1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月一日(火曜日)委員長の指名で
、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。
税制及び税の執行に関する小委員
新井 将敬君 遠藤 武彦君
大島 理森君 笹川 尭君
中村正三郎君 葉梨 信行君
鳩山由紀夫君 村上誠一郎君
山中 貞則君 中村 正男君
武藤 山治君 宮地 正介君
矢追 秀彦君 玉置 一弥君
正森 成二君
税制及び税の執行に関する小委員長
中村正三郎君
金融及び証券に関する小委員
井上 喜一君 今枝 敬雄君
江口 一雄君 金子 一義君
小泉純一郎君 杉山 憲夫君
中西 啓介君 村井 仁君
山本 幸雄君 沢田 広君
堀 昌雄君 橋本 文彦君
日笠 勝之君 安倍 基雄君
矢島 恒夫君
金融及び証券に関する小委員長 中西 啓介君
財政制度・財政投融資に関する小委員
新井 将敬君 遠藤 武彦君
太田 誠一君 笹川 堯君
戸塚 進也君 葉梨 信行君
鳩山由紀夫君 堀之内久男君
村上誠一郎君 野口 幸一君
堀 昌雄君 森田 景一君
矢追 秀彦君 安倍 基雄君
正森 成二君
財政制度・財政投融資に関する小委員長
太田 誠一君
金融機関の週休二日制に関する小委員
井上 喜一君 今枝 敬雄君
江口 一雄君 金子 一義君
杉山 憲夫君 戸塚 進也君
中川 昭一君 藤波 孝生君
村井 仁君 上田 卓三君
早川 勝君 宮地 正介君
森田 景一君 玉置 一弥君
矢島 恒夫君
金融機関の週休二日制に関する小委員長
中川 昭一君
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昭和六十三年三月一日(火曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 越智 通雄君
理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君
理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君
理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君
理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君
新井 将敬君 井上 喜一君
今枝 敬雄君 江口 一雄君
遠藤 武彦君 金子 一義君
小泉純一郎君 杉山 憲夫君
戸塚 進也君 葉梨 信行君
鳩山由紀夫君 堀之内久男君
村井 仁君 村上誠一郎君
山中 貞則君 山本 幸雄君
沢田 広君 野口 幸一君
早川 勝君 堀 昌雄君
武藤 山治君 橋本 文彦君
日笠 勝之君 森田 景一君
矢追 秀彦君 安倍 基雄君
正森 成二君 矢島 恒夫君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
法務大臣官房審
議官 稲葉 威雄君
大蔵政務次官 平沼 赳夫君
大蔵大臣官房審
議官 土居 信良君
大蔵大臣官房審
議官 佐藤 浩君
大蔵省主計局次
長 斎藤 次郎君
大蔵省主税局長 水野 勝君
大蔵省理財局た
ばこ塩事業審議
官 宮島 壯太君
大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君
国税庁次長 日向 隆君
資源エネルギー
庁次長 高橋 達直君
委員外の出席者
経済企画庁物価
局物価政策課長 熊澤 二郎君
運輸省国際運輸・
観光局海運事業
課長 福島 義章君
運輸省国際運輸・
観光局外航課長 野崎 敦夫君
郵政大臣官房人
事部給与課長 磯井 正義君
労働省労働基準
局賃金福祉部企
画課長 畠中 信夫君
建設省住宅局建
築指導課長 立石 真君
建設省住宅局住
宅企画官 櫻田 光雄君
自治省税務局固
定資産税課長 佐野 徹治君
消防庁予防課長 木下 英敏君
大蔵委員会調査
室長 矢島錦一郎君
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委員の異動
二月二十四日
辞任 補欠選任
井上 喜一君 小坂徳三郎君
今枝 敬雄君 左藤 恵君
江口 一雄君 浜田 幸一君
遠藤 武彦君 小此木彦三郎君
同日
辞任 補欠選任
小此木彦三郎君 遠藤 武彦君
小坂徳三郎君 井上 喜一君
左藤 恵君 今枝 敬雄君
浜田 幸一君 江口 一雄君
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二月十八日
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
同月十九日
関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
同月十七日
大型間接税の導入反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第一六九号)
同(浦井洋君紹介)(第一七〇号)
同(経塚幸夫君紹介)(第一七一号)
同(瀬長亀次郎君紹介)(第一七二号)
同(辻第一君紹介)(第一七三号)
同(野間友一君紹介)(第一七四号)
同(藤田スミ君紹介)(第一七五号)
同(山原健二郎君紹介)(第一七六号)
同(中村正男君紹介)(第二一七号)
同(早川勝君紹介)(第二一八号)
同(堀昌雄君紹介)(第二一九号)
新大型間接税の導入反対に関する請願(田中慶秋君紹介)(第一七七号)
同(伊藤茂君紹介)(第二一四号)
同(岩垂寿喜男君紹介)(第二一五号)
同(大出俊君紹介)(第二一六号)
同(加藤万吉君紹介)(第三三四号)
大型間接税導入反対に関する請願(工藤晃君紹介)(第三三三号)
同月二十二日
相続税・贈与税改正に関する請願(野中広務君紹介)(第四三〇号)
新大型間接税の導入反対に関する請願(市川雄一君紹介)(第四三一号)
大型間接税導入反対に関する請願(岡崎万寿秀君紹介)(第四六九号)
同(中路雅弘君紹介)(第四七〇号)
同(矢島恒夫君紹介)(第四七一号)
大蔵省財務局の大幅増員に関する請願外一件(沢田広君紹介)(第四九四号)
新大型間接税の導入反対等に関する請願(山原健二郎君紹介)(第四九五号)
大型間接税の導入反対に関する請願(沢田広君紹介)(第四九六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/0
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001・越智通雄
○越智委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案を課題といたします。
趣旨の説明を求めます。宮澤大蔵大臣。
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租税特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/1
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002・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
政府は、現在進められている税制の抜本的改革との関連に留意しつつ、最近の社会経済情勢等に即応して、土地住宅税制についての見直し、石油税についての増収措置等当面早急に実施すべき措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、土地税制の改正であります。
すなわち、土地供給の促進、地価対策等に資するため、優良住宅地の造成等のために土地等を譲波した場合の長期譲渡所得について、その負担を軽減し、一律二〇%の税率による分離課税を行うこととするほか、所有期間が十年を超える居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得について、買いかえの特例を原則として廃止し、軽減税率による分離課税を行うこととする等の措置を講ずることといたしております。
第二は、住宅取得促進税制の改正であります。
すなわち、国民の持ち家取得を一層促進する見地から、現行控除対象限度額二千万円の範囲内で、公的な借入金等に係る控除対象額をその年末残高の二分の一から全額に引き上げることとするほか、適用対象者の所得要件を緩和するとともに、適用対象となる借入金等の範囲に一定の増改築等のための借入金等を加える等の拡充を行い、あわせてその適用期限の延長を行うことといたしております。
第三は、石油税の改正であります。
すなわち、昭和六十三年度における税負担の安定を図りつつ、石油及び石油代替エネルギー対策財源を安定的に確保するため、昭和六十三年八月一日から昭和六十四年三月三十一日までの間の特例措置として、課税方式を従量税化するとともに、所要の増収措置を講ずることといたしております。
第四は、租税特別措置の整理合理化等であります。
すなわち、企業関係租税特別措置等につきましては、連年厳しい見直しを行ってきておりますが、昭和六十三年度におきましても、既存の租税特別措置の整理合理化を図る一方、地域産業の活性化、事業分野を異にする中小企業者の知識融合化による新分野の開拓の促進に資するため、特別償却等の措置を新たに講ずる等必要な改正を行うことといたしております。
その他、欠損金の繰越控除の一部停止措置及び欠損金の繰り戻しによる還付の不適用措置を適用期限の到来をもって廃止するほか、住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例、たばこ消費税の税率等の特例措置、揮発油税及び地方道路税の税率の特例措置等、適用期限の到来する租税特別措置について実情に応じその適用期限を延長する等の措置を講ずることといたしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/2
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003・越智通雄
○越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/3
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004・越智通雄
○越智委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/4
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005・中村正男
○中村(正男)委員 おはようございます。
まず、先ほど理事会でも申し上げたのですけれども、この租税特別措置法の一部改正につきましては、極めてこの国会で重要な法案でございます。にもかかわりませず、所管の大蔵大臣が、きょうの質問者に限っては三十分間だけしかこの委員会におられないということでございまして、極めてこれは不満でございます。したがって、まあきょうは特別の例外という形で、あす以降はより大臣の大蔵委員会の時間帯を大幅にふやすように、ぜひひとつ委員長に強く要望しておきたいと思います。
そこで、大臣にお聞きをしたいわけでございますが、私どもこの六十三年度予算案につきまして、社会党、公明党、民社党、会民主連合、四党でもって具体的な修正共同要求を出しております。それぞれの委員の方から、また具体的なそれに対する質問があろうかと思いますが、まず最初にお聞きをしておきたいのは、この国会、昨年の末から始まっておりまして、税制改革の論議が極めて重要な課題になっております。私ども日本社会党も、冒頭から土井委員長がこの税制改革の問題について質疑をいたしておりますが、私のきょうまでの率直な感じでございますけれども、冒頭からずっと聞いておりますと、政府の答弁に微妙な変化といいますか、が見られるというふうに思うわけでございます。
例えば、この増減税同額、いわゆるレベニュー・ニュートラルということでもって当初は言っておられたようでございますが、二月二十三日の予算委員会、大蔵大臣の答弁をお聞きをいたしますと、税制改革がレベニュー・ニュートラルで帳じりを合わせなければならないというのは無理だ、場合によっては減税先行ということだ、こういう答弁がなされております。そのことにつきまして、もう少しより具体的な考え方をお聞きしたいと思います。
率直に申し上げますけれども、この六十三年度所得税等の減税を実施する、そういう決意を固められたというふうに判断するわけですが、そのことについてのお答えをまずお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/5
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006・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 税制改正全般につきましては、昨年政府提案が廃案になりまして以来、私どももいろいろその間の事情を反省し、また再検討いたしておりまして、ただいま税制調査会において政府からの諮問に基づいて御検討していただいております。また、私どもの党内におきましても、やがてその問題についても検討をさらに進められるような状況でございます。したがいまして、政府がそれをいつ、どのような形で御提案できるかということを、ただいま定かに申し上げるような状況にまだなっておりません。できるだけ早く御提案の上、御審議をお願いいたしたいと思っておりますけれども、まだ御提案に至っておりません。
したがいまして、その内容につきましてただいまからどうこうと申し上げることが困離でございますが、先般お答えいたしましたことの意味は、今回は抜本改正として、資産、消費、所得全般にわたっての改正を考えさせていただきたいと思っておりまして、いわゆる税収の増を主たる目的とするものではない。今、レベニュー・ニュートラルというお話もございましたが、もちろん減税をいたしますためにはそのための財源措置は必要でございますけれども、全体としての税収増を考えておるのではなくて、資産、消費、所得の間の適正なバランスを実現するような改正をいたしたい、こういうことを申し上げようといたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/6
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007・中村正男
○中村(正男)委員 もう一つよくわからないのですけれども、税制改革はこれから論議が進んでいくと思うのですが、その場合、必ずしも単年度で見るのではなしに、一定期間でもって見ていく、税制と財政との関係を見ていくということにおいては、減税を先行してもそれは問題ではない、こういうふうに私は大臣の答弁を受けとめておるわけでございますが、そういうことからいたしますと、今日までの大臣の答弁は、我々の受けとめ方では六十三年度は減税が実施をされる、こういう理解に立つわけですけれども、規模、内容、方法はまだ無理といたしましても、そういう趣旨に沿ってそういう方向で対処していくというふうな具体的な答弁をぜひひとつお願いをしたい。そうしないことには、以降の論議においても極めて抽象的に終わってしまうおそれがございますので、改めてもう一度お聞きをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/7
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008・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 六十三年度、これから始まる年度でございますので、その六十三年度において政府が予算等々で御提出をいたしておりますような状況を超えた新しい減税ということが可能であるかどうか、そういうお尋ねであると思いますが、政府といたしましては、ただいま御提案いたしました予算のように、そういう状況をただいま考えてはおりません。さらに申しますれば、すべてのことはこれからの抜本改正につきまして、私どもがどの時期にどのような御提案をなし得るかということとも多少の関連はいたしますけれども、しかし、六十三年度において所得税関係でこのような減税、あのような減税といったようなことは、私どもただいま考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/8
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009・中村正男
○中村(正男)委員 実際問題あす正午までに修正要求の、とりわけ所得税を中心にした減税について与野党協議があって、回答がなされる直前でございます。したがって、そういう意味合いでは、大蔵大臣として政府と与党は別だという立場に立たれるのはいささかどうかなと、率直に私はそう思うわけです。あす与党の方から具体的な減税の回答があれば、政府としてはどういうふうに対処されるのか、これは当たり前のことでございますが、一応お聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/9
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010・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 与野党の御会談が土曜日にあり、さらに明日までを期限にして与党の方から野党案についての意見を申し上げるということは承知をいたしておりますけれども、ただいまどういう経緯になっておりますか、つまびらかにいたしておりません。もちろん、与党として何かのお返事を申し上げる場合には、私どもにも内々では打ち合わせがあるものと思っておりますけれども、ただいまのところ別段のことを聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/10
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011・中村正男
○中村(正男)委員 わかりました。もうこれ以上申し上げません。
次は税制改革法案でございますが、この国会当初、大蔵省の方から提案される法案の説明を受けたのですが、その中にわざわざ税制改革関連法案、検討中、こういう字句が書かれてございました。今日までの論議をずっと聞いておりますと、政府の主要な方々の発言あるいは与党首脳の発言等々から察しますと、当初何が何でもこの国会に提出をするというふうなニュアンスが、いささか変化をしてきたのではないかなというふうにとれる発言も間々新聞報道でございます。これは大蔵委員会でございますから、これからの審議にも大変大きな影響を与えると思いますので、はっきりとこの国会に提出するのかしないのか、それをまずお聞きをしたいと思います。明確にひとつ答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/11
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012・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 御審議は当委員会でお願いを申し上げるのでございますから、それはまことにごもっともなお尋ねでございます。私どもといたしましては、先ほど申しましたようなことから政府税制調査会に諮問をいたしまして、税制調査会は精力的に答申をつくるための作業をしておられまして、御承知のように全国の公聴会等もやっておられます。私どもはできるだけ早く、一日も速やかに調査会の答申を得て、与党とも相談をしながら御提案をいたしたい。その時期は一日も早いことを願っておるわけでございますが、税制調査会にいつまでの御答申ということを期限をつけてお願いをしたわけでもございませんために、いつまでの御提案をするということは申し上げ切れないでおる。先般、議院運営委員会に税制改正の法案を検討中のものとして御報告いたしましたのはそのような意味でございまして、したがいまして、もとより一日も早く、できますればこの国会に御提案をして御審議をいただきたいというのが私どもの希望でございますが、そのような事情がございましたために、議院運営委員会には検討中ということで申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/12
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013・中村正男
○中村(正男)委員 しかし、どうしても私は納得できないのでございます。重要法案である租税特別措置法の一部改正法案がもう実質審議しているにもかかわらず、全く霧の中で、一体政府としてはどういう今後の税制を考えておるのかわからないままでこれから審議をせよということでございまして、私は極めて不誠実な政府の態度ではないかということを強く申し上げておきたいと思います。この国会全く関係なしに、税制改革法案は提出をしないというのであればまたそういった観点での論議になるわけでありますし、そこらは極めて不満であります。
重ねてお聞きをいたします。といたしますと、六十四年度予算は新たな税制改革を行った上で編成をされるおつもりなのか。もうあと一カ月で本年度終わるわけであります。すぐさま次年度の予算編成に入るわけであります。税制改革の外側の論議だけは進んでおりますけれども、実際の中身は全く国民には知らされてない。法案を出すのか出さないのかもわからない。一体、国民生活に極めて関係の深い来年度の予算案はどういう税制に基づいて編成をされるのか、それもまだ全くわからない。そのあたり率直にどういうふうにお考えになっておるのか、重ねてお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/13
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014・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 その点は、税制改正案の提出につきまして検討中というふうに議院運営委員会に御報告をいたしましたそういう状況のもとでございますので、したがいまして、その状況で今の六十四年度の予算編成がどのようなことで行われるかというのを想定することがなかなか難しゅうございますが、いずれにいたしましても六十四年度の、概算要求は八月の末でございますけれども、予算編成そのものは通常考えますと年末までということでございますので、それまでにはまだ相当の時間もございます。したがいまして、それまでの状況の推移に立って最新の時点を背景にして予算編成をいたします、このように申し上げるしかどうも正確な表現がないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/14
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015・中村正男
○中村(正男)委員 しばしば予算委員会で総理の答弁では、売上税の反省に基づいてということが出てくるわけでございますが、今お聞きする限りでは全くその反省が見られない。売上税の失敗というのは、第一には拙速主義、それから中身のまずさ、それから秘密主義というふうに言われております。しかも、厚かましくも、法案を出してくると同時に、それを前提にした当年度予算を編成されて出してくる、これでは国民は考えるいとまもない、そういう反省が全く今現在まだなされていないわけです。我々この大蔵委員会としては、それこそ粛々として税制改革を論議をしなければならない、こういう立場にあるわけですけれども、この国会に出すか出さないかもまだわかってない。しかも、来年度の予算編成に基づくその基盤となる税制は、ことしじゅうに論議をきちっとするということについても定かでない。それじゃ、もう税制改革の論議、とりわけ今まで政府・与党が考えておったような新たな間接税は、とにかく本年度中は審議の爼上にのせないというふうに我々は受け取ってよろしいわけですか。それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/15
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016・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは先ほども申し上げましたように、私どもとしては最善の努力をいたしまして、できるだけ早く成案を得て御提出をいたしたいと思いますので、その節には、何とぞ速やかに御審議を賜りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/16
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017・中村正男
○中村(正男)委員 もうのれんに腕押しですから、これ以上言っても仕方ございません。やめます。
最後に、ぜひひとつ野党が出しております減税要求を中心にした予算修正に、前向きに誠意を持ってお答えをいただくように強く要望しておきます。
それでは本題に入ります。
大臣がおられるときに基本的なことでちょっとお聞きをしておきますが、六十三年度の租税特別措置法による全体の減収見積額は幾らになっておりますか。その答弁をいただく前に、なぜこの減収額の見積書及びその決算額についてこの大蔵委員会に報告がないのか、提出がないのか。私は、これは隠れた補助金というふうに見るわけでございまして、予算案は予算委員会に提案されてきちっと国会の承認を受けることになっているのですが、これの減収額については、全く今まで民主的な統制に基づく審議がなされてない。その基本的な考え方について、なぜこれはそうなっているのか、大臣のお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/17
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018・水野勝
○水野政府委員 租税特別措置の減収額につきましては、毎年この御審議をいただく時期に、極力早い機会にお出しすることを努力をしてきてまいっておるところでございますが、今年度におきましては目下鋭意計算中でございますので、極力早い機会に御提出を申し上げたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/18
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019・中村正男
○中村(正男)委員 私は、極めて不誠実だと思うのです。先ほどからの繰り返しでありますが、私は、予算と同質あるいはそれ以上に重要な内容を含んでおると思うのです。にもかかわらず、単なる資料という程度で、しかももう具体的な租税特別措置法の審議が始まっているにもかかわらず、まだ六十三年度の減収見積額が算定されておらず、しかも我々には報告もされてない。これはどういうことなんですか。大臣、それでいいとお考えなんですか。大臣の見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/19
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020・水野勝
○水野政府委員 御提案申し上げております今年度の租税特別措置法の改正に伴いますところの減収額としては、この改正の要綱の中で項目別に御説明、御提示を申し上げているところでございますので、この法案の審議に際しましての関連する事項といたしましては、最小限度ここに御提案申し上げている。全体としてのものは、その中の今回の改正にかかわりませんものも含めまして、全体としてお出しするわけでございますので、極力早い機会にお出しいたしますが、今回の審議に際しましての分につきましては、一応御提示申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/20
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021・中村正男
○中村(正男)委員 租税特別措置法の一部改正、その出されておる項目の減収額、これだけを論議するのがこの法改正の論議ではないのですよ。今私が言っているのは、予算と同質的な性格を持つこの措置法全体の減収額が幾らになるのか、それぞれの目的別の減収額がどうなっているのか、それと予算とを突き合わせながら論議をしなくてはならない。また、これからこの税制改革では、法人税のあり方について当然重要な項目として論議されるわけです。それとも極めて関連が深いわけですね。にもかかわらず、まだ減収額の見積もりが出てない。これでは私は審議できないですよ。大臣、どうなんですか。極めて軽視をされている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/21
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022・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 これは全く、作業のために時間がかかっているということのように承知をいたしております。すなわち、このたびの予算に見込まれました税収の動向に沿いまして、その中から特別措置がどのような作用をするかということを計算するわけでございますけれども、項目数が非常に多うございますし、計算も大変複雑で、各種のデータを分析しながら計算をする必要がございますので、現実にそのためにかなりの手数、日数を要しておるということでございます。できるだけ速やかに計算をいたしまして御提出をいたしたいと存じますので、その間の事情を御理解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/22
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023・中村正男
○中村(正男)委員 五十六年三月二十日の当委員会におきまして、我が党の塚田さんが質問をされております。それは、単なる見積書だけ国会開会中に不定期に資料として出るだけだ、けしからぬ、なぜ、見積額が出るのであれば決算額は報告されないのか、そういう立場で強く指摘をされておるわけでして、大蔵省もその反省を委員会でされているわけですね。もうその間かなり年月がたっておりまして、その後問題になってないからといって放置をされている。しかも租特の質疑が始まっているのに、まだ全体の減収額が計算されてない。昨年は四月に予算委員会に資料として出ています。そういう態度は、私は本当にけしからぬという以外にないわけでございまして、国際的な潮流といいますか、この問題についての先進諸国の対応というのは極めて民主的になされている。アメリカ、イギリスでは、これがあと四カ国を含めて、国会にきちっと報告をする義務があるという法制化がなされておりますし、その他十一カ国が国会などによる民主的統制が必要、こういう国会決議もなされておるわけです。にもかかわらず、我が国では今言ったようなていたらくであります。国際的な基準まで、租税特別措置法の国際比較をする基準まで今審議が進んでいるというふうに聞くわけですけれども、その辺の認識を含めてもう一度お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/23
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024・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 先ほど申しましたような事情でございまして、私どもは全力を尽くしておるところでございますし、また各国の状況も承っております。さらに最善を尽くしまして、御審議に資しますためにできるだけ早く提出をいたしますので、どうぞその間の事情は御理解を賜りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/24
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025・中村正男
○中村(正男)委員 委員長に要望しておきます。
この租税特別措置法の一部改正する委員会には間に合わなかった。ぜひ早期にこの見積書を出していただきたい。予算委員会が先行して、大蔵委員会に全くこれが今まで出されてないわけですから、その反省も含めて、ぜひ早い時点で提出されることを強く要望しておきます。今の件、よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/25
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026・越智通雄
○越智委員長 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/26
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027・中村正男
○中村(正男)委員 よろしくお願い申し上げておきます。
それじゃ、引き続いて質問していきますが、政務次官よろしくお願いを申し上げます。
今の件でありますが、今回の改正項目は、極めて少ない項目に限られておるんじゃないか。例えば、各種引当金についても全く触れておりません。前回は、これは売上税関連法案とともに消え去ったわけでございますが、外国課税控除の問題とか賞与引当金の問題、出ておったのですが、そういったことが出てない。基本的に今回その項目が極めて少ないということについて、どういうことからこういった程度になったのか、その経緯をお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/27
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028・水野勝
○水野政府委員 先ほど大臣から提案理由を御説明申し上げました。その中でも申し上げたところでございますが、現在、税制の抜本的改革の作業が進められているところでございます。それとの関連にも留意をしつつ、一方最近の社会経済情勢に即応しまして、とにかく早急に実施すべき事項を今回租税特別措置法等の一部改正として御提案申し上げたところでございます。
御指摘の賞与引当金、外国税額控除等につきましては、お示しのように先般、昨年の改正には御提案申し上げたところでございますが、大半は廃案となっておるところでございます。そうしたものも踏まえまして、全体を今後いかに取りまとめて御提案をするか現在作業中でございますので、そうした点につきましては、今後まとまった段階で御審議をお願いをすることといたしたい。今回は、とにかくそういうこととは一応切り離して、当面早急に実施すべき事項を取りまとめたところでございますので、若干項目としては、例年に比べて少ないという御指摘もあるいはあろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/28
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029・中村正男
○中村(正男)委員 私は、この租税特別措置法、必ずしも全部が不公平税制の源であるというふうには申しませんけれども、もっともっと克明に、年度ごとに見直しが鮮明にやはり行われていかなきゃならないというふうに思うわけです。本来、政策的な使命を終えたと思われるものでもまだ存続がされておって、結局制度そのものが硬直化しておるというふうに率直に思うわけでございます。
政府税調の意見公述書の中で、チェーンストア協会の清水会長がこういった指摘をされております。一九八七年三月三十一日現在、見直し項目として国税百八十六項目、財源税額九兆七千億円、地方税百八十項目、財源税額六兆四千四百五十億円、これだけあると指摘をされておるわけですから、そういう意味合いではいささか――幾らこれから税制改革の論議をしていくからといっても、まだ現実にその法案は出てないわけですね、先ほど来の論議でも。そういう中でこれだけの項目があるという、これについてのまず数字的な点についてどういう認識をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/29
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030・水野勝
○水野政府委員 お示しの政府の参考人意見聴取の際に、そうした陳述がございましたということは確かでございます。ただ、国税に関して申し上げれば百八十六項目、これは昭和六十一年度末の数字のようでございますが、百八十六項目、九兆七千億円という項目数それから金額につきましては、若干私どもとしてもこの点はその根拠が明らかでございませんので、それにつきまして正確な御答弁を申し上げることはできないわけでございます。
私どもとして租税特別措置の項目につきまして申し上げれば、これはいろいろな計算があるわけでございますが、一応従来からの基準に従いまして計算いたしますと、昭和六十一年度末におきましては一応百六十八項目かという計算があるわけでございます。ただ、その減収額として申し上げますと、これは先ほども御指摘がございました毎年御提出申し上げている租税特別措置による減収額、これは最新のものをとりましても国税といたしましては一兆五千二百八十億円。ただ一方、交際費課税によりますところの増収額がございますので、それを差し引きますとネットとしては六千九百二十億円という数字、これが当委員会にお出ししている数字でございます。
したがいまして、九兆円となりますとかなり差は開くわけでございます。どのような項目を租税特別措置として計算されてお話しされたか、あるいは引当金でございますとかそういったものも含め、あるいは外国には余り一般的ではない定率法の償却、こういったものもカウントをされているのか、それぞれの見方によっているんな計算が出るわけでございますが、九兆七千億円というのは私ども、やや大きな数字ではないかというのが実感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/30
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031・中村正男
○中村(正男)委員 清水さんのおっしゃりたいのは、もっと積極的に見直しをやるべきじゃないか、それが足らない、こういう指摘のもとにこの基礎数字を出されたと思うわけでして、そういうこととしてぜひ大蔵省としては受けとめていただきたい。私どもも先ほどから申し上げているように、政策的な使命を終えたと思うものでもまだ残されているものがかなりある。それは業界なり関係筋からの当然の圧力があるんじゃないか。言いかえますと、それはそのまま補助金という形での逆な受けとめ方をされている。結果として、それが税の公平、公正さを欠くということにマイナス面としてはなるわけでありますから、ひとつもっともっと厳しい見方をしていただきたいと思います。
先ほど少し申し上げて、大臣がおられるときでしたから詳しいコメントをいただけなかったのですが、今言ったいわゆる見積額あるいは決算額含めて国際的に租税特別措置法のあり方というものも相当変わってきたんじゃないか、より厳密になってきた。日本の場合は極めて複雑でしかも多方面にわたっている。外国ではより簡素化が進められている、全体的な潮流として。しかも、財政あるいは経済含めて大変これは深くかかわっておるわけですから、もう一つの新たな国際的な摩擦要因にもなるんじゃないかな、私はこういう認識をしているわけです。そのあたり大蔵省、どういうふうな受けとめ方をしているのか、もう一度聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/31
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032・水野勝
○水野政府委員 御指摘はごもっともでございまして、租税特別措置は、租税の原則からすれば認められないものを政策的な配慮から特別の措置を講じているものでございます。ただ、これはやはり当委員会でもたびたびの御指摘もございますし、また財政状況等にもかんがみまして、昭和五十年代以降は年々その縮減をお願いをしてきているところでございます。また、さらにさかのぼれば昭和三十年代は、輸出の奨励でございますとか資本の蓄積でございますとか企業の内部留保の充実でございますとか、そうした観点からかなり大幅な特例措置が講じられてきたところでございますが、輸出奨励といったことは、もちろんこの経済社会におきましては逐次その問題点が指摘されて縮減され、現在は姿を消しておるところでございます。それにかわりまして、一応個人の貯蓄の奨励でございますとか生活環境の整備でございますとか技術振興でございますとか、そういったものに逐次租税特別措置が、減収額の推移を見ましても少しずつ移ってきたわけでございまして、そうした観点から見ますと、大きな流れとしてはその時代の要請に応じまして変化をしてきていると申し上げられるのではないかと思います。
最近、アメリカ、イギリスにおきましても大きな法人税の改正が行われておりますが、アメリカ等におきましては、レーガン税制改革の当初のころはかなり特例措置が拡大されたのが、先般の改革によりまして大幅に縮減された。五年間で千二百億ドルぐらいの法人税の増徴を行ってそれを所得税減税に充てたということは、レーガン税制の当初のころにかなり拡大された特例措置が行われた、これが縮減されてきたということではないかと思うわけでございます。
我が国の場合におきましては、昭和五十年に特例公債の発行が行われまして以来、厳しい財政事情、それから当委員会等におきますところの御指摘を受けまして年々縮減をいたしてきておりまして、企業関係としては現在四千億円程度の減収額となっておるわけでございます。またその中身では、最近におきましては試験研究費を中心とした技術振興の関係のものが多いわけでございますし、またその四割ぐらいは中小企業向けのものであるということで、それなりに時代の要請に合った、また財政事情に即応した姿には努力してまいっているつもりでございますが、いろいろな御指摘、当委員会におきまして御議論をいただく、これを翌年度の税制改正の中に反映するように努力いたしてきておるところでございますが、今後も一層そうした方向で努力をしてまいりたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/32
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033・中村正男
○中村(正男)委員 それでは次に、課税ベースのあり方で具体的な点について、実態と認識についてお聞きをしたいと思います。
各種引当金が結局は企業に対する優遇税制になっているわけですが、例えば貸倒引当金、これも実際の貸し倒れ損失発生率といわゆる法人操入率の間に乖離がかなりあるというふうに言われております。まずその実態はどうなっているのか、またそれについての認識をお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/33
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034・水野勝
○水野政府委員 貸倒引当金の繰入率の問題につきましては、税制調査会としてはおととしの抜本答申におきましても、実績率と繰入率との間には「なおかなりの乖離があり、法定繰入率のあり方を含め実情に即した見直しを行っていく必要がある。」という指摘をいただいておるところでございます。
現状におきましては、法定繰入率と実績との間には、おおむね二倍ないし三倍ぐらいの差はなおあるのではないかというのが実情ではないかと思われるわけでございます。貸し倒れに対する引き当てでございますので、丸々実績というものだけでは厳しい面もあろうかと思われますので、こうした実情になっておるところでございますが、貸倒引当金は昭和四十七年以降かなり縮減が行われてきたところでございます。金融保険業について申し上げますと、千分の十五でございましたが、大体五回にわたりまして縮減が行われまして、現在は千分の三になっておる。したがいまして、当初に比べますと、十五が三になっておるということで五分の一、二割の水準にもなっておるところでございまして、こうした点は、従来からの他の引当金とともに逐次その見直しを行わきせていただいてきたということは申し上げられるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、なお実績率との間には開差がある、この点を今後どのように検討していくかということは一つの検討課題であろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/34
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035・中村正男
○中村(正男)委員 ということは、今後さらに努力をしてといいますか、実態により合わせていくようないわゆる数字の見直しといいますか、それはなされるおつもりなのか。また、それは一応めどとしてはどういう手順といいますか、税制改革論議がこれから始まりますから、それを見た上でという答弁になろうかと思いますが、そのあたりの考え方をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/35
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036・水野勝
○水野政府委員 先般の御提案申し上げました改革法案では、まず引当金につきましては賞与引当金を取り上げておったところでございます。その次の問題として、貸倒引当金につきましては、繰入率のあり方を見直す必要があるという観点で見直しを行っていく方向でございました。現在、この貸倒引当金を含めまして引当金全体について、抜本的税制改革の中で、今回はどのような対応でこれを取り上げていくか検討中のところでございます。今回取り上げることにいたしますか、中長期的に貸倒引当率を取り上げていくことになりますかは今後の課題でございますが、問題として意識しておりますところは御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/36
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037・中村正男
○中村(正男)委員 その次は、この貸倒引当金以上に企業に対する優遇税制になっていると言われておるのが、退職給与引当金ではないかと思うのです。これも利用する法人割合が低くなってきている。利用しているのは大法人でございまして、中小法人は極めて利用率が低い。一般的にそういう実態だと思うのですが、これについてはその実態と認識についてどういうふうに思っておられるのか、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/37
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038・水野勝
○水野政府委員 退職給与引当金は、残高が九兆五千億ということで、ほぼ十兆円に近いものになってきているところでございまして、引当金としては最大のものになっているわけでございます。これは御承知のように、勤労者が勤務しておられるその期間に応じた将来の退職金に相当するものを、その勤務しておられた期間の経費として引き当てをするという会計経理上の要請から出るものでございまして、租税特別措置ということは当たらないかと思うわけでございますけれども、理論からすればそういうことでございますが、一方現実には、じゃその方が退職されたときにそのお支払いする保全措置が講じられているかというと、それは講じられていない。会計理論上からは、それはその期その期の所得を適正に計算するための制度にすぎないわけでございまして、理論からいたしますと保全措置があるなしは関係はないわけでございますが、現実的な感覚としては、そうしたものがないのにただ留保されている、保全措置がないのに留保されているというのはどうもおかしいという、現実面からする御議論があることは事実でございます。でございますから、そこは会計理論上の要請と現実的に期待されておる役割とをどのように調和させていくかという問題があるわけでございます。
また、退職金制度というものが今後企業として一時金の方向になお大きく向いているのか、年金制度といったものになっていくのか、その場合には中におきますところの引き当てでございませんで、外部拠出の方に移っていくのか、そういったことも見きわめる必要があるわけでございます。したがいまして、引当金、特に退職給与引当金の問題はなかなかいろいろ複雑な面があるわけでございます。
それからまた、これはそもそも昭和二十七年に法人税率が三五%から四二%に引き上げられたときに、その負担緩和という意味もあって導入されたという事情もあるようでございます。こうしたもろもろの事情を考え、今後法人税率にどのように対処していくかという観点も含めまして、見直しはしていく必要があると税制調査会の答申も指摘をしておるところでございますが、これを縮減すると、退職支給そのものがどうも縮減されるのではないかと受け取られる向きもある。これはなかなか複雑な影響を及ぼす制度でございます。しかし集約すれば、これはかなり大きな企業の内部留保の充実に現実に役立っているという面は否定できないところでございますので、課税ベースの拡大を図るという見地からいたしますれば、やはりこれは、どの時点でどういうスケジュールで取り上げていくかは別といたしまして、今後の検討課題であろうかと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/38
