1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年六月二十七日(水曜日)
午前十時六分開議
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○議事日程 第十九号
昭和五十九年六月二十七日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十七
年度決算の概要について)
第二 郵政省設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第三 昭和五十六年度一般会計予備費使用総調
書及び各省各庁所管使用調書(その2)(衆
議院送付)
第四 昭和五十六年度特別会計予備費使用総調
書及び各省各庁所管使用調書(その2)(衆
議院送付)
第五 昭和五十六年度特別会計予算総則第十一
条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管
経費増額調書(その2)(衆議院送付)
第六 昭和五十七年度一般会計予備費使用総調
書及び各省各庁所管使用調書(衆議院送付)
第七 昭和五十七年度特別会計予備費使用総調
書及び各省各庁所管使用調書(衆議院送付)
第八 昭和五十七年度特別会計予算総則第十一
条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管
経費増額調書(衆議院送付)
第九 昭和五十六年度決算調整資金からの歳入
組入れに関する調書(衆議院送付)
第一〇 昭和五十六年度一般会計国庫債務負担
行為総調書(その2)
第一一 関西国際空港株式会社法案(内閣提出
、衆議院送付)
第一二 昭和五十九年度の財政運営に必要な財
源の確保を図るための特別措置等に関する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、国家公務員等の任命に関する件
一、日程第一
一、港湾運送事業法の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
一、日程第二より第一二まで
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
内閣から、公害等調整委員会委員長に大塚正夫君を、同委員に三ツ木正次君を、
土地鑑定委員会委員に青木茂男君、浅村廉君、幾代通君、大神三千雄君、久保田誠三君、中村友治君、松尾英男君を、
中央更生保護審査会委員長に新谷正夫君を、
漁港審議会委員に岡部保君、神尾徹生君、倉武二君、懸塚新吾君、下門律義君、松田廣一君、宮原九一君、矢野照重君、横山信立君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
まず、公害等調整委員会委員長、同委員、土地鑑定委員会委員のうち青木茂男君、淺村廉君、幾代通君、大神三千雄君、中村友治君、松尾英男君、漁港審議会委員の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/1
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002・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、いずれも同意することに決しました。
次に、土地鑑定委員会委員のうち久保田誠三君の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、これに同意することに決しました。
次に、中央更生保護審査会委員長の任命について採決をいたします。
内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/3
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004・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、これに同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/4
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005・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十七年度決算の概要について)
大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。竹下大蔵大臣。
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/5
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006・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 昭和五十七年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
昭和五十七年度予算は、昭和五十七年四月五日に成立いたしました。
この予算は、臨時行政調査会の行政改革に関する第一次答申を最大限に尊重し、歳出面においては経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制しつつ、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、質的内容の充実と景気の維持拡大に配意するとともに、歳入面においても極力見直しを行い、これにより公債発行額を着実に縮減することを基本方針として編成されたものであります。
さらに、補正予算が編成され、昭和五十七年十二月二十五日その成立を見ました。
この補正予算では、税収不足に伴う歳入不足に対処するとともに、災害復旧費の追加、義務的経費の追加等の措置を行うため、地方交付税交付金の減額、給与改善費の不用を含む既定経費の節減等を行うほか、定率繰り入れ等の停止による国債費の減額を行い、なお不足する歳入については、公債の追加発行によることといたしました。
この補正によりまして、昭和五十七年度一般会計予算は、歳入歳出とも四十七兆五千六百二十一億円余となりました。
以下、昭和五十七年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。
まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は四十八兆十二億円余、歳出の決算額は四十七兆二千四百五十億円余でありまして、差し引き七千五百六十二億円余の剰余を生じました。
この剰余金は、昭和五十八年度へ繰り越しました歳出予算の財源等に充てるものでありまして、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計の昭和五十八年度の歳入に繰り入れ済みであります。
なお、昭和五十七年度における財政法第六条の純剰余金は千四百七十一億円余となりますが、この純剰余金につきましては、昭和五十八年分の所得税の臨時特例等に関する法律第八条の規定により財政法第六条第一項の規定は適用されないこととなっております。
以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳
入につきましては、予算額四十七兆五千六百二十一億円余に比べ四千三百九十一億円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額四千八百九億円余が含まれておりますので、これを差し引きいたしますと、昭和五十七年度の歳入の純減少額は四百十七億円余となるのであります。その内訳は、公債金における減少額三千二億円余、租税及び印紙収入、雑収入等における増加額二千五百八十四億円余となっております。
一方、歳出につきましては、予算額四十七兆五千六百二十一億円余に、昭和五十六年度からの繰越額四千七百九十二億円余を加えました歳出予算現額四十八兆四百十三億円余に対しまして、支出済み歳出額は四十七兆二千四百五十億円余でありまして、その差額七千九百六十三億円余のうち、昭和五十八年度に繰り越しました額は五千五百四十億円余となっており、不用となりました額は二千四百二十二億円余となっております。
次に、予備費でありますが、昭和五十七年度一般会計における予備費の予算額は二千三百億円であり、その使用額は千三田二十五億円余であります。
次に、昭和五十七年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。
次に、昭和五十七年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は三十一兆二千四百五十九億円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は三十一兆二千二百五億円余でありますので、差し引き二百五十三億円余が昭和五十七年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。
次に、昭和五十七年度の政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。
以上が、昭和五十七年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書の概要であります。
何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/6
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007・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。久保田真苗君。
〔久保田真苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/7
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008・久保田真苗
○久保田真苗君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十七年度決算と当面する我が国内外の諸問題について、中曽根総理及び関係大臣に質問いたします。
まず最初に、危機的な財政状態に陥った五十七年度決算につきお伺いいたします。
昭和五十七年度財政の特徴は、前年度の約三兆円の歳入欠陥に続く超緊縮型予算であったにもかかわらず、レーガン米大統領の軍事費増額の強い要求に押されて防衛費を突出させ、逆に福祉、医療、教育などの民生関係予算を切り込んで軍拡型予算を誕生させたことであります。この年に始まって三年間、この型の予算編成が引き継がれ、ますます強められています。
また、五十七年度の歳入構造を見ますと、歳入欠陥が五十六年度の二倍に当たる六兆円にも達していることが挙げられます。
政府は、一方で五十九年度赤字公債依存脱却と財政再建を公約しながら、他方ではこの歳入欠陥の穴埋め策として、史上最高の四兆円もの国債を追加発行し、それでも足りないとわかりますと、さらに一兆二千億円の国債費の定率繰り入れを勝手に取りやめるなど、およそ財政の健全化とは逆行する措置をとったのであります。そして、この税収不足が大きな政治問題に発展いたしますと、その原因が景気の停滞だとか物価の安定にあるとか弁解をしていますが、その根本原因は、政府が高過ぎる経済成長を設定し、それに基づいて過大な税収見積もりを行ったことにあります。このことは、防衛費を捻出するために予算編成をやりやすくする意図的な目的からやったと見られてもいたし方ありません。
その結果は、年度半ばにして財政非常事態宣言を出すという重大な事態に陥り、財政再建を大十五年度まで押しやり、我が国の財政経済の至るところに大きな後遺症を残して、国民に一層の犠牲を強いる方策が次々にとられるに至っています。
〔議長退席、副議長着席〕
日本社会党は、この失政の責任を厳しく追及いたします。そして、民生の犠牲に立つ軍拡主導型の財政運営について強く政策転換を求めます。
総理及び大蔵大臣は、私のこの指摘に対してどのように反省され、また、その反省を今後の政策にどのように結びつけようとされるのか、お伺いします。
次に、国家公務員の給与に関する人事院勧告について総理の所見をお尋ねします。
政府は、財政危機を理由に昭和五十七年度の人事院勧告を凍結し、続けて五十八年度においても、二年分の官民較差を基礎として行った人事院勧告をわずか一部しか実施しませんでした。まことに驚くべき暴挙であり、これによってこうむった公務員労働者の損失は甚だしいものがあります。自民党政府の失政の結果を労働者の賃金をもって償うことが、これ以上許されるものではありません。
国際労働機関は、一昨年の人勧凍結に関する総評、同盟の提訴を受けて、昨年三月の理事会で人事院勧告の完全で迅速な実施を勧告いたしました。本年もILOの条約勧告適用専門家委員会が、一昨年と昨年の日本での公務員賃金問題に関し、公務員のスト権が否認され、団体交渉権が大きく制限されている以上、人事院勧告が完全に実施されることは何よりも重要であるとの見解を表明しています。さらに、今次ILO総会においても条約勧告適用委員会が、去る六月十九日、この方向で非常に近い将来問題が解決されることを望む旨の結論をまとめたところであります。
