1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十一年十月二十日(月曜日)
午前十時三分開議
出席委員
委員長 細田 吉蔵君
理事 小此木彦二郎君 理事 小里 貞利君
理事 佐藤 守良君 理事 三塚 博君
理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君
理事 嶋崎 譲君 理事 西中 清君
理事 河村 勝君
逢沢 一郎君 甘利 明君
井出 正一君 石破 茂君
石渡 照久君 臼井日出男君
大島 理森君 大野 功統君
片岡 清一君 亀井 善之君
久間 章生君 古賀 誠君
桜井 新君 鈴木 宗男君
関谷 勝嗣君 田中 直紀君
津島 雄二君 中島 衛君
中村正三郎君 野中 広務君
長谷川 峻君 増岡 博之君
松田 九郎君 村井 仁君
森田 一君 山村新治郎君
伊藤 忠治君 上田 卓三君
菅 直人君 小林 恒人君
関山 信之君 戸田 菊雄君
村山 富市君 有島 重武君
石田幸四郎君 遠藤 和良君
大橋 敏雄君 柴田 弘君
阿部 昭吾君 工藤 晃君
中島 武敏君 村上 弘君
出席国務大臣
内閣総理大臣 中曽根康弘君
大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君
厚 生 大 臣 斎藤 十朗君
運 輸 大 臣 橋本龍太郎君
労 働 大 臣 平井 卓志君
自 治 大 臣
国家公安委員会
委員長 葉梨 信行君
国 務 大 臣
(内閣官房長官) 後藤田正晴君
国 務 大 臣
(経済企画庁長
官) 近藤 鉄雄君
出席政府委員
内閣審議官 中島 眞二君
内閣法制局第四
部長 大出 峻郎君
警察庁交通局長 八島 幸彦君
総務庁人事局長 手塚 康夫君
経済企画庁調整
局長 川崎 弘君
経済企画庁総合
計画局長 及川 昭伍君
経済企画庁調査
局長 勝村 坦郎君
国土庁土地局長 田村 嘉朗君
大蔵省主計局次
長 角谷 正彦君
大蔵省主計局次
長 篠沢 恭助君
厚生大臣官房審
議官
兼内閣審議官 佐々木喜之君
通商産業大臣官
房審議官 末木凰太郎君
中小企業庁長官 岩崎 八男君
運輸大臣官房審
議官 井山 嗣夫君
運輸大臣官房国
有鉄道再建総括
審議官 林 淳司君
運輸大臣官房国
有鉄道部長 丹羽 晟君
運輸省運輸政策
局長 棚橋 泰君
運輸省地域交通
局長 熊代 健君
労働大臣官房審
議官 佐藤 仁彦君
労働省労政局長 小粥 義朗君
労働省職業安定
局長 白井晋太郎君
建設省道路局長 萩原 浩君
自治大臣官房審
議官 渡辺 功君
自治省行政局公
務員部長 柳 克樹君
自治省税務局長 津田 正君
委員外の出席者
日本国有鉄道総
裁 杉浦 喬也君
日本国有鉄道常
務理事 岡田 宏君
日本国有鉄道常
務理事 須田 寛君
日本国有鉄道常
務理事 山田 度君
地方行政委員会
調査室長 島村 幸雄君
運輸委員会調査
室長 荻生 敬一君
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委員の異動
十月二十日
辞任 補欠選任
小沢 辰男君 田中 直紀君
古賀 誠君 逢沢 一郎君
関谷 勝嗣君 大野 功統君
月原 茂皓君 平沼 赳夫君
野中 広務君 石破 茂君
野呂田芳成君 村井 仁君
原田 憲君 石渡 照久君
町村 信孝君 中村正三郎君
若林 正俊君 井出 正一君
山下八洲夫君 菅 直人君
浅井 美幸君 有島 重武君
同日
辞任 補欠選任
逢沢 一郎君 古賀 誠君
井出 正一君 若林 正俊君
石破 茂君 野中 広務君
石渡 照久君 原田 憲君
大野 功統君 関谷 勝嗣君
田中 直紀君 小沢 辰男君
平沼 赳夫君 亀井 静香君
村井 仁君 野呂田芳成君
菅 直人君 伊藤 忠治君
有島 重武君 浅井 美幸君
同日
辞任 補欠選任
伊藤 忠治君 山下八洲夫君
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十月十六日
国鉄の分割・民営化反対に関する請願(渡部行雄君紹介)(第一九四号)
国鉄分割・民営化法案廃案等に関する請願(柴田睦夫君紹介)(第一九五号)
同(寺前巖君紹介)(第三二四号)
国鉄の分割・民営化関連法案廃案に関する請願(新盛辰雄君紹介)(第一九六号)
同(永井孝信君紹介)(第一九七号)
同(広瀬秀吉君紹介)(第一九八号)
同(沢田広君紹介)(第三二五号)
同(松本善明君紹介)(第三二六号)
同(山原健二郎君紹介)(第三二七号)
国鉄分割・民営化反対に関する請願(田口健二
君紹介)(第二四二号)
国鉄分割・民営化関連法案反対に関する請願(辻第一君紹介)(第二四三号)
同(中島武敏君紹介)(第二四四号)・
同(不破哲三君紹介)(第二四五号)
同(村上弘君紹介)(第二四六号)
同(矢島恒夫君紹介)(第二四七号)
同(中路雅弘君紹介)(第三二八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国有鉄道改革法案(内閣提出第一号)
旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案(内閣提出第二号)
新幹線鉄道保有機構法案(内閣提出第三号)
日本国有鉄道清算事業団法案(内閣提出第四号)
日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法案(内閣提出第五号)
鉄道事業法案(内閣提出第六号)
日本国有鉄道改革法等施行法案(内閣提出第七号)
地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
日本鉄道株式会社法案(伊藤茂君外八名提出、衆法第一号)
日本国有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に関する法律案(伊藤茂君外八名提出、衆法第二号)
日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案(伊藤茂君外八名提出、衆法第三号)
派遣委員からの報告聴取
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/0
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001・細田吉藏
○細田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、日本国有鉄道改革法案、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案、新幹線鉄道保有機構法案、日本国有鉄道清算事業団法案、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法案、鉄道事業法案、日本国有鉄道改革法等施行法案及び地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案並びに伊藤茂君外八名提出、日本鉄道株式会社法案、日本国有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に関する法律案及び日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案の各案を一括して議題といたします。
この際、去る十八日、各案審査のため、北海道、香川県及び福岡県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員から報告を求めます。第一班三塚博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/1
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002・三塚博
○三塚委員 第一班、北海道班の派遣委員を代表して御報告申し上げます。
派遣委員は、鈴木宗男君、関山信之君、戸田菊雄君、西中清君、阿部昭吾君、中島武敏君、それに私の七名で、現地参加として委員町村信孝君、委員小林恒人君、議員鳩山由紀夫君が参加されました。
会議は、札幌市共済ビルにおいて開催し、現地各界の意見陳述者の方々から、日本国有鉄道改革法案等十一法案について意見を聴取し、これに対して熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、北海道大学経済学部教授小林好宏君、北海道急行運輸株式会社代表取締役社長皆川文次君、北海道経済連合会専務理事佐々木宣君、北海道商工連盟専務理事羽根田二郎君、北海道経営者協会会長武井正直君、弁護士佐藤太勝君の六名でありました。
その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、国鉄改革政府八法案に賛成の立場からの意見としては、国鉄の現在の機構、制度的枠組みのもとでは合理的、効率的経営が不可能であり、公社形態、肥大化した機構からは地域主体の輸送体系、サービスの改善が生まれず、基本的に今回の分割・民営化が望ましいこと。分割後の北海道新会社は、現在よりも顧客をふやし、バスとの競争に勝つため、スピードアップ、電化等のための路盤、軌道の強化が望まれ、六千二百億円の基金運用では不足と考えられる。また、最近の金利低下傾向の中にあって、予定された資金の確保に十分な配慮を行うこと。北海道の交通の骨格となる路線はこれを確保し、道民の足として十分機能するよう、利用する道民みずからが新会社への育成強化に努める必要があること。北海道における特定地方交通線のうち保留四線は、沿線住民の民生の安定を図る見地から政府は必要な対策を適切に講ずるよう要望すること。余剰人員対策は、北海道の厳しい雇用情勢の中で、道内における雇用の創出も含めて政府の特段の配慮を望むこと等の意見が述べられました。
また、反対の立場からの意見としては、北海道旅客鉄道株式会社の自立経営は不可能と判断するが、可能だと納得できる数値を示してほしいこと。社会構造の変化に対応できなかった反省に立った輸送力増強と競争力の整備計画が示されていないこと。極端な減量経営、運賃アップ、ローカル線の切り捨てを前提とする北海道会社の経営見通しは余りにも甘く、冷たいものと道民は感じていること。多角的経営手法により鉄道事業が新生することへの疑問、国鉄職員の雇用不安、異常な労使関係は、政府案に妥当性と合理性が欠けており、雇用問題については国の責任として施策を明確にして解決に当たるべきこと。新事業体は分割でなく全国一社制とし、地方交通線を含む全国ネットワークを維持する必要があること等の意見が述べられました。
次いで、各委員から陳述者に対し、道内地域流動九八%から見た分割の有利性、保留四線の存続、競争条件の整備の必要、雇用受け入れ先の確保、分割後の経費増の心配、民間手法による再建方策のあり方、妥当な基金の額、北海道新会社の経営できる可能性、貨物会社の見通しとダイヤ編成への危惧、人材活用センターの位置づけとあり方等について質疑が行われ、滞りなく全部の議事を終了いたした次第であります。
以上が第一班の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じますが、速記録ができましたならば、本日の会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第一班の報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/2
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003・細田吉藏
○細田委員長 次に、第二班佐藤守良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/3
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004・佐藤守良
○佐藤(守)委員 団長の細田委員長にかわりまして、私が第二班、香川県班の派遣委員を代表して御報告を申し上げます。
派遣委員は、団長の細田吉藏君、野中広務君、井上普方君、上田卓三君、石田幸四郎君、遠藤和良君、工藤晃君、それに私の八名で、現地参加として委員森田一君、月原茂皓君が参加されました。
会議は、香川県高松港湾合同庁舎において開催し、現地各界の意見陳述者の方々から、日本国有鉄道改革法案等十一法案について意見を聴取し、これに対して熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、株式会社四国新聞社監査役阪根義雄君、日本労働組合総評議会香川県地方評議会議長加治美夫君、徳島商工会議所会頭布川隆美君、交通問題評論家田中誉君、鉄道労働組合四国地方本部委員長宮道義幸君、四国学院大学講師橋本了一君の六名でありました。
その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、国鉄改革政府八法案に賛成の立場からの意見としては、分割・民営化することは、地域のニーズの反映、責任体制の明確化、競争意識の触発、企業の活性化につながるので賛成である。経済活動の官営、国営の時代は終わり、経営能力により適正規模で行うこと、すなわち小さい方が効率的であり、対応性がある。四国においては、現在、電車は一メートルも走っておらず、ほとんどの鉄道路線は単線であるが、分割・民営になれば、経営のきめ細かいサービスが期待できる。今後、高速道路、空港の整備、本四架橋の開通を考えるとき、四国の鉄道を取り巻く環境は一層厳しいと思われるので、バス部門、関連事業による収入増を図る必要がある。それには、会社法第十条の中小企業との関係について十分なる行政指導あるいは適用除外等を考える必要がある。今後の鉄道近代化のため、設備投資の増大をも考えねばならず、経営安定基金の増額、できれば二千億円にすることが望まれるとともに、物価変動、金利の低下に対する措置も考える必要がある。また、四国は台風常襲地帯で、大災害があれば経営安定基金があっても飛んでしまうので、相互補完措置あるいは特別立法による救済措置を考慮する必要がある。なお、宇高連絡船についても四国鉄道会社の企業に即した船舶の就航方法を十分検討するとともに、雇用問題については四国地方はおくれているので、公務員、地方公務員、産業界に対する確保について一層の努力を願いたい、法律案の早期成立を望む等の意見が述べられました。
また、反対の立場からの意見としては、国鉄財政の破綻の発生原因別の額、責任の所在が不明確である。本来国鉄の債務でない鉄建公団、本四連絡橋公団等の債務を算入していることは不当である。分割・民営化での地域密着性というが、四国の鉄道事業は伸びる余地がないので、鉄道経営は成り立たない。貨物は減少の一途をたどり、全廃につながる。瀬戸大橋に電化の鉄道を運行させるためには国有鉄道の保持が必要である。新会社の経営予測、収支見通しについて、その根拠は不明確であり、特に営業費用の圧縮は労働者の犠牲と国民へのサービス、安全交通を損なうものである。企業性、効率性の追求は運賃値上げ、ローカル線の切り捨て、要員の削減になる。基金制度は内部補助の変形で、先行き不安である。国鉄改革法第二十三条は違法であり、人材活用センターは精神的アウシュビッツである。国民の財産である国鉄用地は、私的企業の営利目的のために売却すべきではない。資産の切り売りは新会社の経営基盤の破壊につながるので反対である。法律案の慎重審議を望む等の意見が述べられました。
次いで、各委員から陳述者に対し、関連事業についての住民の私鉄並みの協力、設備資金に係る財政措置の必要性、民営のメリット、貨物会社の旅客会社への統合、地方交通線廃止の歯どめ、金利の動向による経営への影響、安定基金によらなければやれない会社を民間企業と言えるのか等について活発な質疑が行われ、滞りなく、全部の議事を終了した次第でございます。
以上が第二班の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じますが、速記ができましたならば、第一班と同様のお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第二班の報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/4
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005・細田吉藏
○細田委員長 次に、第三班山下徳夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/5
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006・山下徳夫
○山下(徳)委員 第三班、福岡班の派遣委員を代表して御報告を申し上げます。
派遣委員は、久間章生君、松田九郎君、嶋崎譲君、村山富市君、山下八洲夫君、柴田弘君、河村勝君、村上弘君、それに私の九名で、現地参加として委員大橋敏雄君、議員中西績介君が参加されました。
会議は、福岡市福岡第二合同庁舎において開催し、現地各界の意見陳述者の方々から、日本国有鉄道改革法案等十一法案について意見を聴取し、これに対して熱心な質疑が行われました。
意見陳述者は、九州・山口経済連合会常務理事前田研一君、田川市長滝井義高君、福岡大学工学部教授吉田信夫君、社会問題研究所事務局長八丁和生君、九州電力労働組合本部執行委員長鷲頭康義君、筑豊復興共闘会議事務局長野村実智明君の六名でありました。
その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、国鉄改革政府八法案に賛成の立場からの意見としては、政府案は、最後の機会の国鉄再建案として適切かつ現実的なもので、再生を図る唯一の方策であり、早期成立が肝要であること。九州にとっては、鉄道は九州内の交通ネットワークづくりを主体にすれば十分と考えられるので、分割に賛成である。九州の雇用情勢は一段と厳しいので、国の出先機関が率先して採用枠を広げて採用すること。九州会社の災害復旧費については、河川、道路と同じ扱いとする措置を講ずること。労使の信頼回復と正常な労使関係の確立が急務であり、労使の協力と健全経営への意欲が重要であること。用地売却についてば、資産処分審議会に九州地方の代表を加えるなど制度面で地域の声を十分反映すること。地域密着型の経営を目指し、ローカル線の存続に新会社は最大の努力を払うこと。九州新幹線については、九州の高速交通体系の整備を図り、九州域内の一日行動圏の確立のため、十分論議を尽くして早急な実現を図ること等の意見が述べられました。
また、反対の立場からの意見としては、国鉄改革は必要と考えるが、現行公社制度は欠点があり、民営化には賛成であるが、分割することは総合交通体系に対する配慮を欠くので、全国一社制の統一ネットワークで今後もいくべきであること。政府案は、国鉄の解体、公共交通の危機を深刻化し、公共交通のニーズ及び過疎地域の切り捨てを行い、交通弱者、福祉への取り組みを弱めるものであること。九州会社は基金でようやく赤字をカバーするもので、今後地方交通線の切り捨てが懸念されること。処理すべき長期債務の積算根拠及び処理財源が不明確なこと。私鉄並みの経営の目標は、九州の場合私鉄も赤字であり、関連事業への進出は地元第三次産業を不当に圧迫することになるので不可能であること。分割・民営によって交通サービスの地域格差を広げ、特に筑豊地帯の地域交通が切り捨てられること等の意見が述べられました。
次いで、各委員から陳述者に対し、国鉄経営の実態認識、長期債務処理財源の明示、全国一社制のメリット、デメリット、適正要員数の妥当性、改革の際の職員採用の仕組み、九州会社の分離一社制のメリット、デメリット、九州会社の経営見通し、地方交通線の存廃、九州内の雇用確保のめど、人材活用センターの実情、整備新幹線の財源等の問題について質疑が行われ、滞りなく全部の議事を終了した次第であります。
以上が第三班の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じますが、速記ができましたならば、第一班と同様のお取り計らいをお願いいたします。
以上をもって第三班の報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/6
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007・細田吉藏
○細田委員長 お諮りいたします。
ただいま報告のありました第一班、第二班及び第三班の現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/7
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008・細田吉藏
○細田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/8
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009・細田吉藏
○細田委員長 午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十時十九分休憩
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午後二時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/9
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010・細田吉藏
○細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
ただいま議題となっております各案について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村上弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/10
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011・村上弘
○村上(弘)委員 日本共産党は、国鉄の分割・民営には反対であります。全国単一のネットワークで結ばれた公共交通機関である国鉄を守り、発展をさせる立場であります。
ところが、監理委員会や政府の見解では、国鉄の経営危機の主要原因について、それは言うまでもなく莫大な設備投資を国鉄に利子つきの借金でやらしてきたことにあるわけでありますが、そういう莫大な借金を背負わしている問題を全く棚に上げて、輸送構造の変化に効果的に対応できなかったとか、あるいは国鉄危機の主要原因は全国一元の巨大組織としての公社という経営形態のせいであるとか、そのために変化への対応がおくれた、こう言っています。
さらに、過去数次にわたる再建策がいずれも失敗したのは、これも経営形態の問題にメスが入らなかったからだ、こういうふうに述べております。
それ以外にも、外部干渉に弱いとか経営の自主性がないとかいろいろ挙げまして、諸悪の根源は経営形態にある、だから、再生の道は国鉄の分割・民営化以外にはない、こう言うわけであります。
果たしてそうでしょうか。事は百十四年の歴史を持つ国鉄と国民生活全体にかかわる重大問題であります。しかも国鉄は、一度解体し、土地などもどんどん売り払って営利企業化してしまえば、これはもう取り返しがっかないわけであります。
こういう歴史的な大問題でありますから、原点に立ち返って、なぜ国鉄が経営危機に陥ったのか、その原因、内容はどういうものか、その責任はどこにあるのか、そういう問題について、特に、国鉄という経営形態の中にその主要な原因があるのかどうか、これを歴史的事実に基づいて、特に自民党政治とのかかわりなどにもさかのぼって徹底的に究明することが絶対に必要だ、これこそこの国鉄国会の最大の使命だ、こう思います。
言うまでもなく、病気を治すには正確な診断が必要であります。そうでなければ治療も誤ります。下手をすれば命にもかかわります。実際、政府は、手の施しようのないほど国鉄の危機を深化させて、そして事ここに至っては分割・民営以外にはないんだということであるかのように、国民に現実に押しつけてきておるわけであります。私は、こういうやり方は絶対に許されてはならない、そういう立場から、以下一つ一つお聞きしてまいりたいと思います。
まず、国鉄の名誉のために聞いたいのですが、国鉄といえばまるで即赤字のように思われております。これは政府の意図的な宣伝のせいでもありますが、しかし、国鉄は百十五年に及ぶ歴史のうち九十年以上が黒字であります。
国鉄総裁にお聞きいたしますが、国鉄が赤字になったのはいつからか、その額はどれくらいであったか、それが第一点。
第二点は、財政の悪化が特に深刻になるのは七〇年代以後のせいぜい十数年のことでありますが、その転機を画した一九七三年、昭和四十八年度の単年度赤字、長期債務は幾らであったか。
第三には、昨年度、一九八五年、昭和六十年度の単年度赤字、長期債務は幾らであったか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/11
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012・杉浦喬也
○杉浦説明員 お答えいたします。
昭和三十九年度から国鉄の赤字が始まりまして、三十九年度の赤字が三百億であります。
昭和四十八年度の単年度赤字は四千五百四十四億円、その年の年度末の長期債務残高は四兆三千六百七十九億円。
それから、昨年度、昭和六十年度の単年度赤字額は一兆八千四百七十八億円、それから同年度末の長期債務残高、一般勘定と特別勘定を合計いたしまして二十三兆五千六百十億円。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/12
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013・村上弘
○村上(弘)委員 明らかなように、このいわゆる大赤字だどか長期債務だとか言われるのはここ十数年のことですね。昭和三十九年、一九六四年当時の赤字は単年度三百億円、これが赤字転落の初めでありますが、当時はまだ少なかった。それが一九八五年、昨年度は長期債務二十三兆五千億と大変なもので、このわずか十三年間ばかりの間に、長期債務一つとっても五倍以上にふえておるわけです。
そして、こういう状況の中で今一番問題だと思うのは、国鉄といえば赤字だ、長期債務だ、まあ大赤字宣伝がやられておるわけでありますけれども、一体この二十三兆五千億円という長期債務の内容はどういうものなのか、国民には知らされていない。率直に知らさないで隠したり回避したりしてきておる。なぜこういう長期債務が生まれたのか、その原因と責任の所在はどこにあるのか、解明もほとんどしておらぬわけであります。
この漫画の本ですね、「国鉄 元気になぁーれ」という、これは新幹線のグリーン車の中に、ただで座席に配られておるわけであります。これは国鉄当局が出しているものでありますが、これでいくと、「一日列車を走らせると六十七億円ずつ赤字が増え続ける」とか、それが積もり積もって二十三兆五千億円にもなったとか、こう書いているのです。こんなのを読めば、だれでも、まるで列車を走らせるための人件費や物件費で毎日毎日六十七億赤字が出ておるかのように国民は思いますね。そこにペテンがあるのです。
そこで、今国鉄総裁が出しました二十三兆五千億円の長期債務の内容は一体どういうものか、新幹線等の設備投資の借金だとか利子だとか特定人件費だとか、これがほとんどでありますが、簡単にその内容を述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/13
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014・杉浦喬也
○杉浦説明員 二十三兆五千億の中身を簡単に分類いたしますと、一つはいわゆる赤字のための借入金、赤字借入金による借金、これが約九兆一千億。それから、減価償却ができないということで借金をいたしました、それは、主として施設の維持更新等安全対策等に充当される金額でございます。残り約九兆五千億、これがいわゆる輸送力増強等のための借入金ということに相なるわけでありまして、さきに申し上げました二つを合計いたしますと全体の約六割、つまり赤字借入金並びに安全等の維持更新費の金額が約六割を占めているということでございまして、先般来いろいろな議論がございますが、借入金の金額すべて、それが利子にはね返り、それがすべての要因であるというふうにおっしゃいますが、その中の経営上の必要性それから経営の結果の赤字の占める割合というものが約六割であるということをおわかりいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/14
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015・村上弘
○村上(弘)委員 なるべく過去の設備投資やその利子あるいは特定人件費のことに触れないわけでありますが、要するに、これら全体が押しつけられた設備投資のための借金とその利子、そこから出てくる新たな借金、こういうものの関連の中でふえてきたものであるということはもう明白であります。それで、国鉄の運転によって一日六十七億円赤字が出ておるということについても、結局はこの長期債務が基礎にあって、そこから出てくる新たな資金不足、そのための借金、そのための利子ということになっているわけであって、まるで国鉄と国鉄労働者が日ごろ列車を動かすために赤字が出ておるかのように思わせる仕掛け、こういう宣伝は非常に欺瞞的なものだ、こういうふうに思うわけです。
もう一度総裁にお聞きしますが、この間、このような国鉄の分割・民営化のために使った広報費はどれぐらいであり、この漫画などは単価どれぐらいで、どれぐらい出していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/15
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016・杉浦喬也
○杉浦説明員 毎年の広報活動費は、この数年間を見ますと約六億円になります。そのうちの一部を使いまして国鉄の現状あるいは改革の問題につきましてPRをしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/16
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017・村上弘
○村上(弘)委員 そういう大変な広報費を使いながら、国民は、国鉄は赤字だ、それは経営形態に原因があるんだ、分割・民営化は仕方がないんだ、こう思わせられるようになってきたと思うわけです。
しかも、私が問題だと思うのは、これだけ大赤字宣伝したのですから、分割・民営化をすれば赤字がなくなるんじゃないかと国民は期待を持たせられてきたわけですね。しかしながら、実際に今度の計画を見ましても、赤字がなくなるどころか逆に鉄建公団などの分も押しつけられて、水増しをされて総計三十七兆三千億円なくなるどころかふえるわけですね。しかも、そのうちの大半が清算事業団に移しかえられるだけですね。そして十六兆七千億円、今度の土地売却などで増減があるかもしれませんが、結局は土地売却の問題も含めて国民にその負担が押しつけられる、こういうことになってきておるわけです。これはまことに巧妙なすりかえであると思います。第一に、赤字をなくするためだと思わせて、赤字はなくならない。第二に、国鉄のせいでもない長期債務、その利子あるいは特定人件費、こういうものをまるで国鉄の経営形態が原因でできたものであるかのようにすりかえてきておる。これが今度の赤字問題の一番重要な点ではなかろうかと思うわけです。
そこで、運輸大臣にお聞きしますけれども、この長期債務やその利子、特定人件費を除けば、一般営業損益では黒字ではありませんか。昨年、一九八五年、六十年度の一般営業損益は幾らであるかということと、一日当たりにするとそれは赤字か黒字か、幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/17
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018・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 国鉄の決算、昭和六十年度、委員が御指摘のように、一般営業損益に限定して物を申し上げるならば、確かに三千百八十九億円の黒字を計上いたしております。しかし、一般営業損益での黒字計上というものは、国鉄の経理の状態をあらわす指標の一つでありますけれども、これが国鉄の経営の全体の姿ではないことはよく御承知のとおりです。すなわち、一般営業損益では、現実にかなりの収入を上げております東北・上越新幹線の資本費が除外をされております。また、借入金にかかる利子負担を全く除外しております。経常的な事業活動を的確にあらわしたものではありません。こうした要素を含めて国鉄経営全体で考えた場合、昭和六十年度においても、先ほど総裁が御答弁をしたとおり一兆八千億円余、さらに国庫助成を除けば実質は二兆四千億円余の膨大な赤字であり、これが一日当たり六十七億円になっておることも事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/18
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019・村上弘
○村上(弘)委員 まあ、全体をどんぶりにすれば赤字になるということはだれでも知っていることで、今も東北新幹線の設備投資やその利子のことなどもあるんだと言われたように、結局、全体の赤字の中にあるものは、設備投資とその利子やあるいは特定人件費などの国鉄の責任にかかわらない部分での赤字が多くを占めておる、これはもう明白であります。
今のお答えでは一日当たりの数字がありませんでしたけれども、三千百八十九億円の年間黒字、一日当たり九億円の黒字になります。このことがまず大事なことであって、つまり単年度で、そういう国鉄の責任にかかわらないところから生まれた長期債務やその利子などを除けば黒字なんだということですね。この点が非常に重要であると思うわけです。しかし、どうも政府答弁は、何でもかんでも全部一くるみにして赤字にしなければ気が済まぬような感じがするわけであります。しかし、国民の側から見ればそれは非常に奇妙ではないかというように思われておるわけです。
よくこのごろは引用もされておりますが、これは朝日新聞の十日付の社説ですね。「もっと深めたい国鉄改革論議」という中で、こう書いています。「赤字、赤字というけれど、長期債務の利子など過去のしがらみを除くと、昨年度の国鉄の幹線、地方交通線、バスの収入(一般営業損益)は三千二百億円近い黒字になっている。ならば、しがらみ部分の対応さえ考えればよいのに、なぜ経営形態まで変えるのか、」これは国民の素朴な疑問である、こう述べているわけですね。
そこで、もう一つお聞きしたいわけでありますが、こういう事実をどうずればいいのかという立場で見る必要がある。何に手をつければ今の国鉄の経営危機を打開できるのかという立場で見れば、赤字の内容そのものが大事である。全体が赤字だというのではなくて、どこにその一番の原因があるかということをよく見るべきである。一般営業損益では黒字であるということと比べてみて、一層鮮明にすることが必要だと思うわけです。(発言する者あり)それを考えるのがこの国会です。
それではどうすべきなのか、何をなすべきか、こういうことになるわけです。このことについては、政府は知らなかったのではないと私は思っています。
といいますのは、毎年国鉄の監査委員会は国鉄の企業採算を超える構造的問題の解決、この問題を提起してきておりますね。しかし、この問題について政府はほとんど真剣な努力をしてこなかったのではありませんか。少なくとも昭和五十七、五十八、五十九各年度の監査委員会が解決を要望していた事項について、運輸大臣はどのように受けとめておられたか、何が切望されておったか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/19
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020・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、先ほどからどうも御意見と私どもの考え方とかみ合っておりません。
例えば、昭和五十五年度までの累積債務棚上げ五兆三千二百二十一億円というような努力も払ってきている中で今日の赤字が出ておるということもこれまた事実であります。そして、先ほどから繰り返して申し上げるようでありますが、一般営業損益は確かに一つの国鉄の状態を示すものであることも事実でありますが、それが経営の全体をあらわすものでないことも事実であります。東北・上越新幹線の資本費が除かれている、借入金の利子負担が全く除外されておる、こうしたことでは経常的な事業活動を適正にあらわしていないと言わざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/20
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021・村上弘
○村上(弘)委員 運輸大臣が言ったこと自身がこちらが問題にしておる点なんですよ。東北新幹線の設備投資やその利子を大体国鉄が持つのがおかしいのであって、そしてそういうものを込めて赤字だというのが問題なのであって、毎年監査委員会はそういう問題について政府が抜本的な解決策をとってほしいという要望をし続けてきておるのですね。そのことについて、運輸大臣は頭にありますかということを聞いておるのです。監査委員会は何を要望してきたかということをお答えをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/21
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022・林淳司
○林政府委員 監査委員会が、ここ二、三年は別としまして、かつて提言をしておりましたのは、いわゆる構造的欠損という問題について、政府の方でしかるべく措置をしてほしいということを言ってきております。ただ、これにつきましては、監査委員会という立場から、そういう経営全体の改革についての意見を述べる立場にございませんので、そういう現象的な面についての意見を述べたというふうに私どもは理解しておりまして、したがって、国鉄の改革そのものは、単にそれだけの現象的な原因を除去するだけでは達成されるものではないというふうな受けとめ方を従来からしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/22
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023・村上弘
○村上(弘)委員 現象的な問題だとは驚きましたね。一番根本的な問題ですよ。監査委員会の毎年度の提言なり要望なりというものは、読んでみますと本当に胸が痛くなるぐらいですね。
これは五十七年度の国鉄監査委員会報告書ですが、そこで提起していることは、第一は「退職金・年金の異常支出による特定人件費」それから「地方交通線から生ずる損失、」それから今も出ておりましたけれども「東北・上越新幹線の資本費関係負担等の問題であり、さらに重大なものは巨額の過去債務とそれに対する利子負担の問題である。」「その大部分は国鉄の企業採算を越える構造的問題であり、国鉄自身の努力のみでは到底解決し難いものである。」これが現象的な問題でしょうかね。これは非常に深刻な、国鉄のそれこそ経営の基本にかかわるような問題であると私は思います。
五十八年度、五十九年度、部分的な点だけちょっと読みますと、別のことではこう言っておりますね。「特に毎年度の欠損の処理については、これを借入金によって補填するという欧州諸国に例をみない措置がとられてきたが、このことは」「国鉄財政の今日の窮状を招いた大きな要因である。」「青函トンネル、本四連絡橋等について、国鉄は自らの負担においてこれらの運営にあたることには耐え得ないところである。」さらに五十九年度はこう述べていますね。「本委員会においては、これまで、国鉄の経営する事業の真の再建を達成するためには、この問題の根本的解決が不可欠であることを繰り返し指摘してきたところである」、こう言っておるのですよ。これを現象的な問題だとか、あるいは運輸大臣はこれについて何項目か頭にあるでしょうと聞いても、御自身がお答えにならない。
中曽根首相は、過去数次にわたる再建策に取り組んできたけれども、ことごとく失敗したということを分割・民営化やむなし論の理由によく述べておるのですよ。一体どういうことに真剣に取り組んできたのかということにかかわる問題です。国鉄の監査委員会自身が、毎年この問題を解決してほしいと提起しているのです。過去数次取り組んできたと言うけれども、何をやってきたのでしょうかということにもかかわる問題であるわけですね。
そこでお聞きしたいわけでありますが、こういう国鉄自身の努力では解決できない問題について何回も提起してきたこの内容は、単なる現象問題ではなくて非常に重要な問題だと思うわけですが、もう一度運輸大臣にお聞きします。この監査委員会報告というのは、そのときそのときの運輸大臣が承認しているのですよ。あなたも、立場から言えばそういう立場にあるわけです。この要望事項について、橋本運輸大臣は、この中身は間違っておると思うか、どうですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/23
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024・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 先ほどからの御論議を拝聴しながら私なりのお答えをさせていただくならば、監査委員会報告のその根幹に触れるところまでを考えてみれば、輸送構造の変化あるいはモータリゼーションの進展の中における鉄道輸送の役割の変化というものに十分対応し切れなかった公社組織というものの持つ弱み、全国一社制の組織と一元的な巨大組織のために機動的にこれらの変化に対応できなかった弱み、こうしたものが極めて大きいと考えております。ですから、今回の改革ではこうした状況を踏まえた上で、過去の極めて過重だと言われる資本費負担というものは軽減をし、健全な会社としてスタートできるような民営・分割の方式を考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/24
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025・村上弘
○村上(弘)委員 大臣、そう先走らなくていいのです、いずれそのことも聞きたいと思っていますから。私が聞いたのは、監査委員会が提起したこれらの項目は間違いだと思うかどうか、これを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/25
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026・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 ですから、それなりに真剣に受けとめて検討の結果を今申し上げたとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/26
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027・村上弘
○村上(弘)委員 余り内容が頭に入っていないにもかかわらず、真剣に検討したと言うわけでありますが、答えだけが先に出たというような印象を受けました。
これは総理も、この間の監査委員会報告については政府として責任を持っていたわけでありますが、この内容に対して過去数次の再建策はことごとく失敗してきたということも言われます。これは後でもうちょっと触れたいのですが、その点もただしていきたいと思うわけでありますけれども、これを毎年毎年要望されてきておったというのは事実であるし、この内容は当然だと思うが、総理はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/27
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028・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 今まで政府関係からお答えいたしましたように、やはり公社制度というものの大きな欠陥が順次露呈して、モータリゼーションとかそのほかの大きな時代の変化に対応する力がなかった、あるいはさらに労使関係においておのおのが自主責任体制というものもなかった、そういうようないろいろな面の欠陥がふくそうして今日のような事態になってきていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/28
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029・村上弘
○村上(弘)委員 全く問いに答えておらぬと思います。
私が聞いておるのは、監査委員会が言うておるこういう長期債務の各内容について総理はどう考えておるのか、それを頭に入れて別のことを考えたと言うわけですが、それ自身については必要であったと思うのかどうか。まあ若干の棚上げをやっていますよ、これは後でもっと触れたいけれども、全体の長期債務総額、長期債務残高と比べたら本当に知れています。それだってある一定の努力には違いないけれども、過去大いに取り組んできたけれどもことごとく失敗したというほどの取り組みではありませんよ。そうであったら毎年毎年監査委員会が同じことを政府に要望するはずがないんです。やられてないから毎年これは要望されているのでしょう。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/29
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030・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げますように、基本的には公社体制という体制のやり方が時代に合わなくなってきたというところです。局部的にはなるほどいろいろ投資、設備、そういういろいろな問題もございましょう。しかし一番根本的な問題は今申し上げたようなところにあるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/30
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031・村上弘
○村上(弘)委員 それではその問題に入っていきましょう。果たして国鉄の経営形態が輸送需要の変化に対応できなかったからこういうことになったのかどうかという問題ですね。あなたはそう言われたわけです。
それでは一体この長期債務がどういう時期に急速にふえるようになるのか、その基礎にどういう政策があったのか、それはその当時の情勢に対して適切な対応であったのかどうか、それは国鉄が対応できなかったのか政府が誤った対応を国鉄に押しつけたのかという問題にかかわってくるわけです。
御承知のように長期債務が急テンポにふえ出すのは一九七三年、昭和四十八年のことですね。この当時は長期債務はまだ四兆三千億円、今から考えるとまだその程度であったわけです。それが十三年間で二十三兆五千億円、五倍以上に膨れ上がってくるわけですね。ですから一九七三年、昭和四十八年を節目として見るということは非常に大事なわけです。といいますのは、それ以前の数年間は一年当たりの長期債務のふえ方は大体四千億円台ですね。ところがそれ以後は毎年一兆二千億円ずつふえていくのです。三倍ずつふえていくんですね。そういう転機を画したのは一体何であったか。それが有名な日本列島改造論をひっ提げた田中内閣の登場です。あのときに第二次財政再建計画というものがつくられるわけですね。まあ監理委員会も政府も過去の変化の状況に対して的確に対応できなかったんだということを経営形態変更の理由に挙げておるわけでありますけれども、果たしてそうか。これは相当重要な問題です。
お聞きしたいわけですけれども、この第二次財政再建計画を閣議了解したときの田中内閣の閣僚の一人、通産大臣であった中曽根総理ですからよく覚えておられるでありましょうが、一九六〇年代末に国鉄財政再建推進会議が意見書を出しています。それは政府自身が一九六九年、昭和四十四年からの第一次財政再建計画、このときはあなたが運輸大臣だったわけですが、その当時は設備投資の規模を抑制しておった。三兆七千億円というのを限度としている。ところが田中内閣のもとでそれを一挙に十兆五千億円へと三倍化するわけですね。これがその当時の情勢と輸送需要を前提にしての政府の対応であったわけですが、それほどに一挙に三倍化した理由は一体何であったのかお聞きしたいと思います。——総理、あなたですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/31
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032・林淳司
○林政府委員 確かに、おっしゃるように第一次の再建計画のときは投資額は三兆七千億、それから第二次になりまして十兆五千億、三倍弱でございますけれどもふえたわけでございます。これは当時、四十七、八年ごろ、このころはかなり経済の高度成長でございまして、諸般の設備投資等が一般にも行われておったということで、例えば国鉄で言いますと貨物等についてもかなりの需要を見込んでおったということでございます。そういう背景のもとに十兆五千億という設備投資を予定したわけでございますが、その後オイルショックその他ございまして経済情勢が変わったということで、実際にこの十年間に投資しましたのは八兆五千億でございます。したがってその十兆五千億に対して二兆円少ない額であると同時に、当初予定しておりました計画では、いわゆる維持更新投資については一兆五千億、すなわち十兆五千億の一四%程度しか予定をしていなかった。しかし実際には先ほどの八兆五千億のうちの五割以上が維持更新投資に投入されたということでありまして、現実の投資はいわゆる安全対策あるいは老朽施設の取りかえ、その他いわゆる維持更新に重点充当されたというのが現実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/32
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033・村上弘
○村上(弘)委員 総理はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/33
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034・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 林君が答弁したとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/34
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035・村上弘
○村上(弘)委員 国鉄のこれほど重大な改革法を提案している政府の最高責任者が、事ここに至った一番重大な転機になった時期の問題について、一挙に設備投資を三倍化した、それが一番の根源にあってずっと続いておるのですよ、そのときの大きな転換をやった一番の理由についてみずからお答えにならぬというのは、いかにこの問題が過去にさかのぼって原因を探求しないで結論から出発しておるかということを逆に立証していると私は思うわけです。
あのときの状況を申し上げますと、この第二次再建計画の一番の問題は一体どういう点にあったかといいますと、御承知のように二十二年前に初めて国鉄が単年度赤字を出すわけです。そうしてその後、一九七一年、昭和四十六年、今から十六年前に償却前赤字になるわけですね。つまり国鉄が長く黒字をずっと続けてきて、営々として努力していたのが非常に危険な状態に入り始めておったわけです。いわば危険信号が出ておったわけですね。そういうときに、それを加速するように一挙に投資三倍化計画が出されるわけですね。これが大きな問題の一つです。しかも大事なことは、その設備投資を国鉄の利子つき借金でやらしたんだ、ここに根源があるわけですね。
それから第二の問題は、それほどの大きな、大変な計画を出した理由です。それは田中当時の日本列島改造論の内容にさかのぼっていくことになりますけれども、当時、日本列島改造論では、一口で言いますと、一九七〇年、昭和四十五年を起点に去年まで、一九八五年までの十五年間に国民総生産は年率一〇%ずつふえるであろう、こういう予測を立てたのですね。これはこの間宮澤さんが参議院の上田耕一郎議員に聞かれて、あの当時ニクソン・ショックからオイルショックからどんどん始まっている時期に年率一〇%の経済成長があり得るかと聞かれて、どう言いましたかな、寡聞にして聞いたことがない、寡聞でなくともそんなことは世界じゅうないですよというやりとりがありましたけれども、そういう大変な国民総生産の成長というものを前提にして、そうして工業生産は四倍になるだろう、貨物輸送量も四倍以上になるだろう、そうすると当時の国鉄の輸送力では対応できなくなる。陸も海もフルに使っても対応できなくなるということですね。そういうことを前提にして、この方針に基づく経済社会基本計画、これは政府の方針です、それに基づく第二次再建計画、これは国鉄の計画、全部一貫しているわけですね。そういうものとして出されてきたのが貨物輸送力の四倍化、最後には四・五倍にまで持っていこう、こういうことです。しかし、それをやるにはもう在来線はパンクだ、だから在来線は貨物輸送に開放する、じゃお客さんはどうする、新幹線だ。新幹線九千キロ計画、こういうのが出されたわけですね。つまり、こういう一挙三倍計画の基礎には当時の政府の政策があったわけです。
それで、これは国鉄当局にお聞きしたいわけでありますけれども、第二次再建計画での貨物輸送計画、これは一九八二年、五十七年度でどれくらいにしていたか、そしてその実績はどうか。ついでに、これは計画外になりますが、昨年の貨物の輸送量はどうなのか。過去の輸送需要の変化に対応できなかった、それが国鉄の経営形態のせいであると首相も運輸大臣も言うておりますが、果たしてそうかどうかにかかわる問題ですから、こういうような貨物輸送需要の増加ということを前提にして組んだ投資計画、その結果はどうなったのか、述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/35
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036・杉浦喬也
○杉浦説明員 第二次再建計画におきます貨物輸送量の想定でありますが、昭和四十八年度からスタートいたしましたその年度計画は一億八千百十二万トン、最終年度の五十七年度が三億三千百三十四万トンという計画をいたしております。
これに対しまして実績、昭和四十八年度が一億七千五百六十八万トンということでございました。その間、第一次、第二次のオイルショックということを経まして輸送構造が大変激変をいたしまして、五十七年度の実績は九千七百八十万トンということでございます。その後なお貨物の輸送量は減少を続けておりまして、昨年度の実績でいきますと六千八百五十五万トンという数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/36
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037・村上弘
○村上(弘)委員 全然けた違いですよね。要するに、当時の田中内閣のもとで策定された第二次再建計画の前提にあるものもその結果も大変な大間違いであったということであります。
ここで、これは総理にも運輸大臣にもはっきり聞きたいのですけれども、こういう政策を決めたのは政府であって国鉄ではないのだということです。そして、こういう輸送力増強のための設備投資をどんどん進めたのも、これは政府が押しつけたのであって国鉄がやったのじゃないのだということですね。
総理にお聞きいたしますけれども、よく国鉄が輸送需要の変化に、すなわち環境の変化に対応できなかった、それが今日の経営危機の最大の要因だ、こう言うわけでありますけれども、これは国鉄という経営形態のせいですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/37
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038・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 まさに全国一社制の公社という経営形態がそうした状況に対応できなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/38
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039・村上弘
○村上(弘)委員 全然わからぬですね。こういう一挙に輸送力三倍化計画をやらされたのが全国一社の経営形態のせいですか。全然私には通じませんね。わかるように説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/39
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040・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 公社形態というものがまさにそういう問題を生む原因であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/40
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041・村上弘
○村上(弘)委員 公社形態でなぜそういうことになるのですか。もう一遍言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/41
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042・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 何遍でも申し上げますが、公社形態というものがその原因にあったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/42
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043・村上弘
○村上(弘)委員 答弁不能なんです、これは。私はそう思います。ほかの人はようわかっておるのですからね。
だから私が申し上げたいのは、公社形態がそういう結果を生むのであるということをあえて私が好意的に解釈すれば、政府のこういう押しつけを公社は丸々のまされるような状況にあった。だから公社形態。それも理屈が通りませんけれどもね。押しつけた方が押しつけられたものに公社形態だから押しつけられたと言う。こんな理屈も通用しません。これは全然だめですね。
今まで総理も運輸大臣も輸送需要の変化に効果的に対応できなかったのが今日の国鉄の危機を生んだ原因だ、こう言うわけですよ。しかし、そういう原因を押しつけた、間違った対応をさせたのは政府なんです。させられたのは国鉄なんだ。これは極めて単純な論理ですよ。それを主客を転倒させて、押しつけたものが押しつけられたもののせいである、こういうようなことはこれは世間では通用しないです。ですから、変化に的確に対応できなかった、それは国鉄という経営形態のせいであるというのは全くのすりかえであり、こじつけである、こう言わざるを得ません。
そこで、そういう点について総理も答弁不能のような状況でありますが、私、もう一度結論的にはっきり言いますと、国鉄には輸送需要の変化に対応することができなかったから経営危機が生まれたのだ、その経営危機は国鉄の経営形態に原因があるのだ、こういう論は論拠を全く失った、回答不能なんだ、そういうことですね。国鉄は対応しなかったのじゃないのですよ。対応しなかったどころか、大変な間違った対応をさせられたのですよ。それをさせられたのは、政府がそれをさせたのであって国鉄がみずから進んでやったのでないことは、あの当時の経過を見てもいろいろな報道の中によく出ていますが、これも後で少しは触れたいと思います。そしてそういう政府の誤った対応のために今日の危機がつくり出されてきたのである。だから、そういうような今日の破局的な長期債務を累積させる転機をつくったあの第二次再建計画、この原因も責任も今日に至ったその経過も挙げてこれは基本的に政府の責任なのですよ。これは認めなさいよ、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/43
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044・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 何回でも同じことを申し上げて恐縮でありますが、私はそう思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/44
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045・村上弘
○村上(弘)委員 それじゃ、これは答弁不能に陥っている状況でありますから、ちょっと角度を変えてもう少しお聞きしたいと思います。
今まで何回も再建策に取り組んできた、それで若干、五兆ばかりの債務棚上げもやってきたということもありますね。だが基本的にどうなのかということについて、監理委員会の答申その他について一つ一つよく見ていきたいと思うわけです。
まず、国鉄の何回かの計画で再建という名前がつくようになったのはいつからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/45
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046・杉浦喬也
○杉浦説明員 第一次の再建計画は昭和四十四年でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/46
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047・村上弘
○村上(弘)委員 その昭和四十四年、一九六九年の設備投資計画は何年間でどれぐらいで、一年当たり幾らぐらいであったかということと、その前が第三次長期計画ですね、第三次長期計画の一年当たりの投資計画に比べるとどういう変化がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/47
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048・山田度
○山田説明員 第一次再建計画、四十四年度でございますけれども、そのときの投資計画は十年間で三兆七千億でございます。その以前、第三次長期計画と称しておりましたが、今手元にきちんと持っておりませんけれども、おおよそ三兆三千億じゃなかったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/48
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049・村上弘
○村上(弘)委員 年当たりに見ますと、第三次長期計画時代は年間四千二百億ばかりの投資計画であったのが、第一次財政再建計画に変えた時期には年間三千七百億円のテンポに下げられておるわけですね。そのときに国鉄は財政規模を超えるような設備投資をやるべきでない、抑制をする、こういう考え方に立ったのですね。そこで再建という言葉が出てきたわけですね。
そこで聞きたいわけでありますが、運輸大臣、その後は実際どうなっていったかということです。第三次長期計画を打ち切った一九六八年、昭和四十三年のときの長期債務残高はまだ一兆九千三百六億円であったわけですね。ところで、第一次再建から第二次再建に移行する直前の年、一九七二年度末の長期債務残高は幾らであり、それが次には、第二次再建から第三次に移行する一九七五年度末には幾らになり、さらには経営改善計画へ移行する一九七九年度末は幾らになり、最後に終年度に当たる一九八五年、去年ですね、これの長期債務残高は幾らになったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/49
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050・杉浦喬也
○杉浦説明員 昭和四十四年度、第一次の再建計画スタートの年度末の長期債務残高が約二兆二千四百億でございます。昭和四十八年、第二次のスタート時点……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/50
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051・村上弘
○村上(弘)委員 その前の終わりのときの数字ですよ、四十七年。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/51
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052・杉浦喬也
○杉浦説明員 四十七年は三兆七千億強でございます。スタートの四十八年度、四兆三千六百億程度になります。四十八年度から第二次。五十七年度が長期債務残高十八兆四百億程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/52
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053・村上弘
○村上(弘)委員 変化を見るには計画年度がかわっていくその前の年度の一番最後の数字を見ることが一番大事なんで、それをお聞きしたのですが、ちょっと一年ずつ繰り上がった数字を言っておられるから、その点で若干の食い違いがありますけれども、要するに私の方で調べた数字では、最初が一兆九千億、その次が三兆七千億、その次が六兆七千億、その次が十二兆六千億、最後が二十三兆五千億ですね。要するに毎年年度の計画が変わるたびに長期債務残高は一・六倍、二・二倍、一・九倍、一・九倍、こうふえ続けておるのです。そしてこの十七年の間に何と十二・二倍に長期債務残高が膨れ上がってきておるわけです。
そこで、どういう対応をしてきたか。過去何回か再建に取り組んできたけれどもことごとく失敗した、こう言うわけでありますけれども、今の再建計画の中身を見ると、これは再建じゃないですよ。むしろ設備投資拡大計画なんですよ。国鉄財政破壊計画だと言ってもいいでしょう。これが今までの計画の事実なんです。これは具体的な、客観的な数字ですからね。ですから、少なくとも第一次再建計画発足当時成立した全国新幹線整備法、この当時はもう少し当時の運輸大臣も真剣に考えておったんですね。
例えば、あの当時、国会答弁で橋本登美三郎運輸大臣はこう言っていますよ。「従来の新幹線のように国鉄の財政の中でまかなうんじゃないんだと、別個の金でまかなえと、こういう意味で、政府に対して一つのくさびを打った」こう言って、国鉄の借金で設備投資をやることはこれはだめなんだ、別個に扱えということについてくさびを打ち込んだのがこの全国新幹線整備法なんだということで、これで再建の道が開けるんだと当時言っておったのですね。それから第五十五回鉄建審の議事録を見ますと、この議事録でもこう言っていますね。「これにつきましては半額政府出資を受けるという前提によりまして試算をいたしております。」当時はまだこういうことが必要なんだということを政府担当者もある程度考えておった、こういうことですね。つまり、当時の橋本運輸大臣は、国鉄の財政で賄うのではなしに別個の金で賄うのだ。それから鉄建審の議事録にも、半額は政府出資でやるのだ、こう言っておるのですね。
これをやられておったら事ここには至らなかったと思うのですよ。総理も、事ここに至っては分割・民営化以外にないんだとよく言いますけれども、事ここに至らぬための方針もかつてはあったんですな。ところが、全然それを実行してこなかった。こういうことになるわけでありますけれども、こういうふうに見ると、今までの再建策というものは、国鉄財政の再建じゃなくてむしろ破壊計画になっていたのじゃないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/53
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054・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私は今細かい数字を記憶いたしておりませんが、確かにそうした御議論が計画策定の時点にあったことは聞いております。しかし、出資、利子補給を合わせて実質的金利七%程度の場合であればほぼ同等の数字が出るような仕掛けを組んだはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/54
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055・村上弘
○村上(弘)委員 それは若干の利子分、半額出資に対してそれに相当する利子を負担するというふうなことがあったことも事実です。それは、その期間に関しては、金額については相当接近した経過があります。しかし、元本を持つのと利子を持つのとでは、これはその工事が終わった段階では根本的に違ってくるのです。これは試算してみたらすぐ出てきます。ですから、それもやった、やったということには当たらないです、根本的には。過渡的の本当にほんのわずかの努力をしたということだけであって、根本は少しも動いちゃおらぬのです。ここに問題があるわけですね。要するに、この間のことについて、政府が国鉄の経営形態に問題があるんだと言うことについてはだれも納得させることのできない今の答弁でありますけれども、それはそのとおりであって、なぜそうなるかといえば、この国鉄の経営危機を今日に至らしめた一番の問題の中身について真剣に対応してこなかった、そしてある過程ではこれは別枠でやると言っておったことも別枠にはしなかった、こういうような状況が続いてきたわけですね。簡単に言えば、やるべきことはやらないで、やっちゃならぬことばかり一生懸命続けてきたというのが過去数次の再建策ということの中身じゃないか、こういうことですね。そういうことについて、それは国鉄の経営形態に責任があるというのはどう考えても結びつかない。ですから、そういう論拠は全く成り立たないわけでありますから、この輸送需要の変化に対応できなかった、それは国鉄の経営形態のせいである、だから分割・民営化が必要だなどということは、これは論理としても成り立たないし、事実としてもこれは全然つじつまが合わぬわけですから、こういうことは撤回したらどうですか。総理、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/55
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056・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 委員、恐縮でありますが、自問自答してお答えをお出しになっておられるようでありますけれども、事実は違います。私は何回かこの委員会でも申し上げてまいりましたけれども、現在の輸送の国民の依存度というものの変化は否定のできないものであります。そして鉄道輸送の中で動いている実質的な人員と交通機関別の依存度を見てみれば、現在の国鉄が無理のあることは御理解いただけるはずであります。
大変失礼でありますが、数字を申し上げさせていただくなら、国民が選ばれる交通機関は、ゼロから百キロの場合六〇・九%が自動車、三九・一%が鉄道という数字が出ております。そして百キロから三百キロの区間、自動車の依存度が七四・〇%であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/56
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057・細田吉藏
○細田委員長 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/57
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058・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 しかし、三百キロから五百キロの区間になりますとまさに四五・二%の方々が鉄道輸送に依存をされております。五百キロから七百五十キロになるとその依存度は六二・八%になるわけであります。そして七百五十キロから千キロの区間、三三・七%の方が鉄道輸送に依存をしておられます。これが現実の旅客の移動の数字であります。旅客の一人一人の平均数字を申し上げるならば二十四キロであります。いわば大都市における通勤通学の輸送需要、そして中距離都市間の移動というものが、鉄道に求められている現実の国民の輿望であります。そしてそれにこたえる体系を私どもは考えたわけでありまして、先ほどからの御意見は当たらないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/58
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059・村上弘
○村上(弘)委員 それは輸送構造のそういう変化があったことは事実なんです。それに対して的確に対応しなかったのは政府じゃないですか。そういうことがわかっておるんだよ。あるいは結果としてそういうことになってきておるのに、貨物輸送の増強に力を入れたのですよ。それで九千キロの新幹線計画をやったのですよ。それで莫大な三倍からの設備投資の増強をやったのですよ。そういうことをやってきたから、あなたが今言ったような変化に対応できなかったのであって、あなたはそこをはっきりしなくちゃだめですよ。
それからもう一つ言いたいのは、確かに私鉄、マイカーあるいはいろいろなところに輸送需要の転換が行われておるということは事実です。しかし、これは一九七〇年代の当初の時期の三大都市圏での輸送人員は、国鉄の方のお客さんが十六万人減っているのですね。その間に私鉄の方が百四十六万人ふえておる、こういうことがあるのです。これは一体何だろう、余りにも大きな変化があるな、それで見たら、そのときに運賃の大幅値上げをやっているのですよ。五〇%値上げを昭和五十年—五十一年にかけてやっていますね。それから有名な五党合意で運賃値上げの自由化が決まって、これは一九七八年、五十三年からざあっと上がっていきますね。それでもう、それこそ私らも地域でよくわかりましたけれども、国鉄に乗っていたお客さんがざあっと並行した私鉄に雪崩のように動いていきましたね。こういうことが起こっているのです。
つまり、再建計画の中身は、一つは運賃値上げ、もう一つは人減らし、それから何よりも設備投資で莫大な資金を投入して、大企業がそれで潤ってきたわけでありますけれども、そういう対応をしてきたところに大きな輸送需要の変化に対応できなかった根本があるし、しかもその中で、わざわざ運賃値上げでそれを加速させてきておるのですよ。だから、あなたが言うような変化があることは事実だけれども、それに対応させられなかったのは国鉄じゃないのですよ。政府の政策なんですよ。これははっきりしておかなければいかぬ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/59
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060・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 どうですかとのお尋ねですから、そうは考えませんと申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/60
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061・村上弘
○村上(弘)委員 しかし、それは見解の相違というような問題じゃないのですよ、客観的な事実に基づいて私は言っておるのですから。
そこで、共産党はただ批判したばかりじゃないし、今だってそう批判ばかりしておるのじゃないのです。我が党は一九七三年、昭和四十八年当時、国鉄財政再建五項目、こういう具体的な提案を出しておるのです。これは非常に大事な提起をやってきたわけでありまして、その内容を簡単に申し上げますと、第一は、異常に膨れ上がった設備投資を行うことは、国鉄の財政状態の悪化が加速度的に進行せざるを得ない、それはこのようにむやみに大きな設備投資を借入金主体で進めようとするからだ、こういう警告をまず出しておる。
第二は、投資規模についてこういう提言をしています。適正化と投資の優先順位の科学的、民主的な決定が必要である。さしあたり現行再建計画の十カ年三兆七千億円、年平均三千七百億円この程度にとどめるべきだ、こういうことを提起しています。
第三に、公共交通機関にふさわしい費用負担原則を確立すべきだ。その第一の柱として、線路や停車場の設備や建物など国鉄の基礎施設は、国道と同じようにだれもが利用できる公共施設、国の財産であり、この建設、改良の資金を国の出資——つまりこれは税金ですが、国の出資で賄うのは当然である、こういうふうな提言をしておるわけです。
私、思いますのに——ちょっとおとなしくしていなさい。今日のこういう危機をもたらしたことを考えますと、歴代政府の責任は非常に重大だと思うのですよ。もしまじめに、どの党の提案であれそうだと思うことであるならばそれを実行しておったならば、今日のような危機は生まれなかったであろう、私はこう思うわけでありますが、何か見解をお持ちだったらお聞きしたいと思います。——我が党はそういうふうな提案をしてきたということを、本当にこの歴史的な時点に立って、本当に大事な提起をしてきたと改めて思っておるわけでありますが、これは日本で我が党だけが言っておるのじゃなくて、世界的な見地でもあったのです。
御承知のように、公共交通機関に対しては、世界はどこでも国鉄に対する財政措置は当然のこととして国がやってきておるわけですね。EC諸国では、国民への公共サービスを大切にして、国鉄が公共サービスのために不採算の部門を持っておるのに対して国が責任を持って補償するという制度を確立をしてきておるわけですね。最近五年間の国鉄への各国の助成を見ますと、営業収入に対する国の助成割合はどうか、こう見ますと、ドイツ連邦鉄道では七四・三%助成しています。フランス国有鉄道は八七・五%、イギリスが五四・六%であり、日本はわずか一九・七%。これも前向きの投資はわずかであって、利子その他の後追いの方が主なのです。前向き部分は九・二%にとどまっておるのですね。これは一九八四年度の数字でありますけれども、ヨーロッパでは日本より不採算の路線がはるかに多いのです。そうであるにもかかわらず、公共交通機関だからという前提で、赤字やあるいは破綻というものは起こっておらぬわけです。この財政破綻が起こらぬというのは、こういう制度が確立をしておるからですね。
これほどの措置をとっても、国有、国営である鉄道を維持しようとするのは、これはやはり大変な困難な仕事です。これらの国では、かつて民有鉄道が分立して民営でやられておったわけです、まあ全部が全部ではありませんが。しかし、そういうのが失敗した経験に立って、国有、国営あるいは公営という方向に行き、国が補償するという制度を確立してきておるわけです。ところが、日本では、中曽根内閣のもと、分割・民営化、こういう方向に今進もうとしている。まさに世界の大勢に逆行していっておるわけです。日本はGNP世界第二位、経済大国、こういうふうに言われておるわけでありますけれども、ヨーロッパ並みの助成がなぜ日本でできないのか、これは不思議ですね。お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/61
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062・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私どもから考えてみますと、やはり各国の交通体系はそれぞれの国の歴史と実態を踏まえて運営をされるものだと考えております。そして現在の日本において、私どもは国鉄の分割・民営化が必要であると判断をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/62
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063・村上弘
○村上(弘)委員 日本はヨーロッパよりも経済的にもあるいは鉄道特性を生かす上でもはるかに有利なんですよ。国情から見ても、歴史からいえば百十五年の歴史があるのですよ。なぜそれを変えるのか、これもう全然わかりません。今のお話ではわかりません。ですから、今の何が何でも分割・民営化だという大前提を取り払うということが大事なところへ来ておるのだということを申し上げたいわけであります。
もう一つこの際強調しておきたいし、総理にもお聞きしたいと思いますけれども、御承知のように一九七〇年代のフランスは、公共性よりもどちらかといえば企業性の方を優先した。あの当時は保守政権でありましたけれどもね。しかし、一九八二年にミッテラン政権のもとで交通基本法というものを制定している。そして一九八三年に完全な国有、国営に移行していくわけですね。
そこで、この交通基本法第二条ではこういうことを書いています。「交通権の実施により、」交通権という概念ですね。「交通権の実施により、アクセス、」つまり連接ですね。それから「質、運賃面で、国民全体に開かれた交通手段を利用して移動することが可能となる。この精神に基づき、交通の不便な状況に置かれる人々に対しては、その補助のため、特別の措置が講じられる。」法律で、そういういわば交通弱者に対して補助をするということが明文化されておるわけです。ですから、これらの国では国鉄の維持のために全力を挙げておるわけですよ。我が国の場合も、日鉄法第一条は、公共の福祉の増進ということをはっきり掲げておるわけです。精神は、フランスのあの交通権というのもこの日鉄法の第一条の精神も私は共通しておると思うのですが、大都市に住んでいようと田舎に住んでいようと、大人でも子供でもお年寄りでも、自動車の運転ができようとできまいと、だれでも行きたいところに行ける権利、これを保障するということ、とりわけいわゆる交通弱者を生み出してはならないということですね。これは憲法二十五条の言う健康で文化的な生活の重要な柱の一つであるし、国は当然これを保障する責任を持っておるのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/63
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064・細田吉藏
○細田委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/64
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065・村上弘
○村上(弘)委員 この点では共通の問題であろうと思いますが、総理の見解をお聞きしたいと思います。——これは総理、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/65
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066・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 御指摘の公共性の担保は、今回御審議を願っております鉄道事業法の中にも明記をいたしております。ただ、現在の国鉄と分割・民営後の新会社との差異は、今までは現実の交通依存の度合いがどう変わろうと国鉄に過剰な公共性を負わせておったということは事実であります。今後、民間鉄道と同等の責任、公共性というものは当然あるわけでありますけれども、それは鉄道事業法の規定で十分対応できると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/66
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067・村上弘
○村上(弘)委員 今運輸大臣は、今度の改革法の精神も公共性にあると言われましたけれども、そんなことを言ったって、そうはなっていないのですよ。第一条「この法律は、日本国有鉄道による鉄道事業その他の事業の経営が破綻(たん)し、現行の公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対して、」これはまあ前提は大すりかえの前提ですね。「これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するための日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革に関する基本的な事項について定めるものとする。」こうなっておるので、公共性というのはどこにも出てこないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/67
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068・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 鉄道事業法第一条「この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とする。」であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/68
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069・村上弘
○村上(弘)委員 それはしかし、日鉄法第一条の面と違うのは、その事業法の中では、結局、いろんな運賃を決める場合でも、あるいは線路を廃線するのを認めるかどうかという場合でも、それが維持できるかどうか、採算に合うかどうかということを基準に決める、基本はこういうことになっておりますからね。そうでなかったら民営じゃないのですからね。民営というのは営利、もうけというのが基準なんですから、公共性が優先することはないのです。だから、公共性という言葉がそこに部分的に出てきておっても、当然それはあるべき言葉であるけれども、この一番の基本であるところの改革法の第一条には、効率的にやるということが強調されておるのであって、精神は貫かれておらぬし、もしそういうことが貫かれるならば、民営ということと矛盾してくるのだということを申し上げておきたいと思います。
そこで私は、ヨーロッパのそういう状況についてなお申し上げておきたいのは、日本よりずっと不採算の事業もヨーロッパでは維持されておるのです。赤字はヨーロッパでも赤字だし、日本も赤字なんです。しかし、ヨーロッパの国鉄は財政破綻をしていないのですよ。日本はひどい財政の破綻になっておるわけですね。この違いは一体どこにあるのかという問題です。
その理由はどこにあるかといいますと、ヨーロッパでは繰り越しの決算は少ないのです。債務残高が少ないわけです。したがって、利払いが少ないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/69
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070・細田吉藏
○細田委員長 御静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/70
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071・村上弘
○村上(弘)委員 ここに一番の基本があるわけですね。——よく聞いておきなさい、あなた方。
第三に、日本の国鉄は、ヨーロッパ諸国と比べて輸送実績は五倍です。日本の国鉄労働者の能率は、これは御存じでしょうが、世界一高いですね。そうですよ。そういう状況であるにもかかわらず、日本の国鉄の方がこれほどの有利な条件を持ちながら、ヨーロッパ国鉄は財政破綻がなくて、日本はひどい財政破綻に陥っておる。その根本はどこにあるか。要するに公共性の問題です。国民福祉の問題です。これに対して、国民の交通権に対してどういう態度を政治がとってきたかというところにあるわけであって、我が党が主張してきたような立場、公共性と交通権、国民の福祉、これを本当に堅持してきておったならば、あんなにひどいもうけ本位の設備投資だとかあるいはとんでもない見当違いの輸送増強計画などというものはやられなかっただろうということを強調して、この問題を終わりたいと思うわけであります。
最後に、そうすると、赤字の原因と責任をだれが持つのかということをやはりはっきりしなくてはならぬ、こういうふうに思うわけです。この点については、中曽根首相や橋本運輸大臣はどうも違うようでありますけれども、歴代の運輸大臣は大体この監査委員会が主張しておるような内容、この立場に立っておったということを私いろいろ調べてみて発見したわけです。きょう私は田村通産大臣の出席を求めておったのですが、どうなりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/71
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072・細田吉藏
○細田委員長 本日は他の委員会出席のため、遺憾ながらこちらへ出席できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/72
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073・村上弘
○村上(弘)委員 各大臣出席を要望した人が出てくるのがこの委員会ですからな。これは極めて不満ですね。
田村さんがおるところであの人のことをいろいろ聞いてみたかったわけでありますが、あの人は元運輸大臣で、国鉄の問題について一九八一年、昭和五十六年十二月の交通新聞に「国鉄問題への提言」というのを三回にわたって発表しているのです。それのリードを読んでみますと、「国鉄民営論や経営形態変更には否定的な考えを明らかにし反響を呼んでいる。」こういうことが述べられておるわけです。
それで、田村さんが述べておるのを少し引用してみますと、こう書いています。「国鉄の性格と任務」というところでは、独占性は崩れているが、しかし、「国鉄は公的な国民の足であり高度に社会化されたものと考えるのが至当である。」「私は、今述べたような国鉄の性格や任務を前提として、赤字の原因を徹底的に分析究明の上それぞれの負担関係を明らかにし、国鉄に再建の目標を与えて責任経営の遂行に邁進させることこそ重要であり、しかも現実的な対応であると考えている。」さらに「国鉄の財政面での再建とは、この収支差額の発生を原因別に分析し誰がどういう形でその費用を負担するか、あるいは解消させるかということであるが、その場合まず大前提として考えなければならないのは、本来国鉄の責任に帰するべきでない、いわば経営外の要因によって生じた問題の解決である。」こういうことをまずはっきり言っています。
それから「過去債務」の方ではこう言っています。「例えば、設備投資のための資金調達をとってみれば、新線建設の意思決定は一体誰がやったのだろうか。国鉄は、私鉄のように自分の意思で採算を考えながら線路を敷いたことは一度もないのであって、すべて国が国民的見地から決めたものである。」そして「国鉄の責任とすることができない部分については、国鉄の経営から切り離すことが是非とも必要である。」こういうふうに述べているわけです。
私は、こういうことも含めて、運輸大臣でもあった田村さん、現在通産大臣である田村さんにこれについてのことをお聞きしたかったわけでありますが、今出席しておりませんので、この点も含めた田村通産大臣に対する質問は留保しておきたいと思いますが、お取り計らいをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/73
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074・細田吉藏
○細田委員長 質疑を続行してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/74
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075・村上弘
○村上(弘)委員 この問題の質疑は留保したいということを確認しておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/75
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076・細田吉藏
○細田委員長 わかりました。あなたが留保されることは承りました。質問の時間をどうされるかは理事会で御相談を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/76
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077・村上弘
○村上(弘)委員 では、後で理事会で諮ってください。
なお、元運輸大臣であった小坂徳三郎さん、この人は去年の十月発行の「日本人永久繁栄論」という本の中でこういうことを言っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/77
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078・細田吉藏
○細田委員長 お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/78
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079・村上弘
○村上(弘)委員 「国鉄はいきなり六分割しても再建できない」「電電公社や専売公社が民営化したからといって、同じように国鉄も分割・民営化しろという論議には必ずしも賛成しかねる。」それから「「分割・民営」という方針にこだわりすぎて少しく結論を急ぎすぎた”見切り発車”ではなかったのか。」こういうことを述べていますね。
全部言う時間がないので飛ばしますが、国鉄の杉浦さんのことでこう言っている。「杉浦喬也氏が就いた。新総裁は首相の意をうけ、副総裁ら分割反対派の国鉄幹部を更迭した。」「反対意見はいっさい封じようとする”魔女狩り”か”非国民扱い”のようで、こうした態度は、どうも私にはなじめない。」これは小坂さんが言っているのです。
それから、同じく元運輸大臣の三塚さん——一カ所だけやらしてもらいます、今まで余り引用しなかったので。「問題は、設備投資に要した資金のほとんどが、戦後全期間を通じて借入金であったということである。」ということを言っていますね。それからこれはNHKの討論会で述べられたことですが、新幹線や地方線、本四架橋、青函トンネルなどの投資をしてきたが、飛行場や道路のように公共事業方式でなく、借入金で進めたことに赤字の原因があったことは間違いない、こういうふうに言っています。
