1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和五十九年七月六日(金曜日)
午前十一時七分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第二十号
昭和五十九年七月六日
午前十時開議
第一 日本原子力研究所法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
第二 農業振興地域の整備に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 土地改良法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
第四 雇用保険法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、日本ユネスコ国内委員会委員の選挙
一、日本育英会法案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/0
-
001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、日本ユネスコ国内委員会委員一名の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/1
-
002・橋本敦
○橋本敦君 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/2
-
003・名尾良孝
○名尾良孝君 私は、ただいまの橋本君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/3
-
004・木村睦男
○議長(木村睦男君) 橋本君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/4
-
005・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、日本ユネスコ国内委員会委員に吉川春子君を指名いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/5
-
006・木村睦男
○議長(木村睦男君) この際、日程に追加して、
日本育英会法案について提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/6
-
007・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。森文部大臣。
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/7
-
008・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 日本育英会法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
昭和十九年日本育英会法施行以来、日本育英会は逐年発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受けた学生及び生徒は約三百四十万人に達し、これらの人材は社会の各分野で活躍し、我が国の今日の発展に多大の寄与をいたしてまいりました。
しかしながら、最近における高等教育等の普及状況を踏まえ、社会経済情勢の変化に対応して日本育英会の学資貸与事業の一層の充実を図るためには、その内容、方法等について抜本的な見直しを行うことが必要であり、このことは、第二次臨時行政調査会の答申等や文部省に置かれた育英奨学事業に関する調査研究会の報告でも指摘されたところであります。
このような要請にこたえるべく、今般、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに教育の機会均等に寄与するため、日本育英会の学資貸与事業に関し、無利子貸与制度の整備、有利子貸与制度の創設その他制度全般にわたる整備改善を行うほか、日本育英会の組織、財務、会計等の全般にわたる規定の整備等を行うこととし、現行の日本育英会法の全部を改正する法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。
まず第一に、日本育英会は、すぐれた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資の貸与等を行うことにより、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与することを目的とすることといたしました。
第二に、日本育英会の組織については、理事は文部大臣の認可を受けて会長が任命することとし、また、法人運営の適正を期するため、会長の諮問機関として評議員会を置くなどの整備を行うことといたしました。
第三に、日本育英会の業務については、学資貸与事業について次のような改正を行うことといたしました。
まず、無利子貸与制度について、現行の一般貸与と特別貸与を一本化することといたしました。これに伴い、特別貸与を受けた者が一般貸与相当額の返還を完了したとき、その残額を免除してきた従来の特別貸与返還免除制度を廃止することといたしました。
次に、現行の無利子貸与制度に加えて、学資貸与事業の量的拡充を図るため、新たに低利の有利子貸与制度を創設することといたしました。この有利子貸与制度には、死亡、心身障害返還免除制度を設けることといたしました。
なお、無利子貸与にあわせて有利子貸与を受けることができる道を開くことといたしております。
第四に、日本育英会が債券を発行することができる旨の規定を設け、国の一般会計以外からの資金を導入し得ることといたしました。なお、これにより、政府から資金運用部資金の貸し付けを受けて、有利子貸与事業に対する貸付資金の原資に充てることができるようにいたしたい考えてあります。
また、債券発行規定を設けることに伴い、日本育英会の長期借入金または債券に係る債務についての政府保証の規定を整備するほか、日本育英会の財務、会計について所要の規定の整備をいたしております。
第五に、日本育英会の監督、罰則等に関する規定を整備するとともに、関係法律についても所要の規定を整備することといたしました。
