1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年二月二十日(土曜日)
午前十一時二十分開会
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委員の異動
一月二十五日
選任 坪井 一宇君
二月二日
辞任 補欠選任
坪井 一宇君 吉川 博君
二月二十日
辞任 補欠選任
吉川 博君 松浦 孝治君
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出席者は左のとおり。
委員長 谷川 寛三君
理 事
出口 廣光君
松浦 功君
佐藤 三吾君
抜山 映子君
委 員
加藤 武徳君
海江田鶴造君
金丸 三郎君
久世 公堯君
佐藤謙一郎君
坂野 重信君
沢田 一精君
田辺 哲夫君
増岡 康治君
松浦 孝治君
糸久八重子君
山口 哲夫君
片上 公人君
神谷信之助君
秋山 肇君
国務大臣
自 治 大 臣 梶山 静六君
政府委員
警察庁警備局長 城内 康光君
自治大臣官房長 持永 堯民君
自治大臣官房総
務審議官 小林 実君
自治大臣官房審
議官 湯浅 利夫君
自治大臣官房審
議官
兼内閣審議官 前川 尚美君
自治省行政局長 木村 仁君
自治省財政局長 津田 正君
自治省税務局長 渡辺 功君
事務局側
常任委員会専門
員 竹村 晟君
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本日の会議に付した案件
○地方行政の改革に関する調査
(派遣委員の報告)
○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/0
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001・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
地方行政の改革に関する調査を議題といたします。
先般、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。佐藤三吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/1
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002・佐藤三吾
○佐藤三吾君 委員の派遣について御報告いたします。
派遣委員の谷川委員長、松浦理事、片上委員及び私の四名は、去る一月十八日、十九日の二日間、沖縄県を訪問し、県市町村における財政状況、行政改革の推進状況及び地域振興対策等の実情を調査いたしました。
第一日は、県当局、市長会及び町村会から当面の行財政問題についてそれぞれ概況説明等を聴取しました後、那覇市の小禄金城地区土地区画整理事業並びに南風原町琉球絣会館の伝統工芸品・産業工芸品育成事業を視察いたしました。翌日は、読谷村の焼き物を中心とする伝統工芸品による町づくり、本部町の国営沖縄記念公園、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターの現場、那覇市の自由貿易地域建設予定地などを順次視察いたしたわけであります。
沖縄県は、既に復帰以来十五年を経過しております。この間、沖縄振興開発特別措置法に基づいて、本土との格差の是正と自立的発展の基礎条件整備を基本目標とする第一次、第二次の振興開発計画が高率の補助を得て進められてまいりました。これによって、空港、道路、港湾等の社会資本が着実に整備されております。しかしながら、全国一の高失業率と最低の県民所得など多くの課題を抱えた県の実情を見るときに、沖縄振興開発計画の基本目標の達成が難しい状況にあるのも事実であります。本年度から第二次振興開発計画の後期に入りましたが、一層の振興開発促進策が必要との印象を深くした次第であります。
以下、調査結果の概要を申し上げます。
まず、地域振興の状況について見てまいりますと、農業は、サトウキビを中心に多くの作目が生産されておりまして、生産基盤整備、流通条件の改善、特殊病害虫の根絶、防除等に努め、生産性の高い亜熱帯農業を目指しておりますが、パイナップル産業が急激な円高の影響により大きな打撃を受けており、地元から、輸入自由化反対及び生産振興対策について要望がございました。
製造業では、肉製品、砂糖、ビール、泡盛等の食品関連を初め、飼料、セメント、鉄鋼、石油精製等がございますが、糸満工業団地における企業の立地促進及び中城湾港工業団地の造成、既存企業の移転再配置促進と企業誘致、先端技術の開発導入などの工業の振興を積極的に進めておるわけであります。そのほか、県には、琉球かすり、久米島つむぎ等の織物を初め、紅型、陶器、琉球漆器等の多種多様なすぐれた伝統工芸がございます。近年、手づくりのよさが見直されてきたことと伝統工芸品に対する社会的関心が高まっていることなどから、県の重要な地場産業として育成されております。
観光については、沖縄国際海洋博覧会開催を契機に発展を続けまして、昭和六十一年には二百三万人の観光客が来県し、約二千二百七十六億円の観光収入をもたらしました。沖縄県は、我が国唯一の亜熱帯海洋性気候と景観を生かしたリゾート開発の展開が見込まれております。現在は、昨年六月に制定された総合保養地域整備法に基づく基本構想を策定中とのことでございまして、ますます大きな伸びが期待されておるのであります。
卸小売業、サービス業等の第三次産業については、県経済が消費型構造になっていることから、純生産に占める割合は七六%と極めて高い状況にありますが、そのほとんどは中小零細企業で、経営基盤が脆弱であります。そのため、中小企業の組織化、近代化等の努力がなされているところであります。
また、県にとって最も大きな政策課題である雇用問題については、県人口がここ十四年間に約二十二万人増加したこと、県内産業の雇用吸収力が弱いことなどから、失業率が全国平均の約二倍という厳しい状況にあり、産業の振興など雇用拡大の努力がなされております。
次に、最近では学術、文化、経済等の国際交流が盛んになり、沖縄コンベンションセンターの整備を初めとして、国際的都市形成の促進が図られております。特に、沖縄は日本の南の玄関として、東南アジア、太平洋地域の貿易基地として重要視され、昨年十二月に我が国唯一の自由貿易地域の指定を受けたのであります。来年度中の操業開始に向け、物流中継加工基地として整備が進められております。
次に、公共施設等の整備状況についてでございますが、特に道路につきましては、舗装率、改良率はともに全国水準に達しておりますが、道路延長、道路面積の割合は依然として格差が大きく、鉄道のない唯一の県として、道路網の整備は緊要であります。現在、那覇空港自動車道建設、新交通システムの導入などが検討されております。
続きまして、県の財政状況につきまして御報告したいと思います。
昭和六十一年度普通会計決算の規模は、歳入が三千八百三億円、歳出が三千七百七十億円で、それぞれ五%の伸び率であります。実質収支比率は一%で類似県より若干高目でありますが、経常収支比率は八九・三%で高率を示しております。特に後者は早急に改善を要するものと思われます。さらに、公債費比率は九・八%、財政力指数は〇・二七%となっております。歳入では、県税等の自主財源の割合は二三・九%と低く、逆に依存財源の割合は七六・一%と、国への依存が極めて高い財政構造となっております。歳出では、人件費等の義務的経費の割合が四九・三%で年々高くなっている反面、投資的経費の割合は三四・四%と減少傾向にございます。
続いて、行政改革について御報告しますと、六十一年度の県の実施状況を見ますと、事務事業の見直し、組織機構の簡素合理化、定員管理の適正化、事務事業の民間委託等を行っております。特に、県単補助金の見直しで二億二千万円の節減、使用料及び手数料の見直しで三億三千万円の増収、遊休土地の売却等で二十億三千万円の収入増を図っております。
以上で沖縄県における調査報告を終了いたしますが、今回の調査に際し、西銘知事を初め県当局、関係市町村等の皆様が終始私どもに御協力くださったことに対して、深く感謝の意を表します。
また、県から提出されました要望書につきましては、これを会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、よろしくお取り計らいのほどお願いいたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/2
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003・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
なお、ただいまの報告の中で要請のございました要望事項等につきましては、本日の会議録の末尾に掲載することといたします。
速記をとめてください。
〔午前十一時三十四分速記中止〕
〔午前十一時四十九分速記開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/3
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004・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 速記を起こして。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/4
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005・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。梶山自治大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/5
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006・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。
今回の補正予算により、昭和六十二年度分の地方交付税交付金の交付税及び譲与税配付金特別会計への繰り入れが増額されることとなっております。地方財政の状況にかんがみ、本年度においては、既に交付することとした追加公共事業等の実施のための一般財源所要額三千五百億円に加えて、普通交付税の調整額の復活に要する額百九十三億円、財源対策債の縮減に伴う普通交付税の増額に要する額二千八百三十億円及び特別交付税の増額に要する額百九十三億円、合わせて三千二百十六億円を地方公共団体に交付するほか、同特別会計における借入金を二千三百四億円減額することといたしたいのであります。
また、昭和六十六年度分から昭和六十八年度分までの地方交付税の総額につきましては、昭和六十六年度及び昭和六十七年度にあってはそれぞれ千三百三十億円を、昭和六十八年度にあっては千三百三十五億円を加算した額といたしたいのであります。
次に、財源対策債の縮減に伴い必要となる財源を措置するため、昭和六十二年度分の普通交付税の額の算定に用いる単位費用の一部を改定することといたしたいのであります。
以上が地方交付税法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/6
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007・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/7
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008・山口哲夫
○山口哲夫君 県会議員の経験者が総理大臣になり、同時に自治大臣に就任されるというのは恐らく初めてのことだと思います。それだけに、この機会にぜひ地方自治の大きな発展のためのいろいろな政策を実現していただくように、私どもとしては心から期待いたしております。恐らく地方自治の発展を願っている多くの関係者も同じような考え方に立っていると思いますので、どうかひとつ、今後よろしくお願いしたいと思います。
そこで、大臣に質問するのは初めてでございますから、地方自治に関する基本的な考え方について幾つかお尋ねしてみたいと思っております。
地方自治というのは民主主義の学校である、よくこういうふうに言われておりまして、地方自治の発展が正しく行われることによって日本の民主主義の確立が図られるだろうというふうに私は考えております。
そこで、地方自治制度で最も大切なことは何かといえば、地方自治体の独立性というものを大切にすることではないだろうか、そんなふうに思っております。したがいまして、政府としては自治体に対する干渉というものは極力排除していく必要があるのじゃないだろうか、私はそんなふうに思っているわけでございます。
ところが、残念なことに、前の中曽根総理は全く違った考え方を持っていたようでございます。私は昭和六十一年の十一月十日、参議院の予算委員会で、国と地方自治体との基本的な考え方についてお尋ねをいたしました。当時の中曽根総理大臣はこんなふうに答えております。「自治省は監督する権限を持っておりまして、」「自治省としても、その監督権に基づいて、その地方行革大綱及び各自治体がおのおの自主的におやりになっておる行革を推進するようにいろいろ指導助言しておるのではないかと思います。」
