1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月一日(火曜日)
午前九時三十一分開議
出席委員
委員長 渡辺 秀央君
理事 甘利 明君 理事 尾身 幸次君
理事 奥田 幹生君 理事 田原 隆君
理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君
理事 二見 伸明君 理事 青山 丘君
麻生 太郎君 石渡 照久君
小川 元君 島村 宜伸君
玉生 孝久君 中川 秀直君
中山 太郎君 額賀福志郎君
福島 譲二君 牧野 隆守君
粟山 明君 森 清君
山崎 拓君 綿貫 民輔君
井上 泉君 小澤 克介君
緒方 克陽君 城地 豊司君
関山 信之君 水田 稔君
石田幸四郎君 権藤 恒夫君
森本 晃司君 薮仲 義彦君
米沢 隆君 工藤 晃君
藤原ひろ子君
出席国務大臣
通商産業大臣 田村 元君
国 務 大 臣
(経済企画庁長
官) 中尾 栄一君
出席政府委員
公正取引委員会
事務局審査部長 植木 邦之君
経済企画庁調整
局審議官 長瀬 要石君
経済企画庁物価
局長 冨金原俊二君
経済企画庁総合
計画局長 星野 進保君
経済企画庁総合
計画局審議官 宮本 邦男君
経済企画庁調査
局長 勝村 坦郎君
通商産業大臣官
房審議官 末木凰太郎君
通商産業大臣官
房会計課長 牧野 力君
通商産業省通商
政策局長 村岡 茂生君
通商産業省貿易
局長 畠山 襄君
通商産業省産業
政策局長 杉山 弘君
通商産業省基礎
産業局長 鈴木 直道君
通商産業省機械
情報産業局長 児玉 幸治君
資源エネルギー
庁長官 浜岡 平一君
資源エネルギー
庁石油部長 内藤 正久君
資源エネルギー
庁公益事業部長 植松 敏君
中小企業庁長官 岩崎 八男君
中小企業庁計画
部長 田辺 俊彦君
中小企業庁指導
部長 村田 憲寿君
中小企業庁小規
模企業部長 三上 義忠君
委員外の出席者
大蔵大臣官房審
議官 柏谷 光司君
大蔵省主計局主
計官 永田 俊一君
気象庁海洋気象
部海上気象課長 荒川 正一君
会計検査院事務
総局第五局上席
調査官 奥村 勇雄君
商工委員会調査
室長 倉田 雅広君
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本日の会議に付した案件
中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)
異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案(内閣提出第一四号)
通商産業の基本施策に関する件
経済の計画及び総合調整に関する件
私的独占の禁止及び公正取引に関する件
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/0
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001・渡辺秀央
○渡辺委員長 これより会議を開きます。
通商産業の基本施策に関する件、経済の計画及び総合調整に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥田幹生君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/1
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002・奥田幹生
○奥田(幹)委員 両大臣の所信について質問をさせてもらうわけでございますが、まず最初に田村通産大臣にお伺いいたします。
田村大臣は、新年早々アジア・太平洋貿易大臣会合に出席されました後、お母様の重病を気にされながらもやはり国益を最優先されまして、そうしてイギリス、西ドイツを相次いで御訪問をいただいたわけでこざいます。大臣の御心境を察しますときに、本当につらい思いもされたと思いますけれども、大臣の国益最優先されましての行動には、私どもは頭の下がる思いでございます。御苦労さまでございました。
二年半前のプラザ合意以後の我が日本の経済は、円高の影響で大変深刻な打撃を受けたわけでございますけれども、いろいろ政府の施策が功を奏しまして、とりわけ去年の下半期ごろからは順調な景気で、企業収益もほとんどの企業においてふえてまいっておると思うわけでございます。そこでまず、通産省が我が国の経済の現状をどのように認識され、今後の経済運営の取り組みについてどうお考えになっておるかということを承りたいわけであります。
大蔵省の通関統計で見ますと、これはざっとした数字でございますけれども、輸出は八六年は前年比で一・三%減った。これが去年、八七年は一・九%減になっております。反対に輸入の方は、八六年が一二・五%増でございましたのが、さらに八七年はそれに八・二%上積みされた、こういうような数字が出ておるわけでございます。また、経済成長でも八七年、去年は実質で三・七%、内訳は、外需の寄与度がマイナス一・三、内需の寄与度が五・〇でございました。これは、この八八年の予測を見ますと、トータルでは三・八%の成長になっておりますが、外需はマイナス一・〇、これを内需の寄与度四・七%で補おうとしておる。こういう点で非常にいい傾向になってきておりますし、とりわけ輸入では製品輸入の方がふえてきておる、こういうようなことになっておるわけでございます。
そういうように、内需中心の経済に変わってきつつあるということは非常に結構なことでございますけれども、この産業構造、これで十分ということは言えないと思うのです。したがって、これからの通産省の対応も含めて、構造調整の現況と将来展望、これについて最初にお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/2
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003・田村元
○田村国務大臣 ただいまの御質問は、プラザ合意以降の円高というものを中心にして、今後の経済運営に対する取り組み方あるいは現状の認識はどうかということと、構造調整の進捗状況あるいは今後の見通しということについての御質問だと思います。
さきおととしになりますか、昭和六十年秋のプラザ合意以降の急激そして大幅な円高の進行は、輸出の減少、企業収益の悪化、設備投資の低迷、失業率の上昇など、我が国経済に非常に深刻な影響を及ぼしましたけれども、最近の経済情勢を見ますと、物価の安定などを背景に個人消費が堅調であることや住宅投資が高水準で推移していることに加えまして、民間設備投資も着実に増加してまいりました。企業の業況判断も大幅に改善するなど、全体としては内需主導型によりまして着実な景気回復局面にあると考えられます。
しかしながら、この構造調整に伴うといいますか、経済の二面性というものが強くあらわれておりまして、輸出型中小企業とりわけ輸出型産地、企業城下町などの景況には依然としてはかばかしくないものがございます。また、中央と地方の経済格差が再び拡大してよくない姿になっておるというような問題が生じております。
政府といたしましては、今後とも金融財政政策の機動的かつ弾力的な実施などをやって、適切なマクロ経済運営をアメリカやその他の国々との政策協調のもとで行うことによりまして、内需中心の高目の経済成長を確保するとともに、経済政策としては、いわゆる産業政策面では産業構造転換の円滑化、創造的飛躍を目指した技術開発の推進、地域の活性化、内需型産業の活性化などを柱とする総合的な施策を展開してまいりたいと考えております。
それから構造調整の問題でございますけれども、対外不均衡を是正して国民生活の質の向上を図ることが我が国の喫緊の課題でございます。このためには、御指摘のとおり、我が国経済構造を従来の輸出依存型から内需型へと変革することが必要でございます。このような見地から、政府は昨年五月の緊急経済対策において、総額六兆円の財政措置を伴う内需拡大策を講じたところでございます。この対策の効果に円高の効果も加わりまして、我が国経済は内需が堅調に拡大し、他方、先ほど御指摘のあったように外需は、輸出減、輸入増が続く中でマイナスに転じてきております。全体として内需主導型の経済構造に着実に転換しつつございます。これを国民生活に即して申しますならば、消費がふえて住宅の新増築が進んで、道路や下水道などの社会資本の整備が急速に進展して、また安い輸入品がどんどん入ってくる、そういうことでございまして、国民生活の豊かさが増大しておるということが言えると思います。
通産省としましては、アメリカなど諸外国との先ほど申し上げたような政策協調のもとで、内需拡大策を継続すべく引き続き適切なマクロ経済運営に努めていかなきゃならぬと考えております。先ほど申し上げました産業構造転換の円滑化とか、あるいは創造的な飛躍を目指した技術開発の推進とか地域の活性化、内需型産業の活性化などを柱とする総合的な施策を展開してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/3
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004・奥田幹生
○奥田(幹)委員 今大臣からいろいろお話を伺いまして、マクロで見ました場合には非常にいい傾向にあるわけでございますけれども、少し突っ込んで経済界を眺めてみますると、問題は、全体的にはいいのでございますけれども、やはり輸出型産地を初めといたしまする中小企業を初め経済の一部陰の部分というのがなきにしもあらずの感じでございます。
この経済社会の基盤を支えておりまする中小企業でも、マクロ的にはいい数字が出ておるわけでございます。例えば商工中金の調査によりますと、景況判断指数がちょうど一年前、六十二年の二月は中小企業四七・五でございましたのが、昨年秋十一月には五七・一、十二月は五六・四でございましたけれども、こういうように数字が上がっておりますし、規模別生産指数の推移を見ましても、中小企業の製造部門で去年の十月は六・七、十一月は六・九、こういうようにいっときよりもよくなりつつあることは確かでございましょうけれども、しかしながら生産額の推移を見てみますると、六十一年を一〇〇といたしました場合に六十二年は九三・六というような数字になっておるわけでございますよね。それから解雇者の推移を見ましても、おととしは四千七百人、それが去年は六千人をちょっと超えた。休業、廃業も依然として続いておる、こういうような数字になっておるわけでございます。幾ら景気がよくなりましても、こういう中小企業の、特に輸出型産地のような非常に不遇な陰の部分を、決して経済政策の中で私どもは忘れてはいけないと思うわけなんです。まずこれにつきまして、とりわけ中小企業対策の陰の部分について大臣はどういうお考えをお持ちになっておるのか、これを伺いたい。
それから、きょう五十五分には両大臣ここをお出ましになって予算委員会に御出席のようでございますから、お尋ねする項目をちょっと順序を変えまして、続いて経企庁長官にもお伺いをさせてもらいたいと思うのです。
といいますのは、円高差益の還元状況についてお尋ねをするわけでございます。いっときの円に比べまして約二倍に上がっておりますですよね。この円高のメリットを国民に還元をして生活のレベルアップを図っていくということが、政府全体の大きな課題であると私は思っておるわけでございます。いただきました試算によりますると、二年半前のプラザ合意以後去年の十二月までにざっと二十九兆四千五百億、三十兆円の差益が出ておる。それに対する還元は二十兆五千億という数字になっておりますね。しかしながら消費者、一般の国民は果たしてそれだけ、三分の二も今までに還元がされたんだろうか、実感としてなかなかそういう感じを持っていないんじゃなかろうかな、私はこう思うわけでございます。
三日前の新聞に載っておりました、通産省が百貨店やスーパーなどの大型小売店が円高のメリットをどの程度消費者に還元しておるか、こういうのを調査した。そうしますると、円高メリットを生かして輸入が活発になっていることをこの調査は裏づけておる。だけれども、ブランド品は調査品目のうち六割までが値下がりをしておらず、消費者への還元がおくれていることもわかった。こういうようなことが記事にしてあったわけでございます。一概に差益の還元といいましてもいろんな品目がございまして、例えば電気の場合には三回にわたって、ガスもそうでございましたが値下げをしていただきました。これは非常にありがたいことでございますけれども、例えば輸入牛肉の場合はどうなんだろうかな。数字ではマイナス二三というのがことにデータとしては挙がっておりますけれども、しかしながらきのうもニュースで総務庁長官が、まだもう一つけげんな節がある、不十分だと思われるので畜産事業団をひとつよく調べてみます、こういうような答弁をなさっておったわけでございます。
通産関係、農水関係いろいろございましょうけれども、それを全部にらんで、そうして還元を積極的に進めておられるのが経企庁でございますので、ひとつこれにつきましては経企庁長官から御答弁をお願いしたいが、まず通産大臣からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/4
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005・田村元
○田村国務大臣 今、後段の御質問は、材料は私がつくらせました資料に基づくものではございましたけれども、経企庁長官から答弁をしていただくということで、中小企業について私の気持ちを述べてみたいと思います。
先ほども申しましたように、また御指摘がありましたように、経済の二面性というものを一番強く食らっておるのが中小企業であります。とりわけ輸出型の下請であります。でございますし、また同時に、日本の産業の特殊性とは何か。それは、中小企業が絶対多数であることと同時に、流通機構だと言われております。この中小企業、しかも事業所の数は全体の九九%以上になります。これを何とか健全なものにしていかなければならぬ。そのためには、当然のこととして構造調整、それに弱い者が結束していくという意味においても異業種の融合化とかあるいは融資その他、いろんな面で中小企業を時に支え時に誘導しなければなりません。そういう点で、中小企業対策費が年々減少傾向でございましたけれども、六十二年度からその傾向に歯どめをかけることができました。わずかではありますけれども、上昇するようになってまいりました。
なお、これでもう能事終われりとするものではありません。なおも努力をしなければならぬことは当然でありますけれども、それにいたしましても、通商産業省が抱えておる最も大きな内政問題は何かと言えば中小企業対策と言っても過言ではないという気持ちで、今後とも積極的にもろもろの施策を展開してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/5
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006・中尾栄一
○中尾国務大臣 お答えいたします。
奥田先生の言われました内需拡大の面において、大体内需の方の寄与度が五%、それに対して外需がマイナスに寄与しておるから、したがってある程度の維持をしておって結構だということを言っていただきましたが、そのとおりだと私も考えておる次第でございます。
大体マクロの経済の方は今、私が言うべきだったのかもしれませんが、通産大臣全部総合的にお述べいただきましたから、私の方からもごく簡単に円高差益の問題に重点を置いた答弁をさせていただければ、このように思います。
まず経企庁の試算によりますと、六十年の九月のプラザ合意以来六十二年までの大体二年余りの円高差益は、累計でいきますと御指摘のとおり二十九兆円発生しまして、そのうち二十一兆円が還元されておるというところでございますから、円高還元率は実質的には六九・六%、七割近い、こうごらんになっていただいてもいいんじゃないか、こう思っておるわけでございます。ただ、各期ごとの還元率は期を追うごとに確かに上昇しておりまして、昨年七―九月期の以降は九割程度にまで実は達しておるのであります。こうした状況を若干の商品で見ますると、個々の需給動向や輸入原材料比率の違いなどから必ずしも小売価格の下落率は一様ではございません。しかし、例えばェビは二三・六%、多少ミクロ的になって申しわけございませんが、食用油は一四・七%、あるいはティッシュペーパーは二・一%の下落となっておりますが、全く御指摘のとおり、円高差益の還元について三度にわたる電気、ガス料金の引き下げなど各般の還元策は実施しておりますものの、国民の実感としてはもうちょっと何とかならぬのかなという意見があることだけは否めない事実でございます。
これは総務庁なんかとも話し合ってはおりますけれども、ただいま御案内のとおり、経企庁では新経済計画を作成中でございます。平岩外四会長を中心にいたしまして、四つの部会に分かれてこの問題なども特にとらえながら問題点の解決にいそしまなければならぬ、こう思っておるわけでございまして、円高のメリットはおおむね順調に物価に反映されつつあるものとは考えておりますが、しかし原材料費の低下を通じる円高効果は薄く広く、しかもタイムラグがございます。大体二から二・四半期半、大体六カ月、七カ月、八カ月くらいおくれてその効果が出てくるというようなことがございまして、そういう点で多少まだおれには不満だなと思う方もおられるかもしれません。同時に、一部ブランド品については、高級品イメージというものの維持のために、どちらかといえば金権的な考え方からあんまり安くしてもらっては困るというものもごく一部の中にはあるということも値下げにならない面かなとも思うのでございます。
さらに、国内制度に絡むいわゆる内外価格差の問題もあることからして、消費者にとって必ずしも円高メリットの効果が実感されてないことも御指摘のとおりでございますが、いずれにしましても政府としては、為替レートの動向などを踏まえて、公共料金については差益の的確なる反映を図るということがまず第一点。さらにまた、必要に応じて輸入消費財価格動向等の調査を完全実施いたしまして公表することにしております。大体これは四月ごろにまとめて五月ごろにはこの点を明快に発表したい、こう考えております。ということで、円高差益の一層の還元に努めてまいることをお約束申し上げたいと思います。
さらに、時間のかかる問題ではございますが、経済構造調整、規制、制度の見直し、輸入の拡大等を通じまして内外価格差の縮小にこれ努めていくということ。規制の緩和、これも大いに重大なるファクターであるということも私の口からも申し添えておかなければなりませんし、同時に、それに対応する各省にわたる問題点は、それぞれ各省とも話し合いながら円高差益のデメリット、メリットが余り効果がないじゃないかというようなデメリット的なフィーリングというものを一刻も早く直していくように全力を投球したい、このように思っておりますので、よろしく御承知を願いたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/6
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007・奥田幹生
○奥田(幹)委員 両大臣、ありがとうございました。
それじゃ、続いて質問をさしていただきます。日米貿易についてでございます。
今アメリカの議会に包括貿易法案がかかっておりまして、上院と下院で協議中だと承っておるわけでございますが、この法案の中身を見ますると保護主義的な条項が含まれておりまして、それがどういう決着を見るかは、世界の自由貿易体制を維持してまいります上で非常に重要だと私は認識しておるわけでございます。ちなみに日米貿易の状況を見ますると、八六年は対前年比で八十八億ふえておりましたのが、昨年の場合には十三億増までその増加分が縮まっておるのですよね。これは、私は非常にいい傾向だと思うわけでございます。
しかしながら、この包括貿易法案を見ますると、こういうようないい傾向をあたかも無視したかのように大変な問題が含まれておる。その典型的なものはやっぱり通商法の三〇一条だと思うわけなんです。大臣もよく御承知でございますけれども、はっきり「日本のように」ということで国名を挙げておるのですね。「日本のように対米黒字が大きな国に対しては、黒字幅を毎年一〇%ずつ削減させる条項」、ゲファート条項、こういうようなのは本当に問題だと私は思うのです。で、これも最近のマスコミに載りました記事、少しずつ上院の財政委員会と下院の歳入委員会が法案を煮詰めてきておる。全体的には、問題点の二割くらいは心配ない方向に解消されておるけれども、例えば今申し上げましたような三〇一条でございますとか、あるいは輸入被害に対する救済措置を規定いたしました二〇一条でございますとか、こういうような問題はまだ煮詰まらないまま残されておる。そうして三月の後半以降にまでかかるだろう、こういうようなことが載っておるわけなんです。
それで、アメリカはこの秋に大統領選挙その他ございまして、アメリカの国内でもいろいろな思惑、国内事情がありましょうけれども、こういう日米間の貿易ということになりますと、やはりアメリカの国内がそういう特殊な事情があるから仕方がないわというようなことばかり日本側からは言っちゃおれない問題でございます。これについて政府は今どういうような対応をしておられるのか、これをお伺いしたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/7
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008・田村元
○田村国務大臣 アメリカの議会はいわゆる包括貿易法案につきまして、昨年九月に両院協議会を設置はいたしましたけれども、ほとんど審議が行われませんでした。御承知のとおりであります。去る二月十七日に、両院協議会の中心となる第一分科会における審議が再開されたばかりであります。
今後の包括貿易法案の見通しにつきましてはいろいろな見方はございますけれども、昨年のいわゆるブラックマンデー、これで株式は暴落、為替レートは大変動ということがあったわけですが、このブラックマンデーにおける株式暴落後、保護主義的な貿易法案は世界経済を混乱に陥れるとの考え方がアメリカ国内で強まっておるということもまた事実でございます。それから、最近におけるアメリカの貿易収支の改善が著しいということなどの好材料もありまして、保護主義的な法案が成立することのないよう期待いたしております。
これに対してアメリカ側は有名な人がいろいろなことを言っておりますが、多くはアメリカの議会のいら立ちというものがブラックマンデー後少し薄れておるのじゃないかという表現をしておるわけであります。しかしながら、いろいろな場面を想定しなければなりませんから、不幸にして保護主義的条項が含まれたまま成立した場合には大統領の拒否権に期待せざるを得ません。現にアメリカ政府も、去る一月の日米首脳会談の際にレーガン大統領が、保護主義法案に対しては拒否権を発動するということを明言いたしておりますし、保護主義法案には反対との態度をとってきております。今後とも米国政府を大いに支援してまいりたい。
率直に言いまして、私どもの基本的な考え方は、仮に中身が薄まろうとも、保護主義というものが残っておる限りにおいては、我々はそれを歓迎することはできない、絶対反対である、この基本的な考え方に立って、今後もアメリカ行政府をうんと応援していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/8
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009・奥田幹生
○奥田(幹)委員 この通産大臣の所信表明の四ページに載っております「国際社会への積極的な貢献」、これについて次にお伺いをいたします。
発展途上国には一兆千九百億の累積債務があると言われております。これは大変な数字でございます。ところが我が日本は、ありがたいことに世界で一番の資本供給国である。したがって、発展途上国に対しては積極的に貢献をしていくべきだ、それなりの目標を立てて今日までやってきたわけでございまして、新しい予算案の中にも、ODAの総額は一兆三千四百億と見込まれておるわけでございます。そこで、ここに大臣が言っておられます、昨年スタートをいたしました新アジア工業化総合協力プラン、ニューAIDプランについて、これは今どういうような状況にあるのか、これが質問の一点でございます。
それからもう一つは、この経済協力予算をドルで見ました場合に、八六年は我が日本が民間を含めまして百四十八億ドル、これに対してアメリカは百二十一億ドルでございまして、日本が最高の数字を記録した。これに関する限りは非常に結構でございますけれども、その中身を見ますときには、金を与えますよ、援助をしますよというのではなくて、何年かしましたらこれだけの利子をつけて返しなさいよ、そういうようなものでございまして、トータルをいたしますと、その寄与度におきましては先進国の中では日本が一番低いと言われておるわけなんです。この一九八六年の政府開発援助の実績を見ますると、今申しました寄与度におきまして、イギリス一〇〇%、オーストラリア一〇〇%、カナダが九九%、アメリカが九六・八%、スイスも九九%、こういう数字になっておりますけれども、日本の寄与度は八一・七%、八割はようやく超えておりますけれども、先進国の中では低い数字になっておる。やはり名実ともに寄与をしようといいますと、私は、一遍に一〇〇という数字は無理かとは思いますけれども、この率を上げていくことが本当に発展途上国から喜ばれるのじゃなかろうかと思うわけなんです。これにつきましては、通産大臣は質と量両面にわたる援助の拡充につきましてはどういうお考えをお持ちになっておるのか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/9
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010・田村元
○田村国務大臣 まず、新アジア工業化総合協力プラン、いわゆるニューAIDプランについてでありますが、これは昨年の一月、私がバンコクへ行きましたときに、アジア諸国の外貨獲得産業の早急な育成への協力を図るために提唱したものであります。このプランというのは、アジア諸国におけるインフラ整備などハードな面での協力、それから人材育成、製品開発、経営指導、マーケティング等ソフト面の協力、また民間セクター育成への資金協力、我が国企業の直接投資の促進というような、各種の協力を集中的に実施していくというものであります。
平たく言いますと、従来の援助と違って、特にASEAN諸国、中国も含みますが、そういう国々に対して日本から、インフラのみならず、技術のみならず、お金のみならず、ノーハウから人材養成からすべての面で御協力を申し上げて、そして一次産品中心のこれらの国々に輸出型産業を興していただこう、そしてまず日本が第一番目に彼らにとって魅力あるマーケットになろうというようなことであります。私は、アジアの発展途上国を我々のアジアの仲間として御協力申し上げるということについては、そこまで突っ込まなければいけないだろう、もう従来のように資金援助だけではいかぬというふうに思って、非常に具体的なものを出したわけであります。このプランは六十二年度から具体化してきておりまして、各国の実情に応じて、輸出加工基地の整備に対する協力などの地域へのアプローチ、それから輸出有望業種を選定してその育成に協力するセクターアプローチの二つの方法を適切に選択しながら、協力を本格化しようとするところであります。
それで、現在、代表的なものをちょっと申し上げますと、タイでは東部臨海開発計画の中心となるレムチャバン輸出加工基地建設への協力、金属加工、玩具、家具類等六業種の輸出有望産業育成に協力をしております。それからマレーシアでは、自動車部品、エレクトロニクス、陶器、ガラス製品など六業種の輸出有望産業育成に協力。中国では、青島の輸出加工基地整備に協力。フィリピンでは、昨年十二月の竹下総理訪比のときにアキノ大統領から、建設材料、化学製品、家具、家庭用品など十業種を候補業種としてニューAIDプラン適用の強い要望があって検討中。なお、インドネシア、インド、パキスタンからもそれぞれ協力要請がある、これが現状でございます。これは非常にいいことだと思いますから、ぜひ一層大きくしていきたいと考えております。
それから、経済協力の質、量の問題で今お尋ねがございました。発展途上国に対する経済協力を積極的に推進していくことは、我が国の国際的な責務だと私は思います。このような観点から、日本は累次にわたるODA政府開発援助の中期目標を策定してその拡充に努めてきております。昭和六十三年度予算政府案におきましても、前年度五・八%を上回る六・五%の伸びを確保いたしております。しかし、国際的に比較いたしますと、量的にはGNP比〇・二九%と、先進国これはDAC諸国でありますが、十八カ国中十五位にすぎません。それから質的にも、総合グラントエレメントで最下位とまだ大きく劣っております。
このグラントエレメントでございますけれども、これはなかなか難しいのですが、援助条件の緩やかさを表示するための指標で、借款の額面価値と借款期間中に借入国が支払う元利合計額を割り引いた現在価値との格差を借款の額面価値へのパーセンテージであらわしたものでありまして、OECDで決めたものであります。ベースとなる金利、現在価値への割引率でありますが、これを一〇%として、グラントエレメントが二五%以上のものをODAということにしております。この総合グラントエレメントで先進国中、DAC諸国中最下位というようなことでございます。
今後、我が国の国際的地位にふさわしい国際的貢献を果たさなければなりませんが、ODAの量的、質的改善に努めてまいらなければなりません。これはやりたいと思っております。また、やらなければなりません。また、その過程で円借款等の資金協力、人材育成協力、研究開発協力等の技術協力を初めとする各般の経済協力手段を総合的、有機的に活用して、効果的そして効率的な援助の実施を図ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/10
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011・奥田幹生
○奥田(幹)委員 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/11
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012・渡辺秀央
○渡辺委員長 次に、井上泉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/12
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013・井上泉
○井上(泉)委員 この商工委員会に関係する仕事といいますか、これは我が国経済を支えるすべてのものを網羅しておると言ってもよいほど重要な委員会であるわけですが、私はこの委員会に所属したのはこれが初めてでありまして、そういう点からも、今までの国会活動の中で商工関係については、いろいろ重要とは考えながらも勉強不足を自己批判せざるを得ないのです。そこで、私自身の知識の不十分さをひとつ大臣や関係者によって補っていただいて、立派な通産行政が我が国の政治の中で施行されることを期待するものであります。
そこでまず、これは大臣にお伺いするわけですが、大臣は、皆も同僚議員の方も御承知のとおり今の竹下総理よりは一期先輩である。私も国会に初めて来たときに、国会は軍隊みたいなものだな、年次別で非常に階級制度が厳としておる。一年生と二年生の議員とでは格差があるような感じがして、国会の中でもこんなことかなと、こう思いながらも自分もうかうか二十年近くなってきたわけです。そこで、通産大臣は竹下総理よりも一期先輩であるし、そして学んだ学校も知的なそして経済的なことについては非常に権威の高い慶応である。我々が一万円札を見るときに、いつでもあなたの母校の福沢諭吉先生の写真を見るわけで、大臣も学校の創設者、先輩の金をあちこち使うことによって日本の経済が維持できるということで一種の誇りを感じておるのではないか、こういうふうに私は思われるわけであります。
そこで、内閣総理大臣の権限というものは非常に大きいので、これはたとえ通産大臣が一期上の先輩であっても、総理がこう言うとあるいはそのことに従わざるを得ない面があるかもしれぬわけですけれども、そういうことを考えると、総理の顔色をうかがって通産行政を進めるということではなしにあなたならできるのじゃないか。私は今日までの政治経歴から見ても、あなたなら利欲に走らない。金集めは余りせぬから田村派ができぬではないか、そういうふうな話まで私どもも聞かされるような、清潔な政治家としてのイメージが伝わっておるわけでありますので、その点からも私は立派な見識を持って行動される大臣だと思うので、あえて大臣の政治姿勢の一環として、内閣総理大臣という内閣を統括する総理がおるけれども、事通産行政についてはおれの識見に基づいて、おれの行政姿勢に基づいてやるんだ。もちろん総理の意見を聞かなければならぬでしょうけれども、やはり通産大臣としての重責を誇りを持って遂行していくという決意をお持ちなのかどうか、その点をまずお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/13
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014・田村元
○田村国務大臣 私の母校から私の性格、考え方までお尋ねでございますが、私が学びました慶応義塾といいますのは、自由主義と民主主義を基本的な理念としておるわけであります。「人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」、これが慶応義塾の福沢先生の教えであります。その教えは生涯持ち続けたいと思っておりますが、それが私が余り出世しないゆえんかもしれません。権力主義に余りそぐわないかもしれません。
それはそれといたしまして、通商産業大臣として総理大臣の顔色をうかがってその指示に基づいていろいろとやるのではないか、あるいはそうでないのかどうかというお尋ねでございますが、私はもちろん内閣の和はたっとびますし、かつ総理大臣の権威というものは高く認めていきたいと思います。しかしながら、事通産行政に関しましては私がお預かりした立場でございまして、私が正しい、このようにしなければならぬと判断したことについては右顧左べんするつもりは毛頭ございません。私も、あなたほど純粋じゃありませんが、土佐っぽの血を受けております。いごっそうぶりはしっかりと発揮していく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/14
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015・井上泉
○井上(泉)委員 私は、大臣が我が高知ともゆかりのある方である、そうしてまた聞くところによると、武市半平太という維新の学問的な理論的な指導をされた方と最も関係の深いという話をこの間聞いたわけです。
そこで、今の大臣の姿勢の中で、福沢諭吉先生の建学の精神というものが今日も守られねばならないことだとわきまえておること、そのことは私は高く評価をするわけでありますが、それと同時に、あなたも長い政治経歴でありますから、石橋湛山内閣ができたときには、やはり自民党の内閣でしたか、あなたはそのときは何期ぐらいで、そのときに石橋湛山内閣に対してどういうふうな評価をされておったのか、承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/15
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016・田村元
○田村国務大臣 石橋内閣ができましたのは、私の記憶が間違っていなければ昭和三十一年であったと思います。そのとき私は一年生代議士でありました。私は初当選が三十年の二月でございまして、社会党でいえば石橋政嗣君と同期生でございます。年も同い年であります。
それで、私は当時石橋湛山先生に非常なあこがれを抱いておりまして、総裁選挙において、本来私の立場からいえば石井光次郎先生の応援をしなければならぬ立場であったかもしれませんけれども、私は石田博英さんらとともに一生懸命に石橋湛山先生の応援をして、そして湛山先生が内閣総理大臣として晴れて昭和三十二年の一月四日に神宮参拝をされたとき、その御案内役をいたしたことでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/16
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017・井上泉