このように再三にわたってILOの指摘を受けるまでもなく、人事院勧告は、憲法に基づく労働基本権に重大な制約を加えた代償として辛くも設けられた制度でありますから、この勧告に離反するということは、政府みずからの手によって社会の秩序を破壊することにほかなりません。人勧を完全に実施して秩序を早急に回復しなければなりません。人事院勧告がもはや信頼と効力を持たない場合の方法はただ一つ、公務員の労働基本権を回復せしめ、団体交渉によって給与を決定する本来のメカニズムを取り戻すことしかないと考えますが、いかがですか。
総理、あなたは憲法の保障する労働基本権制限の代償制度である人勧完全実施の政府責任をどう考えておられますか。ILOの指摘をどのように受けとめられますか。二年間不履行の償いをどのように果たされますか。ことしこそ人事院勧告を完全に実施する決意がおありですか。どうぞ明確にお答えください。
次に、長過ぎる労働時間の問題について総理及び労働大臣のお考えを伺います。
我が国の長時間労働は、法制の上でも実態の上でも今や隠れのないものになっています。昭和二十二年、日本経済の苦境のどん底で制定された労働基準法は、一日八時間、一週四十八時間制を掲げてはおりますが、当時の苦しかった経済事情を反映して、実は重大な欠陥を持っております。それは労使の協定によって労働時間の延長を無制限に行えるようになっていることです。さすがに最近になって労働省は、過長な所定外労働時間の削減に手を染め、昭和五十七年から時間外労働に関する目安を決めて行政指導を行ってはおりますが、
これもその内容を見ると、極めて長い時間外労働を常態的に許容するものでしかありません。
ILO一号条約、三十号条約は、工業、商業、事務所等について一日八時間制、一週四十八時間制を定めたものですが、これらの条約は原則的な労働時間の枠内で一定のやりくりを認めるほかは、真に一時的、緊急的な例外しか認めておりません。その趣旨は、労働時間制度の原則から隔たることなく、労働者に健康な旧常生活を確保することにあると考えられます。我が国の労働時間は、法制、実態ともにこの趣旨から余りにも遠く隔たるものと言わざるを得ません。
時間外労働は、景気に対する雇用調整機能を持つと言われるかもしれません。しかし、諸外国の状況をお考えください。先進諸国においては既に週四十時間制、週五日労働制が定着しているのに対して、我が国では年間労働時間数二千百時間と欧米より二割方多く、我が国の経済発展に比べても、労働時間や労働者の生活条件の改善が著しく立ちおくれたことを率直に認めなければならないのではないでしょうか。
このようなときに、昨日衆議院本会議で提案された労働基準法の一部改正案の中に、雇用量の最も大きい第三次産業の女子労働者の時間外制限を一気に緩和し、実質的に二倍ないし三倍の増加を許容するような案が含まれていることは、全く理解に苦しむほかはありません。まず労働時間全般のあり方に根本的なメスを加え、これを改めるのが先決ではありませんか。
労働大臣、あなたは日本の労働時間の立ちおくれをどのように受けとめておられますか。法制の改革に真剣に取り組む意思がおありですか。週四十時間制を進める考えがおありですか。そのような計画があればお聞かせください。
総理、昭和五十四年に閣議決定された雇用対策基本計画に沿って、昭和六十年度には我が国の労働時間の水準を欧米主要国並みに近づける目標が立てられております。それはもう来年ではありませんか。日本の国際的、経済的地位が高まり、海外への資本供給国としての役割まで叫ばれている今日、自民党政府のもとでの積年の悪弊である長過ぎる労働時間にこの際思い切って終止符を打つお考えはありませんか。どうぞ所信をお聞かせください。
最後に、自然保護政策といわゆる環境アセスメント法案について総理及び環境庁長官に伺います。
総理は、国土緑化推進運動を提唱し、縁と花と小鳥を保護し、日本列島を緑で覆いたいと言っておられます。大変結構なことであります。
しかし、自然のままに残っている緑とそこにすむ生物は、切り倒された後、人の手で植えられた縁よりもあらゆる意味でずっと貴重であり、ずっと価値が高いのであります。木を切る場合は、よくよく考えて惜しみ惜しみ切らねばならぬ。なぜなら、木を切るのは数分だが、育つには数十年もかかると言った先人の言葉をよくよく考えていただきたい。ところが、これに反する事実が全国各地に国や地方公共団体の手で起こされております。
私は、ここで二つの例を挙げておきます。
一つは、青森、秋田県境にあるブナの原生林を突き抜けて着工されている青秋林道であります。二つ目は、首都圏にわずかに残る貴重な自然である神奈川県逗子市にある池子弾薬庫に米軍住宅を建設する計画であります。九百二十戸の住宅建設に実に八十万平方メートルという法外な、余りにも広大な自然を破壊する無謀な計画であります。総理が真に自然に対する理解者であるならば、全国に幾つも見られる自然を破壊する計画の全面的な見直しをされるよう強く要望いたします。
次に、環境影響評価法案は内容的に見て不十分な点はありますが、法案が今国会に提出されていないことはまことに残念です。
言うまでもなく、公害が発生してからその対策をとるのでは取り返しがつかない経験は、水俣病、四日市ぜんそくなどに代表される深刻な公害被害によって十分承知されているはずであります。これを未然に防ぐため、開発計画の段階から環境への影響を事前に予測し、住民の信頼を得て進めることが必要であります。いわゆる先進国では、これらのことを当然のこととして受け入れており、さらに我が国においても昨年五月、北海道、東京、神奈川、川崎市が条例を定め、十五県三政令都市が要綱を定めております。この面での国の環境行政は大変立ちおくれていると言わざるを得ません。環境庁長官は、この立ちおくれに対してどのように対処されますか。
総理、環境行政の中から国民の生命、健康、自然保護に関する基本的な立法措置が排除された場合、一体、我が国の環境庁の仕事に何が残るのでしょうか。本気で日本列島を緑で覆いたいというのであれば、環境アセス法案の提出と成立にリーダーシップをぜひ発揮していただきたいのですが、いかがですか。
日本社会党は、本国会において、環境影響事前評価による開発事業規制法案を衆議院に提出しております。大変すぐれた法案であると考えますので、真剣な審議にぜひ御協力をお願いいたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/8
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009・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 久保田議員にお答えをいたします。
まず、五十六年、五十七年等における赤字の状況、このような状況についていかなる責任を感じ、今後いかなる対処をするかという御質問でございます。
五十六年度におきましては遺憾ながら約三兆三千億円、五十七年度におきましては約六兆一千億円の税収不足が生じましたが、まことに残念な次第でございます。これは第二次石油危機に伴う世界経済の停滞が予想以上に長期化し、その回復がおくれたことを背景にして起きたものでございます。このような状況から、従来の五十九年度特例公債依存脱却は不可能になりました。私は就任以来、いわゆる経済につきまして、「展望と指針」という方向に経済の基本政策の考えを変えまして、そして六十五年度特例公債依存体質脱却との努力目標を設定して努力しているところでございます。
なお、税収見積もりにつきましては、今後とも着実かつ的確なものにするように、一層工夫努力を凝らしてまいりたいと思っております。
次に、人勧問題について御質問をいただきました。
人事院の給与勧告制度は、公務員の労働基本権を制約する場合に講じなければならない代償措置の一つとして憲法上の評価が与えられているものでありますから、この制度が実効を上げるように政府は最大限の努力をしなければならないものと理解しております。昭和五十七年及び五十八年度の決定は、人事院の給与勧告制度が実効を上げるよう最大限の努力を払った上で、現下の厳しい財政事情、経済社会情勢等を総合的に勘案してやむを得ずとった措置でございます。今後も誠意を持って努力いたしたいと思います。
さらに、人事院勧告に関するILOの再三の指摘について御質問をいただきました。
ILOが従来から述べてきた原則は十分に理解をいたしまして、誠意を持って今後とも対応してまいる所存でございます。ILOの勧告等々は、大体において非常に強い希望の表明という文章になっておりますが、我々はその趣旨を体して今後とも努力してまいるつもりでございます。
次に、今年の人事院勧告について御質問をいただきました。
本年度の人事院勧告につきましては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立って、完全実施に向けて誠意を持って取り組む考え方でございます。具体的には、人事院勧告が出されました段階で、給与関係閣僚会議において、諸般の事情を考慮しつつ検討してまいりたいと思います。
次に、昭和六十年度に労働時間の水準を欧米主要国並みに近づけるための長時間労働削減への決
意いかんという御質問でございます。
労働時間の短縮につきましては、週休二日制の普及、あるいは年次有給休暇の消化促進、あるいは恒常的な長時間労働の改善等を重点に今後とも着実に推進してまいるつもりでございます。
なお、今後の労働時間対策の進め方につきましては、公労使三者構成の中央労働基準審議会において検討しておる最中で、その答申を見守っておるところでございます。
自然保護に対する所信をお尋ねいただきました。
自然は、単に社会経済活動の基盤であるのみならず、生命をはぐくむ母体であり、人間の精神性につきましても極めて重要な影響力を持っておるところであります。また、一度破壊されれば容易にもとに戻らないという特質も持っております。御指摘のように、木を切るには数分だけれども、育てるには数十年間という、まさに名言であると思います。後世に禍根を残さないように、今後とも自然環境の保全について積極的に努力してまいります。
御指摘の青秋林道につきましては、林道は、森林の適正な管理はもとより、地域の林業振興を図る上でも実は重要な役目を片方では持っております。青秋林道につきましても、このような観点から青森県、秋田県両県が県営事業として開設を進めておるものでありまして、御指摘のブナの原生林の保全には特に配慮してこれを行わんとしておるものと解釈しております。
次に、逗子市にある池子弾薬庫の問題の御指摘がございました。
横須賀地区における米海軍の家族住宅の不足が深刻な状況にありますために、これを解消するために年来努力してきた対象でございます。自然保護につきましては十分注意をしておりまして、住宅建設に当たっては計画区域を同弾薬庫の約三〇%にとどめ、その中でも四〇%以上の緑地を確保するという配慮をいたしまして、できる限りの努力をしておるところでございます。今後もそのような考えに立って実行したいと思います。
環境アセスメント法案の御質問がございましたが、現在、党内を中心に各方面との調整に努力しておる次第でございます。
残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/9
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010・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 先ほど来総理の答弁で、財政運営に対する反省等既にお答えがございました。
確かに従来、特例公債の借りかえは行わないこと及び五十九年度までに特例公債依存から脱却すること、これを政府の方針としてまいりました。これは、特例公債の発行が本来望ましくなく、残高もできるだけ早く減少させることが望ましいという基本的考え方によったものでございます。
しかし、まさに第二次石油ショック、そして我が国経済財政を取り巻く環境の変化、そうしたことから、五十九年度脱却の実現は不可能となりました。五十四年度から五十七年度まで、経済計画による名目成長率平均一〇・三%を見込んでおりましたものが、実績は六・六%にすぎなかったわけであります。政府としては、特例公債の発行は望ましくないという基本的考え方に立って、昨年八月に「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中で、六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努める、こういう目標を示したところでございます。今後ともこの努力目標の達成に向けて、歳入歳出両面にわたって最大限の努力をしていかなければならない、このように考えております。
それから、税収不足に対する反省でございますが、先ほど申しましたような考え方をもって分析をいたしておりますが、我が国においても例外でなく、企業の生産活動や消費が予期した以上に伸び悩んだということであります。これからもやはり適正な見積もりを行う最大限の努力をしなければならないし、また、より適正なものにすべく一層の工夫が必要であるというふうに考えております。
それから次は、増税なき財政再建等に触れての御意見を交えた御質疑であります。
