1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年三月二十日(水曜日)
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昭和六十年三月二十日
正午 本会議
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○本日の会議に付した案件
人事官任命につき同意を求めるの件
国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例
等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び
質疑
午後零時二十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/0
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001・坂田道太
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
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人事官任命につき同意を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/1
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002・坂田道太
○議長(坂田道太君) お諮りいたします。
内閣から、人事官に佐野弘吉君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/2
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003・坂田道太
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
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国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/3
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004・坂田道太
○議長(坂田道太君) この際、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣竹下登君。
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/4
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005・竹下登
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあります。このような中で、我が国経済、社会の柔軟性を維持し、今後の内外経済の変化に適応していくためには、財政の対応力の回復が最も急を要する政策課題であります。
このため、政府は、昭和六十年度予算におきましては、引き続き財政改革を強力に推進するため、歳出面において、既存の制度、施策の見直しを行うなど、すべての分野にわたり経費の徹底した節減合理化に努め、その規模を厳に抑制したところであります。
特に、補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、人件費補助等の見直し、高率補助率の引き下げ、その他廃止、合理化など徹底した整理合理化を積極的に進めました。なお、いわゆる行革関連特例法による特例措置については、所要の継続措置を講ぜざるを得ないのでありますが、現下の厳しい財政事情等にかんがみ、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
本法律案は、以上申し述べましたうち、立法措置を要するものについて、国の財政収支の改善を図るとともに、財政資金の効率的使用を図るため、累次の臨時行政調査会の答申の趣旨を踏まえ、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定めるものであります。すなわち、本法律案は、国の負担金、補助金等に関し、地方公共団体の一般財源による措置への振りかえ及び交付金措置への移行等を図る必要があるものについて所要の措置を講ずるとともに、いわゆる行革関連特例法の各特例措置についての昭和六十年度における所要の継続措置及び国の負担または補助の割合が二分の一を超える負担金、補助金等についての昭和六十年度における負担または補助の割合の引き下げ措置を定めております。なお、この引き下げ措置の対象となる地方公共団体に対しましては、その事務または事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずることといたしております。
以上、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げましたが、政府といたしましては、今後ともさらに財政改革を推進するため、渾身の努力を重ねてまいる所存であります。(拍手〕
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国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特
例等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/5
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006・坂田道太
○議長(坂田道太君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大島理森君。
〔大島理森君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/6
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007・大島理森
○大島理森君 私は、この機会を与えてくださいました諸先輩に感謝を申し上げながら、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、国の補助金等の整理合理化並びに臨時特例等に関する法律案の趣旨説明に対し、質問を行うものであります。(拍手)
現在、国の財政はまことに厳しい環境に置かれており、こうした状態が継続すれば、今後の高齢化社会、国際化等社会経済の変化に財政が適切に対応することがますます困難になるばかりでなく、子や孫たちに大きな負担を負わせることになりかねない状況にあります。したがって、今ここでさらに徹底した行財政の改革に取り組み、財政の対応力の回復を図らなければ、将来に大きな禍根を残すことは明らかであります。こうした状況のもとで、政府は補助金等の整理合理化を主たる内容とする本法案を提出したところでありますが、財政改革を推進するためには、一般歳出の四割を超える補助金等の整理合理化に積極的に取り組むことが不可欠であり、我々は困難と辛苦を乗り越え取り組まねばならぬ課題であると考えるものであります。六十年度予算においては、累次の臨調答申、行革審意見等を踏まえ、本法案で措置されるものを含め補助金等の徹底した整理合理化が幅広く推進されており、その政府の姿勢を私は高く評価するものでありますが、総理に、どのような基本的考え方に立って補助金等の整理合理化を推進したのか、第一に伺いたいと存じます。
一般会計における補助金等総額の約八割は地方公共団体向けのもので占められております。したがって、補助金等の整理合理化は、言いかえれば国と地方を通じた行財政の運営のあり方に密接な関係を持つものであります。国、地方を通じた行政が総合的、効率的に行われるためには、国と地方の機能分担、費用負担のあり方について、社会経済情勢の変化に応じて見直しを行うことが重要だと考えます。補助金等についても、このような観点に立って、これを幅広い角度から見直し、適切な方策を講じて整理合理化を進めていくことが必要であることは言うまでもありません。例えば、本法案で措置することとされている地方の事務事業として同化定着しているものや、いわゆる人件費に係る補助金等の一般財源化、交付金化は、地方の自主性、自律性を尊重する見地から大きな意味を持つものであると考えます。この点に関する総理のお考えを伺いたいと存じます。
次に、高率補助率の引き下げについて伺います。
補助率は、それぞれの補助金等が創設された際の経緯等により定められていると考えられますが、高度成長期の財政状況のゆとりをも背景としつつ、相互に競い合い、次第に高められたこともあって、一般的に補助率が高目に維持される傾向があったことも否めません。したがって、補助率についても、社会経済情勢の変化等を踏まえつつ、臨調答申等の趣旨に沿って見直しを行うことが重要であります。高率補助率の引き下げにつきましては、地方への一方的な負担転嫁であるとかあるいは弱い者いじめの施策であるというような一方的な意見が一部に見られるところでありますが、私は、今回の措置は、行財政改革の重要な柱である補助金等整理合理化の一環として位置づけるべきものと考えております。また、補助率の引き下げは、あくまで国と地方との間の費用負担関係の見直しであって、国民に対するしわ寄せとか弱者にしわ寄せをする施策であるとする見方は当たらないと考えております。これらの点について、総理の見解を伺いたいと存じます。
さて、この高率補助率の引き下げを初めとして補助金等の整理合理化に際しては、地方財政への影響が生じることは避けられないところだと存じます。しかし、国と地方は、ともにひとしく一億二千万国民の繁栄と福祉向上のために責任を分担し合う車の両輪であり、地方財政の運営に支障が生ずるようなことはあってはならないのであります。今回の措置に当たって、地方財政計画上、地方交付税の特例措置として一千億円、そして建設地方債の増発措置として四千八百億円と万全の措置が講じられたと伺っておりますが、総理から、今回の地方財政対策でとられた地方債の償還問題に対する取り組みについて、基本的な考え方をこの際伺っておきたいと思います。
以上、今回の法案につき順次伺ってまいりましたが、行財政改革の推進、特にその一環としての補助金等の整理合理化については、今後も毎年度予算編成の都度、国民の皆様方の理解と協力を得ながら、さらに徹底した努力を積み重ねていくことが肝要であります。特に国、地方の間の機能分担、費用負担のあり方を踏まえつつ、今後とも補助金等については不断の見直しを行うことが必要であると考えますが、政府は、今後この問題に対し、特に六十一年度以降どう取り組んでいくのかを最後にお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/7
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008・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 大島議員にお答えをいたします。
第一問は、補助金等の整理合理化の基本的な考え方に対する御質問でございます。
六十年度の予算を見ましても、補助金の総枠は交付金等補助金的性格のものを入れますと約十四兆四千億円ぐらいになります。一般行政経費が約三十二兆五千億円でございますから、約三分の一は補助金的性格を持っている、こういうことでございます。補助金等の整理合理化に当たっては、行財政の簡素合理化、地方公共団体の自主性、自律性の尊重の観点を踏まえつつ、国、地方の機能分担、費用負担の見直しの一環としてもこれを推進してまいっていく必要があります。今回の措置につきましても、そのような観点からこれをお諮りしておる次第なのでございます。
次に、人件費補助等の一般財源化、交付金化の御質問でございます。
この点は私も同感でございます。補助金等の整理合理化に当たりましては、行財政の簡素合理化及び地方公共団体の自主性、自律性の尊重等の観点を踏まえつつ、これを推進しておりますが、六十年度予算におきましても、人件費補助等の一般財源化、交付金化の措置を講ずることといたしております。
