1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十一年十二月十一日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十二月十日
辞任 補欠選任
小野 明君 志苫 裕君
十二月十一日
辞任 補欠選任
斎藤 文夫君 青木 幹雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 岩本 政光君
理 事
大城 眞順君
亀長 友義君
村上 正邦君
久保田真苗君
委 員
青木 幹雄君
大島 友治君
岡田 広君
小島 静馬君
古賀雷四郎君
斎藤 文夫君
永田 良雄君
永野 茂門君
堀江 正夫君
志苫 裕君
野田 哲君
飯田 忠雄君
内藤 功君
柳澤 錬造君
国務大臣
厚 生 大 臣 斎藤 十朗君
自 治 大 臣 葉梨 信行君
国 務 大 臣
(総務庁長官) 玉置 和郎君
政府委員
内閣法制局第二
部長 大森 政輔君
警察庁長官官房
長 新田 勇君
総務庁長官官房
長 古橋源六郎君
総務庁行政管理
局長 佐々木晴夫君
総務庁行政監察
局長 山本 貞雄君
厚生大臣官房長 北郷 勲夫君
厚生大臣官房総
務審議官 長尾 立子君
厚生省健康政策
局長 竹中 浩治君
厚生省生活衛生
局長 北川 定謙君
厚生省社会局長 小林 功典君
厚生省児童家庭
局長 坂本 龍彦君
自治大臣官房審
議官 森 繁一君
事務局側
常任委員会専門
員 林 利雄君
説明員
文部省教育助成
局教職員課長 佐々木正峰君
文部省社会教育
局社会教育課長 小埜寺直巳君
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本日の会議に付した案件
○地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/0
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001・岩本政光
○委員長(岩本政光君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨十二月十日、小野明君が委員を辞任され、その補欠として志苫裕君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/1
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002・岩本政光
○委員長(岩本政光君) 地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は前回既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/2
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003・志苫裕
○志苫裕君 総務長官、健康がすぐれないと伺っておりますが、それでもあちこち持ち前の、話題は提供しているようでありますが、しばらくおつきあいいただいて、委員長のお許しがあればほどほどに健康に留意する時間を持っても結構であります。
本法案は、見かけによらず重要な中身を持っておりまして、私は実は地方自治という地味なテーマに取り組んで、これをライフワークとしておる人間なんですが、以下、私も精魂を傾けてやりますから、ひとつまた精魂込めて答えてほしいと思うんでありますが、願わくは役所の長じゃなくて、民間出身の大臣としてひとつ後世に記録をとどめてほしい、このようにお願いいたします。
社会情勢の変化などに見合いまして絶えず行政のあり方を見直す、そういう意味での行政改革はいつの内閣にとっても重要な課題でありましたが、これを政権の存在理由に位置づけたのは中曽根内閣ですね。その中曽根さんは、一口に言って行革とは官から民へ、中央から地方へ仕事の移しかえを行うことである、こう議会でも答弁をしておるんですが、なぜか中央から地方へという仕事の移しかえは遅々として進まない。ある時期、大平総理が田園都市構想を掲げて地方分権を説いたことがあります。ずる賢くて縄張りの拡張ばかり考えておる中央の省庁は、予算獲得のためにこれに悪乗りをしたことが一時ありましたが、時期が過ぎてしまえばうたかたのごとく消えた、こういう歴史もあります。
私はこういう状況の中に、あの戦後改革の中でも生き残ったと言われる中央集権官治体制あるいは日本官僚制というもののしぶとさを見る思いがするんですが、長官の所見はどうでしょう。あわせて自治大臣の所見も伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/3
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004・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) 御答弁申し上げます前に、ここで志苫先生に久しぶりに会ったのでお礼を申し上げたいと思いますが、私がちょうど行革の委員長をしておりましたときに、理事さんが小柳先生と野田先生、それで締めくくりの最後の質問者が志苫先生でございました。そのときに、今両先生思い出していただいたらわかると思いますが、鈴木総理が、きょう大みそかであしたいよいよ上がるんだから、これ何としてもやっぱり玉置君、頭を下げて、そして皮一枚でもいいから残してもらいたいという、そのいわく因縁があったことは御承知のとおりだと思います。私は国家、国民のために何としても行革をやらなければならぬ。これは政党政派、イデオロギーを離れてやっぱり行革というものはやっていかなければならぬというのでお願いをしまして、最後の皮一枚残して、そうして今日あるわけでありまして、あのときの恩義を考えますと、小柳先生、野田先生、志苫先生、忘れることはできません。あのとき皮が切られておって首が落ちておったら臨調も行革審も、今度また新しくやる新行革審も何もないんです。それだけに、今日改めて公開の席上で、内容については私は恐らく遺言の中にも書きませんが、これは秘話でございますが、ありがたいことだと、こう感謝しながら御答弁を申し上げたいと思います。
今申されましたことは、ことごとく私たちもやっぱり真剣に考えてきたところであります。しかし、まだ道半ばでございましてなかなか進まない。そこで、今度は国と地方の問題につきましては、国だけでなしに各省とも総務庁といろいろと相談をしまして、機関委任事務の問題につきましても合意を見た上で法律案としてお願いをしておるところでございます。専門の志苫先生に私が答えるようなものじゃございません。私はど素人でございます。それだけに、こっちの知っておる専門の連中によく聞いてもらって、肝心なところは私が答えますのでよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/4
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005・葉梨信行
○国務大臣(葉梨信行君) 行政改革の推進に当たりましては、国、地方を通じます行政の簡素、効率化を図るとともに、地方分権の推進を基本的な方向とすべきであろうと思うのでございます。そのためにはまた、住民に身近な行政は、できるだけ住民に身近な地方公共団体において処理することが望ましいと考えているところでございます。
このような考え方から、機関委任事務やあるいは許認可権限につきましてはできる限り整理、合理化を行い、地方自治の伸長を図るべきであろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/5
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006・志苫裕
○志苫裕君 それは、そんなこと私は聞いているんじゃないんだ。そういうことをずっと言うてやっておるが、国から地方へという仕事の移しかえはさっぱり進まない。これはやっぱり戦後のあの改革の中でも生き残った中央集権官治体制というもの、日本官僚制というもの、こういうもののしぶとさからきているんだというふうに私は思うんですね。そういう点についてどのような所見を持っておるかということを聞いているわけだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/6
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007・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) 私は、常日ごろ地方自治こそ民主政治の道場であるということを言ってまいりました。それだけに、地方自治体の自主性というものは国が尊重してその自治体の力というものをつけていく、これが国の政治の基本だと、こう考えておりますので、今回の問題につきましてもその方向に従って、一遍にはまいりませんか努力をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/7
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008・志苫裕
○志苫裕君 この機関委任事務に関する論議というのは、何もここ数年始まったことじゃないんですね。この問題は、新憲法制定以来地方自治のありようをめぐる論争と民主主義の確立を目指す論争、実はこの闘いの歴史なんですね。
新憲法で国会の立法権あるいは内閣の行政権と並んで地方自治の基本、すなわち地方の自主立法権、自主行政権、自主財政権というものがうたわれましたけれども、現行地方自治制度には、例外として従前の中央官治体制の名残が居座った部分があるんです。これがいわゆる機関委任なんです。残りかすなんですよ。ですから、この機関委任によるところの事務処理方式というのは地方自治の根幹にかかわるもんだということで、絶えずこれの廃止、改善を求める努力やさまざまな提言、論争が行われておるんです。ですから、この提案は直接的には行革審の提言を受けての提案になっていますが、背景を言えば、このような歴史を引きずっているものなんです。今、便宜取りまとめとして総務庁がこの法案を所管をしておるけれども、私は、総務庁にそういう歴史を引きずったその問題の処理が今この法案に出てきているんだという認識が果たしてあるんだろうかということを、まず最初に問わなければならないんですね。
私は、総務庁がさまざまな行革の中でも機関委任事務をこうやって所管をすることはそんなに適当じゃないと思っているんです、いろいろあるから便宜やるんでしょうがね。この機関委任事務について言えば、今言ったようなものを引きずっておるんで、いろんな都合で所管しておるのであれば、その歴史の認識をまず持っておってもらわぬと困る。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/8
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009・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 今回この機関委任事務の一括整理法を提出することについて、総務庁が適当であるかどうかというふうなお話もあったわけでございますけれども、御承知のとおり、これはいずれも昨年七月の行革審答申において提言されたもの、それをいわば取りまとめまして、他の法律と同様にいわば行政改革の推進官庁たる総務庁がこれを所管をして今回法案を提出した、こういう次第でございます。
従来、御承知のとおり、百二国会でも地方の自主性、自律性の強化の一方途としまして、国の関与等の整理合理化法案を提出した経緯もあるわけであります。したがいまして、そういう観点からいえば、まあ必ずしも総務庁がこれが不適当とも思わない、このように存ずるわけであります。
なお、歴史的認識を持っておるかというお話があったわけでありまして、この点、機関委任事務の整理合理化につきましてかねてから、例えば地方制度調査会その他でもって大変な御論議があるというのは承知をいたしております。これはさきの臨時行政調査会にありまして第三次答申、これが提出されましたのが五十七年の七月三十日でありますけれども、その際にも実は大変な論議があったわけであります。つまり、今志苫先生が言われましたように、機関委任事務というのはそもそも整理すべきではないかという御議論もありました。ただ、これに対しまして、機関委任事務というのは、これはもう志苫先生よく御承知のように、いわば学問的な講学上の概念であって、各種の個別の法律の中に、例えば国の大臣の委任を受け、あるいは国の法律に基づきまして各都道府県知事がこの事務を執行する、許認可権限を行使する、こういう仕掛けになっておる、それを総称したのが機関委任事務ということでありますから、これはいわばすべての法制について見直すということが果たして現実的かどうかという議論があったわけであります。
そこで、その臨調の第三次答申、基本答申では、御承知のように、機関委任事務のあり方を見直すというふうな指摘がありまして、これを行革審でもって再度検討することになった。行革審では、御承知のように、機関委任事務はいわば全国的統一性、公平性を確保しつつ、地方の実情に即した行政を行うものであるから、これが有効に正しく活用されるならば有効な制度であるという御提言のもとに、言うならば適当でないもの、常に見直すべきもの、これを指摘をされたわけであります。そのあたりの整理をしたのが今回の法案の中身である。こういう経緯でもって今回提案をいたしたわけでありまして、そのあたりにつきましては御理解を賜りたいと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/9
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010・志苫裕
○志苫裕君 その辺のことはおいおいとやりますがね。
大臣と長官、私は先ほどちょっと言いましたが、今いろんなことを言っていましたが、しかし歴史的に見て、この問題の解決を阻んだ基本的な要因は、中央省庁の縄張り根性なんですね。ですから、本当にこの問題の解決を図ろうとするのであれば、縄張り根性を持っておる中央の役所では、てめえでてめえを料理するようなものですから、本当は難しいんですよ。そういう意味も含めて余り適当じゃないんじゃないかというような言い方をしたんです。まあ自治省もさっぱり頻りにならぬけれども、それでも自治省あたりは地方の事情は割合に——所管している役所ですからね。事、機関委任事務についての整理を言うならば、そこに思い切って任せるとかいうふうなことの方が、この中央から地方への仕事の移しかえという点だけで言えば一番いいような気もする、そういう感じがしていたもので適格性を疑ったんで、今いる方の能力を疑っているんじゃないんですけれども、どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/10
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011・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) まあお説のとおり、各省の縄張り根性というのは、総務庁長官になってみてなるほどすごいものだなということを感じております。
今度の場合は、自治省だけでなしに、きょう恐らく御論議いただけると思いますが、厚生省関係の権限委譲、これが非常に多うございます。各省もあります。そういうことになってきますと、各省にわたる問題につきましては一応総務庁がやるということ、総務庁というのは私は余り大した役所じゃないなと思いましたが、監察、調査の権限があるということ。それで、言うことを聞かなかったら定員を絞り上げるということ、こういうのがあるから聞くんであって、こんなものなかったらへのかっぱでありまして、何も看板もかける必要ないと思うぐらいでありますが、ようやく士気が上がりまして、余り総務庁の言うことを聞かなかったら定員は認めてくれぬな、それからまた、監察、調査に入られるなというようなことでありまして、大蔵省が強いのは金を握っているからです。総務庁の強いのは定員を握っておって監察、調査の権限を持っておるというふうなところから、これがやっぱりこういう国の権限委譲の問題につきましては、各省に対してある程度のにらみがきくんじゃないか。座るべき人が座ったらやっぱり聞きます。玉置和郎みたいな何をやらかすかわからぬようなのが座っておると言うことを聞きますので、この辺もひとつ御協力を賜りたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/11
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012・志苫裕
○志苫裕君 自治大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/12
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013・葉梨信行
○国務大臣(葉梨信行君) 機関委任事務制度につきましては、戦前において既に採用されていたものでございますが、昭和二十二年の地方自治法制定時に現行制度の骨格が形成されたところでございます。こういうことはもう先生全部御存じのことでございましょう。
その後、この制度のあり方をめぐりまして、地方制度調査会等において制度の廃止等各種の提言が行われてきたところでございまして、本年二月の地方制度調査会におきましても、原則としてはこの制度を廃止すべきである、しかし当面は、機関委任事務の整理合理化を行うべき旨の提言が行われたわけでございます。
以上申し上げましたような経緯につきましては、自治省といたしましても十分認識しているところでございますけれども、さしあたっては機関委任事務の整理合理化に取り組んでいこう、こういうことになっておりまして、今後ともこの機関委任事務制度そのもののあり方も含めて整理合理化を進めてまいりたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/13
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014・志苫裕
○志苫裕君 どうも少し答弁は合わないんだけれども、自治大臣ぐらいだったら、そうだおれにやらせろよ、大抵はやるからくらいの答弁は大臣してもらわぬと困ります。あなた大臣なんだから余り役所の書いたものを気にしないで、両方の大臣に来てもらっておりますので、やっぱり大臣が言うて、それでずっとルールをつくってもらいたいと思って、細かいことを聞くならおいでにならぬでもいいわけですよ。
そこで、みんないろんなことで苦労はしていることはよく心得ているんで、ただ、衆議院の記録を精細に読みますと、行管の佐々木局長、いろいろ成果も上がっているんですと。行革審の答申よりも政省令事項を入れれば七十二もあるし、それから福祉関係だけでももう十七も余計やっているんですと。まあ成果を誇示するのは結構なんですが、そう成果を誇示するほどのものじゃないんですね。実質のあるものは福祉関係で若干ございますが、これは少し銭、人の関係で何か譲ったみたいな形で、あとは鼻くそみたいなもので余り中身はないですよ。しかし、そのことはけなすわけでもないんですが、何か私の言い方に不満でもあれば後ほど言ってもらっても結構です。
ともあれ、地方自治に対する制約は機関委任事務だけじゃないので、許認可から必置規制、その他人事、財政にわたるさまざまな関与、全部あるんですが、話をみんな広げてもしようがないので、機関委任事務に絞って話をしているんです。
自治省、きのうもお願いしておきましたが、機関委任事務の増加状況と現況、そしてなぜふえたのかという自治省の判断、ちょっとそれを述べてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/14
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015・森繁一
○政府委員(森繁一君) 機関委任事務につきましては、今先生御指摘のとおり、戦後一貫して増加してまいっておるわけでございます。その傾向を地方自治法の別表第三及び第四によりまして整理されました事務の項目の数で申し上げてみたいと思います。その項目数で見ますと、昭和二十七年度が二百五十六項目になっております。それから十一年置きました昭和三十八年度が四百二十項目になっております。それから昭和四十九年度、これも十一年後でありますが五百二十二項目。こういう数字になっております。
次に、こういうふうに機関委任事務が増加してまいりましたその原因についてでございますが、私どもの理解しておりますところでは、昭和三十年代後半からの高度経済成長と関連いたしまして、公害部門あるいは環境行政、あるいは消費者行政、都市計画等のいわば新しい分野の部門で機関委任事務が増加したことによるものではなかろうかと考えております。
なお、機関委任事務を省庁別に見てみますと、厚生省、農林水産省、建設省が特に多いようでございまして、この三省で大体六割を占めておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/15
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016・志苫裕
○志苫裕君 それは社会経済や国民生活の変化、そういうものを背景にしてどんどん事務が拡大してきた、それはちっとも説明にならぬのでして、だから機関委任事務がふえたことにならない。事務全体がふえています。
なぜ機関委任事務がふえたかというと、そういう行政事務というのは何も国だけが全部やらなくてもいいわけです。地方にも政府があって、それで自主的に既に住民に対する義務、責任に基づいてやっているわけです。そういうものも包括をして一方的に国の事務とし、それを地方に委任する、そういうやり方をとったところが問題なんです。社会の変化を背景にして事務がふえたので機関委任事務がふえました、というのではちっとも事務がふえた説明にならぬのでありまして、これは後ほど整理のところで言います。
とにかく、今あなたは四十九年と言うけれども、知事会が出している今一番新しいのは五十五年になりますよね。というのは、四十九年の報告ではそれはあなた少し怠慢ですよ。五十六年法が、五十六年に別表改正が行われていますから、あのときに整理が行われているはずで、あなたは別表を言わないが、私が非常に重視しているのは単独法を言っているんです。単独法はわからぬですか、個別法。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/16
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017・森繁一
○政府委員(森繁一君) 今四十九年を例に申し上げましたのは、その後、四十九年以降自治法の別表につきまして抜本的な見直しをやっておらない、こういう実情にございますのでその数字を申し上げたわけでございます。ちなみに、五十八年以降現在までは五百八という数字になっております。
なお、個別法につきましての数字でございますが、私どもそれぞれ詳細には掌握しておりませんので、別表第三及び第四の数で御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/17
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018・志苫裕
○志苫裕君 そこに問題があるんでして、今所管をしておる自治省が個別法に基づく機関委任事務が幾つだかわからない、これが問題なんです。二十七年法改正のときに、いわゆる機関委任事務と団体委任事務を別表に一覧にしたんです。なぜ一覧にしたかというと、だれが見ても、ああ、こんなにあるのかと言ってわかる。わかることによって、こういう事務の整理合理化の世論喚起に寄与できるだろうという立法趣旨が一つあるわけなんです。
もう一つは、機関委任事務をするには、一々煩わしい地方自治法の別表改正という法律手続が要る。煩瑣にすることによって無制限な増加を防ぐという法趣旨があって、別表の一、二、そして三、四、これをつくったという、この立法趣旨にかんがみれば、自治省がわからぬような機関委任事務が個別法でじゃんじゃんできて、肝心なところが知らぬなんという、これがまずこういう状況を生んでいるもとになっているんです。
行管はわかりますか。個別法に基づく機関委任事務は幾つですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/18
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019・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) 私ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/19
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020・志苫裕
○志苫裕君 いや、事務局から。長官はわかるわけないからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/20
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021・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) この教え方がまた大変難しいわけでありまして、率直に言いまして、個別法のすべてについて私どもチェックをいたしているわけではありませんで、その総数を把握はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/21
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022・志苫裕
○志苫裕君 長官、こういうことだということがわかったら、ちょっと休憩しても結構ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/22
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023・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) いや、よくわかりましたよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/23
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024・志苫裕
○志苫裕君 そういう状況なんですね。これ、困ったものですね、わからぬものを今聞いてもしようがないので。しかし、いろんなところでは八法律とか七法律とか何か答えているんですが、あれはでたらめに答えているのかな。では、それは後刻にしましょう。
衆議院の会議録を一応もとにして私は話をしますが、事務の整理区分というのは余り明確ではない。五十八年法審議の折にこの機関委任事務の定義を明確にして、その概念規定を定めて、それによって残すもの、地方に移すものの仕分けをするという答弁をして、仕分けの作業は行革審にでも頼んだのか、行革審の方は例示として、例えばこういうものがということで七項目例示を挙げて機関委任事務とされている、それが基準になるかはわかりませんが。ともかく衆議院では、先ほど局長がお答えになったように、機関委任事務というのは講学上の概念で個々の政策大系の中で決められると、依然としてあいまいなことを言っておるわけですね。そういう状況のもとでは、現実的には法令協議における自治省の意見がかなり重要な位置を占めてこなければこの問題のチェックにはならないというふうに思います。
この法令協議に当たっておる自治省のスタンスをお聞きしましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/24
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025・森繁一
○政府委員(森繁一君) 機関委任事務を新しく設けます場合には、法律の企画立案の段階におきます法令協議がございます。その法令協議の段階におきまして、私どもの方は機関委任事務は真に必要なものに限定する、そういう立場から意見を申し述べているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/25
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026・志苫裕
○志苫裕君 真に必要なものに限るといっても、その真に必要なものの物差しがないから、自治省はどういう物差しで真に必要なものとそうでないもの、あるいは自治省の意見の中には、これは機関委任事務でなくて団体事務でもいいじゃないですかと、そういうことはもう既に自治体が自主的にやっていますよというふうなものだってかなりあるだろうと思う。かなりあるはずだから、自治省も地方公共団体の方もこれはもう団体事務にしてください、こんなことは別に法律に書いておかぬでもいいですよという意見をがばっと出しておるのでして、あなたの方はどんな物差しでやっておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/26
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027・森繁一
○政府委員(森繁一君) 私どもとしましては、住民に身近な行政はできるだけ住民に身近なところで執行をいたしたい、こういう気持ちがまず基本にございます。
