1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年十一月二十七日(水曜日)
午前十時四分開議
出席委員
委員長 越智 伊平君
理事 熊谷 弘君 理事 熊川 次男君
理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君
理事 上田 卓三君 理事 沢田 広君
理事 坂口 力君 理事 米沢 隆君
加藤 六月君 金子原二郎君
笹山 登生君 自見庄三郎君
仲村 正治君 野中 広務君
野呂 昭彦君 平沼 赳夫君
平林 鴻三君 藤井 勝志君
宮下 創平君 山岡 謙蔵君
山崎武三郎君 山中 貞則君
山本 幸雄君 伊藤 茂君
川崎 寛治君 戸田 菊雄君
野口 幸一君 藤田 高敏君
武藤 山治君 古川 雅司君
宮地 正介君 正森 成二君
簑輪 幸代君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 竹下 登君
厚 生 大 臣 増岡 博之君
出席政府委員
人事院事務総局
給与局長 鹿兒島重治君
大蔵政務次官 中村正三郎君
大蔵大臣官房審
議官 門田 實君
大蔵省主計局次
長 保田 博君
大蔵省主税局長 水野 勝君
大蔵省理財局長 窪田 弘君
大蔵省理財局た
ばこ塩事業審議
官 松原 幹夫君
国税庁調査査察
部長 日向 隆君
厚生大臣官房審
議官 山内 豊徳君
委員外の出席者
厚生省年金局年
金課長 谷口 正作君
厚生省年金局数
理課長 坪野 剛司君
社会保険庁年金
保険部国民年金
課長 植西 常郎君
社会保険庁年金
保険部業務第一
課長 亀田 克彦君
通商産業省機械
情報産業局産業
機械課長 中田 哲雄君
労働省婦人局婦
人労働課長 藤井紀代子君
大蔵委員会調査
室長 矢島錦一郎君
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委員の異動
十一月二十七日
辞任 補欠選任
大島 理森君 平林 鴻三君
中川 昭一君 野呂 昭彦君
額賀福志郎君 仲村 正治君
同日
辞任 補欠選任
仲村 正治君 額賀福志郎君
野呂 昭彦君 中川 昭一君
平林 鴻三君 大島 理森君
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十一月二十七日
関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法
律案(内閣提出、第百二回国会閣法第八一号)
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001・越智伊平
○越智委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簑輪幸代君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/1
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002・簑輪幸代
○簑輪委員 共済年金についてお尋ねするわけですけれども、共済年金の仕組みの中で基礎年金制度ということが位置づけられております。ここで四十年間保険料を払い、四十年後に五万円の基礎年金を受け取るという仕組みになっているわけですけれども、五万円の基礎年金というのは一体どういう根拠に基づいてこんな数字が出てきたのか、どんな暮らしを予定しているのか。まず最初にこの五万円の基礎年金ということの中身についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/2
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003・谷口正作
○谷口説明員 基礎年金の五万円の水準についてのお尋ねでございます。
基礎年金につきましては基本的な考え方といたしまして、老後生活の基礎的な部分を保障するという考え方に立っております。その場合に、私どもといたしましては高齢者の現実の生計費等を総合的に勘案いたしまして月額五万円、御夫婦で月額十万円という水準を設定いたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/3
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004・簑輪幸代
○簑輪委員 その基礎的な部分というのがさっぱりわからないのですけれども、どんな生活を予定し、その生活の中で例えば衣食住というのはどういうふうに位置づけられているのか、これを御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/4
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005・谷口正作
○谷口説明員 基礎年金の保障する老後生活の基礎的部分としてどんなものを考えているかという御質問でございます。
基礎的部分を考える際に、私どもとしましては、まず六十五歳以上の高齢者で単身者の方々の月々の消費支出がどれくらいになっているかということを毎年総理府、今は総務庁で行っております全国の消費実態調査をもとにして調べたわけでございます。その場合、基礎的部分といたしましては六十五歳以上のそういった高齢者の方々の食料費あるいは住居費、被服費等の実態を踏まえまして、その中にはほかにも雑費というものがあるわけでございますけれども雑費を除きまして、大きくいいまして衣食住と申しますか、食料費、住居費、被服費等の実態を踏まえるなどいたしまして五万円の水準を設定いたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/5
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006・簑輪幸代
○簑輪委員 ただいまの御説明は考え方をおっしゃったわけですけれども、五万円の中で衣食住というのは大体どんなふうに考えているのか、金額的にもし言えればお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/6
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007・山内豊徳
○山内政府委員 基礎年金の五万円を私どもが設定します考え方は今、年金課長が申し上げたとおりでございます。そのことと、公的年金である基礎年金の水準の五万円というものが何を意味するかということにつきましては、高齢者の生活実態の中からそういう部分を念頭に置けば、年金給付額として五万円という額に意味があるということでつくったのでございます。それがかつてのマーケットバスケットで積み上げました生活保護基準のように、では五万円の中の幾らの部分が住宅費で幾らの部分が光熱費であるかというそういう積み上げた数字との関係は、やはり極めて一般化された形で年金水準を決めておりますので、単身五万円、夫婦十万円の中で年金の使い方として住宅費は幾らになるということを割り出したものは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/7
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008・簑輪幸代
○簑輪委員 実際の生活というのを考えてみますと、やはり住まいに幾ら、食生活に幾ら、衣服に幾らということになるわけですね。さっきおっしゃったように実態調査を踏まえてということであるならば、その調査の中では衣食住というのが数字で出てくるはずのように思うのです。だったらその結果だけでも、衣食住がどんなふうになっているのかお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/8
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009・山内豊徳
○山内政府委員 御指摘の意味が五十四年度の全国消費実態調査で具体的な数字としてどういう数字がそれに該当しているかということで申し上げますと、食料費が一万九千円、住居費が一万一千円、光熱費が三千七百円、被服費が六千七百円。これがその時点での価格でございますが、私どもは五十九年度価格としての五万円を設定しましたので、今申しました数字の総体に一・一七といういわば実質価格の伸び率を掛けたものが一応四万七千円余りになったということで積み上げたわけでございます。もとになった数字では、今申しました数字の割合で実態調査の数字は出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/9
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010・簑輪幸代
○簑輪委員 現実に六十五歳を過ぎたいわゆる高齢世帯の人たちが一体どんな暮らしぶりをしているのかというのは、例えば総理府の住宅統計調査などから見てみるとある程度のことがわかると思うのですね。
六十五歳以上の単身世帯九十八万六千世帯のうち、年収百万円以下の者六二%、百五十万未満の者が二〇%。圧倒的に多くの人が月々十二万円以下で生活しているということになります。このうち、持ち家のある人が六四%、家はあるけれども年収百万円以下という人が六一%、百五十万円以下と合わせて七九・七%、借家住まいの人は三六%、家賃を払いながら百万円以下で月々八万円以下という人が六四%、百五十万円以下という人も入れると、何と八二・四%に達するという状況です。
さらに、六十五歳以上の夫婦の世帯を見てみますと、百四十六万八千世帯のうち、年収百万以下が二二%、二百万以下を合わせると五五・七%。夫婦世帯で持ち家のある人は七八・五%、このうち百万以下が二一%、二百万以下を合わせると五二・五%、借家住まいが二〇・二%。百万円以下で家賃を払っている人が二五・二%、二百万円以下を合わせると、家賃を払っている人六七・四%という状況になります。
つまり、六十五歳以上の高齢者世帯の二八%、四分の一を超えるお年寄りが借家住まいであるという実態です。そのうちの四四・六%、およそ半分に近い人が八万円以下の月収から家賃を払っているという状況ですが、こういう実態について厚生省は十分御承知の上、このような基礎年金の額をお定めになったと伺ってよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/10
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011・山内豊徳
○山内政府委員 今申しましたように、全国消費実態調査の中では住居費が一定の割合を占めている数字を使ったということからも、一応そういう生活をなさっていらっしゃる方を含めた高齢者の生活実態を念頭に置いて決めたということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/11
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012・簑輪幸代
○簑輪委員 高齢者世帯全体を平均化して物を見るということが、基礎年金最低生活保障という考え方を基準にしてみますと、必ずしも適切でないというふうに私は思うわけですね。低所得の高齢者世帯が老後を安心して暮らせるかどうかという観点で考えてみなければならないというふうに思うわけです。
他方、現役世帯、一般世帯を見てみますと、年収百万円以下の持ち家取得率は四七・九%、百五十万円以下で四六・四%、二百万円以下で四九・二%、半数以上の人が家を取得することすらできないという状況です。ところが、年収五百万を超えますと七三%から九〇%の人が持ち家を取得しているという状況です。現役の三七%が借家住まいで、年収は二百五十万円以下。実際、貧しい生活になればなるほど老後も、現役で貧しい状態である場合は老後も百万円以下あるいは二百万円以下という貧しい収入の中から家賃も払っていかなければならないという実態が出てきているわけです。収入階級別の持ち家、賃貸状況は大体所得に比例していくということになります。
ところが、住居費というふうに見てみますと、総理府の社会保障統計年報によれば、低所得者も高額所得者も一万円から一万三千円程度の負担ということで、実質的に見れば逆累進の形になっているのではないでしょうか。こういうふうに見てみますと、実際家がなくて老後を迎え、そして家賃を払わなければならないという世帯、一方、所得額に比して老後の消費部分での住居費というのはほとんど変わらないという実態から見ますと、低所得者における老後の生活というのを考えるときに、この低所得者層への過重な負担、老後生活の基礎的な部分を保障するというような役割を今回の基礎年金制度が必ずしも果たすという制度になっていないのではないかというふうに思われますけれども、この点、厚生省どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/12
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013・山内豊徳
○山内政府委員 現実に老後生活を営んでいらっしゃる方の住宅の、特に持ち家状況、あるいは住宅の費用をどういう負担をなさっていらっしゃるかということは、確かに老後の社会保障を考える大きな課題であると思います。ただ、基礎年金に私どもが老後生活の基礎的な部分を設定した中には、先ほど申し上げたことを繰り返すようでございますが、平均的な姿での住居費も含み得る額として五万円を設定しておるわけでございますので、この五万円という基礎年金の額の設定が全然住宅問題を頭に置かなかった額ではないというふうに御理解をいただきたいと思います。もちろん、老後における住宅問題、これは現役を含めてになろうかと思いますが、住宅政策の観点からどのような政策をこれからも考えていかなければならないかという、そういう別の課題は当然あろうかと思うのでございますが、五万円の設定に当たって、住宅費についても平均的な形、定型的な形では含み得るものを設定したのが私どもの考え方でございます。
〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/13
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014・簑輪幸代
○簑輪委員 大蔵大臣にもお伺いしたいと思うのですけれども、我が国の年金水準は世界的水準に達し、遜色のない程度であるというふうにも総理大臣などもおっしゃっておられるようですが、私は到底そんな実態でないというふうに思います。
一方、欧米の実態を見てみますと、年金生活者、高齢者というのを、障害者のグループといいますか、同じような対象として一つの概念でとらえていく、そういう中で特に住宅政策という面でも積極的な施策がいろいろとられているようです。
国際社会福祉比較研究会の報告を見てみますと、欧米のほとんどの国々で老人に対する税の減免が実施されておりますし、イギリス、フランスでは関係の固定資産税を免除しているということも言われております。特にイギリスでは、公共賃貸住宅の新規建設に当たって事実上三分の一を老人専用アパートにするとか、車いすで出入りできる玄関、浴室、トイレ、寝室を備えた一般公営住宅としてのモビリティーハウジング規定や、またスウェーデンのように建築法の中に身体障害を持つ人々を配慮することを義務づけるなど、高齢化社会への対応としてケアつき住宅の建設が進められているようです。
同時に、欧米諸国では低所得者のための家賃補助制度が広く普及されておりまして、人口五、六千万のそれぞれの国々で高齢化の中で十分その対策がとられているという状況から見まして、我が国は世界の十分の一の生産力を持ち、年金生活者の最低保障ができないというような状況では絶対ないと思われます。住宅減税とか、それから老人世帯の固定資産税の免除とか、家賃補助制度とか、それから今申し上げましたような高齢化社会に適応した積極的な住宅政策のための予算、年金財源の福祉活用というような部分など、総合的に高齢化社会に向かっての検討というのを行うべきではないかというふうに思うのです。
諸外国でとられておりますこういうさまざまな制度等も勘案しながら、大蔵大臣としては、こういう住宅問題に関連してり施策として、我が国の今後あるべき姿をどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/14
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015・竹下登
○竹下国務大臣 急速にやってくる高齢化社会、そこで高齢化社会問題を総合的に勉強する、これは私も賛成です。ただ、住宅問題を中心にしての考え方ということになりますと、私の担当でいえば住宅税制、あるいは建設省の住宅政策の中で今まで割り増し融資でございますとかそんな措置を行っておりますが、何分国土狭隘にして人口の多い国でございますから、よくやられておる欧米の住宅政策がそのまま持ってこれない環境にはあるんじゃないかな。専門家ではございませんので、十分勉強さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/15
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016・簑輪幸代
○簑輪委員 老後の住宅問題をも考えてみた場合に、基礎年金五万円というのは必ずしも基礎的部分を保障するということになっていないのではないかということで私最初に申し上げたんですけれども、大臣、共済年金の関連でもこういう五万円ということが基礎年金になっているわけですけれども、この五万円で老後の住宅問題をも含めた基礎的保障というふうになるのかどうか。大蔵大臣としてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/16
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017・竹下登
○竹下国務大臣 妥当なところではないかな。基本的な議論をいたしますと、国年、厚年のときにも議論がありましたように、生活保護政策とどういうふうな位置づけをするかということになると、また別の角度から議論しなきゃならぬわけですが、今の場合、生活保護、住宅扶助も含めて、それはそれとしての制度がここにあって、そして一方国民共通の基礎年金ということになると、私も計算の基礎を知っておるわけじゃございませんが、五万円よりは五万五千円がいいという方ももちろんいらっしゃいますけれども、まずは適当なところではなかろうかな、こんな感じで受けとめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/17
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018・簑輪幸代
○簑輪委員 私がさっきから申し上げておりますように、一番肝心なのは、低所得者ということで本当に年金を当てにしながら老後を計画している人たちにとって、この五万円というのはまことに心もとないものではないかというふうに言いたいわけですね。
厚生省にお伺いしますけれども、厚生省の吉原年金局長がある対談で、年金の問題での対談ですけれども、年をとってもテニスぐらいできる、ゴルフぐらいできる、旅行ぐらいできる、たまには外国にも行けるという老後でないとつまらないでしょうねというようなことを述べておられるわけですけれども、そういうふうになれば非常に結構ですが、この五万円の基礎年金でたまには外国にも行けるというような水準になるものかどうか。厚生省としてはどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。もちろん吉原年金局長ではありませんので、審議官のお考えで結構ですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/18
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019・山内豊徳
○山内政府委員 私、直接の上司でもございます吉原局長がどういう席で申し上げたか、そのこと自身は存じ上げませんでしたが、そういう気持ちでいるであろうことは、ある意味では私も同じ気持ちでございますのでよく理解できるわけでございます。
ただ、ここで先生とそういうことを議論するために申し上げるわけではございませんが、やはり今までのお話と、もう一つ考えなければいけないのは、その五万円という基礎年金を支える費用負担面での国民の受け取り方という問題もあるわけでございます。私自身、自分の身内にあります年寄りにできるだけ幸せで豊かな生活をしてもらいたいと思うわけでございますが、同時にまた、私が自分の年寄りに仕送りするとなりますと非常に負担を感じる面もございますので、そういうことも総合勘案してやはり公的な制度をつくっていかなきゃならぬじゃないかという感想を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/19
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020・簑輪幸代
○簑輪委員 大蔵大臣は、この五万円でたまには外国にも行けるというような水準だというふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/20
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021・竹下登
○竹下国務大臣 私は田舎者でございますので、年をとったらできるだけ田舎の静かなところで平和に暮らして、余り外国なんかへ恐ろしくて行けないような気がいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/21
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022・簑輪幸代
○簑輪委員 大蔵大臣は数え切れないほど外国にお出かけになって、老後ほどこか田舎で畑でも耕したいと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、圧倒的多数の国民は大臣と同じ気持ちじゃないんですね。むしろ、大変苦労して仕事をし、それこそ実りの老後を迎えて、たまには外国にも行けたらすばらしいなと願っているわけです。そういう点から見て私は、この基礎年金では外国旅行の夢を見ることさえなかなか難しいのではないかというふうに思うのですが、そこら辺のところをやっぱり大臣がきちっと受けとめて政治をやっていただかないと、自分は外国へ行きたくないんだというふうな御答弁はいささか適切な答弁ではないと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/22
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023・竹下登
○竹下国務大臣 素朴な感じを私は述べたわけでございまして、いささか主観に過ぎた感がありますとすれば、適切ではないということはそのままちょうだいして結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/23
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024・簑輪幸代
○簑輪委員 年金の制度はどうあるべきかということは、ただいま厚生省からも答弁がありましたように、給付の面だけでなく負担の面もあわせて考えなければならないというようなことが言われたわけです。負担の方も、社会保険の仕組みから考えた場合にどうあるべきかということは当然十分な検討をしなければならないことだというふうに思うわけです。で、現在のままの給付水準を維持していくということになると、将来、負担はたえがたいものになるんだということが言われて、それでたえられる限界というようなものも考えながら改正を行うという方向も示されておりますけれども、今回の改正を見てみますと、頂担が千分の三百近い水準になることが予定されております。このような水準というのは負担の限界として果たしてどうなのか。政府はサラリーマンの年金保険料の負担についてその限界はどれぐらいの水準だと考えているのか、そしてその根拠は一体何なのか。そのことを大蔵省、厚生省にお伺いしたいと思います。
〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/24
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025・山内豊徳
○山内政府委員 今先生お話のございましたように、厚生年金の場合について申し上げますと、現在の制度をそのまま維持し続けますと将来的にピーク時には実は千分の三百八十八くらいの負担にならざるを得ない、そういう見通しが持たれたところから、ある意味では今回改正の一つの問題意識が始まったわけでございます。その結果、厚生年金の場合で申し上げますと、改正させていただきました新しい厚生年金の水準で考えますと、今お話があったように、ピーク時にたしか千分の二百八十九、三百近い数字になるわけでございます。
御案内のように、この十月から千分の百二十四という負担でいるわけでございますが、それが新しい改正後の姿で倍率にして二倍以上になるということではございますが、私ども今回の改正を設計します段階では、三倍以上になる千分の三百八十八ではとてももてない、であるとすればどのような手だてがあるかということで、先ほど来御議論のありましたような基礎年金の水準も設定しあるいは経過措置なども勘案して、ぎりぎり千分の二百八十九というものを私ども一応対外的にも見通しの数字としてお示ししているわけでございます。
これが厳密な意味で昭和八十年なり九十年時点におけるサラリーマンのある理論値としての限界内であるかどうかということを議論するについては、私どもまだ将来のことについて見通し切れない面が幾つかございますが、やはり現在の二倍強というあたりが一つのぎりぎりの選択の限界ではなかろうかという考えで全体を設計したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/25
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026・門田實
○門田政府委員 大蔵省の方からお答えいたします。
お話のように、今回の改正では給付と負担のバランスということを重視いたしまして、特にこの公的年金は世代間の助け合いでございますから、現役世代の負担の今後の増大を考えて給付水準と負担水準を考えていく、こういう立場に立ったわけでございます。
お尋ねの保険料負担の限界をどう考えるかということでございますが、これを考えます場合には、一人の組合員というか被保険者には、毎月、所得税あるいは住民税等がかかります。それから医療保険、健康保険といいますか、共済でいいますと短期の掛金ということになりますが、それに合わせてこの年金についての長期掛金負担、こういうものを総合的にとらえまして負担の限度というものを考えていかなくてはならない、こういうふうに考えます。
したがいまして、年金だけでは、どういう水準までならいい、どういう水準を超えますといけないというものが一義的には出てこないのではないかというふうに考えます。今回の改正案でお示ししております千分の二百九十六とかいうのはかなり高い水準でございまして、仮に支給年齢を六十五歳といたしますと千分の二百四十六という数字が私どもの方では出ておりますが、この辺の負担がかなり高い負担として今後意識されなければならない、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/26
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027・簑輪幸代
○簑輪委員 厚生省の方のお話では、千分の二百八十九が高い数値として予定されている。それから大蔵省の方は千分の二百九十六ということで、いずれも千分の三百近いところにいくわけですけれども、そうしますと、大体この三百くらいが限界じゃないかなと思って、そこら辺に抑えられたような感じがしないでもないのです。
一方、大蔵省の元の共済課長は、社会保険料の負担というのは千分の二百以内、千分の二百五十まで考えるとしても、できれば二百以内に抑えるのが望ましいという見解を発表されたやに聞いておりますけれども、これとの関係で厚生省、大蔵省、それぞれどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/27
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028・門田實
○門田政府委員 私どものかっての共済課長がどこかの講演か何かでお話ししたことでございましょうか、そういうことを以前にも指摘を受けたことがございます。そのときの事情を私は詳しくは存じませんが、千分の二百といいますのは、これは労使合わせて千分の二百ですから、組合員にとりましては千分の百、つまり月収の一〇%という一つのめどになる負担水準であるということ。
それから、千分の二百五十といいますのは、当時西ドイツ等におきまして、年金保険の負担率を日本のベースに引き直して算定してみますと非常に高くて、既に千分の二百五十くらいに到達しておる、こういう実態が一つありまして、そのことを念頭に置いてそういう数字も出たのではないか、こういうふうに推測いたしますが、いずれにいたしましても、そういった水準あるいはそういった水準からさらにその先ということになりますと、これはかなり高い負担水準である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/28
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029・山内豊徳
○山内政府委員 今御指摘の野尻氏の論文については、実は私ども正確に勉強していない点がございますが、先ほど申し上げましたのは、千分の二百八十九は、非常に胸を張って、もう大丈夫、限界内でございますと申し上げたつもりではございませんで、かなり厳しい限界をお示しした数字でございます。
例えば、今大蔵省の御答弁の中にもあったかと思いますが、現在の西ドイツあたりでも、厚生年金の標準報酬的に計算してみますとたしか労使折半で千分の二百五十近い実態にはなっているわけでございます。そんなことを考えますと、先ほど来お話に出ております今後の高齢化の進み方というものがこういう負担をもたらさざるを得ないように思っているという点で、私どもも引き続きその厳しさをどうやって打開していくかということにこれからの社会保障全体の問題があるような気がしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/29
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030・簑輪幸代
○簑輪委員 西ドイツの数字を基準にして二百五十くらいということのようですけれども、それを超えて三百になんなんとするという状況を招こうという法改正になるわけですが、そういう場合、本当にサラリーマンの限界内にあるのか、あるいは果たして限界をもう超えてたえがたいものであるということではないのかというあたりは、将来を考えるに当たって大丈夫と言わない限り、これを押しつけることはできないと思うのです。したがって、こういうふうに数字を出してこられたという以上はこれは限界内であるとお考えのように思いますけれども、しかし、実際生活しているサラリーマンの実感からいえばこれは限界をはるかに超えていると言わざるを得ないと思うのです。
サラリーマンの収入に占める年金保険料の負担割合というのがこれまでどのように推移してきたのかということを、年を追って数字をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/30
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031・谷口正作
○谷口説明員 お答え申し上げます。
外国と日本における労働者の賃金に占める年金保険料の割合の推移についてのお尋ねでございますが、まず日本につきましては、昭和五十年の時点で三・八〇%でございましたが、七六年、昭和五十一年に四・五五となりまして、昭和五十五年五・三〇、そしてことしの昭和六十年十月から六・二〇という状況になってございます。
それから次は、アメリカについて申し上げますと、昭和五十年、一九七五年四・九五からずっと逓憎いたしまして、昭和六十年、一九八五年においては五・七〇という状況になっております。イギリスにつきまして同じ時点で申し上げまして、昭和五十年、一九七五年におきまして五・五〇、逓憎いたしてまいりまして、現時点、昭和六十年、一九八五年におきましては九・〇%という状況になっております。西ドイツにおきましては、昭和五十年、一九七五年に九・〇、逓増してまいりまして、現時点、昭和六十年の六月からは九・六〇という状況になっております。フランスにおきましては、昭和五十年、一九七五年が三・〇%、逓増してまいりまして、昭和六十年、一九八五年現時点におきましては五・七。スウェーデンにつきましては、本人負担はないという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/31
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032・簑輪幸代
○簑輪委員 この十年間の推移を見て、それぞれの国がその負担をふやしてきているということが言えると思いますけれども、我が国の場合、特に五十年三・八〇から六十年六・二〇というふうにふえてきて、その上、これからさらにまた飛躍的にふえていくという状況を考えますときに、サラリーマンの実感というのは、年金保険料というのが本当に生活を圧迫する程度になってきているというふうに言わざるを得ないというふうに私は思うのですね。一方、年金の場合事業主負担というのがあるわけですけれども、我が国の事業主負担、年金保険料負担が保険財政に占める割合、わかりましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/32
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033・山内豊徳
○山内政府委員 主要先進国の社会保障の財源の中での本人負担の割合と事業主負担の割合でございますが、ILOの資料で申し上げますと、アメリカが一九六〇年で本人負担が二一・八%、事業主負担が三四・九%でございます。これは、一九八〇年になりますと本人負担が同じように二一・八で事業主負担が三七・六という統計になっております。それから、イギリスを申し上げますと、一九六〇年に本人負担が一九・一、事業主負担が一七・三でございましたが、一九七九年になりますと本人負担が一五・八、事業主負担が二六・丑となっております。それから西ドイツを申し上げますと、同じく一九六〇年に本人負担が二五・九、事業主負担が四四・四、一九八〇年になりますと本人負担が三三・八で事業主負担が三四・一となっておるわけでございます。
これは、今申し上げましたように社会保障全体でございますので、年金だけではなくて社会保障費用の財源の中での本人負担、事業主負担の割合でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/33
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034・簑輪幸代
○簑輪委員 我が国の場合はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/34
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035・山内豊徳
○山内政府委員 我が国につきまして、今と同じ年次の一九六〇年、昭和三十五年をとりますと、本人負担が二五・八、事業主負担が四二・〇という数字になります。これが一九八〇年、昭和五十五年になりますと、本人負担が二五・五、事業主負担が二七・九という数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/35
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036・簑輪幸代
○簑輪委員 この数字を見てみますと、日本の場合は一九六〇年には事業主負担の割合が多かったのですけれども、一九八〇年になりますと事業主負担は割合としてぐんと低下してきているという数字があらわれているわけですね。
それで、もう一つ別の観点から見てみますと、資本金の規模別で社会保険科の負担割合が一体どうなっているのか、これがわかりましたら、ちょっと教えてほしいのですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/36
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037・山内豊徳
○山内政府委員 今のお尋ねは事業規模別の社会保障費用の事業主負担の実態でございますが、ちょっと私ども手元の資料では持ち合わせがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/37
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038・簑輪幸代
○簑輪委員 それでは、これは改めて、いただければお願いしたいと思いますが、よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/38
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039・山内豊徳
○山内政府委員 もしそのような計数がとれるものでございましたら、御説明に上がりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/39
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040・簑輪幸代
○簑輪委員 これはもう既に公表されている資料があると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。