実は私はこの答弁を聞いて唖然としたわけであります。昭和二十七年に地方自治法の大改正があって、国の監督権というものを一切なくしたわけです。国が監督権を持ってはいけないんだ、自治体というのは独立性を持っているんだからできるだけ国が干渉しないようにといって大改正したことを、当時の総理は御存じなかったようです。ですから、私は、大変失礼だったけれども、内務省の考え方をいまだにお持ちなんではないですかと言ったことがあるんですけれども、若くして県会議長さんをやられた梶山自治大臣でございますので、よもやそんな、監督権を持っているなんというお考えは持っていらっしゃらないと思うんですけれども、まず地方自治に対する基本的な理念と、そして二番目には、国と地方自治体との関係についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/8
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009・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) まず冒頭に、激励を兼ねて力強い御声援もちょうだいいたしまして、大変面映ゆい思いがいたしますけれども、皆さん方と力を合わせて地方自治進展のために懸命な努力を払ってまいりたいと思います。
新しい地方自治制度の発足を見てから既に四十年を経過いたしまして、関係者の御尽力及び国民の理解と協力により、我が国の地方自治はおおむ
ね定着しつつあるというふうに考えております。しかし、社会経済情勢の変化に対応して地域の活性化と住民福祉の増進を図るためには、地域の特性を生かした個性豊かな地域づくりが必要となっており、地方公共団体の果たすべき役割はますます重要であるというふうに認識いたしております。
しかしながら、依然として巨額の借入金残高を抱えるなど、地方自治行政をめぐる環境は極めて厳しいものがありますが、地方自治行政は民主政治の根幹であることは御説のとおりであります。また、内政の基盤をなすものという認識をしておりますので、地方自治行政の進展のために一層の努力を払ってまいりたいと思います。
なお、国と地方自治体との関係についてでございますけれども、現在の地方自治制度のもとにおいては、国は地方公共団体に対し、戦前の制度のように、強い後見的監督権を有するものではないというふうに考えております。しかし、国と地方公共団体は、国民福祉の向上という共通の目標に向かって、それぞれが機能と責任を分かち合いつつ相協力をする関係にあることから、地方自治の本旨にのっとりつつ、国に対しては、助言、勧告権や財務監視の権限などが与えられているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/9
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010・山口哲夫
○山口哲夫君 昨年の十二月二十四日、夕方の四時ころだったと思いますけれども、大臣のところに私ども社会党の北海道選出議員会でいろいろ要請に参りました。そのとき大臣がこんなお話をされまして、私は大変感銘をいたしました。それは、政府は能率的、効率的で安上がり行政をしてきたが、そのため地方自治体は全国画一化してしまった、また、補助金などによって自主的なものができなくなった、こんなお話をされまして、今まで自治大臣の口からそういう話は聞いたことがないものですから、我々の考えていることと全く同じことを就任早々の大臣がおっしゃったことに、やっぱりさすがに県会議長さんをやられたお方だなと思って私は非常に喜んでいたわけであります。
ところが、大臣がおっしゃるように、全国画一化してしまった、私もそのとおりだと思うんですが、残念ながら、今の政府の地方自治体に対する態度というものは画一化を図るためにいろいろな仕事をやってきていると思うわけです。
行政改革なんかはその最たるものでございますけれども、六十年の一月二十二日に自治省は行革大綱を出しました。これは臨調の答申を受けて出したわけですけれども、その中を見ますと、地方自治体の組織、機構にまで踏み込んでいるわけです。例えば、都道府県や市は規則を見直しなさい、あるいは中小規模の市や町村に至っては部の見直しをやりなさい。たしか自治省の指導では、五万人以下の町村で部なんかつくる必要はないんだ、こういう指導をしていたはずであります。しかし、部をつくるかつくらないか、そういった機構を決めるのは政府じゃないと思うんですね。当然これは県議会であり、市町村議会が決定する権能を持っていると思うんです。
それから定数の問題でもそうです。私は自治省というのは随分お暇なところだなと思うんですけれども、高等数学を使って一々定数のモデルまでつくりまして、おまえの市は財政部門が何人多いとか、経済部門が何人多いとか、教育部門が何人多いとか、一々小さな自治体にまでそれを適用して指導するようなやり方をやっているわけです。しかし、観光行政に力を入れたいという町村長さんがおれば、当然経済部門に職員を多く配置するでしょう。うちは教育に重点を置くんだといえば、教育委員会の職員がふえるのは当然であります。そんなことは自治省に言われることでなくして、それぞれの自治体が決定する権能を持っていると私は思うわけです。職員の賃金についても同じです。
そのように、地方自治体の権能や、特に議会の権能というものを何か左右するような今の政府のこういう指導というものは、さっき大臣がおっしゃった、決して監督権があるものではない、お互いに協力し合ってやっていかなければいけない、こういう立場からいけば、私はやはり行き過ぎでないかなというふうに思うわけでありますけれども、所見をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/10
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011・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 私が就任早々、今でも就任早々でございますが、北海道の議員団の皆さん方と御懇談申し上げた際のお話を引用してのことでございます。
私が申し上げたのは、戦後四十年、戦前社会はいざ知らず、民主的な地方自治制度が確立したわけであります。しかし、日本は、残念ながら国も地方も、経済的にもあるいは社会的にも大変おくれておったわけであります。ですから、私たちの先輩である地方自治に携わる者、あるいは中央政治に携わる者が、懸命な努力を払いながら能率化、効率化を図ってきたことは現実であります。その結果として、大変世界に誇り得るような、ある意味で安上がりの中央政府や地方自治ができ上がったというふうに私は理解をいたしております。そのこと自体は私はすばらしい先輩の努力であろうかと思います。
ただ、懸命な努力を払ってようやくこの時点まで参ったわけでございますが、振り返ってみて、そうなりますとやはり画一性が進んで、どちらかというと特性の生かされない地方自治体ができ上がってしまったのではないかなという反省をする余裕が出てきた、という言い方がいいかどうかわかりませんが、そういう時点に今差しかかったわけであります。
ですから、私はあのときも申し上げたわけでありますが、これからは、画一とか能率とかという問題ももちろん大切でございますけれども、それを乗り越えた、もう一つ手づくりの、それぞれの特性のある地方自治の完成というか、そういうものに目標を置いてやる時期が来たのではないかなというふうに今でも思っております。
ですから、地方行革について、自治体の権限を左右するというと大変大げさでございます。そういう指導はなされていないというふうに私は理解いたしておりますが、もちろん大きな意味でのバランスを失するようなことがあってはいけないという意味もひっくるめまして自治省の指導がなされているというふうに私は理解いたしております。
それから、自治省の立場は、もちろん自治省という名の中央官庁であろうかもしれませんが、やはりスタンスは、地方自治体を後ろに背負い、その人たちの意見を集約して、そしていわば中央政治に向かって物を申す、これからもこういう姿勢をとっていかなければならないという基本的な気持ちを持っております。
ですから、お答えいたしますが、地方行革を推進するためには、まず国において、地方行革を阻害し地方行財政の膨張をもたらしている制度、施策等の思い切った見直しが行われることが必要でありますし、地方公共団体としても、最近の地方行財政をめぐる極めて厳しい環境の中にあって、総力を挙げて行政改革を進めることが肝要であろうと思います。もちろん自主的にであります。このため、地方公共団体における行政改革の指針として、自治省は昭和六十年一月に地方行革大綱を策定して、地方公共団体に対し、自主的、総合的な行政改革を推進するように要請したわけであります。
各地方公共団体における具体的な行政改革については、すべて当該地方公共団体において知恵と工夫を凝らして自主的に決定し実行されているというふうに私は認識いたしておりますし、地方自治体に対して介入というような立場にはないと私は思います。ある意味で車の両輪、お互いに切磋琢磨し合いながらやっているのが現実だという理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/11
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012・山口哲夫
○山口哲夫君 元自治大学の校長をなさっていた鹿兒島重治さんとおっしゃる方が、現代行政法全集十四巻「地方自治体法」の中で大変いいことをおっしゃっております。「行政指導」という見出しのところですけれども、ちょっと読んでみますと、
地方公共団体に対しては各省庁から無数の通知、通達が示達されている。これらのうちには、単に法令の解釈を示すものや国の一般的な方針を伝達するに過ぎないものもあるが、実質的に地方公共団体に対して拘束的な指示を行っているものも少なくない。
過剰な行政指導が行われている原因には二つのものがある。一つは国の各省庁が地方公共団体を十分信頼せず、地方自治行政に国の意向を強く反映させようとするからであり、地方公共団体の自主性、ひいては地方自治に対する配慮が乏しいことである。
自治大学の元校長先生がこうおっしゃっているわけですね。ところが、残念ながら、今の政府がやっていることはこの鹿兒島先生がおっしゃっているのと逆の方法だろうと私は思うんです。
今、大臣は大変いいことをおっしゃったんですけれども、そろそろ反省する時期だろうと、今まで確かに画一性というものについて余り目を向けていなかったけれども、どうもそろそろ反省していかなければならない時期に来ているようにも思う、こんなような趣旨のことを今おっしゃったと思うんですが、私に言わせれば、ちょっとその反省が遅きに失したと思うんです。大臣は御就任早々ですから別に大臣を責めるわけじゃないんですけれども、自治省自体が、そういう画一化をしては地方自治の本旨というものを損なうんだということをもっと早くにお気づきになってしかるべきでないかなと思うんです。
少なくとも、地方自治というのは分権と民主主義によって運営されるものでないかと思うんです。だから、外部から干渉したり政治的な関与をするということは決して好ましいことではない。しかし、残念ながら、今までの例を見ておりますと、干渉、政治的な関与、これが非常に乱用されておって、もう日常化しているのでないかと思うんです。経済的な効果を重視することはいいんですけれども、それが強過ぎる余りに、一番大切な、民主主義の学校であると言われる地方自治の政治原理というものを見失っていはしないだろうか、私はそんなふうに思えてならないわけであります。
せっかく、もうそろそろ反省しなければならない時期であろうというふうに大臣もお考えのようでありますから、どうかひとつこれを契機に、地方行革を自治体に押しつけるような通達や内簡というものを今後出さないように、これは自治省だけじゃありません、各省庁にも関係してまいりますので、ぜひ大臣のお力で、今後こういうことのないように、行き過ぎのないようにやっていただきたいと思いますし、自治体に対して制裁措置だけは絶対にとらないということをお約束していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/12
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013・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ただいま山口委員から御指摘のあった点でございますけれども、考えてみますと、近代国家ができて明治以来百年、確かに官治行政であったわけでございますから、それぞれ地方自治体という極めて小さい自治の範囲しかなかったわけでございまして、いわば中央から与えられる行政しかなかったわけでございます。そういう長い習慣が続いたことでございますから、率直に言いまして、昭和二十年以降今日まで、どちらかというとやはり中央依存度が高かったという体質もこれは否めない事実であります。
ですから、ちょっと手を放せば昔の村長さんだとか町長さんが、変な言い方かもしれませんが、なかなか恣意的な村政や町政を行った現実も、私も見聞きをいたしております。そういうことがありますから、どうしてもやはり平準化あるいは均質化、あるいは経済性、こういうものに向かって大きな目を向けざるを得なかったという今日までの時代背景があろうかと思います。
しかし、今ようやく我々は、というか地方自治団体は、一人前、成人者になって、堂々と自分の判断能力で物を行っても間違いがないという時代を迎えつつあるわけでありますから、そういうことについてはこれから大きく転換をしていかなきゃならないし、まずもって地方自治体自身が、住民も、あるいは議員も首長も、そういう観点に立ってこれから地方自治を運営していく、こういう姿勢が出れば、おのずと中央省庁においてもその反応が出てまいるというふうに私は感じておりますし、私も各中央省庁に対しまして、地方自治に対する関与度をなるたけ低めていくような努力を払ってまいりたいという気持ちでいっぱいであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/13