これらは私は事実に即した常識的な当然の見解であろうというように思うわけです。だれでもその事業に本当に目を向けて実態をよく見ればそう思うのが当たり前であって、どうも何が何でもまず分割・民営化ありき、そして真にやるべきところに今この大事なときに目を向けない、こういうことは本末転倒じゃないかということですね。事ここに至ったのは、輸送需要の変化に対応できなかったからだ、それは国鉄のせいであるしその経営形態のせいであるというのは全然通らない。あるいは、再建策はことごとく失敗してきた、これも国鉄のせいでありその経営形態のせいである、これも今まで見てきたように、全然すりかえですね。そして赤字や長期債務の主要な内容が何であり、それをどうすべきであったかということについては、それぞれの時期の各運輸大臣は、これは監査委員会の報告にも立脚しておるのだろうと思いますけれども、それとしては正当な見解を述べておられると思うのです。ということは、今の中曽根内閣がとっておる国鉄の再建なるものに対する、改革という言葉を使って言っておることに対するやり方はまさに逆行である、自分のやってきたこと、政府がやってきたことの責任を回避し、それを国民に押しつけるものだということは極めて明白であったと思うわけでありますけれども、総理は、それでもこうした歴史的事実や政府・自民党がずっとその間やってきた政策的、あるいはまあゆすり、たかりなどと新聞などでもいろいろ言われてきたようなそういうことも含めまして、そういう政治の責任について、そういうものについては一切目をつぶるつもりか、そして事ここに至った以上はもうこれしかないのだ、こういうような態度をあくまでも強行されるつもりであるのか、この点についてお聞きしたいし、事ここに至ってはということは一体どういう意味なのか、それもあわせて御返事をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/79
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080・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 折々の監査からいろいろな問題提起がされておった事実を私は否定をしておるわけではありません。また、折々の、その時点における運輸行政の責任者がそれなりの感覚で御判断になったことも恐らくあったでありましょう。
ただ、御理解を願いたいのは、昭和五十六年に臨時行政調査会が発足をし、国会承認人事でスタートをいたしました。この臨調、ここで、五十七年の基本答申の中で、行財政改革を政府が真剣に進めるとするならば国鉄の問題を避けては通れないという問題の指摘をされました。そして、それを受けて国鉄再建監理委員会が発足し、その作業の中において根本的な処方せんとしての民営・分割という方向を打ち出した経緯を委員は御承知のはずであります。そして、今その根本的な対応策としての法律案の御審議を願っておるというのが現在の状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/80
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081・村上弘
○村上(弘)委員 それは全然私の問いに対する答えにはなりません。政府が臨調路線を今大いに突っ走っておられることはよく知っています。それが今の軍備拡大路線といったようなものであるし、今日では経済構造を調整し、変えていくというようなことにまでつながってきておって、円高問題も深刻になってきておることも、それに対する対応がまさに国民いじめになってきておるということもよく知っています。そして、こういう一大失業時代が始まろうとしておるときに、政府みずからが主導的に分割・民営化、営利企業化、解体、大変な人減らし、安全まで脅かすようなことをあえてやろうとしておるわけで、これが臨調路線の二〇三高地であるとまで総理は言ってこられたわけでありますが、そういうこともよく知っておりますけれども、それはまさに国民の意思に逆行するものじゃないか、世界の大勢にも逆行するものじゃないか、これは歴史的な暴挙じゃないかと私は言いたいわけですね。
先ほども引用されました国有鉄道改革法第一条は、こういう今の国鉄危機の原因を全くすりかえてしまい、赤字の原因も他に転嫁し、何もかも国鉄の経営形態に原因があるのだという、だれも納得できない理由に結局すりかえてしまって、そしてこのいわば歴史的な大悪法を通そうとしておるというのが今日の状況だと思うわけです。しかし、百十五年の歴史を持っておる国鉄でありますから、ここで本当に原点に立ち戻って、こうなった原因はどこにあるか、その責任の所在は一体だれなのか、どこにあるのか、これをもう一度明らかにして原点からやり直すべきだ。この法律は撤回して出し直すべきだということを求めたいのですが、総理、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/81
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082・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 何回も先ほどから申し上げておることでありますが、鉄道事業法で公共性は担保されております。民間鉄道全部が同じ責任を負うわけでありますから、公共性を度外視してというお言葉は当たらないと考えております。また、法律案を撤回する意思はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/82
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083・村上弘
○村上(弘)委員 分割・民営化が国民に何をもたらすかということについては山ほど問いたいことがありますけれども、時間がもうあとわずかでありますから、あなたが言われるほど果たして公共的かどうかというようなことも一、二お聞きしておきたいと思います。
民営化して株式会社にするということは、これは営利本位の経営に変わっていくというところに一番の本質があるわけですが、そのことによって鉄道事業が一体どうなっていくのかという問題ですね。この事業法第二十八条によりますと、もうからない赤字の一般ローカル線あるいは幹線の路線、これも、申請をすると、並行してバスが走っておる場合という条件があるわけですけれども、その程度のことで大体許可しなければならないということになるのかどうか。私は、本会議で質問したとき、「ローカル線がどうなるか」と聞いたら、今の特定地方交通線のことについてお答えになったのですよ。一般のローカル線、あるいは幹線でも不採算のところがありますね、そういうところは一体どうなるのか。それは申請されたらやはりこの二十八条の条項に基づいて許可をする、基準はこれだ、それ以外の歯どめはないということになるのかどうか、これを確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/83
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084・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 一般の地方交通線につきましては、諸条件に大きな変化がない限り今後とも維持していくことが可能であると考えております。したがって、これらの路線について廃止申請が出されることは通常考えられません。仮に申請が出てまいりました場合には、二十八条二項の規定により、公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあるか否かについて判断をいたすわけでありますから、この判断につきましては、輸送量の動向あるいはバスを含めた代替交通機関の整備の状況等が総合的に勘案されるものと考えとおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/84
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085・村上弘
○村上(弘)委員 今の答弁で非常に明らかになったのは、今の特定地方交通線と今後廃止申請がされる可能性のある一般のローカル線、あるいは幹線だって可能性があるわけで、そのときに対応する態度の条項については特別のものは何もないということが明らかになったわけであります。
そこでもう一つお聞きしておきたいのは、監理委員会答申では、旅客会社の鉄道事業を大きく言って三つに分けています。主要都市間中距離幹線輸送、大都市圏輸送、地方主要都市圏輸送、三つに限っていますね。私どもの計算でいきますと、この三つに該当する路線はほぼ五千キロぐらいになるのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、これは運輸省としてはどれぐらいになりますか、三つの幹線というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/85
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086・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 後の質問については事務方からお答えをさせますが、委員がわざわざ本会議で特定地方交通線のみ答えたのでその他の交通線について答えろと仰せられましたから、私はそう申し上げました。そして、公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあるか否かについての判断ということを申し上げたわけでありまして、それをまとめて特定地方交通線から幹線まで一遍で廃止されるかのような言い方をされましたのはちょっと事実と違うと思います。先ほど申し上げたとおりであります。
後の点は事務方から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/86
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087・須田寛
○須田説明員 新しい会社がこれから重点的な分野といたします大都市交通圏、旅客輸送でございますが、それから中距離の都市間輸送の分野がどの程度かという御質問でございます。これは新しい会社のいろいろな経営形態その他で変わってまいりますので、明快なお答えは非常に難しいのでございますけれども、大体大都市圏旅客輸送分野と私ども考えておりますのは、首都圏と関西圏、それから中京圏の各線区だというふうに考えております。それから地方都市圏の分野といたしましては、おおむね県庁所在地とその周辺線区、大体二、三十キロから四十キロ圏ぐらいまでの範囲というふうに考えております。それから中距離の都市間輸送旅客分野と申しますのは、大体現在特急列車ないしは急行列車を運行しております区間、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/87
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088・村上弘
○村上(弘)委員 概念を少し詳しく言った程度であって、キロにしてどれぐらいになるのかさっぱりわかりませんが、時間がないのできょうはこれぐらいにしておいて、ちょっとどうしてもお聞きしておきたいのは事業用の土地の問題です。
路線撤去も自由になるし、運賃の値上げもどんどん進むし、人減らしもどんどん進む、安全運行も危ないというのが今度の分割・民営化のもたらすものでありますけれども、改革法案第二十条によって新会社は事業用資産を帳簿価格を基準にして引き継ぐことになっておるわけですね。この問題についての不当性もいろいろ問うてきたわけでありますが、きょう特にお聞きしたいのは、東日本会社が引き継ぐいわゆる山手線、東海道、東北の一部を含む、赤羽線を除く環状線部分ですね。この各駅の面積合計と帳簿価格は、国鉄から私どももらった資料では百九十一万五千平米、簿価にして七十九億一千三百万円ということになっておりますが、これがこのとおりかどうかということと、さらにこれに基づいて計算すると三・三平米当たり一万三千六百円というただ同然の価格になるわけでありますが、これでいくと国民の共有財産が非常に不当に扱われていくということになる、こういうふうに思うわけです。その点が一点お聞きしたいのと、もう一つは、ここにある東京都の宅地建物取引業協会が発行している東京都の地価図、昭和六十一年度の資料ですが、これの周辺の地価から推計してみますと、帳簿上五億六千二百万円の東京駅は時価四兆八千億円、同じく十一億円の池袋駅は一兆七千億円、それから二億円の秋葉原は二兆六千億円という途方もない値段ですね。これを合計しますと山手環状線の駅の部分だけで実に十八兆四千億円になるわけです。これが新会社で好きなように使える、こういうことになるわけですが、この新会社の株式は、東日本会社の場合資本金二千八百億円でありますから、これが仮に四倍になっても一兆円ですね。三井や三菱や住友グループ初め西武も東急もあるいは東京電力なども手ぐすねを引いておるわけですね。二千八百億円出せば、あるいは一兆円出せば、山手線の駅だけで十八兆円、さらには中央線、東海道線、総武線など首都圏の天文学的な資産を手中にして思うように利用することになるわけでありますが、この点についてお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/88
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089・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今、村上委員御提出の資料はちょうだいをいたしました。しかし、私どもは鉄道事業を継続するつもりでありますから、駅を売り飛ばす事態などというのは想定をいたしたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/89
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090・村上弘
○村上(弘)委員 あなたがそうであっても、それは民営会社が自分で決めるのですから歯どめはないわけですよ。
そこでもう一つお聞きしたいのは、清算事業団が引き継ぐ処分用土地ですね、ここにも重大な問題があるわけです。政府はようやく三千三百三十ヘクタール、八兆五千億円、こういう数字を出したわけですが、提出された資料に基づいて、先ほどの東京都の地価図によって東京都内の処分用地八十四カ所、この時価を算出をしてみますと、国鉄本社は三・三平米当たり六千万円、総額が二千百八十億円、汐留貨物駅跡地は六千八百万円で総額四兆円、八重洲北は七千万円で総額三千四百億円、この八十四地点、合計百四十七ヘクタール、全体で三千三百三十ヘクタールの四%強にすぎないこれだけの地域で時価総額が七兆円になるのですね。これに大阪の梅田貨物駅や横浜の新鶴見操車場を加えると十兆円、全体ではもっと巨額になると思うのですが、これがなぜ全国で八兆五千億円、こういうことになるのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/90
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091・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私どもは、これらの処分用地について公正を期するために公開入札を原則として売却したいという希望を前から申し述べております。そしてその際に、予断を与えることになるので価格については控えたいということを申し上げてまいりました。しかし、本委員会から、再建監理委員会試算の五兆八千億という数字を基礎にして仮定値を置いた試算を提出せよと命ぜられましたので、その御指示のありましたとおりの試算をいたしたものが七兆七千億という数字であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/91
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092・細田吉藏
○細田委員長 村上君、時間ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/92
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093・村上弘
○村上(弘)委員 それではこれで終わりますが、どうも、いろいろお聞きして、今おっしゃったように仮定値であってそのままでないということも承知でありますけれども、要は、公正な競争入札でやるとしても競争入札のできる者は一体だれかというと、これはもう限られた巨大資本しかないわけで、これはやはり不公正にならざるを得ないのであるし、随意契約やあるいは兼業やら、いろいろの可能性が新たに出てくるわけであって、こういう問題についても指摘をしておきたい。国民の財産が非常に危険な状態に置かれておるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/93
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094・細田吉藏
○細田委員長 これにて村上君の質問は終了いたしました。
次に、戸田菊雄君。
〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/94
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095・戸田菊雄
○戸田委員 まず総理に、今後の二十一世紀に向けての総合交通政策の構想はどのようなことでお持ちになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/95
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096・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 これは経済企画庁がつくりました「展望と指針」というような例の計画の中に大まかに述べられておるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/96
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097・戸田菊雄
○戸田委員 確かに日本の交通政策は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、これは企画庁でその方針、大綱を決めたのですが、中身はどういうものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/97
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098・及川昭伍
○及川政府委員 「一九八〇年代経済社会の展望と指針」について、我が国で中長期的に良質な交通ネットワークを形成するための総合交通政策の基本的な考え方を述べております。
現在、経済社会が非常に変化し、人や物のモビリティーが非常に多様化いたしておりますが、それに基づいて国民生活の質を向上するためには、交通政策は総合的でなければならないという考え方を示しております。その基本的な考え方としては、各交通機関、陸と海と空とあるわけですが、さらに陸には鉄道と道路、四つの交通機関が適切に競争するということと、それから利用者、その乗り物を利用する人が自由に選択ができるような、そういう二つの原則のもとで、今後とも各種の計画や社会資本整備と調和を図りながら全体として効率性、整合性が保たれるようにする必要があるという考え方を示しております。
さらに、それらの整備に当たりましては、それぞれの交通機関の需要の動向、空に対してどういう需要があるか、陸の中で鉄道や道路、それぞれにどういう需要があるか。さらにはそれぞれの交通手段の特性、例えば航空の交通は長距離であるとか、鉄道の需要は中距離あるいは大都市内の大量輸送機関として特性を発揮できる、そのような特性に応じて相互補完的に組み合わせて整備をしていくという考え方を示しております。
〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/98
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099・戸田菊雄
○戸田委員 いわゆる経企庁の今後の交通政策については三十七ページですが、「良質な交通ネットワークの形成」、こういうことになっておりますね。そのことによって世界の大勢は広域化と高速化、それからお互いの交通機関の補完的役割をうまく組み合わせて、そしてお互いが共存共栄できる、こういうような趣旨でもって今後の交通対策というものをつくっていこう、こういう趣旨だと思うのですが、それについてなおかつ、今後の経済指標その他について、従来高度成長で来たが、現在は低成長時代に入った、安定成長期からさらに低成長期に入った、こういういわば経済指標との兼ね合いでもってその需要その他についてどのように判断をされていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/99
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100・及川昭伍
○及川政府委員 今回の「経済社会の展望と指針」においては具体的な需要の数値は示してございません。しかし、全体の考え方といたしましては、交通需要は経済成長率に依存する割合が非常に大きいというふうに想定し、従来からそのような手法を用いつつ、関係の機関で需要を想定されているというふうに承知をいたしております。ただ、それらの需要のうち、空と海と陸、それぞれの需要がどのように伸びるかといいますと、従来の経済計画でもあるいは今回の「展望と指針」でも、国民のニーズの変化に応じて空の需要の伸びが非常に大きい、陸の需要の中では自動車の需要と鉄道の需要と比べますと、自動車の需要の方が相対的に大きい。ただし、その中でも鉄道の需要は全体の交通需要について四割弱、三十数%の需要を従来見込んでおったわけでありますが、現在でも若干それは低下の傾向は示しますが、そのような需要動向を示すであろうというふうに考えており、国鉄財政再建のための今回の需要予測においてもそのような前提のもとに試算されているものと理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/100
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101・戸田菊雄
○戸田委員 監理委員会の「意見」によりますと、今後の輸送需要の見通しについて、国鉄の場合、三百キロから三百五十キロの中距離地帯では、新幹線を中心に鉄道がなお五一%程度のシェアを維持し、「優れた特性を有する鉄道の果たす役割は大きい。」と言っておりますが、そういう経済情勢ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/101
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102・及川昭伍
○及川政府委員 国鉄監理委員会が想定いたしました需要予測につきましては、一九八〇年代、すなわち昭和六十五年度までは経済成長率を四%程度、それ以降二十一世紀までは経済成長率三%程度を前提として全体の需要予測を試算しているものと了解をいたしており、その過程で経済企画庁にも内々の協議があり、総合交通の観点からはおおむね妥当なものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/102
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103・戸田菊雄
○戸田委員 今日まで国鉄が大変努力をして、人件費その他の見合いは私鉄以下になっていますね。業績においても諸外国よりもはるかに効率がいいということになっている。六十年度監査では明らかに営業収支はもう黒字になっている等々の問題でありまするから、総理、民鉄並みの手法によって、今日、分割ということを提唱しておるわけでありまするけれども、そういう必要はないのじゃないでしようか、そういう監査委員会の報告からいけば。御判断はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/103
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104・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 これは委員が御指摘のように、六十年度監査報告による一般営業損益のみをとらえて考えれば、私はその御議論も成立をすると思います。しかし、何回も当委員会で御答弁を申し上げてまいりましたが、一般営業損益そのものは国鉄の収支全体の中の一部の側面を示しているものにすぎません。全体の数字は委員御承知のとおりでありまして、私どもとしてはやはり根本的な手術をする状況になっておる、そしてその方向を民営・分割という方向に私どもは求めた、このように御答弁を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/104
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105・戸田菊雄
○戸田委員 具体的に中身の問題で聞いていきたいと思いますが、一つは今まで、監理委員会の答申もそうでありますが、政府の言わんとするところは、今の国鉄は非常に赤字である、赤字論を盾にとって緊急措置法によって職場の規律その他いろいろやってまいりました。しかしその結果、今日においては六十年度の監査報告の状況になっておるわけでありまするが、その赤字の要因は大臣、どうお考えになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/105
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106・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私は、赤字の要因というものを分析してまいりますと、さまざまな角度からの議論ができると思います。先刻来の論議を踏まえておりましても、例えば特定人件費の問題もございましょう、あるいは設備投資の多寡を論ずる手法もありましょう。しかし、いずれにもせよ、その歴史を踏まえて今日に至った状態というものが問題であると私どもとしては考えておりますが、まさに社会経済情勢の変化に対応して、殊にそのモータリゼーションの流れの中で的確に国民のニーズにこたえていくべきであった国鉄というものが十分に対応をし切れなかったその原因というものは、私はやはり全国一社制というものの持ついわば敏速さを欠く動作というものも否定はできなかったと思います。また、公社制というものの持つ横風に弱いとでも申しましょうか、そうした部分もあったでありましょう。さらに、あるいは経営責任の明確さを欠くといったような原因も指摘をできるかもしれません。そうしたものを総合した中で、現在をどうしていくか、将来に向けての対応とすれば民営・分割という処方せんを私どもは採用したということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/106
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107・戸田菊雄
○戸田委員 確かに鉄道の独占性がなくなったとか、まさに構造的要因でありましょう。あるいはローカル線とか貨物線こういったものが大量の赤字を出したとか等々の要因はありますけれども、国鉄の二十五・四兆円の大赤字というものは、結局は利子つき金を借りて設備投資をやった、こういうところにあるのじゃないでしょうか。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/107
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108・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 ですから、そうした点も私は全面的に否定をするものではございません。しかし、逆にその設備投資というものは、むしろ国鉄自身が国民の安全輸送といった視点から十分に役立てておる投資でもあるわけでありまして、その辺については、私は論議の存するところだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/108
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109・戸田菊雄
○戸田委員 例えば昭和三十六年から五十九年度までの設備投資に使われた十四兆円、この内容を見てみますと、新幹線建設が四・一兆円、総体の二九・三%、大都市圏輸送が一・四兆円で一〇%、幹線整備でもって一・九兆円、一三・六%、電車、電車化、ディーゼル化、諸改革、取りかえ、合理化、近代化あるいは安全対策諸費用、輸送設備の維持更新や経営の体質改善等々、これが四・五兆円になっておる。それから車両関係の修理、購入、こういったものが一・二兆円、建設関連利子が新幹線工事で〇・七兆円、総体の五%を占めておる。基幹施設工事〇・二兆円、合計で十四兆円、こういうことになっているのですね。六〇%はそういった設備投資でもってやっておられて、そのさらに三〇%近いものは新幹線建設に投資をされておる、こういうのが現状じゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/109
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110・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 昭和三十六年からと言われますと、私、学校を出た翌年でありまして、とてもそこまで正直私もわかりません。ただ、今お話にありました、そして私が先ほど申しましたように、その設備投資の負担による側面というものも決して否定はいたしません。しかし同時に、その設備投資というものは輸送サービスの向上や安全確保等、そしてまた、国民の求めるより高速の輸送体系というものにこたえるという役割は果たしてきたと私は思います。
むしろ今日の背景から考えてまいりますと、輸送構造の変化あるいは採算性を十分に考慮せずにという御指摘を受けたとすれば、そうしたこともあるいは否定できないのかもしれませんけれども、過大な設備投資を行ってきたとするならば、むしろ民間の企業でありましたなら拒否ができたでありましょうようなものであっても国鉄という公社制度の中でその横風に耐え切れなかった部分というものもあったのではなかろうか、私はそう思うのです。そういうことは、実は政府あるいは国会あるいは地域の住民の声が非常に大きく、ある程度無理を承知で国鉄がこたえようとした部分もあったかもしれません。しかし、そういうものが出てくるということは、全国一社制の公社という組織に私どもは大きな原因があったと言わざるを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/110
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111・戸田菊雄
○戸田委員 新幹線整備法十三条というのはどういう内容ですか。事務当局で結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/111
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112・林淳司
○林政府委員 新幹線整備法の第十三条でございますが、「財政上の措置等」ということでございまして、新幹線の建設に関しまして、必要な資金についての政府の助成その他必要な措置を講ずるよう配慮しなければならないという規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/112
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113・戸田菊雄
○戸田委員 この十三条というのは今発表されたとおりなんでありますが、これによって助成、配慮その他真剣に考える。なおかつ当時の国会における運輸委員会でも、「新幹線鉄道の建設には十分なる資金の調達、助成を行なうよう配慮すること。」この附帯決議も行われている等々で、わかりましたということで政府がこの法案を通しているのですね。
そういうことにもかかわらず、実際は、例えば東北新幹線の場合、建設期間に対応する国鉄財政計画再建十カ年、昭和四十八年—五十七年では、計画中の総工事費の一五%に当たる一兆五千億の政府出資をいたします、こういう約束だった。ところが結果的にはこの出資は三年目で打ち切られて、わずかに三千七百八十億円で打ち切られた。こういう状態であるから国鉄は逆に、新幹線は出発しているし、工事は出発しているし、いや応なしに利子つきの金を借りて建てざるを得ない、こういう状況だと思うのです。大臣、まさにこれは国で決めて、法律までつくって、そのことによって新幹線はつくりなさい、こう言っている。まさにこの点については国鉄当局自体としては自主能力も何もない。政治的に判断をされて、政治的に立法化されて、そしてつくりなさい、いわば強制ですね。そういうことに追い込まれたから、そういう利子つきの金を借りて建設をしなければいけないという羽目になる。政府の責任どう考えましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/113
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114・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私はそのころ当該委員会におりませんでしたので、事務方から受けた説明でお答えをしたいと思いますが、計画当時、たしか出資の相当額という御議論があったということも聞きました。そしてその後、出資及び利子補給を行ったと聞いております。その内容は、金利約七%ということで計算をすればほぼ相当に見合うものというふうに私は説明を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/114
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115・戸田菊雄
○戸田委員 まさに国会の立法措置で政府が責任を持って施行したのですから、この点に限っては私は何としても政府が責任がある、こういうことだと思うのですね。
国鉄の再建方策については民鉄適用ということでやってこられております。民鉄と比較をして国鉄の資本金は幾らになっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/115
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116・林淳司
○林政府委員 現在の国鉄の資本金は約四千六百億円程度だったというふうに記憶しております。大体民鉄の場合年間の売り上げの二割前後、少ないところは一割ちょっとというところもございますし、いろいろございますけれども、平均すれば二割前後ということでございます。したがいまして、国鉄の現在の年間の売り上げが約三兆ということでありますと、それに対しては、まあ二割まではまいりませんけれども、一五%程度ということでございますから、民鉄と比べてそれほど少ない資本金ではないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/116
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117・戸田菊雄
○戸田委員 私の調査によりますと、私鉄全体は営業キロ数で五千六百二十九キロですね。国鉄は三万八百三十六キロ、約五・四八倍です。資本金は私鉄全体でもって三兆一千六百六十七億円、国鉄は四千五百六十億円、七分の一です。非常に資本金が低く見積もられておる。これはどういうことでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/117
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118・林淳司
○林政府委員 ただいま私、手元に数字は持っておりませんけれども、大手私鉄十四社、これでもって私ども分析したわけでございますが、会社によっては一二、三%あるいは二〇%程度、例外的に二五、六%という会社もございます。これは年間売り上げに対する比率でございます。それに対して、先ほど申しましたように国鉄は年間売り上げの大体一五%程度の資本金を持っておりますので、大手私鉄十四社に比べて決して低い数字ではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/118
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119・戸田菊雄
○戸田委員 これは結局国鉄法第五条に政府の増資義務規定、これがあるわけでありますけれども……。ありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/119
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120・林淳司
○林政府委員 国鉄法の第五条に「資本金」という条文がございまして、これは「政府が、全額出資するものとする。」さらに「政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額の範囲内において、」「追加して出資することができる。」ということでございます。これに基づきまして国鉄については、先ほど申しましたように、東北新幹線の建設に際しまして総額七百数十億の出資をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/120
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121・戸田菊雄
○戸田委員 私の記憶では、私鉄の経営の資本金は、資本費ですね、これは大体三〇%を上回らない、そういう基準で今やっておるようです。結局政府は出資を惜しむために私鉄よりもはるかに低い助成体制をとった、そういうところに今日の国鉄の赤字要因を生んだ最大の原因があるのじゃないですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/121
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122・林淳司
○林政府委員 たびたび繰り返して恐縮でございますけれども、大手十四社についていろいろ検討したわけでございますが、年間の売り上げに対しまして、低いところで一二・八%という会社あるいは高いところでは例外的に四〇%という会社もございますけれども、平均的には二〇%程度でございます。一二%あるいは一六%あるいは一七%程度、そういう会社が幾つかございまして、それに比べて、先ほど申しましたように国鉄の年間売り上げに対する一五%程度の出資比率というものは決して低くないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/122
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123・戸田菊雄
○戸田委員 結局、いろいろ言っておられますが、そういった各般の国鉄法なりあるいは新幹線整備法なり等々で義務づけられている手当てを政府全体として怠ってきた、そういう結果が今日の赤字要因を生み出している。もう一つは、やはり新幹線のそういうものの投資を政治的に決定して強引にやらせた、こういうところに二十四兆何がしという総体的な赤字が出てきているのですよ。まさにこれは国の責任じゃないでしょうかね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/123
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124・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたけれども、だからそうした側面があるという御議論が成立しないとは私は申しません。しかし、それだけが原因でもありません。そしてまさにその設備投資というものが一方では安全輸送、サービスの向上という側面から十分に国民に還元をされているものであることも事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/124
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125・戸田菊雄
○戸田委員 どうしてそんなに固執するのですかね。
では、国鉄再建計画の経過を見てみましょう。関係する国の計画。新全国総合開発計画、これは四十年から六十年度までですね。再建の一番の中心は何かというと運賃の値上げにあるのですね。それから四十六年から六十年度の運輸政策審議会答申、これも同じように運賃値上げなんです、いわゆる国鉄再建ということで。目標は常に収支均衡、これを目指してということなんです。経済社会基本計画、四十八年から五十七年度、昭和五十年代前期経済計画、五十一年から五十五年度、昭和五十年代前期経済計画、五十一年から五十五年度、新経済社会七カ年計画、五十四年から六十年度。六次にわたって国が、そういう赤字が出現いたしましたものですから、これを何とか再建をしなければいけない。いずれも運賃値上げを中心に置いて再建方策に取り組んできたのです。その間に投資額は三・七兆円、七兆円十兆円、五・一兆円、五・一兆円等々で現行の二十四兆、臨調でもって指摘をされたそういう赤字というものを招来した、こういう状況です。それに対する助成は、まさにさっき東北新幹線の例で申し上げましたように、一五%補てんするものが三千億見当で終わってしまった、こういう実情なんです。だから、国鉄としてはやむを得ずそういう措置をとらざるを得ないという状況に来ているわけです。それを盾にとって監理委員会では赤字破産論、これでもって何か国鉄が今にも倒れるような状況、そして今回の民営・分割に踏み切った、こういうのが実態じゃないでしょうか。総理、どういう御見解を持っていましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/125
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126・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 国鉄の再建について、過去四次にわたる再建計画によってどういう結果が出たか、御指摘を受けました。そしてこれらがそれぞれ今委員が御指摘のとおり、収支均衡の回復というものに目標を置いたことも否定をいたしません。これが結局現実にはうまくいかなかったということで今日の事態になっておるわけでありますが、その原因というものは、一つは事業経営を特性分野に特化することが十分図られず、経営改善が適切に行われなかったこと、一つには運賃改定のおくれなどにより収入の増加が予期どおり得られなかったこと、また、業務運営の効率化が適切に行われず、経費の縮減が不徹底であったこと、そしてまさに先ほどから御論議として出されております設備投資に伴う資本費負担が増加したこと、これらの理由が皆私は挙げられると思います。こうして結局過去に何回か再建策を講じ、経営の抜本的改善を図ろうとしながらこれがうまくいかなかったということは、基本的には私はやはり公社制度というもの及び全国一元的な運営という現行の経営形態そのものに内在する問題を解決し得なかった点にあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/126
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127・戸田菊雄
○戸田委員 建設省来ておりますね。——建設省、道路建設に対して五カ年計画とその実績との対比をひとつ述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/127
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128・萩原浩
○萩原政府委員 現在私どもは第九次の道路整備五カ年計画、昭和五十八年度から昭和六十二年度の五カ年計画を遂行中でございます。その内訳といたしましては、三十八兆二千億ございますが、そのうち一般道路が十六兆円、それから有料道路が九兆二千億円、地方単独事業が十一兆七千億円、そのほかに調整費が一兆三千億円ほどございまして、三十八兆二千億の計画でございます。
これに対しまして昭和六十一年度、今年度まで第四年度でございますけれども、一般道路につきましては十一兆六千八百九十六億円、それから有料道路につきましては七兆三千二百七十一億円、地方単独事業は八兆二千三百五十三億円、合計で二十七兆二千五百二十億円の投資をすることになってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/128
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129・戸田菊雄
○戸田委員 大臣、国家全体の財政投資からいっても、今発表になったように、道路に対しましては一般道路事業でもって十一・六兆円、有料道路に関しては七兆三千二百七十一億円、地方単独事業でもって八兆二千三百五十三億円、合計二十七兆二千五百二十億円。地方の単独事業はおおむね地方債で全部やっているだろうと思いますが、これにももちろん国庫の助成も行っています、入っております。こういう状況なんですね。それがために、税金上からいくなら重量税をつくったり何かして補てんをして、受益者負担方式をとったりいろいろやっていますけれども、道路にはこういった二十七兆円に及ぶ膨大な財政投資を国自体がやっている。ところが国鉄の場合は、全くこれは自前方式でやれということなんですから。西ドイツ等では会計区分制度というものをつくって、そういった大投資の場合については国家でしかるべくこれは補てんしますよ、こう言って単年度で債務関係はもう決算をしてしまうのですからね。会計法上の問題もありますが、問題は国家財政全体の投資の問題で、偏っている。これはだれがやったって、国鉄当局が幾ら逆立ちしてやったって、これだけの大債務を自前方式でとれといったって今の現状の国鉄からは生まれっこないですよ。どう考えましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/129
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130・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今西独の例も引かれて助成措置のお話がありましたが、私ども西独がどうしてそういう状況をとっておられるのか等については定かではございません。ただ、我が国は我が国の実情の中で、私は、それなりに国鉄に対しても従来から種々助成措置を講じてきたと思います。私の立場から申しますならば、国鉄に対して大きな投資が公的資金でなされておれば状況が変わったであろうと言われれば、それを否定するものではございません。しかし、国全体の投資の中でそれらの資金がどう有効に配分され、活用されていくのか、そしてその中において、まさに目的税としての財源を持つ道路の場合と、そして営業収入というものを現に利用者からちょうだいをしている鉄道と国鉄というものを同列で議論をするのには、私はちょっと無理があると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/130
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131・戸田菊雄
○戸田委員 時間がなくなってきますから先へ急ぎますが、ただ言っておきたいことは、大蔵大臣もおられますが、自動車重量税の総額負担は税収の約八〇%ですから三千億ちょっとです、私の記憶からいけば。ですから二十七兆何がしにはほど遠い話です。総合的な、いろんなガソリン税とか何か車税の関係は八種類ばかりありますが、大多数はやはり国で助成体制をとっているということなんですから、この点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
警察庁から来ておりますか。——交通安全施設投資額と、それから現下のモータリゼーションの死傷事故件数はどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/131
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132・八島幸彦
○八島政府委員 お答えいたします。
まず交通安全投資の額でございますが、国が半分補助をいたします特定事業につきましては、第三次五カ年計画、これは昭和五十六年から六十年までの五カ年計画の実際の投資額は、事業費べースで千三百十一億五千万ほどでございます。それから地方単独事業といたしまして整備いたしました額は、同じ昭和五十六年から六十年までの五カ年で二千三百六十五億円でございます。
それから交通事故の死傷者についてのお尋ねでございますが、昭和六十年中の死傷者は約六十九万人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/132
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133・戸田菊雄
○戸田委員 私はこういった投資はいけないとは言っていないのです。当然あってしかるべきだと思っているのです。今発表されたとおりですが、例えば特定事業だけでも五十年度以降六十年度まで、これは警察庁の資料でありますけれども、二千九百億円を超えているのですね。ですから、これは道路にしてもあるいは交通安全施設関係にしても、私は当然だと思っております。同時にまた、国鉄に対してもそういう部面の補てん策というものは、新幹線等の場合は法律でも決まっているのです。これから新幹線五幹線を整備するという状況もあるようですから、そういうときに財政上の問題をよほど検討されて、それで実行するようにしていただかないとこういう二の舞がまた再現をするということになりますから、そういう点については篤と配慮をいただきたい。
それから、この点は総理にお伺いしたいのですが、今交通事故の死者が年間一万人に近いのですね、九千二百六十一人。最近、関係者のいろいろな努力によって若干減ったとはいいますけれども、しかし負傷者数は六十八万を超えている。死傷者数全体では六十九万六百七人。これは容易ならざる状態だと思うのですね。このままいくなら、将来一億二千万の我が人口は何らかの形で交通災害を受けるという格好になる。この抜本的な解決もあわせてこれからやっていかなくちゃいかぬと思いますが、そういう点はどういう見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/133
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134・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 私の記憶では、たしか年間一万四千人ぐらいまでお亡くなりになる方が出たことがあると思います。それを次第に減らしてきましたが、また最近少し増高の気配が出てきております。政府では総務庁を中心にこの啓蒙運動を一生懸命やっておりまして、警察庁あるいは自治省、関係各省の御協力を得ましてあらゆる面で努力しております。啓蒙運動とか、あるいは踏切をつくるとか、交通信号をやるとか、あるいはガイドラインをつくるとか、そういう面で一生懸命やっておりますが、やはり何といってもドライバーあるいは歩行者、両方がよく注意し合う、そういう意味で今回はベルトをつけるというようなことも積極的に前進してきたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/134
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135・戸田菊雄
○戸田委員 そこで運輸大臣にお伺いをしたいのですが、第百国会でしたか、国鉄は破産しているわけではない、改革八法案は再建計画だなどと答弁をされております。今回の民営・分割というものは、監理委員会の答申では、国鉄は破産をした、したがって、再建は会社更生法の手法でいきましょう、こういうことで今日の再建策というものが出てきた、こう考えるのでありますが、その辺の見解はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/135
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136・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、その今の見解というのはどなたの答弁でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/136
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137・戸田菊雄
○戸田委員 これは百国会ですから前運輸大臣ですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/137
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138・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 そうですか。私が受けとめておりますのとちょっと感じが違いまして、私は今回の国鉄の改革というものは、いわば破産状態の後始末といったような後ろ向きの発想でとらえてはおりません。むしろ国鉄ばかりではなくて、鉄道輸送というものの国民の交通機関依存度の中での変化をとらえ、そしてこれから先の鉄道輸送というものの役割を考え、そしてあくまでも現在まで国民に親しまれてきた鉄路というものを本当に生き残らせて役立てていくためにはかくあるべきだと考えてこの法律案の御審議を願っておるわけでありまして、むしろ一歩積極的に前に出る考え方を私どもはとってまいったつもりであります。破産の後始末というような考え方で少なくとも私はこの御論議をお願いしたつもりはございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/138
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139・戸田菊雄
○戸田委員 私は、大臣、監理委員会の「意見」はそういうことですと言っているのです。今、前運輸大臣三塚大臣と言ったのは誤りでありまして、その前の運輸大臣がこれは言っているわけです。その手法に基づいて今回の再建方式というものを、計画というものを設定をした、こういうことなんです。そうだとすれば、会社更生法によって再建方式というものを生み出されたのですから、会社更生法の目的、第一条「この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社(以下「会社」という。)について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とする。」こういうことになっているのですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/139
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140・林淳司
○林政府委員 監理委員会の意見書では破産したとは書いてございませんで、「民間会社なら既に破産した状態となっている。」ということを言っているわけであります。
そこで破産とかあるいは会社更生というのは、これは私企業の問題でございまして、私企業の場合に非常に経営が行き詰まった、その場合に、債権者の債権保全のためには一体どうしたらいいかということであります。これはもう会社を継続する見込みがないという場合には破産に移行する。その場合に、破産に移行してすべての資産を処分して、そして債権の一部と申しますか最大限債権を保全する。さらにそれに対しまして、もし会社を継続していく見込みがあるならば、その方が債権者にとって有利であるならば、破産ではなくて会社更生という道を選ぶということになるわけでありまして、破産かあるいは会社更生かというのはあくまで債権者の最大の利益を保全するための方策であります。それに対しまして、今回私どもが国鉄を分割・民営化するというのは、これは会社更生とか破産という考え方とは全く違うわけでありまして、最初から鉄道事業というものの重要性を認識して、将来にわたってこれを再生させていく、維持していくということが大前提としてあるわけであります。そのためにはどういう方策をとったらいいかということで、これは破産法等には関係なしに今回改革八法をこういう形で提出させていただいたということでありまして、これは民間会社の場合の破産あるいは会社更生とは考え方は全く別でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/140
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141・戸田菊雄
○戸田委員 このままでいくなら国鉄は破産をします、監理委員会はそこを明確に指摘している。そしてなおかつ「このような鉄道の持つ役割を踏まえた上で、将来にわたりその特性を最大限発揮させていくためには、抜本的改革によって速やかに国鉄事業を再生させることが必要であるとの認識を持つに至った。」すなわち、民営的手法によって会社更生法の適用を踏んでこれから再建、事業継続、こういうことに持っていきましょう、こう言っているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/141
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142・林淳司
○林政府委員 私の記憶しておる限りでは、再建監理委員会の意見書では、先ほど申しましたように破産とは言っていません。民間会社なら破産したと同じ状態になっておるという状態を述べておるわけであります。
それから、会社更生法を適用するとかあるいは会社更生法の手法でというふうなことは、これは書いていないはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/142
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143・戸田菊雄
○戸田委員 きょうは監理委員会を呼ばなかったから、ちょっと運輸省の見解は違うようですけれども、今答申を全部拾い上げるのはあれですから。手法としてはそういう手法をとっているのですよ。私は前国会、通常国会に監理委員会を呼んだときに、そういう破綻、破産こういう状況に至ります、したがって今読み上げたような状況でいかなければいけません、それがためには民主的手法をとっていきますよ、民営・分割化はやりますよ、その手法は今言ったように会社更生法に基づいてと、こういうことなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/143
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144・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私は、実は過去のやりとりについては率直に申し上げて存じておりません。しかし、少なくとも私どもが今皆様に御審議をお願いをいたしておりますのは、国民に長い間親しまれてきたこの鉄路というものを生き残らせていきたい、そしてそれが積極的に今変わりつつある交通体系の中で今後ともに存立し得る形、他の交通機関と対等に競争のできる形をつくっていくにはこれしかないということを考えて、今御審議を願っておるわけでありまして、まさに公社という経営形態を離れて民営・分割という手法をとろうとしておるのもそうした考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/144
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145・戸田菊雄
○戸田委員 この一件は、では改めて各省、監理委員会の皆さんにも来ていただいて再度論議をすることにいたしましょう。
問題を変えて、別な問題に移ります。
問題は、雇用政策の問題ですが、国鉄の雇用は、これから職員数は、監理委員会の答申によりますると、六十二年度首で二十七・六万人にいたします、向こう六十四年度首には二十一・五万人にいたしますよ、最終の適正要員は十八万三千人ですよ、こういうことで答申がなされましたね。ところが、その後いろいろな諸条件があって、これは後で触れまするけれども、いずれにいたしましても各旅客会社に対する承継について、財産はただでくれてやるわけですね。しかし、職員の場合は、一たん実質上解雇、そして国鉄の基準によって推薦をし、運輸大臣の諮問機関である設立委員会に報告をして、そこでまた採用その他の推薦をやる、最終的に運輸大臣が任命をする、こういうことになっていますね。これは、今の労働法その他からいって非常に憲法にも違反する手法じゃないかというふうに私は考えているのです。
と申しますのは、戦後新憲法ができて、東京大学の学会編さんでもって非常に純粋な意味でその解説をやった。あらゆる憲法論を見渡してもこれが一番いいなと私は思っているのですが、それを見ますと、二十八条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」解説として「憲法第二五条は、すべての国民に対して生存権を保障している。その具体化に当つては、財産をもつている者にとつては第二九条の保障があるに対し、無産者即ち自己の労働による以外生計の道のない者にとつては第二七条及び本条があるわけである。即ち、すでに説かれたように財産権と労働者の権利とが生存権の二つの経済的支柱である。」こう言われて、なおかつ「近代法の大原則たる契約の自由は、両当事者が法律上のみならず事実上も対等の地位にあるのでなければ所期の目的を達しえない。即ち、それは契約の条件に不満であるときには契約を結ばない自由があることを前提する。ところが、使用者と労働者との関係は、後者には生産手段がないために、前者は事実上優越した地位を占めることになる。何となれば、労働者には契約を結ばないでいる自由はないからである。」生殺与奪の権が握られているわけですから。「かくて労働条件は使用者の一方的に決めるところとなり、労働者はこれを受諾せざるをえない。かくて労働条件はますます低下し劣悪化する。労働者がこれに対抗するには、労働者の各人が、労働力の売り手としての競争者たることをやめて、労働者団体として労働力を独占する以外に道はない。」のだということで、対等になるためには労働組合をつくって団結をして、そしてだれにも拘束されずに自由な行動ができる、こういうことを言われているんですね。だからこの趣旨からいけば、今回の処置はまさに私はこういう憲法否認の手法ではないだろうか、こう考えるのですが、労働大臣来ておりますね。見解を伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/145
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146・平井卓志
○平井国務大臣 お答えいたします。
委員の御質問、非常に幅が広いのでございますが、国民的課題とまで言われておりますこの大改革の中で、改革法の二十三条等が不当ではないかというふうな御質問でないかと思うわけでございます。
御案内のように、この改革法は、新事業体の職員の採用は新規採用によるというふうになっておるわけでございまして、このような仕組みをとりましたのは、従来まで政府で御答弁申し上げておりますように、現在における国鉄の危機的な状況をどのように認識するか、この点に立ちまして、第一は公共企業体から民間会社へと経営形態が大きく変わる、変更されるということが第一点でございまして、いま一つは、これも従来から御答弁申し上げておりますが、全国一社制というのを六分割いたしまして、それぞれ違う条件に置いて当該会社が新たに出発するということでございます。ですから、各事業体はそれぞれ新会社として出発の諸条件は違うわけでございます。でありますから、新事業体の職員の構成及び労働条件というのはまさしく新しい経営理念また経営体制によって行われるものである、こういう考えが前段にございます。また清算事業団へ移行する職員につきましても、この場合は自動的に清算事業団においてその身分を承継する、同時に雇用関係を継続いたしながら三年間にわたりまして再就職促進のための措置をとる、こう相なっておるわけでございます。
以上総合的に判断いたしました場合に、この改革法に言う職員の移行方式は妥当である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/146
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147・戸田菊雄
○戸田委員 私が聞いておる内容に大臣は答えていないのですね。憲法の労働者三権の付与の解釈はどのようにおとりになるのですかということを私は今伺っているのです。あなたが今答弁をしたのは、結局承継法人の職員、いわゆる二十三条を言っているわけでしょう。「承継法人の設立委員(当該承継法人が第十一条第一項の規定により運輸大臣が指定する法人である場合にあっては、当該承継法人。以下「設立委員等」という。)は、日本国有鉄道を通じ、その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、」云々、この説明は私今聞いていないのです。憲法解釈はどうなのか、基本法。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/147
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148・平井卓志
○平井国務大臣 委員御指摘の憲法二十八条でございますが、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」こうあるわけでございます。それについてこのたびの問題はどうかという御質問でございますけれども、ただいまも御答弁申し上げましたように、新規採用におきましては一般の民間企業においても団体交渉は問題とならない、このように私は理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/148
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149・戸田菊雄
○戸田委員 いや、憲法の解釈をどのように——私は、憲法否認の行為ではないか、こう言っているのです。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/149
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150・平井卓志
○平井国務大臣 でございますから、ただいま申し上げましたように、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動」云々という憲法の条項には違反しないと私は申し上げておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/150
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151・戸田菊雄
○戸田委員 これはいずれ有権解釈を求めるために再度論議をしていきたいと思います。
いずれにいたしましても、現行三十二万できた要員を六十二年に二十七万六千人にし、最終には二十一万五千人、これに落ちつけるために九万三千の余剰人員を生み出した。そのうちの六万一千名は、公的部門に三万人、民間体制に一万人、関連産業に二万一千人、こういうことでこれから再就職を政府は責任を持ってやります、こう言った。余る四万一千人は清算事業団に送り込みますよ、しかし三年間過ぎたら、各般の教育その他をやっても結局これは首にしますということですな、悪い言い方ですが。そういう振り分けをやっているわけでしょう。
だから、そういうことになりますと、今の会社更生法、民間の場合破産をして再建に持っていく場合、いわゆる会社更生法の第百九十五条ですよ。「裁判所は、更生計画案について、会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合、会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは、会社の使用人の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない。」あなた方がやった手法というものはこれよりも下回っているのじゃないでしょうか。どうですか、その見解は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/151
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152・小粥義朗
○小粥(義)政府委員 先生御指摘のいわゆる破産ないしは会社更生法と同様に見るかどうかという点に一つの問題があろうかと存じますが、今回の国鉄改革の案では、いわゆる新会社について新規採用方式を、従来から繰り返しお答えしておりますように、そういう方式をとることにいたしております。したがいまして、その部分に関しては、先ほど大臣がお答えいたしましたように、憲法二十八条、これは一般的に団結権等を保障いたしておるわけでございますが、具体的にどの範囲について団結権あるいは団体行動権等を保障するかについては、それぞれ実定法として労働組合法あるいは労働関係調整法等あるわけでございますけれども、先ほど大臣がお答えいたしましたように、いわゆる新規採用についてはそういう形をとらないのがむしろ一般であるわけでございます。
一方、国鉄の清算事業団については、これは当然に雇用関係も承継されるし、その間についてのいろいろな労働条件の問題についてこれは当然団体交渉等の問題になり得るわけでございますが、新会社については新規採用方式をとる以上その問題は出てこない、こういう理解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/152
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153・戸田菊雄
○戸田委員 私は、さっきの憲法論議から一定の労働大臣の回答があったから、これは今さておいて、本来なら憲法にのっとって基準法があり、それから公企体法あり、そこで労使関係のいろいろな問題がまた決められて、それを受けて労使協議、協定、協約というものができていくわけですね。これが法体系だと思うのです。ところが、今回はそういうものを全部御破算にしてしまって、それで一たん解雇をして三段階の推薦方式で最終的に運輸大臣が任命をする、こういうことをやっている。だから、その方式というものは私は会社更生法の民間体制よりも下回っているのじゃないか、そういうことを今聞いているわけなんです。民間手法その他をさっきいろいろ論議したけれども、これは後でやることにしましたからそれは私は打ち切って、それでも民間の会社更生法より下回っているのじゃないか、全然相手と協議も何にもない、こういう状況で一方的に持っていくわけですから。この見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/153
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154・小粥義朗
○小粥(義)政府委員 今回の国鉄のように一つの大きな企業体を分割する場合に限らず、例えば営業譲渡であるとか合併であるとかいうような場合にも、資産の承継と職員の承継とはどうなるかというのはしばしば問題になるわけでございます。そうした場合に、例えば経営形態が変わります従来の例を調べてみますと、資産は承継されるけれども職員は必ずしも承継されないというケースもあるわけでございます。
問題は、新しい事業体を職員を含めた承継的な形でやるのか、あるいは別途新しい事業体という形で新規採用の形でやるのか、これはいろいろ議論のあるところでございますけれども、今回は、先ほど大臣がお答えしたような趣旨から新規採用方式をとることにしたわけでございまして、新規採用方式をとるがために委員御指摘の会社更生法百九十五条といったものが直接適用される余地はないということになるわけでございますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/154
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155・戸田菊雄
○戸田委員 下回っているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/155
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156・小粥義朗
○小粥(義)政府委員 新規採用方式をとる必要性があるという限りにおいて、その点はやむを得ないものというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/156
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157・戸田菊雄
○戸田委員 私は、二年前のNTTや日本たばこ産業の民営化方式にも携わってきました。職員の採用については、そのときの職員はすべて新会社に承継するということになっている、どっちも。国鉄がなぜ今回そういうことができないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/157
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158・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私も党の中で電電、専売の民営化の絵図面をかいた一人であります。そして、この場合には確かに全従業員が移行をいたしました。ただ、国鉄の場合とこの二者とで全く違っておりますのは、電電公社あるいは専売公社に比べまして、国鉄の場合、業務量に比して著しく多い、過剰な要員体制をとっているということが現実の問題としての大きな変わりの部分であろうと私は思います。
そして、先ほど委員自身が御指摘になりましたように、新会社発足時に二十一万五千人でスタートをするわけであります。これには鉄道業務そのものに係る要員体制の中で必要になる要員数に加えて、新会社が発足当初必要となる他の業務あるいは将来の関連事業への移行というものを頭に置きながら、スタートの時点でも鉄道業務そのものから見れば約二割の余分な人員を抱えてスタートをするわけであります。しかしそれでもなおかつ、残念ながら六万一千の方々に私どもはお仕事を探して差し上げなければならない状態になるということでありまして、まさに電電、専売の場合と国鉄の場合と、過剰な要員体制そのものが大きな違いであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/158
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159・戸田菊雄
○戸田委員 きょうは時間がありませんから詳しく詰めることはできないのですが、もう一回総括の質問等ありましょうからそのときに十分優先をしてまいりたいと思いますが、積算基礎においても回帰式をとった、こう言っている。しかし、現行の国鉄要員というものは、作業ダイヤ、労働時間、その他でもって積み上げ方式をとってきている。それに見合うと、片方は十八万三千人最終適正要員、国鉄の場合は十九万五千人、こうなっている。だからこの違いはあるのですけれども、我々自体が回帰方式そのものを適用してやってもちょっと監理委員会答申の数字には当てはまらない。これは後でやりますけれども。
しかし、いずれにいたしましても四万一千名、最終的にはこういう状況になりますよ、こういう状況なんですから、そういうものをNTTや日本たばこ産業方式でいけば、これは一たん承継をしておいて、そして後からいろいろと労使協議でもって決める筋合いのものだろう、こういうふうに考えているのです。だから、私はぜひ政府の考えを翻意をしていただきたい。すなわち、新会社移行時の国鉄職員はNTT、日本たばこ産業同様すべて承継雇用とする。雇用決定は労使協議とする。政府の設立委員会あるいは国鉄当局は組合に労働条件を提示をする。その場合は既得権を確保する。賃金、年次有給休暇、手当、労働時間特例、いろいろあります。採用に当たっては公正を期する。さらに一方において、国鉄への基本計画、事業計画等事前に提示する。組織、機構、ダイヤ作成方、客車運用、運賃等々条件を示して、そして近代法にふさわしい雇用政策の態様というものをとってみてはいかがなものでしょうか。私は非常に強く要望したい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/159
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160・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今御答弁を申し上げましたように、電電、専売の場合と全く異質な点として要員過剰ということを現実の問題として私は申し上げました。また同時に、電電、専売の場合と異なりまして、これは私がもう申し上げるまでもありません、それぞれの理由を持ってのことでありますが、新会社は全国一社制に移行したわけであります。
しかし、鉄道というものの特性、交通機関相互の競争、地域の実態のより的確な反映といった視点から私どもは分割・民営という方式をとり、その中でいわば旅客の移動のエリアというものをも考えて分割の筋引きをいたしました。言いかえれば、新しい会社が発足をいたします時点で、職員の構成あるいは労働条件等につきましてはそれぞれの会社の経営方針というものが当然反映をされるべきものであると私どもは考えております。その結果、設立委が採用する方式をとったわけでありまして、新会社が発足をする時点に必要以上にあるいは関連業務等に進出して、その人たちに働いていただける限界を超えて過剰な要員で発足をすることは、むしろ私は新たに次の理想に向けて走っていかなければならない新会社そのもののスタートを危うくするものだと考えておりまして、残念ながらこの点につきましては委員と見解を異にいたしております。
ただ、先ほど委員は清算事業団を三年たったらほうり出されるんだとおっしゃいましたけれども、そういう事態にならないで済むように、今私どもは一生懸命にその六万一千の方々に対しての職場を用意しようとしているわけでありまして、その努力というものもあわせてお考えをいただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/160
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161・戸田菊雄
○戸田委員 今、国鉄でいろいろと要員問題で諸作業をやっているようです。しかし、国鉄の職員の皆さんは大変な不安を持っているのですね。ですから、中には七十名を超す自殺者も出たというようなこともある。あるいは公共部門や民間体制や関連企業に行くためにいろいろな受験や何かの応募もやっている、こういう状況ですね。そういう問題についても非常に公正を欠くようなそういう手順というものが現地では今行われて、大変な不安を持っているのです。国鉄は、一歩誤ってポイント一つ切りかえを違ったら大事故になっちゃうのですからね。常に職場にそういう緊張度がなくちゃいけない。ところが、そういう不安状況だ。私は非常にそのことを心配していますよ。
だから、こういう点については大体どうでしょう。私の推測値では、二十七・六万人に対して恐らく六十二年の三月まで三万人ぐらいの希望退職が出るんじゃないかという話もある、あるいは休職、退職が一千名くらいあるんじゃないか等々を加味しますと、三万三千人ぐらい自然減も出る。それらをずっと整理をしていきますと、残された要員数は二十二万ちょっと、二十一万五千に近づくというのが実態だと聞いているのですが、その辺はどういう情勢掌握をしていらっしゃるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/161
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162・杉浦喬也
○杉浦説明員 今、先般の通過いただきました法律によりまして希望退職を募っておるところでございます。現時点で希望退職の申し出があります者が一万三千人、その他公的部門等を含めまして大体一万八千人ぐらい希望退職と名づけられるようなそういう退転職というふうに相なることになると思います。将来これがどのように発展し、数がどのようになるかちょっと予測はできません。少なくとも当面の目標の二万人、これはもう十分達成できるというふうに思っておるところでございまして、将来の私ども並びに政府でお願いいたしております雇用の確保の問題につきましては六万一千人、希望退職二万人を引き算いたしまして四万一千人が清算事業団の方へ移りまして、それに雇用対策を講ずるということが現時点では最も望ましい政策であるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/162
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163・戸田菊雄
○戸田委員 今次国会は十一月二十九日までですから、少なくともその間に本問題等に対するきちっとした解決策を見出さなければいけない。そういうことになりますると、やはりそういう実勢の現況というものを一回国会に出していただく、それが必要だと思うのですが、その点はどうでしょう、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/163
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164・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 新しいデータ、提出を命ぜられれば提出をいたします。なお、口頭で現在の時点、部門別は私正確に記憶をいたしておりませんが、六万一千名に対して先週末六万百名まで求人の応募をいただいております。現在おくれておりますのは実は国の部分でありまして、これは雇用率の設定を先般の閣議で行いました。そしてそれに従って今上積みの数の計算を各省にしてもらっておりまして、それが作業のおくれの一つの原因でございます。
なお、申し添えますが、けさ総理御自身の発意で地方自治団体関係者にお集まりをいただき、総理からも地方自治体における雇用についても改めて再度の御依頼をしていただいたようなわけでありますが、これにいたしましても、たしか一万一千五百名採用を願いたいとお願いをしておりますのに、現時点において九千八百名まで求人をいただけるところまでまいりました。この後も全力を尽くすつもりでありますし、現況については改めて資料として御報告をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/164
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165・戸田菊雄
○戸田委員 大臣の答弁、了とするのですが、ただ関連企業ですね、大体私の記憶ですと総体八百六十五社と思うのですが、その中に働いている皆さんというのは国鉄OBもおりましょう。そうしますと、五十五でやめてそして六十歳までよろしい、六十五歳までいいですよということになりますが、現状は現役優先ということで、例えば四十七歳から年金の若年支払いが制度としては国鉄ではいいということになると、これは五十歳、五十三歳ぐらいでやめていく人もあるわけですよ。そうすると、現職優先ですからどうしてもそっちへ関連企業の二万一千名というものは向けられる可能性が十分多い。そうすると玉突きなんですね。現職でそちらで働いている人は全部玉突きでもって、本来なら六十までいくのを五十八でやめなさい、こういうことになっている。実証はいっぱいあるのです。ですからそういうことのないように、本問題についてはぜひひとつ大臣、御配慮をいただきたいと思うのですがどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/165
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166・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今、御指摘と逆のお答えをして恐縮でありますが、関連企業に対して確かに私どもは積極的に国鉄職員を受け入れていただくようにお願いも申し上げております。そしてまた、今日の国鉄の置かれている現況にかんがみて、関連企業側にも十分な理解と協力を得ながら推進が図られることが望ましい話でありますし、これは国鉄当局として当然十分配慮をしながら努力をしていただけるものと考えております。
私どもとすると、今、国として責任を持つべき公的部門の三万人というその目標に対してなお一歩の努力を必要としておるのが状況でありまして、全力を尽くして対応したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/166
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167・戸田菊雄
○戸田委員 年金の問題ですが、橋本運輸大臣の大変な御努力で一応四閣僚懇談会というものをつくられた。これは非常にいいことだと思うのですが、私は前途をいろいろ考えまして、大変な要員不足によって掛金が少なくなり、国鉄共済全体が非常に赤字体制、それは資料をいただきましたからあえて指摘しませんけれども、そういう状況等々があるものですから、何としても配慮をいただきたいのは、「財政調整実施後の年金財政問題」ということで、
国鉄年金は、財政調整五箇年計画に基づき、国家公務員等から財政援助を頂くこととなり、六十四年度までは収支均衡するとされていた。しかしながら、経営改革を行うにあたり、財政調整五箇年計画に比し、要員は十万人以上縮減すること等により、その再検討が必要となっている。
そのため、第百三国会における政府の統一見解に基づき、今後の国鉄年金の支払いに支障が生じないよう対策の検討を行い、六十一年度中に結論を出すことになっている。
政府部内に「国鉄共済年金問題に関する閣僚懇談会」が設けられ、六十四年度までの対策及び六十五年度以降の対策が具体的に検討されることとなっているが、その場合、「公的年金制度改革について」(昭和五十九年二月二十四日閣議決定)に沿い、公的年金制度一元化の流れの中で対策を講じて頂きたい。
こういう要請があって、それでいずれにいたしましても六十四年度までは、
国鉄共済年金については、財政調整五箇年計画の終わる昭和六十四年度までは、政府として、国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにいたします。
以上については、昭和六十一年度中に結論を得、その後できるだけ速やかに具体的立法措置に入ることといたします。
なお、昭和六十五年度以降分については、その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるように措置いたします。
こういうことになっているのですが、問題は二つあると私は思うのです。
六十四年度まで、そういう変化に伴って損金が想定するところ三千億見当不足を来していくのではないだろうか。とすれば、六十一年度中にそれらの支障のないように完全に政府が責任を持って実施をいたします、こういうことでなければいけないと思うのですが、その前段の扱い方、どうでしょう、大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/167
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168・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 前段の問題でございますが、昨年の十一月二十八日の統一見解で申し上げましたところに従いまして、六十四年度までの分は支払いに支障のないように国の負担分を含めていたしますということを申し上げております。これにつきましては、六十一年度中に結論を得ますということも申し上げたわけでございますが、これに従いまして関係の閣僚が既に何度か会合を開いております。今年度中には結論を得まして、この統一見解で申しましたとおり実行いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/168
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169・戸田菊雄
○戸田委員 大臣、念を押すようですけれども、六十一年度中必ず実行いたします、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/169
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170・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 六十四年度までの分についてはさようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/170
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171・戸田菊雄
○戸田委員 もう一つは、六十五年度以降この扱いをどうするかということを、大蔵大臣、それから年金の担当主管大臣、きょうは御不幸のところ非常に申しわけなかったのですが、厚生大臣、それから運輸大臣、自治大臣等々の御意見をおのおの聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/171
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172・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 後先になって恐縮でございますけれども、六十五年度以降についてでございますが、これにつきましても支払いの維持ができますよう措置をいたすべく、六十四年度までの対策に引き続きましてできるだけ速やかに検討を行い、結論を出したいと考えております。統一見解で申し上げたとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/172
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173・斎藤十朗
○斎藤国務大臣 国鉄共済年金問題につきましては、ただいま先生御指摘がございましたように、昨年の十一月の政府統一見解に基づきまして六十四年度までのことにつきまして、当面する問題として今四閣僚の懇談会で鋭意検討、努力をいたしておるところでございます。私も年金担当大臣としてそれに参加をいたしまして検討をいたしておるところでございます。六十五年度以降のことにつきましては、本年度中に六十四年度までのことについて結論を得、その後速やかに六十五年度以降の問題について検討いたし、支払いができるようにいたしてまいろう、こう考えておるところでございます。
同時に、年金担当大臣といたしまして、昭和七十年度をめどといたしまして年金の一元化へ向けての作業も一方進んでまいるわけでございますが、その中におきましては、それぞれの年金各制度の歴史的な沿革やこれまでの経緯によりまして、負担や給付の面におきましてそれぞれ調整をせなければならない問題もあろうかと思います。そういったいろいろ難しい問題も控えておりまするけれども、そういったことを調整しながらこの問題との関連をつけてまいりたい、こう考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/173
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174・葉梨信行
○葉梨国務大臣 昭和六十五年度以降の分につきましては、政府統一見解におきまして、六十四年度までの対策に引き続き、その後十分な検討を行い、国鉄共済年金の支払いの維持ができるよう措置することとされております。今後とも政府統一見解の趣旨に沿って努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/174
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175・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 実は所管をいたしておりませんために全く心を痛めるばかりでありますけれども、私の立場からいたしますと、まずとにかく委員御指摘の六十五年度以前の問題として、六十四年度までをそれぞれに対して支払いに支障のないような状態をつくり出すことに今全力投球であります。しかし、長い目で見てまいります場合には、私は、日本の年金制度全体が統合一元化の方向に向いている、その位置づけの中において国鉄共済の問題もまた解決をされるべきものである、個人的にはそのような考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/175
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176・戸田菊雄
○戸田委員 大蔵大臣の答弁は、六十五年度以降支障のないようにそれも対処します、こういう趣旨の答弁でございますが、六十五年以降じゃ間に合わないのですよ。ですから私は、要望ですけれども、六十四年度以前の問題については、それは統一見解をぴっちり実行していただく、六十五年度以降の問題については六十三年度まで政府の対応策をきちっとして確立をしていただく、それでないと間に合わない。例えば厚生大臣が言ったように七十年に向けて政府全体の年金一元化、こう言ったってそれはなかなか難しい問題が出てくる。だから、六十三年度まで、閣僚懇談会の各大臣の皆さん方に御努力願って、そういう方針をきちっとしていただきたい。でないと、必ず間に合わない。どうですか、見解は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/176
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177・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 六十四年度までの問題につきましても実はなかなか解決が容易でありませんで、幾たびか閣僚会議をいたしておるところでございますが、その後のことになりますとますます事情は困難になってくることが予想されまして、問題はいよいよ容易ではないという感じが実は予感としていたしておるわけでございます。そういたしますと、なおさら結論を得ることに手間がかかる。この六十一年度中に六十四年までの問題は片づけました後、どういう構成、恐らく閣僚によるいろいろな協議ということになるのかと思いますけれども、どういうふうにしていくかということも実はまだ決定をいたしておらないような現状でございます。したがいまして、難しい問題だから早く結論を出せとおっしゃいますことはわからぬではございませんけれども、難しい問題であるだけになかなか決心が、結論が出しにくいという要素もございまして、決してただじんぜん日を過ごすつもりはございませんけれども、どうぞその点は御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/177
