1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十三年十月十三日(木曜日)
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議事日程 第七号
昭和六十三年十月十三日
午後一時開議
第一 著作権法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
上原康助君の故議員小渡三郎君に対する追悼演説
日程第一 著作権法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び肉用子牛生産安定等特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/0
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001・原健三郎
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/1
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002・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御報告いたすことがあります。
議員小渡三郎君は、去る七月二十八日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る八月三日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 議員正五位勲三等小渡三郎君の長逝
を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
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故議員小渡三郎君に対する追悼演説発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/2
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003・原健三郎
○議長(原健三郎君) この際、弔意を表するため、上原康助君から発言を求められております。これを許します。上原康助君。
〔上原康助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/3
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004・上原康助
○上原康助君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員小渡三郎先生は、御家族の手厚い看護のかいもなく、去る七月二十八日、御入院中の東京女子医大病院において逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
先生は、昨年秋ごろから体調を崩され、入退院を繰り返しておられましたが、今年に入り療養に専念するのやむなきに至り、ついに不帰の客となってしまいました。
もうすぐ元気になる、遅くともこの臨時国会からはまたばりばり活動を展開していくとの小渡先生の言葉をかたく信じておりました私は、このたびの突然の計報に接し、ただただ驚愕し、万感胸に迫る思いがいたします。いかに天命とは申せ、人の世の無常を嘆かずにはいられません。
私は、ここに、議員各位の御同意を得て、議員一同を代表して、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
小渡先生は、大正十四年、弁護士として活躍された小渡良忠氏の長男として今の韓国のソウルでお生まれになりましたが、昭和十三年沖縄に戻られ、沖縄県立第二中学校の二年に編入されました。
当時の先生は、軍事教練の時間には何度となく配属将校らに搾られたというほど大変なわんぱく少年であったようであります。また、スポーツは万能で、柔剣道から水泳、相撲に至るまで、学校で行われるあらゆるスポーツをこなし、勉学の面においても大変すぐれ、特に理科系を得意とされ、昭和十九年、難関中の難関と言われた海軍兵学校に合格されたのであります。
戦時中のこととて限られた書物を何とか手に入れられ、片端から読破して、そのころの学生の理想とした文武両道に励まれ、大いなる夢抱く青春の一時期を過ごされました。
後に豆タンクと愛称される政治家小渡三郎のバイタリティーと行動力は、このころから培われたものだったと言えましょう。
