1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年四月二十八日(木曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 稲垣 実男君
理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君
理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君
理事 池端 清一君 理事 田中 慶秋君
相沢 英之君 粟屋 敏信君
伊吹 文明君 石破 茂君
今井 勇君 遠藤 武彦君
小沢 辰男君 大野 明君
大野 功統君 片岡 武司君
近藤 鉄雄君 佐藤 静雄君
自見庄三郎君 高橋 一郎君
竹内 黎一君 中山 成彬君
堀内 光雄君 三原 朝彦君
持永 和見君 伊藤 忠治君
大原 亨君 川俣健二郎君
河野 正君 田邊 誠君
永井 孝信君 新井 彬之君
大橋 敏雄君 平石磨作太郎君
吉井 光照君 塚田 延充君
児玉 健次君 田中美智子君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 藤本 孝雄君
出席政府委員
厚生大臣官房総
務審議官 黒木 武弘君
厚生省健康政策
局長 仲村 英一君
厚生省保健医療
局長 北川 定謙君
厚生省保健医療
局老人保健部長 岸本 正裕君
厚生省社会局長 小林 功典君
委員外の出席者
社会労働委員会
調査室長 石川 正暉君
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
箕輪 登君 竹内 黎一君
同月二十七日
辞任 補欠選任
片岡 武司君 福島 譲二君
自見庄三郎君 山崎 拓君
高橋 一郎君 橋本龍太郎君
中山 成彬君 小川 元君
三原 朝彦君 木村 守男君
同日
辞任 補欠選任
小川 元君 中山 成彬君
木村 守男君 三原 朝彦君
橋本龍太郎君 高橋 一郎君
福島 譲二君 片岡 武司君
山崎 拓君 自見庄三郎君
同月二十八日
辞任 補欠選任
木村 義雄君 石破 茂君
自見庄三郎君 遠藤 武彦君
同日
辞任 補欠選任
石破 茂君 木村 義雄君
遠藤 武彦君 自見庄三郎君
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四月二十五日
国立腎センター設立に関する請願(矢追秀彦君紹介)(第一六六五号)
難病患者などの医療及び生活保障等に関する請願外一件(矢追秀彦君紹介)(第一六六六号)
高齢者の就労対策の充実に関する請願(五十嵐広三君紹介)(第一六六七号)
同外三件(池端清一君紹介)(第一六六八号)
同(石橋大吉君紹介)(第一六六九号)
同外二件(石橋政嗣君紹介)(第一六七〇号)
同(岩垂寿喜男君紹介)(第一六七一号)
同(上原康助君紹介)(第一六七二号)
同(小川国彦君紹介)(第一六七三号)
同外一件(小野信一君紹介)(第一六七四号)
同外一件(緒方克陽君紹介)(第一六七五号)
同外一件(岡田利春君紹介)(第一六七六号)
同(金子みつ君紹介)(第一六七七号)
同(川崎寛治君紹介)(第一六七八号)
同(川俣健二郎君紹介)(第一六七九号)
同外二件(河野正君紹介)(第一六八〇号)
同外一件(小林恒人君紹介)(第一六八一号)
同(佐藤敬治君紹介)(第一六八二号)
同外二件(坂上富男君紹介)(第一六八三号)
同(渋沢利久君紹介)(第一六八四号)
同(新村勝雄君紹介)(第一六八五号)
同(田口健二君紹介)(第一六八六号)
同(田中恒利君紹介)(第一六八七号)
同外二件(中沢健次君紹介)(第一六八八号)
同(細谷治嘉君紹介)(第一六八九号)
同(三野優美君紹介)(第一六九〇号)
同(水田稔君紹介)(第一六九一号)
同外一件(安井吉典君紹介)(第一六九二号)
同(吉原米治君紹介)(第一六九三号)
同外三件(石橋政嗣君紹介)(第一七九〇号)
同(岩佐恵美君紹介)(第一七九一号)
同外二件(緒方克陽君紹介)(第一七九二号)
同外二件(川崎寛治君紹介)(第一七九三号)
同外三件(河野正君紹介)(第一七九四号)
同(辻一彦君紹介)(第一七九五号)
同(藤原ひろ子君紹介)(第一七九六号)
同外一件(細谷治嘉君紹介)(第一七九七号)
同(山花貞夫君紹介)(第一七九八号)
国民健康保険法の改悪反対に関する請願(川俣健二郎君紹介)(第一六九四号)
同外一件(矢追秀彦君紹介)(第一六九五号)
同(岡崎万寿秀君紹介)(第一八〇九号)
同(川俣健二郎君紹介)(第一八一〇号)
肢体障害者の生活保障等に関する請願(吉井光照君紹介)(第一六九六号)
カイロプラクティック等の医業類似行為に関する請願(冬柴鉄三君紹介)(第一六九七号)
国民健康保険法改悪反対等に関する請願(田中美智子君紹介)(第一七八七号)
同(矢島恒夫君紹介)(第一七八八号)
福祉の国庫負担金の削減反対等に関する請願(吉井光照君紹介)(第一七八九号)
医療費抑制反対及び医療と福祉の拡充に関する請願(安藤巖君紹介)(第一七九九号)
国民健康保険制度改悪反対等に関する請願(石井郁子君紹介)(第一八〇〇号)
同外一件(児玉健次君紹介)(第一八〇一号)
同(瀬長亀次郎君紹介)(第一八〇二号)
同(田中美智子君紹介)(第一八〇三号)
同(中島武敏君紹介)(第一八〇四号)
同(野間友一君紹介)(第一八〇五号)
同(松本善明君紹介)(第一八〇六号)
同(矢島恒夫君紹介)(第一八〇七号)
同(山原健二郎君紹介)(第一八〇八号)
同月二十六日
高齢者の就労対策の充実に関する請願外一件(阿部未喜男君紹介)(第一八三八号)
同(上田哲君紹介)(第一八三九号)
同(小澤克介君紹介)(第一八四〇号)
同(川俣健二郎君紹介)(第一八四一号)
同(佐藤敬治君紹介)(第一八四二号)
同(沢藤礼次郎君紹介)(第一八四三号)
同外一件(馬場昇君紹介)(第一八四四号)
同(村山富市君紹介)(第一八四五号)
同外一件(井上泉君紹介)(第一八六八号)
同(工藤晃君紹介)(第一九二一号)
同(瀬長亀次郎君紹介)(第一九二二号)
同(川俣健二郎君紹介)(第一九六二号)
同外七件(関山信之君紹介)(第一九六三号)
腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(武部勤君紹介)(第一八四六号)
国立腎センター設立に関する請願(北川正恭君紹介)(第一八四七号)
同(浅井美幸君紹介)(第一九六五号)
同(春田重昭君紹介)(第一九六六号)
同(渡部一郎君紹介)(第一九六七号)
国民健康保険法の改悪反対に関する請願(川俣健二郎君紹介)(第一八四八号)
同(安藤巖君紹介)(第一九二五号)
同(浦井洋君紹介)(第一九二六号)
同(金子満広君紹介)(第一九二七号)
同(田中美智子君紹介)(第一九二八号)
同(田邊誠君紹介)(第一九六八号)
医療費抑制反対及び医療と福祉の拡充に関する請願(安藤巖君紹介)(第一九二三号)
同(柴田弘君紹介)(第一九六四号)
国民健康保険制度改悪反対等に関する請願(児玉健次君紹介)(第一九二四号)
国民健康保険法の一部を改正する法律案反対に関する請願(柴田弘君紹介)(第一九六〇号)
保育制度の維持、充実に関する請願(越智通雄君紹介)(第一九六一号)
国民健康保険法改悪反対等に関する請願(柴田弘君紹介)(第一九六九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)
社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)(参議院送付)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/0
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001・稲垣実男
○稲垣委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、厚生年金保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、去る二十一日、質疑を終局いたしております。
これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
厚生年金保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/1
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002・稲垣実男
○稲垣委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/2
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003・稲垣実男
○稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/3
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004・稲垣実男
○稲垣委員長 次に、内閣提出、参議院送付、社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/4
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005・河野正
○河野(正)委員 社会福祉・医療事業団法一部改正に対しまする質疑を行うわけですが、与えられた時間が非常に短いものですから、御親切は結構ですけれども、お答えの方はひとつ簡単にお答えをいただきたい、こういうふうに思います。そこで時間の制約がございますからいろいろ申し上げることができませんので、まず最初に、この法改正に対しまする基本的な点についてお尋ねをいたしたいと思います。
そこで、改正の目的が、一つは人口の急速な高齢化、それから第二には家庭における介護能力の低下、第三には年金制度の成熟に伴い福祉サービスのニードの多様化、こういうことでございます。そしてこれに対してどう対応していくかというのが法改正の目的であるようでございますが、その一つは、公的福祉施設をつくっていこう、そういう推進、それから、次が私が特に問題としておるところでございますけれども、この法律の第二番目の目的として、いわゆる民間の活用ということが主張されておるわけでございます。いわゆる民間の創意工夫を生かしたサービスの健全な育成という形になっておるわけですけれども、社会保障の基本的な概念から言えば、民間に頼るというものを国が徹底的にやるというのが社会保障の原則でなければならぬわけです。ところが今度の法律の改正の第二項目は、高齢化というものが急速に進んでいく、したがってそれに対する医療費の問題があり、年金があり、あるいは福祉と、こういった問題があるわけですが、いずれにいたしましても、そういう高齢化に基づいて社会保障費の予算というものが膨張をしていくということに相なると思うのです。そこで一部は民間にもという気持ち等もあって、そして今度の改正が行われるのであろう。政府の言い分は言い分で、これは民間の方も活用してできるだけ福祉サービスに貢献したいということは、名目上は非常に結構ですけれども、しかし私どもはそういうことを恐れております。
そこで、こういった福祉の問題に対しましては、一つには国の負担、それからもう一つは国民の負担、民間の負担。そこでその国あるいは国民の出し分、これはいずれも増加をするわけです。そこで私どもが恐れますのは、なるほど大義名分としては立派でございますけれども、しかしむしろ、予算が膨張する、したがって民間にもその一部を持ってもらう、持ってもらうのは結構ですけれども、それがどうも民間依存の傾向というものが非常に強くなっていくのじゃないか。そういうことになりますと、なかなか法律の名分は立派ですけれども、結果的には社会保障の基本的な概念というものが崩壊をするということになると思いますので、そういった意味で、この運営については一考も二考も要する点があろう、悪いとは言いません、あろう、こういうふうに思いますので、まずその辺からひとつお答えをいただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/5
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006・藤本孝雄
○藤本国務大臣 確かに御指摘のような御心配があろうかと思うわけでございますし、またその点が非常に大きな問題だと思います。高齢化社会が進んでまいりまして、いろいろな公的施策を拡充、充実させていかなければならぬ、それはそのとおりでございますし、力を入れていくわけでございますが、そういう中で、さらにその公的サービスを補完する意味で民間のサービスを受ける、こういうことによって高齢者の福祉を守っていく、増進を図っていく、こういう考え方でございまして、決して公的サービスの代替ではなくて公的サービスの補完、こういう考え方であるわけでございまして、重々御注意のことにつきましては念頭に置いて対応してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/6
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007・河野正
○河野(正)委員 補完は結構ですけれども、ぜひ大臣のような趣旨で補完していただくことは結構だと思うけれども、ややもすれば、その補完がそっちの方に比重がかかって、そして国民の負担の方が重くなる。こういうことになれば、この福祉制度というものは社会保障の一環ですから、当然国が面倒を見るというのがこれはもう原則だと思うのですね。それが壊れるというおそれがあるというようなことで、そういう点に対してぜひ一層御配慮いただきたい、こういうふうに思います。
そこで、もう時間がございませんから先ばかり急ぐわけですが、日本の高齢化というものが非常に急速に進んでいく。一体どういう形で進んでいくかといいますと、実はこれは日本大学の方で検討しておるわけですが、今六十五歳以上の高齢者が、高齢化ですからどんどん進んでいくわけですが、国民の二〇%高齢者が増加する、それに一体どのくらい年数がかかるかといいますと、実は日本は二十四年でそういう二〇%に達するわけですね。それからフィンランドが四十八年、スウェーデンが五十四年、オランダが五十二年、西ドイツが五十六年、デンマークが六十一年、ルクセンブルクが七十年、こういうふうに日本の二倍から三倍のテンポで諸外国は高齢化社会に進んでいるのですね。日本はその二倍のスピードあるいは三倍のスピードで実は高齢化が進んでいる。ですから、これは高齢化対策の一環として、今度の法律改正、特に第二項目はそういうことをねらわれておるわけですから、そういうことを考えますと、実は二十五日に毎日新聞が主催いたしましたぼけに対するシンポジウムがあって、私も朝から晩まで参加してきました。そのときの資料ですけれども、こういうふうに急速というよりも全く超急速的に日本の高齢化は進んでいる。とてもじゃないが、今の対応では一体どうなるであろうかという心配があると思うのですね。私が非常に驚きましたのは、こういう地味なテーマのシンポジウムでしたけれども、会場は満員なんですよ。それほど高齢化に対して、あるいはぼけ問題に対して、国民の皆さん方が非常に大きな関心を持っていらっしゃる。その点について政治家としても非常に関心を持たなければならぬだろう、こういうことを私は考えた。これほど急速に高齢化が、日本はとにかく世界のどの国と比べましても急速に進んでいく。これはよほど抜本的な考え方がないと、とてもじゃないが、これは対応できぬのじゃないかというふうな気がいたします。この点は考え方ですから、大臣の方からひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/7
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008・藤本孝雄
○藤本国務大臣 御指摘のような内容で、欧米の二、三倍のスピードで高齢化が進むわけでございます。今その高齢化社会の入り口に立っておるわけでございますので、そういう来たるべき超高齢化社会、それに対しましてふさわしい社会保障の制度をこれからつくっていかなければならぬ。その点についての責任を十分に痛感いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/8
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009・河野正
○河野(正)委員 これは大臣の亡くなられた御尊父の遺志でもあろうかと思いますので、ぜひひとつその方向でやっていただきたいと思うのです。
ここでひとつ苦言を呈したいと思いますのは、私も二十五日に日大の教授の講義を受けてきたわけですから、特に痛感しておるわけですが、厚生省の推計というものが非常に低いのですよね、低いのです。例えばこの推計を見てまいりましても、大体日本大学の人口研究所の出した資料によりますと、昭和百年、二〇二五年を目安にしておるわけですけれども、その推計によれば、厚生省の推計の二倍になっているのですよ、二倍。それからもう一つは、寝たきり老人ということですね。実はこの日本大学の推計は厚生省の推計の三倍になっているのですよ、三倍。ですから、今大臣からもいろいろ対応するために努力するとおっしゃったから、その点は私ども感謝いたしますが、この推計がそういうふうに低く推計されておって、そして果たして対応というものがうまくいくのかどうかという疑念があるわけなんですね。この点は私が勝手に言うんじゃないのです。日本大学の人口研究所の発表を二十五日に聞いてきた。私は朝から夕方まで参加して聞いてきたわけですから、それを申し上げておるわけですからね。ですから、そこがやはり厚生省の推計というものが非常に低い。それじゃ対応にはなりませんよ。こういうことですから、この点については、大臣と言ってもあれでしょうから、局長の方から答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/9
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010・小林功典
○小林(功)政府委員 突然の御質問で、担当の局長が来ておりませんけれども、今の老齢人口の将来推計の問題でございますが、私の知る範囲で申しますと、人口問題研究所で推計をしておりまして、その他にもいろいろな機関、研究所等から、今先生がおっしゃいましたようないろいろな別の推計が出されておる、これは承知しております。ただ人口問題研究所は、先生も御存じのように、大変長い歴史と伝統を持つ機関でございまして、世界的にも非常に評価されておるということでございますので、私どもとしましては、一応人口問題研究所の推計をもとにいろいろ施策を考えておる、こういうことになろうかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/10
