一%以内との枠を取り外そうとすることなどに見られる中曽根内閣の危険な軍事拡張政策に警鐘を鳴らすとともに、金権腐敗擁護の姿勢に反省を促して、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/11
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012・木村睦男
○議長(木村睦男君) 内藤功君。
〔内藤功君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/12
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013・内藤功
○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十九年度政府提出予算三案に反対の討論を行うものであります。
今日、我が国は、平和、暮らし、民主主義、この三つの分野で未曽有の危機に直面し、底知れぬ不安と混迷が広く国民を覆っております。中曽根総理は施政方針演説において、二十一世紀を日本の世紀としようとする、行く手に光が見え始めていると述べられましたが、最近発表されたギャラップなどの主要十カ国の世論調査によりますと、今後三十年間の出来事に希望を持っている日本人はわずか六%なのに、逆に恐れを抱く人は六四%にも上るとされ、「世紀末感漂う日本」と報道されているのであります。
今まさに政治に求められているのは、このような国民の不安と恐怖を解消し、危機からの脱却の展望を指し示すことであり、来年度予算は何よりもこの立場から国民の期待にこたえるように編成されなければならなかったのであります。
ところが、戦後政治の総決算を呼号する中曽根内閣の提出した昭和五十九年度予算案は、大軍拡と財界奉仕、財政危機の犠牲をすべて国民に転嫁し、社会保障を中心に戦後築き上げられてきました諸制度や民主的諸原則を軒並み根本から覆そうとするものでありまして、断じて容認できないものであります。
以下、具体的にその理由を申し述べます。
その第一は、レーガン戦略直結の安保強化とそのための大軍拡路線をますます露骨に突き進んでいることであります。
中曽根総理の軍事費の四年連続異常突出の決断、トマホーク配備の容認は、日本を核戦場にする危険を一段と強めるものであります。去る三月二十日に起きました米空母とソ連原潜の衝突事故は、まかり間違えば日本海を死の海にしかねない問題として、米ソ両国の力の均衡論に立った軍拡競争、パワーゲームに組み込まれることの危険性を改めて明らかにいたしました。また、ベトナム戦争で活動した謀略部隊グリーンベレーの再配備を政府が容認したことは、沖縄県民を初めとする国民の憤激を呼んでおります。
反対の第二の理由は、本予算案のもたらすものが、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるという国民諸階層の格差の増大であるからであります。
政府が鳴り物入りで宣伝した所得税減税は、その規模が極めて小さい上に、最低税率を引き上げ、逆に最高税率は五%も引き下げるという露骨な金持ち減税と言うべきものであり、しかもその減収分は、酒税、物品税等の大衆増税によって補てんするという二重三重に許しがたいものであります。さらに、消費者米価など公共料金値上げに健康保険本人十割給付の廃止、児童扶養手当の切り下げ等々が加重されまして、低所得者層は減税どころか大幅な負担増であります。
総理の言われる「戦後三十八年営々とした努力によってもたらされた我が国の歴史上との時代にも実現し得なかった多数の国民が浴する現代文明の恩恵」なるものの実体がこれであるなら、余りにも国民を愚弄するものと言わなければなりません。
反対の第三の理由は、本予算案が財政破綻を促進するものにほかならないからであります。
現在のこの深刻な財政危機は、後は野となれ山となれ式の国債大量発行で行った大企業奉仕の景気対策の結果そのものであるにもかかわらず、政府はこの危機を赤字国債の借りかえで乗り切ろうとする無策ぶりであります。それどころか、政府が提出しました「財政の中期展望」は、財政破綻をとことんまで推し進め、大増税以外に選択の余地がないというところまで国民を追い詰めようという意図をあからさまにしたと言う以外に言いようのない無責任なものであります。
反対の第四の理由は、巨額の浪費を放置したままで、民間活力の導入と称して新たな大企業奉仕をたくらんでいることであります。
政府は、むつ小川原開発を初め数々のむだ遣いに何らメスを入れることなく、今度は国民の共有財産である貴重な国有地を提供するなど、もってのほかであります。総理の言う民間活力の発揮とは、財政に寄生じ、財政を破綻に追い込む一方で、身動きできないほど肥え太った大企業へ新たな利潤を保障するため、国民から一層搾り取ろうとするものであります。これは我が国経済のゆがみを極限にまで推し進めるものにほかなりません。
今求められているのは、上位五十社で十六兆円にも上ると言われる内部留保を初め大企業の過剰蓄積を野放しにするのではなく、民主的コントロールを加えることにより、つり合いのとれた経済発展への端緒を切り開くことではないでしょうか。中曽根内閣の選択は、日本経済再建に逆行し、国民に過酷な負担を強いる最悪のものであると思います。