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178・戸田菊雄
○戸田委員 誠意ある答弁は認めるのですけれども、六十三年度では——きょうは内容は触れません。恐らくあした同僚議員が触れるかもしれませんから触れませんが、六十三年度まで前途二年間でこれをぴっちり政府の統一見解等を満たしてもらって、そして六十五年度以降の対応をどうするかということでないと、これは絶対時期的に間に合いません。六十五年以降やりますよなんといったって、これはとてもできない。この前の年金の統一見解確認のときに既に閣議決定で七十年まで立法化措置を図ると言った後、これは御破算になっているのです。ですから、そういう点を含めまして、これはぜひ六十三年度まで対応策を決定します、この大綱だけひとつ確認しておきたいと思います。
〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/178
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179・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 いろいろな問題がありそうなことは戸田委員がいろいろ御承知の上、予知しておられての御質問であるように承ります。したがいまして、この点につきまして大蔵大臣としての私が自分だけの御答弁をすることは実は大変に難しいのでございます、いろいろな問題を含んでまいりますので。したがいまして、重ねてのお話でございますが、六十三年度中にということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、できるだけ鋭意検討いたしまして結論を出したいということだけでひとつお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/179
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180・戸田菊雄
○戸田委員 いずれ本問題については再度やりましょう。
そこで、最後ですが、時間がなくなりましてちょっとはしょって質問いたしますが、この株の扱い方ですね。改革法、各社法案等々見ましても、これは政府からいただいた資料ですけれども、「各事業体別の資産区分の考え方及び額」というのがございます。これを見ますると、「日本国有鉄道清算事業団」に「売却可能用地及び新事業体出資株式を保有する。」こうなって、全体で〇・八兆円いわゆる八千億、そのうち土地が一千億、株式は七千億、こういうことになっているのですね。各旅客鉄道会社にくれてやる財産の試算その他見ましても非常に低額、七千億ということだと思うのです。そういうことになりますると、非常にこれは問題のある設定の仕方ではないか。NTTの場合は国が三分の一保有、あとは売却する、資本金は七千億、こういうことで今日NTTの売買が開始されたわけですけれども、もちろん公正に運用するためにいろいろな諮問機関その他あります。ありますが、国鉄の場合は全然それがないですね。国が全額清算事業団にこれを融資いたします、こういうことだけですね。その内訳が今のとおりです。こういうことになると、含み資産がいっぱいある、そういう状況の中でこんなに安い株式。ある会社の社長さんに言わせれば、前途三年、五年たってから収支計算がよくなって、五百円の株が一千円になりあるいは二千円になるということになると大変な資産で今の三十七・何がしなんというのは全部それで償却できるんじゃないかというようなことも言っておる。しかし、私はさっきの資本金の問題でもちょっと指摘をしましたけれども、もう少しこういう点について、国がどのくらい持って、売却予定どの程度等々。NTTの場合は職員の持ち株制までやると約束したのですから、だからそういう面を含めて国鉄の場合も株運用等については十分厳密な試算というものを出していただきたいと思いますね。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/180
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181・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今の委員の御指摘は二つに分離してお答えすべきかと思います。
まず第一点は、新会社の株式の価格と申しますかその資本金の額が低いという点でありますが、これはまさに額面価格でありますし、この資本金計算自体が営業収入の二割という、まあ民間鉄道等の実態を参酌して決めた金額でありますから、これが不当な金額であるとは私どもは思いません。
また、NTTの場合には、確かに通信の機密その他、国として通信事業というものに一定の株式を保有すべき役割もまたあろうかと思います。しかし、私どもは、この新たな鉄道会社それぞれは、スタートこそ特殊会社の形でスタートをいたしますけれども、それなりにその経営が地について、国民からもその評価をいただけた段階において順次これは売却していき、完全な民間企業にしていきたいと考えている性格のものでございます。その辺にも差異がございます。ですから、政府の株式保有義務を定めております他の特殊会社のように、株式保有によって会社の実効支配権を握るということは、むしろ民間経営を志向する鉄道事業に余計なかせをはめる可能性すらあるわけでありまして、むしろNTTのような保有義務を義務づけていない、経営が地につき、国民の評価がそれだけいただけるようになれば、やがて完全な民間会社になっていく、その姿をとる方が私もどは至当だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/181
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182・戸田菊雄
○戸田委員 後でこれは詳しく、きょうは準備してきたんですが時間がなくてちょっとできませんので、いずれ本問題についてはやりまするけれども、そこで、最後になると思いますが、いわゆる地方税改正、これはどういう目的でやられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/182
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183・葉梨信行
○葉梨国務大臣 地方税法等の改正案を御提案しておりますが、これは日本国有鉄道改革法案等一連の国鉄改革関連法案に盛り込まれました分割・民営化を基本とします国鉄改革の方策を前提といたしまして、税体系上のバランスを考慮しながら、新しく設立されます事業体の性格等に応じた地方税法上の措置を新しく定めるものでございます。同時に、この重要な国鉄改革が順調に進行いたしますように、必要な経過的な負担軽減措置を講じていこう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/183
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184・戸田菊雄
○戸田委員 資料によっても、従前、納付金体制、おおむね平均六百億見当、こういうことできたのです。二年間そのまま納付金体制でいって、二年後に今の地方税法、固定資産税その他に切りかわる、こういうことですね。その場合に、今の納付金よりも高くなりますか、どうですか。激変緩和でいろいろ非課税方式をとっておられるようですが、その辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/184
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185・葉梨信行
○葉梨国務大臣 二年間現行の納付金体制でまいりまして、その後八年間同額で固定資産税に切りかえまして固定資産税を納めていただく、こういう方針でございます。
〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/185
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186・戸田菊雄
○戸田委員 最後に総理に、いわゆる分割手法によって、言ってみれば実際は二十三の世帯ができるという格好になるのですね、いずれにしても社長さんが二十三人できる。そういうことになると、今まで一世帯で運用してきたものを二十三分割する。早い話が、家財道具から始まって、それから電話も新設する、各般のあれがかかるということになると、経済効率を生み出すために民営・分割するというものは逆になっているんじゃないだろうか、私はこういうふうに考えますが、総理はその件に対してどういう見解をお持ちでしょうかね。
それからもう一つは、ダイヤ改正のときに、今回は、十一月は国鉄本社が全部やりましたからこれは余り問題ないのですけれども、例えば今後ダイヤ改正をやるというような場合に、鹿児島から東京までダイヤ設定するわけですね。ところが、今度は鹿児島は九州旅客鉄道会社、それから西日本、それに東海、そして東日本、こうなるわけです。これはだれが一体ダイヤ調整しましょうね。それから、経費の積算だって大変な複雑さをかえって逆に創出します。あるいは客車運用一つ考えてみても、これは大変な作業です。国鉄は効率化を図るためにいろいろな車や何かに全部記号をつけて効率的にやっている。そういうものは一体どうなっていくのか。それから、安全体制も、非常に要員不足でもって無人駅がふえていく、逆にスピード化を図る等々がありますから、あるいはこの車両の検査その他にしてもやはり手抜きが相当出てくる。この間新幹線のある運転手が、一人乗務ですから、二百五十キロのスピードで吹っ飛ぶのですから、そういう状況の中で居眠りを起こした、こういうことです。幸い制御方式があってそれを食いとめた、こういうことであります。それは出ますよ、そういうことは。安全に大変な影響を持つような状況。あるいは無人駅になれば町の格式が下がる、そういうことになると地域経済に及ぼす影響が非常に大きい等々非常にデメリット分が数多くある。
この間公聴会で、私、県の町長さんにいろいろと伺いましたら、電話料金は全国どういうところでも一律じゃないか、NHKの視聴料はこれも一律じゃないか。過疎地帯と言われ、農村地帯と言われ、そういったところの人たちも食糧生産その他で大変な努力をしている。そういう者に国鉄だけ格差運賃でもって、北海道はおととい行ってまいりましたが、六%も運賃値上げをしなければいけない。今までは遠距離逓減法という運賃方式でやりましたが、今度は格差運賃で、地域地域によって全部違う。所得の少ない過疎地帯、そういったところで普通の人よりも大変な負担増というものを招来をする等々、今後の経営に対して利便性や安全性や、そういったものに対してむしろ大変な障害というものが出てくるのではないだろうか、こう考えているわけでございますが、総理はいかがお考えでしょうか、見解をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/186
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187・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 非常に本質的な問題の御質問でございますが、やはり私は分割を支持しますというのは、今国鉄はほとんど民間会社との競争の中に立たされております。特に大都市圏等においてはそうでありますし、それからトラックとの大きな競争にも立たされておりますし、あるいはさらに飛行機との競争に立たされておる。この激甚な競争が生まれてきたということが、明治の初めに国鉄ができたとき、あるいは終戦直後以来最近に至るまでの国鉄と全く様相を異にしてきたわけでありまして、この競争に打ちかっていかなければならない。この競争に打ちかってサービスをよくしていくという面から考えると、これはもうどうしても分割は必要である、私はそのように考えました。特に、中部地方というものを独立さして本州三分割するのはどうかという点も随分考えてみまして、東と西二つにしたらどうかという発想も持ったのでございますが、やはり中部地方というあのエネルギーの一番ある、そこを独立さして、そして思い切った経営努力をやらして、東と西にも刺激を与える。本州が二つだけになるというと、ややもすればマンネリズムにまた流れる危険がある。あの真ん中に一番暴れん坊みたいな民間的な力を持ったところを入れておいて、そして東と西にも刺激を与えながら我々が考えている分割の効果を上げるというためにはやはり本州を三つにした方がいい、そういう発想も持ったわけでございまして、これが正しいかどうかはわかりませんが、私はそう思っておるのであります。
そういうような考えに立って、電電なんかと違って国鉄の場合は人間の労働力を非常に要する現場の業務が多いわけです。それで、財界の皆さんがよく言うには、ああいうような現場的業務というものは五万人がもう限度だ、二十万人前後というものを一括して一つの場所で管理するということはとてもできない、そういうことをよく私聞きました。そういうような面から、今分割という形によれば、分割によるデメリットとメリットと両方見ると、もちろんデメリットもあると思います。あると思いますが、メリットの方が多くなる、そういうような考えを持ちまして、やはり分割というものを支持するという考えになったわけでございます。
では旅客会社間の今のような不能率やら不連絡というものはどうするかという御質問でございますが、現代のコンピューターの発達した技術においては、これはもう容易に克服される。この点につきましては、技術的な面でございますから国鉄の方から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/187
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188・細田吉藏
○細田委員長 戸田君、時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/188
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189・戸田菊雄
○戸田委員 はい、今終わります。
国会の論議も、政府の案は六分割、公明党さんは二分割、社会党は非分割、大体方針が出そろいました。これは基本的な問題ですから今後十分ひとつ時間をかけて慎重審議で一定の結論を出していただくように要望して、終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/189
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190・細田吉藏
○細田委員長 これにて戸田君の質疑は終了いたしました。
次に、遠藤和良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/190
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191・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理初め関係閣僚の皆様そして特別委員の皆様には、連日大変精力的に国鉄改革法案の審議をしていただいておりまして、きょうも大変遅い時刻になりましたけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
本日も大変いろいろな問題が提起されまして、かなりきめの細かい議論があったわけでございますが、私は観点を変えまして、今この国鉄の法案の審議と並行してといいますか、かなり先行した部分として、新会社のいわゆる役員、社長さんはだれになるのだろうかというふうな動きがあるようでございますが、これはまことに重大な問題であると思います。厳正で公正を期すためにも、この新会社の役員の人事につきましては法律上どういう手続でお決めになるのか、そしてまたいつごろお決めになるおつもりなのか、この辺から伺ってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/191
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192・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 新会社の取締役及び監査役の人選については、法律上、法案の成立後発足する設立委員会において具体的な案が検討され、これを踏まえて最終的には各会社の創立総会の議決によって決定されることとなります。また、新会社の代表取締役は創立総会の後、取締役会において選定をされ、監査役とともに会社法第六条の規定により運輸大臣の認可を受けることとなっております。
また、この時期という御指摘でありますが、これは現時点、まだ法律を通していただける時期がわからない段階でいついつと言うことは大変不遜でありますけれども、例えばNTTのときを調べてみますと、昭和六十年三月二十八日に創立総会が招集をされて取締役及び監査役が選任をされ、同日の取締役会で代表取締役が選定されたというふうに聞いております。NTTの場合は旅客会社などと違いまして、取締役の全員、監査役の選任について、郵政大臣の認可が必要になるわけでありますけれども、この認可も同じ日に行われたと聞いております。参考として申し上げればこのような形になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/192
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193・遠藤和良
○遠藤(和)委員 ただいまの手続を伺っておりますと、形式的には株式会社になるわけでございますけれども、設立委員は運輸大臣が任命をする。それから創立総会を招集いたしましても株主さんは旧国鉄、清算事業団でございますから、いわば国が一〇〇%株を持っているようなものでございます。それから代表取締役がこれまた運輸大臣の認可を受けなければならないということになっておりまして、文字どおり国の監督のもとに発足をする特殊会社の形をなしていると思うわけでございまして、そうなりますと、この役員人事については国の考え方というのがかなり色濃く反映されるのではないか、このように思うわけでございます。新聞報道等を見ますと、代表権を持つ取締役は六つの旅客会社と一つの貨物会社、合わせまして各二人ずつとしますと十四人になるわけでございますが、この十四人の人事カードというのは中曽根総理の手中にあるのではないか、こういうふうに言われておるわけでございますが、このカードをどう使うかということが今関心を呼んでいるわけです。
電力会社が九電力に分割された当時の総理は吉田茂総理でございましたけれども、まさにそういう時代状況というものを考えますと、総理の手中に十四枚のカードがありまして、それをどう使っていくかというふうな問題ではなかろうかというのが専らのうわさであるわけでございますが、この新会社の社長人事につきまして総理はどういうふうにお考えになるのか。新会社の社長人事というのがいわゆる新しい会社のイメージにもつながるわけですね。あるいは、企業は人なりと言われておりまして、その人をどう選ぶかによりまして性格が決定するという重大な側面があるわけでございますが、この新会社にふさわしくやはり民間から登用するというお考えなのか、あるいは、国鉄のことはやはり国鉄に今いる方が一番よく知っているのだから、国鉄の人から新会社の社長を選ぶというお考えなのか、こういう感触でございますけれども、総理はどのように判断されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/193
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194・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 そのことは、法律によりまして設立準備委員会及び創立総会で決まることで、我々政府がそういうふうに関知する問題ではない、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/194
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195・遠藤和良
○遠藤(和)委員 運輸大臣には直接設立委員を任命をしたりあるいは社長人事に対してこれを認可する権限があるわけでございますけれども、運輸大臣はどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/195
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196・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 むしろ具体的に云々ということをコメントする方が不見識だと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/196
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197・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理もこの間若干この委員会でお話しになりましたけれども、でき得れば民間人の方が新しい会社にはふさわしいのではないかというふうな御発言があったような感じがいたしますが、その辺はどうですか。確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/197
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198・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 これは東海会社について公明党の先生から執拗にどういう人が選ばれるかという御質問がありまして、それでいろいろ誘導質問もございましたが、私は、民間会社をつくるのですから民間的手法、民間的経営に長じた方あるいは地元に密着して信用のある人、そういう方々が入るのがやはり常識的でしょう、そういうふうに申し上げました。これは一般論として申し上げたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/198
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199・遠藤和良
○遠藤(和)委員 すると、今もその考え方は変わっていないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/199
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200・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 一般論としては変わっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/200
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201・遠藤和良
○遠藤(和)委員 新聞ではかなり固有名詞が出てまいりまして、大分言われているようでございますが、この問題は大変微妙な問題でもございますので、この程度にとどめておきたいと思います。
委員会で一番焦点になってまいりましたのが国鉄の用地の処分の問題でございます。この用地につきましていろいろな議論があったわけでございますが、ここで私は、法律に沿って若干考えてみたいと思うわけでございます。
清算事業団法の第三十条でございますけれども土地の処分の方法、「事業団は、その所有する土地の譲渡、貸付けその他の処分に関する契約を締結しようとする場合には、その処分の公正かつ適切な実施を確保するため、一般競争入札の方法に準じた方法その他の運輸省令で定める方法によらなければならない。」と条文にあるわけでございます。この「運輸省令で定める方法」というのは随意契約を指していると理解するわけですが、ただいまのところどういうふうな運輸省令を考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/201
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202・林淳司
○林政府委員 ただいまの清算事業団法三十条の運輸省令でございますが、まだ省令という形にはなっておりませんが、現在実質的に考えておりますことは、「土地の処分に関する契約の締結の方法は、一般競争入札の方法に準じた方法によるものとすること。ただし、次に掲げる場合には、随意契約によることができるものとすること。」ということで、例えば「契約が、国地方公共団体等に公共用、公用等の用に供するため必要な土地を譲渡することを目的とする場合」、そのほかいろいろございますが、そういう事項を現在予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/202
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203・遠藤和良
○遠藤(和)委員 随分簡単に申してくれましたけれども、六つ全部言ってもらいたかったのです。時間がないので私の方から申しますと、「土地の処分に関する契約の締結の方法は、一般競争入札の方法に準じた方法によるものとすること。ただし、次に掲げる場合には、随意契約によることができるものとすること。
(一) 契約が、国、地方公共団体等に公共用、公用等の用に供するため必要な土地を譲渡することを目的とする場合 (二) 一般競争入札の方法に準じた方法により公告を行つても入札者がない場合であつて、予定価格以上の価格で契約を締結するとき。 (三) 再度の入札に対しても落札者がない場合であつて、予定価格以上の価格で契約を締結するとき。 (四) 落札者が契約を結ばない場合であつて、落札金額以上の価格で契約を締結するとき。 (五) 貸付契約の内容が法第一条の目的を妨げない場合であつて、貸付期間が一年を超えないとき。 (六) 契約が売却を目的とする場合であつてその予定価格が一定価格を超えないときその他の場合」こういうふうになっていると思いますが、正確ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/203
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204・林淳司
○林政府委員 現在私どもが検討をし、予定をしております内容は、ただいま先生が御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/204
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205・遠藤和良
○遠藤(和)委員 そこでお伺いしたいわけでございますが、(一)の「契約が、国地方公共団体等に公共用、公用等の用に供するため必要な土地を譲渡することを目的とする場合」と、等という字が二つあるわけでございますが、最初の「等」、それから二番目の「等」は具体的に何を指すのか、説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/205
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206・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 最初の、契約の相手方のところで申しております「等」というのは、例えば道路などの公共、公益事業の施行主体となるべき公的主体、利用目的につきましての「等」というのは、鉄道あるいは上下水道などの公益事業の用に供するため譲渡する場合というものを考えております。
今例示で申し上げましたが、あるいはそのほかにも想定し得るケースはあるのかもしれません。これは政省令を完全につくります段階、各省と調整を行う部分で決定をすることでありますが、今例示で申し上げましたようなものを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/206
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207・遠藤和良
○遠藤(和)委員 最初の「等」にいわゆる第三セクターというものは含まれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/207
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208・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 第三セクターという言葉で一つにくくられますと、私は、随意契約の対象としては適当ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/208
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209・遠藤和良
○遠藤(和)委員 いわゆる鉄道事業を行う第三セクターはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/209
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210・林淳司
○林政府委員 現在各地で鉄道事業を第三セクター方式でやっておりますが、そのような場合には公益事業という範疇に入れていいかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/210
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211・遠藤和良
○遠藤(和)委員 お伺いしますと、いわゆる第三セクターにも入るものと入らないものがあるというふうに理解できるわけですね。運輸大臣、ここが大変議論の分かれるところでございまして、私は、最終的にはこの運輸省令の中に等のようなあいまいな表現というのはなくすべきだ、こう考えるわけでございます。今、たたき台ですから「等」というのがあるのでしょうけれども、最終的に運輸省令というのは厳格でなければならない。それが弾力的に適用されたりするところに不正が起こる、こう思うわけでございまして、「等」という表現は削除すべきである、このように主張しますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/211
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212・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 例えば鉄道でありますとかあるいは道路でありますとか、土地収用法の対象となるような極めて公共性の高い施設の整備事業であってその施設をほかの場所につくれといっても無理ですよというようなものは、やはり私はこういうケースの中に想定せざるを得ない場合があると思うのです。ただ、最初に第三セクターとぽんとお聞きになりましたときに、第三セクターというくくりであれば対象になりませんと申し上げましたのは、まさに委員が御指摘のような批判を受けないためでありまして、これは今まさに案として各省との協議以前のものを資料として御提示をいたしておるわけでありますから、御注意の点は政省令作成の時点において十分私どもも頭に置いていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/212
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213・遠藤和良
○遠藤(和)委員 そうすると、最終的な省令の中には等の表現はないと理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/213
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214・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 これは私は、まさに法制局等との審議の中においてどういう条文の書き方がされるか、何とも保証はできません。そして、具体的例示として対象とすべきものが非常に幾つも何行にもわたるような場合に等という書き方がされないという、法制局の整理でそういうふうにならぬとは私もちょっとお約束はできませんけれども、今言われた問題意識については私は同様に考えますから、十分注意していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/214
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215・遠藤和良
○遠藤(和)委員 例示があれば全部例示すればいいのであって、私は等というふうなあいまいな表現が残っていれば、それは必ず拡大解釈されるものになるのではないか、こう懸念するわけでございます。
なぜそういうことを申し上げると申しますと、三千三百三十ヘクタール、これは長い間国鉄がつくってきた財産でございます。言いかえれば国民の財産でございます。それを一般競争入札でやる、これが絶対公平なやり方だ、私はこう思うわけでございますが、その中に随意契約の特例を設けるわけですね。その中に等というふうなあいまいな表現が残ると——あいまいにならない等というのはない。やはり等というのはあいまいなんです。ここのところを明快に、そういう理解の起こらないような方法を考えていただきたいと私は重ねて要求するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/215
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216・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私は法制の専門家ではございませんので、条文整理の結果がどうなるというお約束まではできません。ただ、委員が御指摘になる疑問点あるいは御心配の点というのは、私自身が先日来繰り返しここで御答弁を申し上げ、むしろ、随意契約の幅を広げろとおっしゃる御指摘に対しても、それは困るのですということを申し続けてきた点でありますから、十分私は委員の御主張を体して努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/216
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217・遠藤和良
○遠藤(和)委員 それでは、運輸大臣の見識に期待をいたしまして、別の問題でございます。
土地信託制度の導入につきまして本委員会でもいろいろと議論があったわけでございますが、運輸大臣は土地信託については否定的見解、総理はかなり前向きの発言があったわけでございます。この土地信託制度について閣内が統一見解を出すべきではないのか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、今の時点でもやはり総理と運輸大臣の間には意見の相違がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/217
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218・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 これは大変困った御質問でありまして、総理と私の間に意見に食い違いはないということを先般も私はここで申し上げました。ただ、あえてもう一度お尋ねでありましたならば、この答弁資料そのままを読み上げてお答えにかえたいと思います。
清算事業団の土地の処分に当たっては公開競争入札を基本として売却することとしている。
もちろん信託の方法により運用する方法もあるが、信託は通常長期間のものが多く、また、信託により得られる配当が清算事業団の債務の元利償還額に見合うか否かという問題があるので、現段階においては慎重にいろいろな方面から検討中である。
なお、具体的な処分に関しては清算事業団に置かれる資産処分審議会において検討することとしている。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/218
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219・遠藤和良
○遠藤(和)委員 土地信託については総理の方から発言があったわけでございますので、総理に確認だけしておきたいわけでございますが、土地信託の場合、その土地の所有権ですね、これはやはり清算事業団にあるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/219
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220・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 私が申し上げました趣旨は、まず何といっても国家の、国民の財産を処分するのですから、公正でなければならぬ、これが第一です。一切に優先して公正ということを我々大事に考えなければならぬ。それからもう一つ考えなければならぬのは、国鉄の借金を返すということであります。借金を返すということもまた清算事業団や我々が今やっておる大事業の大眼目でございまして、そのために我々は最大限の考慮を払わなければならぬ。これが二つの前提であります。
ただ、しかし、清算事業団においていろいろ処理をしていくという過程において、借金を返すという面からそう不便はない、不都合はない、あるいはまた公正という面からもそれほど不都合と見られるものは考えられない、そういうケースが信託を行う場合にもないとは限らぬかもしれぬ、将来のことを考えると例外的に。例えば、今相当金も余っておるようですから、十年、二十年、三十年ぐらいの間の計算を全部して、そしてその分の金を一括して払うかもしれぬ、清算事業団に信託という形で。そうすると相当の金額が入ってくるわけですね。そうすると、これはある意味においては分割で支払ってきたのと似たような場合もあり得る。そういうような場合も考えられないことはない。これからそれは、それらすべてケース・バイ・ケースで、今言った公正ということとそれから借金を払うということを優先させつつ、清算事業団で設置される審議会で一々洗ってみて、点検してみて、これがそういうものに当たればやってもいいのじゃないか。
ということは、一つは地価が暴騰するということを私は非常に恐れております。まあ暴騰ということもないでしょうけれども、ともかくこれが騰貴の誘因になるということはできるだけ避けたい、そういう考えもあるわけです。そうしますれば、信託という形でやった場合には所有権は清算事業団が持っているわけですから、移動しないわけで、そういう面から見て、地価抑制上一般競争入札でやる場合よりもあるいはより好ましき結果が出るかもしれない。そういうような面も考えまして、今言った諸原則というものを厳守しながらそういう可能性も残しておいた方がいいのではないか、そういうふうに考えて運輸省でも検討してもらっている、そういう考えでおるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/220
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221・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理、今かなり具体的にお話をいただいたわけでございますけれども、清算事業団というのは大体総理の心づもりでは何年ぐらい置いておく予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/221
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222・林淳司
○林政府委員 清算事業団にはいろいろな事業があるわけでございますが、基本的には債務を償還するということでございます。そのための手段として土地の売却、その土地を売却するに当たって付加価値を高めるための基盤整備というようなことをやるわけでありますが、その土地を売却し、基盤整備をしてこれを売却していくという仕事を完了するにはおおむね十年程度は少なくともかかるであろうというふうに現在見ております。しかし、それは長期債務の一部をそれで償還するわけでありまして、あとまだ債務償還は続きますので、したがって、清算事業団は十年たって直ちになくなるというものでは必ずしもない。その後の債務償還の中で清算事業団も存続をしていくということになるのではなかろうかと思います。
なお、清算事業団にはそのほかに限時的な仕事として、いわゆる職員の再就職対策というものをやるわけでございます。これは法律にも書いてありますように、三年で完了するという計画で進める予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/222
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223・遠藤和良
○遠藤(和)委員 今十年程度という目安があったわけでございますけれども、例えば土地の信託制度を導入したとしますと、土地の所有権というのは清算事業団にずっとあるわけですから、清算事業団というのは永久になくなることはできないことになるわけですね。総理のお話だと三十年で償還するんだ、こういう契約をすれば別でしょうけれども、この清算事業団というのはどういう性格のものかという性格の問題にもなるわけでございます。
ここで、土地信託制度というのは理論としては考えられるわけでございますが、清算事業団をいつまで置くのかというめどがなければ、これはやっておきますと土地の所有者というのは永久におらなくてはならないということになるわけでございまして、この辺の考え方を明確にするべきではないのか、土地信託制度を導入する前提として清算事業団の性格をどうするのかということをはっきりしなければならない、このように考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/223
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224・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 今総理御自身からも御答弁がありましたように、清算事業団が行わなければならない最大の目標は何かと言えば、最終的に国民に御負担を願わなければならなくなるかもしれない長期債務の額をできるだけ減少することであります。そしてそのためには、三千三百三十ヘクタールの用地の処分というものをできるだけ高値で売却をすることであります。しかもそれは、その売却そのものの作業が国民の目から見て公正と判断されるものでなければなりません。そして、総理からお話がありましたように、理論的には売却をするよりも有利な信託というものもあり得るわけでありますから、その可能性まで否定をしてしまうということはいかがなものかと私も思います。
ただ、信託ではありませんで、地方自治体から借りたいというお話があったことがありましたけれども、実はこれはその借地料その他、到底清算事業団の元利償還を償うには足りるものではございませんでした。それだけにこれは、最終的に資産処分審議会において十分御検討をいただくポイントでありますし、既に公明党からその用地の都市計画等々との調整についても御指摘をいただいておるわけでありまして、その仕組みについて十分考えてまいりたい、そのように考えております。
清算事業団そのものはおおむね十年程度をめどとして考えてきたものでありまして、その前提の中で資産処分審議会もさまざまな対応を考えてくれるものであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/224
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225・遠藤和良
○遠藤(和)委員 清算事業団を十年で解散するという前提に立てば、土地信託制度も十年が限度になるわけですね。そうでないと整合性がない話になりまして、清算事業団が十年で解散した後まだ清算事業団の土地が継続して残っているというのは、ではだれが管理するのかということになるわけでございまして、この辺の整合性を詰めなければならない、このように考えます。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/225
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226・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 ですから、清算事業団は、従来からここでも何回か申し上げてまいりましたが、そして今審議官から改めて申し上げましたが、おおむね十年程度というものを私どもは想定をしておるわけであります。ですから、貸借にいたしましてもあるいは信託にいたしましても、そうした前提を持って資産処分審議会が十分御検討いただくものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/226
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227・遠藤和良
○遠藤(和)委員 十分に納得できないわけでございますけれども、別の問題に移りたいと思います。
特定地方交通線の廃止に伴いまして生じた用地については、売却が困難な用地が多いようでございますが、売却できるものは多少あるのですか。ないとすればどのような活用とかあるいは処置を考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/227
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228・杉浦喬也
○杉浦説明員 今お話しのように、特定地方交通線の所在する場所は割合ローカルな地方でございますので、その売却につきましては割合に需要が少ないということはあろうかと思います。ただ、先ほどお話にございましたように、鉄道事業を経営する第三セクターあるいは当該地方公共団体が必要とする道路施設等々につきましてこれを譲渡する、あるいはその他もっと有効な利用方法はないかというような点を十分これから検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/228
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229・遠藤和良
○遠藤(和)委員 これは今回の三千三百三十ヘクタールの中には入っていない土地ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/229
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230・岡田宏
○岡田(宏)説明員 全く入っていないということではございませんけれども、売却困難用地ということで約四千ヘクタールの面積を別に資料としてお出ししてございますが、多くのものはそちらに入っているとお考えいただければ結構だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/230
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231・遠藤和良
○遠藤(和)委員 今このリストに載っていない土地で、いわゆる国鉄保有地の中で無償で貸し付けしている土地あるいは有償で貸し付けしている土地がかなりあると思いますけれども、この実態はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/231
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232・岡田宏
○岡田(宏)説明員 これも先般御提出申し上げました資料に挙げてございますけれども、無償でお貸ししてあります土地は約三万件でございます。面積は二百五十八ヘクタールということでございます。これらの無償貸し付けの目的は、道路でございますとかあるいは水道でございますとか警察官の派出所でございますとか公衆便所でございますとか消防施設でございますとか、旅客営業上必要欠くべからざるものであるということで国、地方公共団体、それからもう一つ電話ボックスということでNTT、そういったものを相手方として無償貸し付けをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/232
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233・遠藤和良
○遠藤(和)委員 無償貸し付けをしている土地につきましては、今公社でございますから、その性格上無償貸し付けになっていると思うのですが、今度株式会社になりますと、株式会社の土地を無償で貸し付けるのはいかがなものか、こういう議論が成り立つと思うのですが、この二万九千六百七十カ所でございますか、これについては例えば払い下げをするあるいは賃貸料を取る、こういうふうな考え方なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/233
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234・杉浦喬也
○杉浦説明員 新しく民営鉄道になる場合に参考になりますのは、現在私鉄がどうやっているかということでございまして、私鉄の場合も、調べますと、先ほど申し上げましたような施設については無償で貸している例がございます。そういう点も踏まえまして、これからどういうふうにしたらいいか、本当に必要なものはやはり無償かなという感じもいたしますが、これから十分検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/234
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235・遠藤和良
○遠藤(和)委員 それから、昭和五十六年度以降、既に売却した土地がかなりあると思いますが、この実態はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/235
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236・杉浦喬也
○杉浦説明員 ただいま数字をちょっと調べておりますが、大体毎年予算ではここ数年間千五百億、千六百億というような資産売却の予定にしておりますので、そうした目標をおおむね達成をしておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/236
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237・岡田宏
○岡田(宏)説明員 売却をいたしました土地の面積でございますが、五十六年度百八十一万五千平方メートル、五十七年度百六十一万八千平方メートル、五十八年度二百七十六万九千平方メートル、五十九年度二百四十一万七千平方メートル、六十年度三百六十一万九千平方メートルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/237
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238・遠藤和良
○遠藤(和)委員 その土地の中でいわゆる随意契約で売却処分したところ、これはかなりありますね。五十八年度以降で大きいところで結構でございますが、例えば三千平方メートル以上ぐらいの土地というと大体どのぐらいの件数になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/238
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239・岡田宏
○岡田(宏)説明員 今、先生御指摘の三千平方メール以上の随意契約の土地の面積につきましては、数字をちょっと調べておりますが、かなりの件数随意契約で売却しているものがあるということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/239
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240・遠藤和良
○遠藤(和)委員 私、個々のリストをいただいているわけでございますが、売却価格まで入ったリストでございますけれども、計算をいたしてみますと、五十八年度に地方自治体に随意契約で売却した件数は七十件、金額は百八十億二百八十九万円、土地開発公社等に売却した件数は三十八件、金額は二十一億八千二百四十万円。五十九年度は、地方自治体に売却した件数七十三件、金額百八十億六千六百三十万円、土地開発公社等に売却した件数二十三件、金額十五億四千五百二十万円。六十年度は、地方自治体に九十九件、金額二百八十億三千九百五十万円、土地開発公社等には二十四件、金額十一億四百五十万円。この三年度の合計が地方自治体に二百四十二件、金額六百四十一億八百六十九万円、土地開発公社等には八十五件、金額四十八億三千二百十万円、総合計三百二十七件、六百八十九億四千七十九万円でございますが、間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/240
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241・岡田宏
○岡田(宏)説明員 先生に提出いたしました資料のとおり、今おっしゃったとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/241
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242・遠藤和良
○遠藤(和)委員 そこで、私は、先般来新聞等で随意契約された土地が不正に転売されている事実があるというふうなお話があったわけでございますが、こういった疑惑を解く意味でもこの三百二十七件について追跡調査をすべきではないか、このように考えますが、大臣はどういうふうに考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/242
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243・杉浦喬也
○杉浦説明員 転売の実例が数件ありましたので、今厳格にそれを実施するようにいたしておりますが、今先生がおっしゃいましたようにこれは十分に調査をしてまいりたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/243
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244・遠藤和良
○遠藤(和)委員 調査した結果は国会に報告していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/244
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245・杉浦喬也
○杉浦説明員 必要な数字は御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/245
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246・遠藤和良
○遠藤(和)委員 運輸大臣にお伺いしますけれども、この随意契約された後、不正に転売されたといったことを防ぐ意味でいろいろと検討されていると思います。例えば国有財産の処分より厳しくしたいという御発言もありました。それから、期間を五年ではなくて十年ぐらいにしたいとか、あるいは違約金だけではなくて払い戻しを明文化するとかいうふうないろいろなお話があったわけでございますが、この法案の審議中にそういった成案を得ることはできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/246
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247・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私どもとしてはできるだけ早くそうした成案を得たいと考えておりますけれども、いかんせんなかなか厄介な法律上の問題が幾つかあります。例えば善意の第三者に売却されてしまっていた場合、取り戻しの条項をつけておきましてもこれは効果的に働かないといったような問題がありまして、今少々難渋いたしております。今いつという点につきましては、多少時間のゆとりをちょうだいいたしたい、そのように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/247
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248・遠藤和良
○遠藤(和)委員 事情はよくわかるわけでございますが、やはり法案の審議中あるいは法案が成立するまでにはある程度めどをつけていただかないと、これは法案の審議にもかかわる問題だと私は考えるわけでございますので、御努力を要望しておきたいと思います。
それから、用地につきましては以上にしておきまして、経営安定基金のことでございますけれども、今回、再建監理委員会の案よりも増額されて三島に経営安定基金を設置することが決まったわけでございますが、運輸大臣この経営安定基金というのは現金でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/248
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249・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 三島基金の額を監理委員会の試算に比べて増額をいたしたことは事実御指摘のとおりであります。実はこれは六十年度までの輸送実績を基礎に予測をしてみましたところ、北海道会社については実はやや減少ぎみにある、四国会社はほぼ同じ、九州会社については若干の増加というようなことが出てまいりまして、こうした営業収入もこうした需要動向を反映しながら試算をいたしました。そうしてまた、営業経費について必要最小限のものを積み上げにより算定しましたところ、実は監理委員会の試算に比べて相当な増額となりましたこともあって、営業経費が三会社合わせますと九十億円程度増加するといったような見込みも出てまいりました。
そうした状況を踏まえてこうした方式をとったわけでありますが、これはその現金をぽんと積むのではございませんで、法律的には改革法案の第十二条第二項及び会社法の附則第七条一項に規定するとおり、会社の発足当初に国鉄が債務を負担し清算事業団がその償還及び利払いを行っていく、また会社は会社法の十二条一項に規定するとおり、国鉄に対する債権の額、すなわち元本部分の額を基金として管理をしていくという形になります。これは幾ら何でも発足当時一兆一千八百億円の現金を用意しましても、これはちょっと現実的ではないのではなかろうか。また、むしろ会社が経営上直ちに必要とする資金というのは元本部分の資金でもなく、その果実である利子部分の資金であることから、債権という形で基金を設けることにしたわけであります。その現ナマを置くというのはちょっと私は現実性がないように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/249
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250・遠藤和良
○遠藤(和)委員 たしか再建監理委員会のお考えは現金という考え方でなかったのかと判断するわけでございます。例えば四国の例で考えますと、基金の総額は一千九百二十億円でございますね。それを六十二年度、六十三年度は過去十年間の国債の利払いの平均ということで、七・五%の利息百四十四億円が来るわけですね。それから、六十四年度以降は元利均等払いで三百二十億円ずつ来る。七十二年度にいわゆるきちっとした基金の形になる、こういうことだと理解しておりますが、この理解で間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/250
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251・林淳司
○林政府委員 先ほど先生おっしゃいました監理委員会の方も、やはり分割払い債務ということでございます。今回、政府の方で考えておりますのは、十年間の分割払いと申しますか、十年間で元本を最終的に造成させる。その支払い方法としては、最初二年間は据え置きまして、あと八年間で元利均等償還方式でこれを三島会社の方に償還するわけでございます。したがいまして、最初に現金を積む場合には、これの七・五%の運用というものは三島の会社の方に行くわけです。ところが、最初二年間据え置きということは、これは七・五%の金利相当分、これを清算事業団が丸々会社の方に渡すという形になります。いわばその運用責任が清算事業団の方にあると申しますか、三島会社の方にはないということになります。
その後三年目から元利均等償還方式でございますから、最初は元本は非常に少ない、だんだん元本がふえていくということで、次第にその元本の運用責任が三島会社の方に生じてくる。かなりの、最初のうちは七・五%の運用についてはこれは会社の方はその責任を持たないでも、いわば清算事業団がそれを保証しておるという形でございます。先ほどの先生御指摘の四国会社についても、そういう方式で毎年いわゆるその基金の運用益というものを今の償還方式で計上しておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/251
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252・遠藤和良
○遠藤(和)委員 そうしますと、新会社が発足するであろうと言われております六十二年四月一日には、これは三島基金としてお金は一銭も行かないわけでございますね。いわゆる清算事業団に対する債権として基金に相当する額の紙切れが一枚行く、こういうふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/252
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253・林淳司
○林政府委員 いわゆる分割払いを約束した債務でございますから、したがって、国鉄から例えば四国会社に最終的に設定すべき基金額についてのいわば証券を出すわけですね。したがいまして、紙は——紙と申しますか、それに対して当然国鉄の債務を引き継いだ清算事業団はそれの利払い及び償還義務を負うわけでありますから、したがって、その基金全額に対する利子相当分は丸々四国会社に清算事業団から支払われるということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/253
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254・遠藤和良
○遠藤(和)委員 証券というのは紙でございますからね。紙切れが行くわけですよね。現金は一銭も行かないわけですね。そうしますと、この会社法の第十二条、例えば三項「基金は、取り崩してはならない。」とあるのだけれども、取り崩す基金が一銭も来てないのですね。紙切れ一枚で取り崩すことはできないのですね。それから第五項ですね、「北海道旅客会社等は、確実かつ有利な方法により基金を運用しなければならない。」とあるわけでございますが、実際に六十二年度、六十三年度というのは基金は来ないわけです。しかも、運用する会社が民間会社になって意欲満々で運用したいと思いましても、その運用分の金利もこれはないわけですね。これは清算事業団から全部七・五%で来るわけですから、どうもここに書いてあることがそらぞらしく思えるわけでございますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/254
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255・林淳司
○林政府委員 これは、国鉄と例えば四国会社との間の債権債務関係でございますから、約定に従って完全に元利を払っていかなければならぬものであります。したがいまして、その初年度は、先ほど申しましたように二年据え置きますのでもちろん元本部分は参りませんけれども、その元本全額の利子は完全に支払われるわけでありまして、それでもっていわゆる営業赤字は完全に消えて、かつ、営業収入の一%程度の利益が出る、こういう計算になるわけであります。したがいまして、先ほど申しましたように、その後元本が逐次十年間の間にこれが蓄積されていくわけでありますが、それについては会社の方で自由な運用がその後行われる。ただし、その七・五%の、金利情勢等もございますけれども、それだけの運用責任はまた逆に言えば会社の方に発生する、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/255
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256・遠藤和良
○遠藤(和)委員 それはよく理解をしている上でお聞きしているわけでございますけれども、何か私たちの理解は、三島に対しては経営安定基金を出すんだ、そしてその基金によって会社は運用益を赤字の補てんに充てなさいというふうに額面どおり受け取っておりましたら、実際は現金は一銭も来なくて紙切れだけ来る、こういう形になるわけでございまして、何か自分の娘を嫁にやるのに、持参金がないから紙切れだけ持って、借金の証文を持たして分離さしたような感じがするわけでございますが、そういう感じはいたしませんか。総理どうですか。
〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/256
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257・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 ちょっと本当に全く私の予測しなかった角度からの御質問でありますが、仮にその一兆一千八百億という金額が現金という形で各会社に渡されたといたします。これはまともにそれぞれの会社の手持ちする現金でありますから、金利の変動の影響を受けるでありましょう。その他の資産価値の変動というものも、その投資先によっては生ずるかもしれません。
今御論議をいただいております方式は、少なくとも三島会社の経営というものが安定的に遂行し得る、しかもその努力によって一定の利益を計上できる仕組みとして、むしろ私は、非常に不安定な、当初現金を渡され、いわば荒れ野にほうり出されるようなやり方よりも安定度が増す仕組みではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/257
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258・遠藤和良
○遠藤(和)委員 そうしますと、現金を渡すと心配だから利子の分はちゃんと親が面倒見るから、それが親心だ、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/258
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259・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 親心なんて僣越なことを申し上げるつもりはありません。しかし、その三島会社というものについて、当委員会が始まりましてからも、従来からもいろいろな角度からの心配をいただいております。そうした中で安定的にこの基金が運用されることの方がより望ましいのではなかろうか、本当にそう思う、私はそう申し上げているだけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/259
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260・遠藤和良
○遠藤(和)委員 確かに金利七・五%というものを会社が運用していく大変難しい情勢があるということは理解をいたします。しかし、新会社はもう完全に民間会社になるんだから生い立っていけというふうな感じで受け取っておりますと、どうもそうではないというふうな感じもありましたものですから、若干御質問をさしていただいたわけでございますが、まあ十年たったら基金の形になる、これは私も理解をするところでございますが、この先ほども読み上げました会社法第十二条の第五項に「確実かつ有利な方法により基金を運用しなければならない。」という条文があるわけでございますが、この「確実かつ有利な方法」というのは、具体的にはいかなるものを想定しておるのか。確実というのは例えば元本保証という意味であるのか、株式については株式を取得するというふうなことはこの基金で運用できるのかどうか。この辺はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/260
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261・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 私どもの立場から申し上げますならば、三島会社の基金そのものがその運用益によって損失を補てんしようという性格のものでありますから、御指摘のとおり運用の結果、元本部分が減少してしまうというような事態を生ずることは、これは本当に適当ではないと思います。ただ、私は、むしろその株式という方法につきましても、各種の株式の中に、極めて投機性の高い不安定な危険度の高いものもありますが、非常に安定的に収益性の高いものもあるわけでありますから、これを一概に否定をするという考え方をとる必要はないのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/261
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262・遠藤和良
○遠藤(和)委員 会社法第十条に中小企業者への配慮事項というのがありますが、この法律の条文を読んでみますと、いわゆる中小企業分野調整法よりかなり厳しい表現になっておりますけれども、これがこの条文に入ったいきさつ並びに厳しくなっている理由等の説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/262
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263・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 運輸大臣になります以前、党の行財政調査会長としてこの問題に取り組んでおりました当時、例えば中小企業団体でありますとかその他から、むしろ国鉄が民営化をする過程において、自分たちの事業分野に進出をすることによって自分たちの生活が脅かされるのではないかという声が随分出てきた時期がございます。
国鉄改革に伴って設立される旅客会社、また貨物会社、これは御承知のとおり事業範囲というものは限定せず、鉄道事業以外の事業についても原則として自由に行えるように措置しております。しかし、やはりこれらの会社はいずれも大変規模の大きな特殊会社として発足をするわけでありますし、しかも、大量の利用者が集散する駅というものを所有しておりますために、営もうとする事業の規模のいかんによっては周辺地域において同種の事業を営む中小企業者にとって極めて大きな影響を与えるおそれもなしとは言えません。このため、会社がそれぞれの地域において営む事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げないようにという観点から、こうした条文を用意したわけであります。
そして、今御指摘のように、特に強い配慮義務を課しましたのは、まさに旅客会社、貨物会社というものがいずれも大変規模の大きな特殊会社であるということ、しかも駅というものを持ち、過渡的に経過的に他の事業者との調整を図る必要等に特に留意すべし、そうした点からこうしたものを用意いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/263
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264・遠藤和良
○遠藤(和)委員 きょうは通産大臣お留守のようでございまして、中小企業庁長官にお越し願っておると思いますが、いらっしゃっていますか。——この条文については、最初は運輸省はどうも渋っていたんだけれども、通産省からきつい要望があって、閣議決定の二十四時間前に入ったとかいう報道もあるわけでございますが、中小企業庁長官はこの条文についてどういうふうな解釈をしておりますか。
〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/264
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265・岩崎八男
○岩崎政府委員 新会社があらゆる可能性を追求してその経営体質の強化に努力される、これは十分理解できるところでございます。ただ、いろいろな意味において不利がございます中小企業のその事業分野を不当に妨げたりあるいはその利益を不当に侵害したりすることについては、別途いろいろな法律と同様に十分配慮する必要が政策的にもございます。そういう意味において、今運輸大臣から御発言がございましたように、この法律の論議の中で、いろいろな中小企業者あるいは中小企業団体からその面の懸念の表明がございました。そこで特にこういう配慮事項をお入れいただくということで運輸省との間に合意が成り立ったものでございます。
ただ、生きた経済でございますので、こういうことはいけないとか、ここまでが許されるとか、そういうことをあらかじめ一律に設定するということはやはり不適当だと思いますし、すべてこういうものの調整は、基本は当事者同士が十分な話し合いと理解のもとに解決をしていただく、こういうことが基本であるだろうというふうに思っておりまして、本法においても運輸省の適切な御指導のもとに、その趣旨に従って活動いただけるだろうと期待しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/265
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266・遠藤和良
○遠藤(和)委員 この条項のいわゆる適用基準というのがいま一つ明確ではない。当事者同士でお話し合いをするということになろうかと思いますけれども、例えば東京駅の丸の内に書店をつくるという計画がありましたですね。ブックス・シグナルという名前ですか。国鉄さんの方はかなり準備を進めてきたわけでございますけれども、地元商店街の反発もあって、いまだに開店のできない状態である。こういった問題が今後も起こる可能性は十分にあるわけでございます。こういった、例えば地元でお話し合いができればいいわけでございますが、それが暗礁に乗り上げたといった場合、これはやはり運輸省と通産省でお話し合いをしてお決めになるということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/266
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267・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 これは運輸省の立場からだけ物を申しますならば、国鉄改革後における鉄道事業の適切かつ健全な運営に悪影響を与えない範囲内で自由自在な事業展開ができるという状態を認めることが一番安易であります。しかし、個々の事業を行おうとする場合に、御承知のように会社法の十条で、地元中小企業者の事業活動を不当に妨げ、その利益を不当に侵害することのないよう会社に配慮させるべく十分指導していくということを我々は考えるわけであります。ですから、具体的に個別のケースを想定いたしますと、私は想定するケースによって随分お答えをする中身も変わろうかと思います。
ただ、私どもの立場からいえば、例えば会社法第一条三項の認可をいたします際に、その事業を行おうとするときには、この規定の趣旨に沿って周辺の中小企業者との間に著しい悪影響を及ぼさないようにあらかじめ関係者と十分調整を図るように指導していくということになろうかと思います。
また、大企業者としてのそれぞれの会社が新たな分野に進出をしてまいります場合の進出計画についての調査、調整の申し出あるいは主務大臣の勧告等々の問題は、これは分野調整法など中小企業関係法令に定められておるわけでありまして、新会社も大企業者としてこれらの法令の適用を受けることになる、私はそのように考えております。
ですから、これは実は個別ケースを想定し出しますと切りのない応用問題の連続でありまして、基本原則としては、今考えたようなことを頭の中に描いておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/267
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268・遠藤和良
○遠藤(和)委員 別の問題でございますけれども、十一月にいわゆる国鉄最後のダイヤ改正というのが行われるわけでございます。かなり今国鉄の職員の数が減っているわけでございますけれども、列車はふえた、ふやすことができた。いろいろな御苦労があったと思うわけでございますが、このダイヤ改正によりまして、職員の労働時間とか労働条件に変化はないか、今までなぜできなかったのか。こういう問題も含めてちょっと総裁にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/268
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269・杉浦喬也
○杉浦説明員 十一月のダイヤ改正でございますが、約二万五千人の要員の合理化ということに相なるわけであります。これにつきましては、今までも労使交渉でその案件を処理してまいっておりますが、駅、車掌区、運転関係それぞれのところで、作業体制を見直すというようなことによりましてそうした合理化の要員を生み出そうとしておるわけでございます。ただ、具体的な施策を実行しようとする場合に、従来労使間で持っております労働時間等々の労働条件の基本的な枠組みは変えないということで可能でございます。したがいまして、そうした既にある労使間のルールによりましてこれを実行するということにしておるわけでございます。
どうしてそのような合理化が可能であり、今までどうしてできなかったかというような御疑問でございますが、社外的な一般環境といたしましては、ローカルの都市圏を含めまして大変鉄道に対する見直し論といいますか、サービスへの要求というものがバックグラウンドで、ございます。それに対応しまして、今回のようなダイヤ改正で大いにサービスを提供したかった、これは長い懸案でございました。なかなかできなかった理由といたしましては、やはり労使関係といいますか、乗務員等のいわば働き度がなかなかこれを効率よくできなかったという点がございます。近年に至りまして、そうした関係の合理化事案もかなりスムーズにこれを展開することができまして、労働のいわば働き度合いというものがかなり向上したということが第一点でございます。
それから、新しく新幹線を開業するとか、あるいは貨物列車を需要の削減に対応いたしまして大分削っております。そういうところから線路容量が大分あいたわけでございまして、そうしたあいたところへ、ローカル線を含めました旅客列車の増発が可能となったということ、あるいはまた、増発する車両につきましても、余り長大なものでなしに、編成を縮めまして、そうした編成を縮めた余った車両を増発分に使うというような、あれこれいろいろとやりくり算段をいたしまして、経費はそれほどふやさないで効果を上げようとしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/269
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270・遠藤和良
○遠藤(和)委員 ダイヤと運賃についてお伺いしたいわけでございますが、分割ということから国民の間で大変心配をしていることの一つに、いわゆる旅客会社が六つあります、それから貨物会社が一つできるわけでございますが、この各社間の利害が対立をいたしまして有効な全国ネットワークのダイヤが組めないのではないかという心配がありますね。そういった場合、そのダイヤの最終的な調整というのはどこの機関で行うのか、これは国鉄に聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/270
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271・杉浦喬也
○杉浦説明員 今回の分割の基本的な考え方としまして、旅客流動の面で割合に一社内で完結度合いが高いというような仕組みをとったことがバックグラウンドで一つダイヤ問題として言えるかと思います。それにいたしましても、各会社をまたがります列車運行が必要になってまいりますが、基本的にはこうした各会社またがりの列車というものは割合にお客さんに評判のいい、収益性が高い、そういう列車でございます。したがいまして、これは各社間とも今後ともそうした列車を維持し、さらに発展しよう、こういう意欲が出てくるであろうというふうに思います。
そうした場合に、各社間の調整でございますが、これはもうそうした基本的には各社やりたいという気持ちがある、そういう列車でございますから、各社間におきまして例えばダイヤの調整会議等を持つことによりまして適切な対応が可能であり、あるいは各列車の設定をどういうように優先度合いをつけるかというようなルールなどもつくりまして、各社間で話し合いをすることによってスムーズな長距離列車の設定、運行が可能になるというふうに私ども思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/271
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272・遠藤和良
○遠藤(和)委員 若干技術的な問題でございますけれども、運賃計算の手法ですね、これについては従来より割り増しになるのではないかという心配があるわけでございますが、通算制というのは維持されるわけですか。
それから、今国民の間に人気のありますいわゆる全国商品、フルムーンパス等の商品は今後も扱われるのかどうか、あるいは列車遅延による特急料金の払い戻し制度というのは維持できるのかどうか、あるいは全国一本の時刻表というのは今後も発売されるのかどうか、細かい問題でございますけれども、まとめてお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/272
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273・須田寛
○須田説明員 順番にお答えしてまいります。
まず第一の運賃でございますが、これは将来会社ごとに賃率がたとえ異なるようになりましたといたしましても、お客様がお乗りになります距離を通しまして通算運賃で計算をすることにしたい、かように考えております。したがいまして、遠距離逓減方式等は現在と同じように将来も適用してまいるというふうに考えて目下検討いたしておるところでございます。
それから第二番目でございますが、今御質問のございましたフルムーンあるいはナイスミディというふうな全国的な非常に御好評をいただいております企画商品類がございます。こういったものはやはり新しい会社の営業施策にとりましても重要なものでございますので、精算の方法等をこれからも工夫をいたしまして、従来同様に新しい会社もこれらのものを設定してまいれるようにこれも検討したい、かように考えておるところでございます。
それから時刻表でございます。これは現在約三社ばかりの出版社から全国版の時刻表が出ているわけでございますが、新しい会社になりましても全国的な列車は引き続き運行されますし、それから全国的な企画商品等も今申し上げましたように設定をいたしますので、これにつきましても従来どおりその出版社におきまして発行されるもの、かように考えておりますので、今までどおり御利用いただけるもの、かように考えております。
それから特急料金の払い戻しでございますが、これは現在、特急の場合は二時間おくれました場合に払い戻しをするということを約款上取り決めておるわけでございますが、こういうものはお客様へのサービス上各会社が同じ取り扱いをすることが適当だと考えております。したがいまして、会社の発足に当たりまして、協定によりまして共通約款のようなものをつくりまして今の制度をそのまま維持いたしまして、会社ごとに取り扱いが異ならないように考えて、後の清算の問題等は適当に処理をいたしますが、そういうふうなことでお客様には御迷惑をかけないように処理をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/273
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274・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理にお伺いしたいわけでございますけれども、先週の土曜日に地方公聴会がございまして、私も四国に参りまして皆さんの御意見を拝聴してまいったわけでございますが、今回の分割・民営に賛成する方もあるいは反対する方も一様に同じ見解を持っていらっしゃったのは、四国の会社の経営の見通しでございます。大変四国会社の経営は厳しいものがある、こういう心配をしておりました。
そこで総理にお伺いしたいわけでございますが、地元では今回の分割・民営は四国会社にとっては地方交通線が次第に切られるのではないかという心配をしておるわけですね。あるいは運賃の格差がますます大きくなって割り増しの料金を払わなければならない、こういうふうに心配している方がたくさんいらっしゃるわけでございます。私、先日、本会議でも質問させていただいたわけでございますが、こういった心配は全く杞憂である、今回の分割・民営によって四国の会社は明るい未来に向かって新しくスタートできるのであって、地方交通線が廃止されるということはないんだ、むしろ現状のままいった方が地方交通線の廃止の心配がある、こういうふうに総理はお考えでございましょうか。四国に住む四百二十万の国民の皆さんに対して、総理は四国会社の将来に対して明るい展望を約束することができますかどうかを私はお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/274
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275・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 今回の六分割につきましては、各地域の旅客会社が経営安定できるように、そういうような公平な観点からいろいろな配慮をした六分割をやった次第でございます。そういうような観点を持ちまして安定基金も適当な額をちゃんと計算をしてつくったわけであり、また、新しくできる六会社はかなりの自由度を持って、民間的手法をもって経営を自由に腕前を振るえるような条件ができてくるわけでございます。そういうような観点からいたしますと、私は、四国は観光的にもあるいは産業的にもかなり無限大の可能性を秘めていると思います。現に本四架橋がもう着々とできておりまして、本州と変わらない地域になってくるわけでございます。そういう点を見ますと、かなりの財産も旅客会社は持っているとも思われますし、そういう将来の可能性を考えてみますと、四国の皆さん方が力を合わせて知恵を出してやれば前途洋々たるものがある、こう考えて確信しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/275
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276・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理の御発言を額面どおりに受けとめたいのでございますけれども、実態を申し上げますと大変厳しいものがあるわけですね。
例えば、四国の場合は、六十二年度以降輸送人キロはずっと減少いたします。それにもかかわらず運輸収入はふえております、見通しによりますと。それはなぜかというと、運賃と料金の支払い額が変化する、いわゆる運賃値上げがほかの五社に比べましてかなり高率になっているわけですね。大体この試算のもとになっているアップ率でございますが、北海道は六%、東日本は三%、東海は三%、西日本は四%、四国は六%、それから九州は五%という値上げになるわけでございますが、これは単年度でこれでございますから、ずっと積算をいたしますと、五年たつと四国と本州の各旅客会社との運賃格差というのは、一・〇六の五乗割る一・〇三の五乗でございますから、計算をしますと一・一五で一五%格差がつくわけです。それから、十年たつとどうなるかというと、今度は一・〇六の十乗割る一・〇三の十乗でございますので、これは一・三三で三割ぐらい割高の運賃になるわけでございます。大した差がないじゃないかとおっしゃるかもわかりませんけれども、これは大した差なんですね。四国は県民所得も低いわけでございます。にもかかわらず、本州から比べると三割も高い運賃を払わなければならない。こうなりますと、四国の会社の見通しは総理のおっしゃるようにバラ色ではないのではないかという心配がございます。
もう一つは、四国は大変基盤整備がおくれているわけでございます。総理御存じだと思いますけれども、複線というところが全体の三%しかありません。それから電化はゼロでございます。国鉄百十四年の歴史があるわけでございますけれども、四国に限って申しますと過小投資に過ぎてきたわけでございまして、こうした基盤がおくれている。したがって単線でございますから、ダイヤもそんなにダイナミックな大編成はできないわけですね。運賃は高い、こうなりますと、どうして明るい未来が開けるのか大変疑問になるわけでございますけれども、総理は、なおかつ明るい未来と確信されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/276
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277・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 これは実例で反論するようで大変恐縮でありますけれども、確かに今委員御指摘のように、今回の政府試算において賃金の上昇、物価の上昇等による経費の上昇を吸収するために六十二年度から六十六年度までの人キロ当たりの運賃、料金、年六%程度の上昇というものを見込んでおります。
しかし、逆に現在の国鉄でお考えをいただきたいわけでありますが、実は現在の国鉄の過去十年間の人キロ当たりの運賃、料金の支払い額の上昇率は年率約九%でありました。むしろ、分割後の四国会社のアップ率は現在の国鉄の過去十年のアップ率より低いのです。これは実績としてひとつお認めをいただきたいと思います。これは事実、本当に九%でありますから、六%想定という点からいうならば現在の国鉄の過去十年のアップ率が続くことを考えるなら、むしろ低くなっております。
また、四国の輸送力増強というものがおくれているという御指摘をいただいたわけでありますが、私の聞きましたところでは、現在主要なプロジェクトとして予讃本線の坂出—丸亀間の線増工事あるいは予讃本線高松—観音寺間、土讃本線多度津—琴平間の電化工事を行っており、電化工事については、坂出—多度津間を除く区間については六十一年度中に完成をする、その予定を報告を受けております。これから後、これらの継続する線増、電化工事のほかに、経営の体質改善投資としての踏切の近代化でありますとか、直営店舗関連事業関係等の投資をも見込んでおるわけでございまして、私どもとしては、もちろん、ある意味ではこれは新たに発足をする四国会社の経営者の経営の判断にもよることでありますけれども、分割後の企業というものが民間的手法を駆使しながら四国各県民の輿望にこたえるような努力をしてくれるものと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/277
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278・遠藤和良
○遠藤(和)委員 かなり楽観的なお話だと私は思うわけでございます。
きょうは後藤田長官にもお忙しい中、四国の代表として来ていただいております。若干質問をさせていただきたいわけでございますが、今四国に四国国鉄線整備促進期成会というのがございまして長官も顧問になっているのです、私もなっておりますけれども。大変四国の鉄道の先行きが不安であるというので陳情が来ているわけですね。例えば先ほどの経営安定基金を増額してほしい。あるいは設備投資に使えるお金というのが大変少ないわけですね。政府の試算を見てみますと、六十二年度、六十三年度、六十四年度、六十五年度、六十六年度、大体平均毎年輸送力の整備等に使える予算というのは四億円か五億円ぐらいのオーダーなんですね。今高松—徳島、あるいは高松—高知、高松—松山の幹線の複線化をするだけで約三千億円がかかる、こういうふうに言われておるわけでございますが、ぜひこの経営安定基金の増額とともに、こういった設備の近代化あるいは輸送力の増強等に使えるための基金というものを考えてはいただけないか、あるいは政府が特別の財源措置をしていただけないかという要望があるわけでございますが、後藤田官房長官はどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/278
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279・後藤田正晴
○後藤田国務大臣 遠藤さんおっしゃるように、四国会社の先行きについて、四国四県の県民の皆さんの中に非常な不安感があるということは否定はいたしません。したがいまして、政府としては、この六分割の際に当然のことながらそれらも実際は頭の中に置きまして、そして最大限の措置をしようということで、経営安定基金のようなものも置いてあるし、それから今の設備の話ですが、これなんかもあの当時から電化が一つもない、これは分割までにやってもらわなければならないとか、いろいろな御要望があって、政府としてはできる限りの措置をしようということで私はやっておると思います。
