1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十一年十月三十一日(金曜日)
午後三時一分開議
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○議事日程 第八号
昭和六十一年十月三十一日
午後三時開議
第一 国務大臣の演説に関する件
第二 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/0
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001・藤田正明
○議長(藤田正明君) これより会議を開きます。
日程第一 国務大臣の演説に関する件
大蔵大臣から財政について発言を求められております。これより発言を許します。宮澤大蔵大臣。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/1
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002・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) ここに、昭和六十一年度補正予算の御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、補正予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
戦後四十年余り、我が国は国際環境に恵まれる中で、国民の勤勉と創意により、今や世界経済の約一割を占めるまで成長を遂げ、国民生活もまた向上いたしました。こうした中で、我が国は、国際社会からその国力にふさわしい貢献を求められるようになっております。
私は先般、IMF・世銀総会等一連の会議に出席し、各国の大蔵大臣及び中央銀行総裁と意見交換を行ってまいりましたが、どの会議においても諸外国の我が国に対する強い関心と期待が表明されました。
石油価格や金利の低下等により、世界経済は全体としては好影響を受けるものと見られますが、他方、米国の財政赤字、各国の大幅な対外不均衡、依然として厳しい西欧諸国の雇用情勢等の課題を抱えており、それらを背景として、欧米諸国を中心に保護主義の高まりが懸念されております。
こうした中で、我が国は大幅な経常収支の黒字を続けておりますが、このような対外不均衡の是正について各国に対しその改善の努力を求めると同時に、我が国としても国際的な地位に応じた責務を自覚し、調和ある対外経済関係を形成するため、市場の開放、内需の拡大、経済構造の調整等に努めていく必要があります。
昨年来のドル高修正は、やがて大幅な対外不均衡の是正に寄与していくと期待されます。しかしながら、当面、我が国経済を見ますと、円レートの急速な上昇の中で、製造業を中心に企業の業況判断には停滞感が広がっております。また雇用情勢も弱含みで推移しております。
このような今日の経済情勢の中で、政府は、円レートの動向とその国内経済に及ぼす影響に周到な注意を払いつつ、適切な経済運営に努めてまいりましたが、とりわけ内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保することが緊要の課題となってきております。
他方、高齢化の進展等今後の社会経済情勢の変化に弾力的に対応し、我が国経済社会の活力を今後においても維持していくため、財政の対応力の回復を図る重要性はますます高まっております。
昭和六十一年度末の公債残高は百四十兆円を超え、国債費が歳出予算の二割を占めるなど、国の財政事情は極めて厳しく、引き続き財政改革を強力に推進することは喫緊の国民的課題であります。
行財政の改革を進めていくに当たっては、種々の困難が伴うものと思われますが、それに憶することなく、さらに一層の努力を払い着実にその歩を進めていく所存であります。昭和六十二年度予算編成に当たりましても、制度の徹底的な見直し、優先順位の厳しい選択を行い、一層の経費の節減合理化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上申し上げましたような状況を踏まえ、政府は、行財政改革路線を堅持するという基本方針のもとで、内外経済情勢に適切に対処するため最大限の努力を行うこととし、去る九月、事業規模約三兆六千億円に及ぶ総合経済対策を決定いたしました。
本対策においては、まず、事業費三兆円の公共投資等の追加を行うこととしております。
具体的には、公共事業で一兆四千億円の追加を行うこととし、災害復旧事業五千五百億円、一般公共事業八千五百億円を確保するほか、日本道路公団等の事業費一千億円、地方単独事業の追加要請八千億円、住宅金融公庫の融資制度の拡充等による事業規模の追加七千億円を確保することとしております。
また、都市再開発、公共的施設の整備等に民間活力の一層の活用を図るため、規制緩和、インセンティブの付与等をさらに進めます。
さらに、産業構造の国際化の流れの中で、円高などの厳しい環境変化に直面している中小企業等がこれに積極的に対応し得るよう、これまでの対策の拡充に加え、地域中小企業に対する総合的な支援策を講じてまいります。
その他、雇用対策、円高等による差益の還元等を対策に盛り込んでおります。
政府は今回の総合経済対策の着実な実行を図ることにより内外の要請にこたえていきたいと考えておりますが、ここに本対策の施策の実現をも図るため、昭和六十一年度補正予算を国会に提出いたしました。
税制につきましては、税制調査会において、昨年九月以来の一年余にわたる精力的な御審議を経て、去る十月二十八日、税制の抜本的見直しについての答申が取りまとめられたところであります。
答申におきましては、中堅サラリーマンの負担軽減を中心とした所得課税の軽減合理化や法人課税の見直しについて検討の具体的方向が明らかにされる一方、間接税や資産税、あるいは利子配当課税等のあり方について基本的な考え方が示されるなど、税制全般にわたる包括的、一体的指針が示されております。
税制は国、地方を通じ財政の根幹をなすものであり、また国民生活と密接に関連するものであります。この際、現行税制のゆがみ、ひずみ、重圧感を除去し、国民の理解と信頼に裏づけられた税制を確立し、安定的な歳入構造を確保することは、ぜひともなし遂げなければならない重要な課題であると考えます。
政府といたしましては、答申において示された基本的方向に沿って抜本的な税制改革案をできるだけ早期に一体的に取りまとめ、国会の御審議を経て、その実現を図るべく、かたい決意で取り組んでまいる所存であります。
経済全般にわたる国際化の進展等に対応して、金融の自由化及び円の国際化を進めていくことは、我が国経済の効率化と発展に資するものであると同時に、我が国が世界経済の発展に貢献していく上で有意義なものであると考えております。このため、スケジュールを示しつつ、金利の自由化、短期金融市場の整備、資本市場の国際化、ユーロ円市場の発展のための措置等を逐次実施してまいりました。
現在、十一月の証券投資顧問業法の施行、十二月のオフショア市場の発足に向けて準備を進めているところであります。さらに、来年春までに一億円以上の大口定期預金金利の自由化及びMMCの条件緩和を行うこととするなど、今後とも、適切な環境整備を図りつつ、金融の自由化及び円の国際化を積極的に進めてまいりたいと考えております。
次に、今国会に提出いたしました昭和六十一年度補正予算の大要について御説明申し上げます。
さきに御説明いたしました総合経済対策を実施するため、公共事業関係費の追加として、災害復旧等事業費四千百六十億円のほか、臨時緊急の措置として一般公共事業関係費一千三百三十億円を計上するとともに、一般公共事業に係る所要の国庫債務負担行為の追加を行い、事業費一兆四千億円を確保することとし、また民間活力活用推進対策費及び中小企業等特別対策費として二百八十五億円を計上することといたしております。そのほか給与改善費、北洋漁業救済対策費、義務的経費の追加、国民健康保険特別交付金等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。
他方、歳入面におきましては、税収につきまして、最近までの収入実績等を勘案すると、一兆一千二百億円の減収が避けられない見通しとなり、また税外収入も一千三百三十三億円の減収が見込まれることとなりました。
このような状況におきまして、行財政改革路線を堅持するため、特例公債の増発を回避するよう歳入歳出両面にわたり最大限の努力を払ったところであります。
まず、可能な限り既定経費の節減に努めるとともに、予備費の減額を行い、さらに、国債整理基金の状況にかんがみ、普通国債償還財源の予算繰り入れ四千百億円を行わないこととするほか、所得税及び法人税の収入見込み額が減少することに伴い地方交付税交付金を四千五百二億円減額することといたしました。しかし、なお財源が不足することから、前年度の決算上の純剰余金四千四百五億円について、臨時異例の措置ではありますが、特例公債の増発を回避するためやむを得ずその全額を不足財源に充当するとともに、公共事業の追加相当額については建設公債五千四百九十億円を発行することといたしました。なお、この剰余金の措置につきましては、別途、昭和六十年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
これらの結果、昭和六十一年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し二千六百三十八億円減少して、五十三兆八千二百四十八億円となっております。
地方財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が四千五百二億円減額されますが、地方団体の円滑な財政運営を確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計において資金運用部から同額の借り入れを行うことにより、当初予算額どおりの地方交付税総額を確保することといたしております。
以上の一般会計予算補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても、所要の補正を行うことといたしております。
財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、既に弾力条項を発動して、日本道路公団等の事業費の追加に要する資金につき機動的に対処してまいりましたが、今回の予算補正においても、空港整備特別会計等について、所要の追加を行うことといたしております。
以上、昭和六十一年度の補正予算の大要を御説明申し上げました。何とぞ、御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
なお、既に国会に提出しております国鉄改革関連法案及び老人保健法改正法案につきましては、いずれも予算編成と極めて密接な関連を持つ重要な法案でございますので、速やかに成立いたしますようお願いを申し上げます。今や、国際社会における我が国の役割が高まる中で、財政状況は厳しく、我が国経済は内外とも難しい局面を迎えております。来るべき新たな世紀に向け、これらの諸課題を解決するため国民各位の一層の御理解と御協力をお願いいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/2
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003・藤田正明
○議長(藤田正明君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。福間知之君。
〔福間知之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/3
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004・福間知之
○福間知之君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和六十一年度補正予算三案の趣旨説明に対し質問し、当面する財政経済に関する諸課題につきまして、今多くの国民が政府にただしてほしいと願っている幾つかの点を伺ってまいります。
昨年九月のニューヨークG5から一年、国際通貨情勢はそれまでのドル高からドル安へ百八十度の転換をいたし、一方で円は円高への道を一直線に進んでまいりました。もとより、円レートの上昇は、我が国経済力の評価そのものであり、好ましいはずのものではありますが、しかし今回の上昇のスピードは余りにも急激に過ぎ、わずか一年で二百四十円から百五十円台へ実に八十円を超える円高となっては、いかに競争力のある我が国産業といえども、その対応は極めて困難であります。