私が調べただけで、ちょっと正確な数字手元にございませんけれども、資本金の規模別で社会保険料負担割合を調べてみますと、資本金の金額が多くなるにつれて売り上げに占める保険料の割合というのが下がっていくという状況を示しているわけです。先ほどの数字が、この二十年間で事業主負担の割合が減ってきているということと、さらに企業の規模が大きくなるに従ってその保険料負担の割合が下がっていくというようなことをあわせ考えてみますと、従来とは違う新たな対策をとる必要があるのではないかというふうに思わざるを得ません。
一方、事業主負担というのは労働者の数と賃金で決まってきますけれども、例えばロボットを導入すると人員削減をもたらし、それで年金の保険料負担が減ることになるように思うわけですね。
ロボットの実態というのをちょっと見てみたいと思いますが、我が国がロボットを導入し、そして今日に至るまでどのような推移をしてきたのか。そして将来ロボットはどういうふうにふえていくのか。我が国は世界一のロボット普及国だと言われておりますけれども、このロボット台数について教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/40
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041・中田哲雄
○中田説明員 ロボットの導入に関します公式の統計はございませんけれども、工業会の統計によりますと、生産台数は昭和五十年当時四千四百台、それから五年刻みで申し上げますと、五十五年には一万九千九百台、この間四・五倍になっているわけでございます。それから昨年が四万一千六百台、ことしは、これは予想でございますが五万台程度。仮に五万台といたしますと、五十五年当時に比べまして約二・五倍くらいになるわけでございます。
将来の見通しは、確たるものはございませんが、設置台数は伸びは鈍化すると思いますが、台数ベースでは着実に増加すると考えております。
また、これまでは製造業中心でございますが、今後の技術開発によりまして、医療、福祉分野でございますとか海洋開発でございますとか、こういう非製造業分野でも普及していくのではないかというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/41
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042・簑輪幸代
○簑輪委員 ロボットの生産台数、累積で言いますと何か一九八三年に十五万四千百台という統計が出ておりますけれども、これは間違いないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/42
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043・中田哲雄
○中田説明員 設置台数についても統計がないわけでございますが、生産台数の合計から輸出を引きますと御指摘の数字になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/43
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044・簑輪幸代
○簑輪委員 このロボットの普及というのは我が国だけではございませんで、諸外国でもロボットは普及しているわけですけれども、先進諸国におけるロボットの成長率といいますか、ふえていく割合というのはどんなものなのか。過去五年間でどんなふうに推移し、今後さらにどんなふうにふえていくと見ておられるのか、通産省のお考えをお聞かせください。
〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/44
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045・中田哲雄
○中田説明員 ロボットの定義が国際的に統一されておりませんでなかなか比較が困難でございますが、一昨年の五月に公表されましたOECDの世界各国のロボット普及台数の推計によりますと、先進諸国でも相当急速な勢いでロボットが普及しているわけでございます。
一九八二年の数字が、全世界で三万一千台となっておりますが、特に一九八一年—八二年の設置台数の伸びを見ますと、米国が三九%、それから西ドイツが五二%、イタリアが五六%、英国が六二%といったことで、欧州諸国においても米国においても相当高い伸びが示されております。今後もこのような設置台数の伸びというのは続くだろうと思いますが、相当数の設置台数に達しますと、やはり伸び自体は鈍化してくるのではないかというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/45
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046・簑輪幸代
○簑輪委員 我が国の伸び率もほぼ同じようなものと受けとめてよろしいのでしょうか。あるいはちょっと異なる特徴がありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/46
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047・中田哲雄
○中田説明員 設置台数が少ない時代には我が国も非常に高い伸びでございますが、当初よりはやや鈍化してきておるという状況でございます。ただ、大勢的には世界の趨勢と同様というふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/47
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048・簑輪幸代
○簑輪委員 ロボットが導入されて省力化が図られるということになりますと、その公労働者の数にも影響してくると見られるわけで、年金の計画を立てる場合にもこれを十分勘案しなければならないと思うのです。
厚生省にお伺いしますけれども、こうしたロボット問題などについても御検討の上で法案が出されたと受けとめてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/48
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049・山内豊徳
○山内政府委員 先生のおっしゃる意味は、恐らく過般の年金改正に当たりまして従業員と同じように位置づけるような形での保険料問題が導入できないかと検討したかどうかという意味だと思いますが、具体的な検討はいたしておりません。
ただ、御案内と思いますが、過般の国会におきましてこの問題がかなり議論になりまして、その段階で厚生省はいろいろなお考えを申し上げたところでございますが、改正を計画します段階でこのロボット問題を大きな検討課題としたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/49
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050・簑輪幸代
○簑輪委員 やはりそういうものも十分踏まえて計画を立てなければ適切なものとは言えないのじゃないかと私は指摘しておきたいと思います。
一方、我が国の一部上場企業の一社当たり従業員数の変化を見てみますと、これはかなり減少してきていると言わざるを得ないですね。昭和五十年、一社当たり四千三百十二人でしたけれども、昭和五十九年度を見てみますと一社当たり三千七百四十六人。五十九年度の一部上場企業の数が九百八十六社ですから、この減少分を九百八十六社に掛けますと何と合計五十五万八千七十六人、一部上場企業ではこれだけ人数が減っている、労働者の数、従業員の数が減っているということになるわけですね。これは非常に重要なファクターではないかと私は思うわけです。
このようなさまざまな観点から見てみますと、産業構造の変化というものは無視できないものだと思います。従来の労使折半という負担割合は、こうした実態から見ますと必ずしも今日の事態にマッチしなくなってきているのではないか。そこで、使用者負担の割合について見直す必要があるのではないかと指摘したいと思います。
最初に申し上げましたように、労働者の方は急速に収入における保険料負担が過酷なまでに伸びていく、そして一方では企業の負担が減少してきている。これを解決していくためには、労使折半ではなくて、労使三対七にするなど負担割合を変えていくことによってこの矛盾を解決することができるのではないかと思います。そうした事態を解決する一つの方法として修正保険料というような考え方をとっている国もあるやに聞いておりますけれども、その国の実態がおわかりでしたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/50
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051・山内豊徳
○山内政府委員 先生の御質問に当たるものとして、フィンランドの年金制度に関するものがあるのではないかと理解しております。フィンランドの場合は、全国民を対象とします一律定率給付の国民年金がありまして、その財源として、使用者に対して課する場合に資本額に応じた費用負担を課しておるということでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、事業主側には支払い賃金のあるパーセントで費用を負担させておるわけでございますが、その率の決め方として、資本額によって階段をつけているということのようでございます。私どもが入手しました資料では、具体的に一番低い方で四・六%、高い場合で五・六%でございますから、千分の十の差をつけているわけでございます。
そのことがロボットの導入を主たる理由とする制度であるかどうかについて私ども十分な調査をし切れておりませんが、支払い賃金に対する率ではあるけれども、資本額の規模によって差をつけているフィンランドの仕組みを、先生のおっしゃる意味で一つの例として私どもは理解しておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/51
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052・簑輪幸代
○簑輪委員 フィンランドがどうしてこのような制度を採用したのかという理由はわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/52
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053・山内豊徳
○山内政府委員 まことに申しわけございませんが、正確な意味での勉強をしておりませんのでお答えができないわけでございます。ただ、一日だけつけ加えさせていただきますと、これは税方式に近い考え方ではなかろうかと私ども理解しておりますが、さらに勉強させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/53
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054・簑輪幸代
○簑輪委員 こういう考え方で修正保険料という仕組みを採用している国もあるわけで、私がただいま申し上げましたように労働者の負担、事業主の負担、それぞれが矛盾を抱えてきている今日、こういう方法を我が国でも検討してもよろしいのではないかと考えますけれども、厚生省としては、こういう問題点、労使の負担割合を変えるあるいは修正保険料という制度を考えてみるというようなことは検討されたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/54
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055・山内豊徳
○山内政府委員 私ども、今回の年金改正以前の改正の時期からこの問題が国会等を通じまして議論になっておることは承知しておりましたが、反面、議論を繰り返していただいておりますが、我が国の社会保険システムの中で労使折半というものが定着しているのではないかということで、最終的にはこれを変えるということを結論づけないで改正案をお願いしたわけでございます。折半を維持した方が妥当ではないかという点のもう一つの理由としましては、中小企業などの事業主の負担能力などを勘案した場合に、新しい負担割合で関係者の合意を得ることができるだろうかという問題とか、十分な資料を入手しておりませんが、高齢化の進んだ欧米の先進国でも、従来三、七のような労使負担割合であったものが実際的には四〇%と六〇%というふうに、その後の一九七〇年代の改正においてやや折半に近い傾向をたどっている国もあるというようなことも一応念頭に置きながら、今回の改正におきましては折半負担を見直すという結論を出さなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/55
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056・簑輪幸代
○簑輪委員 労使折半を引き続き採用するという中で、最近の中小企業の困難な経営実態、そして中小企業が社会保険料負担にこれ以上たえられないというようなことも勘案してというようにもお聞きしましたけれども、中小企業の場合は中小企業にふさわしい制度を考えればよろしいわけで、中小企業の存在が即労使折半割合を変えられないという根拠にはなりがたいと思うのですね。いろいろな仕組みの中で、中小企業の抱えているさまざまな特殊な問題、困難な問題については特別な配慮をするということはやっているわけでございますから、社会保険料負担についても、労使折半を大企業から中小企業、零細企業まで全く同じにしておくということに必ずしも合理的な根拠があるわけではないと思いますが、その辺の配慮を含めての検討はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/56
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057・山内豊徳
○山内政府委員 御指摘の点は、折半を維持するかという問題、資本金規模がよろしいか、設備の規模がよろしいかは別としまして、企業の人の省力の度合いに応じたものが導入できないかという点も含めて検討したかという御質問だと思いますが、端的に申しますと、そのことを具体的な制度の仕組みとして検討したことはございません。ただ、現時点で申し上げますと、我が国の実態としましては、まずそれは租税負担についての議論から、入り口から入る問題ではなかろうか。私ども、もちろん租税問題に対して厚生省として全く無関心であるわけではございませんが、そういう性格の議論があった上で、なおかつ社会保障保険料にもその考えが導入できるかということがその次の議論になるんではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/57
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058・簑輪幸代
○簑輪委員 租税から考えるべきだからということで、社会保険料の方では余り真剣に検討しなかったというようにも受け取れましたけれども、私は、租税は租税でそれは責任ある官庁がそれなりに検討するのは当然でございますが、同時に、社会保険料を所管する主務官庁といいますか厚生省においては、そういう社会保険の事業主負担のあり方という問題について、実態を踏まえその負担割合を変えるというのを当然検討されなければならないし、またその際に、中小企業問題というのをどう配慮していくのか、どういう特別な手だてをとるのかというものも勘案して、総合的に労使折半を変えるべきかあるいは維持すべきかというときにそこまで含めて、そこまで踏み込んできちっと討論されなければ、ただ中小企業を非常に配慮して、そこで労使折半を維持しますみたいな感じに受けとめられるわけですね。ですから、今後のこうした年金が非常に困難な事態を迎えていて、労働者の負担も厳しい、限界を超えるという状況さえ招いている今日、真剣にこの労使負担割合の変更というものを考慮し、あわせてその際中小企業への配慮というものを論議する必要があるというふうに私は強く主張したいと思うのですね。
それで、今後の方向として、そういうのも十分検討に値するというふうにお考えなのか、それとも今後も、例えばさっきおっしゃったように諸外国が逆に労使折半に近いような状況になっているというようなお話からすれば、もう検討の余地はなくて、これが万全の方法でございますと胸を張っておっしゃるのか、それはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/58
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059・山内豊徳
○山内政府委員 私どもは折半という割合、今のような一律の率を企業の規模にかかわらず課するという考え方を、まあ先生おっしゃるように絶対何が何でも守り切るという意味で申し上げてございませんが、やはり高齢化という点においてはかなり先を行っている諸外国で、かつては確かに三、七というような割合が定着しつつあるかに見えたものが、最近ではそうでない動きもある。もちろんその動きは、先ほど申しましたようにせっかくに私どもが考えるような折半論へ近づくかどうかわからない点がございますから断言はいたしませんので、御指摘の点恐縮でございますが、我々の検討課題の一つであるかないかという点であれば、それは先ほど来問題になっております昭和八十年、九十年といった非常に高い負担の時代に年金費用負担をどうするかという大きな問題の一環としては、研究課題の一つになることは当然だろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/59
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060・簑輪幸代
○簑輪委員 年金財政の問題で大変厳しい状況を踏まえて論議をするわけですが、その中で、私どもはやはり基本的に今回の改正案を見ましても国庫負担が大幅に削減されているということが非常に大きな問題点であることを強く指摘しております。
それで、あわせて労使負担割合というものも考え直していかない限り納得のいく年金制度というふうにならないということを重ねて強調し、ぜひともこの負担割合の検討というのを強めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
さて、今回の改正に当たって、婦人の年金権の確立ということが宣伝されておりますけれども、私は全体的に研究しまして、これは到底婦人の年金権を確立したものではないというふうに受けとめております。
さまざまな角度からお尋ねしたいと思いますが、この年金制度というものを考えるに当たって、その前提として想定している状況というのは、一家の夫が主たる生計維持者として働き、妻は仕事を持たずに家庭で子育てをするという前提のもとに構想されているように思われますけれども、従来の年金構想の前提というのは果たしてこういうものであったのかどうか、そして今回の年金改正に当たっても、こういう世帯を想定して年金制度が仕組まれているのかどうか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/60
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061・山内豊徳
○山内政府委員 お尋ねの点は、年金制度あるいは年金改正に対する一つの社会実態の反映をどう行政庁として考えているかという非常に難しい問題でございますが、大きな意味合いからいえば、やはりこれまでの厚生年金の姿の方に、どちらかといえばより多く今おっしゃいましたような男性配偶者が稼ぎ、女性配偶者は家庭にいるという形が典型的にあらわれているのではないかと思います。
ただ、今回の改正におきましてもそういう違った見方でしか制度になっておりませんが、従来までに比べれば、女性配偶者の年金権を確立するという意味ではかなり今までの生活実態の見方と変わった見方の前提に立った改正であると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/61
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062・簑輪幸代
○簑輪委員 社会実態を少し変えてみて、それにふさわしい年金改正をしたというような御答弁のようにも受け取れるのですけれども、何かそうではなくて、社会実態はやはり夫が働き、妻が家庭にいる。しかし今まで無業の妻が離婚したときには無年金になって非常に気の毒であった、したがって、この無業の妻に年金権を保障する、このことによって婦人の年金権が確立されたのだというふうに受けとめられるのですけれども、違うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/62
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063・山内豊徳
○山内政府委員 先ほど、社会実態を変えてと私申し上げたかもしれませんが、そういう意味ではございませんで、社会の実態がどういう生活実態であるかということの、実態の変わり方をどう見ながらという意味で申し上げたつもりでございまか。
なお、二番目にお尋ねの点でございますが、やはり基礎年金を配偶者単位に再編したという意味では、おっしゃるように今回取り入れました手法は、無業の女性配偶者を念頭に置いた再編であることはそのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/63
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064・簑輪幸代
○簑輪委員 そうしますと、やはり相変わらず夫が働き、そして家庭を守るのは妻である、無業の妻があるという前提はほとんど変わらなくて、ただ今まで放置されていた人のところにも先を当て、権利を保障するというようなことになっていると思うのですね。でも今日、家庭の実態も大きく変化しつつあるということは見ていかなければならないと思うのです。
そこで、夫が主たる生計維持者として働き、妻は家で子育てをしながら守るという、そのような世帯というのは今日この日本の世帯の中で一体どれくらいあるものなのかということがわかりましたら教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/64
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065・山内豊徳
○山内政府委員 計数の上での資料を手元に持ち合わせておりませんが、実感としてはかなり共稼ぎの御夫婦の実態が多いということは、身辺の事情としても認識しておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/65
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066・簑輪幸代
○簑輪委員 労働省は、この数字はわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/66
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067・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
五十五年の総務庁の国勢調査によりますと、夫が就業者である普通世帯二千四百二十一万世帯ございますが、そのうち妻が非労働力である世帯は千二百二十万世帯となっております。
また、五十七年の総務庁の就業構造基本調査によりますと、世帯主の配偶者であります女子二千六百二十二万人のうち無業の女子は千三百六万人となっておりまして、先生御指摘の世帯は約千二百万から千三百万程度あると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/67
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068・簑輪幸代
○簑輪委員 そうすると、千二百万から千三百万世帯が全世帯に占める比率は何%ぐらいになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/68
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069・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたけれども、普通世帯二千四百二十一万のうちの千二百万から千三百万程度なので、約半数くらいと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/69
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070・簑輪幸代
○簑輪委員 そうしますと、約半数が、夫が稼ぎ妻は無業でうちにいる。逆に言えば、あと半数はそうではなくて、妻も働き、社会的役割を果たしていると言えるわけですね。そうしますと、そういう世帯が今日半分になってきているということを正しく反映した年金制度でないと、婦人の年金権という点でも到底万全なものとは言えないと思うのです。
今日、ただいまのような数字ですけれども、夫婦共働き世帯が過去から今日までどのようにふえてきたのか、そしてこれから将来はどのようにふえていくと見ているのか、それがわかりましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/70
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071・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
共働き夫婦の割合を、総務庁の就業構造基本調査によりまして、世帯主の配偶者である女子の有業率という形で見ますと、昭和四十年には三八。七%でございました。それが、昭和五十二年には四四・二%、昭和五十七年には五〇・二%と年々増加しておりまして、昭和四十年から五十七年の間に共働き夫婦の割合は一一・五ポイン上局まっておるわけでございます。
今後のことでございますけれども、女子の就業意欲は高まっておりますし、サービス経済化に伴いまして女子に対する需要も増加しておりますので、今後とも共働き夫婦の割合は増加すると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/71
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072・簑輪幸代
○簑輪委員 婦人が働き、役割を果たしていくということは、今後ますます強まっていくわけです。先進諸外国の動向を、もしわかりましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/72
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073・藤井紀代子
○藤井説明員 労働力率という形で申し上げさせていただきたいと思います。
アメリカにつきましては、一九八二年の数字でございますけれども、労働力率が五一・〇%でございます。イギリスは、一九七五年の数字ですが、四二・九でございます。フランスは四二・九。西ドイツが四一・〇。スウェーデンが少し高くて六六・八になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/73
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074・簑輪幸代
○簑輪委員 諸外国でも婦人の果たす役割は大変大きくなってきていますけれども、我が国はことし雇用機会均等法も制定されまして、私どもはこの均等法では真に男女平等の条件が設定されない、実効性が疑わしいということで問題を指摘してまいりましたけれども、本当に男女が募集、採用から定年退職に至るまで平等に職場で働くことができるようになれば、自然の趨勢と労働意欲が高まっているというだけではなくて、このような法律の実効性が発揮されるならば働く婦人は今日よりもさらにふえる、そういう方向も考えられるのではないかと思いますけれども、労働省は、この均等法施行に当たって、どのように今後の状況を見込んでおられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/74
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075・藤井紀代子
○藤井説明員 男女雇用機会均等法は来年の四月一日から施行になるわけでございますけれども、企業の中におきまして婦人が働きやすい環境ができてくるということになりますれば、女子の就業意欲も高いところでございますし、今後とも女子の方が活躍する場はふえてくると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/75
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076・簑輪幸代
○簑輪委員 そういうふうに、さまざまな条件から今日専業主婦を上回る働く婦人の実態から見て、最初に申し上げましたように、年金を考えるに当たって、まず夫が働き妻はうちにいるという前提は当然見直して、夫婦共働きという実態に合わせたような年金制度にしていかなければならないのではないかという検討はされたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/76
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077・山内豊徳
○山内政府委員 先ほど御指摘がございましたように、基礎年金という仕組みによって非常に具体的に年金権と結びつきがはっきりしましたことは、おっしゃるように無業の女性配偶者の扱いでございます。これは端的に申せば、共働き御夫婦の場合は女子の配偶者にもいわば従来的な厚生年金の年金が保障される仕組みになっておりますものですから、やはりどうしても社会保障としての年金の仕組みとしては、そのものから保障が外れる方をまず考えなければならないという手順であったろうと思います。ただ、先生が繰り返しおっしゃっておられますように、世の中の家庭生活といいますか雇用生活の実態がそういうふうに変わっていることは私ども当然念頭にありますし、こういうことを申し上げてはおしかりを受けるかもしれませんが、例えば女子の支給開始年齢の扱いとか女子の掛金率の扱いなどは、端的に申し上げますと女子の労働者が割合としても期間としても長く働いていらっしゃる実態を踏まえた改正でもあったわけでございますので、無業の女性配偶者の扱いだけが我々の大きな年金改正の念頭にしかなかったというわけでないことはぜひ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/77
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078・簑輪幸代
○簑輪委員 無業の妻の問題だけでない、そして女予の年金支給開始年齢や保険料率についても変えていくんだということをおっしゃいましたけれども、これは、働く婦人にとって有利に変えられるというものではないんですね。受給開始年齢はどんどん先に延びる、そして保険料率は今日よりもふえていくということであって、働く婦人にとっては有利にではなくて、逆に不利になっていく、そういう状況を共働きの実態に合わせて改善いたしましたというふうには到底私は受けとめられないと申し上げなければなりません。
それから、専業主婦と言われておりましても、実際にはパートタイムで働くという中で、九十万までであれば税の面でもその他の面でもいろいろな措置があるために、九十万ということを念頭に置きながらパートで働くという主婦も随分いるわけです。一方では無業の妻の基礎年金を保障するために、その保険料は一体どうなっているのかといえば、本人からは一円も取らずに夫の保険料の中に含まれておりますという説明で、実際にはすべての勤労者が負担していくというシステムになっているのが法の内容ですね。私は前の連合審査でもお尋ねしたのですけれども、なぜサラリーマンの無業の妻からは一円も保険料を取らないのか、その合理的根拠をもう一度御説明いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/78
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079・山内豊徳
○山内政府委員 端的に申せば、無業の女性配偶者の場合はみずから支払う現金が用意されてないケースが多いのではないかということでございます。ただ、もちろんそれは世帯としてとらえれば男性配偶者の所得もあるわけでございますから、その中から負担することは現在の任意加入制度でも可能ではございますが、考え方の基礎は、所得の名義にない被保険者については保険料負担を仕組むことは無理ではないかという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/79
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080・簑輪幸代
○簑輪委員 それは、例えば自営業者の奥さんなんかで全く無収入の人の場合は、実際問題として一号被保険者として今後一万三千円の負担を余儀なくされるという状況から考えてみて、決して合理的根拠というふうに私は納得できないのです。
これまで、無業の妻の場合任意加入制度がございました。この任意加入というのは約七割強がしておられたわけで、逆に言いますと、任意加入しなかった無業の妻があるわけですけれども、その人たちは一体なぜ任意加入をしなかったのかということについてちゃんと調査をされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/80
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081・山内豊徳
○山内政府委員 任意加入しておられない配偶者についての調査は、たしか社会保険庁としては持ち合わせがなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/81
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082・簑輪幸代
○簑輪委員 だから、なぜ任意加入しなかったのかということをきちんと調べないと、それまで任意加入していた人をなぜ今度は一円も払わなくていいというシステムにするのかということが合理的に説明がつかないと思うのです。例えば、すごく保険料が高くてとてもじゃないけれども払えなかったのか、あるいはまたこの保険制度ではとても将来十分でないから入ろうとしなかったのか、みずからの意思でやめたのか、保険制度の価値を認めないで加入しなかったのか、それとも本当にお金がなくて保険料負担にたえられなくて払えなかったのか。そこのところをちゃんと調査しないと、無業の妻は所得がないからそこは保険料負担をさせませんというふうには結びつかないのではありませんか。任意加入制度でちゃんと七百万以上の人たちが保険料を払ってきたという実績があるわけですから、そのことから考えてみても、そこの調査をせずにこういうシステムにしたというのはやはり納得できないのですね。必要性が全くないとお考えでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/82
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083・山内豊徳
○山内政府委員 おっしゃるように、そういう調査をして、その結果年金改正の設計について参考になることは確かにあると思うのでございます。ただ、私が先ほど申し上げました今回改正の基本にあるいわゆる三号被保険者の考え方は、一般的な形では確かに七百万の方が任意加入しておられたことは御指摘のとおりでございますが、一般的な形では、そういう方が三号被保険者として当然ある額の保険料を持つことができるという前提で組むことは無理があるという見方には、私どもとしては合理性があると考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/83
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084・簑輪幸代
○簑輪委員 そういう制度を採用するに当たって、その影響を受ける人たちの意見あるいは実態を調査するということをせずに、多分こうであろう、こうしてやれば無業の妻は救われるではないかというような感情論だけで考えるというのはいささか適切を欠くのではないかと私は思います。逆に共働き家庭、それから働く婦人全体がこの無業の妻の基礎年金制度を保障していくために出費をしなければならないということについてのさまざまな意見もあることを考え合わせますと、すべての婦人にふさわしい年金を保障するという点でこのような意見が出てくるような制度をつくるということは問題があったのではないかというふうに指摘せざるを得ないわけです。
さらにまた、無業の妻の年金権を確立したといっても、実際には基礎年金だけであって、離婚をした途端に自分で一万三千円の保険料を払っていかないと、四十年先に五万円もらえないというシステムになっておるわけですね。諸外国ではこういう場合の不合理を解決するために婚姻年齢に相応した年金権を保障するという考え方もあるように聞いておりますが、一体どこの国でどんな制度があるのか、わかりましたらお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/84
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085・山内豊徳
○山内政府委員 申しわけございませんが、先生が今御指摘のような制度があるかないかを含めまして、私どもちょっと手元に資料を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/85
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086・簑輪幸代
○簑輪委員 資料がなければそれを調べて教えていただきたいと思いますけれども、そういう制度をとっている国があるかないかくらいはおわかりでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/86