財政改革は、何よりもまず制度の徹底した見直し等によります厳しい歳出削減を基本として取り組むべきものでありまして、増税なき財政再建はそのためのてこであると考えております。昭和六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標の達成は容易ならざるものがございますが、まさに国民各界各層の御意見を伺いながら、財政改革に向けて歳入歳出両面の最大限の努力をしていかなければならないと考えております。
五十九年度税制改正において、御指摘がございましたごとく、法人税、酒税、物品税の税率引き上げ等を行いました。これは、一方でまた大規模かつ本格的な所得減税を行いながら、財政事情を現在以上悪化させないという観点から行ったものにほかならないわけであります。
それから次は、福祉、文教費の削減等国民に犠牲を強いるではないかという御意見を交えた御質疑でございます。
公債発行残高が、五十九年度末には約百二十二兆円にも達します。利払いもまた予算の一八%、そして歳出総額に占める税収割合は六〇%、これは確かに厳しいものであります。財政というものが、本来期待されておる諸機能の発揮を十分に行わなければならないものが行い得なくなっておる。このままでは二十一世紀を前にして、人口の高齢化や国際社会における我が国の重大な責務の増大など、今後社会経済の変化に対応することができなくなるおそれがある。そこで、私どもといたしましては、まず財政の改革を推進して、我が国の将来の安定と発展にとってぜひともやり遂げなければならない政策課題が財政改革である、こういうふうな考え方に立っておるわけであります。
今後の予算編成の具体的方法については、いましばらく勉強させていただきたいのでございますが、いずれにせよ、厳しい概算要求枠を設定して、あらゆる分野に聖域を設けることなく、歳出全般にわたる節減合理化と規模の抑制に努めていかなければならない、このように考えております。(拍手)
〔国務大臣坂本三十次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/10
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011・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) 久保田議員にお答えをいたします。
我が国の法制上、実態上の労働時間の立ちおくれをどのように受けとめておるか、今後、法制の改革や週四十時間の実現に取り組む意思があるかというような御趣旨の質問でございました。
労働時間の短縮につきましては、厳しい経済環境のもとで難しい面があっても、労働省としては、週休二日制の普及促進等々によって今後とも努力をいたしてまいりたいと思っております。
労働時間の短縮につきましては、基本的には労使が生産性向上の成果を賃金だけでなく労働時間の短縮にも配分するよう配慮することが重要だと考えております。現在、西ドイツでは労働時間の短縮をめぐって労使の対立が続いておりますが、日本の労使は、日本の経済社会の実態にふさわしい方法で労働時間の短縮に取り組んでいただきたいと念願しております。
なお、労働時間問題を含め労働基準法上の諸問題につきましては、現在、昭和六十年を目途に学識経験者から成る労働基準法研究会に専門的立場からの調査研究をお願いしているところでございます。(拍手)
〔国務大臣上田稔君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/11
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012・上田稔
○国務大臣(上田稔君) 久保田先生の御質問にお答えを申し上げます。
白神山地のブナ林の問題でございますが、総理からもお答えをいただいたのでございますが、それに補足いたしまして、ブナの原生林の保全につきましては十分に配慮をしていかなければなりませんので、自然環境保全地域の候補地というよう
なことを考えまして、関係の方面と折衝をいたし研究をいたしておるところでございます。
それから青秋林道につきましても、総理のお答えのとおりでございますが、林業振興ということも考えましていろいろ折衝をさせていただいております。
次に、アセス法案でございますが、これも総理からお答えをいただきましたが、今、政府・与党との調整を進め、今国会に再提出を一日も早くするべく全力を尽くしておるところでございます。どうぞよろしくお願小いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/12
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013・阿具根登
○副議長(阿具根登君) 服部信吾君。
〔服部信吾君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/13
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014・服部信吾
○服部信吾君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十七年度決算について、中曽根総理及び関係大臣に質問いたします。
まず最初に、五十七年度の財政運営について中曽根総理にお伺いいたします。
昭和五十七年度の税収額は、決算ベースで、当初予算の見込み額に比べて何と六兆円に上る巨額な減収を招き、五十六年度を大幅に上回る税収不足となったのであります。このような巨額の税収不足が生じたのは、第一に、内外の経済情勢に対応できず、日本経済の潜在能力を引き出せなかった政府の政策の失敗に原因があると言っても重言ではありません。第二は、経済成長率を実質五・二%と高い予測を立て、税収見積もりを高めたことであります。
このような巨額の税収不足が生じたのは、五十七年度予算の編成に当たって経済の見通しを著しく水増しし、その予測に基づいて税収見込みを安易に立てたととろにあります。この五十七年度の経済見通しについては、民間の研究機関等は大半が三—四%実質成長率を予測し、国会においても政府の五・二%が途方もなく過大であるとの批判が続出したにもかかわらず、政府は、五十七年度の我が国経済を取り巻く情勢を見ると多くの先進工業国においてインフレの収束と景気の回復が期待されると見通し、国の財政としては内需中心の景気の維持拡大に配慮するとして、この五・二%の経済の実質成長を裏づけて、その批判をはねつけたのであります。
しかるに、その実績はどうだったかと申しますと、政府が予想した五・二%を大幅に下回る何と三・三%に終わり、その責任は大きいと言えます。この経済見通しの大きな誤りは、もろに財政再建を直撃して完全に崩壊させてしまったのであります。
そこで、中曽根内閣の五十九年度予算編成に当たっての名目成長率五・九%、実質成長率四・一%については、このような失敗は繰り返す懸念はないのかどうかをまずお伺いしたいのであります。
今、五十九年度の第一・四半期を終わろうとしていますが、その実質成長率はどの程度になるのか、また、それを踏まえての今年度の見通しは大丈夫か、明らかにされたいのであります。五十七年度のときのように無責任に、よくなる、よくなると日先だけでごまかすようなことのないようここに強く念を押しておきたいのであります。
内需主導の景気回復を実現し、我が国経済を安定成長軌道に乗せるためには、六十年度予算編成が極めて重要であります。
総理は、過日この席で、来年度予算編成ではマイナスシーリングを堅持する旨発言されました。財政再建のためマイナスシーリングを堅持するというのは、一つの方法であることは事実であります。しかし、この手法が景気回復をおくらせ、結果的には財政再建をもおくらせてきていることは否定しがたいのであります。私は、行政改革を徹底する一方で、生活関連の公共投資や福祉、文教関係予算を確保するよう要求すると同時に、防衛予算については、防衛費の対GNP比一%の枠を堅持するためにも私は厳しく抑制すべきであると考えますが、総理、大蔵大臣の見解を求めるものであります。
ところで、五十七年度の内需拡大の失政の一つには、人事院勧告の実施見送りなど、直接的内需抑圧の措置をとったこともその一因であると思います。この人勧実施の見送りは、民間労賃の抑圧に連動してきたのであります。
そこでお伺いしたいことは、中曽根内閣は、五十九年度の人事院勧告がなされた場合、過去の事例に見られるように凍結することなく、勧告を尊重し、速やかに実施すべきであると思うが、総理の見解をお伺いしたいのであります。
次に、マル優制度をどうするかについての内閣の考え方をお伺いいたします。
御承知のとおり、税金を納めなくてもよい利子非課税貯蓄残高は、五十七年度末で二百二十六兆円に上ると言われておりますが、この非課税貯蓄に一定の限度を設けて国税庁で集中管理をして、その乱用を防ごうとする所得税法の改正が行われ、五十九年一月一日から実施されることになっていたわけであります。ところが、五十七年度末に突如租税特別措置法の一部改正が自民党によって可決され、その実施が六十一年一月一日に延期されたのであります。
私は、自民党によるこの措置は、国の財政が破局に陥り、不公平税制の是正が強く求められていることを考えるならば、理解しがたいところであります。六十一年実施については現在中曽根内閣がどのように考えられているのか、明確にされたいのであります。
八月末には六十年度予算についての概算要求が締め切られます。六十一年一月一日実施となると、六十年一月一日からそのためのカード配布が必要であり、そのグリーンカード実施のための予算は百億円を要すると伝えられております。少なくとも八月末の要求段階において結論を出さなければならないと考えますが、総理と大蔵大臣の所信をお伺いしたいのであります。
次に、補助金の不当事項についてお伺いいたします。
前年度の五十六年度の補助金の不当事項の金額は七億円でありましたが、五十七年度は二十五億円にも上っているのであります。その中でも、農林水産省の関係では、十一の補助事業において十八件もの補助金をめぐる不当事項が指摘をされております。特にこれらの三分の一は水田利用再編対策にかかわる指摘であり、その多くは土地区画整理事業が完了している地区など、全く対象とならないものに対し転作奨励補助金が支出されております。国の基本である農業の重要性と今後の農業の発展を考えるとき、国民に不信を求めるようなことがあってはならないと思います。農林水産大臣のこれらに対する反省と今後の対策についてお伺いしたいと思います。
また、大変残念なことでありますが、ある一部の自治体において、国からの補助金に対して架空の水増し請求を長期間にわたって続けていたという前代未聞の不正事件が発覚し、国民の行政への信頼を裏切ったのであります。私は、補助金については、地方自治の活力をつけるという観点からいっても、地方交付金をできるだけふやし、地方財源を強化するのが本来のあり方ではないかと思うのであります。総理の御意見をお伺いしたいと思います。
最後に、政治倫理の確立に関連して、会計検査院の権限強化のための会計検査院法改正問題についてであります。
今国会の重要テーマの一つである政治倫理の確立についての中曽根総理・総裁を頂点とする自民党の姿勢は、まことに不満足なものがあります。先般の三週間にわたる国会空転も、ひとえにこの問題に対して熱心に取り組もうとしない自民党にその責任があったことは国民周知のところであります。今こそ清潔、公平な政治を確立し、国民の信頼をから得る重大なときであると思います。
そのためには、今国民からひんしゅくを買っている政治倫理問題の根があの忌まわしいロッキー
ド事件にあることは明白であり、会計検査院の権限を強化するための院法改正は、このような事件の再発防止を目的として提起されたものであり、衆参両院においても警告決議として何回も議決が繰り返されてきたことは今さら申し上げるまでもないところであります。したがって、この会計検査院法改正問題に一向にけじめをつけようとしないところにも政治倫理の問題に対する総理の認識の程度を知る思いがするのであります。
院法改正の論議は既に五カ年も続いており、その間に政治倫理の確立を望む国民の声は一層強くなってきております。今こそ中曽根総理が国民的立場に立って決断し、政治倫理確立の一方途である院法改正を行うことを表明すべきときであると思いますが、総理の御決意をお伺いして私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/14
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015・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 服部議員にお答えをいたします。
まず、五十七年の税収額の御指摘をいただき、五十九年度の予算編成に当たって、名目成長五・九%、実質成長四・一%見通しに誤りはないかという御質問でございます。
五十九年度につきましては、最近、特に世界経済は米国経済を中心に拡大の傾向を顕著に増しております。国内経済も、物価の安定を基調にいたしまして、企業収益の改善等景気回復を支える要因は継続していく見込みでございます。政府といたしましては、今後とも機動的な経済運営を図りまして、このもとで、我が国経済は、国内民間需要を中心にして政府経済見通し実質四。一%程度の成長は達成できる見込みでございます。
昭和五十九年度第一・四半期の実質成長はどの程度か、五十九年度の実績はどれぐらいになるかという御質問が第二でございます。