この間、我が国経済は、輸出を中心とする製造業の生産活動に急激なブレーキがかかり、その失速ぶりは、六十一年一—三月のGNPが五十年以来実に十一年ぶりのマイナスとなったことからも、いかに大きな打撃であったかうかがうことができるのであります。総じて景気の現状は、個人消費、住宅建設及び一部非製造業の活動に若干の明るさが見える一方で、このところ連日のように報道される鉄鋼、造船、金属鉱山、繊維等多くの不況業種を抱える製造業の著しい落ち込みという二極分化の傾向をたどっておりますが、経済の不況感は和らぐどころか、ますます強まる方向にあると言わざるを得ないのであります。
これまで楽観論に終始してきた政府も、重い腰をようやく上げ、八月の月例経済報告からは「景気拡大」という文字を削除はしましたが、政府の事態の深刻さに対する認識の誤りと、円高メリットが年度後半の景気を盛り上げるとの甘い期待が対策のおくれを招き、円高不況の傷口を広げてまいったと断言しても過言ではないと言えるのですが、政府の認識を伺いたいと思うのであります。
以下、順次具体的に質問をしてまいります。
まず、円高対策についてであります。
今回同様、円高で苦しんだ昭和五十二年から五十三年の場合と比較し、今回の円高がいかに急激かつ産業破壊的であるか、政府発表の諸統計によっても明らかであります。昨年十一月以降本年九月までの円高による企業倒産は、実に四百三十二件に達し、前回同期間の百五十八件に比べ二・七倍にもなっており、しかもなお、倒産は依然高水準にあって、次第に中型、大型の倒産が進行しております。そして、このような企業倒産の多発に伴って雇用面への悪影響も鮮明化しており、最近月の失業率は、前回の二・二%から二・八ないし二・九%に高どまりしたまま三%突破も目前という状況にあります。
また、造船、海運、石炭、鉄鋼、金属鉱山といった構造不況業種には、およそ数十万人と言われる企業内余剰人員、すなわち潜在失業者が存在しており、事態は発表数字よりはるかに深刻だと思うのであります。
さらに、企業収益の落ち込みも二社に一社が前年比減益と言われ、我が国産業はまさに第一次石油ショック以来の円高デフレの直撃にあえいでいるのが実情であります。
そもそも、今回の円高は、アメリカ・レーガン政権の経済政策の失敗によって生じた膨大な貿易赤字が要因であります。その赤字削減のために、G5合意という人為的手段によってドル安・円高をつくり出し、もって貿易赤字のツケを一気に我が国産業経済に押しつけようとしているものなのであります。
しかし、七月に一ドル百五十円台の超円高相場が定着して以降四カ月が経過しても、アメリカの貿易赤字は一向に改善の気配が見られないのみならず、我が国貿易黒字も、Jカーブ効果が働いているとはいえ、減少するどころか、むしろ増加さえしているではありませんか。そして今年度黒字が七百億ドルを超えるとも見られているのです。このような状況の中で、多くの我が国企業は血のにじむような努力にもかかわらず、ついに耐え切れずに国内生産を海外生産に切りかえ始めており、それに伴って国内雇用、産業の空洞化が現実の問題として憂慮される状況になってきておりますが、政府はこの事態をどう認識しておられますか。
こうした深刻な円高は、政府みずからがアメリカの言いなりになり、つくり出したにもかかわらず、政府の認識は極めて楽観的であり、我々がかねがね円高の影響は極めて甚大で早期の積極的対策が必要だと主張してきたことをも無視して、常に年度後半になれば円高のメリットが浸透し、景気は上向くとのバラ色の夢を振りまいてまいりましたが、今や政府の主張は完全に誤りであったことが証明されたのであります。
また、昨日、日銀は〇・五%の公定歩合の引き下げを表明し、本日ただいま臨時政策委員会が開かれこれを決定するとのことですが、判断を誤った政府に引きずられて財政の出番をおくらせた政府と平仄を合わせようとしたものであって、完全に時期おくれの措置であります。重病の日本経済にカンフル注射といった感を免れません。この措置は、反面、預貯金金利引き下げによる庶民いじめにつながることも否めません。この責任を政府はどうするつもりですか。
また、深刻化する円高による不況、増加する失業者への雇用確保、進行する産業の空洞化にどのように対処しようとするのか。さらに、いわゆる前川レポートを受けて政府が策定した経済構造調整推進要綱の具体化のための実施計画を決めたと報じられていますが、その内容、タイムスケジュールを伺いたいと思います。またあわせて、今後の国際経済に対する政府の基本姿勢を伺いたいと思うのであります。
次に、政府の経済見通しの誤りについてお伺いをします。
六十一年度政府経済見通しは、既に始まっていた円高の中で実に四%の見通しを立てたのであります。しかし、政府みずからの対応のまずさが招いた一層の円高によって、その実現は今日完全に不可能となっております。ほとんどの民間研究機関が二ないし三%へと下方修正をしているにもかかわりませず、政府だけが一たんは断念しかかった四%成長に今日なおも固執しているのは一体なぜですか。四%が対外公約だからでありますか。異常な円高という煮え湯を飲まされ、その上で実現不可能な成長を対外公約としたのは中曽根総理自身であります。しかし、今日まで政府は四%成長実現のためにどう対処してきたと言うのでしょうか。詳細かつ具体的な説明を求めるものであります。
政府は、予想外に深刻な円高に慌てて、去る九月十九日、総合経済対策を決定し、ただいまも宮澤大蔵大臣が述べられましたが、しかし事業規模三兆六千億円と言われる対策の中身は、公共事業費の国庫債務負担行為や住宅金融公庫の融資戸数の追加等で水増しされ、実際に年度内に支出される額は多く見積もっても一兆円強、GNPに対して〇・三%程度の押し上げ効果がせいぜいで、政府の一%近い見積もりは明らかに過大であります。これによっても四%へ限りなく近づけようとするもくろみは実現せず、公約違反だけが残ることは火を見るよりも明らかであります。この点、政府はどう考えますか。
円高不況対策という国内要因に加え、国際収支の不均衡是正という国際的要請によって、かつてない内需拡大への期待が内外から高まっているこの時期に、この程度の対策では焼け石に水と批判を受けてもやむを得ないのではないでしょうか。不況期にこそ財政が思い切った対策をとることは近代財政政策の常識であるにもかかわらず、政府が野党の主張する五兆円規模の対策をなぜとろうとしなかったのか理解に苦しみます。政府は、本日提出されたこの程度の補正予算で四%成長が実現可能と本気で考えていらっしゃるのかどうか、お伺いします。
また、対外公約であればなおのこと、実現不可能とわかったその時点で新たな目標を掲げる道を選択することこそ必要ではありませんか。これでは、実現不可能な四%成長にしがみつき、問題の先送りで当面を糊塗しようとしているにすぎず、早晩、目標達成不可能が明らかとなったとき、政府はこの責任をどうとる考えなのか、しかとお考えを伺っておきたいのであります。
次に、税収見積もりの誤りについて伺います。
既に指摘したとおり、六十一年度経済見通しは、円高不況にもかかわらず、当初から政府の楽観論の中で実現不可能な高い成長率を掲げてきたのであります。それに基づいてはじいた六十一年度税収は、当然高く、年度途上の予期せぬ出来事ならいざ知らず、政府みずからが招いた円高の中でそのような初歩的な誤りを犯した責任は極めて重大であります。
税収減は、景気後退による賃金、賞与等の伸び悩みによる所得税の減少及び企業収益の落ち込みによる法人税の減少など、合わせて一兆一千二百億円と見積もられておりますが、果たして打ち続く厳しい状況の中でその程度の落ち込みで済むのでありましょうか。もし税収が一段と落ち込むようなことになれば、赤字公債の増発は必至であるのみならず、六十二年度税収にもさらに大きな影響を及ぼすものであり、中曽根内閣の六十五年度赤字公債脱却という財政再建目標は、もはや完全に崩壊したと言わざるを得ないのであります。
中曽根内閣の四年間は、五十七年の世界同時不況からの回復過程と重なって、幸運にも追い風に乗った財政運営でありました。しかし、昨年九月からの円高を境に風向きが完全に逆転し、今後は向かい風の中での経済財政運営を余儀なくされようとしているのであります。今後はこれまで以上に経済政策に意を用いていかなければならないにもかかわらず、中曽根内閣の緊縮一本やりのもとでは、景気不振による税収減によってますます財政再建は遠のいていく危険が高いことを指摘しないわけにはまいりません。政府の事態に対する判断の誤りが招いた税収不足の責任と、さらに一層の税収減が起こる可能性について政府の明確な判断と認識を伺うとともに、もし一層の税収減となり二次補正を余儀なくされるような事態となった場合、どう責任をとられるかを伺いたいのであります。
次に、税制改革についてお伺いをいたします。
昭和二十五年のシャウプ税制改革から三十五年、この間高度成長から低成長に移行した今日、我が国の税制には不公平、不公正なゆがみ、ひずみが生じていることは多くの国民が感じているところであります。しかし、このシャウプ税制以来の抜本改革を目指した中曽根内閣のもとで出された政府税調の最終答申を見ると、果たしてこれで改革の基本である公平、公正、簡素、選択、活力といった観点に照らし、抜本改革と言えるのかとの疑念を抱かざるを得ないのであります。
確かに、所得税、住民税の税率は六段階、四段階へと簡素化され、給与所得控除も実額控除の選択が認められようとしております。しかし、なおよく見ると、所得階層によって軽減率にかなり大きな差異があり、特に四百万円から六百万円の中堅世帯の軽減率が異常に低いのは、公平、公正の視点からその減税方式に問題があると思うのですが、いかがですか。
さらに問題なのは、減税財源づくりの方策であります。総理は、これまで繰り返し間接税の導入について、多段階、普遍的、網羅的で流通各段階に投網をかけるような税は導入しないと答弁してまいりました。そうであるならば、政府税調答申の新しいタイプの間接税として提起しているA、B、Cそれぞれの案は、総理が導入しないと答弁した間接税に照らし、どういう位置づけになるのでありましょうか。少なくともC案のいわゆる日本型付加価値税は、多段階、普遍的、網羅的であり、総理の導入しないと答弁した税制そのものと考えますが、総理の判断を伺うとともに、あわせてこのC案、日本型付加価値税は導入しないということをここで明確に答弁するように求めるものであります。
次に、地価問題について伺います。
最近の経済の停滞と金融緩和によって、いわゆる金余り現象が生じて多くのマネーゲームと言われる行為が流行し、さらに都市部を中心に底地買いや土地転がしによる異常な地価の高騰が続いていることはマスコミ報道等によって周知のところであります。特に都心部の狂乱的な地価上昇は、中曽根内閣の民括利用の都市再開発計画が火に油を注ぐ役割を果たしたものであることは否めない事実であります。一坪一億円という、庶民から見
ればおよそ想像もつかない土地価格は、周辺の地価騰貴を招き庶民生活の中にも固定資産税の上昇という形で被害が及んできているばかりか、政府が不況対策の目玉にしようとしている住宅政策や公共事業の推進にも甚大な弊害を及ぼすことは必至であり、まさに百害あって一利なしであります。
確かに、政府は五十九、六十年の土地白書で上昇する地価動向に警告を発してきました。しかし、それは単なる警告でしかなく、地価抑制の具体策は何一つとられてこなかったのではありませんか。東京都が条例改正を急いでいるのに対し、政府の対策は常に後手後手に回っているではありませんか。政府のこれまでにとってきた地価抑制策と今後の対応、あわせて都市部の土地供給対策をどう進めていくおつもりなのか伺っておきたいと思います。
さらに、今回の地価上昇は、やはり実物経済の不振によって生じた金余りが背景にありますが、金余りは地価上昇ばかりでなく株式や金(きん)など、実物経済と離れたところで投機的動きを一層強め、さながら日本はオール投機に踊っているかのようであります。低成長となって所得が伸びなくなった庶民が、より高い金利の預金に預けかえるささやかな財テクまでも否定するものではありませんが、日本全国が投機的なマネーゲームに走ることは、一歩間違えば我が国経済を不安と混乱に陥れかねない危険をはらんでいることを忘れてはなりません。政府は、今日の実物経済の沈滞の中での投機的マネーゲームに対しどのような判断と認識を持っておられるのか、伺いたいと思います。
最後に、六十一年度当初予算審議の途上、与野党間で合意された年内所得税減税の約束が我々の強い要求にもかかわらず本補正予算に盛り込まれなかったことは、まことに遺憾であり、残念であります。しかし、このことは公党間の約束であります。その約束を政府・自民党がみずから破るようなことがあるならば、もはや民主主義政治とは言い得ません。我々はなお引き続き約束の履行を要求するものでありますが、この点に関し、与党総裁である中曽根総理はどのような認識を持ち、責任を果たす決意なのかお伺いをいたします。
以上で私の質問を終わります。政府の誠意ある答弁を求める次第であります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/4
