1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年四月十六日(火曜日)
午後三時二十七分開議
出席委員
委員長 粕谷 茂君
理事 浦野 烋興君 理事 田原 隆君
理事 森 清君 理事 渡辺 秀央君
理事 後藤 茂君 理事 城地 豊司君
理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君
甘利 明君 尾身 幸次君
奥田 幹生君 加藤 卓二君
梶山 静六君 高村 正彦君
佐藤 信二君 仲村 正治君
野上 徹君 野田 毅君
林 大幹君 原田昇左右君
奥野 一雄君 上坂 昇君
浜西 鉄雄君 水田 稔君
横江 金夫君 和田 貞夫君
渡辺 嘉藏君 木内 良明君
西中 清君 福岡 康夫君
青山 丘君 横手 文雄君
工藤 晃君 野間 友一君
出席国務大臣
通商産業大臣 村田敬次郎君
出席政府委員
通商産業省機械
情報産業局長 木下 博生君
委員外の出席者
商工委員会調査
室長 朴木 正君
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本日の会議に付した案件
半導体集積回路の回路配置に関する法律案(内
閣提出第六三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/0
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001・粕谷茂
○粕谷委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、半導体集積回路の回路配置に関する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田原隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/1
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002・田原隆
○田原委員 二十一世紀の幕あけを目前に控えた今日、我が国の経済社会は大きな変革期にありますが、我々はこの変化を先取りした適時適切な施策を積極的に展開し、我が国の経済社会の発展基盤を揺るぎないものとするとともに、さらなる発展を図り、国際社会の有力な一員としてその地位にふさわしい役割と責任を担っていかなければなりません。この意味において、新たな技術開発への挑戦、広範かつ急速に進展する情報化への対応、さらには激化する通商問題への対応を今こそ積極的に推進していくことが極めて重要であります。
本法律案が提出されたのも、このような時代的要請にこたえるためのものであると認識しているわけでありますが、半導体集積回路は、わずか四半世紀前に開発された新しい工業製品でありながら、その後の普及は目覚ましく、我が国産業経済、国民生活にとって不可欠のものとなっているのみならず、今後とも高度情報化社会における産業の米として一層その重要性を増すと見込まれております。
このように、重要な工業製品の生産を担う我が国半導体産業が健全な発展を遂げることは、我が国経済の一層の発展のためにぜひ必要であるわけであります。そのためには製品の模倣が横行するようなことがあってはならない。半導体集積回路の回路配置を独自に開発した者を適切に保護するための立法が必要であるという趣旨には大いに賛同するものであります。また、既に米国において本法律案と同趣旨の法律が施行されている現状にかんがみ、本法律案を速やかに成立させることは、米国と並ぶ半導体先進国である我が国の国際的責務であり、また、日米通商摩擦を未然に防ぐ策としても極めて重要であると考えております。
以上の基本的な認識に立ち、本法律案について政府の見解をただしていきたいと考えております。
最初に、世界の半導体集積回路産業の現状と、これに占める我が国半導体集積回路産業の地位について簡単に要点を述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/2
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003・木下博生
○木下政府委員 半導体集積回路は、今先生おっしゃったように、急速に過去十数年の間に伸びてきた産業でございますが、その中でも米国及び日本における発展が著しいものがございます。
自由世界全体の半導体集積回路の生産は、ドルで申し上げて恐縮でございますが、外国の資料でございますのでドルで申し上げますと、一九七八年には六十一億ドルであったものが一九八四年には二百五十八億ドルと、年平均二〇%の伸び率を示しております。こうした中で我が国の半導体集積回路の生産も非常に大きく伸びておりまして、同じく一九七八年の十三億ドルから一九八四年には七十億ドルと、年平均二三%の伸び率を示しておりまして、自由世界におけるシェアも、七八年の二二%から八四年には二七%という格好で伸びております。今後、電子機器が産業社会において急速に浸透していくことが予想されておりますので、これに伴いまして半導体集積回路産業もますます成長していくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/3
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004・田原隆
○田原委員 今、日米の半導体産業の伸びについて詳しくお話がありましたが、日米の半導体集積回路産業の技術上の競争力についてどのように認識しておられるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/4
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005・木下博生
○木下政府委員 半導体集積回路は一九五〇年代にアメリカで初めてつくられ、それが発展してきたものでございまして、技術的にはアメリカの方がはるかに歴史があり、高いわけでございます。
ただし、最近は日本の半導体も急速にアメリカに追いつくような傾向を示しておりまして、技術的に見ますと、我が国は良質の労働力、すぐれた品質管理技術を生かした高度かつ信頼性の高い生産技術を誇っております。これはほかの分野の産業とも共通するところでございますが、半導体におきましてもそういうことでございまして、半導体をつくる機械についても、従来はアメリカから輸入したものを使っておったわけでございますが、最近は日本で生産された機械をたくさん使うようになってきているということで、全体として生産管理技術は非常に向上してきております。
一方、アメリカの場合には、豊富な技術的蓄積等を背景として高度な開発技術力を有しておりまして、新製品開発力もすぐれております。このため、特に半導体の中でもいろいろな論理計算を行うようなマイクロプロセッサーとかロジック等の製品分野ですぐれております。日本の場合は、もちろんそういう分野での生産もやっておりますが、どちらかというとメモリー関係の半導体にすぐれているということが言えると思います。
そういう中で、世界の中で日米両国で九割を占めているということでございまして、両国の半導体産業が今後共存共栄して発展していくものというふうに我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/5
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006・田原隆
○田原委員 半導体集積回路の分野において日米通商摩擦はどういう現状でありますか、要点をお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/6
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007・木下博生
○木下政府委員 半導体集積回路は、従来日本がアメリカから輸入をたくさんするというような形になっておったわけでございますが、八一、二年ごろからその地位が逆転して、日本の方が金額的には、アメリカに対する輸出量の方が輸入量よりもふえているという状況になっております。昨年におきましては、日本の対米輸出は日本の統計で三千七百二十二億円で、対前年比二〇二%、ちょうど二倍に伸びておるわけでございますが、一方、輸入の方は千六百二十六億円ということで、五二・一%の増加ということになっております。いずれも両国の半導体に対する需要の堅調を反映して、非常に大きな伸びを示しておるわけでございます。
そのような状況でございますが、昨年来、日本における半導体の需要の伸びに応じて半導体の設備投資に対する非常に強い意欲が各メーカーに見られまして、そのために急速に日本の生産能力が高まってきているというようなことがございますので、去る三月十八日の日米エレクトロニクス次官レベル会合におきまして、日本の市場が規模が拡大するほど対米輸入が増加していない。というのは、日本でどんどん生産するものですから、アメリカからの輸入が日本の市場が伸びるほどは伸びてないというような懸念も表明されておりますし、それから全世界的に設備能力が若干過剰になるおそれがあるのではないかというような心配もしておるわけでございます。そういうことでございますが、長期的に見ると世界の半導体需要というのは今後伸びていくというふうに考えられますので、現在のところ、それほど深刻な摩擦というようなことにはなっておりません。
それで、日米先端技術産業作業部会というのがございますが、そこで一九八三年十一月に半導体について両国で関税を撤廃しようという話し合いができたわけでございますが、それに基づきまして、ことしの三月から日本、アメリカ両国において半導体の輸入関税を撤廃する措置をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/7
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008・田原隆
○田原委員 やや技術的になるかもしれませんが、半導体集積回路の設計から製造までずっと考えていきますと、いろいろ工程があるわけですが、その工程をチャートにするといわゆるフローチャートができるわけです。そのフローチャートに従って少し説明していただきたいと思うのですが、今度問題になっております回路配置、レイアウトというのは、そのフローチャートのどの辺を指しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/8
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009・木下博生
○木下政府委員 半導体は数ミリ角のチップの中にたくさんの素子を生成させるというようなものでございまして、非常に細かい技術を要してつくられるものでございます。半導体をつくりますときの工程を大きく分けますと、設計工程と製造工程ということに分かれるわけでございますが、その設計工程も幾つかの段階に分かれております。
まず第一には、その要求の仕様に応じたシステムをつくっていく、いわゆるシステム設計の段階でございます。そのシステム設計をやりますと、その上で半導体のその論理回路を設計するということで、どのような計算をしていくものをどういうふうに置いていったらいいかというような論理回路の設計を次にいたします。そのような論理回路の設計をしました上で、その論理回路に合うようなトランジスタや抵抗や何かをどういうふうに置いていくかというような意味でのトランジスタ回路設計というのを行うわけでございます。その段階を経まして、そのトランジスタ回路設計をベースにしまして、諸要求あるいは数値諸元をコンピューターに全部入れまして、レイアウト設計ということをやるわけでございます。半導体のそれぞれの部分についてのそのトランジスタ回路設計に見合ったものをコンピューターの中に入れ、それを磁気テープの中に入れていきまして、レイアウト設計というのをやるわけでございます。
そのレイアウト設計が半導体集積回路の全体の回路配置のベースになるものでございまして、その設計を行った段階で、機械で全部やっておりますので、設計自身が正しいかどうかということを全部細かく人がチェックいたしまして、チェックした形で、それを全部修正すべきものは修正して磁気テープの中に記録するわけでございます。記録した磁気テープを、今度は製造段階に入るわけでございますが、マスクに入れます。マスクといいますのは写真のネガみたいなものに当たるものでございますけれども、半導体というのは立体的な構造をなしておりますので、工程に応じていろいろな作業をやっていきますので、それに応じて八枚から十数枚程度のマスクというのをつくっていきますが、それは磁気テープに記録された数値をベースにして、コンピューターで電子ビームを出しながらマスクをつくっていく。マスクをつくったものを今度は露光装置にかけまして、半導体のベースになりますウエハーの上に映していって、それでいろいろな加工をやっていくというようなことで製造工程が行われるわけでございます。
幾つかの加工工程を経ました上で、最終的にできましたものが集積回路ということになるわけでございますが、今御質問の回路配置といいますものは、結局半導体集積回路の回路素子及びこれらを接続する導線の配置というものを言うわけでございますので、この開発のフローチャートから見ますと、設計工程の最後の部分であるレイアウト設計でつくられたときの抽象的な回路配置、これがベースになりまして、できた製品には回路配置が具現化された形で出てくるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/9
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010・田原隆
○田原委員 わかったようなわからぬような話ですが、逆にさかのぼっていきますと、レイアウトが決まる直前というか、直後というか、上から来ると、レイアウトが順番につくられていって、ここからレイアウトだという境ははっきりしていますか、していませんか、このレイアウトの対象になるフローのプロセスの一部というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/10
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011・木下博生
○木下政府委員 設計工程の中でレイアウト設計の直前はトランジスタの回路設計というものでございますが、これは私も中学、高校で物理を習ったときに、物理の教科書なんかに出ているいわゆる電気の回路の図でございますが、そういうものをつくって、それで一つの半導体集積回路全体のものができ上がるわけでございますが、それぞれは単に、それは一応理論的な考え方を示した配置でございますので、それを実際上半導体集積回路、半導体の中にそういうものを生成させていく工程というのは要るわけでございまして、そういうものに変えていくために、レイアウト設計ということでいろいろな数値を入れて磁気テープの中に、例えば回路の幅はどういうふうにしていくとか、どういうふうなところにトランジスタを置いていく、あるいは抵抗を置いていくというようなことをやって決めていくわけでございますので、レイアウト設計というのは設計図自身をつくり上げるものではございませんが、その個々の部分ごとにつくり上げていく工程において、その部分についてはレイアウトが固まっていく、固まっていったそれぞれのレイアウトを全体として合わしてみると、それが一つの半導体集積回路のレイアウトになるという意味で、レイアウトの設計段階がはっきりと示すことができるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/11
