1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和六十三年三月十日(木曜日)
午後零時三十五分開会
─────────────
委員氏名
委員長 田沢 智治君
理 事 仲川 幸男君
理 事 林 寛子君
理 事 粕谷 照美君
理 事 佐藤 昭夫君
小野 清子君
川原新次郎君
木宮 和彦君
山東 昭子君
杉山 令肇君
世耕 政隆君
竹山 裕君
寺内 弘子君
柳川 覺治君
久保 亘君
安永 英雄君
高木健太郎君
高桑 栄松君
勝木 健司君
下村 泰君
─────────────
委員の異動
二月十九日
辞任 補欠選任
寺内 弘子君 坪井 一宇君
二月二十二日
辞任 補欠選任
坪井 一宇君 寺内 弘子君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 田沢 智治君
理 事
仲川 幸男君
林 寛子君
粕谷 照美君
佐藤 昭夫君
委 員
小野 清子君
川原新次郎君
山東 昭子君
杉山 令肇君
世耕 政隆君
寺内 弘子君
柳川 覺治君
久保 亘君
安永 英雄君
高木健太郎君
高桑 栄松君
勝木 健司君
下村 泰君
国務大臣
文 部 大 臣 中島源太郎君
政府委員
文部政務次官 船田 元君
文部大臣官房長 古村 澄一君
文部大臣官房総
務審議官 川村 恒明君
文部大臣官房会
計課長 野崎 弘君
文部省初等中等
教育局長 西崎 清久君
文部省教育助成
局長 加戸 守行君
文部省高等教育
局長 阿部 充夫君
文部省高等教育
局私学部長 坂元 弘直君
文部省学術国際
局長 植木 浩君
文部省社会教育
局長 齋藤 諦淳君
文部省体育局長 國分 正明君
文化庁次長 横瀬 庄次君
事務局側
常任委員会専門
員 佐々木定典君
─────────────
本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○教育、文化及び学術に関する調査
(文教行政の基本施策に関する件)
(昭和六十三年度文部省関係予算に関する件)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/0
-
001・田沢智治
○委員長(田沢智治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨年の十二月二十六日、山本正和君が委員を辞任され、その補欠として安永英雄君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/1
-
002・田沢智治
○委員長(田沢智治君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。
本委員会は、今期国会におきましても、教育、文化及び学術に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/2
-
003・田沢智治
○委員長(田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/3
-
004・田沢智治
○委員長(田沢智治君) 次に、教育、文化及び学術に関する調査を議題といたします。
まず、文教行政の基本施策について、中島文部大臣から所信を聴取いたします。中島文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/4
-
005・中島源太郎
○国務大臣(中島源太郎君) 第百十二回国会におきまして、文教各般の問題を御審議いただくに当たり、所信の一端を申し述べます。
教育は、国家社会発展の基盤を培うものであり、次代の日本を担う青少年を育成する上で一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題であります。
臨時教育審議会は、現在の教育が抱える諸課題を踏まえつつ、時代の進展に対応した教育の実現を期し、四次にわたる答申を提出して、昨年八月、三年間に及ぶ活動を終えられました。政府としては、既に各般の施策の具体化に着手してきておりますが、今後とも臨時教育審議会答申に示された広範多岐にわたる改革提言の着実な推進に努めることとしております。このため、昨年十月に政府全体として当面取り組むべき重要な課題とその具体化方策を明らかにした教育改革推進大綱を閣議決定したところであり、当面、同大綱に沿って所要の施策を積極的に推進してまいります。また、教育改革に関する施策を円滑かつ効果的に推進するため、総理府に臨時教育改革推進会議(仮称)を新たに設置すべく政府において所要の準備を進めているところであります。
