1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月一日(火曜日)
午後零時一分開会
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委員の異動
一月五日
辞任 補欠選任
赤桐 操君 一井 淳治君
一月二十一日
辞任 補欠選任
一井 淳治君 赤桐 操君
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出席者は左のとおり。
委員長 村沢 牧君
理 事
井上 孝君
福田 宏一君
小川 仁一君
委 員
井上 吉夫君
植木 光教君
遠藤 要君
沓掛 哲男君
志村 哲良君
高橋 清孝君
赤桐 操君
太田 淳夫君
上田耕一郎君
山田 勇君
青木 茂君
国務大臣
建 設 大 臣 越智 伊平君
国 務 大 臣
(北海道開発庁
長官) 粕谷 茂君
国 務 大 臣
(国土庁長官) 奥野 誠亮君
政府委員
北海道開発庁総
務監理官 中田 一男君
北海道開発庁計
画監理官 大串 国弘君
北海道開発庁予
算課長 筑紫 勝麿君
国土庁長官官房
長 清水 達雄君
国土庁長官官房
会計課長 佐々木 徹君
国土庁計画・調
整局長 長沢 哲夫君
国土庁土地局長 片桐 久雄君
国土庁大都市圏
整備局長 北村廣太郎君
国土庁地方振興
局長 森 繁一君
国土庁防災局長 三木 克彦君
建設大臣官房長 牧野 徹君
建設大臣官房総
務審議官事務代
理 中嶋 計廣君
建設大臣官房会
計課長 鹿島 尚武君
建設省建設経済
局長 望月 薫雄君
建設省都市局長 木内 啓介君
建設省河川局長 萩原 兼脩君
建設省道路局長 三谷 浩君
建設省住宅局長 片山 正夫君
事務局側
常任委員会専門
員 荒木 正治君
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本日の会議に付した案件
○建設事業及び建設諸計画等に関する調査
(派遣委員の報告)
(建設行政、国土行政及び北海道総合開発の基本施策に関する件)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/0
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001・村沢牧
○委員長(村沢牧君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
建設事業及び建設諸計画等に関する調査を議題といたします。
まず、先般当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。
まず、第一班の報告をお願いします。志村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/1
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002・志村哲良
○志村哲良君 去る一月十八日から二十日までの三日間、村沢委員長、石井理事、一井委員及び私、志村の四名は、岡山、香川、愛媛、広島の四県において、本四架橋事業と広島市における建設事業の状況を調査してまいりました。以下、その概要を御報告申し上げます。
瀬戸内地域は高度経済成長期における鉄鋼、造船、石油化学等、重厚長大産業を中心に発展してまいりましたが、近年、円高等により、こうした中心産業が直撃され、地域の経済と雇用への影響は深刻なものがあります。しかし、昨年の公共投資の大幅追加、好調な住宅建設等の内需拡大に支えられて、地域経済はようやく上向き始め、明るい状況も出てきたと言われております。中でも四国側の香川、愛媛両県では、公共投資への経済依存度が高く、したがって、公共事業に関しては、当面、地域の経済を支える柱として、また、おくれている社会資本の整備促進のために、事業費の確保に強い期待が寄せられておりました。
さて、こうした中で、瀬戸大橋すなわち本四連絡橋児島—坂出ルートが四月十日に開通が予定され、五十三年に着工以来十年目、事業費一兆一千三百億円で、道路と鉄道によって本州と四国が初めて陸続きになるわけであります。これにより、本州と四国間の交通は時間的に大幅に短縮され、経済、文化等の交流の緊密化を通じて地域の活性化と国土の有効利用に大きく寄与することが期待されております。
視察当時、工事は既に最終段階に入っており、舗装や維持管理施設等の整備が行われておりましたが、ルート延長三十七キロのうち、三つのつり橋、二つの斜張橋及びトラス橋の計六つの橋が連なる海上部十三キロは壮観で、改めて世紀の大事業であることを実感いたしました。地元では開通に先立ち、三月二十日から児島と坂出の両側で架橋を記念する博覧会が開催されますが、開通後はこの橋をすぐれた自然景観とあわせて観光の柱にも期待し、ホテル等の建設も進んでいるとのことであります。
