1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年八月七日(火曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第二十九号
昭和五十九年八月七日
午前十時開議
第一 臨時教育審議会設置法案(内閣提出、衆
議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
日程第一 臨時教育審議会設置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長高平公友君。
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〔高平公友君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/1
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002・高平公友
○高平公友君 ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、その提案の理由及び内容について申し上げます。
我が国の教育は、国民の努力により著しく普及し、その水準は国際的にも高く評価されているのでありますが、一方、社会の急激な変化、教育の量的拡大等は教育のあり方に対して大きな影響を与え、今や教育改革の必要性が各方面から指摘されております。このような教育改革に対する国民の要請を踏まえ、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して、教育全般にわたる改革を図ることが緊急かつ重要な課題となっております。
本法律案は、このような状況にこたえるため、第一に、今後における社会の変化及び文化の発展に対応する教育の実現を期して、教育基本法の精神にのっとり、政府全体の責任において必要な改革を図るため、臨時教育審議会を総理府に設置すること、第二に、審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るための方策に関する基本的事項について、調査審議して答申するとともに、意見を述べることをその所掌事務としており、内閣総理大臣はこの答申を尊重しなければならないこととすること、第三に、審議会は、文部大臣の意見を聞いて内閣総理大臣が任命する二十五人以内の委員をもって組織するとともに、文部大臣の意見を聞いて内閣総理大臣が任命する専門委員を置くことができることのほか、審議会の事務を処理させるため事務局を置くこと等を内容としており、本法律案は施行の日から起算して三年を経過した日に失効することとしております。
なお、本法律案は、衆議院において、内閣総理大臣が審議会の答申等を受けたときはこれを国会に報告するものとすること、内閣総理大臣が審議会の委員を任命しようとするときは両議院の同意を得なければならないこととするほか、これに伴う関連規定及び施行期日について所要の修正が行われております。
他方、日本社会党所属の本院議員から、本案に対する対策として、現行の中央教育審議会にかえて新たに文部省に国民教育審議会を設置し、教育、学術、文化に関する基本的な重要事項を調査審議し、文部大臣に意見を述べることなどを内容とする国民教育審議会設置法案が提出されました。
委員会におきましては、以上二法律案を一括して審査し、中曽根内閣総理大臣を初め衆議院内閣委員長代理の出席を求めて質疑を行うほか、文教、社会労働の二つの常任委員会との連合審査会を開くとともに、四人の参考人からの意見聴取、札幌に委員を派遣して地方公聴会を行うなど、総審査時間四十時間を超す熱心な審査が行われました。
この間の主な質疑を申し上げますと、教育荒廃の現状認識と開かれた改革の必要性、審議会を総理直属とする理由、委員の構成と任命のあり方、公開制の是非、諮問事項の具体的内容、教育改革における教育基本法の精神の尊重と国民的合意を得る手だて、委員の国会承認の基準と守秘義務を課す理由のほか、教育改革と行革審答申及び財政との関連、障害児に対する統合教育の必要性及び文部省関係の汚職問題等広範多岐にわたっておりますが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して小野理事より反対、自由民主党・自由国民会議を代表して坂野理事より賛成、日本共産党を代表して橋本委員より反対、公明党・国民会議を代表して峯山委員より賛成、民社党・国民連合を代表して藤井委員より賛成の旨の意見がそれぞれ表明されました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。穐山篤君。
〔穐山篤君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/3
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004・穐山篤