政府としては特に四半期ごとの経済見通しを作成しているわけではございませんが、最近の関連指標の動きを見ますと、我が国経済は、業種別、地域別になおばらつきは残されていますが、全体として見れば非常な拡大基調にあります。政府といたしましては、今後とも適切な機動的な経済運営を行いまして、国内民間需要を中心にして実質四・一%程度の成長は達成できる見込みでございます。
次に、来年度予算編成について御質問をしていただきました。
来年度予算編成につきましては、増税なき財政再建と六十五年度赤字公債依存脱却、この二つの軌道に乗りまして、そして臨時行政調査会の答申の線に沿って編成してまいりたいと思っております。いずれにせよ、聖域を設けることなく実行いたしたいと思いますが、内外の情勢から見れば厳しい編成にならざるを得ないと、このように考えております。
防衛費のGNP比一%枠の御質問がございました。
昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針については、これを守ってまいる考え方であります。なお、将来のGNPの推移及び防衛費の動向等不確定的な要素がございますが、ともかく懸命の努力をしてまいるつもりでおります。
次に、五十九年度の人事院勧告の完全実施の御要望がございました。
本年度の人事院勧告につきましては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立って、完全実施に向けて誠意を持って取り組む考え方でおります。具体的には、勧告が出された段階で、閣僚会議等において諸般の事情を考慮しつつ検討いたします。
グリーンカード制について御質問をいただきました。
グリーンカード制の調査、審議をいたしますのは税制調査会でございますが、この新メンバーを六月二十五日に任命したところでございます。グリーンカード制度を含む利子配当課税制度のあり方については、この新メンバーによる税制調査会において早急に検討が開始される予定であり、その推移を見て対処いたしたいと思います。
必要な予算配賦を概算要求でやるべきではないかという御質問でございますが、これも税制調査会の検討状況を踏まえまして適切に対処してまいりたいと思います。
一部の地方団体におきまして、補助金の不正請求が行われた事件がございました。このような事件が起こりましたことは極めて遺憾千万でございます。今後とも、地方団体の財政運営について適正かつ健全な運営が行われるように、事前事後、指導してまいりたいと思います。
なお、地方に対する補助金につきまして、補助金を減額して交付金をふやせという御質問でございますが、臨調答申の趣旨を踏まえまして、補助金につきましては今後とも整理合理化を図っていくつもりでございますが、人件費補助につきましては、臨調答申の線に沿って一般財源化、交付金化を図っているところでございます。今後とも、地方公共団体の自主性を尊重しつつ、臨調答申の線に沿って一般財源化を検討してまいりたいと思います。
会計検査院法の改正について御質問をいただきましたが、これは自由主義経済体制下における公権力の過剰介入問題、政策金融の円滑な遂行との兼ね合いなどの重要な問題を含んでいますために、現在の段階で政府としては慎重検討中でございまして、今提案するということは困難な状況にございます。
しかし、政策金融に著しい支障を生ずることがなく会計検査院の機能の充実強化を図ることについては、政府としても積極的に対処することにいたしまして、会計検査院の検査が有効に実施されるように一層の協力方を各省庁に指導しているところでございます。
残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/15
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016・竹下登
○国務大臣(竹下登君) いわゆる成長率の問題等について詳しく総理からお答えがございましたが、ちなみに、五十八年度は三・四%と申しておりましたが、三・七%ということに結論としてなるというふうに見込んでおりますことをつけ加えさせていただきます。
それから、防衛費の問題でございます。
これは総理から大方針として申し上げましたごとく、昭和五十一年度の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針、これを守っていくという大原則であります。
それから、グリーンカード制度実施のための経費でございますが、御指摘になりましたとおり、グリーンカード制度につきましてはその実施が三年間延期されております。現行法ではカードの交付は昭和六十一年一月一日、これから開始されることになりますので、その予算の手当ては昭和六十年度予算において措置する必要があるという御意見、そのとおりでございます。
そこで、利子配当課税のあり方につきましては税制調査会におきまして検討が行われることになっておりますので、グリーンカード制度のための経費については、その検討状況等を踏まえながら、これは落ち度なく対処していくという筋合いのものであろうというふうに考えております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣山村新治郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/16
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017・山村新治郎
○国務大臣(山村新治郎君) 補助事業の適正な執行につきましては、かねてよりいろいろ努力してきたところでございますが、五十七年度決算検査報告におきまして指摘を受けたことはまことに遺憾でございます。
指摘を受けた事項につきましては、補助金の返還等厳正な措置を講ずるとともに、今後の再発防止を図るため、関係県に対しまして、市町村、農協等に対する指導監督の徹底を図るよう通達したところであります。今後とも、補助金の効率的使用等を確保する、この観点に立ちまして一層の
適正化努力を図ってまいる所存でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/17
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018・阿具根登
○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/18
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019・阿具根登
○副議長(阿具根登君) この際、日程に追加して、
港湾運送事業法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/19
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020・阿具根登
○副議長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。細田運輸大臣。
〔国務大臣細田吉藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/20
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021・細田吉藏
○国務大臣(細田吉藏君) 港湾運送事業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
四面を海に囲まれた我が国にとりまして、港湾運送は、海陸交通の結節点たる港湾における流通機能のかなめとして産業の発展、貿易の振興など我が国産業経済上極めて重要な役割を果たしております。
しかしながら、近年、コンテナ埠頭等の近代的な港湾施設の整備などによる港湾における物流合理化の進展には目覚ましいものがあり、港湾運送についても、このような状況の変化に適切に対応すべく港湾運送事業に関する規制を見直す必要性が高まっております。
また、この点につきましては、昨年三月の臨時行政調査会の最終答申におきましても、同趣旨の指摘を受けているところであります。
このような情勢にかんがみ、将来にわたって効率的な港湾運送事業の実施が図られるよう、今回、港湾運送事業法を改正することとした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、船内荷役と沿岸荷役が一貫して行われる荷役形態が大部分を占めるようになった現状にかんがみ、事業の種類について、船内荷役事業と沿岸荷役事業とを統合して港湾荷役事業とすることとしております。
第二に、一般港湾運送事業者についての下請に
関する規制の弾力化を図ることとしております。
現在、一般港湾運送事業者は、引き受けた港湾運送について、その一部を直営することを条件にそれ以外の港湾運送については、当該事業者と一定の密接な関係を有する関連事業者に下請をさせることを認めておりますが、今回新たに、コンテナ埠頭等の施設においてみずからの統括管理のもとに一定量以上の港湾運送を行う場合にも関連事業者に下請をさせることを認めることとしております。
以上が港湾運送事業法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/21
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022・阿具根登
○副議長(阿具根登君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。目黒今朝次郎君。
〔目黒今朝次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/22
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023・目黒今朝次郎
○目黒今朝次郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
我が国は四面を海に囲まれ、貿易立国を国是とする我が国経済社会活動の中にあって、港湾運送事業は海陸運送の結節点として重要な物流機能を担い、かつ国民生活の発展向上に多大な貢献をしているものであることと同時に、本法の第一条に定める法の目的に照らしてみて、今回の法改正案の内容では健全な港湾運送事業の発展につながり得ないものであり、逆に港湾の秩序を混乱させ、中小零細事業者の倒産、整理淘汰の促進、港に働く労働者の雇用不安の増大など、港湾機能の低下をもたらすことが強く予測されるものであります。したがって、本改正案の審議に際しては、改正案の中身もさることながら、貿易活動、地域経済活動の基幹を担う港湾運送活動において、その安定した港湾機能の発揮と保障のための国全体の政策のあり方を見直す必要があると考えます。
そこで、第一に、総理大臣に伺います。
現行の港湾運送事業法は、昭和二十六年に制定されて以来、十数次の改正を経て今日に至っていますが、法の制定を必要とした当時の経済社会環境で港湾事業の秩序ある発展を図ることを目的とした法の制定理由と同時に、もう一つは、港湾運送事業というものは他の運輸産業とは本質的に異なって、船舶運航の波動性に伴う事業の脆弱性、不安定性及びそれに従事する港湾労働者の不安定雇用を構造的に抱えていることが背景にあります。
そういう状況の中で、一つには、事業法の制定を通じて、我が国経済の戦後の混乱期から高度成長を通して物流活動を港で支えてきたものであります。しかし、最近の港湾運送活動を取り巻く状況は、一方で国際複合運送活動の増大による輸送合理化の集中、もう一方では、OECDによる一九七九年の勧告、すなわち競争政策及びその適用除外分野または規制分野の件、あるいは米国における一連の運輸部門の規制緩和や、我が国においても運輸省の諮問機関である運輸政策審議会が昭和五十六年七月にまとめた、すなわち長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向に基づき、交通運輸産業の事業規制の緩和政策がとられようとしておるのであります。
既に運輸省においても、臨調答申に基づいて行政機構の改組がこの七月から実施され、従来の許認可行政から政策誘導行政機構に変わろうとしています。つまり、港湾運送活動においては、今日では輸送革命ともいうべきコンテナリゼーションを中心とした大合理化が集中し、企業倒産の増大、港湾労働者の失業と雇用合理化が十数年にわたって進行している重大な情勢にあり、そうした中で行政機構の改変、事業規制の緩和、そして今回の法の一部改正が実行されようとしていますが、法の定める目的及び港湾の公共性と社会的役割に照らして、政府としては一体、今後の行政全体のあり方をどのように考えているのか。
特に労働集約型産業である港湾活動において、港湾機能の秩序ある効率化を図るためには、何よりもその機能を担う港湾労働者の安定した雇用保障を確保することなしには、今後の我が国経済貿易活動の秩序ある発展も裏づけられないと考えるが、政府はどう考えているか、お答え願いたいと存じます。
次に、運輸大臣にお尋ねいたします。
港湾機能の果たす重要性にかんがみ、港湾棚能の安定した維持と発展を図るためには、施設、事業、そしてそこに働く労働者の三位一体の総合的なバランスを持った政策の遂行が必要であると考えます。しかるに、戦後から今日までの港運行政のあり方と内容を翻って見た場合、このバランスのとれた行政施策がなかったのではないか。