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011・河野正
○河野(正)委員 むしろこの政策を立てていくためには、やはり高い方を見ておった方がいいですね、低い方を見ておけばどうしても対応がおくれるわけですから。そういう意味では、やはりこういうふうな日本大学の推計もあって、それが高齢化に対しても厚生省の推計というものは非常に低い。それから寝たきり老人あるいは痴呆老人、そういう方々に対しまする推計も、厚生省の場合は三分の一である。そういう低い推計ではやはり対応というものが非常におくれていくということを私どもは危惧をするわけです。どっちが正しいかわかりません、推計ですからね。実際現実にそうなるのかならぬのか、それはやってみなければわからぬ、推計ですから。
そこで、いずれ人口構造も変わってきますから、実際今の高齢化がどこまで進むのか。それはがんの特効薬とかあるいは循環器の特効薬ができれば、がんとか循環器、心臓、それらで亡くなる人が減れば、ずっと高齢化が進んでいくでしょうし、それから出生率が今非常に低いわけですから、出生率が少し高まれば、そこでまた平均寿命というものが抑えられるということですから、どこまでも推計ですけれども、やはり政府の方針としては先取りをしていくということが望ましいと思う。そういう意味で、どうも推計が低い。これは悪く考えると、推計を低くしておった方が余りいろいろ厚生省が攻撃を受けぬでいいものですから、そういう低い推計を出しておるのではなかろうか、勘ぐって言えばそういう感じがしないわけでもないわけです。そこで、そういう大学その他のいろいろな研究所で推計が出てまいりますが、そういう点は十分参考にしながら、それに対応する施策というものをぜひひとつ実行していただきたい、こういうふうに思います。
そこで、今度のこの法律改正の第二項が問題だと先ほど言っておるわけですが、民間に対してできるだけ福祉サービスに対する責任を持ってもらう。そうすれば、今の高齢化のニーズにこたえていこうということそのものは私は悪いことはないと思うけれども、ところがアメリカと違って、やはりこの福祉事業というものが、言葉は悪いけれども、お年寄りを食い物にするのじゃないけれども、そういう傾向がないわけではない。アメリカあたりは財団あるいは慈善団体が金を出してやりますので、そういうことはないわけです。そのことに厚生省も着目をされて、そしてこの悪質な老人ホームに対する監視を強化するというようなことで基準もつくられておるというふうに言われております。そう言われながら、現実には老人福祉施設が非常に目立つ増加をしておる。現在二千八百五カ所のホームに約二十万人も入所しておる。そしてもう既に半分以上が民営なんですよ。そして今度はまたそれをふやそう、こういったことになるわけですね。ところが今でもこの悪質な老人ホームが後を絶たないということで、それに対する監視強化のための基準をつくる、こういうことですね。これは一体効果が上がっているのかどうか。私どもは民間に対して福祉事業に対して協力を訴えることは一つも悪いことではないと思う、国だけでなかなかやれぬわけですから。ですけれども、言葉は悪いけれども、お年寄りを食い物にするというような形でそれが行われて、しかもそれを低利で金を貸すということですから、これはちょっと一考も二考も要すると思うわけです。そういう意味で、監督強化、監視強化のために基準をつくられたということですが、この効果というのは一体上がっておるのかどうか。上がっておらなければ、上がらないまままたどんどん金を貸してやらせるわけですから、悪が増大するような格好ですね。もちろん非常に良質で良心的な、特に田邊先生あたりのところはそうだと思うけれども、良心的なホームがたくさんあることも私どもは承知しておるし、それに対しては心から敬意を表しておるわけですが、今申し上げるような現実がたくさんあるわけでしょう。この基準ができても、次から次にそういう悪質な例が出てきておるわけです。新聞紙上でも出てきております。時間がございませんから、ここで一々挙げるわけにいきませんが、ホームにおけるずさんな経営が、この基準ができたけれども新聞をにぎわしておる、こういうことでございますから、一体そういうのはどういう状況になっておるのか、簡単でいいからお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/11
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012・小林功典
○小林(功)政府委員 今お話ございましたのは、恐らく社会福祉法人の不祥事例を御指摘になったのだと思います。これはいわば公的な施策を社会福祉法人が委託を受けてやっている事業でございますが、たまにそういう事件が起こるのは事実でございまして、まことに遺憾でございます。ただ、大多数の施設につきましては、適正な運営がなされていると考えております。それにつきましては、私ども従来からいろいろな行政指導あるいは準則等決めまして、あるいは監査指導ということで各現場まで入りまして指導監督を行っておるわけでございます。
もう一つ、先生おっしゃいました中にシルバーサービスのガイドラインのお話もあったかと思いますけれども、これにつきましては、まだこれからの話でございます。シルバーサービスはこれからふえて発展していくものでございます。これを余り野放しにしないで、事前に年寄りが食い物になることのないような自粛あるいは行政指導というものをやっていきたいということで、一つは、お話ありましたような一定のガイドラインを示しまして、これをもとにして国と地方が連携をして行政指導をするということ。もう一つは、これは民間事業者でありますから、民間事業者の集まりでありますシルバーサービス振興会という社団法人がございます。ここで自主的な規制をするという意味で倫理綱領の策定等を初めとした自主的な取り組みをお願いしておる、こういうことによりましてシルバーサービス事業の健全な育成を図っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/12
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013・河野正
○河野(正)委員 時間がございませんので、お答えは簡単にお願いしたいと思います。
そこで、形容はよくないと思いますが、極端な話ですけれども、年寄りを食い物にする。その一環として、先ほどちょっと、毎日新聞のぼけ対策に対するシンポジウム、そこで大変な国民の方が関心を持っていらっしゃる、会場が満員ですから。そういうことから特にぼけ問題について一言指摘したいと思います。
きのうあたりからマスコミは、ぼけ老人に対しての特効薬ということでホパテ、これは田辺、それから武田はアバン、こういうぼけ老人に対します特効薬ができておる。ところが田辺のもののにせ薬。私は今までにせ薬を随分とこの委員会で追及してきたいきさつがあるのです。今度はちょうどぼけ問題ですから、それは高齢化に対するあれですから、高齢化を利用してにせ薬をつくって、このホパテというのは年商一千億。それがにせものが出ておるわけです。これは現金問屋と言っておりますけれども、私はこの委員会ではブラックマーケットという言葉を使っている。ブラックマーケットを利用すると、そういうにせ薬をつかませられるから、一般的にはこれは規制できませんから、少なくとも国の機関、国立病院は現金問屋は利用しなさんな、私はかねがねこういう指摘をしてきた。ところが医療費を抑制しなければならぬから、我々は現金問屋を活用しておりますというのが今までの厚生省の姿勢。ですから、全部できなくても少しでも減らしなさい、にせ薬をつかまされますよ、こういうことを言ってきた。ところが今度またホパテが出てきた。これは年商一千億です。そういう意味でこれは大変なことだと思いますので、今度の改正の第二項目の、民間に対して金を貸してやるということについても、適正にやってもらわぬといろいろ禍根を残しますよということを言ってきたと同じように、国が現金問屋を利用する、私はブラックマーケットと言っておりますが、そういうことをしますと、にせものをつかまされますよ。今度も、これは普通十二万円ぐらいするのです。それが六万円ぐらいで入ってくる。それを八万円ぐらいで卸すのですね。一般には十二万五千円ぐらいですから、それが八万円で入るのですから、にせ薬とわからない限りみんな買いますよ。これは民間ではなかなか規制できませんから、少なくとも国の機関はそういう危ないところの商品は買いなさんなと私は今までいろいろ言ってきたけれども、四十二の国立病院が現在そういう現金問屋と取引しているのですよ。これは大臣は初めてですけれども、マスコミが言っておりますように、老人を食い物にするようなにせ薬が国民の弱みにつけ込んで出てくることは望ましいことではないのです。ですから、こういう点については、今後薬品監視で注意するんだとおっしゃっておるけれども、薬品監視といったって、次々起こっているわけでしょう。警察庁が摘発するにせ薬事件は年間三百件から五百件起こっているでしょう。これは後を絶たない。それならまず厚生省が手本を示さなければいかぬわけですよ。これについて一言大臣から答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/13
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014・仲村英一
○仲村政府委員 かねがね先生が御指摘なさっておられる点でございますけれども、私ども、今回の事件につきましては、特定の事件ということで現在いろいろ情報を集めておりますが、まだ全容をつかんでおるわけではございません。特に御指摘の国立病院へこういう薬が流れているかどうかについては、私どもまだ情報を把握しておりませんが、一般論として、患者に使われる薬がそういう模造品のような形でつかまされるのは大変問題でございますので、薬務行政としても取り締まりをさらに厳しくする必要があると思います。国立病院に関しましては、従前から御指摘ございますが、やはり安く買えるということも経営努力の一つでございますので、全部をやめるのはなかなか難しいと思いますが、仕入れ業者あるいはルートを十分明定した上で確実なものを買うような努力をさらにさせるということで、私ども対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/14
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015・河野正
○河野(正)委員 時間がありませんから、また別の機会に譲りますけれども、今のような答弁ではいかぬですよ。安く買えるから買わせるんだ。安いからにせものをつかまされるわけでしょう。ですから、さわらぬ神にたたりなしという言葉がございますね。なるべくそういうものは敬遠した方がいいことはわかっているわけです。それを依然として薬代が安いからやりなさい。民間の医療機関では無理ですから、少なくとも国立病院だけはそういうことがないように、にせ薬をつかまされることがないようにやってほしい、こう思いますので、大臣から一言。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/15
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016・藤本孝雄
○藤本国務大臣 私もその点につきましては知識を持ち合わせておりませんので、実態を十分に把握した上で慎重に対応してまいりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/16
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017・河野正
○河野(正)委員 時間が参りましたので、あと一言だけ。それは老人保健法のときも私は中曽根前総理にも御指摘をしたわけですが、老人と歯の問題。老人はとにかく食べることだけが生きがいですから、それが非常に歯が悪くて食べられぬ。しかも寝たきり老人は歯医者に通うことができぬわけです。したがって、今度の訪問介助、在宅介助というもの、ケアというものがありますね。それに関連してですけれども、在宅老人の歯科の保健推進事業、これは厚生省がことしからおやりになる。どうもこれが徹底してないのですよ。ですから、もう少し徹底する必要があるし、それから今申し上げますように、今度モデルとしてことし七カ所指定をするということですね。ですけれども、これはやはり希望するところがあれば、逐次——政府が出すのは一カ所がたった百四十三万円ですよ。だから希望する都市があれば、ひとつこの際それは次々と加えてやる。全国に七カ所やったって、その七カ所の都市の老人が幾らか恩恵に浴するでしょうけれども、全国の百万以上の、今六十万と言われておりますけれども、寝たきり老人は現実には百万以上おると思いますね。歯で苦しんで食べることができませんから生きがいがない。そういう御老人がいるわけです。今度在宅ケアが出てきますから、この歯の問題は希望すれば逐次認可をしていく。ことしは一都市でわずか百四十三万円しか出さぬのですから。ですから、このくらいのことは、もし、特に大臣もそうでしょうが、大臣のお父さんも老人福祉については非常に大きな関心を持っていらっしゃったということを私どもは承知しておりますので、とにかくお年寄りの在宅ケアの一環として、この歯の問題については、ぜひひとつ希望者があれば、希望する地域があればするんだ。ことしはたったの百四十三万円です。ですから、ぜひひとつこれは大臣から、そういう希望するところがあれば、老人福祉のために考えたいということをお答えいただければ、全国の老人は喜ぶと思うのです。これは大臣からです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/17
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018・仲村英一
○仲村政府委員 モデル事業としてやっておりますので、私どもこれからいろいろ……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/18
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019・河野正
○河野(正)委員 私はあなたの答弁を聞いてない。あなたに希望してないのだから、時間がないから、池端先生の時間に食い込んでいるのですから、大臣から答えれば結構なのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/19
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020・藤本孝雄
○藤本国務大臣 現状におきましては、だんだんと前進しておると理解しておるわけでございますが、せっかくの河野先生の御提言でございますので、時間をいただきまして、私もぜひ勉強して対応したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/20
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021・稲垣実男
○稲垣委員長 池端清一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/21
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022・池端清一
○池端委員 この改正案はいろいろ検討してみましたが、施設福祉中心から在宅サービス中心へという大きな流れの変更の中で発想されているのではないか、私はこのように考えるわけでございます。
したがって、まず最初にお尋ね申し上げたいことは、今後公的な分野においてどこまで在宅サービスを確保する方針であるか、まずその点を端的にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/22
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023・藤本孝雄
○藤本国務大臣 国民生活を送る上で切実なニードにこたえる真に必要なサービスにつきましては、今後とも公的施策の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/23
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024・池端清一
○池端委員 ここに昭和六十二年十二月七日に出されました福祉関係三審議会の合同企画小委員会の報告書がございます。これを読みまして、非常に問題があるのではないかと私は率直に思ったわけであります。なぜならば、公的部門による福祉サービスは、基本的には次の二点だと言っているわけです。その一は、「対象者が低所得者であるなどの理由により、基本的に民間によるサービスの提供が期待し難いもの」これが第一。第二は、「広い意味における市場機構を通じての民間サービスの供給が十分でないもの」こういうことでございます。そして「それ以外の多様なサービスについては、様々な形態の民間部門が積極的に対応していく」ということが記載をされておるわけであります。これは老人福祉法その他の精神からいって非常に問題ではないか、こう思うわけでありますが、ここで言う一の「低所得者であるなどの理由により、」あるいは二の「民間サービスの供給が十分でないもの」というのは、具体的にはどういうものを指しているか、その点をお尋ねをしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/24
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025・小林功典
○小林(功)政府委員 確かに昨年十二月の意見具申、先生今お話しになりましたような二つに分けて、この公的部門の役割を書いておるわけでございます。例えば老人の入所施設を例にとって御説明すればわかりやすいと思いますが、まず養護老人ホームというのがございます。これは低所得者に限定をしておりますので、第一のカテゴリーに入る問題だろう。それから特別養護老人ホームにつきましては、両方に当たる。つまり低所得者対策でもあるし、それから「広い意味における市場機構を通じての民間サービスの供給が十分でないもの」というところにも入る。したがいまして、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームはすべて公的な部門の対象になる、このように私どもは理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/25
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026・池端清一