私は、教育改革の担当大臣として、その果たすべき役割と責務を十分認識し、教育、学術、文化、スポーツに対する国民や社会の要請にこたえるとともに、我が国が国際社会へ積極的に貢献していくべく、教育改革の実現に全力を傾けてまいる決意であります。
以下、主要な課題について私の基本的な考え方を申し述べます。
第一は、生涯学習の振興についてであります。
今日、情報化、国際化などの社会の変化に主体的に対応し、今後も社会の活力を維持し豊かな社
会を築いていくために、学歴社会の弊害を是正するとともに、国民の生涯にわたる学習の成果が適正に評価される社会の形成が必要とされています。また、長寿社会の到来や自由時間の増大、所得水準の向上等を背景とする生活環境の変化に伴い、人々の学習意欲が高まるとともに、科学技術の高度化や社会の情報化の進展等により、新たな知識、技術の修得などの学習需要が増大しております。
文部省としては、このような国民の要望にこたえ、生涯学習を積極的に振興する観点から、国、地方を通ずるその振興のための体制整備を図ってまいります。また、必要な施設の整備、指導者の養成確保、多様な学習情報の提供、高等教育機関への社会人の受け入れ促進、放送大学による学習機会の拡充等を中心とする生涯学習の基盤整備に努めてまいります。家庭、学校、地域社会各分野の教育機能を活性化するとともに、国民が学校教育、社会教育、スポーツ、文化活動等を通じて、生涯のどの時期でも適時適切な学習をすることができる社会の実現を図ってまいる所存であります。
第二は、初等中等教育の改善充実についてであります。
これからの初等中等教育においては、二十一世紀に向かって、国際社会に生きる日本人を育成するという観点に立ち、豊かな心を持ち、たくましく生きる人間の育成や社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図り、また基礎、基本を重視し、個性を生かす教育の充実を図ることが重要であります。このため、昨年末の教育課程審議会の答申を受けて学習指導要領等の改訂を行い、教育指導の改善に取り組んでまいる所存であります。
また、道徳教育につきましては、今後とも、学校と家庭や地域社会とのより密接な連携を図りながら、その一層の充実に努めてまいります。
児童生徒の問題行動の解決には、学校がその責任を十分果たすとともに、学校、家庭、地域社会が一体となった取り組みを推進することが肝要であります。このため、文部省としては、児童生徒の健全育成のための諸施策の一層の充実に努めてまいります。
さらに、高等学校教育の多様化、弾力化を推進するため、高等学校の定時制、通信制課程の修業年限の弾力化を図るなど所要の制度改善に取り組んでまいる所存であります。
幼児教育、職業教育及び特殊教育につきましては、今後とも一層の振興を図るとともに、児童生徒が生涯にわたり心身ともに健康で充実した生活を送ることができるよう健康教育の充実に努めてまいります。
次に、教育条件の整備につきましては、児童生徒一人一人により行き届いた教育を行うため、四十人学級を初めとする教職員定数改善計画の着実な推進に努めることとともに、義務教育教科書無償給与制度の堅持、過大規模校の解消等公立学校施設の整備に努めてまいります。
教員の資質能力の向上は、教育改革を進める上で最も重要な政策課題の一つであります。
そのためには、教員養成、現職研修の各段階を通じた総合的な施策を講じていく必要があり、文部省としては、昨年末の教育職員養成審議会の答申を踏まえて、所要の制度改善を図ってまいります。
その第一は、今後の学校教育の内容の変化に対応するとともに、広く教員に人材を得るため、教員養成、免許制度の改善を図ることであります。
第二は、教員としての第一歩を踏み出す最初の段階において充実した研修を行うことにより、教員としての使命感や実践的指導力を養わせるため、新任教員に対する一年間の初任者研修制度を創設することであります。
なお、初任者研修制度の円滑な本格実施を図るため、その試行を昭和六十三年度にはすべての都道府県、指定都市において実施することとしております。
さらに、特色ある地方教育行政の展開を図るため、教育委員会の活性化を進めてまいります。
第三は、高等教育の改革と充実についてであります。
二十一世紀に向けて我が国が国際社会に貢献する国家として、より一層発展していくためには、社会や国民の多様な要請を踏まえつつ、大学を中心とする高等教育の改革を推進することが重要な課題となっております。このため、大学等の教育研究の高度化、個性化、活性化等を図る具体的方策につきまして、昨年秋に発足いたしました大学審議会に検討をお願いしているところであり、今後その審議の動向を見きわめながら、大学改革の諸課題の具体化に積極的に取り組んでまいる所存であります。当面、特に、大学院の充実と改革を図るため、大学院全般の整備並びにその高度化及び多様化の推進に努めてまいりたいと存じます。
