1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十一年十一月十一日(火曜日)
午後四時十四分開会
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委員の異動
十月三十日
辞任 補欠選任
松浦 孝治君 古賀雷四郎君
十月三十一日
辞任 補欠選任
古賀雷四郎君 松浦 孝治君
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出席者は左のとおり。
委員長 前田 勲男君
理 事
大木 浩君
下条進一郎君
福間 知之君
市川 正一君
委 員
佐藤栄佐久君
杉元 恒雄君
降矢 敬義君
松浦 孝治君
松岡滿壽男君
守住 有信君
梶原 敬義君
小山 一平君
本岡 昭次君
田代富士男君
伏見 康治君
井上 計君
木本平八郎君
国務大臣
通商産業大臣 田村 元君
政府委員
通商産業大臣官
房長 棚橋 祐治君
通商産業大臣官
房総務審議官 山本 幸助君
中小企業庁長官 岩崎 八男君
中小企業庁次長 広海 正光君
中小企業庁計画
部長 小林 惇君
事務局側
常任委員会専門
員 野村 静二君
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本日の会議に付した案件
○産業貿易及び経済計画等に関する調査
(派遣委員の報告)
○特定地域中小企業対策臨時措置法案(内閣提出、衆議院送付)
○中小企業信用保険法及び特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/0
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001・前田勲男
○委員長(前田勲男君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。
本委員会が先般行いました委員派遣について、派遣委員の報告を聴取いたします。大木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/1
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002・大木浩
○大木浩君 特定地域中小企業対策臨時措置法案外一件の法律案の審査に資するため、去る五日から七日までの三日間、愛知、三重、大阪、和歌山の各府県に参り、地域の実情を調査いたしました。派遣委員は、前田委員長、下条理事、福間理事、市川理事、杉元委員、松浦委員、梶原委員、田代委員、井上委員、木本委員と私の十一名でございます。
日程は、五日、名古屋通産局会議室において、東海三県の地場産業について現地関係者から説明と要望を聴取した後、尾張旭市にある光和陶器株式会社工場を視察、次いで瀬戸市の愛知県陶磁器工業協同組合会議室で、瀬戸商工会議所、瀬戸輸出陶磁器工業組合などから産地事情の説明と要望を聴取しました。六日は大阪市内のホテル会議室で、大阪府、大阪商工会議所、大阪府中小企業団体中央会、大阪府商工会連合会から説明と要望を聴取した後、自転車部品メーカーのマエダ工業株式会社美原工場を視察しました。七日は、住友金属工業和歌山製鉄所と松下電器技術館を視察しました。以下その概要について御報告いたします。
まず、名古屋通産局会議室におきましては、愛知、岐阜、三重の東海三県の地場産業の業況説明と業界の要望を聴取しました。初めに、名古屋通産局長から管内概況の説明を聞いた後、日本陶磁器輸出組合、名古屋輸出陶磁器協同組合、とこなめ焼協同組合、岐阜県陶磁器工業協同組合連合会、日本輸出刃物工業組合、萬古陶磁器工業協同組合及び三重県鋳物工業協同組合から、各業界が受けている円高の影響の実態と要望を聴取しました。各業界から出てくる言葉は、異口同音に百五十円という円高に対する憤りとその恐ろしさについてでありました。昨年のG5協議前と現在を比較すると、生産額、輸出額は大幅にダウンし、例えば輸出陶磁器の名古屋検査所の検査合格高では、この十月は三十三万ダース、金額で約七億円で、これを前年同月と比較すると、五六%へと、半分近くまで激減しているという深刻な実情の説明がありました。
このような苦境の中にあって、事業転換を考えても、どの製品も国内市場は洪水の現況で、転換先は見出せない実情であるという声もありました。また、今の中小企業救済策は、資金の借入枠の拡大、金利の軽減が主流であるが、借り入れで切り抜けられればまだよい。それどころか、返済の見通しの立たない借金は、したくてもできないのが実情であるという厳しい訴えもありました。さらに円高不況からの企業の必死の生き残り作戦として、既に六十五歳以上の高齢者とかパートは、涙をのみながらやむを得ず整理してきたが、この先いよいよ常用労働者にまで波及するのではないかと危惧しているとの声がありました。
このほか各業界とも、電力、ガスなどの円高差益を円高不況に苦しむ中小企業者へ還元してほしいという要望がありました。また、いずれの業界からも、今回の特定地域中小企業対策臨時措置法案の早期成立と、本法に基づく地域指定を切望するという声が強かったことを申し添えます。
この後、尾張旭市へ赴きまして、現地の高級ノベルティ製造販売の光和陶器株式会社の工場を視察した後、瀬戸市の愛知県陶磁器工業協同組合会議室において、瀬戸市当局及び瀬戸商工会議所、愛知県陶磁器工業協同組合、瀬戸輸出陶磁器工業組合からそれぞれ産地事情と要望を聴取しました。
