1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年三月二十二日(火曜日)
午前十時二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 岡部 三郎君
理 事
高木 正明君
水谷 力君
宮島 滉君
稲村 稔夫君
刈田 貞子君
委 員
青木 幹雄君
上杉 光弘君
浦田 勝君
大塚清次郎君
北 修二君
熊谷太三郎君
鈴木 貞敏君
初村滝一郎君
星 長治君
一井 淳治君
菅野 久光君
諫山 博君
喜屋武眞榮君
国務大臣
農林水産大臣 佐藤 隆君
政府委員
農林水産大臣官
房長 浜口 義曠君
農林水産大臣官
房審議官 伊藤 礼史君
農林水産省経済
局長 眞木 秀郎君
農林水産省構造
改善局長 松山 光治君
農林水産省農蚕
園芸局長 吉國 隆君
農林水産省畜産
局長 京谷 昭夫君
農林水産省食品
流通局長 谷野 陽君
食糧庁長官 甕 滋君
林野庁長官 松田 堯君
水産庁長官 田中 宏尚君
事務局側
常任委員会専門
員 安達 正君
説明員
経済企画庁総合
計画局計画官 三宅 輝夫君
国土庁防災局防
災調整課長 森永 正彬君
文部省初等中等
教育局高等学校
課長 森 正直君
参考人
日本中央競馬会
副理事長 犬伏 孝治君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○農林水産政策に関する調査
(昭和六十三年度の農林水産行政の基本施策に関する件)
○原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/0
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001・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
農林水産政策に関する調査のため、本日の委員会に日本中央競馬会副理事長犬伏孝治君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/1
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002・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/2
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003・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 次に、農林水産政策に関する調査のうち、昭和六十三年度農林水産行政の基本施策に関する件を議題といたします。
本件につきましては、前回既に説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/3
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004・一井淳治
○一井淳治君 まず、オレンジ、牛肉の交渉のことから質問をさせていただきたいと思います。
眞木経済局長さんには非常に大変な時期に渡米なさいまして、まことに御苦労さまであったというふうに存じます。アメリカでの日米の交渉の概要について、特に自由化時期の明示が必要だと、この時期いかんによっては代償措置を求めるということが新聞では報道されておりますけれども、その間のことを含めましてまず御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/4
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005・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 牛肉とかんきつの問題につきましては、合意期限が今月末で切れるわけでございまして、残された日数が非常に少なくなっております。この間、アメリカ側が交渉のテーブルに着くことを拒んでおりますので、私再度、三月十五日から訪米をいたしまして、十五日から十六日にかけましてUSTRのスミス次席代表ほか関係者と会合いたしまして、強く交渉のテーブルに着くよう要請をしたところでございます。しかしながら、米国側は自由化時期を明示するということが条件でございまして、それがなければ話し合いに入ることができないという従来の立場を繰り返すのみでございました。
また、ただいまお尋ねがございましたが、アメリカ側の基本的な立場は、この四月一日に自由化が行われるべきであるというのが基本的な立場である。もし、自由化の時期がそれよりも長く要する、ロンガータイムを必要とするということであれば、代償といいますか、それまで待つ間の失われる利益に対して代償しろというような考えを述べたわけでございます。
このように非常に状況は厳しいわけで、前回二月に訪米をいたしましたときと比べてその態度は変わらないというような状況でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/5
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006・一井淳治
○一井淳治君 私、ちょっと聞き落としがあったかもしれませんが、代償措置というものが言われておるようですけれども、具体的にどういうことなんでございましょうか。
それから、自由化の時期についてロンガーどうのこうの言われましたけれども、時期についてアメリカ側はどういうことを考えておられるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/6
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007・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 今申し上げましたように、アメリカ側としては四月一日から自由化が行われるべきである、したがってもし自由化が行われる――これは私らがそう言っているわけではなくて向こう側が言っているわけでございますけれども、より長い期間を要するようであれば、その間にもし自由化されればアメリカとして例えば牛肉、オレンジをより多く輸出できるであろうという考えのもとで、それが自由化がおくれるその分だけ輸出される数量なり金額が少なくなる、その分を代償しろというようなことであろうと推察をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/7
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008・一井淳治
○一井淳治君 余り聞いてほしくないという趣旨かもしれませんが、この代償措置の内容でございますけれども、何かお話が出ておるんでしょうか。それから自由化時期の明示ということで、短期間であればあるいはある程度の期間を先に明示すればいいという趣旨とは違うんでしょうか、私は新聞報道しか知らないわけですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/8
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009・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 日本側といたしましては、自由化時期の明示は困難であるという基本的立場で臨んでおりますので、そういうことは一切ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/9
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010・一井淳治
○一井淳治君 私は、もう余り質問したくない気持ちもあるんですが、自由化時期の明示が交渉の前提ということをアメリカ側は言っておるようですけれども、これはもう四月一日からという意味なんですか、自由化時期の明示が交渉の前提というのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/10
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011・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 誤解のないように、これは日本側の立場ではなくてアメリカ側の言い分でございますけれども、基本的には本年の四月一日から自由化をすべしということでありまして、どうしても日本側が四月一日から無理で、例えば何年か後にやるのならその何年か後にやるということをはっきりさせてほしい、それが話し合いに入る前提だとアメリカ側が主張しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/11
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012・一井淳治
○一井淳治君 実は、アメリカが自由化時期についてどれくらいを考えているかということを、アメリカ側の考えですね、これを聞きたかったんですけれども、いろいろ交渉のぐあいもあるのかもしれませんので、これは聞かないことにいたします。
今後、どのようにこれに対処なさっていかれるのか、その点について、できれば大臣の方からお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/12
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013・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 牛肉、かんきつの今後ということでございますが、三月末が大きな節目を迎える時期であるということは昨年来申し上げてきたところでございます。そういう意味では、いよいよ真剣に努力の積み重ねをしていかなければならない、こういうことで、相手の状況は少しも変化が見られないようでございますけれども、我が方は粘り強く努力を続けていく。特に一月の首脳会談において例示をして牛肉、かんきつはテーブルに着いて話し合おうということになっておるわけでありますから、それが今日までそのテーブルもまだできていないということでございまして、そのテーブルづくりに専念をいたしておるところでございます。テーブルづくりができましたならば我が方の実情というものを的確にそのテーブルのところに持ち込んで、そして話し合いをし、どんどんどんどん延びていっていいものじゃございませんから、お互いが納得し得る状況になれば一日も早い方がいいわけでございますから、関係者はみんな我が国内においてもいら立ちを感じておるわけでございますから、そういう意味での努力を続けてまいりたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/13
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014・一井淳治
○一井淳治君 一つ私心配しておりますのは、新聞の報道でございますけれども、眞木経済局長さんが訪米されておられましても、どうも非常に厳しい状況だということばかりが報道されておりまして、しかもそういったことを経済局長さんが記者会見で発表なさるということも新聞記事に実は載っておるわけでございます。これは私どもの一方的な見方ということになるのかもしれませんが、どうも国内の酪農家の人たちに対して国際情勢はこうなんだ、聞けよ悟れよというふうに新聞のいろんなニュースの操作をしているんじゃないかというふうにすら考えられるというふうに思うわけでございます。
ごく最近の新聞報道などを見ますと、自民党の党内がこの問題については非常に強硬である、政府はこれを調整している、調整は困難なんだというふうな書き方もありまして、国内が一丸となって、あるいは農林省が先頭に立って必死で頑張っておるというふうな印象がどうもなくなってしまっておるというふうに思うんですけれども、このあたりのことについてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/14
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015・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 権威あるこの委員会でマスコミの報道、一部であってもその報道をもとにした議論をいたそうとは思っておりません。今日まで、私が就任以来からでもさまざまな報道がなされ、そして一部では間違った報道も伝えられたこと等もございまして、その都度、我が方からその社に対して厳重にお話を申し上げた経緯もございます。そういうことで一部の新聞記事の言いわけに終わるような状況がもう幾つか実はございました。それを一々ここでは、先ほど申し上げるようにそれをもととして議論しようとは思いません。
我が方は、ガットの問題等でも十二月の総会をただ延ばせばいいというものじゃない、真剣にもう少し考えようということで二月の理事会にまで送った経緯もございます。今度の場合もあの場合と同じように、解決をするためには野党の皆さんの御意見も当然聞かなければなりません、頭の中に入れておかねばなりません。しかし、政府・与党の責任は重いわけでございますから、そういう意味で内閣挙げて一体となって取り組もう、そして、与党の意見ももちろん団体の意見も流通関係者の意見も消費者のニーズも踏まえて取り組もうということで取り組んできた経緯もございますので、八品目にいたしましてもプロジェクトチームで率先勉強を続けておるところでございますし、農林水産省がだんだんだんだん後ろに行って、そして、人任せにしているという言い方はおっしゃいませんけれども、そういうことではございません。深刻、真剣に考えながら今努力をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/15
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016・一井淳治
○一井淳治君 この問題は、十二品目のことよりも非常に影響力が大きいわけでございますので、どうか外務省ではなくて農林省の方が中心になっていただきまして、ただいまお聞かせいただいていますように強力な交渉をなさっていただくように強く要望いたしたいというふうに思います。
それからもう一点だけ、代償措置の内容ですが、これはどういうことなんでしょうか。我が方ではなくしてアメリカ側はどういうことを考えているかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/16
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017・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 先ほども申し上げましたように、要するに我が方としては自由化は困難である、明示も困難であるという立場で、とにかくまず交渉の席に着くべきであるということを要請をしておる段階でございまして、今おっしゃいましたような代償の内容云々のところまで、そういうところにまで話が立ち入っておる段階ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/17
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018・一井淳治
○一井淳治君 次に、場外馬券売り場の新設の問題について質問をさしていただきたいと思います。
競馬会が場外馬券売り場を新設するには、農林水産大臣の承認を受けなければならない、こういう決まりになっておるわけでございますけれども、この承認の要件についてこれまでの取り扱いを見てまいりますと、昭和三十六年七月二十五日の長沼答申というのがございまして、「公営競技は、その運営の実情において、社会的に好ましくない現象を惹起することが少なくないため、多くの批判をうけている」としまして、「少くとも現状以上にこれを奨励しないことを基本的態度とし、その弊害を出来うる限り除去する方策を考慮した。」とされ、新設を抑制するという方針であったようでございますが、五十四年六月二十一日の吉国答申におきまして、「今後は、抑制基調は維持しつつも、多少弾力的に検討することとしてよいものと考えられる。」といたしまして、場外馬券売り場については、「弾力的に検討してよいが、地域社会との調整を十分に行うこと。」とされて、これ以後は地元の同意が得られたときのみ農林水産大臣に対する申請は承認されるという取り扱いがなされてきておるわけでございますけれども、この取り扱い、場外馬券売り場の新設の承認要求が出た場合の承認をする要件について将来もこういうことでおいきになるのかどうか、将来もその方向でおいきになるとは思うんですけれども、確認する意味でお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/18
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019・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 中央競馬を初めといたします各種の公営競技につきまして、場外売り場の設置につきましては、ただいま先生から御指摘ございました二回にわたる公営競技問題懇談会からの報告がございます。私ども、ただいま先生から御指摘のございました昭和五十四年のいわゆる吉国答申に盛り込まれております趣旨に沿いまして、現在中央競馬会に対して指導を行っておるところでございますが、今後ともこの方針を維持してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/19
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020・一井淳治
○一井淳治君 ただいまの御回答は、地元の同意が一つの要件であるということでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/20
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021・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 先生から御指摘ございましたように、吉国答申におきましては、「場外売り場の設置については、ノミ行為の防止にも効果があると思われるので、弾力的に検討してよいが、地域社会との調整を十分に行うこと。」ということが盛り込まれております。これを受けまして、中央競馬の場外馬券売り場の設置につきまして、中央競馬会が農林水産大臣の承認を受けることになっておるわけでございますが、この承認をするための要件として地元の同意を必須の条件として運営をしておりますが、この方針は今日あるいはこれからも不動でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/21
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022・一井淳治
○一井淳治君 それからもう一つ、交通の関係での警察との協議が要件になっているということを聞いておるんですが、その内容や方式について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/22
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023・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 場外馬券売り場の設置に当たりましては、ただいま申し上げました地元の同意要件とあわせまして地元の警察と交通問題等について協議をするように指導をしております。
具体的な地元警察との協議内容なり協議の方式についてはケース・バイ・ケースでございまして、その地域の状況に応じて必要な協議をし、同意を得るような手続を個別に行うように指導をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/23
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024・一井淳治
○一井淳治君 二つの要件を今御説明いただいたわけでございますけれども、これの要件が満たされる時期についてお尋ねいたしたいわけでございます。
承認申請をする時点、社会常識があるとは思いますけれども、それに一定の幅を置いた接着した時点というふうにお聞きしていいでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/24
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025・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 御承知のとおり、先ほど申し上げましたが、中央競馬会が場外馬券売り場の設置をするには農林水産大臣の承認が必要でありますが、その承認に当たりましては先ほど申し上げましたような方針に沿いまして、当然のことながら地元の同意を付して承認を求めることが必要であるというふうに考えておるわけでございます。
ただ、地元から同意をとる時点と承認手続をとる時点に相応のタイムラグが生ずることはやむを得ないことでございますので、私ども必ずしも承認申請をする日付と同じ日付の同意書ということは要求をしておりません。個別具体的に合理的な範囲内でのタイムラグは当然あり得ることだというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/25
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026・一井淳治
○一井淳治君 これは社会常識の問題になってくると思いますけれども、常識的に申請時点にも要件が満たされているというふうに見られる時期に要件が満たされておることが必要だというふうに考えていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/26
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027・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) ただいま申し上げましたタイムラグがどの程度まで許容されるかということを一義的にはなかなか決めがたいと思いますけれども、まさに先生御指摘のとおり、社会常識で個別具体的に判断していくことが必要ではないかというふうに考えております。
具体的には、同意を出してから承認申請までの間の状況がどうなっているか、あるいは具体的な物理的な時間がどれぐらいの開きがあるかというふうなこと等を総合的に勘案して申請に付された同意の妥当性なりなんなりを判断していくべき事柄であるというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/27
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028・一井淳治
○一井淳治君 申請は日本中央競馬会の方から出されてくるわけでございますけれども、ただいま御説明のあった設置要件についてはそのような御指導をしてくださっておるわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/28
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029・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 私どもは、中央競馬会に対しましては、場外馬券売り場の設置のための承認申請に当たりましては、先ほど来御指摘のございました地元の同意、それから地元警察との協議、その結果を踏まえて適切にそこに承認を求める場外売り場の設置運営が平穏かつ円滑に行われる状態が十分確認された状況下で申請を行うように指導をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/29
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030・一井淳治
○一井淳治君 具体的なケースでございますけれども、岡山市の新福という土地で現在日本中央競馬会の場外馬券売り場を設置しようとして、株式会社日隈という会社が準備を進めておるということは農水省におかれましても御承知のことと思いますが、これにつきましては地元で強い反対運動が起こっておる。岡山の市議会でも昨年七月二十一日に、地域住民の平穏な生活が脅かされつつあるとして圧倒的な多数で反対決議がなされておる。岡山の県警本部においても、岡山県議会で協議に入り得る状況にはないというふうな県議会での答弁をなされておるというふうな状況については耳に入っておると思います。農林水産省としては設置の承認申請が出てこない限り具体的な事前の可、不可ということはとても言えないとは思いますけれども、今申し上げたような状況、これは農水省の方にもお耳に入っていると思いますけれども、現在の状況下においては中央競馬会からの設置承認申請が出される状況にはないというふうに私は思うんですけれども、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/30
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031・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 先生から今御指摘のございました岡山市におきます場外馬券売り場の設置問題につきまして、御指摘いただきました各般の事実関係につきましては相当部分私ども耳にしております。ただ、具体的なケースについての私どもの判断は、やはり中央競馬会からの承認申請が出てきた段階で個別具体的に審査を行って判断をするものでございまして、少なくともこの案件につきましては中央競馬会からそのような承認申請は出ておりません。したがいまして、本件について私どもが承認の可否について具体的に言及することはひとつ御容赦をいただきたいと思いますが、一般論としましては、先ほど来申し上げております場外馬券売り場設置に当たっての承認要件というものを十分勘案して所要の行動をとるように中央競馬会には日ごろから指導をしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/31
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032・一井淳治
○一井淳治君 同じ問題について、先日の衆議院の農林水産委員会でも別の議員から質問がありまして、局長さんがお答えになっておりますけれども、同じお立場とお聞きしていいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/32
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033・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 今御指摘ございましたように、衆議院の農林水産委員会におきましても本件についての御質問がございましたが、その際に、中央競馬会からの承認申請は出ておらないけれども、私どもの現在聞いている限りの事実関係を前提にすれば、すぐさま中央競馬会の方からこのための承認申請が出てくるという状態にはないのではないかというふうな私の印象を御答弁を申し上げたことは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/33
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034・一井淳治
○一井淳治君 それから、日隈から出された建築確認申請に対して確認通知が交付されたという事実がある。これも御存じと思いますけれども、確認申請がおりても今のお立場はそれによって変化はないというふうに私思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/34
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035・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) 私どもの中央競馬会の場外馬券売り場の設置についての承認要件というものは先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、その限りにおきましてはこの場外馬券売り場についての建築確認申請が行われた、あるいは建築確認の手続が行われたということは直接影響を与えるものではないと考えていただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/35
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036・一井淳治
○一井淳治君 この場外馬券売り場の新設の承認申請の時期でございますけれども、建物の建築をしてから出さねばならないものではないというふうに思いますが、その点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/36
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037・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) この建築確認手続等につきましては、建築基準法に基づいて進められるものでございます。建築基準法の趣旨に沿って行われる手続でございまして、そのこと自体について私どもの方からこの場外馬券売り場云々というふうな問題で容喙をすべきものではないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/37
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038・一井淳治
○一井淳治君 次に、日本中央競馬会の方に御質問をいたしたいと思います。本日はおいでいただきましてありがとうございました。
まず、岡山市議会で六十二年七月二十一日に場外馬券売り場設置反対の決議がなされているわけでございますけれども、この決議を尊重されるのかどうか、まずその点からお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/38
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039・犬伏孝治
