1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年五月十七日(火曜日)
午後二時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 三木 忠雄君
理 事
工藤万砂美君
鈴木 省吾君
猪熊 重二君
橋本 敦君
委 員
下稲葉耕吉君
徳永 正利君
中西 一郎君
長谷川 信君
林 ゆう君
秋山 長造君
千葉 景子君
関 嘉彦君
西川 潔君
政府委員
法務大臣官房長 根來 泰周君
法務大臣官房審
議官 稲葉 威雄君
法務省民事局長 藤井 正雄君
事務局側
常任委員会専門
員 片岡 定彦君
参考人
東京大学先端科
学技術研究セン
ター教授 大須賀節雄君
一橋大学学長 川井 健君
日本土地家屋調
査士会連合会会
長 多田 光吉君
日本司法書士会
連合会会長 牧野 忠明君
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本日の会議に付した案件
○不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/0
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001・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案につきまして御意見を伺うため、お手元に配付いたしております名簿のとおり、四名の方々に参考人として御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
次に議事の進め方について申し上げます。
まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただきたいと、このように考えております。
それでは、これより各参考人に順次御意見をお述べいただきたいと存じます。
初めに、大須賀参考人によろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/1
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002・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) 東京大学の大須賀でございます。
私は、技術の立場から民事行政審議会委員といたしまして、本システムの検討に当初から加わってまいりました立場から、技術的な面で御意見を述べさせていただきたいと思います。
そもそも、今回登記事務をコンピューター化するに際しましては、それなりの当然理由なり動機なりがなくてはございませんけれども、私はこの点に関しては大きく三つの理由があるかと思います。
一つは現行登記事務処理自体に内在する問題点でございます。これはさらに分けてみますと、もう先刻御存じのとおり、事件数が非常に増加をしている。ちなみに昭和四十年に取り扱い件数を百といたしますと、五十九年には四百七十六、恐らく現在ではもう少しふえていると思いますので約五倍になっているということ。それからもう一つは、事件が非常に集中化をしているということでございます。それは公共事業等が集中的に起こりますと件数が集中的に発生する。それから第三に、事件の非常に複雑化というようなことも挙げられております。これが第一でございます。
それから第二は、最近よく言われておりますように、情報化社会ということを言われますけれども、この本システムばかりではなくて、民間等あるいは行政等においても本システム以外にこの情報処理のコンピューター化ということがどんどん進められております。そういう情報が将来相互乗り入れをするといったようなことも当然予想されるわけで、社会全体としてのバランスということも考えなくてはいけないかと思います。
第三は、行政がこれから直面するであろうサービス化の強化といいますか、そういうものにどう対応するかということで、現状におきましても登記事務がもうほとんど手いっぱいであるという現状を考えますと、何らかの手を打たなくてはいけないかと思います。
今三点挙げましたけれども、もちろん一番重要なのは、現在のシステムがもう既に近い将来このままではどうにもならなくなるという現状に直面しているということでございまして、それは幾つかの問題点を発生しているわけでございます。
一つは、一人当たりの件数が非常に増大してしまっているために登記官が非常に多忙になっているということ。それからもう一つは、現在登記事務というものは帳簿を中心にして行っておりますが、それは要するに、紙に記録をしたものをマスターファイルとして使っているということを意味しております。それは、公開性の立場から大勢の人がそれを見なくてはいけないんですけれども、マスターファイルは一つしかありませんから当然競合が起こってまいります。
それからもう一つは、そのマスターファイル自身を不特定多数の方に見せるということのために、改ざんとか抜き取りとかということが予想されるわけであります。それに先ほどの事件数と職員数とのアンバランスといったことが起こってまいりますと、職員が非常に注意が向けられなくなりまして、改ざん等に対する監視が行き届かなくなるということも考えられる。それからもう一つは、職場環境がよくないということでございまして、こういう現状をどうにか解決しなくてはいけないということにも直面しておるわけであります。
そういうことをどのように解決していったらよいか。これはもうもちろん、どんな手でもそういう問題点を解決できればよろしいわけでございますけれども、登記事務というものの性質から申しまして、それが人間であろうとあるいはコンピューター化をいたしましょうと、登記簿というもの、マスターファイルというものは一つでなくてはならない。もしそれが多数にありますと矛盾を起こしたりしますので、一つのものでなくてはいけないわけであります。したがいまして、そういう登記簿はもともと一つでなくてはならないという大前提のもとで、先ほど申し上げました問題点をどう解決するかということを考えなくてはいけません。
そのためには、当然のことながら処理を高速化する、迅速化するということを考えるしかないわけでございまして、それにつきましては登記簿を従来紙に書いた記録から電子ファイル、電子的な記録媒体に移して処理をすることによって高速化を考えるということ。それからもう一つは、技術的には現在非常に発達してまいりましたネットワークをコンピューターと結びつけて、その情報の転送を早くするあるいは利用者がそのファイルに、普通アクセスするということを言いますが、その場に到達すること、それを高速化すること、そういうことを考えなくてはいけないわけであります。
ちなみに現在の計算機技術を見ますと、実はこの二つの面で非常に大きな発達をしております。一つはデータベースという技術が非常に発達しております。データベースというのは大量のデータを計算機内に統一的に管理する技術であります。それは現在のシステムに考えますと、登記簿に相当する大量のデータを計算機内で管理するということに相当いたします。この技術が非常に発達してまいりました。もう一つはネットワークの技術であります。それをつなげるデータ通信という技術が非常に伸びてまいりました。この二つの技術が、ちょうど今現在登記事務処理の問題点にうまくマッチする。そういう意味でコンピューター化ということが非常に有望な状態になっております。
そして、コンピューター化に際しまして考慮しなくてはならない点が幾つかございます。一つは処理の迅速性と申しますか、先ほど挙げました問題点を解決するのに十分な処理速度が得られるかどうか、これはもう当然のことでございます。それと同時に、コンピューター化をすることによって予想されますさまざまな変更、特にデータに関する安全性とか、信頼性とかというものは十分であるかどうか、その検討は非常に丹念にやっておかなくてはいけないと思います。
安全性と申しますとここでは、例えば事故等によってその情報が失われてしまわないか、その事故というのは人災もありますし天災もございます。それから先ほど申し上げました改ざん等に対して十分な対策がとり得るかどうか、これは非常に重要な点でございます。
また、そのコンピューター化に対する信頼性と申しますか、事務処理が過ちを起こさないかどうか。安全性を確保するために、将来コピーをするということを考えなくてはいけないのですけれども、その間に整合性がとれるかどうかといったようなことも問題になります。そういう点で処理の迅速性であるとか安全性、信頼性というものがまず考えられなくてはなりません。同時に、実現性あるいは将来性といった面にも目を向けなくてはいけないと思います。
実現性と申しますと、現在技術的にはもうかなりな問題が解決されておりますので、技術的にはそれほど問題はありませんけれども、むしろ経済性とでもいった方がよろしいかもしれません。余り高価なものであっては成り立たないということです。
それからもう一つは将来性でございまして、当面は先ほど申し上げました問題点をどう解決するかというところに全力を集中するかとも思いますけれども、将来発展する情報化社会に歩を合わせてさまざまな新しい利用形態が出てくると思います。例えば情報検索をするとか、あるいは現在行われておりませんけれども、管轄外の登記所から他の登記簿を見るといったようなことですね。そういったようなサービスに対応できるかどうかということも考えておかなくてはいけないかと思います。現在のコンピューター技術でいいますと、こういった種類の問題点はほぼ技術的には解決可能かとも思います。
なお最後に、現在考えられておりますコンピューターシステム化の特徴と申しますと、分散・三階層ネットワークシステムということに象徴されるかと思います。
これはコンピューター化を行うと申しました、また登記簿は一つでなくてはいけないと申しましたけれども、もちろんそれは全部を集めて一つになるのであって、それを部分部分に分けても差し支えないわけであります。現状でも、その登記全体の登記簿というものは各登記所に分散されて置かれております。それが全体をまとめたときに一つでなくてはならないということでありますから、計算機化をするに際してはそれを新しくすべてまとめてしまう方式をとるのか、あるいは計算機化においてもそれを分散して計算機自身も分散するかといったさまざまな方法が考えられます。
したがって、例えば集中方式であるとか、分散化方式であるかに関しましても審議会の中でいろいろな議論がなされました。これはシステム設計の問題といたしまして、システムの実現の期間であるとか、コストあるいは移行計画等にも大きな影響を持ってまいります。そればかりではなくて、システムのつくり方によっては利用の手順が変わってきます。そしてまた、それに応じて新しい法律をつくらなくてはいけないということも起こってまいります。
そういうようなことで全体を考えますと、現在コンピューター化をするのに一番都合のいいのは現状のシステムを、利用手順を変えないようにつくるということです。現在のシステムは登記所とその上に法務局並びに地方法務局があり、その上にさらに法務省という三段の構成でつくられております。その構成をそっくり計算機化する。したがって、計算機化するということは実際にはほとんどシステム全体には影響を及ぼさない。もちろん計算機化をするに際しては記録を縦書きから横書きにするといったような形で利用者に変化が出てきますので、そういう変化にはそれなりの法対策もしなくてはいけませんけれども、それが一番少ないような形でコンピューター化をするというのが現在の考えられているシステムの最も大きな特徴かと思います。
そのようにして変化が非常に少ないことと同時に、その三階層、つまり登記所のレベル、法務局、地方法務局のレベル、それから法務省のレベルというところに新しいコンピューターを置きまして、コンピューター自身を三つの階層に分けて、しかもそこに順次バックアップの情報を置くということによって、仮に一カ所の情報が失われましてもそのバックアップセンターでそれを補うなり、あるいはさらに災害が起こりまして二カ所の情報が失われても、最終的には最上位にあります法務省のレベルの情報によってそれを補うといったような情報の安全性の対策というものが十分にとられ得るということ。それから、その間をネットワークで結ぶということによって処理の高速性というものを保証しているということ。そういうことが現在の技術では十分に対応をとることができますし、先ほど申し上げましたように、現在登記所の抱えている問題点というものがかなりの程度といいますか、大半のものが解決されるのではないかと考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/2
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003・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
続きまして、川井参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/3
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004・川井健
○参考人(川井健君) 御紹介いただきました川井でございます。
私は民法の専攻でございますけれども、民事行政審議会の委員を務めまして、さらに板橋登記所にありますパイロットシステムに関しまして、法務省の内部に設けられた評価委員会の委員を務めさせていただきました。しかし専門は民法でありますので、余り技術的な方面につきましては知識を持っておりません。法的な面から意見を述べさせていただきたいと思っております。
前提問題といたしまして、言うまでもないことでありますけれども、一般の社会においてコンピューターの技術の進展というのは目覚ましいものがあることはもちろんでありまして、各方面において技術革新が行われ、また従来の諸問題が迅速確実に処理されている、こういう状況であります。十年前と比べて全く違った環境になっている次第でありますが、一般の行政におけるコンピューターの採用というのもかなり進んでいると言えるわけであります。
今回は、国民の権利に関係の深い不動産登記と商業登記の面でコンピューターの導入ということが考えられているわけでありますが、こういう登記の面では比較的コンピューターに親しみやすいということが言えると思います。いろんな権利がありますけれども、これをコンピューターと結びつけるというのにはそれぞれ問題がありますが、こういう登記の問題ですと従来、薄冊によって処理していたものを近代的な技術で処理をしようということでありまして、これはコンピューターと大変親しみやすい関係にあると思われるわけであります。
言うまでもありませんが、昭和六十年にいわゆる円滑化法が既に制定されておりまして、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律が制定されており、その中で政府の責務としまして「登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策」ということがうたわれております。今回の法案におきましては、そういった施策が目指されておりまして、その内容の主たるものは次の二点にあると思います。
一つは、登記事務についての迅速な処理ということであります。登記の申請に関するいわゆる甲号事件、これについての迅速な処理を行っていきたい。さらに、登記の閲覧、謄抄本の請求、そういう手続の面で迅速な処理をしていこうというわけであります。従来から登記所の職員は、国民の最近の土地に関する関心の増大ということもありまして非常に忙しく働いておりますが、国民の側からしますとややサービスが足りないのではないか、こういうふうな声も聞かれるわけであります。やはり迅速な事務処理が行われるということがサービスの上では大切なことであります。こういう面で、コンピューターシステムの導入によりまして迅速な処理ができる、これが一つのメリットになると思われるわけであります。
