1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月十一日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第二十一号
昭和五十九年七月十一日
午前十時開議
第一 昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算、
昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算、昭和
五十六年度国税収納金整理資金受払計算書、
昭和五十六年度政府関係機関決算書
第二 昭和五十六年度国有財産増減及び現在額
総計算書
第三 昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総
計算書
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○本日の会議に付した案件
一、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
風俗営業等取締法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/1
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002・木村睦男
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。田川国務大臣。
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/2
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003・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 風俗営業等取締法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
現行風俗営業等取締法は、キャバレー、料理店、ダンスホール、パチンコ屋、マージャン屋等を都道府県公安委員会の許可に係らしめているほか、深夜飲食店、個室付浴場業、ストリップ劇場及びモーテル営業についても一定の事項について規制を行っております。
しかしながら、最近、同法の対象となっている営業のほかに、あからさまに性を売り物にした営業等善良の風俗及び少年の健全な育成の上から問題の多い営業が増加しておりまして、現行法上このような営業が野放しとなっていることが、風俗環境を害しているだけでなく、少年非行が昭和五十五年以来四年連続戦後最悪の記録を更新している大きな原因の一つとなっていると考えられます。
この法律案は、このような少年非行の増大と風俗環境の変化という実情にかんがみ、題名の変更及び目的規定の新設、風俗営業に関する規定の整備、風俗関連営業に関する規定の整備、深夜における飲食店営業の規制等に関する規定の整備等を行うことをその内容とするものであります。
以下、この法律案の内容の概略を御説明申し上げます。
第一は、題名の変更及び目的規定の新設であります。
これは、法律の題名を風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に改め、この法律の目的を「風俗営業及び風俗関連営業等に関し、善良の風俗の保持及び風俗環境の浄化並びに少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止のための措置を講ずるとともに、風俗営業の業務の適正化を促進する等の措置を講ずること」と明定するものであります。
第二は、風俗営業に関する規定の整備であります。
これは、許可対象営業に新たにゲームセンター等を加えるとともに、暴力団員、覚せい剤中毒者等を欠格事由とする等風俗営業の許可に関する規定を整備し、また、遵守事項及び禁止行為に関する規定、営業所の管理者についての規定等を整備し、パチンコ等の遊技機の認定、検定等に関する規定を整備するほか、行政処分等に関する規定を整備し、遵守事項違反に対しては指示及び行政処分で対処することとするものであります。
第三は、風俗関連営業に関する規定の整備であります。
これは、個室付浴場業、のぞき劇場、ラブホテル、アダルトショップ等を、風俗関連営業として届け出制に係らしめるとともに、一定の地域における営業を禁止し、また、年少者の立ち入り及び接客業務従事の禁止、広告宣伝の規制等遵守事項及び禁止行為に関する規定を整備するほか、行政処分等に関する規定を整備し、一定の違反事由に該当する営業者に対しては営業の廃止を命ずることができることとするものであります。
第四は、深夜における飲食店営業の規制に関する規定の整備であります。
これは、深夜飲食店のうちバー、酒場等の酒類提供飲食店を届け出制に係らしめるとともに、飲食店営業について、午後十時以降の年少者の立ち入り及び接客業務従事の規制等遵守事項及び禁止行為に関する規定を整備し、また、指示及び行政処分に関する規定を整備するものであります。
第五は、少年指導委員及び風俗環境浄化協会に関する規定の新設であります。
これは、少年の補導等の活動に民間ボランティアの活力を導入し、これを促進するために少年指導委員に関する規定を新設し、また、風俗環境に関する苦情の処理や法律違反防止のための啓発活動、講習、調査の委託を行うなどして広く民間における浄化活動を促進するため、風俗環境浄化協会に関する規定を新設するものであります。
以上の措置に伴い、警察職員の立ち入りに関する規定の整備、聴聞に関する規定の整備、手数料に関する規定の整備、罰則の整備等所要の規定の整備を行うこととしております。
この法律は、公布の日から六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、施行の際現に風俗営業者である者は、改正後の規定による許可を受けて風俗営業を営んでいる者とみなすこととする等所要の経過措置を設けております。
なお、本法律案につきましては、衆議院において次の修正が行われております。
その一は、ゲームセンター等へ年少者を客として立ち入らせてはならない時間についてでありますが、内閣提出法律案では午後十時以降とされていたものを、都道府県条例によって年齢別にもそれ以前の時を定めることもできることとするよう修正されております。
その二は、管理者に関する規定についてでありますが、管理者の助言の対象は風俗営業者及びその代理人であり、指導の対象は使用人その他の従業者であることを明確にするとともに、内閣提出法律案において規定されていた解任命令にかわって、解任勧告を行うことができることとするよう修正されております。
その三は、警察職員の立ち入りに関する規定についてでありますが、無用の誤解を避けるため、原則として現行法の規定に倣って規定を整備することとするよう修正されております。以上が、この風俗営業等取締法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/3
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004・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。志苫裕君。
〔志苫裕君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/4