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039・中村正男
○中村(正男)委員 今の引当金の問題はまた全体を通じて申し上げますが、次は、政策手段として行われている減免措置ですね、これについてお聞きをしていきたいと思います。
昨年、くどいようですが、ことしの見積書はまだいただいておりませんので、昨年の見積書で見てみますと、項目四の技術の振興、設備の近代化、これがその他を入れて九の費目に分かれておりますが、全体を通じて三千五百三十億円、先ほどのお話であれば六十三年度ほぼ四千億円、そういうことですね。この中に、確かに技術の振興、設備の近代化ということで、研究費に軸足が移っているというお話でございますが、我々には実態はわからないわけですね。しかし、現実にこの特別措置を受けた企業は、これは補助金が交付されたことになるわけですね。一方では、それは税制の面では公正を欠くマイナス面がある。やはり国民の側からすると、これが一体どう使われておるのかということは知るべきであるし、また知らせるべきであるというふうに思うわけです。したがって、このような特例によって租税の減免額を受けた内容を公示する義務があるんじゃないか、またさせる責任が大蔵省にあるんじゃないか、私はこう思うわけですけれども、その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/39
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040・水野勝
○水野政府委員 御指摘のように、所得税、法人税、相続税につきましては公示制度といったものがあるわけでございます。所得税につきましては税額、法人税につきましては所得の額が公示されることになっておるところでございますが、この公示制度は、御承知のように、第三者によるチェックという牽制的効果あるいは適正申告に資するという効果、こうしたものをねらいとして制定されておるものと考えておるところでございます。
一方、租税特別措置は、特定の政策目的に従いまして租税の減免を講ずるものでございますので、これはまさにそうした政策目的に合致した業務を行っておられる方につきましては、それは特別措置が適用になる。それを公示するという意味が、全体としての公示制度の意味でございますところの第三者によるチェック、適正に行われているかどうかをチェックするという機能を主としております公示制度となじむものであるかどうか、そこは、現在の公示制度に期待されておる役割からすると、少しどうも次元の違う話ではないかということで、公示制度にのっとって特別措置の減免税額を公示するというのはいかがなものかと考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/40
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041・中村正男
○中村(正男)委員 これも先ほどから申し上げておりますが、国際的な大きな流れとしては、より民主的な統制が進んでいっていると私は思うのです。したがって、従来のそういった公示の基準に照らしてというよりも、やはり税のこれからよりシビアな厳正化ということを考えれば、これは検討すべき課題ではないかというふうに申し上げておきたいと思います。またそれは、後ほどそれに対してもお答えいただきたいのです。
次いで、そういった企業が当該の特例措置によって所期の政策目的を達成し得たかどうか、これも私は、極めて不明確なままに推移をしておるのじゃないかと思うのです。まずそれについてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/41
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042・水野勝
○水野政府委員 租税特別措置によりまして企業がそれだけのメリットを受けるということは、まさに租税特別措置がねらいといたしました企業経営と申しますか、そうしたものを行った場合にそういうメリットが得られるということでございますので、一定の要件があれば減免になるということは、そういうその政策目的に即応した行動をなさればそういうメリットがあるわけでございますので、適用を受けるということは、それがその趣旨に即したメリットを受けておるということで尽きるのかなと感ずるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/42
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043・中村正男
○中村(正男)委員 いや、それは私はちょっと後追いだと思うのです。やはりそういう減免措置、特例措置を受けて、どういった効果があったのか、これはきちっと後をチェックをしなければならない。そしてそれがやはり見直しにつながっていくわけですし、あるいはまた新たな措置も考えてやらなければならない。極めてばらまき補助金の嫌いが濃い。これもひとつ検討を、いわゆる政策目的を達成し得たかどうか、それについてきちっとチェックをする、そういうことを強く望んでおきたいと思います。そのためには、定期的にそういったものを審査する制度、制度化が必要じゃないか。今まではそんなことは全く論議されてなかったと思うのですが、それについての答えをいただきたいと思います。
同時に、特例措置によって当然何らかの利益が得られたと思うのです。あるいはまた、なおかつそれは利益につながらなかったという結果もあるかもわかりませんが、とにかくそれは利益を生むという前提のもとでの減免措置でありますから、当然それによって得た利益の処分はその企業が勝手にやれるものではない。これはやはり一定の制限を加えていかなければ、何のための減免措置かわからぬわけですね。これも今全然野放しの状態であります。ただ減免措置をしたというだけに全部とどまっている。どういう効果があったのか、あるいは政策目的を達成し得たのかどうか、あるいはまたそれを定期的に審査する制度を考えなければいけないのじゃないか、また、それから生まれた利益というものをやはりきちっと制限していく何らかの措置が必要じゃないか、そこまで踏み込んだ論議が果たして今までなされたのかどうか、その点も含めて総括的にお聞きしておきたいと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/43
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044・水野勝
○水野政府委員 租税特別措置が一定の政策目的で、租税の原則と違う扱いをしている制度でございますので、それが政策的な意義が薄れた、もう要らなくなったという場合には、当然見直しをしていくべきものでございます。その点は、御指摘のとおりでございます。したがいまして租税特別措置につきましては、極力それの適用に期限を付するということでいたしておるところでございます。現在八十一の企業関係では項目がございますが、その中で六十七項目までは期限があるわけでございまして、十四項目は期限がございません。したがいまして大半のものは期限を持っているわけでございまして、その期限が到来いたしましたときに、これを延長するか廃止するか見直しをするか、その期限到来時にそうした作業をさせていただいているところでございまして、そうした仕分けをいたしまして、この一部改正法にのせまして御審議をいただいているところでございまして、まさにそういう意味におきましては、その期限の到来時に厳密な審査をし、結論を出し、御提案を申し上げているところでございます。
また、こうした方向につきましては、今後ともその方向で対処してまいりたいと思うわけでございます。おおむね企業関係の特別措置は、二年という期限を付している例が多いわけでございます。二年と申しますと、適用者側からしますと、適用を始めようとして一年目からたって、二年目にはもうすぐ期限が来る、これはどうも租税特別措置の適用期限としては短いじゃないかという議論も時々聞くわけでございますが、ただいま御指摘のような観点からいたしまして、どうしてもこれは二年程度の期限でもって見直しをさせていただきたいということでお願いをしているわけでございます。
ただ、御指摘の点の、それによるメリットがどう使われたかという点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、まさにそうしたこの特別措置のねらいとしております企業の行動が行われたときには自動的にそこにメリットが及ぶ、まさにそのメリットが及んでほしい行為をお願いをした、その行為をされたところにつきましてはメリットがいくわけでございますので、そのメリットをさらに追跡してというのはこの特別措置のあり方とどう結びつくのか、その点は若干どうも疑問に感ずるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/44
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045・中村正男
○中村(正男)委員 メリットをやはり追求をしていき、それから得られた利益についても、いわば特例措置によって減免されたからそういう利益が生まれてきたわけでありますから、当然それには何らかの法的な税制上のいわば義務、ある意味では新たな義務を企業としては負っていかなければならない、またそういう指導を大蔵省としてはやっていかないことには、あくまでこれは特例措置なんですから、先ほどもおっしゃっておられるように特例というのは期限が切られているのは当たり前なんですから、一定期限の中でそれがどういうメリットが生まれ、どういう利益を生じたのかぴしっと把握して、そのことによって得られた利益というものは当該企業は勝手に使うというわけにはいかないんじゃないか。これは、税法上の特別措置を受けた上での特別な利益なんですから、それに対しては私は、特例措置にのっとった上での新たな税法上のあるいはいろいろな意味の制限を課していくべきじゃないか、こういう立場なんです。
私も民間の出身でありますから、幾つかその実態を知っております。知っておりますけれども、何らそこには、減免措置がとられたというだけでストップしているわけですね。とまっておるわけですよ。そこから先は、何ら税制上のあるいは法的な制限措置が加えられていない。企業は、極めてありがたい補助金をもらったということだけでとどまっているわけです。それなら補助金は補助金として予算上でやれば済む問題なんですよ。税制上でわざわざ不公平な税制をもたらしながらそんなことをしているわけですから、している以上はきちっとそれに対する制限を加えていく。加えない、あとは追求もしないというのであれば、それは予算上の補助金に全部してしまえばいいのです。税制上の特例措置でやる必要はない。そういう点が私はどうも納得できないのですね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/45
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046・水野勝
○水野政府委員 委員のおっしゃるお気持ちはわかるような気もするのですけれども、ちょっとそこは補助金と税制上の特例措置との差があるのではないか。補助金でございましたら、こういう目的で補助金が設けられている、それを適用したいために申請をされ、その補助金の交付を受け、交付を受けたらそれがその目的に従って確実に使われているかどうか、それはチェックする必要がある。一方租税特別措置の方は、まさにその点が補助金と違うところでございまして、特段の手続を要するわけではございませんで、税法上の要件に合致すればその恩典、メリットを受けられる、そこが個別に公な手続をしてでないと出ない補助金と、その資格に該当すれば適用になる租税特別措置のメリットでもありデメリットでもあるという御議論はあるわけですけれども、そこに租税特別措置と補助金との違いがございますので、御指摘のような事後のチェックというものが補助金と同じような意味におきまして行われ得るものかどうか、制度的にその点はどうも補助金と違うのではないかという気がするわけでございます。
委員のお気持ちは、何となくわかるような気もしますが、制度的にはそこにはちょっと補助金と違うことが厳然としてございますので、その点はなおよく考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/46
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047・中村正男
○中村(正男)委員 こんなもの、もらう金は何も一緒なんですよ。全く隠された補助金という表現なんですから、むしろ補助金以上に、本来税法でやるわけですから、より追求がきちっとなされなければならない。税法のもとにいわば保護されているといいますか、あるいは一般化されてない、そういうかえって国民の側からすれば極めて不公平な不公正な扱いではないか。これは私は、そういうふうに強く申し上げておきたいと思います。
もう時間がございません。そこで次に、現行の法人税の基本構造について少し論議していきたいと思うのです。
まず今の法人税、これはシャウプ勧告時には三五%一本でスタートしたわけですが、このときの法的といいますか学説的な根拠としては、いわゆる個人株主と法人というものは一体のものだとする法人擬制説的な考え方で、我が国のこの法人税の基本構造がスタートしたと思うのです。しかし現実的には、そうはいっても公開された大法人と閉鎖的な中小法人があり、そこで何らかの調整的なことをやる必要があるのじゃないかというふうなことで、法人擬制説に立ちながら、法人擬制説という立場から、いわゆる現行法人の税構造にも極めて調整的な部分が都度入ってきた。
最終今現在では、例えば二重課税の調整、いわゆる前取りの理念から、二重課税の調整ということで配当軽課制度というものが取り入れられてきた、あるいは配当控除制度というものが入る。また、受取配当益金の不算入制度という問題もそれに関連していると思うのですが、それじゃ今の法人税というのは全く法人擬制説的な考え方に基づく構造になっているのか、あるいはもう一つの法人実在説ですね、法人は事業を遂行することによって所得を得る主体であって、個人とは独立に存在する、こういう法人実在説に若干なりともそれが加味されているのか。一体、法人税の基本構造はどういう考え方に今立ってつくられてきたのか。その辺はどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/47
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048・水野勝
○水野政府委員 確かにシャウプ勧告のころは、シャウプ使節団の勧告の中でややそういう趣旨の提言が述べられておるところでございますが、その当時の我が国の経済の実態ということから申しますと、まだ戦後直後でございまして、経済活動もそれほど活発でない、やはり税の中心は所得税、しかも事業所得者の所得税というものが相当税の中枢をなしておった、法人税の方はそれほど大きなウエートを持っておらなかったというときでございますので、そうした割り切りでいろいろ議論がされたのではないかと思うわけでございますが、その後三十年代、四十年代を経ましては、我が国の法人税というのは世界に有数のウエートを持つ大きな税目に発展してきているわけでございます。大体平均して税収の三割を占めておるというものでございます。こうした大きな税収をもたらす法人税につきましては、シャウプ税制のころのように擬制説あるいは実在説といった、そうしたいわば観念的と申しますか、そうしたものから仕組みを演繹的に議論していくというのは、それはもうやや適当ではないのじゃないか。実際におきますところの、要するに社会におきますところの企業の経済的活動の意味というものを、現実におきましてその企業の資金調達あるいは資本市場のあり方とか国際的な資本交流、そうした点をもろもろ考えてあるべき法人税を考えるのが適当ではないかというのが、現時点でのおおむねの考え方ではないかと思うわけでございます。
ただ、ぎりぎり理論的に詰めてまいりますと、やはり法人というのは株主から構成されている、法人所得は最終的には株主に帰属するものでございますし、株主の所得の一部を構成するのだということは、ぎりぎり言えば理論的にはどうも商法、会社法等の仕組みからそうなっているところでございますので、そうした面は確かに否定はできない。そうした面からいたしますと、負担調整措置ということは必要ではないかということはあるわけでございますが、それが擬制説とか実在説とか、そうした理論的な観点から演繹的に出てくるというものでもないのではないかというのが、現在の考え方なり実態ではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/48
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049・中村正男
○中村(正男)委員 しかし、現実には例えば配当軽課措置、これはあくまでも擬制説を根拠にしてそういうものが入ってくる。しかし一方では、企業規模なり所得水準、こうしたことに応じていわゆる現行法人税は一本でありながら中身において二段階税率を採用している。これはもうあくまでもいわゆる企業の担税力というもの、それに差異があるということを認めたものと私は理解するわけですね。だからそれはおっしゃったように、いや、そんな理論的に確たるものはないと言いながら、結果としては二つの要素が混入した今の法人税の実態になっている。それが結果において租税特別措置法というものに発展拡大していって、それが結果として税負担の軽減、優遇措置というものを決定づけているわけですよ。だから、私は根本的に、あいまいにするのじゃなしに、いわゆる理論的にもいま一度検討し直すべきじゃないか。本来のものとして法人税はどうあるべきか、どういう理論に成り立つのかということをぜひひとつ基本的な根っこから見直しをすべきじゃないか。そこまででまず、今まで言ったようなことは果たして今の政府税調ではどの程度論議されたのか、ちょっと時間がございませんので簡潔にひとつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/49
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050・水野勝
○水野政府委員 この点は、しばしば税制調査会でも議論されるところでございます。先般の抜本的税制改革の答申におきましては、先ほど申し上げましたように、理論的な面から見まして擬制説あるいは実在説という法人の性格論から、もろもろの負担調整措置を議論するということは適当ではない、現実に企業の資金調達方式、資本市場のあり方、国際資本交流等企業をめぐる経済活動に対して税制がどのような影響を及ぼすかという観点から検討を進めるべきである、これが現時点での税制調査会の基本的な考え方のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/50
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051・中村正男
○中村(正男)委員 時間がございませんので、もう途中はしょって結論から指摘をしたいのですが、私も法人の実態に即応した法人所得課税への改革をやるべきではないか、これを言いたいわけでございまして、今私が指摘したように、今の法人税の構造にはさまざまな矛盾が含まれておるわけです。それは、今の企業実態なり経済実態に一方では即さなきゃいけないと言いながら、一方ではこの原則を曲げてはならない、その相矛盾した形が混在されている。その根本は何かといいますと、やはりもう法人税は一本では無理だ、一本では無理ではないか、こういうことの方がより現実的じゃないかと私は思うのですね。
きょうは法務省にも来ていただいております。商法改正が論議されておると思うのです。きょういろいろな項目についてお聞きをしたいのですが、それは時間がございませんので省略いたしまして、要は商法改正が、私の理解では、いわゆる今論議しておるようなことも踏まえて、今の法人構造が果たして商法上妥当なものか、むしろ公開されている大法人とそうでない法人機能を持つ法人もしくは有限会社、そういったものとに区分けをしていく方向で論議されておると私は思うのですが、ちょっと法務省の方、おいででしたらお答えいただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/51
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052・稲葉威雄
○稲葉政府委員 現在商法の改正につきましては、先生御指摘のように、現実と会社法制との束離というものを是正するという方向で検討をしております。
その問題意識は、一つは、その会社という制度を利用している法人は、現在のところ株式会社、有限会社ともに百万以上ございますわけですが、その会社は、必ずしも会社としてふさわしい、つまり株式会社とか有限会社という会社は、それぞれ個人とは別の責任財産を持って、そしてその会社の債務というものは個人ではなくて、つまり株主とかあるいは経営者ではなくて、会社だけが責任を負うという形で法律制度としては組み立てられているわけでありますが、そういうものにふさわしい実態を持っていないという面はあるのではないかというのが一つでございます。
それからもう一つは、現実に株式会社は百万以上あります、あるいは有限会社はございますが、そういう会社が法律をきちんと守っているかどうかというと、会社法の仕組みというものを必ずしも守っていない。そしてその場合には、会社法の仕組み自体が中小会社に適していないという面がある。そういうことで、それの乖離をなくすという方向で検討をしているわけでございます。
ただ、その場合に、先生の御指摘のような中小会社と大会社を分けるという方向で考えているわけでございますが、これには二つの面がございまして、一つは規模の大きさというもので分けるという考え方でございます。それから、先生先ほども閉鎖的なというふうにおっしゃいましたけれども、こういう株主が非常に限られているか、それとも数が多いかというところで分ける。例えば大企業でございましても、日本アイ・ビー・エムというような会社は、これはIBMだけが株主でございまして、これはある意味では非常に閉鎖的な会社であるわけでございますが、そういうものをどういうふうに扱うかということで、その二つのメルクマールを使いながら、会社法は改正の制度の組み立てをやっていかなければいけないというふうに思っております。
ただ、その結果として、これ以降は私どもの申し上げることでないのかもしれませんが、その後の問題としてそれを税制上どういうふうにお使いになるかということは、また税制の方で十分御審議いただきたいと思っておりまして、私どもとしては、先ほど申し上げたような問題意識に立って、日本の経済社会の中で会社制度というものが公正に、かつ有効に機能するようなものとして改正したいというふうな方向で検討しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/52
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053・中村正男
○中村(正男)委員 ありがとうございました。
それでこの商法改正法案が、私どもお聞きしているところでは、この国会に提案される、当初それまでに法案をまとめるというふうにお聞きしておったのですが、若干それがずれているような感じでございますが、今時点でそのあたりどういうふうな状況になっているのか、また、めどを含めてお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/53
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054・稲葉威雄
○稲葉政府委員 御指摘のように、当初の予定としては今国会に出したいというふうに考えておりましたが、現在のところはとても無理ということで、来通常国会に提出できればということで、それを目標にして現在作業を行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/54
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055・中村正男
○中村(正男)委員 大蔵省にまたお尋ねしますが、端的に申し上げて今までの論議では、いわゆる会社区分の商法が改正されるまでは税制は法人税一本でいくのが妥当ではないのか、税制も区分すべきだという論議があるけれども当面は待つべきだというのが五十五年の税制調査会の結論といいますか、そういったふうにお伺いしているわけです。まあ過去のことはいいわけですが、今お聞きをしますと、法案としては来国会ということになる。そうなれば、今政府・与党が考えておられる税制改革は年内と、先ほど宮澤大臣明確にお答えなかったのですが、このあたり法人税の基本構造の検討あるいは改革、新たな大法人とその他法人税を分けるというふうな発想での論議はこれからしていく決意がおありなのか、あるいはそうではなしに従前のままでやっていくのか、大変重要な答えになると思うのですが、どうですか、どういうふうなお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/55
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056・水野勝
○水野政府委員 商法改正の面におきまして大法人と中小法人、あるいは公開法人とそうでない法人というふうなことで区分けがされて、法制上の扱いに差異が生ずるという場合に、先ほどお話のございましたように税制がそれをどう受けるか、これは税制の立場から検討されるべき問題だと思うわけでございますが、しかし、そうした区分けが一方の法制におきまして行われる場合には、当然税としてもそれにどう対処すべきかは、その時点において検討すべきことになろうかと思うわけでございます。
ただ、そういうこととは別に、法人としては現在一本として法制化されているものでございましても、税制上の措置といたしましては、これまでも同族会社に対しますところの行為計算の否認、留保金課税制度あるいは軽減税率、こういったものはその政策的要請等に応じまして講じられてきているところでございます。実態的に法人の規模の相違等によって、必要に応じ配慮がされてきているところでございますので、商法上の検討とは別に、従来からそうしたことを行ってきてまいっておるという線は、今後とも同じような考え方の中で検討されていくのではないかと思うわけでございます。ただ、商法でそうした大きな改正があれば、それを契機にその面につきましての基本的な検討は税制としても出すべきものであろうというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/56
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057・中村正男
○中村(正男)委員 根本的に今の法人税の基本構造が擬制説からスタートして、そのために配当軽課措置等の調整的なといいますか、そういうものが入れられた。しかし、現実の今の経済社会と法人の構造を見てみますと、明らかに大法人はいわゆる機関株主が中心でございまして、個人の持ち株比率というのは本当に微々たるものになってきております。そういうことを考えると、大法人はむしろ実在説に基づく根本的な見直しをやった上で、こういうあいまいな相矛盾するこの措置法に盛られているいろいろなことを整理して、きちっとした税制を確立すべきじゃないか。同時にまた、一方では、日本の場合中小企業あるいは零細企業経営というのはあるわけですから、それらについてはそれに即した税制をこの際打ち立てる。きちっと二本立ての税制にした方が、よりこれからの経済社会なり国際化の中でふさわしい税制ではないか。
単なる租税特別措置法の一部改正だけをちょこちょこやっていたのでは根本的な解決にならない。むしろこの際、そういったことを前提にしながら租税特別措置法全体を原則的に廃止をして、まず課税ベースを広げて、そして、どうしても経済あるいは産業政策上必要なものだけ年限を限って新たに実施をしていく。その場合、当然審査等の制度の新設を含めて見直すべきではないか。もうこんな個々の、先ほど言った貸し倒れあるいは賞与さらには退職金の引き当て等、課題は現実にあるわけですから、また産業政策上も全く硬直化した中でその効果が表面には出ない、またその利益の処分について全く制限を加えられていないこんな措置法は一切改めるべきだということを申し上げて、この質問を終わりたいのですが、最後に次官、お聞きになっておられまして、率直な御感想と御見解をお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/57
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058・平沼赳夫
○平沼政府委員 御意見を拝聴いたしておりまして、御指摘の点いろいろごもっともな点もあるわけでございまして、我々当局といたしましては、その御意見も慎重にこれからの考慮の中に入れて取り組みさせていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/58
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059・中村正男
○中村(正男)委員 中途半端な時間になってしまったのですが、せっかく建設省がお見えになっておられますので具体的な問題で一つだけ、居住用の財産を譲渡した場合の課税の特例の改正についてちょっとお聞きをしておきたいと思います。
まず、買いかえ特例の廃止、これは大蔵省としては、土地の高騰を抑えるという意味合いの税制として出されたと受けとめているのですが、その辺は大蔵省、それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/59
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060・水野勝
○水野政府委員 一点は、今のお話にも関連いたしますが、地価の高騰を伝播させる機能というか効果をこの制度が持っておる、その点に対処する必要がある。それからこの制度は、そもそも居住規模を大きくするときは負担がなくて、小さくするときには負担が出てくるという、公平の点からも問題がある。こうした二つの観点から、今回御提案を申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/60
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061・中村正男
○中村(正男)委員 建設省お越しでございますが、これは土地対策として有効に働くのかどうか。それとは別にもっと大きな問題が土地高騰の原因になっているわけでして、私はこれは余り効果はないと思うのですが、建設省のお考えをお聞きしたいということと、もう一つは、今日本に問われていることは良質な住宅を求めていくということだと思うのです。そういう意味合いでは、住宅減税も若干行われておりますが、これは不満であります。不満でございますが、一方では住宅減税が行われて良質な住宅建設を促進しようとする、一方では買いかえ特例の廃止というのは、ある意味では良質の住宅取得を阻害する、あるいは抑制する、私はそういう意味合いを持つのじゃないかと思うのですが、建設省のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/61
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062・櫻田光雄
○櫻田説明員 お答えいたします。
ただいま主税局長の方からもお話ございましたように、買いかえ特例制度が都心部の地価高騰を都市の周辺部に波及させた一つの要因である、このようなことが指摘されているわけでございます。この買いかえ制度の見直しというものが行われますれば、不必要に高いお金で周辺部の土地を買うというふうなことは防止されるわけでございまして、その点におきまして一つの大きな効果があるというふうに認識をいたしておるわけでございます。
それから、二点目の住宅政策の基本的な目標でございますけれども、国民大衆に対しまして適切な住宅供給を行いまして国民生活の質の向上を図る、こういうことにあるわけでございます。これを達成するためには住宅取得能力の向上ということと、二番目に住宅価格、土地価格を含めましたこの安定というものが二大の不可欠の要因である、このように考えているわけでございます。
第一番目の住宅取得能力の向上という面におきましては、今回お願いをしてございます住宅取得促進税制の改善というような政策とか、あるいは住宅金融公庫等の政策金融の充実というようなことで対処していかなければならないと考えているわけでございます。二番目の、地価の安定、住宅価格の安定を図らなければならないということは申すまでもないわけでございまして、この点につきましては、いろいろな総合的な施策というふうなものが必要になるわけでございますけれども、その総合的な施策の一環といたしまして、今回の買いかえ特例措置の見直しというものも一つの役割を果たすべきもの、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/62
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063・中村正男
○中村(正男)委員 私は、この問題は東京問題だと思うのです。まだ地方はそれほど東京のような実態になっていない。そういう中では、何も東京都心だけが住宅建設云々じゃないと思うのです。むしろ都心などというのは、住宅を建てられないのです。これは、もちろん当然のことながら全国適用されるわけですから、そういう意味合いでは、地方ではこれによってより良質な住宅を建てるということには極めてマイナスの要因になるわけです。僕はその点を言っているのです。だから、全体として住宅建設の促進を阻害するのじゃないか、より良質な住宅を取得していこうという国民の気持ちを抑えることになるのじゃないか、その辺はどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/63
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064・櫻田光雄
○櫻田説明員 お答え申し上げます。
住宅の促進ということにおきまして、地価の安定が不可欠の要因であるということを考えているわけでございます。その意味でこれを行いますために、いわゆる買いかえ特例制度というふうなものの見直し、一部におきまして現在の制度と比べまして、買いかえの促進という面ではデメリットが生じるというふうなことがあろうかと思いますけれども、全般的な国民大衆の住宅取得の促進のために地価の安定を図らなければならない、そういうふうな観点でぜひともこの見直しが行われるべきものと考えているわけでございます。
今、先生がお話しになりました地方部における問題でございますけれども、実は先生御案内のとおり、住宅を売ります場合の租税の制度でございますけれども、買いかえ制度と並びまして住宅の譲渡益につきまして、実は三千万円までの特別の控除というものがございます。地方部におきましては、この三千万円の特別控除制度を使いますれば、現在と同じような形で買いかえの促進というふうなものがやっていけるだろう、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/64
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065・中村正男
○中村(正男)委員 時間が来ましたからこれで終わりますが、まだまだ私はこれは東京だけの問題で、勤労者全体から見るとこれには大変不満でございます。こういうことをやられることが良質な住宅取得を阻害するのじゃないか。一方では住宅減税、これも少ないのです。せめて連合が言っているような限度額四千万、そのうちの二%、これは年間八十万です。それを五年間四百万円。今回の提案ではこれは二十万、五年間百万円ですから一方では微々たる住宅減税で、また一方では大部分の良質な住宅買いかえをしたいという意欲を阻害する、いわゆる二律相反する今回の御提案ではないか、私は極めて不満だということを申し上げて、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/65
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066・越智通雄
○越智委員長 次に、橋本文彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/66
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067・橋本文彦
○橋本(文)委員 私もまず、土地税制からお尋ねいたします。
今回のこの改正によりまして、いわゆる増収額は初年度は四十億円と見込まれております。平年度で五十億円。全体の額からすると、極めて少ない金額ではなかろうかと思うのです。今お話がありましたように、大都市周辺の問題であって全国一律の問題ではない。買いかえ特例につきましては皆さん非常に期待を持っておった。それが全国一律にばっさり切られてしまうというこの問題、これについてまずどうお考えですか。主税局長はこの件につきまして、要するに一つには土地狂騰の原因である、それから不公平がある、その点を言いましたけれども、大都市周辺以外はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/67
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068・水野勝
○水野政府委員 御承知のようにこの買いかえ制度は、昭和四十四年以前はかなり弾力的に行われておったところでございます。これは、今まで居住用に使っていた資産かどうかにかかわりなく、とにかく土地を売って家を建てればよかった。非常に大幅に認めておったわけでございます。したがいまして、その点からいたしましてとにかくうちを、土地を買いさえすれば課税が生じないということから、かなり大幅に利用されたところからその弊害がかなり指摘されたところでございます。
また税制といたしましても、買いかえということは結局その昔からの取得価格を引き継いでいくことでございますが、およそ帳簿的なものを持たない、事業をいたしておられない個人の方に、そうした取得価格を永久に引き継ぎをお願いするということは、そもそもいろいろ現実的にも困難があるのじゃないか。こういった点から、昭和四十四年には、これはもう思い切って廃止させていただくということで廃止になったところでございます。
ただ、昭和五十七年になりましては、これがやはりライフサイクルに応じた住みかえ、住環境の悪化のための住みかえ、そういった場合に税負担が起こるということは問題であるということから、長期保有のものは再び買いかえを復活するということになったわけでございます。したがいまして、この制度としては、やはり税制上いろいろ公平の点から、また現実的な執行の面から難点があるということが底流にあったわけでございますが、五十七年に一部復活をしたということでございます。
それが今回に至りましては、やはり都心部の地価の高騰を伝播させるという面の効果と申しますか影響が非常に大きくなりましたので、税制としてのそもそもの問題点とあわせて、基本的に原則としてはこれを廃止させていただく。ただし、一定の場合はこれは残しておくということでございます。これは都心部の話でございますが、一般的な地方の部分につきましては、先ほどお話のございましたように譲渡益税、三千万円の特別控除がございますので、おおむねカバーはされるのではないか。また、三千万円を超える部分につきましても一〇%、一五%という低率分離の課税でございますので、これが住宅の取得を阻害をするということはないのではないかと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/68
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069・橋本文彦
○橋本(文)委員 この買いかえ特例は昭和四十四年にでき上がって、直ちにそれが廃止される。その後十三年経過してまた五十七年に復活して、今年、六十三年にまた廃止しよう、変転きわまりないわけでございますけれども、実は昭和五十七年ごろ、そろそろ大都市周辺では地価の高騰があったのです。この五十七年の段階で、特に買いかえ特例を利用してとにかく地価のつり上げがあった、こういう時期なんです。そういう時期に、わざわざこの買いかえ特例を新たにまた設けた。この辺で大蔵省あるいは建設省の方の将来性の見通しのなさ、それが今回あるんじゃないかと思うのです。その辺いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/69
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070・水野勝
○水野政府委員 確かに四十四年に廃止し、五十七年に復活し、今回またこれを廃止するということは、制度の安定性を欠くものでございまして、御指摘の面はあることは否定できないと思うわけでございますが、やはり地価の動向と申しますか、そういったものがある程度大きく変わるものでございますので、税制としてもそうした状況の変化には対応して、その都度改正をお願いをするということになってきておるわけでございます。しかし、何と申しましても、税制としてはこうした制度は、個人の買いかえ制度というのはやや無理があるというのが底流にございますので、そういう底流の上でそのときそのときの情勢に応じて利用いただいたり、廃止さしていただいたりしているということではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/70
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071・橋本文彦
○橋本(文)委員 私の質問は、買いかえ特例が復活した昭和五十七年ごろ、大都市周辺においては土地の高騰が始まっておった。その一つの原因として、買いかえ特例の全部使ってしまうというようなことが問題になっていたんじゃないか、そういうような状況を把握していなかったかどうかを聞いておったわけです。把握しておりましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/71
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072・水野勝
○水野政府委員 高騰は、五十年当初に比べますと、上昇が始まっていた時期ではあろうかと思います。上昇が少しずつ目立ってまいりますと、住みかえのために売る。そして、新しいところを買うにも、まさに譲渡益が大きく出てまいりますので御負担が問題になる。そういうことから、恐らくその時点におきましては復活して対処をいたした。それが今度その地価の上昇が暴騰ということになって、その弊害が大きくあらわれてきた。それによって、今回廃止さしていただくということを御提案申し上げておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/72
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073・橋本文彦
○橋本(文)委員 緩やかな上昇の段階では目をつぶっておったけれども、暴騰あるいは狂騰という事態に直面して税制を改正する、こういうわけですね。しかし、いろいろと言われておりますけれども、確かにこの買いかえ特例、もう時期を失してしまった、遅きに過ぎたという御批判があるのは御承知でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/73
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074・水野勝
○水野政府委員 私どもとしては、底流としては、個人買いかえ制度というのは極力できればない方が、税の公平の面からすれば適切ではないかと思うわけでございますので、やや時期おくれという御指摘はあるといたしましても、これはこういうことで御提案を申し上げたいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/74
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075・橋本文彦
○橋本(文)委員 今回は買いかえ特例を廃止されますけれども、また復活するというようなことは考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/75
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076・水野勝
○水野政府委員 税制のあり方としては、できるだけこうしたものは縮減をさしていただきたいというのが現時点の考え方でございますので、現時点の情勢のもとでは、もう一回またこれを復活してお願いをするということはないことと考えますけれども、もろもろの情勢の変化というものはいろいろあり得るわけでございますので、今後永久にこれがこの方針でということを申し上げるのはいかがかと思いますが、四十四年に廃止し、五十七年に復活し、また今回廃止するというような、こうしたことはできれば避けたいというのが現在の感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/76
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077・橋本文彦
○橋本(文)委員 この土地制税の見直しで、買いかえ特例の関係に関しては四十億円増収する、こうなるわけですね。この場合には、いわゆる良好な土地を供給した、これに対しては税率が低くなって減税、買いかえ特例で増税、こう見るわけですね。それでよろしいでしょうか、そういう見方は。その結果、初年度は四十億、平年度で五十億になるわけですけれども、この内訳はどうなるでしょうか。買いかえ特例の廃止だけでは幾らになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/77
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078・水野勝
○水野政府委員 この四十億及び五十億という話は、まさに居住用財産の課税の特例の制度の変更によるものだけでございまして、その中での数字として計算してございますので、これが四十億、五十億、居住用買いかえの改正による増収額としてお考えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/78
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079・橋本文彦
○橋本(文)委員 大臣見えましたので、早速よろしいですか。
昭和五十四年のいわゆる財政再建に関する国会決議がございますね。もう予算委員会で何回も言われて、耳にたこができていると思いますけれども、この国会決議の内容を大蔵大臣はどのように理解しているか、確認しておきたいど思うのです。
逐条的にいきたいと思いますけれども、「国民福祉充実に必要な歳入の安定的確保を図る」という、この「国民福祉充実」という「福祉」はどういう力点を置かれておったか、大臣はどのように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/79
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080・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 国会の御決議でございますので、その解釈というのは、やはり有権的には国会でお願いをいたすべきものだと考えておりますけれども、この「国民福祉充実」ということがここに出ておりますのは、恐らくはやがて来るべき我が国の社会の高齢化等々を踏まえながら、福祉政策の充実には相当な経費が必要であろう、そのための歳入は安定的に確保しなければならない、こういう御意向であったのではなかろうかとそんたくをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/80
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081・橋本文彦
○橋本(文)委員 高齢化社会の到来を予測しておったのではなかろうかと考えておられる。
その次に、「財政によるインフレを防止するため」云々がございます。この「財政によるインフレを防止」、これは何を言っておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/81