それで、具体的に個別法で新たな事務を機関委任事務として位置づけますためには、その事務が真に厳格な意味におきまして全国的な統一性あるいは公平性が求められている事務でありまして、その担保の手段といたしまして、主務大臣の指揮監督権が必要だと、そういうものに限って協議をいたしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/27
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028・志苫裕
○志苫裕君 そのようなものに限って協議をしている割には無制限にじゃんじゃんふえているじゃないの。必要なものに限って協議をして、自治体のサイドに立っておる自治省もオーケーを言うたかクレームつけたかわかりませんが、形の上ではオーケーを言うてでき上がったものが、二十七年の法制定当時から五十五年までには、知事に対する委任は二・五倍になっている、市町村に対する委任は二倍以上になっているんです。それで、しゃばじゅう騒いで大変だ、これは減らすものは減らさにゃならぬと、みんなこういう大騒ぎになっているのは、今までのやり方にやっぱり問題があったわけでしょう。中には、そのとき必要だが歴史的役割を終えた、終えたんだけれどもしっかり権限握って死んだやつでもまだ放さないというような問題があるかもしれませんけれども、やっぱり自治省の方のスタンスを今聞いていますとね、あなたの方では基本的にまず国の事務、地方の事務という仕分けをするんですか。そして、国の事務ではあるが、地方に移してそれにかかわった方がより能率的だというふうに仕分けをするんですか、どっちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/28
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029・森繁一
○政府委員(森繁一君) 先ほど申しましたように、私どもとしては住民に身近な行政はできるだけ住民に身近な地方行政団体で処理をせしむべきだ、これがまず基本的なスタンスでございます。その上で国の責任において処理しなければならない事務は国の事務、それから地方の責任において処理した方がいい事務は地方の事務と、こういう区分の仕方をいたすつもりでございます。さらに国の事務とされたものにつきまして、先ほど申し上げましたように全国的な統一性、公平性がどうしても必要だと、そのためには指揮監督権が必要だと、こういうものにつきましては機関委任事務としての位置づけをすると、こういうことでございまして、その他のものはすべて団体事務という取り扱いにしておる、こういう形でございます。
なお、先ほど来機関委任事務の数がふえておるんではないかというおしかりを受けておりますけれども、私どもの努力が足りない面があろうかと思いますが、これがなければもっとふえておったんではなかろうかと思いますので、その辺もひとつ御考慮いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/29
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030・志苫裕
○志苫裕君 いやいや、憲法があって、憲法の命ずる基本法、自治法がありまして、そこには本旨があるんでして、そんなに法律さえつくれば無制限に機関委任事務をできるものでもない。限度を超えれば憲法違反になる。そうでしょう。地方の自主権というようなものを一方で認め、その本旨に基づく基本法ができておって、それを妨害をするような立法がいかに法に基づくからといって機関委任事務として有効になるわけじゃない。これは憲法の論理でしょう。
法制局いらっしゃいますか、私は当然に法令審査という関門も通るはずだと思うのですが、機関委任事務を盛り込んだ法案の審査をするときには、これがいわゆる憲法の言う、あるいは地方自治法の言う地方自治の本旨というものに触れないかどうかという視点での法令審査はやられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/30
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031・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 御指摘のとおりでございます。いわゆる機関委任事務の立法化と申しますものは、地方自治の本旨を尊重しつつ、なお当該事務を地方公共団体の機関に委任し、その処理を行わせることに合理性があるという場合に行われるべきであると思います。したがいまして、内閣法制局における法案審査におきましても、法案審査に際しましてはいろいろな観点からの審査をいたすわけでございますが、今御指摘のような事項を含む法案につきましては、ただいま申し上げたような観点から合理性があるかどうかということを一つの審査の観点として行っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/31
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032・志苫裕
○志苫裕君 その観点は立派だと思いますが、どうも地方自治の本旨にももとるし、合理性もないという法案も私の私見では随分見受けられる。だから問題にするわけですが、まさか法制局の答弁で何とか法は本旨にもとるし、合理的でないというような答弁をして、自分が法令審査をしたあれを覆すようなことはなかなか言わぬでしょうけれども、素直に見直すときにはこれはこんなものは要らぬなと。これからますますそういうものについて、今お答えになったような観点で法令審査をやるように求めておきます。
これは直接これにかかわる判例じゃありませんが、三十八年の最高裁の判例を引用すれば、地方公共団体が自主立法権、自主行政権、自主財政権というものを与えられた団体であることを無視して、憲法で保障された地方自治の機能を法律でもって奪うことは許されない、こういう判例もあることを考えれば、私はやたらと法律さえつくれば地方公共団体に仕事を昔のように命令できるんだ、やらせられるんだというふうに考えるべきものではないということを改めて指摘をしておきたい。
それにしても自治省ね、私は先ほど言いましたが、二十七年改正で別表をつくることによって、無制限な機関事務がふえていくことをある意味では制限をしようと。面倒な法改正の障害とか、あるいは一覧表にしておくことによってだれが見てもすぐわかる、何だこんなものまで義務づけられておるのかというようなことがわかる。有識者から批判が出る。こういう改正趣旨を持っていたはずなんですが、しかし先ほど言ったように、実はそうやって命ぜられた、自治法の別表にも載らないものが何だかいっぱいある。それを行管も総務庁も自治省もあんまりわかりませんじゃこれはちょっとルーズなんだな。これからはその辺はきちっとしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/32
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033・森繁一
○政府委員(森繁一君) 地方自治法の別表をつくりました趣旨は今先生御指摘のとおりでございまして、個別法にそれぞれ根拠を持っております機関委任事務につきまして一覧性を持たせる、こういうことによって事務処理の便宜を図るというのが一つの意義でありますし、他面では、こういうことをいたしまして、将来における行政の簡素化、事務再配分に資すべく現在の状況を明らかにすると、こういうことが第二の眼目であったわけであります。
私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますように、機関委任事務は別表作成の趣旨に沿いまして必要最小限のものにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけでありますし、さらに御指摘をいただきました四十九年以降の問題につきましても、今般地方自治法の一部改正案ということで国会に御審議をお願いしておると、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/33
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034・志苫裕
○志苫裕君 これは自治省でも行管でも総務庁、どっちでもいいですが、例えば行管局長の答弁の衆議院の記録ですと、三十八年の第一次整理法のときでも政省令事項を含めて五十とか、あるいは今度も政省令事項で七十二とか、それをお答えになっていますよね。もちろんその中に、ちょっと見ますと、何も機関委任事務じゃなくて、許認可からあるいは国の出先機関にやらせるものまで含めての数字のようでありますが、七十一になったり二になったりそんなことどうでもいいんでありますが、まさか省令で機関委任をしたり、法に基づかないで政令で機関委任をしたりしているものはないでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/34
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035・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) おっしゃるように、この機関委任事務の法源というものは法律またはこれに基づく政令でありますから、したがいまして、今の省令のみを根拠とするような機関委任事務というものは、これはあり得ないわけであります。
私どもが今回整理をいたしたというものは、この法律または法律に基づく政令によるもの、それからもう一つは省令事項でいろいろと手当てをすることによってその事務の性格づけが整ってくるというふうなものを合わせまして、先ほど先生が言われましたように、その政省令七十二事項ということで申し上げている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/35
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036・志苫裕
○志苫裕君 先ほど言った、私はやっぱり中央省庁の多くは法律——法律も国会通るわけですから、法律をつくればその法律及びそれに基づく政令で機関委任事務ができる。そこだけ読んでおって、そういう法律をつくる場合には、憲法、自治法——基本法ですね、これの流れを読み取らないで安易に機関委任事務の法案をつくるという、こういう嫌いがあることをこの機会に警告をしておきたいと思うんです。先ほどの判例もそうだし、あるいはまた地方自治法第二条の、地方公共団体に関する十二項でしたかね、法の規定は、地方自治の本旨に基づいて、解釈、運用されなければならぬという規定、あるいはまた昭和二十二年の自治法をつくるときの当時の特別委員会の会議録にもありますように、委任についてはすべて法令でやることが建前であって、政令は施行命令的なことに限られるという縛りをかけているとか、こういう一連のことを見ると、そう無造作に法律をつくっていいというものじゃないということが構図として浮かび上がってくるわけで、これからの法令協議あるいは法令審査、あるいはまた各省庁が立法するときにはそこのところを、今日特に地方の自主権というふうなものがうたわれて、総理も言うように、国から地方へ仕事の流れを移しかえるんだというこの大方針にもかんがみて、一つの立法にもそういうことに事細かく気を使うべきだというふうに主張しますが、これは自治大臣も、それから長官も、また法制局の審査に当たる方も、この点ひとつ確認をしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/36
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037・森繁一
○政府委員(森繁一君) 個別法で簡単に機関委任事務をつくるものではない、こういう先生の御指摘は私どもしっかりと胸にとどめまして、今後法令協議等で真に必要なものに限定していく、こういう態度で進んでまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/37
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038・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 私どもの方でも、例えば国の行政の組織、定員等について審査をいたすわけであります。また、今の行革審の答申等を推進する義務があるわけであります。そういう観点から、志苫先生の御指摘はまことにごもっともな面があるわけでありますけれども、先ほど自治省からも御答弁がありましたように、ある程度確かに事務がふえていることも事実なんですね。それで、その事務を一体国がやるのか地方がやるのか、あるいは国、地方が協力してやるのか、こういうことのいわば仕組みづくりがそれぞれの段階でいろいろと考えられるわけであります。もちろん志苫先生がおっしゃいますように、地方自治体そのものがみずからの条例でもって既にちゃんとやっておるというものについて国が手を伸ばす必要は原則的にはないわけでありますが、ともすればこれは地方のサイドから、いわば平等に反するという議論が出てくるわけですね。
そこで、これはいろんな事務がありますけれども、いわば公平の観点から国で統一基準をつくれという話が出てまいるわけであります。そうすると、これが機関委任事務になるということが時々ある。そのたぐいの話もありまして、要するに、そういう事務を前提として国がやるとすれば出先機関をつくらなきゃいかぬわけですけれども、出先機関は私どもはこれは認めたくない。そこで、どういう仕組みが一番合理的であるかということをやはりそのときそのときの状況に応じまして、これは要するに国、地方が別にけんかしながらやっているわけじゃないんで、協力しながらやっているわけでありますから、そういう仕組みづくりについていろいろと考えて、御指摘を踏まえながら考えてまいりたいというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/38
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039・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 御指摘の点は、先ほどお答えいたしましたように、従前から心にとどめてやっているわけでございますが、今後ともそのようにやってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/39
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040・志苫裕
○志苫裕君 確かに、世の中の変化に応じて事務がふえていく、これはもう確かなんだ。事務がふえていくのはちっとも悪いことではないんで、そしてその事務の中の多くは一種のナショナルミニマムを保障するという意味での全国的な公平性というふうなもの、それと同時に、住民生活に密着して地域の実情に応じて展開さるべしという二つの要素を持っておることは確かなんだ。そこまではそんなにだれも意見が合わないわけじゃない。そこから先が違う。そこでどうするかといって考える場合に、やっぱり本来地方自治の領域と考えられ、また、地方公共団体も何らかの形でそれをやっておるものまで一括国が抱え込んで下請をさせるという、そこに問題があったわけで、これは、地方公共団体の方も、控え目ながらその点を強く指摘して、これが増加の原因だ、こう言うてることなんで、繰り返しになりましたが、今後のためにも申し上げておきたい。
今もちょっと局長から答弁ありましたが、それには、いきなり、事務は国と地方とが機能を分かち合う、あるいはあなたの言葉で言うと、国と地方が行政事務について責任を分かち合う立場にある俗に言う機能分担論、これは私否定しません。しかし、機能分担論を考える前に、機能分担をし合う地方には地方なりの自主権があるということを前提にしないで機能分担論を言えば、地方自治は抹殺されることになるわけだ。ここのところがやっぱりどうしても、こういう問題に携わってきた者と、昔からの、役所で上から下を眺めている者との違いとなってあらわれる。地方を信用しないというのもそこから出てくるんでしてね。この点は、そういう前提を知らなければおよそ正常な憲法感覚とは言えないということだけは申し上げておきたいと思うんですね。
そこで、これは衆議院でもいろいろと議論されてますが、事務区分の基準を何とかつくれないか。そうめんどうな頭を使わないで、はいこれは地方の事務、はいこれは国の事務、はいこれは機関委任、あるいはこれは団体委任というふうにつくれないかという基準策定の問題は、例えば行革審の最終答申でも、定期見直しのための何かそういう機構の確立とか、あるいは三十八年法の審議の際の基準設定の答弁とかありますが、いまだにあいまいだ。この基準策定について何かうまい工夫はないかということが一つ。それから先ほども出たチェック機関について、行革審の最終答申でも若干の提言はありますが、私は、これに地方公共団体の意見をどんな形で盛り入れるか、人を出席させるか、政府機関の仲間にするか、さまざまな方法があると思うのですが、チェック機構としてはこれをどう位置づけるかというところが問題だと思いますが、この点どうですか、基準明確化作業、それからチェック機関における地方公共団体の意向の反映の仕方、この二つについて何か御意見ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/40
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041・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 先ほどの先生の御注意につきましては、私どももよく頭にとめましてこれから事務の執行に当たってまいりたいと考えます。それをまず一応申し上げたいと思います。
それから、今機関委任事務の整理合理化のいわば機関委任事務の基準づくりという問題でありますけれども、これはもう先生御承知のように大変難しい課題です、率直に申しまして。それで、行革審でこの六十年七月二十二日に、これはもう先生よく御承知のように、いわば機関委任事務がこれは有効な制度だということを前提といたしまして、それにしても整理合理化を行うべきであるということで、整理合理化の基準ということで廃止または縮小すべきものと、それから団体事務化すべきものと、市町村委譲すべきものと、それぞれ三、四の観点を一応示しているわけでありますけれども、当面私どもとしてはこうしたような物の考え方によって事を進めていくほかはない。先ほど申しましたように、この事務それぞれがそれぞれの一つの国の行政施策といいますか、施策の体系のもとに事務が一応設定されてまいるわけでありますから、千差万別のところがあるわけであります。
念のために行革審の六十年七月の整理合理化の基準というのを申し上げておきますと、「廃止又は縮小すべきもの」として「社会、経済情勢の変化等により実質的意義が失われ、又は必要性の乏しくなっているもの」、それから「他の同種類似の行政事務により代替可能なもの」、それから「行政事務としてではなく、民間機関の事務事業として実施することで足りるもの」これは整理合理化をすべきである。それから「団体事務化すべきもの」として「地方公共団体の事務として、既に同化定着しており、その自主的な判断によって処理することが適当なもの」、二番目に「統一的に処理する事務等であっても、基準を示すこと等により、十分対応可能であり、国が指揮監督を行う必要がないもの」、三番目に「個別の法令に当該事務に係る国の関与等についての規定が定められていることにより、その適用以外に国が指揮監督を行う必要がないもの」、四番目に「同種類似の事務との均衡上、団体事務とすることが適当なもの」。それから「市町村委譲すべきもの」として三つ挙げてありますけれども、「市町村が、実質的な事務処理を行っているもの」、それから「他の関連する事務が市町村の事務となっており、市町村において一体的に処理する方が効率的であるもの」、三番目に「他の同種類似の事務が市町村で行われているもの」というふうな基準を掲げておるわけであります。私どもとしては今後ともこうしたことによって行革審でも言っておりますように不断の見直しを行っていくということが大切であるかと思います。
それから二番目に、先生御質問のいわばチェック機関が必要であると思うがどうかというお話でありますけれども、この点は、今申しましたように行革審答申で合理化基準が示されるとともに、ことしの六月の最終答申においても国の関与等とともに機関委任事務を各省庁において定期的に見直しするべきであるということの提言が述べられております。政府としましてはこれらの提言を最大限に尊重しつつ対処することといたしておりまして、これらを踏まえまして今後とも機関委任事務の整理合理化を進めるということで考えてまいりたいと存じます。第一義的にはこれはやはりその施策を担当する各省庁においてまず見直しを行っていただくことが先決である、これをまず第一義に一応考える。
それからなお、先生も先ほどお話しになりましたように、機関委任事務の抑制策については、各省庁間の法令協議において自治省による厳重なチェックが行われているところでありますので、改めて個別のチェック機関という話になりますと、何か非常にまた大げさな話にもなってまいりますので、私どもとしてはこうしたような態勢で今後とも今の行革審の答申を踏まえながらこの合理化に取り組んでまいりたいとこのように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/41
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042・志苫裕
○志苫裕君 なるほど行革審の最終答申の中に「定期的見直しの仕組みの確立」という項がありまして、今お答えになったようなことも書いてある。必要に応じては総務庁の行政監察機能も活用すると、これは玉置さんの出番だけれども。私はこの日本官僚機構というのはそんなに生易しい代物じゃない、化け物ですからね、これは。自分で見直せと言ってもなかなかやらないのですよ。そうするとやっぱり外の血を入れるという意味で、一番それを手がけておるし、自分も責任を負っておる地方公共団体の意見を聞きおく程度じゃなくて、聞いたらそれなりにしんしゃくをしなきゃならぬという一種の義務を感じたようなそういうものが必要だという意味で申し上げたので、物々しい役所をつくるという意味じゃないんですが、ちょっと長官、何かその辺方針だけでも述べてもらうとありがたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/42
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043・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) 私は衆議院でもお答えしたのですが、戦後これもう四十年からたっておるんですね。日本の政治の機構というのは戦前は内務省が非常に強かった。それで各省もそれぞれの権限が非常に強かった。それはなぜかといったら天皇の政府だったわけです、朕の政府だったわけです。それだけに、国会を見たっていまだにわかるのは、大臣があの上に並んで国民の代表が下に並んで、それで我々を、何も偉いことないのに、下から上を見ていただいているようなこういうことがやっぱりいまだに続いておるんですね。だから、戦後四十年たった今日、この朕の政府であるというこういう考え方について民主政治の原点に立ってこの辺をしっかり見直していかなかったら大変なことになる。
自治大臣とはさっき話しておったのですが、なかなか志苫先生のお話は、こっちの方は学歴がありますからうんとわかります。私なんかさっぱりわからぬ。さっぱりわからぬが、しかし基本の問題は、その辺からたたき直さにゃいかぬということだけはわかる。だからこの辺についてしっかり基本を踏まえて、今いろいろと勉強さしていただきましたがしっかりやってみたいなと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/43
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044・志苫裕
○志苫裕君 総務庁長官、一般演説ばっかりで、気持ちのほどはわかりましたが、私の方ではやっぱり地方公共団体の意見をそれなりに聞かなければならないという、そういう思いの入ったものでないと中央省庁の握ってしっかり離さないという構造が崩れませんよということを言っているので、これは自治大臣の方も総務庁長官の方も、また両役所もしっかり考えておいてもらいたい、複雑な機構をつくれと言っているんじゃないんでしてね。行革審自体が地方公共六団体から随分たくさんの提言を受けたけれども、それが実って法案となって出てくると、もう数えるほどしかなくなっていますからなかなか大変なんだろうが、基準の明確化、チェック機関、それから別表改正、これをワンセットでやる、法案と別表はという三つで少しずつでもチェックしていく方がいいだろう。法制局その他もそれぞれしっかり知恵を出してもらうということをこの機会に申し上げておいて次へまいります。地方公共団体の方はちょっとやめにしましょう。
ただ、行管庁も自治省も両方とも地方六団体が先ほど言ったようにいろんな意見を出したが、余り入れられていませんが、あのときに事務区分をしていますよね、あいうえおとか。あの地方公共六団体が出した事務区分というものは、先ほど局長が読み上げた行革審の六十年答申ですね、中間答申、これとあわせて今後の参考になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/44
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045・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) おっしゃる事務区分というのは、たしか六十年二月に地方六団体から行革審に対して提出されたものの中に書かれております事務区分であったと思います。行革審にあってもこれらについては相当いろいろと検討したというふうに承っております。
ただ、地方六団体の事務区分の内容は、従来の機関委任事務の概念を国の事務ではあるが地方公共団体が取り扱うことが適当な事務と、それから国と地方公共団体が協力して実施する事務と、その他あるわけですけれども、要するに、機関委任事務を二つに分けておるというあたりが大変新しい特色であろうと思いますけれども、この二つの事務を明文する基準というのはこれは示されてないんですね。それだけに、そのあたりのいわば概念そのものが実は今のところ明確ではない。また、実際上も現行機関委任事務が国の事務としての性格を有するとともに、地域の実情を踏まえた運営が必要という性格を有しているわけで、今言いました二つの分類に区分して何か特色が出てくるかどうかということはなかなか難しい点であろうと思います。ただ、私どもこれからもまたポスト行革審という話があるわけでありまして、今後ともいろいろと勉強してまいりたい、このように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/45
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046・志苫裕
○志苫裕君 結局ね、実績を積み上げていって、あれがやっておるのにこれがならぬのも理屈上おかしいじゃないかと。同じ法の構造を持っているし、同じ法の趣旨も持っておるしと、そういう意味で実績を積み上げていくというのが一番確実な区分方法かなあという感じも率直にします。抽象的なお経を書いたって、勝手に読んどったらこれは何にもならぬわけですから、ただ私には一つ参考になるかというのは、地方公共団体、六団体が両方合わして五百二十九でしたかね、五百二十九の別表の事務について、五百二十九といったら相当な数ですから、これを分けましたよね。分けるとおのずからその法律の概念がわかってくる。そういう意味でああいう仕分けの仕方というのは参考にしたらどうだろう。それから見ると、ああいう区分けをしてある中から本来のごく一部分のものが引き出されて今度の処理の対象になっておるということを私非常に残念に思うわけで、この点は今これ以上申し上げても私も余り基準も持ってないんで、今一番納得がいけるのは、公共六団体があの処理をした法案の中身の共通項を探す方がいいのじゃないかなということだけ申し上げておきます。
これに関連しますが、厚生大臣ちょうどいますので、私は積み上げしかないだろうという意味で代表的に一つ聞きますが、五十八年法、これを私は便宜第一次整理法と言い、今度のやつを第二次整理法としましょうか。第一次整理法で興行場法が団体事務化されました。実は旅館業法、公衆浴場法、理容師法、美容師法などというのはほぼこの興行場法と類似の法構造、法趣旨を持っている。だれが読んでもそう見れます。また、当時そういう議論もありました。ところが、これには指一本触れられておらない。興行場法が一足お先に五十八年法で団体事務化をされた。それから、あなたの方はまさかと思っていた実は福祉関係の、ある意味では全国的に統一性を確保する最たるものの方が団体事務化の方にやってきて、物の順序として旅館、公衆浴場、理容、美容というふうなものが実は取り残されておるというのはいかなる事情によるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/46