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005・志苫裕
○志苫裕君 私は、日本社会党を代表して、ただいまの趣旨説明に関し若干の質問を行います。
「「警察官僚」が日本を制圧する」というショッキングなレポートが本になっておりますが、そこでは、かつて警察国家と言われた時代に地方を統治し、警察権も握った血統を持つ官僚集団の内務省復活のもくろみが追跡されております。名づけて新内務官僚。彼らには、内務省解体によってつくられた戦後の日本が欠陥だらけで、およそ行政の統合力が欠けているように映る。一方、民主警察のあかしとしてその職務を限定されたはずの警察は、いつの間にか総合治安対策を唱えて国の隅々にまで目を光らすほどにはみ出しております。これらの新内務官僚たちは、明治政府以来初めての内務省出身の首相の登場、しかも戦後政治の総決算を叫ぶ首相の登場に水を得たように泳いでいるというのであります。このたびの風営法の全面改正も、その一環として見れば合点がいく。
そこで、この際、総理と公安委員長に対し、警察制度の基本をただしておきたい。
現行警察制度は、かつての警察国家が人権に対する非道な圧迫によって個人の尊厳を堕落させたことの歴史的教訓を踏まえ、人間の尊厳と自由の理想を保障する民主的理念に立脚したものであること、そして、警察が広く行政の各分野に関与し過ぎたことの反省から、その職務を司法警察を中心に厳しく限定されていることについて確認を求めます。私は、警察がともすれば行政の分野を広く取り込もうとする傾向のあることについて、この際強く警告をしておきます。
さて、風営法は新しい法律に衣がえしようとしておりますが、かつての警察命令を新しい警察の責務との関連でごく一部を法律に取り込んだのが始まりで、当初は売春、賭博の風俗犯罪の予防を目的とすると解されていたのでありますが、その後数次の改正を経るうちに、風俗営業でない営業も取り込み、警察に許可権のない営業にも規制を及ぼすようになりました。言うならば、風俗営業の概念が公安委員会の管理する警察権の外へ広がったのであります。当然のことながら、風俗営業でない営業にはそれぞれの適用法律があり、立法論としては、風俗営業法の規定をその営業固有の法律に移して、警察の行政範囲を限定すべきだと考えますが、今度の改正はあべこべに、えたいの知れぬ「関連営業」という領域不明のものまで警察が取り込んでおります。いかなる理由によるものか、また、この改正によって従来の風俗営業の概念は変わるのでありましょうか、お伺いいたします。
各論に入る前にもう一つ見解を求めるが、それは、性や娯楽に対する取り締まりの観点であります。
性は卑しむべきものとの建前論で規制が行われますが、民衆のレベルでは本音で実におおらかに論じられております。最近は価値観が多様になって、その傾向は進んでおると思います。娯楽もまた人の本性にかかわるもので、管理社会のストレス解消、人間性の回復に有用であります。こうしてみると、風俗事案に対する取り締まりの規範と社会の現実との規範には大きな開きがあって、取り締まりが強化されるほどに建前と本音の使い分けが進行し、ゆがんだものになってまいります。警察の摘発はしょせん氷山の一角でありますから、警察の恣意が働き、癒着が生じて、国民の遵法意識は逆に損なわれる危険が生まれます。
そこで、規制、規範の基準はどこに設けるのか。性や娯楽は建前論で抑圧できるものではなく、また違反を取り締まる能力もないのに管理の綱の目だけ広げるのはいかがなものでしょう。実体法の問題として売春などは現行法で十分対応できるのでありますから、その効果を優先すべきだとも思うのであります。性や娯楽に公共の福祉が優先するという思想は時に危険だという見解について、どのように思いますか。私は、性風俗の紊乱を容認するのではないが、それに籍口する警察権の私生活への介入を懸念をする立場であります。
今回の法案は、少年の非行の増大が性風俗の不健全性に由来することを前提といたしております。しかし、そのような因果関係を統計上に認めることは困難であります。昭和五十八年版警察白書によれば、少年非行が戦後三回目の上昇期にあるのは主要刑法犯を犯した触法少年で、その内訳は凶悪犯や粗暴犯であります。不良行為についてみても校内暴力などで、今回の提案にかかわるような好奇心型非行の中では薬物乱用などが増大をしておるのであって、端的な性非行はほかに比べて相対的に減少していることが認められます。したがって、提案が少年の非行原因を風俗に求めているのは誤りであり、作為的な説明はかえって本質を見失わせるものであります。少年の非行原因は決して短絡的なものではなく、全社会的なものであると思います。
青少年の保護は決して権力の拡大の口実であってはならず、そもそも少年の健全育成は国家権力による一方的、画一的規制がふさわしくない分野でありまして、地域の特性、自主性が尊重されるべきであります。一体、少年の健全育成は警察の責務に属するものでありますか。消極目的を持つ警察が、少年の福祉増進という積極目的を持つことは妥当ではないというのが通説でありましょう。
改正案は、少年指導委員制度を設けて補導することにいたしておりますが、現在少年の補導を規定した法律は存在しません。警察庁の少年警察活動要綱にその規定はありますが、これは内部通達にすぎない。警察はこの要綱に基づいて広範に少年補導を行っているのでありますけれども、そのあり方が今日重大な問題となっているのだから、今必要なのは、補導の限界を法律的に解明し、補導という名の警察権から少年の人権を守ることであります。
少年警察活動要綱二十条によれば、補導の内容は、発見、捜査、通報、助言など無制限であります。繰り返して聞くが、いかなる権限によるものか。もし犯罪の予防というのであれば、かつて大問題になった警職法の改正で少年の保護という項目をあえて掲げたのはなぜか。また、犯罪の予防と非行の予防は同義語ではなく、法は非行の予防まで職責に含めてはおらない。本来治安維持を任務とする警察が、少年の福祉という権限外の目標を掲げて少年の私生活に目を配らすこと自体、決してプラスにはならないし、少年法、児童福祉法の上からも問題であります。
ところで、今回の改正案によると、補導の権限は直接に警察のそれではなく、指導委員のものであること、このことは逆に言えば、警察による補導の問題性を意味するものであって、警察は間接的な形で法の認知を図ったということになりましょう。公安委員会が委嘱した指導委員が法律上できる行為を警察官がやれないことはあるまいという倫理がやがてまかり通る、断じて承服できません。少年指導委員は警察権の及ばない一般の食堂にまで権限が及ぶのであって、行き過ぎとしか言いようがありません。この機会に、少年の福祉が警察権の強制作用になじむものかどうか、それぞれの所管の対応も含めて、文部大臣、総務庁長官の意見も伺いたい。
警察は少年非行が発生する以前に規制する方針のようだが、こうした警察の積極性に反比例するように、教育、福祉面での後退が目立つ。この点も両大臣の所見を伺いたい。
こうした状況は、学校や地域での教育力を高める努力を疎外し、警察の指導にお任せしましょうという風潮を生み、広範な市民団体が反対する少年法を先取りするものであって容認はできません。少年の育成は断じて警察作用で行うものであってはならないことをここに改めて強調します。いろいろと主張しましたが、ここで総理大臣から今日の青少年問題についてまとまった所見を例えれば幸いであります。