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087・山内豊徳
○山内政府委員 私の聞き違いがあったかもしれませんが、婚姻期間がどのくらいであったかによって例えば離婚のような際に年金権を保障している国があるかという点であれば、それは幾つかの国でそうした制度を仕組んでいる国があることは承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/87
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088・簑輪幸代
○簑輪委員 中には別れるときに半分の権利を妻が受け取っていくというようなシステムもあるようですけれども、そういう制度をとるのはなぜなのかということも含めて厚生省として御検討になったことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/88
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089・山内豊徳
○山内政府委員 外国の年金制度にそういう例があることを踏まえて内部的な検討をしたことは事実でございますが、それを我が国の年金改正において採用するには至らなかったのもまた実態としては事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/89
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090・簑輪幸代
○簑輪委員 結果として採用されていないことはこの法案を見ればわかるのです。だから、そういう制度をとっている国があるのはそれなりの必要性があり合理性があってやっているわけですし、それを我が国に当てはめて考えた場合にどこがどう適切でないのかということを考えないと、採用しなかったよというだけではちょっと納得しかねるのですけれどもね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/90
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091・山内豊徳
○山内政府委員 この制度を考えました当時の考え方の整理としましては、幾つかの点で直ちにこういう離婚の際の給付を二分するという扱いには踏み切れなかったということを検討しております。
その理由としましては、特に離婚という実態に着目した場合に果たして単純に二分の一ということでいいのか、あるいは婚姻期間中の財産の分与については民法上の仕組みとして個別のケースごとに判断されているという実態もあるのではないかということ、あるいは税の課税なんかにおきましても、我が国の場合は必ずしも婚姻期間中の所得を名義のいかんを問わず二分するというふうに扱われていない、そういうことを勘案しまして、そういった外国に例のある離婚の際の年金給付を二分するという扱いを採用しなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/91
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092・簑輪幸代
○簑輪委員 離婚をした後に一応基礎年金は保障しましたという形になるようですけれども、それだけでは不十分ではないかということで今後の検討の対象に当然なるのではないかと私は思います。今おっしゃったように、これはこれで解決済み、今後はもう検討する必要もないというふうにお考えではないでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/92
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093・山内豊徳
○山内政府委員 この点は絶対に考えてはならないこととは思いませんが、今回の基礎年金の導入ということで、先生の御指摘もありますけれども無業の女性配偶者の年金権を保障する仕組みを仕組んだわけでございまして、これ自身がこれからかなり時間をかけて施行しなければいかぬ点でございますので、それを基本的に変えて離婚時の年金額二分制を採用するということは、研究課題とは申し上げたいと思いますけれども、具体的なスケジュールにおいて検討してみたいと言うことはちょっとできかねるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/93
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094・簑輪幸代
○簑輪委員 やはり、社会の実態が変化するに従って検討課題というのはさまざま出てくるというふうに思います。私が今指摘した問題点は、婦人の中でも、無業の妻が家庭において貢献した部分というのは離婚してしまうと一切否定されて基礎年金だけになってしまうというのはいかがかという意見がありますので、その点は十分今後の検討の中で煮詰めていただくようにお願いをしておきたいと思います。
他方、夫婦共働きと申しましても、同じ二号被保険者でありながら妻の方が非常に低賃金ということもあって、さあいざ年金受給という段階になりますと、自分の年金とそれから夫の遺族年金を比較してみると夫の遺族年金の方が多くてそちらを選択するというケースも考えられるわけですね。そうしますと、低賃金でありながら長い間働き、そして長い間二号被保険者として保険料を負担してきた分というのは全く自分の老後に吸収することができなくなってしまうのではないか、掛け捨てになってしまうのではないかというような問題点も指摘されておりますが、これについてはどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/94
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095・山内豊徳
○山内政府委員 厚生年金という一つの保険集団といいますか仕組みの中で給付を保障するという仕組みとしましては、そういう長く低所得である加入者がいらっしゃること自体どう見るかという基本論はあろうかと思いますが、年金制度の仕組みとしては、そういう遺族年金の方を結果的に選択する、そちらの方が高いという例が出てくることは、一つの年金の仕組みとしては御理解をいただかなければいけない点ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/95
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096・簑輪幸代
○簑輪委員 併給調整というようなことがされる理由の中で、一人が何人分もの年金を受け取るのはいかがかということが言われるわけです。それは一般論としてわかりやすいように言われているとは思いますけれども、実態的に見ますと必ずしも合理的ではないというふうに思うのですね。
と申しますのは、老後の生活を営むに必要な年金額という点から考えた場合に、たとえ併給をしてもらっても非常に低水準であるということもあるわけです。したがって、そういう点をやはり考えながら年金の併給という問題を検討しないと、ただ何人分もの年金をもらうのはけしからぬからそれを調整するというのでは私ども納得できない。したがって、一定の年金権を足してみた場合にそれが水準を超えるというときには併給調整がされるということは合理的であるかもしれませんけれども、非常に低水準でありながらこれが併給調整によって先ほど申し上げたような掛け捨てのことも起こってしまうというのはやはり納得できないのではないかと思いますが、そういう点での併給調整のあり方について、一定の水準を考えて検討されたということはないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/96
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097・山内豊徳
○山内政府委員 併給調整の問題につきましては、そういう検討すべき面があることは事実かと思いますが、一方、基礎年金という形で基本的な部分を保障するという前提を今回改正の柱にしておりますものですから、そういった土台という意味での基礎年金を前提にしますと、今直ちにこの併給問題について、現在改正していただいた内容と違ったものを検討するということは今のところは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/97
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098・簑輪幸代
○簑輪委員 私はちょっと納得できませんけれども、続いて別の問題についてお伺いしたいと思います。
共働きの二号被保険者の婦人が育児とか自分の親の介護のために職を離れるというケースが間々ございます。そうした場合に、それが年金の面でどのような影響を受けるのかということについて大変不安もあり、要求もあるわけです。例えば育児休業の問題で考えてみますと、育児休業制度があるという場合とそうでない場合がございますけれども、こういう育児休業制度がある場合とない場合で、あるいは公務員と民間の場合で、これが年金の面でどのような影響を受けるのかということについてお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/98
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099・山内豊徳
○山内政府委員 今お話ございましたように、この育児休暇制度のきちんとした適用がある場合を前提に考えますと、厚生年金の方では、この休業期間は一時的なものであるということで、従前の標準報酬を前提にして引き続き二号被保険者とすることができるようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/99
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100・門田實
○門田政府委員 公務員の場合についてお話ししておきたいと思いますが、公務員の場合には、育児休業期間中の者もその身分を保有しておりますので、引き続いて共済組合員となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/100
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101・簑輪幸代
○簑輪委員 ただいま民間の場合は二号被保険者とできるというふうにお答えいただきましたけれども、「できる」というのはどういう意味でしょうか。と申しますのは、保険料の負担等についてどういう形になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/101
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102・山内豊徳
○山内政府委員 従来とも厚生年金の場合は、事実上の使用関係が続いているということで、先ほどちょっと申しましたように従前の標準報酬を前提とした掛金を適用しながら、今回の改正でいえば二号被保険者期間が続くということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/102
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103・簑輪幸代
○簑輪委員 育児休業の場合に無給ということもございますね。そうすると、保険料等については自分で払うということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/103
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104・山内豊徳
○山内政府委員 事実上使用関係、雇用関係が続いていると見るか見ないか、先生お話しのように賃金の支払いがどの程度あるかということも要素になってまいりますが、育児休業期間中の無給の期間がごく短いような場合は実は従前の標準報酬をもとに適用を続けておりまして、その場合は、事業主分の負担は事業主、それからその短い期間の分は本人が負担なさる例も出てくると思います。
ただ、確かに、長期にわたって賃金の支払いがなされないような状態になりますと、育児による休業、休職といいながらそれが長い期間になりますと、二号被保険者の期間が外れるという扱いにもなっております。その点、先ほどの答弁を少し修正させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/104
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105・簑輪幸代
○簑輪委員 育児休業制度がきちんと行われている公務員の場合は、育児休業適用でない公務員はまるきりその期間は結局二号被保険者を離れなければならないということになるわけですね、民間の場合でも、育児休業制度がきちんとあって、使用者負担を事業主がちゃんとやってくれれば、それは二号被保険者として継続するということになりますが、そうでない限りは二号被保険者から外れてしまうということになって、例えば三号被保険者にならざるを得ないということになると思うのです。結局、育児のために職を離れるということであっても、それぞれの制度がある場合とない場合とでは、年金の仕組みの上で全く異なる扱いを受けるわけです。
育児休業制度の問題につきましては、労働省において育児休業適用事業所をふやすということでこれまでもPRをされたりして努力を積み重ねられてきておると思いますけれども、今日どの程度の普及率になっているでしょうか。
〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/105
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106・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
大体一四%程度と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/106
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107・簑輪幸代
○簑輪委員 これは全然進んでいないと思うのですけれども、どうなんでしょうか、このままの状況で飛躍的に進むという可能性はあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/107
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108・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
私どもの調査で「女子保護の概況」というのがありますが、それによりますと、育児休業制度実施事業所の割合は、四十六年には二・三でございましたけれども、四十九年に五・七、五十一年六・三、五十二年六・六、五十六年一四・三%ということで、年々ふえてきてはおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/108
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109・簑輪幸代
○簑輪委員 全事業所のわずか一四・三%しかこの制度がないという状況から見ますと、圧倒的多数の婦人は、育児のために職を離れると二号被保険者から三号に変わらざるを得ないという状況になるわけですね。したがって、公務員においても育児休業制度が適用されていない公務員は同様の状況にあるわけで、今日すべての婦人労働者に育児休業法をぜひ制定して、育児休業の法的権利を確立することが必要ではないかというふうに思いますけれども、労働省としてはこの育児休業法制定の必要性というものについてどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/109
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110・藤井紀代子
○藤井説明員 お答え申し上げます。
労働大臣の諮問機関でございます婦人少年問題審議会におきましてもいろいろと御検討していただいておりますけれども、まだ今のところ法制化については時期尚早であるという御意見をいただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/110
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111・簑輪幸代
○簑輪委員 婦人が真に役割を果たし働き続けるために、この育児休業法の必要性というのはかねてから再三申し上げておりますけれども、私はきょうも重ねてこの育児休業法の必要性について強調しておきたいというふうに思います。育児だけではなく、年老いた親の面倒を見るために、介護をするために職を離れなければならないというケースも多々ございます。そして、育児の場合は、保育所の活用が図られる場合には働き続けることができるという状況もございますけれども、親の介護のためには何とも手だてがなくて、断腸の思いで職場を離れるという婦人の切々たる訴えを私も聞いております。したがって、この年金問題を論議するに当たって、私はまず育児の問題でもお年寄りの介護の問題でも、本来公的な施策を十分にとって、働き続けることができる状況を確立することは大前提として強めていかなければならないというふうに思うのです。それが個人の犠牲によって、個人の努力によって賄われていくということを国が当てにしていくということはまことに間違っているというふうに思います。保育所の充実それから特別養護老人ホームの建設等々、ぜひ積極的な施策をとられるべきだというふうに思います。
しかし、今日それが充実していない段階で、せめて年金としてもこの期間を年金の資格としてカウントすることができるのではないか、そういう観点で検討をする余地があるのではないかというふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/111
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112・山内豊徳
○山内政府委員 育児あるいはかなり高齢の御両親なりの介護をするためにある期間どうしても職場を離れなければならない女性加入者の扱いでございますが、諸外国でもそういう方については、その期間を年金の資格期間から除外することによって基礎年金的なものを余り額が減少しないようにした例も若干ございますが、今回の改正はむしろその点は、共働きの御夫婦の場合でございますと、職場を離れて厚生年金二号適用から外れた期間をいわば被扶養配偶者としての三号被保険者としての扱いを継続するという形で、基礎年金の部分については年金を保障できるような仕組みをとったわけでございます・そういったことで、先生御指摘のように周辺の施策としての育児の問題、老人養護の問題はあるとしましても、一応今回の改正でその点は三号被保険者の仕組みの中で一つの対応をしたつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/112
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113・簑輪幸代
○簑輪委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。
ただいま私が申し上げましたように、婦人が育児とか親の介護等でやむなく職を離れるというケースがあって、これは本来ならば国が十分な施策をとってそして働き続けることができるようにしておくべきだと思いますけれども、その点での大臣の御見解と、それからまた、やむなく職を離れる場合に、せめて年金として資格のカウントをするということを検討してもよろしいのではないかと思いますが、その点についての大蔵大臣の御見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/113
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114・竹下登
○竹下国務大臣 まず後段の問題でございますが、これは今回の改正によって退職共済年金の受給資格を国民年金等地の被保険者期間と通算して二十五年以上とした。したがって、御指摘のような理由で退職した場合も国年の被保険者となられるわけですから、その期間も受給資格期間として通算される、こういうことになるわけであります。
共済年金制度は、公務員として永年勤続した者に対し、老後の生活保障をするため現役時代の勤務実績に応じて給付を行う、これが原則でございますので、公務員などでなくなった後の期間についてまで共済年金額の算定の基礎期間に算入するというのは、仕組みの上ではやはり論理の一貫性はないというふうに私は思います。
それから前段の問題でございますが、あるいは保育所の問題とかいろいろなことを総合勘案してのお考え方ではなかろうかと思っておりますが、その趣旨等は我が国の厚生行政の中でも、私なりに客観的に見させていただきますと、着実に充実されておるような認識を私自身は持っております。完全だとかいう意味で申し上げるわけではございませんが、制度、仕組みとしては大体成り立っておるのではなかろうかというふうな理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/114
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115・簑輪幸代
○簑輪委員 大臣は大体いいんじゃなかろうかという認識をお持ちのようですけれども、実際に共働きの婦人あるいは働き続ける婦人の間の声というものは、保育所問題一つとりましても、保育料が高くなって滞納さえふえているという状況もございますし、また親の介護の問題でも、十分な施設がないために、本当に子育ての段階では何とか保育所へお願いをして働き続けられた人も親の介護という段階ではもうどうにもならなくて職を離れるということがあるわけなんですね、その点からいいますと、必要性から見たときに非常におくれた状況にあるということを私は大臣もぜひありのままに見ていただきたいというふうに思います。そのための施策の充実に今後格段の御努力をいただきたいというふうに思います。
次に、年金の掛金の負担が一万三千円にも達していくという状況の中で、支払いが困難になり、免除の申請という事態がだんだんふえているというふうに承知しております。その場合には実際問題として五万円の最低保障さえ受けられないという状況になるわけですが、それでもそういう事態が年々ふえていくということが実態です。わかっていながらそういう実態になっていくということになれば、やはり制度の根本にも非常に問題があるのではないかというふうに思います。
申請免除が認められる要件、基準というのは一体どういうことなのか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/115
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116・植西常郎
○植西説明員 お答えいたします。
免除の申請につきましては、世帯単位に保険料が納められるか納められないかということにつきまして判断をいたしておりまして、具体的にはその世帯に所得税が課せられているような場合には非免除にする。それから市町村民税の均等割が非課税になっているような世帯、これは世帯員全員について非課税になっているような世帯でございますが、そういう世帯につきましては免除にするというふうな基準で認定しておりまして、その間に入る方々につきましては、その世帯の所得とかそれから資産の状況、また家族の数の状況、そういったものを一定の基準に当てはめまして免除するかしないかを決めておるような実態にあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/116
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117・簑輪幸代
○簑輪委員 それで、その免除基準というのは今後も維持されるものと考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/117
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118・植西常郎
○植西説明員 お答えいたします。
今の免除基準につきましては、今後も引き続き採用していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/118
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119・簑輪幸代
○簑輪委員 年金局長は、免除基準についての問題はこの法律が施行後に基準そのものについても考え直す必要があるのだというふうに述べられておりますが、そうすると、今の基準はずっと今後も維持していくということとあわせ考えますと、一体どういうことになるのかなと思うのですが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/119
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120・山内豊徳
○山内政府委員 ただいま、免除といいますより制度の存続を申し上げたので、申しわけございません。
御指摘のように、実は国民年金の保険料の申請免除の基準につきましては、従来から財政再計算期の都度保険料の負担能力調査という形で調査を実施して、従来若干の見直しを行ってきた実績もございます。実は今回の改革も、これは一つの財政再計算期でもございますので、昭和六十一年四月以降、将来の一万三千円ではなくて、六千数百円という現行の保険料負担に関して必要な調査を行うことにしております。その結果どのような見直しをし整理するか、率直に申しまして結果を見て判断するというお答えをせざるを得ないのでございますが、基本的なあり方まで見直すに至るか、あるいは従来のような基準の数値的、数量的なものを直すにとどまるかは、調査の結果を見て判断をしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/120
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121・簑輪幸代
○簑輪委員 免除の基準そのものをそうしょっちゅう変えられてはたまったものじゃないですね。ですから、基準はきちんと確立をし、その適用に当たって、世の中の変化に従って結果は変わってくるということはあるかもしれませんが、そういう意味でさっきお答えいただいた免除基準ですね、所得税の世帯は非免除であるを初めとして、その基準は基本的に今後も維持されるものというふうに考えていいのですかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/121
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122・山内豊徳
○山内政府委員 お話のありました免除基準の、言葉が適切かどうかは別としまして、上限と下限の考え方を大きく変えることは考えられないと思いますが、その間における上限といいますか、境界と境界といいますか、その間の適用については、あるいは免除基準の見直しが必要になる結果も出てくるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/122
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123・簑輪幸代
○簑輪委員 免除率がだんだん高くなってくるので、ここは何としても免除率を下げなければならない、したがって免除判断において非常に厳しく過酷になるというようなことになるとすれば、これはゆゆしい問題だと思うのですね。なぜ免除を申請せざるを得ないのかという実態を考えてみますと、保険料が高くて払えない、それから生活が困難であるという事実から免除の申請が出てくることを思いますときに、それは考え方が逆ではないかというふうに言わざるを得ない。私はそういった意味でこの免除基準というものは基本的に維持されるべきだというふうに思いますが、重ねてお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/123
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124・山内豊徳
○山内政府委員 私ども初めから一定の考え方を持って厳しく見直すということを決めているわけではございません。ただ、御指摘のように確かに、六千数百円といいながら年金額が上がってきますと、どう申しますか、現実にきちんとしたものを整備しておかないと、非常に恣意的と申しますか、実施をします行政庁の側にも懇意的になるようなことがあってはいけませんものですから、その点はやはり先ほど申しましたように、両方の境界線の中でのいろいろな適用については見直しを図ることもあり得るかと思います。ただ、境界そのものを大きく変えることは、先生御指摘のように当面考えられないところではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/124
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125・簑輪幸代
○簑輪委員 国民年金の加入者の所得別内訳というのがわかりましたらお願いしたいのです。所得ゼロの場合の男女別、それから年間所得百六十万未満の男女別というのがわかりませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/125
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126・植西常郎
○植西説明員 被保険者の所得階層別の状況につきましては把握いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/126
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127・簑輪幸代
○簑輪委員 私、ちょっと別の資料で国民年金加入者の所得別内訳という数字を手にしているんですね。それによりますと、所得ゼロの男女別、男が一五・六%、女が七六・七%、それから年間所得百六十万未満の男女別、男はちょっとわかりませんが、女が九八・三%ということで、結局、ゼロも含めてですけれども、百六十万未満の割合でいいますと九八・三%が女であるというふうになっているわけです。したがって、女性がこの国民年金の保険料負担にたえられなくて免除あるいは滞納というふうになってくるケースが非常に多いのではないかということがここからも言えると思うのです。
婦人の年金権という場合に、こういう国民年金加入者の実態から考えてみますと、やはりこの五万円の年金をもらえなくなるというのは婦人が非常に多いのではないかというふうに言わざるを得ません。厚生省としては、将来加入者が五万円の年金を受け取れないだろうというふうに予測しているその割合は、どれくらいに見ておられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/127
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128・坪野剛司
○坪野説明員 今お尋ねの数字でございますけれども、一号被保険者、二号被保険者、三号被保険者とそれぞれあるわけでございますけれども、二号被保険者、三号被保険者は、そういう五万円受け取れないというケースは理論上はございません。一号被保険者につきましては、保険料を免除される方あるいは納められなかった方ということはございますので、さきの国会での御説明では一号被保険者については二五%ぐらいはあるのではないだろうかということをお答えしておりますけれども、基礎年金全体といたしましてはたしか、数字は間違いないと思いますけれども、九六・三%ぐらいが五万円で、残り数%ぐらいの数が五万円がもらえなくなるのではないかというふうに推測しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/128
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129・簑輪幸代
○簑輪委員 一号被保険者の四分の一が五万円もらえないということになりますと、人数でいうとどれくらいを見込んでおられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/129
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130・坪野剛司
○坪野説明員 先ほどの数字、ちょっと修正させていただきます。九六・三ではなくて九三・六でございますので、これは修正させていただきます。
将来の話でございますので、一概に当たるかどうかわかりませんけれども、ただ、免除につきましては一応、過去の傾向として一五%を予測しております。その後追納ということもございますので、一応追納がないという前提での数字しかちょっと手元にないわけでございますけれども、受給者として第一号被保険者で大体、二五%ですから百五十万ぐらいではないだろうか、これは昭和百年度でございますが、推計しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/130
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131・簑輪幸代
○簑輪委員 昭和百年に百五十万もの人々が実際には五万円の年金を受け取れないということを厚生省自身が推計しておられるという状況から考えてみますと、本当にゆゆしいことではないかというふうに思います。
もう時間もなくなりましたので最後に一点お伺いしたいのですが、年金受給者の方々から非常に強い要望がございます給付の方法についてです。年金掛金が非常に高くなったということで、これまで三カ月一括納付制度であったものを毎月納付に改めるというふうに聞いておりますが、給付の方について毎月給付というふうに改めるというふうには聞いていないのですね。ところが、実際年金生活をしておられる方々から、三カ月まとめてというのは生活サイクルに合わないし、とても不便で困る。したがって、事務上の問題とかいろいろ言われておりますけれども、給付も毎月給付されるようにぜひ改めなければならないと思いますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/131
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132・亀田克彦
○亀田説明員 年金の毎月支払いでございますが、これを実施するということにいたしますと、会計法等に基づく支払い通知事務が非常に膨大になるというような問題がございます。それから新たに地方税の住民税の特別徴収義務がかかってくるということで、住民税の場合、御承知のように全国一律ではございませんので、非常に大変な事務になるというような事情がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/132
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133・越智伊平
○越智委員長 大きい声で全員に聞こえるように。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/133
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134・亀田克彦
○亀田説明員 はい。ただ、先生御指摘のように年金の毎月支払いの要望が非常に強いという事情がございますので、私どもとしましては、関係方面とも十分協議をいたしまして六十一年度中にも実施の具体的方策について目途を立てたい、こういうことで努力をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/134
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135・簑輪幸代
○簑輪委員 そうすると、六十一年度中に毎月支払いの実施の具体的方法等を含めて明確な将来方向が明らかになる。六十一年度中には将来の展望が明らかになる。いつごろやれるのかということが六十一年度中にわかるというふうに理解してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/135
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136・亀田克彦
○亀田説明員 どういう段取りでやっていくか、そういう方策の目途を六十一年度中に立てるべく努力をしていきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/136
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137・簑輪幸代
○簑輪委員 大体いつごろ実施できるのかという方向がはっきりしないことには、六十一年度中に考えたけれども先のことはまだわかりませんでしたでは困るので、ぜひこの具体的めどをはっきりさせていただくように強く要求をしておきたいと思います。
さまざまな問題についてお尋ねしましたけれども、時間もなくて十分お尋ねすることができなかった部分もございます。今回、特に婦人の年金権を確立したと厚生省は言われておりますけれども、今まで述べましたように、婦人の年金権につきをしては極めて問題点が多いし、無年金者の問題、それからまた共働きの婦人への措置その他、改善という方向とはおよそ言えない部分が多々あって、年金権問題を論議するに当たって問題提起をしてきましたさまざまな問題をぜひ今後早急に解決していただきたい。そうでないと、この年金計画そのものが破綻を来すことになるのではないかというふうに強く指摘をしておきたいと思います。そして、政府が国庫負担を減らして、労働者の負担を強め給付を減らしていくという基本的方向は断じて承知できないということを強く申し上げて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/137