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012・田原隆
○田原委員 そうすると、需要に基づいてシステム設計がなされて、それから論理回路の設計がなされますが、その後トランジスタの回路設計をやりますね。そのときにシンボル図といいますか、トランジスタとかコンデンサをシンボルであらわしていって、それから実物を配置したような図に入っていって、手作業が相当伴ってきて、手作業がそこで一応どこかで終わりますね。そしてコンピューターを使いながらすり寄せていくんだと思うのですが、そうすると、その辺が一番大事なところなんですが、トランジスタの回路設計図といいますか、その辺は対象になるのですか、ならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/12
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013・木下博生
○木下政府委員 トランジスタの回路設計図自身は、この集積回路の回路配置には該当しないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/13
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014・田原隆
○田原委員 そうすると、回路配置図にコンピューターの助けを得て修正を加えて、そして図面として最終のところまですり寄せたものから始まるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/14
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015・木下博生
○木下政府委員 コンピューターの助けをかりまして、先ほど申し上げたトランジスタ回路設計から実際にどこにどういうような配置でトランジスタを入れる、あるいは抵抗を入れるというような形の実物の、同じような形で置いたものをレイアウトとしてつくっていくわけでございますが、つくったものをチェックするためには、全体の一つの図をつくってみるというような作業も行うわけでございますけれども、立体的な形の配置をチェックするために、例えば色を変えて、それでそのそれぞれの色を変えたものを見ながら、全体の例えば電気が通じるべきところに通じているかどうか、あるいは通じるべきでないところに通じるようなことになってはいないかというような点をチェックいたしましてやるわけでございますが、そういう最終的な集積回路自身にそのままそれが立体的な製品としてでき上がると同じ形になったもの、それをレイアウト設計というわけでございまして、それからが回路配置というふうに言えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/15
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016・田原隆
○田原委員 ちょっと話を変えまして、この回路配置、これがどうして法律一本までつくってやらなければいかぬ保護の対象になるほど値打ちがあるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/16
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017・木下博生
○木下政府委員 今申し上げたような回路配置の開発には、多大のコストを要するわけでございます。人手もたくさんかかりますし、複雑な半導体集積回路をつくりますためには、投入資金が数億円かかって開発期間も二年、三年を要するということでございますけれども、他方、そういう開発をしてでき上がった集積回路の製品を見まして、その製品のでき上がったものを解析して、どういうような形でつくっていったかということをやる技術というのが非常に進んできておりまして、先ほども申し上げましたように期間は非常に長くかかって、金額は多額の金額がかかりますけれども、模倣することは非常に容易にできる。数億円かかったものも数百万円かけて非常に短い期間で模倣することができるようになってきているわけでございます。
そのために、模倣する人が、せっかく金と時間をかけてつくったものをどんどん模倣して同じようなものを市場に出していくというようなことになりますと、オリジナルなものをつくった人たちの開発努力というのが無に帰してしまう、そういうようなことでは公正な競争条件が確保できないというようなことでございますので、よりよい回路配置の開発意欲が失われるおそれがないように、急速な発展を遂げてきた回路配置の発展が阻害されることがないように、そのようにオリジナルな回路配置をつくり出した人たちの権利を守ってやる必要が非常に高まってきているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/17
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018・田原隆
○田原委員 模倣という言葉が出ましたけれども、模倣が容易だというけれども、そんなに容易なものですか。そんなに容易なら、どのくらい模倣されているのか、模倣の現状といいますか、もう時間がありませんから、要点だけひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/18
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019・木下博生
○木下政府委員 模倣する技術につきましても、コンピューターや何かの発展によってそれが可能になってきたわけでございますけれども、なぜ模倣が容易になってきたかといいますと、三つの点が挙げられると思います。
一つは、模倣機会が非常に多くなってきたということで、どこにでも集積回路というのは売られて使われているわけでございますから、使われているものを手に入れるということは非常に簡単になってきているということが一つございます。
もう一つは、技術的な容易性でございまして、これは技術的にでき上がったものをいろいろ解析してみると、それだけでどういうふうにつくられたかということは非常にわかりやすいという意味で、容易になってきております。
それから第三番目の点は、経済的容易性でございまして、これも先ほど申し上げましたように、オリジナルなものをつくることに比べて金額がはるかに安くでき上がるというようなことで模倣が非常に容易になってきております。
それでは、現在、現実にそういう模倣というのがどんどん行われているかという御質問についてでございますけれども、現時点におきまして、我が国の国内で実際に回路配置の模倣が行われ、問題が発生しているということはないと私どもは承知しております。しかしながら、半導体集積回路の集積度の向上に伴いまして、模倣の可能性はますます高まっていくものと考えられますし、オリジナルなものを開発するよりも模倣すれば安くできるということになると、そちらの方に動いていく可能性がありますし、過去において半導体集積回路がその集積度が低い時代に、業界ではよくお互いに模倣し合うというのが習慣となっていた時代もあったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/19
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020・田原隆
○田原委員 先ほどフローについて詳しくお話を伺いましたけれども、そのフローを逆行していって、いわゆるリバースしていって、そして解析していきますと、まねができるわけだと思うのですけれども、先ほどのお話の中では、トランジスタ回路設計は対象にならないと言うが、そこまでさかのぼってしまって、そしてつくり直したものは、たとえ同じようなものができても、これはこの法律の取り締まりの対象にならないわけですか。リバースエンジニアリングというのがよく言われておりますけれども、本法との関係といいますか、その辺の微妙なところですが、ちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/20
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021・木下博生
○木下政府委員 今回の法律案におきましても、そのいわゆるリバースエンジニアリングに関する規定が置いてありまして、解析すること自身は法律でも認められるようになっておるわけでございます。そのリバースエンジニアリングというものをやることによりまして、半導体に具現化されている製造方法、技術水準、ノーハウ等の評価を行って、みずからの技術水準の向上を図ることができるという意味で、半導体集積回路産業においてはそれが正当な慣行として定着しておりますので、そういうこと自身をやることは法律でも認めることにしようというふうに考えておるわけでございます。
ただ、リバースエンジニアリングの結果、今先生おっしゃいましたように、設計の各段階における工程もすべてわかることになるわけでございますが、そのレイアウト設計以前の段階にまでさかのぼったものを、またそこから同じようなものをつくっていくというようなことで、実際上、商業的な販売を目的としまして同一の回路配置を持った半導体集積回路を製造するというような行為になりますと、それは通常考えておりますリバースエンジニアリングの範囲から外れてしまう、むしろ模倣と見るべきだということでございますので、そういう種類の行為は模倣行為として、この法律では権利として、もしそういうことをやったら権利者の方から排除行為要求等なされてもやむを得ないということになるのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/21
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022・田原隆
○田原委員 もう一度お伺いしますが、トランジスタ回路設計図は模倣の対象にならない、そこまでさかのぼってもう一回フローに従ってきた場合、金が一番かかるのはレイアウト設計をやるコンピューターを使ったすり寄せの段階だから、保護してやらなければいかぬ、公正な競争ができないと言われたと思うのですよ。それを今のお話だと対象とならないトランジスタ回路設計まで戻っていって、もう一回戻っても対象にならないような話だったけれども、何かおかしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/22
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023・木下博生
○木下政府委員 トランジスタ回路設計、論理回路設計のところまで戻ってリバースエンジニアリングで設計の工程を解析、分析することはできるわけでございます。したがいまして、そこまで戻った上で、戻ったものをベースにしまして独自にレイアウト設計を行い、それで半導体集積回路をつくるということになりますと、それは新しい半導体集積回路をつくったということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/23
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024・田原隆
○田原委員 よくわかりました。
そうしますと、もうちょっとさかのぼりまして、論理回路とかシステム設計とかやった結果、ここらは余り金がかからぬから保護しなくていいというのか、保護の対象としても実益性がないというのか、それとも保護しようとすれば、保護する方法があるとすれば、どういう法律で保護されているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/24
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025・木下博生
○木下政府委員 今回の法律で保護しようとしておりますのは、集積回路の回路配置を保護しようということでございまして、回路配置自身は観念的には、例えば特許法に基づく特許に該当し得るものでございます。ただ、新規性、進歩性というものから考えると、回路配置自身について新規性、進歩性というのはなかなか認められないということになりますので、したがって、今回このような法律によってそれを保護する必要が出てくるわけでございます。ただ、そのベースになります論理回路、トランジスタ回路につきましては、それ自身がもし新規性、進歩性を持ったものであれば、それは特許法あるいは実用新案法に基づく保護を受け得る性質のものでございます。しかし、今回のこの法律におきましてそういう新規性、進歩性のない論理回路あるいはトランジスタ回路までこの法律で保護するというようなことになりますと、回路配置の円滑な創作活動を阻害するということも懸念されるということで妥当でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/25
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026・田原隆
○田原委員 レイアウトは、そうしますと権利保護のために新しい法律をつくるわけですが、従来の特許法とか著作権法でもいいような感じがする部分が相当あるのですけれども、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/26
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027・木下博生
○木下政府委員 ただいま申し上げましたように、特許法との関係で申し上げますと、回路配置は特許法で言う発明に抽象的には該当すると思いますけれども、現実には既知の知識を基本とした経験則に基づく繰り返し作業でつくっていくというようなものでございますので、新規性、進歩性の保護要件を満たすことはなかなか難しいということで、特許法による保護にはなじみにくいということが言えるかと思います。
それから著作権でございますけれども、回路配置はいわゆる実用物である半導体集積回路の本質的な構成要素になっているわけでございますので、半導体集積回路と不可分のものであるということでございまして、このような実用物に対して著作権法の保護をするということは必ずしもなじまないというのが著作権法の解釈だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/27
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028・田原隆
○田原委員 この法律と、米国の半導体チップ保護法というのが最近できたわけですが、これとの違いについて少し詳しく説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/28