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005・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 福間議員にお答えをいたします。
まず、経済情勢の認識の問題でございますが、おっしゃいますように、内需と輸出の間に乖離が出てまいりまして、内需は依然として旺盛でございます。特に消費、それから住宅、それから非製造業の投資。ところが、輸出関係におきまして円高の陰りが強くなってまいりました。このような二面性を今持ってきつつある状態で、これが先行き雇用にどういうふうに影響してくるか心配しておるところでございます。
政府は、四月、五月の二回にわたり、それから先般の九月に、これがための経済対策を順次決定して努力してきたところでございます。特に、先般におきましては、「昭和六十一年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」の考え方にのっとりまして、内需の拡大を図り雇用を確保する、それらのために公共投資の拡大等を中心にした政策を今御提示申し上げておるところでございます。
これらの政策を着実に遂行し、また、ただいま報告を受けましたが、日本銀行も公定歩合を三%に下げたようでございます。これらの金融の弾力的運営等もあわせ行いますことによりまして、所期の目的を達するように全力を振るってまいるつもりでおります。
円高の原因の問題でございますが、これは膨大な貿易黒字及び日本の旺盛な競争力、こういうものが経済の基礎条件としてありまして円高が招致されたと考えております。
為替相場の急な乱高下というものは世界経済の運営のためにも芳しくないものでございますし、二国間においてもそのようなことでございますので、我々としては緩やかな安定を得るように今後とも努力してまいるつもりでおります。
今回、諸般の対策を決定いたしたのも、内需振興を中心にいたしまして経済の基礎条件を整えよう、そういう考えに伴って行うものでございます。
円高に伴いまして雇用の問題が心配されておりますけれども、海外生産の動き等が活発化いたしまして、いわゆる産業の空洞化現象ということも心配されておるところでございます。
これらに対しましては、新しい技術革新あるいは情報化の成果を生かす、あるいは流通やそのほかのいわゆるハードでないソフトの面等の産業の成長を図るという努力を行いまして、雇用機会の創出に全力を振るって努力してまいりたいと思っておるところでございます。
公定歩合につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。
次に、国際経済への対応でございますが、やはり内需の振興と、それから国際経済に調和するための経済構造の転換、改革、この二つを我々としても積極的に努力してまいりたいと思っております。
米国の財政赤字、各国の経常収支の不均衡及び西欧諸国の厳しい雇用情勢、日本の膨大な黒字の突出、こういうようなものが世界経済における障害となっていると言われております。
これらの問題につきましては、政策調整を各国と共通に努力いたしまして、自由貿易をさらに推進するという線で、我々としては引き続き努力してまいるつもりでおります。今回の総合経済対策もその一環であると御認識願いたいと思うのでございます。
次に、経済構造調整推進要綱の実施計画でございますが、十月二十八日に開催された政府・与党経済構造調整推進本部におきまして、その要綱が決定されてからほぼ半年経過したことにかんがみまして、それに掲げられた施策全般の実施状況を踏まえて、要綱に即して、さらに内需の拡大、国際的に調和のとれた産業構造への転換等七つの分野について、現在の状況のもとでできる限りそれぞれの施策の実施年月等も明らかにした今後の予定を策定したところでありまして、今後この線に沿いまして着実に推進していくつもりでおります。
四%成長の問題でございますが、政府は四月、五月あるいは今回の九月等の努力を通じ、四%成長に向かって懸命の努力をしてきたところでございます。現在までの情勢を見ますと、内需の方は十分その期待にこたえておるのでありますが、貿易関係の面からマイナスが出てまいりまして、これが危ぶまれておるというのが実態でございます。
今回、内需振興のための政策を行いましたのも、これらの情勢を踏まえて実行したところであります。これらの政策を有効に着実に展開いたしまして、内需をもって外需の不足を補う、そういう線で努力してまいりたいと思っております。
次に、歳入欠陥の問題でございます。
円レートの動向等の情勢から見まして、経済の成長に停滞と陰りが見えてきつつあります。そういう意味におきまして、今回、事業規模三兆六千億円に及ぶ総合経済対策を決定したところでございます。
内需の振興については先ほど申し上げたとおりでございますけれども、歳入につきましては、大蔵省におきまして、各項目について積み上げ的に点検をいたしました。その結果、約一兆一千億に及ぶ歳入欠陥が見込まれまして、今回予算措置をした次第でございます。まことに遺憾な事態でございますが、やむを得ずこのような措置を講じさしていただいたところでございます。
次に、六十五年度特例公債の脱却の問題でございますが、この努力目標は容易ならざることではありますけれども、全力を挙げて今後とも取り組んでまいるつもりで、旗はおろさないという考えに立っております。
予算編成のたびごとに、いろいろな経費の削減、節約あるいは金融政策の弾力的運営、経済政策あるいは国有財産の売却等々、そういうあらゆるものを組み合わせいたしまして、この目的を達するように努力してまいりたいと思っておるところでございます。
いわゆる間接税の問題でございますが、選挙等で申し上げ、あるいは国会において申し上げました私の公約は守るつもりでおります。
御提案のいわゆるABC型に関する評価の問題でございますが、これらはいずれも、その実態、内容がどういうものになるかという具体的な案が出てまいりませんと、これは公約に反するかしないかという判定はできにくいのでありまして、もう少し時間をかけて検討さしていただきたいと思っておるところで、いずれにせよ、公約違反をやることは行いません。
次に、地価の対策の問題でございます。
地価は、全国的には安定しておるのでありますが、東京の都心部商業地区等において上昇してきている、急騰しているという部分がございます。
これらにつきましては、何といってもやはり供給を増加するということが基本であると思います。それと同時に、投機的な土地取引を抑制するために国土利用計画法の的確な運用等に努めてまいりたいと考えておるところであります。
現在の金余り現象に関する御指摘でございますが、最近、個人、法人部門の資産運用において収益性志向が強まっていることは事実であります。しかし、このこと自体は経済合理性にかなったものでありまして、一概に否定すべきものではないと思うのであります。
しかし、そのようなことがいたずらに投機的なものになったり、あるいは善良な人たちが被害を受けることがないように政府としても十分注意してまいりたいと思っておるところです。
けさも消費者保護会議、消費者関係の閣僚会議等も開きまして、いわゆる最近の抵当証券等に対する問題等についてもいろいろ対策を練るように話したところでございます。
それから、減税の問題でございますが、いわゆる所得税減税、政策減税の問題については、去る十月十六日の与野党国対委員長会談における合意を踏まえまして、今、実務者会談において協議が行われており、政府としてはその推移を注意深く見守っておるところでございます。
残余の答弁は関係閣僚がいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/5
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006・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 昨年九月以来のいわゆる為替調整をどう見ておるかという最初のお尋ねでございました。
長い目で見ましたら、自分の国の通貨の価値が上がることは、それ自身は決して悪いことではないと思いますし、原燃料を海外から買っております我が国のような場合、現在の卸売物価が一〇%以上下がっておりますようなことはメリットがあることでございます。しかし、そうではありましても、いかにも過去一年に起こりましたことは急激であり過ぎましたし、幅も大き過ぎました。我が国の経済がこれに十分に対応できなかったことは明らかであると思います。
殊に、ただいま製造業を中心に企業の業況判断は非常に停滞感が広がっておりますし、雇用情勢もいわば弱含みであるということはもう疑いの入らないところでございます。
そういう状況の中で、先般総合経済対策を立てまして、このたび補正予算の御審議を願っておるわけでございますが、この総合経済対策三兆六千億円というのは過去最大の規模のものでございます。財政の制約がございませんと、もっといろいろなことができるに違いないという、そういう苦しみを私自身感じておりますが、現在の中でやれるだけのことをやったという感じでおりまして、何とかこの早期着実な実施に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
それから、そういう状況の中で我が国は国際経済へどういう基本姿勢で取り組むかというお尋ねでございました。
これは先般のIMF等々の機会に行われました七カ国蔵相会議等々いろいろな場で議論されたことでございますが、ここまでまいりますと、為替レートが大幅に動くということ、不安定であるということは結局、経済成長の阻害要因になる。したがって、各国が政策協調をすることによって、為替レートに大きな影響を与えずとも、この世界の不均衡を是正することが望ましい、それは政策協調であるということが結論でありまして、まさにそのとおりであろうと思います。先般、総合経済対策を決定いたしましたのも、また、ちょうど福間議員の御質問の最中に、日本銀行が公定歩合を三・五から三に引き下げまして、明日から実施するという報告がございましたので、前例によりまして御報告を申し上げますが、このような措置も、そのような政策協調の一環として、国内の景況、物価、為替等を勘案して行われたものというふうに考えるわけでございます。時宜に適した措置と存じます。
次に、税収の見積もりでございますが、大きな歳入欠陥を出しましてまことに申しわけないことであります。現在の段階で最善の見積もりをいたしたつもりでございますが、それによりますと、所得税が四千二百六十億円、法人税九千八百十億円、石油税二千五十億円、関税七百五十億円等々が歳入不足の要因でございます。プラスが見込めますものは相続税の二千百九十億円、有価証券取引税の三千四百八十億円程度でございまして、差し引きまして、一兆一千二百億円の歳入欠陥を見込んでおります。現在といたしましては、最善のと申しますか、先まで考えまして積み上げて見通したつもりでございますので、大きな誤りはないものと考えております。
それから、税制調査会の答申の中の所得税、これがいかがなものであろうかというお尋ねでございましたわけですが、いわゆる中堅のサラリーマンの負担圧迫感を何とか緩和したいというのが、今回の答申の主たるねらいであると思います。したがいまして、配偶者の特別控除でありますとか、あるいは給与所得者に対する実額控除を認めるとかいう点、並びに累進構造にいたしましても、税率の刻みにいたしましても、四つの案が出ておりますけれども、大体中心になりますものは、年収八百万あるいは九百万、これは夫婦子供二人という給与所得者でございますが、その辺のところの重税感を何とか緩和したい、そういうねらいを持っておるものというふうに考えておるわけでございます。
それから最後に、個人にしても法人にしても、いわゆるマネーゲームといったような今の風潮をどう思うかということでございました。
これはまあ収益性志向といえばそういうことでございますけれども、例えば、製造業がその製造業の本来の目的をいわば放てきしてマネーゲームに没頭するというようなことは、長い目で見ますといろいろ問題があるのではないか。これは米国にそういう傾向が大変著しく、我が国にもどうもそういうことが見えております。どこまでがどうということは申しにくいことでございますけれども、こういうことが長くまた一般に広がるということは恐らく好ましいことではないというふうに個人としては考えております。(拍手)
〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/6
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007・田村元