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082・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 昭和五十四年といいますのは、昭和四十八年に石油危機が起こりました後、我が国としては、それに対応いたしますために特例公債を発行いたしましたり、相当財政は重い負担を背負ってまいったわけでございます。何とかそれを再建しなければならないということを国会としてお考えになられながらの、こういう御意思であったのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/82
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083・橋本文彦
○橋本(文)委員 特例公債発行あるいは赤字国債の発行を極力控えるようにという趣旨ではなかろうか、こう思ったわけですね。
それで、来るべき高齢化社会を想定し、それから赤字国債の問題、「財政再建は、緊急の課題である。」こういうメーンテーマになる。そして、具体的には「政府が閣議決定により昭和五十五年度に、導入するための具体的方策として、これまで検討してきたいわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかった。従って財政再建は、一般消費税(仮称)によらず、」こうなっておりまして、要するに高齢化社会を想定しても、そしてまた財政再建、これはとにかく大型間接税、一般消費税、こういうものにはよらないんだ、間接税によらないで、あくまでも「行政改革による経費の節減、歳出の節減合理化、税負担公平の確保、既存税制の見直し等を抜本的に推進することにより」、こうなっておるわけですね。あくまでもこれを素直に読むと、新税を導入することは考えないで、既存の税体系の中で考えていきなさいよというふうにとれるわけです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/83
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084・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 先ほどお尋ねに対して申し上げましたように、将来高齢化社会が到来すれば相当大きな福祉の負担が必要である。しかるに今財政は、今というのはこの時点でございますが、特例公債を増発することによって非常な苦労の状況にあり、インフレを防止する必要もある。また、財政を再建する必要もある。将来の需要が増大するのが見込まれるのに対して、財政はこのような状況であるから、かくかくの方法によって財政再建をしなければならない。そういう意味での財政再建の方途についての御決議である、また名前もそうなっておりますが、そのように受け取っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/84
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085・橋本文彦
○橋本(文)委員 この決議文の中に、「政府が閣議決定により」という文章がございます。この閣議決定というのはいつ行われた閣議なんでしょうか。それはわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/85
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086・水野勝
○水野政府委員 税制調査会におきましては、五十三年の十二月に一般消費税大綱というものを盛り込みました答申を決定いたしたところでございます。そこで政府といたしましては、五十四年一月十九日に昭和五十四年度税制改正の要綱の閣議決定をいたしておりますが、その中におきまして、一般消費税大綱に示されたようなものの五十五年度実施を準備するような趣旨の文章を織り込みまして、それでもって閣議決定をいたした、この閣議決定であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/86
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087・橋本文彦
○橋本(文)委員 閣議決定と申しますと内閣の基本方針、基本中の基本でございます。それが昭和五十四年度に閣議決定が行われて、とにかく一般消費税を導入していこう。当然その一般消費税を導入するということは、税制の安定的な確保に努めるということだろうと思います。しかし、いろいろたくさん議論がございまして、ついには一般消費税が導入できなくなった、そのときの国会決議でございまして、要するに政府が一たん基本方針として決めた、今までの税体系はそのままにしておきまして、新たに間接税を導入するということを閣議決定で決めた。しかし、それを国会決議によって一たんその閣議決定をおろす、そういうわけですね。おろさざるを得なくなった、そのように理解をしておりますが、そのとおりでよろしいですか、閣議決定をおろしたことになるという。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/87
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088・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 毎度申し上げますように、国会の御決議を余りあれこれ私どもは恣意的に申してはいけないことでございますけれども、これを読みますと、私は、ここに「一般消費税(仮称)」とございますのは、しかもわざわざ「閣議決定により」と言われましたのは、あの一般消費税というこういう御意思、一つのものを確定するためにわざわざこういう表現をされたのではないだろうかというふうに読んでおります。間違っておりますかもしれませんが、抽象的な話をしているのではない、あのものは「国民の理解を得られなかつた」、こう言っておられるのではないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/88
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089・橋本文彦
○橋本(文)委員 こう聞きましょう。まず、昭和五十四年度になされた閣議決定というものはどうなったんでしょうか、この国会決議を受けまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/89
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090・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは恐らく、この閣議決定をいたしまして、結果はこういうことになったわけでございますので、決定そのものが取り消されたということはないということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/90
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091・橋本文彦
○橋本(文)委員 この閣議決定は現在でも生きておるんでしょうか。今の、現在の内閣も拘束するような閣議決定なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/91
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092・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 閣議決定をいたしましたが法案は提出されませんでしたから、事実問題といたしましてその閣議決定は実行に移されなかった、こういうことであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/92
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093・橋本文彦
○橋本(文)委員 閣議決定が実行に移されなかった、事実上なくなったというふうに理解しておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/93
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094・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ちょっと細かいことになって悪うございますが、閣議決定そのものは今日も存在しておる、しかし、その閣議決定を国会のこのような御決議によって政府は実行いたさなかった、こういうことと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/94
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095・橋本文彦
○橋本(文)委員 そうしますと、大臣の考えでは「一般消費税(仮称)」というこの閣議決定は、現在も存続しておるというわけですね。事実上、現実の問題としまして、内閣の基本方針というものが一たん決められる、それがその方針を転換する場合、方向転回する場合にはどういうようなことをしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/95
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096・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 私が今、閣議決定は取り消されておらないだろうと思いますと申しあげましたのは、取り消してしまいますと、この財政再建に関する決議の対象であったものがなくなってしまうということになります。実際はそうではなくて、行政府として一つの意思決定をいたしましたけれども、立法府においてこのような御決議があって、その立法府の御決議を尊重して、行政府が一たん決定をいたしましたけれどもそれを実行に移さなかった、こういうふうに解釈するのが恐らく一番素直な解釈ではないか。もとより、でございますから、その閣議決定がまたいつかのこのこ起き上がって動き出すかということになりますと、それはもうこの段階でこれに関します限り、話はきちんとついておることであるというふうに考えるべきでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/96
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097・橋本文彦
○橋本(文)委員 高齢化社会を想定し、あるいは特例公債、赤字国債の問題でのインフレ懸念、こういうことを踏まえての財政再建、これについてその後新たに閣議決定はしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/97
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098・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、財政再建等々について、政府は当然その後もろもろの方法によりまして努力をいたしてまいりました。それに関してはたくさんの具体的な決定がございます。予算案そのものも、この趣旨に従いまして五十五年以降ずっとマイナスシーリング、ゼロシーリングというようなことでやってまいりました。それはもとより閣議決定を経てやってまいったことでございますので、たくさんの財政再建についての、あるいは行政改革についての決定を具体的にはいたしておると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/98
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099・橋本文彦
○橋本(文)委員 大臣、本来ならば総理に聞くんでしょうけれども、この閣議決定が実行に移されなかった、事実上存続しているけれどももはや今はそれが生きて返ることはないだろうとおっしゃいました。それで、現実の閣議の中では、これはもう御破算にしよう、廃止をする決定というのもあるんですか、また、あった例もあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/99
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100・水野勝
○水野政府委員 この五十四年一月十九日の閣議決定は、毎年の税制改正要綱を決定いたす中の一つの文章としてあったわけでございます。その文章といたしましては、税制改正要綱の柱書きの下に「なお、一般消費税(仮称)については、昭和五十五年度中に実現できるよう諸般の準備を進める。」こういう文言でございました。税制改正は、中身全体が決まりますと、全体像を税制改正の要綱として閣議決定で確認をいたしておるところでございます。
ただ、物によりましては、その閣議決定の内容がそのまま実現に移されない場合も過去例があるわけでございます。例えば、昭和五十年度の税制改正要綱の閣議決定におきましては、社会保険診療報酬課税の特例の見直しについては、次期社会保険診療報酬の改定と同時に実施するというふうな要綱の決定を閣議でいたしておったところでございますが、次期報酬の改定のときには見直しは行われなかった、こうした例もあることはございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/100
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101・橋本文彦
○橋本(文)委員 ある閣議決定に対して新たにそれを廃止するという閣議決定はないのですか、そういうことはしないのですか、手続的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/101
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102・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 これは法制局長官のお力をかりなければいけませんかと思いますが、私自身の経験で申しましても、前の閣議決定を新しい閣議決定にしますために廃止するということはございます。具体的な例で申しますれば、例えば、これは間違いがあるといけませんので申し上げませんが、そういうことはございます。つまり、行政府の意思が一つのことを決めた、しかしその後の事態の進展によって、これはこういうふうに改めた方がいいという場合に、改めることもございますし、前を廃止して新しいものを決めることも、これはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/102
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103・橋本文彦
○橋本(文)委員 もちろん相矛盾するものができれば、後の方の閣議決定によって前の閣議決定はなくなる、そう思うのが当然でしょうけれども……。
大臣は、この一般消費税(仮称)なるものは、あのときの問題にされた一般消費税であって、いわゆる大型間接税、そういうものを指しているのではない。Aという名前のつけられた新しい税であった、決して間接税一般を指しているものではない、そういう考えですね、あの一般消費税は。我々は、この一般消費税(仮称)も含めて、いわゆる大型間接税あるいは現在政府が考えておられるような新型間接税、要するに、新たな税は設けてはいけませんぞと読んでおるわけです。あくまでも財政再建、高齢化社会を想定しても、間接税導入をしないで行革をしなさい、あるいは現在の税体系の不公正を見直しなさい、あるいは税負担の公平を確保しなさい、こういうことによっていわゆるスリムな形にしていらっしゃい、そういうふうに思っているのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/103
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104・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 これは本来国会の御決議でございますので、今行政府の一員であります私がかように思うということを申し上げるのは、筋としては私は適当なことではないと思っております。お尋ねでございますから申し上げておるのでございますが、政府が閣議決定により五十五年度に導入するための具体的方策としてこれまで検討してきたいわゆる一般消費税(仮称)と、こうかなり具体的に、あのものは適当でないというふうにかなり一つ一つ具体的に対象を考えて、この文章はおっしゃっているように私は印象を受けますけれども、しかしこれは、本来行政府の申し上げるべきことではない、国会が有権的に御解釈なさるべきことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/104
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105・橋本文彦
○橋本(文)委員 税制改革につきましては、今回の租税特別措置法につきましても、現在進められている税制の抜本的改革との関連に留意しつつというような表現できているわけです。したがいまして、相続税法の見直しとか酒税法の改正とかいうものは今回入っておりません。あくまでも税制の抜本的改革との関連に留意するのだ、そこに力点が置かれまして、しかし万やむを得ないものとして現在、これだけはやってもらいたいという形だろうと思うのです。
そこで税制改革なんですが、ずっと予算委員会の議論を拝聴しておりますと、税制改革というものは、あくまでも新しい税、消費の段階における新税、要するに大型間接税を導入することが税制改革につながっていくのだというふうに思えてならないわけです。我々は、税制改革というものはあくまでも不公平税制を先決問題としてやる、それから現在の既存税制の中にも非常な矛盾がある、それを見直していくべきである、こういう議論があるわけです。同じ税制改革といいましても、政府の方では、新しい税金を設けることがいわゆる税制改革につながっていくのだ、我々の方では、新しい税金を設けないで税制改革をすべきであるというかみ合わない議論になっておりますけれども、きょうの朝日新聞で、いよいよ政府税調の試案なるものがそろそろ出そうである、いろいろ議論があったようですが、EC型付加価値税と取引高税に絞られた、そしてその両案が併記されるというようなニュースがありましたが、それは大臣御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/105
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106・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 そういう報道は読みましたが、実情は、税調の各委員が地方の公聴会にずっと行かれまして、それがようやく今終了するところでございますが、その上で一堂に集まられて自分の見聞きしたことを持ち寄られる、それはこれからでございますので、あのような報道は私は今の段階で事実ではないであろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/106
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107・橋本文彦
○橋本(文)委員 ところが、税制改革ということにつきましては、昨年の十一月十二日に税制調査会に諮問をしております。この諮問は、高齢化社会の到来、それから経済の一層の国際化を理由にいたしまして、税制改革の実現が避けられない、こういう文言になっておるのです。予算委員会の議論を拝聴しておりましても、財政再建のために新しい税制改革をするのではない、あくまでも高齢化社会あるいは経済の国際化のために税制改革をするのだ、こう言っております。ところが、冒頭大臣が、個人の意見と断った上ですが、国会決議における国民福祉の充実という問題も高齢化社会を想定しておる、高齢化社会ということが常にキーワードになっております。しかし、財政再建は国会決議のあの問題があるし、今回やるのは財政再建ではありません、あくまでも税制改革なんですということでもって、間接税を何とか導入しようとお考えのようです。この国会決議の国民福祉の充実という問題と高齢化社会の到来、全く同じことを言っているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/107
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108・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 政府の諮問につきまして、これは私どもがいたしましたことでございますので有権的に申し上げることができるわけでございますが、今後の高齢化社会の到来と申しましたのは、まさに今後二十一世紀に向かって、現実に到来する高齢化社会に対してどういうふうに対処をすべきかということを頭に置いて申したわけでございます。
他方、国会決議が、冒頭に言われました国民福祉充実云々が果たしてそれと同じことであるかどうか、国会決議については私どもは有権的に申し上げられませんのて、そこを断定するわけにはまいりません。政府の諮問の意味はそのような意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/108
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109・橋本文彦
○橋本(文)委員 では大臣、税制改革に関しまして、まず最初に何をしなければならないとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/109
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110・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それはたくさんのことをしなければなりませんので、まずとおっしゃいますと優先度というものを申し上げにくいのでございますけれども、要するに先ほど言われました諮問にありますような、こういうことについて全般的に考えていくべきではないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/110
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111・橋本文彦
○橋本(文)委員 よくわかりません。これは所得、消費、資産の間で均衡のとれた安定的な税体系を構築するということに主眼がございまして、それが現状では消費の面に重点が置かれておる、そういう感じがするわけです。
そうではなくて、ここに書いてあるのはわかっております。大臣として、税制改革には何が必要なんだ、また国民の間では税金に対するどういう認識がおありなのか、御存じでしょうか。まずもって何から手をつけるべきであるか、どういうお考えをお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/111
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112・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 まずとこう言われますと、いろいろなことを同時に考えなければいけないと思いますので、一つとってまずを申し上げることはなかなか困難でございますけれども、しかし、例えば税制調査会の各委員が地方の公聴会に出られます前に、「税制改革の基本課題」という内部の意思統一をなさいました文書がございます。それによりますと、「それでは、いかなる方向で税制改革を進めるべきであろうか。このような改革は、課税の公平、中立、簡素の基本原則に従い」行われなければならないと書いてございますので、やはり公平、中立、簡素といったようなことが原則であろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/112
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113・橋本文彦
○橋本(文)委員 国民の間で税に対する不満があるのは御存じですね。それはどこにあるか、大臣は認識しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/113
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114・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは、基本的にはなるべく安い方がいいと考えられることは当然でございますけれども、もともとが受け身のものでございますので受け身の立場として、まあ右隣の人も左隣の人もみんな負担をしている、お互いに相応のいわば不公平感のない負担ならばやむを得ぬな、しかしそれが必要だな、こういう意識を広く国民は持っておられるだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/114
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115・橋本文彦
○橋本(文)委員 今、大臣の口から不公平感という言葉が出ました。不公平感が存在するので不満を持っておる、このように理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/115
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116・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 不公平感があって、それについての国民の不満というものはこのたびの公聴会などでもあちこちで伺っておりますので、そういうことがあるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/116
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117・橋本文彦
○橋本(文)委員 さあそこで、不公平感が存在するということがわかりました。となれば、ではその不公平感がどうしたら除去できるのか、どう除去しなければならないのか、そういう構想はお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/117
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118・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは、制度の面と行政の面と両方あるであろうと思います。例えば、勤労所得と事業所得との捕捉率に差があるというようなことがよく言われますが、それは事業所得の捕捉が十分でないということ、行政の努力によっていろいろな方法がございますけれども、さらにそれを高めなければならないという、あるいは申告制度等々によって納税者側により協力をお願いをするといったような行政上の工夫もございますし、また制度上もしそういうことが現実の問題としてあるのならば、勤労所得に対してどのようなことを制度上考えればいいのか、事業所得に対してどのようなことを制度上考えればいいのかといったような両方の問題に私は分かれておる、そして政府としても、ある程度そういう努力は今日まで両面でやってまいっておると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/118
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119・橋本文彦
○橋本(文)委員 もっと現実的な面の不公平感というもの、庶民が持っている切実な不公平感というものを、どうも大臣は認識しておらないような感じがするのです。そういうふうにさらりと理論的に言ってしまわれますと、もう身もふたもないわけでして、どんなにサラリーマンが自分は重い税金を課せられているかという切実な声――クロヨンとかトーゴーサンという言葉を使うと、そんなことは存在しないと言う人もおられるようでございますけれども、現実はトーゴーサン、クロョンということが一般的になっております。そういうところに見直しをしようともしないで、そして国民の負担を公平にするために広く薄くという形でもって間接税を導入する。それで本当に国民は、いわゆる税に対する公平感を持つのでしょうか。私は反対だと思います。
例えば、間接税というものは御存じのように逆進性がございます。したがって、所得が低ければ低いほどその重税感を感ずる。どんなに所得税の見直しで所得税減税があったとしても、結局はプラスになってしまうのじゃなかろうか、そういう思いがするのです。所得税減税で大幅に減った、しかしその減ったものは、いやそれ以上のものを間接税でもって払わざるを得ない、これでは全くプラス・マイナス・ゼロ、あるいはそれ以上となったら、それは国民は怒りますよ。じゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/119
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120・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 例えば、中堅サラリーマンの重税感というものは非常に強い。それはやはり累進構造があの辺のところで非常に急になっておるからではないかということを考えますと、累進構造を緩めるための改正をしなければならない。それは昨年もお願いをいたしましたし、これからもお願いをいたそうとしておるところでございます。また、給与所得者の中には、ある程度実額で非常に大きな、給与を得るための支出があるという主張について、これは所得税法始まって以来のことだそうでございますけれども、特定控除というようなことも制度としては考えるべきだということを思っておりますし、また配偶者特別控除につきましても、そういう意味では給与所得者に事実上いわば有利に働く要素が大きいと思います。
他方で、事業所得について言えば、みなし法人の場合どの限度まで給与を経費として考えるか、その限度をどう考えるかといったような、そういう制限などは今度は事業所得者の方にやや重く働くといったような、そういう制度面の改正ということを昨年もお願いいたしましたし、これからもやってまいりたいと思うのであります。
同時にまた行政の面で、いろいろ申告の方法とかあるいは実調とかいうようなことで、できるだけ事業所得の捕捉に努めてまいりたい。具体的に申しますと、さっき大変抽象的に申し上げたのですが、そのような努力が行政と制度の両面で行われてまいりましたし、今後もぜひそうしなければならないと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/120
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121・橋本文彦
○橋本(文)委員 まだまだ大臣にはお聞きしたかったのですけれども……。
大臣がいないのでちょっと困るのですが、今回の大蔵省が考えておる税制改革の中には、いわゆる高齢化社会というものが相当大きなウエートを占めておられる。高齢化社会につきましては、二年ほど前に閣議決定がなされまして、長寿社会対策大綱というものがございます。しかし、この長寿社会対策大綱を幾ら拝見いたしましても、数字的なデータというものは全くない。ただ観念的に、感覚的に多分こうなるであろうというだけでございまして、具体的に数字をもって、データをもって示しているものは何一つない。しかし、今回の税制改革論議に先立ちましては、あくまでも大変な時代が来るんだ、だから新税を導入しなければやっていけないんだ、こうなっておりますけれども、そこまで大蔵省が言い切るためには、大蔵省内部におきましては、相当綿密なデータなり数値というものを把握して今回この税制改革に臨んでおるのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/121
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122・水野勝
○水野政府委員 御指摘の高齢化社会の展望につきましては、今までもいろいろな機会にいろいろな試算等が公にされておるところでございますが、今通常国会におきましては、先般予算委員会におきまして、二十一世紀の社会保障の展望につきまして、二〇〇〇年それから二〇一〇年の時点における老齢人口数、勤労者数、社会保障給付費等の見通しにつきまして、厚生省、大蔵省、両省協議の上その姿をお示しするということで御答弁申し上げ、現在その作業が鋭意進められているところでございます。
ただ、私ども税制調査会にお願いしております高齢化社会を迎えての税制の抜本的な改革ということにつきましては、将来のそうしたものに備えるということはもちろんあるわけでございますが、現在が、この十年間ほとんど本格的な所得税減税が行われてきていない。そういうところから、税制が勤労者の源泉所得税に偏る、その負担率が上がる、こういうのがこの十年間の現実でございます。こうしたひずみと申しますか、ゆがみが生じておりますものを放置いたしまして今後高齢化社会を迎えれば、ますますそのゆがみ、ひずみが大きくなるということから、現時点におきまして税体系の見直しをお願いをしたいというところでございますので、将来のそうしたものを踏まえて、そして現在の時点の税制を考えるというよりは、現時点におきましてゆがみ、ひずみが生じておるのを是正をする必要がある。これを放置して高齢化社会を迎えたら、ますますそのゆがみが大きくなるということから、税制改革、抜本的な見直しをお願いをいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/122
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123・橋本文彦
○橋本(文)委員 現行の税体系にゆがみが生じている、ひずみがあるということを認識なさっておるようでございます。
しかし、具体的にそういう税調等に諮問する際には、ある程度大蔵省としてはこういうことを考えている、あるいはこういうデータがあるんだということを示さなければ、税調の方では何もできないのじゃないでしょうか。きょうのこの朝日新聞の記事を見てみましても、新型間接税に関しましては、大蔵省は七類型のタイプを示したというふうに報道ではしておるのですけれども、要するに、予見を差し挟まさないでというような形で諮問しておきながら実際にはこういう形でもって七つの類型を出しておる。これはもう全然、竹下総理が言っている予見を差し挟まさないでというのと相矛盾すると思うのです。実際大蔵省は、新型間接税について七つの類型を出したのでしょうか。それがまず一点。
それから、この高齢化社会、現在のひずみのままでは困るということですけれども、高齢化社会が到来したならばこうなるんだよということ、こういうデータを出さないで諮問をしているのでしょうか。予算委員会で追及があって、初めて大蔵省と厚生省が躍起になってそのデータをつくっている、こんなばかなことがありますか。当然、事前になければ話にならない、私はそう思います。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/123
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124・水野勝
○水野政府委員 御指摘の七類型というこの記事につきましては、恐らくこれは、税制調査会が本年に入りまして間接税部会で現行税制を一わたり御審議いただき、その上に立ちまして、考えられる間接税につきましての類型を八つに整理して検討をされておるところでございます。その八つの中の一つは、現在の我が国におきますところの物品税の類型でございますので、現行のものを除けば七つになる。その七つの類型のことを恐らく記事として引用をしておられるのかと考えます。したがいまして、そういうものであるとすれば、七類型は税制調査会で先般二月に検討されたときの類型でございまして、こうした類型がございます。その中でどのように対処されていくか、これはまさに税制調査会の今後の御審議によるところでございますので、それでもって予見をお与えしたということではない。その七類型の中から、恐らく今後いろいろな具体的な検討がさらに進められるのではないかと思うわけでございます。
それから、もう一つの高齢化の点につきましては、先ほど、今国会でもうそのような両省での共同作業によりましてお出しするということに御答弁申し上げているところでございますが、こうした計数等につきましては、従来いろいろな機会にいろいろな関係省からお出しされていたものはあるわけでございます。それを政府として、両省で御相談して、確定的と申しますか、両省協議の上での数字を今回お出しをしようということでございます。こうしたものが今まで全くなかった、なくて議論がされていたということではなかろうかと思うわけでございますが、今回改めてお示しをするということをお約束しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/124
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125・橋本文彦
○橋本(文)委員 最初の答弁の大蔵省が示した七類型という、そういう記事の表現についてはどうなんですか。今の答弁を聞いていますと、大蔵省は示していないというふうにとれるのですが、この記事のように大蔵省が示したという表現、このまま認めますか、認めませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/125
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126・水野勝
○水野政府委員 これは税制調査会の間接税部会に、今申し上げましたように、考えられる間接税の類型としては八つございますと、八つありますという数字を税制調査会の審議資料としてお出しをいたしました。その八つの中で、現行の物品税を除けば七つになりますので、ここで言っておりますのは、恐らくそのことを言っておられるのではないかと思います。そういう意味で、考えられる間接税の類型を大蔵省が検討資料として、審議資料としてお出ししたという意味におきましては、大蔵省が示したという意味ではこのような表現は当たるかと思いますが、特に大蔵省がこうしたものがありますと言って世の中にお出ししたということではございません。税制調査会の審議資料、素材として、資料としては税制調査会にお出しをいたしましたというのが真実のところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/126
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127・橋本文彦
○橋本(文)委員 それから後段のお答え、大蔵省にも厚生省にも従来そういうデータは持っておった、しかし、今回改めて大蔵省、厚生省が協議して、政府として出すのですというこの答弁、ちょっと気に入らないのですね。高齢化社会が来るんだというふうに声高に叫ぶのであるならば、こういうデータがあるんだということがなければ言えないでしょう。それはすぐに国会で、論議の場で、直ちに提出してしかるべきである、こう思うのです。それが、その両省が頭を寄せ合って一生懸命考えて出さなければならない。なぜこんなような不手際があるのでしょうか。
私は、大蔵省も厚生省も十分予測したデータはあると思っているのです。そのあるデータをなぜ公表しないのか。いろいろなタイプがあるでしょう、いろいろなデータがあるでしょう、いろいろな計算方法もあるでしょう。でも、恐らく広く見てこれが一番妥当だろうというものもあるからこそ、高齢化社会は大変な時代なんだ、財政的措置もしなければならないという判断が出るのじゃないでしょうか。今お話を聞いていると、ただ観念的に大変なんだ、じゃ大変だと言うけれども具体的内容を示せ、じゃ一生懸命数字をこれから拾ってみます、そんなことで税制改革の一環として、なぜここで今後の高齢化社会の到来などと言えるのですか。少なくとも税調に諮問するときに、高齢化社会の到来は大変なんですということを言っている以上、どんなようなデータを出しているのでしょうか。予見を差し挟まないという以上は、高齢化社会と言えば税調の方でもって適当なデータを考えるだろう、こうお思いなんでしょうか。少なくとも大蔵省は諮問に際しては、高齢化社会の予測される数値はこういうものがありますと言っておると思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/127
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128・水野勝
○水野政府委員 高齢化の推移につきましては、厚生省の人口問題研究所の推計があるわけでございまして、昭和六十年、七十五年、八十五年、九十五年、それぞれのデータ等は公にされておるところでございます。こうしたものから人口構成はそれぞれ推計されるところでございますので、それによりますところの高齢化割合でございますとか、そうしたものは基礎データとして、諮問をお願いした審議の当初におきましては、そうした関連の資料はお出ししているところでございますが、これは特段そうしたものとして取りまとめたというよりは、これまでいろいろな場において公にされておりますもろもろのデータを集めてお出ししたというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/128
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129・橋本文彦
○橋本(文)委員 私の言っているのは公のデータですね、それ以外に予測される高齢化社会を数値で示したデータ、表というものは持っていないんですかと聞いているのです。公表されたことを聞いているのじゃないのです。来るべき高齢化社会の実像をどうとらえておるのか、そういうデータは大蔵省あるいは厚生省はお持ちなんでしょうかと聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/129
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130・水野勝
○水野政府委員 そうした高齢化の実態予測、これはもう十分今までいろいろな機会に出されているところでございますので、そうしたものは取りそろえてお出しをしているところでございまして、それは従来の数字でございますと、よその組織のことを申し上げては恐縮かもしれませんが、厚生省高齢者対策企画推進本部といったところでもろもろの推計等、仮定計算等をされておられるそうしたものとか、ただいま申し上げました人口問題研究所の推計でございますとか、こうしたものを使わせていただきまして、税制調査会の審議にも供しておるところでございます。
ただそれが、今申し上げました厚生省高齢者対策企画推進本部といったところの数字でございますので、今回、今国会におきましては両省相談して高齢化の実態と申しますか、先ほど、老齢人口数、勤労者数、社会保障給付費等につきまして両省協議の上、お示しをするという御答弁を申し上げたところでございますが、関係するデータにつきましては、従来いろいろなところから出されているものは少なからずございますので、そうしたものをデータにしながら審議に供しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/130
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131・橋本文彦
○橋本(文)委員 じゃ、高齢化の問題はそのくらいにしまして、もう一つの税制改正の諮問に書いてありますところの「経済の一層の国際化」、これはいわゆる対外経済援助ですかね、ありますけれども、どのような数値をもって税調に諮問しているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/131
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132・水野勝
○水野政府委員 これは、主としては法人税と間接税にございます問題であります。法人税につきましてのまずその税率水準から申しますと、昭和五十年代はほとんど諸外国とも、国税、地方税合わせますと五〇%前後の負担率でございました。ところが、この数年来各先進諸国ともこの法人税を引き下げてまいりまして、例えばアメリカでございますと法人税としては三四%、地方税を合わせましても四〇%ぐらいに引き下げてくる。イギリス、フランス等もそういう動向にあるわけでございます。そうした中におきまして我が国だけが五〇%を超える水準で続けてまいりますと、これがいろいろな取引のゆがみを生じあるいは我が国の経済の空洞化ももたらしかねない、こうした点は検討すべき問題になっておるわけでございます。
また、間接税につきましては、昨年の秋にガットで勧告をもらいました。現在の我が国の酒税が輸入品に対して差別扱いになっておるということを厳しく指摘されまして、この点につきましての対応も迫られておるところでございます。
そのほか、物品税につきましても、大型自動車といったものにつきましてもやはり国際摩擦の原因になっているところでございます。こうしたもろもろの点を総合いたしまして、国際化に対応し得る税制を今後考えていく必要がある、このような問題意識でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/132
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133・橋本文彦
○橋本(文)委員 当面する予測される高齢化社会の問題あるいは経済の国際化、そういうことを背景にして税制改革を進めておる、そのようでございます。しかし、その根底にあるいわゆる財政再建という問題、まだまだこれは至上命題だと思うのです。財政再建は素通りしておる感じがするのですが、この財政再建に関してはどのようにお考えなんでしょうか。これは本当は大臣に聞くべきなんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/133
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134・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 財政再建は私ども最も喫緊の課題だと考えておりまして、今年度予算におきましても特別公債発行額を一兆八千三百億円減額するというようなことで、六十五年特例公債依存体質から脱却ということで最大限の努力を払っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/134
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135・橋本文彦
○橋本(文)委員 税の自然増収等がございまして、急に不可能と思われた昭和六十五年赤字国債脱却がどうやら努力目標としては実現可能になってきた、こんなようなことが言われております。しかし、実際に六十三年度末で赤字国債の残高は百五十九兆円になろうとしている。昭和六十五年の脱却ができたとして、昭和六十五年には残高は幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/135
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136・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 国債は二つございますけれども、国債百五十九兆のベースで申し上げますと、六十五年度末で今の見通しでございますと百六十八兆、うち特例公債に限って申しますと六十八兆二千億という見通しを一応持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/136
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137・橋本文彦