第二のメリットは確実な処理、いわゆる円滑化法にもうたわれていることでありますけれども、登記事務を確実に処理していこうということであります。従来の処理方法でも次第に改善がなされておりまして、昔は書き違いとかあるいは書き写しのときのミスなどが多かったわけであります。かなり現状でも改善はされておりますが、コンピューターシステムの導入によりましてこの点はさらに確実性が増すであろう、これが一つのメリットと言えると思うわけであります。
こういう二つのメリットがあるわけですけれども、それによるところの効果はどうであろうか。効果としては幾つか考えられるわけでありますが、ただいま申し上げたサービスの向上ということがその一つであります。特に、いわゆる乙号事件の処理がスピードアップされまして、謄抄本の請求とかあるいは閲覧関係の業務がスピードアップされる。こういう問題につきましてはこのたびの法案におきまして、閲覧関係については登記事項要約書の交付を請求するということになっておりますので、従来の薄冊を直接手にして閲覧するというのではなくて要約書の交付を受ける、こういう形になるわけであります。そして、そこには権利の現状が示されるということでありまして、そういうやり方は現行法の仕組みをコンピューターシステムの導入によってそのまま維持しようというものであります。
ただ、権利の現状というのが多少その範囲が問題になりますけれども、日本の登記というのは、そこに表示されている権利を信頼しても実は権利が存在しなかったという場合に、その信頼が保護されない。法律用語で言いますといわゆる公信の原則が採用されていない、そういう問題がありますので、少しさかのぼって権利関係を調べていくという必要性があります。そういったときには閉鎖登記簿を閲覧しまして権利関係を確かめていくということになるわけで、その点も現在の体制と本質的に違いがないわけでありますが、コンピューターシステムの導入によって若干その点がやや制限的になる、登記事項要約書に書かれる事項がややどうしても制限的になりますので、そういった面の問題がありますが、希望としては多少そこを膨らませるようなことがあってもいいのではないかという感じがいたします。これが第一点のサービスの向上ということであります。
第二の効果としまして、長期的に見ますと、結局作業の軽減ということにつながるであろう。今までのやり方に比べて登記所の公務員の仕事が軽減される、能率よく仕事が行われるということが期待できると思うわけであります。
第三には、それと関係しますが、長期的に見ますとやはりコストの軽減になるであろう。これは一般社会の会社における業務、銀行における業務などを見ても明らかでありまして、かなりの投資は必要でありますが、長期的に見ればコストの節約になる。特に公務員の場合でありますと定員が制限されており、今までの経過から見ても、人員は増加していないけれども仕事の量は増加している。今後もますます登記事務の増大ということが予想されるわけですが、そういうことに対応し得るであろう。
そして第四の効果としては、民事行政審議会の答申の最後のところに、「今後の検討課題」として書かれていることでありますが、不動産に関する総合的情報システムへの対応につながり得る。これは登記の問題だけじゃなくて、今後行政の各方面での関連を必要とする問題でありまして、例えば建設省とかあるいは国土庁あたりで土地対策をとる、そういった場合に登記所のデータがその基礎となり得ると、こういった面の発展性を含み得る。しかしこれは、今後の課題でありますから、今回の改正に直接かかわっているとは言えない問題であります。
以上が今回の改正による効果と言える問題だと思うのでありますが、こういう問題に関して、もちろん予想される反論というのがあり得るわけであります。
ただいまの大須賀先生の御指摘の中にも若干触れられていた問題と重複する面もありますが、予想される反論について若干申し上げますと、第一は、安全性はどうかということであります。
国民の重要な不動産に関する財産の記録が、コンピューター事故によって一瞬のうちに消える、こういうふうなことがありますと深刻な結果を招くわけでありますけれども、これについては、大須賀先生の御意見の中にもありましたように、このたびの改正法案では慎重な対応がとられております。各登記所で行う登記の記録のほかバックアップセンターが設けられる、さらに中央に登記情報センターが設けられる。このような形で幾重にも登記ファイルが保存される、万一事故が起こったときにはそれを回復することができる。こういう安全対策が考えられているわけであります。つまり、三階層ネットワークというシステムが採用されることになっておりますので、こういう安全性は大丈夫であろうというふうに考えるわけであります。
第二には、いわゆるコンピューター犯罪との関係はどうであろうか。各方面でコンピューター犯罪が問題になっておりまして、登記の不正、偽造、改ざんと、こういう問題が生じて国民の財産が害されることはないであろうか。こういう問題が生ずるのでありますが、このたびの改正法案におきましては、登記官コードとパスワードを慎重に用いさせるということによって、これに対応させるという仕組みになっております。従来から登記官は、登記については重い使命を負って仕事を担当しているわけでありますが、今後も登記官にはこういう重い注意義務が課せられまして、コードとパスワードの使用によってその面の不正が防止されるという仕組みになっております。
第三に、プライバシーの保護でどうであろうか。これももちろんコンピューターを使う場合には慎重に配慮しなければいけない問題でありますけれども、この不動産に関しましては、現在は不動産がいわゆる物的編成主義になっていて、不動産ごとに登記が行われるという仕組みになっております。外国の立法では人的編成主義というのがあって、人を中心にして編成するというやり方もありますが、日本の場合は物的編成主義であり、この現行法を前提にしてコンピューターシステムを導入しようということでありますので、ある人の財産がどうであろうかという興味を持って、その人の不動産を網羅的にはじき出すということはできない。個々のものを中心にしまして記録を調べていく、こういうことになるわけであります。
登記というのは権利関係を公に示す、公示する、公開するというのが登記制度の役割でありますが、それがプライバシーの面で不正に用いられることはない。もちろん、これは用い方次第ではそういう危険もあり得るわけでありますが、このたびの改正法案では現行法を前提にしているわけでありますから、法律改正でもしない限りはプライバシーの侵害があるということはないわけであります。
第四の予想される反論といたしまして、先ほど長期的に見ますと職員の作業が軽減されるということを申し上げました。コンピューターを用いるということでありますので、職員の負担がどうであろうか、労働衛生の面で不都合が生じないであろうか、こういう問題が生じ得るわけであります。この点につきましては、既に銀行、会社等の業務を通じまして経験が豊かでありまして、そういう経験を生かしながらこれを運用していくということが考えられます。これまでの板橋の登記所を中心にしたパイロットシステムの検討におきましても、この問題が検証されましたけれども、適切な対応を考えることによりまして労働衛生上の問題を避けることができるということが言われているわけでありまして、もちろん今後も配慮は必要でありますが、この点の心配を除去することができると思うわけであります。
第五に、費用がかかってどうであろうか。コンピューター化するに当たっては膨大な費用がかかる、そこまでの費用をかけて移行させる必要があるんだろうかという問題がありますが、これも先ほど述べたことに関連しまして、長期的に見ますとやはりコストの低減になる。とりあえずはかなりの費用を要するわけでありまして、この点は六十年に施行されました登記特別会計法の適用によって乙号事件の手数料をこれに充てていく。そしてまた、このたびの答申では課題としまして、甲号利用者にも相応の負担を求めるという趣旨のことが書かれているわけですが、これも結局甲号の利用者も広い意味では登記制度の利用のメリットを受ける、そういうことがあるわけでありますから、今後の課題として検討されていいのではないかと思うわけであります。
第六の反論といたしまして、このたびの改正は余り根本的な改正になっていないのではないか。種々、民法とか不動産登記の上で問題があるだろう、それに手を触れないでコンピューターシステムの導入にとどめているのはどうであろうか、こういうことが考えられるわけであります。もちろん民法、不動産登記法等については問題点が多いところであります。先ほど申し上げたいわゆる登記の公信力等をめぐっても議論がありますし、また日本の民法によりますと、当事者の意思によって権利が移転する、こういう仕組みになっているわけで、これらについても種々議論があるところでありますが、とりあえず今度の改正というのはそこまでには触れない。現行制度の基本を維持しながらコンピューターシステムの導入を行うというのがねらいになっているところであります。
あるいは民法とか不動産登記法を見ますと、明治三十一年、三十二年に制定された法律でありますので、ちょうどことしで民法は九十年になりますが、文語体で書かれていて非常に読みにくい。国民の立場からしますともう少しわかりやすい法律であることが望ましいのではないか、こういう意見もあり得るわけでありますが、そこまではこのたびは触れない。もちろん今後の課題ではありますけれども、現行法を前提にした上でとりあえずのコンピューターシステムの導入を図ろうというのが今度の改正であり、こういった根本的改正を伴っていないという批判は当たらないであろうというふうに思うわけでございます。
以上が私の意見であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/4
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005・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
続きまして、多田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/5
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006・多田光吉
○参考人(多田光吉君) 御指名をいただきました日本土地家屋調査士会連合会会長の多田光吉でございます。
このたび、参議院法務委員会において御審議をいただいております内閣提出の、不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案について、参考人としてこの法改正に関して意見を述べる機会の御配慮をいただきまして、当改正法案と密接な関係にある表示に関する登記の申請を業務とする団体として感謝を申し上げる次第でございます。
このたび、内閣から提出されております不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案につきましては、法務当局が昭和四十七年度から増大する登記申請事件の事務処理の迅速化、不正事件の防止等登記行政の円滑な運営に苦慮している状況から、登記事務処理にコンピューターを導入して改善を図ることについて長年にわたり研究、検討をして、これを一部の登記所に導入して登記事務処理と現状の登記事務を並行して行い、その結果を詳細にわたり比較検討した結論として、コンピュータの導入によって登記事務の処理の迅速化、不正事件の防止、登記情報提供の広域化等最も適切な施策として成案されたものと考えるわけでございます。
日本土地家屋調査士会連合会は、登記制度の充実を図るための基本とする改正と理解をいたしまして、本国会においてぜひとも成立されますよう特段の御配慮をいただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。
この法律改正案につきましては、これまで日本土地家屋調査士会連合会が対応した経過の概略を申し述べ、御参考に供したいと存じます。
このたびの改正案につきましては、昭和六十年五月一日法律第三十三号による法律の施行による実施について、行政審議会の答申を反映して成案がなされておりまして、この改正によって登記行政の一層の充実が図られるものと考えるのでございます。
不動産登記制度は御承知のように、不動産登記法の定めるところにより登記簿に個々の不動産についての客観的な状態と権利関係を記載してこれを一般に公開し、国民がこの登記簿を見ることによって特定の不動産の権利関係等を知ることができ、これによって不動産取引の安全に奉仕する制度としているのでございます。不動産の登記は、不動産に関する物権の変動を登記簿をして公示し、第三者に対抗するためになされるものでありますが、不動産に関する権利の変動を登記簿上明確に公示するためには、その権利の客体である不動産自体の物理的な状況が登記簿上に明確に把握されていなければ、およそ権利に関する登記をし公示をしたとしても、公示の働きを害することになるのでございます。
そこで、不動産登記制度は、不動産の表示に関する登記と不動産の権利に関する登記が別個独立してなされるものとしているのでありまして、その登記手続、効力など異なった取り扱いがなされておるのでございます。不動産に関する登記は、権利に関する登記が正確かつ円滑に行われるための前提であるところから、両登記が互いに関連して登記制度が機能し、登記制度の目的である不動産の取引の安全と社会経済の活動に大きな役割を果たしている現状でございます。
これに関連して登記事件の趨勢は、戦後日本の経済が復興し、社会構造の変化は経済の中心である都市への人口移動が盛んに行われまして、住宅地の造成、住宅の建設、さらに公共事業が盛んに行われたのであります。昭和三十年代、日本経済の高度成長に伴いまして国民の所得が増加するに従い国民の不動産に関する関心が高まり、不動産取引が活発に行われて、登記事件が急激な増加を来しておるのでございます。
登記事件の趨勢は、法務省の統計によりますと、昭和五十一年度二千万件、謄抄本の交付事件が二億八千万件、昭和六十二年度には登記申請事件が二千六百万件、謄抄本交付事件が五億二百万件、昭和六十二年度の総事件数は五億二千八百万件となっておりまして、事件量の増加は昭和五十一年度から六十二年度の十年間に七六%の増加となっておるわけでございます。これに対して登記事務処理に当たる登記所職員の数の増加は昭和五十一年度から昭和六十二年度まで十年間にわずか六%、五百六十七名しか増加されていない状況になっているのでありまして、登記事務の処理に甚だしく停滞を来しておる現状でございます。こうしたことから、登記制度を利用する国民の経済活動に大きく各種の障害、弊害を生じておるのでございます。
こうした状況から、連合会は常に登記行政を所管する法務省民事局第三課との協議の場におきまして、登記事務の適正迅速な処理を図るため調査士制度の活用とその方策を提言してきているのでございます。
このたび提案されております法案につきましては、昭和四十七年度に法務省から登記事務処理の迅速化を図るためコンピューターの導入の構想が提起されまして、連合会はこれに対して、調査士制度の目的とする表示に関する登記申請の手続業務がどのように変化し、どのような影響があるのか、業務の現状と変化、影響について意見の交換をいたしてきておるのでございます。
連合会が法務省の意向をもとに検討した事項については大要次の六項目でありまして、その結果を四項目に整理し法務省に対し要請をいたしてきているのでありまして、この要請事項がこのたびの改正をする法案に反映されているところでございます。
検討事項について簡単に説明を申し上げたいと思います。
第一として、電子情報組織を用いて行う登記について、コンピューターの導入については不動産登記法の一部を改正する必要があり、この移記には今後十年程度を要するので、その間現状のブックシステム方式と大臣の指定庁の行うコンピューター化の方式と並行するので指定庁を官報によって告示する、その対象は細則で定めることといたしたい。