○穐山篤君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案に対し、反対の討論を行うものであります。
そもそもこの法案は、かねてから中曽根総理が、教育改革は中央教育審議会で十分検討してもらうと内外に公表していたものでありますが、突如として変心し、総理直属の教育審議会としたいわくつきのものであります。
反対の第一の理由は、臨時教育審議会が真に二十一世紀を担う青少年の人間教育を目指す審議会となっていないことであります。
我が国の教育の現状はまことに憂うべき状況にあり、激発する青少年の非行、暴力、登校拒否などに象徴されるように極めて深刻であります。また、偏差値教育に示されるごとく、一人一人の青少年の個性や能力が大切にされず、人間の価値が点数ではかられる競争至上主義に偏り、伸び伸びとした人間教育を受けられない構造となっているわけであります。学習塾がはんらんし、教育がもうけ主義の産業にまで発展し、大きな病根を残しているのであります。これら荒廃した教育現状を一刻も早く改革しなければならないことは、国民共通の認識となっているのであります。
教育改革の推進に当たりましては、まず教育の政治的中立を確認し、あらゆる権力の不当な支配や介入を排除し、憲法並びに教育基本法に即して民主的に審議を行う機関を設置しなければなりません。しかるに、本審議会は総理直属のものであります。加えて、運営に至るまでも総理大臣の恣意に左右されるものとなっているのであります。過去において、総理直属の教育に関する審議機関が国家主義、軍国主義教育の推進に大きな役割を果たす結果になったことは、歴史が歴然と証明しているところであります。人間教育から再び国家教育を目指そうとする本審議会の設置には絶対に賛成するわけにいきません。
日本社会党は、我が国の教育を改革し、再建することにはいささかも反対するものではありません。むしろ、教育改革に積極的であります。それゆえに、恒常的に教育改革に取り組むものとして国民教育審議会設置法案を提案したのであります。我が党の考え方は、民主主義、平和、真理を目指すすぐれた国民教育の立場に立ちまして、憲法と教育基本法に基づき、国民一人一人の自由な
人間的成長、発達を促すため、国民の総意を最大限尊重する中で行おうとするものであります。審議会は、まさにこれらのことを保障するものでなければならないと思います。
反対の第二の理由は、国民的合意形成のための条件がこの臨教審構想には全く欠落していることであります。
総理は、しばしば教育改革の国民的合意の必要性を説き、国民的視野に支えられることを述べておられますが、この審議会構想によって期待することができるでありましょうか。委員会審議を通じましても、臨教審設置の本当の目的も明瞭でなく、特に注目をしておりました諮問事項についても具体案が明示されなかったのであります。委員選任の基準につきましても、人格識見ともにすぐれている者としている以外、国民が納得できることは何ら示されておりません。審議に参加する委員は、当然憲法や教育基本法を尊重する者でなければなりませんが、その点につきましても、再三の確認に対して明確な回答がなかったのであります。
また、委員任命に当たっての国会同意や審議経過の国会への報告のみで、果たして国民参加の精神が貫かれるでありましょうか。国民合意の形成とは、政策決定過程において国民がいかに参加し得るかという問題であります。それも、あらゆる形、あらゆる機会にどのように保障するかが肝心でありますが、この臨教審法案には国民合意の保障がみじんもないのであります。第二臨調が主導した行政改革のパターンを教育改革、臨教審に当てはめようとする意図であると指摘をせざるを得ないのであります。
反対の第三の理由は、国民に開かれた審議会となっていない点であります。
審議会が非公開であり、かつ委員に守秘義務を課している点は言語道断であります。審議会の密室審議が行政の民主化を阻害し、官僚的独善の弊害を生じやすいことは、教科書検定がその典型ではないでしょうか。
我々は審議会の公開を要求をいたしました。しかし、政府は、自由な発言が阻害されるとしてかたくなに拒否しておりますが、果たしてそうでありましょうか。審議会公開の方がはるかに責任ある論議が活発に展開されるものと信じます。総理が国民的合意を通じての教育改革を真に目指すとするならば、単に審議内容の国会報告義務だけでなく、むしろ積極的に審議会の日常の活動や審議の状況、あるいは委員の意見の表明、委員間の意見の対立などを含めた「ガラス張り」を国民に示し、国民がいかに政策決定過程に参加するか模索する機会を与えるべきであり、国民には結論だけを知らせるのでは全く片手落ちであります。
審議会委員を国会の同意人事としたため、守秘義務を課したのは当然だとしておりますが、これは全く不合理であります。教育には秘密はないはずです。教育が直接国民全体に対して責任を持って行われるべきであるとした教育基本法の精神に全く逆行するものであります。国民もまた、審議の非公開、守秘義務の裏側に潜む中曽根流教育改革に危険性を抱いているところであります。
反対の第四の理由は、臨教審を隠れみのとして、当面解決、改善を求められております諸問題の先送りであります。
