1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年五月九日(水曜日)
午後零時二分開議
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○議事日程 第十四号
昭和五十九年五月九日
正午開議
第一 北西太平洋における千九百八十四年の日
本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関
する議定書の締結について承認を求めるの件
(衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日程第一
一、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の
確保を図るための特別措置等に関する法律案
(趣旨説明)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
江島淳君から海外旅行のため八日間の請暇の申し出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/1
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002・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
よって、許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長後藤正夫君。
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〔後藤正夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/3
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004・後藤正夫
○後藤正夫君 ただいま議題となりました北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
この議定書は、日ソ間の漁業協力協定に基づき、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における本年のわが国のサケ・マスの漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、違反に対する取り締まりの手続等を定めたものでありまして、ソ連の距岸二百海里水域の外側の水域における本年の我が国の年間総漁獲量は四万トンとなっております。
委員会におきましては、サケ・マス資源の回復と漁獲量の確保、操業水域の転換、漁業協力費の算定基準、今後の北洋サケ・マス漁業等の諸問題につき質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。
昨八日、質疑を終え、別に討論もなく、採決の結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/4
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005・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/5
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006・木村睦男
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/6
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007・木村睦男
○議長(木村睦男君) この際、日程に追加して、
昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/7
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008・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。竹下大蔵大臣。
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/8
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009・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には異例に厳しいものがあります。このような中で、財政改革の推進を通じて財政の対応力を回復させることは、今後の我が国経済の発展と国民生活の安定の基盤を確かなものとするための緊要な政策課題であると考えております。
このため、政府は、昭和五十九年度予算におきまして、特に歳出構造の徹底した見直しを行うことを基本とし、あわせて歳入面についてもその見直しを行い、公債の減額に最大限の努力を払ったところであります。
まず、歳出面におきまして、前年度よりさらに厳しいマイナスシーリングのもとで、聖域を設けることなく見直しを進め、制度、施策の根本にまで踏み込んだ改革を行うなど徹底した節減合理化を行いました。その結果、一般歳出の規模は前年度に比べ三百三十八億円の減額となっております。
他方、歳入面におきましては、所得税の大幅減税等所要の税制改正を行うとともに、税外収入について、特別会計及び特殊法人からの一般会計納付等の措置を講ずるなと思い切った増収を図ることとしております。
しかしながら、これらの措置をもってしても、なお財源が不足するため、昭和五十九年度におきましては、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等を停止せざるを得ない状況にあります。