つまり、運輸行政として、一方では経済の高度成長に伴い増大する貨物輸送に対処するものとして、昭和三十七年以降今日までに六次の港湾整備五カ年計画を策定し、計画投資額の合計では八兆三千六百八十億円の巨額な国家投資を通して港湾施設の整備拡充を進めてまいりました。これについて、昨年八月には、行政管理庁より港湾整備関係に関する勧告がなされましたが、これによれば、せっかくの投資結果にもかかわらず、整備された港湾施設が十分に利用される状態になっていないこと、機能発揮に障害を生じていること等が指摘され、今後の整備事業に当たっては、経済活動と密接な関係を持つ港湾の特性を踏まえて、事業の効果が最大限に発揮できるよう十分に配慮することが必要とうたわれております。
また、事業法については、港湾の公共性に基づく港湾機能の発揮のために、事業基盤の強化、過当競争の是正、良質な輸送サービスの提供のため
の施策をこれまで講じてまいりましたが、これに対しても昨年の行政管理庁による港湾運送事業に関する行政勧告に指摘されておりますが、その中では、運賃のダンピングや事業者の過剰競争によって法令が遵守されていないことが指摘されています。
そして、もう一点は、港に働く人に対する行政施策の問題であります。本来、事業と人の問題は一体的なものであり、港湾の持つ特殊性、公共性からかんがみて、一般産業とは異なる港湾労働のあり方についての運輸行政が強く求められていながら、今日までその面での行政施策が全く放置されていたのであります。特に、日本の港湾労働者の能力とサービスは、世界のトップクラスにランクされる技術を持ち、経済活動への多大な貢献をしておるにもかかわらず、常用労働者といえども波動性に伴う雇用不安を常時あわせ持っている現状であります。
そのような状況の上に、物流合理化のしわ寄せと、今回の法改正による事業の過当競争を巻き起こし、一層の雇用不安を増大させているが、これは今日の運輸行政のあり方として私は厳しく批判されなければならないと考えます。法律によって無用の混乱を引き起こし、労働者の失業を招くようなことは断じて許されるものではありません。
特に、運輸省は、物流活動の効率化とそれに対応する行政機構の改組を進めようとする主管官庁の立場から、港湾の公的性格とその社会的に果たす重要な役割に対して、港運行政に競争原理を導入し、港湾秩序の混乱をもたらそうとするのか、あるいは港湾機能の安定的維持のために港湾建設、事業者、労働者のバランスをとった秩序ある港運政策を進めようとするのか、今後の港運行政をどのように考えているのか伺いたいと存じます。
また、今回の法改正によって秩序の混乱と雇用の合理化を生じさせないための行政の具体的な措置をどう考えているのか、お聞きいたします。
また、今後の港運行政のあり方を展望するに、現行の事業法に労働保護立法の側面を持たせ、事業者、労働者、港湾施設の一体的な港運行政の施策が必要と考えますが、お考えを聞かせてもらいたいと存じます。
次に、労働大臣及び運輸大臣にお尋ねいたします。
ILOが、コンテナリゼーションが港湾労働者に及ぼす社会的衝撃の大きさと影響の甚大さに対し、港湾における新しい荷役方法の社会的影響に関する条約並びに勧告を採択したのは一九七三年、昭和四十八年の六月のことであります。この条約の採択には日本政府は賛成しているわけですが、今日に至るも我が国における条約の批准及びそれに基づく国内法を改正しようとする姿勢はないわけであります。
ILOが港湾労働条約という最も重い決議をした背景には、コンテナリゼーションの港湾労働者に及ぼす衝撃の大きさが、当時としてもそれだけ予測できたからであります。現実に我が国港湾においては、昭和四十四年から五十七年までの十二年間に、全国平均で約三万名の常用港湾労働者の減少となり、年平均ベースでは毎年二千百名余の減少、あるいは延べ雇用人員数では四十四年当時の約五〇%、半分という就労機会の極端な減少をもたらし、また港湾労働法に基づく登録日雇い港湾労働者では、法施行当時定数が三万名でありましたが、今日では何とわずか千四百名、四%という大幅な減少になり、極めて厳しい港湾労働者の雇用合理化を生じさせているわけであります。
〔副議長退席、議長着席〕
これに対して、一体、労働省並びに運輸省として積極的な港湾労働施策をどのように講じてきたのか。事実は、商社、荷主、海運会社などの御機嫌を取りながら、その軍門に屈服して何の施策も講じてこなかったのが実態ではないか。ILOの条約は、港湾産業という国際間にまたがる港湾の将来を考慮し、その安定した恒久的な雇用の保障を図るよう政府に対し義務づけているものであり、それは現行の港湾労働法の内容とは根本的に異なるものであって、今日まで条約批准を放置し、労働者にのみ雇用合理化のしわ寄せを押しつけてきた行政の責任は極めて大きいと言わざるを得ません。
特に、再三言ったように、我が国経済活動に果たす港湾産業の重要性にかんがみ、我が国港湾労働政策は全く欠如している状況であり、国際的視野からも港湾労働の後進性、労働条件の立ちおくれが強く糾弾されている状況であります。このような状況及び今後の港運行政のあり方を展望するならば、速やかにILO港湾労働条約の批准及びこれに基づく関係国内法の整備を進めて、ますます厳しい環境を持つ国際間の経済活動の中にあって、安定した港湾労働者の雇用保障と港湾機能の安定的維持に努めるべきと考えますが、労働大臣のお考えを伺います。
また、現行の港湾労働法を、第一に、事業法の指定港である全国九十七港に適用を拡大させ、事業法と労働法の整合性を持たせること、第二に、現行の日雇い港湾労働者のみの登録制度ではなく、常用港湾労働者と日雇い港湾労働者のすべてを登録して全的適用を図り、真に港湾労働者の安定した雇用の確保を図れるよう、実態に合わせた法の改正と運用を図るべきと考えますが、労働大臣のお考えを聞きたいと存じます。
また、このILO並びに港湾労働法の問題に関して、業界を指導する立場にある運輸大臣がこのILOの条約批准並びに港湾労働法の改正のためにどのような努力をされてきたのか、現在どういう問題点があるのか、将来どのように取り組もうとするのか、あわせて運輸大臣の考えを聞きたいと存じます。
次に、総理並びに大蔵大臣に質問します。
海陸運送の結節点である港湾運送事業法に基づく各業種に従事する港湾労働者の雇用と職域問題は、大蔵省所管の関税行政、さらに通産省所管の国際輸出入物資にかかわる通産行政のあり方とも深く関係していることは周知のとおりであります。しかし、最近の国際的な貿易摩擦、経済摩擦の激化による厳しい経済環境の中で、対外経済競争に終始する余り、運輸、流通面におけるコストダウンの合理化、省力化を図る勢いが急速に進み、その結果、なかんずく港湾労働者の雇用と生活の安定の上に大きな影響を及ぼし、随所であつれきを生じさせております。
荷主産業における流通下請産業へのコストダウンの圧力、通関行政の自由化、特例扱いの増大、商社、荷主、海運会社、税関、港湾などの大規模な複数業者間にまたがるコンピューターを使用した高度情報合理化の導入、あるいは国際的な貿易書式手続の簡素化、合理化を目指す勢いというように、今日極めて急速に、しかも激しい勢いで海運、港湾産業の大規模合理化が進行しています。
しかし、問題は、効率化、合理化を焦る余り、その一方では港湾産業に対する激しいスクラップ化、中小企業の倒産、労働者の雇用合理化をもたらしていることに何らの行政施策も講じられていないのが現状であります。
ILO憲章に基づくように、近代国家における法理念は、経済の効率化を追求する一方で、労働者の雇用を重視する政策がとられなければならず、まして貿易国家たる我が国経済において、その港湾機能を担う港湾労働者の雇用の安定を国の施策として重視しつつ、かつ通産、大蔵行政においても、この港湾労働の安定と港湾機能の安定を図る秩序ある政策をとらなければならないと考えますが、お考えをお聞かせ願いたい。
以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/23
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024・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 目黒議員にお答えをいたします。
第一問は、政府といたしまして、一体今後の港湾運送事業に係る行政のあり方をどのように考えているか、港湾労働者の安定した雇用保障が必要
ではないかという御質問でございます。
港湾運送は、港湾における流通機能のかなめとして、我が国産業経済の発展に果たしてきた役割は極めて重要であると考えております。第二次臨時行政調査会の答申にもありますように、最近における産業や経済が運輸に求めるニーズの変化、企業の活性化等の観点から、事業規制のあり方の見直しを行ってきております。今回の港湾運送事業法の改正についても、かかる観点から見直しを行っておるものであります。
港湾機能の維持発展のためには事業基盤の強化と雇用の安定は不可欠でありまして、今後ともよく注意してまいりたいと思っております。
次に、省力化が港湾労働者の雇用の不安定あるいは港湾産業のスクラップ化等をもたらしている。このような事態を回避するため港湾労働、港湾機能の安定を図るための施策を進めるべきではないかという御質問でございますが、貿易立国たる我が国の輸出入貨物の輸送を担う港湾産業についても、情報処理の高度化、貿易手続の簡素化等の必要がございます。その際、港湾機能の維持、港湾労働の安定、それらの調和につきましては十分配慮してまいりたいと思います。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣細田吉藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/24
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025・細田吉藏
○国務大臣(細田吉藏君) 私に対しまする第一の御質問は、港湾建設と港湾運送事業者、それから港湾労働者、このバランスがとれた政策をとらなければいかぬじゃないか、こういう御質問でございます。
もとよりさようでございます。我が国の港湾におけるこれらのバランスは、私は、いろいろ欠点はあろうと思います、不十分な点もあろうと思いますが、国際的に見ますと、かなりいい水準にいっておるのではなかろうか、かように考えております。しかしながら、これで満足するわけにはまいりません。四面海に囲まれております我が国において、港湾は特に物流の中で特別に重要な役割を持っておりまするので、これらのものがもっと、より調和がとれて、いわゆるハードとソフト、そういうものが調和がとれていくようにすることが必要であると考えておりまして、今後ともその方向に沿うべく一層の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
二番目は、港湾秩序の混乱と雇用不安が今度の改正によって起こるのじゃないか、こういう御質問でございます。
私ども、今回の改正は、コンテナリゼーション等の荷役革新によって生じました規制と実態が離れておるものを是正しようとするものでございまして、将来にわたって安定的かつ確実な港湾運送の体制を実施できるようにとの趣旨に基づくものでございます。したがって、これが原因となって過当競争や雇用不安が起こるとは考えておりません。しかしながら、我が国の港湾にとって過当競争、雇用不安は古くて新しい問題でございまして、いつも十分な配慮をしなければならないことは言うまでもございません。したがって、これらの点について十分配慮してまいる考えでございます。
最後に、ILO百三十七号条約批准の問題でございますが、運輸省といたしましてはこれが一日も早く批准になることを希望いたしておりまして、今後労働省その他関係の各省と十分協議してまいりたいと存じますが、本大臣としてはその方向に向かって極力努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣坂本三十次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/25
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026・坂本三十次
○国務大臣(坂本三十次君) コンテナリゼーションの進展による港湾労働者の雇用合理化に対して労働省の講じてきた施策いかんという御質問でございました。
港湾におけるコンテナ化を初めとする最近の荷役革新の進展に対応して、労働省としては、雇用の安定等の観点から登録紹介方式の改善、教育訓練の充実等を図ってきたところであり、また、近年の景気の低迷とも相まって生じた荷役量の減少に対しても、雇用調整助成金を活用して港湾労働者の雇用の安定に努めているところでございます。
次に、ILO百三十七号条約の批准及び港湾労働者の雇用保障等についてでございます。
ILO条約については、国内法制との整合性を確保した上で可能なものから批准に努めるというのが政府の基本的な考え方でございます。ILO百三十七号条約については、港湾労働法等、現行の国内法によりおおむねその内容が満たされていると考えておりますが、港湾労働関係の労使問で同条約の内容について理解の一致を見るに至っておりませず、このような現状のもとでは、批准することには問題が残っておると考えております。
労働省としても、関係審議会の場等を通じて、港湾輸送の変化等の事態も踏まえまして、港湾労働者の雇用の安定と港湾機能の充実の要請にこたえるための港湾労働対策の検討を深めていただきながら、関係者における共通の理解が形成されるよう努めてまいりたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/26