○池端委員 今日の公的な在宅サービスの実施状況を見てみますと、これは昨年の六月現在でございますが、厚生省の調査で家庭奉仕員派遣事業実施市町村は三千二百四十七の多きに及んでおります。デイサービスの事業は二百八十八の市町村、ショートステイ事業は二千七百二の市町村、入浴サービス事業は千五百二の市町村、こういう実態になっているわけでございますが、この状況はこれからも相当ふえていくと私は思うわけでございます。
ところが、ただいまのこの報告に照らして考えるならば、対象者が低所得者に限られる、あるいは民間のサービスの供給が十分でないという場合に限って公的部門が乗り出すということになれば、この報告を忠実に実践するとすれば、今実施している市町村も相当制限をせざるを得ないのではないか、私はそういうふうに思うので、非常に問題の多い報告だと思いますが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/26
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027・小林功典
○小林(功)政府委員 先ほどお話ししましたように、私どもの理解としましては、意見具申の趣旨は先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、在宅サービスにつきましても、公的な施策を今後とも進めていきたいということでございまして、例えばホームヘルパーの増員にいたしましても、デイサービスの実施箇所数の増にいたしましても、あるいはまたショートステイの対象人員の増にいたしましても、これはこれからも大いに進めていきたいと思っております。現に六十三年度も、六十二年度も同じでございますが、相当大幅な拡充を図っておりますので、今後そういうことで拡充を続けていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/27
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028・池端清一
○池端委員 ただいま申し上げましたデイサービスとかショートステイ、こういったような在宅サービスについて、もちろん対象は低所得者を優先すべきだと思いますけれども、その人たちに限定をしない広範な人たちをこの対象にして考えていくべきだ、そういう原則に立つべきだと私は思うわけでございます。厚生省もそういう観点から今日までこのホームヘルパー、家庭奉仕員派遣事業の対象者を逐次拡大している、予算上もそういうふうになっておるわけであります。ですから、低所得者でなくても、一定の負担をすれば利用できる、こういう方向を目指しているというふうに確認をしてよろしいかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/28
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029・小林功典
○小林(功)政府委員 デイサービスやショートステイ等の在宅サービスにつきまして、従来から低所得者以外の者に対しましても公的部門が提供してきておりますし、また今後もその方針を変更する気持ちはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/29
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030・池端清一
○池端委員 四月の二十二日あるテレビで放映をされておりましたけれども、民間企業の介護サービスで週三回五時間で何と十三万円強、これが毎日の介護サービスとなると月に三十万円、こういうような状況だという放映がなされておりました。非常に民間サービスが高いのであります。私は、これでは低所得者の方ばかりではなくて、一般の年金生活者でも利用できない、こういう状況ではないかと思います。そうすると、勢い在宅サービスを実施する市町村が今後ともふえていく、こういうふうに考えるわけでございますが、基本的には在宅サービスというのは公的部門で行うべきである。そして先ほど大臣も言われたように、これを補完する形で民間がやる、こういうことが望ましい姿ではないか、私はこう思うのであります。先ほども申し上げましたけれども、老人福祉法の第四条第一項「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有する。」とあるわけでございまして、シルバーサービス産業栄えて福祉が滅ぶという状況に絶対に持っていってはならないというふうに考えますが、この点についての御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/30
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031・小林功典
○小林(功)政府委員 今先生お話のあったとおりだと思います。シルバーサービスはお年寄りの多様なニーズに対応するために健全な育成を図っていかなければならないと思っておりますが、それはあくまで公的部門がさらに拡充をする、そういう前提での施策でございますから、そういう意味では先生今おっしゃったとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/31
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032・池端清一
○池端委員 先ほども大臣から答弁ありましたし、四月十二日参議院の社会労働委員会でも答弁をしております。「国の福祉サービスも無論充実させていかなけりゃなりませんけれども、それを補完する意味で民間のサービスにも期待していいのではないだろうか。」こういう趣旨の御答弁をされております。また社会局長は、同日「公的部門につきましても所得の多寡にかかわらず提供するというのが原則でございます。」こういうふうに言われておるわけでございます。
そこで、重ねてお尋ねしますが、私は先ほどホームヘルパー初め四つの在宅サービスの問題に触れましたけれども、これらの在宅サービスについても、この原則が当てはまるというふうに確認してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/32
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033・小林功典
○小林(功)政府委員 在宅サービスにつきましても、民間サービスは公的サービスを補完するものと考えております。今後とも在宅サービスについても、私が前に申し上げましたように、所得の多寡にかかわらず提供されるものであることは変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/33
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034・池端清一
○池端委員 次に、国の予算面から在宅サービスの問題をお尋ねしたいわけであります。
施設福祉、もちろん重要でありますけれども、在宅サービスというものも本当に重視をしていかなければならないと我々は思います。そういう問題について予算の面からいろいろ分析をしてみますると、六十三年度の予算では在宅サービス関連の予算が百五十一億一千二百万円、施設サービス関連の予算が二千七億五千六百万円、正確に計算しておりませんけれども、十五分の一程度でしか在宅サービスの予算は組まれていないわけであります。これではかけ声倒れになるのではないか、私はこう思うわけでございます。ですから、中期的な一つの目標というものを据えて、例えば五年後には在宅サービスの予算をせめて施設のサービスの半分にまで持っていくといったような政策目標をとってはどうか、立ててはどうか、私はこういうふうに考えますし、また在宅サービス拡充の中期計画といったようなものを策定をすべきではないか、こう思うのでありますが、この点についてはどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/34
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035・小林功典
○小林(功)政府委員 在宅サービスにつきまして従来からいろいろ大幅な拡充を図ってきたという点は、先ほど申し上げたとおりでございます。
そこで、先生、今お話がございましたような政策目標といいますか将来目標を決めてやるべきだということは、全く同感でございます。ただ、先生は今予算面から、予算額からのアプローチをなさいましたけれども、私どもはむしろ整備の目標というものをきちっと持って、それに向かって現実に整備を進めていく、こういう方向を今とっているわけでございます。
それを一つ申しますと、まずデイサービス事業につきましては、六十年代中に三千カ所、これは約全市町村という意味でございますが、そこで実施をすることを目標に整備を進めております。またショートステイ事業につきましても、このデイサービスと同じように昭和六十年代には全市町村、全特養に整備ができるように、それを目標に推進してまいりたいと考えております。
そういうことで、そういう整備の目標を持って、施設ももちろんでございますが、在宅につきましても、その充実を図っていきたい、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/35
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036・池端清一
○池端委員 政府案の趣旨の一つとしては、民間サービスの質の向上、こういうことが言われているわけであります。
それでは、民間サービスの現状について、先ほど河野委員からも御指摘がございましたが、どういう実態になっているか、これを把握されておるのでございましょうか。厚生省が確認をした株式会社等の民間サービス事業体は、全国で入浴サービス中心が四十社、介護者派遣中心が二十社、私もこういうふうに承知をしておるわけでありますが、こういう企業はどういうシステムで営業をしているのか、その実態を明らかにしてもらいたい。マンパワーの問題も含めて明らかにしていただきたいと思います。
〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/36
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037・小林功典
○小林(功)政府委員 今先生がお示しになりましたようないろいろな在宅介護サービスについての状況は、直接私どもまだやっておりませんけれども、各種の資料をもとにしまして状況はある程度把握しております。ただ、これは万全ではございませんので、私どもとして直接調査をしたいということで、実は六十三年度予算で実態調査の経費を計上しております。これをもとにいたしまして、本年度中には詳細な実態調査をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/37
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038・池端清一
○池端委員 民間の事業、民間の方についても、献身的に本当に奉仕的な立場からやられている事業もある。私どももいろいろ視察なんかをしておりまして、非常に頭の下がる経営の状況も見てまいっております。しかし、一面では豊田商法まがいの家庭の弱みにつけ込む、お年寄りの弱みにつけ込むということで、入会金を取って倒産をするとかサービスの担い手の質が悪くトラブルが続発する、こういったようなものも現実に起きているという話も聞くわけでございます。これについてはきちっとした対策をとっていかなければならない。単なる企業間のいわゆる倫理綱領の策定、それだけではだめだと思うのです。やはり行政機関がきちっとこれらについて具体的な指導というものをしていかなければならないと思います。
そこで、お尋ねしますが、具体的にこれらの民間のシルバーサービス事業についてどこの機関が監督指導に当たられるのか、それからどういう基準で監督指導を行うのか、この点をお尋ねしたいと思いますし、先ほどもお話がありましたように、ガイドラインというものの策定が何としても必要だ、こう思うわけでございます。
私はここにイギリスの「認可居住施設法一九八四年」、それから「居住施設規則一九八四年」というイギリスの施設ケアの実践綱領というのを持っております。イギリスでは、こういうようなきめ細かなガイドラインを策定して、十分な対応、対策を練っておるわけでございますので、ぜひ我が国でもこういうようなものを制定していく必要があるのではないか、こう思いますが、この点についてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/38
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039・小林功典
○小林(功)政府委員 確かにシルバーサービスのこれからを考えますと、質の確保と申しますか良質なシルバーサービスが健全に育っていくということは大切だと思います。特にお話もありましたように、相手が弱い立場にあるお年寄りでございますから、よほど慎重の上にも慎重を期して指導をしていかなければならないと我々は心しているわけでございます。
そこで、例えば有料老人ホームにつきましては、既に一定の基準を示しております。指導指針ということで示しておりますけれども、在宅介護サービスについては今までございません。そこで在宅介護サービスにつきましても、お年寄りに適切なサービスが提供されるように、一定のガイドラインを示すことを我々も考えております。それをもとにいたしまして、国と地方が連携をいたしまして、行政指導を行っていきたいということでございます。
それから、もう一つつけ加えさせていただければ、これは民間事業者の仕事でございますので、できれば民間事業者の相互の間で自主規制と申しますか、そういうものを図ってもらいたいという気持ちを持っておりまして、シルバーサービスについての民間事業者の集まりでありますシルバーサービス振興会という社団法人がございますが、そこで倫理綱領の策定等の自主的な取り組みを現在お願いしているところでございます。そういった行政指導と自主規制という二つの柱で、これから健全な育成を図っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/39
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040・池端清一
○池端委員 今の局長のお話、私もシルバーサービス振興会の概要の中で自主的な倫理綱領の策定というようなものも行われておる、検討されているということは承知をしておりますが、もちろんそれだけではなくて、あくまでも車の両輪といいますか、そういうガイドラインの策定も含めて行政指導も十分なさるべきでないかということを強く申し上げておきます。
そこで最後に、大臣、今ある新聞に「「老い」を支えるもの」という連載物が特集されておりますけれども、これには「ヨーロッパ福祉の光と影」という副題がついておるわけであります。おとといの日でしたか、いろいろヨーロッパの福祉の現状を見てまいった人たちが、「外交や防衛ばかりが政治ではない。「福祉こそ際立って政治なのだ」」というヨーロッパ福祉の現状を見て、そういう意見を述べられているのを見まして、私も全く同感でございます。ともすれば、政府はこういう部門から何となく撤退する、そしてこれは民活だ、民営だあるいは民間委託だ、こういう潮流が支配的なように見えます。これは非常に老人福祉法の精神をも逸脱したものではないかということでございまして、もっともっと福祉充実という観点に政府は責任を持って対処していくべきだ、私はこう思いますが、この点についての御決意を承って、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/40
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041・藤本孝雄
○藤本国務大臣 社会保障制度は、申し上げるまでもないことでございますが、国民生活の長期安定の基盤でございます。それからまた今後高齢化社会が本格的に進行するわけでございまして、そういう社会の中で国民の皆様方が豊かで健康で明るく生活を進めていくためには、社会保障制度の持つ役割というものは極めて総体的にも大きくなると私は思っております。そういう意味で、今後社会保障制度の充実強化を図っていくということは、政治に課せられた非常に大きな課題である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/41
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042・池端清一
○池端委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/42
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043・野呂昭彦
○野呂委員長代理 田邊誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/43
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044・田邊誠
○田邊(誠)委員 既に具体的な問題については河野さんと池端さんからお話がございましたので、私は大臣とこの委員会で席を同じくして社会福祉を論じてきた仲間でございまするから、基本的な考え方についてのみ大臣に質問をいたしたいと思います。
当委員会の冒頭における大臣の所信表明のごあいさつを拝聴いたしまして、なかなか重要な観点を冒頭に述べていらっしゃいます。それはこの進みつつある長寿社会の位置づけをどうするか。それから第二は長寿社会への持つべき認識はどうか。そして第三番目にはこの長寿社会に向けるところの政策形成への決意というものを述べられている。こう私は実は拝聴いたしたのでございまして、非常に重要な問題を内包していると思うのでございます。
私は、こういったことを進めるについての基本的な視点は何かといいますならば、その第一は、お年寄りがみずから健康で生きがいのあるところの生活をするぞ、こういう自分みずからがこれを築くという意欲というか意識というものを持つことが何より大事だろう、こう思うのです。