○参考人(犬伏孝治君) 日本中央競馬会副理事長の犬伏でございます。本日は参考人として参りました。どうかよろしくお願いいたします。
ただいまお尋ねの岡山市の議決でございます。御指摘のように昨年七月、私どもの岡山市新福町に場外発売所を設置することの問題につきまして反対の議決が行われております。当時のことを申しますと、実は私どもそのような動きは存じていなかったために予想せざる事態でございました。それまで設置を進めてまいりました立場からいたしますと残念に存じました。しかし、いずれにいたしましてもそのような議決が行われました上は私どもといたしましてその決議は重要なものと受けとめておりまして、十分慎重に対処してまいる必要がある。したがいまして、現在のところ事態の推移を慎重に見守っておるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/39
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040・一井淳治
○一井淳治君 昨年の七月三十一日の山陽新聞の朝刊でございますが、施設をつくろうとしております日隈の小坂猪之助常務の談話が載っておるわけであります。それを見ますと、市議会での反対決議は承知しているけれども、日本中央競馬会との約束もあり、いつまでも待てない、建物を建築するのが当社の役割であるという談話が載っておるわけでございますけれども、この市議会の反対決議を押し切ってでも建築するというふうなことは非常にぐあいが悪いんじゃないかと思いますけれども、何か日本中央競馬会との間で約束でもあるんでしょうか。あるいは今後そういうふうな日隈のごり押しをする態度を許しておいきになるのかどうか、その辺についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/40
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041・犬伏孝治
○参考人(犬伏孝治君) 御指摘の新聞報道は、昨年七月三十日、株式会社日隈が建築確認申請の事前手続といたしまして、市の指導要綱に基づく建築計画書を提出しようとしたことに対しまして、市の当局は市議会の議決が行われたことでもあるし、しばらく待ってほしいということを申したことに対しまして同社の小坂常務が発言したというふうに伝えられております。
この件につきましては、私ども中央競馬会といたしましては、約束云々ということにつきましては承知をいたしておりません。日隈からは、場外発売所の建物を建設し、場外発売所の設置につきまして農林水産大臣の承認が得られたときにはこれを日本中央競馬会に賃貸するという申し出はございます。このことがそのような約束云々ということで伝えられたのではないかと存じます。
現在、私ども中央競馬会としてはいついつまでに建物を建てるといったことにつきまして日隈側と何ら取り決めをいたしておりません。そのように御理解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/41
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042・一井淳治
○一井淳治君 建築確認申請をする場合には、工事の着工年月日、それから完工年月日を記載する欄があるわけでございますけれども、日隈が手続をした確認申請の場合の年月日はどのようになっておったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/42
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043・犬伏孝治
○参考人(犬伏孝治君) 建築確認申請書は、建築主であります株式会社日隈が提出をしたものでございます。お尋ねの着工年月日、竣工年月日につきまして日隈側に問い合わせをいたしましたところ、予定日についてはいずれも未定という形で申請したとのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/43
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044・一井淳治
○一井淳治君 株式会社日隈が建築を強行して既成事実をつくってしまうようなことがあったら非常に残念だというふうに思いますが、そういったふうなことがないように御指導いただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/44
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045・犬伏孝治
○参考人(犬伏孝治君) 岡山の場外発売所開設につきましては、必要とする地元町内会の同意は既にいただいております。しかし、市議会の反対決議もございまして、私どもといたしましてはこのことについて慎重に対処する必要があるということは先ほど申し上げましたとおりでございます。
いつ建築工事を行うかどうかという件については、日隈側の判断にかかわることでございますが、競馬会としては、日隈側へは先ほど申しました競馬会の考え方を申し述べまして善処方を要請しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/45
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046・一井淳治
○一井淳治君 先ほどのお答えの中に、地元の町内の同意があったという御説明がありました。これは町内会長さんの同意書のようなものがひょっとすると競馬会の方に出されておるのかもしれませんが、現在、町内会の組織をめぐって裁判ざたが起きているということも御存じだと思いますけれども、同意があったかどうかというその認定を慎重にしてもらわなくちゃいけないと思うんですが、その点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/46
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047・犬伏孝治
○参考人(犬伏孝治君) その同意書が提出されたことにつきまして、町内会の一部に反対があり、反対の動きが広がっておるということは承知をいたしておりますが、同意書そのものにつきましては、私どもは町内会の規約に基づいて正規の手続でなされたものというふうに受けとめております。
ただ、先ほど申し上げましたように、市議会の議決等もございまして、全体として岡山市に場外発売所を設けることにつきましては、なお事態の推移を見守る必要があるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/47
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048・一井淳治
○一井淳治君 現在、この場外馬券売り場の新設に反対する趣旨の裁判が起こっている。裁判を起こしている人数を見れば地元のどれくらい多くの人たちが反対しておるかということもわかるんじゃないかというふうに思いますけれども、そういった点を十分考慮しながら慎重な対処をお願いしたいというふうに思います。
それからまた、競馬というものは本来遊び事でございまして、市民の楽しみのはずであったわけですけれども、余りに強行なさいますと、岡山市議会の反対決議にもありましたように地域のコミュニケーションがなくなってしまう。お隣同士会っても口もきかないような感情的なあつれきが起こるわけでございます。市民生活を本当に真っ暗にしてしまいまして、地域のコミュニケーションを破壊してしまうようなそういうことが今後起こらないように、これは結局地元の同意ということがかかっておるわけでございますけれども、地元の同意をどのように形成していくかというふうな過程においても決して無理をされないようにいろいろ今後慎重な御配慮をいただきたいというふうに要望させていただきまして、次の質問に移りたいと思います。
次は、日本酒の原料のお米の問題について質問させていただきたいわけでございます。日本酒の原料はお米ですけれども、聞くところによりますと、お酒のコストの七〇%を占めておるというふうに聞いております。日本酒は外国から輸入される洋酒と同じ商品ということで競争関係にある上に、今度酒税法が改正されるという予定で原料の米が非常に高いというので厳しい競争の条件下に置かれておるという運命にありますけれども、日本の伝統的な食文化を守っていくためにも、それからまた、これまで非常に多額の税金を納めて国に協力してきたということもありますので、何とか安い他用途利用米をより多く日本酒の原料用に回してもらいたいというふうに思うわけでございますけれども、最近の実績と今後の方針についてまず御質問いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/48
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049・甕滋
○政府委員(甕滋君) お話のございました他用途利用米でございますけれども、主食用より低い価格で加工用に米を供給いたしまして米需要の拡大あるいは水田の有効利用、低コスト生産を推進するという目的で昭和五十九年度に導入をされたものでございます。
清酒の原料用米といたしましては、六十二年度から純米酒等の増加を図りましてアルコールの添加を減らし、米の使用量を増加させるという目的でまず他用途利用米三万トンが導入されたところでございます。六十三年度におきましては、純米酒等の需要量の増加に対応し、米需給均衡化緊急対策の一環としまして米の消費拡大、アルコール添加の一層の減少を図るためにこの供給量を三万トン拡大いたしまして、合計六万トンの供給を行うという予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/49
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050・一井淳治
○一井淳治君 今後ともこの他用途利用米の日本酒原料用に回す量を一層ふやしていただきたい、このようにお願いしたいと思います。
それからもう一点、酒米に向けられる他用途利用米の搗精度でございますけれども、他用途利用米実施要綱に基づいて変形加工を行うということになっておるわけですが、需要者が大体七〇%から七五%の搗精度を希望する方が多いということで現在一律七〇%に統一されておるというふうに聞いております。しかしお酒の醸造者にとってはいろんなバラエティーがありまして、吟醸酒、純米酒等をつくるところでは五五%から六〇%の搗精度を希望しているということもあるわけでございます。七〇%につかれたものをもう一遍醸造者の方で搗精度を加えるということは工程上できないというふうに聞いておるわけでございますけれども、米の需要拡大の精神からしましても、多様な需要にもう少しきめ細かく対応していただいて、その搗精度をもう少し御配慮いただきたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/50
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051・甕滋
○政府委員(甕滋君) ただいまお話ありましたように、酒造用の他用途利用米につきましては、通常の酒造用米と異なりまして、横流れ防止といった観点もございまして、供給をいたします全農等の指定法人と需要者側の酒造メーカーサイドとの話し合いでその供給が行われております。その話し合いの中で六十二年産につきましては一律に七○%と設定されたわけでございます。これはアルコール添加を減少してそれに見合う他用途利用米を供給するという趣旨から、利用形態になじむ一般的な普通酒を念頭に置いたということでありますとか、搗精工場の加工コストあるは流通の効率性等といった経済的な面もございまして、歩どまりを一律とするといったことが配慮されたと承知しております。
これからどうするかというお話でございますけれども、実需者側と供給者側の協議によって決められていく話でございますけれども、その際、御指摘のように、実需者側のニーズが十分に反映されますように吟醸酒、純米酒等の醸造に対応できるようなやり方はないか、歩どまりの設定あるいは価格のあり方などを含めまして関係者間で話し合いが行われますように指導をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/51
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052・一井淳治
○一井淳治君 それから次は、木材の関係について質問さしていただきたいと思います。
去年の六月ごろから夏場にかけて住宅需要に刺激されまして木材価格が高騰したわけでございます。私は、そのことについて昨年七月三十日の建設委員会と十月十六日の決算委員会で同趣旨の質問をさせてもらっておりますけれども、木材の値上がりの原因として農水省の木材需給対策中央協議会での四半期ごとの需要予測が甘かったことが一つの原因ではなかろうかというふうな感じも持たざるを得ないわけでございます。
末端では、すなわち建築業者のところでは木材価格が上がっておる。私は去年の七月三十日の建設委員会の質問で、例えばベニヤ板は五〇%上がっている、ヒノキの柱材は一〇〇%も上がっているということを申し上げたんですけれども、その段階でものんびりと構えておられるような状況があったわけでございます。やはり需要予測をもう少し適切に対応するようにしていただかなくちゃならないと思うわけでございます。
そのためには、木材の価格動向をもう少し的確に把握していただくようにしなくちゃならないんじゃないだろうか。そのためには、卸価格だけではなくて、末端の建築業者に現実に木材が渡っていきます小売価格、これはある程度地域によってもばらつきがあると思いますけれども、その点を十分に把握していただきたい。そうしないと、現実に地方では木材の値がだんだん上がっておるのにかかわらず、中央の方ではまだのんびり構えておられるというふうな状況が出てくると思うわけでございます。
林野庁の統計を見ますと、卸価格といいますか、流通過程での価格を非常に重宝されておるわけでございます。統計数字では、流通過程での価格は最近を見ましても確かに安くなっておるということがあるわけですけれども、建築業者の段階では下がらないで高値安定の状態になっている。そういう印象はぬぐえないというふうな状況がありますので、もう少し小売価格をよくつかんでいただく。そして建設業者も場合によっては今言ったような協議会にも加えていただきまして、小売業者を含めた全体としての木材価格の動向を見極めながら需要予測を的確にやっていただいて、急激な木材価格の変動が起こらないようにしてもらいたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/52
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053・松田堯
○政府委員(松田堯君) 木材需給の見通しにつきましては、御指摘がございましたように、木材需給対策中央協議会で年間を通しましての見通し、また四半期ごとの見通しを公表しているところでございます。価格につきましては、農林水産省の統計情報部におきまして素材価格、これは工場着価格でございます、また製品価格、これは卸売価格でございますが、これにつきまして前月の実績の調査を行いまして毎月公表をしております。御指摘のありました小売価格につきましては、流通在庫も含めまして日本木材備蓄機構が毎月二回の調査を行いまして、迅速かつ的確にその把握に努めまして公表をいたしておるところでございます。
今後とも的確な情報の提供について努めてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/53
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054・菅野久光
○菅野久光君 まず、大臣の所信表明についてお伺いをいたしたいと思います。
今日の日本における農林水産業の置かれている厳しさ、こういったようなことについて、先日の大臣の所信表明をお聞きしておりまして、その認識といおうか、意識といおうか、そういうものがどうもぴんと伝わってこないんです。今、農業にとって、また林業にとって、そして水産業にとって、何が一番問題だというふうに考えておられるのか。その点についてひとつお答えをいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/54
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055・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 率直に申し上げまして、今一番関係者が農政について心配をしておられる点は、先行きどうなるのであろうかという点を一番心配しておられると思います。私自身も、私の仲間からはそういうことを聞きます。
なぜそういう心配が、不安感があるか、先行き不安。そうすると、需要と供給、このバランスがどうなっているのであろうか。食生活の変遷もこれまた背景にある。同時に、急速な国際化、これにどのように対応していくのか、またこの心配もある。こういうことでございますので、国内対策それから外交、両面からやはり的確な政策を推進していく必要がある。それには、長期の展望といいますと、もう一昨年の十一月のことでございますので古いと言われるかもしれませんけれども、一年何カ月か前の二十一世紀に向けての農政審の報告、その報告を受けております。そこには各般の方々の御意見を集約いたしました一つの結論が出ておりますので、それをもとにして今私が申し上げた不安を解消するための努力を真剣に積み重ねている、こういうことにポイントがあろうか、こう私自身考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/55
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056・菅野久光
○菅野久光君 農政審の報告を基盤にしながらこれからどうやっていくのかということについてはいいんです。今、六十三年度の農林水産業の政策をどう進めていくかということについての大臣の所信表明なんですね。ですから、先ほど申し上げましたように農業、林業、漁業にとってどんな問題が差し迫った問題としてあるのかという認識といいますか、意識というものが先日述べられた中ではどうもぴたっとこない、そういうことを私は申し上げておりますので、その点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/56
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057・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 所信表明はコンパクトにされた一つの活字でございます。おのずから、その目方と言っては言い方がどうかと思いますけれども、限界がある。一つの所信表明の中に、例えば米流通研の問題、これは農政審報告を受けた、その精神を体して具体的に当面の問題として勉強を続ける、そして流通の改善も含めていく、こういうことでございますし、林業や漁業の部分におきましてもそのような具体的な運びをしていくという考え方で、将来を展望しながら、そして一つ一つ刻んでわかりやすく進めていこう、こういうことで努力をしていることでございます。
それで、姿勢はどうか、具体的な問題についてとこう言われると、具体的な問題と姿勢とみんなまたここで私がお話をしなければならぬように思いますけれども、農業、漁業、林業それぞれについて私が今申し上げた一つの方向づけ、それに基づいて勉強を続けておりますし、六十三年度予算に関連づけられるものはまた関連づけながら一つ一つ進めておるつもりでございますので、事務当局から補足をさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/57
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058・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) ただいま先生の御質問に関連いたしまして大臣から基本的な点をお答えいたしたわけでございます。
所信表明の場面におきまして、六十三年度予算につきまして、農業の振興に関連いたしましてお手元にありますように大きくは五項目を挙げておるわけでございます。第一は、土地利用型農業の体質強化を目指した構造政策の積極的な推進というものを挙げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/58
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059・菅野久光
○菅野久光君 細かいことはいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/59
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060・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 大臣が今お話を申し上げましたとおり、農政審の答申に基づきまして、現下におきます国民の諸要請に対応いたしまして、国民の納得する価格に基づき食糧等の安定的供給を図るという基本的な考え方に立っておるわけでございます。そういう意味におきまして、生産性の向上を図る諸施策を今回の六十三年度予算に盛り込んだわけでございます。
六十三年度予算におきましては、御案内のとおり、これまでマイナスシーリングといったような状況に置かれておりましたけれども、六年ぶりにこの予算におきまして、NTTの予算等々も含めておりますけれども、具体的内容の充実を図ったということでございまして、公共事業の重点的展開というものもその第一の点に据えておるところでございます。その他需要の動向に応じた生産性の高い農業の展開というようなことでございまして、六十二年度実施に着手いたしました水田農業確立対策といったものもさらに展開していこうということでございまして、地域輪作農法の確立というものをその中心に据えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/60
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061・菅野久光
○菅野久光君 六十三年度の予算編成に当たって、この農林水産委員会に所属している委員はみんな今の農林水産省の予算のことについて心配しているわけですよ。まあ言えば私どもは応援団、そういう立場でいるものですから、本当に内圧、外圧、日本の農林水産業というのは大変な状況になっているという認識があるから、暮れの予算の復活折衝のときなんかも我々は野党は野党の立場で一生懸命頑張ってきたつもりでおるわけです。
そういう立場からいきますと、この前大臣が表明された所信表明については、今農業で、例えば十二品目の問題だったら十二品目の問題が農家にとっては最大の課題だ。例えば北海道で言えば、北海道の十勝の芽室というところでは、一月の一日から農民集会が持たれる。わずか二カ月余りの間に全道で百三十五の地域集会が催されて、延べ八万人が参加した。北海道の農家の戸数というのは十万戸余りしかないわけですから、ほとんどの農家が参加したというような状況になっているわけですよ。ですから、そういう今の農業の特徴的な事柄についてまず述べて、いや、この十二品目の問題は述べてありますよ。しかし、私どもから見れば後の方につけ足しのような形ではないですか。そうじゃないんですよ。
今置かれている農業には、例えばこういうような問題があるし、林業についてもこういう問題がある。水産についても大変な状況になっていますね。そういったようなことが述べられて、そしてその厳しさを克服するために次のような施策をやるというような形になるべきものではないかなと。そうであれば私は聞いている者がよくわかると思うんですよ。何か経済構造調整だとかいろいろ難しい言葉が並べられています。しかし、農業者にとってもあるいは漁業者にとっても林業者にとっても大臣の所信表明というのは大臣がやっぱりこういうことを考えてやろうとしているんだなということがわかるような書き方というものが必要ではないかなというふうに私は感ずるんです。ただ、この委員会の場で言えばいいというものではないというふうに思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/61
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062・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) いろいろ御懇切な御注意をいただきましたが、政府・与党としての一貫した一つの歴史の流れの中に、環境は非常に厳しくなっておることは事実でございますから、そういう意味では政策の整合性、そして継続性、これを考えて書きますとこんな順序になると。しかし心は、これは今までは対外的な外交案件に触れたような書き方は余りしてございません。しかし、どうしてもこれは入れなければならぬということで事務方にも苦労を煩わしまして苦心をしたつもりでございます。しかし、それなら先に持ってこいと言われますけれども、繰り返すようで恐縮でございますが、政策の継続性等を考えると順序をこうやってきて、そして最後にはやっぱりきちんと盛る。最後に盛ることが非常に甘い物の考え方であるという批判をされるとするならば、決してそれはそうではないということで、率直に申し上げたいのでございます。
最後の結びのところで一番時の重要な問題を表明をしたということでひとつ御理解を賜れば幸いでございます。
また一面、この場でそういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、私も相当気のはやる方の性格でございますが、その性格から見ればちょっと地味過ぎるではないか、もっとパンチ効かせろよと、こういう期待に外れておるということを一番おっしゃりたいのではないかなと、私の自覚症状からしてそういうことを自分で言うわけでございますが、しかし、農政の最高責任者になってみますと、前段申し上げたようなことも頭に置きながらやらねばならぬ、こういうことでございますので、よろしく御理解をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/62
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063・菅野久光
○菅野久光君 私が言わんとするところはよく大臣もわかってくれているようでありますので、それはそういうことにいたします。
しかし、言われていることの中で何というんですか、全く片手落ちのような感じを受けざるを得ないのは、例えば、二ページの「こうした中で、我が国農林水産業は」と書いてありますが、その次に書いてあることはほとんど農業関係で、市場開放要求などということが書いてあるからあるいは林業あるいは水産業にもかかわっているのかもしれませんが、「農林水産業は」と言いながらほとんどが農業の問題じゃないか。水産関係の人たちが見たときに何だこれ、「我が国農林水産業は」と言いながら農業のことしか書いてないじゃないかというふうに思うんじゃないかというふうに私は思うんですよ。「農林水産業は」とこう言うんですから、やっぱり林業のことにもちょっと、水産業のことにもやっぱりちょっと、それは枠の問題があるのかもしれませんが、これでは我が国農林水産省は農林水産省じゃなくて農業省かということになるんじゃないかと思うんですが、それはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/63
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064・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 確かに二ページでもそういう印象を受けるとおっしゃればそう受けられておるのでありますからあえて反論はいたしませんけれども、随所になどなどと使っているわけでございまして、農業が優先かというと決してそうではないのでございます。農林水一体の中で我が省の責任を果たしていく、こういうことでございますので、言葉の足りない点はひとつPR方、また御協力をいただきたい、こう思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/64
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065・菅野久光
○菅野久光君 北海道にとっては水産というのは非常に大きなウエートを占めている問題なものですから、水産という言葉を何かひとつ、あるいは林業もちょっと一言加えていただければ、まさに前段で言われてる「我が国農林水産業は」ということにつながっていくのではないかというふうに思うんです。
それから、ちょっと気になることなんですが、三ページの終わりのところですね。「大都市の過密と一部農山漁村における過疎化の進行」こういうふうにありますが、「一部農山漁村における過疎化の進行」の「一部」というのは一体どのぐらいだから一部というふうにお考えなのか。どうも私どもの実感としてはそんなことになっているのかなという気持ちなんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/65
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066・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) これは、実は四全総にも関連をしてまいりますけれども、定住と交流という概念は昨年秋策定された四全総の一つの柱となっておるわけでございます。全部ではございません、一つの柱となっておるわけでございますけれども、過疎化した過疎化したということで、もっと人口がふえねばならぬならぬと言ってきたところであっても、私どもの承知しておるところこれ以上の過疎化は相ならぬ。今定住をしている人たちで、あとは交流によってその地域がどれだけ活性化していくかということも考えますと、定住と交流という形の、今まで過疎と決めつけられておったものが一部ではそうではない、全部ではございません、一部ではやっぱりそうではない。定住と交流によって活性化していかねばならぬということで意気盛んな町村もあるわけでございます。そういうことも含めて実は言っておるわけでございまして、これも聞かれてから言うんじゃなくて、そう言うんだったらそれ書けやと、こう言われるかもしれませんが、さよう御承知おきいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/66
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067・菅野久光