○井上(泉)委員 その石橋湛山内閣に対しても、これの成立を目指して運動された、そういう政治思想、政治哲学というものをお持ちになっておられるということは、私も我が意を得たりとは言わなくとも、本当に敬服をするわけであります。ところが、その石橋湛山先生のそのときから訴えておった政治哲学というものが、今日ほど大事に生かされなければならないときはないのではないかと思います。
石田博英先生が一九八二年の中央公論で「小日本主義に還れ」、大体、大日本主義というものは軍国主義への道を歩む姿勢だ、あくまでも日本は小日本主義に返って、そして自由諸国との協調の中に今日の日本の繁栄の道というものを求めるべきである、その点からも軍備を増大をしていくという政治傾向とは断固として闘わなければいかぬ、それを選んではならない、こういうことを非常に主張されておるわけであります。
そこで私は、自民党としての良心が石田博英先生の論文の中にあるのではないか、その石田博英先生と志を同じゅうして行動されたということになりますならば、やはり今日の竹下内閣の中で貴重な存在ではないか、こういうふうに思うわけですが、その政治姿勢、政治哲学というものは、今日もそしてまた今後においてもあなたの通産行政の中で発揮をしていくということを信じておって間違いないでしょうか、ひとつその辺の御答弁を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/17
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018・田村元
○田村国務大臣 石橋湛山先生という方は、経済学者であると同時に、かつ偉大な経世家でありました。
先生は、常に私たち若い者に対してこういうことを教えられた。それは、過去においては軍事力ということで大国、小国を決めた、これからの時代は、文化の香り高い経済国のその力をもって国の力の大小を判断しなければならぬ、決して軍事力を誇るような国にしてはならないのだということを教えられました。私は、先生に教えられたその教えというものは今でもしっかりと胸に抱いておりますし、もちろん自衛ということは私も否定はいたしません、自衛力は否定いたしませんけれども、軍事大国への道ということになりますれば、これは政治家としてやはり思いを新たにして対応しなきゃならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/18
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019・井上泉
○井上(泉)委員 石橋湛山先生は、確かにそういう大臣の言われるような政治姿勢で貫かれておったということは、湛山先生の著にも、そしてまた石田博英先生の著にも明記をされておるし、私はこういう立派な先輩政治家の流れを、今日の自民党政治の中で、竹下内閣の中で、経済的にも非常に摩擦の多い今日、この自由貿易体制というものを堅持しなければならぬと、これは石橋湛山先生も指摘をされておったことですから、そういうことから考えても、これはそういう軍事大国的な立場ではなしに、やはり経済大国として、それにふさわしい日本の経済体制というものを強固にしていくことが必要ではないか。
そこで、あなたの所信表明の中で「世界の中の日本」ということを指摘をされておるわけですが、日本のための世界というようなことも一面では言われるような中で「世界の中の日本」であるという、その日本国の今日の世界の中における立場というものを、そうして、世界の中で日本はどうあるべきかということが日本の政治の中で貫かれていかれるような、有力閣僚として、そしてまた、今そういう教えを自分の政治哲学の大きな柱にしておると言われる大臣が、やはりその点を十分考慮して行政を進めていかれたい、こう私は思うわけです。
そこで、去年のあなたの所信表明、つまり六十二年の所信表明とこのたびの所信表明とは非常に中身が――私は、大体所信表明というものはずっと同じようなものが毎年毎年、ちょっと項を変えたり中身の活字を変えたりするようなことで形式的なものにできておると思うわけですが、それが去年のとは非常に違うわけです。去年のあなたの所信表明のどういう点が反省の材料となってというか、どういう点でその所信表明したときの施策の問題点が出て今度の新しい所信表明になったのか。そういう点で、自己反省する面があるとするなら、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/19
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020・田村元
○田村国務大臣 昨年の所信表明の原稿を持っておりませんので、具体的な文言としての比較はできませんが、私は、昨年に比べて、本年の展望あるいはやらなければならぬこと、これは大分変わってきておると思います。
昨年は、とにかく円高にいかに対応するか、不景気にいかに対応するか、こういうことで頭がいっぱいでありました。ところがことしは、経済は底がたいものがあり、かつまた反面、二面性を持って、非常に繁栄してきておる業種と、そしてまた一方においては不況に苦しんでおる業種、特に輸出型でありますが、そういう二面性を持っております。でございますから、日本としては、この二面性というものが強まりつつ、かつ景気の底がたさがここまで強く出てきたということについて、去年とはいささか趣を異にいたしておる面がございます。
特に私は、内政の面においては持続的な内需拡大を図って、そして外、国際的な国際調和型の産業への円滑な転換、つまり輸出依存型体質から内需依存型体質へと転換をさせる構造調整というものはどうしても必要であろうと思っております。それからまた、日本の経済の力というものからいって、またその立場からいって、当然国際分業体制を構築していかなきゃならぬ。あるいは、先ほどもお答えいたしましたように、発展途上国への大いなる援助もまたやっていかなきゃならぬということで、日本はもう国際協調の枠組みの中で動いていかなければならないだろう。しかしながら、それは国際協調のおつき合いをする反面、今度は日本の国内においても内需面で力を持っていかなきゃならぬだろうというふうに考えております。
特に、日米問題でありますけれども、アメリカからいろんなことを言われる。時に私、率直に言って理不尽なことは多々あると思います。そのたびに私は非常に抵抗いたしました。東芝問題でもそうです。東芝問題だって、それは確かに犯罪です。犯罪ですけれども、しかしそれは、ココム違反は国内法で処分するものであって、他の第三国から制裁を食らうべき筋のものじゃありません。これを私は非常に強く向こうで抵抗したわけです。
また、ヤイターさんの事務所へ行ったときに、日本の防衛ただ乗り論のような話も出ましたが、ひょっと見たらマッカーサー元帥の肖像画がかかっておったから、これはジェネラル・マッカーサーか、こう言って聞いたら、そうだ、そこで私は言いました。日本はこの人に聞いてもらったらわかる、今や平和憲法を持っているんだ、そういうあなたの国のようなことを言われても困る、マッカーサーが一番知っているんだ、こう言って私は強く抵抗したりしました。とにかく、国際協調はしなければなりませんが、言うべきは極めて明確に言うというようなしんの強さもまた持って、世界の経済大国の責任を果たしていかなきゃならぬ、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/20
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021・井上泉
○井上(泉)委員 とにかく、経済大国になったというのも、やはり日本の国民の英知と勤労意欲というもの、そしてまたこの憲法そのもののいわゆる軍備を抑制する思想、それとが相一致して今日の経済大国になったと私は思うのです。
ところが、経済大国の被害者というか、被害者ではないけれどもその経済大国の谷間に落ち込んでおる人を、これからの日本の経済の中でどう引き上げていくかということを考えるのがやはり通産の仕事としても大事ではないか。例えば、大手の鉄鋼会社なんかは、鉄鋼が不景気で不景気でと、こう言うて随分騒いだ。ところが、民活というかそういう政策が浸透していく中で、この鉄鋼メーカーは大きな利益を上げた。利益を上げて、もう借金も返済、赤字も帳消しになって、何百億の黒字も出した。それだけの大きな経済力を持っておるわけですし、それから、東京あたりでは、私のところへ出てくる学生のなにがアルバイトをしておる。ビルの窓ふきが一日八千円もらえるというふうな、そう言うて話を聞かされたわけです。
ところが、特に中小企業になると、もうこれは円高の不況をまともに受けておる。円高の利益というものは一つもない。円高の利益というようなものはやはり鉄鋼とかいう大手のものが、原料が安くてそして合理化をやって、そこで利益を上げてきておるわけですけれども、中小企業はそれができない。だから私は、この中小企業の政策については、もっと通産省としても政策をきめ細かく対応していかねばならないのではないか。このことで通産関係の予算等を見る中でも、やはり中小企業に対する際立った予算の裏づけというものが、今大臣が自民党の方の質問に答えて、だんだん減ってきておったのが、多くはないけれども今度は若干増加した、こういうふうな話をされたわけですが、民需を拡大をするためにはやはり中小企業に対する政策というものをもっと思い切った形で、えらいものはそういう政策の恩恵がなくてもこれは十分に自立していく能力があるのですから、その点は通産大臣として重点的に配慮していただきたい、私はかように思うわけですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/21
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022・田村元
○田村国務大臣 私の答弁をあなたが大体言ってくれたわけですけれども、中小企業といいますのは、事業所の数でいいますと全体の九九・四%です。それから、従業員は労働者全体の八一・四%。でございますから、日本はまさに中小企業の国であると言っても過言ではありません。先ほど申し上げたように、経済の二面性があります。中には大変苦しんでおる、例えば不況地域あるいは企業城下町あるいはまた不況業種、いろいろと苦しんでおる人、特に中小企業の中でも下請、輸出型産業の下請企業というのは本当に苦しんでおります。これを何とか救っていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
中小企業対策費が少ないじゃないかというおしかりを受けるのでありますけれども、まあ幸か不幸かといいますよりむしろ幸いなことに、中小企業の多くが今景気が非常によろしゅうございます。でございますから、中小企業対策費の大部分を不況中小企業へ対応させるということになりますから、その点では、満足ではありませんけれどもまあまあの対応はできるのかな、このように考えておりますけれども、冒頭申し上げましたように、日本は中小企業立国でありますから、これは私は内政のすべての施策の筆頭に挙げて取り組んでいくということを平素も申しておりますし、今もその気持ちに変わりはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/22
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023・井上泉
○井上(泉)委員 そこで私は、大臣に対する質問はまた後にいたしまして、当面の重要というか問題になっております。昨晩もニュースを聞いておりますと、伊方のいわゆる出力調整に抗議をする集会が通産省に押しかけてきた、こういうニュースを聞いたわけですが、この伊方の出力調整をやったことに対して資源エネルギー庁の首脳、これは新聞記事でありますから、私が直接聞いたものでないのですけれども、この四国電力の伊方発電所の出力調整をめぐる反対運動について「これほど問題になるとは思わなかった。ソ連のチェルノブイリ事故の後遺症が続いていることを痛感した。通産省としても情報公開などで反省すべき点はあるし、責任は感じている」これは朝日新聞に載っておったわけですが、このことはどういう点を反省をしてこれからどういうふうにするというのか。責任を感ずるだけじゃいかぬわけですから、やはり責任を感じたらその責任を償わなければいかぬわけです。これはエネルギー庁の首脳というのですから、長官かあるいは次長なりしかるべき人だと思うのですが、資源エネルギー庁の方から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/23
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024・浜岡平一
○浜岡政府委員 ただいま御引用いただきました発言は、私の新聞記者懇談での発言を引用されたものだと思っております。大筋におきましてそういう趣旨の発言をいたしました。
実は、伊方二号での出力調整の運転試験でございますけれども、二回にわたって行われることになっておりまして、第一回目は昨年の十月に行われております。そのときは全く何の反響もなかったわけでございます。今回第二回目が行われます際に、先生御承知のような反対の声等も非常に強くなってきたわけでございまして、やはりチェルノブイリ以降一段と原子力の安全性の問題につきまして、PAといいますかそういった面での努力が必要だと痛感いたしておりまして、さまざまな努力をしてきたわけでございますけれどもまだ国民一般の不安感といったものが決して鎮静をしていないことを痛感したというわけでございまして、その辺の気持ちを申し述べた次第でございます。
今回第二回目の試験に当たりまして、大変強い反対の声等も出てまいりましたので、電力会社におきましても、パンフレットの作成あるいは新聞への意見広告の掲載でございますとか説明会の開催等をやっておりますし、私どもも大変多数の回数にわたりましてプレスレク等もやったわけでございますけれども、振り返ってみますと、必ずしも国民一般に十分理解が得られたと言いがたい状況の中で実施せざるを得なかったということは、残念ながら事実であると思っております。今後とも、安全確保なくして原子力利用なしという基本的な理念に立ちまして、原子力発電の必要性と安全性につきまして一層の理解が得られるよう努力をしてまいりたいと考えております。特に、今回は女性の間にも大変な不安の声があるというようなことも感じておりまして、従来のPAのやり方あるいはその対象等につきまして改めて総点検をして、遺漏なきを期したいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/24
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025・井上泉
○井上(泉)委員 原発の出力の調整を昨年もやってことしもやって、最初は何にもなかったけれども今度は非常に反対が高まったということは、前の調査にいろいろ遺憾な面が出てきたんじゃないかというような感じもするわけであります。しかし、私自身が科学者でも何でもないから、原発が安全だとか原発が危険だとかいうようなことを、なぜ安全であるか、なぜ危険なのかということを科学的に説明せよというてもよう説明をしないのですけれども、これだけ厳重な――安全、安全ということを言うがかなり危険なものじゃないか。かなり危険というか、その危険というものはかすり傷を負う危険じゃない、これは生命にまで及ぶ危険性を持ったのが原発の実態じゃないか、こういうように思わざるを得ないわけです。しかし、原発が三十二か三か稼働しているという中には、やはり従業員も何千人かおるでしょう。そういう人たちが、特攻隊精神で原発の運転管理をやっておるのであろうか。
そういうことも考えてみますと、この出力調整試験というか実験というのは、通産省の指示でやったものですか、それとも原発を運転する電力会社自身が考えてこれをやったものですか、どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/25
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026・浜岡平一
○浜岡政府委員 これは通産省が行った試験ではございませんで、電力会社と原子炉メーカーの共同の試験でございます。ただ、こういう試験を行うということにつきましては、年々それぞれの発電所の稼働計画等はヒアリングをいたしておりますので、そのヒアリングの段階でそういう実験を行うということは承知いたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/26
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027・井上泉
○井上(泉)委員 日本のエネルギーの中で原子力が占める立場といいますか、それは「資源エネルギーの需給の推移と見通し」というエネルギー調査会の一九八六年十一月の資料を見てみても、二十一世紀つまり二〇〇〇年のときには原子力はエネルギーの構成が一六%程度、こう載っているわけですが、一六%程度の電力というものは原子力に頼らないでも十分補完のできるものではないか。これだけ大騒ぎを起こすような、そして安全性、安全性と通産省も一生懸命強調せにゃならぬような危険と思われるこの原子力発電というものは、もう二〇〇〇年ごろにはこれを解消していくような、原子力発電所をゼロにするような、そういう日本のエネルギーの需給調整を図っていくということはできないものかどうか、その点をひとつ。
〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/27
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028・浜岡平一
○浜岡政府委員 ただいま先生が御引用されました数字は一次エネルギー全体の中での原子力のウエートでございまして、一次エネルギー全体の中には、申し上げるまでもございませんが原料炭でございますとか、あるいは家庭で使われる石油製品類等々が全部入っているわけでございます。この一次エネルギーの中の約四〇%が電力に転換をされるわけでございます。電力に転換される割合は年々上がってきているわけでございまして、原子力のウエートということになりますと、発電電力量の中での原子力のウエートというのがやはり焦点かと存ずるわけでございますけれども、六十一年度で申し上げますと、原子力のウエートは発電電力量の中では二八%を占めております。それから七十五年度につきましては、今の私どもの見通しでは四〇%というような数字になっているわけでございます。
なお、一言つけ加えさせていただきますと、電力需要は先生御承知のとおり季節によりまして大変大きな変動がございます。八月のお昼過ぎがピークでございます。年末年始の夜中というのがボトムでございますけれども、ピークを一〇〇といたしますとボトムは二五前後というようなことになるわけでございます。このピークの一〇〇のときに原子力が全体をどれくらい賄っているかといいますと、二割も賄っていないというような状況でございまして、日々出力調整を行うというような必要は当面考えられないと見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/28
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029・井上泉
○井上(泉)委員 日々出力調整をやる必要はないと言うても、何カ月に一回、この間の新聞では十五カ月に一回とか、そういうふうに出力調整をやることが報道されておったわけですが、その出力調整をやるということは、電力の需要に原発の出力がオーバーするからということによって出力調整をやるわけでしょう。原発に頼らないエネルギーというものは日本では不可能かどうか、そのことをひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/29
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030・浜岡平一
○浜岡政府委員 前段の十五カ月というのは多分定期検査の期間、現在十二カ月プラス・マイナス一カ月ということになっておりますけれども、これを延ばすかどうかという検討をいたしていることは事実でございまして、その検討の一つの可能性の数字として十五カ月という数字があるということが報道されたことがございまして、多分その数字が先生の御記憶に残っているのではないかと思っております。
日本の原子力発電の動かし方でございますけれども、先ほど申し上げましたように、ピーク時には全体の二割も原子力は賄えないというような状況でございまして、もちろんフル稼働いたしているわけでございます。問題は、ボトムの年末年始の真夜中というような時点になりますと、原子力発電の能力と需要量が企業によりましてすれすれになるというケースもないわけではございませんで、そういう企業におきまして、年末年始等に数日間にわたりまして連続して出力を抑制しているというような例はあるわけでございます。
将来の可能性といたしまして、日々出力を上げ下げするというようなことが出てくるかもしれないということで、その挙動を確認をしデータを集めるという意味で今回の試験を行っているわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、日々出力を調整するというような必要性は当面考えられないんではないかと思っております。先ほど申し上げましたようなウエートを既に占めているわけでございますし、またコストの面それから燃料の輸送の面等から考えまして、やはり非常に重要な意義を持っていると考えておりまして、これを他の電源によって代替するというのは極めて困難なことではなかろうかと思っております。また、将来に向かって考えますと、やはり炭水化物を燃焼させることによりまして炭酸ガスがふえる、いわゆる温室効果というようなことで地球全体の温度が上がってくるというようなことも大変懸念をされておりまして、長い目で見ますとやはりこの原子力の利用ということが必要不可欠と考えておりますので、先ほど申し上げましたように、これを他の電源で代替をしていくということは、長期的に見ましても非常に困難なのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/30
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031・井上泉
○井上(泉)委員 役人としての答弁はそうでしょうけれども、極めて困難というのは、そういうようなことは極めて困難であるけれどもやろうと思えばできぬことはないということに一面は考えられるわけですけれども、それはそういうような意味で極めて困難という表現をなされたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/31
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032・浜岡平一
○浜岡政府委員 判断の基準がいろいろあろうかというぐあいに思うわけでございますけれども、安定供給あるいは経済性というような基準に照らしますと大変難しいと申し上げたわけでございます。物理的に全部とめてしまうということが不可能ではないことはもちろんでございますけれども、それに代替する電源の開発あるいはそのための燃料、火力になりますから燃料の調達というような問題もあるわけでございまして、そういう面でも決して簡単な問題ではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/32
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033・井上泉
○井上(泉)委員 それは回りくどうに――私はここで反対の立場でいろいろ質問しておるとかいうわけじゃないですから、やっぱり国民の疑問にこたえて質問をしておるわけなので、こう言うたら責任がある、こう言うたらどうだというようなことを考えずに、専門家として、日本のエネルギー事情からいうて原発というものは必要であるし、そしてそれと同時に、いつも出力調整やるというものでもないということを言われたわけですが、いつもやらないけれども、日本国じゅうにある三十幾つかの原発が月に一つやっても三十二カ月かかるわけになるのです。だから、毎月はやらぬけれども、やっぱし年に一回なり二回なりはそれぞれやらなきゃいかぬということになれば、これはやっぱし一年に三十二回、原発がそういう出力調整試験をやらにゃいかぬ、やるべきである、こういう通産省の考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/33
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034・浜岡平一
○浜岡政府委員 御指摘のとおり、十二カ月プラス・マイナス一カ月ごとに定期検査というものがあるわけでございます。電力需要の低い年末年始、これは働く方にとりましては別途問題があるわけでございますけれども、そういった時期に定期点検の時期を振り向けていくということによりまして、先ほど申し上げましたような問題に対応していくというようなことも可能かというぐあいには、私どもも思っております。
ただ、基本的には、多くの電力会社ではボトムの時期におきましても原子力の能力はそのボトムに達していないというような状況でございますので、先ほど申し上げましたように、日々出力調整をするというような必要性は当面ないんではないかというぐあいに見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/34
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035・井上泉
○井上(泉)委員 あなたの答弁を聞いておると、何かうんと歯がゆい思いがするわけですけれども、私は日々やるとかやらぬとかいうことを問うておるのじゃないのですよ。日々やれいうたら大変でしょう。そこで、原発の危険性というものは国民の大多数が認識をしておる、知っておる。ところがそれを科学的に、そんなことを理屈を言えといったところで専門家でないから言えない。私自身も反対の立場には立っておるけれども、どこが危険でどこがどうなのか。それであなたは、エネルギー庁としてもこういう調整試験についてのやり方が不十分であったということについて非常に反省をしておる。
それは電力会社がやっておることであると言われても、やっぱりこれは監督官庁なり――あるいは電力会社というのは、私は私企業であって私企業でないと思うわけです。やっぱり公共性を非常に持った電力会社であるから、その公共性を持った電力というものが地域住民に、そしてまた日本の国民に大きな危険性を与えるような、そういう原発を絶えず運転していくに必要な、それによって全体の電力の需要を原発によって調整をしていく、いわば利潤を確保するために原発によって電力の消費量を調整していくというようなやり方というものが果たして適当かどうかということは、主管官庁として考えるべき問題ではないかと私は思うわけですが、あなた、今の反対をしておる人たちに対して今後どういうふうに対応していくべきであるという反省の上に立った方針というものを持っておるのでありましょうか。
国民に対してこう言いますけれども、私どものところへ通産省から、こういう試験をやって、これはこういうために出力調整試験をやる、その結果がこうだった、こういうふうな話を一遍も聞いたことはないですよ。それは国会議員でさえ聞いてないんですから、一般国民大衆が聞く道理がないわけです。やっぱりそういう点についても説得力がない。危険だから、どうにも住民を説得していく自信がないということだと私は思わざるを得ないわけですが、説得をしていく自信ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/35
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036・浜岡平一
○浜岡政府委員 何点か御指摘いただいたわけでございますけれども、需要の大きな波があるわけでございます。これに対する調整は、第一次的には、まず揚水発電あるいはLNG火力発電、さらに石油火力を調整するというわけでございます。さらに第二段階になりますと石炭火力で調整をいたしまして、一番最後に、先ほど申し上げましたように年末年始等におきまして、原子力の出力を数日間にわたりまして抑制する例が若干あるというような状況でございます。
こういった点を含めまして、いわゆる原子力の必要性、さらには安全性のPR、PAにつきましては一段の努力が必要かと思っております。特に今回、いろいろと御指摘のような動きがあるわけでございますので、こういった方々とも人数を限定いたしましたクールな対話の場というものはぜひ設けてまいりたいというぐあいに思っております。
なお、この問題の資料等につきまして、商工委員会の諸先生にお届け申し上げていないという点は御指摘のとおりでございまして、こういった点につきましては早急に補わさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/36
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037・田村元
○田村国務大臣 今の答弁に尽きるわけでございますが、私どもは、先般もお目にかかりましたが国際原子力機関のブリックス事務局長とか日本の原子力安全委員会の内田委員長とか専門の方々から、外国のデータあるいは国内の理論等を聞かせていただいて安心はいたしております。
しかしながら、率直に言って、今あなたが御指摘のとおりPR不足ですよ。問題になりません。電力会社ももっと広報活動を活発にすべきです。同時に、それをするように政府ももっとけつをたたいて、そして政府自体ももっと広報すべきです。私はそう思います。私は、その意味では御指摘は正しいというふうに思ってあえてここで申し上げた次第でありますが、だからといって役人としてはあの程度の答弁しかできないのですよ。その立場もひとつ考えてやっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/37
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038・井上泉
○井上(泉)委員 こういうことを問うては失礼かもしれませんけれども、エネルギー庁長官は技術屋ですか、それとも一般の行政官ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/38
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039・浜岡平一
○浜岡政府委員 残念ながら事務屋でございますけれども、技術系の審議官もおりますし多数の技術系の課長もおりまして、まさに日々訓練を受けているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/39
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040・井上泉
○井上(泉)委員 原発は危険なりという空気が圧倒的に強いことは間違いないわけですから、そんな危険なものを、そしてまた国民が相互に相争うようなものには頼らずに、別にエネルギーの道を求めたらいいのじゃないか、私はこういう考え方を持っておる者です。
それで、今大臣が電力会社のけつもたたいてという話をされたのですが、何かあると電力会社が主体だといっても、やはり政府が監督をして指導する責任があるわけですから、もっと政府みずからも先頭に立ってこの原発問題については対応しないと、きのうも、私はけさの新聞をよく読んでなかったわけですけれども、隣の水田部会長に聞くと、何か逮捕者が二人も出た。通産省の玄関で逮捕者を出すような、原発の問題について国の行政の中で、それに対する反対行動の中で逮捕者をつくるというようなことは、私は通産大臣としても恥ずかしいと思うわけです。各大臣の中で大物大臣と言われる通産大臣の管轄の中で住民が逮捕されるというような、そんな状態を招くことのないような対応の仕方というものはやはりしなければいかぬと思うのです。
そこで、私は大臣に提言をするわけですが、これは原子力発電をこうこうすれば安全が確認されるし、現在日本の原発はこういうふうにやっておるからソ連とかアメリカのスリーマイル島等々の事故とは全然違いますよというPRのものが出されてはおりましたが、しかしそういう立場の人とそれは危険という人とが一つのテーブルで、それも大衆の前で、団体交渉とかいうことではなしに、科学者としての冷静な判断をし合ってお互いが討議をして、ともに日本のエネルギーの問題としての原発をより安全度を高めるような方法があればその道を求めるというような、何かそういう原子力の専門会議みたいなものを、その原発に反対であろうがなかろうが、これはそういう人たちも一緒になって研究討議をするというのは国家的な重要性を持っておるのではないかと思うので、大臣にその点について何か案はないか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/40
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041・浜岡平一
○浜岡政府委員 御指摘の点は、真剣に受けとめさせていただきたいと思っております。
原子力の安全性につきましては、日本では炉の型の選択、さらには多重防護、それからさらにはヒューマンエラーの防止等々の面で、世界最高水準の技術と人間的努力というものが積み重ねられてきておると信じております。さらに、チェルノブイリの事故と日本の原子力利用の違いといったようなものにつきましても十分調査が行われているわけでございまして、その関係のPA用の資料もたくさんあるわけでございまして、これは後ほど先生のところへお届けさせていただきたいと思います。
それから、ただいま御指摘になりましたような冷静な対話というものは、先ほど申し上げましたようにそういう場が設営できれば大変歓迎すべきことだと思っておりますので、私どももそういう方向で取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/41
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042・井上泉
○井上(泉)委員 そういうことは、もうあなたたちの立場は原発の推進論者だ、こうみんなが共通に認識しておるから、エネルギー庁の長官で集めても、要請してもなかなかだめだと思うのです。そういうことはやはり大臣が、同じ国民の間でエネルギーという国家の重要な政策の中で相争うことのないように、そしてより安全性を追求する道があるとするならば、より安全を深めていくためにそういう反対派の意見というものにも謙虚に耳を傾け、それに対して、それはあなたはこう主張するけれどもこれはだめだ、これはこうですよというように、もっと科学者としての積極的な論議というものを日本の中で原発について起こすということは、国際的にも貢献することではないかと思うのです。
それで、長官がいろいろ資料と言いますけれども、私なんかは、その他の同僚の議員さんは私と違って学があるかもしれませんが、私は全くそういう専門的な知識のない者なので、説明を受けてもなかなか理解しにくいし、見せてもいただくわけですけれども、そういう学者の見解、私の方にも原子力資料情報室というところからいろいろな文書をちょうだいをして、私もそれを勉強させてもらっておるわけですけれども、これはもう原発は絶対だめだという論拠に立ったものでありますし、そういう科学者の意見も無視することなしに、こういう反対運動があればあるほど安全というものを追求せざるを得ない、こういうふうに思うので、そこはひとつ大臣が積極的に対応をするようなことをお考えになっていただいたらどうだろうか、こう思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/42
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043・田村元
○田村国務大臣 実は、私の地元にも原子力発電の問題で大騒ぎが起こっておるんです。芦浜というところの中部電力の原子力発電所をつくる、つくらぬの問題でございます。この原子力発電反対の動きの中には二つありまして、一つは、聞く耳を持つという、反対は反対だけれども聞く耳を持つ。それからもう一つは、何が何でも反対、それも余り平素聞いたことのない名前の人が反対で騒いでいらっしゃるという場合と、両方ございます。
