1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年二月十九日(火曜日)
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昭和六十年二月十九日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
古屋自治大臣の昭和六十年度地方財政計画につ
いての発言並びに地方税法等の一部を改正する
法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部
を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び
質疑
午後零時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/0
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001・坂田道太
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
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国務大臣の発言(昭和六十年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/1
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002・坂田道太
○議長(坂田道太君) この際、昭和六十年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。自治大臣古屋亨君。
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/2
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003・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 昭和六十年度の地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
昭和六十年度の地方財政は、累積した巨額の借入金を抱え引き続き厳しい状況にあることにかんがみ、おおむね国と同一の基調により、歳入面においては、地方債依存度の抑制に努めるとともに、地方税負担の公平適正化を推進しつつ、地方税源の充実と地方交付税の所要額の確保を図り、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化を図るとともに、限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、節度ある行財政運営を行うことを基本としております。
昭和六十年度の地方財政計画は、このような考え方を基本として策定しておりますが、以下、その策定方針について御説明申し上げます。
第一に、地方税負担の現状と地方財政の実情にかんがみ、その負担の公平適正化を図るため、個人住民税均等割の税率の見直し、事業税における新聞業等七事業に係る非課税措置の廃止など非課税等特別措置の整理合理化等を行うとともに、住民負担の軽減及び合理化を図るため、個人事業税の事業主控除額の引き上げ、不動産取得税の新築住宅に係る課税標準の特例控除額の引き上げ、固定資産税及び都市計画税の土地の評価がえに伴う負担の調整等の措置を講ずるほか、自動車取得税及び軽油引取税の税率等の特例措置の適用期限を延長することとしております。
第二に、現下の厳しい財政環境のもとで、昭和六十年度に限り暫定的に実施されることとなりました国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加額五千八百億円に相当する額について、所要の財源措置が必要となりましたので、地方交付税の増額と地方債の増発により完全に補てんすることとし、地方財政の運営に支障が生ずることのないようにいたしております。
第三に、抑制的基調のもとにおいても、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、その特性を生かした地域社会の形成を進めますとともに、生活関連施設の整備を図る等住民生活に直結する諸施策を実施することとしております。このため、住民生活に身近な社会資本の計画的な整備と町づくり特別対策事業の充実に努めるとともに、福祉施策及び教育、文化振興対策等の推進を図ることとし、これに必要な財源を確保し、また、過疎地域等に対する財政措置を引き続き講ずることとしております。
第四に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化及び一般行政経費の抑制を行うとともに、国庫補助負担金について一般財源化及び補助単価の適正化等その改善合理化を進め、さらに年度途中における事情の変化に弾力的に対応できるよう必要な措置を講ずることとしております。
以上の方針のもとに昭和六十年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は五十兆五千二百七十一億円となり、前年度に対し二兆二千三百七十九億円、四・六%の増加となっております。
次に、地方税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
昭和六十年度の地方税制の改正に当たりましては、最近における地方税負担の状況及び地方財政の実情にかんがみ、税負担の公平適正化の推進に努めるとともに、住民負担の軽減及び合理化にも配意しながら、地方税源の充実を図ることをその基本としております。
以下、その概要について御説明申し上げます。
第一に、地方税法の改正であります。
まず、地方税負担の公平適正化を図るため、昭和五十五年度以来据え置かれてきました個人住民税均等割の税率について、その後の物価水準の推移等を勘案し、その見直しを行うとともに、事業税における新聞業等七事業に係る非課税措置について、創設以来長期間を経て社会経済情勢が著しく変化していること等にかんがみ、これらを廃止する等地方税における非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととしております。
また、住民負担の軽減及び合理化を図るため、個人事業税の事業主控除額の引き上げ、不動産取得税の新築住宅に係る課税標準の特例控除額の引き上げ等を行うとともに、固定資産税及び都市計画税について評価がえに伴う税負担の調整を図るための措置を講ずることといたしております。
さらに、地方道路目的財源の充実確保を図るため、自動車取得税及び軽油引取税の税率等の特例措置の適用期限を延長することといたしております。
第二に、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の改正でありますが、日本国有鉄道の市町村納付金の算定標準額の特例措置の適用期限を延長する等の改正を行うこととしております。
そのほか、所要の規定の整備を図ることとしております。
これらの改正により、昭和六十年度におきましては、三百二十七億円の増収となる見込みであります。
次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
第一に、昭和六十年度分の地方交付税の総額については、同年度における国庫補助負担率の引き下げに伴う地方の財源不足を補てんするため、総額の特例措置として一千億円を加算することとした結果、その総額は九兆四千四百九十九億円となり、前年度当初に対し九千二百七十二億円、一〇・九%の増となっております。
また、地方財政対策において、後年度の地方交付税の総額に加算することとした千三百五十五億円については、既に減額することが法定されている三百億円を控除して、昭和六十六年度から昭和六十八年度までの各年度分の地方交付税の総額に加算することとしております。
さらに、昭和六十年度の普通交付税の算定については、経常経費に係る国庫補助負担率の引き下げ等に伴い増加する経費に対し所要の財源を措置し、あわせて生活保護基準の引き上げ等に要する経費の財源を措置することとするほか、地方債による措置の縮減に伴い必要となる投資的経費を基準財政需要額に算入する等のため単位費用を改定することといたしております。
第二に、当せん金つき証票の収益金の使途の弾力化、最高賞金の倍率制限の緩和等を行うとともに、公営競技を施行する地方団体の公営企業金融公庫に対する納付金制度の延長、拡充等の改正を行うこととしております。
以上が昭和六十年度の地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
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国務大臣の発言(昭和六十年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/3
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004・坂田道太
○議長(坂田道太君) ただいまの地方財政計画についての発言及び二法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山下八洲夫君。
〔山下八洲夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/4
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005・山下八洲夫
○山下八洲夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました昭和六十年度地方財政計画並びに地方交付税法等の一部改正案につきまして、総理を初め関係各大臣に質問をいたします。
まず本論に入る前に、私は一年余、議場の最前列の議席で総理の施政方針並びに質問に対する答弁等を真剣に聞いてきました。総理、あなたの言葉は、二十一世紀とかあるいは文化とか花とか緑とか、美辞麗句、形容詞の羅列で、内容が余りにも貧弱ではありませんか。(拍手)もっと真剣に、前向きの答弁を強く要望いたします。国民はこのことを一番願っているのであります。
さて、私は、近年の行政投資の縮小均衡路線に大きな疑問を抱いています。例えば五十年代に入ってからの国民総生産に占める国及び地方の財政の比重を見ますと、五十六年度の国と地方を合わせて三〇・四%をピークとして、五十九年度においては二六・七%、六十年度においては二六・一%の見込みとなっております。これを国と地方に分けてみますと、五十六年度は国一一・三%、地方は一九・一%となっており、これが六十年度には国一〇・三%、地方一五・八%と落ち込んでいます。
この数字から明らかなことは、第一に、GNPに占める行政投資の位置の低下、第二に、特に地方財政の落ち込みの激化であります。同時にこのことは、自治体の財政力の格差に基づいて地域経済格差も一層拡大していることを物語っております。政府は、財政再建を理由に緊縮財政をとっておりますが、公共経済の地位の低下と、それによる地域格差の拡大をもたらしている実態をどのように受けとめ、またその是正についてどのような施策をお持ちなのか、総理大臣、経済企画庁長官、大蔵大臣、自治大臣の御所見をおのおのお伺いしたいと考えます。
第二に、地方財政計画の意義についてお伺いしたいと存じます。
地方財政計画と決算を比較いたしますと、その乖離は相変わらず大きいものがあります。五十七年度を見ますと、一般行政経費が二七・三%、二兆四千六百八十六億円の増、補助事業が六・八%、五千二百三十六億円の増となっており、一方単独事業は二六・八%、二兆二千八百十二億円のマイナスとなっております。この傾向は五十年代共通のものでありますが、特に単独事業は五十一年度から二〇%台のマイナスを続けております。
これは第一に、地方財政計画が地方の財政需要を的確に反映していないこと、第二に、国が財政を抑制しても実際には必要行政経費は下がるわけではなく、地方が乏しい財源からその分を補てんしていること、そして第三には、そうした地方への財政転嫁によって自治体財政の弾力性が欠如し、地域特性に応じて行われるべき単独事業の実施能力がないということを示しております。
計画と決算の乖離とその特徴は、今や地方財政計画が地方財政の実像を示すものではなく、国家予算の裏負担計画にすぎないことを明らかにしております。そして、六十年度地方財政は国庫補助率一律カット分を除いては収支均衡とされておりますが、これは自治省が単に帳じりを合わせているにすぎず、実態は、六十年度地方交付税が対前年度一〇・六%の伸びをもってしても財源不足は依然として存在していることは明らかであります。