このような中で、本四備讃線の開通に伴い、四国側の玄関口となる宇多津町では、地域振興整備公団による区画整理事業によって、塩田跡地に、計画人口八千七百人、商業、住宅、流通等総合的機能を備えた町づくりが進んでおります。この地域は瀬戸大橋の開通及び関連道路の整備により、鉄道で高松に約二十五分、岡山まで三十分という利便性を生かし、中讃都市圏の拠点となる新都市をつくろうとするもので、今後、産業構造の変化等を勘案しつつ、観光レクリエーション開発やスポーツ産業、ホテル等の立地に期待がかけられておりました。
しかし、瀬戸大橋開通に伴う高速交通メリットを広く及ぼすためには、一日二万五千台と予想される自動車交通を円滑にさばくための関連道路及び高速道路網の整備が不可欠であります。このため、岡山県内では当面の受け皿となる国道二号のバイパス整備が、また香川県内では国道十一号坂出—丸亀バイパス、善通寺バイパス等の整備が鋭意進められております。しかしながら、高速道路
については、山陽道が瀬戸大橋との接続点、早島から西四十一キロが開通するものの、その東側及び中国横断道の工事はおくれており、また、四国側では、計画に対する供用割合が全国の三六%に対し一〇%、開通区間は善通寺—土居間等合計でまだ七十キロにすぎず、橋と直接関連する善通寺—高松間の開通は数年先となります。事業の一層の促進が望まれます。
次に、尾道—今治ルートについてであります。
尾道—今治ルートは、瀬戸内の西の地域、広島と愛媛の経済圏を結ぶことから西瀬戸自動車道と呼ばれておりますが、ルート全体の建設に向けて大きく前進しております。すなわち、五十年の一レート三橋の建設方針によって、まず大三島橋、続いて因島大橋が建設に着手され、その後、五十六年、伯方・大島大橋、六十一年、生口橋が着工凍結を解除、そして来年度には来島大橋の建設着工が予定されております。既に大三島橋は五十四年、因島大橋は五十八年に供用され、また伯方・大島大橋は我々の視察の二日前に開通しており、ルートの中で残された区間は生口島と大三島を結ぶ多々羅大橋のみとなります。来島大橋は完成が十一年後と見込まれておりますが、地元からは、その時期には多々羅大橋もあわせて完成するよう建設に配慮してほしい旨の強い要望がありました。
西瀬戸自動車道の特徴は、道路単独橋であり、また、人口が合計で十万人を超える大きな島々を結び、島嶼地域の振興に寄与するものでもありますが、工事面では、設計上、特にすぐれた自然との調和が要求され、また来島海峡は、潮流が速い上に船舶の幹線航路となっていることから航行安全対策が重要になっております。なお、ルート全体の事業費は六千億円が見込まれており、六十二年度末の進捗は約二五%となっております。
最後に、広島における建設事業についてであります。
原爆による惨禍から奇跡的な復興を遂げた広島市は、現在、人口百三万人を数え、中国地方の中核都市として発展を続けております。しかし、広島は太田川の河口に開けておりますが、平地は少なく、開発が急速に周辺丘陵地に拡大しているのに対し、都市機能は都心部に集中しており、都市機能の分散配置による多心型都市構造への転換が必要になっております。
こうした課題を抱える中で、市当局は、具体的な都市ビジョンとして世界平和に貢献する水と緑と文化のまちを掲げ都市整備に取り組んでおり、その基盤となる道路交通網の整備を初め、河川、公園、都市開発等の事業が意欲的に進められておりました。
これらの事業のうち、太田川の整備と道路整備について若干申し述べます。
太田川は市街地で六本の河川に分流し、水の町広島を特徴づけておりますが、四十七年の放水路完成までは大災害も何回か発生しております。現在もなお高潮対策、ダム等治水事業が進められておりますが、大都市を流れる河川としては水質がきれいで、基町地区では、護岸が隣接する公園計画にあわせ親水性や景観に配慮して整備され、市民の憩いの場にもなっております。
また、市内では交通渋滞が激しく、おくれている道路整備が大きな課題であります。この中にあって、祇園新道は山陽道広島インターチェンジと市内中心部を結ぶバイパス道路として建設が進んでおりますが、その中央部には新交通システムの導入が計画され、市内西北部からの通勤交通を改善する上で大きな期待が持たれております。
このほか、西部丘陵都市建設、広島広域公園、段原地区の区画整理、八幡川の改修等の事業を視察いたしましたが、詳述を省略させていただきます。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/2
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003・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 次に、第二班の報告をお願いします。井上君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/3