私は今、何といっても地元でございますから、賛成だ反対だの前にテーブルに着いて勉強しようじゃないか。反対しておる者も我々国会議員も、皆原子力のことを科学的にとうとうと説明できるほどの知識を持っていないのだから、一遍テーブルに着いて話し合おうじゃないかと言ってもだめで、知事が大分呼びかけておるようですけれども、町長も大分苦しんでおるようですけれども、どうしてもだめだというような現状でございます。そこで、私の後援会の者が一人やはり反対の中におりまして、それに聞いた。私は、君はどういうわけで反対するんだと言ったら、わからぬ、わからぬが、要するにこれが爆発したら名古屋から大阪くらいまで吹っ飛ぶんだと、こう言うのです。それは原爆のことじゃないか、原爆と原発は同じじゃないかというようなことで、そういうことなんでございますけれども、漁村なのですがなかなか難しい。そう信じ切っておりますから難しい。それを説明しても、だますという考え方しかありません、受けとめ方が。
私はやはりいろんな面で、おっしゃったように広報活動をしていく。「今週の日本」でもそうでございます。あるいは、政府の広報機関あるいはその他新聞、雑誌、いろんなところで政府あるいは電力会社、電源開発等が広報活動をもっともっと十分にしていくという必要があるのではなかろうか。今後の代替エネルギーのトップとして位置づけるならば、そこまでやらなきゃいかぬのじゃないかということを常々言っておりますが、きょうの御指摘はまさに頂門の一針、私は心の中で十分受けとめて、今後の対応の参考といたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/43
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044・井上泉
○井上(泉)委員 委員長に提言しますが、要請しますが、当委員会で原発の安全性について、いわゆる学識経験者というか本当の技術者を呼んでひとつ意見を聞いて、参考人として出席を求めて話を聞いて、そしてそれに対する質問等もさせていただいて、議員としての私が見識を深めていくような機会をつくってもらいたい、こういうふうに思うわけですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/44
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045・奥田幹生
○奥田(幹)委員長代理 御意見はよくわかりました。後日、また理事会で相談をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/45
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046・井上泉
○井上(泉)委員 今、経済企画庁長官がお見えになったわけですが、経済企画庁長官も勢い込んで経済企画庁の長官としての仕事をなされておると私は思います、そうでなけりゃ大臣になった意義はないのですから。
そういうことを考えますと、いろんな面で日本の国土の均衡ある発展ということは、至るところで言われるわけです。経済の格差がないようにとか、そういうことがよく言われるわけでありますが、一つの事例として、今度本四架橋ができ上がった。本四架橋が四月十日か何かから開通をする。すると、本土と四国の間、特に四国の経済関係というものは非常な変化を来すのではないか、こう思うわけですが、この本四架橋のもたらす経済的な影響といいますか、それをどういうふうに企画庁としては調査をなされておるのか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/46
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047・中尾栄一
○中尾国務大臣 本四架橋の問題は、後ほどまた政府委員の方からも詳しい御答弁があるかと思いますが、何と言いましょうか、総論として、あるいはマクロ的に地域経済の問題等をどのようにとらえているかということをちょっと私の口からも申し上げておきたいと思いますが、円高等の内外の経済事情のまことに著しい変化によりまして大きな影響を受けている地域の活性化を図り、また同時に雇用も、現在策定中の経済計画において、大きな重要課題としてこれは受けとめておる次第でございます。四つの分科会に分けてこれをやっておるわけでございまして、その安定を確保するということが現下の重要な課題と、はっきり申し上げて考えております。
そういう意味におきまして、先生の御指摘等も当然それに関連する問題になってくると思いますが、これは政府委員の方に答弁させたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/47
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048・勝村坦郎
○勝村政府委員 お答え申し上げます。
本四架橋の開通が四国経済あるいは高知県の経済にどういう影響を与えるかという御質問と思いますが、私どもはじかに本四架橋の影響の分析はいたしてございませんけれども、御存じかと思いますが、既に四国経済連合会あるいは本四架橋公団等が架橋の経済的影響について予測をいたしてございますが、それによりますと、六十五年までに生産活動では一・九%ぐらいの増加、あるいは観光者数では、延べでございますが二千四百四十万人、三十数%の増加が見込めるというような計側がございます。ただ、四国内の県別に申しますと、その半数は香川県への観光客でございますが香川県への影響、あと愛媛、徳島と続きまして、高知県では一一%ぐらいの影響というようなことになっております。
なお、経済企画庁では、年間二回ほど、地域景気懇談会というのをやっておりますが、ことしの一月に、たまたま四国では高知を選びまして伺って、いろいろ地元の御意見を伺ったわけでございます。そのとき、いろいろな御意見がございましたが、特に観光関係では、やはり本四架橋によりましていい影響が出てくることをかなり期待しておられるというお話がございましたが、ただ高知という地理的な条件上、四国内の交通網の整備ということがどうしても必要であろうという御意見、御要望もございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/48
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049・井上泉
○井上(泉)委員 何か妙につかみどころのない話ですね。どうも私の頭が悪いか、あなたの説明が上手なのかわかりませんけれども、つかみどころがないのですが、観光客というのはこれは移動するので、やはりその地域が活性化するような、地域自体の中にそれぞれの産業というものが誘致をされていくような方法でなければならぬと私は思うわけです。本四架橋ができて、それで高知県、あるいは高知県を含めた四国四県がどういうふうに変わっていくか、これはプラス面もマイナス面もある、そんなマイナス面をどうやって除去していくかということが行政の課題として考えざるを得ないと思うのです。
そういう点について、これは私も勉強不足で恐縮ですが、ひとつ経済企画庁の優秀な調査網を駆使して、本四架橋後の四国の経済の影響というか変動、それに対応する政策というものをこの国会中にまとめてもらえぬでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/49
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050・勝村坦郎
○勝村政府委員 お答え申し上げます。
御説のとおり、私どもとしましては最大限の努力をいたしまして地域経済の動向の把握をしてまいりたいと思いますし、また本四架橋というのは御指摘のとおり地域に非常に大きな構造的変化を与える、またその結果を分析いたしますのにある意味では非常にいい機会だとも思いますので、できるだけの努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/50
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051・中尾栄一
○中尾国務大臣 先ほど事務当局から答弁いたしましたように、大体年二回くらい各地域でやっておる、その一つを昨年当企画庁では高知でやったわけでございます。そのときに、いかようにこの問題点が地域住民並びに農業、商業、製造業、観光業その他に大きな影響をもたらすかという報告を私は受けております。したがいまして、ほかならぬ井上先生、この問題点では大変熟知されておる先生でございますから、その点私どもも鋭意努力をして、可及的速やかにどのような方向でこういう問題点を活性化していくかということを十分勉強させまして、それでなおかつまた答弁に付したい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/51
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052・井上泉
○井上(泉)委員 通産大臣は去年の演説の中で、総合保養地域整備法案を提出する、地域の快適でゆとりのある国民生活の充足と国土の均衡ある発展の確保という中でそういう法案を出しておられるわけですが、そういう中に、過疎地の例えば高知のようなところはこの法案の対象になって、何か国としては行政の施策を講じておられるかどうか、この機会に承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/52
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053・杉山弘
○杉山政府委員 御案内のように、昨年通産省は他省庁と共同いたしまして総合保養地域整備法案を出して、成立をさせていただいております。現在は、この法律に基づきまして各都道府県が具体的な整備計画をつくって承認を受けるという段階になっておりまして、私の承知いたしておる限りにおきまして六ないし七の府県から具体的な整備計画の承認の申請が取りまとめ省庁であります国土庁に提出をされている、こういう状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/53
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054・井上泉
○井上(泉)委員 こういう大事な全国的な視野で物事を検討しなければいかぬ委員会でローカルのことを言うて恐縮ですけれども、これは地元のことでありますが、高知県が国民休暇県構想というものを打ち出して、今度も行政改革の中で国民休暇県局という新しい局まで増設して大々的にやっておるわけです。この総合保養地域整備法の趣旨に一番合致した地域だ、こう思うわけですが、これは出ておるか出ておらないか。これは県から出てきてなければ用事にならぬわけですから、あえてそのことをどうこう言うわけでないですけれども、出ておるとするなら、そういう点についても十分考慮を払っていただきたい。これは返事は要りませんが、そのことを申し入れておきたいと思います。
そこで、最後に中小企業の問題について一点お尋ねしたいと思います。
というのは、経営指導員の制度というものがあります。この経営指導員制度によって、弱小な中小企業者が非常に恩恵を受けておることは事実であります。そしてその中で、特に同和地域における経営指導員の役割というものも非常に重要な使命を持ってやっておるわけですが、予定では、今度の予算の内容では同和地区の経営指導員は全部なくして、そうして全体の経営指導員の枠の中へ入れてしまう、つまり目的が同和地域というものから今度それはのけたというようなことで、地元の方でも大変不満に思っておるわけですが、この制度はどうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/54
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055・岩崎八男
○岩崎(八)政府委員 御指摘のとおり地域改善対策、これは全般でございますが、政府全体として、地対財特法というのですか、この期限内六十六年度までに可能な限り一般対策に移行するという基本方針が決まっております。そういう一環として、今御指摘の地域改善対策担当経営指導員についてもできるだけ計画的に一般対策へ移行していく、こういうことで今回スタートすることにいたしました。ただ、この移行が円滑に行われないといけませんので、六十三年度においてはさしあたりこの指導員の五%を一般指導員という形にする。したがって、同和地域に対する経営改善指導そのものが減るということではございませんけれども、今専らその方へ充てられております経営指導員の五%をさしあたり一般経営指導員の方へ移行させたい、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/55
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056・井上泉
○井上(泉)委員 時間がないのでいろいろと指摘をしたいわけですけれどもやめますが、そういうものをなくして、五%でものけていく。それなら今度、六十三年度はそう、今度は六十四年度はこうということで、結局なし崩しにつぶしてしまいやせぬか。役所もメンツというか何か余りにも形式にとらわれて、同和地区と同和地区外とは別々にせぬでも一緒にしたらいいんじゃないかというような形でやっておると思うけれども、やはり同和地域の人はその地域の中の特殊な中小企業者としての振興策、経営指導員というものを望んでおるわけですから、私はそれを五%でも抜いていくということは反対です。いずれまた機会を見てこの問題についても論議をしたいと思うわけであります。全般的な同和地域の産業振興について、通産省の持っておる役割を私は強く求めるわけであります。
ちょうど時間が来ましたので、以上申し上げて、きょうの私の所信表明に対する質問を終わります。また今後、何かの機会に御質問申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/56
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057・奥田幹生
○奥田(幹)委員長代理 水田稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/57
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058・水田稔
○水田委員 大臣の所信表明と私どもが理解しておることも、経済の国内の現状というのはそれほど違ってないわけでございます。しかし、それに対応する予算を見ますと、こういうことになっていますね。例えば石特会計を除いた通産省の予算は六十二年度に比べてマイナス〇・四%、中小企業も一般会計ではマイナス〇・一%、特に大臣も指摘されておりますように、全体の企業数の九五%を占める中小企業、特に下請等は大変な状況にある、あるいはまた、これまで日本の産業の基礎を支えたところの基礎素材産業というのはまだ大変な状況にあるわけです。全体的に言えば、一昨年の十月から回復基調にあることはもう間違いないわけです。
そこで、国民の雇用の問題あるいは地域の産業ということを考えれば、こういうところへ対して積極的な対応が必要。もちろんこの国会に融合化法案であるとかあるいは信用保険の限度額の引き上げ等それぞれの施策は得られておるわけですが、全体的な予算で見る限り、例えば防衛費は四・四%、あるいはまた公共事業はNTTの売却益を含めた予算で見ると約二〇%伸びる、政府はこういう必要だというのには積極的な手を打っておるわけです。先ほど井上委員からもお話がありましたように、まさに実力大臣のもとでこの日本の経済の特に今問題になっておるところへ対する手当てというのは、極めて不十分ではないかということが痛切に感じられるわけであります。そういう点についての一つの大臣のお考えを聞かしていただきたい。
もう一つは、先ほど申し上げましたように、我が国の産業のいわゆる加工組み立てを支えたというのは基礎素材産業が品質のいいものを安く提供した、こういうことでありますが、それが撤退、縮小を続けておるわけです。一体どこまでいったらいいのかということで、大変な不安があるわけであります。鉄鋼は幸い一時的に、大変な合理化とその中で需要が一億トンに近いあるいは超すというような状況の中で今もっておりますけれども、長期に見ればこれも将来展望というのは下がっている、そういう見方ができると思うのです。非鉄金属その他についても、まさに今これからどうなるんだ、そういう思いでおるわけであります。ですから、一次産業あるいは二次である基礎素材産業というのを、これから日本の産業構造の中でどういうぐあいに位置づけて対応していこうとお考えになっておるのか、この二つの点を大臣にまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/58
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059・田村元
○田村国務大臣 先ほど御指摘がありましたが、通産省の六十三年度の一般会計予算は六千二百二億円、前年対比マイナス四・七%でございます。しかし、その減少分の大半は石油税を財源とする石特会計への繰入額の減でございまして、その他の経費は対前年度比マイナス〇・四%程度とほぼ横ばいでございます。
通産省としましては、国際社会との調和と経済の活性化というものを図るために内需の拡大、構造調整の定着といった多くの政策課題を抱えております。現在の予算規模が率直に言いまして最善のものとは考えておりませんけれども、しかし現実的には財政再建の要請の声が強い中で経常経費の合理化等、知恵を絞りながら予算面での制約に対処してきておるところでございます。特に来年度予算につきましては、通産省計上の一般会計予算のほかNTT株の売却益による無利子貸付制度の活用や産業投資特別会計の活用等により、必要な経費はむしろ前年度に比べプラスになっておりまして、各種の政策運営に支障がないように配慮してございます。六十二年度にようやく減少傾向に歯どめをかけて若干ふえたわけでございますが、本年もわずかではありますけれども前年度に比べてふえております。
なお、中小企業対策予算につきましては、来年度一般会計予算は政府全体で、もちろん大蔵、労働省分を含みますが千九百五十二億円、対前年度比マイナス一・一%となっておりますが、産投会計も含めた政府全体の中小企業対策予算は二千二百八十九億円、対前年度比プラス〇・二%となっておりまして、従来までの減少傾向は先ほど申しましたように歯どめをかけました。昨年度に続いてプラスの伸びを確保して、融合化を初めとする各種施策の充実を図っておる次第でございます。
なお、もう釈迦に説法でございますが、中小企業も含めて企業への支援というものは、従来の一般会計から資金繰りの援助にだんだんと移行しておることはもう御承知のところでございます。そこで、こういうものとは別途、中小公庫、国民公庫、それから商工中金の六十三年度の貸し付け規模がおおむね二十兆円ということでございますので、この点は特に御参考までに申し上げておきたいと思います。
それから、基礎素材産業の問題についてお尋ねがございました。我が国の鉄鋼業、化学産業など基礎素材産業は、オイルショックを契機として構造的不況問題に直面してまいったのでありますが、事業者の自主的な構造改善努力、また最近の内需振興等によりましてどうやら回復傾向にあるようでございます。しかしながら、我が国基礎素材産業をめぐる環境につきましては、サービス経済化の進展、円高の進展、NICSの追い上げ等依然として厳しいものがございます。我が国基礎素材産業がこのような状況に適応して順調に発展していくためには、技術開発の推進、それから国際化への対応、産業基盤の強化などの課題を克服することが必要でございまして、昨年三月、関係業界、学識経験者等をメンバーとする基礎素材産業懇談会を設置いたしまして、対応の方途について検討していただいております。この懇談会は、昨年六月、鉄鋼業の合理化の方途を内容とした「新世代の鉄鋼業に向けて」という中間報告を取りまとめたことは御承知のところでありますが、さらに現在化学産業の今後のあり方について検討していただいておるところでございます。通産省としましては、これらの報告を踏まえまして、健全な発展のための施策を講じてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/59
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060・水田稔
○水田委員 特に三次産業がふえるから雇用は心配ないという言い方がされておりますが、一次産業、二次産業が全体的に衰退した中で、三次産業だけ栄えるということはあり得ぬと思うのですね。これはアメリカの今の経済のあり方、成り立ちから今日までの状況を見れば、その轍を踏んではならぬと思うのです。そういう意味で、基礎素材、これまでの基幹産業に対する将来の見通しをきちっと立てた対応をぜひやってもらいたい、それが一つ。
それからもう一つは、大変な経済転換の中で、円高で収益を上げておるところは余り言わないわけです。転換もできるわけです。できない、いわゆる円高によって大変なダメージを受けておるところが転換に困っておるのですから、金を借りてやれるという問題でもないわけですね。そういう点では、特に中小企業については、ことしは一般会計で〇・一%ですが、この五年間で見ると二二%減っておるわけですね。これは私どもも、中小企業は独立して専任大臣を置いてもっとやらなければ、一千九百億ぐらいの年間の予算で日本の中小企業全体の面倒を見切れぬじゃないかということは何回も言ってきたわけですね。専任政務次官を置いておるから一生懸命やりますというのは、これは大臣からの昨年の答弁でもあったわけでございます。そういう点では、中小企業に対する施策というのは、もちろん一つ一つの内容もありますが、同時にトータルとしてもっと、今これだけの大転換期には通産省が性根を入れてやるべきではないかということを申し上げて、これは答弁は結構ですから、次へ進みたいと思います。
さてそういう中で、一つは金属鉱業の問題、まさに数少ない国産の原料を使ってのいわゆる素材産業でございます。これは、もともと国際的ないわゆる構造不況の中にあって、順次休閉山が続いてくる。特に、昭和六十年九月のG5以降の急速な円高によって、当時を思い返してみますと、当時のエネ庁長官が、きょう対策を立ててもあす百八十円が百六十円になれば、前の日に立てた対策はもう全くパァになる、そういう嘆きをあのときにしみじみ言われたのを今でも思い起こすわけでございます。昭和六十年四月に金属鉱山の数というのは五十九あって、従業員が八千九百五十人、それが昨年十月には三十二の鉱山で三千四百三十六人ですから、現在既にもう半分以下。さらにこの二月の末には、ベースメタルで見ますと、八谷鉱山が二月に閉山するということになり、また鉄鋼との関係で、釜石の鉱山が三月の末に閉山されることになるわけです。そうしますと、あと残るのは四つでございます。
こういう状況を見るときに、六十一年の九月に鉱業審議会が「今後の我が国非鉄金属産業のあり方と鉱業政策の方向」というのを通産大臣に建議したわけでありますけれども、その当時のドルと円の関係は今とは全然違います。既に百三十円を切る状況の中にあるわけです。これは、鉱山を経営しておる経営者の側もそこに働いておる人も、大変なつらい思いをしながら今日まで取り組んできて、やってもやってもなお閉山ということになっていく、努力のしがいはないのか、こういう思いでおるわけであります。まさにこういう点では、ここはもう剣が峰というところへ来ておるわけでありまして、そういう点では、単に円ドルの関係を見ても、これからさらに円が弱くなるということはあり得ぬだろうと思うのです。一般的な見方は、アメリカの経済との関係で言えばさらに円が高くなっていく、そういう感じがして仕方がないわけであります。
一体こういう状況の中で、国内の数少ない資源である金属鉱山というのをどういうぐあいに今後通産省としては、もうこれは成り行きで仕方がない、百円を切るようなことならまあ安い外国のを買えばいいというお考えなのか。これは特に地域経済、地域産業との関係の深いものばかりであります。そういう点についての基本的な考え方をお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/60
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061・浜岡平一
○浜岡政府委員 金属鉱業が大変な苦境にございますことは、ただいま先生から数字を挙げて御指摘になったとおりでございます。
今御引用になりました六十一年九月の鉱業審議会の建議を見ますと、国内鉱山につきまして、非鉄金属資源の安定供給の担い手として、また海外資源開発のための技術涵養の場として、さらには地域経済の中核として、重要な存在意義を有するというぐあいにとらえております。国内鉱山につきまして、中長期的な見通しを三つに分けて立てておりまして、一つは、現状のままで成り立ち得る鉱山、二つ目は、縮小、効率化等の合理化を行えば成り立ち得る鉱山、三つ目は、閉山等の方向に向かわざるを得ない鉱山、こう分けまして、そのいずれに該当するかを経営判断にゆだねながら、合理化等につきまして積極的に国のバックアップをするべきであるというような建議が行われておりまして、この位置づけは基本的に今日も変わっておらないと考えております。
六十一年度は大変な苦境でございました。六十二年度も引き続き厳しい状況が続いていたわけでございますけれども、かなり合理化の努力も行われましたし、また、銅などの国際市況が反騰するというような局面もあらわれてまいりまして、何とか収益は回復途上にあるという状況でございます。しかし、御指摘のとおり、円の先行きは楽観を許さない状況でございます。六十三年度予算におきましても、引き続き安定化融資など所要の予算を確保いたしておりますし、また新たに、金属鉱業が持っております人材、技術、施設などの経営資源を活用いたしまして、これを国際的にも有意義に生かしていくというような新しい対策も考えているところでございまして、非常に厳しい状況でございますが、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/61
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062・奥田幹生
○奥田(幹)委員長代理 午後零時五分から再開することとして、この際、休憩いたします。
午前十一時四十六分休憩
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午後零時十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/62
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063・渡辺秀央
○渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。水田稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/63
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064・水田稔
○水田委員 大臣、先ほどエネ庁長官が一般的なお話をされたのですが、実は今より以上の円高が進めば、まさにあと四つ残っておるのは全部だめになるだろう。それでいいのかどうか。例えばアルミの場合は、ボーキサイトも輸入、電力の原料も輸入、そしてとうとう百八十六万トンの能力を持っておった日本で、日軽金の水力発電のたしか六万トンぐらいですか、それだけになってしまうということになる。それは通産省の決断もそうだったのかもしれませんけれども、そういうことでいいのかどうか。これは国内に資源のあるもの、それからまだまだ調査すれば、国内に賦存している鉱石はないとは言えないわけですね。
そういう点で、単なるいわゆるコスト、いわゆる国際比較の問題だけじゃなくて、その山を国内に存続さすということは、例えば掘削の技術の問題であるとか、それとの関連のひいて言えば製錬技術も含めて、そういう技術を国内に温存しないと、アルミの場合はまさにあそこまで落ちたものですから、国際価格の高騰の中で振り回される、こういうことが現実に起こっているわけです。そういう点で、今残っておる山について言えば、そういう経済的な側面だけじゃなくて、我が国にそういう技術を残すという点から、これだけは残すんだ、おまえたちも頑張ってくれ、こういうことが政府からも業界なり労働組合に言えるような何らかの――今までとにかく努力してもだめだった、成り行きでつぶしていかざるを得なかった、先行きも不安でたまらぬわけですね。そういうことに歯どめをする何らかの基本的なお考えを持ってもらいたいものだ、こう思うのです。
エネ庁の長官は、とにかく技術を持ったものをもってどうこうという話がありました。あるいは経営状態もとにかく少しはましになった、こういうお話ですが、そんな状態でやっておれば、まさにこの一年か二年の間には全部がなくなってしまう。そのことは日本の国内の資源、そして国内の産業の技術という問題で失う方が多いんじゃないかという気がするものですから、そういう点についての基本的なお考えを大臣にお伺いしたわけでございます。長官がお答えになりましたけれども、私の申し上げたようなそういう気持ちでこれからのいわゆる金属産業というもの、金属鉱業というものについてのお取り組みはできないものかということについての、大臣の基本的な御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/64
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065・田村元
○田村国務大臣 何といっても基本的にはやはり為替レートの安定だと私は思うのです。当初は私も百七十円プラス・マイナス十円と言ったこともありましたが、今はもうなりふり構わず、とにかく安定してくれという気持ちでございます。
これが基本的な問題でありますが、石炭鉱山なんかで我々は貴重な勉強をさせられたわけでございます。金属鉱山ももうぎりぎりまで合理化してきたわけでございますが、それに対してやはり最終的ぎりぎりどうしてもというような状況になれば、それは話は別でございますけれども、当面何といってもやはり経営安定ということを政策の中心にして、その方向で指導もし協力もしてあげるということが必要なんじゃなかろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/65
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066・水田稔
○水田委員 そこで、今苦労しながら操業しておる鉱山を考えてみますと、今ある鉱石を取るだけであれば、それはもうじり貧になるわけですから、少なくともその周辺を中心にした従来の鉱石より高品位な鉱石を確保していく。そのためには、探鉱ということが大事なことであります。
これは現在三段階方式でやっておられるわけで、御承知のように広域調査は全額国庫、精密調査はいわゆる国、都道府県、企業、こういう分担でやっておるわけでございます。もちろん実際の開発は企業ということになるわけでございますけれども、ここまで来たのを金属鉱業残していこうということになれば、探鉱というのを今まで以上に積極的にやるということが必要。そして資金の点でも、これは広域調査と精密調査を一緒にして、現に操業しておるところ、可能性のある地域を重点的にやっていく、そういう方策は考えられないだろうかどうか。そういうことでもやらないと、為替の変動によって、まさに今の鉱石を取るだけではこれはもうとてもじゃないが先行きが不安定、こういうことになってしまうと思うのです。その点についてのエネ庁の御見解をお伺いしたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/66
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067・浜岡平一
○浜岡政府委員 御指摘のいわゆる三段階方式によります探鉱活動につきましては、稼働鉱山周辺に特に力を注いでいくという点は全く先生御指摘のとおりでございまして、運用面ではそういう方向に沿って工夫を凝らしてまいりたいと考えております。
三段階になっているわけでございますけれども、各段階ごとに次第に企業化といいますか事業化の色彩が強まってまいりますものですから、企業者負担というような考え方が入ってまいるわけでございます。広域調査でございますと、かなり広い範囲につきましてベーシックな調査をするということで委託費ということでございますが、精密調査の方は今御指摘のように補助ということになっております。これの二つを一本にいたしますと、委託という方で残ればいいのでございますが、補助の方になってしまいますと、ちょっとデメリットも出てきてしまうかというような点もございます。また、使い分けの問題もあるわけでございますけれども、そういう意味でやはり三段階方式というのは維持していった方がいいんじゃないかと思っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、運用の妙を大いに発揮をしまして、成果を上げてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/67
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068・水田稔
○水田委員 広域調査というのは相当の広範囲になりますから、精密はある程度の限定したことになる。ですから、それを一緒にして中程度の規模ですね。ですから、現在操業しているところを中心にやれば、そう広い範囲にはならないと思います。そういうことなどを含めて、国が出す金は同じであっても、そこへ集中的に使うとか、そういう点では知恵を出してもらいたいな、そういう気持ちがいたします。
同時に、広域調査の中でレアメタルの問題ですね。これは来年度の予算でもふやしておるわけでございますが、これは南アフリカのいわゆるアパルトヘイトの問題で、日本が今あすこへたくさん物を売って批判されておる。そういう中で、あすこから必要なレアメタルということを言われておりますが、レアメタルの賦存量を調べれば、何もあすこに全部頼らなくてもいいというのが世界的にも今言われておるわけです。日本の国内でも、まさにこれからの産業を考えればレアメタルというのは重要な金属でございますから、そういう点では日本の全体をもっと今の金属鉱山を生かしていこう、そのためのいわゆる精密調査あるいは広域調査の上に、従来以上にレアメタルの探鉱をやっていく。そのことによって、金属鉱山もそれらと含めて一緒に生き残っていくことができることになるかもしれぬと思うのです。
そういう点で、これはこれから長い目でというのではなくて、今現実の日本の金属鉱業の実態を考えれば、レアメタルの国内賦存の状況を緊急に調査する、そういうこともやりながら金属鉱山全体のバックアップをしていく、そういうことが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/68
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069・浜岡平一
○浜岡政府委員 御指摘のように、レアメタルの供給は南ア、ソ連等、特定の供給源に依存しているものが非常に多いわけでございます。また、日本の金属鉱業にとりまして、いわば一つの新しいフロンティアでございますので、私どもも積極的に取り組みたいと考えております。
いわゆる三段階方式とは全く別枠でございますけれども、レアメタルの国内賦存状況調査という予算を計上いたしておりまして、六十年三月の鉱業審議会鉱山部会探鉱分科会におきまして、有望地域二十九地域というものをリストアップいたしておりまして、順次それに手をつけていくということになっております。六十二年度は五地域、六十三年度は六地域に取り組んでいくわけでございますけれども、御指摘のように逐次取り組みまして積極的に対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/69
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070・水田稔
