1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月二十二日(火曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 戸沢 政方君
理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君
理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君
理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君
理事 中村 巖君
赤城 宗徳君 稻葉 修君
上村千一郎君 木部 佳昭君
北村 直人君 佐藤 一郎君
塩川正十郎君 塩崎 潤君
渡海紀三朗君 丹羽 兵助君
二田 孝治君 宮里 松正君
村上誠一郎君 稲葉 誠一君
清水 勇君 前島 秀行君
冬柴 鉄三君 山田 英介君
田中 慶秋君 滝沢 幸助君
安藤 巖君
出席国務大臣
法 務 大 臣 林田悠紀夫君
出席政府委員
法務大臣官房長 根來 泰周君
法務大臣官房司
法法制調査部長 清水 湛君
法務省民事局長 藤井 正雄君
法務省刑事局長 岡村 泰孝君
法務省矯正局長 河上 和雄君
法務省人権擁護
局長 高橋 欣一君
法務省入国管理
局長 熊谷 直博君
委員外の出席者
最高裁判所事務
総長 大西 勝也君
最高裁判所事務
総局総務局長 山口 繁君
最高裁判所事務
総局人事局長 櫻井 文夫君
最高裁判所事務
総局経理局長 町田 顯君
最高裁判所事務
総局民事局長 泉 徳治君
最高裁判所事務
総局刑事局長 吉丸 眞君
最高裁判所事務
総局家庭局長 早川 義郎君
法務委員会調査
室長 乙部 二郎君
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委員の異動
三月二十二日
辞任 補欠選任
加藤 紘一君 二田 孝治君
塩川正十郎君 渡海紀三朗君
丹羽 兵助君 村上誠一郎君
松野 幸泰君 北村 直人君
伊藤 茂君 前島 秀行君
安倍 基雄君 滝沢 幸助君
塚本 三郎君 田中 慶秋君
同日
辞任 補欠選任
北村 直人君 松野 幸泰君
渡海紀三朗君 塩川正十郎君
二田 孝治君 加藤 紘一君
村上誠一郎君 丹羽 兵助君
前島 秀行君 伊藤 茂君
田中 慶秋君 塚本 三郎君
滝沢 幸助君 安倍 基雄君
同日
理事安倍基雄君同日委員辞任につき、その補欠
として安倍基雄君が理事に当選した。
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三月八日
刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)
同月十一日
不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
同月三日
刑事施設法案反対に関する請願(寺前巖君紹介)(第五五六号)
同月十六日
刑事施設法案の廃案に関する請願(安藤巖君紹介)(第九二〇号)
同(石井郁子君紹介)(第九二一号)
同(岩佐恵美君紹介)(第九二二号)
同(浦井洋君紹介)(第九二三号)
同(岡崎万寿秀君紹介)(第九二四号)
同(金子満広君紹介)(第九二五号)
同(経塚幸夫君紹介)(第九二六号)
同(工藤晃君紹介)(第九二七号)
同(児玉健次君紹介)(第九二八号)
同(佐藤祐弘君紹介)(第九二九号)
同外一件(柴田睦夫君紹介)(第九三〇号)
同(清水勇君紹介)(第九三一号)
同(瀨長亀次郎君紹介)(第九三二号)
同(田中美智子君紹介)(第九三三号)
同(辻第一君紹介)(第九三四号)
同(寺前巖君紹介)(第九三五号)
同(中路雅弘君紹介)(第九三六号)
同(中島武敏君紹介)(第九三七号)
同(野間友一君紹介)(第九三八号)
同(東中光雄君紹介)(第九三九号)
同(不破哲三君紹介)(第九四〇号)
同(藤田スミ君紹介)(第九四一号)
同(藤原ひろ子君紹介)(第九四二号)
同(正森成二君紹介)(第九四三号)
同(松本善明君紹介)(第九四四号)
同(村上弘君紹介)(第九四五号)
同(矢島恒夫君紹介)(第九四六号)
同(山原健二郎君紹介)(第九四七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/0
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001・戸沢政方
○戸沢委員長 これより会議を開きます。
お諮りいたします。
本日、最高裁判所大西事務総長、山口総務局長、櫻井人事局長、町田経理局長、泉民事局長、吉丸刑事局長、早川家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/1
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002・戸沢政方
○戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/2
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003・戸沢政方
○戸沢委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、趣旨の説明を聴取いたします。林田法務大臣。
─────────────
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/3
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004・林田悠紀夫
○林田国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下、簡単にその要点を申し上げます。
第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、簡易裁判所判事の員数を五人増加しようとするものであります。
第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件及び督促事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を六十二人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十五人増加しようとするものであります。
以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/4
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005・戸沢政方
○戸沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/5
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006・戸沢政方
○戸沢委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/6
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007・坂上富男
○坂上委員 裁判所職員定員法に関する質問をさせていただきたいと思います。
まず、裁判所の定員についてでございますが、この法案を見ておりますと、各地方裁判所、簡易裁判所ごとの定員というものがこの条文を見てもわからぬわけでございますが、一体裁判所の定員というのはどういうふうな形で定められているのか、お聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/7
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008・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所職員の定員につきましては、法によりまして、裁判官につきましては高等裁判所長官、判事、判事補、簡易裁判所判事の職種別に定員が定められております。裁判官以外の裁判所職員につきましては、そのような職種別ではございませんで、トータルいたしました員数について定められているわけでございます。
法律の定め方はそのような定め方になっておりまして、現実の問題といたしましては、各裁判所別の配置の定員というものは具体的に定めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/8
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009・坂上富男
○坂上委員 配置定員というのは、通常言葉の中であるようでございますが、どういう意味を持ちますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/9
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010・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 法律で定められました法律定員、これは予算で定められた予算定員とも合致するわけでございますが、その枠の中で各庁別にそれぞれ事件の状況あるいはその庁における配置された人員の状況その他もろもろの要素を勘案いたしまして、各庁別に幾らの定員を配置するかを定めておりますのが配置定員でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/10
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011・坂上富男
○坂上委員 いただいております法律案関係資料をごらんいただきたいのでございますが、これによりますと、例えば十七ページ、地方裁判所の現定員、例えば書記官四千九百二十七名、それで改正後の定員が四千九百三十七名。これは、そういたしますと、裁判所全体の、地方裁判所の定員の合計数でございますか。それで、それがそうだといたしますと、今度これを各地方裁判所別に分けるのはだれが定めるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/11
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012・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 法律案関係資料の地方裁判所の項に記載されております書記官につきましては、これは簡易裁判所を含めました地方裁判所及び簡易裁判所に配置されております書記官の定員を示しているわけでございます。これを各庁別に振り分けるということは、これは最高裁判所において定めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/12
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013・坂上富男
○坂上委員 最高裁判所で、いつの時点で毎年定めるのですか。それもお聞きをいたしたいと思います。
そこで、そういたしますと、ことしはこの配置定員というものが、政府予算原案では地方裁判所の場合十名書記官が認められておるわけでございまするから、この十名がそっくりどちらかの地方裁判所に配置定員として配置をされるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/13
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014・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 前段に対するお答えでございますが、毎年予算が成立いたしまして実施されますのが四月一日からでございます。それに合わせまして定員法の御審議も三月中にお願いいたしまして、四月一日施行ということでやっておりますので、それを踏まえまして毎年度の配置定員は四月一日付ということで定めております。
後段の御質問に対するお答えでございますが、今回の定員法を可決していただきましてこの十名の増員が認められました暁には、地方裁判所及び簡易裁判所の中で必要な部分にこの増員分の書記官を配置するということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/14
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015・坂上富男
○坂上委員 ことしは、そういたしますと、裁判官それから書記官を含めまして、きょう提案のありました簡易裁判所判事五名、裁判所職員が二十五名の増員、こうなったわけでございますが、これは概算要求のときはどれぐらいの人数要求でしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/15
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016・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 概算要求の段階におきましては、これは八月三十一日に要求書を内閣の方へ送付しなければならない扱いになっておりまして、その時点におきましては、簡易裁判所判事五名、書記官及び事務官四十四名、合計四十九名の増員の要求をいたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/16
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017・坂上富男
○坂上委員 そういたしますと、今回の定員法の改正は要求人員よりも減らされた、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/17
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018・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 書記官、事務官の一般職の増員要求は四十四名いたしましたが、内閣の方で定員削減計画を立てておられまして、私どもの方もそれに協力という形で司法行政事務の簡素化、合理化を図りまして三十七名の定員削減を行う。そういたしますと、四十四名から三十七名を差し引きました七名につきまして純増の要求になっていたわけでございます。今回の定員法においてお願いいたしておりますのは一般職につきましては合計二十五名の増要求でございますから、私どもが当初予算要求いたしました数よりは上回っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/18
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019・坂上富男
○坂上委員 これはまた、要求もしないのにふえたというのはどういうわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/19
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020・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 御承知のように、昨年管轄法の改正法の御審議をお願いしていたわけでございます。九月に入りまして、当委員会においても可決していただきましたし参議院法務委員会におかれても可決されたわけでございまして、その際、簡易裁判所の設立の趣旨にかんがみ、その機能の充実を図るため、簡易裁判所の人的、物的施設の一層の整備に努めること、こういうような御趣旨の附帯決議をいただいたわけでございます。
私ども、それを踏まえまして、今後の簡易裁判所の機能の充実を図るため簡易裁判所の人的、物的施設の整備をいたしたいということを財政当局にも申し上げまして、その過程の中で増要求をいたしました結果、先ほど申しましたように、一般職員二十五名の増ということになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/20
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021・坂上富男
○坂上委員 こういうのはあれですか、概算要求はわかりましたけれども、政府原案が決まる前の皆さん方の要望でございますが、これは文書でやるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/21
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022・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 これはいろいろな形があるように聞いておりますけれども、文書でやる場合もございますし、口頭でやる場合もございます。今回は口頭で行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/22
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023・坂上富男
○坂上委員 私たちの方も職員の皆さんの労働過重等を考えてみまして、もっと大蔵当局に、裁判所でございますから、強力にその必要の人員というものは要請をしていいのじゃないか、こう実は思っておるわけでございます。
大臣、今おっしゃったような経過があるわけでございますが、特に司法の充実というような意味におきまして、裁判所の職員は人員が余っているなどということは全くありませんで、大変な事実上の欠員というような状態で労働過重が出てきておるのではなかろうかと思いますので、以下、具体的にこれをお聞きをいたしますので、この段階でひとつ裁判所の定員の増加ということに対しまして、まず大臣としての御所見を承っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/23
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024・林田悠紀夫
○林田国務大臣 裁判所の判事その他の職員が大変繁忙の中で努力をしていただいておることは、よく承知をいたしております。
それで、この人員の問題は最後に大蔵大臣との大臣折衝が行われます。また、その前には総理府が大体、かつての行政管理庁でありまするが、人員につきまして掌握をいたしておりまして、大蔵大臣の方に意見を申し述べるわけであります。そういうことで、法務大臣といたしましては、側面から裁判所の定員の増加につきまして総理府やあるいは大蔵大臣に対しましてお願いをいたしまして努力をしておるところでございます。今後とも、十分ではありませんので、さらに大いに努力をしてまいりたいと存じております。よろしくまたお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/24
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025・坂上富男
○坂上委員 それでは今度は各論に入りますが、まず執行事件、それから破産事件、督促事件、これの職員、裁判官の労務状況とでも申しましょうか、人員の不足とでも申しましょうか、今現在どんなような見方をなさっておるのか、お聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/25
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026・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 まずその前提といたしまして、御指摘の各種の事件の動向でございますが、これは法律案関係資料の二十四ページから二十六ページに記載されているわけでございますが、民事執行事件、それから破産事件、簡易裁判所の民訴事件、督促事件、いずれにつきましても近年若干事件が減少してきた面もございますが、従前に比べますと事件数の増加が著しゅうございまして、また、破産事件につきましては関係当事者が多数おります会社破産事件が増加しておりまして、これに伴いまして送達関係事務、当事者等からの照会への対応事務あるいは配当計算事務等、主として裁判官の補助機構であります書記官、事務官等の事務が増加しているわけでございます。そこで、今回これらの書記官、事務官を中心といたしまして増員をお願いしているわけでございます。
これらの事件の適正迅速な処理につきましては、これまで事務処理体制及び事務処理手続の整備充実を図りますとともに、増員につきましても最大限の努力をしてきたわけでございます。昭和五十八年以降、執行事件につきましては判事十四人、一般職員五十三人、破産事件につきましては判事十人、一般職員二十人、簡裁民訴事件につきましては一般職員三十二人、督促事件につきましては一般職員三十五人、そのように増員措置をとってきておりまして、判事につきましては、執行事件につきまして先ほど申しました十四人、それから破産事件につきましては判事十人というように増員を図ってまいりましたので、今回は執行事件、破産事件につきましては判事の増員ではなく書記官、事務官の一般職の増員を中心としてお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/26
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027・坂上富男
○坂上委員 私は実務も若干関与しておりまして、執行事件、破産事件、督促事件、これは決して迅速に行われているとは思えないわけでございます。その大きな原因は、やはり職員、裁判官ともに人員の不足がその大きな原因になっているのじゃなかろうか、こう私は思っておりまするので、ひとつ一層の充実方を特に要望をいたしておきたいと思うのであります。
さて、今度は簡易裁判所の充実強化についてでございますが、昨年簡易裁判所の統廃合が法律で決定をいたしたわけでございます。この附帯決議の中で充実強化が言われておるわけでございますが、この具体策について今どのようなことを検討なさっておるか、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/27
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028・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 現在考えているところを申し述べさせていただきます。
最初に、人的施設の充実強化でございますが、現在、独立簡易裁判所の裁判官の非常駐庁というものが百四十一庁ございます。統廃合によりまして、このうちの九十庁が統合されまして、五月一日以降残ります裁判官非常駐庁は五十一庁となる勘定でございます。これらの裁判官非常駐庁のうちには、事件数が非常に少のうございまして、裁判官を常駐させるわけにいきませんで他庁からのてん補体制で賄うのが適当な庁もある程度ございます。それらの庁を除きまして、今後の事件数の動向等も踏まえまして、できるだけ常駐化していきたいと考えております。その給源といたしましては、現在廃止される予定の簡易裁判所に配置されている裁判官が十一名程度ございますし、今回増員をお願いいたしております簡裁判事五名をあわせて考えていきたいと思っているわけでございますが、他に繁忙庁の手当て等もしなければなりませんので、六十三年度には、この簡裁判事五人の定員増が認められます場合には、常駐化の数は独立簡裁七庁、支部併置簡裁一庁、合計八庁について常駐化を図りたいと考えております。
それから次に、裁判官以外の一般職員の充実でございますが、廃止予定庁に配属されております職員、一般職は約二百八十人ございます。そのうちの約二百人を主として簡易裁判所に配置することによりまして、その充実を図っていきたい。それから、今回増員をお願いいたしております簡易裁判所の事務官十八名につきましても、増員が認められました場合には簡裁の充実に振り充てたいというふうに考えております。
次に、物的施設の充実強化でございますが、昨年管轄法改正法案を提出いたしました時点では、存続する独立簡裁のうち未整備庁舎は三十二庁でございました。六十二年度予算でそのうち二十一庁については庁舎が新営されまして、あるいは現に新営中でございます。残る十一庁でございますが、六十三年度予算におきましては、そのうち七庁の新営を予定いたしております。残る未整備庁は四庁ということになるわけでございますが、これらにつきましても可及的速やかに整備を図りたい。他方、機械あるいは器具による簡裁の冷房設備の整備も進めていきたいというふうに考えております。
それから手続、運用面につきましては、簡裁の機能の充実強化を図りますために、受付窓口につきまして受付カウンターを設置いたしますとか、あるいは訴訟手続、調停手続の概要をわかりやすく解説したパンフレットを備えつけ、あるいはそれぞれの申し立ての定型書式あるいは記載例等も備えつけるなどいたしまして、国民の皆さんが容易に簡易裁判所の手続を利用できるような体制づくりを図っていきたいと考えているところでございます。
その他細かいことはいろいろございますが、長期的な検討を要する事項につきましては、継続的に検討を進めて充実を図っていきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/28
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029・坂上富男
○坂上委員 では具体的に、今度は国民の立場から見た具体策をお聞きいたしたいと思います。
まず夜間調停、これは一体どの程度御計画をお持ちでございますかどうか。それから口頭受理、これについてはどういう対応をされる予定なのか。それから相談業務の充実でございますが、これは従前よりもどの程度充実させるような対策を講ぜられるのか。それから窓口の改善すべきところがあるかどうか。こういう点の具体策について、お考えと今後の方針についてお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/29
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030・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 まず最初に御指摘の夜間調停の実施でございますが、これは利用者に対するサービスの一環として今後検討を加えていくことになるわけでございます。当面は、東京、大阪等の今回の大都市簡裁の適正配置によりまして、人員の面でもあるいは設備の面でも充実されることになる大都市簡裁での実施がその検討の対象になろうかと思います。そういうわけでございまして、とりあえずはこの夜間調停はある程度先の話として検討を進めていかなければならないと考えております。
それから、その次に御指摘の口頭受理の問題でございます。口頭受理は、坂上委員先刻御承知のように、当事者が裁判所の窓口へ参りましていろいろ相談をし、かつ自分の訴えたいところを申す場合には、かなりの時間をかけて解きほぐしながら聞いていかなければならない面が多面あるわけでございます。しかも、かなりの希望者があります場合には、それをある程度効率的に処理していかなければならない面がございます。
そういう点からいたしますと、純粋の口頭受理というよりは、当事者が簡単に記入できるような定型的な申し立て用紙というものをつくりまして、記載例等を参考にしながら適宜記入をして申し立てができる、そういうふうな体制整備の方が何よりも肝要であろうかと思います。従来諸種の申し立て用紙がございましたけれども、なかなか書きづらい点もございましたので、今回いろいろな工夫を加えながら、当事者にとっては非常にわかりやすく書きやすい各種の申し立て用紙を用意いたしまして、かたがた記載例等もわかりやすい記載例を置くことによりまして、当事者がごらんいただきながら、そのような定型用紙を利用して申し立てが容易にできるような方策に重点を置いて考えていきたいと思っているところでございます。
受付相談の業務の充実につきましても、やはり今回の適配実施を契機といたしまして、人的体制も充実を図らなければならない。受付の窓口の方にベテラン書記官を配置するとか、あるいは相談についてのいろいろなマニュアル等も考えまして、この相談業務の充実ということを図っていきたいと考えるわけでございます。
そのような形になりますと、いろいろ人手の問題が出てくるわけでございまして、先ほど申しましたように今回の適正配置の実施によりまして、廃止庁に配置されております二百八十名ぐらいの一般職のうち二百名は簡裁に振り向けまして、今申しましたような窓口業務の充実等々の部面に活用を図っていきたいと考えているわけでございます。そのような各般の施策を総合いたしまして、従来よりもより利用しやすい簡裁を実現していきたいと考えております。かたがた簡易裁判所あるいは家庭裁判所の利用の仕方をわかりやすく説明したパンフレットというようなものも、簡裁の所在する自治体あるいは希望する自治体等に配付いたしまして利用の便を図っていきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/30
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031・坂上富男
○坂上委員 もうちょっと具体的にお答えいただきたいのですが、例えば夜間調停をいつからやるというのか、やるについては人員というものがきちっとこれに対応するようにしなければならぬわけであります。ただやるやると言って、先のことだ先のことだと言ったらこれはもとのもくあみになるわけであります。去年の附帯決議の中で、いわゆる国民のための、庶民のための窓口を充実し、かつ改善をし、勤めから帰ってきて簡単な夜間調停あるいは夜間裁判、こういうものを口頭で受理できるようにしようじゃないかというのが理想なんでありますが、依然としてそういうものがまだ見通しもないというような状況になりますと、せっかくの附帯決議も全く空念仏に終わるわけでございます。しかも、このことをやるにはいわば人員と設備の充実拡充が必要なわけでございます。でありまするから、私が冒頭、予算におきまするところの定員の増加の要求というものは本当に本腰でやっておられるのかどうか、そういう点まで実は個々的に考えてみますると、こういう改善の問題をやるためにこれをやるんだという強い意思というものが果たして予算要求の中で出ているのかどうか、いささか私は不安を感ずるわけでございます。でありまするから、具体的にせめて夜間調停をいつやるかということぐらいはめどが立ちませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/31
