1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年四月二十日(水曜日)
午前十時三分開議
出席委員
委員長 松本 十郎君
理事 岡島 正之君 理事 片岡 武司君
理事 渡海紀三朗君 理事 西田 司君
理事 山下八洲夫君 理事 草野 威君
理事 岡田 正勝君
石橋 一弥君 金子 一義君
北村 直人君 鈴木 恒夫君
高橋 一郎君 友納 武人君
渡辺 省一君 佐藤 敬治君
中沢 健次君 細谷 治嘉君
柴田 弘君 経塚 幸夫君
寺前 巖君
委員外の出席者
参 考 人
(宇都宮市長) 増山 道保君
参 考 人
(田川市長) 滝井 義高君
参 考 人
(明治大学政治
経済学部教授) 喜多 登君
参 考 人
(東洋大学法学
部教授) 坂田 期雄君
地方行政委員会
調査室長 大嶋 孝君
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本日の会議に付した案件
地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/0
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001・松本十郎
○松本委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人の皆様から意見を聴取することといたしております。
参考人として御出席いただいた方々は、宇都宮市長増山道保君、田川市長滝井義高君、明治大学政治経済学部教授喜多登君及び東洋大学法学部教授坂田期雄君、以上四名の方々でございます。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
参考人の皆様には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
なお、議事の順序は、初めに参考人の皆様からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただきまして、次に、委員からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。
それでは、増山道保参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/1
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002・増山道保
○増山参考人 全国市長会の評議員をいたしております宇都宮市長の増山でございます。
衆議院地方行政委員会の諸先生方におかれましては、日ごろ地方行政の諸問題につきまして格別の御尽力を賜っておりますことに対し、衷心より厚くお礼を申し上げたいと存じます。
本日は、地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして御意見を申し述べる機会を与えていただきましたので、直接都市行政に携わっております市長の立場から御意見を申し上げたいと存じます。
御承知のとおり、昭和六十三年度の地方財政は、国庫補助負担率の引き下げなどを行わないという前提に立ちますと収支は均衡いたしておりますが、国民健康保険制度の見直しによる地方負担の増加、あるいは昭和六十一年度及び昭和六十二年度における国庫補助負担率の引き下げによりまして、地方財政は巨額の財源不足を生じる結果となっており、この不足額に対しましては、所要の財源措置がとられることとなっております。
地方財政は、昭和六十三年度末には六十七兆円にも達すると見込まれている累積した巨額の借入金を抱えるなど、引き続き厳しい状況にあるものと考えております。
このような地方財政の実情を踏まえまして、以下、当面する諸問題につきまして御意見を述べさせていただきたいと存じます。
まず、国庫補助負担率の引き下げ問題についてでありますが、申し上げるまでもなく、この引き下げ措置は、昭和六十一年度及び昭和六十二年度の予算編成に際し、当時の国の深刻な財政事情に対応し、補助金問題検討会等における検討などを経まして、昭和六十三年度までの暫定措置として、生活保護費など関係補助金及び公共事業費など関係補助金の補助負担率につきましてとられているものであります。それに対処すべく所要の財源措置がなされており、緊急避難的な暫定措置であるという点を考慮し、私どもといたしましてはやむを得ないものと判断しているところであります。
しかしながら、国庫補助負担率の引き下げ措置は、あくまで昭和六十三年度までの暫定措置でございまして、昭和六十四年度以降の補助負担率の取り扱いにつきましては、地方団体といたしましてはもとの補助負担率に戻すべきものであると存じます。
次は、国民健康保険制度の見直しについてでございますが、国民健康保険制度につきましては、その構造的要因から高齢者、低所得者を多く抱えており、市町村は極めて厳しい運営を余儀なくされてきたのであります。
国におきましては、国保経営安定化のため、昭和六十三年度及び昭和六十四年度の暫定措置として、いわゆる低所得者対策としての保険基盤安定制度の実施及び高額医療共同事業の充実などを行うこととしており、この国民健康保険制度の見直しによる地方負担の増加額につきましては、地方交付税の特例加算などにより対処することとされております。
しかしながら、これらの措置も二年限りの暫定的なものであること、そして、引き続く高齢化社会の進展、急激に増え続ける医療費など、国民健康保険をめぐる状況はますます厳しさを増すばかりでありまして、これが及ぼす地方財政への影響もはかり知れないものがございます。
つきましては、これらの問題の解決を図るため、医療費の適正合理化を推進するとともに、国民の給付と負担の公平化を図る観点から、医療保険制度の抜本的改革につきまして諸先生方の格別の御尽力を賜りたいと存ずるわけでございます。
次は、税制改革の問題についてでございますが、税制改革が国民的課題となっており、現在、国会及び政府税制調査会などで検討が進められていると伺っておりますが、私ども地方財政に携わる者の立場からお願いを申し上げたいと存じます。
まず、所得税及び住民税の減税につきましては、昨年既に相当の減税が実施されているところでありますが、国民の不公平感、重税感などのひずみが拡大してきておりまして、これらの是正を図るため、さらに住民税の減税及び所得税、法人税などの減税が行われた場合に生ずる地方交付税の減収に対しましては、地方財政の運営に支障が生ずることのないよう、完全に財源の補てん措置を講ずるように配慮をしていただきたいと思います。
次に、これは私からの意見のまとめということになりますが、地方の自主性、自律性を確保する観点から、地方財政の長期的、安定的な財源確保につきまして、諸先生方に御配慮をお願いいたしたいと存じます。
御案内のように、昭和六十三年度の地方財政計画は、累積した巨額の借入金を抱え、引き続き厳しい状況にあることにかんがみ、おおむね国と同一歩調により策定されております。歳入面におきましては、地方債の抑制に努めるとともに、地方税負担の公正、適正化を推進しつつ、地方交付税の所要額の確保を図り、歳出面におきましては、経費全般につきまして徹底した節減合理化を図るとともに、限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、節度ある行財政運営を行うこととしておりますが、特に生活関連施設などの整備と地域の特性を生かした個性豊かな地域づくりなどに資するため、特別事業費として、ふるさとづくり特別対策事業が計上されており、地方単独事業を積極的に推進するための措置は、地方団体にとりまして時宜を得た対策であると評価をいたしております。
なお、これにあわせまして、地方団体が地方単独施策として、地域の振興などに資する民間事業活動などを支援する新しい仕組みとして、ふるさとづくり財団を創設する構想がございますが、その実現方につきましても、この機会に諸先生方にお願いを申し上げる次第でございます。
地方財政計画の規模は、総額で五十七兆八千百九十八億円、対前年度比で六・三%の増となり、昨年度の二・九%及び国の予算の対前年度比四・八%を上回るものとなっております。また、一般財源は前年度に比べて八・二%の増、歳入に占める構成比も六五・一%と、前年度に比べて一・一%高まっておりまして、その財政内容は改善されているものの、地方債につきましては、前年度に比べ特定資金公共事業債を考慮いたしますと三・八%の減となりますが、引き続き高い水準となっております。
先ほども申し上げましたが、地方財政の現状は、巨額の累積借入金残高を抱えるなど極めて厳しい状況に置かれ、個々の地方団体につきましても、公債費負担比率が年々上昇しており、昭和六十一年度決算におきましては、危険信号とも言える二〇%を超える市町村が前年度に比べまして四十二団体増加し、千三十三団体となっておりまして、全体の三分の一を超える実態となっているのであります。
また、地方財政は、国の財政構造とは異なり義務的経費のウエートが高い上、歳入構造から見ましても自主財源が極めて乏しく、その上、国の制度、施策の影響を極めて強く受けるという特質を持っているとともに、三千三百団体余の財政主体の集合体であることなどを考えますと、現下の地方財政の実態は全く予断を許さない状況にあり、地方財政の健全化はまだまだと言わざるを得ないのであります。
もとより、地方団体におきましても、この危機を打開すべく、事務事業の見直し、組織機構の簡素化、職員の給与、定員の適正化、経費の節減合理化などに努め、みずから努力しているところであります。
私ども地方公共団体は、今後も引き続き一層の行政の簡素合理化、財政の効率的な運用を積極的に推進してまいる覚悟でございますが、諸先生方におかれましても特段の御配意をいただきたく、特に次の三点につきまして御配慮を賜りますようお願い申し上げます。
まず第一点は、地方税源の充実強化についてでございます。
地方団体の事務は、住民福祉の向上、公共施設の整備、維持など住民に身近な経常的なものが多い上に、人口の高齢化、経済の一層の国際化、価値観の多様化などによって行政需要は増加の一途をたどっております。
これらの要請にこたえ、地域の特性、多様性を生かしながら魅力ある地域づくりを進めるためには、安定した財源が必要であり、さらに、地方財政の健全性を回復するためにも地方団体の収入の中心をなす地方税源の拡充強化がぜひとも心要であります。
現在、国会及び政府税制調査会などにおきまして、直間比率の見直しなどを含めた整合性のとれた税制の抜本的改革につきまして検討されておりますが、その際、地方財政の実情を考慮し、地方の自主性、自律性尊重の観点から、地方税源の充実強化を図っていただきたいのであります。
さらに、私ども都市の立場から申しますと、都市的税目であります法人所得課税の市町村への配分の強化、個人所得課税における市町村の配分割合の拡充などを図るとともに、地方道、特に市町村道の整備促進のための道路財源の強化を推進する必要があると存じます。
第二点は、地方交付税総額の安定的確保についてであります。
御承知のとおり、地方交付税制度は、地方団体の自主性を維持しながら、地方財源の均衡化及び必要な財源の保障により地方自治の本旨の実現を図ることを目的としており、また私ども地方団体は、これは国が便宜的に一括徴収する形態の地方税とも言うべきもので、独立共有財源と認識をいたしておりまして、地方税とともに自主財源の大きな柱となっております。
しかしながら、先ほども申し述べましたとおり、累積した地方債残高、巨額の交付税特別会計の借入金残高など、地方財政を取り巻く厳しい財政環境を考え合わせますと、財源の確保は今後におきましても極めて重要な課題でありますので、諸先生方におかれましては、個々の地方団体の各年度の財政運営に支障を生じないよう十分な御留意を賜り、地方交付税総額を安定的に確保していただきますようお願いを申し上げる次第であります。
なお、税制の抜本的改革との関連でございますが、今後の税制改革のあり方につきましては、現在、国会及び政府税制調査会などにおきまして検討が行われており、その具体的内容は現段階では決まっていないわけでございますが、その内容いかんによりましては、地方交付税制度にも多大な影響が及ぶものと思われます。しかしながら、交付税特別会計の巨額の借入金残高などを考慮すれば交付税総額の増額が必要でありまして、減額し得るような余地はございませんので、必要な地方交付税の総額の充実確保を安定的に図られるよう格段の御配慮を賜りますようお願い申し上げます。
第三点は、国庫補助金等の整理合理化についてでありますが、この問題につきましては、先ほども申し述べましたので重複を避けたいと存じますが、昭和六十一年度及び昭和六十二年度におきまして行われた国庫補助負担率の引き下げ措置は、国の補助金等の臨時特例等に関する法律等に基づき、昭和六十一年度から六十三年度までの暫定措置として講じられたものでありまして、その引き下げにつきましては昭和六十三年度限りとすることを厳守していただきますよう、この際御要望を申し上げますとともに、今後このような地方団体の不信を招く措置が講じられることがないように、あわせて強くお願いを申し上げる次第でございます。
なお、補助金などに係る超過負担の解消につきましては、国におきまして毎年度合同調査を実施し、その解消措置がとられてきておりますが、引き続き御配慮を賜りますようお願いを申し上げます。
以上、当面する地方行財政の諸問題について、お願いかたがた忌憚のない御意見を申し述べさせていただきましたが、地方財政の厳しい実情を御理解いただき、速やかに本改正法案が成立いたしますよう何とぞよろしくお願いを申し上げまして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/2
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003・松本十郎
○松本委員長 ありがとうございました。
次に、滝井義高参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/3
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004・滝井義高
○滝井参考人 ただいま御紹介いただきました田川市長の滝井義高でございます。
国会の諸先生方におかれましては、国民福祉の前進と地方自治の発展のために日夜御研さんをいただいておりますことを心からお礼申し上げますとともに、今回地方交付税法の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただく機会を得ましたことを大変光栄に存じます。心からお礼を申し上げたいと思います。
今宇都宮の増山市長さんから、大体我々地方自治体が考えておることを総括的にお述べをいただきました。したがって、重複をすることは時間のむだでございますので、重複をしないように二、三の点について意見を述べさせていただきたいと思っております。
まず第一に、現在、昭和六十三年度を迎えまして私たち地方財政は大変苦しい財政運営に迫られております。それは最前お話がありましたように、地方財政における借入残高が、六十一年度決算においても、その歳入をはるかに上回って六十一兆になんなんとしておるということでございます。
こういう事態に直面をいたしまして、私たち地方自治体は何をしておるかというと、まず第一に、行財政改革を引き続き精力的にやっているということです。二番目には、自主財源である税源の安定的な確保のために努力をいたしております。次は、地方財政における重要な共有の財源である地方交付税の総額の安定的な確保についてこいねがっており、あるいは陳情、要望をいたしておるところでございます。そして四番目には、地方自治体の一般財源を確保するために、その充実に日夜努力をいたしております。こういう四つの点について努力をしながら、地方財政の進展と住民自治の発展のために努力をいたしておりますけれども、なかなか意に任せません。
そういう中において、今回地方交付税法の一部を改正する法律が提起されまして、そして交付税の総額について加算を行っていただき、あるいは制度改正に伴う単位費用の改定あるいは補正係数の改正等を行っていただきました。この点については政府並びに自治省当局に心からお礼申し上げたいと思っております。
そこで、まず私たちが一番問題なのは、この交付税法の一部を改正する法律に関連をいたしまして、地方交付税の総額が本当に安定的に確保されておるかどうかということです。
かつて、五十八年の終わりに交付税の借入金が十一兆五千二百億になったとき、我々はびっくりいたしました。その利子だけでも莫大なものになるわけです。だからこれはやめなければいかぬと、五十九年からやめました。そして、それにかわる措置としてどういうことが行われたかということでございます。
御存じのように、地方財政計画を立てる、必然的に財源不足ができる、あるいは昭和六十年から補助金のカットが行われる、必然的に財源の不足が出てくる、こうなりますと、総額を確保することは大変困難になりました。しかし依然として総額は、地方交付税法の六条によりまして所得税、法人税、酒税の三二%という枠にきちっと決められてしまっております。したがって、その枠をはみ出した地方自治体の基準財政需要額と基準財政収入額の差額というものは三二%で賄い得ませんから、どういう措置をとったかというと、交付税の特別会計における借り入れがだめになりましたから、地方債で賄うことになりました。地方債がどんどんふえてきました。最前増山市長も述べられたように、六十一年度末における決算において、三千三百のうち実に千八十一の団体が二〇%の赤信号を超えることになったわけです。