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004・井上孝
○井上孝君 去る一月十八日から三日間、福田理事、小川理事、沓掛委員、上田委員と私、井上は、新潟、富山、石川三県における建設諸事業の実情を調査してまいりましたので、その概要を御報告いたします。
まず、道路事業について申し上げます。
北陸自動車道は、新潟県新潟市を起点とし、富山県、石川県、福井県を経て、滋賀県坂田郡米原町で名神高速道路に接続する延長四百八十三キロメートルの高速道路であります。既に、新潟黒崎から名立谷浜までと、朝日から米原間は供用されており、名立谷浜から朝日までの五十九キロメートルが現在建設中であります。
今回視察いたしました親不知海岸高架橋は、富山県境に近い新潟県青海町に位置する延長三・四キロメートルのプレストレストコンクリート橋であります。架橋位置は天下の険として知られる親不知・子不知地区であり、平地部が極めて狭隣であるため、本高架橋はほぼ全域にわたって海中部または海浜部を走行しております。また、本地区の晩秋から早春にかけての気象、海象は極めて厳しいものであります。したがいまして、工事が非常に困難なものであるとともに、塩害防止、厳しい波浪による橋脚の摩耗防止のため各所に新規の工夫がなされております。
本親不知海岸高架橋を含む名立谷浜から朝日までの区間は、本年八月に供用が開始される予定で、これにより北陸自動車道は概成する見通しとなっております。
一方、北陸地方の一般国道につきましては、交通不能区間、除雪困難による冬季交通不能区間が少なからず存在するとともに、都市及びその周辺部、主要国道を中心に、近年増大する交通量により交通渋滞や通行の安全の低下を来しております。また、豪雪地帯であることはもとより、急峻な地形等により災害を受けやすい条件にあるため、しばしば通行どめを余儀なくされております。
このような状況のもと、北陸自動車道が概成すれば、経済圏の拡大、工場誘致、観光開発等、北陸地方の経済社会活動に大きな便益を与えるとともに、従来しばしば災害による通行どめとなっていた国道八号線の代替機能も果たし、防災道路としての役割も担うことができます。ぜひ、安全面に留意しつつ、一日も早い完成を期待いたします。
次に、都市計画事業について申し上げます。
まず、富山県が新都市拠点整備事業として行っております、とやま二十一世紀都市MIRAI計画は、富山駅北口にある国鉄跡地、遊休化した運河船だまり、大規模民間未利用地を利用して、二十一世紀の経済社会へ向けての新たな課題に対応した高度な業務環境、良質な就業環境、快適利便な居住環境、知的で健康的な生活環境を備えた高付加価値型都心ビジネスパークの建設を目指すものであります。水公園カナルパークと並木のある大通りブールバールを中心に、町全体が花と緑と水に彩られ、オフィス、住宅、文化・スポーツ施設がバランスよく配置された計画であるとのことでした。
次に、高岡市が行っております御旅屋西通り地区市街地整備事業は、高岡市が中心市街地の活性化を図った中心市街地活性化計画の一環として、都市計画道路片原町伏間江線の整備にあわせ、地区の環境整備を行い、中心商業地にふさわしい町づくりを行うものであります。同地区の現況は、道路はすべて幅員四メートル未満と狭小で袋小路も多く、また建築後三十年以上経過している老朽家屋が全戸数の約六〇%を占めている等、生活環境上良好な地区ではありません。そこで、地区の改善、並びに都心環状線の一路線である都市計画道路片原町伏間江線の整備とあわせ、沿道区画整理型街路事業と住環境整備モデル事業の合併施行により整備を行うこととしております。
次に、金沢市における香林坊地区市街地再開発事業は、都心部の再生を図るものであります。金沢市の香林坊地区は、金沢市の中心商業地の一角をなしており、昭和四十年ごろから防災建築街区造成事業により総合的建築の整備が計画され、第一地区、第二地区とに分かれ、一部建物除去等の事業が行われましたが、昭和五十年ごろ石油ショ
ックによるキーテナントの撤退等により事業が挫折しました。しかし、都心部にありながら土地の有効利用がなされていない状況から、地区の内外から整備を望む声があり、市街地再開発事業として整備することで再出発し、昭和六十一年九月すべての整備が完了しました。本事業は、幹線道路の無電柱化、歩道のケヤキ並木やフットライト、横断地下道の陶壁やエスカレーター等、官民一体となった新しい試みが行われており、用水の開渠化、屋外広場の設置、外壁の色彩等とともに、良好な都市環境の形成を図る施設が整備されておりました。
ほかに、金沢市では、JR金沢駅と金沢市の二大商業地である香林坊、武蔵ケ辻地区を結ぶ金沢駅通り線建設事業、新たな都市核の形成を目指す金沢西部地区土地区画整理事業等が施行され、都市基盤整備の促進が図られておりました。