○橋本(文)委員 百六十八兆円の残高ができて公債を発行しなくなる、しかし依然として利子を払うわけですね。現在でも年間約十一兆五千億ですか、払っておる。これが百六十八兆になればさらにふえるわけです。
我々がよく聞かれることは、この百六十兆円になんなんとする借金を利息を払っていればいいのだということではおかしいのではないか、どうしたら健全財政で赤字がなくなるのか、赤字がなくなるのはいつなんだろうかと聞かれるのです。この百六十兆円になんなんとする赤字がなくなるのは何年後なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/137
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138・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 これは、六十五年に特例公債依存体質から脱却いたしますと、特例公債発行額はゼロということになるわけでございます。ただし建設公債は、今の中期展望によりましてもある程度の額を発行し続けるということになりますので、当面国債残高は建設公債を含めたところでは増加せざるを得ないという状況になるわけでございます。ただし特例公債につきましては、六十五年に脱却をいたしますと、その残高は確実に減っていくという見通しを立てているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/138
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139・橋本文彦
○橋本(文)委員 確実に減っていくという、その数値を示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/139
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140・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 これはあくまでも仮定計算でございますけれども、仮に六十五年に特例公債発行ゼロということになりますと、その年度末の特例公債は六十八兆二千億でございますが、これが例えば昭和七十年になりますと、六十二兆五千億というぐあいに順次減っていくという計算になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/140
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141・橋本文彦
○橋本(文)委員 仮定の話で恐縮なんですけれども、七十一年度それ以降、要するにゼロになるのはいつなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/141
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142・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 当面資料を持ち合わせておりませんけれども、計算で申しますと、今のところ特例公債は六十年償還のルールということでお願いしております。六十五年脱却の暁には、なるべく早く特例公債の償還に努めなければならないと思いますけれども、その計算でまいりますと、六十年たてばゼロになるということであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/142
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143・橋本文彦
○橋本(文)委員 高齢化社会の到来の問題、それと同時にこの公債残高に対する利払いの問題。高齢化社会が大変だ大変だと言っても利払いの方が大きい、これが現実ですね。そうすると、どんなに努力をしても現在の収入では賄い切れない。だからということでもって既存の税制の見直しは放置して、新たな税金、間接税というものは別名打ち出の小づちとも言われております、何ぼでも振れば取れる、そういう税金に頼ってしまう、そんなような感じがするわけです。そうじゃなくて、本当に政府が厳しい思いをして、いかにして国民の負担を少なくするか、これが今与えられた課題ではなかろうかと思うのです。どうもその安易な手法に頼っているんじゃなかろうかという気がするのです。いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/143
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144・水野勝
○水野政府委員 現在進められております税制改革は、昨年の十一月十二日の総理からの諮問にもございますように、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築するというのがその基本的目標でございます。先ほども大臣から申し述べておりますように、今回の税制改革は増収を予定するものではございませんので、その意味におきましては財政再建の問題とは一応切り離されたものであろうかと思うわけでございます。昭和五十六年以来「増税なき財政再建」という基本的な方向が打ち出され、その方向に即しまして財政再建の方は努力がされておるところでございます。今回の税制改革は、まさに安定的な税体系の構築ということでございますので、そうした問題意識のもとに作業が行われているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/144
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145・橋本文彦
○橋本(文)委員 私がお尋ねしておるのは、財政再建ということは至上の命題である。どうも赤字公債に依存する、それが脱却できればもう財政再建ができたんだというような、そんなようなニュアンスを持ってくるものですから、そんなものではない、あくまでも赤字国債は早くゼロにしなければいけない。これは国民感情なんです。その上でどうするか、そういう議論は全くない。要するに借金をしておって、普通の一般の家庭でしたら、例を言えば年収約五百五十万ぐらいの家庭がある。ちょうど今の赤字国債は三倍でございますから、一千六百万円の借金がある。これは住宅ローンだったらまだまだいいのですけれども、そうではない、例が悪いかもしれませんけれども。こうなったらその家庭は、本来ならこれはもう破産ですよ。我が国の場合にはそれをせずに何とかこうやっていける。国民感情からすれば、そのためにその利息が払われている、これを何とかせい、こういう声があるのは当然でございます。こういう公債の赤字の利払いがなくなってくれば、その税の面でも大変なことが使えていける。現在の利払いによって制約されている事業というものは大変なものでございます。ここをどう考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/145
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146・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 その認識は全く同じと申し上げてよろしいかと思います。現在のように歳出構造の約二割を国債費が占めている、利払い費が占めているという状況は、私ども健全とは考えておりません。そのために、まず現在発行しております特例公債を六十五年度までに何とか努力をして発行額をゼロにする、その後は特例公債依存度を、片方で新規の建設公債を依然として出し続ける状況でございますから、財政体質を改善して、できるだけ特例公債依存度を下げる、まず新規の公債発行額を下げていくということに次の努力を絞るべきだというのが私どもの今の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/146
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147・橋本文彦
○橋本(文)委員 それでは、また租税特別措置法の方に返りまして、住宅取得促進税制の件ですが、これを五年に区切ったというのが一つ、それから、例の床面積における制限というものを撤廃したということ。これを見ますと、期間の面でも非常に不満ですし、床面積の撤廃というのもどうも釈然としない点があるのです。非常に大きな邸宅をつくったとしてもこの特例が認められる。やはり床面積に絞るべきだったんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/147
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148・水野勝
○水野政府委員 従来は住宅取得促進税制におきましても、そこに社会政策的な配慮と申しますか、そうした観点もあわせて考える、あるいは所得政策的な観点も考える、そうした要素はかなりあったわけでございますが、現時点のように所得水準がだんだんと均衡化する、平均化してまいりますと、そうした住宅対策といたしましては、そうした点は今申し上げたような観点からの配慮という点から、住宅をとにかく取得を促進する、それが内需拡大にも通ずる、そうした観点に純粋と申しますか、住宅の取得を促進するという観点により大きく改めていくのが、現下の経済情勢からすればより適切ではないかということから今回、従来からございました二百平米でございますが、これは一応撤廃をするのでいかがかということで考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/148
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149・橋本文彦
○橋本(文)委員 期間を五年、それから残高に対する一%に決められた背景はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/149
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150・水野勝
○水野政府委員 この住宅取得促進税制は、住宅を取得された方の経済的負担を緩和申し上げるということでございますが、特に住宅取得された直・後の初期負担と申しますか、その負担の軽減を図るということが主たるねらいでございます。
アメリカのように、所得税制におきましてすべてローンの利子は控除する、それは住宅でございましても消費者金融利子でございましても、そもそもアメリカの所得税では、利子は控除するというのが所得税制の基本としてあったわけでございますが、そういう税制とは我が国は仕組みが違うわけでございますので、本来個人の利子は引けないわけでございますが、住宅取得者の初期負担を軽減を申し上げるという観点から年限を切っておるところでございます。これが当初は三年でございましたが、六十二年の改正によりまして五年に延長をさしていただいたということでございます。それから上限は二千万で、その控除率は一%でございます。
したがいまして、年間の控除は最高二十万円までいくわけでございますが、この二十万円の所得税が控除される、軽減されるということは、この二十万円という数字をとりますと、夫婦子二人、四人世帯のサラリーマンの方で年収が五百三十万円の方は所得税が二十万円になる、そうした数字でございますので、それは相当、ある意味では大きなものでございます。したがいまして、それが五年間と申しますと百万円になるわけでございますので、現下の全体としてのサラリーマンの方の所得税負担を考えれば、このあたりが適切な水準ではないかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/150
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151・橋本文彦
○橋本(文)委員 期間の点にしてもパーセントにしましても非常に少ない、こういう認識を持っております。
相続税、今回入ってまいりませんけれども、土地の急騰に関して一番悲劇的なのは相続税でございます。今回は全然これは見送られているわけでございますけれども、相続のためにどうしても土地を手放さなくてはならなくなってしまった、これに対して相続税の方は現在何の見直しもされていない。この相続税をめぐりまして、大変いろいろな問題が起きております。
御承知のように、養子を相続直前にする、そしてその基礎控除をふやしていく、そして税額を極めて低廉なものにしていくということがありまして、現在、この養子そのものが問題であるということになりました。この養子制度の問題も昔からよくあったわけなんですけれども、しかし、ここまであらゆる階層に、養子をつければ相続税を払わなくても済むんだというような風潮にしてしまったというこの責任、これはだれにあるのか、まさに政府にあるわけでございまして、子供が立派に存在するにもかかわらず、税金のために養子を迎えるというようなことは、これは全く異常だと思うのです。ところが、そういうような背景をこしらえておきながら、何か政府の方が考えているのは、こういう養子をつくった場合には、それは違法として処罰の対象にしようというようなことを考えておられるようでございますけれども、これはもう全く考え違いも甚だしい、こう思うわけでございます。むしろ養子をしなくてもいいような税制にすべきじゃないのか。そう言うと理想論だと言われるかもしれませんけれども、しかし、養子を迎えなければ相続税の負担に耐え切れないという現実、むしろこれを見るべきじゃないかと思うのです。例えが悪いですけれども、非常な社会悪がはびこってきた、では厳罰をもって臨めばそういう社会悪が消えるかと言えば逆でございまして、それは刑事政策上は全くだめなわけですね。
今回は、どうも養子に対して、その養子をしたことを制裁するというようなことを考えておられるようですけれども、これはいかがなものなんでしょうか。そして、大蔵省並びに法務省の方で協議した結果、養子制度に対して何らかの制約ができるというような見解があるようでございますけれども、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/151
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152・水野勝
○水野政府委員 感じ取られておられるのは、ややオーバーではないかという気がいたします。私ども、税制の立場として養子制度を否定するとか、実際に養子をなさっておられるのにそれを否認するとか制裁を加える、そういったことは全く考えておらないし、また、できることではないと思っておるわけでございます。
ただ、税制の仕組みとして相続税の仕組みは、若干ここは技術的な点になりますが、相続税は、まず相続がありましたらその遺産全体の相続税額を計算して、それを現実に財産を取得された額に応じて負担を案分するという仕組みでございます。そこで、まず相続税の全体を決めるときに、これは養子であろうと実子であろうと、とにかくお子さんがおられたらそれは全部法定相続分で相続されたものとして、一人一人についていわば抽象的に税額を計算して、それを合計したのが相続税の総額になる。その相続税の総額を計算するときに、養子の数ももちろん入れておるのが現行制度でございますが、しかし、その場合の相続税の総額を決定するときのお子さんの数をどうするかは、これは税制として決めればよいことでございます。
例えば、相続を放棄された方というのは、民法上は相続人として扱っていないのですけれども、税法上はこの人も相続人の一人として、一人一人の税額を計算して総額を出すときの数に入れておる。ですから、そこは相続税の総額を計算するときに、税制上それをどのようなお子さんまでをカウントするかという面では、税制として仕組むことができるのではないか。それは、別に養子制度を否認したり制裁を加えたりするということでなくてできるのではないか、そこらに解決の方法がないか、そこらを踏まえて法務省と御相談を申し上げておるところでございます。制裁を加えたり、罰則で云々ということは毛頭考えてございませんので、御了解を願いたいと思うわけでございます。
それからまた、こうした制度が起こってきておりますというのは、御指摘のように、相続税が十三年間放置されておるということにも一つの原因があるという御指摘もあることでございますので、そういった点も踏まえまして、相続税につきまして現在、税制調査会に鋭意審議をお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/152
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153・橋本文彦
○橋本(文)委員 石油税について今回、従来の従価税から従量税に変更いたしました。石油関係諸税はほとんどが従量税であったわけですけれども、何ゆえにこの石油税だけが従価税であったのか。それが今回、原油価格の低落とか円高、いろいろな問題が起きまして値段では到底税収が上がらない。従来、目的税でございますから、その税収を確保するためにはどうしても従量税によらざるを得ない。極めて税金の増収を目的とする変更でございますけれども、従価から従量というのは、そういとも簡単に直していいものだろうかという気がするのですが、いかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/153
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154・水野勝
○水野政府委員 この石油税は、税制といたしましては、石油という非常に便益性の高い有限な資源の利用ということに着目して、その利用者に御負担をお願いをするわけですが、一方、現実的にはこの税収は、石油及び石油代替エネルギー対策のための財源として使われているという面もあるわけでございます。そうした点からいたしまして、その石油及び石油代替エネルギー対策のために安定的に歳入を確保するという要請もあるわけでございますので、今回のような御提案を申し上げておるところでございます。
従量税、従価税の仕組みにつきましては、それぞれの観点から設けられているところでございますが、例えば酒税でございます。これは伝統的に従量税が多いわけでございますが、我が国におきましても戦前一時期は、戦時中一時期これが従価税の部分も取り入れられたことがございました。また昭和三十七年には、一部の酒税につきまして従価税を取り入れたところでございますが、昨年御提案した改正案では従価税部分を廃止してございます。この点は昨年廃案になっておるところでございますが、このように税率の仕組みにつきましては、それぞれの時の要請に応じまして従量、従価、それぞれを使わせていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/154
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155・橋本文彦
○橋本(文)委員 そのときそのときの情勢に応じて、非常にいいですね。要するに体系的なものじゃなくて、都合のいいようにいつでも変えられるという性格を持っている。そんなことで、それを使う方の負担は大変だという認識をやはり持ってもらいたいと思います。
それで、この石油税に関しましていわゆる石油の依存度とかあるいは一番問題の備蓄の問題、あるいはエネルギー問題等々質問を用意したんですけれども、時間もありませんし中途半端になりますので割愛いたしますけれども、ただ一点だけ、ガソリンが日本では大体百二十円前後する。ところが同じ一リットル当たりアメリカでは約三十何円台、ブリュッセルで大体五十円から六十円というように、非常に日本が高いわけですね。それで、私もよくわからなかったのですが、初めて内訳を聞きまして、一リットル当たりガソリンには何と五十四円の税金がかかっている。だから百二十円のガソリンのうち六十円が税金だと見れば、本体は六十円。したがって、ガソリンが百八十円したときから見れば大幅に安くなっているという説明を受けましてもなかなかぴんとこないんですけれども、現在のこの百二十円というガソリンの値段ですね、これは原油が下がった、それから円高である、こういう状況からしても、現在のガソリンスタンドの値段というのは適正、妥当なものなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/155
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156・高橋達直
○高橋(達)政府委員 我が国のガソリンの値段が国際的に見て高いのではないかという御指摘でございます。また、原油価格あるいは為替レートの変化に伴って十分その分が還元されているかどうか、こういう御指摘でございますが、確かに私どもの統計からまいりましても、例えば本年一月におきましてアメリカではリットル当たり三十二円、フランスでは百九円、これらに対しまして日本の場合には百十九円ということになっておりまして、区々ではございますが、相対的には高い水準になっているということが言えるかと思うわけでございます。
このガソリンの価格決定につきましては、それぞれの国の石油製品に対する需要構成なりあるいは製品の価格体系の問題あるいは課税の状況等によりまして違ってくるわけでございまして、また我が国の場合、特に精製流通段階におきます種々の環境安全対策上の法規制がかなり厳しい状況になっております。また給油所のサービスも、相当各国によって違うというようなことから違ってきているわけでございますが、御指摘の税金面を除きましても、我が国の場合には高い状況にあることは事実でございます。
なお、円高還元の状況でございますが、あるいは原油安の還元の状況でございますが、五十九年の九月から六十三年の一月まで比較してみますと、原油の場合で約リットル当たり三十円下がっておるのに対しまして、ガソリンの場合には二十九円ということでございますので、おおむね原油と同じような動きで下がっておるわけでございます。
しかし、いずれにいたしましてもその価格の水準といたしましては、先生御指摘のようにまだ高い面がございます。今後、石油政策の規制を緩和するという方向で当省としても動いてまいりますが、そうなりますと、市場メカニズムを通じましてガソリンの相対的に高い部分が修正されるというような経営の決定も行われることを期待しているわけでございます。いずれにいたしましても、全体として石油製品の価格体系を徐々に国際的にさや寄せしていくという動きが起こってくるものとして期待しておりまして、私どもとしてもそれを注視をしてまいるという態度でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/156
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157・橋本文彦
○橋本(文)委員 一点だけ。簡単で結構です。
今回の石油税の増収措置によりまして、初年度で千二百九十億円、平年度で二千七百十億円、これがふえるわけでございます。これが具体的に我々が使うガソリンにはどの程度はね返ってくるものなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/157
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158・高橋達直
○高橋(達)政府委員 現在の水準でございますと、現在石油税法におきましては従価税の体系でございますけれども、これでリットル当たり約八十銭程度という水準になっております。これが、今回の六十三年度の租税特別措置法におきます従量税化いたしました改正の後の水準として私どもが見積もっておりますのは、リットル当たり約二円ということでございますので、一円強の増徴ということに相なるわけでございますが、全体百二十円の中の一円という水準であるということを御承知おきいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/158
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159・橋本文彦
○橋本(文)委員 円高差益それから原油の下がった中でガソリンは石油税の増税によってわずかであるけれども上がる、そういう認識をして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/159
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160・越智通雄
○越智委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十八分休憩
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午後三時三十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/160
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161・越智通雄
○越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。早川勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/161
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162・早川勝
○早川委員 今回出されております租税特別措置に関連しまして、若干の問題を指摘させていただきたいと思います。
今回の租税特別措置として、来年の三月三十一日まで、たばこ消費税の値上げの延長が盛り込まれております。最初に、今回一年延長するその理由をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/162
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163・水野勝
○水野政府委員 この延長措置は、六十一年度の税制改正に当たりまして、租税特別措置法の中で御提案を申し上げたところでございます。その際にも申し上げましたが、この措置は、補助金等の整理合理化に伴う地方財政対策の一環としてお願いをしたところでございます。
六十一年度におきましては、六十二年度を展望し、税制の抜本改革の作業中でございましたので、その間一年ということで御提案を申し上げたところでございました。六十二年度改正におきましては、十二月までの九カ月間の延長を一応お願いをいたしまして、あとは抜本的な税制改革の中につなげたところでございますが、その後改革法案の廃案に伴いまして、これをさらに三カ月間延長させていただいたところでございます。
今後なお、この趣旨といたしましての補助金の整理合理化に伴う地方財政対策という観点からいたしまして、これをもう一年延長をさせていただく。ただ、なお税制改革につきましては作業が進んでおるところでございますので、今回これを一年間の延長ということで御提案をしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/163
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164・早川勝
○早川委員 この一本一円の値上げは、今主税局長が言われましたように、六十一年度のいわば減収補てんのためにということで、たしか二千四百億円増税が図られたのですが、その後六十二年度、今経過を言われたわけですけれども、ただ、一本一円を値上げしたときに、今までの負担率が五六・七からたしか五九・七まで上がったと思うのですが、その抜本的な税制改革につなげるという意味は、いわば売上税との絡みで調整しながらその負担率だけは確保するという意味で、当初は十二月三十一日まで、それから再三延長されたわけですけれども、売上税が廃案になった時点で、昨年ですね、昨年の時点でいわば延長する理由はなくなったのではないかというふうに考えるのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/164
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165・水野勝
○水野政府委員 ただいま申し上げましたように、これが地方財政対策の観点を踏まえてお願いをしたところでございまして、そちらの方の補助金の問題はなお続いているところでございますので、この点はやはりお願いを申し上げたいというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/165
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166・早川勝
○早川委員 そうじゃなくて、そうしますと、この租税特別措置というのは一体どういう性格なのかなということになるのですね。六十一年度は一年間だ。もう明確に一本一円で二千四百億円で、税収が補てんされればいいんだという形で一年間出されたと思うのですね。補助金のカットということの財源という形にはなっていなかったと思うのですね。そういう形が途中で変わってしまって、売上税と連動させていたけれども、負担率の五九・七というのは維持したいんだということだけが残っているような形が今続いております。そうしますと、抜本税制改革との絡みでといいますと、やはりこの五九・七という税率は確保するんだというふうに考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/166
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167・水野勝
○水野政府委員 このたばこ消費税の税負担水準をどのように考えるか、これは大きな間接税の柱の一つでございますので、それは税制の抜本改革の中で、それとの関連でなお検討されるべき点はあるのではないかと思うわけでございます。そうした作業はなお現在審議が行われているところでございますので、今回、前回、前々年から引き継がれております一本一円のこの特例措置、これをとりあえず一年延長をお願いを申し上げるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/167
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168・早川勝
○早川委員 先ほど来抜本税制改革に関連して議論がありましたが、このたばこの値上げも来年の三月三十一日まで、まあ一年間だということですね。
仮に、抜本税制改革案、間接税を含めて改革案が提出されずまた成立しなかった場合には、また来年の四月一日からという形での特別措置が出てくるわけですか。どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/168
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169・水野勝
○水野政府委員 まさに税制改革の作業は、税制調査会に内閣総理大臣から諮問をいたしまして、できるだけ速やかにその成案をまとめるようにお願いをしたいと、現在お願いして審議が続けられておるところでございますので、その審議の結果をお待ちするところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/169
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170・早川勝
○早川委員 仮定の話で大変恐縮なんですが、売上税のときは五%の税率だったわけですが、昨今新聞等で、マスコミ等で取り上げられている憶測を見ますと、今度新型の間接税が出た場合には、税率は二%だとか三%でもいいんだというような記事を拝見するわけですね。仮に三%というような税率になった場合には、この五九・七というのは、値上げした段階で五六・七プラス売上税の五%というような形で現行の負担率五九・七というのが維持されるというふうに考えますと、三%のようなそういう新税が出た場合には、この負担率は下がると考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/170
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171・水野勝
○水野政府委員 ただいま委員お示しのように、まさに仮定の話でございまして、現在間接税を含め所得税、法人税、相続税全般につきまして審議が行われておるところでございますので、そしてまたそのいずれもがなお成案を得ていない段階でございますので、ちょっと仮定によりますところの御答弁はなかなか難しいところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/171
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172・早川勝
○早川委員 専売改革法案が通ったときの附帯決議の中では、消費税率は平均専売納付金率と同率だという意味は、そういうことが書かれたわけですけれども、それは五六・七と。特例で五九・七に上がってしまった。そうすると、今の仮定の話にも連動するわけですけれども、適正な負担水準というのは何%と考えればよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/172
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173・水野勝
○水野政府委員 御指摘のように、公社の改革の当時、負担は維持するという趣旨であったかと思います。それがまさに六十一年度の税制改正に当たりまして、地方財政対策の一環として特例的に急遽お願いをいたしたという事情があるわけでございまして、したがいまして、これは租税特別措置として御提案をいたしたところでございます。それが一方におきましては、補助金等の整理合理化に伴いますところの財源対策となっているという点もございますので、たばこ消費税のあるべき税率水準という問題、それから現在進められております税制の抜本改革の問題、それから財源対策としての面、ここらを総合いたしまして今後全体の中で審議していくことになろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/173
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174・早川勝
○早川委員 大体、この租税特別措置で、一年一年というような延長の法案は余り例がないと思うのですね。しかも、租税特別措置の本来のスタートの趣旨が途中で変わってしまってきているということで、午前中にも議論がありましたように、とにかく特別措置というのはできるだけ早期になくした方がいいんだということは一般論がありますが、とりわけたばこについてはその感を深くいたします。
たばこの問題に関連してもう一点伺いたいのですが、税収ですね、たばこ消費税収の見通しの問題なんですが、御存じのように、たばこの消費量はほぼ一定しているわけですね。しかも最近の状況を見ますと、外国たばことの競争が激しくなって、外国たばこのシェアが非常に上がってきている。そういう中で、日本たばこ産業も経営対策上競争に勝たなくてはいけないということで、いわば新製品、低価格の商品が出てくるんじゃないかと思いますね。出さざるを得ないんじゃないかと思います。そうしますと税収も、例えば二百二十円の新製品が二百円に下がった場合には、一箱当たり税金が百三十二円から百二十二円、例えば十円下がってしまうということがあるのですね。そうしますと、トータルの消費量は恐らく三千百億本くらい国内市場で消費されている。それで、外国たばこがシェアを伸ばしてくると低価格競争になってくる。低価格競争になれば一本当たりの税収も下がってくる。そうしますと、見通しの問題についてもそうなんですけれども、こういう競争の中で低製品が出てくることによって若干違ってくるんじゃないかと思うのですけれども、この販売量、総需要量と価格との関連で見通しについて、若干減収になってくるんじゃないかな、率が下がるんじゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/174
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175・水野勝
○水野政府委員 たばこ消費税の見積もりにつきましては、私どもとしてもいろいろな見積もり作業をいたしておるところでございますが、その大半は日本たばこ産業株式会社の納税額でございますので、この専門家である日本たばこ産業株式会社の見積もりを大きな参考事項として見積もらせていただいているところでございます。六十二年度、六十三年度、そうしたもろもろの観点からの見積もりをいたしまして御提案申し上げているところでございますので、適正なものであろうと考えておるところでございます。
今御指摘のような低価格製品へのシフトということも今後あろうかとは思いますが、現時点での、一月末までのたばこ消費税の税収の動向を見ますと、まずまず前年水準の進捗割合を確保いたしておりますので、現時点におきましては、この税収が鈍化と申しますか、見積もりより低下していくということは現時点では余りないわけでございますが、中長期的には御指摘のような点はあろうかと思います。ただ、低価格化し、またその品質等にもよろうかと思いますが、それによりまして消費される本数等がまたどのように変化していくのか、そこらを総合的に見て、今後中長期的には頭に置くべき問題であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/175
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176・早川勝
○早川委員 先ほど、五六・七それから五九・七と、五九・七の今の負担率はこれからの抜本税制改革との絡みで調整されるという答弁がございましたけれども、今のような形で低製品価格競争のような様相を呈してきた場合には、歳入当局としては一定の税収を期待するということになると、税率のアップを考えなければいけないのかなということも出てくると思うのですが、今の五九・七というのが、百歩譲っても上限だというふうに考えてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/176
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177・水野勝
○水野政府委員 現在のたばこの五九%台というのは、消費税としては決して低くない水準であろうかと思います。しかし、特殊なこうした嗜好品につきましては、諸外国共通いたしましてかなり高い御負担をお願いしているというのがその例でございますので、そうした嗜好品に対する課税のあり方という中で、今後抜本的な税制改革の一環として検討されることになろうかと思うわけでございます。現時点で、これを上げていくあるいは下げていくというような具体的な方向を示す結論はまだ出されておりませんので、その審議を見守るという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/177
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178・早川勝
○早川委員 いずれにしましても、今のたばこ産業というのは、民間に移行してから非常に厳しい国際競争の中へ置かれてきているというのが事実でございます。そこで、政務次官にお答えいただきたい点が一つございます。
二百円銘柄のようなものにシフトしていった場合に、財政面での圧迫が一つ、先ほどの税収面での減収が一つあります。それからもう一つ、原料、コストの問題を当然考えなければいけない。その場合に、御存じのように、葉たばこ価格というのは農産物、これは一般国際価格に比較しまして高い。アメリカに比べますと、二・五倍だというようなことが指摘されております。そうしますと、この葉たばこ問題についても、従来から農政負担というものを政府が考えなければいけないのじゃないかということが指摘されているわけですね。そういうことについて政府としてお考えいただきたいと思うのですが、そのお気持ちを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/178
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179・平沼赳夫
○平沼政府委員 確かに、たばこの問題というのはなかなか厳しい問題があるわけでございまして、今御指摘の特に葉たばこ生産者の置かれている立場、こういうのも大変厳しいわけでございまして、政府といたしましても、葉たばこ生産者が今後、やはり生業として一生懸命やってくだすっているわけですから、その方たちの立場を考える、そういうことも、当然今までもしているわけですけれども、さらによく皆様方の御事情を聞きながら対処してまいりたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/179
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180・早川勝
○早川委員 いずれにしましても、先ほども言いましたように、特別措置、特別措置で一年置きに繰り返すということはぜひやめていただきたいということを強く主張いたしたいと思います。
次に、税制の問題について伺いますが、最初に、四野党が修正共同要求を出しております。その中でいわゆる歳入の項目が出されているわけですが、第一に、不公平税制等の是正というので一兆七千億円という増税項目が書かれております。これをごらんになって、とりわけ1の「不公平税制等の是正」という項目をごらんになって、主税局長はどんな感慨を持たれますか。つまり、野党四党(1)から(9)まで、「等」という言葉が入っておりますけれども、まあ(1)から(8)ぐらいをいわば不公平税制なんだという認識をしているわけですね。これについていかがお考えか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/180
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181・水野勝
○水野政府委員 この九項目につきましては、その幾つかは前回と申しますか昨年の春に国会に御提案申し上げた改革法案の中で、その手直しをお願いしたものもあるわけでございます。一方、しかしこうしたものが不公平税制として取り上げられるというのはいかがかなと思うような項目も見受けられるところでございます。
それから、この九番目の納税環境の整備、丸く三千億円というのは、これはどういうような対処方法をお考えになり、どのようにこれが積算されているかにつきましては、私ども必ずしもまだよく理解できない点もございます。全体の感想ということでございましたので、そんな感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/181
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182・早川勝
○早川委員 じゃ、一番から八番、そこに具体的に書いてありますけれども、不公平税制としてとらえるのは適当でない、これはどういう項目になるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/182
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183・水野勝
○水野政府委員 八番目に「給与所得控除の頭打ち制度の復活」というのをお掲げになっておられるところでございますが、この点は、昭和四十九年度までは給与所得控除は一定の金額で頭打ちをしておった。それが四十九年度の税制改正で、率としては低減をいたしますけれども、収入金額が大きくなれば、やはりこの給与所得控除の制定の基本的な考え方でございます収入の概算経費といったもの、それはそれでやはりあろうかと思いますので、どこかで切るというのはいかがかということで、四十九年に御提案申し上げて現在それが続いてきているところでございます。そういう意味からいたしますと、収入金額が大きければ大きいなりに何がしかの概算経費があるとすれば、それが不公平であるということで手直しをするのがいいのかどうか、その点が先ほどちょっといかがかなという気がしたという一つの項目の例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/183
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184・早川勝
○早川委員 項目について伺ったのは、なかなか政府というのは、例えばこの三番、四番、五番、支払い配当軽課制度だとか受取配当益金不算入制度だとかあるいは貸倒引当金の問題というのは、不公平税制ではないと言っていたように聞いているのですけれども、今の主税局長の答えですと八番にだけ触れられて、一番から七番はいわば不公平税制だというふうに認識されたというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/184
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185・水野勝
○水野政府委員 不公平税制であるかどうかという点はおきまして、この九つの項目の中で、とにかく政府案としても去年御提言申し上げた項目があるということ、それから給与所得控除の頭打ちについては、これは制度としてそれを、頭打ちを導入するのが適当かどうか疑問を感ずるというところまで申し上げたわけでございまして、不公正税制として整理するかそうでないかという点につきましては、必ずしもそうは申し上げていないわけでございまして、とにかく手直しをするのが適当であるとして御提案した項目も少なからずある、しかし中には、こういう手直しをするのが適当かどうかはいかがかという項目もあるというところまで申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/185
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186・早川勝
○早川委員 私の聞いたのは逆に、不公平税制と野党が認識しているのは的確かどうかということなんですけれども、それはおきまして、政府税制調査会の昭和五十年の九月三十日、租税特別措置の整理合理化についてという審議がありまして、これはその資料なんですが、その中には、租税特別措置を全面的に見直すことが必要だという基本的な方針が出されております。
そこでは、不公平税制ということじゃなくて不公正税制という表現が使われていまして、それは非常に適切な表現だというふうに理解しているので申し上げますが、こういう表現になっております。見直し対象の整理分類ということにつきまして、「従来から租税特別措置といわれてきたものの中心をなすのは租税特別措置法に定められた各種の特別措置であるが、必ずしもこれに限られるわけではなく、法人税法、所得税法その他の各税に係る本則に規定されている制度であつてもときに不公正税制であるとして批判の対象となつているものがある。そこで、租税特別措置の全面的な見直しを行うについては、まず、①形式的に租税特別措置法に規定されているすべての制度のほか、②形式的には本則に規定されているが、実質的には租税特別措置に該当するのではないかとして問題が提起されたことがある制度をすべて網羅的に列挙したうえで、」云々、見直せという表現になっているわけですね。
図らずも主税局長は、先ほどの修正増税項目の七番のうちあえて三、四、五を言いましたけれども、認められたようなニュアンスで答えられたのですが、問題は、先ほども租税特別措置の項目は百六十八項目あると答弁されたのですね。それでネットの減収額は六千億円ぐらいだ、こういう答弁でした。予算委員会に出されている各年度の減収額試算を見ましても、百六十八項目が載ってないんですね。ところが、この昭和五十年度のときの税調審議の中にはこういう分類で、政策税制として取り扱う項目と政策税制として取り扱わない項目ときちんと分けまして、貸倒引当金の圧縮の問題だとかあるいは退職給与の引当金の問題だとか、いわゆる法人税法の本法にかかわるような項目もきちんと書いてあるのですね。したがいまして、今抜本的な税制改革をやる、その場合の一つの理由が不公平感だということを考えますと、少なくともこの百六十八項目、今ある項目を出していただいて、法人税法、所得税法のどこにかかわるか、そういうものを国民の前にはっきり出してもらうのが必要じゃないかと思うのですね。出すことを期待してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/186
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187・水野勝
○水野政府委員 お話しの昭和五十年は、ちょうど約三兆円の税収不足が生じまして特例公債の発行を始めた年でございます。そこで、とにかく現行税制の中でまず洗いざらい租税特別措置を見直して、増収も図り得る余地があれば増収を図って、少しでも特例公債の負担を減らしたいということで作業をいたした年でございまして、御指摘のような観点からいろいろ税制調査会におきましても審議が行われたところでございます。それを受けまして昭和五十一年度以降におきましては、年々基本的に租税特別措置の見直しが行われてまいったところでございます。したがいまして、その当時に比べますと、減収額の規模から見ましても、かなり法人税収との対比におきましては低下してきているところでございます。