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047・北川定謙
○政府委員(北川定謙君) ただいま先生御指摘の興行場法の問題でございますが、昭和五十八年の行政事務の簡素合理化及び整理に関する法律におきましては、地方公共団体において処理することとしても支障が生ずることがないと認められる事務として、興行場営業の許可等の事務を都道府県の団体委任事務に移したところでございます。これは先生御指摘のとおりでございます。旅館業におきましては人体と寝具あるいは浴場等直接接触する部分が非常に多い。あるいは、美容業等におきましてはタオルだとかはさみだとか、こういう人の病気と健康とかかわる問題が非常にまだ強い。こういう点に着目しまして、現在の疾病の態様から見て、特に国としてもその衛生水準の確保についてまだ技術的に十分関与していく必要がある、こういうことでこれらについては機関委任事務として残すと、こういう経緯がございます。
厚生省におきましては五十六年に理容所及び美容所における衛生管理要領を、また五十九年には旅館業における衛生等の管理要領等を示しまして、全国的に統一した指導を図っていくということをやっておるところでございます。
また、特に美容師法におきましては、公衆衛生の確保のため、美容師の資格要件が定められておるわけでございますけれども、この資格制度につきましては全国共通性を確保する必要があるというところから、都道府県の団体委任事務とはまだしていない、こういうことでございます。これらの事務につきましては引き続き機関委任事務とすることが適当であると考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/47
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048・志苫裕
○志苫裕君 じゃあ、このことは後にやりますからここでは余り触れませんが、ごく常識的に考えて、五十八年法で、第一次整理法で興行場が地方に移った。その次は大体似たようなものだから旅館とふろ屋とこれだと、これはごく常識なんです。あなたは全国的公平性、共通性の確保、あるいは資格試験等があるからでこぼこが出てもらっちゃ困る。簡単に言えば、まだ地方に移すわけにはいかぬと、こういうことなんだ。
しかし、考えてごらんなさい。全国的公平性もいいけれども、旅館、ふろ、理容、美容というのは、別に厚生省がどうのこうの言わぬでも、もう何十年、下手すりゃ百年だ、地方の事務なんだ、これは。一々後見人として厚生省様がついておらなくてもやっていけるんだ、こんなものは。新しい行政需要に応じて事務ができてまだ不なれのところもある、なれてもいない、やり方もばらばらになるというものは全国的公平性の確保という観点が強く求められる。しかし、機関委任事務を地方の事務に移すという前提は、地方の事務として定着もして同化されたという大前提がある。そういう整理区分に従えば旅館だ、ふろだ、理容、美容というようなものはね、国の後見的な関与要りませんよ、もう。だけれども、滑った転んだの言って放さない。こういうところが問題だと言ってずうっと指摘しておったんですよ。あなたいろいろ言ったけれども、説明になんかなっちゃいませんよ、こんなものは。今出てないんだから、すぐ出せと言ったってこれだめですからね、これだけは申し上げておきましょう。
さて、いよいよ第一次整理法と今度出た法案にちょっと移ります。
団体事務化に関してだけ言いますと、第一次法では十一法律、第二次法で十七法律三十三事項、これがいろんなものの中で中心的な位置を占めてますね、この団体事務化がですね。また、一番それに関心があるわけで、新しく十一法律十一項目が機関委任事務になったなんていうのは余計なお世話で、これはあべこべだというような感じもしないではない。減らす法律だと思ったらふえる法律になっているというようなのも何だばかくさいと思っています。
そこでね、団体事務化の場合には単に都道府県知事を都道府県と書きかえるだけでは意味がないんですね。それによって実質的に機関委任事務の性格が払拭されたかどうかということです。また、どういう形で地方の事務になるのか、あるいはまたその事務が当該行政全般の中でどの程度の位置を占めているか、これの検証を抜きにして都道府県知事を都道府県と書きかえたって意味ないです、こんなものは。だから、そういう視点で少し検証をして見ますが、ですから私は、機関委任事務の、機関委任の性格を払拭できるかどうかは国の関与と地方公共団体の自主立法権との関係だというふうに思いますね。
第一次法の場合には団体事務化と条例制定権とが一体のものとして認められていると、このように私は理解をしています。すなわち、例えば墓地埋葬法あるいは興行場法、へい獣処理場法等々を例に引いてみても、この団体事務化というのは執行者を国の機関の長から団体の執行機関としての長へかえて、その権限が地域の実情に即して行使できるように、国の関与を排して地域的な基準に応じて運営を可能にしてあるという点では評価をできます。また、それが団体事務化の意味だと思うんですが、第二次整理法を見ますと、同じ団体事務化というふうに言っておりますものの、特に福祉関係法、例えば身障法、老人福祉法、児童福祉法、精神薄弱者の法律等々の事務の多くは政令で定める基準に従い実施するという法構造を持っていますね、そう思う。条例へ移されましたのは児童福祉法の保育所入所措置の基準というこのただ一点でありまして、それさえも政令の縛りがついていることは御存じのとおり。
こうして見ますと、同じ団体事務化とはいっても一次と二次の間では大分違っておりまして、機関委任事務の整理手法あるいは団体委任事務というものに新しい概念でも持ち込んだのかなと、こういう感じを私は強く持っている。私の言う問題点の指摘はわかったと思うんですね。一次法と二次法では違いがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/48
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049・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 今おっしゃる意味はわかりましたが、その機関委任事務を団体事務化するというのは、要するに地方の自主性、自律性を強化をするという観点で国のいわば関与を極力これを少なく抑えるということを目的意識といたしておるわけであります。その目的意識においてはこれは異なるところがないわけであります。ただ、一つのやり方といたしまして、確かにおっしゃるように、この法案の中で「政令で定める基準に従い条例で定めるところにより」というふうな書き方をいたしているところがある。この点が御不審であるということだろうと思いますけれども、ここのところも要するに、団体事務化に伴ってこの所要の政令で定める旨の規定を盛り込む趣旨の問題でありますけれども、行政の基本的な枠組みを示しまして全国の行政水準のレベルを確保するところにこの目的があるわけでありまして、一方で従来いろいろと詳細な規定のありました省令等は大幅に簡素化をすることになる。したがいまして、全体として見れば国の関与は、これは緩和されることになるということであります。
なお、これは先生当然御承知のとおり、この団体事務化によって、従来地方自治法百五十条の主務大臣の指揮監督権が及んでおったわけでありますけれども、これについてはこれは及ばなくなる。要するに、全体としまして確かに「政令の定めるところにより」ということで一つの国の枠組みを一応示しますけれども、大幅にいわばこの事務の執行にあってはこれは簡素化をされるものと、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/49
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050・志苫裕
○志苫裕君 全然答弁になってないよ、あなた。例えば団体事務化されれば国の指揮監督、主務大臣の指揮監督権は及ばない、緩和されるんじゃないんです、及ばないんです。そこのところの概念だってはやもう言葉の使い方で間違っていますよ。現に総務庁が配った資料——配ったんだかもらったんだかわからないが、今のあなたの答弁のように「団体事務化により、国の指揮監督権が緩和され」、厚生省が主管課長会議に配った資料の中にも「地方の自主性を尊重する観点から、国の関与を緩和する」、緩和するとは何事ですか。緩和するという法律的な位置づけはないんですよ。あるいはまた、それを裏づけるようにこの分厚いもの、これを読んでみますと、団体事務化のくだりで第十条から第十八条までは都道府県及び市町村ですがね、都道府県が「行うものとすること」、同じ団体事務化でその他の項目は全部都道府県あるいは市町村の「事務とすること」。いいですか、団体事務化というのは「事務とすること」ということなんだ。しかし、問題になる十条から十八条だけは、すなわち皆さんの法案は、大幅に緩和されるというそのねらっておる条項だけは「事務とすること」と書かないで「行うものとすること」明らかにこれは扱いが違っている。扱いが違っておるから法の概念でも立法技術上の手続をそろそろ変えるのかなという懸念を私は持ったわけで、これは少し法制局にもやがて聞きますので、ちょっと聞いてくださいよ。
普通地方公共団体が処理している事務を区分するときには、固有事務と団体委任事務及び機関委任事務に区分するのが通説ですね。この固有事務の中にさらに行政事務という区分がありますが、実質的な意味はないようで、これを入れた当時の法制定の議論やこれの解説書、そのほかの回顧談によると、あのときあれを抜いておけばよかったなという話が出ているぐらいですから余り実質的に意味はない。固有事務は地方の事務、団体委任及び機関委任は国の事務とされてきたんですね、今まで。団体委任事務は国の事務ではあるものの、一たび地方に移されたらそれは固有事務との区別はない、同様に扱われるというのも通説です。あらゆる解説書にこれ以外のことは入っていません。現に地方自治法が「普通地方公共団体の事務」と、こう定めておるものには双方があわせ含まれているわけで——そうでしょう、団体事務化というのは地方の事務に移すという意味で、当該事務の責任主体は地方公共団体、地方の事務は地方の実情に応じて運用されなければならない、当然のことなんだ。ところが、今指摘をした福祉関係の改正で団体事務化されるものの多くは、政令で定める基準に従い運用されるように求めておりますから、地方の実情に応じた運用を目指したものとは受けとめがたい、そうでしょう、国の関与を残しているわけだから。私は、この「政令で定める基準」というのはナショナルミニマムとしての福祉水準を国が維持していこうという積極的な意思表示というふうにとることももちろんできます、これは。あるいはまた一面、費用負担その他の問題もあって事務主体は地方に移さざるを得ない、しかし水準設定については国が統一的に権限を持つ。例えて言えば、権限は移すが所有権は渡さない、そういうふうな気持ちも働いておるようにも受け取られるんですが、むしろさまざまな状況で地方に渡さざるを得ないが、権限は渡すが所有権は渡さないぞということの方が正解かなというふうに思うのでして、それでは先ほど来言っているように、団体事務化の意義が失われるんですよ、せっかくやろうというのに。
私は今度の福祉関係法の中で、果たして団体事務化がいいのかなというそういう疑念を持つものもありますよ。これよりもこっちを団体事務化した方が、現にこの福祉関係の四法は、地方公共団体の意見の中にはこういう形での団体事務化は余り要求していなかった。これは国がある意味では指揮命令、監督権を持っておった事務の方が全国的統一性の確保にいいのではないかという意見のグループの中に入っている課題が、いきなりぽんとこの団体事務化になったことだけは間違いがない。これ自体も奇異に感ずるけれども、そうなったらなったで、今言った政令の縛りをかけた団体事務にした、これは全く機関委任事務の変種なんですよ。従来の法律概念にない。これが立法技術の問題として新しいものとしてまかり通っちゃ困るということで、私はこの問題については重大な関心を持っているんですよ。絶対譲れないですよ、こういうやり方は。
この点自治省、法制局さんの方はどうですか。従来はこういう立法方式ないでしょう。団体事務化をして、当然団体事務にすれば自主立法権があるわけなんです。それはさまざまの問題、厚生大臣が定めるところによりというようなこと、それはいいですよ、あんなものは別に。地方の具体的な運用にゆだねられた部分に国の関与が残っておるという法がありますか、そんなもの。今度は自治省もこの法令協議に乗ったんだろうが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/50
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051・森繁一
○政府委員(森繁一君) 団体委任事務と申しますか、団体事務とされます事務にありましても、それぞれの事務の性質に応じまして地方の自主運用に全くゆだねていいものと、それから、先ほど先生の御指摘になりました一定の行政水準を確保するなどの目的から、国において一定の基準を設定する必要があるものと、こういうものがあるだろうと思います。
先ほど来御指摘があります児童福祉等の事務につきましては、その例に属するものというふうな理解の仕方をいたしておりますけれども、その基本的な事項が政令で定められます場合にも、その範囲というのは最小限度のものでなければいけない、こういうふうな理解の仕方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/51
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052・志苫裕
○志苫裕君 法制局はどうですか。今までありますか、こういうのが。団体事務にしておいて、政令の縛りがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/52
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053・大森政輔
○政府委員(大森政輔君) 従前御指摘のような立法例があるかどうかという点につきましては、突然のお尋ねでございまして、こういう例があると今端的に御指摘申し上げる準備を持たないわけでございますが、一般的な考え方といたしましては、ただいま自治省から答弁がございましたのと同様の考え方でございます。
若干敷衍いたしますと、団体事務化、いわゆる団体委任事務になった場合でも、あくまでそれは国の事務という性格を全く消したわけではございませんので、その段階で必要な場合には政令基準をかけるということは、団体事務化と概念として全く矛盾するというものではない。したがいまして、政令要件を加えるかどうかという点は、そのなそうとする事柄の内容いかんによって決まるのではなかろうかと。そしてまた、その内容の事柄いかんによってその程度があってしかるべきだと、このように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/53
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054・志苫裕
○志苫裕君 厚生省、後でいいですよ。確かに私らがおととし、風俗営業法ですね、あれをつくったときに、条例事項が随分多いんですが、そのうちに一つ「政令の定めるところにより」というのがありましたね。これは本法に、例えばいろんな風俗営業は何時までしかやっちゃいかぬと。しかし、地方の実情に応じて延ばしてもいいときがある、お祭りの日とか、親戚が来たとか何か知りませんが、そういうときには営業時間を普通十一時まで酒飲んではだめなんだが一時までいいとかというふうに、こう法の定めがあって、それを延ばすようなときにその政令により条例で定める。風俗営業法は、条例委任事項が随分たくさんありますが、そのうち一項でこのときちょっと問題にしたことがあります。だけれども、本法を緩和するという意味でそういうものかなとそのときは疑問に思っていたのですが、どうもこんなにごそごそと出てきますと、何のこっちゃこれ、団体事務化の実質像というのは地方公共団体の自主立法権じゃないか、それを拘束して何が団体事務化だと、こんなばかな法構造があるかということを私は強く感じている。
大体我慢がならぬのは、厚生省も行管庁もそうだが、厚生省が書いたから行管庁も書いたんだ。国の関与を緩和するですね、団体事務にすると国の関与を緩和することができるとは何のことですか。団体委任事務には、主務大臣の指揮監督権は及ばない。その指揮監督権が緩和されるというのはどういうことなんだ。それを双方から書いてある。ここをですから答えてください。指揮監督権が緩和されるというのはどういうことなんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/54
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055・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) いろいろと制度的な面から御疑問、おしかりを得ているわけでありますけれども、これは厚生省関係いろいろと大変御協力を願ったわけでありまして、行革審の引用をいたしますけれども、六十年七月二十二日の答申の機関委任事務の整理の関係で、これは「老人福祉法、身体障害者福祉法、児童福祉法、精神薄弱者福祉法及び生活保護法に基づく福祉施設への入所措置等の事務については、国と地方の機能分担に係る臨時行政調査会の答申を踏まえ、住民に身近な行政はできる限り地域住民に身近な地方公共団体において処理する方向で、それぞれの業務の性格に応じ、費用負担の在り方の見直しと併せて、検討を行うものとする。」ということがありまして、それでこれにつきましての処理をめぐりまして、大変厚生省の御協力を得まして、いわば行政の水準は確保するように仕掛けをしようと、これが政令で定める基準であります。
先ほど先生が言われましたナショナルミニマムというお話がありましたけれども、これは行政水準の確保というのは、福祉水準につきましてこれは必要である。そこで、そういう仕組みにつきましては、これは政令で定める。それから、従来のいわば手続的な問題その他につきましては、これは各団体で自主的な条例制定権に基づきまして御措置を願うと。今、先ほど先生のお話の団体事務化というのは一体何だと。これは要するに、公共事務とそれから団体委任事務とそれから行政事務と、これを条例でもって一応定めるわけでありますけれども、その中のいわば団体委任事務化をすることによって一つの基準を定めて、政令でもってそのミニマムを定めて、それでその後の事務手続等につきましては、これはいわば事務を大幅に従来省令で定めたものを緩和をするということであって、これは一つの方策であろうと私どもは思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/55
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056・志苫裕
○志苫裕君 それは認められないね。主務大臣の指揮監督権が及ばなくなるんですよ、団体事務化になれば。そこで、国の関与を残すことのそういう法律の変種をつくった。その法律に合わせて書くには、指揮監督権が緩和されると書いた方が一番また適切な表現なんだ。適切な表現なのですが、地方自治法の第二条の2において、普通地方公共団体の事務とされたものの中に、自治法の百五十条やその他によるところの技術的な指導もしくは助言、いわゆる一般的な指導権は認められています。しかし、主務大臣の指揮監督権はない。こいつを新しい法律の変種によって与えられたんじゃたまったものじゃないんだ。これはもう断じて譲れませんよ、この点は。まず、指揮監督権が緩和をされるという文章は撤回しなさい、撤去しなさい、これは。と同時に、この法律の構造についてうやむやにしないで、こういう法律の構造にするのはどういう場合だと。先ほどの法制局の答弁であながち絶無とも言えない。物によりけりだと思いますが、しかし、これが一つの例になって無制限にこういう法律の立法技術が——これからどんどん機関委任事務が団体事務になっていくわけであって、せっかく団体事務になるかな、地方の自主性が尊重されるかなと思ったら、国の関与がちゃんとついておるというものが続々と出ていかれたんじゃこれはかなわない。この点について、これは特に自治省がこういう問題に無関心でいちゃだめですよ。主務官庁はやれ、やれと言われるから身ぐるみはぐように仕事を移す、しかしどうも地方も信用ならぬし、おれの権限も減るから何かちょっとつながりつけておこうというふうに考えるのは役所の癖としてわからぬわけじゃないが、そんなに嫌なら団体事務にしなきゃいいじゃないの。そんなに地方の自主性やそういうものよりも、住民の密着性よりも、全国的公平性、統一性の方が最優先されるというものであれば国の事務にすればいい。そんなものまで地方の団体事務にしろなんてだれも言っていないんです。渡しておいてひもをつけるとは何事です、これは。
それでも幾らか気を使っていることはわかりますわな。「政令の定めるところにより」と書かないで「政令で定める基準に従い」と、「基準」というのだからガイドラインで、ガイドラインだから幅がある。ましてやこういう事務は地方も手なれ
た事務だ。したがって、そういうガイドラインをもとにして地域の自主性を生かした運用にするだろうということが期待されている。それならそれでガイドラインと言えばいい。衆議院における厚生省の課長さんの答弁は、政令で基本的な要件を定めてその範囲内で条例で定めてもらう、と言っているでしょう。「基準」と書いておいて範囲内とは何です。知らぬで議論をしておれば自然にそういう言葉が出てくる。本来、これ書くとやばいな、やばい法律だなと思うから基準にした。答弁では、その範囲内で、とやっている。事々がそうなっておるのでこれは撤回しなさい、これ改正しなさい。さもなかったらこういう立法は異例であって、どういう事項に限るという統一解釈を出しなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/56
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057・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 今私どもの方の衆議院における課長の答弁のお話も出ましたので、私からちょっとお答えさせていただきます。
この「政令で定める基準に従い」という条項を設けました趣旨は、この社会福祉につきましては、国が社会保障という一つの責務を実現するために実施するわけでございますので、その基本は国が法律をもって一定の水準、内容を確保できるように定めておるわけでございます。したがいまして、地方公共団体に事務を委任する場合であっても、その基本的な枠組み、内容、水準等については国が責任を持って定めると、こういうことになっているわけでございます。
そこで、なぜ政令が出てくるかという問題でございますが、例えば一つの例といたしまして、児童福祉法の保育所への入所措置について申し上げますと、法律上は「保護者の労働または疾病等の事由」によってその児童が保育に欠ける場合に市町村が措置をすべきであると。保育所に入所させて保育をする措置をとるべきである。その際に「保育に欠ける」ということは基本的な条件でありますけれども、それがどういう内容、具体的にどういう場合に保育に欠けるかということについては、なかなか明確にわかりにくいという問題がございます。それを解釈するに当たって、その立場立場で幅が出るということがあり得るわけです。それは、基本的には国が一定の水準を確保し、全国的にできるだけ統一した内容によって福祉の施策を進めるということに対して別の問題が生じてまいります。
そこで、この政令というのは、法律の趣旨を明確にするために政令でよりわかりやすくしようというものでございまして、法律の趣旨をさらに狭くするとか、さらに地方に対して法律の考えていない拘束をするとか、そういう趣旨では全くございません。したがいまして、形の上では法律の下にまた政令が出ておるようでありますけれども、法律と政令が一体になって法律の基本的枠組みを明確にする、こういうものと私どもは考えて立法をいたしたわけでございます。
この政令で定める基準につきましては、具体的にどうするかというのは今検討をしておるわけでございますが、保育に欠けるということについて典型的な事例を挙げ、さらに、それらに準ずるような内容のものも地方においてそれぞれの実情に応じて実施できるような、こういう形にいたしたいと思っておりますので、先生の御心配のようなことは私どもは全く考えておるわけではございません。そういう点について御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/57
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058・志苫裕
○志苫裕君 私は、おたくの言っていることはわからぬわけじゃないんですよ。児童福祉法の今度の第二十四条でいえば、まだ法律全体としては保育に欠ける子供がおったらそれを入所させる義務が市町村にあるわけですね。それで、保育に欠ける子供というのは一体どういう子供だと。勝手に、おまえは欠けるから入れてやろう、おまえは欠けそうもないからだめだと人の顔を見て言うわけにいかぬですから、したがって、保育に欠けるという法の概念を明らかにしておかなきゃならぬ。その明らかにしておくことを政令で書こうと、一つ何々、一つ何々と一応物差しを書こうという意味、これはわからぬわけじゃないんです。しかしそこから先が問題だ。
この前提には、そういう事務は何十年も地方公共団体がやってきたという実績を踏まえているわけだ。まあお金やその他で厚生省も大事だけれども、厚生省という役所があるなしにかかわらず、地方公共団体もまた地方に対して責任を負う政府として、そういう義務を憲法上負っている。それでやってきた。親元である皆さんから見れば、心配で心配でしようがない。何するかわからぬ町村長もおるという点もあるかもしらぬが、しかし押しなべて言えば、そういうことは地方公共団体の事務に同化をしてる、地方の政府でもちゃんとやっていけるということを前提にして団体事務化が進むわけですね。そうなったらそうなったで、団体の自主立法権というものは拘束しちゃいかぬ。保育に欠けるという概念はどういうものでしょうというのであれば、お手の物じゃないの。こういうことに解するということで解釈を出すとか、あるいは技術的な助言をするとかいう一般的な方法をもって足りるわけです。地方自治法の二百四十五条でしたか、それでも足りるわけですね。
にもかかわらず、私はあなたと同じ意味、それでなきゃいかぬと思っていますよ。いかぬと思っていますが、これを政令の縛りにするというのが地方自治の本旨をわきまえていないということを言っている。そのことのためにこういう立法をして、それが前例となって機関委任事務の変種ができていくことを、私は地方自治確立をライフワークとしている人間としては懸念するということを言っている。
自治省、この点どうなんですか。あんた、無関心でいちゃだめですよ、こういう問題に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/58
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059・森繁一
○政府委員(森繁一君) 先ほど申し上げましたように、ある場合につきましては国の方で最低の行政水準とでも申しますか、それを明らかにする必要がある場合があろうかと思います。その際に「政令で定める基準」ということに今回の場合は相なっておるわけでありますけれども、その内容につきましては、先ほど申し上げましたとおり、合理的で最小限度のものにされるべきであると、こういう考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/59
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060・志苫裕
○志苫裕君 厚生大臣、せっかくおいでになってさっぱり発言の機会もなくて恐縮だけれども、厚生省、主務官庁として清水の舞台から飛びおりたつもりで、ここであなたが言えぬことを私が言えば、銭も減らすことでもあるし、権限ぐらいは渡さなければなるまいというので清水の舞台から飛び降りたつもりで渡したが、どうも全国的公平性が保てるかなという老婆心は残るというあたりの折衷案だろうという感じがするんですが、そんな往生際の悪いことを言ってないで渡すものは渡すと、通知するものは通知する、解釈するものは解釈するでもやれぬこともないんだね。先ほど隣の局長からお答えになった点、私は本当にちっとも異論はないですね。だけど、その方法は別にある。国と地方公共団体の関係においてそういう懸念を払拭する方法は、他の方法がちゃんと法律にあるという意味でちょっとあなたと意見が違うだけで、意図していることはそんなに違っているんじゃない。大臣、どう思うね、これ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/60
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061・斎藤十朗
○国務大臣(斎藤十朗君) 先生も意図しているところは同じだという御発言もございましたが、社会福祉サービス等につきましてそれぞれ一般化し、また多様化いたしてまいり、これが長い間地域に定着をいたしてきておる、こういう状況の中で、それぞれの地域に密着したその実情に応じた福祉サービスを行い、また、それぞれの地域の創意工夫を生かした福祉サービスを進めていくということが非常に大事であるというふうに考えております。そういう意味におきまして、今回の団体委任事務にして一層福祉のサービスが地域に密着をしていただけるようにしよう、こういうことでございます。