改正法案の問題点は実に多い。トルコぶろを届け出させることで事実上の管理売春を容認し、本院における野党一致の要請を拒んだのはなぜか。第三十七条の立ち入り権について衆院修正が行われましたが、その実質が変更されたのか。原案によると、現行法であいまいな立ち入り規定を明確にしたにすぎないというのでありますが、だとすれば、帳簿その他の検査や質問権に変化はないということになるが、この点はどうか。立ち入りは行政調査のために認められるにすぎないのだから、行政裁量は限定すべきであります。また公安委員会の指示権も恣意的運用にわたるので、あらかじめ予見できない指示内容で規制されるのは不当でありましょう。環境浄化協会とは、一体これは何者です。少年指導委員同様、法律をもって警察の手先をつくることもあるまい。
以上、個別的な幾つかの点をただしましたが、この改正案は、届け出に始まって、立ち入り権の強化や指示権その他を通じて風俗営業の全般を警察の監視下に置き、大幅な裁量権のもとに管理しようという色彩が強い。それはまた法の目的とも異質であります。この改正の結果、風俗営業の全般が警察というお釈迦様の手のひらで動く孫悟空になりましょう。
警察が全面的に管理し、管理者、少年指導委員、環境浄化委員などのおかっぴきがお上の十手を預かって津々浦々に配置される。このような生殺与奪の権限を握られたところで健全な風俗産業は発展をしません。風俗犯が内向し、警察官と一部のお目こぼしにあずかる業者との癒着が助長されるでありましょうことが十分懸念をされます。したがって、この際、本案を撤回し、セックス産業の強い規制はもちろん、風俗営業の見直しも含めて新たな観点を入れた法案を再提出すべきであります。まじめな業界、弁護士会、さらには売春問題に取り組む多くの婦人団体等の反対に素直に耳を傾けるべきであります。
公安委員長、今警察がやることは非行少年の対策ではなく、非行警官の対策であります。風俗営業の適正化もさることながら、警察管理の適正化が求められます。西にグリコ、東に金塊が未解決のまま、相次ぐ警官の不祥事は警察の信用を根底から揺さぶっておるではありませんか。まさに我が罪は我が前にある状態でありまして、そのことの解決が先決であります。
私は、最後に、警察官の人権感覚にこの際触れておきたい。警察社会では警察官の人権は軽んじられているようでありますが、そういう社会で人権を無視されている警察官の人権感覚で、民衆の人権を推しはかることはまことに恐しい。でなければこのような法案は出てこない。強く撤回を求めて質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/5
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006・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 志苫議員にお答えをいたします。
まず、風俗営業法の改正は行政警察を拡大することによって行うことは好ましくない、警察の任務とは何であるか、これが第一問でございます。
警察の任務、目的は警察法に明定されておりますとおり、個人の自由と人権の擁護、公共の安全と秩序の保持を目的とすることでありまして、今回の風営法の改正も当然この範囲に含まれるものでございます。もちろん、日本国憲法の保障する個人の権利と自由の干渉にわたる等のことがあってはならないのは当然のことであり、今後とも厳粛にその任務、目的の範囲内で警察は行動すべきものと考えます。
第二に、少年の健全育成のために、消極的目的を持つ警察が行うことは妥当ではないのではないかというお考えでございます。
少年の健全な育成は、少年問題に関係する機関が相互に緊密に連携しながら、それぞれの立場を進めていかなければならないことは当然のことであると考え、警察もその一環にあると考える次第でございます。教育団体、あるいは家庭、あるいは各種の公共団体、あるいは宗教関係の団体、その他あらゆる団体等とも連携をとりながら、警察は謙虚な立場に立って執行すべきものであると考えております。
特に、最近におきまする青少年問題に対しましては、何としても国民の大きな関心を呼んでいる問題でございまして、青少年たちをいかにして精神的、清浄な環境の中に置くか、汚染から守るかということが大問題になっております。これは一警察だけでやれるものではございません。社会全体が協力して子供たちを擁護していかなければならない、そういう自覚のもとに今後この問題に対処すべきものであると思います。
青少年問題に対する御質問がございましたが、やはり社会の急激な変化に対応できない、そういうところから青少年問題が起こっておるのではないかと思います。これにつきましては非常にさまざまな複雑な、多様性の原因があると思いますが、この社会の病因、病理的解明ということも非常に重大なことではないかと思います。そのような非常に幅広い、底深い関係に立ちまして、これをよく冷静に認識しつつ対処してまいらなければならないと思っております。
本法案を撤回する考えはございません。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/6
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007・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 志苫議員にお答えをいたします。
まず、警察の任務、目的についてでありますが、現在の警察制度は、過去の教訓を踏まえまして民主的理念に立脚して定められておりまして、犯罪の捜査、被疑者の逮捕のみならず、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することをもってその任務、目的としております。
今回の風営法の改正も、もちろんこの警察の任務、目的に即したものであり、少年非行の激増その他少年をめぐる問題と最近の風俗環境の悪化に対処するための必要最小限度の改正を行っているにすぎませんで、決して警察権限を必要以上に拡大しようとするようなものではございません。
風俗営業の概念、風俗関連営業の規制の理由についてお答えをいたしますが、今回の改正は、従来からこの法の目的と考えられておりました善良の風俗の保持、清浄な風俗環境の保持、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止を明らかに定めたものにすぎませんで、法の目的、風俗営業の概念ともに現行法とは変わりありません。
また、規制対象は時代の要請に応じ変化していますが、いずれもこの法の目的の範囲内での規制でありまして、他の法律、例えば衛生目的の法律で規制することでは十分に所期の目的を達成することができないだけではなくて、特に、風俗関連営業の中には他に法律の規制のないものも多いのであります。善良の風俗を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するためには、この法律で規制する必要があると考えております。
性や娯楽について取り締まりをするのは適当ではないのではないか、また現行法による規制で十分ではないかというような御指摘についてでございますが、今度の改正は、公共の福祉に名をかりて性や娯楽自体を罪悪視してこれを取り締まろうというものでは決してありません。風俗に関する営業が好ましくない商業主義等により売春や賭博、福祉犯等に結びつきやすい行為を規制することにより、善良の風俗等を害する行き過ぎた行為を防止しようとするものにすぎないのでございます。
