1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月三十一日(木曜日)
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議事日程 第十一号
昭和六十三年三月三十一日
正午開議
第一 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑
午後零時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/0
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001・原健三郎
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/1
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002・原健三郎
○議長(原健三郎君) 日程第一、原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。農林水産委員長菊池福治郎君。
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原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔菊池福治郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/2
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003・菊池福治郎
○菊池福治郎君 ただいま議題となりました原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における外国政府による漁業規制の強化に伴う原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化にかんがみ、本法の有効期限をさらに五年間延長するとともに、新たに、主要な近海資源を原材料とする水産加工業の体質強化を図るための施設費、研究開発費等の資金の融通を行おうとするものであります。
本案は、昨三月三十日参議院より送付され、同日本委員会に付託されました。委員会におきましては、同三十日、林田農林水産大臣臨時代理から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、同日質疑を終局し、採決いたしました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/3
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004・原健三郎
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/4
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005・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/5
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006・原健三郎
○議長(原健三郎君) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣宇野宗佑君。
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/6
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007・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) 本年三月二日に東京において署名いたしました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明を申し上げます。
政府は、日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化により、在日米軍経費が著しく圧迫されている事態にかんがみ、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動を確保することを目的として本年一月以来、米国政府との間で交渉を行いました結果、三月二日に我が方本大臣と先方アンダーソン駐日臨時代理大使との間でこの議定書に署名を行うに至った次第であります。
この議定書は、現行の日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の第一条が、在日米軍従業員に支給される調整手当等に要する経費の我が国による負担について当該経費の二分の一に相当する金額を限度とすることと定めておりますところを、当該経費の全部または一部を負担することに改めることを規定しております。なお、この議定書は、前記の協定の効力の存続期間中、すなわち一九九二年三月三十一日まで効力を有するものとされております。
日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化により、在日米軍経費が著しく圧迫されている事態の中で、この議定書の締結を行うことは、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持及び在日米軍の効果的な活動の確保に資するものと確信しているところであります。
右を御勘案の上、この議定書の締結につき御承認を得られますよう格別の御配慮を得たい次第でございます。
以上が、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)
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日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/7
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008・原健三郎
○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。高沢寅男君
〔高沢寅男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/8
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009・高沢寅男
○高沢寅男君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました日米地位協定第二十四条についての特別協定の改定議定書につきまして、反対の立場に立ちつつ、竹下総理及び関係大臣に対し御質問をいたします。
さて、振り返ってみれば、昭和五十三年度以降、我が国は思いやり予算という名のもとに、本来ならば日米地位協定第二十四条に基づいてアメリカが負担すべき在日米軍基地の日本人従業員の福利厚生費や、さらには米軍の施設費について肩がわり負担をしてまいりました。この思いやり予算の金額は、昭和五十三年度には六十二億円であったものが、わずか九年たった昭和六十一年度には八百十八億円と、実に十三倍以上に急増いたしているのであります。しかも、これに加えて、政府は、昨年昭和六十二年度に新たに在日米軍労務費の特別協定を締結し、在日米軍基地で働く日本人労務者の諸手当の二分の一を限度として、五年間の期限を限って日本側で肩がわり負担することとしたのであります。この特別協定によって六十二年度に新たに計上された日本側負担分は百六十五億円であります。ところが、それから一年しかたたない今、さらに政府は、この特別協定を改定して、日本人従業員の諸手当の二分の一ではなく、今度はその全額を負担することとしようというのであります。この背景として急激な円高・ドル安の進行があったことは確かでありますが、しかし、アメリカの要求に対する日本政府の対応は、余りにも唯々諾々とした自主性のない態度と言わざるを得ないのであります。
私は、以下、この改定議定書についてお尋ねするものでありますが、まず第一に、総論として、アメリカの世界戦略の大きな変化が進行しつつあることを指摘し、それとこの思いやり予算との関係を総理にお尋ねするものであります。