しかし他方、そういうことによってそれぞれの地域においての水準がまちまちになる心配もありはしないか、そういうことによって全体の福祉サービス水準というものが低下をするのではないかという心配をされる向きも一方においてあるわ
けでございます。そういったその両面をどう調和をしていくかということが今御議論のある問題点だろうというふうに思うわけでございます。そういう中で、児童家庭局長から御説明を申し上げましたように、例えば措置に対する入所基準等についても、法律に定められておりますことを一層具体的に政令でその枠組みを決めさしていただき、その枠組みの中で一定の水準を守りつつ自由な創意工夫をしていただく、こういうことだと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/61
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062・志苫裕
○志苫裕君 これはこの条項を認められないと言ってもここじゃこれどうにもならぬから、その点は私としてはこういうのが新しい前例になることはとても認められないという立場で、ただ、全くないかといえばあるんですね。それはある場合に限って認められていないというものでもないだろう、自治省の答弁をかりれば最小限にとどめるべきだ、法制局の答弁をかりれば絶無とも言えないのかもしれないというような、等々あれしてこのケースがこれに該当するかはどうかは別として、ただ、このケースを仮に認めるとすれば、これから国会もそうだし、行管もそうだし、それから自治省もそうだし、法制局もそうだが、こういうものは無制限に認められていいわけはないので、やっぱりどういう場合の立法例というふうに、それこそ枠をかけておかないといかぬ性格の問題になってくる。他の方法をもって代替する場合には、そんなふうにしちゃいかぬというふうなこともまた確認をされておかなければならぬ問題だというふうに思います。
これは言うなれば修正案でも出さぬといかぬのが修正案出したってあの頭数見ると通らぬし、これはできれば、別に与野党の問題じゃないんで、国と地方との関係でこういう立法例というのが初め出てきますと、どこかに統一的な解釈を確立しておかぬといけないなあという感じがしますので、まあひとつ必要があれば附帯決議等で委員長のもとで相談をして何かうたい込むとか、そんなことで委員長も配慮をいただきたいということをお願いを申し上げておきます。
そこで、こればかりやってもしようがないので、時間もなくなったから次へ参りますが、やっぱり基本的にこういう問題考えてみるというと、何というんでしょうかね、団体事務化をすることで地方が勝手なことをして水準が下がるんじゃないかなという地方公共団体に対する一種の不信感、中央省庁の持っている後見的地位というふうなもの、この感覚がどうも抜けない。実はそうじゃないんですよ。福祉水準に関して言えば、厚生省のいわゆる基準だか定めを多くの地方公共団体が上回って実施措置したことがばらまき福祉だと言われて、逆に制限をかけたのは国の方なんであって、地方公共団体が水準を下げたことはない。国よりももっと身近な国民、もっと身近な住民のところにおって根強い地域のニーズを受けとめて行政しておる地方公共団体、そのことの認識を持ってもらわぬと困りますよ。そういう地方不信感というふうなものが絶えずこういう問題につきまとって、はしなくもこういうのに出てくるんでね。
厚生省、この問題、私は基本的にはこういう条項には承服できないけれども、しかしこれが通るとなれば「政令で定める基準」と、政令で定めるところによりじゃないんで、「政令で定める基準」ですわ、あくまでも。これは先ほど言いましたように、概念を明確にすることによって、なおかつ地域の実情に応じて運営されることを期待するというものであろうと私は考えるんですが、厚生省のどなたか、課長の答弁、この範囲内で条例で定めるというのは、基準という文字の解釈の体をなしていません、これは。その点を改めて答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/62
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063・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 「政令で定める基準」ということとその範囲内ということとの関連でございます。課長の答弁につきましては、範囲内という言葉そのものが適切でないのではないかというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、結局社会福祉の関係は、団体委任事務と申しましても国が社会福祉の基本を法律で定め、その基本にのっとってその枠組みをもとに実施していただくわけでありまして、全くそれとは別個に地方公共団体独自の政策、これはまた別にあり得ると思いますけれども、国が国の責任を持って行う社会福祉の業務は、国の基本にのっとって行っていただくということになるわけであります。それにつきましては、先ほど申しましたように、政令でもって法律の趣旨を明確にし、そしてそれにさらに必要があれば、条例でさらに具体的な地方の自主性を反映した実施を行っていただくわけであります。したがいまして、この範囲という言葉は、実質的な意味としては国の定めた基本の枠組みに乗って行っていただく、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/63
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064・志苫裕
○志苫裕君 わかりました。絶えずこういうものには地域の実情に応じた運営というものと全国的公平性、統一性の確保という両面を持つからこういうことになるわけで、統一性の確保だけなら何も地方に要らぬのでありまして、そこのところは、今局長が最後に答弁ありましたように、その概念にのっとって地域の実情に応じて運営をするというふうにこの際は受けとめておきます。
そこで、時間がなくなったので、個別の問題を幾つか用意しましたが、この個別事項を若干聞くに当たって、各それぞれ改正条項の「政令で定める基準」、政令の定め、いわば下位法令への委任事項というのは私は原則的には本法の審議と同じものであって、下位法令がどんなものになるかわからぬで本法の審議ができないという法案審議のスタンスを私は持つものなんですが、ですから下位法令にどのようなことを定めるのかというそのあらましの提出を求めました。厚生省から、あるいは行管庁ですか、きょういただきまして、本来ならばこれを読み上げて記録に載せることが、将来どういう審議が行われたのかなというときの立法趣旨になるわけで大事なんですが、それを読み上げる時間がないんですね。あるいは読み上げてもらう時間がないのですが、私の手元にいただいておるという記録だけをとどめておきたいと思います。まだ全部読んでないんで、大体衆議院でお答えになったもの、あるいはまた、従来の国の事務として行っていた場合に、さまざまな規則であるとか通達であるとか告示であるとか省令であるとか、そういうもので扱っていたものと基本的枠組みは違わないというふうに理解していいですか。それだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/64
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065・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 社会福祉につきましては、その水準、内容等についてこれを団体委任事務化したからといって低下させるようなことはあるべきじゃないと考えて、そういう見地に立って今回の政令等に基づく内容についても検討しておる段階でございます。したがいまして、現在の実際の仕組みというものを、少なくともそれを低下するようなことをもたらすような、こういうことはないと申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/65
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066・志苫裕
○志苫裕君 私のところへいただきました下位法令への委任事項の内容はそういうものであるというふうに了承をしておきます。
ちょっと児童福祉法五十六条の二項で、今度は地方公共団体の長が保育料を徴収することになるわけですが、自治省、これによって徴収される保育料、いわば費用の徴収ですね、これは自治法上どういう経費ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/66
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067・森繁一
○政府委員(森繁一君) 私ども理解しておりますところでは、児童福祉法等による徴収金は、自治法に言います分担金、使用料、手数料のたぐいのものではない、いわば地方自治法上定めておる今申し上げたような種類の歳入ではないと、こういうふうな理解の仕方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/67
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068・志苫裕
○志苫裕君 すると、長が勝手に取れるということですか。そしてこれは取った金をどこぞに貯金でもしておくんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/68
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069・森繁一
○政府委員(森繁一君) 先ほど申しましたように、児童福祉法等による費用徴収は、自治法上必ず条例で定めなければならないとされております分担金、使用料、手数料のたぐいには該当いたしません。したがいまして、地方自治法上は条例または規則のいずれかの形で決めることができると、こういうふうな理解の仕方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/69
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070・志苫裕
○志苫裕君 私は、団体委任事務になりますれば議会の関与が出てまいります、もちろん費用の問題をめぐっても議会の関与があるということ等を考えると、これはやっぱり条例で規定することの方が一番適当なものだというふうに考えて、これは意見だけを、もちろん条例で決めることを妨げるものじゃないわけでして、規則でもいいという解釈に立っているようですが、議会の関与のことを考えれば、条例に明定することの方が一番なじむということだけは申し上げておきます。
それから、これは法改正じゃありませんが、四十五条の福祉施設の最低基準を検討中だというふうにも伺っておるわけですが、簡単でいいです、従来のそれこそ基本的な枠組み等を変えることは意図していないというふうに考えていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/70
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071・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 施設の最低基準の見直しでございますが、これは今回の機関委任事務を団体委任事務に改めるということと直接の関連というわけではなくて、いわば行政改革の一環として、この機会に最低基準についても簡素合理化すべき点があるかどうかを見直すという見地で行うものでございます。
その際に、いろいろ最低基準の定めておる内容について検討をいたしますと、非常に細か過ぎて余りにも施設というものに対して拘束力が強過ぎる、あるいは現在の時世に合わないような条項がある、あるいは既に他の法令等によって厳密に規定されているようなものもある、もう少しさらに施設の創意工夫を生かせるような形に改めるべきものもあると、いろいろ見直すべき点があるようでございます。そういう点に着目をいたしまして、簡素化できるものは簡素化をしようということで考えておりますが、いずれにしても、そのことによって福祉の水準を低下させるということはないようにこの見直しを行おうという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/71
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072・志苫裕
○志苫裕君 何か衆議院の記録を読んでいると、児童福祉法の第二十四条の解釈について、市町村が条例を定めない場合に保育に欠ける子供の措置が欠けるのじゃないかというようなことで言われているのがありますよね。私は、何のやりとりをしているかちょっと意味が解せないのですが、察するに、条例をつくらなかったら保育に欠ける子供の入所の措置がとれないかという意味の質問なのかなというふうに解しますが、あの二十四条、私の言うとおりでいいと言えば確認してもらえばいいんですが、二十四条は基本的にはもう、保育に欠ける子供があったら市町村は保育の入所の措置をとらなければならない、義務だというのが二十四条の解釈ですね。その場合には、その政令で言うところの概念にのっとって条例で必要なことをみんな書いて入所の措置をとるんだ、という手続が書いてあるというふうに読めばいいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/72
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073・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 今おっしゃったとおりでございます。衆議院の方の議論というのは、恐らくこういう意味の御質問だったのではないかと理解しております。つまり、条例をつくらない場合には保育に欠ける児童を保育する義務が生じなくなるというようなことになるんじゃないか、条例をつくって初めて保育をする義務が出てくるというようなことになるのではないかという御疑問があったようでございまして、そういうことではございません。あくまでも保育に欠ける児童を保育する義務はもう法律で市町村にあるわけでございまして、それを実施する上において条例を定めて行えと、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/73
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074・志苫裕
○志苫裕君 最後になりましたが、身障者福祉法、これ直接の関係でないんで恐縮ですが、二十条の補装具の交付等ですけれども、四十八年の六月十六日、厚生省告示百七十一号、これに関して言いますが、同じ補装具といいましても、雪の降るところと降らぬところとか、建物がどうとか、地域のあれによってニーズの変わってくるのが当然のことでありますね。あるいは耐用の年数とか、こういうものは当然のことながら地域のニーズに対応したものとして取り扱っても一向差し支えない。今度は実施機関が実施者になりまして、団体委任事務になったことになれば、なおさらそのような地域の実情に応じた運営というものが図られるというふうに理解していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/74
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075・小林功典
○政府委員(小林功典君) 補装具の交付でございますが、従来から先生も御案内のように、障害の重度化とか、対象者の範囲の拡大に伴う品目の追加、あるいは機器の改良に伴う改定などを行ってまいりまして、多様なニーズにきめ細く対応してきたところでございます。現に五十九年にも一品目追加となっておりますけれども、そこで団体委任事務化された後の話でございますが、この補装具の交付につきましては、やはり厚生省告示ということに基づきまして給付が行われることになりますけれども、対象者のニーズに十分こたえていくようにしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/75
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076・岩本政光
○委員長(岩本政光君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。
午後零時一分休憩
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午後一時二十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/76
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077・岩本政光
○委員長(岩本政光君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
本日、斎藤文夫君が委員を辞任され、その補欠として青木幹雄君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/77
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078・岩本政光
○委員長(岩本政光君) 休憩前に引き続き、地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/78
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079・飯田忠雄
○飯田忠雄君 まず最初に、小さい政府という考え方につきましてお伺いをいたします。
このたびの法案を見ますと、団体事務化のものが三十三、それから市町村委譲のものが五件、知事委譲が十一件、それから整理合理化二件、廃止が十件と、こうなっております。これは結局は国の仕事を地方に移すことによって、小さい政府を実現しようというお考えなのかどうかという点が一点。それから次に、団体事務化と自治体の長への委譲というこの両者の間の区別、どうしてこういう区別が生じたのかという点。この二つの点につきまして、これは所管官庁どこでしたか。所管官庁の方でお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/79
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080・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 今回のこの法律案は、提案理由その他でも一応申し上げておりますように、要するに地方の自主性、自律性を強化するという観点から、機関委任事務の整理合理化を行おう、それからまた地方への権限委譲を行おうとするものであります。
御指摘のように、行政改革を進める上で小さな政府を目指すという御意見もあるわけでありますけれども、今回の法律案は、今申しましたように、いわば小さな政府の実現というよりは、地方の自主性、自律性の強化と、それから地方公共団体が地域の要請に責任を持ってこたえ得る基盤を強化するという観点から、こうした機関委任事務の整理を進めたわけであります。
ついでに申しますと、臨調答申では行政改革を進める観点として四つ挙げておりますけれども、「変化への対応」「総合性の確保」それから「簡素化・効率化」「信頼性の確保」と挙げておりますけれども、この「総合性の確保」の中で、やはり地方行政の総合性の確保ということがやはり相当強調されておるわけでありまして、いわば今回はそういう地方自治の自律性の強化という観点からこれを挙げたわけであります。
それから二点目は、ちょっと今聞き取れなかったわけでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/80
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081・飯田忠雄
○飯田忠雄君 二点目は、自治体の長への委譲ですね、それから団体事務化と、この二つの違いはどこにあって、その区別はどうして生じたかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/81
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082・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 今の地方公共団体の長への委譲というのは、これは端的に言って十一法律につきまして、許認可権限を大臣権限から都道府県知事に委譲しておるということでありまして、これは確かに機関委任事務でありますけれども、要するに大臣が中央で判を押すのではなくて、地方で都道府県知事がその権限において許認可を行うということで、やはりこれも地方の自主性の強化という一環として、そうした権限の都道府県知事委任を図ったわけであります。
それから、団体事務化と申しますのは、いわば法令の根拠を持つわけでありますけれども、従来、機関委任事務として国の命を受けまして、都道府県知事ないし市町村長が事務処理を行っておったもの、これをいわば団体の事務にするということでありまして、地方公共団体で、従来は省令等でもってその基準が定められておりましたわけでありますけれども、いわば団体が条例を定めて自主的にその事務を執行する、こういう形にすることを団体事務化と称しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/82
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083・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、こういうことでしょうか、従来国がたくさん所管しておった事務を、これを地方公共団体に移すことによって国の事務を減らして、地方公共団体の方はふやして自治化を強化する、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/83
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084・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 要するに行政というのは、国と地方とがこれが一体となって一定の国民に対する行政が行われているわけであります。したがいまして、今回の法律の趣旨は、例えば機関委任事務を整理するというのは、これは団体事務化するということは国の事務は少なくなる、地方は確かに多くなるわけですけれども、地方公共団体で従来その種の事務はいろいろと行われているわけでありますから、いわばそこでその事務を執行するに当たって総合性が強化される、こういうふうな効果が期待されるわけであります。
ですから、定量的にただ国の事務が減って、それから地方の事務がふえたのだという話じゃなくて、いわば地方の総合性が確保される、その中において事務が執行される、こういうことになってくるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/84
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085・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そうしますと、政府を小さくするということではなくて、地方自治の本旨に従ってやるべきものは政府が持たないで地方自治にやらせる、こういう御趣旨でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/85
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086・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/86
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087・飯田忠雄
○飯田忠雄君 地方自治の本旨に基づいて地方自治法はつくられておるということになっておりますね。なっておるんですが、詳細を見てみますと、まことに不思議な条文があるわけです。例えば百四十六条をごらんになりますと、国の機関としての長に対する職務執行命令というのがございますね。つまり、都道府県知事というものは県民が直接選挙によって選んだ自治体の長なのであって、旧大日本帝国憲法下における県知事の地位とは根本的に違うわけでございますね。旧制度でありますれば、当然、地方公共団体の長は、これは国の機関であることは間違いなかったわけなんですが、今日の制度では国の機関ではあり得ないということになります。これは憲法に書いてある規定から見てもそう解せざるを得ないわけですね。
そこで、地方自治法でなぜこういう国の機関としての長に対する職務執行命令なんという規定が置かれたのか。これは非常に疑問が多いわけですが、これは帝国憲法時代の制度をここに引きずってきておるということなんでしょうか、どういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/87
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088・森繁一
○政府委員(森繁一君) 自治省の方からお答えをさせていただきたいと思います。
今お話のありました機関委任事務制度自体は、我が国の近代的地方自治制度が確立されたとされております古く明治二十一年にさかのぼりますけれども、その市制、町村制におきまして既に採用されておった概念でございます。ただ、先ほど先生も御指摘になりましたように、戦前は知事は国の官吏でございます。いわば国の機関でございましたために、知事に国政事務を行わせるにつきまして機関委任の概念構成をもってする必要がなかったそういう時代でございました。戦後、知事が公選制になりまして、その身分も国の官吏でない、こういうことにされたことに伴いまして、機関委任事務制度は都道府県を含めました地方団体一般にかかる制度として整理されたのでございます。
詳しく申し上げますと、昭和二十二年に制定されました地方自治法におきましては、機関委任事務の根拠規定が設けられまして、あるいはまた国の監督に関する規定が定められ、あるいは議会や監査委員の関与が制限された、こういういきさつがございます。その後、幾たびかの自治法の改正がありまして、現在に至っておるわけでございますけれども、現在の地方自治法の条文で申し上げますと、地方自治法の百四十八条によりまして「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務及び法律又はこれに基く政令によりその権限に属する国、他の地方公共団体その他公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。」と、こういう規定がございます。これが根拠の規定になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/88
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089・飯田忠雄
○飯田忠雄君 現行法としましては、そういう法律があって、それで処理しておられるということはよくわかりますが、しかし、現行法そのものが憲法の精神に反するのではないかと思われるんですね。これは御承知のように、憲法の九十二条から九十五条までに地方自治に関する規定がございますが、これは九十二条ではっきりと「地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と、こう書いてあるわけですね。県知事を国の機関とするということが地方自治の本旨に合うかどうかということは検討しなきゃならぬ問題でしょう。この問題についてどのように御検討なさってこの自治法をおつくりになったのか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/89
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090・森繁一
○政府委員(森繁一君) 今先生御指摘になりました憲法九十二条の地方自治の本旨につきましては、いろんな解釈なり、説があるわけでありますけれども、少なくとも団体自治と住民自治とを包含するものでなければいけない、こういうことは共通の認識になっております。さらにかみ砕いて申し上げますと、地方公共団体が住民の要望にこたえ、住民のための行政を行う、いわば自主的、自律的に行政を行うということが地方自治の本旨だと、こういうふうに理解できるわけでございます。