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032・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 夜間調停につきましては、法案を提出いたします前の段階の三者協議あるいは法制審議会におきましてもいろいろ議論を交わしたわけでございますが、夜間調停を必要といたしますのはやはり都市部の簡易裁判所でございます。かつて夜間調停を実施したことがございまして、地方等におきましてはそれが先細りとなって消滅してしまったというような経緯もございまして、夜間調停のニーズというものはやはり都市部の簡易裁判所であろうかと思います。
都市部の簡易裁判所におきましては現在その集約を図る改正法の施行を前にしているわけでございますが、それにつきましては庁舎の整備その他の状況がございまして、施行期日は政令にゆだねられているわけでございます。私どもの予定といたしましては、大都市簡裁の庁舎が建ち上がるのが相当先でございまして、その段階までにいろいろ検討を進めまして、庁舎が建ち上がりまして大都市簡裁が動き出しますときに、そのようなニーズにこたえるようにいろいろ検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/32
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033・坂上富男
○坂上委員 ちょっとここで角度を変えた質問で大変恐縮でございますが、入国管理局に御質問申し上げたいと思います。
黄耀慶君に関する強制送還出国について東京地方裁判所が停止の決定をいたしましたが、この事件の概要についてちょっとお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/33
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034・熊谷直博
○熊谷政府委員 事案の概要について答弁させていただきたいと思います。
黄耀慶さんのケースでございますが、この人はいわゆる入管行政上インドシナ系華僑として取り扱われる人のケースでございます。
この黄耀慶さんは、昭和五十年四月、祖母、兄弟ら六名とともに漁船でベトナムを離脱をいたしまして、同年五月台湾の軍艦に救助され、その後台湾でその他の家族も合流いたしまして、家族、お父さん、まま母、それから他の兄弟らとともに約四年間台湾で生活をいたしております。その間、両親らとともに台湾の国籍を取得いたしております。そして、台湾政府から黄耀慶さんは当時の本名である黄春瑞という名義の正規の台湾旅券を取得の上、五十四年四月十二日に、日本で就労をする、稼働をするという目的を秘匿いたしまして、観光客として本邦に入国いたした人でございます。日本においては中国料理店等の皿洗いをいたしまして、いわば不法就労をしていた人でございます。この間約半年の間日本で不法在留をしていたということでございます。翌年、五十五年二月十六日に不法残留容疑で警視庁の浅草警察署がこの人を逮捕いたしまして、その後東京簡易裁判所で罰金六万円を科されております。同年三月十二日、不法残留していたということで、入管の手続によりまして台湾向けに強制送還をされております。
その後、さらに四年間台湾で生活をいたしまして、昭和五十九年一月に至りまして、今度は名前を変えまして黄耀慶という名前で台湾旅券を取得しまして、再び就労目的あるいは稼働目的を秘匿いたしまして観光という資格で本邦に入国し、皿洗いとか調理士見習いとして入管法上不法に就労していた人でございます。この間約一年ちょっとの期間でございますが、本邦に不法残留ということになります。
翌年七月四日に不法残留を出頭申告してまいりまして、入管当局の在留特別許可を欲しいという願い出をしてまいりました。入管当局は調査及び審査をいたしました結果、入管法違反の事実があるというふうに認定いたしまして、その後いろいろ手続をいたしました結果、これに違反事実があるという判定が下されました。御本人はこれに対して異議申し立てをいたしましたが、昭和六十二年三月二十五日に至りまして、この申し出は理由がないという旨の法務大臣裁決がございました。同年四月二十三日に退去強制令書発付、これに基づき収容されるということになって現在に至っているわけでございます。
同年七月二十三日に、この大臣裁決等を不服といたしまして、東京地裁にこの裁決及び退去強制令書発付処分の取り消しを求める行政訴訟を提起いたしまして、あわせて退去強制令書の執行停止を求めるという申し立てをいたしました。その年の十一月十七日に東京地裁は、同申し立てに対しまして、退去強制令書のうち送還部分に限って、一審判決が言い渡された日から一カ月を経過する日までこれを停止するという旨の決定を行いました。
その後、本案は、現在東京地裁において引き続き審理中でございます。一審判決までには、なお相当日数がかかるものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/34
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035・坂上富男
○坂上委員 さて以下は、もう今度は簡単に御答弁いただきたいのですが、まずこの事件ですが、裁判所は何で停止になったのですか。何で裁判所が停止しました。この理由を簡単に言うてください、執行停止。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/35
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036・熊谷直博
○熊谷政府委員 これは今申しましたように、本案が終結いたしまして一審判決が出るまでには若干の時日がかかるということでございますので、その間に強制送還をされますとこの裁判の審理の係属が難しくなるということでございまして、裁判所はその間強制送還の部分について執行を停止するというふうな判断をいたしたものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/36
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037・坂上富男
○坂上委員 裁判所は、強制命令が出て、裁判所に裁判を出し執行停止を出せば、これは全部停止しますか。相当の理由、もっともと思われるという理由がなければこれは停止しないと思うのです。どうですか。実務で特に出入国管理に当たっておられましてしょっちゅうそういう問題が起きておるのだろうと思うのですが、停止をするには停止をするなりの相当の理由、疎明が立たぬ限りは裁判所はこういう停止決定は出さないと思うのですが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/37
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038・熊谷直博
○熊谷政府委員 裁判所の停止決定でございますので、私どもその理由についてそんたくする立場にございませんが、決定のときの理由書、決定書というのを見ますと、「理由」というところにこう書いてございます。(坂上委員「簡単でいいですよ」と呼ぶ)簡単に申し上げます。「相手方が」「申立人に発付した退去強制令書に基づく執行は、送還部分に限り、本案事件の判決が確定するまでこれを停止する。」というふうに理由書に書いてございます。それ以外は書いてございません。理由の本文でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/38
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039・坂上富男
○坂上委員 ちょっと私の質問を御理解ない答弁じゃないかと思うのでありますが、そういう停止決定が出たということはわかっているのです。
〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
その停止決定が出るに至ったところの理由を裁判所はどう述べているか。法務当局が判断したのと裁判所の考え方というのはどうも別じゃないか。そもそもこういう出入国管理における法務省における行政に間違いがあったのではないか、こういうことを判決は指摘をしていると私は思うのであります。
そこでお聞きをいたしますが、昭和五十六年五月二十二日の九十四回の衆議院委員会におけるインドシナ流民に対する、いわゆるインドシナ流民取り扱い方針というものがきちっと出されたわけでございますが、この方針は一体どういうものであったか。簡単でいいです。そして、これはいつ変更になったのか。私は変更になっていないと思うのです。裁判所も、これはこういう方針が決まっているのだ、したがってこの方針に基づいて相当数のインドシナ流民が特別在留許可を受けている、こう指摘をするわけでございますが、一体流民取り扱い方針はどういうものであったのか、この後方針が変わったのか、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/39
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040・熊谷直博
○熊谷政府委員 御指摘の、当委員会において昭和五十六年五月二十二日に当時の政府委員から申し上げまして明らかにされましたこのインドシナ流民、インドシナ系華僑の取り扱い方針を簡単に御説明申し上げます。
これは、第一に、インドシナ三国の旧旅券で本邦に入国し、そのまま不法残留となっている者については、帰る国がないという事情を考慮して在留を特別許可する。これが第一。第二が、台湾、タイ等の第三国旅券を所持していても、それが他人名義の旅券を不正入手するなどしたものである場合には、これと同様に扱うものとする。特別在留許可は、この場合は出るというふうに申しております。第三に、台湾旅券等を正規に取得いたしまして本邦に入国している者については、ケース・バイ・ケースで検討いたしまして対処しますが、例えば次のような事情にある者は、特段の忌避事由がない限り、在留特別許可を考慮するということになっております。その一が、日本人または正規に在留する外国人と親族関係にある者。二が、両親、兄弟等が現に第三国の難民キャンプに収容されているなどのために、本邦から出国しても適当な行き先がない者。三に、その他特に在留を許可する必要があると認められる者。
以上が取り扱い方針でございまして、この方針はその後変更がございません。現在においてもケース・バイ・ケースに適正に対処しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/40
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041・坂上富男
○坂上委員 さて、この人はインドシナ系華僑であることは間違いないと思うのですが、それから今お読みになりました、日本人または正規な在留外国人と親族関係にある者、弟さんが日本人と結婚しておりますが、これは間違いないと思うのですが、この条文に該当する人でないかと思われますが、この二点、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/41
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042・熊谷直博
○熊谷政府委員 この弟さん、春雄という読み方になると思うのですが、この人と一緒に在留特別許可を申し出て、一緒に審理されたわけでございますが、この弟さんはそのときの在留決定に従いましてその後在留許可を正式に取った方でございます。
それと、今の条文にその結果当たるのではないかという御質問でございますけれども、親族関係にあるということについて、まさに同じ法務委員会、衆議院の五十六年十一月の国会でございますが、同じ政府委員からこのようにこの親族関係という規定の条文の解釈につきまして答弁をいたしております。これを読ませていただきたいと思います。「処遇方針の三の一に掲げております「日本人または正規に在留する外国人と親族関係にある者一と言いますのは、これは民法上の親族関係を言うものではございません。」と答弁しております。私どもといたしましては、家族の離散をなるべく防止して、人道上の配慮をしようという考え方に基づいてこういうことを立てたのである。したがって、ここに言う親族関係というのは、夫婦であるとか親子、兄弟であって、生活上お互いにある程度の依存関係が認められる場合を想定しているものである。実際の運用はケース・バイ・ケースで個々にその人の状況を総合的に判断して弾力的に考えていくというふうに答弁いたしておりますので、当時の政府委員の考えもこのような解釈に基づいて行われたものでございまして、現在でもその点は変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/42
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043・坂上富男
○坂上委員 さて、今言ったようなことはまさにそのとおりだと思うのです。民法上の親族などという厳格なことを言わないで、幅広くこれを解釈しようとしてやってきております。これも大変結構です。でありまするから、この黄さんというのはいわばインドシナ系の華僑であること、それから兄弟が日本に在留してしかも日本人と結婚をなさっているということ、そんなような観点から見てみますると、この人を果たして強制退去させる必要があるかどうか裁判所は疑問に思ったのじゃないか、こう思うわけであります。
そこで、裁判官はこう言っているわけであります。
前記のインドシナ流民取扱い方針等に照らし、本件について法務大臣が申立人に特別在留許可を与えなかったことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用がなかったかどうかは、更に本案訴訟における申立人の中国国籍取得の経緯、台湾における生活状況、申立人の本邦への入国の目的、在留状況、台湾在住の申立人の親族の生活状況、前記インドシナ流民取扱い方針の内容、その運用状況、同種事案についての取扱事例等についての本格的な審理を待つほかはなく、現段階において法務大臣の異議申出棄却裁決に違法がなく、ひいては本件退去強制令書発付処分に違法がないと断定することはできないものというべきである。こう言っておるわけであります。いわゆる法務省の退去強制令書発付の処分に間違いがあるかもしらない、こう言っているわけであります。だから停止をする、こう言っているわけであります。だから今局長が、本案が提起をされた、しかももう送還されたのでは利益がなくなるから、回復しがたい損害になるからとにかくストップがあったんだ、こういう程度のことでありますが、裁判所はそう言っていないのです。どうもいろいろの観点から見てみると、この問題は法務省の方で間違いがあるかもしらない、よってちょっと待ってくれ、そして本格的な審理をしよう、こう裁判所が言っておるわけであります。
そこで、今収容所におるそうでございますが、どれぐらいかかるか、ことしいっぱいかかるか、あるいは来年にかかるか知りませんが、とにかく収容所の中に入れられているわけであります。そこで先般、仮釈放、仮放免というのですかの申し立てが出たそうでございます。却下されたそうでございます。
一体この仮放免はどういう場合に出せるのか。例えば病気で収容に耐えられないとか、あるいはその他もろもろの事情によって仮放免がなされると条文に規定があるようでございます。まさに本件の黄さんの場合は、ここまで停止が出たのです。しかも、インドシナ流民取り扱いに該当する人かもしらないのです。そういうような人でストップがかかった。おまえはその結論が出るまで収容所に入っているというのは、仮放免の趣旨からいってどうも乱用の疑いがあるんじゃなかろうか、そんなふうに私は考えるのですが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/43
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044・熊谷直博
○熊谷政府委員 御指摘のように仮放免許可申請というのが昭和六十二年十二月三日に出されております。その際の申請理由は「弟が在留特別許可を得て日本に定住している。」ということ、それから「在留を希望し、令発付処分等取消請求訴訟を提起しているが、勝訴の可能性が大きい。」というふうに言っております。その他、「収容が七か月となり、上記訴訟も長期化が見込まれる。」というようなことで申請がなされました。
仮放免という制度がどういうものであるかというお尋ねでございますので、まずその点について簡単に御説明させていただきたいと思いますが、この制度は、収容令書または退去強制令書が発付され、それによって収容されている者につきまして、幾つかの理由に基づきまして仮放免をするという制度でございます。一つが、今坂上先生おっしゃいました健康上の理由、それから第二が、送還の直前ないし自費出国をするという意思がございます場合にその出国準備のために必要である場合、そういう場合はその収容を継続することが相当でないと認められるわけでございますが、そういう場合に一たんこれを解くという制度でございます。
まれに過去において国籍国、つまりこの場合は台湾でございますが、国籍国が引き取りを拒否するというような人の場合がございます。そういう引き取り拒否を国籍国がいたします場合には、これは送還が困難になるということになりますが、さらにそういう場合には収容自体がかなり長期に及ぶ場合になるわけでございますが、そういう場合に人道上の配慮を要するという状態になるわけで、そのような場合にも仮放免をしております。
さらに、将来において在留特別許可を与える可能性が大であるというふうに行政府側が判断いたします場合に仮放免をすることがございますが、この黄耀慶さんの場合、私どもの判断といたしましては、ただいま申し上げましたいずれの場合にも該当しない、したがって仮放免すべき理由がないというふうに判断をいたしまして仮放免を認めなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/44
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045・坂上富男
○坂上委員 これは課長さんで結構でございますが、仮放免の条文をちょっと読んでください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/45
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046・熊谷直博
○熊谷政府委員 五十四条、ちょっと長いのですが、「収容令書若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている者又はその者の代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、法務省令で定める手続により、入国者収容所長又は主任審査官に対し、その者の仮放免を請求することができる。」二、「入国者収容所長又は主任審査官は、前項の請求により又は職権で、法務省令で定めるところにより、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができる。」それから三は、「入国者収容所長又は主任審査官は、適当と認めるときは、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者以外の者の差し出した保証書をもって保証金に代えることを許すことができる。」……(坂上委員「結構です」と呼ぶ)よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/46
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047・坂上富男
○坂上委員 どうですか。今お読み上げのとおり、法務省といたしましてはどうも二つのようでございます。一つは、収容所に収容することが病気で耐えられないということ、いま一つは、参りました、もう任意に退去するから準備のために出してくれないか、この二つのようでございます。どうですか、あの条文の趣旨は。情状によりと書いてあるわけであります。情状というのはどういうことかといいますと、今裁判所が停止決定として出した、私はまさにこのとおりになるだろうと思うのです。いわばインドシナ流民の特別在留処分の該当者に当たるんじゃなかろうか、こう思っておるわけであります。また幾つの例を列挙いたしましても、どうもこれに当たる、裁判所もどうもそれじゃないか、こう言っておるわけであります。でありますから、本裁判の結果によらなければなりませんけれども、それまで三百万以下の保証金あるいはまた皆様方の身柄の引き受け、これによって仮放免をしてもいいというようなのはその条文から言えると思うのでありますが、どうも法務省の見解とすると、病気または任意に出ていくならば出すよ、あとはおまえたちは収容所の中に入っておれ、その間裁判所で裁判をして一年、一年半かかるということになりますと、どうもこれらの人たちにとっては大変気の毒な状況じゃないか、どうも法の趣旨に合わないのではなかろうか、実はこう思っておるわけでございます。
局長、もう一度御検討いただきたいと思うのと、ひとつ大臣、そういう状況で、これは再度御調査の上御検討いただかなければならぬ問題だと私は思うのであります。本当に法務当局はこれは裁判に勝てるという自信がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/47
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048・熊谷直博
○熊谷政府委員 裁判のことでございますので、予断を申し上げるわけにはいきませんが、本案の裁判におきまして政府側は政府側の考えを述べております。
それと、先生今御質問になられましたもう一つのところでございますけれども、停止決定の際の経緯をよく見てみますと、先生がさっきお読み上げになりましたように、本格的な審理を、情状その他について待たなければいけないということでございますので、我々も待つということでございます。
もう一つ、決定にきちんとございますように、強制送還執行令書の中には送還の部分と収容の部分と二つございまして、今度の東京地裁の決定は、読みますと、送還部分に限定してこれを停止するというふうに書かれておるわけでございます。私どもとしては、収容の部分については裁判所はこれをむしろ認めたというふうに解釈しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/48
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049・坂上富男
○坂上委員 大臣、最後でいいですが、申し立てをしたのは送還の停止だけでしょう。そのほかのものは却下じゃないでしょう、仮放免のことについては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/49
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050・熊谷直博
○熊谷政府委員 この決定書を私も持っておりますけれども、収容部分の執行停止も申し立ての中に入っているわけでございます、全面停止でございますから。それで、裁判所はそのうちの収容部分については却下したというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/50
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051・坂上富男
○坂上委員 局長、その主文の次の理由を読んでください。理由ではっきり書いてある。「本件申立ての趣旨は、「相手方が昭和六二年四月二三日付けで申立人に発付した退去強制令書に基づく執行は、送還部分に限り、本案事件の判決が確定するまでこれを停止する。」との裁判を求める」こう書いてある。全部とは言っていないのです。
〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
停止にさえなれば、今度五十四条を使えば仮放免になる、こう思ってこういう手続をとっているのでございまして、却下になったわけではありません。求めていないだけなんです。これはもう停止さえ出れば法務省で仮放免していただけるんじゃなかろうか、こういう理解のもとでやっているのですから、ひとつもう一度見直しをしていただきたい。
もう時間でございますから、最後に大臣から、そういう状況を踏まえて再検討賜れるかどうか御検討賜りたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/51
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052・林田悠紀夫
○林田国務大臣 裁判所におきまして今審理中でありまするから、裁判所の判決を待たなければなりませんが、十分検討をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/52
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053・坂上富男
○坂上委員 局長、どうですか、さっきおっしゃった申し立てのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/53
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054・熊谷直博
○熊谷政府委員 先生今お読み上げになりましたのは裁判所の決定の理由でございますが、「送還部分に限り、本案事件の判決が確定するまでこれを停止する。」というのが申し立ての趣旨のように書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/54
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055・坂上富男
○坂上委員 そうでございます。でありますから、二つの申し立てをして送還部分だけ停止になったんだ、仮放免の方については裁判所は却下したんだとは決して書いてないわけでございますから、法務大臣が今御答弁になりましたとおり、どうぞもう一遍よく御検討の上、とにかく収容所に入れられっ放しでございますし、やはり人権にもかかわる問題でもありますから、ひとつ十分な御検討をくださるようお願いをいたしまして、時間がもう過ぎておるようでございますから、終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/55
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056・戸沢政方
○戸沢委員長 稲葉誠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/56
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057・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 きょうは裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の質問なものですから、それに関連する二、三の基本問題について最初にお聞きしたいと思うわけです。
これは大臣から最初にお答え願った方がいいと思うのですが、近ごろ法曹一元化、一元化ということがいろいろ言われておるわけなんですが、一体この法曹一元化というのはどういうものなのか、なぜそういうことが言われるようになったのか、それが一体実効を上げているのかいないのかというようなことをお聞きするわけなんです。今最初に言った法曹一元化とは一体何なのか、どういう理由でそれが設けられたのか、こういうことからお答え願えればと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/57
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058・清水湛
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。
法曹一元という言葉、これは戦後、特に英米流の司法制度が日本に入ってきたということが一つの大きな契機になっていようかと思うわけでございます。
法曹一元という言葉が具体的に何を意味するのかということ自体についても大変議論があるようでございまして、実は先生よく御存じのことだとは思いますけれども、例の臨時司法制度調査会におきましても、法曹一元というのは何であるかということが大変議論になったわけでございます。ただその際、臨時司法制度調査会設置法の中では、特にこの法律の中における法曹一元という言葉についてはどういうことを意味するかということを定義いたしておりまして、その法律の規定による定義によりますと、裁判官を裁判官以外の法律職種に従事している者から任命するのを原則とする制度である、こういうふうに法律は定義されているわけでございます。
そういたしますと、その場合、裁判官以外の法律職種として典型的に考えられましたのは、この臨時司法制度調査会の議論等を背景にいたしますと、これは弁護士であるということになるわけでございます。つまり、法曹一元という言葉のいろいろ定義の仕方があるわけでございますけれども、一般的に法曹三者の中で使っている場合、法曹一元という言葉は、原則として弁護士の中から裁判官を選任する、こういうことだろうと思うわけでございます。これは、実はアメリカあるいはイギリスにおきましては、現実に弁護士の中から裁判官が選任されるということになっているわけでございまして、戦後英米流の司法制度が入ってきたのと軌を一にしてそういう法曹一元論が出てきたということとも符合するわけでございます。
この法曹一元を我が国においても採用すべきであるというような議論が一つの契機になりまして、昭和三十七年でしたか、臨時司法制度調査会というものが設置されたわけでございますけれども、その中で大変いろいろな議論がされました結果、我が国の現状におきましては、まだそういう意味における法曹一元を実現するための基本的な諸条件というものが整備されていない、こういうような結論が示されたわけでございます。それで、さらに、じゃ具体的に、いつになったらそういう基盤が整備されることになるのかというようなことも議論されたようでございますけれども、その点につきましても具体的にいつまでにそういう基盤が整備されるというふうに結論づけることはできない、そういうことになりまして、したがって、法曹一元というのは実現されれば非常に結構な制度であるけれども、現状ではまだその状況を満たしてない。むしろ臨時司法制度調査会の意見といたしましては、望ましい制度であるから、そういうことを念頭に置きつつ、そういう基盤が整備できるような方向でこれからお互いに考えたらどうかというような最終的な御意見だったというふうに私どもは理解しているわけでございます。