一九六九年七月、ベトナム戦争の手痛い敗北に追い込まれつつあったニクソン大統領は、いわゆるグアム・ドクトリンを発表し、アジア・太平洋地域における憲兵の役割をアジア諸国に肩がわりさせることを宣言いたしました。これは、アメリカが全世界に張りめぐらした軍事的プレゼンスを持続することがもはや不可能な時代が来ていたことを物語っていたのであります。それ以来約二十年たちました。アメリカの軍事的、政治的、経済的な世界国家としての能力が破綻したことは、今やだれの目にも明らかとなりました。アメリカは世界最大の債務国に転落し、財政と貿易において巨大な双子の赤字を背負い、あれほどに強いアメリカを叫んだレーガン大統領も、ついに二月十八日に議会に提出した予算教書では、実質的に国防費を削減せざるを得なくなったのであります。その国防報告には、陸海空の兵員の削減、小型ICBM、すなわちミゼットマン計画の中止、衛星攻撃兵器の開発の取りやめ、海軍六百隻艦隊計画の規模縮小などが明記されているのであります。これと時を同じくして、昨年十二月八日に米ソ間にINF全廃協定が締結され、引き続き米ソ間で戦略核の半減を目指した協議が進められておりますが、これは少なくともアメリカの側から見て、過去四十年にわたって展開されてきた、いざというときには対ソ全面核戦争を発動するという戦略計画に重大な変更が加えられたことのあらわれであります。これは、ニクソン・ドクトリン以来のアメリカの軍事プレゼンスの縮小過程に、今後さらに加速度をつけるであろうことは疑いありません。これは、本来ならば世界の緊張緩和と軍縮を促進するものであり、我々の歓迎すべき変化であるはずであります。
ところが、総理、アメリカの戦略思想は、今や全面核抑止戦略から柔軟反応戦略に切りかえられ、より小単位の、より小回りのきく、より機動性のある、より高度のハイテクを備えた、そういう新しい戦力の整備が追求されることになりました。しかも、それと見合って、我が国の軍事的役割分担に対するアメリカの要求は、ますます強化されてきているのであります。ことしに入ってにわかに日米関係の表面に躍り出てきた米軍の有事来援の問題、それに伴う米軍の装備、弾薬等の事前集積の問題、それに対する日本のWHNS、すなわち、米軍来援を受け入れる側としてとるべき対米支援行動の問題、それに伴って日本国民の権利や財産に制限を加えるための有事法制整備の問題等、これらはすべて私が指摘したような日米間の軍事協力の枠組みの上にあらわれてきたものであります。総理、アメリカのねらいとするところは、ただ単なる日本有事の際の日本の防衛ではありません。アメリカの最大のねらいは、極東有事に際してアメリカ自身の負担と犠牲は最小限にとどめ、自分にかわるアジア・太平洋地域の憲兵の役割を最大限に日本に肩がわりさせようとすることにあります。日米安保協力ガイドラインで共同研究の進められているシーレーン防衛作戦計画も、洋上防空、対潜水艦作戦計画も、すべてはこの一点に収れんされてくることになるのであります。
総理、昨年九月にアーミテージ米国防次官補が、韓国を訪問いたしました。その際、アーミテージ次官補は、米韓連合司令部の指揮系統を再検討する旨の発言をしているのであります。現在、米韓連合司令部の司令官は在韓米軍司令官が兼任いたしておりますが、もしもこの指揮権を韓国側に渡すとなれば、それは必然的に在韓米軍の撤退につながるのではないでしょうか。レーガン大統領の前任者であるカーター大統領の時代にも、在韓米軍の撤退の方針が出されたことがありました。ことしの十一月に行われるアメリカ大統領選挙で共和、民主いずれの大統領が当選しても、この新大統領が在韓米軍の撤退を打ち出す可能性は極めて大きいと私は考えるものであります。
そこで、総理にお尋ねをいたします。
あなたは、私が指摘したようなアメリカの世界戦略の大きな変化、すなわち、アジア・太平洋地域におけるみずからの軍事的プレゼンスとコミットメントを次第に縮小し、この地域の防衛の役割と責任を日本に肩がわりさせようとする戦略計画の変化をどのように認識されておりますか、お尋ねをいたします。またあなたは、このアメリカの戦略計画の変化に乗じて、あるいはアメリカからの日本の軍事力増強の要求にこたえて、日本を米ソに次ぐ第三の軍事大国に仕立て上げようとするお考えをお持ちでしょうか、いかがでしょうか、お尋ねいたします。また、このたびの在日米軍に対する労務費特別協定を改定して思いやり予算の大盤振る舞いをされようとしていることは、これもアメリカの極東戦略の肩がわりというねらいを込めてのことでしょうか、いかがでしょう。総理のお答えをお願いいたします。
次に、瓦防衛庁長官にお尋ねをいたします。
あなたは本年一月十九日、カールッチ米国防長官との会談に当たり、米軍の有事来援問題に関連する日米共同研究をあなたの側から提起されたとのことであります。これは極東の政治、軍事情勢についてのいかなる状況認識に基づいてなされたものでありましょうか、お尋ねをいたします。瓦長官、あなたは、昭和四十年本院において、我が党の先輩議員岡田春夫氏が、自衛隊の当時の統幕事務局長を長とする制服グループが極秘のうちに研究立案していた三矢研究計画というものの存在を明らかにし、時の政局を揺るがす大問題となったことは御記憶かと思います。問題の三矢計画は、朝鮮有事を想定し、在日米軍と共同して日本自衛隊が朝鮮半島に向かって軍事作戦行動をとることとし、そのために必要な諸措置の計画を図上作戦のシミュレーションで作成したものでありました。私の見るところ、あなたが米国防長官に提起された米軍の有事来援の日米共同研究は、これに関連するポンカス計画あるいはWHNS計画あるいは有事法制計画とつなげていくと、その内容はまさしくかつての三矢研究計画とうり二つのものとなってくるのではないでしょうか。防衛庁長官として、あなたはこのことをどのように認識をされているのでしょうか、お尋ねを申し上げます。
もう一つ防衛庁長官にお尋ねしたいことがあります。
在日米軍への思いやり予算はあなたの所管される予算であります。この思いやり予算が支出され、それを在日米軍が使用している内容を見ると、こんなものまで日本の国民の税金で出しているのかと思わざるを得ないような、いかがわしい内容のものまで含まれています。これは今国会の予算委員会において大いに論議されたところであります。また、逗子における池子米軍住宅の建設あるいは三宅島における米軍機夜間発着訓練基地の建設など、それぞれの地元住民の圧倒的反対の世論をねじ伏せて無理やりに推進されようとしていますが、その費用もこの思いやり予算から支出されるということは、どうしても私の納得できないところであります。ところが、私の調査によれば、さらに重大な憲法違反の予算支出がなされているのであります。すなわち、昭和五十八年度、五十九年度に、在沖縄の米軍基地、キャンプ・コートニーの施設整備のために支出された防衛施設庁予算の中に、教会の建設費が含まれているのであります。教会とは、キリスト教の教会であります。これは、明らかに憲法第二十条及び第八十九条に対する違反であります。防衛庁長官、あなたは、この憲法違反の予算支出をいかがお考えでありましょう。その責任も含めて、あなたの御所見を明らかにしていただきたいのであります。
最後に、宇野外務大臣にお尋ねいたします。
昭和六十三年度の外務省予算要求額は四千四百十六億円であります。しかし、この中からいわゆるODA関係の対外援助予算を差し引き、純粋に外務省が展開される外交活動のための予算を見れば、わずかに千百十九億円にすぎないのであります。外務大臣、昭和六十三年度の在日米軍のための思いやり予算は、総額千二百三億円であります。この金額と、あなたの外務省の純粋の外交活動の予算千百十九億円とを比較されて、大臣の御所見はいかがでしょうか。外務大臣、これは単なる金額の比較の問題ではないのであります。最近の我が国の安全保障政策は、まず防衛庁当局が日米の軍事関係を利用して既成事実をつくり、その後を引きずられながら外務当局がつじつま合わせに忙殺されるというケースが多いのではないでしょうか。言うまでもなく、一国の平和と安全を守る基本的任務は外交にあります。仮に武力による防衛を認める立場に立っても、防衛はあくまで外交のしもべでなければなりません。この主客が転倒したところから、日本は、第二次世界大戦の悲劇を経験したのではないでしょうか。この経験は、断じて忘れてはならない経験であります。
外務大臣の御所見と御決意をお尋ねをいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/9
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010・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) ただいま、五十三年以来の経緯にさかのぼって、今日の米国の世界戦略への認識と、こういうお尋ねがまず第一点でありました。
米国は、抑止力の維持強化を図ることを基本とする国防政策を推進しておる、このようにまず認識しております。こういう基本的な考え方に立って、流動する具体的な国際情勢等に応じて、効果的な国防力の維持に努めておるものと承知いたしております。米国のこのような基本戦略に基づく米国の同盟友好諸国に対するコミットメントの決意についても、変化があるというふうには考えておりません。他方、米国議会を中心といたしまして、我が国に一層の防衛努力と国際社会における貢献の増大を求める声があることは、これは承知いたしております。安保条約上、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に我が国を防衛する立場にある米国として、我が国の防衛努力につき関心あるいは期待を有することは、これは自然の考え方であると思いますが、我が国の諸施策は、あくまでも自主的に行っていくべきものである、このように考えております。
次の問題は、軍事大国化への懸念の問題でありました。