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029・木下博生
○木下政府委員 アメリカで昨年の十一月に制定されました半導体チップ保護法と我が国の法律とは若干異なる点があるのは事実でございます。それはその法体系自身が我が国とアメリカとの間では違っているというようなことがございまして、そういうふうに若干の異なる点が出てくるのはやむを得ないことかと思います。しかしながら、保護期間、保護対象、権利内容等、基本的な枠組みにおいてはアメリカの半導体チップ法とほぼ同じだというふうに考えております。
アメリカの法律と違う大きな点だけ申し上げますと、第一は外国人の扱いでございまして、アメリカの法律の場合には相互主義を採用しておりまして、アメリカと同じような法律で保護している外国のその国のチップはアメリカで保護するというような考え方に立っておりますけれども、日本の場合には、すべての国の国民の回路配置について同一の条件により保護するというようなことにしております。
それから二番目の違いは、権利の発生の時点でございまして、商業的利用または登録のいずれか早い時点に権利が発生するというアメリカの法律の体系であるに対しまして、今度の御提案申し上げております法律では、登録により権利が発生するということを考えております。
それから三番目は、アメリカでは権利侵害に対して罰則の規定がございませんが、日本ではほかの同様の知的所有権保護の規定とあわせまして罰則規定を設けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/29
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030・田原隆
○田原委員 第二十四条に善意者保護の特例規定を設けておりますけれども、この趣旨についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/30
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031・木下博生
○木下政府委員 二十四条で「善意者に対する特例」という規定がございますけれども、半導体集積回路というのは、各種の製品に組み込まれまして広く流通し、広く使われているというものでございます。それで、模倣回路配置を用いた半導体集積回路が組み込まれた製品であることを知らずに、かつ知らないことについて過失がない者が業としてそういう半導体集積回路を譲渡する場合が出てくるわけでございますけれども、この場合も権利侵害であるというようなことにいたしますと、かえって半導体集積回路あるいはそれを組み込んだ製品の流通を妨げるということになりかねないということを考えまして、本条により善意無過失者に対する特例を設けたものでございます。ただし、善意者が模倣の事実を知った後においてそのものを販売するというような行為が行われても、それに対しても何ら処置を講じないというのは適切でございませんので、そのような場合には公平を確保するために、ライセンス料に相当する額の金額の支払いをそういう人たちに義務づけている。しかし、それによってその半導体集積回路自身の侵害を行ったということには必ずしもならないという考え方でこの規定を置いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/31
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032・田原隆
○田原委員 「回路配置利用権の効力は、他人が創作した回路配置の利用には、及ばない。」旨の規定が第十二条第一項にありますけれども、これはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/32
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033・木下博生
○木下政府委員 同じような考え方に基づいて集積回路をつくって、結果的に同じようなものができ上がるということがあるわけでございますので、十二条のこの規定は、独立に開発された回路配置をこの法律においてはおのおの別個に保護することを明らかにしたものでございまして、たまたま一致して、その模倣によってつくったものではないということがはっきりしたときには、それぞれの人がそれぞれ創作者として権利の保護を受けられるということが必要だと考えてつくった規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/33
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034・田原隆
○田原委員 一般に、工業所有権、工業特許権ですか、特許の場合は、知らずにつくってもできたものが同じであったらいけないのじゃないですか。その辺、これと非常に違うと思うのですけれども、このように絶対的な独占権を認めなかった理由はもうちょっとわかりにくいのですけれども、説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/34
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035・木下博生
○木下政府委員 特許の場合には先願主義を採用しておりまして、同じ発明をした人の場合には、早く出願をした人の方が権利を得られる。しかもその権利を得るに際しまして、それが新規性があるかどうかという厳重な審査をした上で権利が与えられ、それに見合った独占権が与えられているわけでございます。ただ、本法の場合には、他人の回路配置の模倣を防止することによりまして、公正な競争を確保し、回路配置の創作者の投資意欲が損なわれないようにしようというのが目的でございますので、まねして安くつくってしまう人を防止しさえすれば、そのそれぞれの回路配置について必ずしも新規性がないものもあるわけでございますけれども、そういうものを開発しようという意欲がそれで損なわれることがないということなんで、特許法とは違った保護の仕方を考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/35
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036・田原隆
○田原委員 回路配置の利用権の内容に半導体集積回路の使用行為が含まれていないのですが、これはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/36
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037・木下博生
○木下政府委員 特許法の場合には使用の部分までその権利がかぶさる形になっておりますけれども、本法案におきましては先生御指摘のように使用の部分が含まれないようになっております。
その理由は、機械等に半導体集積回路が組み込まれましてその一部として使用されるものでありまして、その使用に当たってその機械の全体に占める半導体集積回路のウエートというのは比較的小さいということがございます。そのような状況であるにもかかわらず、使用行為を権利化するというようなことになりますと、その機械等を使用するユーザーは非常に不安定な状態に置かれてしまうということになりまして、結果としてそういう機械器具の取引の安定を著しく害するということでございます。他方、その権利者にとりましては、使用者たる最終ユーザーにまで権利が及ばなくても十分な保護を与えられるというような状況でございますので、この法案におきましては使用まで権利の対象とすることにしないで十分だと考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/37
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038・田原隆
○田原委員 回路配置の利用権の存続期間を十年にする、この十という数字は恐らく適切だと私も思うのですが、長いような短いような感じですけれども、その理由と、それから附則に、施行日から前二年内に最初に譲渡等されたものに限り登録を認める、それ以前のものは保護しないという、これは当然の措置かもしれませんが、その辺の二年という数字ですが、これらについてもちょっと触れていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/38
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039・木下博生
○木下政府委員 半導体集積回路のように技術進歩が非常に早いものについて、それを創作した人たちの権利を保護することと、それからそれを使用する人たちの使用する立場を保護する、両方考えまして、両方のバランスをとってこれらの保護期間を考えた方がいいということで考えたわけでございます。
それで、十年間の保護期間が長いか短いかという点でございますけれども、具体的にはその全体のバランスを考えて適切な期間を考えたわけでございますけれども、権利者が開発に要した費用を十分に回収するに足る期間保護することができれば十分ではないか、その後は公的な資産としてだれでも自由にその成果を利用できるような形にしたらいかがだろうかということを考えたわけでございますが、普通半導体集積回路の場合には最初の出荷から六、七年でピークを迎え、十年程度でその半導体集積回路自身成熟化するというふうに言われておりますので、その時点まで保護すれば投資回収も十分に終え得るというふうなことを考えて十年としたものでございます。ちなみに、アメリカの場合でもやはり同じ十年の保護期間をとっております。
〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
それから、設定登録可能な期間を商業的利用から二年以内とした理由でございますけれども、これも創作者等とそれから利用者のバランス、両方を考えてやったわけでございまして、権利者にとりましては、自分で開発した回路配置について二年間の商業的利用を通じて技術的見地のみならず市場性、商品価値等がわかってくる、そういうことが確認できて商業的価値のあるものを、初めてこれなら登録して自分の権利として保護してもらった方がいいなというようなことで申請できるという意味で、その申請費用も軽減されることになろうかと思います。すべての回路配置についての登録を要しないという意味でそういうことが言えるかと思います。
一方、利用者の立場に立ちますと、特定の人が潜在的権利をあくまでも保持しているというようなことは必ずしも適当ではございませんので、二年以内に登録するようにと期限を切ることによりまして、公的資産としてそれ以降は自由にその回路配置をほかの人も使えるようにする方がベターではないかというようなことで二つのバランスを考えたわけでございまして、登録される回路配置が選別され、乱登録が防止されることは権利者以外にとっても商取引を行うに当たり注意義務の範囲の軽減に資することにもなるというようなこともございまして、二年間で一応登録できる期間を切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/39
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040・田原隆
○田原委員 少し手続に関することについて伺いたいと思うのですが、年間どのくらい申請があるとお考えになっておるか、そしてその手続は相当複雑なのかどうか。こういう日進月歩の産業に関する技術ですから、できるだけ登録事務は簡素にして要を得て実効が上がるものが望ましいと私は思うのですが、その辺の通産省のこれからの運営に対するお考えと、現に今どの程度まで考えているかというようなことについて伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/40
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041・木下博生
○木下政府委員 こういう新しい法律でございますので、実際にどのくらいのものが登録をして権利保護を求めてくるかということを現在の段階で推測することは非常に難しいわけでございますが、通産省といたしまして半導体集積回路メーカーに年間どのくらい新しいものをつくっているかということを聞いたところでは、年間の申請件数は全体で数千件、多くても五千件程度と予想する会社が多かったわけでございます。今後、本法案の成立を待ちまして、さらに詳細な調査をし、それをベースにしまして登録機関等の人員配置等も考えていきたいと考えております。
それで、登録をするに当たりましては、今先生おっしゃいましたように、登録自体は申請の様式が整って、創作者であることがはっきりする書類さえ整っておればそれで登録できるということでございまして、内容に立ち入って実質的な審査をするわけではございませんので、私どもといたしましては、登録の関係の手続もできるだけ簡易なものにして申請者の方々の便宜を図っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/41
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042・田原隆
○田原委員 認定登録といいますか設定登録といいますか、登録の事務のやり方というのは具体的にどういうふうにお考えになっているのですか。例えばどういうふうな事務的な機関を設けるとか……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/42
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043・木下博生
○木下政府委員 法律によりますと一応通産大臣が登録をするということになっておりますけれども、指定登録機関をして登録させることができるというようなことになっております。行政事務のうち事実確認的で判断要素の少ない定型的なものにつきましては特別認可法人や民法法人等にその事務を行わせるということで、できるだけ行政簡素化あるいは民間活力の活用を図るというような形での行政がよろしいわけでございますので、本法に基づきます登録もどちらかというとそういう事実確認的なものが多いわけでございますので、指定登録機関にやらせるのが適当だと私どもは考えております。
したがいまして、まだ具体的にどういう登録機関にその登録をしてもらうかということは決めておりませんけれども、本法成立次第、適当な機関を選定いたしまして、その登録事務を通産大臣にかわって行わせるということをやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/43
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044・田原隆
○田原委員 我々素人考えに考えますと、これは権利保護ですから何か特許法に非常に類似したような法律であって、工業所有権みたいなものですから特許庁を使ってやればそのままいけそうな気がするのですが、どうして指定登録機関などをつくってやらせるのか、その辺が少しわかりにくい気がするのですが、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/44