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014・山口哲夫
○山口哲夫君 賃金の問題で随分以前に国会で論議されたときの議事録を読んでみますと、制裁措置はとらないということを自治省でも約束していたわけですね。これはもう当然のことだと思うんです。しかし、残念ながら、現実はどうかといえばやはりやっているわけですね。一々介入し、自治体を呼んでああのこうのと言って財政的な面からの制裁をやるわけです。
これは私は、地方自治の精神、国ができるだけ介入、干渉はしない方が地方自治の発展のために好ましいんだという考えからいくと、ちょっと行き過ぎだろうと思うんです。ですから、先ほど質問いたしました、国のいろんな内簡が出ておりますけれども、それに従って思うようにやらないからといって、その自治体に対して財政的な制裁措置をとるようなことはいたしませんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/14
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015・津田正
○政府委員(津田正君) 地方行革の推進、あるいは給与の適正化問題に絡みまして財政的な制裁ということでございますが、私どもは、給与の問題等におきましても、平均的な給与と申しますか一般水準の給与よりも上回っておる団体というものは、財政的判断としましては、やはりその部分財政的な余裕があるのではないか、そういうような考え方はできると考えております。そういう意味におきまして、起債等の配分におきまして、そういうものがなければそれだけの財源がある、このような観点で地方団体に起債の配分をするのがむしろ公平にも適するのではないか、かように考えておるわけでございます。
しかし、趣旨は、まさしくそういう財源に余裕があるかどうかというようなことでございまして、決して地方団体の給与等について不当な介入をする、こういうものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/15
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016・山口哲夫
○山口哲夫君 不当な介入をしないということは、制裁措置をとらないというふうに解釈してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/16
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017・津田正
○政府委員(津田正君) いわゆる制裁ではございません。財政的な判断、このように御理解賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/17
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018・山口哲夫
○山口哲夫君 財政的判断というのはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/18
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019・津田正
○政府委員(津田正君) 例えば一〇〇の給与水準の団体と一二〇の給与水準の団体では、通常の団体が一〇〇でそれなりに地方行政を運営できておるということになりますと、一二〇の団体というのはそういう面では財源的な余裕があるのである。
その場合、起債を配分する際には、やはりその一〇〇で運営しておる団体と二〇プラスになっておる団体というものは財政的な力というものが違うのではないか、そういう意味で地方債の配分等におきまして考慮をしてもいいのではないか、こういうことでございまして、それによって給与制度の運用その他につきまして制裁的な介入ということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/19
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020・山口哲夫
○山口哲夫君 先ほど基本的な考え方で申し上げましたように、賃金決定とか定数の問題とか機構の問題というのは自治体が決定する問題でしょう。それを一々数字を挙げて、例えば十何%以上はだめですとかいいですとか、そういう判断で自治省が一々個別に呼び出して干渉するというやり方は、これは明らかに地方自治体の権限に介入したものではないんですか。その点について、基本的なお考え方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/20
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021・木村仁
○政府委員(木村仁君) 給与決定等につきましては、地方公務員法上の民間準拠あるいは国公準拠というような一般的基準がございますので、そういうものに即して技術的な援助、指導等を行っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/21
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022・山口哲夫
○山口哲夫君 技術的な指導でしょう。どんな法律解釈を読みましても、政府の指導というものはあくまでも技術的でなければならないと書いてあるんです。権力的な介入ではいけないと書いてあるんです。
しかし、今あなた方のやっていらっしゃることは技術的な指導じゃないでしょう。技術的であれば、大体ほかの都市はこういう程度ですよ、できればひとつこういうものを参考にして今後運営を図ってもらいたい、これならまだ技術的ですよ。しかし、十何%以上はこれはもうけしからぬといって一々自治体を呼びつけて指導するというやり方は、明らかに権力介入ですよ。これはぜひやめてほしいと思うんです。
こんなことをやっていたらほかに何にも入れませんのでまたいずれやりますけれども、今大臣がおっしゃったように、地方自治体というのは個性のある運営、独立性を持った運営、そういうものがやはり好ましいと思うんです。私はもっと地方自治体を信頼してほしいと思うんですよ。あなた方は頭のいい人ばかりそろっておりますので、何でも自分たちの考えているように地方自治体が右へ倣えしてくれなければ気が済まない。地方自治の一番肝心のところをお忘れになっているのではないかと私は思うんですね。
それは見ていたらはらはらすることもあるでしょう。しかし、子供の教育だってそうじゃないですか。これはいけない、あれはいけないといって全部規制してごらんなさい、どんな子供がそこに育っていきますか。やっぱり一つの個性をいかにして育てようかということを考えたら、少しくらい間違いがあってもそれをちゃんと眺めながら適切に指導する。それを、やっていることを一から十まで全部個別に指導するような、私はそういうやり方では地方自治体が伸びていかないと思うんです。
時には地方自治体の中でも間違いを起こすこともあるかもしれない。しかし、それを直すのはやっぱりその地域の住民でしょう。そのために地方自治法でいろんな制度が認められているわけですからね。私は、そういう基本的な考え方をもう一度お持ちになりまして、細かな指導、介入だけはぜひやめていただいて、この機会に地方自治の本旨に沿って自治体の発展を図られるように、ぜひひとつ大臣の特段の御努力を期待しておきたいと思います。
なるべく早く終わるようにと言われておりますので、残念ながら用意した財政問題にはほんのわずかしか入れませんけれども、まず、今度提案されております地方交付税の問題で、この交付税制度というものは、その年に入ってきた交付税額というものはそのまま全部地方自治体に配分するというのが私はこの制度の基本的な考え方でないかなと思うんですが、今回提案されているのを見ておりますと、五千五百二十億、第二次として補正されているんですが、その中の二千三百四億は交付税特別会計における借入金の減額相当額ということで、これは交付税特別会計の借入金の償還に充てているわけですね。
なぜ借入金の償還に充てなければいけないんでしょうか。私は当然この分は全額地方自治体に交付すべき性質のものでないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/22
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023・津田正
○政府委員(津田正君) 地方交付税の性格につきましては、先生おっしゃるとおり、地方団体の共通の財源、こういうようなことでございますので、地方団体の財政運営に資するよう配分しなければならない、このように考えております。
ただ、御承知のとおり、昭和五十年度以来地方財政も大幅な財源不足というような事態の中で、地方債の増発あるいは交付税特別会計借入金というようなもので運営せざるを得ないような状況になっておるわけでございます。
今回の補正措置におきまして約五千億ばかりの交付税が追加して計上できたわけでございますが、やはり新たな借金の原因でございます財源対策債というのをなるべく縮減したい。しかし、もう年度もかなり進行しておりまして、個々の団体におきましてもそれぞれ財政的な運営のめどというものをやっておるわけでございまして、そのような地方団体のめどを混乱させるようなこともいけない。
そういうことで、財源対策債の縮減におきましても約二千八百三十億程度でございますが、調整額の復活あるいは特交等に配分するもの以外につきましては、地方団体共通の借金でございます交付税特別会計の借入金というものを返還することによりまして、中長期的な地方財政の安定化というものも考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/23
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024・山口哲夫
○山口哲夫君 財政局長さんのお話を聞いていますと、大蔵省の幹部の方が言っているような感じにとられてならないんですよ。少なくとも自治省の立場に立つならば、少しでも多くの財源というものがあれば、それを交付税として地方に配分して地域の行政水準を高めよう。自治省だって恐らくそんなふうにお考えになっていらっしゃるのじゃないかと思うんです。
だから、私は基本的な考え方を聞いておきたいんですけれども、交付税というのは、その年に入ってくる収入というものはできればそのまま全額地方に交付して行政水準を上げるということが理想なんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/24
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025・津田正
○政府委員(津田正君) 交付税の本来の性格としてはそのように理解しております。
ただ、現在の厳しい地方財政の状況を踏まえて、やはり中長期的な意味での健全化も図らなければならないような状況であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/25
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026・山口哲夫
○山口哲夫君 後段の方は、少し大蔵省と折衝して頑張っていただきたいと思うんですね。その分くらいはぜひ自治体に交付するように私は努力していただきたいと思うんです。
これは五十年の補正の部分の金額を落としていくわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/26
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027・津田正
○政府委員(津田正君) 今回償還しようというものは五十年の借入分を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/27
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028・山口哲夫
○山口哲夫君 多分そうだと思ったんですが、この「地方財政要覧」というのでは、もう既に議決したと思って落としちゃっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/28
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029・津田正
○政府委員(津田正君) ちょっと私手元に持っておりませんが、それは落としてないもので掲げてあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/29
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030・山口哲夫
○山口哲夫君 前にいただきました「六十五年度以降、国の会計より交付税等特別会計に繰り入れるとされている各原因別財源補てん措置とその額」という、いわゆる償還計画ですね、「交付税特会の借入金及び償還計画」という数字と、今度出た、これは出たばかりだと思うんですが、これと比較しましたら、五十年のところだけもうちゃんと数字が直っているんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/30