○菅野久光君 「一部」というその言葉が、北海道なんかは二百十二市町村のうちの六八・九%が過疎地域の指定になっているわけですね。九州なんかも五四・五%の市町村が過疎地域の指定になっている。そういうところが過疎化は進行していないかというとやっぱり進行しているわけですよ。ですから、「一部農山漁村」というそういう認識で農林水産省はいる、今の四全総の問題云々のことはありますけれども、国民の実感としてあるいは地域に住んでおる者として、営林署の廃止なんかで、当初はわずかだけ人数を減らして、実際は、実態は余り変わらないようにしますよと言いながら年々減らしていっているわけですね。
そんなことで、これなんかも農林水産省も責任があるんですが、営林署の統廃合したところだけが別に過疎化が進行しておるとは言いませんけれども、こういうことではちょっと実感としては――一部ということは私はちょっと納得できないといいますか、国民の実感からほど遠いような感覚でおられるのではないかというふうに思います。これは私が思うんですから、そうじゃないといえばそうじゃないのかもしれませんが、言葉の使い方については気をつけていただきたいなというふうに思います。
それから、これは二十四日の畜審にかかわる関係でまた委員会を持たれるようでありますからいいんですが、生産コストを引き下げる、そのために「生産資材費等の節減のための取組みを強化することとして」おる。それは非常に結構なことなんですが、ここでちょっとお尋ねしたいのは、生産コストを引き下げるためにはどんなことが必要なのか。生産資材費の引き下げだけなのか、そのほかにどんなことが必要なのかということをちょっとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/67
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068・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 先生御指摘の十ページのところに、「生産コストの一層の引き下げを図るため、生産資材費等の節減のための取組みを強化することとしております。」と大臣は所信表明の中で言及されたわけでございますが、今先生御質問のとおり、ここの場合におきます畜産物価格等々に触れないで全般的なことを申し上げますと、まず米あるいは土地生産性等の土地利用型のもの等につきましては、私どもの理解といたしましては、まず第一に農業機械あるいは農薬等々の資材費等の節減というものが重要な課題であろうというふうに考えております。円高等の還元のこともございまして、農薬あるいは肥料等におきましての問題が各企業の努力あるいは全農との話し合いの中でできる限りの努力は続けられておるわけでございます。そういったようなものの中でまず資材費等というものが一つの前提ではないか。
それからさらに、今畜産等に触れます場合には、えさ、えさ代といったようなものが畜産物の生産性の向上といいますか、あるいはコスト削減といつたようなものに大きく影響するというふうなことでございますので、そういったものをトータルに掲げましてこの十ページのところで大臣がお述べになったというふうに我々は理解をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/68
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069・菅野久光
○菅野久光君 畜産の関係で言えばえさも入るというようなお話でありますが、過日、私どもも北海道に十二品目の問題を含めて視察団を派遣し、私も参加をしてまいりましたが、このほかに今農家の負債問題をどうするかということなどもこのことにかかわって非常に重要な問題だというふうに認識をしておりますから、これは二十四日の日にでもやりたいというふうに思っております。
所信表明の最後の方では、「農林水産行政を推進するに当たりましては、手順を尽くし、国民各界各層の信頼を築き上げ、農林水産業の確かな展望を示すよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。」ここのところが非常にいい言葉だなというふうに思っております。まさに今後手順を尽くして、そして農林水産業の確かな展望を示すようにひとつ全力を尽くしてもらいたいということを申し上げて、ちょっと細かいことまで申し上げましたけれども、私は率直なところ受けた感じ、そういったようなことで申し上げましたので、今後の上で何か参考にでもなればというふうに思っております。
時間も余りありませんので、次にちょっと米の関係について御質問申し上げたいと思います。
六十二年度から水田農業確立対策がスタートいたしました。関係者の努力によって転作目標面積七十七万ヘクタールの達成が図られました。しかし、四年連続の豊作となったこともあって、今後の需給見通しは三度目の過剰が懸念される事態に至っておるわけですね。
そこで政府は、昨年暮れ米需給均衡化緊急対策を発表いたしました。ここで八十万トンの自主調整保管及び自主流通在庫保有を決めるとともに、三十万トンの需給ギャップ調整として需要拡大、在庫調整で十六万トン処理するほか、生産者団体で処理するものとして十四万トンを充てるとの計画を明らかにいたしました。政府は生産者団体に消費拡大、需要開発米及び転作の方法を示しておりますが、食管制度堅持の名のもとにいずれも生産者にとって過重な負担を強いるものというふうに思われます。
この十四万トンを処理するのに、生産者団体は金額にして幾らくらいの負担を強いられることになるのか、その見通しを示していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/69
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070・甕滋
○政府委員(甕滋君) ただいまお話ございましたように、最近の米需給の動向等からいたしまして七十七万ヘクタールの水田農業確立対策の遂行に加えまして、六十三年度の緊急対策といたしまして米需給均衡化のための特別の対策を予定しておるところでございます。
ただいまお話ございましたように、三十万トンの需給ギャップの調整のために需要拡大あるいは在庫調整といった手法を尽くすわけでございますけれども、同時に地域におきます生産者団体等の主体的な努力によりまして、十四万トンにつきましては需要拡大あるいは需要開発米といった取り組みとあわせまして、そういったもので需給ギャップが埋め尽くされない場合におきましては転作といったもので需給均衡に取り組もうということをいたしております。この計画につきましては、各地域で関係者の皆様方に大変御苦労を煩わせまして、地域の実情によりまして需要拡大等にもいろいろ取り組んでいただいております。
その結果につきましては現在集計中でございまして、需要拡大によって何トンあるいはそれで足らざるところは転作というような計画が現在取りまとめ中でございますので、その結果によりまして、また七十七万ヘクタールの推進とあわせまして来年度の取り組みの全貌がはっきりしてまいると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/70
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071・菅野久光
○菅野久光君 金額にしてどのくらいの負担をさせることになるのかはっきりしたことは言えないのかもしらぬが、このぐらいかなというような見通しありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/71
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072・甕滋
○政府委員(甕滋君) これは、需給ギャップの調整をいたします話でありますから、金額的な負担というものを直接結びつけて考えることはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/72
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073・菅野久光
○菅野久光君 在庫調整などを含めて、本当に生産者に全く負担をかけないというようなことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/73
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074・甕滋
○政府委員(甕滋君) もちろん生産の調整でございますから、その生産が行われない分につきまして個々の農家にとりまして我慢をしていただくというところは出ようかと思いますが、それに対しましては、円滑に進めるための国の助成というものは当然考えておるわけでございますけれども、生産者個々にとりましては、生産者の負担ということだけではなくて、生産者団体の在庫調整へのまた経済的な配慮ということも行われるところでございますし、政府、農業団体、農家、あるいは流通在庫もございますので業界、各方面が協力をして、全員で汗を流してこの需給ギャップの解消に全力を挙げて取り組もう、こういう趣旨で現在進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/74
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075・菅野久光
○菅野久光君 ですから、全く生産者に負担をかけないということではない、どのぐらいの金額かは別にしても、それぞれが汗を流すと、こう言っているわけですから、そういうことになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/75
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076・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 今、食糧庁長官から申し上げましたように、関係者といえば生産者団体、生産者、そして流通各段階における部門、それから消費者もつけ加えたいと思います。これは消費拡大ということがあるからでございます。そういうことで、各セクションにおいてひとつ汗を流そうではないか。我々も知恵を絞る、関係者も協力してこの困難なときを乗り切ろう。そして、食管の根幹はちゃんと堅持していく、米の自由化はしない、こういうことで国内の体制というものはぴしっとしていこうではないか、こういうことで努力をしているわけでございますので、まあ金目の問題はそういうそろばんがどうはじけるのか私にもまだ現状わかりませんけれども、そういう物の考え方で「緊急」ということでお願いをしておる。だから、一面的に農民に負担を強いたではないかと言われると、今申し上げたようなことで農民の負担を強いるということではない、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/76
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077・菅野久光
○菅野久光君 先ほどちょっと転作のことも言われましたが、転作ということについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/77
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078・甕滋
○政府委員(甕滋君) 現在行っております水田農業確立対策におきましての七十七万ヘクタールの枠組みは、六十三年度におきましても引き続きその着実な実行を図りたい。米需給均衡化緊急対策におきまして需要拡大あるいは在庫調整等によりまして及ばざるところは転作で三十万トン、これはトータルでございますが、需給調整を図るという取り組みを予定しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/78
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079・菅野久光
○菅野久光君 今の転作でということであれば、もう三月の末であれですよ。六十三年度需給調整を転作も含めてやるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/79
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080・甕滋
○政府委員(甕滋君) 緊急対策につきましての三十万トンの需給ギャップについて、学校給食の需要増を一万トン、それから流通在庫につきまして三万トンを見込みますと二十六万トン残りがございまして、このうち他用途利用米につきましては在庫調整分も含めまして十二万トンがございますので、残りの十四万トンにつきまして先ほど申し上げましたような地域におきます主体的な取り組みを期待する、こういう構成になっておるわけでございます。
その十四万トンの地域におきます取り組みの中で、需要拡大等によりまして埋められる分は、例えば政府の限度数量等におきましても復元をいたしますが、それによって及ばざるところは、十四万トンの需要拡大の残りにつきましては転作で対応をしていただくということで昨年末の緊急対策が定められたところでございます。その取り運び等につきましては生産者団体等とも十分協議をいたしまして、そういった枠組みで取り組んでおるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/80
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081・菅野久光
○菅野久光君 それでは、転作の関係について現在までのところどのような状況になっているか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/81
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082・甕滋
○政府委員(甕滋君) 六十二年度につきましては、既に御案内のとおり、水田農業確立対策の七十七万ヘクタールに対しましては一〇二%という達成率で取り組まれたところでございますが、六十三年度の対策につきましては、昨年からことしにかけまして県あるいは市町村等にその目標面積が配分をされておる。そして市町村から農家別にその配分が、当然作付前に間に合うように配分が行われるタイミングになっております。そういった中で、緊急対策にかかわる要転作面積等につきましても、それとあわせて農家レベルにこれから配分が行われてまいりましてその達成に取り組んでいただくことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/82
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083・菅野久光
○菅野久光君 そのために必要な転作の面積は、およそどの程度になる予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/83
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084・甕滋
○政府委員(甕滋君) 先ほど申し上げましたように、現在、各地域で積み上げられた数字を集計中でございまして、もう間もなくその結果につきまして御報告できる段階になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/84
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085・菅野久光
○菅野久光君 今集計中だということですから、いいです。
それでは、先般明らかにされたところによれば、六十三年産米の基本計画は政府買い入れ数量が二百八十九万トン、自主流通数量が三百七十八万トンということで自主流通米の比率を拡大するものというふうに伝えられております。これは恐らく政府在庫の増加を考慮してのものと思いますが、一方、さきに農水省がまとめた米流通改善大綱で示されたところによりますと、三から五年後に自主流通米比率を六割にするとのことでありますが、この六十三年産米については米流通改善大綱を先取りしたものではないかというふうに受け取れるんです。
いずれにしろ、国民の主食である米の管理に関する重要な問題については、国民の代表機関でありますこの国会において十分に論議する必要があるというふうに思うんです。それを経ないうちに少しずつ実質的な制度改革を行うことは政府の独断専行というふうに言わざるを得ないわけですが、この際、政府のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/85
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086・甕滋
○政府委員(甕滋君) ただいまお話しございましたように、自主流通米の拡大につきましては、消費者ニーズを的確にとらえまして、それに対応できるような民間流通の長所を備えております自主流通米の拡大を図ろうという考え方があるわけでございます。これは既に六十一年十一月の農政審報告におきましても、自主流通米に比重を置いた米流通の実現といった点がうたわれておりまして、昨年、米流通研究会でその辺の具体化の研究を十分していただきまして、現在私どもは米流通改善大綱といった形でその方向づけのもとに自主流通米の拡大あるいは流通過程の改善合理化に取り組んでいこうとしておるわけでございます。
六十三年産米について具体的にどうなるかといった点につきましては、現在関係者の意見を聞きながら三月末までに米穀の管理に関する基本計画を法律に基づいて策定しようということで、その中で具体的には集荷面あるいは販売面における政府米と自主流通米の数量の見通しを明らかにしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/86
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087・菅野久光
○菅野久光君 今言いましたように、黙っているとというわけじゃないんですが、どんどん政府の方の施策が先に行って、それを聞いて我々が質問するというようなことがよくあるわけですよ。それで先ほど大臣の所信表明の最後の「手順を尽くし」というここのところ、いい言葉だということを言ったのはそのことを申し上げているのであって、何と言ったって国民の大事な問題でありますから、政府の方で一応考えたことについてはやはり国会で論議をして、その上で実際の施策に移していくというようなことをぜひやってもらいたいというふうにこの点は要望しておきたいと思いますが、大臣、何か一言ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/87
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088・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 先ほど来御質問のポイントは、今重ねておっしゃるように、国会での論議を制約という言葉はおっしゃいませんけれども、制約を実質的にするような運びであってはいけない、こういうことでございます。国会での御論議を制約しようなんという大それた考え方は毛頭持っておりません。
ただ、農政審の中には各界各層の方々がおられる。そこで出された、集約された意見をもとにして、例えば米流通の問題は流通研究会をつくって勉強をして、そして農林水産省自体の一つの素案といたしましてそして運んでいる。その間には六十三年度のまた予算審議も行われている。また農林水産委員会で今まさにこうして議論をしておられる。そういうこともみんな含めまして推移をしている、こういうことでございますから、決して国会での議論を制約をしようなんというふうには思っておりませんし、また、それじゃ国会での結論が出るまで農林水産省は何も案を持たなくていいかというとそういうことにはなかなかならないのではないか、行政の責任はやはり果たしていかなければならぬ、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/88
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089・菅野久光
○菅野久光君 行政の責任は果たしてもらわなきゃならぬわけですけれども、可能な限りやはり国会で論議をすべき性格のものはぴしっと国会に出して論議をしていくということが手順を尽くすということにつながっていくんだということを私は申し上げておりますので、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。
それから、牛肉、オレンジ問題でありますが、先ほど一井委員から質問がありましたので、私は一点だけ聞いておきたいと思います。仮に牛肉が自由化されるとなると我が国の畜産、酪農は大打撃を受けることになるわけで、政府はあくまで自由化阻止でいくのか、それとも言われているように自由化時期を明示してその間に国内対策を進めようとするのか、どちらでいこうとするのか、今お答えできるのかどうかそれはわかりませんが、お答えできないとすればそれをいつ決めようとなさるのか、その辺についてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/89
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090・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) これも昨年来、私が就任いたしましてから申し上げていることでございますけれども、この三月末には大きな節目を迎える、これはもう事実でございます。しかも、なおかつ両国首脳同士が一月にテーブルをつくって、そして話し合おうということも確認をされておるということでございまして、そのテーブルづくりに全力を挙げておるということでございまして、テーブルができましたならばこちらの考え方、一口で申し上げれば、昨年来自由化は困難であるということをはっきり申し上げておるわけでございますから、そういう中でテーブルに着いてどのような話し合いの結果になるか、今いよいよ時期は迫っておるという感じではございますけれども、中身はどうなるんだ、こうなるんだという推測を、あるいは予測を申し上げる時期にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/90
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091・菅野久光
○菅野久光君 時期としてはアメリカの大統領選挙などもある何か悪い時期にぶつかっているというふうに思うんです。五十九年の山村大臣のときにこの問題がありまして、そのときに我が党の村沢委員が質問をした。山村大臣がアメリカとの交渉で帰ってきて、当時の中曽根首相、竹下大蔵大臣に、これは枠の拡大を受けざるを得ない、しかし、足腰の強い農業にするためには政府もそれなりの政策をやっていかなきゃならぬので、財政的な問題もよろしくと言ったら、わかったと、こういうことになったことを私どもはこの委員会で報告を受けているわけですよ。それから四年たつわけですよね。
四年たって、本当に足腰の強い、アメリカを初め諸外国に対抗できるようなことになったのかなっていないのか。今なってもやっぱりこれはもう大打撃を受けるから大変だと騒がなきゃならないんですね。そういう点では委員会で大臣が答弁されたそのことが着実に実行されていないのではないかというふうに残念ながら思わざるを得ない実態が牛肉、オレンジの前回の交渉からこの四年間のことを考えてみると思わざるを得ないんですよ。まあそんなことを含めながらこの問題にどういうふうに対応するのか、本当に難しい問題だと思いますけれども、とにかく、私に言わせれば政府はやるべきことをきちっとやってこなかった、そのツケを生産農家に回すようなことのないように政府としてもしっかり対応してもらいたいということを要望申し上げておきたいと思います。
時間がございませんので、水産の問題について御質問申し上げたいと思います。
五十年代後半になってやや落ちついたかに見えました我が国の漁業情勢は、六十年代に入ると再び厳しいものになりました。特に北洋漁業は米ソの飛躍的な規制強化によって第二次二百海里ショックと言われるほど深刻な打撃を受けました。そこで、この北洋漁業問題等漁業環境を中心に政府の見解をお尋ねしたいと思います。
まず、米国政府から締め出された北洋はえ縄、刺し網等の救済対策についてでありますが、米国はここ数年、急減させてきました対日漁獲割り当てを本年はついにゼロとしました。このため、北洋はえ縄、刺し網漁船が二十二隻、北転船二十七隻、小型トロール船十九隻が操業不可能となって、乗組員二千六百人と関連業界、ひいては地域経済にも深刻な影響を与えることになりました。これらの業界は、これまでアラスカ原住民に対する技術や資金援助等の血のにじむような漁業協力をしてきたのですが、アメリカはこのような実績を全く無視して極めて事務的、見方によればもう冷酷に我が国の業界を締め出したわけです。政府はどうしてこれを阻止できなかったのか、このような結果になったことに対してはどう責任をおとりになろうとするのか、そこをお尋ねしたいというふうに思います。
時間の関係もありますから、先ごろこのことにかかわって北洋はえ縄、刺し網漁業者に対して国際規制関連経営安定資金の緊急融資をすることを決定して、融資枠が十四億七千四百万円、貸付利率は年三%以内、貸付期限は三月三十一日まで、融資限度額は一隻当たり六千七百万ですね。そういうことでなされたわけでありますが、これはもっと早くに何かこういうような状況になることが決まっていた、それがこのようにおくれた理由は何かということと、それから、これは融資ですから、借りた金ですから返さなきゃならないわけですね。現在ほとんどの船は係留したままになっているわけです。わずかにカリフォルニア、カナダ沖のバラメヌケの漁場開発を八ないし九隻ぐらいで行っているということで、あとは全部係留しているわけですね。これからの仕事、それはどういうふうにお考えになっているのか、そのことをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/91
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092・田中宏尚
○政府委員(田中宏尚君) ただいま御質問ございました北洋はえ縄の二十二そうに対する融資でございますけれども、これは先生御承知のとおり、一月末にアメリカの二百海里内での割り当てがゼロということが最終的に決まりまして、それから各船の必要融資額というようなものを調査、集積いたしまして、それで三月上旬にようやく決定に至ったわけでございますけれども、率直に申し上げまして、割り当てゼロ後一カ月少しでやれたということは我々としても我々内の努力といいますか、過去よりはスピードアップに努めたという感じがいたしておるわけでございます。
それから、今後の問題でございますけれども、はえ縄の二十二そうはアメリカの二百海里内に依存している面がかなり強いわけでございます。ただいまお話しありましたように、一部はほかの代替漁場で操業もしておりますけれども、基本的にはあそこに対する依存というものは高いわけでございますので、一つは何とか代替漁場というものがないかということで業界も巻き込みましていろいろ相談しているわけでございますけれども、御承知のとおり、それぞれの海がそれぞれの漁業権なりあるいは許可漁業というもので埋まっておりまして、現在のところはなかなかはかばかしくいっていないわけでございます。その中でソビエトとの合弁事業というような話も出てまいっておりますので、そういう方向につきましても我々としてできるだけ支援なり協力なりして将来の姿を描きたいということで一生懸命やっているというのが現在の段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/92
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093・菅野久光
○菅野久光君 残余の質問はまた別の機会にさせていただきたいと思います。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/93
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094・上杉光弘
○上杉光弘君 私は、大臣の所信表明に関する基本的な問題について若干の質問をいたしたいと思います。
まず、農産物の自由化問題についてでございますが、これは当面の問題として当然政府としてお取り組みになっておるわけでありますが、政府は去る二月のガット理事会の勧告を受けて、いわゆる八品目を自由化する方針を決定いたしました。私自身としても、我が国の国際的な孤立は何としても避けなければならない、これは政府の選択としてもやむを得ない問題であった、こう思うのであります。しかし、問題は自由化に伴う事後処理でございまして、農林大臣はその御英断によりまして二月一日に農林水産省内に自由化関連対策を検討するためのプロジェクトチームを発足させられました。国内農業に不測の悪影響を与えないとの観点から早速検討に着手したと聞いておりますが、大臣のこの果敢な御判断は自由化の不安におののく農民に対しまして将来に対する期待感を与えたと私は高く評価をいたすものであります。
さような意味で、プロジェクトチームが発足して約二カ月間経過いたしたのでありますが、現在その検討状況はどうなっているのか。もとより成案を得る段階ではなかろうと思うのでありますが、具体的にどのようなことを検討されておるのかを御説明いただきたい。そして、一日も早く農民を安心させることはとりもなおさず政府の責任であり、政治の責任だと思うのであります。農水省の事務当局から御報告をお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/94
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095・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) ただいま先生の御質問のプロジェクトチームの検討状況でございます。
この点につきましては、粉乳等乳製品及びでん粉等を除くいわゆる八品目につきましてはガットに適合する措置に移行させることになり得るわけでございます。この基本といたしまして、先生お話しのとおり、我が国農業の将来に禍根を残すことがないということを基本といたしまして、まずプロジェクトチームにおきまして関係方面からの意見の聴取等を行っているわけでございます。