そして、中曽根内閣は、この悪政を遂行するため金権腐敗構造の温存と民主主義破壊の新たな攻撃を強行しようとしております。総選挙後あれほど声高に言明した田中元首相の影響の排除ところか、明らかにこれに逆行する動きがあります。我が党は断じてこれを認めることはできません。国会の当面の重大な責務は、衆議院に我が党が提案している田中辞職勧告決議案を審議、採択するなど、ロッキード問題にきっぱりけじめをつけ、また予算委員会でも我が党が要求いたしました二階堂氏の証人喚問など、真相の徹底的解明を行うことであります。
さらに、ロッキード事件を契機として政治倫理確立のために設置された衆参両院の政倫協の場で執拗に繰り返されている政党法を制定するという動きは、政治革新を目指す政治勢力と少数党派の排除を目的とし、憲法の民主的規定を真っ向から踏みにじるものでありまして、断じて許せるものではありません。
私は、中曽根内閣のこのような反国民的路線は国民の厳しい批判の前に必ずや破綻せざるを得ないであろう、このことを厳しく指摘し、反対討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/13
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014・木村睦男
○議長(木村睦男君) 柄谷道一君。
〔柄谷道一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/14
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015・柄谷道一
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題になりました昭和五十九年度一般会計予算外二案に対し、一括して反対の討論を行います。
五十九年度予算について国民が中曽根内閣に特に求めたものは、第一に、国民の重税感、税に対する不公平感を解消すること。第二に、速やかな内需主導型の景気回復を実現し、国民生活の安定を図ること。第三に、国家的課題である財政再建に向けて着実な第一歩を踏み出すこと。第四に、臨調答申にのっとり国、地方を通じた行財政改革を断行すること。そして第五に、行革中といえども福祉の計画的向上を図ることの五点であったと私は考えるのであります。
中曽根総理は、昨年十二月のさなか五十九年度予算編成に関する十項目の構想を発表されましたが、この中には、ただいま申し上げました五点についての総理の考えがそれなりに示されておりました。しかし、提出された政府予算案は、その国民への公約をことごとく破り、国民の期待を大きく裏切ったものであり、国民に大きな失望と政治への不信感を与えたものと言わざるを得ません。とりわけ、増税を行わないとの公約にもかかわらず、減税財源確保の名のもとに、減税総額を上回る国、地方合わせて約一兆三千億円の増税を強行しようとしていることは、最大の公約違反であります。これが、我が党が政府予算案に反対する第一の理由であります。
減税との抱き合わせであれば、酒税、物品税、自動車関係諸税などの大衆増税並びに法人税、石油税などの企業課税の強化を行っても増税ではないとの中曽根内閣流の解釈は、良識ある一般の国民には到底理解できない詭弁であり、これにより中曽根内閣の増税なき財政再建という最大の公約は大きく崩れ去ったと断ぜざるを得ません。財政再建を初めとする国家的課題に取り組むに際しては、国民の理解と協力が十分得られるような、信頼に足る政治姿勢が何よりも肝要であることに政府は深く思いをいたすべきであります。五十九年度予算を契機として、政府が今後一層増税による財政再建路線へと突入していかぬよう、我が党は政府に対して強く警告するものであります。
同時に、国民の切実な要求であった所得減税の実施に至るまでの対応に見られるような、常に後手後手の姿勢を政府が早急に改め、今や急務となっているパート減税の拡充、内職者、単身赴任者に対する税制上の優遇措置、教育費減税の創設などに速やかに着手されますよう強く求めます。
反対する第二の理由は、公共事業の適切な確保を図り、民間活力を最大限に発揮させることによって高目の成長を期するとの公約にもかかわらず、政府が公共事業関係費を削減するなど、既にその破綻が立証された縮小均衡型経済運営をなおも踏襲しようとしていることであります。
政府は、政府自身がその拡大を期待している民間設備投資に対して、法人税率の引き上げや投資減税の圧縮などにより水を差すばかりでなく、個人消費に対しても減税効果を増税で相殺し、公共料金の軒並み引き上げや福祉の後退により国民生活を圧迫し、むしろ消費意欲を減退させる措置を講じているのであります。このような経済運営によっては速やかな景気回復も雇用情勢の改善も望めず、税収は依然伸び悩みを続け、ひいては財政再建の遅延が早晩大増税を不可避とすることは必至であり、到底容認できません。我が党は、我が国経済の潜在成長力の顕在化と増税なき財政再建の達成のため、早急に拡大均衡型経済運営への転換を図るよう強く求めます。