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045・木下博生
○木下政府委員 まず、今回の法律に基づきます権利、これは工業所有権的なものではございますが、工業所有権の範疇に入るものかどうかということについて特許庁といろいろ議論したわけでございますが、やはり今回のものは必ずしも特許法体系で言う工業所有権の一部に該当するものではないという結論に達しております。そういうことでございますから、特許庁でその他のものはまずいということを言っておるわけではございませんが、本来国が行うべき事務は膨大な量がございまして、国がみずからやるのは必ずしも適当ではないのではないかというような感じがいたします。
特許庁の場合には、御承知のように実質的な審査を行って、その結果登録等の仕事を行っておるわけでございますけれども、今回のものは事実確認的で判断要素の少ない定型的なものでございますので、できるだけ民間機関を活用した方がベターではないかというようなことを考えております。そのために機関を新設するのか、あるいは設立されている機関に一部の業務としてそれをやってもらうのかということは今後検討していかなければいけませんが、民間にやらせるからといって、その民間で人手や何かをたくさん食うことのないような仕事のやらせ方で、できるだけ簡素な登録事務を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/45
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046・田原隆
○田原委員 設定登録を簡素にやっていただくそうですからそれにこしたことはないのですけれども、具体的にそれじゃ申請書のほかにどんなものを出させようとしているのか、例でいいですから話してみてください、図面とか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/46
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047・木下博生
○木下政府委員 申請書につきましては第三条に書いてございます。第三条の二項で申請すべき事項が書いてございまして、三項でそれに添付するものとして通産省令で定めるところによりまして図面、写真、申請者が創作者であることについての説明書その他通産省令で定める資料を添付しなければいけないということになっております。したがって、今申し上げましたような図面とか写真とか出していただくわけでございますが、私どもとしては通産省令で定める資料ということで製品自身も出していただくことを考えておりますけれども、その程度のもので、企業秘密に当たるような細かいものまで出していただくようにすることは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/47
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048・田原隆
○田原委員 指定登録機関というのは民間であろうと思うのですけれども、それで公平性、中立性が確保できるかどうか。確保してもらわなければいかぬわけですが、その辺のところを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/48
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049・木下博生
○木下政府委員 指定登録機関につきましては法律の二十八条以下に詳しく要件、役員の選任、解任条項等が決められております。したがいまして、今おっしゃいましたように役所、通産大臣にかわって登録事務を行うものでございますので、公平性、中立性が担保される必要があるわけでございます。
そういうことで、法律の中でその指定するための要件というのをはっきり定めておりますので、それに従って公平かつ中立的な機関、公益法人、特認法人等をその対象として考えていきたいと考えておりますけれども、実際に登録事務を行うに当たりまして公平性、中立性等の担保がなされなくなるようなことというのは起こり得るわけでございますので、そのときには事務規程の変更や役員の解任、適合命令というような規定に基づいて適切な措置を行い、その公平性、中立性を担保していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/49
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050・田原隆
○田原委員 この法律ができると、米国において我が国の国民が仮に創作したとした場合に、そのレイアウトは保護されることになるわけですか。
また、日米以外の第三国で我が国の国民が創作した回路配置が模倣された場合の方策はこれで十分なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/50
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051・木下博生
○木下政府委員 現在、アメリカの法律では、アメリカの法律と同様の規定で保護している外国の半導体チップについては保護をするという規定になっております。
厳密に申し上げますと、アメリカの半導体チップ保護法では、回路配置の保護について米国人に対し内国民待遇を与えるか、あるいは同法の規定と実質的に同じ基準の保護を与えている国の国民が創作した回路配置につきましては、大統領布告により保護することができるということになっております。したがいまして、本法案が施行されますれば、日本人が創作した回路配置をアメリカで保護してもらうことが、大統領布告が出されればできることになるわけでございます。また、私どもは、十分その布告が出されるものと期待しております。
それから、この法律が施行される前におきましても、アメリカの半導体チップ保護法によりまして、国際経過規定というのが置かれておりまして、立法化に努力していると認めた国の場合には、商務長官命令によって日本人が創作した回路配置を保護する道が開かれているということがございますので、現在、日本の業界は商務長官に対してその保護をしてもらうように請願を出しておりまして、近々商務省においてはその審査を始めるというふうに聞いておりますので、この法律が施行される前でも、日本人の創作した半導体集積回路はアメリカで保護されることになるだろうと私どもは期待しているわけでございます。
それから、第三国で我が国の国民が創作した回路配置が模倣された場合でございますけれども、模倣されたものが日本に輸入されるというようなことが行われますれば、本法案に基づきまして差しとめ請求あるいは損害賠償請求等ができるわけでございます。しかし、その半導体集積回路が日本に持ち込まれずに日本以外の国で取引されて使われるというような場合には、本法律の適用の余地はございません。したがって、私どもとしては、本法案と同様の内容を持ちます国際条約みたいなものが早くできるように、アメリカとともに国際的な場面で働きかけを行っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/51
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052・田原隆
○田原委員 我が国の半導体集積回路産業界及び半導体集積回路のユーザー業界、これは、この法律案をどういうふうに受けとめて、どういうふうに評価していますか。
〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/52
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053・木下博生
○木下政府委員 この今回の法律案の立案の過程で通産省に、産業構造審議会に小委員会を設けまして、半導体集積回路のレイアウトをどうやって保護したらいいかという御検討をいただいたわけでございますが、そのときにも、単にメーカー代表の方々だけではなく、ユーザーの代表の方々にも入っていただいております。それから、もちろんこういう知的所有権関係の学者の先生等中立的な委員にも入っていただいていろいろ御検討いただいたわけでございますけれども、その中でもそういう各業界代表の方々は言っておられましたけれども、半導体集積回路がこれだけ大きな産業として進んできた段階で、その集積回路の回路配置を保護する必要性というのは非常に高いというようなことで、保護すると同時に、取引に関するルールができることが望ましいというような感じの意見を皆さん方持っておられまして、したがって、そのようなルールをつくるための本法律案に対しては、集積回路産業及びユーザー業界ともに歓迎しているという状況でございます。
また、今御質問もございましたけれども、半導体集積回路産業にとっては、今やアメリカ向けの輸出というのも非常に大きなものになっておりますし、アメリカとの技術的な協力関係も非常に高まってきておりますので、アメリカにおいて我が国企業の半導体集積回路が保護されるための前提条件がこの法律の制定によってできるわけでございますので、そういう意味で、関係業界は高く評価していると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/53
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054・田原隆
○田原委員 半導体集積回路産業は、国民生活や経済活動に不可欠となっている重要物資を供給する産業でありますが、今後我が国においても健全な発展を促していかなければならない分野と考えております。大臣はこれをどのように認識されておりますか、最後に大臣にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/54
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055・村田敬次郎
○村田国務大臣 先ほど来、田原先生の御質疑をこちらで承っておりました。
一九八三年十一月にまとめられました日米先端技術産業作業部会提言にもございますが、半導体集積回路産業を初めとするハイテク産業というのは、先生の御質問にもありましたように、近年急速な成長を遂げております。これら産業の一層の成長は、経済フロンティアを拡大し、世界経済の活性化をもたらすものであって、また生活水準の向上にも資するものが非常に大きい、このように考えております。
近年の貿易額またこの業界の発展というものも、特に日米において目覚ましいものがあるわけでございますが、政府といたしましては、こうした産業が順調に成長するべく、民間部門の投資及び研究活動を取り巻く環境整備を図るなど、民間活力が最大限生かされるよう努めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/55
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056・田原隆
○田原委員 以上で聞きたいことは、表面的でございますけれども、大体終わりましたが、一つ要望しておきたいのです。
登録事務が複雑になるようなことがあって、それがもとで技術が阻害されたり、あるいはもう一点、公平性、中立性が指定登録機関が民間であるために侵されるというようなことがないようにしてもらわなければいけないし、また、国際的に必要なルールづくり、こういうものも急いでやっていただかなければいけないと思いますので、ひとつそこらを十分踏まえて今後研究していただいて、早急に対処しながらうまい運営をやってこの法律を生かしていただきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/56
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057・粕谷茂
○粕谷委員長 これにて田原隆君の質疑は終わりました。
続いて、水田稔君の質疑に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/57
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058・水田稔
○水田委員 一つは、このチップパターンの問題について、今度法律で利用権の設定登録をやろう、こういうことでございます。これに関連するものとしては、例えば集積回路のレイアウトの開発については、設計図などについては、いわゆる著作権法に言うところの学術的な性質を有する図面、あるいはまた論理回路やトランジスタ回路については、現在でも多くの特許が取られて、それぞれ工業所有権で保護されている。こういう上にさらにいわゆるマスクワークの利用権についての保護をしなければならぬ、こういうことをやろうということでございますが、こういう立法をしなければならなくなった一つの背景になったもの、あるいは著作権なり工業所有権とのどういう絡みでこういう形の保護をしなければならないかということについての理由をまずお答えいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/58
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059・木下博生
○木下政府委員 今先生御質問の中にございました論理回路、電子回路、トランジスタ回路と私どもは言っておりますが、そういうものについては、それが新規性、進歩性があるというようなものであれば特許法や実用新案法の対象となって権利を得ることができるわけでございます。ただ半導体集積回路配置といいますと、集積回路全体の配置のことを言うわけでございまして、部分的にそういう回路についての特許が成立しているといたしましても、全体としての回路配置につきましては、それを保護する適当な法律手段が必ずしもないということでございまして、既存の特許法あるいは著作権法によっても回路配置そのものの保護を図ることは非常に難しいということでございます。
ところが、集積回路を開発いたしますためには、特に回路配置の開発には多大のコストがかかるわけでございまして、投入資金数億円、開発期間二、三年を要するわけでございます。ところがそういう多大の金と時間をかけてつくったものが、でき上がったものを見てそれをいろいろ分析した上でまねる、模倣するということは比較的容易でございまして、そういうようなことが行われるおそれが非常に強いということでございます。それで、もしそういう回路配置の模倣が行われました場合には、模倣を行った者は回路配置開発のために要する投資を節約できるということになりまして、多大の金をかけたいわゆる創作者の方がむしろ被害を受けて、金をかけないでつくった方が有利になるということで、公正な競争条件が確保できなくなるというようなことでございます。