以上のように、富山、石川両県においては、新しい都市づくりが積極的になされており、北陸地方における中核都市にふさわしい都市が形成されつつあります。なお、住民参加による官民一体の計画推進の必要性が強調されておりました。
最後に、能登地域半島振興計画について申し上げます。
能登地域におきましては、半島特有の地理的条件のため、人口減、高齢化、低所得、地域内での就職難等が生じております。しかし、同地域は、自然、風土、歴史的遺産、海洋資源等豊かな資源に恵まれ、潜在的に大きな開発可能性を有しております。そこで、能登地域半島振興計画を策定することにより、人、モノ、情報が交流する新しい能登の創造を目指しております。本計画の重点施策は、能登を全国に開く国土幹線軸へのアクセス整備により、交流手段を確立するとともに、ナショナルリゾートの形成、新規産業の誘致と地域産業の高度化、電源立地等大規模プロジェクトの検討と推進及び快適で魅力ある生活環境等の整備により、交流の基礎となる定住のための総合環境の整備と地域の活性化の促進を図ることであります。
このうち、国土幹線軸へのアクセス整備として、能登幹線道路ネットワークの形成が重視されております。そのためには、富山県砺波市から石川県輪島市を結ぶ高規格幹線道路の能越自動車道の建設促進と金沢—能登二時間圏構想、金沢—七尾一時間圏構想の実現が望まれております。さらに、各県から共通して北陸新幹線建設の強い要望がありました。
なお、以上のほか、能生町雪崩対策事業、能登島大橋、柴山潟整備事業につきましても調査いたしましたことを申し添えます。
以上、簡単でありますが報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/4
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005・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 以上で派遣委員の報告は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/5
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006・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 次に、建設大臣から建設行政の基本施策について所信を聴取いたします。越智建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/6
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007・越智伊平
○国務大臣(越智伊平君) 建設行政の基本方針及び当面の諸施策について、私の所信を申し述べます。
最近の我が国経済の課題は、行財政改革を推進する一方、内需を中心とした景気の持続的拡大を図り、雇用の安定と地域経済の活性化を積極的に図っていくことにあります。
このため、昭和六十三年度の建設省関係予算については、NTT株式売り払い収入の活用等により、九年ぶりに大幅な伸びを実現したところであります。
改めて申し上げるまでもなく、国土建設の目標は、住宅・社会資本の整備を通じ、国土の均衡ある発展を促進し、活力ある経済社会と安全で快適な国民生活を実現することにありますが、我が国の住宅・社会資本の整備はいまだ立ちおくれた状況にあります。
また、我が国の大幅な対外経済不均衡や円高の進展等内外の経済情勢に適切に対処するため、内需主導型経済成長への速やかな転換、地域の活性化が求められております。
昭和六十三年度においては、こうした課題にこたえるため、所管事業の計画的かつ効率的な実施に努め、また、民間活力をも活用しつつ、住宅・社会資本の計画的かつ着実な整備を推進していく所存であります。
また、大都市地域等における地価高騰に対処するため、土地供給促進のための施策を強力に推進するとともに、土地取引の適正化の措置、さらには諸機能の地方分散のための施策についても鋭意推進してまいりたいと存じます。
以下、当面の諸施策について申し述べます。
第一に、都市対策であります。
これからの都市整備に当たっては、本格的な都市化、情報化、産業構造の高度化等に適切に対応するとともに、それぞれの地域の特性を生かしながら、安全で個性と魅力ある都市を形成することを目標として、長期的展望のもとに、総合的、計画的に都市政策を推進していくことが必要であります。
このような観点に立って、都市計画を適切、有効に推進するとともに、街路、公園、下水道等の都市基盤施設については、五カ年計画に基づき、計画的かつ効率的にその整備を進めてまいりたいと存じます。