○国務大臣(田村元君) 我が国の経済は、円高の急速な進展等によりまして、内需と外需、製造業と非製造業の間に景気の二面性がより明瞭になってまいりました。特に鉄鋼、合繊等、比較的輸出比率の高いものでは、円高により輸出代金の円換算手取りの減少、輸出数量の減少が見られます。さらに、景気の低迷、輸入の増加による需要の減少、国内価格の下落等により企業収益が悪化しております。非鉄金属、アルミ、銅、鉛、亜鉛等でございますが、非鉄金属につきましては、国際相場商品であるため円高の進行によって国内市況が大幅に下落し、経営状況は極めて悪化しております。
このような経済情勢にかんがみまして、九月十九日に内需拡大策と中小企業対策等を柱とした事業規模三兆六千億円強の総合経済対策が策定され、本日、建設国債五千四百九十億円の増発等を内容とする昭和六十一年度補正予算案の提出の閣議決定が行われたところでございます。今後この対策の効果を早期に発揮させるために、補正予算の早期成立を期するとともに、対策の着実な実施に全力を挙げて景気の浮揚に努めることが極めて重要と考えておりまして、通産省といたしましても、四%成長を目指して総合経済対策の着実な実施に努める所存でございます。
次に、我が国の高い経済力の蓄積を生かしまして、海外直接投資等を通じて産業の国際的展開を進めることが我が国として指向すべき基本的方向であり、これにより国際的に調和のとれた経済構造の実現、世界経済の活性化と拡大均衡に貢献するものと認識いたしております。
同時に、国内におきましては、内需中心の高目の経済成長を図りますとともに、新たな技術革
新、情報化の成果を生かすこと等によりまして、産業の新たな発展分野の開拓を図り、多様な雇用機会の創出を図っていくことが必要と思っております。
最近の急激な円高のため、速いテンポで海外投資等が進む可能性がございます。それが一定の限度を超えるときには雇用、下請、地域等への影響が懸念されることは事実でございます。したがいまして、産業構造の円滑な転換を図るための諸施策を推進することにより、産業活力の維持、雇用の安定等に万全を期する所存でございます。(拍手)
〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/7
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008・近藤鉄雄
○国務大臣(近藤鉄雄君) 既に総理及び大蔵大臣、通産大臣からお話がございました。私から特につけ加えることは余りないと思うわけでございますが、お話がございましたように、今回の三兆六千億円余の総合経済対策はかつてない規模のものでございますし、六十年名目GNP対比でも一・一%強の規模のものでございます。したがいまして、この総合経済対策を年度内にどれだけ実際消化することができるかが成長率達成のための大きな決め手になるわけでございますので、既に大蔵大臣を中心として建設大臣や通産大臣や関係大臣にお願いをしてございまして、何とか早期着工、そして実施に、それぞれ関係者に働きかけをしていただきたいと申し上げておる次第でございます。
同時に、このたび公定歩合の引き下げがあったわけでございますが、こうした施策が民間の将来に対する期待を好ましいものに転換することによって投資、消費の促進を図る効果も十分にあると考えておるわけであります。
円高メリットについてもいろいろお話がございますが、その円高のデメリットは輸出を中心として非常に厳しくきいてくるわけでございますが、円高メリットの影響は緩慢なものでございまして、そうした円支払い代金の減が個人なり企業に残りまして、それが具体的に投資や消費に起動してくるためには将来に対する成長期待が前提でございますので、今回の総合経済対策もそうした意味の効果を持つものと考えているわけであります。
同時に、我が国が今後国際経済の中でどのような役割を果たしていくのかというお話がございます。まさにそのための構造調整政策でございますが、経済の構造調整ということは、考えてみますと、潜在的に非常に大きな投資需要を持つものでございます。従来の産業構造ではだめなんだ、転換するわけでございますから、それだけの設備投資需要というものが内在しているわけでございまして、そうした構造調整に基づく設備投資というものをどうしてこれから誘発していくかということが一つの政策課題でございます。そのためには、金融政策の弾力的な運営とか税制とか、さらには規制緩和による民活の積極的な発揮、そうしたものをあわせてまいりますと、私どもはできるだけ所期の目的が達成できる方向で経済が発展をしていく、かように確信をしている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣綿貫民輔君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/8
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009・綿貫民輔
○国務大臣(綿貫民輔君) 地価高騰に対応する抑制策についての御質問に対しましては、総理から既にお答えになっておるところでございますが、補足して申し上げたいと存じます。
十月一日に地価調査を発表した結果にもあらわれておりますように、全国の地価は対前年比二・七%ということでほとんど横ばいということになっておるわけでありますが、東京を中心に一部の都市におきまして商業地を中心に異常な高値が見られる、特に東京は異常な高値を呼んでおるわけでございますが、これは急速な国際化、情報化という中で起こった現象だと受けとめておるわけであります。
これを鎮静化するためには、新たな供給用地を提供するということと同時に、これに便乗するような土地転がし等が起こらないような規制策を強めていくということが肝要だと思うわけであります。既に東京都と相談をいたしまして、新たに小規模の取引に対する規制を含めた条例を制定させていただいたところでございますし、さらにまた、超短期の譲渡所得に対する重課税を課するための法律を今検討しておるところでございます。
供給面につきましては、東京湾岸の開発その他を含め、さらに都市部における未開発用地等の高度の再開発を含め、関係省庁と鋭意その実現のために努力をさせていただいておるところでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/9
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010・藤田正明
○議長(藤田正明君) 和田教実君。
〔和田教実君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/10
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011・和田教美
○和田教美君 私は、ただいまの財政演説に対して、公明党・国民会議を代表して質問いたします。
昨年九月の五カ国蔵相会議、いわゆるG5の合意以来、既に一年以上たちますけれども、日本経済は今深刻な円高不況のあらしに見舞われております。鉱工業生産は四月以来、六月を除けば連続四カ月前年水準を割り込み、企業は大幅に収益を低下させて、倒産や事業所の閉鎖が多発しております。円高を直接の引き金とする倒産はG5以後の一年間で四百二十九件を記録して、五十二年からの前回円高倒産の二倍半に達する深刻さであります。完全失業率も最悪を記録して、二百万人失業時代が間近いという声さえ聞かれます。このため、八月の経企庁の景気後退宣言に見られるとおり、景気はことしの春以降急速に悪化して、最近一段と不況の色を濃くしております。
ただいまの宮澤大蔵大臣の財政演説では、円高不況の現状について、製造業を中心に企業の業況判断に停滞感が広がっていると述べられておりますけれども、事態はそんな生易しいものではないと思います。今回の日銀の公定歩合の引き下げもどの程度の景気刺激効果があるか、私は疑問だと思います。
円高不況の原因が、昨年九月のプラザ合意以来、円の対ドルレートが一挙に五〇%も切り上げられるという行き過ぎた為替レート調整にあることは明らかであります。しかし、そのような行き過ぎを今日まで甘受して、対米交渉において何ら有効な手を打たなかった政府の通貨外交の失敗が不況をさらに深刻化させたものと言わなければなりません。
我々はかねてから、円高デフレを克服するための積極的な経済政策への転換を政府に要求してまいりました。しかし政府は、これに耳をかさず、年度後半には物価安定による実質所得の増大で経済は拡大するという円高メリット論を展開して、国民に甘い期待と幻想を抱かせたのであります。
また我々は、ことし三月の参議院予算委員会で、円高不況による法人税収の落ち込みによって六十一年度予算でかなりの歳入欠陥が生ずる懸念について警告しましたが、当時の竹下大蔵大臣は、税収にそう大きな狂いは生じないと答弁しました。しかし現実には、本日、国会に提出されました六十一年度補正予算案に見るとおり、円高デフレの影響で税収、税外収入を合わせて一兆二千五百億円に上る歳入欠陥が出ております。円高不況の見通しを誤って緊縮型経済政策に固執して、小出しの景気対策によって不況を一段と深刻化させた政府の政治責任を一体どのように考えているのか、中曽根総理、宮澤大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
次に、今回政府が提出した六十一年度補正予算案によって、果たしてどの程度の景気浮揚効果があるかについてお伺いしたい。
政府が九月に発表した総合経済対策は、もともと地方公共団体の事業や財政投融資に大幅に頼っているほか、民間活力の協力に期待するなど政府計画として水増しの目立つものであります。したがって、対策の実効性を判定するに当たって、公共事業の追加一兆四千億円の中身が問題であります。ところが、災害復旧事業は別として、景気拡大のための一般公共事業八千五百億円のうち、年度内に工事を完了させる分は千五百億円で、残り七千億円分は来年度に予算をつけることを前提に発注する国庫債務負担行為、そのうち一部に前金をつける程度のものであります。そして一兆四千億円の事業費のうち、実際に補正予算による国費で負担するのは災害復旧事業、一般公共事業合わせて五千四百九十億円、それを建設国債の増額で賄うことにしております。我々の立場からすれば、今回の政府の公共事業追加規模は余りにも小さ過ぎるし、その景気浮揚効果に大きい疑問を持つものであります。
この程度の景気対策によって、深刻な円高不況を克服し、中曽根総理みずからさきのサミットでも表明した内需中心の実質成長率四%の国際公約の達成は、到底不可能と考えるものであります。四%を確保するためには七—九月期以降、年率換算で実質七%と高度成長期並みのスピードを必要といたしますが、そんなことは常識的に不可能だからであります。
最近、民間の研究機関は次々に本年度の経済見通しの改定を発表しておりますけれども、その大部分は二%台の低い成長率に下方修正しております。政府は、現在なお六十一年度の実質経済成長率四%の目標が実現できるとお考えになっているのか、また本音では達成できないと考えるのであれば、なぜ目標を修正しないのか、総理初め大蔵大臣、経企庁長官の責任ある答弁を求めます。
公明党は、去る六月の円高不況対策に関する提言の中で、財政の出動による内需拡大が急務であるとの観点から、五兆円規模の補正予算の編成を要求しました。所得税、住民税減税と住宅減税合わせて二兆円、それに国費による公共事業費の追加三兆円程度です。また公共事業の追加のために建設国債を大幅に発行してよいし、六十二年度においてもこのような積極型予算編成が必要だと主張してまいりました。ところが、大蔵省事務当局は、今回の建設国債の増発はあくまで円高デフレに対応した臨時緊急の措置であり、六十二年度予算編成では公共事業費はマイナスシーリングによって極力抑制すると述べております。
宮澤大蔵大臣は、この点について、六十二年度において持論の建設国債増発論によって景気重視の予算編成を行うのか、それとも硬直した財政再建路線に逃げ込むのか、財政運営の基本方針を明らかにしていただきたいのであります。
また、我々の主張してまいりました年内の所得税減税及び政策減税について、与野党間に明確な合意があるにもかかわらず、今回の補正予算案に全く組み込まれていないのは極めて遺憾であります。公党間の約束である以上、政府・与党が速やかに減税の名に値する具体案を明らかにすべきだと思いますが、総理の見解を求めます。
さて、円高不況の進行は、輸出関連の中小企業を初め石炭、非鉄金属、造船、鉄鋼業など我が国の産業経済に深刻な影響を広げております。中でも雇用不安の拡大は極めて重大で看過できません。最近の雇用関係指数を見ると、有効求人倍率は〇・六倍で低迷を続け、完全失業者は八月で百六十九万人、失業率は二・九%を記録するなど、いずれも雇用情勢の悪化を示しております。
また、今回の雇用情勢の悪化は、第一次石油危機後の状況と違って、産業構造の転換を伴うより構造的なものであること、また関連会社への配転などグループ内吸収に余り期待できないこと、構造不況業種ほど従業員の高齢化が進んで広域移動に限界があること、さらに地域性が強く企業城下町を直撃していることなどが特徴であります。一口に産業構造の調整、転換と言いますが、それは雇用、失業面で多大の犠牲と地域経済の混乱を伴うことを銘記しなければなりません。政府は、一部財界だけでなく労働界や中小企業などとも十分協議し、新規雇用分野の創出、不況地域対策など総合対策を早急につくるべきだと思いますが、労働大臣の見解を求めます。