○水田委員 もう一つ、金属鉱山を維持していく上で今探鉱のための減耗控除制度というのがあります。これは大変役に立っておるわけですが、昭和四十年から時限立法で二年とか三年とか延長を繰り返してきたわけであります。そういう中で、六十四年の三月末に期限が切れる。あと一年ですが、こういうことになるわけです。これはやはり、今申し上げました金属鉱山が生き残るための探鉱の重要性ということを考えれば、また企業が意欲を持ってやるためには、この制度はある程度恒久的なものにしていく、そういうことが気持ちの上での大きな支えになるんじゃないか、そういうぐあいに思うのですが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/70
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071・浜岡平一
○浜岡政府委員 減耗控除制度の考え方は日本だけではなくて、いわゆる鉱山の安定的発展のために国際的にもかなり広く認められている考え方だと承知いたしております。
六十三年度で現在の措置の期限が切れるわけでございますけれども、できれば確かに恒久化いたしたいと思っておりますが、いわゆる租税特別措置の仕組みでやっておりまして、それぞれ二年なり三年なりの期限を設けてレビューを重ねていくという一般的な仕組みがございますので、恒久化はなかなか難しいかと思いますけれども、今後ともこの制度を存続をさせていくことは必要不可欠と考えておりまして、大いに努力をしてまいりたいと思います。いろんな面での御支援をお願い申し上げたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/71
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072・水田稔
○水田委員 この問題で最後でございますが、これはもうこの委員会で私何回も申し上げたのですが、例えば鉱山と同時に製錬というものもこれは一体でございますが、そこで一番問題は何かというと、原料とも言うべき電力料が非常に高いということです。アルミが撤退せざるを得なかったのも、これは電力料の問題です。産構法が廃止になるけれどもフェロアロイはどうするかということが問題として残るのも、これは電力料であります。ことしの一月一日から引き下げをやったわけでございますけれども、一バレル十七ドル、百三十八円の計算、今百二十八円とまた十六ドル少々ということでございます。
そういう中で九千五百億円の積み立てがまだあるわけでありまして、あの電力料の問題のときにも申し上げたのですが、こういう産業の実態、日本の産業をどう残していくか、雇用をそこで守っていくかという点については、それぞれの産業が国際競争の波に洗われておる。電力だけはもう原価主義ですからという、コストの意識もない、そこまで言うと失礼かもしれませんが、原価主義なんだということだけではだめだろう。電力料の問題についても、こういう基礎素材、そして電力多消費の産業が日本の中でどれだけ生きていけるかということでは、エネ庁はそういう点をもっと真剣に考えるべきではないだろうか。国際競争をしていくというためには、電力だけじゃなくていろんな問題で、原材料について日本で使えば高くつくというものを少なくとも国際価格で、そしてその上に競争するのはそれぞれの企業の努力ですよ、こういう形をいろんな分野でつくっていかなきゃならぬと私は思うのです。特に非鉄金属、製錬に関しては、電力料というのがそういう点で大きなウエートを占めておる。今も日曜日を振りかえて働いたり、あるいは深夜を一生懸命やったり、夏分の割高なときにはとめるとか、そんな苦労をしながらやっておるわけですから、そういう点も含めて電力料問題についてはなお一層の努力を願いたい、こういうぐあいに思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/72
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073・植松敏
○植松政府委員 今御指摘のとおり、非鉄金属関係素材産業はコストに占める電気料金のウエートが大変多うございます。今御指摘ございましたように、電気料金につきましては六十一年六月以来、原油安、円高の進展を考慮しまして暫定料金で引き下げをやってまいりましたけれども、ことしの一月からは暫定料金切れに伴いまして本格的な料金改定をいたしまして、一層の料金の引き下げと、さらに料金制度の改正もいたしたわけでございます。
非鉄金属等の基礎素材産業につきましては、先生から今御指摘がございましたけれども、ロードを割合需要の少ない夜間にシフトをする、あるいはその他きめの細かい需給調整を行うことによりまして割安な料金が適用される需給調整契約制度というのがございます。多くの素材産業はこの需給調整契約に入って割安な料金を使うことができるようになっておりまして、この料金単価につきましても、今回の料金改定におきましてかなり大幅な引き下げになっております。また、需給調整契約に加入していない需要家につきましても、今回の制度改正におきまして季節別、時間帯別の料金制度を設けまして、相対的に夜間の使用量の多い基礎素材産業につきましてはかなりのメリットが出るものと考えております。
料金制度全体につきましては、御指摘のとおり原価主義と公平の原則、これは電気事業法で定められておりますのでそれ自身を変えることはできませんが、その枠組みの中でできるだけコストを反映しながらも大口の基礎素材産業等がより割安な料金が使えるような、こういった需給調整契約等の活用を今後も図ってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/73
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074・水田稔
○水田委員 産業全般の問題についてはまた別の機会にやらしていただきますが、同時に金属鉱業というのは地域に定着した産業、そしてやりよういかんによってはその地域に相当の雇用を確保することができるわけですから、山がつぶれるとまさにその集落が全部壊滅する、そういうことですから、そういう点を含めて、御答弁いただいたようなことでこれからもぜひ努力をしていただきたいということを申し上げて、この項目の質問を終わりたいと思います。
次は、白島の石油備蓄基地の問題について伺いたいと思うのです。この基地が昨年の二月三日の大しけで壊れてしまった。大破しておるわけです。きょう三月一日ですから、もう既に一年以上を経過しておるわけです。この委員会でも報告を聞いた覚えがありませんし、恐らく四百億円以上の損害と見られるわけですが、一体これはどういうぐあいになっておるのか、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/74
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075・内藤正久
○内藤(正)政府委員 今先生御指摘のとおり、昨年の二月三日から四日にかけての大しけで白島石油備蓄基地が被災したわけでございますが、その後、大きく分けまして二つのことをいたしてきております。一つは原因究明、もう一つは応急工事でございます。
原因究明は、今後の対策を考えます場合にも最も基本的な情報を得る作業でございますので、これには念には念を入れて実施をいたしております。
まず会社自身の原因究明の調査といたしましては、防波堤の被災の実態をまず把握いたしますとともに、その当時の気象、海象を把握いたしまして、かつそのときに来襲したであろう波浪の推計をいたしております。かつ、施工段階あるいは設計段階等の状況を把握して、予定どおりのものであったかどうかというレビューを行っております。さらに、特に時間がかかりましたのは耐波性の試験でございます。これは、その当時来襲したであろう波とケーソンとの挙動関係を模型をつくって実験をするということで、相当の時間を要しております。それで、ちょっとテクニカルになって恐縮でございますけれども、その実験は二次模型実験と三次模型実験と行っております。二次は、特定断面に対して波浪が当たった場合のケーソンの挙動を調べておりますが、これは四月から九月まで、その実験だけでもかかっております。三次模型実験は、角の部分のような立体的な部分の挙動を調べるものでございますけれども、これも六月から十一月にかけて実験がかかっております。そういうことで、綿密な実態及び実験を踏まえて原因究明に当たっておるというのがまず会社側の調査でございます。
それから通産省といたしましては、石油公団に指示をいたしまして、白鳥国家石油備蓄基地計画対策委員会を設けましてその検討をいたしておりますが、昨年末までに五回にわたって専門的な立場から検討をいたしております。このような検討結果を昨年の十二月二十五日に一応非公式な報告書という形で北九州市、これは港湾管理者としての責任があるということで、そちらに提出いたしております。それに対しまして、一月に入りまして、一層のなお深い検討の必要な部分があるという指摘を受けまして、現在その検討に入っておるところでございます。
いずれにいたしましても、原因究明は今後の対策を立てる基本でございますので、十分な対応を図っておるというのが原因究明の状況でございます。
それから応急工事の方でございますけれども、これはことしの冬を越えますための越冬態勢を整えるという観点から工事を行ったものでございまして、五月から始めまして十二月五日に越冬のための工事が終了いたしております。現時点におきましては、冬季には従来から工事を行っておりませんので、先ほど申し上げました原因究明の作業を継続中ということでございます。
それで、通産省といたしましては、先ほど申し上げましたように公団を通じて会社を指導するとともに、とりわけ安全第一という観点から原因究明を行い、あるいは公団を通じて会社側が関係機関に十分に協力するよう指導しておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/75
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076・水田稔
○水田委員 これがまだ建設途中ですから、ケーソンが流れたとかひっくり返ったとかいうことで済んでおるのですが、完成して五百六十万キロリットルが備蓄されておったら、この事故で油流出が恐らく起こっておっただろう。九州、日本海岸、瀬戸内海はもちろん、朝鮮半島から、場合によったら沿海州まで行ったのじゃないか。大変な自然破壊になる、大変な災害になるわけです。そして、五十六年にこの委員会でも、多くの人からこれは危険ではないかという質問をされておるのに、今答弁があったような、いろいろななぜ起こったかというような実験はやりました、絶対心配ありません、こう言っておるのです。それで起こった。
一年たったけれども、一年の間に四百億円の税金を使って、いわばこれはもう捨てたと同じですね。そういう状況が起こって報告もない。そして、本来ならばそれだけの税金をむだ遣いしたのなら国民に対しておわびがあってしかるべきなのに、そういうあれもない。私がこれを質問すると言ったら、資料を持ってきてくれた。これだけ持ってきたのです。これはだれが言うたのですか。まさにそういうお粗末なことをやったことを隠そうという意図があるからじゃないですか。三行ずつ書いてあるのを二枚ほど持ってきて、これです。私はまだもらっておりませんが、現地で調べた調査資料はこんなにあるというのですね。それをいただくことにしておりますから改めてまたやりますが、まさにそういう点では、国民の税金を使って仕事をやった、そこでこれだけの大変な事故を起こしたという感覚がエネ庁にはないのじゃないか、そういう気がして仕方がないということを申し上げておきます。
そこで、今海象、気象の調査もしておる、こういうことですが、気象庁来ていただいていますね。昨年二月三日の白島周辺の気象がどうであったかということを、ちょっと御報告いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/76
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077・荒川正一
○荒川説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。
昨年の気象はどうであったかという御質問だったと思いますが、気象庁の観測地点であります福岡及び萩の気象機関におきまして、昨年二月三日の記録を見てまいりますと、同日の風は、福岡におきましては四十八年間の統計を持っておりますが、もう一つ萩の測候所におきましては三十九年間の統計を持っておりますが、その間で最大の瞬間風速を観測しております。また、玄界灘付近の同日の波浪につきましては、気象庁は過去十六年間の波浪解析図を持っておりますが、それによりますと、二月といたしましては最大の波高を記録しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/77
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078・水田稔
○水田委員 風速なり波高は幾らだったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/78
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079・荒川正一
○荒川説明員 福岡の瞬間風速の最大値は、二月三日、北北西の風二十八・一メートル・パー秒であります。萩におきましては、北北西の風三十二・三メートル・パー秒であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/79
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080・水田稔
○水田委員 そうすると、福岡における四十八年間の中で二月三日以前の最大風速は幾らですか。それから、波高も言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/80
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081・荒川正一
○荒川説明員 先ほどの答えをもう一度申し上げます。
気象状況といたしまして最大風速と最大瞬間風速というのがございますが、通常、最大風速というのは十分間平均値の最大値であります。まず最大風速について申しますと、福岡では北の風十四・九メートル・パー秒であります。二月の記録といたしましては、昭和十四年以降の記録で第二位となっております。萩につきましては、北北西の風二十一・七メートル・パー秒でありまして、これは昭和二十三年以降の二月の記録として第三位でございます。
それから最大瞬間風速は、福岡では北北西の風二十八・一メートル・パー秒でありまして、これは昭和十四年以降四十八年間の記録の中で、二月としましては第一位の記録であります。それから萩では、北北西の風三十二・三メートル・パー秒でございます。これも、萩の二月の記録としましては三十九年間の記録の中で第一位でございます。
それから波浪につきまして申し上げますと、玄界灘の付近で、気象庁で外洋波浪図というのを毎日一回つくってございますが、それの二十一時の外洋波浪図によりますと、有義波高にしまして五ないし六メートルというふうに解析されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/81
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082・水田稔
○水田委員 つくるときに百年間の海象、気象条件を調べる、そういう点からいえば、それから何割も何倍もという異常な状況ではないわけです。この日、たまたま我が党の土井委員長が福岡へ飛行機で入ったのです。その瞬間的なところはいっていませんが、福岡へ飛ぶというのは余りとてつもなく気象条件の悪い状況ではなかったわけです。これは、波高が六メーターというのは十分耐え得る設計になっておるわけですね。ですからそういう点からいえば、もともとここへつくるときにこの場所が不適当じゃないか。玄界灘の荒波というのは、これはもう日本の国民だれでも知っておる言葉。元寇の役で元の大軍が全部沈んだのも、これは気象庁が観測所を置く以前の歴史的なそういう記録も、玄界灘にやるのなら当然調べるべきなんですね。そういう点からいえば、まさにこの場所へ設置を考えたことが誤りではなかったか。あるいはまた、この建設に当たっては、一つは漁業補償で大変な争いがあった。あるいはまた、これは当時の新聞に出ておりますが、政治家なり政治家の秘書のところへ金を持ってきた。その方は金と知らずに受け取ってすぐ供託しておりますけれども、業者が二千万円持ってきたことは間違いないようですね。そういうことが当時から言われてきた。あるいはまた、元請から下請へのピンはねが余りにも多過ぎるというようなことが建設を決める段階からあったわけでございます。そういう点からいうと、私がこれを質問すると言ったらこれだけしか持ってこなかったエネ庁の態度というのは、隠したいという気持ちがあるからじゃないですか。だれがこれを、この程度のものを持っていっておけばいいと言ったのですか。今の答弁でも、もう少しのことは、資料は私にもらえたはずなんです。
そこで、もう時間がありませんから、私は大臣にお尋ねする前に、これについては当然普通の会計検査であれば、そこに何があるかわからないけれども行って、むだ遣いがあった、こういう指摘をされるわけですが、これはまさに四百億はもう返ってこないでしょう。恐らくここへもっとやるとすると、これを手直しするだけでも最初からかかる以上の金がかかるし、さらにまだ、全体で二千百億ですから、それ以上の金がここにかかるだろうと思うのです。まさにむだ遣いがされた疑いが多分にあるわけでありますが、会計検査院はこれを調査されたことがあるのかどうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/82
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083・渡辺秀央
○渡辺委員長 気象庁荒川海上気象課長から、訂正発言がございます。荒川課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/83
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084・荒川正一
○荒川説明員 申しわけありませんでした。訂正申し上げます。
最初にお答えしました、福岡及び萩においてのこの日の風につきまして、それぞれ気象庁が統計しておる四十八年間及び三十九年間で最大瞬間風速を観測しておりますというように申しましたが、これは二月としてはというふうに、二月としては最大の瞬間風速を観測しておりますというふうに御訂正申し上げます。
もう一つ、二度目にお答えしました中で、福岡の最大風速は北の風十四・九メートル・パー・セックで、二月の記録としては昭和十四年以降の記録で第二位と申したようですが、第六位でございます。そのように御訂正を願います。どうも失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/84
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085・奥村勇雄
○奥村会計検査院説明員 ただいまの先生の御質問にお答えいたします。
御指摘の白島石油備蓄の事故に関しましては、本院としても大きな関心を持っておりまして、昨年の七月及び八月に白島石油備蓄会社の本社及び現地の会計を実地検査いたしました際に、事故の状況については把握いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/85
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086・水田稔
○水田委員 今申し上げましたように、気象庁からお話がありましたように、これは何百年に一遍の気象条件、海象条件ではないわけですね。しかも、それは徹底的な事前のモデルの試験もやった、こう言う。それがこういうことが起こったわけでありますから、これはまさに税金のむだ遣い、もう明らかにそう言えると思うのです。そういう点では、会計検査院としても厳重な検査をやってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/86
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087・奥村勇雄
○奥村会計検査院説明員 お答えいたします。
現在、本件事故の原因につきまして関係方面で専門的かつ技術的な検討が行われているところでございますので、本院といたしましてもその成り行きを見守り、その結論及び当局のその後の対応状況を見て対処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/87
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088・水田稔
○水田委員 もう時間がありませんから、最後に大臣にお伺いしたいのですが、今申し上げましたように、もともとあそこは危ないなと言われておるところに、大丈夫だ、大丈夫だと言ってやった。今、気象を気象庁から言ってもらったのは、千年に一遍の大災害のような、そういう気象条件ではないわけですね。ですから、当然玄界灘では通常考えられる気象条件の中で、建設段階でこういうことが起こった。完成しておったら大変なことですけれども、そういう意味で、これは通産省として、いずれにしたところで四百億円はもう使って、使いっ放しになってしまうでしょう。そういう事態が起こったということで、今会社が北九州の港湾局から言われて調査をしておるのは、港湾管理上で言われておるのです。
あの地区、あの地点に石油備蓄基地をつくるという判断をした通産省として、それは根本的に――人災かあるいは天災か、いずれかはまだわかりません。わからぬけれども、気象条件一つ聞いてみても、これは設計の誤りがある。基本的に言えば、この状態はわかっておったはずです。百年間調べて、百年間のデータがなければ、四十八年であと類推して百年をやる計算式があるわけですから、それでやっても当然考えられるぐらいの波浪によってあれだけ壊れたわけですから、これは一つは天災とは言い切れない。人災の中では、設計にあるのか、あるいは手抜きにあるのか、いろいろあると思うのですね。そういう点については通産省が調査をして、国民に対して明らかにする責任があると思うのです。大臣に、最後にその点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/88
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089・田村元
○田村国務大臣 私は、その当時、つまりここに決定をした当時のいきさつを存じませんけれども、しかしこういう結果が出たことは紛れもない事実でありますし、また今、私は率直に言って非常に参考になる質疑応答でございました。まずもって、とにかく終わり悪ければ万事悪しでございますから、国民のお金をこういうふうにしたことは紛れもない事実、私から通産省として、昔今を含めまして国民の皆さんに深くおわびを申し上げる次第でございます。
と同時に、やはりこれは真実を調査して、そして主権者たる国民の皆さんの前に明らかにすべきだと私は思います。早速エネ庁に対して、私から強く指示をいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/89
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090・水田稔
○水田委員 これに関連して、石油備蓄の基本的なあり方等についても質問する予定で、総務庁も来ていただいておりましたけれども、時間がありませんので、改めてまた別の機会にやらせていただくことにして、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/90
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091・渡辺秀央
○渡辺委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時五十九分休憩
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午後三時二十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/91
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092・渡辺秀央
○渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。二見伸明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/92
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093・二見伸明
○二見委員 午前の質疑ともし重複しておりましたらばお許しをいただきたいのでありますが、四時にちょっと中座されるそうですので、最初に通産大臣にお尋ねをいたします。
アメリカとカナダで自由貿易協定というのが締結されて、今議会で批准待ちでございますけれども、アメリカとカナダとのいわゆる自由貿易圏、これについて通産省は、率直に言ってどういう評価と影響を考えておられるのか、御見解をお示しいただきたいわけであります。
私の聞いておりますところでは、通産省はこれが世界経済に一種のブロック化をもたらすおそれがあるという考えを持っているようでありまして、日本としては特定の自由貿易協定には属さず、多国間主義の立場からガット新ラウンドをこれからも推進していきたい。またその一方で、アジア・太平洋地域との連帯を強化し、通商、経済面の協調のほか、円の域内利用を促す。さらに、他国の保護主義化を抑えるため日本の市場開放を徹底するなどの基本方針を固めていると報道されておりますけれども、アメリカとカナダとの自由貿易協定、自由貿易圏というものに対して、通産省はどのような評価と、さらにこれに対する我が国への影響、これをどのように認識しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/93
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094・田村元
○田村国務大臣 米加自由貿易協定は、我が国にとって両方ともそれぞれ重要な貿易相手国でございます。世界経済の中でも重要な地位を占めておる米加両国間の協定であるということもありまして、この協定の我が国経済及び世界経済への影響というものに注目をいたしております。
この協定は、所要の手続を経て来年一月から実施されると聞いておりますが、米加両国間の自由貿易の促進によって両国経済が活性化し、その活性化を通して世界経済の安定に資するものというならば、これは結構なことで期待をしたいと思います。
なお、我が国としては、この協定が、率直に言って地域主義に陥らないように、そういう観点からガット、OECDの場で議論をしていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/94
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095・二見伸明
○二見委員 確かに、この自由貿易協定というか自由貿易というものが、米加両国にとってはそれぞれいろいろなインパクトを与えて活性化するかもしれないけれども、その運用によっては地域主義化、ブロック化になった場合にはマイナスの影響が出てくるという感じを私はしているわけであります。
それで、竹下総理はことし訪米されたわけでありますけれども、アメリカから、アメリカがカナダと同じように日本と自由貿易協定を結びたいというような意向が、公式あるいは非公式に打診はあったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/95
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096・田村元
○田村国務大臣 日米間で自由貿易協定を締結したらどうかという考え方につきましては、おととしの七月にマンスフィールドさんが講演で発言をしておられます。それからまた昨年の十二月には、例の有名な下院のギボンズ貿易小委員長も、議会演説で日米自由貿易協定の交渉開始を提言しております。さらに先般、竹下総理の訪米に際してバード上院院内総務から、日米自由貿易地域を検討してみてはどうかとの提案があったとのことを聞いております。しかし率直に言って、アメリカからこの自由貿易協定に関する公式の打診はまだ全然来ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/96
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097・二見伸明
○二見委員 どうなんでしょうか。やはり我が国としては、アメリカとの間でもこうした自由貿易協定を将来にわたって結んだ方がよいという御判断を通産省としてはお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/97
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098・田村元
○田村国務大臣 これはいいとも悪いとも一概に言えないことで、いろいろな面から検討をして、慎重の上にも慎重を期さないと、何とも発言のしようもありません。もちろん全然だめと言ってしまうこともどうかと思いますけれども、慎重に検討ということじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/98
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099・二見伸明
○二見委員 実は、アメリカが日本に対して自由貿易協定を非公式にいろいろ打診してきているという話は聞いているわけでありますけれども、その際また、日本はアメリカと自由貿易協定を結ぶというよりも、アジア・太平洋経済圏で自由貿易協定というか自由貿易圏を構築した方がよろしいのではないかというサゼスチョンもあったやに実は聞いているわけであります。私は、日本のこれからの生きるべきといいますか、日本としてはアジア・太平洋経済圏の中核としての役割をこれから果たしていくべきだと思っております。
ただ、これを言いますと、かつてのいわゆる大東亜共栄圏の発想に受けとられかねない危険性があるわけでありまして、日本がアジア・太平洋経済圏の中核としての役割を果たすということは、大東亜共栄圏の発想とは全く異なった、全く異質なものでなければならないし、その結果、例え結果としてであれ富が日本に集中するというようなことがあってはならない。そういう前提を踏まえた上で、アジア・太平洋経済圏の中核としての役割を果たしていくべきではないかと実は考えているわけであります。
ですから、一度にそういくわけでもないでしょうけれども、当然そのためには、円がアジア・太平洋経済圏で主要準備通貨になるために日本としても努力をしなければならないし、その努力をするということは日本国内にはね返ってきて、日本としてもやはり日本国内に痛みを生じる結果にもなるかもしれない。しかし、そうした痛みを分かち合いながらも、アジア・太平洋経済圏の中で日本が中核としての役割を果たしていかなければならないと考えているわけです。そのために、将来としてはこのアジア・太平洋自由貿易圏というものを目指しながら、それに向かってのいろいろな通商上の努力や何かをしていくべきではないかと考えているわけです。
また、通産省の中にも福川事務次官を中心として勉強会を持つことになったというような新聞報道もございますけれども、大臣、どうでしょうか。例えば私は、日本だけが中核というと大変語弊があるので、アメリカの西海岸がこの中に参画してきても当然いいし、もちろんオーストラリアがその中のメーンになってきてもいいわけです。日本だけということではなくて、そうした国が中心となって、大平さん当時の言葉で言えば環太平洋経済圏、そうしたものを描きながら中核的な役割を果たしていくべきではないかと思っているわけですけれども、大臣、御見解はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/99
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100・田村元
○田村国務大臣 まさにおっしゃるとおりでありまして、日本が往年の大東亜共栄圏のごとき尊大さを持っては絶対ならぬということです。と同時に、よりよき魅力あるマーケットに日本がまずなっていくという必要があると私は思います。御指摘の趣旨は、今後の世界経済の健全な発展を図る上で重要な点と思います。
この自由貿易協定とは、具体的には締結国間の実質的にすべての関税などを撤廃することを意味しておりますけれども、第三国に悪影響を及ぼさないことが重要であります。このような自由貿易協定は、締結国間の貿易を促進し、当該国の経済の活性化、ひいては世界経済の安定に資することが期待される。ところが、アジア・太平洋地域は経済の発展段階もさまざまであります。いろいろな段階にあるわけです。ですから、現実に自由貿易協定の締結の具体的可能性を直ちに検討するまでに機が成熟しておるとはまだ思えません。しかしながら、アジア・太平洋地域は潜在的な成長の可能性が極めて高いわけであります。当該地域の供給力の増大など、今後世界経済に占める比重は一層増大する見通しであります。このような観点を踏まえて、アジア・太平洋地域の健全な発展及び世界経済運営の円滑化のためにアメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランドを含めた当該地域全体の協力を推進することが重要と考えます。
実は、私が昨年オーストラリアに行きましたときにオーストラリアの側に、まず環太平洋の経済貿易の連帯を進めるために我々がしばしば会うというようなことはどうだろうか、こう言って、全く僕の思いつきで提案をしたわけですが、向こうは非常に賛成して、ところが何とはなしにそのままになっておったと思っておりましたらこういうような表現が出てきたというので、一粒の麦まだ死せずかなという感じで、今私自身も勉強しておるというところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/100
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101・二見伸明
○二見委員 古い話になりますけれども、私が学生を終わったころかと思うのですが、いわゆるECができた当時に、ECと同じようなものを日本を中心としたアジアにつくろうじゃないかというような話がありました。しかし、当時は一ドル三百六十円であり、しかも日本の国は輸出に頼らなければやっていけないというような状態であり、確かにアジアでは日本は当時も唯一の先進工業国家であったけれども、アジア全体をまとめていくだけの力はないというようなこともあって、そうした構想が立ち消えになったことをおぼろげながら記憶しているわけであります。確かに大臣おっしゃるように、この地域は経済の発展段階も全部違いますから、ヨーロッパが経済的に統合されるあるいはされたのとは条件は違うわけですね。ですから、もしそういう構想を描いたとしても道は決して近くはないと思います。しかし、それに向かっての努力というものは必要だと私は思うのです。そのために日本の市場を開放しなければならぬ。具体的な品名や何か言うといろいろ問題が起こりますから言いませんけれども、例えばタイに対しても出さなければならぬものは、そういう努力はこれからもしていかなければならないと思います。
さらに私は一点、アジア・太平洋経済圏構想をこれから進めていくというか、NICSあるいは東南アジア諸国との連帯を深め、お互いにレベルアップしていくために日本としていろいろやらなければならないことがあるけれども、一つは、話が飛んで申しわけないけれども円借款の問題で改めてお尋ねしたいのでありますが、私はその前に、経済協力というのは大国である日本が資源の少ない、あるいはお金の少ない国に施し物をするんだという発想ではいけないと思う。経済協力というのは施し物でもなければ金持ちの道楽でもない。むしろそれは世界的な所得再配分機能であるというふうに私は思います。世界が健全に発展するためには、どうしても必要なのが経済協力だ、円借款もその一環だと私は思います。