では、後は一体どうなるんだということになりますと、これは先ほど運輸大臣からお答えしておりましたように、やはり経営者の方の経営の方針あるいは努力、あるいはまた新会社に入る職員の気持ち、そしてまた何よりも、ああいった必ずしも道路その他もいいところじゃありませんし、四県の住民の人たちがみんなこの会社をひとつ育てていってやろう、今、東北地方でも第三セクターその他になっているのがありますね、あれなんかも、やはりその土地の人がその鉄道をかわいがってやろうということで立て直しができておると思うのですね。それで、今度の四国の会社は、別段売り飛ばすわけじゃないのですけれども、しかし、県民の皆さん方をこの鉄道を何とかひとつ守り立てていこうじゃないかといったような気持ちにどう持っていくかということも将来の経営に大きな役割を果たすのではないか、私はこう考えるわけでございます。したがって、遠藤さんのような御心配はみんな持っておりますから、お互いそういう気持ちでやれば、やりましょうや、そのことをひとつ申し上げておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/279
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280・遠藤和良
○遠藤(和)委員 何か責任をこちらにもいただいた感じでございますけれども、国鉄当局にお伺いしたいわけでございます。
六十三年の春にいよいよ本四備讃線が開通するわけでございますが、これは四国にとってはやはり夢でございまして、いよいよ本土と直結するということになります。ありがとうございます。
それで、これに備えましてどういうふうな商品を考えているか。地元からの要望は、例えば四国の四つの県都がありますが、高松、徳島、高知、松山から東京行きのブルートレインをつくってもらいたい。線路というのは、やはり私どもの感覚でいきますと、駅がある、その駅が東京まで続いているというのが夢でございまして、今まで四国は離島でございましたから、レールがつながっておらなかったわけですね。これをぜひ実現をしていただきたいという要望でございます。それから、県都から岡山行きの直通列車をつくってもらいたい、こういうお話もございますので、運輸大臣、この辺についての見通しはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/280
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281・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 余り全部四国の方にお客がとられてしまわないように、岡山としても防衛策を考えなければならないのかなと思いますが、本州—四国の架橋を考えた時点から四国側の御要望というものは私どもはしばしば承ってまいりました。また、そのお気持ちもわかっておるつもりであります。
基本的にはこれは分割後のそれぞれの会社の対応に属する分野でありますが、私も委員と同じような夢が描きたいものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/281
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282・杉浦喬也
○杉浦説明員 待望の本四備讃線の開通を間近に控えまして将来の大変明るい話題であろうかと思いますが、そうした面に対しまして国鉄の対応もいろんな角度から、今までと違った連絡船でないやり方、そうした面で十分に対応していきたい、その中にはブルートレインのようなものも含めまして十分検討したいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/282
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283・遠藤和良
○遠藤(和)委員 総理のおっしゃった明るい未来というのは、例えば今のような話ではないかと私は思うわけですね。やはり四国の県民の皆さんから、分割・民営した結果、具体的にどういうふうに変わったのかという材料にもなろうかと思います、こういった明るい話は。ぜひ総理にも特段の御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。答弁お願いできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/283
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284・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 大いに努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/284
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285・遠藤和良
○遠藤(和)委員 宇高連絡船というのが今あるわけでございますが、これは再建監理委員会のお話では廃止する、こういうお話になっているわけでございます。地元では、やはり宇高連絡船、この船舶事業というのは引き続いて継続をしたい、連絡船という形ではなくて、船舶として事業を継続したいという希望もあるようでございますが、この辺についてはどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/285
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286・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 宇高航路につきましては、本州四国連絡橋児島—坂出ルートが完成をした時点において原則として廃止する旨を昨年の十月十一日の閣議で決定をいたしております。再建監理委員会の答申には必ずしも廃止となっておりませんでしたが、昨年の閣議で決定をいたしております。これは新たに完成をいたします本四連絡架橋というものの性格から考え、同時に現在の宇高航路の運営実態から考えてみますと、新会社が連絡橋の完成後もこれらの航路を存続するだけの業務量があるとは考えられないといったようなことがポイントになったと思われます。
しかし、やはりこれ自身は、私はまさに連絡船航路としての使命は閣議決定のとおりであろうと思いますが、今委員の言われたような他の角度からということであれば、これは最終的には私は経営者の判断にまつ部分であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/286
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287・遠藤和良
○遠藤(和)委員 後藤田官房長官にもう一問お願いしたいわけでございます。
今、国鉄の四国総局では、いわゆる余剰人員が大体千人と言われておりまして、この方々の雇用先の確保に全力を挙げているわけでございます。先日、私も四国総局に行ってまいりまして総局長並びに担当の皆さんとお話をしたわけでございますが、国関係の雇用状況が余り思わしくないわけですね。ことしの九月一日現在でございますが、運輸省が九名、気象庁が四名、海上保安庁が一名、防衛庁が一名、文部省が七名、大蔵省が一名、労働省が五名、通産省が二名、農林水産省が三名、郵政省が一名、建設省が一名、裁判所が一名、合計三十六名というふうな数字でございました。やはり国が率先をしてこの問題についてかからないと、四国の場合は民間もそんなに大きい会社はないわけでございますね。その辺を官房長官としては特段の力を入れていくというお考えであろうかと思いますけれども、御決意のほどをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/287
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288・後藤田正晴
○後藤田国務大臣 おっしゃるように、四国だけでなしに、いわゆる余剰人員対策というのは政府は国鉄を含めて最大限の努力をして今日に至っておるわけでございますが、その中でもやはり国が率先してやらなければならぬということは仰せのとおりで、そういうつもりでやっております。
そういう観点に立って、全国的にも国家公務員のまだ採用申し出数が不十分でないかという批判があることも承知をいたしております。それらについては、九月の十二日でございましたか、分野別の計画なりやり方なりを閣議で決めまして、今精力的に詰めておる段階でございます。これは必ず目標数は達成できるというふうに考えておりますが、四国については仰せのように、たしか千名ぐらいのいわゆる余剰人員ですね、そのうち公的部門が五百名弱、四百六、七十人だったと思います。現時点では大体全体的に比較的順調に、消化といいますか仕事は進んでおるというふうに私は承知をいたしておりますが、細部の、今、何の役所がどうこうといったようなことは、係官からお答えをいたさせたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/288
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289・中島眞二
○中島(眞)政府委員 内閣の雇用対策本部の事務局でございますが、その後、四国におきます採用の申し出は出てまいっておりまして、ただいま官房長官からお話ございましたように、公的部門では約四百七十人の採用申し出数となっております。国と特殊法人など、いわゆる国の関係で約二百人、地方公共団体で約二百七十人でございます。このほかに国鉄関連企業で約三百人、それから一般産業界で約三百三十人ということでございまして、一千人を上回ります約一千百人の申し出となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/289
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290・遠藤和良
○遠藤(和)委員 官房長官にもう一問お願いしたいわけでございますが、先日の公聴会で、経営者の方からの意見でございますけれども、伸びる経営というのは三つの条件があるんだ。一つは、その事業が時代に合っているかどうか、それからもう一つは人を得ているかどうか、三つ目が金があるかどうか。これは、鉄道事業というのは時代に今のところ合っていないわけですね。問題は人でございますけれども、優秀な人を四国のような会社に優先的に配置していただければ四国の経営というのは見通しが明るくなる、こういうことでございました。
今、国鉄の職員の皆さん、特に優秀な方々に第一志望から第五志望ですか希望をとっているようでございますが、どうも四国というのは人気がありませんで、ほとんど希望する人がいないようでございます。この辺も、新会社の経営というものを考えながら、ある程度、これは政策的な配慮と申しましたらなんでございますけれども、その辺も勘案しながら新会社の設立というものを考えていかなくてはならないのではないか、このように考えるところでございますが、どのように御判断をされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/290
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291・後藤田正晴
○後藤田国務大臣 遠藤さんおっしゃるように、企業の将来性というのは、時代のニーズに合った仕事なのか、あるいは人材がどうなっているとかあるいは資金がどうなっているとか、こういったことであろうと思います。それから考えれば、四国の鉄道の将来性については、先ほど言ったようになかなか厳しい前途があるということは私は覚悟しなければならない。そのときにこれをペイするような会社にしなければならぬわけですから、計画としてはそれはできるということでやっておるわけですから、それにふさわしい人材を送り込んでやっていかなければならぬ。これは私がお答えするのではなくて、私はあなたと同じように、率直に言えば陳情する側かもしれません。その点についてのお答えは、ひとつ国鉄総裁の方からお願いをいたしたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/291
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292・杉浦喬也
○杉浦説明員 私の立場からまだ今の御質問にお答えする能力はございませんけれども、御趣旨を体しまして、国鉄職員、優秀な人間が多いわけでございますが、立派な鉄道になるように配置されることを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/292
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293・遠藤和良
○遠藤(和)委員 官房長官、どうもありがとうございました。
運輸大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、いわゆる四国というのは事故の多いところでございまして、大災害が起こるとたちまち経営に支障を来すのではないか、こういう心配があるわけです。それで公聴会等でも御意見があったわけでございますが、例えば災害に対する基金あるいは積立金のようなものを、旅客会社が連帯でと申しますか、つくっておいて、そして災害に対しては総合的な責任で行う、こういうふうにしていただかないと、経営規模の小さい四国においては大変厳しい事態に陥るのではないか、これまでは全国一本でございましたからそうした心配がなかったわけでございますが、この辺の考え方について何か工夫はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/293
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294・橋本龍太郎
○橋本国務大臣 提出をいたしております六十二年度の収支見通しの試算上、四国の災害対策費につきましては、災害発生時において早急に輸送が回復されるよう、過去の災害発生実績に基づいて所要の経費を修繕費等の中に組み込んでおります。現在の国鉄の体系でありますと、車両事故等に対応するための保険には加入をしていないわけでありますが、事故により車両及び建物に損害があった場合は、従来は修繕費、また死傷事故等がありました場合には、業務費の中の賠償費というもので対応をしてきておりました。今回、政府の収支見通しの試算をいたします場合、これらの経費を過去の実績に基づいて積算して物件費に織り込んでおりますから、基本的には事故等があった場合の措置は十分に講ぜられていると思います。
私は、保険的な考え方というのは一つの考え方だと思います。しかし、これは、最終的には経営者の判断にかかることでありますし、私が云々できる性格ではありませんけれども、私鉄における保険の加入状況でありますとか、新会社の経営状況等を考えた場合には、合理的な範囲での保険加入というものは可能であろうと私どもも考えます。必要に応じて、こうした制度の活用をも含めて事故の場合の措置についての対応を指導していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/294
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295・遠藤和良
○遠藤(和)委員 最後に、総理にお伺いしたいわけでございます。
今、新幹線整備計画があるわけでございますが、四国だけ全くの空白になっているわけでございます。今度の本四備讃線というのは新幹線の通るような規格になっておりまして、入り口はできているわけでございますが、今のところ構想がないわけでございます。大変に地元の熱意というのはあるわけでございますが、この四国の新幹線構想につきまして総理の所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/295
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296・中曽根康弘
○中曽根内閣総理大臣 御要望として承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/296
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297・遠藤和良
○遠藤(和)委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/297
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298・細田吉藏
○細田委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。
次回は明二十一日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後七時二十分散会
〔本号(その一)参照〕
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派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録
一、期日
昭和六十一年十月十八日(土)
二、場所
きょうさいサロン
三、意見を聴取した問題
日本国有鉄道改革法案(内閣提出)、旅客
鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に
関する法律案(内閣提出)、新幹線鉄道保
有機構法案(内閣提出)、日本国有鉄道清
算事業団法案(内閣提出)、日本国有鉄道
退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団
職員の再就職の促進に関する特別措置法案
(内閣提出)、鉄道事業法案(内閣提出)
、日本国有鉄道改革法等施行法案(内閣提
出)、地方税法及び国有資産等所在市町村
交付金及び納付金に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出)、日本鉄道株式
会社法案(伊藤茂君外八名提出)、日本国
有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に関
する法律案(伊藤茂君外八名提出)及び日
本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特
別措置法案(伊藤茂君外八名提出)につい
て
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 三塚 博君
鈴木 宗男君 関山 信之君
戸田 菊雄君 西中 清君
阿部 昭吾君 中島 武敏君
(2) 現地参加委員
町村 信孝君 小林 恒人君
(3) 現地参加議員
鳩山由紀夫君
(4) 政府側出席者
運輸大臣官房国
有鉄道再建総括
審議官 林 淳司君
日本国有鉄道常
務理事 川口 順啓君
(5) 意見陳述者
北海道大学経済
学部教授 小林 好宏君
北海道急行運輸
株式会社代表取
締役社長 皆川 文次君
北海道経済連合
会専務理事 佐々木 宣君
北海道商工連盟
専務理事 羽根田二郎君
北海道経営者協
会会長 武井 正直君
弁 護 士 佐藤 太勝君
────◇─────
午前十時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/298
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299・三塚博
○三塚座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会派遣委員団団長の三塚博でございます。私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。
この際、派遣委員を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、国鉄改革関連諸法案の審査を行っているところでございます。当委員会といたしましては、各法案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取いたしますため、御当地を初め高松市、福岡市におきましてこのような会議を催しておるところでございます。
本日、御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げるものであります。
まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会運営についての議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言をなさる方々は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをいただきたいと存じます。
次に、会議の順序につきまして申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
出席委員は、自由民主党の鈴木宗男君、日本社会党・護憲共同の戸田菊雄君、関山信之君、公明党・国民会議の西中清君、民社党・民主連合の阿部昭吾君、日本共産党・革新共同の中島武敏君、並びに現地参加委員として、自由民主党の町村信孝君、日本社会党・護憲共同の小林恒人君、以上であります。なお、現地参加議員として、自由民主党の鳩山由紀夫君が出席されております。
次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
北海道大学経済学部教授小林好宏君、北海道急行運輸株式会社代表取締役社長皆川文次君、北海道経済連合会専務理事佐々木宣君、北海道商工連盟専務理事羽根田二郎君、北海道経営者協会会長武井正直君、弁護士佐藤太勝君、以上の方々でございます。
それでは、小林好宏君から御意見をお述べいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/299
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300・小林好宏
○小林好宏君 小林でございます。私は、この法案に賛成する立場から意見を開陳させていただきたいと存じます。
私の意見は三つの点に分けられます。第一は、基本的に分割・民営化が望ましいと考える理由、第二は、分割・民営化の具体的方策、すなわちこの改革案に盛られた具体的な内容についての見解、第三は、北海道の立場で、地域経済の振興という視点から見てこの国鉄の民営化をどのようにとらえ、結びつけるかという問題であります。
第一の点についてまず申しますと、国鉄の現在の機構、制度的な枠組みのもとでは、元来事業体として合理的、効率的経営が不可能であるということをまず指摘しておかなければならないと思います。この場合に、確かに今の問題はこの膨大な累積赤字といった事態から生じているわけでありますけれども、しかしここで特に強調しておきたい点は、この公社という形態での事業の運営は、たとえ黒字であったとしてもそれが合理的であるという証明にはならないということであります。
昭和三十年代の末まで確かに国鉄は黒字でありました。その国鉄が黒字であったときには公社形態の不合理性が表面化しなかったということであって、当時もし民営であったならば、より望ましい成果を達成していたかもしれないのであります。もっとも、民営であれば独占体ではあり得なかったと思われます。他の複数の事業体による競争関係が成立していたかもしれないと思われますが、当時は、自動車も航空機も国鉄に対する代替的な輸送手段として競合する状態にはなかったわけであります。しかもその上、高度成長に基づく輸送需要の増加という状況のもとで、公社組織でも十分黒字を上げ不合理性を表面化させずに済んだわけであります。けれども、一たびモータリゼーションの進展、航空機の発達等によって自動車、航空機との競争にさらされるに至りまして、経営体としての弱点をさらすほかなかったわけであります。
現在の国鉄経営の最大の問題点は、設備投資、料金決定、給与の決定といった基本的事項についての自主的決定権を持たないという点であります。そのような状態のもとでは合理的経営を行うことは不可能であって、国鉄の経営形態、機構の抱えている弱点はまさにそこから発していると言うことができます。
もう一つの問題は、よく指摘されますように、肥大化した機構から発生しております。もちろん、通常の製造工業でも巨大規模の企業というのは存在するわけであります。しかし、鉄道事業の場合は、製造工業と違って地域との関係というのがもっと密接であります。すなわち、路線は全国くまなく敷かれているわけでありまして、その地域と密接な関係にあるわけであって、集権的な管理システムがもたらす欠陥というのは、鉄道事業の場合より大きいわけであります。地域を主体にした輸送体系、サービスの改善といった発想は、現在の国鉄の機構からは生まれてこないと思われるわけであります。ちょうど国鉄が国の制度の枠組みの中で自由な意思決定ができないのと同様に、地域の総局も国鉄本社の意思決定の枠組みの中で動かざるを得ず、地域の視点からの自主的な改革を進めるということが不可能であるわけであります。例えばダイヤの大幅な改善という問題一つをとっても、設備投資や補修といったこととも関連してくるわけであって、その設備投資やら補修やらといった決定自体が本社の意思決定のもとに制約されているというわけであります。地域の立場からベストな選択をしょうとしましても、本社の立場から見た制約のもとでは実行できないという場合が多いわけであります。
また、今回の例えば地方交通線の廃止をめぐる問題にしましても、全国一律の基準に従って廃止路線が決められるというようなやり方がとられるわけです。赤字路線を整理していくということはやむを得ないと思われますけれども、その選択基準は実は地域によってかなり異なっているということがあります。そうしたことも、現在の機構のもとでは全く形式的に処理されざるを得ないといったようなことが間々見られるわけであります。例えば赤字路線の整理といったような問題自体は、これはやむを得ない点はあるわけでございますが、いろいろな問題一つ一つとりましても、現行の、つまり全国一本化された国鉄という機構のもとで、またそれを管轄する運輸行政のもとで、地域からの発想というものがなかなか実行されないという問題点は間々見られるわけであります。
ところで、今回の国鉄改革をめぐりまして、民営には賛成だけれども分割には反対だという意見がしばしば聞かれます。しかし、私はあえて、民営化に先立って分割がより必要だとすらここで強調しておきたいと思います。
分割に反対する議論は、国鉄の果たすべき役割のうちの公共性という点を重視して、黒字路線で得た利益で赤字路線の赤字分をカバーするいわゆる内部補助ということが、北海道や四国などの地域の立場から見て望ましいという前提に立って展開されております。しかし、この議論には次の欠点があると思われます。内部補助に頼ることは、自主的経営改善の努力をえてして怠らしめる原因となるというのがまず第一点。そして、それよりもさらに重要なのは次の点であります。現在、国鉄の累積赤字は許容限度をはるかに超えていると思われますが、赤字の原因を除去していくことは避けられない、もしこの前提に立って考えますと、赤字路線から順に廃止していくほかはないということになります。もし分割せずに全国一本化した経営体として赤字問題に対処するとなれば、北海道や四国のかなりの路線を切り捨てていかざるを得なくなる。決して地方にとっては有利ではないわけであります。
現行の制度のもとでの北海道の鉄道は、一口に言って次のように特徴づけられると思います。それは、内部補助に依存する代償として自主性の発揮の可能性を放棄し、中央集権的な経営システムのもとで相対的に劣悪な設備等の条件、具体的には弱い軌道であるとか電化のおくれであるとか劣った車両であるとか、そうした相対的に劣悪な設備等の条件に甘んじていた。内部補助に依存する代償として、そういった条件に甘んじていたということであります。私は、改革の基本方針を北海道の立場で見た場合、内部補助を受ける権利を放棄するかわりに、十分に顧客を吸収し得る条件、すなわちスピードアップの可能な軌道の強化、電化、車両の改善等をスタート時点において整え、その上で純粋に私企業として他に依存せずやっていける、そういう改革案になっているかどうかが決め手であると考えておりました。その意味で、今回の改革案は基本的にはそのような考え方には立脚している、そう思うわけであります。
そこで次の問題すなわち改革案の具体的内容、特に新会社の経営の前提条件について検討してみたいと思うわけであります。
北海道が十四の線区を抱えたままで経営を行ったならば、このまま引き継いでいったならば、多分赤字になるであろうことは目に見えております。そこで、北海道では過去の赤字を継承しないこと、予想される赤字を補てんするものとして基金を割り当てること等の措置をとり、その上で私企業としてやっていけるという見通しのもとに案が出されているわけであります。そういう意味では、その基本的な考え方には賛成であります。しかし、これで十分かと言えば、確かに不安が残ります。顧客を現在よりもふやしていくこと、これからますます激化するバスとの競争に勝てること等が必要であります。
ところで、付言するならば、私は国鉄を維持存続させるために、例えばバス事業とか他の競合的な事業に制限を加えるというやり方は正しくはないと思います。今日の傾向というのは、基本的にはさまざまな規制を緩和していくわけで、原理的に言うならば、さまざまな競争者の参入あるいは代替的な競合的な他の手段の展開を妨げるべきではないと思うわけであります。ですから、究極的には、需要者の立場に立った場合に、需要者にとって選択可能な複数の代替的な手段があって、そういうもとでそれぞれの輸送手段がちょうど成り立ち得る、そういうバランスした状態が恐らく最も望ましいわけであります。では、そういう理想的な状態が実際可能かというと、これは確かに、例えば北海道のような限られた人口のもとでは非常に難しい問題であります。したがって、そういう理想的な状態に近づけるまでの途中の過程では各種の措置が必要になってくるであろうと思われます。例えば高速道路の整備計画であるとか、そういった問題は総合的な交通政策の中に位置づけて、どこから優先していくべきかといったことが考慮されなければいけないと思うわけであります。
ともかくもそういう問題があるわけでありますが、まず新会社のスタート時点において、これから激化するであろうバスとの競争に勝てること、さらに現在よりも顧客を引きつけることができること、そのための条件が必要であります。そのためには、一層スピードアップを図るとか、電化をするとか、そうした各種の方策が望まれるわけであります。それには膨大な設備投資が必要になります。北海道は路盤が弱いわけでありますが、その路盤の強化、軌道の強化、地方線は多かれ少なかれそういう傾向があるわけですが、とりわけ北海道は軌道の弱いところが非常に多い、そういう軌道の強化が必要になってまいります。現在、この改革案では、北海道で予想される赤字をカバーしていけるように最初から六千二百億の基金を割り当てるといった措置がとられているわけでありますが、その基金の運用では全く不足であろうと思います。ですから、欲を言うならばもっと多くの基金が欲しいところであります。
しかし、繰り返しますが、私が主張したいのは、スタート時点での競争条件を整えるということ、後は自主独立で国にもどこにも依存せずに運営していくべきであるということであります。したがって、こういう議論が地元からよく出されます。分割し民営化していくことはよろしい、けれども赤字が出た場合にはやはり国が補てんしてくれるのだろうか、そうあってほしいという議論は地元からしばしば出されます。しかし、その議論をやったならば、小国鉄をまた再び北海道という場につくるにすぎないわけであります。したがって、ここで新しくスタートする場合には、まずスタート時点での条件を整備する。そして、その条件を整備した上で完全に私企業としてやっていける体制に持っていくべきである。したがって、赤字が出たならば国にカバーしてほしいなどと言うべきではないということを、私はあえてここで強調しておきたいわけであります。そのためには、現在の条件が悪過ぎると思います。
もう少し具体的に申しますと、これからの鉄道は大都市圏の輸送と拠点都市間輸送が二本柱であります。拠点都市間輸送においては、長距離バスとも航空機とも競争していかなければならないわけです。四時間以内、三時間台でありますと、北海道内における拠点都市間輸送、これはかなり競争可能であります。例えば札幌—函館、札幌—釧路、札幌—北見が三時間台で結ばれるならば、航空機とは十分競争できます。しかし、そのためにはかなりのスピードアップが必要であります。現在、札幌—函館間は四時間を十分ほど切ることは可能でありますが、これを例えば三時間二十分であるとか、札幌—釧路間を三時間五十分であるとか、そういうふうに結ぶためには相当の設備改善が必要であります。
私は、国鉄改革の問題を、守りの姿勢ではなく攻めの姿勢で受けとめたいと思うわけであります。あっちを削り、こっちを削りして、何とか赤字を出さずにやっていこうという雰囲気が全体的に流れていると印象づけられます。しかし私は、この機会にこそ積極的な姿勢を打ち出すべきだと考えます。その意味では、この改革関連の法案から受け取られる雰囲気というものは、必ずしもそういった積極姿勢というものをそこから読み取ることはできないわけでありまして、その点に若干の不満は残るわけであります。
例えば、新幹線といったような問題一つ例にとりましても、新幹線保有機構というものがあるわけです。それは確かに新幹線と新会社の関係を示してはおりますけれども、しかし、我が国における高速軌道を将来どうしようと考えているのか、その姿勢といったものがこの改革案全体からはどうも見えてこないわけであります。これはやむを得ないことではありましょうが、その点で私には若干不満は残っております。ただ、これは今後の課題であろうと思われます。
私がなぜ積極論にこだわるか、それを最後に簡単に触れたいと思います。
それは、私の述べようとする第三の論点、すなわち北海道の地域振興と国鉄改革の問題をどう結びつけて考えるかという問題であります。今どこの地域でも、地域活性化のためさまざまなプロジェクトを考え出しております。現在、民間にある余剰資金がどんどん海外へ流れている。それは確かに外国の成長を促進するのに役立ってはいるけれども、その一方で国内経済は停滞している。北海道は特にひどい状態で、成長率は全国の半分であります。何とか外国に流出している資金を国内投資に振り向けさせることはできないのかというわけであります。そのために魅力的なプロジェクトをいろいろ組もうということであります。実際、北海道の新計画では、十五にも及ぶ戦略プロジェクトを立てております。しかしながら、その中には海のものとも山のものともわからないプロジェクトも含まれております。あえてそういうプロジェクトを立てながら、何とかして民間の資金を導入し、また民間の活力を導入して北海道経済を活性化させよう、そういうわけでありますが、この海のものとも山のものともわからないプロジェクトに比べますと、北海道の旅客鉄道の本格的な整備改善といった問題は、海のものか山のものかはっきりしているわけであります。その意味では、資金を投ずるに値する事業であります。もっとも、それで十分黒字を出せるかどうか、これは確かに問題でありますが、とにかく具体的にはっきりした問題だということであります。
もっとも、これ自体は改革案の対象範囲を超えた地域政策の課題であって、この案の良否には直接関係はありません。しかし、私の希望は、民間資金を導入して北海道の新しい交通体系を築いていくといった具体的かつ積極的なプロジェクトの展開にとって、この国鉄改革がプラスに作用してほしいと願うわけであります。その意味で、多少不十分ということは言えるわけでありますが、しかし、ともかくも積極的に新会社を盛り立てていく機運が北海道の特に産業界全体に生まれてくるならば、この国鉄の分割・民営化は地域活性化のためのきっかけを与えることになるかもしれないと思うわけであります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/300
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301・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
次に、皆川文次君からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/301
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302・皆川文次
○皆川文次君 今日の危機的状況にある国鉄の改革の必要性については、常識に照らしてほとんどの人が疑問を持つことはないと思います。しかし、改革の理念とその手段については意見の違いがありましょう。
私は、国鉄の改革について、理論的にも実践的にも一私的企業的な赤字解消策に陥ってはならないこと、そして将来社会の鉄道の役割をはっきりさせて、総合的な交通輸送体系形成を志向するという視点に立脚すべきであることを主張いたします。
次に、北海道にとっての国鉄の改革は、日本国土における本道の限りない未来性と現状における社会資本蓄積の不足及び交通基盤整備の立ちおくれの実態を正しくとらえて、これからの北海道発展を支え、保障するに足る改革でなければならないことを強く訴えます。
政府案は、北海道と四国、九州の三島及び本州を含めて分割して、新たな経営形態として北海道旅客鉄道株式会社を設立する、そしてその会社の経営は十分採算が賄われ、経営の維持発展が図れるという計画であります。しかし、ついせんだっての八月二十七日発表された六十年度の国鉄の決算と監査報告によって、運輸省みずから計画の下方修正をするという大きな変化がありました。このことは、経営見通しで収入の過大、経費の過小であったことを修正せざるを得なかったということを明らかにしたものだと思います。ちなみに、政府の当初案では、六十二年度の輸送見通し、人キロで三十七億人キロが今回の修正で三十六億一千万人キロで〇・九億人キロの減であります。パーセントでは二・四%の減少であります。これは、対前年比で四・一%の減であります。また、五十六年以降五年間の平均で四・三八%の減少であります。さらに、十年間の減少率なども取り入れて計算をすると、六十二年度の実績は三十四億七千万人キロという推計になります。
このように、収入に直接的に連動する乗車人員、人キロにおいて顕著に減少の事実があらわれたということは、経営の成否を判断する上で重要な基準であります。経営の基本である収入、そしてその源泉である乗車人員及び人キロのいずれにおいても減少の傾向が事実をもって証明をされました。今後さらに、地方交通線の廃止、高速道路の建設促進、自家用車の増加、運賃値上げによる客離れなどの客観条件を加えると、とても北海道鉄道会社の自立経営は不可能と判断せざるを得ません。もし自立経営可能だとするならば、納得のできる数値を示して説明をいただきたいと思います。
監理委員会も政府も、北海道国鉄を民営化し分割して将来があると言われておりますが、大変僣越ではありますけれども、分割した北海道の国鉄を、北海道の優良企業と言われる例えば電力さんや銀行さんあるいは農業団体など、それらの企業が経営の可能性を信じて経営参入に手をお挙げになるでしょうか。分割しての北海道の独立採算の道は、とても不可能であると判断をいたします。
北海道鉄道会社が経営困難、行き詰まりを来したとき、どんな改善の処方せんが書かれるでありましょうか。結局、今進めようとしている第二の国鉄の道を踏襲する以外、ほかに方策があるのだろうか、また、そのときだれが責任を負うのか、そのとき国はどのような態度をおとりになられるだろうか、この点が改革案をめぐる北海道道民の最も大きな不安であり、心配であり、合意しがたい大きなポイントでなかろうかと痛感をいたします。したがって、私は分割、新会社で進めようとする政府案には賛成できません。しかし、どうしても分割、新会社移行にならざるを得ないという場合は、改めて自立の基礎条件をスタート段階で確立をするということを再検討願わなければならないと思います。
次に、民間活力導入をうたった民営化による多角的新事業分野の問題についてであります。
私鉄経営に学び、新たな才覚と創造と努力の上に立って多角的経営手法を取り入れることによって新たな鉄道事業が新生すると言われますが、理論的に理解できたとしても、実際が伴うかどうか疑問であります。北海道の人口希薄、寒冷地帯という特殊事情の上に立ち、私鉄の先例に倣って、地域開発効果、旅客流動拠点、土地の保有などの潜在可能性がどれだけあるか、これを考えてみますと、その可能性は乏しく、容易に経営の拡大、安定に寄与することにはならないだろうと考えます。言うまでもなく、これから新たな分野に向けて新しい潜在可能性を求めるという戦略性に立つべきことを否定するものではありませんが、俗に言う私鉄のこれまでの例に見るような鉄道事業が内包する可能性を基盤とした多角化の前途は、非常に厳しいものであるということを理解しなければなりません。
次に、北海道においていわゆる保留四線区の存続は極めて重要な問題であります。五十九年度における北海道の地方交通線十四線区の営業係数は三八五、損益は赤字の二千四百九十億円というこの事実を直視したとしても、長大保留四線区は、今の北海道並びにその沿線地域、これからの北海道並びにその沿線地域にとって、収支損益勘定の立場のみで律することはできない問題であります。四線の存続は当然経営を圧迫するものの、ここにこそ鉄道の持つ公共性の維持と鉄道機能発揮の道を開くべきでありましょう。しかる上で、公共性と企業性の両立、整合について総体論として模索すべきであろうと思います。北海道において、何としてもこの長大路線存続の実現を図るよう、強く要請をいたします。
続いて、設備投資問題についてでありますが、これまで国鉄が社会構造の変化に対応し切れなかったことが今日の現状をもたらした大きな要因であったことは間違いありません。その反省に立ち、新たな成長を遂げようとするならば、当然輸送力の増強と競争力の整備に向けて投資計画を立てることは不可欠であります。しかし、計画にはこれというものが示されておりません。これは、新たな鉄道事業として本当に実効を上げようという熱意と真剣さに欠けるものであるということを指摘いたします。経営計画見通しの五カ年にわたる投資計画の件名を明らかにしてもらいたいと思います。
次に、雇用問題についてでありますが、雇用問題はますます深刻になってきております。これは国鉄職員とその家族にとって最大重要なことでありますが、同時に、北海道の地域社会全体において非常に深刻であります。道内の雇用情勢は、漁業をめぐる減船、鉄鋼、アルミ、石炭、造船などの構造的な変化を初め、雇用被害は深刻さを増しながら広範にわたって拡大をいたしております。このような雇用事情下で、国鉄からの雇用吸収の余地はどうなのか、想像にかたくありません。国鉄改革を進める上で、雇用問題は主軸をなす国の重要課題であるのに、雇用問題は別にひとり歩きをしておるような感じがしてなりません。雇用問題は、はっきりした国の責任でありますから、その対策に国はもっと毅然とした責任ある施策を明確にして解決に当たるべきだと思います。少なくとも、連続報道される不当労働行為や労働組合の分裂、はたまた自殺者の発生など、この異常な事態の発生を重く見て、歴史的な大国鉄の改革が、多少の痛みはあったとしても、明るい風通しのよい雇用施策を併置して行われることを強く要望いたします。こういう事態、いわゆる大転換期であればあるほど、信頼関係を確立して創造的勤労意欲がわき出るような環境でなければならないと思います。申し上げましたような雇用事情でありますから、雇用環境の改善と雇用激減緩和措置を国の施策としてとらえるよう要請をいたします。
次に、整備新幹線と青函連絡線と青函トンネルについて申し上げます。
まず、整備新幹線建設についてでありますが、今、北海道において新幹線を望むその気持ちは、単なる願望ではなく、長期展望に立った北海道の発展と将来のあるべき近代的交通のあり方としての、そこにスタンスを置いての強い要請であります。北海道の位置と距離から、しばしば飛行機との競争、競合が論ぜられるところでありますが、この論理でいつまでも新幹線問題をとらえていると、将来を失いかねないと思います。まず当面、東北新幹線が青森まで延長されるときは、函館まで同時開業を図るべきでありましょう。そして、それを端緒に新幹線を含む将来の新交通体系形成の現実的な足がかりとなるようにしてもらいたいと思います。
続いて、津軽海峡線営業開始と青函連絡線問題について。計画の中で、青函トンネル開通に伴う津軽海峡線開業は、六十二年と六十三年の収支のバランスが大きく変動していることを見ると、取り上げられているだろうことが予測をされますけれども、しかし、連絡線の存続と新線開業による経営見通しについては、詳細は何ら明らかにされておりません。また、連絡線問題の処理と決定の責任はどこにあるのか。もし、帰属が北海道旅客鉄道会社であるからそれは地域問題だとするなら、極めて大きな問題であろうと思います。したがって、法案審議の中で明確にする必要があるのではないかと思います。また同時に、トンネル本体の維持に技術面も含めで膨大な費用を要すると言われておりますが、その取り扱いが明確でありません。
次に、貨物輸送について。人間社会において、経済や産業の営みにおいて物的流通を欠いてその存在はありません。今度の国鉄改革で、貨物について全国一本の貨物会社で運営するところまでは報ぜられておりますけれども、我が国の物流構造の中で、鉄道はどんな体系で、どんなシステムで、どんな役割を果たそうとしておるのか、ほとんど示されておりません。そして、十一月ダイヤ改正では大幅な縮減が企図されております。北海道の産業の実情から、輸送のあり方いかんでは鉄道利用の需要は旺盛であります。当然、中長距離直行のその特性が最も選好されるところでありましょうが、貨物安楽死の道をとるのか、新たなシステムと技術を駆使して貨物の蘇生を図ろうとするのか、明らかにすべきであります。旅客と貨物と、それぞれ別会社で同じレールで商売をやるということになりますが、それはともかくといたしまして、物流構造と物流機能にどうかかわりを持つのか、その方向を示していただきたいと思います。ここで申し上げておきたいことは貨物収支で、全国的に貨物は赤字の元凶だと言われておりますけれども、北海道の営業係数は、貨物が二四三、旅客が三七六であって、赤字の荷物はむしろ旅客であります。したがって、貨物の分離あるいは撤退は自殺行為にも等しいことになるのではないかと考えます。
最後に、今百五十年の歴史を持つ国鉄をどう改革するか、政治、経済、文化、社会、あらゆる面にかかわりながら、あらゆる分野の人々があらゆる国民の英知と力で進めようといたしております。私は、何としても深刻な国鉄の危機がここに至ったその根源を正しく究明していただき、将来に禍根を残さぬよう慎重にかつ徹底した審議のもとに、いやしくも国会で多数の力で強行成立などの事態を招来しないよう願いながら、真に国民の側に立って、二十一世紀を鉄道が他の輸送機関と対等に、いや、むしろエネルギーや公害の面でより人間と生活に密着して、他のライバル機関よりも少し優位に立って新しい百年目のスタートを切れるように、政府案、国民共同の対案、あわせて国民の理解を得られるよう存分な審議を尽くしていただきたいことを申し上げて、私の意見を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/302
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303・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
次に、佐々木宣君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/303
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304・佐々木宣
○佐々木宣君 私は、北海道経済連合会の佐々木でございます。
私は、日本国有鉄道の再建に関して、政府が推進しようとしておられる分割・民営化による再建策に賛成の立場から陳述いたします。
今次の行政改革、財政再建は、肥大化し硬直化した行政を改革し、二十一世紀に向けて活力ある我が国社会をつくる道を目指したものであります。これを実施するためにはいろいろな困難が伴いますが、国民としてもこれに十分な認識と理解を示し、それ相応の忍耐と努力を払うことが必要であると存ずる次第であります。また、当然のことながら、一時的には社会経済に大きなリアクションが生ずることも覚悟しなければならないと考えます。
この行政改革の中で、国鉄の再建問題は最も大きな課題であり、しかも最も難しい問題と言えるのでありますが、しかし、どうしてもここで抜本的に解決しなければならない重要な課題であります。今の国鉄の置かれている状態は、民間企業に例えますと、赤字が大量に累積し倒産したと言っても過言ではない状態でありまして、仮に現在の体制のままいつまでも放置しておきますと、結果として国民の足としての鉄道を完全に失ってしまうことになりかねないのであります。
御承知のとおり、国鉄は昭和三十九年に赤字に転落して以来、年々加速度的に赤字幅がふえ、六十年度末の長期債務残高は二十三兆六千億円と、年間収入の実に六・六倍という膨大な額に達しております。しかも、これからも年々膨張を続けていくのであります。この赤字は国の債務になりますので、当然国民一人一人の負担となるものであり、どう考えてみてもこのまま放置し得るものではありません。こうしたことから、国鉄内部においても過去数度再建策が立てられたのでありますが、残念ながらことごとく失敗に終わり、結局、政府が推進しなければならなくなったのであります。
そこで、政府におかれては、国鉄の再建問題に関して五十八年六月に日本国有鉄道再建監理委員会を設置し、国鉄経営再建のための体制整備案の提出を行わせることにされたことは御承知のとおりであります。この委員会では、予算編成時に五十八年、五十九年と両年度にわたりそれぞれ意見書を提出されたほか、五十九年八月には国鉄の再建について国鉄の分割・民営化の必要性を提言し、これを基本として作業を行い、六十年七月に「国鉄改革に関する意見」として政府に答申されました。
そもそも国鉄の経営が破綻に至ったのは、昭和三十年代以降の高度成長期に産業構造が大きく変化し、国民の所得水準も急速に伸び、交通機関に関しても、いわゆるモータリゼーションの進展や航空機の発達によって自動車や飛行機への依存度が高まり、鉄道は厳しい競争場裏でその優位性を急速に失ったためであります。かてて加えて、このように輸送構造が大きく変化する中で、国鉄の労使とも経営の変革や生産性の向上に立ちおくれをとるなど、時代の変化に的確に対応できなかったことも大きな要因であると考えられます。さらにまた、現在の経営形態そのものに内在する構造的な問題、すなわち公社制度のもとで、こうした巨大な組織による全国一元的な運営を行うことの無理がたたったと言えなくもないのであります。
さて、考えてみますと、公社制度にかかわる問題としては、次のようなことが挙げられます。一つ、国の関与度が大きく、外部干渉を避けがたい体質を持っていること。二つ、経営の自主性がほとんど失われており、経営責任が不明確になっていること。三つ、労使関係がとかく不正常なものとなりがちであること。四つ、事業範囲に制約があり、多角的、弾力的な事業活動を行うのが困難であることなどであります。
また、全国一元組織にかかわる問題としては、次のようなことが挙げられます。一つ、極めて多数の職員を抱える巨大組織となっているため、適切な経営管理が行われがたいこと。二つ、画一的な運営が行われ、各地域の実情から遊離していること。三つ、全国一体の収支管理が行われるため、各地域や旅客、貨物などの各事業部門の間に不合理な依存関係が生じやすく、経営効率が阻害されがちなこと。四つ、同種企業間における競争意識が働かないようになっていることなどであります。
したがいまして、こうした現行制度に内在する構造的な問題を克服し、効率的で責任ある経営を可能にするためには、国鉄事業を民営化するとともに、適切な事業単位に分割することが不可欠なことと考えられるのであります。全国交通ネットワークの維持など、かつて国鉄に求められていた政策上の要請は、国鉄がその独占的地位を失い、輸送市場におけるシェアも小さくなり、機能的にも役割分担が制約されている今日ではほとんど意義を失っておりますので、そうした観点からいっても、現行経営形態を維持する必然性は極めて乏しいと考えられるのであります。とにかく、過去数度の再建策の失敗例を見るまでもなく、現行制度の枠内での手直しという従来の延長線上の対症療法では、もはや国鉄の再建を図ることは不可能であり、速やかに分割・民営化施策を断行する以外に再建の道はないと存じます。
そこで、政府におかれても具体的な分割案を検討するに当たって、一、適切な経営管理が行われること、二、地域の実情に即した運営が行われること、三、各地域、各部門での依存関係を排除すること、四、競争意識が働くこと等の要件をできるだけ満たし得るものとすると同時に、旅客、貨物の流動実態や列車の運行状態との適合性、分割に伴う技術上の問題を最小限に抑えた上、分割後の各事業体の安定的な経営基盤を確保するといったもろもろの点を総合的に考慮された結果、旅客部門と貨物部門を分離し、旅客部門については、本州は三地域に分割し、北海道、四国、九州の三島をそれぞれ独立させて、全国を六分割することにされたのであります。
一方、貨物部門については、貨物の流動実態や業務運営のあり方が旅客部門とは大きく異なっており、経営責任の明確化を図る必要があるため、旅客部門から分離して全国を一元的に運営する独立事業体とすることとしておられますが、私としてもこれは妥当なものと考える次第であります。しかも、競争の激しい輸送市場の中で、企業性を発揮し、活力ある経営を行い得るようにするためには、公社制から大きく脱却した経営形態、すなわち民営化を断行すべきであり、しかもこの民営会社は、できるだけ民間企業と同様に自主性と創造性に富んだものとすることがぜひとも必要であると考えます。このように考えてまいりますと、六旅客鉄道会社は、それぞれ地域住民のための鉄道として生き生きとしたものとして生まれ変わることが可能でありましょう。
さて、分割・民営化されますと、北海道においては北海道旅客鉄道株式会社(仮称)が誕生いたしますが、この会社の経営は相当厳しいものと覚悟しなければなりません。もちろん、政府におかれてもこの点は十分認識されまして、新会社には長期債務を負担させない、経営安定のための基金を設置するなどの措置を講ぜられており、国鉄の試算によっても、初年度から黒字が見込まれております。しかしながら、そのためには労使が真に一体となって懸命の企業努力を払うとともに、これを利用する我々道民の協力もまた欠かせない要件なのであります。そのようにして、少なくとも北海道の交通の骨格となる路線につきましては、これを確保し、道民の足としての機能を十分に果たすことができるよう、道民みんなの手で新会社を育成していかなければならないと考えます。
また、新会社ができますと、一つ、ダイヤが従来のように中央の人の手によって中央中心に編成されることなく、地域住民の利便を中心に考えた弾力的な編成にすることができます。二つ、設備投資も道内の利用者ニーズに合致させることを最優先に考えて行うことができる。すなわち、駅の新設にしても車両にしても積雪寒冷地向け仕様を導入することなどが可能であるということなど、地域に密着した鉄道として生き生きしたものに変えることができるのであります。
さらに、分割・民営化に当たっては、処理すべき大きな課題が二つあると存じます。一つは余剰人員対策であり、二つ目は長期債務の処理であります。余剰人員対策につきましては、政府におかれましてもこの問題を大変重視し、法を制定して計画的に対応することとしておられますし、民間においても、それぞれその力に応じた協力を積極的に行おうという機運が十分にうかがわれるのであります。長期債務につきましては、再建監理委員会の答申による処理方針が現段階で考えられる最良の方法と思われますし、長期的に見て国民の将来の負担を軽減することになると考えられます。
なお、この機会に、北海道の特殊事情につきまして問題点、お願いを含めて三点ほど申し述べさせていただきます。
一つは、先ほどの基金についてでありますが、最近の金利の低下傾向の中にあって、これが実質的に目減りすることのないよう、予定された資金を確保していただきたいということであります。
二つ目は、事業用地についてであります。債務償還との関連もございますが、新規関連事業の展開という点にも配慮されて、事業用地を十分に確保しておいていただきたいということであります。
最後に、余剰人員対策につきましては、御存じのとおり、北海道は円高不況になる以前から経済が低迷状態を続けておりました上、北洋漁業の問題、石炭問題など、暗い材料をたくさん抱えております。それだけに、公的部門にしろ民間にしろ、厳しい雇用情勢の中で苦悩しておりますので、国鉄の余剰人員対策を北海道だけですべて対応し処理するということが非常に困難な状況にあります。どうかこうした点を十分配慮していただき、道内における雇用の創出も含めて、政府の特段の御配慮をお願い申し上げる次第であります。
なお、最後にもう一つだけ付言させていただきます。それは、地方交通線のうち保留四線の問題であります。厳しい環境の中にあります保留四線の沿線住民の民生の安定を図るという見地からも、政府におかれまして、特に慎重に必要な対策を適切に講じてくださいますよう、切にお願い申し上げる次第でございます。
以上申し上げまして、私の陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/304
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305・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
次に、羽根田二郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/305
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306・羽根田二郎
○羽根田二郎君 本日は、三塚博前運輸大臣を初め交通運輸問題の専門の諸先生方には、遠い寒い北海道まで足を運ばれ、北海道の鉄道の現在と将来について私ども道民の声を聞いていただけることは、無量の喜びとするところでございます。また、雪国の鉄道の持つ特殊な諸事情に心を痛めておられる本道選出の先生方、そして東北、北陸の先生方がこの公聴会にそろわれましたことは、北海道にとって心強い限りでございます。昨日は札幌にも初雪が降りました。もう本格的な冬将軍の季節になったのでございます。どうか、北方圏に位置する北海道の国鉄、鉄道事業の困難性について御理解をいただきたいと思います。
さて、私はただいまから四つの問題点に絞って、北海道民の立場から意見を述べたいと思います。
まず私は、国鉄が分割・民営化され、来年四月から北海道旅客鉄道会社として独立して運営されるとき、将来にわたり安定した経営が成り立つものかどうかという点について、大きな懸念を持つものであります。
政府が明らかにしたところによりますと、道旅客鉄道の初年度は四百七十億円の営業欠損の見込みだが、経営安定基金の運用益四百七十八億円が補給されるため八億円の黒字になる、そして以後も黒字が続き、発足五年目の六十六年度には黒字累積が三十四億円に膨らむ予想だということであります。果たして分割・民営後の道旅客鉄道の経営がこのように楽観視できるものでしょうか。
この問題について北海道新聞は、今月五日、「不安消えぬ道旅客鉄道の前途」という表題の社説を掲げております。私は、多くの道民が、政府の国鉄改革案により分割・民営化された後の北海道の鉄道が今までのように将来ともやっていけるのかどうか大きな不安を抱いていると考え、この道新の社説は極めて重要なことを指摘していると思いますので、その概要を引用いたします。
「政府が明らかにした国鉄分割・民営化後の北海道旅客鉄道会社の収支見通しによると、」という書き出しで、
この見通しを素直に受け入れがたいのは、現実との落差があまりにも大きいからである。
道内の国鉄は六十年度決算で、過去最高の三千二百六十四億円もの赤字を出している。道内では同年度中に、五千四百人もの退職者を出した。このため、退職金支払いが異常に増え、結果として赤字額が膨らんだという。
しかし、こうした特定人件費を除いても、赤字は二千億円を超える。新会社発足と同時に、それが四分の一以下に激減するとは、到底、思えないのだ。
確かに、新会社の従業員は六十年度の約半分、一万三千人に減る。国鉄から引き継ぐ長期債務もない。発足から二年間だけ、暫定営業する名寄線など長大四線についても、運行に伴う赤字はすべて国鉄清算事業団が負担する。
いわば、現状よりはるかに身軽になるわけだが、それにもかかわらず、本道での鉄道経営には難しい問題が多い。
一つは経済環境の厳しさである。基幹産業の農林漁業は不振続きだし、製造業の主力、鉄鋼やアルミは撤退や縮小を余儀なくされている。円高の余波で、石炭も大幅減産が必至の情勢だ。
こうした経済的落ち込みの結果、輸送需要の長期低迷は避けられまい。
バスとの競争も深刻だ。高速道路や国道の整備につれ、道内でも長距離 バスの運行が増えている。特急列車より時間はかかるが、運賃が割安なため、国鉄からかなりの旅客を奪っている。
今回の見通しでは、道旅客鉄道は向こう五年間毎年、運賃値上げを予定しているが、これではますます、バスとの競争が不利になろう。
それでなくとも本道は、広い面積に人口が散在している。しかも積雪寒冷地であり、線路の除雪費や車内の暖房費が余計にかかる。多くの道民が、道旅客鉄道の将来に不安を抱くのも当然だろう。
新会社がスタートしてからでは遅い。いまのうちに突っ込んだ論議を重ね、納得できる見通しを示してほしい。
以上が北海道新聞の社説であります。
この道新の社説は、北海道経済界初め党派を超えた道民の偽らざる気持ちを代弁しているのであります。極端な減量経営、そして運賃アップとローカル線の切り捨てを前提とする北海道鉄道会社の見通しは、余りにも甘く冷たいものと道民は感じているのであります。
次に、地方交通線、特に長大四線の問題について申し上げます。
政府の国鉄改革案が実施されると北海道の地方交通線は全滅の可能性があるという不安が、道民の中から起こっております。道内の国鉄の六十年度の営業費用は三千四十五億円に上るが、これを新会社発足時の六十二年度は四〇%程度の千二百七十億円で乗り切ってしまおうというのが、昨年七月、国鉄再建監理委員会が答申に描いた新会社の青写真であります。これは、現在の函館本線だけの経費、年間一千二百五十億をわずかに上回る額にすぎません。果たしてこれで新会社の経営はもつものでしょうか。新会社の行方は、人員や事業規模がどうなるかの関心もさることながら、経営基盤いかんでは、路線の新たな縮小、利用者の負担増といったはね返りが危惧されている。机上の数字合わせばかりが幅をきかせ、その自信が狂った場合のツケは余りにも大きい。極端な減量経営で北海道は心臓麻痺を起こします。もう少し緩やかな改革が妥当だと思います。
今、政府は一日の輸送密度四千人未満の特定地方線区廃止を積極的に推進しております。北海道においては、目下協議中のいわゆる長大四線も、分割・民営化の二年後には廃止される方向にあります。私は、それぞれ営業キロ百キロを超える長大四線は、関係自治体の強い反対があり、地域経済の崩壊につながる重大な問題であり、党派を超えて住民ぐるみの存続要求が出ているので、いかなる場合といえども存続を強く要望いたします。
三つ目に、雇用問題について申し上げます。
三塚先生は、運輸大臣の時代に来道せられ、横路知事と会談されたと聞き及びますが、知事からも本道の景気の低迷と雇用情勢の厳しさについて陳情をされたと思います。本道の雇用情勢は一段と厳しくなっております。この七月の有効求人倍率は、全国が〇・五に対し、本道は〇・二四でありまして、失業多発地帯の汚名は返上できておりません。さらに、北海道の漁業の縮小と減船、第八次石炭政策に伴う閉山の危機が加わり、けさのニュースでは道内五山が閉山に決まったと報じているのであります。さらに、鉄、アルミ、造船、木材不況が続き、これに国鉄の一万三千人もの余剰人員が放出されるとすればどうなることか、もはや説明の必要はありません。賢明な御判断をいただきたいものであります。長引く不況の中で、本道経済には雇用を吸収する力はありません。北海道の国鉄に対する余りにも厳し過ぎる減量経営の押しつけは、北海道切り捨て政策ではないかと思わずにはおられません。
国鉄に先立って民営化された電電公社や専売公社は、全職員の継承が当然のこととして行われましたが、国鉄の場合、分割された上、さらに余剰人員対策として希望退職募集二万人や清算事業団への振り分け、再就職四万一千人が強行されるのですが、新しい契約に当たっての職員の選定は、国鉄職員は事実上一たんすべて解雇され、差別選別の上、一部の者だけが新規採用されるという、近代社会では考えられない不当な措置であり、団体交渉権さえ事実上奪われるなど、違憲の疑いさえあると識者は皆指摘しておるのであります。
また、国会でも明らかにされましたが、大量の退職者が出るというのに、昭和六十五年度以降の年金の展望もいまだに明示されず、津軽海峡線の開業に伴う青函船舶の雇用も不透明であります。このようなやり方は、政府の国鉄改革法案の「事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する計画」に基づいて実施されようとしているのであります。国鉄職員の雇用不安をあおり、幾つもの組合が毎日のようにできるような異常な労使関係は、政府法案に妥当性と合理性が欠けているからだと思います。私は、電電公社や専売公社のように、すべて新事業体が全職員を一たん引き継ぎ、労使協議して適正要員を定め、退職希望職員の職業と生活の安定を確保するため、新事業体と国の責任において必要な措置を講ずることを要望いたします。
次に、国鉄関連企業問題等について申し上げます。
政府は、国鉄職員再就職計画を策定し、国、地方公共団体など三万人、一般産業界一万人、国鉄関連企業二万一千人、計六万一千人の再就職目標を決めました。その結果、鉄道弘済会を初め多くの国鉄関連企業などに働いている人たちの雇用が脅かされております。各企業は、この分を新規採用の中止、定年の切り下げによって対応せざるを得なくなっております。赤字ローカル線の切り捨てや国鉄の大合理化、企業縮小で委託業務が激減し、その上国鉄から余剰人員を押しつけられ、これでは会社が成り立たないと嘆いているのであります。今、国鉄関連企業では、四月一日以降の委託業務の直営化の動きとあわせて、玉突き解雇の問題が大きな不安となっております。国鉄における雇用不安は、国鉄だけの問題ではなく地域全体の問題であり、過疎の一層の進行にも直結する問題であります。
最後に私は、まことに舌足らずでありましたが、国鉄の改革に当たっては北海道の地域特性を十分に考慮すること、新事業体は分割ではなく全国一社とし、地方交通線を含む全国ネットワークを維持すること、そして国鉄職員及び国鉄関連企業に働く人々の雇用不安を解消することを要望して、私の意見陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/306
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307・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
次に、武井正直君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/307
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308・武井正直
○武井正直君 このような機会を与えていただきましたことに深く感謝申し上げる次第でございます。
私は、これまでの数次にわたる国鉄改革並びに現行の組織のあり方などを検討、考察させていただきました後、この民営・分割の政府提案に賛成する立場で御意見を述べさせていただきたいと思う次第でございます。
思い起こしますと、一九〇六年鉄道国有化法案が成立いたしまして、この北海道でも民営と国有鉄道とが半々ぐらいの営業距離になっておったのが、ちょうど八十年前に国有化されたという経緯があるわけでございます。たまたま一九〇四年シベリア鉄道が完成いたしまして、兵員輸送というようなことを力点に置きまして一九〇六年に鉄道国有化法案ができましたことは、皆様御高承のとおりでございます。また、その後、鉄道省並びに国鉄が国民経済的に果たした歴史的な意義、その他もろもろの役割というものについては私も十分認識するものでございますし、戦後の引揚者の人員吸収その他について果たされました役割というものも十分認識した上で、御発言申し上げさせていただきたいと思います。したがいまして、年金問題等いろいろな問題はございますけれども、これは当然国民年金等に吸収されるというふうに私は理解しておるわけでございます。
三点について御意見を述べさせていただきたいと思います。第一点は国鉄の経営形態と組織について、それから二番目はこの分割・民営というものは一体どのようにしたらいいだろうか、三番目は北海道の特殊性につきまして、せっかくの機会でございますので、先生方にも聞いていただきたいと思う次第でございます。
まず第一点の国鉄の経営形態と組織についてでございますが、国民経済的視点に立つならば、国鉄債務が二十兆円を超しておるわけでございまして、世界的に問題になっておりますところのメキシコでさえ、これは大体十五兆円ぐらいでございます。しかも、毎年赤字を累増し続けるということは、国が債務を引き受けるというようないろいろな方法はあると思いますけれども、いかなる方法をとったといたしましても結局国民がそのツケを払うということは変わりないわけでございますので、抜本的な改革を行うということはむしろ遅きに失したのではないかというふうに私は思う次第でございます。
また、公社という戦後できた制度、これが先ほどの御意見にもございましたが、我が国の風土に本当になじんだものだろうかという疑問も持つものでございます。本道の場合は赤字が年三千億程度出ておるわけでございまして、この現状から見るならば、黒字化するための努力というものは、他地域に比べるならば非常に大きいということは十分承知しておるわけでございます。したがいまして、地域としてはそういう国鉄を存続させるという意味で大乗的な見地から協力を申し上げたいというふうに考えるわけでございますし、後で述べますところの要望もこのような趣旨でございます。また、そのような努力を払っていただくことによりまして、運賃が他地域よりも高くならないような御配慮もお願い申し上げたいと思う次第でございます。
このような改革を要する国鉄が不振に陥った問題点というものは、私は二つあるというふうに認識する次第でございます。
第一点は、交通手段が多様化し、利用者のニーズの変化というものあるいはそういう環境の変化というものが非常に激変したということがあるわけでございまして、いろいろな制度的な制約で国鉄当局がそれに対応できなかった。これはあたかも、今から二十年ぐらい前でございますが、アメリカのペン・セントラル鉄道が倒産したのも同じような理由でございます。したがいまして、交通の独占的地位を失ったというようなこと、このことは公共性の低下ということにも結びつくのかもしれませんが、そういうものによることでございまして、地域特性の活用ができなかったということ、経営をしてまいります上に全国一本の大きな管理スパンというものがございますけれども、そういう組織に私はやはり問題があったというふうに思う次第でございます。これが第一点。
第二点といたしましては、業務の運営、管理、投資、人事管理など、経営上の重要事項につきまして種々の制約によりまして自主的決定を持ち得ず、つまり自己責任の原則が確立されることが困難であったということによるものだろうと思います。その意味で、組織を分割して管理可能な適正規模として責任の所在を明確にする民営化が国鉄再生への道であろうかと思いますし、このことが国民の利便にも資するものだろうと確信するものでございます。したがいまして、民営後は官による監督強化によりまして自由なる業務の運営を阻害するということをできるだけ排除していただきたい。つまり、デレギュレーションというような一つの流れというものが世界的な風潮でございますけれども、これがいいかどうかということはいろいろ御異論のあるところだとは思いますが、その利点を生かしまして、また、できるだけ早くこの国有化された株式につきましても民営化していく方が責任の原則が明らかになるのではないかと信ずるものでございます。
第二点、分割・民営についてはどういう利点があるだろうかという点を考えてみたわけでございますが、運輸業は一般に不況業種というふうに言われるわけでございますけれども、経営のやり方、運営の仕方によりましては、いわゆる宅配便のように好業績の企業もあるわけでございまして、決して不況業種というふうに私は思っておりません。つまり、今後の分割・民営によりましてこの辺が生かされるならば、非常にいいのではないかというふうに思うわけでございます。この点について三点申し上げたいと思います。
第一点は、鉄道がその最も得意とする分野、特性といたしまして中短距離大量輸送ができるわけでございますが、本道は広域で人口が少ないという地域でございますので、この特性を生かすということは大変難しい地域の一つだろうと私は思います。しかし、都市の発展段階に合わせて駅舎を改廃することが今後は容易になるのではないだろうか。例えば札幌近郊など、もっと駅をたくさんつくれば地下鉄とも競合することが可能でございますし、もっといろいろ北海道で利用することは可能でございます。例えば、従来千歳空港駅ですら昭和五十五年までできなかったというようなことを考えると、これはまだまだ考える余地というのは非常に大きいのではないだろうか。また、ダイヤの変更等旅客のニーズに合わせ得る。これは、東京で決めるよりは地方の実情に合わせる方がはるかに便利であるということが言えるわけでございますし、さらに都市間の交通というのが一つの使命でございますが、例えば札幌—小樽間等を利用するならば、都市の再開発ということも非常に利便になるのではないだろうかと私は考察する次第でございます。
第二点は、北海道経済というものはそもそも資源収奪型の経済形態でございまして、技術移転というものが非常に困難な地域であったわけでございます。道も拓土植民的経済体制をとってこられたということが言えるわけでございますけれども、この民営化によりまして北海道産業への技術移転が可能になるのではないか。国鉄の技術は、本道といたしましては極めて高いものであるというふうに私は評価しております。例えば苗穂工場、道東では釧路の車両センターというものがございますけれども、ここの技術の力というものは、例えば金型とか鋳物とか、これは北海道で最も高い水準であるわけでございます。今後、多面的な業務運営によりまして、国鉄以外にもその技術が移転することが可能になるのではないか。そういうことで、新会社の収入源はもとより、本道発展に資することが可能である。これを全部持っていってしまったならば、北海道の発展というものが非常に困難になるので、ぜひこういう技術を残していただきたいというふうに私は思うわけでございます。
それから三点目は、人材の活用の問題でございます。国鉄は、今余剰人員という言葉が使われておりますが、どうも私は余り好きでない言葉でございますけれども、本来日本で最も優秀な人たちが集まっておった集団でございます。特に本道の場合には、極めて優秀な人材がこの国鉄には現在奉職しておると思います。この活用を図るということが本道の発展にぜひとも必要でございますし、また、新会社の職員にとりましても真に働きがいのある職場というものをつくるということの方が、ここに職を奉ずる人にとって幸せになるのではないかというふうに私は思う次第でございます。人材のあっせんにつきましては、私が会長をしております経営者協会といたしましても、全面的な御協力を申し上げるというよりは、むしろその人材を活用して北海道の活性化を図ろうとして働かせていただいておりますけれども、今後とも積極的に行いたいと思うわけでございます。そのためには、これから申し上げますところのいろいろな御要望をひとつ聞いていただきたいと思う次第でございます。
三番目に、分割・民営に当たってのお願いということを、六点ばかり申し上げたいと思います。
先ほどから意見陳述がございますように、本道は産業構造上、非常に不況業種が多いわけでございます。有効求人倍率も全国の二分の一から三分の一の〇・二ぐらいでございますので、特に雇用確保のための諸施策というものが欲しいと思う次第でございます。また、労働力というのは、広域異動というような点もあるわけでございますけれども、流動化という点ではなかなか難しい点もございますので、それならばやはり北海道を生かしていく方が国民経済的見地から有効であるというふうに私は思うわけでございます。そういう意味で、新会社がスタートする時点で条件を整備するというような意味も含めまして御要望をお願いしたいと思うわけでございますし、こういうことをしていただくことによって北海道の活性化というものが一段と開ける。このことがないと、黙っておったらますます北海道の経済は地盤沈下してしまうのではないだろうかというようなことでございますので、ぜひこの点をお願いしたい。
第二点は、エアカーゴ基地というものを今千歳空港近辺で考えておりますけれども、こういう地域振興を図るとともに、例えばリニアカーの設置、とりあえず千歳—札幌間に設置をしていただいて、そこに例えば製作工場をつくっていただく。これは、低温工学については当地方に非常な技術がございますので、こういうような工場をつくっていただいて雇用を吸収していただくというのも一つの方法ではないかと思います。それから、従来本州で使い古した、そう言うと言葉が悪くなりますけれども、そういう車両をこちらへ持ってきて使っておったというのが現状でございますが、寒冷積雪時に適した鉄道車両工場を、例えば釧路とか長万部とかああいうところに、技術もあり敷地もあるわけですから、ぜひそういうものを誘致してやっていただきたい。そうすれば地域振興も可能になるのではないかと私は思うわけでございます。
それから三番目でございますが、本道鉄道の収益性というものは、今までの陳述でございましたように、決して高いとは私も思いません。したがいまして、鉄道施設と一体的に開発できる事業を進めるための鉄道用地は、売却して累積債務に充てるよりも新会社になるべく利用させていただきたいというふうに思うわけでございます。つまり、若干非事業用地になるのかもしれませんけれども、多面的な業務運営を展開して収益性を上げるためには、そういう含みを残していただくような御配慮をいただきたいというふうに思うわけでございます。
四番目に、経営安定基金についてでございますけれども、私はたまたま銀行の社長をしておりますが、最近金利が非常に低下しておりまして、そういう状況下、かなり厚目にしていただかないと計算上出ないのではないか。あるいは金利が高くなるかもしれませんけれども、そういう点で六千二百億の基金はもうちょっと厚目にしていただけないだろうかということをお願い申し上げる次第でございます。
それから、国家的事業としてできました青函トンネルを多面的に活用していただく方法もぜひ考えていただきたい。海外投資よりはぜひ北海道へ投資していただくということが、これまた国際協調上も非常に有利であろうと思いますし、この中には新幹線も入ると思いますが、こういうことによって雇用の確保ということもひとつぜひ考えていただきたい。
最後に、新しい事業会社というものに対しましては、やはり自由、弾力的な業務運営をすることによって新しい発想を持ち込むならば、決して経営ができないということではなくて、むしろここに職を奉ずる人たちが生きがいのある職場として生き生きと働けるということが可能であると私は信じておるわけでございますが、そのためには、余り監督等が厳しくなって従来と同じような思考過程ではいけない、弾力的、自由な業務の運営を可能にするような体制というものをとっていただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
以上、六点お願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/308
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309・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
次に、佐藤太勝君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/309
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310・佐藤太勝
○佐藤太勝君 佐藤でございます。私は、分割・民営化には反対の立場で意見を述べさせていただきます。
第一に、国鉄を分割・民営化すべしとして挙げられている根拠について、その根拠が全く合理性がないということであります。
その第一は、監理委員会の「意見」も政府の説明も、国鉄の改革の出発点は国鉄が破産しているという点であります。国鉄の経営は破産状態にある、国鉄は破産しているというのがその出発点であります。しかし、本当に国鉄は破産しているのでしょうか。破産とは、支払い停止もしくは債務超過を言うことは、もう御存じのところだというふうに思います。国鉄が支払い停止に陥っていないことは明白であります。現に運営をしているわけであります。だとすれば、債務超過であるか。債務超過とは、債務額が資産の額を上回ることであります。まず債務であります。国鉄の債務は三十七兆円と言われております。その債務の内容についても、本来国鉄の債務とは到底言えないものまで入れているという問題があります。しかし、この点についてはここでは触れません。次は資産であります。国鉄の総資産とその評価が明らかにならなければ、破産という判断をすることはできないことは言うまでもありません。これは、私ども弁護士が日常処理をしている倒産処理のイロハであります。きょうお見えの諸先生は、国鉄の総資産についておわかりでありましょうか。そして、債務超過というふうに考えておられるのでしょうか。監理委員会の「意見」でも政府の説明でも、この点については何一つ明らかになっていないのが現状ではないでしょうか。国鉄は琵琶湖に匹敵する全土地、そして全国に張りめぐらされた通信情報施設、その設備、駅舎、レール、鉄橋、トンネル、車両を初め、営団地下鉄、日本テレコム等の株式等を保有しております。総資産だけで二百兆を超えるという説明もございます。土地だけでも、例えば国鉄自身が簿価の百倍、すなわち約七十兆円になるのではないか、こういう説明をしているのであります。これだけで、債務超過でないことはもう明らかではないでしょうか。すなわち、破産状態ではないということであります。破産状態でなければ、なぜ分割・民営化をする必要があるのでしょうか。前提において誤っているというふうに言わねばなりません。債務だけ並べ立てて分割・民営化すべしと言うのでは、まことに一方的であるというふうに私は思います。
それでは、二十三兆円と言われる債務の真の発生原因は何であるかということであります。病気でも倒産処理においても、その発生原因を追求することが第一であります。私は、この問題については、東北新幹線そして上越新幹線建設を中心とする過大な設備投資のためであるということを申し上げたいというふうに思います。昭和四十九年から五十八年までの年平均の国鉄の設備投資額は八千五百億円、特に昭和五十三年から五十六年の四年間には毎年一兆円を超す設備投資がされております。これらの設備投資に要する資金は、すべて国鉄の負担とされたわけであります。諸外国の例に見るまでもなく、本来ならばこれらはすべて国の負担においてなされなければならないものであるというふうに考えます。また、そのような約束があったというふうに聞いております。国鉄の資本金は、今日四千五百六十億円であります。長期債務のわずか一・九%、このような資本金のもとで今申し上げたような過大な設備投資を自前でやろうとすれば、借金と金利が雪だるま式にふえていくというのは当然のことではないでしょうか。まず、ここから出発すべきだというふうに私は考えます。
そればかりではありません。六十年度の監査報告書を見ますと、営業収入は三兆五千五百二十八億円、営業経費は五兆五千七百二十八億円であります。しかし、この経費の中から特定人件費、東北・上越新幹線資本費相当額、利子などのいわゆる長期債務関連にかかわる部分二兆七千四百九十九億円を差し引きますと、七千二百九十九億円の黒字になるというのが監査報告書で明らかになっているわけであります。つまり、長期債務に関する部分の手当てさえつけば、国鉄は現在の体制のまま黒字経営をやっていくことができるということが、単年度の監査報告書で明らかになっているわけであります。国鉄の改革を考えるならば、まずこの点から出発すべきだと私は思います。この点にメスを入れないで、国鉄の赤字の原因が全国一元の公社制度にあると言うのは全くのすりかえではないでしょうか。諸外国においても、例えばアメリカを見ますと、民営で倒産に陥った鉄道を旅客のアムトラックと貨物のコンレールの二つの国有鉄道にして、現在は立派にその営業をやっているのが現実であります。公社制度そのものに原因があるのではなく、公社制度をどのようにして使っていったのかというところが問題であろうというふうに私は考えるわけであります。
第二に申し上げたいことは、北海道の国鉄が分割・民営化によってどうなるかという点であります。分割・民営化によって北海道会社は昭和六十二年度から八億円の黒字を計上し、以後黒字を続けるという試算がなされております。問題は、この数字の前提となった経営内容であります。何よりも注目したいのは営業経費であります。この試算によりますと、北海道の旅客会社の営業経費は一千三百一億円というふうに抑えられております。貨物についてはどうなるか。全国一元の貨物ということで、北海道分についての試算がまだありません。ぜひ国会で審査をしていただきたいというふうに私は思います。しかし、私どもが推計をした貨物の経費、北海道分は推計で二百二十三億円くらいであろうというふうに思います。この貨物の推計経費二百二十三億円を足しますと、旅客と貨物で北海道は一千五百二十四億円でやらなければいけないということになります。他方、昭和六十年度の監査報告書をもとにしまして、経費総額の中から長期債務関係部分、特定人件費利子等分割・民営化になれば負担を免れる部分を差し引きますと、純粋の営業経費は二千八百十六億円であります。この二千八百十六億円と先ほど申し上げました一千五百二十四億円を比較すれば、大体半分であります。つまり、北海道の旅客と貨物を現在の半分の経費でやれというのがこの国鉄の試算であります。これでやれるかという問題であります。やれるかというよりは、この範囲内でやれというのがこの国鉄の試算だというふうに私は思います。そのために、経費を次から次へと削減していく。まず赤字のローカル線を廃止していく。したがって、北海道は三五%の線路がなくなるということになります。九州は二一%、本州はわずか八%しかなくなりません。いかに高い比率かということがおわかりいただけると思います。
次に人員であります。昭和六十一年十月現在で二万五千四百十二人おりますが、これが一万一千四百五十人と半分以下になるわけであります。つまり、二人に一人は首を切られるということになるわけであります。これもほかの地域と比べて異常な高率であります。働く人間を半分にし、経費を半分以下にして本当に北海道の鉄道は動くのでしょうか。ローカル線を切ったとしても、経費輸送量ともそんなに減少するわけではありません。そうなれば、結局バスの分離、連絡船の廃止、それだけではありません、発足するであろう新会社においてこの経費に合わせるために徹底した合理化が行われるのではないでしょうか。列車の間引き、無人駅、保安無視、サービスの低下、サービスの放棄、これでなければ経費が落ちるはずがないのであります。そして、その結果どうなるか。乗客離れは必至であります。乗客離れは減収を招く。同じことの悪循環であります。
もう一つ、運賃の値上げであります。北海道会社は六十三年以降毎年六%の値上げが考えられているようでありますが、これにとどまるものではないというふうに私は思います。これまた乗客離れをもたらし、結局は日高線とか江差線といった特定除外地方交通線まで切り捨てていくということになるのではないでしょうか。鉄道事業法案二十八条を見ますと、事業の休廃止は原則として許可という条文になっております。法律の上からも地方線、ローカル線の廃止が容易になってきている、そういう法制度が用意されているのだということを指摘しておきたいというふうに思います。
最後に、この北海道の国鉄が、今申し上げたように特定除外地方交通線まで廃止されていく、そういう運命にあるのだということは、次の数字で明らかだというふうに思います。先ほど申し上げました運輸省・国鉄の試算、これは採算の分岐点として乗車密度というのをとっております。その乗車密度は、北海道の場合は四千二百十六人であります。この四千二百十六人を前提にして、基金からの四百七十八億円の補助金を前提にして八億円の黒字になるというのが計算の前提であります。この四千二百十六人をそれぞれ線区別に細かく見てみますと、この四千二百十六人を超える線区が北海道に果たして幾つあるのかということであります。四千人を超える乗車密度を持つ線区はわずか二八%であります。つまり、四千人以下が七二%もあるわけであります。特に、千人未満が二三%もあるわけです。これは一次線、二次線を廃止した後の線区の問題であります。これらの線区が採算がとれないことを理由に廃止されていく運命にあることは、この数字からでも明らかなのではないでしょうか。当面、長大四線の廃止が問題になっていますが、私は廃止すべきではないということを申し上げたいというふうに思います。
分割・民営化によって、北海道の国鉄は大正時代に逆戻りだというふうに言われています。しかし、今申し上げたように、大正どころか明治時代に逆戻りするのではないでしょうか。この広大な北海道で、特にローカル線が廃止されることは地域の崩壊を意味いたします。既に廃止された地域では、人口が流出し過疎化が進行していること、バスに転換されても定期代が三倍から五倍になって高校生の通学に支障を来して通学さえできないということ、特に廃止される地域では老人の方の比率が高く、病院にも通えないという悲惨な現実が生じていることをぜひ御理解していただきたいというふうに思います。私は諸先生に、日本国有鉄道法一条に書いてある「公共の福祉」ということについて、もう一度お考えをいただきたいというふうに思います。北海道のローカル線の経費というのはせいぜい四百億円程度でございます。一機百九億円もするような戦闘機や一千億円を超えるようなミサイルを購入することと、せいぜい四百億円の負担で北海道の地方線、ローカル線を残すこととどちらが公共の福祉にかなうことなのか、ぜひお考えをいただきたいというふうに思います。
最後に、この国鉄改革法案の審議について御要望したい点がございます。
法案の最大の問題点は、国鉄の事業、資産、負債の承継、雇用人員の数、選定等、基本的な事項が挙げて政令、省令に一任されている点であります。国民が関心を持っている国鉄資産の処理についても、その方法を含めて省令によるとされております。その反面、国民が負担する十四兆円を超える巨額の債務については、どのように負担することになるのか何一つ明らかになっておりません。このようないわば一括白紙委任立法では、我我国民の疑惑、政治不信は増大するばかりであります。議会制民主主義の根幹にかかわる問題として、ぜひこの白紙委任立法の是非について十分御審議をいただきたいというふうにお願いする次第でございます。
最後に、北海道における国鉄の現状について、単に紙の上の数字ではなくて、現実の姿をぜひ見ていただきたいということでございます。冬の北海道でバス路線に転換して果たしてやっていけるのかどうか、ぜひ先生方の目で、この北海道で国鉄が果たしている役割を十分見ていただき、その上で審議をしていただきたいというふうに申し上げまして、私の意見陳述といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/310
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311・三塚博
○三塚座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/311
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312・三塚博
○三塚座長 これより委員からの質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/312
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313・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 公述人の皆さんにおかれましては、大変お忙しい中、本当に貴重な御意見ありがとうございます。
皆川公述人にお尋ねをいたしますけれども、分割をしては自立経営は不可能である、ゆえに反対だという御意見でありましたけれども、私は北海道に生まれ育って三十八年になります。そして今、北海道民の鉄道の利用の実態を見ますと、九八%が道内のみであります。大方一〇〇%と言ってもいいぐらいの数字であります。北海道民が鉄道を利用した場合、事実上分割をされている、私はそういう認識に立っておりますけれども、この九八%の数字について皆川公述人はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/313
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314・皆川文次
○皆川文次君 お答えいたします。
確かに、域内流動実態は九八%ぐらいであることは承知をいたしております。しかし、経営でありますから、そういう域内の人員の流動実態を踏まえながらも、経営の基礎条件として収入、あるいは収入と費用の関係のバランスがとれなければ、経営が成り立たないわけであります。したがいまして、今まで言われている案及び計画の中では、私も申し上げましたように、改めて民間の活力を導入して私鉄並みにいろいろなことをやっていこうじゃないかということも言われております。それも私は否定するものではありませんが、先ほど申し上げましたように、五十九年のべースで六十二年の経営の見通しを立てて、昭和六十年を経過してその実績に基づいて数値が下方修正をされなければならないというようなこと、それから、今後のニーズ及び国鉄の列車運行にかかわる他機関の他動的な客観条件などを加味いたしますと、さらに乗車人員は減少していくだろう。したがいまして、先ほど小林先生も言われたように、どうすれば乗客を吸収できるかという新しい方策も追求しなければなりませんが、今申し上げましたように、六十年度の監査結果等を基礎にいたしますと、なかなか経営は成り立たぬじゃないだろうかということを申し上げているのでございます。この不可能だということがどうすれば可能になるかということは、当然考えなければならないことでありますが、私は現状においては経営の自立は不可能だろうということを申し上げておきます。だとすると、どうするかということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/314
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315・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 皆川公述人、私がお話をしているのは、皆川公述人が一社でないとこれはだめだ、困るという根底に立っておったものですから、それで、北海道内しか九八%は利用していないのですよというお話を今したのです。経営の話じゃないのです。実際、北海道だけ利用しているのが九八%なのですよと。実際、利用者の数字からいきますと分割と同じ状況なのですね。ですから、北海道については分割した方が、事実上分割になっておるから有利でないかという話を僕はしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/315
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316・皆川文次
○皆川文次君 鈴木先生が言われるように、分布というかシェアはそういうことでありましょうが、私は一社でなければならないということを直截的には申し上げておりません。とにかく北海道を新しい別会社として、経営の存立基盤というものが今見通せるかどうかということでは不安であるということ。
それから、社会党が出されておりますところの一社案というもの、それは問題は経営のやり方だと私は思います。先ほど申し上げましたように、国鉄がなぜ今日のような深刻な現状になったのだろうかということを探っていきますと、いろいろな問題はありましょうけれども、いわゆる経営管理の問題が大きく存在しているだろうと思います。ですから、私は一社であっても、ほかの民間の会社が、北海道支社だとかあるいは関西支社だとかそういうような形でもう全国一社の会社で経営をされている、そこに学び取るとすれば、問題は経営のやり方ではないだろうか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/316