次に、政府税制調査会が二十八日に答申した税制改革問題についてお尋ねいたします。
税調答申の全体的構図は、所得税、住民税、法人税などの減税の見返り財源として大型間接税を導入し、少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優を廃止するというものであります。概して言えば、所得税、住民税の最高税率の引き下げ、相続税の税率構造などの見直し、マル優廃止、それに大型間接税の導入を加えて、金持ち優遇の傾向は明らかであります。
総理は、さきの衆参同日選挙に当たり、国民と自民党が反対するような大型間接税は税調が答申しても採用しないと言明されました。現在、我が国にある消費税は、物品税や酒税などの個別消費税ですが、これでは間接税の税収を大きくふやすことができないというので、いわゆる課税ベースの広い間接税、すなわち大型間接税の導入が増税の本命として登場してきたのであります。税調が最も望ましいと言う日本型付加価値税はもちろん、製造業者売上税、事業者間免税の売上税、この三案はいずれも課税ベースが広く、まさに総理が導入しないと公約した大型間接税そのものであります。これらは大型ではなく新型間接税だという強弁は、到底国民の納得を得られません。総理は、答申の言う新型間接税、すなわち大型間接税の三案及びその変形、組み合わせはいずれも導入しない、公約は守るところで改めて言明していただきたい。明確な答弁を求めるものであります。
我々は、大型間接税には低所得者ほど税負担が重くなるという逆進性があるだけでなく、物価上昇の引き金になる、また一たん導入すれば税率を上げるだけで簡単に増税できるなどの理由でその導入には反対であります。もちろん所得税の大幅減税は賛成ですが、所得税減税は原則として所得税制改革の範囲で処理し、あわせて税制全般にわたる不公平是正で賄うべきだと考えております。
我々はまた、郵便貯金も含めたマル優の廃止にも反対であります。答申は、老人、母子家庭などにはこの制度を存続すると述べております。これは当然のことですが、税制上の優遇措置によって一定の貯蓄を支援する必要性は、何も老人、母子家庭に限りません。将来の老後に備え、さらに現在の病気や教育、住宅問題に備えるために、国民が自己防衛的貯蓄を必要とする事情は一向に解消していません。これは政府の社会福祉政策のおくれの裏返しであります。マル優の不正利用に対しては限度額管理の強化で対処すべきであり、一部の不正利用を理由に制度そのものを廃止するという考え方は納得できません。総理、大蔵大臣及び郵政大臣の見解を求めます。
税制改革の最大の課題は、いかにして公平を確保するかということであり、最優先して取り組むべきものは不公平税制の是正であります。その中でも大きい課題は、いわゆるクロヨン、サラリーマンと事業所得者などの不公平の解消を急ぐことであります。今回の答申はこの点について、サラリーマンにも必要経費の実額控除を選択制で認めるとか、専業主婦に対する特別控除を新設するなどを提案しています。しかし、この程度でサラリーマンの不満が解消されるはずがありません。クロヨンと呼ばれる実態はひとえに所得捕捉の不公平に基づくものであり、これをどのように改革するか、大蔵大臣の見解を求めます。
今回の答申は、所得税の減税方式、マル優廃止に伴う課税方式、導入すべき大型間接税のタイプなどがいずれも複数案併記で、その結論は自民党税制調査会にげたを預けた形となっております。したがって、複数案の組み合わせによって一体どんな増減税になるのか、個々の納税者にとってさっぱりわからないというのが多くの国民の不満であります。
さきに大蔵省は、国全体で増減税差し引きゼロの税制改革をしても、サラリーマンのほとんどは減税になるという、一般には信じがたい仮定計算を発表しました。ところが、これに先立つ学者グループの政策構想フォーラムの試算によると、年収五百万円以下の中低所得層は、減税どころか増税になるという大蔵省と全く違った結論になっております。一体なぜ試算結果がこのように異なるのか。また今後税制改革案を一本化する場合に、大蔵省の言うとおり必ずサラリーマンのほとんどが減税になるようにするとここで断言できるのか、総理、大蔵大臣の見解を伺って私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/11
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012・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 和田議員にお答えをいたします。
まず、円高不況の責任はどこにあるかという御質問でございますが、円高の原因は膨大な輸出黒字等、日本経済の競争力という経済の基礎条件に大きく依存すると考えられます。またアメリカとの関係におきましては、アメリカの膨大な赤字であるとか、あるいは貿易の赤字であるとか、そういう問題も関係してくると思います。これらの経済の条件が組み合わさりまして、そしていわゆる自由フロート制のもとに、自由変動相場制のもとに動いているというのが現状でございます。我々といたしましては、この中にあっても、急激ないわゆる乱高下というものを避けるべきであるということで主張もし、努力もしてきたところでございます。
最近は割合に安定してきておるようでございますけれども、しかし幾らの数字で安定したらいいのかということは、これは経済の諸条件の決めるところでございまして、我々が人為的に設定するということは極めて困難である、そう考えております。要するに、この急激な乱高下によりまして企業がショックを受けないように、そして企業精神がこれがために萎縮しないように我々としては措置するということが大事であると考えております。
次に、今回の補正予算において歳入欠陥を処置したことでございますが、これはさまざまな積み上げの見積もりを行いまして、一兆一千二百億円の減額補正を行いました。
この見積もりというものは、見積もり時点における課税実績その他の利用可能な資料を用いまして、最大限の努力をして積み上げてきた数字でございます。このような事態になったということは甚だ遺憾でございますけれども、やはり内需は割合に好調なのでありますけれども、貿易の面においてマイナスが相当出てまいりまして今のような結果になってまいりました。
これらの是正については、補正予算等を成立さして全力を振るって回復していきたいと努力しておるところでございます。
四%成長の可能性の問題でございますが、我々としては全力を振るってできる限り四%に近づけるべく努力をしてまいりたいと思っております。今回の公定歩合の引き下げや補正予算の提出というものは、みんなこれらのためのものでもあると御理解をいただきたいと思うのであります。
次に、減税の年内実施の問題でございますが、十月十六日の与野党国対委員長会談における合意を踏まえまして実務者会談が行われておりますが、政府はこれらの会談の推移を注意深く見守り、まとまった点についてはこれを尊重していきたいと思っております。
いわゆる間接税につきましては、政府税調から答申がございました。しかし、いわゆるA、B、C案の中のどれが公約に違反するかしないか、そういう問題についてはその内容、実態によるのでございまして、抽象的にA案、B案、C案という程度ではまだ判定する条件が整っていないのでございます。私はしかし、あくまで公約を守っていきたい、このことは党の皆さんにも申し上げ、今実質的な検討に入ったところでございます。
非課税貯蓄の問題につきましては、多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしている現実は否定できません。これらのいわば不公平税制を是正するという面について、一部老人あるいは母子家庭等に対してはマル優や郵便貯金の非課税制度を維持しつつ課税を行う、そういう方向で答申が出てきておるわけであります。
この答申につきましては、慎重に党としても検討してもらおうと考えております。
次に、サラリーマン減税の問題につきましては、私がここで前からも申し上げておりますように、いわゆる中堅サラリーマン、子持ちで住宅ローンや教育費に非常に取られておる、それらの中堅サラリーマンに対する減税を思い切ってやりたいと申し上げておりますが、その線に沿って、いずれ党とも相談をして思い切った減税を実行したいと思っておる次第でございます。
残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/12
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013・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の九月のG5以降における為替調整の問題でございますが、確かにただいままでのところ、恐らくいろいろな事情でアメリカの貿易収支は顕著な改善を見せておりません。八月、九月にやや減少の傾向が見えておりまして、それが本格的なことであることを期待しておりますけれども、まだ自信を持ってそう申し上げられるような状況ではございません。
一方では、米国の中の保護主義というものにある程度の鎮静的な役割を果たしたことは、私は確かではないかと思いますが、我が国におきましては、和田議員が言われましたように、これはメリットもいろいろあることでございますけれども、非常な急激な、しかも大幅な円高でございましたから日本経済が十分に対応できない、それがただいまの状況であることは御指摘のとおりであると思います。
そこで、政府におきまして、ことし四月にも五月にも経済対策をいたしましたが、このたび総合経済対策でかつてない大きな規模の公共事業等を中心にいたしまして事業をいたしまして、補正予算の御審議をいただいておるところでございまして、それが不十分であるという御指摘は決してわからないではございませんけれども、ただいまの財政から申しますと、これがもう本当に精いっぱいだという感じを正直私はいたしておりまして、財政をお預かりしてみますと、なかなか事態に十分に対応できない、早く財政が回復しまして弾力的に事態に対応できるようにしたいと思いますと、やはり財政改革というものはどうしてもやってしまわなければならないという気持ちが強うございまして、そういう中でできることを最大限にやったということで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
それから、成長率のことにつきましては経済企画庁長官からお答えがございますと思います。
今回の補正予算だけで現在の日本の経済状況を乗り切っていけるとは私は考えておりませんので、したがいまして、それは六十二年度の予算編成とも当然に連動をし、関連をしていくことであると思っております。
ただ、その場合に、やはり財政改革というものの枠内で物を考えなければなりませんので、公共事業につきましては、例えば、いかにして事業費なり事業量を確保していくか、いろいろ工夫をしなければならないと思っておりますけれども、そういうふうにいたしたいと思っております。
〔議長退席、副議長着席〕
それから、このたびの税制調査会の答申というものが一般的に金持ち優遇ではないかというふうに御指摘になられたと思いますけれども、私自身は中堅の給与所得者、勤労所得者、サラリーマンをできるだけ重税感から解放しようというのが主たるねらいだというふうに理解をいたしておりまして、例えば、配偶者の特別控除でありますとか、あるいは給与所得者に実額控除の道を開くとかいうこともそうでございますし、幾つかの所得税のモデルを示しておりますが、その中心になりますものは、累進構造にしても税率の刻みにしても、そこらあたりのところに一番軽減、重税感からの解放をねらっておるということは申し上げることができると思います。
それはおっしゃいますように、所得税の最高税率を下げるといったようなことを提案しておりますけれども、それは企業意欲とか勤労意欲とかいうことから申せば、最高税率にもおのずから限度があることでもございますので、それをもって金持ち優遇だとおっしゃいますことは、必ずしもそうではないのではないかと私自身は考えております。
それから、利子所得についてでございますけれども、非課税貯蓄についてでございますが、答申の申しておりますのは、相当多額の利子が課税ベースから逃れておる、したがって、所得の種類間で税負担を逃れておる所得があるということ、これを直すべきだということを言っておるわけでございまして、もちろん老人や母子家庭については非課税制度を維持することが望ましいと言っておりますから、この点は答申をよくまた考えまして適切に対処していかなければならないと思います。