大蔵省、見えておられますか。実は、その円借款を既にもう供与した、しかし供与した円借款がこの円高で債務国の方は大変な負担増となっている、これが現実であります。この現実の状況を、円借款の供与状況について事務当局の方でちょっと御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/101
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102・柏谷光司
○柏谷説明員 先生のおっしゃいましたとおり、円借款を供与しておりますその相手国が円高によりまして負担がふえている、これも確かに事実でございます。しかしながら、開発途上国全体で見ますと、円借款よりも民間銀行からの貸し出しあるいは輸銀からの貸し出し等が多いわけでございます。それと比べまして、いわゆる円借款の金利というものはまだ安い、また期間も長いということで、相対的な意味では、民間銀行からの借り入れあるいは輸出入銀行からの輸出信用よりは円借款の方が負担は若干安くなっているということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/102
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103・二見伸明
○二見委員 私がいただいた資料によりますと、円借款の供与状況というのは、一九八四年度は新規実行が四千百四十八億円で貸付残高が三兆百五十三億円です。一九八五年度では新規実行が四千百二十七億円、貸付残高は三兆三千五百八十億円、八六年度が新規実行五千百八十八億円、貸付残高三兆七千八百二十六億円、八七年度は九千億円以上になると予定されております。それで円高の状況はどうかといいますと、八五年九月は一ドル平均二百四十二円だった。ところがことし八八年二月の段階では一ドル約百三十円です。ですから、八五年から八八年の間に円は一・九倍の円高になっている。
ということは、円を借りた方にしてみればどういうことになるかというと、例えば一九八五年の貸付残高は約三兆四千億円でありますけれども、二百四十二円で計算をすると百四十億ドルです。しかし、今一ドル百三十円で計算をすると二百六十億ドルになる。円では三兆三千五百八十億円かもしれないけれども、ドル換算すれば、二百四十二円ならば百四十億ドルだ、ところが百三十円では二百六十億ドルになる。要するに、レートが変わっただけで新しい借り入れなしで自動的に百二十億ドル債務が増加したという勘定になるのです。このことを経済大国日本として、金融の論理だけでもって任しておいていいのかどうか、この点については通産省と大蔵省のお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/103
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104・田村元
○田村国務大臣 御指摘のとおりでございまして、発展途上国サイドにおいて円高に伴う債務負担増というものが非常に大きい、御指摘の数字であることもそのとおりでございます。実は私、インドネシアに行きましたときにスハルト大統領から、何とかしてくれぬか、金利下げてほしいけれども、そんなことぐらいじゃ間尺に合わぬのだというようなことも聞かされたわけであります。こういう事情がございますので、円借款の条件の緩和あるいは特に金利の引き下げについて、今申したように途上国から大変強い要求が出されておりまして、債務負担問題への対応策については、このような要望を踏まえながら今後真剣に検討しなければならぬと思っております。それもいいかげんな検討でなしに、抜本的に検討をしなければならぬと思うのです。わずかの間に倍近くなったんですから、これはもうサラ金もいいところで、本当に聞いていると何のためのあれかわからない。しかも円借というのは、さっきおっしゃったように日本が恵んでやるものじゃないのです。日本が崇高な国際的な責務を果たす、こういうことですから、当然我々は真剣に考えなければならぬだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/104
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105・柏谷光司
○柏谷説明員 ただいまの大臣から御答弁いただきました点もございます。また、片や確かに二見先生のおっしゃったように二年前と比べたら一・九倍ほど円が高くなっております。
しかしながら、また別の関係から申しますと、私ども、円借款は長年一定額でもって貸しておるわけです。ですから、ある時点からある時点をとらまえたらたしかそういうこともございますが、もっと円高になる前の円がまだ安かったころの時点から比べると一・九倍という数字ではないわけでございます。御案内のように、為替レートは大変上がったり下がったりするものでございますが、ただ私どもが出しております円借款というのは、大体毎年同じような金額を同じような国に出しておるわけでございます。ですから、長い目で見た場合には何も二倍になっているわけではなくて、それはもっともっと下がっている、平均的には安定しているということは一つの問題として言えます。
それから第二点、先生のおっしゃったとおり、残高で二年前と比べると例えば百三十億が二百六十億になったとかそういうことがあり得るかもしれませんけれども、ただ債務返済国といたしましては、その二百六十億を全部出すのではなくて、そのうちの元本と利子を配分して払うわけでございます。ですから、全体の残高の例えば一割弱の金額を大体毎年払うわけでございます。それで言いますと、確かに円高で苦しいことは事実でございます。また大臣もおっしゃったとおり、インドネシアなんか大変苦しいという事情もわかります。しかしながら、一・九倍になったからそれがすべて残高ベースで響くということではないわけでございます。さはさりながら、何もやってないかというとそうではございませんで、いろいろな問題がございますが、私どももできる限り努力しておりまして、ちょうど今から一年ちょっと前の昨年の一月に円借の平均金利を〇・六%ほど下げている、そういう事情もございます。
〔委員長退席、与謝野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/105
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106・二見伸明
○二見委員 これは大蔵省に申し上げたいんだけれども、日本が円借款している相手国が日本と同じような経済のレベルにある、ならばあなたのその話はわかるのです。しかし、日本は紛れもない世界の経済大国なんです。金融の論理でもって過去の円借款がどうのこうのと議論されたんでは、それは日本としての国際的責務を果たせなくなるんではないだろうかと私は思います。私は、むしろ円借款で苦しんでいる、ドル建て円高によって苦しんでいる開発途上国、債務国のためには、昔の高金利時代の借款を借りかえてやるとかあるいは既応の借款の金利を下げてやるとか、円高進行に伴う実質的な負担増――新しく借りたわけではない、円高が進んだために負担増になってしまった、これを例えば免責してやるとか、そうした思い切った手だてを打たなければならないと私は思っているのです。
開発途上国の累積債務というのは日本一国だけで解決できる問題ではなくて、恐らく先進国がそれこそ本気になってこれを解決しなければならないときが来ると思いますし、これは全く私の個人的な意見ではありますけれども、力のあるある国が、昔の言葉で言えば徳政令だ。そのくらいのことまでしなければならないような事態だって私は来ると思っているのです。ですから私は、大蔵省がくれぐれも金融の論理でもって円借款の問題を取り扱ってもらいたくない、このことを申し上げておきたいと思います。よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/106
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107・田村元
○田村国務大臣 アメリカが、物価が上がらない限り、基軸通貨が自国の通貨であるということで為替レートに無関心という場合があります。しかしこれは、日本から見れば黒字国と赤字国の問題なんです。ところが、途上国に対する円借款、これは全然趣を異にします。ODAでも、日本のODAはまことにその中身は貧しいものがあります。
率直に言って、私は、今の答弁は国際的に恥ずかしい。大蔵省はこんなばかな答弁をして、私は恥ずかしい。なぜ国際的に貢献をするという日本の崇高な義務というものを感じないのか、日本の円だけ大蔵省で毎日勘定しておったらいいのか。私は、本当に今の答弁を恥ずかしく思います。これは、与党野党を問わず御協力をお願いして、私は大蔵省を説得したいと思います。大体、今のようなこういう大事な答弁を、私はしっかり知らぬ人だが、それでは問題にならない。こっちは国務大臣として答弁しておるのです。ですから、先ほどの点は余り深い関心をお持ちにならないで、私の答弁の方に関心をお持ち願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/107
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108・二見伸明
○二見委員 私も、大臣の答弁に深い関心を抱いて今後の推移を見守ってまいりたいと思いますし、やはり日本がこれだけの経済力を、開発途上国のために今こそ発揮すべきときだと私は思います。東南アジアやそれらの国から、ああ日本は今度は心と心の通い合える友達だなと言われるようにならなければ、日本の本当の意味での存在価値はないと思うし、日本が国際的に孤立してしまうんじゃないかなという気持ちも一方ではしているわけであります。
大臣、大蔵省、結構でございます。
経済企画庁長官、経済見通しについて若干お尋ねをいたします。
長官は、八八年度、六十三年度の日本経済は「内需を中心とした着実な拡大が図れる」と述べておられます。しかし私は、日本経済を考えた場合にやはり無視できないのは、これは日本経済だけではなくて世界経済もあわせて考えた場合に無視することのできないのが、アメリカの経済の動向だと実は思っております。アメリカの経済の実質GNP成長率は、八五年が三・〇%、八六年が二・九%、八七年が二・九%であります。それで、ことしの八八年のアメリカの経済成長率ですけれども、もし数字が違っていたら御訂正いただきたいのだけれども、たしか昨年の暮れにアメリカは、三・五%というのを二・四%に下方修正しました。その後二・九にまた戻したという情報も私は聞いておるのですが、しかし民間の調査機関では一%台を予想するところもありますけれども、アメリカの八八年の経済というのは、八五年、八六年、八七年に比べて横ばいまたは若干下目というふうに考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/108
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109・中尾栄一
○中尾国務大臣 先ほど来、大変に造詣の深い先生のお話を聞いておりまして感動しました。
私は、大体マクロ的にとらえるわけでございますけれども、八八年のアメリカの経済は、個人消費や住宅投資の伸びが鈍化しておりますけれども、輸出は依然として好調な伸びを続けていることもこれまた事実でございまして、設備投資も回復基調にある、このように判断をしております。そしてまた、引き続き緩やかに拡大をしておる、こうも言えると思います。また、双子の赤字という、これは先ほど御指摘になった日本の内需、外需との関連にもなるわけでございますが、貿易収支の赤字も依然大幅でありますが、縮小の兆しがございます。
今後につきまして、輸出の好調が持続すれば生産、設備投資への好影響が続くものと思いますけれども、経済の拡大はさりとて、八七年十月の株価の大幅な暴落というのは、これは見きわめる必要があるのではないかな、このように判断をしております。
その点については、政府委員からもちょっと詳しく説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/109
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110・勝村坦郎
○勝村政府委員 基本的な考え方は、ただいま大臣がお答えになったとおりであります。
ちょっと数字の点について御説明したいと思いますが、二・四と申しますのは、アメリカ政府は普通第四・四半期、第四・四半期で年内成長率をコメントしておりますので、八八年の年内の成長率が二・四%ということであります。したがいまして、昨年の年内成長率は三・八%でございましたから、そういう意味では勢いは鈍る。ただ、年全体を平均しました成長率はここ三年ほど二・九という数字が並んでいる、こういうことでございます。
内容につきましては、先ほど大臣がお答えしたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/110
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111・二見伸明
○二見委員 八七年のアメリカの経済の実質成長率は二・九%で――二・九が変わったのかな。そのうち内需が二・六で、外需が〇・三の寄与率ですね。数字が違っていたら教えてくださいね。というふうに私は伺ったわけでありますが、いずれにいたしましても、外需の寄与率が八七年のアメリカの経済ではプラスに転じていますね。八五年がマイナス〇・七で八六年がマイナス一・〇でしたから、八七年はアメリカ経済では、過去から比べると輸出が順調だったということになるんだと私は思うのです。しかも、昨年十二月のアメリカの貿易赤字の規模が百二十二億二百万ドルですか、前月比七・七%のダウンで、十一、十二月と連続して赤字幅が減少していることが、やはり輸出が伸びているということの一つの証左だと私は思います。
それで、これは輸出が伸びて赤字幅が減ったから、それではアメリカの産業が内需中心型産業から輸出志向型といいますか、そういう産業に体質転換したんだろうか。かつて日本は、日本経済を引っ張るために輸出、輸出と、こういきましたね。ところがアメリカは、輸出じゃなくて、国内需要を喚起することによって自分の国の景気を支えてきた。それが外国からの輸入、貿易赤字というものの拡大になってきたのだけれども、じゃこの傾向を見て、アメリカの産業がいよいよ内需よりも外に目を向けようというような体質に転換しつつあるというふうに判断してよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/111
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112・中尾栄一
○中尾国務大臣 先ほど先生の御指摘になりました二・九%はそのとおりでございます。アメリカの八七年の実質経済成長率は二・九%と、大体八六年並みの成長率を維持しておる、こう考えていただきたいと思います。
その内訳を概略申し上げてみますると、八六年の内需の寄与度が三・九%、それから外需の寄与度がマイナス一・〇%ということになりますけれども、八七年にはドル安等のもとに輸出が好調となって、内需の寄与度の二・六%に対して外需の寄与度が〇・三%になった、この計算どおりでございます。こうしたことから、内需の主導型から、かつて日本があったように輸出の主導型に成長しているんじゃないかという例を先ほど示されましたが、私どもの見解も、アメリカ経済は今や内需主導型の成長から輸出主導型への成長を徐々にたどる結果になりつつある、このように判断しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/112
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113・二見伸明
○二見委員 アメリカにとって喫緊の課題は、いわゆる双子の赤字を解消するということでありますし、それがひいては世界経済にとっても必要欠くべからざる要件になるわけですね。私はアメリカ経済を、アメリカの双子の赤字を解消するのには時間がかかるけれども、そのためにアメリカの内需というものを喚起するような政策はアメリカとしてはとるべきではないのではないかな。これは、アメリカの政策にくちばしを入れることは内政干渉かもしれないけれども、アメリカも日本に対して、内需を喚起しろなんて平気で言ってくるんですから、日本も言ってもいいと思うのです。
例えば、八七年第四・四半期は、設備投資も個人消費も両方とも落ち込んでおりますね。私は、アメリカ経済が立ち直るためには国内消費というのは抑えなければいけないと思う。抑えるためには、一方では歳出削減をしなければならないし、一方ではアメリカは増税をしてでも国内需要というものを抑える、そうした厳しい政策をとる必要があるんじゃないかというふうに私は思っておりますけれども、長官はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/113
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114・中尾栄一
○中尾国務大臣 多少内政干渉というようなことになるかもしれませんが、先ほど二見委員がおっしゃいました論理に従いまして私も言わしていただきますれば、大体同感の思いでございます。
アメリカの実質GNPの動向をまず見ますると、八七年の十月から十二月期には、一次改定値でございますが、前期比年率四・五%増となっておるわけですね。個人消費は三・一%減、民間設備投資は〇・五%減となっておるわけです。これらは七月から九月期の大幅増の反動によるところが大きいものと私どもは見ておるわけでございます。ただ、個人消費につきましては八七年から若干伸びが鈍化しておる傾向でございまして、今後とも、アメリカの対外不均衡是正の観点から見ますると、先生が御指摘のとおり、ある意味において財政赤字を含めて、程度の問題はございますけれども、消費的な国内支出が抑えられる方が望ましいのではないかな、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/114
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115・二見伸明
○二見委員 いずれにしても、私も長官と同じでございまして、ということは、これからアメリカの好景気に期待して世界経済が大きく伸びるということを考えてはいけないんではないか。むしろアメリカは双子の赤字で苦しんでいるわけですから、それを解消するために国内消費を抑える、そして内需型の産業を輸出型の産業に切りかえる。ということは逆に言うと、日本もそれだけある面ではアメリカの痛みを受けなければならぬということになる。
しかもアメリカへの輸出が、NICSからの製品が多い。アメリカは恐らく、NICSからの製品に対してもいろいろな措置をとってくるだろうと思う。そういうことになると、NICSはアメリカへ売る製品を日本に向けてくるということになって、理屈で言うのはそうなんだけれども、日本にとってもこれは厳しい国際的な責任を負わされることになるんだなというふうに思っております。しかし、その責任は日本は逃げてはいけないんじゃないか、受けて立てるだけの経済政策を確立していかなければいけないんじゃないかなと思いますけれども、大変一般論で、抽象的なお尋ねで申しわけないけれども、御感想はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/115
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116・中尾栄一
○中尾国務大臣 先ほどから何か二見委員のお言葉に全く同感の思いでございまして、先ほど来NICSの問題並びに、どっちかといいまするとパシフィックリムと申しますか環太平洋地域、この問題点がいろいろ取り上げられておるわけでございますけれども、全く同様でございまして、これは四十年前の日本の経済から見ますると、今日の日本のこれだけの発展というものはだれしもが考え及んだものではないと思います。同様に、今アジアはその状況の中にあるわけでございますから、そういうNICSあたりとの連携、あるいはまた、パンパシフィックじゃございませんがパシフィックリムの問題を含めまして、発展を考えていかなければならぬ。そのためには、日本はある意味においてNICSの圧力も相当出てきましょうし、また逆に、アメリカに行くNICSの物が日本に返ってくるというような形における日本への圧力もありましょうし、ありとあらゆる点で痛みは伴うと思います。しかしこの痛みは、現在の日本では乗り越え乗り越えながらもやっていかなければならない痛みだな、そういう中に世界の連帯の発展があるんだなということも、私も一衣帯水の意味で考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/116
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117・二見伸明
○二見委員 経企庁では新経済五カ年計画を経済審議会に諮問して、先日中間答申か何か出ましたね。これからさらに詰めていくのだと思いますけれども、私はやはりアメリカが苦しんでおる間、日本がその責任の一端を負うという基本的な考え方で、この新経済五カ年計画を最終的につくり上げていただきたいと思いますし、そのためにはできる限り高目の成長を盛り込めるような施策が必要ではないかな、私たちが四%台の実質成長率を期待できるような施策がとれないものかなというふうに期待をしているわけであります。固まった段階でないので数字の点は言いにくいかもしれませんけれども、お考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/117
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118・中尾栄一
○中尾国務大臣 五カ年、五カ年ごとにそういう経済政策を打ち出しているわけでございまして、これで十一本目に相なるわけでございます。ちょうど今から四年半前に、中曽根内閣のときに「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、これが出されたわけでございますから、そういう意味においては約五年目を迎えて、私もこれは強く要請しているのでございますが、今度は半年間くらいで上げろ。従来はこれは一年くらいかけているのでございます。しかし今度の場合は、竹下総理がサミットに行く前、少なくとも、私も出席いたしますOECDの閣僚会議くらいまでには仕上げてくれ、こう言うておるわけで、平岩外四会長を中心にいたしまして、四つのディビジョンに分けまして今詰めておるさなかでございますから、その数値の問題点については触れることはちょっとできかねると思いますが、いずれにしましても先ほど言うたような思いを十分にその中に織り込んで、そして成長率の問題も、先生の御指摘のような御意見も出ているやに承っております。そういう中で私どもも前向きに取り組んでいくべきかな、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/118
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119・二見伸明
○二見委員 ありがとうございました。長官、もし御予定があれば結構でございます。
それでは、質問を別の質問に変えたいと思います。いわゆる日米半導体交渉のことなんですけれども、この見通しはどうなんでしょうか。
昨年四月十七日にアメリカは、日本が半導体協定を遵守していないとして米国向けの工業製品の一部に対して関税の引き上げを行いましたね。その後六月に、二十インチカラーテレビを対象とする五千百万ドル相当の措置の部分が解除されましたし、十一月にはさらに八千四百四十万ドル相当分の解除が行われて、いわゆるダンピング部門の措置はすべて解除されたのですけれども、対日市場アクセスの部分が現在残されておりまして、日米間でこれが協議をされておりますですね。この見通しをお尋ねしたいのですけれども、その前に、外国系それから米国系の半導体の日本国内におけるシェアといいますか、輸入のシェアの数字があったら教えていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/119
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120・児玉幸治
○児玉(幸)政府委員 日米の半導体問題、二見先生御指摘のように、昨年の四月十七日以来異常な状況に入っておりまして、いまだに解決いたしておりません。
今お尋ねのございましたマーケットアクセスの関係での現状はどうかという点でございますけれども、ちょっと数字のことで細かくなりますが、まずこの半導体協定は六十一年の七月末に実質合意を見て、九月の初めにサインをいたしました。したがって、六十一年の前半というのが一つの物差しになります。それから一昨年、六十一年の暮れぐらいに協定ができてから数カ月たってどうなったか、それから最近、昨年の暮れぐらいの時点でどうなったかという、この三つの節目をとりまして数字の推移を見たいわけでございますが、まず六十一年の上期につきましては、通産省で主要なユーザー六十三社につきましての調査結果によりますと、月平均で百十八億円余りの外国系の半導体を購入いたしております。それが六十一年の十―十二月になりますと、この四半期の中の月平均でございますが、百三十一億円に上昇いたしました。さらに、昨年の十―十二月につきましては、これが月平均で百六十五億円に上昇いたしております。したがいまして、六十一年の上期の百十八億円に比べますと、現在の百六十五億円という最近の数字はどういうレベルかと申しますと、百十八億円に対しましては約四〇%の増加、それから六十一年の十―十二月の百三十一億円に比べますと二六%の増加、こうなっておるわけでございます。
したがいまして、購入額そのものは今御紹介いたしましたように伸びておりますが、実は日本のマーケットもその間に大きくなってきているわけでございまして、御質問のシェアということでもしお答えいたしますならば、六十一年の上期に一○・三%でございました外国系の半導体のシェアは、昨年の十―十二月期には一二・四%へと上昇をいたしております。この中で、アメリカ系とアメリカ以外の国から入ってくるものと両方あるわけでございますので、全体を合計して一二・四でございまして、もしアメリカ系だけをこの中からさらに抜き出せば、それは一一・九%というようなことでございます。
私どもといたしましては、絶対量では大変よく伸びておりますし、それからシェアについてもそれなりの上昇を示しているのではないかというふうに考えておりますけれども、どうもアメリカの業界あるいは政府の期待はもっと大きいものにあるようでございまして、なかなかこれではまだ不満だと言っているのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/120
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121・二見伸明
○二見委員 恐らく日米間で細かいところの議論が行われているんだろうと思いますし、その細かい議論をここで御説明いただいてもそれほどの大きな意味はないと思いますので、議論の中身は伺いませんけれども、ただ私は、やはりこれは日米それぞれが建設的な意見を出し合って解決しなければならない問題ですね。相違点を浮き彫りにするというよりも、むしろお互いに歩み寄っていく、建設的な意見を持ち寄りながらこれは解決をしていかなければならないと思うのですけれども、しかしもう四月十七日、満一年がもう目の前に来ておりますし、六月にはサミットもありますし、できれば四月十七日あるいは六月のサミットまでに何とか解決できないものかというふうに思っているわけですけれども、どうですか、交渉の当事者として、そこら辺の見通しはまだかなり厳しいものがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/121
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122・児玉幸治
○児玉(幸)政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては相当努力をして先ほど御披露いたしましたような数字をつくり上げていったわけでございます。実は、これは決してほっておいてできたことではないのでありまして、大手のユーザーに対しましては、そのトップを集めて通産大臣から何回も外国系半導体の購入の促進についての要請もいたしておりますし、それから半導体国際交流センターという財団法人も設立をいたしまして、そこでその見本市をやったりシンポジウムをやったりあるいはいろいろな情報提供をやるというふうなことで、日本側としては精いっぱいの努力をいたしているわけでございます。
ただ、今までのところ、例えば政府レベルで話し合いをいたしますと、とかくその数字に議論が集中する傾向がございまして、ただその数字は足りないとかいうふうなことを非難をしているということだけでは事態は進まないことは、まさに先生御指摘のとおりでございます。したがって、これから先私どもが今のこの異常な事態を一刻も早く打開するためにやらなければならないことというのは、建設的なアプローチと申しましょうか、非常にビジネスライクにどうやって建設的に日米の関係をいいものに組みかえていくかということでございます。
したがって、今私ども考えておりますのは、できるだけ近いうちに日米双方の業界、アメリカ側のサプライサイド、それから日本側でいえばユーザーサイド、そういった人たちに一堂に集まってもらって、そこで率直にいろいろな意見交換もし、またその商談の場もつくっていきたい。例えば、日本側でユーザーが新しい製品を開発いたしますときに、非常に早い段階から技術情報を提供いたしますと、それを使いながらアメリカの方のメーカーも対応することができるわけでございますが、そういったことをきちんと地道に積み上げていくことによりまして全体の雰囲気を変えていく、日米間の信頼関係を揺るぎのないものにしていきたいと考えておるわけでございます。
それじゃ、こうすれば間違いなく今の異常な事態がすぐに解決するかどうかという点、これは相手のあることでございますから、私がことで保証するわけにはいかないわけでございますけれども、アメリカ側もこういった建設的なアプローチについては非常に関心を持っておりますし、特にアメリカの業界は大変関心を持っております。したがって、当面はこういった方法論に全力投球をいたしまして、できるだけ早期に今の異常な事態が解消いたしますように全力を挙げたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/122
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123・二見伸明
○二見委員 日本には、この半導体交渉と並んで、最近アメリカのいわゆる反ダンピング攻勢というのですか、これが大分厳しいようでございますけれども、これは今どんなことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/123
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124・村岡茂生
○村岡政府委員 現時点におきましてはうわさの段階ではございますが、約二十数件にわたる商品につきまして、米国商務省を中心にいたしましてダンピングの調査が進められたり、あるいはその業界において調査が進められたり、あるいは法律事務所で調査をしたりというような状況にございます。今まで調査ということで行政府が確定したものは、そう急激に増加しているという状況にはないわけでございますけれども、今後どうなるかということにつきましては、先生御指摘のとおり、私どもも懸念をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/124
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125・二見伸明
○二見委員 実は、この反ダンピング攻勢に関連して、例えば日本の品物が日本で買うよりもロサンゼルスで買った方が安いとか、こういう話が出てきておりますですね。これは、例えばこの品物ですね。これはソニーだけれども、この同じ品物が日本の平均小売価格が例えば一〇〇とする。全く同じものが海外で例えば七〇で売られている。ダンピングじゃありませんよ。目玉商品、ディスカウントでやるのじゃなくて、平均小売価格が七○で売られているということになれば、これは問題だと私は思います。
それで、これは新聞報道でございますから事実かどうかお答えをいただきたいのでありますけれども、「また、輸出型企業に対する価格動向調査にも乗り出した。」これは通産省がですよ。「まず一月に日本製時計、カメラ、VTRなど日本での価格より海外市場価格の方が低いものの多い十数品目に対する内外価格差調査をした。米国がダンピング提訴を示唆しているファクシミリ、複写機などの事務機、建設機械、さらに乗用車を含む自動車などを対象に、近く実施する方針だ。」という新聞記事も一部あるわけであります。そうした同じ品物が、日本での通常の販売価格と海外でのディスカウントセールじゃなくて通常の販売価格で格差があるという事例は、通産省としてはつかんでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/125
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126・末木凰太郎
○末木政府委員 先生御指摘のように、日本国内で売られる日本品と海外で売られる日本品との価格差があるというような報道を最近しばしば見るわけでございまして、そういった報道については私どももちろん承知しております。
ただ、先生先ほどおっしゃいました、例えば日本国内で百ドルのものと全く同じものが七十ドルで売られていればという例をお挙げになったわけでございますが、これはそういうケースもあるかもしれませんけれども、かなりのケースにつきましては、製品の規格とか仕様が違うというのが輸出品と国内品の一般の姿でございます。また、物品税などについても、日本国内ではかかり向こうではかからない場合もあるとか、あるいは売れ筋商品、どんなものが人気商品で売れて価格が強くて、その逆にどんなものが価格が弱いかとか、そういったいろいろな事情につきましては必ずしも一様ではございませんので、全く同じものがあった場合どうかと言われればそれはおかしいのではないかなと思いますけれども、じゃ一般的に実態はどうかということになると、なかなか正確な比較は難しゅうございます。
しかし、仮定の話としまして、仮におっしゃったように、ダンピングでもないのに外国では七十ドル、日本では百ドルというようなことがあれば、今度は日本の消費者の立場として、どうして高い物を買わされているのかということになりますし、そのときにどこに問題があるのか、卸段階にあるのか小売段階にあるのか、あるいはメーカーの価格戦略にあるのか、いろいろ疑問が出てくることも当然でございます。さらにまた、あるいはそういうのは一時的な現象であって、為替レートの変更に伴って価格調整が単に時間的におくれているのかもしれません。そういったいろいろな場合があり得ると思いますので、いずれにしましても、先生が多分お考えのような問題意識を持ちまして今後とも事態を注視してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/126
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127・二見伸明
○二見委員 通産省にお願いしたいのは、もしこういう同一製品、全く同じ規格の同じものが日本と海外で価格差があるということになると、これはやはり問題ですね。また、メーカーあるいは商社がそういう売り方をすれば、日本の消費者はばかにされたことになるし、アメリカでそれを安く売ればこれはダンピングの批判になりますね。ですから、その実態をできるだけ早く可能な範囲内でお調べをいただいて、もし御報告をいただければ幸いだと思いますし、その点お願いをしたいと思います。
