1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年四月十九日(火曜日)
午前九時三十四分開議
出席委員
委員長 大坪健一郎君
理事 榎本 和平君 理事 小宮山重四郎君
理事 佐藤 敬夫君 理事 粟山 明君
理事 若林 正俊君 理事 上坂 昇君
理事 貝沼 次郎君 理事 小渕 正義君
唐沢俊二郎君 栗原 祐幸君
櫻内 義雄君 竹内 黎一君
中島 衛君 中山 太郎君
原田昇左右君 山下 元利君
上田 利正君 野坂 浩賢君
村山 喜一君 近江巳記夫君
春田 重昭君 矢島 恒夫君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 伊藤宗一郎君
出席政府委員
科学技術庁長官
官房長 見学 信敬君
科学技術庁原子
力局長 松井 隆君
科学技術庁原子
力安全局長 石塚 貢君
科学技術庁原子
力安全局次長 緒方謙二郎君
委員外の出席者
参 考 人
(財団法人原子
力安全研究協会
研究参与) 中村 康治君
参 考 人
(日本弁護士連
合会公害対策環
境保全委員会副
委員長) 石橋 忠雄君
参 考 人
(原子力資料情
報室代表) 高木仁三郎君
参 考 人
(中央大学教授) 中島篤之助君
科学技術委員会
調査室長 西村 和久君
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委員の異動
四月十五日
辞任 補欠選任
中山 太郎君 綿貫 民輔君
原田昇左右君 大塚 雄司君
矢島 恒夫君 岩佐 恵美君
同日
辞任 補欠選任
大塚 雄司君 原田昇左右君
綿貫 民輔君 中山 太郎君
岩佐 恵美君 矢島 恒夫君
同月十九日
辞任 補欠選任
羽田 孜君 中島 衛君
同日
辞任 補欠選任
中島 衛君 羽田 孜君
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本日の会議に付した案件
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/0
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001・大坪健一郎
○大坪委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人各位から御意見を聴取いたします。
御出席願っております参考人は、財団法人原子力安全研究協会研究参与中村康治君、日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会副委員長石橋忠雄君、原子力資料情報室代表高木仁三郎君及び中央大学教授中島篤之助君でありますが、中島参考人は、JRの事故のため、まだ御到着になっておられません。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序でございますが、まず中村参考人、次に石橋参考人、高木参考人、中島参考人の順序で御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
それでは、まず中村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/1
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002・中村康治
○中村参考人 中村でございます。
最初に委員長にお許しいただきとうございますが、説明の関係で時々参照いたしますので、資料を配付さしていただきました。お許しいただきます。
私は、核物質防護条約の趣旨に賛成でございまして、したがって、この規制法一部改正法案の内容も当然だと存じております。このような明快な意見を申し立てるに至る私の考え方を御説明するのに、今委員長の許可をいただきました資料をお手元に差し上げてございます。時々それを参照、引用することをお許しいただきとうございます。
私は、実は動燃事業団を退任いたしまして、もう五年半から六年という経過になっております。我が国が原子力開発に着手いたしましたごく初期から、当時原子燃料公社と言っておりましたが、これに参加さしていただきまして、その後組織が今日の動力炉・核燃料開発事業団に改編されても、ずっと核燃料関係の技術開発に携わるという一生を過ごしてまいりました。定年退職された方とか責任重大な立場から去られた方々の恐らくすべてがそうであると思いますが、自分は一体何をしてきたというのだろうか、在職中にそれぞれ苦労や失敗もあったろうに、自分をあんなに夢中に駆り立てていたものは一体何であったろうか、自分はそこで何をしてきたというのであろうか、こういうことを考えるもののようでございまして、私も、そうして核燃料とは一体何であったかということを繰り返し繰り返し考えるこの数年でございました。職を離れるにつれて詳しいことは忘れる方が多くなってまいりますが、離れるに従って視野もおのずから広まるというものではございまして、また、在職中には余裕がなかったり、立場上往来することがちょっと困難であったようなところにも訪問いたしまして、この目で実情を確かめることのできるように、なったものもございます。
私は、核燃料が専門でありまして、原子炉にかかわるところは職責上の認識しか持ち合わせておりませんが、核燃料の立場から原子炉あるいはひっくるめて原子力というものをどうとらえていたか、そういう見方で世界の情勢を見てみるとどうか、こういったことをあちらこちらでしゃべらしていただいておりますが、その資料が先ほどお手元に差し上げた資料でございます。
その中で最初に申し上げておることは、原子力というのは米、英、仏、ソという工業先進国だけの問題ではなくなってきている。一般の方はそういったところだけのように認識されていらっしゃいますけれども、私自身が機会を得てあちらこちら見てまいりますと、東アジア近隣諸国でもかなりの規模で原子力を進めています。その状況を最初に説明いたしております。ちょうど丸二年になりますけれども、ソ連のチェルノブイリの原子炉の事故はまことに残念なことでありましたけれども、このことをきっかけに原子炉安全に関する情報交換を従来にも増して広く世界各国の間で協力してやっていこうということになったことが望外の収穫であったと思います。
このように、各国で経済環境ごとに多少進展の相違はあるにいたしましても、原子力を各国で進めているのは、一般的には在来の発電手段よりも経済性がいいということでありましょうけれども、国内資源のない国にとっては、石油価格が安くなったらもう一度輸入し直して、それで発電すればいいというものでもなかろうと私は考えております。そういったところから原子力発電の社会的意義ということをこの資料の中で申し立てております。
要約いたしますと、我が国ではどんな種類の発電所でも国産できます。発電コストの内訳を考えてみますと、石油発電の場合はコストの大部分が海外に流出する燃料費になっておりまして、原子力発電の場合には逆に大部分が国内に資金が還流するいわゆる資本費勘定になっています。それは製鉄所とかセメント工場あるいは機械工場などで我々の仲間が働く職場をつくっておりますし、利子という形で年金などの形で国民経済に還流している、こういう位置づけで考えられます。
一九八〇年には世界の総人口が四十二億ちょっとと発表されております。そのときに、一億一千万を少し超えた我ら日本人でございますが、そのおよそ四十人に一人の我ら日本人が、その年の世界貿易統計を見ますと、貿易対象になったエネルギー資源の七分の一を我が国に輸入しております。世界の人口はまだまだふえます。我々日本人というのはそれほどふえないで、いわゆる老齢化社会を迎えようとしているわけです。西暦二〇〇〇年には我ら日本人は世界の中で六十人に一人という割合に近づいてくるわけでございまして、つい先般までのように、世界の貿易の何分の一かを輸入して持ってくるということは大変困難になってくると考えています。
そういったところから、核燃料の最大の特徴と私考えておりますが、つまり、ウランの中の核分裂性元素が消費されますが、その消費される間にプルトニウムという新たな核分裂性元素が生産されるということが強調されることになります。化石燃料はかまの中で消費が行われるだけでございますけれども、核燃料はかまの中で消費と同時に生産が行われているわけであります。天然ウランは世界じゅうに広く分布する元素でございまして、ただ経済的に採掘できるという点では偏在しておりますけれども、その中の核分裂する成分のウラン235の濃度を少し高めた低濃縮ウランが軽水炉の燃料に使われています。この濃縮という仕事は、同じ操作を繰り返してまいりますとどんどん同位体濃度が高くなってまいります。幸か不幸か、濃縮には極めて高度の技術と膨大な投資が必要でございます。したがって、世界的に供給者の数は限られた存在でございます。我が国がやっとパイロットプラントの域を脱しつつあるという状況でございます。しかし、こういう濃縮技術の特性にかんがみて、国際安全保障の立場から濃縮技術情報の管理が求められるところでございまして、平和利用濃縮施設に関しては、一方国際的な保障措置が適用されている、こういう関係でございます。
一方、核燃料が原子炉の中で照射されますと、本来核分裂しない性質のウラン238がプルトニウムに転換されて、原子炉のその場で核分裂に参加して発熱もいたしますけれども、ウラン235のすべてが燃焼するわけにいかないのと同じように、一部に残存したものが使用済み燃料という形で原子炉から排出されます。こういうふうに軽水炉燃料が十分燃焼された後に再処理によって分離されたプルトニウムは、いわゆる核兵器級と異なりまして、核分裂しない成分も相当含まれています。したがって、そのままでは直ちに効率のよい核爆発装置材料にはなりませんけれども、効率を問わなければ、あるいは本人の危険を顧みなければ爆発装置にはなるかもわかりません。また、プルトニウムは放射能毒などの顕著な物質でございまして、しかるべき設備と防具を用いないと取り扱いが困難であります。その毒性は即効的なものではございませんけれども、毒作用のあることは否定できません。
動燃事業団は国の開発機関として、お手元の資料に年表を入れてございますけれども、そこに示すように、再処理の工業的開発、プルトニウムの特性を研究する、製造研究をする、さらに新型動力炉開発プロジェクトの燃料を製造する、さらに照射の試験を行う、そのまた再処理の技術開発をするという一連の業務を実施してまいりました。現在も続けています。それぞれの実績は一応世界的なものでございまして、実証責任を果たしつつあると考えております。
電力会社所有の軽水炉使用済み燃料はガンマ線が非常に強うございますので、直接人体が近づくことができないという点で核物質は防護されています。再処理して分離いたしましたプルトニウムもおのずからの放射能による防護性はございますけれども、意図的な接近をも不可能とするほどの強い防護性はございません。したがって、従来からも安全確保の立場から厳密なプルトニウムの閉じ込めを行いまして、それが核物質の防護にもつながっているわけでございますが、また、国内及び国際的な保障措置責任として計量管理をしております。計量管理の一つの要因が完全に要因として成立するために、いわゆる包蔵性管理と言いますが、まあ閉じ込めるいろいろな施設とかいろいろなシステムがございますが、その包蔵性ということも、結果的には核物質の防護の観点も満足しております。また、製造いたしました混合酸化物燃料として加工されたものは原子炉サイトまで輸送しなければなりませんけれども、これはコンクリート遮蔽のような重厚な施設を使わなくても、ある程度の施設で化学的にもう一度プルトニウムを分離することは不可能ではございません。したがって、輸送に関しては最大の配慮を払って防護対策が実行されてきたはずでございます。これまではプルトニウム燃料の加工であれ使用であれ、動燃という一つの責任機関の中で物が授受されておりましたけれども、軽水炉プルトニウムリサイクルの実証試験をする、現在進行しておりますが、こういったところでは加工済みプルトニウム燃料を違う機関に授受するという段階に入りつつございます。こういう機微な核物質を含有する燃料の受け渡しには、出荷者責任として、十分安全防護と相手側の防護性を調べて、相互の善意と警備当局への依存によって仕事をやってまいりました。
今後、商業機関による濃縮、再処理が計画され、プルトニウムを利用する施設と機関の数がふえてまいります。プルトニウムの取扱量や輸送回数が増加し、それにかかわる人の数も多くなるということを考えますと、施設者側の体制、設備の整備と同時に、法制的な核物質の防護の望まれるところでございます。
以上が私の陳述でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/2
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003・大坪健一郎
○大坪委員長 ありがとうございました。
次に、石橋参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/3
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004・石橋忠雄
○石橋参考人 日本弁護士連合会の石橋でございます。
お話を申し上げる前に、委員長に資料の配付の御許可を賜りたいと思います。資料の一つは、青森県六ケ所村に立地予定の核燃料サイクル施設に関する日弁連の調査報告書でございます。もう一つは、我が国の原子力利用法体系に関する私個人の考え方を述べた「公害研究」の切り抜きでございます。今回の改正案につきましては、日弁連はまだ正式にその意見を取りまとめておりません。したがいまして、特別のことがない限り、私個人の意見として申し上げさせていただきたいと思います。
まず第一に、今回の法案によって、私は、我が国においていわゆるプルトニウム管理社会というものを新たにつくり出してしまうおそれがあるというふうに考えております。今回の改正案は、もちろん御承知のとおり、青森県に立地予定の核燃料サイクル施設と大きな関連があるわけでございます。これは、プルトニウム並びに高濃縮ウランをいかにして防護するか、こういうような問題でありますが、それでは我が国においてプルトニウムというものが一体今後どれだけ製造され、保有され、そして消費されていくのか、こういうことがまずきちっと法案の前に検討されなければならないというふうに考えます。
私は、今回の法案とも関連がございます日米原子力協定に関連しまして、昨年の十一月とことしの三月にアメリカのワシントンを訪問いたしまして調査してまいりました。アメリカ議会の資料によりますと、我が国が西暦二〇〇〇年までに保有するプルトニウムの量は八十三・九トンである、こういう資料を得てまいりました。同じくアメリカの下院外務委員会における核管理研究所のレーベンソール代表も、我が国が西暦二〇〇〇年までに八十五トンのプルトニウムを保有し、今後三十年間では二百五十五トンに及ぶと、このように証言しておりますので、八十トン内外のプルトニウムが二〇〇〇年までに製造される、こういうことが一応言われておるわけです。
一方、それではこれを消費する高速増殖炉あるいは軽水炉改良のMOX燃料を使用する原子炉はどのくらいあるか、あるいは今後どのような建設の見通しであるかということについて申し上げますと、日米原子力協定についてレーガン大統領がアメリカの議会に昨年十一月九日に承認を求めた一件の書類がございます。その中に、ACDA、兵器管理軍縮庁という官庁がございまして、このACDAの大統領に対するメモランダムの中には、日本側はこの日米協定の交渉に当たって、FBRの「常陽」とATR「ふげん」のために年間三百キログラムのプルトニウムを必要としている、さらに今後はFBR「もんじゅ」並びに大間ATRのためにもっと多くのプルトニウムを必要とする、こういうような記載がございます。
これを子細に見てみますと、現在「ふげん」と「常陽」は稼働中でございますけれども、これの出力キロワット数というものは、御承知のとおり「ふげん」原型炉が十六万五千キロワットでございます。それから「常陽」実験炉が十万でございまして、これを合計しても二十六万五千キロワットにしかならないわけでございます。現在開発中の「もんじゅ」原型炉、これは二十八万キロワットでございますが、さらに青森県の大間に立地予定の電源開発のATR、これが一番大きくて六十万六千キロワット、この二つを合計いたしますと八十八万六千キロワットでございます。この四つの原子炉を合計いたしましても百十五万一千キロワットの発電出力量でございます。御承知のとおり大間ATRというのは、いまだに漁業権の買収並びに土地の買収がなされておらないわけで、いつ建設になるかというのが非常に危ぶまれておるところでございます。
さらに、このACDAのメモランダムの中には、美浜一号炉と敦賀一号炉においてMOX燃料を使用する、改良型でございますけれども、そのためにもプルトニウムが必要である、このように述べてございます。これは私の方で調査したところによりますと、このMOX燃料の中に占めるプルトニウムの割合というのは、美浜一号炉においては一装荷時において四十八キロにすぎません。それから敦賀一号炉は同じく五キロでございます。このようなことから、我が国においてここしばらくの間は、プルトニウムが大量に必要であるということは推測できかねるわけでございます。