大学入試の改善につきましては、国公私立大学を通じ受験生の個性、能力、適性に応じた多様な入学者選抜の実現を図るため、昭和六十五年度入試から臨時教育審議会答申を踏まえた入試改革を実施することを目途に、大学入試センターの所掌事務の変更等所要の準備を進めていくこととしております。また、国立大学の入学試験につきましては、複数受験制度や二次試験のあり方について国立大学協会とも協力して適切な改善が図られるよう努力を重ねる所存であります。
さらに、国立学校の整備につきましては、総合研究大学院大学を創設し、三重大学に医療技術短期大学部を併設する等、努めて精選しつつも学問の発展及び時代の進展に即し、教育研究の推進上必要な整備に力を注ぐこととしております。
第四は、学術研究の振興についてであります。
大学を中心とする学術研究は、国家、社会のあらゆる分野の発展の基盤を形成するものであり、その振興は極めて重要であります。とりわけ独創的、先端的な学術研究を推進し、世界の学術の進展に積極的に貢献していくことが我が国に強く期待されているところであります。このため、科学研究費の拡充に努めるとともに、若手研究者の育成に格段の努力を払ってまいります。また、近年の学術研究の進展に対応し、国立天文台を創設するなど研究体制の整備充実を図ってまいります。
さらに、加速器科学、宇宙科学、生命科学等の重要基礎研究や、民間等との共同研究の推進を図ってまいる所存であります。
第五は、私学の振興についてであります。
私立学校は、それぞれの建学の精神に基づいた個性豊かな教育研究を実施しており、我が国の学校教育の普及充実に多大の貢献をしてきております。このような私学の果たす役割の重要性にかんがみ、引き続き教育研究条件の維持向上に努めてまいる所存であります。
また、専修学校につきましては、生涯学習振興の観点を踏まえ、社会の多様な要請に応じた特色ある教育の一層の振興を図るため、今後一層充実した指導と育成に努めてまいります。
第六は、社会教育、体育・スポーツ及び文化の振興についてであります。
今日、国民の間には、社会の変化に適応し、人生八十年型社会にあって、心身ともに健康で豊かな人生を送るため、生涯にわたって、学習の機会を持ち、文化や体育・スポーツに親しみたいという要望が高まっております。
このため、文部省におきましては、生涯学習社会への移行という基本的視点を踏まえつつ、社会教育の一層の振興を図ってまいります。また、生涯スポーツ活動の振興に引き続き努めることとし、昭和六十三年度においては、新たにスポーツ・レクリエーションの全国的な祭典を開催するとともに、一定の地域をスポーツ活動等の場として総合的かつ重点的に整備するための施策について所要の調査研究を進めることとしております。
また、本年開催されるソウル・オリンピックを初め、各種の国際競技会における我が国選手の活躍に対する国民の期待も大きいことから、国際競技力向上のための施策の充実にも力を入れてまいります。
さらに、伝統文化の継承と豊かな文化の創造に向けて、諸条件の整備など関係施策を推進するこ
とが重要であります。このため、貴重な国民的財産である文化財の保存、活用を図るとともに、現代舞台芸術のためのセンターとなる第二国立劇場の設立の推進、国際的視野に立った意欲的な芸術活動の推進、国民文化祭の開催など芸術文化の振興に努めてまいります。また、社会の進展に応じた著作権制度の改善を図ってまいります。
最後に、教育、学術、文化、スポーツの国際交流の推進についてであります。
我が国の国際的役割の増大に伴い、教育、学術、文化、スポーツの国際交流、協力の推進は、ますます重要な課題となっております。このため、留学生及び研究者の交流、国際共同研究、外国人に対する日本語教育の推進、語学指導等を行う外国青年招致事業の拡充等を図ってまいります。とりわけ留学生交流につきましては、二十一世紀初頭における十万人の留学生受け入れという長期的展望に立ち、広く国民各界各層の協力も得つつ、私費留学生に対する支援など受け入れ体制の整備充実を図ってまいる所存であります。また、研究者交流につきましては、外国人の若手研究者に対するフェローシップを創設することとしております。
同時に、海外勤務者の子女に対する教育につきましては、日本人学校等の整備充実を図るとともに、帰国子女受け入れ体制の充実にも引き続き努力してまいります。
以上、文教行政の当面する諸問題について所信の一端を申し述べました。
文教委員各位の一層の御指導と御協力をお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/5