それから、公取は来ておりますか。公取は価格問題をよく調査するのだけれども、この問題については公取としては調査されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/127
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128・植木邦之
○植木(邦)政府委員 先ほど通産省の方が申し上げましたように、国内価格とそれから海外の価格とが違っているということは私どもは存じております。それで、それがいろいろな理由で違っているのだろうということは通産省のお答えにあったとおりで、私どももそのように思っておりますが、そういう問題につきましては、私ども公正取引委員会としても今後とも注目していき、それから必要に応じて調べていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/128
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129・二見伸明
○二見委員 日米経済関係は以上で、問題をほかに移したいと思います。
公取が見えておりますから、公取の方に最初にいきましょう、簡単に終わりますから。
抱き合わせ販売というものがありますね。ファミコンソフトのドラゴンクエスト、いわゆるドラクエというのですかパートIII、これは大変異常なブームで、子供が学校を休んで買いに行ったとか、午前三時から並んで買ったとか、親が会社を休んで買ったとかという大変なブームになりましたね。そういう人気商品が出ると売れ行きの悪い不人気なソフトを抱き合わせで売る店があるというので、このドラクエの場合には問題になっているわけです。
例えばこういう新聞記事もあります。「「抱き合わせでなくては入荷する手段がなく、セット販売しています」の張り紙を店頭に出したのは、JR秋葉原駅前電気街の一角にあるソフト専門販売のA店。A店の説明によると、発売初日に「ドラクエIII」約八百本が入荷したが、ほとんどの問屋が一本につき他のゲームソフト二―三本の抱き合わせを強要してきた。」こういう新聞報道もありまして、抱き合わせで売っておりますという写真もあるわけです。
こういう抱き合わせ販売の実態というものを公正取引委員会としては調査されているのか、もし調査されて明らかになっているものがあれば説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/129
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130・植木邦之
○植木(邦)政府委員 このドラクエIIIが新聞紙上で大きく取り上げられまして、その販売について生徒が朝早くから並んでいるということが出ておりますのは私どもも存じておりまして、それで私どもが所管している法律、独占禁止法でございますが、この法律をもってどういうようにアプローチをするかということになると思うわけですが、一般的に申し上げますと、人気商品に不人気商品を抱き合わせて売るというような販売方法が行われていると、不公正な取引方法に該当するおそれがあるということが言えようかと思います。
あくまで一般的なことでございますが、そういう見地から私ども現在のところ、消費者あるいはほかの事業者の方からいろいろな苦情が参りますので、どういう売り方をしているのだろうかということを実態を調査中でございます。それで、まだ現在のところお話しするような事態には至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/130
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131・二見伸明
○二見委員 植木さん、一般論としてお尋ねしますけれども、抱き合わせの形態というのはいろいろあると思うのです。例えば問屋が小売屋に抱き合わせでもって売る。小売店としては抱き合わせでなければ仕入れることができないから、やむを得ず嫌々、泣く泣く抱き合わせで仕入れてくる。この場合、問屋の行為は独禁法第十九条の「不公正な取引方法の禁止」に該当するのかどうか。それが一つ。
もう一つは、抱き合わせでもつて仕入れを強要された小売屋さんが今度は消費者に売る場合には、自分が抱き合わせで仕入れてきたのだから、これを消費者に抱き合わせで売る場合がありますね。この場合は、この小売店は十九条違反になるのかどうか。それが二つ目のケースですね。
〔与謝野委員長代理退席、尾身委員長代理着席〕
三番目のケースとしては、問屋からは抱き合わせではなくて普通に人気商品を小売店に卸したのだけれども、小売店の方で自分の在庫の人気の悪いソフト、これと人気のいいのを抱き合わせして売りつけて、じゃないと売りませんよといった場合には、この小売店は十九条違反になるのかどうか、この三つのケースが考えられると思うのです。それ以外にもケースがあればお答えいただきたいのだけれども、私の頭に浮かんだのはこの三つのケースなので、そのケースについて御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/131
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132・植木邦之
○植木(邦)政府委員 先ほど一般論として申し上げまして説明が足りなかったかもわかりませんが、まずこの抱き合わせというものはかなり広範に継続的に行われているということ、その場合に違反になるということが私どもの法律の考え方になっております。そういう場合を問屋がやっている場合というのは、あくまで一般的で申しわけございませんけれども、そういう場合が起こり得るかというように考えます。
それから今度は、その問屋がそういうことをしたので仕方がないから小売がそんなことをしているという場合、小売店というのは非常に数が多うございますから、その競争にどのくらい影響を及ぼすのかということを考えるのは難しゅうございますけれども、その場合は抱き合わせて押しつけたそちらの代理店の方が一義的には問題になって、そこのところに何か措置をすることによって小売屋さんにそういうようなことをしてもらえないようにするだろう、そういうように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/132
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133・二見伸明
○二見委員 いずれにいたしましても、いわゆるファミコンソフトというのはヒットするかしないかでもって採算がかなり違うわけですね。ですから、物すごくヒットするなと見込まれる商品が出てくると、どうしても今まで売れなかったものを抱き合わせで売りたいというのが業界というか体質だろうと私は思います。問屋にしろ、それは自分の商売の戦略上そうせざるを得ないことにもなるんだと思うのですけれども、そうした体質があるんじゃないかなと私は思います。その点はこれからもよく注意をしていただきたいし、抱き合わせ販売が行われることのないように監視の目をぜひとも光らせていただきたいことをお願いをいたしまして、公取への質問は終わりにいたします。
最後に、これはエネ庁かな、浜岡さんの方ですね。石油税です。従価税から従量税に変わりますね。六十三年八月一日からキロリットル当たり二千四十円になります。原油の値段が高くしかも円安だった時期には四千五百億円前後の税収があったのですけれども、今は原油も安い、しかも円高だということで、税収が二千億円前後に落ち込んでしまいました。これは、そのための財源対策として考え出したものだというふうに認識してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/133
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134・浜岡平一
○浜岡政府委員 全く御指摘のとおりでございます。ただ、税収の落ち込みにつきましては、先生のお示しになりました数字が想定された時期もあったわけでございますが、その後一段と円高が進行いたしておりまして、私どもの今の感じでは、従来の仕組みでございますと千六百億円程度の税収しか期待できないのではないかと見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/134
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135・二見伸明
○二見委員 なるほど、いただいた資料によると六十一年度は千六百十六億円ですね。
それで、こういうふうに制度を変更するということによって、ガソリン一リットル当たりの石油税の負担というのはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/135
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136・浜岡平一
○浜岡政府委員 現在ガソリンの販売価格、所によりましていろいろ違いますが、末端価格で百二十円程度かなというぐあいに見ております。従来の仕組みのもとでのガソリン一リッター当たりの石油税の負担額というのは、大体八十銭程度ということでございます。今度手直しいたしまして上乗せになります分が、一円十銭程度というようなことではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/136
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137・二見伸明
○二見委員 わかりました。石油税の負担は若干上乗せされるというふうになるわけですね。
それで、基本的な物の考え方なんだけれども、今回の措置は、石油・石炭・石油代替エネルギー特別会計が今の制度のままでは崩壊をしてしまう、石油税の収入が千六百億円前後ということで石特会計自体がもう破産をしてしまう、このままではエネルギー政策が継続できないということで、こうした財源措置が出てきたんだと私は思います。
ただ、ここで考えなければいけないことは、例えば国の重要施策というのは、国防もあります、教育もある、社会福祉、政府がやらなければならない重要施策というのはいろいろあります。国防というのは、防衛というのは国の存亡にかかわることであり、民族の存亡にかかわる非常に重要な政策課題だと私は思います。同じようにエネルギーも、日本人の生活がさらに豊かに発展していくために、日本の経済力がさらに伸びていくために、エネルギー政策というのは国防とは違った意味で国家の存亡、民族の存亡にかかわる重大な施策なんではないかと思います。その点は認識は同じでよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/137
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138・浜岡平一
○浜岡政府委員 いわゆる総合安全保障というような概念もあるわけでございまして、安全保障という観点から考えますと、エネルギー問題のウエートは非常に大きいと考えております。そういう意味で、やはり防衛に準ずるような地位を占めていると言っても決して過言ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/138
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139・二見伸明
○二見委員 そうすると、そのような重要な施策を推進するための財源というものを石油に集中的に課税して、それで一切を賄えという発想が果たしていいのかどうか。私は、石油に税金をかけてはいけないというのではないのです。石油にかける税金だけでもってエネルギー対策は全部やりなさいという考え方がいいのかどうか。
しかも、これは仕組みからいけば、石油税というのは一度一たん一般会計に入るわけでしょう。そして出すわけです。しかも、一般会計から入ってもそのままそっくりエネルギー政策に使うわけじゃなくて、今まで一部貯金してきたわけでしょう。貯金していたから、六十一年の税収の落ち込みも六十二年の落ち込みも、今まで五十八、五十九、六十と一般会計の中に石油税収を貯金してきた、それを六十一年に吐き出した、六十二年にも吐き出して何とかやりくりしてきたわけですね。
そういうことを考えるならば、このエネルギー政策というのは石油だけにかぶせるのではなくて、むしろ本来ならば一般財源で、国の重要施策として賄っていくべきではないか。石油税収はその財源の一部として使うとしても、それは税収がたくさんあれば全部使ってもいいですよ。そうでない場合には、一般財源から繰り入れることによってやっていくというのが本来ではないでしょうか。そうしなければ、エネルギー対策が大事だというので石油にばかり税金がかかってくる。石油にかかるのはこれだけじゃなくて、いろいろなところで別の名目でいろいろな税金がかかっていますね、揮発油税だとかなんとかいって。何が何でも石油に集中させようというやり方というのは一考してもしかるべきではないかと思いますけれども、その点については長官はどうお考えになりますか。
大蔵省、帰ってしまったかな。――大蔵省は予算を編成する立場として、何が何でもエネルギー対策は石油だけに任せるんだというお考えでこれからもいくのか。私はそうじゃないと思う。まず大蔵省の方のお考えを聞いて、それから浜岡さんの方のお考えを伺いましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/139
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140・永田俊一
○永田説明員 お答え申し上げます。
先生おっしゃられましたように、エネルギー政策の重要性あるいは石油備蓄等を総合的なエネルギー政策として着実に推進することが重要であるということは、私どもも十分認識しておるところであります。ただし、このエネルギー対策につきましては、受益と負担の密接な対応関係、あるいは現下の一般会計の厳しい財政状況等を考慮いたしまして、財源については受益者負担的な特定財源ということでお願いをしているわけであります。
ただ今回、六十三年度の石油税収が低水準にとどまるということが見込まれましたことから、これは予算では当然どんなときにも検討する話でございますが、歳出の効率化あるいは経費の圧縮といったものを前提にいたしまして、不足する財源について租税特別措置によりまして石油税の増収措置をお願いし、これによって所要の財源を確保していただき、かつ必要な支出をこれによって確保しているというふうに私どもとしては考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/140
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141・浜岡平一
○浜岡政府委員 率直に申し上げまして、一般財源で負担をしていただければ大変幸せだと思っておりますが、やはり現実的には極めて難しいんではないかと私どもも思っております。年々いろいろと主計局とも意見交換をいたしておりますけれども、現実的な制約はかなり大きいんではないかと思っております。
現在、私どもの方でやっておりますエネルギー対策、全体といたしまして約八千億から九千億円ぐらいの規模かと存じておりますが、通産省の石特繰り入れを除きました一般会計の規模というのが御高承のとおり三千二百四十二億でございまして、根っこにございます一般会計の規模とエネルギー政策の規模を比べて考えますと、現実的には大変難しい課題であるというぐあいに思わざるを得ないわけでございまして、そんな観点から、石特がスタートいたしましたときに、創設以来受益者負担という考え方でこの石油税が特定財源的に運用されてきているわけでございまして、やはり現段階におきましてはやむを得ない選択かなというぐあいに思っております。なお、御高承のとおり、電気につきましては電源開発促進税というのがございまして、約二千四百五十億円ぐらいを負担していただいております。それから、国内炭の引き取りにつきまして、いわば輸入炭とリンクしてお願いをいたしておりまして、その分の負担が恐らく千数百億、いわば実質的には輸入炭に負担をしていただいているというようなことではなかろうかというぐあいに思っております。
しかし、二十一世紀ぐらいまでを展望して考えますと、確かに複合エネルギー時代というような展望があるわけでございまして、エネルギー間競争も一段と活発になってまいります。石油のウエートも次第に下がっていくわけでございます。そういう状況下で、先生御指摘のとおり、確かに石油の負担というのはエネルギー政策だけではなくて道路整備財源というような負担も担っているわけでございますので、長い目で見ますと、やはり広く薄くというような観点で、仮に目的税で考えるとしても議論をすべきだというような御指摘もございます。やはり二十一世紀ぐらいまでをにらみますと、そういう息の長い検討というのもあわせて今始めておかなければならないという思いは強くいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/141
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142・二見伸明
○二見委員 石石勘定の中で、石油対策として一番大きなウエートを占めているのは備蓄でございますね。私は、このエネルギー対策の中で備蓄というのは非常に大きなウエートを持っているし、これからも当然推進しなければならない大きな課題だと思います。ただ、いわゆる国家備蓄のあり方について、もう少しコストの面を考えてもいいのではないか。六十三年度予算ですと、国家備蓄増強対策としては二千三百九十五億円が計上されております。
ところがこの国家備蓄に対して、昨年の七月、総務庁は勧告を出しておりますね。「① 民間余剰タンクは、昭和五十九年末現在で約千五百万キロリットルを超える余剰能力があるとされており、また、石油の需給見通しは、総合エネルギー調査会においても昭和六十五年度で二・四億キロリットル、昭和七十年度で二・五億キロリットルと微増傾向とみているとおり大幅に伸びるとは考えにくく、民間余剰タンクは今後の転用・廃棄を考慮しても今後相当期間の利用が可能であると考えられる」こういう指摘が一つありますね。そして「当面、民間余剰タンクを利用した方がコスト面で割安とみられる」こういうふうに総務庁は指摘をしております。「石油公団は、昭和五十六年度から民間余剰タンクを借り上げ、昭和六十一年度末現在で千四百六十六万キロリットルの原油を備蓄しているが、その利用は国備基地が完成するまでの一時的な保有方法として位置付けており、国備基地が完成する昭和六十五年度には民間余剰タンクの借上げは無くなる予定である。」こういうふうに総務庁は指摘しているわけでありますけれども、この国家備蓄のやり方について、いわゆる民間余剰タンクを利用した方がコストが安い、この指摘は無視できない指摘だと私は思います。エネ庁としては、こういった指摘に対して今後どういうふうに対応されていくのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/142
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143・浜岡平一
○浜岡政府委員 先生御指摘のような総務庁からの指摘がございますことはそのとおりでございまして、その内容につきましても、私どもも真剣に受けとめて今後の対応ぶりを考えているところでございます。ただ、この勧告におきましても、「国備基地で原油を備蓄することは、基本的には経済安全保障の観点から妥当であると考えられるが、」というようなコメントはいただいているわけでございます。
先生御高承のとおり、現在三千万キロリッターの国家備蓄というものを目標に取り組んでおりまして、現在御審議いただいております予算案が成立をいたしますと、六十三年度中にこの三千万キロリッターという目標が達成できるのではないかと考えております。現在建設をいたしております国家備蓄基地は、この三千万キロリッターをにらみながら進めているわけでございますけれども、現在の段階でも、先ほど御指摘のとおり民間のタンクをかなり活用いたしております。一月末で国家備蓄の原油二千六百十六万キロリッターあるわけでございますけれども、このうちいわゆる国家備蓄基地に入っておりますものは一千十九万キロリッターでございまして、残りの一千五百九十七万キロリッターは民間のタンクを借りて入れてあるわけでございます。この勧告をいただきました時点でも、予定よりも計画がおくれておるというようなこともございまして、ごく最近、それぞれの国家備蓄基地の完成年度を後ろへずらすというような決定をいたしましたものですから、この三千万キロリッターにつきましても、民間タンクを利用いたします期間あるいは量は、この勧告をいただきました時点の想定のものよりもかなり長引き、さらに大きくなるということではなかろうかと思っております。
さらに、今回石油税の仕組みの見直しをお願いをするに当たりまして、国際的にも非常に強い要請がございますので、さらに二千万キロリッターを上積みをいたしまして、五千万キロリッターまで持っていくというような目標を考えているわけでございます。この二千万キロリッターの入れ物につきましては、今回は新しく基地をつくるというようなことは全く考えておりませんで、民間タンクを使っていくということで考えております。したがいまして、その辺が重なり合って動いてまいりますが、五千万キロリッターの備蓄が全部積み上げられました時期には、三千万キロリッターが国家備蓄基地に入りまして、二千万キロリッターが民間タンクを活用しているというような姿になろうかというぐあいに思っておりますので、基本的な方向といたしましては、この勧告でお示しいただいた方向に沿って動いていくと御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/143
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144・二見伸明
○二見委員 今、水田委員から私の方にメモが回りまして、昭和六十一年一年間で二百二十九億円が節減できる、こういうことでございます。私は、国家備蓄は大事なことだと思うけれども、やはりそうしたコストの節減、経費の節減だけは本腰入れてやっていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わりといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/144
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145・尾身幸次
○尾身委員長代理 青山丘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/145
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146・青山丘
○青山委員 通商問題からお尋ねいたしたいと思いますが、その前に少し触れておきたいのは、国際経済に対する認識、基本的にどうということじゃありませんが、逆にまた、大臣が所信表明でも述べておられましたように、日米関係においては対外経済不均衡が依然として高い水準にある。したがってといいますか、ヨーロッパも含めて欧米諸国からの保護主義的な圧力が非常に強まってきている。こうしたことと、発展途上国の累積債務がさらに増加をしている。大変解決困難な問題を国際経済は抱えておりますし、国内経済については、さきの月例経済報告でもそう発表されておりますが、長い円高基調の中でも景気は極めて良好であるというような報告であります。しかし同時に、輸出型の中小企業と輸出型の産地、先般大臣もそうした地域を視察していただきましたが、相変わらず厳しい状況であります。
この辺の認識は私も大体同じような認識でございますので、そうした点で少しお尋ねしたいと思いますが、特に最近私ども憂慮しておりますのが例のアメリカの包括貿易法案、下院の案と、一九八七年包括通商・競争力法案、上院の案との一本化のためのアメリカ両院の協議会が開かれている。これの審議の推移というのがどんな状況に今あると把握しておられるのか、これが第一点。第二点は、上院、下院のこの貿易法案に対して、アメリカの政府、行政府はどんな態度をとっていくと見ておられるのか。それから日本政府としては、大変保護主義的な色彩の強いこの法案が万が一成立するというようなことになりますと、これは我が国の経済にとっても大変なことである。そういう点から、何とかこれを阻止すべきだと思います。どんな取り組みをしようと考えておられるのか、その方針について明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/146
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147・村岡茂生
○村岡政府委員 先生御指摘のとおり、現在包括貿易法案につきましては、上下両院の調整作業が急速に進み出しております。現時点におきましては、二つの段階に分けまして、比較的両院の調整が楽な問題、これをフェーズIで処理をしよう、かなり難しい問題、これはフェーズIIで処理をしよう、こういうような合意ができまして、現時点においてはフェーズIにつきまして下院のプロポーザルができ、それを上院に投げている、こういう状況のように聞いております。この両院の調整のプロセスはなかなか予断を許すわけにはまいりませんけれども、やはりゲップハートさんが大統領候補としてアイオワその他でかなり高い得票を得たというようなこともあって、審議が急速に動き出しておるというのは、我々としても大変懸念しているところでございます。
しかし他方、昨年の十月十九日のブラックマンデーにおきます経験というものが大変貴重な経験でございまして、下手をするとスムート・ホーレー法の二の舞になると申しますか、世界経済を破滅に導く可能性すらあるというような意見、良識というものが非常に強く出てきたと思います。二つ目に、やはり去年の十一月、十二月の貿易収支、アメリカにとって大変よかったと思います。あえて冒険的に申し上げますと、ことしに入りましても少なくとも一月、二月、三月ぐらいはかなりいい数字が続くのではないか、私は個人的にそう思っております。
そういうようなこともありまして、比較的理性のある意見というのも割合強くなってきている、しかし予断は許さない、こういう状況かと思います。アメリカ政府、特にホワイトハウスにおきましては、保護主義的な法律は通さない、もし議会を通過してくるならば、これは拒否権をもって応ずるということを再三再四表明しておりますし、中曽根総理あるいは竹下総理が訪米されたときも、拒否権を発動するということを明確に保証していただいているわけでございます。我々といたしましても、今後ともあらゆる機会をつかまえて、こういう保護主義的な法案が通らないように行政府を通じて働きかけをしていくということにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/147
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148・青山丘
○青山委員 レーガン政権が拒否権を発動していこう、こういう姿勢は新聞報道でも伝えられておりますが、しかし今回の貿易法案の中には、不公正貿易に対する対抗措置の発動について大統領の裁量権を制限していくのだというような通商法三○一条改正条項、あるいは特定の産業を一方的な基準で保護していくことができるのだという条項等々が含まれているということになってまいりますと、やはりなかなか大変なことじゃないかと多くの皆さんは憂慮しておられるわけであります。そういう意味で、もしそんな法律案が成立するというようなことになってきますと、世界貿易体制といいますか自由貿易体制に重大な影響が出てきます。そういう意味でも、日本政府としてアメリカの政府や議会に対してしっかりとした取り組みをしていかなければならないというふうに思いますが、再度そのあたりの決意を聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/148
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149・村岡茂生
○村岡政府委員 御指摘のように、いわゆる包括貿易法案の中には強度に保護主義的な条項が多々含まれております。先生御指摘の三〇一条、これにもいわゆるゲップハート条項、スーパー三〇一条等々がございますし、さらに二〇一条の条項も私どもは強度に保護主義的であると思っております。それに加えてダンピングの規定、ダンピング提訴をやりやすくするための規定が幾つかあります。これも大変問題であります。先生御指摘のように、さらにセクター別の条項、これもかなり保護主義的であります。そのほかに懸念材料、東芝条項とかあるいはプラントクロージングの条項、投資条項、いろいろ保護主義的な条項があるわけでございますが、幸いにしてこれらの条項については米行政府におきましてもかなり保護主義的であると断じ、かつ手紙を行政府から議会に送りまして、これらの条項がこのままの姿で残る限りは拒否権を発動しないという勧告を大統領にすることができないというようなことを送っております。私どもといたしましても、こういう問題につきましては確固たる決意で臨んでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/149
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150・青山丘
○青山委員 今、東芝問題が少し出てきましたけれども、なるほど東芝機械のあのココム違反というのは大変遺憾なことでありました。したがって、私どもも、この種の問題を国内的には法整備もしていかなければいけないということで一緒になって取り組んできたつもりでおりました。しかし、どうもアメリカの昨年末の動きあたりは、本当に日本に対して神経を逆なでするようなことを平気でやってきている。全くおかしい。どこまで一体思い上がっているのか、考え違いをしているのかと思わざるを得ないようなことが出てきておるわけです。
例えば去年の十二月二十二日に、例の八八年度長期暫定予算決議案が成立をいたしました。この内容は、一つには、国防省の東芝グループからの調達を禁止していく、アメリカ軍の物品販売所、PXにおける東芝製品の締め出しを行っていくというようなことです。私どもも、ココム違反を再び繰り返してはいけない、また通産省においてもそのための対応策としてしっかりよく取り組んでこられたと思っております。したがって、外為法の改正等、国内法の整備も急ぎ取り組んできました。特に通産大臣は、二度にわたってアメリカへ行き、アメリカの政府、議会に対して日本の取り組みについて説明をされました。私はある程度評価をしてくれたのではないかと思っておりますし、こうした大臣の努力、通産省の取り組み、私は評価をしてきております。
しかし、その後のアメリカの日本に対する姿勢というのは少しおかしい。少しじゃない、随分おかしい。一体日本をどういうふうに見ておるのか。アメリカの属国のように思っておるのか。日本はアメリカの属国でもないし、アメリカの一州でもない。しかもココム違反というのは、もともと紳士協定であって、大臣がよくこの委員会で言われたように、国内法で厳然たる処罰をすべきであって、外国から、アメリカから処罰をされる筋合いのものではない、そういうふうに思ってきておりました。にもかかわらず、このようなアメリカの姿勢というのに対して、日本政府は一体どんな取り組みをしてこられたのか、またこれからどうすべきだと考えておられるのか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/150
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151・田村元
○田村国務大臣 全くおっしゃるとおりでございます。私も、一年半くらいの任期中でありますが、まず内需の拡大で随分言いたいほうだい言われ、我々はとにかくそれを実行した。その成果も上がっておる。それでアメリカに対して、あそこまで言ったんだから今度は財政赤字の削減に対して意欲的に取り組むべきであるということで物を申したわけですが、アメリカも、私どもから見て十分という評価はできませんけれども、まあそれなりの対策を講じた、これは事実であります。それから半導体の問題だって、あるいは東芝問題だってそうであります。
そういうふうにして、随分いろいろなことを言ってきましたけれども、我々は率直に言って、相手の無理な言葉というものを非難する前に、翻っておのれを反省しなければならぬ点が多々ありますから、できるだけのことはしてまいりました。ただ、今度の東芝制裁措置というものについては、どうしても私は納得できない。我が国は、外為法改正を初めとする輸出管理体制の整備を進めております。企業もコンプライアンスプログラムを策定してココム規制を遵守する体制を本格的に整備するなど、それこそ官民一体となって輸出管理強化のために全力を尽くしてきたところであります。
アメリカで昨年十二月に成立した長期暫定予算決議などに東芝制裁条項が含まれていること。また、米国議会において議論されている包括貿易法案に外国企業制裁条項が含まれている。ココム申し合わせというものは、参加各国がそれぞれの国内法制により主体的に実施すべきものであるというココムの基本的な考え方がある。これは、それに反する行為であります。私どもは、その内容の濃い薄いを論ずる前に、基本的にこういうことについて了承することはできません。
我が国としては、今後ともアメリカの行政府を中心に、このような法案が成立することのないよう最大限の努力を払っていこうと思っておりますが、まあ一つ救いは、アメリカの行政府はレーガン大統領を初めとしてこのような議会に高まっておる保護主義に対して極めて厳しい嫌悪感を示しております。私どもは、このアメリカ行政府の保護主義反対の正しい考え方を大いに激励をし、また声援を送っていきたい、このように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/151
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152・青山丘
○青山委員 あのココム違反事件が起きたときに、私どもは大変残念なことだ、またこんなことが続いてはいけないということで、再発防止のための外為法の改正についても積極的に審議を進めてきましたし、したがって国内法の整備についてアメリカからも一定の評価をしてもらっていたに違いないと思ってうぬぼれておりました。そしてまた、内閣の実力大臣が二度にわたってアメリカへ行って政府や議会に対して説明をしてこられた。我々のそういう誠実な態度について一定の評価をしてもらっていたに違いないと思っていたにもかかわらず、こうした八八年の予算決議案、この中には、今申し上げたように国防省の東芝グループからの物品調達を禁止していくということであるとか、アメリカ軍の物品販売所における東芝製品の締め出しを行っていく、こういう動きが出てくるということは、一体日本をどういうふうにアメリカが見ておるのかな。
私どもはアメリカとの関係は大切にしていかなければいけないし、真に日本とアメリカとの友好と親善のためにも、また同盟国としてのアメリカから日本に対する立場を尊重してもらう、そういうことから考えてみても、アメリカの一連の動きというのはまことに残念であります。しかも、大統領の裁量権を制限していくというような条項がこれから改正案として出てくるということになれば、日本政府として一生懸命やっているというだけじゃなくて、具体的にこういうふうにやっていくんだという決意をひとつしっかりと示していただかないといけない。そういう点での再度の御決意をぜひ聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/152
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153・田村元
○田村国務大臣 まず、私は、先般のブラックマンデーの株式暴落等の現象から、アメリカ側は必ず保護主義がかえってマイナスになるということを悟ったものと、今もってそう思っております。これは、政治を知り経済を知る者の当然の常識だと私は思うのです。同時に、よもや国際的なルール、取り決めあるいは国際的な信義というものを自国の選挙で踏みにじるようなことは絶対にするまいというふうに、私はなおその評価を捨てておりません。