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138・越智伊平
○越智委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時八分休憩
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午後一時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/138
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139・越智伊平
○越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。野口幸一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/139
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140・野口幸一
○野口委員 俳人の小林一茶が、自分の人生の終えんの地を故郷に求めてふるさとに帰りましたときに詠みました俳句が、有名な「これがまあついの住みかか雪五尺」、こういう句であります。今回のこの年金問題を考えてみますと、これがまあ本当に労働者のついの住みかともいうべき姿なのかと思いますと、雪五尺どころか雪一丈というような感じでございます。全く感慨深く、またこの問題の非常に重要な課題を含んでいると思うわけであります。そういう気持ちで若干質問をさせていただきたいと思っております。
その前に、実はけさ新聞を拝見をいたしました。国鉄共済年金の救済につきまして「一部国庫負担を認める」という見出しのもとで、あるいはまた、他の新聞は「厚生年金料率上げ支援」という見出してあります。
この内容を読ませていただきますと、昨夜都内某ホテルにおいて行われた大蔵大臣あるいは厚生大臣等々四者会談において、大蔵大臣が国鉄共済年金の救援策として国庫負担金を出すことを表明した。「これに対し厚相も「国庫負担をしてもらえる以上、現在、国鉄共済年金の財政支援に加わっていない厚生年金など他の年金制度の支援も、やむを得ない」との見解を示した。」政府は、この見解に基づいて新たな段階に入った、こういうような内容でございますが、事実このような会議がございましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/140
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141・竹下登
○竹下国務大臣 昨夜九時過ぎから十一時半ぐらいまででございましたか、きのうもおとといもでございます、今晩もでございますけれども、話し合いをしておることは事実でございます。
ただ、今中身は大体出ていないことになっておりますので、私も別に記者会見もしたことございませんし、したがって憶測記事の域を出ないのではなかろうかというふうに私は思っております。やはりこれは最終的には官房長官から発表をされるべきことだと思っておりますので、まだ言ってみれば経過の段階でございますので、結論が出るまでは私からもろもろの検討経過を申し上げるわけにはいかない性格のものではなかろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/141
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142・野口幸一
○野口委員 恐らくそういう答弁が返ってくるのではないかと思いました。しかし、新聞のこの内容は必ずしも全部否定をしておられるわけでもございませんで、憶測記事とはいいながらも非常に具体的なことが書かれてあるわけであります。
少なくとも他の共済年金のいわゆる支援を受けるということは非常に重大な問題でございまして、国が出すということを決めるということだけでも大事なことでありますけれども、同時に、他の年金の組合員から新たな掛金の増額を求めるということもこれまた重要な問題でございます。少なくとも、掛金あるいはまた給付もそうなのでありますが、年金制度全体の問題についてこれを改定しようとする場合においては、例えば厚生省においては年金審議会、あるいは国家公務員においては国家公務員共済審議会等の議を経てこの問題を決めていくというのが通例であると承っておるわけでありますが、これが開かれてもおらないままに簡単にその他の共済が救援に立つというようなことを、これは実は厚生大臣が言っておられるわけでありますけれども、私は出席を要求しておりませんが、厚生省の方からこのようなことを簡単に言うべきものかどうなのか。また、開いてもいないのにそのことが可能かのごとき、会議がたとえ今晩にでも開かれるとするならばそういう会議を持ってからやるべきが至当だと思うのでありますけれども、それも開かれる様子も聞いておりませんが、一体どのようにして今後取り運ぼうとしておられるのか、その点も少しくお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/142
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143・竹下登
○竹下国務大臣 これも経過でございますので、私見が入りますといけませんし、極めて言葉に注意をしながらお答えをしなければなりません。
今度の問題で国鉄共済問題というのは、一つは国鉄監理委員会の意見というのがございます。ところが、これも厳密に言ってみますと、最大限尊重する、こういう閣議決定はありますが、法律ができたわけでもないし、現実の姿が今の段階では変化していない。そうすると、それを余りがっちり念頭に置いた議論も直ちにはいかがかな、こんな印象を、いささか私見でありますが、持っております。
それから二番目には、各種審議会。私は、国共済、これは年金一元化の方向に沿っていろいろ検討しなさい。で、地共審あるいは厚生省の方で見れば、答申は、助っ人はやめろとでも申しましょうか、そういう趣旨の答申をちょうだいしているわけですから、その答申というのは現段階においてネグってしまって済むわけには、これはもちろんそれぞれの担当大臣としてはできないことでありましょう。ただ、最終的には国民の理解を得られなければならぬということになれば、将来検討される段階においてあるいはいろいろな変化が全く期待されないわけでもなかろうか、これも私見でございます。そうすると、その辺は、ある意味において玉虫色のような表現にならざるを得ないのかな、こんな気持ちも私自身にはあるわけでございます。したがって、事前に各種審議会を開いて議論をしてもらうということになりますと、これはまた根本議論から始まりましてそう早目に結論が出るとも思えませんので、したがって、きょうも議論してみますが、その一つの方向というものを私どもが申し述べて、官房長官にどうまとめていただくか、こういうことになるではなかろうかなというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/143
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144・野口幸一
○野口委員 厚生省、どうですか。今の問題、大臣から伺いましたが、厚生省としてはどう思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/144
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145・山内豊徳
○山内政府委員 先生御指摘のように、厚生年金に関して特に他の制度とのかかわりで何かを決めるとすれば、これは厚生年金の内容の問題以上に非常に重要な問題でございますから、関係審議会はもちろんのこと、もっと相当な議論を尽くしてからでないと事は決められないということは先生の御指摘のとおりでございます。
新聞報道につきまして、私自身は大臣からも、そのようなことを決める、あるいは決めるための検討をするようなことの指示は一切受けておりませんので、私としては、大臣はそのようなことを決めたという意味で表明したりあるいは申し上げられたことはないと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/145
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146・野口幸一
○野口委員 聞くところによりますと、実はこれは水面下の話かもしれませんが、明日あたり官房長官が、この前連合審査の際に約束をいたしました政府の統一見解というものを示したい、そのようなスケジュールになっているようでありますけれども、いずれにいたしましても、この問題をやはりはっきりと解決をしていただかないと、今回の共済法の改正という課題を審議を進めていくということについては極めて困難なことになるわけでありまして、これは一番当初から言われてきたことでございます。改めて私が今申し上げるわけではなくて、既に本委員会がこの問題を取り上げまして以来、実はずっと話のあったところであります。それが、終局の場になりまして、国庫金もある程度負担をするが他の共済の援助も受けるということに仮にするならば、それはそれなりの手続を十分とって同意を得た後に御回答をいただくのが筋であり、それでなければ天下り約といいますか、威圧的な措置をするあるいはしたということになって、組合員の協力はおろか、世人の非常な誤解といいますか、政府のとった態度というものに対して怒りを覚えるだろうと思いますし、今後の共済の統合についても、決してプラスになるような状況にはなっていかないのじゃないかと非常に心配をするわけであります。したがって、先にスケジュールを決められるということは簡単でございますけれども、内容を検討せずして、あるいはまた審議会等の議を経ずしてこのようなことを軽々に決められるということは、私は断じてあってはならぬと思うのであります。したがって、明日セットされているやに承ります。その御回答が、今大臣がおっしゃったように玉虫色の域を出ないとするならば、これは連合審査を開いても意味がないと思うのであります。大臣、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/146
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147・竹下登
○竹下国務大臣 私も今記事を読ませていただきましたが、厚生大臣が書いてあるようなことをおっしゃったという記憶は私にはありません。したがって、推測記事を出てないのじゃないかなという感じを持ったわけでございます。
それから、先ほどの玉虫色という表現は、やはり正式に取り消すべき表現だと私自身感じました。それは、恐らくいろいろな詰めをやらなければならぬことがあろうかと思います。例示することもなかなか困難でございますが、いろいろな意味において、一つの基準とか切れ目とかいうものがありますと、それは将来の議論に待たなければならぬような点があるとすれば、表現が非常に抽象的にならざるを得ないかと私が感じたものですから、つい玉虫色と。これは取り消させていただくことにして、官房長官がおまとめになるわけでございますけれども、誠心誠意作業は進めなければいかぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/147
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148・野口幸一
○野口委員 大臣が言いにくいのは少しくわからないわけでもありませんけれども、少なくとも、この問題が当委員会で取り上げられてから相当日時がたっているわけでありまして、その討論の内容から出てまいっておりまする重大な問題は、国庫負担をどのようにするのか、あるいは他の共済にある程度依存するのならば、それなりの手続あるいはまた協議が必要であることは百も承知の上で、時間を置いて恐らく官房長官が御答申なさるものだと私は思っておったわけであります。しかし、先ほどから申し上げておりますように、これが何もそういう手続を経ずして、単に政府の見解として、玉虫色であろうが、あるいはまた玉虫色でなくてある程度具体的な数字を仮に出すといたしましても、これは今日までの各共済の審議会の経過から見ましても非常に異例のことであるし、またそういうことはあってはならないことでありますから、それを軽々にこの数日というか一両日の間に決めていこうとされること自体に私は不信を抱くのであります。
大臣にお願いいたしておきますが、この問題ばかり言っておるわけにまいりませんので、憶測記事だと言われれば、そのことについて私らも直接聞いたわけではありませんから、それはそれで事を了承するというわけにはまいりませんけれども、しかし、仮にそうだといたしましても、少なくとも明日以降において、この手続を経ずして他の共済の救援を求めるというようなこと、国庫金を出すことは大臣の決断でできることでありますけれども、その他のことはなかなか簡単に決まるべきものではない。とするならば、当然当面は全額国庫が負担をして乗り切る、こうおっしゃるのだったら、これはまた話は別でございます。そういう御答弁になるように、ぜひ官房長官にお伝えをいただきたいということをまず申し上げておきたいと存じます。(発言する者あり)雑音がありますので、金主元にはっきりと答えを求めよということでございますので、金主元にひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/148
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149・竹下登
○竹下国務大臣 今ありましたような意見も十分参考にしておまとめいただくように官房長官さんにお伝えをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/149
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150・野口幸一
○野口委員 そこでお伺いいたしますが、「増税なき財政再建」という言葉は聞き古しておるわけでありまして、耳にたこができるほど聞いたわけでありますが、今日もなお大蔵大臣の頭の中にこの方針というものが生きておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/150
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151・竹下登
○竹下国務大臣 「増税なき財政再建」というのは財政改革を進めていくためのてことして、プリンシプルとして持っていないと、一たび安易な考え方になりますと、たがが緩んでしまうという意味において生きておるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/151
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152・野口幸一
○野口委員 言うだけならば簡単なんでありますけれども、少なくとも今日求められて。おる課題は、正直言って、大蔵大臣の胸の中にもあるはずでありますが、いかなる形で税負担を高めるかということが今日的な問題として当然大臣としてあるべきものだと思います。しかし、前国会でも話がありましたように、いわゆる税制の見直しという点の中において、まず増税ありきという形では考えない、こういう御返事もございました。しかし、片や百何十兆円という借財が減っているわけでもなし、また今日の年金の問題を取り上げてみましても、今の国鉄の共済を救済するその資金を出すにいたしましても、入ることは減っても出すことが減るということは非常に難しいことでありまして、その意味では財政再建をするに当たって増税ということを頭に入れないで果たしてできるのかということになりますと、これはあくまでも理念の問題であるということだけで片づけられるということは私は遺憾に思うのであります。もう少し率直な話を国民の前にしていただいた上に立ってあくまで議論を進めていかないと、片方では「増税なき財政再建」だとスローガンとして掲げられるが、実際はそうじゃないことがどんどん行われているということではどうにもならぬわけであります。
かつて私は、この委員会で大臣にも申し上げましたが、新たな税目を設けて税金を取るだけが増税ではない。つまり自然増収ということが仮にあるとしても、これも増税の一つだ。税がふえるということ、国民の負担がふえていくということが増税であり、国民の税の負担が減ることが減税だとするならば、増税は常に行われていると言っても過言ではない。そういう立場から考えましても、明年度の予算編成においては増税はないかもわかりませんが、しかし考え方の中にそのことが一切ないと言えば、これはうそだと思うのです。そのうその答弁を繰り返してみても仕方がないと思うのでありますが、国民の税負担というものは今後も絶対不変にしていくという信念を改めてここにお示しいただけますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/152
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153・竹下登
○竹下国務大臣 古証文のように何回もお話しすることになりましたが、いわゆる「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないということを意味しておるというふうに定義を一応ちょうだいいたしておるわけであります。それで、自然増収というものは確かに増の収でございますが、この定義づけの物差しで言いますならば、これはいわゆる「増税なき」という範疇には入らない、こういう考え方をとっておるわけであります。
いずれにせよ、税の議論というのはこれで四年ぐらいやって、それでやっぱり税制調査会で抜本策をやってみるかという空気が出てきたのじゃないか。したがって、今度の抜本策というものには、私ども正確に国会の意見等をお伝えする役目を堅持しながら、余り予見めいたことを辛さないで対応すべきじゃないかというふうに思っておるわけであります。いずれにせよ国民の皆さん方の間にも、いわば結論から言うと、負担をするのも国民だしサービスを受けるのも国民であるという意識はかなり強くお持ちいただいておるわけでございますので、最終的にはそういう負担の問題と受益の問題との調和点がどこにあるかということを、国会の問答等を通じながらコンセンサスが那辺にあるかを見定めていくという手法で対応した方がやはり現実的ではなかろうかという感じを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/153
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154・野口幸一
○野口委員 過般行われました政府税調に臨んだ総理のごあいさつの中にありましても、明年度の政府税調でぜひ前段では減税の問題を論議してほしい、後段では増税の問題、いわゆるEC型付加価値税の問題等々も含めて答申をいただきたいというような内容のごあいさつがなされております。したがって、総理の頭の中にも、減税と増税というものをセットにして考えますならば、増減税をやって、そのこと全体から見て差し引き減収になるというようなことは恐らく考えられないわけでありまして、しかも、来年の参議院選挙というものを意識されてか、減税問題については来年の夏ごろまでに返事をほしい、夏ごろが済んだら今度は増税の問題についての答申が欲しいなどと言われるような内容のごあいさつをしておられますが、そういうところから見ますと、今大臣のおっしゃった御答弁必ずしも当を得ているなということには私は感じられないのでございます。しかし、この問題、大臣がおっしゃるようにここ数年ずっと同じことばかりやっているわけでありまして、こんなこといつまでもやっていてもという意味から言われると私は心外なんでありますけれども、しかし審議を進める立場から考えましてこの問題をいつまでも続けるわけにはまいりませんので、一応この辺で本音の御答弁を今後いただきたいということを特に申し添えてこの問題を一応打ち切らせていただいて、また時期を見て提案をさせていただきたいなと思います。
そこで、第二次世界大戦後西欧諸国を初め各国におきまして、福祉国家の実現というものに対して非常に熱意を示し、社会保障初め教育、住宅、生活環境改善、サービスの向上等をそれぞれ求めて政策を実行してまいりました。欧州等ではソーシャルポリシーというのだそうでありますが、我が国では福祉政策と言われておりますけれども、この問題は、各歴代内閣も多少なりとも推進を目途に掲げられてまいったことも事実でありますし、非常に政策遂行に当たっての財源問題についてもいろんな角度から御討論があったことも承知をいたしております。また、いわゆる高福祉高負担などという言葉なるものも出てまいりまして非常に議論を醸し出したこともありますけれども、二回の石油危機の時期を契機にいたしまして御案内のように経済成長が鈍化をして、福祉財政を支えてきた経済基盤が弱体化したと申しますか、非常に財政が困窮をするという状態になった。
そこで臨調なるものが登場をして、小さな政府だとかあるいは能率的な政治とかいうものを提唱しているわけでありますが、政府がとりました施策を眺めてみますと、この問題で特に顕著に感じられるのは、すべて財源不足のしわ寄せが福祉関連予算に非常に強く求められておる。そして、当面の問題として、まず年金で申し上げますならば給付を削減する、そして掛金を上げるというような、いわば場当たり的な問題を取り上げてこられまして、先ほども私が申し上げましたような将来のいわゆる年金像、年金とは何ぞや、あるいはまた将来かくあるべきであるというような格調の高い福祉政策というものが、望まれてはおりながら具体化されてこなかった。そこで、そういった背景もあって年金の統合という、その言葉の中に国民皆年金といううたい文句があるわけでありますが、それを取り上げていくに当たって今日の統合問題等々が出てきたわけであります。
大臣は、今回の法案審議を通じてそれぞれの質疑者が今の年金制度というものについて議論をしておりますけれども、将来の年金像、年金のあるべき姿、また、年金とは一体どういう位置づけで考えるべきものなのかということを、まさか今回のこの措置がベストであるとは思っておられないと思いますので、ぜひ将来の年金像について大臣の御見識ある御回答をいただきたい。来年の今ごろは、ひょっとすると宰相の地位にあるかもわかりませんあなたが述べられる回答は国民のひとしく待っているものである、私はそう思っております。したがって、将来年金はこのような展望を持ってやっていくとおっしゃるならば非常に幸いだと思いますが、竹下大蔵大臣の御所見をぜひこの際、高い見地から年金統合の今後のあり方についてお伺いをいたしたい。
〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/154
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155・竹下登
○竹下国務大臣 年金というのは、私は、やはり老後保障の大きな役目を果たすものではなかろうかというふうに考えております。しかし、財政を預かっておる立場から中長期に物を考えて、これがいつまでも安定的なものとして存在するためには、今から急速に訪れるであろう高齢化社会を予測して、設計のし直しというと少しオーバーでございますが、やっていかなければならぬということから、基礎年金制度というようなものを押しなべて国年、厚年に続いて各種共済の中へ取り入れていこう、この考え方が一番現実的な問題ではなかろうかというふうに考えております。そういうことになると、やはり給付と同時に今度は負担のバランスというものも中長期的に考えていかなければならぬ。そういうところで、最終的にはこれから厚生省あるいは年金担当大臣の方が中心で将来設計についてのいろいろな議論が進められていくでございましょうけれども、私自身が考えるのは、やはり負担と給付というものを現実的な側面でとらえて対応しなければならぬではなかろうかなというふうに今考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/155
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156・野口幸一
○野口委員 私の質問いたしました趣旨から大分離れておるような気がします。少なくとも、先ほども申しましたように、次の政府を預かる責任者とも言われているあなたが年金という問題についてもう少し深い御造詣の上で、しかも具体的にかくあるべきものだ、年金とはこうあってほしいという願望も含めてお話しいただけるものだと思っておったのですが、現実の掛金と給付の問題だけに過ぎた話だけではいささか物足りないなと思います。しかし、年金担当大臣でないわけですからそれ以上のことは余り言えないかもわかりませんけれども、少なくとも大蔵大臣という立場は、年金担当大臣ではなくてもやはり国家公務員については責任者でありますし、また年金全体の財源問題になってまいりますと途端に大蔵大臣の責務というのは当然大きく求められてくるわけでありますから、機会がございましたならばもう少し私はまだこの問題についてもお尋ねをしたいなと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
さて、公的年金の一元化という言葉を最近よく使われておりますが、これはどう定義されておりますか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/156
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157・竹下登
○竹下国務大臣 公的年金の一元化ということになりますと、高齢化社会の到来に備えまして、公的年金制度全体の長期的安定と整合性のある発展を図る、こういう見地から各制度を通じて給付と負担の両面にわたります公平性が確保されるように必要な調整を進めていくという定義になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/157
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158・野口幸一
○野口委員 そうしますと、統合、再編、一元化という一つのプロセスはどのような方法でやろうとされておるのか、どこまで一元化をしようとしておられるのか。一元化というのは全部一本にしてしまうということでありますから、そうなりますと、その一元化というものの意味は、単に給付と掛金だけの問題ではなくて、財産からすべていろいろなものも含めての一元化でなくてはならぬ、あるいはまたそういう意味を持つのかなと思うのであります。つまり、一元化というのはどういうプロセスで統合され、再編され、そして一元化という筋道になっていくのか、その辺のところをもう少し詳しく御説明いただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/158
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159・門田實
○門田政府委員 ただいま御指摘がございましたように、一元化といいます場合にもいろいろ考え方がございます。各制度がそれぞれ併存しておりまして、その中でどの制度にあっても大体同様の年金給付を受ける、そうしてまた大体同じような負担をしていく、これが一番ソフトな一元化であろうかと思いますが、もっと強い方の一元化論の中には、これは一つの法律のもとに入る、あるいは積立金等含めまして全部一つである、完全な統合の姿、先ほど先生もおっしゃいましたが、そういうことを想定する考えまで、そこは実に幅広いわけでございまして、政府が現在使っております場合にも、そこのところはこれでなくてはいかぬというところまでは定まっていないわけでございます。
このプロセスでございますが、今回こういう改正で国民年金、厚生年金の方につきまして既に改正を成立をさせていただきまして、国民共通の基礎年金というものを一階部分についてつくったわけでございます。そこで今度共済法の改正がございますと、国家公務員等のグループにも一階部分は基礎年金ということで全国民共通の姿になりまして、その上にそれぞれの制度の報酬比例年金が乗っかっていく、その場合には大体整合性が給付面では図られてまいる。公務員の場合には職域年金部分というものが特にその上にございますが、それを別といたしますと、大体同じような給付面の整合性が図られる。したがいまして、今後は負担面の整合性といいますか一元化といいますか、そういう方向へ向かって関係者は努力してまいる、そういう段階であろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/159
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160・野口幸一
○野口委員 御答弁の内容は抽象的でありますが、そういうようになっていくだろうと思います。しかし、先ほども大臣もそれから審議官も言っておられたと思いますが、少なくとも現在の組合員といいますか共済組合員の負担の部分におけるところの公平の問題も実は大切なことであります。しかし今回のこの一元化を目指した改正案はそれと逆行している部分だってあるのではないかと思われるのであります。
後ほど財源問題についてお話しさせていただきますが、まずその今の公平感といいますか組合員の拠出する掛金の公平感という立場からだけ取り上げて考えてみますと、今回の掛金のあり方として、標準報酬といいますかいわゆる報酬を基準として算定をする、こういうことになっております。標準報酬方式の取り上げ方でありますが、この標準報酬というのはどういう形で今お考えの中にあるわけなんですか。標準報酬というのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/160
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161・門田實
○門田政府委員 年金額算定の基礎のとり方といたしまして、従来公務員等は本俸基準、それから厚生年金等では標準報酬ということになっておりました。標準報酬といいます場合には、本俸プラス諸手当という考え方でございます。今御指摘ございましたように、今回の改正におきまして国家公務員等共済は基礎俸給のとり方について標準報酬制、厳密に言いますと平均標準報酬制、就職いたしましたときから退職いたしますときまでの間の本俸プラス諸手当、それの総体の平均、こういうものを算定の基礎に採用するということにいたしたわけでございます。
その理由でございますが、国家公務員等共済の場合には、民営化した日本たばこ等もございますし、それからまた先ほど来のお話にございますように、今後年金一元化ということを考えますとできるだけ合理性のある範囲で厚生年金に合わせていくことが大切であろうかと考えまして、こういう標準報酬制というものを算定基礎に採用することにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/161
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162・野口幸一
○野口委員 これは伝えられておるところでありますが、この手当というのは——いわゆる基本給以外の手当等というのは大体何と何を考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/162
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163・門田實
○門田政府委員 ちょっと概念的な御説明になりますが、公務員等が自己の労働を提供いたしましてその対償として受け取るものであれば、俸給、給料、賃金、手当その他の名称のいかんにかかわらずすべて報酬に含む、こういう考え方でございます。ただし、常時または定期に受け取って通常の生計に充てられるものでございまして、臨時に受け取ったり三カ月を超える期間ごとに受け取ったりするものは含めない、こういうことでございます。
具体的に申し上げますと、いろいろな手当は大体全部入るわけでございますが、期末手当、勤勉手当あるいは冬季にのみ支給されます寒冷地手当、こういうものだけを除いておりまして、そのほかは全部含まれるという概念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/163
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164・野口幸一
○野口委員 そうしますと、住宅手当あるいは通勤手当も対象になるわけですね。
そうしますと、住宅手当の場合などは、現物給与として宿舎提供を受けている音あるいは住宅手当として受けている者の格差、あるいは通勤手当の場合におけるところの、通勤実費を全額もらっている人とまたそこまで達していない人もいるわけであります。身出しをして通勤をしている人もいるわけでありますね。本来通勤手当というのは自分の勤務をする場所に赴くために要する通勤費を支給されるという形の中で考慮されたものでありますから、このようなものが入ってくるということになってまいりますと、非常に個人それぞれの格差が生じることになるんではないか。先ほども言いましたように、住宅手当なんというものは、高級公務員の方は宿舎に入っておられますが、下級公務員はなかなか宿舎に入れないということもございます。
〔中川(秀)委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
宿舎を現物提供を受けている者あるいはまた宿舎に仮に入っている者は低額の家賃といいまするか使用料でもって済みますが、高級にならなくとも一般的なアパートだとかあるいはマンションだとかあるいはその他の住宅に住んでいる者との格差が出ているわけであります。それが一概に手当も算入するんだということになってまいりますと、そこに算出されてくる掛金の不公平というものが当然生まれてくると思うわけでございます。
そもそも年金というものは先ほど来公平感というものがまず統合の、あるいはまた一元化をしていく上において極めて重要な課題だと言われておりますように、個々の省庁に勤めておってもそのような差が生じてくるということについては納得できないのであります。少なくとも、地方公務員が現在とっておられるような形の中での掛金の掛け方にならないものかどうか、この点はどのように考えておられましょうか、特にそういう点をお聞きしたいのであります。
つけ加えて申し上げますが、私はたまたま郵政省の出身であります。郵政省は御案内のように三事業に分かれた仕事をいたしております。それぞれの事業によって手当が違います。そうなりますと、同じ事業に働いておりましても、これは掛金額が違うということになってくるわけなんです。もっと突っ込んで言いますならば、全国至るところ、東京を初めとして、郵便局のないところはないと言われるほど全国各地に郵便局がございますが、御案内のように、これは後でもまた人事院とも関係があるわけなんですけれども、役職によって俸給が上下をいたします。また、その役職の配置のない局所もあります。
具体的な点を申し上げますと、例えば、特定郵便局の中に特定郵便局長代理という役職がございますが、これは管理職手当をもらっておる。しかし、それになるということについてはなかなか現実面としては不可能に近い状況がたくさんあるわけであります。ましてや、特定郵便局長というのは自由任用制度でありまして、大体一般職員がなっていく道筋が開かれていないのはこれまた御案内のとおりであります。そういったところもあり、かつまた同じように、例えば三十年営々として勤続をいたしましても、東京中央郵便局に勤めておった者はそれなりの役職に昇進をしていく機会を与えられるんでありますけれども、離れ小島に郵便局がある場合、そこの小さな郵便局にはいわゆる局長代理はおろか、主事という役職も主任という役職もない場合もあるわけであります。そうなりますと、給料が一定の高さまでいきますといわゆる頭打ちという制度がございまして、役職につかない限り現行俸給が変わっていかないという不合理な面が実はあるわけであります。これは御存じだと思うのであります。
そこで、何にも今の手当の関係がなくとも、一般俸給の中であって同一の勤務をしても、年金においては三十年東京で勤める者と離れ小島の小さな郵便局で三十年勤める者との差は画然としてあります。にもかかわらず、今回はそういう格差の上にさらに手当を入れるということになりますと、これまた余計格差が広がっていく、不公平が余計に広がるという問題が実はあるわけであります。私は、今回のこの改正の中で平均報酬月額の算定のあり方については再考していただかなくてはならぬ。どうしても私は納得ができない、こういう立場であります。審議官、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/164
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165・門田實
○門田政府委員 実は、この標準報酬制のときにまさにお話のような御意見がいろいろございました。特に、手当の中で通勤手当、住宅手当、それと超過勤務手当、この辺が大変議論になりました。そしてまた、労働組合側の委員の方からも、同じ職場で年金額が違ってくる、こういうのが職員の感情としてどうであろうかというような御意見もございまして、率直に言いまして、これは非常に議論がそれぞれあり、悩んだところでございますが、結局、現在民間においても厚生年金におきましてそういった取り扱いがいろいろな御意見がある中で行われておるという実情があるわけでございまして、本俸でいくか標準報酬でいくか、標準報酬でいく場合にはやはりできるだけ総括して、手当を含んでいく。また、個々に外そうとしますと、それは事務、勤務の実態から見ましてまた非常に煩瑣なことになります。大変そこは議論があったんですが、結局厚生年金と同じような標準報酬制をとろう、こういった意見が強かったということでこういうことにいたしたわけでございます。これは、職場によって、先生御指摘になりましたような郵政の職場等、あるいはあるのかなという感じがいたします。席上でもそういう御意見の開陳があったように私記憶しておりますが、厚生年金同様の取り扱いということでこういうことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/165