第二は、そういったお年寄りを包むところの国を含めての地域社会、これがどういう受け入れ態勢を持っているか。もちろん医療や年金の問題もございまするし、そしてまた地域社会全体の体制というものもございまするが、そういったものを一体どのように築いていくかということが非常に必要だ。今ノーマライゼーションということが言われておるのですが、今からもう二十年くらい前でしょうか、私は自民党の伊東正義さんと公明党の大橋敏雄さんと民社党の田畑金光さんとそこにおるところの小林社会局長、一緒に実はヨーロッパをめぐってまいりました。スウェーデンへ行きますと、社会福祉施設は緑の森の中にあって、日本はああいうことになっていないのを非常にうらやましいと思ったのでございますが、しかし、数年前に行ってまいりますと、お年寄りと青壮年と児童というか子供は同じ地域でもって暮らすことが普通のことなんだというふうに実は変わってきておるのであります。日本の社会というのは一体そういうことになっているのかどうか。ですから、お年寄り自身に対するところの対策は重要でありますけれども、それを受け入れるところの地域社会の体制づくりというのが同じく並行して行われなければならぬ、私はこう思うのでございます。
第三番目には、具体的な施策は非常に重要でございますけれども、そしてその手だてを非常に大事にしなければいけませんけれども、一番最終の行き着くところは、お年寄りができるだけぼけを少なくして、長寿を全うするというのが人間の一番とうといことだと言われておりまするが、この精神的な安定感というか安心感というか、そういうものを植えつけるようなものがなければならぬ。だからこれからいろいろな施策を行われまするし、この法案もその一助でございましょうけれども、しかし、どういうことをやるにしても、お年寄りに対して非常に安らぎを与えるというものがなければ、私は絵にかいたもちになるだろうと思うのです。リハビリ、サービスといっても医学的なものもあります。あるいは職業につかせるというものもございます。そしてまた社会的にいろいろ対応することもございまするが、それと並行して心理的なリハビリ、サービスというものも必要だというのを私どもは忘れてはならない。私はこれが社会サービスというか長寿社会に向けるところのもろもろの具体的政策をするに当たっての基本的な三つの視点だと心得ておるのですが、大臣、それ以外にいろいろな御意見もございましょうから、御所見をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/44
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045・藤本孝雄
○藤本国務大臣 田邊先生とは私が初当選以来もう二十五年、公私ともに極めて御指導いただいておりまして、大変感謝をいたしております。
今御指摘のお考え方につきましては、私も全く同感でございまして、まず第一点目の福祉という問題については、これはよりよき生活をするための努力であるというふうに考えておりまして、その場合には三つの分野があろうかと思います。公的なサービス分野、それから地域、職域における相互扶助の分野並びに自立自助、御本人のそういう分野、この三つが十分に行われまして、しかも補完されていくところに立派な福祉が完成される、こういうふうに私は思っております。
それから第二点目の、地域におきまして老人が孤立しないで家族の方々とか若い人、そういう方々と同居している社会、これを築いていく。またこれが必要だということにつきましては、全く同感でございまして、ヨーロッパにおきましても、そういう傾向といいますか、そういう現実といいますか現状といいますか、非常に進んでおるように見ておるわけでございまして、我が国といたしましても、そういうお年寄りが孤立をしないで社会生活が行える、こういった観点からの施策というものの充実に取り組んでいかなければならぬというふうに考えております。
それから三点目の、お年寄りの問題を考えますときに、基本的には私はやはり三つの点があると思うわけでございまして、それは一つは心の豊かさ、それから物質面での豊かさ、それと健康、この三つが突き詰めて考えると、これが基本的な柱であるというふうに考えておるわけでございます。
そこで、厚生省はこの心の問題、また物質面での問題、健康の問題のすべてに関係をいたしておりますけれども、特にやはり健康の問題、健康の分野が厚生省にとりましては最も責任を負うべき分野でございますので、その点については、今後国民の健康づくりという問題を特に最重点に、もちろん医療の問題、またその中では予防、検査の問題ももちろんございますけれども、特に国民の健康づくりという問題については、これからさらに重視をして取り組んでまいりたい、かように私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/45
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046・田邊誠
○田邊(誠)委員 大臣の所信を承りましたが、そこでこの社会サービスというものを充実強化しなければなりませんが、医療、年金、制度的には一つの段階をけみしておるわけです。内容的にはいろいろと問題がございまするけれども、一応形の上では先進国並みになってきた。我が国では一番おくれているのは社会福祉という部面がおくれてきたのでございまして、ここに目を向けることは非常に重要だろうと思うのでございますが、現在は生活の質ということが実は言われておるのでございます。長寿社会になると同時に、その生活の質が非常に向上してきた、またさせなければならないという状況でございまするから、したがって、社会サービスというものの側面をとらえたときに、どういうものが必要かと言えば、やはり第一には専門的な分野あるいは技術的な分野についての向上がより重要になってきている。機能的なサービスというものが実は非常に重視されてきている、こう私は思うのでございます。したがって、ここに携わる方々のそういった面におけるところの強化策というのがより充実されなければならない、こう思います。
それからもう一つは、厚生白書にも言われておりまするところのいわゆる受け手志向でございまして、サービスを受ける側といいましょうか、あるいは施設に入っていらっしゃる方々、病院の入院者、そういった方の考え方なり、将来的に言えば人権の尊重というか、そういったものも含めて受け手志向というものを重視しなければならない、こう言われておるのでございます。上からの一方的な押しつけではいけない、画一的な物の考え方なり施策ではいけない、こうなっておるのでございまするけれども、大臣、これは非常に難しいのでございます。全体的な国民の意識もございまするし、そしてまた後で時間があれば触れたいのですけれども、例えば今病院に入っている方々の差額ベッド、それからいろいろな施設に入っていらっしゃる方々の自己支弁、こういったものが最近生活の質の向上と相まって導入されてきた。そうしますると、やはり権利意識というのが非常に強くなるのですね、当然だろうと思うのですけれども。実はそれを受けて立つ側の従事者というものは一体そういう意識の変革があるのかどうか。さらにまたそういう受け入れる側の体制がきちんと整っているのかどうか。例えば病院にしても施設にしても、夕食は五時じゃ困るぞ、こういう話になってくるけれども、それならば六時なり六時半なりにそういう夕食をするためには、その施設なり人員配置なりというものが充実していなければ、それはなかなかできないことなんですよ。ですから、これはあくまでも両者の話し合いによるところの同意というものを根底に置いて物事をだんだんと進めていかなければならない、私はこう思うのでございます。したがって、厚生省も随分各都道府県なりいろいろな施設なり病院に対して指導はしておるようですけれども、ただ指導というだけでは、どうも摩擦が起きたり、そこにそごが起きたりという形になってくると私は思うのですね。これは恐らく今後突き詰めまするならば、環境アメニティーやプライバシー、それから選択の自由というところまでだんだん入ってくると思うのですね。ですから、今ちょうどそういう過渡期にあるということを十分認識されて、それに対して適切な手を打たれることが非常に重要なことだ、こう私は思うのです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/46
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047・藤本孝雄
○藤本国務大臣 厚生白書でも初めて取り上げましたマンパワーの問題、これは御指摘のように、今後の社会保障制度を充実さしていくための極めて大きな基盤、またかぎを握っておるというふうに思います。七十五年度までに社会に出てくる新しい人口が約五百万、その中の三分の一、百五十万程度の数の確保が今後のマンパワーを考えます場合に必要である、こういう数字も出ておるわけでございまして、そういうマンパワーの確保が背景になって、また土台となって社会保障制度というものは前進、向上していくと私も考えておるわけでございまして、その点については極めて難しい問題でございますけれども、懸命に努力をしていくべき問題であると思っております。
それから、厚生行政全般の問題にもかかわる問題でございますが、受け手志向、要するに行政側の考え方で、そのペースで進めていく、そういうやり方から受け手の方からの立場に立って進め方を変えていく、これは非常に重要なことでございまして、私も役所の中でそのことを強く言っておるところでございます。その場合に、今御指摘のような権利問題であるとかいろいろプライバシーの問題であるとか選択の問題であるとか、極めて重要な問題が起こってくると思うわけでございまして、こういう問題も十分に勉強し、対応するために考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/47
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048・田邊誠
○田邊(誠)委員 今お二人の質問にもありましたけれども、最近、民間の活力を導入、福祉ミックスというか公民ミックスというか、そういうミックス論というのが盛んになって、それが将来の日本型の福祉社会のあるべき姿だということが言われているんですが、これは実は誤りますると、非常に民間依存型になるというのは先ほどの御指摘のとおりでございまして、サービスの理念というものは、施設重視をしていくのか、それから在宅重視をしていくのかということについても問題がございまするし、それからまた社会サービスの普遍化ということが言われておる中でもって、利用者の負担ということが当然のようにされているけれども、それが国の責任の回避ということにつながりはしないか。それからサービスの主体は、先ほど社会局長からも言われましたが、いわゆる公的サービスというのが主体であって、民間や家族やボランティアというのは、あくまでもそれを補助する形であるという認識をきちんと持っていないといけないだろう。しかもそれらのことが最終的には財政の抑制論につながるというか、その背景の中で打ち出されているのではないかという心配をされておるわけでございます。ここ十年間見ましても、一般会計に占めるところの社会保障総給付費というのが率としては必ずしも向上していない、こういう状況でございまするし、外国の場合は、やはり民間から始まった社会保障というか社会福祉というものがだんだんと国と社会全体でもってそれをフォローしていくという形になってきた。日本の場合も、戦前においては、民間の社会事業家がやってまいって、戦後それが変わって、憲法理念もあっていわば国の責任論ということになった。それがまた公民ミックスという格好にだんだんと変わってきているというのが福祉の後退論ではないかというふうに言われる一つのゆえんだろうと思うわけでございます。したがって私は、国の責任というものと、それからやはり福祉は手近にあるものが手がけることが必要だと思う。そういった点からいえば、地方自治体が福祉に対してもっと十分手だてが講じられるような体制づくり、財政的にもあるいは権限の面からいっても、そういった面で移譲していくということが必要じゃないかということが考えられまするけれども、いかがでございましょうか。
それから、良質なサービスの提供の問題は、先ほど言われましたからよろしゅうございまするけれども、私は結論的に言うのは、今在宅重視ということになっているから、それはそれなりの意味があると思いますよ。やはり今まで育ったところでもって生涯を送るという、これが非常に大切だということはわかりまするけれども、いわば施設から在宅へ、在宅から施設へというこの移動がスムーズに行われるような体制をつくらないと、そこに固定化してしまうということがあるのではないでしょうか。そのことを私は非常に心配をいたします。
私の個人的なことで大変恐縮だけれども、実は私の法人が経営をしているのは、特養と養護と同じ建物の中でもって、一階は特養、二階、三階は養護である。ところが養護老人ホームに入った年寄りは、特養に移さなければならぬといってもなかなか移すようなことを行政的にやらせない。そしてまた特養に入ればそれっきりで、それから移ることはできない。こういうような形というものをこれから先よほど注意してその移動が円滑に行われるような状況というものをつくっていかなきゃならぬ。これが第二。
第三番目に、もう一つ最後にお伺いしておきたいのは、都市型の高齢者、これが非常に問題だろうと私は思うのです。これは、例えば田舎のように福祉センターがあって歌ったり踊ったりすることができない、ゲートボールをやるというようなことができない、そういったことに抵抗がある、そういう人たち。例えばイギリスにおけるところの公園が充実しておる、あるいは博物館がある、美術館も無料で見られる、あるいは野外のコンサートや野外劇が頻繁に行われる、そういう都市センターというか、そういうものがあって、そこに行けば仲間がおっていろいろと話ができる、こういうような住環境の整備といいましょうか、こういったものがないと、これから先、都市型の高齢者に対して行うことの手だてというのは非常に困難になってきているんじゃないかと思うので、これに対してもぜひひとつお考えをいただきたいと思います。
時間が終わったそうでございまするから、大臣から何か一言御決意があれば承って終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/48
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049・藤本孝雄
○藤本国務大臣 貴重な御意見、私にとりましても非常に参考になるわけでございまして、御指摘の点につきましては、十分に念頭に入れて、これから対応してまいりたいと思います。
民間サービスが福祉サービスの中に入ることによりまして、公的サービスが後退するのではないか、この御心配はごもっともだと思うわけでございまして、そういうことにならないように、さらに公的サービスの充実を図ってまいるわけでもございますし、公的サービスで行わなければならない分野については、これからも充実させていく、その上で選択等による場合に民間のサービスで対応していく、こういうことでございますので、その点につきましては十分に注意してまいるつもりでございます。
それから、地方と国との役割分担、この問題も私は将来の重要な問題だと思うわけでございまして、福祉はまさに身近に行うべきものでございまして、そういう点については、将来の方向としてはそういうことでなければならぬというふうに考えております。
それから、長寿社会における対策として、健康とか所得とか雇用、それから居住環境の整備があるわけでございまして、その中の一つの大きな柱として言われましたことにつきましては、私も全く同感でございまして、これは厚生省の所管で十分対応できる問題ではございませんけれども、政府全体として取り組む問題だと心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/49
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050・田邊誠
○田邊(誠)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/50
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051・野呂昭彦
○野呂委員長代理 大橋敏雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/51
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052・大橋敏雄
○大橋委員 社会福祉・医療事業団法の改正案の審議に際しまして、私は高齢化社会に関する基本的な問題から若干お尋ねをしたいと思うわけです。
まず、我が国は確実に世界一の長寿国、老人大国になると言われているわけでございますが、厚生省の人口問題研究所は、これについてどのような状況を推測し、あるいは把握しておるのか、まずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/52
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053・黒木武弘
○黒木政府委員 我が国の高齢化の今後の状況でございますけれども、御案内のように、世界に例を見ないスピードで、二、三倍のスピードで高齢化が進行いたしておりまして、ちょうど昭和七十五年、二十一世紀になりますと一六・三%ということで、現在のヨーロッパ並みの高齢化社会に入ってまいる。そして八十五年になりますと、これが二〇%台に突入いたしまして、昭和九十五年に二三・六%というピークを迎えるという推計を人口問題研究所は出しておるわけであります。
その際の国際比較についてのお尋ねでございます。同様に人口問題研究所は「日本の将来推計人口」という資料に国際比較を掲げております。それに沿って申し上げますと、昭和八十五年、二〇一〇年でございますけれども、この状況で国際的にはドイツが最も高齢化が進んでいるということでちょうど二〇・〇%、次いでスイスが一九・六%、スウェーデンが一八・七%というふうに出ておるわけでございます。このとき、先ほど申し上げましたように、日本もちょうど二〇・〇%になっておるわけでございますから、お尋ねの点につきましては、ちょうど昭和八十五年に最も高い西ドイツと並ぶ高齢化になるということで、この時点から世界のトップクラス入りになってまいるのだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/53
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054・大橋敏雄
○大橋委員 今の説明のとおり、我が国はもう確実に世界一の老人大国になるわけでございますが、長生きするということは非常に喜ばしいことだと私は思うわけですけれども、長生きしてももう死んだ方がいいというような暗い気持ちになるような社会というものは困る。やはり生きがいある明るい社会にしていくかしていかないかは、まさに政治あるいは行政を担当する者の責任ではないかと思うわけであります。