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317・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 羽根田公述人にお伺いいたしますけれども、例えば保留四線を残してくれという話がありました。私も保留四線を残そうと思って今努力している者です。しかし、今のままで保留四線は残れると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/317
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318・羽根田二郎
○羽根田二郎君 今のままでという御質問には、私は、つまり長大四線については六十二年四月以降二年間にわたって清算会社が赤字部分を補てんする、こういうふうに伺っておりますが、この状態によって一応百キロを超える長大路線が営業が継続できる状態であるという現実の姿は、やはり認識しておかなければなりません。したがって、長大路線を今後も継続するということについては、北海道の国鉄、鉄道会社、これだけにその負担を全部負わせる、こういう形ではやっていけないという認識に立っております。私どもは、北海道は分割をすることでなくて、本州の三鉄道会社は膨大な黒字を出す、こういう状態にあるわけですから、全国一社制で、全国ネットワークでやることによってこの長大路線を継続していけるのではないかという認識に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/318
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319・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 なぜ今民営・分割の議論が出ているかというと、今のままではもう雪だるま式に赤字がふえていくのだ、もたない、だから民営・分割してやり方を変えましょうということで今この議論になっているわけですね。ですから、私は今のままでは、レールを残すためにこの民営・分割化の議論をしておりますので、ちょっと今の公述人のお話では厳しいのではないか、残したいけれども残らなくなる状況になるのではないかと思って私は憂えているからそういうお話をしたのでありますけれども、よくわかりました。
ただ、保留四線だけでも去年だけで百八十一億の赤字であります。ですから、これは国民の負担ですから、国がことしだけでも六千億、言ってみれば国鉄に助成をしている状況です。六千億ということは、国民の税金で賄っているわけですから、このまま国民が負担をしていっていいのかなというのが私の心配、危惧の念ですから、これは速やかに民営・分割しかない、そのための方策また知恵を出さなければいけないかな、私はこんなふうに思っているのです。
それでは、佐々木公述人にお伺いいたしますけれども、公述人は北海道経済界の大御所であられまして、北海道経済万般を知っておられるかと思うのでありますけれども、その中で公述人が特に北海道の特殊事情を踏まえて、基金の目減りはないようにというお話でありました。国鉄の再建監理委員会の基金と今運輸省・国鉄が出した基金では千三百億ほど上積みをしてあるのですけれども、これは実態に合っている数字だというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/319
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320・佐々木宣
○佐々木宣君 国鉄の専門家による試算に基づいて上積みをしたということで、これを信用するという立場をとります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/320
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321・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 きょう公述人さんの皆さんの御意見を聞いて、皆さん六人とも共通しているのは、保留四線を残さなくてはいけないという御意見でありますので、これは私も大変参考になりました。
そこで、小林先生にお聞きしますけれども、鉄道と民間の資金だとか経済力をセットしないと北海道の地域振興はないのじゃないかという御意見がありました。鉄道と民間の資本だとか資金というもののセットについていろいろ先生なりの、こういったプロジェクトがいいといった御意見があるでしょうか。あったら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/321
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322・小林好宏
○小林好宏君 一つは、新会社が発足して以後、さしあたりこの北海道旅客鉄道株式会社という形でスタートするわけでございますが、将来、例えば当初政府出資という形である株式会社を民間に移譲していくというときに、先ほども話題になりましたけれども、一体だれが北海道の株を引き受けるのだという問題が既にございました。私が思いますには、多分東日本鉄道株式会社の場合には株価は上がるだろう、北海道の場合には下がるだろうというようなことは当初あるだろうと思います。しかし、そういうスタートをした後にまたさらに増資をしていくとか、かなり積極的な姿勢が必要であろう、そういったときに道内の産業界がどれだけバックアップをしていく態勢をとるかという一つの課題があります。それがまず第一の問題です。
次に、現在、残される路線の上で、例えば観光開発であるとかどんなプロジェクトが可能かという問題が出てくると思います。そこのドッキングということが大きな課題になってくるだろう。
それからもう一つ、先ほど保留四線のことをちょっと触れられましたが、私もちょっと引っかかる点があります。と申しますのは、北海道の地域振興にとって拠点都市の開発というのは非常に重要な課題になってくる。保留四線をもし廃止されたならば、例えば紋別なんというところは鉄道がなくなる。しかし、紋別などは地方中心都市の一つであります。この地方中心都市を北海道の振興の核としてそれぞれ位置づけてあるわけであって、つまり、そういうように北海道の地域振興の方策と鉄道の配置がどのようにドッキングしているかということが課題になるわけです。それを北海道の立場で考えていくということが必要なんだということは、先ほど申し上げたわけです。その際、局間の資本がかんでくる余地というのはかなりあると思います。先ほども述べた観光開発ということが一つは考えられます。現にその兆しは見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/322
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323・鈴木宗男
○鈴木(宗)委員 時間ですので質問を終わりますけれども、特に座長にお願いがあります。
今回のこの六人の公述人におかれましては、六人とも共通しているのが保留四線の存続ということでありますので、この点、座長におかれましても十分御配慮をいただきますようお願いいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/323
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324・三塚博
○三塚座長 町村信孝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/324
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325・町村信孝
○町村委員 時間がありませんので、二点だけ特定の方にお伺いいたします。
一点は、小林先生に伺いたいのですけれども、スタート時点で競争条件を整備させておかなければいけない、そうしなければ民間会社としてやっていけない、こういうお話でございまして、その際に、いろいろバスその他飛行機との競争条件も整備しておかなければいけない、よその分野に出ていくことも自由にかなり認めていかなければ新会社が成り立たない、こういうお話でございました。私もそのとおりだろうと思うのですけれども、特に新会社がこれから取り組むべき新しい分野ですね、どういうことなんだろうか。私は、やはりリニアというのは、まず実験的にはぜひやるべきだろうと思うし、それからほかの民間鉄道であれば当然やっているような関連事業、宅地開発であるとかそういうところでかなり収益を上げて民間鉄道会社が成り立っている、そういう分野かなとも思われますが、先生なりのお考えがあればひとつ御示唆をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/325
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326・小林好宏
○小林好宏君 今おっしゃられたリニアの問題その他宅地開発の問題そのとおりだと思います。
それにつけ加えて申しますと、私は当初に設備投資が必要だと思われるということを申しました。それを具体的に申しますと、基本はとにかく拠点都市間輸送、先ほど申し上げましたように札幌—釧路間であるとか札幌—函館間とか札幌—北見間、これがまず具体的には航空機に十分対抗できる時間というものは大体三時間台であろう、それをするためには相当の基盤強化が必要だということを先ほど申しました。
もう一つ、札幌圏の集積は私はまだ進むと思います。そのことがまた北海道経済の振興にとってはむしろ望ましいと考えます。その場合に、札沼線などは電化すべきであろうと思われます。さらに欲を言うならば、函館本線全線及び石勝線の電化などを進めるべきだと思います。それによって、例えば電力需要がどれぐらいふえるかという計算は比較的簡単にできるのではないかと思われますが、そのことがさらに北海道経済に波及していく効果が考えられる。設備投資自体がもたらす波及効果ということもまた考えられる。さしあたり鉄道会社に直接関連する事柄としては、そういったことを私はぜひ進めてほしいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/326
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327・町村信孝
○町村委員 ありがとうございました。
もう一点だけ、これは武井参考人に伺いますが、先ほど北海道の特殊性からいろいろなことをやらなければいけない、リニアを初めとして車両の工場をつくったらどうか。私は、それぞれ大変重要なポイントであろうというふうに思うのですが、それもやはり雇用の面で十分な配慮がなければいけないからだ、こういうことですね。今、確かにおっしゃるように非常に求人倍率の低い状況の中で、各企業が大変苦労して受け入れている。先ほどのどなたかのお話のように、関連企業は過剰人員の上にさらに過剰人員を積み重ねるような形でさえ引き受けている、こういう話でしたけれども、私が見ておりますと、確かにそういう厳しい雇用情勢はわかるのですが、本州の各企業あるいは自治体の受け入れ状況と比べて、いかに北海道の雇用情勢が厳しいとはいいながら、なお一層の努力がまだまだ必要なんではないだろうか。それなりの数の求人が来ているやに聞いておりますが、ただ実際の条件を聞いてみると、今働いている方の水準よりはうんと低い状態でなければ受け取らないとか、雇用を吸収できないとか、実際実現不可能なような条件をつけて、そして受け入れてもいいよというような話も私は散見するわけですけれども、その辺で、経営者協会の会長さんというお立場もございますので、さらに一層の御努力をいただきたい、これはお願いも兼ねて、何かコメントがございましたらば一言お聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/327
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328・武井正直
○武井正直君 町村先生の御指摘のとおりでございますけれども、私は基本的には、国鉄の職員の方を余剰人員という言い方、余り者という考え方では取り組み方としてよくないのではないか。せっかくの国民経済的な人材でございますので、これを活用していただきたい。現に非常に優秀な方がおりまして、私の方の銀行でも——私のことを申して恐縮ですけれども、条件において今先生の御指摘のような、のみがたいような条件で雇用はいたしておりません。全く同じ条件で雇用しておるわけで、むしろ技術を持っておられる方なんか高い条件で雇用しているようなことでございます。そういうことを踏まえまして、決して不利にならないような努力を今後も継続していくことが人材活用という意味で、余り者を使うという発想ではなくて、人材を活用して北海道を活性化するという発想をとって、それなりの給与も出していただくというのが正しいあり方だというふうに私は理解しております。各企業にも実はそういう趣旨でお願いしておりますので、各党の先生方もひとつぜひお願いしたいというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/328
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329・町村信孝
○町村委員 一層の御努力をお願いいたしたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/329
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330・三塚博
○三塚座長 戸田菊雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/330
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331・戸田菊雄
○戸田委員 社会党の戸田菊雄です。
きょうは、公述人の皆さんには御多用中御出席をいただいて、非常に貴重な御意見を拝聴しまして、本当にありがとうございました。
それで、設題がちょっと多過ぎたかもしれませんから、余り時間がないものですから簡単にこちらも質問いたしますので、要点だけひとつお述べを願いたいと思います。
一つは、この二十一世紀に向けての交通態様というものはどうあるべきかということ。私たちは、総合交通体系の中で、各陸海空含めまして共存共栄ができる、こういう交通システムをつくっていかなければいけない、こういうふうに考えております。ところが、今回の国鉄は、この一世帯を実際は二十三世帯に分割してしまうのですね。実質、六旅客鉄道会社を初め二十三世帯とする。そうすれば、各世帯ごとに家財道具もそろえなくちゃいけない、あるいは電話線も引かなければいけない等々、むしろ節約からいけば私は経済効率というものは低下をする、こういうふうに考えるのです。
小林先生、さっきお述べになったお話は、大体経済合理性からいって民営・分割賛成だ、こうお伺いをいたしたのでありますが、その点の見解はどうでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/331
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332・小林好宏
○小林好宏君 規模の経済性という概念からいって、統合した方がより規模の経済効果が大きいではないかという議論があろうかと思います。これに対しましては、事業体の数がふえるほど経営管理に要する人員が果たしてふえるかどうか、あるいはその他の一般管理費、固定費等の負担がどうなるかということで比較してみるのが一番近道かと思います。この点につきましては、つまり、これまでの統合化された国鉄運営においてどうであったかという反省からまず出発したのだと思います。
ところで、この問題は、全く同様な経験を日本経済はしているわけであります。それは、電力がそうであります。やはり九電力に地域分割した。この場合も、電力会社は日本全国統一してやった場合と九電力に分割した場合とどちらがより効率的かという問題はあるはずです。したがって、問題の立て方はそこは全く同じだと考えてよろしいと思いますが、この場合も、私は地域の中で、鉄道会社が一社であったとしてもやはり地域間競争というのはあると思うのです。つまり、同じ旅客を奪い合うわけではないのですが、例えば北海道旅客鉄道から見れば、東日本では何をやっているか、西日本では何をやっているか、そういう相互の比較、その比較に基づく経営の改善、そういうものはこれから相当出てくる余地があるだろうということがあると思います。
根本的には、最初に申しましたように、分割したことによって、例えば一般管理費であるとかそういったものが統合した場合の総合計に比べてふえるか減るかといった比較で行わなければいけないと思いますが、私は、少なくともこの案に盛られた思想から言うならば、それはむしろ削減していく方向なのだろうと思います。
もう一つ申し上げましたのは、地域間でも競争があるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/332
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333・戸田菊雄
○戸田委員 国鉄もそうですけれども、将来ますます交通機関は高速化、広域化する。現に動いている新緯線等は、仙台—東京間を二時間で行きますね。こういう時代になってきているのですね。ところが、今回分割したことによって、時間的に二時間単位で分割してしまっているわけですね。例えば、鹿児島から夜行寝台列車で東京まで来ますよ。そうすると、ダイヤの形成とかあるいは費用の積算とか切符の売買とか、いろいろな経営諸事業に対して非常に複雑怪奇になってくる、こういう状況だと私は思いますね。だから、そういう状況の中で二十三にも分割してしまうのですから、経営能率は相当下がるのではないだろうか。
それからまた、運賃一つ見ましても、現在のところは遠距離逓減法で全国一律ですね。ところが、これは格差運賃ですから、地域によって全部違う。北海道のようなところは、いろいろ農林に携わって食糧生産をしている人もおるし、あるいは水産に携わって食糧を提供する人もいるし、そういった苦労をして全体がやっている。そういう人たちも、今までは全部一律だったわけですね。今度はそれが違うのですね。殊に過疎地域あるいは北海道のように、いろいろお述べになられましたが、非常に不況で今ひどい、こういうような状況の中で逆に高い運賃を払わなければいけない等等の不合理が相当出てくると私は思う。ですから、社会党は、全国一社体制の経営実施体制をとって、そして地方の経営委員会を設置して、そこで民主的な手法によって個々の国鉄運営というものをやっていこう、こういうことにしておるわけでありますが、この全国一社体制でも、その他の今の経営の矛盾等についてはもちろん改革することは当然であります。そういう立場からいって、非常に経営が非能率化されていくということを私は考えるのですけれども、その辺は皆川さんにちょっとお願いをしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/333
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334・皆川文次
○皆川文次君 今、戸田先生が言われました分割におけるところの管理が仕事の面あるいはサービスの面で非常に複雑になってくるだろう、そういう複雑さが醸し出すデメリットというものをどういうふうに計算するかということは、私は、とにかく概念的に大変複雑になって、マイナス面の集積は相当なものだろう。前にNHKのテレビ討論会のときに、三塚先生は、同席の先生のそういうような指摘に対しまして、そうした配分のことだとかいろいろな調整のことは、コンピューターがこれほど進んでいる今日の時代、さらに先端技術が導入をされていくという時代においてたやすくできる、こういうふうにおっしゃられておりましたが、私は、そういう単なる技術面だけじゃなしに、問題は、運ぶ側じゃなしに乗る側の論理に立ってそのことがどうなのかということを聞いてみることが一番大切じゃないだろうかと思います。利用者、乗客の論理に立ってそうした問題をどうしていくのかということだと思います。
それからもう一つ、公企体であれ民間であれ、一社であっても、再び国鉄がうまくいかなかった、政府の介入だとか政治の介入だとかあるいは地域のエゴが入り込むとか、そうした問題については、今までだって国鉄に対して、あれもやってはいかぬ、これもやってはいかぬということで国鉄法を決めて、ホテルをやりたいと言ってもそれはできないような、民業圧迫だとかいうようなことでやれないような仕組みをつくってきたわけですから、これから一社体制であったとしてもそういうような在来の弊害が入り込めないような、そういうことを議論して法律なり規制措置を講じて、そして準民間的な働きが、自由濶達な働きができるような仕組みにしていく、そういうことを考えて一社体制ということを志向していくべきではないだろうか、私はこんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/334
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335・戸田菊雄
○戸田委員 ありがとうございました。
今回の政府の民営化、これはもっぱら経営に自主性を持たせる、そういう発想で出発をしたのですが、現在の八法案を見ますとこれらについては全く逆に、逆縛りをやっておる、こういう状況だと思うのですね。というのは、例えばこの経営にかかわる基本計画の問題、事業計画あるいは軽微の計画の変更でもすべて運輸大臣の許認可事項になっている。金縛りになっておるのですね。ですから、そういうことからいけば、民営化手法による経営の自主性なんていうものは全くない、これでは運輸官僚に金縛りに遭ってしまう、こういうような状況ですから、こういう点は私は間違っているのじゃないだろうか、こう思うのですが、時間が余りありませんので、ひとつ簡単に小林先生とそれから経営者協会長さんの武井さんの御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/335
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336・小林好宏
○小林好宏君 現在の動向というのはデレギュレーションがどんどん進行している状況にあると思いますが、私鉄であっても、通常の事業と違って運輸、通信、公益事業に対してはかなりの規制が現在も加えられている。そういう前提条件のもとで、旅客鉄道会社が発足しても十分に自主的な運営ができるかどうかという問題はあると思います。これは、まさに今問題になっているところの規制の緩和の方向性の中で取り上げていくべき問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/336
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337・武井正直
○武井正直君 基本的には小林先生と同じ意見でございますけれども、私は実は銀行の方の経営をさせていただいておりますが、銀行関係もおっしゃるように今大蔵大臣の非常な規制下にあるわけでございます。——規制という言葉は余りあれですのでちょっと訂正いたしますが、監督下にあるわけでございます。そういう点で、それでは何もできないかというとそうではなくて、今小林先生のおっしゃるような、方向としてはデレギュレーションの方向に進んでおりまして、この間において新しい会社はできるだけ自由濶達な発想のもとにいろいろな事業を展開できるような方法をひとつしていただきたいということで、実は要望の五番目に述べておりますことは先生の御指摘のとおりでございまして、恐らくこれは監督をなくせということはちょっと難しいかと思います。何をやってもいいというわけのものではございませんので、それはもう先生御指摘のとおりでございますけれども、やはり適当な監督のもとでできるだけの自由な事業を展開して、より効率を上げて運賃も上げないということが必要じゃないかというように私は思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/337
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338・戸田菊雄
○戸田委員 それから、長期債務の問題についてです。今回、監理委員会の「意見」としては、民間の手法をとった。「意見」では、国鉄は破綻をしました、したがって破産の民営化手法によって長期債務その他を満たしていく。その場合の再建方式というものは、民間体制でいくなら会社更生法に基づいて資産や財産やあるものを全部出して、それで実際どのぐらい借金があるのか、資本費はどのぐらいあったと、全部総体的にやるわけですね。そして管財人がそれを洗って、そして最終的にどうしてもこれだけの債務がありますよということになれば、初めて銀行債権を何ぼカットする、商品債権を何ぼカットする等々とやりまして、人件費はベースアップをやめていただこうかということで再建に乗り出すのですね。ところが今回は、監理委員会の答申でも、最終長期債務は三十七・六兆円だ、こう言って、そのほかには青函トンネル分も入る、鉄建公団分も入る、本四架橋も全部入る、こういうことになってしまっているわけですね。だから、そういうものが長期債務に入っているのが妥当かどうか。民営化手法でいくなら、そういうことをやって本当に再建に乗り出すというのがあれでしょうが、そういうことを全然やらない。したがって、資産も時価でいった場合にどのぐらいかといっても、その試算というものは一切やらない。ただ、簿価でもってこれだけ引き継ぎますよ、こういうことですね。ですから、そういう点の手法について私は誤っておると思いますが、そういう手法の問題が一つ。
それからもう一つは、最終的に国民負担分が十六・七兆円出るのですね。これは、まだ政府としてもどういう解決をするかということが明確じゃないのです。こういうものについては一体どう措置をしたらいいのか、その辺の見解。
それから、時間がありませんから一挙にお話をしますが、共通点としていろんな公述人の皆さんから意見が出たのは、やはり雇用問題ですね。一つはやはり手法の問題です。今、国が出している法案というものは、財産は全部くれてやりますよ、しかし人間はだめだ、実質的に一たん解雇する、こういうことですね。破産方式でいく場合は、事業を継続するのですから、当然職員もということになるのです。だから、民営化をこの前したときには、NTTとか専売は全部そのときの職員はそのまま承継したのですね。ところが、国鉄だけはそうじやない。こういうことは、我々国会でいろいろ言っておるのでありますが、各般の法律条項からいっても違反だろう、私はこういうふうに思います。ですから、これは全部そのまま承継を一たんやって、その上に立って労使協議でもって具体的に決めて、そして公正に採用基準というものを設定して、話し合いでとにかく決めていく、こういう手順でなければいけないと思うのですが、こういう点についての見解を、ひとつ小林先生と皆川さんとそれから経営者協会長さんの武井さん、簡単でいいですからお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/338
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339・小林好宏
○小林好宏君 まず第一点、再建の手法について、もし破産しているというのであれば、例えばその破産会社を更生させる場合と同じ取り扱いでなければならないはずではないかという問題についてでございます。
私が先ほど強く強く強調いたしましたのは、こういう機会でなければ国鉄の経営形態を改善するということは行われなかったということ。しかし、鉄道経営が最も望ましいようなあり方とは一体何かと問うならば、赤字、黒字を問わず、公社という戦後の独特の形態、これが今まさに反省の時期に来たのだと思いますけれども、これはやはり失敗であったということが証明されたのだと思います。そのことは、高度成長時代ははっきりしていなかった。これを今の時点ですっかり改めようという、そこが基本なんだと思うわけでございます。破産したから再建する云々ということではなしに、このままの形態で継続するならばますます赤字が累積するというところが問題なんだと思います。それをストップさせるというところに私は主眼点があると思います。
それから、次の十六兆何がしの国民負担分、これをどうするかという問題だと思います。これは、いずれにいたしましてももう国民負担には変わりないと思います。ですから、問題はそれをふやさないということなんだと思います。
三番目は雇用問題、私は、手順としては確かに一たんすべて承継した上で、さてその先どうするかというのは一つのお考えだろうと思います。しかしながら、新しい大きな変更をやろうという際に、雇用についてめどをつけておくということは絶対に必要条件だと思います。そのための努力はされていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/339
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340・皆川文次
○皆川文次君 長期債務については、私は、もっと国民の立場からわかりやすいように、裸にして議論ができるようにしてもらいたいというのが希望としてあります。
次に、雇用問題でありますが、これは戸田先生も言われておりますように、当然新しい会社に継承するという道筋をとるべきだと思います。ただ、いずれにいたしましても、こういう状態になっている国鉄を生き生きとしたものにしていくということになりますから、それじゃこれからの企業活動の量と人間の関係はどうかということは、民間であっても公企体であっても検討に付されなければならないことだと思います。こういうような形での国鉄改革でなくとも、国鉄自身がみずから経営を改善するという場面に立ったとしても、雇用問題というものはその企業の中に、あるいは労使間の中に発生をする問題であるというふうに一つは理解をしなければいかぬのではないか。民間でありますと、会社の経営を転換していこうというときには、大体希望退職の募集だとかあるいは一定の条件つき退職の募集だとかいうことは労使で話し合って決められて、それはそれで労使問題としてやるということでありますが、先ほども申し上げましたように、国鉄の改革というのは我が国にとって国が責任を持って行う大改革として打ち出されておりますから、雇用のあり方の問題も政府が責任を持って国鉄当局を指導しながらやる。どうも我々見ていますと、雇用問題は労使間の問題なのか、国はどういう関与をされるのか。確かに中曽根総理大臣が本部長になって雇用対策について責任を持ってやろうということはテレビでは見ておりますが、実際には国がどういうように国鉄を指導して、みんなが理解できるような雇用施策というものを打ち出して、それに沿っていいのか悪いのか、じゃどうするとかいう議論が十分になされていないままにあるから、私は雇用問題というものはひとり歩きをしているという感じがしてならないということを先ほど申し上げました。これは、もっと国の責任において明確に国鉄当局を指導しながら明らかにしていくということが必要じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/340
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341・戸田菊雄
○戸田委員 時間がありませんので簡単に。
小林先生は、先ほどのお話の中で、基本設備等は事前に整備すべきだ、そういう考えでございますね。その点が一つ。
それから、経営者協会会長の武井さんは、基金は少し少ないようだからもう少し出していただきたい、こういう話のように承ったのですが、幾らぐらいならいいか、適当な数値があったら聞かせていただきたい。
それから、公述人の皆さん全部に最後に聞きたいのですが、皆さんが社長だったら北海道鉄道旅客会社は黒字経営でできましょうか、見解をひとつお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/341
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342・小林好宏
○小林好宏君 自分に経営能力があればやると思います。最初に条件整備が必要だと言ったのは、つまりその点を強調したかったからであります。
三十秒だけもうちょっとお話しさせていただきたいのは、根本的な問題は、つまり北海道が条件が悪いというのはもうはっきりしていることです。そういう条件の悪いところをどうカバーしたらいいかというときに、基本は二つ方式がある。赤字を出したら埋めてやりましょうという方式と、もう一つは、少なくともスタートラインを一線に並べて後は自力でやれというのと、基本的にはこの二つだと思うのです。私は、その後者に徹するべきだということを強調したかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/342
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343・武井正直
○武井正直君 先ほどの、基金はあと幾らぐらいか、こういう点でございますけれども、千三百億増額させていただきまして六千二百億ということでかなりの増額を見ておるわけでございますので、金利水準その他運用をどうするかというようなことと密接に関連すると思いますけれども、大体この辺がいいところかなというふうにも思います。ただ、もっと金利が下がるようだともうちょっと御考慮いただく方がよろしいかというふうに思います。
それから、経営者としておまえやるか、これは、やり方によっては私はできると思います。今、私ほかの職業についておりますので、今やるつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/343
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344・三塚博
○三塚座長 それでは、あと皆川陳述者から、経営者としてやるかという点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/344
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345・皆川文次
○皆川文次君 やるかやらないかということもありますが、やらなければならない羽目になればそれは命がけでもやらなければならぬということがありましょうが、好んでやるかどうかということは、またこれは別な問題であります。大きな企業であれ小さな企業であれ、問題はどんな条件整備をすればやっていけるのか、それからみんなが一生懸命働くのか働かないのか。いかに出発の条件がよくとも、やはり発想だとか働き方、ここのところが悪ければ間もなく倒産するから、そんなものには手をかけない方がいいわけであります。ですから、先ほど私が申し上げたように、本当にこの会社が自立できるとするならば、わかるような数値を出して議論をする必要があるじゃないか。まさに私は、それを出し合って、できる条件は何か、できない条件は何かということを明らかにして、この会社を引き受けようか、こういうことになりましょうから、科学的に実態的にやれる条件整備というものを明らかにしてやっていく、こういうことでなければならない、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/345
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346・佐々木宣
○佐々木宣君 北海道旅客鉄道会社に関しましては、楽にといいますか、ぬくぬくとした経営はできるとは思っておりませんけれども、やはり努力次第によっては明るい見通しに立つというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/346
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347・羽根田二郎
○羽根田二郎君 私は、経営がやっていけるかどうかという前に、国鉄の場合と民間になった場合と、利用する道民の皆さんがどうお感じになるのかということがポイントだと思います。何よりも鉄道は安全の問題が第一であります。高い安全性を確保する。そのためには、たとえ経営が苦しくても、もうけ主義ではなくて国民の側に立って安全を確保するという考え方が基礎になっておらなければならないと思うのです。国鉄が現在のような企業体制になるまでに、たくさんの民間の私鉄を国鉄の傘下におさめました。そのときに一番困ったのは、私鉄の鉄道の基盤が大変弱くて、金もうけ主義だから線路の状態が極めて悪い、車両も悪い、それを保守する能力、技術も低い、こういうところに問題があったように思います。したがって、私どもが国民の側に立って鉄道の経営をやるということになれば、民間といえども、そういう援助を公共の立場から御援助いただかないで、もうかるかもうからないか、ただ会社のそういう観点だけで経営をせいというようなことを言われても、これは引き受けがたいと私は思います。
私どもは、往々にしてこの国鉄の分割・民営の話を職場の中で話題とすることがあります。そのときに、全国はどうか知らないけれども、一体どこの会社がこの北海道の鉄道を引き受けるだろうか、恐らくはだれも引き受けるという会社がないのではないか、こういう議論を往々にして聞きまして、私もそれには同感だな、こういう気持ちがいたしております。現状で、私はこの会社の経営に乗り出すというような考え方はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/347
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348・佐藤太勝
○佐藤太勝君 私は経営者でもありませんし経営学の専門家でもないのですが、今一番必要なのは、北海道会社が経営をやって果たして採算がとれるのかという点について十分な議論がまだないのではないか。そこのところを、例えばきょうお見えのような経営を担当しておられる経営者の方もおられますでしょうし、いろいろな方の意見を聞いて、果たして北海道会社が立ち得るのかどうか、十分議論を尽くしていただきたいというのが私の第一点でございます。例えば九州・山口経済連合会では、九州と四国の経営について成り立ち得るのかどうかという、経営サイドの方も含めて十分議論をして検討されたようでございますので、ぜひ北海道会社についてもそれをやっていただきたいというふうに私は思います。
それから、先ほど私が申し上げましたのは、私なりの一つの数字を前提にした考えでございます。多分あの数字で、私が申し上げたようにローカル線なり切り捨てていって合理化をどんどんやっていけば、それに合うような形をとっていけば、場合によっては数字の上で八億円という黒字が出るかもしれません。しかし、これはあくまでも一つの可能性ではないだろうか、数字の上の前提ではないだろうかという気がいたします。そういう数字を前提にいたしますと、私はとてもローカル線を切り捨てて合理化をやっていくような自信はございませんので、とても引き受けるということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/348
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349・戸田菊雄
○戸田委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/349
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350・三塚博
○三塚座長 西中清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/350
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351・西中清
○西中委員 公述人の皆様には、きょうは大変お忙しいところを貴重な御意見を拝聴することができまして、心からお礼を申し上げたいと思います。同時にまた、時間も大変長くなって、お昼を過ぎておりましてお疲れでございますけれども、もうしばらくお願いをいたしたいと存じます。
最初に、小林先生にお伺いをいたしたいと存じます。
先ほど北海道の交通体系に若干お触れになっておりましたが、私もこの北海道の経営を非常に心配いたしておりまして、八月にも現地調査をさせていただいて、いろいろなお話も拝聴したわけであります。一応今度の法律案では、近距離通勤、さらに都市間の中距離、これは鉄道の使命だという前提でこの改革は進んでおるわけでありますけれども、北海道の場合は少し事情が違うのではないかな、こういうように私は認識をしております。というのは、先ほどもお話がございましたけれども、中距離の場合はバスが相当力をお持ちであるということ、したがってその要素がどういうように経営に影響を与えるのか、こういう心配を持たざるを得ないのであります。同時にまた、都市間といっても、その間に町なり村なりというものが連続してつながっておるというケースと、全く離れてしまって何もないというケース、これは本州とは大分事情が違うようでございまして、そういった点で、今後どういうような考え方で進んでいったらこの北海道の交通体系というものが成り立つのか、もしもお考えがありましたら、簡単にひとつお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/351
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352・小林好宏
○小林好宏君 拠点都市間輸送に関しては、やはり特急をふやすとかスピードアップを図るということでいかざるを得ないと思います。そうなりますと、しかしその区間の中に存在する町や村は一体どうなるかという問題が出てくると思うのです。その場合に、はっきり申し上げて町村の利便性が改善されるという見込みを立てることは非常に難しいと思います。
もう一つは、バスとの共存関係をどう保っていくかということについて、お互いにけんかをし合うのではなしに、ある程度の協調体制が必要になってくるのではないかと思います。それが基本的な点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/352
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353・西中清
○西中委員 先ほども同僚の方からお話がありましたけれども、もう一度確認をいたしたいのです。
いわゆる基金という問題でありますけれども、北海道における今後の経営の大変重要な柱でございます。これが、今の金額が適切なものかどうかということはなかなかちょっと判断に、私たちも実は正直言って苦しむのです。しかも、現在の金利情勢の中でこれがしばらく続くのではないかというように見ておりまして、政府の見込みのように果たして運用益が出てくるのかどうなのか。こういう点で、先ほど小林先生は、新会社がスタートする場合にはこれは条件をきちっと整えるべきだとおっしゃっておりまして、基金が全く少ないというお話がございました。それは計量的に出るのか出ないのか知りませんけれども、その点どういうことなのか、お伺いをしておきたい。
同時に、武井公述人にお伺いしますけれども、現在の金利情勢が数年間続くとすれば、政府の目指しておる運用益は確保できるとお考えかどうか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/353
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354・小林好宏
○小林好宏君 まず基金の問題について、不安要素の一つは、おっしゃるとおり金利の予測、金利七・五%が高過ぎるのではないか、大体最近の情勢から見ると、安全を考えるならばもっと低目に設定をしておくべきであるということが一つあります。全くおっしゃるとおりであると思います。
もう一つ、基金が全く少ないと申しましたのは、この基金はあくまでも営業上発生するであろう赤字を埋めるという考え方に立っているわけです。ですから、その基金は設備投資の基金ではないわけであります。どういう形であれ、例えば軌道強化等の設備の改善、現在国鉄は既に行っていると思いますが、それを相当上回るような設備改善の資金というものは別個に必要であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/354
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355・武井正直
○武井正直君 金利の予測というのは神様でないとできない、私どもの一番困っているところでございまして、先生御指摘のとおりでございますけれども、これは運用の仕方いかんによっても——どのように運用するかというのはこれから決めてまいることかと思いますけれども、運用の仕方によっては可能だなというふうに思っております。ですから、どのように運用するかということも考慮に入れて考えるべきじゃないかというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/355
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356・西中清
○西中委員 次に、皆川さんにお伺いをいたしたいと思います。
先ほど来からお伺いいたしておりますと、私が間違っているかもわかりませんけれども、御意見としては大体民営はやむを得ないであろうというようなポジションではないかと思います。しかし、全国一本が望ましい、分割はどうも賛成しがたいというような立場ではないかと推測をいたしております。これは、やはり北海道の経営は厳しいので、一社で内部補助、こういう考え方を基本にお持ちではないかと私は推測しておるのですが、今お話しいたしました基金というのは、既にこれはある面で言うと国民全体の内部補助でございます。皆さん方の御意見の中にもありましたけれども、私は新会社が成功するかしないかというのは、一つはシステムがきっちりできるかどうか。と同時に、モラールがやはり問題であろうと思います。したがいまして、確かに一社で内部補助をしていけば現に黒字の答えが出ておるのだからいけるのじゃないかというお話でありますけれども、私は必ずしもそうではないと思っております。
例えば、本土に働く職員の皆さん方の立場にすれば、北海道、四国、九州は赤字が毎回出る、それを我々の働きによって埋めているのだということが長い間継続していくとするならば、やはりどうもおもしろくないという意識が出てくるのじゃないかと思います。我が党が民営・分割ということについて基本的に賛成しておるのも、働く意欲が出てこなければ会社というものは成立しないということで、その立場に立っておるわけであります。細部にわたりましては、六分割が五分割だ、そして貨物会社一本はまずいというようないろいろな私たちの考え方はございますけれども、今申し上げました問題でいくと、やはりモラールは低下する、こういうように私は思わざるを得ないのであります。その点、よそのことは知らぬということかもしれませんけれども、私は基金は、一つの考え方として、明らかに将来展望の上でずっと赤字ということはだれも否定できないと思います。これはこれで、国民が税負担なりなんなりして維持していくということは当然だろうと思います。ですから、そういう点で、全体がだめになるよりはこういう形でモラールを大いに上げていく、そして厳しい状況の中でも三島は頑張っていただく、こういうようなことの方が妥当性があるのではないかというように思うのでございますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/356
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357・皆川文次
○皆川文次君 今出されておりますところの内容は、北海道新会社発足、経営の自立を目指す、こういうことで出発をしても、それは採算はとれないだろうということが一つ。経営的に見て、経営見通しとして非常に厳しい。これは厳しいという言葉を使っておりますけれども、そんな厳しいということで成り立つのかどうかということ、もう全くだめなのかもしれません。しかし経営でありますから、どこを切ってどこを生かしていくかということは出てくるわけであります。やはり最初の出発の段階で諸条件をそろえて、これでやっていけるのかどうか、あるいは経営に値するのかどうかということ。
それから、北海道でこの会社を経営していくというときに、やはり先生方もいろいろなことをおっしゃられますが、北海道的に見ますと、公共責任を果たし切れるだろうかどうかということはこの会社にかかってくるだろうと思います。すると、採算が合わなければ公共部分をぶった切っていこう、そして企業ベースに乗せていこう、これで北海道の交通というものは確保されるかどうかということを非常に悩むわけです。したがって、先ほども申し上げましたように、北海道の長大保留四線があります。これは今もう北海道のどの人に聞いても、このままぶった切るということは許されない、こういうことで悲痛の声を上げているわけなんですが、これを抱えていくとすれば、ここには大変な経営的な欠損というものが生ずるわけです。しかし、これを企業性だけで見ていくならば、そう長くは続かないから捨てざるを得ないということになってくるだろう。しかし、交通というものを考えたときに、やはり将来の交通のあり方の問題と公共の福祉ということを貫いていくとすると、そこで企業性と公共性をどう整合させるかということが北海道にとっては非常に重要な課題だ、こんなふうに思っております。
それから、分割して別会社ということよりも、社会党案で出されている一社制でいっても、私は一社制であったとしても、北海道の独立採算を標榜して北海道は北海道で独立採算を図っていくというようなこと、実際に民間の全国組織の会社というものではやっているわけであります。そこに今、かっての国鉄がどうだという批判もありますけれども、今や公企体といえども競争に勝てなければそれ自体が有用とされない、人は離れていく、批判を受ける、こういうことでありますから、そういう気持ちになれば一社制の中で独立採算を目指して努力していくということで、公共性と企業性の整合、調和というものをどう図っていくかということ、そこが北海道にとっては——先ほどどなたかも指摘をされましたように、九州の経済界では多くの人方が集まって調査会を設けて九州のこれからの国鉄をどうしていこう、こういうことが議論をされて提言もされているわけでありますから、そうしたことを北海道の場においても検討しながら、鉄道をこのまま守り、先生の指摘されたモラールの低下というものをどう避けていくかということも研究課題だ、こんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/357
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358・西中清
○西中委員 皆川さんに再びまたお願いしたいのです。
物流のお仕事が御専門のようでございますが、今度の改革案では、この貨物会社は全国一本である。片っ方は六分割である。これは、私たちが実は非常に心配をしておる問題点なのでございますけれども、私たちはこの貨物会社は将来ちょっと危ないのじゃないかなという心配をしないわけではないのです。その経営見通し、そういうお仕事の関係からどのようにごらんになっているか。
それから、特に心配なのは、なぜそういうふうに経営が難しくなるかというと、いろいろと競争が激しいということもございますし、いろいろな問題があるのですけれども、技術的な問題としてはダイヤの編成、これが多くの会社にまたがっていくということ。したがいまして、当面は良識を持って旅客会社も対応してくれると思いますけれども、年月がたってくると、これは自分の会社の経営が第一でございますから、お客さん第一、荷物は第二、こういうダイヤになりかねないということを心配しております。その点で危惧を持っております。この辺のところの何かお考え、御感想があれば伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/358
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359・皆川文次
○皆川文次君 今後の国鉄貨物輸送を考えるときに、やはり国鉄の貨物輸送がなぜ衰退をしてきたのだろうかということ、これはもう過去の実績というものをしっかりと分析をしてみる必要があると思います。私は何年か前に「国鉄貨物輸送を蘇生させるために」という一つの論文を書いて、当時国鉄労働組合に提起をして検討願ったときがありましたが、それはまさに、国鉄の貨物輸送の特性というものは中長距離あるいは長距離直行一貫、これを貫かざるを得ないだろう。北海道の道内においても域内物流の需要はあるけれども、これはそんなに採算が上がるものかどうかということと、それから、北海道の産業がどういうふうに変わっていくだろうか。一つは、石炭を見ていただけばわかるように、そういうような産業の状況変化ということもあります。いずれにいたしましても、この長距離直行一貫輸送というものは、生かそうと思えばどの輸送機関よりもすぐれて有用な輸送手段だ、こう思うわけであります。
それで、私が書いた論文の中に貨物輸送のある技術的な研究をしている人の知恵もかりておりますが、今旅客であると、ホームに列車がとまる、ドアがあく、人が乗る、ドアが閉まる、すぐ走る、長くてわずか一分。貨物でもわずか十分か二十分、それだけの停車でそういうことが今日できるはずだ。ホームの構造なりあるいはコンピューターを使う、あるいは荷役機械も改良する、そういうような形にしない限りこの貨物輸送というものは、釧路から出て帯広でとまってそこでまた組成をやる、また札幌へ来てやる、こんなことをやっておったのでは速さの面で価値がなくなります。ですから、私は貨物輸送のヤード方式ではなしに、新しい方法というものを技術的に採用しながら、今申し上げたようなことを、これは学者先生なんかの議論にも今のっているところでありますが、全く新しい、本当にだれが見ても長距離を直行で一貫して走るというようなことをやるべきじゃないだろうか、こんなふうに思います。
それから、北海道的に見ますと、貨物輸送といっても、今この秋には大量にバレイショでも、タマネギでも農産物がどっととれる、そして夏になるとすっかりかれてしまう、こういうような波動をどうするかということが、設備投資の問題とのかかわりで一つあると思うのです。ですから、私が前に堂垣内さんが知事のときに提唱したことは、十勝なり北見のあの土地の安いところに、とれた農産物を一年間保管するような立派な倉庫をつくって、そして東京にストックしておくのじゃなしに生産地でストックしておいて年間コンスタントに送るというようなこと、それと国鉄の貨物輸送とどう結びつけるかというようなことを改めて産業政策として考えてもらえないかということを提起したこともあります。今も道庁なんかにはそういう提起をして検討を願っているところでありますが、今までの概念じゃなしに、今度はかなりしっかりと新しい形の貨物輸送をつくり出す、こういうような考え方でやると、十分にこれは需要もあるし、それから価値のある輸送体系というものがつくられていくだろう、こんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/359
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360・西中清
○西中委員 どうもありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/360
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361・三塚博
○三塚座長 阿部昭吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/361
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362・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 佐々木公述人それから武井公述人に伺いたいのでありますが、雇用問題、今北海道は非常に漁業もそれから炭鉱もあるいはその他大変厳しい。そこへ、国鉄のこれから新たな進路を求めねばならぬ人がたくさん出てくる。これがみんな北海道から外へ出ていってしまわなければならぬというのでは、北海道はえらいことになる。同じような悩みは、私も日本海岸の東北でありますから肌で感ずるわけであります。
そこで、先ほどお話にございました、例えば長万部の工場をどのように生かすかとか釧路をどうするかとか、こういう本当になるほどと思うような御提言がございました。今、日本全体は、この数年間情報産業なりハイテク産業というものに一つのある進路を求めておったように思うのであります。北海道のこの国鉄を取り巻く状況は、単に国鉄内部だけじゃなくて、やはり北海道内にある地方都市の力というものを強めていかなければ北海道鉄道の進路というものもまた成り立っていかぬのではないか。そういう意味で、北海道全体の産業構造というものをどういうふうに展望なさっておられるかということをぜひお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/362
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363・佐々木宣
○佐々木宣君 私ども経済団体という立場で、ただいま先生のおっしゃった北海道産業経済の活性化を進めていって、現在の北海道経済というものの本州依存型といいますか、こういった形をやはり何とか自立する形へ持っていきたい、こういう目標でいろいろな問題について取り組んでおります。ただし、おっしゃるとおり現在の国全体の経済も多少落ち込みになってきております。それから、産業構造の転換といいますか、重厚長大から軽薄短小というようなことからいっても、例えば私ども企業誘致について非常に一生懸命やっておりますけれども、なかなか成果は上がってこないという実態にございます。これは、国内で地方に展開するよりは海外展開であるというような感じになってきておるわけであります。そんなことも含めて、我々は非常に苦慮しております。したがいまして、私ども今考えておりますのは、回り道かもしれませんけれども、まず地場企業の力を何とかしてつけていきたいということ、それを基本にして展開を図っていきたいということでございます。
ただし、現在、雇用問題につきましてはそう長い時間待っておるわけにいかない問題がございまして、先ほどこれにつきまして私が申し上げましたのは、やはり雇用の創出を含めて国の方でひとつ御尽力いただきたいということを申し上げておるわけです。やはり雇用の場を、今はなかなか難しいのですが、何らかの形でのプロジェクト、そういったものについて、私どももいろいろ知恵を出してまいりますけれども、ひとつ政府の方でも十分の御支援をいただきたい。
その場合に、もう一つ北海道で問題になりますのは、やはり需要が非常に少ないということ、このために企業進出はない。地場企業の振興を図っていってもなかなか需要がない。それから、私ども北海道の企業がそれなりの技術を駆使し、それなりのすぐれた経営力を発揮して本州なり海外に打って出るということは、理想でございますが、なかなかそこに至らない。需要を含めた何らかの対策についてひとつお願いいたしたいということを申し上げたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/363
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364・武井正直
○武井正直君 阿部先生の御指摘のとおりでございまして、雇用問題というのは北海道にとりまして一番大きな問題であろうかと思います。そういう意味で、先ほどお願い申し上げた点でございますけれども、その中で、鉄道輸送というのは、地方都市が発展するということによって人間の交流が盛んになるわけでございますので、地方都市を発展させるという御指摘、そういう産業構造に持っていく必要が御指摘のとおり私もあると思います。
そういう意味で、これは一例でございますけれども、例えば長万部とかあるいは釧路とか、そういうところに一大基地をつくっていただいて、今まで全部車両というものは本州でつくったものを持ってきて、域外で収支が非常に悪くなっているわけですけれども、これを北海道でつくれば、国鉄の優秀な技術で幾らでも雇用ができる。それから、特に千歳空港をエアカーゴの基地にしていただいて、そこにいろいろな施設をつくれぱ雇用の機会ができる。人口が流出するということは、労働力というものはそんなに流動性のあるものじゃなくて、家もあれば家族もいるわけですから、そんなに広域移転しろと言っても難しいじゃないかという先生の御指摘もそのとおりでございますので、そういったような施設を、一つのスタートをしていく上の条件という意味も含めまして、ぜひ御検討いただきたい。
それから、非事業用用地というのも、債務の返済ということだけでなくて、やはりそういうものも北海道の特殊性を御考慮いただいて、そういうところでいろいろな事業が展開できるような方法をしてそこに雇用を吸収していくということでないと、ほかの雇用条件が非常に悪いということは御指摘のとおりでございますので、ぜひそういうような方向で御検討いただければありがたいというふうに思う次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/364
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365・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 私は二十年間、国政の中における国鉄の問題のいろいろな検討、論議というものを経験してまいりまして、今感じておりますのは、今までいろいろな御意見ございましたが、労使の問題が一つあったと思うのであります。したがって、公共企業体でありますから、当然にここには政治が介入するという問題があったと思うのであります。私は、やはりこの労使の問題には政治は一切介入していかない、この原則を立てないといけない。特に今度は民間鉄道会社としていくのでありますから、労使の間に本当の信頼というものがつくられなければいけないのだろうと思うのでありますが、そういう点につきまして、小林陳述人に御見解があれば伺いたいのであります。
同時に、今お二方から言われました問題、さっき小林先生の方は、札幌がでかくなるのはよろしいというお話がございましたが、札幌がこれ以上でかくなって道内の各主要都市が衰えていくようなことになれば、北海道鉄道会社というのは逆に相当難しくなるのじゃないかという認識を私は持っておるわけであります。この二つの点をぜひお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/365
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366・小林好宏
○小林好宏君 第二の問題から先にお答えいたします。
札幌へすべて集中すればよろしいと言ったわけではもちろんございません。まず大前提は、今後も都市化傾向は続くという前提であります。北海道において、これだけ広い土地面積があるところで、しかも人口は限られている、そして都市化傾向が進む、こうなりますから、当然過密と過疎の共存ということは避けがたく起こってくると思います。したがって、そこでの問題は、札幌及びそれに次ぐ地方中核都市、そして地方中心都市への人口集積はむしろ望ましい、そこを結ぶ鉄道体系というものを考えるべきであろう。そうすると、町村部はどうなるのかということになってきます。したがって、幹線鉄道及び幹線道路と、それからいわゆる広域的な生活圏内を結ぶ輸送のネットワークをどう形成するかということになってくるわけだと思います。北海道は比較的車社会に似合っているわけであって、半径数十キロ圏内というものが同一の生活圏域に包含されることが可能であります。そういう北海道全体を構想した上で鉄道を位置づけるということが必要だと思うわけであります。
次に、前段の問題の労使関係、これは御指摘のとおり、公社という形態が必然的にもたらした結果だと私は思っております。つまり、賃金決定一つ労使間の交渉で自主的に決定できないというところから、必然的に労働運動は政治運動にならざるを得ないのではないかと私は思います。そういう欠陥を持っていたというところが根にはあると思います。しかし、国鉄の労使関係がなぜこのように悪化したかということについては、その途中のプロセスでいろいろな問題があったと思います。これをお話ししていれば大変長くなりますから、省略させていただきますが、これを私企業に転換することによって労使関係を改善することは絶対の条件であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/366
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367・阿部昭吾
○阿部(昭)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/367
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368・三塚博
○三塚座長 中島武敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/368
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369・中島武敏
○中島(武)委員 意見陳述者の皆さん方、大変御苦労さまでございます。
佐藤さんに伺いたいのですが、いわゆる二十三条問題、新しく分割・民営された会社ができますと、これは鉄道事業は引き継ぐのですけれども、この鉄道事業に不可欠な人間は引き継がない。一たん全員解雇になって、その上で差別選別の上に、気に入った者は採用する、気に入らない者は清算事業団行きで、これはまたこれで三年すれば首は切られる。しかも、新しい会社に採用される人たちも、どんな労働条件のもとで働くかということについては何も団体交渉する機会も権利もないという、これが今度の法律なんです。大変異常な法律だと私は思っておりますが、佐藤さんは法律家としてこの問題についてどうお考えになっていらっしゃるか、その点についての御意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/369
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370・佐藤太勝
○佐藤太勝君 先ほど戸田先生も御指摘ありましたように、今度の分割・民営化の手法、これはどうも今やられている例えば裁判所でやっているような手法ですね、例えば会社更生法的な手法をとると言いながら債務についても資産についても明らかにしないとか、ちょっと私には理解できないような手法で進んでいるのですが、今中島先生から言われた職員の採用についても、裁判所の考え方とは極めてかけ離れたやり方で進んでいく。
例えば、今御指摘のありましたように、職員の身分が承継されないという点は、六つに分割されても鉄道事業をやるわけですから、これは言ってみれば営業譲渡になるわけです。六つに営業譲渡をされたというふうに考えればいいだけのことであります。営業譲渡の場合に労働者の地位がどうなるかということについては判例がありまして、労働者が希望する限りは営業譲渡をされた会社に承継するというのが裁判所の基本的な考え方であります。これにも違反しているわけであります。現に、NTTとたばこ会社はちゃんと法律で職員の身分は承継するというふうに規定されているわけです。なぜ国鉄だけがそういう方法をとらないのかということについて、私はどうも納得ができないというか、わからない点であります。
それから、先ほど会社更生法の話が出ましたが、職員の身分についても団体交渉ができない、規定がないということになっております。例えば会社更生法の場合、更生計画を立てる場合に当然労働者に対する合理化という問題が出てきます。その場合には、会社更生法百九十五条で労働組合の意見を聞かなければいけないというのが法律の規定でございます。これと比較しても、今度の法律は団体交渉の規定がありません。これもやはりおかしな点だろうというふうに私は思います。
それから最後に、清算事業団に行く職員のことでありますが、清算事業団に行くまでの間に、二十三条を見ますといろいろな選別の可能性が何段階にもわたって規定されています。清算事業団に行きますと、結局国鉄の身分を離れて三年間で完全に解雇されるということを考えますと、これは実質的には整理解雇だろうというふうに私は思うわけです。整理解雇の場合どういう手続をとらなければいけないかというのは、これは最高裁判所の判例もありまして、四つの要件が必要だろう。そのうちの一つでも欠ければ整理解雇は無効だというふうになっております。一つは、整理解雇の必要性であります。本当に分割・民営化して十八万人体制で九万何千人の首を切る必要があるのかどうかという点、それから解雇を避ける努力をしたのかどうかという点、それから基準の妥当性の問題があります。当てはめの問題もあります。それからもう一つ重要なのは、労働組合と十分協議をしたのかどうかという点であります。このうちの一つでも欠ければ整理解雇は無効だ。しかし今出されている法律は、この四つの要件を充足するというふうには私はどうも思えません。団体交渉も否定されている、それだけで解雇は無効になるのではないか。日鉄法二十九条も同様でございます。そういう点から見ますと、今度の法律というのは最高裁判所の判例、これにも違反する法律ではないのかというふうに私は考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/370
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371・中島武敏
○中島(武)委員 今のお話とも関連するのですけれども、佐藤さんは国鉄の民営・分割反対の第一線で活動しておると聞いておりますが、人材活用センターの問題について伺いたいと思うのです。この問題をどういうふうに位置づけてとらえていらっしゃるか、また、そこにおける実態の特徴についてどう考えていらっしゃるか、このことについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/371
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372・佐藤太勝
○佐藤太勝君 人材活用センターは、私はあってはならないやり方だろうというふうに思います。
現在、人材活用センターに配置されているのはほとんどというか一〇〇%国労の組合員、そして全動労の組合員だろうというふうに思います。私が調査をしました運転関係で言いますと、第一次から第八次までで四百五十一名ですが、そのうち全動労が二百九十二名、国労が百十二名、動労の組合員の方がわずかいますが、しかしこれは転換教育を前提にしまして一時的に人材活用センターに配置されているだけであります。ですから、国労、全動労で一〇〇%、ほかの職場では多分国労は一〇〇%だというふうに思います。
そこで、この必要性ということでありますが、そもそも安全性なり正常な国鉄の運営を考えるならば、余剰人員ということ自体があってはならないというか必要のないものではないだろうか。運転の職場で申し上げますと、例えば運転士で言いますと、従来の運転時間を大幅に延長される。それから検修関係で言いましても、従来四十八時間の点検が七十二時間に延ばされる。そういう労働強化の中で人を余らせてきている。それが余剰員と言われるものであります。それを一括管理するということで人材活用センターに配置しているわけですから、そもそも余剰人員がそういうものである以上、その必要性は全くないのではないか。しかも、余剰人員を人材活用センターに配置して何をされているかというと、ほとんど仕事らしい仕事はさせられていない。例えばペンキを塗らされたり掃除をさせられたり窓ふきをさせられたり、あげくの果てはキリギリスをとってこいとか、ちょっと常識では考えられないようなことをさせられている。その反面、本来の仕事ではどうなっているかというと、人が足りませんので安全の上で大変大きな問題が出ているのではないでしょうか。
例えば十一月ダイヤが間もなく実施されますが、この十一月ダイヤ改正になりますと相当スピードがアップされるというふうに聞いています。しかし、御承知のように北海道の線路は必ずしもそのスピードに沿うような形でレールがきちんとしているとかポイントが改善されているといったようなことではなくて、危険性がかなり指摘されている中でのスピードアップです。例えば保線の関係でいいますと、人が減らされて人数が足りないために十分巡回ができないというような危険性が出されています。それから検修でも、そのスピードに合うような車両とか検修を考えますと、もっと人が要るはずです。その人を減らしておきながら片一方でそういうスピードアップを図るということは、これは安全の上からいうと大変大きな問題を提起しているのではないか。人材活用センターというのは、そういう意味でも大きな問題を投げかけているのではないかというふうに私は思います。
人材活用センターに行っている人たちの話を聞きますと、既にもう清算事業団行きだ、そのために今からOAの機器を習得しておけというような指示がどうもあるみたいです。そういう分割・民営化を先取りするようなやり方というのは、私はやはりやるべきではない、ぜひ国会の力でそういう既成事実を強行していくというようなやり方はやめていただかなければいけないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/372
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373・三塚博
○三塚座長 これにて質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
意見陳述者の方々におかれましては、お昼時間を挟みまして長時間にわたり真剣かつ貴重な御意見をお述べいただきました。まことにありがとうございます。
拝聴いたしました御意見は、国鉄改革諸法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚く御礼を申し上げるものであります。
また、この会議開催のために格段の御協力を賜りました関係各位に対しましても、深甚な謝意を表するものであります。まことにありがとうございました。
それでは、これにて散会いたします。
午後一時十分散会
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派遣委員の香川県における意見聴取に関する記録
一、期日
昭和六十一年十月十八日(土)
二、場所
高松港湾合同庁舎
三、意見を聴取した問題
日本国有鉄道改革法案(内閣提出)、旅客
鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に
関する法律案(内閣提出)、新幹線鉄道保
有機構法案(内閣提出)、日本国有鉄道清
算事業団法案(内閣提出)、日本国有鉄道
退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団
職員の再就職の促進に関する特別措置法案
(内閣提出)、鉄道事業法案(内閣提出)
、日本国有鉄道改革法等施行法案(内閣提
出)、地方税法及び国有資産等所在市町村
交付金及び納付金に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出)、日本鉄道株式
会社法案(伊藤茂君外八名提出)、日本国
有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に関
する法律案(伊藤茂君外八名提出)及び日
本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特
別措置法案(伊藤茂君外八名提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 細田 吉藏君
佐藤 守良君 野中 広務君
井上 普方君 上田 卓三君
石田幸四郎君 遠藤 和良君
工藤 晃君
(2) 現地参加委員
月原 茂皓君 森田 一君
(3) 政府側出席者
運輸大臣官房国
有鉄道部長 丹羽 晟君
日本国有鉄道副
総裁 橋元 雅司君
(4) 意見陳述者
株式会社四国新
聞社監査役 阪根 義雄君
日本労働組合総
評議会香川県地
方評議会議長 加治 美夫君
徳島商工会議所
会頭 布川 隆美君
交通問題評論家 田中 誉君
鉄道労働組合四
国地方本部委員
長 宮道 義幸君
四国学院大学講
師 橋本 了一君
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午前十時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/373
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374・細田吉藏
○細田座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会の委員長で、今回の派遣委員団団長の細田吉藏でございます。私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。
この際、派遣委員を代表いたしましてごあいさつ申し上げます。
皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、国鉄改革関連諸法案の審査を行っているところであります。当委員会といたしましては、各法案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地を初め札幌市、福岡市におきましてこのような会議を催しておるところであります。
本日、御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。
まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会運営についての議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言をなさる方々は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
なお、この会議におきまして御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをいただきたいと思います。
次に、会議の順序につきまして申し上げます。
最初に、意見陳述者皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
派遣委員は、自由民主党の佐藤守良君、野中広務君、私、細田吉藏、日本社会党・護憲共同の井上普方君、上田卓三君、公明党・国民会議の石田幸四郎君、遠藤和良君、日本共産党・革新共同の工藤晃君、現地参加委員として、自由民主党の森田一君、月原茂皓君が出席しております。
次に、本日、各界を代表して御意見を述べていただく方々を御紹介申し上げます。
株式会社四国新聞社監査役阪根義雄君、日本労働組合総評議会香川県地方評議会議長加治美夫君、徳島商工会議所会頭布川隆美君、交通問題評論家田中誉君、鉄道労働組合四国地方本部委員長宮道義幸君、四国学院大学講師橋本了一君、以上の方々であります。
それでは、阪根義雄君から御意見を述べていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/374
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375・阪根義雄
○阪根義雄君 阪根でございます。ただいまから意見を述べさせていただきます。これから申し上げますことは、断るまでもないことでございますが私の意見でございます。
結論から先に申し上げますと、国鉄の分割・民営に賛成であります。ただ、私、四国に住んでおる者の一人として、四国など三島の新旅客会社が今後長期にわたりまして安定的な経営を十分維持できるよう格段の御配慮をお願い申し上げるという条件をつけて賛成いたします。
最初に、分割・民営についての意見でございます。
今までよく言われておりますように、国鉄の経営が今日のように悪化いたしましたのは、言うまでもなく、モータリゼーションや航空輸送の発達、これに伴って大きく交通市場が変化いたしましたが、それに対して柔軟に対応し切れなかったというところに原因があるように思います。その最大の理由は、やはり公社という官僚的な組織が一つの限界を示したのではなかろうかと思います。総裁の権限は非常に限定されておりまして、給与、予算、設備投資、運賃など、経営の根幹をなすものが自主的に決められない、あるいはたくさんの関門を通らなければいけない。そのような状況の中では、手足を縛られたような状態とも言えます。そして、国鉄内に非常に優秀な人材を抱えながらもそれを十分に生かし切ることができなかった。そのようなことが経営の悪化につながったと思います。それからまた、公社なるがゆえに政治介入を受ける、こういうケースも間々あったと思います。民営になりますれば、以上申し上げたそのような二点は大きく改善されることは間違いありません。
また次に、全国一元的な組織では経営管理に目が行き届かず、画一的な運営になりがちであります。したがって、地域のニーズを十分に反映しにくい。しかも、組織内での安易な相互依存関係が生じるというような結果がもたらされます。そして、民間にあるようなシビアな競争意識というようなものが生じにくいということも言えます。
ところで、地方の新線建設などの過度の要望が経営悪化に拍車をかけたのではなかろうかという意見が多くあります。この点につきましては、私の意見は少し違います。
四国地方の例を申し上げます。四国地方ではいまだに電車は一メートルも走っておりません。瀬戸大橋が間もなく開通いたしますが、それに備えてやっと数十キロの電化工事が今行われておるとというような状態であります。営業キロも八百余キロで、しかもそれがほとんど単線であります。このような状態のままで今日に至ったのです。これは国鉄が大変巨大な組織であって、そして大都市圏とか本州が重点になってその対策に追われ、四国地方はすべて後回しになってきたためであります。ですから、長年にわたる過小投資のまま推移して今日に至ったということが言えると思います。この点、分割になれば地域の要望や実情に即した経営、これがきめ細かく実施することができると思います。
また、分割によりましてもたれ合いの関係がなくなりまして、責任体制が明確になってきます。これは大きなメリットであります。当然経営の厳しさというようなものを認識されて、地域間あるいは同業間の競争意識も触発され、企業も活性化すると思います。しかも、最もいいことは、地域社会との連帯、地元の企業だという意識が住民の中にも深まってきます。それだけに、企業が今後発展する余地ができてくるわけでございます。
以上のような点で、分割・民営に賛成いたします。
次に、四国の住民なるがゆえにあれこれと注文したい点もあります。三つほど申し上げたいと思います。
まず第一に、四国の輸送事情についてであります。現在も輸送人員が低下する、減少するというような状況が続いております。運輸収入は、今後、計画によりますと、資料によりますと、少しずつふえることになっております。しかし、輸送人員というのはむしろ減少を見込んでおるのが実情でございます。資料を見ましても減少いたします。つまり、毎年の運賃値上げをもって運輸収入の増加を図るというわけでございます。実際の営業収入を見ますと、例えば昭和六十六年度の営業収入の見通しは三百五十五億円となっております。運輸収入は二百八十一億円です。その差額が七十四億円。この差額については、バス部門や附帯事業、関連事業等による収入で補うということだろうと思います。ところが、六十年度の実績を見ますと、バスの収入は二十七億円、関連事業収入は十億円と聞いております。このような状態の中で新しい会社が発足するわけでございます。したがって、このような状況を打破しなければなりません。思い切った多角経営による増収を図ることが必要だと思います。それがまた新しい旅客鉄道会社の活性化をもたらす大きな原因でもあると思います。私鉄大手の鉄道運賃以外の収入を見ますと、全体の三〇%を超えております。多いところは五〇%を超えておるとも聞いております。ところが四国の場合は、現在約三%にすぎません。関連事業による収入が今後ふえなければいけない。そうしなければ四国の旅客会社が十分な経営を行うことができないとすれば、せめて一〇%ぐらいまで伸ばせるような体制をつくってほしい、このように思っています。そのために、法案によりますと、旅客会社法案の第一条には、附帯事業のほか運輸大臣の許可を得てその他の事業も広く行えるように規定されております。また一方、第十条では、中小企業の事業活動を不当に妨げたりあるいは利益を不当に侵害してはならない、このようにも言っております。まことに当然でございます。地元の中小企業とトラブルを起こすような経営のあり方ではもってのほかでございます。地元と調和を図り、共存共栄を図りながら、しかも新旅客会社が発展しなければならない、このあたりの政府御当局の御指導、ここらをぜひともよろしくお願い申し上げたいと思います。しかも、例えば多角経営に当たりまして小売業あるいはそれに類することをやろうと思えば、監督権限がまた違った省にわたります。そういう場合に、他省との連携その他についても十分な配慮をお願い申し上げたいと思います。
次に、四国の事情からしまして心配なことが一つございます。四国は台風の常襲地帯でございます。最近は余りありませんけれども、四十七年でございますか、土讃線繁藤災害が非常に大きな被害をもたらしました。そのころは国鉄全体での保険機構が働いたわけでございますが、これからは一社で危険を負担しなければならない。ですから、そういう点で経営の安定という面でお考えいただきたい。そのような場合に特別立法なりあるいは何らかの方法で救済できるような方法を考えていただきたいと思います。
いずれにしても、一番大事なのは、みずから努力する自助努力ということが欠かせません。これあってこそ会社が発展するわけでございますが、しかしその前に、やはり自助努力もその前提となる基盤の強化、これについての措置が必要です。そういう点では設備投資についても維持更新投資ということがうたわれておりますが、新しい電化等の近代化に伴う設備投資、ここら辺もお考えいただけたらという気持ちがございます。
三番目に、経営の安定基金でございます。この点について最後に申し上げます。
四国の場合は、つい先日の報道によりますと千九百二十億、二十億がついておりますが、千九百二十億になっておる。その利息が百四十四億。この基金は、国鉄清算事業団から二年間の据置期間を含めまして十年間で年利七・五%の元利均等払いということで支払いを受けるようになっておりますが、このお金につきまして、もちろん自分で稼ぐ部分を大いにふやして基金に頼らないでもいけるということが理想ではございます。しかし、やはり心配なのは、今後十年の間に物価の変動があるかもしれません。その場合に、基金自体の値打ちの目減り、ふえることはないと思いますが、目減りというような心配もあります。それからまた、現在の激しい金融市場におきましては金利の変動、これが起こるかもしれません。そしてさらに、この基金の元利払いが三年目から始まるといたします。そうすると、新しい会社におきます利子運用の上手下手というような問題が営業成績を大きく左右する、こういうことも考えられます。そういうもろもろの問題について考えなければいけない。ですから、物価変動や金利変動のリスクを避ける措置、そのようなものを考えていただきたいと思っております。
以上をもちまして私の陳述を終わりますが、最後に一言つけ加えさせていただきます。
交通体系というものは、陸海空のバランスがとれていなくては地域の健全な発展は望めません。幸い、四国地区では現在新空港とか本四連絡橋とか高速道路等の建設が軌道に乗り、めどがついてまいりました。そのような今日に鉄道だけが取り残されるようなことがあっては地域住民も不幸でございます。私ども地域住民は、国鉄と一丸となって今後大いに頑張りたいと思います。先生方の深い御理解を得たく存じます。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/375
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376・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
次に、加治美夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/376
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377・加治美夫
○加治美夫君 加治であります。
私は、意見を申し述べる前に、公聴会のあり方について一言だけ申し上げておきたいと思います。
国鉄問題については、既に新聞論調や投書欄などを見ても、国民の間にさまざまな意見がございます。それだけに、私たち各党推薦という形できょう出さしていただいておりますけれども、もっと多くの各層の国民の声が反映できるような公聴会を今後とも開催をしていただきたい、このように思います。さらに、会場ももっと広いところで、傍聴の皆さん方も四十人という非常に限られた人数ではなく、みんなが聞けるような状態というものがつくれないか。また、発言も十五分ということで私ども十分意見を反映することができません。したがって、十分な意見が反映できるようなことをお考えをいただきたい、こういうことを冒頭に申し上げておきたいと思います。
さて、私の意見ですが、陳述に当たっての基本的な考え方としては、政府原案に反対であるという立場でございます。ただ、国鉄の改革に当たって、事業範囲の拡大とか事業規制を排除するための民営的手法を取り入れる、こういうことについては賛意を表したいと思いますが、分割は絶対に行うべきではない。今回の政府案には総合交通体系についての視点が欠けておるのではないか、少なくとも二十一世紀に向かっての社会的交通サービスを確立する、そういう立場からの社会的な公共性、こういうものをどう追求をしていくのか、こういう立場を十分明らかにしながら策定をすべきではないか、このように考えます。
総論の問題について基本的にたくさんの意見がございますけれども、そういうことについて触れる時間がございません。したがいまして、せっかくいらっしゃった先生方に四国の実態というものをひとつ御理解をいただいて、この特に三島の中における四国の後進性、その中で一体分割・民営した会社がどうなっていくのか、こういう問題などについて私の見解を申し上げ、御理解をいただきたい、このように思うのです。
そこで、まず第一に、分割後の四国会社がどうなるか、こういう問題につきましては、経営は成り立たない、こういうことを十分御理解をいただきたいと思うのです。
既にこれは監理委員会にしても政府の原案にしても、今も御指摘ございましたが、六十二年度百四十一億、こういう赤字が出され、ずっとこの赤字基調が続くことは間違いございません。政府の資料などによりますと、収支試算は、輸送量微減、毎年六%の運賃値上げということで事業収入が伸びるようになっていますけれども、そうはならないと思うのです。なぜかといえば、六十三年度は本四架橋がつきますからある程度観光客は伸びると思います。しかし、六十四年度は高松に新空港がつきます。そういったことなどを考え、さらには今後高速道路網の整備、こういうようなことを考えますと輸送量は減少していく、こういうことは間違いないと思います。また、この資料の中でもバス部門が六十二年度三億の黒字などということが言われておるようでありますけれども、到底考えられません。四国のバス企業、私鉄バスは十三社ありますが、バス企業で黒字のところは一切ございません。すべて赤字であります。このことをとらえてみても、国鉄バスが今度は民間になって十三社のシェアの中に入って黒字になるということは、とてもじゃないが考えられない、こういうこともございます。また、四国の四十四ヘクタールの土地売却などが出されておりますが、これを見ても一等地ばかりです。そうなってまいりますと、新たな事業を起こすとしてもできない、こういう状況もあると思います。また、運賃値上げが進みますと旅客離れが起こる。六%の毎年値上げというのは、本土と違うわけですから、そういう形になりますとますます旅客離れが進む。それと同時に、この六%以上というのがどうなのかということを考えますと、最近の物価上昇というものは一、二%ぐらいの鎮静化でありますし、国民所得も横ばいだ。そういう中でいわゆる鉄道運賃が六%以上毎年上がるということについてどうなのか、こういうことについて四国の島民は非常に大きな問題を感じるのではないか、このように思います。
さらに次には、赤字の問題についてはいわゆる基金制度の問題がございます。この千九百二十億を中心とした基金制度とは一体何なのか、こういうことを考えた場合に、本当にこれが民活会社として認められるのか。民活会社なら、先ほども御指摘があったように基金がなくて本当に運営されていかなくてはならない。基金を担保してその利子運用でやらなくちゃならない、これはあくまでも国の負担に基づく事業ではないか。こうなると、純粋の意味で民活会社としての使命があり、その理解ができるのかどうか、こういうふうな問題がございます。また、公共交通のかなめである国鉄を変えるわけだから、そしてそれが赤字だから基金やむを得ないんだ、こうするならば、四国には十三の私鉄があるわけです。これも公共交通なんです。そこが成り立たないという状況なんです。来年以降は明らかに同じ私鉄となるわけですから、そうなりますとそれとの矛盾が出てまいります。十三社が、基金制度を私たちのところにも考えてもらいたい、こういうふうなことになると一体どうなっていくのかというようなことを私どもとしては指摘をせざるを得ない、こういうふうに思いますので、基金制度そのものについての問題点ということについても、確かに四国は基金がなければ成り立たないということは明らかなんですが、それが本当にどうなのかということについて御議論をいただきたい、こう思います。
時間がありませんから省略をいたしまして、先へ進みます。
次に、二つ目の大きな問題ですが、政府の経営見通しはあくまでも前提であると思います。したがって四国会社が、新経営体が今後どうするかということを考えますと、当然企業性、効率性が追求されます。何が考えられるか。四国の会社が考えるのは、どうしても赤字ですから何とか黒字転換したい、こうなりますと、一つは運賃値上げです。六%以上も上げなくちゃいけないじゃないかというふうな問題。運賃値上げを考える。その次に何かといえば、赤字路線の切り捨てしかございません。その次に何か。三つ目には、コストを下げるためにはどうするか、これは要員削減。四千名と言っておりますけれども、それよりももっと下がるのではないかと僕たちは思います。さらには人件費の削減、そういったもの。それから重大なことは設備投資の圧縮、こういったことを考えていくようになるんじゃないか。そうなりますと、運賃値上げは四国の利用者の反発を買います。さらに、四国の路線はすべて国鉄は今赤字なんです。そこでローカル線の切り捨ては島民生活に重大な影響をもたらします。それから鉄道を残すためにどうするかとなれば、ローカル線を切り捨てるぞとなれば、鉄道を残してくれ、そうなると、今度地方自治体が負担しなければなりません。既に国鉄バスが廃止になって町営バスになっているところもあります。地方自治体がやはり負担をする、そうなります。そうしますと、四国の島民四百万は大幅な運賃値上げが出てくる。自治体を通じてやはり鉄道の負担をしなくちゃならない。さらに十六・七兆億という国民全体の負担が出てくる。そういうふうに三重も四国の島民は負担が強いられていくようになるのではないか、こういう点が大きな課題として指摘をされるのではないかと思います。