それから項目としては、これは百六十八と申し上げたのは、先ほどの御質問の中でそうした数字の御提示がございましたので、現在の租税特別措置法を機械的に勘定をしてまいりますと、所得税、法人税、登録免許税といったものまで含めますと、全部で百六十八と申し上げたところでございますが、非常にいろいろ細かな項目等もございますし、またそうしたものは余り利用もされてないようなものも、とにかく条文上存在するものを全部計算をしていくと、これもいろいろ計算の方法はあるのでございますが、そうした数字があるということでございまして、百六十八というのは、どうも現実的にこれが全部特別措置だと言えるような大きなものはこの中では余りたくさんないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/187
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188・早川勝
○早川委員 国民にとっては大体税金というのは非常に難しい、税制というのは読んでもわからない。だけれども、百六十八もあるということだけは事実なわけですね。そうしますと、抜本税制改革の中でとにかく不公平感を払拭しなくてはいけないというのは、制度をいじる問題だとかあるいは行政の問題で、徴税の問題で対応する部分だとかいろいろあると思うのですが、その一つは、とにかく不公平税制というのは、少なくとも百六十八とかあるいは恐らくこれに貸倒引当金の先ほど言ったような項目まで入れますと百七十を超えると思うのですね、そういう項目をはっきり出して、そしてこの改革を進めるのだ、これはどうしても残さなければいけないのだ、社会的な政策上、さらに公正の観点から見てどうしても必要なのだというならば、それをはっきりすればいいわけですね。少なくとも、まず第一にそういう資料を明らかにすること。そして第二に、この不公平税制の是正のいわば改革プログラムみたいなのを今出してもらえないかなと感じるわけですね。
先ほど主税局長言われたように、貸倒引当金の圧縮もその都度やってきました、こう言われるわけですね。昨年の抜本改革の中を見ますと、また次回出てくると予想される法人税関係でも、支払い配当軽課の問題だとか、こう出てくるわけですね。そうすると、同じやるならば、今ある不公平税制というのはこういうものがある、それぞれの改革をするには時間がかかる、しかし、きちんと時間を組み立てていく中でこの不公平税制をなくすのだということが国民の信頼を得る道だと思うのですが、大臣見えますので、その点にだけまずお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/188
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189・水野勝
○水野政府委員 先ほどお触れになったような貸倒引当金等々、この問題はそれ自体としてここに掲げられておりますような不公平税制として整理されるということでございますと、先ほどの五十年の御引用になりましたあの当時の整理の仕方とも、若干乖離をする面もあるのではないかと思うわけでございます。私ども、不公平税制であるかどうかは別といたしまして、貸倒引当金であれば、常にその繰入率が実績と対比いたしまして適正なものかどうかを検討してまいる必要があり、また検討してまいったところでございますが、それをもっていわゆる不公平税制として整理し、それに対処するというところになりますと、ややいかがかなという、その制度自体を不公平と言われますと、やはり引当金というのは、費用の事業年度間の適正な配分ということから出発しているところでございますので、制度自体をそのように整理されるのはいかがかなということでございます。しかし、検討すべき課題であるということにつきましては、それはそのとおりであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/189
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190・早川勝
○早川委員 それで、そういう税制の公平な負担、不公平感を払拭するためにいろいろな項目がたくさんある。それを、いろいろな分類になるかもしれませんけれども、細かければ細かいほど国民にとっては親切なわけですね。公開性という観点からいえばそうなるわけです。したがって、そういうものを明らかにして、同時にその改革プログラムというものをつくられる、つくってほしいと私は思うわけですけれども、そういうことに取り組まれるお気持ちがあるかどうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/190
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191・水野勝
○水野政府委員 今回の抜本税制改革の中で、各税目につきましてここに問題があるということでこの点を検討するという、いわば検討課題を整理する、そうしたものとして整理してそれぞれにつきまして考え方を整理していく、そうしたものとしての検討項目というか検討課題、そういったものは整理できようかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/191
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192・早川勝
○早川委員 大臣が見えましたので、質問させていただきます。
いろいろなところで何度も聞かれていると思うのですが、今回のこれからの抜本的な税制改革に当たって、税収の中立性という問題と、先ほども議論ありましたけれども、増税なき再建という二つの方針は守られますか。あるいはこれは、今回の抜本改革を検討するに当たっては方針にされないのかされるのか。この二つだけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/192
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193・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 このたびの政府が検討しております抜本改正は、所得、消費、資産の間のバランスを高齢化社会等々の到来に備えてこの際きちんとした税制にしておきたいということでございまして、その作業の過程においては、当然のことながら今まで不公平感の原因となっておりますような制度があればこれは改めていきたいということ、また中堅所得者層等を中心にした、サラリーマンを中心にした所得税の重税感の軽減、あるいは法人税の国際水準並み、または相続税の、十年たっておりますから抜本改正等々、それにあわせまして、間接税そのものがもう非常にいびつになっておりますから、直間比率の是正といったようなことを政府は考えておるわけでございます。そこからは直接に今増税、つまり付加的な歳入を求めようとしておるのではございません。そういう意味では、レベニュー・ニュートラルという結果になって一向に差し支えない。ただ、それ以下でございますと、減税財源を欠くことになりますので、ニュートラルにはいたしたいと思っておりますけれども、増税を特に考えておるということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/193
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194・早川勝
○早川委員 レべニュー・ニュートラルという基本は堅持されるということがわかりましたが、これは私の方で言いますけれども、いろいろな資料を読みますと、昨年の売上税の、なぜ売上税を出してきたかという根拠ですね。それを見ますと、また同時に税制改革をやらなければいけないという理由を見ますと、整理しますと三点見受けられます。第一点は直間比率の問題だ。それから二番目は、高齢化社会を迎えるに当たっての対応。それから三番目が、個別物品税にはいろいろな欠陥がある、こういう観点から税制改革に取り組まなければいけないということが言われているわけです。まず、これについて、こういう認識でよろしいかということだけ確認させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/194
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195・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 言われました限りでは、そのとおりと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/195
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196・早川勝
○早川委員 もしこの三点から、実は自民党政務調査会「なぜ、今、税制改革か?」とかあるいは「売上税独り語り」というのを読ませていただいて整理したわけですが、例えば直間比率の問題、その中身、どういうことが考えられているかということを私なりに読みますと、不公平感を払拭する、しかもそれは中堅サラリーマンのところに不公平感が強いということで直接税、所得税を減税する、そのために間接税で補うのだというような理由が書かれているわけですね。そうしますと、所得税減税をやってその財源を間接税でやれば、それこそ税収はプラス・マイナス・ゼロだな、増収にならなくてもいいのだなというふうに考えるのですね。
それから、二番目の高齢化社会の問題については、これは収入の安定性とそれから子供に負担をしわ寄せするなというような表現が出ていますが、高齢化社会に対応するということになると、収入の安定性の観点から間接税の方が望ましい。他方、社会保障費が増大するということを考えると、ここは増税になるのかなというふうに考えるのですね。
それから、個別物品税の欠陥というところは、これはやりようによると思うのですけれども、少なくとも増収にならなくてもいいというふうに考えると、今抜本的な税制改革をやらなくちゃいけないということで、税収は中立性でいいのだ、減収になっては困るけれども別に増収にならなくてもいい、こう言われたのですが、改革の根拠、この三点から見ますと、どう見ても増収、増税にならざるを得ないんじゃないかなと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/196
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197・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 今どうしてそういう最後のところがなりますのか、つまり、今の所得税の重税感というのは中堅所得層で相当なものでございますから、昨年途中までお願いをしたわけでございますけれども、累進構造を何とか改めてまいりたいと思っております。それから、法人税につきましても私どもが最終的に考えておりますところまではまだまだ減税が行き届いておりませんといったようなことは、実は相当の財源を必要とするわけでございまして、しかも、非常に先々のことを考えますと、これはだんだん高齢化社会になっていくということは、それらの人々が稼得能力をなくす、稼得能力をなくす人の割合が多くなるということでございますから、そこから所得税の負担というものはどうしても若い人にかからざるを得ない。しかし、何倍という負担を一挙にしわ寄せするわけには到底いかないわけでございますから、そういう意味でおのずからやはり間接税の方に比率が移ってくる、こういうことであって、全体としてのトータルがふえるというふうに別に考えることはないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/197
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198・早川勝
○早川委員 そうしますと、「増税なき財政再建」というのはこれからも可能だという考えでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/198
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199・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 その経済の運営を過たなければ私はできる、またぜひこれはやらなければならないと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/199
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200・早川勝
○早川委員 そうしますと、整理いたしますと、今の特例国債、さらに建設国債の問題もありますけれども、「増税なき財政再建」については今回の抜本的な税制改革に期待する必要はない、これが第一点。それから第二点、抜本改革はレベニュー・ニュートラルでやる。しかし、ここでよくわからない部分は、高齢化社会に当たって社会保障等を含めてあるいは負担構造はいわゆる広く負担してもらうことになるけれども、トータルとして税負担が上がっていく、そのための布石を今回の税制改革が行うものではない、こういうように二点理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/200
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201・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 高齢化社会になりましたときにいわゆる社会保障のためにどれだけの給付をするか、それはどれだけの負担をするかということにかかっておるわけでございますから、その問題を今一応議論を複雑にしないために別にいたしておきますが、そういたしますと、大体早川委員の言われるようなことだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/201
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202・早川勝
○早川委員 この間接税にシフトをするということはシャウプ税制以来の抜本改革だ、前内閣はそういう方針で取り組まれたわけですけれども、今回の抜本改革は、そういう意味で、例えばシャウプ税制というのは垂直的公平と水平的公平のどちらを優先させたかと考えますと、いわば垂直的な公平を優先させて税の所得再配分効果を重視しようというふうに私は理解するわけですね。そういうふうに考えますと、これから今政府が、あるいは政府税制調査会が出されようとしている税制改革は、いわゆるシャウプとの対極にあるような方針で、そしてその具体的な改革案が出てくる。言いかえれば、どちらかというと消費税、間接税のウエートが非常に高くなってくる。そして、その負担の公平というのは、どちらかというと幅広くとなりますと水平的な公平を重視する。こういう方針に転換する、こう理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/202
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203・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 一概にそういうふうに申せるかどうかいかがかと思いますけれども、シャウプの時代、シャウプ税制が行われました昭和二十四年、五年、二十年代の中途から後半でございますか、それと日本の今とは全く所得の分布も異なりまして、いわゆる五分位階層で見ましても、ただいまは一番下と一番上の比が二・九でございますが、シャウプのときは五・八、ちょうど倍でございますか、これはお互いに経験している、よく知っていることでございますが、そうなりまして、しかも所得水準が高くなりましたから、そういう格差の少ない、所得水準の高い社会は、今から四十年近い前、三十何年前と違いまして、当然に広く薄く社会の費用を分担できる社会であると思います。
もう一つシャウプの時代と違いますのは、所得税をああいうふうに組んでいきまして、そのころの給与所得というのは、たしか全体の税収入の中で給与所得は、一番小さいときは昭和三十五年に一二ぐらいであったようでございますけれども、今は二一とかなんとかいう、給与所得の所得税の持っておりますウエートが全体の税収の中で大変に高くなっている。これは明らかに我が国の所得水準が上がっていきましたことに税の累進性がつまりそのままというか余り変わっておりませんでしたために、給与所得が重い負担を背負っておって、そういう意味で、給与所得といいますか、個人所得でもよろしいのですが、殊に給与所得でありますが、そういう意味では、やはり直接税の負担がそれだけ大きくなってしまったということではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/203
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204・早川勝
○早川委員 その一面を大臣は言われたと思うのですね。稼得者が、シャウプの時代と比べますとはるかにサラリーマンの比重が高くなっているわけですね。今現在七五%。それだけの人たち、勤労者のうち七五%がサラリーマンだとすれば、国民所得のうちのウエートがそちらへいく、そこで所得税の税収が上がる。別に不思議はないわけで、逆にいつまでたってもサラリーマンが膨大な稼得者になっている一方でほかのところで稼得者に税金が上がるというのは逆な不公平になるわけですから、僕は、一面は真理ですけれども、他面、それだけを理由にされるのは当を失しているんじゃないかなと思います。
実は、今大臣も言われた中に、これからの間接税増税の問題で考えなくちゃいけないなというのが一つございます。シャウプのときの五・八倍とそれから二・九倍という数字を指摘されたわけですけれども、ほかの最近の資料、これは分析された資料があるのですけれども、「経済成長と所得分配」という本が経企庁から出ているのですけれども、その中に「家計所得の階級間格差率の推移」というのが載っています。どういう分析がされているかといいますと、高度成長期には実収入の所得の階級間の格差は縮小傾向にあった、そういう数字で、ここに表があるわけですけれども、確かに昭和四十八年ぐらいまでは、例えば昭和四十二年のときには三・〇三だったのが二・五八までその格差は傾向的に下がっていたわけですね。五十四年までは大体横ばいの状況なんですね。単年度上がったり下がったり。ところが五十四年が二・六〇という倍率でして、六十年は二・八六でいわば二・九、つまり五十四年以降こう見ていきますと、拡大傾向ですね。つまり格差がだんだん広がる傾向にあるわけですよ。そして、しかも最近のキャピタルゲインで、土地だとかいわゆる株だとか。土地を持っている者と持っていない者との格差ですね。株式投資できる人間、余裕のある人とそうでない人の。こういう傾向が高まってきているし、それをこれに加味すれば、どうもいつも出てくる統計というのはフローしかないのですけれども、そのフローで見ても格差が広がりつつあるわけですね。今の昭和五十四年から六十年、この七年間。そうすると、確かにシャウプのときと比べると半分くらいになった。しかし、この最近の、極端に言いますと低成長の中に入ったときから時間を区切って見ていくと、格差は拡大傾向。しかもそれに最近の資産の所得を加えると、もっと拡大しているんじゃないかと思いますね。
そうしますと、所得税、例えばマル優一つ見ても、あるいは一律分離課税にしてしまった。総合課税から分離課税にしてしまった。で、間接税というのは逆進性ではどうしてもカバーできない税金なんですね。そうすると、格差が広がっていく中で、仮に新型のそれこそ例外なしのというような税金が入った場合には、さらにこの所得再配分効果というのは低下して格差を助長するのじゃないかと思います。
こういう今日の状況がありますので、こういう基礎的なデータを含めて広く国民の、つまりそのプロセスを国民が信頼するということがどうしても必要だと思うのですね。そういうことを考えますと、こういうデータがあるということも理解していただいて取り組んでいただきたいなということを考えております。最後にその点だけちょっと大臣の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/204
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205・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは、今四十八年とおっしゃいました。四十八年かと思って伺っておりましたが、つまり、ずっと我が国の雇用が進んでまいりまして、ある段階で完全雇用に近いところまでいったことがございます。この完全雇用に近いところにいくまではずっと給与が上昇していったわけですが、四十八年というのはちょうど石油危機の起こったところでございます。それから後ごくごく最近まで、結局労働側の問題といいますか雇用の問題としては、雇用の確保ということ、どうして失業者を減らすかということが最大の関心になってきたことはやむを得なかったことであった。そういう意味では、賃上げよりは雇用確保というふうに、国全体の関心もそうでございますし、労働運動側の御関心もそうであった。それは無理もないことだと思います。その間には、確かに五分位層の所得格差というのはどうしたって開きがちになった。残念なことでしたが、現実にそうであったと思うのでございますね。四十八年というのはちょうど石油危機でございますから、やはりそれからごく最近までそういう状況にあった。それはそうであったろうと私はおっしゃるように思いますが、ここにきまして、これからの我が国が、もうここまで雇用が、有効求人倍率が〇・八六までまいりました。かつてない高い率になってまいりますから、これからさあどういう動きをするのか、そこはやはりいろいろ見通しの問題でもございますけれども、五分位階層の格差が過去何年か石油危機以後なるほど広がったかもしれないが、今後の傾向として広がる傾向にあるか縮まる傾向にあるかといえば、これは何とも言えない、あるいはまた縮まっていくのではないかというふうに私などは考える方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/205
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206・早川勝
○早川委員 大臣がいなくなってから言うのはおかしいのですけれども、つまりフローの問題とストックから上がる収益が、こういう家計調査報告を見ても、ストックからの収入は入らないのですね。例えば金融資産から実収入を含めてこういう統計にあらわすということがされてない。ところが、一方のいろいろな、間接税、所得平準化だとか日本は世界一豊かになったという宣伝物を見ると、これだけ金融資産を持っているよとかお金持ちはこれだけいるよ。じゃ、そこから生まれる果実はこういう統計の中に含まれて五分位がつくられるかというと、つくられてないのです。大臣は縮まるだろうと言われるが、僕は広がると思うのです。一方に持てる者と持てない者というものが生まれちゃったわけですね。そこから生まれる果実をつけ足していけば、確かにフローのところはそんなに違わない。毎月毎月の収入。だけれども金融資産から入ってくるものの格差が広がるのじゃないかと思うのですね。そういうことを考えますと、間接税導入、しかも広く、浅くというのは不公平を助長する危険性が非常に大きいということを私は指摘しておきたいと思います。
じゃ、大臣がいなくなりましたので、ほかの質問をさせていただきます。
林業税制の問題を伺いたいと思います。相続税については抜本改革に先送りされているわけですけれども、ぜひ検討していただきたいという観点から伺いたいと思います。
今回の租税特別措置の二年間適用期限を延長するという項目に、一つは山林を現物出資した場合の所得税の納税期限の特例の措置がありますね。これは二年間延長するというのが今回の改正案に入っております。御存じのように昭和四十九年にたしか特例措置として創設されたと伺っていますけれども、実は大蔵省の大先輩の高木文雄さんが書かれた本を拝見しますと、この適用事例は今まで四件しかないというのですね。昭和四十九年に設けられたこの特例措置、いわゆる法人成りのための措置なんですが、これを受けた人は四件しかないという指摘があるのですけれども、今現在何件ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/206
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207・水野勝
○水野政府委員 確かに、この制度は四十九年に発足したわけでございますが、この利用が件数としては余り多くないというふうには承知いたしております。たしか一けた台であったかと思います。正確な件数、今なお調べて申し上げますが、一けた台以下であったと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/207
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208・早川勝
○早川委員 一けた台ということは十に満たないということですね。四十九年に設けられて今六十二年ですから十三年、また延長して十五年、十五年たって十件にも満たない、そんな税制をしかも特別措置で残しておく必要があるのかどうかと感じるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/208
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209・水野勝
○水野政府委員 現在の件数はどうも三件か四件ということのようでございます。この制度は、一つの問題は、現物出資する、そうすると、やはり出資分が相当大きくなると物すごい資本金になったりする。現実の中身からするとそれほど大きな会社ではございませんけれども、それを出資すると資本金のみが大きくなって、その資本金のみが大きい会社だということになるといろいろほかにも影響があったりするということで、どうも最初二回ぐらい延長したときはほとんど件数はゼロだったかと思います。それがどうにかこういう制度があるということが理解されてやっと適用件数が出てきたというのがどうも正直言って最近の動向でございまして、ある意味ではなかなか難しい制度でございますので利用されにくかった面があるのではないかと率直のところ考えております。しかし、こういうものへの需要はやはりあるということで、これを廃止しようといたしますと、山林対策の一環としてぜひ残してほしいという御要望も強いわけでございますので、御指摘のように適用は少のうございますけれども、今回延長を御提案をさしていただいているというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/209
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210・早川勝
○早川委員 十三年やって恐らく四件という指摘が正解だと思うのです。それで、需要があると言われても、これじゃまた二年やってゼロ、需要はないのじゃないですか。もうそういうのは私はやめた方がいいのじゃないかと思います。それよりも、こういう需要がない措置は一つでも、先ほどの百六十八のうち一つ減るわけですから、やめた方がいいと思います。
他方、国有林が非常に荒廃していて、何とかして財政支出を含めてよりよい緑を確保しなければいけないということがあるわけですけれども、それと同時に、日本の全体のことを考えますと、やはり民有林もこれまた対策を、政治の手を求められているわけです。
そこで、抜本改革で相続税が検討されているわけですから、この相続税の問題についていわばこういう方向で検討していただきたいということで伺いたいと思いますが、今御存じのように農地の猶予制度があって、納税猶予をやって二十年営農を続ければたしか相続税免除という制度がありますけれども、とりわけ山の方は逆に言えばもっと息の長い産業だと思うのです。立木は六十年たたなければ成木にならないし現金化できないというようなことを考えますと、ぜひ農地経営に認められているような延納、そしてそれを同時に免除する制度につなげるような、こういう制度をつくっていく必要があるのじゃないかと思うのですが、これについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/210
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211・水野勝
○水野政府委員 この農地の猶予制度につきましては、農地というものが極めてほかの資産と比べて特殊性がある。その特殊性のあるところが法制的にも二つ明確にされているところでございまして、一つは、農業基本法で、農地というのは細分化してはいけないのだ、必ず資産の相続に当たっては共同相続人の中の一人が引き継いで担当することが必要なのだ、そのために、必要な施策を講ずるのだということが農業基本法自体におきまして明定されておるところでございます。それからもう一つは、農地法におきまして、農地というのは必ずその耕作者みずからが所有することが一番適当なんだ、そういうことで農地政策を進めるのだというこの二点、法制的に他の資産と比べて性格が異なるということが非常にはっきりされておるところでございます。こういう基本的な農地の性格を受けまして、税制としても必要な施策を講ずるものとするというその農業基本法の精神にも則して実施しているところでございます。しかし、最近に至りますと、農業の構造改善ということからしてこういうことが果たして基本的にいいのかどうかという御議論も出てまいっているようでございまして、それに関連しましてこの農地猶予制度につきましても現在いろいろ検討がなされるべき時期にまいっておるのでございます。
一方、山林につきましては、そのような農業基本法におきますところの一人だけが必ず相続するとか、持っている人が必ずそれを経営するのだというところとか、そういう原則はないわけでございますので、そうしたものに即応した猶予制度というものを山林その他の資産に広げていくということは、この制度の理論的背景からも難しい問題ではないかと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/211
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212・早川勝
○早川委員 例えばまた評価の問題等もこれは連動をしてくるわけなんですけれども、そうではなくて、今山林経営者が非常に苦しんでいるのは、結局相続税が重くて、どうしても納めようとすれば延納制度がございますけれども、あるデータを見ますと、相続税額の三分の一ぐらいが延納利子になるというような数字も出るわけです。そうするとえらい重い延納制度だなということがあります。それよりも何よりも、必ずしも日本の山がきちんと整備されなくて、御存じのように高度成長期のときに非常にそれこそ乱伐と言われるぐらいに切り過ぎて、今相続をしてもとても立ち木を売ってそしてそれで納められるという状況ではないわけです。それを無理してやろうとすれば、それこそ乱伐して山全体が荒れてもとにかく税金を納めなければいけないのだということは、こういうふうに逆に考えますと、それこそ日本の自然環境を含めて山自体が荒廃してくるわけです。特に民有林であればなおさらなわけです。そういうことを考えますと、農地とは、そういう制度があるからという意味は同じだという意味ではなくて、違った意味で検討していい制度じゃないかなということです。
それから二番目ですけれども、幼齢林。今日本の山は木は非常に若いわけです。そういうことを考えますと、この評価の問題についても要望が出されているようです。西ドイツの課税評価の方法というのは、もちろん御存じだと思うのですが、経営森林全体を評価単位として収益還元方式だということをやられているようです。そういうことを考えますと、この幼齢林といわゆる成木に近いものとは評価方法が当然変わっていい、あるいは極端に言えば無評価、まあゼロでもいいのじゃないかというぐらいに考えることもできるわけです。そういうこともぜひ検討していただきたいと思います。
それからもう一つ、イギリスがやられているいわゆる立木、立ち木一代に一度だけ課税するというやり方ですね。これも考えたらどうかなと思います。大体相続というのが三十年だとすれば、世代交代を含めて三十年だ。その一方で、木というのは大体六十年だとか九十年だとか長期間を要するわけです。そうしますと、一本の木に対して相続税が六十年にして二度かかるのですか。九十年、百二十年でヒノキを売っていたりすると三度も四度もかかるというような非常に不合理なかかり方が起きるということで、イギリスでは何か一代に一度だけ、つまり切ったときに課税するんだというやり方をとっているようですけれども、先ほど言いました幼齢林の評価の問題、それから立木に対する累積課税の排除、西ドイツ、イギリスでやられているこういう税制を参考にして取り組んでいただきたいと思うんですが、そういう意思はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/212
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213・水野勝
○水野政府委員 いろいろ御指摘のような点は、毎年の税制改正に際しまして、いろいろ御意見、御要望があり、検討さしていただいてきているところでございます。したがいまして、現在、山林なり立木についての相続税につきましては、評価の面、それから課税の面、延納の期間、利子率、こういったものにつきましてかなりいろいろな措置が講じられてきているところでございます。最近の昭和六十二年度の改正におきましても、概算経費率を引き上げたとか、それから保安林に関する延納の利子率を四・八%という極めて低い率に下げたとか、それから、先ほどの幼齢林の話にも関連いたしますが、評価上標準伐期の期間を十年延長する、これによりまして初期の評価額がかなり下がることになろうかと思いますが、そうしたもろもろの施策を講じてきているところでございます。全体として見ましても、山林経営者で相続税の課税を受けておられる件数というのは、したがいましてかなり減ってきておるわけでございます。
しかし、現時点におきましては、その立木のと申しますか、材木価格の低迷と申しますか、輸入材との競争力と申しますか、そういうところからいろいろ問題点はなお指摘されているところでございますので、御指摘の点等につきましては、今後なお改正の機会に勉強いたしてまいるべき事項だとは思います。しかし、根っこの相続税につきまして、昭和五十年以来十三年間据え置かれているところでございますので、まずはこの本体の相続税の方につきましてその制度を今回基本的に見直しを審議してもらっているところでございますので、まずは当面はこちらの方の話として対処さしていただく問題ではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/213
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214・早川勝
○早川委員 せっかく相続税の抜本改革をやられるなら、土地の暴騰という問題はありますけれども、やはり山林経営について、そして山林の林業継続、山を守るというような観点から、これらの相続税についても、先ほど指摘しましたような観点、あるいは物納制の活用の問題だとか具体的な要望が出されておりますので、抜本改革に値するような林業に関する相続税改正をやっていただきたいということを要望させていただきます。
あと、時間がございませんので、簡単にそれぞれの項目について質問させていただきますが、一つは週休二日制の問題について伺います。
完全週休二日制について、もはやスペインと並んで日本だけだというような指摘もございます。何が先進国かわかりませんけれども、唯一日本だけだという指摘もございますので、ぜひ実現する状況にあるというふうに思います。
それは、経済企画庁が前に指摘しておりましたように、週休二日制をやれば、国内需要、個人消費もふえるんだという試算があるわけですね。例えば六十年国勢調査をもとにして計算された数字を見ますと、一兆七千億円強の消費支出効果がある、こういう試算をされているわけですね。六十年ですから、今日の時点だと恐らく二兆円ぐらい。一年間平均七万一千七百四十三円という数字を出されているわけですけれども、恐らくそれも七万数千円に上がったとすれば、完全週休二日制をやれば恐らく二兆円の消費支出効果があるという試算が出されているわけですね。そんなに違いはないと思います。そういうふうに考えますと、内需拡大の大きな柱じゃないかなと思いますので、ぜひ。これは反対する人は少ないわけです。いわば条件整備の中で時間がかかっているような話も伺っております。
そこで全銀協は非常に精力的にことしの十月からでもというような意向を伺っておりますけれども、金融機関全体としてこの完全週休二日制の取り組み状況について、簡単に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/214
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215・平澤貞昭
○平澤政府委員 今、委員がおっしゃいましたように、週休二日制を拡大していくということは大きな時代の流れであるわけでございますし、そういう中で消費の拡大を通じまして内需拡大に資するものであるという点もおっしゃるとおりでございます。
そこで、金融機関の週休二日制についてでございますが、御存じのように六十一年八月からこれまでの第二土曜日に加えまして第三土曜日を休業日としたところでございます。そこで、これをさらに拡大していくことにつきましては、昨年の十一月、労働大臣から全国銀行協会連合会等に対しまして金融機関の完全週休二日制の実現の要請が強くなされたところでございます。したがいまして、民間金融機関におきましても、その実現に向けて具体的な検討が鋭意進められている状況でございます。したがいまして、大蔵省といたしましても、その環境整備にさらに一層努力してまいりたいと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/215
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216・早川勝
○早川委員 週休二日制・閉庁問題関係閣僚会議というのがつくられて、とにかく前向きに取り組もうということで政府内部でもやられているわけですけれども、いま一つ踏み切れない理由、背景というのはどういうところにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/216
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217・平澤貞昭
○平澤政府委員 民間金融機関サイドからいたしましては、先ほど申し上げましたようにその実現に向けて積極的に取り組んでいるわけでございますが、ただ、この週休二日制を一般に行います場合には、一つは、金融機関を利用いたします人たち、そういう人たちの理解を十分に得ることが必要であるわけでございます。それからまた、金融機関には民間金融機関のほかに農林系統の金融機関もございますし、さらに郵便局とかそういうものもあるわけでございますめで、こういう金融機関がすべて同時に実施できる環境をつくることも必要であるわけでございます。特に郵便局の場合は国家公務員の週休二日制の進展とも絡む問題がございますので、そういう問題を解きほぐしながら進めていくということが肝要であろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/217
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218・早川勝
○早川委員 この二日制について、いわば利用者サービスの問題については、今までの経過を聞いてもそれほど支障は起きてないわけですね。いわばなれの問題だと思うのですね。しかも、今までやってきた経過を見ますと、大体これは三年置きぐらいに、金融機関の四週五休から四週六休というのを見ますと、何か三年ステップで段階を踏んできているような感じを持ちます。
もう一つの問題は、いわば郵便局の問題だと思うのですが、外国の状況、もちろん日本の郵便局のウエートと外国のは全然違うとは思うのですけれども、郵便局の貯金部門で、イギリスだとか、フランスだとか、西ドイツ、イタリアなども別に土曜は閉じてないわけですね。土曜も開いているんですね。けれども、全体としては週休二日制をやっている。今、局長言われましたように、確かに民間金融機関、信金、信組合めて、それから郵便局の問題含めて一体にというのもあるわけですけれども、いわば完全週休二日制の先進国を見た場合でも、必ずしもそういう意味では足並みがそろっているわけではないというようなことを考えますと、英断する時期じゃないかなと思うのですね。みんな足並みがそろわなければスタートできないという状況を待っていたのではなかなかという感じを受けるものですから、この際思い切って、時間的に見てももうそろそろはっきりした方針を出して踏み切ってもいいという方向に大蔵省として指導されていいんじゃないかと思うのですけれども、最後にその点だけ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/218
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219・平澤貞昭
○平澤政府委員 その点につきましては、徐々に環境はできつつあるわけでございます。現在労働省初め関係各省が十分連絡をとりつつこの問題について前向きに取り組んでいるわけでございますので、そういう中からおのずから私は答えが出てくるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/219
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220・早川勝
○早川委員 それこそ政治的な決断をぜひしていただいて、強力に推進をしていただきたいと思います。
それから、税理士法に関連して一点だけ伺いたいと思います。
御存じのように、これから税の不公平感をなくすためには徴税行政の面が一つの柱になっているわけですけれども、税理士の人たちの要望に実は一点あります。税理士法三十条には、「税務代理の権限の明示」という条文がございます。それからもう一つ、第三十四条には「調査の通知」があります。この二つを読みますと、納税者が税務代理をする委任状を税理士に渡しその委任状が税務署に提出されていなければ、調査の通知というのは税理士のところへやらなくてもいいのだというふうに、この二つの条文を単純に読みますとそう読めるわけですけれども、そうしますと、今の状況を見ますと、委任状を税務署に出していない、とりわけ個人の所得税の申告に関しては出していない人が多いのじゃないかなと思います。また、小さい事業所の場合出していないんじゃないかと思います。こういうことを考えますと、この委任状というものを、申告書のところを拝見しますと、税務代理と税理士の署名捺印、それから最近はそこに所在地も書くようになったというふうに伺っていますので、何か署名捺印をもって委任状、まあ委任状とは違うのですけれども、実際の扱いの面で委任状を出したというような形で対処をしていただきたいなという要望があるのですけれども、国税庁としてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/220
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221・日向隆
○日向政府委員 今委員のお尋ねと若干ダブった答弁をさせていただいて恐縮でございますが、今御説明になりましたように、税理士法第三十条によりまして、「税務代理をする場合においては、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない。」とされておりまして、これを受けて、おっしゃいましたように、同法第三十四条により、税務代理の書面を提出している税理士に対しては、調査に際し、納税者に調査通告をすることをするのにあわせて、当該税理士に対してもその調査の日時、場所を通知しなければならない、こうされているわけであります。
実際に現況を見てみますと、法人税の調査に当たりましては、大部分の場合、今おっしゃいましたが、いわゆる関与税理士につきまして第三十条による委任状が提出されております。これにのっとって調査通告が行われているということでございますが、問題は、御指摘になりましたように、所得税の調査に当たりましては必ずしも委任状が提出されていないのが実情でございますので、この場合、納税者に調査通告をすると同時に、申告書等に署名押印のある税理士について税務代理等の有無を納税者本人に尋ねる等、何らかの形でこれを確かめるように努力いたしまして、税務代理等が認められるような場合には、納税者を通じ、これが原則だと思います、または場合によりましては直接税務署が当該税理士に対して調査通告を行っているところもあるわけであります。
私どもとしては、今委員の御指摘がございましたので、これを踏まえまして、委任状が提出されていない場合におきましても、ただいま申し上げましたような方法でできる限り税務代理等の有無の確認に努めまして、これを踏まえ当該税理士に対して調査通告をするようにしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/221
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222・早川勝
○早川委員 これはやはり税理士の人たちが実際にやられている中で、要望に近いことなんですけれども、もう一点ございます。
それは、個人所得税を出す場合に所得税の申告決算書というのをつけるように言われているわけですけれども、税務代理をやる税理士、会計士が税務署に行ってその用紙を欲しいんだがと言っても、なかなか予備がないので一部を渡してあとはコピーをというような対応をされていると伺いますので、それほどの経費でもないでしょうし、それよりもそういう信頼性を得るということを考えますと逆に安上がりなサービス行政じゃないかなと思いますので、その点もぜひ勘案をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/222
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223・日向隆
○日向政府委員 今御指摘の諸用紙等の需要につきましては、私ども第一線の税務署等に十分な手当てをいたしまして御要望にこたえるよう努力してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/223
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224・早川勝
○早川委員 最後になりますが、これは大蔵省への要望になるんですか。税務署員もそうなんですけれども、財務局の職員の人たち、定員法を含めて非常に厳しい状況に人数の面で置かれている。その他方で、聞きますと、税務面でもそうですし、それから財務局としての携わる業務の内容においても金融絡みの問題が非常に多くなっている。それは他面、非常に専門的な知識を要求される。ところが、非常に人が少なくて、日中は、いわば時間内は一般の人との接触で時間を費やされて、いわゆる専門知識を自分が勉強するのは、その仕事が終わって一般国民、市民との接触が終わった後で自分で勉強しなくてはならないという非常に厳しい状態に置かれている。しかも、一日勉強すればそれで修得できるというものではないわけですので、そういうことを考えますと、昨年も出た抵当証券法から投資顧問業法を含めて、非常に細かくかつ専門的な仕事がふえてきている。それは同時に人もそちらに重点的に配慮していいのじゃないかなと思いますので、これは要望になりますけれども、ぜひ考慮していただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/224
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225・平沼赳夫
○平沼政府委員 早川委員御指摘のとおり、最近は非常に国際化や経済情勢の複雑化、そういうことで大変税務署の仕事の量がふえておりまして、定員が足りないということが大きな問題になっております。そこで、大蔵当局といたしましては、事務の合理化だとか機械化というようなことに努めてまいりましたけれども、それでもなかなか厳しい状況でございますので、関係各位のあくまでも御理解を得た上で、増員等の問題も、今までも大変お力をいただいているわけですけれども、さらに努力をしてまいりたい、このように思っておりまして、大変いい御指摘をいただきましてありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/225