このほか、この全部改正の機会に、現行の片仮名書き文語体の法文を平仮名書き口語体に改めることとし、法文の平明化を図ることといたしております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/8
-
009・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。粕谷照美君。
〔粕谷照美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/9
-
010・粕谷照美
○粕谷照美君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本育英会法の改正案につきまして、中曽根総理並びに関係各大臣に対して質疑を行います。
最初に、奨学事業の基本理念に関してお伺いいたします。
総理並びに文部大臣は、衆議院本会議で我が党の佐藤徳雄議員の質問に関連いたしまして、教育の機会均等を拡大するために今回の有利子制導入を行うものだと述べられておりますが、憲法及び教育基本法にいう教育の機会均等は、決してそのようなものではありません。奨学制度の本来あるべき理想は給費制度であって、現在の無利子貸与制度はその理想に到達する過渡的な段階であると私は考えます。
現に文部大臣の私的諮問機関である育英奨学事業に関する調査研究会ですら、「先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としている」ことを指摘し、「現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」と報告をしているのであります。また、衆議院文教委員会における附帯決議は、「無利子貸与制を根幹としてその充実改善に努めるとともに、有利子貸与制度は、補完措置とし財政が好転した場合には検討すること。」と満場一致で決定しているのであります。
しかるに、今回の改正法案は、根幹となるべき無利子貸与者を九千人も減員した上での有利子制度の導入であります。将来、有利子が根幹となり、全面有利子化されるのではないかというおそれを持っているものであります。このことは奨学制度の基本理念に逆行し、教育の機会均等を妨げるものではありませんか。
大学、短大の奨学生採用に当たって、有利子は三・二、無利子は三・五と、両者の区分を高校における五段階相対評価の平均点で振り分ける方法は問題であります。教育改革の重要な課題として、偏差値教育の是正によって生徒の個性ある能力を引き出し、花開かせることを強く主張されております中曽根総理の主張とも相反するものと言わざるを得ません。平均点ということで言えば、ワシントン、アインシュタイン、エジソンも奨学生の採用基準から外れたのではないかなどと言われているゆえんもそこにあるのであります。
憲法二十六条に言う「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」、教育基本法第三条一項の「能力に応ずる教育」、同二項の「能力があるにもかかわらず」の「能力」とは、平均点のよい成績のすぐれた学生を意味するものではないと考えるのでありますが、能力とは何か、教育とは何かの基本理念の問題としてお答えをいただきたいと存じます。
既に九五%の進学率、準義務教育とも普通教育とも言える高等学校の生徒に対する奨学金は、学力基準を廃し、義務教育学校の就学援助制度に準じて、育英抜き、経済的必要度に応じての奨学金制度とすべきであります。母子家庭の激増、交通遺児、失業家庭を初め経済的な困窮で家庭教師についたり塾に行くゆとりすらない生徒たちにとって、この学力基準がいかに非人間的であり、反教育的なものであるかに思いをはせていただきたいと思います。
また、家庭の収入状況は、税制上の不公平で、サラリーマン家庭の生徒や学生の多くが奨学金を利用できないでいるという不合理きわまりない実態が生じております。一方、教育費は年々高騰を続け、家計費を圧迫して、奨学金の支給を要望する生徒、学生の声は激増しております。したがって、実情にそぐわない収入基準や学力基準が奨学生採用の基準になり、有利子、無利子の線引きになるということは、即刻是正されなければならないと思います。
次に、有利子貸与の三%の利率は閣議決定ということになっておりますが、現行の無利子貸与ですら、就職の入り口から男女差別を受け、働き続けるための社会的条件の整わないまま退職のやむなきに追い込まれる女子学生たちは、将来の返還の負担の重さを考え、申請をあきらめる場合が非常に多いと聞きます。この低利を今後とも維持していくのかどうか、文部大臣の御決意をお伺いいたします。
また、衆議院本会議での総理答弁の中に、この育英資金の恩恵を受けた人たちが社会に対して感謝し、さらに後輩に対してその恩沢を拡大し受け入れられるように、先輩が協力をすることが望ましいというお考えがございました。六月初旬、名古屋市の小川郁子さんという方が、亡夫の遺志と言って四億円の奨学基金を名古屋女子大に寄附されたという心温まる報道がございました。御夫婦ともに奨学金の恩恵を受け、留学までできたお礼だと小川さんはおっしゃっておられますが、このような立派な行為はだれもができることではありません。しかし、そのようにありたいと考える方が多いことは、日本育英会あてに金一封を入れ、返済を完了した喜びとお礼の手紙がたくさん届いていることからもわかるわけです。
しかし、先輩が後輩に対して恩沢を受け入れられるようにするために、なぜ利子つきの奨学金制度を導入するのか、また平均点の悪い、端的に言えば成績が無利子の者よりも〇・三ポイント悪い学生に適用されるという、こういう差別を持ち込むのですか、納得がいきませんので御説明をいただきたいと思います。
奨学事業を実施しているアメリカのロックフェラー財団やカーネギー財団は有名でありますが、我が国においてもさきの小川基金のような個人の善意によるものや、さらには財界等に呼びかけて民間の活力を奨学事業に投入していただくということは非常に重要なことだと思います。そのためには、育英奨学法人や地方公共団体の行う奨学事業等に対し、税制上の措置や国からの補助などが必要と考えますが、御見解を承りたいと存じます。