さらに、内需の拡大、都市機能の高度化等に資するため、市街地再開発事業及び土地区画整理事業の促進のための制度改善を含め、市街地開発事業等の一層の拡充、推進を図るとともに、民間の都市開発事業についても積極的にその推進を図ってまいります。また、大規模空閑地等を有効に活用し、これらの区域における一体的かつ総合的な再開発を誘導するための措置を新たに講ずる所存であります。
一方、都市近郊における集落地域の計画的整備を推進するとともに、都市の防災構造化の促進、都市の緑の保全と創出及び国際花と緑の博覧会の準備の推進を図ってまいります。
第二に、住宅・宅地対策であります。
住宅は、国民の生活の基盤であり、国民が安定したゆとりある住生活を営むことができるよう良質な住宅ストック及び良好な住環境の形成を図ることを基本的目標として、今後進展する高齢化、情報化、ニーズの多様化等に適切に対応しながら総合的な施策を展開してまいる所存であります。
このため、住宅金融公庫の貸付条件の改善及び住宅税制の拡充を図るとともに、大都市地域等における公共賃貸住宅の的確な供給、既成市街地における良質な市街地住宅の供給、既存住宅ストックの有効活用、高齢者対策の充実、地域に根差した住まいづくりの推進、木造住宅の振興等の施策を推進してまいりたいと存じます。
また、宅地対策につきましては、公的宅地開発の推進、政策金融の活用、関連公共公益施設の整備、開発許可の迅速化等を図るとともに、特に、昨年の緊急土地対策要綱を踏まえ、地方公共団体の開発抑制方針の転換要請、大都市圏において良質な宅地の供給を促進するための新たな制度の創設、土地関係税制の改善等に重点を置いて各般の施策を総合的に推進してまいりたいと存じます。
第三に、国土の保全と水資源の開発であります。
我が国の国土は、洪水、土石流等に対して極めて弱い体質を持っておりますが、その保全施設の整備はいまだ立ちおくれております。
このため、第七次治水事業五カ年計画に基づき、重要水系の河川の整備、総合的な治水対策、土石流・地すべり対策等を計画的かつ強力に推進するとともに、第四次海岸事業五カ年計画及び昭和六十三年度を初年度として新たに策定する第二次急傾斜地崩壊対策事業五カ年計画に基づき各事業を積極的に推進してまいる所存であります。
また、災害対策の充実を図り、その着実な実施に努めてまいります。
さらに、安定した水供給を図るため、多目的ダムの建設等による水資源の開発を推進してまいる所存であります。
なお、ふるさとの川モデル事業等、豊かで潤い
のある河川の整備を積極的に進めることにより、河川利用の促進を図る所存であります。
第四に、道路の整備であります。
多極分散型国土の形成、地域社会の活性化等の課題に対応し、国民生活の充実を図る上で、道路は欠くことのできない基本的な公共施設であります。これまで九次にわたり道路整備五カ年計画を策定し、その整備を着実に進めてまいりましたが、その整備水準はいまだ低い状況にあります。
このため、新たに昭和六十三年度を初年度とする第十次道路整備五カ年計画を策定し、交流ネットワークの強化、よりよい都市のための道路づくり、地方の定住と交流を促進する道路づくり、多様な道路機能の充実に配慮しつつ、高速自動車国道から市町村道に至る道路網を体系的に整備してまいる所存であります。
特に、全国的な自動車交通網を構成する高規格幹線道路網一万四千キロメートルについては、昭和六十七年度末までに六千キロメートルの供用を目途にその整備を積極的に推進するとともに、地方道路整備臨時交付金制度を拡充し、地域の振興を支える道路の整備を推進する所存であります。
また、民間活力を活用しつつ、東京湾横断道路、明石海峡大橋及び伊勢湾岸道路の建設を推進するとともに、新たに来島大橋の建設に着手することとしております。
なお、積雪寒冷特別地域における冬季交通確保のための第九次積雪寒冷特別地域道路交通確保五カ年計画及び山間・奥地等の地域において産業の総合的な開発の基盤となる道路の整備を推進するための第七次奥地等産業開発道路整備計画を策定することとしております。
第五に、建設産業、不動産業の振興であります。
建設産業につきましては、建設業許可制度の適正な施行、共同企業体の適正な活用の推進、元請・下請関係の合理化、中小建設業者の育成振興、建設労働・資材対策等その健全な発展を図るための施策を中長期的展望に立って展開してまいる所存であります。
不動産業につきましては、資質の向上及び業務の適正化等を図るため、宅地建物取引業制度の改善等の施策を推進するとともに、引き続き不動産流通市場の整備、近代化を図ってまいる所存であります。
また、我が国経済の発展及び急速な国際化の進展に伴い、建設分野においても、一層国際協力の充実を図るとともに、建設業の国際活動に関しても国際協調を図りつつ振興を図ってまいる所存であります。