そこで他方、機関委任事務の制度は、この制度とは今申し上げましたことと矛盾するのではないか、こういうお話があろうかと思いますが、機関委任事務制度につきましては、先ほど総務庁の方からもお答えがありましたように、いわば国の事務とされておりますものにつきまして、その管理、執行を地方公共団体の機関にゆだねる、これは経済的な原則から申し上げまして、国の機関を全国各地にたくさんつくるということにも問題があるでしょうし、また他方、幾ら国の事務でありましても、地方公共団体が身近な地方公共団体として住民に不断の接触を重ねつつ事務を処理するというところに意義がある、こういう二つの面から今申し上げたような制度がとられておるものと理解しておるわけでございます。したがいまして、直ちに憲法九十二条に言う地方自治の本旨に反するということにはならないと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/90
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091・飯田忠雄
○飯田忠雄君 地方自治の制度に反しないとおっしゃるけれども、都道府県知事というのは自治体の長であって、地方自治を行うためのものですね。ですから、ここで地方自治法で決められる問題は、地方自治にふさわしい内容が盛られなきゃならぬわけでしょう。これは地方自治法の初めにも書いてありますね。県知事を国の機関とするということが地方自治にふさわしいということになるかどうか、これは大変私は疑問だと思いますがね、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/91
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092・森繁一
○政府委員(森繁一君) 知事なり市町村長を国の機関とすることについて妥当性を欠くではないかというお話でございます。確かに一部の先生方にはそのような御意見をお持ちの方もいらっしゃるということを承知いたしておりますけれども、私どもは先ほど申し上げましたような理論構成を持ちまして、知事なり市町村長なりが国の機関として国の事務を処理する、こういうことが直ちに憲法に違反するとは考えておりませんし、今後の方向としましては、機関委任事務自体につきまして抜本的な整理合理化といいますか、見直しを行いまして、できるだけ地方団体の事務にするということが一層地方自治の本旨にかなうような方向ではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/92
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093・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そのようにおっしゃることは大変結構だと思いますが、ただ、現行法が地方自治にふさわしくない規定をたくさん置いておるわけです。こういう地方自治にふさわしくない規定がまだほかにもありますよ。指摘すればたくさん出てきますが、そういうものを残しておいて、今度の案を見ますと、まことに枝葉末節と思われるようなものばかり競っておられるわけですね、根本問題は抜きにして。そういうことで、制度の改革、殊に今ねらっておられる小さい政府の樹立ということができるかどうかという問題ですがね、これが一つと。
それから、県知事を国の機関とすることによって地方自治の本旨が損なわれると普通は考えるんですが、それは今の現行法を維持しようとする人はいろいろ御議論があろうけれども、大局から見るならばやはりこれは地方自治の本旨に合わない、こう思われます。そういう問題があるのですから、これを根本的に御研究なさって、そういう規定は早く整理をされたらどうか、そして真実の地方自治の樹立ができるような体制をおつくり願いたいとこう思うんですが、この点について自治大臣はどうお考えですかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/93
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094・森繁一
○政府委員(森繁一君) 現行の地方自治法の規定の中にも憲法の趣旨に沿わないようなそういう規定があるではないかという御指摘でございますが、確かにそういう部類の規定がないこともございません。これは事実でございます。ただ、私ども先ほど来申し上げておりますように、機関委任事務というのはできるだけ整理合理化いたしまして、これを地方団体の事務として、地方団体が自主的、自律的にその事務を処理するということによりましてますます地方自治が充実する、こういうふうに考えておりますが、さらに抜本的に申し上げますならば、これは地方制度調査会がことしの二月に答申いたしておりますが、「国の責任において処理すべき事務は国の事務、地方公共団体の責任において処理すべき事務は地方公共団体の事務」と、こういうふうにはっきり区別をいたしまして、その間国の適切な関与の方策を考えるべきであって、機関委任事務制度の方式というのはなるべく早くこれは廃止した方がいいと、こういう答申が出てございます。
ただ、その答申の中にも、それは究極の話でありまして、当面のところは機関委任事務の整理合理化に一層努力すべきであると、こういう答申をいただいております。私どもその答申の線に沿いまして今後とも物事を処理してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/94
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095・飯田忠雄
○飯田忠雄君 機関委任ということがこれは国家機構の中で行われるなら了承できます、大臣の権限を地方局に渡すというならね。しかし都道府県知事に移すということになりますと、これは自治体ですからね、全然選挙も違うし、成立の根拠になっている法律も違います。憲法上の保障のある問題でしょう。こういう場合に、非常に安易に機関委任ということをお考えになってやってこられた従来の態度は疑問が多いではないか、こう思いますよ。殊に、当然これは国がやるべきものを都道府県のものにしてしまっておるという点もございます。
例えば地方自治法の第二条の第三項の六号に「留置場」という言葉がある。これは留置場がなぜこれが地方自治の本旨にかなうのか、私は非常に奇異に感じますが、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/95
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096・新田勇
○政府委員(新田勇君) 留置場というのは犯罪捜査の過程で容疑のある者を一時的に留置するための施設でございます。したがいまして、犯罪捜査全体が地方の事務としていかがなものであろうかということについて、飯田委員がかねてからその種の主張をなさっておられることは十二分に承知いたしておるところでございますが、しかし地方の安全、秩序の維持ということは地方住民にとりましても密接な関係があり、かつ深い関心のあるところであろうかと思います。
そういうことを前提といたしまして、現在の犯罪捜査の事務、そしてその中の一環としての留置場の設置管理というようなことが団体委任事務ということで都道府県に任されている、かようなものとなっているというふうに理解いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/96
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097・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今の御説明はどうも私はわからないんですがね、現在の行政法で昔の帝国憲法時代のいわゆる保護拘束というものを認めておるかどうかということなんですがね、これは認めておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/97
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098・新田勇
○政府委員(新田勇君) おっしゃられるような意味での戦前での保護拘束あるいは予防拘禁といったようなものは現在の制度としてはございません。ただ、保護という言葉で申せば、例えば警察官職務執行法の第三条というのに、精神錯乱または泥酔というような状態にある者につきましては、一定の条件で保護のために身柄を拘束するというような規定はあるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/98
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099・飯田忠雄
○飯田忠雄君 予防拘禁はこれは別の問題です。私ここで申し上げているのは予防ではなくて保護ですね、保護するために、例えば道で酒に酔ってひっくり返っていると、自動車に引かれると困るからこれを留置場に入れて保護するというそういう根拠規定はあるかどうかとお伺いしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/99
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100・新田勇
○政府委員(新田勇君) ただいまいわゆる警職法の三条に基づく保護のことを申し上げたわけでございますが、こういった状態の者を留置場に入れて拘禁するといいましょうか、拘束するというようなものはございません。ただ、地方自治法の二条三項六号のところに「救護施設等の保護施設」というようなものはございまして、現実に警察署にも保護室というようなことで、こういった泥酔のためにコントロールのきかなくなったような者を入れるというような施設を持っている警察署もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/100
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101・飯田忠雄
○飯田忠雄君 保護施設は、これはいいわね。これは当然警察にお持ちになって保護されることは構いませんが、留置場ということになりますと、これは保護施設じゃないでしょう、留置場という言葉はね。それで、この留置場というものに実際にここに留置しておるのは犯罪の被疑者ではありませんか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/101
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102・新田勇
○政府委員(新田勇君) おっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/102
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103・飯田忠雄
○飯田忠雄君 犯罪の被疑者を留置するということになりますと、犯罪の被疑者の問題ならば、それはいわゆる司法警察の問題でございますね。司法警察の問題であれば、それは広い意味における司法に関する事務なんです。そうじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/103
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104・新田勇
○政府委員(新田勇君) その点がいつも飯田委員と議論になるところでございますが、まあ犯罪の捜査というのはいずれ司法作用である裁判というところに移っていくわけでございますが、しかし、犯罪の捜査の段階では今のところやはり司法ではない、行政の分野ではないかというふうに考えられているように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/104
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105・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、犯罪の被疑者を引っ張るのは、これは将来刑罰を科するための前提条件じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/105
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106・新田勇
○政府委員(新田勇君) 全くおっしゃるとおりでございまして、やがて司法作用に移っていくところの行政的な作用と、かようなものだというふうに理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/106
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107・飯田忠雄
○飯田忠雄君 地方自治法の第二条の第十項をごらんください。「地方公共団体は、次に掲げるような国の事務を処理することができない。」、はっきり「できない」と書いてある。それで一番が「司法に関する事務」、二番目が「刑罰及び国の懲戒に関する事務」、「関する」ですよ。刑罰を科するということじゃありませんよ、刑罰に関係があればみんな入る。刑罰に関する事務云々と、こうずっと並べて書いてあります。そのほか例えば「国の運輸、通信に関する事務」「郵便に関する事務」「国立の教育及び研究施設に関する事務」「国立の病院及び療養施設に関する事務」「国の航行、気象及び水路施設に関する事務」「国立の博物館及び図書館に関する事務」これらについては地方公共団体は処理できないと、はっきりこう書いてますね。できないんですよ。そうすると、留置場に将来刑罰を科せられると思われるような者、つまり刑罰に関する者を留置するということは刑罰に関することですからね、それはできないじゃありませんか、都道府県は。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/107
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108・新田勇
○政府委員(新田勇君) 結論的に言うと、あそこで言う司法事務ではないんではないかというふうに考えるわけでございます。
多少根拠的なことを申し述べさしていただきますと、地方公共団体には、この二条にありますように、法律により地方公共団体に属するものをその地方公共団体が行うというふうに書いてあるわけでございますが、この法律というので例えば警察法の三十六条というのを見ますると、「都道府県に、都道府県警察を置く。」そして、都道府県警察は二条の責務に任ずる、というふうになっておりまして、警察法の二条では、その責務として犯罪の捜査ということが挙げられておる。
こういった点を総合的に見ますると、この自治法で今先生が御指摘になったところの司法事務とは別に、犯罪捜査というものはいずれ司法事務に移っていくにしても、それの前段階は依然として行政事務であり、地方公共団体が行ったとしてもおかしくない、こういうふうな考えに基づくというふうに考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/108
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109・飯田忠雄
○飯田忠雄君 大変審議官苦しい御答弁だけどね、これはあなたの立場よくわかりますよ、行政官としてはそう言わざるを得ぬだろうけれども、しかし、今ここで問題にしているのは立法問題ですからね。
それでお尋ねするんですが、例えば犯罪捜査をする権限はどこから生ずるかという問題を考えてください。犯罪捜査は司法警察職員が捜査するとなっているんですよ。警察官が捜査する場合もそれは司法警察職員の資格において捜査ができるのであって、司法警察職員の資格を持たない者は犯罪捜査の権限がないわけです。そうなっていますね。
そこで問題になるんですが、都道府県の警察官が犯罪捜査をなさるということになると、それは刑事訴訟法の規定を度外視しておやりになるのか、それとも刑事訴訟法に従っておやりになるのか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/109
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110・新田勇
○政府委員(新田勇君) もちろん刑事訴訟法の規定に従って犯罪捜査を行っていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/110
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111・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そうであるなら、明らかに司法警察職員として犯罪捜査をおやりになりますね。刑事訴訟法に従っておやりになるわけなんです。それは司法警察職員と、こう言うてますからね、行政警察職員じゃありませんから。行政警察職員ならば、都道府県の警察としておやりになってもいいですよ。しかし今ここで問題になっているのは司法警察職員ですから。そうなりますと、刑訴訴訟法に従って行う国の犯罪捜査でしょう。国の犯罪捜査をおやりになるんですから、これは明らかに「刑罰及び国の懲戒に関する事務」に該当するでしょう、少なくとも。そうしますと、それは地方公共団体は次のことをやってはいかぬと書いてある条項に触れます。ということは、もっと端的に申しますと、都道府県知事は、この第二条の十項に書いてある仕事をすることができないということなんです。そうでしょう。都道府県知事にはそういう権限はありませんよということですね。
そこで、都道府県知事にそういう権限がないということになりますと、それならば都道府県警察はできるかと、こういう問題が起こってきます。都道府県警察はこれは都道府県公安委員会のものとして行うと。そうしますと、都道府県公安委員会というのはこれはどうなるんでしょうね、国家公安委員会の下部機関なのか、それともそうではなしに知事の所属機関なのか、どちらになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/111
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112・新田勇
○政府委員(新田勇君) まず、警察が犯罪の捜査をする責務という問題、あるいは権限の根本的なものはやはりこの警察法にあろうかと思います。警察は犯罪の捜査を行う。ただ、その犯罪の捜査のやり方につきまして刑事訴訟法がいろいろと決めているものではないかというふうに考えるわけでございます。
つきましては、その警察の組織とそれから公安委員会及び知事との関係でありますが、この警察事務というのは、行政事務の中でもその政治的中立性について強くその中立性を保つ必要があるということから、やや特異な組織の成り立ちになっているのかと存じます。法律的にいえば知事の所轄のもとに公安委員会が置かれ、この公安委員会の管理のもとに警察が置かれているということで、犯罪捜査に当たる警察は公安委員会が管理する、そしてそれらは知事の所轄のもとに置かれるということで、普通地方公共団体とつながっておると、かように考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/112
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113・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ここで少し論点を変えて質問しましょう。
留置場が県のものだと、こういうふうに地方自治法には決めてある。だから、それはそれとしてそういくよということで、今後変えないでいくということであれば、ここで起こってくる問題は、留置場に関する規定は全部条例によるべきだ、県の施設だから。国の法律によるべきじゃないでしょう。今まで留置場の管理その他、あるいは留置場の使用その他について条例を設けておるかどうか、御存じないですか。これは自治省の方に聞いた方がいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/113
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114・新田勇
○政府委員(新田勇君) 条例で留置場の運営管理といったようなものは決めておらないというふうに理解いたしております。
ただ、留置場は全国の各警察に千以上あるわけでございますので、それらの管理が適切に、かつ統一的に行われる必要があるということで、国の方で公安委員会規則を設けまして、それに準拠して行っておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/114
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115・飯田忠雄
○飯田忠雄君 留置場は現行法によれば、これは都道府県の管理する施設ですね。そうしますと、これは国の施設じゃありませんね、都道府県が管理しているんですからね。ですから、現在都道府県の費用で賄っておられましょう。費用を出す場合に予算も組まないで出すということはあり得ないはずなんです。当然予算を組む以上は、条例を決めてやるべきではないかと思いますが、こういう点について自治省ではどういう監督をなさっておりますかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/115
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116・森繁一
○政府委員(森繁一君) 今先生の、条例でこういう施設を設けなければいけないんではないかという御趣旨については、地方自治法の二百四十四条という規定がございますが、ここに「公の施設」という規定がございまして、ちょっと条文を読ましていただきますと、「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。」ということで、この「公の施設」の設置につきましては条例で行わなければいけない、こういうことになっておるわけでございます。ところが、先ほど来お話しになっております留置場といいますのは、その「公の施設」には該当いたしませんので、この規定から直ちに条例で設けなければならない、こういう結論は出てこないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/116
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117・飯田忠雄
○飯田忠雄君 留置置場というのが公の施設でないというのは初めて承りましたが、これは、じゃ私の施設ですか、留置場は。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/117
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118・森繁一
○政府委員(森繁一君) この「公の施設」という概念は、たしか私の記憶によりますと、昭和三十八年ごろまではいわゆる営造物と呼んでおりましたものにかわる概念でございます。この概念の中には、先ほど条文を読みまして申し上げましたように、一つは住民の福祉を増進する目的を持つとか、あるいは住民の利用に供するための施設とかこういうものでございますので、留置場は今申し上げました住民の福祉を増進する目的を持つかどうか、あるいはその一般的な利用に供するための施設であるかどうか、その点でかなりニュアンスの違う施設のような気がいたしますので、ここに言う「公の施設」には該当いたさないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/118
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119・飯田忠雄
○飯田忠雄君 県が金を出して設けておって、しかもこれは私のことで使うんでなしに、犯人を留置するといったような公自務に使う施設でしょう。これがどうして公の施設に当たらないかという大変不思議なことなんですよね。で、公の施設に当たらぬと言って強弁なさっても公の施設なんですよ、それは。それで、公の施設であるのに、なぜ金を出す場合に条例の根拠に基づかないで出すのかということだね。本来、県の費用を出す場合は県の予算を執行する、また、組むための条例があるんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/119
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120・森繁一
○政府委員(森繁一君) たびたび申し上げて恐縮でございますが、公の施設の概念の中には住民の福祉を増進するという、そういう概念が入っておりまして、端的に申し上げますと、例えば図書館だとか美術館だとか、あるいは体育館だとか、こういうものが公の施設の典型的な例として考えられるわけでございます。留置場は今申し上げましたような施設とはかなりニュアンスを異にする施設でございまして、ここで言う「公の施設」ではございません。
ただ、地方公共団体の一種の行政機関なり、あるいは行政機関の属する財産であるということは、これはかわりないわけでございまして、その意味で地方団体が経費を支弁するということはあり得べきと申しますか、当然そのようにやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/120
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121・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、地方自治法の第二条の第三項の六号に列記してあるものは、これは公の施設ではないのですね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/121
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122・森繁一
○政府委員(森繁一君) 先生お示しの地方自治法の第二条第三項六号の中にはいろんな施設が書いてございます。この中にはいわゆる地方自治法上の「公の施設」に該当するものもございますし、そうでないものもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/122
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123・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、ここに書いてある中で留置場を公の施設でないとされた理論的根拠は何ですか。例えば病院はどうか、あるいは隔離病舎はどうか、療養所はどうか、皆これ考えるとわかりませんけれども、これは公の施設に該当するかどうかという問題も起こってきますが、ここでは時間がないから留置場だけに限りますが、留置場というものが公の施設でないというその理論的根拠はどこから生まれたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/123
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124・森繁一
○政府委員(森繁一君) 公の施設というのは、先ほども条文で御説明申し上げましたように、括弧書きで定義をしておるわけでございます。その「公の施設」の要件の中に、一つは、住民の福祉を増進する目的を持つものでなければいけない、これが一つ要件としてございます。それから二番目に、住民の利用に供するための施設というのが要件になっている。三番目に地方公共団体が設置する。この三つが要件になっておるわけでございますが、まあ留置場の点について言いますと、第三の要件はともかくといたしまして、第一及び第二の点で住民がみずから進んで利用するような施設ともはえませんし、ここで言う「公の施設」には該当しないと考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/124
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125・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、留置場というものは公の施設でない、住民が喜んで使うものでないからということですね。ということは、これは地方自治の本旨には合わない施設だということじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/125
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126・森繁一
○政府委員(森繁一君) 地方公共団体は住民にサービスすべくその責務を持っておるわけでございますが、その地方公共団体の所持しております財産なり公の施設の中には、まあ住民が積極的に利用したくないという施設もあるわけでございます。端的に申し上げれば隔離病棟などもその一つの例であろうかと思いますし、地方公共団体のやっております仕事が広範多岐にわたっておりますので、住民の福祉を直接増進するものもあればそうでないものもある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/126
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127・飯田忠雄