そこで、法曹一元が実現するための諸条件というのは一体何なのかということになるわけでございますが、臨時司法制度調査会の意見書で示されているいろいろな意見を通覧いたしますと、一つには弁護士から裁判官になるルートが確立されるということ、これが大きく言って一つでございます。それからもう一つは、そういうようなことについて国民が納得すると申しますか、国民的なコンセンサスがある、こういうことだろうと思います。
まず第一の、弁護士から裁判官になるルートということでございますけれども、これにつきましては、まず弁護士が裁判官になりたいという気持ちが起きるという程度に裁判官の待遇というものが十分に改善されなければならない。それからもう一つは、十分に裁判官になる希望者が出るだけの法曹人口と申しますか、弁護士人口が飛躍的にふえなければならない、こういうような問題。あるいはまた、法曹一元制度ということになりますと、裁判官が全国各地を転勤するというようなことは非常に問題になりますので、弁護士さんが全国各地の裁判所の各地域に十分に存在して、そういう中からその地域における裁判官が選ばれるというようなものがなければならない。つまり、弁護士の分布が全国的に平均化と申しますか、十分でなければならない、こういうようなことが考えられる。
それから第二番目の条件でございますけれども、弁護士から裁判官が選ばれるということについて、裁判についての信用とか信頼性というものが十分に確立される。これは裁判官も弁護士も検察官も、お互いに法曹三者が協力して実現しなければならないことでございますけれども、そういうふうなことについての国民的な合意というものも必要であろうというふうに思われるわけでございます。
法曹一元の基盤となるべき諸条件については、細かいいろいろな議論がこの臨時司法制度調査会におきましてもされているわけでございますけれども、大ざっぱに申し上げますと、その実現のための諸条件というのは私が先ほど申し上げたようなことであり、そういうような条件は、臨時司法制度調査会の答申が昭和三十九年にされたわけでございますけれども、その後も基本的には変わっていない。その間、例えば裁判官、検察官の初任給調整手当が創設されるとか、あるいは三十九年の臨時司法制度調査会の答申を契機にして司法試験の合格者増が若干図られるというような若干の改善はございますけれども、基本的な諸条件の変更は現在もない。そういうことから、最初に申し上げましたような法曹一元はいまだ実現されるに至っていない、こういうふうに私どもは理解しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/58
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059・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 今の問題は非常に大きな問題ですし、この時間であれですから、いろいろな形で今後論じていかなければいけない問題だ、こう思うのです。
そこで、裁判官の問題で二、三お聞きをいたしたいのは、前々から私が疑問に思っておりますことは、裁判所の所長の仕事ですね、任務といいますか、司法行政と言うけれども、一体どこまでが司法行政で、それを超えるものとなると司法権の独立を害するというか、その限界は一体どこにあるのかということを絶えず疑問に思っているのですが、たまたま「裁判官懇話会報告(2)」というのがありまして、「あるべき裁判をもとめて」というので、これはちょっと古い本なんですが、判例時報社から出ているのですが、この中にある裁判官が「単独事件を持って感じたことについて、次のように報告した。」としていろいろあるわけですね。
「現在、週単独が二開廷、そして合議が大体一・五開廷という日程であるが、手持事件はこの四月以来、二二〇から二四〇位、そして当庁の場合、新受が大体二〇数件というのが現状である。」こういうのですが、そこで「当庁でも、毎月いわゆる成績表が回ってくる。」こういうのですね。「更に、年二回の裁判官会議の際に、いわゆる年間の営業報告、私達はそう言っているが、営業報告をするというようなシステムになっている。」あとずっとこうあるのですが、これはどういうことなんですかね。「成績表が回ってくる。」とか「営業報告をする」というのは、裁判官が自分でするのかだれがするのかよくわかりませんが、具体的にどういうことなんですか。どうも聞いてみたらこういう言葉じゃ言っていないんだけれどもという説もあるし、いや、ただ赤字、黒字ということはよく言うんだということもあるのですが、赤字、黒字ということを含めて、これは一体どういうことを言っているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/59
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060・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所はそれぞれ民刑の部、係別で構成されておりまして、それぞれが新受事件を割り当てられまして、その事件の処理に従事しているわけでございます。そこで、それぞれの部、係における事件処理状況がどういうものであるかというものを、司法行政事務を統括いたします所長としては常に把握している必要があるわけでございます。部における事務分配は部で決めるわけでございますが、部の司法行政事務を統括いたします部総括者も、やはり部における事件処理状況、これは自分も含めまして、右陪席あるいは左陪席の事件処理状況を常時把握しておく必要があるわけでございます。そのような状況把握に基づきまして、例えば右陪席の負担が重いというようなことになりますと、部の事務分配の定めを若干変更いたしまして、裁判長であります部総括の負担割合を少しふやして右陪席の負担を軽くしてやるとか、そういう配慮が必要になってくるわけでございます。そのようなことで各月ごとに新受、既済、未済の結果報告を求めているわけでありますが、そのことを称して成績表というふうに言っておられるのじゃないかというふうに考えております。
それから、毎年二回の営業報告でございますが、これは大きな裁判所になりますと毎年二回定例の裁判官会議が開かれます。そこで例えば民事部の事件処理状況はこうであるというような概括的な説明が所長あるいは所長代行からなされます。刑事の状況はこうであるというような形で報告がございまして、その際資料といたしまして各部別の状況というようなものも配られることがあるわけでございます。そのことを称して営業報告書というふうに言っておられるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/60
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061・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 裁判官が神聖な裁判に当たっていて営業報告なんという言葉を使うということ自身、ちょっと私は理解できないのですが、これは本当に言ったのかは別ですけれども、赤字、黒字というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/61
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062・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 これも甚だ不適切な表現だと思います。新受に見合います既済をいたしますと、これは収支と申しますとまたおしかりをいただきますが、収支とんとんということになります。新受を下回ります既済ということになりますと、未済事件がふえるわけでございます。これを称しまして俗に赤字というふうに呼んでいるんじゃないかと思います。それから、新受を上回ります既済件数がございますと未済がその分だけ減ってくるわけでございまして、そのことを称して黒字と俗に呼んでいるんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/62
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063・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 これは言葉は別として、問題はこういう統計をとっているわけですね。各裁判官ごとにとっていないと言うけれども、各部の何係と言えばだれが裁判官だかわかるわけですから、とっていて、そこで例えば未済が多いとか長期未済が多いとなると、ここで問題なんですね。ここで問題と言うと何かテレビのクイズみたいであれだけれども、ここで問題なのは、所長が呼ぶわけでしょう。呼んで、君のこの未済は多いじゃないか、これはどういうわけだ、こう聞く。それは司法権の独立との関係でどうなんですか、いいのですか悪いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/63
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064・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 各部、係における事件処理状況と申しますものは所長が把握しておられると思います。それに基づきまして所長がどのような措置を具体的になさいますか、これはそれぞれいろいろなやり方があろうかと思いまして、私どもそれを逐一詳細に承知しているわけではございません。場合によりますと、その係を含みます部総括をお呼びになりまして、例えば右とか左の負担が少し多いのじゃないか、何か配慮してやる必要があるのじゃないだろうかというふうに申し上げることもあるだろうと思います。私のわずかな経験でございますけれども、未済が滞った裁判官を直接呼びつけて、これを何とかしろというふうな形で言われたことは実はないわけでございます。
裁判の独立と司法行政との接点と申しますのは、稲葉委員先刻御承知のとおり、非常に難しい問題であろうかと思います。漫然放置しておきますと、その人が未済事件を抱え込んで快々として悩むということもあるわけでございまして、適切な助言をしてさしあげる必要がある場合ももちろんあろうかと思います。その際には、所長も裁判官でございますから、そのような個々的な事件の干渉にわたるようなことはもちろんおっしゃらないだろうと思います。ただ、君のところの事件が非常にたまっているようだけれども、何かこちらの方で援助できるようなことがあったら遠慮なく申し述べるというような形であるいは言われることもあるのかもしれません。詳細は私承知しておりませんけれども、仮にそのような未済事件を非常に抱えて困っているような裁判官がございます場合には、やはりその裁判官のみならず他の裁判官も含めまして、適正迅速な処理ができるようにその裁判官に助力の手を差し伸べる必要がございますので、裁判官の独立を害しないような範囲で、しかも適正迅速な処理ができるような環境づくりと申しますか、そのような点に意を尽くしながら所長さんとしては努力されているのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/64
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065・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 民事裁判官会同だとか刑事裁判官会同というのが最高裁でありますね。そうすると、どうもよくわからないのですが、一つの問題について研究会や何かやるといろいろな意見が出る。最終的には最高裁の民事局長なり刑事局長が、最高裁としてはこういう考え方だとは言わないけれども、こういう考え方が適正だろうとも言わないけれども、いずれにしても最高裁の見解らしいものを最終的に示すのじゃありませんか。そういうふうなことが盛んに言われているのですね。そのことから公害訴訟であるとか国を相手にするいろいろな訴訟の流れが変わってきたということも言われておるので、その会同というのは一体何のためにあって、具体的に最高裁の民事局なり刑事局なりはどういう役割をしておるのですか。最終的には最高裁側の、言葉は難しいのですが、案を出すというと、いや案は決して出しませんと言うし、考えを示すのかというと、いや決して考えを示したことはございませんと言うし、なかなか難しいのですけれども、いずれにしても最高裁の民事局なり刑事局としての考え方は、参考には述べることになるのですか。実際にはどういうふうになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/65
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066・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 裁判官の会同なり協議会は、それぞれ具体的な事件を抱えて、その適正迅速な処理にいろいろ苦心しておられます裁判官が相寄りまして、それぞれ具体的な事件の話は申しません、いずれも抽象化をして議論をするわけでございますが、自由闊達に議論を交わしてもらいまして、それぞれその研さん、修養の糧にしていただくわけでございます。その際に、もちろん最高裁の事務局におきましてはある抽象的な命題に関連いたします学説、判例等はいろいろ渉猟いたしまして、こういう学説がある、このような学説もある、このような判例もある、こういうことは申し述べます。
それから裁判官方におかれましても、会同員あるいは協議会のメンバーといたしまして、こういう学説があるけれども自分はこういう観点からこういうふうに考えるのだと、いろいろ意見を申し述べられます。場合によりますと、そういうふうな自由な意見交換で終わりまして、結論めいたことを申し上げないときもございます。中には、これは最高裁じゃありませんけれども、事務局限りの御意見といたしまして、我々の研究の結果によると、甲乙丙の三つの学説があるうちには丙説が一番妥当ではないのかと考えておるというようなことを申し上げることもございます。それも、例えば学説の一つのような位置づけとして申し上げているわけでございます。そのあたりの見解をどのように取捨選択していただくか、これは独立に司法権を行使されます各裁判官方のそれぞれの御判断にゆだねられているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/66
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067・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 今の問題は、お聞きしますと、一番最後のところでそういうような案らしいものというか見解らしいものを示して、受け取る方は、最高裁の考え方と相反する判決をすれば控訴なり上告をされて破られる、そのときにというのをいろいろ考えて、結局最高裁側のというか事務総局側の意見らしいものと受け取ってそれに従っていく、こういうふうなことが現実には行われているんじゃないでしょうかね。どうもそういうふうに聞くのですがね。
ただ検察官の場合は、会同なんかありますけれども、これは大体大した用もなしに集まる場合も多いのですか。終わって懇親会をやるのが目的で集まる、同期の懇親会とかなんとかと、そういう関係で遠くにいるのをたまに東京に呼んであれしよう、懇親会中心だというのでやるらしい場合もあるように聞いているのだけれども、裁判所のはどうもそうでないらしいですね。一つの目的を決めてやるのじゃないですか。一つのルートというか、そこへずっと引っ張っていこうという意図があるようにとっている人もいるのです。どうもそこら辺のところがよくわからないところなんです。
きょうは、もう一つの問題は、裁判官は十年間判事補ですね。そしてその間にやめる人はそんなにいないわけですね。検事の方は十年間でやめるのが随分多いわけなんだ、そこが本筋なんです。裁判官の場合はどうして、三年たつ、それから五年たって特例になりますか、単独で裁判をやりますわな。そうして十年間にやめるという人は余りいないように感ずるのですが、そこはどういうふうになっておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/67
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068・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 判事補の退官でございますけれども、年度によって多い年もあり少ない年もありますが、過去数年分平均してみますと、一年間で判事補の退官は五名程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/68
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069・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 判事補で五年たつと、特例で単独で裁判ができますね。これはどういうところから来ているわけですか。どういう理由づけから来ているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/69
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070・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 これは、裁判所法の建前でございますと判事補十年にして判事資格が得られるわけでございますが、御承知の職権特例法がございまして、当分の間、判事補を五年経過をした者には判事の職権を認めるというふうになっております。その法律に従いまして職権特例の判事補として判事の仕事を行うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/70
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071・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 それは法律の説明なんで、じゃ、なぜ五年たってそういう特例というものを認めるようになったのか。それで全部の人が五年たつとちゃんと特例になって単独で裁判できるわけでしょう。これが一つの裁判官のだいご味、だいご味というと言葉が悪いけれども、一つのあれですわね。
ところが、検事はどうなんですか。大臣も聞いていてくださいよ。官房長でもいい。検事は五年たって何をやっているのですか。何をやっているというのはおかしいけれども、下っ端でぺいぺいしているわけでしょう。そう言っては悪いか。五年たつと検事は何をやっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/71
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072・根來泰周
○根來政府委員 私どもの人事関係は、一年間は新任検事ということで大地検に置きます。それから地方へ出まして、大体四年たちますと、大地検にいわゆるA庁という指定がございますけれども、大地検に帰ってきまして大地検で修業する、こういう形になっております。したがいまして、五年ぐらいたったときにはまだ地方におろか、あるいはいわゆるA庁入りという制度に乗りまして東京、大阪等の大地検で修業をしておるというような状況だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/72
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073・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 裁判官の方は五年たって単独で裁判できて、検事の方はA庁に入れば一番下の方ですよ。一番下でもないけれども、まあ一番下に近いところですね。あるいは地方でも下の方です。これはどういうわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/73
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074・根來泰周
○根來政府委員 私の立場でお答えするのはどうかと思いますけれども、検察庁の場合はその仕事というのはもう新任検事のときから独立して検事として職権を行使しておるわけでございまして、新任検事でありましても仮に二十年の検事でありましても同じようなレベルで仕事をしているわけでございます。仕事の内容といたしまして難しい事件をやるとか易しい事件をやるとかいう差はございますけれども、そういう意味で新任検事であろうと二十年の検事であろうと実質的には同じじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/74
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075・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 それはこういうことでしょう。例えば起訴状を書くときに、何々検察庁検事の名前で起訴状を書いているわけですね。ところが、何々地方検察庁検事正の名前で起訴状を書かないのはどういうわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/75
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076・根來泰周
○根來政府委員 検事正はその地方の検察行政といいますか、そういうことを統括しておるということでございますし、また事件の指揮監督をしているわけでございまして、自分がみずから捜査なり公判なりをやっておるわけではございませんので、直接その捜査等をやっておる検察官がその名前で処分を裁判所に請求する、こういう形になっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/76
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077・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 形になっているのはそのとおりなんで、だから検事は一つの、どういう言葉なんですか、独任官庁というか独立官庁というのですか、どういう形なんですか。正式に言うと、言葉はどういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/77
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078・根來泰周
○根來政府委員 独立の行政機関、こういうふうに解釈されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/78
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079・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 独立の行政機関だから、起訴状なんかも自分の名前で起訴するんじゃないですか。こういうわけでしょう。ところが、現実にはちっとも独立の機関じゃないわけなんです。それは、行政目的はいろいろありますから単純には言えないと思うのですけれども、問題は十年たって裁判官でやめる人は今五人だと言われましたね。裁判官の方が初任の人数は多いわけでしょう。大体倍でしょう。検事の方は十年たってやめる人はどのくらいいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/79
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080・根來泰周
○根來政府委員 過去五年間の平均でございますが、十年未満の在職の検事で退職した者は年平均して十三人程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/80
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081・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 そんなに少ないですかね。私はもっと多いように思っていたのですが。それは、最初から検事の肩書だけもらってやめるという人もいるらしいのですよ。元東京地検検事という名前があった方が、というようなことでやる人もいるから一概に言えないのですが、問題は、近ごろの傾向というのは、やめる人が、十年たってというだけではないのですけれども、非常にふえているということと、それから相当優秀な人がやめる傾向にあるということなんですよ。残っている人も優秀なんですよ。そう言うと話がおかしくなるからあれですが、相当優秀な人がやめるわけですよ、だれがどうだということは言いませんけれども。
この前、文芸春秋に出ましたね。その人は一月二十二日付で大阪の弁護士会に入っていますが、その記事を読むと、私はあれは全部がうそだとは言えないと思うのです。全部が本当だとも言えないと思うのですけれども、詳しいことを知っている人がいて、日時とかなんとか内容まで相当詳しく書いてある。ということは、全部がうそだとは言えないと思うのです。相当考えなければならない問題を含んでいると思うのです。それで、十年間の任官だけでなくて、検事の退職者が相当いるわけですが、どういう理由で検事が中途でやめるのかというふうにあなた方の方では考えているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/81
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082・根來泰周
○根來政府委員 検事の退職の理由はいずれも一身上の理由ということでございまして、若手の検事で退職いたしますと、退職後は大体弁護士になっているというのが実情でございます。理由はそういうことになっておりますけれども、退職の動機は必ずしも判然といたしておるわけではございません。これについていろいろ推測するわけでございますけれども、これは先生の御意見も承り、また私どもの意見も申し上げたいと思いますが、それは余り公開の席でいろいろ申し上げますと差しさわりもございます。公開の席で申し上げられるとしました場合には、必ずしも納得いかない点があると思いますけれども、検事の生活というのは公私ともに非常に厳しい生活をしております。仕事も非常に忙しい、また私的にもいろいろ拘束を受けておるということであります反面、それに対して転勤も多い、それなりの待遇が与えられていないというような考え方に立ってやめる者が多いのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/82
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083・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 公開の席で言えることと公開の席で言えないことがあるというのはおかしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/83
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084・根來泰周
○根來政府委員 退職の理由というのは、非常に私的なことがございます。私的なことについていろいろ分析すると、その御本人に対しても非常に失礼に当たることがございますし、余り御本人に対して好ましい結果にならないのでそういうふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/84
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085・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 それはそれでいいのですが、問題はいろいろあると思うのですよ。一つは、転勤が多いこともありますね。だけれども、裁判官の場合だって十年間に大体三カ所ぐらい行くわけですね。殊に検事の方が転勤は多いですね。それが一つ。
それからもう一つは、今の検事の警察との関係の問題が相当あるんじゃないでしょうか。これはいわゆる壁塗りというのですが、御案内と思うのですけれども、警察から来た事件をそのまま調書をとり直して、ただやっているだけのがあるわけですね。そうすると、検事は何のために自分は司法試験を通ってこういう検事をやっているのか、一つの抱負を持ってやってきたのにこんなことをやっているんじゃということで嫌になっちゃうのも相当いるわけですね。これは刑事訴訟法の改正までいかないといけないのかもわかりません、よくわかりませんが。
もう一つの問題は、今言った独立官庁であるのに実に決裁がやかましいのですよ。それはいい次席にめぐり会えばいいわけですけれども、やかましい次席にめぐり会ったら収拾がつかなくなる。だから、報告がまず嫌なんです。調べたものを上へ報告しなければならないでしょう。報告したところでああだこうだと言われて、調書のとり方が悪いから直せなんて言われて突っ返されるわけでしょう。どこを突っ返されるかというと、大体調書の中で未必の故意のとり方でしょう。こんな調書のとり方あるか、未必の故意をうまくとれば殺人罪になるじゃないかとかというのも相当あるわけですね。だから、当たりどころによっては死ぬのではなかろうかと思いましたというような調書をとらないといけないわけですよ。調書の技術が出てくるわけです。そういうようなことがいろいろあるわけですけれども、いずれにしても報告があって決裁が非常にやかましいということですね。きつ過ぎるということが今の若い人にはあれだということが、もう一つ大きな原因になってきているわけですね。だから、考え方によると、そういうことによってかえっていろいろな人と切磋琢磨することが必要なんだ、そういう見方もあるのですね。だから一概に論ずるわけにはいきませんけれども、ともかく独立官庁であって権限が十分与えられないで、細かいことまで報告して決裁を経なければならないというところに嫌気が差してしまうという者も相当いるわけですよ。
もう一つは、皆さん方には悪いのですけれども、おれたちはいつまでたっても田舎回りだ。それで、できる人というと司法試験を一番か二番で通って、語学ができて、外国語に通じてというのが東京にいて本省と東京地検との間を行ったり来たりしているのだ、東京から離れやしないではないか、おれたちは田舎ばかり回されて何だというような気持ちもないわけではないですね。