また、特例公債の償還財源の調達問題につきましては、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定を図りながら、どのように財政改革を進めていくかという観点から検討する必要がありますが、今後の厳しい財政事情を考えれば、借換債の発行を行わないという従来の方針につきましては、遺憾ながら見直さざるを得ないものと考えます。
本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債の発行等、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置を定めるとともに、特例公債の償還のための起債の特例を定めるものであります。
すなわち、本法律案は、第一に、昭和五十九年度における特例公債の発行、国債費定率繰り入れ等の停止、日本電信電話公社及び日本専売公社の国庫納付金の納付の特別措置について定めております。
第二に、政府は、昭和五十九年度以前の各年度において発行した特例公債の償還に当たり、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り借換債を発行しないよう努めるとともに、借換債を発行した場合においては、その速やかな減債に努めるものとする旨定めております。
以上、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/9
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010・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。赤桐操君。
〔赤桐操君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/10
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011・赤桐操
○赤桐操君 私は、日本社会党を代表いたし、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、総理並びに関係各大臣に若干の質問を行います。
まず、財政再建についてであります。
我が国の財政状況は、国債残高百二十二兆円、国債費九兆一千五百五十億円に端的にあらわれておりまするとおり、大変な窮状であり、まさにサラ金財政の状況にあります。財政法四条ただし書きによる例外の財源調達でありまする建設国債は、四十一年度発行以来既に約二十年間も継続いたしており、さらに財政法で認められない赤字国債も恒例のように毎年繰り返され、既に十年を数えるに至っております。この異常でゆがんだ財政運営脱却の目途さえつかないという状況は極めて遺憾であると同時に、三木内閣から鈴木内閣までの各内閣は、財政再建目標を国民に公約提示しながら、いずれも破綻と挫折を繰り返してまいりました。
中曽根総理は、赤字国債脱却期間を従来より大幅に延ばし、七年後の六十五年度を目標年次とされましたが、果たして歴代政府と同様の結末になるのではないかと危惧の念を禁じ得ないのであります。と申しまするのは、財政再建初年度の五十九年度に、対前年度比一兆円の特例公債減額計画が五千二百五十億円とほぼ半分しか達成できなかったことが先行きを暗示しているからであります。
さらにつけ加えるならば、この財確法案で日本電信電話公社及び日本専売公社からの臨時国庫納付金二千三百億円の取り立てを織り込んでの特例国債減額であることを指摘せざるを得ません。
中曽根総理はまた、増税なき財政再建を提唱しておられまするが、先ごろ大蔵省が国会に提出した「中期的な財政事情の仮定計算例」等による六十年度以降各年度の膨大な要調整額を増税なしにやれるか、国民は心配いたしております。総理はしばしば一般歳出の削減を口にされまするが、仮定計算例を見ますと、一般歳出の規模は六十五年度までおおむね三十兆円台で推移の見込みでありますので、その中から要調整額が捻出できるのか、具体的に何を削っていくかお示しをいただきたいと存じます。
増税なき財政再建を言いながら、既に五十九年度に増減税合わせての税制改正で六百五十億円の純増税を行っている中曽根内閣のやり方に、国民の不信感は募っております。さらに政府税調と大蔵省は課税ベースの広い間接税の導入を研究、検討中であることは周知のとおりであります。増税なき財政再建が、本法案の特例公債の借りかえ転換同様、増税再建への転換の危惧を国民はぬぐい去ることができません。総理の明確な御答弁を求めます。
次に、財確法案の問題であります。
五十九年度財確法案は、前段で五十九年度の財政運営に必要な財源確保の特別措置を、後段において五十年度から五十八年度までに発行した特例公債の借りかえ償還を行うことを規定しております。
まず指摘しなければならないのは、本法案は看板と中身が違い過ぎることであります。五十九年度特例公債発行六兆四千五百五十億円の根拠法と五十八年度までの特例公債発行残高四十六兆円余の借りかえとは本来別問題であり、特例公債の借りかえは五十九年度の財源不足を補てんすることとは何ら関係がないのであります。しかるに政府は、全然異質の財政措置を五十九年度財確法案に「等」の一字を入れるだけで処理しようとするやり方は、余りに便宜的であり、財政民主主義を無視する態度と言わなければなりません。
私は、本法案を二つに分割いたし、五十九年度の財源確保法案と過年度発行特例公債の借りかえ法案として再提出することを要求するものであります。
次に、特例公債借りかえに政策転換した政府の無責任な態度を厳しく追及しないわけにはまいりません。当時の大平蔵相の現金償還の約束を含む五十年度以来各年度の特例公債発行の根拠法については、借りかえ禁止規定を設けて特例公債増発
の歯どめと、建設国債と特例国債の節度の違いを強調してきたのは政府自身であります。五十九年度赤字国債脱却が水泡に帰すると、これまでの公約を破棄し、公債政策を百八十度逆転させ、特例公債借りかえを当然視する政府の姿勢は納得できないだけではなく、その背信行為は許されないところであります。一年前の五十八年度予算審議や同年度の財確法の審議を通じ、繰り返し特例公債の借りかえなしの現金償還を約束したのは中曽根内閣であり、竹下蔵相であります。この責任をどうおとりになりますか。