その結果、よりよい回路配置の開発意欲が失われるおそれがありまして、急速な発展を遂げてきました半導体集積回路の全体の発展が阻害されるおそれがあるというようなことでございますので、そのような点を踏まえまして、本法案に基づく回路配置利用権というものを新たに設定して、それを保護することが必要であると考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/59
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060・水田稔
○水田委員 一つは、学術的な性質を有する図面ということで著作権で保護される、これは五十年。それからトランジスタ回路、これは特許で十五年。それはその間、権利として有効なわけですね。一面、それを使ってつくったマスタパターンというのは十年でとにかく利用権は消滅するということになるわけですね。ですから、そういう五十年、十五年、十年、そしてその間の絡みがもとになった原図、それから、さらにそれをトランジスタ回路に組んだものは保護されておる。片一方は、それを使ってつくった実用物が十年という形になる。権利の保護の期間に大変差があるわけですね。そういう点で、実際に運用する上で不都合が起きないのだろうかという心配はないのだろうかということについて、どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/60
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061・木下博生
○木下政府委員 確かにおっしゃいますように、著作権法の適用になり得る図面、それは五十年間保護されるということになりますし、それから先ほど申し上げましたように、トランジスタ回路あるいは論理回路につきまして新規性、進歩性があるものについては特許法で十五年保護される可能性はあるわけでございます。ただ、この回路配置全体は、そういうものがあるからといって完全に保護されるわけでございませんで、この法律によって初めて回路配置全体を開発した人の権利がほぼ十年間保護されることになるわけでございます。私どもは、このように技術進歩の速い半導体集積回路というようなものの場合には十年間の保護をやれば足りるし、また十年間たった後は公的資産というようなことでだれでもそれが利用される形にして、むしろ技術進歩を促した方がいいと考えまして、十年という期間で保護するのが適当だと考えたわけでございます。
その場合には、今御指摘ありましたように個別の特許やあるいは著作権がひっかかるものがあるかもしれません。ただ、著作権五十年でひっかかる図面というものは、図面自身ができ上がった製品に権利として及ぶわけではございませんので、したがって、その図面ではなく、また別途回路配置自身を見てみずから新しいものを開発していくということは十分可能でございますので、それによって不当に、著作権によって図面が保護されているためにせっかく十年で保護されている期間が切れてみんなが使えるようになっても、その使えることが制約されるということはなくなると思います。
それからまた、一般の回路配置について特許ができている場合に、十五年間の保護をされるといいましても、それはその部分についての権利の保護でございまして、その点は新しい法律案の中でも特許法との関係をはっきり書いてございまして、その関係は一応分けて考えることが十分可能だというふうに私ども考えておりますので、この法律をつくることによっていろいろな権利が交錯して非常に複雑になり、かえって進歩が阻害されるというようなことにはならないと我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/61
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062・水田稔
○水田委員 技術の進歩を考えるなら研究開発はみんなオープンにしたらいいと思うのです。みんなオープンにすれば全部利用できるのですから。それは権利として創作者に対して保護するわけです。例えばトランジスタ回路というのは、その回路に基づいてマスタパターンをつくるわけですね。そうすると、それは十年たったらもうだれがつくってもいいんだということになれば、もとのトランジスタ回路というのは侵害されておるわけでしょう。そのトランジスタ回路に基づいてつくったものが幾らでもつくれるわけですからね。そういう点で著作権法なりあるいは特許法なり、そして今度の保護法による権利の関係が、これをつくることによって片一方の特許権の方が侵害されるということになる。そういう点の法律上の権利関係がむしろおかしくなるのではないか。私はどちらがいいかわかりませんが、例えば同じ十五年にしておけば特許に関する限りはそこに問題は起こらぬだろうという感じもするわけですね。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/62
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063・木下博生
○木下政府委員 ただいま先生の御質問の点のトランジスタ回路あるいは論理回路が特許の対象となっている場合について考えますと、特許の対象になるような回路のそういう考え方、そういうもの自身が組み込まれた回路配置というのは存在し得るわけでございます。その場合には、特許法との関係については十三条で、回路配置利用権者等は、「その登録回路配置の利用が他人の特許発明又は登録実用新案の実施に当たるときは、業としてその登録回路配置を利用することができない。」ということになっておりまして、特許あるいは実用新案に当たるものはそちらの方の権利を受け取らないとできないような形になっておるわけでございます。
したがって、特許法との関係で期間が別だからどうこうというようなことはございませんで、例えば十年たった後、そこの回路配置の中の一部に使われておりました特許の対象となっているトランジスタ回路を使って、まただれかが集積回路をつくろうということになりましたら、そこの部分についてだけ言えば特許権者から権利を譲り受けてやる必要があるということでございまして、私どもとしては、集積回路自身について言えば、集積回路の回路配置の権利は十年間保護すれば十分に投資資金も回収できるだけのものができるということを考えておりまして、それによって権利を保護することによって開発を促進するという効果もございますし、また、十年間で権利期間を切ることによって十年後にはだれでもがそれを使えるということで、ほかの人がどんどんそれを利用して新しい開発をやっていくということができるようになるという意味で、二つの意味で十年間が適当だと考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/63
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064・水田稔
○水田委員 そうすると、トランジスタ回路について、特許を取ったマスタパターンは、この法律で十年であるけれども、実際は特許の期間十五年が有効、特許を取ってないマスタパターンについては十年の保護、こういう法律だというぐあいに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/64
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065・木下博生
○木下政府委員 ただいま申し上げましたように、回路配置というのは半導体集積回路全体の配置でございまして、その全体の配置につきましては、特許法上、新規性、進歩性等の面から見まして特許の対象とはなり得ないと考えております。
といいますのは、単なる経験則に基づいて繰り返し反復作業でつくっていく部分というのがたくさんございますので、そういうものを新規性あるいは進歩性の対象としては考えられないということになるわけでございます。したがって、この法律によってそういう回路配置を権利として認めて保護する必要があるということで、こういう新しい法律をお願いしているわけでございますが、その回路配置の一部に、特許の対象となっている、いわゆる電気がこういうふうに通じていけばこういうふうに計算が速くできるというような論理回路あるいはトランジスタ回路の部分がありましたら、その部分だけは特許の対象として考えることができるということになるわけでございます。したがって、その部分だけは特許の対象として十五年間の保護は受けられますが、全体として見たものは特許の対象としてなり得ないということでございますので、それはこの法律によって十年間の保護は受けられるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/65
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066・水田稔
○水田委員 いや、このマスタパターンの中に特許の回路が入っておればこれは十五年だと、さっきそういう答弁をされたわけですよ。十五年、特許権で保障される、それを使う場合には当然特許権者の了解を得て、金を払って使わしてもらう。それから、そういう回路が入っていなければ、このマスタパターンだけであれば、これは十年の保護で足りる、こういう答弁をされておるわけですね。そうなんですかと、こう言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/66
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067・木下博生
○木下政府委員 特許というのは新規性、進歩性のある、いわゆるアイデアでございますけれども、そういうものが含まれた回路の考え方の部分については特許が成立し得るわけでございますので、そういうものについては特許法に基づいてそれ自身のものとして権利の保護がなされ得る。ところが、そういうものを使って、一部分使ってつくった半導体集積回路の回路配置全体は、その部分については特許で保護されておることになりますけれども、そのつくられた回路配置というようなもの自身は特許の対象とはなってないわけでございますので、それはこの法律によって保護するということになるわけでございますから、その二つは保護の見地が違うし、保護の部分が違うということで、二つがダブって保護の対象となるということはあり得ますけれども、その二つが存在するから、片一方が十年間しか保護されないからおかしなことになるではないかということには必ずしもなり得ないのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/67
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068・水田稔
○水田委員 どうも答弁を聞くたびにおかしいのですよ。私は一番最初に聞いたのは、特許法がトランジスタ回路については十五年。しかし、それを使ってつくったマスタパターンというのは、これは実用物ですから、それは幾らでも次々つくっていくわけですから、それは特許の対象にならぬ。そこで、十年保護しなければ、リバースエンジニアリングが発達して、そしてすぐまねをされる、だからそれを十年保護するんだ、最初こういう説明。しかし片一方では、その中の回路というのは、設計したものはその中に組み込まれておるわけですね、考え方は。これは新規性があるから特許を取っておる。その回路を使ったものが、片一方では十五年で、こっちの特許は十五年生きておるからそういう点で不都合が起きぬか、こう言ったら、それは法律で、特許を取っておる回路についてはその特許権者に了解をとって使わなければならぬ、だから保護されていますとこう言う。そうすると、このマスタパターンの中の特許を取った部分ですね、回路については、この中で特許を取っておる部分があるものについては十五年間、事実上権利が保護される。特許を取ってないものについては、この中の回路について、これはマスタパターンだけが保護されて、この法律で十年ですか、こう言った。そうしたら、それから何かこう、わかったようなわからないような、だんだん変な答弁になっていくのですね。だから、どれが本当なんですか。
私の聞いておるのは、特許法と、今度の法律では十年。それは、回路そのものは特許で保護されておるけれども、このマスタパターンというもの、マスクワークというものは、これだけでは、その中にこの回路を組み込んでもそのもの自体だけで保護されるんだ、こっちとは関係ないんだ、そういうことなのかどうかということ。後ろの方ではうなずいておるけれども、答弁する人が何遍も違うことを答えたんではこれはいけませんよ。大事な法律を、大臣、出した方が本当にしゃんとせぬでは、まともにこの法律の運用できませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/68
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069・木下博生
○木下政府委員 特許の対象となっております回路、それはあくまでも一つの新規性のあるアイデアでございますけれども、そのアイデアを使ってつくったレイアウト設計、その中にはそのアイデアが組み込まれておりますけれども、その特許の対象となったもの自身がそこの回路配置にあらわれてきているというものではないわけでございます。回路配置はあくまでもそのアイデアを使って回路配置ができ上がっておる。そういうでき上がった回路配置を含めまして、特許の対象とならない部分を含めた全体としての回路配置については権利を十年間で保護するということでございますから、その中にはそのアイデアとして組み込まれた部分の、特許の保護の対象になっている部分は入っているのは確かでございます。したがって、その部分に関する限りは十五年間の保護を受けて、そうじゃない部分のいわゆる回路配置というもの全体について言えば十年間の保護を受けるというようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/69
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070・水田稔
○水田委員 とにかく、こればかりやってもいけませんから、あしたこれは城地さんにもう一遍詰めてもらいます。今の答弁だったら、やはりこのマスタパターンの中のいわゆる特許を取ったトランジスタ回路については十五年間権利が保障されておる。そうすると、片一方のこの法律で十年間というのは、回路について特許を取ってないマスタパターンだけが十年間だ、こういうことになってしまうのですよ。
それは恐らく、後ろの方から助言しておるのを聞いてみると、そうじゃない、これは本来著作権で言うところの保護されるもの、特許法で保護されるものが、このマスタパターンをリバースエンジニアリングで分析して全く同じものをつくられた場合に、これは実用物だからそういう保護の対象にならぬという考え方がある。だから何らかの形で保護しなければならぬという考え方が、いろいろな著作権や特許法を見ながらそれに当てはまらぬ、当てはまらぬからこれでやろうということになったんだと思う。
しかし、それなら、今ある法律の権利との関係というのは一体どうなるのかということが、やはりこれから出す人にも、特許を取る人にもみんなわかるように、今の答弁では、恐らく、この速記録を読んで、これから出そうとする人はわからぬと思うのですよ。
ですから、この点は私は時間の関係で保留しまして、あしたまた城地さんの方から、それまでに検討して、きちっとした答弁を城地さんにしていただきたいと思うのです。