日米安保条約によって我が国を防衛する立場にある米国として、これは先ほども申しましたように、一層の努力を期待するということは自然なことでございましょうが、我が国が米国にかわって地域的な軍事的役割を果たすことを要求しておるといったようなことはないというふうに承知しております。いずれにいたしましても、我が国としては、今後とも専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従いまして、あくまでも自主的に判断し、みずからの防衛のため、節度ある防衛力の整備を図っていく、この方針に変わりはありません。
次は、思いやり予算の問題でありました。
外務大臣の趣旨説明にもありましたように、政府としては、日米両国を取り巻く経済情勢が最近において一層の変化を見せており、そのために在日米軍経費が著しく圧迫されているこの事態にかんがみまして、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図って、もって在日米軍の効果的な活動を確保するとの観点から、労務費特別協定の改正によりまして在日米軍経費の我が国負担の増加を図る、こういうことになることであります。したがって、米国の極東戦略の肩がわりである、そういった御指摘は、私どもは当たらない、このように理解をいたしております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/10
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011・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) お答えいたします。
外交予算とそして思いやり予算、そうした関係の御質問でございますが、平和と安全を確保するということは、これは仰せのとおり外交の基本的な使命でございます。したがいまして、日米安保体制というものが継続され、その効果的な運用ということを図りまする場合には、当然、思いやり予算もその一環として重要な部分を占めておる、私はかように存じます。だから、外交予算と直接比較をしていただくことはいかがかと存じまするが、もちろん、私たちが今日の外交予算をもって満足しているわけではございません。常に高沢議員からもいろいろと御指摘を賜っておりまするとおり、定員におきましては五千名定員、さらに予算は多々ますます弁ずと申しましょうか、そういうことでございますが、今日ただいまは、御承知のとおり財政再建の途上にあり、しかも、財政当局また関係省庁からは格段のいろいろと外務省に対する御高配をいただきました予算でございますので、私たちは、この予算の中におきまして最大の努力をし、最大の外交効果を上げたい、かように存じておる次第でございます。
第二問目は、つじつま合わせではないか、つまり防衛庁と外務省、主客転倒しておるのではないかというお話でございますが、これは決してさようなことではございません。先ほど申しましたとおり、外務省は、安全保障政策の推進、そしてその遂行、これを一番の使命といたしておりますので、私たちはその分野におきまして最大の努力を払っておるところでございます。したがいまして、そういう結果、つじつま合わせをしたとか、あるいはまた主客転倒であるというようなことは当たらないと私は存じます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/11
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012・瓦力
○国務大臣(瓦力君) お答えいたします。
まず、日米防衛首脳会談における有事来援研究の提案の趣旨についてでありますが、我が国有事の際の米軍の来援は、日米安保体制の核心をなす重要なものでございますので、従来から最大の関心を払ってきたところでございまして、幸い最近になって日米間で研究の機運が生じてきたため、先般の日米防衛首脳会談において私から提案したものでございます。
なお、極東における軍事情勢について申し上げれば、極東ソ連軍の質、量両面にわたる増強と行動の活発化など、依然として厳しいものがあると考えております。
次に、有事来援研究の内容についてでございますが、この研究は、「日米防衛協力のための指針」に基づく共同作戦計画の研究の一環として、我が国有事における時宜を得た米軍の来援について研究するものでございます。その過程で装備の事前集積、つまりポンカスについても取り上げられることとなるか否かは今後の日米間の検討によるものと考えておりますが、いわゆる有事のホスト・ネーション・サポート協定や有事法制について研究するものではございません。このことは従来から申し上げておるとおりでございます。
なお、いわゆる三矢研究について申し上げれば、この研究は、我が国に対する外部からの武力攻撃があった場合の我が国の防衛について、統合運用を中心として行われた幕僚研究でございます。有事来援研究と同じものといった指摘は当たりません。
次に、提供施設整備による教会の建設についてでございますが、本件建物は、安保条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的といたしまして、米軍に対する施設提供の一環として、米軍にとって必要不可欠な施設を建設し、提供したものでございます。本件建物の提供は、憲法二十条が禁止する宗教的活動には当たらないものと考えております。また、本件建物は在日米軍に提供したものでございまして、憲法八十九条とはかかわりないものでございます。
以上、お答えいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/12
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013・原健三郎
○議長(原健三郎君) 玉城栄一君。
〔玉城栄一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/13
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014・玉城栄一
○玉城栄一君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました在日米軍労務費特別協定の改正議定書の締結について承認を求める件について、竹下総理大臣並びに関係大臣に御質問を申し上げたいと存じます。
在日米軍経費の日本側負担増の問題は、昨年十月七日以来、中曽根内閣のペルシャ湾の安全航行確保対策の一環として検討されてきたことは、客観的な状況から明白であります。にもかかわらず、政府はこれを否定し続け、単に円高・ドル安を最大の理由に挙げて、我が国の自主的な判断でこの特別協定改正議定書を締結したと述べておられるのであります。しかし、私は、この改正議定書は、あくまでも米国の世界戦略の流れの中で締結されてきたものだと思わざるを得ないのでありますが、総理の御見解を承りたいと思うのであります。
地位協定二十四条に関する特別協定は、昨年の六月に発効いたしたばかりであります。しかも、これは五カ年間の効力を有するものでありますが、その後一年もたたずに改正というのでは、余りにも政府の見通しが悪過ぎると言わざるを得ないのであります。今年一月、竹下総理が訪米された際のお土産だったとしか考えられないし、まさに朝令暮改のそしりを免れないと思うのでありますが、総理はどうお考えでいらっしゃるのか、お伺いをいたしたいと思います。
政府は、この特別協定改正議定書の国会承認を大変お急ぎのようでありますが、もしこの改正議定書が承認されますと、六十三年度の途中から在日米軍基地従業員の諸手当の全額を日本側が負担することが可能であるということになっておりますが、六十三年度政府予算案には諸手当の二分の一しか計上されておりませんので、当然補正予算を組むおつもりなのかどうか、お伺いをいたします。
在日米軍労務費の諸手当全額を負担するということになりますと、必要な経費は約四百億円になります。さらに、米軍への施設関係予算は六十三年度予算案には約八百億円計上されております。政府は、この労務費と施設費を合わせたいわゆる米軍への思いやり予算については今後ともますます増額しようというふうにおっしゃっておられますので、これらの費用は当然のことながら政府が今進めている中期防衛力整備計画の総額である十八兆四千億円の枠内で処理されるものと思うのでありますが、確認の意味も含めてお伺いをしておきたいと思うのであります。カールッチ米国防長官は、日本の米軍支援総額は二十五億ドル以上となっている、人員一人当たりで四万五千ドルとなり、ホスト・ネーション・サポートとしては世界の中で最高であると述べており、またアーミテージ米国防次官補も米下院歳出委員会の軍事建設小委員会で同じ数字を挙げるとともに、日本は米軍が駐留している国の中でも最も気前のいい国だと述べているのであります。なぜ我が国だけがこのように、また、それ以上に負担していかなければならないのか、国民に納得のいく説明を当然政府はすべきであります。国民の理解と支持なしには我が国における米軍基地の存続はあり得ないと思うからであります。お伺いをいたします。
さらに、この機会に竹下総理にぜひお伺いをしておきたいと思いますことは、沖縄米軍基地の実態について、総理はどのような御認識をお持ちでいらっしゃるのかということについてであります。