さらに、大きな三つ目の問題としては、四国の鉄道基盤は全国最低なんです。今阪根さんも御指摘になったように、電化率はゼロです。複線化率三%です。コンクリートまくら木への転換率も八%です、全国四〇%と言われておりますけれども。そういう中で今一部だけ電化が行われていますが、これは香川県の本当の一部だけです。これは分割・民営を前提とし、六十三年の瀬戸大橋を見越しての電化ですが、もうこれで打ち切りにならざるを得ません。四国島民は全島における、特に県庁所在地間における複線、電化などというのは悲願です。これはとてもじゃないができることはありません。
さらに、この五年間の設備投資を見ても、これは現状維持がやっとで、今までより少ない設備投資額です。これからは車両更改も、今日まで本社がやっておりましたが、自力でやらなければなりませんが、現在の四国の車両はほとんど耐用年数が来ております。五年間には完全にほとんどの車両が来てしまうという状況であります。そのうち、電車を含めて百両の購入を今年度行っておりますけれども、それだけではとてもじゃないがこれは不可能であると思います。昨年十一月二十二日の四国新聞でも、老朽車両での故障続出とか、膨大な補修費が必要なんだとか、一つ間違えば大事故につながる、こういう指摘がなされておるということについても明らかにしておきたいと思います。
さらに、四国の鉄道は今日まで災害も多くて、今阪根さんも指摘をされたように、雨が多いとか、活断層の構造的な部分だとか、トンネルや橋梁が多いとか、そういうことなどを考えますと、四国の防災施設、こういうことに対してのこれからの投資という問題がたくさん要るわけですけれども、それが不可能になってくる、こういうことを御理解いただきたいと思います。
四番目に、私は労働者の立場から雇用問題についてどうしても触れておきたいと思うのです。
その中ではまず第一番目に、国鉄改革法二十三条は、これはどうしても見直していただきたい。私は、極論を言えば、これは労働組合を否定するのではないか、労働者の権利を奪うのではないか、現在の憲法や労働関係法の労使関係のあり方というものを根本から変える問題ではないか、そして九万三千人と言われる人たちの首切りを強行するような、これも言葉が過ぎるかもわかりませんが、国家的な不当労働行為ではないかと言わざるを得ないのです。そういうことで、具体的中身については時間の問題がございますので省略をいたしますけれども、二十三条についてはどうしても納得できません。そういうことを明確にしておきたいと思います。
さらに、二つ目には、現在国鉄の内部では人活センターや職場において不当労働行為が本当に行われております。四国の中でも五十九カ所、三百八十名余りが一方的に今人活センターに配置されています。それは明らかに清算事業団への選別というものが前提になっています。そして、その中身はほとんど国労の幹部なんです。活動家なんです。そういう人たちを中心にして配属をしておりますし、またこの配属の仕方についても全く一方的で、私たちが聞いた限りでも、これは重大な配置転換ではないか、こう指摘せざるを得ません。具体的には時間がありませんから言えませんけれども、これはいつからいつまでとか、どういう理由だとかいうことなどについては一切明らかになっておりません。そして完全に労働者と切り離して別のところに置いている。また、中には同じ仕事をしている人もおるのです。それなら人活センターに配置しなくてもいいわけなんです。そんなことも行われておりますし、現実に人活センターに行っている人たちは、もう頭を殴られたような気持ちだというふうなことだとか、家族にも言えないとか、本当に精神的な負担、仕事のえらさよりも精神的なつらさというもの、本当に血を吐くような、涙が出るような発言がある。このことについて御理解をいただきたいし、この人活センターの設置目的が増収施策とか経費節減とか教育とか言われておりますけれども、その実態とはかけ離れている、こういうことについてやはり理解をしておいていただきたい。
さらに、人活センターに活動家が行っているものですから、職場の中では不当労働行為が横行しています。九月十三日の朝日新聞の香川版に載っておりますが、多度津の車両所などで助役だとか課長などが、もうこの組合におったら新会社は採用しませんよ、こういうことなどが職場の点呼の際に言われる、こういうふうなことなどについては大変な問題だと思うのです。そういうことなどについても私たちは指摘せざるを得ません。そしてその裏で、きょうの毎日新聞で明らかになっているような資材隠しなどが四国総局でも行われているということなどについて、国鉄当局の態度について厳重な抗議をしなければならぬ、私はこのように思います。
四番目に、余剰人員と言われる人たちの再就職先は残念ながら四国にございません。四国は千名の人たちが今から予定をしています。そしてさらに千名。これは御承知のように適正要員四千名。さらにそれ以上に、六十三年の本四架橋開通で船舶がなくなるだとか国鉄の駅が改革されるとなりますと、さらに大幅な要員減が想定をされますけれども、現在四国の中ではこれはほとんど考えられません。現在県を初め自治体で努力をされております。私たちも県などとも話をして努力をしておりますが、それでも二百名強ぐらいしか見通しがないと思うのです。民間の中でも、NTT二十名とか電力三十名。四国には残念ながら大きな民間企業はございません。どこでも合理化をしているのです。そういうことからいきますと、全部足したって三百ぐらいしか四国にはできぬのじゃないかと私は思うのです。さらに求人倍率は、全国的よりここは非常に悪いのです。高知県は〇・三、徳島県でも〇・四か〇・五、愛媛県でも〇・六、香川県が何とか〇・九を維持しておったとしても第三次産業が主体です。中高年齢層の仕事はほとんどありません。そういったことから見て、四国の問題については雇用関係はほとんど行き先はない、こういうことがございます。
特に本四架橋について監理委員会の答申は、本四架橋がつけば連絡船は廃止すると言っていますが、この点はひとつ何としてももう一遍お考えをいただきたい。これは五十三年の中央における政労交渉の中でも、船舶業務は確保する、こういうふうなことにもなっておりますし、四国島民は、何としてもこの船舶業務は残していただきたい、こういう強い希望があることを申し上げておきたいと思います。
若干時間をとりますが、最後に一言だけまとめとして申し上げさせていただきたいのですが、百有余年の歴史を持つ国民の財産である国鉄の大改革です。したがって、この審議の進め方について、私は、この百七国会で決定することについてどうなのかということについてやはり意見を言わざるを得ないと思うのです。
最初に、来年四月がタイムリミットなんだということを前提としてこの百七国会で上げるということについては問題がある、こういうことを指摘せざるを得ません。最近の新聞論調はどれを見ても、この間の九月三十日の朝日新聞社の社説でも、法案成立を政治的な業績とするのではなくて国民のための真の鉄道再生の道筋を探し当てることだというふうなことを指摘されて、公共性の問題、ローカル線の問題、長期債務、土地処分、余剰人員、いろいろな角度から多くの問題が指摘をされています。そうなりますと、本当にさまざまな意見があるわけですし、私たちも十分納得できるようなものはないわけでございますし、今日の状況を見た場合に、本当にこれが議論として、百四国会、百七国会ありますが、ほとんど議論は行われていない。今ようやく審議が行われた段階だと思います。そういう段階で、十一月上旬には上げるということについては、これはいかがなものか。もっと本当にあらゆる立場から多くの議論に参加をしていただいて、そして方向性を決めていただく。国民参加のもとで国民すべてが納得できるようなものにすべきではないか、こういうことを申し上げたいと思うのです。
四国では、この分割・民営に対しては自治体の意見書、決議を四県議会で、市は三十市の中で二十七、百四十五の町の中で八十一、それだけの圧倒的なところで意見書採択をして、再考をしていただきたい、こういうことを申し上げ、さらに四百万島民の中での有権者百十万を上回る反対署名なども去年からことしになってやられておるわけです。したがいまして、四国の分割・民営、特に分割については、どうしても先ほど申し上げたような立場からすべきではない。ここで行われますと、四国の島民四百万は切り捨てられる、将来の四国の鉄道についてはとてもじゃないが再生不可能である、四国の問題については将来に大きな禍根を残す、そういうことになることは必至だと思いますので、ぜひとも国会の中における慎重審議を御理解をいただいて、少なくとも社会党案を中心として徹底的に議論をしていただいて、四国の島民も十分納得できるようなものをつくり上げていただきたい、私はこういうことを最後に申し上げて、少し時間を超過したことをお許しいただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/377
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378・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
次に、布川隆美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/378
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379・布川隆美
○布川隆美君 布川隆美でございます。私は、商工会議所の会頭という肩書でございますが、もちろん本日の公述人としては個人の私の意見を述べさせていただきたいと思います。
商工会議所というのは中小企業の集まりでございまして、私自身も中小企業でございます。私自身の経営の感覚から私の結論を先に申し上げたいと思いますが、国鉄の民営・分割に賛成でございます。
経済活動をするのに国営とか官営の時代はもうとっくに終わっておるという認識でございます。官僚的という言葉もあります。硬直的とか固定的な、そして親方日の丸式というような言葉もあります。そういう危機感を持たない感覚では、この変化の激しい時代には対応できないと思います。もちろん、官僚というものが明治以来の日本の国家の近代化に大きく貢献したということを否定するものではありません。立派な官僚が、そして国を思い郷土を思うその心が近代国家日本をつくったということは事実でございます。しかしながら、経済活動において今言う国営とか官営という時代はもう終わったという考え方でございます。これは既に歴史が証明し、国会でも論議し尽くされておりますので省かせていただきます。
国鉄民営後六社分割の賛成の理由でございます。実は私ごとを申し上げて失礼なんですが、私は戦後二十二年にビルマから復員してまいりまして、二十三年から自来三十九年間、この三十九年間に実は私は会社を十一ぐらいつくりました。三年か五年置きに次々とつくったわけでございますが、その間に吸収したり合併したり、あるいは解散した会社もあります。現在七社の経営にタッチをしております。まだ現在、七社のうちの二社は社長を務めております。あと五社は会長ということで経営の第一線から退いておりますが、そのグループの従業員は全部で八百八十人ほどになっております。七社で八百八十人ということですから非常に小さな、いわゆる中小企業ばかりでございます。
そこで、なぜ一つの会社でやらなかったのかということでございます。近代産業の発展は、いわゆる標準化あるいは規格化、分業化、集中化、極大化の方向に走ってまいりましたが、それぞれの産業において、またそれぞれの経営能力によって、適正規模というものがある。大きいだけがいいものじゃない。いわゆるスモール・イズ・ビューティフル、小さいものが美しいんだ、小さいことがいいことだという、いわゆる小さい方が効率的で変化に対する対応も非常にしやすいということでございます。例えて言うならばコミュニケーションの問題にしてもそうでございます。百五十名とか二百名というような仲間同士みんながお互いに顔を見合わせながら仕事ができる、コミュニケーションにおいても効率的でございます。また、ハンドリングにおいても効率的でございます。わざわざ長い長いコンベヤーをつくらなくても、手から手へ渡せる。それはハンドリングにおいても、ただ運搬ということだけでなくて、あらゆるものが効率的でやりやすいということが第一点でございます。
第二点目に、人間尊重の立場からいっても小さい方がいいのではないかという考え方を私自身は持っております。いわゆる近代産業が発展して、先ほど言ったように分業化されています。かごに乗る人、かごを担ぐ人、そしてそのわらじをつくる人というようにだんだん分業化されてまいりました。小さな組織では、一人とかあるいは少数の従業員の能力と行動によってその成果というものが会社の業績にすぐに響いてまいります。そしてその業績の向上について、その人あるいはその人たちの評価というものがみんな万人が認めるところになります。正しくいわゆるトップからも仲間からも評価される。人間というものは、自分の能力をフルに活用したい、そしてその業績が正しく評価されるということに喜びを感じ生きがいを感じるものであります。人それぞれの生活に潤いと喜びを与えることが人間尊重のベースであろうと思います。それには、適正規模というものもあるけれども小さい方がいいのではないかというように思います。
三番目に、最近、活力とか活性化するということがよく言われておりますが、私たちの経済社会においては、それは世の中に変化が起こりイノベーションが生まれてくる。そのイノベーションの過程において、その変化に対応しようとそれぞれが競い合う。しかしながら落ちこぼれもできます。そしていわゆる敗者、負ける者も出てまいります。私は徳島県人ですが、徳島では有名な阿波踊りがございます。阿波踊りのはやしにこんなはやしがある。「わたしゃ負けるの大嫌い 新町橋まで行かんか コイコイ」こういうはやしがあります。そのはやしにつれて踊り子が、私は負けないようにといって一生懸命に踊っている姿が美しいということで世の中でもてはやされているのでありますが、負けないように、落ちこぼれないように生き生きと活動する姿がいわゆる活力あるあるいは活性化ということであると思います。
そこで、先ほど来いろいろの人たちが四国鉄道が小さいから非常に将来性について危機感があると言われております。小さいものはいつも危機感を感じて存在しておるものであります。私たち中小企業はこれで大丈夫だ、今もう景気がいいから大丈夫だ大丈夫だなんて思っている経営者は一人もないと思います。いつも危機感を感じて存在をしております。また、先ほど申し上げましたように、自分の能力を精いっぱい活用したいという自主性がございます。自分がやらなくちゃという自主性、いわゆるこの危機感と自主性こそが活力の源泉であると信じております。私自身四十年近く経営に携わって具体的な経験から民営・分割が最上の策と信じます。少数精鋭主義という言葉もありますが、それは精鋭が集まってそして少数でやるというのではなくて、少数にしたら精鋭になる、こういうようにも思います。
しかしながら、小さな会社にしたら何でも成功するのだろうか、そうはいかないと私は思います。まず、その企業が時代の流れに合っているのだろうかどうだろうか。また、経営し運営する人材はおるのだろうかどうだろうか。それから、いわゆる金はあるのだろうかどうだろうか。設備投資は万全なのか。あるいは、私たちの経営でも三年、五年という初期においては非常に苦しい時期がございますが、その苦しい時期を乗り越えるだけの資金というものは十分あるのだろうか。四国鉄道はモータリゼーションの時代に逆らっております。これは時代に逆行している事業体だと私は思います。それならば必要以上と思われるぐらいに人材と金を集めておかないと破綻を来すということは火を見るよりも明らかであろうと思います。それと、やはり四国鉄道を育ててやろうという世論とファンを四国島内につくらなければ決して運営はできていかないのではないだろうか、将来性はないと思います。
私は、国鉄は技術集団だというように思っております。世界一正確な時間運営の技術、世界初の新幹線、リニアモーターカーの技術、世界一長い青函トンネル等の世界一の技術をたくさん持っております。それだけではありません。いわゆる優秀な技術集団であります。この技術集団の技術者の再配分、いわゆる中央集中ではなくて地方に、いや地方にこそその配分を厚くしなければなりません。東日本、それから東海、西日本地区以上に四国鉄道に人材を再配分しなければやっていけないというように思います。
また、先ほど来申しておりましたが、再雇用の問題でございます。大企業と中小企業の格差は何かといったら、人と金でございます。いわゆる人材の差というものが大企業と中小企業の差だと私は思っておるのですが、中小企業は優秀な人材が少ない。少ないということは優秀な人材を求めておるということでございます。この再雇用についても、中小企業に優秀な人材を配分し、大企業、先ほどNTTあるいは四国電力の話が出ましたが、そういう大企業には単純労働者を配分するというぐらいの配慮がないと、私は四国の企業のコンセンサスあるいはファンはつくれないというように思います。そういうように中小企業に優秀な人材をあっせんしたならば喜んで受け入れられるだろうし、その人材で、先ほど言ったその人の能力と行動によって企業の業績が上がるということは、その人を通じて、人材を通じて、たくさんの国鉄ファンができるということでございます。そういう配慮をしなければならないということであります。
また、それと同時に、もう既に四国各県知事からも要望書が出ておりますが、創業時までにやらなければならないこと、それは電化の問題、あるいは高架事業をやりかけてそのままになっておる、あとは自己資金で設備投資をやりなさい、そういうようなことではなかなかやっていけれない。四国県内全部、幹線は電化をする、あるいは高架事業を実現する、またその設備資金と、それから未完成部分における投資効果、それは今未完成のものでそのまま置いておいた方がいいのだろうか、八分どおり、九分どおりできて、あとわずかな金で完成するならば、それは四国島民のためにどれだけプラスになるか、どれだけの収入が上がるか、十分に考え直す。そして、先ほども話がありましたように災害が四国はたくさんあります。そのときの備えは十分にできておるのだろうか。運転資金等いわゆる経営安定基金も十分配慮した上で民営・分割ということに賛成をいたしたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/379
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380・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
次に、田中誉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/380
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381・田中誉
○田中誉君 田中でございます。
先ほど加治さんの方から公聴会のあり方についての意見が出されましたが、私は公聴会に出席する意見陳述人に対する扱いに問題があるということをまず冒頭申し上げたいと思います。
私の家に十五日の日に配達証明で、政府提出の八法案それから社会党提出の三法案が実は送られてまいりました。三日前であります。しかし、法案に関連する国鉄改革関連法案関係資料集は送られてきていません。これは当然具体的な資料があるわけですね。それから、マスコミでも既に発表されておりますが、各政党が要求をして出された資料も全然送られてきていないわけです。一応私は独自に入手いたしましたが、これだけ、社会党、共産党、公明党、民社党の方から実は約三百枚ほどの資料がございます。私がなぜこれを言いたいかといいますと、私ども意見陳述人は、法案をどうこうするということじゃないんですね、分割・民営化によって四国はどのように変化をしていくのか、それはやはり具体的資料を見なければわからないわけなんです。これでは形式的なものに終わってしまうし、私ども陳述人にすらそういう扱いをしているわけですから、四国県民は問題点を知ることができないという状況になっているわけです。したがって、私は徹底したデータの公開と納得のできる場というものが改めて必要だということをまず申し上げておきたいと思います。
それでは、これから意見に入りますが、私は、政府法案に反対をして、社会党法案に賛成する立場から意見を申し上げたいと思います。
まず初めに、再建を学ぶということで、昨年、折からの再建ブームということでございましょうか、国鉄四国総局が十六回にわたりまして、千六十六人が奥道後の研修に実は入っています。三泊四日ということで二千二百万円、四国にとっては大変な金額でありますが、いわゆる坪内経営理念を学ぶということで朝から夜遅くまで徹底した学習をされたようであります。さて、それから一年であります。現在の来島グループの経営というものは、銀行が関与しなければ実は再建できないというふうな状況になっているわけです。私は、坪内さん自身は一般の雇われ経営者でありませんし、私欲のない立志伝中の人であるということについては評価をいたします。私が言いたいことは、これはやはり構造不況というものであり、世界的な日本の経済の言うならばもろもろの情勢というものが、今日のそういった状況を実は持っていると思うのです。そうすれば、国鉄は財政が破綻をした、こういうことで分割・民営化論というものが打ち出されているのですが、それでは国鉄の財政の破綻というものを構造的に見たら一体どうなのか、こういう意味でまず奥道後の研修の教訓というものをもう一度学んでいく必要があるのではないだろうか、私はこれからの意見陳述でまずそういう基本的な考えを持っているということを申し上げたいと思います。
もう一つは、実は分割・民営化は来年四月一日からじゃないのです。既に十一月からダイヤ改正で多くの合理化なりダイヤの編成が新たになっているわけです。そこで、私が松山から高松に来るときに、素朴な利用者の意見としてぜひ地方公聴会では話をしていただきたいということもありました。それは、十一月のダイヤ改正で予讃本線、いわゆる高松—宇和島間はキロ数にすれば約三〇%弱でありますが、取扱収入は約七割という四国の中では最大の幹線である。県庁と県庁を結ぶという立場で松山から高松について申し上げますと、上り列車で申し上げますと、今までは急行列車が九本、そして特急列車が四本でありましたが、今回は特急が十三本、急行はわずか一本ということに実はなってしまいました。しかも平均時速が六十三キロにダウンをしているわけです。三時間を切っておりました特急列車の大半が、急行列車並みの三時間を超えるという運転時分になっています。急行列車の停車駅と同じところへとまるわけですから当然そうなってくると思います。そうしますと、急行料金の千円が、特急料金の二千円を払わなければ乗れないという形になってくるわけですね。今までは急行列車を定期で利用しておりました方もできなくなるという状況がある。まさにこれは分割・民営に向かってのふんだくりではないのか、実はこういう意見が出されています。また、特急の新型車両がそういう形で入ってまいるわけですが、もう一つ普通の車両が二十一両入ってまいります。高松を除いた三県に配属をするわけでありますが、これにはトイレは一切ついていません。国電区間、電車区間ならいざ知らず、こういったところは一時間に一本しか列車が走らないわけですが、お年番りや子供さんが乗る場合にトイレのない車が果たしてサービスになるのだろうか。これが実は来年四月に向けてのダイヤ改正の実態だということをまず素朴な利用者の意見として申し上げておきたいと思います。
そこで、私は、国鉄財政の破綻の問題というものは、やはりその原因と責任というものをこの際明確にしていただきたいと思っております。
昨年十一月五日に高松で再建監理委員会の地方懇談会が持たれました。当時、二十二兆円という長期債務を発生をしたことで財政破綻をしたのだから分割・民営化をするのだということで亀井さんも実はおっしゃったわけなんです。最近の国会でも多少債務の内容が明らかになりつつあるわけなんですが、例えば八月二十七日に発表した六十年度の決算、赤字が一兆八千四百七十八億円であります。しかし、損益勘定の一兆二千百九十九億円、工事勘定とか特別勘定の利子の支払いを入れますと一兆六千三百五億円に実はなっているのです。利子の問題が言ってみれば長期債務によって引き起こされた最大の赤字の原因になっています。そういう立場で、例えば赤字を出した昭和三十九年から六十年までの工事経費を見ますと約十四兆円であります。その間に利子を約八兆円払っております。また、昭和五十三年以来、国鉄の経営の責任でないということで、構造的な要因として特定年金なり特定退職手当の累計額が両方合わせますと四兆二千億円にもなっています。さらに東北・上越新幹線の資本経費が一兆四千億円もある。こういうふうに赤字の発生した原因というものがそれぞれ実は出てくるわけなんです。したがって、国鉄にはどのような責任があるのか、そしてその手当てを怠ってきた政府について一体どのような責任があるのかということを明らかにすることによって、この国鉄の分割・民営化の基本的な問題の解明がされていくのではないだろうかということを私は申し上げたいと思います。
同時に、今回、来年度末には二十五兆円の債務だということを言っておりましたが、これに加えて三十七兆三千億円というように債務が水増しをされました。年金負担分なり三島の基金、余剰人員の対策費、鉄建公団なり本四公団のそういったもの約十二兆円というものが水増し債務とされたわけです。なぜそういったものを国鉄の赤字に押しつけて、さも三十七兆三千億円も赤字があるということを国民の前に示してきたのかということについての大きな疑問を私は持たざるを得ないと思うのです。そういう点で、まず私は、国鉄財政の破綻の原因とその責任というものがこの特別委員会の中でより明確になっていく、そのことによって正しい根本的な改革ができるということを申し上げておきたいと思います。
さて、それでは分割・民営化で地域密着型の言うならば鉄道の経営ができるのかどうかという問題です。私は、実は四国の鉄道経営は成り立たないという結論を持っています。これについては、一つは鉄道事業では四国の場合は伸びる余地が一切ありません。例えば、最近第三次特定地方交通線に指定されました中村線があります。この中村線は四国の九つの線区の中で一番営業成績がいいわけなんです。四国の九つの線区の営業係数は約三〇〇というふうになっておりますが、中村線は二六五であります。赤字が九億円だというふうに言っておりますが、委員会に出されました資料によれば、特定人件費なり長期債務を差し引けば五億五千万が中村線の赤字だということになっています。二番目の営業成績のいいのが予讃線で二百五十三億円の赤字であります。二七五という数字であります。一番営業成績のいい中村線を廃止をするところに四国の鉄道の置かれている状況というものをまず理解していただきたいというふうに思います。
それから問題は、昨年七月二十六日に再建監理委員会が意見書を出しました。そのときは六十二年度の収支の見通ししか出さなかったわけです。国会でいろいろ議論がありまして、昨年の九月十一日、第百二国会でようやく再建監理委員会は六年間の収支見通しを出しました。それと今回委員会に出されました政府の見通しの収支には大きな開きがあるわけなんであります。言うならば、収支見通しのギャップが非常に大きいというふうに言わざるを得ないと思っております。しかも、これは意図的にやられたかもわかりませんが、六十六年度には六億の利益が十二億というふうに実はしているわけなんですね。これは株式を売却するためにはそういう経営成績にしなければならぬということがあるかもわかりませんが、同時に、輸送量と営業収入との間の整合性がないということを私はまず指摘をしておきたいと思うのです。
例えば「鉄道旅客部門の輸送量及び運輸収入の推移」がありますが、ここでは昭和六十三年度には前年に比べて七・二%、いわゆる十六億三千万人キロの輸送量だということになっております。これは約三百六十万人輸送量がふえるという中身なんです。多分これは本四架橋に関連しての一つの問題かと思います。ところが、鉄道旅客会社の収入を見てみますと、そこにはその収入の整合性は一つも見当たらないという状況があります。ちなみに、六十二年度は三百億円の営業収入に対して六十三年度は三百十三億円ということで四%台。四国の場合は、昨年四月に五・五%の運賃値上げをして、そのはね返りというものはわずか二%なんです。全社的に見れば、新幹線の収入の伸びで、五・五%の平均の運賃値上げで、国鉄全体では七%の増収に結びついているわけです。先ほどもお話がありましたように値上げをすれば旅客離れ現象を起こしている、そういう状況が依然として四国の中で続いておりますけれども、本四架橋に関連するそういった輸送量と営業収入との整合性が見当たらない。こういう言うならば大きなギャップの中でこの収入の見通しの根拠というもの、例えば本四架橋の開設に伴って、あそこの資本経費は三十七兆三千億円の中に入れておりますが、いわゆるランニングコストすらも不明のままで計算をされておるというところに私は大きな問題がありはしないかというふうに思っています。
さて、その中で、これからの自立ができないという要素として四国の交通網の問題、これを一応展望しなければならぬと思います。六十四年度に高速道路がかなり発展してくるだろうと思います。高松空港も、先ほどのお話にありましたように六十四年の開港であります。そういう状況の中で、設備投資につきましても、言うならば香川県だけが分割・民営化を前提にして電化が実は実施をされます。都市圏の輸送の便利さ、そこに生きる道を一応図ろうとするならば、四国の鉄道の将来展望の中で三県庁の所在地にそのことができ得ないというところに、私は四国の鉄道の言うならば将来というものは見出すことはできないと思っています。
また、関連事業についてもあります。鉄道事業の限界があるとすれば関連事業で生きる道があるのかということです。現在国鉄は、鉄建公団、帝都高速度交通営団を加えて百二十一社に千三百二十四億円の出資をしています。三島を見てみますと、九州にはバスターミナル、ステーションビルなど四社に六億六千万円の出資をしています。北海道では旭川、札幌などにターミナルビル、臨海鉄道など六社に十一億九千万円という出資をしています。しかも、九州には博多から新幹線が延長されるという整備新幹線の問題が浮上しているわけであります。北海道も新幹線の工事線昇格が間近になるという状況になっています。そういう点を見ますと、鉄道事業以外の生きる道についてもそういう状況にならざるを得ないと思います。
やがてローカル線が切り捨てをされるという運命にあるのは、本来、再建監理委員会は五十八年、五十九年の提言の中では、ローカル線は分離しなさいという提言だったのです。これを意見書では一緒にするということです。地域活性化を図るというのです。ところが実際は政治的な判断で、一緒にしなければローカル線廃止反対運動が起きるからという一つの配慮の中でやられたということは、事務局の内幕の中で明らかになっていると私は思います。
同時に、これほどまで手厚い保護をしている。例えば基金制度というものは、これは内部補助の変形であります。やはり先行き不安というものを持っています。これだけの手厚い保護をするならば、なぜ現行の状況にならないのかという大きな疑問を私は持っています。
もう一つは関西一の災害線区ということで、委員会資料の中にも、過去十年間全国の大型災害復旧工事十億円以上の調査の中で四国は七回も実は該当しているという事実があります。意見書の中にはそういったことは触れていないわけですね。そういう点も私は意見として申し上げたいと思います。
さて、次に連絡船について申し上げたいと思いますが、利用動向調査についても、大鳴門橋、坂出—児島間のDルートの開通に伴うところの輸送量の残存率が依然として百万、二〇%も残されるという調査の実績もあります。したがって、私は、宇高連絡船関係労働者の雇用保障、船舶関係業務を確保するというこの協定に従って中型連絡船として残すことを提起をしておきたいと思います。
次に、貨物輸送であります。四国の貨物輸送は激減の一途をたどりまして、六十年度は百四十万トンということで、急激な変化をしています。石灰石が九十一万トン、新聞紙が八万トン、うちコンテナが二十万トンでありますから、いずれにしても、政治的に残された貨物駅というもの、四国の貨物輸送は廃止をされるであろう、こういうことを申し上げておきたいと思います。
さて、そういう中で、国鉄バスにつきましても依然として路線の削減というものが出されています。したがって、そういう意味で、地域住民にとって欠くことのできないこの国鉄バスというものをあくまでも守るという立場の中で、それは現行の分割・民営化の中ではでき得ないということだけは申し上げたいと思います。
さて、第三セクターの問題が四国の場合でも発生をいたしました。一番営業成績のいい中村線が、言うならば会社の設立準備に実は入っております。その典型であります三陸鉄道が、今年度赤字を予想して運賃値上げという赤字の危機を迎えています。不便であり、運賃も割高である、見通しが立たない、こういう中で、地域住民にとっては二重の負担になる第三セクターという方向をとらざるを得ないという状況については、これは今日の分割・民営化のもたらす中身だと思います。そういう意味でぜひ御再考をいただきたいと思います。
同時に、四国には幻の新幹線ということで、新幹線は走りません。ステーションも新幹線が入らないような規格に変えたということも実は聞いています。一方、整備新幹線が浮上するということでありますから、そういったことについて私は十分再考をしていただきたいというふうに思います。
さて、国鉄改革法の二十三条については加治さんの方から話がありましたが、人材活用センターについては、九月二十日に松山市の有志の弁護士、十月十三日には多度津の車両所の報告が行われておりますが、弁護士は精神的アウシュビッツだということを実は指摘をしています。配属は労働条件の重大な不利益変更であり、人格権を大きく侵害をする差別行為と指摘している。ここに働く人は労働でなく苦役であるということが訴えられています。そういう意味で、私どもはこの改革法案には反対をしなければならないということを申し上げておきたいと思います。
最後に、一応私どもは、政府法案に反対をし、そして社会党の現実的な立場からの法案を知る立場の中で、特に社会党の法案は、今日の国鉄の三つの危機、経営の危機、機能の危機、雇用の危機を克服し再建することができるという立場の中で、今四国の実態から見てさらにその内容については強化すべき点もいろいろとあると思いますが、しかし、いずれにいたしましても、国民が国鉄の中でお互いに自由に行き来し、そして平等である、こういう二十一世紀に向けた交通政策というものが今何よりもこういった過疎の地域においては必要ではないかというふうに私は思っています。したがって、この政府法案ではまさに分割・民営をすることによって四国の鉄道というものは将来消えてしまいかねないような基盤を持っている、そういうことを申し上げまして、四国に対する今日までの設備の、言うならば政治的ないろいろな差別もありましたが、この社会党法案を通すことによって、私は、全国一社制、そして二十一世紀に向けた交通が守れるような方向でぜひお願いしたいということを申し上げまして、意見陳述を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/381
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382・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
次に、宮道義幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/382
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383・宮道義幸
○宮道義幸君 ただいま御紹介にあずかりました鉄労四国地方本部の宮道でございます。
本日は、民社党の推薦をいただきまして、国鉄改革問題について意見を申し上げる機会を得ましたことを大変光栄に思っておるところでございます。
内閣から衆議院に提出されました国鉄改革関連八法案の分割・民営化につきましては、私は基本的に賛成するものでございます。国鉄改革がなぜ必要か、国鉄の分割がなぜ必要かという点については先ほど阪根さんなり布川さんからの意見もございますので、時間の関係もございまして、賛成という基本的立場を明らかにいたしまして省略をさせていただきたいと思います。いずれにいたしましても、今回の国鉄問題は大改革であることについては間違いがございません。したがいまして、私は次のような問題点について意見を申し上げまして、先生方の御検討をいただきたいものだと思っているところでございます。既に阪根さんからも御意見が出ておりまして重複する部分があるかと思いますが、決して打ち合わせをしているわけではございませんので御了承を賜りたいと思います。
一つは、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案の第十条についてでございますが、「中小企業者への配慮」ということが規定をされております。中身的には「会社は、その営む事業が地域における経済活動に与える影響にかんがみ、その地域において当該会社が営む事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げ、又はその利益を不当に侵害することのないよう特に配慮しなければならない。」このように定められているわけでございますが、この条項は事業の制約につながるのではないかと思いますし、商売が自由に行われないことになっていくのではないかと考えるわけでございます。私どもは二十一世紀に向けて鉄道を走らせていかなければならない、このように考えておるわけでございまして、そういう意味からはぜひ四国鉄道における商売が自由に行われるようなことを御勘案いただきたいと思うわけであります。
御案内のように、四国、北海道、九州の三つの島は、経営安定基金の収益を事業運営の経費に充当し、赤字を埋めるわけでございます。したがいまして、三島は自前では黒字にならない鉄道会社であると言えると思うわけであります。
四国会社の経営見通しは、六十二年度営業収入が三百億円と推定されております。五年目の昭和六十六年度は営業収入は三百五十五億円で、五十五億円も収入増加を見込んでおるわけであります。先ほどもお話がありましたように、六%程度昭和六十三年度からの運賃値上げも見込まれておると思うわけであります。一方、輸送量の関係は、昭和六十二年度十五・二億人キロが六十六年度には十四・八億人キロで計算をされております。もちろん瀬戸大橋が開通後でありますが、〇・四億人キロの減少になっておるわけでございまして、そのことは、橋ができても昭和六十六年度は鉄道に乗るお客さんが減るということを示しているのではないかと思うわけでございます。また、バス収入を別にした鉄道による運輸収入は、昭和六十二年度が二百二十八億円となっておりますが、六十六年度は二百八十一億円でございまして、営業収入と運輸収入との差は七十四億円となっております。先ほどもお話がありましたけれども、今後は一層関連事業の収益を上げなければ収支が成り立ちません。したがいまして、民営になっていくわけでありますから、せめて商売を自由にやらせていただきたいと思うわけでございます。
四国会社はそれでは大企業かといいますと、四国には電力会社がありますけれども、小企業ではございませんけれどもまあ中企業程度の規模ではないかと私は思っているわけでございます。近年四国には大きな変化がこようといたしております。その特情を二点ばかり申し上げまして御参考に供したいと思うわけでございます。
一つは、六十九年から七十年にかけまして四国に高速道路が完成をされると言われておるわけでございます。もちろん部分開業もあると思っておりますが、高松—松山間が自動車で走りますと二時間程度で行けるということになるようでございます。ところが、先ほど特急のお話もございましたけれども、特急列車と比較をいたしますと、高松を出ますと五十分ぐらい自動車の方が早く松山に着くという結果になるわけでございまして、高速道路ができ上がりますと必然的に都市間輸送が自動車を利用することになるのではないかと思っております。鉄道の利用が大幅に減少し、幹線と言うべき予讃線が経営の危機を招くおそれがあるのではないかと考えておるわけでございます。したがいまして、私は、四国の旅客会社が高速道路による言うならば横断道路、縦断道路、これらによる自動車の旅客輸送と鉄道輸送を併用させていただいて運送が行われる道をぜひ開くように考えていただきたいと思うわけであります。四国の鉄道が今後二十一世紀へ活躍をするためには、やはり自動車と鉄道の併用による輸送方法が最も重要であるということを訴えておきたいと思うわけでございます。
二つ目には、反対側でございました加治さんなり田中さんからも意見が出ましたが、昭和六十三年に瀬戸大橋が完成されます。宇高連絡船の廃止の問題が再建監理委員会でも出されているわけでございますが、四国会社の企業を見た場合に、四国会社の企業に即した船の就航方法が十分検討されてしかるべきではないかと私は考えているわけでございます。
そのように特情的に、一つは高速道路、一つは船の問題、あるいは商売の関係、こういった点を考えまして、第十条に言われる「中小企業者への配慮」は、民社党の立場からいきますと少し問題はあるのではないかと感ずるわけでありますが、「中小企業者への配慮」の適用から四国旅客会社は特に除外をされるように、細田委員長さんほか委員の方に、特にこの法律の関係、難しい問題があろうと思うのですが、四国鉄道を将来に持続発展をさすために御勘案をいただきたいものだと思っているわけでございます。
第二点目は、経営安定基金の増額でございます。これも先ほど触れられておったようでございますが、私の方からも重ねて申し上げたいと思うわけでございます。四国旅客会社は、千九百二十億円の基金によりまして、昭和六十二年度は百四十四億円の利子収益により三億円の利益を得ることになるんだということが明らかにされております。民間である以上、労使が一体となって経営に努力し生産性を向上することは当然でありますが、先ほども御案内がありましたように、四国は来年の三月へ向けて電化の部分開業が行われていますし、高松—多度津間の複線化はできてはおりますけれども、肝心かなめの坂出—丸亀間の複線化ができておらない。瀬戸大橋が開通をしても確かにここらはネックになるところでもございますし、また電化の関係が今後どう進展をするか、あるいは複線化が思うようにいくのかという憂いや心配があることは事実であります。したがいまして、こういった問題を考え合わせるときに、経営基盤を今よりもさらに安定させてもらう、同時に社員全体の勤労意欲を高めさせてもらうといったところから、経営安定基金というものを、手切れ金というのかあるいは支度金というのか、こういった部分ではないかと思いますので、ひとつごろ合わせではありませんけれども二千億程度に増額をされるようにぜひ御検討をいただきたいと考えておるわけでございます。
第三点は、大災害に対する復旧工事の問題でございます。これも御意見が出ておりましたが、私、昨年も亀井委員長にもこの問題を提起いたしたところであります。四国では十四年前の昭和四十七年に土讃線の繁藤駅で天災による山崩れがございまして大災害が発生したわけでありますけれども、この復旧経費は現在の単価で計算いたしますと七億ないし八億円要ったと言われておるわけでございます。そのような大事故はいつもは起こりませんし、現在既に大豊トンネルなども開通をし、金食う土讃線と言われておったところにもかなりな補強工作が行われていることは事実であります。しかしながら、大災害というものは何十年かに一度は発生するのではないかと思っております。したがいまして、そういった場合に遭遇をいたしますと基盤の弱い四国会社では大変なことになるのではないかと思っておりますので、こういった大災害に対する復旧工事費の補完措置を相互連帯でつくっていただくわけにはいかないものだろうかといったことを私は提起いたしまして、十分御検討をいただきたいと思うわけでございます。
第四点でございますが、雇用の問題でございます。私は鉄道労働組合でございますので少し組合のことを言って恐縮でありますが、私たちは国鉄改革労働組合四国地方協議会を十月の三日、五組合で結成いたしました。約二千八百名の結集ができております。四国では第一等の協議会になったところでございます。既に第二次労使共同宣言も同時に締結をいたしました。その内容の一つは鉄道事業のあるべき方向、二つ目には労使関係のあるべき方向、三つ目には望ましい職員の姿、こういったものについて労使で合意事項を締結いたしまして、私どもは、地域に密着をした鉄道輸送の再生のために、現にサービスの向上、増収活動及び安全輸送に懸命の努力を行っているわけでございます。私どもは、新会社を創造するために意識改革を行いまして、まじめに働いているわけでございます。私どもは新会社に向けて雇用をされるものだと信じておるわけでございますが、どうか雇用問題についての一層の御理解をいただきたいと思っておるところでございます。さらに、公務員、地方公務員、産業界などに対する雇用の確保は順次進められているというふうに判断をいたしておるわけでございますが、四国はまだおくれているのではないかと思っているわけであります。どうか先生方におかれまして一層の御努力をお願い申し上げたいと思っておるわけでございます。
最後になりますが、私は、国鉄改革は大変な改革であると同時に、六十二年四月一日から実施をするとするならば相当の準備が要るのではないかというふうに思っております。そういう準備が完備をされることによって、六十二年四月一日の切りかえがスムーズに行われるというふうに考えております。したがいまして、国鉄改革八法案、政府法案が衆議院におきまして早急に議決され得るようお願いを申し上げまして、私の陳述といたしたいと思います。
御清聴大変ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/383
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384・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
次に、橋本了一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/384
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385・橋本了一
○橋本了一君 私は、四国学院大学で地方自治論を担当している橋本でございます。地方自治論や地方開発論を専門としておりますが、交通権学会の会員で、私は監事でありまして、四国連絡事務所の代表をしておりますが、国民の交通権を守り発展させるという立場から、現在の国鉄問題とも深くかかわり合いを持っております。
まず最初に、基本的立場として、国民の交通権を保障し公共交通を発展させるには、国有鉄道を堅持し、国民本位に民主的に改良、改善しながら拡充、発展させること、これが肝心ではないかと思います。したがって、公共交通を分断して一体性あるいは連続性、快適性、安全性、広域性といったものを破壊し、利潤原理でもって運営していくいわゆる国鉄分割・民営化には絶対に反対であります。そういう立場から意見を申し述べたいと思います。せっかく四国で公聴会が開かれましたので、四国の地域特性を重視して発言申し上げたいと思います。
まず第一点は、いわゆる国鉄の長期債務ですが、これは先ほど来非常に精細な分析もなされ、矛盾点もつかれましたが、私は、三十七兆五千億と積算されておるその長期債務の発生原因、責任の所在がまず不明確であるという点を指摘したいと思います。年金負担、余剰人員対策あるいは三島基金など分割・民営化に際して政策的に債務に算入されたもののほかに、本来国鉄には全く責任のない、鉄建公団の債務や本四連絡橋公団などの設備投資にかかわる言うならば外圧的債務などが十一兆あるいは十二兆も算入されております。長期債務を膨張させて、赤字経営だ、それは公社経営によるものだと国鉄分割・民営化の根拠の一つに使っておられますが、しかし、本四架橋児島—坂出ルート、以下瀬戸大橋と呼びたいと思いますが、この鉄道橋部門の建設費六千億などは本四連絡橋公団が償還すべきものであって、国鉄の長期債務に入れて国民の負担を強いるなどはお門違いと言うべきでありましょう。新会社すなわち四国旅客鉄道会社に資本費の負担能力がないから有効活用できないだろうという形で債務の中に編入しようという根拠を挙げておられるわけでありますが、鉄道を使用料を払ってでも使うかどうか、運行させるかどうかということは、国鉄が主体的に判断すべきものであって、本四公団の建設費の償還とは全く別の次元のものであります。もっとも、私は、瀬戸大橋は自動車道路と鉄道橋との併用橋になっておりますが、本質的には高速自動車道路であると考えております。したがって、在来線なり鉄道が運行され、橋げたの島となっております櫃石島とか与島とか岩黒島などの島興部にも途中駅を設置して初めて四国の地域住民の生活と密着してくる橋になるだろう。そういうような配慮がなされなかったとしたら、これはまさしく大きな資本のいわゆる環太平洋構想に基づく大動脈としてのみ役割を果たすことになるだろうというふうに考えております。したがって、国鉄を国鉄として残置し、鉄道を走らせ、国家が財政的にも助成あるいは補助をしてでも電化など設備を充実させ、運行を保障すべきであると考えております。ところが、最近の国鉄四国総局の発表では、新会社にも設備投資能力があるので瀬戸大橋の鉄道電化は新会社でしてもらうと発表されております。先ほど申し上げました、新会社には資本費の負担能力がないから長期債務の中に編入するんだと言っていることと明らかに矛盾があります。
このことは一応ひとまずおくとしましても、いわゆる四国旅客鉄道会社といいますか新会社の経営予測について意見を述べたいと思います。この点については、先ほど田中先生から非常に精細な矛盾点、そして虚構性といいますか空想性というものについて御批判がありました。私は、その御批判を一応受け取りながら、さらに申し上げたいと思います。
先ほど来申し上げているとおり、慢性的な赤字をいわゆる三島基金の利子でもって補てんして、そして新会社は初年度六十二年度から三億円、あるいは六十三年十一億円、以降十三億とかあるいは十六億、そして六十六年度には十二億円と黒字が出るんだというふうに見通しておりますが、ここ数年来の営業収入を見ますと、ほぼ三百二十億程度あるいはそれより少し下回るということであります。しかし、旅客輸送量は普通乗客あるいは定期乗客とも三ないし五%ずつ減少傾向にあります。それを運賃値上げでカバーして、いわゆる旅客収入を毎年二%ずつ、一〇二%というふうに算定しております。ところが新会社では、毎年逓減傾向にはあったとはいえ十三億ないし十六億あった貨物収入が、分割されますと営業収入として計上されません。これは従来営業収入のほぼ四ないし五%も占めるものであります。そうしますと営業収入は減少するだろうということは当然予測されるわけでありますが、初年度はともかくとして平均三ないし四%の増収を見込んでおります。いわゆる関連事業によって雑収入あるいは諸収入に期待しているわけではないかと思いますが、根拠が全く明らかでありません。不確かな予測というか期待値にすぎないと言っていいんではないだろうかと思われます。ここでその増収の根拠となっているのは、明らかに提起されているのは、北海道とともに六%の運賃値上げをしていくということであります。他の新会社と比較して五年間で十数%も地域格差がつくということになります。いわゆる公共交通は広域性と平等性、統一性というものがあって初めて公共交通たるゆえんがあるわけでありますが、ここに地域格差がつく、これはまさに国民の平等が著しく侵害されるということになるのではないか。そういう意味で、国民の交通、往来の権利が保障されないということになるわけであります。他方、営業費用について見てみますと、例年ほぼ九百億あったものを四、五百億に圧縮しております。特定人件費などの追加費用を除きましても、政府資料に基づきますと、要員数の減少に伴う支給給与、退職金負担の減額によって二百四十億から五十億に、約二分の一に圧縮するんだというふうに言われております。これはまさしく働く人たち、労働者の犠牲を強制しているということにほかなりません。また、物件費も二百三十億から五十億あったものを百四十億程度に、六〇%に減額しております。ところが四国の場合は、先ほど来いろいろと指摘されておりますとおり、大変老朽化し、耐用年数さえ過ぎかかっているというような車両を使っている。あるいは、四国の虚弱な地盤を走るために防災費、設備費用が非常に高くかかる。百億以上はかかるだろう、車両の転換だけでもそれだけかかるだろうというふうに算定する人さえあります。減価償却費等を約六十億計上しておりますが、そこから瀬戸大橋鉄道電化のための設備投資費を捻出するということになりますと、これはほかにしわ寄せがくる。まさに国民の交通における安全性がひどく侵害されるということになるでありましょう。電化とかあるいは高架化、複線化など四国の鉄道の現状から見て近代化、高度化が必要であるわけですから、必要な物件費の切り捨てはまさに利用者へのサービスの切り捨て、国民の安全性に犠牲を強いるものであると断定しなければならないでしょう。ここからも、国家が財政的に補償しあるいは助成するなりして国有鉄道をこそ堅持して、公共交通を堅持しなければならないのではないかと思うわけであります。新会社の収支見通しは三島基金の利子収入で補てんしてあたかも黒字であるかのようにつじつま合わせをしているのではないかという疑いは、これはぬぐい去ることができないでありましょう。新会社に瀬戸大橋の鉄道電化の設備投資あるいは鉄道運行のための補修費等の負担能力がないとすると、四国四百万島民は瀬戸大橋に対して非常に大きな夢をかけました、この夢がまさに破れてしまうということにならざるを得ないのではないだろうかと思います。
次に、国鉄用地の売却について意見を述べてみたいと思います。
過去五年間の売却実績を見ますと、百三件七・四ヘクタールを七十五億三千万見当で売却しております。昨年などは十三億余りで高松の玉藻城のすぐ近辺を五千六百平米近く県に売却しているというようなことになっております。これを極めて単純に平米当たりの単純平均をしてみますと十万二千円、坪当たりでも三十三万六千円ぐらいになっております。国土庁の発表している路線価格を検討してみましても、非常に安い価格で売却しているということは明らかであります。こういうふうに実勢とは全くかけ離れた形で売却されている。もっとも、今までは公共用地でありますから、そういう意味でむしろ国鉄の用地は国民の財産というべきでありましょうから、公共福利の増進という国鉄の第一条の目的からいいますれば、いわゆる本当の意味で遊休用地なら有効活用するという手もありましょうが、しかし、今後は民間に対して私的な用途のもので売却していくということになれば、厳正な地価の評価をしなければならないと思います。ところが、この地価については全く情報が知らされていない、秘密裏に行われているということに対して国民全体が非常に疑いを持っていると言わざるを得ないでありましょう。
多少わき道にそれますが、地方自治体に対して、四国四県で約二百二十の地方自治体がありますが、その大半に対して国鉄は約三億七千万あるいは三億八千万の納付金を払っておりました。ところが、新会社は固定資産税を支払わなければならなくなるだろうと思います。先ほども指摘がありましたように、民営化されたりあるいは第三セクターで経営するということになりますと、周辺整備とかあるいは駅舎整備だとか、いろいろな鉄道に関する地方自治体の負担が非常に高くなるわけであります。ところが、地方自治体に対する納付金はカットされる。さらに、そればかりでなくて、昭和六十四年度から七十一年度までは法改正をして特別措置を講じる、いわゆる固定資産に値するものを二分の一以下に減額するというふうに言われております。これはそういう意味でも地方自治体が非常に危機感を持って、四国四県の二百二十の自治体のうちで百十八自治体が意見書を採択している、あるいは反対の立場をとっているということは、このような深刻な先行き見通しというものを持っていることにほかならないと思います。
四国鉄道局からのかつての発表では、約二十八万平米余り遊休している土地がある、そのうちで利用計画が立っているものを除きますと二十六万平米と言われておりました。ところが、今度の発表では四十四万平米にまで売却可能用地が拡大されております。必要用地までも売却するということになっているということはこの数字から読み取れるわけであります。しかも、これが民間企業の私的な営利目的のために払い下げられるならば、しかもこれら国鉄用地というのは各地域における一等地でありますが、これらが私的大企業の膨大な利潤の源泉になるだろうということになりますと、いわゆる民間活力の活性化論とかあるいは国鉄分割・民営化の表には出てこない、見えざる意図というものがここから読み取れるのではないだろうかというふうに思うわけであります。資産を全くすり減らし、売って、長期債務の返済の中に充てていってしまいますと、新会社に移行した場合には健全な経営基盤を著しく損なうということに結果するでありましょう。国民とかあるいは国鉄に働く労働者が営々と百有余年にわたって築き上げてきた国民の財産である国鉄用地を売却するということは、厳に慎まなければならないと考えます。
次に、最後ですが、要員問題について、先ほど要員問題あるいは俗に余剰人員問題と言われておりますが、私は余剰人員という立場をとりません、その余剰人員問題については先ほど労働者代表の方々から報告がありましたので、私は公共交通の安全性確保という観点からこれを述べてみたいと思うわけであります。
ことし八月現在で、四国には無人駅が百八十一駅あります。四国の国鉄の総駅は二百五十七駅でありますから、七〇%以上も無人駅になっております。踏切についていいますれば、全踏切が千五百五カ所あります。その踏切のうちで、いわゆる踏切保安要員のいる有人踏切はわずか六カ所であります。自動遮断機あるいは警報機がついているのが千一カ所、警報機のみが百十四カ所、警報機もない無人踏切が三百七十九カ所あります。この警報機のみあるいは無人踏切というところは、通行人にとって、しかもこれは私たちが交通弱者と呼んでいるお年寄りだとか子供さんにとって大変危険な状態にさらされていると言わざるを得ないと思います。特に学校通学路に当たる踏切さえも無人化しているために、学童生徒の登下校の安全性が非常に侵害されている。先生が立ち番をして学校に誘導するという実態さえ調査で明らかになっております。こんな状況にもかかわらず、いわゆる国鉄要員は余っている、余剰人員だという形で、国鉄職員が適正な任務配置をされず、本来の職務以外のところで政策的に遊休させられていると言わざるを得ないと思います。さらに、人材活用センターには、最近入所させられた四国鉄道病院の技師などの職員を除いても、四国四県で五十九カ所、三百十六人もいます。近く三百六十人にはなると言われております。この中の構成を見ますと、国労の組合員が二百六十五人で八三%を占めております。動労十六人、鉄労三十二人、そして労働組合に未加盟の者は三名となっている。明らかにこれは差別的な人材配置と言わざるを得ないと思います。一方で国民の交通の安全性を阻害しながら、他方では労働者の人権とかあるいは生活権、労働権を侵害しております。しかも、人材活用センターへの配置転換については、労使交渉の慣行といいますかルールというものを全く踏みにじっているという事例が数多く見られます。これは憲法違反的な行為である。国鉄当局の非人道的な行為とともに強く抗議しておきたいと思います。
最後でありますが、フランスやドイツ、イギリス、さらにはアメリカの例を引くまでもなく、鉄道や貨物輸送は最近国有化しております。こういう公共交通を維持発展させるということがまさに歴史の発展の方向であります。四国四県の二百二十の自治体のうちで百十八と、過半数以上の自治体が分割・民営化の反対決議をしておられる。しかも、四国の人口の約四分の一以上の方々が分割・民営化に反対の署名をされている。世論はまさに私たちの立場を支持していると言って過言でありません。国民の交通権を保障し、国有鉄道を堅持して、民主的に国民本位の効率性を高めるため改善、改革をすることこそが未来を切り開く道であると信じます。いわゆる国鉄の分割・民営化には絶対に反対するということを改めて申し上げて、発言を終わりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/385
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386・細田吉藏
○細田座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/386
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387・細田吉藏
○細田座長 これより委員からの質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
この際、委員の皆さん方また意見陳述者の皆さん方にお断り申し上げたいのですが、時間が大分、予定よりも三十分近く延びておりますので、その辺を御勘案の上で会議の進行について御協力を賜りますようお願いを申し上げます。
森田一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/387
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388・森田一
○森田(一)委員 ただいま御紹介をいただきました森田一であります。
私は、国鉄の再生は分割・民営化以外にはないという立場であります。ただ、各意見陳述者の先生方共通して、私も共通でありますが、今後の四国旅客鉄道株式会社の将来は大変に厳しいという認識を持っておるわけであります。しかしながら、この分割・民営化というのは国鉄監理委員会において初めて出てきた問題かといいますと、そうではなくて、国鉄監理委員会より前に、分割をしないという国鉄の再生案があったわけでありますけれども、その中においても四国は独立させる、分割をするというか独立させるということになっておったわけでありまして、私どもは、どうしても独立した上で四国旅客鉄道株式会社が存続、発展をする道を探っていかなければならないと考えるものであります。
既に法律におきまして、四国ほか北海道、九州におきましては債務の承継はしないとか、あるいは経営安定基金を設けるというような配慮がなされておるわけであります。しかし、これらの配慮だけでは必ずしも四国の旅客鉄道株式会社の存続、発展が保障されるものではないことは各先生方お述べになったとおりであります。ここで一つ間違えますと、確かに十年、十五年後に四国旅客鉄道株式会社は、松山、高知、徳島までの幹線を除いて西日本旅客鉄道株式会社に合併を申し込まなければならない、こういうような事態になりかねないわけでありますけれども、しかし幾つかの条件を満たせばそのようなことにならずに存続、発展は可能であると私は考えておるわけであります。
それらの条件というのは、まず第一は職員の減量、整理、これに成功をすることであります。四国は確かに雇用機会が大変乏しい地区でありますから非常に困難はありますけれども、この点についてどうしても成功させなければならないわけであります。第二点は、経営者、いわゆる経営的なセンスのある人材を経営陣に得ることであります。第三点は、先ほど宮道先生の方からもお話がありましたが、関連事業、多角経営の成功、そして地元の協力、これが大変大事だ、大切であると考えるものであります。第四点は、地域の住民の間に我らが国鉄という意識が大変大事であります。地域の住民の間の誤解は、東京とか大阪に行っても、切符を地元で買っておるからこれらが何となく地元の会社の収入になっておるような錯覚を抱くわけでありますけれども、東京、大阪に四国の人たちが旅行しても、必ずしも地元の四国旅客鉄道株式会社に収入が多く落ちるとは限らないわけでございまして、そのような認識のもとで、我らが四国旅客鉄道株式会社という意識のもとに多角経営その他に対しても理解を示してもらわなければならない、このように考えておるわけであります。他方、会社におきましても、例えば電化というのは今後は無理だというような先生方の御意見が多かったわけでありますけれども、私は、これは地域のニーズに合致するだけではなくて、鉄道経営そのものの効率化にもつながるわけでありまして、琴平—観音寺だけでなくて、今後さらにこれを延長することによって鉄道経営の効率化が図られるというふうに考えておるわけであります。最後に、第六点といたしまして、今後、例えば四国で一つという讃岐満濃公園というのが建設されることになっておりますけれども、これらの事業、いろいろな企画を考えてニーズを新たにつくり出していく、乗客を新たにつくり出していく、こういうような考え方のもとに経営がなされていかなければならないと考えるものであります。
そこで質問でありますが、時間がないということでありますので、一点に絞りまして布川先生の方にお尋ねをいたしたいわけであります。先ほど宮道先生の方からお話がありましたように、関連事業が非常に重要である。しかも、これについて住民が何でも反対というようなことでは会社の経営というのはなかなか成り立たないと私は思うわけでありますが、この関連事業への住民の協力について、これまで商調協その他いろいろ御苦労されたであろう布川先生の方にお尋ねをいたすわけでありますけれども、少なくとも私鉄並みの協力というような住民の協力というのは今後得られるであろうかどうか、その辺のことにつきまして御意見を賜りたいと思うわけでございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/388
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389・布川隆美
○布川隆美君 お答えします。
私は、四国鉄道会社の事業の多角化というのは賛成でございます。それをやらなかったら四国鉄道は成り立たないと思います。実際、商調協なんかで大型専門店の設置ということは非常に難しい、県民、市民の同意を得るということは非常に難しいような世の中でございますが、しかしながらやはり国鉄は四国の会社でございます。これがうまくいくかいかないか、四国島民全部の責任にもなってまいります。手をもぎ足をもぎ羽をもぎということで、四国鉄道が事業を多角化することを抑制するということはできないと私は思います。自由主義経済の中からいって、株式会社になる以上はこれは当然やらなければいけないし、またそれに島民が、四国の県民が協力するように持っていかなければいけないということで、できるということを断言できはしませんけれども、私はそういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/389
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390・細田吉藏
○細田座長 次に、月原茂皓君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/390
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391・月原茂皓
○月原委員 月原茂皓であります。
私は、国鉄、鉄道というものについては小さいころから郷愁を覚えておるわけでございますが、これが私の小さいころの思い出につながるように、より生き生きとこれからも国民のためになってもらいたい、こういう気持ちから分割・民営化に賛成するものであります。
私は、百四十三兆円の借金を抱える国家が、国民が、もうそれしかないという流れによって、ほっておけば一年に二兆円に近い赤字が出ている、累積赤字が今は十六兆円だ、一刻も早くよみがえってくれというのが国民の感情だろうと思っております。そしてまた我が四国についても債務の棚上げ、そして基金をつくる、そういうような手厚い保護が行われているわけであります。そういう観点から、私、賛成の諸先生、阪根先生、布川先生、そして宮道先生にお尋ねしたいのでございます。
今森田先生もお話しになりましたように、国鉄の多角経営について皆さん少しずつおっしゃったのですが、より詳しくお話を願いたいと思います。それは、電電公社についても、日本電信電話株式会社になるときに、途中で修正が行われて大いに活動できるようになったわけでございます。今非常に法案の大事なときでございますから、その点を強く皆さんから話していただきたい、私はこのように思うわけであります。
そしてまた、災害の関係についても皆さんおっしゃっておったのですが、それについてより考え方をお示し願いたい。
そして船舶の関係、これも一律に言うのではなしに、この瀬戸内海という特色を生かしてどういうふうに考えられておるか。
この三点について、全部について網羅されなくても結構ですが、三先生からお話を伺いたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/391
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392・阪根義雄
○阪根義雄君 ただいま月原先生からお尋ねがございました多角経営についてまず申し上げたいと思います。
多角経営に関する前に、一つ印象があるわけでございます。去年の夏ごろでございますか、何かパンフレットをいただきまして、そのときに「Q&A」という題目がついておりまして、その下にありました表題が、鉄道の明るい未来を開くために、こういうような言葉がございまして、なるほどと思って読んでみたのですが、そのときに感じたことがあるのです。それは、民営になるのであれば、本州も西日本あるいは九州、北海道、四国、それぞれ違った行き方があってもいいのじゃないか、それが本当の民営だ、そこらの表現が何もないなと思ったのです。同じような要領で明るい未来を開けといっても、それは無理でございますという地方が出てくるわけです。ですから、明るい未来を開くために、四国は四国なりの明るい未来を開く方法を考えなければならない、それが私ども先ほど申し上げた多角経営でございます。でなければ、なかなか明るい経営は開けないわけです。これは何も民営化したからといって急に出てくるわけじゃない。小林一三先生が阪急を創設したころに、既に宅地を造成し、あるいは住宅街をこしらえ、あるいはターミナルビルでデパートを開く、いろいろなことをやられました。ですから、何十年も前から鉄道の営業はそういうことをやってきたわけです。ですから、国鉄が民営化すれば当然そのような方向に行くのが正しいあり方だと私どもは考えるわけです。
それからもう一つ、時代がどんどん進みまして、昔は駅から駅へ人を運べばよかったわけです。駅から駅へ運ぶという、つまり、乗る者は駅までやってこい、来れば乗せてやる、そういうような輸送方法でございます。そういう輸送方法は今飛行機に取ってかわられたと考えていいわけです。飛行場まで来なさい、飛行場から次の飛行場まで乗せていってあげます、これは非常に高速ですからその理由が成り立ちます。鉄道の何倍も速いわけですから、そういうような移動の仕方で客は十分満足します。ところが国鉄、鉄道の場合は、駅までやってきなさい、切符も駅まで来て買いなさい、こういうようなやり方が百年続いておるわけです。そういうような状況のもとで、国鉄は再建しなさい、利益を上げなさい、これは無理でございます。ですから、そういう時代の変化に即応したやり方、駅から駅へではなくて、つまり、我々が旅をしますね、旅をするときに旅の感覚、旅立ち、旅に出る場合は自分の家を出るときに旅が始まるわけです。そして目的地に至る。目的地からまた家へ帰ってくる。それまでが旅です。ですから、家から旅が始まっておるにもかかわらず、国鉄さんは駅まで来た人が初めて旅人だと思うわけですね。そういうような状況が続いておる。その状況をこれから変えていかなければならない。そのためにはいろいろなことをやらなければならない。その一つが多角経営です。附帯事業を大きくやる、あるいは関連事業を起こす、こういうことになってくるわけです。そういうような経営のやり方を大いに考えていただいて、活力のある民間鉄道会社ができることを私は非常に大きく期待するわけです。
話が長くなりましたから、私の意見はこれで終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/392
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393・布川隆美
○布川隆美君 多角化については、私は先ほど賛成だと言いましたが、いろいろな事業があると思います。実はせんだっても徳島県でそんなことを申したのですが、徳島県だけでなくて、高知県あるいは鴨島とかいろいろなたくさんの市町村の中心が駅だ、昔の中心であったのが駅だと思うのです。駅舎というものは町づくりに貢献をすべきではないかということを考えます。一つの非常に卑近な例ですが、先ほど言った高知県とか徳島の駅なんかは一階建ての駅舎がそのままでございます。私は、あれを広告塔の駅舎にしたらどうかというようなお話をしたことがあります。八階建ての張りぼての広告塔で、中身は一階そのままあるいは二階そのままですが、外側に広告塔のパネルをつくる、そういうことで、今までのようにただペンキでかいた広告でこれからの新しい美しい町づくりができるかと言ったらそうじゃなくて、先端技術を入れる、レーザー光線で広告をやるとかあるいは電子板ですか、これはもう既にできておりますが、そういうようなもので町を美しくする。徳島県、高知県ならばいわゆる県都にふさわしいような駅舎というものをつくって、そして県民、町民、市民に喜ばれながら、企業にも喜ばれて、事業収入を得ることもできるのではないだろうか、そういうようなことも言ったわけでございます。つい先日、昔の丸亀藩の京極藩主が六万何千石の再建に、藩主それから管理者それから藩民みんなが創意工夫を働かせて、丸亀のうちわをつくり、金刀比羅宮の観光のいわゆるPRをして、そして立派に丸亀藩が再建したというようなことがたまたま四、五日前ですか、日本経済新聞に載っておりました。四千九百人の英知を絞ってやるならば、新しい事業、県民にもユーザーにもそして社内にもみんなに喜ばれるような事業というものが出てくると思います。ひとつそういうことを四千九百人みんなで考えやすいような組織にするのがまず一番だと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/393
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394・宮道義幸
○宮道義幸君 月原先生の御質問になりました点にお答えをいたしたいと思うのです。
一つは多角経営の関係でありますが、将来展望に立っての、四国に高速道路ができるということについて私は意見を申し上げておるわけなんですが、先ほども阪根先生からお話がありましたように、例えば荷物はもうだめになってしまった。そうすると、これは言うならば宅急便が家へ荷物をとりに行って、荷づくりもして、そしてちゃんと安全でしかも速い時間帯で安く送るというふうなことを考えますと、今からの旅客輸送も、これもタクシー会社であるとか民間圧迫というようなことになりますが、やはりそういった家へ小集団でありますと迎えに行く、そして駅へ連れてきて乗っていただく、また駅に帰ってきたら家まで送る、こういうふうなことも四国のような場合はやはり考えていかないといけないんじゃないかなというようなことを私は考えているわけであります。四国総局がそういうことについていいことだとは言っておりませんが、私自身はそういったことも考えておるわけでございます。それから、多角経営その他ございますが、いろいろと新しい社長が職員の意見を聞いて思い切ってやっていただくということが一番いいことだろう、それに協力していただくことがいいんじゃないかと思っております。
船舶の関係は、せっかく宇高連絡船を国鉄が長い間やってきたわけでありますし、今も観光船で瀬戸大橋などを見学いたしておりますが、雇用の問題もございますし、また連絡船を改造するなり中型化するなりして、岡山への就航であるとかあるいは観光船に使うとかいうようなことで、四国旅客鉄道株式会社が航路の関係の方もやはりやらしていただきたいと思っているわけでございます。
それから災害の関係でありますが、私もこれが一番だとは思っておりませんけれども、六つの旅客会社でこういった大災害についての救援措置というのですか、そういう保険的なものを考えていただいたらいいのではないか。日ごろ積み立てておいて、いざのときにそれを拠出していくというようなことが考えられないものだろうか。地方鉄道の関係で二割程度は大災害の場合はその企業がもうけておれば出るというようなことを言われているようでありますが、そこらをもう少し六つの旅客会社のプールみたいな形で補強できないものか、こういうふうに考えているわけでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/394
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395・細田吉藏
○細田座長 上田卓三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/395
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396・上田卓三
○上田(卓)委員 意見陳述人の皆さん、本当に御苦労さんであります。大変貴重な御意見をお伺いいたしまして、本当にありがとうございました。
そこで、先生方にお尋ねをいたしたいわけでありますが、いろいろ聞いておりまして、四国の事情、九州とか北海道も同様な課題が山積しておるというように思うわけでありますが、いずれにいたしましても、今後の鉄道事情というものを考えますと、利用者はふえない、逆に減っていくというような傾向にある、こういうことのようでございます。確かに国鉄職員が六十一年度で六千七十人、それが四千九百人体制といいますか、千百七十人が削減されるというようなこともありまして、若干赤字が解消されるというものの、なおかつ六十二年度においては百四十一億、それから六十三年度においては百三十五億、こういうような形でやはり赤字があるということであります。それに対して経営安定基金の利子でもってこれを穴埋めをする、こういうことで辛うじて六十二年度においては三億、六十三年度においては十一億云云と、こういう形で一応利益は上がることになっておるわけでございます。そういう意味で、基金の利子の補給を受けなければやっていけないような民間企業が果たして民間企業と言えるのか、こういうような疑問がわくわけでございます。そういう意味で、四国に限って言うならば、これは公社制度で置いておいた方が非常にいいのではないか。何か無理して、政府の方からそういうことを言うから右へ倣えというような感じもしないわけではないわけでございます。当然やはり国鉄というものは、鉄道事業というものは、一つの企業体でございますから民間的手法というものがあってしかるべきだと思うわけでございますが、地方のそういう三島会計の部分についてはもっともっと積極的な国の補助体制がなければやっていけない、こういう体質があることはまた事実ではないか、こういうように思いますので、一点は、どうも公社制度の方がいいのではないか、四国に限って言うならばそういうような感じがいたすわけでございますので、諸先生方はその点どう考えておられるのか。
それから利子の補給でございますが、今低金利時代でございますので、一応七・五%の年利ということのようでございますけれども、これが将来どう約束されるのかということで、金利の動向によってこの会社が生きるか死ぬかというような瀬戸際に立たされるのではないだろうか、こういうように思っておるわけでございまして、やはり物価の動向、金利の動向というものについてどのようにお見通しを持っておられるのか。
またあわせて、減価償却費等についてもどうも低く見積もっているのではなかろうか、こういうように思うわけでございまして、使い捨て一回きりというなら別でございますけれども、やはり複線化の問題、近代化の問題等あるわけでございます。そういう意味で設備投資も相当要るのではないか、こういうように考えておりますので、その点についてどのような考え方を持っておられるのか。
それから最後に、これは民間会社でありますから、それじゃ経営が行き詰まって倒産したらどうなるのか。倒産する前に恐らく赤字路線はどんどん廃止、廃線ということになるんじゃなかろうか。そして最後は倒産ということになるわけでございまして、そのときは一体どうするのか。そのときは四国経済に与える影響はどうなるのか。そういうようなことを先々まで考えておられるのか。何か聞きますと、二十一世紀は非常にバラ色だ、こういうような感じを受ける発言もあるわけでございますが、まさしく暗黒と言ってもいいような感じもしないわけでもないわけでございますが、その点についての御感想なり御意見をひとつ聞かしていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/396
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397・細田吉藏
○細田座長 上田君、どなたにですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/397
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398・上田卓三
○上田(卓)委員 先生方全部にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/398
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399・細田吉藏
○細田座長 それじゃ、六人の皆さんにお願いしたいということですから、ひとつ要領よくお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/399
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400・阪根義雄
○阪根義雄君 全部というと時間がなくなりますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/400
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401・上田卓三
○上田(卓)委員 結論だけお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/401
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402・阪根義雄
○阪根義雄君 四国では公社制がいいのではないかというような意見、これについては、私はそれでは余計いけないと思います。公社であるがゆえに現在までこのような累積赤字が続いてきたわけです。これを断ち切るためには、やはり民営でなければならない。民営によって四国は四国の島民の鉄道としてやっていく。そして先ほど申し上げたように、いろいろな事業、多角経営もやって、そして経営を改善していく可能性があります。公社制で全国をやる、あるいは本州に牛のしっぽのようにぶら下がってやる、これでは余計赤字がふえていく。やはり民営がよろしい、そうでなければならない、このように思っております。
それから利子補給七・五%、これは私申し上げましたように、確かに将来不安がございます。ですから、金利動向あるいは物価の変動、このような変動が起こり得るかもしれません。その点で法案審議に先生方の十分なるお気持ちを織り込んでいただきたい、そのように、都合のいいようなことでございますが、お願い申し上げたいと思います。
それから設備投資ですが、これはやはり今後近代化のために必要でございます。新しくできる新会社が、四国会社が大いにその点やらなければならないのですが、やりやすくするように融資その他いろいろな便宜があるかと思います。そういうときに仕事をやりやすいような方法をあらかじめ考えていただいておく、こういうことをお願いしたいと思います。
それから倒産というようなことは、これはしたくないから今このようにやっておるわけでございますので、よろしくお願い申し上げます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/402
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403・加治美夫
○加治美夫君 まず第一番の公社制度の関係ですが、私は、前提としてやはり四国だけ、いわゆる三島切り離して公社制度でどうかという以前に、鉄道としての全国一律制、いわゆる平等、移動権の自由などを含めて全国一律で考えていくということが大事ではないかということに立っているわけです。そういう中から、私ども自身も公社制度の中で法律改正に基づいて何らかの方法がとれないか、言うなれば現在の国鉄を何とかするために公社制度の中でも法律改正することによって事業範囲を拡大する、そういういわゆる兼業規制の撤廃などができないかというふうなことなどについて、社会党の先生方等にもいろいろお尋ねをしたり御意見を出してきた経過がございますが、そういう中ではどうしてもかなり難しいというふうなことの中で出されたようでございまして、私どもも、公社制度で法律改正で兼業規制などの排除が可能で、あらゆる商売といいますかそういうことが可能であるとするならば、全国一律の中でそういう方法をとることも可能ではないか、このように考えますので、なお国会における法律論議の中で御議論をお願いをしたい、このように思います。
設備投資、利子補給の関係については、私も先ほどの資料の中で申し上げましたが、特にそういう点について私どもも心配をしている。特に四国の設備の不十分な部分については、昨年亀井監理委員長がお見えになったときに、四国がこれほどおくれているとは知らなかったということを言われました。それほど知らない人が中心になってつくられたこの監理委員会答申でございますので、これは私も大変だということでお話をしたこともあるのですが、本当にそのこと一つをとらえてみても、四国会社は将来大変なことになるということをいみじくも言われたのではないか、このように思いますので、よほどの体制がなければ困難ではないかと思います。
そういう中で民間の会社になるわけですから倒産したらどうするか、そのことは、私が最後に申し上げましたように将来必ず禍根を残す、そういう事態というものが、本当に社会不安といいますかそういう問題にならざるを得ない。この四国の将来にとっては、単に国鉄だけの問題ではなしに、鉄道だけの問題ではなしに、四国の経済、社会、さらには教育、文化、福祉に至るすべての四百万島民の生活基盤がこのことによって本当に根底から変わるわけでありますから、そういう部分についてはより慎重に考えていかなくてはならないし、本当にそういう極めて重大な危機というものを想定しながら対応していく、そういう長期的な展望に立って本当に理解できるようなものをやはり検討してつくり上げていくべきではないか、こういうふうな立場で、非常に危機感を持っているということについてなお御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/403
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404・上田卓三
○上田(卓)委員 委員長、済みません、誤解があったらいけませんので……。
私は公社制度がいいんじゃないかと言っているのではなしに、利子で補給をしないとやっていけないような会社というのは果たして民間会社と言えるのか、そこに力点があるということをひとつ理解をしていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/404
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405・布川隆美
○布川隆美君 四問について一緒にお話をしたいと思いますが、私たちは中小企業の経営をしておりまして、倒産の危機には日常直面をしております。そういうところで危機感を持って、自主性があって、そこに成長があるというように私は思うのですが、これは十年か十何年か前、ちょっと忘れましたけれども、イギリスのフィナンシャルタイムズが、日本の経済を一度再点検をしよう、なぜ日本の経済があれだけ伸びたんだろうか、その中でその源泉は中小企業のあの活力だということを言っております。その活力というのはどういうことかというと、先ほど言いましたように、日本の中小企業はどこでも日本じゅうだれでも参入できる、市場に、企業に、産業に参入ができるけれども、それと同時にたくさん毎日毎日倒産をしておる、そこで倒産にならないように一生懸命やっておる、その活力が中小企業をこれだけ繁栄させた、そして中小企業の繁栄が日本の経済を発展させたというようなこと、これはイギリスのフィナンシャルタイムズが十何年か前にそんなことを言っておりましたが、実際私たちの経営というのはいつ倒産するかもわかりません。そういうように危機感を持っております。しかも、中小企業の場合は全部社長とか代表者が個人保証をしております。会社がなくなるということは個人もなくなるということ、それは死ぬということにすぐにそのまま直結するわけでございます。そういう危機感の中で経営をしておる。経営というのは、利益を上げるというのは、利益というものはリスクの代償、リスクの対価だと私は思います。それと同時に、利益というものはやはりイノベーションあるいはクリエティビティー、創造性の賃金だとも言われているわけです。そういうことで、四国鉄道が今後やっていくのに、先ほど申しましたように四千九百人の人たちが一致団結して、そして英知を絞って倒産の憂き目に遭わないようにしていかなくちゃならないということでございます。そのためにはやはりいわゆる公社でなくて民営がいいということは先ほども申しましたが、上田先生のお話しのように、民営でそんな基金をもらってその金利でやっていくのが果たして民営と言えるのかという問題になってくると、私もちょっと法律的にわかりません。ただ、やはり民営の方がいいということだけを申し上げましてお答えにしたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/405
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406・田中誉
○田中誉君 今回の六分割というものは、国鉄が六十一年度末で二十五兆円という借金を抱える、したがってここで内部補助を絶つということが一つの大前提になっているのですね。しかし、私も先ほど申し上げましたように、この基金制度というものは現行の内部補助を変形したものにすぎないのですよ。もう一つは、新幹線保有機構を見てもわかりますように、東海道新幹線の利益というもので、リース方式で本州の三分割の会社に内部補助していくわけなんです。そういう意味で見れば、これは民営化という代物ではないということ。問題はこれから先のお話で、これは経済専門家の話なんですが、いずれにしても低金利の方向にならざるを得ないだろう。そうすれば、赤字額が運用の基金を上回った場合には、その負担というものは、地方交通線の廃止なり運賃値上げなり地方自治体の負担となることは明白な事実なんです。したがって、そういう将来的な予想というものが明らかにならない形でしゃにむにやるところにやはり問題がありはしないかというふうに思っております。
それから減価償却の問題なんですが、昨年九月十三日に高知で再建監理委員会の方が四国四県の県庁の部長クラスを集めました中の話で、輸送の安全対策を中心に必要な投資額は減価償却費の中に含めてあるという言い方をしているわけです。
〔座長退席、佐藤(守)座長代理着席〕
ちなみに、委員会に出されました資料を見てみますと、昭和六十二年度には「減価償却費等」というのが五十八億円なんです。これをもう一つの表で見てみますと、四国の場合はいわゆる維持更新に五十三億を使う。これは防災なり橋なりトンネルなり駅舎なり、古いものをかえるということだ。そして、ここにありますのは、輸送力増強などに投資をするのは十億だと言っている。これがだんだん減りまして、六十三年から六十六年までは四億か五億しかないのです。そうなれば耐用年数の来る車両の一両一億円という交換もままならない。もちろん電化なり複線化という設備投資はできないということは明らかなんです。そういう事実もこの委員会の資料の中では実は明らかにされている。そうすれば、そういったことはすべてまた変えなければならない、こういう状況が実は出てくるわけですね。
それからもう一つ私は特に強調しておきたいことは、なぜ四国の島民が、これは北海道、九州も言えると思うのですが、なぜこのような格差を受けなければならないのかというところに問題があるわけです。したがって、先ほどお話のありましたように、世界的な鉄道の大勢というものは大量輸送であるし、安全輸送であるし、省エネルギーという展望を持つような議論というものがもう少しなければならないのじゃないか。そういう意味で現行の分割・民営化のもとでは、四国は基盤的にも資金的にも成り立ち得ないということがこの資料の中でも明らかだということを私は強調しておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/406
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407・宮道義幸
○宮道義幸君 公社制度の問題につきましては、やはり親方日の丸、こういった考え方が公社制度の中にあるのではないかというふうに思いますし、それではいつまででも国民の皆さんが税金によって国鉄の面倒を見てくれるということにはならないのではないかというふうに思っております。同時に、賃金などの関係についても、やはり今の公社制度ではそういう公社の経営と労働条件というものがミックスをしていかないのではないかというふうに思っているわけでございます。
〔佐藤(守)座長代理退席、座長着席〕
したがいまして、地域に密着をした鉄道というのが民営であり分割の会社であるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。
それから、安定基金をもらうのに民間会社と言えるのか、こういう点については、私も学がございませんからいかぬのかいいのかわかりませんけれども、そうしなければ、私も主張いたしておりますように四国の鉄道会社が独立をしてやっていけない、このように私は思っております。
それから金利の問題でありますが、国債などを買えば、七・五ですかそれぐらいはいけるのではないかなというふうに聞いておりますが、今から金利が下がっていく可能性はあると思います。それだけに私も基金の増額については先生の方にお願いを申し上げておるところでございます。
それから倒産の問題が言われておりますが、私どもは二十一世紀へ向けてバラ色などとは思っておりません。けれども、二十一世紀へ向けて、今から少なくとも百年間は四国の鉄道を走らせて四国の島民の役に立たなくてはならない、このように考えておるわけでありまして、厳しい中にもやはり新しい四国の鉄道会社を創造して鉄道を再生してつくっていきたい、このような決意に燃えておることを述べておきたいと思うわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/407
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408・橋本了一
○橋本了一君 まず、公社制の問題ですが、公社性悪論、そして私鉄性善論ということが国鉄分割・民営化の論議の中でいつも出てくるわけでありますが、公社性悪論ではなくて、公社そのものの、国鉄の持っていた、経営陣の持っていた官僚主義的な体質というところに問題があるのでありまして、公社そのものの問題ではないということをまず厳密に分けておかねばならないというふうに思うわけであります。しかもアメリカのように資本主義国でありながら、しかも国家独占資本主義が非常に発達した国でありながら、アムトラックとかグレイハウンドのように公共交通を維持するためには国有化しなければならない、しかも防衛費とのバランスにおいてでも補助をしなければならないということ、これが歴史の流れだということをまず申し上げたいと思うのです。イギリスとかドイツなんかの場合には、基礎設備を明らかに国家がきっちり保障して建設をしていくというような形をとっております。フランスは、申すまでもなく、明らかに国有鉄道を強化発展させている、一九八二年の総合交通法案によって強化させているという事実から見ても、資本主義国においてもむしろ国有化の方向へ向かっているというふうなことを申し上げたいと思うわけであります。
それから基金の金利の問題でありますが、これは私も最初の陳述のときに申し上げようと思ったのですけれども、非常に高金利であるということから相当難しい問題で、将来的にはスライドするなりあるいは弾力的な運用をしなければ、あのように凍結した形、そして固定した形で、しかもこれが黒字を生み出していくといいますか、補てんをして利益を生み出すという格好をとらすということは到底考えられないということを申し上げたいと思います。