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226・早川勝
○早川委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/226
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227・越智通雄
○越智委員長 次に、安倍基雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/227
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228・安倍基雄
○安倍(基)委員 きょうは一時間半ございますが、あすまた予算委員会に立つことになっておりますので、案件によりましては予算委員会の方に回すことにいたしまして、特別措置法のことを前半にお聞きして、あと一般問題を聞きたいと思います。
大臣は三十分間というお話でございますので、その間大臣に御答弁をいただくことにしまして、今回の税制改正、特に土地問題でございますけれども、ちょっとその場しのぎというか、例えば買いかえについての特例をちょっと手直しするとか、みんなにわあわあ言われてそれでちょっとやったというような感じがするわけでございます。その点ちょっとどうかなあ、もっともっと基本的な、あるいは読まれたかもしれませんけれども、文芸春秋二月号に、土地税制は保有と譲渡、そういったのをひっくるめて一つの税制を考えるべきじゃないかというような問題の提起を私はいたしましたけれども、こういったものの一環の中に今度の税制改正をするべきじゃなかったかな、急に言われて慌てて手直しをしたという感が否めないのでございますけれども、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/228
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229・水野勝
○水野政府委員 今回の土地税制におきましては、内容といたしましては、居住用資産の買いかえの問題、それから優良住宅地の造成のための課税の特例を創設いたしたい、この二つの点が主なものでございます。
昨年九月の臨時国会におきましては、二年間以内の超短期の土地譲渡につきましての車課というものを基本的な政策として盛り込ませていただいたところでございまして、これらによりまして昨年の臨時行政改革推進審議会の答申にございます土地問題につきましての対策はおおむね講じたところでございますが、なお今後の検討課題として、この行革審の答申にもございますように、負担の公平に留意しつつ、税制の活用方策と制度、運用のあり方について検討するとされているところでございますので、こうした方向に沿いながら今後とも検討をしてまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/229
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230・安倍基雄
○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、土地税制の抜本的な見直しということを将来期待いたしますが、その点について大臣の所見もお伺いしたいと思っております。
具体的な問題になりますけれども、今回の買いかえ特例について、人によっては価格制限とか面積制限というようなことで頭打ちをするのも一つの方法ではないかというような議論もございました。大臣が来られる前にこの点一言聞いたことでございますけれども、今回の買いかえ特例というものはみんなに言われて慌ててやった。もう一方の優良宅地造成についても、何か基本的な構想なりビジョンなりの枠組みの中に位置づけられた改正ではなさそうだ。むしろ、私は文芸春秋で指摘いたしましたように、やはり保有と譲渡とずっと通じた土地税制の抜本改正ということを考えるべきではなかったかな、その点について、今後保有については、確かに今のところ固定資産税は地方税でございますけれども、これをひとつ土地税制の抜本改正という方向に向かって検討されることを考えておられるか、ともかく地方税と国税だから手はつけられないというような気持ちでおられるのか、この点、土地税制の抜本改正に向かっての意思がおありかどうかということをお聞きしたいと思います。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/230
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231・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 一昨年あたりから非常に土地価格の上昇がございまして、それに対応して税制も、今安倍委員の言われましたのは、居住用宅地の買いかえの特例のことを言っておられたのだと思いますけれども、対応をいたしたわけでございます。それで、ちょうどここに、この前も申し上げたかもしれませんが、水田さんの肖像がかかっておりますけれども、水田さんは、長い間の御経験で、税制というものが土地の価格に長い目で見てどれだけ影響力を及ぼすものか自分はやや疑問に思うということを私に何度か言っておられました。それは、そのときどきでは確かに短期的にはいろいろな効果があるわけでございましょうけれども、長期になりますと今度はそれが逆の効果を及ぼしたり思わないことになったりすることがあるということを言おうとされたのだと思います。しかし、当面は、こういう問題、先鋭化しておりますから対応しなければなりません、またいたしましたが、こういうことがありませんときに恒久的にどうあるべきかということはやはりもう少し考えなければならない問題であろう、今ということではございませんが、そういう気持ちは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/231
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232・安倍基雄
○安倍(基)委員 買いかえ特例なんというのはいい例で、いいと思ってやったらどうもおかしくなったり、やったりやめたりというような変な話になってきているわけでございます。私がここで提示しているのは、土地政策を絡めまして、保有に重く譲渡に軽くというのが一つの大きな土地政策としていい方向ではないかと私は考えておるわけでございますけれども、この辺、大臣は、今のところしばらく考えない、落ちついたときにもう一遍考えるとおっしゃいますが、むしろこういったことを土地政策の関連でもう本当に、直間比率、直間比率と言うばかりではなくて、今こそ検討をスタートすべきではないか。この水田さんが言われた特例的な話は、やったりやらなかったり、失敗したりうまくいったりということがございますけれども、基本的には保有に重く譲渡に軽くという一つの方向は大いに論議されるべきであり、そこは今もっと検討すべき問題と思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/232
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233・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 大変難しい問題でございますから軽々に申し上げられませんけれども、今新しい行革審でも土地については特に重点を置いて検討していただいておりまして、中長期の考え方を出していただけることになっております。税制調査会でもそうでございますが、やはりそういうところの方々のお考えを行政の方でよく考えさせていただく、こういう問題こそそういうところから御意見を出していただくことが大事なのではないか。今余り思いつきを申し上げることは事の性質上よろしくないと思いますので、そういうふうにしてまいったらいかがかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/233
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234・安倍基雄
○安倍(基)委員 行革審もいいのですけれども、どうもこれだけ土地問題が騒がれたあげく大山鳴動ネズミ一匹式の税制改正ではないかな、この際行革審、行革審と言わないで、どうも日本というのは最近はそういう審議会にげたを預けて返事がないうちは何もしないという感じでございますけれども、土地政策をどうするかというのは大問題でございまして、私はこれからの土地税制は今から本当に政府全体で検討するんだという態度で臨んでいっていただきたいと思います。
大臣が行かれるのは三十分ですね。それでは、大臣がおられるうちに、ちょっとほかの問題について飛んでお聞きしたいと思います。
これは主として円高差益と、それから円とドルの変化によっていろいろな業界が苦しんでいるということの一例として、私は船の関係の雇用の問題からちょっと勉強してみたのですけれども、こういう問題がある。これは主として運輸省の話でございますけれども、運輸省の説明を聞いた後、大臣のお考えも承りたいと思う問題が一つございます。
と申しますのは、私ども船員組合を持っておりますけれども、日本の船員がどんどんと第三国の船員に置きかえられてしまう。これは日本船籍の場合にはいいのですけれども、外国船籍にして安い船員さんを乗せる方がむしろ安くつくということで、現在外航船についてどんどんと日本船籍から外国船籍に離脱していく方向にある。これはまた雇用にも響いていく。彼らに言わせますと、自分たちは相当の借金をして十年くらいの計画で船をつくった。つくった途端にドルがどんどん安くなってしまって運賃収入がどんどん減ってきてしまう。一方、債務の方はごっそりと、ずっしりと重くかかってくる。
ここで中小企業についてのいろいろの助成策がある。確かにこういった中小の船主は、規模からいえば中小企業。例えば中小企業の何千万というような融資を受けてみたところで、もう額としてはべらぼうな額を借りている。となりますと、中小企業の救済策では間に合わぬ、一体どないしてくれるというような話もございまして、船員の方も結局は外国船籍にどんどん行ってしまえば職場も失うというような話になるわけでございます。
企画庁から円高差益の話が出ましたからそれはまた後から御説明を受けますけれども、片っ方で円高差益を享受している企業がある反面、円高により非常に打撃をこうむっている企業もある。これは当然でございまして、これは輸出産業もそうでございますが、こういった外貨によって収入を得ているものについてはまた相当の打撃もある。それに対するいろいろないわばバッファー措置というものについてどう考えるか。先に運輸省の方からこういった問題をどう考えるかについてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/234
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235・野崎敦夫
○野崎説明員 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、日本の国際航路に就航しております海運業といいますのは、全く輸出産業と同じでございまして、運賃収入が基本的にドルであり、またコストは円であるということで、非常に円高・ドル安の影響を受けて困っております。私どもとしましては、何とかしたいということで、六十一年以来、中小企業庁と歩を一にいたしまして幾つかの策を講じてまいりました。基本的には運転資金の確保、中小企業対策の一環としての対策でございます。また、船舶整備公団の共有近海船につきましては、これまた利子の減免といったようなことを種々講じてございます。
そこで、やはり基本的に外航海運というのが自由業でございますので、先生おっしゃっていますように、設備資金は確かにたくさん借りてはおりますけれども、運転資金の方の面倒を何とか他の産業と横並びで中小企業対策の一環として見るということで限度ではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/235
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236・安倍基雄
○安倍(基)委員 設備資金がえらい大きな、かさむ業種のようでございますね。でございますから、通常の中小企業のいわば対策では間に合わない。もちろんこれは、それぞれの企業がそれぞれのいわばそろばんというか契約のもとに事業をしているわけでございますから、それを何もかも国が面倒を見るという日本的な考え方は私はとらないわけでございます。ただ、反面、これだけドルと円とが急変した、そういう時点では、おまえたちの見通しがまずかったから、おまえたちは大きな借金をしょって船をつくった、運賃収入はめちゃくちゃに減ってしまうという話になると、これはちょっと行き過ぎかな。それがまた雇用にも響いていくということになりますと、やはり円高差益が一方においてずっとある反面、非常に苦しんでいる輸出あるいは輸出類似産業がある。一般的には、自動車とかあるいは鉄鋼などは企業も相当大きいですから。造船が一体うまくいっているのかというと、私が中国財務局長をしていたころにどんどん倒れたものですから、造船は大変だと思っているのだけれども、運輸省の話によりますと、意外とそう倒産していないという話を聞いているのでございますが、こういうものに対して、おまえたち勝手にやったから、見通しが悪かったからだけで済むかどうか。やはりバッファー的な、一定の期間はこれだけの円ドルの変化があったことについて考えていくべきじゃないかな、それがまたいわゆる通常の中小企業の助成というか救済で間に合わないスケールのものもあるのじゃないかな、こういったものについてどう考えるのかということをもう一遍運輸省からお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/236
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237・野崎敦夫
○野崎説明員 円高が急激に来ましたものですから、船会社といたしましてはどうしてもドルコストへの転換がおくれておりますが、最近は日本籍船を避けるような形で極力ドル収入に対応するドルコスト化ということが行われております。また、船腹調整を実質的に行ってまいりましたため、ドルベースではございますけれども、運賃水準も一応ある程度の改善というふうな状況にも現在あるわけでございまして、何とかやってきておるのではないかと思っておるし、もちろん先ほど申しました中小企業円高対策もそれなりのある程度の効果を上げているかと思っております。
そういうことでございますので、運転資金を面倒を見るということの中小企業対策でもう少し外航海運あるいは近海海運というのはいけないものだろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/237
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238・安倍基雄
○安倍(基)委員 ちょっとその辺が中小企業対策で間に合うものか間に合わないものか、それが雇用にも影響してきている。
一つは、ナショナルフラッグというか、日本の国籍の船舶というのをある程度一定範囲内に維持すべきではないかという問題点もある。これは別に緊急事態ということもございませんけれども、ナシナナルセキュリティ、の面からいってもナショナルフラッグの船舶を持っている必要もあるのではないか。それとともに雇用の問題もある。そういったことをどういうぐあいに運輸省は考えておられるのか。また、最後に大蔵大臣がこういったことを、ドル・円の急変に基づく各産業について、私はこれはあるものを面倒を見るとほかのものとのバランスがある、非常にいろいろございますから、それはやはりどの業種がどのくらい打撃を受けておって、それについては考えるべきものかどうかというような考え方をある程度持つべきではないのかなと思いますが、運輸省のさっきのナショナルフラッグについての問題あるいは雇用の問題をどう考えていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/238
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239・福島義章
○福島説明員 先生のお尋ねの件は、日本類船としての必要な日本船腹量といいますか、日本籍船の船腹量というものを国として設定すべきではないか、こういう御指摘かとお伺いいたしておりますが、この問題につきましては非常に難しい問題でございまして、実は一昨年の十二月、海運造船合理化審議会、運輸大臣の諮問機関でございますが、この小委員会におきまして、「今後における我が国商船隊の構成、規模等については、ナショナル・ミニマムの設定の問題をも含め、」「諸般の情勢を勘案しつつ、引き続き、検討を行う」、こういうことに中間報告がなされております。
現在、我が国が非常に経済社会が急速な構造変化の過程にございますのと、外航海運を取り巻きます環境というものが、先ほど先生からもお話が出ておりますような非常に船腹過剰状況にある、あるいは日本船の競争力というものが、船員費のコスト差といいますか、さらにこれが円高によって拍車がかけられておるわけでございますが、そういうものによって非常に拡大してきている、競争力が低下するという状況になってきているという非常に難しい状況がございまして、こういう非常に難しい経済情勢、それから外航海運をめぐります客観情勢の中で、現在その必要な船腹量というものを策定するというのは大変難しい問題ではなかろうか、こう思っておりますが、いずれにしましても、我々としましても、海運造船合理化審議会というのがございますので、この場で引き続き検討を続けていきたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/239
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240・安倍基雄
○安倍(基)委員 この問題、大蔵大臣のいわば横から聞かれた感じをお聞きしたいのですけれども。
私どももこれだけのドルと円の急激な要するに変化というものを今までに経験したことがなかった。そうすると、一方において円でもって相当の借金をしてそれでもってその分を払っていかなければいかぬというのが、要するに収入の方はめちゃくちゃに減っちゃってきているという種類の業種が幾つかあるわけですね、程度の差に応じて。確かに彼らの見通しは悪かったと言えば悪かったかもしれませんけれども、これだけ大きな変動があるとは余り思ってなかったということでございます。
そうなると、これは中小企業対策あるいは城下町対策的な対策だけでは済まないものも随分出てくるのではないかな、そういうのがぽちぽちと、まあ声を大にしているものはどんどんと拾われるけれども声を大にしていないものはそのままになってしまうというような状況がある程度あるのではないかなと思われます。
この点について、私は、やはり通産なり企画庁なりが、それぞれの業種で円高で困っている業種というのはどんなものがあるのかな、それが通常の対策で救えるのかな、これは円高差益の還元問題とはまた別個に考えていくべき問題ではないかなと思います。この点、大蔵大臣の御感想をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/240
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241・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 海運界の業界としてのいろいろな問題というのを私も全く知らないわけでもございませんし、またいろいろ運輸省も指導されていろいろに業界としてもやっておられるようでございますけれども、例えば船舶調整にしてもあるいはまた雇用の問題、外国人労務者の問題というようなことになりますと、これはまたもっと難しい問題にも関係するのでございましょうし、結局もとに戻りまして、運輸省は海運行政としてどういうふうに考えられるかということを承って、私どもとしても役所としてそれに御協力をしていくと、どうもこういうふうにお答えをするのが私は本当のお答えなんではないか、なまはんかな知識で余り申し上げない方がよろしいので、運輸省にひとつ基本的なお考えなりを決めて指導していただくということがよろしいのではないか、そのために必要なことはまた大蔵省としても御相談に応じていくということであろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/241
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242・安倍基雄
○安倍(基)委員 大臣のおられる時間も余り長くないと思いますので、この問題はこの辺でとめまして、もとの問題に戻るのですけれども、結局、私は現在の地方税が非常に、今まで我々直間比率、直間比率ということばかり言いますが、地方税と国税とのバリアというか、これは時間もございませんからあすの予算委員会でも取り上げようかと思っておりますけれども、どうも最近の状況を見ますと、特に土地の値上がりなんかを見ていまして、結局、国の財政というのは、いわば重荷をどんどん背負わされながら、入ってくるものは限られておる。地方財政は最近どんどんどんどんと伸びつつある。これは要するに土地の値上がりもございますし、何か大蔵省じゃないけれども、護送船団方式的に一番弱い方の地方自治体を基準としていろいろ援助したり面倒を見たりする。そうすると、強い方の自治体というのは、もう本当に金が余ってしようがない。
実は、例えば東京都の都庁の移転、これがどのくらいかかるかと聞いてみましたら、千四百億くらいかかる。で、あの辺の土地を評価したらべらぼうな額になるわけですね。私ども静岡県の予算を聞いてみたら八千億くらいだそうですから。それも豊かな方の県でございますけれども。移転だけでも千四百億円かかる。東京都は確かに美濃部さんのころから比べますと大分鈴木さんになってよくなったとは思いますけれども、ただ、本当に黙っていてもがっぽがっぽ入ってくるということはもう事実でございまして、それが結局、私はこの前の論文でも書いたのですけれども、サラリーマンの税金、いわば住民税とかあるいは法人住民税ががっぽがっぽと入ってくるものだから、上げるべき固定資産税を上げてない。
そこで、霞が関ビル、あれは一体どのくらい固定資産税を払っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/242
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243・佐野徹治
○佐野説明員 特定のビルにつきましての税額につきましては、守秘義務等の規定がございまして差し控えさせていただきたいと思いますが、ちょっと御参考までに、昭和六十一年度の固定資産税の概要調書がございますが、それに基づきます東京都の特別区の高度商業地区の平均評価額、これによって試算をいたしますと、土地につきましては税額は一平米当たり約一万五千九百円ということに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/243
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244・安倍基雄
○安倍(基)委員 守秘義務と言いますけれども、大体法人の会社の場合にいろいろ経緯がございましょうからなかなかわかりづらい。だけれども、あの辺の土地の時価が大体どのくらいで、それでそれを掛ければ幾らという程度のことは、それは守秘義務に当たるのですかね。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/244
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245・佐野徹治
○佐野説明員 特定のビルにつきましての税額は従来から公表いたしておりません。私が今申しましたのは、東京の二十三区の中のビル街と申しますか、大きなビルが並んでおりますようなそういったものは高度商業地区という形で評価上分類をいたしておりまして、その高度商業地区の一平米当たりの税額は先ほど申しましたようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/245
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246・安倍基雄
○安倍(基)委員 私はニューヨークのいろいろな比較を自治省に頼んだりして、どうもなかなか正確には返事は戻ってこないのですけれども、少なくとも向こうの方が一フロア当たり数倍になっている。しかもそれは年々ニューヨークの市が法人と個人とに分けながら審査をし直しているという形なんですね。日本の場合には、特に東京なんかは法人住民税、個人住民税でがっぽがっぽ入る。例えば、法人についてのあれは全国で三兆円くらいあるのですけれども、二五%がそういう東京都の中に入っちゃう。七千億か八千億近く。ということは、そういうところでもう十分賄われちゃうから要するに何も固定資産税に頼らないでもいい。だから上げない。
でありますから、私はこの前のあれにも書いたのですけれども、保有についてのコストが安ければ、買ってビルを建てさえすればもうかる。東京集中の一つの原因は、東京都などがサラリーマンの税金でもって賄っちゃって余りに余っちゃうものだからそういう固定資産税を上げないで済ましているというところに問題がある。だから、私はここで大臣に土地税制を根本的に見直せと言うのは、国と地方を通じて見直していかなければだめですよ。幾らそういっても、上がった分は全部またもうがっぽがっぽ。じゃ、もうそろそろ時間ですから、大臣ちょっとこのことを、土地税制の見直しはやはり国、地方を通じた根本的な制度見直しの一環として早くやらなければいけないのじゃないかと思っておりますけれども、この点時間が足りなければ予算委員会でまた繰り返してもよろしゅうございますけれども、大臣のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/246
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247・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 過日総合雑誌で御所見を読ませていただきまして、いかにもそういうことがございます。東京都の場合なんか、今まさにおっしゃいましたようなことが事実上あるであろうということは想像ができることでございますから、やはり地方税も一緒にしまして検討しないとどうも有効な考え方は出てこないということは、私もあれを拝見して感じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/247
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248・安倍基雄
○安倍(基)委員 じゃ、大臣、どうぞ。ありがとうございました。またあす……。
そこで、今の問題の延長ですが、最近東京都が都市計画税の減免措置をいたしましたね。これについて自治省はどうお考えでいらっしゃいますか。
〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/248
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249・佐野徹治
○佐野説明員 東京都が講じようとしております都市計画税の軽減措置の内容は、いわゆる小規模住宅用地につきまして軽減措置を講じようということでございます。私ども、都市計画税と申しますのは、やはり都市計画事業を実施することによりましてその区域内の土地なり家屋なりが受益することに着目をいたして課税をする目的税であるというふうに理解をいたしておりますので、本来都市計画税と申しますのは一律に課税されるべき性格のものである、こういう点から申しますと、東京都において講じようといたしておりますような措置は都市計画税の性格の趣旨から申しますと必ずしも適当ではないのではないか、こういうようなことを東京都にも申し伝えてあるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/249
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250・安倍基雄
○安倍(基)委員 私別に東京都を目のかたきにするわけじゃないのですけれども、実際のところ都市計画とか道路の建設とかいうのは最近余り金を使ってないのですね。だから、余っている金は一体どこに行っているのだろうかと実は思っているわけでございまして、一遍もう少し突き詰めてあれしてみたいのですけれども、公共事業の投資の比率なんというのは東京都の場合には落ちてきているのですね。きょうは一時間半しかございませんから、この問題はまた懸案といたしまして、ちょっと次へ移らせてもらいましょう。
今度の法案の中にいわばたばこの税金の据え置きの話がございますが、外国たばこのシェアが大分急増しているというぐあいに聞いておりますけれども、その実情なり、それに今どういうぐあいに考えるのか。消費者のためだから外国たばこはどんどんふえてもいいと考えるのか、いや、やはり日本の――たしかたばこの民営化法案を審議したときに、外国のたばこ会社というのは一つの総合会社だからいざとなるとダンピングもやるし相当の資力でくるよ、欧州などはたちまちのうちに二、三〇%のシェアになってしまったよ、一体大丈夫かねということを言うたことがございます。今聞いてみますと、シェアが一一、二%に急上昇していると言っておりますけれども、その状況と、これからどう考えるのかということを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/250
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251・宮島壯太
○宮島政府委員 最近の円高及び昨年四月の紙巻きたばこの関税無税化を背景といたしまして、輸入たばこの小売定価が引き下げられました。そうしたことに伴いまして、安倍委員御指摘のとおり、輸入たばこのシェアが高まってきておりまして、六十一年度には三・九%であったものが本年一月には一一・二%というように一〇%を超えたシェアになっております。
この輸入たばこのシェアが今後どの程度になるかにつきましては、たばこの嗜好品としての性格、外国メーカーの販売活動のあり方等の要因もございまして、現時点で具体的に予測することは困難でございますが、今後の推移によりましては日本たばこ産業株式会社にとって非常に厳しい状況になることも予想されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/251
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252・安倍基雄
○安倍(基)委員 それでは、たばこ産業の見地からいっては困るけれども消費者の見地からいったら一つも困らないというような感じですか。どういうあれですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/252
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253・宮島壯太
○宮島政府委員 現在輸入自由化をしておりまして、外国製品でありましてもあるいは国産品でございましても、それは消費者が選択するものでございますから、私どもといたしましてはそれは消費者の選択にまつべきものと考えております。ただ、関税無税化等の措置によりまして当初考えておりました状況よりもかなり厳しい状況に急激になっているのではないかと日本たばこ産業株式会社は認識しておりまして、私どもとしてもこうした点については十分注意をして見守っていく必要があろうかと思いますが、繰り返し言いますが、消費者の立場からいたしますと、それは消費者の選択にまつべきものというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/253
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254・安倍基雄
○安倍(基)委員 たばこはまた税金の面でやはりある程度重要な面もあるのですけれども、関税局の方せっかく見えてますからあれですけれども、何かほかの国では要するに嗜好品についてはまだ関税が残っている。アメリカでもECでも残っている。ところが日本の場合には外してしまった。それは、ちょっと一説によると、あのころアメリカから言われて、生産専売をとるか、あるいは関税をあれするか、二つに一つ、どっちかにしろ、こう言われて、おりてしまった。そのときは円高でも何でもなかったものだから、関税ぐらい下げても大丈夫じゃないかという安易感がどうもあったらしい。
実は私も、これもまたいささか自画自賛なんですけれども、昭和六十年のいわば初めのころの委員会でも申しましたし、雑誌にも書いたんですけれども、市場開放というのは、関税を下げる下げるというのは、当時における為替相場を全く考えていない。為替相場がいいときには、いいというか、円安のときには黙っていてもどんどんどんどんと外へ出ていくし、外から入ってくるものには自然関税がついている。そういうときに関税を下げても余り効果がない。一遍下げてしまって、逆転したら大変な目に遭うよという論文を書いた記憶がございます。
この辺、関税当局として、やはりそのころ円安であったということで、ちょっと安易に考え過ぎたんじゃないかなというような気がするのでございますけれども、その点どう考えているのか。しまったなという感じでいるのか。やはりこれからの関税政策というのは常に為替相場ということを考えた上での政策でなくてはいかぬのじゃないか。
現在為替相場の変動は関税の変動率を大きく上回っているものでございますから、当時私は、六十年、G5前の為替相場というのはケネディ・ラウンドから比べて要するに平均一五%のドルの切り上げだ。だから輸出については一五%の補助金がついているのと同じだし、輸入については一五%の自然関税が課せられているのと同じだ。だからこのときに関税を下げてみても全然黒字解消にはならぬよ。ところが逆転したら要するに大ごとになる。つまり、これからの関税政策というのは為替相場を無視してはいけないよというようなことをあえて市場開放に反対するという文芸春秋の論文で書いたことがございます。この点たばこの一つの例をもとにして関税局はどう考えていらっしゃるかという、突然の質問で申しわけないけれども、佐藤君、ひとつどういうお考えであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/254
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255・佐藤浩
○佐藤(浩)政府委員 広範な範囲の御質問でどうお答えするか難しいのでございますが、まず日米の協議の中で六十一年十月に日米合意を見たのでございますが、その際の為替相場は一ドル百五十七円でございました。そういう意味では既に円高の時代に入っておった環境の中で合意を行ったわけでございまして、安易に円安だったからとかということではなかったことだけまず申し上げたいと思います。
それから第二点でございますが、製造独占か関税の無税化をというような話があったのではないかという御質問だったと思いますが、確かに交渉の経緯でそういう話がございました。その辺、政府としては、もちろん葉たばこ耕作者の立場、あるいは日本たばこ産業の立場、あるいは政府としての外交上の問題、この辺を検討いたしまして、製造独占を譲るよりは関税の無税化に踏み切る方がベターであるという判断のもとに選択いたしたことも先生御指摘のとおりでございます。
それから、外国はたしかまだ関税があるのではないかというお話もございましたが、この点確かに日米たばこ協議の当事者である米国も従価税率にいたしましてほぼ二〇%に相当するたばこの関税を持っておりますし、ECに至りましては九〇%の関税を持っておることも事実でございます。我が国が無税ということでいかにもアンバランスではないかという御趣旨かと存じますが、ただ我が国の場合、今申し上げましたように、製造独占という制度を堅持いたしておるわけでございます。ECの場合は、国によっては製造独占をとっておる国もまだございますが、御存じのとおり、ECは、どこか穴があいておれば、例えばドイツで製造独占が破られていれば、そこで例えば米資本が入って自由につくれる。もちろんアメリカも製造独占はとっておりません。そういう意味で、我が国が製造独占をとり、かつ関税が高いのは問題であるというのが米側の主張であったと記憶いたしております。その結果、先ほど申し上げましたような経緯で関税無税に踏み切ったということでございます。
最後の為替相場と関税率の関係でございますが、これはかなり理論的な問題あるいは実際的な問題、いろいろな点で考慮しなければならないかと思いますが、先生御指摘のように、産業保護にとって円高になれば関税率をどんどんそれを相殺するような意味で上げるのがむしろ筋ではないかという先生かねての御主張かと承知しておりますけれども、一方、常に運動いたしますと、為替変動の効果も貿易上は全く、完全に相殺するように上げたといたしますと、なくなるわけでございまして、為替調整というものは経済の実体あるいは関税率というもの、一定の所与の条件に対応して、経済実体に応じて変わっていくんだと考えれば、現在のような変動相場制のもとではある程度関税政策は国の政策として産業保護の必要に応じて決め得るもの、為替相場はそういうものを所与の条件として実体経済に合わせて自由に動くものという組み合わせになるのではないか。したがいまして、為替相場に応じて必ずしも関税率を変更させていくというようなことは当然に行われるべきものでもないのではないかというふうに考えておりますが、お答えになっておりますかどうか、以上で御勘弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/255
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256・安倍基雄
○安倍(基)委員 私は関税を為替相場にすぐスライドして変えるとまでは言っていないのです。ただ、要するに、為替相場の変動も将来あり得ると見越して、関税を下げたりするときは慎重でなければいかぬ。例えばさっき百五十七円であったとおっしゃいました。事実、妥結したころはその辺だったのですけれども、この前の関税を下げるときに、大丈夫なのかな、こんなに円が上がってきてしまっているのに、その事情は変わってきたんだから、もっと頑張ればいいじゃないかと私は思ったのですよ。あの交渉そのものは相当前から要するにされておって、最後に決着がついたころはどんどんどんどんと円が上がってきてしまったというのであって、妥結当時円高をちゃんと考えていたというのはいささか言い過ぎなんで、そこまでは、あんなになると思わない格好で大体の合意ができてしまった後どんどんどんどんと円高が進んだというのが実態ではないかと思います。
今御承知のようにECは九〇%ぐらいかけている。それでもたちまちのうちに三〇%ぐらいの外国シェアになってしまった。製造独占があるから大丈夫か。製造独占はかえって日本の葉たばこ業者か何かが苦しいからということで無理やり独占して彼らを保護していたもので、原価のいわば低下には全然役立っていないのですよ。その面で、原価は製造独占で要するに一向下がらない、関税はない、ダブルパンチなんで、製造独占をとっていわば関税を下げたというのは、どっちかといえば逆だったのだというような考えもあるのですけれども、この点、製造独占の話になるとすぐ葉たばこ業者の話になるので、なかなか弱い面がたばこ産業にあるのかもしれませんけれども、農産物の自由化というようなことさえやろうというときに、ちょっとこの辺は逆の方向に動いてしまったかなという気がしないではないので、これはちょっといかがでございますか、大蔵当局の方。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/256
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257・宮島壯太
○宮島政府委員 製造独占を選択した経緯につきましては先ほど佐藤審議官から答弁がなされましたが、今安倍委員御指摘のように、国際的に見て国産葉たばこは高く原価がついておりますので、国産葉を使うたばこ産業株式会社にとりましてはコストを引き上げる結果になっているのは御指摘のとおりでございます。日本たばこ産業株式会社としては、国際競争を強いられている中で、一方そうした国産葉たばこの全量買い上げ制度がございますので、国産葉たばこの生産性の向上、それによって国産葉たばこの価格の引き下げを一方でお願いしますとともに、会社の一層の合理化を図って他の面でコストの低減を図っていこうとしているところでございます。制度問題として今安倍委員御指摘のような要素があることは十分私どもも承知しておりまして、今後外国のたばこがどの程度のシェアになるか、それを注視しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/257
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258・安倍基雄
○安倍(基)委員 外野席からここら辺でやめておけよと言うからやめておきましょう。しかし、この辺はいろいろ問題を含んでいることでございますから、今後の検討を希望したいと思います。
まだ時間は十分ございますから、この間、大蔵委員会で聞こうと思って、積み残したわけじゃないのですけれども、土地問題と関連しまして、都市の高層化というのが大事だということを私言いました。ところが、いつの間にか、私もうっかりしたところで、最近木造の三階建てを認めるという法案が通過したのです。私も、それを事前に知っていれば、そいつはおかしいぞと待ったをかけるつもりでいたのですけれども、通ってしまった後、しまったというわけです。
そこで、木造にした経緯。それによって一体どうなるのか。確かに日本の木材業界が困っているという話はありますよ。しかし、本当に日本の木材業界がそれで助かるかどうかははっきりわからない。しかも、これはどのくらい延焼というか、というのは、私は、大分前に、災害対策委員会のときに、もう数年前ですけれども、いわゆる関東大震災の被害額は幾らか、こう聞いたわけですよ。そしたら、何と当時の予算の四倍、GNPの半分というのですね。その相当の部分がやはり焼けたということなんですよね。
ここで私が強調したいのは、これだけ高層ビルになってくるとなかなか防火が難しい。ただ三階建てぐらいならいいじゃないかという話かもしれませんけれども、二階建てと三階建てで延焼区域が大分変わってくるだろう。しかも、私、説明を受けますと、余り延焼しない地域に認めるからいいのだとこう言うのだけれども、その地域は、一遍建てさせますと逆にそれを高層化する地域に切りかえるのが難しくなってしまう。一遍建てさせて後からもう少し容積率を上げたり、どうせ一遍建てたら周辺がだんだんと都会化するわけですから、区域そのものをある程度縛ってしまう。いろいろ説明を聞くと、何か木造三階建てでも余り延焼しないのだというような説明ですけれども、その辺はいささか疑問がある。何で木造三階建てを認めることにしたのか。
一説によると、アメリカあたりから大分プレッシャーがあったという話さえ聞きます。木造三階建てを認めることによって日本の木材業界はどのくらい助かるのか。円高で結局は海外の木材を使うくらいのものでしょう。その意図がわからない。これだけ日本の人件費が高ければ木を切り出すのだって大変なんですよ。海外からの輸入の材木の方が安くて席巻してしまうわけですよ。木造三階建てを認めた動機、そこにアメリカからの要請があったのかどうか、その辺をちょとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/258
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259・立石真
○立石説明員 今先生の御指摘がございましたように、昨年の建築基準法の改正によりまして、準防火地域内におきましても、一定の技術水準に適合するものについては木造建築物であっても三階建てを建てられるように改正したところでございます。
まず、都市的な問題についての先生の御指摘でございますが、人口の密集しております市街地におきましては、都市計画で防火地域制というのを指定しております。商店街やあるいは業務地域では防火地域というのを指定しておりまして、そこでは原則として木造建築物は建てられないことになっております。しかし、それほどではないが住宅、商店等がずっと連檐している市街地につきましては準防火地域という地域を指定しております。その準防火地域の中におきましては、先生御指摘のように、関東大震災あるいは戦災等の過去の災害の反省に立ちまして、かつ昔の木造の家屋が非常に燃えやすかったということによりまして、木造三階建てを制限してきたところでございます。
ところが、最近の建築物については非常に技術開発が進んできております。先生御承知のように、同じような木造建築物であっても、昔は柱、はりがあり、あるいは障子で外に小舞板等の非常に燃えやすい材料が張ってあったわけでございますが、最近の木造住宅等につきましては、不燃性の材料を使う等非常に防火が進んで、防火性能の向上が進んできているところでございます。
今回の改正の趣旨でございますが、先ほど申し上げましたように、一定の技術基準に適合するということでございますが、建物が火災になったときの延焼を防止すること、また、建築物の中におきましても、一たん火災が発生しても建物全体の火災にならないようにその拡大速度を遅延させること、また、火災になっても倒壊を防止すること、そういうことによって技術的な基準を守るならばこれらについてはかなりの防火性能が得られるということが技術的に明らかになりましたので、今回の改正を行ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/259
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260・安倍基雄
○安倍(基)委員 答弁は簡単にしてください。
それで、アメリカからの要請か何かあったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/260
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261・立石真
○立石説明員 建築基準法という法律は、建築物の安全、衛生、防火というのを守るための最低の基準を決めておる法律でございます。そこで、アメリカ等の要請、あるいはまた国内での木材関係業界の要請、いろいろな要請はございましたが、それらとは別の観点から、やはり性能の向上したものについては適切に評価するということで今回認めたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/261
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262・安倍基雄
○安倍(基)委員 じゃ、アメリカの要請はあったんですね。私が言うのは、それは大体商業地域に認めないということは、やはりそれなりにほかのものよりは燃えやすいということじゃないですか、はっきり言って。いいですか。それからもう一つ、一遍そうやって建てさせてしまうと、その地域は今度は動かしづらくなるわけですよ。そこを商業地域に編入するなりあるいは住宅地域としてもいろいろ変えていくなり。
ちょっと消防庁にお聞きしたいんですけれども、本当に二階建て、三階建てで延焼範囲が同じなんですか。それから、いろいろ防火措置があると言うけれども、本当に差がないんだったら商業地域に建てさせたっていいじゃないですか。それは理屈が合わないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/262
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263・立石真
○立石説明員 やはり鉄骨、鉄筋コンクリ’ト造と比べますれば、木造はその性質上燃えやすいところはございます。したがいまして、非常に密集した地域、あるいはまた映画館やデパートのような非常に大規模な建築物、そういうものについては木造の大規模な建築物はできないということになっております。段階的な差があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/263
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264・安倍基雄