これは何を意味するかというと、二〇%を超えた三千三百のうちの三分の一の自治体は事業がやれなくなるわけです。二〇%を超えれば必然的に起債の制限を受けます、あるいは財政運営が硬直化するわけですから仕事ができない、こういう形になってきました。しかし御存じのように、仕事をしようとすれば起債を受けなければならぬ。起債を受ければ継ぎ足しの一般財源がない。だから進退きわまってきたことになるわけです。もしここに三二%の交付税を枠を広げて、起債じゃなくて現金をくれる。交付税は現金です。現金をくれることになると、その財源で仕事ができる。地方財政は実に弾力的に運用されるわけです。それがないわけです。ここに地方財政の根本的な硬直化と借金膨大化の道が開かれておるわけです。この点についてぜひひとつ慎重な御配慮をいただきたい、こう思うわけでございます。
そういう形で財政運営は行っておるわけでございますが、次に問題になりますのは、交付税の基準財政収入額を見積もるときに、その基準税率は収入額の百分の七十五を見積もっていただきます。したがって、我々地方自治体には二五%の余裕財源が残っておるわけです。この二五%の自由財源によりまして地方自治の振興、すなわち地方自治の振興は何かというと、自主的なあるいは主体的な行政を行う、同時に多角的な運営を行う、同時に広域的な運営を行う、こういう形で行うわけです。これはもちろん七五%で見積もっていただく交付税もそれに役立ちますけれども、やはり自由に使う財源がそこになかったらうまくいかないわけです。この自由に使う二五%というものが大変窮屈でございます。できれば七五を七〇ぐらいにしてもらって、三〇ぐらいの財源をいただきますと、もう少し滑脱な地方財政の運営ができることになるわけです。それがなかなか行われない、借金ばかりでいく、こういう形になってきております。こういう点についての御配慮をぜひお願いいたしたい、こう思っております。
次に、国民健康保険についてでございます。
今地方自治体が一番運営で困っているのは何かというと、国民健康保険の財政の運営でございます。御存じのように、東京一極集中主義によりままして、我々のような産炭地や過疎地というところは非常に高齢化が進んでまいりました。国民健康保険をどのように運営していくかは、我々地方自治体の最大の政治課題でございます。もちろん国家における政治課題でもあるわけでございます。その場合に、今回の財政措置、すなわち交付税法の一部を改正することによって国民健康保険に財政措置をしていただいたことは、非常に高く評価していいと思っております。
今回の国民健康保険の改正は、今まで国民健康保険に参加をしていなかった県に対して一つの役割分担をさせるということが一つ出てまいりました。もう一つ出てまいったのは、交付税の措置で地方が負担をした財源について見てもらえる、財政措置をしてもらえる、こういうことでございます。その財政措置をしてもらえる点は二つございます。
一つは、四割、六割の貧しい家庭に保険料の減免をしますと、その減免をしたものについての二分の一をまず国が見てやろう、あとの四分の一は県と市町村が見なさい、こういうことで県がそこに一つ入ってきた。これは非常にいいことでございます。
いま一つは高額医療費。御存じのように高齢化社会は必然的に高度医療を必要とします。その高度医療は莫大な金がかかる。したがって、これは地方自治体だけで負担することはいけないので、共同と連帯の意識を持って地方自治体が一体になって高額医療費に対する共同事業をやる。その共同事業の担い手として県が入ってきて、ここに県が一定程度の負担をする、国がある程度の事務的補助を出そう、こういう形ができて、その県が負担をした分について国が交付税で措置をしていただく、こういうことになったわけです。
ところが、国民健康保険の赤字の大きな原因としてもう一つ重大なものがあるわけです。それは何かというと、地域における医療費の格差でございます。医療費は東の方が低くて東低西高です。西の方が高い。もちろん沖縄のような例外はありますが、高いわけです。そういう情勢の中で、この医療費の格差を当然何らかの形で見なければなりませんが、この暫定措置の中には医療費の格差を見ていただいておりません。これは昭和六十三年、六十四年と暫定措置で、そこで医療費を一遍調査してみて、そして非常に不当に医療費の高いところにはペナルティーの意味をもって地方自治体の負担をやらせようという意図が恐らくあるのだと思うのです。したがって、それをやっていただいていないのですが、そもそも医療費の格差が出るのはどういう理由で出てくるかというと、いろいろ理由があります。
まず第一に、医療費が高まるというのは、入院が多くてしかも高度医療です。すなわち入院、高度医療、高齢、こういう三つのものが重なって医療費が国民所得の伸びよりはるかに伸びていくことになります。そうなりますと、まずその地区に病院があるかどうか、その病院が高度の技術者、例えば脳外科、心臓外科、こういう高度の技術者と同時に高度の機器を持っているかどうかということによって違ってきます。また、その地区の高齢者、六十歳以上のお年寄りあるいは七十歳の老人保健に加入している人が多いかどうかということによっても違ってきます。それから、その地区における国民健康保険の加入者の所得レベルが一体高いのか低いのか。低所得階層がいっぱい、過疎や産炭地のように七割が所得百万円以下なんというところは、もう例外なく医療費が、悪いことをしない、へまなことをしなくても上がってくるわけです。こういう不可避的なものについて、当然国がある程度の措置を自治体が負担したものについてやるというのは当然のことじゃないかと思っておるのです。そういう点について、今回は財政の基盤強化の面と共同事業については見ていただきましたが、その医療費の格差の問題については見ていただいておりません。できればこういうものも一緒に見る体制をつくっていただきたい、こう思うわけです。
それから四番目につきましては何があるかというと、我々の地域的な問題でございますけれども、産炭地補正というのがございます。産炭地補正というのは昭和五十一年にできた制度でございます。なぜできたかというと、炭鉱が閉山の後に、今北海道がそういう状態になりつつあるわけですけれども、後遺症がいっぱい出てきたわけです。例えば鉱害とか失対事業とか生活保護とか、とにかくいっぱい後遺症が出てきて、とても地方自治体の財政で賄える状態でなくなったわけです。これをどうやって克服していくかということが大変問題になりました。そこで五十一年になりましてからなお後遺症が残っておるので、その対応として普通交付税の中に産炭地補正の係数を入れて、そして産炭地の貧しい自治体に対応しようということになりました。ところがその制度が、現在なお失対事業や同和や炭住改良や鉱害等いっぱい後遺症が残っておるにもかかわらず、これが昨年、六十二年度から段階的に九、七、五、三、一、六十七年度はゼロ、こういう形になりました。そうしますと、産炭地はこの補正がなくなりますと一般財源がなくなりますから、それらの後遺症の解決が大変苦しい状態になってまいります。こういう点をぜひ御配慮いただきまして、九、七、五、三、一と廃止することは結構でございますが、それにかわる普通交付税における代替的な措置をぜひ講じていただいて、産炭地が最後の仕上げのできる形をとらせていただきたいと思うわけでございます。これが四点です。
第五点目は、率直に申し上げまして実は地方自治体の先が見えなくなったということです。ガルブレイスが二十世紀は不透明の時代、不確実の時代と言いましたが、地方財政は全く不透明でございます。先が見えないのです。その先の見えないまず第一に何があるかと申しますと、補助金のカットです。国庫負担率の引き下げでございます。六十年に我々市長会は、これは一年限りですよ、六十年だけだ、これでひとつ我慢せいというので、市長会は随分がたがたしましたけれども、一年限りならやむを得ぬ、大蔵、自治がそれほどまでにかたい約束をしたのならよかろうということで了承いたしました。ところが六十年度が終わらないうちに、六十一年度の予算編成の段階になりますと、地方財政は国に比べて豊かではないか、国は現在で言えば百六十三兆の借金を持っておる、おまえたちは六十七兆だ、半分以下じゃないか、国が苦しいときは地方もその役割を分担しなければいかぬ、こういうことで、六十一年度、六十二年度、六十三年度と三カ年間、再び自治大臣、大蔵大臣が判こを押してやりました。政治というのは信がなければ立ちません。私たち地方自治体も、この制度は一年限りですよ、生活保護や教育や母子家庭の補助金や老人福祉は削ります。しかし、これは政府が一年限りと言っているから、議会、了承してくれ。しました。そしたら翌年になったらまた三カ年。何だ市長、おまえ一体どこを見て政治をやっておるんだ、こういうように市長に対する不信感が住民の中から、議会の中から出てきたわけです。ぜひひとつ六十四年度は、もう六十三年きりでやらない、こういう明確な方向を出してもらわないと地方自治体は先が見えないのです。
これだけでありません。私の市が今直面をいたしておる先の見えないものをちょっと挙げてみますと、まず第一に失対の打ち切りでございます。五十五年に失対制度の見直しがあり、六十年度に見直しがありました。そして六十五歳以上の失対労務者を排除するということになった。そうすると、六十五歳以上を排除しますと、その後片づけをだれがやるのかというと、任意就労事業の形で私たちがやります。この任意就労事業は二カ年ですよ。二カ年過ぎたら、ことしの八月に二カ年で卒業しますが、その後また見なければならぬわけです。まだ働く意思と能力がある。市長、働かせ。そうすると今度はシルバー人材センターでやろう。こうなりますと地方自治体はその失対事業の後始末を全部やることになるわけです。こんなものがこういう路線でいきますよということが初めから決まっておればいいけれども、細切れで出てくるわけです。これが一つです。
二番目は国立病院です。私のところにも国立病院があります。そうすると、滝井君、おまえのところの国立病院、済まぬけれどもおまえのところで見てくれぬか。国は国立病院の経営で千二百億以上の赤字を出す、これ以上赤字を出したらだめだ、見てくれぬか、こうなる。うちには三百三十四ベットの病院がある。その上にまた国立病院を背負い込むなんということはできないわけです。しかし、地域の医療を見た場合に、その国立病院が循環器と肺、すなわち炭鉱地におけるけい肺、肺がん、肺の結核というようなものの専門的な病院、これを廃止したり、我々のような小さなものに移譲したら機能ができないのです。それをやれ、やらなければどこかほかのものにやるという形です。これがその次です。
ローカル線を廃止する。国鉄が赤字、分割・民営化した。私のところは七つ線があります。一次、二次、三次で八十三線廃止されました。七つのうち五つが廃止される。残るのは二つです。そうすると来年の九月三十日までに三線が廃止されますが、それをひとつ第三セクターでやってくれぬか、やらなければ地域住民の足が守れぬ。そうすると、その交通を我々がまた引き受けることになるわけです。
そして国民健康保険をうまくやろう。退職者医療制度だ。大丈夫だ、滝井君、これ協力せい、こうなった。はい、わかりました。そうしたらあら済まぬけれども数が間違っておった、見損なった、赤字が出た、またこれ私たちがひっかぶることになったわけです。
そして次に出てきたのが国土政策です。国土政策をやるんだ、こういう形になった。そうですか。出てきたら東京一極主義、地方団体が挙げて反対をしたら多極分散型になった。ところが、もう人も物も情報もお金も、そして食べるエビまでが東京集中です。全部東京集中。今から国土分散の促進の法律を出しても、もう事態は遅いのです。遅くなってしまった。そういう形になってしまいますと、私のところに来る約束をしておった企業が、市長さん、ちょっと待ってくれ、あの分散法がもうちょっとはっきりするまではわしらも行きにくい、東京本社が許さぬ、こういう形になってきておる。国土分散の理念と作文はできたけれども、実態は東京へ東京へと草木もなびいて、東京都と千葉県と神奈川県と埼玉県と茨城県にまで最近は進んで、人口の三割、しかもそれが優秀な頭脳が行くわけです。私どもの八幡製鉄所は新日鉄の顔と言われた。頭脳と言われた。その頭脳が千葉県の富津に移ってしまう。そうしたら北九州はもぬけの殻になるのです。そうすると、北九州のインパクトを受けて我々筑豊は地方財政の安定を図ることになったが、インパクトがなくなってしまった。したがって、根本的に地方財政の長期の我々の計画をやりかえなければならぬ。どんな方向でやりかえるか。まさに太平洋に出た小舟と同じようで、左に揺れ右に揺れているというのが今の姿でございます。こういう形になってきたわけです。
そうしましたら、次に出てきたのは農産物の自由化です。北海道から雄の子牛を二千頭も買ってきて、半年飼ったものをうちで一年飼ったら肉用牛になる、やれと一生懸命やらした。ところが、これが自由化したらその農家は、市長、どうしてくれるか、困るじゃないか。困るのはもう私もいかんともしがたいわけです。まさに進退きわまって首をつらなければならぬという状態になっておるわけです。こういう農産物の自由化が出てきました。
そして次に出てきておるのが前川レポートでございます。これぐらい私たちがびっくりしたことはありませんでした。アメリカでレーガンさんと中曽根さんが前川レポート、国際公約を約束しました。そして、約束をしたら途端にすぐに第八次の石炭政策が出ました。そしたら大牟田の四百五十万トンの石炭を掘るのが三百五十万トンになりました。高島炭鉱がすぐにつぶれました。大牟田が四百五十万トンから三百五十万トンになって、おまえのところ何も関係ないじゃないかと思いがちですが、それが関係があるのです。第八次石炭政策ができて大牟田が四百五十万トンから三百五十万トンになりましたら、私の方に、大牟田の利益を得たものが鉱害復旧の金として田川に来る金が出てこないのです。もう既にかつて二百万トン掘っておった三井田川鉱業所は昭和三十九年に閉山をして鉱害復旧の後始末をやっている。炭住改良を我々はやっておる。そうすると、その三井さんに鉱害復旧の金が三池炭鉱が縮小したために出てこないのです。金が出てこない。そうすると鉱害復旧がうまくやれないのです。まさか、きのうアメリカで約束したことが、あさって私のところにくるとは夢想だにしませんでした。それほど経済と政治が密接に結びついて国際化しておるわけです。もはや国際的な姿を見ずして地方財政の運営はできなくなってしまいました。
こういう形でおって、しかも今度は次に、我々の産炭地を支えておるのは時限立法です。みんな期限があります。この期限のある法律が延長するのかしないのかがさっぱりわからない。六十五年に過疎法が切れます。六十六年に産炭地の振興法が切れ、六十七年に鉱害復旧その他産炭五法と地対財特法、同和新法が切れる。八本が切れる。これが我々産炭地の財政を支えておるわけです。この支えておるものが延ぶのか延ばないのかわからなかったら、私たちは五年とか十年の長期計画が全然立たないのです。その日暮らしです。その日暮らしぐらい哀れな自治体の姿はないわけです。産炭地振興、地方自治体の振興、それは自主的、独立的な財源も持ち、多角経営をやり、広域的に手をつなごうとしても、広域的につなぐものがみんな先が見えないのです。こういう姿の情勢では困る。だから、ある学者に、こういう状態の地方自治体を先生どう思いますか。わしもいろいろここで滝井市長さん、あなたに話して聞かせるが、わしもわからぬのじゃ、総理大臣はわかっておるでしょうか、こういうことなんです。
だから、第一線の地方自治体の我々としては大変苦労をいたしております。どうかひとつ地方自治体が、あすの夢とロマンを持ってふるさとを愛する心でふるさとの前進が図られる形を先生方にぜひつくっていただくように、きょうはまかり出てお願いした次第でございます。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/4
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005・松本十郎
○松本委員長 ありがとうございました。
次に、喜多登参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/5
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006・喜多登
○喜多参考人 明治大学の喜多でございます。
本日は、この地方交付税改正の法案につきまして参考人として意見を述べさせていただけることは、まことに光栄に存ずる次第であります。そこで、私の意見をこれから申し述べたいと思います。
まず第一番目でありますが、今回の地方交付税法の一部を改正する法律案というのは、現行の制度のもとで、かつ限られた財源という制約のもとでの改正であったということであります。このような制約条件の中にあるにもかかわらず、地域発展の方策を基準財政需要額の算定方法の改正という形を通して組み入れられているということは、まことに望ましいことであると私は思います。特に地方財政計画の中で、ふるさとづくり等特別事業、こういうものが考慮されている点は高く評価することができると思います。この措置は地域発展を引き出すものとして大いに私は期待できますし、今後これ以外の地域発展事業に関しましても財源強化の措置がとられることが望ましいと考えておるわけであります。現在の地方は、目下点検の厳しい時代を経まして体質を少しづつ改善しつつあります。このさなかに地方に対して夢と希望を与える今回の措置は、まことに望ましい措置であると私は考えます。これが第一点であります。