このほか、高速自動車国道等のネットワークを活用した高度情報通信網の整備、高度情報化に対応した都市整備及び建築物整備の推進等を図るとともに、リゾート地域の整備、関西文化学術研究都市等の地域的な総合プロジェクト、先端技術の活用等による建設技術の研究開発について積極的に推進してまいる所存であります。
以上、私の所信を申し述べましたが、その推進に当たっては、所管行政の合理化、効率化を図るとともに、綱紀の保持に努め、国民の信頼と期待にこたえる考えであります。
委員長を初め委員各位の御指導と御鞭撻をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/7
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008・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 次に、国土庁長官から国土行政の基本施策について所信を聴取いたします。奥野国土庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/8
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009・奥野誠亮
○国務大臣(奥野誠亮君) 国土行政の基本方針及び当面の諸施策について、私の所信を申し上げます。
近年、我が国においては、東京への種々の機能の一極集中と人口の再集中等により地価の高騰を初めとする都市問題が顕在化してきている一方で、地方においては急速な産業構造の転換により雇用問題が深刻化している地域も少なくありません。また、本格的な国際化、技術革新、情報化、高齢化等の進展により、経済社会の大きな変化が予想されます。
このような社会経済情勢の変化に的確に対応しつつ、二十一世紀を見通した長期的な展望のもとに国土の均衡ある発展を図り、住みよい国づくり、地域づくりを進めるため、私は、次に述べる諸施策を積極的に推進してまいる所存であります。
第一は、第四次全国総合開発計画の推進であります。
国土政策の根幹として、二十一世紀への国土づくりの指針となる第四次全国総合開発計画は、昨年策定されたところでありますが、これは、地域の創意と工夫を基軸とした地域づくりを基本とし、そのための基盤となる交通、情報通信体系の整備等交流ネットワーク構想の推進により、多極分散型の国土の形成を図ることを基本的目標としているものであります。このような国土を形成することにより、住民が誇りと愛着の持てる、豊かで住みよい地域社会の実現に寄与してまいりたいと考えております。したがって、その推進は、東京一極集中の是正と多極分散型国土の形成を通じて、東京を中心とする地価の高騰等現下の土地問題の解決にも資するものであると考えております。
本年は、この四全総推進の一年目に当たり、国はもとより地方公共団体や民間団体など多様な主体の参加、協力を得ながら、四全総で示された諸施策を総合的かつ強力に推進してまいります。
この一環として、本国会に、四全総の基本的目標とする多極分散型国土の形成を促進するため、行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域からこれら機能の分散を図るとともに、地方の振興開発と大都市の秩序ある整備を推進し、あわせて住宅及び宅地の供給と交通施設の整備等を促進するために必要な措置を講ずることを内容とする法律案を提出するための準備を進めているところであります。
また、公共事業の関係省庁間相互のまたは民活事業との調整を円滑に推進することとし、このため、国土総合開発事業調整費の充実を図ることとしております。
第二は、総合的な土地対策であります。
東京都心部に端を発した地価の高騰は、最近に至って、都区部等においては一部下落も見られる等鎮静化の傾向を強めておりますが、周辺の各県さらには地方主要都市ではなお十分な監視が必要であります。
このような地価高騰の抑制については、昨年十月、臨時行政改革推進審議会の答申等を受けて緊急土地対策要綱を定めたところでありますが、国会におかれても、精力的な御審議がなされ、決議等もなされております。これらを踏まえ、現在、土地対策関係閣僚会議を中心として政府一体となって、土地取引の適正化、住宅・宅地開発の促進など、この対策の着実な推進に努めているところであります。
特に、土地取引の適正化については、国土利用計画法に基づく監視区域制度の機動的運用に努めてきたところでありますが、今後とも地価の上昇を防止するため、地価上昇のおそれがある地域については、機を逸することなく監視区域を指定するよう関係地方公共団体を指導する等、所要の措置を講じてまいる所存であります。
また、昭和六十三年度税制改正において、居住用財産の買いかえ特例の原則廃止を初めとする土地譲渡益課税の見直し等を行うことにより、地価高騰の波及を防止し、また土地供給の促進を図るなど、地価対策に資することとしております。