次に、補助率の引き下げが弱者しわ寄せではないかという一部の誤解があるがいかんということであります。
六十年度予算は極めて厳しい環境にありまして、臨調答申等の指摘を踏まえて、補助金等の徹底した整理合理化に積極的に取り組んだ次第であります。今回の地方公共団体向けの高率補助金の引き下げは、国、地方の間の費用負担等の見直しを行うものであり、これにより国民生活にかかわる個々の施策の水準が影響を受けるものではございません。要するに、国と地方との分担の割合が変わるが、それを受ける国民には影響がないということであります。
また、地方財政への影響につきましては、所要の地方財政対策を講じて、地方公共団体の行財政運営には支障がないように措置してあります。
次に、後年度負担に対する措置であります。
今回の国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加額については、地方交付税、地方債の増額により万全の措置を講ずることとしております。また、地方債の元利償還などの後年度の地方財政負担についても、国として必要な措置を講じて適切に対処する所存でございます。
次に、補助率引き下げは一年限りであるかどうかという御質問でございますが、今回の高率補助率の引き下げは、六十年度における措置として実施いたしました。六十一年度以降の取り扱いにつきましては、今後所要の検討を行い、適切に対処してまいる所存であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/8
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009・坂田道太
○議長(坂田道太君) 沢田広君。
〔沢田広君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/9
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010・沢田広
○沢田広君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対しまして、総理並びに関係大臣に対し質問を行うものであります。
今の答弁の中で総理は、住民に一切の支障は与えないと言われました。重ねてこのことについて再確認をして、御答弁をいただきたいと思います。
続いて、弱い者いじめは一方的であるという自民党の見解が述べられましたが、生活保護にあるもの、あるいは精神障害者にあるもの、あるいは肢体不自由児にあるものが弱い者でなくはないと思うのでありますが、こういう立場で物を論ずることは、まさにそういう立場にある人を侮べつをするものであり、あるいはそれをもって弱い者いじめではないということを牽強付会をする以外の何物でもないと思うのでありまして、自民党の代表の内容の訂正を改めて求めたいと思います。
総理府を初め、内閣、文教、厚生、農林、運輸、建設、自治に関係するものでありまして、本来は各委員会に分割をして審議を行うべき法案であります。最悪の場合でも、特別委員会を設置をいたしまして、その中で各方面の意見を聴取しながら、この審議を扱うのが当然の理であったと思うのであります。しかしながら、これを無視し、強硬に大蔵に付託をするという方途をとったことは極めて暴挙と言わなければなりません。また政府がかかる一括、一山と言われるような提案の仕方をすることについて、総理はいかがお考えになっておられるでありましょうか。ちなみに、法案は各種、多様でありまして、五十九法案にも達するのであります。その点、いかがお考えになっておりますか、お伺いをいたします。
昭和五十六年、第二臨調の答申の中におきましても、縮減から生活保護費については除外をすると言われているのであります。これは憲法の保障する条項であり、健康にして文化的な生活を営む権利、その維持に必要なものであります。それを強引に、大蔵省では補助金総枠の中で削減を要求し、かかる分野にまで削減を求めたことは国民生活を破壊するものであって、許されるものではありません。これは明らかに憲法第二十五条の精神に反するものであり、許されるものではないと考えますが、いかがでありましょう。
これに匹敵するものといたしまして、児童福祉法、身体障害者、精神衛生、特別児童手当法、老人福祉法、母子保健法まで切り込みを行うとは、福祉国家にほど遠くなっていくのであります。国民がこれを認めるものとは思いません。かかる法案を提出した責任の所在も改めて問いたいと思います。今回、国の財政事情を理由に一方的に国の負担割合を引き下げることは、単なる地方への負担の転嫁にとどまらず、国の責任を放棄したものであります。総理の御見解を承りたいと思います。
次に、本法律案は、昭和六十年度予算の作成に当たりまして、一般歳出の伸び率をゼロに圧縮するために経費の節減合理化の一助として企画されたものだと思います。本年の予算の作成は、本法案と同様に会計間の操作や粉飾によってゆがめられ、国の責任や負担の先送りをしたにすぎません。「中期的な財政事情の仮定計算例」を見ましても、その行く末は極めて不安、不透明、国民生活の窮乏を深める以外の何物でもないと思います。住民に直接つながる地方財政の圧迫は、地方住民すなわち国民生活も圧迫することになるのであり、政府が今行おうとしていることは、角を矯めて牛を殺すに類する行為と言わざるを得ません。地方自治の強化こそ国の再建の基盤であるとの認識が必要だと思いますが、いかがお考えでありますか。
かかる緊縮、切り込み、耐乏、弱い者いじめの手法で、総理は本気で六十五年度特例公債依存財政から脱却できると考えておられるのかどうか。今やサラ金地獄に落ち込もうとしているこの累積赤字あるいは借りかえは、大型消費税、大型間接税導入の布石でないということができましょうか。国民の多くは、大型消費税、大型間接税導入の布石となることを危惧しておりますが、いかがお考えでありましょう。具体的財政再建の方途は国民の前に示されなければなりません。今日において、六十五年度財政再建の前に要調整額の解消はどうか、国民負担の目標値はどうか、歳出構造のあり方はどうなるか、いろいろと不安があります。総理、大蔵大臣から、これらについて具体的にお答えをいただきたいと存じます。
また、毎年その場しのぎの予算編成をして、財政再建はおろか、本年のように国民生活に直結する各種補助金、養護学校を初め道路法、河川法等々までなで切りに削減してつじつま合わせをしている予算案は、まさに場当たり主義的な財政対策になっていることを指摘せざるを得ないのであります。現行税制の不公平税制が顕在をしておりまする今日、この不公平税制を正して、その後でこの補助金等は考えるべき性格のものであろうと思います。いわゆる不公平税制に手をつけない総理の責任は極めて重いと言わなければなりません。「増税なき財政再建」とはまさに題目にすぎないと言わざるを得ないのでありますが、いかがでありましょう。
また、今回のような地方への負担転嫁を続ければ三割自治が二割自治になり、地方あっての国、国あっての地方でありますが、そのバランスはまさに車の両輪と今まで言われたのでありますが、しかし、両輪の一方が大きくなって一方が小さくなれば、これは片ちんばになるわけでありますから、脱線をするか、その不均衡はますます拡大して品物が落ちてしまう、国民生活は苦しむということになるわけであります。結果的には国民経済の正常な発展を阻害することになるわけでありまして、この法案の撤回を強く求めるものであります。(拍手)単に地方財政に肩がわりを要求し国民負担にしわ寄せをするだけの予算編成では、ますます次年度以降の予算編成を難しくするばかりでなく、国民の意思に反した行財政改革に落ち込むことは必至と言わなければなりません。総理並びに大蔵大臣の所信のほどを伺いたいと思います。
次に、総理、各大臣にお伺いいたしますが、まず国土調査法以下離島振興、沖縄あるいは豪雪地帯、皆さんの地域であります、過疎地振興特別措置法、そういうものまでそれぞれが削られていって、今日までの経過並びに本年度時点において、これらの諸法の目的に照らし、今回の措置をとられた場合の国民に対する影響を詳細にお聞かせをいただきたいと思うのであります。以下、質問の趣旨は同様でありますが、文部省関係、厚生省関係等々ございますけれども、以上の点について納得のいく御説明をいただきたいのであります。
このわずかな時間の中に六十六項目に触れることは極めて困難でありますが、慎重審議が必要であると思いますので、国民が納得のできるような、関係機関あるいは関係者の意見が十分に反映できるように、この法案の審議は保障をされなければなりません。議長においては、これらの法案の審議に当たって十分国民の意見が反映できるような特段の措置を特に求めておきたいと思います。
義務教育の国の負担の原則の空洞化を企図しておりますが、同法制定の際に政府は、教材費における市町村及びPTAの経費負担の軽減を図り、教育の充実をうたいました。積極的に決定されたものであります。文部省も学校教育に不可欠のものとして、全国均等整備を図ることを目的としてきたものであります。特に重要な政策の変更をもたらす事項でありまして、この法案の中で処理しようとすることは許されるものでありません。特に総理の御所見を承りたいのであります。
行革関連特例法の一年延長及び六十年度限りの措置につきまして、まさに一割カットは、紺屋のあさってということわざがありますけれども、また一年、また一年という再延長、そのときになると言を左右にしましてまた延ばそうとする。このことは国会の無視であり、公約違反であり、そして国民を欺瞞する以外の何物でもありません。一年限りと言った責任は一体果たしてだれが負うのでありましょうか、一体この責任はどうなるのでありましょうか、明らかにしていただきたいと思います。また政府全体の信頼に関係する問題であります。関係大臣より明確にお答えをいただきたいと存じます。
以上のような状況の中におきまして、いわゆる国と地方との機能分担のあり方、事務事業分担と財政負担の見直し作業を完了すると言っておりますが、この八月には概算要求をまとめる時期でもありますが、どのような見通しにあるか、お答えをいただきたいと存じます。特例公債もこの十一年続き、国債費の定率繰り入れの中止も一年限り一年限りと言いながら四年間も続いていることを考えますと、これも紺屋のあさってになるのではないかと危惧せざるを得ません。全く一片の紙切れ同様ほごにされるおそれなしといたしません。あえて大蔵大臣の明快な方針とともに責任をお答えいただきたいと存じます。
国庫負担の一割カットは、地方においては一挙に四割増となるものもあり、全国の市の単純平均から一市当たり約二億円の負担増、最も大きいものは大阪市で約九十億円の負担増、産炭地であります生活保護費の比率の高い福岡県直方市においては、人口六万五千と小都市ながら五億円に近い負担増が強いられるようになっております。また、地方負担の増加分については地方交付税で措置すればということでありますが、地方交付税はこれを理由にして増額されることはなくしたがって、一律カットによる地方負担の増加分を交付税で措置すれば、これは地方交付税が実質削減されたことと同様でありまして、これまた承認できるものではありません。
私は、本案が単に財源確保のために考え出された極めてずさんな場当たり的な考えで俎上に上り、国民生活の犠牲の上に立ってこの財政再建を行われることは許されるものではないと確信をいたします。どうかこの法案が国民のために廃案となって、そして国民が安心して暮らせる政策の展開を心から求めて、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/10
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011・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 沢田議員にお答えをいたします。
第一問は、法律の一本化は常任委員会の審議権を無視するものではないかという御質問でございます。