しかしながら、我々としても今まで随分努力をいたしました。二度にわたって走った、あるいは外為法の改正もした。しかも、今度の六十三年度予算案におきましては、百三名という審査官の充実もいたしました。そして、各有力な政府要路の方あるいは有力な議会の方々に対して、随分親書も出しました。そのように努力をしてまいりましたが、ただ、この問題を論じておるのは議会でありまして、私どもがアメリカ政府に対してそれは困ると言うと、向こうももっともだと言って一緒に怒るわけです。ところが、議会がああいう状態である。しかも、日本のように議院内閣制ではない、向こうは完全な三権分立であります。しかも、大統領に対して議会はその意向に余り拘束されないし、日本と違って党議という観念が割合にないというようなところがあって、確かにやりにくい点もございますけれども、なお懸命の努力を続けていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/153
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154・青山丘
○青山委員 なおひとつ、ぜひ懸命の取り組みをしていただきたいと思います。
それから、私からも例の半導体制裁措置について一点だけお尋ねしておきたいと思いますが、アメリカから一方的に半導体の制裁措置がなされて約一年近くなろうとしております。その間二度にわたって一部解除なされてきましたが、なお対日市場アクセスに不備があるというような指摘から一部制裁措置が残っておりますが、一体アメリカは、この日本の市場の中でアメリカ製半導体がどの程度のシェアを確保すればいい、納得するんだというふうに見ておるのでしょうか。
しかし、これは民間が購入するものでありますから、この水準までいかなければだめだというようなアメリカの主張自体が大体無理ではないかと思います。そういう点で、一体アメリカというのは、日本政府及び日本国民に対してどういう感覚で何を考えておるのかという疑問を持たざるを得なくなってきておりますが、この制裁解除も一刻も早くさせるように日本政府としては取り組むべきだと思います。そのあたりはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/154
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155・児玉幸治
○児玉(幸)政府委員 日米の半導体問題につきましては、先生御指摘のように、昨年の四月十七日にアメリカが関税上の特別措置をとっているわけでございまして、今お話がございましたようにその後は二回にわたって解除措置を講じましたため、現在では一億六千四百万ドル相当分の措置が残っておるわけでございます。
その対象はマーケットアクセスの問題でございまして、それについて私どもがこれまでいろいろ努力をいたしました結果、どういう状況になっているかというのを簡単に申し上げますと、協定締結前の昭和六十一年上期には月額にいたしまして大体百十八億円ぐらいずつ外国系の半導体を買っておりましたものが、昨年十―十二月期には月平均百六十五億円というふうに購入額は上がっております。したがって、この伸び率を見ますと約四〇%月平均で購入額は膨らんでいるということでございます。それから、これをマーケットシェアということで申し上げますと、同じ六十一年の上期は一〇・三%でございますけれども、昨年の十―十二月期にはこれが一二・四%へと拡大しているのでございます。
それじゃ一体アメリカはどこまでいけば満足するんだということでございますが、政府レベルでいろいろ議論しております限りでは、特定のシェアに関する数字をアメリカ政府が言っているわけではございません。ただ、民間の半導体の業界の人たちは、五年ぐらいたてば日本で自分たちが二○%ぐらいのシェアが占められるようになるのではないかという期待を持っている、こういうことがあるわけでございます。それでアメリカの政府は、具体的な数字はないけれども、今御披露いたしましたような日本側の数字の改善はやはりアメリカの期待にはまだ十分ではないのだというようなことを言っておるわけでございます。私どもは、これは大臣にも数回大手のユーザーのトップの方々を招いていただきまして、この購入促進については大変強力な勧奨をしていただきましたし、私ども自身もまた、事務的にも何回も何回もユーザーを集めてはこの問題について協力を依頼しておるわけでございます。そういったことがこの数字にも反映しておりますし、さらに言えば半導体国際交流センターという財団も昨年の春設立をいたしまして、そこで見本市あるいはシンポジウム、各種の情報提供あるいは商談の機会をつくっていくというふうなこともやっているわけでございます。
問題は、それじゃどうすれば、こういうことでございますけれども、机を挟んでシェアの数字を多いとか少ないとか議論をしてみてもなかなか現状では実態が進まないと思います。むしろ業界同士の間に長期的な信頼関係をきちんと築いていく、それを踏まえて政府同士で事態の打開をすることが非常に重要だと考えておりまして、三月の下旬には日米の業界の会談を行うべく今準備をいたしておりますが、ここで率直な意見交換をすると同時に、長期的なビジネス関係をつくっていくということについて積極的に働きかけを進めてまいりたいと思っております。これらを踏まえまして、今の異常な状態が一刻も早く終了いたしますように、私どもといたしましても政府レベルで折衝に全力を挙げてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/155
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156・青山丘
○青山委員 先日、アパルトヘイトの南アフリカの実情が映画になっておりまして、たしか題名が「遠い夜明け」、試写会が行われましたが、通産大臣、経済企画庁長官、この「遠い夜明け」という映画ごらんになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/156
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157・田村元
○田村国務大臣 私は映画愛好議員連盟の会長でございますが、あのときは予算委員会の最中でして、ちょっと見る機会を失しました。ぜひ見たいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/157
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158・青山丘
○青山委員 経済企画庁長官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/158
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159・中尾栄一
○中尾国務大臣 私もぜひ見たい映画の一つでございますけれども、田村大臣ともどもちょうど予算委員会でずっと閉塞されておりまして、まことに申しわけございません、見ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/159
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160・青山丘
○青山委員 実情をよく御存じの二人ですから、あの映画をごらんいただくとあの映画そのもののとおりだというふうにはあるいはごらんにならないかもしれないし、意外と客観的に正確に理解されるのではないかと思いますが、しかし今、南アフリカにおける黒人差別の問題は世界的な問題として出てきております。そこで、南アフリカ共和国向けの輸出の問題について一言だけ触れておきたいと思います。
昨年一年間の日本からの対南ア輸出が世界一、こういうことで国際的にも大分批判が出てきておりまして、あわてて通産省も経団連あたりに自粛の要請をされたようでありますが、批判が出てから急いでやるというのも少し大人げないのではないか。輸出動向というのは毎月出てきておるわけですから、どういう動きに今日本がなっておるのかというのは恐らくつかんでおられただろうと思うのですね。にもかかわらず、日本からの輸出が世界一になって批判を受けて初めてあわてて自粛の要請をする、これは少しやはり対応が甘かったのではないかと思います。そのあたり、本当ならもっと早くやるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/160
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161・村岡茂生
○村岡政府委員 一昨年、日本を含めて関係国で対南ア措置というのを決定し、実行しておるわけでございますが、そこにおいては、アパルトヘイト撤廃へ向けての強い意思のもとに行おうということで一致していたわけでございます。
私ども通産省といたしましても、これまで幾つかの貿易規制措置を行ってまいりました。また同時に、米国等の措置をアンダーマインしないようにというような行政指導もいたしてまいりました。私どもといたしましては、この南ア措置というものを強く堅持するということが非常に重要なことだと思います。一昨年から昨年にかけて、実は通産省としては何回も業界にはそのような要請をしてまいってきたわけでございまして、必ずしも華々しく新聞には出なかったわけではございますが、実はやってきたということをぜひ御理解賜りたいと思います。今後とも慎重に対応してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/161
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162・田村元
○田村国務大臣 大臣が局長の補足をするのも妙な話でございますけれども、実はそれをもって私は言いわけにしようとは思いませんけれども、参考までお聞きを願いたい。
南アとの貿易総額は、円ベースで申しますと、一九八一年には八千六百九十一億円です。八五年には六千八百六十五億円、八六年には六千七十一億円、昨年度は五千九百七十五億円と、どんどん減っておるのです、率直に言いまして。ところが、これをドルにしますと、為替レートの関係で、一九八一年に三十九億五千万ドルというのが八五年には二十八億六千万ドルになり、八六年には三十五億八千万ドル、昨年は四十一億二千万ドルというふうに、どんどんと上へいってしまったということもございます。これをもって私は強弁しようとは思いません。思いませんが、為替レートが大きく響いておる、実際にどんどん減っておることは事実なんだということの御認識だけはよろしくお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/162
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163・青山丘
○青山委員 為替のレートの関係で国際感覚のバランスが少し崩れてきているのは、この後ちょっと国内の物価のことで、円高の差益の還元のことで触れたいと思っておりました。したがって、今のことがそれるといけませんから南アの問題だけに限って言いますと、あちらの方では黒人に対する差別それから白人に対しても人権侵害、こうした先進国の強い批判がある中で、日本からの輸出だけが一向に減っていないというべきでしょうか、数字の上では伸びているというような形、これは日本はやはりあくまで商売優先の国だという印象を先進国の中に強く植えつけてしまいます。これは非常にまずい。
そういう点では、やはり私は少し国際感覚を持った対応をしていかなければいけないと思っております。こうしたことが、先進国から日本に対する批判として大きく出てきておる。貿易によって得る利益よりも国際信頼を損なう損失の方がはるかに大きい。そういう意味では、日本の貿易に対する取り組みというのを少し考えていかなければいけない段階に来ておる。人には人徳があるように、国にも国の徳を養っていっていただくときがいよいよ来ておる。こういうときに、従来のような考え方ではなかなかいけない。そのあたりの御見解を、政府としても甘く見ていないでぜひひとつしっかりと取り組んでいただきたい。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/163
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164・田村元
○田村国務大臣 全く御趣旨のとおりだと思います。我々も思いを新たにして取り組む所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/164
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165・青山丘
○青山委員 急ぎ一、二点、中小企業大学校についてお尋ねをいたします。
最近、中小企業のソフトの面における経営資源の拡充、充実、この問題が非常に出てきております。特に、人的能力を開発して向上さしていく、そのことが経済社会環境が大きく変わってきたときに企業として総合的な経営力といいますか対応力を持つ、こういうことが非常に重要だと言われてきました。そういう意味では、中小企業大学校が果たしてきた役割というのは大変大きいと思います。
それで、端的にお尋ねいたしますが、中小企業大学校における研修の内容について今年度特に考えておられることがありましたら、ひとつ聞かしていただきたい。いま一点は、中小企業大学校瀬戸校が来年開校されますが、この工事の進捗状況について。もう一点、ついでにお尋ねしたい。このカリキュラム、今日まで全国的に中小企業大学校でそれぞれが取り組んでこられたこれまでの研修内容、研究内容について十分検討してきておられると思うのです。しかし、中京地域におけるこの中小企業大学校としての役割を考えていただいて、どのような企画を考えておられるのか。三点お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/165
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166・岩崎八男
○岩崎(八)政府委員 御指摘のとおり、この中小企業大学校は、中小企業者の人材開発という面で私ども施策の中でも非常に大きくとらえておる分野でございます。先生御承知のとおりに、この四月に広島校が開校いたしますので、今や五校体制になりました。この五校で二百三十一コース、延べ約八千人受講することになります。期間も二、三日から一年まで非常にいろいろなコースがございますし、中身も非常に多岐にわたっておりますけれども、特に去年あたりから力を入れておりますのは、やはり新分野の開拓といいますか転換といいますか、そういうことに対する中小企業者のポテンシャルを高めるべく、そうしたコースあるいはエレクトロニクス関係のコース、こういうものの充実ということを特に今気をつけておるという状況でございます。
それから、第二の瀬戸校は、おかげさまで昨年の十月から上物工事に入りました。六十三年度予算案の中にこの関係の建設費九億八千八百万円計上しておりますので、来年、六十四年四月開校ということで十分やっていけるかと思っております。
それから第三点、そこでどういうコースをやるか。これは、御指摘のとおりその地元のニーズというものを最大限把握する、吸収することを重点にしてきておりまして、各校の地域ごとにその地域の中小企業者や学識経験者を入れましてカリキュラム委員会というのをつくっております。それから、その上に地域の運営委員会というのをつくっております。そこで各地域の団体やその他を入れて、そのニーズの把握とそれに即したカリキュラムということを努力しておりますので、瀬戸校についてもそのような形で運営していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/166
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167・青山丘
○青山委員 ぜひお願いします。
円高差益の還元についてといいますか、国内の物価の取り組みについて若干お尋ねをいたしたいと思います。もう時間がありませんから急ぎます。
昭和六十年九月のG5を境に円の対米ドルレートは上昇に転じてきました。こうした円の上昇について、これまではそのマイナス面のみが大きく取り上げられてきたように思いますが、最近では、企業の対応がある程度進んだこともありまして、円高のもたらすプラスの面が注目されてくるようになりました。そういう背景の中で、政府においてもこうした動向に沿って各種調査、例えば輸入品流通実態調査であるとか輸入品の購入等に関する調査、あるいは経済企画庁の物価局による円高差益の還元状況等についての試算等々が発表されておりまして、政府の発表ではかなりの円高差益の還元がなされている、こういう状況のようであります。
ところが、きのうでしたかおとといでしたか、NHKの報道でもありましたが、国民生活の中にはなかなかその実感がない。例えば建設であるとか運輸であるとかサービス、そういった分野における差益の還元というのはほとんどないではないかというような指摘があります。したがって、たしか去年の五月ごろからでありますが、大阪の商店街や市場など中小小売商の団体では、消費者への円高差益還元を目的に共同で外国商品の直接買い付けをやったり販売をしたりしてきている、これはいいことだというので、大阪府や大阪市が支援をしてきたという報道がなされておりました。けさの新聞報道もありますが、私はどうもそのあたり、消費者不在の価格体系にあると言わざるを得ない。そういう意味では、消費者保護の立場から経済企画庁長官、商業振興の立場から通産大臣から、それぞれ御見解を示していただきたいと思います。
時間がありませんからついでにお尋ねいたしますが、円高差益の還元はただ単に消費者利益の問題にとどまっておらない。今、日本が国際国家へ脱皮することができるかどうかという大切な段階にもある。特に、諸外国から見ますと日本の物価水準というのが非常に高い、生活しにくいところだという印象を非常に強く与えてきております。そういう点から考えてみますと、資料の一つでありますが、ジェトロあたりでは、東京の耐久消費材価格はニューヨークの一・三五倍、これは去年の今ごろの数値ですけれども、食料品はニューヨークの一・五七倍となっておりまして、その後さらに円高が進んできておりますから、その格差はさらに広がっております。こういう点を考えてまいりますと、日本の物価水準を国際水準並みに下げていく必要がある、そういう新しい物価体系に移行していくための取り組みが非常に必要だと私は思いますが、経済企画庁長官の御見解を示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/167
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168・中尾栄一
○中尾国務大臣 御質問の趣旨は二点あると私は判断いたします。一つは、ただいま青山委員が申されました円高が一体浸透しておるのか。同時にあと一点は、消費者グループが直接的にこの問題に対して関与していくという問題、これはどうなんだ、こういうような点かと思います。
まず円高差益の問題は、率直に申し上げまして、多少二ないし二・四半期半ぐらいタイムラグがあるのでございます。そのタイムラグを別にいたしましても大体六九・六%、大体七割近くは円高差益が還元されているという方向づけがございます。もちろん生鮮食料品等の問題などを含めまして、先生御指摘のとおりまだ不満な点はある、こういう点はまた確かにそのとおりでございますが、その点におきましては私どもは鋭意最大限の努力を払わなければならぬ、こう考えております。
特に円高を背景としての流通業界においての百貨店、スーパーを中心にした開発輸入などの方向によりまして、海外から直接商品を輸入したり販売したりするなどの積極的な取り組みが行われるようになってきたということは、円高メリットの活用を通じた物価の安定あるいはまた国民生活の向上という観点から高く評価できるのではないかと私は感ずるわけでございます。
特に企画庁としましても、流通業者及び消費者に対する啓発あるいは情報の提供、あるいはパンフレット等における知悉させる行動、あるいはまたアメリカの輸出業者などに対しての日本国内の紹介など、一環として流通業の促進セミナーの実施なども行いまして、輸入品の情報誌の作成などに対する支援も行いまして、円高差益の還元状況や輸入の動向に対するパンフレットの作成なども、現在も作成中であり、実はきのうも一本つくったというぐらいに毎日積み上げておる次第でございます。
今後とも引き続きこれらの施策の実施に努めるほか、消費者の立場に立って、今日までの慣行であるとか規制であるとか制度を見直すとか、そういうような方向によって円高メリットが国民生活により一層浸透するように努めていきたいものだ、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/168
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169・田村元
○田村国務大臣 今、企画庁長官がお答えいたしましたことでほぼ尽きておるわけでございますけれども、先ほど長官からも話がありましたように、流通業界が製品輸入、つまり開発輸入などでございますが、この拡大に努力していくことは一般消費者への円高メリットの浸透に資するものでありまして、また世界各国から最適な商品調達を行うことによりまして消費者の商品選択の幅を広げるということになって、豊かさの実感、つまり豊かな国民生活の実現に役立つものと評価しております。
通産省としましても、主要百貨店、スーパー等に対しまして三回にわたりまして円高活用プランの策定を要請するなどによりまして、私自身でやりましたが、輸入拡大を求めますとともに輸入拡大への流通業界の取り組みを支援すべく、流通業の輸入促進セミナーの開催、それから商店街などにおける輸入品フェア開催に対する補助等の中小商業者の輸入拡大努力への支援などの施策を推進しているところでございまして、今後ともこのような施策の展開を図ってまいりたいと思っております。
なお、なかなか実感というものがわかないということは事実でございますけれども、考えてみますと、今ここに企画庁の担当局長が来ておりますが、私ども閣議で先般も、金曜日でございましたか、説明を長官から受けましたけれども消費者物価指数、これが日本とドイツだけは極端に低いんですね。あとは非常に高い。ということは、これは物価が安定しておるということからそれだけ、しかも日本の場合今のような経済成長率を示しておりますが、そういうどちらかというと底がたい景気というものが展開されておるというときにほとんど消費者物価指数が動かないということは、私はやはりそれだけ円高差益の還元というものが大きく物を言っておる側面もあろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/169
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170・青山丘
○青山委員 時間が来ましたので私はやめますが、最後に一言だけ触れておきたいと思います。
けさの読売新聞を読みますと、日本のカメラや電気製品はアメリカで買った方が安い場合が多い、海外に旅なれた人には半ば常識になっておるというようなことでありますが、日本でできた品物がアメリカで買いますと、日本のディスカウントショップで買うよりもなお半分ぐらいになっておる。ほとんど内容は変わらない。型式を少し変えてみたり、中身が違うとかなんとかというのは方便であって、実体はほとんど変わってないにもかかわらず、アメリカで買った方が半額ぐらいの安さだ。型式が少し古くなればもっとうんと安くなっている。アメリカあたりじゃ、これはもう恐らく本気でダンピングしているんじゃないかと思っているほどであります。こういう消費者不在の行政というのはない。アメリカで日本人が集まるといつも、日本の消費者はおかしい、どうかしている、こんな高いものをよく買っているんだなというのが話題になるそうです。それがけさの読売新聞に載っておりますが、こんなことでは、消費者価格が安定しているといってみても物すごく高い位置で安定しているわけですから、これ以上上げられたんじゃますますたまったものじゃない。安定しているのが当たり前、むしろ本来ならドイツのようにもっと下げていくべきではないかと私は思っているんです。最後に一言御見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/170
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171・中尾栄一
○中尾国務大臣 先ほどの言葉の中にもちょっと私も足らざるところがあったかと思いますが、例えば我が国の物価水準そのものが国際的な価格水準と比べて割高であるという点は、もう先生の御指摘のとおりでございまして、このいわゆる内外価格差という問題は、円高差益を還元するというだけでなかなか解決できない問題がある。それに時間がかかっておる。例えば今言ったような並行輸入といいましょうか、少なくとも外国で買った方が日本で買うよりは安い、これはだれが聞いても矛盾した話でございまして、これは怒り心頭に発する方も多かろうと思います。こういう点は、鋭意私どもの企画庁でも努力をし、通産省とも十分に話を詰めながら、またお互いに共同作戦で各関係官庁にも呼びかけてこの問題の解決にいそしみたい、こう覚悟しておりますから、よろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/171
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172・青山丘
○青山委員 質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/172
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173・尾身幸次
○尾身委員長代理 工藤晃君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/173
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174・工藤晃
○工藤(晃)委員 通産大臣に大型店対策について伺いたいと思いますが、最初に中小企業庁長官に伺います。
昨年九月三十日発表の「商店街実態調査の概要」があります。それによりますと、全国の商店街で停滞及び衰退しているというのが大変ふえている。過去になく高い水準である。それから商店街の当面する問題点としては、第一番目に域外立地の大型店との競合というのが挙げられている。そのほか、全国の商店街で来街者数が少なくなったとするのが七割近い、こういうことがおおよそ伝えられたと思うわけでありますが、大体そういう内容なのかどうか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/174
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175・岩崎八男
○岩崎(八)政府委員 今お挙げになりました調査は六十一年一月一日現在ということで、前回は五十六年にやりましたのですけれども、それに引き続いてやったものだと思います。
今お示しになりましたように、非常に停滞もしくは衰退しているというように答えた商店街が多いということは、そのとおりでございます。それから、なぜそういうようになったか、あるいは問題点は何か、これについて大型店との競合というふうに答えた、これはいろいろな要因を聞いておりますが、これが四七・七%で一番多かったことは事実でございます。したがって、この大型店との競合というのが商店街で一つ大きな分野であるということは、そのとおりだと思いますが、そのほかに、例えば駐車場がないというのが同じぐらい四三・四%あるとか、商店でないところが商店街の中にたくさんあるから断続的だからというのが三一%とか、業種構成に問題が出てきているというのが三一とか、いろいろ要因は多く絡まっておる。したがって、流通革命とよく言われますけれども、やはり商店街にそういった大規模店と小規模店の問題のほかに商圏というものが非常に大きく動いておって、商圏対商圏といった競争関係もかなり強く影響しているのではないかというふうに考えております。
〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/175
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176・工藤晃
○工藤(晃)委員 それでは、停滞及び衰退していると答えたのが八八・九%に至ったというのがこの調査結果なんですが、私は東京の国立市のある商店街の調査例についてお話ししたいと思うのです。
委員長、これはぜひ大臣に見ていただきたいと思って、大臣のために……。
これは国立市の坂下商店街と呼ばれておりまして、東二丁目、東三丁目にかかっていて、駅からそう遠くないバス通りに面して、周りは住宅街であります。すぐ近くが府中市、国分寺市、立川市に接している、こういうところですが、ここで長く商売をされている方に商店街の移り変わりを調査していただいたところが、この転業、廃業で囲ったようなところが出てきております。約六十軒ぐらいのところで三分の一が転業、廃業である。具体的に言いますと、時計屋さんが二軒あったのがゼロになった。食料品店が三軒あったのがゼロになった。肉屋さんが二軒あったのがゼロになった。それで、やめていく人は本当に惨めだと言われるわけです。というのは、借り店舗ですから立ち退き料を取ってというわけにはいかない。本当に後の生活がどうなるかというようなことであります。地理的に言うと、国立駅の近くに西友の国立店がある、紀伊国屋国立店がある。それからさらに立川の駅ビル・ウイルというものの影響が非常に強く出てきているわけですが、先ほどの中小企業庁のやられた商店街調査の中の一つの典型的な例じゃないかと思います。先ほど中小企業庁長官も言われたように、業種構成に問題があるとか断続的であるというのは、実はこういう形でだんだんなってきているということの例だと思うわけです。
そういうことで、ここで長く商売されている方がこの商店街の状況をつぶさにみずからも体験して、本当にこれは何とかしなければいけない問題だと言われておりましたが、通産大臣は、先ほどの中小企業庁の調査等も大体符合するだろうと思いますが、こういう全国に広がっているような状態に対して国の対策を強めなければいけないと考えるわけですが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/176
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177・岩崎八男
○岩崎(八)政府委員 私どももこの商店街あるいは小売商対策、これをどうするか一生懸命考えております。あるいはまた、それなりの努力をしてまいっておりますが、今申し上げましたように、特に商店街というのがある魅力を持たなければいけないということがやはり基本だと思いますので、CIといいますかコミュニティーアイデンティティーといいますか、その商店街としてどういうところが魅力かというようなことをもっとその商店街当事者たちが懸命に考える、こういう動きを促進したいということで、ひとつ来年度からそういうための助成制度を追加して考えたいと思っております。
それからもう一つは、先ほど申し上げたように、今は車で来るというのが非常に多うございます。したがって、駐車場がないというのは非常に決定的なあれになります。そういう面についてもむしろ第三セクターで、例えばポケットパークをつくるとかコミュニティーホールをつくるとか駐車場をつくるとか、そういうようなものを整備していく、こういうことを来年度からさらに新規に追加していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/177
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178・工藤晃
○工藤(晃)委員 ちょっと答弁がずれてきたように思うのです。というのは、ここは駐車場も何も、バス通りなんですよ。大変交通が便利なところで、駐車場をわざわざつくらなくてもいい。どこかの郊外の大きな商店街とかそういうのじゃないのです。
時間も余りないことですから、もう少し通産大臣に大型店対策そのものについて伺っていきたいと思うわけです。
その質問というのは、五十七年一月の大型店問題懇談会報告というのを受けまして、二月には通産省が大型店対策の措置を出した。そしてまた、五十九年三月措置というのも新たにとられた。内容の上で、「大型店の出店抑制策」として「(1)特定の大手大型小売業者の出店届出について個別企業ごとに指導」する。「(2)大型店の出店が相当水準に達していると認められる地域への出店届出について自粛を指導」する。当時、この五十九年三月の措置が出されたときには、今言った二点とも引き継がれているという説明でありました。そして、それを引き継がれ、同時に今も引き継いでいるのかどうか、その点はっきり答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/178
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179・末木凰太郎
○末木政府委員 昭和五十七年に始められまして、二年後の五十九年三月に改めて実施されました今先生御指摘の措置は、その後今日まで実施されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/179
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180・工藤晃
○工藤(晃)委員 実施されているということならばもう少し伺いますが、特にこの特定の大手大型小売業者として、昨年の春は百貨店十一社、スーパー十九社、秋は百貨店五社、スーパー十八社に対して個別指導したといいますが、その名前を答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/180
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181・末木凰太郎
○末木政府委員 御指摘のように行政指導を行っております。毎年春、大体四月、五月くらいに基本的なヒアリングをいたしまして、その後秋に必要に応じて補足的なヒアリングをするという形で行っております。
数字は、昨年の場合には先生おっしゃった数字のとおりでございますが、この対象にしております企業の名前につきましては、これは大店法をいわば補完する行政上の指導でございまして、相手方企業がいわば出店計画をあらかじめ話すわけでございますから、企業秘密の最たるものについて早目早目に聞きまして、必要に応じて行政指導をし協力してもらっているという性質のもので、相手方の納得と協力のベースで行っておりますので、名前の発表は従来控えさせていただいております。今回も御容赦いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/181
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182・工藤晃
○工藤(晃)委員 そういう答弁では私も納得できません。これは行政の方針としてはっきり出しているのですから、具体的に示されるべきものである。しかしおおよそ想像して小売業のトップ、一位から十位までとか、あるいは二十位まで三十位までくらいは当然入るだろうと考えております。
もう一つ、これとの関連で「大型店の出店が相当水準に達していると認められる」という、何を基準にしてやるのか。これもちゃんとした数値があるはずで、我が党は予算委員会を通じましてこの資料要求をしましたが、いまだに出されておりませんが、なぜこれが出されないのか。出すべきである。なぜ出さないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/182
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183・末木凰太郎