また、総理も竹下大蔵大臣も、臨時行政調査会の答申を踏まえて育英制度の改正を行う旨御答弁を衆議院ではされております。臨調の答申、すなわち「外部資金の導入による有利子制度への転換、返還免除制度の廃止を進めて、育英奨学金の量的拡充を図る。」という指摘こそ、第二臨調発足に先立つこと一年、昭和五十五年の大蔵省の手に成る「歳出百科」に述べられている内容そのものではありませんか。大蔵省のこの発想は、専ら財政上の見地からの要請であり、教育的配慮に欠けるばかりではなく、非教育的措置と言わざるを得ないのであります。
ここで思い起こすのは、散大平正芳氏が総理、大蔵大臣在任中に、かつて御自分が大蔵省の文教担当主査時代に育英制度を手がけ、情熱を傾けて苦労してつくり上げたという経過もあって、奨学制度の本質を正しく理解し、財政当局のたび重なる強い要請にもかかわらず、有利子制の導入は頑として受け付けなかったということを仄聞いたしまして、私は立場を超えて深い共感を覚えたのでございます。制度創設の昭和十八年と言えば、ガダルカナル島放棄、アッツ島守備隊全滅等の戦局のもとに、巨額な軍事費にすべてが犠牲となっていた時代のことであります。この時代に、文部省や国民教育振興議員連盟の激しい折衝の様子が「大平正芳回想録」に載っておりますので、一部御報告をいたしたいと思います。
文部省の学芸課長劔木は、真夏の暑い午後、毎日のように大平のところまで出かけて行って説得するが、大平は、そりゃだめだ、そりゃだめだ、と言うばかりで、いっこうに納得せず、終業の五時がくると、椅子をクルッと回して机の上に足をあげ、引出しから酒のびんを取り出して、茶碗で一杯やりはじめる。たまりかねた劔木が、「私にもくださいよ」とせがんだこともあった。
大蔵省内でもいろいろの議論があったが、大平の筆によると、最後に植木主計局長が次のように言いたした。「“自分は、貧しい家に生まれて、到底上級学校に進学できる身分ではなかった。そこで、已むなく姓を変えて養子に行き、養家から一高、東大へと進学させて貰ったのだ。男が自分の姓を変えるということは辛いことだ。しかし、向学心をもっていても、貧しいため、心ならずも、こうした道を選ばなければならない人が多かろう。自分は、日本の後進青年のために、こうした辛酸をなめさすに忍びない。そこで自分は、非常な情熱を傾けて、この制度の発足に努力しているのだ。大平君、どうか自分の心情を汲みとって、出来るだけ多くの人に、この恩恵が均霑されるよう考えてもらいたい”」
植木局長は、目に涙を浮かべて、大平に協力を求めた。「それまで、数字と論理の一点張りで頑張っていた私の頑強な気持も、この言葉を聞いて雪が陽光に解けて行くように、解けて行った。私は植木主計局長の意を体して、当初の私の提案を大幅に是正し、給費を貸費に改めて、国会に提出した」。とございます。
こうして大日本育英会は昭和十八年十月十八日に発足することになったのであります。また、敗戦直後の日本の経済財政の危機的状況も今とは比べ物になりませんが、そのようなときも無利子制度の灯は、先人の高適な識見と情熱と努力の中で守られ続け、ともし続けられてきたのであります。
この歴史的経過から見ても、財政難だから有利子をという論理は通用いたしません。削れるべきところがほかにもあるではありませんか。逆に、財政事情が好転した場合には見直しを検討する必要があると思いますが、どのような展望を持っていらっしゃるか、お伺いいたします。
あわせて、総理、大蔵大臣の奨学制度に対する教育的基本的理念を重ねてお伺いいたします。
次に、高等教育への漸進的無償制の導入を規定した国際人権規約は、我が国を含めて既に六十六カ国が批准をしております。世界の大勢は高等教育の無償化、奨学金制度の拡充の方向へと向かっているのであります。この第十三条2の(b)及び(c)項について、当時、法的解釈は別として留保を解除する方向に努力との政府答弁が既にございます。中曽根総理及び森文相のお考えをお伺いいたします。
最後に、今回のような奨学制度の根本にかかわる法改正を行う場合に、当年度からの改正案を国会に提出した場合、国会の審議状況によっては新年度の奨学生の募集と採用に支障を来すおそれのあることは当然予測されたことであります。また、予測していなければなりません。もしこのことを予測しながら、逆に学生、生徒を人質にして法案の成立促進を意図したとするならば、政府、文部省は国会の審議権を制約もしくは軽視しようとするものであって、その責任は厳しく糾弾しなければなりません。
我が党は、憲法、教育基本法に基づく奨学制度確立の立場から、本改正案は慎重審議を尽くすべきものと考えますが、学生、生徒の修学に支障を来すことのないよう、法案の結論を得るまでは現行法によって奨学生の募集を行うことを強く要求してまいりました。そして各党の合意のもとに、文部省は不十分ながら現行法による措置をとらざるを得なかったのであります。そこで、このような法案の提出に当たっては、現行法による経過措置を明確にするか、もしくは法改正の実施年度を次年度からにする等の配慮を行うべきであると考えますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
以上をもちまして、私の日本社会党を代表しての質疑を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/10
-
011・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 粕谷議員にお答えいたします。
まず、有利子貸与制度の導入は教育の機会均等を妨げるものではないかという御質問でございますが、妨げるものとは考えておりません。
このたびの有利子貸与制度の創設は、育英奨学事業の量的拡充を図るためのものであり、そして教育の機会均等をさらに確実にする、そういう意味を持っていると思っております。したがいまして、今後ともこの改正の趣旨に沿って育英奨学事業の充実に努めてまいるつもりであります。
次に、学力基準で奨学生の選考を行うことは教育基本法の理念に反するものではないかという御質問でございますが、日本育英会は、教育の機会均等に加えて、有為な人材育成を目的としております。家庭の経済状況に加えて、学校における長期間の評価の記録である学業成績、人物、健康等を勘案して総合的に選考を行うことは適切でございます。
なお、この場合の学力基準は、著しく高い資質、能力を要求しているものではなく、憲法及び教育基本法の理念に反するものではないと考えております。