第二点は、今回の改正案の中で「地域産業の育成、地域経済の活性化の促進等地域振興に要する経費」の財源措置がとられております。これは先ほど申しましたように非常に望ましい点でありますが、しかし財政力の少ない地方公共団体に対して特別の配慮という視点が欠けているのではないかと私は思います。これは対象事業によりますが、特にふるさとづくりにつきましては、財政力の弱い地方公共団体に対しては特別の補正、例えば私仮に申しますならば、ふるさと補正とも言われるべき特別補正を財政力指数をベースとしてつくって、そこで補正をやった方がよろしいのではないか、かように考える次第でございます。
なぜかと申しますと、同じく地方自治体と申しましても実に多様でありまして、財政力指数の弱い団体というのが先ほどの市長さんのお話のように幾つもあるわけであります。つまり地方交付税があり、特殊補正があって初めて何らかの計画が立つという地方公共団体というのはたくさんあるわけです。これに対して、せっかくふるさとづくりという夢と希望を与えながら、実態としてこれは絵にかいたもち、自分としてもやりたくても財源的な手配ができないということでは仏つくって魂入れずの例えのごとく、そのような状態になり得る可能性を持つと私は思います。そこで私は、ふるさと補正ということをここで考えていただきたいというふうに思う次第であります。
第三番目として、今回の改正案には、これまでの制度の改革、ある意味では制度運用の変更、これに伴うところのひずみ、これについての是正の措置がとられております。これは、地方政府へ一たん大きな負担を重荷させました。その負担を事後的に軽減措置をしているということでありますが、これはやはり評価できる措置であろうと思います。
しかしながら、これらの制度の改革や制度運用の変更については慎重な考慮が事前になされるべきでありましょう。特に現在問題になっております国庫支出金等の削減に関する問題、これにつきましては、もっと根本的にこの制度それ自体についての検討というのが必要ではなかったかと思います。特に私は、地方財政法第十三条、これは「あらたな事務に伴う財源措置」というところでございますが、この精神を生かしてもらって、もちろん地方のやる行政については国と地方と負担を分けてやるという、そのようなことがございますけれども、この点に関して、先ほど申しました地方財政法第十三条の精神を生かしまして、地方への負担というのをできるだけ避けるような配慮が望ましいのではないかと思う次第であります。
第四点といたしまして、本年度の状態にかかわる減税について少し申したいと思います。
現在、所得税、法人税等所得に関係するこういう分野についての減税が国会で論議されております。しかもその減税の幅が数兆ということでございます。この減税が行われますと、確かに国民の所得をふやし、それが税収をふやすという効果がございます。私どもはこれを通常乗数効果という形で計算をやったりしておるわけでありますが、そのようなプラスの効果があります。しかし、もし所得相関の減税が大幅に行われ、しかも現在のような経済的環境からもっと悪い状況へと突っ込んでいったとしたならば、これは自治体に対する一般財源補てんとしての交付税は明らかに減額になってまいります。これは先ほど市長さんたちが参考人として意見を述べられた、まさにあの交付税の不安定要因を大きくつくり出すということになってくるわけであります。
そこで、こうした問題に関して、ここに新たな視点から新しい措置をこの現行の交付税制度に入れて考えるべきではなかろうかと思うわけであります。この考え方には幾通りかございます。
例えば、現行の国税三税にプラスして新たなる国税を入れる、こういう形も考えられましょうし、あるいはまた、現行の国税三税はそのままにしながらも交付税率を操作させるというやり方もありましょう。あるいはまた、別な形でのこの財源補てんの道を考えることができるのではないか。例えば包括的補助金という考え方を通すことによってそのことはできるのではないかと思う次第であります。
第五点について申し上げます。これは現行地方財政調整制度全般にかかわる問題でございます。
我が国の地方財政調整制度は、世界に誇るべきまことに精微な構造を持っております。しかし、この制度が成立したその当時の背景を考えなければなりません。昭和二十年代の経済社会、こういう環境のもとで、ここで一つの考え方が定立していったわけであります。
この考え方は、国民全体に行き渡るべき行政というのは全国どのような地域であっても同じであるべきであるという考え方、そしてこれは地方自治の精神にのっとってこの状況を実現すべきである、こういう考え方ではなかったかと思います。そしてこれ自体が大変すばらしい効果を呼んだことも事実であります。さりながら、この方向というのは全国各地方公共団体に対して平準化した地方行政の展開を求めるということになっているわけであります。
ところが今日、所得水準は上がり、国民の暮らし向きは昭和二十年代とは比べものにならないぐらいに向上し、行政水準も次第に上昇して、成熟した経済社会に入りつつあります。この状態に入るにつれて国民の選好というのはだんだん変化してまいっておる次第であります。例えば、これまで高い累進度を持つ所得課税を背景としました所得再分配の方式をとっておる課税制度、これは今日国民の選好の変化でここに見直しということが入ってきているわけであります。既にアメリカ、イギリスにおきましては、フラット化されたレートに基づく所得課税というのが行われようとしておるわけであります。
一方で、ここは大切なことでありますが、地域間の経済力格差が、今まで収縮の方に向いていた部分が今度は格差を拡大させる方向に我が国においては向かっているわけであります。そこで、平準化した行政を中心としてつくり出されておった現行の地方財政調整制度というのをこのまま維持していいかということが今問われていると思うわけであります。そこで、新しい視点を現行の調整制度に加えるか、あるいはまた新たな考え方をもって地方財政調整制度を考えるか、これを検討する時期が今参ったと思う次第であります。
地方財政調整制度は、昭和二十五年のシャウプ勧告の当時に生まれた平衡交付金制度、それから昭和二十八年十月に地方制度調査会の改革答申に基づき成立した地方交付税制度が今日に来ているわけであります。しかしながら、先ほど申したように経済社会が大きく変わり、平準化したところからさらに変化を求めているという国民的な選好を考えたならば、ここにこの制度に関する根本的な見直し、ないしは新しい視点からこの制度に関するプラスの要因を加えていく必要があるのではないか、かように思う次第であります。
そこで、第一点として、財政力水準の低い地方公共団体に対して特別な措置がとられるような特殊な配慮が必要であると私は思います。それは基準財政需要額において、現在人口が流出し、あるいはまさに流出が始まろうというところ、過疎化を起こしているところでは、この基準財政需要額の算定というのは時間とともに縮小縮小という傾向をたどっていくわけです。したがって、この部分について思い切った措置が必要ではないか、あるいはまた、こうした地域に新しい発展の核をつくり出すための何らかの措置が必要ではないか、そのための特殊な財源措置がここに必要になるのではなかろうか、この点が一つ言える点であります。
第二番目に、相対的に財政力水準のよいと言われている地方政府に対する措置であります。これにつきましては、財政責任、つまり地方公共団体が持っておる財政自主権が十分に発揮できるような措置。それは、一つは財源的に地方税の増加ということもございましょうが、しかし財政力水準の弱いところに地方税の財源を大きく付与しようとしてもこれはどだい無理であります。大きく利益が出てくるのは、都市化が行われ人口がふえてくる、この地域についてのみその可能性を持つわけであります。したがって、こういう地域につきましては特殊な措置が必要でありましょうが、いわば財政力水準のよい地方公共団体には、もっとみずからの創意と工夫で地域の発展に貢献できるような配慮を現行の地方財政調整制度の中においても考えておく必要があるのではないか、こういうふうに思う次第でございます。
以上、五点にわたりまして私の意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/6
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007・松本十郎
○松本委員長 ありがとうございました。
次に、坂田期雄参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/7
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008・坂田期雄
○坂田参考人 東洋大学の坂田でございます。
きょうは、こちらの委員会で意見を申し述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変ありがたく感謝いたしておる次第でございます。
既に諸先生からいろいろ現在の地方財政、交付税制度の問題についてお話がございましたので、重複しない範囲内で若干申し上げてみたいと思うわけでございます。
まず第一番目は、現在の地方財政制度の基本的な問題でございますが、現在地方財源は交付税だけでなくて地方税、国庫補助金を主な財源としておるわけでございますが、これを地方自治という観点から見た場合に、非常に基本的な問題が依然そのまま残されている。そういう根本的な点からまず見てみたいと思うわけでございます。それは、現在の地方自治体というのは、地方分権とかいろいろ言われておりますが、国庫補助金によって地方の自治体が隅々まで統制支配されてしまって地方自治の芽が育たない、こういう現状にあるわけでございます。
国庫補助金による地方自治が進展しないいろいろな状況があるわけでございますが、その一は、この十数年来各自治体で、地方の時代と言われる中で、地域の特性を生かしながら創意工夫、さまざまな地域づくり、町づくりのいろいろな芽が出てきたわけでございますが、これがいざ実行しようと思う場合には、国の国庫補助金をもらわなければできないということで、国庫補助金というものによってそういう芽が全部摘まれてしまう。しかも最近の状況を見ますと、地方での新しい知恵とかアイデアは地方自治体から全部出てくるわけでございますが、これが霞が関の中央省庁がその中からいいものだけを取り上げて、そしてモデル事業という格好で新しい補助金にして地方へおろす。せっかく地方で個性、多様な町づくりの芽が出てきた、地方の時代の芽が出てきたのが、中央省庁によって画一化された補助金という格好でこれがまた押し返される。せっかくの地方自治の芽が摘まれてしまうというのが一つの問題ではないかと思うわけでございます。
現在の国庫補助金についての問題のその二といたしましては、現在の地方財政の仕組みのもとではどうも住民の自治意識が育たないのではないかということでございます。実は昨年の六月、私が参加しております地方自治経営学会で、戦後四十年たったけれども地方自治は一体何が変わり何が変わっていないのだろうかという議論がございました。そのときに一つ挙げられておりましたのが、住民の自治意識というものが戦後四十年たって全然変わっていないのではなかろうか。自分の町は自分でという地方自治の一番の基本がどうも育っていない。その原因は何であろうかということが議論されたわけでございますが、その場合に、現在の日本では、行政が住民に対して与えるサービスと、それに見合って住民が税負担をする、そのサービスと負担とが結びついていない。これがアメリカとかヨーロッパでございますと、住民が行政に対してこういうサービスを求めたいというのであれば、それに見合うお金は税金という形で負担する。サービスと負担が常に結びついている。住民はより大きいサービスを求めたいのであれば、より大きい税金を負担する。税金は余り負担したくないのであれば、サービスは少なくていい。そういう形になっているわけでございますが、日本の場合には、サービスの要求は国へ行ってもらってくればいいという国庫補助金の要求という形になる。住民だけではございません。地方自治体の首長さんも、住民が評価する場合には国から幾ら金をもらってくるかということで評価される。一方住民は、自分たちは一銭でも負担するのは嫌だ、手数料とか使用料の引き上げ反対、増税も反対という形になってしまう。そういう意味におきまして、これから自分たちの町は自分たちでという自立、セルフヘルプ、住民のそういう地方自治の基本を育てるためにも、現在の税財政をもっと自主財源を多くして、そして与えられた自主財源の中で住民も自治体も自分たちでやっていくということを育てる、そのためにも基本的に地方財政制度をもっと改善しなければいけないのではなかろうかと思うわけでございます。
現在の国庫補助金制度に伴う問題点のその三といたしましては、この十年来行政改革が進められたわけでございますが、現在の日本の行政の最大のむだというのは、国と地方とが二重三重の行政、多重構造になってしまっている。つまり国民の税金が一たん国税として徴収されまして、それが国庫補助金という格好で中央省庁、中央省庁の出先機関、そして県、市町村ということで実際に行う市町村に税金がおりていくわけでございます。現在、地方行政に関連する中央省庁幾つかございますが、国庫補助金を審査し、配分するために座っている中央省庁の職員が非常に多いわけでございます。これを最初から実際に仕事をする地方自治体に財源を与える、国庫補助金という迂回していく格好じゃなくて自主財源として直接与えるようにすれば、現在の中央省庁とか出先機関に国庫補助金を配るために座っている非常に多くの国家公務員は要らなくなる。行政改革が非常に進む。そういう意味で国、地方を通じてもっと簡素で効率的な行政機構にする。これは臨調でも大分議論されたわけでございますが、ほとんど進んでいない。地方行革、自治体に対する行革は厳しく言われまして、まだ不十分な点はありますが、かなり進んだのじゃないか。しかし、一番大事な国の行革は依然そのまま残されている。そういう点から見ましても、現在の国庫補助金を中心とした地方財政制度にメスを入れるということは、国、地方を通ずる全体の行革、国民の負担の軽減にもつながると言えるのじゃないか。
もう一つ、その四番目といたしまして、最近の大きな問題といたしまして東京一極集中、そして四全総でも多極分散型国土の形成、地方分散が言われておりますが、その方向で政府機関を地方へ移転するというような方向が現在若干進められております。しかし、それだけでは本当の地方分散は進まない。基本的にはなぜ東京に、中央に多くの人あるいはいろいろなものが集まってくるのか、なぜ東京に行かなければならないのか。それは中央に権限と財源が集まっているからです。この中央に集まっている権限と財源を地方におろす。地方分権、つまり東京に来なくても地方の県とか市町村ですべて用が足りる、最終の意思決定ができるというシステムにしなければ東京一極集中は是正できない。そういう観点からも、現在の国庫補助金を中心とした地方税財政制度をもっと改善して、自主財源という格好で地方自治体におろすということを、基本的に議論をもっと進めなければならないのではないかと思うわけでございます。
さてそこで第二番目といたしまして、国庫補助金の補助率の問題が先ほど来出ております。ちょうど六十三年度で三年間の暫定措置、六十四年度にもとへ戻すべきだということは当然かと思うわけでございますが、ただその場合の議論として、単に補助率をどうこうするという問題だけではない。実は国庫補助金をどうするかという場合に、先ほどの地方自治という観点から見ました場合には、国庫補助金は少しでも減らす。国庫補助金の件数そのものを減らす。できればこれをなくして自主財源に振りかえる。そういう国庫補助金を縦に切って減らしていくという視点が一番大事なのでございますが、これまで進められましたものは、国庫補助金をそのままにしておいて横に切る。補助率を、国の負担割合を減らして地方の負担割合をふやす、横に切る切り方をどうこうするということではなくて、縦に切って補助金を減らしていく。そこに今後の国庫補助金のあり方として基本的にもっと目を向けていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。
第三といたしまして、自主財源の増強の問題が先ほど来出てきておるわけでございます。今日の状況から見まして、公債費負担比率も非常に高まってきております。今後の方向としましては、できれば地方税、地方交付税をもっと増強したいというのが地方自治体の以前からの念願ではございます。しかし、現在は住民税、所得税、国民全体が減税というムード、状況の中にありまして、やはり国も非常に財政が厳しいという状況で推移してきた。こういう状況から見まして、目下税財政制度の抜本改正というそういう改正が進められるのであれば、その改正の中において地方団体の自主税源というものが十分確保されるように、そういう大きい制度改正のときをとらえて、地方の長年の地方税そして地方交付税の十分な充実が図られるように配慮されるようにぜひお願いいたしたいというふうに思うわけございます。
最後に、第四番目でございますが、先ほど来お話も出ておりましたが、今年度から新しいふるさとづくりの特別対策事業というものが進められるようになってまいっております。多極分散型構造、四全総、地方分散を進めるための政策といたしまして、これは地方が創意工夫で町づくりを自主的に進めようというところに起債で財源を与えて、それを交付税で後で措置をしてやろう。そういう意味において、補助金でがんじがらめに縛りつけるという従来のやり方ではなくて、地方の創意工夫の芽を生かした格好で中央が財源を与える。そういう意味では地方自治、地方分権に即した制度、方向で非常に望ましい、ぜひこういうものの枠を伸ばしていただきたいと思うわけでございます。