それで、このプロジェクトチームでございますが、十二品目等々に関連いたします農林水産省の関連局といたしましては、経済局を含めまして全部で四局あるわけでございますが、大臣官房の企画室に先生御指摘の農産物自由化関連対策検討プロジェクトチームを設置したところでございます。これにつきましては、手順を尽くしまして各方面からの検討を行うということでございまして、今申し上げましたヒアリングを図りながら品目ごとの特性、地域農業における地位等を配慮いたしまして、一つは農業生産対策、さらに二つ目といたしまして農産物加工対策等幅広い検討を現在連日行っているという状況でございます。この考え方は、三項目の申し合わせを踏まえまして、我が国農業への不測の悪影響を回避するための所要かつ適切な国内措置を確保する。あわせまして、国境措置を含めましての成案を得るということで現在なお鋭意検討を進めているところでございます。
私どもといたしましては、できるだけ早くこの内容をまとめるよう努力中でございますが、今しばらくお時間をいただければというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/95
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096・上杉光弘
○上杉光弘君 ありがとうございました。当面する問題でありますから、成案を得られるよう精力的にお願いをいたしたいと思います。
次に、牛肉、かんきつの問題でありますが、最近の新聞、テレビ報道によれば、近々大臣も訪米される、このようなことでありますが、この三月末で日米の協定が期限切れとなります。米国側はかたくなに自由化時期の明示をしなければ協議に応じない、四月に入ればガット提訴だとも言っており、一向に話し合いのテーブルに着こうとしない状況にあるわけでございます。これに対しまして大臣は、国会を初めあらゆる機会をとらえまして繰り返し自由化は困難である旨明言をされておるわけでございまして、大臣の発言を聞く限り大変心強いものを覚え、また全国の農家も大臣の発言によって大変な期待を感じておろうかと思うわけでございます。大臣の直接の御答弁もいただきたいと思うのではございますが、私はこの問題を考えますときに、むしろなぜ牛肉、かんきつ自由化が困難であるかという根本的、基本的な問題を伺って政府の認識を再確認いたしたいと思います。
米国との交渉に際しましても、最終的に物を言うのは我が国が買う方でございますから我が国の実情にある、こう思うのでありますが、この問題を通じて国民の皆さんにも広く我が国農業の実情を知ってもらわなければならないと考えますし、特に我が国の牛肉、かんきつをめぐる情勢がいかに厳しく、したがって自由化がいかに困難であるかということについて政府の認識を明らかにいたしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/96
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097・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 牛肉、かんきつの自由化が困難である、繰り返して申し述べてきたところでございますけれども、なぜ困難なのかということを率直に申し上げますと、仮に牛肉の輸入割り当て制度を無条件で短期間のうちに廃止をするとすれば、酪農を含む全国三十五万戸の生産農家、百二十万ヘクタールにわたる国土利用等広範な生産活動への打撃が懸念をされます。また、牛肉の国際需給面から見て、今後とも必要な輸入量を現在のような価格で安定的に継続確保できるか否かの懸念がありまして、生産性向上を図りつつ国内生産の確保を図る必要があると考えるわけでございます。
かんきつにつきましては、西日本の傾斜地における重要な作物であり、仮に輸入割り当て制度を無条件で短期間のうちに廃止をするとすれば重大な影響を及ぼす懸念がございます。なお、温州ミカンは需要の減少傾向に対応して園地の転換を実施しているなど厳しい状況下に置かれております。
このようなことから、牛肉、かんきつの自由化は困難であると考えておりまして、できるだけ早いうちに関係者との間で円満な解決が図れるように、テーブルができましたならば最善の努力を尽くさなければならぬ、こういうことで考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/97
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098・上杉光弘
○上杉光弘君 できるだけ早くということでございますが、とにかく日本の農業の実情に精通された大臣でありますから、私どもは大いなる期待を持っておりますが、よろしく頑張っていただきたいと思います。
さらに、牛肉問題に関連してでありますが、さきに申し上げました自由化、いわゆる八品目のうち牛肉調製品につきましては生肉に近いものが含まれていることは広く知られておるところであります。これが自由化されますと、たとえ牛肉を守ったといたしましてもその実効が失われてしり抜けになる心配がある、懸念がある。これについては自由化するのかどうか、政府のお考えをこの際お伺いいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/98
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099・京谷昭夫
○政府委員(京谷昭夫君) ただいまお尋ねのございました牛肉調製品でございますが、御指摘のとおりいわゆる十二品目の中に含まれている産品でございます。これに対する我々の対応といたしましては、非常に多彩な商品分野を含んでおりますけれども、牛肉調製品としてはガットでのパネル採択を受諾しておりまして、数量制限撤廃やむなしという判断を既に行っているところでございます。この場合、食肉調製品と申しましても大変多くの分野にまたがっておりまして、相当部分については食生活上の嗜好面から一定の制約があるだろうと考えておりますが、御指摘のようにシーズンドビーフあるいはローストビーフ等といったような比較的生肉に近い分野のものにつきましては、その性格から考えて国産の牛肉と競合する懸念も実はあるわけでございます。
そこで、私どもとしては、他の産品と同様に、現在、省内のプロジェクトチームにおいて対応策を検討しているわけでございます。まだその結論を得ておりませんけれども、その方向といたしましては撤廃時期の選択の問題、あるいはまたそれに合わせましてガットと整合性のとれた何らかの措置を具体化していくことが必要であろうということで検討を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/99
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100・上杉光弘
○上杉光弘君 検討に余り手間取って大変だということにならないように、さらにまた、先ほども言いましたが、牛肉を守ってみてもしり抜けになるような実態にならないようにお願いをいたしたいと思います。
それから最後に、米問題でありますが、米は自由化しないと大臣もはっきり言っておられますとおりでございます。しかしながら、先ごろ米国の包括貿易法案に我が国に米の市場開放を求める条項が盛り込まれている、そういう報道を我々はお聞きいたしておるわけでございます。依然として三百一条の再提訴の機会をねらっておるという感触を私どもは強く持っておるわけでございまして、これらを見る限り米国は市場の開放を求める姿勢を崩していない、私はそう思えてならないのであります。政府としては米の市場開放要求にどう対処していくのか、大臣の御意見を含めてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/100
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101・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 今、三百一条の動き、あるいは包括貿易法案、こういうことに関連しての米の自由化についてのお尋ねでございます。私どもも市場開放要求の中に牛肉、かんきつとあわせて米もアメリカの両院協議会で合意をされた、こう聞いております。おりますが、今回の合意というのは立法に対する一過程であるというふうに判断をしておりまして、私どもは昨年の臨時国会におきましても、またことしの通常国会に入りましてからも、総理からも私からもたび重ねて自由化はしない、国内で自給をする方針を堅持するということを明確に申し上げております中に、アメリカ議会において一面的に立法のための一過程としてそういうことが伝わってきておるということについて私自身は言及はいたしたくない、こういう考えでございます。我が方の主張は尽くせるだけ尽くして言い切っておるということでございまして、今言われる包括貿易法案等に対する考え方について言及はいたしたくないということでございますので、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/101
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102・上杉光弘
○上杉光弘君 米の自由化問題につきましては、総理府の調査にもございましたように、国民の基本食糧については七〇%以上の国民が自由化反対の意向を表明しておるわけでございまして、大臣のその基本的な姿勢と考え方で頑張っていただきたいと思うのでございます。
それから、この際に関連の問題としてお聞きしておきたいのは、大臣の所信表明の中にもございましたが、これまでなかった項目が一つございます。それは、国際化の時代を迎えて、とにかく我が国が孤立化しないために自由化を受け入れざるを得ない立場に立たされて政府もその選択をいたしたわけでありますけれども、その基本にあるものは国際間価格の縮小という点において、価格差があるから縮小というものが余儀なくされておるわけであります。さような意味からすれば、私は率直に申し上げまして、我が国のそのような立場から国際間の縮小ということで価格政策に取り組むということであれば、生産者価格だけに手をつけるというのは片手落ちというものではないか。流通機構等に対する手はつけられないものかというのが私どもの立場からいえば当然の考え方でございますし、さらにまた、具体的にそれらにどう取り組むかということをこの機会にお聞かせをいただきたいのでございます。
それからもう一つ、大臣の所信表明の十ページに、「生産コストの一層の引き下げを図るため、生産資材費等の節減のための取組みを強化する」と明言をされておるわけであります。農業生産者だけがバッシングを受けておるという現状の中で、国民世論もさることながら、流通問題、この生産資材費等に対する取り組みの強化をすることは、とりもなおさず農家だけがその帳じりを全部背負うということにならないことへの方向づけでもあろうか、こう思うわけでございまして、この際、事務当局の流通機構に対する今後の取り組みをどうされるのか。それから大臣には、生産資材費等の取り組みについての表明に関する考え方をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/102
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103・谷野陽
○政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、国民に食糧を安定的に供給するためには、農業の生産性の効率化とともに流通の効率化を図ることは極めて重要な課題であるというふうに考えております。
流通コストにつきましては、国によりまして消費をいたします食料品の構成形態が異なっておりますので、直接的な比較は困難でございますが、小売価格に占める流通経費の比率ということでとってみますと、我が国の流通経費の比率は諸外国に比べまして必ずしも高いわけではない、おおむね同様程度であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。しかしながら、今後農業あるいは食品産業の体質の強化、生産性の向上を図ってまいります際には、これによります効果をできる限り消費者に及ぼしていくために、流通につきましてもその機能の充実と合理化、効率化の一層の推進を図ることが重要であるというふうに考えておるわけでございます。従来から産地の出荷体制の整備、卸売市場の整備あるいは小売の近代化等をやってきたわけでございますけれども、今後、ただいま申し上げましたような農業あるいは食品産業の合理化、効率化にあわせまして、食料品の流通につきましてもその効率化に取り組んでいかなければならないというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/103
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104・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 生産資材費の取り組みを強化せよ、こういうことについて一言言え、こういうことでございます。一言申し上げて、あとは吉國農蚕園芸局長から補足をさせますけれども、全農等団体筋あるいは業界、こういうところに対して具体的に強力な行政指導をしなければならぬ、こう指示をしておりますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/104
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105・吉國隆
○政府委員(吉國隆君) 農業資材対策に関しまして具体的な点を若干申し上げさせていただきますと、農業機械につきましては、効率的な利用を図っていくということがコスト面で非常に重要な要素を占めておりますので、六十三年度の予算におきましても、機械のリース方式の導入、あるいは効率的な利用のための集中管理方式の採用、こういったことを含めまして新しい対策も講じてまいりたいというふうに考えているところでございます。
それから、肥料につきましてはバルクブレンディング肥料と言われておりますけれども、粒状配合肥料のことでございますが、バラ流通の導入の可能性について実証的な試験を行うための事業を予定いたしているところでございます。
また、農薬につきましては、むだな使用を省いていくという見地から、成育診断等の精度を上げながらそういったものを目指す事業というものを仕組んで取り進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/105
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106・上杉光弘
○上杉光弘君 最近の農業バッシングの実態を見てみますと、国際間の農産物の生産者価格が高いがために、その要因は国民の感情としてもそこへ行っておる、認識としてもそこへ行っておる。しかし、我々が考えると決してそうではなくて、生産者価格の倍か三倍で消費者に渡る流通機構の複雑さ、問題点、これは何としてもメスを入れなければ、農民が努力をして生産性を高めていく、技術を導入する、そういう段階で一方的になってしまう今の世論というものには私どもはどうも迎合できない。ですから、生産者価格を言うなら流通問題について政府の行政指導や問題点の解決のための取り組みをよろしくお願いを申し上げたい。
さらに、生産者価格を高めておるのは資材の供給のあり方や資材の流通にも問題があるわけでございまして、これらに対する取り組みは、今お聞きいたしましたけれども、所信表明の中でこれはやる、強化すると大臣が表明をされたわけでありますから、大いなる期待を持っておるわけでございます。
それから、関連する問題でございますが、まず自由化を余儀なくされた今日の日本の農業、これを守っていくためには幾つかの課題があると思いますが、特にプロジェクトチームを置かれまして生産や加工の問題までお取り組みになって成案を出されるわけでありますけれども、その前段階の基本的な問題として、私は、今後の農林業の振興並びに農山村の活性化の政策を進めていくに当たっては、ひとり農水省だけでできる問題ではないと思っておるのであります。そのような立場に立てば、当然政府は横の連携をもとった上で総合的にこれに当たっていく必要がある、そのような考え方を持つわけでございますが、この前提に立ってまず経済企画庁に国民経済の立場からお尋ねをいたしたいと思います。
私は、なぜ経済企画庁にお尋ねをするかといいますと、農水省は、広報室が発表しておりますが、農業の多面的な機能や役割を金に換算をいたしておりますが、私は精度の上からはそんなに高いものではないし、数学的な手法を取り入れた因数分析、要因分析等でもありませんから説得力を欠くと思っておるわけでありますが、それでも三十六兆六千二百億という農業の持つ多面的な機能、役割を評価いたしておるのであります。当然、経済企画庁としては、農林業の位置づけというものをどのようにされておるのか、私はこの際見解をお聞きしておかなければならぬと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/106
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107・三宅輝夫
○説明員(三宅輝夫君) ただいま先生からのお尋ねで、農林業そしてその産業が営まれております農山村、その国民経済的な立場からどういうふうに考えるのかということでございますが、私どもといたしましても、まず何といいましても農業は国民生活にとって最も基礎的な物資である食糧の供給を行っておる、これはだれも異論のないところでございます。
しかし、それだけではなくて、国土の保全であるとか、自然環境の維持、培養であるとか、水資源の涵養であるとか、種々多面的な役割を有しておると考えますし、そういう産業が営まれております農山村自身の重要性ということは言をまたないところだと考えております。そういう意味から農林業、それからその産業が営まれております農山村の広い意味での健全な発展と活性化ということは非常に重要な国民的な課題であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/107
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108・上杉光弘
○上杉光弘君 さらにお尋ねをいたしますが、そのような前提、認識に立った上でお答えをいただきたいと思います。
さすれば、農村や農業が持つ多面的な機能、役割、これについての国民経済等を預かられる経済企画庁とされましては、定性的な国民の評価から定量的に評価する方向づけは農水省がすべき筋合いのものではない、経済企画庁が当然やらるれべきものであり、定量的な評価の上に立った農林業政策というものが展開されていくべきであると私なりの見識を持っておるわけであります。
そのような意味で、農山村や農林業が持つ多面的な機能と役割を定量的に評価することについての考え方、さらにこれを計画化した上での一つの役所としての責任というものはどうお考えになっておるのか。農林水産省ひとりがこの農林業の政策を推進するということについては大変難しくなった今日であり、国民世論等の支援、国民の理解、納得というものが裏になければできない、打ち出せないという現状を考えるときに、経済企画庁の考え方を私はお聞きしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/108
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109・三宅輝夫
○説明員(三宅輝夫君) 先生のただいまの御質問で、定量的な意味での、例えば水源涵養の量であるとか、あるいは国土保全、自然環境の維持についての定量的な分析ということでございましたが、ただいま先生がお述べになられましたような三十六兆円云々というのはまさに農林省の方でお考えになられた一つの案として私どもは承っております。
ただ、それに対応します形での経済企画庁としての計数的な判断はただいまはございませんが、実は現在、経済審議会におきまして新しい経済計画の検討が行われておるところでございまして、その中で今後の農林業及びその産業が営まれております農山漁村のあり方につきましてはちょうど今議論が行われておるところでございまして、新しい役割を十分認識した上での今後の経済計画への策定という方向で進めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/109
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110・上杉光弘
○上杉光弘君 私は、ただいま答弁をお聞きして、極めて重大なる御答弁をいただき、今後の方向に対する期待感を深くいたしたところでありますが、経済企画庁としても農林業の振興ということは、私なりに考えまするに、これは国土保全ということにつながるわけでありますから、これ以上農林業の振興というものが後退をしていけば、我が国の国家の存立の基盤である国土保全というものはどうにもならない状態に追い込まれていく。そういうものをおもんぱかればおもんぱかるほど経済企画庁の積極的な国民経済の立場からの評価というものをお願いいたしたいと思います。
私は、かつて五十一年でありましたか、地方議会におるときにスイスにお伺いしました。観光行政視察でございますが、あのアルペン酪農地帯のハイウエーを観光バスに乗っておりましたら、時々とまる。時々とまってバスガイドが黄色い草花を引き抜いてきて、そしてそれを袋へ詰めて発車オーライをやる。多いときには運転手までおりていく。私はいぶかってこのことに対する質問をいたしました。そうしたらバスガイドがこう言ったのであります。スイスという国は、御案内のとおり観光と農業で成り立つ国でございます、スイスの観光資源はこの牧歌的なアルペン酪農を中心にしたものであります、こういう答えであります。もし牛が黄色い草花を牧草と一緒に食ったなら中毒するか死ぬでありましょう。私どもは国民教育の上で、黄色い色素を持った草花というのはおおむね毒草と思えと教えられております。教育に従ってこうしたまでと、こういう言い方をしたのであります。
また、スイスの農務省へ行って農政の基本というものを聞くと、一口に言えばどんなことであるかというと、スイスの農政というものはまず農民の位置づけ、農業の位置づけが明確に出されております。すなわち、農民は三百六十五日、暑かろうと寒かろうと、雨の日でも風の日でも一日も休むことのない食糧生産と国土保全の任を課せられた国家公務員である、こういう認識がスイスの農政の基本にはあるのであります。私はそのバスガイドが農家の出身であったか町の出身であったかは知りません。しかし、農業とは余り縁のないバスガイドという職業の女性の口から、国民教育の上でそのようなことまで教えられていると聞いて、考えますと、我が国の社会教育や学校教育との落差を必然的に強く感じないわけにはいかぬのであります。
したがって、文部省にお尋ねをいたしますが、農林水産省との接点、連絡会議であるとか、国民教育の取り組みのための対応というものがどうなっておるのか、このことをお尋ねをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/110
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111・森正直
○説明員(森正直君) 御説明申し上げます。
文部省は、学校教育を主管いたしておりますが、あるいは御案内かもしれませんが、文部省の告示に学習指導要領というのがございまして、その中で小学校、中学校、高等学校等の教育課程の内容を定めているわけでございます。農業、農山村につきましては、社会科の中でもとりわけ重視しておるわけでございます。それから教育課程の基準を定めてまいります過程で農水省、あるいはほかの産業分野であればほかの関連省庁と十分協議をしながら学習指導要領というものを定めていく、そんなプロセスを経ております。
ちなみに、現在学校教育におきましては、小学校を例にとりますと、農業が我が国の最も重要な産業の一つであるという認識のもとに、我が国の農業の特色ですとか、農村の役割ですとか、農業の技術、経営の改善などにつきまして子供の発達段階に応じて指導することといたしております。
例えば手元に東京書籍という大きな出版会社の「新編 新しい社会」という小学校五年生の教科書を持ってまいりましたけれども、それを見ますと、例えば第一章が「わたしたちの生活と農業」、中身といたしまして、「稲作のさかんな地域」ですとか、「稲作の仕事をおもにする農家」ですとか、「町と農家の協力」ですとか、あるいは「野菜」、「畜産」、「農業と国民の食生活」、そういったことを半分以上のスペースを割いて子供に教育するようにいたしております。教科書の後半に入りますと、水産業ということで「漁業と漁場」、それから水産業の地域的な役割と状況とか、「これからの日本の水産業」、そういったような記述が残る部分を占めている、そんな教科書になっております。
それから、中学校におきましても大体似たような傾向でございますけれども、ただ、中学校になりますと社会科の中身が地理的領域と公民、つまり市民を育てる市民的領域と歴史的領域という三つの領域になりますので、農業関係につきましては、主として中学校では地理的分野の日本の諸地域の学習ですとか、それから農村と都市の役割ですとか、そういったことで取り上げておりますのと、あと公民的な分野、市民的領域というところで、例えば、先ほど来お話に出ておりますが、世界と日本の貿易問題ですとか、そういった角度からもこの農業、農村の問題を取り上げているわけでございます。三つ目の領域でございます歴史的な分野におきましても、日本の農業、農村というものを時の流れに従って、それこそ縄文、弥生のころから現代に至るまで、農村、漁村といったものについても記述をしかるべく割いて教育を行っているところでございます。
それから、高等学校におきましては地理と歴史と現代社会というふうに分かれますけれども、現代社会というのは現代の諸問題を扱っておりまして、日本の農業の問題を都市化と絡めましたり、国際的な構造の中で取り上げましたり、そういったことをやっております。それから政治経済という科目がございまして、その中でも現在非常に問題になっている農業関係の明るい面とか、課題となっている面ですとか、そういったことを教科書でも取り上げておりますし、教室でも教え、考えさせるというような努力をしているわけでございます。
御案内のように、高等学校には農業科というのがございまして、農業科におきましては、今まで申しました一般の児童生徒に対するものとはちょっと違って、例えば生産、経営に関する基礎、基本の知識、技術ですとか、農業、農村の意義、役割といったものについて、もっと突っ込んだ形でいろんな能力と能度を育成させるというようなことを考慮し、努力しているわけでございます。
以上は学校における座学的なものを中心としたことでございますけれども、あと例えば、文部省が各都道府県と協力しながらやっております事業といたしまして、小中学校について、ふるさと交流学習促進事業というのがございまして、これは例えば都会の子供が農村へ、農村の子供が都会へというようなことで小中学校が相互に交流を図り、児童生徒にいろいろな体験を得させて、農山村、農業といったものについての理解を深めさせるというようなこと等をねらいとして実施している交流学習事業が一つございます。
それから、これもやはり小中学校でございますけれども、勤労生産学習の研究推進校というのもやっておりまして、これは全都道府県小学校、中学校にお願いしまして、文部省が指定する期間、一区切り二年間といたしまして、細かいところは学校の創意にゆだねておりますけれども、学校林とか、学校農園とか、あるいは近くの農村ですとかいろいろお願いしまして、農作物の栽培とか草花の栽培とか水田耕作ですとか、あるいは収穫祭、お祭り行事ですとか、あるいは木や何かを利用した道具の製作ですとか、いろんなことを子供たちに体験させ、農業、農村というものについて肌で考えさせていくというような事業もいたしております。
それから高等学校につきましても、これも一校二年間ずつで研究テーマを文部省と県とで協議いたしまして、そのテーマは例えば生産活動を中心とした勤労体験学習ですとか、あるいは学校農園等を活用した勤労体験学習ですとか、そういったことを各都道府県全国五十校ぐらいずつでございますがお願いいたしまして、農業を含む働くことの意義や意欲、それから農業、工業等の日本における役割、意義といったようなことについて考えさせるとか、望ましい勤労観あるいは職業観をはぐくむというようなことに役立てようということでこういった事業を進めているところでございます。
大体私どもの行っております事業を概略申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/111
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112・上杉光弘
○上杉光弘君 私はそんな答弁があるんじゃないかと思ったんですよ。全然産業と結びつかない。
農業を取り巻く環境というのは、自然環境、それから経済的な環境、外交があるかもしれない。もっと大切なベースになるものは国民の理解や認識や評価なのであります。文部省が進めているようなもので農業が持つ多面的な機能、役割というものが、農村が持つ多面的機能と役割というものが正しく国民に理解されて評価されるかというと、そんなものじゃどうにもならぬですよ。ですから、私は文部省には今後農水省とはより接触を、接点というものをみずから求めてもらって、そして学校教育のみならず、社会教育や企業教育の分野まで文部省が大いなる国民教育の立場から方向づけをしていただきたい。
この問題はまた後日時間をとって質問をいたしたいと思います。
それから、もう時間がありませんから、農水省にまた戻りたいと思いますが、その前に国土庁に一つだけ質問をいたしておきたいと思います。
日本の国土というのは八割が山林、原野、農村地帯といわれるところでありまして、まさに国土の大宗をなすのがこの農山村であります。そのような特殊事情がございますが、日本の国土として外国にはない特殊な事情が私は幾つかあると思うんです。
その一つは島国で国土が大変狭いということ。二つ目には、国土の大半が国土の大宗をなす山林であるということ。しかも山林は急傾斜であるということ。それから三つ目には、火山灰土で覆われている、災害の危険を常に伴う土質であるということ。また、河川が非常に多く、雨量が豊富であるということ。このような国土としての特質があると私は思うのであります。
さような意味で私が申し上げたいことは、農林業というものが受け持っておる、農山村が受っ持っておる国土保全という役割はより国民生活に密着しておると思います。これは諸外国とは違った特殊な事情ではないか、このように思っておるわけでございますが、国土庁のお考えをお聞かせいただくと同時に、そのことから今後どのような方向づけをされようとしておるのか、あわせてお尋ねをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/112
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113・森永正彬
○説明員(森永正彬君) 先生御指摘のとおり、我が国の国土の条件というのは非常にいろんな特殊性がございます。