次に、私が衆議院で御答弁申し上げました後輩が育英資金の恩沢を拡大して受けられるように先輩は協力することが望ましいと、これを申し上げましたその真意は、返還金をできるだけ多くの後進育成の資金として循環運用して事業規模の拡大に資することが望ましい、こう考えたわけでございます。
今回の利子の付加ということは、これは社会人になった後、自分の事業収入あるいは給与収入等で得られたその一部を利子として返還していただくということでございます。それによって利子分だけ原資が拡大されるわけでございますから、それによって後進がさらに恩沢を受ける機会が多くなる、そういう効果を持つものと考えております。そういう意味におきまして教育の機会均等を確保する、さらに有効に活用される、そういう意味であると御理解願いたいのでございます。
次に、無利子貸与制度を根幹として今後も存続すべきではないか、また奨学制度に対する基本的理念いかん、そういう御質問でございますが、育英奨学事業は、教育の機会均等を確保するための基本的施策であると考えております。
今度の制度改正におきましても、無利子貸与制度を育英奨学事業の根幹として存続し、かつこれを改善しようとしておるものであります。改善によって量的拡充を図る、そういうために新たに長期低利の有利子貸与制度を創設する、こういう意味でございまして、今後とも育英奨学事業の充実に努めてまいりたいと思っております。
国際人権規約第十三条の留保解除について御質問をいただきました。
これらの条項に対しまして、批准に際しましては慎重な検討の結果、国内の現情等にかんがみ留保を付したものでございます。現時点ではこれらの留保の撤回は考慮しておりませんが、今後、諸般の動向を注目して慎重に検討し続けたいと思っております。
次に、法律の施行を昭和六十年度からにする等、国会の審議権を制約しないように配慮すべきではないかという御質問でございますが、このたびの制度改正に当たりましては、学生生活に深い関係を有するものであることにかんがみまして、本年度からこれを実施したい、そう考えて、他の予算関係法案と同様に所定の手続を経て国会に提出したものでございまして、国会の審議権を制約するものではございません。
なお、本法案の審議中も、奨学金の交付を期待している学生、生徒に対しましては不利益を及ぼさないように、でき得る限りの措置を講じておるところでございます。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/11
-
012・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 粕谷さんにお答えを申し上げます。
御質問の第一点は、有利子貸与制度の導入は奨学制度の基本理念に逆行し、教育の機会均等を妨げるものではないかとのお尋ねでございますが、日本育英会の育英奨学事業は、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与する重要な施策でございまして、逐年充実に努めてきたところでございます。
今回の日本育英会法案は、最近における高等教育等の普及状況を踏まえまして、社会経済情勢の変化に対応して育英奨学事業の量的拡充を図るため、長期低利の有利子貸与制度を創設することとしたものでございまして、教育の機会均等の確保に寄与するものであると考えております。
育英奨学事業につきましては、教育の機会均等を図る観点から、今後とも制度改正の趣旨に沿ってその充実に努めてまいる所存でございます。
御質問の第二点は、学力基準や家計基準により奨学生の選考を行うことは是正すべきではないかとのお尋ねでございますが、国の予算の制約の中で学資貸与事業を適切に実施しようとする場合、一定の学力基準や家計基準を満たすことを要件とすることはやむを得ないと考えております。
また、能力をどのようにして判定するかは難しい問題でございますが、学校における長期間にわたる評価の記録である学業成績を判定の重要な資料とすることは適当なものであると考えております。日本育英会におきましては、学力及び家計の状況に加え、面接その他の資料に基つぎ、人物等につきましても十分配慮の上採用者を決定いたしておるものでございます。
家計収入の基準につきましては、昭和五十九年度におきまして、消費者物価の上昇等を勘案して全般的に改定するとともに、特に給与所得世帯につきましては、その生活実態を踏まえて給与所得控除限度額を引き上げることにより、不公平感を生じさせないように措置を講じております。
御質問の第三点は、有利子貸与の利率は今後とも低利を維持していくのかどうかとのお尋ねでございますが、今回の有利子貸与制度の創設に当たりまして、貸与利率は、在学中は無利子として、卒業後においてもできるだけ低利となるように配慮をいたし、無利子貸与と同額の基本的な貸与額については年利三%といたしました。
育英奨学事業は、国としての実施しなければならない基本的な教育施策でございまして、今後とも有利子貸与制度の貸与利率はできるだけ低利とする必要があると考えております。
御質問の第四点は、育英奨学法人や地方公共団体の行う奨学事業等に対する税制上の措置や国からの補助が必要ではないかとのお尋ねでございますが、公益法人等の育英奨学事業は、それぞれ創設の目的に従って特色ある事業を行っているところに大きな意義がございまして、国の施策と公益法人等の活動が相互に補いながら発展していくことが重要であると考えております。
公益法人等の育英奨学事業に対しまして、新たに国の補助を行うことは困難であると考えておりますが、税制上の措置につきましては、寄附金の受け入れ等に優遇措置が講ぜられているところであり、これを活用して個人や企業からの寄附を促進し、事業の充実を図るように従来から指導いたしているところであり、今後とも公益法人等の育英奨学事業の育成に努めてまいりたいと存じております。
御質問の第五点は、無利子貸与制度を事業の根幹として存続すべきではないかとのお尋ねでございますが、育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないと考えており、今回の制度改正においても、無利子貸与制度については日本育英会の育英奨学事業の根幹として存続させ、改善を行うとともに、これに加えて新たに低利の有利子貸与制度を創設したものでございます。