百歩譲って、特例国債の現金償還が財政の窮迫で困難であるといたしましても、発行当時の経緯にかんがみ、毎年度の特例公債償還期限到来債のうち、まず現金償還に最大限度の努力をし、やむを得ない残余の額を借りかえ償還することとして、毎年度国会の審議議決を得べきではないかと考えますが、何ゆえ五十年度以降の発行特例公債の借りかえ方式転換を本法案で一括して行わなければならないのか。特例公債に対する従来の警戒的な政府の姿勢が余りに急変し過ぎるのではなかろうかと思うのであります。
続いて、国債運用でこれまで政府が強調してまいりました建設国債と特例国債の区別は、発行段階はともかく、流通、償還の段階では何らの区別がなくなったと思われますが、政府の国債政策は根本的に変わったということか、伺いたい。
財確法案で特例公債の借りかえ政策導入を規定しただけで、特別な定めがない以上、結局国債整理基金特別会計法に従った借りかえ償還が行われることになると思われます。これまで建設国債は、道路や建造物の耐用年数がおおむね六十年と見込まれるので、後世代の人々も負担を分担する意味で借りかえを行うことが認められるというのが政府の説明でありました。赤字国債は従来、後世代にツケだけを回すことになるので借りかえはすべきでないと主張していた政府が、借りかえを是認した現在では建設国債同様六十年にわたる償還となると思われますが、後世代に対する負担をどう説明されますか。これまでの赤字国債の借りかえなしの現金償還方針と矛盾のない、国民が納得する説明を求めます。
こうした追及に対し、政府の答弁は、財確法案の六条の訓示規定を引用されることでありましょう。すなわち第六条は、特例公債の「償還のための起債は、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り行わないよう努めるものとする。」また「償還のための起債を行った場合においては、その速やかな減債に努めるものとする。」となっております。しかし、これまでの財政関係の法律にこの種の精神規定、訓示規定の例があったでありましょうか。さらに、訓示規定は財政運営を規律する力はほとんどゼロに等しいはずであります。そのことは、財政法四条の例外規定の建設国債が恒常的な財源確保策として使われていることから見ても、この訓示規定が赤字国債の垂れ流し的運用の歯どめになるとは思われません。
従来の赤字国債警戒の政府の延長線上で特例公債の借りかえを実行するなら、訓示規定を改め、例えば建設国債の償還期限の半分の三十年とか三分の一の二十年で償還する義務規定にすべきが当然ではないかと思うのであります。赤字国債償還の厳しい節度遵守を回避し、単なる訓示規定では、政府が法案通過のためにどんなに強弁しても、赤字国債垂れ流しに道を開き、財政危機を増大させることは火を見るよりも明らかであります。将来の財政運営を誤りなきものにするために、五十九年度財確法案の特例公債償還のための起債の特例については再検討を強く求める次第であります。
五十九年度財確法案に赤字国債の借りかえ方式を導入することは、以上何点か指摘してまいりましたように重大な問題点があるとともに、たとえ赤字国債の借りかえが必要だといたしましても、提案は時期尚早であります。大蔵省が五十九年度予算審議資料として国会に提出した「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」の特例公債の借換債を発行しないケースの場合で、五十九年度の余裕金残高は一兆七千九百億円、六十年度に特例公債の現金償還を行っても、国債整理基金になお五千五百億円の余裕金が残ることになっております。国債整理基金に赤字国債を返す金があるのに、拙速な法案を何ゆえ提案しなければならないのでありましょうか。まだ一年の余裕があることは政府資料で明確なわけでありまするから、赤字国債の借りかえについてじっくり検討し、たとえ借りかえをしなければならない場合でも、後世代からの批判はもちろん、健全な財政運営から外れることを防止することは、国会の義務と責任であります。慎重な扱いを政府と本院の皆様に強く要請を申し上げたいと思います。
最後に私は、政府に、国債の管理、償還等に関する法律制度の整備を図り、仮称でありまするが、国債管理法の制定を要請いたします。
五十九年度末の国債残高百二十二兆円は、予算規模の二・四倍、国民総生産の四二%という膨大な額であります。さらに、将来見通しを政府の「中期的な財政事情の仮定計算例」の(3)、すなわち一般歳出の伸び率ゼロの場合で見ましても、赤字国債脱却目標年次の六十五年度の国債残高は百六十七兆円に膨れ上がるのであります。
四十年度に国債発行が行われて、二十年間の国債管理はその場しのぎの行政措置で対処してきたと言っても過言ではありません。そして国債を規律している法律は、明治時代につくられた片仮名の国債ニ関スル法律であり、国債整理基金特別会計法であります。戦後の財政法によって国債に関する考え方も基本的に変わったはずでありまするのに、管理、運用、償還等は戦前の法律でやっていることは不自然であるばかりか、そうした行政の姿勢こそが、前段で私がるる指摘をいたしましたような非常に問題を含んだ無理な五十九年度財確法案の提出の背景でもあります。
この際、政府は、国債管理の基本政策を確立し、法体系の整備を行うべきだと考えますが、いかがでありますか。膨大な国債発行を行った政府として、その事後処理の法制度の整備は政府の責任でもあります。総理と大蔵大臣の御所見を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/11
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012・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 赤桐議員の御質問にお答えを申し上げます。
第一問は、六十五年赤字国債脱却の目標をどのようにして実行していくかという御質問でございます。
政府といたしましては、臨時行政調査会の答申を尊重するということ、それから、さきに出しました八〇年代経済の展望と指針に沿った経済運営をやっていくということ、この二つを基調にいたしまして毎年毎年の財政経済を運営していくつもりでございますが、特に臨調答申の線に沿いまして、歳出歳入構造の思い切った見直し、さらに不公平税制の見直し、税外収入の確保、あるいは民間活力の増進、あるいはさらに財政経済の弾力的運用等、これらの方法を組み合わせまして財政経済の運用を行い、六十五年赤字国債脱却の目標を達する、そういう考えに立って実行していきたいと思います。