今、国民が求めているのは、四十人学級の凍結解除、マンモス校、過大学級の解消、私学助成などの教育環境の整備拡充を図ることであります。しかるに、行革審の言うがままに教育財政を一層削減し、これらの問題に何にも着手していないことは、政府の教育に対する心の貧困を示しているのであります。また、非行、暴力、登校拒否などの教育の荒廃に積極的に対処し、受験体制の改革を早急に図れというのが父母や国民の悲願でありますが、政府ほどのように受けとめているのか、全く疑問でなりません。当面の諸問題を解決しようとする意欲と情熱こそが二十一世紀の活力を約束するものでないでしょうか。
以上、私は、本法案に反対する主な理由を述べましたが、我々が二十一世紀の青少年に責任を持ち、継承するためには、過ちを再び繰り返さないことを確認することが重要であります。総理直属の臨教審は、教育基本法の形骸化となり、特に中曽根総理が改憲推進論者として、その地ならしとしての役割を推し進める危険な道を選択することになることを指摘いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/4
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005・木村睦男
○議長(木村睦男君) 太田淳夫君。
〔太田淳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/5
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006・太田淳夫
○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案につきまして、賛成の討論を行うものであります。
私ども公明党は、昭和三十九年の結党以来教育問題について真剣に取り組み、その基本政策やその他さまざまな提言を公にしてまいりました。私どもが昭和五十二年教育基本政策を発表した当時、既にいわゆる受験地獄、四無主義、五無主義、そして非行の問題などが深刻な問題になっていましたが、このような教育の荒廃は今日においても依然として解決されていないばかりか、一層その深さと広がりを増しているのが現状であります。
しかも、校内暴力が日常化する学校の出現、また子供の自殺の増加、登校拒否、落ちこぼれ等々、以前には全く見られなかった新しい種類の問題すら出現してきているのであります。これらの問題は、子供の成長発達期における一過性的な現象ではなく、まさに異常現象として受けとめるべきであります。
学校教育におけるこれらの異常現象は、極めて複雑な背景を伴い、深刻にして広範であり、多くの国民が危惧と不安に陥っております。将来の社会を担う青少年の教育を今こそ抜本的に問い直し、改革すべきなどの声がほうはいとして起こってきたのも当然であります。この時点に至るまで我が党の教育に対する提言が入れられなかったことはまことに遺憾とするところであります。
政府が設置した中央教育審議会は、教育改革に関して今日までさまざまな提言や答申を発表し、我が国教育に大きな役割を果たしてきたことに対しては一応評価できます。しかし、今日の教育荒廃の根源の深さと広さを考えるとき、この教育の改革を推進するためには、やはり広く国民の支持を得つつ国会や政府が総力を挙げて取り組まねばならない国政上の最大課題であり、ひとり文部省のみに改革をゆだねるべき事柄ではありません。
このような見地に立って、かねてより我が党は、教育改革のためには他省庁にまたがる広範囲な新機関を総理府に設置し、国民合意のもとに長期的かつ基本的構想を策定する必要があることを提言してきたのであります。さらに、教育改革の方向として、私どもは、戦前への回帰、すなわち儒教的、軍国主義的道徳教育への志向、あるいはこの改革の機運に乗じて防衛力増強路線、憲法、教育基本法の改悪の方向に進むことに対し反対してまいりました。同時に、教育は人間育成であるという重要な側面を無視し、教育に受益者負担主義を導入して、教育や福祉を切り捨てることにも反対してまいりました。
しかし、その後国会の論議を通じ、我が党の追及によって、教育基本法を変える意思はない、また政治の教育への介入は行わない等総理も明言し、教育改革には国民の合意が極めて重要であり、そうした条件づくりに前向きに取り組む意向が表明されました。
今回の臨時教育審議会の設置に当たって重要なことは、国民合意の改革案づくりの体制をつくることと、改革案作成上の諸原則を明確にすることであります。このような視点に立って、我が党は国民合意の改革案づくりの体制をつくるため、委員任命の国会同意、答申等の国会への報告義務、審議の公開制並びに現場の教師、父母等の代表を委員に加えることを主張してまいりました。幸
い、これらのうち委員任命の国会同意、答申等の国会への報告義務に関し、衆議院において修正が実現され、審議の公開については審議の概要を一定の区切りをもって公表するとの答弁が行われ、さらには、委員に現場の教師と父母を含める点について積極的前向きの答弁が行われているのであります。これにより、我が党の主張はほぼ取り入れられたものと考え、今後の措置を見守ってまいりたいと思います。