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166・野口幸一
○野口委員 納得できる問題ではございません。何としても、議論になったということはそれだけ問題点が多いものであるということでございまして、少なくとも、先ほど私が申し上げましたように地方公務員の現在とっておられる制度というのはまだ存続をしているわけでありまするから、今早急にこの国家公務員の共済制度においてそのような状況をぜひ今回断行しなければならぬという理由は私はないと思うのであります。審議官が御答弁になっていますいわゆる超過勤務手当の問題も、私はあえて言わなかったのでありますが、御案内のとおりであります。したがって、一定の基本的な俸給月額といいますか、俸給にある程度の手当ともいうべきものを数値的に算出をしてそれを加算することにはやぶさかではありませんが、これがばらばらになるということについてはどうも私は承知でき得ないのであります。
そこで私は、国共審の答申の内容を読ませていただいたわけであります。国共審の答申の内容は実は両論併記になっておるわけであります。私は、本来ならばこれは、公益側及び使用者側委員、それから労働者側委員ともに歩み寄るべきところは歩み寄って話がなされるのが望ましいと思うのでありますけれども、しかし、必ずしも意見が一致をしないということもこれは間々あることであります。しかし、今回のこのような重要な問題が一致を見なかったという形の中で答申をされたということになりますと、法案を作成するに当たってはより慎重でなければならぬはずでございます。
したがって、私はお聞きしたいのは、こういった両論併記の答申を受けた場合における今回のこの法案の作成にその答申がどのように、どこの箇所に生かされているのか、この点をお伺いしたいのであります。本来ならば公益側委員、使用者側委員あるいはまた労働者側委員がそれぞれ述べられた議事録を拝見したいと思うのでありますが、難しそうでありまするから、このことについては配慮いたしまして申し上げないことにいたしますけれども、少なくともこれがどのような形で生かされてきておるのかということをひとつお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/166
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167・門田實
○門田政府委員 今回の共済年金制度の改正につきまして、国共審答申におきましては、ただいまお話ございましたように公益側、使用者側と労働者側と両論併記という形の答申をちょうだいいたしまして、一本の答申を得るには至っていないわけでございまして、この点は残念であったと思っております。しかしまた、審議会の考え方といたしましてむしろ問題点を明確にしていいではないか、こういう形でそれぞれの方々がそういう御意見をなさった、こういう事情もあるわけでございます。
それで、ただいまお尋ねの点でございますが、労働側委員の意見と公益側等委員との間で見解の相違が幾つかあったわけでございますが、その中で幾つかとり得るものにつきましては積極的に取り上げているところがございます。それは例えば、公務員の特殊性から職域部分を厚生年金に上積みしていく、こういった点、それから懲戒処分等による給付制限、これは従来給付額全体につきまして給付制限の対象としておったわけでございまして、これを撤廃という御意見もありましたが、これは職域部分のみに限定をしていくという形で限定してまいったということ、それから民間へのいわゆる天下りによりまして高給を得ながら年金を受け取る、こういう点につきましては所得制限を強化していくという方向で対処する、こういったようなことをいたしておるわけでございます。答申にございますように、意見が大きく分かれておりますポイントは、やはり基礎年金についての考え方、それから先ほど来お話ございました算定基礎の問題、それから減額退職年金制度、こういったものを残すべきか否か、こういう問題等であったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/167
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168・野口幸一
○野口委員 今審議官が言われたお答えの中で、先ほど私が申し上げました公益側委員及び使用者側委員の意見の中で述べられております項目で「なお、郵政省共済組合を代表する委員から、共済年金の算定基礎額を標準報酬方式とすることについては、本俸について相当程度統一性をもっている国共済グループの特性に着目して、いわゆる地共済方式を採用すべきであるとの意見があった。」というお答えが出ております。これは公益側、使用者側の委員の方からお答えが出ておる。これに対して労働者側委員は反対をしたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/168
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169・門田實
○門田政府委員 ただいまお話の点でございますが、この点につきましては労働者側は、この答申によりますると、算定基礎につきましては標準報酬方式を導入しない方を望まれる御意見になっておるわけでございます。それに対しまして公益側委員及び使用者側委員は標準報酬制でやろうという意見であり、その中で郵政省共済組合制度を代表いたします使用者側委員からただいまのようなお話があった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/169
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170・野口幸一
○野口委員 少なくとも使用者側と労働者側の意見が全部、数ではどうか知りませんけれども、意見の一致があったこの部分について実は生かされていませんね、はっきり申し上げて。今私は郵政省を代表しているわけではありませんから、全体のことでありますから、必ずしもそうならなければならないという議論を展開しようとは思いませんけれども、生かそうとする気持ちがないのですね。だから少なくとも、特殊的な立場にある郵政省なら郵政省については一体どうするのかということについても、他の公務員とは違った立場にあるということならばそれなりの方式が当然生かされてくるべきだと私は思うのですが、そういう点は考慮の余地がないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/170
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171・門田實
○門田政府委員 その点につきましては法制局の審査の段階でもいろいろ御相談いたしたりしたのでございますが、一つの法律の適用下にある共済の形として、何かそれぞれがそういったものが遣うということは不適切であるということで、それはやはり国家公務員等共済としては一本であるべきであろう、こういうことで、職場の実情等は職場ごとにそれぞれ違うわけでございますが、そこはこういう踏み切りにお願いいたした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/171
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172・野口幸一
○野口委員 納得できませんね。しかし、また先ほどの話に戻りますが、この標準報酬方式というのは短期の掛金にも影響してくるわけですね。そうしますと、はね返りの幅が余計広くなって不公平感が広がりますね。この点はどう思っていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/172
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173・門田實
○門田政府委員 その点は、議論で出ましたのは、標準報酬額が大きくなるわけでございますから、将来の年金給付額がそういうところは大きくなっていくということが一点ございます。ただし、現役時代の当面の掛金も大きくなっていく。(野口委員「いや、短期」と呼ぶ)短期につきましてはその掛金のみの、傘との兼ね合いでございますが、そういう方向にあることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/173
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174・野口幸一
○野口委員 だから、結局標準報酬方式を採用したことによって公平が不公平になっていく。職員間の負担もそうだし、給付も不公平になっていく、こういうことになっていくわけでありまして、本来の公平性というものを求めようとする年金の統合一元化という方向には逆行していくんじゃないですか。逆の形になっていくわけであります。だから、そういう意味でこの標準報酬方式というのは採用すべきでないと私は思う。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/174
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175・門田實
○門田政府委員 公的年金制度の方だけで議論いたしをすと、厚生年金等々も恐らく職場の実態ではそういうことがあるのでございましょうが、そういった標準報酬制というものでやっていっておる。私どもの方も職域部分を別にしますと厚年と横並びの水準で、かつ同じような算定基礎をとってまいるということで、そこはやはり制度間の整合性を図っていくという面では前進であるというふうに思っております。個々の職場の実態からそういう御議論は十分あるんだと思いますが、これはどちらかの踏み切りの話でございまして、私どもとしてはやはり厚生年金同様の標準報酬制の方が適切だ、こういうふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/175
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176・野口幸一
○野口委員 そのことでよろしゅうございますとは言い切れませんし、私どもはあくまでもこの問題については納得できません。
同時に、減額年金制度を今回廃止するわけですが、どういう理由でこれを廃止するというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/176
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177・門田實
○門田政府委員 減額退職年金の制度は、これは若干経緯を申し上げますと、恩給と給付を統合いたしまして現在の共済年金制度へ移行しました際に、これは平均寿今も短かったせいもございますが、従来恩給は四十五歳、それから給付は五十歳から年金が支給されておったわけでございまして、これを五十五歳支給とするということにいたしましたことを勘案いたしまして、五十五歳前でも御本人の希望があれば、額は減額になる、しかし年金は受給できる、こういう仕組みを設けたわけでございます。
実際に見ておりますと、減額退職年金制度で確かに早く受給できるという面はよろしいのでありましょうが、実は生涯にわたって、その後ずっと残存年数もふえてまいりましたのに減額された年金をずっと受けられるということは、どうも本当に老後保障が必要なそういう時期に十分な保障が受けられないということで、これは果たしてどうであろうか、こういう議論があったわけでございます。また、公的年金の大宗でございます厚生年金にはこの制度はないわけでございまして、最近におきます定年制の施行あるいは最近の標準的な退職年齢あるいは再就職による所得制限、いろいろなことを勘案いたしますと、やはり年金を五十代で受け取られていくということよかも、六十歳以降の本当に必要な時期に減額されない年金額を受けられるということの方が大切なのではないか、こういう考え方に立ちまして、十年間の経過期間を残しましてその後これを廃止する、こういうことに踏み切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/177
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178・野口幸一
○野口委員 これは、在職老齢年金制度を引き入れる、その代償みたいなものでこれを取りやめにするというのが本旨だそうでありますけれども、特に私考えますのは、女子の年金受給者、教育労働者といいますか学校の先生の女性の方、小学校の先生なんかは、六十歳まで勤務するということはほとんどない。また実態としては、大体五十そこそこでおやめになっていくケースが非常に多いわけであります。やはり少なくとも経過措置としてでもこの問題は相当期間延長をする、今言われたように残していく方向をぜひとっていただかないといけないのじゃないだろうか。女子職員の非常に多い教職員の皆さんだとかあるいはまたその他、先ほど言いました郵政の職場もそうなんですが、電電公社もそうでありますけれども、女子職員の非常に多い職場において特に強く望まれている問題でございます。
そういった点が実は先ほども申し上げましたように両論併記という形の中で国共審の結論から外れてしまっているところに問題点があるわけでありまして、それで、そのもとにつくられた本案の改正点というものが、非常にあいまいな形あるいはまた職場の実態に合っていない形、労働者の意に反したものになっている。また、先ほどから申し上げておりますように公平感がますます損なわれていく形の中で、改正じゃなくて改悪されようとしているこの年金について、私はどうも納得できない、これが私の実感であります。この問題については修正意見も私ども持っておりますので、もう一度ぜひ考慮をお願いをしたいと思っておるところであります。
その次に申し上げたいのは、国家公務員法の第八十二条並びに八十三条によって停職処分を受けた場合、給与の支払いが停止されるわけであります。考えてみますと、この法律は全く人権を無視した法律だと私は思うのであります。
これはまず人事院にお聞きをしたいのでありますけれども、国家公務員は兼業の禁止をいわゆる百一条、百二条で書かれております。全くよその仕事をしてはいけないということになっておるわけでありますが、給与が停止になるということは、これは死ねということになってしまうわけであります。何もするなということでありますから、できないわけであります。刑事罰で引っ張られて留置所に入るやつは、罪は罪であっても、あしたからでも実は三食つくわけでありますし、監獄でありますけれども寝るところは保障されるわけであります。ところが国家公務員は、本人の意に反して例えば事故なんか、善良な管理のもとに行ったとしても不可抗力的な要素があって事故を起こしたという場合だってあります。そういうことによって例えば停職処分を受けたということになりますと、直ちに翌日から給与がとまってしまう。本人はおろか家族全部、月給もらえなくなってしまうわけでありますから、全くその点については死刑を受けたような形になっているわけであります。こんなばかな法律が今まかり通っているわけであります。人事院、この問題についてどのようにお考えですか。(「恩給並みにしますと言え」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/178
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179・鹿兒島重治
○鹿兒島政府委員 お答えいたします。
現在の国家公務員に対する懲戒処分四種類のうち停職という懲戒処分でございますが、これは戦後の公務員制度で設けられた懲戒処分でございまして、当初よりその処分の内容といたしましては、職務に従事させないこととあわせて給与を支給しないということがその内容として今日まで一貫いたしておるわけでございます。そういう形で多年にわたりまして、今日では定着をした制度だというぐあいに私は考えております。
また、ただいま、営利企業いわゆる百三条の私企業からの隔離の問題と、それから他の事務事業の関与制限のお話がございましたが、この規定は御承知のように服務の規定でございまして、いわゆる他の営利企業等に従事することによりまして、例えば利害関係が生ずるとかあるいは公務員としての品位にかかわるとかいうような観点から、許可を与えがたき服務上の規定でございます。したがいまして、懲戒処分の問題とは別個に、ただいま申し上げましたような服務上の問題として、仮に許可申請がありました場合には判断すべき問題だ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/179
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180・野口幸一
○野口委員 そんないいかげんな答弁で私は引き下がろうと思いませんよ。今私が聞いたのは、こういう問題が事実上ある。それに対して、それは人権無視をしているのではないかという考え方がある。だから、それは人権無視になっていないとおっしゃるならなっていないと、そうお答えをいただければいいのでありまして、これは、停職をされたら給与がとまってしまうということについては死刑を宣告されたと同じような状況になるじゃないか。他の、破廉恥罪で警察に引っ張られて勾引されても、明くる日三食、飯は食えるのですよ。これは本人だけじゃなくて、家族にも全部給料やらないというのだから、食うところ、寝るところ、もちろん教育はおろか、あらゆる給与がとまってしまうというような状況を来すということ、これでどうして人間生きていくのですか、そういう処分を受けたら。
片一方、例えば恩給受給者に対する支給の問題、今そちらの方からも話が出ました。厚生年金は死刑が宣告されても支給されるんですね。そこのところへこれから話を持っていこうとするのですけれども、年金の問題に及ぶまでに、今言われている国家公務員の処分によるところのいわゆる人権無視的な処分のあり方、それがひいては年金の裁定にも関連をし、子々孫々までその罪といいますか、本人はおろかその配偶者が死ぬまで、あるいはその人が亡くなって年金権を失うまでその問題がついて回るという非常に矛盾をしたものがあるわけであります。それについてどうお考えなのか。これは正しいものだろうか、人権を無視していないだろうかということをお聞きしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/180
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181・鹿兒島重治
○鹿兒島政府委員 懲戒処分につきましては、戒告を除きまして必ず給与上の何らかの影響というものが出てまいります。減給処分は言うまでもございませんし、免職処分の場合には一切給与は支給されないということになりますし、また停職の場合につきましては停職の期間中は給与を支給しない、それぞれ給与上の効果が懲戒処分の内容として附帯しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/181
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182・野口幸一
○野口委員 そうすると、人事院としてはそういう処分というのはいわゆる人権無視ではないという考え方なんですね。当たり前だというのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/182
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183・鹿兒島重治
○鹿兒島政府委員 公務員法上の非行処分に対する制裁の内容である、このように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/183
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184・野口幸一
○野口委員 そんなことわかっていますよ。今私の言っているのは、そういう問題はあっていいか、そういうことはどう思うかと言っている。公平かどうかという問題ですよ、わかりませんか。そうなっているということは事実なんです。それをあなたはどう思うか、肯定するのか肯定しないのかと言っている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/184
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185・鹿兒島重治
○鹿兒島政府委員 昭和二十三年に国公法が制定されて以来そういう内容で一貫しておりまして、私どもとしましては懲戒処分の内容としてやむを得ないもの、かように理解いたしております。
〔熊谷委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/185
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186・野口幸一
○野口委員 やむを得ないということで済ませる問題ではないですよ。これから年金の問題に移りますが、年金の場合でもやはり生かされておって、いわゆる処分によるところの減額というものはあるわけですね。門田審議官、そうなんでしょう。片方恩給の場合は、今も横から話がありましたように懲役もしくは禁錮三年以上ですか、そういう者以外は全部支給対象になっているし、ましてや厚生年金の場合なんかは死刑の宣告を受けても厚生年金は受けられるのですよ。遺族年金ももらえるのですよ。片っ方国家公務員は、停職されたら明くる日から飯を食う金もくれなければ年金にも影響して、それが子々孫々というか配偶者が死んでいくまでいわばその償いと言われる部分が残される、あるいはそういう損失部分が残っていくというこの矛盾した現状をどのように理解しておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/186
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187・門田實
○門田政府委員 年金の方の御説明をいたしますが、厚生年金の話が先ほど出ましたが、厚生年金水準並みの報酬比例部分につきましては、こういった懲戒等による給付制限の対象になってはいないわけでございます。給付制限の対象になっておりますのは、いわゆる公務の特殊性、公務員制度等の一環としての性格を持ちますところの職域年金部分、これは基礎年金を合わせまして全体の給付額の八%強、こう言われております。その部分につきましてそういった場合に給付制限があるということでございます。従来は年金額全体につきまして給付制限がかかっておった。今度は職域部分だけである。
それからもう一つ、これはある期間が経過しますと治癒といいますか原状に回復するわけでございまして、これがずっと続くというものではございません。そこのところは治癒されるといいますか原状に回復されるといいますか、そういう仕組みになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/187
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188・野口幸一
○野口委員 都合のいいところだけは、標準報酬方式などは厚生年金並みにして、そしていわゆる職域年金の部分の制裁におけるところの減額については、これは公務員だからといってそれを採用する、甚しく不公平じゃありませんか。先ほども不公平な話をしましたが、これまた不公平じゃありませんか。将来は全的統一をしようあるいはまた一元化をしようというのでありますから、そういうことをむしろ消していく立場で統合していかなければ一元化の意味がないのじゃないですか。都合のいいところだけは都合のいいところにひっつけて、例えば標準報酬方式などを編み出して考えていけばいいかもしれないけれども、片方のぐあいの悪いところはそのまま残していこうとする。これは、国家公務員共済を受けている部分で例えば電電公社あるいはたばこ株式会社の人々は国家公務員ではないのですが、そうすると共済の場合はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/188
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189・門田實
○門田政府委員 日本たばこ等の人につきましても同様な扱いで、職域年金部分が設けてあるわけでございます。
ただ、私の御説明が悪かったのかあるいは誤解をお招きしているといけないのですが、今議論になっております職域年金部分といいますのは、厚生年金の方にはない部分の話でございます。その分につきましての給付制限のお話を申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/189
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190・野口幸一
○野口委員 その部分は納得できませんが、時間がありませんから、次に移っていきたいと思います。
次に、年金財源の負担はどうあるべきかという点について若干申し上げて、御意見をいただきたいと思います。
大臣、将来老齢化社会が進んでいく、いろいろ給付の額がふえるということも一つはございますが、年金の財源というのは、将来国民皆年金、一元化の暁はどのような形で財源を求めていくのが一番最良と思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/190
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191・竹下登
○竹下国務大臣 私が私的に大変興味を持ったのはいわゆる目的税という問題に興味を持ったことがかつてございます。しかし、今度税そのものから考えると、いわゆる目的税というのは硬直する税制になりますし、税というのはやはりすべて色のつかない歳入があって、それを国民のニーズに対応して柔腕の選択をしてこれを配分するという性格のものとの位置づけからすれば、やはり目的税そのものには基本的な問題はあろうかと思っております。
したがって、税の抜本改正問題は今進行中でありますが、現時点で私どもがこの長期な安定した整合性のある問題ということをとらえてこれを考えてみますと、現行の社会保険システムというのがやはり一番妥当ではなかろうかという結論に達したからこそ、本法律案をお願いしておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/191
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192・野口幸一
○野口委員 現在はやむを得ないとしても、将来は、今はしなくもおっしゃいました目的税の導入ということについて全く考慮の中にない、あるいはまた一般会計とこれを分離いたしまして社会保障勘定という勘定分離を導入してやっていこうという考え方、そういうものもお持ちじゃないということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/192
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193・竹下登
○竹下国務大臣 今彼に分離勘定にしてやりますと、やはり財源というのは目的税というものが考えられたときにそういうシステムになっていくのじゃなかろうかな。
私、あえて個人的にと申しましたが、一般論としても示唆に富んだ考え方であると今でも思っておることは事実でありますが、先ほど申しましたように、目的税は財源の適正な配分をゆがめて財政の硬直化を招く傾向を持つということから、税体系としては好ましいものじゃないんだ、こういう議論が一つございます。それからもう一つは、目的税というものの上がりの多寡によって違っできますけれども、いわば聖域をつくることに完全になってしまうということでございます。それから一般的に、社会保障だけは、聖域という意味とやや同じでございますが、別枠だよ、こういうことに間々なりがちではないか。そういうことを考えますと、もちろん今税制調査会の抜本改正の作業が進んでおりますが、それは別においておくといたしましても、やはり慎重な検討を要する問題だというふうに考えております。
ただ、一般的に示唆に富んだ提案というふうな受けとめ方をしたことも事実でありますし、また個人的に非常に興味を持って勉強したことがあることも事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/193
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194・野口幸一
○野口委員 我が党は御案内のように、将来、所得型付加価値税、これは直接税でありますが、これを目的税として導入した方がいいんじゃないかという意見があるわけであります。今大臣もおっしゃいましたが、一時大蔵省も、この構想について賛意とまではいかなくても、そういう方法もあるのかな、一つの考え方だというようなことで御意見をいただいた経過もあるわけであります。
少なくともこれから将来の年金の財源というものを考えてまいりますと、先ほどから申し上げておりますように老齢化社会が急速にどんどん進展していく、掛金の賦課率というものは、これも限界が個人的な場合においてある、あるいはまた標準報酬方式なるものを取り入れることによっての不公平感というものが拡大されていく等々のマイナス面を考えるときに、やはりよりよいものを求めるとするならば、所得型付加価値税というものを望んでいく方がいいのではないかなという気がするわけであります。決して私ども増税を喜んでいるわけではありませんが、一方、掛金だけで年金財源を処置をしていくということについては、必ず将来ひずみが非常に大きくなりはせぬかということを考えて申し上げているわけであります。
これはもう大臣は玄人でありますから今さら私が御説明申し上げるまでもなく、多くの学者が今回福祉目的税構想というものについて御意見を述べられております。これはいずれも間接税を対象にして考えておられるようでありますけれども、私どもはそれを否定いたしまして、直接税で目的税を創設すべきであるというような考え方を出しておるわけです。今大臣にお聞きをいたしますと、必ずしも御賛成でないようでありますけれども、重ねて申し上げますが、将来こういう姿というものは考えられないものか。もう一度お聞かせをいただければ幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/194
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195・竹下登
○竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、高齢化社会を迎えて社会保障費がどんどん増加していくというようなことを考えましたとき、それの安定的な財源として、目的税というのは普通考えやすい一つの方法だと思うのであります。かつて日本社会党案でお出しになりました、今おっしゃったいわゆる所得付加の問題、これについては、当時議論しましたのは、そもそも所得税というのはちゃんと刻みも持って累進税率も効いているんだから、その中で一般的に富の再配分がなされておるのだから、それの上にまたこぶをつけることに対してはいかがか、こんな反論をしたことも覚えております。
一方、今学者の方等からもたくさん出てきておりますのが、いわゆる間接税でもってこれを福祉目的税にしたらどうだ、こういうような意見も出ております。それについて、考え方からいいますと、何と申しましょうか、仮に増大していくのを抑えようとすれば、低い目的税があったらそれが一つの歯どめになってむしろいいのじゃないか、こんな議論をしたこともありますし、それから高い目的税であったらこれは無限に伸びていくのじゃないか、こういう議論をしたり、さまざまな議論をしたことがございますので、現段階においてはそういう問題点があるということを申しておりますが、私はきょうは、それはだめよというお答えをしないで、検討すべき課題だという意識を持っているということを申し上げているのも、これは個人的に少し関心があり過ぎた嫌いもあるかもしれませんが、そんなことでお答えをしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/195
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196・野口幸一
○野口委員 この問題は、専門であります武藤さんが後ほどまたおやりのようでもございますので、そちらの方に譲っておきたいと思います。
先ほど同僚委員の質問にもございましたが、婦人の年金権の問題について最後に申し上げてみたいと思います。
今回、基礎年金導入に当たりまして、婦人の年金権がこのことによって確立をした、こうお考えのようでありますが、そのことについて審議官からの御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/196
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197・門田實
○門田政府委員 この問題は、基礎年金構想の議論の中で非常に議論された問題でございますが、共済組合の組合員につきましても、被扶養配偶者につきまして今度基礎年金に加入するということになりますと本人名義の基礎年金が支給される、こういうことでその適用を受けるわけでございますが、今日の社会的な状況、つまり婦人が社会的にも非常に進出しておりますし、地位向上の動きもあるわけでございますし、また一方で、離婚した等の場合に従来ですと長年連れ添った奥さんでも無年金者になってしまう、こういう矛盾があったわけでございまして、そういう面につきましては一つ前進であった、こういうふうに考えております。老後の老齢基礎年金という問題だけでなくて、妻が障害の状態になった場合の措置でありますとか、そういう点までも個々に見ていきました場合に、今回の改正はやはりそれなりの大きな意義がある、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/197
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198・野口幸一
○野口委員 五万円もらおうといたしますと、四十年間その組合員と一緒に生計をともにしなければならないわけですね。そうでないと年金権の五万円というのは取り得ないのですね。年金そのものは二十五年から発効いたしますが、結局、仮に五万円もらおうと思うと、四十年間妻の座といいますか配偶者の座、婦人が組合員の場合は夫が配偶者でありますから、男の場合もあるわけでありますけれども、いずれにしても配偶者が四十年間生計を一にする、こういうことが条件になっているようでございますね。
この生計を一にするということで、これはまことにちょっと下世話な話になりますが、戸籍上の妻があって内縁の妻がいる場合、内縁の妻の方ばかりへ行ってそこで生計を一にしておった場合には、戸籍上の妻には年金権がなくて、その内縁の妻の方にその年金権が存在をするということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/198
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199・門田實
○門田政府委員 これは基礎年金、国民年金を所掌いたします厚生省でございますので、あちらにはそういう方の話の大専門家がいるのだろうと思いますが、私、余りそういうことは詳しくございませんで、なかなか難しい御質問だと思いますが、やはり本妻の方がおられるならばその方なのではなかろうか。本妻の方がおられるのであれば、恐らくはその方であろう。そうじゃなくて、戸籍上婚姻関係がなくても実質的にというような場合は、別に正式の婚姻でなくても、そういう方がそういった被扶養配偶者という認定を受けるケースが多いと思いますが、両方おられるという場合は、これは実態に着目していくのでありましょうが、それはまたよく調べてみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/199
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200・野口幸一
○野口委員 審議官、それはよく調べてみますというのじゃなくて、やはりいろいろな例を考えてからでないと、いわゆる婦人の年金権というものが確立したとは言えないんですよね。
例えば今度は、今女性の方がいらっしゃいますしなんですけれども、女性蔑視をするつもりはもちろんありませんけれども、たまたま、本妻という言葉を使うとおかしなことになりますから、妻がなくて同棲をしている場合、この同棲をしているいわゆる女性に対して、四十年間一緒に同棲しておれば、これは年金権はあるんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/200
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201・門田實
○門田政府委員 それは御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/201
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202・野口幸一
○野口委員 そうすると、その同棲をしておるという証明はどこでとるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/202
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203・門田實
○門田政府委員 これは、私ども共済の場合ですと、本人からの被扶養申請を受けまして、それをやはり認定する作業というのがございまして、その中でチェックされた上で、事実がそうであれば認定をされる、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/203
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204・野口幸一