今後とも無利子貸与制度を事業の根幹として存続させ、改善するなど、今回の制度改正の趣旨に沿って育英奨学事業の充実に努めてまいりたいと存じます。
御質問の第六点は、国際人権規約第十二条二項(b)及び(c)項の留保を解除し、速やかに実行すべきではないかとのお尋ねでございますが、国際人権規約第十三条二項(b)及び(c)項の規定は、後期中等教育及び高等教育の機会の確保のためにとられる手段の一つとして締約国が無償化を漸進的に実現することを求めているものでございます。
後期中等教育及び高等教育につきましては、私立学校の占める割合の大きい我が国におきましては、私立学校を含めて無償化を図ることは、我が国の後期中等教育及び高等教育のあり方の根本にかかわることでございまして、現時点におきましては、従来の方針を変更して漸進的にせよ無償化の方針をとることは適当でないので留保しておりますが、今後諸般の動向を見て慎重に検討いたしたいと存じます。
なお、我が国では、本規定の趣旨とする後期中等教育及び高等教育の機会の確保のため、かねてから私学助成、育英奨学事業等の充実を図っているところでございまして、今後とも育英奨学事業等の充実に努力してまいりたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/12
-
013・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は、利率、税制等であります。
まず、有利子貸与の貸与利率につきましては、金融財政事情を勘案いたしますとともに、できるだけ低利なものとするように配慮して、無利子貸与と同額の基本的な貸与額については年利三%としたところでございます。これは文部大臣からもお答えが既にございました。
今後、貸与利率の取り扱いにつきましては、そのときの金融財政事情等を総合的に勘案して対応すべきものであるというふうに考えております。
それから次の、税制等の問題でございますが、文部大臣からもお答えがございました。
育英奨学事業を行います公益法人や奨学基金を造成する学校法人に対します寄附金につきましては、既に個人の場合には寄附金控除の対象として、また法人の場合においては通常の損金算入限度額を超えて損金算入を認める措置を講じております。税制上、所要の配慮を現に行っておるということであります。
国からの補助ということになりますと、これまた文部大臣からもお答えがございましたが、現下の厳しい財政事情のもとに新たな補助金を創設するということは困難であるとお答えせざるを得ません。
それから次は、財政事情が好転した場合等の問題でございます。これも文部大臣からもお触れになりました。
今回の改正は、臨調答申を踏まえまして、育英奨学事業のあり方を再検討して、厳しい財政事情のもとで育英奨学事業の量的拡大に対処するという観点から、有利子貸与制度を恒久的なものとして導入したということの基本的な考え方でございます。しかし、見直しということは、あらゆる制度は時代の変化に応じて絶えず見直しを必要とするという考えは当然のことであろうと思っております。
それから、大蔵大臣として奨学制度に対する基本的な理念を問う、こういう最後のお尋ねでありました。
国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与するため、育英奨学制度は必要不可欠であるという基本認識は私にもございます。このような考え方に立ちながら、今後育英奨学事業の量的拡大が必要と思われますが、厳しい財政事情のもとでこれに対処するために、まさに今回有利子制度の導入を図ってきたということになろうかと思われます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/13
-
014・木村睦男
○議長(木村睦男君) 高木健太郎君。
〔高木健太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/14
-
015・高木健太郎
○高木健太郎君 私は、公明党・国民会議を代表し、かつ国民会議の立場から、ただいま趣旨説明のありました日本育英会法案につきまして、総理並びに文部大臣に対して若干の質問をいたします。
まず、今回の改正において貸与の一部に新しく有利子制を導入しながら、育英会法の改善と言われるのはどのような理由によるものか、御説明願いたい。なるほど貸与学生数は増加され、一人当たりの貸与金はふやされました。しかし、特別貸与制はなくなり、一本になった一般貸与制の総額は減額され、ふやされたものは有利子制であります。これで改善と言われるのでしょうか。
育英会の貸与は、通称育英奨学金と言われています。外国のスカラシップと同様、これには優秀なる学生への褒賞の意味が含まれ、元来給付をもって原則とするものであります。事実、欧米主要先進国においては、国の財政の窮迫にもかかわらず、返還を求めない給費制を採用し続けており、一部貸与制を加味しているのはアメリカ、西ドイツのみでございます。改善と言うならば、貸与制の一部を改めて、かえって給費制にすべきではなかったのですか。総額を増して一見改善に見せつつ、一方では有利子制を導入するというのは、失礼ながら羊頭狗肉、朝三暮四の策と言われてもやむを得ないのではないでしょうか。いかがでございますか。
国家を親とすれば、学生は子供に相当するものであり、親はその子を育てる義務があります。親が子供に利子をつけて金を貸すというようにさえ感ぜられます。このような形でなされた行為に対して、子供が親に感謝、報恩の気持ちを抱き、国を愛するという感情がわくものでしょうか。なるほど利率は安い。だが、安ければなおさらこれをさっぱりと切るべきではありませんか。国の財政を預かる政府としては、制度の永続性を考慮してのやむを得ざる処置であると言われるのですか。しかし、国の将来を思えばこそ、たとえ現在いかに苦しくとも一律マイナスシーリングを排して、育英会の本来の使命達成に必要な資金に充てるべきではありませんか。この際、総理並びに文部大臣の再考を強く求めてやまないものであります。