昭和四十七年、沖縄の本土復帰に際して米軍基地の整理縮小の国会決議が行われ、政府はそれを誠実に遵守するとお約束をしたはずであります。しかるに、沖縄の本土復帰後十六年を経た今日、今もなお米軍基地は、在日米軍基地の四五%が沖縄に集中し、米軍の常時使用する専用施設においては何と七五%が沖縄に存在しているのであります。沖縄本島においてはその面積の二〇%が米軍基地であり、嘉手納空軍基地のある嘉手納町においてはその八三%が米軍に提供されているのであります。そのほか沖縄の美しい海と空も、米軍への提供海域、提供空域に占められ、まさに基地の中の沖縄という実態は本土復帰後十六年を経た今日も、今もなおそのままであり、むしろ逆に米軍の基地機能はますます強化拡大されているのであります。依然として沖縄県民は復帰前よりまさるとも劣らない苦悩を強いられておるのであります。このような実態について竹下総理はどのように受けとめておられるのかお伺いをいたしますとともに、政府は、沖縄の米軍基地の整理縮小について具体的にどういう計画をお持ちなのか、お伺いをいたしたいと思います。
さらにまた、お伺いをいたしたいことは、この改正議定書は米軍基地従業員の安定的雇用の維持に役立つと先ほどもおっしゃっておられたのでありますが、果たしてそうでありましょうか。昨年六月、あの特別協定が成立した直後、米軍は基地関係従業員三百三名の大量解雇を通告してきた事実があるのであります。この問題はまだ懸案のままでありますが、今後は一体どうなるのか。果たしてこの改正議定書によって政府の言う米軍基地従業員の雇用の安定が図られるという保証が本当にあるのでしょうか。先ほどの三百三名の解雇問題も含めて竹下総理の明快な御答弁をお願いしたいと思います。
さらにお伺いしておきたいことは、今沖縄で最も泣かされているのが、基地の外で米軍用貸し住宅を建設した方々であります。この人たちは、米軍の意向を受けた政府の要請に従って、米軍の住宅不足を補うために借金までして米軍用貸し住宅を建ててきた方々であります。ところが、その後、思いやり予算に基づいて我々日本人にはとても手の届かないような大変立派な高層マンションを政府が次々と米軍基地内に建設したために、約千数百戸の米軍用民間貸し住宅はすべて空き家となってしまったのであります。現在でも政府は大量に基地内で建設中でありますが、こういう政府の場当たり的政策によって犠牲を受けているこれらの方々を一体どのように政府は救済するおつもりなのか、お伺いをしておきたいと思います。
次に、我が国の防衛問題についてお伺いをしてまいりますが、かねてより米国内からしばしば伝えられる日本の防衛支出が少な過ぎるという声は、私は異常だとしか思えないのであります。国民の目から見ると、政府に何か米国に対し負い目でもあるのかとさえ受け取れるほどであります。一体米国は我が国にどれだけの防衛負担を求めようとしているのか。防衛力増強の要求は、結局、米国のアジアでの肩がわりを我が国に求めているのではないでしょうか。さらに、三年続きの米国防予算削減は在韓米軍の撤退につながるものと受け取られておりますが、政府は、在韓米軍の撤退の可能性についてどのような御認識をお持ちなのか。また、在韓米軍の撤退が行われたとするならば、日本の防衛政策のスタンスは変わり得るのかどうか。さらに、在韓米軍の撤退に伴って沖縄の米軍基地並びに自衛隊基地はさらに強化されるのではないかと私は危惧いたしますが、政府はどのようにお考えになっておられるのか、お伺いをいたします。
先ほどの防衛庁長官のお話もありましたけれども、この際、この前の訪米によりまして日米防衛首脳会談で合意された日本有事の際の米軍の来援の問題についての日米共同研究は、さまざまな問題を内包するものであります。日米安保条約が改定されて二十八年経過した現在、これまで検討されなかった日本有事における米軍の来援研究が今なぜ必要なのでしょうか。特に、一年前、日本側から申し入れる考えはないと言いながら、前言を翻して、先ほど長官もおっしゃった、日本側からなぜ申し入れを行ったのでしょうか。その背景と目的は少しも国民の前に示されていないのであります。政府の御答弁を求めるものであります。
私が特に指摘しておきたいことは、昭和五十三年の「日米防衛協力のための指針」いわゆるガイドラインによって、日米の防衛協力が着々と進められているということであります。日本有事における日米共同作戦の研究、シーレーン防衛の共同研究、相互運用性の共同研究、さらには今回の有事来援研究と続いていることを見れば、ガイドライン路線によって安保条約が事実上拡大強化をされつつあると言わねばならないのであります。ガイドラインでは、この結論がそれぞれの政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないとされているものの、実態的には、我が国の防衛政策、予算に直接反映されているのであります。結局、国民にその中身が公表されないまま、国民の権利義務や防衛政策の基本に関する研究が日米で続けられていることは、シビリアンコントロールの点から見ても大きな問題と言わざるを得ないのであります。竹下総理は、つかさ、つかさでと防衛庁に任せきりで、リーダーシップを何ら発揮しておられないではありませんか。軍人同士の極端な話し合いの中で、日本は一体どこへ行くのか、いつか来たあの危険な道へ再び行くのではないかという大きな不安が国民にはあるのであります。竹下総理の御見解を伺いたいのであります。
日本有事の米軍来援の研究は、単なる研究にとどまらず、新たな協定、有事立法へとつながるものであることは、政府が何と抗弁しようと明らかであります。有事においては、鉄道、船、航空機、道路などの輸送、土地の収用、物資調達など広範な分野が入り、民間を巻き込むことは必至であります。さらに、この研究は、日本有事にだけ限るという保証はなく、極東有事、中東有事にも対処することになるのではないかといった疑問などなど、単なる研究というだけでは済まされない、さまざまな重大問題が出てくるのであります。政府は、これらの疑問に対し、単なる抽象的な答弁ではなく、客観的に、国民にわかりやすい御答弁を求めるものであります。
さらに、有事来援の中核として、部隊装備の事前集積の問題があります。この事前集積には、五千億という膨大な経費がかかると言われておるのでありますが、一体この経費について日米どちらが負担するのか、もし日本側が負担するならば、思いやり予算の中で負担しようという考えなのか、明確にお答えをいただきたいのであります。
この思いやり予算が創設された五十三年には六十億円だったのが、新年度予算案では実に千二百億円にも達しており、この十年間で二十倍にもなるという驚異的な伸び方であります。政府の言う思いやりは米国の顔色をうかがう思いやりであり、日本が米国の世界戦略に一層組み込まれ、軍事大国化への道を邁進する危険な選択ではないかと私は危惧するものであります。米国の国防費削減のツケを我が国が負担するいわれはないし、日本は米国の金づるでもなければ打ち出の小づちでもないはずであります。大事な国民の血税をこういう形でどんどん米軍へ提供することは国民の理解を得られないと私は思いますが、総理並びに関係大臣の良識ある御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/14
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015・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) 玉城さんにお答えいたします。
まず最初の問題につきましては、米国の世界戦略からすべてをお説きになりまして、今度の締結全体の問題に対してお触れになりました。今般の改正は、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図って、もって我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的な運用を確保するためのものでありまして、特にペルシャ湾安全航行のための具体的な施策とかそういう考え方ではなく、米国の世界戦略に対応したといったようなものではございません。
なお、補正の問題にもお触れになりましたが、補正予算は考えておりません。
さらには、十八兆四千億の枠内、こういうお話もございましたが、将来にわたってそれで措置し得るものであると考えております。
それから、沖縄基地の実態についてどのように認識しておるか、こういうお話でございました。
沖縄の皆さんの理解と協力なくして、まさに日米安保条約に基づくいわゆるこれらの施設、区域等の存在というのは、実際私もあり得ないというふうに感じております。したがいまして、沖縄における米軍施設、区域の円滑、安定的な使用を確保することは、まさに日米安保条約の目的達成のために緊要であり、そうして、それこそ重ねて申し上げますが、沖縄の皆様方の理解と協力によらなければならないというふうに考えておるところでございます。したがいまして、政府として、関係地元住民の御要請と、そうして米軍側における駐留目的達成上の必要性、そのような調整を一生懸命やりまして、住民の生活に及び得る影響というものを最小限に食いとめていく、この努力を今後とも続けなければならないと考えております。
それから、シビリアンコントロールについてお触れになりました。