反対する第三の理由は、財政再建についての国民の理解や合意を得るべく、その具体的手順と方策の明示及び簡潔でわかりやすい資料の提供を求めた臨調答申に全く反していることであります。
政府が、五十九年度赤字国債減額を五千二百五十億円にとどめ、昨年政府公約としたばかりの昭和六十五年度赤字国債脱却のための約一兆円の減額を放棄したことは、政府の財政再建にかける熱意と公約履行に対する責任感とが全く欠如していることを物語るものであります。
また、我が党の再三にわたる要求にもかかわらず、大蔵省が「財政の中期展望」の主要経費別内訳などの財政再建を真剣に検討していく上での不可欠な基礎的資料の提出を、時には議員に不当な圧力をかけてまで強硬に拒否し続けたことは、憲法第六十二条に基づく国政調査権の観点からも、臨調答申が求めた情報公開の観点からもゆゆしきことであり、極めて遺憾であります。この点について政府、特に大蔵省の反省を促すとともに、政府に対し、今後の財政再建に向けての具体策と建設的な財政論議のために必要な諸資料を早急に国民の前に明らかにするよう強く求めます。
反対する第四の理由は、中曽根総理の答弁とは逆に、臨調答申に沿った行財政改革の断行が極めて不十分なものにとどまっていることであります。
我が党が、行革与党の立場から、かねてより退職者不補充措置の拡大による公務員定数の約一万七千人純減、特殊法人に対する補助金の削減、地方公務員給与適正化法の制定、貸倒引当金等の見直しなどの具体策を示し、その実現を強く求めてきたにもかかわらず、政府がこれを軽視したことは遺憾であります。
また、政府が臨調答申の指摘に反して、国債費の定率繰り入れ等の停止、住宅金融公庫の利子補給金の財投借り入れ、住宅・都市整備公団補給金の予算計上見送りなどの財政技術的操作による表面的な歳出抑制を五十九年度においても再び行おうとしていることは、臨調答申の精神にもとる小手先の手法と言うべきであります。このような一時的な、いわば緊急避難的な措置は、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりか、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味で極めて問題であります。制度の根本的改革につながらない実質的な赤字国債の発行は今後行わず、既往の措置は早急に解消するよう求めます。
反対する第五の理由は、政府が行革の名のもとに、社会保障の理念や展望を明らかにしないままに健康保険制度の改悪など福祉後退を図っていることであります。
我が国の憲法は、その第二十五条において、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障し、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に対する国の責務を明確に定めております。我が党は、この憲法の規定に基づき、国民のニーズにこたえた公正かつ高水準な社会保障制度の確立を強く求めてまいりました。しかるに、政府が医療保険改革の中期展望とその具体的プログラムを何ら示すことなく、単に与えられたマイナスシーリングに帳じりを合わせるために、国民合意も得られないまま一方的に本人給付率の削減を図り、患者にのみ負担を強いようとしていることは断じて容認できません。
このような見地から、我が党が本人給付率の削減撤回、高額療養費自己負担限度額の抜本的見直し、国庫負担の導入による退職者医療制度の創設などを政府に強く求めてきたにもかかわらず、政府が今日に至るまでこれらの要求こたえようとしなかったことは極めて遺憾であります。我が党は、国民の福祉を断固守るべく、今後健保改悪を阻止するため全力を傾注する決意であることを特に強調しておきたいと思います。
最後に、五十九年度予算は、昨年末の総選挙のあおりを受けて越年編成となり、当初から暫定予算不可避かとささやかれていたにもかかわらず、中曽根総理が三月下旬に一方的に訪中日程を組み、参議院における予算審議を必要以上におくらせた上に、それでもなお暫定予算を組まずに済まそうとしたことは、余りにも財政民主主義と参議院の権威を軽視したものであります。今後はかかる事態を繰り返さぬよう中曽根総理に反省を促し、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/15
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016・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/16
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017・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより三案を一括して採決いたします。
表決は記名投票をもって行います。三案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/17
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018・木村睦男