第二番目といたしまして、コンピューター化の対象でございます。一として、登記事務については受け付け、調査、記入、校合、登記。第二番目に土地、建物等の登記簿。第三は登記情報の公開、謄本にかわって証明書となり、閲覧にかえて要約書となる。地図関係については当分対象としないこと。その他、休眠登記の抹消整理の規定をすること。
それから登記簿の編成でございます。現行法と同じ編成として、物的編成主義は変更しない。しかしながら、公開の段階で証明書の様式はコンピューターの長所を取り入れることで検討をすること。
閉鎖登記簿の取り扱いでございます。閉鎖登記簿の登記記録は、土地に関するものについては閉鎖の日から五十年とし、建物については同様三十年とすること。
四番として登記情報の公開でございますが、何人でも手数料を納入して登記簿に記載されている事項の全部または一部を証明した登記事項証明書の交付を請求することができること。手数料のほか郵送料を納付して請求することもできるとすること。管轄外からも請求が可能となるが登記所間の通信データ交換の関係から、当初から全面にはならない、こう考える。登記事項証明書は、登記薄の謄本または抄本とみなすこと。
それから五番目として、アラビア数字の使用について。登記をし、または申請書その他登記に関する書面を作成する場合においては、金銭その他、物の数量、年月日及び番号を記載するにはアラビア数字を用いてすることができるものとすること。
共同担保目録の取り扱いついて。登記の申請書には共同担保目録を添付することを要しないとすること。ただし、他の登記所の管轄に属する不動産に関するものについてはこの限りでないとされる。
以上について検討の結果として、コンピューター導入に伴うものとして連合会は、第一、登記事項の移記に際しては、表示に関する登記事項は現に効力を有しないものであってもコンピューターに移記すること。第二番目に、地番、家屋番号は住居表示番号からも検索できるようにすること。第三番目に、休眠抵当権については一定年数を経過し、もしくは名義人の行方不明等の場合抹消のできる手続を検討すること。第四番目には、閉鎖登記薄の証明書を発行できるようにすること。以上の四項目について法務省に対して要望をいたしたのであります。
登記事務処理のコンピューター導入については、時代の趨勢として最も適当な方策と考えるのでありますが、私ども未知の部分も多くありますので、今後実施の際に、細則、登記手続準則等の改正等において法務省と十分協議をいたしまして、調査士業務の処理に甚だしく影響を来さないよう対処してまいりたいと考えるわけでございます。
次に、不動産に関する総合情報システムについてでございます。これは、行政審議会の答申に提言されているのでありますが、登記情報システムがコンピューター化に移行するに伴いまして、当然地図情報の提供が問題となってくるわけでございます。地図情報は、登記制度における公法上の筆界の確認を主体として不動産自体の特定要素を具備する的確な数値による情報の整備を図る必要があるわけでございまして、これらにつきましても早期実施の方法で進めていただきたい、このように思うわけでございます。
以上、申し上げまして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/6
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007・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
続きまして、牧野参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/7
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008・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) 御紹介をいただきました日本司法書士会連合会会長の牧野忠明でございます。
国会議員各位におかれましては、日夜国政に没頭され、御心労を煩わしておりますことについて心から感謝を申し上げます。なおまた、我々司法書士団体に対しましてもかねて深い御理解をいただき、御指導を賜っておりますことについて衷心より御礼を申し上げます。
本日は、我々団体が業として最も深くかかわり合いを持っております不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案に関しまして、司法書士団体を代表して参考人としての意見を申し述べる機会を与えていただきましたことについて、重ねて深く感謝を申し上げます。毎日この事務に携わっている職能集団といたしまして、意見が個別、具体的にわたる点も御容赦をいただきたいと思います。
御高承のごとく、我が国の不動産登記制度は明治十九年、法律第一号として登記法が制定され、翌二十年二月一日施行されて以来百年余の歴史を有しており、商業登記についても明治三十一年非訟事件手続法として制定され、今日に至っております。その間、社会経済状況の変化に対応して数次の改正が繰り返され、今日の登記制度が確立されている次第であります。
この登記制度の歴史の中で、特に昭和三十七、八年以降、我が国が高度経済成長期に突入しますや一般経済取引とともに不動産取引がとみに活発化し、国民総中産階級化がさらに不動産の商品化を加速し、つれて登記事件も激増の一途をたどってまいっているわけでございます。法案の資料にもございますように、昭和六十二年で登記申請事件二千六百万件、謄抄本交付等事件に至っては五億件余というまさに天文学的な数字が推定されておりますが、今後も多極分散型国土開発、あるいは各般の内需拡大政策等、一連の施策の動向を受けまして、この登記事件の騰勢はなお維持されていくものと推測されます。
かつて、登記事件激増期の一時期、これを処理するための人的、物的対応が間に合わず、所によっては登記を申請してから一週間、十日、さらには二週間を経なければ登記が完了しない、あるいはマンション等の集団事件に至りましては一カ月を経なければ完了しないという、まさに登記事務処理の破綻状態が現出したことも記憶に新しいところであります。これらの状態は、国民一般の経済取引あるいは不動産取引に重大な影響を及ぼさずにはおかないわけでございまして、そのような事態を再度繰り返してはならない。そういうことでこのたび将来を見通し、登記事務処理過程に的確迅速な画期的事務処理システムであるコンピューターシステムの導入を選択されましたことは、まさに、高度ハイテク時代の時流に即した先見性ある判断であるとして、我々団体もこれを高く評価しているところであります。
このコンピューターシステム導入に先立って、昭和五十八年から東京法務局板橋出張所において実施されましたパイロット・システムの評価委員会にも我が団体から委員を送り、検証評価に参画させていただきました。また、今次法案を煮詰める前段で開催されました民事行政審議会の審議にも参画し、法務大臣の諮問に係ります電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり、特に留意すべき事項について種々意見を申し述べさしていただいたところであります。その結果、何点か我々の意見を法案に取り上げていただいている事項もございます。その点につきましては、立案に当たられました御当局に対し深く感謝を申し上げる次第でございますが、以上申し述べましたような経緯から、今次法律案に関連しまして若干の所見を申し述べさせていただきたいと存じます。
第一に、コンピューターシステムの導入に際しましては、そのコンピューターが持つ付加価値を十分国民に還元していくという配慮がなされるべきであると考えます。登記事件の処理が従来より正確迅速に行われること、きれいで読みやすい謄抄本、今度は登記事項証明書になるわけでありますけれども、それらが早く提供されること、あるいは登記事項証明書は、A登記所においてB登記所の管轄に属する物件の証明書を入手することができる道が開かれたこと、所有者の住所、氏名等による物件検索機能が用意されたこと、商業登記においては本支店所在地においてなすべき登記申請において簡略化が図られることなどなど評価すべき点が多々あります。
しかし、従来の閲覧にかわる登記事項証明書について、情報伝達の互換性が図られないことに若干の疑問が残りますし、コンピューターシステムを発足させるに際しての既登記事項の入力についても、経費との絡みもあって現に効力を有する事項のみを入力する建前となっているようでありますが、このことは、昭和六十三年三月二十五日発行の登記先例解説集に掲載されております。田中法務大臣官房参事官の「登記電算化の際の登記の移記について」と題する寸評において、スウェーデンあるいはオーストリアの例を引いて指摘されておりますとおり、少なくとも所有権に関しましては、過去の登記事項も入力するよう配慮すべきではないかと考えられます。
さらに、入力事務との関連で、担保権抹消の簡略化の道が開かれたものと推測されますが、元本利息の二重払いをしても、なおかつ迅速な担保権抹消の方法を選択したいという向きには極めて便利な方途であろうと考えられます。これを利用しやすいような運用面での特段の配慮をお願いいたしたいと存じます。さらに、登記記録の保存年限も延長されましたが、できれば登記に関する添付書類についての保存年限の延長も、今後の問題として御配慮いただければと考えるわけであります。
次に、今後登記事務は、逐次コンピューター導入によりましてブックレスシステム化されていくわけでありますが、万全なシステムを構築するために、パイロットシステムに準じたブックレスシステムの検証評価を継続すべきであると考えます。また、このシステムの導入が国民のプライバシーの侵害をもたらすことのないようにシステム監査制度を設けるなど、十分配慮してもらう必要があると存じます。
三番目には、コンピューターシステムの導入に当たっては受益者負担の原則がとられており、今度新たに乙号事件の登記手数料が設定されることとなっておりますが、商業登記簿閲覧の有料化も受益者負担の原則からやむを得ないものとして理解できるとしましても、このシステムの利益を受ける者は登記申請者すべてに及ぶわけでありますから、登録免許税によってもこの経費を賄うものとして、登記手数料が国民に過度の負担とならないよう十分配慮をしていただく必要があると存じます。
最後に、今後十ないし十五年間に全国一千百七十余所の登記所がコンピューター化されていくわけでありますが、そのための予算も恐らく数千億を要するものと予測されます。さらに、その後もかなりの人的、物的資材を投入しながら、商業登記制度はもちろん、不動産登記制度は国民の不動産に関する重要な法的手続制度として維持されていかなければならないものと考えております。
それにつけても、我々はこの不動産登記制度が国民の不動産取引の安全と円滑化に機能しているという質的側面ももっともっと充実させ、国民の信頼と期待にこたえていく必要があると考えます。そのことは真実な不動産に関する権利変動の実体を正しく登記に反映させていくという登記の真正を確保し、予防司法の機能を十全に果たしていく工夫にほかなりません。登記制度発足以来百年を経た今日、紙登記簿を廃止して、コンピューターによるブックレスシステムを実現していこうという、まさに登記事務処理の画期的な構造改革が推進されようとしている今、登記制度が持つ質的側面についても抜本的転換へ向けてスタートが切らてしかるべきであろうと存じます。
我々は職域独占というようなレベルの発想ではなくて、ただいま申し述べましたような視点に立って、登記代理制度の整備の問題あるいは登記原因証書や保証書制度の見直しの問題などを初めとして、コンピューター化以外の事項についても登記制度改革の幾つかの問題提起をいたしております。
どうか本院におかれましても、我々の意図するところをお酌み取りいただき、大所高所から今後の登記制度のあり方について何とぞ御示唆賜りますよう心からお願いをして、参考人としての意見陳述を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/8
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009・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/9
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010・工藤万砂美
○工藤万砂美君 工藤万砂美でございます。参考人の諸先生には大変お忙しいところをお出ましいただきまして、大変専門的な立場で御意見を賜りましたこと、心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
そこで、専門的な諸先生でありますから、比較的素人の私から御質問申し上げるのもどうかと思いますが、まず大須賀参考人にお伺いしたいことは、迅速性と安全性を進めながらコンピューター化を進めていくということで、これは国民に対するサービスにほかならないわけでありまして、技術的に申しますと、かなり資金が膨大なものが必要となってくるわけでございますね。それで、先般来いろいろ計算してまいりますとかかる費用が約五千億円、それから十五年ぐらいの期間を要するということであります。これは、お金に関連なく一般の国民の方々は、やるんなら早くやっていただきたいというような願いがあろうかと思います。そういうことから申しますと、全国大体九ブロックぐらいに分けて、そのブロックごとにやっていくというシステムでこれを移行していくわけでございましょうけれども、技術的な観点から見まして、それから地域の実情等を考えていきますと、最大限詰めて何年ぐらいで大体全国のコンピューター化ができるとお考えでございましょうか、その辺は御意見があれば承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/10
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011・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) お答えいたします。
何年ぐらいかけて実施できるかということに関しましては、技術的な面、コンピューター化に際しましては、まずハードウエアの導入の面と、それからそれに対するソフトウエア開発の面がございます。それと同時に、膨大なデータを移すという作業がございまして、恐らくこの作業の中で一番時間のかかり、また費用のかかる点はデータを移すという点にあるかと思います。その点は、何年という年限を切るのは大変難しくて、技術的な面よりもむしろそれはどれだけお金を準備できるかという予算面の方で決まってきてしまいますので、仮に政府といたしましても、前倒しに予算を書き入れることができますれば割合早期に移行ができるのではないかというふうに考えますけれども、むしろそれは技術的な面よりもそちらの方が重要ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/11
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012・工藤万砂美
○工藤万砂美君 ありがとうございました。
純然たる技術的な面からということを実はお伺いしたわけでございますけれども、十五年もかかるということになりますと、大変気の遠くなるような話でございますから、そのときに我々議員なんかやっているかどうかわからないし、そういうことから申しますと、我々の目の黒いうちに何とか全国ネットワークを実現さしていきたいものだなと、こういう意欲に燃えておりますものですから今のような御質問を申し上げたわけでございまして、失礼の段はお許しを願いたいと思います。
そこで、川井参考人にお伺いをさしていただきます。