しかし、戦雲は急を告げ、沖縄は昭和十九年末から非常事態下に置かれ、二十年四月以降は国内唯一の陸戦場と化し、言語に絶する未曾有の戦禍をこうむり、日本は同年八月ついに敗戦を迎え、日本の苦難な戦後史がスタートしたのであります。幼少のころから父君より徹底的なスパルタ教育をたたき込まれていた小渡三郎先生は、日本の敗戦などみじんも信ぜずに、軍神の道を濶歩しようとしていたやさきの敗戦であっただけに、その衝撃ははかり知れないものがあったとのことであります。
一木一草に至るまで焦土と化し、戦争で痛めつけられた郷土の敗戦直後を目の当たりに見せつけられた熱血漢小渡三郎青年は、郷土の再建復興に向けて、早くも政治の道に志すことをかたく決意するのであります。そして、昭和三十三年、弱冠三十二歳で沖縄県中部の旧美里村の議会議員に当選され、政界への第一歩を踏み出されたのであります。
昭和三十八年には、その卓越した政治手腕が認められ、請われて琉球政府八重山地方庁長に抜てきされ、その後、労働局長、通商産業局長、さらに行政副主席の要職を歴任されました。
この間、持ち前の行動力とその卓越した政治行政手腕を遺憾なく発揮され、経済復興、自治権の拡大、軍用地問題、祖国復帰対策等に大いに尽力され、今日の沖縄の基盤を築き上げられたその功績はまことに大なるものがあります。(拍手)
しかし、政治の世界、順風満帆とだけは限らず、小渡先生は、その後一時は官界を去って野にあったのでありますが、昭和四十六年、周囲の熱烈な支持と期待を受け、琉球政府立法院議員補欠選挙で返り咲き、再び政界への復帰を果たされ、不死身の個性派政治家小渡三郎の存在を県民に強く印象づけたのであります。
沖縄は、昭和四十七年五月、二十七年間にわたる米軍統治から脱却し、国民待望の祖国復帰を果たすことができました。小渡先生は、復帰後も引き続き県議会議員として御活躍され、新生沖縄県の発展に大いに貢献されたのであります。
県議会議員時代の先生は、琉球政府の要職にあった間の人脈を駆使しての豊富な情報と巧みな弁舌をもって当時の屋良革新県政を厳しく追及し、爆弾男の異名をはせ、沖縄政界の一翼を担う実力者としての地位を確固たるものにしていくのであります。また、台風の後など見舞いを兼ねての被害状況調査に日夜東奔西走し、対策を講じられた先生の面倒見のよさ、献身的な御活躍には、選挙民からの厚い信頼と敬愛が寄せられたものであります。
小渡先生のこのような庶民性と行動力、面倒見のよさに県民の期待の輪が広まり、沖縄の抱える諸問題の解決のため、小渡先生を国政の場に押し上げようとの強い動きとなったのもけだし当然といえましょう。
このような県民の強い要望と期待を担って、小渡先生は昭和五十四年十月の衆議院議員総選挙に出馬されたのでありますが、善戦むなしく次点にとどまるに至りました。しかし、国政への執念に燃えておられた先生は、翌年六月、第三十六回総選挙に勇躍立候補され、見事に雪辱を果たし、初当選の栄冠をかち得たのであります。
本院に議席を得られた先生は、内閣、地方行政、文教、予算の委員を務め、とりわけ沖縄及び北方問題に関する特別委員会においては、理事の要職にあって沖縄の抱える諸問題解決のため全身全霊をもって当たられ、積極果敢にその職責を全うされたのであります。
昭和五十七年度から始まった第二次沖縄振興開発計画の策定に当たっては、格別な情熱を傾けられ、産業経済全般にわたる推進策はもとより、第一次産業の振興なくしては沖縄の発展はないとの信念から、農業基盤整備、技術水準のレベルアップに努められました。
中でも、昭和五十七年に施行された糖価安定法の改正は、沖縄の基幹産業である糖業の振興にとって有益な立法措置だとして、その制定に当たっては、自由民主党の農林部会においても、沖縄の特殊事情を強く主張し、一歩も譲らなかったと聞いております。
また、先生は基地の町で育たれたがゆえに、沖縄の基地問題には人一倍関心を持たれ、持ち前の行動力で米軍基地返還の促進や跡地利用計画に積極的に取り組まれる反面、目に余る米軍演習や基地被害等に対しては、舌鋒鋭い小渡節で政府関係当局に野党ばりの質問を展開することもしばしばでありました。
特に、私の脳裏に歴然と浮かぶのは、小渡先生が本院に議席を得られた直後の昭和五十五年十月、沖縄北部のキャンプ・ハンセン基地で米軍の実弾演習による森林火災が起こり四日間にわたって燃え続けた際に、先生は現場の状況をいち早く調査され、米軍に対する厳重抗議と基地周辺の防災対策、住民の安全確保の実現を顔を紅潮させながら政府に強く迫っておられた雄姿がしのばれてなりません。
先生は、事沖縄問題に関しては、みずから与党内野党と称して、問題の是非を頑固に貫かれたのであります。
一方、自由民主党内にあっては、国民運動推進部長、政調沖縄振興委員会副委員長、広報委員会宣伝局次長、全国組織委員会農林水産局次長などの要職を歴任されました。
かくして、在職五年余りという短いものではありましたが、政治家としての重責を果たしてこられた先生の御功績はまことに大なるものがあったと申さねばなりません。(拍手)