次に、現行法の活用で十分ではないかという御意見でございますが、警察は売春防止法等各種諸法令を活用し、取り締まってきておりますけれども、次々とエスカレートし、悪質巧妙化する営業に対しては十分に実効ある手段とは言えないのでございます。どうしても善良の風俗や少年の健全な育成を害する行為を防止するために効果的な規制措置をとることが必要不可欠であると考えております。もちろん御指摘のとおり、警察が業者と癒着する等により国民の信頼を裏切るようなことがあってはならないのは当然でありまして、改正法の運営に当たっては厳にそのようなことのないように努力をしてまいる考えでございます。
今回の改正の理由となりました少年非行の増大についてお答えをいたします。
少年非行と風俗環境の関係は、単に性非行の増加にあらわれているだけではございません。少年非行は四年連続戦後最悪の記録を続けておりますが、その背景には、盛り場を徘回したり不健全な娯楽等を行っている不良行為少年が増加し、これらの少年がゲームセンター等をたまり場として非行集団をつくって、悪質な非行行為に走っております。非行行為が増加し、低年齢化しているだけではなく、いわゆるセックス産業を中心に少女売春等の少年少女を食い物にする犯罪が多く発生しているのでございまして、こういう状況下にあるのでございます。このような風俗環境の悪化が少年の健全育成を阻害している状況は、非常に深刻な状態になっているのでございます。
少年の健全な育成を警察が行うことについてお答えをいたしますが、次の時代を担う少年の健全な育成は国民すべての願いであり、関係する機関が相互に連携しながら、それぞれの立場で積極的に進めていかなければならない緊急の課題であると考えております。警察といたしましても、少年の非行を防止し、その健全な育成を図ることは警察の重要な責務の一つであり、関係機関や関係団体、さらには地域住民と密接に連携し、少年の非行を防止し、その健全育成に資することはどうしても必要なことでございまして、これを積極的に推進しているところでございます。
補導の限界、根拠についてお答えをいたしますが、補導とは、個々の少年に対しその健全な育成のために働きかけて、これを善導することであります。警察が少年の補導を推進しているのは、一部は犯罪の予防という趣旨でございますけれども、むしろその根拠は、個人の生命、身体、財産を保護し、公共の安全と秩序を維持するという警察の責務から当然導き出されるものと理解をしております。なお、補導につきましては、警察官が少年法など個々の法令に基づいて活動するような場合を除き、任意の手段に限られていることになります。
前に述べましたように、補導の根拠は、犯罪の予防だけでなく、広く警察の責務一般から導き出されるものであります。かつての警職法改正案における少年の保護の根拠も同様、警察の責務一般から導き出されるものでございます。
少年の補導についてお答えをいたしますが、少年の補導は現在でも警察の重要な責務の一つでありまして、今回の風営法改正により新たに認知したというものではございません。警察といたしましては、今後とも少年の非行を防止し、その健全な育成に資するため、関係機関、関係団体、地域住民等と密接に連携し、さらに少年指導委員等のボランティアとも協力しながら少年の補導を積極的に推進していく所存でございます。
立ち入りについてお答えいたしますが、警察官による立ち入りは現行法においても認められているのでありますけれども、内閣提出の法律案においては、最近の立法例に倣い、従来立ち入りの内容とされていたものを、「帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」として明確化したところでございます。しかし、この表現は、現行の立ち入り権と比べ、その範囲が拡大するのではないかとの疑念が表明されましたので、無用の誤解を避けるためにこの表現を削除し、従来の規定に即して修正することとされたものでございます。現行法においても立ち入りの目的を達成するため、必要な措置をとっているところでございますが、改正案はこれに即して運用されることとなると考えておるのでございます。
指示が恣意的に行われるのではないかとの点でございますが、指示は現行法において「必要な処分」として規定されているものでありまして、これを明確化したものにすぎません。他の法令にも多くの例がございます。
この指示は、風俗営業者やその代理人等が当該営業に関し法令や条例に違反した場合等で、善良な風俗を害する等の行為を防止するため必要な場合にのみできることは法文上明らかであります。また、比例原則に従うことも当然のことでございます。警察が恣意的に行い得るとの御指摘は当たりません。
本案を撤回すべきではないかとの御意見でございますが、今回の改正案は、風俗営業に対し、営業者に対する罰則を大幅に減らす一方、人的資格や管理者制度の整備などにより、営業者みずから健全化のための努力を促そうというものでありまして、風俗の健全化を図る上で大いに効果があるものと考えておりまして、撤回せよとの御意見には賛成いたしかねます。多くの地方自治体を初め国民各層から速やかな対策を要望されているところでありますので、どうぞよろしく御理解を賜りたいと思います。
警察官の不祥事案防止対策についてお答えをいたしますが、最近、警察職員による不祥事案が相次いで発生し、国民の警察に対する信頼を損なっていることはまことに遺憾でございます。しかし、まじめに治安に当たっている大多数の警察官のいるということもひとつ御理解をしていただきたいのでございます。先日は三多摩で殉職をいたした警官もございますし、昨日は犯人逮捕のためにとうとい一命をささげた警察官もおるのでございます。そうした警察官の心情を思いますと、このような事故は本当に残念でならないのでございます。今後再びかかる不祥事案を引き起こすことのないように、人事管理の徹底、教養の充実、身上把握の徹底、福利厚生制度の改善、気持ちの通い合う明るい職場づくり等の諸施策を推進してまいりたいと考えております。
基本的人権の尊重についてお答えをいたしますが、御承知のとおり、警察の職務は犯罪の捜査、被疑者の逮捕等個人の基本的人権に深くかかわっていることでございますから、日ごろから人権尊重の各種教養を徹底しているところでございます。今回の風俗営業等取締法の改正は、現下の風俗環境の実情にかんがみまして必要最小限度の改正を行ったものでございまして、取り締まりに当たりましては、いやしくも人権侵害等の批判を招かないようにさらに一層指導を徹底し、慎重に対処してまいりたいと存じております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/7
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008・森喜朗
○国務大臣(森喜朗君) 志苫議員にお答えを申し上げます。
お尋ねの点は、文部省として青少年非行の防止に対しどのように取り組んでおり、また今後どうしていくかということでございますが、青少年の非行の原因、背景は、家庭における親の養育態度、学校における教師の指導力の低下、急激な社会環境の変化や地域連帯感の欠如などが複雑に絡み合っており、その対策はきめ細かく、かつ総合的に進めるべきだと考えております。