次に、いわゆるクロヨンのお話で、これはまあクロヨンかどうかは別としまして、把握にいろいろ違いがあって、そこから不公平感が出ていることは確かでございますから、税務調査を充実するとか、青色申告についてもっと制度を育成するとか、あるいは白色の場合でも記帳制度等を定着するとか、税務の方で一層の努力を重ねなければならないと考えております。
それから、今度の税制改革が家計にどういう負担を与えるか。いろいろ計算で政府は都合のいいことを言っているのではないか、政策フォーラムの試算によればというようなお話がございましたが、政策フォーラムの試算も検討いたしておりますけれども、いろいろ違った前提に立っておる点もございまして、必ずしもどれがどうということを正確に比較して申し上げることができません。
それは税率構造にしても、間接税にいたしましても、まだ案ができておりませんから当然そうであるかと思いますが、いずれにいたしましても、このたびの税制改正でいわゆる働き盛りのサラリーマン、いわゆる中堅所得層の非常な税負担の累増感というものを何とか緩和したい、それに配慮することを重点にしておるということは申し上げて間違いのないところであると考えております。(拍手)
〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/13
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014・近藤鉄雄
○国務大臣(近藤鉄雄君) いわゆる円高によりまして今年度GNPがどれぐらいに予想より落ち込むかについては、まだ最近のデータが出ておりませんので明確に申し上げられないわけでございますが、しかし、たびたびお話がありますように、今回の三兆六千三百六十億円という規模はこれまでの最高の額でございまして、既にもう四月、五月と続けてやっての三回目の大型な総合経済対策でございます。ですから、これがどの程度、どこまで年度内に実際に実施されるかが一つの決め手でございますので、先ほど申し上げましたように、大蔵大臣にも御相談し、また建設大臣、通産大臣その他関係閣僚にお話をして、何とかできるだけ年度内に消化を図っていただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
いわゆる円高メリットでございますが、経済企画庁で一年間試算をいたしますと、大体十・四兆円ぐらいでございますし、最近の輸入を見てまいりますと、円建てで毎月毎月三割から四割昨年より支払いが減っているわけでございますから、こうしたものが効果を持たないはずがないわけでございます。ただ、デメリットは極めて厳しく影響を持ちますが、メリットの方は緩やかな影響を持ちますので、これが具体的な消費や投資に融和されるためには経済全体の明るい見通しがなければならない、こういうことでございます。そうした経済の明るい見通しを守り立てるために今回の総合経済対策は相当な効果を持つと思うわけでありますし、特に今回の公定歩合の引き下げは、さらにこれをプラスするものである、かように考えておるわけであります。
GNPの中で当然政府の投資の果たす役目は大きいわけでございますが、しかし限度がございますし、民間の設備投資はGNPの中で五十五兆円という金額でございます。そして民間の消費は百九十兆円でございますから、政府の活動も大事でございますが、しかし五十五兆円の民間設備投資、そして百九十兆円の民間消費をどういうふうにこれから積極化して誘発するかということが経済政策の大きなポイントである、私はかように考えるわけでございますので、そうした明るい方向でこれからの経済の見通しを民間の方々に持っていただけるようにひとつ内閣を挙げて取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣平井卓志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/14
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015・平井卓志
○国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。
円高等を背景とする非常に厳しい雇用失業情勢に対応いたしまして、内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保するために、政府として先般、総合経済対策を決定したところであります。それに基づきまして、雇用調整助成金制度の拡充につきましては十月二十日より既に実施に移したところであります。
また、不況業種、不況地域を中心として離職者の増加が見込まれることから、今回の補正予算において約七百九十三億円の失業給付費を計上しているところであります。
さらに、今後、産業構造の転換等に伴いまして特定の地域において雇用の悪化が懸念されますために、雇用機会の増大を図ることを中心としました総合的な地域雇用創出促進対策について、現在、中央職業安定審議会の意見も聞きながら具体的な検討を急いでおるところであります。これらの施策を通じて雇用の安定に万全を期してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣唐沢俊二郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/15
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016・唐沢俊二郎
○国務大臣(唐沢俊二郎君) 申し上げるまでもなく、長寿社会を迎え、老後生活を安心して送れるようにすることは、若い人を含めすべての国民の切実な課題となってきており、少額貯蓄非課税制度はその意味で今後一層重要な役割を果たすものであると考えております。
したがいまして、郵政大臣といたしましては、去る十月十六日にいただきました郵政審議会の答申を踏まえ、少額貯蓄非課税制度存続のため、引き続き努力してまいる考えであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/16
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017・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 下田京子君。
〔下田京子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/17
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018・下田京子
○下田京子君 私は、日本共産党を代表し、政府財政方針並びに昭和六十一年度補正予算案について質問いたします。
総理、まず最初にお聞きしたいことは、政治の責任とは何かということです。すべての人々がより人間らしい人生をと願っています。私は、この国民の願いにこたえ、核戦争の心配のない世の中をつくること、国民の命と暮らしを守ること、これこそが政治の責任ではないかと思います。
ところが、どうでしょう。これとは全く相反する許しがたい衝撃的事実が明らかになりました。アメリカ政府が、病人やお年寄りなど六百九十五人の市民に対し、放射能人体実験を長年にわたって行っていたという驚くべき事実です。何と恐ろしいことでしょう。アメリカ政府のこのような非情な行為は、核兵器開発のためには、人間の命を犠牲にすることを何とも思わない核軍拡競争の悪循環が生み出したものと言わざるを得ません。
総理、あなたはこの放射能人体実験をどう受けとめておりますか。許しがたい非人道的な行為であり、その根本に核軍拡競争があると考えるなら、今こそ人類の緊急課題として核兵器の廃絶協定の締結を世界に訴え、またSDI研究参加を撤回すべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
次に、政治の責任において、命と暮らしを守る幾つかの具体的対応策について質問します。
今、国民が政治に求めている願いを妨げている根本原因は、軍拡、大企業奉仕の中曽根政治にあります。その第一は、異常円高と不況対策であります。緊急に必要なことは、一ドル百五十—百六十円という異常円高の是正であります。総理はそのためにどういう対策をとられるのですか。この問題の根本解決のためには、アメリカ経済の赤字体質からの脱却が必要です。総理は、アメリカの財政赤字の是正について申し入れてきたと言われますが、アメリカの財政赤字の根源の一つは、SDIを初めとする軍事費の増大にあります。ここにメスを入れよとなぜ明確に主張できないのですか。レーガンの言いなりで、日本政府が軍事費をふやし続けているからではありませんか。そうでなければ、この補正予算でF15、P3Cの新規発注をやめ、二兆円近い本年度軍事費の未執行分を大幅に削減すべきです。はっきりお答えください。
次に、不十分な円高対策です。
政治災害と言われる異常円高に対し、無利子融資、災害資金並みの三%融資をというのは、多くの関係者の切実な声です。アメリカには、今回の〇・五%公定歩合の引き下げなど、その要請にこたえ、また大企業には基盤技術促進センターへの二百九十億円の無利子融資などをしておきながら、なぜ実効ある円高対策を中小零細企業にはできないのでしょうか。総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
しかも、重大なことは、在日米軍の駐留経費の負担を軽くせよというアメリカの要求にこたえて、労務費の負担分を為替相場にスライドさせ、日本が持つという案が外務省、防衛庁の間で検討され、その負担額は七十億円増にもなると報道されています。これは事実ですか。だとすれば、円高で苦しんでいる日本国民をなおざりにし、円高を押しつけているアメリカに思いやりを厚くするとは本末転倒ではありませんか。答弁を求めます。
第二は、全国的に深刻な雇用問題です。
北海道の深刻な実態を見ますと、まず国鉄の分割・民営化に伴う一万三千人の合理化計画です。さらに、経済構造調整ということで石炭産業の縮小となれば、一万四千人もの首がかかってきます。北洋漁業の減船で約四千人が職を失い、大規模経営で大型の負債を抱えて離農する農民もふえています。大手の造船、鉄鋼の大量人減らしも進んでいます。まさに地域経済は崩壊の危機に直面
しているじゃありませんか。これは北海道だけの問題ではありません。こうした深刻な失業、雇用問題を起こさないためには、国鉄分割・民営化法案の廃案と前川レポートの撤回、真の内需拡大こそが必要でございます。そのためにも、大企業の下請いじめの規制を強化するとともに、大量解雇を許さないため知事に実態の調査と勧告権を与えることや、公共事業の地元雇用等を拡大することを義務づけるべきと思います。具体的にお答えください。
第三に、大型間接税とマル優廃止の問題です。
今でも、朝起きて電気をつければ電気税、ガスをひねればガス税、お料理に砂糖を使えば砂糖消費税、冷蔵庫には物品税と重税に苦しんでおります。さらに大型間接税が導入されたら、まさに朝から晩まで税金づけです。しかも、大半の国民は増税になるのに、政府は減税になると全く事実に反する宣伝をされています。総理は、国民が今でも家計のやりくりにどんなに苦労しているかわからないのでしょうか。その上、生活を切り詰めてのわずかな貯金にまで税金をかけようとしております。余りにもひど過ぎます。総理は、国民の反対する大型間接税は導入しないとの選挙公約をまさか破るようなことはありませんでしょうね。大型間接税の導入はしない、マル優廃止はしないと明確な御答弁を求めます。
第四は、日本の食糧と農業を守る問題です。
今、心配なのがお米の自由化です。総理、国民の主食であるお米は国の責任で安定供給するのが基本です。自由化要求にまさか応ずることはないでしょうね。加藤農相は、私の質問に対して、援助米に百万トン、加工用米五十万トンを買うこと、ガットのテーマとすること、この三条件をアメリカから正式に要求された場合でも、一切受け付けないと答弁されています。この点についての総理の答弁を求めます。
第五は、福祉の問題です。
総理は豊かな老後をと公約しました。しかし、お年寄りには初診料二・五倍、入院費は一年で十倍もの負担増を押しつけ、健康保険組合などへは拠出金増で労働者の負担をふやし、一方、これによって国の負担を減らすなど、全く国民を欺く医療の改悪を進めようとしています。かつて太平洋戦争末期、昭和十八年、東条内閣のとき、軍事費調達のため、健康保険本人負担を行った歴史を再び繰り返してはなりません。軍事費を削って命を守ることこそ、今、政治に課せられた歴史的責任ではありませんか。老健法案は撤回し、老人医療費無料化を復活すべきです。答弁を求めます。
最後に申し上げたいことは、総理の人種差別発言、女性べっ視発言、アイヌ民族べっ視発言など国際的、国内的批判を浴びている問題です。