一方、昭和六十二年版の原子力白書によれば、プルトニウムの利用形態としては、当然FBRの利用を基本としている。それからその実用化の時期は二〇一〇年ごろよりもおくれ、二〇二〇年代から二〇三〇年ごろをめどにプルトニウム利用体系の確立を目指す、このような記載がございます。
以上のような観点から、プルトニウムが西暦二〇〇〇年までに八十トン以上も我が国において保有される、一方これを使用する高速増殖炉、ATRあるいは軽水炉の改良されたMOX燃料使用の原子炉というものは非常に少ない、少なくとも年間二百キロ、三百キロ、あるいはもっとそれ以上のプルトニウムを消費する高速増殖炉体系というものは全く確立されていない、このように考える次第であります。そういう観点から、まずプルトニウムの管理というものを、もちろん管理あるいは防護というものは必要でございますけれども、それを大量につくり出していく我が国の原子力事業体制というものをまず第一に検討していかなければいけないと、この法案の審議に当たってはそのように考える次第であります。
これから申し上げますように、そういう背景を持った今次改正案というのは、我が国において新しくプルトニウムの管理社会という新局面をもたらすおそれがあるというふうに考えます。
第二番目に、今回の改正案は、昭和六十一年度の改正案と同様に、非常に大事な事項を政令にほとんど白紙委任している、こういうことが言えるかと思います。提案理由の中に、事業者に対して核物質防護の必要な措置を講ずる際の基準の明確化をこの法律によって行うのだ、こういうふうに書いてございます。例えば第十一条の三でございますが、事業者は「特定核燃料物質を取り扱う場合で政令で定める場合には、総理府令、通商産業省令で定めるところにより」防護措置を講じなければならない、このように書いてございます。第十二条の二にも、「事業者は、第十一条の三第一項に規定する場合には、総理府令、通商産業省令で定めるところにより、核物質防護規定を定め」これを内閣総理大臣及び通産大臣から認可してもらう、このように書いております。これを合計してみますと、事業者が核物質防護規定を定めるまでには、三つの政令の白紙委任を経過して初めてこの規定を定める、こういうような法律構造になっておるわけでございます。このようなことで、この法律案のみをもって核物質防護の基準を明確化することはできない、このように考えるわけです。これは我が国の原子力利用法体系に非常に特徴的に言えることでございまして、お手元に配付した「公害研究」にはその点を書いてございますので、どうかお読み願えればと思います。
このような白紙委任条項というものがどういうような効果、影響をもたらすかということについて申し上げます。つまり問題点でございますけれども、まず第一点は、この法律案によって、核物質はもとより、原子力利用、原子力開発の全体について、核物質防護を理由として秘密の強化及び非公開の方向に進むおそれがある、このように考えるわけでございます。
この委員会からいただきました調査室の資料によりますと、今回の改正は五十五年六月の原子力委員会核物質防護専門部会の報告を受けている、このような趣旨の記載がございます。この五十五年六月の原子力委員会部会の報告を見ますと、「事業者の措置すべき核物質防護の要件」として、核物質の使用中、貯蔵中及び輸送中についての防護基準がたくさん書いてございます。それは結構でございますけれども、その中の一つに「核物質防護の詳細に係る情報の管理」という項目がございまして、これを受けた別表二に「核物質防護措置の詳細に係る情報は不必要に分散されないこと。」このようになってございます。したがいまして、今次改正案に盛られている核物質防護規定というものは、不公開となるおそれが十分にあると考えております。このような状況においては、原子力利用に反対したりあるいは安全や情報を要求する住民運動、さらには内部告発、これらの動きと今次改正の核物質防護要件というものが正面から衝突して、一歩間違うとそれらの運動なり内部告発というものを非常に抑制する役割を担ってしまう、このように考える次第であります。
さらには、この原子力委員会の部会報告には緊急時の周辺住民に対する規制等も書いてございますけれども、それらにかかわらず、この核物質防護規定というものが周辺住民あるいは内部労働者に対する人権、財産、これらの侵害の可能性がある場合に、これらが憲法あるいは市民法、労働法などに違反しているかどうかをチェックする機能が少なくともあわせて盛られていなければ、そういう規定がなければいかぬわけですけれども、それらが全くない。核物質防護規定が事業者によって一方的に作成され、そして内閣総理大臣が認可する、これだけのことでございますので、その内容が憲法、法律に違反しているかどうかをチェックする機能は国会に与えられなければいかぬわけですが、それらの規定がないというふうに考えます。
さらに、原子力基本法の第二条には、御承知のとおり原子力の平和利用と安全というものが書いてございます。これらは自主、民主、公開の原則というものが制度的に担保されて初めて実現されるわけでございますが、今私が申し上げたような次第から、この自主、民主、公開の原則が大きく後退して、その結果、原子力の平和利用あるいは安全性に関する保障というものが非常に危惧されてくるというふうに考えるわけでございます。
一方においてこの改正案は、核物質防護条約上の国際約束でございます。これに基づいて改正される機運になっているかと存じますけれども、この核物質防護条約というのはまさに我が国の国際約束でございまして、国会が何らかの形でこの防護というものに責任を持ち、そして一定の役割を果たさなければいかぬ、こういうふうに考えるわけです。そういう観点から見ますと、一定の核物質防護に関する事項については、やはり国会への報告義務あるいは国会の国政調査権を強化する方向で、むしろ核物質防護に関する改正がつくられなければならないと考えるわけです。
これは、先ほど来申し上げている五十五年の原子力委員会部会の報告によれば、核物質防護、なかんずく緊急時においては、事業者と治安当局、規制当局が各自の責任においてこれを実行しなければならない、こういうふうなことが書いてございます。したがって、この改正案では、ただ単に核物質防護について政令で定め、そしてそれを事業者に措置させる、そして事業者に規定をつくらせる、このようにありますけれども、そうすると、この五十五年の報告において、事業者、治安当局、規制当局、各自の責任において実行しなければいかぬというのと大きく矛盾してくるわけであります。この事業者、治安当局、規制当局というのは、まあ事業者は除いてでございますけれども、これは当然行政官庁のことをいうかと存じます。これらについて警察的な発動というものがあるわけでございまして、やはり国会が何らかの形で調査するなり報告を受ける、こういうことの方向で改正すべきであるというふうに考えます。核物質防護が非常に秘密性を持つということはよくわかります。例えば、その場合には国会においても秘密会を持つとかという形でも結構ですので、何らかの形で国会がこの核物質防護について責任を持つようにお願いしたいと思います。
アメリカの原子力規制委員会のゼック委員長は、この日米協定に関連しましてコメントを発表しております。これは、六ケ所の再処理工場について現在のIAEAの国際防護基準を適用した場合には、年間二百キロから三百キロのプルトニウムが不明になる、したがって、六ケ所のサイトに即した具体的な防護基準というものを示してもらわなければ日米協定については賛成できないんだ、このように書いてございます。これは我が国にも当てはまると思います。この法律の改正案では、行政官庁並びに事業者に核物質防護の責任すべてを押しつけた形になっておりまして、むしろ原子力基本法の自主、民主、公開の原則に反した、後退したものであるというふうに私としては考えます。
もう一点は、時間がございませんけれども、核物質防護というのは、先ほど来から申し上げているように、原子力の安全性に関するさまざまな問題点と表裏一体といいますか、非常に密接な関係があるわけでございまして、それらの安全性に関する問題点とあわせた形で改正をしなければいかぬ。この核物質防護だけ、極端に言いますと秘密を厳重に保持する、このためにさまざまな弊害があるわけでございますので、安全性を求める住民側、労働者、そういう方々の声をもどうかくみ上げていただく形で改正していただきたいと考える次第でございます。
終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/4
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005・大坪健一郎
○大坪委員長 ありがとうございました。
次に、高木参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/5
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006・高木仁三郎
○高木参考人 高木でございます。私は今回の法改正に反対します。その根拠をここに述べさせていただきます。
今回の法改正の目的は、核燃料物質、特に改正法案の規定では「特定核燃料物質」、具体的には濃縮ウランとプルトニウム、端的に言うとプルトニウムということだと思いますけれども、その防護というこれまでになかった概念と措置を導入することにあると考えます。これは、これまでよりもはるかに大量のプルトニウムの取り扱い、移動、使用等を想定することによって必要となる措置と考えられますけれども、それはこの物質が容易に核兵器の材料ともなり得るような核分裂性の性質を持つこと、それゆえに管理、防護の強化を必要とするということによっていると思われます。
しかしながら、プルトニウムは、同時に大変よく知られた発がん性の高い猛毒物質であります。その大量の使用ということは、後から少し詳しく述べさせていただきますように、大変大きな安全上の問題を提起します。そしてそのような安全上の保障にとって大変大きな、重要な要素は、資料、データが常に公開され、研究者間あるいは市民、広く国民全体の間で自由に議論が行われ、また何が施設の内部で行われているかということを監視される、そういう体制だと思います。ところが、核物質の防護、管理の強化は秘密の壁を厚くし、このような本来必要な公開性を妨げる方向に働くことは明らかだと思います。後からまた少し具体的に指摘させていただきますけれども、そういう意味で、今回の法改正は非常に多くの点において公開性を損ね、安全上の検討を妨げる、あるいは市民の側のこれに関する監視であるとか反対の意思表示であるとか、そういう自由を妨げる効果を持つものと強く懸念します。
私の危惧は、例えば昨年の十月に敦賀一号炉において試験中に出力が異常上昇する事故があったわけです。このときに市民団体の求めに応じて市から出された事故報告書の多くのデータが墨塗りであったという有名な事件がありましたけれども、こういうことは皆さんも御記憶があるかと思います。このときの墨塗り、非公開の理由がどこにあったか正確には私は存じておりませんけれども、二月二十二日の予算委員会における政府委員の答弁を見ましても、このような情報制限の正当化の大きな第一の理由が核物質の防護、盗難防止にあるということを述べられていることからも、核物質防護ということが情報の公開ということに制限的に働くということを強く憂うる次第であります。特に私は、現在民間においてプルトニウムの問題を研究している人間でありますので、私のような作業が大きく制限されるということに個人的にも大変危惧を持つ次第であります。
もう少し問題を理解する上で、少しプルトニウムという物質についてお話をさせていただきたいというふうに思います。
御承知のように、プルトニウムは原子力発電におけるウラン燃焼の一種の副産物として生成するわけですけれども、よく燃焼した使用済み燃料から回収されるプルトニウムは、これは条件にもよりますけれども、プルトニウム同位体の組成は、例えばプルトニウム239が五〇から六〇%、240が二〇から二五%、241が一〇から一五%、あと242が数%、それにコンマ何%かのプルトニウム238というような組成になるかと思います。これらの同位体はいずれも発がん毒性ですけれども、毒性が高い上に非常に寿命が長い厄介な物質であります。一つの目安として「国際放射線防護委員会広報三十」による年摂取限度、これは一種の許容限度と考えていいと思いますけれども、これを用いると、右のような組成のプルトニウム一グラムは約八千万人から九千万人の人間の摂取限度、いわば許容量に当たるわけで、その毒性の大きさが理解いただけるかと思います。このプルトニウムを大量に回収し、輸送し、利用するというのが法改正の前提になっているわけですけれども、この前提にこそ大きな問題があるというふうに指摘したいと思います。
法改正の背景には、核物質防護条約への加盟、そして包括同意方式による日米原子力協定があるわけですけれども、例えば日米原子力協定の附属書にあるプルトニウム空輸という規定、この危険などだれの目にも明らかだと思います。伝えられるところによりますと、プルトニウム空輸は、約二百五十キログラムを積んだ専用航空機が二週間に一便ぐらい日本の空港に到着する。この一回のプルトニウム輸送量は優に全日本の人口にがんを生じさせ、死に至らしめ得るものであります。したがって、この空輸は絶対に事故や過誤によってプルトニウムが漏えいすることを許さないものでありますけれども、私にはそのような絶対的安全性ということは到底信じられないのであります。
空輸の問題には現在それなりに関心が集まっておりますけれども、私は、問題は空輸部分だけではないというふうに指摘したいと思います。空港からプルトニウムの貯蔵ないし加工施設に至る陸上輸送もまた大変大きな問題だと思います。二週間に一便というような頻度で空港にプルトニウムが到着するといたしますと、その頻度でまた陸送が行われなければならなくなる。日本の今の道路交通状況、人口分布を考えると、こちらの方こそ私はそら恐ろしい気がいたします。さらに、このプルトニウムは燃料加工施設で加工されて、新型転換炉でありますとかプルサーマル燃焼が行われる各軽水炉であるとか、それから今後完成するであろう高速増殖炉「もんじゅ」であるとかいうところに運ばれることになるだろうと思います。その輸送もまた陸送で行われることになる。このプルトニウムを大量に利用する社会は、大変頻度の高い輸送が伴い、それに伴う危険は大変大きいというふうに思います。
このように輸送の問題だけをとっても、プルトニウムが大量に使われる社会は、大きな危険性を持ち、またその防護のためと称して市民的自由を制限しなくてはならなくなることは明らかだと思います。私の観点では、プルトニウムのような物質は、本来輸送すべきでない物質だと思います。社会の中を輸送ということによってこの物質が動き回るということは、明らかにこの物質の性質にとって不適当であるというふうに考えます。そして、そのような輸送を伴わなくてはならない技術選択というのはすべきでないというふうに考えます。
今申し上げましたように、そういう非常に大きな犠牲を払ってプルトニウムを大量に使用するという方向に今向いておりますけれども、そのときにそれだけの犠牲を払うことのメリットがどこにあるのか、プルトニウム利用ということのメリットがどこにあるのか、今実はますますわからなくなってきている状況であるというふうに考えます。
先ほども石橋参考人から既に詳しく話がありましたけれども、プルトニウムを具体的に原子炉で燃焼する計画については当面、ここ数十年の間見通しも立たないし、その先も具体的な見通しはない。世界各国を見ても、高速増殖炉計画からは撤退の方向は明らかだというふうに思います。また軽水炉でプルトニウムを燃すプルサーマルにしても、このことが本格的に実用的な意味を持つとは思いません。現在ではプルサーマル燃料のためのMOX燃料、混合酸化物燃料、ウランとプルトニウムの混合酸化物ですけれども、この燃料をつくるために再処理を行って燃料加工する経費の方が、単純にウランを燃やすよりもはるかに高くつきます。ウランそのものは今世界市場でだぶついているわけですから、仮に原子力発電の是非そのものはここにおいたといたしましても、プルトニウムを燃すことの合理的根拠はほとんどないような気がします。
先ほども申しましたように、プルトニウムのような物質を輸送も含めて社会的にこれを使用するということは、よほど緊急の絶対的な合理的理由がない限りやめた方がいいと思います。そのような理由は今全く見出せないというふうに私は考えます。そうなりますと、再処理という行為も本来必要でなくなるというふうに考えます。それがまた今世界的に一つ向かっている方向ではないかと思います。再処理自身も大きな放射能放出源として、原発以上に日常的な放射能放出が非常に大きく、諸種の危険を伴うものでありますし、また経済的にも今非常に困難な状況にある。そういう状況の中で再処理を行って、しかも使い道のないプルトニウムを取り出すこと自身に大きな問題がある。これ自身が危険性をつくり出しているというふうに私は考える次第です。
多少法案についての具体的な問題点を申し上げますけれども、私がこの法案に対して感じる危惧というのは、第一は、改正案で規定されている核防護措置や核物質防護規定の内容が一向に明確でないということであります。これは先ほども石橋参考人の方から詳しく指摘がありましたように、すべてが府省令で定めるところによるとゆだねられていて、その府省令の内容については現在の段階では全く明らかでない。こういう形での法改正は行うべきではないというふうに、私はその点だけからも思います。しかも、私どもが長い間原発問題に取り組んできた経験で言いますと、今の原発の保安規定、原発だけではありませんけれども、いろいろな施設の保安規定ですら私たちが自由に見られないような状況がある。公開されていない。ましてや核物質防護規定ということになったら、恐らくほとんど確実に私たちには公開されないようなものとして各施設でつくられるでありましょう。そういうところに私たちは大きな危惧を感じるわけであります。