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027・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は、税関行政、そして港湾労働の安定、また港湾機能の安定、この関連した御質問でございます。
税関行政の目的は、円滑な国際間の物流を確保しながら、同時に適正に関税等を徴収し、そして国内法令に違反する貨物が国内に流入することを防止する、こういうことにあるわけでございます。わが国は内外からの要請に応じまして、通関手続に関して簡素化、合理化措置を確かに実施してきておりますが、他方、効率的、重点的な輸入貨物の審査、検査体制をとっておりまして、税関のチェック機能の維持には十分意を用いておるところでございます。
そこで、今総理からも運輸大臣からもお答えがございましたが、そういう本来業務を持っておりますが、根底には港湾労働の安定、港湾機能の安定という問題は、総理、運輸大臣からそれぞれ考え方をお述べになりました、そういうものを背景に踏まえていなければならないということは、私どもも十分事実認識をいたしておるつもりでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/27
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028・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/28
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029・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第二 郵政省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長高平公友君。
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〔高平公友君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/29
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030・高平公友
○高平公友君 ただいま議題となりました郵政省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、臨時行政調査会の答申を踏まえて決定された行政改革に関する当面の実施方針に基づくものでありまして、郵政事業に係る地方行政機構の総合化及び効率化を図るため、現在郵政省の地方支分部局として置かれている地方貯金局及び地方簡易保険局を地方郵政局に統合して、同局の貯金事務センター及び簡易保険事務センターとすることを内容とするものであります。
委員会におきましては、統合に至る経緯とその効果、臨調答申との関連など法案内容に係る諸点を初め、郵便事業の将来展望、郵便料金の今後の見通し、郵便貯金、簡易生命保険事業の財政状況と資金の運用のあり方等、郵政三事業にかかわる基本的諸問題のほか、放送衛星の故障、少額貯蓄に対する利子課税の是非等について質疑がありましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/30
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031・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/31
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032・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/32
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033・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第三 昭和五十六年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)
日程第四 昭和五十六年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)
日程第五 昭和五十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)
日程第六 昭和五十七年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書
日程第七 昭和五十七年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書
日程第八 昭和五十七年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書
日程第九 昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書
(いずれも衆議院送付)
日程第一〇 昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)
以上八件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。決算委員長安
恒良一君。
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〔安恒良一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/33
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034・安恒良一
○安恒良一君 ただいま議題となりました昭和五十六年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)外五件の予備費関係、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書及び昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)、以上八件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果について御報告を申し上げます。
まず、予備費関係六件は、財政法の規定に基づき国会の事後承諾を求めるため提出されたものでありまして、その内容は、昭和五十七年一月から同五十八年三月までの間において使用または増額の決定がなされた一般会計、特別会計の予備費関係経費であり、主要な項目として、災害復旧事業、退職手当の不足補てん、総理大臣の外国訪問、国民健康保険事業に対する国庫負担金の不足補てん、スモン訴訟における和解の履行に必要な経費などが挙げられております。
次に、昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書は、同年度における一般会計の歳入歳出の決算上生じた不足を補てんするため、決算調整資金から一般会計に二兆四千九百四十八億円余を組み入れたことについて、決算調整資金に関する法律の規定に基づき国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。
次に、昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)は、昭和五十六年度に発生した災害の復旧事業の実施が同五十七年度に及ぶものについて、同五十六年度においてその事業費の一部補助について債務負担行為を行ったことについて、財政法の規定に基づき国会に報告されたものであります。
委員会におきましては、これらの八件を一括して審査をいたしましたが、質疑の内容につきましては会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、採決の結果、予備費関係六件及び決算調整資金からの歳入組入れに関する調書につきましては、いずれも多数をもって承諾を与えるべきものと議決され、また、国庫債務負担行為一件につきましては全会一致をもって異議ないと議決された次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/34
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035・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
まず、日程第三、第六及び第八の予備費使用総調書等三件について採決をいたします。
三件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/35
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036・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、三件は承諾することに決しました。
次に、日程第四、第五及び第七の予備費使用総調書等三件について採決をいたします。
三件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/36
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037・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、三件は承諾することに決しました。
次に、日程第九の決算調整資金からの歳入組入れに関する調書について採決をいたします。
本件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/37
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038・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本件は承諾することに決しました。
次に、日程第一〇の国庫債務負担行為総調書について採決をいたします。
本件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/38
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039・木村睦男
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
よって、本件は全会一致をもって委員長報告のとおり異議がないと決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/39
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040・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一一 関西国際空港株式会社法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長矢原秀男君。
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〔矢原秀男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/40
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041・矢原秀男
○矢原秀男君 ただいま議題となりました関西国際空港株式会社法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案の主な内容は、第一に、関西国際空港株式会社は、関西国際空港の設置、管理等を効率的に行うことを目的とする株式会社とすること。第二に、関西国際空港は、国際航空路線に必要な公共用飛行場として、大阪府の地先水面に設置するとともに、空港及びその航空保安施設の設置、管理は、運輸大臣の定める基本計画に適合するものでなければならないこと。第三に、政府は会社の発行済み総株式の二分の一以上の株式を保有するとともに、地方公共団体は自治大臣の承認を受けて会社に出資することができること。第四に、会社は、関西国際空港及びその航空保安施設の設置、管理を行うほか、空港の機能を確保し、利用者の利便に資する諸施設及び連絡橋の建設、管理等を行うこと。第五に、政府は、会社の行う事業の公共性にかんがみ、無利子貸し付け、債務の保証、税制上の特例等の助成措置を講ずるとともに、利益配当の特例、国庫納付金、監督等について所要の規定を設けること等でございます。