文部省といたしましては、青少年の健全育成を図るため、学校教育におきましては生徒指導の充実を図るとともに、教育内容の充実、道徳教育の充実、教員の資質の向上、高校入試の改善等の施策を講じてまいりたいと存じております。また社会教育におきましては、青少年団体活動の助長や、青少年が大自然の中での共同宿泊生活を通じて仲間と切磋琢磨する少年自然の家の整備を図るなどの施策を講じております。さらに、学校、家庭、社会が緊密な連携のもとに関係の諸施策を総合的、統一的に進めるため、昭和五十七年度から、豊かな心を育てる施策を推進しております。
今後とも関係機関団体等との密接な連携のもとに、青少年の健全育成のために努力してまいりたいと存じております。(拍手)
〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/8
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009・後藤田正晴
○国務大臣(後藤田正晴君) お答えを申し上げます。
最近の少年の非行問題は、これは先進各国いわば共通の病理現象といったように大変その数もふえ、各国とも対応に苦慮しておるのが現状のように思います。我が国におきましても、数がふえるし、同時にまた年齢もだんだん低下傾向にある。しかも、女のお子さんの非行がだんだんふえるといったようなことで、政府としても大変対応策に苦慮いたしておるわけでございますが、何といいましても、子供さんを持っておる御家庭の親御さん方がこういったことに対して非常な心配をしていらっしゃる。私ども政府としては、こういった親御さんの御心配にやはり政府一体となって取り組んで対応策を講じていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
現在は、積極行政、消極行政を担当しておる役所が十二ばかりございます。このように、何といいましてもたくさんの政府各省が関係しているだけに、その総合調整ということでお互いに緊密な連絡をとりながら、そして御家庭なり学校な色あるいは地域社会なり各方面への働きかけ、御協力を求めていかなければならない、こういったことで青少年問題審議会がございまするので、この審議会に最近の青少年問題への対応策についての諮問いたしまして、五十七年の六月に御答申をちょうだいいたしておりますが、その御答申の趣旨に沿って閣議決定を行って、現在各省庁でその対応策を講じておるような次第でございます。
同時にまた、昨年、横浜その他において中学生等による一連の非行事件が発生して世間の耳目を聳動させたといったようなことがございましたので、政府といたしましては非行防止対策推進連絡会議、これは関係各省の局長クラスの連絡会議でございますが、その連絡会議で当面とるべき対応策として、全国民的な少年の非行防止運動、これを喚起して推進をしていこう、こういったようなことで五項目ばかりの対応策を立てて、現在鋭意その推進を図っているところでございます。
今後ともこれらの施策を強力に推し進めてまいりたいと考えておるのでございますが、何といいましても、その中の一つの大きな柱は、今日青少年を取り巻いておる社会環境、これが悪化しておることは否定し得ない事実であろうと思います。そこで、関係省庁とも緊密な連絡をとりながら、有害環境の浄化活動、これを進めることが肝心ではなかろうかと、かように考えておるわけでございますが、今回御提案しておる風俗営業等取締法の改正の趣旨も、私はそういった御趣旨で改正をなさって御提案したものと、かように考えているような次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/9
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010・木村睦男
○議長(木村睦男君) 原田立君。
〔原田立君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/10
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011・原田立
○原田立君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております風俗営業等取締法の一部を改正する法律案の趣旨説明に対して、若干の質問を行うものであります。
最近の少年を取り巻く情勢は、少年の刑法犯がここ四年連続して戦後最悪の記録を続けております。また、不良行為少年も百四十三万人に達し、前年に比べ八万八千人も増加しているなど、まことに憂慮すべき事態に立ち至っております。
このような深刻な事態を引き起こした原因の一端は、社会の享楽的風潮に加え、少年のたまり場となっているゲームセンターなどを中心に非行化が進んでいることであります。新宿歌舞伎町に代表される個室マッサージ、個室ヌード、のぞき劇場など、あからさまに性を売り物にしている営業が増大し、それに伴って少女の性非行化が進むなど、いわゆる風俗環境の悪化にあることは言うまでもありません。こうした点から、今回の風俗法の改正は、その是正を一歩進めるものであると考えるものであります。
この際、以下の点について総理並びに国家公安委員長に質問をいたします。
まず初めに、本法律案の改正の基本事項についてであります。
今日の青少年の非行問題は、学校、家庭を初め地域社会など複雑な社会環境に起因するものであり、単なる補導や取り締まりなどの強化だけでは非行防止の実効は期待できません。学校関係を初めとして関係各省庁や地域社会との連携をどう進めていくのかが大きなかぎであると思うのであります。したがって、少年の健全な保護育成を図るための総合的対策が必要だと考えますが、総理はこの対策をどのようにおやりになるのか、具体策をお伺いしたいのであります。
また、改正案では、目的規定を新設し、「善良の風俗」「清浄な風俗環境」を掲げておりますが、その定義、内容ともわかりにくく、国民の意識も時代、社会によって多様に変化すると考えるのであります。その解釈や運用いかんによっては、表現の自由、営業の自由等憲法で保障された基本的人権や国民の日常生活に多大なる影響を及ぼすおそれがあるのではないかと憂慮するものであります。この点に対するお考えと対策についてお伺いしたいのであります。
次に、規制対象の拡大についてでありますが、第一に、改正案では、風俗営業の中にスロットマシン、テレビゲーム機等の遊技場を加えるとともに、届け出制を義務づけた「風俗関連営業」を新設し、従来の個室付浴場業、モーテル営業に加えて、ストリップ劇場、のぞき劇場、ラブホテル、個室ヌード、アダルトショップ等の営業を加えております。また、バー、酒場等の酒類提供飲食店の深夜営業についても届け出制を義務づけるなど、規制対象を大幅に拡大しております。
このような風俗営業の業種の拡大は、違反に対する罰則、許可や取り消しなど警察の権限がそれだけ拡大されることになるのであります。さきの大阪府警で起きたゲーム機汚職事件や、秋田県警でのコンピューターを不正に使用した自動車運転免許証の偽造密売事件などが多発していることからも、規制対象の拡大に伴う不祥事件の増加につながることを心配するのであります。現場警察官に対する教育等十分なる対策、検討が必要だと考えますが、どうですか。
第二に、風俗営業者に対する規制の政令等への委任の問題であります。
今回の改正案では、具体的規制内容のほとんどを政令、総理府令、国家公安委員会規則にゆだねており、その数は実に七十七項目にも上っております。これは公安委員会、警察へのいわゆる白紙委任とも言える自由裁量権の拡大であると心配するものでありますが、いかがですか。また、国民の権利義務に直接かかわる事項を行政府だけで決定するのではなく、広く国民の意見を聞き、法の運用を図るべきではないかと考えますが、どのような御所見か伺います。