特に、狭い国の中に山林なりが多いわけでございまして、それが治山治水の大きな役割を果たしているという特色も我が国では特に見られるところだと思っております。それから雨が多い、台風、豪雨、豪雪その他が非常に多いというのも我が国の一つの特質でございまして、そういった自然現象に対しまして国土を保存するというのが非常に重要なわけでございますが、山林それから農山村群がそういう役割を担っているということも事実かと思っております。
私どもといたしまして国土保全をこれから進めていく場合に、治山治水の事業、そういったものを大いに進めていかなければならないというふうに思っておりますが、単にそういったハードな事業ということだけでなくて、四全総でも触れられておりますが、安全で潤いのある国土の形成、こういった観点から、まさに豊かな環境の保全、特に森林なり水田の持つ国土保全機能、こういったものを活用していくとか、それからさらには狭い可住地の中で人口なり諸機能が非常に過密なところと過疎なところがございます。こういったものの分散といいますか、均衡ある国土利用というものを図りまして、全体として安全で潤いのある国土構造に持っていかなければならない、そういう面がさらに国土保全という意味にも非常に役立つかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/113
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114・上杉光弘
○上杉光弘君 もう時間がなくなりましたから、最後に農水省に戻りたいと思います。
農業バッシングで農業予算、特に価格政策を削る、あるいは構造政策が思うように進まないという、我が国の農政というものは財政当局の首を縦に振った状態でなければ政策を打ち出そうにも打ち出せない。政策選択の幅が極めて硬直化した状態になっておると私は思うのであります。しかし、よくよく考えてみますと、例えば農業が後退すれば国土保全という機能が損なわれる。農林業というものがしっかりしておれば国土保全というものは守られるわけでありますから、国家存立の基盤は揺るぎないものでありますし、また、町に住む人たちも水不足とか、あるいは工業が水がないために回らないとか、そういうことにはならない、将来の国の発展的方向というものは極めて安定したものになる、こう思うわけでございます。
そのような意味で一つだけ数字をとらえて言いますと、治山治水事業は、第一次が昭和三十五年からともに始まりました。当初、実績にいたしまして第一次の昭和三十五年から三十九年の五カ年計画では七百二十九億円の計画に対して治山事業は八百五十七億かけております。昨年から第七次が始まっておりますが、計画にして既に一兆四千百億円を数える状態になってきた。治水事業につきましては第一次が三千六百五十億の計画に対して、四千三百五億円という実績を示しております。第七次の去年は、八兆円の計画であります。これは社会の仕組みやあるいは人間の、国民の居住区分やあるいは林道が開発された、あるいはその他の開発事業によってこういうものがかさんでおるという説明もありましょうけれども、基本的なものとしては、農林業というものが衰退をしたことに起因することをなしとしない。特に、治山、治水事業の最も大切な辺地、過疎地における人口の減少、農家戸数の減少というものは歴然とした裏打ちとなっておると私は思うのでありまして、農林業を振興することはとりもなおさず国の基本である。
いただきました資料によりますと、六十一年度末でございますが、土石流の危険箇所が七万箇所以上ある。七万四百三十四箇所の河川が、溪流がある。地滑りの危険箇所は一万二百八十八箇所、そして、急傾斜の崩壊危険箇所というものは六万二千五百七十箇所、山腹崩壊危険地区が八万四千三百箇所、崩壊土砂流出危険地区というのが八万六千二百箇所ある、こう言われておりまして、潜在的な危険箇所はこれを何倍も上回るものではないか、こう思っておるわけであります。
これらに対する財政負担は、農林業の予算を削減してみても、一方でふえれば国家財政という立場からすれば何も意味をなさないことになってしまう。さような意味で、そのようなこと等も前提に置いて農村と農業が持つ多面的な機能と役割について定量的に評価する方向づけをするための農水省内にプロジェクトチームを置くとか、あるいは研究調査のための予算措置をするとか、そういうことについてのお考えを、まず事務当局のお考えを最後にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/114
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115・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 先生のお話の流れに沿って申し上げますと、先ほど具体的な数字をお話しの農林水産業の公益的機能の評価という問題は、昭和五十五年の時点におきます例えば大気汚染の問題とかそういったものに重点を置きつつ評価されたものでございまして、その場合におきましては、トータルの数字ではございますけれども一つの歴史的な役割を果たしたというふうに考えているわけでございます。もちろん、農林水産業の持っている多面的な役割それぞれにつきまして評価の問題等々ございまして、これも先生御案内と思いますけれども、技術会議に総合的プロジェクトということで、農林水産業が持つ国土資源と環境の保全機能及びその維持増進に関する総合研究というものを実施しております。その中におきまして、二地域の流域でございますけれども、具体的な評価の手法というものを磨いていかなければいけないというふうに考えているところでございます。
先ほど来お尋ねのように、農林水産業についての多面的な機能等につきましては、そういった研究等を踏まえまして、かつまた先ほど御指摘の五十五年のデータというものを踏まえまして、私どもその精度を高めていかなければならないというふうに考えます。さらにまた、農林業が置かれております多面的な役割といったようなものを、関係各省とも協力をいたしまして国民の方々に理解をしていただく、そういったような努力も傾けていかなければならないというふうに考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/115
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116・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 時間がありませんので、簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/116
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117・上杉光弘
○上杉光弘君 時間が来ましたからこれで終わりたいと思いますが、農林業の政策を強力に推進していくためには、何としても国民の理解と合意というものが得られなければならない。そのような考え方に立てば、国民に理解させる手だてとしては、農村が持つ、農業が持つ多面的な機能、役割というものを定量的に評価することであり、それを理解させることだ。どうしても定量化政策というものを強力に推し進めていただきますよう提案をし、お願いをして、最後に大臣の決意のほどをお聞かせをいただいて、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/117
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118・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 簡潔に申し上げますが、今ほど委員の御見識をいろいろ承りまして、特に国土保全関係、このことについてのお話もございました。いろいろ数字を挙げられましたが、災害対策基本法、それに基づく地域防災計画、そういうものの中で関係各省庁が集まって会議を重ねていることは事実でございますけれども、なおまだ配慮をする必要があるなと。しかし要は教育でもあるということになると、文部省に対してもっと横の連絡をとりながら私どももやらねばならぬ、そういう感想を持った次第でございます。
林野庁におきましては、学習指導要領にない部分を副読本として、山の持つ機能、そういうことについて教育部分での副読本を出しておりますけれども、しかし、そういうものがぴしっと学習指導要領に盛られるようになればいいなと思いますし、そういうことについては私どもが農林水産省として積極的に農林水産漁村、そして農林水産業、このことについての認識を国民各界各層にしみわたるように努力をしなければならぬなと思った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/118
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119・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
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午後一時二十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/119
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120・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査のうち、昭和六十三年度農林水産行政の基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/120
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121・刈田貞子
○刈田貞子君 私は、まず最初に農村婦人の対策の問題について質疑をさせていただきます。
歴代の農林大臣に農村婦人の対策についてお伺いをいたしておりますので、大変農村問題にお詳しい大臣と伺っておりますので、婦人対策についても大変懇ろな対策を講じていただけるものと思いましてお伺いをいたします。
ことし三月十日を農山漁村婦人の日と設定されましたけれども、これは私大変喜ばしいことであろうというふうに思いますが、この農山漁村婦人の日を設けられた理由と、それから今後どのようにこの日を生かしていかれるのか、まず大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/121
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122・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 六十三年から農山漁村婦人の日を新しく設定させていただいたわけでございます。農山漁村において婦人が農林漁業生産、あるいは健全な農林漁家生活の運営に大きく貢献いたしておりますし、農山漁村社会生活の維持発展の上でも重要な役割を担っておられるわけでございます。農山漁村婦人の日は、こうした農山漁村婦人の役割を正しく認識すると同時に婦人の能力活用を促進することを目的として設定をいたしたわけでございます。農山漁村婦人の地位の向上、農林水産業、農山漁村の発展という観点から意義深いものと私どもは考えておるわけでございます。
我が省といたしましては、農山漁村における婦人の役割の重要性にかんがみまして、この農山漁村婦人の日の成果も踏まえまして、協同農業普及事業を初め各種の広報手段等を通じてこの日を設けた趣旨の普及にまずは努めたい、農業団体等の関係組織や地方公共団体とも協議しつつ、この日にちなんだ諸活動が展開されるよう努力をしてまいりたい、農山漁村婦人対策という大きなとらまえ方におきましてもこれを推進することについて努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。その手始めは三月の十日、実は一つの事業をやったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/122
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123・刈田貞子
○刈田貞子君 大臣もよく御存じのとおり、農村で農事に従事している女性というのは、百五十日以上農事にかかわる婦人は六五・五%という数字がございます。一方で、言ってみれば半分以上を占める労働力として農村で婦人が活躍をしているにもかかわらず、その農村婦人の地位というものを考えた場合に、まず我が家で自分の農業経営に参加する農家主婦の割合、あるいは経営方針を決める資格を持っていると考えられる農家主婦は一一・三というような数字が出ておるわけですね。あるいは、財産名義を持っている人が非常に少ないということ、それから地域の集会に参加する人という場合には一〇%程度しか数値が上がってこない。あるいはまた農協あるいは農業委員会の委員、役員、こういう者に関してはその数がまことに少ない。こういうことで農村社会におけるその他位というものを考えた場合には非常に位置づけが低いと私どもは考えております。
大臣御存じのことと思いますけれども、国連で定めておりますところの婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約というものがございますが、その条約の十四条で、農村婦人に関する特別の問題ということがいろいろ論議をされておりますけれども、そこで八つの農村婦人の権利がうたわれておるわけでございます。これはまたお時間がおありのときにぜひ御婦人の方からレクチャーを受けていただきたいのでございますけれども、協同組合を組織する権利とか、あるいはまた適当な生活条件を享受する権利とか、あるいはまた地域活動に参加する権利等々も含めまして八つの権利がその差別撤廃条約の中でうたわれておるわけでございまして、こういう問題を考えますとき、我が国の状況はこの撤廃条約に比較してまだまだ非常に課題が多過ぎるというのが実情ではないかと私は思います。
さらに、この差別撤廃条約の二条では、そうした事実関係の環境整備をするだけでなく、農村社会における――農村社会とは言わないんですが、婦人に関するあらゆる環境の慣習、慣行に至るまでその差別を修正ないしは廃止する、こういうことになっておりまして、慣習、慣行に至るまで差別をなくすということは今日の農村社会においては大変に厳しい実態があろうかというふうに思うのでございます。したがいまして、今後農村婦人の地位の向上、あるいは共同して農村社会で営農を行っていく労働力として参加していく、そしてその利益を享受するという立場をつくるときに、婦人に対する課題というのは非常に多かろうと思いますが、もう一度御答弁お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/123
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124・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 重ねての御質問でございます。特に国連における差別撤廃の条約、これを引き合いに出されてのまた御議論でもございます。私、まだ経験乏しゅうございますが、例えば人口問題等におきましても国連筋と連携のもとでアジア地域であるとか、あるいは中南米地域であるとか、いろいろなところへ出かけてまいりますと、やはりそうした問題についても婦人の地位それから婦人の権利義務関係、特に権利の関係が強く主張されることがしばしばでございまして、乏しい経験でございますけれども、そういう経験も踏まえながら私は取り組んでまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/124
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125・刈田貞子
○刈田貞子君 そうおっしゃられますけれども、課題は具体的には非常に多いですね。
局長、いかがでございますか、具体的にこれから農村の婦人の地位を高めていくために、具体的にはまずどんなことから手がけていけばよろしいというふうにお思いでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/125
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126・吉國隆
○政府委員(吉國隆君) 先生御指摘になりましたように、これは先生も慣行というような言葉もお使いになったわけでございますが、我が国の農山漁村社会なり家庭生活におきまして、どちらかといえば固定的な性別の役割分担意識というものがあるのじゃないかという認識をいたしているわけでございまして、こういった意味から婦人の役割、能力についての社会的評価というものをきちんとしていく、また、その基礎の上に立ちまして各種の分野での婦人の積極的な参画、役割開発ということをやっていかなくちゃならないという基本認識をいたしているところでございます。
先生もお触れになりました国連の動きというものを背景にいたしまして、御案内のように昨年の五月に「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」というものが決まっているわけでございまして、ここで柱として取り上げられている点が四つございますが、一つは先ほど申しましたような意味で婦人の役割についての正しい認識と評価を確立していくという問題でございまして、農山漁村婦人の日の設定もまさにこういった角度から行われているわけでございます。
二番目の柱としては、技術面並びに経営面についての普及指導ということがございます。
三つ目には、生活面での総合的な普及指導、この中では健康面の問題等も非常に大きな要素として取り上げられているわけでございます。
また、四つ目には、各種の地域におきます農林水産業あるいは地域社会活動、そういったもの、あるいは先生のお触れになりました農業委員会、農協等の方針決定の場への参画、こういったことが柱としてうたわれているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/126
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127・刈田貞子
○刈田貞子君 私は、農村で婦人たちが元気を出す、非常に力を発揮するということで農村の活性化は大いに進むと思います。ぜひ農村婦人の対策についてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。
次に、大臣が所信の中でうたわれました土地利用型農業の体質強化を目指した構造改善を積極的に進めるということで、構造政策についてその基本だけを一部お伺いいたしてみたいと思いますが、五十五年の「八〇年代の農政の基本方向」、ここで六十五年までの十年間に農地の流動化九十万ヘクタールを出され、それから土地利用型部門の大規模農家三十万戸というような目標を立てられておるわけでございますけれども、この農地の流動九十万ヘクタールというのは十年間で考えれば年間九万ヘクタールが流動しなければならないということになります。
データの細かいのがないものですから、五十八年で計算をいたしてみましたが、五十七年がピークで、以降横ばいという感じのようなんですね。五十八年のところで見ますと、有償移動で三万八千ヘクタール、それから農地法三条による賃借六千、それから利用権設定、つまり農用地利用増進法ですね、これでは四万、ここで合わせて八万四千が五十八年一カ年で流動した。そうすると、平均年間九万ヘクタールの流動化を予定しているということになると、五十八年がその目的に一番近く流動化が進んだのではないかというふうに私は思うんでございます。
さらに、六十一年に出ました「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」、これによれば、さらに加速を加えて土地の流動化を図っていくことが非常に急務であるということを書いておられますね。ということは、基本的には五十五年の当初の目的どおりには移動していないと思われるんですけれども、まずこの辺のところからお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/127
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128・松山光治
○政府委員(松山光治君) 農地の流動化を進めまして農業構造の改善を図っていく、御指摘のとおり、大変重要な課題であるというふうに考えております。
最近の流動化の状況でございますけれども、今五十八年の八万四千ヘクタールという数字のお話がございましたが、大体その後の状況を見ましても、農用地利用増進法によります利用権の設定を中心といたしまして、年間八万五千ヘクタール前後の流動化量、こういう形で進んでおるわけでございます。
ただ、単年ごとの数字につきましては、期限切れになりまして更新するといったようなものも入ってございますので、そういったダブりを除去いたしまして大ざっぱに推計いたしてみますと、五十六年から六十一年までの六年間でネット移動いたしましたものが大体四十二万ヘクタール程度というふうに見込まれます。単年にいたしますと大体平均七万ヘクタール程度、こういう水準になるわけでございまして、かなりの流動化の進展は見られるわけでございますが、今先生御指摘のございました「八〇年代の農政の基本方向」で想定いたしました年間九万ヘクタールという規模からいたしますと、それの大体八割弱というのが現在の姿である、このようにお考えいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/128
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129・刈田貞子
○刈田貞子君 私も、その更新の分とかあるいは作業受委託の問題とか、あるいはまたやみ耕作でしょうか、何か数量的にあらわれてこないものも見ますと目的数値に近いものがあるのではないかなというふうに思われますけれども、統計上はそういうものが出てきませんので、やはり当初の目的よりは少しおくれているのではないかなというふうに思っております。
問題は、量の問題よりは質の問題のことを考えなければいけないのではないかというふうに思うんですけれども、流動化に際していわゆる中核農家、さっき言いましたように、当初の目的として大規模中核農家を三十万戸つくっていくということがうたわれているわけでありますから、農地の流動化が中核農家への面的利用として集積されていかなければいけないわけですけれども、それが果たしてどうなのかということでいろいろ数字を拾ってみたり調べてみたりするわけですけれども、この辺がもっと厳しいんじゃないかと思うんです。例えば流動化奨励金ですか、交付の条件をいろいろ変えたりして御苦労なさっていますね。けれども、果たしてこれが規模拡大の確実な数値に結びついているのかいないのかという流動化の質の問題、このことについてはどういう御認識を持っていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/129
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130・松山光治
○政府委員(松山光治君) どういう階層からどういう階層に土地が動いているか、こういうことでございますが、今手元にございます農用地利用増進事業におきます賃借権の設定の状況、これを都府県について見てみますと、六十一年の場合で下層の方から上層の方に動いたものが全体動いたうちの六割強を占めてございます。下層に移動したというのもごくわずかでございますがございます。あと残りの三割ちょっとが同一階層間の移動でございます。
その他、農地保有合理化促進事業によります面積移動などを見ましても、最近におきましてはできるだけ将来ともに農業を担っていただく人に使ってもらうということで、いろいろ各地で御努力いただいておるということを反映いたしまして、上層への移動が多くなっているということは私どもも認識をいたしておるところでございます。
絶対値の点についてはいろいろと御議論があろうかと思いますが、例えば都府県の場合で五十五年に九万五千戸でございました三ヘクタール以上の層が、六十二年には十二万五千戸というように増加しておるというようなこともございますので、我々としてはなお努力を必要とする面が多々あろうかとは思いますけれども、方向としては上層の方への集約化という点が進んでおるというふうに認識しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/130
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131・刈田貞子
○刈田貞子君 これは私の考え方なので、違っていたら違うとおっしゃっていただいていいわけですけれども、私、昨年の九月十六日の農業会議所の大規模稲作農家における水田小作料の実態に関する調査というのを見ていて、実勢小作料についてはかなり高いと答えている農家が一〇・四、それからやや高いと答えているのが三七・一で、これを合わせますと四七%の農家が採算から見て非常に高いというふうに小作料の問題を言っているわけですね。
現に、標準小作料から見れば三割高というようなものもあるわけで、この辺のところを見ますと、例えば大規模農家が五ヘクタールのうち一ヘクタールを借りていた。そこに払う小作料は幾らになるか。米価も下がった、それから減反も進むというような中で、果たして採算のとれる小作料というのはどのぐらいのところを考えればいいのか。農家自身は二万五千一円というような数値をここの中で出していますよね。希望の価格というのが出ていますけれども、果たしてどの程度の小作料が一番適正なのか。
私は、小作料が高過ぎるということも土地の流動化を阻む一つの事情になっていないかどうかということが知りたくて小作料の問題を取り上げたわけでございますけれども、これはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/131
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132・松山光治
○政府委員(松山光治君) 小作料水準の見方についてのお尋ねでございますけれども、借りる方からいたしますればできるだけ安い方がいい、貸す方からすればできるだけ高い方がいい、こういう性質の問題でございますので、なかなか一概に判断しにくい問題でございます。
農業会議所が行いました昨年の調査で先生御指摘のような結果が出ていることは私どもも実は承知をいたしておる次第でございます。
小作料の水準は地域によって大分異なっておりまして、これは米の生産力の水準もございましょうし、それから農地の賃貸借の需給関係といったようなものも反映しておるわけでございますが、六十一年の米の生産費調査によりますれば、一番高いのが東北でございまして、十アール当たりで見まして約四万六千円。水田でございます。ところが、東海になりますれば二万円というような水準になっているわけでございます。平均で三万六千円の小作料水準。これは会議所の調査も大体そのあたりの水準になっておったかと思います。ちなみに、標準小作料の平均水準は大体二万七、八千円が平均でございますので、それを上回っておることは事実でございますけれども、その標準小作料と実納小作料の開きぐあいが最近だんだん縮まってきておるというのが一つございます。
同時に、今度支払い能力という点からいたしまして、米でどれぐらいの土地収益を上げておるかということを生産費調査から見てみますと、規模の大きいものほど土地純収益が大きいという関係があるわけでございますが、六十一年の調査結果から見ます限りでは、一・五ヘクタール以上の層では、土地純収益がそれぞれの層において支払っておる実納小作料を支払い得る、それを上回る土地純収益を上げておるというのが現在の状態でございます。
なお、流動化との関係について申し上げますれば、調査によりましてはやはり小作料の絡みがあるよという答えもございますけれども、むしろ大宗は貸し手がなかなかいないんだとか、土地基盤整備がもうちょっと進まないから引き受け手がいないんだとか、そういうふうな答えをしておる場合が多いわけでございまして、そのあたりのところを考えながらこれからの政策を進めていかなければいかぬだろう、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/132
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133・刈田貞子
○刈田貞子君 農水省の一つの目標としては、規模拡大は十ヘクタール規模を考え、北海道で二十五ヘクタール規模というふうなことを考えられておるわけですね。そうすると、十ヘクタールの規模拡大に対してやはり小作料はできるだけ安い方がいいわけですよね。まして米価引き下げムードがますます濃くなっている中で小作料だけが下がらないというとやっぱり農家の生産意欲が落ちていくんじゃないかな、規模拡大意欲が落ちていくんじゃないかなということが一つ。それからもう一つは、実勢小作料が標準小作料よりも高い、三割も高いというような実態はそのまま農産物のコストにもかかっていくわけですよね。そうすると、どうしてもコストの引き下げということにはつながっていかないというようなこともありまして、この小作料の問題はこんな少ない時間でちょぼちょぼとやる課題でないので、また時を改めて私は細かくさせていただきたいと思いますし、これも今後やはり考慮していかなければならない大きな要因ではなかろうかというふうに思っておりますので、一応希望を申し上げておきます。
それから次に、構造政策については新しい立法化を考えておられるようでございますけれども、土地利用型農業における中核農家の育成、それから具体的な施策としては土地の流動化の推進というようなことを図っていきますと、そこに当然出てくるのは、中核農家でない農家はどうするのかという問題が出てくるわけですよね。いわゆる兼業農家と称する方々でしょうか。これはどうするのかという話が出てくるわけですけれども、兼業農家といってもやはり農業生産者としての顔を持ち、あるいはまた地域経済の担い手としての顔を持つ、あるいはまた一般労働者としての顔もあるかもしれません。それから生活者としての顔もある。どの顔に光を当てるかによってその兼業農家に対する考え方というのがいろいろ出てくるわけだと思いますけれども、一体この兼業の農家と称するこの方々をどういう位置づけに今後していこうと考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/133
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134・松山光治
○政府委員(松山光治君) 御案内のように、兼業農家と申しましてもいろいろな農家があるわけでございまして、片一方の極には、非常に安定的な兼業に従事しており、もうほとんど農業に依存しておらない、むしろ労働力その他の事情からすればだれか適当な人がおれば預けたいなというふうな人がおる反面、第一種兼業農家の中には相当しっかりした労働力も持ちまして、むしろ地域の農業の担い手たり得べき人もいるわけでございます。