その概略を申し上げますと、瀬戸地域の地場産業として、輸出関係では、最盛期の月産三十億円が、本年十月には十五億円と半減し、前年同月比では二六・六%減となっていること。したがって、この対策として減量経営しかない、そのため今後は離職者がかなり出ることが予測されること。その対応のためにも今回の法案の早期成立と地域指定を切望していること。また、ここでも円高差益の中小企業者への還元の要望がありました。
次は、大阪通産局管内でございますが、市内のホテル会議室に関係者にお集まりいただき、初めに大阪通産局長から、近畿経済の概況と動向についての説明を聴取しました。次いで、大阪府商工部長から、大阪府経済の概況説明の中で、特に大
阪の製造業では三分の二の企業が製品輸出しており、輸出依存度が高い関係上、円高の衝撃に一段と厳しいものがあること、このため、府としては、知事を会長とする「大阪府円高対策推進会議」を設置したほか、「緊急経営安定対策資金融資制度」や「下請アドバイザー制度」を新設するなど、機動的効果的な中小企業対策を推進していることなどの説明がありました。引き続き大阪府立商工経済研究所長から、本年九月に実施した府下の中小企業の円高影響実態調査についての説明がありました。
次いで、大阪商工会議所、大阪府中小企業団体中央会及び大阪府商工会連合会からそれぞれの要望を聴取しましたが、その概要は次のようなものであります。
繊維、自転車、作業工具、人造真珠などを初めとする大阪の地場産業においては、昨秋以来の急激かつ大幅な円高の影響に加え、発展途上国からの輸入品の急増によって厳しい状況に立ち至っている。これらの対応策として、為替レートの安定、内需拡大策の推進、中小企業対策費の大幅増額、金融・税制面における優遇措置、輸出関連中小企業の事業転換に関する援助、電力、ガスなど円高差益の中小企業への還元等について、格段の配慮を願いたい旨の要望があり、ここでも今回の特定地域中小企業対策臨時措置法案の早期成立を希望する旨の発言がありました。この後、派遣委員とこれら関係者との間で質疑、意見交換が行われました。
次いで、府下南河内郡美原町にある地場産業の自転車部品メーカーのマエダ工業株式会社美原工場を視察しました。会社の説明によりますと、自転車市場は、最近の円高と台湾や韓国の急成長の影響を受けて、低価格車いわゆる大衆車については、日本でつくっていたのではもはやどうにもならないということから、生産拠点をドル圏の台湾、韓国に持っていかざるを得ないのが実情であるとのことでありました。同社は、自転車部品の製造販売については、国内はもちろん、世界的にも五指に入る優良企業と言われておりますが、この企業にしても、今の円高と新興国の追い上げによる打撃は極めて大きいものがあることを訴えているのでありまして、数多くの中小企業の苦境が、いかに厳しいものであるかに思いをいたした次第であります。
次に、住友金属工業和歌山製鉄所についてでありますが、御承知のとおり、基幹産業たる鉄鋼業界は、今構造不況と円高不況のダブルパンチに見舞われ、鉄冷えの厳しい状況下にあります。同製鉄所において、会社側からその現況について説明を聞きましたが、今後の経営課題として、発展途上国の追い上げをかわすべく、国際競争力の維持、強化に努めるとともに、経営の多角化にも努めなければならないこと、また、合理化施策は労使に「雇用か賃金か」という厳しい選択を迫られているといった、押し詰められた実情が示されました。この後、同社の誇る厚板圧延工場とシームレス鋼管工場を視察しましたが、厳しい合理化計画で、この厚板工場は来年は休止して鹿島工場へ統合する予定とのことでした。ここでも、中小企業といわず、我が国の代表的基幹産業においても、円高不況の影響が深刻に迫っていることを実感した次第であります。
最後に、松下電器産業株式会社の技術館を視察しました。我が国エレクトロニクスの最先端技術の数々を見て、技術の進歩とその力強さを感じましたが、会社の説明によれば、円高の影響は、この超優良企業ともいうべき松下電器にも及び、同社の場合、為替レート一円の円高が五十億円の差損になるという厳しい説明も聞きました。同社も当面の円高対策として、海外への進出すなわち現地生産が必要となること、しかしながら工場の進出を早急に行うと、国内工場の労働者の扱いの問題が生じてくるという悩みがあり、社内での失業者がふえることにならないよう、雇用の調整の面から検討中であるとの説明がありました。
以上で報告を終わりますが、今回の調査を通じて、自分の力ではどうすることもできない為替レートの変動という経済メカニズムに翻弄されている中小企業者の苦悩の声に接し、その有効適切な対策の必要性を痛感いたしました。我々としては、調査によって得ました結果を今後の委員会の審査に十分反映させる所存でございます。
最後に、調査に当たり御協力をいただきました現地の関係各位に対し厚く御礼申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/2
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003・前田勲男
○委員長(前田勲男君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/3
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004・前田勲男
○委員長(前田勲男君) 次に、特定地域中小企業対策臨時措置法案並びに中小企業信用保険法及び特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
まず、特定地域中小企業対策臨時措置法案について趣旨説明を聴取いたします。田村通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/4