私は、今日に至っては、地方財政計画の策定に地方自治体の参加を保障し、地方の財政需要の的確な把握と、国、地方の調整を行う、例えば地方自治委員会のような調整機構の設置を早急に実現させなければ、地方財政、大きく言えば公共経済は、無秩序な混乱状況に至ると考えます。中曽根総理は、分権自治の推進、地方の自立を強調されておりますが、国及び地方の調整機関の設置は、総理の政策基調からしても必要不可欠と考えますが、総理の御見解を伺いたいと存じます。(拍手)
また、自治大臣には、計画と決算の乖離、特に一般行政経費の大幅増加と単独事業のこれも大幅な落ち込みをどのように考えておられるのか、また、その解消のための施策をお示し願いたいと存じます。
第三に、地方交付税についてただしたいと考えます。
五十九年度において政府は、制度改正と称し、地方財政における財源不足額に対する国と地方の貸し借りをやめ、既往の借入金の整理を行うとともに、今後財源不足が生じた場合は、特例措置として国が地方交付税に加算することといたしました。しかし、政府の制度改正は一年にして崩壊したと言わざるを得ません。それは、国庫補助率一律カットによる五千八百億円の地方負担転嫁によってであります。五千八百億円は地方財政需要の本来の財源不足額ではなく、国による政策的な新たな地方負担転嫁であります。しかも、特例措置として一千億円が交付税に加算されましたが、これが五十九年度における制度改正で言う特例措置と性格が異なることは明白であります。貸し借りはやめる、財源不足額は特例措置とするとしたのが、早くも六十年度において崩れ、しかも、さきに述べましたとおり、見せかけの収支均衡を理由に、本来国の事務事業であるべき社会保障費を含めた地方転嫁を行おうとしているのであります。
自治大臣は、この六十年度地方交付税の実態、これは特例措置の一千億円、五十九年度繰り越しの一千二百七十二億円を加えましても、法定税率を下回る額でしかありませんが、地方交付税法の制度改善に基づくものと説明されるのか否か、明確な御答弁をいただきたいと思います。
また、総理にお伺いいたしますが、経常経費系統の補助率一律カット対象事業の多くは機関委任事務であると考えます。総理は、機関委任の廃止、整理については積極的な姿勢を示しておられます。たとえ六十年度限りとはいえ、国が手当てすべき費用を地方に押しつけようとするのでありますから、少なくともこれらの事業については機関委任をやめる方針をお持ちと推測いたしますが、行革審で審議中などという、そんなことを考えず、受け身のものではなく、総理自身の御所見を披瀝いただきたいと存じます。
私は、この際、民間活力の導入についてお伺いいたします。
総理は、国公有地の民間払い下げ、民間活力の導入を強力に主張され、百六十三地点、六十五ヘクタールをリストアップし、既に五十九年十二月末時点で二十六地点を処分しておられます。ところが総理は、ことしに入り、一度公団に譲渡した後、再度随意契約で民間企業に払い下げる方策を打ち出されました。既に処分したものは入札で、今後は随契でというのは著しく公正を欠く措置であります。国有地の払い下げは、信濃川河川敷問題を見ても、利権と非常に結びつきやすいものであります。総理の方針の転換も、政治献金と絡んで受け取る向きもあります。この際、総理の率直な所見を伺いたいと存じます。
また、総理は、地方行革の推進、花と緑の町づくりを提唱されておりますが、自治体が最も頭を悩ましているのが用地確保であります。自治体に高い用地を取得させ、民間企業には安い国公有地を払い下げるというのでは、行革の趣旨にも反します。まず自治体や公団公社による有効利用を促進すべきで、それをおいて民間企業への払い下げに固執する総理の姿勢は不自然さをぬぐえませんが、明確な答弁を重ねてお願いをする次第です。また、国公有地の払い下げによる経済的あるいは財政的効果について、経済企画庁長官、大蔵大臣から具体的なお答えをいただきたいと存じます。
次に、六十年度予算の前提となる経済見通しについて一言質問したいと思います。
大臣は、六十年度実質四・六%の内需主導の経済成長を想定しているのであります。その内需のうち個人消費については、六十年度の減税がなされず、国庫補助金一律カットが示しているとおり、福祉関係はばっさり切り捨てているのであります。仲裁裁定やあるいは人事院勧告の完全実施を初め大幅な賃上げと、医療、年金など福祉関係の向上と充実がない限り、消費者はますます先行きが不安になり、財布のひもは一層かたく、消費支出の大きな増加と内需の拡大は見込めないのであります。そしてまた、政府支出は歳出抑制によって抑え込まれたままであるため、結局、六十年度の経済見通しは実質的には政府説明に反して外需主導と言わざるを得ないと思いますが、同じ選挙区の金子経済企画庁長官の御所見をお伺いしたいと存じます。
最後に、国鉄の特定地交線について、総理並びに自治大臣にお伺いいたします。
総理、あなたは施政方針演説において、「地方公共団体と協力して、花と緑に囲まれた、安全で快適な生活環境づくりを進め、さらに、各地域が独自の創意工夫により、特色ある文化の花を吹かせた、魅力ある町づくり、村づくりを進められるよう努力してまいります。」と申しておりますが、地方交通線の廃止やあるいは第三セクター化で過疎化が一層進み、総理の考えている文化の花を吹かせた町づくりや村づくりは、私は夢物語だと思います。
全国の特定地方交通線の多くは、町や村の山合いあるいは谷合いを国民に愛されて走っているのであります。自治大臣の地元の岐阜県明知線も同じであることは、大臣が一番御存じのことでありましょう。私も大臣の隣町に住んでいますので、よく知っております。私の教えられたところによりますと、その明知線は、古屋大臣の父、今は亡き古屋慶隆先生の努力で開通したと語りぐさにもなっているのであります。この鉄道がことしの秋には第三セクターとして自治体主導の運営になることは必至で、関係市町村の財政負担は大変なものであります。第三セクターへの転換に国から転換交付金や運営費補助金を助成せず、国の責任で国鉄に交付をし、国鉄の経営にすべきではないか。また、財政力の弱い地方自治体の第三セクターへの財政負担を中止すべきであると考えますが、総理並びに自治大臣の御答弁をいただき、私の質問を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/5
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006・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 山下議員にお答えをいたします。
まず、地域経済格差の是正の問題でございます。
我が国経済の現況を見ますと、景気には地域的にばらつきが見えますが、全体としては拡大上昇の傾向にあると思います。政府は、今後とも、景気の持続的拡大を図るために機動的な経済運営に努めるとともに、地域の特性を生かした地域経済の自立的発展を促す所存でございます。特に、公共事業費の配分等につきましても、きめ細やかな配慮をいたしまして万全を期するつもりでございます。
次に、地方財政計画の策定における地方団体等の関与についてお答えいたします。
地方財政計画は、毎年度、国の経済見通し、国の予算、財政投融資資金計画、長期計画等との関連のもとに、地方団体の財政需要の動向を踏まえ、地方財源の確保と円滑な地方行財政の運営が図られるよう、政府の責任において策定しているところでございます。この地方財政計画の策定に当たりましては、地方財政審議会の意見を聞くとともに、地方団体の意向を十分尊重しているところでございまして、別途の国と地方との間の調整機関を設けることは考えておりません。
機関委任事務等の問題について御質問いただきました。
臨調答申におきましては、必要性の乏しくなった事務を廃止、縮小する、地方公共団体の事務として既に同化、定着している事務を地方公共団体の事務とする、都道府県から市町村への委譲を適当とするものについて積極的に推進する、こういう考えが示されております。政府といたしましては、この答申の趣旨を踏まえ、五十八年の第百回臨時国会におきまして、行政事務簡素合理化法等により、当面五十五件の整理合理化を図ったところでありますが、さらに機関委任事務のあり方につきましても、行革審の審議結果を踏まえ、政府としての具体的方針を検討し推進いたします。
次に、国公有地の払い下げ、公団活用の問題でございます。
公的機関活用構想は、国有地等の有効活用という観点からは一つの方式であります。いずれにせよ、国有地等の処分は、適正公平を期することが必要であり、公団をこの中間機関として活用するということは一つの研究課題でありまして、決定しているものではございません。国公有地の公団、公共団体への活用については、国公有地の処分に当たりましては、地元公共団体等の利用要望があれば、その必要性等を十分勘案して調整いたします。地元公共団体等の利用要望のないものについては、経済の活性化等に資するよう民間活力にも配慮いたします。
特定地方交通線の問題でございますが、未曾有の危機状態にある国鉄対策のために、既に鉄道特性が失われた線区を維持するのは困難であり、特定地方交通線対策は積極的に推進してまいります。
このような観点から、政府としても転換を促進するための助成金の交付を行っておるところでありまして、今後もこの政策は続けていくつもりであります。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/6
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007・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 山下議員の御質問にお答えいたします。
最初は、政府の行政投資に対する質問でございます。
国土の均衡ある発展と魅力ある地域社会の形成を図りますために行政投資の重要であることは申すまでもありません。最近における行政投資の推移がどのような影響を与えるかについてはいろいろ見方があると思いますが、国、地方公共団体を通ずる厳しい財政状況下におきまして、今後とも行政投資の適正な配分と計画的、効率的な実施を通じまして、均衡ある国土の整備と活力ある豊かな地域づくりに邁進してまいります。
地方財政計画と決算の乖離についてお答えいたします。
地方財政計画は、本来、標準的な水準にある地方財政の歳入歳出の状況を把握することを通じまして、地方団体の標準的な行政に要する財源を保障することを目的とするものであります。しかも、計画は原則として単年度の当初ベースで積算されておりまして、実際の財政運営の結果である決算とある程度の乖離が生ずることは、その仕組みの上からまことにやむを得ないものと考えております。しかし、必然的に生ずる乖離を除きまして、その差はできるだけ小さいことが望ましいのでありますから、従来から、計画を策定する際に、規模是正を図るなどによりまして、その差を縮小する努力を重ねてきたところでありますが、今後ともそうした努力を一層強く図ってまいります。
その次は、交付税法第六条の三と地方交付税の特例措置についてお答えいたします。
昭和六十年度の地方財政収支見通しにおきましては、経費全般にわたる節減合理化と地方交付税など地方一般財源の伸長等によりまして、国庫補助負担率の引き下げがない前提では収支が均衡する状況でありましたが、国庫補助率の負担の引き下げが行われましたことにより、これに対する財源措置を講ずる必要が生じましたため、地方交付税の増額と地方債の増発により対処することといたした次第であります。この交付税の増額措置は、地方交付税法第六条の三の規定に基づきまして、昭和五十九年度において改正しました地方交付税法附則第三条の規定に基づく特例措置でありますので、昭和五十九年度において制度改正された趣旨は生かされているものと考えております。
最後に、第三セクターへの転換による地方自治体の財政負担でございまして、地元の明知線につきましては、山下先生も大変御関心を抱いておるところでございますが、やはり地域住民の意思というものが一番中心であり、国の基準も守っていかなければならないのでございます。自治省といたしましては、地方財政の現状からいたしまして、こういう問題、第三セクターに加わることにつきましては慎重に対処してまいるよう指導しておったところでありまして、この方針は変わりありません。したがいまして、お話の明知線の問題も、この秋には第三セクターになると思いますが、この方針につきましては、私ども慎重に対処する、こういう考えでおります。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/7