以上のほか、国土庁としては、今後とも国土利用計画法の的確な運用、地価公示の拡充、国土調査の推進等を図ってまいる所存であります。
これらの施策により、引き続き適正な地価の形成を図るとともに、適正かつ合理的な土地利用の実現に努力してまいります。
第三は、地方振興の推進であります。
多極分散型国土の形成のため、さきに述べた諸施策に加えて、地方振興を強力に推進してまいります。このため、二十一世紀に向けての基本的かつ総合的な地方振興施策の体系化を図るとともに、四全総に対応した新しい東北、北陸、中国、四国及び九州の各地方開発促進計画の策定及びこれに基づく振興施策の遂行を図ってまいります。
また、総合保養地域整備法に基づき、リゾートの整備を鋭意促進するとともに、テクノポリス地域等の整備により、地方産業拠点の振興を図ってまいります。
さらに、地域の個性を生かした町づくり、生活環境と生産基盤の調和した豊かな村づくりを進めることにより、地方都市と農山漁村について総合的な整備を図るほか、地域の主体的なふるさとづくり活動を支援する地域活性化支援事業を行ってまいります。
過疎地域、振興山村、豪雪地帯、特殊土壌地帯、離島、奄美群島、小笠原諸島、半島などについても、各種の特別事業の実施、生活環境の整備、産業の振興などを進めることにより、引き続き計画的、総合的に振興してまいります。このうち、豪雪地帯については、基本計画を改定し、これに基づき振興施策の総合的推進に努めることとしております。
第四は、大都市圏整備の推進であります。
多極分散型国土の形成のためには、東京一極集中を是正するとともに、大都市圏の秩序ある発展が重要であります。このため、大都市圏整備計画等の着実な推進を図ってまいります。
また、都市・産業機能の地方分散を積極的に図ることによって東京への過剰な依存からの脱却を図るよう努めることとしておりますが、この一環として、さきに政府機関の移転について方針を決定したところであり、この方針に基づいてさらにその推進を図ってまいります。
さらに、筑波研究学園都市の総合的な整備、業務核都市等の育成、東京湾臨海部の開発等の大型プロジェクトの推進、三大湾地域の整備、琵琶湖総合開発事業の計画的な実施及び関西文化学術研究都市等の建設促進を図るなど、各地域の総合的整備についても進んで取り組んでまいります。
第五は、総合的な水資源対策の推進であります。
水需給の安定を図ることは、国土行政を遂行する上で基本的な課題の一つであります。
このため、経済社会情勢の変化、連続して発生する渇水等に対応し、二十一世紀を展望して策定した全国総合水資源計画及び利根川水系、荒川水系などにおける水資源開発基本計画に沿い、水源地域対策の充実を図りつつ積極的に水資源開発を推進してまいります。
さらに、地盤沈下防止等対策要綱に基づく諸対策の実施など地下水利用の適正化を進めるとともに、国民の水資源に対する意識の高揚、雑用水利用の促進など水資源の有効利用に努めてまいります。
第六は、災害対策の推進であります。
国土を保全し、国民の生命及び財産を災害から守ることは、国の重要な責務であります。昨年は、災害による被害が比較的少ない年ではありましたものの、梅雨前線、台風、千葉県東方沖の地震などの災害が発生いたしました。今後とも、関係省庁との緊密な連携のもとに、各般にわたる災害対策を総合的かつ計画的に実施し、災害に強い国土づくりに努力していく所存であります。
震災対策については、東海地震に対する防災体制の充実、地震対策緊急整備事業の促進のほか、南関東における広域防災体制の充実、防災基地の整備等をより一層進めることとしております。火山対策については、特に桜島、伊豆大島などの活動的な火山に係る防災体制の整備を促進してまいります。
また、近年多大の被害を発生させている土砂災害については、関係省庁との連携を図りつつ、総合的な対策を推進していく所存であります。さらに、防災無線網の充実強化、情報化に対応した防災対策の推進、国民の防災意識の高揚に努めてまいります。
最後に、国際交流につきましては、昨年の国際居住年の成果を踏まえた居住分野における国際交流事業の推進を初め、水資源開発についての技術交流、国連総会決議に基づき一九九〇年から始まる国際防災旬年に向けての国内体制の整備等、国土政策に関する国際協力を引き続き進めていくこととしております。
以上、国土行政に関する所信を申し述べましたが、これらの施策の強力な推進に全力を挙げて取り組んでまいりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/9
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010・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 次に、北海道開発庁長官から北海道総合開発の基本施策について所信を聴取いたします。粕谷北海道開発庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/10