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031・津田正
○政府委員(津田正君) 失礼いたしました。この要覧の一月発行の分では、落としたような数字でございます。
七十二ページ、地方の五十年補正分千七百八十五億七千万円でございますが、落とす前は四千八十九億九千万円でございます。確かに御指摘のとおり、要覧は少し先走ってやっておるようでございます。申しわけございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/31
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032・山口哲夫
○山口哲夫君 議決を得ない前に先走ってそういうものを発行してしまうというのは余り好ましいことではないと思いますので、ぜひひとつそういうことのないようにしていただきたいと思います。
それでは、国の政策によって減税した分ですが、その分交付税に減収として出てきますね。これは当然国の責任で補てんすべきものだと私は思うんです。
具体的に申しますと、所得税減税というのは、初めの政府の考え方より五千二百三十億円減収になっています。この分の交付税の減収額というものは千六百七十三億円なんですが、これは国の政策としてやって、その分が地方自治体に影響してくるんですね。増減税同額というのであればいいんですけれども、増減税同額でなしに減税の方が多くなってしまった。そうするとそれは地方自治体の交付税にも影響してくるんですから、その自
治体の減収分というのは、国の政策としてやった以上は当然国の責任として補てんすべきものだと思うんですけれども、その考え方を一つ聞いておきます。
それからもう一つ、六十一年度の国庫補助負担率の引き下げに伴う六十二年度影響額を見ますと、調整債三千八百億のうち、法律で定めてあるのは四百三十億、これはもう既に決定しているんですけれども、残りの二千四百八十億というのはいまだに法定化されていないんですね。
これをこのままにしておきますと、何か大蔵省に食い逃げされてしまうのじゃないかなと心配されるんです。その分だけ地方自治体に対する財政的な影響力というのが出てくるわけですから、これは残りの二千四百八十億も四百三十億と同じように早く法定化するようにしていただきたいと思うんですけれども、いつ法定化されるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/32
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033・津田正
○政府委員(津田正君) まず前段の御質問、所得税減税を行いますと交付税に影響があるではないか、それにつきましては補てんをすべきかというような問題でございます。
過去におきましても、年度途中に政策減税を行いましてそのために地方交付税が不足してくる、こういうような場合には、御指摘のとおり補てんをしてまいったわけでございます。
六十二年度の場合には、御承知のとおり約一兆五千億台の所得減税をやっておるわけでございますが、今回の第二次補正予算、また御審議いただいております補正交付税法案によりましても、結果的に、そういうものを飲み込んでもなお国税三税で一兆七千百億円、こういうような増収になってまいりまして、それの三二%分が地方団体の交付税に追加される、そして地方団体の財政運営にも支障がない、こういうような事態でございますので、もちろん国の政策減税とはいいながらも、地方財政の運営に支障がないということで処理をしておるわけでございます。
それから、六十一年度の補助負担率引き下げによります経常経費部分の将来の補てん措置の問題でございますが、考え方としまして、交付団体分の影響額の二分の一を、たばこ消費税、それから交付税の特例加算、そして四百三十億の法定加算ということでまずきっちりと処理したわけでございます。残り二分の一につきましても、やはりこれは交付団体に今後影響が出てまいるわけでございますので、大蔵省との間で覚書によりまして、暫定加算という制度でやっておるわけでございます。
法定はしてございませんが、そういう意味で、今後自治、大蔵両省間で調整の余地があると言えば言えるわけでございますが、私どもとしては、交付団体の影響分につきましては全額国において責任を持って処理してもらおう、このような方針で今後も臨みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/33
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034・山口哲夫
○山口哲夫君 十分納得できたわけじゃないですけれども、時間でもありますので、これで終わりたいと思います。
単位費用の問題等について通告してありますけれども、いずれの機会にまたやらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/34
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035・片上公人
○片上公人君 初めに、警察庁にお尋ねしたいと思います。
去る二月二日、警察庁は大韓航空機事件の容疑者である金賢姫に対する事情聴取を行うために係官三人を現地に派遣されましたが、まずその取り調べ結果について御報告いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/35
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036・城内康光
○政府委員(城内康光君) 警察庁係官を韓国に派遣いたしまして金賢姫にも面会した結果、問題の恩恵なる女性が日本人である、それから日本から拉致された疑いが持たれることが明らかになるとともに、人定に関しまして若干の資料を入手しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/36
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037・片上公人
○片上公人君 金賢姫の教育係でありました李恩恵という女性の身元割り出しについて、今後の見通しをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/37
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038・城内康光
○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
現在、李恩恵を割り出すために、身元に関する情報、それから似顔絵をつくりまして、こういったものをもとに、家出人の手配データなどを利用して幅広く類似の行方不明者を全国的に調べているところであります。
さらに、もし何らかの事情によって警察に家出人の届け出がされていない場合ということもあろうかと思いまして、広く国民各位の御協力を得る必要があるというので、目下、似顔絵を利用したポスター、チラシなどを全国的に配布しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/38
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039・片上公人
○片上公人君 この事件の実行に当たりまして日本の旅券が偽造されたわけでございますが、この旅券偽造の捜査状況はどうなっておるのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/39
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040・城内康光
○政府委員(城内康光君) お答えいたします。
日本の旅券の偽造に関しましては、蜂谷真一名義の旅券は、北朝鮮工作員宮本明こと李京雨がその偽造に関与していることがわかっております。それからさらに蜂谷真由美名義の旅券につきましては、北鮮において一九八四年、金賢姫の旅券用の写真がつくられて、同人がその旅券に署名したことなどがわかっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/40
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041・片上公人
○片上公人君 どうもありがとうございました。
次に、先ほども出ましたが、自治省の財政課でまとめておる「地方財政要覧」の中に「地方財政の主な措置状況」という項目がございます。昭和三十年度以降の地方財政対策が一覧表になっておるわけでございますが、私は特に昭和五十年度以降の措置について見てみましたけれども、一貫した方策がなくて実にわかりにくいという思いがいたしました。
あるときには交付税特別会計借り入れを重ねる、また臨時地方特例交付金で半分国が出す、あるいは国の財政が厳しいからそれもできなくなってきておる、地方債を増額する、さらに補正増についてもあるときは繰り越す、そして調整復活をする、また本年度のように特別会計借入金の償還に充てる等々でございますが、地方財政対策をどのようにしようと思っておられるのか、基本的な考え方を大臣にお伺いしたいと思っております。
なお、この地方財政対策につきましてもっと予測がつくようにしていただきたい。ふたをあけてみないとどういう対策かわからないというのでは地方自治体の財政関係者にとりましても非常に迷惑ではないか、こう思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/41
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042・津田正
○政府委員(津田正君) 大臣の御答弁の前に、私から過去の経緯等につきまして申し上げたいと思います。
御指摘のとおり、五十年度の補正以来、財源不足によりましていろいろな措置を組み合わせておるわけでございます。要は、地方財政全体として、また個々の地方団体の財政運営に支障がないようという基本的な考え方でございますが、措置のやり方といたしましては、交付税の特例増額、あるいは臨特、建設地方債、あるいは特会借り入れと、種々の手法を組み合わせまして、基本的でございます地方財政の運営に支障がないよう措置をしておるわけでございます。
これは何と申しましても、石油ショック以来の我が国の国の財政、そして地方財政の基盤が非常に不安定ということに起因しておるわけでございまして、一刻も早く、このようないわば毎年度の切り抜け措置というものは脱却いたしたいとは存ずるわけでございますが、これまでの実績としましては御指摘のとおりでございます。
特に、地方団体関係でわかりにくいのではないか、こういう御指摘もあったわけでございますが、毎年毎年、地方財政対策を講ずる際の経済情勢の動きというのも非常に激しい、そういうことで、一貫したような財政措置がなかなかとりがたい、非常に複雑になっておるということでございます。しかし、私どもとしましては、この地方財政対策の内容につきましては地方団体に十分内容を説明し、御理解を求め、財政運営に支障がないよう今後とも努力してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/42
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043・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 今、財政局長から今までの経緯について御説明がございましたけれども、昭和五十年来そういう状況で、毎年毎年の対応に追われたという現実がございます。そういうことから、一貫性がないのではないかということもございますし、衆議院で社会党の委員の方にも御指摘をちょうだいしたわけでありますが、いずれにしても、法律や政令その他の定められた事項の中で何とか緊急回避的にこの問題に対処しようとするとこういうふうに複雑になってしまったという結果があるわけであります。
ただ、この赤字対策に懸命に知恵を絞った結果というか、もろもろの法律やその他を利用することによって、残念ながら一貫性がなくなってしまったということもございますけれども、複雑な仕組みまでしてこの健全化に懸命な努力を払ってきたという過去の経緯だけはお認めを願いたいと思いますし、これからわかりやすい形に抜本的に改正ができる機会があればそうしてまいりたいと思いますので、御協力のほどを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/43
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044・片上公人
○片上公人君 国庫補助負担率の引き下げでございますが、これは六十三年度までの暫定措置とされております。六条の三第二項との関連を含めまして、大変難しいものでもあると思いますが、きょうは補正法案の審議でもございますので後日ゆっくり論議することといたしまして、このカット問題について一点だけお尋ねしたいと思います。
新聞等の報道によりますと、大蔵省は、六十五年の財政再建のためには補助率カットの継続が必要、こういうニュアンスでジャブを放っておるようでございますけれども、自治省としては地方団体の声を背にどのように対応されていくのか。私は早く適切な対応が望まれると思いますが、大臣の力強い決意とお考えをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/44