政令等の制定及び運用に当たっては、学識経験者、地方公共団体及び関係者などから成る審議会を設置し、法の適正な運用を図ることを私は提案するものであります。御所見をあわせてお伺いいたします。
第三に、改正では風俗営業にスロットマシンを加えておりますが、このスロットマシンは従来は賭博に使用される例も多く、許可制とはいえ公式に認めることは、青少年に時間内であれば自由に使用を認めることになり、社会的、教育的にも影響があるのではないかと非常に心配するのであります。また、テレビゲームについても、コンピューター文化の急速な進展に伴い、今後ますます広範囲な普及、発展が予測をされることからも、画一的な規制ではなく、一定の条件、基準を設けて区別し、何らかの検討が必要であると考えます。御見解をお伺いいたします。
第四に、改正案では風俗営業の重要な要件となる「接待」の意義を設けてありますが、この規定はあいまいであり、解釈、運用によっては非常に混乱を招くことが予想されます。したがって、具体的内容及び実施に当たっての対処についてどのような考えで臨むのか、お伺いいたします。
次に、性産業の拡大化についてであります。
個室浴場業については、昭和四十一年の法改正で、地域規制の条項で建設禁止除外地域で営業が行われ、営業時間、行為などについては都道府県条例で規制が行われてきたにもかかわらず、減少どころか逆に増加したのであります。届け出制とはいえ、これらの業種を風俗営業として規制の対象にすることは、性産業の拡大を助長するおそれがあるのではないかと思いますが、いかがですか。また、これらの性産業の規制に対してはどのような対応で臨むつもりでいるのか、売春防止法等との関係についてもあわせて御所見をお伺いいたします。
最後に、立ち入り権についてであります。
改正案では、公安委員会は風俗営業者に対してその業務に関し報告または資料の提出を求めることができることを新設しております。報告または資料の提出については、営業者にとって過大な負担を強いる結果となるのでありますが、このような心配についてどのように配慮するのか、お伺いいたします。
また、警察職員の立ち入りについては、衆議院で修正が行われたとはいうものの、営業者にとって重要な問題であり、慎重に対処しなければならないと考えるものでありますが、現場警察官に対しての何らかの規定を定める考えはないか、お伺いいたします。
以上、重要事項について質問いたしましたが、政府の率直な御答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/11
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012・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 原田議員にお答えをいたします。
まず、青少年の非行化増大に対しては総合対策で行うべきである、関係省庁、教育環境との協調をどう進めるかという御質問でございます。
お示しのように、青少年の健全な育成を図るためには、本法の改正とともに、関係機関、関係団体、さらには地域住民が緊密に連携して、家庭とともに適切な対策を推進していくことが必要であると考えております。警察はそれらの一環として謙虚に各方面の意見を聞いて、注意深く周到に措置を進めるべきものであると考えます。
次に、「善良の風俗」、「清浄な風俗環境」の意義、あるいはさらに、その解釈や運用いかんによっては国民生活、思想に大きな影響を及ぼす危険性はないか、こういう御質問でございますが、善良の風俗、清浄な風俗環境は、ともに判例等にもより、また学説等にもよりまして明確な概念があると理解しておりますが、今後、本法の厳格な解釈、運用が行われるように措置してまいりたいと思っております。
次に、規制対象の営業範囲を政令あるいは規則にゆだねているが、これは自由裁量権の拡大につながらないかという御質問でございます。
今回の改正案で、政令、国家公安委員会規則に委任しておりますのは、その内容が技術的、細目的なものであるために行われるものでありまして、あくまで警察の自由裁量権を拡大するものではございません。
最後に、今回の改正で性産業の公認や拡大を助長するおそれはないか、性産業の規制に対しては取り締まり法規の適正な運用こそ重要ではないかという御質問でございます。
今回の改正は、現在野放しになっている個室付浴場等に必要な規制を課するものでございますが、これを公認するとか助長するというものではございません。青少年犯罪を防止し、非行を防止するために、清浄な精神環境の維持を行ってその汚染から守ろうという、そういう防止目的を持って一定の規制を行うものでございまして、助長するものではもちろんございません。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/12
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013・田川誠一
○国務大臣(田川誠一君) 原田議員にお答えをいたします。
ます、少年の健全な保護育成についてでございますが、今回の風営法改正は、風俗環境の悪化が少年の健全な育成を著しく阻害しているという状況に対処するためにお願いをしているわけでございます。しかし、少年問題の背景には、家庭、学校、地域社会等が抱えるさまざまな問題が複雑に絡み合っているのでありまして、その解決のためには、法改正とともに、今後関係各機関や関係団体、さらには地域住民と密接に連携して、総合的な対策を一層積極的に推進していく所存でございます。
善良な風俗、清浄な風俗環境の概念についてでございますが、これはいずれも現行法においても規定されて、長い間の運用の積み重ねによって明確にされてきた概念でございまして、決して不明確なものではないと理解をしております。また、警察といたしましては、本法を厳格に解釈、運用し、万が一にも御懸念のないように努めてまいりたいと考えております。
不祥事案の対応についてでございますが、最近の警察官の不祥事案については、人事管理の面、指導監督等の点で反省、検討を加えているところでございます。今後このようなことのないように努めていかなければならないと考えております。しかし、今回の風俗営業等取締法の改正は、現下の風俗環境の実情にかんがみ、必要最小限度の改正を行ったものでありまして、今後とも原田議員の御指摘の点は十分留意し、人事管理、指導、教養の徹底等最大限の努力、注意をしてまいりたいと考えております。
政令、規則等への委任についてでございますが、今回の改正案で、規制対象の範囲に関して技術的、細目的事項について政令、国家公安委員会規則に委任をしておりますが、いずれも法律の委任の範囲内で具体化するものであり、その範囲は明確でございます。決して警察に白紙委任され、その自由裁量権を拡大するものではございません。
政令等の運用などについてでございますが、今回の改正案を作成するに当たっても、警察としては風俗問題懇談会を開催して各界有識者の方々の御意見をお伺いし、また関係各省庁、関係業界等と十分話し合った上で案の内容を詰めてまいりましたが、今後この法律に基づく政令、総理府令、国家公安委員会規則等を定めるに当たりましても、このような懇談会に諮るなど関係各界の御意見を十分に尊重してまいる所存でございます。