先ほどお話しの中で、いわゆる安全性の問題とそれからプライバシーの保護、信頼、こういうものについて御意見がございました。ただ、このプライバシーの問題になりますと、実は新聞にも出ておりますように、法制審議会の商法部会ですか、これで今のコンピューター化の問題と直接関連がありますことは、もう少し先の話になりますが、御意見として承っておきたいことは、あらゆる法人、株式会社もそれから有限会社も全部入力しなきゃならぬと。それで登記をしますわね。登記をする目的というのはやっぱり閲覧ということに絡んでくるわけでございましょうから、そうなりますと各企業の実態というものが一目瞭然、どこにいてもその企業の実態をつかむことができる、こういうことになりますわね。
そうしますと、それに関するプライバシーの侵害という問題に絡んでまいりますと、ある程度のこれは法制化をしながら法律を直していかなきゃならぬということになりますけれども、株式会社、そして有限会社が損益計算書とかあるいはまた貸借対照表まで入力しなきゃならぬということについての是非について、川井参考人どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。この点についてお伺いをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/12
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013・川井健
○参考人(川井健君) 私は民法の専門でございまして、このたびの改正法案に関しましても不動産登記の方を主として考えております。したがいまして、ただいまの御質問に対して必ずしも十分対応できないかと思うんでありますけれども、ただ一つの前提問題としましてプライバシーということになりますと、これはむしろ個人の、人の情報ということになります。みずからの情報は自分で管理する、こういう原則があって普通の人についての情報をどうするかというのがプライバシーの問題だと思うので、ただいまの御質問ですとむしろ企業の情報をどこまで公にできるのか、それによって企業が不都合をこうむらないかということでありますので、従来のプライバシーよりは少し範疇が離れた問題ではなかろうかと思うわけです。そういう面からしますと、企業の情報をどこまで公に示すのがいいのであろうかということでありますが、今回の改正法というのは、その点は現行法を前提にした上でやはり公開すべきものは公開する、そういう建前であろうと思いますので、さほど不都合はないであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/13
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014・工藤万砂美
○工藤万砂美君 個人、法人にかかわらず、プライバシーの侵害ということについてはコンピューター犯罪というものが、コンピューターが普及してまいりましてから随分とあるものですから、私どもはそういう面での心配を実は今からしておりまして、川井先生、個人の問題だとこうおっしゃいますけれども、個人も法人も同じようなことで我々は考えていかなければなりませんし、それについては抜本的に登記制度そのものを改正していかなければならないのじゃないかなといった感じを持っておりますので、また今後いろいろと御指導賜りたいと思うわけでございます。
そこで、多田参考人にお伺いいたします。
先ほど御意見の中で地図のコンピューター化について御意見がございました。これは当分の間は対象にしないというふうなお話もございましたが、私どもとしてはこれからの国土の開発の問題やらいろいろ考えてまいりますと、地図のコンピューター化も必要ではないかしらと、かように考えるんですけれども、その点についてのお考え方はどういうふうに考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/14
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015・多田光吉
○参考人(多田光吉君) この問題につきましては、我々日本土地家屋調査士会としては、法務省から最初に法案の構想として提示されたものについては、地図については今回は考えないということでございましたので、私どもこれらについては、社会が発展する中で地図情報については必要であろうということで、行政審議会の最後の提案にも提言されておりますけれども、これらにつきましては、コンピューター化される総合情報の中では当然必要となってくるであろう、これらについては早急な対策を立てて、私ども技術を持つ集団として何かしら協力を申し上げたい、こうしているわけでございます。
最近の情報によりますと、この問題につきましては国土庁が地籍調査の推進と所有者同士のトラブルの解消、行政の省力化に伴うコンピューター処理による地籍図の数値化システム、こうしたものを積極的に各全国市町村に対して働きかけをし、そうした情報の提供をしたいということで進めておるわけでございます。このこととも関連して、登記情報の中で、不動産自体の特定要素を備える情報として的確な情報管理をすべき必要があるということを提言いたしておりまして、法務省に積極的な推進を図ることをお願いしているわけでございます。
それからもう一つには、新行革審の答申でございますけれども、この中で土地に関する基本データの一元的整備ということで、大蔵、自治、国土等それぞれ別個に保存するデータを一元的にまとめ、土地の有効高度利用、土地取引の適正化を図る目的として整備主体の運用システム、財源等の検討をすること。二番目として、大都市地域を主点として地籍調査を計画的、積極的に推進すること。三番目として、土地の有効高度利用が必要な地域を対象に、定期的に一定面積以上の未利用地、低利用地の把握、国土利用計画法の遊休土地制度の活用を図ること。こういうようなことがなされておりまして、こうしたデータがここにあります基本データの一元化の整備という提言の中で最も重要な登記、法務省の権利の明確化を図る基本データがここらの中に含まれていない。
そうした別個な形ですべての情報がなされるとすると、いろいろ社会に錯雑を起こすということから、こうしたものを含めて考えてまいりたいというような提言をしておるわけでございます。将来につきましては、こうしたものを積極的に進めることが必要である、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/15
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016・工藤万砂美
○工藤万砂美君 私は、実は北海道なんですけれども、北海道というところは比較的まだ開発されてから浅いものですから、測量してみますと誤差がかなり多く生じているのが現実でございまして、いわゆる縄延びもございましょうし、それから昔は、明治時代はあちらの山からこちらの山までおれの土地だというようなことで払い下げを受けた実績がございましたりなんかしまして、随分とその面では、少し乱雑な登記をなされておる面もあるわけでございますので、こういう地図のコンピューター入力ということによってある程度、そういうものもきちんとできるというような感じを持っておるものですから、私はできれば早くコンピューター化と一般登記事務とあわせながらやっていくべきだなと、こういう感じを持っておるので御意見を伺ったわけでございます。
最後に、牧野参考人にお伺いいたします。
御意見にございましたように、全国で大体千百七十カ所ぐらい登記所がございますのと、過般来いろいろと登記所とか法務局の合理化が行われまして、随分と廃止をされたところもあるし合併をされたところもございまして、地域住民の方々はわりかし手数がかさんでいる格好です。それから現地の登記所あたりでもかなり複雑な事務がふえている、こういうこともございます。お話にございましたように、実際としてもう気の遠くなるような五億二千八百万件ぐらいの事件がございまして、これは大変なんですけれども、それにつけて、やはり私は登記の信頼性といいますか、そういう面からいいますと、真正確保という問題が一番最重要課題であると思うんです。
だから、登記されたものについて、国民の一人一人がこれは絶対もう間違いないし安全だというようなことで信頼を置きながら、この登記事務等の取り組みをしなきゃならぬと思うんです。その真正確保という問題について参考人は、どういうふうにしたら国民の信頼を得て確実なものをより迅速にしていただけるんだろうか、こういうことについて御意見がございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/16
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017・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) 参考人の意見でも申し述べましたように、これから登記制度の充実、発展を考えていく場合には、そこにやっぱり視点を置いて考えていかなきゃいけない非常に大きな要因があるのではないかと思っております。
それで、今の登記制度の中でも正しい、言うならば不動産に関する権利変動の実態を反映させる手だてが幾つかされているわけであります。例えば登記済み証を出すとか、あるいは印鑑証明書を出すとか、それから本人が出頭して申請をするとかあるいは権利者、義務者二人共同で申請をするとかいろいろありますが、非常にもう不動産取引が活発化しまして、しかも広域化してまいりますと、偽造の問題が出てまいったり、それからコピー技術が発達して、印鑑証明それ自体偽造されて見過ごしてしまうというような面もございまして、かなり被害が出ている状況があります。
したがって、そういったものは、例えば権利証の偽造につきましては、余り簡単な権利証ですとすぐ偽造されてしまいますから、契約書それ自体、記名、捺印したそれ自体が権利証になればなかなかこれは偽造がしにくいわけでありますし、それから見破れるわけであります。そういう手だてだとか、あるいはこれはもう登記制度それ自体の基本的なシステムですけれども、申請をして登記官は出された書面についての言うならば書面審査権限しかないというわけで、出されてくれば受けざるを得ないわけでして、その中に正しい権利が含まれているのか含まれていないのか、その辺はもう関知しないわけであります。ただ、出された書面上それに疑義があればそこでチェック機能が働いていきますが、らしくつくってあればそのまま登記は通っていく。
そうすると、それが登記情報に反映されますと、果たして実体的な権利があるのかないのか、言うならば非常に不安定な状態の登記情報が蓄積されてきている。これは民法の基本的な意思主義あるいは対抗要件主義というのはそこから来ているのではないかと思います。
一つ、これは非常に飛躍的な発想ですけれども、そういう登記事務処理の手続過程の中で、代理人についてもう少し厳格な権利義務あるいは資格、そういったものをぴしっと手続法の中にうたっていけばかなりその形式審査主義が是正されてくる、正しい情報が入ってくるような手だてができる、そのかわり、それなりに代理人については責任を持たせるということができると思います。
それからもう一つは、例えば所有権移転という最も物権変動の原型的なものについては、登記を効力要件にするというようなこともあるいはこれから考えていっていい問題ではないか。現に登記手続の中で、例えば根抵当権等につきましては、実体法の中で登記しなければ効力が出ないというような規定も幾つか散見されるわけでありまして、それをもう少し発展させまして、公信力とまではいきませんけれども、所有権移転については登記を効力要件にする、これも一つの大きな将来の課題ではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/17
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018・工藤万砂美
○工藤万砂美君 ありがとうございました。
今お話にございました、例えば印鑑証明もコンピューター入力をして取れるということになりますわね。これについて、例えば犯罪防止だとかそういう面から申しますと、印鑑証明もコンピューター化して差し支えないというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/18
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019・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) 今の商業登記のシステムの中では、イメージ処理方式で印影をそのままやるという形になっているようでございます。したがって、それはそれとしてまた利用する価値はあると思います。ただ、比較考量となりますとなかなか即断はできないわけですが、普通の行政、個人の印鑑証明についても今はほとんどそういうコピーシステムによって出されておりますし、それがスピード化されますし、流れには沿っているのじゃないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/19
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020・工藤万砂美
○工藤万砂美君 どうも皆さん、ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/20
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021・千葉景子
○千葉景子君 どうも参考人の皆さん、きょうはありがとうございます。
私の方から何点かお聞きしたいと思いますが、まず大須賀参考人にお尋ねさせていただきます。
私も、コンピューターということになると全く素人でございまして、もう難しいということだけが頭にあるんですけれども、このコンピューターで今後登記事務を処理するということになります。現在では一定の範囲までの処理を行うということなんですが、例えば申請書あるいは入力に際してマークシートを使うとか、あるいはいずれは自動的に読み取ってしまうとか、そういう問題、あるいは今度はコンピューターの効力といいますか、そういうものとしてもほかのコンピューターとつなげてネットワークをつくるとか、それは登記所のコンピューターだけではなくて、例えば税務署であるとかほかの省庁である、そういうネットワークづくり、あるいはそれから先ほどもお話に出ておりましたほかの新しい利用形態といいますか、さまざまの、コンピューターとなりますと非常にこれからの広がりというのが大きいような気がするんです。
具体的には一体どんなところまでコンピューターで可能なものなんでしょうか。その点を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/21
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022・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) お答えいたします。
現在のコンピューターはどこまでできるかというような限界が、まず見えてないと言った方がよろしいんではないかと思うんです。
ただいま御指摘になりました入力における方法、それはマークシートという御発言がございましたけれども、例えばOCR、文字読み取り装置を利用するというようなことも将来もう当然考えなくてはいけませんし、またネットワークを使うことによって、現在の登記システム以外のシステムとのネットワークを当然組むことも可能になるわけでございます。登記システムに関しましても、現在はむしろその使い方を制約して、登記所内だけのネットワークを組むということで、現在の登記システムに余り変更が起こらないようにというような配慮をしております。当然これは、例えば公認会計士のところから直接入力をする、あるいは読み取るといったことが可能になるわけでございます。こういうものは技術的には可能であっても、運用上現在のシステムをどこまで改革して拡大していくかということは、むしろ運用の問題として考えていただいた方が私はいいかと思います。