○議長(木村睦男君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
〔投票箱閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/18
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019・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/19
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020・木村睦男
○議長(木村睦男君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十四票
白色票 百三十一票
青色票 百三票
よって、三案は可決されました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百三十一名
安孫子藤吉君 井上 吉夫君
井上 孝君 井上 裕君
伊江 朝雄君 岩動 道行君
石井 一二君 石本 茂君
板垣 正君 岩上 二郎君
岩崎 純三君 岩本 政光君
上田 稔君 植木 光教君
浦田 勝君 江島 淳君
遠藤 要君 遠藤 政夫君
大河原太一郎君 大木 浩君
大島 友治君 大城 眞順君
大鷹 淑子君 大坪健一郎君
大浜 方栄君 岡田 広君
岡野 裕君 岡部 三郎君
沖 外夫君 長田 裕二君
加藤 武徳君 海江田鶴造君
梶木 又三君 梶原 清君
金丸 三郎君 上條 勝久君
亀井 久興君 亀長 友義君
川原新次郎君 北 修二君
工藤万砂美君 熊谷太三郎君
倉田 寛之君 藏内 修治君
源田 実君 小島 静馬君
小林 国司君 古賀雷四郎君
後藤 正夫君 佐々木 満君
佐藤栄佐久君 斎藤栄三郎君
斎藤 十朗君 坂野 重信君
坂元 親男君 沢田 一精君
山東 昭子君 志村 愛子君
志村 哲良君 嶋崎 均君
下条進一郎君 杉元 恒雄君
杉山 令肇君 鈴木 省吾君
世耕 政隆君 関口 恵造君
曽根田郁夫君 田沢 智治君
田代由紀男君 田中 正巳君
高木 正明君 高平 公友君
竹内 潔君 竹山 裕君
谷川 寛三君 出口 廣光君
徳永 正利君 名尾 良孝君
内藤 健君 中西 一郎君
中村 太郎君 中山 太郎君
仲川 幸男君 夏目 忠雄君
成相 善十君 西村 尚治君
長谷 川信君 秦野 章君
初村滝一郎君 鳩山威一郎君
林 健太郎君 林 寛子君
原 文兵衛君 桧垣徳太郎君
平井 卓志君 福岡日出麿君
福田 宏一君 藤井 孝男君
藤井 裕久君 藤田 栄君
藤田 正明君 藤野 賢二君
降矢 敬義君 星 長治君
堀内 俊夫君 堀江 正夫君
真鍋 賢二君 前田 勲男君
増岡 康治君 増田 盛君
松浦 功君 松尾 官平君
松岡滿壽男君 水谷 力君
宮澤 弘君 宮島 滉君
宮田 輝君 村上 正邦君
最上 進君 森下 泰君
森山 眞弓君 矢野俊比古君
安井 謙君 安田 隆明君
柳川 覺治君 山崎 竜男君
山内 一郎君 山本 富雄君
吉川 博君 吉川 芳男君
吉村 眞事君
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反対者(青色票)氏名 百三名
青木 薪次君 秋山 長造君
穐山 篤君 糸久八重子君
稲村 稔夫君 上野 雄文君
小野 明君 大木 正吾君
大森 昭君 梶原 敬義君
粕谷 照美君 片山 甚市君
久保 亘君 小柳 勇君
小山 一平君 佐藤 三吾君
志苫 裕君 菅野 久光君
鈴木 和美君 瀬谷 英行君
高杉 廸忠君 竹田 四郎君
寺田 熊雄君 中村 哲君
野田 哲君 福間 知之君
松前 達郎君 松本 英一君
丸谷 金保君 村沢 牧君
村田 秀三君 目黒今朝次郎君
本岡 昭次君 八百板 正君
矢田部 理君 安恒 良一君
安永 英雄君 山田 譲君
和田 静夫君 飯田 忠雄君
大川 清幸君 太田 淳夫君
刈田 貞子君 黒柳 明君
桑名 義治君 塩出 啓典君
白木義一郎君 鈴木 一弘君
田代富士男君 多田 省吾君
高木健太郎君 高桑 栄松君
鶴岡 洋君 中西 珠子君
中野 明君 中野 鉄造君
二宮 文造君 服部 信吾君
原田 立君 伏見 康治君
藤原 房雄君 三木 忠雄君
峯山 昭範君 矢原 秀男君
和田 教美君 市川 正一君
上田耕一郎君 小笠原貞子君
神谷信之助君 近藤 忠孝君
佐藤 昭夫君 下田 京子君
立木 洋君 内藤 功君
橋本 敦君 安武 洋子君
山中 郁子君 吉川 春子君
井上 計君 伊藤 郁男君
柄谷 道一君 栗林 卓司君
小西 博行君 三治 重信君
関 嘉彦君 田渕 哲也君
中村 鋭一君 抜山 映子君
藤井 恒男君 柳澤 錬造君
青木 茂君 青島 幸男君
木本平八郎君 喜屋武眞榮君
下村 泰君 秦 豊君
前島英三郎君 美濃部亮吉君
田 英夫君 野末 陳平君
阿具根 登君 中山 千夏君
山田耕三郎君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/20
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021・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案