五十九本の法律を一括した法案で提出いたしますのは、今回とられる措置がいずれも次の点で共通の趣旨、目的を有しているからであります。すなわち第一に、昭和六十年度の予算編成に当たり、国の財政収支の改善を図る見地からとられる国の歳出の縮減に資する措置であること、第二に、財政資金の効率的使用を図るため負担、補助等について見直しを行い、所要の措置を講ずるものであること、第三に、累次の臨調答申の趣旨を踏まえ、その実施を図る財政上の措置であること。このように立法の趣旨、目的が共通の場合、一括法として立法することは、その立法趣旨を明確にする上でも、またその立法趣旨に基づいてとられる措置を総合的に論議する上でも、ばらばらに立法するよりも適切であり、審議の便に資するものと考えております。なお、国会審議の問題は最終的には国会でお決めいただくことでありまして、政府としては国会の審議権を制約する考えは毛頭ございません。
次に、生活保護費等の問題は国の責任の放棄ではないかという御質問でございますが、生活保護は国民の生存権保障の最後のよりどころであることにかんがみ、国が最終的な責任を持っていることは御指摘のとおりであります。同時に、従来から一貫して生活保護費について地方公共団体もまた一定の負担をしてきたことも事実であります。また、今回の補助率引き下げ措置に伴う地方の負担増分は、地方財政計画の作成を通じて措置してあります。特に生活保護については、新たに生活保護臨時財政調整補助金約二百億円を計上して対応しておるわけであります。その上に、今回の措置は生活保護の水準及び内容には影響を与えるものではありません。したがって、国の最終的な責任は確保されていると思います。
次に、六十五年特例公債依存体質からの脱却の問題であります。
我が国の財政状況が極めて厳しい状況にあることは事実でありますが、六十五年までに特例公債依存体質から脱却する、それを「増税なき財政再建」の理念を堅持して行うということは、一貫して変わらざるところであります。
次に、具体的な財政再建の方途の問題でございます。
これは、毎年毎年の分につきましては予算をもってお示ししているところでございますが、中期的な展望を持って財政運営を考えていくことは御指摘のとおり必要であります。このような検討に資するために、中期展望及び仮定計算例を提出しておるところであります。今後財政改革を進めるに当たりましては、歳入歳出の根本的な見直しあるいは税外収入の確保、適切な経済政策等によって片一方の努力をすると同時に、また一面におきましては、六十五年赤字国債依存体質の脱却、「増税なき財政再建」の理念を堅持して努力していくつもりであります。歳出歳入の各項目のあるべき水準や国民負担率等の目標値を含んだ定量的な財政計画の策定は、経済全体が流動的である中で極めて困難であると前から申し上げているとおりであります。
次に、今回の予算編成はつじつま合わせではないかという御質問でございます。
今回提出した中期展望等の試算は、中期的に見た我が国の財政事情の厳しさを示したものになっておりますが、これらの試算は、いずれもさまざまな角度から検討していただくためのたたき台となる基礎資料であって、あらかじめ特別の政策的意図が込められているものではございません。六十年度の予算は、行財政改革を強力に推進するという従来からの方針に基づいて歳出の徹底した節減合理化を行ったものでありまして、つじつま合わせではありません。
次に、義務教育費の国庫負担の問題でございます。
義務教育費国庫負担制度における旅費、教材費は、地方公共団体の事務事業として定着しているとの判断から、地方一般財源化を図ったところでございます。地方一般財源化に当たっては、地方財政計画等を通じ所要の措置を講じたところです。したがって、重要な政策変更を企図したものではなく、義務教育費国庫負担制度の基本は堅持しているものであります。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/11
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012・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 沢田さんにお答えいたします。
五十九本の法律の一括化は各常任委員会の審議権を無視したものではないか、これは総理からお答えがございました。一番大事なことは、総理からもお答えがありましたが、法案の国会審議の問題は最終的には国会でお決めいただくことでございまして、政府として国会の審議権を制約するなどという大それたことは断じて考えてはいけない、こういうことであります。
それから次の問題は、要調整額を挙げて御意見を交えての御質問がございました。
先ほど総理からもお答えございましたように、いろんな前提を置いた、たたき台となる基礎資料でありまして、あらかじめ特別の政策意図を込めたものではございません。したがいまして、六十年度予算に当たりましてもさまざまの工夫を行いまして、これのぎりぎりの調和点というふうに御理解をいただきたいと考えておるわけであります。
それから、今回の補助金の削減等に至ったプロセスあるいはその理由ということでございます。
国の財政が極めて厳しい環境にありまして、歳出削減を実現するためには、一般歳出の約四割を占めます補助金等の徹底した整理合理化を積極的に進めていくというのが不可欠のことであります。補助金の整理合理化に当たりましては、臨調答申あるいは行革審意見、これらの趣旨に沿って、行財政の簡素合理化また地方公共団体の自主性、自律性の尊重、これらを踏まえまして、そして、まさに車の両輪であります国と地方との間の機能分担、費用負担、これらの一環として推進していく必要がございます。そういう観点を踏まえて、六十年度予算におきましては補助金等のすべてをまず洗い直しをいたしました。そして、人件費補助等の見直し、補助率の引き下げ、廃止、一般財源化、統合メニュー化、あらゆる方途を講じたわけであります。したがって、一般会計補助金等総額において前年度比千三百四十四億円の減額となったわけでございます。まさに今回の高率補助率の引き下げの措置は費用負担の見直しを行うものでありまして、大事なことは、これによって国民生活にかかわる個々の施策の水準が影響を受けてはいけない、また受けるものではないということをはっきり申し上げておきます。
それから、地方財政の影響につきましては、先ほどもお答えがありましたように、所要の地方財政対策を講じてきたわけであります。
次に、義務教育費について申し上げますと、これまた旅費及び教材費の問題について特に総理からお答えがございました。臨調の第三次答申「地方財源の総体の在り方を含め、今後、検討を行う必要がある。」という指摘にこたえまして、国と地方の財政負担のあり方に関する検討の一環として、同制度のあり方について種々の観点から検討を行ったわけであります。重要な政策変更というものをもとより企図したものではなく、義務教育費国庫負担制度の基本はこれを堅持するという立場から対応した措置であります。
次が、生活保護費の問題でございます。
臨調一次答申での補助金等の金額のいわゆる一割削減、あの措置の対象からは生活保護費等は除かれておる、したがって、五十六年八月の閣議決定におきましての基本方針もその答申どおりに、金額の一割削減措置の対象からは個別検討とされたもの及び生活保護費等は除外した、これは事実でございます。しかしながら、その後第五次答申等におきまして、生活保護費等についても具体的な整理合理化方策が指摘されておりますように、生活保護費を一般的に整理合理化の対象から除外する趣旨のものではございません。したがって、その第五次答申、行革審の意見に従いまして、六十年度概算要求について著しく高率の補助の見直しを行うこととした際においても、生活保護費をその対象から除外することとはしなかったわけでございます。したがって、今回の措置は、いわゆる臨調第一次答申との関連性においては反するものではございません。
それから、行革関連法案の一年延長問題についての御意見を交えた御質問でございます。
行革関連法案は、これは臨調の第一次答申から受けまして、行政改革を進める第一歩として緊急にとるべき方策を措置するという使命のもとに制定された法律であることは御指摘のとおりであります。他方、本特例法の対象となっております諸制度につきましては、その後累次の答申の指摘をも踏まえまして、恒久的制度改革の実施が逐次予定されるに至っております。行革関連法案の六十一年度以降の取り扱いについては、このような本特例法の使命をも踏まえながら、その対象となっておりますそれぞれの制度の改革実施の状況、これを見きわめた上での判断が必要であるというふうに考えております。
それから、暫定措置について延長しないと確約できるかという趣旨のお尋ねでございました。
補助率につきましては、整理合理化の一環として、社会経済情勢の推移等を踏まえて見直しを行う必要があります。とりわけ高率補助率についてはそのあり方について問題があって、この引き下げを図る必要があるという指摘がございました。現下の極めて厳しい国の財政状況にかんがみまして、地方公共団体に対する高率補助率の引き下げを行うこととしたわけであります。しかし一方、補助金の整理合理化は、事務事業の廃止そして縮減を基本として行うべきものであって、補助率の見直しについては、国と地方の役割分担及び費用負担のあり方とあわせて検討する必要があるという意見も参考にいたしました。そして、今後さらに検討する。したがって、今回の措置は当面六十年度における暫定措置、このようにしたわけであります。したがって、六十一年度以降の補助率のあり方につきましては、国、地方の役割分担、費用負担の見直し等とともに十分検討を進めて結論を得るものであるといたしております。そういう考え方を踏まえて、今後適切な対処をしていきたいということになります。
延長しなくても来年度予算編成はできるのか、こういう御質問でございました。
六十年度以降の取り扱いについては今申し述べたとおりでありますが、六十年度以降の予算編成、こういうことになりますと、六十年度予算を今、国会で御審議をいただいておるところでございますので、具体的に六十一年度予算編成を念頭に置いておるわけではございませんが、いずれにしても、財政改革を推進するという基本的な考え方は、これは踏襲して対処すべきものであろうというふうに考えます。
それから、国と地方の機能分担のあり方等についての御意見を交えた御質問でございます。
社会保障関係に係る補助金につきましては、昨年末の予算折衝の過程におきまして、まずは暫定措置、そして六十一年度以降は見直すために今後一年以内に結論を得る努力をする、そういう私ども三大臣の申し合わせがございます。政府部内での補助金に係る検討の具体的方法につきましては、現在関係省庁間で検討中でございます。今後できるだけ速やかな部内の検討の場を設けるべく相談していきたいというふうに考えておるところであります。
それから、本来このようなことは本法案の提出前に行うべきものではないか、こういう御意見でございました。
確かにそれも一つの意見でありますが、しかし、私どもは、行政の簡素合理化と地方公共団体の自主性、自律性の尊重の観点をも踏まえて検討を行ってきたわけでございますし、したがって、機能分担、費用負担の見直しの一環として、これを推進する必要があると考えたわけでございます。
そして、特例措置の節減効果はどの程度になるか、こういうことでございました。
高率補助率引き下げによる節減額は四千四百八十一億円、一般財源化による節減額は三百七十八億円、行革関連特例法の延長による節減額は三千五百六十一億円、以上特例法案全体の節減額八千四百二十億円、こういうことになるわけであります。
地方負担の増加分は地方交付税で措置するというが、これは地方交付税の実質負担増をもたらすのではないか、こういう御質問でございました。
これは、六十年度の地方財政対策においては、高率補助率の引き下げによる影響額を織り込んだ上で生ずる財源不足五千八百億円について、地方交付税交付金の特例措置及び建設地方債の増発、これによって完全補てんをしたわけでございます。
三大臣の覚書の問題につきましては、これは、この問題について最後までお互い議論の結果生じた覚書でございます。他の分野についても、必要に応じて同様な協議、検討を加えていくというのは当然のことであるというふうに理解をいたしております。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/12
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013・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