それですから、技術上は現在の登記システムの中におきましても、例えば検索を行う、先ほどちょっと川井参考人の方からもお話がございましたが、名前で、その名前に関連する土地を全部拾い出してくるといったようなことも技術的には可能なわけでございます。そういったことを、むしろ運用上どのように利用していくかということが今議論されていることかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/22
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023・千葉景子
○千葉景子君 そういうことになりますと、先ほどからいろいろお話が出ておりますが、プライバシーといいますか、その情報をどこまで管理をしていくかといいますか、そういう問題も当然出てこようかと思うんです。川井先生の方からもお話がありましたが、確かに現在の登記制度というのは物的な編成主義がとられておりますし、それから登記制度そのものも、むしろ公開が目的だという点もあるわけです。それが人的な検索の仕方ができるとか、そういうようなことになりますと、やはりそこに何らかのチェック機構みたいなものが必要なのではないだろうかというふうに思うんですが、大須賀先生のシステム工学というのでしょうか、そういうようなお立場から、その辺はどういう形での情報管理といいますか、お考えがございますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/23
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024・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) お答え申し上げます。
一つは、いま先ほど私が申し上げましたように、名前で引くというようなことをするためにはそれなりのソフトウエアをつくらなくてはいけないわけですね。したがって、そのシステム内にそのソフトウエアがつくられていない限りはそういうことはできないわけでございます。ですから、技術的に可能であるということは、設定いたしましたコンピューター内で、もしそういうソフトウエアをつくればそれが可能になるということでございます。それから、仮に現在のシステムの機能を少し拡大いたしまして、特定の管理された使い方のもとで、名前による検索とその他のことができるようなそういうソフトウエアをつくったといたしましても、先ほど管理されたと申しましたが、それを今度あるファイルをだれに見せてよいかよろしくないかということを指定することができるようなソフトウエアをつくることができるわけでございます。そういうことで、だれにもそれが見られてしまうというようなことを防ぐような技術的な手段はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/24
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025・千葉景子
○千葉景子君 ところで、大須賀先生にもう一点お尋ねしたいと思うんですが、コンピュータ化になりますとそれを操作する方の非常に労働衛生といいますか、健康の問題あるいは作業環境、こういうこともこれまでと違った面が出てこようかと思うんです。この労働環境といいますか、こういう問題については大須賀先生はどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/25
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026・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) お答えいたします。
一般論で申しまして、現在の登記所のシステムというのは労働環境は余りよいとは私は思っておりません。それは騒音、ほこり、あるいは複写機等から発生するにおい等を考えますと、それがコンピューター化することによってかなり衛生面でもよいものになるというふうには考えております。
ただ、コンピューターを使う際の労働環境をどうするかという問題は、実は今非常に広い範囲で議論されておりまして、例えばディスプレーを何時間続けて見ていられるかといったような議論がなされております。そういう面に関しまして、このシステムにおきましても労働環境をどうするかということは、もっともっと議論されなくてはいけない問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/26
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027・千葉景子
○千葉景子君 その点については、例えばどんな問題点といいますか、時間であるとか照明とか明るさとか多々あるかと思うんですが、具体的にはどんなところが一番問題になりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/27
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028・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) 現在一番議論されておりますのは、ディスプレーというのは普通の紙を見るのとは違いまして、電子的に文字、図等を表示しておりますので、それが眼精疲労という形で出てくることです。それが何時間連続して見ても健康上差し支えないかというような議論が一番多いかと思います。それに関しまして、ただそれだけではなくて、例えば背後の照明が目にどういうふうに影響するか、あるいはディスプレーの角度がどうであるか、あるいは距離がどうであるかといった、これは人間工学という一種の学問分野に属しますが、そういう面からの研究が現在進められている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/28
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029・千葉景子
○千葉景子君 それでは次に、川井先生、牧野先生、多田先生にそれぞれお伺いしたいと思うんです。
登記事項の移行の問題なんですけれども、今回の改正案によりますと、原則としては現在生きている事項を移行するということでございます。この点についてそれぞれのお立場から、とりわけ実務に携わっていらっしゃる多田先生、牧野先生などにおいては、毎日仕事をなさる中でいろいろなお考えがおありかと思うんです。先ほどちょっとお伺いしたんですが、その辺について一体この原則で足りるものか、あるいはもうちょっとこうした方がいいのではないかと、そういう点がございましたらそれぞれ伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/29
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030・川井健
○参考人(川井健君) 私は、先ほどその点に関して触れたところでありますが、民法の考え方からしますと、現在の権利関係の登記を見るだけでは必ずしも安心できない、過去にさかのぼってどういうプロセスで権利が移転したかということを調べないと安心とは言えない、その点では閉鎖登記簿を見ることによって確実に権利を確かめることができる、そういうことが理論的には言えるわけでありまして、一々閉鎖登記簿を見なくても現在の登記事項を要約書によってかなり知ることができればそれにこしたことはないであろう。ただし、そのためには先ほども話題になりました費用の問題が出てまいりまして、それとのバランスからしますとどうしても制限的に考えざるを得ないであろう。ただ、希望としましては、多少そこを膨らましてある程度はそこに反映できることが望ましいであろう。
私としては実務の面というよりも民法的な角度から今のように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/30
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031・多田光吉
○参考人(多田光吉君) 私ども先ほど御意見のありましたように、表示事項の移記に関しては、表示に関する事項、登記事項は現に効力を有しないものであっても全部移記をしてほしいということを要請いたしまして、これにつきましては業務の実態からそうする必要があるということで、大体了解をされておるわけでございます。
私ども調査士業務といたしましては、不動産の物理的な状況を正確に把握して台帳に公示するための重要な責務を持つ業務とされておるわけでございまして、これらの申請手続においては、その不動産の登記がされた時点からいろいろな変動、経過を経た基礎を十分知る必要がある。また、これらを基礎にした調査、測量の結果、権利の特定について経過を知る必要がある。こういうことから、現に効力を有しないというものであっても移記する必要がある。もう一つに法務局の登記事務処理をする段階においてもそうした経過がないと事務処理ができない、したがってそうした処理をする場合でも閉鎖登記簿からいろんな経過を知る必要がある。そうした煩雑な手続が必要となりますので、これにつきましては現在効力を有しないものでも相当のものについては移記をしてほしいということでお願いをしてございます。法務省も大体これについては了解をした事項でございますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/31
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032・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) 実務のいろんな態様によりまして、その必要性もさまざまでございますが、申請をした登記事項が正しくそのとおり登記されているかどうかということを確認するだけであれば、それは現在事項だけが登記されておればもうそれで十分確認できるわけです。ところが、不動産の取引に絡みまして権利関係を調査確認するという場合に、現在Aという所有者が現在の登記名義人、その前のBという所有者が譲渡担保によって所有権を取得していたと。Aはその人から移転を受けている。今度Cがそこから物権の移転を受けるという場合に、現在事項だけ見ますと正しく権利移転がされたという状況になっているわけです。その前の譲渡担保という要素がどうなっているのかということについて全く現在事項からだけでは判断がつかないわけです。
それから、これは実務上の経験ですけれども、短い期間に転々移転されている物件というのはかなりどこかに問題がありそうだというぐあいに疑ってかかって間違いのない物件であります。そういったものは現在事項だけではわからない。
したがって、我々が取引の立ち会いを頼まれて物件の調査をする場合には、どうしても現在事項と閉鎖登記の両方を見ていかなきゃいけない。それから、恐らく登記官が調査される場合でもそういう必要性が出てくるのじゃないかと思われます。それから表題部に限っていいますと、建物の登記あたりで今租税特別措置法がございます。木造は十五年以内の物件で取引すれば免税されるとか、いつこの建物が建築されたかということが、例えば新築して増築しているとすれば、現在事項しか出てこないとすれば過去の登記年月日その他はわからない、新築年月日等は。そういったものについての適用があるかないかという判断は、やはり両方の登記を見なきゃいけないというようないろんな面が出てくるのではないかと思われます。
したがって、先ほど申し上げましたように、実際この処理に当たられました方も諸外国の例を見て、もう少しさかのぼって入れる必要があるのではないかという御指摘がされているのではないかと思いますけれども、少なくとも物権の原型であります所有権に関しましては、経費との絡みもあろうと思いますが、可能な限りさかのぼって入力していただくということがベターではないか。入力されればそれが恐らく公開されて事項証明書等で出てくると思いますので、そういう御配慮をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/32
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033・千葉景子
○千葉景子君 この点については、大須賀先生にこういうことをお尋ねしてよろしいのかどうかわかりませんけれども、現在事項を移記するのとそれから過去の経歴といいますか、登記の、そういうものを移記するということになりますと、そこには相当な経済的には違いが出てくるんでしょうか。大体どのくらいの違いというのは出てくるものか、もしおわかりであればお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/33
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034・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) それは計算機のメモリーに記憶しなくてはならない情報量に依存するわけでございます。記憶方法にも依存します、それは技術の問題でありますけれども。現在時点より一回分さかのぼった過去の情報を全く現在と同じものを全部用意するというのは、計算機処理上でいえば一番簡単、単純でございます。しかし、それでは冗長な情報が非常に多うございますから、現在では現在と変わった分だけを、経歴をずっと記憶するというやり方をとるわけです。そういたしますと、経歴として蓄えられた情報と現在の状態をそのまま蓄えている情報とは形式が違いますので、これを一致させる方法が必要でございます。ソフトウエアが必要でございます。
そういう意味で、ソフトウエアの開発とそれから経歴の情報を蓄えるということで、その分の費用が余計かかるわけです。それはつまり経歴をどの程度記憶するかということに一番依存をしてまいります。ですから、今回登記事務処理に関しましても、過去の経歴をさかのぼった場合、どのぐらいの情報量になるのかということの算定が非常に重要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/34
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035・千葉景子
○千葉景子君 ところで、今回の改正案ではコンピューター化ということになりますと、これは性格上当然目に情報というのは見えないという形になってまいります。そういうことで閲覧ということがなくなりまして、それにかわるものとして要約書ということになってこようかと思うんです。この要約書のつくり方とか、それから閲覧ができないことによる不便さといいますか、そういうこともあろうかと思うんですね。牧野先生などは、この点についてはどんな問題点をお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/35
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036・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) これは法の施行段階の問題であろうと思います。