私は老人福祉対策の骨格というものは三つに分かれるんではないかと思います。その一つは、老後の所得保障の問題、二つ目は、老後の健康維持の問題、三つ目は、老人ホーム等の入所施設等の問題ではないかと思うのであります。そこで、老後の所得保障については、公的年金制度等の改善に期待しているわけでございますし、また老後の健康維持は、医療サービスの充実、老人保健制度の改善に当面期待しているところでございます。
この際、お伺いをするわけでございますが、常に老人医療費が問題にされているわけでございますが、国民医療費に占める老人医療費、またその割合は現在どうなっているのか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/54
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055・岸本正裕
○岸本政府委員 六十一年度の実績でお答えをさせていただきます。
六十一年度では老人医療費は四兆四千三百七十七億円でございます。国民医療費全体に占める老人医療費の割合は二六%ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/55
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056・大橋敏雄
○大橋委員 老人医療費は、一人当たり平均で見た場合は、外来、入院はどの程度の割合を占めていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/56
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057・岸本正裕
○岸本政府委員 ちょっと今六十一年度の実績の資料がございませんので、恐縮でございますが、六十年度の実績でお答えさせていただきます。
一人当たりでございますと、老人の入院の一人当たり診療費は二十七万六千百円でございます。それで外来、入院外でございますと十八万九千二百円ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/57
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058・大橋敏雄
○大橋委員 私が調べた内容では、外来平均で三・一倍、入院では四・二倍だというふうに理解しておるわけでございます。このように老人医療費の増大というものは、寝たきり老人等の長期入院が非常に大きく影響していると私は思うわけでございます。ようやく中間施設と言われております老人保健施設が具体化してきているところですが、まだまだ期待にこたえ得る状況にはない。しかし、いずれにせよ、年金制度、健康保険制度問題は、政治の表舞台に出されまして、改善、改革への努力が図られてきているわけでございますが、問題は、三つ目の老人ホーム等の入所施設整備、これが政治の陰に隠れて著しく立ちおくれているのが実態ではないかと思うのです。
そこで、全国の寝たきり老人の総数はどの程度になっているのか、そのうち特別養護老人ホームの数あるいは入所者数はどうなっているのか、またその他病院等に入院している寝たきり老人等はどうなっているのか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/58
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059・岸本正裕
○岸本政府委員 寝たきりなどによりまして介護を要する老人の数につきましては、昭和六十一年度で六十万人程度と推定いたしております。このうち特別養護老人ホームに入所している方が約十二万人でございます。それから病院等に長期入院している方が約二十五万人でございます。したがいまして、在宅でいらっしゃる方が二十三万人程度ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/59
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060・大橋敏雄
○大橋委員 今数字をお聞きしたわけでございますが、寝たきり老人の総数は大体六十万人程度だ、そのうち特養等に入っているのはわずか十二万人、病院の方は二十五万人だ。とにかくこうした特別養護老人ホーム等に入りたいと思う人が山ほどいるわけでございまして、その需給関係からいくとお粗末の一語に尽きると私は思うのでございます。とは申しましても、大幅に急増してきております高齢化、すなわち寝たきり老人あるいは痴呆老人等の実態から見ますと、このような特養ホームや老人保健施設の建設を幾ら急いでみてもおのずと限界があると私は思うのでございます。
そこで、関心が高まってきているのが在宅福祉の充実強化の重要性であろうかと思うのでございます。また老人の大半の方々が住みなれた家庭での介護を希望している。これは調査結果を見るまでもないわけでごいますが、現実問題としまして、寝たきり老人あるいは痴呆性老人等を抱えている家庭介護というものは本当にもう筆舌に尽くせぬ苦労があるようでございます。その実態がテレビや映画等マスコミを通じまして報道され、私どもも深刻な状況をうかがい知ることができるわけでございますが、現状は施設入所者の恩典に比較しまして、在宅介護については極めて不利益な扱いにあると言っても過言ではなかろうかと思います。したがいまして、寝たきり老人等を抱える在宅介護に関する税制上の優遇措置の大幅改善が切望されるのも当然と思いますし、我々公明党はこの点を強く主張してきているところでございます。要するに、在宅介護の大変な苦労に対する支援政策、施策、体制を確立することが急務であるということでございます。
そこで、これらの観点に立てば、デイケア施設あるいはショートステイ施設等の整備を促進していくことだと思うわけでございますが、現在我が国の中にあるデイケア施設あるいはショートステイ施設はどのくらいになっているのか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/60
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061・小林功典
○小林(功)政府委員 在宅施策の中で、今お話しにありましたデイケアサービス事業につきましては、その実施箇所数は六十二年度で四百十カ所、六十三年度では六百三十カ所、つまり二百二十カ所の増を図っております。それからショートステイ事業の対象人数でございますが、六十二年度で四万六百四人、六十三年度で四万九千七百九十五人、九千百九十一人の増となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/61
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062・大橋敏雄
○大橋委員 家庭介護の寝たきり老人あるいは痴呆性老人等のことを思えば、こういうデイケア施設、ショートステイ施設は極めて少ない。何とかこれを早く整備しなければならないということを実感するわけでございますが、今回の改正法案では、民間活力の導入によりまして、有料老人ホームや在宅介護等のシルバーサービス等民間福祉事業に対して低利融資制度を創設するというものでございますので、私はこれには大いに賛成です。だが、民間活力導入に事寄せまして、国の本来の責任を放棄していくようでは大問題である。
実は、イギリスはサッチャー政権になりまして、福祉への公的支出を抑え込んでいく政策を基本的にとっているようでございます。つまり福祉というものは、民間活力主体であるということのようでございますけれども、それが現在老人ホーム等に顕著にあらわれてきているようでございます。イギリスでは今その民間活力主導政策の功罪が各所で論議されているところでありますが、それがイギリスの雑誌の論文に問題点が詳しく紹介されております。
その一例を申し上げますと、例えば民間有料老人ホームでございますが、一口に言えば、確かに施設はどんどんふえていった。ところが非常に料金が高い、サービスが悪い、冷たい、質、内容が非常に落ちている、また施設が偏在しているという問題等々が出ているわけです。その民間老人ホームの定員数がコーンウォール地域では五年間で四百人から千三百人、つまり三倍以上にふえている。また施設も、デイボーン地域では六年間で百八十一施設から四百施設へと二倍以上にふえている。サフォーク地域では公的老人ホームの定員が五年間でわずか六%の増しかないのに、民間私立老人ホームの定員は五〇%。六%と五〇%という格段の差でございますけれども、物すごい勢いで増設されていったのであります。問題は、有料の民間老人ホームは、施設の利用料金が高過ぎる、一般老人は手が届かないということでございます。例えば公立の方は、日本円に直すと月に約四万七千円程度なんですけれども、民間の施設は月に約十四万。三倍とまでいきませんけれども非常に高い。高い料金の割にはサービス面が逆に粗雑であるということが指摘されているわけです。例えばケアのあり方、あるいはまた職員の負担増、経費増につながっていくような、例えば病気がちな老人だとか手のかかる面倒な老人等は入居時から敬遠されて入りたくても入れない、あるいは入居後も他へ転出させられていくという傾向が強いということが言われているのです。また営利主義に走るということで、施設が地域に偏在して過剰供給となっているわけでございます。先ほど申しましたように、民間活力を導入することは私は賛成でございますが、こういうふうに営利に走ることばかりに力を注がれて、肝心の老人福祉の精神が後退していくようでは問題だと思うのでございますが、この点について特に大臣はどのようにお感じになるか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/62
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063・藤本孝雄
○藤本国務大臣 大橋先生の御心配、今御指摘になられましたことにつきましては、今回の法改正にとりまして最も重要なポイントだと思います。私どもはこれから在宅福祉サービスを充実させていく、そういう方向の中で公的な福祉施策というものはさらに充実をさせてまいります。ただ、価値観が非常に多様化する中で、公的サービスを上回る、例えば入浴サービスにつきましても、私も現場を見たわけでございますが、その地区では二カ月に一回でありました。これに対して、その家族の方はせめて一カ月に一回ということができないか、こういうお話もお聞きしたわけでございまして、そういう場合に、公的なサービスの充実を図りながら、一回よりは二回、二回よりは三回、そういうサービスを受けたい、こういう方に対して、こういうニードに対して民間の福祉サービスが対応していくということは結構なことではないかというふうに考えておるわけでございまして、決して公的な福祉サービスを減らして、その減らした部分を民間の福祉サービスで肩がわりをさせていくという考え方では毛頭ないわけでございまして、さらに上回る部分について補完をしていく、こういう考え方であります。
それから、もう一つ大事な点は、せっかく社会保障というものが、スタートは救貧ということであったのが国民全体をカバーする立派な制度になっているわけでございまして、今後公的サービスと民間サービスがお互いに補完し合って福祉の向上を図っていくわけでありますけれども、その場合に、お金のない人は公的サービスを受けろ、お金のある人は民間サービスを受けなさい、こういう誤った方向に走りますと、せっかく国民全体をカバーしてきた社会保障というものがまた逆戻りして救貧という役割になってしまう。これも極めて大事な問題でございまして、そういうことにならないように十分に配慮してまいる、これが二つの大きな柱であろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/63
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064・大橋敏雄
○大橋委員 今の大臣の御答弁を聞いていまして非常に安心したのですけれども、今の大臣のお気持ちがそのまま行政に反映されるように一層の努力を期待したいと思います。
それから、在宅介護の支援ということでございますけれども、ここで極めて重要視されるのが、今も申しましたデイケア施設、これは一日のうちに一定の時間寝たきり老人等を通所施設に受け入れて、入浴だとか食事等の日常生活の援助あるいはリハビリ、生活訓練を行うところでございますね。またショートステイ施設というのは、介護を行っている家族の人の病気や急用等さまざまな理由によって家庭における介護機能が低下するような場合に、短期間寝たきり老人等を受け入れて必要な介護を行うというところでございまして、この事業の内容から見ますと、その施設は利用しやすい場所に設置されなければならないな、これが何より重要な要件だなと私は思うのでございます。すなわち、その地域の中心的な場所にということになりますと、そのような便利な場所というものは、大体土地代、地価が非常に高い。のみならず、その場所を確保するのにはいろいろと難しい問題が出てきまして、極めて困難だと考えられるわけでございます。
そこで、私が一つ思い当たることがあるわけでございますが、現在都市部の小中学校の児童生徒が非常に減少してきたということで、教室ががらがらあいているわけですね、文部省ではこれを余裕教室といっているようでございますが。そこで、文部省はこの余裕教室の地域社会への開放指針というものを既に公表いたしております。それを私見てみましたら、文部省ですからやむを得ぬと思いますけれども、文化、スポーツ等文部行政に関する分野に限定しているわけです。あくまでも文部行政に関する分野というところになっているわけですが、私が目をつけたというのは、この余裕教室、空き教室を老人福祉施設にも改修、活用できるように働きかけたらどうでしょうか、こういうことなんです。小中学校の所在地というものは、言うまでもなく地域に密着した最適地だと私は思うのであります。しかも、給食設備も活用できますし、老人と子供の接近の機会が多くなる。言うならば一挙三得の利益が考えられるのではないか、こう思うわけです。
例えば、東京二十三区の実情を見てまいりますと、小中学校は既にもう十年以上前から空き教室ががらがらしておりまして、幼稚園とか保育園に転用されているところがたくさんあります。ところがその幼稚園あるいは保育園の園児そのものがまた減ってきておるわけですね。これも必要でなくなってきているところがたくさんあるわけです。こういうことで、文部省では社会にそれを活用してくださいという指針を出しているわけでございますので、老人福祉施設にもそれを改修して活用できるようなことに努力してはどうかということなんでございますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/64
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065・小林功典
○小林(功)政府委員 大橋先生おっしゃいますように、特に在宅福祉サービス、これは住民が利用しやすい身近な場所に置くのが好ましいわけでございまして、そういう意味では大変御示唆に富む御意見だと思います。特に大都市については、これもお話にありましたように、土地が非常に高騰しているというようなことで、土地の確保が非常に難しいというネックもあるわけでございまして、そういう意味では一つの御提案だと思います。
ただ、小中学校の余裕教室そのものを在宅福祉サービスにいわば転用するということにつきましては、例えばその建物をそのまま使うわけにもいきませんので、施設の構造をどうするか。子供さんの場合とお年寄りの場合は違うわけでありまして、例えばお年寄りでいえばスロープとか手すりとか浴室といったものも必要になる。これは具体的な例でありますが、そういったことで、設備の面をどういうふうに補完、カバーするかという問題でありますとか、あるいは人員配置をどうするかといった問題、それから老人の処遇をどうやって確保するかとかいろいろクリアしなければいかぬ問題が幾つかあるわけでございます。ですから、そういう検討課題を考えまして、今の御提案を貴重な御示唆と受けとめまして、例えば高齢者の生きがい対策への活用といった、そういったものも含めまして、何かいい知恵はないかどうか幅広く研究させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/65
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066・大橋敏雄
○大橋委員 これは所管外の施設を利用する話ですから、そう簡単にいく問題ではないと思いますけれども、将来の我が国の高齢化社会、その実態から考えてまいりますと、先ほど申しましたデイケアとかショートステイ施設等非常に少ないので、何とかこれをクリアしていかなければならぬ。たまたまそういう地域にこういう余裕教室、空き教室がたくさん出てきたという、これはもうもってこいではないか。直ちにということは無理でしょうけれども、やはり老人の生きがいの教育の場所にそれを使わせてもらうなどということは、私は直ちにできる問題ではないかと思いますので、最後に大臣のお気持ちを聞いて質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/66
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067・藤本孝雄
○藤本国務大臣 社会局長から御答弁申し上げましたように、検討すべき問題はいろいろあろうかと思います。しかし、ただいま承っておりまして、私も非常に貴重な御提案だと思いますので、どういうふうに幅広くその施設を活用することができるかということにつきまして、十分に検討を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/67
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068・大橋敏雄
○大橋委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/68
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069・野呂昭彦
○野呂委員長代理 田中慶秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/69
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070・田中慶秋
○田中(慶)委員 社会福祉・医療事業団法の改正について質問をさせていただきたいと思います。