増税なき財政再建と言っておるが、五十九年度においては増税をしているではないかという御質問であり、増税への転換の危険があるがいかんという御質問でございます。
確かに、今回、石油関係の特別会計の赤字を埋めるために、約六百五十億円ばかりの石油関係の増税をお願いしなければならなくなりました。それ以外の分につきましては約二十億円の減になっておるのでございます。
政府といたしましては、臨時行政調査会の答申の線に沿いまして、一般会計を中心に増税なき財政再建という考えで努力してきたところでございますが、特別会計におきましても、石油税収入の急激な低下、これは石油の価格の低落からきてお
るものでもございますが、そのようなことからこのような事態に至りましたことは甚だ遺憾でございます。
特例公債の借りかえの問題について御質問がございました。
第二次石油危機による景気の後退に対しまして、雇用を確保し景気を維持していくために、大量の赤字国債を含む国債を発行せざるを得なくなったことは、まことに残念でございます。しかし、この赤字国債あるいは建設国債の発行によりまして、諸外国に比しまして、雇用問題あるいは景気政策問題は我が国におきましてはやや外国よりも順調に推移してきたものと考えております。しかし、そのかわり今日に至りまして膨大な国債のツケが回ってきたという状況でございますけれども、これらのものを一挙に償還するというようなことになりますと、財政経済関係に急激な甚大な影響が来るということにもなりかねまじき状態でございます。そういう意味におきまして、まことに残念でございますけれども、借換債の発行を検討せざるを得なくなったのでございまして、まことに遺憾の意を表する次第でございます。
政府といたしましては、これらの処理に当たりましては今後とも慎重の上に慎重を期して実行していくつもりでございます。
残余の御答弁は大蔵大臣からさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/12
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013・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 御意見を交えたもろもろの質問でございましたが、まず最初御指摘がありましたように、この法律は、五十九年度の財政運営に必要な財源を確保するための特別措置を定めるとともに、同年度以前の各年度において発行した特例公債について償還のための起債の特例を定める法律、そういう形で構成されております。
前年度の財源確保法を初め、過去各年度の特例公債法におきまして、それぞれ発行の根拠を定めますとともに、いわゆる借りかえ禁止規定を定めておりますことは御指摘のとおりであります。今回、五十九年度の特例公債の発行に関する規定を定めるに当たりましては、まずしたがって、財政制度審議会において御審議をいただきました。そうして、今後の厳しい財政事情を考えますと、従来どおりの借りかえ禁止規定を置くことは極めて困難である、そういう認識から、したがって御指摘になりました努力規定ということを定めさせていただいたわけであります。
そこで、これまで五十年度から五十八年度までの各年度の特例公債、これは五十九年度の特例公債と同様に、各年度の経常収支差を補てんするという意味で同一の性格を有しております。結果として連年継続して発行されてきたわけであります。今後中期的な財政事情を展望した場合には、同様に借りかえざるを得ないというように考えざるを得ません。その償還のための起債の特例について、五十九年度の特例公債と一体として努力規定を定めることが適切であるというふうに考えたわけであります。この議論は、私どもも法律を作成する段階においてたびたび議論をした問題でございます。いずれにいたしましても、これは当該委員会等でさらに議論をされる課題ではなかろうかという問題意識を持っております。
そこで、大体借りかえは過去の公約違反ではないかと、こういうことでございます。
総理からもお答えがございました。確かに、遺憾ながら従来の五十九年度脱却の実現が不可能となったという時点において、私どもは御指摘がありましたように、「中期展望」と、そして「仮定計算例」でも明らかにいたしましたように、極度に厳しい状況に置かれている今日の財政、そこで経済や国民生活の影響を考慮しながら財政改革を着実に進めていくためには、まさに遺憾ながら特例公債についての借換債の発行を検討せざるを得ないということになったわけであります。そうして、これからは、第一段階としては一般会計における単年度ごとの新規財源債としての特例公債の発行をゼロにしていくことに全力を傾注して、第二段階としては残高をできるだけ速やかに減少していく、こういう二段階で臨むということになったわけであります。
それで、最初の御質問と性格を同じくしておりますが、特例公債については償還期の到来するたびに逐次法改正を行うべきじゃないか、これも私どもも部内で十分に議論をさせていただいたわけであります。この問題につきましては、五十九年度に発行するものについてその借りかえをお許しいただくということになりますと、それ以前に発行したものの償還期の方が早く参るわけであります。したがって、やはり今考えてみますと、この問題については同様の考え方に改めざるを得ないではないか、政策転換ではないか、そういうところから借りかえ禁止規定が存置されたままの状態で置くことはかえって適当ではないではないかという結論に到達をいたしたわけであります。
それから、建設公債との区別等々についての公債政策が根本的に変わったという御指摘でございます。