政治の軍事に対する優先、いわゆるシビリアンコントロールは、民主主義国家に不可欠なものである、このような考えに立っております。あるいは防衛庁部内の内局あり、そして安全保障会議があり、閣議があり、特にこの国会、これが存在するわけであります。したがいまして、シビリアンコントロールの原則というものはあくまでも、内閣総理大臣、私としても適切な運用に配慮していくのは当然であるというふうに考えております。
それから、在日米軍の駐留経費の負担について、日米安全保障体制の堅持を防衛の基本方針とする我が国としましては、自主的判断によって可能な限りの努力をすべきであるという考え方、そこで従来から日米両国を取り巻く国際経済情勢の変動でございますとか、そういうのを見ながら安保条約の目的達成との関係、そして我が国の財政負担、在日米軍従業員の雇用の安定、諸般の事情を考慮して適切に対処していくべきものであるというふうに考え、今日までもそのように対処してきたつもりであります。今後ともこの方針によってさらに国民の皆様方の理解を得つつ慎重に対応していくというのが基本的な考え方でございます。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/15
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016・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) 総理の御答弁との重複を避けて、私に関する部分をお答え申し上げたいと思います。
最初、今回の労務費特別協定の改定は朝令暮改ではないか、こういう仰せでございますが、御承知のとおり、この協定を結びまして以来さらなる円高、そしてドル安という事態でございましたので、やはり我々といたしましては、従業員の雇用の安定を図る、これが最大の目的である、こうしたことでございますので、朝令暮改では決してございません。
その次には、今後この問題はさらに続くのではないかということでございますが、あくまで暫定的、限定的な問題でございますので、当然私たちといたしましては、日米安保の効果的運用、それを図る。その中には財政的な制限もございますし、またやはり社会的、経済的な影響をも慎重に考慮しなければならない。そういうふうなことで、総理もおっしゃいましたとおりに、常に自主的にこの問題は政府といたしましては解決をしていきたいと思う次第でございます。
なお、沖縄の問題は総理からお答えがございましたけれども、沖縄の従業員の方の雇用の安定というものがあるのか、それは維持されるのかという御質問がございましたが、この段は、今回の協定改定等々を通じまして、我が国が、沖縄の方々に対しましてもその従業員の雇用の安定を図っておる、そうしたことを明確に米側にお伝えいたしてありますので、米側といたしましても協力するということを約束しておられる次第でございます。
もう一つ、在韓米軍の撤退という問題もございましたが、我々の認識からいたしますと、最近、非常に近いところのアメリカの高官アーミテージ国防次官補の発言の中にございますが、そのようなことは決して極東の安全に寄与するものではない、こういうふうに言っていらっしゃいますので、私たちもそのことを信じておる次第でございますし、また、その方がよいと私たちも考えておる次第でございます。
その次に、有事来援の研究はすなわち有事立法につながるのではないか、また極東有事につながるのではないか、そうしたいろいろの疑点を提示されたわけでございますが、これはあくまでも第五条日本有事、このことに関する勉強でございまして、また、この勉強の結果は、決して両国の予算あるいは立法、さらには行政的措置をとるという義務を必要としない、このことはもう日米ともに理解をいたしておりますので、有事立法をつくるための勉強会ではない、かように御理解賜りたいと存じます。
ポンカスに関しましては、防衛庁長官からお答えがあろうと思います。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/16
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017・瓦力
○国務大臣(瓦力君) お答えいたします。
総理、外務大臣から実はお答えをいただいておりまして、たくさんの質問がございましたが、整理をさせていただきます。
在沖縄米海兵隊クラブ従業員の人員整理問題につきましても、外務大臣からもお触れいただきましたが、現在米側と引き続き協議を行っているところでございます。私の一月訪米時、カールッチ国防長官との会談におきまして、本件人員整理問題を含め従業員の雇用の安定に特段の意を用いるよう同長官に要請したところ、同長官はこれを了解いたしたものでございます。これにより本件人員整理問題は解決に向かうものと期待しております。なお、現在米軍においても各種の経営合理化を実施し、人員整理の抑制に努力をしていると承知をいたしております。
次に、沖縄におきましての民間の貸し住宅についてでございますが、米軍の駐留を円滑にするための施策として、米軍家族住宅の不足の整備は安保条約上必要な施策でありますが、米軍家族住宅の建設に当たっては、できるだけ民間貸し住宅に影響を及ぼさないように配慮をしてきたところでございます。今後とも、その観点から慎重に対処してまいる所存であります。
次に、有事来援研究でございますが、有事来援研究は、あくまで我が国に武力攻撃が行われた場合の我が国防衛のため米軍の時宜を得た来援を得ることを目的として行われるものでございます。また、この研究は、我が国有事において米国からの来援が確実かつ時宜を得て行われるか否かは日米安保体制の核心をなす重要な問題であることから、我が国の防衛の観点から必要なものと考えておる次第でございます。
次に、ポンカスにかかわる費用負担についての御質問ですが、有事来援研究においては、有事における米軍の時宜を得た来援を得るとの観点からポンカスも取り上げられることはあろうと思いますが、ポンカスの実施やその費用負担といったことは、本研究とは別個の問題でございます。政府としては何ら検討していないので、お答えは差し控えたいと思います。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/17
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018・原健三郎
○議長(原健三郎君) 和田一仁君。
〔和田一仁君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/18
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019・和田一仁
○和田一仁君 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、ただいま議題となりましたいわゆる在日米軍労務費特別協定を改正する議定書について、総理並びに関係大臣に対し質問をいたすものでございます。(拍手)
現在、日米間にはさまざまな懸案が存在しており、特に貿易摩擦問題は重大な政治問題となっております。現にきょうもワシントンにおいて、牛肉・オレンジの自由化問題をめぐって極めて厳しい交渉が続けられておるわけでございます。しかしながら、日米関係は我が国外交の基軸であり、アメリカは我が国の安全保障にとって死活的な重要性を持つ国家なのであります。第二次大戦後今日まで、四十年余りにわたりまして世界各地において幾多の国際的な紛争、動乱が発生したにもかかわりませず、我が国は一貫して平和を維持し、繁栄を続けてくることができました。その理由は幾つか挙げることができますが、その最たるものは、日米間の友好、信頼関係をつくり、日米安保体制を基盤とした日米の同盟関係を堅持してきたということでございます。これによって、我が国は、憲法の平和主義を踏まえた必要最小限の自衛措置を講じ、足らざるところはアメリカの強力な軍事力を後ろ盾として、平和と安全を維持することができたのであります。それに加うるに、我が国はアメリカとの同盟関係を通じていわゆる西側自由陣営の一員として自由な貿易体制に参加をし、経済を発展させ、そして今日の繁栄を築いてまいりました。アメリカとの安全保障体制は、まさにその基盤をなしてきたと言っても過言ではないと存じます。(拍手)
さらに、このことは今やアジア・太平洋地域の複雑な力のバランスを支える重要な柱となっているのであります。韓国、ASEAN諸国、そして中国といった我が国の友好諸国が日本の安全保障政策に基本的な信頼を置いているのは、我が国が憲法の平和主義を踏まえた防衛政策を堅持するとともに、日米安保体制によって決して独自の軍事大国とはならないという路線をとっているからにほかなりません。かつて、日米安保体制は日本を戦争に巻き込むと言われ、今日もなお一部でそうした主張が繰り返されております。しかし、それが的を得ていなかったことは今日までの事実が明白に証明しているところであります。我が党は、今後とも我が国の平和と安全を確保するため、日米安保体制を堅持するよう主張するものであります。(拍手)