ただその場合に、地方自治体がそういう財源をもらって基盤整備をすると同時に、地方分散あるいは地域の活性化を図るためには民間企業に同時に来てもらうということが大きな課題でございます。行政だけでできるものじゃございません。官と民、そういう意味において各自治体が民間企業等の誘致を図るために、何か自治体として手を打ったり助成をする方法がないだろうか。そういう点で、ふるさとづくり財団というものが先般来検討されまして、ことしの各府県の当初予算、それから政令指定都市では横浜市を除いて既にその財源も計上されているというところまで来ておるわけでございますが、中央段階で現在まだそれが具体的に進まないという状況のようであります。ぜひこれも実現されるように心からお願いを申し上げたいというふうに思うわけでございます。
以上をもちまして、私の所見を申し上げさせていただいたわけでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/8
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009・松本十郎
○松本委員長 ありがとうございました。
これで参考人の御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/9
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010・松本十郎
○松本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
なお、念のため申し上げますが、参考人の皆様は委員長にお申し出をいただき御発言をお願い申し上げます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/10
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011・金子一義
○金子(一)委員 御紹介いただきました金子一義でございます。
きょうは増山参考人、滝井参考人、現職の市長さんとして本当に生々しい現場でのお話を伺いました。特に委員の中からも、きょうは先生方の御意見、政府委員に答弁をさせたらどうだという御意見が出るくらい本当に生々しいお話をちょうだいいたしましたし、また喜多、坂田両参考人からは大変学識に富んだお話を承りまして、本当に私たちも御意見を体して地方財政の問題に取り組んでまいりたいと思った次第でございます。
せっかくの機会でございますので、二つ三つ御質問をさせていただきたいと思います。
ちょっとふるさと財団の問題からお話を伺いたいと思うわけでございますが、喜多参考人と坂田参考人に対してなのでございますけれども、喜多参考人、財政力の弱い自治体に補正をというお話があったのでございますけれども、この補正の中身というのはどういうふうにお考えになっておられますのか、ちょっとこの点についてお話を伺いたいと思います。
〔委員長退席、西田委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/11
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012・喜多登
○喜多参考人 私先ほど申し上げましたのは、今回のこの改正の中に地域発展の政策というのが盛り込まれている。具体的には「地域産業の育成、地域経済の活性化の促進等地域振興に要する経費」、これについての財源措置であるわけです。その中で事業項目、単独事業、そういうのがいろいろと盛られてきているわけです。特にふるさとづくりにつきましては、市町村と、それから都道府県、この中でそれぞれ事業に関する費用、これについての目標というのができております。
さりながら、先ほど申し上げましたように経済的に弱い自治体、そして事実上今まで発展の核を持っておった炭鉱地帯とか漁村とかいうところにおいて核が失われつつある。こういうような状況に対して、これを活性化させていきたい。政府はそのために今、例えば活性化のための一つの具体的動きとして、ふるさとづくりというようなことを考えられている。
さて、そのような事業を推進しようとしても、自立財源調達という形から見ると、一つの規模を想定されて、この部分については助成するという、ある意味ではそういう計画についてはよろしいという条件を提示したならば、これは残念ながらできないというところは多々出てくると思うわけです。ですから、こういうところにつきましてはやはり特殊な補正というのが必要じゃないか。その特殊な補正と申しますのは、かつて数値急減補正というのがございました。これは明らかに過疎対策に対する問題でございます。しかし、過疎対策だけについての数値急減補正では、これははっきり申してこの地域の振興というねらいから見まして十分な機能を果たすことはできないと思います。そうした点につきまして、数値急減補正とは違った形の補正というのをここで考えていただけないであろうか。
その際の一つの指標というのは、財政力指数、この財政力指数のある一定の部門、これは都道府県と市町村について財政力指数の表がございます。例えば都道府県でいいますと、A、B、C、D、E、Fという段階をつくっておりますが、Fは東京であります。東京を除いて一番上はAのグループ、それからBのグループ、Cのグループ、Dのグループ、そしてEのグループとなっております。その中でD並びにEのグループ、それから市町村、これにつきましても財政力指数、これは欲を言えば〇・七未満という形につきまして、ここに特殊な補正というのが講じられないだろうか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/12
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013・金子一義
○金子(一)委員 ありがとうございました。
坂田参考人もこのふるさとづくり特別事業、またこれにあわせましてふるさとづくり財団の構想につきまして大変高く評価をしていただいておりまして、お話を伺ったわけでございます。
お話ございましたとおり、一時財団構想につきましては私たちも随分議論をいたしました。これが地方の本当の意味での活性化に非常に、ある意味では起爆剤になるだろう。ただ、残念ながら各役所間の議論というのもございまして、論理というのもございましたし、またそれなりに政策の間の整合性という問題もございまして、私たちは役所間で一度きちっとそこのところを詰めてほしいというようなことを申して、そこの調整をしてもらっておるわけでございますけれども、学識経験者として、外のお立場におられまして、そういう今の取り扱いにつきまして何かもし御意見ございましたならば、一言お願いを申し上げます。
〔西田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/13
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014・坂田期雄
○坂田参考人 ただいまのふるさとづくり財団についてのお話でございますが、私どもが聞いておりますふるさとづくり財団というのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、ふるさとづくり特別対策事業、これは自治体が起債と特別交付税という資金をもらって行政として行う基盤整備の事業。しかし、さっきおっしゃいました地域活性化、その起爆剤という意味で、いろいろな民間の企業誘致とか地域づくりというのはやはり官民協同でやらなければできない。そういう意味において民間をいかに誘導するか、そのために、では自治体は何ができるか。その場合にこのふるさとづくり財団というのは御案内のように無利子資金を融資しようというわけでございますが、融資をするという場合にはその資金は起債で、それから無利子の財源は地方交付税ということになるわけでございますが、民間企業に直接融資するという場合に、その民間企業が果たしてどの程度のノーハウを持っているのか、あるいは融資して大丈夫なのかどうか、そういう実質審査をする機関というのはやはり必要であろう。それがふるさとづくり財団だというふうに伺っておるわけでございます。
つまり、ふるさとづくり財団というのは、地方公共団体の共同の機関としてそういう実質審査をする役割、したがって別に金融機関じゃない。いろいろ各方面の様子とか伝わってまいりますお話を聞きますと、今御指摘ございましたように各省同士の調整がつかないということのようでございますが、例えばこれは金融機関であって、ほかの金融機関とこれは競合するんじゃなかろうかとか、あるいは国の政策とか金融政策にこれが重複するんじゃなかろうかとか、そういう議論がいろいろあるようでございますが、例えば従来国の補助事業について単独事業があるのと同様に、いろいろな融資の方法にしても、国の現在の開銀とかいう融資の方法と並んで、地方自治体の単独の融資というか、そういう道があっても別にいいんじゃなかろうか。現在の制度というのは、国の制度に地方自治体が上乗せしたり、あるいは国の縦割り行政に地方自治体が横に補完するようなさまざまな形で展開されている。それがまさに地方自治である。地方自治体の創意工夫が生かされるような格好で、ふるさとづくり財団というのは別に問題ないんじゃないか。
ただ、全体の金融体系とかそういうのが乱されるのじゃないかという心配があるとすれば、これは量的な面で、例えば地方債計画の中でこれが自治省と大蔵省との間で事前に調整される。金額的にもそう大きい金額ではございませんようですし、それから現在民間企業でいろんな既存のところから融資を受ける場合も、通常五〇%ぐらいの融資で、最大限七〇%のようであります。それで、このふるさとづくり財団を通しますのは何か二五%を限度とするようでございますから、現在の既存制度に食い込んでというのじゃない。現在の既存制度の外側で二五%が提供できる。そういう意味からいっても特に問題はないのじゃなかろうか。
私どもが外から見ておりますと、どうも中央の省庁というのは縄張りといいますか、どうもそういう意識が先に立って、あるいは中央の権限を自治体にとられたくないというか、そういう意識が先に立つんじゃなかろうかという、それは少し勘ぐりかもわかりませんが、どうもそういう気がするわけでございます。今我が国にとって一番大事なことは、いかにして多極分散、地方分散を進めるか。そのためには、地方だけではもうどうしようもできない、国で何とか手を打ってもらわなければならない。国に期待するのは、ふるさとづくり特別対策事業のようなこういう財源措置、それともう一つ官と民、民を誘導するためのこういう特別な融資制度。これはそういう意味では本当に地方自治体が地域活性化を進めるための有力な武器を中央の方で用意してくださった、これは地方自治体にとっては非常にありがたい。そういう意味で、全国の各府県が当初予算に一斉に予算計上して、ぜひこれでやりたい、これだけの強い地方の声が上がって、そろっている。これをぜひ国会の段階で、あるいは中央の段階でお進めいただくようにお願いをいたしたいというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/14
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015・金子一義
○金子(一)委員 力強い御意見、ありがとうございました。
増山参考人は現在宇都宮市長というお立場で、本当に現場で御苦労をされておられるわけでございますけれども、冒頭に六十三年度で日限の切れます補助金の補助率の問題につきまして、これはぜひ今度一括して戻せ、また滝井参考人からもこの補助率の問題が地方で非常に不信を呼んでおるという厳しいお話を承ったのでございますけれども、一方でこの補助率、六十四年度に向けて見直しを議論しなければいけない。
そこで、地方自治体の自主性、自律性という観点を十分尊重、配慮した立場からこれを検討していく必要があろうかと思うのでございますが、議論といたしまして、きょうも喜多、坂田両参考人からもお話が出たわけでございますけれども、この見直しに当たりまして、補助金の整理合理化といったようなものも考えるべきではないかという御意見も出ました。いわゆる補助金を一般財源に振りかえたらという切り口と、もう一つは、高率の補助のもの、生活保護等々の問題は当然国の役割。一方で奨励的な補助金、これは低率になってまいりましょう、少額になりましょう、そういったものは一般財源化してもいい。その他切り口は幾つかあると思うのですけれども、ちょうど六十三年で切れますこの補助率につきまして、増山参考人に見直しにつきましての御意見をさらに承れればと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/15
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016・増山道保
○増山参考人 先ほど田川の市長さんからも、重ねて、補助金の削減につきましては絶対お約束を守ってほしい、地方自治体の厳しい状況はともども申し上げたところでございますが、地方自治体にとりまして国の補助金は、事業を執行する上におきまして大変重要な貴重な財源でございます。したがいまして、前段申し上げたことと加えまして、従来の慣習から申し上げますと、少額の補助金でありましても、一生懸命書類をつくり努力をしながらそれを確保することが大きなインパクトとなって地方自治体を盛り上げてきた。こうした経過の中でございましても、行政改革あるいは合理化というような観点から簡素化をいただければ、またある程度のルール化をしながら、引き続き補助金行政につきましては御配慮をいただきながら、地方自治体の育成に温かい御配慮を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/16
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017・金子一義
○金子(一)委員 増山参考人にもう一つ御質問をさせてください。
きょうお話は出なかったのでございますけれども、地方自治体が本当に国に先駆けて行政改革というのをお進めいただいておりますし、また、さらにこれからもおやりになられるということでございます。しかし、この行政改革につきまして、国の法律でがんじがらめになっていて、そして地方で自主的に行政改革をやろうと思っても、様々な国の関与がかえって地方の行政改革に阻害要因になっているといったような問題点が随分指摘されるのでございますけれども、それについて増山参考人の御意見を賜ればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/17
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018・増山道保
○増山参考人 地方自治体が行政改革をしていく中で国の関与が阻害要因となっているというようなことについての御質問でございますが、地方自治体がみずから不断に行政改革をしようとする場合におきまして、事務事業の見直し、その組織、機構の再編合理化をいたし、定数を削減しようといたしましても、施設や職員の設置基準あるいは資格について法令等によりまして必置規制がございますため、国におきましてはこうした制度を改めない限り、地方自治体独自ではその改革を進めることができないという現状にございます。
したがいまして、地方自治体に密着をいたしました行政事務につきましては、地方自治体の自主性、効率性などを考慮いたしまして、国の関与をできるだけ少なくしていただきたい、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/18
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019・金子一義
○金子(一)委員 ありがとうございました。
滝井参考人からは、本当にまた生々しいお話を承って、いろいろ御質問も申し上げたいのでございますけれども、余り時間もありません。
一つだけ、先ほど滝井参考人がおっしゃられました地方債の発行による事業拡大は本当に限界だ、これを地方交付税で、要するに現金でというお話があったのでございますけれども、そうなりますと三二%の問題というのをどこかへ置いていかなければならない。そうでないとすると、今度は市町村間の問題ということになってくるのかなと思うのでございますけれども、これについて、最後に先ほどの御趣旨を承れればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/19
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020・滝井義高
○滝井参考人 最前学者の先生からもお話がありましたけれども、一つの方法として三二%、これは法律で変えてもいいことになっておりますので、三二%を変える。かつて、五十八年の借入金が非常に多くなったときには、国会でも変えようという論議が相当あったと記憶しておりますが、変えるという方法は、一つは、言われたように三税にもう一つ加えるということ。いま一つは、交付税は変えなくても補助金、土光臨調で補助金の合理化をやりなさい、そしてメニュー方式とかあるいはサンセット方式とか、切るものは切る、やるべきものは簡素にして地方に一括支給するという方法がある。そういう形で税源が確保されればそれでも結構。しかし、当面地方交付税法の一部を改正する法律でいえば、法律の中で不足のときは三二%は変えてもいいことになっておる。だから、法律の中でやればそういうことです、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/20