特例公債の残高をできるだけ早く減少させていくという考え方、これは従来と基本的には変わりはございません。しかしながら、特例公債の大量償還を行いながら、一方で新たな特例公債を発行せざるを得ないような財政事情のもとでは、まず一般会計が特例公債に依存しておる体質から一刻も早く脱却して、財政の対応力の回復を図ることが何よりも重要であります。こうした観点から、先ほども申し上げましたように、第一段階はまず単年度ごとの新規財源債としての特例公債の発行をゼロにしていくことに全力を傾注して、そして第二段階では、いわゆる残高の減少に対して順次財政体質の改善を図る、こういう基本的な考え方に立って財政運営を行わんとするものであります。
償還ルールの問題についても御言及がございました。
特例公債について借換債を発行する場合におきましても、その償還方法につきましては、さしあたり最小隈、既に確立しております四条公債と同様の方法によるということにしたわけであります。財政審報告にもございますように、本来できるだけ早く残高を減少させるべきである特例公債の性格から見まして、あらかじめ新たな一定の年限による償還ルールを設定する、このことは難しいものではないかというふうに考えております。だから、さしあたり最小限、四条公債と同様の償還ルールによるという趣旨のものと御理解をいただきたいわけであります。
もとより、財政事情を勘案してできるだけ速やかに残高の減少に努めることは、これは当然のことでございます。そして具体的な償還方法につきましては、なお幅広い角度から検討をこれから進めていく問題であるという問題意識を持っております。
それから、努力規定というものは財政運営の歯どめにはならない、そして新たに二十年償還とかいう御意見と御提案を交えた御質疑でございました。
早く減少させていくという考え方は、これは従来と基本的には変わりがございませんので、努力規定はやはり最小限置くべきである。しかし、今後の厳しい財政事情を考えてみますと、そこで例えば二分の一とか三分の一にするというようなことは、今現段階で決めてしまうということは、これは極めて困難な問題でありますので、財政審の報告にもございますように、直ちに一定の年限による償還ルールを設定するということは適当な理由をなかなか見出すことは難しい問題であるというふうに考えておるわけであります。
それから、大体努力規定のような、訓示規定のようなものが例としてあるのか、こういう御質問でございました。
例はないわけではございません。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律というような
法律におきましても、「各省各庁の長は」「補助金等が」「公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。」その種のいわゆる訓示規定の例はございます。
それから、国債整理基金に残高があるから、まだ一年先でもいいではないか、拙速ではないかという御指摘でございます。
この問題、やはり五十九年度に発行いたしますものについて同様な考え方を過去のものにも及ぼすということになりますと、このたびが適切ではないかという結論に到達したわけであります。
それから最後に、国債管理法といった形の御提言を含めた御意見でございましたが、このいわゆる大量償還及び借りかえに対処するためには、国債管理政策のより一層弾力的な運営を図ることが必要でございます。そうした国債管理のあり方をも含めて、今後とも幅広い角度から検討をしていくべき課題であるという問題意識を持っております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/13
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014・木村睦男
○議長(木村睦男君) 多田省吾君。
〔多田省吾君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/14
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015・多田省吾
○多田省吾君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
今を去る九年前、昭和五十年度に特例公債が発行されたとき、当時の大平大蔵大臣は、特例公債の借りかえは行わないと明言し、五十一年度から五十八年度まで、いわゆる財政特例法の中で「償還のための起債は、行わない」という規定が明文化され、財政運営の一応の節度にしてきたのであります。我々は、当時から特例公債大量発行に対し、償還計画を示すべきであると厳しく迫ってまいりましたが、それに対する政府の答弁は、十年先まで償還計画を示すことは難しいけれども、特例公債の借換債を発行しないことを条文化したことによって政府の決意を信頼してほしいという答弁を繰り返してきました。
今回、政府提案の法律案は、その信頼のきずなであり、財政特例法のバックボーンとも言うべき「償還のための起債は、行わない」という条項を、八年前にさかのぼり各年度提出の法律から削除するというのであります。既に、特例債のうち中期国債は一兆円を超えて現金償還されており、名実ともに実行されてきた法律であります。この各年度の法律に明記された「償還のための起債は、行わない」という国債の前提条件を、償還の迫った今、否定し去ろうとする暴挙は、日本の議会史上前例を見ないことであります。
昭和五十年代前半のあの伯仲国会において、もし借換債不発行の条項がなければ財政特例法は成立しなかったはずでもあります。本法律案の提出は、国会論議に対する挑戦であり、議会制民主主義の根幹にかかわる重大な問題であります。
大蔵省は、新法律案との整合性を欠くため、これまでの財政特例法の借換債不発行の条項を削除したと主張しておりますが、新法律案は既に実行されている法律と理論的整合性を欠かないようにつくられるべきであり、新法に合わせて既に実行されている法律の条項をさかのぼって削除するという暴挙は、我が国の法体系を崩壊せしめ、法律に対する国民の信頼性を著しく失わしめるものと言わざるを得ません。総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
次に、三木内閣以来歴代自民党内閣がことごとく財政再建に失敗し、今日特例公債の償還を不可能にした背景を見ましたときに、最も顕著でありますのは、経済成長率を初めとする政府の経済計画と実績の乖離が余りにも大き過ぎたことであります。