第二は、警察力の介入の余地がふえているということであります。国家公安委員会が関係大臣に意見を述べることができ、また各大臣と国家公安委員会の相互協力がうたわれているわけですけれども、このようなことは、先ほど述べましたような私のような研究者の立場、あるいは原発、核燃料の輸送等を監視する住民の監視行動、あるいは反対する行動に大きな制限が働く、制限的に働くことは間違いないというふうに思います。原子炉等規制法というのは、本来原子炉の安全を規制することを最大の目標としなくてはならないわけですけれども、これは警察力による規制というような問題とはおのずから性質が別なはずのものであるというふうに考えます。
それから、今度は罰則規定ということが改正法案の中にはうたわれておりますけれども、刑事罰というようなことが原子炉等規制法の中に入ってくることも、明らかに今までの法とは違う管理的なものでありますし、これもまた先ほど申しましたように、公開性でありますとか自由な討論、住民の反対等の権利というものに対して制限的に働く。拡大解釈されますとそういう可能性がありますし、具体的にも七十六条の二第二項で未遂罪も罰するというふうに言われておりますけれども、核物質のみだりな乱用はともかく、その未遂罪というような形で拡大されますと、例えば情報のためにアプローチをするとか監視のために接近するというようなことまでも、拡大解釈されて刑事罰の対象になるということがあり得るのではないかというふうに憂えるわけです。
以上、要するに私は、プルトニウムのような猛毒で核兵器の材料となるような物質は、その利用のメリットについてよほど緊急かつほぼ絶対的な合理的根拠がない限りすべきでない。しかるに現状においてプルトニウムの利用拡大を図るというようなことは、私には全く納得できるような理由を見出せないのであります。そういう点からして、今回の法改正が先ほど申しましたようないろいろなデメリットを多く持っていることとあわせて、私には納得できないことであり、反対であるということをもう一回お話しして、私の話を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/6
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007・大坪健一郎
○大坪委員長 ありがとうございました。
次に、中島参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/7
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008・中島篤之助
○中島参考人 中島でございます。交通事故のためにこの委員会に若干遅刻しましたことを最初におわび申し上げます。
今回の核物質防護条約への加入に伴う原子炉等規制法の改正案の審議に当たりまして、参考人として意見を述べる機会を与えられましたことを大変光栄に思っております。時間も限られておりますから、次の三項目について意見並びに要望を申し上げさせていただきます。
その第一は、原子力平和利用三原則の厳守ということについてであります。
申すまでもありませんが、今回改正されます原子炉等規制法そのものの冒頭にも、原子力基本法の精神にのっとって製錬、加工及び再処理の事業並びに原子炉の設置、運転等に関して必要な規制を行うというふうに明記されておりますので、今さらそういうことをわざわざ言う必要はないではないかというふうにお考えになる向きもあると思いますけれども、実はそもそも核物質防護というような、はっきり申し上げれば好ましからざることを国際的協力という立場で取り決めなければならないということが存在するというのも、これは現実であるということであります。
核物質防護とは、申すまでもありませんけれども、核物質の不法な兵器転用が行われて、諸国民の平和と安全が脅かされることがないようにするということでありましょうから、このこと自体に反対する理由はないと私は思います。しかし、よく考えてみますと、アメリカ、ソ連を初めといたします核兵器保有国が、現在もう膨大な核兵器を製造し、配備しておるわけであります。すなわち、核抑止力という言葉が使われておりますが、核抑止力に頼ることを自国の安全保障政策の基本としているというのも、また現実であります。核抑止力ということの本質は核による脅迫ということでございまして、それが国際的には現在では合法とされていること自体が、いわゆる核ジャック等々の発生する社会的根源でありまして、これについては時間があれば後にもう一度改めて申したいと思います。ここでは次のことだけを指摘しておきたいと思います。
核抑止力のために蓄積された膨大な軍事用の特殊核物質、これはプルトニウムだけで全世界で、国連事務総長報告によりますと二、三百トンあるというふうになっておるわけです。高濃縮ウランは二、三千トンであろうというふうに膨大な量が蓄積されておりますけれども、そういう軍事用の特殊核物質についての防護は、今回の国際防護条約の対象にはなっておらないわけであります。これらの軍事用の核物質の管理は、申すまでもありませんが軍隊の手によって行われている。あるいはもう少し正確に申しますと、アメリカのDOE、エネルギー省も結局軍事用のプルトニウムの管理を行っているわけで、言わば軍事的に管理を行っているというのが現実であります。
そういうことを考えますと、平和利用に限り、自主、民主、公開の三原則を守ることを国是としている我が国の原子力開発の根幹に、核兵器保有国においては常識となっているような核物質防護のシステムが無批判に導入されますと、触れるということが起こり得るかもしれない。そのことは非常に厳しく吟味しておかなければいけないというふうに考えるので、わざわざ改めて三原則の厳守ということを申し上げた次第であります。
我が国の原子力基本法にも盛られております平和利用三原則というのは、よく御存じのように、日本学術会議の申し入れに基づいて制定されたものでありますけれども、実は日本学術会議が申し入れたその内容というものが法律にそっくり盛られたわけではございません。よく御存じかと思いますが、これを今回改めて御紹介しておくことは大変意義があると思います。それでぜひ審議の参考にしていただきたいと思うのであります。
これは第十八回総会の政府に対する申し入れでありまして、一九五四年のことでありますが、「わが国で、原子力の研究およびその開発、利用をはじめるについては、政府において、少なくとも次の諸条件を保障するための措置をとられたく、ここに本会議第一八回総会の議により申し入れます。」とありまして、七項目ございます。
時間がありませんので、特に私が強調した三原則が書かれているところは省きまして、第五項に「原子力の研究・開発・利用に関係する機関の要員については、日本国憲法によって保障された基本的人権を、とくに十分尊重すること。」というのが入っております。六は安全のためのものですが、七に、「核分裂性物質または核分裂性物質の原料となる物質は、国民の利益のために、厳重に管理されるべきこと。」というふうに書いてありまして、この立場からは、核物質を厳重に管理するということは当然であるという立場がとられているわけです。特に今読みました第五項の、原子力施設の従業員といいますか、機関の要員についての人権の保障、これは私の考えでは、日本国憲法によって当然認められたことでありますから、わざわざ原子力基本法には入らなかったのであろうというふうに考えるわけであります。
実はこういうことを申し上げますのは、私が一九七二年から八五年まで、日本学術会議の会員として原子力関係の委員会等で仕事をいたしました関係で、特に今度の法改正に当たっても強く要望しておきたい点であります。
次の問題でありますが、第二番目に申し上げたいのは、このような規定があったにもかかわらずと申し上げるべきでありましょうが、一九七八年以来、日本原子力研究所において核物質防護問題に絡んで起こった事件についてであります。この核物質の防護というのは、これから法律ができて、各省令ができて核物質防護が行われるということではなくて、実はこの法律ができる前から、原子力関係の日本原子力研究所あるいは動力炉・核燃料開発事業団等々の事業所におきましては、あるいは原子力発電所等においても、一定の防護措置が国際原子力機関の勧告に従いましてそれぞれ実施されておるというのが現実でございます。ですから、私はそのことが今度法律化されることそれ自体に反対ではありませんけれども、それに対して、今これから申し上げるような事件が起こってはならないという意味で、ぜひ参考に申し上げたいのであります。
国際原子力機関が核物質防護のための最初のガイドラインといたしましてINFCIRC・二二五、これはIAEAの報告書でありますが、一九七五年に各国の専門家が集まりましてつくりまして、そしてその二年後に改定されたものが各国に勧告されたわけであります。実は当時我が国で問題になっておりましたのは核不拡散条約、NPTと申しますが、核不拡散条約は七〇年に署名のために開放されていたものが、その批准が我が国ではいろいろ議論がございまして、実はそのときに一番問題になっていたことは、核不拡散条約を批准すれば、それに伴って国際原子力機関との間で核物質の管理に関するいわゆる保障措置を取り決める必要があるわけであります。この保障措置と申しますのは、具体的にプルトニウムあるいは濃縮ウランというような特殊核物質の管理をどのように行うか、これは実は核物質防護ということではなくて、計量管理によってどこにどれだけの物質が存在するかということを把握する、そのためのシステムを我が国がつくる必要があるわけであります。これについて詳しく申し上げる時間はございませんけれども、この議論の中で、現在一定の保障措置の体制がとられていることは御承知かと思います。そういうことについては、私は当時原子力研究所におりましたので、いろいろな討論がされたことをよく記憶いたしております。
ところが、一方今問題になっております核物質防護そのものにつきましては、どうも十分な議論があったとは思えないのであります。それにもかかわらず、原研当局が一方的に幾つかの防護措置を実施いたしました。それは、そもそも核ジャック対策というのは、それに対する対抗手段の技術的な問題というのは本質的には大した問題ではないのですけれども、例えば、所員がそれまではただ名前が書いてあっただけの身分証明書を持っていたのを写真つきの身分証明書に取りかえるとか、あるいは入口を特定するとか、特別な核物質のある施設の周辺に塀をつくるとか、そういうことをやったわけであります。当然日本原子力研究所の労働組合は、これは労働条件の変更に関することであるから協議をしてほしいという申し入れに対して、当局が応じない。それで労働組合側が対抗措置といたしまして、その配付された写真入りの身分証明書を全部回収して突っ返すという大変ラジカルな戦術をとったわけでありますが、これに対して中央執行委員会全員を処分するということになりまして、以来九年間にわたりまして係争問題となりました。
結論だけ申しますと、実は昨年、茨城地労委を経て中労委ということになったわけですが、茨城地労委では労働組合の主張が認められまして、この処分は不当労働行為である、それから核物質防護といえども職員の人権を侵すことは許されないという点が明記された地労委命令が出されたのであります。これは非常に重要でありまして、我が国の憲法のもとにおいては当然のことでありますけれども、こういう紛争を経なければ当然のことが行われないということは非常に問題であるわけです。原研当局はそれに対して、不服であるということで中労委に訴えた。結局昨年十二月八日に、和解という形で事実上この問題は終結したわけであります。言っていることは簡単でありまして、事業所において労使がやはり協力して核物質防護に当たるべきであるという当たり前のことが出されたということにすぎないのです。すぎないと言っては大変失礼ですが、そういうことであります。
実は私が申し上げたいのは、この地労委並びに中央労働委員会における審問の場所で、核物質防護にかかわるあらゆる問題、つまり国際的背景、例えば核不拡散条約体制というものはいかなるものであるか、核兵器廃絶の問題はどうかかわっているか、原子力基本法をめぐる問題はどうか、それから労働条件をめぐる問題、研究所でありますから、当然学問研究の自由と核物質防護のかかわりの問題といった非常に広範な事柄が、各界の著名な方々を証人として審問に参加していただきまして、議論されました。したがって、この係争問題に関する記録というのは、核物質防護を実際に行うに当たって配慮すべき重要な事項を含んでいる、我が国で唯一の公式の場における論議の記録であるというべきでありましょうし、あるいは単に記録というにとどまらない具体的な経験であったということであります。今回の法改正後に省令あるいは各省の規則といったような制定が行われるはずだと思うのでありますけれども、その際には必ず参考にしていただくべき内容を含んでいるということを私は強調しておきたいと思います。
非常に多くの方が参考人として出席されましたので、その一々を御紹介する時間はもちろんないわけでありますが、特に高柳信一教授、東大名誉教授で現在は専修大学にいらっしゃいまして、憲法学の大家でありますが、同時に学術会議の学問研究思想の自由委員会の委員長という形で中労委で証言をなさっております。これは非常に重要であります。
高柳教授は、学問の自由というのを三つに分けた側面から考える必要がある。つまり学問の自由というのは、単に学者が研究するのは自由だというようなことでは全く意味がないのであって、学問の研究というのは自然と社会の法則を認識する作用である、これが一つの側面であります。もう一つは、現在の近代的な科学研究にあっては、研究者と研究手段というのは分離しておる。つまり、研究者は雇用されている人であるということであります。ところが、研究成果というのは一般に社会的に非常に大きなインパクトを持っている。そういう三つの側面から、研究を行う事業体ではどういう原則を守らなければいけないかということを非常に明快に論証されておるわけであります。これは詳しく御紹介申し上げる時間がないのは大変残念でありますけれども、一点だけ私なりに理解した点を核物質防護に即して申し上げたいと思うのであります。
例えば、原子力研究所の高速臨界実験装置があります。これには高純度のほとんど核兵器材料そのものと言っていい、九二%以上の純度を持つプルトニウムが約三百キログラム含まれているわけであります。この場合はプルトニウムを加工したり何かするということではありませんから、一種の研究手段であります。プルトニウムの金属片があるというわけですが、その所有権、管轄権というのは当然のことながら原研当局にあるわけでありますけれども、その管轄権があるからといって、それを一方的に事業者が行使してはならないというのが一般の事業体と研究事業体との相違であるということであります。そういうことをすればそもそも研究している目的というものが失われるだろう、創造的な研究を巨大な国費を投じて行っていることがむだになるであろうということを高柳教授は言っておられるわけであります。
実は核物質について最もよく知っているのはだれかと言えば、現場の研究者である、あるいはその機関の要員であります。原子力研究所にはもちろんいろいろな人がおり、事務職員もおるわけですけれども、その人たちの知識水準にしましても一般の市民よりははるかに水準が高くて、むしろ一般市民の水準からすれば、専門家とみなすべき知識水準を持った人たちの団体である。そういう人たちを信頼しないで、一方的に事業者が実施するということはまずいということであります。ですから、科学者というのは、特に核物質という非常に重要なものを扱う立場からいえば、機関の要員は、この核物質防護ということに当たって管理に参加するのは当然であるということになるわけです。
時間が参りましたから少し急いで申し上げますと、核物質が同時にまた軍事に使われている物質でありますので、実は世界においてはこれらの核物質の管理は軍事的に行われているということであります。軍事的に行われるということは、軍事の論理というものは非常に明快でありまして、敵か味方かを識別することから始まるわけであります。つまり、敵の軍服を着ているやつは敵であるし、味方の軍服を着ているのは味方であるというわけです。それは結局人間をどう信頼するかということであります。戦争の論理はこうやらなければ勝てないのでありますけれども、この論理を研究機関あるいは平和利用を原則とする事業所に持ち込んだら、とんでもないことになるわけです。
ところが残念なことに、核物質防護条約そのものにしましてもその影響を受けておる。つまり、不信感を前提にしたある程度の秘匿、秘密という措置を認めている点があるわけです。これは、うっかりいたしますと直ちに秘密は自己増殖をいたします。そうしてそういう結果としては、核物質の水平拡散は防ぐことができるかもしれませんけれども、垂直拡散は防げない。あるいはこの危険な核物質を一部の人だけが握って、平和利用と反する方向に向かっていくかもしれない。つまり、軍事的な論理でPPをやる場合の最大の落とし穴がこの点にあるということを高柳教授は指摘しておられるわけであります。したがって、研究者を信頼し、核物質防護を実行するに当たっての共同管理者にするというのは、平和利用三原則を守るためにも、あるいは学問研究の自由を守るためにも、あるいは原子力研究の発展を図るためにも不可欠の要件であるということを、先ほどの学術会議の勧告とあわせて御確認願いたいと思うのであります。