まず、厚生省関係の法律についてのお尋ねでございますが、これらは、生活困窮者に対する生活保護、老人、身体障害者、児童等の福祉施設への入所措置、精神衛生、結核等の公費負担医療、さらに児童や母子に対する対策などに関し、事業の執行及び費用負担について規定した十一の法律があります。それぞれの法律に基づく補助金等は、事業の性格、国及び地方公共団体の行財政事情等を総合的に勘案して全国的にバランスのとれた施策の実現を図る観点から導入されたものでありまして、今回の措置は国と地方の負担区分の変更であることから各制度の給付水準には直接影響しないものであり、また、今回の措置に伴う地方負担の増についても地方財政対策の上で所要の手当てがなされているところでありますので、御理解を賜りたいと思います。
なお、生活保護に関しましてお尋ねでございましたけれども、先ほど大蔵大臣がお答えになったことに尽きるとは思いますけれども、国と地方の負担の区分についてでありました。私どもは、このことによりまして生活保護の給付水準、内容に影響を与えないよう十分配慮をいたしたつもりでございます。今後もそのような立場から対処してまいりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/13
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014・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) まず最初に、自治省関係の法案について今度どうなったかというお尋ねでございますが、一つは、新東京国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律でございます。これは、国の補助、負担割合の特例を定めるため四十五年にできたものでございます。その後十年間延長されております。今回の法改正による地方公共団体への影響は約一千万円でございます。
次に、もう一つは、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律でございます。これは、地方公共団体の行う公害防止対策事業に係る経費に対する国の負担または補助の割合の特例を定めたものでございます。これは地方団体への影響は約三億円でございます。
次に、国庫補助負担率の引き下げ措置として、六十年度限りの措置としている高率補助率の一割カットは延長しないという確約はできるのかということでございます。
先ほど大蔵大臣から答弁もありましたように、昭和六十一年度以降の国庫補助負担率のあり方につきましては、今回の予算編成の経緯を踏まえ、国と地方との役割分担、費用の見直し等を含めまして昭和六十年度において検討を行うことにしておりますので、御了承を願いたいと思います。
その次は見直し作業の問題で、これは一年周で完了する見通しはあるかという問題でございますが、国と地方との役割分担、費用負担のあり方の検討につきましては、行政の果たすべき役割、国と地方の機能分担等の見直しを行い、地方自治の確立と地方財政の健全化を図る方向で対処してまいりたいと思います。その具体的方法等を検討する場の設定につきましては、現在協議中であり、可及的速やかに結論を得るよう努力してまいりたいと思います。
次に、国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加額についてお答えいたします。
今回の二分の一を超える補助負担率の引き下げ措置に伴います地方負担の増加額は、社会保障等の経常経費系統で約二千六百億、公共事業等の投資的経費で約三千二百億、合計五千八百億と見込まれております。
次に、国庫補助負担率の引き下げに伴う地方財政措置についてお答えいたします。
国庫補助負担率の引き下げ問題につきましては、国と地方団体の考え方に大きな食い違いがありましたが、極めて厳しい財政状況のもとにおきまして、地方負担の増加につきまして万全の地方財政措置を講ずることを前提として、これに協力したものでございます。その際、極力地方交付税の増額措置で対処することを基本としたところであります。今回の措置によって生ずる地方負担の増加分につきましては、地方交付税の算定等を通じて所要の財源措置を講じており、地方団体の財政運営に支障を生ずることのないようにしたところでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/14
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015・坂田道太
○議長(坂田道太君) 中川嘉美君。
〔中川嘉美君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/15
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016・中川嘉美
○中川嘉美君 私は、公明党・国民会議を代表して、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、内閣総理大臣並びに関係各大臣に対し若干の質問を行うものであります。
最初に、私は、本法律案と関連する幾つかの重要事項について、総理の基本姿勢を伺いたいと思います。
政府が「増税なき財政再建」を掲げながら、これに逆行する大型間接税の導入を画策していることは周知の事実であります。本法律案でも示されているように、中曽根内閣は、今日まで「増税なき財政再建」の名のもとに、福祉、文教予算の削減など国民生活に多大な負担と犠牲を強いてきたこともまた事実であります。それにもかかわらず、財政再建に欠かすことのできない行政改革と景気対策に積極的な取り組みをしようともせず、「増税なき財政再建」の総理公約を放棄することは、まさに国民に対する背信的行為であり、極めて遺憾であると言わなければならないのであります。政府が大型間接税導入を画策することは、事実上「増税なき財政再建」の公約を破棄するものと受けとめざるを得ないわけでありますが、本件に対する総理の明快な答弁を求めるものであります。
言うまでもなく、「増税なき財政再建」を推し進めるためには、我が国経済を安定成長軌道に乗せ足場を固めるとともに、その一方で徹底した行財政改革が必要であります。ところが、本法律案は、補助金の整理合理化と称せられるものの、その主たる内容は、国の財政負担を地方に転嫁する高率補助金の一律削減と厚生年金等への繰り入れを停止したいわゆる行革関連法の延長であり、本来的な行財政改革とはおよそかけ離れた、財政の帳じり合わせのための措置にすぎないのでおります。政府・自民党内には、歳出削減はもはや限界であるとの声が台頭しつつあると言われますが、このような声は、国民生活にしわ寄せをする本法律案のようなやり方の行き詰まりを端的に物語るもりであると言わざるを得ないのであります。私は、今こそ総理に、本来的な行財政改革の徹底、すなわち機構減らし、仕事減らしから始めて、結果として人減らし、金減らしにつながる中央省庁、特殊法人の統廃合などの行政機構の簡素化を初め、すべての施策を見直し、その上に立った補助金の整理合理化、国家公務員の純減数の拡大などを要求するものであります。総理の御決意と方策をお聞かせいただきたいと思います。
また、臨時行政調査会の答申では、「補助金等の整理合理化という課題は、実は、国と地方とが共同して行っている行政施策そのものについて整理合理化を検討することであり、また、国と地方との費用分担の在り方を検討することにほかならない」とうたっており、補助金の一律削減などはどこにも提案されておりません。したがって、補助金の一律削減は臨調答申を全く無視した行為であると言わざるを得ないわけでありますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
しかも、私が納得できないのは、本法律案が補助金、行革法の延長など極めて多くの法律案が盛り込まれているにもかかわらず、先に予算案で金額を決定し、一括して日切れ法案とし、その成立を迫っていることであります。このような行為は、国会の審議権を拘束し、財政民主主義を踏みにじるものと言わざるを得ないのであります。こうした国会軽視の姿勢について、総理並びに大蔵大臣はどのように受けとめ責任を感じておられるのか、この際明確にしていただきたいのであります。
本法律案のようなつじつま合わせの措置がとられたのは、ここ数年の経緯で弊害が明らかになっているマイナスシーリングによる一律削減方式の概算要求を六十年度の予算編成においても踏襲したことにあります。したがって、私は、六十一年度の予算編成の方式をマイナスシーリングによる一律削減方式から政策の優先順位を明確にした政策別シーリングに改めることが緊要と考えるものでありますが、総理並びに大蔵大臣の所見をお示しいただきたいと思います。
次に、地方行財政改革のあり方について質問をいたします。
地方自治体の財政は、景気回復に加えて自治体独自の行政改革の努力もあり、徐々に健全化の方向に向かいつつあります。しかしながら、政府が、国と地方自治体との行政権限の再配分や財源の再配分など国と地方自治体間の本来的な行政改革への取り組みを放置し、補助金の一律削減によってただ負担のみを押しつけることは、再び地方財政の困窮化を招くものであります。既に地方自治体は財政難に陥ることを憂慮して、この補助金削減に対し、全国のすべての都道府県議会そして六百五十一の市議会が反対の決議をしている現状を総理は御存じなのかどうか、御所見を承りたいのであります。
あわせて自治大臣に伺いますが、望ましい地方行財政改革のあり方について大臣はどのように考えておられるのか、伺っておきたいと思います。
さらに、福祉、文教施策についてでありますが、今回の高率補助金のカット分二千九百億円のうちの二千七百億円は、生活保護費と児童保護費など社会保障関係が大半を占めております。すなわち、社会的に弱い立場の人々への補助をねらい撃ちする福祉切り捨て以外の何物でもありません。生活保護、義務教育などは、本来国の責務として行うべき性質のものと考えますが、総理は、こうした施策について、国と地方との役割分担と国の持つべき責任の範囲をどのように考えておられるのか、明確にしていただきたいのであります。
今回の措置に伴って、一応財政金融上の措置がとられているものの、特に生活保護費比率の高い地域にとっては、財政が厳しく圧迫されることは必至であります。地方財政法第二条第二項においては「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」としております。今回の措置は、この地方財政運営の基本に反していないものと言えるのかどうか、自治大臣に対し明確な答弁を求めるものであります。
次に、行政改革関連特例法の延長問題、特に厚生年金勘定から一般会計への繰り入れに関してお尋ねをいたします。
行政改革関連特例法は、五十九年度に赤字国債の発行をゼロにするとの鈴木内閣時代の財政再建目標に合わせて制定された、五十七年度から三年間の時限措置であります。その中でも厚生年金の国庫負担繰り延べは、五十七年度からの三年間の合計額が七千百七十五億円に達するものと見込まれております。すなわち、国はこれらを厚生年金から借金しているわけであります。この繰り延べについては、特例法の期限が切れる五十九年度以降、国は繰り延べた金額に利子をつけて厚生年金に返済しなければならないことになっております。特に、この返済について、五十六年十月二十八日の行財政改革特別委員会において、我が党の正木議員の質問に対し当時の渡辺大蔵大臣は、「年金財政の安定を損なわないという本法の趣旨にかんがみて、特例適用期間後の繰り入れ措置については、できる限り速やかに着手することをこの場でお約束をし、また努力をする」と答弁しておられます。そして、五十八年九月三十日の行財政改革特別委員会においても、竹下大蔵大臣と林厚生大臣が同意の上、さきの答弁と全く同趣旨の統一見解を示しておられるのであります。こうした経緯から見ても、今回の行革特例法の延長は明白な公約違反であります。総理並びに大蔵大臣そして厚生大臣はこの責任をどう考えておられるのか、しかと承りたいのであります。
さらに、私は、財政負担の後年度への国庫負担の繰り延べと財政再建についてお伺いをいたします。