テレビゲーム機等の規制についてでありますが、現金を入れて現金が出てくるようなゲーム機は、これはもともと禁止すべきものでありまして、改正法案でも認めるつもりはございません。日本における通常のスロットマシンの使用方法は、単にコインを使用して遊技するものであり、射幸心をそそるものとは言えません。したがって、遊技すること自体を否定する必要はないと考えております。また、今回テレビゲーム機等については、これが賭博に用いられたり、その設置場所が少年のたまり場となって少年に悪影響を及ぼすことを防止するため、ゲームセンター等を風営法の許可対象とすることになっておりますが、これらの機器の使用そのものを察しているものではなく、コンピューター文化の健全な発展を阻害するものではないと考えております。
「接待」の意義の周知徹底についてお答えをいたします。
原田議員御指摘のとおり、接待の意義は風俗営業の重要な要件であります。そこで、都道府県警察の第一線に至るまで、接待の具体的な内容について明確な基準を定めて徹底するよういたす所存であります。
性産業の規制についてお答えをいたします。
昨今の性産業のはんらんは、善良の風俗や清浄な風俗環境を害し、また少年の健全な育成に多大な影響を与えていると考えておりますが、現行法令に基づく取り締まりだけでは十分その目的を達成し得ない現状でございます。加えて、性産業の多くは売春に移行しやすい営業でありますが、売春防止法は単純売春は処罰しない法体系になっていることもこれらの捜査を非常に困難にしているところでございます。そこで、従来野放しであった性産業を届け出をさせることによってその実態を把握し、地域規制等必要な規制を行い、違法行為があれば営業の停止、廃止等により厳しく対処することとしていく方針でありますので、公認することになるという御指摘はこれは当たらないと考えております。今後、関係省庁とは提携を密にし、改正法案を初め各種法令の運用に配慮し、効果があるように努めてまいる所存でございます。
それから報告、資料の提出の運用についてお答えをいたします。
報告または資料の提出の規定は、立ち入りが営業活動に直接影響を及ぼす可能性があることにかんがみまして、より穏やかで営業者にとって負担の少ない方法として、最近の立法例に倣いまして設けたものでございます。その意味から、この規定は現行の協定に比較して、より営業者等に配慮したものでございますが、その運用については混乱のないように、警察庁においてきめ細かく第一線を指導することとしております。
警察職員の立ち入りについてでございますが、警察職員の立ち入りについては、確かに営業者に一定の負担を及ぼすものであるだけに慎重な配慮の上で行わなければならないと考えております。立ち入りにつきましては、従来から現場警察官が上司の指揮のもとに行っておりますが、さらにこの趣旨を徹底するため、各都道府県警察において指導を強めて必要な措置を講ずるよう配慮してまいりたいと存じております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/13
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014・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
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015・木村睦男
○議長(木村睦男君) 日程第一 昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算、昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算、昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和五十六年度政府関係機関決算書
日程第二 昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書
日程第三 昭和五十六年度国有財産無債貸付状況総計算書
以上三件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。決算委員長安恒良一君。
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〔安恒良一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/15
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016・安恒良一
○安恒良一君 ただいま議題となりました昭和五十六年度決算外二件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
昭和五十六年度決算は、昭和五十七年十二月二十八日国会に提出され、同五十八年四月二十七日当委員会に付託となり、また国有財産関係二件につきましては、同五十八年一月二十八日国会に提出され、同日当委員会に付託されました。
当委員会では、この決算外二件の審査に当たりましては、国会の議決した予算が法規に基づき厳正かつ効率的に執行されたかどうかについて審査するとともに、政府の施策全般について広く国民的視野からの実績批判を行い、その結果を内閣による将来の予算策定に反映させるべきであるとの観点に立って審査を行ってきたのであります。
この間、審査のために委員会を開くこと十一回、別に述べるような内閣に対する警告にかかわる質疑のほか、外交、防衛、行政改革、財政再建に関する問題を初め、教育、医療、農作物対策、雇用問題など行財政全般について熱心な論議が行われましたが、それらの詳細は会議録によって御承知願います。
七月九日質疑を終了し、討論に入りました。議決案の第一は本件決算の是認、第二は内閣に対する十一項目の警告であります。
討論では、日本社会党を代表して目黒理事、公明党・国民会議を代表して服部理事、日本共産党を代表して佐藤委員、民社党・国民連合を代表して柄谷委員、ほかに木本委員より、それぞれ本件決算は是認できないが、内閣に対する警告案には賛成である旨の意見が述べられ、自由民主党・自由国民会議を代表して平井理事より、本件決算を是認するとともに、内閣に対する警告案にも賛成である旨の意見が述べられました。
討論を終わり、議決案を採決の結果、本件決算は多数をもって是認すべきものと議決され、次いで内閣に対する警告案については、全会一致をもって警告すべきものと議決された次第であります。
内閣に対する警告は、次のとおりであります。
(1) 会計検査院の検査機能の充実強化については、本院の要請を受け、政府は当面の実行可能な措置を講じてきたところであるが、同院の検査の重要性にかんがみ、今後とも同院の行う検査の実施にあたっては、その目的が十分達せられるよう所要の措置を講すべきである。
(2) 毎年度、決算検査報告において、国の財政処理にかかわる多くの不当事項等が指摘され、本院でも、常にその改善を求めてきたところであるが、依然として、多くの事項について指摘を受けていることは遺憾である。
政府は、予算の原資が主として国民の税金であることにかんがみ、その執行を一層厳正、かつ、効率的に行い、いやしくも違法、不当の指摘を受けることのないよう努めるべきである。