アイヌのお母さんから総理に手紙が届いているはずです。「我が子たちは差別に泣かない日はなかった、日本は単一民族では決してありません」というお手紙、ごらんになったでしょう。少数民族であるアイヌにいわれのない差別が行われている事実をこの手紙から読み取っていただけると思います。総理、あなたの日本国籍を持っていて差別を受けている少数民族はないとの認識は間違いです。さきの発言を撤回し、陳謝すべきです。そして、国の責任で権利を保障し、差別を一掃するための新しい法律をつくるべきです。差別で泣く子がないように誠実な答弁を求めます。
総理、政治の責任は国民の命と暮らし、世界の平和を守ることにこそあると、この点を繰り返し主張しまして私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/18
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019・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 下田議員にお答えをいたします。
まず、米国の放射能実験のことでございますが、報道があったことは知っておりますが、真実か否かについては承知しておりませんので、コメントはいたしません。
いずれにしても、我が国としては核兵器の究極的廃絶実現のために努力してまいります。
SDIにつきましては、前から申し上げているように、これは新しい戦略防衛体系、攻撃兵器の体系から防衛兵器の体系で核兵器を廃絶しようという考えに立つものでありまして、これに対する対米交渉を撤回する考えはありません。
円高の問題につきましては、これはいわゆる経済のファンダメンタルズというものの反映で現在のような情勢になっております。しかし、これからの問題といたしましては、東京サミットで合意いたしましたように、各国間の政策協調、これが非常に重要であると思います。
先般のIMF・世銀の総会でも、為替相場の安定性の重要性について意見が一致したところでありまして、相場が乱高下されるというような場合には適時介入してまいるつもりでおります。
軍事費の問題について御質問がございましたが、我が国の防衛費は、自主的判断に基づいて自衛のため必要最小限度の防衛力整備費をほかの諸項目とバランスをとりつつ計上しておるのでありまして、前から申し上げているとおりであります。
防衛費の削減の問題につきましては、今年度の補正予算についても、他の省庁と同じように、防衛庁にも経費の節約を求めたところでありまして、防衛庁としても大切な経費ではありますけれども、各省庁並みに節減せよという政府の方針に基づきましてそれに協力してもらったものなのであります。
次に、零細企業への無利子融資の件でございますが、中小企業者に対しては既に政府系中小企業金融三機関によって金利五・〇%の融資を実施しており、また最近におきましては、地域の中小企業等に対しましては、九月十九日の総合経済対策の決定によりまして、事業資金としては極めて低水準の三・九五%という低利融資を実施しておるわけでございます。これによって御了解願いたいと思います。
いわゆる思いやり予算と称するものについて、在日米軍の駐留経費の負担については自主的に判断するものでありますが、御指摘のような具体的方策を検討している事実はありません。
また、内需拡大の問題につきましては、先ほど来申し上げているように、今回の補正予算等により三兆六千億円の予算を計上いたしましてこの実を上げようと努力しておるところでございます。
下請取引の適正化につきましては、円高の影響の不当な転嫁を防止するために、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用を図るとともに、親企業に対する指導も強化してまいっております。
九月十九日の総合経済対策においても下請取引の適正化のための対策等が決定されておりまして、十月中旬に親企業等に対し下請取引適正化の指導通達等を発出したところであり、今後とも指導してまいりたいと思っております。
次に、大量解雇に関する調査権等の問題でございますが、解雇は具体的事情に応じて労使当事者の話し合いにゆだねることが適当であり、その規制を行うことは不適当であると考えます。
大量解雇などの雇用調整の問題は、労使間で十分話し合いを尽くして納得のいく解決が行われるように期待しております。政府は労使間については不介入でございます。
次に、公共事業の地元雇用につきましては、地元雇用の確保にも配慮して失業者吸収率制度を設けております。
今後とも民間企業における雇用促進のための施策とともに、公共事業の実施に当たっても雇用に配慮してまいりたいと思います。
間接税とマル優の問題では、公約を守るということをここで累次申し上げましたが、そのように今後も実行してまいります。
なお、自民党におきましていよいよ検討に入った次第でございますが、最終的にも公約を守るように注意してまいるつもりでおります。
米の問題でございますが、米については国会決議がありまして、米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、国内産で自給する、そういう方針を堅持してまいりたいと思っております。
いわゆる米に関する三条件というものについては、米の貿易制度は、我が国の行っている制度はガット上容認された国家貿易制度であると考えます。
ガットニューラウンドの交渉の具体的内容については、今後参加国間で決定していく問題であり、我が国としても、米の国内自給という基本方針のもとに、今後の対処について誤りなきを期してまいります。
なお、援助米や加工用米の購入について、米国政府から要請があったということは承知しており
ません。
次に、社会保障費と軍事費の問題でございますが、我が国の防衛関係費については、他の諸施策との調和を図りながら必要最小限の経費を計上している、そういうことを前から申し上げているとおりです。
老人医療費の無料化の問題については、長寿社会の到来に備えて、老後の健康保持、医療の確保を図ることは極めて重要であります。
増加の避けられない老人医療費を、お年寄りも含めて国民全体が公平に負担するシステムを確立して、制度の長期的な安定を図る必要があり、老人医療費の無料化を復活する考えはありません。
次に、アイヌ問題の発言の問題でございますが、前回私が国会で申し上げたのは、昭和五十五年に国連へ提出した国際人権規約B規約第一回報告書においては、本規約に規定する意味での少数民族は我が国に存在しない旨報告しているという事実と、梅原猛さんの本によれば、日本人は相当融合している民族であると書いてあることを紹介したものでございます。
今後提出する第二回報告書については、現在準備中であると承知しておりますが、もちろん法のもとの平等を含め、日本国憲法で保障されている国民の基本的人権は守っていかなければならないことは当然であります。
残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/19
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020・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業に対する金利の問題でございますけれども、いわゆる円高で影響を受けております中小企業に対しては、中小企業関係の三機関から既に五%という融資がございますことは御承知のとおりですが、せんだっての総合経済対策で三・九五という金利を実は決めたわけでございます。市場経済でございますから、無利子というわけにはなかなかまいりませんで、三・九五というのは、これは随分低い金利であると私は考えております。
それから、防衛庁関係の、防衛施設庁でございますが、いわゆる思いやり予算というものを考えているかということで、私はそういうことを正式に伺っておりませんので、そういう話が具体的にあるのじゃないのだろうと思いますけれども、ただ、このことはもともと国の安全保障に関する問題でありまして、円高とは余り関係のない話である。国の安全保障のために必要なことはやらなければならないということであろうと思います、現実に問題があるというふうには聞いておりません。
それから、間接税のことについてお話がございまして、我が国のように所得水準がかなり高く、しかもそのストック格差の小さい国におきまして、直間比率が七対三であるということは、やはりもう少し間接税に重点があってもいいのではないかということはよく言われるところでございますし、また間接税そのものにも現在の間接税、例えば物品税でございますけれども、それに内在する問題がいろいろございますから、この際やはりこの問題は根本的に検討してみるということは、私は有意義なことではないかというふうに考えておりまして、これが決して累退的ないわゆる庶民課税になるといったようなふうに私どもは考えておらないわけでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/20
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021・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 小西博行君。
〔小西博行君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/21
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022・小西博行
○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいまの財政演説を踏まえて総理に質問を行うものであります。
昨年九月以降の急激かつ大幅な円高は、我が国産業に極めて重大な影響を与えております。今や雇用不安から社会不安を引き起こし、各地において事件が発生するなど、憂慮にたえない現象すら起こっております。この円高は、申すまでもなく政府の経済政策の行き詰まりがもたらした人為的なものであり、政府の責任は極めて重大であると断ぜざるを得ません。
このような円高が継続する一方で、産業構造調整を強いられている我が国産業は今や壊滅的打撃を受け、企業倒産が相次ぎ、失業者が増大することは不可避であります。とりわけ繊維、造船、海運、鉄鋼、石油化学、石炭、資源等々の主要産業は、構造的要因に加え、今回の円高により存亡の危機に直面しております。例えば、我が国の代表的産業である鉄鋼産業におきましても、来年三月までに一時帰休が大手五社で七千名にも及ぶとされています。また全国六十五の高炉のうち、十一が既に廃炉となり、十六が休止をせざるを得ない惨たんたる状況にあります。
したがって、政府はこれら苦境産業に対して一日も早い諸施策の実現を図るべきであります。前川レポートに示された構造調整とは、すなわち、そこに働く方々の雇用調整そのものであることを深く認識して、国鉄再建同様、今後の対策に期待するものであります。
以上の認識に立った上で、各産業ごとの需要創出策及び新技術開発策、また事業転換対策、雇用対策等々を総合的に推進するのが政府の責任だと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
既に同僚議員からもお尋ねのありました今年度の経済見通しについてお伺いいたします。
政府は今年度の経済成長率を四%と見込んでおりますが、四月—六月期の対前期比実質成長率はわずか二・二%にすぎません。したがって、この程度の補正予算では年間四%の経済成長は到底不可能と言わざるを得ません。政府の目標どおり四%の成長を確保するためには、七月—九月期以降は年率換算で七・〇%の経済成長を続けなければならないことになります。総理はいかなる根拠に基づいて今なお四%成長が達成されると確信されているのか、具体的に示していただきたいのであります。
次に、税制改革についてお伺いいたします。
十月二十八日に提出されました政府税調答申は、今後の政府の姿勢を位置づけるものとして大変重要であります。まず、本答申の理念についてお伺いいたします。
申すまでもなく、税制は国民の最大の関心事でありますが、このたびの答申の中身は、国民が最も恐れていたとおり、大型間接税の導入とマル優廃止が盛り込まれており、当初から財政当局が意図していたとおりのものになったと言わざるを得ません。国民の参加と選択の機会が与えられなかったことは極めて遺憾であります。総理は税調で盛り込まれた大型間接税の導入やマル優廃止を見直して、国民に選択を認める方式で税制改革を進める決意をお持ちかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
次に、本答申の目的についてお伺いいたします。
税制改革の本来の目的は、現行税制のゆがみ、ひずみを是正することにあると考えますが、このたびの税調答申は、所得減税を隠れみのにして実質増税路線につながるのではないかと心配される点が幾つかありますが、この点もあわせてお伺いいたします。
次に、大型間接税についてお伺いいたします。