行革特例法の延長を初め、政管健保の国庫補助の削減など本来的な歳出の効率化ではない糊塗策によって政府は緊縮財政を取り繕っておりますが、これらが後年度の負担となることは明らかであり、問題解決の先送りと言わざるを得ないのであります。総理は、施政方針演説などにおいて財政再建、行政改革の効果を誇っておられますが、本当に財政再建は進んでいると言えるのかどうか、極めて疑問であります。後年度に先送りした国庫負担についてどのように対処されるのか、また、それらを含めて今後財政再建にどのように取り組まれるのか、その方途と手順を明確にお答えをいただきたいのであります。
最後に、本法律案の六十一年以降の取り扱いについてお尋ねをいたします。
補助金、行革延長法ともに単年度立法となっております。また、補助金の一律削減などについても来年度以降の取り扱いが不透明なことは、いたずらに地方自治体や国民の不安を助長するだけであります。総理に伺いますが、この際、本法律案の措置は今年度限りであると確約できるのかどうか、いま一度明らかにしていただきたいのであります。特に年金関係は、現在審議中の年金法改正案が成立すれば六十一年度から新しい制度に切りかわることになるため、延長は許されないはずであります。年金財政の安定、すなわち保険料の引き上げや支給額の抑制につながらないようにするために、どのような手だてをしようとされるのか、来年度以降の返済計画について大蔵大臣からこれを明確にお示しいただきたいのであります。
以上、重点項目に絞ってお尋ねをいたしましたが、総理並びに関係大臣の明快なる御答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/16
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017・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 中川議員にお答えをいたします。
第一問は、「増税なき財政再建」と税制改革の問題でございます。
「増税なき財政再建」は財政再建の基本理念であると考え、今後も堅持してまいるつもりでございます。税制改革につきましては、シャウプ税制改革以来三十五年経過いたしまして、この間におけるひずみやゆがみ等々を是正して不公平感、重税感を国民から解消させよう、こういう考えをもちまして、公平、公正、簡素、選択並びに活力という基本原則を踏まえて行いたい、特に、これは増収を目的とするものではなくして、むしろ所得税や法人税の減税をやりたい、そういう念願に基づいて行いたいと思っておるものであります。しかし、いずれこれは政府税調に諮問することになると思いますが、現段階におきましては、政府としては白紙で臨みたいと考えております。
補助金の整理合理化の問題でございますが、臨調答申等の指摘を踏まえまして、徹底した整理合理化に積極的に取り組んでいるところでございます。六十年度予算におきましても、すべてについて洗い直しを行いまして、人件費補助の見直し、統合メニュー化、その他廃止合理化等幅広い整理合理化を積極的に推進しております。この結果、一般会計補助金等総額で対前年度千三百四十四億円の減額を達成いたしました。今後とも努力してまいるつもりでおります。
次に、機構の簡素化、特殊法人の合理化、定員問題等についての御質問でございます。
行政改革については、臨調答申の趣旨を踏まえつつ、累次行革大綱に沿って推進してきたところであります。機構については、総務庁の設置、十省庁の内部部局の再編成、地方支分部局の整理合理化等各般にわたる改革を推進しておるところであります。特殊法人等については、統廃合、事業の縮小等の整理合理化及び経営の活性化を推進中であります。定員につきましては、第六次定員削減計画を着実に実施しておりまして、六十年度においては六千四百八十二人の大幅な縮減を図ったところであり、今後も努力してまいる所存であります。
次に、補助金の一律削減問題でございます。
財政改革を推進するに当たっては、一般歳出の中の膨大な量を占めておる補助金等の整理合理化を積極的に進めることが不可欠であります。臨調答申、行革審意見等においても、補助率の総合的見直しを含め幅広い補助金等の整理合理化策が提言されておりまして、今回はその趣旨に沿って行ったものであります。
一括法案、日切れ法案として提出したことはいかんという御質問でございますが、本法案は予算と一体不可分の重要な歳出関連法案でありまして、この法案の成立なくして予算の円滑、適正な執行は期しがたいのであります。そのため、早期成立を期して六十年度予算案と同時に一月二十五日に提出した次第なのであります。しかし、国会の審議の問題は国会でお決めいただく事項でございまして、政府として国会の審議権を軽視する考えはございません。
六十一年度予算と概算要求の問題、つまり、政策別シーリングを行えという御質問でございます。
厳しい財政事情のもとでこのような予算編成を行いましたが、概算要求基準につきましても厳しい基準を実は設定をして、節減合理化に努めたところであります。そして、概算要求基準については、経費の性質等に着目した技術的な方法により算出された各省庁の基準額の範囲内で各省庁が政策の優先順位の厳しい選択を行って要求づくりを行うものでありまして、一律に削減するという性質のものではありません。なお、財政改革を強力に推進するため、予算編成に当たっては、今後とも概算要求についての厳しい基準を設定してまいります。
次に、地方団体の反対の問題であります。
高率補助率引き下げに関しては、地方公共団体から種々の意見があったことは承知しております。地方財政への影響については最大限の対策を講じておりまして、今後地方団体とよく話し合いもし、了解と御協力を得るように努めたいと思っております。
生活保護費の問題と国の責任の問題でございますが、現行生活保護法は、生活保護が国民の生存権保障の最後のよりどころであることにかんがみ、国の最終的責任を明示していると思います。同時に、従来から一貫して、生活保護費について地方公共団体も一定の負担をしてまいってきております。今回の措置は、昭和六十年度における暫定措置として行うこととし、六十一年度以降のあり方については、国と地方の役割分担及び費用負担の見直し等とともに検討したいと思っております。
義務教育費の取り扱いの問題であります。
義務教育費国庫負担制度における旅費、教材費は、地方公共団体の事務事業として定着しているとの判断から、今回地方一般財源化を図ったところであります。この財源化に当たっては、地方財政計画等を通じ所要の措置を講じてきております。今後とも義務教育の維持充実のために、国としてこの制度の基本は堅持してまいるつもりでおります。
財政再建の方途と手順についての御質問でございますが、毎年度の予算編成を通じて毎年毎年の計画は実行しておりますが、この場合、歳出面においては、政府と民間の役割分担、国と地方の機能分担、費用負担を見直すなど連年努力をしておりまして、節減合理化に努める。また一面、歳入面におきましては、税外収入あるいは適切な経済政策による増収等についても努力をし、さらに税制調査会に対していろいろなお考えを聞いておるところでございます。また、将来のこととして、シャウプ税制以来の根本的な改革を行わんと心がけておるものであります。しかし、財政に関する定量的なリジッドな財政計画の策定は、流動酌な情勢からかんがみて必ずしも適当でないと考えております。
今回の補助金カットの問題は、暫定措置として行うこととして、六十一年度以降の補助率のあり方については国と地方の役割分担、費用分担の見直し等とともに検討いたしたいと思います。行革関連特例法の六十一年度以降の取り扱いについては、行政改革を進める第一歩として制定された行革関連特例法の使命を踏まえつつ、逐次予定されるに至っている対象調度の見直しの状況等をも見きわめて判断いたしたいと思っております。
残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/17
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018・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 中川さんにお答えいたします。
ます、一括して日切れ法案の成立を迫っていくというのは国会軽視になる、どういうように受けとめて、どういうふうな責任を感じておるか、こういうことでございます。
総理からもお答えがございましたが、六十年度予算の執行に当たっての必要不可欠の制度改正である、予算と一体不可分の重要な歳出関連法案でありますので、この法案の成立なくしては予算の円滑な適正な執行は難しい。また、財政運営は会計年度全体を通じまして歳入歳出両面にわたって計画的に行っていくべきものでございますので、特に本法案のように各省庁におたって広範な分野での施策に影響するものにつきましては、国会の議決を経た上で整然と執行に入る必要があるというふうに考えております。したがいまして、先ほどもお答えがございましたように、一月の二十五日に六十年度予算案と同時に国会へ提出をしたという事実があるわけでございます。心から早期成立を期待をいたしておるところでございます。
さて、次の問題は、一律削減方式から政策別優先順位を決めたシーリング方式というものに改めるべきではないかという御意見でございます。
確かに経費の性質等に着目した技術的な方法によりまして概算要求基準が設けられてきたわけでございますが、基本的には、それぞれの担当していらっしゃいます各省庁が政策の優先順位を厳しく選択していくというのが一番妥当ではなかろうかというふうに考えております。今後とも、概算要求につきましては厳しい基準を設定する考え方であらねばならぬと思っております。
それから厚生年金の関係で、整理いたしますと三つの御質問がございます。
一つは、五十九年度までに特例公債から脱却することを目標としておった、その区切りが五十九年であったことは事実でございます。この目標達成のために努力いたしましたが、第二次石油危機に伴います経済停滞というまさに世界不況という予期せざる事態ということになりましたので、そこで六十年度における所要の継続措置をお願いせざるを得なかったというふうにぜひ御理解を賜りたいと思っております。
次の問題は、どういうふうに国庫負担に対する繰り入れに着手するかということでございます。できるだけ速やかに繰り入れに着手すると申し上げて今日まできておりますが、これは法案が延長する場合においても、この考え方自身には変更はございません。したがって、繰り入れ期間、内容、これにつきましては現時点では明確に申し上げられないということが実態でございます。
それから次に、六十一年度よりの年金制度改正の問題に触れての御質問でございましたが、六十一年度より年金制度改革の実施が予定されておりまして、厚生年金に対する国庫負担の仕組みも基本的に変わるということになりますならば、したがいまして、現行の行革関連法案による繰り延べ措置をこのまま延長することは問題があるのではないかと考えます。いずれにしても今後の検討課題であるということをもってお答えといたします。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/18
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019・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 中川さんの御質問でございます望ましい地方行財政改革のあり方につきましては、地方財政が引き続き非常に厳しい状況にあることにかんがみまして、行政の果たすべき役割あるいは国と地方との役割分担の見直しというものを行いまして、国、地方を通ずる行財政改革の推進と行財政の簡素効率化、合理化を図ることを基本といたしまして、地方自治行政の確立と地方財政の健全化を図る方向で対処することであると考えます。