小渡先生、あなたと私の出会いは、古くはあなたが琉球政府の労働局長時代で、私は駆け出しの全軍労委員長のときでした。私が局長室を訪ねたとき、例の調子で、米軍とは仲よくせよとのことでしたが、私は別の道を選んでまいりました。
本院にともに席を置くようになってからも、あなたは名うての国防強化論者で、事安保、自衛隊問題等では、激しい論戦を交わしたこともしばしばありました。選挙地盤がともに沖縄中部と競合したこともあって何かと話題はされる関係にありましたが、党派は異なっても、郷土を思い国の行方を案ずる気持ちの上では多くの共通する面がありました。あなたは、私にとって尊敬できる立派な先輩であり、かけがえのないよきライバルでもありました。
先生の口癖は、「思いやりのない政治からは何も生まれない」でありました。先生は、このような政治信念のもとに、「すべての行動に全力を尽くす」をキャッチフレーズにして政治に尽くしておられる一筋さに、政治家小渡三郎先生の面目躍如たるものがございました。(拍手)
先生は、若山牧水の歌「幾山河越え去り行かば淋しさの果てなん国ぞ今日も旅行く」を好んで口ずさみ、「政治には終わりというものがない。それゆえに政治家に終局のゴールはない。一つ山を越え、谷を下り、やっと山の項にたどり着いたと思うと、またさらに険しい山々がはるか遠くに待ち受けている。それは、終わりもゴールも、一時中断もない。政治家とは業の深いものだとつくづく思わざるを得ない」と語っておられます。ここに、先生の政治哲学とその人柄の奥深さを知ることができるのであります。
小渡先生の人生は、まさに幾山河を越えながらもなお果てしなく国の平和と国民の生活の向上、安定のため政治への限りない情熱を燃やし続けた旅路であったと申せましょう。
小渡さん、あなたの方言を交えてのあの個性豊かな独特の口調や言い回しは、聴衆の耳ばかりでなく心をもつかんで離さない小渡節として定評があり、他の追随を許しませんでした。あなたのその個性がにじみ出た大衆性に、選挙民は強い感銘と共感を持って接してきたのであります。もはやそのお顔、お姿に接することができなくなったかと思うと、まことに痛恨のきわみであります。
先生は、御年六十二歳、政治家としていまだ壮年期にあり、力量、識見ともにいよいよ円熟味を増し、今後の御活躍が大いに期待されていたとき、先生の突然の御逝去は、御自身にとってまことに無念きわまりないものがあったと申せましょう。
小渡さん、あなたの訃報に接し、病院に行くのは間に合わず、羽田空港に駆けつけたとき、先生が生前心からかわいがっておられたお孫さんが「おじいちゃんは、おじいちゃんは」と繰り返し繰り返し母親に聞いていた小さないじらしい声を、涙なくして聞くことはできませんでした。
また、先生の長年にわたる政治生活を内にあって支えてこられた奥様を初め御家族の胸中を察するとき、申し上げる言葉を知らないのであります。ただただ深くこうべを垂れるのみでございます。
今や、内外の諸情勢は極めて重要な時期に直面いたしております。このときに当たり、いよいよその培ってこられた政治力を発揮し、大成の政治家たらんとした小渡三郎先生を失いましたことは、自由民主党はもとより、本院にとっても国家国民にとっても、まことに大きな損失であります。とりわけ沖縄にとっての損失は大きなものがあり、去る七月三十一日に沖縄市営体育館で行われた告別式に、嘆き悲しみをこらえながら一万余の県民が参加したことでも、小渡先生への期待がいかに大きかったかがわかるのであります。
三郎ヤッチー、悔しかったでしょう。天命だと思ってあきらめられるでしょうか。
長いこと本当にお疲れさまでした。安らかにお眠りください。
ここに、先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、私の追悼の言葉といたします。(拍手)
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日程第一 著作権法の一部を改正する法律案
(第百十二回国会、内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/4
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005・原健三郎
○議長(原健三郎君) 日程第一、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。文教委員長中村靖君。
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著作権法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中村靖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/5