総理は、これまでたびたび大型間接税は導入しない趣旨の発言を繰り返しております。言うまでもなく、大型間接税の導入はインフレの助長、逆累進性、弱者へのしわ寄せなど、経済に悪影響を及ぼすことは極めて明白であります。しかるに本答申では間接税が盛り込まれており、残念と言わざるを得ません。総理は公約どおり大型間接税は導入しないと明言していただきたいのですが、いかがですか、お伺いいたします。
次に、所得税についてお伺いいたします。
累進カーブの緩和、刻みの削減、実額控除制度の導入、配偶者特別控除創設など、基本的に評価できる点は幾つかありますが、中低所得者への恩恵が少なく、高額所得者が優位になっている点は問題であります。さらに、生活苦にあえぐ中高年齢層の方々には住宅、教育に重点を置いた政策減税を実現すべきだと思いますが、総理はこのような政策減税を実行する決意をお持ちかどうか、明快なる答弁をいただきたいのであります。
次に、法人税についてお伺いいたします。
法人税の改革については、上乗せ措置の撤廃、基本税率の引き下げ、法定耐用年数の見直し等については一応評価できるものでありますが、さらに経済活性化並びに国際的視点に立った改革を進めるべきであります。特に円高不況などで極めて厳しい環境にある中小企業に対しては、中小法人などの軽減税率の見直しが盛り込まれておりますが、より慎重な姿勢をとるべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
相続税については、本答申に含まれているように相続税減税が打ち出されており、基本的には評価できるものの、世代が進むごとに縮小を迫られている中小企業や医業の承継税制拡充にも踏み込むべきだと思いますが、御所見をお伺いしたい。
また、資産課税の取り扱いについては、本答申ではキャピタルゲイン課税、富裕税の実現について積極的な姿勢が示されていない点は納得できません。最高税率を大幅に引き下げた以上、シャウプ勧告が打ち出したように、資産課税の強化でこれを補うべきだと思いますがいかがですか、お伺いいたします。
次に、不公平税制の是正についてお尋ねいたします。
このたびの税制改革に際して、総理は公平、公正、簡素を主張されておりますが、本答申においてはわずかに配偶者特別控除の創設以外に見るべきものがありません。私は、マル優の限度額管理強化、脱税の防止、納税環境の整備こそが不公平税制の是正の出発点だと考えるのでありますが、不公平税制是正のため、いかなる具体策をお持ちか明確にしていただきたいのであります。
次に、財源についてお伺いいたします。
本答申に盛り込まれました大型間接税の導入とマル優廃止は、単に減税財源のための手段として苦し紛れに選択されたものにすぎず、これを許せば大衆増税をももたらすことになりはしないかと危惧しております。私は、このような国民に大きな負担を課すやり方はやめて、あくまでも行財政改革の断行と不公平税制の是正、資産課税の強化、さらに経済政策の転換による自然増収によって減税財源を賄うべきであると考えますが、総理の明確な見解を賜りたいと思います。
最後に私が申し上げたいのは、今日における政治の果たさなければならない役割は、活力ある経済と活力ある暮らしを実現することであります。かかる見地からすれば、今日の日本の経済と国民の暮らしは、異常な円高を契機にして未曾有の危機に直面していると断ぜざるを得ません。しかるに政府の認識は、今回の補正予算案や政府税調答申を見ても極めて不十分と言わざるを得ません。このような中途半端な施策でこの困難とも言うべき経済危機を突破できるのでありましょうか。またこのような税制改革案で個人も企業も活力を取り戻すことができるのでありましょうか。残念ながら私は否と断ぜざるを得ませんが、総理の御認識をお伺いして私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/22
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023・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 小西議員にお答えをいたします。
まず、四%成長の可能性の御質問でございますが、前に申し上げましたように、内需は割合に順調で四%を超えておる情勢のようです。しかし、貿易収支の面からマイナスが出てきておりまして、今のところ四%達成は難しい情勢であります。
しかし、今回この内需を補完する意味におきまして三兆六千億円の補正予算を提出し、また公定歩合も引き下げるという結果が出てまいりまして、これらによりまして、貿易収支からのマイナスを全力を振るってカバーするように今後努力してまいる所存なのでございます。
次に、国民の選択と税制改革の問題でございますが、私は、前から申し上げておりますように、今回税調に諮問し答申をいただきましたポイントは、税制のゆがみ、あるいはひずみ、あるいは重税感から解放して、国民の信頼に裏づけられた望ましい税制体系を確立しよう、シャウプ以来の見直しをやろう、こういうことで、ゆがみ、ひずみ、重税感からの解放というものが中心にあるわけでございます。それに基づきまして、基本方向が今度答申で明示されておりますが、「なお国民世論の方向を見極めるべき点もあるところから、ある程度選択の幅をもった形でとりまとめ」たことと言っておりまして、我々の選択をかなり余裕を持って行えるようにしていただいておるわけでございます。
この答申の趣旨を踏まえまして、今、党で検討を開始したところであり、来年度予算に間に合うように、六十二年度税制改正という形で国会の御審議を得るように努力したい、そう考えておるところでございます。
不公平税制につきましても、今申し上げましたゆがみ、ひずみ、重税感の除去というようなところが中心にあるので、税の増収を目的とするものではないと前から申し上げておるとおりでございます。
不公平感という面から見ましても、公平確保については、租税特別措置の見直し等も含めまして、今回の税制改革においても努力いたしたいと思っております。
いわゆる間接税と選挙公約の問題でございますが、ここで前から申し上げておりますように、税制調査会の答申におきましても、私が選挙公約をしたということを先方に報告いたしておりまして、それが念頭にありまして答申も行われております。
今後この答申を点検いたします際には、もちろん公約を実行してまいるつもりでおります。
中高年齢層の減税の問題でございますが、いわゆる中堅所得者層を中心とした税負担の累増感の緩和を図るため、大幅な累進緩和等を中心とする負担の軽減、合理化を提示しております。これらに対しましては、我々はその方向に沿って対処してまいりたいと思っております。
なお、本年度の問題については、与野党の実務者間で協議が行われておりまして、その会談の推移を注意深く見守ってまいりたいと思います。
中小企業に対する軽減税率の問題につきましては、今回の答申では、「基本税率との格差を縮小する方向で検討すべきである。」と指摘されております。政府としても、本答申の基本的方向に沿って適切に対処いたしたいと考えております。
次に、中小企業や医業の承継税制の問題でございますが、中小企業や医業の相続税については、既に五十八年度及び五十九年度の税制改正で円滑な事業承継に配慮し、実施したところでございます。これ以上の問題については今後の検討課題でございます。
資産課税の強化の問題でございますが、有価証券譲渡益課税については、今回の税制調査会の答申では、公平、公正の理念に照らして、また利子配当課税との権衡等を考慮しつつ、段階的課税強化を一層推進することにより課税ベースの拡大を図ることを提言しております。これらについては党において検討していただくことにいたしております。
富裕税の問題については、これはさらに中長期的に検討すべきものであると考えます。
不公平税制の是正の問題につきましては、今回の税制改革においても一層努力する所存でございます。
納税環境の整備についても、五十九年度税制改正において実施したところでございますが、今後とも、それらの措置の定着を図りつつ改善する方途につき配慮してまいりたいと思っております。
マル優等の非課税貯蓄制度につきましても、先般来申し上げておりますように、現在の情勢から見ますというと、多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしている現状にかんがみまして、一部老人、母子家庭等に対してはマル優や郵便貯金の非課税制度を維持しつつ、課税を行う方向で見直すことが税調の答申に提言されておるところでございます。我々としては、これらにつきましては、党におきまして真剣に検討してまいりたいと思っております。
減税財源につきましては、税収中立性の原則のもとで、中堅サラリーマンの負担軽減を中心とした個人所得課税の思い切った軽減合理化及び法人課税の見直しなど行っていくためには、税負担の公平に留意しつつ、間接税あるいは資産課税等のあり方について見直しを行うほか、社会経済情勢の変化に即応した税制の改革、課税ベースの巨額な脱漏をもたらしているいわゆる非課税貯蓄制度の見直しを行うことが必要であると指摘されております。これらにつきましては我々も慎重に検討してまいりたいと思います。
次に、国民減税の実施でありますが、今回の税制調査会の答申においては、中堅サラリーマンの負担軽減を中心とした所得課税の軽減合理化や法人課税の見直しについて検討の方向が明らかにされている一方、間接税や利子配当課税のあり方についても基本的な考えが示されるなど、税制全般にわたる包括的、一体的な指針が示されております。
政府としては、この答申において示された基本的考え方や具体的提言を踏まえまして、国民の選択の方向を十分酌み取りつつ、抜本的な税制改革案を取りまとめてまいりたいと考えております。
以上で答弁を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/23
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024・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/24
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025・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 日程第二 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長岩本政光君。
〔岩本政光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/25
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026・岩本政光
○岩本政光君 ただいま議題となりました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、去る八月一日付の人事院の国家公務員災害補償法の改正に関する意見の申し出にかんがみ、年金たる補償に係る平均給与額に年齢階層ごとの最低限度額及び最高限度額を設定するとともに、通勤の定義に関する規定の整備を行い、あわせて監獄等に収容されている者に対して休業補償を支給しないこととするほか、所要の規定の整備を行おうとするものであります。
委員会におきましては、災害補償の法的性格、限度額設定の是非、社会経済情勢の変化に即応する通勤災害の範囲の拡大、収監中の職員に対して休業補償を支給しないことの取り扱い等のほか行政監察のあり方及び官民給与較差五%未満の場合の人事院勧告のあり方についても質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して内藤委員より反対の旨の発言がありました。次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、災害の予防及び職業病の発生防止のため努力すること等二項目にわたる自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党・国民連合の各派共同提案に係る附帯決議が付されました。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/26
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027・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/27
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028・瀬谷英行
○副議長(瀬谷英行君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110715254X00819861031/28
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