次に、地方財政法第二条第二項と国庫補助負担率の引き下げの措置についてお答えいたしますが、昭和六十年度予算におきまして、国の極めて厳しい財政状況にかんがみまして、暫定措置として国庫補助負担率の引き下げを行うことになりましたが、これは昭和六十年度における一年限りの措置でありますので、改めて昭和六十年度におきまして国と地方の役割分担、費用負担等のあり方について検討することとし、さらに国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加に対しましては、交付税の特例措置、建設地方債の増発で補てんするなど万全の措置を講じ、地方公共団体の財政運営に支障を生じないよう対処したところであり、地方財政法に反する措置がなされたとは考えておりません。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/19
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020・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) お答えいたします。
厚生年金保険の国庫負担の一部繰り延べ措置についてのお尋ねでございます。
このことについては、昭和六十年度においても引き続き国家財政が極めて厳しい事情にあることにかんがみ、政府全体として行革関連特例法に基づく各特例措置について所要の継続措置を講ずることとされたことから、昭和六十年度における一年間の延長をやむを得ないものとして受け入れることとしたものであります。この措置は、極めて厳しい国家財政のもとでいろいろな工夫を行った上で、社会保障の実質的水準を低下させないためにやむを得ずとられた措置であることを御理解賜りたいと存じます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/20
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021・坂田道太
○議長(坂田道太君) 伊藤昌弘君。
〔伊藤昌弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/21
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022・伊藤昌弘
○伊藤昌弘君 民社党・国民連合を代表して、国の補助金等の整理合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
行政改革の断行と歳出削減のためには、昭和六十年度予算案における十四兆四千三百億円たる、一般会計の約三割を占める補助金の整理合理化が不可欠の課題であることは論をまちません。補助金は国民の血税、よって使途は役人のためであってはならないし、政治家のためであってもなりません。真に国策のため必要なものに限り必要最小限とすべきであり、身勝手な補助傾向は国民に自主自立の心を忘れさせ、御都合主義や勝手な解釈がまかり通り、それは国家国民のために正しきことではありません。公費天国と乱脈経営の官業、行政への甘えの構造、補助金でふやす個人資産、借りなければ損な政策金融の甘い汁など、数え上げれば限りなし。
〔議長退席、副議長着席〕
さて、時代の変遷とともに役割を終えた補助金、効果が不明確な補助金、特定な対象を優遇する補助金は即時廃止、禁止すべきであり、また、地方自治体の自主性を妨げ莫大なむだを生んでいる各省ばらばら縦割り補助金は断固整理統合すべきであります。また、自治体に過重な業務を強いている乱雑な補助金申請事務は大胆に簡素化すべきであります。さらに、補助金の交付、箇所づけをめぐる利益誘導は金権腐敗の温床を形成し、厳しく是正しなければなりません。よって、補助金問題はまさに緊急の課題であり、我が党が真剣に叫び続けてきた理由はそこにあるのであります。
しかるに、政府の施策いかん。一つ、廃止した補助金は極めてわずか。二つ、総合メニューにして弾力性は少し出ただけ、まだ実態は変わらず。三つ、後は国の負担を国民や地方に移しかえるか先延ばし。この先延ばしなどはもってのほか、みずからの放漫財政を忘れ、後世の国民に負担がえしょうとは。この安易な補助金処理は、将来の国家国民の活力を失わせることになるやも知れず。これが整理か、合理化か。政府はやる気でやっていただきたいのであります。かくのごとき立場に立って質問をいたします。
政府は、五〇%以上の高率補助金について、これを原則一割カットし地方に転嫁、その額は五千八百億円。そもそも金減らし、仕事減らしの行革とは、補助金を廃止するか、地方の一般財源とするか、縦割り補助金にメスを入れるかであるにもかかわらず、政府の措置は負担を地方にツケ回ししただけであり、肝心な国民の負担は軽くなっていないのであります。見せかけで国民をだましてはなりません。この基本問題を総理、総務長官はどう考えておられるのか、お答えをいただきたいのであります。
第二、補助金の整理は政策の見直しから始めなければならないのに、この当たり前のことがなされておりません。政府は何を考えておられるのかさっぱりわかりません。
まず、時代の変化に対応する的確な整理、自治体における定着度、そして何よりも補助効果を見きわめるのが政府の責任ではありませんか。特に一律カット補助金の中には、生活保護費補助金など、憲法の規定に基づき究極駒に国の責任において実施するものとされ、そのために高率補助とされているものが数多くあります。私は、現在の補助率を絶対視しているわけではありませんが、かかる補助金について何らの政策判断もなく財政上の理由のみで一律カットし、後でその是非を検討するというのでは、順序がまさに逆さま。政府いわく、各補助金については一つ一つ洗い直し、補助金の合理化を図ると言明してこられましたが、おっしゃるだけではございませんか。能のない一律カット方式と政治判断なしで安易に負担を地方に転嫁した理由、今後もこんな無責任なやり方をなさるのですか。また、これと関連をして、地方財政の好転を理由として、補助率削減の継続とあわせて地方交付税率の引き下げを内々検討されておられる由、事実をお話しください、大蔵大臣。
第三、補助金と機関委任事務の関係がきちんと配慮されていないことであります。
一律カット補助金の中には、国の機関委任事務になっているものが多く、補助基準も認定の規則も補助単価も全部国で決定をされ、地方は国の監督下、事務執行をするだけであります。そのような状態であるのに、補助が高率だとか地方の負担が少ないとか生活被保護者の認定を甘くしているなどを理由に、補助率を引き下げるべきなどと勝手な政府意見も耳にいたしますが、まさに主客転倒。何もかも政府の言うとおりやれと委任しておいて、みずからの監督の無能を棚に上げて他に責任を転嫁するとは情けないお方々。それならば機関委任事務を廃止し、地方交付税中への組み込みを積極的にやってみたらいかがでしょうか。補助金の不正受給を改めるには、補助率の引き下げでは直りません。機関委任事務のあり方を見直すか、実態に応じた国の補助基準改善が必要であります。また、地方議員などの圧力が給付の不正を生むなど徹底的に調査をしてほしい。厚生大臣の御所見を伺いたいのであります。
第四、財政合理化のための例えば第二交付税制度の創設についてであります。
民社党は、公共事業関係補助金すなわち道路、河川など地方財政法第十条の二に列挙されている事業に使う国の支出金を地方に一括交付する第二交付税制の創設を言い続けてまいりました。それは、各事業の整備順位や個別の選択を自治体に任せ、事業間の整合性を図るとともに、財源を一括交付することによって財政のむだを省くのであります。これにより、事務手続の煩雑さ、事務費のむだ、縦割り行政の弊害を排除できるではありませんか。役人のための規則であってはなりません。軌を一にして臨調自身もその具体化を期待しているのであります。政府もこの税制の検討を約束されましたので、臨調答申にも合わせてどのように具体化していくのか、総理のまじめなお答えをいただきたいのであります。
第五、国が地方に補助金交付に当たり細部にわたって干渉し過ぎるのではありませんか。
この補助金は、係長行政と呼ばれているように、各省ぱらぱら、細かな条件が付され、莫大なむだを生んでいるのであります。例えば、土地の有効利用から多目的に一緒に一つの施設をつくろうにも、各省からは別々につくれとの指示、話がついて複合施設になっても入り口などを別に設けよとか、また、補助金をやるから特定業者を使えなど、また、年度末になってどかっと補助金が持ち込まれたり、一体国民の税金を何と心得ているのか、総理、大蔵大臣、お答えをいただきたいのであります。類似施設補助金は総合化し、特定業者を押しつけるなど権力と金にまつわるおかしな行為はやめてほしい。しかと御所見を願い上げます。
第六、補助金申請と交付にかかわる業務は、何と都道府県で四五%、市町村で二五%と大なるもの。これでは必要な補助金も役人に仕事をつくってあげるだけの補助金になってしまうではありませんか。
よって、また申し上げる。補助金は政治家や役人、業者、特定の人々のためのものではなく、国民のためのものでなくてはなりません。したがって、補助金対象となる事業別申請、交付様式の統一、窓口一本化、書類の簡素化、地方出先機関との二重協議廃止などを図らなければなりません。大蔵大臣、お答えをいただきたいのであります。
最後は、行革関連特例法についての約束が守られていないことであります。政府は、厚生年金に対する国の負担削減を柱とする特例法について、期限に利息をつけての返済を約しましたが、なお一年延長の措置を講じました。
質問第一、延長理由を。第二、厚生年金の負担の繰り延べ措置に伴う四年間の繰り延べ総額は幾らになるのですか。三つ、その利子計算の方法と利子総額。四つ、返済はいつから、何年で行うのか。大蔵大臣に、国民に理解をさせる心でお答えをいただきたいのであります。
以上をもって質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/22
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023・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 伊藤議員にお答えいたします。
第一問は、高率補助金の一律カットは地方転嫁ではないかということでございます。
六十年度予算は、極めて厳しい環境の中で、臨調答申の線を踏まえまして、補助金等の徹底した整理合理化等に積極的に取り組んだところでございます。この補助率の引き下げに伴う地方負担の増加に対しては、交付税の特例措置及び建設地方債の増発で補てんするなど万全の措置を講じて、地方公共団体の財政運営に支障がないように対処しております。
次に、いわゆる第二交付税制度の創設に関する御質問でございます。
民社党は、かねてこのアイデアを御提唱なすっていることは私も承知しておりまして、この御趣旨は十分理解できるところでございます。しかし、国と地方の役割分担のあり方につながると同時に、国庫補助負担制度の意義を大きく変更することになるので、御趣旨は踏まえつつも慎重に検討してまいりたいと思っております。国庫補助金等の整理合理化と手続の簡素効率化については同感でございまして、今後とも積極的に推進してまいります。
臨調答申と補助金等の整理合理化の問題でございます。
補助金につきましては、何しろ三十二兆五千億円の一般行政費の中で交付金等を入れますと約十四兆四千億にもなる膨大なものでありますので、これが積極的な合理化を行わなければ臨調答申の簡素合理化の趣旨に沿わないという点はよく認識しております。六十年度予算におきましても、答申の線を踏まえまして、すべての洗い直しを行い、人件費補助の見直し、統合メニュー化の促進、その他廃止合理化等幅広い積極的な合理化を行ったのでございます。この結果、一般会計補助金等総額で対前年度千三百四十四億円の減額を達成しました。今後とも不断の見直しを行い、さらに徹底した整理合理化に努める所存でございます。
行革特例法の一年延長の問題でございますが、行革関連特例法の特例適用期間については、制定当時昭和五十九年度までに特例公債依存体質脱却を目標としていたこともありまして、区切りとして昭和五十九年度までとしたところであります。この目標実現のため最大限努力いたしましたが、第二次石油危機の後遺症等予想せざる経済の停滞等からその実現が困難になったこともありまして、国の財政は極めて厳しい状況であります。このような財政の状況にかんがみ、本特例法の一年延長をお願いせざるを得なかったことはまことに遺憾でありまして恐縮に存ずるところでございますが、ぜひ御理解をいただきたいと思うところでございます。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣後藤田正晴君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/23