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008・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 山下さんにお答えいたします。
まず、経済問題でございますが、我が国経済は、設備投資等国内民間需要を中心といたします自律的拡大局面にありまして、地域間の景気動向のばらつきも、景気の拡大に伴いながら改善しつつある現状であります。一方、我が国財政は巨額の公債残高を抱えておりますので、大幅な財政赤字を出しているという極めて厳しい現状からして、財政が積極的な役割を果たすような状況には残念ながらございません。また、従来より行財政改革を進めながら景気には可能な限り配意した財政運営を行ってきておりますが、六十年度予算におきましても、一般公共事業の事業費につきまして種々の工夫を行うことにより、前年度を上回る水準を確保したところでございます。
それから次に、民活対象財産の問題であります。
関係地方公共団体との調整を行いまして、処分可能なものから速やかに処分することとしております。民活対象財産を処分することによりまして、税外収入の確保を図って財政改革に寄与いたしますとともに、民間活力により、これらの財産を都市再開発あるいは住宅供給等のために有効に活用することによりまして、景気の持続的拡大にも寄与するものであろうと考えておるところであります。
なお、国有財産の売却は法令の規定に基づきまして厳正に行うべきものであります。一般競争入札を行った場合には、入札の場において、入札参加者に対して落札者の氏名、落札価格等を開示しておるというのもそういう趣旨からであります。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/8
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009・金子一平
○国務大臣(金子一平君) 山下議員にお答えいたします。
第一点は、地域間の格差是正をどう考えておるかという問題でございますが、我が国経済の動向を見ますと、電気機械などの好調業種の多寡やあるいは公的支出依存度の高低などの地域特性によりまして、景気動向になおばらつきが残されておりまするけれども、全体として景気は拡大傾向を続けております。また、景気回復のおくれておる地域につきましても、景気拡大が持続するにつれて漸次改善の方向に向かっておると考えていいと思うのでございます。政府は、五十九年度の上期におきましては、公共事業等の機動的な、弾力的な施行をやりまして、地域経済にも配慮した機動的な経済運営に努力してまいったのでございまするが、今後も景気の動きを的確に見定めて必要な機動的な措置をとってまいりたい。また、民間活力が最大限に発揮されるような環境の整備を行うことによって景気の持続的拡大を図るとともに、地域の特性を生かした地域経済の自立的発展を促すための諸施策を講じてまいりたいと考えております。
それから第二点は、国公有地の売却の経済効果でございまするけれども、既にお話がございましたが、市街地の居住環境の整備を図る上で極めてこれは大事なことでございますので、周辺市街地を含めた総合的な都市整備に資するように、これからも努力してまいりたいと考えております。特に、国公有地の売却による経済効果につきましては、所在地等の条件によって一概に申し上げられないことは当然でございますが、国公有地を核とした民間活力の総合的な活用による住宅、都市開発投資は、住宅建設促進等の直接効果のほかに幅広い関連投資が行われるという経済的波及効果を持っておりまするので、内需中心の安定的経済成長にも大きな役割を果たしてくれるものと考えております。また、総合的な都市整備に伴い、地域経済の活性化にも資することになると考えております。
それから第三点の、六十年度の経済見通しいかんということでございまするが、六十年度におきましては、アメリカの景気が鈍化いたしまするので、輸出の伸びが緩やかになってまいりまして、その点、ある程度の影響を受けることはもう御承知のとおりでございます。
私どもといたしましては、今日の財政事情が許せば、ある程度の減税もやり公共投資もやりたいと考えておったのでございますが、それができるような情勢ではございません。ただ、一部の投資減税を実行いたしましたり、あるいはまた公共事業の一般会計の分を伸ばしたりというようなことはやっておるわけでございます。やはり輸出中心から民間活力を大いに盛り上げる方向に持っていかなければならないわけでございまするが、個人消費は、引き続き所得が順調に増加し、また景気拡大が続くことによりまして消費マインドに明るさが増すと期待できますので、前年度よりその伸びを高めるものと考えております。また、住宅投資も着実に増加するものと考えられます。さらに、設備投資でございまするけれども、次々と開花しつつある革新的な技術に関連する豊富な投資機会を利用して、投資は引き続き活発に行われておるのでございまして、また、緩やかな回復を続けておる個人消費や住宅投資の足取りが一層しっかりとしてくるにつれて、こうした分野に関連した業種の動きも強まるものと予想いたしておる次第でございます。
こういう点から、政府経済見通しの実質四・六%程度の成長は確実に達成し得るものと私どもは考えております。
以上、お答えいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/9
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010・坂田道太
○議長(坂田道太君) 上野建一君。
〔上野建一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/10
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011・上野建一
○上野建一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案に対し、自治体の行財政の基本問題を中心にいたしまして、総理並びに各大臣に質問をいたします。
質問の前に、まず私は総理に対して強く注文をしておきたいと存じます。
防衛費の対GNP問題に関連して予算委員会における総理の答弁を聞いておりますと、質問する党によって本音と建前を使い分けているのであります。まさに巧言令色というよりは私は不遜な態度と言わざるを得ないのであります。このような態度は、事が重大なだけに国民の不安と不信感を増していることは明らかであり、率直かつ政治責任を明らかにした答弁をいただきたいと存じます。
まず私は、自治体に関連する基本的問題について質問いたします。
その一つは、昨日、千葉県議会に起こった県議会議員の公職選挙法を悪用した、有権者を愚弄した交代劇の問題であります。これは既に新聞等に報道されておりますので詳しくは申し上げませんけれども、五十四年の県議会選挙で九千万余円の買収容疑で逮捕され、議員の辞任と懲役三年の判決を受けた石井元県議が、その身がわりと言われていた現県議会議員を辞任させ、近く行われる知事選挙の際補欠選挙を行わせ、再び立候補しようとしているのであります。この問題は単なる議員個人の問題ではなく、議会制民主主義を軽視し議席を私物化するものであります。加えて有権者を愚弄して余りある問題でありまして、政治不信を大きく増大させるものであります。
そこで、中曽根総理にお答えをいただきたいのでありますけれども、あなたは自民党総裁でもあります。このような現在の選挙制度を逆用しあるいは地方自治法を利用した自民党員による県議会の現と元の二議員に対して、このような行動を中止するように総裁として指示すべきだと思いますが、どうでしょうか。自民党の政治倫理とも関連してお伺いをいたします。
次に、この問題について国家公安委員長でもあります自治大臣にお尋ねをいたします。
一つは、このような例が全国のどこかにあるのか。法的にはどうか。この問題は、おまえはおれのかわりだから、おれが出られるようになったら、おまえはやめろという、まさにやくざもどきの交代劇だという批判がありますけれども、これに対してどうお考えになるか。二つ目は、この元県会議員が現県会議員とともに暴力団に関係すると言われておりますけれども、その事実はどうか。
次に、二つ目の問題は、いわゆる自治体行革の問題であります。
昨年、概算要求基準が設定された以降、自治体に対する高率補助の一律カットの見返りとして、自治体に対する権限強化が総理から約束されました。必置規制の廃止等に係る法律案がそれでありますが、膨大な機関委任事務の改廃は、一昨年は四十余件が行われただけで、その後は何ら是正措置がとられていません。五千八百億円もの負担が自治体に転嫁されようとしているとき、総理の言う見返り措置なるものがこのような必置規制の廃止等で済まされるならば、余りにも自治体に犠牲を強要するものと言わざるを得ません。一体総理は、地方自治を国の赤字財政の補てん機関としか考えていないのではありませんか、明らかにしていただきたいと存じます。
このことは、閣議に報告された地方行革大綱についても同様であります。国の行革の後は地方行革だと言っておるわけでありますけれども、この大綱は、全自治体に首長を長とする行革推進機構を設けることを義務づけ、策定すべき内容をも網羅し、果ては自治大臣に報告することさえ義務づけているのであります。ここ数年来、職員の賃金問題をてこに自治体に対する地方債をカットしたり特別交付税を減額するなど、財政的締めつけを強めながらのこのような措置は地方自治を侵害するものであります。自治体の自主的努力に逆に水を差すものと言わざるを得ません。高率補助の一律カットを受け入れ五千八百億もの負担転嫁を許容した自治省は、今や地方自治の最小限の歯どめさえもみずから放棄したわけで、この責任はまことに重大と言わざるを得ません。自治体が自主的に事務事業の改善をできるよう、国、自治体間の行財政制度を分権を基本として改革し、そのための条件を整えることこそ自治省の任務であると思いますので、大綱に基づく次官通達は撤回をすべきと考えておりますが、自治大臣はどう考えるか、見解を明らかにしていただきたいと存じます。
次に、最近の税制論議を聞いておりますと、見直し論ばかりが先行する嫌いがあり、とりわけ総理が盛んに強調するシャウプ税制のゆがみの是正論に至っては大変無責任な論議と言わざるを得ません。申し上げるまでもなく、シャウプ税制の根幹をなす考え方は、戦前の税財政の改革を通じて戦後民主主義の行財政上の基盤を整備することにあり、その主眼は地方財政の強化にあったことは明らかであります。すなわち、戦前の内務省を中心とする集権的な支配を打破し、国、都道府県、市町村の行財政の責任を明確にする行政事務の再配分と税源の分離による独立税主義の確立を第一の基本とし、その上に立って自治体の税率を上下させる権限保障と地方財政平衡交付金による財源不均衡の調整を第二の柱とし、もって地方自治の財源基盤の強化による民主政治の発展を図ること、これがシャウプ勧告の歴史的意味であります。この意味は、今日においてもその輝きを増しこそすれ、色あせたものではありません。地方交付税を含めた租税総額に占める自治体への実質配分は、昭和五十二年の八〇%をピークに今日は六九・九%に低下し、昭和四十年代前半の水準に逆戻りしております。この間、自治体の財源不均衡を完全に調整すべき地方交付税は昭和五十年以降恒常的に不足し、地方債への振りかえを余儀なくされております。また、行政事務においては、約四百を超す機関委任事務の存在によって、国民に対する行政責任の明確化は全くほごとなっております。このようなシャウプ勧告の歴史は、それがなされた直後から今日まで自民党政府による骨抜きの歴史であるわけでありまして、この点についていかにお考えか、総理にお伺いをいたしたいわけであります。
さらに、大蔵大臣にお尋ねいたします。
シャウプ勧告のゆがみを是正すると言いますけれども、ゆがみとは具体的に何を指しているのでありましょうか。総理大臣、大蔵大臣のこれまでの言動を見ますと、具体的定義のないまま戦後税制の見直しをシャウプ勧告のゆがみの是正に求めることは、明らかにごまかしの論理と言わざるを得ません。シャウプ勧告の精神と具体的改革案をゆがみと言うのか、それとも一連の臨調答申の思想のように、地方財政は国に比べ極めて余裕があり、地方交付税率の引き下げあるいは税源の縮小こそがシャウプ勧告のゆがみの是正だと言うのか、まず明らかにしていただきたいのであります。