いずれにしてもそういう点がありまして、非常に決裁が厳し過ぎるのですよ。上命下従が厳し過ぎる、これが問題ではないかと私は思うのです。これをどういうふうに理解したらいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/85
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086・岡村泰孝
○岡村政府委員 決裁のことでございますが、これは検事正等の指揮監督権に由来するものでありますが、検察権の行使に全体としての統一性を保たせ、検察権の行使が誤りなく行われるようにするために有用なものであるというふうに思っているところでございます。しかし一方、検察官はそれぞれ職務上独立いたしておりますので、この検察官の独立性ということといかにして調和を図っていくかということがやはり決裁制度の一つの問題であろうかと思います。要するに、検察官の自主性、主体性、こういったものを尊重しつつ検察権の行使が適正に行われるように決裁の運用を行っているところであります。
また一方、検察官はそれぞれ経験年数も違うところでありますので、経験年数の少ない検察官に対しましては指導的な意味あるいは教育的な意味も含めましていろいろ決裁の場において指導し、教育する面もあらうかと思います。こういった決裁制度のあり方等につきましては、先ほど御指摘のありました検察官の会同等におきまして真剣に検討を加えまして、どうあるべきか、どういった運用が望ましいかということをいろいろ議論いたしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/86
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087・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 だから、今のあれは、次席なり検事正の性格というか仕事ぶりというか、そういうものに関連するわけですよね。だから、いい次席やいい検事正にめぐり会った人は非常にいいわけです。だけれども、そうでない者にめぐり会ったらもうこれは収拾つかない。収拾つかないという言葉は悪いけれども、困ってしまうわけですね。どうも私が聞く範囲では、そこに一つの大きなポイントがあるような感じがしてならないわけです。あの文芸春秋に出たのも、全部うそではないですよ。あれが全部本当だとは言いませんけれども、どうもそういう感じがするわけですね。
そこで、今度の法案は簡易裁判所の判事を五名増員するということです。これは結構なんですが、問題は簡易裁判所の判事がどうやって採用されているのか。何か試験をやっているらしいのですが、官報に出るわけでもないらしくて、何かわけがわからないですね。一部に言われているのは、司法行政にあずかった人たちが簡易裁判所の判事になるのが多いということが言われている。殊に最高裁に関連した人ですね。最高裁の事務総局にいた人、大法廷なり小法廷なりで書記官や何かをやっていた人、そういう人が簡裁の判事に登用されるのが非常に多いということを私どもは聞くわけです。それから地裁でいうと事務局長とか、それからいわゆる司法行政にあずかった人たちが多いということを聞くのですが、実態はどういうふうになっているのですか。どういうような選考をやって、どういう人が応募して、どういうふうな人たち、今私が言ったようなことで司法行政に関連する人たちが多いように聞くのですけれども、具体的にどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/87
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088・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、簡易裁判所判事の任命には二つのルートがあるわけでございます。
一つは、裁判所法四十四条に定めております判事等の職にあった者からの任命でありまして、これは判事あるいは検察官、弁護士等からの任命で、各年度それぞれ随時任命しているわけであります。
ただいま御指摘の点はもう一つのルート、裁判所法四十五条の採用の場合のことをおっしゃっておられるものと思います。これは条文にもございますように、多年司法事務に従事した者、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者から任命するということになっているわけでありますが、この任命は各地方裁判所に置かれました簡易裁判所判事推薦委員会から候補者が推薦されてまいりまして、その推薦されてきた候補者を最高裁判所に置かれた簡易裁判所判事選考委員会で選考いたしまして、そしてその選考の結果任命するということになっております。そしてさらに、簡易裁判所判事選考委員会の選考の対象者には、このように各地の推薦委員会から推薦されてきた者と、そのほか簡易裁判所判事選考委員会において直接対象者として決定した者、この両方があるわけであります。
そのようにして任命されたのがいわゆる特任の簡易裁判所判事というわけでありますが、この中の後者の簡易裁判所判事選考委員会で直接候補者として認定した者、この点を指摘しておられるものではなかろうかと思うわけであります。これは最高裁判所の職員のみならず、全国各地で一般職の裁判所事務官あるいは裁判所書記官として多年その力量を発揮して、そして各裁判所での書記官事務あるいは事務官事務についてのベテランとして長年を送った者を対象としているわけであります。その比率といたしましては、今言われたような司法行政に携わった者が多いというようなことはございませんで、書記官として法律知識を駆使して書記官事務についてのベテランとして成長した者も多数あるわけでございます。
それからまた、最高裁判所の例えば首席書記官というようなものも、各地の首席書記官等のポストを経て最高裁判所の首席書記官になってきているわけでありまして、最高裁判所でずっと育って、そして最高裁判所の首席書記官になるという者は現在いないわけでございます。このように各地で書記官あるいは事務官としてその能力を実証してきた者が、その簡易裁判所判事選考委員会で候補者として決定されて、そしてその試験を受けて最終的な選考、合格という運びになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/88
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089・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 それはわかっているのですよ。私の言っているのは、最高裁の事務総局なり大法廷なり小法廷を経験した人が簡易裁判所の判事になるのが相当多いように聞いておるものですから、それをお聞きしているわけなんです。ともするとこの簡裁の判事の選考が今選考委員会や何かで地裁にあるというけれども、いつどういうふうにやっているのかよくわからないですね。官報に出てやるわけでもないのでしょう、いろいろあるのでしょうけれども。そういうふうな点があると思うのです。
私、疑問に思いますのは、よくわからないので教えていただきたいのですが、例えば勾留質問の場合に、東京ならば十四部でやりますね。そうすると、簡裁の判事でも涜職だとか殺人だとか放火とか、そういう事件についても勾留質問ができるのですか。そして勾留状を出せるのですか。そこはよくわからないのですが、出せるとすればそれはどういう法律的な根拠なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/89
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090・吉丸眞
○吉丸最高裁判所長官代理者 御指摘の殺人、放火等の重要な事件につきましても、令状請求事件の処理につきましては、簡裁判事もこれができるということになっております。
御承知のとおり、裁判所法には地裁、簡裁等の管轄の定めがございますが、これは訴訟事件に関するものであるというふうに理解されるわけでございまして、令状請求事件の処理ということになりますと、訴訟事件の処理とは性質、内容が全く異なるということになりますので、必ずしも訴訟事件の管轄に拘束されることはないというふうに考えられているものと思われます。現行刑訴法では、御承知のとおり令状の発付は裁判所でなく裁判官の権限とされておりまして、刑訴規則二百九十九条は、その法律を受けまして、令状請求について原則として司法警察員等が所属する官公署を管轄する地裁または簡裁の裁判官に対して行うべきであるというふうに定めておりまして、現在はこの規定によって運用されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/90
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091・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 その規定自身がどうも私よくわからないのですよ。だから、大きな犯罪、事物管轄からいえばできない事件について勾留質問をやって勾留状を発付できるということになりますと、それは事実上裁判以上のものになってくるんじゃないか、こう私は思うのです。だから問題は、地裁の裁判官が勾留当番の場合と、それから簡裁の判事が勾留当番の場合と、これはちょっと違うわけですよ。第一、却下率が非常に違うわけですよね。そういう統計がありますか、今なければ後でもいいですけれども。地裁の判事の方は却下率がある程度あるけれども、簡裁の判事の場合は勾留質問に対して却下はほとんどないわけです。すっと通ってしまうわけです。だから検察官によりますと、これは検察官はあれしないけれども、事務官が、東京なんか別かもわかりませんけれども、きょうの勾留当番だれだろうということを裁判所に聞くわけです。そうすると、例えばA判事だ、あれはまだ若くて判事補でなかなか優秀な人で、ちょっとこれはまずいな、あしただれだと言うと、余り言っては悪いけれどもB簡裁判事だとなると、じゃ一日あれしておいてあしたやった方がいいじゃないかということを、検事はやらないですよ、事務官の方であんばいしてやる場合もなきにしもあらずというようなことも聞いておるわけです。
だから、そこら辺が非常におかしいのですよ。判決、決定、命令というのも事物管轄になるわけでしょう。勾留質問によって勾留状を発付するのは、訴訟事件じゃないからといって簡裁の判事に、それも大きな犯罪に関連して事物管轄ということを全く考慮しないでやらせるというのは、理屈はわかりましたよ、訴訟事件でないということかもわかりませんけれども、それは筋が通ってないので、元来それは戦後のそのときに自治体警察ができて、それに対応して簡易裁判所もできる、そうすると、そこで逮捕状等をわざわざ本庁や何かへもらいに行くのは大変だからそこのところでもらおうということになってできた法律ではないのですか。経過がどうもそういうふうに思われるのですよ。
ですから勾留質問を、これはやはり事物管轄なら事物管轄というふうにちゃんと守るような形にいくのが筋じゃないかと私は思うのです。理屈はいろいろ立つと思うのですけれども、どうもそこのところが納得できないのですよ。ですから今度のある事件なんかでも、東京簡裁のあれから捜索、差し押さえ令状が山のように出ているのでしょう。請求すればどんどん出るわけです。逮捕状とは多少性質が違うかもしれませんけれども、どんどん出る。地裁だとなかなかそうはいかぬという傾向がなきにしもあらずということが言われておるのですね。今の、勾留質問の勾留状を簡裁の判事がそうした事物管轄と関係なく出せるということは、法律規定はわかりますよ、わかるけれども、どうも沿革からいって変わってきているのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、そこはどういうふうに理解したらいいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/91
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092・吉丸眞
○吉丸最高裁判所長官代理者 現在の簡易裁判所の発足当時のことを考えますと、委員ただいま御指摘のとおり、全国に散在する多数の警察における令状請求を容易、迅速になさしめるということから、簡易裁判所の重要な役目として令状請求の審査ということが入ったというふうに理解いたしております。そして、逮捕状、捜索、差し押さえ令状等の関係を考えますと、この状況は基本的には現在においても変わりはないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
勾留事件ということになりますと、これは逮捕状、捜索、差し押さえ状よりも一層いわば公判に近いような性質のものになります。これはそういう意味でそれぞれ各庁実情に応じて処理されているところだと思われますが、そのあたりの具体的な状況については私どもも必ずしも十分把握していない状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/92
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093・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 勾留質問で答えたものが弁解録取調書になるのですか。それは証拠能力があるわけですからね。だから、簡裁判事の質問をした事物管轄を超えたものに対しての弁解録取も証拠能力があるということを考えると、どうも筋が通らないように私は考えられるのです。
それからもう一つは、簡裁判事のことでいろいろ疑問に思いますのは、事件の中では、一つは境界確定の訴えですよ。これはよくわからないです。境界確定の訴えと所有権確認の訴えとがよくわからないですね。これこそ会同か何かで最高裁としては見解を示したことがあるのですか。ということは、境界確定というのは、境界がわからないから求めるんだ、境界がわかっているなら所有権確認でいくんだ、こういうことを言う人もあるのですね。それなら、自分は、原告はA地を所有しておる、被告はB地を所有しておる、境界がわからない、裁判所で境界を決めてくれ、こういう訴えを全国で千件くらい起こされたら収拾がつかなくなってしまうんじゃないですか。だから、境界確定の訴えと所有権確認の訴えとがどう違うか。それが簡裁に多くかかるために簡裁では事件が延びてしまっているのが非常に多いわけですね。第一、最高裁の判例は境界確定の訴えに和解はないというのでしょう。和解がないといっても、一生懸命和解を進めているじゃないですか。これはおかしいじゃないですか。そもそも今言ったことと、それから境界確定の訴えが形成訴訟なら、そして非訟事件なら非訟事件としてちゃんとはっきりさせたらいいんじゃないですか。そこら辺のところをどういうふうに考えたらいいのですか。余り司法権の独立に介入してはいけませんけれども、どういうふうに考えたらいいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/93
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094・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 境界確定訴訟は、御指摘のとおり形成訴訟と解されておりますが、実際問題といたしましては、当事者の方で自分の主張する所有権の範囲はこういうことであるということで、実際の問題としましては当事者の間で係争地というものが固まっておりますので、実際上は所有権確認の争いという形になっております。
そこで、私どもは訴額を考える際に、実際に争っております紛争の土地の価額でもって管轄を決めておりまして、九十万以下の場合には簡裁ということになっておりますが、御承知のように五十七年九月の改正におきまして、境界確定とか御指摘の所有権確認訴訟は裁判所の事件の中でも最も複雑な事件の代表とされたために、地裁と簡裁の競合管轄ということになりました。それから、一たん簡裁に申し立てられましても、被告の申し立てがございますとこれは必要移送ということで地裁に持っていかなければいけない、こういうことになりまして、そのために今こういう不動産訴訟が地裁と簡裁でどういうふうに係属しているかを見てまいりますと、六十二年におきまして地裁の係属が五九・一%、約六〇%になっております。これは九十万以下のものでございます。それから簡裁の係属事件が四〇・九%になっております。これが、法改正前の五十六年の数値を見ますと、三十万以下のこういう不動産訴訟が、地裁が一一・五%、簡裁が八八・五%でございましたから、かなり簡裁の係属事件が少なくなっております。したがって、法の改正の趣旨がかなり浸透してきているのではないかと思っております。
私どもといたしましても、こういう境界確定訴訟等の不動産訴訟はできるだけ地裁に移送するのがいいのではないかということで、会同等で各裁判官の理解を求めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/94
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095・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 今の問題は、法律的な見解をここでお聞きしてもあれだと思うのですが、私の聞きたいところは、それが簡裁でどうしても長くなる。私は長くなっていいと思うのです。何もむやみやたらに早くすることが筋ではないのだというふうに思うのです。だから、長くなるのは長くなってもいいと思うのですが、それが公正に行われればいいと思っているのですが、いずれにいたしましても、その二つの差がよくわからないのですよ。これは私じゃなかったのですが、私がたまたまいたときに、ある著名な裁判官ですが、高裁で書物を書いておられる方ですが、その方から釈明をされまして、釈明されたのは私じゃないのですよ。それで、立ち往生している人が大分おられたので、その点は強く感ずるのです。だから、非訟事件なら非訟事件としてはっきりさせていくとか、所有権確認の訴えの場合には負けてしまったらば既判力はないわけでしょう。境界確定の訴えをまた起こせるのですか。そういうわけですね。そこら辺のところはどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/95
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096・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 所有権確認訴訟も既判力がございますが、さらにその境界について争いが残っております場合には境界確認訴訟が起こせるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/96
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097・稲葉誠一
○稲葉(誠)委員 私が既判力がないと言ったのはこれは間違いですが、いずれにしてもルールとしてよくわからないのですね。所有権確認をずっとやってみて、それで最高裁まで仮に行ったとして、なおかつ境界確定の訴えが起こせるのか起こせないのか、場合によるかもわかりませんし、そこら辺のところは私もよくわからないものですから、勉強してみたいと思っておるところなんです。
いずれにいたしましても、裁判所職員定員法で簡裁の判事五名をふやすということ、それから裁判官以外の裁判所職員を二十五人増加するということ、これは最初の段階の概算要求のときにここまで行かなかったのが、あれは簡裁の統廃合がまだない段階でしたからこういう数字だったと思うのですが、ここまで来たわけですが、さらに裁判所の中の、殊に職員の仕事の内容から非常に人数が少なくて困っているとかいろいろな問題がありますが、これはまた日を改めて質問させていただきたい、こういうふうに思っております。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/97
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098・戸沢政方
○戸沢委員長 冬柴鉄三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/98
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099・冬柴鐵三
○冬柴委員 ことしの裁判所職員定員法の一部改正案は、下級裁判所の裁判官において定員の変更を必要とするのは簡易裁判所の判事のみのようでございますけれども、昭和六十三年、ことしの四月に簡易裁判所判事への任官予定者は何名になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/99
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100・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事は、最高裁判所に設けられました簡易裁判所判事選考委員会の選考によって任命される者と有資格者からの任命と両方あるわけでございます。
それで、前者の任命が簡易裁判所判事の任命のかなりの部分を占めるわけでありますが、これは一定の委員会の手続が必要でございまして、各地の推薦委員会から推薦が上がってまいりまして、そしてそれを試験をしていくという関係になるわけであります。そういった試験の採点等がありまして、最終的に選考が決まりますのは夏でございます。大体、この選考を経て任命される者は例年八月一日の任命ということになっているわけでございます。
そのほかに、例えば判事定年退官者あるいは定年に近い判事が中途退官をいたしまして任命をされるケースがございます。これは一定の決まった時期があるわけではございませんで、その定年に近い時期等に年間随時任命されていくわけであります。ことしの四月の採用という形で特に簡易裁判所判事の任命を決めているわけではございませんが、この判事定年に近い方からの簡易裁判所判事の任命が六、七名に上るはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/100
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101・冬柴鐵三
○冬柴委員 それでは、このようにお聞きしたいと思うのですが、簡易裁判所判事の現定員は七百七十九名。いただきました資料の昨年十二月一日現在による欠員は三十二名。十二月二日からこの年度末、本年三月末までに退官される予定の方を合わせて何名ぐらいの欠員になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/101
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102・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 昨年十二月一日現在の欠員がさらに十名程度膨らむ予定でございます。すなわち、その間の退官者が十名程度ふえまして、四十名を少し超える程度の欠員が出るという予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/102
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103・冬柴鐵三
○冬柴委員 そうしますと、今回五名増員するといういわゆる上限と申しますか、それはどういうような計算といいますか、観点から五名を増員して七百八十四名にされようとするのか、その理由はどういうところにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/103
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104・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 先ほど人事局長から御説明申し上げましたように、これまでの欠員それから今後予想される欠員を含めまして充員措置を講ずるわけでございますが、私どもといたしまして今回簡易裁判所の判事五名の増要求をいたしましたのは、昨年管轄法の改正法を可決成立させていただきまして、簡易裁判所の充実を図らなければならない。御承知のように、簡易裁判所は裁判官が常駐していない庁がかなり多うございまして、管轄法改正の施行に伴いましてその非常駐庁の多くは解消されますが、なお五十一庁の非常駐庁が存続するわけでございます。この中で、事件数あるいは人口数等から見まして裁判官を常駐させる必要のある庁が相当ございます。それらの常駐化に当たるためにある程度計画を立てなければなりませんが、計画を立てました上で簡易裁判所判事の増員をお願いしたい。とりあえず今年度におきましては五名ということでお願いしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/104
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105・冬柴鐵三
○冬柴委員 資料によりますと、簡易裁判所の六十一年度民事一審新受件数というものは二十一万四千百四十四件となっているようです。これは現時点からいいますと丸一年前の統計になりますけれども、これが大体横ばいになっていると仮定いたしましても、七百名の簡易裁判所判事に均等に割り振ったということを前提にいたしましても、三百件の新受件を簡易裁判所一人に割り当てるというふうになると思うのです。もちろん刑事もありますし、いろいろありますが、特に民事を考えましても大変ハードだというふうに思われるのですが、統計上で結構ですけれども、簡易裁判所判事の一人の手持ち民事一審受件数、こういうものがわかりましたら、大体何件くらいになっているのかをお示しいただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/105
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106・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねでございますが、突然のお尋ねでございますので、今ちょっと手元に数字を持っておりませんので、後刻また……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/106
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107・冬柴鐵三
○冬柴委員 それでは次に移ることにいたしますが、簡易裁判所の民事訴訟事件の平均審理期間につきまして、いただきました資料によりますと三・二カ月と記載されています。この計算の基礎には、昨年も私指摘を申し上げたのですが、事件終了事由に訴え却下、放棄、認諾、取り下げあるいは欠席判決等、実質的な審理に至らなかったものも含められているのではないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/107
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108・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 訴え却下、請求の放棄、認諾、和解、それからもちろん欠席判決、すべて含んでおります。訴えの却下、請求の放棄、認諾は比較的数は少のうございますが、欠席判決はかなり数が多うございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/108
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109・冬柴鐵三
○冬柴委員 私は昨年の三月二十四日の当法務委員会で裁判所職員定員法の一部改正法案の質疑をさせていただいたわけですが、その際に、このような質疑資料としては、実質的な審理というものを必要としたいわゆる対席判決に要した期間がどれぐらいになるか、こういうことを示してもらわないと、訴訟のあるべき姿、いわゆる迅速な裁判というものの要請に照らしまして現状訴訟は遅延をしているのではないか、あるいはそれを解消するためには簡易裁判所判事はどの程度の定員を必要とするか、このようなことを審議するのがこの場だと思われます。そのような場合に、いわゆる実質的な審理を必要としなかった取り下げとか放棄、認諾。欠席判決になりますとちょっと違うかもわかりませんけれども、そういうものを含めまして裁判官の手をそう煩わさなかった、そしてまたこれは当然ながらほとんど一回期日で事件が落着している、こういうものまでいわゆる玉石混交してしまうと、押しなべて民事事件が非常に早く解決しているように国民の目には映ってしまう。しかし、そうではないのではないかというのが我々の実感でありますので、その際もこのような資料を、対席判決に要した期間、そしてそれは何年目に何%、何年目に何%というような形でお示しをいただきたいものだという要請をしていたのですが、これが今回にもついていないというのは何か理由があったのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/109
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110・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 委員からお話がございましたように、六十一年での通常民事訴訟で平均審理期間は簡裁が三・二カ月ということになっておりますが、今御指摘のように、いわゆる実質的な争いがある事件ということで対席判決で終わったものの審理期間だけを取り出してみますと、六十一年度で簡裁が六・三カ月になっております。約二倍になっております。また、期間別でございますけれども、簡裁の場合に、やはり六十一年度で七六・一%の事件は六カ月以内に処理されておりますので、全体的に見ますとほぼ順調な処理になっているのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/110
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111・冬柴鐵三
○冬柴委員 あと二三%はどれくらいになっていますか、わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/111