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024・後藤田正晴
○国務大臣(後藤田正晴君) 私に対する御質疑は、金減らし、仕事減らしの行革という観点に立ては、今回の高率補助金の一割カットは単なる負担の地方転嫁であって、国民の負担軽減になっておらぬではないか、どう考えるか、こういう御質疑でございます。
高率の補助につきましては、一般に財政資金の効率的な使用、こういう観点から問題点の指摘もございますし、第二臨調の答申及び行革審からの御意見においても、その見直しの必要性が指摘をせられておるところでございますが、今般の高率補助の一割カットは、こういった趣旨をも踏まえながら、直接の目的といたしましては、極めて厳しい環境下に置かれた昭和六十年度予算の編成に当たって国の財政収支の改善に資する、こういう見地から必要とされた措置でございます。御指摘の点につきましては、私どもといたしましても十分理解のできるところでございますが、政府といたしましては、御趣旨の点をも勘案しながら、今後とも不要となった補助金の廃止及び統合メニュー化、こういった一連の補助金の合理化施策を推進してまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/24
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025・竹下登
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
政策判断抜きの一割カット方式は問題だ、だから手順が逆ではないか、こういう御趣旨を交えた御質問でありました。
今、後藤田国務大臣からもお答えがございましたように、補助金の問題につきましては、地方公共団体に対する人件費補助等の見直しとか、あるいは補助目的を達成したと思われるもの、また地方公共団体の事務事業として完全に定着しておるもの等を廃止とか一般財源化、これを行いました。さらには、今お話がありました統合メニュー化を推進してまいりました。そして終期の設定、これらをやってまいりました。このようなことを行います上に、なお社会経済状態の変遷をも踏まえまして、いわば国と地方との機能分担、費用負担の見直し、このような角度からいわゆる高率補助率の引き下げ、これをお願いすることにいたしたわけであります。
六十一年度以後も補助金カットは継続するか、こういうことでございます。
国、地方の役割分担、費用負担の見直し、これは今後とも検討を進めていかなければなりません。その結論を踏まえて適切に対処していかなければならぬというふうに思っておるところであります。
それから、地方交付税の引き下げを勉強しているか、こういう御指摘でございます。
行政が総合的、効率的に行われますためには、国と地方公共団体がそれぞれの機能と責任を分かち合いながら相互に協力していくことが必要でありますし、また国と地方の財政は、税源配分、交付税交付金、補助金等々によりまして、それぞれ密接な関係を有しております。交付税のあり方というのは、このような国と地方公共団体の税源配分の問題の一環として、国と地方との行政事務配分と費用負担のあり方とか、あるいは地方税、地方譲与税制度、国庫補助金のあり方等を総合的に勘案して、国と地方の財政状況等を踏まえながら、まさに幅広い見地から検討されるという一般論としての課題であるという認識を持っております。
それから、補助金の事務の簡素合理化、これは御提言にございました趣旨は私どもも生かすべき趣旨だとまず思います。
申請、交付手続の簡素合理化について従来からも推進してまいりましたが、本年度当初におきましても、執行上のきめ細かな配慮についていろいろ工夫をするように補助金等適正化中央連絡会議を通じて指導を行っております。今後とも事務手続の簡素合理化に努めるよう各省庁に要請してまいります。
それから、行革特例法の一年延長、この問題につきましては総理からお答えがございました。
第二次石油危機に伴う世界経済の停滞の長期化というまさに予期せざる事態、これからいたしまして、六十年度における所要の継続措置をお願いせざるを得なかったわけでございますから、まさにぜひぜひ御理解を賜りたいというふうに考えます。
それから、厚年に関する質問、四年間で幾らか、こうおっしゃいました。九千四百七十億円でございます。
そして、この利子等の問題につきましては、積立金運用収入の減額分を含め将来繰り入れることを明らかにしておりますが、積立金運用収入の減額分の計算方法及びその返済方法については現時点ではまだ確定していないということをお答えせざるを得ません。
それから、削減額は幾らか、いつから返済するか、裏腹の質問でございますが、特例適用期間経過後においてできる限り速やかに繰り入れに着手するということを今日までも申し上げてきておりますし、六十年度に行革関連法案を延長する場合においてもこの考え方には何ら変更はございませんが、期間、内容につきましては、今後の財政状態を勘案する必要がございますので、現時点で明言する状態にはございません。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/25
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026・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) 生活保護の不正受給と補助率引き下げの関連等についてのお尋ねでございますけれども、不正受給については、それがごく限られた一部の者によるとはいいましても、生活保護制度自体に対する国展の理解と信頼を失わせることとなりますので、従来から厳正に保護の適正実施に努めておるところであります。今回の補助率の引き下げは、高率補助金の見直しの一環として昭和六十年度における暫定措置として各省が足並みをそろえて行うものでございます。また、生活保護にかかわる補助のあり方等の問題につきましては、国と地方の間の役割分担の見直しとあわせ今後政府部内において検討を進めることといたしておる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/26
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027・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 中島武敏君。
〔中島武敏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/27
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028・中島武敏
○中島武敏君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、いわゆる補助金カット一括法案について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
今回の法案を詳細に分析し、また趣旨説明やこれまでの政府答弁を聞いて、私は心の底からの怒りを抑えることができません。生活保護、児童福祉、老人福祉、障害者福祉、義務教育等々の各分野にわたって戦後四十年国民の運動が営々として築いてきた諸成果が、今昔を立てて突き崩されようとしているのであります。この法案こそは、戦後政治の総決算を標榜する中曽根政治が戦後福祉の総破壊とまさに同義語であることを何よりも雄弁に物語っていると言わなければなりません。(拍手)
私は、質問を行うに当たって、東京都内の老人ホーム、保育所、学校、福祉事務所の幾つかを訪問し、現場で働く職員はもとより、お年寄りや母親、生活保護を受けている人たちなどの声を聞いてまいりました。これから先一体どうなるのか、措置が打ち切られるのではないか、料金の値上げを負担し切れるだろうか等々の不安、ミサイルや戦車を買うお金はあるのにという嘆きと怒りが、いずこにも満ち満ちております。
そこで総理、あえて問い直したいと思います。この法案による生活保護費の削減額は千三百十億円。一方、来年度十四機を追加発注するF15戦闘機のためにアメリカと日本の死の商人に支払う代金が千四百二十二億円であります。保育所措置費の削減三百四十八億円は、四百二十六億円もする護衛艦一隻でおつりが来るのです。新規購入するパトリオット・ミサイル〇・五個群の価格が三百二十六億円であるのに対し、切り捨てられる老人保護費は三百二十二億円であります。広島、長崎の被爆から四十年、核戦争阻止、核兵器廃絶の声がほうはいとしてわき起こっているとき、なぜ福祉を削り、お年寄りや子供たちを苦しめて、レーガン核戦略への加担、そのための大軍拡を強行しなければならないのか、大砲よりバターを、軍事費を削って暮らしと福祉、教育に、の圧倒的な国民の声になぜ耳を傾けられないのか、まず最初に明確なお答えをいただきたい。
以下、法案の具体的問題点について伺います。
第一は、国民生活への深刻な影響であります。
総理は、口を開けば、財政上万全の措置をとっており住民生活への影響はないと述べておりますが、とんでもありません。一律カットについて言えば、地方自治体に転嫁する六千四百億円のうち国が補てんするのは一千億円のみであり、残りはすべて借金で貯えというのであります。国の負担を全廃する義務教育の教材費などに至っては、全く何の措置もありません。自治体への膨大な借金の押しつけが何ゆえに万全の措置なのか。自民党市政下の横浜市では、既に無認可保育所への独自の助成を打ち切り、大規模校の解消も、文部省が三十一学級以上を対象としているにもかかわらず、三十七学級以上のみとしております。このように住民にしわ寄せする事態が全国的に起こり得ないと、どうして保証できるのですか、総理及び自治大臣に伺いたい。
今国会の施政方針演説で総理は、「寝たきり老人や障害者など、社会的、経済的に弱い立場にある人々に対して、温かい手を差し伸べてまいります。」と明言されました。実際、温かい手が今ほど必要なときはありません。特別養護老人ホームには、まさに寝たきりのお年寄りが大勢いらっしゃいます。そのお年寄りたちに、食事材料は全額自分で出せ、そのため入所料を年同最高二十四万円も引き上げる、国の負担を減らした分は自治体に見てもらえ、自治体が出し惜しみしようと国の関知するところではない、これが政府が現にやろうとしていることであります。
生活保護の場合、事態はさらに深刻かつ重大と言わなければなりません。政府の厳しい受給抑制指導のもとで、東京都板橋区では六十四歳のお年寄りが、日も当たらず、すき間風の吹き抜ける家賃一カ月一万五千円のアパートから、せめてトイレが中にあるところに移りたいと申し出たところ、福祉事務所からは、何をぜいたくな、もっと安いところに移れと強要されたのであります。青森市では、小学校六年生の子供を持つ五十四歳の母親が体を壊して失業したため保護を申請したところ、福祉事務所は、子供が学校で修学旅行のために三年生のときから積み立ててきた三万円の貯金をおろせ、そうしないと認めないと迫ったのであります。母親は泣く泣く指示に従わざるを得ませんでした。総理、この人々の何とも言えない悔しさ、無念さをどう受けとめられますか。恵まれない人々、お年寄り、子供たちを寒空のもとに突き放し、自立自助せよとお説教しても何の解決も得られないのであります。あなたのおっしゃる温かい手とは一体何なのか、伺いたいと思います。
第二の問題は、福祉、教育、地方財政に関する原理原則のじゅうりん、国の責任の放棄であります。
この点で、まず今回の法案の名称そのものが許しがたいと言わなければなりません。補助金といえば事業実施の責任はすべて自治体にあり、国はそれを手助けしてやるだけのように聞こえます。ところが、今回の措置による民生関係国費削減額の実に九割以上、同じく公共事業関係のほとんどが、補助金ではなく地方財政法第十条及び十条の二に列挙された国庫負担金そのものなのであります。
自治大臣、地財法十六条で特別の必要があると認めるときに限り交付するというだけの補助金のカットと、国が進んで経費の全部または一部を負担しなければならない国庫負担金の削減とでは、雲泥の差があるのではありませんか。その一方的カットは国の責任の放棄を意味するのではありませんか。地方自治へのあなたの見識が問われる問題であります。明快な答弁を求めます。