したがいまして、各地域の実情を見ながら、兼業農家につきましての就業機会の安定ということに心がけながら、できるだけこれから中核的に担っていただく人に農地の利用を渡していっていただくといったようなことが一番望ましいわけでございますけれども、御指摘のようにかなり分厚い層で中間層といったようなものが存在するわけでございます。そういった方々も含めての地域農業のあり方といったようなことを考えてまいりますれば、やはりそういった兼業農家層も含めまして地域としての効率的な生産単位の形成、こういう課題も十分頭に置いた対応をしていかなきゃならぬのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
現に、地域の実情に応じまして、例えば中核農家が機械作業、基幹的な作業を担当する、兼業農家がその他補完的な労働に従事するという形で、作業単位としては相当能率的な形での営農をやっておる事例も間々あるわけでございます。これらのどのような道を選んでいくかということは、ひっきょう各地域におきます自分の村の農業を将来どう考えていくかといったようなことと密接に関連するわけでございますので、私どもといたしましては、そういった各地域における健全な農業の発展が行われるようにできるだけの条件整備に努めていきたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/134
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135・刈田貞子
○刈田貞子君 ですから、仮にも制度によって二兼農家を云々というようなことにはならないんで、そこに住んでいる人たちの合意によって、あるいはまたその農地の条件あるいは労働市場というような問題を考えながらやっていかなければならないものじゃないかなというふうに私は思いますものですからこんなお尋ねをしたわけですが、これも構造政策の中で大きく考えられていかなければならない課題ですので、これからさらに機会を得てこれも質問を重ねてまいりたいと思いますが、少し勉強したところでは、兼業農家というものの定義が大分変わってきているように思います。それから諸外国でも兼業農家というものに関する考え方が相当変わってきているというようなことを少し勉強いたしましたので、この次にまた御披露したいと思います。
それから、大臣にお伺いしますけれども、所信で構造政策のことについてお触れになられましたわけですが、日本の国土をどう有効的に利用していくか、それからまたどんな農地をつくっていくのか、そこにどんなものを植えていくのか、そこでどんな経済効果を上げていくのか、あるいはその中でどんな人の暮らしをつくっていくのかというのはすべてにかかわる問題で、構造政策といっても非常に遠大な課題ですよ。だから、かなり大きな漠とした一つの英断が必要であると同時に、例えば小作料の問題一つとりましても非常に難しい問題が絡んでいますね。
私も、小作料の問題に大変関心を持って調べてみましたが、ただ単に権利の調整をすればいいというものではないということを感じました。例えば水利費はどうするのかとか、それから六〇%は未整備であるというところの我が国の農地を整備しながら流動化させていくには一体どういうふうに考えていけばいいのか、その費用負担なんかどうするのかとか、非常に細かいことが絡んでくるんですね。だから、同じ構造政策といっても、ある意味では大きな英断が必要な部分もあり、そしてある部分では大変にきめ細かな個別作業だというふうにも私思うんです。そういうものをからげてこれから我が国の構造政策を進めていくに当たって、有効な土地利用あるいは優良農地を集めるというふうなことも含めてどういうお考えをお持ちになるのか。もちろん構造政策推進会議ですか、というようなものができまして、各機関、機能と連携をとりながらいろいろ進んでおるようでございますけれども、大臣のその点の所信を改めてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/135
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136・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 今委員おっしゃるように、構造政策と一口に言っても多面的な分野にわたるわけでございまして、一口ではなかなか言い切れない。例示をすれば、今もちょっとお触れになりましたが、用排水の負担の問題はどうなのか、農山漁村における農山村における生活の環境の変化によって生ずる問題も出てくれば、あるいはかつて苦い経験をした都会におけるスプロール化、そういうふうなものは農山漁村にはそれほどございませんけれども、大都会におけるそうした問題、これもやはり構造上の農山漁村のみならず、農山村のみならず都会における市街化区域内あるいは調整区域内、これをどうするかというような問題やらもういろんな問題があるわけですね。
ですから、そういう中にあって社会的な側面が余りにも大きい中で農業を営む者、それから農山村で生活をする農家、農業者と農家、これをどう分類しながら構造政策と結びつけていくか、こういうこともまた必要でございますし、本当に挙げれば切りがないぐらいまさに混住社会の中に今日の農業者があり農家があるということになるわけでございまして、非常に難しいわけでございます。
しかし、効率的な農地の利用、おっしゃるようにそれを考えていかなければ食糧政策の基盤である農業は進まぬのでありますから、そういう意味において私どもはそれぞれの地域における実態というものを特に重視しまして、そこにはまた雇用に及ぶ問題も出てまいりますし、地域の現実性、そういうものを頭に置きながら構造政策をきめ細かく配慮していく。大きな問題のとらえ方としては混住社会の中に日本農業を、また食糧政策をどう生かしていくか、まさに地域農政にかかわる問題でもある。こういうことで、大きな観点とそれからきめ細かな観点と二つ組み合わせながら努力を続けていく、こういうことになろうかと思います。
またその一方、財政上の問題がある。しかし、それはどうしてもやらねばならぬというのは財政当局に理解をしてもらって、我が方は予算づけ等を進めていかなければならぬ、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/136
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137・刈田貞子
○刈田貞子君 次に、農産物貿易問題についてお伺いいたしますが、先ほど同僚委員の中からガット裁定後の十品目の問題についてお尋ねがございましたが、私もそのことについてぜひ伺わせていただきたいわけです。
八品目の自由化を事実上受け入れたということで二月一日、その受諾後同時に農産物自由化関連対策検討プロジェクトチームをおつくりになったわけですね。先ほど伺いますと、その中身についてはまだ鋭意検討中であるということなんですね。そこで、いつまで鋭意検討するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/137
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138・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 現在、いわゆる十二品目の問題に関連いたしまして今後の対策を検討しております農産物自由化関連対策検討プロジェクトチームでございますが、この作業については先生御指摘のとおり二月の初めにつくらしていただいたわけでございますが、いわゆる八品目のそれぞれの関連という個別の問題もございます。それから具体的には国境措置の問題もあります。さらに国内対策といったような問題につきましても、農家の生産対策あるいは流通対策を含めまして幅広く検討するといったようなこともあり、現在鋭意検討をしておりますが、現段階におきましてはできるだけ速やかにということで作業を進めているところでありまして、具体的にいついつまでにということを申し上げる段階に今まだ立ち至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/138
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139・刈田貞子
○刈田貞子君 そういたしますと、いついつまでにという期限を切らなくても大丈夫なだけの余裕が対アメリカとあるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/139
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140・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) この対策の内容は、先生御指摘のように対外問題との関係もございます。そういった意味でいついつまでにという具体的な問題をここで詳細、具体的に答える段階には立ち至っておりませんが、できるだけ速やかに作業を急ぎまして対策の内容を固めていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/140
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141・刈田貞子
○刈田貞子君 先ほど同僚委員の中からも出ておりましたけれども、八品目の農産物に関してはできるだけ早く国内対策を打ち出していただく、そのことが農民を安心させることにつながるんだからというお話がございましたけれども、私どもも党として大久保書記長を中心にして沖縄のパインの緊急視察を行ったわけでございますけれども、その中でも現場の状況がなかなか自分たちで把握できない、一体いつまでこういう状況が続くのか、そしてその対策はどうなるのか、そのいかんによっては我々の農作業もこれから違っていくんだというようなところまで非常に切実な要望が出ておるわけでございます。
ですから、できるだけ早くというふうにおっしゃられても、現場の農民は非常に困ると思うんですね。そこのところを私は大変遺憾に思います。これは鋭意検討していて中身がだんだん固まってきているんだけれども、国際上の問題もあるから今それが発表できないという段階のものなのか、やっぱりまだまだ懇ろに協議をしている段階なのか、そういうところをもう一度確認さしていただくことが一つと、それから自由化を拒否した二つの品目、粉乳それからでん粉、これについては今後見返り措置を提供するということでアメリカと協議に入るというようなことを伺っているわけですが、いわゆるこの見返り措置、これについてはどのように考えればよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/141
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142・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 先生御指摘の前段につきまして、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
先ほど来申しておりますように、この対策については一つは関係方面との折衝といいますか、具体的にいろいろ沖縄の点を提起されましたけれども、そういう方々の御意見といったようなものもこのガットの裁定までに具体的にあるいは公然とはお話を伺っていないという状況でございました。そういう意味において関係者の方々から十分いろいろな対策の御要望、御要請というものも聞かなきゃいけないという点が一点あります。
それからもう一点は、対外的に自由化の問題をどういうふうにしていくか、移行措置の問題をどうするかというものとの関係がございますので、ただいま先生が御指摘のとおり、農家の方々に不安がないように私どもできるだけ早く各方面からの検討を行った上での対策を樹立していきたいというふうに考えているところでございます。
なお、後段につきましては経済局長からお答えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/142
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143・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) ただいま御提起ございましたように、乳製品とでん粉につきましては、輸入数量制限の撤廃は、ガットの今回の裁定受け入れにもかかわらずこれを行わないという方針で臨んでいるところでございます。
そこで、ガットの勧告を受けても数量制限の撤廃を行わないという場合には、相手の利害関係国に対抗措置をとるというようなこともガット上の手続で認められておりまして、そのような可能性があるということは否定できないわけでございます。
ただ、我々といたしましては、このような問題が提起された場合におきましても関係国――そういう問題提起をした国との間で現実的、実質的に解決されるよう努力をしたいと考えているわけでございます。
先般、先ほど答弁ございましたプロジェクトチーム等をつくって国内対策あるいはまた国境措置等について検討を始めておるということ等を含めて、アメリカに今後の取り運び方につきまして説明をいたしました際にも、その二品目につきましてはアメリカとの間ではこの貿易の実態はほとんど米国側から輸出がない、非常に少ない量であるということも踏まえて、我々といたしましては代償は必要はないと考えるということを申したわけでございますが、アメリカ側は代償が必要であるというような応答がございました。
こういうものも含めて、今後アメリカ等の関係国といろいろと話し合いをして理解を求めていくというプロセスに入っていくことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/143
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144・刈田貞子
○刈田貞子君 私、もっと時間があると思ったら時間がないので、ちょっとはしょってしまいますけれども、今のお話についてもまだ言いたいこといっぱいあるんです。
もう一つは、今回のガットの十品目を事実上是認したということが今後の、今ステージが変わってきている牛肉、オレンジの問題についてどういう影響性を持つかということを一つ伺いたいわけでございますけれども、四年前の山村・ブロック会談の前にもやっぱり十三品目のガットの問題が取り上げられて、それが牛肉、オレンジ交渉に連動していったように私は思うんですね。枠拡大ということでおさまったわけですけれども、あちらの意図するところは、必ず同じ時期にこのガットの問題、いわゆる農産物の自由化とそれからこの牛肉、オレンジ問題を連動させてくるように思えて仕方がないわけですが、このたびもまたガットの十二品目をパネル裁定にまで持ち込んだということで、その影響が次の牛肉、オレンジ交渉にどう響いてくるのか。万が一日本が期限を明示しない限りアメリカはテーブルにのってこないというような場合に、そのまま三月三十一日期限切れになった場合に、アメリカはこれをガットに提訴するというようなことになりますと、さきの八品目ないしは十品目の解釈がそのまま牛肉、オレンジに当てはめられるというふうに考えるべきなんだと思うんですが、この辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/144
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145・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 十二品目につきましてのパネル報告書でございますが、これはあくまでも十二品目のそれぞれの輸入制限措置をめぐる事実関係等に即しまして、この問題についての日米両国間の紛争を解決するという観点から作成されているわけでございます。したがって、これが直ちに内容等について先例となり得べきものではないと考えておりますし、また個々の解釈に問題がある点につきましては、ガットの理事会でも我が方としてもその旨の発言をいたしておるところでございます。
ただし、ただいま委員御指摘の点は、たまたま前回の牛肉、かんきつ交渉と、十三品目と当時申しておりましたが、そのときの問題の扱いは牛肉、かんきつが一応枠の拡大ということで決着を見て、十三品目もそれに続いて同様の解決を見た、一部分的な自由化はございましたけれども。そういうこととの関連で相手方がどう出てくるかという点にむしろ焦点を当てた御質問だと思うわけでございます。
この十二品目問題につきましては、御案内のような取り運びとなっておるわけでございますけれども、牛肉、かんきつにつきましてはこれからやはり何とか交渉のテーブルに着いて、我が方は我が方としての理解を求めて決着を図っていきたいという態度でございます。
アメリカ側としては、それがもし不調に終わる場合にはガット提訴といったようなことも言っていることは確かでございますけれども、我々といたしましてはあらゆる状態を頭に置きながら、あくまでも二国間で解決をするということに向けて努力をしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/145
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146・刈田貞子
○刈田貞子君 最後です。時間がありません。
大臣にお願いをしておきますけれども、牛肉、オレンジ交渉については牛肉の問題についてかなり話題が多く焦点が当てられているように私は思いますけれども、かんきつ農家の現状というのは大変深刻な状況にあります。そして、かんきつ、オレンジの自由化というものは、これはとりもなおさず、それを自由化したときには日本の果樹農家すべてに影響が及んでくる実は大きな課題を持っているというふうに私思うんで、牛肉にとかくウエートがかけられがちでございますけれども、かんきつ農家に対する御配慮もぜひよろしくお願いしたいというふうに思いますので、終わりにいたしますが、御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/146
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147・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 牛肉、かんきつと、それから十二品目問題は、よって来る経緯、次元が違うわけでございます。ですから、これは別々の問題である。しかし、たまたま今また議論が重なっている部分があるということにおいて非常に難しい見方をされる、当然のことだと思います。しかし、今経済局長から御答弁申し上げましたように、これは分けて進めております、こういうことをひとつ申し上げておきたいと思います。
また、牛肉、かんきつの問題は、山村農相時代の問題をいろんな方がしばしば引用されるわけでございますけれども、それより随分前に実は当時の農林省、中川一郎農林大臣のときに中川・ストラウス会談、これによって始められた経緯もございます。随分時間はたっておりますけれども、依然として牛肉には牛肉、かんきつにはかんきつ、この問題について難しさがございます。自由化は困難であるという難しさは依然としてあります。
そういう中にあって、お尋ねは牛肉の方にちょっとウエートがかかり過ぎているのではないか、これはだれがそうウエートをかけているのかよくわかりませんが、あるいは一部の報道でそういう認識を持たれたとするならば、私から報道のことについて、その見方についてここで論及をしようとは思いません。我が方はそれぞれ別々の難しさを持っておる。この二つは自由化困難である。そして早くテーブルに着いていただければ私どもは率直な話し合いを進めてまいりたい、こういうことで対応をしておるところでございますので、牛肉、かんきつについて、おっしゃるような、どっちが軽くてどっちが重いという仕分けは絶対にいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/147
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148・諫山博
○諫山博君 我が党は、今までしばしば日米諮問委員会の報告あるいは前川レポートを取り上げてきました。この二つの文書は、日本の農業がどういう筋道で破壊されていくのか、この基本的な方向を示しているからであります。
前川レポートは、米は日本でつくるよりか外国から買った方がいい、こういう言い方をしています。政府は、米の輸入自由化はしないと言っていますけれども、今のアメリカ側の動きを見ておりますと、米の自由化に対してさまざまな圧力が加えられていることが感じられます。
もう一つの日米諮問委員会の報告、これは日本の農業の将来像として、米とか麦とか牛肉とか酪農などの生産はアメリカに任せればいい、日本国内では果樹、野菜、草花、鶏、豚などの小家畜などをやればいいではないかというような言い方をしています。全く日本の農業を破壊する方向が提起されているわけです。
大きな目で見ますと、日本の農業が日米諮問委員会の方向あるいは前川レポートの目指している方向に急激に動いているというような気がしてなりません。
この二つの文書について農水大臣はどのような理解の仕方をしているのか、まず聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/148
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149・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 今、前川レポートそれから日米諮問委員会のことを引用されて、前川レポートでも米まで云々というお話がございましたが、前川レポートに「国際化時代にふさわしい農業政策の推進」と項目を挙げておられるその中には、「基幹的な農産物を除いて、内外価格差の著しい品目については、着実に輸入の拡大を図り」と記されております。米でも何でも前川レポートが自由化せいと言っているふうには承知をしておらぬのでございますが、ひとつその点を御理解を賜りたいと思います。
また、日米諮問委員会のことについても触れられておるわけでございますけれども、私どもは今の農産物貿易問題、これについてはニューラウンド、ウルグアイ・ラウンドにおける新しい一つのルールづくりをまずしようということで、積極的にこの議論に参加貢献をしようと思っておりますし、その状況も踏まえながら、農業の健全な発展と調和を図るということを基本にして適切に対応してまいりたい。アメリカからすべての農業が破壊をされつつあるという認識にはどうも立ちにくいのでございまして、もっとはっきり言わせていただけば、おっしゃるようなことであるとするならば、私どもは日米交渉に臨む値打ちがないということになりますので、そんなことではないということを率直に申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/149
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150・諫山博
○諫山博君 この二つの文書は、農業に対する補助政策などはやめて、日本の農業を自由な国際競争の場に立たせればいいという方向だと理解いたします。そうすると、残るものは残るだろうし、つぶれるものはつぶれるだろう、これが基本的な底流として流れていると思います。つまり、競争の弱い者がつぶれるのは経済法則上仕方がないではないかという基本的な考え方です。
これでは、日本の農業がつぶされていくのは避けられないと思いますけれども、そういう方向だとは御理解しておられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/150
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151・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 今、決して委員の言葉じりをとらえて言うわけではございませんけれども、経済原則からすればかくかくしかじかなるではないかという設問でございます。
私どもは、基本的な農産物、また農業政策全般について言いますれば、経済合理主義では割り切れるものではないという考え方を持っておりますので、そこにまたちょっと認識のずれがあるのではないかなと、率直に今御質問をいただきまして感じておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/151
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152・諫山博
○諫山博君 農業を国際的な競争の場に投げ出す、こういうやり方がいけないことはもちろん明らかで、今農水省が全面的にそういう立場をとっているとは私には思えません。そのためにガットでいろいろ努力されているとは思います。ただ、大河原前駐米大使は前川レポートの基本的な性格について、政府の介入によるのではなくて市場原理に基づいて産業構造の転換を図ろうとするものだ、そしてこれは工業分野だけではなくて農業分野にまで当てはめようとしているというふうに理解していますけれども、そういうのがアメリカ側の基本政策だ。しかし、これにどういう対応をするのかというのがまさに日本政府の直面している問題だというふうに思いますが、その点は違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/152
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153・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) おっしゃるように、日本だけではなくて各国とも農業政策には苦労をしておる現実をお互いが承知をしておるところでございます。米国におきましても、ソ連におきましても、あるいはEC諸国においても、この我が日本においても、苦難の、苦悩の道を歩んでおることは事実でございます。そういう中にあって今日までとられてきたいわゆる保護政策というものをどう見直すか。例えば米一つとらえましても、午前中の質疑にもありましたように、流通の改善はいかがあるべきか、そこにも踏み込んで我々は改善を加えていかねばならぬ、そういう努力はしなければならない。
しかし、先ほども申し上げるように、経済合理主義で割り切れるものではないという基本を頭に置きながら、我が国には我が国の食糧政策があるということもちゃんとわきまえた上で交渉に当たりつつある、当たってきたし、またこれからも当たっていく、こういうことでございますので、アメリカの言うとおりになっておるというような、破壊されていくんだという前段のお話にはなかなか、それもそうでございますがとは言いにくい、言えない感じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/153
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154・諫山博
○諫山博君 農業基本法が制定されて二十数年たちました。当時は選択的な拡大という言葉が流行して、果樹、畜産が奨励されております。あの農業基本法制定の当時、中核農家、自立経営農家を育てるということが強調されましたけれども、統計的に見ると、一九六〇年当時、いわゆる自立経営農家の数が約五十二万戸、現在ではこれが二十二万戸程度に減っているはずです。農業基本法のもとでこういう事態になるということは初めから予想していたのか、それとも農水省として予想しない結果になっているのか、この点どう理解しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/154
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155・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 先生御指摘の、農業基本法の考え方がどういうふうに具現してきたのか、それから具体的にどういうふうな状況になったのかとの評価の話でございます。
御案内のとおり、農業基本法はいろいろ戦後におきます食糧生産、そういったようなものを前提にした曲がり角におきまして、農業の生産性の向上と並びまして、農業従事者と他産業従事者との生活の均衡を目標として掲げたわけでございます。このため、農業基本法におきましては、農業所得のみによって他産業従事者と均衡する生活を営み得る家族経営としての農業経営の自立経営という概念を掲げまして、できるだけ多くの家族経営が自立経営になるように育成すべきだという政策目標を掲げたところでございます。
この制定当時、昭和三十六年でございますが、自立経営の育成は、技術の進歩等農業内部の条件もあったわけでございますが、その後におきます高度成長といいますか、その後のいろいろな経済状況、社会的状況によりまして、基本的には就業構造の改善というような面におきましての条件を踏まえまして、先生御指摘のとおり、具体的な私どもの公表しております白書等によりましてそれを戸数に置きかえますと自立経営の数といったものは伸び悩んでいるという状況にございます。ただ、これにつきましては、農業基本法が先ほど私が申し上げましたような目標を掲げた点に着目いたしますれば、例えば農家の一人当たりの所得と勤労者の所得というものにつきましてはほぼ拮抗するところまで来た。もちろんこの場合におきましては、兼業農家の方々、そういったものを包摂した農家の所得ということではございますが、そういう形で実現が図られているという面があります。さらにまた、選択的拡大といったようなことで需要の動向に即応いたしまして多様な供給を行ってきたというものも、戦後の農業と申しますか、あるいは基本法農政の成果だというふうにも考えられるところでございます。
なお、そういう中におきまして、所信の中で大臣からも申し上げましたとおり、土地利用型農業といったものにおきます規模拡大の道がなかなか困難に差しかかっているという状況でございますので、私どもといたしましては、先生のお話にもありましたように、自立経営農家のみならず多くの担い手、これは中核的担い手という言葉も使わせていただいたこともございますが、そういう担い手の育成に取り組みまして、今後とも農業を取り巻く厳しい状況に対し農業生産の体質強化を図っていかなければいけない、あるいは農業者の生活の安定に重点を置いて対応していかなきゃいけないというふうに考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/155
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156・諫山博
○諫山博君 私が知りたかったのは、政府が育てると言った中核農家が農業基本法のもとで半分以下になっている、これは初めから予想していた事態か、それとも予想しない結果になったのかということですけれども、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/156