日程第二 物品税法の一部峯改正する法律案
日程第三 石油税法の一部き改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上三案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長伊江朝雄君。
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〔伊江朝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/21
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022・伊江朝雄
○伊江朝雄君 ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、酒税法等改正案は、最近における酒税の負担状況等に顧み、酒税の従量税率の引き上げ及び制度の整理合理化を行うほか、清酒製造業の経営基盤の安定等に資するための措置を講じようとするものであります。
次に、物品税法改正案は、最近における消費の実態及び課税物品相互間の負担の権衡等に顧み、録音用磁気テープ等の物品を新たに課税対象に加えるとともに、小型乗用自動車等の税率を引き上げる等の措置を講じようとするものであります。
次に、石油税法改正案は、最近における厳しい財政事情及び原油価格の低下等に顧み、今後における原油及び石油代替エネルギー対策の財源確保の要請を考慮して、石油税の税率引き上げ及び課税対象の追加等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、これら三法律案に対する質疑を行うとともに、昭和五十九年度税制改正に関して参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録に譲ります。
三法律案に対する質疑を終了いたしましたところ、自由民主党・自由国民会議の岩崎純三理事より、酒税法等改正案及び物品税法改正案に対し、二法律案の施行期日を「公布の日」に改め、これに伴う所要の規定を整備する修正案がそれぞれ提出されました。
続いて二修正案及び三原案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して丸谷金保委員、公明党・国民会議を代表して塩出啓典理事、日本共産党を代表して近藤忠孝委員、民社党・国民連合を代表して栗林卓司委員より、いずれも二修正案及び修正部分を除く三原案に反対、自由民主党・自由国民会議を代表して大坪健一郎理事より二修正案及び修正部分を除く三原案に賛成する旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終わり、酒税法等改正案、物品税法改正案に対する修正案及び修正部分を除く二原案並びに石油税法改正案について採決の結果、酒税法等改正案及び物品税法改正案はいずれも多数をもって修正議決すべきものと決定し、また石油税法改正案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、三法律案に対し、酒税制度について酒類の消費の実態に即しその税負担のあり方を引き続き検討すること等六項目にわたる附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/22
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023・木村睦男
○議長(木村睦男君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。丸谷金保君。
〔丸谷金保君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/23
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024・丸谷金保
○丸谷金保君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました酒税法外三法案について、反対の立場から討論を行うものであります。
今回の増税は、公約違反であるばかりでなく、大衆いじめ、弱い者いじめの増税案です。増税なき財政再建とは何を意味するのか、国民には全くわかりません。所得減税が中高所得層に効果が厚く、低所得層に効果の小さい不公平な内容になっている上に、その財源を大衆増税に求めるのでは、減税、増税の両面からまさに不公平の挟み打ちです。所得減税が景気対策上の措置でなく単なる負担調整措置であるならば、なおのこと、減税財源は大衆課税によらず、各種引当金、準備金の整理、利子配当所得課税の強化等の不公平税制の見直しによって確保すべきものでありますが、残念ながらそれらは全く不十分なままに放置されております。
また、今回の税法審議に当たっての大きな特徴は、政府が減税法案に先立って間接税増税法案を国会に提出してきたことであります。さすがに本院ではこのようなこそくな手段を正すことができましたが、この点政府に強く反省を求める次第であります。