それから設備投資の問題でありますが、私は、本四架橋、瀬戸大橋にかかる新規の設備投資について四国総局が十二億円の鉄道電化というものは新会社が負担すべきであるということを言っておるけれども、例えば、初年度の五十三億の中でいわゆる補修あるいは防災というものに五十数億を使うとわずか四、五億しか残らない、そのような中で十二億円の鉄道電化はできないというような形で、既に申し上げたとおりであります。
それから倒産の問題でありますが、側これは我々の学会などではよく三年から五年で倒産するだろうということを言っております。公共交通でありますから倒産さすわけにいきません。だから当然何らかの形で代替をとるというような形になると思います。しかしながら、当然その不採算部門というようなものをどんどん切り捨てていって、しかも、いみじくもかつて運輸省の高級官僚が、香川県のような貧乏なところは高速自動車道路と鉄道、両方とるのは非常にぜいたくな話だ、どちらか一方にすべきだというようなことを言っておりましたが、まさに四国横断道路の建設が完了するのが一九九〇年であります。そうしますと、その間の七、八年は何とかかんとか鉄道をもたして、後はバス、自動車体系にしょうというような形をとるというような暫定的なにおいがして仕方ない。むしろやはり公共交通、国民の足を守るためには公社制を強化するというような形で経営をしていかねばならない。これは我々財政学を研究している者にとっては、誇り高い赤字、そして恥じ入るべき黒字、まさに軍事費を膨張させるというようなことでなくて、たとえ赤字を補てんする、国家が補助を出しても国民の利益になる、公共福利にかなう交通を守っていかねばならないというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/408
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409・上田卓三
○上田(卓)委員 いずれにいたしましても、経営安定基金の利子で赤字を埋める。利益が出たといっても、利子が入っているから利益が出ているということでありますから、果たして純粋の利益と言えるのかどうか。そういう意味では、全く鉄道事業の持つ公共性からくるところの国家補助事業である、民間会社というような大きな顔をしていてもそれは全く補助事業に間違いない、こういう結論になってくるのではなかろうかという感じが私はいたすわけでございます。そういう意味で、やはり経営努力は大いにしていただかなければなりませんが、どうにもいかぬときは、当然、この基金の枠をどうするのか、利子補給をどうするのかということをちゃんと国が責任を持つという体制がなければ、将来性の問題について不安が残るのではなかろうか、こういうように思うわけでございます。
時間もございませんので、最後に加治公述人にお尋ねいたしますが、この資産と事業については新会社に継承するということでありますが、労働者は一たん解雇そして新会社で採用、こういうような形で大変人活センターなどでの不安もあるわけでございます。先ほど田中先生からもお話がございましたが、この点についてちまたでは、これは俗に言うところの偽装倒産ではないのか、組合つぶしではないのか、こういうような意見も聞くわけでございまして、そういう点についてのお考え方を述べていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/409
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410・加治美夫
○加治美夫君 私は、先ほど継承法人の職員、いわゆる二十三条問題について提起をしたわけでありますけれども、基本的にこれは全員を一たん解雇して、そして希望者を募って、そして新会社の職員の労働条件、職員の採用の基準はすべて設立委員が行う、こういうことなどについては、今まで例がないと思うのです。民間会社が倒産をして次の企業をつくったりいろいろする場合でも、旧労働組合との間でいろいろ決める。そういうことを決めた中でどういうふうな格好で承継していくか、こういうふうなことなどの議論が行われて、職員の意思というもの、さらには当該労働組合の意志というものが尊重される、そういうことでなければならないわけでありますが、今回の場合は、すべて設立委員が労働条件や採用の基準を示す、そして国鉄当局はその職員の意思を確認をして職員となるべき者を選定をして設立委員に出す、こういうふうなことになっておりますので、この部分についてはどうしてもこれは重大な問題を残していく、私どもとしてはこのように考えておりますから、資産と事業だけを新会社に継承し、そして職員については選別をする、こういうことについては、明らかに、単なる企業論だけではなしに、その背景に労務対策といいますかそういう問題も含めたものが存在をしているのではないかということを含めて、この職員の問題については、私どもは全員、全国一律で民営的手法を講ずることによって全労働者、職員の継承というものは可能だ、こういう立場をとっておりますので、ぜひともそういう立場で国会の中における御論議を深めていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/410
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411・細田吉藏
○細田座長 井上普方君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/411
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412・井上普方
○井上(普)委員 関連して一言お伺いしたいのです。宮道さんは賛成のお立場でございますが、ちょっとお伺いいたします。それと、田中さんにお伺いします。
実は、きょう資料を見ておりますと、人件費を見てみますと、労働者一人当たりの人件費が、四国におきましては四百九十万円ぐらいになる。それから北海道は五百二十四万円ぐらいになる。東日本鉄道会社は五百十二万円になる。四国の人件費はそんなに低くあってはならないと思いますし、こんなことでいいんだろうかと思うのですが、どうでございますか、御意見をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/412
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413・宮道義幸
○宮道義幸君 六十二年四月一日のベースアップは二%ぐらいだったですか、それは全国一律で組まれていると思っております。六十三年度以降が四国などについては昇給を除いてべースアップで一%だというふうに聞いておるわけでございまして、先生がおっしゃる四国の四百九十万と他の地域との人件費の格差はどういうことかというと、ちょっと私それはよくわかりませんのですけれども……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/413
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414・井上普方
○井上(普)委員 わかりました。
この計画によりますと、四国におきましては四千九百人、これの人件費が六十二年度におきましては二百四十四億ということになりますので大体四百九十万円。ところが、東日本でございますと八万九千六百人で四千六百四十二億円ということになりますと、一人当たりの人件費に差が出てくるんですね。こんなものを四国の労働者は認められるのですか、その点をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/414
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415・宮道義幸
○宮道義幸君 この経営の見通しにおける要員と人件費から先生がおっしゃられているのではないかと思いますが、それぞれ地域において、あるいは職種、勤続年数、これらによって、ベースアップが行われても賃金が違ってきておると思うのです。だから、そのことはどう計算されておるのか私はよくわかりませんが、恐らく四国の計算方を運輸省の方で出されているのではないかと思います。ただ、私どもが問題になるのは、昭和六十二年の賃金がどうなっていくか、あるいは六十三年度以降の賃金がどうなるかというのが労働者側としては問題になっていくところだというふうに私は考えているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/415
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416・田中誉
○田中誉君 この委員会資料では正確な数字はそう単純に割り切れないと思っているのです。というのは、この人件費の中には基準内賃金そして基準外賃金なり期末手当、旅費、いろいろなことが入っているわけですね。したがってこれは委員会の中で、いわゆる基準内賃金部分について一体どうなのか、そういう具体的な資料を出さないと明らかにならないと私は思っております。問題は、私鉄に学ぶということですが、私鉄の場合には実は定期昇給制度はございません。したがって、私が非常に心配いたしますのは、四国の場合は平均的に二・五%の賃金ということを言っているわけですね。そうすると、これが定期昇給を含めればほぼ五%になるわけなんですが、その部分が非常に不明確である。したがって四国の場合は、運賃は五割上がる、労働者の賃金は低く抑えられるということで、これは分割・民営化の大きな矛盾であるし、そのことを私どもは黙って見過ごすことはできない、こういう気持ちを申し上げておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/416
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417・細田吉藏
○細田座長 次に、遠藤和良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/417
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418・遠藤和良
○遠藤(和)委員 きょうは大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。私は徳島県でございますけれども、皆さんの御意見を承っておりまして四国の問題をかなり具体的にさらに勉強させていただいた思いがいたします。
私は、基本的には分割・民営という考え方に賛成という立場で質問をさせていただくわけでございますが、先ほど布川さんから御自分の経営経験等を通しまして大変貴重な御意見を賜りました。今後伸びる事業の条件というのが三つありました。一つは時代に合っているのかどうか。これは鉄道事業というのは合っておらぬわけでございますが。二つ目は人材はいるのかということでございますが、これはそういった方向で設立委員の方方に御努力をいただくということになろうかと思います。三つ目の金はあるのかということでございますが、この点に絞って若干質問させていただきたいと思うわけでございます。
先ほどから問題になっております経営安定基金の問題でございますが、先ほど言われましたように、経営安定基金は補助事業のような考えには真っ向から私は反対でございます。これはむしろ、今回六分割する旅客会社それぞれ資産を持って分割するわけでございますので、四国としてはこうした資産に見合う持参金という形でいただくものでございまして、四国の立場からして決して卑屈になるお金じゃない、堂々と主張のできる基金でございまして、こうしたものを財産として今後分割・民営の基盤にしていく、こういう考え方でございます。ただ問題は、経営安定基金、千九百二十億円でございますけれども、これの利回りでございますが、政府の見通しは過去十年間の国債利回りの平均値ということで七・五%というかなり高金利のものを算定しているわけです。二年間、六十二年度、六十三年度はその利息として百四十四億円清算事業団から振り込まれる、三年以降は元利償還で支払いがありまして、だんだんと自主運用分がふえていくということになりまして、十年間できちっとした基金の形になる、こういう考え方でございますけれども、果たしてこの自主運用のできるところの利回りが七・五という高利におさめることができるかどうかということが会社の手腕ということにもなるわけでございますが、十年後からさらに先の問題でございますけれども、これは会社としては全額自主管理で七・五%の利回りをつけていかなければならないということになるわけですね。六十二年度の見通しで見ますと、営業収益大体三百億、そのほかに百四十四億の利子で、両方合算をして計算をするということになるわけでございまして、利子が全体の三分の一ぐらい占める大きいパーセントになるわけですね。こういったもので、金利の変動で一%下がればたちまち黒字が赤字に転落する、経営としては大変難しい、綱渡り経営になるという面が一つあります。それからもう一方は設備投資のことでございますけれども、これも見通しで見ますと、毎年度五十億円ぐらいのオーダーでございますが、ほとんどは維持管理費でございまして、新規の事業に使える、輸送力増強等に使える予算は四億円から五億円ぐらいのオーダーである。こういうふうになりますと、大変問題になっております四国の複線、電化、こういう問題、例えば複線だけを考えましても、四国の高松—徳島、高松—高知、高松—松山という幹線の複線だけで四千億円ぐらい要るだろうという推算ができるわけでございますけれども、とてもそういうものは見込めないということになるわけでございます。
そこで、質問でございますけれども、こうした設備投資に対する財源の措置というものを一体どのようにお考えであるのかということでございます。政府としては、もう一たん切り離してしまうと全部それは四国で考えろ、こういう形になっているわけですね。この財源措置というものをどういうふうに考えていくのか。例えば関連事業からの収益を充てるとか、あるいは設備投資に使える基金を創設するとか、いろいろな考え方があろうかと思いますが、その辺のお考えを確かめておかないと何となく四国会社の経営見通しが暗くなってくるわけでございまして、スモール・イズ・ビューティフルになるためにそういった設備投資等についての財源措置をどういうふうにお考えであるのか、こういう質問をしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/418
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419・布川隆美
○布川隆美君 財源はどういうようにするかということになってくると大変難しい。実は、私も今度の公述人に選ばれるまで千九百二十億というのは、これは基金というのだからもらいっ放しだというように解釈をしておりました。千九百二十億円は、今遠藤先生言われたように四国の島民への手切れ金だ、涙金だというのではなくて、こういう貧乏会社を引き受けるその対価として千九百二十億円くれるんだというように私は解釈をしておりました。ところが、よく読んでみますと、それは三年目から元利を戻していかなければいかぬという。それならこの十年間に早く経営を軌道に乗せて、そして今言われるように設備投資をやらなくてはいけない。まだ十年間ぐらいの間は設備投資についての担保力がなくても国が保証をしていただいて、前向きの金ですから、赤字補てんでないのですから、これは国の保証によって設備投資はやっていかなくてはいけない。しかしながら、十年後に完全に株式会社に移る。できるだけ早くというけれども、その金を返すまでに企業の経営というものを安定化して、そしてみずから担保力を持って——担保力がなくても、政府系の銀行は、私のように担保力がなくても企業に将来性があるということなら、それも担保にして金も貸していただけます。そのためには、どうしても企業をできるだけ早く軌道に乗せるということが先決だと思います。設備投資をそれなら四国の人たちだけで、おまえ受け持てるか、どうだと言われても、それはなかなか難しい問題で、私もちょっとお答えができませんが、とにかく十年、返すまではひとつ国の保証ということも前向きの資金についてはお願いをしたい。
それと、やはり人道上の問題の災害が起きるということ、これはわかりません。その災害をほっておいて、国はそんなこと知らぬと言っていいのかという問題もあると思います。そのための復旧工事だ、設備だというものについても、ひとつこれは国として保証をしていただいて、民間金融機関からも当然ですが、国の政府資金も導入をさしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/419
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420・遠藤和良
○遠藤(和)委員 ちょっと誤解があるようですから一言言っておきますが、経営安定基金というのは返すものではないのです。ただ、初年度にどんと一括で来るのではなくて、十年間できちっとお払いしましょうということです。清算事業団から四国に来るのです。四国の人は清算事業団に返す必要はないのです。念のために言っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/420
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421・布川隆美
○布川隆美君 そうですが、それはありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/421
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422・細田吉藏
○細田座長 石田幸四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/422
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423・石田幸四郎
○石田委員 石田と申します。きょうは陳述者の皆さんに貴重な御意見を承りました。特に四国の実情について皆さん方が危惧しておられる点をるるおっしゃったわけでございまして、私たちもまことに骨身に感ずるわけでございます。
私ども公明党は、民営・分割ではございますけれども、政府に対して今後修正を要求する立場にございます。これを申し上げておきますと、例えば政府は六分割案でありますが、公明党は本州二分割案ということで、五分割案であります。また、三島基金におきましても、再建監理委員会が試算をした当時からいち早く、その基金の額では足らないということで増額を今日まで主張してまいりました。さらに申し上げますと、貨物会社の運営については非常に危機を感じておりまして、これはむしろ旅客会社に併営した方がより機能的な運営ができるであろう、こう思っております。さらにまた、安全、災害対策の問題も皆様方からるる出たのでございますが、これに対しても強化を要請をいたしたい。さらにまた、地方交通線の廃止問題に対しましても一定の歯どめの強化を要請をいたしたい。さらには、これだけの大改革でございますので、いろいろな問題が今指摘をされたようにあるわけであります。そういった意味におきまして、三年後、五年後、その中身の検討はさらに詰めなければなりませんが、やはり見直しをしなければならない。そういう規定をこの法案の中に織り込むべきではないか。簡単に申し上げますとこう主張をしている政党でございます。
そこで、田中先生に一つお伺いをいたしたいのでございますが、先ほど先生のお話は、特に分割の弊害についての御意見の陳述がるるあったように思うのでございます。そういった意味で、今まさに公社制が問われておりますが、やはり鉄道の運営そのものが大変大きな赤字を生むということは、これはフランスにおいても西ドイツにおいても同じでございます。特に、一カ月ぐらい前に西ドイツの予算委員会のメンバーが来日をいたしまして、この鉄道の赤字にどう対処すべきかということをかなり突っ込んで勉強をしていかれました。いわゆる国の財政としての負担に耐え得ない、特に西ドイツは単年度決済をしていたわけでございますが、最近はそれもなし得ないような状況になって、赤字がふえております。そういうような中で、先生は民営・非分割といいますか、そういう立場を主張しておられるわけでございまして、じゃ一体民営のメリットということについてどんな点を挙げられるのか、これをお伺いをいたしたいと思います。
同時に、今度は宮道先生にお伺いをいたしたいのでございますが、今申し上げましたように、我が党は貨物併営論であります。四国の貨物会社の要員を調べてみますと、営業が四十人、運転が三十人、それから工場に十人、その他に十人ということで、合計九十人でございます。恐らく十一月のダイヤ編成で若干貨物列車が減るだろう。それも、数字を見てみますと二割ぐらいかなと思います。そういった意味で、九十人ぐらいの人数を四国四県に分散をさせてやるということは余り能率的じゃないんじゃないか、併合するかあるいは旅客会社に全面的に委託してしまった方がさらに経費の節減等も進むのではないかな、私はこんなことを考えておるわけでございますが、もし御意見がありましたら承りたい。
この二点だけ、田中先生と宮道先生にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/423
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424・田中誉
○田中誉君 石田先生のおっしゃったことは、民営のメリットと言われたのですが、そういうことですか。——私はまずこういうことを具体的に申し上げたいのです。先ほども公社制度の弊害というお話があったんですが、私はそういう立場はとらないわけです。一つの例が、問題は、この二十三兆五千六百億円という借金を出した原因というのは何なのか。もちろん政治的な要因もある。しかし、同時にやはり現在の経営機構の官僚制にあるという気持ちもあるわけですね。例えば去年の一月十日に国鉄が独自の再建計画を出しました。いわゆる民営化・非分割という再建の独自計画ですね。そして、再建監理委員会の求めに応じまして六月の二十日に当時の仁杉総裁が三十数項目のデメリットを実は提示したわけです。その翌日、首相によって罷免されたことは記憶に新しいと思う。したがって、それまでの、それぞれの中央地方を通じて分割はノーだという意見というものが抹殺をされてしまった。したがって、分割・民営化以外に道はないという形で今日突っ走っているというのが実情だと思う。それが人活センターだとかいろいろな形の中にあらわれていると思う。問題は、社会党が三つの危機の中で機能の危機を挙げているわけですね。これは経営権もないし人事権もないということ、さらには国鉄の事業そのものが日鉄法に縛られて言うならば資産を持ちながらそれを有効に活用し得ないというところから民営的手法を導入するという現実的な立場の中に社会党の法案が提出されたと思っている。そういう意味で、私は民営のメリットというものはそういうところに求めていくべきでないだろうか。同時に、やはり鉄道というものは、世界的な大勢の中にありますように、いわゆる公共輸送としての役割を同時に持たしていく。そこで社会党法案でも何割の株式保有という事実上の政府の特殊法人化という一つの考え方もその中にあるんじゃないかというように私は思っています。そういう意味で、民営化のメリットについては、私はそういう社会党の法案の持つ指摘を踏まえて一応説明を申し上げておきたいと思います。
それから貨物の問題なんです。これは私は意見陳述の中に言いましたように、四国の貨物は既に廃止への方向に実はなっているんです。事実、去年の九月に四国の貨物の取扱駅は全廃という形が出たんです。したがって、四国の国会議員の先生方がやはり存置をさせるという一つの動きもありましたでしょうし、荷主、業者も貨物の廃止は困る、こういう立場の中で、いわゆる代行的な輸送という形の中で実は六駅が残っているという状況です。しかし、その輸送する品物というものは、たび重なる合理化の中で全方位体制というものが廃止をされていますから、百六十万トンから百四十万トンに実は激減をしている。その大半が土佐の石灰石で、約七割を占めるという実情の中で見れば、貨物はこの程度の運転なり営業では列車を運転することもできないし、貨車の補修をすることもできないということは明らかなんです。そうすれば旅客会社ですべて負わなければならぬという状況に実はなってまいります。同時に、輸送する品物というのはそういう状況になっておりますから、私は貨物は早晩廃止をされるという立場をとっていることを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/424
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425・宮道義幸
○宮道義幸君 今先生からお話がありました貨物の問題でありますけれども、一万二千五百人の貨物の要員を四国に割り当てた場合が九十名だというふうに私は感じているわけなんです。具体的に経営側の方から、こういうことでやるぞ、こういった箇所にこういう任務で配置をするんだというふうなことはまだ聞いておりませんのでわかりませんが、問題は、例えば遠藤先生の徳島は今度は廃止になってトラックでやるということになっていますし、貨物列車がレールを使うのは松山—高松間という形になるわけですね。それじゃ一回か二回かくらいの入れかえ作業に貨物会社を専門に張りつけるのか、こういうことになるとやはり問題があるのではないかというように思うのです。そうすると、旅客会社がその時間帯について請け負って、賃金をもらって、経費をもらってやっていくというようなことを考えなくてはならぬのじゃないかというふうに思いますし、先生が心配されているようなことがまだまだ私どもの方にはきちっとした絵がかかれておらぬように思っておるわけであります。先ほど田中さんが言われているように、それはもう四国はだめぞというふうなことには私は考えておりません。せめて、この十一月のダイヤ改正で九十名の貨物会社という形でそれは存続をさせるということにはなるんではないかというふうに思うのです。そのことで土地の関係なども貨物会社が持っておるんじゃないかなというように私は感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/425
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426・細田吉藏
○細田座長 工藤晃君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/426
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427・工藤晃
○工藤(晃)委員 共産党の工藤晃です。きょうは大変貴重な御意見を聞かしていただきまして、本当にありがとうございます。
私も考えてみますと四国の状況に大変知識が乏しいという感じも持っておりまして、私は昭和二十四年、二十五年に実は宇和島中心の地質調査に参りまして、そのとき高松から宇和島まで行くあの列車の長いこと、宇和島でおりると、もうこの先はないんだなということをつくづく感じたのですが、それから三十何年たって、いまだにこの鉄道網はそう変わってないということで、先ほど来お話ありましたように、多くの自治体が分割・民営化に反対する、あるいは多くの危惧をあらわす、そういう表明をされているということに対して非常に共感を持ったということであります。
さて、日本共産党は分割にも民営化にも反対であります。それは第一に、今度の財政の破綻というのは政府の誤った政策から押しつけられたものであって、それを取り除く。世界のどこを見ても、ばらばらの民営鉄道が鉄道を成り立たせ得ないということから国鉄に統合され、公共性を持たされた、そういう歴史からいってみても、これは反対します。二つ目に、今度の法案によって、民営化ならば鉄道網が維持できるということは証明できません。維持できないということが証明されます。三つ目に、国鉄は国民の財産であります。それは価額であらわすならば大変な額になる財産でありますが、それが価額の評価もなしに、いわば暗やみでどこかに渡されようとする、こういう問題があります。さらに、三十七兆円も国鉄と関係のない負債とか費用までが押し込まれまして、清算事業団に持っていかれ、何か土地を売れば解決するであるかのような幻想を振りまきながら、事実上、借金財政が続いている、国民に大きな負担が来る、こういうこともあります。さらに、先ほど来お話がありました民主主義の問題があるからであります。
そこで、私は最初に橋本さんにお伺いしたい点は、これは先ほど来の議論とも関係するのですが、実は四国の場合、六十年度経常収支で約五百七十億円の赤字というのが六十二年度には若干の黒字になる。なぜなるかというのは、先ほど来の基金があります、それから特定人件費がなくなる、あるいは引き継ぎ債務がなくなる、それからかなり無理な人減らしということでやられますから、事実上、ある特別の措置あるいは補助金といっていいか悪いかわかりませんけれども、そういうもので無理やり黒字になるという姿でありますが、このことを見ると、いわばこれは純粋な民営化とは言えないということも言えるでしょう。というだけでなしに、民営化すれば何でも解決する、うまくやっていけるのだということではないという証明になるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
それとあわせて、実は私たちも、また多く広く指摘されてきたことでありますが、無理やり資本費や特定人件費などを押しつけてきたことから起きている問題だから、これを取り除けば、押しつけるようなことをしなければ、破綻問題も起きなかったということの証明になるのじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
そしてこのように、財務の面ではまさに一〇〇%民営化でも何でもない状態でスタートしながら、ビヘービアといいますか行動面では一〇〇%の民営化ということになっていきますと、そこで路線廃止の自由化ということにもなっていくと思います。サービス低下もあります。とりわけ四国の場合は、皆さんが強く要求されている設備投資の問題というのが非常に深刻だと思いますが、これまで出された資料によりますと、実は四国の場合は減価償却の負担をかなり低くしている。それで、設備資金というと減価償却費を少し上回るぐらいしか見ていないというようなことで、先ほど言いました電化や複線化、さまざまな課題がこれでは解決できない。こういう四国の皆さんの要求からいっても、こういう方向はとれないのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/427
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428・橋本了一
○橋本了一君 先ほど民営の経営というものについて、これは民営にすればかえって負担するのではないだろうかという御意見でございますが、全く私はそのとおりだとむしろ思っておるわけであります。しかも、この長期債務等につきましての責任というものは、むしろ一つの責任は、政府から基礎財、基礎設備についての投資というものをすべて国鉄に押しつけてきたということと、それからいわゆる列島改造論などに見られましたところの無理な地域開発というものとあわせて新幹線を増設してみたりするというようなことから、しかもそれを国鉄の責任においてやらされた。イギリスだとかドイツなどを見ましても、例えばイギリスなどでも地上の鉄道運行というようなものについては民営的な手法を導入しても、いわゆる線路だとかあるいは駅舎だとかといったたぐいの基礎的な設備については国家でやっているというようなことにもかかわらず、我が国においてはそれらをすべて国鉄にやらされた、いわゆる押しつけの債務であったということになるのじゃないだろうかと思うわけであります。
それから設備投資の問題については、先ほど私も申し上げたとおりでありますが、それについて多少財源措置というようなものについて私の意見を、質問に答えることをちょっと通り越しますが、申し上げておきたいと思います。
それは、何といっても過剰な軍事費というものを削減してこういう交通に転用すべきであるということがまず第一点であります。それから、例えば教育だとか社会福祉だとか医療費だとかについてのいわゆる受益者負担というようなものをしきりと最近の行政改革、臨調行政改革の中で導入しておりますが、こういう観点から申し上げると、鉄道あるいは運輸・交通をもって企業を成り立たせているそういうものの受益者負担を、ここで例えば仮に交通税というような目的税を新設して充当すべきでないだろうかというふうに思うわけであります。あるいは新幹線を敷設することによって得ました開発利益というようなものが非常にたくさんある、しかも建設にかかわる相当多額の、巨額の利潤を生み出したわけでありますから、これこそまさに受益者負担というような観点から申し上げると吐き出していいんじゃないだろうか。吐き出し税の新設というものをぜひ提案して、こういうような財政的な措置をとるならば、国鉄の債務というものに充当していく、償却していく財源というものは十分成り立つのではないだろうかということをまず申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/428
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429・工藤晃
○工藤(晃)委員 田中さんにお伺いしたいのです。私に与えられた時間があと三分かそこらなので、簡単に、私も簡単に述べます。
それはこういう問題なんです。例の十六兆七千億円は国民の負担だというと、二十五年だと一年間に一兆四千億円ずつ払っていかなければいけない。何で二十五年間連続して毎年一兆四千億円払わなければいけないんだ。しかも、これにはいろいろからくりがありまして、土地がどれだけ売れるかとかいろいろな問題があって、早速来年度の予算でかなり借入金が出てくるような状態なんですね。私は、実は今の土地のブームというのも景気が少しでも変わればたちまち冷えてしまって、どれだけ売れるのか売れないのかわかりはしない、こういう状態だと思うのですね。そういうことを見ますと、実は今度のは四国の方々にとって路線のサービスが悪くなるとかなんとかだけでなしに、場合によれば鉄道がなくなったところの人まで、それこそ二十五年間これだけの負担がひとしくかかってくるという意味で、非常に不合理なやり方だというふうに考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/429
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430・田中誉
○田中誉君 私、意見陳述で申しましたように、来年度末で約二十五兆円の長期債務、これに水増しをした債務合わせて三十七兆三千億円、その中からいわゆる十六兆七千億円という国民負担が押しつけられてくるわけですね。したがって、私が言いましたように、やはり借金の発生原因別にその責任というものは明らかにしていく必要があるのではないだろうか。そして、この水増し債務を国鉄の債務に押しつけてきたこと自体にも問題がある。したがって、そういう点で見れば、この十六兆七千億円という借金というものを毎年、三十年返済としても一兆三千億円、これはまさに不当な国民負担である、こういう立場をとっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/430
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431・工藤晃
○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/431
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432・細田吉藏
○細田座長 これにて質疑は終了いたしました。 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
拝聴いたしました御意見は、国鉄改革諸法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚く御礼を申し上げます。
また、この会議開催のため、格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、深甚の謝意を表する次第であります。
それでは、これにて散会いたします。
午後一時二十四分散会
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派遣委員の福岡県における意見聴取に関する記録
一、期日
昭和六十一年十月十八日(土)
二、場所
福岡第二合同庁舎
三、意見を聴取した問題
日本国有鉄道改革法案(内閣提出)、旅客
鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に
関する法律案(内閣提出)、新幹線鉄道保
有機構法案(内閣提出)、日本国有鉄道清
算事業団法案(内閣提出)、日本国有鉄道
退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団
職員の再就職の促進に関する特別措置法案
(内閣提出)、鉄道事業法案(内閣提出)
、日本国有鉄道改革法等施行法案(内閣提
出)、地方税法及び国有資産等所在市町村
交付金及び納付金に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣提出)、日本鉄道株式
会社法案(伊藤茂君外八名提出)、日本国
有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に関
する法律案(伊藤茂君外八名提出)及び日
本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特
別措置法案(伊藤茂君外八名提出)につい
て
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 山下 徳夫君
久間 章生君 松田 九郎君
嶋崎 譲君 村山 富市君
山下八洲夫君 柴田 弘君
河村 勝君 村上 弘君
(2) 現地参加委員
大橋 敏雄君
(3) 現地参加議員
中西 績介君
(4) 政府側出席者
運輸大臣官房審
議官 近藤 憲輔君
運輸大臣官房国
有鉄道部財政課
長 後出 豊君
日本国有鉄道常
務理事 山田 度君
(5) 意見陳述者
九州・山口経済
連合会常務理事 前田 研一君
田 川 市 長 滝井 義高君
福岡大学工学部
教授 吉田 信夫君
社会問題研究所
事務局長 八丁 和生君
九州電力労働組
合本部執行委員
長 鷲頭 康義君
筑豊復興共闘会
議事務局長 野村実智明君
────◇─────
午前十時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/432
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433・山下徳夫
○山下座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会派遣委員団団長の山下徳夫でございます。私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。
この際、派遣委員を代表いたしましてごあいさつを申し上げます。
皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、国鉄改革関連諸法案の審査を行っているところであります。当委員会といたしましては、各法案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地を初め札幌市、高松市におきましてこのような会議を催しておるところであります。
本日、御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言をなさる方々は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
なお、この会議におきまして御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをいただきたいと思います。
次に、会議の順序につきまして申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
出席の委員は、自由民主党の久間章生君、松田九郎君、日本社会党・護憲共同の嶋崎譲君、村山富市君、山下八洲夫君、公明党・国民会議の大橋敏雄君、柴田弘君、民社党・民主連合の河村勝君及び日本共産党・革新共同の村上弘君並びに私の十名であります。なお、現地参加議員として中西績介君が出席されております。
次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
九州・山口経済連合会常務理事前田研一君、田川市長滝井義高君、福岡大学工学部教授吉田信夫君、社会問題研究所事務局長八丁和生君、九州電力労働組合本部執行委員長鷲頭康義君、筑豊復興共闘会議事務局長野村実智明君、以上の方々でございます。
それでは、前田研一君から御意見をお述べいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/433
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434・前田研一
○前田研一君 九州・山口経済連合会の前田でございます。
私は、分割・民営化によって国鉄再建を図ることについて、賛成の立場から概括的に意見を述べたいと思います。
最初に、国鉄分割・民営化の意義と法案の早期成立についてのお願いを申し上げます。
御承知のとおり我が国は、現在、抜本的な行政改革と財政再建の推進を最重要政策課題として、その具体化に取り組んでおり、第二臨調の答申に基づいて行政の合理化や効率化はある程度進展してまいりました。この行政改革の中でも国鉄改革は最大の問題であり、極めて重要かつ緊急を要する政策課題と存じます。巨額の長期債務と膨大な赤字を抱える国鉄経営の現状は、もはや破産状態にあり、この再建を図るためには、単なる対症療法では不可能であることは、これまで数次にわたる経営改善計画が破綻したことに明瞭に示されていると思います。
さきの第二臨調の答申では、抜本的な国鉄改革を行うために分割・民営化の方向が提言され、この答申を受けて国鉄再建監理委員会は、効率的な経営形態を確立するため、分割・民営化に伴う具体的方策を明示されました。もはや猶予を許されない最後の機会の国鉄再建方策として、極めて適切かつ現実的な方策であると思います。九州の国鉄の経営の実態は、他の地域に比べましてさらに厳しい状況にありますが、このたび示された方向のもとに、地域全体の理解と協力を得ながら、この再生を図っていかねばならないと思います。
さて、新会社は六十二年四月に発足する予定になっております。新しい経営形態へ円滑に移行するためには、余剰人員対策を初め新会社発足に必要な万全の諸準備を慎重かつ迅速に進めていかねばなりませんが、そのためには十分な準備期間が必要であると考えられます。現在、国鉄改革関連法案につきまして国会において慎重な審議を続けておられますが、この法案の成立がおくれますと新会社発足にも支障を来してまいります。したがって、現在審議中の国鉄改革関連法案を何よりも早期に成立させることが肝要ではないかと思います。
具体的な問題について申し上げます。
最初に余剰人員対策についてでございます。国鉄職員の再雇用問題、いわゆる余剰人員対策についてでございますが、この余剰人員対策は国鉄改革の成否を握るかぎとも言える重要な課題でございます。分割・民営化に伴って全国で約六万一千人、九州では一万一千人の余剰人員が生ずるものと見込まれております。現在、要員合理化を実施する一方、広域異動や希望退職募集などの対策に取り組んでいるほか、公的部門や一般産業界でも受け入れなどの協力が行われているところでございます。現在、九州では目標の約半数が確保されているということでございますが、経済界といたしましてもさらに協力に努め、目標の達成にいささかなりとも寄与いたしたいと存じております。
ところで、九州は他の地域、特に大都市圏に比較いたしまして雇用機会の著しく少ない地域でございます。しかも最近の厳しい経済環境の中で、鉄鋼、造船、石炭など一般産業界では合理化や雇用調整などが進展しておりまして、雇用情勢は一段と厳しさを増してきております。雇用の場の確保というものがさらに難しい局面を迎えていると言えます。政府におかれましては、九月十二日、国鉄等職員再就職計画を閣議決定し、余剰人員の受け入れ分野別の採用計画を決められました。国や地方公共団体などの公的部門では、約三万名を採用するとの目標が改めて明示されたところでございます。国鉄職員の再雇用の場の確保には、まず国鉄自体の自主努力というものが必要であることは当然でございますが、雇用の場の乏しい現地九州というものを考えてみますと、広域異動などの方策も必要とは存じますが、国鉄職員の再雇用を円滑に図るためには、極力地元で働けるようにすることが望ましいと思います。このため、まず率先して国の機関の採用枠というものを極力広げてもらうということと同時に、さらに国が国鉄職員を採用される際には、雇用機会の少ない地方での職場を確保するため、国の地方出先機関で高い比率で採用をしていただくなどの配慮がぜひとも必要であり、あくまでも雇用不安の解消に最善の努力をすべきであると思います。
次に、国鉄の非事業用地処分の問題について述べたいと思います。
国鉄用地につきましては、最小限必要な事業用地を除いて、非事業用地は債務償還の処理財源として売却されることになっております。またこの売却対象用地の処分につきましては、その使途や活用方法などを審議する機関として資産処分審議会が設置されるというふうに承っております。ところで、九州における売却対象用地は全国の一一・八%に当たる三百九十四ヘクタールに達し、おおむね都市部に立地しております。しかも香椎操車場、鳥栖駅など、新会社の経営にとって今後期待できる分野である関連事業などの展開のために有効活用が可能な用地、あるいはターミナル駅を中心とする市街地再開発に重要な機能を果たす用地も含まれております。そこで、この資産処分審議会の運営として、例えばその構成メンバーとして九州地域の実情に通じた地方の代表者を参画させていただくなど、制度面で地域の声というものが十分に反映され、国鉄の売却用地が地域発展に資するような御配慮をいただきたいというふうに考えるわけでございます。
最後に、九州新幹線について述べたいと思います。
当地方の経済発展にとりまして何よりも重要なことは、高速交通体系の早期整備にあることは各方面から指摘され、強く要望されているところでございます。その中で高速自動車道の整備につきましては、九州縦貫道は着工以来二十年余を経てまだ完成に至らず、九州横断道の建設もまだ部分的であるなど大変な立ちおくれを見せており、私どもは機会あるごとにその整備促進をお願い申し上げております。しかし、高速交通体系のもう一つの柱である九州新幹線の整備につきましては、まだ政府の方針は明確になったとは言いがたい状況にあることは御承知のとおりでございます。確かに九州新幹線の整備につきましては、財源問題地元の負担問題あるいは九州新会社の経営との関連、特に経営を脅かすような負担にならないための方策の検討など、解決すべき困難な課題が数多くあることも承知いたしております。しかし、当地方の今後の発展のためには、高速交通体系の整備を図り、九州域内を一日行動圏につくりかえていくということが何よりも緊急の課題でございまして、このための重要な一翼を担うのが九州新幹線の早期整備でございます。このような当地方の実情を十分勘案されて、九州新幹線の整備問題については十分御論議をいただき、一日も早い実現を切にお願いいたしたいと思います。
以上、国鉄再建のため分割・民営化の必要性について賛成し、あわせて九州の実情にかんがみ若干の問題点について見解を申し述べて、私の意見を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/434
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435・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
次に、滝井義高君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/435
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436・滝井義高
○滝井義高君 田川市長の滝井義高でございます。
国会の諸先生方におかれましては、国政の進展と国民生活の安定と福祉の向上のために日夜御努力をされておられます点について、心から敬意を表したいと思います。
本日は、御指名をいただきまして、国鉄関連の諸法案について、地方自治体を担当する一市長として意見を述べる機会を与えていただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。
政府案は、分割・民営化を中心にして八つの関連法案が提出をされておるわけですが、考えてみますと国鉄は百十四年の長い歴史を持っております。その歴史を築くために、国民あるいは政府一体になりまして、五銭、十銭——五円、十円じゃないです、五銭、十銭を積みながら今日の巨大な、世界でも有数な国鉄をつくってきたわけでございます。今回その国鉄が二十五の関連会社にばらばらにされてくることになるわけでございます。私は、過去の歴史にかんがみまして全国一社制、そして統一ネットワークで国鉄は運営すべきものだと考えております。
それはどうしてそうなるかと申しますと、御存じのように、日本の国鉄というのは運輸交通体系のきちっとした全国的なネットワークを持っております。同時に通信情報網についてもきちっとしたものを持っております。同時に優秀な人材と非常にすぐれたリニアカー等の技術を持っております。こういう三つのものがうまく連携をとり、総合的に運営をされるならば、最近民営化しました三十万のNTTにまさるとも劣らぬ力を発揮するものだと思っております。それを二十五に散り散りばらばらに切り刻むということは、国鉄の効率を悪くし、そして今後、運営する上の事務処理を行政改革とは反対の複雑化の方向に持っていくことになります。そういう点から考えましても、やはりこれは全国一本でやる必要があると痛感をいたしておるものでございます。
民営化については私は賛成でございます。民営化については、国鉄再建監理委員会の推進力でありました慶応大学の加藤寛教授も申しておりますけれども、今度の国鉄法案で最高の至上命令というのは民営化であると言われております。私もそうだと思っております。しかし、分割というのはこれは附属物である。民営化すればそういう形が必然的に附属的に出てくる。こういう附属的な形、いわば刺身のつまとして取り扱っておるわけです。この点は非常に大事でございますが、それならばなぜ民営化をしなければならぬか。
今まで国鉄は公社で経営しました。公社の欠陥を三つ監理委員会が挙げております。私もこれは同感でございます。まず第一は、急速な日本の経済の変更とモータリゼーション、航空機の発達、こういう客観的な情勢の変化に国鉄が対応できなかったということです。二番目は、国鉄の労使が親方日の丸的な意識を持っておったということであります。もう少し早くこの事態を認識して、そしてきちっとやるべきなのにそれがなかった、極めて甘い考えであったということです。これは高木総裁もそう言っております。三番目の問題は、政治と国民が過大な要求をいつも国鉄に押しつけてきたということ、この三つでございます。したがって、今後民営化をする場合には、公社のそういう欠陥を除いて、当事者能力を持たなかった国鉄に当事者能力を持たせるということです。これは民営化以外にない、こういう極めて端的なものでございます。
もう一つ民営化論で私たちが忘れてならないことは、仁杉さんが首を切られる前、すなわち昨年の一月に国鉄が「経営改革のための基本方策」というのを出したわけです。これが内閣のげきりんに触れたかどうか知りませんけれども、あれから国鉄はおかしくなってきた。あれをごらんいただきますと、あれはいわば分割をとっていない。民営化方式をとっている。そして国鉄を再建しようという方針をあれは出しております。
そこで、私が一番懸念する分割を我がふるさとの九州に焦点を当てて、一体分割がうまくいけるかどうか。九州の運命は即四国と北海道の運命と全く同じでございます。したがって焦点をここにちょっと当てて見てみますと、まず九州の国鉄で黒字はたった一つ、すなわち小倉から博多に行く新幹線です。しかし、これは西日本に取り上げられてしまいます。そうすると残る線は全部赤字でございます。百円稼ぐのに三百円必要だ。全部赤字、これがまず第一です。二番目は、与えられた九州のこの鉄道のレールが古い、鉄橋が古い、車両が古い。全部古い。そして同時に設備投資いわゆる電化、複線化というのが非常におくれておる。四国のごときは一つも電化はありません。非常におくれておる。これがこれから国鉄が運営をしていく上で大きな問題点でございます。今からすぐやるといったって、莫大な金が要るからできないわけです。列車を新しくここ二、三年のうちにかえるといったら三百億や五百億すぐ要るわけです。これが一つです。それからもう一つ、九州を取り巻く経済環境、社会的な環境でございます。九州は御存じのように過疎率が非常に高い。老人人口が非常に多いわけです。過疎率は五四%、九州の半分は過疎でございます。そして県民所得をごらんいただきますと、県民所得は全国平均の八割ちょっとです。八四%ぐらいでございます。これも最近はだんだん下がりつつあると思います。こういう形でございます。
さらに経済的な状況をごらんいただきますと、まずアルミがだめになりました。鉄鋼も御存じのように大八幡製鉄というものの頭脳、いわゆる中枢部は全部千葉県の富津に移転をします。そうすると、八幡製鉄というのは東北の釜石製鉄所と同じような地方製鉄になって、今までの中枢的な役割はしなくなります。そしてセメントがだめで、韓国、台湾その他いわゆるNICS諸国から追い上げられて、もうお手上げです。内陸部のセメントは特にもう調整工場にならざるを得なくなりました。そしてそれにいわゆる前川レポート、ロン・ヤスの国際協定としての経済構造の調整の波が押し寄せてきまして、石炭産業が壊滅的な打撃を受けることになる。もう既に高島が二十日には提案をします。そうなりますと、アルミがだめで鉄がだめで石炭がだめで、そして造船も二割の減産ということになると、九州の経済というものは夢とロマンがなくなってしまいました。そういう中で、国鉄の分割・民営化とともにローカル線の切り捨てが行われてくるわけです。そういう環境の中で国鉄を考えてみると、絶対にこれは黒字にならないわけです。
そこで、黒字にするために何をこの法案はしておるかというと、いろいろなことをやっておりますが、まず第一に、九州においては本州と違って国鉄の運賃の値上げを倍にします。向こうが二%、三%やるならこちらは五%か六%上げます。それから給与体系についても、ベースアップを向こうが三%、四%やればこちらは二%しかやりません。これは五年間のうちに格差が二割以上ついてしまいます。そういう過疎で財政的にも貧しいところで運賃を上げて給与を切るという形で、まず国鉄の赤字をなくそうとしております。
それでもまだいかぬわけで、それでここに出てきたのがいわゆる経営安定の基金三千六百億です。ところが、監理委員会は三千六百億と決めておりましたが、それはだめだというのでいつの間にかだんだんふやして、全国で言うと千八百四十億ぐらいふやしてきた。九州は百二十億ぐらい。まあ新聞ですからはっきりしませんが、百二十億。三千六百億から三千七百二十億になった。そしてこれは、もし九州にだんだん赤字が出てきたときはそれをつぎ足してくれるかというと、国会の何かを見ると橋本運輸大臣は、それはもうつぎ足しません。ということになりますと、まず第一に問題になるのは、低金利の状態の中で国債の長期国債と同じように七分五厘の利子がもらえるかどうかなんです。これが一%もらえなかったら三十億や四十億すぐ減ってしまう。監理委員会の意見では十一億の黒字なんですから、それがだめになったらもう一遍に赤字になってしまうわけです。これはいわば九州というものと四国と北海道の手切れ金じゃないか。もうこれで終わりだよ、これで九州は捨てますよという手切れ金のような感じが一市長としてみるとするわけです。それでは困るわけです。だから、ここらあたりはもうちょっときちっとひとつお願いをいたしたいと思います。
もう一つその上に問題が出てきたのは、国鉄のバスとこの新会社が一体になっております。バスは御存じのようにもう九億円の赤字でございます。九億円の赤字が出ますと第三種生活路線、五人未満のものはもう十一社は運行中止です。そうすると第二種の生活路線である五人から十五人のものもやがて同じ運命になります。バスが既にそういう運命にあるとすれば、残っておるローカル線じゃなくて特定地方交通線じゃなくて、地方交通線が同じ運命になるわけです。したがって、地方交通線を切らないという保証はどこにもありません。そこで保証を私はしていただきたいと思います。
それからもう一つ、現在第二次の地方ローカル線は三十一線でございますが、まだ一線しか片づいておりません。あとは協議中あるいは協議が少し片づきつつあると思うのです。第三次は十二線ですが、そのうち三線は既に御存じのように第三セクターになりました。あとは残っております。この残っておるものは、どうせ民営化するわけですから、もし法案が通るとすればこの民営化の中でやってもらって、その法律の中を削っていただきたい。そうして地域の我々が産炭地の発展計画その他を立てる場合にマッチする形にぜひしていただきたい、こういうように私は考えております。
以上、まず第一の民営・分割の中の分割の一つの例を示しました。
次は、二十五の国鉄改革の中でかなめの役割をするものは、私自身が法案を見て旧国鉄、国鉄清算事業団だと思います。この清算事業団は、私たちがあの監理委員会の報告や法案を見ても理解ができないことがいっぱいで、わかりません。本当に一生懸命見てみたけれどもわからない。
まず第一にわからない点は、国鉄の長期債務が三十七兆三千億になっておる。その三十七兆三千億を新事業体が十四兆二千億、それから旧国鉄、清算事業団が二十三兆一千億と分けております。一体こういう分け方の根拠は何だかさっぱりわかりません。どういう根拠によってこういう分け方をしたのかというのがわかりません。
それから二番目にわからないのは、国鉄の分割・民営とは関係のない長期債務が二十五兆四千億、あの監理委員会の報告にあります。これを新会社が八兆四千億、それから旧国鉄が十七兆に分割して受け持つことになっております。どうしてそういう分け方になるのかというのがまたわからない。そればかりじゃなくて、八兆四千億という新事業体に移っていくものというのは、一体評価は何でやっておるかというと簿価ですね。帳簿価額ですね。そうすると、新会社というのは国鉄と全然無縁です。社長さんも新しくなるし、労働者もそこに直接雇うわけじゃないし、全然新しいものです。ところが財産だけは国鉄のものを安く取っていってしまう。それを簿価で安く取りますと、それだけ今度は清算事業団が余計に負担をしなければならぬ。これを高く時価で見積もって移して、それを将来返すようにすると国民の負担は軽くなるわけです。これは簿価でやっております。何で簿価でやらなければならぬのか、これがわからない。こういう点でございます。
それからもう一つは、この清算事業団は御存じのように年金を全部背負うわけです。四兆七千億背負っております。十万人首を切ると三千億の給料が浮きます。しかし十万人首を切っても、東北・上越新幹線にぽっと三千億取られたら十万人首を切ったことが何にもならないわけです。給料は三千億浮きます。こういうように今度は年金を全部かろわせます。そうすると、新しく出た年金が全部追加費用として四兆七千億に加わっていくわけです。それを清算事業団がかろっていくわけです。そのほかに、あれをごらんになると鉄建公団の建設のためにかかる資本費の負担もしますし、本四公団のものも負担します。これも二兆二千億円負担するわけです。そのほかに三島基金もここから出します。このように全部出していくわけです。そして二十三兆一千億のうち土地を売ったものが五兆八千億、これは国会で七兆七千億に修正をされました。そして株が六千億。株は六千億より上がるかもしれませんが、一応監理委員会はそうなっております。そうすると、この新事業体に行く土地というのは一体どことどこが行くのか、そして残る旧国鉄に帰属する土地はどことどこになるのか、これがまたわからない。ようやく一昨日国会の資料が手に入ったので見ましたら、六万六千二百三十六ヘクタールのうち新会社に行くのは五万八千百十ヘクタール、九割行ってしまうのですね。これは簿価で行ってしまうわけですね。そんなことで我々負担側が一体黙っていていいのかどうか、こういうことです。新会社と国鉄は無縁です。こういう点をもう少し私たち国民にわかるようにしていただきたいと思っておる次第でございます。
以上、概要をちょっと申し述べましたけれども、法案が大変難しくて、勉強すればするほどわからなくなるわけです。国鉄は過去四度か五度か再建計画をやりました。私は五十五年のときに国会でも公述に出たのですけれども、そのときに言いました、この計画は二年ぐらいしたらだめになると。これもこれからもし法案が通れば、一、二年が勝負だと思っております。もし一、二年の間にうまくいかなかったら、これは大変な問題になってくるわけです。特に三つの島々はうまくいきません。そして御存じのように今までは国がいろいろ内部補助を、お金を出してやってくれておったのですけれども、今度は新幹線は、例えば設備投資の余計にかかったところはリース料は少ししか取らない、しかし東海道線や何かの非常に安いところは高いものを取る。これは結局内部補助をやっておるわけです。あるいはこの基金も内部補助と同じです。結局体裁を変えただけで、今までとちっとも変わらぬことをおやりになっているということです。
そして最後に旧国鉄、これの支出と収入とをずっと見ていくと、一収入の部分の国が一体幾ら出すかということがわからないわけです。十六兆七千億の利子だげでも、監理委員会はこれを二十年ないし三十年で全部払うとすると、仮定だけれども利子だけでも一兆三千億か四千億かかりますよ、こう提起しておる。ではその利子は全部国が出してくれるのかくれないのか、まだわからぬ。これは十二月の予算編成まではお預けだというならば、国会でやはり前もって明らかにしていただいて、このくらい国が出すのだ。今一兆一千億法人税その他足りません。我々地方自治体には四千四百億だけ交付税が来ない。この問題さえ片づかないのです。だから国鉄のここらあたりももう少しきちっとしていただいて、我々が納得いく形で分割・民営をおやりになるならばやっていただく。そうでなければ、もう少し時間をかけてじっくりとそれぞれの地域で論議をして、そして立派な、国民総意の形で国鉄の未来が開ける形をつくっていただきたい。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/436
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437・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
次に、吉田信夫君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/437
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438・吉田信夫
○吉田信夫君 福岡大学の吉田でございます。
私は、九州の交通計画に関与しておりますので、その視点から日本国有鉄道の分割と民営化に基本的に賛成という意見を申し上げます。
まず最初に分割・民営化に賛成の理由を三つほど述べまして、次に分割・民営化のミニモデルとしての甘木鉄道の評価を申し上げ、最後に日本国有鉄道の改革に関する特別委員会に対して、九州の地域交通から二つの点の配慮方をお願いしたいと思います。
まず賛成の理由の一つは、全国に比べまして九州の輸送機関の中で鉄道が占める割合は、人の動きで六%、物の動きで二%へと低下しております。さらに九州の域内での人の動きを調べてみますと、内—内で動いているのが、まず発ベースで九五・六%、九州に入ってくる着ベースで九五・五%であります。他のブロックに比べてみますと、九州の域内の鉄道の完結度は高いと言えるのではないかと思います。したがって、鉄道は九州の中での交通のネットワークづくりを主体にし、九州から外への交通には新幹線、航空を組み合わせたネットワークがあれば十分だと考えております。
二番目の理由は、九州は他のブロックに比べまして、他のブロックというのは四国だとか北海道という意味ですが、都市化がかなり進んでおりますので、鉄道が得意とする都市間交通、それから都市近郊交通に適しているということが言えます。つまり九州では、具体的に言いますと百万都市として福岡、北九州を抱えておりますし、五十万都市としては熊本、鹿児島があります。それから四十万都市としては長崎、大分がありますし、三十万前後の都市としては宮崎、佐世保、久留米がある。それぞれ海岸線に沿いまして、百キロ前後離れてうまく分散しているわけでございます。したがって、鉄道が得意とする都市間交通が成り立つ背景があると言えます。次に都市近郊交通について申し上げますと、九州七県の人口のうちでそれぞれの県庁所在地への県の人口の集中の割合は、熊本が三〇%近くです。そのほかの県庁所在地の都市も二五%前後の人口の集積があります。したがって、これは鉄道が得意とする都市近郊の交通の分野に所属すると考えております。
三番目の理由は、地域密着型の鉄道経営の意思の決定がこれまでよりずんと早くなると思います。交通という商品は、御存じのとおり時間のストックがききません。その時間帯にしか商品の価値がないわけです。したがって、時期を失しますと交通のサービスの価値は全くゼロになります。ある東京の私鉄では、野球の試合の進みぐあいに応じてお客さんの帰りの車両の運行ダイヤを適宜動かして、交通の需要を、商品を逃さないような努力をしているわけです。このような柔軟な対応こそ今の国鉄に最も問われていることではないかというふうに考えます。
以上、まだございますけれども、時間がございませんので、三つの観点から分割・民営化に賛成いたします。
次に、この四月から甘木鉄道が発足しておりますが、これについて若干のコメントを通して、国鉄の分割・民営化に対する一つの資料としてお話ししていきたいと思います。
私どもは交通機関を使うときには、速いとか安いとか回数が多いという交通のサービスがあります。それに対応して短く動くとか中距離を動くとか長い距離を動くという距離の関係が出てまいります。御存じのように、都市交通の近距離の運転では運行回数の多さが最もきいてくるわけです。中距離では速さがきいてまいります。長距離では速さと運賃がきいてまいります。私たち利用者は、この交通機関をうまく適時使い分けていることは御承知のことだと思います。それで九州におきましては、都市間交通の中距離としては、在来線よりも新幹線が持つ速さという交通サービスを私たちは提供を受けたいと思っております。都市近郊線の通勤通学では、短い車両の編成でよいから回数の多い交通サービスを私たちは欲しているわけです。つまり、この運行回数の多さを目玉商品として鉄道の再生にかけたのが甘木鉄道であります。
私は、甘木鉄道を九州鉄道会社への分割・民営化の、ミニモデルと評価しております。国鉄甘木線は、六十一年の四月に甘木鉄道会社として発足しましたが、これまでの乗車人員と収入の実績は当初の予測をかなり上回っております。ちなみに数字を申し上げますと、一日平均乗車人員が予定としては二千四百人、年間収入が一億五千四百八十万と当初試算しておりました。それが九月末までの一日の乗車人員は二千六十九人、収入は八千二十万となっています。その原因は何かといいますと、御承知と思いますが、国鉄時代の七往復から三十二往復へと運行回数をふやしたことであります。つまり、その地域のニーズにこたえた地域密着型のダイヤ編成を実施したためだと考えております。その他駅前の無料駐車場だとか西鉄バスの乗り入れだとか、非常にソフトな対応、細かな対策をとっております。そして甘木沿線住民の方々が地域の足として、自分の鉄道だというマイレールの意識を持ったことだと思います。しかし、この成功も鉄道施設への積極的な投資、これがないことには実現は不可能であったと思います。つまり新しい投資とは、新しいフィーリングを持った機動性のあるレールハスだとか、三十二往復という往復の回数を実現させた中間の駅での行き違い施設、そういった施設の前向きな投資が需要を掘り起こしたし、三十二往復の回数を実現させたと思います。
しかし、この甘木方式が九州のほかの地方交通線で全部成功するとは思っておりません。つまり甘木鉄道の再生を可能にしたのは、その前向きの投資と、さらに福岡市への都市近郊の交通需要がその背景にあったと思います。同時にそういった甘木鉄道の成功は、片側では甘木鉄道の沿線を並行して走る西鉄バスの利用者が千三百人から千人に減少しております。公共交通としての鉄道とバスとの競争はある面では必要だと考えますが、でき得れば鉄道とバスとが協調して、マイカーから鉄道への転換を図ることがこれからの甘木鉄道に残された課題だ、そういうふうに考えております。しかし、いずれにしましても甘木鉄道の成果というものは、これまで私ども交通計画の分野で種々議論されておりました分割・民営化への一つのプレ、前もっての実験であり、分割・民営化に賛成する一つの根拠にしたいというふうに私どもは考えております。
最後に、日本国有鉄道改革に関する特別委員会で九州の地域性を配慮していただきたいということを二点だけ申し上げます。
一つは、九州は地震、台風、集中豪雨などの災害が非常に多く、鉄道の災害復旧費の財源が新しい会社をかなり圧迫するのではないかというふうに考えております。例えば地震につきましては、九州の中央を中央構造線という地震帯が走っておりますし、かつ鹿児島だとか宮崎の沖には南海トラフが走っております。国土庁の第三次火山噴火予知計画の中では全国十二の火山が活動しておりますが、その中で阿蘇、霧島、桜島、雲仙、これを要注意火山としてリストアップしております。さらに、土砂災害の危険度を示します急傾斜地崩壊危険箇所というのがありますが、これの分布は長崎が百三十五、佐賀が五十八、全国でも非常にランクが高い県に入っております。さらに年間の降水量、雨の量は宮崎が二千四百ミリぐらいです。九州各県とも御存じのように二千ミリ程度は降ります。これは日本平均の降水量をはるかに上回っております。この水は九州の豊富な水源にもなっておりますが、集中豪雨による災害の原因ともなっております。例えば長崎では、五十七年の七月に時間雨量百八十七ミリという我が国観測史上最大の集中豪雨が出ております。この長崎で国鉄は、車両の水没、浸水、線路などの崩壊を生じ、鉄道関係の災害復旧費は長崎だけで十一億円、九州全体で二十三億円にも達しております。五十七年に限らず、年間ほぼ十五億円前後の災害復旧費が鉄道で必要だと考えております。
ところで、来年発足いたします九州鉄道会社の鹿児島、日豊、長崎線、これらはほとんど海岸線に沿って走っております。鉄道は海からの越波や津波などで災害をこうむりますし、山からは急峻ながけが迫っているため地すべりの危険にさらされております。先日も国道二百十九号では物すごい地すべりが起こっております。さらに鹿児島、宮崎では、御存じの比重が非常に軽くて雨に弱いシラスがたくさんあります。したがって、九州では地震、地すべり、集中豪雨による災害が毎年生じておりまして、この災害復旧費は新しい会社の経営をかなり圧迫するものと考えております。したがって、九州鉄道会社は公共性の強い維持交通線を十二線も抱えていることになりますので、ひとつ道路、河川その他と同じような災害復旧の手だてを講じていただきたいというふうにお願い申し上げます。
もう一つは、前田研一さんが触れられました新幹線の問題をやはり避けて通ることはできませんが、新幹線と同時に在来線についても若干述べてみたいと思います。
九州の鉄道の複線化率というのは、御存じだと思いますが一八・五%で、全国の二七・四%に比べて整備がおくれております。その施設も先ほど滝井市長が発言されたようなことだと思います。この都市間交通、それから都市近郊交通としての鉄道を再生させるためには、やはり鉄道の複線化、電化、それから新幹線の建設というような鉄道の交通サービスを地元に提供すべきであるというふうに考えております。
新幹線の建設には膨大な財源が必要とされていることは、私たちも存じ上げております。それでも九州新幹線は、国の政策にある多極分散型の国づくり、それから九州二十一世紀委員会というのがありますが、それが提唱する九州全域日帰り圏の構築、そのために欠かせない基幹交通だと考えております。新幹線の開通後には、高速輸送による移動時間の短縮、沿線への企業立地、観光レクリエーション、駅周辺の再開発、非常に大きな効果をもたらすと思います。しかしその建設へのハードルは、これまでも何度も繰り返されておりますようないわゆる財源であります。建設国債などその整備のための財源調達をどのように考えるか、ひとつ知恵を絞っていただきたいというふうに思います。
その一つの手だてといたしましては、私どもが個人的に考えておりますのは、いわゆる高速道路も同じですが、新幹線、在来線の複線電化、新駅設置、それらによって生じた開発利益の一部をできるだけスムーズな形で回収して、新しい建設の投資に還元するような工夫が一つ要るんじゃないかというふうに考えております。その方法として幾つかの試みの案が出されておりますが、例えば土地売買に際し値上がり分に課税される所得税のうちの何割かを建設によるアップ分として鉄道のための目的税とする方法だとか、この前韓国で聞いてまいりましたけれども、自動車を購入するときに鉄道債券を何か負担させる方法があるというふうに聞き及んでおります。さらに地価の値上がりによる固定資産税の何割かを徴収する方法、それらをひとつ御検討いただきたいというふうに思います。したがって、外部経済の受益者からの負担を一日も早く九州の鉄道会社の財源に充て、鉄道の特性を生かすべき分野への参入が容易になることをひとつ支援していただきたいというふうに考えます。
最後に、廃止地方交通線、維持交通線について若干の議論をしたいと思いますが、これまでこの論議については、私どもの分野では既に論議が出尽くしているというふうに思っております。したがって、その方向としては、廃止地方交通線の第二次対象線については、バス転換、第三セクター化への検討を急ぐべきでして、六十一年度内に方向を決めるべきだというふうに考えております。また第三次対象線については、知事は地元の意向を早急にまとめて意見書を提出すべきだというふうに考えております。
以上、国鉄民営化に対して、交通計画の視点からの賛成の意見と、それから新会社の発足に当たりまして九州の地域事情をひとつ御配慮をいただきたいという点を申し上げて、私の意見の陳述を終わらしていただきます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/438
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439・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
次に、八丁和生君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/439
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440・八丁和生
○八丁和生君 社会問題研究所の八丁でございます。
私は、分割・民営化による国鉄再建については反対の立場からの陳述をいたします。なお、社会党提案の全国一社民営化については賛成の見解でございます。
このたびの法案提起に当たりまして国民として思いますことは、国鉄の改革の必要性は私も認めるところであります。やはり一兆八千億円という赤字が計上されるようになった以上は、制度的な問題なりあるいはその原因なりを究明し、適切な措置をとらねばならないと思います。しかしながら、現在政府が提案をしております案では、我が国の公共交通の根幹を極めて弱体化させるものであり、また関連いたしまして国鉄職員の雇用などの問題で重大な不利益をもたらすものではないか。そういう意味でこれは大変大きな問題を含むものであると考えるわけであります。なお、そういうことでありますから、何らかの改革の措置をとるということであれば、社会党案が極めて現実性があり、妥当ではないかというふうに考えるのであります。
その理由を述べます前に、若干先生方に御注意を喚起したいことがございます。それは、この立法化の措置がとられる前に事実上の分割・民営化が進んでおる、既成事実化が進んでおるというふうな見方をせざるを得ない、そういう新聞報道を我々はこの数年嫌というほど読まされてきておるわけでありますが、例えば来月から実施される十一月ダイヤ改正というものは、四月以降の分割・民営化を前提としたものだというふうに報道されていることは周知のとおりであります。また新会社に向けての要員削減を前提とした対策でしょう、人材活用センターなどが設けられて、そこに国労組合役員を中心として明らかに人権侵害と思われるような、あるいは憲法上の権利の侵害と思われるような差別的な要員配置というものがなされておるということも日々新聞で見るところでございます。このようなことから、実に自殺者が七十人近く出るというようなこともございまして、このようなことが果たして許されるべきことかどうか。特に国権の最高機関、国会でございまして、その権威を損なうようなことではないか。我が国は法治国家でございますので、このようなことは前例としてあってはならないことではないかということをまず申し上げたいのでございます。
続きまして私の見解でございますけれども、まず第一に分割の必要性はないのではないかということでございます。それは国鉄の六十年度の監査報告書の百五十六ページに経営改善計画の進展状況を示した表がございます。これを見ますと、長期債務の利子支払いや特定人件費、これなどは単年度の経営問題として考えるべきものではないと思うのです。外地からの引き揚げ職員の大量退職に発生する諸問題でございますが、それらの問題をおくといたしまして、いわば単年度での経費と収入との関係を総括した場合に、既に六十年度におきましては三千百八十九億円の黒字と、五年前に比べまして実に逆転をしておるわけであります。このために国鉄労使の出血は大変なものがあったと思うのでありますが、これを見ますとローカル線の三千億からの赤字をカバーしてなおかつ三千億円からの黒字が出る、そういう体質に変わっておるという事実を我々はもっと見なければならないのではないか。ですから、今法案の中で言われておりますような、あのような巨大な国費をもってこの荷物を別に国が背負うということであれば、実はこのような数字があるわけでありますから、そういう措置を今の国鉄に対してなし、そして二度とそういう問題が発生しないような措置を行うならば、むごい自殺者も出すことなく、あるいはこれだけ深刻な社会問題を起こすことなく事態は解決していくということになるのではないか。こういうふうに考えてきた場合に、何かためにするようなものを感ずるわけでありまして、最近のマスコミに一斉に国鉄の土地をむしり取るということにねらいがあるのではないかというような報道があっておりますのは、なるほどそういうことかな、こう考えさせられるのでございます。
次に、この分割によっては実は九州の交通、特に公共交通に関するニーズというものは消化できないのではないか、あるいは九州の各地方自治体、地元経済界が真剣に考えております過疎問題あるいは地域振興の問題に対応できないのではないかというふうに考えるのでございます。と申しますのは、御承知のとおり分割によって国鉄は民間会社になるわけでありますから、公共の福祉等につきましての責任は解除されるわけでございます。ですから、採算の合う範囲内において公益の問題と取り組めばよいということになります。こういうことになりますならば、どうしても採算がとれなくなる、あるいは先ほど吉田先生のお話にあっておりますように、地震やその他の災害などによって復旧困難ということになりますと、どんどん路線などが放棄されていく。何しろ赤字を出すわけにいかぬわけでありますから、切り捨てていくしかないということになるわけでありまして、交通弱者の問題、地域経済は大変な打撃を受けるということになるわけであります。
さらに、鹿児島、宮崎、長崎等に関しましては新幹線を求める声が非常に高いのでありますけれども、この地域の過疎化の問題を考えた場合に、中距離交通線としては、やはり今日非常な生命力が実証されております新幹線建設に関連いたしましても、この会社ではやれないのではないか。国が公共事業で線路をつくっても、これから九州に引かれる新幹線はすべて採算がとれません。そうなりますと、採算のとれないものを九州会社が取り組むわけにいかぬということでありますから、この新幹線はまさに単なるコンクリートの構造物ということになってしまわないだろうか。これまた大変な国費のむだということになってまいります。このように、民間化しますならば、そして現在与えられる基金というのは現状を維持するに必要な額になるのだろうと思いますし、先ほどありましたような災害等に対応する費用あるいは設備更新に関する費用などは考えられているふうではないと判断せざるを得ませんから、政府のこの地域の諸問題に対する政策手段という点から考えた場合に、極めて貧困なものになるわけであります。民間会社にこれだけ大きな行政課題と取り組ませることはできないのであります。そういう点で、国はこの地域の民生を初め経済の振興に関する政策手段を失うということになりはしないか。九州の住民は棄民、捨てられるという立場に置かれるのではないかと思うのであります。そういう意味で分割という形態は、この地域の住民の利益に合致しないと率直に申さねばならないのであります。
次に、盛んに私鉄並みの経営努力というものが強調されるのでございますけれども、九州の私鉄はもうそれこそ血の出るような合理化を積み重ねてきておりますにもかかわらず、すべてうまくいっておりません。最近では北九州市に走っております市電を西鉄は非常に苦悶の末に放棄しております。甘木鉄道のケースは明るいニュースとしてございますけれども、これはこれなりの大変な福岡県を初めとする、あるいは甘木市などの特別の努力があってのことでございまして、県は実にこのために一億円からの出費をしているという事実もございます。つまり、国あるいは行政の側の積極的な関与を前提としての成功であるということも見ておかなければならないと思うのであります。私鉄並みの努力を何か特効薬のようなお考えに立つならば、これは将来大変大きな問題になると思うのです。あるいは私鉄並みということの意味を関連企業への進出という意味で申しているのであれば、これまた九州の場合に大変大きな問題が発生するのであります。それはほかでもなく、第三次産業部門に国鉄が進出をするということを意味するわけであります。九州の購買力は小そうございます。そこに国鉄が暴れ込むということになりますならば、九州の第三次産業部門はいかにして生きていけばよろしいのかという問題もここで発生するわけでございます。そういう意味で、このようにまさにトラを野に放つような意味を持つ——全国的に見ますならば、あるいは国や行政の手段として見れば小さいけれども、民間との関係で見ますならば、そういう第三次産業部門の資本との競合ということになってまいりますならば、これは大変大きな深刻な問題であるということを私は申さねばならないと思うのであります。
最後に、実はこの法案に関連して重大な疑問を私は持っております。と申しますのは、この法案の論拠は、一つは、三十七兆円からの国鉄債務の処理について一定の見解が出たということを前提としております。しかしながら、この基金にいたしましても、あるいは国が背負うと言われている十六兆七千億円の長期債務の始末の問題にいたしましても、財源問題についてはいささかも国民には明らかにされていない。国会の審議も注意深く聞いておりましたけれども、これはまだ先送り、六十二年度予算編成あたりから問題になることだとしているわけでありますが、御承知のように、現在この新しい財源の調達をめぐりまして国内いろいろの論議に分かれているところでありまして、経済界もまた分かれていると新聞報道で聞いております。このように新規財源がまだ定かではない。にもかかわらずこれをやりますならば、少なくとも監理委員会の試算でも一兆五千億近くのお金が要るということになっている。あるいは基金も九州の場合三千七百億というお金が来るそうでございますけれども、そのお金がどういう形で来るのか、このことは全然明らかになっていないわけであります。まさに架空の一つの理論を前提としたような話でございまして、そういう法案は現実の諸問題を解決するものとしては非常に説得力に乏しいのではないか。まさにこれをやるというのであれば、やはりそれだけの財源の所在を明確にし、これを増税でいくのかあるいは国債でいくのか明確にして、国会におきましても議論されるべきでありましょうし、あるいは主権者にその点についての判断のよりどころを明示すべきなのではないか。実に六十二年度の概算要求の中には、六千億程度のお金しか計上されていないということは御存じのとおりだと思うのであります。
なお、この債務の整理の中で、青函トンネルや本四架橋のような国鉄の経営外の事情によって発生している事業についても、国鉄の債務であるがごとく扱って国民にその処理を求めてきているという点については、責任の所在が不明確なままに論議が進んでいるという意味におきまして、非常に問題ではないだろうかと思うのであります。なるほど、国鉄に対する政府を初め関係官庁の監督責任の問題というものはかなりのところが明らかになってきておりますけれども、国鉄の経営外で発生した青函トンネルや本四架橋のような事業の債務を今回のこの法案で一括処理するというようなことは、果たしていかがなものかというふうに思うのであります。やるのであれば、その由来、原因、そして責任の所在を明確にしながら、やはり国会で論議され、かつ国民の判断の基礎を明らかにすべきではないか、こういうふうに考えるのでございます。
そういう考えに基づきまして、この際一社制は堅持しながら、かつ、もちろん先ほど吉田先生のお話にもありましたように、地域の福祉あるいは地域の鉄道に関連するさまざまなニーズを大事にする形のいわゆる経営権の分権というような点を十分に踏まえながら、かっ公共ニーズに関する取り組みについては、やはり国が厳格な判断のもとに補助金等を明確に出す、あるいは鉄道の分野の活動を保障する意味での総合交通政策などを前提といたしまして、いわゆる一社制、分権化、そして民営的手法、こういうようなより現実的な策を最終的に決定されるということであれば、それは一つの見識ではないだろうか、また国民の求めているところではないだろうかというふうに考えていることを申し上げまして、私の陳述を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/440
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441・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
次に、鷲頭康義君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/441
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442・鷲頭康義
○鷲頭康義君 御紹介をいただきました鷲頭でございます。
まず最初に、本問題に関する基本的な考え方を申し上げたいというふうに思います。国鉄再建監理委員会が開催されました公聴会の中でも申し上げたわけでありますが、国鉄再建監理委員会が出しております「国鉄改革に関する意見」に基本的に賛成の立場でありますし、今回政府から提出されております国鉄改革法案の基本方針であります分割・民営化に賛成であります。
その理由はもうそれぞれ言い尽くされておりますので、くどく言う必要はないかと思うのですが、国鉄が今危機的な状況にあり、どうしても改革をやらなければならぬということはだれもが認めておる状況だろうというふうに思いますし、国鉄当局も再建方策などを数度にわたって検討され、しかもそれに対してあらゆる努力をされてきたわけであります。しかしながら、現行の経営形態では再建不能と言わざるを得ないだろうというふうに思っておるわけであります。もしもこのまま放置をするということになりますならば、日本の鉄道産業の崩壊ということだけではなく、国民に大きな負担を強いる大変な状況になるということはもう必至であります。そういう意味で、日本の鉄道を守りながら健全な経営を確立していくためには、この分割・民営化を推進する以外に道はないだろうというふうに思っているわけであります。ただ、この改革は日本の鉄道事業を崩壊させるものではなく、鉄道事業の再生を図っていく道だというふうに認識をいたします。そういう意味では、この改革が何としても成功をおさめなければならないというふうに思います。そういう意味から、幾つかの問題について御意見を申し上げたいというふうに思います。
まず一つは、労使の信頼の回復と正常な労使関係を確立することが大変重要であるということであります。もちろん国鉄の中にも組合は幾つもございますし、いろいろな考えもあるかもわかりませんが、一般論として私どもが感じる状況は、今の労使関係は異常と言わざるを得ません。お互いの信頼というのは全くないような状況に受けとめられます。そのことがある意味では今日を招いた要因の一つであったかもわかりません。新しい旅客会社に移行するといたしましても、現在のような状況が続くとするならば、鉄道事業の維持あるいは発展というものは望めないというふうに思うわけであります。鉄道事業を取り巻く環境の厳しさというものを十分認識をしていただきまして、そして国民の期待にこたえ、鉄道事業を守り抜くあるいは健全な企業運営を果たしていくという立場から、労使の信頼を早く回復していただいて、正常な近代的な労使関係を確立してもらいたいということであります。
二番目に、労使の協力と健全経営への意欲という意味で申し上げたいと思います。
御承知のように、民間企業にとりまして、みずからの雇用を守り、労働諸条件の維持向上を図っていくためには、その企業の健全な発展を図っていくしか道はないわけであります。そういう意味で、民間企業における労使は、そういう共通認識に立って相協力し合いながら必死の努力をしておるということが現状であります。そういう民間企業の実態を十分自覚をしてほしいというふうに思っているわけであります。また、特に九州は厳しいという状況から、新しい会社になっても大丈夫かというような意見がよく言われます。今もちろん経営計画なり収支の見通しも出されております。ただ私がここで強調したいのは、そういう経営計画なりあるいは収支の見通しが大事であるということは当然でありますけれども、それよりも増して重要なのは、やはりみずからの企業、言うなら新しい鉄道を自分たちが守っていくという意欲、これに燃えることがより大事ではないだろうかというような気がいたしております。
たまたま私は電力に従事をいたしております。そういう意味で考えてみますと、電力も過去に日本発送電というのがございまして、これが民営化し、九分割された経験を持っております。そのときに、今論議されておるような鉄道と似たり寄ったりかもわかりませんが、ある意味で九州は悪い条件の地域をもらったような気がいたします。二、三例を申し上げますと、全国の離島の六割以上は九州にございます。そしてまた当時九州以外は水力が中心でありましたけれども、九州は石炭火力が中心でありました。そうしますと、どうしても発電原価が高くつくわけであります。あるいは過疎地域が多いわけでありまして、大変需要密度も低く、電柱に平均一軒の需要家しかぶら下がっていないような僻地も多く抱えておったわけであります。そういう意味で大変条件の悪い地域をもらったわけであります。そのために一時期火力調整金をもらったり、あるいは全国一高い電気料金というふうに言われた時期もございました。私ども労使はそのことを何とか克服したいという立場から、技術の開発とか省力化は当然のことながら、九州の特性を生かした努力というものをしてきたわけであります。一つ例を申し上げますと、九州は石炭火力が多かったゆえに、発電原価も高いし不利だ。ところが、このことは逆に言いますと、石油火力へ他社に先駆けての先鞭をつけることになったわけであります。そういう意味で石炭火力から石油火力への転換なども図ってまいりました。今ではやっと他社並みに電力供給の安定あるいは料金、サービスを維持できるようになったような気がいたします。もちろん石炭から石油に転換したときに数千名の合理化要員が出ましたが、労使が真剣に論議をし合いながら、配転を含め、教育をしながら事業の中で何とか消化をしていったというのが現実であります。そういう意味で、繰り返すようでございますが、新しい旅客会社を取り巻く環境というのは私も確かに厳しいだろうというふうに思います。しかし自分たちの鉄道、自分たちの雇用を守っていくという燃えた意欲がこれから大変大事ではないかということを一点申し上げておきたいと思います。
三番目に、雇用の確保とみずからの課題という自覚を持ってほしいということであります。
どなたかも言われておりましたように、分割・民営化がうまくいくかどうかは、私はやはり雇用の確保にあると言っても過言ではないような気がいたしております。そして九州では一万一千名程度の余剰人員が想定されておりますが、今目鼻が立っておるのは半分程度というように伺っております。これからあと半分の雇用確保をしていかなければならないわけでありますけれども、大変厳しい状況にございます。これもどなたか言われておりましたように、円高不況の深刻化というのは全国的な課題でありますけれども、特に九州の場合は素材型産業を多く抱えておるという状況の中で、鉄鋼、造船、セメントあるいは石炭、いろいろな産業が大変な状況にあるわけでありまして、その中であと半分の雇用を確保していくのは大変厳しい状況だというふうに思います。しかし、この改革を成功させるために、政府あるいは地方行政、産業界の方々が言うならば協力し合った、全力を傾注して雇用確保に努力してほしいというように思うわけであります。ただ、そのことについてはそのとおりですけれども、国鉄の労使の皆さんも自覚をしてほしいというふうに思っているわけであります。さっき申し上げましたように、国鉄だけではなく、円高不況が深刻化する中で大変な産業も出ているわけであります。少なくとも民間企業で自分の雇用を守るというのはみずからの課題でして、労使とも必死に努力をしております。しかし、それでも雇用が守れない企業、産業も幾つも出ているわけでありますが、その人たちを助ける人はだれもいないわけであります。その方々から見ると、国鉄だけなぜか、甘えているんではないかという声があることも事実であります。そしてまたあるときは、国鉄職員の雇用を守るために関連産業に出していく。そういう意味で関連産業の労働者からは、国鉄職員の雇用を守るために我々が犠牲になっているのではないかという声があることも事実であります。
さっき私、電力と申し上げましたけれども、私ども電力でも今回百三名の方を採用することにいたしました。この百三名の方々に対して可能な限り温かく迎えたいと思っています。しかし、私どもの組合員の中に釈然としないものを持っている人がおることも事実であります。最近でも電力の関連企業で半分以上の労働者が解雇されました。そのときに私どもは、同じ電力産業に働く仲間として、九州電力に救いの手を伸べてほしい、雇用してほしいということを申し入れました。しかし会社は一人も雇ってはくれませんでした。ところが今回は百三名の採用をした。言いかえますと、組合員からすると、私たちの仲間さえも救えないのに、なぜ国鉄だけは採用しなければならないのかというような声があることも事実です。そのことを私はとやかく言うつもりはありません。要は、雇用の確保というのは大変大事なことであり、みんなが全力を傾注しなければならないけれども、国鉄の労使の皆さんもそういう声があるということも認識していただいて、みずからの課題という自覚を持ってほしいということを申し上げたいわけであります。
四番目に、地域密着型の経営を目指してローカル線の存続をぜひしてほしいということであります。
分割・民営化の最大の趣旨は、地域とともに発展していく鉄道事業を目指すということにあるだろうと思いますし、それが民営・分割の中にあって十分可能な道だというふうに思います。これからは地域の人たちから、国鉄という鉄道ではなくみずからの鉄道という、親しまれ愛されるような鉄道をぜひ目指してほしい、そして地域とともに生きていく、あるいは発展していくような地域密着型の企業経営を目指してほしいというふうに思っておるわけであります。また分割・民営化はローカル線切り捨ての道だという意見もございます。しかし今の国鉄をそのまま放置するとするならば、かえってローカル線は今以上に廃止に追い込まれていくのではないだろうか。そうではなくて、この分割・民営化をすることによって、これ以上ローカル線を廃止しない道を選ぶのだという考え方がより大切ではないだろうかという気がいたします。既に論議の対象になっております第三次ローカル線までは別といたしましても、九州の新会社がこれからのローカル線の存続に最大の努力を傾注してほしいというふうに思っているわけであります。