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045・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) この特例措置は、六十一、六十二、そして明六十三年度までの暫定措置でございます。ですから、もちろん国の財政事情を自治体側が全く知らなくていいということではございませんけれども、しかし暫定措置はあくまでも暫定措置でございますから、六十四年の予算編成の時期までにこの問題はいわば決着を見なければならない問題であります。
事務配分やその他税財源の配分、そういうものをひっくるめまして、この補助率の引き下げの問題は何とか解決を見て新しい展開をしてまいりたい、このように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/45
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046・片上公人
○片上公人君 自治省が法人事業税の分割基準を見直す方針を固めたとの報道がありますが、まずこれまでの検討経緯をお聞きしたいと思います。
なお、この検討におきまして明らかとなりました現行の分割基準の問題点と、それに対する見直しの方針についても示していただきたい。
さらに、今後の見直し案についての調整及び実施に向けてのプロセス、スケジュールを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/46
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047・渡辺功
○政府委員(渡辺功君) ただいま御指摘の事業税の分割基準でございますが、これは従来から、社会経済情勢の変化に応じた事業活動と行政サービスの受益関係を的確に反映させて税源の帰属の適正化を図るという観点から定められているものでございまして、財源調整そのものを目的として行うものでないことはもちろんでございます。
ところで、現行の分割基準でございますが、これは昭和四十五年に改正されて以来、基本的には見直しが行われていないということでございますが、最近におきます産業構造の変化あるいは工業技術の変革等、産業経済の大変著しい変化が起きてきている、これはもうだれしも認めているところでございます。こうした変化に伴いまして、製造部門におきますオートメーション化の進行あるいは管理部門におきますところのOA化の進展等、事業活動におきます工場と支店部門と本社部門の関係の態様の変化ということが起きております。こうしたことを踏まえまして、見直しを行う必要があるのではないかというふうに考えたところでございます。
そこで、これらの産業経済の変化に対応した分割基準のあり方を検討いたしますために、学識経験者あるいは企業の実務者といった方々七名の委員から成ります研究会を六十二年七月十四日に設置いたしまして今日に至っているところでございます。現在まで研究会を四回開きまして、現行の分割基準の妥当性あるいは社会経済情勢の変化の状況等を検討いたしますとともに、神奈川県など六府県におきます実地調査、これは課税団体であります県、課税庁でございますが、及び税金を納める方の企業、両方にわたりまして実地調査を行うということのほか、全県に対しましてアンケート調査を行っているところでございます。また、分割法人に対する抽出調査も実施いたしております。
今後、これらの調査の結果を踏まえまして本年度中に結論を得る方向で鋭意検討をお願い申し上げているところでございますが、何せ調査の対象も多く、回答状況等が当初予定していたところよりもおくれているという状況から見ますというと、なお若干の時間を要するのではないかというふうに考えられております。できるだけ早期に結論が得られるように期待しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/47
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048・片上公人
○片上公人君 自治省ではふるさとづくり財団の創設を準備しているということでございますが、その構想を説明していただきたいと思います。
また、これに対しまして大蔵省などの反対が強いということでございますが、自治省のお考えはどういうことなのか、あわせて説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/48
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049・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ふるさと財団、仮称でございますけれども、具体的な構想等については後刻財政局長から御説明を申し上げますけれども、今、四全総を踏まえまして、一極集中がこれからますます加速されるだろう。都道府県の税収を見てみましても、この十年来だんだんに全国の平準化が進んだわけでありますが、ここ一両年東京の税収のシェアは極めて高くなっておりますから、東京に対する一極集中というものはどんどん加速されている。
一極集中が加速されて東京に集積することが私は悪だとは申しません。東京が再開発その他を行うことによって、まさに一極集中、あるいは東京における機能が完成はされるのかもしれませんが、反面、東京を除くいわば地方と言われる地域に過疎化が進み空洞化が進んで、雇用の場やその他がなくなって、最低の行政水準すら維持することができなくなったらどうなるだろう。
こういうことを考えますと、地方自治団体のそういうものに対するいろんないら立ちというものがわからないわけではありませんし、むしろ切実な感じとしてあるわけでありますから、これから地方自治団体がお互いにみずからの創意工夫によって行うもの、今までもいわば行政の縦割りの中で道路や橋梁や港湾やその他もろもろのものがなされてまいりましたけれども、横軸で、地方自治団体という枠で切ってみますと、どうしてもそこにはクレーターのように穴が幾つもあいているわけでありますから、これを埋める事業がなければならないという気がいたします。
そういうことから、特別事業や、あるいは何らかのいわば第三者機関的なものをつくってノーハウを出し合う。極端なことを言うと、結婚相談所じゃありませんけれども、企業の事情を聞き地方自治団体に伝える、そして地方自治団体のいろんな要望を中央に伝えるというか、あるいは企業に伝えるというか、そういう制度があってしかるべきだ。しかし、これは一地方自治団体あるいは自治省だけではできない。
例えば、東京でなければならないという企業は幾らやっても当然東京へ集まりますけれども、東京でなくてもいい企業、団体、こういうものがあるはずでございますから、各省庁の地方分散という問題も公としてはありますし、民間団体等においてもそういうものがあるのではないか。
その誘導策はどうすべきかというと、税制やそ
の他もろもろの、東京の中から出ていくことを阻害しておるもの、東京でなくてもいいと言いながらも、東京から出ていくのは都落ちといういわば暗く弱いイメージがあるし、それから、東京から出ていくために例えば土地を売れば、それに対する譲渡益課税は当然法人税としてかかるわけでありますから、東京から出ていくには丸裸にされてしまう、そういうことがありますと、出ていってもいいという企業ですらこれにちゅうちょをいたしております。
ですから、私は、自治大臣ということよりは国務大臣として、これから各省庁と打ち合わせをしながら、東京からスムーズにそういうものが出ていける施策、そして地方自治団体がこれを受ける受け皿、そしてその間をつなぐもの、こういうものが完成をいたしませんと、言うべくして多極分散というのはできない。
しかも、今までと違って、今までは税収の実績を見てみましてもある程度多極分散が、東京都の税収が二一、二%あったところから一七%までシェアとしては下がったわけですが、これが最近になって急激に上がっているという現実を見てみますと、これは早急に手を打たないと、行政が懸命な努力を払っても、民間のエネルギーというのは、経済の合理性、採算性を求めれば集中のメリットがあるわけでありますから、東京に集中することは当然だ。これを行政の力で何とか多極分散をする力を与えなければならぬ。その一環がふるさと財団と言われるものであります。
どうも誤解を受けて、他省庁から、あるいは他の、議員なんかもひっくるめて大反撃を受けておりますけれども、やはり今、そういう中央の考え方と違った横軸の、地方自治の考え方というものに願いを込めながらこの問題に努力をして実現してみたいと思っておりますので、御協力を願いたいと思います。
詳しい点については財政局長から説明をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/49
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050・津田正
○政府委員(津田正君) この仕組みの趣旨につきましては大臣からお話があったわけでございますが、要するに、官民一体となった地域の総合整備振興を図るという観点から、地方団体の実施します地域開発事業と相まって、長期低利の地方単独融資事業を行おう、これのシステムをつくろうというものでございます。
基本的には、地方団体が地方債を起こす。これはもちろん利息というものがかかります。それを地域開発に役立ちます民間事業者に無利子で貸す。これはもちろん必要な資金を全部貸すわけではございませんで、二割とか二五%でございまして、残りの部分は民間の金融機関から借りられるようあっせんをするということでございます。そういたしますと、地方団体の金利負担をどうするかという問題がございますので、これについては地方交付税で手当てをしよう、このような考え方でございます。
もちろんこれだけではございませんで、民間優良プロジェクトの発掘、具体化、具体的なプロジェクト等に関するデータバンク機能、コンサルタント機能、調査をやる。そして金融機関等の民間事業活動等に対する融資のあっせんも行おう、こういうような構想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/50
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051・片上公人
○片上公人君 それでは最後に、今回国税三税の増収の中で初めて特別会計借入金の償還をするに至ったこと、来年度は補助負担率の引き下げ等がなければ収支均衡することなど、財政環境に変化が見られておりますが、大臣の地方財政に対する認識はどうなのか、これを最後にお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/51
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052・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 地方財政については、ただいまの議論を通じましても、依然として巨額の借入金残高を抱えておりまして、引き続き厳しい状況に置かれております。
今後、その償還にもたえ得るような財政構造の健全化を図っていくためには、行財政の守備範囲の見直し、行財政運営の効率化を図るとともに、地方税、地方交付税等の地方一般財源の着実な充実を図っていくことが基本的に必要なことだというふうに認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/52
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053・片上公人
○片上公人君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/53
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054・神谷信之助
○神谷信之助君 時間がありませんから答弁の方もできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。
最初に、先ほども同僚議員からありましたが、地方自治のあり方にかかわって、行政運営の問題で一般論として若干お聞きしたいと思います。
それはどういうことかというと、国と市町村、それから府県と市町村、この相互の間に往々にして意見の相違が生ずるわけですね。そういう場合の処理はどのようにあるべきなのか、この辺のお考えをまずお聞きしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/54
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055・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 国、都道府県、それに市町村は、いずれも国民の福祉向上という共通の目標に向かって、それぞれの機能と責任を分かちつつ相協力する関係にあると考えられますので、意見に相違があった場合には当事者間で相互の立場を尊重しつつ十分に協議を行い、施策が円満、円滑に行われることが望ましいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/55
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056・神谷信之助
○神谷信之助君 一般的にはそういうことだと思うんですね。相互の立場を尊重し円満に協議を調えてもらいたい。