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021・金子一義
○金子(一)委員 大変ありがとうございました。
いろいろ御意見を賜りまして、これを参考にして、我々はまた地方行政の円滑な推進のために努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/21
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022・松本十郎
○松本委員長 中沢健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/22
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023・中沢健次
○中沢委員 お二人の現職の市長さんを初めといたしまして、学問的に大変な見識をお持ちのお二人の大学の教授に、大変御多忙な中お越しをいただき貴重な御意見をお聞かせをいただきまして大変ありがとうございます。時間的な制約もございますので、幾つかの問題に絞りまして具体的に参考人の方にお尋ねを申し上げたいと思います。
まず一番最初に、田川の市長でいらっしゃいます滝井参考人にお尋ねをしたいのであります。
先ほど交付税の産炭地補正の問題について具体的なお話がございました。たまたま私も北海道の夕張の出身でございまして、市長も御承知のように第八次の石炭政策が六十二年度からスタートをいたしまして、大変残念なのでありますが北海道で二つの山が閉山になる、政策に先駆けまして長崎の高島も閉山になる、九州、北海道で集中的に閉山と各山の合理化が非常に進んでいる、こういう状況でございます。直接その当該市町村の財政にも多大な悪影響を及ぼしている、これは事実でございまして、翻ってみますと、昭和三十年代の後半からそういう全国的な石炭のスクラップ政策がずっと続いておりますので、同じような傾向がもう長い間続いている、御承知のとおりでございます。
そこで、具体的にお尋ねをしたいのでありますが、この産炭地補正、投資補正のナンバー三というふうに言われておりますけれども、御指摘がございましたように、昭和五十一年にやはり国の政策として必要だ、こういう判断で投資補正が新たに導入をされた。そして昭和六十一年度までは同じ算定方式で基準財政需要額に一定の算式を用いましてその需要額が算定をされてきたわけなんでありますけれども、昭和三十五年の国勢調査あるいはその後の国勢調査の比較からいきまして、もうそろそろ全体的な計算方式の見直し、つまり漸減方式にしてもいいのではないか、こういうことになりまして、これには我が党としてはいろいろ問題を投げかけて反対をしてきておったのでありますが、結果的に、六十一年度まではその算式に応じて一つの算定があったのでありますが、六十二年度以降六十七年度にかけまして漸減方式で、つまり六十二年度は〇・九%、六十三年度は〇・七%、そして六十七年度はゼロになる、こういう漸減方式が今のこの交付税の制度で存在をするわけであります。
この補正によりまして、全国的な法の六条指定の自治体におきましては、基準財政需要額についていろいろ補正がありまして、恐らく田川市は全国で最高の補正を受けているのではないか。私の聞いたところによりますと、六十一年度でこの関係でおよそ十億円財政需要額が算定になっている。これが〇・一ないし〇・二減ってまいりますと、億単位の財政需要額が減る。そうすると、当然ながら普通交付税が減額になる。自治体の財政はそれでも大変なのに、ますます財政のやりくりが大変ではないか、このように考えます。
そして、そういう話も市長の方からございました。市長の方からは、代替措置についてぜひ考えてもらいたい、こういうお話でございますけれども、私どもとしては、一面この漸減方式についてもっと緩やかなカーブでやったらどうだという意見と、もう一つはこれにかわる代替措置が必要ではないか、二つ自治省当局にいろいろぶつけている最中なんでありますが、まだ最終的な自治省の見解はいただいておりません。したがって、市長の方から、代替措置の具体案がもしおありであれば、産炭地の財政実情も含めて改めてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/23
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024・滝井義高
○滝井参考人 中沢委員にお答えをいたします。
御存じのように、産炭地の客観情勢が大変変わってまいりました。まず、昭和三十五年の鉱業人口というのは、もう約三十年の時日の経過がありますから、その三十五年の鉱業人口を基礎にすることについて不合理性があるということもよくわかっております。それから就労事業も、御存じのように高齢者を排除するという労働政策、いわゆる六十五歳年齢ということで、この計算の基礎は、三就労事業、すなわち緊就、開就、特開という三就労事業の就業人員を基礎にしてやっておるわけです。当時私の方で、三十五年ならば一万人の炭鉱労働者、鉱業人口があったわけです。それから三就労事業も二千人を超えておったわけです。ところが、現在もう炭鉱がなくなっておりますから鉱業人口も激減をしております。それから三就労事業についても現在千五百人くらいだと思います。あるいは千二百人くらいかもしれませんが、非常に減ってきました。したがいまして、それを基礎にして産炭地補正をやるというのは難しい。したがって私の方も代替措置をやってもらいたい。
それじゃおまえは代替措置は何をとるかということが問題なんですが、その場合に、当然今の三就労事業が現実にあるわけですから、それは一応まず基礎にしてもらわなければならぬ。
それから、産炭地は御存じのように非常に高齢人口が多いわけです。全国で百人について十・九が一番新しい統計ですが、私の方の市は十六人。二十一世紀の日本の姿を先取りしているわけです。
それから、産炭地の後遺症としてあるのが生活保護です。例えば私らの郡でいきますと千人について百五十人から二百人。私のところは五十を少し割っておりますけれども、そういう生活保護というようなものも、これは特別交付税なり普通交付税でもある程度配慮はされますけれども、異常な状態にあるわけですから、何かそういう係数をやってみたらということで私どももいろいろ担当課長に勉強させておりますけれども、これだという決め手を実は持っておりませんが、今のようなものを参考にする以外にないではないか。
それから、場合によっては炭住改良。いわゆる炭鉱の炭住が残りますから、そういう残った炭住というものも一つの指数に入れてみたらということも考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/24
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025・中沢健次
○中沢委員 どうもありがとうございました。
いずれにしても代替の制度についてまだしかとしたプランをつくり得ていない。私もそれなりにいろいろ検討しているのでありますが、私自身もまだまとめた案を持っておりません。しかし、これは産炭地にとりましては非常に大事な問題でございますので、引き続きまた御連絡をとらしていただいて、私どもも参考になるような御意見なんかも今後いろいろちょうだいをさせていただきたい。今後ともよろしくお願いをしたいと思います。
二つ目の問題につきましても滝井参考人にお尋ねをしたいと思いますが、補助率のカット問題でございます。
これは本委員会でも委員会開催のたびにそれぞれの委員から自治大臣に対しまして、場合によっては大蔵省の方から関係者の出席を求めていろいろ論議をしている最中でございます。私自身も十四日の委員会でこの問題を取り上げまして、自治大臣の御答弁と大蔵の政府委員の答弁をいただきました。
市長も御承知のように、正確に言えば六十年そして六十一年から六十三年、四年間にわたって補助率がカットを受ける。莫大な被害を受ける。しかし、いずれにしても六十三年度までの暫定措置であるという約束を、少なくとも自治あるいは大蔵間でそういう覚書を含めて交換をしている。そうすると政治の信義の問題からいいまして、いろいろな意見があったにしても六十四年度はもとに復元する、これは政治上の信義であり常識だ、こういう立場に私は立っております。
そういう立場で自治大臣に質問いたしまして、大臣からもそういう趣旨で、いろいろ厳しいけれども地方自治を守る、あるいは地方財政を守るという立場で自治大臣として頑張りたい、こういう見解の表明が何回かにわたってございました。しかし、残念ながら大蔵省筋は自治大臣の答弁と違いまして、極めて玉虫色の答弁をしております。もっと言いますと、ごく最近大蔵省の首脳部の、いろいろな方針を協議をした段階で、この補助率のカット問題でいうと国の財政再建には非常に大きな要素である、したがって六十四年度以降も継続をして補助率のカットはやらざるを得ない、こういう状況のようでございます。
そこで、この問題に関連をして二つ見解をお尋ねしたいと思います。
先ほども市長の方からはあったのであります。宇都宮の市長の方からも同じような態度の表明がございましたが、改めて、六十四年度以降は補助率カットをもとに戻すべきである、こういう態度について表明をお願いしたい。
いま一つは、この問題については全国の市長会あるいは知事会等々を含めて、地方の六団体にとりましても大変大きな政治課題にこれからなってくるのではないか、このように考えます。これは私の希望でありますけれども、少なくとも自治省もそうでありますが、大蔵省筋に対しまして地方の六団体ががっちりスクラムを組んでいただいて、足並みをそろえて六十四年度完全に復元を迫っていく、そういう行動の展開が、地方自治の最前線で大変な御苦労をされておりますけれども、首長やあるいは議会の長の組織の責任ではないか、このように考えますが、その辺についての御見解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/25
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026・滝井義高
○滝井参考人 お答えいたします。
第一点につきましては、最前意見を申し述べさせていただきましたように、当然我々地方自治体といたしましては、補助率のカットは約束どおり暫定措置でございますから、六十三年度が終わって六十四年から新しい観点でそれを復活していただきたいと思っております。
ただその場合に、大蔵省は大変多くのところから借金をしております。例えば政府管掌健康保険から千億借りるとか、あるいは国債整理基金に繰り入れをやめておるとか、二十四兆ある。したがって二十四兆もあるから、これを扱えばそれに連鎖反応が起こるということを言っておられるように聞いておりますけれども、それはそれ、これはこれで、地方自治体のいわば共有の自主財源を全部借金で、起債で賄わせるということは地方自治体の自主性、弾力性——地方の時代なんというのは言葉だけになっている、だから先が見えない、こうなっておる。したがって絶対にそれはすべきだと思います。実行していただきたい。
それから、地方団体の問題でございますが、先般全国の市長会の理事会でこの問題を私発言をいたしまして、これはやはり全国市長会の理事会だけではだめだ、それぞれ各県の市長会からこの問題を討議してくる必要があるというので、福岡の市長会を先日開きまして、これを九州の市長会に決議案として上げようという決定をいたしました、六十三年限りと。恐らく九州の市長会もそれを全国の市長会に上げてくると思っております。
ただ私たちが大変懸念をいたしておりますのは、税制改革についてこれが関連をしてくるおそれがある。と申しますのは、前回の売上税のときに地方譲与税の形で問題が出てきているわけです。したがって、税制改革が非常に大きく論議をされる段階でこれが巻き込まれるおそれがあるので、巻き込まれないうちにこの結論を早く国会においても出していただきたいし、私たちもそういう努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/26
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027・中沢健次
○中沢委員 ありがとうございました。今後ともひとつよろしくお願いしたいと思います。
時間がもう迫っておりますので、最後に喜多教授にお尋ねをしたいと思います。
先ほどのお話の中で、ふるさと財団に関連をいたしまして、財政的にはふるさと補正ということを学問的な立場でお考えである。これは言葉として私は初めて聞きました。恐らくいろいろな研究をされた上での見解の表明ではないかと思いますので、もう少し具体的な内容も含めて、先ほども少し関連してございましたけれども、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/27
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028・喜多登
○喜多参考人 先ほど御質問を受けまして、そのときに私が申し上げた点、まず第一番目には数値急減補正というのが現行の制度の中でございます。これは過疎化を起こしているというところについての対策でございます。しかし今回私が申し上げているのは、あくまでも財政力の弱いところで、これから地域を振興させて、そしてそこで新たな発展をつくり出そうと努力しているところに何らかの財政的な措置が必要になる。時あたかも、このような新しい視点から地域振興に関する措置が地方交付税の見直しの中に入ってきているわけであります。ですから、これは日本全体に行き渡るような一つの大きな仕事ですが、財政力の弱いところにおいては到底そういうことはでき得ない。でき得ないから、ここに特別の補正措置をやったらどうでしょうか。仮の名前を名づけるならばということで、ふるさと補正ということを申し上げたわけです。
さて、その対象となるのはどんな自治体であるかということについて、先ほど申し上げましたように財政力指数からグループ別をつくっております。これは都道府県、市町村全部できておるわけです。そうすると、先ほど申しましたようにFの段階は東京でありまして、上から財政力のいいところからAグループ、Bグループ、Cグループ、Dグループ、Eグループとなっておるわけです。この中でD並びにEの、これは都道府県について見てまいりますとCの中にも本当は入ります。だけれども一応ここでは便宜的にD並びにEというグループにしておきますが、この中でいろいろな発展計画をやろうとしても、先ほど坂田教授が言われたように、私も実は地域振興のためにということで、昔から財政問題となると私はその点に焦点を置いて研究しているものでございますが、その論点から見ますと、いかにして地域を振興させていくか。そのためには企業が入ってきて、そして子供たちの中にはどんどん中央へ中央へとなびいていく、その姿を何とか食いとめていく地域振興策をやらなければならない。ですから、こうしたところに今申したような特殊な補正を少しでも与えることによってそれができないだろうか。
市町村につきましては、財政力指数の中で、これは欲を言えば切りがございません。しかし、先ほど一応数値を申し述べたのは〇・七。〇・七の財政力に満たないそういう市町村につきまして、あるいはまた段階的でもよろしいですが、そういうことができないであろうかということを申し上げたわけてあります。したがって、こういうふるさと補正ということが一つの契機となって、今まで例えば事業体としてこれだけの事業ができるところに、さらに財源が特殊な加味をされるとするならば、私は地域振興が本当に仏つくってこれに魂が入るのではないか、このように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/28
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029・中沢健次
○中沢委員 大変貴重な専門的な御意見をいただきましてありがとうございます。いずれにしても、この委員会の部屋の中に自治省の担当課長それぞれお見えでございますし、今御意見をいただきました内容も含めて、私どもとしてはさらに検討を加えまして、具体的な制度をつくる、あるいは制度の補正をさせるということで、引き続き私どもも努力をしたいと思います。
時間が参りましたので、改めて厚くお礼を申し上げまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/29
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030・松本十郎
○松本委員長 草野威君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/30
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031・草野威
○草野委員 本日は、参考人の皆様方にはお忙しい中をわざわざ国会までおいでいただきまして、まことにありがとうございました。