それで、先ほどからのお話にありましたように、この法律を出したのは、一つはやはり、リバースエンジニアリングが大変進歩して、時間と金をかけてやったものを簡単にまねして、いわゆるゾロ商品で稼がれる、これでは、とてもじゃないが新しいものを開発する意欲を失うじゃないかということが一つ。
それからもう一つは、これは日米貿易摩擦との関係の、アメリカがいわゆるチップ法をつくる、そしてつくってない国は保護しない、こういうようないわゆる相互主義でこの法律をつくったということが、通産内部の論議を局長が十分頭へ入っていないということになると、そこらの論議がアメリカに押されて慌ててやったのじゃないか、どうもそういう感じがして仕方がないのですが、アメリカはそういう相互主義をとっているわけです。我が方の分は相互主義をとっていないわけです。
今、半導体集積回路、いわゆる半導体の生産というのはアメリカが世界の六〇%、日本が三〇%、両国で九〇%ですから、これはまさに二国間の問題というふうに思われる。ところが実際問題としては、新興工業国、韓国なんかは大統領命令で、この産業をやれ、そして輸出しろ、こういう形になっている。シンガポール、台湾等もそういうところへ参加してくることは恐らく間違いないだろう。アメリカは相互主義をとって、同じような法律をつくらぬところについては保護しない、こういうことを言っておる。日本は、鉄にしたって、自動車にしたって、造船にしたって、みんな追い上げられているわけです。この半導体産業が追い上げられないことはないわけなんで、まさにこれからが大変なところに来るだろう。そういう立法の段階で相互主義をとらなかったのは一体なぜなのかということをお答えいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/70
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071・村田敬次郎
○村田国務大臣 水田委員にお答えいたします。
アメリカとの交渉の際にこの問題が非常に大きく浮かび上がってきたことは事実でございます。二月にブロックさんと会ったときにも、半導体集積回路の保護を日本でもやってほしい、ぜひ早急にやってほしいということがありまして、日米の貿易交渉上の非常に大きな要項の一つでございました。
それから先ほど来お話が出ております著作権法の問題とエレクトロニクスの問題、みなそうでございますが、そういった動機でこの法律案の起案になったことは事実でございますが、この法律案の中で相互主義を採用しなかった理由につきましては、米国以外に回路配置保護法を持つ国がない現状で、我が国も相互主義を採用いたしますと、他のすべての国に属する外国人は本法案による保護を受けられない、こういうことになります。保護の範囲が非常に狭くなってしまう。そこで、日本国民が創作した回路配置が外国で模倣された場合に、その回路配置を用いた半導体集積回路を我が国に輸入する行為は本法案の対象となりますから、実際上御指摘のような問題は少ないと考えます。
いずれにいたしましても、本法案成立後、国際的なルールづくりに積極的に協力してまいりたい、こういう考え方で臨んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/71
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072・水田稔
○水田委員 私の質問に完全に答えているとは思えません。大事なことは、新興工業国というのはとにかく技術的に追いつこうというのでいっぱいでしょうから、他国のことまで考える余裕がまだないのかもしれませんが、少なくとも世界の九〇%をつくっておるアメリカと日本がやった。これから参入してくるところも含めて、今最後に大臣が言われたように、そういう点でお互いに問題が起きないような仕組みを国際的につくっていく必要があるのじゃないか。この日本の法律の中に相互主義の項目が盛られていないけれども、その点はひとつぜひこれからの課題として努力をしていただきたい、こういうぐあいに要望しておきたいと思います。
それから、この法律の内容について、これを読みますと、保護する権利の範囲というのは一体どの程度なんだろうかということが心配であります。一つは、チップパターンの完全なコピー、全く同一なものだけにしか権利が及ばない、こうなりますと、それに機能的にいうとほとんど関係ないような回線を入れて、ほんとに部分的な変更を行って届けをする、これは創作だということで登録されれば事実上権利の侵害が行われる。逆な考え方をすれば、簡単な変更までも権利の侵害ということで認めない、権利として保護される、こういうことになれば、この法律は特許法なんかと違って登録が簡単にできるわけですから、登録の簡便さ、手続が簡単な割に大変大きな権利を与え過ぎるという矛盾が起きるのではないか、そういう心配をするわけですが、その点はいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/72
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073・木下博生
○木下政府委員 新しくお出ししましたこの法律案は、登録によって権利が発生する、しかし、登録自身のときに実質的な審査は余りしないでやるというところが非常に特徴的なところでございまして、特許法の場合には実質審査をした上で権利が発生する形になりますし、一方著作権法の物の考え方の場合には、創作をした段階で権利が発生したままになって、登録をすること自身を要件としていないというところで、この権利の保護の仕方としては新しい考え方だということは言えようかと思います。ただ、今御質問のございました点は、確かに私どもとしても今後の運用に当たっていろいろ問題が出てくるところではないかなと考えてはおります。
ただ、御承知のように、この法律は十二条で独立に開発されたものであれば、それがたまたま同じものであっても、それぞれが創作者として保護されるという形になっておりまして、特許法のように、どちらか先に開発した人の方に独占権ができてしまうというような形になっておりません。したがって、個々独立に開発したものであれば、それがたとえ同一であっても、同一であること自身がその権利関係に特に影響を及ぼさないという意味で特許法とは違いが出てくるわけでございます。
それで、どの程度同一であればまねした回路があるかどうかということの関連において申し上げますと、開発されました集積回路をまねをしてつくった場合に、完全にまねをしてしまっておれば、それは当然まねをしたものだということで権利侵害したということがはっきりいたしますが、部分的にまねした場合にそれがどうなるかという点が問題になってくるかと思います。この点につきましては、登録をいたしますときに、その内容が同一であるかどうかを審査して登録をするという形をとっておりませんので、形の上で申請書類が整っておれば登録だけはなされて権利は発生し得る。あと問題は、模倣されたと思う人が模倣したと思う人に対して訴訟で問題を解決していくというようなことでございますので、現実の訴訟におきまして、模倣の程度との兼ね合いで同一性がどうかという点の判断がなされることになろうと思います。したがって、幾つかの訴訟がなされることによって、訴訟の積み重ねで同一性がどうかの判断ができ上がってくるというふうにお考えいただいた方がよろしいかと思うわけでございます。
ただ、過去における判例の考え方といたしましては、全体として考察して同一かどうかを判断する、それから公知の部分は評価せず特徴的な部分を高く評価するというようなことで、過去の判例によって意匠法で同一性であるかどうかの判断はなされておりますが、そのような考え方と同じような考え方で、今後どの程度まで同一であればそれがまねしたものだと判断するかということが訴訟の段階で決まってくることになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/73
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074・水田稔
○水田委員 今の答弁を聞きますと、この法律をつくったことによって、権利の保護と同時にそれ以上に大変な紛争が起きてくる。裁判所は仕事がたくさんあって、日本の裁判というのはなかなか進まぬというのが今の実態なんですね。そこへ全部持ち込むというのが一体本当に権利の保護になるのかという気がするのですが、これは特許法と違って行政の審査はやらないのですね。侵害という場合でも、そういう手続をしないですぐ訴訟ですね。そういう点は裁判所の方の見通しなんかもちゃんと、どの程度そういう紛争が起きる、大して出ないからすぐ裁判へ行ったらいいとお考えになったのかどうか、その点もお伺いしたいと思います。
もう一つは、今の御答弁の中で、全く同じものが出た場合先願主義をとらない、そうすると、一カ月前と一カ月後に出ても、いずれも創作であればこれは両方とも登録する、こういうことなんですね。そうすると、これは創作ということ自身もまた、部分的な変更でいわゆるまねをしたというのとは違って本当の創作というのをこれも裁判所で判断するわけですか。
それからもう一つ、ついでに聞いておきたいのですが、例えば特許法の場合は先願主義ですが、全く同じものが同じ日に出願された場合に、特許法上はどういうふうに扱うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/74
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075・木下博生
○木下政府委員 まず第一の、全く同一のものが別々に登録されて権利となった場合の二つの権利者との間の関係についての御質問でございますが、これはもしAという権利者の方がBという権利者に対して、Bという人がAのものをまねたということで争いが起こったということになりますと、当然裁判の場でAという人はBという人がAという人のつくった回路配置をまねをしたということを立証して、それで立証したことによって、もし立証を成功させればBという人がAという人のものをまねたということの判決が出るという形になるわけでございます。したがって、裁判所の場で全く裁判官に白紙で判定してもらうということじゃなくて、それぞれの人が、片方はまねたということを証拠を挙げて主張していくし、反対側の人は、いやまねたんじゃなくて独自にやったんだということを証拠を挙げて主張していく。その主張の過程で最後は裁判所が判決を下すということになるわけでございます。
それから、特許につきまして今御質問ございましたが、私特許の専門家じゃございませんので全く正しいお答えになっているかどうかわかりませんが、特許について全く同じ日に全く同じものの申請が出た場合には、両者で協議してもらう、協議してもらった上でどちらかが申請を出した形にするということでございまして、両者の協議が整わない場合には、両者の申請は認められずに特許としては成立しないということになるそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/75
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076・水田稔
○水田委員 特許の関係、そのとおりなわけです。話がつかなかったら両方とも認めないわけですね。一つは特許法そのものではないわけでありますけれども、現にそういう権利の保護、工業所有権の保護についてはそういう手続もあるわけです。ですから、これは事ごとに裁判に持っていくというのが立法のあり方としていいのかどうか、これは後でまた技術的な審査の問題もお伺いしますが、そういう点ではそこらに問題があるのではないか、やってみて将来に残るのではないか、そういう気がするということだけ申し上げて次の質問に移りたいと思います。
それは、今もちょっと申し上げましたように、登録されたチップパターンというのは、これは例えばそのパターンで見る限りは違っておっても、入力をしたものが出てくるときに全く同じ能力を持った、そういうものも実はあり得るわけですね。ですから、そういう点では登録で申請されたものを判断する場合に、一つは新規なものとして、いわゆる創作的なものかどうかというのは今までの公知のもののデータをちゃんと持っておかなければならないわけです。基礎データがないと、これは新規なものかあるいはもう既にみんなが使っておるものを出して、おれの権利だ、こういう権利を振り回す人もなきにしもあらずだと思うのです。
それから、チップパターンそのものでは違っておるように見えても、機能的には全く同じというのはあり得るわけですね。回路のつくり方によってあるわけですから、そういう点からいって、登録のやり方が余りにも簡便さに走って、正確さといいますか、それぞれの権利を保護するという点で欠けておるのではないか。
ですから一つ必要なことは、やはり基礎データ、これまでにも公知のチップパターンがどういうものが公に出ておるか、それからもう一つは、それらと照合する技術的な仕方というのは非常に難しい、技術屋というのは判断が大変難しい。ですから基礎データとそういう要員をそろえることができるのかどうか、そして手続上はある程度予備審査的なものがちゃんとできる体制がなければならぬと思うのです。
ですから基礎データの問題と、それからチップパターンが違っておっても本質上は同じ機能を持ったものなんかは一体どうなのか、そういう技術的なことを判断するためには、その技術屋のレベルというのは非常に高いものが要求される、そして、それは単に簡単に外見上だけで見て、これは新しいからということではなくて、ある程度は技術的に検討ができる、そして、そういうものを持った予備審査が必要ではないかと私は思うわけです、権利の保護ですから。そういう点でひとつ今の四点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/76
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077・木下博生
○木下政府委員 この法律案によります登録の審査という問題について御質問があったわけでございますが、第八条で「通商産業大臣は、設定登録の申請が次の各号のいずれかに該当することが第三条第二項の申請書及びこれに添付した図面その他の資料から明らかであるときは、設定登録の申請を却下しなければならない。」ということで、一、二、三ということで、創作者でないこととか、創作者が二人以上ある場合において、その共同の設定登録の申請をしてないこと等が書いてあるわけでございます。
したがいまして、登録を受けますときに、その提出されました資料、図面等から見て創作者でないことが明らかであるときには拒否するということでございまして、あくまでも書面から見てそれを拒否するかどうかを決めていくということでございまして、マスタパターン等で公知のものがあって、その公知のものをまねているかどうかという内容にわたって審査をするわけではないということでございます。
したがいまして、この法律では、先ほども申し上げましたけれども、独立に開発された回路配置は同一のものであっても保護されるという考え方でございますから、審査に当たってその回路配置が公知であるかどうかということを調査する必要はないわけでございます。したがいまして、その登録機関におきましては、公知のマスタパターン等の基礎的なデータを保有しておいて、その保有したものに基づいて申請があったら、一々それが新規のものであるかどうかという審査をする必要はないという形の制度になっておるわけでございます。