委員会におきましては、現地調査を行い、参考人の意見を聴取し、また、地方行政、建設及び環境特別委員会との連合審査会を開催するなど熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党瀬谷理事より反対、自由民主党・自由国民会議梶原理事より賛成、日本共産党橋本委員より反対、公明党・国民会議桑名理事より賛成の意見が述べられ、採決の結果、本法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法案に対し、瀬谷理事より、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案に係る会社の運営に当たっては地元の意向が十分反映できる仕組みを整備すること等六項目を内容とする附帯決議案が提出され、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/41
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042・木村睦男
○議長(木村睦男君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。瀬谷英行君。
〔瀬谷英行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/42
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043・瀬谷英行
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、関西国際空港株式会社法案に対し、反対の討論を行うものであります。
元来、国際空港は国家の表玄関であって、その位置、環境、規模、設備、安全性はもとよりアクセスに至るまで、それにふさわしいものでなければなりません。また、空港事業の性格は、当然一〇〇%公共的使命を帯びており、だからこそ第一種空港として当然国が建設、管理、運営に当たるべきものとされており、そのことは既に世界的な常識となっております。
本空港も、当初、事業主体が公団と第三セクターの併用方式をとり、地元も大方その失うに理解をしていたはずであります。ところが、突如として中曽根総理の意向により株式会社方式に形を変えたと伝えられ、しかも配当制限条項が修正さ
れる等の奇怪な付録までついて回るに至っては不可解と申し上げるほかありません。
これに対し、地元は大きな戸惑いを示し、先般の大阪周辺の現地調査の際は、我々の質問に対し、地元地方自治体関係者は一様に、会社方式は希望したもりでもなければお願いしたものでもないと一斉に述べておりました。また、公聴会では、日向方齊関西経済連合会会長自身が、空港事業が民間出資になじまないことを述べ、株式会社方式に疑問を表明いたしました。
審議の過程においても、政府答弁では、ついに何がゆえに株式会社方式でなければならないのかという根拠を具体的に明示することができなかったのであります。また、地元の予期に反して突如、株式会社方式にスタイルを変えた経緯の不明朗もしくは疑惑に対しても十分解明されるところがついになかったのであります。
したがって、我々はまず第一に、本空港が世界的に例を見ない株式会社方式で建設、運営されることに対し、基本的に強く反対をいたします。これ、国家的事業に対する政府の巧妙な責任回避であるからであります。
また、次に指摘しなければならないことは、人事や運営の面における疑問と不安であります。
民間の活力を云々されておりますが、最終的には一兆を超すであろうと思われる巨大な投資必要額に対して、たかだか二百億程度の出資は二階から目薬にすぎないと思わなければなりません。結局は、役員人事を支配するための布石だったのではないかと疑われてもいたしかたないと思います。さらに、法案が成立する前から新聞紙上に会社幹部の人事が報道される等、官民の妙な癒着が案ぜられます。出資者が出資を背景に、その立場で思惑と利益誘導に走ったら本来の公共事業がゆがめられ、利権の温床となるおそれなしといたしません。
第二に、地域整備計画とその実施のための責任体制が確立されていないことを指摘いたしたいと思います。
我々は、空港そのものの必要性を認めるとともに、二十四時間空港の機能を発揮するため海上にその位置を求めたことに対しては評価をいたします。それだけに、空港の機能を十分発揮できるためのアクセスの問題を重視しなければなりません。
アクセスの点で全く失敗だったと認めざるを得ない前例に成田空港があります。自動車は長時間を要し予定を立てにくく、新幹線は駅だけあってレールがなく、京成電車はレールがあっても空港本体と離れ過ぎてバス連絡を要する等、まことにちぐはぐであります。ところが、関西空港の場合も、法案審議を通じて明らかになった限りでは、道路、鉄道等いずれもすこぶるあいまいで、開港時までに完成できるという保証が全くありません。建設省も運輸省も国鉄も、人ごとのように乗り気がなく、さながら他人の引っ越しをたばこをくわえて眺めているという感じであります。
もしも、空港となるべき新しい島が完成した場合、アクセスが歩調をそろえられなかったらどうなるでありましょうか。成田の場合はまだ陸続きだから不便の度合いが若干違っておりました。ところが、関西空港の場合は海上だけに、 アクセスの不備は致命的となるでしょう。昨日の委員会でも、その点の不安について委員から強い指摘がありましたが、例えば、島ができても橋ができなければどうなるのか。そのときになって、しまったと言っても後の祭りであります。船でお客を運ばなければならないということになれば、まさに矢切の渡しの関西版になってしまいます。
最後に、十分な配慮を要する問題として漁業補償の問題があります。審議過程においても、水産庁はよそごとのような感じで事の成り行きを軽視しているのではないかと案ぜられましたが、土地問題と違って海上に団結小屋を建てられることはないかもしれません。だからといって、水かけ論で事を処理しようとしてはならないのであります。
この周辺は漁獲される魚の種類も多岐にわたり、漁民の生活がかかっております。殊に、ここではタイが釣れるということを聞きました。雑魚と異なりまして、タイがとれるとなると漁業補償といえども大変であるという認識が必要であろうと思います。この種の問題の取り扱いを一歩誤れば成田の二の舞いとなる可能性を秘めていることを強く指摘いたします。
本法案が参議院に送付されてから、現地調査、公聴会、かなり長時間に及ぶ審議の経過を振り返ってみても、この大事業を進めるに当たって生ずるであろう多くの問題を解決するには、このような事業形態が適切であるという確証を得ることはついにできませんでした。政府の責任回避と財界に対する利便供与が、結局周辺自治体に対する有形無形の負担の転嫁としわ寄せになることを危惧するものであります。そのような場合の財政的支援体制の保証もないまま、この空港は先行き多くの不安を抱えております。成田の失敗を再度繰り返さないことを強く要望いたしまして、反対の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/43
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044・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/44
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045・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/45
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046・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/46
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047・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一二 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案(内閣提出、衆書院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長伊江朝雄君。
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〔伊江朝雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/47
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048・伊江朝雄
○伊江朝雄君 ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、依然として厳しい現下の財政状況のもとで、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源を確保するため、同年度における公債の発行の特例に関する措置、国債整理基金に充てるべき資金の繰り入れの特例に関する措置並びに日本電信電話公社及び日本専売公社の国庫納付金の納付の特別措置をそれぞれ定めるとともに、同年度以前の各年度において発行した特例公債について、償還のための起債の特例を定めようとするものであります。
委員会におきましては、既発憤を含め一括して特例公債の借換債を発行することとした財政運営上の政策転換の理由、本案を五十九年度財源確保の法案と借換債発行のための法案に二分できない理由、特例公債依存財政脱却目標年次である六十五年度までとその後における財政状況の見通し、
減債基金制度維持についての対応、具体的な中期財政計画提出の必要性、公債の発行、管理についての歯どめの具体策、財政法上の日銀引き受け禁止の精神の尊重等について総理、大蔵大臣並びに財政当局に対して質疑が行われたほか、参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して竹田四郎理事、公明党・国民会議を代表して塩出啓典理事、日本共産党を代表して近藤忠孝委員、民社党・国民連合を代表して栗林卓司委員、参議院の会を代表して青木茂委員よりそれぞれ反対、自由民主党・自由国民会議を代表して岩崎純三理事より賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本案に対し、特例公債依存財政から昭和六十五年度までに脱却するための手順と方策を具体的に明らかにすべきであること、公債償還、減債基金への繰り入れの見直しと償還計画を明示すること及び特例公債、建設公債別の発行、消化状況等を報告すること、日本銀行に係る両公債別の保有状況等について報告すること等を含む三項目についての附帯決議案が自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会、新政クラブの各派共同提案として竹田四郎理事より提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/48
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049・木村睦男
○議長(木村睦男君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。竹田四郎君。
〔竹田四郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/49
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050・竹田四郎
○竹田四郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案に対しまして、反対の討論を行います。
今後、我が国は、国内的には高齢化社会を急速に迎え、国際的には、経済、金融、資本の一層の自由化をして、自由世界GNP一割の先進経済国家としての役割を求められます。こうした時期に当たって、我が国の財政運営はいよいよ機動性、弾力性を要求されてきております。しかるに、我が国財政は、国債を抱いているのではなく、国債の中にどっぷりとつけ込まれた財政となってしまいました。
私どもは、昭和四十年以来、国債、特に特例国債の発行は財政民主主義を破壊するものだとして毎年強い反対姿勢を打ち出してきました。しかし、自民党政府は天の声に耳をかさず、歴史の教えを学ぼうとせず、自民党選挙基盤の培養のための補助金や防衛費突出のために支出をし、また不公平税制の是正に手をつけることなく、じんせん今日に至りました。
この間、政府は、特例国債は見合い資産もなく、後代に負担だけを残す悪い国債だと宣伝をし、必ず十年以内で償還をするのだと公約をしてまいりました。また、五十三年度には、五十九年度にはゼロにすると公約をしました。こうした公約にもかかわらず、五十九年度末は国債残高は百二十二兆、うち特例国債は五十三兆円、国債の利払い費は八兆円強という大怪物になってしまいました。今また六十五年度に特例国債をゼロにすると公約していますけれども、これまた実行されますまい。
そして、十年たった今日、特例国債を現金償還せずに、借換債を発行して、建設国債同様六十年間にわたって償還するという法案を臆面もなく提出してきました。しかも、毎年毎年特例国債の法案を国会の審議にゆだね、国民の監視を受けてきたのに、五十一年度から五十九年度の九年度にわたって一挙に借りかえ禁止規定を削除するというのであります。これでは歯どめが全くなくなるのではないかと言えば、第六条に努力規定があるからと弁解して恥じるところはないのであります。行政者としての責任をとるどころか、今次の法案は政策の大転換であるとうそぶいているのであります。