初めに、東京一極集中と地方分権、こういうような問題について参考人の皆様方に御意見を承りたいと思います。
なぜ東京に集中するか、そういうことで、これは多くの権限また財源というものが東京に現在集まっているから、こういうお話がございましたけれども、竹下総理のお書きになられた本の「ふるさと創生論」の中にこういう一節がございます。国が企画を出し、地方がこれに乗るという仕組みを逆転させ、地方が知恵を出し中央が助成する、こういう仕組みにすべきである。このように述べている一節があるわけでございます。私も拝見いたしまして、ここに書かれている意味というものは、地域政策の推進に当たっては住民の創意工夫によって行うものであって、そのためには地方自治体に対して国の権限というものを大幅に移譲しなければならない、そして中央は全国的な調整とか技術的な援助をすればよい、こういう考え方であろう、このように私は理解をしたわけでございます。
そこで、このような竹下総理の考え方を実現させるためにはどのような方策が必要であるか、参考人の皆様方の率直な御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/31
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032・増山道保
○増山参考人 地方団体におきましては、それぞれ二十一世紀を目指した町づくりを進めることに官民一体となって努力をしておるところであります。そのためには地域の総合的な振興整備を図らなければならない、こういうことがあるわけでありまするけれども、一面、地方におきます民間企業の立地というようなことはまことに厳しいものがあります。また、先ほどからお話に出ておりますように、今の地方自治体それぞれ厳しい財政環境の中で、それぞれの地方団体だけではなかなか対応できない限界がございます。
そうした状況の中で、地方団体が共同の仕組みのもとで、地方債あるいは地方の共通財源であります交付税を活用いたしまして、長期で低利の地方の単独事業を行いまして、都市の設備や文化、スポーツ施設の整備など民間活力を積極的に導入することによって、一極集中が多極分散になるようにという大きな期待を持っておるわけでございます。そうした中で「ふるさと創生論」につきまして、こうしたことが真の地域の振興や地域経済の活性化にもつながるものということで大きく期待をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/32
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033・滝井義高
○滝井参考人 お答えをいたします。
極めて具体的に御説明してみますと、九州、山口に人口五万以上の都市が約五十ございます。その人口五万以上の都市で、人口が減っておるのが約四割、二十二の市で人口が減っております。人口のふえておるのは、主として県庁所在地でふえておる。いわゆるミニ東京一極集中主義ができておる。九州、山口の中で県庁所在地で減っているところが一つあります。それは長崎でございます。なぜ減るか、造船でございます。福岡県で一番典型的に人口が減るのが北九州と大牟田と私の田川でございます。したがって、これから新しくふるさとをつくろうという場合に、我々が知恵を出したらそれに対して国が助成をしていただける、こういう形が最高なんです。今御指摘のとおりです。竹下総理も言われるとおりです。
そこで、そういう人口が減る状態を分析してみますと、極めて端的に申し上げますと、長大重厚型の産業のあったところが減るわけです。あるいはその周辺が減るわけでございます。したがって、私の方では炭鉱、北九州では炭鉱と造船と鉄でございます。それから大牟田は石炭を中心にして減っていくわけです。ふえているところはどういう形でふえているか。一番典型的なのは福岡都市圏でございます。今百八十万ぐらいで、スプロール現象が起こっています。これが七十五年、二十一世紀の初頭になりますと約二百四、五十万になっていきます。急速にふえていくわけです。なぜ我々の方は減るかというと、最前申しましたように長大重厚型の産業、いわゆる前川レポートによる決定的な空洞化の影響を受けたところが減ります。そして福岡でふえるのは何かというと、高度技術と高度のサービス業です。これが合併をするところはふえていくわけです。
そこで、私たちが福岡のそういう状態をつくろうとすると、どういうところに大きな隘路が出てくるかというと、技術的能力を持った労働者がいないということです。炭鉱にしても鉄にしても、労働者というのは色が真っ黒くて筋骨隆々たるブルーカラーを思い出すわけです。ところが、そういうブルーカラーは単純労務で高度の技術を持たないから、企業が来ようとしてもいわば技術的な基礎がないわけです。それならばそれをすぐに技術的なものに切りかえ得るかというと、ピッツバーグが鉄で倒れましたけれども、そういう基礎を築くためには十年、十五年かかるわけです。少なくとも小学校、中学校からコンピューターを教え、そして技術的な能力をつけた基礎がないとだめだ。あるいは付近の工業高校が高度技術のコンピューターその他をやる、あるいは情報の処理訓練ができる、そういうものがないとだめなんです。したがって、そういうものをこれからつくろうとすると、今労働省の職業能力開発局で例えば雇用促進事業団に職業訓練校をつくらせようとしておるわけですが、それはテクノポリスとかテクノピアのあるところでなければだめだ、こういう形になっています。したがって、我々はやろうにもやりようがない。大牟田、北九州、田川というようなところはできない。
今の我々の産業構造を見てみますと、第一次産業の農業が三%か四%、二次産業、鉱工業が三四、五%、そしてサービス業が六五、六%。そのサービス業も飲み屋とかバーとかパチンコとかというようなものであって、高度のサービスと高度の技術、例えば通信とか運輸とかというようなものではないわけです。したがってホワイトカラー、アメリカ流に言えばゴールドカラーの養成が全然できていない。ここらの基礎をこれからどうするかということは、地方自治体の最大の課題であり、日本の課題だと思うのです。それが東京一極集中主義でいっているわけですから、日暮れて道遠しというのが現状であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/33
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034・喜多登
○喜多参考人 申し上げます。
私は、国民経済的な視点からグロウスポール、これをここに成長させていくということが大切ではなかろうかと思います。そしてこれはただ単に政府部門だけではなくて官民一体となって、つまり民間の活力を利用して地域振興が図れるようにしなければならない、かように考えます。
では具体的にどうなるかと申しますと、テクノポリス法、これは通称ですが、せっかくこの法律ができてテクノポリスの指定が行われております。これは日本列島の空間構造に関する新たな改革の視点であろうとは思います。このようなテクノポリスというのは産、学、住、そしてもう一つは交通、この四つの体系をセットとした地域的な成長の新たな拠点をつくろうとする、こういう考え方だと思います。したがって、このような分野について格段の配慮が、実際上テクノポリスがつくられて動き出していっても、これに実を結ばせるためには財政的な特殊な措置が必要ではないか、かように考えます。
ところが、テクノポリス指定外の中で大変苦しんでいるところがあります。こういう地域に関しては、はっきり申して国家的な大規模なプロジェクトを投入する必要がございます。したがって、こういうところについては地域を指定しまして、国家的プロジェクトをここで展開することによって各地方に核となるような都市をつくり、今まで一極集中型で、人並びに情報、さらに頭脳も東京に集めているところから、地方にそれぞれ核となるような場所をつくり上げて、それを成長の拠点とするような考え方が必要ではなかろうか、かように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/34
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035・坂田期雄
○坂田参考人 ただいまのお話は、竹下総理の「ふるさと創生論」の言葉を引かれまして、地方が知恵を出し、中央が助成する、こういう方向を実施するにはではどうしたらいいかというお話であったわけでございます。この点から見ました場合に、現在の国庫補助金を中心といたします制度の中では、地方の知恵とかアイデアとか創意工夫の芽が摘まれてしまう。むしろ先ほどお話がございました前段の、中央が企画して地方に押しつけるという型になってしまう。これではだめだ。では本当に地方が生き生きと地域活性化をやるためにはどうするか。そういう点で、先ほど来お話が出ております今年度の新しい事業のふるさとづくりの特別対策事業は、国庫補助事業とは違いまして、地方がこういう町づくりをしたいという知恵を出す、これに対して中央が、上から干渉するのではなくて、むしろ横あるいは後ろからこれを起債と特別交付税で助成しよう、まさに今おっしゃられたことにこれがぴったり当てはまるのではないかと思うわけでございます。
それと、先ほどからお話が出ておりますふるさとづくり財団、これは官だけではなくて民間がそれぞれの地方を舞台にして活躍できるように、自治体が判断をして、こういう助成をしたい、こういう援助をしたい、そういう自治体の知恵が生かせるように資金を用意する、地方議会の議決でそれを運用なさる。そういう意味において、中央がそういう枠組みあるいは資金を用意して、それを使うのは地方自治体の自主性に基づいてできる、まさに非常に理想的な、四全総の地方分散に向けての新しい地方財政制度の第一歩を踏み出すすばらしい制度ではないかと思うわけでございます。
ただ問題は、現在の日本では総論賛成、各論反対で、いざこういうものができるということになると、いざ各論になると反対になる。中央省庁がそれぞれの権限を皆さんお守りになる、あるいは中央と地方との関係で地方に渡したくない、そういう点で障害があってなかなか進まない。せっかくのいい制度が動き始めようとするときでございますので、ぜひ国会の先生方のお力で、地方が今待ち望んでおるのではないか、地方の自主性が発揮できるような新しい税財政制度への進展をぜひお願いいたしたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/35
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036・草野威
○草野委員 大変どうもありがとうございました。まさに総論賛成、各論反対でございまして、日暮れて道遠しという感でございます。
次に、喜多先生と坂田先生にお尋ねをしたいと思います。
先ほどからのお話の中で減税と地方自治体の財政に与える影響ということがございました。現在国会におきましても減税問題が議論されている最中でございまして、この減税問題には国民も大きな期待を持っているわけでございます。一方、地方自治体の財政の問題につきましても、これまた非常に影響が出る大きな問題だろうと思います。この問題につきまして、先ほどの御意見の中に、新しい税、また交付税の税率アップの問題、それからまた補助金のあり方についても御意見がございました。特に補助金のあり方等を含めまして、もう一歩具体的なこの問題に対する御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/36
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037・喜多登
○喜多参考人 お答えいたしたいと思います。
減税は国民全体待望でございます。しかし、先ほど申しましたように、減税が行われましても直ちに地方交付税のマイナスということにはなりません。それは、この減税によって所得をどんどん生み出して新しい形の税収を伴ってくる、こういうことがある場合であります。逆にそういうことがない場合は、これは明らかに交付税の減収へとなってくるわけです。そこで現在のような経済的環境、つまり経済成長率がプラスであって、四%、五%というような実質成長率を持つような場合について言うならば、相当税収の増加ということが考えられます。ただし国会で今いろいろ論議されているように、累進度を大きく変えてしまう、アメリカ型のようなフラット化に近い形になっていきますと、これは大分様子が違います。さらにまた、今度は経済状態が四から五%の成長ではなくて下がってくるような場合がございます。このときは、私どもこれを租税の弾性値という言葉を使っておるのでありますが、経済成長よりも税収が上がっていく場合と、今度は逆に経済が下がったために租税収入がそれ以下に落ち込んでくる、こういう状況が出てくるわけです。そういう事態というのは、制度の中に既に予期して、その対策というのを持っておかなければならぬ。こういう状況にある場合においては、地方交付税制度それ自体の中で減収が生ずるということを前提としてこの減税問題というのを考えていかなければならぬと思います。
そこで、その問題につきまして、一つは、国税三税の中に新しい何らかのものを加える。この何らかのものの中には、巷間言われているような新しい形の間接税が入るかもしれぬし、あるいはまた現在行われている何らかの税が入るかもしれない。こういうところを考えてみる必要があるということが第一点。
第二点は、交付税の税率を三二%から上げて、つまり減収に見合ったところへ上げていく、こういう措置が必要だと思います。
しかし私は、それにも増して必要なことは、新しい考え方に基づくところの財源付与の制度が必要ではないかと思います。それは、先ほどから市長さんたちが非常に御苦衷を述べられておりますが、現行の補助カットに関する問題でございます。現行補助カットが行われているが、それをもとに戻してほしい。私は今チャンスだと思うのです。つまり戻す際に、ここに注文をうんとつけた昔の形のままで例えば国庫支出金それ自体を戻していくという考え方があります。私は、戻す場合に、その戻すべき額、総額全体の中で、各省所管別の形の、機関別、これは目の細分となっておりますが、その中で、各事業体についての部門の中で、少なくても項の段階において、これから戻す領域、ある意味では増加させている領域を包括化して、つまり新しい形の包括補助金という形で出して、自治体における財政自主権というものをここに大きくさせていく方策こそ望ましいのではないかと思います。つまり包括的補助金と申しますのは、現行地方交付税制度と現行国庫支出金との間のちょうど中間的なものでございます。
今から十数年昔でございますが、ニクソン大統領がレべニューシェアリングというシステムを取り入れていきました。そのときにニクソン大統領は、地方政府に対して、レッドテープをいっぱいつけた、つまりカテゴリーグラントでこれを押し込んでしまっている、これを何とかして解除して、地方政府の自由度をもっと増す方策を考えるべきである。そしてそこで生まれてきたのがレべニューシェアリング制度であったわけでございます。今日レーガン大統領のもとになってきておりますが、レーガン大統領はもっと違った形で、包括的な補助金、つまり補助金のカテゴリー、つまりいろいろ注文をつけてこういうふうにしなさいとして渡している補助金をここに改めて、自由度を高めたところの包括的な補助金へと向かっております。
ですから現行制度を基底として我が国について考えるならば、補助金を一括して包括するということはできません、これは各省のいろいろな利害関係がありますから。ですから、少なくとも戻すという場合については、その戻す額の中で包括できる、つまり少なくとも項の部門で包括できるものを自治体の自由に使えるような形へと渡すならば大変望ましい状況になるのではないか、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/37
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038・坂田期雄
○坂田参考人 ただいまのお話は、減税という要請がある一方で、地方団体の自主財源を増強しなければならないという要請をどう考えていくかということではないかと思うわけでございますが、確かに国税におきまして所得税、法人税を減税、あるいは地方税においても住民税を減税、こういう要請の強い中で、他方地方団体の自主財源をどう増強を図っていくか、大変難しいところじゃないかとも思うわけであります。
それで先ほども申し上げましたが、現在我が国の租税体系全般について直間比率の見直しも含めまして抜本的な検討が行われておるわけでございますが、この抜本的な改正が行われるとすれば、その時期をとらえまして地方団体の自主財源が十分に確保されるよう、そういう非常に大事な時期に十分な配慮あるいは先生方のお力をぜひいただきたい、必要なのではないかと思うわけでございます。