第三点は、先ほど石橋参考人その他からも言われたとおりでありまして、今回のことが余りにも省令あるいは規則にゆだねられております。私は、その具体的な審議は当然原子力委員会あるいは原子力安全委員会に諮られて行われるとは思いますけれども、同時に、科学者の代表機関である日本学術会議にも政府として正式の諮問をして、間違いが起こらないようにするということをぜひこの会議で決めていただくことを心から要望するものであります。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/8
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009・大坪健一郎
○大坪委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/9
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010・大坪健一郎
○大坪委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。榎本和平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/10
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011・榎本和平
○榎本委員 まず、お伺いする前に、率直に私の基本的な認識を申し上げておきたいと思います。我が国の原子力というのは今日では国民生活に必要不可欠のエネルギーである、私はそのような認識に立っておるわけであります。そういう認識の上で、これからまず中村参考人にひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
今日大方行われておりますところの軽水炉を中心とした原子力発電、これは申し上げるまでもなく、アメリカを初めとしてヨーロッパ先進各国、そういう先進工業国だけでなくて、先ほど参考人もおっしゃっておられましたように新興の工業国、また発展途上国、そういう範囲にまで広く利用されて今日に至っておるわけであります。しかし一方、世界の国々を見ました場合に、原子力利用をいまだ選択できない国家もございますし、またあるいは、現在利用はいたしておりますけれどもそれを縮小しよう、そういう動きもある国があると伺っておるわけであります。また、原子力発電をやっていても核燃料の再処理というものを行わない、使用済みの核燃料というものを直ちに破棄するといいますか、そういうふうな政策をとっている国もあるやに伺っておるのであります。
ですからそういうことで、まず第一点の御質問といたしまして、こういうふうにいろいろな国、その国その国によって違った動きがある。私は先ほど申し上げましたように、原子力エネルギーというものはこれからの国民生活に不可欠な要件であるという認識に立っておるわけでありますが、そういう点でいささか疑問も持つものでありますので、この点をまずお伺いをいたしたいと思うのであります。
また、関連する問題でありますからまとめてまず三点ほど申し上げたいのでありますけれども、こういう世界の各国の中で我が国と隣接いたしております、これも先ほど参考人がちょっと触れられまして、余り詳しくお触れにならなかった点でありますけれども、我が国の近隣諸国、東アジア諸国、こういう国々でも私ども一般国民の予想以上に原子力エネルギーというものが使用されている、こういうふうなことを聞くのでありますが、この点についての現状といいますか、またどのような進め方をやっておられるのか、第二番目の質問としてこの点をお伺いをいたしたいと思う次第であります。
さらに三つ目の質問としまして、今我が国におきましては使用済み核燃料の再処理を行うための具体的な計画を進めておるわけでありますが、このプルトニウムの利用を進めるということの必要性、これは私どもそういう立場に立つものでありますが、ひとつ中村先生の専門的なお立場から、この点も第三点としてお伺いを申し上げたいと思うのであります。
まず、この三つの問題について中村参考人の御意見を伺いたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/11
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012・中村康治
○中村参考人 お答えいたします。
御質問の幅が大変広うございますし、時間の制限もございますので御期待に沿いかねるかと思いますが、少し簡略に申し上げます。
世界各国ではいろいろな政策があったし、それから特に最近は経済環境の変化、環境価値観の変化といったものがいろいろ影響を与えております。特に、アメリカが原子力利用においての先導的な立場をとっておりましたけれども、今から十年ほど前、カーター政権時代になったところでかなり方針を改めたことがございました。率直に申してそういったことが混乱の第一でございました。核兵器拡散を防止しなければならない、これはだれも異論があるわけではないが、その進め方についての問題で、少なくとも当時カーター大統領は、アメリカ国内において、それまでは民間事業として進めようとしておりました再処理、プルトニウムリサイクル、あるいは高速増殖炉、その前にもう一つございました、濃縮も民間事業にしよう、こういういろいろな政策がございましたが、これを全部しばらく棚上げにする。それで同じような政策を同盟諸国にも求めてきたことがございました。これは当時国会でも大変御心配いただきましたが、私どもいわゆる日米交渉というような簡略な表現をしておりましたが、何とか乗り切ることができました。その後INFCEという、国際的に核燃料サイクルを進めることと核拡散の問題を議論する場がございまして、いろいろな議論をいたしましたけれども、結局こういう性急な、かたくなな政策は世界的には当時は認められませんでした。
ちょうどそのころにアメリカ国内でスリーマイル島の原子力発電所の事故がございました。これは結果的には重大な放射能の放出もなく、人的な災害もなかったわけですけれども、かなり深刻な安全議論をいたしました。もともとアメリカ国内では、一九六〇年代から七〇年にかけて少し過大な電力需要の伸びを想定しておりました。こういったことが今度いろいろなふうにはね返ってまいりまして、金利が上昇する、建設に時間がかかる、そういったところから原子力発電所の発注のキャンセルというようなこともございました。こういうことで、その後はレーガン政権になって再処理否定というようなことは取りやめるということになりましたけれども、もう産業界がなかなか興味を持たなくなっているという状況です。しかし、それでいながら、カーター政権時代に使用済み燃料を廃棄物として直接処分をするという一つのシナリオを決めておりましたけれども、これも横で見ておりますと、予定どおりに進行しているようには思えません。しかし、米国原子力産業界には、ずっとその先を考えてみると、核融合がそう簡単に出てくるわけではないとすれば、やはり高速増殖炉というものが必要だ、そうするといきなり処分してしまうのではなくて、使用済み燃料を再取り出し可能な形の貯蔵をして将来の時代に備えなければならぬ、こういう意見もございます。
フランスは一応順調な展開をしておりますけれども、ここでの特徴は、最初にガス冷却炉をとっておったのがいち早く軽水炉に切りかえて、それで軽水炉から高速炉へという路線で進んでまいりました。このために大型の濃縮、再処理、こういう工場施設を用意いたしまして、自分の国で発生する需要が出てくるまでは外国にサービスを提供する、こういうことで今日までやっています。
イギリスも同じような政策ですが、軽水炉への切りかえが比較的最近ということでございます。この二つの国はチェルノブイリの影響ももちろん深刻に受けましたけれども、計画自身は着実に進んでいるということでございます。
西ドイツは、地理的、国家的環境が厳しい、そういったことでもともと原子力開発にも政治の影響をかなり深刻に受けております。チェルノブイリの事故についても、距離が近くて全般的な環境論ということに巻き込まれておりますけれども、現在連邦政府は今までの方針を堅持すると言っています。
スウェーデンとかスイスという比較的規模の小さい国では、したがって電力規模もそれほど大きくございません。そこで、軽水炉発電を導入するにしても燃料関係のサービスはフランスとかイギリスに委託する、こういう政策をとっております。そろばんが合うならば、経済的であるならばプルトニウムリサイクルもやるというのを明快に持っておりましたけれども、再処理料金が高くなってきた、廃棄物は返還される、こういったところから少しく政策が変わりつつある。使用済み燃料を直接処分する可能性、こういったことを今検討しているわけでございます。特に地理的に近いスウェーデンでは、チェルノブイリ事故の影響を受けて、現在ある原子力発電所はまあいいとしても、これ以上の拡大はやめようというような結果を国民投票で言っていました。
簡単に後を続けますが、東アジアでは、これもお手元の資料に書かしていただいておりますので時間を節約いたしますけれども、韓国では現在八基。最後の一基はまだ商業運転ではありませんで試験運転、そういうことでいうと八基。台湾では六基動いております。それから中国では秦山の原子力、加圧型、PWRですね、これが大分格好をつけてまいりました。中国では西暦二〇〇〇年までに一千万キロ、できれば千二百万キロぐらいのところまで持っていきたい、こういうことでございます。
こういう近隣諸国も、エネルギーの必要性から考えてみて、それぞれ安全確保第一ということで物事を進めておりますが、韓国の場合には核不拡散条約、NPTの参加国でございますし、IAEA、国際原子力機関のフルスコープ・セーフガードも受けています。中国もこれに参加しています。中国はただ保障措置のあり方について現在なお議論しているようでございます。台湾は政治的に微妙な立場でございますが、アメリカが原子炉燃料を提供しているというその責任において、管理の責任を持っていると了解しております。
問題は、こういうような世界情勢、これも今後もいろいろ動くことはあると思いますが、先生方に釈迦に説法するまでもなく、その中で資源に乏しい我が国においてはエネルギーの安定供給というのが大変大事な話です。現在原子力委員会のいろいろな資料にもございますように、原子力発電を基軸エネルギーという位置づけをされまして、今後も着実に進めていくことが肝要だと私も思います。こういう点で考えてみると、使用済み燃料を再処理いたしましてプルトニウム利用を進めるということは、一つにウラン資源、もともと我が国にほとんどございません、ほとんど輸入ですが、このウラン資源の有効利用を進めるということと、原子力発電にかかわって対外依存度を少しでも軽減していく、一言でエネルギーセキュリティーとよく言われますけれども、そのために必要でございまして、この再処理で回収されるプルトニウムは、言うならば準国産のエネルギー資源である。
そういったところから、お手元の資料の十五ページから十六ページに経過をちょっと書いてございますけれども、私は動燃の核燃料サイクルの実績をそこで紹介いたしまして、それを国民の英知と汗で生み出したエネルギー、こういう表現をしておりますけれども、その実績は現在でも石油換算で三百万キロリットルを超えております。今青森県の方で計画されている核燃料サイクル施設が実現したといたしますと、そこで呼び起こされるエネルギーを今度は石炭で換算いたしますと、年間三千万トンというものになります。我が国の実際の石炭生産から考えてみて、これは非常に大きな意義を持っておると私は考えております。
以上、一通りの御質問にお答えいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/12
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013・榎本和平
○榎本委員 もっとお聞きしたいのでありますが、何か時間が相当おくれておる、こういうふうなことでございまして、まだ私の持ち時間は若干あるのですが、これで参考人に対する私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/13
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014・大坪健一郎
○大坪委員長 上坂昇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/14
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015・上坂昇
○上坂委員 本日は、参考人の先生方に非常に貴重な御意見を賜りまして、お忙しいところをおいでいただいたことを心から感謝申し上げます。
今四人の皆さんからお話を承りまして、今回の法律案の持つ危険性あるいは欠陥を指摘していただきました。特に我が国はあくまでも原子力の平和利用を目的としておりますから、元来軍事的な管理を目的とされている今回の防護条約に基づく高濃縮ウランあるいはプルトニウムの防護、そういう関係の法律を国内で制定をする場合に、この核防護に名をかりて原子力利用の三原別や国内の研究の民主的な体制というものを制限することにつながるおそれがあるという御指摘についても認識をすることができまして、大変ありがたいと存じております。
高木参考人にお伺いを申し上げますが、発がん性の猛毒を持つプルトニウムを核燃料サイクルの名で商業的に大量使用、利用をするということが国民の生活にとって将来どういう意味があるか、どういう影響を持っているのであるか、これをまた一つはコスト面を含めてお答えをいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/15
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016・高木仁三郎
○高木参考人 お答えいたします。
先ほどプルトニウムの危険性ということを一般的にお話ししましたけれども、具体的に少しお話ししたいと思います。
現在プルトニウムは使用済み燃料の中に発生するわけですけれども、その使用済み燃料の中に発生したプルトニウムを再処理によって回収する。現在一番大きく問題になっておりますのは、先ほどもちょっと申し上げました新しい日米原子力協定に基づくプルトニウム空輸という問題でありますけれども、このプルトニウムの空輸ということの危険性ということをもう少し具体的に考えてみますと、例えば二百五十キログラムのプルトニウムが運ばれてくる。これが仮に日本の空港に到着する寸前の状態において、空中において航空機の事故でありますとか爆発、墜落というようなことによって容器が破壊され、これは粉末状の酸化プルトニウムでありますけれども、プルトニウムが拡散するということがあれば、これは拡散計算といういろいろな計算の想定がありますけれども、地上数百メートルから数千メートルというような上空で爆発してプルトニウムが拡散したというようなことを考えると、周辺の陸地数百キロ四方の範囲において、ほとんど居住不可能なプルトニウム汚染が実現するというふうに考えます。気象条件によっては、ほとんど日本全土的に汚染が拡散して住めない、あるいは農業が営めないという状況が実現すると思います。プルトニウムそのものは、プルトニウムの主成分であるプルトニウム239の半減期が約二万四千年という非常に寿命の長い物質でありますから、一たんこのようなことが起これば、陸地の汚染というのはほとんど修復不可能な状態が来ると思います。
これは空輸だけの問題ではなくて、先ほども申し上げましたように陸送が非常に多くあるわけですけれども、そういう陸地関係の輸送においても、例えばトレーラーで運ばれるということになる。それが一般道路あるいは高速道路、いずれにせよ専用道路ということはあり得ませんので、ほかの普通の車両と同じ道路を走らなくてはならないわけですから、一たん事故に巻き込まれたりすれば、あるいは火災に巻き込まれるというようなことがあると、やはり大きな危険性があると思います。そういうすべての状態につき、この運ばれるプルトニウムの量が、先ほど言いましたように一人一人の人間への毒性という点からいうとけた外れですから、かなり高い確率で事故を防止しても、一たん事故が起こったら、その結果というのはもう非常に壊滅的修復不可能な事故、チェルノブイリ原発の事故よりもさらに総量にして毒性の大きい放射能がかかわるような事故になるということを指摘したいと思います。
それから、同じような問題がプルトニウムを扱うすべての施設にやはりかかわってくることですし、プルトニウムは臨界管理ということがまた非常に難しい物質ですから、臨界管理を間違えば、一カ所に多くのプルトニウムが誤って集合するというようなことがあると臨界量に達して、それによる事故がある。極端な場合には核爆発事故というようなことがあり得るということです。