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011・粕谷茂
○国務大臣(粕谷茂君) 第百十二回国会における委員会審議に当たりまして、昭和六十三年度の北海道開発行政の推進に関する私の所信を申し述べさせていただきたいと存じます。
北海道は、全国土の約五分の一を占め、豊富な水資源や工業開発適地、広大な農業開発可能地を有するとともに、今日までの開発を通じてすぐれた発展基盤を形成しており、特に、本年三月には、青函トンネルの供用開始により、本州と陸続きになるなど、今後の我が国の長期的、安定的な発展に積極的な役割を果たしていくことが強く期待されている地域であります。
しかしながら、現在、これまでこの地域を支えてきた石炭、鉄鋼、農業などの産業が非常に困難な状況に立たされており、この状況に対処するため、国の内外との競争に耐え得る力強い北海道の形成が強く求められているところであります。
これらの点を踏まえて、当庁は、目下、現行の新北海道総合開発計画に続く第五期北海道総合開発計画の策定作業を進めているところであります。
昭和六十三年度は、その初年度として、北海道経済の現状に配慮しつつ、長期的発展基盤の形成を図るための施策を積極的に展開してまいる所存であります。
以下、主要施策について申し上げます。
まず、治山治水につきましては、国土の安全性を高めるとともに、貴重な水資源の効果的な開発を図るため、国土保全事業及び水資源開発事業等を総合的、計画的に推進することとしております。
特に、石狩川下流部の洪水対策と千歳川流域の抜本的な治水対策のため、新たに千歳川放水路に着手するなど、重要水系及び災害多発地域の河川改修、砂防事業等を重点的に実施するとともに、都市化の著しい地域において、総合治水対策を講ずるなど、災害の防止に努めてまいる所存であります。
また、海岸浸食や越波による災害が頻発している胆振海岸において、新たに直轄海岸事業に着手します。
さらに、今後の水需要の増大に対処するため、治水対策とあわせて多目的ダム等の建設を促進することとしております。
次に、道路整備につきましては、道内各地域の均衡ある発展に寄与するため、高規格幹線道路から、国道、地方道及び街路等に至る各事業を体系的かつ総合的に推進することとし、高速性と定時性を確保した水準の高い道路網の形成を目指すとともに、交通安全施設等の整備及び防災、震災対策事業を重点的に進め、さらに、都市機能の向上と都市環境の改善を図るため、都市周辺のバイパス、連続立体交差等の事業を促進する所存であります。
さらに、生活環境の整備につきましては、冬期間における生活環境の一層の改善を図り、もって冬の生活の充実、企業立地の促進等に資することを目的として、快適な冬の生活環境づくり「ふゆトピア」事業を促進するとともに、下水道事業、都市公園等の事業並びに公営住宅等の建設及び関連公共施設の整備等の事業を推進することとしております。
このほか、北海道の発展基盤を整備するため、港湾、空港、漁港、林道等の整備を計画的に進めるとともに、農産物貿易をめぐる状況にかんがみて、北海道の特性を生かした、より一層の低コスト、高生産性農業への速やかな展開を図り、我が国の食料供給基地としての北海道の役割を果たしていくため、農業基盤の整備を促進することとしております。
また、以上の基盤整備の推進とあわせて、北海道の産業の振興開発を促進するため、北海道東北開発公庫の機能を充実し、その活用に努めてまいる所存であります。
さらに、北方領土隣接地域の振興及び住民生活の安定を図るため、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律に基づき、所要の施策を積極的に推進し、北方領土問題等の解決の促進に資するよう努力してまいる所存であります。
以上、北海道開発行政に関し、所信の一端を申し述べましたが、今後とも北海道総合開発の推進に全力を傾注して取り組んでまいる所存でありますので、委員長初め各委員の皆様方の御支援を謹んでお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/11
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012・村沢牧
○委員長(村沢牧君) 以上で所信の聴取は終わりました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214149X00219880301/12
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