○飯田忠雄君 例えば火葬場とか墓地というものはそう進んでそこへ行きたくないけれども、しかし火葬場とか墓地がなかったら困るでしょう。火葬場とか墓地というものは行きたくないけれども公の施設ですわね、必要だから公の施設でしょう。そうすると、留置場というものは、そういう意味で行きたくはないけれども公の施設なのか、それとも元来こんなものは都道府県に置くべきものではないとお考えなのか、そこのところなんですよ。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/127
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128・新田勇
○政府委員(新田勇君) ちょっと私の方の関係もありますので申し上げてみたいと思いますが、自治法の百五十六条というのに「地方公共団体の長は、条例の定めるところにより、警察署その他の行政機関を設けるものとする。」ということで、警察署は条例に基づいてつくられておりますが、その中にこの留置場というものが置かれておるのが常態でございます。そういうことで広く条例でカバーしている、かように考えることもできるのではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/128
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129・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ただいまのような御答弁なら、この六号から「留置場」を削るべきでしょうね、警察署で賄っているんだから、留置場というものは要らないでしょう。わざわざ「留置場」というのを掲げた意味があるのじゃないかと思いますがね。
もし留置場というものが都道府県の施設であるならば、その費用は都道府県で出すべきでしょう。現在も都道府県で出しておられるはずですね。都道府県で費用を負担しておる以上、その負担する金は県民が支払っているわけです。当然これは県議会において県民の了承を得るべきものでありまして、県議会で取り上げなきゃならぬし、また、その金を出す根拠というものは条例によって決められた基準によるべきものではありませんか。そうでなしに、勝手に県知事が留置場に関しては一切住民に諮らないで、また住民の方の、県民のおつくりになった条例に従わぬでもよいといったような解釈を下し得るそういう性質のものであるかどうか。また、そういう性質のものを自治法は認めるためにこういう規定を置いたのかということになります。
そうであるならば、もしそういうことを認めるためにこういう規定を置いたということであれば、これは憲法の九十二条の精神に反しないかという問題です。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/129
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130・新田勇
○政府委員(新田勇君) 警察署というのにはいろいろな機能がございますが、この中の一つに留置場が入っておるということで警察署を置くということについて条例で定めるということをいたしておりますので、これでカバーされるのではないかと、かように考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/130
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131・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それなら留置場を使用するための手続というものは、これは当然条例で決めるべきでしょうね、県の施設であれば。例えば刑事施設といったようなものは法律で決めるべきではなしに、留置場管理条例とかあるいは留置場使用条例というもので決めるべきものということになりますね。そういう解釈を政府ではおとりになるのかどうか、今後とも留置場に関しては法律は一切関与しないというふうな態度をおとりになるのかどうか、その点明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/131
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132・新田勇
○政府委員(新田勇君) 犯罪捜査も現実には都道府県の警察が行っているわけでございますが、その犯罪捜査の手続は刑事訴訟法で決められている、国の法律で決められているところでございます。国家的関心事が高いということから斉一性を期し、あるいは基本的人権を尊重するという立場からそういう手続になっているのかと存じます。したがいまして、留置場につきましてもその運用について国の法律で決めるということもできるのではないかというふうに考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/132
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133・飯田忠雄
○飯田忠雄君 この問題はよくひとつ研究していただきたい。ここで議論をしてもやはりなかなかいい御答弁をお出しになる様子はないから、研究していただいて、そしてこれは間違いあると思われたら将来、訂正、法律を変えるということをしていただきたいということを要望しておきます。
こればかりかかっているとせっかく質問したいのができませんので次に行きますが、権限委譲を今度はやっておられますね。いろいろ権限を市町村に譲ったりあるいは知事に譲ったりしてやっておられますが、こういうことについて行政監察局はどういう作業をなさったんでしょうか。行政監察局が果たされた任務の状況とか成果ですね、それについてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/133
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134・山本貞雄
○政府委員(山本貞雄君) 御指摘の点につきましては、六十年の一月に行革審から総務庁に対しまして権限委譲に関しましての既往の意見、要望等につきましてひとつ実態調査をして行革審に報告してもらいたいという要請がございました。これを受けまして総務庁におきまして、既に行革審に対しまして地方六団体及び自治省等から提出されておりました既往の意見、要望並びにそれまでの各方面からの意見、要望の約九十項目につきまして調査対象として取り上げまして、これにつきまして臨調第三次答申が示しました国と地方の機能分担の合理化の項で示されました見直しの視点を踏まえまして、その調査対象事項の実態等につきまして、その概要を審議会の検討資料として六十年の四月に行革審に報告した次第でございます。
行革審に報告いたしました調査結果の個々の具体的内容につきましては、行革審がその客観的審議を担保いたしますために、その基礎となりました資料を含めまして審議の詳細な内容は外部に公表しないことといたしておりますので、具体的内容を申し上げますことは差し控えさしていただきたいと存じますが、行革審ではこの総務庁の調査結果等をも参考としつつ審議を行いまして、昨年の七月権限委譲等のあり方につきまして具体的な答申を行ったと、このような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/134
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135・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、次の問題に入ります。
総務庁長官、非常にお疲れのようでしたら適宜お休みになっていただいて結構でございますから。ここにおいでになれば聞きますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/135
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136・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) わからぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/136
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137・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、次の問題に行きます。
権限委譲に当たりまして、団体委任事務とするか機関委任事務とするかということを御判断なさる根拠は何によって行われたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/137
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138・山本貞雄
○政府委員(山本貞雄君) 御参考までに、先ほど申し上げました行革審が権限委譲につきまして具体的答申を行ったわけでございますが、そのときの考え方というものをただいまの先生の御質問に即して申し上げますと、行革審といたしましては、国の直営の事務につきまして、地域性あるいは総合性、効率性の視点より、できる限り住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体で行うべきであるという観点から、できる限り地方への権限委譲を行うべきであるという考え方をまずとったわけでございます。
その際に二つの方法が御案内のとおりございまして、団体委任事務として権限委譲するかあるいは機関委任事務として権限委譲をするかということでございますが、行革審といたしましては、厳格に行政サービスの全国的統一性あるいは公平性を確保する必要があるというふうな事務で、しかしながら同時に、地方の実情を踏まえながら、そして地方行政の総合性、効率性、住民の利便等の観点から、やはり地方で行った方がいいというものにつきましては機関委任事務、そしてそうでないような必ずしも厳格に全国的な統一性、公平性、そこまで厳格に必ずしも担保する必要のないようなものにつきましてはこれは団体委任事務と、こういうふうな観点に立ちまして、そしてその際、既に政府側から何度も答弁されておりますように、機関委任事務制度というものは正しく活用されるならばこれは極めて有効な制度である、こういった前提に立ちまして行革審では国の直営事務を具体的に見直し検討した結果、結果的には三十三事項につきまして知事に機関委任をするのが適当である、このような答申を出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/138
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139・飯田忠雄
○飯田忠雄君 国と地方の機能分担という問題について今伺いましたが、どうも明確にならない点もありますが、こういうことについてもっと根本的に見直しをなさる御計画はあるかないかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/139
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140・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 今回のこの法律案につきましても実はそのあたりの見直しが行われたという経緯があるわけであります。けさほどもお答えしたわけでありますけれども、臨調の第三次答申、これは基本答申と称しておりまして五十七年の七月に出されておりますけれども、その中で諸般の論議が行われて、機関委任事務のあり方を再度見直すようにという指摘がございまして、これを受けまして、政府としては旧行革審に対してこれにつきまして検討を依頼したわけであります。そこで、旧行革審で諸般の論議が行われた結果として昨年の七月にこれについての答申が行われて、これに基づきまして今回この法案を提出をいたしたということでありまして、現在の物の考え方にありましては、相当の検討が行われたものというふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。
ただし、行革審もことしの六月に出されました最終答申におきまして、さらにこういう考え方でもって不断の見直しを行うようにという御指摘がありますので、私どもとしては、この機関委任事務、行革審で指摘されましたように、これが正しく活用されるならば全国的な統一性、公平性の確保のために有効な制度であるということを前提といたしまして今後とも見直しをしてまいりたい、このように存じている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/140
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141・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、団体委任事務という言葉がしばしば出てまいりますが、団体委任事務という言葉の内容について少し確かめたいと思います。
これは端的に申しますと、都道府県の事務とするということは、議会の権限を尊重するということになるのでしょうか。つまり、都道府県の事務であればいろいろ議会に報告をする。例えば離島振興法で、従来、離島振興計画実施のための事業計画に係る意見具申、これは都道府県の事務とする、こうありますが、知事が従来意見具申をしておったそれを都道府県の事務とするということは、これはどういうことなんでしょうか。意見具申は都道府県が意見具申をするという、こういうことにするのか。このことがもし地方自治にふさわしいことであるなら、私は、都道府県の仕事となった以上はすべて議会が最高でおやりになればいい問題ではないか、あるいは知事が最高でおやりになればいい問題ではないか、こういうことになりますが、どうしてこういうことをなさったのか、どうも意味が明確でないんだが、内容はどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/141
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142・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) まず、団体委任事務がどんなものであるかという御質問でありますけれども、団体委任事務というのは、その性質は国の事務であるけれども、いわゆる固有事務とひとしく地方公共団体がみずからの権能として処理すべき事務とされているものであります。この内容が非常に多義的でありますものですから、一貫した共通性はその事務自体としては見られないわけであります。
これについての執行につきましては、主務大臣の指導助言、あるいは内閣総理大臣の措置要求等が定められておるわけでありますけれども、基本的には、先ほど申しましたように、いわば地方の権能でもって自主的に事務が執行される、こういう内容を有するものであります。
そこで、先ほどのいわば知事の意見具申ということについては、これは一体機関委任事務と団体委任事務とはどう違うんだと、こういう御質問であろうかと思いますけれども、そのことにつきましては、従来機関委任事務でありました段階では、これはそれぞれの手続、内容が省令その他によって定められておった。ところで、今回団体事務化をしたということは、要するにそういう事務については、地方団体としてはこれを執行するわけでありますけれども、その中身あるいは手続等につきましては、これは地方の自主的判断に任せる、こういうことでありまして、相当程度事務に慣熟してきている、従来からその方式その他について地方団体の能力も向上しておりますし、その事務に慣熟をしておるというところに着目いたしまして、こうしたものについては地方の団体委任事務と改めた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/142
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143・飯田忠雄
○飯田忠雄君 どうも明確でありませんが、例えばもう一つ例を挙げて御質問いたしますが、文部省のところで、社会教育主事等の研修というのがございまして、これを団体事務にする、こうなっております。つまり都道府県の事務とするというわけですが、従来は都道府県の教育委員会が執行機関であった。それを、教育委員会が執行機関であったものを都道府県の事務とするという意味ですが、これはどういうことですか。教育委員会から権限を取り上げて、都道府県でまた別の機関をつくって仕事をやる、こういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/143
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144・小埜寺直巳
○説明員(小埜寺直巳君) お答え申し上げます。
社会教育主事の研修につきましては、現在の法体系におきましても任命権者であります都道府県の教育委員会が社会教育主事の研修をする実態もございます。あるいは市町村の教育委員会が社会教育主事の研修をするという実態もございます。
ただ、この社会教育法の今回の改正の規定の趣旨は、これは実は昭和三十四年に社会教育法を改正した際に、やはりこの社会教育主事というものが社会教育の中核的な働きをするという職員でございますので、この社会教育主事の研修の全国的な一定の水準を確保するという立場から、いわゆる固有の事務として行われる研修のほかに国の機関委任事務としても都道府県の教育委員会に行わせるという、こういう道を昭和三十四年に開いたわけでございますけれども、今回はその点に関しては、今後は地方公共団体の自主性を尊重するという建前で、これを都道府県の団体事務としたわけでございます。そういう趣旨で今回の改正をしているというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/144
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145・飯田忠雄
○飯田忠雄君 結局、都道府県の事務とするということは、これは都道府県で条例をつくって、そこで規則を定めて、それに従って社会教育主事等の研修を行うんだ、こういう意味になるでしょうか。従来は、都道府県教育委員会が社会教育法に基づいてやっておりましたね。それを今度改めて都道府県の事務とするということは、条例に任せると、こういう意味でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/145
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146・小埜寺直巳
○説明員(小埜寺直巳君) ちょっと説明の仕方がまずかったのでございますけれども、現在は、はっきり申し上げますと二本立てでございます。都道府県の教育委員会が固有の事務として社会教育主事の研修をやっているということは現行法で読めるわけでございます。その道と、もう一つ国の機関委任事務として社会教育主事の研修を都道府県の教育委員会が行っている。この二本立てで走っておるわけでございますけれども、その後者の機関委任事務として行われる点につきましては、これはもう都道府県の教育委員会が育ってまいっておりますから、国が全国的な立場で行わせるという、いわゆる指揮監督をしてそういう研修をやらせる必要がないという判断に立って今回改正案を提案している次第でございます。
それから条例の件でございますけれども、私どもの立場からいたしますと、今回の改正は、各都道府県において自主的に地域の特性に応じた研修を実施しようという、そういう立場に立って改正するわけでございまして、条例等によって新たな規制を加えようという意図を持っているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/146
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147・飯田忠雄
○飯田忠雄君 もう少し補充的にお伺いしますが、例えば社会教育法で法人設置の公民館への業務停止命令というのも今度都道府県の事務とされたわけですが、この場合、業務停止命令を出す場合の名義人は、これは何々県知事の名義なのかあるいは何々県という名義なんですか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/147
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148・小埜寺直巳
○説明員(小埜寺直巳君) 都道府県の教育委員会に関する権限の問題、教育に関する問題につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に規定がございまして、二十三条では教育委員会の権限、それから二十四条では地方公共団体の長の権限が規定されております。
今、先生御指摘の点につきましては、これは広く教育に関する問題でございますから、地教行法の二十三条に基づいて都道府県の教育委員会が指導をするということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/148
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149・飯田忠雄
○飯田忠雄君 都道府県の事務とした場合、例えば業務停止命令を出す場合は、東京都ならば東京都として出すべきじゃありませんか、これは東京都知事じゃなくて都の事務にしたわけですから。そうすると、書く場合は、都が停止命令を出すのであって知事じゃないんですよ。もし知事ならば、これは都道府県の事務とするんじゃなしに、都道府県知事の事務とするというふうでないといけないわけですね。都道府県の事務なのか都道府県知事の事務なのかという点は重要な点なんですよ。その点明確にしないと、それがどうもはっきりしませんのですが、どうなっているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/149
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150・小埜寺直巳
○説明員(小埜寺直巳君) 機関の話でございますが、地方公共団体という法人格を持った団体があって、それを実際だれがやるかという場合、教育に関する問題につきましては、例えば私立学校の問題、これは地方公共団体の長が機関という立場でおやりになる。それから、一般にその学校の管理とかあるいは公民館、図書館、博物館といった社会教育行政に関する権限は、これは都道府県の教育委員会が当該地方公共団体の機関としておやりになるわけでございまして、その効果はすべて当該地方公共団体という法人格を持った団体に帰属するということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/150
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151・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それは結局東京都でやるわけですね。例えば命令出すでしょう。停止命令に東京都として停止命令をお出しになるわけだね。それでいいんですよ、団体としてやるんだから。それでちっとも悪くない。それを団体としてやると言っておきながら都知事と書かれるから問題になる。都知事じゃない、団体命令でやるんですから。そういう点が従来どうも明確じゃないんですよ。これは明確にしておいていただきたいんです。
余分なことですが、例えば大学で学位を出す、この場合に各大学でばらばらなんです。あれは大学が授与するとなっているんだから、本来は何々大学でやるべきなんです。京都大学ははっきりと京都大学でやっています。京都大学長じゃありません。ところが、広島の学位を見ますと、広島は学長になっている。これはおかしいでしょう。各大学でばらばらなんですよ。そういうようなことが起こってくるので私は御質問申し上げた。やはり統一をとっていただきたいわけです。
それから次に、社会福祉団体事務というものは機関委任事務から団体委任事務とされるわけですが、そういうことをされると、全国的統一性や公平性の確保ができなくなるおそれがあるのではないかという心配を関係の方々は皆お持ちになっているようです。そういう点につきましては現行水準を確保できる担保はあるかどうか、どういう方法でその御心配は要りませんよとおっしゃるのか、どうでしょうこの点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/151
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152・小林功典
○政府委員(小林功典君) 一口に福祉サービスと申しましてもいろいろございまして、種々雑多でございます。そこで、一つは全国共通的に提供されなきゃならないようなサービスもございますし、地域ごとにその実情に即して地方公共団体の独自性のもとに創意工夫が行われて提供さるべきそういう福祉サービスもあるわけであります。
そこで、今回団体委任事務化しようという事務は、いずれも既に長年にわたって地方に定着同化した事務でございますし、それとともに、例えば団体委任事務化された老人ホームの入所措置というのがございますが、それにつきましては我々は入所基準の基本的な要件についてガイドラインをつくろうというふうに考えております。あくまでガイドラインでございますから指針でございますけれども、それに従って地方公共団体がやっていただくと、それによって各地の著しいばらつきが避けられるし、福祉水準の低下も避けられるだろうと、こういう考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/152
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153・飯田忠雄
○飯田忠雄君 普通非常に皆さんが御心配なさる点は、団体委任事務と言う、ということは都道府県の事務にしてしまうので、都道府県の事務にするというと、福祉団体に対する補助金とか、あるいはいろいろ経費をもらう場合に、県によっては予算がないからだめだと言われてだめになるということが起こりかねないので、そういうことが起こらないような担保はあるかということを心配なさる方は言うておられるわけです。そういう点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/153
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154・小林功典
○政府委員(小林功典君) 今回の機関委任事務を団体委任事務にするということと、例えば補助金等の財政措置、これは全く関係なくやっておりますので、今までどおりその点は財政の方につきましては今と変わりはございませんので、そういう御心配はないかと思います。
〔委員長退席、理事館長友義君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/154
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155・飯田忠雄
○飯田忠雄君 これは、そうしますと、都道府県の事務にされても国が予算権は面倒を見る、こういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/155
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156・小林功典
○政府委員(小林功典君) 助成措置はその団体委任事務化によって変わるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/156
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157・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、次に進みますが、臨時行革審答申、これは六十一年の六月十日のものですが、これでは定期的な見直しの仕組みの確立を提言しておりますね。それは現在それについて具体的にはどういう措置がとられておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/157
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158・佐々木晴夫
○政府委員(佐々木晴夫君) 定期的見直しにつきまして確かにこの六月十日の御提言の中にございます。これをどういうふうな仕組みを考えていくかということは、これは大変なかなか難しい問題で、なお検討中の課題でありますけれども、いずれにしましても、行革審の最終答申は政府としてこれを最大限に尊重しつつ、逐次所要の施策を実施に移す旨の基本方針を六月十七日に閣議決定をいたしておりますところでありまして、これらにつきまして各省庁となお今後協議をしてまいりたいと、このように存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/158