五番目に、多角的経営と土地の問題であります。
地域密着型の企業経営を目指して新しい鉄道会社が努力をしていくということになるわけでありますけれども、正直言って鉄道だけの経営では相当厳しいものが想定されるだろうと思います。そういう意味からは、やはり鉄道事業との整合性を持たせながら、多角的な経営を求めていくことが大変大事ではないだろうか。地方行政あるいは地方の財界などとも十分連携をとりながら、そういう意味での御検討もお願いを申し上げたいと思っているわけであります。また長期債務返済のための土地の売却ということが今論議されておりますが、基本的には賛成であります。ただ申し上げたい点は、将来のそういう長期的なビジョンなりあるいは経営戦略の中で多角的な経営を求めていくという立場の中で、やはり一定の土地の確保ということが重要なことは当然でありまして、そういう意味でただ単に国鉄の用地を売ればいいということではなく、これからの新しい鉄道会社がやっていけるような、そしてまた多角的経営が可能になるような意味での土地対策の検討もぜひお願いを申し上げたいと思います。
以上で私の意見を終わるわけでありますけれども、いずれにしてもこれから大変な論議もございましょうし、新会社への移行あるいは土地の処分などいろいろな論議があるわけでありますが、最後に申し上げたいのは、政治の不当介入、党利党略あるいはためにするような論議を排して、本当に日本の鉄道事業を再生するという、あるいは健全な発展を目指すよいう立場で熱心に御検討いただきたいということを申し上げまして、私の意見を終わります。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/442
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443・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
次に、野村実智明君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/443
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444・野村実智明
○野村実智明君 御紹介いただきました野村であります。
私は非常にローカルな立場にありますので、一地域のローカルの立場から、政府案の国鉄分割・民営化に反対する立場で意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、国鉄の経営危機が部分的な改善では対応できないことは、過去のたび重なる自主再建の失敗の例からも判断ができます。国鉄再建監理委員会の最終答申、そうして今の臨時国会に提出されております政府案は、予想されたとおり国鉄分割・民営化を正面に据えて、国鉄百年の歴史を解体することを前提とした再建案のように思われますが、今の法案が唯一絶対のものかとなると、これには国民の間にたくさんの反論や異論があります。私も、地域交通の将来に多大の不安を残す限りは、多くの疑問を持っている一人です。国鉄の解体によって最も手痛い打撃を受けるのは九州などの地方交通です。国鉄の赤字解消という目的を貫徹させる余りに、肝心の鉄道の公共交通機関、公共性というのが再建の中では二の次になっておるような気がしてなりません。私は地域からの疑問点として、分割・民営化は交通サービスの地域格差をますます広げていくことになると考えておりますので、地域からの積極的な問題を提起したいと思います。
私の住んでおります地域は筑豊地区で、昭和三十年代から政府のエネルギー政策の転換によりまして石炭産業が急速に衰退をいたしました。その影響で筑豊は地域社会が破局に追い込まれております。この二十数年間、国の援助によりまして自治体も住民も地域の活性化に全力を挙げてきました。そうして今再び筑豊が政府の国鉄改革という法律によって、また切り捨てられようとしていることに非常な危惧を感じる次第であります。
今まで筑豊の自治体、住民が一体となって国鉄に求めてきたことがあります。それは北九州、福岡の両百万都市への通勤ベッドタウンとしての筑豊の浮揚のためには、どうしても筑豊にあるローカル線を生かしてもらいたいということでありました。ところが、国鉄は今までこれに逆行いたしまして、駅の無人化をやり、貨物の取り扱いを廃止し、踏切の無人化、それから手小荷物の取り扱いも廃止し、また列車も次々に間引いてきました。そうして地域住民にとっては実になじみのない地方ローカル線にし、国鉄離れを増大させてきました。既にもう第一次廃止として添田線、室木線、香月線というのが廃止されました。第二次廃止線として漆生線、また上山田線がその運命にあります。さらに第三次廃止線といたしまして、宮田線、糸田線、伊田線、田川線というのが今運輸大臣に申請をされております。筑豊に残りますのは、福岡に向けての篠栗線と日田彦山線、後藤寺線、筑豊本線の四線のみになってきました。かつて筑豊は十三の線路がありました。そのうちの九線が廃止になり、また廃止されようとしておるわけであります。地方のニーズに全くこたえられないローカル線、廃止を目的とするためにダイヤを今まで改悪してきたということが私は率直に言えると思います。ところが、今度の十一月のダイヤ改正の国鉄が出しましたチラシがあるのですけれども、それを集約しますと、今まで十何年間ずっとローカル線はダイヤ改正のたびに減らしてきたダイヤなんですけれども、今度の十一月のダイヤ改正を見ますと不思議に、例えば直方駅が取り扱う旅客が百九本から百三十四本にふえております。飯塚駅が取り扱っております九十九本の旅客が今度は百十一本に増発されております。それもみんな筑豊本線と篠栗線と日田彦山線だけなんです。それにつなぐ枝線はほとんどふえておりません。十一月のダイヤ改正は、まさに分割・民営化への移行体制の確立をねらったものだ。そして見せかけの輸送改善で、分割・民営化になり、九州の会社になるとこんなに地域思いのサービスができると思わせるような、そんな下心が今度のダイヤ改正に見えてなりません。
また、列車を増発したにもかかわらず、職員の数を見てみますと、一日の出面というのは逆に減っております。例えば現在直方駅が二十人でさっき申し上げました百九本を取り扱っておったのが、今度は百三十四本にふえて国鉄職員は十一人に減らされた。飯塚駅では十五人を八人というふうに削減が考えられているようです。そのために今までおったホーム要員はゼロなんです。列車の監視をする信号所も、今まで二人で監視しておったのが一人になります。まさに異常事態に対応できないという状態が生まれるのではないか。これは国鉄の分割・民営化が安全性を無視した、そして採算、利益本位の人員配置と言えるのではないかと思います。このことは、国鉄の分割・民営化は生活に欠かすことのできない地方ローカル線を切り捨ててしまう、そうしてそのローカル線の切り捨ては国鉄の切り捨てだけでなく、その地域そのものをつぶしてしまうということに連動することになると思います。
次に、国鉄の分割・民営化は、一つは、十六兆七千億円という巨額な金額を最終的には国民が負担させられるのではないかという気がしてなりません。例えば今二兆円のサラリーマン減税をするかどうか、このことだけで国会の審議が何日間かストップするという状況の中で、その八倍以上の国民負担がどれほど大きなものであるかということは明白です。一人当たり試算をいたしましても十四万円、四人家族といたしますと五十六万円の負担ということになるのであります。いろいろ言っても、最終的には大増税でツケが国民に回されることになります。私は国鉄の分割・民営化法案というのは、ある意味では大増税にも通じる法案だとも思います。
三番目に、私は国鉄の分割・民営化は安全が切り捨てられ、国民の生命さえ脅かされることに連動すると思います。特に私の住んでおります筑豊地域といいますのは老人比率が非常に高くて、市町村によっては一二%から一八%という老人比率であります。そのお年寄りが列車に乗ろうとするときにホーム要員がゼロであるということは、生命の危機にさえ連動するものと思います。既に十一月のダイヤ改正はそのことに踏み切っていると言えますけれども、本当にこの安全性の問題は深刻に考えざるを得ません。
次に、国鉄労働者の十万人近い、九州で一万一千人の失業に連動することであります。筑豊でかって炭鉱労働者が十万人失業いたしました。そして現在もその後遺症が根深く筑豊に残っております。考えただけでもぞっとするわけであります。今でも筑豊は失業者が滞留し、全国一の失業地帯になっておりますし、生活保護世帯もまさにけた外れの全国一の地域になっております。私はこの国鉄労働者の失業、これが最も懸念されるわけであります。また、分割・民営化に向けての新会社の採算を合わせるためでしょうけれども、無理やりにとにかく人員を削減をして、数を合わせるという傾向が今あるのではないかという気がしてなりません。余剰人員をどうつくり出すかというために一生懸命のようであります。例えば今人活センターがありますけれども、人活センターに職員を集約して、これは余剰人員だと言いながら、実は今まで作業してきた保線作業に全部そのまま使っておるということであります。これは私は余剰人員とは言えないと思います。これはどうも分割・民営化に反対する人たちをそこに収容する場所だというふうに言った方が早いのではないか。その中でまた、早目に退職を促進するような環境づくりではないかというようにも思われてなりません。
次に、したがって私は、国鉄再建をするに当たっては、第一に今日の国鉄運営の破綻の最大の要因を明らかにすべきだと思います。国が経営に責任を持つことを基本とすべきではないでしょうか。分割・民営化と言いながら、一方では採算見通しもない、財源もないまま整備新幹線着工の政治的動きが強まっているようですけれども、まず政治が姿勢を正して、責任を明らかにすることが大事だと思います。
第二番目に、国鉄経営の破綻の最大の要因が現行の経営形態やあるいは一元的な運営にあると言われていますけれども、ここ二、三年前から国鉄の経常収支はだんだんよくなっているというふうに聞いております。再建監理委員会の予測によると、ことしの決算は一千三百億円の赤字になるだろうと言われておりましたけれども、実際の決算の状況は一千億を超す巨額の黒字になるとも言われております。そうすると経営形態や一元的な運営に最大の原因があるのではなく、結局国鉄の赤字というのは、設備投資の九〇%以上が借金で賄われてきたというところにあると思います。これが本当の赤字の原因ではないかと思います。また特定人件費などがありますけれども、これは国鉄の直接の経営赤字ではないので、国鉄に責任がないことは国会でも既に決議をされて、常に決算では別項目として処理されておる。そういう点では、これも含めて政治の責任として解決すべき性質のものであります。
三番目に、私は国土の均衡ある発展をどう目指すかという国の基本政策の観点から、この国鉄、公共交通問題を見ていただきたいと思います。国策によって炭鉱つぶしがありました。そして私の住む筑豊地域は破綻に導かれました。過疎化されています。そして二十年間努力したけれども、やはりこの地域の発展の方向というのは今でも見出せずにおります。
一つは、この地域が共通して言っておりますことは、発展の方向は交通政策の公共性を必要とすることであります。福岡県下で過密と過疎というものをどうなくしていくのか、このことは同時に私の住む過疎地域の発展ということに役立つし、福岡県下の発展のために、この過疎地域の筑豊をどう役立たせるかという相互関連で見ていく必要があると思います。例えば福岡都市圏。国鉄で言いますと鹿児島本線、北九州の一部では非常に都市が過密化しております。福岡市の総合計画によりますと、福岡市では既に物流機能を他地域に分散させたい、あるいは人口の流入を防ぎたい、あるいは住工混在の解消の制御をしたいという方針が出されておる模様であります。過密化が問題になっておるわけであります。ところが一方、これらの都市圏の通勤等の距離は延びておりまして、国鉄の営業キロで言いますと、筑豊は福岡、北九州両都市の距離とほぼ同じであります。国鉄の営業キロ数のみで言いますと、筑豊は十分北九州と福岡の通勤圏に入る。しかし残念ながら、国鉄の設備状況で見ますとたくさん問題が残ります。鹿児島本線の場合は、一応電化されて運行量も相対的に大きいが、筑豊の場合、距離が同じでも軌条の状態が悪いあるいは列車の回数が少ないなどの条件がありまして、通勤圏としてこの地域が非常に発展しにくい、これが最大の要因となっております。したがって、私は筑豊の今後の方向というものを考えますと、福岡、北九州への通勤可能な住宅地帯として住宅関連施設や交通体系を整え、そうして同時に企業の発展と北九州、福岡両都市圏の制御、企業の誘導を総合的に進めるためには、どうしても国鉄の単なる存続だけでなくして、むしろ積極的改善に向けて先行投資的役割を果たしていただきたいというふうに思うわけであります。営利会社になると過疎地域をどう発展させるかという点での先行投資や公共性はありません。採算本位ですから、この地域はますます廃れてくるだろうというふうに思います。したがって、私は国鉄の分割・民営化にそういう意味で反対する意見を述べさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/444
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445・山下徳夫
○山下座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/445
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446・山下徳夫
○山下座長 これより委員からの質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久間章生君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/446
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447・久間章生
○久間委員 各意見陳述の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、貴重な御意見を陳述していただきましてありがとうございました。ただ、お話を聞いておりまして二、三お聞きしたいこともございますので、お尋ねいたしたいと思います。
大方の皆様方の御意見としては、現在の国鉄を改革するために民営化するのはやむを得ない、そういうことにつきましては一致しているようでございます。ただその中でちょっとお尋ねするわけですけれども、例えば八丁さんにおかれましては、現在国鉄は健全経営をやっているじゃないか、利子、特定人件費あるいは償却費等、そういう特別なものを除きさえすればやっていけるじゃないかというようなお話だったようでございますが、とにかくそういうものを入れて公共企業体として今やっているわけでございまして、そういう中で政府からかなり補助金を出してもらっても、毎年二兆数千億円の赤字が出ておる。こういうことではどうにもならないというような形で現在国鉄の改革が進んでいるわけでして、そういう意味では健全にやっていると言っても、それがみんなの理解を得るところには至っていない。このままではいかぬということで民営化するということになったわけでございますから、その辺については、民営化しなければいけないという気持ちと健全にやっているじゃないかというのはどうかみ合うのか、一つは聞きたいわけでございます。
それともう一つ、民営化するということまでお認めになるならば、それから先一本でやった方がいいのか分割してやった方がいいのか、その辺はプラスの面とマイナスの面がそれぞれあるわけですし、国民の側から見たならば、民営化しても、ただ民営になったというだけで従来と変わらないのでは、今ままでの長期債務を国民が負担せなければいかぬということにはなかなか納得できない。それなりに大分国鉄は変わったんだという形をもって示してもらいたいということから、今度の法案が出ているのじゃないかというふうに思うわけです。そうしますと、地域の特色を生かしてそれぞれ競い合っていく、そういう中で民営の効果を上げていくというのも必要なのじゃないか、そういうふうに思うわけです。
特に先ほど野村さんから都市周辺の、これから先この地域だったらもっと都市への通勤として伸ばしていけそうなところで、貨物の取り扱い廃止とか無人化がどんどん行われているというようなお話もございましたけれども、全国一社制にしたならば、これ以上の貨物がないところは扱わない、あるいはこれ以上の人間の乗降がないところは無人化するというふうな形で画一的になされる。そういうようなことから、地域の特色を出していくためにはやはり分割したがいいんじゃないかというような意見が強いように私は聞いているわけですけれども、その辺について八丁さんなり滝井さんなりはどうお考えなのか。
特に滝井さんの御意見の中で、統一ネットワークを引くことが国鉄の場合いいんだ、統一ネットワークというのは非常に望ましいことだいうふうにおっしゃられましたけれども、私たちが見ますに、五百キロ以遠につきましては今非常に航空機に移っていっている。しかも先ほどどなたかおっしゃいましたように、九州の中ではほとんどお客が中から中で完結しておる。そういうようなときに、統一ネットワークというただ単なる言葉のイメージだけで、それが非常にいいものなんだ、それを残さなければいかぬのだということにこだわることと、さっき言ったように分割して競わせることとどちらがいいか、これは考えてみる必要があるのではないかというふうに思うわけですけれども、その辺についての御意見をもう一度重ねて御両人にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/447
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448・八丁和生
○八丁和生君 私は、国鉄の経営改善の努力というものは相当大変なものがあったと思うのです。法の趣旨に基づいて国鉄労使が大変な出血をやりながら、五十六年度時点におきまして、いわゆる単年度収支の経費と収入の関係という点で見るならば、今や三千四百億円からの黒字を出すまでに至っておる。この辺のところの評価というものをきちっとやるべきではないか。法の執行について彼らは真剣であったということと、最近の国鉄労使に対する世評とは大変距離がある。私はこの辺非常に残念に思うわけでありまして、国鉄労使が今置かれておる境遇というのは不当なものがあろうと思っております。こういう努力は認めながら、なおかつ問題がどういう形であるのかというふうな事実を踏まえた御措置が必要なのではないか、こう考えてまずこの辺の注目を求めたわけであります。ところが法案では、要は結局長期債務を始末する、そしてあと経営を分割すれば今後二度と赤字は出ないのではないかということだろう。そうなりますと、一社制でいけば問題がまた残るのか、あるいは分割であれば問題は解消するのか、その辺のところに私は来るのだと思うのです。
そうしますと一社制のメリットですが、やはり鉄道というのは一体性が大事だと思うのです。そこら辺のところは議論が分かれるかもしれませんけれども、大体世界の鉄道というのは、いかにして連絡をよくし、そして一体的運用を可能にするか。今日のようにコンピューターがこれだけ普及している段階におきましては、もはや熟練労働に依存しなくとも、それだけの複雑なものを処理できるところまで達している。情報化の時代におきましてこういうものが運営できないというふうには私は考えないわけでありまして、現に電電公社の場合は、全国一社で二十数万の大世帯を立派に運営しているという実績がございます。その他日本の大企業体制というのはなかなかうまく運営されている。国鉄だけなぜ運営できないのか。逆にそう考えたときに労使問題などがよく言われるわけでありますけれども、その労使問題に対する懸念も随分やはり変わってきているのではないか。現実に黒字の数字を出すまでに至っておるということは、そこに一定のいろいろな認識の変化、労使関係の変化というものがあってこそではなかったのか、こういうふうに考えるわけであります。
それから過去の一社制、特に官僚制の問題、何しろ明治以来の機構でございまして、びっくりするようなものがあるわけであります。ただあの官僚制も、鉄道の末端駅におきましては、管理者もだれもいないところで立派にダイヤを運用するということになりますと、規則によってきちっと第一線を規律しておかなければならない、そういう事情もあったと思うのです。そういうような事情を考えながらもその弊害も非常に大きかった、こういうことも明らかでございます。そういう点につきましては、今回はしなくもこれだけの高度情報化社会に達し、その技術をうまく取り入れることと、それから権限を思い切って管理局にゆだね、地域との間のコンセンサスを得るような仕組みを持っていけば、私はその辺分権化ということでカバーできるのではないか。しかし、なお私は民営化と言っている場合においては、政策手段としてコントロールできる体制を前提とするヨーロッパ型の特殊法人と申しますか、株の七割ぐらいを国が持ち、コントロールできるという政策的手段化できるということを前提としながら、日常的経営におきましては自主性を大いに発揮させていくというタイプのものを想定しているわけでありまして、そういう意味におきましては地元との摩擦をコントロールすることもできるし、あるいは地域の公共ニーズに取り組ませることもできる。その辺のところを考えた場合に、いわゆる分権化を前提として民主的コントロールを前提とするならば、その民営化の長所を生かしながら、かつまたデメリットも抑えていく、かつ全国的一社制の問題も解決できるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/448
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449・滝井義高
○滝井義高君 まず第一に総合交通体系との関係です。六つに分断をしてしまったときに、一体政府は日本の今後の総合交通体系をどのように考えておるかというのが全然出てこないのです。航空機あるいは船あるいはモータリゼーション、いわゆるバス、トラック、こういうものとの関係を一体どう考えるのか。いわゆる哲学がない。これは私が哲学がないと言うわけじゃなくて、前に国鉄のベテランである磯崎総裁も、これじゃ二、三年してだめになる、こうおっしゃっているのです。そういう点が一つ。
それからもう一つは、最前私も申しましたように、国鉄が「経営改革のための基本方策」の中でやはり全国一社制を言っているのですね。監理委員会というのは素人なんですね。しかし百年の歴史と伝統を持って一生懸命やった人は、なるほどそれは過去にこだわるところがあるかもしれないけれども、やはりもち屋はもち屋で、専門家の意見というのを尊重する必要があるわけです。それだけの意見を十分聞いて監理委員会があれをつくったかどうかというと、そうじやないのですね。御存じのように、反対しておったやつは飛ばせる、そしてまたその反対しておったやつを帰す、そして今度は分割・民営化に反対するやつは首を切るとかというように、お互いにそういう変な形で国鉄問題が出てきているわけです。こういう非常に浅薄な、わずかな間で議論をしてやった法案、兵馬怱忙の中にできた法案というのは必ずどこか欠陥があるのです。いわばこの法案は欠陥法案だと言われても仕方がないのじゃないか。我々が一々条文を読んでみてもわからぬところがいっぱいです。国民がわからない政策が実行せられれば国民の協力は得られないわけです。
それから、私の方の地域の実情を申しますと、今一番最後の方が申されましたけれども、私の市郡で人口十六万のところに七つ国鉄があります。そのうち五つ切られちゃうのです。我々が五十五年に産炭地の発展計画をつくったときは、通産省はこれがもう最上の産炭地の発展計画だ、福岡と北九州のインパクトを筑豊の、飯塚は福岡……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/449
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450・久間章生
○久間委員 だから、そういう地域の特色を全国一社の場合と分割の場合とどちらが生かせるかということをお聞きをしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/450
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451・滝井義高
○滝井義高君 そのときにはもう営利を中心としたものは生かぜないのです。ビルドがないのです、スクラップばかりになりますから。全国でやればビルドが出てきます。
それから、御存じのように今度の法案は全部内部補助をやっているのですよ。今までとちっとも本質は変わらない。国が補助するのをかわりに新幹線で調整したり基金で調整する。ちっとも変わらないで、ただ分割をしたということで、そこからは何の利益も出てこない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/451
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452・久間章生
○久間委員 それから八丁さんにお尋ねでございますけれども、先ほど架空の財源計画であるというようなことを言われました。今のままで行ったならば国鉄は一体どこへ行き着くのかわからない。政府が一体金を出してくれるのかどうか、それすらわからない。資金繰りすらはっきりしない。そういう状況にあって、先ほど滝井さんは、もうちょっと時間をかけてしっかりやればいいじゃないかと言われたけれども、そういうゆとりがない状況にあるわけですね。架空の財源計画と言われたけれども、この際この法律が通って民営にして分割したならば、十六兆七千億については政府が出しますということを言った以上は、法律が通って走れば、政府にそのオブリゲーションを負わせる形になるわけですね。そういう意味で、架空の財源計画というよりもよりはっきり詰めた格好になるんじゃないか、そういうような気がするわけですけれども、その辺はそうじやないでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/452
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453・山下徳夫
○山下座長 ちょっとお待ちください。
委員の質疑の時間は陳述者の答弁も含めての持ち時間になっておりますので、どうぞ答弁はひとつ簡単に要領よくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/453
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454・八丁和生
○八丁和生君 今の法案でいきますならば、少なくとも監理委員会が示しておりますように一兆五一千億円近くの新規財源が要る。これを現在の再建途上にある我が国の国家財政の中からどう調達をするのか。この辺のところは現在政府税調などで検討されているところだと思うのですけれども、皆さん方も御存じのとおり、今これをどこから調達するのかについて意見が分かれているのじゃないか。所得減税の要求あるいは法人税減税の要求が非常に強い。そうした中で日本型間接税でいくのか、いろいろあっていると思うのでありますが、これはまだ全然意見が決着を見ていない。ですからそのお金をどこから持ってくるのか。直接我々が負担するのかあるいは国債でいくのか、この辺のところは全然はっきりしていないのじゃないか。それを前提にこの法案だげができていくとなりますと、結局は新しく政府はまた借金をするということになるのではないだろうか。ということであれば、これは果たして解決なのかどうか、こういうような意味で申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/454
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455・山下徳夫
○山下座長 次に、村山富市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/455
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456・村山富市
○村山(富)委員 きょうは陳述の皆さんには貴重な御意見を聞かしていただきましてありがとうございました。
それぞれの方の意見を聞いておりますと、現在の国鉄は何らかの形で改革をする必要がある、これはもう一致していますね。それから民営化の方式をとることについても大体の方が賛成ではないか、お一人違う方があったかと思うのですが。それから分割には賛成、ぜひ全国ネットワークは守って一社制でいけ、こういうところに意見の違いがあったと思うのですが、ただ総体的に考えますと、分割によるメリット、デメリットは何なのか、果たして九州鉄道株式会社はうまくいくのか、収支の見通しは立つのか、そういう状況の中でローカル線は一体これまでどおり守っていけるのかどうか、さらに九州は極めて雇用問題は厳しいのだけれども、雇用問題については心配ないのか、こういうところに私は絞られた問題があるのではないかと思うのですよ。
そこでまずお尋ねしたいと思うのですけれども、今九州管内でも、私鉄の会社の経営を見てみますと恐らく鉄道部門は赤字ではないかと思うのですね。全体として関連企業等も含めて平均しますと、鉄道が三〇%、それからその他の関連企業が七〇%ぐらい、若干の違いはあろうと思うのですが、そういう状況になっていると思うのです。そういう私鉄の状況を考えた場合に、私鉄並みの効率性を持った企業に変えていくということにしても、九州鉄道会社が果たして採算がとれて黒字になるかどうかということは極めて疑問である。同時に、関連企業を行うにしても、私どもが承知している範囲では、それほど関連企業に進出できるような部面というものは期待できないのではないか。仮に期待できるような部面があるとすれば、それは地域の経済なり地域の業者なりに大きな影響を与えていくというふうに思われますが、そういう点について前田さんはどういうふうにお考えか、あるいは八丁さんはどういうふうにお考えになっておりますか、まずその点をお尋ねいたしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/456
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457・前田研一
○前田研一君 今の御質問の中で、基本的に現在の国鉄というものは大手術が必要である、昏睡状態から国鉄を救わなければいかぬ、そこが私は出発点であろうというふうにまず考えております。したがって国鉄の再生を願うという場合に、いろいろな経営努力というものは、そこでいろいろな欠陥があったがゆえに、その欠陥をそれぞれ是正しながら、改善しながらどのような経営条件、環境をつくっていくかということが新しい経営をつくり出す際の最大の問題であろう。その中に介在する雇用問題など重要な問題が当面さしあたって大きな課題として出てきております。
おっしゃるとおり、九州の中の経済環境というものは、先ほど申しましたようにほかの地域に比べて不況業種が極めて多い、しかも企業城下町というものも多いという観点からして、地域全体の経済はやや停滞ぎみ、また心配するとすれば地盤沈下というような憂慮すべき事態も考えられないではないという状況にあると思います。しかしながら、国鉄のこういう再生というものを分割・民営化ということで九州の中で救っていくという観点からすれば、何としてでも国鉄の雇用不安というものについては、地域全体がそういう国鉄職員の雇用について不安がないように具体的に努力する以外に手はないというふうに思います。現在半分までいっているということですけれども、これはこれからもどんどん努力していくべき問題であろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/457
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458・村山富市
○村山(富)委員 私が聞いているのは雇用でなくて、九州鉄道株式会社は現在赤字路線を全部抱えておって、そして民営になれば分割されて果たしてうまくいくのだろうか、関連企業で幾らか収益を上げるにしても、もう余り関連企業に期待する部面というのは少ないのではないか。むしろ期待する部面があるとすれば、既存の業界に対する影響というものを考えた場合にいろいろ問題があるのではないか、そういう点についてどういうふうにお考えですか、こう聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/458
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459・前田研一
○前田研一君 地域経済全体の問題として国鉄再建の新会社の収支というようなものを実際我々経済界として見た場合には、極めて厳しいということが一言で言えば言える。これは地域全体の経済状態というものしかり。また、先ほど申しましたように高速道路がまだ未完成で、これからでき上がる。そういう中で鉄道の生きる道はどの程度のものであるのかという厳しい状態もあるというようなことと関連して考えれば、経営の見通しは極めて厳しいということだけははっきり申し上げられる。ただ、こういう新しい民間会社を経営していくという際には、やはり人と金と物というものが前提になる。したがって、その場合に利益というものをまず見ますけれども、その次の段階は収支とんとんという段階も見ていかなければならぬ。九州の場合にはどこからどうはじいても数々の試算の中では赤字だ。したがって、経営安定基金三千七百億円ということを最初からこうして準備していただいたというのが、私は端的に物語る実情ではないだろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/459
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460・八丁和生
○八丁和生君 経営見通しは、たしか九経連がはじいた計算があったと思いますけれども、十七年間くらい黒字の展望はないというような数字を発表していたと思うのでありますが、それが私はよく物語っていると思います。最近、九州総局はバスの関連事業を十一線区、いわゆる三種路線の休止を運輸局に申請しているというニュースを新聞で見ましたけれども、これなどは交通弱者に対して面倒はもう見れませんよということを内外に明らかにしたことなのではないかというふうに見ております。
なお、三千七百億円というこの基金は、今日の我が国の厳しい財政事情の中で、恐らくむしろ現状維持的な発想からのものだったと思うのです。新しい交通福祉ニーズに関連する対応だとかあるいは九州の地域浮揚の問題だとか、そういうことは恐らく念頭になかったと思うのです。現状を維持するに当たって、ぎりぎりのところで厳しく見積もって赤字が幾らか、それを一応埋め合わせるという算術的なものではなかったかと思っております。ですから、もう既に実際来年四月を前提としてスタートするに際しまして、福祉路線は捨てますよというような申請があっていると思うのです。
なお、関連部門についてでございますけれども、ここの福岡市はホテル戦争真っ最中でございまして、もう幾つどのホテルが残るかというような問題にぶつかっております。ですから、言ってみれば第三次産業部門の設備投資も過剰ぎみではないか。この先、九州の浮揚の問題や国際化をどう取り入れるかというような問題、いろいろ議論されておりますけれども、関連部門がたくさんの雇用を吸収するという見通しは極めて暗いと見ております。
なお、もともと九州の鉄道がこれほどの展開を見ましたのは、総括原価主義に基づきまして本州の黒字部分で吸収する、あるいは政策的にこれをバックアップするという政策的な線路であったというふうに私は鉄道の歴史を顧みまして確信をしております。ましてや鉄道というのは、例えば新幹線にいたしましても岡山ぐらいまでが採算ラインでありまして、そこから先は赤字だというふうにお聞きしておりますけれども、これは終点近くなりますとお客は減るわけでありますから、終点に位置する九州の鉄道が経済的に単独で成立するということは非常に難しいのではないか。やはりこれは総括原価主義に立っていくしかないのではないか。現在の鉄道で、単年度収支では既に三千億からの黒になり得る可能性が出ておるというこの点をもっと見て、九州を生かしていくべきではないだろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/460
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461・村山富市
○村山(富)委員 どうもありがとうございました。
次に、ローカル線の問題について滝井さんにお尋ねしたいと思うのです。
今御案内のように、特定地方交通線については、今度の法律の改正の中身を見ますと二年ないし二年半はこのまま継続するわけですね。そしてこの特定地方交通線については決着をつけたい。しかし残るのは地方交通線ですね。今予算を調べてみますと、地方交通線については六十一年度予算で五百八十六億円ぐらいの運営費特別交付金というのが交付されているわけです。これは今度の改革によって廃止になるわけですね。そうしますと、今御意見を承っておりましても、これから九州鉄道株式会社というものに分割されると、恐らく鉄道部面の収支は厳しいだろうということが言われているわけですが、これが民営になると、公共性というものは、今もお話がありましたように幾らか犠牲になることはやむを得ないと思うのです。そうなってまいりますと、これから収支の見通しの中で、この路線はとてもじゃないけれども、どんなに努力をしてみても維持できない、お荷物になる、こうなると廃止になる運命になる。
今度の法律改正の中ではこういう項目があるわけですね。旅客会社はもちろん交通線を廃止する場合には運輸大臣の許可が必要ですけれども、「公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認める場合を除き、」運輸大臣は「許可をしなければならない。」今まではむしろ許可をすることに対して厳しい規制があったぐらいですが、今度は逆に「許可をしなければならない。」という条文に変わっていますから、したがって、そういう路線は休廃止になる可能性が強まっていくのではないか。どうしてもその路線を維持するということになれば、もうこれは国が面倒を見ないわけですから、したがって、それを必要とする地方自治体が面倒を見てくださいということになりかねないようなものもやはりあるのではないかと思うのです。そういうことで地域の住民の生活やらその地域の開発に大きな影響が出てくると思いますが、そうした問題に関連をして、地方自治体を受け持っておられる滝井さんはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/461
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462・滝井義高
○滝井義高君 最前私はちょっと言いかかったのですが、私の十六万の人口の住んでおるところに七線あります。今度の一次、二次、三次で五線がなくなってしまって二線になります。日田彦山線と後藤寺線という二つになります。いわば幹だけが残るわけで枝がなくなるわけですから、やがて幹もなくなると思います。これは今でさえ赤字ですから、いわんや民営化した場合に赤字になるおそれが多分にあって、これが切られると思います。その場合に、切られても道路が整備されておれば結構です。ところが国道の筑豊横断道路二百一号、筑豊縦断道路三百二十二号、これは全部整備されておりません。未整備でございます。筑豊のそういう姿が最前申しました九州とちょうど相似形になるわけです。だんだん切られていきますと、それならば九州の西の方と東の方に高速道路ができておるかというと、西の方の福岡から八代まではできておりますけれども、八代から人吉、人吉からえびのまではできていません。これまで来るのにまだ十年ぐらいかかります。それから大分は、御存じのように大分の知事がテクノあるいは一村一品運動で世界的に非常に有名になりました。しかし大分は一本も高速道路がない。知事が鹿児島県の知事会に行こうとして一番速い方法は何かといったら、大分から大阪に飛行機で行って、大阪から鹿児島に行くのが一番速いということになった。一部もできておりません。したがって、もし国鉄が民営化されて九州会社になって、どんどん地方線が赤字になって切られたときに、九州は高速道路もないわけですから陸の孤島になってしまうわけです。これはちょうど筑豊がまさに六十四年の九月三十日までに切られてそうなるのと同じ形が、やがて九州全体に出てくるわけです。
そうして、最前申しますように企業は素材産業が主ですから、それが全部切られていく。短小軽薄型のIC型企業は東北に負ける状態です。だから九州には夢がない。九州は沈没してしまうのです。だからここを一体どのように調整をしていくかということになると、全国的なネットワークでないとだめです。資本力の弱い九州だけではない。北海道も同じです。四国も同じです。だから私はそういう意味では、九州人としてふるさとを見た場合に、分割ではとても生きていけない、こういうのが結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/462
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463・村山富市
○村山(富)委員 吉田さんにお尋ねしますけれども、なるほど鉄道の持つ役割、任務を考えた場合に、速い、安い、便利がいいというようなことで乗客は選別すると思うのです。それでこれからローカル線は地域密着型にして、その地域の需要にこたえられるようにできるだけ回数もふやしていく、通勤通学に便利がいいように回数をふやすという計画を持っておられるわけですけれども、例えば鹿児島本線とか日豊線からずっと東京に行きますね、そういう路線を考えた場合に、その地域地域にはやはり独立した会社の事情がありますから、そういう本線とローカル線、地方交通線との絡みを考えた場合に、私は必ずしもその地域の需要だけにはこたえ得ないものがあると思うのです。もしそういうことが収益を上げる道になるとするならば、何も分割しなくともむしろやりやすくできるのではないかというふうに思うので、そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/463
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464・吉田信夫
○吉田信夫君 ある程度御指摘のとおりでございます。私どもが交通計画をやるときには、人の動き、物の動きの中で何がその交通機関の主役か。例えば私ども昔は鉄道だけしか手に持っていなかったわけですが、その後いろいろな交通手段がずっと出てまいりまして、それはそれなりに個性、特性に応じて私どもは知恵を使って使い分けているわけですね。ですから、その地域にとって距離だとか運賃だとか回数だとか速さだとか、もろもろの条件を考えた上で、どの交通手段が主役かということをきちっと選別しなければいけないだろうと思います。それにわき役をくっつけてトータルで議論しなければ、一つ一つだけではとても御指摘のように主役にはなり得ないと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/464
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465・村山富市
○村山(富)委員 そういうことからしますと、九州だけを考えた場合、さっき私が言いましたように、何も分割しなくてもローカル線の回数をふやすこともできるでしょうし、それはダイヤの全部の編成の中でしていけばいいわけですからね。しかも全国一社制の方がそういう調整をしたり、運賃の逓減制なんかもありますけれども、そういうことを考えたりいろいろした場合に、滝井さんがおっしゃったように、分割すればかえって複雑になるだけではないか、管理部門もふえていく、そういうデメリットの方が大きいのではないかというふうな意見もあるわけです。これは先ほど滝井さんからも御意見がありましたから、ひとつ一お二人の方にちょっと意見を聞きたいと思うのです。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/465
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466・吉田信夫
○吉田信夫君 私は滝井市長さんとはちょっと意見が違っているのですが、私ども交通計画というのは、いわゆる心の感情よりも、むしろエンジニアとしてはクールな数字の追跡をやっております。したがって、九州の中でまず鉄道が主役の座をおりた。しかし鉄道が使える場所もある。そこは積極的に使おう。私ども人と物の動きを見れば、今は何といったって車社会ですから、車がやはり主役にならざるを得ない。車が主役になりながら、都市間交通だとか都市近郊交通については鉄道再生の道がある。我々はそれに対する手だてが今まで余りにも少なかった。端的に申しますと、複線化だとか電化だとかいうことをもっとフォローしてやれば、今みたいな福岡市の交通渋滞の状況もかなり改善されると思います。
それからもう一つは、冒頭に申しましたけれども、九州の中での割と完結型の人の動きをやっております。五%ぐらいですと、飛行機を使ったり新幹線を使ったりして動く方がむしろよろしいのではないかというふうに考えております。だから地域によって非常にローカルなところにおいては、限られた方向と限られた時間帯にしか使えない交通機関というのは、もう技術のライフサイクルからおくれていると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/466
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467・滝井義高
○滝井義高君 分割・民営化をした場合のメリットとデメリットがあるわけですね。メリットというところは地域密着型であって、そして地域の意向を酌み得る。それから同じように、六つに分けるとそれが競争をしていく、だからよりよきものになっていく、こういう議論でございます。地域密着型というのは、昔の国鉄は地域密着型にできておったわけです。それがだんだん親方日の丸になり、政治や国民の過大な要求に国鉄が耐え得ないようになった。きょうは総局長さんがいらっしゃいますが、最近私は門鉄局に行きました。最近は門鉄局の内部は実に活力に満ちています。がらっと違っています。それから、私のところの伊田という駅に新しい駅長が来ました。そうしたら今までよりかぐっと売り上げたわけです。もう駅長が先頭に立って地域に密着をして、地域の祭りをどんどん宣伝をしてくれるわけです。いらっしゃい、何月何日には川渡り神幸祭があります、これは実に見なければ損なくらいだ、こういうようにぴしゃっと宣伝してくれるわけです。だから別に変えなくても今の姿で、問題は人間がやる気があるかないかということです。意識です。最近国鉄はそういう意味ではがらっと変わっております。だからそれで私はできると思っております。
それに比べてデメリットが余りにも多くて、そうしてその内容がまず第一に複雑でわからない。二十五にも切り刻んだら一つ一つどうなるのだ。この会社はどうなる、この会社はどうなるということはとても大変でございます。統括をしてきちっとやらなければならぬ。問題は、そのかわりに地域の管理局に責任を持たせることです。監理委員会も初めは各管理局ごとに検討をしたようです。しかし、こんなに小さく動かしたらだめだということで六分割になってきているわけですね。細目の方が地域密着型であり競争するのですが、それはだめだということで、監理委員会もこういう形になってきておるわけです。したがって、民営が主で、これはまさに刺身のつま、附属的なものであるという形に私はなっていると思う。だから附属というのは、盲腸みたいに切っても大して被害はないわけです。もうちょっと高い見地から総合交通政策で考えていくべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/467
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468・村山富市
○村山(富)委員 次に、雇用問題について若干御意見を聞きたいと思うのです。
先ほど鷲頭さんの御意見の中に、今の国鉄の労使関係はまさに異常だ、これは正常化して労使が協力して再生を図っていく必要がある、これは言うまでもないと思うのです。ただ、なぜこういういびつな異常な状況が生まれてきたかということについては、やはり原因があるわけですね。
それで、今度の新会社に引き継ぐ扱いなんかを見ていますと、極端に言えば三月三十一日で雇用関係は切れるわけです。そして新会社に採用されるわけです。これは電電公社の場合も専売公社の場合も、恐らく電力の九分割の場合もそうだったのではないかと思うのですが、仕事もそれから資産も全部新会社に承継されるのですよ。それと同じように共済年金なんかも引き継がれるわけですから、したがって、なぜ身分だけが引き継がれないのか。今国鉄で働いている皆さんは、みんな新会社に行きたい、新会社に身分は引き継がれるもの、こういうふうに期待していると思うのです。そういうふうに労使で話し合いをして、安心しなさい、身分も新会社に引き継がせます、しかし全部ではありませんよ、こういう話し合いがちゃんとついて、そして安心して業務につけるような状態ならいいですけれども、全くあなた任ぜで身分は一体どうなるのか、あすはわからない。こういう状況に置かれているところに私は異常な状態が生まれてきている最大の原因があるのではないかというふうに思うのです。その点を鷲頭さんと八丁さんに御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/468
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469・鷲頭康義
○鷲頭康義君 最初に労使関係の異常ということを申し上げました。これは私の感覚ですからお許しいただきたいのですが、電力も、さっき言いましたように、九分割したころは労働運動も電産という組織を持っておりました。今とは少し違っておったと思います。そして九分割にも反対をいたしました。いろいろな労働運動そのものも労使関係も、今とはかなり違っておったような気が私はしております。しかし、正直言ってそれまでは電力そのものも、みずからのことですけれども、親方日の丸的な感覚があったことは否定できないと思っています。しかしそれが完全に分割され、さっき私が申し上げましたように九州の電気料金はよそよりも高いというような状況の中で、何としてもそれを克服していくためには今のままではどうにもならないということから、ある意味で私どもは民主化と呼んでいますけれども、そういうものも始まったでしょうし、労使関係も変わったのだろうというような気がいたしております。ただ、そういう意味で国鉄の場合を考えてみますと、今日までの状況です、これからじゃなくて今日までの状況を考えますと、雇用にしても何にしてもそう心配がなかったのではないだろうか。そういう意味でなかなか柔軟な対応が難しかったのではなかろうかというような気がいたしております。
それからもう一つ身分のことですけれども、私は理想的にはそのとおりだと思うのです。私どもも何千名も減らしてきました。しかし一回でやったのじゃないのです。十年も二十年も経て減らしてきました。それは採用と退職との差は減にしながら、そして九州電力から追われることのないようなという意味で、年度計画を立てながらやってきたからそうなったのだと思うのです。だから私はやはりそれが望ましいと思います。ただ国鉄の場合を考えてみますと、そのことは今ではなくて本当はもう少し前から、それこそ五年も十年も前からずっと計画的にやられてきたとするならば可能であったろうけれども、今ではもう無理になっておるのではなかろうかというような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/469
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470・村山富市
○村山(富)委員 これはもう時間がありませんから端的にお答え願いたいと思うのですが、やはり組合員に不安を与えずに、やる気を持たせるということが大事ですよね。不安を与えないためには安心できるような前提がなければいかぬ。そのためには労働組合があるわけですから、労働組合と十分話をして、そうして新会社になった場合にはこういう条件で引き継ぎますというようなことがはっきりしておれば、これは不安はないわけですよ。だけれども、もう三月三十一日で雇用関係は切れて、だれが新会社に入るのか、どういう条件で入るのか、皆目わからぬ状態に置かれておるところに不安があるのであって、事業も引き継ぐわけですから身分も引き継いだらどうか、当然じゃないかというふうに思うのですが、その点はどうでしょうかと聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/470
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471・鷲頭康義
○鷲頭康義君 基本はやはり労使の信頼だろうと思います。そのことによってそういう真剣な労使交渉ができるのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/471
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472・八丁和生
○八丁和生君 私は労使関係のいびつさというのは、政治の介入と申しますか、国鉄の経営力以上のいろいろな設備投資を特に四十四年以降の新全国総合開発計画の時点で持ち込んだ。その無理を結局労働者の労働条件や賃金、そちらの方面のいわゆる合理化で乗り切ろうとしたというところが労使関係を異常に緊張させた。いわば正常な労使関係の状態のまま、大きい外からの介入、こういう巨大な設備投資のインパクトがなければ、もっと違ったゆとりのある労使関係になっていたのではないだろうか。ここに来てやはりできないものはできないということで、これだけの設備投資の残高というのが結局借金として残ってしまったというふうに私は見ております。
それからもう一つ、雇用を引き継がないということは、これは民間の労使関係に重大な影響を与えるのではないか。つまり労働組合ができたらこれをばばのように見て、これを抜く方法として会社側の名称を変える、こういうことがまかり通るようになりましたら労使関係というのは大変な状態になるのではないか。ですから国がこの種の例をしてみせてはならない。こういうことをやりますと、憲法上の団結権を初め戦後の労使関係の中で積み上げられてきたさまざまなよい慣行や権利、これが根本的に損なわれるおそれがある。この会社名を変える、つまり経営形態を変えることによって労働組合を排除する、こういう悪例になるおそれがあると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/472
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473・村山富市
○村山(富)委員 もう時間が余りないものですから簡単にお答え願いたいと思うのですが、さっきから皆さんのお話がありましたように、九州は余剰人員が一番多いし、しかも石炭やら造船やら海運やらいろいろな産業の状態、経済の状況を考えた場合に、どこよりも北海道と並んで雇用問題は深刻ではないかと私は思うのですね。民間の場合には、先ほど鷲頭さんからもお話がありましたように、雇用を守るためには必死になって頑張っておるわけですよ。ですから、国鉄も何も民営並みに安全性まで無視して人を切ってしまうというのではなくて、民間の皆さんが労使で一体となって努力しているように、国鉄ももっと雇用問題を考えて、できるだけ失業者を出さない、再就職を一つも出さない、雇用を守っていくという努力がもっとあっていいのではないかというふうに私は思うのですけれども、そういう点をどういうふうにお考えになりますかということを前田さんと滝井さんにちょっと御意見だけ聞いて、最後に、私は国鉄の問題というのは、長期債務について国鉄自体が担わなければならぬものと国が持つべきものと、負担をかけた原因者がそれぞれ負担し合うということにすればうまくいくのではないかというふうに思っておりますけれども、もう時間がないそうですから私の意見だけを申し上げて、さっきの点だけお答えをください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/473
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474・前田研一
○前田研一君 先ほども申しましたように、国鉄の雇用問題につきましては、おっしゃるとおり、まず何よりも国鉄の自主的な努力というものが先行さるべきである。それと同時にこの国鉄の窮状を本当に広く理解して、産業界、行政その他の協力を十分にそういう理解と認識のもとで得る、そういう体制づくりをすることが先決だというふうに私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/474
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475・滝井義高
○滝井義高君 御存じのように行政改革が行われておりますから、私たち小さな地方自治体が国鉄の余剰人員をストレートに受け入れるという態勢はない。大きな県や政令都市は、これはある程度受け入れが可能になってきます。しかし我々はそうはいかぬ。しかし、私らも国鉄と地域的に密着していろいろなことをやっておりますから、例えば病院における看護婦とか助産婦が必要だというときには国鉄に通知をするし、それからまた職員をこれから採用するときには、どうぞ国鉄さん試験に応じてください、それはもうフェアプレーでお互いに連携をとってやっております。ただ、御存じのように構造政策のために炭鉱からも失業者が出るし、鉄も一時休暇をとりつつある。そういう中で九州で一万一千人の雇用を確立するということは、もうほとんど絶望的だと思います。そうしますと広域的にそれをやる可能性がどういうふうにすればあるか。そうなりますと住宅とかあるいは学校の転校の問題等、いわば個人的なプライバシーに属するものがいっぱい出てくるわけです。それらのものがきちっと合致するためには相当の時間がかかる。例えば四万一千人の清算事業団、旧国鉄に行く人が三年間で行けるかどうか。そういうことは行けないと思う。それはやはり五年とか六年とか延長しながらやる体制をとっていくということが必要だ、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/475
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476・村山富市
○村山(富)委員 では、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/476
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477・山下徳夫
○山下座長 次に、大橋敏雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/477
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478・大橋敏雄
○大橋委員 私は公明党を代表して御質問するわけでございますが、本日は皆様まことに御苦労さまでございました。
今の国鉄の赤字経営がこのまま推移していきますと、利用者また国民に過大の負担を強いることになりますし、また大変な不利益をもたらすであろうという認識に立ちまして、私どもは今の政府案そのものを全面的に認めているわけではございませんが、原則的には民営・分割ということに賛成でございます。それは、まず何と申しましても公社という、それから巨大組織という現状の経営形態に赤字経営の大きな原因があるのだ、こう認識しているわけであります。本日は皆さんの御意見を聞いておりますと、公社については確かに問題だ、これは民営化すべきである、しかし分割の問題については賛成と反対に分かれているわけでございます。
ここで滝井先生に九州の関係でございますので率直に御意見を伺いますけれども、滝井先生も民営化は賛成である、しかし経営は一本化だというお話でございましたが、私は分割も必要ではないか。例えば九州あるいは四国あるいは北海道というのは独立した地域でございまして、そういう意味では民営化する場合はこれは経営の原則ではないか。そういう立場から考えて、九州はやはり新しい会社を一本設けるのがいいんではないか、このように私は考えるわけです。また国民世論といいますか、それを調査しました結果は、多少のニュアンスは違いましても、七〇%以上の方々が分割・民営、民営・分割というものを志向なさっているわけですね。ただし、そのやり方についてはいろいろ御意見もあるようでございますけれども、基本的にはそういうわけでございまして、必ずしも一本化しなくたっていいんじゃないかと私は思うのでございますが、滝井先生の御意見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/478
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479・滝井義高
○滝井義高君 私最前から申し上げましたように、国鉄というのは非常にすぐれた人材と技術を持っているのですね。これを分割してしまいますと、まずその技術的な力というのがずっと弱くなるわけです。これはもう必ず弱くなります。大きな力があってバックをするところに今日技術がどんどん前進していくし、リニアカー等もうまくいくことになるわけです。
それから、御存じのように情報通信網というのが、光ファイバーその他これから進んで情報化の時代ですね。それと運輸・交通です。日本の産業の未来像をお考えいただきますと、もう長大重厚型のものはだめなんですね。そしてこれから日本産業というのは、サービス業が現在でも六割からどんどんふえてきます。そのサービス業というのは、ホテルをつくったりあるいはコンピューターをつくったりという非常にスマートなものになっていく。そしてセメントとか鉄とか繊維とかというようなものはNICSから追い上げられてくるわけです。したがって、必然的に日本はそれを変えなければならぬ。それから、産業構造の調整の面からもそうならなければならぬことになりますと、やはり交通体系は一本にして国鉄を最大限に使う、そしてNTTと同じように通信・情報、運輸・交通一本にした形でやれば全国のネットワークはきちっとできてくる。しかもこれは今後の四全総で定住圏構想というのをやる上にいいわけです。そうでなくて分割をしてしまいますと、今の日本の政治権力が中央集権化します。情報が中央に行ってしまいます。そして公共事業が中央に行ってしまいます。九州のようなところは大型プロジェクトは何にもないです。全部中央に行く。本四架橋、明石それから東京湾横断道路、こういう形になりますから、やはり全国的なもので国土の均衡ある発展というのを図らないと、分割したらそうはいかない、こういう感じです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/479
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480・大橋敏雄
○大橋委員 後で議論したい問題ですけれども、二十七万何ぼの今の職員を適正要員は十八万ちょっとでいいんだ、まあそれに三万二千人プラスして二十一万五千人で六十二年度はスタートしょうという計画になっているわけですが、かなり人員整理がなされる形になっておりまして、そういう中から技術者を残していくということですから、仮に分割しても技術者とかあるいは能力を持った者がなくなるという形にはならぬのではないか。
実は、六十年度単年度の赤字を見ただけでも二兆三千億円出ているわけですよ。毎年毎年国が六千億から七千億も国庫補助をしているわけです。それをしながらこれだけの赤字が出てくる。毎日六十三億円近くの赤字が増加していっているわけですね。累積赤字も六十年度末で二十三兆六千億でしょう。六十年度予算で、いわゆる借金を見てみますと二兆五千億ということになっているわけですけれども、そのうち一兆円は古い借金の返済に使われるのですね。あとの一兆三千億円は利子ですから、もう話にならぬ状況でございまして、サラ金地獄と言われるような状況になっているわけですから、こういう実態を見てまいりまして、国民の皆さんも分割・民営にすべきであるという声であろうと私は思うのです。
そこで、経営の問題も出ましたので、今度は前田先生や吉田先生等にもお伺いしたいわけでございますが、政府の提出しております九州の経営見通しを見てまいりますと、六十二年度国鉄収支は営業収入が千七十億円、営業費用として二千八百六十億円ですからマイナス千七百九十億円ということになって、最終的に経常損益は三角の二千八十億円ですね。当期損益が二千五百億円です。ところが六十二年度の新会社になると、これは基金が設置されるからその収益でカバーされるというので黒字になるわけですよ。先ほど滝井先生は、これは手切れ金だぞ、本来こんな黒字になっていくはずがない、こういう話があっておりましたけれども、前田先生の御感想、この政府の九州の見通しについてどうお考えか。吉田先生にもお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/480
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481・前田研一
○前田研一君 試算というものは、特に見通しの場合には、経営の結果が出てくる数字でございまして、この試算の仕方によっていろいろ差異が出てくるということだと私は思います。我々が民間経営の試算をする場合には、出発のときに会社が成り立つのかどうかということで、どこにベースを置くかというと、会社が成り立つための条件というようなものをまずはじき出す。最悪の条件でもここまで行けるというものをまず出すわけですね。その最悪の条件というのはいろいろな諸元からなってくるわけですけれども、それにプラスしてどこまでやれば利益がこのくらい、ここまで行けば収支均衡、いろいろなケースがその中から出てくる。我々民間経営の立場ですと、いつも最悪のベースということをまず中心に置くわけです。したがって、この数字のつまみ方によって数字というのはいろいろ変わってくるだろう。政府は政府としてのいろいろな諸元の中で、ここまでは行けるだろう、ここまでは行けるというその見方の中で数字を選んだのが六十二年においては黒字だ。まあ三千七百億円というものがあって黒字だということが言えるかと思いますけれども、少なくとも我々が見ている範囲では、まだまだそういうものにはなり得ないのではないかという数字を実は持ち合わせている。そこに差異が出てくるということでございまして、我々はとにかく収支とんとんまで行けるのか行けぬのか。少なくとも現実問題としては、現在の赤字体制を経営努力によってどこまで赤字の幅を減らせるか、これが九州の鉄道会社を見ていった場合の現実的な目標ではないだろうか。それができるだけ早い機会に来ることが好ましいということだと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/481
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482・吉田信夫
○吉田信夫君 私は経営は全然素人でございますので、よくわかりません。ただ国の試算だとかいろいろなところの試算が黒字になったり赤字になったり、ころころ変わることは非常に困るのではないか。もし分割していただいて、九州鉄道株式会社でもうけた分は九州鉄道株式会社で使わしていただいて、四国だとか札幌には絶対に持っていきたくない、そういうふうに思います。
先ほどからの分割の話ですが、私ども見ていますと、九州から四国へ行く人よりも九州から韓国へ行く人の方が多いのですね。むしろ一緒になれとおっしゃるんだったら、韓国と一緒になるべきだと思います。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/482
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483・大橋敏雄
○大橋委員 時間がございませんので、余剰人員の問題でちょっとお尋ねしたいと思うのです。
まず鷲頭さんと野村さんにお願いしたいと思うのですけれども、とにかく今営業収入の七二%が国鉄の人件費になっているわけですね。これが私鉄になりますと四三%程度で済んでいるのに、国鉄は大変な人件費がかかっているわけで、当然余剰人員がある、こうみなされるわけであります。しかも今度の政府の計画では、六十二年度初めの在籍職員が二十七万六千人である。そのうち適正要員規模は十八万三千人。余剰人員が九万三千人出るんだけれども、そのうち三万二千人は新事業体の方にくっつけるので、結局二十一万五千人が鉄道の仕事に残る。あとどうしても六万一千人がはみ出してくるという感じになります。これは従来の国鉄に残るんだ。その六万一千人のうちの二万人は希望退職を今募っている最中であって、少なくとも四万一千人は三年以内に再就職をしなければならないという計画になっているようでございます。とにかく最初の適正要員の問題でございますが、安全確保の問題が先ほどから出ておりましたけれども、こういう人数で果たしてうまくいけるのかどうか、組合の皆さんの立場から見た場合それをどうお感じになっているのか、それを鷲頭さんにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/483
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484・鷲頭康義
○鷲頭康義君 まず所要員を見る場合に、私どもも労使交渉いたしますが、物の発想というか考え方として二つあるように思うのです。
その一つは、業務に見合う適正要員という見方があると思うのですね。もう一つは要員に見合う適正業務という考え方も一つあるだろうと思うのです。ですからこのことが適正かどうか、私の立場から言うことは差し控えたい、それは国鉄の経営者の皆さんなりいろいろな方々が出された数字でしょうから。ただ、そういう二つの見方がある中で業務に見合う適正要員ということであれば、その業務を例えば削除するといいましょうか減らすといいましょうか、なくするとするならばその要員は要らなくなるわけですね。それじゃ国鉄が今後目指しておる経営の中でどういう業務を従来よりも減らすのか、それが本当に要員減につながる部分に見合うのかどうか、業務に見合う適正要員という立場から考えた場合にはそういう意味で労使交渉が必要だろう、私の立場ではそう思います。
それからもう一つは、もう新会社をやっていくためには採算はこれしかない。極端に言いますと、私どもさっき言いましたように、労働生産性は九電力の中でここ十年ぐらい前はダントツに悪かったわけです。そうしますと経営者というのは、北海道あるいは北陸、四国はちょっと別に置いても、東北、東京、中部、関西、九州ぐらいのところで見ると、どうしても労働生産性をできれば合わせたいという気持ちがあります。そうしますと経営者というのは、電力の中位数ぐらいの労働生産性にするためには九州電力の要員はかくあるべきだという、言うならこっちから持ってきた要員が出てくると思うのですね。じゃ、それを求めるためにどうずればそれができるのか、これまた私は労使交渉だろうと思うのです。ですから適正かどうかの判断あるいは意見は差し控えますけれども、どちらにしてもそういう意味でこれから適正かどうかは十分労使で論議をしていくべき、あるいは委員会の中でも御論議されることだろうというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/484
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485・大橋敏雄
○大橋委員 もう時間が参りましたので、最後に鷲頭さんにもう一つお尋ねしたいことがあります。
それは、今二十一万五千人と六万一千人に振り分けられるわけでございますが、この振り分けに際して最も組合員の立場から、労働者の立場から主張したいこと、お願いしたいことがあればぜひ述べていただきたいことが一つと、もう一つ最後に野村さんにお願いしたいのですが、今国労の組合員がどんどんと脱退なさっている事実があるわけでございますが、これに対してどのように見ておられるのか、それをお尋ねして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/485
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486・鷲頭康義
○鷲頭康義君 率直に申し上げまして大変難しい御質問でございまして、この場でお答えできるとするならば、私はやはり差別なく平等に扱うべきだということしか申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/486
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487・野村実智明
○野村実智明君 一つは人活センターに全部押し込めてしまって、そこで憲法も認めない、労働基準法も認めない、そういう状況の中に置かれておるわけですが、その中に分割・民営化に反対する国労の組合員の役員は全部閉じ込められておるわけです。そしてその間に職場でどんどん国労を脱退させるという当局側の動きがあるということだけは御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/487
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488・山下徳夫
○山下座長 次に、河村勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/488
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489・河村勝
○河村委員 まず鷲頭さんにお尋ねをいたします。
先ほど、国鉄が再生するためには労使の信頼関係を回復して正常な労使関係をつくる、そうして労使が協力して何としても新しい鉄道事業を守り発展させるんだ、そういう決意のもとでやらなければいかに民営にしょうが分割にしょうが物にならぬ、まことにもっともだと思います。そこで労使関係の問題に関連をして、電力九分割以来のいろいろな御努力の話が出ておりました。一部いろいろな質問に対してお答えが出ているようでございますが、電力の分割の場合も国鉄の分割の場合も、一般の企業が幾つにも分かれるというのとは違いまして、一般の場合にはお互いの競争関係がすぐ生まれてくる。しかし、電力にしましても国鉄にしましても平面的に分割されるものですから、同じ地域での競争というのはなくて別々に分かれている。国鉄の場合には私鉄との競争がないことはないけれども、これも部分的になります。そこで、分割したことによってどういうインセンティブが働いて、その後の労使関係あるいは経営に役立つことがあったのか、それを今までの電力事業としての体験から総括的にお話をいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/489
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490・鷲頭康義
○鷲頭康義君 正直言いまして、今分割か一社かということでいろいろ議論が行われていますが、私は分割に賛成の方ですけれども、ただ分割にしろ一社にしろ絶対論はないんだろうと思うのです。相対的な比較だろうと思うのですね。絶対これでなければならぬというものはないだろうと思います。
ただ、電力会社に入って私はまだ三十四年ですけれども、私のそういう経験からすると、一社というか日発といいますか、そういう時代に、さっきも申し上げましたように親方日の丸的というか、あるいは九州で例えば採算がとれなくても日本全体としてとれておれば、やはりそれに頼り切る部分があることは事実であります。そしてまた一社なるがゆえに労働条件も賃金も一時金も全く一緒でありますから、ある意味では私どもがどれだけ働いてもという言葉は悪いかもわかりませんが、そのことが直接反映できないという部分はあるだろうと思うのです。ですから絶対論ではないけれども、そういう意味で考えるならば、本当にこれからの日本の鉄道の再生を図るなら分割をして、そして本当にみずからの課題としてその中で労使が努力をする道が妥当だろう、まず基本的にそう思います。
そういう意味で、九州電力というのは分割された後、さっき申し上げましたように労働生産性は大体中央の二分の一ですから、火力を持っていないところがら拠出をいただいて火力調整金をもらったり、そういうことで実はやってきたわけであります。そして今やっと労働生産性も中央大手三社を含めて電力の大体平均ぐらいにはなってきたというのが事実であります。というのは、その間例えぱ九州で労働生産性を引き上げていくということになれば、当然仕事と人との関係は厳しくならざるを得ません。そうしますと採用を減らしていかなければならぬ。そうなりますと、九州で一番悩んだことは、私自身が過去十年間悩んだのは、採用を減らして帳じりを合わせたわけですから、五十歳以上が六割、そして三十歳以降が四割ぐらい、その中間は人がいない。なぜ人がいないかといえば、雇わなかったからであります。ということは平均年齢がずっと上がるわけですから、東京も一万円、九州も一万円平均で賃上げするならば、九州の人は四十三歳が一万円、東京は三十六歳が一万円、こうなるわけですから、どうしても我々の雇用も労働条件も守るならばよそ並み以上のことをやらなければならぬ、こういう考え方に立つわけであります。そのことが労使真剣に、何としてもそれを克服しようということにつながっのではないだろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/490
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491・河村勝
○河村委員 ありがとうございます。
吉田さんにお尋ねをいたします。
さっき民営・分割に賛成の立場から御意見があったのですが、その中で地域性について配慮が必要だという御意見がありましたね。そこで、九州は災害が非常に多いので災害復旧については道路や河川と同じように扱ってほしい、それから複線化その他の開発利益を税金の形で還元をしてほしい、そういう御意見がございましたが、そうなりますと民営・分割の趣旨と何か矛盾するように感じられるのではないでしょうか。災害復旧費が多いのであれば、それはこれまでの経常収支の中に平年度で必ず積み上げてあるはずですね。ですから正しい計算がしてあれば経営安定基金、そういうものの算定の中に織り込まれるべきであって、国で出してくれということではないはずではないか。それから複線化等の開発利益についても、税金でというのはやはり筋が違うので、むしろそれこそ民営の利点を生かして不動産事業等をやって、複線化をやるときに私鉄がやっておりますように両側の土地を買っておいて、それで開発利益を吸収していくというふうにやっていくべきものではないかと私は考えるのですが、その点ちょっと気になったものですからお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/491
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492・吉田信夫
○吉田信夫君 確かに九州には災害が多いというのは事実だろうと思います。それともう一つは、先ほどから議論になっているようにたくさんの維持交通線を抱え込んでおる。したがって、もしそういった従来の災害事業に附属するような費用が会社の経営を圧迫するようであったら、何らか手だてが欲しいという願望でございます。
それから二番目の開発利益の還元の方法は、これはいろいろな方法がいろいろなサイドで研究されていると思うのですが、実際は非常に難しいことだと思います。ただ、鉄道に限らず九州の高速道路、先ほど高速道路の整備がおくれているという話、それから福岡においても都市環状線など非常におくれているわけですけれども、そのおくれている原因は何かといろいろ考えてみますと、一番問題なのは、例えば百億の金をつぎ込んだときに七十億から六十億ぐらい、六割から七割の金が土地の方に入っていく。何をやっているかといったら、私ども一生懸命交通で知恵を出していろいろなことをやろうと思いながら、結局は土地成金をつくっているということになりますので、もしでき得ればそういったサイドからいわゆる開発利益の還元をいろいろな面で御検討いただきたいという、これもお願いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/492
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493・河村勝
○河村委員 時間もありませんから、私の意見は省略をいたします。
最後に前田さんにお伺いしますが、先ほど余剰人員対策で、九州一万一千人の余剰人員の中で半分、五〇%は既に大体職を確保するめどがついた、それであと極力地元で職場を確保すべきである、そういう御意見がございましたが、私実際ちょっとびっくりいたしましてね。実は九州、北海道についてはとても職場は消化できないから、やはり東京、大阪で職場を求めなければならないのが多いであろう。ですから住宅等も考えないと大変だというふうに思っておったのですが、大変有力な御意見があって少し気持ちが明るくなったのです。五〇%確保して、なおかつ九州の中で職場を確保する見通しをお持ちでしょうか。どのくらいまで確保できるか。全部確保できるということであれば大変結構なんですけれども、その辺を一体どのようにお考えになっていましょうか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/493
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494・前田研一
○前田研一君 正直に申し上げて見通しは持っておりません。ただ、現在半分まで来ているということを我々経済界自体も、九経連という世帯だけじゃなくて商工会議所、いろいろな経済団体全部一緒に集まって国鉄からいろいろ実情の「お話を聞いて、産業界も経済界も協力しよう、そういう場づくりをして、そして民間会社として受け入れについての努力を願うという努力を実は九州域内全域でやったという成果もあわせて、この成り行きについて非常に関心が高かったものですから、国鉄にお聞きしたら現在のところ大体半数までいっているということでございます。しかしながら、あとどこまでいくかということについては、なお一層の努力を要するということだけははっきりわかっておりますが、これが果たしてどこまでいくものかということについては、まだ見通しは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/494
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495・河村勝
○河村委員 ありがどうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/495
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496・山下徳夫
○山下座長 次に、村上弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/496
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497・村上弘
○村上(弘)委員 初めに野村さん、後で前田さんにお聞きいたします。
御承知のように、共産党は国鉄の民営にはもとより分割にも反対です。いわゆる赤字というのは、これは莫大な設備投資を国鉄に利子つきの借金でやらせてきたということと特定人件費ですね。ですから赤字と国鉄の経営形態との間には何の関係もない。また、六十年度の監査委員会の報告を見ましても一日当たり九億円の黒字になっておる。朝日新聞も十日の社説で、国鉄にかかわりのないしがらみを取り除けばやっていけるではないか、なぜ分割・民営化なのか、こういうことを言っておりますが、そのとおりだと思います。しかし、何の関係もない経営形態に矛先を向けて、あえて分割・民営化を強行しようとしているのが現状です。その結果、運賃の値上げ、ローカルの切り捨て、これは大きく言えば九州の切り捨てにつながると思いますが、さらには安全を脅かす大量の人減らし、これがどんどん進行するということですね。現にその兆候がありますが、ねらいは何だろう。それは、一つは土地と資産を財界や大企業が分け取りしたいということではなかろうか。もう一つは労働組合つぶし、これがあると思います。今労使協調が美徳であるかのように言われていますけれども、長時間労働、日本の貿易摩擦の国内要因の最たるものはここですから、大きなツケが今回ってきているのだということを考える必要がある、そう思うわけです。
そこで野村さんにお聞きしたいのですが、分割・民営化、地域思い、そのダイヤ改正、こういうことを当局は言うわけですが、果たしてそうなのか。十一月ダイヤ改正で筑豊が本当によくなるのかということの実情をお聞かせ願いたいのが一点。
それからもう一つは、人が余っていると言うけれども実際はどうか。人材活用センターなどの実情、本当にこれは余った人なのかどうか。余っているからということでそこへ収容しているのですからね。その実情もお聞かせを願いたい。
それからその次に、時間がないから先に申し上げますが、前田さんの方にお聞きしたいのは、あなたの参加しておられます九州・山口経済連合会、そこでは去年監理委員会に提言を出しておられます。先ほどこのことで質問もありましたが、この提言でいきますと、皆さんの計算では来年はもとより昭和七十二年、十年後も黒字にはならぬ、七十二年で百十一億の赤字だ、こう出していますね。先ほども最悪の条件を考えた計算だということを言われましたが、新幹線は九州に所属しないという問題がありますね。バス会社は切り離さないのです、この案でいくと。それから基盤設備もやらない。こういうようなことからいいますと最悪の上の最悪じゃないかと思います。三島基金も二千億円積み増しておりますけれども、九州分は百億円にすぎませんから、さあどうなるか。皆さんの見通しでいくと、これは本当に黒字になるのかどうか。先ほど計算の仕方によるのだと言われましたけれども、あなたの計算の仕方では五年後、十年後大体どうなるか、その根拠もお示し願いたい。
もう一つお聞きしたいのは、整備新幹線の財源についてはどうお考えか。それから今まで新幹線の建設を利子つきの借金で国鉄にやらせてきたということについては、これからの整備新幹線の財源問題との関連も考えて、今までのやり方はそれでよかったのかどうかということについてもお聞きしたいと思います。
以上です。時間がありませんので簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/497
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498・野村実智明
○野村実智明君 先ほど私が意見の中で述べました無理やりに余剰人員をつくらせているのではないかというのは、七月の十八日に、若松保線区の人材センターがあるのですけれども、ここに三十八人余剰人員で入れられた。十月一日になりますとそれが二つに分けられて、若松人材センターに二十二人、折尾の人材センターに二十一人、合計四十三人になったのですけれども、この人たちがどういう作業をしておるかといいますと、今まで職場におったときと同じ作業をしておるわけです。保線作業をしておるわけです。ということは、これは余剰人員ではない。無理やり人活センターに入れることによって余剰人員だというようにしてしまうところに問題があるわけで、本当の余剰人員ではないということを先ほど私は……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/498
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499・村上弘
○村上(弘)委員 何のためにそれをやっているのでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/499
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500・野村実智明
○野村実智明君 結局このねらいは、一つは入っておる人たちが先ほど申し上げましたようにほとんど組合の幹部、活動家なんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/500
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501・村上弘
○村上(弘)委員 振り分けですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/501
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502・野村実智明
○野村実智明君 振り分けです。
そして次の問題ですけれども、筑豊というのは、先ほど申し上げましたように福岡県のちょうど中心地に当たるわけです。それで筑豊は北九州、福岡にいろいろ行き来するときには、五つも六つもの線に乗りかえていかなければならなかった。これは全体の意見が一致しておるのではないかと思いますけれども、私が持っておる四、五年前の運輸省に出した資料によりますと、社会党の意見も共産党の意見も、あるいは福岡県交通対策地方交通委員会の提言も、あるいは福岡県の産炭地振興協議会の提言も、復興共闘とか暮らしを守る、それぞれの団体がしておりますけれども、筑豊に横断鉄道をつくりなさいというのが全部共通しておるわけです。そういう横断鉄道がつくられないままに特定線区を全部切ってしまうということになります。先ほど滝井市長さんが言われましたように今度は田川線が切られまして、もし仮に後藤寺線が切られましたら、もう福岡から田川に入る国鉄はありません。まさに陸の孤島です。これが一つです。
そしてこれをどうするかという問題は、各筑豊の市町村一致しておると思いますけれども、筑豊を北九州と福岡のベッドタウンにしたい、こういうことが大体共通しております。それを距離ではかってみたのですけれども、国鉄の営業キロ数でいきますと、鹿児島本線の福岡の先に福間という駅がありますけれども、そこが物すごい北九州のベッドタウンになっておるわけです。これを国鉄線で結びますと、福間から北九州の八幡駅間で三十四・四キロあります。福間から戸畑までが四十・四キロです。これは通勤距離に入っておるわけです。ところが一方筑豊から見ますと、小倉と田川間を見ますと三十三・五キロです。新飯塚から博多間というのは二十八・五キロ、山田から博多が四十一・四キロなんです。近いのに福岡、北九州の通勤圏に入らないわけです。それは国鉄路線が非常に不備なためですね。だから国鉄路線をもう少し電化したり、あるいは軌条をかえたりすることによって北九州、福岡からのベッドタウン化される。というのは、福岡、北九州でも既に坪十万、二十万の土地はありません。ところが筑豊では今十万前後の土地で緑豊かな土地がたくさんあるわけですから、そういう点ではいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/502
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503・前田研一
○前田研一君 最初の経営収支の見通しのことについて申し上げます。
我々の計算は、最初からこういう経営安定基金というようなものは全く予想してなくて、現状から出発している。要するに国鉄の九州総局の現状から出発して、いろいろな経営の中身、条件というようなものを細部にわたっていろいろ条件立てをいたしました。その一つ一つの諸元というものを経営改善という方向に向かっていくためにはどのような改善の方法があるか、計数的に努力すべきところは努力し、それも最低の努力はここまでだということではじいた結果、先ほど申し上げた相当長期にならないと収支均衡という状態にはならないという結論が計数的に出てきたということでございまして、そのやり方で、言うなれば楽観論と悲観論という見方がもしあるとすれば、楽観論というものは全くありませんでした。我々みたいなこういう経済界ですから、民間の経常という立場をあくまでも貫いて計数をはじいていったということでございまして、最悪の条件ということよりも、改善の方向あるいは努力というものを若干見込んだ数字でもああいうような、長期的にも収支とんとんにはならないよという厳しい材料として出てきたということでございまして、あくまでも収支均衡あるいは利益を生ずるということが極めて望ましいことではございましたけれども、我々の試算の段階ではそういう状態であったということをまず説明申し上げたいと思います。
それからもう一つは新幹線の整備のことでございますが、これは地域住民にとっても全体としての九州新幹線整備は悲願でございまして、何とかしてその要望にはこたえていきたい、我々も地元として推進していきたいという方向でございます。しかしながら、先ほども申しましたように財源問題、それから地元の負担問題、それから新会社と経営との関連というようなことを考えますと、九州の中の新幹線の建設ということは地域全体にいろいろ大きな影響を及ぼすであろう。したがって、これから建設される新幹線の建設費というようなものは、極力軽減していくことが現実問題として私は基本的な命題ではないだろうか。したがって、新幹線のスタイルなり、もう少し軽便な新幹線が技術的にできやせぬかというようなこともあわせ考え、極力この財源を今までよりも安くでき上がるような方法ですべての衆知を集める必要があるのではないかという感じがいたします。東海道新幹線あたりと比べまして九州の中の新幹線の乗客はどうだということになれば、はるかに利用客が落ちるということはもうはっきりしていることでございます。それでも大きな負担にならないようにということでの新幹線渇望でございますので、そういう意味での御検討を、我々ももちろんいたしますけれども、ひとつ十分御論議願いたいという希望を持っておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/503
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504・村上弘
○村上(弘)委員 時間がオーバーしておりますからもう質問は終わりますけれども、財源はどう考えておられますかということと、今までの新幹線建設の財源の持たせ方についてはどうお思いか、この二点をお聞きしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/504
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505・山下徳夫
○山下座長 これにて質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
拝聴いたしました御意見は、国鉄改革諸法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚くお礼を申し上げます。
また、この会議開催のため、格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、深甚の謝意を表する次第であります。
それでは、これにて散会いたします。
午後一時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110704971X00719861020/505
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