そこで、自治大臣に質問をいたしますが、自治大臣は、果たして大蔵省が言うように地方財政に本当に余裕があるとお考えでしょうか。昭和六十年度末の地方財政の借金残額は約五十六兆円となると見込まれております。数字だけを比較をすれば、国の赤字国債百三十三兆円に比べて約四割と少ないように見えますけれども、地方税と国税の比率は三対七と圧倒的に地方税の比率が少ないこと、これを考えるならば、実質的な借金の比重はむしろ地方財政にこそ重いと言わざるを得ないのであります。したがって、地方財政余裕論の生ずる余地は全くないのであり、五十九年度に引き続き、六十年度においても実質的に一・五%地方交付税率のカットとなるような地方財政対策や高率補助の一律カットなど、許容されるものではないはずであります。したがって、地方財政にとってシャウプ勧告のゆがみの是正とは、自治体とりわけ市町村の独立税源の強化、地方交付税の充実にこそあると思いますけれども、いかがでしょうか。明確なお答えをいただきたいと存じます。
さて、今回の地方税制について、二、三具体的に質問をいたします。
今回の改正案の最大の特徴は、国税重視、地方税軽視の最たるものと言わざるを得ません。すなわち、地方税制改正による地方の税収入は百二十三億円の減であり、同税改正の地方へのはね返り分四百五十億円によって辛うじて増収となっているのであります。昨年の税制改正もそうでありますけれども、地方税制改正では地方財政に穴をあけっ放しという改正が一体どこにあるのでありましょうか、自治大臣の責任について明らかにしていただきたいと存じます。
かねてから我が党が主張していたように、事業税における新聞業等七業種に対する非課税措置が廃止されたことは是といたしますが、不公平税制の最たるものである医師の社会保険診療報酬課税の特別措置について全く手がつけられなかったのはどうしたことでありましょうか。自治省は政府税調にもその改正の検討を求めているはずなのに、一〇〇%非課税が大手を振ってまかり通るなどということは、地方税制には不公平税制は存在しないとお考えなのでありましょうか。少なくとも所得税並みの課税をなすべきだと考えますが、お答えをいただきたいと存じます。
近年、自治体間の行政水準は相対的に向上し、税負担に格差を設ける根拠は必ずしもないと考えます。と申しますのは、昭和五十五年以来久しぶりに個人住民税の均等割が引き上げられることとなっておりますが、その内容は、人口五万人未満の市町村のそれが五〇%もアップし、人口規模の大きい市町村ほど低くなっているのであります。このような格差は何を根拠にしているのでありますか。官僚の小手先的な操作の嫌いが大でありますが、政策的にはもはや人口規模に関係なく同額とすべきと考えておるわけでありまして、いかがでございましょうか、御答弁をいただきたいと思います。
最後に、地方道路税についてお尋ねいたします。
政府は、揮発油税等道路財源が余っていることを理由に、その一部を一般会計に取り込んだりし、六十年度においては道路特別会計に直納したりしております。しかし、このように道路財源に余裕があり、しかも、道路整備五カ年計画など長期事業の進捗が低下している実態を直視するならば、この際、地方道路譲与税としての譲与率を現行の四分の一から引き上げ、地方道の整備に重点を置くべきだと考えますが、いかがでありましょうか。建設並びに関係大臣に答弁をいただきたいと存じます。
以上であります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/11
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012・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 上野議員にお答えをいたします。
冒頭お尋ねの千葉県議の件につきましては、自民党は辞任を認めていないという報告を受けておりますので、どうぞ御心配なきようにお願いいたします。
次に、機関委任事務、高率補助の一律カット等の御質問でございます。
六十年度予算は極めて厳しい環境にあり、臨調答申等の指摘を踏まえ、補助金等の徹底した整理合理化に積極的に取り組んでおります。補助率の引き下げに伴う地方負担の増加につきましては、交付税の特例措置及び建設地方債の増発等で約五千八百億円の措置を講じて、万全の措置を行っておるところであります。
なお、機関委任事務については、既にその整理合理化を図ってきていますが、その基本的あり方については行革審で検討を進めております。その審議結果を待って政府としての具体的方針を検討し、これを推進していくつもりでございます。
行革は全国民の声でありまして、特に地方行革は今や非常に重要な国民の要望になってきております。政府といたしましても、法律の枠内でこれを推進していることは不当ではありません。一部の市町村においては、いまだ給与のかなり高いところが散見しておりまして、これらにつきましても是正をする必要があると考えておるのであります。
シャウプ勧告の問題でございますが、シャウプ勧告は、財政民主主義に基づきまして、直接税等を中心にして所得の再分配機能を調整しようとした画期的な税制であり、私は高くこれを評価しているところでございます。しかし、その後の経過を見ますと、次に申し上げるような幾つかのひずみ、その他が出ておるわけでございます。例えば所得課税の所得再分配機能のあり方、あるいは所得の捕捉の問題、あるいは課税ペースの浸食の問題、あるいは間接税の課税ベースや税率構造の問題等々でございます。なお、国と地方公共団体の財源配分の問題につきましては、国と地方との行政事務配分のあり方等を総合的に勘案の上、幅広い見地から検討を行っていく課題であります。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/12
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013・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 上野さんの御質問にお答えいたします。
まず最初に御質問ありました県会議員の進退問題についてでございますが、事実関係を私は承知しておりませんので、一般的関係について考え方を申し上げます。
議員は住民の信託にこたえて議員としての職務を全うすることが期待されておりますので、議員が任期途中におきまして自己の恣意に基づいてみだりに辞職することは、地方自治の運営にとっては好ましくないことと考えております。
次に、関連する県会議員が暴力団に関係ありと聞いておるがどうかということでございますから、この点は国家公安委員長としてお答えさせていただきます。
特定の人物につきまして、警察がその人物を暴力団員として認定するかどうか、あるいは暴力団に関係あるかどうかということについてのお答えは差し控えさせていただきます。
次に、地方行革大綱に基づく地方への指導についてお答えいたします。
地方公共団体の中には、国に先駆けて行政改革に取り組んで、かなりの成果を上げておりますものも相当ございますが、行政改革の努力が不十分なため住民の厳しい批判を受けておられるところもあることは事実でございます。地方行革を推進するためには、まず国において、地方行革を阻害し地方行財政の膨張をもたらしている制度、施策等の思い切った見直しが行われることが必要でありますが、最近の地方行財政をめぐる極めて厳しい環境の中で住民の多様なニーズにこたえるためには、この際すべての地方団体が足並みをそろえて、総力を挙げて行政改革を進めることが肝要であると考えております。このために、昭和五十九年十二月の地方制度調査会の答申を踏まえ、昭和五十九年十二月二十九日の閣議決定「行政改革の推進に関する当面の実施方針」、これを受けまして、地方公共団体における行政改革の指針として地方行政改革大綱を策定し、地方団体に対しまして、自主的に総合的な行政改革を推進するよう要請したところであります。しかし、各地方団体における具体的な行政改革につきましては、全く当該地方団体において自主的に決定して実施すべきものと考えておるのでありまして、次官通達を撤回する考えはございません。
地方財政にとってシャウプ勧告のひずみの是正とはの問題につきましてお答えいたします。
総理からもお話しになったのでありますが、シャウプ勧告の地方税財政に関する基本的な考え方は、一つは、日本の民主化を推進するため、地方自治特に市町村の基盤を強化する必要がある。そのためには地方財源の充実を図らなければならない。地方税の自主性の強化、国庫補助金の整理、新しい地方財政調整制度の創設を行うべきものであるというような意見が出されております。シャウプ勧告に示されたこのような基本的考え方は、今日の地方自治におきましても基本とさるべきものと考えております。厳しい財政状況に対応いたしまして、地方財政の健全化を図り、地方団体の自主性・自律性を高めながら充実した地域社会を形成してまいりますためには、今後とも地方税源と地方交付税の充実強化を図ることが肝要と考えております。
次に、地方財政は余裕があるのか、あるいは構造的体質の改善についてどう考えるかということでございます。
現下の地方財政は五十六兆円にも上る巨額の借入金残高を抱えておりまして、また、交付税特別会計借入金に係る借入金残高の五兆六千九百億につきましては、その償還を昭和六十六年度以降に繰り延べる等の措置を講じているところであります。したがいまして、地方財政は余裕があるとはとても申されません。また、三千三百余の個々の地方団体につきましても、公債費負担が著しく増加し、財政の硬直化が進んでおりまして、国と同様に厳しい財政状況の中にあるところであります。このため地方財政は今後ともその健全化へ向けて一層の努力を行う必要があり、国と歩調を合わせて行財政改革を積極的に推進し、経費全般にわたる節減合理化を図る一方、地方税の充実と地方交付税の所要額の確保など地方一般財源の充実強化に努める必要があると考えております。
昭和六十年度の地方税制改正の増減収の問題についてお答えいたします。
今回の地方税制改正の基本的な考え方は、税制調査会の答申等を踏まえまして、地方税負担の現状及び地方財政の実情にかんがみまして、税負担の公平適正化の推進に努めますとともに、住民負担の軽減合理化にも配意しながら地方税源の充実を図るという方針のもとに行うことといたしました。今回の税制改正による増減収見込み額は、地方税独自の税制改正のみを取り出すと、初年度は百二十三億の減収となりますが、国税の税制改正に伴う法人関係税の増収分も地方税としての改正増でありまして、これを含めた地方税全体では、初年度三百二十七億の増収となっております。なお、平年度におきましては地方税独自の税制改正による増減収のみでも八億円の増収となり、また、国税の税制改正に伴う増収分を加えた地方税全体の増収は八百九十四億となる見込みであります。
事業税の社会保険診療報酬の課税の特例措置について御説明いたします。
事業税における社会保険診療報酬に係る特例措置につきましては、昭和六十年度の税制改革に当たり、これを廃止する方向で検討したところであります。しかし、この特例措置廃止の問題につきましては、医業の法人化等の制約など他の事業に見られない種々の特殊性を考慮すべきであるという意見や、医療体制の整備等保健医療に係る諸施策との関連において総合的に検討すべきであるとの意見がありまして、今般はその実現を見ることができなかったわけでございます。社会保険診療報酬に係る特例の撤廃につきましては、今後とも引き続き保健医療政策との関連をも考慮して鋭意検討してまいりたいと思っております。
住民税均等割の問題についてお答えいたします。
市町村民税の個人均等割は、地域社会の費用の一部を住民が等しく分担するという性格を有しているのでありますが、その税率につきましては、本税創設時の昭和二十五年以来市町村の人口規模に応じた三段階に区分されております。これは、人口が集中するに従って市町村の行政サービスも複雑、多様化し、これに伴って財政需要も増大すると考えたからであります。しかしながら、近年においては人口規模による市町村間の行政サービスの内容も均質化の方向にあり、御指摘のように、均等割税率の格差も縮小されることが望ましいと考えております。今回の税率の見直しに当たりましても、前回改正と同様、それぞれの人口段階ごとの引き上げ幅を同額としており、結果として、人口規模による税率の差の比率は縮小しつつあることを御理解願いたいと思います。
地方道路財源の問題については、自動車交通の普及に伴いまして、地方道特に生活関連道路としての性格の強い市町村道の整備の促進を図ることが必要でありまして、地方道路目的財源の充実強化が望まれているのであります。このため、昭和六十年度の税制改正におきましては、当面、第九次道路整備五カ年計画の実施との関連において、自動車取得税、軽油引取税の税率等の特例措置の適用期限の延長など所要の財源を確保する措置を講ずることとしております。地方道路財源の拡充強化につきましては、今後とも御指摘のように一層の努力をしてまいりたいと思います。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/13