そして総理、あなたは、遵法精神、法秩序の尊厳を説かれるのがお得意であります。施政方針でもこのことを強調されました。そうであるならば、何ゆえにあなたは、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」と明記した地方財政法の原則を平然と無視できるのか。さらにまた、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が」、いいですか、自治体ではなく「国が生活に困窮するすべての国民に対し、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障する」という生活保護法の根本目的を踏みにじることができるのですか。国民には遵法を求めるが、あなた自身は超法規的存在で一切縛られることはないとでもおっしゃるのか、お答えいただきたいのであります。
明らかにしなければならない第三の問題は、この法案と議会制民主主義とのかかわりであります。
国権の最高機関たる国会に対し、行政府がその政策、その提出法案への賛同だけを求め、あまつさえ審議権の制約を図るに至るならば、議会制民主主義が地に落つることは自明であります。五十九本の法律、行革特例法の延長を、個別に数えれば七十五本の法律にわたる、それぞれの制度の基本にかかわる重大な改変を担当外の一委員会の審議だけで一挙に成立させようとするこの法案は、議会制民主主義を敵視する中曽根内閣の姿勢を如実に示すものと言わなければなりません。(拍手)
総理は、かつて通産大臣当時、石炭関係の三本の法案を一本化して提出したために石炭特別委員会で警告決議を受け、御指摘の点は今後十分慎重に対処してまいりたいと頭を下げたことをお忘れではありますまい。当時の反省はどこに消えたのですか。一委員会だけでも問題だったのであります。今回はどうか。本来ならば八つの常任委員会、五つの特別委員会で徹底審議すべきなのです。国会審議は形式的であればあるほどよいとお考えなのか、答弁を求めるものであります。
一年限りの特例と称して議会通過を図っていることも、立法府と国民を愚弄するものであります。総理は、六十一年度以降はまたそのときの情勢でそのときの判断があるでしょうなどと他人事のように無責任な答弁をされておりますが、恒久化しないとなぜはっきり言えないのですか。一年間とは恒久化のための準備期間、世論鎮静期間と受け取っていいのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
最後に、戦後史を振り返るならば、国庫負担金削減が計画されたのは今回が初めてではありません。一九五四年、吉田内閣のもとで自衛隊が発足し、MSA協定を受け入れた年にも、その財源づくりのために生活保護負担の切り下げ案が出されてまいりました。まさに「歴史は繰り返す」であります。しかし、そのときは、全国の自治体、厚生省挙げての反対運動を背に、当時の山県厚相が文字どおり職を賭して抵抗し、ついに制度は守り抜かれたのであります。そして吉田内閣はその年の暮れ退陣に追い込まれました。
今の閣僚諸君にその勇気がないのか。厚生大臣、自治大臣、どうですか。お二人の答弁を要求するとともに、もしもこの法案を強行するようなことがあれば、中曽根内閣もまた吉田内閣と同じ道をたどるであろうことを警告し、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/28
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029・中曽根康弘
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 中島議員にお答えをいたします。
まず、福祉費と軍事費との関係であります。
昭和六十年度予算におきましては、あらゆる分野におきまして経費の節減に努めたところでありますが、福祉予算については、例えば老人や心身障害者に対する福祉施策の充実、保健事業の推進、高齢者の就業機会の確保等につきましてはきめ細かく配慮もし、難病対策等についても充実さしているところであります。防衛予算については、他の施策との調和を図りながら、我が国防衛に必要なぎりぎり最小限の経費を計上した次第です。
次に、地方負担に対する措置の問題であります。
今回の国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加額については、地方交付税、地方債の増額により完全に補てんをしており、地方債の元利償還など後年度の地方財政負担についても、国として必要な措置を講じ、地方行財政の円滑な運営に支障を来さないように対処してまいる所存でおります。
社会的弱者の問題でございますが、生活保護は国民の生存権保障の最後のよりどころとなる重要な福祉行政であります。真に生活に困窮する人に対して必要な保護に欠けることのないように、これまでも国と地方が協力してまいったのであります。しかし、ごく一部の限られた者によるとはいえ、生活保護制度に対する国民の信頼を失わせるような不正受給があることも事実なので、これについては厳正な姿勢で対処する考えであります。
次に、地方財政法二条と国庫補助負担率の問題でございます。
国庫補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加については、先ほど申し上げたように地方交付税の特例措置、建設地方債の増発等で補てんをし、かつ地方公共団体の財政運営に支障が生じないように対処して、地方財政法に違反することはございません。
生活保護につきましても、生活保護法第一条で国の責任を明示していることは当然のことでありますが、それは、生活保護は国と地方公共団体が相協力して行うものでああので、従来から一貫して地方負担も求めてきておるところであります。今回の措置は、地方財政計画により適切に措置をしておりまして、個々の受給者に対する影響はないのであります。中央と地方との負担区分の問題だけであります。したがって、今回の措置は生活保護法第一条に抵触いたしません。誠実に守られております。
次に、一括化の問題でございますが、それは次の点から共通の趣旨、目的を有するからでありまして、それは、国の歳出の縮減に資する措置あるいは財政資金の効率的使用を図るための負担、補助の見直し措置あるいは臨調答申を踏まえた財政上の措置、このように立法趣旨、目的が共通の場合には、各措置を総合的に把握する上でも一括法が審議の便に資すると考えております。国会審議の問題は、もとより国会でお決めいただくことで、政府として国会の審議権は制肘いたしません。
一年限りといたしますというこの点については、六十年度における措置として実施いたしております。六十一年度以降の取り扱いについては、今後所要の検討を行い適切に対処してまいる所存であります。
残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
〔国務大臣古屋亨君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/29
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030・古屋亨
○国務大臣(古屋亨君) 第一に、私に対する御質問の国庫補助負担率の引き下げと地方財政措置についてお答えいたします。
極めて厳しい財政環境のもとで国庫補助負担率の引き下げが行われることになりましたが、これに伴います地方負担の増加額五千八百億円につきましては、昭和六十年度の地方財政対策として、地方交付税の増額一千億円、地方債の増発四千八百億によりまして完全に補てんし、地方団体の財政運営上支障が生じないように対処したところであります。増発される地方債の元利償還など後年度の地方財政負担につきましても、国として必要な財政措置を講じ適切に対処することとしておりまして、私たちは万全の措置を講じたものと考えております。
第二は、国庫補助負担率の見直しと住民福祉の関係でございますが、今回の措置に対しましては、地方交付税の増額措置などによりまして万全の措置を講じたところであり、行政水準への影響を及ぼすことはないと考えております。現在、国、地方を通じて極めて厳しい財政環境下にありますが、これに対しては、まず徹底した行政の刷新と歳出の節減合理化を図る一方、地方団体が多様な行政需要に適切に対応して住民福祉の維持向上を図っていくため、地方税、地方交付税等地方一般財源の充実確保に努め、地方財政基盤の確立を図っていく必要があると考えております。
第三に、国庫負担金の負担率の引き下げについてお答えいたします。
今回の措置につきましては、地方の立場からは、社会保障などの国の基本的責務に基づき地方が事務を分担している分野におきます国庫負担金の負担率の一律カットは受け入れがたいという意見でありましたが、極めて厳しい財政状況下にあることにかんがみ、今回の措置に伴う地方負担の増加につきまして万全の地方財政措置を講じ、地方財政の運営に支障を来さないようにすることを前提として、かつ、昭和六十年度限りの暫定措置として負担率の引き下げを行うとしたものでありまして、社会保障などの国庫負担のあり方につきましては、昭和六十年度において今後の方向を早急に検討することといたしております。
最後に、生活保護は社会保障の根幹をなすものであり、制度のあり方を十分に検討した結果でなければ国と地方の負担割合を変更すべきものではないと考えましたことから、今回の国庫補助率の一律引き下げ問題につきましては、昭和六十年度の予算編成作業のぎりぎりまで平行線で進まざるを得なかったのであります。しかし、極めて厳しい財政状況のもとにおきまして、補助負担率の引き下げに伴う地方負担の増加については万全の地方財政措置を講じますとともに、昭和六十一年度以降の補助負担率のあり方については、社会保障制度のあり方を初め、国と地方の役割分担、費用負担の見直しを行うこととともに、政府部内において今後一年以内に結論を得ることを条件に、一年限りの措置として国庫補助負担率の引き下げを受け入れて協力することとしたものであります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/30
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031・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) 生活保護の補助率についての御質問でありますが、昭和二十九年当時は生活保護法が施行されて間もなくであり、社会保障のもろもろの施策もようやく整備の緒についた段階でありました。そのような状況のもとで補助率を八割から一挙に五割に削減しようとしたものでありました。厚生省としても賛成しがたいという事情にあったと思います。
今回の補助率引き下げ措置は、行革審の意見等を受け、政府全体として高率補助金について行うものでありますが、昭和二十九年当時と比べ、社会福祉施策の拡充強化、国民皆年金及び皆保険の実現等、生活保護を取り巻く社会保障施策の状況も大きく異なってきていること等を考えますと、今回の措置によっても生活保護の適正な実施に支障が生ずるおそれはないものと確信をいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/31
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032・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/32
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033・勝間田清一
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十二分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110205254X01519850320/33
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