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006・中村靖
○中村靖君 ただいま議題となりました著作権法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、社会の進展に応じた著作権制度の改善を図ろうとするものでありまして、その主な内容は、
第一に、著作隣接権の保護充実の見地から、実演、レコード等の著作隣接権の保護期間を、現行の二十年から三十年に延長することとし、これに伴い、外国レコードの原盤の提供を受けて作成した商業用レコードの複製、頒布する行為を処罰する期間及び旧著作権法で保護されていた演奏歌唱及び録音物の保護期間の残存期間の上限についてそれぞれ延長すること、
第二に、著作権、著作隣接権等を侵害する行為によって作成されたビデオソフト等のいわゆる海賊版が大量に出回り、著作者等の権利の侵害という問題が生じているところから、これら著作権、著作隣接権等を侵害する行為によって作成された物を頒布の目的をもって所持する行為について、新たにこれらの権利を侵害する行為とみなし、これを罰則の対象とすること
などであります。
本案は、さきの第百十二回国会に提出され、四月十三日に本委員会に付託となり、同月十五日中島文部大臣から提案理由の説明を聴取し、五月十三日から質疑に入り、参考人から意見聴取を行うなど、慎重に審査を行った後、継続審査となったものであります。
今国会におきましては、昨十二日に審査に入り、提案理由の説明を省略し、質疑、討論の申し出もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/6
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007・原健三郎
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/7
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008・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び肉用子牛生産安定等特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/8
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009・原健三郎
○議長(原健三郎君) この際、内閣提出、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣佐藤隆君。
〔国務大臣佐藤隆君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/9
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010・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
牛肉につきましては、我が国農業生産及び国民食生活における重要性にかんがみ、畜産振興事業団が行う価格安定操作の対象とするとともに、輸入割り当て制度のもとで、事業団に輸入牛肉の買い入れ及び売り渡しを一元的に行わせ、その価格と需給の安定を図ってきたところであります。
しかしながら、この輸入割り当て制度につきましては、先般の日米及び日豪間の協議において、我が国は、昭和六十六年度から、これを撤廃するとともに、事業団は輸入牛肉を取り扱わないこととしたところであります。この決定は、輸入数量制限をめぐる厳しい国際世論、我が国の置かれている国際的立場等を考慮し、所要の国境措置を確保しつつ行ったものでありますが、牛肉輸入の自由化は、今後、国産牛肉の需給及び価格に重大な影響を及ぼすことが見込まれるところであります。
このような牛肉の輸入をめぐる事情の変化に対処して、国産牛肉を引き続き事業団の価格安定操作の対象としてその価格の安定を図りつつ、事業団の業務及びその実施方法等について所要の見直しを行うこととし、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を提出することとした次第であります。
また、このような状況の中で、我が国肉用牛生産の存立を確保するためには、肉用牛生産の合理化を初め関連する諸施策を積極的に推進し、輸入牛肉に対抗し得る価格水準で国産牛肉を供給し得るようその生産体制を整備する必要がありますが、牛肉の内外価格差の現状、我が国の国土条件の制約等から見て、直ちにその実現を図ることは極めて困難と判断せざるを得ず、我が国肉用牛生産の基盤である肉用子牛生産の存続に大きな困難が生ずることが危惧されるところであります。