○野口委員 それは、この認定をするに際してのいわゆる資料はどこで求めようとされているのですか。あるいはまたもう一つは、全期間でなくても、生計を一にしたのは今申し上げましたように五万円の場合は四十年という、そのうち十年間だけはそういう形で生計を別にしたという事実が仮にあるとするならば、五万円の年金権はありませんね。その場合にもいわゆる証明が必要なんですね。いわばそういう喪失している期間があるということが生じた場合に、どこでそういう点を確認されようとしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/204
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205・門田實
○門田政府委員 それは、現実には健康保険等の場合にもそういった、公務員の場合ですと共済事務担当のところでチェックをいたしておるわけでございまして、それと同じような手続で今のこの長期給付の場合の認定も行われる、こう考えてよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/205
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206・野口幸一
○野口委員 そんないいかげんなことで年金を支払うんですか。だから、いわゆる生計を一にしているという証明というのは事実上どれないのじゃないですか。あなたが仮にそういう事務をなさる場合に、そういう申請があった、結婚はしていない、同棲をしていると言われている、しかも生計を一にしているんだということは、本人の申告はあったとしても、第三者がどういう形でそれを認めるかということになった場合に、どういう書類をもってあなたはそれを認定なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/206
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207・門田實
○門田政府委員 私ども共済職員の場合には本当のレアケースになるのだと思いますけれども、その場合にはやはり住民票でありますとかそういった所定のものを提出させて、そういう実態であるかどうかを確認する、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/207
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208・野口幸一
○野口委員 住民票というのは、あなた、一緒に住んでいるという住民票なんてないですよ、個人個人の住民票はあるかもわからないけれども。Aという女の人が新宿区におって、Bという男が品川区にいるという場合の住民票はそれぞれのところでとれるかもしれません。これが生計を一にしているものだという証明はどこからも生まれてきませんよ。生計を一にしている者だということをどこで認定するのですか。近所のおばさんがやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/208
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209・門田實
○門田政府委員 私どもの場合ですと、そういう申請をチェックするということで、それは上司の証明のような場合もありましょうし、あるいは……(野口委員「上司がそんなことわかるかよ。一緒に住んでいるか住んでおらぬかわからぬじゃないか。アパートにのぞきに行くのかよ」と呼ぶ)共済事務というのは今現実に行っておるわけでございまして、現実にそういうことの処理がなされておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/209
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210・野口幸一
○野口委員 あなたをいじめるわけじゃないですけれども、事ほどさようにあいまいなんだよね。婦人の年金権を確立したといっても、婦人というのは、今の場合は妻ということにはなっていないわけでしょう。配偶者ということになっているわけでしょう。その配偶者とは一体何ぞやということになってきたら、生計を一にする者ということになって御説明なさっていらっしゃるわけでしょう。ところが、籍を入れない人を対象として生計を一にしているということで申請をされた場合、だれがそれを証明することによって年金権を獲得することができるのかということを聞いているわけですよね。そうなってきますと、同棲をしている、いわゆる生計を一にしているという証明を出す者はだれもいないじゃありませんか。そうなってくると、例えば女性の場合、組合員が男で、配偶者的立場にある人が女性の場合だったら、女性の年金権というのは確立されていないじゃありませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/210
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211・門田實
○門田政府委員 お尋ねの点は、申請をいたしまして、そこでそういったチェックを経るという問題でございましょうが、その証明ができません場合にはそういった被扶養配偶者ではなくなるわけでございまして、今の制度でいきますと、今度はこれはそういった公務員の奥さんという範疇から外れまして、いわゆる国民年金の第一号被保険者という形でそちらへ入らざるを得ない、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/211
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212・野口幸一
○野口委員 そうなりますと、これはどうも今回の基礎年金によって婦人の年金権が確立されたということにはならないわけですね。国民皆保険ではないし、皆年金でもないし、それから婦人の年金権を確立した年金制度であるとも言い切れないということになるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/212
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213・門田實
○門田政府委員 一号被保険者といいますのは、いわゆる自営業者等のグループでございまして、国民年金の対象者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/213
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214・野口幸一
○野口委員 今のこの年金法によって生じてくるところのいわゆる生計を一にする配偶者たるべき人という、その見解について申し上げているのだよ。だから、これをもって年金権が確立した、婦人の年金権が確立したんだとおっしゃるから、確立されていないじゃないかということを言っているわけだ。だから生計を一にするという対象者というのは、どこでどのような証明によって年金権を確立するための資料を取ることができるのかということを聞いているわけです。できないじゃありませんか。そうしたら年金権は確立してないことになるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/214
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215・門田實
○門田政府委員 先生言われている問題は、確かに、実務的に四十年間にわたってそういうフォローの問題が本当にきちんとできるのであろうか、こういう議論として、かなり国民年金の方の審議をされたときにそれ自体議論になった点であるということでございまして、大事な点なんだと思います。ただ、それはむしろ一般の方の場合に、自営業者等そういう方の場合に非常に問題になるケースがあり得るので、公務員の場合ですと、やはり何といいましても健康保険等を中心に本人並びにその被扶養者あるいはその子供たち、そういうもののチェック体制といいますか、通常の場合よりはうんときちんといたしておりますから、公務員の場合にはそういう心配はほとんどない。ただ、レアケースとしてはそういうケースがあろうかと思いますが、これはやはり同居なら同居の実態をチェックした上で認定する、こういう話だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/215
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216・野口幸一
○野口委員 くどいようですが、余り残り時間ありませんから、この問題ばかりやっているわけにもいきませんけれども、とにかく今さしあたって申し上げておきたいことは、四十年間組合員とともに生計を一にした者が存在をすればそれが五万円の年金権を得る、そのことによって婦人の年金権が確立をしたとおっしゃるものだから、それは全く不確実なものであるということをはっきり返事をしておいてもらわなきゃならぬということなんです。そういうふうにはなってないんですね。
だから逆に言うならば、今四十年間というのは、四十年ではなくて三十年でも、あるいはそのうちのどれだけが欠けていても年金権は確立されないわけですから、欠けている部分についての一体どういう証明書なり、どういう資料によって第三者的にそれを証明することがあり得るのかというと、実はない。ないということは、結局婦人の年金権を確立したというところまではいっていない、逆から言えばこういうことが言えるんじゃないですか、そこのところを私は言っているんです。
だから、例えば、御案内のように最近離婚がどんどんどんどんふえまして、あるいは同棲をしておりましても結婚はしないという数字もお調べのようにどんどんふえてきておる。そういう場合に、生計を一にするというその一つの認定基準といいますか、それは全く不可能に近い状況で、それを認めるか認めないかという判断基準がない。不可能に近い状態であるということは、結局は婦人の年金権というものは確立したということにはなっていない。だから余り大上段から振りかぶって、このことによっていわゆる婦人の年金権が確立したなんということはおこがましくも言ってもらいたくはない。
そういう問題がまだまだたくさん残っているということを、ひとつ審議官もよく考えておいてもらいたいと思うのですが、一体その問題は今後どのように処理をしようと思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/216
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217・竹下登
○竹下国務大臣 私も定かに記憶しておりませんが、厚年、国年のときにその議論があったと思います。そして、そのときはたしか世間様が認定するというようなことが議論されておりました。世間様とは何だといったら、町の世話役さんのことかなと思って聞いておったら、厚生省の方は何とか指導員とかなんとか言われたような感じがしますが、そのときにもう一つ同じようにありました議論としては、配偶者の方が男性だった場合氷やっぱりそういうことはあり得るというような議論もありました。したがって、極めてレアケースであろうと思いますけれども、今からちょっと厚生省の方にもよく聞いてみまして、我が方の連合会にもよく聞いてみまして、そういうレアケースの場合の処理の方法は、この席からでもよろしゅうございますが、調べた後、正確にお答えした方がよかろう、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/217
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218・野口幸一
○野口委員 それでは、その問題は残しまして、後日お返事をいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/218
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219・中川秀直
○中川(秀)委員長代理 伊藤茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/219
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220・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 先ほどの野口さんの質問の中にも国共審の運営態度のことがございましたが、審議の終わり近くになってそもそものことを聞くのもなにであるような気もいたしますけれども、大臣に一言伺っておきたいと思います。
実は、きのう、参考人として総評の江田副議長が御出席になりました。冒頭陳述を伺っておりましたら、その一番最初の部分で、国共審が異例の両論併記になった経過、背景、そしてまた、その後国鉄監理委員会の意見が出されまして、重大な関係のことでございますから出席を求めたが出席をいただけないなどについての不満が強く出されました。私もそれを伺っておりまして、今後のこともありますから、けじめをきちんとすべき問題ではないだろうかと思うわけであります。
この前のどなたかの質疑の中で大蔵大臣は、なぜこんなに遅くこんな経過になったのか、何か機が熟するとか熟しなかったとかいうふうな感想を述べられておりましたが、私は江田参考人の発言を伺っておりまして、いろいろ関係者にとっては非常に苦しい立場だろうと思うわけであります。国家公務員が今八十万、九十万ですか。場所は違いますけれども、地共審の方ならば地共も百数十万の組合員の方々を擁している。その方々に将来の人生設計について責任のある説明をどうするのか、どれだけ要望にこたえていくのか、そういう組織人としての責任を担っているという立場からいたしますと、何も既得権擁護の理屈を言っているわけでもないし、大所高所からいろんな立場を込めながら、非常に苦悩しながら、した経過だということを実は個人的に伺っていても思うわけであります。大臣は麗しき労働者の連帯という意味のことを再三ここでも表明をされました。言葉はまことに結構なことだと思いますが、それにこたえることが大事だと思うわけであります。
麗しき連帯の言葉を考えておりまして、ずっと前にも伺ったことかなと思って前の議事録を見てみましたら、五十八年秋の国鉄財調に関する統合法案の議論のときに、私があのときにも、審議会の答申内容を読みますとまさに苦渋に満ちた感じがいたしますということを申し上げましたら、あのとき大臣は、議事録を見ていましたら、「よかれあしかれ答申という形になったゆえんのもの」は何か、それは、「まさに連帯の精神がそこまで来た、深々とこうべを下げて手を合わせ拝みたい気持ちであったと、これは率直な私の感じであります。」というのがございました。
あのときの答申でもそんなお気持ちを持たれたわけでありますけれども、ちょっと厳しい表現で恐縮でございますが、今度の場合でいいますと両論併記、そして異常な形で実は終わって、また使用者側、公益委員の意見ということをベースにして法案が策定をされる。私は、年金というのは、ほかのどれよりも社会的合意が大切にされるべき分野であろうというふうに思うわけであります。この前は手を合わせるような気持ちだったが今回このような踏み切り方をされたというのは、今回は勝手にしろという気持ちではないと思いますが、そうも言いたくなるような当事者から見た経過ではなかろうかと思うわけでありまして、そのお気持ちをまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/220
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221・竹下登
○竹下国務大臣 まず、五十八年に伊藤さんにお答えいたしましたときは、私は、両論併記であろうと、あるいは極端に言いますとけしからぬという言葉であろうと、答申がいただきたいというような気持ちになっておりました。答申をいただければ相談もしながら法律が出せる、事ほどさように国鉄問題が急を告げておるという問題意識があったということ、それでまさにあのときが機熟したという感じがいたしまして、それで私、審議会に出たわけじゃございませんが、懇談会でございますとかいうときに、決してこれは圧力をかけたのじゃなく、本当に真情を吐露し、お互いが不満なことを言い合いながらお願いをしまして、それで答申を出していただいた。そのときの心境というのは、本当に僕は、まさにこれこそ労働者連帯だ、深々とこうべを垂れて手を合わして拝みたいような気持ちであった、これは本当にそのときそう思っておったから申し上げたわけであります。
それで、一遍その手をやったから今度は両論併記でもいいや、こういう生意気な考え方は持っているわけでは決してございません。今度の場合も非常に苦渋に満ちた、実際何回か模索され、そして亀井さんをどうでも一回出してくれ、大蔵大臣、おまえさんあっせんもしてくれぬか、こういうようなお話もありまして、いろいろその間の事情を承知しておりますので、その苦渋に満ちた気持ちの上で今度お出しいただいたということに対して、私は、あの当時と少しも変わらない労働者連帯の崇高な姿というのは今日も意識いたしております。
そこで、それにもかかわらず出した、こういうことになりますと、公益側と使用者側からは「年金改革の基本的方向からすれば、やむを得ない選択である」こう言われ、それから労働者側からは、容認しがたい等の理由から反対の立場での意見表明が行われた。したがって、一本化できなかったのは残念でございます。これは一本化した方がいいに決まっております。
それからもう一つの問題は、制度審の答申がございまして、この答申においては、「公的年金制度の一元化を進める道筋に沿う限りにおいて」、これも苦渋に満ちた表現でございますけれども、「一つの選択であろう。」こういうふうに述べられたわけであります。
したがって、それらの答申の内容を踏まえ、かつまた、機が熟したという意味とは今度はいささか違いまして、高齢化社会に備えて、給付と負担の均衡を図って長期的安定を図るためには、やはり今が時期じゃないかなという判断をいたしまして、そこで改正法案の提出を行うに至った。したがって、今回の答申の中で指摘されております国鉄共済年金の問題、負担側の制度間調整の問題等については、答申の趣旨を踏まえながら今後検討していかなければならぬ課題は残っておるというふうに認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/221
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222・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 私も、国共審の経過、特に五十八年秋の法律が決まった後の経過を伺っていますと、まことにこれは苦渋に満ちたとでも申しましょうか、大蔵省の担当の出席した方々も共同でそうだったかもしれませんが、関係者にとっては非常に苦しい、悩み多い議論だったと実は思うわけであります。また、さまざまの不信感が生まれたのも、あの五十八年の法律が通って、そして財政調整の作業に入る、さまざまの基礎データをどうするのか、その入り口のときからさまざま大きな不信感が発生した経過も実はあるわけであります。最後には亀井さんの問題もあったわけでありますが、やはりこういう問題でも、年金問題というのはほかのどれ以上に生涯設計にかかわる問題でありますから、極力合意を求めるということが非常に大事であろうと思います。
いずれにいたしましても、大臣は当然だろうと私は思いますが、一つはこのような今後の問題ですね、今後さまざま議論しなくちゃならぬ。今後同じようにとげとげしくなるような、あるいはどうしても意見が対立するような状態でないように、また関係者が苦渋に満ちたような状態でないような努力をふだんからやらなければならないということが一つあると思います。
それから、私は率直に申し上げまして、労働組合の代表の皆さんも数十万の組合員の立場をどう守るのかという責任感を持っていろいろと意見は言われておるわけでありますから、最終的にはさまざまな調整、合意のためにも努力もしなくちゃなりませんけれども、そういう意味でいいましたら、大臣が深々と頭を下げて手を合わしたいような気持ちであった、そういうお気持ちというもので、竹下さんも非常に人情深い人でありますから、それにこたえるような態勢と対応をとっていく。それが、先ほどの大臣の気持ちからしても私は当然の今後の対応であろうと思います。
それで、一つ伺いたいのでありますが、先ほど野口さんの質問の冒頭にも、けさの新聞に報道された昨夜の政府側の関係者の協議の模様についてお話がございました。確たる結果は明日でも官房長官から伺うというふうなことになると思います。
ただ、私は、今後を考えますとこう思います。いずれにしても政府側の方が、国鉄救済の問題も含め、政府としての一定の責任もこれは果たさざるを得ないであろう。しかし、全体的には、大臣の言葉をかりれば、まず兄弟の助け合い、次に親戚の助け合い、最終的にはオールジャパンというふうなことに実はなるわけでありますけれども、そういうベースが、今の国共審、地共審、今度の法案の審議の経過あるいは今日の法案の審議の経過と同じペースでずっと進んでいったという場合には、非常に不幸なといいますか、議論になってしまうのではないだろうか。言うならば、さまざまの不満やストレスがたまって、そして今日の法案の審議も長時間にわたっているという状況があります。これはここでは兄弟間のことであります。それが次には親戚関係ということで地共済になるのでしょうか、そちらの関係者にも同じような雰囲気で広がっていく。最終的には厚生年金になりますかオールジャパン、何かストレスが、あるいは不満が今の調子で拡大をする延長線のような議論というものは、どういう場をおつくりになるか知りませんけれども、またその想定もいろいろ研究はされていると思いますが、非常に望ましくないというふうなことだと思います。
私の希望から言うならば、厚年、国年の議論の最終段階で、参議院での御存じの修正がございました、私どもの望むような形、表現には全部なっておりませんけれども、附則の修正がなされております。私は、やはり何らかの形で制度全体についでさまざまな意見を吸収して将来設計を考えることが望ましい。後ほど厚生大臣がお見えになった機会にまた論点を申し上げたいと思いますが、六十五年、七十年大統一まで今のままで、あるいは今のペースで円滑に進み、また国民の合意が得られるということは非常に難しいだろうと思います。今は官民格差が政治の土俵にのっておりますけれども、今とは違ったさまざまな新たな社会的矛盾がこの年金に関係をしていろいろと出てくるのではないだろうか、これも後ほど申し上げたいと思いますが、そういうふうな気がするわけであります。
政府部内の調整も毎晩やって、難航して苦労されているというふうなお話でございますけれども、政府部内もそうであるわけでありますが、国民に向けて、何か今後の作業のペースというものは、今までのペースとちょっと変えたといいますか、より幅広い展望を持った中で考えていくとか、ちょっと視点とベースを変える必要があるのじゃないだろうか。変えてみたって、何か一つのことをきちんと解決しようと思えば、こういう問題ですから、最低五年ぐらいかかるだろうと思います。
〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
案をつくるのにも、例えば大河内さん時代の制度審で幅広い議論をするとしても二年ぐらいはかかるだろう。先ほど目的税制が是か非かの議論がございましたけれども、何らかの将来展望でさまざまの方式の議論をし、また国民的合意を得るためにも、やはり何年かの期間がかかると思います。
そういう時間のかかる問題だということを含めて考えてみますと、参議院のあの修正事項を今すぐどうと言っても、大蔵大臣も関係者の一人でございますが、すべて大蔵大臣が決裁なさったわけでもありませんから、それを答えを求めようとは思いません。しかし、そういう姿勢での何か今後のことがないと、国共審で起こった苦渋に満ちた事態がさらにさらにいろいろな部面に広がって、同じようにオールジャパンに至ってしまうという不幸な状態になるのではないだろうかというふうに私は思うわけであります。具体論まではお答えしにくいと思いますけれども、考え方がございましたら御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/222
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223・竹下登
○竹下国務大臣 私の経験した国共審、あれは三回と言ったらいいかもしれません、最初は統合法案、その次は財政調整のとき、それから今回とその対応をしまして感じたのは、確かに苦渋に満ちて、そして私自身の物の考え方としても、それぞれ代表の方が後ろに数十万の組織を背負っていらっしゃるということはいつも前提の上に置いて話をしようじゃないかという姿勢は、過去もとってきておりますし、今後もそういう姿勢で対応しなければならぬ、これは私の政治的な信念の一つでございます。
しかし、そういう姿勢で対応したといたしましても、あの国共審の場を延長して仮に地共審あるいはいろいろなところで考えてみますと、率直に申しましてああいう苦渋の模様が何か描かれるような気がいたします。そうなれば、それはおっしゃったように目的税論議なんというものも出てくるかもしれません。今の場合どういうものであるかということを私、今直ちにお答えできるわけじゃございませんが、その具体策を検討する場を早急に設けるべきであるという審議会の答申もございますし、私どもとしては、国鉄の監理委員会から出たあの意見というものがどういう形になって法制化されるかということもまだ判然としませんが、そういう問題のあり方と、それから当然のことながら公的年金の一元化の動向を含めて、これは政府全体で取り組んでいかなければならぬ問題だ。そのときに、私的な勉強会もあるかもしれませんが、どういうことにするかということについては、その具体的な場所ということについてはまだそこまで考えが詰まっていないという現状でございます。
しかし、苦渋に満ちたああいう審議会の延長版、拡大阪ができないように対応していかなければならぬということはつくづくと感じております。苦渋に満ちながらも答申していただいたから、これからも苦渋に満ちながらも答申がもらえるであろうというふうな安易な考え方で臨んではならぬというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/223
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224・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 今の問題は竹下さんだけ責めるものではございませんから、ぜひ検討いただきたいと思います。単一の仕組みではなくて、複合的な仕組み、重層的な仕組みなどを含めて、さまざまの議論がなされるべきであろう。そして、良識ある日本の国民ですから、財政状態もわかりますし、経済の状態あるいは自分の暮らしの状態、みんなやはり真剣に考えている今日の時代であります。ですから、そういう中でさまざまの意見を吸収しながら何か合意のできる、要するにストレス対ストレスではない方向というものをさまざまに模索する、そういう形で議論がなされないと、けさの新聞の見出しを見まして、そうなっているのかどうかわかりませんけれども、ああやはり二段、三段の助け合い体制に持っていくのかな、しかし、それだけでは国民は納得できないだろうなというような気もいたしますので、ぜひ内閣におきまして工夫をいただきたいと思います。
幾つか個別的な問題を伺いたいと思います。今までさまざまに主要な論点についての議論がございましたから、建前の議論を改めて強調しようとは思いません。やや具体論を伺っていきたいというふうに思います。
一つは職域部分の、三階部分の設計、それから報酬比例部分、二階部分の設計に関する問題について数点伺いたいと思いますが、まず三階部分の設計について、なぜ千分の一・五ですか、二階の二〇%ですかという質問が再三ございました。公務員制度の特殊性とか、公務の特殊性とか、民間との対比ということもあったのでしょうか、さまざまな一般的な御答弁が大変まじめな門田さんからございましたが、しかし何となくみんなはっきりしない。要するにまあまあこれぐらいということなのかなというふうな受け取り方で質問者もいらっしゃるようであります。
ちょっと端的に伺いますが、なぜ千分の一。五ですか。なぜ千分の一・四ではいけないのですか。なぜ千分の一・六ではいけないのですか。計量化されるわけですから、一般的な理屈を、わかるように、そこを説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/224
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225・門田實
○門田政府委員 この職域年金部分につきましては、その設計をしました根拠というものは、公務員制度等の一環であるということで御説明をいたしております。お尋ねは、その上に立ちまして、その一・五と定めた理由いかん、こういうことなんでございますが、お話の中にもありましたように、私ども、まず最初に、民間における企業年金を参考にいたしたいということでいろいろ調べたわけでございます。企業年金の態様とか水準、費用負担のあり方はさまざまで、そこから一応の結論を得るわけにはなかなかいかない、こういうことが一つあったわけでございます。そうしてこれは国共審等でも大分議論になったのでありますが、この公務員の職域部分は厚生年金水準の上に幾ら積むべきかという議論、これは一様の、一つのもので定めるというものではなかろう。しかし、今後の現役職員の負担を考え、いろいろの制度の整合性ということを考えますと、やはり厚羊水準より一割程度といいますか、その辺に限度があるのではなかろうか、こういうことがあったわけでございまして、あとはこの現行からスタートしまして完成時、二十年後に持っていくという姿の中で、全体の給付水準等をにらみ、個々の適用の実態をにらみまして、この千分の〇・五からスタートいたしまして二十年後に一・五に持っていく、こういうなだらかな傾斜でそこへ到達する、こういう仕組みにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/225
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226・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 さまざま考えてという経過は、私、検討委員会の関係者からもいろいろと伺いました。そういうことで決まったようでありますけれども、それ以上一般論の議論はいたしません。
ただ、一、二伺いたいのでありますが、要するに、社会的に公務員として許容される範囲とか限界とかあるいは額とかというふうなものが確かにあるのだろうと私は思いますね。そういうものをどうすべきなのか。また、一般社会からもこの程度はと言えるような、そういう一つの判断が必要であろう。要するに、国家公務員の労働者から見てこうあってほしいということもあるし、それから社会的な一つのラインというのもあるかもしれません。そういうものを考えてみますときに、これは公務員という枠だけの一般論ではなくて、世間全体の状況ということもあるのだろうと思います。それが今後どうなっていくのかということも考えなければならぬと思います。二十年というタイムラグを設けてというあれなのですが、今後二十年の間にも私はさまざまのことが起きるのではないだろうかと思っております。
この間、この法案の関係でいろいろ読んでおりましたら、これはきのうも参考人で前銀行局長、所長がお越しいただきましたが、野村総合研究所がこの六月でしたか出したブレティンの中に、「年金改正と三十万円年金への提言」というレポートがございまして、大変おもしろく私もそれを読んでみました。公的年金、企業年金あるいは個人年金、さまざまの提言も書いてございます。あるいは、今後の社会展望の中でややユニークな幾つかの提言などもございました。
例えばパートタイマーへの年金、簡易保険みたいに安易な形で点数計算というふうな提案がございました。これは、パートタイマーも三百万人、しかも日本の労働者、就業人口の中では固定して存在をする。それらの方々は、労働条件はまだそう安定はしていない。しかし、何らかの簡便な方式でのそういうものができれば、将来六十、六十五歳以降のときに一万円でも一万五千円でも上積みされるということが非常に助けになるのじゃないかとか、非常におもしろい提言などもございました。それは別途やりますけれども、ございました。
それを読んでおりまして、また、この執筆者にもお話を伺いましたが、例えば一部上場企業と申しましょうか、大企業と申しましょうか、日本の労働者で言えば十人に一人ぐらいとなるわけなのかもしれませんが、そういう中では三十万円年金、もちろん退職金引き当てという部分が必ずしも全部ではありませんで、退職金ファンドという面が大きなウエートを占めるわけでありますけれども、仕組みは違いますが相当急ピッチで普及をするだろう。現に今、厚生年金基金、税制適格年金ファンドの合計が十六兆を超した、十年を経ずして四十兆、五十兆になるだろう、業界のそういう展望もあるようでありまして、それを見ますと、公的年金が弱いせいもあるのですが、非常に急速にこれは普及をしていくであろうと私は思います。厚生白書の中にも、企業年金について今後抜本的に検討しなければならぬという意味合いのことも書いてございます。
そういう状況を考えますと、将来の時代に合わしたいろいろの検討が割合急ピッチで起きてくるというのが日本の社会の現状ではないだろうか。そういたしますと、二十年のタイムラグ、そして三階建て、一・五となっておりますけれども、こういう方式が長期にわたって固定化されていいものだろうかどうだろうかという感じを私は非常に持たざるを得ないわけであります。三階建ての設計になっているが、社会その他全体から見て、あるいは公務員の生活あるいは社会からの許容範囲等々を含めて適切な時期に考えていくというふうな弾力性は当然持たれるべきであろうというふうに私は思うわけであります。
ここに至る過程の中でも、検討委員会当時からさまざまな議論があって、いろいろなこういうことの話題もあったようでありますが、公式答弁は別にして、今までのさまざまな自由な段階からの論議も踏まえながら、どう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/226
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227・門田實
○門田政府委員 おっしゃいますように、この近年二、三年とりましても、この年金の問題は非常に動いておる時期でございまして、これから先も非常に流動的であるという御指摘はそのとおりであろうと思います。私どもこういった改正案を提出しておる立場でございますから、現状においてはこういうことであろうということで出しておるわけでございますが、お話しのようにそういった背景が非常に動いている。あるいは我々も一つの参考にしようといたしました企業年金におきましても、今後の動きというのは非常に流動的といいますか、そういう要素があるわけでございますから、御指摘のように、そこは硬直的に考えないで、絶えず柔軟性を持っていくという心構えで処したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/227
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228・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 三階建ての部分に関連をいたしまして、これは最初からずっと議論になっておりますが、処分による支給停止のことで伺いたいと思います。
今までの同僚議員の質問にございましたが、また先ほど野口さんも言われておりましたけれども、確かに現在の公務員制度の仕組みあるいはその他からしてこういうことをしたのかもしれません。しかし、恩給との関連からいってどうかということも、確かに現実の整合性という意味では、整合性がまだとれていないわけであります。また、何か悪いことをした対応でも、さまざまな今日の公務員制度上の措置はあるわけでありまして、年金に導入すること自体がもっと検討されていいんじゃないのだろうか。何もこれは基本的な年金の枠組みとかあるいは財政負担が非常にかかりますとかいうふうなわけではありませんで、実は一つの仕組み、公務員制度というものから見た判断の問題でありますから、こういうことなんかは特に労使もっと自主性を持って、主体的に話をして、仕事の仕方、将来も含めて、お互いに一定の結論を見出していくというのが労使関係から見ても望ましい一つの方向ではないだろうかというふうに私は思いますが、門田さん、これもやはりもっと検討すべき課題ではないだろうか。大蔵省というよりも、人事院、公務員制度を含めた検討の問題になるだろうと思いますが、今後とも話題となるべきだろうというふうに思います。
少なくとも労使折半部分について、使の方が出した部分についての何らかの措置というものは僕はない方がいいと思いますけれども、お考えになるにせよ、労の方が出した部分までこれは対象にする、処分の程度によりますけれども、これはいかがなものだろうか。これは実は旧時代の発想でありまして、近代社会の社会契約の思想には恐らくない、君主政治の時代の発想になるのじゃないか。自分が積み立てた分まで、あなたは悪いことをしたからやりませんというようなことが労使の使の方の判断から出てくるというのは、幾ら考えてみてもおかしいし、しかも、こういうことは、基本的に労使がパブリックサーバントとしてあるべき方向で主体的に決定をされ、それが尊重されていくというべきものであり、また、先ほども申し上げましたように、銭目に関係をして財政上非常に困るということは無関係の話になるわけであります。これは最後の折衝の一つにもなるのでしょうけれども、ちょっと注意してお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/228
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229・門田實