次に、各法案について申し上げます。
まず、酒税。初年度三千二百億、平年度三千五百十億の増税を行うというものでありますが、最近の酒の消費量の低迷状態を見るとき、その負担は個人消費に深刻な影響を及ぼすのは避けられません。酒は単なる嗜好品ではなく、生活文化の所産であり、勤労大衆の働く意欲の源泉の一つでもあります。また、消費財としては広範な大衆にかかわるものであり、税負担もそれだけ逆進的性格の強いものであります。もっとも、それだからこそ取りやすい税金であり、そこに今回の増税が求められた理由もありますが、先進国の中で最も高い酒税を標的にするのは、もってのほかの暴挙と言わなければなりません。
そもそも酒に関しては、小売免許制と職業選択の自由の問題、清酒の中小醸造業者の健全化、特級、一、二級といった紋別問題、価格と税のかかわりとしての従価税と従量税の見直し、酒の品質と表示の問題、自家醸造等々検討改善すべき点が多々あるにもかかわらず、これらについては抜本策のないままにすべて先送りで、税金を飲んでいる国民はこれではたまったものではない。税金を取ることだけを目的としている酒税法から、国民の生活を中心に据えて、良質な酒類の提供、正確な情報と利便の確保、その上に適切な負担を求めることを強くこの機会に要求いたします。
また、安定措置法も、零細企業の安定より整理のための法案であり、承服できません。
次に、物品税。初年度三百五十億、平年度五百六十億の増収が予定されておりますが、ここでの問題は、税金の性格自体が変化しつつあるということです。
物品税は、奢侈品、ぜいたく品に課税し、戦費調達のために設けられたものですが、昨年十一月の政府税制調査会の中期答申では、現在のような考え方にとらわれることなく、消費の持つ担税力に着目して課税する方向への脱皮を提言しております。担税力に着目してその方向に脱皮せい。その最終目標は何でありますか。物品とサービス全体に課税する大型間接税、一般的消費税であることは明らかです。中曽根総理は、大型間接税は公約として導入しないと言明する一方で、物品課税の拡大を考えている節がありますが、それは同時に、物品税の性格を変えることにもつながりかねないのであります。
憲法第八十四条、「現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定しております。物品税の課税対象範囲を拡大し、奢侈品、ぜいたく品にとどめないとするならば、現行物品税にかわって新たなる税金の登場とならざるを得ないのではありませんか。現行物品税の課税に当たっても、高価な物品でありながら課税されないものが多々あります。産業保護の観点からという理由に立っていますが、その裏に政治的色合いの強い、補助金支出にかえる措置となっているのも否定できないのであります。国民の不信感、不公平感を解消させるためには正すべき問題が残されております。
また、石油税の増税も、備蓄を名目として石油ガス、LPGなど新規課税も含まれていますが、石油備蓄のあり方に疑問があり、新エネルギー開発の内容にも改善の余地がある現状で、最終的には国民大衆の負担となる今回の増税には疑問を抱かざるを得ません。
以上、増税三法案について触れましたが、最後に二点を強調しておきます。
第一点。政府は間接税増税の方向を打ち出し、直間比率の是正が国民の重税感を和らげるとともに、負担の不公平をなくす方法と考えていますが、現実の国民生活を見ますと、消費の多様化と言われる一方で所得の格差の広がりが起きていること、また各種の統計では、国民の内部での富、資産の保有状況が明確にされず、金融資産から生ずる不労所得の配分状況も明らかにされておりません。また、政府はヨーロッパの直間比率を強調しますが、シャウプ勧告以来アメリカの税制を取り入れてきたのですから、アメリカの直間比率の問題にこそ言及すべきでないでしょうか。間接税の逆進的性格を超えての負担強化は断じて反対であります。
第二点。国民の税に対する不平不満は、制度についてだけでなく徴税面にも広がっております。福島交通は言うに及ばず、最近の企業の使途不明金の増加は、金権政治と密接につながっていることは明らかです。政治不信を除去するためにも厳正な調査を要求します。特に、法人関係税の適正な税務行政の実現を求めてやみません。
以上、二点を申し添え、政府提出の間接税増税の各法案に対する私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/24
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025・木村睦男
○議長(木村睦男君) 塩出啓典君。
〔塩出啓典君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/25
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026・塩出啓典
○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案並びに石油税法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。