我が党は、改革案作成上の諸原則につきましては、憲法、教育基本法の厳正な遵守、教育の政治的中立の確保等々を打ち出しているのでありますが、政府は、今後の委員会の運営に当たって、これらの諸点を厳守すべきであります。申し上げるまでもなく、教育は国家百年の大計であります。いかなる改革を志向するかは、我が国の将来を決定すると言っても過言ではないと思うのであります。
我が党は、二十一世紀を展望した教育改革を推し進めるべきであるという主張をいたしておりますが、臨時教育審議会が今後の教育改革に向けて期待にこたえる立派な役割を果たすか否かは、今後の運営いかんにかかっていると思うのであります。政府は、審議会の運営に際しましては、我が党の指摘しました点を十分に配慮すべきことを強く要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/6
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007・木村睦男
○議長(木村睦男君) 下田京子君。
〔下田京子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/7
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008・下田京子
○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、臨時教育審議会設置法案に対する反対の討論を行います。
まず、私は、子供たちの未来と日本の将来にかかわるこの重大法案が、国民の大きな反対の声を押し切って、我が党の慎重審議要求を顧みず委員会で採決されたことに対し、厳しく抗議するものです。
しかも、教育改革を進めるに当たって基本的なことは、何よりも国民の信頼を得ることです。とすれば、今日大きな社会問題化している文部省と国立大学におけるワープロなど事務機器や医療機器購入をめぐる汚職事件の解明こそ急ぐべきではありませんか。そのために、我が党が徹底した集中審議を行うべきであると強く主張したにもかかわらず、この汚職事件の責任を明確にしないまま審議終結が急がれたことは断じて許すことができません。
次に、本案に反対する理由を述べるものです。
その第一の理由は、臨教審の目指す教育改革が、憲法、教育基本法に基づく戦後の民主教育を否定し、日米軍事同盟体制強化、西側の一員論に立った教育の反動的再編を進めようとする大変危険なものだからです。
臨教審は、総理直属の審議会であります。その中曽根総理は、戦後政治の総決算を標傍するとともに、行政改革なくして教育改革なし、「行政改革で大掃除をして、お座敷をきれいにして、そして立派な憲法を安置する。」と述べているのであります。しかも、現に中曽根総理は訪米の際、日本列島を不沈空母化すると発言し、レーガン政権の言いなりに軍備拡張を突き進めております。
本来、国民の教育要求を実現していく教育改革の方向は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」した憲法の精神を踏まえ、教育基本法の理念である教育の機会均等、平和と民主主義を担う国民の育成、国民の教育を受ける権利を政治の責任と国民的運動によってしっかりと確立していくことにあります。本法案は、言葉の上では「教育基本法の精神にのっとり、」としておりますが、委員会の審議を通しても、教育基本法を遵守する保障が何一つないことが明らかであります。
反対する第二の理由は、軍事費増大、教育予算大幅削減の臨調行革路線貫徹という立場に立った教育改革にあります。
今、教育にかける国民の願いは、まず校内暴力と非行を克服し、受験戦争や落ちこぼれのない、一人一人の子供に行き届いた教育の実現にあります。そのためには、子供の悩みにこたえ、子供の置かれている家庭環境などにも配慮したよりよい教育活動を保障することです。こうした切実な国民の声に耳を傾けるなら、子供の顔と名前が一致しないようなマンモス学校の解消、すべての子供の個性や能力を伸ばすための四十人学級の実現、公立と私立の格差を是正するための私学助成の拡充こそが、今政府の責任において直ちになされるべきではありませんか。
このような教育条件の整備は、臨教審の設置を待たずに実施できることであり、既に国会において衆参両委員会で決議され、国民的な合意がなされているものであります。にもかかわらず、中曽根内閣は、教育費の支出を極力抑制せよという去る七月二十五日の行革審の意見を最大限尊重すると言い、そのため、昭和六十年度からの四十人学級の実現を確約しないありさまです。
このことは、まさに中曽根内閣が、これら教育条件の整備こそ教育基本法第十条によって政府が教育行政として負っている責務であるという、その重大性を少しも自覚していないことをみずから露呈したものと言えます。この自覚がなく、安上がり教育を大前提とする教育改革なるものは、教育活動の一層の画一化、それについていけない落ちこぼれの放置、早々と適性、能力を見限っての進路の強制と、それに見合う学校体系へと行き着くことになり、今日の教育荒廃をさらに進めるものであります。