私どもは、国債の管理政策を一歩誤ると増税、福祉、教育の切り捨て、インフレ等国民生活に大きな犠牲を強要するものだと、国債発行そのもの、特に特例国債の発行に反対をしてきました。大量の国債残高が財政経済に及ぼす影響をおもんぱかり、毎年毎年満期が来る特例国債について借りかえの国会の議決を得るよう要求してまいりましたが、自民党政府はこの要求に応じようとしませんでした。深い反省を要求するものであります。
以下、主要な反対の論点を申し述べます。
第一点は、自民党の公約違反の法案であるということであります。
我々は毎年毎年、特例国債は満期日には全額現金償還するのかとただしてきました。昭和五十年十二月三日衆院で、二十三日に当院で、大平大蔵大臣、さらに三木総理からも、六十年度には借りかえることなく全額現金償還を行うことを財政運営の基本とするという答弁がありました。その後、この趣旨にのっとって毎年度特例国債の借りかえ禁止規定が付されたのであります。
また、赤字国債を昭和六十五年度ゼロにすると称しておりますが、借りかえを行うのでありますから、六十五年度以降も赤字国債は依然として国債整理基金特別会計で発行し続けるのであります。また、一般会計において赤字国債をゼロにしてスリムなように見せても、財政投融資あるいは地方財政にしわ寄せをして、最終的には国の債務となって公共料金等の値上げなど国民の負担に転嫁されてしまって、おできは根絶されるのではなく、他に転移するにすぎないのであります。
第二点は、国債発行についての歯どめが全く失われたことであります。
政府は、国債に関しては年ごとにと言ってよいほどに、財政試算や中期展望や試算を提示して国債発行をゼロにする目標を掲げてきました。それらの計画は、一年といえども予定どおり実行された実例はないのでありまして、財政再建にまじめに取り組んでいるのかどうか、疑問を抱かざるを得ません。努力規定、訓示規定をつくられても、守られたためしはありません。今回この法案で特例国債について借りかえを認めることになれば、官僚はみずからの血肉を切ってまで規定以上に特例国債の残高縮小を図ることはしないでありましょう。二十年も三十年も前の役人のやった責任を、後世代の役人が規定以上に道義的に責任を果たすということは想像すらできません。特例国債は毎
年国会で授権されて発行してきたわけでありますから、その借りかえも毎年国会に承認を求めることによって歯どめとし、余剰資金があれば規定以上に償還することは当然であります。
第三に、減債基金への繰り入れ停止であります。
今までは借りかえは建設国債だけでありましたが、今後は特例国債が加わり、年間の借りかえ額だけでも十五、六兆円にも達するわけであります。従来は、発行当初はシ団の引き受けであっても、やがて日銀や資金運用部の保有が圧倒的に多くなったのであります。したがって、借りかえもそのままスムーズに完了いたしました。
しかし、今後は市中保有が広がり、かつまた流動的になってまいります。また新規財源債の場合はお休みもできますけれども、借換債の場合は返還借りかえの期日を遵守しなければならないわけであります。将来の国の財政負担を軽くするためにも有利な情勢の中で借りかえを行うようにしなければなりません。また国債市場が混乱すれば買い支えをする必要があるでしょう。昭和六十二年には国債整理基金残高がゼロになりますが、基金に相当額を留保しておく必要があります。かかる意味で、繰り入れを中止することは国債管理運営を極めて困難にし、場合によっては日銀の買い入れに頼る以外になくなるかもしれません。
第四には、赤桐議員が去る五月九日この壇上から申し上げましたように、我が党は、昭和五十九年度の財源確保を図るための特例国債の発行、両公社の納付金などと特例国債一般の借りかえとは全く別個の問題であり、二つの法案に分けるべきであり、特別措置等の「等」の字を除きなさいと主張してきました。
政府、大蔵省は、所得税法等の改正案の中にも国税通則法の改正案という別個のものを挿入して提案するなど、国民の関心をそらせ、大蔵省の所期の目的を達成するというやり方が極めて多くなってきました。極めて遺憾であります。今回においても同様であります。借りかえについてはさらに十分な討論を深め、国民のコンセンサスを得べきであります。拙速は必ず財政をますます混乱せしめることになるでありましょう。
第五に、電電公社、専売公社の国庫納付金であります。
昭和五十六年度から五十九年度に至る四カ年間に、単年度千二百億円、総額で四千八百億円の納付を求めたものであり、わけても昭和五十八年度には五十九年度分を前倒しして二千四百億円を納付せしめました。さらにその上、本年度において臨時に二千億円を納付せしめることは電電公社に対する約束違反であります。専売公社の臨時納付金についても、通常の納付金に加え、五十八年度において二年間の特例納付金を納めさせている上に、さらに今回も五十八年度の利益分から三百億円を臨時に取り上げるということでありまして、まさに冷酷無慈悲な悪徳代官のやり方であり、許すことはできません。
以上で討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/50
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051・木村睦男
○議長(木村睦男君) 鈴木一弘君。
〔鈴木一弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/51
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052・鈴木一弘
○鈴木一弘君 ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案に対し、私は公明党・国民会議を代表して反対の討論を行うものであります。
昭和四十年に建設国債が発行され、十年後の昭和五十年に赤字国債が発行されて今日に至り、本年度末には建設国債の発行残高六十八兆四千億円、赤字国債発行残高五十三兆八千億円、合計で実に百二十二兆二千億円の国債発行残高を我が国の財政は抱えてしまうことになってきております。これは我が国の国民総生産の四七・七%、本年度予算の三倍近くにも達する規模の国債残高となるのであります。
このことは、アメリカやイギリス、西ドイツ、フランスと比較してみても、我が国の国債発行残高は極めて高く、対GNP比先進国第一位で、今後の国債政策を一歩誤れば国民生活に重大なる影響を及ぼすことは明らかであります。
そのような重大な局面にあるにもかかわらず、政府は責任ある国債対策を国民に示さないばかりか、かえって国民の目からこの厳しい財政の実情を遠ざけてしまうような無責任な方法をとろうとしているのであります。その無責任な方法とは、この法律案そのものであります。
昭和五十年度、二兆九百五億円を初めとして、五十一年度以降毎年度三兆円、四兆円を超す赤字国債を発行し続け、そのたびごとに、必ず十年後の償還時には一括現金償還をいたしますと毎年度の特例法に政府は明記して、国民及び国会に対して約束をしてきたのであります。これは、あくまで赤字国債は急場をしのぐもので早々に解消すべきであるという、昭和五十年当時の大平大蔵大臣が、政治家として、また日本の財政を預かる責任者としての良心からの現金償還の歯どめをしたためであったと我々は高く評価をしてまいりました。しかるに、政府はその約束をほごにして、来年度から恥も外聞も財政運営の節度もかなぐり捨てて借換債発行による償還の大幅繰り延べを図ろうというのがこの法律案で、今までの政府の失政のツケをこれでごまかそうというものにほかなりません。
次に、より具体的にこの法律案に対しての反対の理由を述べます。
第一に、政府の言う財政再建とは、昭和五十年度以来毎年度発行してきた赤字国債は償還期限到来時に一括現金で返済するとともに、五十九年度には赤字国債発行ゼロを国民に約束してきたことを指すのではありませんか。その後国会で、我が党がしばしば現金償還の準備不足を指摘したのに、その都度一必要なときに予算繰り入れで償還財源をつくりますと答弁してきたではありませんか。この点では既に二重の政府の失政と言わざるを得ません。我々は断じて認めることはできません。
しかるに、政府の五十九年度財政再建は完全に破綻し、赤字国債の償還も六十年も先に延ばすという、全くめちゃくちゃの財政運営を行おうとしております。中曽根内閣が、歴代内閣が国民に約束してきた一括現金償還を一片の法律でひっくり返すことは、まさに背信行為ここにきわまれりと言っても過言ではありません。
財政窮乏のもとでも政府の公約を実行するには、昭和六十年度からの赤字国債の償還について可能な限り現金償還を行い、それでできないものについては借換債にせず、新発債として国債の発行をし、毎年度国会と国民の了解を得て財政運営を行うのが、せめてもの大失政の罪を償う姿勢で
はありませんか。しかるに、この法律案では借換債となるために、一般会計より切り離されて国債整理基金特別会計に移される上に、五十年度以降五十八年度までの九年度分の赤字国債の借りかえを一括してこの法律案で行おうとしているのは暴挙としか言いようがありません。それでは財政再建についての国民の理解と協力は到底望み得ないのではないでしょうか。
第二に、赤字国債の借換債の償還についての問題であります。
国債の借換債による償還の規定は、国債整理基金特別会計法の規定では建設国債・赤字国債の区別はしておりません。ただ国債の借りかえによる起債ができるというのみであります。したがって、赤字国債の借換債が国債整理基金特別会計に移されたときから建設国債の借換債と同様の扱いになり、その償還は六十年間で償還することになるのであります。
このように一たび性格が一変すれば、建設国債と赤字国債の区別は全くなくなり、国債は一度発行したら半ば償還しなくてもよいということと大差なくなり、まさに財政紊乱のもととなるではありませんか。これから六十年以上も先の世代の、現在選挙権を持たない人々に今の赤字国債という借金だけを押しつけるようなことは、国会議員として責任は持てないし、また、できないはずであります。
第三に、このような国債政策の大転換を図ろうとするのであれば、少なくとも一年か二年かけ十分な検討をし、財政再建法という立法をなし、その上で関係する財政法とか国債整理基金特別会計法の不備の点を改めて行うのが政府の責任ある姿勢であると思うのであります。それを、従来のままの国債整理基金特別会計で行うのは余りにもこそくなやり方であります。また、一度発行されれば建設国債と赤字国債の区別はなくなるはずでありますから、政府自身、今までは両国債は性格が違うと大宣伝をしておきながら、償還は同じ扱いでいいというのでは、三百代言のそしりは免れないし、責任ある政府とはだれも認めることはできないではありませんか。
その上に、この法律案においては、本年度の赤字国債発行予定額六兆四千五百五十億円と、専売、電電の納付金とに事寄せて、全然異質の約五十兆円の今までの赤字国債発行残高の借りかえを一度に処理しようとするものであります。本年度予算に関するものと昭和六十年度以降の赤字国債の償還問題は切り離して行うべきとの我々の強い主張と建設的提案に、政府・与党は同意しませんでした。こんな姿勢では、参議院の良識や憲法が求める国会の機能を発揮することは全くできず、政府・与党が本院の墓穴を掘っていることを強く警告しておきたいのであります。
第四に、現在停止している減債基金の繰り入れの問題であります。
国債整理基金特別会計法で規定されている減債基金制度は、昭和五十七年度からの定率繰り入れが停止されてから今日まで、予算からの繰り入れがされておりません。国債政策の一大転換を言う政府は、ではこの減債基金制度についてはどうするのか全く示さず、放置したままなのであります。赤字国債と建設国債の減債について具体的減債計画を示さないことは、怠慢と無責任以外の何物でもありません。
最後に、このような歯どめのない国債政策は、我が国を米国と同じような高金利の社会にし、ひいては財政インフレ発生を招くおそれが極めて高いということであります。国債を減額する最も安易な方法は、その国の経済をインフレにすることだと言われております。中曽根内閣は、建前はともかく、本心は調整インフレを実はねらっているのではないかと、この審議を通じて思えてならないわけであります。
以上指摘したとおり、この法律案は将来へ禍根を残すおそれの多いものであり、断固反対し、私の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/52
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053・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/53
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054・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/54
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055・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X01919840627/55
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