もう既に我が国は長寿社会を迎えようとしているわけでありますが、そこの中で一番問題になってきているのは寝たきり老人や痴呆症老人などの介護の問題であったわけであります。これらについて、高齢者に対する商品やサービスを供給する事業は、従来行政、社会福祉法人によって多く運営されてきたわけでありますけれども、民間活力の導入の動きの中で、民間企業の参入ということが盛んに言われてまいりました。今回の改正案は、こうした動きに合わせて行うものだと思われますけれども、このようなさまざまなシルバーサービスが登場したことについて、厚生省はどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/70
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071・藤本孝雄
○藤本国務大臣 これはやはり高齢化の進展であるとか価値観の多様化であるとかまたニーズの多様化、そういう変化が背景にありましてシルバーサービスというものが登場してきたと思います。私どもは今後公的サービスの充実を中心に進めていくわけでございますけれども、その公的サービスを補完する、また上回るニーズに対してこたえるという意味でのこの民間サービス、これが健全に育成される、発展していくということは、これはそれなりにいいことではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/71
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072・田中慶秋
○田中(慶)委員 そこで、従来の一つの考え方として、行政の福祉サービスに対する質的な問題もいろいろと指摘をされてまいりました。民間サービスが普及しつつある中で、こうしたことが一つの要因となって考えられることは、行政自身も問題解決のために努力をしなければいけないであろう、こんなふうに思います。例えばサービスの水準が低いとかあるいはまた運用が官僚化しているとかサービスが硬直化しているとかさらには手続が複雑であるとかといった公的サービスへの批判に対して厚生省はどのようにお考えになっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/72
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073・小林功典
○小林(功)政府委員 公的福祉サービスは言うまでもなく税で賄われるものでございますから、一定の手続のもとでサービスの内容につきましても全国民に公平に行われる、こういうことが必要でございますから、おのずから一定の制約があることは、これは御理解いただけるかと思います。
ただ、一方において、その手続が今おっしゃったように、非常に煩雑でありますとか、水準が低いとか応対が悪いとか、そういったことがあってはいけないことは当然でございまして、そういう国民の便宜に沿うような、そしてサービス水準が向上するような方向で今後とも努力をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/73
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074・田中慶秋
○田中(慶)委員 こういう問題については、私は一定の基準とかそういうことは当然やらなければいけないと思いますけれども、問題はやはりここに従事される人たちに対する教育訓練というのを怠っているような気がいたします。やはりある一定の人またお年寄り、そういう形の中で全体的な教育訓練の場が必要じゃないかな、こういうことがよく言われるのですけれども、この点についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/74
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075・小林功典
○小林(功)政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
そこで、特に福祉サービスに従事する職員の資質の向上ということは大変重要な問題だと考えまして、現に、現任訓練でありますとかいろいろな講習会というようなことで資質の向上を図っておりますし、また昨年ここでもお願いいたしました社会福祉に関する専門家を養成するための社会福祉士と介護福祉士の法律、これもお通しをいただきまして、来年度から新しいそういういわゆるプロの職員が出るわけでございますが、そういったことで、いろいろ内容、ケースワークあるいは接遇技術といった面での訓練をこれからも大いに充実していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/75
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076・田中慶秋
○田中(慶)委員 ぜひ今後とも努力をしていただきたいと思います。
そこで、公的福祉はすなわちナショナルミニマムの観点から内容の充実をさらに図っていかなければならないと思うわけであります。その努力は引き続き厚生省としても行っていただいていると思いますし、また行わなければいけないと思います。
今いろいろと登場してきておりますシルバーサービスが公的福祉の肩がわりということではなくして、高齢者の多様なニーズに対応するために、いわば公的福祉の補完的な役割であるということは私も認識しておりますし、先ほども述べられているとおりでありますけれども、このように解釈してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/76
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077・藤本孝雄
○藤本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、高齢化社会が本格化する中で、お年寄りに対するサービス、公的な福祉政策というものは、在宅も含めまして充実していかなければならぬわけでございます。そういう将来の方向の中で、民間サービスが公的サービスのかわりに行うということではなくて、補完していく。さらに公的サービスを上回るサービスを選択される方々については、それにこたえていく、こういうことでございますので、その点につきましては、公的サービスが後退しないということでございますし、またそういうことがあってはならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/77
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078・田中慶秋
○田中(慶)委員 ぜひその精神をこれからも貫いてほしい、こんなふうに思います。
そこで、この高齢化対策を進めるに当たっては、政府や公共事業体だけを福祉の供給者とするのではなくして、公的分野あるいは市場に任せる分野、家庭や地域社会あるいは労働組合、企業、ボランティア等の協力にゆだねる分野等々の役割を明確にしていく必要があろうと思います。
このような形の中で、機能的に結合させて、人間の触れ合いを重視していく社会をつくる必要があると思いますけれども、それぞれこの役割分担を明確にしながら、そして整合性を持たせていく必要があろうと思いますけれども、厚生省の見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/78
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079・藤本孝雄
○藤本国務大臣 まさにそういう考え方が大事であろうかと思います。公的サービスが、民間サービスが育成され、また参入してくる中で後退をするのではないかというような誤解を防ぐ意味でも、役割分担をはっきりして、それぞれ対応していくという考え方が極めて大事であろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/79
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080・田中慶秋
○田中(慶)委員 やはりお互いに役割分担を大切にすることが地域に根差した福祉という形になるわけでありますから、これからもぜひそのことを配慮してやっていただきたいと思います。
そこで、例えば民間のシルバーサービスも公的分野との連携なくして正しく発展することはできないと思います。例えば入浴サービスを実施する会社があったとしても、一回につき一万円以上にもなるために、家庭から直接受注するのはなかなか難しく、また採算もとりにくいというので、自治体からの委託の形態をとらざるを得ないのが実態であります。そこで国と地方公共団体が連携をとり、民間のこれらの業者に対する指導、育成等々が必要だと思いますけれども、これらに対してどのように行われているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/80
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081・小林功典
○小林(功)政府委員 シルバーサービスを健全に育成しなければならないということで、国と地方が連携をいたしまして、民間事業に対して一定のガイドラインをお示ししながら、それをもとにしまして行政指導を行ってまいりたいと考えています、それと同時に、民間事業者の集まりであるシルバーサービス振興会という社団法人がございますが、ここで倫理綱領の策定等を初めとするいわば自主的な取り組みをお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/81
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082・田中慶秋
○田中(慶)委員 シルバーサービス振興会というものが設立されているわけですから、そういう点ではぜひお互いに連携をとってやっていただきたい。強く要望しておきたいと思います。
そこで、実は行政が民間事業者に協力し、シルバーサービスを健全に育成しながら高齢者に適切なサービスを提供していくようにすることが大切であることは言うまでもありません。しかし、その際問題になるのは、行政が過度の規制を行うことがある、それがかえって逆効果になって民間の活力を失わせるような状態も幾つか指摘をされているわけでありますが、この辺に対する配慮も必要ではないかと思いますけれども、どのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/82
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083・小林功典
○小林(功)政府委員 実は、昨年十二月に福祉関係の三つの審議会の合同企画分科会におきまして、このシルバーサービス問題を議論していただきまして、その意見具申の中に、まず第一に、「市場機構のもとで対価を得て行う事業については、購買者としての高齢者の選択が可能であり、」第二に、「これらの事業のうち高齢者を入居させ、生活の大部分をその場で営ませる施設を経営する事業については、設置についての届出義務を課す等の法的関与が既に行われているということから、現時点においては、これ以上の法的規制を行う必要はない」ということがあるわけであります。我々はこれは非常に妥当な意見具申だと思います。そこで、我々といたしましては、民間事業者の創造性あるいは効率性を損なうことのないように十分配慮しながら、国、地方の行政による適切な指導あるいは自主規制ということでやってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/83
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084・田中慶秋
○田中(慶)委員 民間企業もあるいは事業者もそれぞれ福祉に対する情熱というのは同じであろうと思うのです。そういう点では、ぜひそれぞれの立場を尊重しながら、規制規制というようなことのないようにして、お互いに共存共栄をするように努力をしていただきたい、このように要望しておきたいと思っております。
そこで、シルバーサービスは今後もいろいろな形で普及していくと思います。その際、高齢者側にしてみれば、受動的な面ということも、ともすれば情報不足ということになりがちな面が出てくるわけであります。また利用者側からしてみれば、シルバーサービスに対してさまざまな苦情や不安も発生することが当然考えられるわけであります。現在国の補助で都道府県に対しシルバー一一〇番を設置しているわけでありますけれども、この状況と今後の対応についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/84
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085・小林功典
○小林(功)政府委員 御指摘のありましたような住民のニーズが非常に高いということを我々考えまして、実は今お話のありましたように、六十二年度から俗にシルバー一一〇番と呼ばれています高齢者総合相談センターの設置に踏み切ったわけでございます。六十二年度に十五カ所設置いたしまして、今年度、六十三年度も十五カ所、それで六十四年度には残りの県を全部設置して、要するに全県一カ所のセンターができるということで整備を進めてまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/85
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086・田中慶秋
○田中(慶)委員 このシルバー一一〇番というのは、お年寄りにとってみればそれぞれ支えになるわけでありますから、ぜひ設置したということだけではなくして、またフォローしながら問題の点が出てきたら、その解決にも努力をしていただきたい。要望しておきたいと思います。
実は、高齢化社会を迎えるに当たって、シルバーマーケットと言われるように、あらゆる領域で民間事業者が参入する機会をうかがうようになっているわけであります。良質の民間福祉サービスに公的な支援を行っていくといっても、このような対象は今回の法案では政令事項となっているわけであります。その場合、多様化するサービスの中でどのようなサービスを公的に支援していくのか、良質の民間福祉サービスだけではわかりにくいわけであります。そこで、どのようなものを公的に支援をするあるいはサポートするというようにお考えになっているのか、明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/86
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087・小林功典
○小林(功)政府委員 シルバーサービス全般についてこれから健全に育成していくわけでございますが、今回お願いしております融資の対象といたしましては、現在考えていますのは、有料老人ホーム、在宅介護サービス、それから入浴サービス、これを頭に置いているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/87
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088・田中慶秋
○田中(慶)委員 お年寄りがいろいろな形で生きがいとかさらにはまた楽しみにしているのが今言われた問題のほかに、やはり食事というものが、そういう点ではお年寄りも我々も食べることに対しては非常に楽しみであり、これからの対象項目として、やはり給食の事業等々についても、高齢者に専門部門として普及していくべきではないか。こういう場合においても、私は今回の対象の中に入れてもいいのではないかな、こんなふうに思いますけれども、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/88
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089・小林功典
○小林(功)政府委員 何を融資対象にするかという判断でございますけれども、確かに将来の課題としては、先生おっしゃったような在宅老人向けの給食サービス事業があると思いますが、まあ実態を踏まえながらそれは採択をしていくということでございますので、当面はさっき申し上げた三つでスタートをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/89
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090・田中慶秋
○田中(慶)委員 給食サービスというのは、高齢化社会あるいはまた高齢者の人たちにとっては非常に大切なことで、地域で私たちの仲間もボランティアで給食サービスをしたりいろいろなことをしているのです。そういう点ではやはり専門的にならぬと、余り量がたくさんあってもいけないわけでありますし、そういう点では、メニューの問題とかいろいろなことを考えてみますと大変重要なことでありますし、また受ける側にしてみても非常にこれを楽しみにしているわけですね。そういう点では、せっかく今回の制度ができているわけですから、将来考えるということではなくして、こういう項目もぜひ検討していただきたいし、この対象の中に入れるべきではないか、私はこんなふうに思いますけれども、大臣、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/90
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091・藤本孝雄
○藤本国務大臣 去年の暮れ私が施設を視察に行きましたときに、給食事業に非常に力を入れてやっておりました。いろいろお話を承りまして、今田中先生が言われたようなことを感じておりますので、ぜひ検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/91
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092・田中慶秋
○田中(慶)委員 ぜひお願いしたいと思います。やはりこれからの老後というものは、一番大切なことは仲間づくりであるとか健康づくりであろうと思います。そこで健康づくりの面で公的な施策の充実と施設の充実ということが必要であろうし、さらにはまた民間サービスの育成ということも必要であろうと思います。私は、老人医療の抜本的な解決というのは、やはり健康医療的な形、スポーツ医療的な形を一番大切にしなければいけないであろう、こんなふうに考えているわけであります。そういう点では、この民間サービスの育成というものが今回大変重要視されているわけでありまして、そういう点での健康づくりの面からもあらゆるメニューを検討する必要があるであろう。その一つには、私はずっとスポーツをやってきたものですから、スポーツ等についても、今のスポーツは極端なことを言えばお金がかかり過ぎるわけであります。具体的にお年寄りの人たちが何かスポーツをしようとしても金が余りにもかかり過ぎる。そういう点では公的施設とかあるいは公的な施策として健康づくりの面をもっともっと考えていかなければいけないし、それを肩がわりする民間についても育成する必要があろうと私は思いますけれども、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/92