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112・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 六十一年度の対席判決で終わった簡裁判事の既済事件を申しますと、先ほど申しましたように六カ月以内が七六・一%でございますが、一年以内が一三・四%、二年以内が六・四%、三年以内が一・九%、三年を超えるものが二・二%、このようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/112
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113・冬柴鐵三
○冬柴委員 ぜひ来年からこのような資料もお届けいただきたい、このように要請をしておきます。
ことしは定員の改正は不要のようでございますけれども、六十三年の四月司法修習を終えて判事補に任官されるのは何名が予定されておりますか、その点について。また、それ以外のルートから判事補に任官されることがあるか、あれば何名くらい予定されるか、その点についてもお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/113
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114・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 この春修習を終える司法修習生で裁判官への任官を希望している者は七十三名でございます。この七十三名がまだ現在いわゆる二回試験の結果は出ていないわけでありますし、また、その後の裁判官の採用のための面接等もまだでございます。その七十三名の者が候補者となって採用される、こういうことになるわけでございます。
司法修習生以外で判事補を希望している者といいますのは、これは年度によりまして時にそういう希望者があることはございますが、現在この六十三年の四月以降に採用を予定している者はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/114
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115・冬柴鐵三
○冬柴委員 ついでに、判事補の欠員が昨年十二月一日では十六名になっておりますけれども、この三月末での欠員の予定者はどれくらいなのか。それから、判事補から十年を経て判事に任官される方の数、それは大体わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/115
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116・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 判事補十年を経過いたしましてこの春判事に任命される者は六十四名でございます。ただいまの十六名とこの数を合わせまして八十名程度の欠員ができる、こういうことになるわけでございますが、これをこの春の採用と、それからそのほか判事補から検察庁、法務省へ出ておりましてそして帰ってきたりする者がございます、そういった者で充員していく、こういう関係になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/116
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117・冬柴鐵三
○冬柴委員 そうしますと、下級裁判所の裁判官のうち、判事補の定員をこのたび、今年度は六百三人からふやさないということは、その範囲内でおさまる、欠員と増員がその範囲でおさまる、こういう趣旨だろうと思うわけでございますが、重ねて、判事についても同じようなことがわかりますか。もしあれでしたら、本年度の欠員がここには、十二月一日現在ですけれども二十七名と示されておりますが、その後の退官者が判事補から判事に任官する六十四名との関係でこれでいいのかどうか。おさまる計算にはなっていると思うのですけれども、その点の関係についてもできればお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/117
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118・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 判事につきましては、やはり昨年の十二月一日現在で二十七名の欠員があったわけであります。その後現在と申しますか、四月までの新たな欠員でございますが、これがまだやや浮動的な点はございますけれども、定年及び依願退官全部を含めまして五十人程度あるわけでございます。全部合わせまして七十を上回る程度の数ということになるわけであります。これを先ほど申しました判事補から判事に任命される者でもって埋めまして、さらに残りの部分はやはり法務省等の検事ポストから裁判所へ戻ってくる者でもって埋める、こういう関係になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/118
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119・冬柴鐵三
○冬柴委員 若干唐突な質問もあって恐縮だったのですけれども、このような検討を通じて明らかとなることは、下級裁判所の裁判官の員数、定員というものは、その年度のある時期における在官予定者数の上限を示すものにすぎず、期中おおむねそれで一定に一致するという期間はほとんどないではないか。特に年度末に至りますとそれまでの希望退官、定年、死亡等の欠員がふえ続けて相当な欠員数になっている、そして期末を迎える、このようなことになると思います。そして、新年度の任官予定者教が期末欠員を超えることが予想される場合には裁判所職員定員法の一部改正、増員改正を行う。そして、欠員に満たない場合には改正は見送っておく。毎年そのように行われているように考えるわけでございますが、そのような私の理解は誤りはありませんか、その点についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/119
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120・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 冬柴委員御指摘のとおり、裁判官につきましては、司法研修所の修習を終えた者から判事補に任命し、判事補十年を経過した者から判事に任命する、こういう仕組みになっておりますので、一定の時期に定員を満たしましても、その後逐次退官等によって欠員が生じ、期末になりますとかなりの欠員が出てまいります。それから、書記官、調査官につきましても、やはり養成の過程がございますので、年度途中に自由に充員するわけにもまいりませんので、同様の問題が生じてくるわけでございます。さりとて、年度当初に年度途中の欠員を見越して多くの職員を採用する、裁判官、書記官、調査官を採用しておくのは定員法の定めに抵触するということにもなりまして、そういうわけにもまいりませず、ただいま御指摘のございましたような手法で定員法の改正をお願いしてまいっている、御認識のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/120
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121・冬柴鐵三
○冬柴委員 そうであるならば、私は、国会に在籍をさせていただいている者といたしましては、年に一回裁判所の定員法の審議を通じてこのようにお会いするということ、これも結構なんですけれども、正直申し上げてこの処理はまことに不合理である、このように申し上げざるを得ないわけでございまして、司法行政事務の簡素化、行政改革の視点からもこの際改めるべきではなかろうかと思うわけでございます。
本来、裁判官の定員は来年度任官予定者が何名だから何名の定員を設けるというものであってはならないはずでございまして、憲法の定める迅速な裁判、これを国民に保障するためにはどの程度の各級裁判官を確保すべきか、そしてまた裁判官一人当たりの平均処理事件数はどの程度が適当であろうか、このような実体的、実質的な判断のもとにいわば中長期、五年くらい先を見通して定員の上限を定めるべきではないか。そして司法当局といたしましては、その定員をいかにして確保するか、充実すべきか、その方策はどうあるべきか、このようなことに力を入れるべきではなかろうか、このように私は考えるわけでございます。毎年日切れ法案としてこのような定員法が国会に上程される、これは大変な労力だろうと思います。このような考え方はいかがでございましょうか。この点についてお尋ねをいたします。
〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/121
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122・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 毎年のように定員法改正法の御審議をお願いいたしておりまして、まことに恐縮なわけでございますが、裁判所職員定員法が制定されました当初におきましても、毎年法改正手続を必要とすることについては実際において煩にたえない、あるいは無用の手数をかけることになるのではないかというような御指摘もあったわけでございます。ただ、国会の御審議をいただくというような関係が一つございます。裁判所職員、特に裁判官の人的構成につきましては裁判所に関する重要な事柄でございますし、裁判所職員の定員は結局は国民の裁判を受ける権利に関する実質的な保障にもかかわる重要な問題でございまして、他方、長期にわたり上限を画すということになりますと相当長期の事件数を予測しなければならない、現実にはこれがなかなか難しいといった点もございまして、今やっておりますような手法で毎年法改正をお願いしてきたわけでございます。
そういうふうにやってまいりますと今御指摘のように定員の運用の弾力性を欠く、年次途中で欠員を抱えていかなければならない、こういう事態にもなるわけでございまして、このような御指摘もごもっともであろうかと思います。ある程度の合理的な期間であれば、従来の増員の実情等も踏まえまして中長期的な予測を行うことも決して不可能ではないだろうと思われます。中長期的な予測をしながら裁判所職員の定員を考えます場合には、一方で、裁判所に持ち込まれる事件のみならず、将来を見越しましてその審理期間なり審理方法等を考慮することが必要にもなってくるわけでございます。これらの点はそのときどきの社会経済事情、あるいは制度的要因、国民の権利意識というようなものにも大きく左右されるものでございまして、厳格に五年先、十年先を見通すことは困難ではあろうかと思いますけれども、先ほども申しましたように過去の実績をもとにしてある程度の予測を立てまして中長期的な増員の必要性を考えてやるということも十分考えられるわけでございます。
ただ、この問題につきましては、先ほどもちょっと申しましたように国会の御審議をいただくことの必要性というものも他面考えなければならないわけでございまして、大方のコンセンサスがその関係で得られますならば、冬柴委員御指摘のように中長期的な展望を立てて裁判官それから裁判所職員の定員数の上限を設定いたしまして、その枠の中で具体的な定員数の定めは最高裁判所規則に委任するというような立法形式をとることも十分検討に値するものではないかと思われます。立法論に属することでございまして、このようなことまで申し上げるのはいかがかと存じますけれども、御指摘はまことに傾聴に値する点があろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/122
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123・冬柴鐵三
○冬柴委員 私は、裁判所の職員の数等につきましては予算で毎年十分審議もできるというふうにも考えておりますので、十年もはちょっと無理かもわかりませんけれども、三年なり五年という長期を見通して、そのかわりにその定員をいかにして確保するか、そのような方策もあわせて国会に上程をされるというような方法が適当ではないか、このように思うのですが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/123
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124・林田悠紀夫
○林田国務大臣 行政官庁におきましては、総定員法がありまして、その範囲内でやっております。また、私、県庁の行政もやりましたが、府県におきましては大体十年間ぐらい定員を決めまして、その定員の範囲内でやっておるというような状況でございます。したがって、御説のことはまことに意義があることでございまして、十分検討に値する問題だと存じます。検討させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/124
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125・冬柴鐵三
○冬柴委員 次に、今の簡易裁判所の審理期間がおおむね六カ月以内で終了している、四件のうち三件まで終了しているということは非常に結構だと思うのですけれども、しかし私は、二十年以上の弁護士生活を通じてもう少し何か長いような感じがするのですね。非常に難しい事件を持ち込んで長くやるからそういうことになるのかもわかりませんけれども、国民の感覚としては裁判はもっと迅速にやってほしいという声があることは事実でございまして、そのような意味で司法部内をもっと充実しなければならない、この必要性を私は強く感ずるわけでございます。
そういう点での一つの提言と申しますか、司法試験の改革等につきましても私的諮問機関からの御意見などもあったようでございますけれども、早急にこの司法修習生からの任官者を大幅にふやすということは、ここ数年間余り期待は難しいのじゃないか。それから、先ほどの稲葉委員の御質問にもありましたように、中途退官者、こういうことを減らすという抜本的方策も今直ちには見当たらない、このような事実があると思います。
そこで、下級裁判所の裁判官全体を増員をするという一つの方策でございますけれども、簡易裁判所の裁判官をもっとふやしたらどうかな、そして今判事あるいは判事補で簡易裁判所判事を兼任をしていらっしゃる方、こういう方にできれば地方裁判所あるいは家庭裁判所の少年事件等の審理に専念をしていただいて、簡易裁判所はやはり簡易裁判所の裁判官にお任せをする、そういうようなことで実質的に第一審を強化していってはどうか、このようにも考えるわけです。そこで、今判事あるいは判事補で簡易裁判所の裁判官を兼任している方がもしいられるとすれば、それはどの程度の人数がいられるのか、わかればちょっとお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/125
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126・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 判事補あるいは判事で簡易裁判所判事の任命を受けている者は相当数ございます。現在、判事補で簡易裁判所判事の任命を受けている者が四百名に近い数がございます。これは、要するに裁判所法によりまして判事補の経験三年以上の者につきましては簡易裁判所判事の任命ができることになっておりますが、そのような資格のある者はほとんどについて任命がされているということになるわけでございます。なお、判事で簡易裁判所判事の任命を受けている者はそれよりかなり少ない数でございまして、数十名程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/126
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127・冬柴鐵三
○冬柴委員 任命を受けているのはそれでわかるのですが、補職ですか、それはわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/127
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128・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事に任命されている場合には、必ずそこの簡易裁判所に補職もされているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/128
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129・冬柴鐵三
○冬柴委員 そうしますと、この簡易裁判所判事、これは先ほどの御答弁でありましたように選考委員会等で選ばれる。こういうところから四百数十名も一挙に採用することはちょっと無理だと思いますけれども、簡易裁判所の裁判官をもっと大幅に採用することにより、現に簡易裁判所で働いていらっしゃる判事補あるいは判事を地方裁判所あるいは高等裁判所の方に回すことによって、その裁判所全体の裁判官の数をふやすことができるのではないか、このように考えるのですが、何かそれには障害があるのでしょうか。簡易裁判所判事につきまして私は後に弁護士からの一言ということを提案したいと思っているのですけれども、その入り口の問題で、そういう簡易裁判所判事をたくさんあれして簡易裁判所から判事なり判事補をもっと地裁なり高裁に引き上げる、引き上げるという言葉はどうですかね、移しかえるというようなことは何か不都合なことがあるのかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/129
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130・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま相当多くの数の者が簡易裁判所判事の任命をされ、勤務する地の簡易裁判所に補職されているということを申し上げましたが、その人たちがどの程度の仕事をしているかという問題になりますと、これは場所によってさまざまでございます。非常に多くのケースは、その地の令状事務あるいは緊急を要する簡易裁判所の事務をこういう簡易裁判所判事の資格のある者でもって処理していくためにこのような任命、補職を受けている、これが相当多くを占めているわけでありまして、それ以外の簡易裁判所の訴訟、公判等の担当ということになりますと、これはかなり少ない数になってくるように思われるわけであります。
こういう簡易裁判所判事の任命、補職を受けている者の事務の分配でございますけれども、これは所属しております地方裁判所で決めることになるわけでありますが、その地方裁判所で簡易裁判所の仕事をどういうふうに割り当てるかという場合には、その地方裁判所の事務処理に大きく影響しないようにその所属の裁判所の事務分配で事件の比率を定めていくというのが通常でございます。したがいまして、大変傾聴させていただきたいアイデアでございますけれども、これによってどの程度の地方裁判所あるいは家庭裁判所の戦力となっていくかということになりますと、今申しましたように、現在の事務分配の比率が余り影響ないように考慮されているということからいたしまして、そう大きな影響はもたらさないのではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/130
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131・冬柴鐵三
○冬柴委員 私は前回にもちょっと申し上げましたけれども、日本弁護士連合会のたしか六十一年度の司法シンポジウムで、特に民事裁判の遅延の実情というものが熱心に討論もされ、そのまとめも公刊されております。その中で、それが全部正しいとは申しませんけれども、約三百名の民事の裁判官を増員することが急務である、その会ではこのようなコンセンサスが生まれたというふうに私は理解したわけでございますが、いずれにしましても地方裁判所の裁判、特に民事裁判は随分対席判決に至る部分については時間がかかっているように私は理解するわけでございます。そのような意味で、簡易裁判所で働いていらっしゃる判事補四百名あるいは判事五十名という方を地裁その他に移すことにより、今そのように法曹界で言われている迅速な裁判というものに対する一つの解決策を提供するのではないか、このように思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思うのです。
そこで、簡易裁判所の裁判官の任命ですけれども、選考委員会等がありましたが、毎年どの程度の方が簡易裁判所判事になりたいというふうに志望していらっしゃるのか、詳しい数は要りませんけれども、その潜在的な実態。それから、それに対してどのように選考がされて、任命を受けてからどのような研修を経て簡易裁判所の判事として任命をされていくのか。抽象的で結構ですけれども、そこら辺のことをお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/131
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132・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事の選考を受けるその希望者でございますけれども、これも年度によってさまざまでございますが、過去五、六年の平均をとってみますと毎年百八十名程度の希望でございます。これらの者が最高裁判所に設けられた簡易裁判所判事選考委員会の選考を受けるわけでございます。選考の中身は筆記試験と口述試験とから成っておりまして、筆記試験は実体法、訴訟法それぞれについてのかなり高度な試験を施しております。それから、口述試験は民事関係、刑事関係に分けまして、民事関係、刑事関係の両方につきまして訴訟法、実体法にわたる問題を試問するという方法で試験をいたしております。
この百八十名程度の者に筆記試験を免除された者が十名程度加わりまして選考を受けて、最終的に合格する者が二十名程度でございます。これも年度によってさまざまでありますが、過去二、三年は大体二十名程度の採用ということになっております。
この合格者を八月一日に簡易裁判所判事に任命いたします。任命されてすぐに研修に入りまして、大体三カ月の研修を施します。これは司法研修所におきまして、司法研修所の教官から民事、刑事全体を通じまして簡易裁判所判事として必要な法律的な知識あるいは判決作成等の経験をさせて、そしてその年の年末近くから実務につく、こういうことになるわけでございます。実務につきましても、最初の数カ月はまだ簡易裁判所判事に任命される前に属しておりましたところの比較的規模の大きい簡易裁判所に配置されまして、そこである程度さらにその庁での研修を受けるということになるわけであります。そして、翌年の春の異動で各地へ赴任してまいります。そこで初めてひとり立ちをいたしまして一人前の簡易裁判所判事として執務をしていただく、大体こういうスケジュールになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/132
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133・冬柴鐵三
○冬柴委員 これも大変競争率が高いようでございますし、職務の性質上、これを倍にするとかということはなかなか難しいことだと思います。そこで、それ以外のルートで、先ほども法曹一元の話が出ましたが、私は比較的年配、六十前後といいますか、五十五歳から六十五歳ぐらいまでが適当だと思うのですが、弁護士が簡易裁判所の裁判官になれるような体制、環境を整えてそれを求めるということは十分考え得る道ではないかというふうに思うわけでございます。私も弁護士をやっていて、そんなことを言ったら失礼ですけれども、弁護士は朝から晩まで非常に忙しいわけでありまして、決して簡易裁判所の裁判官が暇だとは申しませんけれども、せめて年がいけば、じゃどこか地方の簡易裁判所の裁判官になって、七十歳までですか、そのような司法に携わっていきたいなということを考えることも再三ございました。なかなか実現をしない夢かもわかりませんけれども、そのような思いをしたことがあります。
しかし、そうは言うけれども二の足を踏むのはあの判決書という代物でございまして、民事の判決書をまた書かなきゃいけないというのであれば、弁護士をやって準備書面を書いている方がいいかな、こういうふうに考えたこともございます。簡易裁判所の判決書をあのように現状のようなままで置いておいていいものかどうか。例えば要件事実に従って、これは先ほどの研修期間にはそれをやられるのだろうと思いますけれども、その事実、当事者の主張した複雑な事実を整理をして摘示し、そしてまた争点ごとに証拠でもってその事実を認定、確定をして法律を適用する、そして論理的に主文を導いた論理過程を明らかにする、このような判決書をずっと若いときから裁判官としてやってこられた方は別として、途中から裁判官になった方に期待する場合に、非常に苦痛、おっくうといいますか、気おくれがするというか、そういうような面があると思います。一審判決にあの学者の論文のような大部な、またすばらしい論文ですけれども、あのようなものは必要なのかどうか。もっともっと簡略化して、そしてもっと迅速に言い渡しを受ける。これは非常に大切なことですけれども、裁判官がそれに割く労力をもう少し軽減する、こんなふうなことも考えられないのかな。
例えば刑事の判決ですね。これは、戦前は今の民事の判決のように証拠によって認定した事実についての経過も全部書かれているようでございますけれども、新しい刑事訴訟法のもとにおきましては、採用した、取捨した証拠の標目を記載し、それによって、どの証拠でどの事実を認定したかという論理過程は判決書には記載されない、また、判決の宣告をするときには判決書ができていなくても、主文が書かれているものを読めばそれで足ると私は理解しているのですけれども、そこまでしていいのかどうかは別として、刑事の判決書でもこのように簡略化することを工夫し、実践していらっしゃる。こういうような事実に照らしまして、民事の判決書がそのように簡略化できないのは何か実質的な理由があるのかどうか、その点についてお伺いをしたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/133
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134・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 ただいま弁護士から簡易裁判所判事の任官に関連いたしまして、判決書の問題を御提起になられました。御指摘のとおり、弁護士の方が裁判官に任官されることを逡巡される一つの大きな原因といたしまして、訴訟手続が煩瑣である、特に御指摘のような判決書が複雑である、こういうことが逡巡させる一つの大きな原因になっているのではないかと思います。
そこで、簡易裁判所について申しますと、御承知のように簡易裁判所につきましては、民訴の三百五十九条をもちまして「判決ニ事実及理由ヲ記載スルニハ請求ノ趣旨及原因ノ要旨、其ノ原因ノ有無並請求ヲ排斥スル理由タル抗弁ノ要旨ヲ表示スルヲ以テ足ル」こういうことになっておりまして、ただいま委員の御指摘になりました証拠による推論というものは不必要とされておるわけでございます。私どもは、簡易裁判所におきましてこのような簡略判決を利用される方がさらに拡大されることを望んでおります。そのために簡易裁判所の訴訟手続に関する特則活用事例集といった執務資料も用意いたしまして、その中で簡略判決の例も掲げているところでございます。
それから、簡易裁判所の事件の約八割は、クレジット事件でありますとか貸し金事件などの消費者信用関係の事件で占められておりますが、私どもでは、この種の事件につきまして類型別に定型的な請求原因を研究いたしまして、これを裁判官の参考に供しているところでございます。弁護士のように法律知識が豊富で、基礎のしっかりした方でございますと、短期間のうちにこういった手続にもなれていただけると考えておりますけれども、私どもといたしましても、定型的な請求原因の研究の範囲をさらに拡大いたしまして、執務参考資料を充実いたします。そういったことに努力いたしまして、多くの方が御懸念なく任官していただけることを望んでいる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/134
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135・冬柴鐵三
○冬柴委員 確かに民事訴訟法の第二編第四章では簡易裁判所の手続についての特例、特則が定められておりますけれども、実際にこれが簡易裁判所の実務でどの程度採用されているかということになりますと、例えば口頭で訴えを提起できる、このようなものはまず司法書士さんに書いてもらいなさいというような指導になってしまったりしているのではなかろうかと私は思います。そのほかいろいろ結構な、今読み上げられたような判決書につきましてもそのような規定がありますけれども、現実にはそのような判決が採用されない。
そのような理由はどこにあるのかを考えてみますと、先ほどの判事補、判事というような方々がその場にいらっしゃって、そのような方々はどうしても特例じゃなしにがっちりした論文式に書かれる、それに引っ張られているのじゃないかなというふうにもおもんぱかるわけでございますけれども、実際問題、この第二編第四章に定められた簡易裁判所の手続というものは実務ではどの程度とられているのか、あるいはとられていないのか、とられていないとすればそれはどういうところに理由があると考えられているのか、その点について、わかる範囲で結構ですけれども御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/135
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136・泉徳治
○泉最高裁判所長官代理者 民訴の特則がどの程度活用されているかという御質問でございますが、口頭受理という点で申しますと、六十一年度では〇・三%と、かなり少のうございます。しかし、私どもは定型的な訴状の用紙を窓口に置いておりまして、それで簡単に書き込んでいただける、これを私どもは準口頭受理と称しておるのでございますが、それが一六・八%ございまして、口頭受理、準口頭受理で合わせまして一七・一%の受理をいたしているところでございます。