しかし、国と市町村、それから府県と市町村、それぞれ比較しますと、どっちも市町村よりは広いし権限も大きいんですよ。あるいは政策的な能力といった点での違いもあるでしょう。したがって、往々にしてこの点で市町村の意思が十分に反映されない嫌いがあって、逆に問題がなかなか複雑になっていっておるわけなんです。
本来、そういう協議をする場合に、相互の立場を尊重するという相互主義だけではなしに、逆に権限の大きいところ、国なり府県なりが十分に市町村の考え方、意思というものを尊重していく、そういう姿勢が必要だし、実際面でどれだけ市町村の意思が反映をされるかということこそが、本当の意味で地方自治というものが一つ一つ育ち発展をしていくということになるのじゃないか。この辺についてのお考えはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/56
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057・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 今、市町村の権限が小さい、あるいは府県の方が大きい、さらに国の方が大きい、そういう比較論で言われましたけれども、私はそういうふうには理解いたしておりません。身近な生活に密着した行政的な判断あるいは措置能力、これはむしろ末端自治体の方が強いはずであります。
ただ、国には国の一つの権能というか、国をどう守るかとか、全般的な、あるいは平均的な高め方をどうするかとか、あるいは国全体を通じた交通ネットワークをどうするかとか、情報ネットワークをどうするかというマクロの一つの見方があるわけであります。また、府県には府県なりに、その府県的なシェアの範囲内である。それから市町村は市町村なりに、自分の範疇の中の市町村をどう置かなきゃならないか、そこに住む住民の意向をどう守らなきゃならないか、そういうそれぞれの立場があるわけでございます。
ですから、私はやはり相互主義というものは極めて大切であって、徹底的に話し合いをし理解を深めることによってそういう問題の解決に努力を払うことが望ましいし、またそうあるべきだ、このように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/57
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058・神谷信之助
○神谷信之助君 しかし、実際には権限が違うんですよ。例えば市町村が一つの事業をやろうとする。そうしたら、補助金を獲得しようと思ったら府県の協力がなかったらできぬから、そこは認めてもらわなきゃいかぬ。国がうんと言わなきゃ金が来ない。そこでいろいろ意見の相違というものが起こるわけですね。財源もそれから行政権限も本当に対等平等なら別ですよ。国と自治体とが両々相まってとか車の両輪とかおっしゃるけれども、実際上の今の制度はそうなっておる。そういう状況の中で私は言っているんです。
まして、国とか府県がそういう補助金の問題についての権限をいっぱい持っているという状況の中で、そういう権限を利用して不当な圧力を加えたり、あるいは補助金なんかをえさにして、そして市町村にいろんな内部の混乱を起こさせるとい
うようなことは私はあってはならない。それこそ権限の乱用になりますから、そういうことはあってはならないし、また好ましいことではない、そういうように思うんですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/58
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059・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 先ほど申し述べましたように、私は、権限とか権能というものがいわば大、中、小と、そういうふうには考えませんで、それぞれの権限や権能が異なるという立場、そして、末端自治体と言われる市町村は住民の身近な問題に対する対応をするべきであって、その権限は、私は決して十分とは申しませんけれども、最小限度の権能はあるはずだ。それから府県には府県らしい権能があるし、国には国を守り発展をさせていくための一つの権能がある。
私は、そういうものの相互調整をお互い相互主義でやることが望ましいことであって、国と地方が対立するという図式で物事を考えるべきではないという気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/59
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060・神谷信之助
○神谷信之助君 時間がありませんから余り議論はしたくないと思うんですが、大臣のおっしゃるようなことだったら、三割自治とか一割自治というような言葉は出てこない。しかし、現実には三割自治であり実際は一割自治だということが起こっているところに、市町村自治というものがなかなか実際に住民の意思を十分生かすことができない仕組みというものが制度的にある、これは私は否定できないと思います。これはまた後で財政論のところで少し触れますけれども。
別の問題で言いますが、そういったいろいろな意見の相違がある、そのことについて選挙が行われた。その選挙の結果というもの、これはその地域住民の意思の反映として、国でも、それから府県でも市町村でも、当然それぞれの自治体が最大限尊重すべきものだと私は思うんだけれども、それはそういうことでいいでしょうか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/60
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061・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 私は地方議会出身でございますから、地方議会のいわば権能や権限、責任というものはある程度知っているつもりであります。ですから、市町村の議会ないしは市町村の首長がどう思うかということと、あるいは都道府県の知事や都道府県の議会が、あるいは我々いわば中央の政府が、そしてこの衆参両院という国権の最高機関の者がどういう判断をするかということはおのおの違ってしかるべきなんだと。本来一致することが望ましいことでありますけれども、違ってあることもまた現実である。
その場合、一生懸命調整をし合うというのがこれから望まれる良好な関係だというふうに私は理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/61
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062・神谷信之助
○神谷信之助君 具体的に、そういった紛争の中で選挙が行われて、それが争点になって選挙の結果が出る。これは住民の意思として最大限尊重するのは当然であるという点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/62
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063・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) それぞれの争点として戦ったものがある、そういう現実は当然認められるべきだと思いますけれども、しかし、争点になったものが、本来、地方自治の権能というか、市町村の権能か都道府県の権能か国の権能かというその問題については、また別個な判断があるということは御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/63
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064・神谷信之助
○神谷信之助君 現実にはいろいろ具体的に起こっていますからね。例えば三宅島で起こっている問題というのは国と市町村との関係でしょう。それからもう一つ、私が今いろいろ調べているんですが、岡山県の奥津町の苫田ダムで起こっている問題、これは府県と市町村との関係。いずれにしても、この問題は地方自治にかかわる重大な問題だと私は思っています。時間がありませんから、具体的な問題は改めて、地方自治がいかにあるべきかという問題として議論したいと思います。
ただ、苫田ダムの問題で自治省に要望しておきたいんですけれども、昨年の暮れ町長選挙が行われて、その結果、町民の多数が、ダムの建設阻止、そういう意思を持っているということは明らかになってきている。それから、町民の中の相当大多数の感情として、岡山県がとっている態度は、町がダムに反対する限り町に協力はできない、そういう姿勢だというように受けとめている。また、そのように考えられても仕方がないような経過がある、こう私は見ています。
だから、これはまだこれから続く問題ですから、自治省としては、少なくとも地方自治体あるいは地方自治権の侵害にわたるようなことのないように、十分関心を持ってそういう事態にならぬように見守ってほしいということです。直接的にいろいろ介入するということは、先ほど同僚議員からもありましたけれども、下手にするとまた逆の面からの地方自治の侵害になりますから、そういう点では十分慎重にせにゃいかぬけれども、少なくともそういうことのないような立場で十分な関心を持ってもらっておきたいということで、この問題は終わっておきます。
今度は交付税法の問題ですが、これも先ほど同僚議員からありましたように、交付税の今度の増額修正は、本来、全額財源対策債の減額に最優先で配分されるべきだ。ところが、三千二百億は財源対策の方に回して、二千三百億余りは交付税特会に入れる。なぜそうなんだというと、今の段階で地方団体に回したらそのめどを混乱させることになるのじゃないか、特会の方は共通の借金だから、そっちに入れればいいじゃないかという趣旨でしょう。私はそこが問題だ。
というのは、地方団体の借金は今現実に負っておる借金でしょう。これは本来交付税で渡すべきなのを、それだけの財源ができなかったから自治体に借金でお願いした。だからそれをまず解消するのが当たり前で、確かに交付税特会の方は共通の借金だけれども、地方団体の方は今現に借金を抱えているわけですからね。三千二百億なら混乱しないけれども、あと二千三百億継ぎ足したら混乱するというわけでもないでしょう。
確かに公共事業関係だけをとって態容補正しているんだから、もうそれ以上広げたらややこしくなりますと。それは理屈であって、実際には早く借金を返してやればいい。国の方はことしじゅうに返さなくても来年度に回せばいいんだし、そうすれば、それだけ現実に消化して住民の期待にこたえる行政を進めることができるでしょう。だからこの点では、各自治体に財源対策債として負わせているその借金と、交付税特会での共通の借金だという借金と、借金の質が違う、私はそういうように思うんですが、この辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/64
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065・津田正
○政府委員(津田正君) 先生御指摘のとおり、現在の地方財政の借金としましては、共通の交付税特会借入金の借金、それから個々の団体におきます地方債残高も既に四十七兆程度になっておるわけでございますが、こういう借金、そしてまた六十二年度財源対策のために出す新たな借金、こういうようなものがあるわけでございます。
今回の交付税の補正増につきましては、過去の借金を返すのも一つの考え方でございます。ただ、御承知のとおり、現在の地方債の状況と申しますと、かつてのような地元銀行が引き受けてずっと持っておるということではなく、転々流通してございます。それなりの相場というもので流通しておる。これを強制的に償還いたしますと、これは地方債に対する信用というものが失われまして今後の地方債発行にも影響が出てまいる。
それから本年度新たに借金をする財対債、これにつきましてはなるべく減らしたい。ただ、当初の交付税の算定プラス財対債の配分というものと、今回出てまいります交付税の配分と財対債の縮減というものが、個々の団体でも一致させなければならない。
そういたしますと、交付税の仕組み上、縮減というものも、七千億ぐらい財対債があるわけでございますが、御提案のような程度の縮減をすることによりますと個々の団体の財政運営に混乱が起きない。これ以上やりますと正直言って個々の団体の財政運営に支障が出てまいる。そういたしますと、結局のところは、共通の借金返しというものも中長期的な地方財政の健全化のために役に立つのではないか、このように考えた次第でござい
ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/65
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066・神谷信之助
○神谷信之助君 私はどうもまだその点では納得できない。
当該年度に出てきた交付税はその年度内に支払わなければならない、それは原則で、そもそもそうあるべきだということは財政当局も先ほど答弁されているわけですね。だからその趣旨に従って、しかも、個別の自治体に対して財源対策債というやつを無理にお願いしたわけですね。国の財政の都合上、無理をさせてやったわけです。
確かに借金の借りかえというのは難しい。いろいろ地域の、特に金融情勢に問題が起こるのはわかっていますよ。しかし、三千億ができて、だが二千億はだめなんだということでしょう。皆さん頭のいい人が集まっているのに、三千億は配分できるが、あと二千億は配分できないんだ、もうこれ以上は混乱するという言い方でおっしゃっているのは、私はその点はどうしても納得できない。