このような事態に対処して、我が国肉用子牛生産の安定その他畜産の健全な発達を図り、農業経営の安定に資するため、当分の間、事業団に、肉用子牛についての生産者補給交付金等の交付の業務を行わせるとともに、生産者補給交付金等の交付その他食肉に係る畜産の振興に資する施策の実施に要する経費の財源に関する特別の措置を講ずることとし、肉用子牛生産安定等特別措置法案を提出することとした次第であります。
次に、これらの法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
まず、畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。
第一に、事業団は、輸入牛肉については、買い入れ、売り渡し等の業務を行わないこととするとともに、これに伴う所要の規定の整理を行うこととしております。
第二に、畜産経営の改善等に資するため、事業団は、主要な畜産物に関する情報の収集、提供等の業務を行うこととしております。
次に、肉用子牛生産安定等特別措置法案についてであります。
第一に、事業団は、都道府県知事の指定を受けた都道府県肉用子牛価格安定基金協会が肉用子牛の生産者に交付する生産者補給金に充てるため、当該都道府県協会に対し、生産者補給交付金を交付することとしております。
第二に、生産者補給交付金の金額は、肉用子牛の再生産を確保することを旨として定める保証基準価格から肉用子牛の平均売買価格を控除した金額を基礎として算定することとしております。
この場合、平均売買価格が肉用子牛生産の合理化により実現を図ることが必要な肉用子牛の生産費を基準として定める合理化目標価格を下回るときは、都道府県協会の生産者積立金から生産者補給金の一部を交付することとしております。また、事業団及び都道府県は、都道府県協会の生産者積立金に充てるため、生産者積立助成金を交付することとしております。
第三に、牛肉及び特定の牛肉調製品に係る関税収入を、生産者補給交付金等に充てるための事業団への交付金の交付並びに繁殖、育成及び肥育を通ずる肉用牛生産の合理化、食肉等の流通の合理化等に資する施策の実施に要する経費に充てるための特定の財源とすることとしております。
最後に、事業団による生産者補給交付金等の交付は昭和六十五年度から、牛肉等に係る関税収入についての特別の措置は昭和六十六年度から実施することとしております。なお、昭和六十五年度の生産者補給交付金野の財源といたしまして、本年度から昭和六十五年度までの間の事業団の輸入牛肉差益の一部を充てることとしております。
以上が畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の趣旨でございます。(拍手)
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畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び肉用子牛生産安定等特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/10
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011・原健三郎
○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。田中恒利君。
〔田中恒利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/11
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012・田中恒利
○田中恒利君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま提案されました肉用子牛生産安定等特別措置法案及び畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。
この二つの法律案は、さきの日米牛肉・オレンジ交渉の結果を受けたものであります。先般の日米交渉は極めて難航し、佐藤農林水産大臣は二度にわたり訪米されるなど大変御苦労をされたのでありますが、残念ながらその経過と結果については極めて厳しいものでありました。日本の畜産、果樹の存立はこれを守る、これが交渉に臨む日本政府の基本方針であったはずであります。しかし、交渉の経過は、一方的に我が国が譲歩に次ぐ譲歩を重ねたとしか思えないのであります。
すなわち、牛肉の国境調整措置一つを見ても、自由化は困難であるとの方針が自由化を認める方向に変わり、その前提であった輸入課徴金が変動関税に変わり、その変動関税もアメリカ側の強い反対を受けて断念し、アメリカが現に実施している輸入制限に比べても見劣りのする緊急調整措置にまで後退したのであります。この結果、自由化までに三年間の移行期間を置いたとはいえ、この期間に輸入割り当て量を約二倍にふやし、日本人の胃袋から見れば、実質自由化に等しいものとなっています。