-
006・田沢智治
○委員長(田沢智治君) 次に、昭和六十三年度文部省関係予算について、船田文部政務次官から説明を聴取いたします。船田文部政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/6
-
007・船田元
○政府委員(船田元君) 昭和六十三年度文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
昭和六十三年度の文部省予算につきましては、文教は国政の基本であるとの認識に立ち、教育、学術、文化、スポーツの諸施策について、その着実な推進を図るため、臨時教育審議会の答申を踏まえ、所要の予算の確保に努めたところであります。
文部省所管の一般会計予算額は、四兆五千七百六十五億九千四百万円、国立学校特別会計予算額は、一兆八千百八十三億四千二百万円となっております。
以下、昭和六十三年度予算における主要な事項について、御説明申し上げます。
第一は、初等中等教育の充実に関する経費であります。
まず、義務教育語学校の学級編制及び教職員定数の改善計画につきましては、いわゆる四十人学級の実施について、小学校は児童減少市町村以外のその他市町村内の学校の第三学年まで、中学校は児童減少市町村内の学校の第三学年まで、それぞれ施設余裕校について実施することとしたほか、教職員配置についても所要の改善を行うことといたしております。
次に、教職員の資質の向上を図るため、新規採用教員等研修、免許外教科担任教員研修、教員の海外派遣、教育研究グループ補助、教育研究団体への助成など、各種研修を実施することといたしております。また、初任者研修制度につきましては、その円滑な実施を図るため、初任者研修の試行を拡充し、全都道府県、指定都市において実施することといたしております。
道徳教育につきましては、児童生徒の豊かな人間形成を図る上で極めて重要な役割を担っていることにかんがみ、その一層の充実を図るため、家庭、地域社会との連携のもとに、奉仕的体験、生活体験等を通じて道徳的実践力の育成強化を図る事業などを新たに実施することといたしております。
次に、児童生徒の問題行動について適切に対処するとともに、児童生徒の健全な育成に資するため、自然教室推進事業の拡充を図るほか、引き続き生徒指導推進校の指定、生徒指導担当教員の研修等の各般の施策を充実することといたしております。
義務教育教科書の無償給与につきましては、これを継続することとし、所要の経費を計上いたしております。
幼稚園教育につきましては、保護者の経済的な負担の軽減を図るための幼稚園就園奨励費補助を行うなど、一層の振興を図ることといたしております。
特殊教育につきましては、心身障害児の職業的自立のための進路指導等の実践研究を新たに実施するほか、特殊教育就学奨励費の充実など、その施策の振興に努めることといたしております。
教育内容につきましては、その改善について、昨年末、教育課程審議会からの答申がありましたが、これを受けて学習指導要領等の改訂を行い、その趣旨の徹底を図ることといたしております。また、学校におけるコンピューター利用のあり方等についても引き続き研究を行うことといたしております。
教育方法につきましては、その改善充実を図るため、引き続き総合的な調査研究を推進するほか、教育機器を利用した教育方法開発のための特別設備の助成等を行うことといたしております。
また、海外子女教育、帰国子女教育につきましては、日本人学校の増設、児童生徒数の増加に対応し、派遣教員を増員するとともに、中国等帰国孤児子女教育研究協力校を拡充するなど、帰国子女受け入れ体制の整備を図ることといたしております。
さらに、児童生徒等の健康の保持増進に係る事業の推進に努めるとともに、学校給食につきましても、豊かで魅力ある学校給食を目指して、学校給食施設設備の整備を図ることといたしております。
次に、公立学校施設の整備につきましては、校舎等建物の新増改築事業について所要の事業量を確保するとともに、児童生徒急増地域における小中学校校舎の新増築に係る特例措置の延長、部室整備に対する補助制度の創設、吹きつけアスベストの改修に対する補助制度の拡充等の制度改善を行うこととし、これらに要する経費として、二千六百七十六億円を計上いたしております。
なお、定時制及び通信教育の振興、理科教育及び産業教育の振興、英語教育の充実、地域改善対策としての教育の振興など各般の施策につきましても所要の経費を計上いたしております。
第二は、私学助成に関する経費であります。