もう一つは、国庫補助金とも絡めてというお話でございましたが、国庫補助金というのが現在の地方自治を非常に侵害している、あるいは地方自治にとっては悪の根源とも言える状況じゃないかと思うわけでございますが、今後の方向としては、国庫補助金をできるだけ減らして、これを地方税とか地方交付税という自主財源に振りかえていくというのがもう一つの方向じゃないかと思うわけでございます。ただ、これは戦後四十年、言われながらなかなか実現しないわけでございますが、そういう考えに立ちました場合に、先ほどの国庫補助率の三年間の暫定をもとへ戻す、これは当然かとは思います。そうでないと地方団体は非常に不安な状況にありますが、ただそれだけではなくて、国庫補助金そのものをなるべく縮小を図って自主財源に振りかえていく。そういう観点から見ました場合に、先ほどのふるさとづくりの特別対策事業、こういうものは交付税というものをバックにいたしまして、それで地方団体の創意工夫の芽を摘まないで、なるべく生かした格好で伸ばしていこうという新しい行き方、自主財源をそういう形で新しく使っていくというのが一つの方向ではないかと思うわけでございます。今後の方向、あり方としてはそういうようなことが重要な点じゃないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/38
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039・草野威
○草野委員 どうも大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/39
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040・松本十郎
○松本委員長 岡田正勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/40
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041・岡田正勝
○岡田(正)委員 参考人の皆さんにお礼を申し上げます。本当にお忙しいところをわざわざお出ましをいただきまして、大変貴重な御意見をいただきましたこと、心から厚くお礼を申し上げます。
それでは時間の許す限り、諸先生の御意見をこの際承りたいと思います。
まず冒頭に、増山宇都宮市長さんと滝井田川市長さんに国保の問題でお尋ねをいたしますが、国保の問題でいつも話題になりますことは、お店に行きましてお金を出して買う人はお客さんであります。お客さんは品物を選ぶ権利があります。選択する権利があります。そして買わない権利もあります。ところが不思議なことに、国保の中においてはこういう現象があります。医学生を幾らの定員にするか、そしてお医者さんとしてこれを認定するかしないかというようなことは専ら国の権限でございます。病院を設置するか、あるいは病床を幾らふやすか、あるいはレセプト審査をすることについては専ら県の所管でございます。それじゃ市町村は、お金を集めてくる、いわゆる納税をしていただく、徴収と支払いの義務を負っておるのは市町村でございまして、市町村はお金の徴収と支払い義務だけということで一切口を出すことができない、発言権がないというような状態にあります。
両市長さんはそういうお立場に立っていらっしゃるわけでございまして、そういう立場からお考えになりまして、現在の医療保険制度につきまして抜本的な改革をするとするならばかくありたいというようなことがございましたら、ちょっとお教えをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/41
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042・増山道保
○増山参考人 医療保険制度の抜本的な改革についてでございますが、国民健康保険を取り巻きます状況は皆保険達成当時に比べまして大きく変化をしてまいっております。老人保健法が改正されたとはいいながらも、このままの状態で引き続き皆保険制度の、保険体制の主柱としての役割を果たすことは極めて困難であろう、このように受けとめております。こうした状況から脱却いたしまして、二十一世紀の超高齢化社会において安定した医療保険制度を構築するためには、国民健康保険制度のみならず、医療保険制度全体の抜本的な改革が緊急に必要であろうと存じます。現行医療保険制度の最大の問題点であります制度間、保険者間の給付と負担の不公平格差を是正するため、医療保険制度の一元化が必要でございます。この一元化推進に当たりましては、現行制度の枠組みを維持しながら給付率を八割程度に統一するとともに、負担の構造的要因による格差を解消いたし、そういうことによって高齢化社会に対応する医療保険制度を構築していただきたい。次なる改正に向けてどうぞひとつ、国民医療は国の責務であるという基本的な理念に立って、抜本的な改革についてお取り組みをいただければ大変ありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/42
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043・滝井義高
○滝井参考人 お答えをいたします。
まず、現在の日本の保険制度をごらんいただきますと分立をいたしております。しかも、それが職業別に政府管掌保険、組合保険、船員保険、それから日雇いは健康保険に統合されましたけれども、共済組合というように分立をしている。多分八つか九つあります。
行政改革という名のもとに今度は国民健康保険を改革したわけですが、これがまた行政改革に逆行をして複雑になりました。まず我々が定年退職しますと国民健康保険に入ります。そうすると、その国民健康保険で六十歳に達すると退職者医療制度にいきます。七十歳になると老人保健にいきます。そして、どうにもならなくなると医療扶助にいくわけです。いわば渡り鳥保険でございます。したがって、我々地方自治体が医療費の動向を見ようとしても医療費の先が見えないのです。ばらばらになってしまっておる。今まではやせても枯れても国民健康保険の中に高齢者も退職者もみんなおりました。老若男女皆いたわけです。したがって、医療費の動向を見ることができましたが、見ることができないわけです。そういうことになりました。
ところが、もう一つ今度は老人保健等をつくりましたから、この外の健康保険組合、共済組合、国民健康保険組合からいわゆる按分率で拠出をいたします。それで六十一年は八〇、それから六十二年、六十三年、六十四年は九〇、六十五年は一〇〇%となったわけです。ところが最近、政管健保、組合健保をごらんいただきますと、例えば炭鉱の健康保険組合、鉄の健康保険組合等は、もう療養所を売らなければ拠出金を順当に出すことができなくなりました。しかも、同時に保険料を上げざるを得ない、こういう形になってきた。したがって、恐らく一挙に一〇〇%まで行くつもりだったのでしょうけれども、それが行けない。だから、六十三年、六十四年と二年間情勢を見てもう一遍検討しましょう、こういう形になっております。六十五年以降は、政府・自民党の方で、一本化について抜本的な改正をやるということを医師会等に公約をいたしております。したがって、当然今のような拠出金が大きく影響して他の国民健康保険以外のものに赤字基調が出てくる、それから抜本的な改正はやらざるを得ない、こういう情勢に今追い込まれております。
そういう中で、複雑多岐にわたった継ぎ足しだらけの日本の医療制度をどうするか、どこに根本的な問題があるかということです。
まず第一に、日本の医療費を国民経済の伸びの枠の中でおさめようというのが厚生省の基本的な原理原則で、理想的なにしきの御旗でございます。国民経済が高度成長のように一五%も二〇%も伸びておるときならば結構ですが、今のようにせいぜい三・五%程度の実質成長になりますと、医療は、普通の政管健保にしても共済組合にしても少なくとも四、五%は伸びていくわけです。いわんや、老人保健になると平均したら九%、我々のところのように高齢化社会のところは一二%から二〇%伸びるわけです。したがって、国民経済の成長の枠の中におさめることは、木によって魚を求むるに等しいたぐいになってまいりました。
そこで、一元化というのは、今のような財政調整をやるのが一元化でございます。一元化で日本の未来に夢とロマンがあるか、日本の保険制度の中に夢とロマンがあるか。私はないと思っております。そこで、それならおまえは一体どういう考え方を持っておるか、私はこういう考えを持っています。
地方自治体の首長としていろいろ実践をしてみました。その前に老人保健法ができたわけです。私の方では幸せ開く健康展をやっております。全市民を対象に健康政策をやるわけです。厚生省に行って聞きました。労働者をこの中に入れてやるのだ、一体どうするのだ。いや、労働者の方は別に健康保険組合でそういうことをやるから、地域の中小企業、農民、自由業等をやってください。ところが医療というのは、エイズの問題にしても伝染病にしても包括的にやらないとだめなんです。地域、コミュニティーというのが我々の生きている拠点です。コミュニティーで健康を守っていくという形なんです。そうしますと、保険の主体というのは地域保険になります。その場合に、働いておる労働者の皆さんを地域保険に入れると、事業主の出す二分の一をどうするのだという問題が厚生省からすぐに指摘されます。それは保険制度とは別の問題で、労使の間で話し合って、労働者が出す保険料を組合が別な形で見てやればいいので、地域保険は今の国民保険と同じように、世帯割、人頭割、所得割、資産割、こういう形で大体フィフティー・フィフティーで取っていくわけですから、労働者であろうと農民であろうと同じく取ればいい。
その場合に、労働者、農民のクロヨンが問題になる。所得捕捉ができるか。これは一生懸命にこれから捕捉をすることとして、そういう形でコミュニティーの中で全部の住民を見ていくとなりますと、そのアンバラが、例えば我々の産炭地とか過疎地は非常に貧しくて年寄りが多くて医療費が余計にかさみます。そうでないところはうまくいく。しかし、都市は移動が多くまたうまくいかぬ。いろいろあります。だからそれは、最前言った医療費の調整をうまくやってもらってすればいいのじゃないか。したがって、人間の生命というのはコミュニティーで守るべきだ、地域社会で守るべきだ、そのときにはすべてが平等である、自治体がそれを責任を持ってやる、こういう形が一番理想だと思います。
その場合に、それでは財源をどうするかという問題が出てくるわけです。この財源問題をどうするかといったときに、目的税としてひもつきの、余りむちゃくちゃに伸びない保険料とその目的税を一緒にかみ合わせたものでいくかどうかということが、これから議論になるところだと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/43
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044・岡田正勝
○岡田(正)委員 ありがとうございました。
それでは次に、喜多先生と坂田先生にお伺いをいたしたいと思います。
先生方のお話の中にもございましたが、現在の国庫補助のカット、これが六十年で五千八百億、六十一年が一兆一千七百億、六十二年が一兆四千九百七十億、六十三年が一兆六千五百六十九億、トータルで四兆九千三十九億円という膨大な補助金のカットを続けてまいっております。これは本年、いわゆる六十三年度で終わる。六十四年度からはもとへ戻すのだというようなことを政府も言っております。これは、実際は交付税その他で措置をしてありますから実害のようなものは今表にあらわれておりませんが、先生方の御意見も、私どもの意見も、両市長さんの御意見も、とにかく六十四年度からはもとへ戻せということを言っておるのであります。
ところが、坂田先生の御意見の中で貴重な御意見がありました。国庫補助のカットを六十四年度にはもとの姿に戻せということを言うよりは、地方自治を統制支配をしておるガンとも言うべきこの国庫補助金の姿を変えるためにも、国庫補助金はむしろ減らすべきである、その減らしたものをもって総額で変わりがないように地方へ自主財源として与えるべきであるというような御趣旨のお話、これは喜多先生も坂田先生もお話があったように思います。
私ども民社党といたしましては、これは長年来の主張でありますが、先生方の御主張のとおり、そういうものを包括して第二交付税的な性格のものとして、地方の自主性、地方の多様にわたるいろいろな需要があるわけですから、そういうものに対応できるように、地方が本当に自主的に運用できるような財源として地方に与えるべきである、国庫補助金そのものはむしろ減らすべきである、こういう考え方を多年唱え続けてきておるのであります。このことにつきまして、両先生から御意見を承れればありがたいと思うのであります。
〔委員長退席、岡島委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/44
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045・喜多登
○喜多参考人 お答えいたします。
私は、一つの政策を急変させるということは、与える影響がかえって大きくなると思います。つまり、一つの政策が大きく転換することによって、私はこれはイナーシャと言いますが、今まで自治体が一つの制度のもとで、いろいろな法律制度の中で運営されて、住民それ自体がある意味においてはそれになれ親しんでいる場合がございます。その状態を一挙に改廃して、そして新しい制度に行かせるということになると、ここにはむしろ制度を新しく改定することによる混乱の方がはるかに大きいのではないかと思います。
そこで私は、現行制度をベースにして改革ができないだろうか。その改革という形は、今ちょうどこの補助金に関するカットの時期がありまして、それをもとに戻すとするならば、そのもとに戻すという好時期をつかまえまして、在来型の補助金の補助率の部分については金額的な形でこれは在来型でやるけれども、その上に、もとに戻してきたならば、そこに各行政項目についての戻す額が出てきます。その合計額を全部ここで考えてみたらどうか。そのうちに、例えば土木事業関係と言っても各項目うんと分岐しております。それを土木なら土木の中でまとめることができればいいけれども、それが難しいとしたら少なくとも目、その目のところでいろいろ包括して、そしてその金額を自治体に渡したならば、財政自主権という形から見て大変望ましいのではないか。特に、地方予算という場合に、予算編成というのは国庫支出金によってほとんどこれが工作されてまいっております。ですから、こういう状況を少しでも緩和させるためには、このような、つまり現行制度を前提としながら一歩進んだ包括化、この方策が考えられないのであろうか、こういうことを申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/45
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046・坂田期雄
○坂田参考人 ただいま国庫補助金についてのお話をいただいたわけでございます。
ただ、私が先ほど申し上げましたのは、国庫補助率の暫定が六十三年度で終わって六十四年度からというのは、それをしないでということではなくて、それは当然もとに戻すべきである。地方団体の皆さん方の熱心な要望であるし、約束であるし、これは当然であろうと思うわけであります。ただ、それで全部よかった、終わりということではなくて、それよりもっと大事な問題が、国庫補助金を自主財源に振りかえるという大きな問題があるのではなかろうかということで申し上げたのです。
さて、そこで、第二交付税というお話が先生からございまして、民社党が以前から御主張になっておられることでもあり、私も以前からお伺いしているところでございます。確かに現在の国庫補助金というもの、何とかこれをなくしたいという場合に、一挙に自主財源というのはまず難しい。恐らくその中間、過渡的な形態として第二交付税という考えが構想されたのではないかなというふうに、ちょっと拝察いたしておるわけでございます。
ただ問題は、どうやって実現するか。例えば第二交付税が仮にできたとした場合に、何を基準にしてそれを配分するのか。今の交付税のように人口とか面積とかを基準にして配分するのか、あるいはそうじゃなくて、ふるさとづくり特別対策事業のように地方がプロジェクトか何かをやろうというところに対してはぽんと与えるというやり方でやるのかどうするのか。前者の、人口とか面積を基準に案分するのであれば、今の第一交付税と同じになってしまうじゃないかという問題もあるのでしょうし、それからもっと現実的な問題といたしまして、ではそれはどこの省庁が所管してやるのかという生々しい問題になってきますと、国庫補助金が戦後四十年全然変わらないというのは、それが中央省庁の権限でありますから、中央省庁が自分の権限をみずから縮小するような改革というのはまさに大改革でございまして、非常に難しい問題があろうかとも思うわけでございます。
しかし、それにいたしましても、仮にそういう形でも実現すれば、これは地方自治にとっては大前進ではなかろうか。少なくとも現在の、国庫補助金でも一つ一つ細部まで干渉されて、地方自治体が全部中央省庁の支配下に入っているというのではなくて、枠で与えて自由に使える財源として渡すという、そういう意味では、このような構想、このような考え方が今後さらに前進して具体的な形へと進めば、自治体としては非常に画期的な前進になるのじゃなかろうかというふうにも思うわけでございます。
〔岡島委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/46
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047・岡田正勝
○岡田(正)委員 ありがとうございました。
まだまだお聞きしたいことがたくさんあるのでありますが、残念ながら時間が参りましたので、終わらせていただきます。大変ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/47