○安倍(基)委員 だから、私は、土地問題でやるときに、建物を高層化していかないと土地問題は解決しないということを言っているわけですよ。高層化の前提としては不燃性が第一なんですよ。でございますから、これは国内の木材業者が言ったか言わないか知らないけれども、国内の材木はそんなに使えないんですよ、実際のところ。やはり海外からの方が安くつくんですよ。まさにこれはアメリカの要求で、私は最近アンチアメリカのことばかり言うものだからいささか野党的なあれになったかもしれませんけれども、もともとこれは本当に意味のない、何のためにやったのか、アメリカの木材業者の御機嫌をとるためにやったのかと思わざるを得ないんですよ。今、土地問題がこれだけ大事になってきておる。
消防庁にお聞きしたいけれども、本当に延焼に差がないんですか、二階と三階で。やはり二階と三階だとすると、少しは風の強さも変わってくるし、延焼範囲も広がるわけじゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/264
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265・木下英敏
○木下説明員 二階と三階で延焼可能性が違うということはそのとおりだと存じます。従来二階建てまでは準防火地域で認められてきたということもそこにあると存ずるわけでございます。今回準防火地域において木造三階建てが認められたということにつきましては、従来制限されていた理由というのが、延焼危険性というのがやはり問題があるということにあったと思うのです。逆に言いますと、その延焼危険性という観点からいって、そのための防火上の措置が講じられるならば、それはもうその点に関しては特に問題がないということで、先ほど建設省の方からも御説明がございましたように、一定の防火上の、屋根は不燃材料でふくとかあるいは壁は防火構造にするとかいうことによりまして、一定の防火構造なるものが担保されていることでございますので、消防の立場からいいますと特段の問題がないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/265
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266・安倍基雄
○安倍(基)委員 土地の利用、土地問題、高度利用のためには高層化が必要だ。高層化の前提には不燃性が必要だ。本当に東京を見たって、ほとんどの部分が、高層建築がちょっとあるぐらいで、あとはほとんど平家ですよ。これが土地問題を大きくクローズアップしている問題ですよ。私が繰り返し申しますように、一度木造の三階建てをつくれば、そこを密集地域にしづらくなるのですよ。わかりますか。だから、密集地域がないから建てさせるというのは、逆に土地の利用を縛ることになるのですよ。そうじゃないですか。どう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/266
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267・立石真
○立石説明員 建築指導課長の立場から全部お答えできるところまでございませんが、非常に高度に利用すべき地域については都市計画の方で高い容積率制限にしておりますし、また、住宅地等である程度高くしたい、住宅地を主体として低層住宅地で高くしたいという地域等について、今回の二階建てよりは三階建ての方が高度に利用できるというように私たち考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/267
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268・安倍基雄
○安倍(基)委員 あなたをつるし上げても余り意味がないからこれでやめますけれども、高度に利用するのだったら不燃性を絶対条件にすべきなんですよ。不燃性にしないでおいて高くばかりして、それがどんどん延焼するようになったら、まさに土地利用からいってもむだが多くなる。何のための木造三階。私は、本当に去年これを審議するときに爆弾演説をやればよかったのだけれども、ついつい知らなかったと言っては悪いけれども、ほかの委員会の話であれしたものだから、残念なことをしました。この点は、これから土地問題の解決のためには高層化が必要だ。高層化の前提は不燃性だ。それを実際ぴしっと頭に入れておいてほしいのですよ、建設省たるものが。それを、アメリカからちょっと言われた。はあ、木造三階建てつくりましょう。とんでもない。この辺でやめておきます。
その次に、これはあしたの論議と思ったのですが、一応せっかくでございますから。円高差益というのを三十兆円というのが大きく報道されておりますね。私も、おとといだったかな、タクシーに乗りまして、タクシーの運転手さんが、先生、円高差益どのぐらいあると思いますかと言うから、おれは三十兆だと思うと言ったのですよ。そうしたら向こうはびっくりしまして、いや、今テレビでそう言ったばかりだ、先生よく知っていますねと言うから、どうだと自慢したわけだけれども、まあこれは私は以前から知っていましたからね。この三十兆円というのは、相当みんなに対して、ああそんなにあるのかといういわば印象を与えたわけですね。ちょっとどうやって算出したかをひとつ皆さんの前で御披露していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/268
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269・熊澤二郎
○熊澤説明員 三十兆どうやって計算したかというお尋ねでございますけれども、円高が始まりましたのは六十年十月ごろでございますので、私ども六十年十月―十二月期から一年前の円のレートあるいは原油価格のレートというものを見まして、その円のレートなり原油の価格がずっと継続して続く、こう仮定いたしますと、同じ量の輸入品、あるいは原油を輸入した場合にどれだけ支払いの節約になるかということが計算できるわけでございますので、それを毎期毎期計算いたしまして、その二年、四半期ごとになりますが、その累計額を見てみますとおよそ三十兆円になるという計算をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/269
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270・安倍基雄
○安倍(基)委員 これは私も細かい説明をもう聞いたので、積み上げ計算というのは非常に達観的な数字なんですね。それはそれでもいいのですよ。当たらずといえども遠からずじゃないかという気がしますけれども、その反面、三十兆円、つまり為替差損は別枠ですから、三十兆円の損というものが輸出については立っているのじゃないか。その損をどう吸収してきたかということでございますが、そう理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/270
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271・熊澤二郎
○熊澤説明員 私ども物価の立場から見ておりますので、円高によって輸出産業等がどれだけの損害なり打撃をこうむったかというのは、経済企画庁のまた別途別の部局でいろいろ計算したりはしておりますけれども、それはそれなりにあるわけでございまして、例えば円高によって円建ての輸出価格が低下した、この損害がどれだけあるかとか、あるいは輸出が減少した、この損害額がどれだけあるか、こういったようなことはそれぞれ計算できるわけでございまして、私ども、価格の立場だけから申しますと、やはり相当程度、二年と一四半期ということになりますと、十数兆のそういったものの価格による損というものが出ているのかなというふうには計算しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/271
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272・安倍基雄
○安倍(基)委員 実は、この前にもちょっとここで日本航空の運賃の話も取り上げたのですが、これは場合によってはあすでも運輸大臣に直接聞こうかと思っておりますけれども、円高差益を受けている業種というのをどんなものがあるのかなとこう並べて、この前テレビでもやっていましたけれども、ところがそれに対しては十分還元されていない。それは、一つは、この間ちょっと私が論議いたしましたけれども、寡占状態、つまり競争が十分行われていないところ、そこはどうしても価格が下がっていかない。競争が激しいところはどんどん下がっていく。一つの寡占状態であるかどうかというバロメーターにもなるわけですね。
そこで、私が考えたアイデアで、果たして実行可能かどうかという問題はあるのですけれども、要するに、こういう業界は円高差益を受けながら十分まだ吐き出してないよ、こういう業界は相当いっているよ。逆にこういった考えもあるのですね。さっきちょっと一つの例を出しましたけれども、本来吐き出せるはずなんだけれども、もともとが債務を随分負っていた、そのためになかなか吐き出そうにも吐き出せないよ。私は日本航空のあたりをもうちょっと詰めてみなくてはいけないのだけれども、これは非常に債務を円建てで持っていれば、外貨建て運賃が多ければ、それだけ円高差益を還元しようとしてもできないという可能性もあり得る。でありますから、業界によって少しずつニュアンスが違うにしても、円高によってさっきの苦しんでいる業界、円高差益で潤っていながら還元していない業界、そういうものを一つ一つ拾い出してそれをちょっとピックアップして明示する、明らかにするというようなことはできないものかな。これはなかなか難しい話ですけれども、それはどこの官庁がやるのかな。通産は通産でやるのか、運輸は運輸でやるのか、あるいは企画庁がやるのか、その辺を何か、これだけ円高差益三十兆というならば、それをピックアップできるシステムがないのかな、政府のどこかの部門でやれないかなという気がいたしますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/272
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273・熊澤二郎
○熊澤説明員 円高差益の還元を進めるためにそういった業種ごとの還元状況を明示できないかというお尋ねかと思いますけれども、円高差益還元を進める考え方として、私ども二つに分けて考えておりまして、一つは公共料金のようなものでございます。これは電力ですとかガスあるいは輸入牛肉といったように政府が直接価格とか料金に関与しているもの、これは政府が率先して指導するなりいたしまして差益還元に努めていくということが必要な分野であろうと思います。
もう一つは、そのほかの価格、料金、いわゆる市場で自由に形成される価格の商品、サービスの問題でございます。この分野につきましては、先生からもお話がございましたように、競争条件を整備する、自由な競争によって輸入コストの低下なりを価格に反映させていく仕組みをつくる、こういうことが最も基本的に大事なことであろうと考えておりまして、例えば円高差益の還元の問題で申しますと、並行輸入というような問題もあるわけでございますが、そうした並行輸入を不当に妨害するような行為があればそれを排除していくといったような、競争条件の整備を通じて円高差益の還元を進めていくのが基本であろうと考えておるわけでございます。
そこで、先生のお尋ねの業種ごとに還元状況を示したらどうかという点でございますけれども、そういうことで、価格というのは、市場で、もちろん輸入コストの低下という要素もありますけれども、そのほかに生産性の向上の問題とかあるいは需給状況といったようなものが価格に反映されるわけでございますので、どうも私ども輸入コスト低下の問題だけを取り上げて価格を論じていくということには限界があろうかと思っているわけでございまして、したがいまして、先生御指摘の競争条件を整備するといったようなことを基本にしながら輸入の促進とかそういったような政策も含めまして円高差益の還元促進を進めてまいるというのが私どもの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/273
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274・安倍基雄
○安倍(基)委員 統制価格というか、政府が決められる価格は変えられるし、ほかのものも結局そういうのをあぶり出すというか、本来こうなるはずなのだけれどもなかなか下がらぬ。これはこうこうこういう理由です。その理由は、ある場合にはほかの材料が下がらなかったり、この場合には競争条件が十分でなかったりという差益を受ける側の、逆に差損というか円高で苦しむところは、こういう業界はこういう理由でもって苦しみますよ。さっきの一つの例ですけれども、たくさん円で借りておいて収入がドル建てのために減少するというようなものも一つの例でございましょう。あるいは輸出に頼っている企業でも、相当国内シェアがある、そういったものは打撃は若干半減しますよ。そういうのはいささか理屈っぽいかもしれませんけれども、そういうことをあぶり出して、それで結局それぞれの対策を考えるということが必要なのじゃないかな。これは各官庁でやれるのか、企画庁がやるには余り数が多くて荷が重いのかわかりませんけれども、これから構造改善と言う以上は、それぞれの新しい円高の環境のもとにどの企業ならやっていける、どうするという一つの青写真があってもいいのじゃないか。私はあした通産大臣にちょっと聞こうと思っていますけれども、そういうことの前提として、企画庁なり何かが音頭をとって、そういう企業別、業種別の円高効果というか、それによって経営にどう響くかという、サーベイというか、そういうのが構造改善の第一歩ではないのかなと思いますけれども、いかがでございますか。これはむしろ企画庁長官に聞かなければならないことですが、長官になったつもりで答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/274
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275・熊澤二郎
○熊澤説明員 先生に申し上げるまでもなく、我が国のいろいろな物の価格というのは自由な市場で形成されるものでございまして、したがいまして、いろいろな要素によってできるものでございます。需給関係といったようなこともあるわけでございまして、またそれを抜きにした価格ということも論じられないわけでございますので、私どもといたしましては、そういう市場でできる価格を逆の意味で何かこうでなければならないといったふうに指導、誘導するようなことは大変難しいことだろうと思っています。繰り返しになりますけれども、そういうことが基本にございまして、いろいろな分析等々でそういうことをやってみろという御指摘は大変おもしろいとは思いますけれども、円高差益の還元の問題につきましては、先生も御指摘のような寡占とかそういうようなことが問題であれば、やはり競争条件の整備を進めていくといったようなことを基本にしながらこの問題に対処していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/275
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276・安倍基雄
○安倍(基)委員 私は、何もこの価格がこの価格になるべきだとかなんとかいうぐあいにするのではなくて、少し各業界をあぶり出してごらんよ。本来これだけ下がっているのだからもっと下がってもいいはずなんだがなあ。その下がっていないのは、寡占であるとかいろいろ規制であるとか、そういう要素があるだろう。この業界は円高で随分苦しんでいる。苦しんでいるのがもろに来る場合、半分に来る場合、合理化でもって今まであれしてきたけれども、それを一々全部が全部ぴしっとできるわけはないけれども、大まかにあぶり出していけば、これから変えていくべき産業構造というのは逆に浮き出てくるんじゃないかというような考えでございまして、これは恐らく大臣に聞くとまた行革審とおっしゃるかもしれないけれども、行革審を待たぬでひとつ政府部内でやってもらいたいと思います。
時間もございませんからそろそろ最後のあれで、ちょっとこれは個別的な話ですけれども、たしか繰越欠損金の一時停止をやったときに、税理士会あたりから、なかなか引き切れないケースが出てきますよという問題がございました。大きな損を持って、その次は益が出て、本来ならばそのときにこの前の制度であればちゃんと引けたのに、今度は引けなくなっちゃった。その後損が続いちゃって結局は引き切れないで済んじゃう、終わっちゃうというようなケースが出るわけですね。今度制度が変わって、ああたまたまそういうケースのものだけが損をしたなというようなケースが生じ得るわけでございますけれども、これについて何かこの救済措置があるのか。えらい技術的な話で申しわけないけれども、その辺についてもうあと時間もございませんから御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/276
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277・水野勝
○水野政府委員 この措置は、おととしの税制改正におきまして、当時の財政事情等にもかんがみまして、特例措置としてお願いをしたところでございます。
この措置は、御承知のように、直近一年間に生じたものにつきましてはこの二年間に限り繰越控除を適用しないこととしてお願いした制度でございますが、直近一年間に生じたものは以後四年間につきましては繰越控除ができるわけでございますので、その四年間に何とか御利用を賜るようにお願いをいたしたいと思うわけでございます。
この措置は、おととしの状況におきますところの厳しい財政事情を考慮して設けられたものでございますので、観念的に申しますと、以後四年間に控除し切れなかった、もし直近一年間におきまして控除が認められておったならばその直近一年間のときに控除ができたはずのところ、以後四年間頑張っても控除できなかったというのが観念的にはあり得るケースとして否定をするものではございませんが、この制度をお願いをした経緯からいたしまして、その分につきましてはひとつ御容赦願いたいということで、今回廃止につきましては特段の救済措置は講じていないところでございますので、御了解を願いたいと思うところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/277
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278・安倍基雄
○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、私どもは、この制度を導入するときに、何かちょっと場当たり的だなあ、要するに一年ちょっと一時的にやってみて、まあ何というか、ちょっと収入を上げよう、余り感心しなかったのですよね。まさに何年かたってちょっとの間でやめることになりましたけれどもね。
さっき冒頭で申しましたように、今度のいわゆる買いかえ特例にしても、何か思いつき的な要素が否めない。もう少し法改正の場合には腰を据えて、何年かたったらやめちゃうようなものは余りしないようにしてもらいたい。特に買いかえ制度もこれは五十七年から復活してまた大慌てでやめる。ちょっとその辺がその場その場しのぎが多過ぎるのじゃないか。でございますから、私が冒頭で申しました土地税制につきましても、地方税、交付税を通じての改正にしましても、少し腰を据えてやっていただきたい。
私、実はまだ明日がありますので、相当の問題を積み残して今回ここで聞けなかったこともございますけれども、特に私はまた明日でも披露しますけれども、いわば日本の税制、今直間比率、直間比率とばかり言っていますけれども、国税と地方税とを通計してみますと、意外と資産に対する税は軽い。つまり、今地方公共団体がほかのものでぼかぼか取っちゃうものだから資産課税をあれしているというような形でございまして、抜本改正、抜本改正と言うのはいいのだけれども、それを直間比率だけに焦点を合わすのはおかしい。
私は明日またあれしますけれども、売上税あるいはEC型付加価値税と言っていますけれども、これがまた新しい不公平を生むかもしれない。私はここで出さなかったですけれども、中小企業の勤労者の割合というのを日欧と比較すると圧倒的に日本が多いのですよね。というのは、向こうの方が流通においても製造においても非常に大企業があって、あとは簡単になっているのですね。日本の場合には中小企業が多いのですよ。そうすると、結局そこで飯を食っている連中が大勢いるので、そういった連中がやはり所得税を払う連中ですから、その辺の観点が、今は、税調の付加価値税が一番いい、だけれども売上税だと反対勢力が強くてやれないだろうというようなことを言っていますけれども、この前と同じような、しかも取引高税を先に導入してそれから付加価値税に移行しようなんというような議論まで出てきているこの状況。
〔中川(昭)委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
私は、もうちょっと税制論議が現実を踏まえた、現実を踏まえたという言い方は悪いけれども、我々は役人のころはどっちかというと机の上で仕事をしますから、本当に業者に接して、業者の声というのはやはり団体を通じてしか来ないのです。我々の場合には個々の支援者を回っているうちにいろいろなことが入ってくる。それを見ますと、どうも売上税というものが、欧州型付加価値税というものが本当にこの日本の風土になじむのか、小さな企業でぞろぞろ飯を食っている連中が果たしてそれで今までの不公平がむしろ公平になったと考えるのか、逆のケースが出てくるのではないかなということでございます。
まだ税制論議はこれからやりますが、ただ、最近は、当局の皆さん、大蔵大臣やほかの方も、そうは焦らぬ、じっくりと国民の同意を得てやるんだというぐあいに若干風向きが変わってきましたけれども、本当に税制というのは納得させてみんな納めてもらうという形じゃないと、私は今度の大阪がどうのこうのは、別にそれが間接税に対するどうのこうのというよりむしろ浜幸の影響だと内心は思っていますけれども、それは別として、ひとつそういうことでさっきの税制改正も余り急がないで、急いでやると、この前の繰越欠損金のあれみたいな、後でしまったということもあり得るわけですから、後でしまったなんて言うとそう思っていないかもしれませんけれども、そういったこともございますので、ひとつじっくりやるべきであると思います。
そろそろ時間になりましたから、この辺で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/278
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279・中村正三郎
○中村(正三郎)委員長代理 正森成二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/279
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280・正森成二
○正森委員 大臣がもうすぐ来られるようですから大臣の質問を少し後へ回しまして、別の問題からちょっと。
まず第一に、六十二年度の税収について伺いますが、補正を行った後も自然増収が一兆円以上あるとか、あるいは別の新聞では少なくとも数千億円はあるというような記事がございますが、主計局になりますか、主税局ですか、見込みを少しお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/280
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281・水野勝
○水野政府委員 六十二年度の税収につきましては、先般御提案申し上げ可決いただきました補正予算に関連いたしまして、六十二年九月に行われました所得税減税等減税分一兆八千億、それにプラスいたしましてその上に一兆九千億円程度の増収を織り込みまして、補正後予算といたしまして四十三兆円の税収規模を御提案して御承認をいただいたところでございます。
現時点におきましては、一月末までの数字が出てございます。これは六八%までまいっております。昨年同期は六四%でございますので、四ポイント程度の上昇になっておるわけでございます。ただ、この点につきましては、先ほど申し上げました一兆八千億円の減税が行われておりますが、まだこれが後半、確定申告、それから三月決算法人にこうした減税効果が出てくるところでございますので、そうしたものを見ませんと全体は見通せないわけでございます。現に、一月分の税収を見ますと、前年同月比で八七%ということで一二%以上減収になっておるわけでございます。こうした減税効果がこれからあらわれてくるところでございますので、そうしたものを今後注視してまいりたい。
いずれにいたしましても、なお三月の確定申告、それから三月の決算法人の状況、これが大きな要素として残っておりますので、全体としての見通しを現在申し上げることはできないわけでございまして、補正後予算、税収額は適正なものではないかと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/281
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282・正森成二
○正森委員 今、答弁がございましたが、一月の税収実績が三兆四千九百三十七億円くらいで前年同月に比べて一二・五%くらい減というのは事実です。しかし、これは所得税減税の実施による給与調整が理由で、新聞報道によりましても、六十二年四月から十カ月間の累計で見ると二十九兆五千五百九億円で、前年同期比九・一%増で、基調としては好調を持続しておるということが言われておりますし、個別に見ましても、これはもう主税局長には釈迦に説法ですけれども、物品税の柱である自動車が国内販売台数が二六%増だとか、家電製品の売れ行きが物品税収は一一・五%増とか、既に一月時点で前年度の十二カ月分を上回ってしまったというようなことでしょう。ですから、法人税、所得税の減税分の一兆八千三百億円を差し引いて、しかも税収見込みを一兆八千九百三十億円上積みしたわけでしょう。そういう二つの要因、約三兆七千億円があってもなおかつ一兆円ぐらいは増が出てくるということで、大蔵省としては思わずにっこり笑わないかぬということじゃないですか。主税局長、そう難しい顔をせぬとたまにはうれしい顔を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/282
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283・水野勝
○水野政府委員 お示しのように、一兆八千億の減税、その上に一兆九千億の増収を見込んだのが補正後予算でございます。この補正後予算額につきまして、よく言われます税収弾性値でございますが、これを見てみますと、一・八という数値になってございます。税収の弾性値はこの十年ぐらいは一・一という平均値の前後を上下してまいったところでございますが、一・八というのはそういうものに比べますと非常に大きなものでございます。それから、六十一年度の税収につきまして申し上げますと、最後の三カ月、三月分、四月分、五月分になりまして二けたの伸び、五月分になりますと二〇%台の伸びになったという、最後の三カ月が非常に伸びておったところでございまして、そうしたものをスタート台としてまた見ておる今年度の後半でございますので、私どもこれは冷静に今後の推移を見てまいるほかはないのではないかと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/283
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284・正森成二
○正森委員 主税局が冷静に見るというのは結構ですけれども、余り冷静でなくて、何兆円という赤字になったというのもつい数年さきにあるわけですから。ただしかし、余り冷静になり過ぎるというのもこれは実態を反映しないので、やはりある程度補正後予算に比べても税収が相当伸びて、そして自然増収があるというように見るのが常識だと思うのですね。
そこで、主計局の関係になりますか、たばこの関係について伺いますけれども、同僚委員からも質問がございましたが、たばこ消費税率引き上げ特例の延長、これは一円でしたか、地方と国が半分ずつですけれども、これはそもそも導入するときに、政府とそれから党の両税調が正式の答申や大綱を決定した後、地方自治体に対する補助金カットの後始末といいますか手当てができないということで、急遽大蔵省サイドがたばこ産業株式会社とのお話し合いでお決めになり、その後で政府税調と党税調に追認的な御決定をいただくということになって、当時の新聞を調べてみますと、そのことを聞かれた小倉会長が「権威は以前から相当失墜している」とか述べて、それが新聞にでかでか出ていたといういきさつがあるのですね。これはしかし、補助金カットの地方自治体に対する後始末をしなきゃならないということで急遽決まったのですけれども、それは、ないそでは振れぬといいますかね、どうしてもお金をつくり出して地方自治体に何らかの形で配分してやらないとやっていけないということだったと思うのですね。
それで、それは当初、臨時異例で一年限りと、こうなっておったわけでしょう。それが三年になって、自然増収が相当、だぶだぶという言葉は使いたくありませんけれども、当初予算に比べれば三兆七千億円もあって、減税を相当やってもなおかつ自然増収がある。その自然増収を見込んだものに対してなおかつ一兆円ぐらいは増収がありそうだということになれば、臨時異例で行って、当初は一年だと言うておったものを、しかも、あなた方は専売公社のつもりでおるのと違いますか。たばこ産業株式会社というのは、幾らまだ政府が全株持っているといいましても民間会社なんですから、そういうところへ地方の補助金カットの後始末を押しつけておいて、それで一年限りの臨時異例だと言って、一方では税収がだぶだぶ来るのにそれをまだ続けるなんていうのは、少し酷じゃないのですか。主計局はどう考えているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/284
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285・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 たばこの特例措置の延長という話でございますけれども、その一兆円の増収という話は実は私どもまだ主税局から伺っておりませんで、そういうことになれば大変ありがたいことでございますけれども、まだそうなっていないという現実でございます。
また、補助率カットに伴いましてそういうことをしたというのは事実でございますけれども、補助率カットはまだ実は続いておりまして、六十三年度の地方財政対策でも、地方財源不足というのは、補助率引き下げの影響は約一兆六千五百億あるのですが、それとか、今度国保制度の改革をしましたのでその分の増とかいうものがございまして、合計一兆七千二百五十九億円ぐらいの地方財源不足というのがあるわけでございます。それの補てんとして建設地方債の活用のほかにたばこ消費税の特例の継続をお願いしておるわけでございまして、このうち国の分につきましては、交付税の特例加算ということで千二百億特例措置によって補てんをすることにしておるわけでございます。
実は六十三年度予算というのは依然として特例公債を片っ方で出しておりまして、六十五年度特例公債依存体質の脱却という努力目標に向けて経常経費については非常に一生懸命節減合理化をやっている状態は依然として継続しておりまして、その一環として地方財政対策についても先ほど申しましたたばこを財源とする特例加算を含めましてぎりぎりの特例加算措置を構じているわけでございます。そういうことでございますので、依然として赤字公債を出しているという財政体質のもとでやむを得ない措置として御理解をいただきたいというぐあいに私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/285
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286・正森成二
○正森委員 斎藤さん、今あなた重大なことを二つ言われたよ。一つは、まだ補助金カットが続いておりまして、こう言うたでしょう。そうすると、補助金カットが続けばたばこの臨時特例の措置はずっと続けるというようにとれるのですね。補助金カットは六十三年で必ず終わればいいですけれども、六十四年からはもうなくなるんだろうなと自治省が聞いても、大蔵省はちっとも色よい返事しないでしょう。そうすると、これが長引けばたばこの臨時特例異例も続けるということの宣言にほかならないですね。
それからもう一つは、赤字特例も続いておる状況でございますしなんて、赤字特例はうまくいって六十五年度で何とかなくなるのでしょう。それだってまだわからないのですよ。そうすると、今赤字特例も続いておる状況でございまして御理解賜りたいと思います、そんなことを野党が御理解したらえらいことなんで、大体補助金カットにしたって六十三年、たばこも六十三年、それを、あなたの今の発言は、どんなにうまくいっても六十五年まで続けることを御理解願いたい、ひょっとして赤字公債の特例が六十五年で終わらなくて六十六年、六十七年になればそれも御理解願いたい、主計局次長としては大分虫のいい注文、御理解のお願いじゃないですか。
大蔵大臣、今急にお見えになって議論の経過がおわかりにならないと思いますけれども、たばこの特例を聞きましたら、斎藤次長はそういう答弁をされました。そうなりますと、一年限りなんというのは世を忍ぶ仮の姿であって、赤字特例が続く限りは続けるというようにもとれますので、私は、一方では税収は随分いいんじゃないですか、減税をやって「それでもなおかつ十兆八升億円くらい増収が出て、最近の新聞ではさらにそれを最低数千億、一兆円上回るというんだったら、臨時特例異例でやったものは手当てを考えるべきではないか、こう聞いたら、斎藤主計局次長からそういう答弁があったのです。これはちょっと虫のよ過ぎる考えじゃないですか。取れるものは取っておいて、後は何ぼ増収がありましても、一たん握ったものは大蔵省はわらでも放さぬ、そういう感じですね。二千数百億円ですから、わらではないですね。御答弁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/286
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287・水野勝
○水野政府委員 この措置は、先ほど委員御指摘のように六十一年度改正である意味で急遽お願いをした措置でございますが、この点につきましては当時一年としてお願いしました。それは六十二年度に税制の抜本改革の作業を控えておるということで一年とお願いをしたところでございます。今般におきましても、税制調査会の答申では、一つには、現在税制の抜本改革の審議が進められておりまして、たばこ消費税の負担水準につきましてもその一環として検討していくことが適当であるとされ、第二点目としては、この特例措置は地方財政対策の一環ということでお願いをしている、その地方財政対策の問題はなお引き続いておるところでございますので、その点を踏まえまして一年間の期限の延長をお願いすることもどうもやむを得ない、こういう趣旨の答申をいただきまして今回御提案を申し上げているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/287
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288・斎藤次郎
○斎藤(次)政府委員 言葉足らずの点があったかもしれませんけれども、真意を申し上げますと、正森委員がたばこ消費税の特例措置の導入については補助金カットということがあってその補てんということであったのではないかという御指摘があったので、それを踏まえまして、実は補助金カットというのは六十三年も続いておって、その結果、それを主たる要因として六十三年度の地方財源不足があるという事実を御説明したわけでございます。
また、地方財政対策措置につきましては、今のような赤字公債発行下の財政体質のもとでは、我々としては他の経常経費と同様にぎりぎりの編成をせざるを得ない状況にあるということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/288
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289・正森成二
○正森委員 おっしゃりたいのは、補助金カットしたのは、そんなことしたくないのだけれども財政状況が悪いのでやったのだということが言いたいわけでしょうね。それに対する地方自治体の手当てとして導入したんだから、こういう一連の経過が続いている限りは続けるということなんでしょうけれども、あなたの真意はわかりましたよ。わかりましたけれども、なかなか納得できない。しかも、主税局長の今の答弁によると、税制の抜本的改革も今準備中であるしなんということを言われたから、何かそれによると、税制の抜本的改革というのは別の言葉で言えば直間比率の見直し、もう一つ別の言葉で言えば大型間接税導入ですからね。それでもできればたばこはもとへ戻すけれども、できなければまだ続けるとも聞こえるので、もしそうなれば非常に重大な問題だと思いますが、大蔵大臣がお見えになりましたので、この問題はこれで終わらせていただきます。
大蔵大臣に伺います。大蔵大臣、きのうは予算委員会で我が党の柴田議員が質問し、きょうまた本会議で経塚議員が質問をしました大阪の補欠選挙の結果の問題でございます。再度ここで伺うのは非常に失礼でございますけれども、大蔵委員会としては初めてでございますし、それから大蔵委員会に非常に関係のある直間比率の見直しの問題でございますので、再度質問することをあらかじめお許し願いたいと思います。
それで、きょうは総理からの御答弁でございましたが、きのうの予算委員会の質問では、間接税導入を公約した自民党候補が敗れたのは大型間接税反対の大阪府民の審判だという趣旨の質問に対しまして、新聞の報道でございますが、大蔵大臣は、選挙の結果はまことに残念だが、今指摘されたような理由によるとは考えていないという趣旨の御答弁があったと報道されております。それで、今の指摘されたような理由によるものではない、こうなりますと、これは大蔵大臣としてというよりは政治家としての宮澤さんに伺うと言うた方がいいかもしれないのですけれどれでは、三百議席をお持ちの自民党が大阪で敗北なさった、竹下総理の御表現によりますと完敗であるというような表現を新聞ではされておりますが、その要因をどこへお求めになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/289
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290・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 初めに、昨日は、まことに残念だが云々の前に、個人としてはということを実は申し上げておきましたので、つけ加えさせていただきます。
選挙というものは、結局いろいろ複合した原因で答えが出るものでございましょうから、これはお互いによく経験をして知っておることでございますので、大変正確に申しましたら、終わった直後にこれはどういうことの結果であったということはなかなか申しにくいことであろう、私はそういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/290
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291・正森成二
○正森委員 選挙の結果というのは、それはもろもろの要因がございます。投票率もございますでしょうし。ただしかし、ここに私、一方的になってきてはいけませんので、きょうの新聞の社説を少し引用したいと思います。
それは日経新聞の社説です。赤旗ではございません。
参院大阪選挙区の補欠選挙で共産党の吉井英勝氏が自民、社会両党候補を破って当選した。同氏は新型間接税導入反対を掲げて当選しただけに、税制改革を進めようとしている竹下首相は手痛い審判を受けたことになる。政府、自民党は、この結果を深刻に受け止めて今後の税制改革問題に対処すべきである。
少し中略いたしますが、
今回の選挙結果について小渕官房長官は「政策問題で敗れたとは思わない。政府は税制改革問題はこれまで通り一本道で進めていく」と語っている。だが、自民党が税制問題を真正面から取り上げなかったにしても、この選挙結果を全く無視するわけにはいくまい。
これが日経新聞です。
しかも「税制問題を真正面から取り上げなかったにしても」というこの表現は必ずしも正確ではございませんので、私はここに現地の新聞を持ってきておりますけれども、これは毎日新聞です。毎日新聞に自民党の東武候補は、「だれしも税金の高いのは好みませんが、高齢化時代を迎え広く浅く負担を分け合う税制は必要だと考えます。」「このことを踏まえた上で直間比率の見直しは進めるべきです。」というように言っておられて、これは毎日新聞に載っておるのです。それからNHKの政見放送、これは十九日以来何回か放映されましたが、直間比率の見直しは行うべきだということで、私も拝見いたしましたが、党のしかるべきところから言われて言うべきだということになったのかもしれませんが、前を向かずにおっしゃった。原稿をお読みになっておっしゃったのです。ですから、これは党のしかるべき筋から、いよいよ自民党の言うあるいは竹下内閣の言う秋の導入は近いから、ここで直間比率見直しを進めるということを言うておかないと、直前の選挙で言わなかったではないかと言われてはいかぬから言うようにと言われて、ああおっしゃっているなという印象を受けたのですね。そうしますと、ここで言う、正面から掲げなかったにしてもというのは必ずしも当たっていなくて、むしろ正面から掲げられたわけですね。
〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
これは毎日新聞の社説ですけれども、今回の選挙が党首を先頭に挙党態勢で取り組んだということを前提にした上で、
それだけに「惨敗」(竹下首相)の自民党は、新型間接税の導入など税制改革にはより以上の慎重な姿勢で臨むべきだろう。
こう言いまして、中略ですが、
現在も政府・自民党は新型間接税導入を秋の国会で実現させることで、政府と自民党の税制調査会の論議をすすめており、国会でも論戦が始まっている。新型間接税の導入問題での前哨戦のさ中といってよい状況で、国民の関心も再び高まりつつある。
従って、社会、共産両党候補者が新型間接税問題を正面から取りあげて争点にしたことは当然で、これに対して大阪の中小企業をはじめとする商工業者が新型間接税に消極的な反応を示したものとみられる。
これは毎日新聞であります。
それで、これを受けて、いろいろございますけれども省略いたしますが、保守的な中小業者がこう言っているのですね。大型間接税反対中小企業連絡会の薗田純雄代表幹事は、「「私はまだ自民党籍をもっているが」といいつつ、」つまりこの方は自民党員ですね。中曽根総理が国民や自民党員の反対するような大型間接税はやらないというようにおっしゃったということは隠れもない事実ですが、
「私はまだ自民党籍をもっているが」といいつつ、「自民党にとって、売上税のときの「岩手ショック」より衝撃が大きい。共産党は自民党がもっとも嫌い、絶対なれあわない党で、その党にしてやられたわけだからショックは大きい。反対運動のしがいがでてきた」
こう自民党員の方が言うておられるのです。それから日本商店連盟の三浦正義副理事長は、
共産党は大型間接税の問題をもっともきびしく争点に押しだして選挙をやった。その党が勝ったのだから、大阪府民の「大型間接税ノー」の回答は明らか。自民党は素直にみとめ、反省すべきは反省をし、大型間接税導入前にやるべきことを、しっかりやるべきだ
日本専門店会連盟の田中利夫専務理事は、
大型間接税が選挙戦の争点になったことはまちがいなく、国民世論がどこにあるか明白。反対運動に大きな一石を投じた
こうなっているのですね。
ですから、選挙の結果が大型間接税のみによって決まったかどうかというのは、それはいろいろ御意見があるでしょう。一説によると浜田予算委員長の発言が非常に大きな影響を持ったと言う方もおられますし、一概には申しませんけれども、少なくともそれが大きな争点の一つになったということは事実で、「この選挙結果を全く無視するわけにはいくまい。」という日経の社説ですね。あるいは「政府、自民党は、この結果を深刻に受け止めて今後の税制改革問題に対処すべきである。」これも日経ですね。こういう考え方は少なくとも政治家宮澤さんとしてはお持ちになるべきじゃないでしょうか。敗因がどうかというようなことに絞りますと、これはいろいろある。投票率が低かったこと、あるいは候補者の知名度がやや弱かったこととか、それはございますでしょう。しかし、その結果について、この毎日やら日経が言っているような、慎重に対処すべきであるとかあるいはその選挙結果を全く無視するわけにはいくまいということは、民主政治である以上はお考えになるべきではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/291
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292・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 けさのその新聞の社説も読みましたし、今いろいろの人の言っておられることも御紹介がありました。しかし、私はどうも、相当因果関係ということになると、さあそうかな、それは非常に薄いのじゃないかなという気持ちが本当はやはりいたしております。しかし、選挙というのは負けますとやはりいろいろ言われるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/292
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293・正森成二
○正森委員 私はこれ以上言いませんけれども、相当因果関係がないとは言えないと思うのですね。これが唯一の理由だとかこれが最大の理由だとは思わないという御答弁なら、いやそういうこともございましょうと言えますが、私は法律家ですので裁判で相当因果関係という言葉の使い方も知っておりますけれども、相当因果関係がないなんていうことは絶対に言えない。相当因果関係はあるがそれがどれぐらいの比重を持っているかは人によって見方が違うということではないかと思いますが、これ以上は申しません。赤旗以外の新聞がこういうぐあいに書いているということをぜひとも御考慮をいただきまして、今後の行政の御参考にしていただきたいというように思います。大臣、七時になりましたが、もうどうぞ。
それでは、次の問題に移らせていただきます。
海外投資等損失準備金というのが租税特別措置にございます。それで、これは調べてみますと、年度によってもちろん違いますけれども、予算委員会に提出されました資料によりますと、この準備金の残高というのはたしか二千七百六十一億円ぐらいだと承知しております。それをさらに細かく見ますと、資本金十億円以上という通常大企業といわれるところですね、それが大体九五%ぐらいを占めているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/293
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294・日向隆
○日向政府委員 私どもが連年行っております会社標本調査というのがございますが、その結果によりますと、直近の六十一年二月一日から六十二年の一月三十一日の間に事業年度が終了した法人について検討してみますと、御指摘の海外投資等損失準備金の残高は、御指摘のとおりでございますが、二千七百六十一億円でございます。今委員は十億円以上とおっしゃいましたが、私どもこれを今便宜その資本金百億円以上の法人で見ますと、その額は二千百八十七億円で七九・二%、それから資本金百億円未満一億円以上で見ますと、その額は五百五十七億円で二〇・二%、これを通計いたしますと資本金一億円以上で約九九%ぐらいになります。したがいまして、残余の資本金一億円未満の法人では十九億円で〇・七%ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/294
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295・正森成二
○正森委員 私は、仮に十億円以上ととったのですけれども、今日向次長が別の区分をいたしましたが、相当大きな企業が利用している制度であるということになりますね。それで、これによる減収額、いろいろ基準のとり方があると思います。毎年積み立てがふえるが、一年ごとの減収分とすれば幾らであるとか、全部で二千七百億余りですから、これは本来利益としても課税されるべき額だったのですから、仮に四二%と見ればどのぐらいで、それを三年なり五年で分けるとすればどのぐらいと、いろいろ基準はあると思いますが、そのどの仮定でもいいですから置いて減収分をおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/295