まず、私立の大学等に対する経常費補助につきましては、昭和六十二年度に対して十億円増の二千四百五十三億五千万円を計上いたしております。このほか、教育研究装置施設整備費補助についても、大学院最先端装置、情報処理教育装置等の整備を図ることとし、昭和六十二年度に対して二十億円増の七十四億円を計上するなど、教育研究の推進に配慮いたしております。
また、私立の高等学校から幼稚園までの経常費助成を行う都道府県に対する補助につきましても、昭和六十二年度に対して十億円増の七百三十五億円を計上いたしております。
日本私学振興財団の貸付事業につきましては、政府出資金二億五千万円及び財政投融資資金からの借入金二百二十七億円を計上し、自己調達資金と合わせて五百七十億円の貸付額を予定いたしております。
また、専修学校につきましては、職業教育の高度化を推進するための所要経費を新たに計上するとともに、教員研修事業等に対する補助、大型教育装置に対する補助の拡充等を図るなど、専修学校教育の一層の振興を図ることといたしております。
第三は、高等教育の整備充実に関する経費であります。
まず、大学入試の改善につきましては、昭和六十五年度入試から臨時教育審議会答申を踏まえた入試改革を実施することを目途に、大学入試センターの所掌事務の変更等の所要の準備を進めていくことといたしております。
また、国立大学の整備につきましては、総合研究大学院大学を創設するとともに、三重大学に医療技術短期大学部を併設するほか、十八歳人口急増に伴う大学入学志願者の急増に適切に対処するなど、教育研究上緊急なものについて、整備充実を図ることといたしております。
このほか、特に、大学院につきましては、最先端設備の拡充を図るとともに、教育研究上必要性の高い研究科、専攻の新設等を行うことといたしております。
附属病院につきましては、教育、研究、診療上特に必要性の高い分野及び社会的要請の強い分野について、診療科、救急部等を新設するなど、その充実を図ることといたしております。
なお、国立大学の授業料につきましては、諸般の情勢を総合的に勘案し、昭和六十四年度入学者から、これを改定することといたしております。
次に、育英奨学事業につきましては、昭和六十三年度から奨学金貸与人員を増員するなど、その改善を図ったところであり、政府貸付金七百三十九億円、財政投融資資金三百三十億円と返還金とを合わせて、一千五百六十三億円の学資貸与事業を行うことといたしております。
また、公立大学につきましては、医科大学、看護大学等の経常費補助及び新たに整備を図ることとした情報処理教育設備を含めた教育設備整備費等補助について、所要の助成を図ることといたしております。
このほか、大学改革を推進するため、我が国の高等教育に関する基本的事項について調査審議する大学審議会の運営、放送大学の受講の機会を拡大するための地区センターの設置等放送大学学園の整備等の各般の施策につきましても、所要の経費を計上いたしております。
第四は、学術の振興に関する経費であります。
まず、科学研究費補助金につきましては、独創的、先端的な研究を推進し、我が国の学術研究を格段に発展させるため引き続き拡充を図ることとし、昭和六十二年度に対して三十八億円増の四百八十八億八千万円を計上いたしております。
次に、重要基礎研究につきましては、加速器科学、宇宙科学、生命科学等の一層の推進を図ることとし、これら重要基礎研究に要する経費として五百六十五億円を計上いたしております。
また、学術研究体制の整備につきましても、国立天文台を創設するとともに、すぐれた若手研究者の育成に資するための特別研究員制度の拡充、大学と民間等との共同研究の充実を図るなど各般の施策を進めることといたしております。
第五は、社会教育の振興に関する経費であります。
まず、地域における社会教育活動の拠点となる公立社会教育施設につきましては、引き続きその整備を図ることとし、このために必要な経費として七十九億円を計上いたしております。
また、生涯学習の観点から、地域全体で生涯学習に取り組む体制の整備及びその推進を図るとともに、青少年、成人、婦人、高齢者などの各層に対する学習機会の提供、地域活動の促進、新たなメディアの活用等による多様な学習情報の提供に努めるほか、社会教育主事、社会教育指導員等の養成確保、民間の社会教育活動の推進にも努めることとして、所要の経費を計上いたしております。
さらに、青少年の健全育成に資するため、青少年の野外活動や家庭教育の充実に努めるとともに、青少年に豊かな生活体験の機会を提供する少年自然の家につきましては、福岡県夜須町に第十一番目の国立少年自然の家を機関設置し、また、山口県徳地町に置く第十二番目の少年自然の家の設立準備を行うなど計画的な整備を進めることといたしております。