そういうプルトニウムですけれども、実際に、じゃそのプルトニウムを今利用するということになった場合でも先ほどもちょっとお話ししましたように、高速増殖炉に至っては、二十一世紀のいつごろになるかということについては、その商業化ということについては原子力委員会等の見通しを見てもほとんどめどが立たない。世界的に見てもやはり撤退の傾向は明らかだというふうに私は考えます。
そういう中で今出されてきておるのが、プルサーマルといいますか、プルトニウムの軽水炉による燃焼ということであります。MOX燃料というふうに普通言っておりますけれども混合酸化物燃料。燃えないウランに燃える成分としてプルトニウムを入れて、普通の二、三%の濃縮ウランと同じ程度の燃焼性を持つように工夫した燃料ですけれども、これを入れて軽水炉で燃やすということが試験的に試みられつつあるわけです。これなども実際問題としますと、ウランを燃やすことを目的としてつくった原子炉でプルトニウムを燃やすということには、核的な性質が違いますからさまざまな制約が加わるので、全炉心をプルトニウムで置きかえるというようなこともとてもできない。
例えば制御棒のきき方が違ってくる。それから核的な性格が違ってくるために、例えば原子炉に対する乱れが入ったようなときに原子炉のいろいろな振る舞いが違ってくるというところがありますので、これはかなり慎重を要する計画でありまして、現在いろいろ想定されているケースでも、せいぜい炉心の三分の一ぐらいのプルトニウムしか配備できないし、しかもそのプルトニウム燃料も、普通のペレットよりは形を変えたりいろいろな工夫が必要になってくる。
そういう非常な困難がありまして、実際問題として実用性があるとも思えませんし、それからこれをやりますと、また核燃料サイクルが非常に複雑になってまいります。このための再処理ということが必要になってきます。これは今までの再処理と、もっとプルトニウム含量が多くなるような再処理、いろいろな超ウラン元素といいますか、またプルトニウムが燃えたことによって発生するいろいろな毒性の高い元素の比率がふえますので、そういうことも含めて再処理そのものが非常に難しくなる。これは高速増殖炉にも当てはまることです。そういうことがありますので、そういうことも含めて言うと実用性が考えられない。
現在、例えば再処理にかかる経費は、一トン当たりの使用済み燃料を再処理するのに、どんな安い見積もりであっても一億五千万から一億六千万円かかると思うのですけれども、これはまだ商業的に成り立っている金額ではないと思うのですね。実際にはもっと高くつくのではないかと思います。そうやって回収されるプルトニウムを燃料の価値としてウランと比較してみると、いろいろ考えますと三千万円から四千万円ぐらいのお金をかければ購入できるぐらいの濃縮ウラン程度の価値しか、そのくらいの再処理コストをかけても持たないようなプルトニウムしかできないということで、MOX燃料に伴う経済性というのはおよそ私はないと思います。
これが科学技術庁なんかの言い分だと、プルトニウムをただ貯蔵しておくといろいろ核管理上の問題があるから、むしろ原子炉に入れて、MOX燃料として燃してしまった方が管理上の問題がややこしくないんだというような話はよくされるわけですけれども、そのことは裏返せば、そこにプルトニウムがあるから使っているというような話であって、プルトニウムを使うことの本来的な合理的な理由はおよそ考えられないというのが現実だろうと思います。
時間が限られておるようですので、とりあえずお答えとさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/16
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017・上坂昇
○上坂委員 次に、石橋参考人にお伺いをいたします。
先ほど先生は、二〇三〇年くらいにプルトニウム利用体制というのが完成するのだというようなお話でした。今高木先生からも、将来これは完成がずっと先になるだろうというお話がありました。先ほどお聞きしました点によりますと、この使われる量と今保有されようとして予想されている量との間に非常に大きな開きがあります。これについて非常に不安と疑問を持つわけでありますが、これに対して何らか先生のお考えをいただきたいと思います。
もう一点は、今プルトニウムの空輸の問題が出てまいりましたが、この空輸について今一番国際条約の中では問題になるんじゃないかと思います。この空輸がどういう形でどういう保護によって、日本ならばどういうところへ運ばれるということが予想されているのか、この辺についてもお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/17
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018・石橋忠雄
○石橋参考人 申し上げます。
御質問は二点でございますが、関連しているようでもございますし、また高木参考人からもお話がありましたので、まとめてお話し申し上げます。
私がちょうどワシントンに行っておりましたことしの三月の初めごろに、日米原子力協定の米議会の承認の問題がありました。そのときに、アメリカの政府高官によれば、日米双方においてこのプルトニウム空輸について二点ほどの合意がなされたということを私どもで確認しております。その一点は、海の上を飛行機で飛ぶ。それからもう一点は、ノンストップ便である、こういうことでございます。その少し後に国防総省のプルトニウム空輸に関する相当詳しい検討がなされた非公式の文書というものが出たわけでございます。
プルトニウム空輸というのは、昨年のちょうど三月ごろからアメリカやカナダで相当世論ないしは報道等において問題になつてきたわけでございます。それはなぜかといいますと、やはり万が一事故があった場合の人間と環境に与える影響度の大きさなわけでございます。御承知のとおり、この問題について昨年十一月にアメリカの上院において、アラスカ州選出のマコウスキーさんとウイスコンシン州出身のプロクシマイア議員さん、この方の提案によるプルトニウム空輸に関するキャスクの法案が出されたわけでございます。現在このプルトニウム空輸に供されるPAT3というキャスクはまだ開発されておらず、昨年においても動燃の依頼によってアメリカのサンディア国立研究所において開発されてきておりますけれども、実験は失敗しております。
伝えられるところによりますと、これは現在でもまだ開発を続行中ということでありますけれども、アメリカでどうしてこんなに問題になってきたかというと、御存じのように、かつてグリーンランドとスペインにおいてプルトニウムを運んだ飛行機が落ちて大きな問題となったわけでございます。そのために、この日米協定の第五附属書にはこのプルトニウムのことが書いてございます。それから今回の核物質防護条約の中においても、それに関する規定がございます。それから今次の改正案、今御審議いただいておる五十九条の三も、まさにこのプルトニウム空輸のことだろうと考えるわけですけれども、アメリカでは、一言で言うと、万が一のことがあった場合には大変な問題になる、したがって最終的にはアメリカの領土を飛ばない、あるいは領土にプルトニウム空輸機が停止しない、こういうことになったわけでございます。その結果が日米両政府による海の上を飛ぶ、つまり公海上を飛んで他国に迷惑をかけない、こういうようなプルトニウム空輸機のルートになったと思います。
これにつきましては、先ほど高木参考人からもお話のあったように、酸化された粉末状のプルトニウム空輸がなされるわけでありまして、その一回の空輸量が約二百五十キロという大量のプルトニウムであります。これにつきましては、国防総省とアメリカのほかの文書によりますと、アメリカは現在アメリカオリジンのプルトニウムについては八分の七のコントロール権を持っております。したがって、これはアメリカの法律上、当然日本に入るまでは管理してくるということになるわけであります。
そういたしますと、このプルトニウム空輸機がどこに入ってくるかという問題でありますけれども、現在これに供される飛行機というのは開発されておらず、伝えられるところによりますと、来年の三月までにデリバリーできるようにボーイング社の首脳がボーイング747—400という改造機を開発するよう指示した、こういうことでございます。したがって、非常に近い将来においてプルトニウム空輸機が日本にやってくる。
これにつきましては、それではどこの飛行場かということになりますと、このルートが北極からベーリング海峡を通って日本に南下してくるわけでございますけれども、青森県の三沢空港が一番可能性があるだろうと私は考えております。これにつきましては、まずこの日米協定の第五附属書に地上のオペレーションセンターというものが記載されております。これは当然アメリカ軍の関与したものでございます。御承知のとおりアメリカの軍隊が三沢に駐留しております。それから、三沢空港から二十七キロの地点に、先ほどから出ております核燃料サイクル施設の建設が進められておるわけです。それから飛行機の方から見れば、やはり航続距離が一番短いのが望ましい。なぜならば、相当重いものを運んできて、現在のボーイングのジャンボ機でも無理だということでありますので、燃料との関係でそうなる。それから、アメリカのACDAの前に申し上げました大統領に対する覚書では、このプルトニウムの管理につきましては、特に六ケ所の再処理工場においては厳重に管理すべきである、こういう特別項目がございます。そういう点から……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/18
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019・大坪健一郎
○大坪委員長 石橋参考人に申し上げます。
時間が足りませんから、簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/19
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020・石橋忠雄
○石橋参考人 わかりました。
仮に三沢空港に着陸するかどうかは別としましても、やはり日本側においても環境影響調査というものを第三者機関によって行うべきである。それから関係自治体住民とも十分協議していただきたい、このように私はお願いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/20
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021・上坂昇
○上坂委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/21
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022・大坪健一郎
○大坪委員長 貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/22
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023・貝沼次郎
○貝沼委員 参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。時間が余りないようですので、私は簡潔にお伺いしたいと思います。
まず第一点は、日本物理学会にこの中の先生方三人まで入っておられますので、今ずっと読ませていただきました。それで、こういう法律が問題になりますのは、例えば核ジャックとかテロとかがプルトニウムをねらって効果があるのかないのかということが私は問題だろうと思います。そういたしますと、プルトニウム、核物質といったらいいのでしょうけれども、こういう核物質というものは果たしてどういうものなのかということの認識がやはり必要ではないか。
そこで、これは中島参考人にお伺いいたしますけれども、核兵器級ということと軽水炉級のプルトニウム、こういう違いでありますが、ここのところを私どもはどう理解したらいいのか、ここのところをひとつ簡単にお願いしたいと思います。
それからもう一つは、高木参考人にお伺いしたいと思いますが、プルトニウムの毒性ということは、先生の著書であります「プルトニウムの恐怖」という本も私よく読ませていただきましたし、アルファ線が集中的に影響が大きいということもよく知っておりますが、しかし、化学的な性質によって体内からの排せつの問題とかあるいは体内被曝の問題ということも当然あるわけでございます。しかし、このプルトニウム以外にも、実はもっと微量で致死量に達するようなそういう劇毒物もまたあるやに聞いております。アルファ放射体でもっと半減期の短いもの、つまり相対的により危険な核種もあるのではないかというふうに私は考えておるわけでございますので、その辺のところをどう理解したらいいのか。先生は人類のつくり出した最強の毒物であるというふうにお書きになっておるわけですけれども、そういう言葉は単なる化学的なそういうこと以外に別の意味があるということなのか、その辺のところを簡潔にお願い申し上げたいと思います。
なお、この二つの件につきまして、先ほどからお話がありましたように、東海村で最初から我が国の再処理事業研究の草分けとしてこられました中村参考人、特に先ほどの話のように米国のカーター大統領時代、非常に厳しいところをどうやってこれを研究するかというので経験があるわけでございますので、そういう経験に即した立場からの御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/23
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024・中島篤之助
○中島参考人 簡潔にお答えいたします。
「ニュークリア・ウエポンズ・データブック」という本がアメリカで出されておりまして、それの第二巻に核物質の生産方法、つまりこれは核兵器材料の生産方法が詳しく出ておりますが、プルトニウムは、先ほど高木さんがちょっとおっしゃいましたようにいろいろな同位体がございます。質量の違う同位体がございますが、核兵器級というのはそのうちでプルトニウム239の純度が九四%以上のもの、つまりほかの同位体が六%以下のものが核兵器級であるというふうにされております。ただ、注意しなければならないのは、それより純度の悪い、例えば軽水炉から抽出されるようなプルトニウムを核兵器材料というよりは核爆発材料として使えるかということは、アメリカでは実は検討されたことがございまして、これは爆縮の技術が大変面倒になるけれども不可能でない。ただし、核ジャックというのは一体何を目的にそういうものを盗取するかといえば、やはり政治的な目的を追求してやるわけですから、威力が本当に問題かどうかというのは政治的な問題でありまして、純度だけにかかわる問題ではないと私は理解をしております。それでよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/24
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025・高木仁三郎
○高木参考人 お答えします。
私の著書に、例えばプルトニウムは人類がつくり出した最高の毒物であるというふうに書いたという記憶は私はありませんので、ちょっと誤解かと思います。この世に存在する元素としては最高級の毒性を持つという表現はしたと思いますが、生物毒とか他の毒とか、私は比較する立場にありません。しかし、最高であるかどうかはともかくとして、プルトニウムが強い毒性を持つことは間違いないところだと思います。
プルトニウムの毒性は、御指摘のようにそのアルファ放射能にあるわけですけれども、同時に化学的に言いますと人体に非常に長くとどまるということ、しかも非常に発がん性のあるアルファ線を発するという、この二つの効果でもってプルトニウムは非常に高い生物毒性を有するということになるわけです。アルファ放射性物質で似たような性質を持つものは基本的に同じような性質を持つと思いますけれども、例えば超プルトニウム元素というものがあります。プルトニウムよりも重い元素でありまして、アメリシウムとかキュリウムとかいうような元素も基本的には似たような毒性を持つと思いますけれども、実際に生産される量的な問題をいえば、もうプルトニウムが圧倒的に多いわけですから、そういう意味ではプルトニウムが最も厄介な問題を提起している。そういう意味で、一番大変な毒性を持つ物質であるというふうに言って間違いないところだと思います。
特に今、核兵器級と原子炉級ないしは軽水炉級という話が出ましたけれども、実は核物質、核兵器物質としての性能、品位から見れば核兵器級のプルトニウムの方がもちろん品位が高いわけですけれども、毒性という点では原子炉級のプルトニウムの方が、プルトニウム238であるとか毒性の高い放射能量も多い他の同位体を多く含むことになるものですから、一層毒性が強くなるということがあって、一層厄介な問題を提起しているというふうに考えます。
時間が限られておりますので、私の答えにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/25
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026・中村康治
○中村参考人 簡単にお答えさせていただきます。