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048・松本十郎
○松本委員長 経塚幸夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/48
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049・経塚幸夫
○経塚委員 参考人の皆さん方には、大変御多忙の中御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきました。あらかたの問題は各委員の方からお尋ねがございましたので、できるだけ重複は避けたいと思っておりますが、せっかくお見えいただいておりますので、まず最初に国民健康保険の問題で両市長さんにお尋ねをいたしたいと思っております。
滝井市長さんも、これは最大の政治課題だ、こうおっしゃいましたが、確かに今国保問題は全国の地方自治体、地方議会の中でも恐らく最大の論議の焦点の一つであろう、かように考えております。そこで、大きな問題といたしまして二点お尋ねをいたしたいと思っております。
一つは、現状でありますが、これは今回の、今参議院で審議をされております改正案によりまして、厚生省の方の見解としましては保険料の負担増に歯どめがかけられる、一世帯約千七百円保険料が軽減になる、こういうことが概要で述べられております。しかし、お聞きするところによりますと、全国地方団体の約六割以上が六十三年度も新たな保険料の引き上げを余儀なくされておる、こういうことも私どもはお聞きをいたしております。そこで、果たして保険料の引き上げの抑制に直ちにこれがなるのかどうなのか、これが第一点でございます。
それから二つ目の問題としましては、補正で退職者医療の見込み違いの補てん分、老健のおくれの補てん分として千八億、これですべて補てんは終わりました、こういう政府の見解でありますが、六十三年度両市では退職者医療の見込み違いの影響は果たしてあるのか、それともないのか。
それから三つ目の問題といたしましては、退職者医療の見込み違いがなお六十三年度あるところにおきましても、老健法の拠出金の改正によりましてこれは相殺をされておるはずだ、したがって保険財政への影響はもはや遮断されたもの、こういう見解をとっておる見方もあるわけであります。しかし、私どもいろいろお聞きをいたしますと、いやいやそれは退職者医療の見込み違いの影響はなお残っておりますし、それから老健の改正によりましても相殺はされておりませんよ、依然として影響は残っておりますよという地方団体の御意見も耳に入ってきておるわけでございます。
現状につきまして、そういう点は両市あるいは市長会などではどういうふうな御意見が出されておりますのか、お伺いできれば幸いかと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/49
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050・増山道保
○増山参考人 実際に国民健康保険の運営を預かる市長といたしまして、国民健康保険の運営に当たりましては財政運営上まことに厳しい状況にございます。
本市におきましても、昭和六十年度と六十三年度にそれぞれ保険税の引き上げなどを実施をいたしまして、さらにまた一般会計から繰入金等を増額をして対処をしてまいったところであります。このため、市民の方々から、全体的にこれ以上の税負担は不可能である、国の負担の増額が必要であるという意見を聞いておるところであります。
そしてまた、お話のように大変御配慮をいただきまして一千八億という補てんをしていただきまして、地方自治体は大変恩恵に浴しておりますけれども、これですべてが解決したという現状には決してございません。したがいまして、今後とも引き続き六十五年度の抜本改正に向けまして温かい御配慮と御指導を賜りたい、このように強く期待をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/50
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051・滝井義高
○滝井参考人 まず第一点の、今回低所得階層に対して政府が財政基盤の強化をおやりいただいたわけですが、その事業費を六十三年度は一応千億と見まして、その五百億を国が見て、そして今までそれを分担をしていなかった県が二百五十億、我々が二百五十億。この二百五十億は、我々が一般会計から入れておるものがその中に入るかどうかというのはなおちょっと問題があるわけですけれども、一応千億に関する限りは、減免措置をしたものについてある程度の対応が、それぞれの自治体の支出に応じて、あるいは減免した額に応じて対応されます。したがって、それが一人当たり千七百円に当たるかどうか、ちょっと勉強不足でございますが、幾分の軽減にはなると思っております。
それからいま一つ、退職者医療制度の問題についてでございますが、退職者医療制度で我々が大変困ったのは、退職者制度に行った人は割合保険料を順当に払う人が行ったわけです。そして保険料を払えない貧しい退職者の方は行かずに残ってしまったわけです。ここに国民健康保険問題が非常に大きな問題となってきました。一応千八億もらいまして、我々のところもそれ相当のお金をいただいたと思っております。六十二年度にそれをいただくことによって、ある程度財源措置は緩和されました。何もしなかったら、私の方は昭和六十三年末は十二億円ぐらいの赤字になるわけです。しかも税収は、今度一六%またことし引き上げるのですが、引き上げても十億ちょっとしか保険料が取れてこないわけですから、十二億の赤字になると、一年分してもだめなのです。したがって、これはいろいろ健康政策から、国の補助金をさらに陳情していただくことから、料率の引き上げから、それから一般会計からの繰り込み、もう地方自治体ができるすべてのことをやっても、なお最終的に今年度末は三、四億ぐらいの赤字になるという状態でございます。
それから三番目は、老人保健法で、国が一方においてお金を出すと、一方においては国の補助率を必ず下げていくわけですね。これが大変困るわけです。最終的に見ると、国が一番得をして県なり我々が損をした、こういう形になってしまうわけです。それは、老人保健法ができたときもそういう形で困ったわけです。この点は、大蔵省なかなか英知を働かせて、実に根回しがうまくて、私たちはいつも回されておるというのが現状です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/51
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052・経塚幸夫
○経塚委員 きょうは大蔵省は来ておりませんので、また大蔵大臣への質問の機会もございますので……。
そこで、六十五年度の一元化を目指す課題として、これも両市長さんにお尋ねをしたいのですが、一つは医療費の地域差調整、それからもう一つは標準保険料という二つの問題が出てきております。
そこで、その医療費の地域差調整でありますが、これは私どもも一つは問題だと思っておりますのは、国の方の基準医療費と称するものが、年齢構成とベッド数、それから原爆患者等々の条件は考慮に入れられておりますが、年齢構成を考慮に入れましても、老人ベッド数あるいは特養の施設のあるなし、あるいは高度医療の医療環境の問題等々が全く基準医療費なるものの対象から外されておる。これで一二〇%を超えるところは足切りにならず頭切りだというようなことになりますと、一体国保医療を扱っておる地方自治体としてはどういうお考えをお持ちなのか。
それから、いま一つ医療費の問題では、地域差調整システムを対象とする区画は一体どのようにされるのか。一二〇%を超えるという場合に市町村が単位となるのか、それとも府県を単位に一二〇%基準医療費を超えるというところを指定していくのか。医療というものは高度医療のところへ、また医療環境のいいところへ患者が集まってまいりますから、そしてお年寄りの場合は長期入院になりますから、移籍という問題、住民票の移転という問題も絡んでまいります。したがいまして、この医療圏を市町村単位に見るのか、府県単位に見るのか、あるいは全国単位に見れば一二〇%を超えるというところはなくなってくるわけでありますから、その辺はどのような御見解をお持ちなのか。
それからもう一点は、保険料の問題でございますが、政府の方にお尋ねをいたしますと、いわゆる資産割、所得割と称するものと、それから均等割と称するものとの比率が全国平均で大体大まかに六対四のようでございます、出発の当初は五対五であったわけでございますけれども。場合によっては七対三のところもあるかと思います。これを、保険料を標準化するという場合に、全国どこへ行っても負担は同じようなものにしたいということで標準保険料制度というものの検討に入るようでございますけれども、仮に七対三もしくは六対四のところを五対五といたしますと、六十三年度からそれに入りました名古屋市の例を私ちょっと調べてみたわけでございますが、平均九%台の保険料の引き上げが、所得階層が三十万とか五十万とかうんと低いところは三〇%ないし四〇%の引き上げになってくる。これは当然でございまして、仮に十億の枠内で七億が所得割、資産割として、均等割が三億といたしますと、これが五対五になりますと均等割が五億になりまして資産割、所得割が五億、これは全く単純な計算の方法になるわけでございますが、この標準保険料というものについて、中身がそういう資産割、所得割と均等割を五対五にする、税制でいいますと直間比率の見直しというようなことに相なろうかと思いますけれども、そういう点については、もし御見解をお持ちのようでしたら、この際お聞かせをいただければ幸いかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/52
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053・増山道保
○増山参考人 お答えいたします。
医療費の適正化につきましては、地域間の問題もございましょうし、あるいは日本全国的に見まして西高東低とか、いろいろ言われておるところでございますが、地域保険としての国民健康保険制度を長期的に維持をしていくためには、医療費の適正化は避けて通ることのできない問題でございまして、必要不可欠なものであると考えております。
こうした観点から、今回の制度改正は各市町村間の医療給付費の均てん化を目的としたものでありますが、同時にまた、全国的な大きな制度の見直しということも含めて取り組んでいかれるものと期待をいたし、この制度の運用に当たりましては、市町村の保険給付の実態を踏まえて対処されるよう期待をしているところでございます。
私からの答弁は以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/53
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054・滝井義高
○滝井参考人 お答えいたします。
まず第一点の地域医療格差の問題でございますが、年齢別に零歳から五歳、五歳から十歳とやりまして、そしてそれを全国平均をしまして年齢的に見たら何々の町は非常に高い、一定の、二割を超える以上のものはおまえの方が負担をするんだ。それは今先生から御指摘のようにベッドも加わるかもしれません、高度技術も加わるかもしれません、老人人口も加わるかもしれません。非常に複雑な問題が絡まってきて、我々市長会でもこれを厚生省は一体どういう形でやるのだということを聞きましたけれども、その段階では今まだ検討中で明確なことはいずれ勉強して相談をしたい、こういう形で、実はまだ我々も聞いておりませんが、私たちが考えてみますと、まず医療というのは定量的に簡単にはかることができない面があります。
医療技術というのは非常に早く進歩していく。心筋梗塞になったらみんな死んでしまっておったのですけれども、今はそうじゃなくて、ぱっとカテーテルを入れて、風船を冠状動脈に入れてぱっと膨らせばすっと血が通って生き返る、もとの姿になる。そういうような高度技術というのは、初めのうちはなかなか健康保険の適用をしないで何十万と取られるわけです。したがって、それが高齢化社会と結びつきますから、医療費というのは国民所得の範囲にいけといっても無理なものが出てきます。それが、今先生が御指摘のように、今度は地域によって、非常に優秀な機器を持ち優秀な脳外科、心臓外科の医者がいるところの地区は非常に医療費が上がる、こういう形が出てくるわけです。したがって大変難しいので、そこらをどのようにやるかということが、我々も地方自治体を担当する者としてこれから一生懸命に勉強をさせていただきたいと思っております。
それからいま一つは、国民健康保険の改正をやる場合に、国民健康保険という医療の需要体制のところだけしか見ていない。今先生が言われるように医療圏をどうするかということは、別に保険局以外の医務局が今度は地域医療計画を県でつくらせておるわけです。その前に、各県によって違いますが、この医療圏というものをどうするか。例えば福岡県で言えばブロックが四つある。北九州ブロック、福岡ブロック、筑後ブロック、筑豊ブロックとある。その四つを医療圏にするのかというような問題が出てきます。その場合に医療圏は、一次医療、いわゆるプライマリーケアといいますか、初期の一番先に診る人、それからある程度高度の、入院までできる二次医療、それから三次は脳外科だとか心臓とかという大学あるいは特定のところしかできないような非常に高度のものをやるもの、そういうところまで持っていくのかということになりますと、議論が沸騰して非常に難しいわけです。そして、まだ地域医療計画ができていない県が相当あるわけです。もう本当は三月三十一日までにつくることになっておる。だから、医療の供給体制と需要体制、それをつなぐものとして診療報酬がある。いわばこの診療報酬が医療費に重要な影響を及ぼしてくるわけです。この三つを総合的に見て日本の医療制度をどうするかということが考えられていないのです。ばらばらです。だから継ぎはぎだらけの医療制度になって、総合的な観点から物を見ていないわけです。
その姿が、今先生も御指摘になりましたが、我々が年をとりますとまず一番先に厄介になるのは、金を持っていれば老人マンションに行けばいい。そうでなければ軽費老人ホームあるいは有料老人ホームに行きます。そうでなかったら今度は市町村がやっている老人ホームに行きます。そして病気があれば特別養護老人ホームに行きます。それから今までは病院に行っておったわけです。ところが、医療費を食うので今度はここに中間機関をつくりました。そうするとこれもまた渡り鳥になるのです。保険制度が国民保険から老人保健、退職者、老人、生活保護、こういうように渡り鳥になる。したがって、私たちが全体を見ようとした場合に、ばらばらでございますから、体系的でないから、見ようがないわけです。非常に難しいわけです。そして、それぞれのところに地方自治体は金を出さなければならぬから、もう幾ら金があっても足らないわけです。
もうちょっと体系的に、系統的に、供給と需要とそれをつなぐ診療報酬、そしてそれを受ける側——それでは今度は地域で今のベットの数を問題にした場合に、中間機関のベッドは一体何ぼと数えますかと言ったら、最近になったら、それは市長、一ベッド〇・五に数えるというのです。そうしますと、地域にそれがたくさんできますと、ベッドの状態が違ってくる。そして、じゃ診療報酬はどうしますかと言うと、これは今から特別のものをつくる、こういうわけです。今度は訪問看護制度ができて、施設収容には金が要る、在宅にするんだ。それでは保健婦や看護婦さんをといって往診料をやる。こういうように実にそのときそのときで、ずっずっと変わっていきます。したがって、私たちが国民健康保険だけという狭い範囲から医療を見て、未来がどうなるかということを考え得ない状態になってしまったというのが今の状態でございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/54
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055・経塚幸夫
○経塚委員 どうもありがとうございました。
喜多先生、坂田先生にもお尋ねしたいことが幾つかございましたけれども、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。御意見、今後の地方行政に生かしてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/55
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056・松本十郎
○松本委員長 以上で参考人の皆さんに対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
次回は、来る二十二日金曜日理事会、委員会を開会することとし、理事会、委員会の開会時刻につきましては、公報をもってお知らせすることといたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後一時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111204720X00919880420/56
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