このほか、国立オリンピック記念青少年総合センターについては、施設の統合的整備のため、構想をまとめるとともに、基本設計を進めるための所要の経費を計上いたしております。
第六は、体育・スポーツの振興に関する経費であります。
まず、国民の体力つくりとスポーツの普及振興につきましては、広く体育・スポーツ施設の整備を進めるため、社会体育施設及び学校体育施設の整備に要する経費として昭和六十二年度に対して二十三億円増の百六十八億円を計上いたしております。
また、学校体育につきましては、体育指導の充実強化に努めるとともに、学校体育大会の補助につきましても所要の経費を計上いたしております。
さらに、生涯スポーツ推進の観点から、新たに全国スポーツ・レクリエーション祭を開催するとともに、家庭、学校、地域における体力つくり事業の充実に努め、たくましい青少年の育成と明るく活力ある地域社会の形成に資することといたしております。
このほか、日本体育協会の行う選手強化事業や国際交流事業等に対して引き続き補助を行うこととし、特にソウル・オリンピック選手強化特別対策事業につきましては、その拡充を図っております。さらに、国民体育大会の助成など各般の施策につきましても所要の経費を計上いたしております。
第七は、芸術文化の振興と文化財保護の充実に関する経費であります。
まず、芸術創作活動の奨励につきましては、芸術関係団体の創作活動に対する補助、芸術祭、芸術家研修等を行うための経費のほか、新たに民間等の協力も得て、国の内外において意欲的な公演を実施する芸術活動の特別推進事業の経費を計上いたしております。
また、文化の普及につきましては、こども芸術劇場、青少年芸術劇場、中学校芸術鑑賞教室、移動芸術祭等を実施し、国民文化祭を開催するための経費を計上するとともに、中国引揚者や外国人のための日本語教育等に係る所要の経費を計上いたしております。
次に、文化財保護につきましては、国民の貴重な文化遺産の保存、活用を図るため、国宝、重要文化財等の保存整備、埋蔵文化財の発掘調査、史跡の整備・公有化を進め、また天然記念物の保護及び食害対策を進めるとともに、国立劇場の事業を充実するなど、伝統芸能等の保存伝承を図ることといたしております。
また、文化施設の整備につきましては、地域社会における文化振興の拠点となる文化会館、歴史民俗資料館等の地方文化施設の整備を図るとともに、国立文化施設については、かねてより準備を進めております第二国立劇場について、実施設計に着手することとし、そのための経費を計上いたしております。
第八は、教育、学術、文化の国際交流、協力の推進に関する経費であります。
まず、発展途上国への協力等の観点から、外国人留学生の受け入れの拡充、受け入れ体制の整備、日本語教育の充実等を図るとともに、私費留学生に対する施策を充実し、大学等はもとより民間団体など各方面の協力も得ながら、二十一世紀を目指して留学生に関する事業を積極的に推進することとし、そのために要する経費として百八十三億円を計上いたしております。
さらに、ユネスコを通じた教育協力、国連大学への協力等についてもその推進を図ることといたしております。
また、学術の国際交流、協力を推進するため、諸外国との研究者交流、特に次代を担う外国人若手研究者の受け入れを拡充するとともに、各種の国際共同研究、拠点大学方式による発展途上国との学術交流の促進を図ることといたしております。
第九は、教育改革の総合的推進等に関する経費であります。
ただいま御説明いたしましたように、教育改革の着実な推進を図るため所要の経費を計上いたしておりますが、このほかに教育改革に関する施策を円滑かつ効果的に推進するため、総理府に臨時教育改革推進会議(仮称)を新たに設置することに伴う関連経費を計上するとともに、地方公共団
体等への教育改革に関する研究委託、民間の調査研究機関等を活用しての時代の進展や社会の変化に対応した文教政策の立案に関する総合的調査研究、入学時期に関する調査研究などを実施するための経費を計上いたしております。
以上、昭和六十三年度の文部省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。
何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/7
-
008・田沢智治
○委員長(田沢智治君) 以上で文部大臣の所信及び昭和六十三年度文部省関係予算の説明聴取を終わります。
なお、本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215077X00119880310/8
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。