それから、今特に御指摘のございました簡略判決でございますけれども、これはちょっと古うございますが、昭和五十六年三月から五月にかけまして六百七十二の裁判体を調査いたしましたところ、金銭事件では約五〇%の裁判体が、また不動産事件では二六%の裁判体、その他の事件では八%の裁判体がこの簡略判決を利用しているという結果が出ております。ただ、これでもまだ十分ではないと思います。その理由は何かというところでございますが、やはり裁判官といたしまして当事者の納得を得るということが一つございます。それからもう一つは、これが控訴された場合に地裁の裁判官が読む、控訴された場合に控訴審の裁判官を納得させる、こういったことを一番大きな理由といたしまして、どうしても簡略判決の利用をちゅうちょされるということになっているのではないかと思います。この点は私どもは、裁判官の会同でありますとか、そういった執務資料でできるだけ、こういうせっかくの法制度があるものですから、これを活用するようにということで裁判官方の理解を求めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/136
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137・冬柴鐵三
○冬柴委員 立派な判決書よりも迅速な結論、当事者は主文しか読みませんよ。それは上訴審の判事がどういうふうな採点をするかということにおもんぱかって、そういうふうな労力で言い渡し期日が先になるということによって失うものの方が非常に大きいと思いますので、現在進めていらっしやる特則の実施、これをもっと強く御指導をいただきたいものだ、このように思います。
それから、弁護士から裁判官になるという場合に考えるのは裁判官をやめてからの生活はどうなるのかということで、弁護士は定年がありませんのでずっとやれるわけですけれども、裁判官は当然定年がございます。そして、一度弁護士の事務所を閉じまして裁判官に任官をして、十年なりしてもう一度自分の事務所に戻りましても、そのときにはもう顧客は雲散霧消いたしておりまして、恐らくできないということになると思います。そういうことを考えますと、そのようなルートを通じて任官される簡易裁判所判事なりそういう人たちについて、定年後の生活、年金制度、こんなものも考えれば法曹一元というものを実現するのに一歩前進するのではないか、このようにも思うわけですけれども、そのようなことはお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/137
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138・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおりの問題があろうかと思います。大変難しい問題ではないかというふうに思うわけでございますが、裁判官の場合、司法修習生からすぐに判事補になり、ずっと引き続いて判事になり、そしてやめるということになりました場合は、やめた後の年金が支給されるわけでございます。退職手当も、経過した年数に応じての退職手当法に基づく退職手当が支給されるわけでございます。弁護士をある程度の期間おやりになって、途中で裁判官におなりになるということになりますと、退職年金にいたしましても退職手当にいたしましても、どちらの面でもその年数が、当初から裁判官であった人との間でははっきりした差があるということになります。年金につきましてはいろいろと制度の改正等が行われておりますけれども、それにいたしましてもやはり当初から裁判官であった人との間ではどうしても差ができてくるわけでございます。
これをそれじゃどう改めるかということでございますが、これは単に裁判官あるいは法曹の分野での制度改正という問題にとどまらないで、要するに国家公務員全体を通じての大きな退職手当あるいは共済年金についての改革の問題になってまいりまして、これは余りに大き過ぎる問題、少なくともここでお答え申し上げることはちょっと簡単にはできないような問題のように思うわけであります。私どもとしましては、何とか現在の制度を前提にいたしまして、余りそういうふうな今御指摘のような点がマイナス要因にならないような、現在の制度を前提とした上でできるだけマイナス要因を生じないような人事の運用と申しますか、そういうふうな方向で考え、そして少しでもカバーしていくというようなことができないかどうか、そういうふうな観点から考えるほかはないのではないかというふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/138
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139・冬柴鐵三
○冬柴委員 非常に難しい問題であることは承知いたしておりますけれども、ただそういうことであきらめずに、弁護士からそういう者を採用するということになりますと、その点をどうしてもクリアしなければならないのではないか。ただ、若くから裁判官一筋で来られた方と同額をというような大それたことを考えるわけではありません。要するに老夫婦が静かに安心して過ごせる程度のものが何らかの形で保障される道があれば、弁護士から裁判官になられる方は十分考えられるのではないかということを申し上げているわけでございます。
時間も迫ってきますが、家庭裁判所における家事事件というものも、やはり人生経験が豊かな弁護士経験者である家庭裁判所裁判官、こういう人が関与する方が適当だ、特に家事調停の主任裁判官等は適当だと私は思っているわけです。もし弁護士からそういう者を採用するということになった場合、例えば家庭裁判所にいらっしゃる判事あるいは判事補の方が地裁なり高裁の方へ回って一審強化に尽力をしていただく、その家裁の方で現に家事調停の主任等をやっていらっしゃる裁判官を回すことも可能ではないか、こういうふうに思うのですけれども、家庭裁判所の方に大体どれぐらい今いらっしゃるのか。少年事件はちょっと無理でしょうけれども、家事調停とかそういうふうな面でどの程度の裁判官がいらっしゃるのか、もしわかればで結構ですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/139
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140・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 家庭裁判所に勤務している裁判官でございますけれども、大都市につきましてはそれぞれ地方裁判所あるいは家庭裁判所と分かれて勤務しているわけでございますけれども、それ以外の中小規模の裁判所ということになりますと、裁判官はいずれも地方裁判所、家庭裁判所を兼務いたしているわけでございます。したがいまして、全国的にこれでどれくらいの数になるかというのは、なかなかはじき出すことは難しいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/140
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141・冬柴鐵三
○冬柴委員 そういう面もひとつ考えていただいて、そういう家庭裁判所の家事調停等に弁護士から裁判官になった人が縦横にその経験を生かして妥当な解決というものに裨益をしてもらいたいものだ、このようにも思っております。
次に、裁判所の書記官というのがいらっしゃいますが、その職務権限を大幅に拡大して、現在裁判官がやっていられる仕事をそちらに移しかえるというようなことは考えられないものだろうか。例えば六十一年度の簡裁の督促事件数というのは六十三万件という膨大な数でございますし、略式命令事件につきましては実に二百二十九万件に達しているわけでございまして、これを数少ない裁判官が処理をしていらっしゃる。実に御苦労である。ほとんど判をつくだけの仕事に忙殺をされるというようなお気の毒な実情があるように私は思うわけでございます。これらの定型的な処理を裁判所書記官に処理できるような法制度というのは、法の仕組みが無理なのかもわかりませんけれども、例えば事務取扱の裁判官のような発想とか、あるいは法改正をしましてそういうものについては裁判所書記官もできるような改正を実体法でやってしまう、まあ手続法の中でやるというのも一つの方法だと思うのですけれども、こんな考え方はいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/141
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142・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 現在の裁判所書記官は、裁判所の組織上、裁判所法及びその他の訴訟法等で公証官としての権限と裁判所の補助官としての権限を有する者として位置づけられているわけでございます。職員の養成、研修その他につきましてもそういう前提で執務の能力の向上を図っているわけでございます。
補助事務の中でも、例えば登記の嘱託あるいは執行文の付与等、これは一定の判断作業を伴いますけれども、これらにつきましては、従前裁判官が行うものとされていましたものを、研修体制の整備であるとか書記官の執務能力の向上に伴いまして書記官の権限とするというふうに権限委譲の法改正が逐次図られてきたわけでございます。ただいま冬柴委員御指摘の即決和解あるいは支払い命令、略式命令、こういうものはなるほど定型的な処理がなされるわけでございますが、やはり判断そのものは裁判サイドでございます。したがいまして、現在の補助的事務あるいは公証的な事務を行うという裁判所書記官のありようを前提といたしますと、現行の枠組みの中で権限委譲を図るというのは非常に難しいではないかというふうに考えます。
しかし、委員が問題提起される御趣旨は、そういうふうな現行の書記官制度の枠組みの中で考えるのではなくて、ドイツのレヒツプフレーガーの制度がそうでありましたように、あれも裁判官の負担軽減という形で書記官に権限委譲がなされて、それがレヒツプフレーガー、これは司法補助官と訳されておりますけれども、裁判官でもない、書記官でもない、一つの職種として地位が確立されてきているわけでございますが、そのような裁判官とも書記官とも異なる職種を設けてこれに権限を委譲すべきではないかというような御趣旨も含まれているのではないかと思います。これは司法政策としてはそのような選択も考えられるところではないかと思いますが、レヒツプフレーガー制度そのものにつきましても、裁判官との関係あるいは書記官との関係におきまして種々の問題があるようでございますし、ドイツと我が国における社会事情あるいは経済事情、歴史的な事情というふうな相違もございますので、こういう問題につきましてはなお慎重に検討、考究していくことが必要ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/142
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143・冬柴鐵三
○冬柴委員 確かに制度の枠組みを超えた発想がなければできないことは十分承知をしておるつもりではありますけれども、書記官、なるほど法律上は補助官であり公証官でありますけれども、その素養は相当高い位置にあると思うのです。ちなみに採用される手続といいますか、概略で結構です、先ほどの簡易裁判所の判事の任命程度で結構ですけれども、どんなことになっているのか、ちょっと御説明をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/143
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144・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 裁判所書記官は、これも任命は一つのルートではないわけでありますが、一つは裁判所書記官研修所において養成するルート、それから一つは書記官昇任試験を経て任命されるルート、この二つがあるわけでございます。
裁判所書記官研修所におきましては、この中がまた第一部と第二部というふうに分かれておりまして、第一部は大学の法学部を卒業した者が教育を受けるところでございます。それから第二部はそれ以外の経歴を持っている者の養成されるところでございます。第一部におきましては、相当競争率の激しい入所試験を受けまして、そしてこれに合格した者が一年間裁判所書記官研修所の教官からかなり高度な教育を受けるということになるわけでございます。それから第二部は、大学の法学部を経ておりませんので、法律についての基礎教育という必要もございます。そこで、一年半の間裁判所書記官研修所において教育を施す。この一年あるいは一年半の教育を経た者が研修所を卒業いたしまして、毎年春各地の裁判所に書記官として赴任していく、こういうことになるわけでございます。
それから、書記官昇任試験と申しますのは、最高裁判所に設けられました裁判所書記官等試験委員会というのがございまして、ここでこのような養成機関を経ないで試験を受ける者に対して、その実体法、訴訟法両面につきまして、これも相当高度な試験を行います。そして、これに合格した者は研修所の教育を経ないで直ちに裁判所書記官に任命されるわけでありますので、その意味では合格すると同時に書記官になる、そういう高いレベルの維持ということが求められているという観点からの選抜をしているわけであります。ただ、そうやって合格をいたしました者につきましてもさらに相当長期間の研修を行いまして、そしてそれを経た上で各地の書記官事務に従事するということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/144
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145・冬柴鐵三
○冬柴委員 同じような発想なんですけれども、家庭裁判所の審判事件というのも、六十一年度の新受件数を見ますと三十万三千件という気の遠くなるような数字に上っておりますが、これなんかも処理は、恐らく定型的な処理を行って可能ではないかと思うのです。この内訳ですけれども、恐らく子の氏の変更の許可とか養子の許可とかいうものが多いのではないかと思うのですが、大体ビッグスリーくらいでいいのですが、審判で上からいったらどんなものがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/145
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146・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 家事審判は三十万件ほどございますが、そのほとんどは甲類審判でございます。甲類審判の中で一番多いのはやはり子の氏の変更でございまして、これが大体三分の一くらいを占めていたように思います。それからその次に多いのは相続放棄でございましたか、それから精神衛生法の関係に基づきます扶養義務者の選任、この三つが一番多うございます。やはりいずれも冬柴委員御指摘のとおり、中には難しいのがございますけれども、比較的定型的処理の可能なものが多うございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/146
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147・冬柴鐵三
○冬柴委員 子の氏の変更の許可等は民法の改正等によって、裁判所の許可に係らしめなくてもいいような考え方はあるいはとれるのではないかとも思いますけれども、それはさておきまして、現行法のとおりとしましても、これを家庭裁判所裁判官が一々やらなければならないものかどうか。こういうものにつきましても、これは審判官になるのでしょうけれども、今申しましたように家庭裁判所書記官に一部行わせるような考え方といいますか、あるいは荒唐無稽かもわかりませんが、柔軟な考え方で、言わんとすることはもう少し裁判官の負担を軽減をして、そしてもう少し自分の好きな分野の研究に熱を入れるとか、もう少し裁判官に、何か判を押すだけのような仕事に忙殺をされるような実態というものがあるならば、これはいろいろな枠組みにとらわれることなく、もっと柔軟に考えて解決をする。そのことがひいては、せっかく任官をしながら五年以内に一割がやめ、十年以内に二割の方がやめていくというようなものを防ぐことになりはしないか。また、もっと裁判官という職業に魅力を感じて、修習生がもっと裁判官になりたいという人がふえることにはならないかというふうに考えるわけでございます。
きょうは、たくさんの質問を通告をしながら、ほとんどができなくなりまして、この定員法だけに絞った質問になりましたけれども、大臣に最後にお願いしたいのは、裁判官は大変多忙であります。それによって、非常に努力はしていらっしゃるけれども、必ずしも国民が期待するような迅速な裁判というものがいまだ実現をしていないというふうに私は思うわけでございます。そのような観点から、きょうお尋ねをしたような柔軟な考え方といいますか、あるいは荒唐無稽かもわかりませんけれども、そのような発想を導入し、裁判官の仕事にもう少しゆとりが持てるようなことを考えていただいてはいかがか。
それからまた、法曹一元ということは終戦直後からいろいろ再三論議をされていますけれども、いまだ十分に実現をしていない。そのような問題についてもいろいろな観点から今後も御検討いただいて、そういうものが我が国にも定着するように努力をしていただきたい、このように思うわけでございますが、その点についての所感をお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/147
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148・林田悠紀夫
○林田国務大臣 いろいろ御説を伺っておりまして、一々ごもっともであると存じます。裁判が長引いておりまするし、また裁判が極めて複雑であり、しかも事務手続も面倒であるというようなこともございまするし、その辺を十分検討させていただきたいと存じます。
また、実社会へ直接関与されまして酸いも甘いもかみ分けられました弁護士が裁判官になられるという法曹一元の問題は、非常に重要な問題と存じます。今後とも、いかにすればそれがさらに実現できていくかということにつきまして十分検討をいたしたいと存じます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/148
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149・冬柴鐵三
○冬柴委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/149
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150・戸沢政方
○戸沢委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後一時二十四分休憩
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午後四時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/150
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151・戸沢政方
○戸沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。田中慶秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/151
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152・田中慶秋
○田中(慶)委員 このたびの法案の中で特に裁判官の定数増加の問題でありますけれども、今日の裁判の判決までといいますか、それらに対する日時が大変多くかかっているということをよく言われているわけでありますけれども、時代の流れが大きく変わり、そしてまたスピードが要求されているときに、やはりそれに対応しなければいけないのではないか、こんなふうに私は思っております。そういう点では今回の裁判官の定数増加はこの程度で十分なのかどうか、まず一点、その辺をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/152
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153・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 まことに直裁な御指摘でございまして、裁判所にとりましても非常に基本的で、かつ難しい問題であるわけでございます。
裁判所の使命は、申すまでもございませんが、すべての事件を適正迅速に解決することにあるわけでございまして、裁判官の定員がこの程度でいいかどうかという点は、一般論といたしまして事件の適正迅速な処理が十二分に保障されるだけの人員が必要なわけでございます。今回お願いいたしております人員で十分かどうかということになりますと、かなり難しい問題が出てまいります。これまでにも、今御指摘がございましたように訴訟の遅延というものが指摘されております。御存じのように裁判はひとり裁判所の手のみで進められるわけではございませんで、民事で申しますと、原告と被告とが相対立いたしまして、それぞれが代理人を通じまして主張立証し、その過程を経て最終的な裁判所の判断に至るわけでございます。特に訴訟の遂行につきましては、現状におきましては当事者の主導権を尊重して動かしている、こういう点がございます。そのような訴訟手続の構造のもとでは、当事者の準備あるいは活動のいかんが裁判の迅速化を図る上で大きな意味を持ってまいります。
具体的に申しますと、例えば第一審の既済の民事通常訴訟の平均の期日の回数は六回ということになっております。そのうち一回は当事者側の御都合で流れているわけでございます。このような流れが防止できますと、計数的に申しますと六分の一のスピードアップが図られる、こういうような問題がございます。それから、いろいろ主張を書面で準備されますけれども、期日の前に、一週間あるいは十日前に御提出いただくということをお願いしておりましても、期日の当日になってお出しになる。そういたしますと、相手方はその主張に対して十分な準備ができてないので答弁は次回ということになりまして、期日が空転するような格好で一回延びます。このようなことも防ぎますと、またスピードアップにつながるわけであります。
そういうわけでございまして、当事者の訴訟遂行の協力度合いというものがかなりウエートを占めておりますが、裁判所といたしましても当事者が十分準備をして訴訟に臨みます場合、それに受けこたえるだけの人的、物的な体制を整備することが必要でございます。したがいまして、迅速な裁判実現のために裁判官及びこれを補助する職員の増員をお願いすることはもとより、当事者の訴訟活動のあり方あるいは訴訟法規の定め方、事務処理方法等のすべて、これが訴訟の促進につながってくるわけでございまして、私どももそのような観点からあるいは増員あるいは事務処理の改善工夫、こういうような措置をとってきたわけであります。
今回は簡裁判事五名ということでございまして、判事、判事補の増員は要求いたしておりません。書記官、事務官等の増員をお願いしているわけでございますが、今申しました諸般の工夫を重ねながら、今回の法律案を可決していただきますならば、事件処理に大きなおくれを出さないで何とかやっていけるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/153
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154・田中慶秋
○田中(慶)委員 大変丁重なる御答弁をいただいたわけですが、素朴な疑問として、例えば今度の定員の問題でも五名ですが、これで本当にスピードアップできるのかどうか。これが今裁判になると、例えば民事になると時間がかかり過ぎるというのが一般の定評でありますし、そしてまた、なぜそんなに時間がかかるだろうというのが素朴な疑問だと思います。やはり裁判というのは公平であり公正であり、かつまたスピードアップをされなければいけないということはよくわかりますけれども、そういう点ではいま少しその時代時代に合うような形の中で、少なくとも人的なもので解決をできるならばそれを供するのが国民に対する奉仕ではないかと私は思うし、また公平なる、あるいは公正なる裁判ではないか、こんなふうにも考えておりますので、これでできるということであれば何もあえてもっとふやせということもないわけでありますから、少なくともそういうことを含めて全体的にぜひスピードアップをされるように要望しておきたいと思います。
実は、これに直接関係はないわけですけれども、法務の関係で関連質問をさせていただきたいわけでありますが、やはり法というのは国民にとって、すなわちこの法律によっていろいろな問題、生活の問題やら地域の問題が大きく関係するわけであります。
そこで実は、私ども日常生活を営む上においてそれぞれ町内会、自治会というものが大変重要であるということは認識していらっしゃると思いますけれども、この町内会、自治会に対する法律的根拠が今全然ない。こういう問題が一つ。そこで、現実には地方自治体や国が援助をし、補助をしながらそれぞれ地域での友好活動をいただいております町内会館の登記の問題について、現実にはその法律的根拠がないためにこの町内会自治会館をめぐっていろいろな問題が出てくる。これが現実であります。そういう点では、この町内会、自治会というものは人格なき法人ということになるのでしょうか。そういう点を含めて明確にする必要があるのではないか、こんなふうに思いますけれども、この辺についていかがお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/154
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155・藤井正雄
○藤井(正)政府委員 町内会、自治会といったようなたぐいのものにつきましては、これは先生が今おっしゃいましたように法的根拠がない。つまり、法人格を与えるような制度にはなっておらないわけでございまして、これはしかし、人の集団として独立の組織体と見られるようなものにつきましては権利能力なき社団というふうな呼び方で一応の社会的存在が認められているわけでございますが、そのような社団は社団の持っている財産に対する法律関係につきましては社団自身が権利義務の主体とならないというふうに考えられるため、現行の登記の実務においては町内会、自治会という名前でもって登記をすることは認められていないのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/155
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156・田中慶秋
○田中(慶)委員 認められていないからこの質問をしているのですよ。そんな不親切なことがありますか。大体、この通告をしているときに明確にそのことを言っているわけでしょう。限られた時間の中でちゃんとするのですから、少なくとももっと町内会自治会館というものがどのように運用されているか。言いましょうか。例えば防災活動もそうでしょう。環境問題だってそうです。あるいは保健衛生問題もそうです。消防活動もそうです。あるいはまた老人の問題、青少年育成、こういうものがすべて町内会館を媒体としていろいろな地域活動がされているわけでしょう。
しかしその会館が、今申し上げたように、あなたからの答弁のように、今の法的根拠がないために例えばこういう問題が起きているわけですよ。地価が高騰していたり、あるいはそれぞれの個人の経営する、例えばその会長さんたちがある商売をしていた、ところが町内会館を担保とされて訴訟になったり、いろいろな問題が現実に起きているわけなんです。それは、法的な根拠がないからこういう形で困っているわけであります。しかし、代表者の名前になっていれば無断で担保も入れることができますね、はっきり申し上げて。現在こういう問題が起きているから大変困っているわけであります。このことについては、長い間、三十年近く働いて町内会長をやめられた方で今故人になられたわけでありますけれども、歴代の官僚の皆さん方に対する手紙を出してみたり、あるいは総理に対しても手紙を出した。しかし、手紙というのは返事があって初めて国民に対する親切な回答だと思うのです。それが一つもない、こういうことでありますね。そういう点で全くあなたのような答弁が予想されているから、私は今回もあえて質問をしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/156
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157・藤井正雄
○藤井(正)政府委員 このような団体は公益を目的とするものでもございませんし、他方、営利を目的とするものではございません。したがって、概念的に申しますといわゆる中間法人という範疇に属するかと思います。中間法人につきまして、これに法人格を与えるかどうかということにつきましては、かつて法制審議会の民法部会において審議をされたことがございますが、かなり難しいということでこれが実現しないままになっております。
そこで、登記を認めるというためには、これに一般的な形で法人格を与えられないとしますと、個々的に町内会なり自治会というものについて法人格を認めるような個別の立法がなされるかどうかということでございまして、そのような問題につきましては関係省庁においてもあるいは御検討がされているかどうかよく存じませんが、今後そのような省庁と連絡をとりながら検討してみたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/157
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158・田中慶秋
○田中(慶)委員 検討してみたいじゃないのですよね。例えば自治省がそれぞれ地方自治体に対して、少なくとも交付金や補助金の問題、直接関係がありますね。そして地方自治体がそれを奨励をしながら補助金を出して、例えば今建設費の六割近いお金を補助金として出してそれぞれの地域の、極端なことを言えば行政の下請みたいな形で一生懸命いろいろなことをやっておりますね。公報を配ってみたり選挙のときのいろいろな問題をやってみたり、すべてこの地方自治体、行政の下請機関みたいなことをやっていることは現実なんです。お認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/158
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159・林田悠紀夫
○林田国務大臣 私も地方自治に大分長い間携わっておりましたので、そういう自治会とか、よく存じております。いろいろな末端におきまする行政をやっていただいておるわけです。したがってそこに対する補助金も国から府県へ参りまして、府県から市町村に参って、そして市町村からまた補助金が行く、そういうようなことでいろいろな財産も持っておるわけです。