五十一年度から五十三年度までの実質経済成長率は平均六・二五%と計画されておりましたが、実績は五・一%に終わり、また五十四年度から五十七年度までは平均五・七%と計画しておりましたが、景気回復策の失敗から実績は四・二%にとどまりました。民間研究機関の予測と異なり、経済計画を立案し、政策を実行する政府の見通しと実績のこのような乖離はまことに重大であります。
昭和五十年代前期経済計画、また新経済社会七カ年計画等において大きく見通しに狂いが生じた責任は重大であり、内需拡大や減税に消極的だった政府の処方せんに大きな誤りがあったと言わざるを得ません。この責任をどのように感じ、分析されているのか、お答えいただきたい。また、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」はこのままでよいのかどうか、見直すとすればどのように改革されようとするのか、総理並びに経済企画庁長官に意見を求めます。
次に、総理は今国会において、中曽根内閣の間は大型間接税の導入はしないと公約し、増税なき財政再建の精神は堅持すると言っておられますけれども、今後の財政再建の方途と手順を、六十五年度赤字国債脱却に至る再建計画とともに明確かつ具体的に答弁願いたい。
続いて、赤字国債の残高は五十九年度末では五十三兆八千億円にも及び、五十九年度の一般会計予算をも上回っております。もしも本法律案が成立いたしますと、現金償還を除いたほとんどの運用を一挙に財政当局にゆだねてしまうことになります。さらに、もし仮に政府の主張どおり、償還期を迎えた国債の借換債を発行するとすれば、五十九年度に五兆三千六百億円、六十年度に八兆九千六百億円、六十一年度には十兆九千百億円と、まことに巨額なものとなり、債券・金融市場に大きな影響を及ぼすことは必至であります。今後、特例公債について借換債を発行するとすれば、そのための短期国債の発行もまた必至と思われますが、問題点の一つとして、借換債発行の根拠法である国債整理基金特別会計法では同一年度内に償還期限が来る国債の発行を認めておりませんが、これをどうするつもりなのか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
次に、国債整理基金への定率繰り入れ停止は、減債制度を全く根底から否定するものであります。減債制度の確立は、定率繰り入れをすることにより財政の節度を保たせ、国債発行の歯どめにつながり、また国債価格の安定に資するという重要な意味を持っているものであります。
我が党も、各委員会等で、特例債のためには十分の一程度の定率繰り入れが必要であるとの主張もしてまいりましたが、政府はこの点を怠り、ついには基金は底をつき、借換債の発行くと事態を悪化させました。今後、国債に対する国民の信頼をどのように確立しようとするのか、また国債発行の歯どめ策をどのように考えているのか、明確な答弁を求めたいと思います。
次に、国債管理政策と金利の自由化との関連の問題であります。
金利自由化を進めなければ大量の国債の引き受けは困難となり、また金利の自由化を進めれば、小口預貯金を主体とする金融機関の健全経営に大きな影響を与えることは必定であります。大蔵大臣の決意と方策を伺いたいと思います。
また、金融の自由化については、国内的にも国際的にもその機が熟しておりますが、実施に当たっては外圧に屈するのではなく、自主的に、それも国内での混乱が生じないよう漸進的に段階的に進めるべきであると考えますが、この点もあわせてお答えいただきたいと思います。
最後に、当面する諸問題について伺います。
不公平税制の是正は国民が最も強く要望しているものであり、行財政改革と財政再建を推進する上からも不可欠の問題であります。政府は、今後この不公平税制の是正をどのように進めるのか、お聞きしたい。また、この観点から実施が進められてきたグリーンカード制度は遺憾ながら凍結されてしまいましたが、これにかわる具体策を必ず本年中に確立するかどうか、明確な決意をお聞き
したいと思います。
さらに、来年度の予算編成につきましてどのような方針で臨まれるのか。特に歳出削減、十五兆円に及ぶ補助金の整理等、具体的な方針についてお示しいただきたい。
防衛費の突出を認める一方で、まやかしのマイナスシーリングで予算編成を行うという手法では、もはや財政再建はできないと考えますが、確たる答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/15
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016・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 多田議員にお答えを申し上げます。
今回、過去の特例公債の借りかえ禁止規定を一括して改正するのは少し乱暴ではないか、こういう御質問でございます。
今後の厳しい財政状況にかんがみまして、特例公債についてこのような措置をとらざるを得なくなったのは、まことに遺憾でございます。先ほども御説明申し上げましたように、これらの公債は、石油危機に際しまして、世界的不況に対処するために、雇用の維持あるいは景気の維持のためにやむを得ず出したもので、ある程度これらは成功した政策ではないかと思います。しかし、これだけの大きなツケが回ってまいりまして、これを一挙に処理するということは財政経済に急激かつ激甚な変動を与える危険性が出てまいりまして、やむを得ずかくのごとき措置をとらざるを得なかったのでございます。今後は、これらの措置につきましては慎重に努力してまいるつもりでございます。
次に、財政再建の方途と手順を示すべきではないかという御質問でございます。
私は、先般来、臨時行政調査会の答申、それから八〇年代経済の展望と指針、これらを基本にして経済財政を運用してまいりますと申し上げ、特に臨時行政調査会の答申を基本的に尊重しつつ実行いたしますと申し上げてきたところであり、六十五年赤字公債脱却を目標とするという目標も申し上げてきた次第でございます。また、中期的展望につきましては、大蔵省からも幾つかの案をお示ししたところでございますが、我々といたしましては、臨調答申の線に沿いまして歳出歳入の思い切った見直し、あるいは不公平税制を含むそれらの歳出歳入の見直しのやり方、税外収入の確保、あるいは民間活力の増進、あるいは財政経済政策の弾力的運用、これらの方法によりまして実行してまいりたいと思っておるのでございます。