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014・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 上野さんにお答えいたします。
シャウプ税制のゆがみの是正とは具体的に何を指すか、こういうことであります。
総理からも、そして自治大臣からもお答えがございましたように、シャウプ税制というのは今日においても税制の基本的考え方として評価されておるものを含んでおることは言うまでもございません。我が国の経済、社会の構造変化に伴いまして、いろいろな問題が指摘されるようになってきております。ゆがみということになるとさまざまな見方がございますが、これを整理して申し上げますならば、所得課税の所得再分配機能のあり方、所得の捕捉、課税ベースの浸食、間接税の課税ベースや税率構造、こういうものが税調等でも指摘されておるところであります。
それから、地方財政と国との関係、地方交付税率の引き下げ、あるいはシャウプ勧告のゆがみの中でそれらが考えられはしないか、こういう御趣旨の御質問がございました。
行政が総合的、効率的に行われますためには、国と地方公共団体がそれぞれの機能と責任を分かち合いながら相互に協力していくことが必要であります。また、国と地方の財政は、税源配分、交付税交付金、補助金等によって密接な関係を有しておることは言うまでもありません。このような国と地方とのいわゆる税財源配分の問題につきましては、国と地方の役割分担、そしてそれを見直したり、国と地方の財政状況等を踏まえながら幅広い見地から検討されるべき課題であるというふうに考えております。
それから、直間比率が地方財政に与える影響、こういうことが一つございました。
税調の答申の趣旨等を踏まえまして税負担の公平化、適正化を推進する観点に立って、直接税、間接税を通じた税制全般について、今後税制調査会を中心に国民各層各方面において広範な角度からの論議と検討が行われることが必要であるという基本的考え方に立っておりますので、税体系の具体的あり方は、これは国民の合意と選択によって決められるべきものでございますだけに、政府として現段階で予断を与えるような論議をすることは差し控えるべきであると考えておるところであります。(拍手)
〔国務大臣木部佳昭君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/14
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015・木部佳昭
○国務大臣(木部佳昭君) 上野議員にお答えいたします。
昭和五十九年度までに三年間にわたり自動車重量税を含むいわゆる道路特定財源の一部が道路整備費以外に充てられておりましたが、これは厳しい財政事情等によるやむを得ない措置でございます。この分については、建設省といたしましては、速やかに国の道路整備費に充てたいと考えておるわけであります。なお、昭和六十年度については、地方道路整備臨時交付金を設けること等により、いわゆる道路特定財源を上回る額を道路整備費に充当するところといたした次第であります。このようなことから、現時点で道路財源の地方への譲与率を引き上げる考え方は持っておりません。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/15
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016・坂田道太
○議長(坂田道太君) 柴田弘君。
〔柴田弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/16
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017・柴田弘
○柴田弘君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました昭和六十年度地方財政計画、地方交付税法等の一部を改正する法律案並びに地方税法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
総理、あなたは就任以来、たくましい文化と福祉の国づくりの遂行を強調しているのでありますが、このような事業は国民生活に密着をしている地方自治体の手によってこそ行われるべきものであると考えるのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
総理は、来るべき二十一世紀を展望して、国政上、地方自治体はどのような地位を占め、役割を演ずべきなのか、地方自治の基本的な認識についてまずお伺いをしておきたいわけであります。
さて、今回の昭和六十年度予算案は、「増税なき財政再建」を放棄した国民生活無視、増税押しつけ予算と言わざるを得ないのであります。所得税減税を見送り、福祉、文教予算を後退させている上に、地方自治体に対する福祉、医療、教育費等の高率補助金の一律削減が行われ、地方への負担転嫁を強要しているのであり、これはまさしく分権と自治の精神に反した財政措置であると言わざるを得ないのであります。
現行の補助負担率は、長い経過を経て合理的根拠に基づき定められたものであり、その補助率の変更には、まずもって国、地方間の機能分担のあり方が検討されなければならないにもかかわらず、今回の削減は国の財政再建のためだけを理由に、そのしりぬぐいを一方的に地方に押しつけたものと言わざるを得ません。すなわち、経常経費の補助削減の対象は生活保護費、児童保護措置費等、本来国の責務でなされるべきものが大半であり、その点の検討もない今回の一方的な削減は、国の責任の放棄につながるものであると考えるものであります。また、今回の措置は、補助金をめぐる煩雑な事務を何一つ削減するものではなく、総理がかねて主張する行政改革とは何ら関係のないものであります。
政府は、こうした安易な国の財政の帳じりを合わせるためだけの一律削減は直ちに撤回すべきであると考えますが、総理の決断を求めるものであります。また、あわせて、今回のこの一律削減については、自治大臣の率直なる見解を求めるものであります。
さらに、補助金は地方自治行政の画一化、中央集権化などの諸弊害の根源として、臨調等で強くこの廃止が指摘されているにもかかわらず、その整理は遅々として進んでいないのが現状であります。私は、既に自治体の事務として同化、定着しているものは、広範囲にわたって地方の一般財源化すること、また、申請手続の簡素合理化、徹底した補助金のメニュー化、さらに超過負担の実態調査とその解消等を強力に推進すべきであると考えます。あわせて、総理並びに自治大臣の見解を伺いたいのであります。
次に、地方行革についてであります。
政府は既に地方行革大綱を発表し、地方自治体みずからの手による地方行革の推進を強力に指導することといたしております。しかしながら、このような地方自治体みずからの行革の結果として生じた余裕財源が、その地方自治体によって住民のために使用されるのではなく、今回の高率補助率の引き下げに見られるように、国の負担転嫁の財源に充てられてしまうというのであれば、一体地方自治体が行革に対して熱意を持つのかどうか、極めて疑問だと言わざるを得ません。総理、いかがでしょう。
地方行政の現状から見て、地方も改革すべき点が少なくないことは事実でありましょう。しかし、自治体の事務の大半は、国の機関委任事務を初めとして厳しい規制が加えられ、また、その団体委任事務についても、職員配置などの必置規制や国の関与規定などにより、がんじがらめに縛られているのが実情であります。地方行革を進めるならば、まずこのような国の規制を外すことが前提であることは、すべての地方自治体関係者がひとしく認めているのであります。この点についての総理の見解を求めるものであります。
総理は昨年の九月、高率補助率の引き下げと引きかえに、中央省庁が握っている権限の一部を地方自治体に移すべきだとして、特別立法を自治省に指示されました。まさに権限の地方移譲は地方行革の中心をなす事項でありますが、これは自治省一省でできるものではないことを総理は一番よく理解されているはずです。これを断行するには強力なリーダーシップが不可欠であり、まさに総理の指導性の有無にかかっているのであります。しかるに、さきに発表されました国の関与の是正や必置規制の是正案は、地方自治体の要望とはほど遠く、これによって地方行革の実が上がるとは到底思えないのであります。総理は、この程度の是正案で十分と考えていられるのか、明確な答弁を求めるものであります。
次に、地方財政計画についてであります。
昭和六十年度の地方財政計画は、五十年代以降の財政危機に伴う借金返済のための公債費が急増し、計画の一一・二%を占めております。また、給与費等の経常経費が四〇%を占めるなど財政の硬直化が著しくなっております。このため、自治体の単独事業は抑えられるなど六十年度地方財政は依然締めつけが厳しく、地方財政の自主性が望めないものとなっております。地方自治体は、高齢化、都市化、国際化、高度情報化など新たな時代への変化に対応し、個性的で心豊かな活力ある地域社会の実現に取り組んでいかなければなりません。そして、一口に地方財政といっても、三千三百余の大小の自治体があり、その態様は千差万別であります。各自治体が実態に即した財政運営を進めるためには、どうしても交付税率の引き上げによる一般財源の確保が必要であると考えます。総理並びに自治大臣の御見解をお伺いいたします。
さて、こうした地方の現状を考えましたときに、現行の国主導型の地方財政制度では、地方の実態に即した行政運営に十分に対応することができず、制度が実態に追いつかないというのが実情であります。総理、もし戦後政治の総決算を主張するならば、今こそ、戦後四十年間各界で強く主張されながら、いまだ実現を見ていない事務、財源の大幅な地方移譲こそ断行すべきであると考えるものであります。総理の見解をお伺いいたします。(拍手)
次に、税制改正についてであります。
総理は、公平、公正、簡素、国民の選択を基本原則として、戦後税制の見直しを行うとしておりますが、具体的な処方せんについてはいまだ明らかにされておりません。税制の抜本的見直しをするに当たって、公平、公正、簡素、選択の視点から、一つは、国税のどこに問題があり、どう改革しようと考えているのか、また、地方税はどこを改正すればよいのか、さらに、国税と地方税の関係でどこに問題があるか、これらの諸点を国民の前に明らかにしていただかなければ、戦後税制の大改革と申しましても、国民の不安は増すばかりであります。総理、どこをどう改正されるのか、具体的にこの際明らかにしていただきたいのであります。
また、今日の地方税制度は、電気税、固定資産税等を初めとして各種の非課税措置がとられている上に、国の租税特別措置等により地方税が減収する仕組みになっております。これは地方税制の自主的財政運営を損ねるとともに、税の不公正をもたらす結果となっております。総理は、現行のこれらの不公正税制の是正にどのように具体的に取り組まれるつもりなのか、御見解を伺っておきたいのであります。
さらに、現在、利子配当所得については分離課税をとる場合地方税が課税されておりません。不公平の是正のためには、この分離課税を選択した場合の地方税の課税についても早急に実施すべきであると考えますが、自治大臣の御所見を伺いたいのであります。
次に、固定資産税の評価と負担の問題についてであります。
固定資産税の評価がえは三年に一回行われております。今年はその改定の年に当たり、一月一日、評価の基本となる各都道府県ごとの基準地、四十七地点の路線価が発表され、その上昇率の平均が一九・九%であります。固定資産税評価は直接に税額に反映される仕組みになっており、納税額も二〇%近くになっております。一方、国土庁の地価動向調査によりますと、全国平均の上昇率は二・六%であり、しかも、この四年間連続して上昇率が下がっており、今回の発表も昨年の上昇率三・九%からさらに低下をしてきております。この三年間の地価上昇率を合わせますと一〇%弱であり、固定資産税評価一九・九%と比べて実に二倍の開きがあります。
このような最近の地価実態からいって、地価動向とずれのある固定資産税評価には疑問を持たざるを得ません。固定資産税が土地等の財産に対する課税であることから、土地等の評価額が基礎となることは否定できないのでありますが、その税金は所得によって負担されていることも事実であります。住宅ローンを支払っているサラリーマンや年金生活者にとって、今回のような大幅に引き上げられた税金を支払うことは生活をますます圧迫させる要因となるのであります。政府は、こうした点を踏まえ、固定資産税は現実に即した決定をすべきではなかったのか、このように考えるものでありますが、自治大臣の御所見を伺いたいと思います。