まず、反対理由の第一は、中曽根内閣の公約違反の増税であることでございます。
昨年三月の臨調最終答申は、増税なき財政再建について、「何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」と定義づけております。この臨調答申の精神を尊重すると強調してきた中曽根内閣がまずやるべきことは、増税ではなく歳出の徹底的削減であったはずであります。
しかし、政府は、総額十四兆円余の補助金の削減に十分なメスを入れず、徹底した仕事減らし、人減らしも行われず、防衛費の大幅増という聖域には踏み込まず、一方において租税負担率の上昇を伴う増税法案を提出したことは、重大な公約違反と言わなければなりません。
反対理由の第二は、所得税減税の財源として逆進性の強い間接税を増税し、低所得者層により重い税金負担を押しつけることになるからでございます。
さきに成立した所得税減税は、最高税率を下げ、最低税率を上げるなど、金持ち減税ではないかとの批判がなされており、しかも、その減税財源に間接税を大幅に増税しようとするものであります。間接税を増税することは、低所得者ほど減税の恩恵以上に間接税が増税されることになり、特に課税最低限以下の人たちは減税の恩恵はなく、間接税の増加のみを受けることになります。福祉予算の削減、公共料金の値上げ等が重なり、国民生活、なかんずく低所得者への打撃ははかり知れないものがあります。このような低所得者層に対する配慮を欠いた増税案を認めるわけにはまいりません。
反対理由の第三は、間接税の中でも特に逆進性の強い酒税を増税し、取りやすいところから取るという安易な姿勢であります。
酒税が、たばこに次いで最も逆進性の高い税であることは、審議の過程における政府答弁からも明らかであります。しかも、我が国の酒税は、先進国の中でも最高の税率でございます。すなわち、一般会計歳入に占める酒税の割合は、我が国の場合値上げ前で五・五%、値上げ後は六。一%となり、米国、フランスの四倍、西ドイツの三倍、イタリアに比べれば十二倍、先進国で一番高い英国に比しても一・五倍となります。今回の値上げによってビール一本の小売価格は約三百十円となり、そのうち酒税は百五十一円三十五銭で、小売価格の四八・九%となり、米国の一〇%、西ドイツ、フランスの約一七%と比較しても飛び抜けて高い現状であります。
税制調査会は、さきの中期答申において、社会経済情勢の変化を踏まえ、間接税体系の合理化を図り、バランスのとれた税制に改める必要性を指摘しております。かかる税制改革への努力もせず、取りやすいところから取るという姿勢は余りにも御都合主義であります。
酒税の増税は、昭和五十一年以来ほぼ三年ごとに強行されており、他の間接税と比べても、まさに異常とも言える値上げであります。しかも、前々から指摘されている酒の紋別制度のあり方等については何らの改革もなされず、矛盾の解決は先送りとなっております。これらの解決を放置して、税収増のみが先行する安易な値上げは、国民の下級酒へのシフトを起こし、結果として税率を上げても逆に税収が減るという結果を招きかねないのであります。このような政府の姿勢は、強く反省を求めるものであります。
反対理由の第四は、自動車の物品税を上げるなど大衆課税を強化しようとしているからであります。
物品税は、昭和十二年北支事件特別税法で戦費調達を目的として生まれ、種々の変遷を経て今日に至っておりますが、本来は奢侈品、高価な便益品、趣味娯楽品等へ課税されるものであり、生活必需品非課税を原則としておりました。最近の政府の姿勢は、生活必需品まで課税範囲を広げてきており、一般消費税導入への道を開くものであります。
大蔵委員会の審議の過程において、書画骨とう、高級織物等々の高価なものに対して課税がなされておらず、グリーンカード制もうやむやになり、資産家のマル優悪用も放置され、一方、高額所得者の悪質な脱税事件は後を絶たず、まじめな納税者から見れば税の不公平感は拡大されるばかりであります。このような不公平を放置しながら、一世帯平均一・一四台に普及している自動車の物品税を上げたり、電気洗濯機への課税の強化等は、大衆課税を強化し、一般消費税への道を開くものであり、断じて反対するものであります。
反対理由の第五は、石油税の引き上げが余りにも安易であるからであります。
日本の将来を考えるとき、エネルギー対策の重要性は認めるにやぶさかではありません。しかし、限られた予算について、むだを省き、より効率的に使わなければなりません。特に指摘しなければならないことは、政府の経済見通し、なかんずくエネルギーの中長期見通しが、低成長時代への移行を予測し得ず、大幅に狂い、たび重なる修正を続けていることが国民経済を混乱させ、エネルギー対策にも大きなむだを生じており、政府の反省を強く促すものであります。
石油備蓄問題についても、過剰な設備計画、コストの高いタンカー備蓄など、節約、効率化の余地は十分残されているのであります。このようなエネルギー対策のあり方について厳しい改革がなされないまま、原油価格の低下を理由とする安易な値上げには賛成できません。