現在いろいろ我々が得ている情報の中で理解しておりますことは、要約書には一様式と二様式という二つのパターンがあって、一様式は物件の表示と所有者の氏名程度の非常に簡単なもので、たくさん出すことができる。これは、例えば今所有権移転に関して官庁同士の情報提供が行われているわけですが、そういう場合の閲覧といいますか、要約書としてはそれでいいであろうと思うわけでございます。それから二様式につきましては、いろいろもう少し詳しく、所有権についても原因とかあるいは担保権についても受け付け年月日、番号とか原因日付だとか、そういったものが入っているものでございますけれども、それについても所有権欄について原因が除かれるとかあるいは持ち分についてのどうも表示が十全でないとか、いろいろ問題点があるようでございまして、その点は、我々が先ほど申しましたように、本当に権利の実態を調査するために閲覧をするという視点から考えますと、かなり今の示されているパターンでは不十分であるという感をぬぐい切れません。
しかし、それはそれなりにまた用い方があるであろうと思われますので、あれができれば登記事項証明書の方法によって的確な権利の調査をする、こういう傾向にならざるを得ないのではないかというぐあいに考えております。今後施行段階でどうその辺が改善されていくか、我々もまた御意見を申し上げて配慮をしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/36
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037・千葉景子
○千葉景子君 川井先生にお尋ねさせていただきます。
今回は登記のコンピューター化というところを中心にした改正案であろうかと思うんです。先生が、先ほど反論の幾つか問題点があるというところで御指摘になられていらっしゃいましたけれども、ほかにも現在の登記制度の中に問題点があるのではないか、そういう反論が出てくるというようなお話でございました。公信力あるいは意思主義をもう少し形式主義といいますか、そういうものに変えるべきではないかとか、多々議論があろうかと思うんですけれども、先生の目から民法との関連、そういうことも含めて問題点あるいは今後こういうところは検討すべきではないかというような点がございましたらお出しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/37
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038・川井健
○参考人(川井健君) 先ほど申し上げましたように、このたびは民法、不動産登記法の根本までさかのぼる改正にはなっておりません。もちろん多少休眠抵当権の抹消などは入っておりますけれども、より根本的な問題は今後に残されております。
根本的な問題ということになりますと、ただいま御指摘の意思主義をどうするか、あるいは登記の公信力を認めるかという問題などがありますが、これについてはかなり学界でも見解が分かれておりまして、どういう制度が日本で一番いいのか、外国の制度を直ちに日本に持ってきてうまく機能するかというと、やはり日本人の行動様式というのもありますし、伝統もありますので直ちにうまくいくとは限らない。したがって、日本の実情のもとでどういう制度が一番望ましいかについては種々意見が分かれておりまして、こういうことを慎重に考えないといけないだろうと思うわけです。
ただ、現行法のもとでもかなりの努力はされておりまして、登記の真正が確保できるような対策なども種々工夫されている。先ほど牧野先生などから御指摘があって、不十分な点ももちろんあるわけですけれども、かなり注意は払われております。また判例の発展ということもあります。登記の信頼性の確保の上では、御承知のように民法九十四条二項の類推適用などの判例も積み重ねられておりまして、結果的に見ますと、登記の信頼性ということはかなり行われていると言えると思うわけです。
そこで、このたびの改正との関係からしまして根本となるものが不十分で、それが今回の改正によってますます不十分さが増大していくということになりますと、これは問題なんですけれども、しかしそうはならないであろう、確かに問題はあるけれども、種々原則的な問題についても工夫がなされていて、コンピューター化によって著しく不合理な方向に展開するということはないであろう、私はそのように考えております。
根本的な問題についてはなお今後検討すべきものと思いますけれども、ただ民法とか不動産登記法のより根本的な改正ということになると、相当慎重に年月をかけて審議をしないといけない問題でありますから、そこまでは容易にはできないであろう、徐々に判例、学説の発展をまちながら、さらに改正なども検討していくことが必要であろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/38
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039・千葉景子
○千葉景子君 最後に大須賀先生にお尋ねいたします。
このコンピューター化は第一歩ということになりまして、全体がやはり完成するのは十五年程度かかるということでございます。ただ、その間にさまざまな見直しとか修正とかそういうことも考え得るのではないかと思うんですけれども、将来に向けての何かそういう考え方といいますか、その辺については先生はどんなふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/39
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040・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) お答えいたします。
コンピューターの技術が非常な速度で発展しているという現状を考えますと、十年後あるいは十五年後に一通りの完成を見るまでに多分最初の部分はかなり陳腐化していることだと思います。したがって、その部分をまた改めて新しいものに置きかえていくといったようなことは当然予想されるわけでございます。その手続は、現在人がやっているものを計算機に置きかえるというほどの大きな変更ではございませんし、一たん計算機に計算機の形で入れられた情報を計算機の中で変換すること自身はそれほど困難なことではございませんので、計算機の性能の向上に従って、新しい計算機を多分、より安い価格で置きかえるということが行われるかと思います。
それからまた、当然これは慎重にやらなくてはいけませんけれども、コンピューター化することによって現在行われていることよりはるかに多くのことができる可能性を持ってまいります。ですから、その可能性のうちでどこまでを広げていって、より国民に大きなサービスをすることができるかということは積極的に考えていかなくてはいけないのではないかと思うんです。
その際に、先ほど地図情報の話が出ました。それに関連いたしまして、国土庁等でこの地図情報あるいは写真情報等も含めて面情報のコンピューター化を進めております。そういうときに法務省は法務省としてまた別個にそれを持つようなことであっては、これは二重投資になりますので、そういう際に、当然のことながら省庁間にわたる一元的なコンピューター化のあるいは接触点というのが出てまいりますので、そういう点においてはできるだけその合理的なシステム化、システムづくりということを考えるべきではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/40
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041・千葉景子
○千葉景子君 どうもありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/41
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042・猪熊重二
○猪熊重二君 本日はどうもありがとうございます。公明党の猪熊と申します。
大須賀参考人に最初に一、二点お伺いしたいと思いますが、三階層ネットワークという方式でやった場合には、三階層のデータが全部一度に破壊されてしまうというふうなことは、一〇〇%ないというふうな方策というものはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/42
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043・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) いえ、そういうことは一〇〇%ということの保証はないと思います。例えば日本全国が一斉に地震でやられてしまったということになりますと、それだって確率ゼロというわけにはまいりませんから、そういうことはゼロではないんですけれども、コンピューター化に際しまして考えなくてはいけないことは、現行のシステムではどうであったかということの比較であろうかと思います。
ですから、コンピューターシステムにおいても全部の情報が破壊されるような事態であれば現在のシステムでも当然破壊されている。したがって、現在のシステムよりよければ、それは安全性の面でも一歩前進ではあると考えるべきではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/43
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044・猪熊重二
○猪熊重二君 そうすると、何か法務省の説明を聞いていると、三つあるから大丈夫なんだと、こっちがだめでもあっちがいいと、こういうふうな話なんだけれども、一〇〇%ということはないわけなんですね。
それから、先ほど千葉委員が聞かれたんですけれども、全く素人で申しわけありませんが、機械をきょうも板橋へ行って見てきたんです。何かこんな四角い機械なんですけれども、あの機械は、今テレビあたりでも五年ぐらいたつとちょっと古くなって新しいのが出てくる。大体何年ぐらいもって、またあれを取りかえるのにどのくらい費用がかかるのかというようなことは予測できるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/44
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045・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) それは、これからの計算機技術の進歩全般を見渡さなくてはいけないかとも思います。通常、常識的に考えて、計算機が新しいものに置きかえられる期間というのは将来五年ぐらいあるいはその前後ということで、一般には行われるだろうと思います。このシステムは専用のシステムですから、ほかのシステムと必ずしも同一には論じられませんけれども、計算機自身が、全体がその技術が進歩したときには、やはりこのシステムにおきましてもいつか入れかえをするというようなことは考えられなくてはいけないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/45
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046・猪熊重二
○猪熊重二君 その場合、機械をかえるというのは、例えば今コンピューターシステムにかえるといった場合に、どのくらいお金がかかる、総額的にどのくらいかかるという金額の中の機械の変更というか、機械を取りかえるといったら今かかる総額に対する比率的に言えば二、三割分なのか、それともほとんどなのか、その辺はどの程度なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/46
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047・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) 現在のシステムの変更といいますのは、人がやっていたことをそっくり計算機に置きかえるということで、非常に多くの人件費がかかるという仕事でございます。今回のその次の変更というのはハードウエアを入れかえるということで、期間的にも非常に短期間でできますし、データの変換等も全部機械の中で行う。それを前提に多分入れかえることになると思いますので、その費用は現在の変更に比べれば著しく低いものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/47
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048・猪熊重二
○猪熊重二君 それからこれも千葉委員が聞かれたことなんですが、氏名によって、全国のコンピューターの中から特定の氏名の人の所有不動産をピックアップできるというふうなシステムをつくるといった場合には、非常に面倒だとかあるいは金がうんとかかるとか、その辺はどんなぐあいなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/48
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049・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) そのためには名前でもって、現在は名前でもってデータが並んではおりませんから、現在あるものを名前でもって引っ張り出して並べかえるというための新しいプログラムをつくらなくてはいけない。そのプログラムをつくる費用と、それからもう一つは、遠いところの登記所にあるデータにアクセスするためにはネットワークを通してそこに、アクセスといいますか、行かなくてはいけないわけですけれども、そのためのネットワークのシステムというものをつくらなくてはいけないんですが、ネットワークのシステムというのは現在のシステムでも三階層ということで、登記所からバックアップセンターへ、さらに登記情報センターへというふうに、そういうところでも準備されますので、そのための費用というのはそれほど大きなものではないと思います。
ただ、そういう利用の方法が非常にふえますと、これは正常の登記事務にむしろ支障を来す可能性もありますので、運用上の点でそういう配慮は必要かと思います。先ほどのプライバシーのことばかりではなくて、運用上のそういう正規の事務を障害しないという点からも配慮すべきかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/49
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050・猪熊重二
○猪熊重二君 ありがとうございました。
次に、川井参考人にお伺いしたいと思うんですが、コンピューター化によっていろいろ登記事務のコストが軽減される、これは非常にお話わかるんです。ただ、細かい話になって恐縮なんですが、先生両方の――両方のというのは、民事行政審議会の方にもそれからパイロット・システム評価委員会の方にも両方御関係いただいたということで、細かいことで恐縮ですが、コスト全体は安くなるけれども、これを利用する国民の立場において、手数料は非常にふえてくるということについてお伺いしたいんです。
と申しますのは、現在の登記事項を移行するについて、現に効力を有する部分だけを移行するということになりますと、登記システムによる現行の登記簿謄本、登記事項証明書とそれから閉鎖登記簿をもらわなきゃならぬ、そうでないとわからぬという点で、それでも二重に費用はかかる。それから商業登記の方も、商業登記の閲覧が現行無料のものが、いわゆる閲覧方法がないということで登記事項要約書でやっぱり手数料を取られる。それからまごまごすると、先ほど先生がおっしゃられたように、甲号利用者にも登録免許税のほかにもう少し応分の負担をということになってくると、また費用、手数料が付加される。この辺については、審議会等ではどんなふうに皆様の御意見があったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/50