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157・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 今お話しの、中核農家というお言葉をお使いになりましたけれども、私ども広い意味での担い手といったような段階で中核的農家という言葉を使ってまいったこともございます。そういった中で見ますと、中核的農家の生産が総生産に占める割合といったようなものはかなりのウエートを占めてきていると思います。
ただ、言われるところの自立経営という農業だけの経営を行っていらっしゃる方々のシェアにつきましては、六十年の段階で五・三%になっているという事実がございます。ただ、これにつきましては、例えば五十六年の段階でも四・九%というようなことでございますので、あるいは五十七年の数字を引用さしていただきますと、四・五%といった数字でございますので、それに比べますと、ここ六十年の段階の数字はそれを上回っているというふうな状況になっております。
いずれにいたしましても、農業の担い手としてどういう層を考えていくかという問題につきましては、土地条件であるとかあるいは経済条件であるとか、そういったような中から新しい理想像というものを構築していかなければならないというふうに我々考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/157
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158・諫山博
○諫山博君 私たちは、農業というのは日本の食糧を安定的に供給すると同時に、農業に従事する農民、とりわけ農水省が推奨してきた中核的な農民の経営が安定する、農業から排除されるような事態が生じない、こういうことが必要だと思っているわけです。
今の局長の説明では、農産物がちゃんと安定的に供給されているということを強調されましたけれども、その中で次々に農民が農業から離れざるを得なくなっているという事態は余り説明されなかったようですけれども、そういう事態は起きていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/158
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159・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) 先生御質問の、農業基本法の役割といいますか、農業基本法の機能といったようなものにつきまして私は先ほどのようなお話を申し上げたわけでございます。
一つの担い手という形でいわゆる自立経営といったものも農業基本法の中に書かれておりますが、そのほかに協業といったようなことにつきましても掲げておりまして、そういうものと相まちまして日本の農業を推進をしていこう、その方々の担い手としての役割を推進していこうというのが農業基本法の考え方であろうと思っております。
なお、先生御指摘の農家の移動がなかったか、日本の農家の方々がほかの方へ移っていった事実はどうかという御質問でございます。
これは戸数の上からもあるいは具体的な就業人員の上からも、先生御指摘のとおり、三十六年からの間におきまして日本の農業の中から他産業の方へ移動が行われまして、具体的には日本の農家という数も減少をしている、就業人口も減少しているということは事実でございます。
ただ、私が申し上げておりますのは、戦後のいろいろな農業を取り巻く状況に応じまして、担い手の育成といったようなことが日本農業の根幹であるというふうな思想に基づきまして、一つは自立経営の問題、それから先生も言葉をお使いになりましたけれども、中核的担い手といったような形で農業の主要な部分をその方々に担っていただこうという施策をこれまでも続けてまいったわけでございますし、今後ともそういった方々に対しまして重点を置いて施策を実施することによりまして、日本の農家の生産性の向上を図りながら、国民の納得される価格を維持しながら農業の生産を展開していかなければいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/159
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160・諫山博
○諫山博君 多くの農民が農業から離れるのは、好んで離れるのではなくて、農業でやっていけないから離れるんだということをぜひ理解していただいきたい。本当は農業をやりたいけれども、農業では食っていけないという状況の中で中核的な農家の数が減ってきたわけです。
ところで、当面のガット・パネル裁定の問題ですけれども、これを受諾しないと国際的に孤立するとか、国際的な信義上受諾せざるを得なかったというような言い方がされていますけれども、農水省の立場もそういうことですか。これ大臣お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/160
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161・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 本件につきましては、昨年十二月の理事会におけるガット総会におきます議論あるいはまたその後の今般の二月の理事会におけるやりとり等を見ましても、本件につきまして最初我が国が部分採択を求めたのに対し、すべての国がやはり全体採択に賛成するかまたは反対をしなかったという事実がございます。ガットという国際条約に加盟をしているということで、そこにおきますガットの紛争処理手続の尊重ということがやはり強く求められたわけでございます。
この中にありまして、我が方といたしましては、ガットの勧告の中に含められております法理解釈といったものを十分に検討した上で、八品目についてはこれを受け入れざるを得ない、二品目についてはその条文解釈等に賛成することができないということを明確にした上で全体の受け入れを行い、かつ二品目についてはこの自由化を行わないという方針で今関係国の了解を求めておるという状況でございます。したがって、今のような考え方に立って農林水産省といたしましてもぎりぎりの選択をしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/161
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162・諫山博
○諫山博君 これを受けなければ農業分野で何か不利益が及んでくるのでしょうか、この問題に限って説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/162
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163・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 農業部門について受け入れなかった場合不利が起こるかということでございますが、ガットの場におきましての日本の立場というのは、農業部門あるいはその他の部門も含めて全体的にやはり判断されるべきものでございまして、その中の農業部門だけで不利かどうかあるいは有利かということにつきましては、判断が非常に難しい問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/163
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164・諫山博
○諫山博君 今、ガット問題で日本の農民は工業の犠牲にされようとしている。日本の農民は大企業のいけにえにされるのかというような声が出ております。だから、私は農業分野で何か不利益が及んでくるのかと問題を絞って質問したんですけれども、何か不利益が及んでくるとすれば、それは農業分野ではなくて、他の問題だというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/164
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165・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 我が国の農業分野なり農業部門の問題につきましては、外から見た国際的な問題と日本の国内の問題があろうかと考えますけれども、農業分野なり部門というものが国際的にもあるいは国内的にもコンセンサスが得られた形の中でこれを進めていくということが今後の農業政策なりそういうものを進める上において大変重要な問題であると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/165
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166・諫山博
○諫山博君 結局、農業分野で日本の農民にどういう不利益が予想されるのか、この点には触れられませんでしたけれども、ガットの裁定を受諾せず最後まで拒否して報復措置が行われた国際的な事例があるそうですけれども、どういう報復が行われましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/166
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167・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) ここに細かい資料を持ってきておりませんが、かなり前でございますけれども、アメリカとオランダの間で、米国の乳製品の輸入制限についてオランダがガットのパネルに問題を提起いたしましてアメリカに不利な結論が出た、それに対してアメリカ側がその輸入制限を解かなかったということで、オランダがガットの手続を経て、対抗措置ということでアメリカからの小麦製品等について一定期間その輸入を制限したという事例があったと記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/167
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168・諫山博
○諫山博君 アメリカがガットの裁定を受諾せず報復措置を受けたという御説明ですけれども、その報復措置というのはアメリカからの農産物の輸入を制限するという形で行われたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/168
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169・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) そのように記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/169
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170・諫山博
○諫山博君 日本がこういう報復措置を受けるとして、日本の農産物の輸出をアメリカ側から制限されるというような条件がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/170
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171・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 日本もそれほど金額、数量多くはございませんが、いろいろな農産物をアメリカに対して輸出はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/171
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172・諫山博
○諫山博君 眞木経済局長の従来の当委員会での答弁を聞くと、日本は外国からたくさんの農産物を輸入している、ほとんど輸出はしていない、こう言っているでしょう。発達した資本主義の国で日本のように一方的に輸入ばかりしている国はないと言われているでしょう。そうすると、日本からの農産物の輸出が報復的に制限されるというような問題は起こり得ないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/172
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173・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 日本から外国に対する、例えばアメリカに対する農産物の輸出が報復をされるということがあるかどうかという御質問でございますけれども、非常に仮定の上に立った御質問でございますし、もし日本なり一国が受け入れたガットの裁定を実施しない、あるいはその前に受け入れなくても拒否をしたということによって対抗措置をとるといった場合にはこれまたガット上の手続が必要になりますし、そこでの議論を経て行われるわけでございます。
今そこで、いきなり他国に対する日本の農産物輸出が云々というのは余りにも仮定の上に立たれたお話でございますので、明確な答弁という形では差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/173
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174・諫山博
○諫山博君 日本がたくさんの農産物を輸出しているんでしたら仮定の問題だから答えられませんという答弁も納得できますけれども、ほとんど輸出していないわけでしょう。だから、少なくとも農産物に対する対抗措置ということは日本の場合あり得ないというふうに思いますけれども、農産物以外の品物でガットの裁定を拒否したために報復的に制限を受けた例がありますか。例えば農産物のガット裁定に従わなかったために工業製品の輸出が規制されたというような例です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/174
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175・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) ちょっとここに細かいデータを持参しておりませんが、今のところそういう例は余りなかったように思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/175
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176・諫山博
○諫山博君 余りなかったではなくて、全くなかったでしょう。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/176
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177・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 資料を持っておりませんのではっきり答えなかったわけでございますが、記憶しているところではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/177
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178・諫山博
○諫山博君 眞木経済局長は当委員会で次のような説明をされております。アメリカはウエーバー条項を持って農産物の輸入を規制している。EC諸国は課徴金の制度を持って事実上輸入制限の役割を果たさしている。これと対応する形で日本は農産物の輸入制限品目を持っている。三つの国を挙げてそれぞれ農産物の輸入制限に国として規制措置を講じていることを述べられましたが、私が理解したような理解の仕方でいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/178
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179・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) ただいま御提起されましたように、アメリカもウエーバーのもとで十四品目の輸入を制限しているわけでございます。また、ECは主要な農産物につきまして可変課徴金という形の制度を持っておりまして、現実的な効果としてかなり制限的機能を行っておる。ただ、これにつきましては我が方との制度との関連で言えば、それぞれが実質的に公平性の観点から見て非常に問題がある。特にアメリカのウエーバーにつきましては、これは我が国だけではございませんけれども、各国からその指摘をして不当性を問題にしておるわけでございます。
ただ、今委員御指摘の点に加えまして私が申し上げておるのは、アメリカのウエーバーにつきましてもガット上二十五条の規定に基づいて与えられた合法的なものではございますし、ECの可変課徴金につきましても、いろいろ批判はございますけれども、ガット上違法であるということにはなっていないわけでございます。そういう点で我が国の制度は十一条の例外規定との整合性の観点からやはり問題に付され、今回その幾つかのものについて御案内のような裁定が出された、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/179
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180・諫山博
○諫山博君 局長の答弁を私は会議録で読みまして、アメリカもEC諸国も日本も自国の農業を守るためにいろいろ輸入制限の措置を講じている。何となくそこで三極のバランスができているような理解をしたわけですけれども、今度はアメリカはウエーバーを撤回しようとはしていない。EC諸国も課徴金制度を放棄しようとはしていない。日本だけが輸入制限品目を、十一条とかいう説明もされましたけれども、日本だけがこれを今大幅に改めさせられようとしている。
そういうことを考えると、裁定を受け入れなくていいじゃないですか。なぜこれを最後まで断り通せないんですか。それが私には理解できません。農業の他の分野で日本の農民に大変な仕返しが来るというんだったらこれは検討に値しますけれども、そういう事態もない。とすれば、何を心配しているんだろうかというのが私の率直な疑問なんです。これ断ったらどうなるんですか。いけないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/180
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181・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 今その三つの点それぞれの各国、アメリカ、EC、それに我が国がそれぞれの制度でもってある程度バランスをとって守っておったというのは実態的には一つの事実であろうかと思いますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、アメリカの場合はウエーバーをとっておる。実はこのウエーバーをとるときには日本も賛成しているというような経緯もあったわけでございますけれども、一応は現行法上合法である。それに対して我が方のは現行法に照らしてその合法性が問題とされたというようなところに違いがあるわけでございまして、その結果につきましてどういう判断をしたかということは先ほどお答えを申したとおりでございます。
我々も、基本的には、アメリカの持つ現行法上合法的であると言われておりますウエーバーにつきましても、その他のものにつきましても、例えばECの制度等につきましても、すべてニューラウンドで問題にすべきであるという考えは持っておりますけれども、やはり現行のガットの紛争処理手続上、そのようになっておるものにつきましてはそれにきちんとこたえていかなければならないという立場にはあるわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/181
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182・諫山博
○諫山博君 衆議院の予算委員会で、共産党の山原健二郎議員が竹下訪米の問題で質問しました。その席に佐藤農水大臣もおられましたけれども、竹下総理の答弁を会議録で読んでみますと、問い山原議員、レーガン大統領にきちっと対処すると約束したではないか。答え竹下総理、きちんと対処すると申し上げたのは事実でございますと答えています。しかも、竹下総理の答弁はそれで終わったのではなくて、きちんとという日本語がアメリカではどう翻訳されたかということを調べてみた、きちんとという日本語はなかなかアメリカ語に訳しにくかったんだな、もっと適切な表現があったのかもわからない、こういうような答弁をしておられます。
いずれにしても、レーガン大統領に対して竹下総理が、ガット問題できちんと対処すると申し上げたのは事実でございます、こう答弁したのは極めて重大です。私たちは、これは竹下総理のアメリカに対する公約だ、日本政府はこれは履行せざるを得ないような立場に置かれていたのではないかという疑問を持ちました。
農水大臣、あの席におられてどう理解されましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/182
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183・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 総理の答弁はきちんとやっておられたなと思っております。
なお、あのときに、首脳会談で既にもう中身を約束しておったんじゃないか、こういうことも今言われたわけでございます。その部分についてお答えをいたしたいと思います。
我が国は、十二品目について、ガット加盟国としてその紛争処理手続を尊重するとの立場から、ぎりぎりの苦渋に満ちた選択としてパネル報告の一括採択に応ずるという判断を行ったものであります。日米首脳会談において竹下総理が発言されたことが、直ちに十二品目の自由化を約束したということでは、事実ではないと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/183
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184・諫山博
○諫山博君 対米公約になっておったとはなかなか言いにくいとは思いますけれども、きちんと対処すると申し上げたのは事実でございますというのは、レーガン大統領の発言に対する返事ですから、これは対米公約という事実を認めたものだと私は理解するし、当然だと思うんですよ。
そこで、どうしてこういう態度をとるのか。私たち共産党は、その背景に安保条約があると思っております。安保条約というのは、軍事同盟であると同時に政治的、経済的に日本を対米従属の状態に縛りつけております。そのためにアメリカに対して筋の通ったことでも言えなくなっておるのではないか、これが竹下総理のきちんと対処しますという言葉の背景にあるし、また眞木局長の答弁にもありましたけれども、これを断ったら大体どういう事態が出てくるのか、いろいろ国際的な信頼ということは言われますけれども、中身がさっぱりわかりません。
私たちは、こういう点から見ると、根本的には対米従属の関係を断ち切らなければならないということを主張しております。これは私たちが主張するだけではなくて、例えば北海道の農民の集会とか福岡県の農民の集会などは明らかに自由化問題で抗議の矛先がアメリカ側に向けられています。その点でもっと堂々と日本の農民の立場を守れ、アメリカに遠慮するな、アメリカに遠慮する必要は何もないじゃないかということを重ねて申し上げるわけですけれども、大臣は、これ拒否したら日本にどういう事態が起こるということを心配しておられるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/184
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185・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) ただいまの御質問の前段に、どうしても委員は、アメリカに従属する日本である、そしてそれは安保条約であるからである、だからそういうことにならざるを得ないんだ、こういうふうに一つの考え方、それを固定されておっしゃるのでございますけれども、私には理解はできません。
また、ガットでの結論が理事会で出されたものについては、先刻来説明しておりますように、プロジェクトチームでも今詰めを行っておりますし、それから牛肉、かんきつについても今努力をいたしておるところでございますし、そのテーブルができたときに私どもが行うべき外交交渉、その内容を今想定しつつここにお答えするわけにはまいりません。
私は従来とも、譲るべきは譲る、譲れないものは譲れないという主権国家としての農政にかかわる態度は鮮明にいたしておるところでございますので、さよう御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/185
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186・諫山博
○諫山博君 新聞で今、日本政府はガットという外圧を利用しながら日本の農業を――笑われましたけれども、外圧という言葉はしばしば新聞に出てきますよ。つまり、今ガットを受諾して行おうとしている農業政策というのは、農業基本法とか日米諮問委員会とか前川レポートなどが目指している方向と一致している。そうすると、この方向を推進する絶好の材料としてガットが利用されているのではないかという言い方が、これ私たちがするだけではなくてしばしばマスコミにあらわれているわけですよ。そうして、結果的にやはりガット受諾で起ころうとしている事態が自民党・政府が一貫して進めてきた農業政策の方向と合致しているというのも事実です。
同時に、農業に対する保護政策ということがガットの問題をめぐっていろいろ議論されています。一部では日本の農業は過保護になっているのではないのかというような言い方がされていますけれども、国家予算の中で占める農業予算の比率というのは、日本はフランスや西ドイツやアメリカに比べてはるかに低い、フランスの半分ぐらいではないかという数字が出ていますけれども、この数字は間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/186
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187・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 前段についてお答えをいたします。数字は経済局長からお答えをいたします。
委員のおっしゃり方は、私の理解を率直に申し上げますが、あらゆるものを全部悪う悪う結びつけて、そしてアメリカに隷属をする、従属をする、そして破壊をされているんだ、もうだめなんだ、こういうことをマスコミも言っているではないか、共産党が言っているだけではない、こういう意味のこともおっしゃいますが、私にはおっしゃることは理解できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/187
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188・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) ただいま御指摘のあった国々の国家予算の中で占める農業予算の比率でございますが、各国によって農業関係予算の範囲が違うといったような問題がございますので、厳密な比較を行うことは困難でございますが、主要国の一九八五年度の予算につきまして試算という形で計算をしてみますと、日本が五・一%であるのに対し、米国が五・六%、フランスが一〇・二%、西ドイツが五・八%というようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/188
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189・諫山博
○諫山博君 国家予算の中で占める農業予算の比率が日本の場合諸外国に比べて低いということはお認めになりましたけれども、農業総産出額に対する農業予算の割合はどうですか。今の四カ国を取り上げてどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/189
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190・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) これもやはり一九八五年度についての試算でございますが、日本が二二・八%、米国が三一・六%、フランスが三九・四%、西ドイツが二三・八%、農業総産出額に対する農業予算の割合ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/190
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191・諫山博
○諫山博君 今の二つの数字は、結論的に言うと日本の農業が保護されているというのは全くの誤りであって、代表的な他の三カ国に比べても農業予算は少ないし、農業総産出額に対する政府の支出も一番少ないというふうに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/191
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192・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 農業につきましては、御案内のとおり生産が自然条件等に左右される面が大きいということで、各国とも一定の予算なり国境保護措置等を講じておるわけでございます。これを今二つの比率で委員御提起になりましたけれども、各国の事情が非常に違うわけでございますので、例えばこれを農家の一戸当たりの額、あるいはまた単位面積当たりの予算額といったような形で比較をしてみますと非常に対称的な形が出てくるということで、なかなか一概に断定できない面があろうかと思いますが、我が国の農業に関する保護措置が諸外国に比べまして特に大きな違いがあるということはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/192
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193・諫山博