いわゆる大型間接税につきましては、中曽根内閣におきましてはこれは行わないと、前に申し上げたことをそのとおり守ってまいるつもりであり、不公平税制につきましては引き続きこれを見直しをしていく考え方でございます。具体的な問題につきましては、大蔵大臣から御答弁願うようにいたしたいと思います。
「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を見直す必要はないか、こういう御質問でございますが、八〇年代の展望と指針をつくりましたのは、今までのような定量的なやり方では危険性が多過ぎる、余りにも内外の情勢が流動的過ぎる、そういうような意味からも、柔軟な対応という意味もありまして、またある程度自由化という面も考え、国際化という面も考えまして、定性的な考え方に変えたわけでございます。そしてその基本方針を示したのでございます。
そういう意味におきまして、毎年、この計画はいわゆるリボルビングという制度で見直し見直し維持していくという考えに立っておりますので、これを改定する必要はないと考えております。
残余の御答弁は大蔵大臣から申し上げます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/16
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017・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず最初のお尋ねは、過去の特例公債の借りかえ禁止規定を一括して改定する、これは乱暴じゃないか、こういう御指摘でございます。
これは、第二次石油ショック以後、予期せざる経済事情の変化に伴いまして、今後の財政を展望するときには、遺憾ながら特例公債の償還財源の調達に当たっては借換債の発行を考えざるを得ない、そういう前提のもとに従来のいわば政府の方針を変更したわけでございます。したがって、五十九年度財源確保法における五十九年度の特例公債について、いわゆる借りかえ禁止規定を置かない、そうして国債整理基金特別会計法第五条による償還のための起債は、国の財政状況を勘案してできる限り行わない旨の努力規定というものによって一つの歯どめとしてお願いしなければならぬようになった。
さて、この場合において、財政事情のより厳しい時期に償還期が参ります五十八年度以前の発行に係る特例公債、これの償還についてどう考えるか、これについては随分私どもも部内でも議論をいたしました。国会におきましての従来の御議論の経過等も十分踏まえまして、そして政府の方針をこのように変更せざるを得なくなった以上、これらの借りかえ禁止規定をそのまま残しておくというのは、むしろこれは法律としてもある種の整合性というものを欠くではないか、こういうことで思い切ってこの努力規定を置かせていただくことによって御審議をいただく、こういうことにいたしたわけでございます。
それから次の質問は、短期国債の発行等についての御提言も交えた御質問でございますが、大量の国債償還を、そして借りかえを円滑に進めていくため、これはどうしても投資家のニーズに合ったいろいろな種類の国債、すなわち多様化していかなければならぬ。こうした観点から、短期国債の発行というのも確かに一つの検討課題であるというふうに事実認識をいたしております。したがって、この問題は財政面、金融面等々さまざまな観点から十分検討してまいりたいと存じます。
それで、この問題について、年度内償還の短期の借換債については、現行の国債整理基金特別会計法の解釈としては、これを発行することは難しいのではないかと私も考えます。したがって、短期国債の発行そのものの検討の一環として検討すべき課題だというふうに考えております。
それから定率繰り入れ、これは三回目、これを停止した、こういうことでございます。
何としても、国民の保有する公債について満期が到来した場合、個々の保有者に対して全額を現金で償還することは当然のことでありますし、公債政策のこれは根幹でございます。政府としては、今後とも現行の減債制度の仕組みを維持するという基本的考え方を踏まえながら適切に対処して、公債の確実な償還を行いますとともに、歳出の節減合理化等財政の健全化のための努力を重ねて、公債政策に対する国民の信頼を維持していかなければならぬということは当然のことであると思っております。
それから、歯どめ策というようなものに言及しながらのお尋ねでございました。
公債は当面の負担を伴わないことから、安易に公債に依存するという危険性がございます。したがって、公債発行については節度を保つ必要がある、このことは御指摘のとおりであります。したがって、この問題について、従来いわゆる借りかえ禁止規定というようなものは、私はやはり歯どめの大きな一つの問題であったという事実認識をいたしております。しかし、今日の状態に至りますと、まず節度としては、第一段階としては単年度ごとの新規財源としての特例公債の発行をゼロにしていくための努力を継続していく、そしてそれは六十五年度を努力目標にする。第二段階として、公債の残高について速やかに減少させていく。こういう二段階ということを考えて、それが特例公債依存体質からの脱却を最優先としておるという政策のあらわれではないかというふうに考えます。
そして今度は、具体的な歯どめの問題につきましては、これは確かに節度の一つといたしまして
いわゆる訓示規定もございますが、財政改革の過程においてざらに検討を加えていかなければならぬ課題だという問題意識を持っておるものであります。
それから、金利自由化との関係で御心配を交えての御発言でごさいましたが、金利の自由化について前向きに対処していく必要がありますが、同時に、我が国経済、金融に悪影響を及ぼさないように、その条件、手続等につきましては十分な検討を行って、いわゆるソフトランディングに努めていかなければならないところであります。