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005・田村元
○国務大臣(田村元君) 特定地域中小企業対策臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
最近の中小企業を取り巻く環境は、円高の一層の進展、北洋漁業規制の一層の強化等により厳しいものとなっており、特に、輸出型産地、企業城下町等の特定の地域においては、円高の一層の進展等により直接的に影響を受ける中小企業のみならず、商業、サービス業等にも影響が及ぶとともに、雇用状況が悪化する等地域経済全体の疲弊が急速に進むことが深く懸念されております。
政府といたしましては、このような事態に対処するため、去る九月、総合経済対策の中で、円高等内外の経済環境の急激な変化に直面している中小企業の構造転換等を支援するため、特に深刻かつ集中的な影響を受けている地域における中小企業者に対し、法的措置も含めた総合的な助成措置を講ずることを決定したところであります。本法律案は、この決定を受けまして、こうした地域における総合的中小企業対策の骨格を形成するものとして立案されたものであります。
次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
まず第一に、円高の一層の進展等最近における内外の経済的事情の著しい変化により地域経済全体が大きな影響を受けており、その地域の相当数の中小企業者の事業活動に著しい支障が生じていると認められる地域を「特定地域」として政令で指定します。この特定地域の指定に当たっては、雇用に関する状況も考慮するものとしております。
第二に、特定地域の中小企業者は、新分野への進出に関する事業等新たな経済的環境に適応するための措置に関する計画を作成し、都道府県知事の承認を受けることができることとしております。
第三に、計画の承認を受けた中小企業者に対し、種々の助成を講ずることとしております。助成の内容は具体的には、承認中小企業者が承認計画に従って新たな経済的環境への適応を図るために行う事業等に必要な資金の確保、設備近代化資金の返済猶予、承認中小企業者に対する金融の円滑化を図るための中小企業信用保険における付保限度の別枠の設定等の特別措置、承認中小企業者に対する試験研究費に充てるための負担金等についての課税の特例措置等であります。
第四に、特定地域における工場の新増設を促進するため、設備の導入に当たっての特別償却等税制上の措置等を講ずるとともに、公共事業の実施に関し特定地域における経済の安定等の見地から必要な配慮を加えることとしております。このほか、関係地方公共団体においても国の施策と相まって所要の施策を実施するよう努めることとしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/5
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006・前田勲男
○委員長(前田勲男君) 次に、中小企業信用保険法及び特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。田村通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/6
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007・田村元
○国務大臣(田村元君) 中小企業信用保険法及び特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
最近における中小企業の景況の悪化に加え、円高の一層の進展に伴う内外の経済的事情の著しい変化等により、輸出入関連中小企業者を初めとして広範な中小企業者について、その経営の安定に支障が生じつつあります。
政府といたしましては、このような事態に対処するため、去る九月、総合経済対策の中で、中小企業者の担保力・信用力の不足を補完するため、国際経済関連保証及び倒産関連保証に係る無担保保険の限度額を引き上げることを決定したところであります。本法律案はこの決定を受けまして中小企業信用保険の特例措置を規定するものとして立案されたものであります。
次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、中小企業信用保険法の倒産関連保証のうち不況業種等に係る中小企業者についての無担保保険の付保限度額の別枠を一千万円増額して二千万円とすることとしております。
第二に、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の国際経済関連保証についての無担保保険の付保限度額の別枠を一千万円増額して二千万円とすることとしております。
この結果、それぞれの保険における無担保保険の付保限度額は、通常の場合の一千万円を含めて三千万円に引き上げられることとなります。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/7
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008・前田勲男
○委員長(前田勲男君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。
両案に対する質疑は後日行うこととし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714461X00319861111/8
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