最後に、減税についてお伺いをいたします。
五十九年度に所得税減税が実施をされましたが、同時に、物品税、酒税等の大衆増税や公共料金の引き上げ、さらに所得税の累進構造から、増税などにより減税効果が相殺をされてしまっているのが実情であります。五十九年度の減税後の意識調査や世論調査を見ましても、依然として税金が高い、不公平だ、減税をしてほしいという国民の声が総理の耳にも届いているはずであります。まさしく減税は国民的な要求であり、今解決をしなければならない最大の政治課題であると思います。(拍手)
五十二年以来課税最低限の引き上げ幅は一七%であり、物価上昇率は三三・四%となっております。税金は給与の伸びに比べて二倍以上のスピードで増加をいたしております。さらに、六十年度も前年度に引き続き国立大学の入学科、受験料を初め消費者米価、国鉄運賃など公共料金の引き上げが予定をされております。特に物価上昇に追いつけないサラリーマン層などの実質所得を確保する面からはもちろんのこと、低迷を続ける消費部門に活力を与え、景気上昇による税収増を図る上からも、所得税、住民税、単身赴任減税等合わせて一兆円規模の減税を総理に要求をするものであります。いかがでありましょうか、総理の所信のほどをお伺いをしたいのであります。
以上、地方行財政の基本並びに当面する緊急課題につきまして質問をいたしました。総理並びに関係大臣の率直なる、誠意ある答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/17
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018・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 柴田議員にお答えをいたします。
二十一世紀を展望して、その地方自治体の役割いかんということでございます。
社会経済の大きな歴史的転換期にあることから、二十一世紀に向けて地方公共団体の地位はますます重要になり、果たすべき役割も今にも増して期待されるところでございます。身近な仕事は自治体でというのがその中心的な理念でございますが、地方自治の本旨を踏まえまして、そのように推進してまいりたいと思います。
次に、高率補助金のカット等に対する御質問でございますが、本年度は、交付税の特例措置及び建設地方債の増発等で約五千八百億円に及ぶ補てん措置等によって万全の措置を講じておるところであり、撤回はいたしません。
一般財源化並びに申請手続の推進の問題でございます。
地方に同化、定着した補助金等の一般財源化、統合メニュー化等の整理合理化を今後も幅広く推進してまいります。今年度予算におきましても、対前年度千三百四十四億円の補助金の減額を行ったところでございますが、今後とも努力してまいるつもりでございます。しかし、申請手続の簡素合理化、超過負担の解消等を含め不断の見直しを行い、さらに徹底した整理合理化に努めてまいるつもりです。
国の関与等の整理合理化の問題でございますが、地方公共団体に対する国の関与及び必置規制の整理合理化を行うこととして、今国会に関係法案を提出する予定でおります。今後も引き続き機関委任事務のあり方、国、地方を通ずる許認可権限等のあり方等の見直しを推進してまいります。
さらに、行革審におきましては、地方公共団体等の意見も踏まえつつ審議をしておりますが、昨年十二月、整理合理化を図るべき八十五の具体的事項を答申しております。政府はこの答申を最大限に尊重しつつ、六十年行革大綱においても措置を決定しております。今後とも引き続き国と地方の機能分担の適正化等を推進してまいります。
交付税率の引き上げ、財源移譲の問題でございますが、地方税の財源の充実とあわせて、地方交付税の所要額を安定的に確保していく必要があります。厳しい国、地方の財政状況を踏まえ、国、地方の事務配分、財源配分のあり方等を含め幅広く今後検討してまいります。
税制の抜本的改革の問題でございますが、公平、公正、簡素、選択という観点に立ちまして、幅広い視野から検討していただきたいと思っております。現在どのようにやるかということは、政府は白紙であります。
さらに、地方税体系につきましては、国税と同様の検討課題があることに加え、地方税独自の課題としては、国、地方の機能分担の見直しに見合う税源配分のあり方、普遍的でかつ応益原則に適合する税源の付与などが考えられます。いずれにせよ、今後税制全般にわたる抜本的な見直しを行う時期に来ていると考えられますので、以上の点を踏まえて、地方税につきましても、地方財政につきましても、各方面の御意見を伺いながら幅広く検討してまいりたいと思います。
地方税の不公平税制の是正問題でございますが、税制の基本が公平、公正の確保にあることは論をまちません。六十年度の地方税制改正においても、事業税の非課税措置の廃止等特別措置の整理合理化を実施しております。今後とも社会経済の変化に対応して必要な見直しを行ってまいります。
所得税や住民税、単身赴任減税等の問題でございますが、昭和六十年度におきましては所得税、住民税の減税を行う余地がないので、まことに遺憾ではございますが御了承願いたいと思います。単身赴任減税等については、政府税調答申で指摘されるように、さまざまな国民の生活態様の中から特定の条件や特定の家計支出を抜き出して税制上しんしゃくするには限界があると考えられて、困難でございます。
所得税減税につきましては、赤字公債の増発によってこれを賄うことは適当ではございません。しかし、所得税や法人税の減税は実はやりたいと思っておるのであります。今後、税制全般の見直しの中で、広範な検討課題の一つとして取り上げるべき問題であると考えております。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/18
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019・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 柴田議員にお答えいたします。
国庫補助負担率の引き下げ問題につきましては、国と地方の考え方の食い違いは昭和六十年度の予算編成作業のぎりぎりまで平行線でいかざるを得なかったのでありますが、厳しい財政状況におきまして、第一に、補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加については万全の地方財政措置を講ずること、第二に、今回の補助負担率の引き下げは昭和六十年度限りの暫定措置であること、第三に、社会保障に関する国庫補助負担率のあり方につきましては、国と地方との役割分担、費用負担の見直し等とともに、政府部内において今後一年以内に結論を得ることを前提として、これを受け入れ、協力することとした次第であります。今回の措置に伴い地方の負担が増加する五千八百億に相当する額につきましては、総理からも御答弁がございましたとおりでございます。
次に、国庫補助金の整理合理化でございますが、国庫補助金等につきましては、臨時行政調査会や地方制度調査会の提言を踏まえまして、国、地方を通ずる行財政の簡素効率化を図りますとともに、地方団体の自主性、自律性を強化するという見地から、国庫補助金の廃止、統合メニュー化など整理合理化の推進に取り組んでいる次第であります。昭和六十年度の予算の編成におきましても、このような考えのもとで、統合メニュー化、一般財源化など国庫補助金の整理合理化に一応の進展を見たものと考えております。今後とも、行財政の簡素化、地方公共団体の自律性の尊重の観点に立ちまして、事務事業の廃止、縮減を行いますとともに、本来地方の自主性に任すべきものは一般財源に移行されることを基本といたしまして、積極的に国庫補助金の整理合理化の推進を関係省庁に要請してまいりたいと思っております。
また、補助金等に係るいわゆる超過負担の問題につきましても、厳しい財政事情のもとでありますが、大蔵、自治及び関係省庁による実態調査の結果等に基づいて、所要の是正措置を講ずることとしております。
地方財政計画で、交付税率の引き上げによる一般財源の確保についてお答えいたします。
地方財源の充実確保のためには、地方税源の充実とあわせまして、交付税の所要額を安定的に確保していく必要があります。今後とも、地方制度調査会の御意見等を承りながら、地方財政をめぐる情勢の推移に即応しまして、具体的な方策を十分検討してまいりたいと考えております。その場合、地方交付税率の引き上げの問題も当然検討の対象となると考えておりますが、今後とも、厳しい国、地方の財政環境を踏まえまして、国、地方の事務配分、財源配分のあり方を含め幅広く検討してまいる所存でございます。
利子配当課税の問題についてお答えいたします。
分離課税選択の利子所得等に関する住民税の今後のあり方につきましては、政府税調の今回の答申におきまして、「基本的には、税負担の公平を図る見地から住民税を課税すべきであるが、なお解決すべき問題があり、国税・地方税を通ずる徴収事務簡素合理化の観点をも踏まえ、更に、検討する必要がある」とされております。したがいまして、この答申を踏まえまして、適切な方策を見出すべく、引き続き鋭意検討を続けてまいります。
最後に、固定資産税の問題でございますが、今回の評価がえによる宅地の基準地価格の評価上昇割合は、お話のように平均一九・九%となっております。近年、一般的に地価の上昇率は漸次鈍化の傾向を示しておりますが、相続税の最高路線価が二八・二%上昇あるいは地価公示価格は昭和五十五年から五十八年の三年間に二三・二%、五十六年から五十九年の三年間に一五・八%上昇していることから見まして、今回の評価がえは適正なものと考えております。なお、昭和六十年度における土地の評価がえに伴う税負担につきましては、その急増を緩和するために、前年度の税負担を基礎とした段階的な負担調整措置を講ずることによりまして必要な配慮をいたしてまいりたいと思っております。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/19
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020・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 藤原哲太郎君。
〔藤原哲太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/20
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021・藤原哲太郎
○藤原哲太郎君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和六十年度地方財政計画、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方税法等の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問を行います。
昭和六十年度の地方財政計画によりますと、例年になく明るい指標が目につくのであります。財政規模は四・六%の伸びを示し、一般歳出は四%の伸びと、それぞれ昨年度の伸びを大きく上回っております。地方税や地方交付税などの一般財源は昨年度に比べて一〇・五%増という大幅な伸びを示し、歳入に占める一般財源比率は六四・三%と大幅に改善されているのであります。また、昭和五十年度以来、一兆五千億から四兆円に及ぶ巨額の財源不足に見舞われてきました地方財政は、高率補助金の大幅カットに伴う地方転嫁分を除きますと、十年ぶりに収支の均衡がとれることが見込まれる状態にございます。しかしながら、地方財政のこのような改善の兆候というものは、景気回復に伴う法人税収の伸びや、来年度が固定資産税の評価がえの年に当たるというような一時的な要因に大きく支えられているのであります。
目を地方財政の構造的要因に転ずれば、改善すべき問題点が多いのであります。六十年度の地方債残高と交付税特別会計借入金残高など合わせますと、地方財政の借金残高は五十六兆四千億円の巨額に上っておるのであります。また、地方公共団体の公債費の負担は増大の一途をたどり、地方債発行の許可が制限される一歩手前である公債費の負担比率が一五%を超える団体は既に五十七年度におきまして千四百八十四団体となっておりまして、全体で三千三百団体でありまするので、その自治体の実に四五%を占めておるのであります。公債費、給与関係費などの義務的経費は、生活保護費の補助率のカットに伴う負担措置等によりさらに増加をし、歳出構造は一段と硬直化の傾向をたどっておるのであります。構造的には、地方財政は改善どころか深刻な財政状況に置かれておるのであります。一部に言われておるような地方財政余裕論は虚構にすぎないのであります。総理は、一部に言われておる地方財政余裕論をどうお考えになっておるのでございましょうか。また自治大臣は、地方財政の構造的赤字体質というものをどういう手だてをもって改善しようとしておられるか、この機会に所見を伺っておきたいと思います。(拍手)