ただ、今答弁がありましたように権利能力なき社団でありまするから、社団として登記をすることができないわけです。そこで、やはりその代表者が登記をしてもらわなければいかぬわけですが、代表者は交代をするということがありまするので、非常に難しい問題もあります。したがって市町村のものとして財産を考えるか、あるいはそういう末端の団体をいかに考えていくかというのを地方自治の問題として取り上げまして、自治省においていかにするか、それが必要だろうと存じます。自治省ともよく相談をしてみます。当面はやはり代表者で登記をしていただかざるを得ないというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/159
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160・田中慶秋
○田中(慶)委員 大臣、それはわかるのですよ。だけれども、今言うような形の中で訴訟事件が起きたり、、いろいろなことをしているわけです。そして皆さんがボランティア活動をしたり、いろいろなことをしていますでしょう。そして補助金まで出ているものが、やはりそれは権利なき法人といいますか、そんなことだけではなくして、もっとそれだったらそのために法律を整備してもいいんじゃないですか、はっきり申し上げて。これだけ地域活動、いろいろなことをやっています。みんなボランティア的に、みんなそういう形で、目的があって営利事業をやっているわけじゃありません。しかし、そういうものこそもっと大切にして保障してやるのが法律であってもいいんじゃないか、私はこんな気がするのです。はっきり申し上げて、そういう点で自治省も困っているのです、法律的根拠がないものですから。そういう点で私はきょうの質問に立ったわけであります。自治省の見解も全く今までの見解と同じなんです。ですから、そういう点では大臣がこれに対する一つの意気込みなり考え方を整理して、何とか、幾ら営利事業でない場合であっても、せっかくこれだけ全国的に、地域といいますか、直接国民に多くの奉仕やあるいはそれを媒体として地域が、あるときは文化であり、福祉であり、いろいろなこれだけ多目的に利用されている会館が何の法律的なそういう保障がないということ自体がやはり問題であろう。
そこで、これはぜひ、研究するというよりは、長い間これが論議されてきておりますので、ただ研究じゃなくして、実現に向けて、大臣、お約束していただけませんか。例えば町内会、自治会のスタートというのは明治二十三年来、来ているわけですね。当時は衛生組合から出発しております。そしてまた、昭和十五年には内務省省令として具体的に出ているわけであります。ところが、戦後これらについての法律的な根拠が、占領軍令によってこれが解散、廃止にされたわけでありますから、昔にさかのぼれば、この問題というのは内務省の省令としてこの自治会、町内会活動や会館について法律的な根拠というのはあったのです、はっきり申し上げて。それが今申し上げたような形で、戦後のこういう形でなくなったわけでありますから、ぜひそれをもう一度復元するという、目的は違っていてもそういう形のものをつくり上げていただきたい、これは大臣にぜひその辺の決意をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/160
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161・林田悠紀夫
○林田国務大臣 私のような年の者になりますと戦争中のことをよく存じておりまして、戦争中には隣組というのがありまして、隣組の会長は大いに活動をしたものでございます。しかし、先生がおっしゃいましたように、戦後になりましてそういうことはよろしくないということになりまして、隣組とかあるいは末端の自治組織が壊されたわけなんですが、現在におきましては、必要性からまた復活をしてきておるというのが実情でございます。したがって、地方自治の組織としていかに考えるかということは、これは自治省にとりまして非常に重要な問題と存じます。よく相談をさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/161
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162・田中慶秋
○田中(慶)委員 限られた時間でありますけれども、どうかそういう点で、せっかく皆さんがこの自治会活動や町内会活動というのをそれぞれ奉仕やあるいはまた皆さんの善意の集まりでやっているのですね。この全国的なデータでも、例えば役員の皆さんが、アンケート調査の中で、九八%無報酬です、これは。こういう人たちが困らないような形で活動の保障というのはすべきだろう、こんなふうに思っておりますし、あるいはまた、それぞれの活動というものが、地域にとりましては本当に身近な行政みたいな形で町内会活動というのは感じているわけでありますから、そういう点はそれを保障する意味でも自治省と相談をして、これらに対する法的な整備をぜひしていただいて、そのことがこれからの支障にならないようにしていただきたいということを強く要望して、私の与えられた時間でありますので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/162
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163・戸沢政方
○戸沢委員長 滝沢幸助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/163
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164・滝沢幸助
○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。大臣初め政府の皆さん、御苦労さま。
今ほども裁判のお話があったのでありますが、今回の定数にも関連することでもございますが、戦後裁判というものは大きい裁判、しかも死刑というものは必ず無罪になる、いわゆる冤罪でありました。こういうことにつきまして国民はこれで裁判を信ずるであろうか、こういうことを私は案ずるのでありますが、これについて、今も裁判の信頼の話がありましたが、裁判をどうして国民が信ずることができようか。そして、ややもすれば、世論がこれを支持する裁判はひっくり返るんじゃないですか。キリストを裁いたあの裁判と同じでは話にならぬ。やはり事が裁判に持ち込まれたときは、そして病人が手術室に入ったときは、一切合財素人は手を引く、こうでなくてはいけない。お医者さんだって人間だ。あたりでやいやい言われたのじゃメスが狂う。裁判だってそうではないか、こう私は思うのですよ。松川裁判その他数々見てきました。裁判に対して世論ないしはマスコミが静かにこれを見詰める、こういう雰囲気も醸成されなくてはならないのではないかなどと思うのでありますが、所感があれば一言。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/164
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165・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 裁判あるいは裁判所に対する国民の信頼をどのようにして確保するかという問題は、非常に大きな問題でございます。御指摘のように、裁判所の使命は適正迅速な裁判を通じまして国民の権利、利益を擁護して社会秩序の安定に寄与することにあるわけでございまして、私どもといたしましては、そのような使命を持つ裁判所に対する国民の信頼を確保するため、基本的には個々の裁判におきまして裁判官を初め裁判所職員が自分の使命を十分に自覚いたしまして日夜最善の努力を尽くす、その努力の集積によりまして国民あるいは報道関係者の信頼を確保できるのではないか、かように考えているわけでございます。司法行政の立場といたしましても、そのようなことが達成できますように環境づくりに努めているわけでございます。
ただいま御指摘のように、一つは裁判の内容の問題が出てまいります。私どもといたしましては、個々の裁判の中身がもろもろの観点からする国民の皆様の目から見て十分納得のいくものであることが何よりも必要でございまして、裁判の適正ということはこのことを指しているわけでございます。近年、国民生活の多様化、価値観の対立ということを背景にいたしまして、裁判所に提起される事件も一段と複雑困難化を示しております。そのような状況のもとで、事案の真相を的確に把握し、総合的な観点から適正に処置するという裁判官の職責を十分果たし得ますように、例えば行政の面からいたしますと、裁判官の養成、研修につき幅広い知識経験を得ていただくように、前から行っておりますような報道機関あるいは民間企業等への研修、あるいは昨年からやっております行政省庁あるいは弁護士事務所での研修といったような種々の施策を講じてきたところでございますし、今後もそのように努めてまいりたいと思います。
第二の問題は、先ほどもちょっと問題に出ましたが、迅速な裁判の実現でございます。これにつきましても、裁判所職員の増員を初めといたしまして、もろもろの工夫改善をいたしますし、昨今におきましては、弁護士会におかれましても、訴訟の現状を見直すべきである、いろいろ訴訟促進の御工夫をなされる動きが出ておりますので、私ども十分コミュニケーションを図りまして、訴訟の促進が一層図られるような手だてを考えてまいりたい、このような努力の積み重ねで国民の皆様方の信頼を確保してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/165
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166・滝沢幸助
○滝沢委員 いささか焦点がぼやけておりまして、そこら辺に問題の根があるのではないかと私は思いますが、先に進みまして、後でもう一度このことに触れさせていただきます。
さて、大臣、刑事施設法改正をお考えのようでありますが、しかし、これにつきましては、実は日弁連などを初めいろいろと意見のあるところであります。ゆえにこそ御苦労されているわけでありますが、これが志すもの、そして今後の作業日程と申しまするか、一言おっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/166
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167・林田悠紀夫
○林田国務大臣 御承知のように、五十七年に法案を出しまして、これが廃案になったわけでございます。そこで、日弁連の方で反対がありましたので、日弁連と十分話し合いを重ねまして、二十一項目に及びまするところの修正をいたしまして、そして昨年再び提案をした次第でございます。ところが、国会におかれましては審議が行われずに、現在、継続審議になっておるのでございます。この法案は、実は行刑制度が世界的に非常に近代化をされてきております。それで、我が国におきましても近代的な行刑制度にしていこうということで、それを盛り込んだ法案でございまして、これはいわゆる囚人のためにもなるところの法案でございます。そういうようなことで、どうしてもこれを行刑の近代化のために通過をさせていただきたい、かように存じておるわけでございまして、ひとえにこの委員会の先生方の手に握られておるわけでございます。
問題として日弁連がさらに申しておりますることは、一つは、弁護士さんがそこへ行って十分話し合いができるようなことにしてもらいたいということが一点であります。また、もう一つはいわゆる代用監獄の制度でございまして、この代用監獄の制度を早くなくするように、こういうようなことがございます。この二つの問題につきましても十分配慮いたしまして、今回の法案の中には新たにそういうことに対する対案を入れておるわけでございます。しかし、なおこれは法務委員会におかれまして十分御審議をいただきまして、その過程においていろいろな問題が出てくると思いまするが、やはり刑の執行は近代化されなければならないということをお考えいただきまして、この国会中にはぜひ御審議いただき、通過をさせていただきたいと念願を申し上げておりまするので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/167
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168・滝沢幸助
○滝沢委員 問題は、大臣がおっしゃいましたように、依頼主と弁護士が十分に話し合う状況になくなるという点にあるわけてありますから、代用監獄のことはまずおきましても、この面だけはもっともっと今提出されているものよりも改善をされる必要があるのではないか。時代とともにいろいろと近代化とおっしゃるわけでありますが、それこそ、たとえつながれているとはいいながら、法によって保護さるべき者が法の手続において弁護士を依頼しているわけでありますから、この間に十分に意見の交換がなされることをこそ、旧来の法律よりもさらにその面を強化したというのでなければいけない、こういうふうに私は思いますので、でき得べくんば、この審議の作業中といえどもその点について再々の手直しをされるように希望してやみません。そのお考えはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/168
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169・林田悠紀夫
○林田国務大臣 今の弁護士さんが面接をしていただくということでございまするが、これにつきましては、十分修正をいたしまして今出しております。これで大体遺憾なくできると考えておるのでございまするが、なお委員会におきましていろいろ問題がありましたならば、そういう点も十分配慮していかなければならないと存じておるわけでございまして、もう修正済みと言っていいところにある、かように存じておりまするので、よろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/169
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170・滝沢幸助
○滝沢委員 修正済みと言ってしまえば、もうこれはそれで同意ができないことがあれば議会は通らぬということになりまするから、やはりその御答弁というものは、国会の意思がそこにあるならば修正もやぶさかでないということになりませんと、これはちょっといけませんな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/170
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171・林田悠紀夫
○林田国務大臣 ただいまも御答弁申し上げましたように、国会の意思によって決まる、かように存じておりまするので、よろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/171
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172・滝沢幸助
○滝沢委員 さて、さらに話を進めますると、その弁護士に資格を与える司法試験、これが難し過ぎるという一言に尽きるのでありましょうが、世に哀れなるものは司法試験浪人であります。四十歳、五十歳になるまであきらめない、あきらめたときには既に人生は夕暮れになっている、ゆえに、持って生まれた才能と多年の努力にもかかわらず、まことに悲惨な生涯を終わるという例は決して少ないわけではありません。しかし、だからといって、これを適当に安く売り出していいものではない。非常に難しいことではありますが、しかし私は、さきに裁判のあり方につきまして、世論の操作によって裁判が動いてはだめだと言いました。それは決して、定員をふやせとか待遇を改善しろということ以前の、ないしは法の知識というようなもの以前の、人間としての尊厳に対する人間としての理解はいかがか、これにあろうと私は思うのであります。大岡裁判を待つまでもなく、その点は司法試験のあり方にもかかわることでございます。
特に今、回数制限をするとか年齢制限をするとかいうことがいろいろと模索されているようであります。しかし、これに対して憲法違反ではないかというような反論も出てきている模様でありますが、司法試験のあり方というものをきちんとして、いわゆる知的偏重ではなくて人的な、人間としてのとうとさ、立派さ、美しさ、これが選択されませんと裁判がうまくいかぬですよ。世論によって操作されるような判決を出すのはこの知的偏重の司法試験の中にある、ないしは、この司法に携わられる方々の人間修養の足らざる点にあると申し上げても過言ではなかろうと私は思います。
法によって、法という字は二つございまして、御存じのごとく皆さんの法律の方の法、これは裁判官でございますな。しかし、仏法などという宗教の方の法、この方は神様でありましょう。言うなれば、この法によるものは神様であり、他の法をとるものはこれは裁判官でありますから、そのような意味では、神格に近いいわゆる御人格を備えてちょうだいしなければならぬ。それが知的偏重の試験によって苦労されているという姿は私は大変問題だと思いまして、司法試験の改善につきましていかなるお考えがあるか、時間が迫りましたのでひとつ端的に御表明を願いたい。これは提出されるお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/172
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173・根來泰周
○根來政府委員 ただいまおっしゃるとおりでございまして、私どもの方はそういう考えのもとに立ちましていろいろ工夫はしておるのでございますけれども、なかなかいい知恵が出ないということでございまして、今回法曹基本問題懇談会ということでいろいろ意見をちょうだいしましたが、その意見を踏まえまして改善策を考えていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/173
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174・滝沢幸助
○滝沢委員 改善策を考えたいということは、結論が出れば改正案を出すということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/174
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175・根來泰周
○根來政府委員 これはいろいろ手続はございますけれども、法曹三者で協議会がございますが、そういう協議会にかけたり、あるいは法制審議会に答申を求めたり、そういう手続を踏んだ上で国会にお願いしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/175
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176・滝沢幸助
○滝沢委員 その作業日程はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/176
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177・根來泰周
○根來政府委員 でき得れば一、二年のうちにこの改正案を取りまとめて国会にお願いしたいというふうに事務的には考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/177
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178・滝沢幸助
○滝沢委員 そうしますと、一、二年のうちに司法試験制度の改正に関するいわば提案があるというふうに理解すべきでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/178
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179・根來泰周
○根來政府委員 今確たることを申し上げるのは非常に僣越でございますけれども、私どもはそういうスケジュールで進みたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/179
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180・滝沢幸助
○滝沢委員 さて、時間がございませんが、大臣、せんだっての予算委員会でも申し上げました戸籍法の改正の問題です。すなわち戸籍法五十条、同じく施行規則の六十条を改正ないしは廃止をして、人間が生まれたときにその人間が一生涯持ち得るべき名前、これを親御さん方が愛情を込めて、祈りを込めて選んだ名前は、日本の国に通用している漢字ならばどの漢字でも受け付けてよろしいという、いわゆる戦前のあの自由なる命名の制度を復元しなさい、こう申し上げましたら、いろいろと議論の末に、少なくとも前向きに御検討をちょうだいするという御答弁をちょうだいしたわけであります。つきましては、今までたびたびお開きいただいたのでございますが、それらのことを御審議いただくための諮問委員会等をひとつとにもかくにも任命されて、もう一度これを議論に付するというお考えはないかどうか。
すなわち、この前申し上げましたように、ここで十個なり百個の文字が緩和される、いわゆるふえますると、その字が圧倒的に届けられてくることを考えても、いかに国民は名前を自由につけるということを望んでいるか。これをしてこの制度は定着したとすぐ役人はおっしゃるのだけれども、法律の権限でこれを抑えておりますから定着したかに見えまするが、決して決してそうではありません。事例を一々引くまでもなく、この名前をつけようと思ったが受け付けにならなかったという例はおびただしい数に達しているわけでありますから、どうぞ大臣、大臣もこれからひとつ試みに十人ほどのお集まりのところに行ってその話をしてごらんなさい。必ず二、三人の人は、うちの孫が、うちの嫁がという話が出てきます。どうかひとつ、名前ぐらいはせめて自由につけさせてあげたらどうだ。これが愛情のある政治でなくて何でありましょうか。これが竹下さんのおっしゃる大事に大事に――何を大事にするのですか。名前を大事に大事に、命を大事に大事に、人格を大事に大事にじゃありませんか。お願いしたいと思いますが、お考えを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/180
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181・林田悠紀夫
○林田国務大臣 おっしゃるように、名前を大事に大事にしなければいかぬと思っております。そこで、この前の分科会の後を受けまして、現在、民事局長が先に立ちまして、まず法務局、それから直接戸籍事務を取り扱っております市町村、そういうところの意見を聞きまして、現在どういう漢字を要望されておるかということを集めてまいりまして、そして相談をしよう、こういうことになっておりますので、お話のありました点は十分よく承知をしまして大事にして進めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/181
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182・滝沢幸助
○滝沢委員 大臣、ありがとうございました。大臣がこれを改正ないしは緩和をして一つの方向を示すならば、私はこれはもう本当に歴代法務大臣の中でさん然たる業績と信じて疑いません。どうぞひとつ大いに御検討いただきまして、国民のこの広い要望にこたえていただきますように要望して発言を終わります。
どうも御苦労さまでした。委員長、どうもありがとうございました。大臣初め政府の皆さん、どうも御苦労さまでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/182
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183・戸沢政方
○戸沢委員長 安藤巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/183
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184・安藤巖
○安藤委員 休憩前にも弁護士からの裁判官の任用の問題が論議されましたが、最初に最高裁判所の事務総長さんにお尋ねしたいと思うのです。
最高裁判所は来年度から年間二十人程度の裁判官を弁護士から任用するということをお決めになったという話を聞いておりますが、これは本当かどうかということと、本当であれば具体的にどういう準備をされておられるのか、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/184
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185・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 在野法曹として広い社会経験をお積みになった弁護士さんから裁判官に来ていただきたいという気持ちは、今に始まったわけじゃございませんで、昔からずっと裁判所としては持っておりました考えでございますが、御承知のとおり、最近弁護士から裁判官に任官される方が前に比べて少なくなってきております。そういうことで、先ほど申しましたように裁判所といたしましては弁護士さんから来ていただきたいという気持ちは持っておりますが、これをもう少し積極的に来ていただきたいということをはっきりさせまして、果たして応募しても採ってもらえるかどうかというようなことを疑問を持っておられる方があってはいけませんので、そんなことはないのだ、大いに来ていただきたいということをはっきり最高裁の方から積極的に申し上げた方がいいのではないかということで申し上げたわけでございます。
今安藤委員のおっしゃいます二十人云々というのは新聞に載りましたことでございますが、大体そういうようなことを考えておりますが、もう少し具体的なことにつきましては現在いろいろと検討しておるところでございまして、いずれ近いうちにその具体的なことをも弁護士会等へも御説明をいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/185
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186・安藤巖
○安藤委員 今お伺いしておりますと、何か名のりをお上げになったというか、アドバルーンをお上げになったというか、そんな感じもするのですけれども、それよりももう少し一歩踏み込んだお考えを持っておられるような気もするのですね。それで、私は来年度から年間二十人という話を伺ったものですから、これは相当話が具体的になっているのじゃないかという気がするのです。ですから、具体的にどういう準備をしておられるのか。
それから、さらにお伺いをすれば、任用の方法はどういうことをお考えになっておられるのか、希望者はどのくらいあるというふうにお考えになっておるのか、その辺のところもできればお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/186
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187・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 この弁護士から裁判官に来ていただくという件につきましての基本的な考え方はただいま事務総長から申し上げましたとおりでありまして、とにかく裁判所に弁護士としての豊富な経験を持った方に来ていただきたい、それが裁判所の現時点におけるいろいろな事件が参っておりますその状況に対処していくに非常に効果的であろう、そしてそれがまた同時に法曹一元の考え方にも共通するものがあるであろうと考えておるものであるわけであります。来年度から、昭和六十三年度からこの弁護士からの採用というのを本腰を入れてやっていきたいと考えておるわけでございます。これもただいま事務総長から申し上げましたとおり、これまでそれじゃそういう気持ちが全然なかったというわけじゃありませんで、これまでも弁護士から裁判官への採用希望がある方があれば来ていただいていたわけてあります。ただ、それが昭和五十年代に入りましてだんだん少なくなってきてしまった、そういう状態が事実上続いていたということでございます。この春からとにかく力こぶを入れて採用を推し進めていきたいと思っているわけであります。
ただ、それじゃ例えばその採用の手続あるいは申し出の手続、そういったものをどういうふうにしていくか、採用した後の配置あるいは待遇をどういうふうにしていくか、例えば現実に執務していただく前の足ならしをどういうふうにしていただくかといった点につきましてはまだ検討中でございまして、これは検討して直ちに結論が出るというわけのものではなく、だんだんと固まっていくものであるわけではありますが、とにかく今直ちにここで申し上げる段階にまでまだ固まっておりませんで、近いうちにその点を取りまとめまして、そして例えば日弁連等にも御説明申し上げる機会を持てればと考えている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/187
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188・安藤巖
○安藤委員 そうしますと、もうこれ以上お聞きせぬ方がいいのかなという気もするのですが、任用の方法なんかも先ほどお尋ねしたのですが、例えば簡易裁判所の判事のように推薦委員会あるいは選考委員会、そういうようなものもおつくりになるお考えなのかどうかということはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/188
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189・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 手続につきましても、今申し上げましたように、現在考えているところということでございます。ただ、簡易裁判所判事の選考委員会と申しますのは、これは法曹資格のない方を裁判官に任用する方法として設けられているわけでありますが、現在問題になっております弁護士からの裁判官採用といいますのは、何も今回全く新たに始まる性質のものではございませんで、以前からあったものでございます。したがって、その手続等につきましても、例えば委員会を設けて、そして何か今までとは全く違った選考方法等を考えるということには恐らくならないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/189