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296・水野勝
○水野政府委員 租税特別措置の減収額につきましては、現在鋭意作成に当たっているところでございます。便宜昭和六十二年度の分として申し上げますと、これは二十億円という減収額をお示ししてございます。六十三年度の数字は現在作業中でございますが、この海外投資損失準備金は、一つは、これは御承知のように五年間据え置き、その後五年間均分取り崩しでございます。したがいまして、減収額といたしましては積立額と取り崩し額との差額のネット積み増し分をもって法人税減収額として見ているところでございます。したがいまして、取り崩し額と申しますのは過去からの流れで自然に出てくるところでございますので、それほどこの減収額が、昨年二十億円としてお示しした減収額はほぼ六十三年度も同じ程度のものになるのではないかという感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/296
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297・正森成二
○正森委員 私がこの問題を取り上げましたのは、一方で海外投資損失準備金というのを租税特別措置で設けていながら、一方ではタックスヘーブンあるいは外国税額控除というような措置もございまして、ある意味では二重三重に、日向次長の答弁でもございましたように相当高いパーセンテージで大きな企業が利用している制度について、今の非常に直間比率の見直しという名前で大型間接税導入までいろいろ言われているときに妥当であろうかという観点から伺ったわけです。
そこで順次伺っていきますが、タックスヘーブンと言われている国は、今三十六カ国でしたか、最近五年間で随分ふえましたね、そこへ子会社を持っているのが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/297
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298・日向隆
○日向政府委員 今委員御指摘のように、タックスヘーブンとして、大蔵省の告示でございますか、あるいは主税局かもしれませんが、それは今お示しの数字だろうと思います。
その次にお話がございました特定外国会社と私ども言っておりますが、その数は、直近の六十一年度で見まして二千七百十一社となっておりまして、ちょうど五年前が千七百三十六社でございますので、この五年間に約一千社ふえたということに相なろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/298
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299・正森成二
○正森委員 私が今もし三十六カ国と言っていたら、三十三カ国のたしか記憶違いです。三十三カ国の方が正しいと思います。
そこで、こういうようにタックスヘーブンのところに支店を置くところが非常に多いわけですけれども、それに伴って、後で外国税額控除のところでも聞きますが、国際企業の脱税といいますか、あるいは申告漏れといいますか、そういうのがふえておりまして、私が伺っているところでは国際課税上の多国間執行共助条約づくりという作業が進んでいるようで、本年の一月二十五日ですか、何か調印、批准のために開放されたとかいうような報道もございますが、その経緯と、それからこの条約の重点的な内容、何か新聞報道では二つか三つ書いてございますが、御説明願えればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/299
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300・日向隆
○日向政府委員 海外取引を通じます脱税等は、種々委員も御指摘になりましたが、このところ増加しておりまして、この傾向にかんがみまして、私どもとしましては、OECDと欧州評議会が共同作業をした結果、本年一月二十五日、今御指摘になった日にちでございますが、OECD等加盟二十七カ国に署名のために開放されました多国間税務執行共助条約につきましては多大の期待をいたしておりますし、その締結が実は一刻も早く行われるよう希望しているところでございます。
この条約の具体的な特徴は、従来二国間で締結されてまいりました租税条約に盛られていた各種の有益な情報交換、例えば自動的情報交換とか個別的情報交換等に加えまして、第一点は同時税務調査、それから第二点は国外税務調査における当該国、例えばアメリカならアメリカの調査官の調査に我が国の調査官が立ち会うといったようなこと、これを通じて非常に的確な情報が得られると思います。第三点は、今までございませんでした分野でございますが、いわゆる徴収協力、賦課した後の租税債権の徴収の協力及び文書の送達等の規定がございまして、今私が申し上げました意味におきまして従来の分野にない内容を含んでいるところでございまして、本条約が成立すれば、これに加盟しております国の多さ、二十七カ国が一遍にこの条約に加盟するわけでございますから、それに加えまして、こういった内容を持っておりますので、国際取引を通じました脱税等の摘発や防止に相当有効である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/300
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301・正森成二
○正森委員 たしかおたくの審議官というのですかが論文を書いておられるようですけれども、それを拝見いたしますと、そういうことに対処するために、一九八二年度以降、国際調査専門官ですか、それを配置しておられるということなどが出ておりますが、この方のお書きになりました論文を見ますと、現在国際調査専門官は二十四名である、それから年間六十名程度の調査官を海外へ派遣している、このほかニューヨーク、ロサンゼルス、香港へ調査官を長期に派遣しているということが書いてございますが、他方、米国内国歳入庁では国際調査専門官が約四百人、国際課税問題を分析するエコノミストが約三十名となっており、日本の国税庁と随分差があるというニュアンスの論文ですね。
時間の関係もございますが、最近東京国税局などがいろいろ法人をお調べになりましたときも、脱税といったらなんですが、悪質な申告所得の不正、それの約四割が海外取引がらみであるという報道もございます。そういう点から見ますと、これは予算の絡む問題ですからあるいは政務次官にお答え願う方がいいのかもしれませんけれども、アメリカが約四百名で、これは国の大きさも違いますけれども、日本が二十四名というのでは、いかに日向次長が有能でもいささか手勢が少な過ぎるということになるのじゃないか。それでできるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/301
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302・日向隆
○日向政府委員 確かに国際調査専門官は御指摘の数字でございまして、資本金一億円以上の大法人を所管いたします調査部においては十八名、署所管法人につきましては六名、合計二十四名でございます。それに対しまして、IRSでは、私ども伝え聞くところによりますと、かなりの数の国際調査専門官及びエコノミストを擁しているということでございますので、私どもといたしましては、できるだけ早い時点でこういった面での人員及びいろいろな予算面の手当ての充実を関係方面の理解を得ながら得まして、そうしましてできるだけこの面での調査等の充実に遺漏なきを期したい、こう思っております。
ただ、一つ、率直に申し上げまして違います点は、御指摘のその海外調査専門官とかエコノミストは、アメリカは御案内のように移転価格税制をかなり従前から幅広く実施しておりまして、実はこれに従事しているボリュームがその中で相当あるのではないか、こう推定されるわけでございます。これに対しまして、他方、我が国は、御審議いただき御判断いただきまして同じようなトランスファープライシングの課税ができましたのがつい一年半ほど前でございまして、この点につきましては、若干その面での手当てがそういう制度面でのずれと相まっておくれているという点はあろうかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/302
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303・正森成二
○正森委員 政務次官、何か御意見ございますか。ございませんでしたら、結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/303
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304・平沼赳夫
○平沼政府委員 これからそういういろいろ国際化の問題というのはますますその度合いが向上してくると思うわけであります。したがいまして、当局としてもそういう事態に対処すべきだ、こういうことは言えると思いますので、人員の確保等もこれからの重要な検討課題だ、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/304
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305・正森成二
○正森委員 それでは、外国税額控除の若干の問題について伺いたいと思います。
この外国税額控除も、大蔵省が衆議院の予算委員会に提出された資料を見ますと、これは六十年度までの数字で、六十一年度は若干低下しているようですけれども、大体十年間で三兆四千四百七十五億円、その控除額の九〇%は資本金百億円以上の大企業に集中しております。三百億円以上をとりましても、非常に高いパーセンテージを占めているということが言えるわけであります。
この中で、国税庁の専門家あるいは主税局長がおられますけれども、直接控除制度、それから間接控除制度、それからみなし外国税額控除制度というように種類がいろいろ分かれておりまして、その中には随分問題があるものがあるのではないかというように思われるわけであります。その幾つかについて伺いたいと思いますが、これはもちろん大義名分は二重課税控除ということになっておるようですけれども、必ずしも二重課税控除と評価できるのかどうか、余りこの特典を受ける企業にとってうま過ぎる話があるのではないかという気がしないでもありません。だからこそあなた方ももし抜本的な税制改正のときにはこの外国税額控除もほぼ三点ぐらいの主な点にわたって改正するというようなことも言われているわけだと思うのです。
それで順次伺っていきたいと思いますが、みなし外国税額控除というのがありますね。私が文献で調べたところでは、我が国がこのようなみなし外国税額控除制度を適用できる旨租税条約を結んでいるのは十四カ国ですか、タイ、マレーシア、インド、パキスタン、シンガポール等々というように言われているのです。しかし、また他の文献によりますと、本来こうした租税条約は古い植民地主義時代の名残で、米国は今日この制度を持っていないというようにも言われております。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/305
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306・水野勝
○水野政府委員 御指摘のとおり、みなし外国税額控除は、どちらかといえば開発途上国におきましてそこへ進出してまいります企業に対しますところの租税の減免措置、その減免措置をその本店国と申しますか本国におきましてそれを相殺することのないように措置するというところから設けられているところでございます。
一方、この制度を採用している国はかなり多いわけではございますが、今御指摘のアメリカは、これは租税条約の原則上こうしたものを認めないということで一貫しているようでございます。アメリカはそもそも多国籍企業が非常に多いものですから、恐らくアメリカにおきますところの税収確保ということに国際的な部面で非常に神経質でございまして、毎年の税制改正でもかなりそういった面でいろいろな工夫がされているようでございます。そういう多国籍企業が多数ある現状を前提として、極力米国におきますところの税収確保という要請から、恐らくこうしたみなし外国税額控除は租税条約の原則上採用をしておらないのではないかと思うわけでございます。
しかし、アメリカを除きますと、イギリス、フランス、ドイツ等の主要先進国はそれぞれこれを取り入れているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/306
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307・正森成二
○正森委員 結局アメリカが多国籍企業が多いので自国の税収を確保するためにみなし税額控除を採用していないということは、日本がこれからますます多国籍企業が多くなるという状況にあることは何人も否定できないので、そうしますと、我が国の税収が失われるという観点からしますと、やはり我が国もみなし税額控除というのを今のままで存置しておいていいかどうかということは、これは大いに考えてみる必要があるのではないかというように思うのです。
これはみなし税額控除を受けている企業の重役がこのことについて論文を書いているのです。論文といいますか文章を。その中で実に露骨に書いていますから後でそれを読み上げて引用しますけれども、そのほかに間接控除制度というのがあるでしょう。これは子会社をつくってその子会社から配当を受け取った場合に、その配当に匹敵する海外の所得、その税額は一定の比率によりまして日本の税額から控除する。これは全然納めていない税金を引いてもらうのですから、こんなうまい話はないということになるのじゃないですか。だから、私は後で直接税額控除の問題も言いますけれども、このみなし税額控除と間接控除は、これはよほど見直さないと、現に企業はもうこれは実にいい制度だという意味のことを自分らの立場から言っておって、我が国の税収はもうどんどん失われていくのですから。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/307
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308・水野勝
○水野政府委員 間接税額控除の方は、これは直接投資と申しますか、それとのバランスと申しますか、端的には企業が支店を出して進出していくか、子会社の形で進出していくか、そこの間の進出の方法によりますところの形態によって課税上の不権衡が生じないようにするということでございまして、ある外国には支店ができなくて子会社の形でしか進出ができないといったような場合もある。そうした場合に対処してそこにバランスがとれるように配慮をしているところでございまして、全く本店としてはそれは直接はまさに納めてはいないわけでございますが、それを支店の形でなくて子会社という形で進出いたしますことによります必然的な税負担、その部分を調整をしておるというふうにお考えをいただければと思うわけでございます。これはまさに外国税額控除体系の中に入る話でございますが、みなしの問題は、御指摘のようにこれはなかなか難しい問題でございまして、そうしたものを一切排除するということになりますと、開発途上国、こうした国におきましてもろもろの制度、恩典措置を講じても、それが単に先進諸国の中の税収の方に吸い寄せられるということをどう考えるか、なかなか難しい点であろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/308
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309・正森成二
○正森委員 今のあなたの答弁は、梅津主税局長の時代から一貫して、我が党の工藤議員が予算委員会で取り上げてから、おおむねそういうスタンスで来ておられますので、私も議事録を読んで知っておりますけれども、しかし、その理屈が大体おかしいんですね。例えば、国内である企業が設備投資の機械をリース契約で使用する場合と購入して使用する場合と、これはその企業の設備の生産手段としての効果からいえばちっとも変わらないわけですよ。ただしかし、一方、リース契約の場合はそのリース契約としての費用がかかるし、購入した場合は購入した場合としての費用がかかる。もちろん税額の控除もある。それを全く同じにしてやらないとこれはおかしいなんて税務当局が考える方がおかしいので、それは企業が、ある場合は子会社、ある場合は支店というぐあいに選択しているわけですから、それを有利な方に統一してやらなければぐあいが悪いというようなことは、全く企業の立場に立った考え方であるというように言わなければなりませんし、それから外国が、非常に発展途上国が優遇する。優遇も、いろいろな文献をちょっと読んでみたんですけれども、随分優遇していますね。だけれども、優遇することによって、例えば投資減税を相当やるとか、それから輸出企業については物すごく法人税を控除するとか、いろいろ制度があります。それでいきまして、その全額もしくは九割、八割まけてもらったものを、払ったものとしてその全額を日本の税額から控除するなんて、余り乱暴過ぎないですか。仮にそれを所得と見ても、全額日本の税務署が吸い上げるわけじゃないんですよ。そうでしょう。仮に所得だと見てもそれの四〇%とか四二%をいただくわけで、向こうが税金まけてくれたものを、それじゃそっくり喜んで水野主税局長がもらうというわけじゃないんですよ。だから、日本で税金をいただいても、本来向こうで納めるべき税金が助かっているんですから、なおかつ企業はメリットがあるわけです。それを、あたかも日本が発展途上国であるのと同じように、そこが税制が有利だから出ているというものの効果が一円たりとも失われないように、日本の国民が本来受け取るべき税金を全部まけてやるなんて、理不尽きわまりないじゃないですか。それを発展途上国のせっかくの好意を失わないためであるなんていうのは、日本を発展途上国と全く同じに置いて、そして日本の税収のエロージョンというのですか、浸食を認めるものにほかならない。だから、みなし税額控除というのは、それを現在の状況で置いておくなんというのは実に不合理ですね。
発展途上国に進出している我が国の企業がどう言っているか読んでみましょうか。これは「経済センター会報」一九八七年四月一日です。「アジアNICsの実像」ということで、ミネベア取締役相談役の石塚巌さんのお書きになった文章です。これは海外に進出したということを非常に誇らしげにお書きになりまして、長いですから全部読むわけにはいきませんので、一部要約しますと、我々が進出したのは、一つには賃金が安いこと、一つには税制上の特典があるからだという二つの理由を挙げられまして、こう言っているんです。要約ですよ。
さまざまな税制の恩典があった。まず第一にパイオニア産業への税金の減免。当時は、五年間について法人税はゼロであった。第二に、輸出産業によるエクスポートインセンティブが八年ないし十年で、これについては九〇%の免税になる。シンガポールは法人税が四〇%なので、輸出については利益の四%だけを納めればよいそうですね。一〇%ですからね。
第三は投資恩典である。投資額の五〇%まで免税になる。われわれは社内留保を高めながら投資をすることを基本にしてきたので、これらの税制の恩典がシンガポール進出のいちばんの動機になった。
こう書いている。それで、そういうぐあいに恩典があるからというので行って、納めもしない。その納めもしない税金を納めたとみなして日本で納めるべき法人税からそっくり引いてもらえれば、日本がシンガポールになったのと一緒じゃないですか。そこまで発展途上国の好意にお報いしなければならぬ義理は全くないと思うのですね。一国の国内の法人税というのは一国の必要と妥当性によって決めればいいんで、シンガポールやらタイがこう決めたから、その効果が一円、一銭たりとも減殺しないように我が国内で法人税を引いてやるなんて、そんなことがありますか。
この人はまだ言っていますよ。こう言っているんです。
タイの税制の恩典について話したい。まず第一に、八年間の法人税一〇〇%免除。日本の法人税法では「外国の子会社からの配当金に見合う外国税額は日本の法人税より控除する」となっている。また、シンガポールの例でいうと、シンガポールと日本の租税協定では「パイオニア産業法定により減免された税額は、日本の法人によって払われたものとみなす」とある。仮に、シンガポールの法人で百万ドル利益が出たとする。①そのうち五十万ドルだけ配当金として日本に持っていくと、その五十万ドルに見合う税金――税率は四〇%なので、この場合二十万ドル――
原文は「万円」となっていますが、ミスプリントですね。
二十万ドル――を払っているとみなされる。そして五十万ドルは日本の利益に加算され、税額が計算される。そのあとその税額から二十万ドルを控除できる。②また、百万ドルをそっくり日本に持ってきたとする。日本の単独決算でも同じく百万ドルの利益が出ているとすると、合わせて二百万ドル。日本の税率を仮に四二%とすると八十四万ドルが税金になる。これから、向こうから持ってきた利益分百万ドルの税金四十万ドルが控除になるので、実際に払う税金は四十四万ドルでよい。
こう書いて、それで途中省略しますが、結論でどう言っているかというと、こう言っているんです。
海外へ展開すると”変わった会社”とみられるが、海外展開の動機は”人の集まるところに動く”と”税法上の恩典があって、社内留保のできるところへ動く”の二点であった。経済に国境はない。工場の配置が最も経済的で適正ならば良いのである。そういう意味で、円高は経済に国境がなくなっていく兆しととらえるべきだ。経済がだんだん一つになり、社会制度が変わり、政府も政治も変わる。われわれはあまり国境にこだわらず、工場の適正な立地については、いかにコストの安い製品を作るかを基本として考える姿勢を貫いてきた。タイも今後十年はコストの安い製品を作る工場として貢献してくれると思う。
この「コストの安い」という中には税制上の恩典が当然入っているんです。
いいですか。これを見ますと、「われわれはあまり国境にこだわらず、」とか「国境がなくなっていく」とか「経済に国境はない。」これは多国籍企業ではなくて、無国籍人なんですね。日本人じゃないんです。日本に税金を納めるとか、日本に本社があるとか、日本で選挙権を行使しているとか、日本の憲法がどうだとか、そんなことは考えていないのです。我々に国境はない、こう言っている。もうかるところならどこでも出ていく。そのために本国でいかに税の浸食が行われても構わないというのをもう詳細に書いているんですよ。そんなものがあるから、将来法人税が減るから直間比率の見直し、大型間接税が必要だなんて言って、だれがそうですかなんて言えますか。じゃ、日本の国のことを考えるのは行きどころのない庶民ばかりで、それは大型間接税で逆進性の高い税金を取られて、もうかってもうかっているところは国境はないといって出ていって、そして税制上の物すごい特典をもらって、払ってもおらない税金を日本の払うべき法人税から引いてもらってというようなことは、それをほっておくということは、将来の日本にとって税収上重大な問題になるのじゃないのですか、主税局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/309
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310・水野勝
○水野政府委員 日本が戦後国際的に海外進出を始めてまいったころは、やはり世界でのもろもろの共通したルールに従って世界の仲間入りをしてまいった、恐らくそういう経緯があったんだろうと思うわけでございます。しかし、完全にアメリカのように多国籍化した企業が多い国にあってはそういう政策をとっている国ももちろんあるわけでございますが、やはりおくれて国際社会に登場した日本としては国際慣行に従ってまいったということではないかと思うわけでございます。したがいまして、情勢の変化に従いましてそれがやや合理的な範囲を超えてそうしたものが適用になるということは問題でございまして、おととしの税制調査会の抜本見直しの答申におきましても、これが「経済協力という政策的配慮から認められているものではあるが、一方において、税負担の公平等の課税の基本原則を踏まえる必要もあり、これを認める場合にはこうした諸点に照らし合理的な範囲内に限るべきものである」としておるところでございます。したがいまして、我が国といたしましても、三十年代から始まりました租税条約の締結の過程におきましては、従来はスペアリングも諸外国の要請に従って比較的幅広く認めてまいったところでございますが、最近におきますところの条約の締結交渉の態度におきましては、どちらかといえば制限的な、限定的な方向で対処をしてきているところでございます。
ただ、今まで締結されたものにつきましては、相手のある条約でございますので、その改定を積極的に求めるといたしましても、相手にそれだけの恩典を与えてきているところでございますので、これを大幅に改定していくということは現実的になかなか困難でございます。また、現在の日本の国際的な立場からいたしますと、そういう新開発途上国のもの、そこでまけたもの、先ほどの議論に返りますけれども、やはりどんどん、そこはそういうメリットはなかったものとして、その税収、諸外国の、開発途上国のまけた分は日本が取り上げてくる、吸い上げてくるというのは、そこらは国際的に現在の日本の国際的な立場からしてどのように受け取られるかということは、これまたなかなか難しい問題ではないかと思います。しかし、御指摘のような問題意識は持っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/310
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311・正森成二
○正森委員 これはある意味では哲学の問題で、私は何も外国で納めたとみなされる税額を全部日本でもらいなさいとまで今言っているわけではないのですよ。しかし、それを所得として数えてその四十何%か何かをいただくのは当然のことではないか、こう言っているわけなんです。
それで、大体外国税額控除制度が採用されたのは昭和二十八年ですけれども、約九年間は直接控除制度だけで間接控除制度はなかったでしょう。だから、どういう制度を採用するかというのは、すぐれてその国の国内法制の問題であって、客観的にこれでなくてはならないというようなものではないのですね。それは我が国の法制の歴史が示しているのです。
そして、もう時間がなくなってまいりましたが、直接税額控除について言いますけれども、直接税額控除は二重課税排除で極めて妥当なように見えますが、これは日向次長がこの間の日産やトヨタの問題で現地で交渉されて身をもって知っておられると思うのですけれども、直接税額控除の場合でも一番問題になるのは案分なんですね。幾らの価格で外国へ売った、あるいはどういうぐあいに国内の諸費用を海外所得と国内所得へ案分したかというところに問題があるので、その案分が問題があるということになれば、この間のトヨタや日産みたいなことが起こるわけなんです。そして、その案分を国内所得が少なく海外所得が多くというようにやりますと、これは大商社が六つも七つも最近数年間全く税金を納めていないというようなことができるんですね。現にそうなっているわけなんです。
時間の関係で、非常にそれが不当じゃないかというメルクマールをちょっと挙げておきますと、例えば、ある人の研究資料なんですけれども、伊藤忠というのがあるでしょう。これは国内では何年か税金一文も納めてないのです。全体としては納めているということになっているんです。それは海外で納めているのですね。この伊藤忠商事というのは、施設を見ますと、国内の建物面積が十五万九千百二十九平米、そこで働く従業員が六千六百三十六人なんです。海外の事業所の面積が七万二千四百六十五平米、そこで働く従業員が現地社員を入れても二千八百四十五人なんです。ところが、海外では税金を納めているけれども国内では税金を納めていないというようなことがどうして起こるかといえば、これは移転価格税制もございますけれども、海外では利益が上がる、国内ではマイナスである、あるいはマイナスに近い、そこで平均しますと外国税額控除をたっぷり受けられて、それを引きますと国内では結局税金を納めなくてもいい、こうなっているんです。
そうしますと、国内が本拠地で建物の広さも多ければ従業員も多い、海外ではその半分か三分の一の人員と設備である、そこがほとんど利益を稼ぎ出して国内はほとんど稼がないで、結局外国税額控除制度をフルに活用すれば国内で税金を納めないでいいなんというのは、どう見てもおかしいんじゃないですか。これは見直す必要があるからこそ、あなた方は、海外所得は九割までしか認めないとか、いろいろ制限を今度もし税制改正があればやろう、こうしているわけなんで、そうだとすれば、二重課税回避が至上目的なら九割だとか二分の一だとか制限設けるのはおかしいわけでしょう。二重課税排除だったらそれがどうなろうとそれは貫かにゃいかぬので、これを一方では海外の非課税分は二分の一までしか認めないとか海外所得は全体の所得の九割が限度だなどというのは、余り何でもそれはひどいから日本での法人税がある程度残るようにしようというからこそそういう改正を考えているんでしょう。そうしたら、二重課税回避という哲学は一部分別の哲学に大義名分を譲りつつあるんですから、だからそういう点はやはり考えていただく必要があるんじゃないですか。
それから、時間がありませんのでもう一つ言っておきますと、日向次長はよく御存じでしょうけれども、国税で外国税額控除を引いて、それでも間に合わなければ地方税から引くことになっているでしょう。現にトヨタや日産は引きましたね。きょうはその問題聞きませんけれども。ところが、地方税にも外国税額控除で引いていくというような制度は、外国にはないところがあるんじゃないですか。イギリスだとかあるいはフランスなんかにはそんな制度がないんじゃないですか。第一、法人税に地方税のない国があるから引こうにも引けないのでしょう。それを、国際的に活動するところに対して地方自治体が税収の減額を甘んじなければならないなんというのはそもそもおかしいんじゃないですか。
以上、大分しゃべりましたけれども、総合して主税局長、御答弁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/311
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312・水野勝
○水野政府委員 まさに、外国税額控除制度の哲学は、国際的活動に伴いますところの二重課税の排除でございます。その際に、結局は具体的にそれぞれの収入、それぞれの経費がどちらで発生したかということによってその所得の発生が国外、国内に分けられるわけでございます。そこらの区分の仕方につきましては、常にそれを合理的なものになるように見直しをしておるところでございます。したがいまして、その哲学は一貫して変わらないわけでございますが、先ほど申されました大商社のような場合、結局は本店に多数の職員の方がおられて活動をしておられる、しかし本社経費の配分ということをやってまいりますとどうしてもその経費が本社につけられる傾向は否定できない、そういうことも勘案いたしまして、先般の改正案では最低一〇%は国内で発生したものとするという天井を置いたわけでございますが、この改正は廃案になっておるところでございます。そうした点も含めまして、内外の区分が合理的なものになるように現在なお検討中でございます。
それから、我が国の法人税は、地方におきましても独立した法人税の形はとっておりますけれども、国の法人税額を課税標準とするいわば、しかられますけれども、やや付加税的な税額とも言えるわけでございますので、その中におきまして外国税額控除の分につきましてもその部分を持っていただくということが考えられるわけでございます。フランス、イギリス等におきましては、地方に法人税がそもそもございませんので、もちろんそれは国で一手に引き受けているということであろうかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/312
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313・日向隆
○日向政府委員 外国税額控除の適用につきましては、委員御指摘のとおり年々額その他が多くなっていることにかんがみまして、制度の枠内ではございますけれども、私ども、まず第一点は、国外所得と国内所得の所得算出の過程における経費の適正配分という点に非常に着目いたしまして、この適正化を図るために、執行面でございますけれども、過去二年間最大限の努力をしております。
もう一つは、限度計算でその適用額が決まるわけでございますが、限度計算の計算方法につきましてもできるだけの合理化は図ってきたつもりであります。
以上、二点だけ申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/313
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314・正森成二
○正森委員 同じく審議官の書いた論文を読みますと、移転価格税制のところで一番大事なのは、合理的な独立企業間価格の算定方法という問題なんですね。それを基準にしてどちらが不当に利益を得たかということになるのですから。国税庁は、それについて確認制度を導入する、つまり企業から最も合理的な算定方法を自主的に申し出るようにさせて、検証した上でこれに確認を与える確認制度というようなことを始めておられるという報道があります。これもあなたの言う努力の一環だと思いますけれども、しかし、これは例えばアメリカならアメリカがそれを尊重するということには当然ならないのですね。ですから、下手に深入りし過ぎると、アメリカ等で問題が起こったときに、企業は、これは国税庁の確認を得たものであるということで、責任は国税庁へかぶせて、二国間協議でよろしくやってくれ、もし企業に不利なことになれば法人税の還付あるいは地方税の還付ということで当然やってもらえるという一種の保険みたいなことにもなりかねないという点で、よほど慎重な運用が要ると思うのですね。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/314
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315・日向隆
○日向政府委員 独立企業間価格の算定方法を事前に確認するという方法につきましては、最も合理的な算定方法は那辺にあるかということを私どもと企業の間で検討しているところでございますけれども、私はそのこと自体企業にとって一種の安定的な制度運用として大変重要なことだと思いますけれども、御指摘のように、それがアメリカを初め国際的に通用するものであるかどうかという点については、法律的に言いますとそれは拘束するものではございません。したがいまして、実体的にそれがいろいろな相互協議の場等国際的な協議の場において通用するものでなければならないという点はまさに御指摘のとおりでありまして、それだけにこの制度の運用に当たりましては非常に慎重に、できる範囲で対応していきたい、私どもはこう思っております。
ちなみに申し上げますと、この制度につきましては、諸外国では実施面でこれをとっているところはございませんけれども、国際的な評価は大変高いということだけを申し上げさせていただきたいと思います。しかし、運用についてはできるだけ慎重にしていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/315
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316・正森成二
○正森委員 これは答弁は要りませんが、一点だけ指摘しておきます。
直接税額控除については、これは法人税法に外国税額の損金算入方式も明定されているでしょう。それで、外国税額の直接控除方式とどちらを採用してもいい、企業は選択の自由があるということになっておりますが、もちろん損金算入方式の方が企業にとっては不利益なので、今ではそういう方式を採用しているところはないというように聞いているのですね。しかし、法人税法にそういう方式があるのですから、損金算入方式だったら、いかに外国に直接税を納めても、残りの所得がある限りは日本に税金が入るわけですね。ですから、抜本的改正をするなら、むしろ直接税額控除についても現在ある法人税の選択方式のうちの一方を考えていくということも考慮すべきではないのですか、ということを申し上げて、またあなたに答弁してもらうと時間がかかりそうですから、宿題にしておきます。
それで、あとは、もう時間がございませんので、せっかくおいでいただきましたので、労働省と郵政省おいででございますか。――それでは伺います。
先ほど社会党の委員の方から週休二日制について御質問がございました。銀行局長から御答弁をいただいて伺っておりました。それで重複する部分がございますので、銀行局長にはもしあれば最後に伺うとして、失礼ですが、労働省と郵政省から伺いたいと思います。
この問題は全銀協なども前向きでございまして、私が伺っておるのでは、できれば昭和六十四年の一―三月の間に実施したい。一―三月の間に実施をと思えば、その準備期間がございますので、ほぼ一年前には大体のこの時分からというめどが要る。今まで二回ございましたけれども、第二土曜と第三土曜ですね、それも大体それに近いことでやった。各省庁、四省庁だと思いますが、協議しているのですけれども、こんなこと言うたらあれですが、郵政省は郵便業務がございますから無理もないと思いますけれども、いろいろ検討に時間がかかっておるというようにも聞いておりますので、全体についてのお立場ですね、週休二日制についてどう考えるか。
それから、今問題がどこにあって、しかしそれにもかかわらず、将来どういう方向で考えておられるのか、極めて短い時間で結構ですから、要約してお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/316
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317・畠中信夫
○畠中説明員 銀行などの金融機関の週休二日制の推進につきましては、その従業員の福祉の向上に寄与するのみならず、週休二日制の社会的機運の醸成を図るという観点からも非常に重要なものであるというふうに私ども考えておりまして、労働省といたしましては、従来から積極的に取り組んでいるところでございます。
特に、昨年五月十四日に出されましたいわゆる新前川レポートでも、波及効果の大きい金融機関の週休二日制を積極的に推進する必要があると提言されたこと、また、先ほど先生から御指摘がございましたが、月二回の土曜閉店制というのも一年以上を経過いたしまして社会的に定着したことなどの状況を踏まえまして、昨年の十一月でございますけれども、労働省といたしましては、労働大臣から全国銀行協会その他の金融関係団体に対しまして、週休二日制の実現に向けて御努力いただくよう御要請申し上げたところでございます。この要請を受けまして、現在各団体におきましては鋭意検討が進められているというふうに承知しているところでございます。
ただ、御指摘のとおり、この問題につきましては、金融機関の業務の性格や過去の経緯を踏まえれば、郵便局を含めた金融機関が同時に実施できるような環境を整えることが望まれるところでございまして、私どもといたしましては、現在大蔵省、郵政省など関係省庁とよく連絡、協議しつつ、金融機関の完全週休二日制の実施に向けて取り組みを行っているという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/317
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318・磯井正義
○磯井説明員 郵便局の週休二日制への対応でございますけれども、これまで経営の合理化、近代化を進めまして、逐次推進して拡大実施してきておるというところでございます。
現在の状況で申し上げますと、一週間四十二時間、四週六休制をベースとしたもので大部分の郵便局が週休二日制を実施しておるところでございますけれども、実は集配特定局と申しまして郡部の集配業務を持っておるところがございます。千二、三百局あるわけでございますが、一部まだ残っておるのがございまして、これが四週六休ができておりません。これをできるだけ早い時期、できれば年度内、年度内と申しますと今月中ということですが、やり上げたいというところでございまして、これでもって全体が四週六休の足並みがそろう。ここまでまずけりをつけたいというふうな状況でございます。
やり方は、貯金、保険は六十一年八月から第二、第三土曜日をお休みにしております。郵便の方は毎日仕事が動いておりますので交代制で休んでおる、こんなやり方でやっておるわけでございます。
それで、さらにそれ以後の勤務時間の短縮、週休二日制の拡大ということになりますと、職員の労働条件の改善、向上という考え、それから今日内需拡大あるいは国際協調といった面での認識は頭にあるわけでございます。実際の問題といたしまして、現業、実業部門のやり方として、お客様に対するサービスのあり方、事業の経営上の問題、全体の週休二日制の進展状況、こういったものを十分配慮して対処してまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/318
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319・正森成二
○正森委員 少なくとも全然できないというような考えではなしに、前向きに対処したいというのは事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/319
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320・磯井正義
○磯井説明員 郵便局現業、実業の部門として仕事が不都合なく回るように、お客様サービスへの不備が生じないように、この辺のところを十分対応を図って対処してまいりたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/320
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321・正森成二
○正森委員 大蔵省はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/321
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322・平澤貞昭
○平澤政府委員 大蔵省といたしましても、労働省あるいは郵政省等関係各省とも十分によく連絡、協調を図りながら、金融機関の完全週休二日制実施に向けて前向きに検討を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/322
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323・正森成二
○正森委員 それでは最後にもう一回国税庁に伺います。
国税庁としてはあるいは否定なさるかもわかりませんが、私どものところに資料が参っております。国税庁には国税会議と全国税と一般に言われております二つの組合があります。その一方の組合、全国税に対しまして、組合員なるがゆえの差別が非常に行われているという資料や報告が私のところに参っております。
例えば、東京の渋谷署では、全国税分会員の名簿を「取扱注意」の赤スタンプを押した上で配付して、その前歴などを説明するとともに、上部機関の大会代議員名を報告し、全国税の行事日程を知らせるなどの対策がとられていたとか、関東信越国税局の署長会議資料を見ますと、全国税は「拡大月間を設定し、すでに二名が加入しているが、いずれも家庭訪問によるものであり、こんご十分に注意されたい。」とか、「全国税の組織拡大運動について別添文書を熟読のこと。匿名組合員が専門官から新入職員に至るまで幅広くいるので注意せよ。総務課長会議でよく説明しておいたが、全国税は不当労働行為を摘発しており、また、マル生反対闘争など客観条件もあってむつかしい情勢にある。したがって、一旦全国税に入ってしまうと、なかなか手が出しにくくなるので、そうなる前に手だてを尽くすことが非常に重要である。」とか、「国税会議は健全な職員団体であることを理解し、育成せよ。役員を選出する際は人望のある者、リーダーシップを持つ者を選ぶこと。ただし、慣れ合いと見られると若い職員に悪影響が出るのでそのやり方には注意せよ。」「組合問題については、社会問題化するおそれがあるので、秘密の保持にくれぐれも注意せよ。」これはごく一部ですよ。これを読めば切りがないけれども、こういうことを言うておる。
それで、実際上を見ますと、八級職というのがあるでしょう。その八級以上への昇格可能ポスト、これを調べてみますと、これは私の持っておる資料ですけれども、ポスト在職者が大体七〇%、在職率ですね。そのうち全国税組合員以外は七四%がそのポスト在職だ。ところが、全国税組合員はわずか三・五%だというような差別があるのですね。それで、全国税を脱退したらどうなったかというと、十一名のうち十名、実に九〇%以上は八級以上への昇格可能ポストに任命されておるということがございます。
そうしますと、これは紅屋商事事件といって最高裁第二小法廷の昭和六十一年一月二十四日判決ですが、ボーナスを払うとき人事考課率を、二つ組合がありまして、一つの組合ともう一つの組合では著しく、数十%の差をつけておるということがございました場合に、個々の職員が勤務態度がどうであったかということを判定するまでもなく、大量観察によって一つの組合と別の組合がかくも差別がある場合には、これは不当労働行為であるというのが最高裁の判例です。もちろん公務員には不当労働行為制度はございません。けれども、法のもとの平等とか公正な人事考課というのは、これは憲法、国家公務員法等々にございますので、もしこういう調査が事実とすれば、国税庁としては大いに考えていただかなければならないことである。
私は別の機会にこれに近いことを国税庁長官あるいは次長に申し上げたこともございますけれども、今年の資料によりましてもやはりそういう結果があらわれておる。今税制改革で税収を上げなければならないということで、税務署、国税局の職員は非常に熱心に働いているのですね。そういうときに、自分は一生懸命働いているのだけれども不当に差別されているということになれば、労働意欲が減退いたしますし、人事の公正という点でもおもしろくございませんので、こういう点についていかがお考えか、あるいは御調査の上しかるべき対処をしていただけるか、それを伺いまして、ちょうど時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/323
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324・日向隆
○日向政府委員 委員が御指摘になりましたように、一般職の国家公務員には労働組合法第七条の適用はございません。したがって、同法第七条に言う不当労働行為はないということになっておりますけれども、他方、国家公務員法第百八条の二に、「職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」こう明確にうたわれておりますし、また、国家公務員法第百八条の七に、「職員は、職員団体の構成員であること、これを結成しようとしたこと、若しくはこれに加入しようとしたこと、又はその職員団体における正当な行為をしたことのために不利益な取扱いを受けない。」とされておりますので、これらに反しまして、職員団体の加入の有無、まず第一点、第二点は所属の有無、及びその職員団体における正当な行為等に対しまして、以上の三点に対しまして介入とか規制とか不利益な取り扱い等を行ってはおりませんし、また今後とも行う考えは全くありません。
なお、これに関連して、御承知と思いますが、昭和三十七年にこの趣旨を盛り込んだ長官通達を発遣してその趣旨の徹底を図っておるところでございまして、なおこの点について不十分でございましたら十分徹底を図るように努力したいと思います。
それから、人事の問題でございますので一言触れさせていただきますと、人事の配置の考え方については、私がここで申し上げるまでもないと思いますけれども、いろいろな考え方がございます中で、私どもといたしましては、職員一人一人が今日に意欲を持ち、あすに希望を持って仕事に取り組むことができるよう、人事の上では常に適正な見直しを行って十分努力してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/324
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325・越智通雄
○越智委員長 次回は、明二日水曜日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後八時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204629X00319880301/325
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