また、その回路配置は違っておりますけれども機能は同じというものが保護されるかどうかという点についてでございますけれども、本法の保護対象は回路配置に限定されておりますので、先ほど申し上げました論理回路とかトランジスタ回路や半導体集積回路の機能等は本法案において保護されているわけではございません。したがって、回路配置が模倣されたものでない限り、たとえ機能が同じであっても、それらの回路配置はそれぞれによって保護されるというようなことでございますので、したがって、今回の登録という制度は非常にユニークな制度でございますけれども、形式的に書類の文面上拒否すべき事由がない限りにおいては自動的に登録が行われ、権利としてはその段階で権利が発生するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/77
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078・水田稔
○水田委員 ユニークなど言われるのですが、私は、権利の保護に関するものにしては余りにもラフ過ぎると思うのですね。今御答弁いただいたことを逆に、例えば申請者が創作者でないことを裁判の場合争うのは、どっちが創作者か、反論を挙げて挙証しなければならぬ。この判断する場合は、創作者でないことというのは、基礎データも何もなしに創作者でないと言われぬです、初めて出てきたら。基礎データも持たぬわけでしょう。そんなもの見る必要ないと言う。こんなラフな登録の仕方で一体これだけの権利を保障していいのか。あるいは、法律が施行されたときに、施行されるまでに今いろいろなマスタパターンを全部、リバースエンジニアリングが発達しておるんですから、分解してまねするだけじゃなしに、その論理回路を全部書くことができるんですね。それをやっておいて、主要なものだけを一斉にはっと出したら、それが全部権利を押さえてしまうということにもなりかねないわけですね。
それから例えば、申請者が創作者でないことというのは、あとはもう一体どうやって判断するのか。あるいは書類上適合しておればとにかく登録させるんだ、こういう非常に簡便なやり方。それにしては逆に権利は十年間保護されるわけですから、本当にラフ過ぎて、混乱が起きるのは目に見えでおるわけですね。
そういう点は、先ほど私が言いましたように、基礎データは必要ないかと言ったら必要ないということですね。どうやって創作者であるか、公知のものを創作者らしく手続をしてきたのかという判断さえできぬのに、もうとにかく言ってきたら全部登録するんだ、そこで争いがあれば全部裁判所でやりなさい、こういうことになるのですね。そうでしょう。それが法律の立て方で、それでいいんですと、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/78
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079・木下博生
○木下政府委員 創作者が創作した関係の書類を添えて登録するというのが通常の例でございますが、今先生の御質問は、創作者じゃない、まねした人がどんどん登録してくることになったらどういうことになるだろうかという……(水田委員「それができるんですよ、これはやろうと思えば」と呼ぶ)はい、そうではないかと思います。形式的には、まねをした人が、自分がつくったと言って申請してくることは可能かと思いますけれども、ただ本法律は、先に登録した人に排他的独占権を与えるわけではございません。したがって、真正の開発者が登録してくればその人の登録も有効なもので、当然権利として発生するわけでございます。
したがって、先ほど申し上げましたように、十二条で、独立に開発をすればそれぞれの人が、結果的に同じものであったにしても、それは登録することは可能だということになっておりますので、したがって、早く登録をして押さえてしまったら、あとの人が出てこられなくなるという意味での先願的、独占的な権利がないわけでございますから、まねをした方が早目に出して押さえてしまうというようなメリットというのはそもそもないというようなことでございますし、それから先ほど申し上げましたように、最終的には裁判の場で権利の争いが行われるわけでございますが、他人に権利を主張する際には、その前提として訴訟等におきまして真の創作者であるか否かが争われるわけでございますので、あえてまねした人が自分がやったぞと言っても、やったこと自身によって自分が創作者であることの推定をなされるわけでもございませんので、むしろそういう場が出てくることによって、真の創作者が自分の権利を侵害されたということが出て、裁判の争いになるケースもふえてくるというようなことでございます。したがって、まねする人が早目に先手を打って登録するメリットは全くないということが言えると思います。
それからもう一つ、登録に対しては罰則の適用があるわけでございますので、創作者等以外の者が登録するおそれはほとんどないと私どもは考えておるわけでございます。
ただ、先ほどおっしゃいましたように、あくまでも形式的な書類によって登録をいたしますので、あと裁判所の場で争いが起こるということになるわけでございますが、これは著作権法の場合の著作権についても同じことでございまして、著作権については、これは登録を権利の発生要件としておりませんけれども、著作者であるかどうかという点はすべて裁判所において争いが行われているということでございまして、その点に関する限りにおいては、著作権とやや似た面があるということが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/79
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080・水田稔
○水田委員 著作権の場合は先に発表しておるわけですから、それはいつの時点で発表したかで片一方がそれをまねしたかということはわかるわけですね。この場合は、今新しく法律ができれば用意ドンでいくわけですから、やろうと思えばやれぬことはない。そして争う場合に、リバースエンジニアリングでこれは分解したら、逆に配線をずっと見れば、この論理というのはどうなってこうなるんだというのは、そのくらいのことはできるから類似品がつくれるわけです。そうするとそれを争うのに裁判で、裁判というのは三年、四年すぐかかるですよ。こういうチップというのは三年もすれば寿命がなくなってくるですよ。次のものにいっておるです。争いだけ残って、まねしたのが得だということでいってしまうような法律になりはせぬかということを私は心配しておるわけですよ。
ですからそういう点では、さっきから言うようにある程度は、これは本当言うと自民党、与党の皆さんもよく聞いていただいて、これは本当に保護するんだったら予備審査ぐらいやる。それは特許法ほど厳重にやらなくてもいいけれども、そしてそれを審査する機関は相当な専門の技術者をそろえて、基礎データをコンピューターに入れたら、そんなにまだチップパターンというのは山ほど、特許のように百年の歴史があって何百万というんじゃないですから、そういうものをもってちょっとボタンを押せばこれはというぐらいな、そのくらいのことは、新しく法律をつくるんなら考えた方がいいんじゃないかと思うのですね。
これは大臣いかがですか、ずっと今の質疑を聞いておられて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/80
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081・木下博生
○木下政府委員 大臣御答弁になる前にちょっと補足して御説明させていただきたいと思いますが、その書類が整っていれば登録されるということは申し上げましたけれども、申請に当たりましては、回路配置を記載した図面または回路配置をあらわした写真を添付するということをしておりますし、さらに申請者が創作者等であることについての説明書等も提出させるということになっておりますので、創作者等以外の者が申請できないような書類を一応出させることにはなっておるわけでございます。
それから、もちろん先ほど申し上げましたように、指定登録機関で全くこういう半導体について知識がない者ばかりがその任に当たるわけではございませんで、形式審査でありましても一定の半導体に関する知識経験を有する者は当然必要で、その中には電子回路の知識等についても含まれるわけでございますが、そういうような人たちをこういう登録機関の中に配置することによりまして、十分今おっしゃったような点は配慮していきたいというふうに考えております。
ただ最終的には裁判で争いが起こるわけでございまして、先生御指摘のように最近の裁判は非常に時間がかかるというような問題がありますので、半導体集積回路の生命がなくなったころに判決が出るおそれがあるんじゃないかという御指摘もごもっともかと思います。ただ、こういう問題につきまして裁判が提起され、差しとめ請求権等が出されましたときには、当然のことでございますけれども仮処分の申請等もできるわけでございますので、そういう点で裁判所の方に早目に処置をしていただいて、せっかくまねした人がどんどん仕事を進めることで真正の創作者が損害を受けることのないようにするような措置はぜひ裁判所の方でやっていただきたいというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/81
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082・村田敬次郎
○村田国務大臣 先ほど来の水田委員の御質問、ずっとこちらで承っておりました。
委員も御指摘のように、現在のところでは日米両国以外で具体的に回路配置の保護のために立法措置を講じようとしている国があるとは聞いていないわけでございます。これは日米両国系のメーカーで半導体集積回路の全生産量の九〇%を占めておるということも一つの大きな原因だろうと思います。御承知のようにWIPO、世界知的所有権機関においては、日米両国の回路配置保護法を参考としながら国際条約及びモデル法案の検討に入る予定と聞いておりますが、こういった国際的な検討も急がれておる。これには我が国も積極的に協力をしていきたい。 保
それと同時に、先ほど来の御質疑にありましたように、特許権のようないわゆる先願主義をとっておりません。したがって、この法律独自の体系でやっていくわけでございまして、今後、法の運用において十分慎重によく検討をし、そして、委員御指摘のような御心配のないような進め方をしていきたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/82
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083・水田稔
○水田委員 予定答弁を読んでいただいても……。私が言ったのは、実際に実務をやる上で、この法律の目的というのは、努力をした人の権利を保護すると同時に、それによって、半導体産業といいますか、その産業の発展を目的としておるわけです。そう書いてあるのです。ですから、そういう方向にならぬではないかという心配から私は伺っておるのです。保
紛争が起きるような形になって、そして裁判に頼れば時間がかかる。その間には、実際には寿命が短いから、その両方が争って、まねした方がどっちかわかりませんけれども得をして、次のものを開発して次のものを使う段階になる。裁判にすべてを頼るということは、そういう点ではむしろ紛争を多くして業界を混乱に陥れるのではないか。そういう点では、手間がかかっても、もう少し予備審査くらいやって、データを持ってやった方がいいのではないですか、そういう提起をしておるわけですね。そうでなければこの法律の目的というのが達せられないのではないかという内容を一つずつ申し上げたわけですね。
ですから、その点は、新しい法律ですから今までのあれがあるわけじゃない。あるとするならば著作権法と特許法、いわゆる工業所有権との絡み、その中で保護し切れないものを包括していこうということですから、それは方法としては特許法よりは簡便なものでもいい。しかし著作権は、発表したら、本人がオリジナルでつくったということが明らかであれば、それだけ証明すればいいわけですね。ところが、この場合はリバースエンジニアリングが非常に発達して、反対に解析すればできるわけですよ。だから、模造が幾らでもできるわけですから、そういう点では、創作者であるということをお互いに主張する場合に、いわゆる著作権の侵害ほど簡単に裁判所が判断を下せない。お互いに言い争うだろう。それから、基本になる回路その他については、お互いに基本的な技術水準を持った連中がやるわけです、技術がなければまねもできぬわけですから。そういう中では、むしろそこでは争いが多くなっていくのではないか。そういう法律をつくることによってむしろ争いを起こすのなら、そこで親切に、争いが少しでも起こらないような配慮をこの手続の中で、あるいは審査の中でやった方がいいのではないか、こう言っておるのです。そのことに対して、今の質疑を聞いておられて大臣いかがですか、こう言っておるのです。
ですから、それはアメリカとの関係も十分よく知った上で聞いておるわけですから、その中でどうだろうかと聞いてみると、どうもよくはならぬでまずい点が出てくるのではないか。そこらあたりは、初めての法律ですから、与党さんを含めて、政府ができなければ——与党の理事さん、よく聞いてください。与党の理事さん、ちょっと話をやめて聞いてください。そういう点では、委員会の中でも一遍論議をして、よりよきものに私どもはしたいために、疑問に思うところを申し上げておるわけです。
時間の関係もありますから、最後に、そういうことをやられる登録事務の関係は一体どうなるのかということ。
先ほど田原委員の質問の中にもありましたけれども、これを読みますと、その機関、公益法人ですね。その機関に「全部又は一部を行わせる」、こう書いてあるのですね。そうすると、この読みようによったら、通産省も登録事務をやるのだろうかどうか、あるいは、この登録機関というのは複数を考えておるのだろうかというような感じがするわけですね。先ほど言いましたように、これは登録されれば大変大事な権利が保護される。ですから、そういうことについては十分それが読み切れる技術屋の集団というのがそこには存在しなければならぬだろうと思うのですね。
そういう点で、登録機関というのは、形の上では、どうなんですか、単に一つの公益法人というのをこの法律によってつくって、そこに一切をやらせるのか、あるいはまた、これは一つだけではなくて二つになるのか、あるいは通産省も受け付けますよ、あるいはその公益法人にも一部をやらせます、こういうことになるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/83
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084・木下博生