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190・安藤巖
○安藤委員 それでは、その問題はもっと煮詰まった段階でまたお尋ねをしたいと思います。
次にお尋ねしたいと思いますのは、裁判官のうちいわゆる充て判、こういう言葉のもとに司法行政事務に従事しておられる方がおられるということなんですが、この裁判官の資格を持っておられて司法行政事務に従事しておられる方の数、それから担当する事務、職名の人数を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/190
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191・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官で司法行政事務を命じられているいわゆる充て判というものの数でございますが、最高裁判所の事務総局で勤務しております者が四十七名、そのほか各高等裁判所の事務局長のポストについている者、これが各高裁に一名ずつで八名、合計で五十五名でございます。
その事務総局のポストでございますが、最高裁事務総局、各局ございますけれども、その各局の局長ポストにある者が六名、課長ポストについております者が十五名、参事官が二名、最高裁各局及び秘書課、広報課といった課がございますが、そういったところにも局付、課付のポストにある者が二十四名ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/191
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192・安藤巖
○安藤委員 最高裁判所調査官という方はこの中には入らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/192
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193・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 最高裁判所調査官は事務総局の行政事務を担当しているわけではございませんので、この中には入れておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/193
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194・安藤巖
○安藤委員 しかし、裁判所法によりますと、その第四編第一章「裁判官」、それから第二章は「裁判官以外の裁判所の職員」というのがあって、事務総長、五十七条に裁判所調査官というふうにあるのですが、この分け方からすれば裁判官ではないわけなんですね。そうすると、どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/194
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195・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、裁判所調査官は裁判所法上は裁判官とは別の官を構成しております。現在そのような官名で裁判所調査官の仕事をしている者もあるわけでありますが、委員御指摘の最高裁判所の調査官、これはいずれも判事でございます。判事が裁判所調査官に充てられているわけでありまして、これは裁判所法の附則で裁判官をもって裁判所調査官に充てることができるという規定があるために、これを根拠にして裁判所調査官という、裁判官とは別の官の仕事を命じられているということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/195
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196・安藤巖
○安藤委員 ですから、そういう意味でいわゆる充て判ではないということになるわけですか。司法行政事務に携わっているのではないから、そういうことだと思うのです。そういうことでしょう、間違っておるといかぬから、押しつけてもいかぬから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/196
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197・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官をもって充てられているという意味においては充て判の一つであろうかと思います。ただ、事務総局の職員のように行政事務を命じられているというのとは違うという意味で、この司法行政事務を命じられている者の中からは除いて申し上げたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/197
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198・安藤巖
○安藤委員 先ほどお伺いしたところによりますと、最高裁判所の事務総局の中にいわゆる充て判の課長さんが十五人お見えになるということですが、充て判でないいわゆる裁判所事務官の方の課長さんというのは何人見えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/198
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199・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 充て判でない課長でございますが、最高裁事務総局の中に九名おります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/199
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200・安藤巖
○安藤委員 その九名の具体的な課名とやっておられる仕事をお伺いしたいのですが、それとあわせて、現在の充て判の方々がしておられる課長職、これは全部判事さんですね。判事の資格を持っておられる方でないと勤まらないのかどうか。勤まらないからそうしているのだとおっしゃるだろうと思うのですけれども、これは裁判官が足らない、不足云々という話を聞くものですから、しかも司法行政事務なものですから判事としての資格を持っておられない方でも十分これは勤まるのではないかと思うものですからお尋ねするのですが、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/200
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201・櫻井文夫
○櫻井最高裁判所長官代理者 まず判事でない裁判所事務官の占めている課長ポストでございますが、順次申し上げます。総務局の統計課長でございます。それから人事局の能率課長兼公平課長、これは一人で二ポストを兼ねております。それから人事局の職員管理官、経理局の営繕課長、用度課長、監査課長、管理課長、厚生管理官、それから家庭局第三課長、以上でございます。家庭局第三課長は、大体この職名からその職務の内容はおわかりいただけようかと思いますが、これは主として家庭裁判所調査官に関する事務を行っているものでございまして、このポストにつく者は家庭裁判所調査官出身の者でございます。
それ以外の事務総局の課長ポストを判事がやっているということになるわけでございますが、判事でなければできないのかというお尋ねでございます。結局司法行政事務と申しますのは、かなりの部分は裁判官の人事であるとか裁判所の施設の問題であるとか、裁判事務と非常に密接につながっているものが多いわけであります。そういったようなものを処理していく場合には、裁判官としての知識あるいは経験といったものを踏まえないとなかなか適正な司法行政事務の処理がしにくいということがあろうかと思います。それからもう一つの類型のものといたしましては、最高裁判所規則の立案のような法律知識を必要とするものも多くございます。それからまた全国の民事裁判、刑事裁判等裁判事務に密接に関連するようなものも多くございます。こういったようなものも、裁判官の法律知識というものを踏まえた事務処理が行われないと適切な事務処理が行いにくいという関係にあるのではないかと思うわけであります。したがって、今申しました一般職の占めている以外のポストというのは、ずっと以前から裁判官がこのポストについてその事務処理に当たっているわけでございます。
ただ、できる限りそういったポストにつく裁判官を減らそうという考えは以前からございまして、そのために事務総局のポストにつきましても一人で複数のポストを兼ねるというようなポストがたくさんございます。そういうことで、なるべくその人数を減らすように前々から努めているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/201
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202・安藤巖
○安藤委員 今後半におっしゃった、努めておられる方向をもっと御努力をお願いしたいということを申し上げておきます。
それから、時間の関係で、節約のためにいろいろお尋ねすることはやめますが、最高裁からいただいた資料の中に、法務省などいわゆる他省庁への出向者数というのをいただいておるのですが、その中に法務省が七十九名というふうになっております。この七十九名の法務省へ行っておられる裁判官の方々はどういうような部署についておられるのか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/202
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203・根來泰周
○根來政府委員 七十九人の内訳でございますけれども、本省の局部長が四人でございます。それから本省の官房課長は一人、それから官房審議官、これは民事局担当でございますが一人、それから官房参事官が二人、これは民事局と訟務局担当でございます。それから本省の局の課長八人、それから本省の局部の参事官が五人、それから局とか部の部付でございますが二十人、法務総合研究所の教官が一人、法務局長が三人、法務局訟務部長が六人、法務局認務部付が二十五人、地方検察庁検事が三人、合計七十九人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/203
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204・安藤巖
○安藤委員 その関係は、また後で時間がありましたら別の機会にお伺いすることとします。
ところで、簡易裁判所の統廃合の法案ができまして、ことしの五月一日からその統廃合が実施されるわけです。この準備の状況は順調にいっているのだろうかというふうに思うのですが、廃庁されれば、そこにおられた書記官、事務官、廷吏さん、こういう人たちの配転あるいは庁舎の整備等は順調に、五月一日からですけれども、五月一日から発足するにしては相当もう準備しておられなければならぬと思うのですが、それは順調にいっているというふうにお伺いしてよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/204
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205・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 本年五月一日の管轄法改正法の施行を踏まえまして、種々準備作業を進めております。ただいま御指摘の裁判所職員の配置がえにつきましては、当委員会でも附帯決議をちょうだいいたしておりますので、統合庁に勤務していた職員につきましては、勤務条件に不利益が生じないように配慮しながら、職員の希望を尊重しつつ人事異動を行って円滑な人員配置を行ってまいりたいと考えております。
それから物的施設の拡充につきましては、これまで未整備の庁舎が昨年改正法案を提出しました時点で三十二庁ございました。六十二年度予算でそのうち二十一庁につきまして庁舎の新営を既に済ませたところもございますし、現在新営中のところもございます。残りは十一庁になりますけれども、このうち七庁につきましては昭和六十三年度予算で新営の要求をいたしておりまして、予算が成立いたしました場合には六十三年度中に整備されるわけでございます。残るところ四庁のみになりますけれども、これらにつきましても可及的速やかにその整備を図りたいと考えております。簡易裁判所はその冷房設備が非常に不十分でございましたけれども、機械あるいは器具による冷房設備の完備につきましても鋭意進めているところでございます。
それから、先ほど申しました職員の配転に伴いまして一般職員の充実を簡裁を中心にして図っていきたい。統合されます簡易裁判所に配置されております一般職の職員は約二百八十人ほどございますけれども、そのうちの二百人を受け入れ庁であります簡裁あるいは非常に繁忙でございます簡裁の方に振り向けまして、簡裁の機能の充実強化につながるように考えているところでございます。
それから手続、運用面におきましては、受付窓口の整備というものを重点に考えております。例えば物的な問題といたしましては、受付カウンターを各庁に整備して、当事者と対応しながらいろいろ相談あるいは受理に応ずることができる、そのほかに、簡裁の手続をわかりやすく解説いたしましたパンフレットであるとか、あるいは非常に書き込みやすい定型申し立て書用紙というようなものも備えまして、施行後は利用しやすいような形に整備を図ってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/205
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206・安藤巖
○安藤委員 先回の簡裁統廃合法案成立のときに、先ほどもお触れになりましたが、附帯決議があるわけです。その中に、統合された地域に対する出張事件処理など適切な措置を講ずることというのがあるわけです。この出張事件処理は、統合された裁判所があった市町村に対してこういうふうに、あるいはこういうローテーションでとか、中身をおっしゃるのが当然だと思うのですが、出張していろいろ相談なり事件処理なりをいたしますというようなことを裁判所の方から積極的にお話しになってみえておるのかどうか。
それから、統廃合のときは、統廃合対象の簡裁のある市町村の首長さんに対してあるいは議会に対していろいろなオルグ活動を、所長さんあるいは事務局長さんらがおやりになったと聞いておりますが、それ以後、今申し上げました出張事件処理も含めてあいさつ回りのようなことぐらいはやっておられるのだろうと思うのですが、やっておられるのですかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/206
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207・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 まず、附帯決議にございました出張事件処理についてでございますが、私ども、法案提出に至ります過程におきまして、地元にお伺いいたしましていろいろ御協力方をお願いしてまいったわけでございます。その過程におきまして、そういうふうに裁判所が統合されるのであればひとつ地元に出向いてもらいたいというふうな御要望があったところがございます。こちらの方から出張事件処理ということも考えられると申し上げましても、それには及ばないとおっしゃるところもございましたわけでございます。それで、御要望のございましたところにつきましては、施設その他の面での御協力をいただきながら、家事の調停事件あるいは民事の調停事件、家事審判事件につきまして出張いたしまして処理をする、その際、あわせて受付相談もやるというような形で考えているわけでございます。
現在のところ、施設の利用等について関係自治体等との協議を進めておるわけでございますが、民事調停事件を出張処理する予定の庁が六十庁ございます。うち四十二庁は月一回あるいは二月に一回、場合によりますと月二回のところもございますけれども、定期的な出張を考えてやっているわけでございます。それから、家事事件の処理を行う予定の庁が二十九庁、うち十八庁は定期出張を考えております。略式事件の処理を行う予定の庁は十庁でございまして、そういうふうな状況でございます。これらの庁におきましては、出張事件処理の要領を定めますとか、あるいは事務分配規程に所要の改正をするというようなことをいたしまして、実施に向けて鋭意準備を進めているところでございます。
管轄法提出に至りますまで、地元にいろいろお伺いをしてお願いをしてまいりました。もちろん、法案が成立いたしました後、私ども信義を重んじなければなりませんので、地元の自治体にお伺いいたしまして、改正法が成立した経緯、その内容、今後のありようにつきまして、これは所長、局長が直接出向いて御説明したところもございますし、あるいは書面を差し上げまして御説明したところもございますけれども、いずれも十分御説明を申し上げております。その後の説明の過程におきましても、出張事件処理の要望であるとか、あるいは跡地の問題であるとか、いろいろ御要望もございまして、それらを承りながら準備作業を進めてきているというのが現在の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/207
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208・安藤巖
○安藤委員 今出張の関係では、出張事件相談というふうにおっしゃったのですが、出張された場合は事件の受け付けということまではしないという方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/208
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209・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 ただいま申しましたのは出張事件相談ではございませんで、調停あるいは審判事件の処理に現地に赴きました際に、書記官も帯同いたしておりますから受付相談はいたします、こういうことでございます。
受け付けをやるかということにつきましては、これは例えば時効の問題でございますとかいろいろかなり難しい問題がございますので、確実性を非常に要求されるわけでございまして、出張いたしました地元におきまして受け付けをするというところまでは考えておりません。ただ、定型申し立て書用紙等を利用していただきましていろいろ書き込んでいただく、あとは郵送をしていただければ裁判所で受け付けることができるからというようなことで、いろいろ申し上げてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/209
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210・安藤巖
○安藤委員 簡易裁判所の統廃合はああいうようなことで、私どもは反対しましたけれども、結局実現してしまったのです。
最高裁判所は二番手として、今度は地方裁判所、家庭裁判所の支部の見直し、いわゆる統廃合を考えておられるというふうに伺っておるのですが、それは具体的にどういうような作業をお始めになっておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/210
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211・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 支部の適正配置につきましては、五十九年一月に裁判所の適正配置という問題を三者協議会に提出いたしました段階で、簡易裁判所の適正配置と地家裁支部の適正配置ということであわせて問題提起をしてまいりました。スケジュール等の問題がいろいろございまして、とりあえずは簡易裁判所の適正配置から議論していこうということで、支部の問題はいわば先送りになって今日に至っているわけでございます。
安藤委員先刻御承知のとおり、現在の地方裁判所の支部は昭和二十二年に、それから家裁の支部は昭和二十四年にそれぞれ設置されたものでございまして、その後若干の増減それから権限の変更はあるわけでございますが、基本的に配置は変更されないまま今日に至っております。ところが、その支部の配置は、実は明治二十年代に創設されました区裁判所の配置をそのまま踏襲しているわけでございまして、交通事情等を考えますと、簡裁の場合と同様あるいはそれ以上に今日の社会事情との間に大きなずれがあるわけでございます。したがいまして、裁判所といたしましては支部の配置を実情に合ったものに改める必要があるというふうに認識いたしております。現在は、このような認識のもとに支部の実情等の調査等を行うとともに、裁判所内部におきまして基本的な適正配置の検討を行っている段階でございます。
基本的な内容は、これは五十九年一月の段階にも申しておりますが、支部、特に小規模乙号支部の配置の見直し、支部には甲号、乙号の権限の差がございますが、その権限の見直し、甲号、乙号の区別を廃止してはどうかというようなこと、それから支部の新設及び移転等の角度から現在検討を加えているところでございます。今後できるだけ早く内部的な検討を終えまして、簡裁の場合と同様法曹三者協議を初めといたしまして、関係各方面の意見を伺いながら作業を進めてまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/211
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212・安藤巖
○安藤委員 また簡裁統廃合のときと同じようなああいう相関表というものをおつくりになっておやりになるのかなというふうにも思っておるのですが、そういうことなのかどうかということ。そしていよいよ三者協議を申し入れ、あれはどちらから申し入れるのかようわかりませんが、お始めになる大体のめどはいつごろにしておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/212
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213・山口繁
○山口最高裁判所長官代理者 支部も数多くございますので、その中で適正配置、集約を考えるといたしますと、どうしても一定の基準が必要になってまいります。したがいまして、簡裁のときと全く同様な手法になるかどうかはともかくといたしまして、似たような基準の設定というものは考えていかなければならないかと思っております。
三者協議会に具体的な問題提起をする時期の問題でございますが、できる限り早くと考えて作業を進めておりますが、できますれば遅くとも夏前の段階に問題提起ができればいいがなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/213
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214・安藤巖
○安藤委員 地裁の支部の問題は、統廃合されるにしても、簡易裁判所と違って法律を改正しなくてもいいわけなんですね。だからいろいろ着々と準備はお進めになっておられると思うのでございますが、これは簡易裁判所のときにも問題になりましたように、あるいはそれにまさるとも劣らない国民の裁判を受ける権利とのかかわり合いが非常に大きいわけでございますから、慎重にやっていただきたいと思うのです。
これは事務総長に、簡裁の場合も私どもは相当いろいろ言いたいことは申し上げたのですが、それにもまさるとも劣らざる慎重な、国会で法律をつくってもらわなくてもいいんだからということではなくて、より一層慎重に構えていただきたいということを申し上げたいのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/214
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215・大西勝也
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど総務局長から申し上げましたように、支部の適正配置という問題も裁判所はかねがねから考えており、弁護士会等の協議の席上でも問題提起をしておるところでございまして、できるだけこれを実現したいというふうに考えておりますが、この実現の過程におきましては、今安藤委員御指摘のとおり、国民の裁判を受ける権利にも深く関係するところでございますから、各方面の御意見も十分伺って、その意見も踏まえて実施するようにいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/215
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216・安藤巖
○安藤委員 最後に、家庭裁判所の調査官の問題をお伺いしたいと思うのです。
時間がありませんから簡単に申し上げますが、最近家庭裁判所の少年事件を担当しておられる人たちの悩みというのをよく聞いているのです。それは、少年がなぜこういう非行を犯したかとか、どうしてこういう問題なことになったのかということをいろいろ尋ねるわけですね。そのときに、その少年がすらすらと答えるということはほとんどなくて、下をうつむいていろいろあれこれ考えながらぽつりぽつりというのが普通だと思うのです。
ところが、調査官の数が非常に少なくて仕事をいっぱい抱えてきりきりしているわけですね。だから、これは悪いことであるけれども、しっかり考え込んでいると、自分の方から例えば君の今言おうとしていることはこういうことなんだねとか、こういうことを考えているんじゃないのとか、先取りしてしまう。そういうことをしてはいかぬのだということを悩みながらも、手持ち事件数が多くてそういうようなことになってしまうという悩みを持っているわけなんです。そういう非常に忙しい、悩みを持たざるを得ないという状況は、事件が多いということと、これは実は私は具体的に大阪家裁の本庁と堺支部の欠員があってという話も伺っているのです。だから、そういう欠員をきちっと補充するということ。
大体、基本的には家庭裁判所の調査官、それはほかの書記官もそうなんですが、速記官もそうなんですが、底上げをして人員をふやしていただかなくてはならぬと思うのですが、そういう具体的な悩みを聞くと、これは調査官の悩みであると同時に、まさに少年の問題でもあるわけなんです。
そういう点で、まず私は具体的な事例として家庭裁判所の調査官の問題を申し上げたのですが、最後に大臣にお答えをいただきたいと思うのです。そういう悩みはもっともだと思っていただけると思うのですね。そういう意味で、裁判所の職員をしっかり増員していただくように大いに頑張っていただきたい。このたび二十五人職員の方が純増でありますけれども、まだまだとてもじゃないが足らないという状況であるということを御認識いただいて、大いに頑張っていただきたいということを要望させていただきますので、頑張るということを言っていただければありがたいと思いますが、そのお答えをいただいて私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/216
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217・林田悠紀夫
○林田国務大臣 このたびの簡易裁判所の裁判官並びに職員の増員につきましても、大蔵省との折衝におきまして十分努力いたしましたが、さらにそういう家庭裁判所の裁判官また職員の問題につきましても今後大いに努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/217
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218・安藤巖
○安藤委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/218
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219・戸沢政方
○戸沢委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/219
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220・戸沢政方
○戸沢委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/220
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221・戸沢政方
○戸沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/221
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222・戸沢政方
○戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
─────────────
〔報告書は附録に掲載〕
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/222
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223・戸沢政方
○戸沢委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
本日、安倍基雄君委員辞任により、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/223
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224・戸沢政方
○戸沢委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は安倍基雄君を理事に指名いたします。
次回は、明二十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205206X00319880322/224
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