というのはなぜかといえば、交付税特会の借入金は、先ほども出ていましたけれども、オイルショック以来のああいう状況の中で、本来国が負担して全額ちゃんと処理していた、かつてはそうしてきた、そういう仕組みも変えて、先ほどあったようにいろいろ複雑なうっとうしい苦労をしてやって、その中で、二分の一は国が持つけれども二分の一は地方が持てとか、利子はどうするかとか、いろんなことをやってきたわけでしょう。しかし、それは国の財政がどうにもならぬからしようがなかったんで、本来は財源不足については国が責任を持ってやっていくというのが、地方財政法からも、地方交付税法からもそういうことなんです。
だから、本来これは国が全部持つべきものなんです。原則的にはそうだ。だから、そっちを先に返すんじゃなしに、現実に困っている自治体の方に借金を返すのが当たり前じゃないですか、同じ借金でも質が違うんだから。この点は私ははっきりしてもらいたいということを申し上げておいて、次に移ります。聞いてみても同じですからね。
そこで、次の問題はどういうことかというと、先ほど大臣からも、三年連続の補助金カット、これはもう来年度で終わりで、それ以後は改めてやるんだ、もうこれ以上、約束は守る方向で頑張るという趣旨のお話がありました。
しかし、この三年連続のやつも、一番初めの出発は、一年限りというやつを三年前つくったんですからね。一年限りでカットさしてくれというやつを、枠を広げて三年間来た。だから、本来ならば私は、六十三年度はもう補助金カットをしなさんなと言わなきゃいかぬ。ところが、今度補助金カットを六十三年度もされるというと、財源不足額は、自治省の資料によると一兆七千二百五十九億ですか、出てくるんですね。そうすると、これはもう六十一年、二年、三年と続くわけでしょう。三年連続一〇%以上の財源不足になるんですね。そういう状態が起こってくる。
だとすれば、これは交付税法の六条の三の二項に基づいた税率の改正なり制度改革をしなきゃならぬ、そういう段階になるわけです。これは今までもそうであって、五十年度からそういう事態が起こったときに、すぐ、早いことやらなあきませんよ、泥沼に入りますよ、抜本的な改革をやるべきですよということを言っていたわけですけれども、とにかくとりあえずの措置で切り抜けてこられた。我々は、それはあかん、それをいつまででも続けるわけにはいきませんよと。
ところが、今はどういう状況かというと、税収の伸びは物すごくふえた。きのうも予算委員会で大蔵大臣が見積もりの違いについて異例の陳謝をされていましたけれども、そういう事態になったでしょう。そして逆にNTT株の売却益が入ってくる。こういう事態になってきたから、そういう意味では、まさに国家財政全体としては、まだ赤字の累積は残っていますけれども好転の兆しが見えてきた。だから税制改正の絶好のチャンスだ、こういうことになっているんでしょう。税制改正を断固やりますと言って、言うなれば実際は大型間接税の導入をやられる。
そんなことをやらぬで、そういうチャンスになっているなら、今まで延び延びにして、とにかくその時期その時期を糊塗して苦肉の策で切り抜けてきた今日の地方財政制度の抜本的改正、あるいは交付税率の引き上げ、これは交付税法でもちゃんと決まっている。新しいことじゃないんです。法律で決まっていることをやろうという意思はないのか。それではいつまでたっても地方財政のこういう状態というのは抜け出すことはできないというように思うんですが、この辺について大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/66
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067・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) まず第一の補助率のカット、六十三年だけと言っているということでございますけれども、もちろんその気持ちでこれから頑張っていかなきゃなりませんけれども、先を完全に予測する能力は、残念ながら私も持ち合わせておりません。
ですから、六十年のときは六十年単独ということであったわけでございましょうけれども、国の財政極めて厳しいときに、六十一、二、三年度何とかこの補助率のカットをということで、いわば車の両輪論ではございませんけれども、国が滅びても地方が栄えていればいいんだという、これはちょっと荒っぽい議論でございますけれども、そういうことがあり得るのかということを考えれば、やはり痛みは分かち合わなければいけない。
国の財政がすばらしくよくて、地方財政を圧迫しているというなら別でございます。委員御指摘のとおり、国は約百六十兆に及ぶ公債残高がございます。我々地方団体は、五十兆プラス十兆何がしですから約七十兆ぐらいの残高があるわけでありますけれども、それぞれ税収を見てみますと、国は約四十五兆、地方は約二十六、七兆。しかし、これに加えて交付税というのがその中から出るわけでありますから、片や減額、片やプラスをいたしますと、国と地方はおおむね、税収と交付税をひっくるめますととんとんの立場にあるわけであります。我々のいわば赤字というものの比較を言いますと、単純に言えばそういうことであります。
〔委員長退席、理事松浦功君着席〕
ただ、地方と国が同じ役割を分担しているわけではありませんから、全く車の両輪という見方はできませんけれども、それほど国の財政の厳しいときにどうあらねばならぬか。そして、内需の振興をひっくるめて事業量の拡大を図っていかなければ、貿易摩擦の解消もあるいは国民経済の向上もできないわけでございますから、その都度の状況に見合った財政対策をとらなければならないというこの現実はひとつお認めを願いたいと思います。
ですから、六十三年度までで一応暫定措置が切れるわけでありますから、六十三年度以降のものは、今までの継続ではなくて新たな見直しがある、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
それから、交付税法の第六条の三の二項に基づいて交付税の増額を行うべきであるということでありますけれども、確かに六十一年度、二年度継続して一割以上のものになっております。そして六十三年度も恐らくそうなるであろう。当然なるであろう。しかし、六十三年度以降引き続きそうかというと、補助率のカットあればこそでありますから、補助率のカットを除けば均衡するわけでありますから、これが引き続き一割以上の不足額を来すという状況ではございませんので、私はむしろ、交付税の増額、もちろんそれは平時において増額は結構でございますけれども、補助率のカットという前提のもとでそういうものが行われるということは期待をしません。
ぜひひとつ健全な財政が組めるように努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/67
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068・神谷信之助
○神谷信之助君 今の大臣のなににはいろいろ議論があるんですが、きょうは時間がありませんから、問題提起ということで次回に譲ることにして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/68
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069・抜山映子
○抜山映子君 自治省は先日の衆議院の地方行政委員会において昭和六十二年度の地方税収につい
て見通しを述べましたけれども、市町村税についてはどの程度の見通しを持っているのでしょうか。
そしてまた、税目ごとに顕著な傾向があれば、それもお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/69
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070・渡辺功
○政府委員(渡辺功君) 六十二年度の地方税収でございますが、御質問にありましたように、当初対比二兆円ほど上回るというふうな見通しを立てております。
御承知のとおり、道府県税につきましては徴収実績によりまして十二月末現在の数字がわかっておりますので、それを見ますというと、前年同月比一二・六%伸びております。お尋ねの市町村税
の方はそうした資料がとれておりませんし、相手がたくさんある市町村でございますので、従来からそういう調査がなされ得ないでおります。
そこで、内容を考えますというと、好調なのは法人関係税でございます。そこで、法人関係税のウエートは市町村の場合小さいわけでございますので、それらを勘案いたしますというと、全体で二兆円程度ではないかというふうに考えて申し上げたところでございます。
それから、税目別の特徴でございますが、県についてこれを見てみますというと、ただいまも申し上げましたように、伸びでは、法人道府県民税及び法人事業税が前年同月比二〇%を超えるような好調な伸びを示しております。そのほか、県民税であるとか自動車税、軽油引取税あるいは料理飲食等消費税等も堅調に推移しておりまして、先ほど申し上げましたような状況になっているところでございます。
〔理事松浦功君退席、委員長着席〕
なお、市町村の方は前段申し上げましたような状況でございますが、私どもが若干聞き取りをしておるところによりますというと、法人はもちろんでありますが、市町村民税あるいは固定資産税等もそれぞれ堅調には推移している、こういうふうに踏んでおりまして、それで先ほど申し上げましたような総体の税収状況になるのではないか、確定的なことは申し上げられませんが、ということで現在の見込みを申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/70
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071・抜山映子
○抜山映子君 経済とか人口とかすべてが都市集中化の傾向がある、このように言われておるわけですけれども、地方税収の動向が、都市と地方の財政力格差がますます拡大する方向にあるのではないかと思うのですけれども、六十二年度、サンプル的に幾つかの県を挙げて、都市と地方の状況を対比してみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/71
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072・渡辺功
○政府委員(渡辺功君) 財政力そのものについてはまた別に御説明が要るかと思いますが、まず、お尋ねの税金の状況で申し上げますというと、道府県税の県別徴収実績の特徴としましては、やはり東京都のようなところが非常に好調でございまして、最も高い伸びを示しているのでございます。
そのほか、千葉県であるとか埼玉県であるとか大阪府、佐賀県というようなところ、あるいは神奈川県なんかもそうでありますが、そういうところが非常に高い伸びを示している。一方、低い伸びを示しているのは、新潟県の四%増というようなところもございます。
そこで、地域別ということは必ずしもはっきりしないわけなんでございます。量的な分析ができないのでございますが、いろいろこういう徴収実績をとるときにそれぞれ県の税務当局から聞き取りをしたところによりますというと、やはり好調の原因というのは、金融・保険業とかあるいは証券、あるいは建設、不動産、そういう業種が本年度前半から今までのところ非常に好調であったというようなことがあるようでございまして、そういったような部分のウエートが高いところが高くなっているというようなことは概括的には言えるかもしれませんが、確定的な、非常に分析的なことは申し上げる材料を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/72
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073・抜山映子
○抜山映子君 今伺ったところでも、大体東京を中心とする周辺の県は非常に税収が好調である。一方、ローカルの県は、伸びたとはいっても都市圏に比べるとはるかに伸びが低いわけでございます。
こういう地方団体間の財政力格差を是正するためには何らかの対策が必要ではないかと思うのですけれども、これについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/73
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074・津田正
○政府委員(津田正君) 地方団体間の財政力格差が、経済のサービス化、ソフト化というようなものにも影響されまして、やや拡大傾向にあるわけでございます。
したがいまして、私どもは、普通交付税の配分におきましては、従来とも財政力の弱い団体に傾斜配分をしておったわけでございますが、このような財政力格差の拡大傾向にかんがみまして、一層この傾斜配分を考えてまいらなければならない。財政力の弱い地方団体の財政運営に支障が生じないよう、交付税の配分、また地方債の配分等で措置してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/74
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075・抜山映子
○抜山映子君 昨年決定されました政府の緊急経済対策により始められた緊急プロジェクト、これの進捗状況はどのようになっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/75