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051・川井健
○参考人(川井健君) この費用に関しましては、私の記憶では、確かにコストがかなりかかる面を考慮して、その上で登記の公開制をどのように維持していくべきか、こういうことが問題になったと思います。その面を考えましてある程度登記の面に表示される事項は制約をされざるを得ない、手数料等も考えてある程度その調和を図らざるを得ないであろう、そういうことが問題になったと記憶しております。
私が先ほど申し上げたのは、非常に長期的な視点で考えた場合にコストはやはり節約になるであろうということでありまして、具体的な面からしますと手数料負担というのはある程度上がるということは予想され得ると思うわけです。
ただ、ただいま御指摘の問題ですが、やはり登記の利用者というのも、先ほど牧野参考人から御指摘がありましたが、いろんな目的のために利用されるわけでありまして、取引のために不動産を取得する場合の権利関係の調査となりますと相当慎重にいろんな角度で調べないといけないわけですけれども、必ずしもそれがすべてではないわけでして現状を知るだけで足りるということもあるわけですから、全体として見ますと確かに手数料負担はふえるとは思いますけれども、全体として常にコストが著しく上がるということはないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/51
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052・猪熊重二
○猪熊重二君 それから、先ほどもお話がございましたこの審議会の答申の一番最後に書いてございます「不動産ごとの登記情報を中核とし、不動産に関する他の公的情報をも付加した総合的不動産情報を得ることができるシステム」というふうなことがこれにも書いてあるんですが、具体的には審議会等で、このシステムというものについての内容とかあるいは利用方法とか、こんなようなことについて御意見はあったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/52
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053・川井健
○参考人(川井健君) この点は、今後の検討課題ということでありますから、したがって本体の問題ではなくて、今後の一つの問題点という形での指摘がありこれが入ったと記憶しております。したがって、その具体的な細かい内容についての審議は必ずしも詳しくは行われなかったと思うわけです。
ただ、先ほど申し上げたように、建設省関係とか国土庁関係とか、こういった面からの種々の要望等にもこたえ得る、例えば地価がどうなっているかとかそういった問題についてもさらに今後発展の余地はあるであろう。外国の制度を見ますとそういった利用も行われておりますから、そういう可能性も残されているであろう。ただ、そういうことを行うためには、やはり各省庁の間の協議も必要でありますし、また登記がどういう目的で利用されるかについては、現行法の制約ということがありますから、その制約を超えるためには法改正の必要という問題も出てきて、今すぐこれが何らかの形で利用されるということはない、将来一つの課題として検討していこう、こういう事項だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/53
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054・猪熊重二
○猪熊重二君 この法案自体に直接関係するわけじゃございませんが、先ほど先生も登記制度というのが公示の制度だと、こうおっしゃられまして、抽象的なお考えというか御意見をお伺いしたいんですが、身分上においてもいわゆる公示の制度というものが戸籍簿であるとか、あるいは住民基本台帳の記載であるとか、こういうものがございます。
ただ、この戸籍法だとかあるいは住民基本台帳法等については、皆さんに見せるための身分上の公示の制度ではあるけれども、プライバシーの観点から閲覧なり謄本請求というものについて限定が法規上もなされております。不動産の公示制度としてのこの登記制度については、そういうふうな観点での考慮というふうなものは全然必要ないんでしょうか。それともこういう点は少し考える余地があるとか、その辺についての概略的なお考えをお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/54
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055・川井健
○参考人(川井健君) ただいま御指摘のように、戸籍法の上では戸籍の公開原則がとられながら制限が行われております。戸籍法の十条によってそうした制限がありますけれども、これはやはり人の情報を不当に利用するということを制限しようという趣旨だと理解できるわけです。
これに対して不動産の場合ですと、取引の対象でありますから、その情報をやはり人が容易に入手できるということが必要でして、人の問題ではなくてむしろ物の問題でありますからそれを公開するということは必要である。ただそれが行き過ぎて、先ほどから話題になっておりますように、ある人がどれだけの財産を持っているのか、そういうことを一挙に公開してしまうということは、これは制度の乱用になる。現行法の上でそういうことはできない仕組みになっておりますので、それはやはり維持すべきだと考えております。
要するに人の問題と物の問題とは別なんで、取引の対象のものについては公開制をとってよろしい。ただ、そこにもおのずから何らかの制限はあるはずですが、現行法の公開制を反映しているこのたびの改正法案では、別にその点は疑問はないと考えていいのではないかというのが私の考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/55
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056・猪熊重二
○猪熊重二君 ありがとうございました。
時間がありませんので牧野参考人に一点だけお伺いしたいと思います。
既存登記のコンピューターへの移行に関する移行の範囲の問題について、現に効力を有する部分だけを移行するか、それとも全部を移行して記入するか、こういう問題に関して牧野参考人の御意見としては、少なくとも甲区欄については現に効力を有する部分に限定せず全部移行することが妥当だと、こういうふうな御意見がございました。パイロット・システム評価委員会の移行作業に関する検討結果によりますと、甲区、乙区全部を通じて現に効力を有する部分だけを移行するのは、全体を移行するのに比べて四割ぐらいだということが報告書に書いてあるんです。
私が伺いたいのは、現に効力を有する部分が四割ぐらいということになると、現に効力を有していない部分が甲区、乙区合わせて約六割ぐらい。この約六割ぐらいの現に効力を有していない部分についての甲区、乙区の区分けについての検討はされたのかされてないのかこれには書いてないんです。日常業務の中で、要するに、現に効力を有しない部分のうち甲区と乙区のおおよその比率は半分ぐらいだとか、これはもう日常の仕事の中で感ずる感想的なことで結構でございますが、もしおわかりになればお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/56
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057・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) いや、それはちょっと、どのくらいの比率かわかりませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/57
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058・猪熊重二
○猪熊重二君 以上でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/58
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059・橋本敦
○橋本敦君 きょうは、参考人の皆さんありがとうございました。同僚委員の御質問もあり、皆さんの貴重な御意見もいただきまして、一点だけ私は川井先生にお尋ねをしたいと思っております。
それは、閲覧制度がなくなるという問題でございます。そういうことでは、登記事項証明書を出すということにかわっていくわけですが、基本的に閲覧という制度そのものが我が国の登記と国民との関係では長く定着をしてまいった大事な制度でございまして、これがなくなるということが、私は、国民の立場から見て登記制度の国民への長年にわたる奉仕業務の中核がなくなるのではないかということがどうしても気になるわけでございます。
そういうわけで、この点について学者の立場からどうお考えか、一点お伺いをしたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/59
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060・川井健
○参考人(川井健君) 確かに御指摘のとおり、我が国の長い伝統で閲覧制度が存続してまいりましたけれども、このたびの改正法のもとでそれをそのまま維持することは不可能でありまして、ディスプレーの形で閲覧するということが考えられなくはない。ただ、審議会におきまして、そういうやり方については種々弊害が考えられますので、それは検討の結果採用しなくて、登記事項要約書の交付ということでやむを得ないであろう、こういう結論になってきたわけです。
それで、従来の薄冊の閲覧に当たっては自分で閲覧したい事項のほかに、あわせて、関連して種々閲覧するチャンスはあり得たわけですけれども、このたびはそれがかなり限定される、事実上そういった制約はあります。しかし、閲覧の本来のあり方からしますと、本人の希望する事項が示されればそれで足りるわけでありますから、それはやむを得ないと思うわけです。
それと、従来の薄冊の閲覧ということになりますと、それに伴う種々弊害ということもあって不正に利用されるとか、その機会を利用する者がいるとか、そういった不都合な点もあったわけですが、その点は今回の改正法案のもとでは是正されるということになると思います。つまり、プラスマイナス種々あるわけで、先生の御指摘も尊重すべきものがあるわけですが、総合的に考えて、コンピューターシステムの導入に伴う制約上、今回の要約書の交付はやむを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/60
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061・橋本敦
○橋本敦君 わかりました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/61
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062・関嘉彦
○関嘉彦君 きょうは各参考人の方、どうもお忙しいところをいらしていただいて貴重な御意見どうもありがとうございました。
コンピューターの問題は、私は全くの素人であるいはとんちんかんな質問をするかもしれませんけれども、せっかくシステム工学の専門家がおいでですので、主として大須賀参考人からいろいろ教えていただきたいと思います。
先ほど来工藤委員からも質問が出まして、それに伴って多田参考人からもお答えがあったと思いますが、地図ですね。この地図をコンピューターに入れること、これはきょう私板橋に行ってきたんですが、あの板橋あたりにあるコンピューターで技術的に可能なのかどうかということが一点と、それからそれが可能だとしてもバックアップセンターであるとか情報センター、その大型コンピューターで能力的な余地があるのかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/62
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063・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) 技術的には可能でございます。
問題は、イメージ情報というのが非常に多くのメモリーを要します。したがって、地図情報を入れるとなりますと、その記憶装置が非常に膨大になります。記憶装置が膨大になるということはまたさらに言いますと、その処理に時間がかかるということも意味します。そういう意味で、現在のままではコンピューターシステムが非常に膨大になるという意味で、地図情報を入れないシステムとするということが一点かと思います。技術的な問題では困難性はないんです。
ただ、これからのことを考えますと、例えば新しい記憶媒体がどんどん出てまいりますので、その時点におきましてはまた改めて考慮すべき点ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/63
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064・関嘉彦
○関嘉彦君 そのメモリー装置の問題、記憶装置の問題なんですけれども、それをお尋ねしようと思ったんですが、一般にメモリー装置なんかの部分は今後の技術進歩の結果、非常にコストが下がってくるというふうに普通言われているんですが、これは無限にどんどんどんどん下がっていくものでしょうか、ある限界があってそれから以上は下がらないというふうなものがあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/64
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065・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) それは物理的な限界というのはございます。どこまでというのは媒体によっても違いますが、理論的な限界が当然ございますので、無限に下がるわけではございません。
また、現状がその物理的な限界に対してどうかといいますとかなりまだ遠いところにございますので、改善の余地はまだまだ多分にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/65
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066・関嘉彦
○関嘉彦君 これはさっき猪熊委員だったか、御質問があったことだと思うんですけれども、ハードの面は技術的な発達に伴って更新していくことが必要であり、それで、五年間ぐらいで更新するというふうにお答えになったように思います。そのことは償却を考えていく場合にやはり五年間ぐらいを考えておけばいいと、そういう意味に理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/66
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067・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) 将来が今までどおりにいくかどうかというのは別問題として、従来の例でいきますと、そのぐらいの年限で償却をするということを考えて予算等を措置しているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/67