次は、高率補助金の大幅カット、俗に一割カットと言われる問題でありまするが、地方負担転嫁の問題であります。
政府は、昭和六十年度予算において、生活保護費補助金を初めとし、公共事業関係補助金を含め二分の一を超える高率補助金を大幅にカットし、総額五千八百億円を地方に負担を肩がわりさせる措置をとってきたのであります。その根拠とされておるものは、地方財政は国に比べて豊かである、余裕があるという見方から、国家財政が苦しいときには地方自治体も痛みを分かち合うべきであるというものでありました。確かに、単年度国債費が十兆円を超えた国家財政の危機は国民として無関心ではいられないし、国民全体がその痛みを分かち合うべきだという考え方はございます。しかしながら、国は財政再建のためにどのような努力をしてきたのでありましょうか。地方自治体の中には、かつてオイルショック以来、不況下の物価高と言われるいわゆるスタグフレーションの中で、長期の税収減少を予測いたしまして、業務を縮小するとか定員を削減をするとかあるいは民間委託をするとかといったようなことで行財政の健全化、効率化を図り、血のにじむような努力をしておる地方自治体の数多くあることも御承知おきだと思うのであります。これに対し、機構いじりや看板の書きかえに終始してきた国の行革努力の欠如こそ問われるべきではないでございましょうか。(拍手)
かてて加えまして、国の縦割り行政やかたくなな組織、職員に対する必置制度が自治体の行革意欲をそいできた事実を深く銘記すべきでございましょう。確かに地方自治体の中でも、地方公務員の高額給与問題あるいは高額の退職金問題など改善すべき課題はございます。これらは改革を断行してまいらなければならぬと考えます。しかしながら、営々として健全財政に努力してきた自治体も多くあるのであります。国全体の機構や行政のあり方に根本的にメスを入れず、健全財政に努めてきた自治体にただ痛みを分かち合えと言うのは、余りにも中央集権的な姿勢ではないでありましょうか。痛みを真に分け合うならば、みずからも努力すべきではないでしょうか。今回の補助金カットに対して地方自治体が一斉に反発をした理由がここにまさに存在をしておることを記憶すべきでございましょう。
政府は、今回の高率補助金の大幅カットはいかなる理由によるものか、このような地方自治体の素朴な疑問に対してどのようなお考えでおられるか、お答えをいただきたい。また、今回のこの措置が、大蔵、厚生及び自治の三大臣の覚書によれば補助率の大幅カットはこの一年限りの措置ということのようでございまするけれども、このことについて真にこの国会で保障されるかどうか、総理並びに大蔵大臣の率直なる答弁を求めておきたいと思います。
また、この問題に関連して、地方財政法第二条第二項によれば、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」と定められております。高率補助金の大幅カット、地方への負担転嫁は明らかに地方財政法に違反する措置ではありませんか。自治大臣のこの点についての明快な答弁を求めます。
次は、地方交付税の問題について質問をいたします。
言うまでもなく、地方交付税は地方自治体の財源の均衡化と一定水準の行政に対する財源を保障する目的を持つ地方自治体固有の財源であります。地方税に次ぐ一般財源としてその充実を図る必要があります。このため、地方自治体の固有の財源としての地方交付税の性格をより明確にするために、交付税は現在のように国の一般会計を通ずることなく、国税収納整理基金から直接交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れること、また、現行の交付税算定上の市町村の標準団体の規模について、より実態が捕捉できるようにするために、現在の人口十万を人口百万の大都市、二十万の中都市、五万の市町村の三段階に区分をすること、交付税率を引き上げ、あるいは交付税の対象税目の拡大を図ることなどの改善が必要であると思いますが、この点について、大蔵、自治両大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
また、昨年、行政改革審議会の論議などにおきまして、留保財源並びに超過財源の率の引き下げが真剣に論じられたと聞き及んでおります。しかし、地方自治体の留保財源は、地方自治体の特殊性に基づく自主的かつ多様な地方行政の運営を保障するために設けられたものであります。交付税不交付団体の超過財源は、標準的な行政に係る財政需要額を算定するという地方交付税を考慮して設けられているものであります。したがいまして、これらに係る率の均てん化を行うべきでないと考えておるのでありまするけれども、自治大臣のこの点についての御見解を伺っておきたいと思います。
次は、地方税についてであります。
総理は、さきに、戦後税制の本格的な見直しに着手されることを表明されました。私も全く同感の意を表するものであります。特に、財政面における三割自治の現状は是正すべきであります。昭和五十七年度の決算ベースにおける国及び地方の租税収入の配分は、国が六三・二%、地方が三六・八%であり、地方税の割合が少なく、そのため国から交付される国庫補助金を加えて地方団体がその行政需要に対応している現状であります。これは、地方行政における受益と負担の対応関係を不明確にし、財政効率上のむだを生じせしめているだけでなく、国の地方に対する財政的な統制を助長するという弊害を招いているのであります。このような三割財政のもとでは健全な地方自治の発展はありません。民主主義の発展が健全な地方自治の確立に基づくものであるといたしまするならば、このような現状は早急に是正すべきであります。
さらに、二十一世紀に向けた今後活力ある福祉社会においては、全国的な均一の福祉水準の確保以上に、国民の価値観の多様化に対応し得るきめ細かい福祉政策の充実が必要不可欠であります。かかる時代においてこそ、行政の主体は地方自治体にあります。地方の時代と言われるゆえんは、まさにここにあると思うのであります。総理、戦後税制の見直しに着手されることは大いに結構でありまするが、二十一世紀を展望した今後の我が国社会の健全な発展を考えた場合、今日の国に偏った税源配分の現状を根本的に是正する必要があると思いますが、総理の御所見と方針をお伺いいたしたいと存じます。
次は、徴税事務の一元化の問題についてであります。
現在、国、地方を通ずる徴税事務の簡素効率化、所得再配分機能の適正化及び租税政策の一体的運営の確保、あるいは地方税の過年度課税に伴う納税者の負担感の増大と混乱などを理由として、個人住民税を中心として徴税事務の一元化を求める声が起こっておるのであります。臨調もその最終答申におきまして、行政機構改革の中期的課題として徴税機構の改革の問題を取り上げておるのであります。かかる徴税事務の一元化、特に同一所得を課税対象とする所得税並びに個人住民税の徴税事務の一元化について、戦後税制の見直し作業においてこれを検討するのか、そうして徴税事務の一元化そのものについてどのようにお進めになるのか、この機会に御見解を伺っておきたいと思います。総理と大蔵、自治両大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
最後に、住民税減税について質問をいたします。
政府は、五十九年度に五十五年度以来の住民税減税を実施しましたが、それは余りにも小幅であり、その見返りとして酒税、物品税、自動車税等の引き上げが行われたことや、消費者物価の上昇が当初の政府の見通しを上回ったことなどを考えれば、実質的な減税効果はさほど大きくなかったのであります。六十年度は、税率の累進構造、社会保険料の引き上げのほか、物価上昇によって、年収五百万クラスでは、五%程度の賃上げがあってもその増加分の七〇%は税金に食われてしまうと言われておるのであります。さらに米価や医療費等の公共料金の相次ぐ値上げが予想され、国民の実質的な負担はさらに増大することが予想されるのであります。したがいまして、来年度は少なくとも個人住民税について、基礎、扶養、配偶者の各控除を各二万円ずつ引き上げ、課税最低限を二百三万九千円とするという方法によりまして、全体で一千七百億円の住民税減税を実施すべきであります。同時に、不公平税制の是正ではなく実質上の増税である個人住民税の均等割の引き上げはやめるべきであると考えております。
この点についても、総理並びに自治大臣の御見解をお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/21
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022・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 藤原議員にお答えをいたします。
まず、地方財政余裕論と地方財政体質の改善の問題でございます。
現下の地方財政は、昭和五十年度以降大幅な収支不足が生じ、これに対して地方債の増発と交付税特別会計の借入金により対処してきたために、五十六兆にも上る巨額の借入金残高を抱えております。したがって、地方財政は余裕があるとは言えません。国と同様に厳しい対応を余儀なくされているところであります。このため、地方財政は今後ともその健全化へ向けて一層の努力を行う必要があり、国と歩調を合わせて行財政改革を積極的に推進し、経費全般にわたり節減合理化を図る一方、地方税の充実と地方交付税の所要額の安定的な確保など地方一般財源の充実強化に努力いたしたいと思います。
次に、補助金の一割カットの問題でございますが、六十年度予算は極めて厳しい環境にあり、臨調答申等の指摘を踏まえ、補助金等の徹底した整理合理化に積極的に取り組んだところです。昭和六十年度の予算編成に当たっても、以上の考えに基づきまして、暫定措置として補助率の引き下げを行うこととし、六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の役割分担、費用負担の見直し等とともに検討したいと思います。
次に、税源配分の問題です。
国と地方の税源配分の問題については、地方税だけでなく、地方交付税、地方譲与税制度、国庫支出金のあり方、さらには国と地方との行政事務配分のあり方等をも総合的に勘案の上、慎重に検討していきたいと思います。
徴税事務の一元化の問題でございますが、国税、地方税を通ずる徴税事務の一元化については、今後とも、行財政の効率化、国と地方の行政のあり方、納税者の事務負担等幅広い観点から検討いたしたいと思います。
住民税の減税関係でございますが、住民税減税については、昨年度において三千百億円を超える本格減税を行ったところでございます。政府税調の答申でも「厳しい現下の財政状況にかんがみれば、所得税・住民税の減税を行う余地はない」とされており、住民税減税を行えるような状況はことしはないということを御理解願いたいと思います。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/22
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023・竹下登
○国務大臣(竹下登君) まず私に対する御質問は、高率補助の引き下げ問題についてであります。
六十年度予算は極めて厳しい環境にありまして、臨調答申等の指摘を踏まえまして、補助金等の徹底した整理合理化を積極的に進めることとしたわけであります。補助率につきましても、このような整理合理化の一環としまして、社会経済情勢の推移等を踏まえ、見直しを行う必要があります。とりわけ高率補助につきましては、そのあり方につきまして問題があります。その引き下げを図る必要がある、こういう指摘もございますことから、現下の極めて厳しい国の財政状況にかんがみ、地方公共団体に対する高率補助率の引き下げを行うことといたしたところでございます。
しかし、一方、補助金等の整理合理化は、事務事業の廃止、縮減を基本として行うべきものであります。補助率の見直しにつきましては、国と地方の役割分担及び費用負担のあり方とあわせて検討する必要があるとの意見もあることを踏まえまして、この問題については今後さらに検討することとし、今回の措置は、当面六十年度における暫定措置としたものでございます。したがって、六十一年度以降の補助率のあり方につきましては、国、地方の役割分担、費用負担の見直し等とともに十分検討を進めて結論を得るものとしておるところでありまして、これを踏まえて適切に対処してまいる所存でございます。