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159・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そこで、まあ話はちょっと小さくなりますが、厚生省が政令とか省令で決めておるいろいろの基準がございますね。こういう基準が、これが地方自治体の自主性とか自律性を発揮できないようなことになる方向へ行きはしないかという心配があるようです。そういう心配をなさる人がおるんですがね、こういう点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/159
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160・小林功典
○政府委員(小林功典君) 政令等で定める部分がございますが、それはあくまでその制度の基本的事項と申しますか、基本的な枠組みと申しますか、そういうものだけを決めるわけでありまして、その他は地方の自主性に任せ、地方の実情に応じた取り扱いをしていただくということですから、決して地方の自主性、自律性が発揮できないというようなことにはならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/160
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161・飯田忠雄
○飯田忠雄君 もう時間が減ってきましたので、次に行きます。
自治体の機関を国の機関とすることは憲法の九十二条、九十三条二項の精神に反しないかという問題に関連しまして御質問申し上げるんですが、現在、地方自治法の一部改正案を考えておられるようですが、代執行につきましては憲法に違反するという考え方があるように聞いてもおりますが、これについて自治省ではどう考えておられましょうか。自治大臣は代執行について、これは憲法違反でないとお考えなのか、あるいは憲法違反の疑いがあるから将来は何とか考えようとかいうことなんですがね、いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/161
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162・葉梨信行
○国務大臣(葉梨信行君) 現行の制度は機関委任事務の適正な執行の確保の要請と地方公共団体の長の本来の地位の自主独立性との調和を図る観点から設けられたものでございますが、現実に制度として動かないとの批判があることは、先生御存じのように事実でございます。また、公選された首長を罷免するということは民主制度としてもいかにもおかしいという声もあるわけでございます。
〔理事亀長友義君退席、委員長着席〕
機関委任事務の執行が実際に効果を発揮するようにするためには、我が国におきます国と地方団体との関係全般にかかわる問題でございまして、制度の見直しに当たりましては極めて慎重な配慮を要するという立場から、地方制度調査会におきましては、御存じのように議論に議論を重ねました結果、地方公共団体の意見を十分尊重いたしまして、慎重かつ適切に機能し得る制度として、先生おっしゃいましたような提言をするに至ったと聞いているところでございます。
今度の改正案では、同時に地方公共団体の長の罷免の制度を廃止いたしまして、あるいは機関委任事務にかかわる議会及び監査委員の権限の拡充が盛り込まれておりまして、全体として国と地方の関係の改善に役立つ内容になっており、地方自治の本旨にも沿ったものではないかと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/162
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163・飯田忠雄
○飯田忠雄君 これは少し根本的な問題に入って恐縮ですが、地方自治団体の機関が国の事務を担当し得る法的根拠、これは地方自治法にはなるほど規定がございますが、地方自治法に書いてあるような、こういう地方自治体の機関が国の事務を担当するということ、そのこと自体は、やはり憲法九十二条とか九十三条二項の精神に反しないかという問題もあるわけなんですが、これについて自治大臣とか法制局長官はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/163
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164・森繁一
○政府委員(森繁一君) 地方自治体の機関が国の事務を執行する根拠といたしまして、先生がお示しのように地方自治法の百四十八条一項にその規定がございます。それから、普通地方公共団体の長以外の執行機関につきましても同様の規定が設けられておるわけでございます。これら機関委任の制度は、全国的な統一性なり公平性なりを確保するという観点から、国の事務とされたものにつきまして地域住民の意向を反映し、地域の実情に即した処理を必要とする等の事情によりまして、その管理執行を地方公共団体の機関にゆだねるものでございます。
したがいまして、そのことが直ちに地方自治の本旨に反するとは考えておりませんが、自治省といたしましては国、地方を通ずる行政の簡素、効率化、あるいは地方自治の尊重という観点から、住民に身近な事務は住民に身近な地方公共団体において処理することが最も適当である、こういうふうに考えておるわけでございます。そのため、当面機関委任事務の積極的な整理合理化を推進してまいりたい、かように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/164
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165・飯田忠雄
○飯田忠雄君 今の御意見であれば、地方自治に合致するような内容の事務はむしろ国から外して全部地方自治の方へ回すべきではないかと思いますが、国は地方自治に余り干渉しないでいくのが筋ではないか。そして国が行うべき仕事として地方自治に任せておいたのでは困る仕事もたくさんございますね。例えばこの地方自治法の第二条十号に掲げてある八つの仕事は、これは明らかに地方自治には任せないと、こう書いてあります。こういうような仕事はなるほど国の仕事でございますね。それからこのほかにも外交の問題だとか防衛の問題、裁判の問題もそうでしょうが、国の仕事でしょう。それからそれ以外の普通国が関与しなくてもいいような、地方自治体で十分賄えるような事務を国が今なお担当するということであれば、それはむしろ憲法の九十二条、九十三条二項の精神に反しないか、規定に反するとは言いませんよ、憲法がこういう規定を設けた精神に反することにならないかと、こういうことなんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/165
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166・森繁一
○政府委員(森繁一君) 先生御指摘のように、本来地方公共団体がかかわらない、かかわるべきでない事務というのがあることも事実でございます。そういう事務を除きまして、その仕事を国がやるか地方公共団体がやるかという点につきましては、私どもとしましては地方公共団体の自主性、自律性を尊重するとか、あるいは住民に身近な地方公共団体が行政をやるのが民意を最もよく反映するゆえんである、こういう理由のためにできるだけ地方公共団体の事務としていただきたい、こういう希望を強く持っておるわけでございます。
このため、機関委任事務の整理合理化に当たりましては、かねがね各省にそういうことをお願いを申し上げておるわけでございますが、今後とも今申し上げたような態度で進んでまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/166
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167・飯田忠雄
○飯田忠雄君 具体的に、今のに関連しまして教育職員免許という問題がございます。教育職員免許法によってやっておりますが、この教育職員免許というのは本質上国の事務とすべきものか、あるいは地方自治の本旨にかなうから地方自治に任していいとすべきものか、その点についての御判断はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/167
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168・佐々木正峰
○説明員(佐々木正峰君) 教育免許に絡む事務は国の事務でございますが、これを都道府県等に機関委任しておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/168
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169・飯田忠雄
○飯田忠雄君 ちょっとわからぬ。私の質問は教育職員免許というのは、その行為の本質上国の事務であるか、それとも国の事務にしなくても地方自治の本旨に合致するものと考えて地方自治体に任した方がいいと考えるかと、こういう質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/169
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170・佐々木正峰
○説明員(佐々木正峰君) 教員免許に絡む事務は、国の事務と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/170
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171・飯田忠雄
○飯田忠雄君 そこで、もし教育免許に関するものが国の事務であれば、それは重要な問題でしょう。それで、例えば免許するに当たっての材料になる証明書などは真実のものでないと困るでしょう、いいかげんのものじゃ困りますね。皆さんの方では学校法人の理事長というものは、これは絶対に信頼できるというお考えでこれに委任なさったのか、どうですか、その辺は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/171
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172・佐々木正峰
○説明員(佐々木正峰君) 御指摘の点につきましては、現職の教員が上級の免許状を取得しようとする場合、教職員検定を受けなければならないことになっておるわけでございます。この教職員検定は受験者の人物、学力、実務、身体について、授与権者たる都道府県教育委員会が行うこととなっておるわけでございますが、この検定自体は免許状の授与と直接かかわるということがございますので、国の事務として引き続き機関委任事務としては処理するわけでございます。
ただ、教職員検定に当たって必要とされる実務に関する免許状の発行につきましては、これは人事管理上の問題の一環といたしまして、教員が勤務する学校の設置者たる学校法人の理事長に任せるといたしたものでございまして、文部省といたしましてはやはりその設置者たる者が、真にいわば適切な対応をしていただけるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/172
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173・飯田忠雄
○飯田忠雄君 それでは、質問通告しましたものが終わりませんので少しはしょっていきますが、あとは国の事務を団体委任事務とした場合の財政的裏づけはどうなるかという問題について御質問を申し上げます。
福祉関係事務を団体委任事務とした場合に財政的な裏づけがなければ福祉水準の引き下げとなる、こういう問題で心配があるということは先ほども御質問を申し上げました。一般的な問題として、政府ではこのような場合の財政的裏づけの保証は何か法文化でもしてなさるのか、それともそのときの思いつきで適当におやりになるのか、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/173
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174・森繁一
○政府委員(森繁一君) 地方自治法二百三十二条に規定がございまして、国の法令で地方公共団体に実施させる事務につきましては、「そのために要する経費の財源につき必要な措置を講じなければならない。」と、国の財政責任を規定いたしております。この事務の性格に応じまして手数料なり国庫補助負担金なり、あるいは地方交付税なりによりましてその財政措置を行っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/174
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175・飯田忠雄
○飯田忠雄君 最後に一つお伺いします。
国の機関委任事務を地方自治体の事務といたしますと予算措置を必要とするんですが、例えば行旅病人及行旅死亡人取扱法の改正によりまして、所在地の市町村長の救護義務を市町村の義務としております。このことは、その費用も市町村に負担させるという意味でこういうことをおやりになったのか、それともそういうことは考えていなくて、費用は必ず負担すると、根拠はこういうところに根拠があるということでおやりになったのか、その点はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/175
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176・小林功典
○政府委員(小林功典君) 行旅病人等の救護の問題でございますが、現在は、先生も御承知だと思いますけれども、第一義的には扶養義務者による弁償、遺留物品の売却によって対応するというのが原則でございますけれども、これをもっては弁償ができないという場合に、最終的には都道府県が負担するというのが現在の取り扱いでございます。
今回の改正では、この行旅病人及行旅死亡人取扱法に係る費用負担関係は全く変更するものではございません。改正法案におきましても、最終的に弁償がなかった場合の費用については依然として都道府県が負担する、こういうことで費用負担については変更がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/176
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177・飯田忠雄
○飯田忠雄君 時間が来ました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/177
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178・内藤功
○内藤功君 まず、総務庁長官にお伺いをいたしたいと思うんですが、本法案は、四十三法律六十一事項を一まとめにしたものでありまして、十一省庁にわたり、本来九つの各常任委員会に分けて付託すべきものであります。内閣委員会で、会期末の極めて短時間の間でこういう重大な内容を持つ法案を一括して審議をするということは、私は審議権の十全なる保障に当らないと考えるのであります。
国会法のもとで、各常任委員会はそれぞれの長い経験と蓄積を持っておりまして、各常任委員会中心の運営というものが現在の議会制民主主義の一つの骨格であると私は思っております。各所管の常任委員会で法案ごと問題ごとに十二分に審議を尽くすというのが国会審議権のあり方から私は当然のことだと思うんです。
そこで、昨年の六月十三日にも、私は当委員会で時の藤波官房長官にいわゆる規制緩和一括法案につきまして、各常任委員会へ分けての審議を要求し、お考えを願ったところであります。その際、官房長官、当時の藤波さんはこういうふうに言っております。「ただいま委員が御指摘になられました国会の常任委員会等のそれぞれ権能を大事にするようにということにつきましては、今後法案を取りまとめます際に十分頭に置いて進めていくようにはいたしたい、」こういう答弁をしております。総務庁長官、非常に福祉の問題、自治の問題に関する重要な内容を含む法案を一括提出、審議をさせるということではなく、それぞれ所管の専門の委員会に付議させてやるということによって衆参両院の審議を尽くすということが、私は国会の審議を尊重する内閣としてのあり方だと思うんです。長官は、大臣としての立場、また、長らく参議院におられた議員としての立場も十分おわかりでありますが、御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/178
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179・玉置和郎
○国務大臣(玉置和郎君) 私は参議院に十八年間お世話になりましたが、持論は、参議院から大臣なんか出すなというのが私の持論でありまして、一番大事にしなけりゃならぬのは常任委員会だ、常任委員長というのはオールマイティーだ、それだけに、一たん常任委員長になったら六年間少なくともやれ、そして、政府がなんと言うてこようと、常任委員会の委員長が中心になって各党の理事が相談をして、そしてこれはどうするかということを考えていったら一番いいんじゃないか、法案の最終権を持っているのは参議院だ、そこに参議院の権威は生まれるというようなことを言ってまいりました。
さて、今度図らずも総務庁長官になりましたが、大臣ほど窮屈なものはありません。言いたいことを言えない。なかなか難しい。それだけに僕なんかこんなになってみて、ならぬ方がよかったなと思うんですが、後悔先に立たずでありますが、しかし、今のお話の中でいろいろと考えてみましたが、これはやっぱり今の国会と政府のあり方の中で、法案の処理、そういった問題については各党が話し合う場所、まず本会議にどうしておろすか、本会議で趣旨説明をしないでもう委員会でそのままいくのか、そういった問題は各党、政党間の問題である、私はこのように理解をいたしております。
そこで、つけ加えますが、余り共産党さんも何でもかんでも反対しないで、この問題はちょっと考えて賛成してくれたらもっとスムーズにいくんじゃないか、実はこう思っておりますんで、あなただから私はこれ言えるんで、まあひとつこれからも協力のほど、よろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/179
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180・内藤功
○内藤功君 反対、賛成が共産党ぐらいはっきりしている政党はありません。大臣の話ですけれども、歯切れが余りよくありませんね。やっぱり議会制民主主義の根幹にかかわる問題です。私は、参議院に長くおられたあなたからこの点では明確なお話が伺えると思ったが、やはり大臣になると物が言えないということでありますので、これ以上聞いてもしようがない。ただ、これは議会制民主主義に大きなやはり禍根を残すと私は思っておるということであります。
自治大臣にお伺いしたい。
きょうは私、そういうわけで、四十三法律のうち、時間が短いので、児童福祉法と母子保健法についてしか、時間の関係でどうしても聞けない。そこで、後で細かしいことは政府委員に聞きますが、自治大臣に基本のことを一点だけ聞いておきたい。
それは、やはり母子保健についての国の責任——憲法二十五条は「すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」ということをうたってありますが、これからする国の責任、それから、それについて果たしてきた、後で聞きますが、保健所の役割と社会的使命ということについて、大臣はどのように認識をしておられるかという点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/180
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181・葉梨信行
○国務大臣(葉梨信行君) ただいま御質問がございました母子保健問題あるいは保育所問題につきましては、いろいろ時代の要請に対応しながら精いっぱいやってきたところでございまして、これからもひとつ、国民の要請にこたえて頑張っていきたい、いろいろな措置を講じていきたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/181
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182・内藤功
○内藤功君 保育所についてお答えいただいて結構なんですが、保健所についての役割はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/182
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183・竹中浩治
○政府委員(竹中浩治君) 厚生省は保健所を所管いたしておりますので、私の方から答弁をさせていただきますが、保健所は、御承知のように、我が国の公衆衛生行政におきまして、地域の中心的な機関といたしまして、母子保健、精神衛生、結核予防等々、広範多岐にわたります業務を実施いたしてまいっておりまして、地域の保健衛生水準の向上という使命をこれまで果たしてまいったと考えております。
今後ともこのような使命を十分果たしてまいりますためには、人口の高齢化でございますとか、あるいは疾病構造の変化等々に伴いましていろいろ変化をしてまいります地域のニーズに的確に対応した保健所運営を図っていくことが必要でございまして、このため、市町村や医療機関等と十分連携を図りながら、その業務の充実に努めていく必要があろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/183
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184・内藤功
○内藤功君 今の点、自治大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/184
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185・葉梨信行
○国務大臣(葉梨信行君) ただいま厚生省の方から答弁をいたしました、そのとおりであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/185
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186・内藤功
○内藤功君 そこで、政府委員に法案の中身についてただしたいと思います。大臣にお聞きしても余り中身のある答弁が出てこないような感じがいたしますので、失礼ですが、局長以下にお聞きしたいと思います。
まず、児童福祉法の二十四条の改正問題ですが、二十四条は、現行規定は、市町村長は、保育に欠けると認める児童を保育所に入所させて保育しなければならない、簡単に言いますとこういう現行規定であります。それを、「市町村は、」「保育する措置を採らなければならない。」と改正することになります。これはどんな改正の意味があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/186
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187・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 児童福祉法の二十四条の改正のうち「保育しなければならない。」というのが「保育する措置を採らなければならない。」となった点の意味でございますが、最初に二十四条の冒頭に出てまいります言葉は、現行条文では「市町村長は」となっております。これは機関委任事務としての執行者たる市町村長は、ということでございますが、今回団体委任事務化することによって「市町村は」という表現に改まっております。市町村という地方公共団体そのものが実施すると、こういう意味になるわけでございます。これに応じまして、従来「保育しなければならない」と、いわば市町村長の実行する事務という表現になっておったものが市町村という団体のとるべき措置として「保育する措置を採らなければならない」こういうふうに改めたわけでございまして、いわばこういった主語が変わったことによって述語もそれにふさわしい述語にしたと、こういうものでございます。条文の実質的な内容を変更するというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/187
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188・内藤功
○内藤功君 私は法律のあいまいな解釈が嫌いなものですからお聞きするんですが、市町村は保育しなければならない、でもいいんじゃないですか。おかしくないんじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/188
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189・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 厳密な議論ではそれが絶対にいかぬということは言えないかと存じますけれども、今回の改正では、「市町村は」という表現に合わせて措置をとるというのが適切であろう。さらにほかにも児童福祉法関係にはそういう措置をとるという表現がありますので、どちらかというとそれに統一するという意味も含めましてこういうことにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/189
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190・内藤功
○内藤功君 そうすると、私の言ったような立法の仕方も全く否定はなさらないということでありますが、私は、現行規定は「保育しなければならない」、非常に血の通う感じが出て非常にいい規定だと思っているんです、かねがね。それで、非常に広い規定で、憲法の精神がやはり法律の無味乾燥な言葉だけれども非常によく出ている規定だと思うんです。これを残しておきたいと思うんですね。それから「措置を採らなければならない。」、「措置」という言葉が一段階入ることによってこれは狭くなりませんか。例えば保育所の中にはいわゆる無認可というそういう保育所の存在が現実にあります。そういうものを考えてみた場合、「措置」という言葉を入れることによって直接すべてのあまねく子供に対して保育の手を差し伸べるというこの法の精神というものが狭く排除されることになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/190
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191・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 少なくとも立法の趣旨としてはそういうことは全く考えておりません。措置というのは確かにかたい感じ、いわば法律用語ということでかたい感じはいたしますけれども現在の保育行政の内容あるいはそういった実施の考え方、こういったものを実質的に変更するという考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/191
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192・内藤功
○内藤功君 私は、もとの「保育しなければならない」という言葉でこのままでいいんだという考え方を持っておりますが、では次に、関連して厚生大臣おいででございますので基本的な問題を一つお聞きしたいと思うんです。
憲法の二十五条の二項、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」国の責務でございますね。いわゆるナショナルミニマムというものを維持するだけではなくて、それを向上して増進させなきゃならぬというこれが国の責務であることははっきりしております。
本法案では保育でも母子保健でもすべてそのために全力を尽くすという責務が国に課せられていると思うんですが、今こういう市町村にこれらの福祉行政の事務を団体委任という形で移管することによって、財政の面でも実務の面でも非常にこれはナショナルミニマム、さらに地方のいろんな先進的な到達部分を引き下げていくことになるんじゃないかという憂いを大きくしているわけですが、担当所管の責任者である斎藤大臣といたしましてのこの点の憲法についての認識それから御決意を私はまずはっきりと伺っておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/192
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193・斎藤十朗
○国務大臣(斎藤十朗君) このたびのこの法律に基づきまして団体委任事務になります社会福祉事業等につきましても、これまで各市町村において相当程度定着をいたしてまいっておる事業であると考えております。そういう中で非常に多様化するニーズにこたえ、また、地域の実情に合わせた創意工夫を凝らした福祉が展開され、一層福祉が向上をしていくということを考えておるわけでございます。