有利子制導入の理由としては、国の財政窮迫のほかに、各家庭の経済的好転を考えておられるのではないでしょうか。確かに現在多くの家庭においては、塾や予備校志向が一般であります。これらは一見家庭の豊かさのあらわれと見えますが、現実は各家庭ぎりぎりの収入の中から支払われている教育費であり、そうしなければ将来人並みに生きていけない彼らの子弟に対する唯一の親の遺産としての必死の思いの教育費であります。一人っ子家庭の増加はこれを端的に物語っており、人口構成にまでひずみを与えています。この事実は日本の将来にとってまことに憂慮すべきことであり、迂遠に見えて重大な問題かと思いますが、総理はこれをどのようにお考えでございますか。
次に、医学部基礎教官の不足について伺います。
医学部の臨床研修生には国家公務員の身分が与えられ、医学部大学院生への貸与額の二倍に近い無償の給与が支給されております。その結果、基礎医学を学ぶ者は少なくなり、後継者の獲得が極めて困難となり、辛うじて医学部以外の他学部の出身者によって補充されているというありさまであります。医学の本質を考えて早急に何らかの対策を講ずべきであると考えますが、文部大臣の御所見を承りたい。
さらに問題なのは、理学部等の基礎科学の研究者についてであります。
貸与を受けて大学院を卒業しても、就職できない者が多く、全国で既に五千名のオーバードクターがいると言われています。彼らにとって貸与金の返済はその肩に重くかかり、その上、そのころは父の定年退職、自分自身の結婚期と重なり、やむを得ず本務の研究室を去り、不本意なアルバイトを強いられております。このことは国家にとって大きい損失であります。「仏つくって魂入れず」にならぬために、彼らに対しては返済の時期の延期を図るというような処置を講ずるべきではないでしょうか。そうすることが育英会本来の目的達成に沿うものであると考えますが、文部大臣はいかがお考えですか。
最後に、学生アルバイトについて私見を申し上げ、所感をお伺いしたい。
学生の生活費のうち、最近は修学費は減少し、住居費、レジャー貧が増大する傾向にあることは識者の指摘するところであります。しかもアルバイトは逐次増加の傾向にあり、アルバイトに要する労働時間は勉学の時間を上回るとも言われます。学生として本末転倒であり、貸与金の有利子化もその辺を勘案されてのことだとも聞いております。しかし、私は、アルバイトについて別の視点を指摘して再考を求めるものであります。
現在の日本の教育状況を見ますと、中学、高校においてほとんど進路が確定されていると言っても過言ではないと思います。家庭の経済状況が彼らの成績に大きく影響することも否むことはできますまい。高校において教育環境に恵まれなかった子弟は、偏差値は悪く、たとえ大学に入学しても育英資金の受給の機会を失う公算は大であります。彼らはいわば素質以外の理由による育英会落ちこぼれ組に入ることになりましょう。アルバイトに走らざるを得ない動機は実はここにありまして、アルバイト増大イコール怠慢、イコール大学レジャーセンター化との思考は余りにも短絡的であると思います。
また、実力よりも学歴が物を言う日本の学歴社会であってみれば、大学でのマス教育、一方的教育伝達の場におるよりも、実社会における生き生きとした実地研修に加えて報酬が受けられ、旧制高校におけるがごとく学生生活をエンジョイできるとしたら、アルバイトをとがめることができますか。利にさとくならざるを得ない現在の社会においては、育英会の魅力はますます薄れ、彼らがアルバイトに走ることはむしろ賢明なやむを得ない選択と言えないでしょうか。しかも、彼らなりに社会の一員として将来必要な任務を果たすことは明らかであります。
一方、これとは対蹠的に、卒後引き続き官途についた者に対しては返還が免除されると聞いております。臨調の意見をとらず、調査研究会に従った勇気には敬思を表しますが、公務員のみが国家に有為な人材と受け取られかねないうらみを残します。
人間において、体を制御する頭脳は確かに有為です。しかし、腎臓も生命に不可欠な器官であり、肝臓がなくては生存ができないことは御存じのとおりでありまして、ともに肝腎な器官であります。
もしも、彼らがアルバイトをし、レジャーを楽しむがゆえに生活に余裕ありとし、有利子制導入の根拠になったのであれば、それは彼らの立場の無理解によるものであり、余りにも単純な弱者切り捨ての論理であり、私は反対の立場をとらざるを得ません。
以上述べました理由から、私は有利子制導入に反対するものであり、むしろ奨学金本来の原則である給費制の導入を図るべきだと主張するものであります。
総理並びに文部大臣の御所感を伺って私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/15
-
016・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 高木議員にお答えいたします。
まず、育英制度の改善というのは何をもって改善と言うかという御質問でございますが、本制度の改革は、諸外国の実態等にも留意の上に、無利子貸与制度の整備を図り、また育英事業の量的拡充を図っております。こういうようなやり方によりまして、なおさらに今後事業の一層の充実を図ってまいりたいと思っておるわけでございます。
家庭教育費負担の増大が教育に与える影響はどうかという御質問でございますが、公教育の充実に努め、教育費の父兄負担の軽減を図ることは極めて大切であると考えております。教育は国政の基本でありますので、厳しい財政状況を踏まえつつも、所要の文教予算の確保につきましては今後とも努力してまいります。
なお、教育費の増高と人口構成の変化との関係を即断することは極めて困難でございます。
次に、アルバイトとの関係でございますが、アルバイトというものによって弱者切り捨ての口実にしてはならないという御趣旨であると思います。
学生がアルバイトに従事する動機は、それぞれの事情や考え方にもよりますが、学歴社会とは直接関係するものではないと思います。今回の有利子貸与制度の創設は、学生アルバイトの実態とは直接結びつくものではございません。アルバイトをやっているがゆえに収入があるから、それでこの育英制度を緩めていいなどとは毛頭考えておらない、このことを申し上げる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/16
-
017・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 高木先生にお答えを申し上げます。