(3) 民法に基づき、主務官庁の許可によって設立される公益法人の中には、財産の運用あるいは収益事業の実施に際し、法人設立の趣意に反するとみられる事態が生じていることは遺憾である。
政府は、法人設立の許可に際しては、その適格性等について十分調査し、慎重に対応することはもとより、既設の法人についても、その活動の状況に常に留意し、真に公益の増進に寄与するものとなるよう指導監督に努めるべきである。
(4) 来る昭和六十年に「国連婦人の十年」の最終年を迎えるにあたり、婦人差別撤廃条約の批准に向けて、国内法制等諸条件の整備を可及的速かやに実現することが求められている。
政府は、雇用における男女の機会均等及び待遇の平等、男女同一の教育課程の確保等を一層促進し、真の男女平等の早期実現に努めるべきである。
(5) 貸金業規制二法が施行されて半年余を経過したが、サラ金苦による自殺、家出、犯罪は後を絶たず、加えて自己破産申立て件数が急増するなど、依然として深刻な事態が続いていることは看過できない。
政府は、この種金融の健全化を図るため、関係法律の厳正な運用を行うほか、金利の引き下げ、金融機関等から貸金業者等への融資の抑制について一層指導を強めるとともに、都市銀行等一般金融機関が、消費者金融に積極的に取り組める環境を作るなど、利用者の保護に万全を期すべきである。
(6) 東京医科歯科大学医学部の教授選考の際に、選考委員である現職教授が、複数の候補者より現金を収受し、また医療機器の購入にあたっても、業者より現金を収受するという不祥事を起こし、これに係わった教官二名が贈収賄容疑で逮捕、起訴され、加えて従来からの教授選等にみられたこの種の学内体質について指摘されたことは、極めて遺憾である。
政府は、今回の事件が国立大学医学部に対する国民の信頼を損ね、社会に衝撃を与えたことを深く反省し、指摘された問題については、大学当局の自主的、かつ、積極的な改善措置を求め、今後再びこの種事態が発生することのないよう努めるべきである。
(7) 国立予防衛生研究所の職員が、抗生物質の検定成績通知書に虚偽の記載を行ったほか、製薬会社から提出された新薬製造承認申請資料の窃取事件にも加担し逮捕され、一方、国立衛生試験所では、中央薬事審議会の委員を兼ねる部長が、企業から提出された審議資料を他企業に提供し、収賄容疑で逮捕される事件が発生したことは、国民の医薬品行政に対信頼を裏切ったことであり、極めて遺憾である。
政府は、医薬品行政が国民の健康に重大な影響を及ぼすことにかんがみ、医薬品の安全確保について一層努力するとともに、職員への綱紀粛正の徹底、関係資料等の文書管理についても、一層厳正を期し、このような事件の再発防止に努め、国民の信頼の回復を図るべきである。
(8) 本年一月に発生した三井石炭鉱業三池鉱業所有明鉱の坑内火災事故は、生産第一主義と保安対策の不備によって発生した人災ともいえる重大事故であり、その後においても、なお、同鉱業所において、事故が繰返し発生していることは、労働者の健康、生命尊重という基本的な視点が十分に生かされていない結果であり、極めて遺憾である。
政府は、今回の事故の重大性にかんがみ、事故の原因及び保安対策上の基本的な問題の所在を徹底的に究明し、その結果を国民の前に明らかにするとともに、今後の鉱山保安行政を推進するにあたっては、労働者の安全、衛生、保護の各施策を重点的、かつ、有機的に結合させ、さらに一層充実した対策を講ずべきである。
(9) 本院は、郵政省職員による不正行為に対し、これまでしばしば決議を行い、その未然防止を強く求めてきたところであるが、この種犯罪は依然として後を絶たず、とりわけ、先般赤池郵便局において、当該特定郵便局長、十二年の長期にわたり、巧妙に関係書類を作為し、三億六千万余円を領得した未曾有の不正行為が発生し、改善の実があがっていないことは、極めて遺憾である。
政府は、郵政省職員の不正行為が続発し、その領得金額も年々多額にのぼっていることを深く反省し、この種犯罪の絶滅を期すだめ、業務考査及び会計監査等の監察を強化するなど、万全の策を講すべきである。
(10) 近年、いわゆるワンルームマンションの建設が急増し、これに伴い周辺住民との間で、居住環境をめぐり、さまざまな問題が発生している。
政府は、こうしたワンルームマンションの建設に伴う諸問題を解決するため、今後ともその実態把握に努めるとともに、地方自治体や供給業者に対し、適切な指導に努めるべきである。
(11) 特定の地方団体において、長年にわたり国の補助事業及び貸付において、関係書類を作為し、事業費の過大精算、事業の一部不実施、補助あるいは貸付対象外を対象とするなどの不正手段を用い、不当に補助金、貸付金を受け、さらにこれらのうち一部は、請負業者から架空会社を経由して割戻しを受け経理を行うなど、著しく乱脈な町財政が行われていたことは、極めて遺憾である。
政府は、この種事態の再発防止に万全を期するため、地方議会及び監査委員等の自律機能がより一層発揮できるよう、また都道府県による財政運営指導がさらに適切に行われるよう指導に努めるべきである。
以上であります。
次に、国有財産関係二件につきましては、採決の結果、いずれも多数をもって異議がないと議決された次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/16
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017・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
初めに、日程第一の昭和五十六年度決算について採決をいたします。
本件の委員長報告は、本件決算を是認すること及び内閣に対し警告することから成っております。
まず、本件決算を委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/17
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018・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本件決算は委員長報告のとおり是認することに決しました。
次に、委員長報告のとおり内閣に対し警告することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/18
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019・木村睦男
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
よって、全会一致をもって委員長報告のとおり内閣に対し警告することに決しました。
次に、日程第二の国有財産増減及び現在額総計算書及び日程第三の国有財産無償貸付状況総計算書を一括して採決いたします。
両件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/19
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020・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、両件は委員長報告のとおり異議がないと決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02119840711/20
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