安保体制を堅持し、これを有効に運用する上で最大の保証となっているのは、言うまでもなく在日米軍の存在であり、また、在日米軍の駐留が円滑に行われ、一たん有事の際にはこれらが日本の防衛のために直ちに行動し、さらにアメリカ本土からも来援部隊が速やかに駆けつけることによって、日米安保体制は初めて有効に機能すると言うことができるのであります。したがって、我々は、在日米軍の円滑な駐留を実現するため、駐留軍労働者の費用についても、国民的な合意と日米地位協定の原則を踏まえつつ、適正な限度において我が国が負担することの必要性を認めるものであります。
私は、以上述べてまいりました我が党の基本的な立場に立って、以下諸点について具体的に御質問をいたすものでございます。
まず第一は、今回の協定の改正と日米地位協定との関係についてでございます。
在日米軍の費用の問題については、日米地位協定の第二十四条において、米軍の駐留に関するものはアメリカ側が出し、日本側は基地や施設を提供するという原則が定められておるのであります。しかるに、昨年、日米地位協定についての特別協定によって、駐留軍労働者の期末手当など八つの手当につきまして、二分の一を限度として日本側が負担するということになったのでございます。我が党は、本協定は日米地位協定の精紳を踏まえたものであるとの理解から、これに賛成をいたしました。しかし、今回の改正でこれを全額日本側の負担とした場合でも、果たして地位協定の精神を逸脱していないと言い得るのかどうか、十分納得のできる説明が必要であると考えます。この点についてまず総理の御見解を承りたいと思います。
第二は、在日米軍の費用負担の限界についてであります。
昭和五十三年から始まった在日米軍に対する思いやり予算や、昨年の地位協定についての特別協定に伴う労務費の追加なども加えまして、在日米軍の駐留に伴う我が国の負担は増加の一途をたどっているのであります。六十三年度予算案においては、我が国の負担総額は二千五百九十億円、うち、思いやり予算は一千二百三億円に達しているのであります。特に、思いやり予算は何ら制度的な基準を持つものではありません。事実上無制限に膨張を続けてまいりました。重大な問題であります。しかも今後、アメリカの国防予算は横ばいあるいは減少という事態が予想されておるわけであります。円高の進展と相まって我が国に対する一層の費用負担が求められることは必至であります。したがって政府は、今回の特別協定の改正を契機として、思いやり予算と特別協定に基づく労務費の負担、この双方について、我が国の費用負担の基準、限界を明確にして国民の理解を得る必要があると考えます。これについての総理の御見解を求めるものでございます。
第三は、今回の改正によって生じる新たな負担増と防衛費の歯どめとの関係でございます。
今回の改正によって生じる労務費の負担増は年間二あるいは三百億円程度と言われております。それは現在の中期防策定時には想定をしていなかった新たな防衛費の発生であります。しかし一方、昭和六十一年から六十五年までの防衛費は中期防の総額十八兆四千億円を歯どめとすると決定をいたしました以上、今回の改正に伴う新たな負担増も当然中期防の総額の枠内とすべきであると考えますが、これについての総理の御決意を改めて確認をしておきたいと存じます。
第四は、ペルシャ湾の安全確保に対する貢献についてであります。
今回の特別協定の改正は、急激な円高に対処してアメリカの負担軽減を図るということとともに、我が国がペルシャ湾の安全確保に対する貢献の一環として、その防衛に当たっている米国に間接的に協力することを目的としたものでありまして、このことは総理御自身がこの一月訪米された際にレーガン大統領に約束されたことでありまして、御自身が一番よく御存じのはずでございます。しかるに、イラン・イラク戦争は今日もなお継続をして、激しさを増しておるわけでございます。ペルシャ湾における危険も一向になくなってはおりません。現に、先日も我が国の海運業者がチャーターした船が攻撃を受けまして、日本人船員が亡くなっておるのであります。しかるに、昨年打ち出された政府のペルシャ湾の安全確保に対する貢献策というものは、今回の協定の改正も含めて、要するにすべて金を出すというものだけであります。果たしてこれだけでよいのでありましょうか。各国もまた同様の思いで我が国の対応を注視いたしておるのであります。我が国としての今後の貢献策のあり方について、総理並びに外務大臣に対して改めて質問をいたすものでございます。(拍手)
第五は、有事における米軍の来援に関する共同研究についてであります。
去る一月の日米防衛首脳協議において、有事における米軍の来援問題について共同研究を行うことが合意されました。有事における米軍の速やかな来援は、在日米軍の存在とともに日米安保体制の有効性を保証するものであります。かかる意味合いで私は共同研究の必要性を認めるものであり、むしろ遅きに失していると言いたいのであります。そこで、この研究を進めていくならば、来援する米軍についての有事法制の問題や、またいわゆるホスト・ネーション・サポート協定の問題は避けては通れない課題となるのであります。しかるに、これまでの政府の答弁は、現在進められている自衛隊についての有事法制研究の問題も含め、これらの研究の相互の関連性が必ずしも明確にされておりません。特に外務省は、これらの問題は防衛庁だけの問題と認識している傾向があるように思うのでございます。とんでもないことでございまして、これはまさに政府が一体となって政府の責任において取り組むべき課題であると思います。よって、ここにこの際、有事における米軍の来援に関する研究とこれらの相互関係につきまして、総理並びに防衛庁長官、そして外務大臣から明確な御答弁をいただきたいのであります。
我が国が西側の同盟国として安全保障分野においていかなる貢献が可能であるかについての真剣な検討を行い、何ができ何ができないかということを我が国の立場を明確に内外に示す必要があると考えております。どうぞ、以上述べました諸点に対しまして、責任ある御答弁を改めてお願いをいたしまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/19
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020・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) まず、安保体制を堅持する、そういう考え方に基づいての御意見をも含めた御質疑でございました。
さて、今回の地位協定の原則との関係でございますが、本件議定書は現行労務費特別協定の改正、そうして現行労務費特別協定は、地位協定第二十四条について期間が限定された暫定的かつ特例的措置を定めるものでありまして、地位協定のいわば特則ともいうべきものであると考えます。したがって、同条に言いますところの経費負担についての基本原則そのものを変えるというものではないというふうに考えております。本件議定書によります現行労務費特別協定の改正は、同特別協定のこのような性格を変えるものではないというふうに考えます。
次に、在日米軍経費負担問題についての御意見でございました。
政府としては、日米安保体制の効果的な運用確保のため、在日米軍経費の負担についてできる限り努力を行ってきたところであります。他方、政府としては、厳しい財政的な制約や社会経済的影響等を真剣に考慮しながら、安保条約の目的達成を図る範囲内で、国会の御審議を得ながら経費負担を行ってきた次第であります。今般の改正についても、日米両国を取り巻く経済情勢が最近において一層の変化を見せておりまして、そのために在日米軍経費が著しく圧迫されているこの事態にかんがみてとりますところの暫定的、限定的な性格のものでありまして、今般明らかにされました措置以外の措置をとるということは検討をいたしておりません。
それから次は、中期防との関係のお尋ねがございました。
昭和六十年九月策定されました中期防と本年一月新たに決定された在日米軍経費の日本側負担の増大との関係につきましては、いろいろ御議論があり得ることは十分承知しております。この日本側の負担増につきましては、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動を確保するとの観点から極めて重要でありまして、その所要額は、防衛費の効率的使用といった観点から年度年度の予算で精査しながら中期防を着実に実施していく過程においてその所要経費、すなわちおおむね十八兆四千億円程度の枠内で賄い得るものであるというふうに考えております。
それから次は、ペルシャ湾についてお触れになりました。
まさに我が国は安全航行の最大の受益国であります。国際社会の責任ある一員として、ペルシャ湾安全航行確保のために何をなすべきか、そこで、非軍事的分野において応分の貢献を行うことが必要だという考え方に基づいて今日まで措置しております。そうして一方、イラン、イラク両国に対して、湾内における軍事行動の自制をこれは力強く呼びかけていかなければならぬ。そして、その背景にあります紛争そのものの解決のための外交努力を、今までも、今後とも鋭意行っていかなければならぬということでございます。そして、昨年十月七日に政府・与党首脳会議の決定に従い、政府としてはその貢献策の早急な実施に今努めておる、こういうことをお答えとして申し上げます。
それから、危険なペルシャ湾で運航に従事していらっしゃる船員の方々、これにはもう、その任務を遂行されておることに対して深く敬意を表しております。これからも船舶安全航行の確保のために私どもの可能な努力を続けていくことこそ、それらの果敢な任務遂行に対して敬意をあらわす一つのことではなかろうかというふうに考えております。