反対理由の第三は、臨教審の性格、権限、委員構成と選任、会議の運営などすべてにわたって一般行政からの独立性、国民的合意を形成する上で不可欠な民主性、公開性が保障されていない点にあります。
つまり、機構は総理直属、委員並びに専門委員は総理の任命、会長は総理の指名、そして会議は非公開、これでは国民に開かれた審議会などと断じて言えるものではありません。特に本法案は、会議の非公開にとどまらず、委員に対し不当にも法的に全く必然性のない守秘義務まで課して、会議の密室性を強めています。そのため臨教審は、強大な権限を持つ総理の罷免権をてことした統制支配につながる大きな危険性を持つものであります。このことは、戦前の軍国主義、極端な国家主義の教育を厳しく反省して、何よりも公権力による教育に対する不当な支配を許さないとした教育基本法第十条に違反する重大な事態になりかねません。
以上が、本法案に反対する我が党の見解であります。
そもそも、今回本法案が提出されたその根底には、戦犯政治の継承という中曽根内閣の政治姿勢があります。それは、あの忌まわしい十五年戦争は日本が行った侵略戦争であったという明確な認識と反省に立っていない点でも明らかです。だからこそ、来年春から高校で使用される社会科教科書の検定で、旧日本軍の細菌戦部隊、七三一部隊が中国人など数千人に生体実験を行った上殺害した事実の記述を削除させたり、南京大虐殺や日本軍による沖縄住民殺害に関する記述を弱めるよう命ずるなど、教育への強権的介入が進められてきているのです。
こうした教育内容への国家統制を断じて許すわけにはまいりません。学問の自由と教育の自主性は尊重されなければなりません。教育行政は教育活動に奉仕するものであり、国民全体の幸せ、社会進歩に奉仕すべきものであります。
最後に、私は、安保体制下にあって核戦争の危機が強まる中、広島、長崎に原爆が投下されて三十九年目の夏、日本を核戦場にするな、そして教え子を再び戦場に送るなの誓いを新たに、憲法改悪阻止、核兵器の全面禁止を願う広範な人々と御一緒に、真の教育改革に向けて前進することを表明し、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/8
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009・木村睦男
○議長(木村睦男君) 伊藤郁男君。
〔伊藤郁男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/9
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010・伊藤郁男
○伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております臨時教育審議会設置法案に賛成の討論を行うものであります。
戦後の我が国社会は、飛躍的な経済成長を通じて発展してまいりました。そして現在我が国の国民総生産は、アメリカに次ぐ世界第二位、国民所得も西欧諸国と肩を並べるほどになってまいりました。また、これに伴って国民生活の水準も向上し、労働条件の向上や自由時間の増大、国民福祉の充実、レジャー施設の拡大など、日本国民は次第に豊かな社会を享受できるようになりました。
こうした我が国社会の発展は、海外の技術を導入しつつ、日本国民の勤勉さとすぐれた応用力などによって築き上げられてきたものであります。そして、その背景には、六・三・三・四制の学校制度の確立や教育の機会均等を目指した諸条件の整備などによって我が国教育水準の飛躍的向上があったものと、私は一定の評価をこれに与えるにやぶさかではありません。
しかしながら、今日、我が国は大きな変革期にあります。すなわち、我が国が欧米先進国の技術を利用して高度成長を遂げた時代は今や終わりを告げつつあります。我々は、この間に形成されました我が国の制度、慣習、生活様式などの各般にわたって新しい時代に対応し得る改革を進めていかなければならないのであります。それは、大量生産、効率性、画一性を重視してまっしぐらに進んだ時代から、西側主要国の一員として主体的に国際社会に貢献していくことのできる創造性、多様性、国際性を必要とする時代への転換であります。このような我が国社会の量的、質的な変革に伴って、教育もまた新たな対応が必要となっておりますことは申すまでもありません。
現在、緊急かつ深刻な課題として提起されております教育の荒廃、青少年非行の激増、社会環境の悪化などの諸問題は、教育現場はもとより、利己的な風潮、学歴社会、都市問題といった今日の社会のあり方にかかわる幅の広い、かつ根の深い問題であります。また、二十一世紀に向かい、先端技術を中心とした高度産業社会における全体的な教育システムの再構築という課題も緊急に解決を迫られているのであります。こうした視点に立って教育改革を進めていくためには、文部省、中教審といった既存の縦割り行政の枠組みを超え、国民のコンセンサスの上に立脚して、政府を挙げて取り組む体制をつくることが何よりも必要であります。