○木下政府委員 先生おっしゃいましたように、登録の関係する事務につきましても、受付、却下、設定登録の取り消しあるいは原簿の保管、原簿の閲覧等いろいろな事務があるわけでございますが、それにつきましてどこまでを指定登録機関に行わせるかは、事務の性格、指定登録機関の事務処理能力等を勘案して決めることにしておりまして、今のところまだ確たる方針を最終的に固めておるわけではございません。しかし、「指定登録機関に、全部又は一部」と法律には書いてございますけれども、登録事務の全部を行わせることも可能かというふうに考えております。この点は、どのくらいの登録事務になるかというようなことも考えて最終的に決めていきたいと考えております。
ただ、指定登録機関を決めます場合に、それを一つにするのか複数にするかという御質問がございましたけれども、現在までのところ、考え方は決まっておりませんが、登録事務を一体的に支障なく遂行していくためにも、しかも、当面、その事務処理量はそれほどめちゃくちゃに大きなものになるというふうには予想されておりませんので、全国で一つの機関を指定すれば十分ではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/84
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085・水田稔
○水田委員 それからもう一つは、これは新しい法人なのかどうか知りませんけれども、登録事務以外のこともこの法人はやるということを想定した文章になっておるわけですね。この点は何か既存の公益法人を想定されておるのか、あるいは、新しくできるものにこの登録事務とそれ以外のもの、この事務の実施を阻害するようなことをやってはならぬ、こう書いてあるわけですから、ほかのことをやってもいいと書いてあるのですね。ですから、既に存在している何らかの公益法人を想定しておられるのかどうか、その点をお答えいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/85
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086・木下博生
○木下政府委員 この法律によりまして、登録事務以外の事務を公益法人が行う場合というのを予想しておるわけでございまして、具体的には、その業務としては、登録事務と特別な利害関係がないもの、あるいは登録事務の実施を阻害するおそれがないもの、指定登録機関の経理的基礎を不安定にするおそれのないものというようなものを考えておるわけでございます。これらの条件を満たすものであれば、具体的にどのような業務を登録事務以外にやっているものでありましても、指定登録機関として指定することができるのではないかというふうに考えております。
ただ、現在のところ、どのような法人を指定登録機関にするかというところは、まだ最終的に考えが決まっておりませんけれども、私どもとしては、行革の精神に反しないよう、できるだけ簡素なものでやり、しかし能力の十分にある機関でやってもらうということを考えておるわけでございまして、その場合には既存の法人を利用することもありますし、新規に設立する法人をそれに活用するということも考え得るかということで、現在、どのような形で指定登録機関にやっていったらいいかということを検討中の段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/86
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087・水田稔
○水田委員 これは、特許庁という官庁を置くほどの数、それから、それだけの強い工業所有権の保護をやる仕事ではないにしても、大変重要な権利を保護する、保障する、そういった機関ですから、当然、ほかの仕事なんか考えずにこれに専念してやる、公益法人であろうともそうであるべきだろうと思うのですね。それを殊さらに、まだ何も考えていない。考えていないにもかかわらず、ほかの仕事もやれるような条文を入れるというのは、既存の何かの、まあわかりませんよ、例えば、特許協会があったり、JAPATICがあったり、何かそれに似たようなものが電気産業の中であって、そういうものを想定しておるのではないですか。何かの業務をやっておる、それへくっつける、それは私はとるべきではないだろう。例えばこれで、場合によったら民間からの出捐金、民間活力が好きですから、民間から金を出せというのが民間活力、こう思われているのかもしれませんけれども、出捐金、それから国の財政的な援助ということも頭に描いておるようですね。しかし、どの程度のことがどうなるかわからぬときには、まず法人ができる前は、それは当然法律が施行されたら通産省がやるベきです。まずやって、そういう中でこれは事務的にこうしたらいいということを考えるべきじゃないだろうかというのが一つ。
それからもう一つは、先ほど来、電気回路に対する相当高度な技術を持った人を配置しなければいかぬ。それを考えれば当然、そういう連中がおるところというのはどこかわかるわけですね。知識経験を有する者が何名以上おらなければならぬ、こう書いてありますね。知識経験とは一体どの程度の知識経験なのか。例えば大学院において電子回路を専門に履修した者とか、あるいは半導体の設計で、例えば大学工学部電気科を出て何年以上その経験を踏んだ者とか、そういう者でなければ、今はどんどん進んでいますから、現場でやっている者ではとでもじゃないが追いつかぬ。設計というのは一番先端を行くわけですから。そういう点では、どういう人を考えておるのか。
もう一つは、今考えてないというのは私はおかしいと思うのです。政府は、閣議決定して法律まで出してきておる。それはもうちゃんと根回しができて、おぜん立てができた上でやる。じゃ何でやるといったら、例えば登録事務以外のこともやることを想定したいわゆる公益法人を考えているというのは、何かのものが想定されてあるという疑いを持つわけです。ですから、これは大事な権利の保護ですから、それはやるとするならば早急に、一つの法人でやるのならきちっとやるべきですが、それがきょう現在法律を審議しておる段階で頭に描かれてないのなら、当面、とにかく法律が出発して一年ぐらいは通産省でどういうことになるかということをちゃんとやるということが、法律をつくる側としては、登録をしようとする人たちに対する当然の義務だろうと思うのです。
それともう一つは、知識経験を有する者というのは具体的にはどういう人たちを指しておるのか。例えば何とか業界の社長とかなんとか、これはとてもじゃないがそんなものではできぬわけですから、その点は、どういうことを考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/87
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088・木下博生
○木下政府委員 指定登録機関に登録事務をやらせる場合には、通産大臣にかわってこの事務をやってもらうわけでございますから、当然のことでございますけれども、その機関自身は公平、中立なものでなくてはいけないということになると思います。それを確保するために、職員あるいは役員の経歴等を十分判断して、公平な事務が行われるように持っていかなくてはいけないわけでございます。
その場合に公益法人、例えば財団法人を設立するというようなことになりました場合には、民間活力の活用ということで出資等を民間企業に求めることはあるかもしれませんが、私どもとしては、出資を求める場合があるにいたしましても、その運営自身は全くそういう出資をした個々の企業とは関係のない形で、公平、中立な人たちによって運営してもらうようにしていくべきであるし、また、していきたいと考えております。特にこういう国際的な商品につきましては、諸外国との間で最近経済摩擦等が起こっておりまして、こういう認定機関とか検査をする機関の中立性について諸外国もいろいろ注文をしてきておるわけでございますので、当然私どもとしてはそういう形で考えていきたいということでございます。
そこで、どういう人がその登録事務に携わる資格があるかという点についてでございますが、具体的には通商産業省令で定めることになるわけでございますが、当然のことながら、大学以上の学歴を有し、かつ半導体集積回路の設計、開発、研究等に関して一定の実務経験を有するという人たちを予定しておるわけでございます。
あと問題は、どのくらいの事務量になるかという点でございまして、私どもが調査いたしましたところでは、各企業からの申請件数は年間数千件ぐらいには上るのではないかというようなことでございますが、実際に始めてみませんとなかなか具体的な登録事務の件数が把握できないということでございますので、法律が通りまして、政省令等を検討している段階で十分に調査をいたしまして、どのくらいの仕事量になるかということに合わせて、そういう指定登録機関の人数等も決めていくということになろうかと思います。
最後の御質問は、そういう指定登録機関を指定しないで、まず通産省でやったらどうかというようなことであったかと思いますけれども、私どもは、通産省自身でそういう登録事務をやっていくか、その場合でも、現在は定員をふやすことが非常に難しい状況でございますので、そういう中でこういう登録事務に携わる人を相当数割いていくことができるかどうかということも含めまして、最も国民全体にとって便利というか一番適切な方法で、しかも、むだのないやり方で、この事務がやれるように持っていきたいと考えております。そういうことで、もし指定機関を指定します場合にどういう機関にしたらいいかという点の検討はいろいろやっておるわけでございますが、まだ最終的にこうしたらいいというようなところまで行っておりませんので、現在のところは検討中ということで御勘弁いただきたいというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/88
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089・水田稔
○水田委員 私はお役所の皆さんに考えてほしいのですが、行政改革というのは、必要でないところはへずったらいいんですよ。必要なところはふやす。必要なところまで減らすのは行政改革じゃない、行政改悪なんですよ。ですから、これは国民のために絶対必要だということであれば、通産大臣が中曽根総理大臣に言ったらいい。日米経済摩擦の問題からこういうこともやらなければいかぬ。総理大臣がテレビに出て、二万五千円国民の皆さん買ってください、買ってくれと言ったって金はやると言わなんだですけどね。だから、それまでやろうという、そういう問題なんです。それはそういうことが必要なら出すですよ。
あるいは、これは特許庁に怒られるかもしらぬけれども、あそこらは技術屋がようけおるわけですね。あそこでちょっとこの部分を担当してくれぬか、こういうことも知恵を働かせばできぬことはないわけです。何でも民間、民間ということは必要ないし、そして法案を出した段階でまだ具体的なアウトラインさえ登録機関について決まってないというのは、私は、この法案というのはいわゆる未熟児で、とにかくアメリカに対するためにぱっと出してきた、そういう感じがして仕方がないのです。
最後にもう一つ。そこで登録された回線配置の原簿、マスタパターンの原簿というのはどういうぐあいにされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/89
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090・木下博生
○木下政府委員 もし通産大臣が登録をやるということになりますと、当然通産省にその原簿は置かれることになります。それから、指定登録機関に登録を依頼するということになりますと、その機関に原簿は置かれることになりますが、原簿につきましては、法律にも書いてございますように磁気テープ等も使っていいということになっておりますので、そういう形で効率的に処理し、また第三者の方々が閲覧がしやすい形にしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/90
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091・水田稔
○水田委員 最後に、大臣ずっと聞いていただいたと思いますが、一つは、権利の保護については手続が余りにも簡単過ぎて、そして創作者であるかないかということの判定はここではしない、すべて裁判をやる。それは年数がかかる、むしろ紛議が起こるのではないか。あるいはまた登録の機関についても、今の質疑をお聞きいただけばわかるように、本来法律を出す段階では、ある程度が煮詰まってこういう形であると根回しができた状態で出さなければならぬ、いわば未熟児で出産をしたような感じがして仕方がないわけです。
そういう問題点があるということを私いろいろ指摘申し上げたのですが、私は、今こういう著作権法と特許法だけでは十分保護し切れないという実態はわかるものですから、そういう点では、つくる以上はより有効に機能するような法律にしたい、そういう気持ちでそれぞれの問題点を指摘しました。足りない点は、あすまた城地委員から質問いたします。
今の質疑を聞かれて、大臣、一体この法律を出された当事者ですが、御感想、とにかくある程度私の言ったことについてうなずいて、そういう点は省令をつくる、あるいはそれは委員会の論議の中で改めるべきは改めてもいいというようなお考えがあれば、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/91
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092・村田敬次郎
○村田国務大臣 先ほど来の御質疑をこちらでつぶさに承っておりました。まさにこれは白地に新しい絵を描くということでございまして、今までこういった分野は開拓をされておりません。アメリカでこういった法律があるだけでございまして、したがって、先ほど来申し上げておりますように、アメリカからこの半導体チップの保護をぜひやってくれという強い要請があり、そして通産省側でもいろいろ対応いたしまして、今度初めてこの法律をお願いすることになったわけでございます。
したがって、新しい白地にかく絵でございますが、手続その他の問題につきましても、通産省は今まで例えば特許権の問題、いろいろなこともやっておりますし、こういった問題についての学識経験者も多いことでございますので、御指摘の手続の問題、それから登録機関の問題、十分研究をいたしまして、委員の御指摘になられた点の不安がないように、きめ細かく対応したい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/92
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093・水田稔
○水田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/93
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094・粕谷茂
○粕谷委員長 水田稔君の質疑はこれをもちまして終わりました。
次回は、明十七日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110204461X01219850416/94
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