中島参考人も言われましたように、核兵器級プルトニウムと軽水炉で生まれてくるものではかなり組成が違います。一般的にウラン爆弾の場合に、広島に使用されたのが九五%濃縮、高濃縮ウランである、それから軽水炉の発電所に使うのは三%ぐらいの低濃縮ウランであって全く爆発の可能性がない、ここまでは一般社会にも御理解いただいている。ところが、プルトニウムになってくるとちょっとまだなじみが少ないということで、中島参考人と同じ資料、根拠でございますが、核兵器級のものは、その中で核分裂する成分の239が九四%以上というものが使われている。それから高木参考人も言われましたように、それでは軽水炉級の質の悪いプルトニウムが爆弾にならないかといえば、これは全くならないというふうには申し上げられません。時間がないので説明を省略いたしますが、今度はつくる人にかなりリスクのあるようなものでありますけれども、やってやれないわけではないというふうに考えております。
それから、プルトニウムの毒性のお話を私まで質問いただいたか、ちょっと理解が不足でございますけれども、高木参考人もうまく言われましたように、確かに元素としては一番厄介だと言っていいでしょう。しかし、いろんな資料が発表されておりまして、例えばボツリヌス菌の毒素というのは〇・〇〇一ミリグラムで即死を招きます。プルトニウムは回り回ってという非常に時間経過が長いのですが、例えば消化管系に入ってくるということで考えますと、千百五十ミリグラムで十五年後ぐらいに効果があらわれる、こんなふうに書いてございます。それから、アメリカでは戦時マンハッタン計画時代から、今日の基準で見ると何百倍という体内汚染をした従事者の例がございますが、これの追跡調査がずっと行われて、発表もされております。今のところ、ぼちぼち老齢による死亡が出てくる年代になりましたが、死後検査をしてみると、直接の因果関係はまだ認められておりません。しかし、潜在的には危険なものであるということは私も十分了承している。したがって、法案を御審議いただいておるように、我々、善意だけではかることのできない、見えない人たちに対する一つの対応というのが必要だろう、私はそう思っているわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/26
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027・貝沼次郎
○貝沼委員 あと八分ばかりありますので、もう一点だけお尋ねをいたします。
中村参考人にお願いをいたしますが、このPPの問題は、先ほどお話がありましたように政治的な問題だろうと私は思います。その輸送なら輸送の段階で安全性を強調する、これは当然だと思います。そして、さらにまた例えばテロ行為であるとか核ジャックとかがたとえ万が一あったとしても、その場合にいかにして時間を稼ぐかということが重要な要素ではないかと考えておるわけでございます。こういうようなことから、このPPの考える基本的なところをひとつお述べいただきたいということと、それから、プルトニウムを何も使わないでおくと何か不都合なことがあるようでございますけれども、この点について御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/27
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028・中村康治
○中村参考人 先ほど中島参考人は、原研における御自身の経験ということでちょっと触れておられました。私どもも、今回のように明快な法律上の規定はないけれども、安全管理責任は当初から持っておりました。それからまた、国際規制物質であるという管理責任は持っておった。そういう意味で、今まででも防護の体制は措置をしていたつもりでございます。ただ、今までの法体系の中では、私たちがいきなり武器を携えてというわけにまいりません。私たちでできることは、外部からの侵入を企てる人が目的とするものまでに到達するのに物理的、時間的に困難であるように、その間にいろいろな障壁を設定する、これが一つでございました。それから二番目に私たちでできることは、万一そういうことがあった場合にその証拠を握るということでございまして、私たちもう二十何年も前からいろいろな努力をいたしました。その成果が最近の銀行やスーパーマーケットでの隠しビデオとなっているというふうに私は了承しておりますけれども、ああいうような努力をしてまいりました。
それから、プルトニウムを置いておくと不都合があるというのは、これもちょっと難しくなりますけれども、241という同位体がございまして、これが十四年そこそこの間でアメリシウムというものに変わってまいります。つまり、核分裂する性質をなくしてまいります。お金的な表現をすると、マイナス六%の利子率というふうに私は言っております。これが減っていくだけならまだいいのですけれども、減っていったアメリシウムがまた放射線的ないろいろな作用をする。そこで、長い間置いておいてから改めて使おうとすると、今度は従事者にガンマ線が強くなってまいりまして、何らかの除去措置をしなければならない、こういう厄介さがございます。つまり、置いておく間に経済的価値が減ると同時に、今度使うときにもう一度費用が発生する、こういう不都合がございます。簡単に申し上げればそういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/28
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029・貝沼次郎
○貝沼委員 あと五分ありますからもう一点だけお伺いしますが、私がいつもこの委員会で問題にしてきた問題でヒューマンエラーという問題がございます。人間は必ずしも確かではありませんので、その点のことはお考えに入っておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/29
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030・中村康治
○中村参考人 全くおっしゃるとおりでございます。ただ、原子力発電所の施設というのは極めて論理的プラントでございまして、人間の要素ができるだけ入らぬように、かくかくなればこうなるというふうになっております。しかし一方、核燃料の方の仕事は、どの分野も割合に人間の要素の立ち入る部分が多うございます。それだけに従事者の教育訓練というのが非常に慎重を要するところでございます。しかし一方、核燃料関係の取扱施設では、いわゆる温度の高いところ、圧力の非常に高いところがございません。それから、順次処理をされていくということで、まとめた大量のものが一遍に取り扱われるということもない。そこで、従事者訓練やいろいろな検出装置をつけ加えてございますけれども、何かがあったときに高温、高圧がないというのが大変に一つの救いの表現になっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/30
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031・貝沼次郎
○貝沼委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/31
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032・大坪健一郎
○大坪委員長 小渕正義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/32
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033・小渕正義
○小渕(正)委員 私、所用で席を外しておりましたので、皆さんにいろいろ質問することを省略いたしまして、三点ほど端的に御質問いたします。いろいろ長い答弁等で何か時間も随分経過しておるようでありますので、端的に質問するので、ひとつそういう意味での御答弁をお願いしたいと思います。
まず石橋参考人にお尋ねいたします。
核物質の防護条約に加盟する今回の法案でございますが、先ほどの御意見の中では、米国その他へ調査に行かれて、プルトニウムを将来的にも製造される量の推定を言われておりましたが、それに合わせると消費という立場から見たら非常に大きな落差がある。そういうこと等をいろいろ数字的に並べられて、問題がある、疑問があると言われたというふうに受けとめたわけであります。製造と消費との間にどういうバランス的なものがあるかどうかわかりませんけれども、だから防護条約のこういう関係の規制措置は要らぬのだということにはならぬのじゃないかという気がするのです。そういう点で、そこらあたりをひとつ端的にお考えをお示しいただければと思います。
それから次に、今回のこういう法改正によって、原子力開発研究というものが非公開の方向にだんだんなっていくのではないかという懸念を表明されたと思います。一部例を挙げられた政令の中でのいろいろのものについては、確かに拡大解釈、拡張解釈されていけばそういうおそれなしとしない面はありますが、全体的にこういった管理をきちっとしていくことがどうして研究開発の非公開の方向につながるのか、そのあたりがちょっとはっきりとれなかったのです。何か軍事用に転用されていくという可能性というか危険性というか、そういうあれを非常にお持ちなので今のような推論になっていかれたのではないかという私なりの感じもしたのですが、その点もひとつよろしくお考えをお示しいただきたいと思います。
それから三番目でありますが、確かにプルトニウムの管理社会の方向になっていく傾向があるということで、問題だというようなとらえ方をなさったようでありますが、プルトニウムという性格からいけば、よりきちっと管理し、よりきちっとするということもまた逆に必要じゃないか。そういう意味で、プルトニウム管理社会というのはどういう角度で物を見られているのかわかりませんけれども、私ども素人から見ると、だからこそよりきちっとこういうものを管理するきちっとした社会体制がなければいかぬのじゃないかというように受けとめているのです。物を見るのは、表と裏で随分いろいろありますから違うかもしれませんが、プルトニウム管理社会というのを一体どういう意味で言われているのかということ、これもまた非常に端的で結構ですから、よろしくお願いしたいと思います。
それから、高木参考人にお尋ねいたします。
先ほどの御答弁を聞いておりまして、要するにプルトニウムの運搬過程においてのいろいろな危険性を問題点として言われておったようであります。あなたの場合は、現在の科学技術をもってしても、プルトニウムをきちっと格納して閉じ込めてしまうような物体というか、そういうものは不可能だというふうにお考えになっておられるのではないかという感じがするのです。そういう点、今日の科学技術の中で、そういうものを閉じ込めて、きちっとして、いかなる状況の中でも分散、飛散されないような格納というか材料、技術、そういうものは私は可能じゃないかという気がしておったのでありますが、どうも参考人の御意見を聞いておりますと、一切そういうものは考えられぬような形の物の展開でございました。その点について、結論だけで結構です。これはあわせて中村参考人の方の御見解もお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/33
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034・石橋忠雄
○石橋参考人 第一点の、プルトニウムが現実にできてきておって、それをきちっと管理していく法律というのは必要ではないか、こういう御趣旨かと思いますが、そのこと自体は私も格段の異議があるわけではございません。私としては、現在ある原子力施設あるいはヨーロッパから空輸されてくるプルトニウムの管理等につきましては、やはり現実の問題としては何らかの形で対処せざるを得ない。これについて、英、仏に対して持ってくるなとか、そういうようなことは毛頭ないわけでございます。しかしながら、法制面においてもそのあたりをきちっと対処する上では、第一には国会の関与度というものをもう少し深めていただきたい。国会への報告あるいは国会の調査というものがなくして、事業者と行政官庁とのやりとりだけでは、今後のこのプルトニウム管理社会をきちんと正常に運営していくことはなかなか難しい。少なくとも世間一般のコンセンサスを得ながらトラブルをなくしていくためには、やはり国民の代表者である国会の関与度というものが何らかの形で必要じゃないか、こういう観点から申し上げた次第なわけです。
それから非公開の問題でありますけれども、高木参考人の言われたように、現在でも原子力については非公開な部分が相当あるわけでございます。これに対する資料の公開ということについては、これもまた住民側から強い要望があるわけでございまして、我が国においてはそのあたりが、原子力情報に関する公開というものがまだ十分ではないと私は考えておるわけでございます。そういう意味において、もっと原子力基本法とリンクさせた形でこの原子力利用法というものを持っていくべきである。原子力の場合には、当然に核物質防護と安全性という二つの大きな面があるわけでございます。この安全性と核物質防護は表裏一体の部分でありますけれども、その安全性を求める部分についてはそれなりの手続あるいは法的なステップというものをきちっと保障していかないと、いろいろな点で核物質防護の名をかりた情報の不公開という方向になるかと思います。
第三番目の問題でありますけれども、先ほど言いましたプルトニウム管理社会の意味でございます。これについては特別恐怖感を持って言ったわけじゃありませんが、プルトニウム空輸について何回か講演をしたことがございます。そのときに、弘前のお母さん方の前でお話ししたのですが、その方々が、プルトニウム空輸機が仮に三沢空港に来た場合、アメリカの学者に言わせますと、もし事故が起これば粉末状のものが数百マイル簡単に飛散してしまう。そうすると東北一帯の問題になるわけでございますけれども、そういう情報とかあるいは管理体制について、こうですよという事前の教育だとか、住民側とのコミュニケーションが何らなくして突然に空輸機が来る。こういうことであれば自分たちは非常に心配である、寝ていても寝ていられない。これをプルトニウムにとらわれた人質である、こういうような表現をしておりました。私は、そういう一般のお母さん方の関心といいますか気持ちというのは、これはやはり大事にしていかなければいかぬと思っております。そういう意味で、プルトニウム空輸機が日本にやってくる、そしてそれが日本のどこかの空港に着陸するといった場合に、何らかの事故が起こる危険性、可能性というのは高木参考人の言われたようにあるわけでございますから、その辺をきちっと対処していかないと、プルトニウムにとらわれた社会、あるいはそのことだけにいつも精神的に不安を抱いて生活しなければならぬ、こういうような社会になるわけでございまして、一番冒頭にも申し上げましたように、その辺の手当てについて法律あるいは国会というものが何らかの形で一般の人々との交わりをしていただきたい、このようにお願いする次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/34
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035・高木仁三郎
○高木参考人 お求めになった件につき端的にお答えします。
科学技術、特に現代の科学技術は、物をつくり出すという点においては大変強いものをつくり出す能力を持っていると思いますけれども、そのつくり出す技術能力と、それを安全に管理する能力というのはまた別の問題だと思います。プルトニウムの物質に関して言えば、明らかにつくり出す能力の方がまさっていて、それを安全に管理し、閉じ込めておくという能力の方が劣っている。これは特に人間が関与したことでありますから、人間にとってのプルトニウムの毒性というのは人間一人にとっては膨大なものであります。あるいは地球上の人口にとっても、現在つくり出されているプルトニウムは過大なものになっているというふうに考えます。そこには人間のやることですから、機械の設計や管理のミスあるいは操作上のミスまで含めて各種のミス、想定外のことが必ず起こり得る。これはもうスリーマイルやチェルノブイリの事故をまつまでもなく、当然考えられることであります。そういう意味において私は、プルトニウムのような物質を人間は安全に使いこなす技術は今持っていないし、今後も持っていないというふうに考えられます。人類の英知という点では、人類にとって好ましくない物質は好ましくないと科学的に判断して、使わないということがむしろ最大の英知かというふうに思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/35
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036・中村康治
○中村参考人 冒頭私の御説明をしたところでお断りいたしましたように、現役を離れてもう五年半から六年ということでございます。したがって、現在どうだということは私つまびらかではございませんが、私がやっておった昔の経験で、一般論でお答えいたします。