なお、財政審議会からは、当面の暫定措置として高率補助率の引き下げを実施し、基本的な補助率のあり方については、この暫定期間中において今後検討を行うべきであるという御指摘もいただいておるところであります。
それから、地方交付税の性格を明確にするために、現在一般会計から出ておるものを国税収納整理基金から直接出すようにしたらどうかという御提言でございます。
地方交付税を一般会計から交付税特会に繰り入れるという現行制度は、二十九年の地方交付税制度創設以来とられている制度でありまして、また、昭和十五年に創設されました配付税制度のもとにおいても同様の取り扱いがなされておるという沿革もあるところでありますので、これを改めることは、国の予算制度あるいは会計制度の上にも大きな影響を及ぼすもので、問題が多いと考えておるわけであります。したがって、交付税特会に直入するという考え方にはにわかには賛成いたしかねるということであります。
それから、地方交付税率の引き上げあるいは交付税の対象税目の拡大等々御意見を交えての御質疑がございました。
現在、国の財政は巨額の特例公債に依存する危機的な状況にありまして、交付税率の引き上げや対象税目の拡大によって恒久的に国の財源を地方に回す余裕は全くないという状態にありますことを御理解を賜りたい次第であります。
それから、徴税事務の一元化問題でございます。
国、地方を通じます賦課徴収の一元化につきましては、国税といい地方税といいましても、結局は同じ納税者の負担に帰するものであることにかんがみますならば、行財政の効率化及び納税者の事務負担の軽減等の観点からは検討に値する問題であると考えるわけであります。ただ、この問題につきましては、国と地方の関係等の面から種々問題も指摘されておるところでありますので、今後御意見を承りながら幅広く検討してまいりたい、このように考えております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/23
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024・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 藤原議員にお答えいたします。
最初は、地方財政の構造的体質の改善の問題でございます。
先ほど総理からお話しになりましたように、巨額の借入金を持っております非常に厳しい財政状況にありますので、健全化へ向けまして一層の努力を図る必要がありまして、国と歩調を合わせて行財政改革を積極的に推進し、経費全般にわたりまして節減合理化を図る一方、地方税の充実と交付税の所要額の確保など地方財源の充実に一層の努力をする必要があると考えております。
補助率カットの問題でございますが、国の立場は大蔵大臣から話されたところでございます。地方の立場は、まず国と地方との機能分担を見直すべきであるということが基本でございます。結局国庫補助の負担率の引き下げを行うことになったのでありまして、順序は逆になりましたが、これを昭和六十年度における一年限りの暫定措置といたしまして、国と地方の役割分担、費用負担のあり方について検討することといたしました。国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加に対しましては、交付税の特例措置、建設地方債の増発で補てんすることとしておりまして、地方財政法に反する措置がなされたとは考えておりません。
それから、地方交付税を交付税特別会計に直入するという考えでございますが、ただいま大蔵大臣からも話したところでございますが、地方制度調査会からの答申も出されておりまして、これまでたびたび議論のあった問題であります。したがいまして、十分諸般への影響を研究してまいる必要があると思いますので、検討課題として考えさせていただくつもりでございます。
交付税の引き上げや対象税目の拡大については、地方税源の充実強化とあわせまして交付税の所要額を安定的に確保する必要がありますので、地方制度調査会の御意見等を承りながら、地方財政をめぐる情勢の推移に即応して具体的方策について十分検討してまいりたいと考えております。その場合に、地方交付税の税率の引き上げまたは対象税目の拡大も当然検討対象ともなるものでありますが、今後とも厳しい財政環境を踏まえまして十分検討してまいる決意でございます。
標準団体の規模の三段階区分についてお答えします。
現行の交付税制では、交付税算定の複雑化を避けるために、道府県分及び市町村分ともに一つの標準団体を設定して、全国同一の単位費用に測定単位の数値を乗ずるという方法を採用しております。しかし、地方団体の規模の大小、地理的、社会的、自然的条件は千差万別でありまして、測定単位当たり行政経費も地方団体ごとに相当の開きがありますために、基準財政需要額の算定に当たっては種別補正、段階補正、密度補正、態容補正、寒冷補正等の各種補正を適用し、適切な算定が行われるようになっております。御提案のように市町村分につきまして標準団体を三段階に区分しても、地方団体の実態を適正に算定するためには現行の各種の補正を存続せざるを得ず、算定方法の内容がさらに複雑化すると考えられますので、現行では一つの標準団体を設定することが妥当であると考えております。
交付税の留保財源率の引き下げについてでございますが、道府県分の基準税率は昭和二十八年度に現行の八〇%に、市町村分の基準は昭和三十九年度に七五%に改正されて今日に至っておるわけでございます。自治省として、基準財政需要額のあり方とともに、本問題は今後の検討課題として考えてまいります。地方団体間の影響も大きいので、慎重に対処してまいります。
それから、普通交付税不交付団体の超過財源の均てん化でございますが、こういう問題につきましては臨時行政調査会あるいは行革審の御意見におきまして指摘があったのでありますが、地方財政の運営の自主性、自律性に大きくかかわってくる問題でありますので、地方制度調査会等の御意見を承りながら慎重に検討してまいりたいと思っております。
国税、地方税の徴税事務の一元化というような問題につきましては、大蔵大臣からお話がございましたが、一元化をしたプラス・マイナスということを考えまして、地方自治制度の根幹にかかわる問題であり、慎重に対処してまいりたいと考えております。なお、地方税制の運用につきましては、国税当局との密接な協力体制の強化を含めて一層の簡素化、効率化を図ってまいりたいと思います。
最後に、個人住民税均等割の問題についてお答えいたします。
個人住民税均等割の税率につきましては、昭和五十五年度に引き上げられて以来据え置いております。そのため、今回、その後における物価水準の推移や地域社会の費用の一部を等しく分担するという均等割の性格から考慮して相応の負担水準となるよう、その税率を改めようとするものであります。したがいまして、これは税負担の公平適正化の一環として行うものでございますので、御趣旨を御理解願いたいと思っております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/24
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025・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/25
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026・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時十九分散会
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出席政府委員
自治省財政局長 花岡 圭三君
自治省税務局長 矢野浩一郎君
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○朗読を省略した議長の報告
(指名通知)
一、去る十五日、本院は、北海道開発審議会委員に衆議院議員箕輪登君、同渡辺省一君、同町村信孝君、同新村源雄君及び同斎藤実君を指名した旨内閣に通知した。
(常任委員辞任及び補欠選任)
一、去る十五日、議長において、次のとおり常任委員の辞任を許可し、その補欠を指名した。
商工委員
辞任 補欠
甘利 明君 小杉 隆君
奥田 敬和君 大村 襄治君
加藤 卓二君 石原慎太郎君
石原慎太郎君 加藤 卓二君
大村 襄治君 奥田 敬和君
小杉 隆君 甘利 明君
予算委員
辞任 補欠
石原慎太郎君 平沼 赳夫君
大村 襄治君 平林 鴻三君
小杉 隆君 伊藤 公介君
小沢 和秋君 工藤 晃君
伊藤 公介君 小杉 隆君
平沼 赳夫君 石原慎太郎君
平林 鴻三君 大村 襄治君
一、去る十六日、議長において、次のとおり常任委員の辞任を許可し、その補欠を指名した。
商工委員
辞任 補欠
甘利 明君 小杉 隆君
高村 正彦君 石原慎太郎君
石原慎太郎君 高村 正彦君
小杉 隆君 甘利 明君
予算委員
辞任 補欠
石原慎太郎君 月原 茂皓君
小杉 隆君 伊藤 公介君
伊藤 公介君 小杉 隆君
月原 茂皓君 石原慎太郎君
一、昨十八日、議長において、次のとおり常任委員の辞任を許可し、その補欠を指名した。
内閣委員
辞任 補欠
日笠 勝之君 正木 良明君
正木 良明君 日笠 勝之君
法務委員
辞任 補欠
小澤 克介君 松浦 利尚君
橋本 文彦君 矢野 絢也君
松浦 利尚君 小澤 克介君
矢野 絢也君 橋本 文彦君
予算委員
辞任 補欠
矢野 絢也君 矢追 秀彦君
工藤 晃君 経塚 幸夫君
井上 普方君 小林 恒人君
松浦 利尚君 細谷 治嘉君
正木 良明君 有島 重武君
小林 恒人君 井上 普方君
細谷 治嘉君 松浦 利尚君
有島 重武君 正木 良明君
矢追 秀彦君 矢野 絢也君
(特別委員辞任及び補欠選任)
一、去る十五日、議長において、次のとおり特別委員の辞任を許可し、その補欠を指名した。
公職選挙法改正に関する調査特別委員
辞任 補欠
大村 襄治君 西山敬次郎君
綿貫 民輔君 村岡 兼造君
安全保障特別委員
辞任 補欠
綿貫 民輔君 大村 襄治君
(議案提出)
一、去る十五日、内閣から提出した議案は次のとおりである。
入場税法の一部を改正する法律案
農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案
特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案
道路整備緊急措置法及び道路整備特別会計法の一部を改正する法律案
住宅金融公庫法及び北海道防寒住宅建設等促進法の一部を改正する法律案
基盤技術研究円滑化法案
一、昨十八日、議員から提出した議案は次のとおりである。
公立の障害児教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準等に関する法律案(馬場昇君外二名提出)
(議案付託)一、去る十五日、委員会に付託された議案は次のとおりである。
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)
租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)
以上二件 大蔵委員会 付託
農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三町号)
特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)
道路整備緊急措置法及び道路整備特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
以上三件 建設委員会 付託
一、昨十八日、委員会に付託された議案は次のとおりである。
入場税法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
大蔵委員会 付託
学校教育法の一部を改正する法律案(佐藤誼君外二名提出、衆法第三号)
学校教育法等の一部を改正する法律案(中西績介君外二名提出、衆法第四号)
公立幼稚園の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案(中西績介君外二名提出、衆法第五号)
以上三件 文教委員会 付託発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01119850219/26
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