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068・関嘉彦
○関嘉彦君 それから最後に、川井参考人にお伺いいたしたいと思うんです。
先ほど不動産登記法の根本問題があるんだけれども、それはきょうは触れないということを言われまして、それに関連して千葉委員及び猪熊委員の方からも質問がありまして、それに関して若干お答えになったと思うんです。根本問題と言われるのは例えば公開制、全部を公開することがいいか悪いか、そういうふうな問題でしょうか、それともどなたでしたか、ちょっと言われましたけれども、国土庁なんかでやっている、あるいは建設省なんかでやっている地下権の登記なんかですね、そういうふうなものも一緒にやるべきである、そういう意味の根本問題があると言われたんでしょうか。その点をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/68
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069・川井健
○参考人(川井健君) 御指摘のように、根本問題といいますとちょっと範囲が広過ぎて誤解を生ずるおそれがあると思うんですが、私が考えておりましたのは、民法との関係で、現在の不動産の物権変動というのは意思のみによって、つまり売買などに伴う所有権移転の意思のみによって物権変動が行われる、それに伴う登記の問題は対抗問題として扱われている、そのことが反映されて不動産登記法の上では登記の申請手続でどういう書面が必要なのか、そのような問題が扱われているわけですが、そうした諸問題について種々議論があるところでありますので、それらを称しまして根本的な問題というふうに申し上げたつもりです。
ただいま御指摘の公開ということになりますと、やはり不動産の現状といいましょうか、物理的な性状などを示すという表示登記の問題、それから権利関係を示すという甲区乙区の問題、こういう問題について公開性がとられておりますが、その公開性そのものは別に問題はないと思っておりまして、その背後にある権利の変動関係についてどう考えるかという点につき種々問題がある、そういうのを私の根本問題という表現であらわしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/69
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070・関嘉彦
○関嘉彦君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/70
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071・西川潔
○西川潔君 最後になりました。どうぞ、よろしくお願いいたします。本日は大変に御苦労さまでございます。
私も、午前中諸先生方と板橋の方へ御一緒させていただきましたんですが、登記所システムとバックアップセンターが同一登記所にあったせいなのかもしれないんですけれども、コンピューターのために空調が備えられておりまして、温度が二十五度、湿度が五〇パーということで一定に保たれておりました。今後各登記所がコンピューター化していった場合は、登記所でもそのようにしなければならないというふうになるんでしょうが、端末装置の設置場所では、特にコンピューターのための環境設備をするような必要はないんでしょうか。大須賀参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/71
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072・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) コンピューター自体に関して環境を整えるということは、あればそれにこしたことはないんですが、最近はかなり温度、湿度に対して素子等が非常に強くなってきておりますので、端末等に関してはもう普通の状況で使って差し支えないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/72
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073・西川潔
○西川潔君 そうですか。
次に、川井参考人さんにお願いいたします。
我々不動産を買う場合は、まず登記簿を見なさいと、こう言われます。その相手の方の名前が登記簿の所有者の欄に記載されている場合には、これは問題ないのでしょうか。また、今回の法案が通りますと、登記事項証明書などが容易に取り寄せられることになるということですが、登記簿に記載されている者を所有者であると信頼して取引をしても、必ずしも完全に権利を取得できないことがあるとすれば国民にとっては余りメリットがないような気もするんですが、そうすると我々一般国民といたしましては、どのような点に注意し、またそういうことが起こった場合は司法書士の先生方や弁護士さんに相談をすることが一番いいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/73
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074・川井健
○参考人(川井健君) ただいまの御指摘の問題点は、先ほど関先生の御指摘の根本問題に属するわけです。登記簿の記載の名義人が真実の所有者かどうかということは必ずしもこれは確定できない、実は別の真実の所有者がいるということはあり得るわけでありますから、したがって登記簿を信頼して買い受けた者が損害を受けるということはあり得る。それをいかにして防いでいくかということは一つの大きな問題で、種々学説、判例等が今まで苦労しながら前進してきておりますけれども、なお問題は残されている。しかし、今回の改正はそこまではさかのぼることはできない。先ほど申し上げたように、現行法を前提にしてコンピューターシステムの導入を図るということですから、今の御質問の点は依然として残されている。
問題は、コンピューターシステムの導入によってそういった不都合な点が増大するかどうかということなんですが、私は先ほどお答えしましたように、そういう増大ということはないであろう。さらに考えていく必要はありますけれども、コンピューターシステムの導入によってますます不都合が増大していくということはないであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/74
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075・西川潔
○西川潔君 例えばこれは、法律にするとどういうふうないろいろな問題点が出てくるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/75
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076・川井健
○参考人(川井健君) 問題点といいますのは、民法の百七十七条という登記に関する条文が現行法のままでいいのかどうかというのが一つの問題でして、登記を信頼した人を保護するというシステムを導入すべきかどうか、こういうのが一つの問題です。それについては種々議論があるんですが、先ほどおっしゃった買い主の保護を強調しますと、逆に真実の権利者が害されるということがあります。実は登記簿の不正が行われて別の人が書かれている、それを信頼した買い主が保護されるということになると真実の所有者が被害を受ける。そのバランスをどう考えるかというのが問題でして、その点を種々学説、判例が問題にして折衷的なところで今対応しているというところです。
そうした問題は依然として残されておりまして、そうした問題が出たときにどうしたらいいのか、一般の方々がどうしたらいいのかということになりますと、先ほど御指摘のありましたように弁護士の方に相談するとか、そういう対応をせざるを得ないということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/76
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077・西川潔
○西川潔君 次に、牧野参考人さんにお伺いしたいんですが、きょうも見せていただきまして、ちらっとお伺いしたんですけれども、将来司法書士の皆さん方の事務所に直接端末機を置いて、仕事を直接あちらと直結してお仕事をされるようなことに将来はなるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/77
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078・牧野忠明
○参考人(牧野忠明君) 今まで歴史的に見まして、司法書士というのは登記事務をほとんど社会的分業関係の中で専属的にやってきた職能集団でございまして、したがって登記所のキャパシティーの問題があろうと思いますけれども、将来いろんな状況を整備して、ぜひ登記事務専門職である司法書士の事務所に端末機をひとつ出していただきたい、こういう御要望を申し上げているところでございまして、まだその辺はこれからの問題になろうかと思います。そうなれば非常に便利になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/78
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079・西川潔
○西川潔君 大須賀先生にお伺いいたしますが、例えば故障した場合は、職員の皆さんでも短時間の研修程度で故障を直したりというのは可能なんでしょうか。また、例えばハッカーの問題なんかで、こういうのを僕はすごく気になるんです。故障したり、また向こうから入ってきたりというようなことの心配はないものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/79
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080・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) それは一番最初に私が申し上げたのは、安全性といった広い意味でその問題にかかわるかと思います。今のシステムは故障に対していろいろなケースを考えております。それで、基本的には故障によってデータ、情報が失われることが一番怖いので、それが確実に回復できるということを考えているわけです。それには登記所自身に保全ファイルといういつでもコピーをつくっておいて、メーンのファイルが壊れたときにそれを使う、登記所全体が壊れたときにはさらにバックアップセンターに置いてあるものを使うというような形で何重にも保護をしようという、そういう形になっているわけです。
場合によっては登記所のコンピューターシステムが故障してしまった、それはもう故障の程度によってこれは随分違いますので、一般には故障した場合、ハードウエアの故障の場合にはもうサービスエンジニアを呼んで直すというようなことをせざるを得ないかと思います。その場合にもファイル自身はバックアップセンターにあるものを使って、登記所の登記事務は最小限続行できるようにというようなことも考えられると思います。そういう意味で現在のシステムが、少なくともこれからつくろうとしているコンピューターシステムが現在のシステム以上に安全性が下がるとは思われないと思います。
それから、二番目に御指摘のハッカーの問題でございますけれども、これは非常に複雑な要素を含んでおります。それはつまりファイルの内容をだれかが変えてしまう。それは変える可能性というのはいろいろなケースがあり得るわけです。今御指摘の場合は、多分外部のだれかがネットワークを通して侵入してきて壊してしまうであろうという、そういう危険性を御指摘になっていると思いますが、これも先ほどの三階層全部が壊れないかという御指摘と同じようにゼロではないです。これはネットワークがあって、そこにそのネットワークを通して到達する手段がある以上だれかがそこに入る可能性があって、それをどうやって防ぐかというのは技術の問題でございます。当初はネットワークに対してそこまで考えていなかったために比較的容易に入りやすくなってしまっていましたが、最近はハッカーの問題が意識されるようになりましてから、それに対する対策というのは十分にとられようとしております。これはある意味では知恵比べでございまして、こちらが守ろうとする、向こうはその守っているのを入ろうとするということで、それに対して守る方の理論というのはかなり整備されてまいりました。例えていいますと一種の暗号と同じようなもので、暗号をつくる側と解く側という問題なんですけれども、問題は、その暗号に対して意図的にそれを壊そうとしても、それを全部壊されないうちにチェックをして見つけさえすればよろしいわけで、そういう意味ではほぼ万全な対策がとられるのではないかと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/80
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081・西川潔
○西川潔君 最後に、日銀の金庫にでももう近づいてきているというような中学生や高校生がいるぐらいで、本当にそういう意味では、僕ら素人は大変不安に思うんです。きょうも現場でお伺いしますと、やはり端末機でお仕事をなさっている方は普通の神経より二倍使うということをお伺いしました、女性の方ですけれども。それと、五十五歳の男性の方が一人おられたんですが、やはり我々では扱いにくいというようなことで、そうすると中高年者の方のことが僕はすぐに心配になるんですが、そういう方々が研修をされて故障のときにすぐに対応できるような、特別に研修してというような程度のことではできないものなんでしょうか、今回のこの法律に関しては。これを最後で終わりたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/81
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082・大須賀節雄
○参考人(大須賀節雄君) それも故障の程度によりまして、ごく簡単に見つけられるものでありさえすれば、その場で直すことはできるかと思いますけれども、コンピューターシステムが最近はかなり複雑になっておりますので、故障した場合には、普通エンジニアの方以外ですと多少研修を積んでもそう簡単に故障を見つけるということにはならないのではないかというふうに思います。そのためには、その機器自身のバックアップを用意するというようなことも必要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/82
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083・西川潔
○西川潔君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/83
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084・三木忠雄
○委員長(三木忠雄君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げる次第であります。
本案についての審査は、本日はこの程度といたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111215206X00619880517/84
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