○門田政府委員 処分等に伴う職域年金部分につきましての給付制限、先ほど来大変御議論をちょうだいしたところでございまして、私どもは、いわば公務員制度の特色としてそういう職域年金部分が設けられる、こういうことでございますから、したがいまして、そういった特色の一つの反映として、処分等ある場合にはそれがまた給付の制限を受けるということもやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えておるところでございます。先般来大変御議論をちょうだいいたしておりまして、その点は恐縮をしておるわけでございますが、私どもは基本的にはそういう考え方で設計をいたしており、現在もそう考えておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/229
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230・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 いずれ近い時期に、審議の終結までにはきちんとしなければならぬ問題であろうというふうに皆さん思っておられると思います。
それから、検討課題としてという認識ではこれは問題ないだろうと思うことを二つ申し上げたいわけてあります。
先ほども同僚議員の質疑にございましたけれども、報酬比例部分の算定基礎、標準報酬という中で手当の中身の問題、通勤費、住居手当など実費弁償的部分で生活給でない部分、この生活給でない部分が将来の年金設計のベースになるというのは概念上おかしいということだろうと思います。ざっくばらんに言って、厚生年金のときに直しておけばそれに見習ってあれだったのです。それが、あのときどうだったか知らぬけれども、直らなかったものだから、ここで直すわけにいかぬというふうなことだろうと思いますし、私は、近い時期に厚生年金とこっちも含めて是正をするということに関係者はみんな腹の中では思っているというようなことだろうと思います。いずれにしろ、私はそう言いますけれども、門田さんはまじめなのでそういうふうには言えませんでしょうから、検討課題であるという認識は共通にしておきたい。
もう一つは、所得制限についてのさまざまな議論がございました。これもそもそも論から含めて私も幾つか論点がございますが、一つだけ言っておきたいと思うのです。
恩給法は手つかずであるということの関連の中で、恩給部分に関連をする例えば年七百万円以上の所得の人がどうとか、それから今度は共済部分について年六百万円以上の所得者がどうとかありますね。そうすると、恩給と共済と両方うまく扱った場合にはうまいことなっちゃうとか、いろいろ整合性を欠く部面が現実にも幾つか残っているだろうと思うのです。ですから、こういうことも、恩給制度の方についても社会的合意は必ず得られると思いますから、いずれ早い時期にきちんとして整合性あるものにして、一定の部分が得をしているということのないようにしなくてはならぬということではないだろうか。これも、従来の議論からしても検討課題として残されている問題ということではないかと思いますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/230
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231・門田實
○門田政府委員 今回の改正に関連いたしまして恩給との関連の御議論をよくちょうだいいたすわけでございます。先ほどは所得制限に伴いますところの一部支給制限というお話でございましたが、あるいは併給調整等につきましても恩給が入っていないのは公平性に反するではないか、こういう御議論でございまして、恩給と共済との性格の違いといいますか、そこは一つあるわけでございますけれども、やはり今後を展望いたしました場合には、恩給につきましてもやはり何らかのそういった検討は必要であろう、これは私どもの所管外でございますが、そういう感想を持っております。
今回の公的年金制度改革のスケジュールには含まれておりませんけれども、臨調答申等におきましても公的年金制度とのバランスを考慮して恩給についても必要な見直しを行うように、こういうふうにされておりまして、総務庁においても検討されておるということでございますので、それに期待いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/231
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232・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 大臣に一言伺いたいのです。
きのう参考人の方々のを伺っておりまして、村上さんでしたか、さすが非常にお詳しい方で、また率直なお話で、年金制度にはいきなり百点満点の制度というのはございません。今出されているものが五十点と評価されますか何点と評価されますか、しかし、日常不断に努力をして何とか七十点、八十点に持っていくというのが年金制度に取り組む関係者の気持ちではないでしょうかと言われておりまして、私も現実はそういうものかなというふうにも思いました。
確かにこれから六十五年、七十年、大きな難局がございます。今の発想のままでは七十年とてもいかぬと思いますし、さまざま大きな変化も大きな課題もこれから出てくるだろうと思います。今も三、四点にわたりまして、正直のところ検討課題としてという部分もあるわけでありまして、善は急げと申しますけれども、なるべく早い機会に、私は、できれば厚生年金と関係がなければ、ある問題なんかはこの法案でというふうに思うわけであります。関係者がそれぞれ、ああ、こういう点は問題点だな、こういう点は直さなければならぬ次の課題であるな、いや、これは直したいけれども残ってしまったなとかあるわけでありまして、なるべく速やかにこういう点は打開をする、努力をするというのが年金制度に対する信頼を高める意味でも大事な取り組みではないだろうかと思いますが、気持ちだけ伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/232
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233・竹下登
○竹下国務大臣 年金制度を議論する者にとって百点というのはなかなか追求しにくいという話を私も聞いたこともありますし、それから事実、私ども素人から見ると、今度は仕組みそのものを百点に評価していらっしゃるという人は非常に少なくて、共済と書いてあるからともに助けるということだろうなというところで五点ぐらいになって、それから逐次勉強して、我々にしたところで実際知識の度合いそのものからしても本当に三十点ぐらいなものじゃないかなと、自分で自己反省を行っております。
したがって、今度は、方向としては抜本改正でございますね、確かにこの制度の第三段ロケットを審議していただいているわけですから。だが、その詳細な部分については、抜本というよりもその都度見直しみたいな性格を持っているかもしれません。私自身もこの年金に対応するに従って、あるいは運用面でいろいろな意見を入れられることもあるかもしらぬ。その辺、私も定かにはいたしておりませんが、およその問題点というのがこの国会の論議を通じ明らかになってきますと、それに対応する姿勢というのは当然我々としても非常に柔軟であるべきだなという気持ちは、私も審議を通じながら特に深めさせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/233
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234・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 共通の問題認識のところはなるべく早く解決をされるように要望しておきたいと思います。
さらに幾つか具体的な問題を伺っていきたいと思いますが、一つは、日本たばこ共済の問題であります。
国共審の労働者側意見の中の十一項のウ項でございましたか、書いてございます。現状いろいろと難しい状態で特別な対応策を考えなければならぬというようなことが書いてございますが、その国共審の労働者側意見の第十一項の一番最後のところ、その辺はどのように認識されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/234
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235・門田實
○門田政府委員 国共審におきましてそういった議論があったことも事実でございます。
お尋ねの日本たばこ産業共済の実情をちょっと申し上げますと、いわゆる成熟度でございますが、昭和六十年三月末で七二・五%、そのうち退職年金だけをとりますと五六・九%でございます。一般の国家公務員の場合に、この数値はそれぞれ四〇・八%、退職年金だけの場合は三一・二%ということでございますから、比較いたしますとわかりますように、かなり成熟度が高くなっておりまして、したがいまして、年金財政上は厳しい状況にあるというのは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/235
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236・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 門田さんは部分的に言われましたが、挙げてみると幾つもあると思います。今おっしゃったように成熟度が非常に高い、国鉄に次いで高いようであります。その結果、負担も相当限界に近づいているという問題もございますし、国共審の労働者側意見で指摘をしましたように、公的年金制度の中では最小規模の保険集団というようなこともございますし、また、組合員の減少傾向、さまざまの合理化計画、民間になって一生懸命働きながら厳しい条件にぶつかっているわけでございます。それから、民営化によるところの新たな労働保険負担というのがございますし、また国鉄への財政調整の協力というようなこともございます。
いずれにいたしましても、このままでは近い時期に単年度赤字というふうなことになるのではなかろうか。この現状認識は、関係者等しく共通をするところだろうと思うわけでありまして、今えらく細かく具体論を議論するのはいかがかと私は思っておりますが、この共通した現状の認識に基づいて、なるべく早い時期に責任ある対応措置がとられるというふうな検討準備が必要であろうと思うわけでありますが、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/236
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237・門田實
○門田政府委員 この問題につきましても、今回の共済年金改正法案、これによりましていわば給付面の整合性ある水準確保ということが行われておるわけでございまして、今後各制度につきまして負担面の調整を図っていく。そういう中で、やはりこの問題は特に念頭に意識しながら解決を図っていかなくてはならない問題である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/237
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238・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 竹下大蔵大臣は唯一の株主であります。しかも、会社になる前は直接大蔵省所管ということであったわけでありまして、またさまざまの監督権を一手に握っておられる方でありまして、言うならばこれは親子のような関係ではないだろうか。大家さんとたな子という以上に、特に責任と愛情を持ってこのたばこの将来を考えていくというのが大蔵大臣の立場であろうというふうに思います。
今、門田審議官の方からも、いろいろと検討して、そして将来について不安のないように打開策を考えていかなければならないというふうな趣旨の説明がございましたが、特別な関係にある大臣、所管大臣として、また株主として、親のような気持ちで、たばこ共済の将来について深刻な状態にならないように、今の国鉄問題のように関係者を含めた大変な議論をし、そういう意味で、なるべく近いうちに愛情と責任ある対応措置をとられるということが必要であろうと思うわけでありまして、その意味では一番権限を持たれている竹下さんでございますから、その気持ちを伺っておきたい。
〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/238
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239・竹下登
○竹下国務大臣 いつも仲裁裁定なんということがありますときに私が一番二面性を持っておる大臣であって、専売そして印刷、造幣というもののまさに使用者側でありながら、一方国庫大臣というようなときにも悩みを感じておったわけでありますが、今日、このたばこはまさに民営になった。今のところは暫定的に私が一人株主でございますけれども、民営になってからでも本当によくお立ち寄りもいただいております、貿易問題等いろいろな問題がございますから。それで、今まで以上の関心を持って絶えず対応しておらなければならぬ。しかも、前車のわだちとでも申しましょうか、国鉄共済についてのとうとい経験も持ったわけでございますから、これは十分に対応していかなければならぬという気持ちでいっぱいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/239
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240・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 具体論は時間もありませんから避けておきます。十分の対応をというお話がございましたから、それだけ言っておきたいと思います。
ちょっと年金から外れますが、関連をして、通商法三百一条の関係ですね、ちょっと二言だけ姿勢を伺っておきたいと思います。
何か長岡社長も先般アメリカまで行かれまして、さまざまな御説明があったようであります。また、意見書も全部出そろったという関係のようであります。私は、経過を見まして、アメリカなど大きなたばこ会社の方でも、あれが出てびっくりしたというふうな話も伺っております。これらの問題は、ほかの国の会社の人も日本の会社の人も状況の認識についてはお互いに大分共通する部面がありながら、しかも、確実に国内の製品販売のシェアは拡大をしているというような状態でありまして、その辺がリーズナブルに進んでくればいいところだなと実は思っているわけであります。
ただ、時節柄ですから、こんなことをこじらせてまた別の方向に波及したとかというようなことも極力避けなければなりません。各方面の配慮もしながら、しかも関係者に不安のないような打開をしなければならないというところの問題だと思いますが、年を越して、またいろいろの作業もルールに従って進んでくるというようなことであろうと思いますけれども、どんな姿勢で対応されるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/240
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241・竹下登
○竹下国務大臣 原則的に申し上げますと、本年四月に、八十年余り続いた専売制を廃止して、輸入の自由化を実施して、その後においても、我が国市場における国産品と輸入品の公正な競争条件の確保にいい話し合いで努力してきたわけであります。にもかかわらず、今おっしゃいました、米国が我が国たばこ市場に制限的慣行があるとして、米国通商法第三百一条の適用対象とすべき決定を行ったということは、私は極めて遺憾なことであると思っております。ただ、今後アメリカの方でどのような形でアプローチしてこられるか、現在のところ明らかでありません。我が国としては、その主張をよく検討の上、主張すべき点は主張し、米国側の理解を得ていかなければならぬ。長岡さんの報告は、きのう忙しかったものですから立ち話程度で、事務次官の方へ正確にメモも出しておくということでございましたので、まだ読んでおりませんけれども、私の直感したところでは、要するにこれだけ長い時間をかけてやったことでございますし、いわゆるたばこ産業の当事者にはそう大きな不満はないのじゃないかな。ただ、国民に非常にわかりやすいのはいわゆる製造独占じゃないか、こういうようなことと、これも説明すればわかる話でございますが、タックス・オン・タックスの問題というようなことは、そう詳しく知っておるわけじゃございませんから、国民にはわかりやすいかもしらぬな。したがって、長岡さんは、今までも葉たばこの輸入とかそういういろいろな問題でも大変評価を受けておる社長さんでございますので、その交渉の報告をまだ正確に私読んでおりませんで、きのうほんの立ち話で会っただけでございますけれども、相手方の出方を見ながらこれには正確な対応をして、今おっしゃいましたように他に波及もしないで自分たちの問題として正しく理解を深めていくという努力を続けようと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/241
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242・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 今の問題も、今の時代というのはさまざまな複雑な努力をしなくちゃならぬ時代で、大変だと思いますが、鋭意御努力をお願いしたいと思います。
次に、NTTに関連をして三つほど伺いたいのであります。
その一つは、これも審議の中で今までも強調されてきたことでございますけれども、何か確たる印象の御答弁はございませんでしたので、また伺っておきたいのですが、処分それから職域年金の支給停止。しかも、NTTはいわゆる概念上公務とは関係はございません。私は、そういう建前論のほかに、見ていて思うんですね。NTTも、たばこの皆さんも、その後伺ってみましても、とにかく民間になって忙しい、一生懸命大変な努力をなさっている。言うならば、それぞれの分野において、職員の皆さん、あるいは労働組合も、その産業分野における社会的な大きな責任を持った担い手となる道への努力を一生懸命なさっているわけでありますし、あるいはまた言葉遣い一つにしてもそれぞれそうでありまして、利用者という言葉は使っちゃならぬ、お客様である、労働組合の機関紙にも一生懸命そういうのが強調されているわけであります。私は、これからのさまざまな厳しい条件の中で、それぞれそこに働く者としての将来をどう思ってやっていくのかという意味で非常に真剣な模索をなさっている、また、非常に真剣な努力をしているなということを実は思っているわけでありまして、少なくとも民間になって、あいつら怠けているなんて思うような社会的な評価というのは全然ないのが今日の状態ではないだろうかと思うわけであります。
会社の方も、労働組合の方も、そういう状況を私は見ておりますと、そこに官僚的か権力的かみたいな姿勢というものは厳にあってはならぬ、そういう努力をこれからの社会の中で、それぞれの産業分野の中でさらに発展をして実りあるものにできるように、どのように協力援助をしていくのかということ、これは最大唯一の株主ですからお気持ちは当然おありだろうと思いますが、そういう姿勢が社会的にあるべき行政側の姿勢であろう、またあるべき気持ちであろうというふうに実は思うわけであります。
ところが、今度の法案では、これは一括ひっくくりでありまして、そういうふうなことはあらわれておりません。とにかく公務による処分、支給停止あるいは部分的支給停止などなど、一括した法律の表現になっているわけであります。何か官僚的処分の姿勢と申しましょうか、何かそんな感じがするわけでありまして、しかもNTT、たばこの場合には、懸命になってそういう努力をしている、それにこたえる姿勢をどう表現をするのかということがないのは、私は非常に残念に思うわけでありまして、そういう意味から申しましたら、やはりこれからの時代のそういう分野への行政の対応姿勢なのでありますから、少なくともそういう分野については支給停止自体を廃止する、こういうことはそれぞれの会社の労使の話し合いと主体的な判断に基づいて運営をされるというのが、これは当然の筋ではないだろうかというふうに思うわけであります。
それから二つ目には、この職域年金部分の設計についても、それぞれ会社の営業状態がございますし、まだ初年度決算も出ておりませんからわかりませんが、懸命にそれぞれ努力をしているというわけでありまして、やはりそれにふさわしいような自由設計と申しましょうか、自由の幅がどの程度持てるかは、これは現実問題ですからいろいろ大変な面も確かにあると思います。現実はそう甘いものじゃないと私は思いますけれども、やはりそういう幅を認めるというのも、今日の労働者あるいは労使の姿勢に対する当然の判断ではないだろうかというふうに実は思うわけであります。
それからもう一つ、三つ目には、いわゆる企業年金対応の問題がございます。まことに過渡期というのか、過渡的ではない、民間の会社であり、国家公務員等共済組合法に拘束をされるという存在であり、また、さまざまの内容が細かく決まっているという非常に異例の形になるわけでありますが、さっき申し上げましたように、民間の企業年金やその他の状態が相当急ピッチに進んでくるというようなことを考えますと、何か自分たちの努力並みの、世間並みのことはしたいなと考えるのは当然の気持ちではないだろうかと思うわけでありまして、時間がありませんから確認だけしておきたいのですが、例えば税制適格年金制度の可能性、これは支払い対象が退職金あるいは退職一時金だけの支払いであるとか、あるいは制度としての数理計算、数理算定が適切であるとか、幾つかの条件を認めた場合に、国税庁長官がこれを認可をするといいますか承認をするというふうな取り扱いになっているわけでありますが、これらはそのとおりでよろしいかどうか、あわせて三つお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/242
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243・門田實
○門田政府委員 お尋ねの点は、いずれもこの審議会等におきまして大変議論があったところでございまして、民営化されました後の状態ということを考えますと、こういった職域年金というものよりも自由設計的なものの方がふさわしいのではないか。これを突き詰めていきますと、共済グループにとどまるのか、そこから外れるのか、こういう議論まで参るわけでございまして、いろいろな従来からの経緯、沿革を考えまして、当面は共済グループに入る、ただし、将来的には公的年金制度全体の再編成が行われる時点で検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行う、こういうことに処理されておるわけでございます。
お尋ねの自由設計といたしまして、税制適格年金でありますとかそういったものが可能かどうかということでございますが、これはやはり一般的な要件を満たしておれば法律的には十分可能なことであるというふうに私どもも考えておる次第でございます。
お話しのように、民間の企業年金の実態あるいはその推移、非常に動いておりますので、私どももなおその点につきましてもよく勉強するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/243
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244・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 三番目はそれで結構です。
竹下さん、一番目と二番目のことで、これも株主としてということは言いませんが、大臣のお気持ちだけ伺っておきたいと思います。また、これらの中身は、この審議をする中で、もっと実権のある方のところで詰めていただく問題ではないだろうかというふうに思っているわけでありますが、私は、この法律に掲げている仕組みのことと、それから、現状この二つの会社が労使ともに懸命に努力をしている姿というものとの関係を申し上げました。つまるところ、こういうものは国家公務員等共済組合法に縛られている、しかし、立派な会社であるわけですね。これは、民営の形がそもそもあるものだからそうなるのでありますけれども、しかし、法律の運用とかあるいは制度とかというものは、現実に対応してよりよい方向に全体が動いていくというためにその制度も行政も政治も存在をするんだろうというふうに思うわけであります。
そういう意味で、さっき申し上げた日本たばこ産業株式会社労使、それからNTTの労使というものを含めて現状を考えますと、やはり労使が主体的に話し合って、こうしたいあるいはこれが望ましいという方向にむしろ促進的役割を果たすのが行政の立場であり、特に膨大な株を一手にといいますか、名義だけですけれども、持っておられるところの大臣の立場ではないだろうかと思うわけでありまして、ぜひこういう点は、どういう形か知りませんが、そういう気持ちで改善をさるべき姿勢の問題ではないだろうか。まだ、きょう、あす、あさってですか、さらに詰めがあるのだろうと思いますから、できない御答弁は要りませんから、気持ちのところだけ伺っておきたいと思います。
〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/244
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245・竹下登
○竹下国務大臣 ことしの仲裁裁定が出ましたときに、ちょうど電電の労使の方とお会いしまして、何と仲裁裁定の世話にならぬようになりまして一発で妥結しましたと言って、両方とも涙を出して僕にお話がありまして、私も人の子、本当に込み上げてくるような気がいたしました。それから、大体中間決算もほぼ見えるような状態になっておりますが、私の仄聞するところではまさに良好な状態ですべてを進めていらっしゃる。本当に、おっしゃったような気持ちと同じような気持ちで対応すべきものだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/245
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246・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 次に、国家公務員等共済組合連合会の運営のことで二つ質問をしたいと思います。
一つは運営機関の問題でありますが、この法律によりますれば、新しく運営審議会が設置をされるというふうなことになるわけでありまして、私は五十八年の法改正のときにも、地共済と比べて今日の国共済はおかしいではないかと申し上げたのですが、これは地共済の場合と同じようなことになるというわけでありまして、私は一定の前進というふうに評価をしたい、この部分についてはそう思っております。
そうなりますと、現状は連合会の運営について、法律上決まっております評議員会、それから定款で決まっている運営協議会というのがあるわけでありますが、これはこの法律が通りますとどのようになりますか。私は、当然この法律に基づいて運営審議会に一本化をしていくといいますか、これが責任を持ったものになっていく、運営に当たるものになっていくということだろうと思います。現行の評議員会あるいは運営協議会というものを廃止されてそういうふうに変わるというふうに理解するのが法律の筋だろうと思いますが、見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/246
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247・門田實
○門田政府委員 今回の改正で、お話にございましたように、国家公務員等共済組合連合会に、連合会業務の適正な運営に資するため、運営審議会というものを設置することといたしております。
現状を申し上げますと、連合会には各組合の代表者により構成されました評議員会があるわけでございますが、組合員が直接委員になり得る道は開かれていないわけでございます。また、連合会の理事長の定款上の諮問機関としまして、組合員が直接委員となり得る運営協議会というのがございますが、これは法律上の位置づけはなされていない、こういうことになっております。したがいまして、組合員等の要望にこたえまして、各単位組合における例に倣いまして、今回、組合員を直接構成員とする運営審議会というものを設け、組合員の意見反映に努める、こういうことにいたしたわけでございます。
その際に、それでは従来ありました運営協議会はどうなるのか、こういうことでございますが、今回設けようとしております運営審議会は、現行の評議員会を廃止し、定款上の運営協議会に組織的かつ機能的に類似する運営審議会として改めて設置する、こういうことにいたしておりますので、運営協議会の方も発展的に解消していく、組合員の代表を入れた運営審議会が今後のそういった重要事項の審議に当たる、こういうことを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/247
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248・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 そうすると、評議員会はなくなって運営審議会になる、それから、従来の運営協議会も新しくできる運営審議会に発展的に一本化されるということでいいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/248
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249・門田實
○門田政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/249
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250・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 連合会に関連をしてもう一つお伺いをしたいのでありますが、役員体制の問題であります。
これも前のことを再度申し上げて恐縮ですが、五十八年の十月の統合法案の審議のときにも——あのときも竹下大蔵大臣ですね。担当は保田さんの時代でしたが、お願いいたしまして、もちろん、こういう問題でありますから一般論として申し上げましたし、そちらも一般論として御答弁申し上げたいというふうなことであったと思いますが、当時の大臣の御答弁は、大事なところですが、「選考に当たっては、これはまさに適材適所の方々をそれぞれ選ぶべきだ。」というふうなお考えと、それからあるべき形の一つが共済ではないだろうかというお気持ちのこととございまして、「御趣旨が生きるような方向で法律執行者として対応していかなければならぬという私の心境を申し述べまして、答えとさせていただきたい、このように思います。」という御答弁であります。
あれから後、この問題の具体論としての発展は特別ございません。ただ冒頭に申し上げましたような、さまざま異常なストレスがたまったような状態でこの問題が来ている。今後を考える場合にはこの延長線であってはならぬというふうなことを考えますと、具体論は人とか任期とかございますから、そこまで私もわかりませんし申し上げるつもりもございませんけれども、この二年間は進展がございませんでしたが、やはり現実の状況を見ながら、適切な時期にこういうことも、お互いの気持ちが合うように、円滑にいくように解決をしていくということじゃないかなというふうに思うわけでありまして、そのお気持ちを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/250
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251・竹下登
○竹下国務大臣 あれから二年たちますが、私個人、進展があったとすれば、ますます関係者の皆さんと仲よくしてもらうようになったことは事実でございます。(伊藤(茂)委員「大分けんかしてきたじゃないですか」と呼ぶ)ある意味において仲よくけんかをしてきておるような気がしておりますが、今のような御趣旨は今後とも十分体しておらなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/251
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252・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 残念ながら厚生大臣がお見えになるのが四時半のようでありますし、厚生大臣のいらっしゃるところで議論したいことが幾つかあるものですから、ちょっと話題が変わりますが、国鉄再建のことに関連をしてお伺いをしたいと思います。
たくさんの問題がございますが、私が伺いたいのは、長期債務の処理、それから国の責任。特に監理委員会の意見に述べられておりますところの最終的に残る長期債務等の処理ということであります。
前提としてまずお伺いしたいのですが、現実問題、この夏に監理委員会の意見というものが出されました。政府の方は、先般、最大限にこれを尊重して対処をするという御見解を閣議で御確認をなさいました。そして、来年二月とか三月とか言われておりますが、定かでありませんけれどもそれを具体論に移し、立法作業を精力的に進めていると新聞には書かれております。そのような段階に今置かれている。監理委員会の意見を受け、それを最大限に尊重するという一般論を確認し、そして政府の責任においてどのように具体的にできるのかという作業に入っているか入りつつあるかというのが現状であろうと思います。
そうなりますと、何も監理委員会の意見一〇〇%イコールというわけじゃありませんで、最大限に尊重すると同時に、これは政府の責任という立場からさまざまの作業が行われるし、改めて調査なり分析なりも行われるというふうなことであろうと思います。
そういうことで、最終的に残る長期債務等の処理というふうなことで十六兆七千億と数字が出されておりますけれども、当然ながら政府として、また特に大蔵省に大きなかかわりが出てくる問題でありますから、政府としても大蔵省としてもこのような数字あるいはこのような内容が妥当なものであるかどうか、さまざま詰めた検討をなされるというふうなことが当然の筋だろうと思います。
また経過の中でも、国鉄の資産や土地に関連をして監理委員会の報告に書いてあることと総理府、後藤田さんのお調べになった数字とは違うとか、あるいはこういうことをあいまいにして、将来大きな含み資産などを持たせて新しい会社がもうかるようにやっていくのではないかというような一部報道やら行われているというふうなことになるわけでありますが、そういう取り扱いの前提条件と申しましょうか、この数字をどうするのかという前の段階の取り扱いはどうなっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/252
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253・竹下登
○竹下国務大臣 監理委員会の意見では、「長期債務等の処理に際しては、現下の厳しい財政事情にかんがみ、公債に依存することなどを安易に行うべきではない。」こうされて、また最終的に残る国民負担を求めざるを得ない長期債務等については、「財源所要額がこのように極めて大きいことから、国鉄事業再建のためには、長期債務等の処理のための新たな財源・措置を講じることが必要であり、国は、長期的観点に立った総合的かつ全国民的な処理方策を検討・確立すべきである。」という考え方でございますので、大蔵省としてはこの考え方に沿って適切な対応をしなければならぬというふうに考えておるところでございます。
今おっしゃいました長期債務等の十六兆七千億につきましては、国鉄再建監理委員会においていろいろ御検討の上出されたものでありますので、今後これを踏まえて詰めていかなければならぬというふうに今考えております。
それから、意見にも書かれてありますように「国鉄用地を最大限長期債務等の処理財源に充てるなど可能な限りの手段を尽くす」ことが求められておる、こういうようなことをかれこれ勘案いたしまして、私の今の立場から言えば国民の理解を得なければならぬわけですから、安易な方向に行くことがないようにたがを締めておるところでございます。
百三十三兆もあるならば、十六兆七千億その上にぽんと積めば、六十年でやればゆっくりになるじゃないかというふうな安易な話をなさる人も時にはございますが、それには極めて厳しく対応しておるというのが現在の段階の心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/253
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254・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 その十六兆七千億の具体論といってもまだ難しいと思いますけれども、その前にもう一つ伺いたいのは、あの監理委員会の意見を見まして、ちょっとけげんに感じますのは、将来の株の処理のことが書いてございます。私どもも、たばことNTTについてはこの春の国会まで延々と議論しております。これがいつ一部売却になるのか、その際にもいろいろな理屈が出てくるであろうと思っておるわけでありますが、NTT、たばこの場合と違った扱い、違った方程式が書いてあるわけですね、これはどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/254
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255・保田博
○保田政府委員 お答えいたします。
現在直接の担当でないので、責任ある御回答はなかなか難しいかと思いますけれども、おっしゃるとおり旧国鉄といいますか、新しく事業活動を行う会社とは別に、債権債務を主として処理するための旧国鉄という法人をつくることが監理委員会の報告で提案されておるわけでございます。そこにおいて残された債権債務を一括して処理したいということのようでございますので、株式の売却収入として一応考えられる六千億もそこに集中をいたしまして債務の償還に充てたい、こういうふうな考えかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/255