さらに次は、有事来援研究等の問題にお触れになりました。
本研究は、あくまでも我が国に対する武力攻撃がなされた場合の我が国防衛のため、時宜を得た米軍の来援を得ることを目的としたものでありまして、「日米防衛協力のための指針」の枠組みのもとで行われておるものでございます。したがって、日米間の協定や法制そのものについて研究するものではないということに位置づけをいたしております。
最後に、何ができるか何ができないか、それこそまさに国会の議論等を通じ、シビリアンコントロールのもとにおきながら、日米安保条約が有効に機能するための基本的考え方であるというふうに私も問題意識を同じくいたしております。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/20
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021・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) お答えいたします。
ペルシャ湾は、今総理からお答えになられたとおりでございますが、非軍事的、具体的な方策といたしましては、ペルシャ湾内の船舶の航行の安全を確保するシステム、これを全部日本が敷設するということを国際的にお約束いたしまして、湾岸諸国等の御理解も得た次第でございます。したがいまして、今後もそうした面におきまして日本は協力をしなければならない。何分にも、五〇%ホルムズ海峡を通過いたしまして我が国にエネルギーが送られてくるわけでございますから、これを無視することはできません。なおかつ、外交的には国連の安保非常任理事国でございますから、当然その面におきましても我が国は現在も最大の努力を果たしている次第でございます。また、私自身も、イランの外務大臣に直接お出会いし、さらにはまたイラクの外務次官ともお出会いいたしまして、常に、和田議員が申されましたそうしたことに関しまして強く要請を行っているような次第でございます。
また、有事法制の問題に関しましては、総理からもお触れになられましたが、今回の有事来援の勉強は、何度も申し上げておりまするとおり、あくまでも「日米防衛協力のための指針」の一環である、それは第五条に基づく日本有事の場合のことのみである、したがいまして、有事立法につながるものではない、かように申し上げておりますが、その研究を離れて、ではどう考えるかという問題になりますると、研究を離れた一般論といたしましては、今、和田議員が御指摘のとおりに、やはりこれらは勉強しておくべきものであろうという観念は私たちも抱いておるわけでございます。特に、有事立法と申し上げましても、自衛隊に関する問題と米軍に関する問題がございますが、大ざっぱに二つを分けまして、その自衛隊に関する問題は防衛庁で鋭意検討をしておるところであろうと私も思いますが、そうした自衛隊と米軍が日本有事のときには共同して対処するということでございますから、あるいはダブる面が多いかもしれない、そういうことをおもんぱかった場合には、やはり自衛隊の有事法制の研究というもののその結果を見て、米軍に対する我が国の国内法との関係はどうなるか、こういうことがやはり大切な問題であろうと思います。繰り返して申し上げますが、これは一般論として申し上げたわけでございまして、研究より直接つながるものではない、かように御理解賜りたいと思います。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/21
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022・瓦力
○国務大臣(瓦力君) お答えいたします。
総理並びに外務大臣から有事来援問題並びに関連する問題につきましての御答弁がなされまして、これは一にするものでございますが、私の所管でもございますので重ねて申し述べさしていただきます。
有事来援研究は、いわゆるガイドラインに基づく共同作戦計画の研究の一環でございます。また、有事のホスト・ネーション・サポートや有事における米軍の行動にかかわる法制について研究するものでないことは、これまた従来より申し上げておるところでございます。指針におきましては、有事における日米の相互支援の研究は、指針に基づく各種の研究を通じて明らかにされた項目がある程度出そろった時点で改めて研究することになっております。また、現在の有事法制研究はあくまで自衛隊の行動にかかわる法制上の問題を対象としているものですが、いずれにせよ、日米間の協定や有事における米軍の行動にかかわる法制上の問題につきましては、別途慎重に検討されるべきものであるということを申し添えておきます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/22
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023・原健三郎
○議長(原健三郎君) 岡崎万寿秀君。
〔岡崎万寿秀君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/23
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024・岡崎万寿秀
○岡崎万寿秀君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、米軍地位協定に関する特別協定を改正する議定書について質問します。
今日、世界はINF全廃協定の締結にあらわれた核軍縮の流れが大きく前進しようとしています。しかし、一方では、核兵器に固執し新たな軍拡を進める動きが強まっております。こうした中で、世界で唯一の被爆国であり、非核三原則を国是とした日本が進むべき道は、核兵器廃絶と軍縮への道でなければなりません。しかし、政府は、アメリカの核戦略への加担をますます強め、安保条約に基づく軍事分担を拡大する一方であります。今回の地位協定に関する特別協定の改正は、その重大なエスカレートであり、絶対に容認できません。以下、具体的に質問をいたします。
総理、この協定は、私たちの強い反対にもかかわらず、昨年五月に締結されたばかりであります。その際政府は、在日米軍経費の負担増について、昨年五月十八日の外務委員会における私の質問に対して、日本人基地従業員の労務費のうち、手当の「八項目についてその二分の一までを上限といたしまして、それを五年間ということで国会の御承認を得る条約として現在御審議いただいているわけでございます。そこに明確なる上限があるわけでございます。」と言明をいたしました。もともと基地従業員の諸手当は、地位協定第二十四条一項に基づいてすべて米軍が負担すべきものであります。したがって、地位協定の解釈ではどうにもならないので、五年間手当の二分の一負担という時限的、暫定的な特別協定の形をとり、それ以上拡大しない明確なる上限を国会で約束したのであります。ところが、それから一年もたたない今日、政府はその上限を超え、本改正で手当の全額負担を押しつけようとしています。昨年、政府は、今日にかけての円高・ドル安状況を理由にして米軍経費の一部を負担する五年間の特別協定を締結したのであります。日米経済状況の変化は今日の改正の理由にはなりません。そんなことでは国会の権威はどうなるのか、なぜ国会と国民への約束をほごにしたのか、その責任について明快な答弁を求めます。(拍手)
政府が国会の約束を破ってまで特別協定を改正し、米軍経費の日本負担増を図る背景には、昨年九月、当時の栗原防衛庁長官が訪米の際、ブッシュ米副大統領が在日米軍への思いやり予算の増額を要請したことにも見られるように、米国の強い要求があります。総理は本年一月の訪米に当たって、この在日米軍経費負担の日本側肩がわり強化のための日米特別協定改正の方針を手土産にしました。こうしてわずか一年で協定を改め、現行の基地従業員手当の二分の一負担を全額負担とするのは、国会を愚弄し、我が国の自主性を貫く態度ではないと考えますが、総理の所見を伺います。(拍手)
次に、手当の日本全額負担の理由として、日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化を挙げています。しかし、レーガン軍拡がつくり出した双子の赤字対策としての今日の異常円高の進行に協力し容認してきたのは、中曽根、竹下内閣ではありませんか。円高・ドル安が進めばその分米軍経費を日本が負担するというやり方を認めるなら、我が国の負担増は今後も一層拡大する結果となります。こうした口実を繰り返すつもりか、外相にお尋ねします。
今回の改正の真の理由がペルシャ湾における米軍の軍事行動を支援するための措置だということは明白であります。昨年十月七日に政府が決めた「ペルシャ湾における自由安全航行確保のための我が国の貢献に関する方針」は、米軍のペルシャ湾軍事干渉への我が国の支援策をまとめたものでありますが、そこには「米国が、ペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている状況の下で、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的運用を確保する見地から、適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国と協議を行う。」と明記しています。特別協定の改正は、まさにこの方針の具体化ではありませんか。総理は、今回の在日米軍経費の負担増が、ペルシャ湾で行動する米軍への間接的な支援とお認めになりませんか。