プルトニウム輸送途中の危険という御質問だと了解しますが、いろいろな角度から評価をいたします。模擬実験をやって、予想される速度よりも速い速度で衝突をさせる、あるいは火をくぐらさせる、水に押し込める、こういういろいろな実験をやった上でその評価をいたします。ですから、現実的に想定されるようなことについては、全く危険がないように用意はされている。しかし、絶対という表現は私といえどもなかなか申し上げるわけにまいりません。しかし、あり得る形から考えれば御心配になるようなものではございません。
それから、御質問の範囲をちょっと外れるので恐縮でございますけれども、プルトニウムの生成量と使う量との食い違いは非常に大きな違いで、多少誤解があるのではないかと思います。アメリカなどが言っておりますのは、現在原子炉の中にあって生まれつつあるものも含めての状態です。使用済み燃料という形で取り出されて数年間冷却されます。そして再処理という工程でプルトニウムを分離され、その後に目的とするものに使っていくわけでございます。相当の時間軸の差がある。その差を御理解いただかないと、現在発電所の炉の中にあるものの数全部を合わせますと八十何トンということになって、目の前で使うのは何百キロ、こういう表現になるわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/36
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037・小渕正義
○小渕(正)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/37
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038・大坪健一郎
○大坪委員長 矢島恒夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/38
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039・矢島恒夫
○矢島委員 参考人の先生方、本当に貴重ないろいろな御意見ありがとうございました。
中島参考人にお聞きしたいと思います。
先生の御意見の中で軍事用核物質の管理の問題を指摘されました。いわゆる軍事用防護と我が国のように平和利用だけに限定されている国とでは、防護というものにおのずと違いがあって当然だと思うのですけれども、その辺につきまして先生のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/39
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040・中島篤之助
○中島参考人 時間が限られておりますので、簡潔にお話し申し上げます。
私が申し上げたのは、例えば今ここでいろいろ議論になっておりましたプルトニウムにしましても、現在平和利用だということで問題になっているプルトニウムの量よりは、大変残念なことですけれども、核兵器として全世界に配備されているプルトニウムの量の方がはるかに大きい。ですから、今度の核物質防護条約というのは、実はそういう核物質については軍事の問題だとして避けているのだけれども、それが背景として現実に存在するものですから、いわゆる核ジャック、核ジャックといいましてもいろいろな段階の核ジャックがあるわけです。一番恐れられているのはステート・スポンサード・テロと申しまして、ある特定の国が背景にあって核物質を奪取しようとするようなことがあるわけです。私は、そのことが実は核物質防護問題の根本にあるということを申し上げたわけでありまして、やはり核兵器を所持して、つまり核脅迫政策をとることが国際法的に不法であるということがまず国際的に合意される状態にならなければ、根本的には解決しないというふうに思うわけです。
ですから、現在の核物質防護条約は、ではあるがという条件つきです。現在でも我々飛行機に乗りますときに、空港で大変愉快でない身体検査その他を受けるわけです。ただし、ああいうことをやっても、我々が幾ら検査をまじめに受けても、ハイジャックに遭わないという保証は残念ながらなくて、年間何百件か知りませんが、航空機テロが発生しているわけですね。
それで、核ジャックそのものも実はそういうことを背景にしまして起こるといいますか、これはその背景になっている核拡散防止というもの自体が実は非常に大きな矛盾をはらんでおりまして、例えば中国が核兵器を持てば、インドはあらゆる無理を払って核兵器をつくろうとする、インドが持てばパキスタンも持とうとする、それは困るということでつくられたのが核拡散防止条約であります。核拡散を防止しようということはそれ自体結構ですけれども、果たしてそれが実効的であるかということになれば非常に疑問がある。それは内容として、現在持っている核兵器保有国が核軍縮に努力するということが入っていなければいけない。それは前文のところにちゃんと入っているわけですが、これが実はさっぱりそうならなくて、核兵器はふえ続けるということであります。ですから、核不拡散体制を脅かす条件というのは、一つはそういう核兵器の垂直拡散がとめどなく広がることと、それからその次に問題になりますのは、ヨーロッパ等に核兵器を配備するといったことで核不拡散体制というのが揺らいでくるというのは、これはもう国際法学者が指摘しているところであります。
最近、私が多少希望を持てると思っておりますのは、INF条約が締結されまして、ようやくその方向に世界は動き出そうとしている。しかし、私はもっと早く核兵器をなくしてもらいたい。そうでなければ原子力の平和利用というものは守れませんし、日本学術会議がかつて原子力三原則というのを唱えたのは、我が国だけが平和利用で、ほかの軍事利用をしませんと言っているだけでは通用しない世の中であります。つまり、国際的に一定の対応をしなければいけないということも事実でありますから、私は今度の核物質防護条約そのものはやむを得ない。ただ、そのときには十分吟味をして、本当は我が国の平和利用三原則というようなものが国際的に通用するようにしなければいけない。その意味で、既に我々が現場で経験したいろいろな問題を御報告して、今後の我が国のあるべき核物質防護に対応してもらいたいということを申し上げたわけです。
もう一点つけ加えますと、繰り返しますが、核物質をきちんと管理するというのは、基本的には、現在我が国も核不拡散条約に参加しておりまして、それで核物質の計量管理制度をつくって、一定の管理が行われているわけです。これは科学的な内容で、そこで行われる技術手段というのはきちんとしていることが非常に重要でありますが、核物質防護の場合はそうではないのでありまして、技術手段というのはほとんど気休めと言うと大変問題でありますが、さっき中村参考人も言われましたように、テロが来たらなかなかプルトニウムのところに近寄らせないようにするということをつくっておけば、つくっておかないよりいいであろう。ちょうど飛行場で我々が刃物を持っているかどうかを検査される程度のことなんであります、技術的な内容としては。
基本は、そういう核テロが核物質を奪取して、一体効果があるのかどうかということをもう少しよく考えなければいけないのですね。どんな政治的な効果、テロのねらうのは政治的効果でありますから、これに対抗しようとして徹底的にテロが近寄らないようにするということになると、これはとんでもない社会になってしまうのでありまして、そういうことは常識的にはあり得ないだろう。ただし、今後の具体的な措置については、我が国の原子力基本法あるいは憲法、人権、労働基本権等々が守られるように十分慎重に配慮すべきであるということを申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/40
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041・矢島恒夫
○矢島委員 続いて中島参考人にお聞きしますが、先生から府省令にゆだねられた部分が多いということについて御指摘がございました。先生、現段階におきましてどういうことが懸念されるか、またそのための措置としてどうあるべきか、その辺のお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/41
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042・中島篤之助
○中島参考人 私が懸念しておりますのは、実は今度の核物質防護条約にも一定の懸念されるべき点はありますし、今度の規制法でもそれを受けて改正が行われておりますから若干懸念する点がありますが、私が心配しているのは、実は日米原子力協定の方が相当厳しい規制条項がついております。しかし、これはきょうの審議の対象でないと私は思っておりましたので、詳しく検討しておりません。
さっき私がINF条約のことについてちょっと触れましたけれども、廃棄される例えばSS20とかSS13とかいう核兵器の中にはプルトニウムが入っているわけです。あるいは高濃縮ラウンが入っているわけです。それはどうなったかといいますと、このプロトコルによりますと、基本的には各国の裁量に任せるという取り決めになっております。ですから、核兵器をなくすというのは実はそういう形でなくなってくるのだというのが、私が今度の喜ぶべき合意の結果発見したことなんですけれども、それと今度の日米間の関係を見ますと、むしろ原子力基本法で言うところの自主という原則についてかなり懸念せざるを得ない点がある。ですから、我が国はその点をアメリカに対して主張すべきははっきり主張する必要があるということが一つだろうと思います。
それからもう一つは、輸送の問題等々の具体的な問題につきましては、これは一般的に言えばなるべく輸送の機会を減らす。我が国は世界で一番たくさんの核物質の外国委託をやっているわけですね、フランスや非常に遠方の国へ。例えば航海の距離数と目方を掛ければ、日本が世界で一番たくさんの核物質を輸送し、また送り返そうとしているというような政策は再検討すべきであるというのが次の点です。
それから、とりあえずこのPP問題について重要な点は、いわゆる軍事管理の基本は信頼性、つまり信頼性調査と申しまして、これは実はアメリカが戦後になってやったのですけれども、第二次大戦後に原子力産業の従業員であった人たち数十万人のいわゆる信頼度調査というのをいたしました。つまり、これは忠誠審査であります。こういうことをやりまして、数千人の人が不適格だということで原子力産業から追放されました。これはアメリカの目的が軍事でありますから、私がさっきちょっと陳述の中で申し上げたように、敵と味方を識別するというようなやり方からそういうことになるわけです。しかし、このことは学問研究に非常に重大な支障を与えるだろうということを私は懸念して、先ほどのようなことを申し上げたわけであります。反対に、数少ない日本の原子力研究機関の従業員を基本的に信頼して、少なくとも労使間で話し合いができないというような状態は一日も早くなくして、むしろそういう人たちの意見を十分聞いた上で防護対策を立てるべきである。私が日本学術会議ということを申し上げましたのは、日本の科学者の代表機関として、法律によって日本の科学研究についての重要な事項について政府の諮問を受けることができるように規定されているはずでありますから、当然そういうことを行っていただいてしかるべきほどの問題であるという意味で申し上げたのであります。私は、特に第三番目の信頼性調査を決して行ってはならないということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/42
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043・矢島恒夫
○矢島委員 残りの時間が少ないので、まことに申しわけございませんが、引き続いて中島参考人に、少し大きな問題になりますので時間内で無理にお願いする形になりますけれども、私たち日本共産党は核兵器の廃絶というのは緊急な課題だ、このように言い続けております。この核兵器と核物質防護との関係、この辺についての先生のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/43
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044・中島篤之助
○中島参考人 非常に大きな問題でありますが、なるべく簡潔にお答えいたします。
さっきちょっとINF条約のことで、私がかねて考えていたとおりになったと思ったのでありますが、核兵器を廃棄するということは、やはり政治的にやめようということを合意することがまず基本である。その後どうするか、つまりそれをお互いに実行しているかどうかということについては、今回の条約でお互いに核兵器を解体、ある場所に赴いて査察をすることまでも取り決められましたので、技術的な問題は核兵器を廃棄する上ではなくなったということが言えると私は思います。ただ、私がさっき注意を申し上げましたように、そのことは核弾頭に使われている核物質が即地上から消えるということでない。これは別の問題であります。そういうふうに明確に区別をしておくことが私は何よりも重要であると思うわけです。
それで、その後でも核物質は残りますから、ある期間においては、それが先ほどから高木参考人も言われておりますように非常に危険な物質でありますから、基本的には各国の主権に属して、各国のエネルギー政策の判断によって、あるいは原子炉で燃す国もあるでしょうし、あるいはこれはもう使わない。使わないといっても、どう保管するかというのは重要な問題です。あるいは使わないでそのまま核兵器になる状態のプルトニウムを安全に管理する方法は、広い国であれば私はあると思います。非常に国土の広い国であればそれは可能だと思いますけれども、しかしそれは別の言い方をすれば、核兵器物質を貯蔵しているのと似たような状態でありますから、この点でも政治的合意というものが大事であります。物が問題なのではなくて、人間がつくり出したものですから、やはり人間の政治によってこれは解決するべきものであるというふうに私は考えております。
実はいろいろ危険なものは、確かに平和利用の問題でも重大な問題があります。これは市民の感覚からしますと手の届く範囲にありますから、関心が深いのは当然でありますけれども、実はプルトニウムだけで言えば、プルトニウムも高濃縮ウランも含んだ原子力潜水艦が世界の公海を何百隻もうろうろしている。これは核兵器でないけれども、私は核兵器の一部だと思いますが、うろうろしている。それから核弾頭の輸送も、我々の知らないところで軍事管理のもとにほぼ自由に行われているという状況の方に皆さんの注意を向けていただきたい。
そのぐらいのことにさせていただいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/44
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045・矢島恒夫
○矢島委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/45
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046・大坪健一郎
○大坪委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/46
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047・大坪健一郎
○大坪委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。粟山明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/47
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048・粟山明
○粟山委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について、賛成の討論を行います。
原子力は、エネルギー資源の乏しい我が国にとって、今や主要なエネルギー源の一つとして確固たる地位を占めるに至り、また核燃料サイクル事業も本格化しようとしております。これに伴い、核物質の取扱量や核物質の輸送の機会の増加も予想されております。原子力の開発利用を進めていくに当たっては、核物質の取り扱いの安全性に万全を期するとともに、適切な防護措置を講ずることは極めて重要なことであります。
国際的にもこのことは強く認識され、昨年二月、核物質の防護に関する条約が発効しております。核物質資源の供給をほぼ全面的に海外に依存している我が国にとっては、速やかに体制を整備し、本条約に加入することは、我が国の国際的な責務でもあります。
本法律案は、同条約への加入に当たって、我が国における核物質の防護に関し所要の措置を講じようとするものであり、また、原子力委員会の検討結果をも十分に踏まえたものであります。これにより適切な核物質の防護が講じられ、原子力の開発及び利用の推進に資するものと期待されます。
以上にかんがみ、私は、本法律案に賛成するものであります。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/48
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049・大坪健一郎