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076・小林実
○政府委員(小林実君) 自治省といたしまして、昨年五月に決定されました緊急経済対策に基づきまして、特定の不況業種への依存の著しい地域に対しまして、地域経済の活性化に資するように、必要なプロジェクトにつきまして地域経済活性化緊急プロジェクトというふうに位置づけまして積極的な支援を行っておるところでございます。
六十二年度の採択状況は百八十八プロジェクト、総事業費で、これは三年間でございますが、約二千二百億というふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/76
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077・抜山映子
○抜山映子君 それはわかったのですが、どの程度着手されているか、そのあたりをもう少しはっきりさせていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/77
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078・小林実
○政府委員(小林実君) 今御説明いたしました百八十八件のプロジェクトのうち、約八割に当たります百四十件程度につきまして六十二年度において事業実施ということになっております。金額にいたしまして三百六十億程度と予測いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/78
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079・抜山映子
○抜山映子君 そうしますと、当初予定しているよりずっとおくれている、こういうことが言えると思うのでございまして、この緊急プロジェクトは今後の予定として六十三年度においても採択される予定である、このようになっておるわけですから、不況地域が大変苦しんでいるのですからもうちょっと進捗を急いでいただきたい、このように切望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/79
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080・秋山肇
○秋山肇君 最後に御質問させていただきますが、皆さんと同様時間が限られておりますから、政府委員の方々にお答えをいただこうと思って細かく通告をしておきましたけれども、総括的に大臣からお答えをいただきたいと思うわけでございます。
昨年の九月十七日の委員会で私は、群馬県伊勢崎の固定資産税課税ミスの問題を質問いたしました。そのときに自治省からいろいろお答えをいただいていたんですが、残念ながらまた埼玉県八潮市で、固定資産税取り過ぎ十五年という問題が出てまいりました。先ほど来議論がされておりますが、地方自治ということでそれぞれの自治体に権能があり、それぞれの自治体での執行ということで自治省の通達がされておるのだと思うんですが、それを解釈ミスといいますか、準則を違って解釈して納税者に課税してしまっているということが出ているわけです。
こういう問題等を含めますと、先ほど来自治体の自主性というものを確立するというお考え、私も同感でありますが、逆に言いますと、納税者に別に悪意があってしたわけでもないのに、五年以上はさかのぼって税金が還付されないという問題等を含めますと、自治体に対してのペナルティーというんですか、何か制裁措置というものも考えなきゃいけないのじゃないか、納税者の立場からすれば当然そうなると思います。
そういうもろもろの問題を含めまして、また今
まで議論されてきましたこと等含めて、今後の地方財政の展望について、地方自治体が安心して、例えば住民福祉であるとか地域の振興に取り組めるような万全の措置を講じられなければならないと思うんですが、そういう問題等につきまして大臣に御決意をお聞きして、私の質問にさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/80
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081・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 固定資産税の取り過ぎ等の問題が地方自治体で起こっている現実を私もお聞きをいたしまして、大変申しわけない、残念なことだという気がいたします。ただ、法の定めるところでございますから、それ以上にさかのぼることができるかできないか、そういう問題をひっくるめて、専門的でございますから、税務局長からお答えをさせたいと思います。
なお、地方財政の展望と申しますか、先ほども申し上げましたように、ようやく好転の兆しがややあるという程度でございまして、巨額の借入金残高を抱え極めて厳しい状況でありますので、今後とも、その償還にもたえ得るような財政構造の健全化を図っていくため、行財政の守備範囲の見直し、行財政運営の効率化を図るとともに、地方税、地方交付税等の一般財源の着実な充実を図っていくことが基本的に必要だというふうな認識のもとに、これからも努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/81
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082・渡辺功
○政府委員(渡辺功君) ただいま委員から御指摘がありましたように、昨年伊勢崎市の問題で御指摘をいただきましたときに答弁いたしましたのは私でもございますし、法律問題もございますので、お答えをさせていただきたいと思います。
委員御指摘のような事実関係でございますが、そのとおりでございまして、私どもも内容を埼玉県から徴収いたしております。
そこで、昨年の九月にも伊勢崎市でそういう問題があって、厳重にそれは指導するということであったではないかという委員のお話でございます。当時もそれに対しまして、十分そういった点につきまして指導するというお答えをしておったところでございます。今回のような状態は、当時も申し上げましたけれども、課税の適正を失するということそれ自体がもう大変重大でございますけれども、住民の行政に対する信頼を失うということでもございます。そういう意味で非常に遺憾なことでございます。固定資産税の評価や課税が適正に行われるということが極めて重要なことでありますことは当然でございまして、一層厳重に指導してまいりたい、こう思います。
なお、この問題が明らかになったのも、そういう意味では、県の市町村に対する指導の中からそのきっかけがあったようでございます。あってはならないことでございまして、また指導を一層強化してまいりたい、こう思います。
なお、こうした状況に対して五年しか返還できないというのは何とも納得できないではないかというお話でございます。私ども、当時お答えしましたときにも、納税者の気持ち、あるいは委員の御指摘の点につきましても、お気持ちとしてはそうではないかな、こういうふうなことを踏まえながら、しかしながら、これがまた還付金の消滅時効であるとかいうような問題になりますというと、固定資産税だけの問題ではない、税制全体の問題であるし、同時に、民事を含めます債権債務全体の法的安定性の問題ということになりますので、そこは指導を強化するということで、ミスをなくすということでいかなければいけないというふうに考えましてお答えをしました。
なお、そういう点で若干つけ加えさせていただきますが、反省すべき点はないのかということは、当時委員にお答えしました後におきましても私いろいろ反省してみまして、これは市町村の税務行政の限界を超えるような難しいことを制度で仕組んだのだろうかということを自問自答しましたが、私はそうは考えなかったわけでございます。といいますのは、課税標準の特例でございまして、これはたくさんある措置の中に類型はたくさんございます。戦後シャウプ税制以来非常に年月を経過いたしまして、市町村のそういった能力が向上していることは私ども非常に信頼しておりまして、そうではないのじゃないか。
では指導側の問題かということも考えました。確かに指導は私どもは何度も徹底しなきゃならぬ。この点については、いろいろやっておりますという言いわけをするつもりは決してございません。なお私どもも今後指導を強化したい、こう思います。
しかし、同時に、きょうまたこういったような問題について御指摘をいただき、また事実が起きましたことでいろいろ反省しますというと、あるいは申告ということを適用要件とするということの方が本当はよかったのかもしれない。その方が、納税者に不親切なようでありながら、かえって納税者にはすっきりした制度だったのかもしれないというようなことを反省しております。いろいろそういった点について考えていきたい、こういうふうに考えております。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/82
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083・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、吉川博君が委員を辞任され、その補欠として松浦孝治君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/83
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084・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/84
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085・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 御異議ないと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/85
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086・神谷信之助
○神谷信之助君 私は、日本共産党を代表して、地方交付税法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本改正案は、交付税の増額分五千五百二十億円のうち財源対策債の減額等のために三千二百十六億円を六十二年度の交付税に上乗せし、残り二千三百四億円は交付税特別会計借入金の返済に充てることとしております。
地方交付税法では国税三税の収入見込み額の三二%を当該年度に交付すべき交付税としており、収入見込み額の変動による今回の増額分も、当然今年度の交付税に全額上乗せして地方自治体に交付すべきものであります。特に、今年度は、本来交付税で交付すべきものを起債に振りかえた財源対策債を六千五百億円近く発行しており、これは最優先で交付税に戻さなければならないものであります。この点から見て、改正案は増額分の一部しか今年度の交付税に上乗せしておらず、大いに問題であります。
また、特会借入金返済の問題でありますが、将来の財政負担を軽減するために必要な措置とはいえ、これまでの経過からして、地方自治体の固有の財源である交付税をもってそれに充てることはとても容認できないのであります。
そもそも、この特会借入金は、オイルショック以来の地方財源不足に対して政府が地方交付税法に基づく交付税率の引き上げや地方財政制度の抜本改革を怠り、かつての二分の一負担ルール等、借金押しつけ政策をとってきた結果生じたものであり、地方自治体には何ら責任のないものであります。すなわち、地方財政法、地方交付税法などにより、地方団体の必要財源は国の責任で保障し、地方自治を支える地方財政を確立するという根本的な今日の地方自治制度にもとるものなのであります。
したがって、この特会借入金の返済は全額政府の責任で行うべきであり、地方自治体へ責任を転嫁する本改正案にはこの点からも反対であります。
以上、本改正案に反対する理由を述べて、私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/86
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087・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/87
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088・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
地方交付税法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/88
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089・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/89
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090・谷川寛三
○委員長(谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111214720X00219880220/90
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