御質問の第一点は、育英奨学制度の改善は何をもって改善と言うのかとのお尋ねでございますが、今回の制度改正は、最近におきます高等教育等の普及状況や社会経済情勢の変化に対応し、日本育英会の育英奨学事業の一層の充実を図るために行うものでございます。
すなわち、無利子貸与制度につきましては、日本育英会の事業の根幹として存続させ、一般貸与を特別貸与に吸収する形で全体の貸与月額の引き上げを行うとともに、高校から大学院までの学校について一定の増額を行うことといたしております。また、高等教育の機会均等を確保するため、育英奨学事業の量的拡充を図ることとし、無利子貸与制度に加えて、新たに財政投融資資金の導入による長期低利の有利子貸与制度を創設することといたしたものでございます。
御質問の第二点は、基礎医学教育研究の後継者に他学部出身者がふえていることに対して何らかの対策を講じるべきであると思うがとのお尋ねでございますが、他学部出身者がかなりの部分を占めていることは御指摘のとおりでございます。その背景には、基礎医学研究の特性等種々の要因があると考えられます。また、医学部の基礎系の研究者の一部を他学部出身者が占めることについては、一概に問題があるとは言い切れない面もございます。文部省といたしましては、従来から基礎医学の振興は重要な課題であると考えておりまして、今後とも関係者の意見を聞きつつ、長期的観点から研究環境の整備等に配慮してまいりたいと存じます。
御質問の第三点は、オーバードクターにかかわる奨学金の返還の時期を延期すべきではないかとのお尋ねでございますが、日本育英会の奨学金は、原則として卒業後直ちに返還を開始しなければならないことになっております。しかしながら、例外的にはオーバードクターなど真にやむを得ない事由により奨学金を返還することが困難である場合には、特別にその返還の期限を最長五年間猶予することができることといたしております。
なお、この返還期限をさらに延期することは、現下の国の財政事情等を勘案すれば、極めて困難であると申し上げざるを得ません。
御質問の第四点は、学生がアルバイトを行い、レジャーを楽しむがゆえに有利子貸与制度を創設するというのなら、弱者切り捨ての論理ではないかとのお尋ねでございますが、学生のアルバイトの実態につきましては、文部省としても学生生活調査等により把握をいたしておるところでございます。もちろん、学生がアルバイトに従事する動機は個々の学生の事情や考え方によるところでございますが、アルバイトに従事したことの経験を有する学生は八割に及んでおり、御指摘のような実態にあるかどうかは一概には申し上げることはできないと思います。
なお、学生アルバイトにつきましては、学校当局等の適切な配慮のもとに、勉学に影響しない範囲で行われているものと考えております。
今回の育英奨学制度の改善における有利子貸与制度の創設は、育英奨学事業の量的拡大を図り、教育の機会均等に寄与しようとするものでございまして、学生がアルバイトをし、レジャーを楽しむがゆえに有利子貸与制度を創設するといった考え方に立つものではございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/17
-
018・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/18
-
019・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。科学技術特別委員長高木健太郎君。
━━━━━━━━━━━━━
〔高木健太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/19
-
020・高木健太郎
○高木健太郎君 ただいま議題となりました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案につきまして、科学技術特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、行政の各般にわたりその簡素化及び効率化を進める見地から、日本原子力船研究開発事業団を日本原子力研究所と統合するため同事業団を解散し、その権利義務の一切を日本原子力研究所に承継させるとともに、同研究所の業務として、原子力船の開発のために必要な研究を行うこと等を規定するなど所要の規定の整備を行おうとするものであります。
委員会におきましては、原子力船「むつ」の存廃問題と原船事業団の原研への統合理由、統合後の日本原子力研究所の研究開発体制、今後の舶用原子炉の研究のあり方、方法、関根浜新港の急設に伴う漁業補償、土地買収問題等広範にわたり熱心な質疑が行われ、また六月二十二日には、原研東海研究所及び動燃事業団東海事業所に委員派遣を行いましたが、その詳細は会議録に譲ります。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して本岡理事、日本共産党を代表して佐藤委員よりそれぞれ反対、また、自由民主党・自由国民会議を代表して古賀理事、公明党・国民会議を代表して塩出理事よりそれぞれ賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、原子力船の開発のために必要な研究のあり方等に関する事項等四項目にわたる附帯決議案が提出され、賛成多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/20
-
021・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/21
-
022・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/22
-
023・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第二 農業振興地域の整備に関する法律の一部を改正する法律案
日程第三 土地改良法の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長谷川寛三君。
━━━━━━━━━━━━━
〔谷川寛三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/23
-
024・谷川寛三
○谷川寛三君 ただいま議題となりました両法律案について、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