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093・北川正恭
○北川政府委員 これからの高齢化社会に向かって健康づくりというものは非常に重要な意義があるということで、厚生省といたしましても、昭和五十三年度から自分の健康は自分で守るという基本的な考え方のもとに、適切な栄養、それから運動、休養、このバランスのとれた健康づくりを展開しておるところでございます。
今委員御指摘のように、そういうものを公的な体制だけではなくて、もっと民間の機能も活用して、広くこの運動を展開したい、こういうことで昭和六十三年度からはアクティブ80ヘルスプランということで、第一は運動指導員の養成、それから民間の健康増進施設に対し、社会福祉・医療事業団の融資等を活用することによって民間の健康増進の機能を育成することを進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/93
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094・田中慶秋
○田中(慶)委員 ぜひ努力をしていただきたいと思います。今高齢化の問題を考える上で一番重要なことは、例えば寝たきりなど同じような状態にあるものへのサービスでも利用者の負担が大きく異なっているわけであります。予算委員会に私ども民社党の要求にこたえて厚生省の提出していただいた資料によれば、一月当たりの国庫負担額、病院の場合は十六万五千円であり、特別養護老人ホームの場合八万五千五百円、在宅では六千八百円と大きな差があるわけであります。制度の仕組みが違うと言ってしまえばそれだけの問題でありますけれども、お年寄りや国民の側から言えば、入院させた方が得だ、こういう感覚にならないためにも、国民の負担のアンバランスを今後どのように検討されていくのか、お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/94
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095・小林功典
○小林(功)政府委員 先生も十分御承知のことでございますけれども、老人医療というものは、主として保険医療財源で賄われておる。老人の一部負担は健康への自覚、適正な受診、世代間の負担の公平等々勘案して定められておるわけであります。一方、特別養護老人ホームの措置費は公費で賄われておりまして、その費用徴収は所得に応じて行われる、そしてさらに在宅サービスにつきましては、それぞれの制度に応じた必要な費用徴収が行われているところでございます。このように制度の沿革、財源、サービスの内容等が非常に異なりますので、なかなか簡単な話ではございませんけれども、今後医療及び福祉の制度体系の見直しも踏まえながら費用負担の整合性についても検討してまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/95
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096・田中慶秋
○田中(慶)委員 大臣、これから長寿社会というものが出てまいりますし、こういう負担のアンバランスというものは、やはりこれからの制度、政策の中で見直しをしていく必要があろうと思いますので、ぜひ今後とも検討をしておいていただきたいと思います。
そこで、これは最後になるわけでありますけれども、実は私どもかねてから一つの対策として、寝たきり老人介護減税とかあるいはまた介護休暇制度の創設を提唱しているわけであります。これは大蔵、労働の所管でありますけれども、長寿社会をこれから頭に描きながら、そして当然こういう問題については、これからの後継者の人たちやあるいはまた多くの人たちが大変不安を感ずるこれからの大きな課題だと私は思います。そこで、厚生大臣として、これをバックアップしながら、この制度が実現できるような形で努力をしていただけないかどうか、お伺いをしたいと思います。
〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/96
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097・藤本孝雄
○藤本国務大臣 基本的には関係省庁で検討すべき問題でございますけれども、寝たきり老人介護問題は極めて重要な問題でございますので、インセンティブをつくるという意味から、このような御提言の問題につきましては、極めて重要な問題だと思いますので、私も十分に努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/97
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098・田中慶秋
○田中(慶)委員 時間の関係でこれで終わりますけれども、長寿社会あるいは福祉、こういう関係の点から考えてみますと、やはり大臣が一番相手を説得しやすいわけだし、所管として確かに財源的にいえば大蔵であります、休暇制度になれば労働省でありますけれども、言い出しっぺといいますか、やはりそういうことがぜひ将来とも必要なんだということを提唱するには、大臣が一番相手に対して説得しやすい立場にあろうと私は思いますので、ぜひ今後とも努力をしていただきたいということを要望申し上げ、時間が参りましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/98
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099・稲垣実男
○稲垣委員長 田中美智子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/99
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100・田中美智子
○田中(美)委員 厚生省から「養護老人ホーム、特別養護老人ホームの推移」というのをいただきました。この数字で見ますと、特別養護老人ホームは少しずつ箇所もふえておりますし、定員もふえております。しかし養護老人ホームはずっと足踏み状態で、六十年度には二カ所減っておりますし、その後ふえていない。それから定員数も減ってきています。五十一年度と比べまして定員数も減ってきていますが、これはどのように考えて、こういう結果になったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/100
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101・小林功典
○小林(功)政府委員 養護老人ホームにつきましては、実は十年ぐらい前から大体横ばいの感じで推移しているわけでございますが、それは当時、最近でも余り変わっておりませんけれども、養護老人ホームにつきましては、定員割れがかなりあったということが一つございます。それから当時から、寝たきり老人等の増加に対応するために、特別養護老人ホームを急遽整備しなければならない、そういう需要もございました。それからもう一つは、やや減っているというお話がございましたが、これは実は大部屋解消を養護老人ホームの場合にはやりたいということで、同じ施設の中で大部屋を個室にするといった方向の改善をしてきたものですから、そこら辺が相重なりましてこういう状況になったと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/101
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102・田中美智子
○田中(美)委員 定員割れがあるなどということは、特殊なところにはそういう現象が起きたかもわかりませんけれども、これは詭弁としか私には考えられません。例えば東京都だけを見ましても、厚生省に伺いましたら、どれぐらい待機しているか、どれぐらい入所したいという人がいるか数字がつかめないというふうなお答えでしたので、お聞きしても仕方がないと思うのですけれども、東京都の議会に聞きましたところが、養護老人ホームでは今申請を出した人が九百二十五人入れずに待っている。特養老人ホームに至っては三千百八十一人が申請して、待っているということです。一般の庶民の中には、とても老人ホームにはなかなか入れないのだ、ですから、とても長い期間待たなければならないといううわさが立っておりますので、行きたいけれども、まだ申請は出していないという人まで考えますと、相当の人がいるというふうに思うのですね。こういう状態に対して、定員割れがあるから、この十年間足踏みだなんということは、一般庶民からすれば、老人ホームはふえているんじゃないかとだれでもが思っているのです。ところが実際は二人部屋をつくるとか何かというふうないろいろな理屈をつけて定員数が減っているということは驚くべきことだと私は思います。こういうものを放置したまま今回の法案の改正によって民間に融資をするということは、民間に融資することがすべて悪だというふうには私は思いませんけれども、こうしたものを放置したまま展望もなく民間の方にいくということは、前からの先生方のお話がありましたように、公的なものの責任を放棄して、すべてを民間に託していくという方向に向いているのだというふうな感じを受けるのですが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/102
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103・小林功典
○小林(功)政府委員 御質問をお聞きしながら、ちょっと誤解されたのじゃないかと思いますので、改めて申し上げます。
つまり特別養護老人ホームは非常に需要が高くて、精力的に整備を進めてきたわけでございます。ちなみに、六十一年度は千七百三十一カ所、定員十二万七千余ということで、五十一年時点に比べますと二・八倍、人員でいきますと二・六倍ということになっておるわけでございます。さっき申しましたのは、十年くらい前の段階における養護老人ホームの実態をお話ししたわけでございまして、特養については随分急ピッチで整備が進んでおるし、またこれからも進めたいと考えております。
ちなみに、今そういう公的な部門を疎外しておいて民間に融資するとは何だという話でございますが、特別養護老人ホームの例で申しますと、我々はこの数年来毎年百二十カ所、定員で申しますと八千人程度の増床を図ってまいりました。このペースを落とすことなくこれからも続けていきたいというふうに考えておりまして、二十一世紀に入ります七十五年には全部で二十四万人、今の大体倍近くになりますが、その整備をしたいということでありますので、公的部門の充実はさらに拡充する、その上で多様化するニーズに対応するために、民間事業者に対しても、良質な民間事業者を育てるという意味で低利の融資をしたい、こういうことでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/103
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104・田中美智子
○田中(美)委員 ちょっと話が食い違っているのですけれども、特別養護老人ホームは確かにふえています。これはすべてではないかもしれませんけれども、せっぱ詰まった人たちなんですね。実際に老齢化しまして、老齢化が幾つとは言いませんけれども、六十五歳、七十歳になられても健康である、しかし毎日の買い物だとか食事、掃除、洗濯だとかいうものがだんだん面倒になってきている、こういう方たちは養護老人ホームに入りたい、これがやはり一番ぼけ老人にならない道だと思うのですけれども、この養護老人ホームがむしろ減っているということを私は申し上げたのであって、特養老人ホームのことを今言ったのではないわけです。
そういう意味で、この養護老人ホームは必要ないのかというふうに言いたいわけですが、時間がありませんので、少なくともこの数字では、このまま展望もなく、今後特養は進めていく、しかし養護老人ホームの方は減っていっているということは非常に問題だというふうに思います。
それで、次の質問に移りますが、三年前の八五年九月号に朝日生命が「経済月報」というものを出しております。これを一部分読んでみます。「西暦二〇〇〇年のシルバー市場」というレポートなんです。「六十才以上のシルバー人口は、八五年で千七百六十万人、二〇〇〇年で二千七百五十万人(総人口の二一・五%)と予測、これを消費市場でとらえれば二十三兆円から百四十六兆円に膨れる」と分析し、「シルバー世帯はなかなかの金持ち、人口の高齢化にともなうシルバーマーケットの拡大、規模が大きいだけにその魅力も絶大」、このように述べています。「今後、各企業がどのようにこの巨大マーケットに対応していくか、今後の展開には目が離せない」、このように書いているのですね。
これは明らかに大手の企業から、これからの金もうけの対象として、シルバー世帯は多少の小金も持っているし、年金も持っている、これをどう使おうかということ、これがすべて悪いとは申しませんけれども、このレポートに対する問い合わせは、大きな商社や大手建設会社、いろいろな会社、百数十社から朝日生命に問い合わせが殺到しているというわけですね。こういうのを見ますと、やはり養護老人ホームを、国はこの十年間というもの国民の要求がこれだけあるにもかかわらず、これを十分に進めてこなかった。十分どころかむしろ後退しているのではないか。そういう中で、結局民間の大企業が高齢者の衣食住だけでなくて、知遊健と言っていますが、知は知識を求めるということ、遊は遊びたいというレジャーの問題、健は健康ですね。衣食住、知遊健すべてをねらって、こういう状態の中で、公的福祉というものをきちんと前進させていく保障があるのかどうか非常に疑わしく思うのですが、この養護老人ホームについて、そういう観点からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/104
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105・小林功典
○小林(功)政府委員 まず、養護老人ホームの性格でございますが、先生十分御承知だと思いますけれども、心身の状況とか家庭の状況によって家庭にいられない、施設に入らなければならないという方でありまして、かつ低所得だということでございます。ですから、そういう意味でどれだけ需要があるかということになるわけでございますが、最近、聞くところによりますと、数はともかくとしまして、東京都は確かに養護老人ホームの入所希望があるように聞いております。ただ、全国的に見ますと、特養と違いまして養護の方は余り切実な御要望というのはないわけでございまして、低所得階層というふうに絞られているせいもあるのかもしれませんけれども、そういった意味で我々としては当面はこれでいいのではないかという感じを持っております。
ただ、これから先の老齢化の問題を考えます場合に、この養護老人ホーム問題あるいは軽費老人ホームもありますけれども、そこら辺の見直しといいますか、再検討をする時期に来たのではないかという問題意識は持っております。
実は先般、社会福祉審議会の老人福祉分科会というところでその検討に着手をしていただいたわけですが、そこでも先生のおっしゃるようなお話も含めまして検討が行われるものというふうに我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/105
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106・田中美智子
○田中(美)委員 これは今の養護老人ホームが個室でないということが大きな問題になっている。結局、行き場のない低所得者しか行かないというふうなうわさになっている。現実に見てくると、いいものではない、行きたいけれども、こんなものでは入りたくないということもあると思うのですね。ですから、その中身のことを考えないで、ただ希望者はそれほどないのだから、それほど要らないのだというお答えは、私としては納得できないわけです。
それで、次の質問に移りますが、今新聞紙上をにぎわしております東京老人ホームのことです。これは保谷市にあるわけですが、場所が武蔵野市との境にある。ここは非常に老朽化したので、これを理想的なものにつくり直そうということで計画しているうちに、こんな老人ホームができるならばたくさんの人が入りたいということで、ひそかに計画している段階で新聞に出てしまったということでいろいろな論議を呼んでいるわけですが、これが最も望まれていることは、やはり全室個室だということです。私は、アメリカ、ヨーロッパ、全部ではありませんが、相当老人ホームを見てきました。その中で個室でないというのは一つもなかったのですね。私が見たところは全部個室でした。これを見ましても、日本だけが個室でないということは、外国人の驚くところですが、せっかく保谷市とそれから武蔵野市が、足らない分は金を出すんだ、国と都から出してもらって足らない分は市が持とうという形でこういうことをやったものが、今暗礁に乗り上げているというのはオーバーですが、何か非常にけんけんがくがくとやられているというので、一日も早くこれが完成して、果たして国民からどのような評価を得られるか、一つのモデルケースではないかと思います。今ある養護老人ホームというものが、実際見に行っても入りたくないというものだから要求が少ないわけですから、これは一つのモデルケースとして、厚生省がこれこそ推薦してこういうことを一度やらせてみるという決意をして、東京都を指導し、また市の援助などをしていただきたいと思うのですが、大臣のお考え、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/106
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107・小林功典
○小林(功)政府委員 これも特別養護老人ホームと養護老人ホームの関係がちょっと錯綜しているように思いますが、実は養護老人ホームにつきましては、私どもは個室がいいということで、予算もそういうものを確保しているわけでございます。ただ、実際ある施設を改築する、改造するわけでありますから、進んではおりますけれども、例えば五十八年四月と六十二年四月を比べますと、約倍に個室化のシェアがふえているわけでありまして、だから進んではおりますけれども、まだ全部までに至っていない。しかし考え方としては、養護老人ホームについては個室が好ましいという方針でございます。