なかんずく、小口預貯金を主体とする中小金融機関の経営環境が一段と厳しくなるというようなことにつきましては、まさに中小企業への資金の安定的供給、地域経済に密着した活動という期待に的確にこたえていく必要があると私も考えます。したがって、金利の自由化に当たりましては、それが中小金融機関等の経営にもたらす影響等についても十分注意しながら進めていかなければならないというふうに考えております。
そのことはまた、ただいまの御意見にもございました漸進的、段階的に進めるべきであるという考え方と一致するところでございます。そういう問題につきまして、私どもといたしましては、自由化による競争の激化から金融機関の経営格差が拡大して、一部金融機関の経営悪化が表面化して信用秩序を阻害するという、こういうことがあってはならない。したがって、まさに御指摘のとおり漸進的に対処していく課題であるというふうに考えております。
それから、不公平税制の是正の問題について、総理からもお答えがございました。
不公平税割という言葉は、いつも申し上げますように、使うお方によってさまざまな意味を持っております。これが仮に租税特別措置という意味であるとずるならば、これはその都度政策税制としてとられた措置でございますものの、社会経済情勢の変化に対応して今日までも絶えず見直しを行っておるところでございます。しかしながら、それが概念的なものであり、観念的なものであっても、税の公正確保という点から、税制全般について絶えず見直しを行うという姿勢を持ち続けていかなければならない課題であると思います。
それの一環として、御指摘のありましたいわゆるグリーンカード制度にかわる具体策、この問題でございます。
この問題は、確かに税制調査会の答申等を見ましても、非常に多くの人に関係する問題だ、なかんずく金融市場についてもまた大きな影響を与える問題である、したがって今後なお時間をかけて検討することが適当だと、こうなされながら、御指摘なさいましたように、グリーンカード制度の凍結期間との関係から、できればことし夏ごろまでには結論を得ることが望ましい、そういう御答申をいただいておるわけでございますので、先般からこの税制調査会でも国会での御議論等を正確にお伝えいたしました。いわば検討が開始されております。したがって、その検討の推移を見詰めながら対処していかなければならぬ課題だという認識に立っております。
それから次は、補助金の問題等を含めて今後、なかんずく来年度の予算編成に対する対応についての具体策を示せ、こういう御指摘でございます。
財政改革を推進して、その対応力の回復を図りますことは、我が国の将来の安定と発展のために緊要な国民的課題であります。六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めるという努力目標に向かいまして、毎年度最大限の努力を積み重ねていく必要がございます。六十年度予算の編成に当たりましても、こうした見地から、御指摘なさった補助金等の問題を含めて制度のいわゆる根本にまで踏み込んだ改革を行うなど、歳出歳入両面にわたるぎりぎりの努力をこれからも引き続き行っていかなければなりません。
今後予算編成の具体的方法はどうか、これにつきましては、先般の閣議でも私お願いをしておるところでございますが、具体的にはいましばらく勉強させていただきたいと申し上げておりますものの、歳出全般にわたる徹底した節減合理化と規模の抑制を図るため、厳しい概算要求枠を設定していく必要があろう、こういう総体的な認識の上に立っておるわけであります。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/17
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018・河本敏夫
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問の第一点は、昭和五十年代に入ってからの政府の経済成長の見通しと実績は非常に大きな乖離があるではないか、これは一体どういうわけだと、こういうお話でございます。
昭和五十年代に入りましてから、政府は三回中期計画を立てましたが、その第一回は昭和五十一年であります。昭和五十一年に五カ年計画を立てました。そして六%強の成長を五カ年続けていくという、こういうことが内容でございますが、この計画を立てました時期は、第一次石油危機が昭和四十九年に起こりまして、ようやくその調整が終わりまして、経済がほぼ平常に復した段階でこの計画をスタートさせましたので、六%強の目標に対しまして毎年およそ五%強の成長達成をいたしております。ほぼ目標に近い水準を達成したと考えております。
続いて、昭和五十四年に五十年代後半の七カ年計画を設定いたしましたが、実はこの直後にイラン・イラク戦争が始まりまして、世界経済が大混乱に陥りました。そういうことで、この目標は五%強の成長目標でございましたが、実はほぼこの間で特に五十六年度以降は三%強の成長に落ち込みまして、相当目標と乖離が生じたということを私どもも残念に思っております。
第三回目が昨年の八月につくりました昭和六十五年までのいわゆる八カ年計画でございますが、この時期は、第二次石油危機がほほ平常に復した、こういう段階でつくりましたのが一つと、それからこういう経済の激動期でございますから、基本的な経済運営の方針だけをつくりまして毎年見直しをしていこう、こういう方針で対処いたしておりますので、これからの八年間ほぼ四%成長を達成するという目標は、そう大きな狂いなく私どもはこれが実現できると考えております。したがいまして、この計画を今見直すことは考えておりません。毎年実情に合わせて具体的に進めていきたい、このように考えておるところでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01419840509/18
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019・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時七分散会
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