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256・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 時には方便と言ってはなんですけれども、今度の監理委員会の意見を読んでみてたくさんございます中のこれも一つなんですが、ルール違反と申しましょうか……。従来のあれからいたしますと国が引き受ける、それからその処理の問題についても非常に綿密な研究もなさっておるようであります、あるいはそういう株の専門家の意見も聞く。ルールでありますから、当然法律に基づいて国有財産中央審議会などの議も経るとかさまざまな手順というものが定まってあるわけですね。片方はマル金だからそうする、全部大蔵大臣名義になり、片方はマルビだから何とかしなければならぬというようなことでも私はおかしいと思うわけであります。私は、ずっと読みまして、監理委員会の意見のさまざまいいかげんなところの一つではないかという気もいたしますけれども、ジャンルによって取り扱いのルールが変わってしまうというのもまことに変な話だろうと思うのです。ですから、筋論からいえば何かこれでいいというわけにもいかないのじゃないかという気もするわけでありますが、具体論は別にして、理屈、筋論としてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/256
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257・保田博
○保田政府委員 最終的に旧国鉄に残された債務を一括して国が引き受けるというわけにもなかなかいかないように思うのでございます。最終的に国が引き受けるとなれば、これまた国民の負担を当然求めなければならないわけでございますが、先生先ほど来の御質問にもございますように、最終的に国民の負担に求めざるを得ない債務を極力減らすためには、旧国鉄において資産の売却あるいは株式の処分によりまして償還財源をできるだけ確保させた方が、最終的に国民に残される負担が、国民の負担に期待せざるを得ない負担額が減るのではないか、こういう考えであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/257
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258・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 わかりません、それは。こういうことは年を越したらぎっしりありましょう。
それから、新聞によりますと、来年度の予算編成、査定の作業が進められておるわけでありまして、これは保田さん本職の方ですが、国鉄の助成は二〇%減らすとか、来年の国鉄予算は相当削り込むんだとか、新聞を読みますと、これは民営的体質に六十二年四月一日を期していくために愛のむちみたいな格好で厳しくやるんだというような意味合いのことが実は何回か報道をされておりました。どういうことなんでしょうかね、これは。あとは自分で勝手にやれということで、この監理委員会に便乗してやるということなんでしょうか。あるいは長期債務の処理の問題、助成の問題、いろいろありますけれども、監理委員会の報告のように一生懸命やるというのが本旨じゃなくて、この大変な国鉄をどうするのか、大蔵省も担当主計官も担当次長さんも主計局長も一生懸命考えて、国民の足の将来にふさわしい対応をどうとるのかというのが査定をしていく基準ではないだろうかと思うわけでありますが、そこはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/258
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259・保田博
○保田政府委員 先生御承知おきのような厳しい財政事情のもとでございますので、民営化を控えた国鉄をどうやっていくのかということも真剣に念頭に置きながら、しかしまた、そうだからといって特別の感情を持ってこれに甘い査定をするといったことができるような財政状況ではないということも御理解を得たいと思っております。歳出面におきましてとにかく苦しさを分かち合うような予算編成になるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/259
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260・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 特別にそこに苦しさを分から与えるような新聞報道のような感じがいたしますから……。
それで、この監理委員会の意見によりますれば、十六兆、十七兆という膨大な額になるわけであります。その額がふさわしいのかどうかということが、先ほど大蔵大臣御答弁のように、政府の責任でさまざま検討がなされるというのも当然のことだろうと思います。ただ、これがゼロになるというふうなことは考えられないというのも現実じゃないだろうかというふうな気もいたします。
そうなりますと、電電の株の売却処理なんというどころの話じゃないですね。お金が入るのをどうするかどころじゃない、これは大変な議論をしなければならないということになるわけであります。不幸にして、我が大蔵委員会もそれとは無縁の存在ではないということになるわけでありまして、関心を持たざるを得ないわけであります。具体論の検討はどこかでなさっているのかもしれませんが、正式に議論の素材にのるような段階ではないと思います。
ですから、考え方の問題ですね、方法論はどうだろうかという税制、財政、その他の立場からの考え方として伺っておきたいのでありますが、いろいろとこれの始末がどうあるべきかということについての評論とかあるいは学者の論文なんか出されております。ざっと読ませていただきました。
竹下さん、今私どもは国鉄の分割・民営反対五千万人署名運動というのをやっております。一般論を言うと余り反響ないのですが、とにかく六つだか最終的に二十だか、ばらばら会社になって不便になるでしょうよということと、それから十六兆七千億というお話がございまして、この亀井さんの回答どおりにやったら老いも若きも十四万円取られますよという話をいたしますと、みんなが署名をしてくれるというふうな実は状態になるわけであります。
それで、至らない私の知恵でもって考えてみまして全部並べてみたら、政策論としては一般的には五つぐらいあるのだと思うのです。
一つは国鉄再建税。けさの新聞を見ましたら、桜田さんが亀井さんに、こういうことを真剣に考えて、そして政治家が勝手に赤字路線なんかつくらぬように、国民がそういう政治家を選ばぬようにというようなことを前に言われましたなんという思い出話が実は載っておりましたが、国鉄再建税という方式があると言われております。これは目的税でしょうから、それでは一体何にどうかけてどう取るのかという問題が起こってまいりますし、先ほども議論がございました「増税なき財政再建」路線の否定ということにもなるでありましょう。
二つ目には、国債の増発でやる。新聞を読みますと、何か監理委員会の最終文書の仕上げのときにも、公債に依存云々というようなところで大蔵省と内幕の交渉があってなんということを書いている新聞もございましたが、免税で国鉄再建債を発行する。大型プロジェクトに免税債という話も随分あるようであります。こういうルール違反は私はやらぬ方がいいと思いますけれども、これも当然ですが六十五年赤字公債脱却という論理が崩壊をするということになると思います。
それから、一般会計の歳出を大いに頑張って削減をいたしまして、そして、三十年で一兆三千億、二十五年で一兆四千億となりますか、毎年それをつくっていく。
それから、当分これはしようがないから、十七兆円ぐらい、全額借りかえでいって、当分利息だけ払っていく。これは本来の解決じゃないですね。しかも、利払いだけしていく場合には負債が残るわけですから、これをどうするのか。残ると思います。
それから五つ目には、とてもじゃないが二十五年、三十年と申しましても難しいから、まあ五十年程度、長くして毎年の負担を減らすとか、何か形式論理で考えてみますと、そんな四つ、五つぐらいの話が出てくるというふうな感じがいたします。
いずれにしてもこれはだめなことなんで、何かやはり監理委員会の報告とは違った方向で考えてみるという知恵なしには国民の納得は得られないんじゃないだろうかという気もいたしますが、御感想ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/260
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261・竹下登
○竹下国務大臣 今、伊藤さんが例としていろんなのをお出しになりましたように、まあ決して珍案であるとは申しませんけれども、妙案、珍案、いろいろな案をおっしゃる人がたくさんいらっしゃいます。事ほどさように国鉄再建に関する関心が高まっておるというふうに受けとめれば、それはそれなりにありがたいことでありますが、本当に今おっしゃったような問題を総合的に勘案して、やはり国民が理解する方向でこの始末をつけないといかぬ。だから、安易な道はたどらないようにということで締めてかからなければならぬな、大変な問題だという問題意識は十分に持っておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/261
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262・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 大変で終わればいいんですが、しょせん難しいという問題ではないかなというふうに、五つ並べてみて思います。
厚生大臣お見えになりまして、このところ連日各委員会で御苦労さまでございます。特に、厚生大臣ですから健康に留意をされて御活動をお願いしたいと思いますが、三十分ほど、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
実は、厚生大臣にお伺いしたい全体のポイントというのは、さっきも大蔵大臣と問答していたのですが、今夜も悩み多き議論を官房長官を含めておやりになるのだろうと思います。どうも御苦労さまなことだと思いますけれども、何か今のままでいくと、大蔵大臣の言葉をかりれば、国鉄あるいは国民年金、いろいろと危機にぶつかっていく。で、まず兄弟の助け合い、次に親戚の助け合い、最後にはオールジャパンで助け合うというふうな論理で運ばれるのじゃないか。国の責任ということも当然つけ加わるでありましょう。ただ、そうなった場合に、今の法案の審議でも、その背景となる各審議会の国共審も地共審も大変な苦汁を飲む思いというのかあるいは厳しい思いがございました。なおそれが国会の審議にも反映をして延々と長引いているという状況になるわけであります。私は、今後を考える場合に、この苦渋かアレルギーかがさらに次から次へと全国民に、オールジャパンに拡大していく方向でやられるというのはぜひとも避けなくちゃならぬ。そういうペースで物事をやったら非常に不幸なことであろう。
それで、厚年、国年の議論のときにも最終段階、参議院での修正、附則の追加がございまして、基礎年金のあり方、設計その他についての検討ということがございます。私は、その問題も含めて最終的には七十年になりますか、何か総括的な議論が行われ、国民的な合意を形成する全体的な場があり、そういう中でしか国民の合意を得られるところの全的一元化というのはないのじゃないだろうかというような気がいたします。
この法案に関連をいたしましておかげさまで勉強さしていただきまして、大河内さん時代の制度審の答申とか、それに関係する学者のお書きになった論文とか、いろんなものを読ましていただきました。三十年代か四十年代かにもいろんな広範な御議論があったというようなことを実は改めて認識をしたわけであります。そこで出たさまざまな知恵がちょっと消えた形で今回のさまざまの統合の経過がなされているというふうな感じもいたします。それでは一体将来どうなるのかなというふうな気持ちもいたします。というようなことで、今後進めるポイントとして、やはり今のペースを変えていかなくちゃならないんじゃないかという気持ちで幾つかの御質問を申し上げたいわけであります。
総括的な御見解は一番最後に伺いたいと思いますが、まず具体的なことを二、三大臣か厚生省の関係の方に伺いたいのでありますけれども、一つは厚生白書をざっと読まさしていただきました。「長寿社会に向かって選択する」、まことにいい言葉でございます。長寿社会とかあるいは高齢化社会ではなくて、実年とかさまざまの言葉も発明をされているようであります。けさのどこかの新聞のコラムを見ましたら、実年と言うが、懐の中が実が空っぽで実年と言うのもどうかなというようなことも書いてありましたけれども、それは別にいたしまして、読ませていただくと、物の考え方として、福祉や医療とかそういう分野に民間活力の積極的な導入と申しましょうか、そういう意味合いのことがポイントとして出されているわけであります。これは現状認識の問題もございますけれども、現実にはさまざまの福祉削減その他が、軍事費は別にして、今日の財政状況のもとで起こってきた。自己負担も相当厳しくなる。それをどうするのかということがむしろ多くの国民の実感ではないだろうかというふうな気がするわけでありまして、臨教審の自由化論争と同じようなちょっとけげんな感じを多くの国民の皆さんが持たれるのではないだろうかというふうな気がいたします。
去年の今ごろに私どもスウェーデンに参りまして、いろいろ社会保障関連の理論とか何か勉強さしてもらいました。スウェーデンのパルメ社民党の皆さんと話をしておりましたら、こう言っておりまして感心したのですが、我々は経済大国となるために、あるいはお金もうけをもっとできる国になるために経済があるとは思っておりません、社会の目標は福祉社会の建設であります、そういう福祉社会をどう建設をするのか、そのための手段として、道具として経済の発展を考えていく、これが私どもの年来の哲学でありますというようなことを言われまして、ああなるほどなというふうなことを思ったときもございましたが、現状の福祉の認識とそれから民活ということですね、この辺はどういう御判断、お考えで白書にも反映されているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/262
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263・増岡博之
○増岡国務大臣 今日の我が国は非常なスピードで高齢化社会を迎えておるわけでございまして、しかも、その最高の場面も諸外国よりも相当高いだろうということが言われております。したがって、そういうことからして、社会保障に対する国民のニーズはいよいよ増大すると同時に、複雑多様化してくると思うわけであります。そういう場合に対処して我々がやっておかなければならないことは、安心して暮らせるための生活に対する必需的なニーズについて、いわば基幹的なものについては公的サービスで対応するのは当然でありまして、それも今後充実していかなければならないと思います。それを超えるような多様化した部分につきまして、民間の創意と工夫に満ちたサービスを導入してはどうか、国民が選択できるようにしてはどうかという考え方で、そのことを厚生白書でお示ししておるわけでございます。
その際も、もちろん民間活力を無制限に導入するということではございませんで、福祉行政を担当する立場から当然適切な指導等を講じていく考えが必要であろうかというふうに思うわけであります。
その内容を具体的に申しますと、例えば企業年金でありますとか、個人年金でありますとか、有料老人ホームでありますとか、このごろの保険会社の入院の差額ベッドの場合の特約あるいは痴呆性保険等、そういうものがございますので、そういうものを含めて基本的な部面を超える多様化した部分について、今後も民間のものを国民が選択できるようにしておいてはどうかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/263
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264・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 そういうことが白書を読ましていただいても述べられております。それで、ちょっと具体的に伺ってまいりたいわけでありますが、今厚生大臣がお述べになりました企業年金の問題がございます。現状がいろいろと書かれてございまして、「今後の課題」というところに三点挙げられております。その基本的役割を公的年金との関連を踏まえて明確化しなくちゃならぬ。二つ目には、国民のニードに対応できるような制度にしていく必要がある。三つ目には、資産運用の効率化等さまざまな努力をしていく必要がある。こういうようなことが書いてございますが、現状の企業年金などの進行ぐあいのテンポと合わせますと非常に遅過ぎるんじゃないだろうかという気がしてならないわけであります。
諸外国の例を見ましても、これは私から厚生省の方に申し上げるのは恐縮なんですが、さまざまの形で社会的な位置づけ、社会的なコントロールを含めた対応が行われているというのが現実であろうと思います。フランスやスウェーデンの場合には、労働協約で決めるようになっておりますし、すべての企業がそれを実施をする。フランスの場合でも、一定額までは強制採用というようなことのようでありますし、また、スイスなんかの場合には、国民投票でこれを採用させるというようなことになっておるようでありますし、それぞれこの位置づけなどについても一定の社会的合意が形成されるようなガイドラインと申しましょうか、方向づけが進んできているというふうに思います。これは成熟度合いの違いということもあるのだろうと思いますが、こういう各国の例を伺うわけであります。そういうものを見てみますと、これからどのようにしていくのか、非常にテンポが遅いではないだろうか、もう一つ具体的な対応が必要ではないだろうかと思うわけです。
先ほども大蔵大臣との問答で申し上げたのですが、厚生年金基金、税制適格年金合わせましてファンド十六兆円、そしてまた、十年を経ずして四十兆、五十兆という時代になるであろう。これは相当速いテンポだろうと思います。
そういうことを考えてみますと、私はこんな気がしてならぬわけであります。六十五歳以上の日本国民は不幸にして四つの階級に分かれてしまうという気がするわけであります。一つは大企業の関連の方々でありまして、三十万円台の年金設計という層が非常にふえてまいると思います。もちろん退職金の一定の部分を振り分けをするというルールでありますから、単純にほかの方と比較をするというわけにはまいりません。そのことは当然重要な前提であります。
さっきもちょっと申し上げたのですが、野村総研が「年金改正と三十万円年金への提言」というのを出しておりまして、三十万円の年金時代をどう設計をするのかという構図を長いレポートで出しております。そして、その中で公的年金についての提言あるいは企業年金への提言、個人年金への提言、いろいろなことも書いてございまして、興味深く読ませていただいたのですが、そういうことがあったものですから、幾つかの大手の産業分野のところで、知り合いあるいは組合などをたどりまして、あなたのところはどうなっているのというふうに聞いてみたわけであります。
時間もありませんし、具件名を言うのは差し控えていきたいと思いますが、ある大手の商事会社では、退職時、次長クラスの人で、六十歳から六十四歳までは企業年金の上積み分が月に大体九万円、六十五歳以降亡くなるまでは十七万円、本人が亡くなった後も七十五歳まで遺族に差し上げますとございます。課長クラスの方でそれぞれ七万円、十三万円ぐらいの額です。
それから、そう大手ではございませんが、ある食品会社の内容を聞いてみましたら、退職金をどれだけ年金に振り当てるのかという部分が、A、B、Cとございますけれども、三分の二ぐらいを振り込んだ場合には、六十歳の時点で十二万九千円、七十五歳まで毎年二・五%ずつ上がりまして、七十五歳、十八万三千円のところで終わって終身支給、死亡の場合も十五年分保障します。一
ある大手の電機会社の場合を見てみましたら、初年度で六万円、毎年五ないし六%アップをしていって、それで十万円になって終身支給される。これも退職金のうち約三分の二年金化というふうな設計であります。
それから、今大きな焦点になっている飛行機会社、旅客会社の方とか、いろいろなものを調べてみましたら、私もびっくりいたしました。世間から見たら随分恵まれた設計の会社があるのだなと思いました。
それからまた、損保とか生保とか、それを運用する方の会社の人なんかに実はいろいろ聞いてみましたら、相当急テンポで広がっている。それぞれ損保、生保の会社の方でも必死になって営業拡大をやっているということで、情報もなかなか詳しいので、実は時々お茶を飲んだりする方に話を聞いて非常におもしろかったのですが、そういう部分が相当急テンポでふえていくであろうという現象は当然予測をされているわけであります。
片一方、中小企業の場合を見てみますと、これは大蔵省の方が給与実態調査とか何か出されておりますから申し上げることはございませんけれども、これは例えば従業員三千人以上の会社の場合、千人以下の場合、百人未満の場合、小さな工場などを含めまして、退職金振り当ての年金設計をするにも、退職金の額というのが既に雲泥の差であります。そうしてまた、退職金も企業年金も無縁という存在も多いわけでありますし、退職金制度すらない企業が二割強あるというのも残念ながら今日の状況であります。
そしてまた、連合方式で厚生年金基金をつくるという可能性もございますから、それらの実態というものも幾つか聞いてみました。これは東京の電機関係の厚生年金基金の例を聞きましたら、六百社ぐらい入っていて、四、五万人という加盟のようでありますが、それでも男性六十歳から月三万円を保障するという状況であります。
私はこれらを考えますと、ストックの資産は別にして、年金で見るならば、要するに六十五歳を過ぎたら日本人は四つの階級に分化をされる。
一つは、三十万円以上年金をもらえる方々がいらっしゃいます。さっきも申し上げましたが、本人がお亡くなりになっても、遺族の方に長くその額を全額保障するところがございます。
それから二つ目には、モデルでもって十八万、十九万になるのでしょうか、新厚生年金、それから官民格差是正というこの法律の内容でいった共済年金の方がいらっしゃるわけであります。
それから、三つ目には新国民年金、基礎年金というものに該当する方、これは膨大な数になるわけでございますけれども、この方々が今の設計でもって、四十年加入で五万円という設計でございまして、今日までさまざまの委員の方が指摘をされましたように、三万六千円しかもらえない人、四万一千円の人とかというのが相当大きな部分になるであろうというふうに言われおります。そういう意味で、三つ目の階級は五万円ももらえないであろうという人。
それから、さっきの野口さんの質問にもありましたけれども、希有の例ということを言われましたが、そのほかにも、いろいろな経緯がございまして無年金、非常に不幸な、残念なことにどうしてもそういう存在になっちゃったという人が、私のところの年金の神様の大原代議士の計算によれば二百万人以上出るであろうというお話を承っております。一要するに、三十万円以上の年金をいただける設計の層があります。これは労働者十人に一人の、相当の部分か半分の部分か。それから厚生年金、新共済年金。それから五万円ももらえないであろう可能性の多い人、これは二千数百万ですから、膨大な数の国民年金。それから百万人か二百万人か知りませんが、発生するであろう無年金者、こういう四つの階級に分化をする。しかもその動きが非常に顕著に、急激に動いているのが今の日本の社会じゃないだろうかというふうな気が私はするわけであります。
そういう動きというものを、個人的ですから十分に勉強していませんが、いろいろと調べてみまして、そして厚生白書を拝見いたしまして、企業年金の分その他を入れまして、それから今度新しい年金はこうなりますという解説もたくさん書いてございますからそれを読みまして、果たしてこれでいいのだろうか、七十年統合どころか、これから数年間のうちに、今議論をしている官民格差どころではない、大変大きな社会問題が発生するということになる、その芽が拡大しているのが今日の状況ではないだろうかという気がするわけであります。そういう問題意識を、この年金審議の中で特に大きな責任を持たれる厚生大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/264
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265・山内豊徳
○山内政府委員 厚生白書で提起いたしました問題は、先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、厚生年金の特に普及面あるいは資金運用の充実面について政策が必要なことは先生もお認めの上での御指摘と思いますが、やはり基本になりますのは公的年金制度自体で受け持つべき部分といいましょうか、老後生活の部分と企業年金的なもの、公的年金の一部を代行する企業年金である厚生年金基金でとらまえる部分との役割分担をはっきりさせていくということが今急がれている課題じゃないかと思います。
大局的に今先生がお挙げになった四つと申しますか、私も、基礎年金夫婦十万円と考えているわけでございますが、そういった老後の生活に企業年金の上積みがあるために年金給付額に差が出る実態は、それはある程度そのとおりだと私は思いますが、その中でも、かねがね申し上げておりますように基礎年金を土台とする公的年金の役割、その上積みとして位置づけるべき企業年金の役割を今後ともはっきりさせていけないだろうかというのが今回の厚生白書の提言の主体でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/265
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266・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 今私が申し上げたことは、これから二十一世紀に向かってどうなるなんという問題じゃなくて、そういう社会の変化が非常に急激に今起こってきているということ、これは私の勉強といいますか、聞いた範囲でも実は非常に印象深く感ずる点であります。
確かに私は、三十万円以上もらえる人、十八万円の人、五万円ももらえない人、ゼロの人と、大分特徴的表現をして申し上げましたが、表現は別にいたしまして、そういう状況が進んでいく。そして、今は昭和六十年。七十年、これから十年後というのは、今ではちょっと予測できない大きな変化が起こってくるというようなことではないだろうかという気がしてならないわけでありまして、そういう起こりつつあるものをどう分析して、どう対応するのかという視点を持ってこれから議論しなければ、六十五年の節目も七十年の節目も、とてもじゃないけれども多くの国民の合意を形成できるというものではないだろうというふうな気がいたしますし、それから幾つかの矛盾が大きいと思うのであります。
ちょっと税制関連などを含めまして見てみますと、例えば厚生省さんにその保険料負担の決め方というものについて明解な一貫した論理が一体あるのだろうかという疑問を実は持つわけであります。
健康保険の場合には、所得の大小によって保険料負担に十倍近い差がございます。一定の社会的な公平のための措置という論理が働く。
国民年金の場合には、定額拠出、定額給付、支払い能力は考慮されていない。さまざまな関係の学者の本なんかもブックセンターに行っていっぱい買って読んでみましたが、やはり支払い能力を考えないで定額拠出、定額支給というのは、国民のべーシックな部分の保障ということにはなじまないことであろうということを多くの学者が書いていました。それから、今六千七百幾らですか、五十九年度価格で将来一万三千円ということになっておりますね。私のうちでも夫婦で入っておりますから毎月一万三千円払っておりますけれども、家内にすればなかなか大変だと言います。それから、恐らく五十九年度価格で一万円前後になったときには、今の状態では国民健保の一七%とか二〇%払えないに近いような状態が当然出てくるだろうと私は思います、国民生活全体がレベルアップすれば別ですけれども。
それから厚生年金の場合には、生涯所得が低い方には有利な配分効果を持った設計になる。全体として一貫した考え方というのは生まれてきていないというふうな気もいたします。
課税の面でも一貫した原理というものがないのじゃないかという気がいたします。給付段階に対する課税の問題、それから積み立て段階の課税の問題がございます。給付段階の課税の問題を見ましても、公的年金は給与所得として課税をされる。退職金の課税を含めてえらく違うので、一時金でもらう人が九割だという異常な状態。それから準私的年金の場合は雑所得、厚生年金、適格年金の場合。それから特別法人税一%の問題などもあります。
野村総研のペーパーを読んでおりましたら、こういう発想も書いてございました。基礎年金の国庫負担をふやすさまざまな方法があるでありましょう。私もちょっと二、三年かけていろいろな議論をしたらいいと思います。ただ、それをふやすことによって非常に大きなメリットがあるということを書いてございます。一つには、国民年金の一号被保険者の保険料免除率が非常に減少するであろう、それから連動する被用者年金の財政に余裕ができるなどのいろいろな面があって着目をする必要があるというようなことも書いてございました。幾つかそういう問題があるわけでありまして、年金課税の面を見ましても、負担のルールの問題にしても、運用の問題にしても、そういう感じがするわけであります。
そういう面を考えますと、厚年、国年の議論の中で出された問題意識というものをなるべく早い時期に、制度審になるのでしょうかあるいは強化をされた社会保障制度審議会がいいのでしょうかわかりませんけれども、スタートさせるということがないと、到底七十年に向けた統合の国民的合意は得られないという感じが非常にするわけであります。個別の問題はお答えいただく時間がないと思いますから、その辺どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/266
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267・山内豊徳
○山内政府委員 先生の御指摘の点は、これから十年といわず二十年、三十年かかって考える場合の非常に大きな問題面であろうと思います。確かに私どもが公的年金一元化を展望しつつ七十年に向かっていろいろなことを検討します場合も、単に制度上の給付なり負担の調整をどう考えるかということではなくて、大きな意味での社会保障全体の国民に対する費用の持ち方、あるいは先生がもう一つの面でおっしゃった税のかけ方も含めた議論が必要になってくると思います。それだけに、今まで私どもが昭和四十年代以降改正してきました年金改正の取り組み等もっと幅の広い議論をしながら、また突っ込んだ議論をしながら、政府部内でも議論していかなければいけない問題だろうと思います。
ある意味では、保険料を上げるか税金で手厚くカバーするかという問題になりますと、単に年金制度ができたばかりの時代では、国民所得に対するけたも小さなもので議論ができたわけでございますが、これからは税は税で議論すればそれなりに何兆という税源を確保するかしないかという議論になってくるわけでございますので、私ども、部分的な年金制度を検討する場合の非常に大きな問題意識として、先生御指摘の点を頭に置きながら作業をすべき事柄だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/267
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268・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 もう時間ですから、最後に、御出席をいただきました厚生大臣に所見をひとつ伺って終わりたいと思います。
勉強してみまして、将来どうすべきなのかということを私どもなりに実は非常に考えさせられるわけであります。今も申し上げましたが、一元化問題と申しましても、完全統一ということを言う人は非常に少ないわけでありまして、やはり基礎年金をどう安定させ、どう確立をするのかということが中心になっているような今日の状態でございますけれども、六十五年、七十年という状況を考えますと、今議論をしている焦点の議論とは相当違った、しかも非常に大きな社会問題が実は発生をする。その見通しをどう持って勉強していくのかという取り組み方が一番大きな問題ではないだろうか。
例えば、企業年金を見ましても、ことしの厚生白書を見て一体どういうことかなという感じが実はするわけでありまして、さっき申し上げたような三十万円を一生死ぬまでもらえる人あるいは死んだ後も遺族がもらえる人からゼロの人まで極端に分かれるというふうな現象が広がっていったらどうなるのだろうか。それに対して、今の発想とは違うさまざまの社会システム、コントロールというのはどうしたらいいのだろうかということもあると思います。
負担の面でも、一貫したルールがあるとは思えません。基礎年金の負担でも、五十九年度価格で一万円を超す前後から払えないとか、いろいろな問題の人が一〇%ではない、二〇%を超すような状態で出ることも今の国民健保からして予測せざるを得ないというふうなことを実は感ずるわけであります。
そうなりますと、新たな財源というものをどうするのかということ、また、国民の合意を得られる方法も考えなければならぬ。大蔵大臣は、目的税という一般的には余り好まないという趣旨のことをさっき言われておりましたが、これからの社会を考えますと、どうやって真剣に国民の合意を得て、人生八十年時代の実年か老後かに不安を持たないで安心できるような一つの設計が社会的にできるのだろうかという勉強をしなければならぬ。私は最低五年かかると思います。審議会をやっても最低二年かかると思います。審議会で結論を出しても、それを一定の社会的合意にするためには三、四年かかると私は思います。そういうことを考えますと、今せっぱ詰まって目の前のこの法案をやっているけれども、それが終わったらまたゆっくり考えようということでは間に合わないような状態ではないだろうかという気がするわけであります。今の政府のいろいろなシステムの問題その他にわたりまして、全体的に問題があるということを考えますと、そういう勉強をしなければならぬ。それから今晩も、この後あした予定の連合審査に向けて御相談をなさるのでしょうけれども、さまざまのストレッサーがたまってこの法案になった。そして次には厚生大臣、あなたもかぶってくださいよ。自治大臣もかぶってくださいよ。オールジャパン全部悩む、あるいはみんな不満がうっせきをするようなやり方というのは、幾ら考えてもうまくいかない。何らかの形で、もっとトータルで考えた議論の場で国民的合意を真剣に追求する努力をしなければならぬ。それにしても何年もかかると思います。そういうことを実は痛感をするわけでありまして、これについての御答弁を最後に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/268
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269・増岡博之
○増岡国務大臣 私どもは今年金の問題につきましては社会保険方式でやっておるわけでございます。したがって、その中で行い得るいろいろな制度がございます。私はこの問題の将来を考えるにつけて、事実先生御指摘のように今後起こり得ることすべてを網羅してやるということはなかなか大変なことだと思いますけれども、しかしそれもいずれやらなくてはならない時期が来ると思います。そういう問題を処理する上でまず基本的に考えておかなければならぬことは、公平であることだろう。世代間の公平と同時に、同一世代内でも公平であること、先生御指摘のようなひずみも生じかけておるわけでございますが、そのことと、それから制度が安定をしていかなければならないということ、長年の老後の年金を支える制度でありますから、基盤が安定をしておらなければならぬだろうという二つのことは確実に言えるのではないかというふうに思うわけであります。
そういう観点から、実は今度お願いしております共済年金法案につきましても、基礎年金を導入することによって制度間のある程度の調整を基礎年金部分のみについては行うということでありまして、これを今後も御審議いただいて御了承いただきました後、来年四月一日から実施いたしたいと思っておるわけでございますが、その後においてもやはり負担と給付の公平ということを考えていかなければならないということを思います。
それともう一つは、部分的な共済制度、いわゆる縦割り的な共済制度というものは、いいときには非常によろしゅうございますけれども、現在の国鉄のような状態もあるわけでございますから、そういう制度を維持していくことはなかなか困難であろうというふうに思うわけであります。したがって、政府が考えております昭和七十年度までに公的年金の一元化、これは先生御指摘のように、統合してしまうのか、財政調整で済ませるのかという結論はまだ出ておりませんけれども、そういう中でそういう縦割りの問題も解決をしていかざるを得ないというふうに思っておるわけであります。しかし、それとてもやはりかなりの年月をかけて関係者の御理解をいただき、国民にもよく御判断いただかなければならない問題でありますので、今先生にずばりお答えするような答えではなくて大変恐縮でございますけれども、とにかく公平であり安定をしていくという原則のもとで全国民が力を合わせていくということ以外にないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/269
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270・伊藤茂
○伊藤(茂)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/270
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271・堀之内久男
○堀之内委員長代理 この際、お知らせいたします。
関係委員長と協議の結果、大蔵委員会地方行政委員会文教委員会農林水産委員会社会労働委員会運輸委員会連合審査会を明二十八日木曜日午前九時五十分から開会することになりましたので、御了承願います。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110304629X00719851127/271
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