ただ、今保谷のお話でございますが、実はこれはまだ東京都から正式に聞いておりません。おりませんが、新聞などから見ますと、あれは特別養護老人ホームの個室化という面で一つの問題が提起されている、こういうように理解をしておりますので、養護の場合は個室化はもう既に方針が固まっていますので、そこら辺ひとつ区別を御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/107
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108・田中美智子
○田中(美)委員 それは今のこの養護老人ホームでも、政府としては五カ年計画で個室化の方向を向いていく、これは遅々たるものですけれども、そういう方針は立てていらっしゃるので、養護の方については私は心配しておりません。問題はやはり特養の方を心配しているわけですね。
これは朝日の「論壇」に特別養護老人ホームの園長さんである中川先生が、この方は老人問題の本を何冊か書いていられる方ですけれども、「北欧では個室で何の不安もなく運営できている。「雑居安全説」は、老人同士の相互監視に依存する施設側の弱点を暴露しているにすぎない。」というふうに言われているわけです。ですから、特養が個室であって悪いか悪くないかということは、やってみなければ今厚生省としてはよくわからないのじゃないですか。そういう点では一つのモデルケースとして、せっかくやろうとしていることに対して、そういう頭から特養は個室ではない方がいいのじゃないか、こういう言い方はよくないのじゃないか。ヨーロッパではやっているわけなんですからね。ですから、ひとつやらせてみたらいいじゃないか。そしてそこに問題があるならば、またその次の問題を考える。少なくともやはりこれはこの計画どおりに進めていくということが必要じゃないか。ここに対する要求は、全国から入りたいというほどの大きな反響を呼んでいるのですね。ですから、ぜひ厚生省がこれに少しでもけちをつけないように、私は特養のことを特に言っているわけです。けちをつけないでいただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/108
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109・藤本孝雄
○藤本国務大臣 この問題につきましては、東京都から正式な協議がございませんので、今の段階で具体的にお答えすることはできませんが、ただ問題点は二つあると私は思うわけでございます。
一つは、特別養護老人ホームで個室化がいいのかどうかという問題、これは確かに一つの問題点としてあるわけでございます。
それから同時にもう一つは、先ほど御指摘のように、特別養護老人ホームの不足が今問題だと御指摘があったわけでございまして、現に二万人も待機者が現実にある。そういう状況の中でこの特別養護老人ホームの整備につきましては、国の補助金、融資を伴っておるわけでございますから、国の立場からすれば、優先順位ということを考えますと、やはり待機者二万人もいるこの現状からすると、特別養護老人ホームの整備というものを急がなければならぬ。そういう中で、個室の特別養護老人ホームの問題については優先順位としては低いのではないか、こういう考え方になるということは、一般的に言えば妥当な考え方ではないかというふうに私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/109
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110・田中美智子
○田中(美)委員 結局緊急だからそんなことは後回しなんだ。老人の人権を尊重するということは後回しなんだ。こういう意見に私には聞こえましたけれども、非常にその意見は間違っていると私は思います。大臣もいずれはお年寄りになるわけですし、いずれはおしめをしなければならないような状態になるかもしれません。そのときの人間としての誇りというものが最後まできちっと守られる、プライバシーがきちっと守られるということが私は人間の文化だというふうに思います。今そういう人たちが非常に苦しい思いでたくさんいらっしゃることを考えましたときに、間に合わないから、金がないから、そういうものは優先順位としては先にはできないのだという考え方は、やはり人権思想が欠落しているのではないかというふうに私には考えられますが、もう時間がありませんので、次の質問に移ります。
民間に融資する対象が今度の法案では「政令で定める」というふうになっております。現在は社会福祉法人を社会福祉事業法二条によって決めておりますね。それを幅を広げて「政令で定める」ということになりますと、どこに貸してもいいのかということになりかねないと思うのですけれども、この点の歯どめはどうなっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/110
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111・小林功典
○小林(功)政府委員 今回の改正につきましては、既に提案理由の御説明のときにも申し上げましたとおり、人口の急速な高齢化、家庭における介護能力の低下、年金制度の成熟化等に伴ってシルバーサービスを健全に育成するという観点から行う、これは提案理由で申し上げたとおりでございます。したがいまして、融資対象につきましても、当然のことながら、この改正の趣旨に沿った範囲のものに定めるべきものと理解しておりまして、したがいまして、どこにでも貸せるというような性格のものではないと我々は理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/111
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112・田中美智子
○田中(美)委員 ベビーホテルのようなものまでも融資するということが結果的には可能になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/112
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113・小林功典
○小林(功)政府委員 提案理由で御説明した範囲からは逸脱すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/113
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114・田中美智子
○田中(美)委員 最後に、アメリカからの融資が入ってくる、こういう場合は、もちろんアメリカの資本が入ってきて悪いとは言いませんけれども、これはアメリカ的なものになるという心配をするのですが、その点はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/114
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115・小林功典
○小林(功)政府委員 今回の融資は、我が国において行われるシルバーサービスである限りにおいては、今お話がありましたように、外国の企業の出資があるかないかといった点に関係なく対象といたします。いたしますけれども、しかし同時に、今度の融資というものは、一定の融資基準に該当する質のいい優良な企業に絞るというようにしておりますので、いわば審査基準をはっきり決めまして融資対象を決めますので、悪質なといいますか、質の悪い企業に対しては融資は行われないというふうに御理解いただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/115
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116・田中美智子
○田中(美)委員 悪質であるか悪質でないかというのは、極端な場合には、これはだれの目にもわかりますけれども、やはりそこの人間の尊厳をきちっと守っていくという観点からしますと、大臣と私とでは考え方が、悪質か悪質でないかというとちょっと変わってくるように思うのですね。
私は三カ月アメリカの老人ホームや老人シティーをずっと見て回りました。そこで見ましたアメリカのナーシングホームというのは、まるでスーパーのようで、それこそ例えばウィスコンシンナーシングホームというような名前がついていても、これはその町の名前がついているのであって、名前は違いますけれども、一つの資本で一つの企業が全国に三百、五百というナーシングホームを持っているわけですね。ちょうどダイエーとかユニーなどが全国にあるようにずっとある。そして私の見たところはもうほとんどそうでしたけれども、一階、二階、三階と値段が全部違うのですね。そこで食べるものから部屋の大きさ、全部違うのですね。ワンフロアだけはいわゆる生活保護のようなのも一つある。ですから、ずっと一階一階見ていきますと、本当に地獄のさたまで金次第という感じで、本当に悲しい思いを私はしました。
アメリカの老人シティーは、それはもうつかの間の天国。元気な人たちは本当に毎日水泳をし、ゴルフをし、いろいろなことで楽しんでいられますが、一たび足腰が立たなくなりましたら、すぐそうしたナーシングホームにぱっと飛ばされてしまう。金のある者は上の階の非常に広い応接間もあるような部屋に入っていられますけれども、そうでない階の人たちというのは、本当に惨めな、私たちのような外国から来た見学者に泣きついて、自分の生まれたニューヨークに帰りたい、帰りたいと言って私に泣きついて、涙をぽろぽろ流す老人などのことが今私は忘れられないわけです。アメリカの資本が入ってきたらすべてそうなるとは言いませんけれども、民間に託す場合には、利潤追求が主になりますとそういうことになりかねません。そういうアメリカのナーシングホームは、アメリカ人の主義を非常に正直といいますか、はっきりと、ここのナーシングホームは利潤を目的としたところでございますというふうにしてきっちりと見せてくれる、正直に見せてくれるのですね。
それで、公的なものというのは、本当にこれはもう九八%が黒人でした。これは七、八年前ですので、今少し変わっているかもしれませんけれども、それでも個室でしたね。そこには着物も何も着ないでおしめだけしたお年寄りがベッドの上に転がっているのですね。もちろん冷暖房がありますから、いいじゃないかと言う人があるかもわかりませんけれども、やはりそこには人間の尊厳というのはどうなっているんだ。ぼけてしまえば何もわからないか。そんなことは絶対にありません。
私事ではありますけれども、今私の九十一歳のしゅうとが病院を出たり入ったりしております。ほとんど行かれない息子の顔も忘れるというふうな形で老衰しておりますけれども、それでもおしめをかえるときには、私たち兄弟が周りにおりますと、一生懸命に着物を下に下げようとするのですね。私はそういうのを見ていまして本当にかわいそうだと思うのですね。ですから、例えば姉がおしめをかえているときには、私たち兄弟はその座をちょっとよけます。母から見えないところに行っているのですね。そこまでなってても人間には、自分でなってみなければわからないかもしれませんけれども、そこには最後まで人間の恥じらいもあれば尊厳もある。そういうものがきちっと守られるような、そういう老人ホームでなければならないと思います。
今の公的な養護老人ホームは、排せつの場合でも何の場合でも、これがすべて人の前にさらけ出されている。三年前に国際社会福祉学会が東京であったことは御存じだと思いますけれども、そのときに日本の老人ホームを見られた外国の人たちが大変に驚いたというのは、一定の時間になるとだあっとおしめをかえる、そのときには足を全部上げたままおしりがずらっと並ぶ、それを次々とはがしていく、次々とおしめをしていく。これを見て、日本は野蛮国だということが国際社会福祉学会で語られたということを大臣に私は申し上げまして、最後に大臣に、人間の尊厳について、これをしっかり守るような福祉行政、特に養護老人ホームについての御決意をいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/116
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117・藤本孝雄
○藤本国務大臣 人間の尊厳という問題は極めて根本的な問題でございまして、これは仰せのとおり十分に守るべきものであることは申し上げるまでもありません。
それから、特別養護老人ホーム並びに養護老人ホーム、さらには有料老人ホーム、これらの施設につきましては、今後の高齢化社会の進展に伴いまして、内容を十分に充実していかなければならない、そういう問題であろうかと思います。
また、アメリカの例を引かれたお話もございましたが、広い意味でのシルバーサービス、公的サービスの問題につきましては、これは今後の課題でございますけれども、我々としては民間サービスでもって公的サービスを代替していくという考え方は毛頭ございません。公的サービスは今後とも十分に充実させていく。そういう中で、さらにそれを上回る選択がある場合については、それは民間のサービスで対応するということは結構なことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/117
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118・田中美智子
○田中(美)委員 在宅ケアの問題に時間がなくて触れることができませんでしたけれども、民間に融資をすることによって公的なものを削るということはしないとおつしゃいました。これからどんどんニーズが高まっていくのに、それを抑えながらいく、今の不十分なものを十分にしない、そうして民間の方に融資をしていく。その民間の指導がどれだけできるのかというようなことを考えますと、共産党・革新共同はこの法案に賛成することはできないことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/118
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119・稲垣実男
○稲垣委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/119
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120・稲垣実男
○稲垣委員長 日本共産党・革新共同から討論の申し出がありますが、理事会において協議の結果、御遠慮願うことといたしましたので、さよう御了承願い、直ちに採決に入ります。
社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/120
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121・稲垣実男
○稲垣委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/121
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122・稲垣実男
○稲垣委員長 この際、本案に対し、野呂昭彦君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を求めます。永井孝信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/122
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123・永井孝信
○永井委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
一 高齢者に対する公的施策については、公的サービスの役割を明らかにする観点から、ホームヘルパーの派遣、ディ・サービス事業等、在宅福祉施策の拡充、特別養護老人ホームの計画的な整備等、今後とも一層の推進を図ること。
二 シルバーサービスについては、劣悪なサービスの提供により、国民不信を招くことのないよう、国・地方の密接な連携のもとに、高齢者の福祉を第一義として良質のサービスが提供されるよう民間事業者を指導すること。
三 国は良質なサービスの供給を保障するため、民間部門の指導基準となるべきガイドラインの策定について検討すること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/123
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124・稲垣実男
○稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
野呂昭彦君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/124
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125・稲垣実男
○稲垣委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤本厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/125
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126・藤本孝雄
○藤本国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/126
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127・稲垣実男
○稲垣委員長 お諮りいたします。
本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/127
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128・稲垣実男
○稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/128
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129・稲垣実男
○稲垣委員長 次回は、来る五月十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204410X01119880428/129
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