○大坪委員長 野坂浩賢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/49
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050・野坂浩賢
○野坂委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
第一に、核物質防護条約によって義務づけられているものではない改正条項が、本法律改正案の大部分を占めております。その結果、現行のこの法律の主たる目的が、災害の防止等のために原子力施設や核物質やその運用に一定の規制を加えるというものであるのに対して、本改正案によると、核物質そのものを仮想上の特定の人々から防護するという目的が主要な柱として導入されることになるのであります。
これは、今日まで企業秘密の名のもとに狭められがちであった資料の公開をいよいよ狭めてしまうおそれがあるのであります。また、学者や専門家等が立ち入る場合の許可条件が厳しくなり、民主的で自主的な学問研究の自由が奪われるおそれも大きくなっていくのであります。基本的人権や労働基本権が侵されることすら懸念されるのであります。これらは、原子力基本法に定められた自主、民主、公開の原則を著しく空洞化させ、ひいては平和利用への限定さえ保障されがたくなるのではないかと憂慮するものであります。
第二に、核物質の輸送に反対する市民運動を含め、近年各地にほうはいと起こり、成長してきた原発反対の運動こそは、日本の原発の安全性を今日まで辛うじて守る一つの作用を持ってきたものでありますが、もし今後それらの諸運動が核ジャック防止の名目で少しでも抑圧をされるところとなると、大事故発生の危険性が大きくなることは避けられないのであろうと思います。
第三に、本法律改正案は、プルトニウムの本格的な抽出と輸送と利用のための法整備の性格を持っております。しかし、プルトニウムは余りにも毒性が大きく、しかも半減期が二万四千年と極めて長い物質であります。一回に輸送される二百キログラム程度の量で、全世界の人々に発がんさせることができるとも言われているほどであります。我々は核ジャックについてはもちろん断固排除しなければなりません。しかし、たとえ核ジャックを免れたところで、輸送すること自体が大きな危険を伴うものであり、空輸であれ海上輸送であれ陸送であれ、安易に実施してよいことではないのであります。
一方では、プルトニウムの商業的平和利用はといえば、かねてから鳴り物入りで宣伝され、計画され、研究されていたにもかかわらず、展望が開けるどころか、むしろ疑問視されるところとなっております。本命とされる高速増殖炉の開発を見ると、最も早く手がけたアメリカではとうに中止され、先頭を切っていたフランスでもスーパーフェニックスの事故によってつまずき、ヨーロッパ全体が否定的になっております。余りにも高価につく上に、余りにも危険性が高いためなのであります。
我が国を見ても、プルトニウムの輸送や高速増殖炉等に対する心配や反対の声は日増しに強くなっております。そもそも電力業界自体がプルトニウムの利用に極めて消極的になっております。我が党の委員の質疑によっても明らかにされたとおり、低濃縮ウランの国際価格に比べて再処理費や輸送費に多額を要して、精製されたプルトニウムは極めて高くつくからであります。
科学技術庁の皆さんがプルトニウム利用について二十一世紀に向けてどんなにすばらしい計画をお持ちであっても、しょせんそれは絵にかいたもちの域を出ません。いや、絵にかいたもちは何の危険もなく無害で済みますが、プルトニウムの抽出や輸送等を本格的、商業的に開始することになると、国民にとっては取り返しのつかない危険をもたらさずには済まないでありましょう。その誤りの持つ深刻さは原子力船「むつ」の比ではありません。科学技術庁は昔の海軍のような姿勢であってはなりません。これ以上おくれることなく、原子力開発について根本的な再検討を加えることが必要不可欠になっているのであります。そもそも核ジャックを防止する最も本質的、効果的な方法は、プルトニウム社会の拒否にあると思うのであります。
第四に、本法律改正の主要な内容がことごとく政令、府令、省令に任されているにもかかわらず、それらの案がいまだ作成されていない段階で法案審議を強いられているありさまであります。国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である国会が法案の内容自体を審議し、決定することがほとんどできないで、法案成立後、行政府と行政委員会が重要事項を事実上すべて決定するがごとき形態は、民主憲法上はもとより、民主の原則を定めた原子力基本法からも許すべからざることであると言わねばなりません。
以上が本法律改正案に対して我が党の反対する主たる理由であります。他の党の皆さんも我が党に賛同され、本法律改正案に対して否決されることを切望して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/50
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051・大坪健一郎
○大坪委員長 貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/51
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052・貝沼次郎
○貝沼委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。
以下、その主な理由を申し述べます。
第一は、核物質防護は人類の平和のためにも不可欠のことであり、また、平和を希求し、原子力の平和利用に徹している我が国としては、特に力を入れて、国際的にもその誠意と努力が評価されなければならないからであります。また、人類の平和を脅かすテロ行為等は断じて許してはならないからであります。かかる見地から、むしろ遅過ぎたことを指摘した。
第二は、核物質の防護は、軍事、民事すべてについて行われるべきであると主張し、我が国政府の毅然たる態度を確認することができたからであります。
第三は、原子力基本法の自主、民主、公開の三原則についても当然堅持することが確認されたからであります。
第四は、核物質という特殊な物質に関する防護法であるだけに、単独立法にすべしと主張し、検討の余地ありとの答弁を得て、今後に期待することとしたからであります。
第五は、輸送上の問題ですが、いまだ詳細については未決定の部分があるので、その重大性を指摘し、原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を十分尊重する旨の答弁を確認したからであります。
以上、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/52
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053・大坪健一郎
○大坪委員長 小渕正義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/53
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054・小渕正義
○小渕(正)委員 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいままで論議されました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の討論を行うものであります。
我が国は、原子力基本法に基づき、「将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与する」との基本的な考え方のもとに、原子力開発利用を推進してまいりました。そして、御承知のとおり、代替エネルギーの中核を担っている原子力開発は、総発電電力量で約三割を占め、国民生活に不可欠なものとなっております。また、懸案であった我が国の自主的な努力による核燃料サイクル事業も本格化し、着実に成果が実りつつあります。
そのような原子力活動の進展に伴い、原子力施設における核物質取扱量及び核物質の輸送機会の増大が見込まれており、今後とも適切なる核物質防護措置対策を講じることが原子力開発の一層の発展を図る上で極めて重要な課題であります。
本法律案は、核物質の防護に関する条約への加入に当たって必要な国内措置を講ずるためのものであり、原子力の平和利用を推進する我が党の立場からも、早急に推進しなければならないと考えております。
この見地から、今後とも原子力先進国としての国際的責務を遂行するよう、政府が万全の体制を整備することを特に強調し、私の賛成討論を終わります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/54
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055・大坪健一郎
○大坪委員長 矢島恒夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/55
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056・矢島恒夫
○矢島委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正案に対し、賛成の討論を行います。
賛成理由の第一は、核物質が盗取されることを防止することや、原子力施設または核物質の輸送に対する妨害や破壊行為に対して、国民の平和と安全が脅かされることがないように、核物質を政府の責任で適切に管理することは必要であります。核燃料物質を取り扱う事業者に対して防護のための措置を義務づける本改正案は、防護措置に一応限定した内容であり、このこと自体は賛成であります。
賛成理由の第二は、我が党は、ハイジャックを含め一連のテロ行為は、人道上も国際法上も断じて許されない蛮行であると明確にしております。国際輸送中における核物質の不法な奪取は大きな社会的不安をもたらす行為であり、国際輸送中の核物質防護の国際的協力体制を定めた核物質防護条約批准に当たっての国内法整備が本改正案であること等から、賛成するものであります。
核物質の管理や原子力施設の安全確保で最も重要なことは、それに携わる科学者、技術者、労働者が安全上の専門的認識と技術を持ち、必要な道具や施設に熟達し、しかも安全上の社会的責任を強く自覚していくことであります。したがって、原子力平和利用のもとでの核物質防護は、そこに従事する科学者、技術者、職員の協力なくしてはあり得ず、そこで働く職員を信頼し、その協力のもとに実施する核物質防護システムでなければなりません。
こうした点からいえば、防護措置や防護規定、核物質防護管理者など本改正案の重要事項が政令等にゆだねられており、行政府任せになっていることは、主権者国民の知る権利を事実上大きく制限することになっており、重要な問題である。したがって、当委員会における法案審議の中で強調したとおり、政府及び関係機関は、本法施行に当たり、原子力基本法が定める自主、民主、公開の平和利用三原則の厳守に特段の努力を払うべきである。とりわけ核物質防護管理者の指名に当たっては、科学者、研究者、職員の推薦を受けるような人を選任すべきである。
核物質の防護の名によって、原子力の研究、開発、利用に関する機関に働く人たちの思想、信条、プライバシーなどの基本的人権や労働基本権の侵害が絶対にあってはならない。
また、原子力の研究に携わる研究、発表の自由など、原子力の研究開発分野で創造的、自主的な知的活動が行われる場合には、批判の自由を含めた自由度と自治性が高度に保持されることは必須である。
核物質の防護を口実とした情報公開の制限や信頼性確認等が本改正案の趣旨に反して行われることがないよう、政府が責任を持って規制することを強く要求する。
最後に、核物質の防護にとって今日何よりも求められていることは、地球上からすべての核兵器を廃絶することである。この緊急な課題に対して政府が果たさなければならない役割の重要性を強調し、賛成討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/56
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057・大坪健一郎
○大坪委員長 これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/57
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058・大坪健一郎
○大坪委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/58
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059・大坪健一郎
○大坪委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/59
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060・大坪健一郎
○大坪委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、若林正俊君外四名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。若林正俊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/60
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061・若林正俊
○若林委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について留意すべきである。
一 原子力の研究、開発及び利用について、民主、自主、公開の三原則を定めた原子力基本法の精神を堅持すること。
二 基本的人権並びに学問研究の自由を十分に尊重すること。
三 核物質の防護措置に関する法令上の基準を定めるにあたっては、原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行うこと。
以上であります。
何とぞ御賛成を賜りますようによろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/61
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062・大坪健一郎
○大坪委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
若林正俊君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/62
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063・大坪健一郎
○大坪委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
この際、伊藤国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊藤国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/63
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064・伊藤宗一郎
○伊藤国務大臣 ただいま核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上、御可決を賜りまして、まことにありがとうございました。私といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重し、核物質の防護についてさらに万全を期する所存でございます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/64
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065・大坪健一郎
○大坪委員長 お諮りいたします。
本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/65
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066・大坪健一郎
○大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/66
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067・大坪健一郎
○大坪委員長 次回は、来る二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111203911X00619880419/67
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