一方において、今御指摘のありましたように、各地域におけるその福祉の水準が必ずしも一定でなくなりばらつきができるという憂いもあるのではないか。そしてそれが全体として福祉の後退、水準低下ということになるのではないかという心配も一方であろうかと思うわけであります。でありますので、その両点をいかに調和させてまいるかということにおいて私どもも努力をいたしてまいらなければならないと考えております。
今後とも福祉の向上という国の責務を果たしてまいるために最善の努力を払ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/193
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194・内藤功
○内藤功君 努力するというお言葉をいただきましたが、言葉だけでなく実際にやってもらいたい。本当にやるなら防衛費の一部を取ってもやっぱり福祉のために使うというぐらいの御答弁がいただけるかと期待をしておったのですが、ちょっと期待外れですね。それから地方の創意工夫ということを強調なされますが、やっぱり国ですからね、国がそこのところをしっかりしなきゃいかぬということを特に再度申し上げておきたいと思うんです。
そこで法案に戻りますが、この二十四条の冒頭に「政令で定める基準に従い」とあります。これは、私は何度読んでも法律の文言上どこに係るのかということが非常に迷うのでここで改めて聞いておきたいのです、どこに係るのです。「条例で定める」というところに係るのですか、あるいはその先の「保育に欠けるところがある」というところに係るのですか、あるいは「措置を採らなければならない。」というところに係るのですか。私は法律の解釈として三通りあると思うんですね。どこなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/194
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195・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 後ろの方にございます「保育所に入所させて保育する措置を採らなければならない。」に係ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/195
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196・内藤功
○内藤功君 わかりました。そうなりますとこの二十四条は、さきに言いました「政令で定める基準に従い」という大枠の中に入れられて、それが「措置を採らなければならない。」というところに結びつく、政令と措置が絡みつく、そして政令というものは将来国会にかけないでも変わるものですから、この三つのことで二十四条というものの持つ非常に画期的な意味、憲法二十五条の精神に基づいてできた児童福祉法二十四条というものがこの政令の基準というのを置いてそれを措置というところに結びつけて、しかも政令というものは変わることができるということによって非常に将来、今すぐは変わらないかもしれませんよ、将来の日本の福祉で見た場合に、二十四条は変質するのじゃないかあるいは変質しつつあるんじゃないか、こういう批判にはどうお答えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/196
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197・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 国として社会保障制度を実施する責務を負っておるわけでございますが、その社会保障の制度の具体的な実施については、今回地方公共団体の事務としていわゆる団体委任化しようというものでございます。その際に、やはり国の立場からは社会保障の基本的な仕組みは国が決める、そうしてその基本的な仕組みを地方公共団体に実施していただくわけでございまして、その基本的な仕組みは法律でまず決めるわけでございます。
現在の条文にも、改正後の条文でもございますけれども、保育に欠ける児童というものを市町村が責任を持って保育する、これが基本的な仕組みでございます。しかし、その「保育に欠ける」という法律上の文言は、どちらかといいますと非常に抽象的な文言でございますので、さらにそれを実施するに当たって政令で明確化をいたしたい、そしてその政令の基準によりまして各地方団体ごとに自主性が反映できるような条例を決めて実施していただきたい、こういう趣旨でございます。
したがって、政令というのは法律の趣旨を狭くしたり変えたりというものではありませんで、法律の趣旨を明確にするものとしての政令であると私どもは理解しております。そういう意味で、あくまでも法律の基本というものは今後とも守っていくように、政令の書き方によってそれが変わるというようなことがないように運用をしていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/197
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198・内藤功
○内藤功君 それでは政令の書き方ということで聞きましょう。
政令で定める基準というのは現在厚生省として当然お考え、素案があると思います。なければならぬと思うんですね。これを具体的にお述べいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/198
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199・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) まだ法案を御審議の段階でございますから固まった案というところまでは私どもいっておりません。ただ、法律を施行する場合には事務的にどういう政令をつくるべきかという点について私ども内部で検討しておる段階でございます。したがって、本当の素案と申しますか、そういうものでございますからまだ明確な表現等まで至っておりませんけれども、基本的な考えといたしましては、保護者の疾病あるいは労働等によりまして保育に欠ける場合に保育所に入所させる、こういうことでございます。
そこで、例えば母親が病気である、あるいは日中就労しておる、さらに同居の親族の病気を看護している場合というようにいろいろ典型的な場合を列記いたしまして、さらにそのほかに、そういったものと同一視し得るような状況がある場合にも、これに該当するものというように構成をいたしたいと考えておるわけでございます。現在保育所に入所させる場合の基準というものと実質的には同じものにしたいと考えておりまして、ただ、地方公共団体の自主的な判断によってそれぞれの地方の実情に応じた自主性というものが生かせるような形に持っていきたいと、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/199
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200・内藤功
○内藤功君 そうしますと、三十六年二月二十日の児発百二十九号ですか、入所措置基準、七項目ございますが、このとおりの内容になりますか、あるいはどこか変えるところが出てくるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/200
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201・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 基本的にはこれを変えずに政令をつくろうと思っています。ただ、どちらかといいますと、この表現などにつきましては政令としてのいろいろな条文上の整備もありますし、あるいはむしろこの通知ができた時代から見て大分時間もたっておりますから、現在の時点に照らしてみて適切な表現があればそれに改めるというような点はあろうかと思います。
また、あるいは政令というと、基本的な基準でございますから若干表現が簡略化されるという点はこれからの検討によって出てくるかと思います。しかし、基本としては従来の通知の線を踏襲していこう、その上に地方公共団体のそれぞれの実情が反映できるような部分をつくっていこう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/201
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202・内藤功
○内藤功君 法律、政令は表現で解釈するわけですからその表現が大事なんです。今言われた簡略化とかあるいは現状に合うというのは具体的にどんなことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/202
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203・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) それは現在の段階でまだ字句まで確定をしておるわけではございません。そういう面も含めて、実質的には現在の基準を踏襲するという立場で検討しておる、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/203
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204・内藤功
○内藤功君 くどいようですが、この一から七までここにありますけれども、これのどこですか。第何項のどこを変えるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/204
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205・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 個別にどの条項がどのように変わるかというところまではまだ詰まっておりません。しかし、実質的にここに掲げてある事項が盛り込まれるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/205
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206・内藤功
○内藤功君 そうすると、ここに書いてある七カ条のほかに二十四条で政令に織り込むものは何ですか。あるんですか、ないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/206
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207・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) この現在の通知の最後に「前各号に掲げるもののほか、それらの場合に照らして明らかにその児童の保育に欠けると市町村長が認めた事例につき、都道府県知事が承認した場合」というのがございます。これは現在の機関委任事務のもとにおける通知の文書になっておりますので、ここを団体委任事務にした場合の政令の基準としてふさわしいような表現に変えるということはあろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/207
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208・内藤功
○内藤功君 その答えはわかりました。それは当然ですね。それは了解しました。ほかにあるのかどうかという質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/208
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209・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 実質的にはここに書いてあることを大体そのまま踏襲いたしたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/209
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210・内藤功
○内藤功君 大体と言いますと、大体でないのがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/210
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211・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) つまり、個々の表現でございますけれども、最初に申し上げましたように、これが政令ということになりますと、政令としてのいろいろな表現、文章の用語とかスタイルとか、これはまた法制局の方で統一的に法令用語、あるいは法令の条文の書き方としての審査がございますから、そういう点において一字一句審査をいたしました結果、その点での表現上の変更はあろうかと思いますが、それは実質的に内容を変えるという意味でなくて、そういう形式上の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/211
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212・内藤功
○内藤功君 それでは聞きますが、昭和六十年十二月二十日、補助金問題検討会の報告の中で入所の「基本的要件に限って国が定め、具体的要件については、地方公共団体に委ねることとする」と書いてありますが、今回の改正二十四条及び関連政令はその報告のとおりの改正なのか、つけ加えるものがあるのかどうかと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/212
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213・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 今回政令をつくるに当たりましては、この補助金問題検討会の結論を最大限尊重して実施いたしたいと思っておるわけでございます。したがって、基本的仕組みは政令をもって定め、さらに条例で、各地方団体の実情が反映できるようなものをおつくりいただくような仕組みにいたしたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/213
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214・内藤功
○内藤功君 それでは、厚生省としてもし政令を制定した後、厚生省として条例はこういうふうにつくりなさいよというひな形のようなものを示して自治体を指導するということになるのか、そういうことはしないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/214
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215・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) ひな形という形になるかどうかは別といたしまして、条例の準則、あるいはモデルというようなものをつくってお示しをしたいと考えております。
ただ、実際に各地方ごとの実情はさまざまでございますから、そういった点についてはどういうような表現をするかと。仮にモデルというような形にした場合に、余り具体的にある一定の地方に当てはまるような表現というのはまたいかがかと思いますから、その点については工夫を要するところでございますが、いずれにしても、そういうような何らかの一つの参考となるものをつくりましてお示しをしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/215
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216・内藤功
○内藤功君 市町村に保育所のないところがあります。そういうところで改めて条例をつくろうとしないという場合の問題ですが、なぜ私がこれを殊さらに聞くかというと、最近、保育所をつくらないこともその地方自治体の自由であり、地方自治だということまで言う人がおるんです。そこで私はこれを聞くわけです。
そういう自治体があった場合、また、そういうことを法的立場にある自治体の人間が言った場合に、これも自治体の自治でこれは何らの指導もしないという態度でいくのか。どういうふうな態度で厚生省は臨むのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/216
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217・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 市町村においては、保育に欠ける児童があればそれを保育するというのは市町村の義務になるわけでございます。現在は市町村長の義務でありますが、今度団体委任にしますと市町村の義務になります。そうしますと、そういう状況がありながら保育所をつくらない、あるいは保育に欠ける児童を必要な措置をとらないということは、これはむしろ市町村として法令違反のような形になるわけであります。そういうことがないように私どもとしては指導をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/217
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218・内藤功
○内藤功君 従来の徴収金基準額表は、措置費国庫負担金交付の際の国と自治体との決裁基準であると同時に、自治体が保育料を定める際の基準であると政府は説明してまいりましたが、今回の改正が通るとなると、団体委任事務となる。そうすると、その法的性格はどのように変わってまいりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/218
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219・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 現在機関委任事務によって行われておりますが、保育所の保育料をどういう徴収の仕方をするかという意味での徴収基準と、それから国庫補助をどういうように精算するか、精算基準と二つの面を持っております。これが今度団体委任になりますと、国の示す費用負担基準というものは国の精算基準という性格を持つことになり、徴収基準としては直接はその性格が消えると、こういう変化が生じるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/219
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220・内藤功
○内藤功君 同時に、地方の要望により保育料についてのガイドラインあるいは準則を別につくるという答弁がございますが、そのことと今のあなたの答弁との関係はどう理解したらいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/220
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221・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 国の費用負担の基準は、先ほど申しましたように精算の基準でございます。それから、今お述べになりました国から地方に示す徴収の際のガイドライン、これは一つには国が精算をする場合にはこういう考え方で精算をするということをまず精算基準で示すわけでありますけれども、同時に地方自治体において、一方その精算基準に見合った徴収をするためには、こういう徴収方法をとれば大体その精算基準に合致すると、こういう意味で地方が徴収をする際の参考になるようなガイドラインを示したいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/221
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222・内藤功
○内藤功君 厚生省では、現行の徴収基準を四ないし五ランク程度に簡素化することも明らかにしておりますが、例えば簡素化して負担なしのAから全額負担のDまで仮に四ランクとした場合に、非常に多くの人が全額負担のDになっていくというような結果も生じてくるんじゃないかと、こういう心配がありますが、保護者負担の増をもたらす危険が大きいと思うんですが、どういう歯どめを考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/222
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223・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 所得階層を四つ、五つに分類するというところまでは私どもはまだ具体的に考えておりません。現在の階層区分をもう少し事務簡素化のために少なくしようと考えておりますけれども、四つ、五つというところまでやりますと、これは少し行き過ぎではないかという気がいたしますので、そこまで簡略化することは考えておりません。したがいまして、事務的に簡素化し、同時に、費用負担の面においても実質的な支障が生じないようなそういう姿にいたしたいと、こういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/223
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224・内藤功
○内藤功君 そうすると、五つ、六つまで考えているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/224
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225・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 今の段階ではもう少し多い段階にしたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/225
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226・内藤功
○内藤功君 補助金問題検討会の報告によりますと、福祉施設の最低基準の簡素合理化の必要がある、と言っております。特に給食調理員の配置基準の点ですが、こういう大事なことが削除されてはたまらないと、十二月四日に全国私立保育園連盟の要望書が厚生大臣に出され、私どもの方にも提出をされ、私これ読みまして、全部紹介する時間はありませんが、なるほど調理員それから保育所における子供たちの保育教育の中での給食の役割というのが大変大事なものだということを痛感をいたしました。これはぜひお読みいただきたいと思うんですが、この簡素合理化の中に、私はこういう子供たちの給食問題に触れるようなことが断じてあってはならぬと思うんです。一体どういうことをこの中で考えておられるか、法案に直に関係ありませんが、お答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/226
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227・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 社会福祉施設の最低基準の簡素合理化は、今回の団体委任事務化とは直接の関係はございません。この機会に行政改革の一環として見直しをしようというものでございます。
その基本的な考え方は、従来の最低基準というものがかなり細かいところまで決めておったために、実際上各施設における運営が非常に硬直化しているという面もありましょうし、またこれを決めた時点から見ますと、今日大分時代も変わってまいりましたので、改めて今日の時代に見合うような内容のものにするという面もございます。また、他の法令等において既に規定がされているものについて重複して最低基準を決めるということも、これはこの際見直した方がいいというようなことも考えられます。そしてまた、実際に施設を運営する段階において、水準を低下させるわけではないけれども、弾力的に運用をできる部分についてはそういう余地を持たせた方がいいだろうと、こういう点もあるわけでございます。
そういう点について総合的にこれを見直していきたいと考えておるわけでありますが、いずれにしても、現在の最低基準の水準というものを低下させることがないように実施をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/227
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228・内藤功
○内藤功君 これは最低基準の三条、四条にもはっきりと下げちゃいかぬと、上げなくちゃいかぬということが書いてあるんですから、これは厳しく申し上げておきたいと思います。
最後に、母子保健法の問題について、時間の関係で三点まとめて御質問したいと思う。
一つは、母子保健法が児童福祉法から単独立法として制定され、実施主体をこの法律によりまして都道府県知事とするに至ったこの理由、経緯について厚生省の御認識を伺いたいという点。
二点目は、現在保健婦ゼロの市町村が全国で幾つあるか、これに対する対策をどうすればよいか。
三点目は、市町村が主体となって母子保健を実施した場合に、大幅な人員増と民間委託というものが必至ではないかと私は憂えるのでありますが、この点についての対策、御認識、この点を簡潔にひとつお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/228
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229・坂本龍彦
○政府委員(坂本龍彦君) 最初に母子保健法の制定の理由でございますが、これは母子保健の向上に関する施策を強力に推進するために、健全な児童の出生及び育成の基盤ともなるべき母性の保護のための措置を講ずるとともに、乳幼児が健全な成長を遂げる上で欠くことのできない保健に関する対策の樹立強化を図る必要があるということで、母子保健法を制定をいたしたわけでございます。
それから、実施主体が都道府県となっていることについての経緯でございますが、実はこの法案を昭和四十年に政府が提出いたしました段階においては、この母子保健法の事務を市町村が行うこととなっておったわけでございます。その後国会において御審議の結果、都道府県知事が行うことに修正がされまして現在に至っておるという経緯がございます。
もし市町村において母子保健を実施するというようなことになりますと、確かにいろいろな面で大きな影響が出てまいることになろうかと思います。例えば保健婦の問題にいたしましても、その他の問題、そういう点につきまして、いずれにしても私どもは、現在の母子保健の水準というものをこれを低下させるということは避けるべきである。さらにむしろ向上を図らなければならない問題でございます。そういった問題について各方面の影響等も十分考慮しながらこの問題というものは検討していかなければならない、こういう認識を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/229
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230・竹中浩治
○政府委員(竹中浩治君) 先生がお話しの二番目の、保健婦が配置されていない市町村が全国に幾つあるか、また、これに対する対策いかんということでございます。
市町村が各種の保健事業を実施していきますために保健婦の設置を進めていくことは大変重要な問題でございまして、私どもこのために昭和五十三年度から市町村の保健婦設置に対する助成を行ってまいってきておりまして、さらに、五十七年度以降老人保健法が施行されましたのに伴いまして計画的な増員を図ってまいっておるところでございます。
この結果、昭和五十六年末に保健婦未設置市町村が四百二十一カ所ございましたが、昭和六十年末には二百一カ所とほぼ半減、大幅に減少しておるわけでございます。今後とも市町村に対しまして指導を強めまして、保健婦未設置市町村の解消にぜひとも努力をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/230
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231・岩本政光
○委員長(岩本政光君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110714889X00619861211/231
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