まず、農振法改正案は、農業構造の改善の促進に特に留意して、農業の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、農業振興地域整備基本方針等の内容の整備拡充、交換分合制度の拡充及び農業用施設の適切な配置等に関する協定制度の創設等の措置を講じようとするものであります。
次に、土地改良法改正案は、土地改良事業の施行を通ずる農用地と非農用地の整序、農業用用排水の汚濁の防止による優良農用地の保全を図るため、換地制度における非農用地創出手法の改善、農業用排水路等の管理に関する土地改良区の協議請求制度の拡充、農業集落排水施設整備事業の実施手続に関する規定を整備するとともに、土地改良事業の効率的な推進を図るため、一定の土地改良事業に係る同意徴集手続の簡素化等を行うほか、土地改良区の総代会設置要件の緩和等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては両法律案を一括して議題とし、六月二十二日に静岡県下で現地調査を行うとともに、六月二十八日には四名の参考人を招いて、その意見を聴取いたしました。
質疑の主な内容は、農業基本法制定以降における構造政策の展開過程とその評価、耕種農業における生産性向上の目標、優良農用地確保のための方策、農業従事者の就業安定化への取り組み方、協定制度創設の理由と今後の運用方針、第三次土地改良長期計画の全体像及び計画事業量の達成見通し、土地改良区の行う農業集落排水整備事業と地方自治体との関係、都道府県知事による裁定制度の具体的運用方針、換地制度の改正による非農用地生み出しの効果等についてでありますが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して下田委員から両法律案に反対の旨の討論があり、順次採決の結果、両法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、農振法改正案に対しましては、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会の各会派共同提案による七項目の附帯決議を多数をもって行いました。また、土地改良法改正案に対しましては、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、参議院の会の各会派共同提案による六項目の附帯決議を全会一致をもって行いました。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/24
-
025・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより両案を一括して採決いたします。
両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/25
-
026・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、両案は可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/26
-
027・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第四 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長石本茂君。
━━━━━━━━━━━━━
〔石本茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/27
-
028・石本茂
○石本茂君 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法律案の内容は、最近における経済社会情勢の変化に伴い雇用構造が著しく変化していること等にかんがみ、雇用保険制度の効率的な運営を進める等の見地から、基本手当の日額の引き上げ、賃金日額の算定方法の変更、所定給付日数の決定基準としての被保険者であった期間の追加、特定不況業種離職者等に対する個別延長給付制度の導入、高年齢者に対する失業した場合の給付金制度及び早期に再就職した者に対する手当制度の創設等、保険給付の内容を整備するとともに、雇用保険の被保険者の範囲の合理化及び六十五歳以上の高年齢者の任意加入制度を導入すること等であります。
また、船員保険制度失業部門についても、雇用保険と同様の趣旨の改正を行うほか、保険料率の引き上げを図っております。
委員会におきましては、雇用政策及び雇用保険の長期展望、雇用保険における保険料及び失業給付額算定方法のあり方、中高年齢者を中心とした雇用就業対策等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表し佐々木理事より、施行期日を一カ月繰り下げ八月一日に改めることなどを内容とする修正案が提出されました。
次いで討論に入りましたところ、日本社会党、日本共産党よりそれぞれ原案並びに修正案に反対、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議、民社党・国民連合よりそれぞれ原案並びに修正案に賛成する旨の意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本法律案は多数をもって修正すべきものと決しました。
なお、本法律案に対し、雇用保険制度の適切な運営による財政の確立、保険料率の引き上げの回避、必要な国庫負担の確保などを内容とする附帯決議が全会一致をもって付されております。
以上、御報告いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/28
-
029・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/29
-
030・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02019840706/30
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。