○末木政府委員 お尋ねの件について資料要求確かにございましたのですが、この措置は、基本的な指標といたしましては市町村ごとの第一種大規模小売店舗の面積、それからそこに来るお客さんの数、これを比をとりまして面積当たりの顧客数、これを基本的なメルクマールといたしまして、そのほか人口規模とか人口の増減率等を勘案しまして、既に出店が相当水準に達しているかどうかをまず考えまして、いわばこれを、出店が相当規模に達していて抑制措置をとることが必要かどうかを考える候補の市町村と言った方がよろしいかと思いますが、そういうものをつくりました上で、これは私どもがつくっておきまして、そして具体的な案件の出店表明がありましたときに具体的な抑制措置をこれに基づいてとるかどうかにつきましては、その段階で当該市町村あるいは当該市町村の商工会議所、商工会等の長の意見を聞いた上で、具体的な対象にするかどうかを判断しているわけでございます。
したがいまして、あらかじめ何か一義的に対象地域が決まっているというものでございませんものですから、具体的なリストは提出できないということで来ておるわけでございます。ぜひ御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/183
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184・工藤晃
○工藤(晃)委員 それも了解できないですよ。東京で言えば、さっき言った支持人口というのは例えば平均して四・二八人である。これが三人とか二人とか一人台になれば、当然相当というのはわかり切ったことなんだけれども、それさえも示されないというのだと、個別に自治体とか商工会、商工会議所に示すということになると、一体通産省の行政というのが公平に行われているのかどうか、個々の場合に、そのときどきにさじかげんが変わるんじゃないか、それさえも外から見て私たち保証されないと思いますね。そういう意味で出すべきである。こういう重要な問題点があります。
続いてもう一つ伺っておきたいのですが、ヤイター・アメリカ通商代表が、例えば一九八六年十一月十七日発表した貿易の制限に関する報告によると、日本に対して大型店規制をやめよと繰り返し要求してきたということがはっきり書いてありますし、これまでのニュースを見ますと、日米貿易委員会が開かれるたびにその要求が行われてきた。このことに対して政府はどういう態度をとってきたのか。きっぱり、先ほど言いました大型店の出店は抑制するという方針を通産省はとっているから受け入れられないということだったのかどうか。これは率直に答弁していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/184
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185・田村元
○田村国務大臣 最近の日米貿易委員会の場におきまして、米側から輸入促進の観点から大店舗の規制の見直しを求める発言があったことは事実でございます。しかし当省としましては、大型店の出店調整制度は日本独自のものではありません。諸外国にも存在しております。それから、製品輸入の拡大は種々の要因に左右されるものであって、輸入拡大と大店法の規制とを短絡的に直結させる議論には疑問がある、そういうことを先方に指摘してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/185
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186・工藤晃
○工藤(晃)委員 今の大臣の答弁は、私は理解できますが、それならばということで伺わなければならないのは、経済審議会が昨年の五月出した新前川レポートと言われるような「構造調整の指針」の中にこういうくだりがあります。小売業に関する公的規制、制度・運用の見直しが迫られている。この意味として、アメリカ側がそういうことを言っているときに、それに合わせて何か大規模店に対するこれまでの出店の抑制の方針とかやり方の見直しをしなければならないという意味で言っているのかどうか、はっきりさせていただきたいと思うわけです。
先ほども商店街の調査というのが出されました。これは中小企業庁自身がやられたものです。もちろんそれに合わして、私は一つの具体的な今進行しつつある例を出したわけですが、そういうときにもう大型店抑制策は意味がなくなったかのように、もちろんこれは直接そう書いてないですよ。そういうふうに受け取られるような感じの文章があるのですが、それは通産省としてはそう受け取ってないんだということならばはっきり答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/186
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187・末木凰太郎
○末木政府委員 大臣からお答えありましたように、アメリカ側の言い方は、アメリカから日本への輸出促進、日本の輸入促進の観点から大店法に言及してきているわけでございまして、これについてはそういうふうに単純に結びつける考え方には疑問があるというふうに我々は対応しているわけでございます。これに対しまして経済審議会の「経済構造調整の指針」で言われておりますのは、そのくだりのところを見ますと「流通業においては、各種の目的をもって小売業に関する公的規制が加えられてきたが、我が国の経済社会条件の変化によりこれらの諸規制の意義がうすれてきている面もあり、販売許認可等にかかる制度・運用の見直しが迫られている。」ということで、必ずしも日本からの輸入の増加という観点からではない考え方になっております。したがいまして、アメリカの言い分と比較するのはちょっとすれ違うかと思いますが、私どもは経済審議会の御指摘につきましては、ここに書かれておりますとおり、文字どおりそういう御意見かと受け取っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/187
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188・工藤晃
○工藤(晃)委員 それならば今の答弁は、今商店街がこのように衰退して小売業者が非常に困っているときに、従来の大型店出店抑制の方針は変えないという意味で受け取っているというふうに理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/188
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189・末木凰太郎
○末木政府委員 私どもがこの経済審議会の議論をつぶさに同席させていただいて伺ったわけではございませんけれども、この表現で言わんとしている、その辺がどういうふうに変わってきているのかというところにつきましては、先ほど中小企業庁の方からもお答えいたしましたように、中小商業の当面している困難というものが、ただ大規模な店との競争の激化という面だけでとらえるとか、そこに非常に大きなウエートを置いてとらえるということだけでいいのだろうか。もっと人口の移動とか交通条件の変化とか、それからたまたま先生さっきもちょっと商品の変化のことで時計屋さんの例をお挙げになりましたけれども、そもそも世の中に製造され流通している商品の変化とか消費者の嗜好の変化とかいろいろあるので、もっといろいろな面から考えるべき必要があるんじゃないかというような御議論があって、こういうふうなまとめになったものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/189
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190・工藤晃
○工藤(晃)委員 今の答弁を聞いているといささか問題をはぐらかすようなことで、先ほどの中小企業庁自身のやった商店街の調査でも、問題点の第一というのが大型店との競合問題と書いているじゃないですか。みずからやった調査ですね。それを薄めるようなことはよくないし、そういうのは受け入れられませんが、続いて、「大店審会長談話」というのが六十二年六月十七日に出されました。これを見るともっとはっきりしているのは、さっき言った「経済構造調整の指針」でこういうことが出された、しかもこういうことが書いてあるわけです。「大店法に係る国内外からの問題提起を踏まえ、」大店法のこれからのあり方について審議を行ったということがはっきり書いてあるわけです。「内外からの」と書いてあるわけです。いささか語るに落ちるような感じがしませんか。「内外」と書いてあって、内だけじゃないのですね。
そこで問題なのは、この内容そのものはどう読んでみても先ほど言いました通産省が出した二度の通達、もちろん二度目の通達で最初の通達はもうそれに置きかわっていると思いますが、さっき言ったように大型店の出店に対して抑制的な方針をとるということを大きく変えたと判断せざるを得ない内容になっている。というのは、これを見ますと、早く三条の届け出をやらせて、早く受理して、早く調整しなさい、そういう切りかえの方針がはっきり書いてある。もちろん営業時間の問題もありますが、そういうことが書いてあるというのは、これまでさっきの大型店の問題の懇談会に始まって、ともかく特別の、例えばダイエーだとかイトーヨーカ堂だとか、そういう大きな特定の大型小売業者に対しては届け出を出すこと自体に対して抑えていかなければいけないということや、それからもう既に大変出店が進んでいる、あるいはこれから進むようなところに対しては自粛させる、こういう方針に対して、どんな大型店であろうとどんどん三条届け出をやらせて受理させてというふうに受け取られるようなことが書いてある。しかも、それだけではない。非常に問題だと思うのは、一体この談話というのは、この中で審議結果をまとめたと書いてあるけれども、通産大臣の諮問を受けてやったものなのかどうか、そのことだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/190
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191・末木凰太郎
○末木政府委員 その前に一言説明させていただきたいのですが、先ほど私が御説明したのは、経済審議会の書き物についての受けとめ方を申し上げたわけでありまして、もちろん経済審議会も大型店と中小店の競争の問題を無視しているわけではありませんし、私どももその点を軽視しているわけではございません。
そこでお尋ねの、まず昨年六月十七日の大店審会長談話でございますが、これを出すについて通産大臣の諮問があったかということでございますが、諮問はございません。それはどういうことかといいますと、これは、この時点で格別これについての諮問はございませんが、御承知のとおり、大店法で個々の案件が出てきました場合に、これの調整につきましては大臣から原則として大店審にすべて諮問をいたします。そして、そのお答えをいただいた上で勧告をしたり、場合によっては命令をしたりして、面積とか開店期日とかの調整をしているわけでございます。そういう意味では、個々の案件について諮問が年間たくさんあるわけでございますが、そういう個別に諮問を受ける案件について大店審の立場に立ちますと、当大店審としてはどういう基本的な考え方で一件一件について処理をするかという考え方を、大店審がこの時点で整理をなさったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/191
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192・工藤晃
○工藤(晃)委員 これは、大店審の審議会というのはやはり権限が定められているのですよ。大体審議会というのは法律か政令かで定められている。この権限をはっきりさしているのが通商産業省組織令の百二条で、そこで、当審議会は通産大臣の諮問に応じてこれこれの調整に関する重要事項を調査審議するというのがあるわけです。そのほか審議会令というのがありますが、ここで議事の手続その他審議会の運営に関して必要な事項は会長が審議会に諮って定めるということになっていて、これは議事運営や何かのことですね。
だから、どの審議会の例も見てくださいよ。臨調の行革審でも何でも必ずこれからの問題を審議する、そしてまた大臣の諮問があったときにはまたそれに対して審議するというふうになっていて、大臣の諮問もないのに、今言ったように明らかに通産省のこれまでの通達、方針を大きく変えるような内容を、まさにこれは重要事項ですね、この審議会が出して、それで会長談話ということで発表して、しかも聞くところによると、通産省はこれに対して、これは従来の方針と違う、いささか違うところがあるということも言わずに関係方面に伝えたというので、関係方面、例えば各市町村の行政あるいはまた商工会議所、商工会などでは、あたかも新通達が出たかのように受けとめざるを得ないような状態にさえなっている。
ですから、ここではっきりさしてください。これは百二条違反だ。したがいまして、こういう形でこういう方針を大臣の諮問もなしに審議会が出して、次々と新しい方針、それをまた通産省が伝えるというのはまさに権限逸脱であるか、あるいはもっと勘ぐれば、通産省がやらせでやってそして新しく方針の切りかえを進めているのか、どっちかととらざるを得ない。これは行政の問題としてたださざるを得ないので、はっきりさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/192
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193・末木凰太郎
○末木政府委員 繰り返しになりまして恐縮ですが、六十二年六月十七日のこの時点においてこれについての格別の諮問はございませんが、先ほど申し上げましたように、大店法第七条第一項によりまして、個々の申請案件につきまして通産大臣は大店審の意見を聞いて、その届け出を受理した日から四カ月以内に限り云々ということになっています。これはすなわち、そういった形で日常諮問が行われているわけでありますが、そういう諮問に答える場合にどういう基本的考え方で審議会が臨んでいるかという、審議会の取り組み方をおまとめになったということでございます。
それからもう一点、従来の運用を基本的に変えるという御指摘でございましたかと思いますが、この談話の中には、内外の指摘を踏まえていろいろ議論をしたけれども、現在の大店法のあり方につきまして肯定をしているわけであります。そういう前提に立った上で幾つかの点について手続上の考えを整理した、こういうものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/193
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194・工藤晃
○工藤(晃)委員 今みたいな説明は、審議会というのは政令その他でちゃんと権限が定められているのですよ。今言うように、全然大臣から諮問されないで、しかも内容的には三条届け出をどんどんやらせて受理しなさい。これまで書いてないこと、これまででは想像もつかないこと、そういう方針の切りかえをこれにやらして、通産省はこれでよろしいというふうに涼しい顔をしている。これは絶対に納得できませんよ。ですから、この問題は今後もっとやっていきますが、ひとつ具体的にどういうことが出てきたか、これを伺っておきたいと思います。
それは、先ほどの商店街と近いところなんですが、国分寺市におけるイトーヨーカ堂の出店問題について、通産省が最近ずっととってきた態度であります。それは五十六年九月にさかのぼりますが、イトーヨーカ堂が一万九千八百平米の出店計画を持って商工会にあいさつがあった。イトーヨーカ堂というのは、すぐ近くの府中市とか東村山市とか武蔵野市にももう既に出店しているし、ちょうど先ほど言いました立川のウイルの建設が進むというときだったわけです。当然国分寺の商工会は反対を表明しまして、市議会に陳情しまして、五十六年十二月にはイトーヨーカ堂の出店を凍結する決議を全員賛成、これは自民党、保守、公明、民社、共産、社会、無所属、全部そろってそういう決議を行ったわけです。理由は、市内の中小零細小売業への打撃がはかり知れない。ちょうど府中街道といって、今交通が物すごいですね。関越に行くトラックなんかが通るような、そういう交通問題が重大化する。それから、国分寺市としては懸案の国分寺駅とか西国分寺駅周辺の再開発事業を先行させなければいけない等々のことから、当然のこととしてこれは凍結という決議になった。それで、ちょうどこの決議を行った直後に、例えば五十七年二月の措置というのが出されまして、それで大型店の抑制が行われる。ましてイトーヨーカ堂などというのは真っ先にこの対象になるところであります。ところが、これがまた出店を目指して、それをまた通産省が後ろで早く届け出をやらせるようなことは、実はもう地元では夢にも思っていなかった。しかも東京都もはっきりと、これまで地元との納得なしに、合意なしにそういうものは三条届け出、受理しませんよというのは貫いてきた。しかもそういうことはもう通産省も知っていることですから、通産省の了解のもと東京都のそういう態度があったことははっきりしているわけです。それが今度やみくもに、ともかくこれを受理しなさいということになってきた。
そこで、ちょっと複雑な事情があるから、これは大臣にも聞いていただきたいので説明しますけれども、実は国分寺市では、確かにほかの大型店の出店計画があるのです。それは一つは、国鉄の国分寺駅に駅ビルをつくるというときに、市民の運動としては、南北の自由通路というのがないと国鉄の切符を買わないと北側へ行けないし南側へ行けないので、不便だから自由通路をつくってくれという要求を持っていた。そういうときに、国鉄がまだJRになる前ですね、国鉄が南北自由通路と駅舎、それと同時に駅ビルの三点セットでなければどうしてもやらぬということで頑張ったために、実は地元商店街としてはこの駅ビルができると立川のウイルみたいになるんじゃないかという不安があったけれども、ともかく市と商工会側は駅ビルをつくるならなるべく被害の少なそうな百貨店タイプ、結局丸井ということになったんですが、これなら仕方がないだろう。ただし丸井が進出するに対してはいろいろ条件をつけようというので、三年にわたっていろいろ協議して今日に至ってきたわけなんですが、ともかくこれで国分寺市の駅の周りの都市計画というのは一つの形がついてきた段階にある。
もう一つ、西国分寺駅の問題は、これはもともと市の都市計画として南口を整備、再開発しなければいかぬ。そのとき住都公団が施行する、再開発するというので、住宅が建って人口もふえるからそこへ商店が来るのはしようがないだろうというので、東武ストアが出るということに対しましては余り地元の商店街の反対があったというふうには聞いておりません。
つまり、そういう国分寺市としてともかくイトーヨーカ堂を抑えて、しかし国鉄との関係で駅ビルということに直面し、どうしてもこういうことをやらざるを得ないということになった。ところが、そういうふうにして過ぎてきたところが、今商工会などが非常に問題にしたのは、通産省に持っていくと、その国分寺駅の駅ビルの方と西国分寺駅の方はなかなか受理しなくて、イトーヨーカ堂を一緒に出さなければ受けません、三店セットでなければ受理しませんということをずっと言ってきて、何度行ってもそれを繰り返して、東京都の方も、これは本来東京都がこれまでとってきた方針と違うけれどもやむを得ない、やむを得ないというか、これは違うということを認めながら、国が何か新しい方針をとってきたと受けとめている。そういうことで、まず出店の説明会が行われたというふうなことになってきたわけなんです。
しかし、考えていただきたいのは、今言ったような三つの大型店、同時に受理して同時に審議すると言いますけれども、計画だけ見ると、この三つが来ると国分寺市の第一種大型店の小売売り場面積に対する比率というのはにわかに六二%ぐらいになってしまう。第一種、第二種を合わせると六七%になってしまう。今の東京都全体でも三二%という比率に比べれば、驚くべき高さであります。それから、第一種の大型店の支持人口というのも、今の七・三三人が一・六六人ぐらいになってしまうという急激なことであります。
ですから、私が言いたいのは、さっき言ったイトーヨーカ堂を凍結するというのはあらゆる面からいって市民挙げての総意なんですね。これは商工会が陳情して、それで市議会で受けて、それから市が一体になって進めている方針。それとは別に、いろいろな歴史的ないきさつから再開発があって、そこへ出店問題が起きている。こういうことがあるから、当然こういう駅前の問題や何か解決する前に、イトーヨーカ堂が同時に出てきてもらったら大変なことになるというのでとめていたにもかかわらず、何で通産省の方が、これは東京の通産局ですが、ごり押しに商工会に対しまして何度も何度も、それは三つ持ってこなければ受理しない、早く説明会をやらせなさいというようなことにするのか。こういうのを見ると、明らかに先ほどの大店審会長の新方針なるものが、こういう形で実行に移されているのじゃないかと私たち考えざるを得ない。
そういうことで私は、やはりそれぞれの各市、自治体でそういう歴史的な町の発展や中小商工業者のいろいろな生活がある、それを何とか守らなければいかぬ、町づくりも進めなければいけない、そういう意思のもとでやられているやり方をごり押しでやることはやめなければいけないと思うが、これはぜひ大臣に答えていただきたいと思うのです。そこで変わらないということになると、何かやはり最近の通産省の行政は変わったなと我々は判断して、そのつもりで臨まなければいけないということにどうしてもなっていくと思うのです。市議会のこういう決議とか市挙げての総意、今後も尊重するのかどうか、大型店出店問題ですね。これはぜひ大臣、答えていただきたいと思います。――もうあなたの答弁長いからいいよ、もう時間ないんだから。私はまだもう一問あるんだから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/194
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195・末木凰太郎
○末木政府委員 事実だけ簡潔にお答えさせていただきますが、ヨーカ堂につきましては、五十六年の九月に出店を表明いたしまして、同十二月に市議会が出店凍結を宣言いたしました。その後今日まで、そういう状態で最近まで来ております。それから国分寺駅ビルの方の丸井ですが、これはその後、五十八年に出店を表明いたしまして地元との説明会等の手続が済んでおります。そのほかにもう一つございます。もう一つ大手が出店表明をして、これも済んでおります。
そこで、私どもは従来から先願先議のルール、大店審の談話が出るずっと以前から先願先議という慣行を持ってきております。これは先に出たものが抑えられている、それだけのことなものですから、結論がどう出るかは別として商調協の土俵には三つ乗せて議論をすべきだ、その結果どれが優先になりどれが後になるかは議論の結果である、こういう指導をしたわけでございます。ごり押しをしたということでは全くございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/195
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196・田村元
○田村国務大臣 実は個々のこういうお店の問題が大臣に上がるということはないわけでありまして、私も実を言いますと存じませんでした。で、どういうことなんだと聞いてみましたところ、今ちょっと説明がありましたが、何か後発の複数の出店計画が続いてあった。これが一番先願である。ところが地元の商工会が、複数の出店計画のうち最も早い時期に出店表明がなされたこの案件についてのみ事前説明会を開催しないということは、公平性の観点から問題があると認めたというのです。先願先議の原則に反するということから、通産局からそれなりの指導を行った。
いずれにしても、今後三条届け出後に商調協で検討がされるわけですが、そこでは地元の意向について十分にその場で反映されるもの、商調協の場に移ったからだめになるということは考えられない、後からのイトーヨーカ堂以外のものはだめだ、あれはいいとか。商調協が受けて、地元のことでございますから、これは商調協に妙な思惑があるはずがありませんから、地元のこととして十分に冷静に対応するであろう、こういうふうな報告を私は受けておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/196
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197・工藤晃
○工藤(晃)委員 今、大臣はこういう報告を受け取ったという答弁だったと思うのです。
先願先議というけれども、これまでずっと来た方針というのは、先願であろうとなかろうと、特定の大手の小売業者、例えばイトーヨーカ堂とかダイエー、その出店は個別に指導する。しかも指導は何かというと、そういう届け出を出すこと自体ちょっと遠慮しなさいよ、こういう指導で来たわけであるし、しかもうんと込むようなことになれば当然それをやってきたわけです。それを今度は公平の原則というのをここに来ていきなり言って、そうしたらどこの大手もどんどん出して、先に出してしまえばそれは先願だということになってしまって、全然今までの方針が崩れてしまう。そういうことなので、私は大臣に対しまして、少なくとも国分寺市の市議会で決議し市民挙げて共通してあらわしているこの意思というのは、今後の出店の行政に対してぜひ尊重していただきたいということを強く求め、あと一問だけ自動車の問題で質問を続けたいと思います。
歴史的にかつてないような激しい円高になってきている。そういう中で、自動車産業一つ考えてみても、ドル建てで輸出価格を引き上げてこれを吸収しているのか、あるいは原材料費が円高で安くなったから吸収できているのか、あるいはまた国内生産で下請の単価を下げさせたりしてこの円高を吸収しているのか、こういう点について通産省ではっきり調べたものはないようなので、私は一つだけ問題提起しておきたいと思って皆さんに一つ資料をお配りしたわけであります。
これは通産省自身の統計から計算したものですが、さっき言った原材料費ということからいいますと、自動車が使うであろうところの普通鋼材あるいは冷延の薄板、特殊鋼の鋼材、あるいはまた銅とかアルミ、あるいはばねとかゴムとかは余り下がっていないという中で、今野村総研なんかの調査によりますと、対米の輸出はドル建てで八五年と比べて八七年は、一台当たりですから三一%くらいの値上げで終わっているというときに、結局下請に対するしわ寄せというのが猛烈になっているのではないか。かつてこれは予算委員会で途中までの資料を出したことがありますが、続けて見ると、私は明らかにその傾向がずっとはっきり出ているように思うわけなんです。
例えば千人以上の規模の賃金と比べて七割を切るようなところが、一九七四年は二十人から二十九人だったのが、ずっと最近へ来ると百人から百九十九人までの規模のところまで来てしまう。あるいは六〇%を割るところは、前は四人から九人の規模だったのが、今では三十人から四十九人の規模になってしまう。これが通産省の資料からもはっきり出てくるわけなので、これが最近のコストダウンでもっともっと進んでいるというのは想像にかたくないし、現にそういうことをやっているメーカーを私たち調査してよく知っております。
そこで問題は、こういう円高がどんどん進むと、確かにこれはひどい円高だ。しかし、それに合わして際限のないコストダウンを進めていく。そしてその際、結局こういう下請へしわ寄せが進むようなことになると、日本の賃金格差はますます大きくなって、それからもちろん自動車メーカーの賃金も抑えられていくということになると、事実上そのことで内需拡大どころではないんじゃないか。日本の物すごい、最も競争力の強いそういう自動車産業というのは、結局こういう驚くべき、一番末端では千人以上の工場の三割ぐらいの賃金でしか働けない。そういうものに支えられながら輸出が進められているのか、そういうことにもなるし、それでさらにそのことがまた下へ下へとやっていくと、結局摩擦を激しくするということになるのではないか。
こういうことを考えるとき、通産省が産業調整とかいろいろ言っているけれども、絶えずこういう下請の労働者の賃金がどうなるかということまで目を配って今の企業の進み方を見ていかなければいけないし、指導していかなければいけないと思いますが、そのことについて大臣どう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/197
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198・田村元
○田村国務大臣 一度詳しい資料を取り寄せて、よく目を通して勉強したいと思います。
それから、先ほどおっしゃった小売業者が甚大な影響を受けるという百貨店、スーパーあるいは生協、こういうもののあり方についても私は勉強をし直してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/198
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199・工藤晃
○工藤(晃)委員 じゃ、これでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/199
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200・渡辺秀央
○渡辺委員長 御苦労さまでした。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/200
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201・渡辺秀央
○渡辺委員長 次に、内閣提出、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並びに異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案の両案を議題といたします。
これより両案について順次趣旨の説明を聴取いたします。田村通商産業大臣。
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中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案
異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/201
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202・田村元
○田村国務大臣 中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
中小企業信用補完制度は、信用力の不足する中小企業者の事業資金の融通を円滑化するため、信用保証協会が債務保証を行い、これについて中小企業信用保険公庫が保険を行うものであり、保証債務残高は現在十兆円を超える規模に達しております。
我が国の中小企業は、現在、円高、技術革新の進展、国民ニーズの多様化・高度化、国際化の進展等の厳しい環境変化の中で構造転換を迫られております。とりわけ、円高の長期化により、中小企業には新たな発展のための活路の開拓が求められております。
中小企業信用補完制度においても、このような内外の経済環境の変化に直面している中小企業の資金需要に的確に対応していくことの必要性がますます高まってきております。
本法律案は、このような観点から中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正しようとするものであります。
次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一は、付保限度額の引き上げであります。最近における中小企業の資金需要の大口化に対処するため、昭和五十五年度以降据え置かれていた普通保険、無担保保険及び特別小口保険の付保限度額をそれぞれ引き上げることとしております。
第二は、海外投資関係保険の創設であります。我が国経済の国際化に対応し、海外直接投資の必要に迫られている中小企業が増加しておりますが、中小企業は大企業と比べて、資金調達力で格差があり、これを補うことが極めて重要であります。このような観点から、海外直接投資に必要な資金を対象とする保険制度として、海外投資関係保険を創設することとしております。
第三は、新事業開拓保険の創設であります。我が国産業の構造転換の大きな流れの中で、中小企業が新たな発展を遂げていくためには、新たな商品・技術の開発、市場の開拓等により新たな事業の開拓を行っていくことが極めて重要になっております。このような観点から、新たな事業の開拓に必要な資金を対象とする保険制度として、新事業開拓保険を創設することとしております。
第四は、倒産関連保証に係る無担保保険の付保限度額の特例の延長・拡充であります。円高の長期化等に対応し、本年三月三十一日に期限の到来する本特例措置を延長・拡充し、引き続き円高の影響を受けている中小企業者の経営の安定を図ることとしております。
第五は、中小企業信用保険公庫が、これらの信用補完制度の拡充を円滑に実施し得るよう経営基盤の強化を図ることとし、このため、所要の措置を講ずることとしております。
以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
円高の長期化のもとで、中小企業は、新たな発展のための構造転換を迫られております。また、近年における技術革新の急速な進展は、基本的な技術体系の変革をもたらしつつあり、国民ニーズの多様化・高度化は、新たな製品やサービスの提供を中小企業に求めております。
このような厳しい経済的環境に対応して中小企業が新分野を開拓するには、広い視野と事業分野をまたがった技術や経営に関する知識が必要となりますが、一般に事業分野が狭く、経営資源の蓄積が乏しい中小企業が自力でこれを行うことは容易なことではありません。現在、全国各地で、事業分野を異にする中小企業者が協同してそれぞれの技術や経営に関する知識を融合させ、新たな製品やサービスを開発し、新分野を開拓しようとする動き、いわゆる異分野中小企業者の融合化が積極的に展開されております。これは、融合化が厳しい経済的環境の中で中小企業が創造的発展を遂げていくための新たな活動理念であることを示すものと考えられます。
本法案は、このような融合化を促進するための措置を講ずることにより、新たな経済的環境に即応した中小企業の創意ある向上発展を図り、もって我が国産業構造の転換の円滑化と国民経済の均衡ある発展に資することを目的に立案されたものであります。
次に、本法案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、国及び地方公共団体は、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓を促進するための施策を総合的に推進するよう努める旨を規定しております。融合化は、異分野中小企業者の交流に始まり、その組織化から開発、事業化に至るまでの息の長い活動を行うことによって初めてその目的を達成し得るものであります。したがって、融合化の円滑な実施のためには、国及び地方公共団体が総合的に施策を講ずることが重要であり、このような観点から、その施策に係る努力義務を規定しているものであります。
第二に、異分野中小企業者を組合員とする事業協同組合は、研究開発その他の知識融合開発事業に関する計画を作成し、所管行政庁の認定を受けることができることとし、計画の認定を受けた組合及びその組合員等に対しては、必要な資金の確保、中小企業信用保険法による新事業開拓保険の付保限度額等の特例、試験研究についての課税の特例、準備金制度の創設等金融、税制面における種々の助成措置を講ずることとしております。
第三に、計画の認定を受けた事業協同組合が知識融合開発事業を円滑に実施できるよう、中小企業等協同組合法の特例を設けるとともに、その開発成果を協業組合において円滑に事業化できるよう、中小企業団体の組織に関する法律の特例を設けることとしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/202
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203・渡辺秀央
○渡辺委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
次回は、明二日水曜日午前九時三十分委員会、午後零時三十分理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204461X00219880301/203
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