以上をもって私の三法案に対する反対討論といたしますが、ここ数年の税制改正において、国民がひとしく要請する不公平税制の是正を棚上げし、財政収支のつじつま合わせに終始し、結果として取りやすいところから取るという国民生活を無視した増税が着々と進行し、かえって税制をゆがめ、不公平を拡大していることに強い憤りを覚えざるを得ません。政府として臨調や税制調査会が指摘した歳出削減に努めるとともに、執行面、法制面における税の不公平是正に勇断を持って当たることを強く要望し、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/26
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027・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/27
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028・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
まず、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び物品税法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。
両案の委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。
両案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/28
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029・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、両案は委員長報告のとおり修正議決されました。
次に、石油税法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/29
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030・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/30
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031・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第四 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教委員長長谷川信君。
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〔長谷川信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/31
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032・長谷川信
○長谷川信君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、まず第一に、北見工業大学、図書館情報大学、高知医科大学、佐賀医科大学及び大分医科大学にそれぞれ大学院を設置するとともに、長崎大学に医療技術短期大学部を併設しようとするものであります。
第二に、熊本大学の体質医学研究所を廃止して医学部に統合するとともに、文部省の所轄研究所である国立遺伝学研究所を改組転換して国立大学共同利用機関として設置するほか、昭和四十八年度以降に設置された医科大学等の職員の定員を改めようとするものであります。
委員会におきましては、今後の大学院の設置のあり方、研究所における改組転換の手続及び研究所員の処遇、新高等教育計画の内容と実施方針、第三セクター方式など大学の設置形態の多様化、医学部定員削減の是非など医師養成の見直し、大学における非常勤職員の採用のあり方、共通一次テストの改善などの諸問題につきまして熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/32
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033・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/33
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034・木村睦男
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後七時十三分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01119840410/34
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