これは、大変重大な問題であります。米軍はペルシャ湾で軍事干渉を繰り返しておりますが、日本はこれに軍事支援ができないからといって、在日米軍経費の日本負担をふやすことでアメリカの要求にこたえるというのでは、日本の軍事分担は、まさに歯どめなき状態に置かれるわけであります。米軍がその世界戦略に基づいてみずからの利益のために行動することに対して日本が在日米軍経費の負担をふやすことで報いるということは、国際紛争の関与を禁じた憲法上、断じて許されないことであります。あわせて総理の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)
さて、今日、安保条約強化のもとで日本の軍事分担の行き着く先はどこかという問題があります。
一九八〇年三月、アメリカのピンクニー国防総省東アジア・太平洋局長が議会で、我々の目標は、日本が、日本で働く我が国の軍事要員の実際の給与以外、すべてのアメリカの経費を引き受けることだと述べました。日本政府は、この証言がアメリカ政府の見解ではないなどと言ってきましたが、事実はこの方向へ着実に進んでいるのであります。既に日本人基地従業員の労務費の日米分担は、昭和六十三年度は日本が四百十一億円、三四・四%となり、今回の改正で手当の全額日本負担が実施されると、六十三年度をベースにすると日本が労務費の実に五一%を超える計算になります。また軍事建設費は、六十三年度で日本の負担は九七%、七百九十二億円となっているのであります。今日の日本の軍事費分担は、アーミテージ米国防次官補が、米兵一人当たり四万五千ドルという世界最高の支援と称賛している水準であるにもかかわらず、自民党の安倍幹事長は昨年十一月、在日米軍経費のアメリカと日本の負担割合を五分五分にする意向であるとまで表明したのであります。これは政権党の幹事長の発言だけに、アメリカ政府にとって新たな軍事費増額要求のてことなるおそれがあるものであります。それはまた、米軍地位協定それ自体を改定しなければ不可能なことであります。総理は、米軍地位協定の改定についてどう考えているのか。基地従業員の本給負担やそれに伴う地位協定の改定は絶対にやらないとこの場で言明すべきではありませんか。
総理、国民にとって重大なことは、こうした膨大な在日米軍経費肩がわり負担、思いやり予算の拡大が、国民生活関連予算の削減、国民の暮らし破壊と表裏一体の関係で行われているという問題であります。
思いやり予算は、この制度が始まった昭和五十三年度以降の十年間で実に十九倍にも膨れ上がっています。本協定の改正で政府は、米国に対して二百億円以上の新規負担ができるようにする一方、六十三年度予算案では生活保護費を二百五十億円削減し、憲法で保障された生存権をも奪う生活保護打ち切りに一層拍車をかけようとしています。アメリカの対日圧力によってもたらされた異常円高は、日本経済を支えてきた中小零細企業に重大な影響を与え、昨年九月には、全国五十五の輸出型地場産地の休廃業件数は二千三百七十八件にも達しています。ところが、政府は、円高を推進したアメリカには本特別協定の改正によって在日米軍経費の日本負担を拡大しながら、中小企業のための円高被害救済策として進めてきた緊急経営安定対策は本日をもって打ち切り、廃止しようとしています。まさに国民の暮らしよりも日米安保を優先させるものではありませんか。在日米軍に対して大盤振る舞いを行う一方で、社会的弱者、中小企業のための施策を次々と切り捨てることが政府の言うバランスのとれた政治ということなのか、明確な答弁を求めます。(拍手)
さらに、こうした新たな対米軍事分担などの軍事費を賄うために公約違反の新大型間接税の導入をたくらむなど言語道断であり、その断念を厳しく要求するものであります。
最後に、こうした在日米軍経費の日本負担の大幅拡大はまさに日米軍事同盟に根差すものであり、今日急ピッチで進められている日米共同作戦態勢の一層の強化と一体をなすものであります。その一つ、いわゆる有事来援研究の中で米軍物資の事前集積、ポンカスを認めていくようになれば、そのために新たな費用負担を日本が担わされることになるし、また、新たな施設提供ということにもなっていくことは必至であります。これではアメリカの言いなりに軍拡と軍事費の分担が拡大する一方ではありませんか。総理の見解を求めます。
このように日本が世界の核軍縮の流れに逆行して軍事的にも財政的にも一段と米核戦略を補完するものとなっていることは、極めて重大であります。本件特別協定を改正する議定書もまさにそういう性格のものであり、私はその撤回を強く求めて、質問を終わるものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/24
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025・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初に、労務費特別協定、昨年もことしも、こういうことでありましたが、政府として昨年行いまして、そうして事態の変化に応じて、新たにまたことし経費のさらなる圧迫という事態に対処していく、こういう筋になるわけであります。
次なる問題につきましては、基本的な考え方が違うのでございますが、日米安保体制のより一層の効果的運用を図る、こういう基本的な考え方でありますので、米軍の軍事行動を支援するという考え方ではありません。
その次に、在日米軍経費負担歯どめ等の問題がありましたが、何としても、これも我が国の安定と繁栄は、日米安保体制のもとで平和が保たれておるという認識の前提の上に立っておりますので、基本的考え方が違うわけでございますが、その都度国会できちんと御審議をいただいておるところであります。
さらに、今度は、予算全体についての御意見がございました。国民生活等に配慮し、財源の重点的、効率的配分に努めて今日までも参っております。防衛費そのものは、諸施策との調和を図ったぎりぎりの措置である、このように御理解をいただきたいと思います。
日米安保に対する政府の姿勢、これらも基本的認識の相違に基づく御見解でございます。あくまでも日米安保体制の効果的運用を確保することは我が国政府の自主的判断に基づいて行うべきものである、このように考えております。
以上でお答えを終わります。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/25
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026・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) お答えいたします。
二問ございまして、今回の改定をする労務費協定もアメリカの戦略の一環を日本が背負うのではないかというような御趣旨の質問でございましたが、そうではございません。あくまでも労務協定は労務協定でございます。また、自主的に判断をしたものでございます。
続きまして、ペルシャ湾に関しましても、これまたアメリカの戦略の中の一環を担っておるのではないかという仰せでございますが、先ほど私が申しましたとおり、やはり五〇%という大きな石油の通過をこのペルシャ湾から仰ぎ、ホルムズ海峡に仰いでおるわけですから、当然何かをしなくてはなりませんが、非軍事的協力である、それしかできない、かように申し上げておりますので、決して米軍の作戦の一環を我々は担っておるものではない、はっきり申し上げておきたいと思います。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣瓦力君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/26
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027・瓦力
○国務大臣(瓦力君) 私に対しましての質問は、労務費の日本側の負担割合はどうかということでございますが、三四・四%である。五一%を超えると思うがどうかということでございますが、そのままということになりますと、五一・八%になるかと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/27
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028・原健三郎
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/28
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029・原健三郎
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111205254X01219880331/29
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