民社党は、この見地から本年一月の党首会談において、教育改革に国民の総意を結集して取り組むため、中曽根総理にいわゆる教育臨調の設置を提唱いたしたのであります。ただいま議題となっております臨時教育審議会設置法案を政府が今国会に提出してまいりましたのは、総理が我が党の主張に理解を示され、これにこたえたものであると敬意を表するものであります。
しかし、政府案には二つの重要な問題点がございました。一つは、委員の人選は、臨教審の審議、ひいては我が国の教育のあり方に重要な影響を与えるものであり、国民及びその代表たる国会の同意を求めるべきであったにもかかわらず、両議院の同意を必要としていなかったことであります。もう一つは、審議会の答申、意見の実行性を担保して強力な実施への裏づけとするために、これを国会に報告すべきでありますが、その規定が入っていなかった点であります。このため、我が民社党の主張によりまして衆議院段階において、臨時教育審議会委員の任命に当たっては両議院の同意を必要とする、また臨時教育審議会の答申、意見について、政府はこれを国会に報告するものとするという二点を加えて政府案の修正が行われたのであります。
教育改革は、行政府がその責に任ずることはもちろんでありますが、以上の二点を修正したことによりまして、臨時教育審議会に関する国会のかかわりはより強まり、国民的基盤に立った教育改革が推進され得るものと私は高く評価するものであります。
私は、この際、政府並びに設置される臨時教育審議会に対し、次のような希望を申し述べておきたいと存じます。
第一は、審議会委員の選任についてでありますが、今会期中の国会同意は物理的に大変難しいものと推察はいたしますが、選任に当たって、政府は特に広く国民各層の意見が反映されるよう、各方面の方々を網羅するよう留意していただきたいのであります。また、選任された委員には、特定の価値観や団体の利害などにとらわれることなく、広く国民的立場からの議論をお願いしたいのであります。
第二に、国民合意の形成についてであります。
教育改革の成否は、ひとえに国民合意の形成にかかっていることは申すまでもありません。そこで、審議会の運営に当たっては、逐次広く国民の意見を聞くための公聴会を開催すること、及び審議会は結果だけでなく、審議の経過を国民に公表するなど可能な限りの公開の原則を貫き、それに対する意見を吸い上げていくというフィードバック方式をとっていただくことを要望いたすものであります。また、政府におかれましても、教育改革に対する国民世論喚起のため特段の配慮を講ぜられんことをお願いするものであります。
第三に、政治的中立の確保であります。
教育は政治的に中立であるべきであり、特定の政党を支持したり、特定の政治意識を醸成せしめるようなことが教育の現場で行われてはなりません。審議会は政治的に中立であることはもちろん、教育の政治的中立を確保し、責任の所在の明確な行政体制のあり方についても十分な御議論をいただきたいのであります。
最後に、教育改革という国民的大事業の推進には、いずれにいたしましても総理大臣の識見と権限に期待するところが大であり、中曽根総理は、審議会が審議し答申を行った諸事項については必ずこれを実行に移すという強い決意を持って臨んでいただきたいのであります。昭和四十六年の中教審答申の轍を踏むことのないよう、総理にこの点格別のリーダーシップを発揮していただきたいのであります。同時に、教育改革に必要となる財政負担につきましては、これを惜しむことなく充当していただくことを強く望むものであります。
我が民社党は、結党以来、教育を重視し、教育国家建設の提唱を初め、中央教育委員会構想、中高一貫教育の推進、教育憲章の制定などさまざまな教育政策を提言し、その実現に努めてまいりました。我々は、臨時教育審議会の設置が真の教育改革に直結するよう審議の行方を見守るとともに、今後とも必要な提言を加えていくことを申し添えまして、賛成の討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/10
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011・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/11
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012・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/12
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013・木村睦男
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110115254X02919840807/13
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