○諫山博君 諸外国と言われましたけれども、フランス、アメリカ、西ドイツに比べてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/193
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194・眞木秀郎
○政府委員(眞木秀郎君) 国家予算に占める農業予算額の割合、あるいは農業総産出額に対する農業予算額の割合等につきましては、今お答え申し上げたような数字でございます。
一戸当たりの農業予算額というようなことになりますと、農家の経営規模というものが絡んでまいりますので日本は非常に低い。そのかわり、また耕地面積なんかの単位面積当たりの予算額で比較すると非常に多いというような事情がありまして、この辺をどう評価するかということに問題があろうかということを申し上げたわけでございますが、最初の二つの指標で見てみますと、日本がこれらの国々に比べまして高くはないということは言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/194
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195・諫山博
○諫山博君 牛肉、オレンジの自由化問題が焦点になっていますけれども、この問題について農水大臣はしばしば見解を求められました。その答弁を読みますと、受諾することは極めて困難であると言われておりますね。極めて困難であるというのは客観的な見方であって、農水大臣としてどうしようとしているのかという決意の表明はされたことがないように思うんです。これは輸入自由化したら大変だ、米にまで及んでくるかもわからぬということをみんな言っております。そして畜産とかオレンジが米と並んだ基幹的な作物だったということは、これはもう争えないことだと思います。
農水大臣としては、大臣の座をかけてでも受諾はいたしませんとまでは言えませんか。極めて困難でございますという客観的な評価だけではなくて、農水大臣としてどう決意しているのかということを公式に聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/195
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196・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) しばしば申し上げておりますように、また共産党に対しましては衆議院でもあなたの同僚議員にお答えしておりますように、自由化は困難であるということを明言いたしておるところでございます。
それに加えて、これからテーブルができ、外交交渉をしようというときにそれ以上のことを申し上げるのは差し控えさしていただきたい。
しかし、私自身は、この困難な環境、厳しいこの問題を何としても乗り越えなければならない。それはアメリカと日本は友好国であるということからしてどぎつい言葉を使うのはいかがなものかな、友好的、平和的に話し合いをしたいものだ、そして円満な結果を得たいものだ、こういうことを念願いたしておるわけでございまして、極めて冷静、平和的な運びを前提として申し上げておることでございますので、まあそこまで言えば、私のアクセントからして私の姿勢というものは十分おわかりいただけるのではないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/196
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197・諫山博
○諫山博君 念を押しますけれども、極めて困難であるというのは、第三者的な評価といいますか、客観的な分析なんですね。極めて困難であるという農水大臣の一貫した発言の中には決意も込められていると理解していいんですか。それとも第三者的な評価を述べているだけなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/197
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198・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 牛肉、かんきつにつきましては一定量を毎年輸入しているわけであります。そして長い間の議論があるわけでございます。これがちょっと米とは違うんであります。そういう一定量を毎年輸入しながら日米間でしばしば協議をしてきた問題です。今また改めて三月末という大きな節目を迎えてどうするか、こういう問題なんです。
ですから、今までの経緯を考えれば考えるほど冷静に、慎重に、しかも生産者も流通関係者も、もちろん消費者ニーズというものも頭に置きながら、もちろん国会での御論議も頭に置きながら私は取り運ばなければならない、こう申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/198
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199・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 諫山君、時間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/199
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200・諫山博
○諫山博君 はい。
十二品目と牛肉、オレンジは違う、同時に米もまた別物だという御認識のようですけれども、関連はしているということはお認めですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/200
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201・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 経緯が違うと申し上げておるのでございまして、よって来る経緯が違う、こう申し上げているんです。それが時期的に今一緒になっておるんで非常にわかりにくくなっていることも事実だ、こう先ほども申し上げておるわけでございます。
これでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/201
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202・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) もう時間ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/202
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203・諫山博
○諫山博君 それで、十二品目についてもっと毅然たる態度をとれば牛肉、オレンジのような高飛車な態度をアメリカはとらないだろう。同時に、牛肉、オレンジできちっとした態度を文字どおり貫けば恐らく米をどうせよというような問題も生じてこないだろう。その点では今非常に重大な局面に差し迫っておりますから、既にガットの裁定を受諾したと言われますけれども、その受諾も撤回して日本の農業を守る立場を貫くべきだということを申し上げて、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/203
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204・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 撤回をすることは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/204
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205・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 今、大臣にお尋ねしようと思っておりますが、説明することをひとつ経済局長お聞きくださってお答えください。
政府はこれまでの所信表明の中でも、またこのたびの所信表明の中にも日本型食生活の定着促進を挙げておられますね。そこで、内容的には米、野菜、魚を中心とした食生活は健康上好ましいことであると言っております。しかし、現実には野菜や魚の消費量は横ばいの状態である、米は消費が年々減退しておるという現状であります。
ところで、その反面、日本人の体質が欧米型の成人病もふえてきておる。このことは日本型食生活というものが必ずしも円滑にいっていない、その一面を如実に物語っておると思います。
この点について、冒頭大臣に所信を伺いたいわけでありますが、どうしましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/205
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206・谷野陽
○政府委員(谷野陽君) まことに申しわけございませんが、私からお答えをさしていただきます。
日本型食生活と申しますのは、私どもの従来整理をいたしました考え方といたしましては、ただいまお話がございましたように米、魚、野菜を中心とした伝統的な食生活のパターンに肉類、牛乳、乳製品、果実等が豊富に加わった多様性があり、栄養バランスのとれた健康で豊かな食生活であるというふうに考えておるわけでございます。昔の米、魚、野菜のみの食生活の場合には、どちらかと申しますとたんぱく質でございますとか脂肪でございますとかその他のものにおきましてやや不足なところがあったわけでございますが、戦後の食生活の多様化の中で、これに肉類、牛乳、果実等が加わりまして、現段階では諸外国から見ましても日本の食生活というのは大変バランスがとれたものになっておる、こういう評価を受けておるわけでございます。
近年の動きについてでございますが、ただいま御指摘がございましたように、現在までのところいろいろなものが加わってバランスがよくなってきたわけでございますけれども、今後につきましては、むしろ諸外国に見られますような動物性の脂肪でございますとかその他が過剰になって、健康上におきましてもいろいろな問題を生ずるのではないか、こういう御意見がございます。
私ども、日本型食生活ということをいろいろ各方面の先生方の御意見を伺いまして考えて、これを普及をしていきたいということをやっておりますのも、そのような将来に向けての不安感があるというところにあるわけでございます。
そういうわけでございますので、ただいまお話のございましたように、消費量が横ばいということは私どもとしては決して悪いことではない、物によりましてはむしろ減少をしないようにしていく、あるいは物によっては増加するものもある。このような中で全体としてのバランスがとれるような方向に誘導していくのがよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/206
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207・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 大臣、今代弁をしてもらいましたが、その余韻をひとつ受け継いで、結局日本型食生活というものは、言うはやすく現実は必ずしもそうではないという結論。横ばい状態である。特に青少年の欧米型食生活の傾向が強くなりつつあると私は思うんです。そのことについては大臣いかがでしょうか。
〔委員長退席、理事高木正明君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/207
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208・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 非常に冷静な御質問でございますが、私自身、今おっしゃることについて、国民全体の中で日本型食生活というものがどういうふうに理解をされておるか。委員おっしゃるようなことになりますと、若者はそうではないぞと、こういう意味のことでございますが、若者にもいろいろあるんじゃないかなというふうな感じを受けますし、専門的に今流通局長が大体答えたんだろうと思いますが、私よりは流通局長がその辺細かく分析をしておりますので、流通局長の答弁をもって御理解をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/208
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209・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 繰り返す必要はないと思いますので、私は若者とは言いません、青少年の欧米型食生活の傾向が強くなりつつある。
あえてそう言いましたのは、これは学校給食と重大な関係がありますよということを意見も申し、あるいは承りたいと思ったわけです。
学校給食における日本型食生活のあり方というものは非常に重大である。何となれば、もう結論だけ申し上げますが、いずれまた機会を改めて、食生活と人間、食と人間の関係は、人間の味覚、聴覚、いろいろ感覚がありますね、人間の舌の感覚は最も保守的であるという説を私は知っております。ということは、幼少時代に、青少年時代に舌につけた味というものは一生涯を左右するというそのことが、かむことがあごの発達になり、あごの発達が知能の発育になる、こういうとらえ方において、学校生活における学校給食のあり方というのが人間形成をする上から非常に大事なことである、このことを結論として言います。いずれこのことは、文部省も厚生省も農水省も一緒に横の関連を緊密にして連絡提携して学校給食というものをきちっと進めなければいけないということを私は特に申し添えて、いずれまた次の機会にいたしたいと思います。
次に、農産物の自由化の問題、先ほど来、けさ来強調されておりますが、結論的に、農は国のもとというこの大黒柱が、屋台骨が崩れ落ちつつある、私はこのことを一言申し上げておきます。
そこで、アメリカは日本に対し農産物の自由化八品目、強引にも理不尽にも日本に強制しておる。
〔理事高木正明君退席、委員長着席〕
ところが、日本国民は七〇%以上と言いたいんです、七〇%も反対しておる。ところで日本政府はこの強制を受け入れておると。そこで当の農水大臣は苦渋に満ちた明け暮れを送っておられると私はお察ししております。
そこで、この問題に今後どのように取り組んでいこうとしておるのか、どのように進めていこうとしておるのか、まず大臣の苦渋に満ちたその心境を述べていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/209
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210・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 毎々申し上げておるわけでございますけれども、いろんな御質問を受けるたびに、またいろんなことを書かれるたびに私自身が非常に困惑もし、また新たな決意も燃えたぎらせながら毎日毎日を就任以来送っておるということは、私の心境としては事実そのとおりでございます。
しかし、これを日本の食糧政策の前進のために、しかも友好国との間に起きた問題、急速な国際化という現象、特に国内におきましては生産者団体の不安感、流通関係者の改善への模索、消費者ニーズの多様化、こういうことを頭に置きながら冷静に対応していかなければならないと。先ほどの質問者にも御議論がございましたけれども、それをまた日米安保体制と結びつけられますといろいろまたややこしゅうなりますし何でございますが、しかし私としては農林水産省の責任者といたしまして、そして竹下内閣が目指す平和裏に国際的に貢献をしていく、そういう国際社会の中での我が国の進むべき道、それはそれ相並行いたしまして国内の食糧政策を将来を見通した確実なものにしていく、そしてそういう意味では手順を尽くしていく、確かな展望を開きながら手順を尽くしていく、こういう一つの大枠を常に頭の中に置きながら努力を続けておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/210
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211・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 もう一言、大臣の激励、叱咜と言うと失礼になりますから激励になればと……
沖縄の歌、琉歌に「枝(ユダ)や世界(シケ)まるち、芯(シン)や天拝(ティンカ)みて、根(ヒジ)や地(チ)ぬ底(スク)ぬ果(ハ)てん見(ミ)らん。」こういう宇宙的な発想の歌があるんです。木の枝は横に限りなく広がって世を覆う、世界を治める。木の芯は宇宙に向かって理想を追求しておる。ところが、吹けば飛ぶような将棋のこまではない、大木の根っこは大地に浸透してどこまで浸透するかわからない。雨が降ろうが風が吹こうが日が照ろうが揺るぎないバランスのとれたその大木を沖縄の人間の姿として、象徴として歌い上げた歌なんです。
私がそれをあえて申し上げましたのは、農は国のもとという大木がある限り、その大木を切って、あるいは腐れ落ちるのは別ですよ、あくまでもその大木が、農は国のもとという大木が揺るぎないものであるならば、あるいは葉っぱは季節ごとに落ちることも散ることもあるかもしれぬが、揺るぎないその大木をどんなことがあっても守ってもらわなければいけないでしょう。それは農水大臣に。そのことを申し上げるわけで、それに対する決意を最後にお聞きします。
大臣は、この前沖縄にいらっしゃいましたね。八品目の問題を中心としたその中の特に日本の亜熱帯農業と深い関係のあるパインアップル、その現地を見にいらした。その沖縄パイン生産現地の視察の御感想をひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/211
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212・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 前段、食と人間、一つの哲学とも言えるお考えを承りました。
立派な歌も承りましたが、なかなか一遍で覚え切れないものですから、私も今お聞きして非常に関心を持っておりますので、ちょうど新潟弁を先生が、委員がなかなか理解しにくいように私も理解し得ない言葉があるものですから、そういう意味で後でちょうだいできれば幸いだなと、こう思っております。
沖縄のパイン、パイン農家の今日に至るまでの経緯、沖縄全体が復帰するまでの間の大変な御苦労、その後も営々として努力をされておるその姿は、ほかの地域の地域農政とはまた一味違った極めて深刻なこともよくわかりますので、私自身、一遍パイン畑に足を踏み込んで、そしていろいろ御意見を聞いてみたいな、こう思って立ち寄らせていただいた。その際、現地におきましては大変熱心な御歓迎をいただきまして身に余る光栄であると同時に、その責任の重さをいよいよ痛感いたしました。
しかし、当時は、あのころはもう四月の一日から数量制限撤廃するぞと、そうなるんだと思い込んでおられたのも現地に行って現実だと私は思いました。したがいまして、そういうことではない、スケジュールは早く示すよ、しかし、三カ月や半年やそこらでもってすぐ数量制限を撤廃するようなことにはならない、丁寧に取り扱ってまいりたい、それで生きてきた人が生きていかなければならぬのですから、このようなことも雇用問題にも関連しながら我々が配慮しなければならぬ問題であるということを私なりに御説明も申し上げたわけでございまして、話し合いをすればするほど私の責任は重い、農林官僚の皆さんを督励して一生懸命プロジェクトチームにおいて、よしわかった、まあまあこれならばよしと言われるような答えを出さなければならぬ、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/212
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213・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 大臣はあの折、東村で生産農家を前にして、パインは守る、そういった激励を、またこれは国会でも、私にもそう御答弁があった、守るということをね。
そこで、八品目問題のプロジェクトが二月一日から発足した、こういうことでありますね。そこで、時間も迫ってまいりましたので、一応項目だけ私今申し上げますからメモしてくださって、現時点でどういうところまでそのプロジェクトが進んでおるのであるかお答え願いたい。
まず一つ、構成。そのプロジェクトの構成はどういうメンバーで構成されておるのか、そのレベルあるいは関係部局、これが一つ。
二、人員。何名で構成されておるのか、人員、数。
三、作業状態。結成以来今日まで作業がどの程度進んでおるのか。結論が出たのか出ないのか、あるいはどういう状態にあるか。
四、結論を出す時期はいつなのか。いつまでに結論を出すのか。
五、検討項目。どういう項目を検討するのか。関税の問題とか、あるいはその割り当てとか輸入課徴金の問題とか、自由化の時期とか、いろいろ考えられますね、そういった点。
次に、パインの生産性向上について、品種改良、現状と見通し。二、圃場整備と基盤整備等についての省力化、機械化の可能性の問題。最後に、パインの消費拡大について、生果、缶詰、ジュースを、どのように対米的な分野ならば国内的な調整ということが、特に大臣としても考えてもらわなければもういけないことなんでしょう。それから内外価格差についての対応をどうするとか、こういうこともちらほら今までも問題に出してきたわけですが、そういった観点からひとつ聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/213
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214・浜口義曠
○政府委員(浜口義曠君) ただいま先生からはプロジェクトチームの活用の具体的な諸元といったものの御質問があったわけでございます。
五項目の事項でございますが、私からその個別の問題につきまして簡単に御説明をしたいと思います。
第一点の構成部局でございますが、この問題は農林省内の関係部局ということでございまして、具体的に挙げるといたしますと、大臣官房企画室、経済局、農蚕園芸局、畜産局、食品流通局、その事務担当者を集めておりまして、第二の点に関連する問題でございますが、直接に従事をしております人員といたしましては十二名より構成されておりまして、そのチームを官房企画室に設置をしております。
作業状況でございますが、この点につきましては個別の今までの状況におきまして、先ほども御答弁申し上げたところでございますが、関係団体からの意見の聴取といった段階をまずけみしまして、それぞれの各品目ごとの関税の問題あるいは生産確保に対する影響の問題等々議論をしております。
結論を出す時期でございますけれども、この点につきましては、現段階におきましては、一つは国内におけるヒアリングの問題、あるいは対外的な具体的な国境措置との関連等々もありまして、できるだけ速やかにということで、現在作業を急いでいるところでございます。
検討項目につきましては、先ほど少し触れさせていただきましたけれども、具体的な検討項目といたしましては、農業の経営対策あるいは生産対策の問題、さらに農産物の加工対策、さらには国境措置といったものを総合的にあらゆる角度から問題点を提起いたしまして、議論をしているところでございます。
御指摘のとおり、二月の初めから実施をしておりますが、何せ項目が多い点、それから対外的な折衝に関連する点ということでございまして、先ほど申し上げました人員で連日昼夜を分かたず議論もして、あるいは調査をし、立案に従事しておりますが、現時点においていつかということの具体的なことは申し上げられない段階でございます。
簡単でございますが、私の方から前段につきまして申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/214
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215・吉國隆
○政府委員(吉國隆君) パイナップルの生産性向上策並びに消費拡大策について、お尋ねの点につきまして私からお答え申し上げます。
まず、基盤整備の関係でございますが、お話しございましたように、機械化を進めていくためにも基盤整備が重要であると考えておりまして、農道、作業道の整備、そういったものを中心に今努力を行っているところでございます。また、省力化機械の問題につきましてもいろいろと努力を行っているところでございますが、特に多目的作業機械あるいはロータリーマルチングのための機械、こういったものの導入等について事業が行われているところでございます。
また、消費拡大でございますが、加工用のパイナップルの消費拡大という側面につきましては、大消費地域におきましてパイナップル缶詰を利用した料理集やチラシの作成、配布でございますとか、あるいは缶詰、果汁の試食、試飲会、こういったものを行っているところでございます。
また、生食用のパイナップルにつきましても、沖縄産のパイナップルの特性を生かしまして、今後糖度向上等ハウス栽培の導入等によりまして品質の向上を進めながら消費拡大を進めていくことが必要であるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/215
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216・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 時間が来ましたので、ちょっと一つ注文をつけたいんですが、要望したいことがあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/216
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217・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/217
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218・喜屋武眞榮
○喜屋武眞榮君 今お聞きしますと、お二人とも関係団体とか、できるだけ速やかにとか、総合的という言葉、非常に抽象的なお答えでありましたので、ひとつ具体的に報告してください。今おっしゃったことを、もっと内容、例えば人員構成とか、人員は何名であったのか、その人員の構成はどういうレベルとか関係部局等、具体的に尋ねたでしょう。そういうことを知らしてくださいということなんです。よろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/218
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219・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) おっしゃるような資料を出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/219
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220・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/220
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221・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 次に、原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/221
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222・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 原材料の供給事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び改正内容を御説明申し上げます。
この臨時措置法は、昭和五十二年に、米国、ソ連等の二百海里の設定等による水産加工原材料の供給事情の著しい変化にかんがみ、これに即応して行われる水産加工施設の改良等に必要な長期かつ低利の資金の貸し付けを行うことを目的として制定されたものであります。
自来、この臨時措置法に基づき、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫及び国民金融公庫からの貸し付けが行われ、原材料の北洋魚種からいわし等の多獲性魚への転換等が促進されてきたところであります。
この臨時措置法は、本年三月三十一日限りでその効力を失うこととされておりますが、米国、ソ連等の二百海里体制は、昭和六十年代に入って著しく強化され、対日漁獲割り当ては激減しております。また、各国とも、自国資源を最大限に活用する観点から、水産資源をみずから漁獲・加工し、製品としての輸出に努めており、円高がこれに拍車をかけている面もあって、最近では水産加工品の輸入が増大する傾向にあります。
このため、原材料の供給事情の変化に対処して我が国近海資源の食用加工品の原材料としての利用を一層促進するとともに、水産加工品の貿易事情の変化に対処して、主要な近海資源を原材料とする水産加工業について、新製品・新技術の開発・導入や共同化を推進することにより、その体質を強化していくことが必要となっております。
このような状況にかんがみ、この臨時措置法の有効期限を五年間延長し、昭和六十七年度末までとするとともに、新たに、水産加工品の貿易事情の変化に対処して、主要な近海資源を原材料とする水産加工業の体質強化を図るための施設費、研究開発費等の資金の融通が行えるよう、所要の規定の整備を行うこととした次第であります。
以上がこの法律案の提案の理由及び改正の内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/222
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223・岡部三郎
○委員長(岡部三郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215007X00219880322/223
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