かんきつについては、生産農家が血の出る思いでの生産調整のさなかに自由化が決定され、しかも牛肉で認めた関税の引き上げや緊急調整措置すら確保されていません。自由化に伴う政府のかんきつ対策では、温州ミカンを中心に大幅な廃園が予定されています。一体、貴重な資源であるミカン園を、後をどうするかの方策もないままに荒廃させることが農政と言えますか。これでは、どう見ても、日本の畜産農家や果樹農家の存立が確保されたとは到底思えないのであります。(拍手)
竹下総理は、この日米農産物交渉についてどのような評価をお持ちか、また、自由化後の国内諸対策について政府の責任をどのように受けとめていられるか、所信のほどをまずお伺いいたします。
この上に、米国の国内には、追い打ちをかけるかのように米の輸入自由化を求める動きがあらわれています。政府は、米の市場開放問題はウルグアイ・ラウンドで協議するとの見解を繰り返しています。また、先日の本会議で、宇野外務大臣は米の市場アクセスの協議を拒否しないと明言されました。
そこで、これまた総理にお伺いいたします。
仮にウルグアイ・ラウンドで日本の米市場を開放すべしとの意見が多い場合には、政府はこれに従うというのですか、それとも毅然たる態度でこれを拒否するのですか、実はそこが問題なのであります。この点についての総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
今、全国の農村では、さきの農産物十二品目や牛肉・オレンジの経緯からして、初めに拒否があり終わりに自由化ありきとの認識がしみ込み、多くの農業者の農政批判はみなぎっています。政府は、この現実を肝に銘ずべきであります。本院は、このような事態の中で米自由化に反対する決議を二度にわたり決定いたしました。総理は、国権の最高機関である本院におけるこの決議に誠実にこたえる責任があります。
我が党は、RMAの提訴に対するUSTRの対応いかんにかかわらず、また、ガットやウルグアイ・ラウンドにおける議論にかかわらず、我が国は米の完全自給を貫くとの竹下総理の言明を重ねて強く求めるものであります。
農業貿易のあり方は、今日、国際政治の中で大きな課題であります。ウルグアイ・ラウンドはその方向を示す重要な場であり、米国やケアンズ・グループ、EC、日本等がそれぞれ自国の特殊事情を踏まえて活発な動きを示しています。米国のガット・ウェーバー条項の存在や輸出補助金、ECの可変課徴金等による輸入規制などなど、必ずしも公正とは言えない各国の貿易制度を踏まえて、我が国は米国に偏り過ぎた農業の貿易構造を改め、食糧輸入国として立場を同じくする諸国との関係を強めるべきであります。ウルグアイ・ラウンドに向けての我が国の対応について、宇野外務大臣の見解を求めます。
佐藤農林水産大臣は最近よく攻めの農政を述べられていますが、攻めの農政とは何か、その中身、その方向について具体的な内容を明らかにしていただきたいのであります。
次に、畜産二法について主として佐藤農林水産大臣にお尋ねをいたします。
第一は、牛肉の輸入自由化が我が国農業、なかんずく肉用牛、酪農に及ぼす影響をどう見ているのか。牛肉需給の見通し、特に国内自給率など、今後の方向を示してほしいのであります。
第二に、この法案は、牛肉輸入の自由化で大幅に価格が低落する肉用子牛について、その実勢価格と保証基準価格との差を不足払いとして交付することを主な内容としていますが、この保証基準価格の水準、算定方式についてお考えをお伺いしたい。
第三は、財源であります。
不足払いの財源は、牛肉及び牛肉調製品にかかわる関税収入が特定された財源とされていますが、関税収入は、為替レートの変動、輸入牛肉の量と価格に左右され、極めて不安定であります。しかも、牛肉関税率は、七〇%から始まり、年々下がって五〇%になり、その後もさらに下がることが心配されますが、宮澤大蔵大臣は、この不足払いの特定財源の性格、その運営についてどのような御見解か、承りたい。
また、農林水産大臣は、この関税収入をもって今後長期にわたり肉用子牛等対策費を賄うことができると考えているのか、仮に賄い得ない事態が生じた場合はいかなる措置を講ずる考えか、お考えをお示しいただきたい。
第四は、不足払いの実施は昭和六十五年度からとされていますが、牛肉は本年度から毎年六万トンの輸入割り当てがふやされますので、完全自由化を待たずして牛肉、子牛価格の低落が心配されます。したがって、この間の対策をどのように考えていられますか。本法の実施は、明年度から直ちに行ってはいかがですか。
第五に、この法律案は肉用子牛の対策であり、肥育牛に対する所得保障の欠如が指摘されます。
我が国の肉牛生産は子牛部門と肥育部門に分離されていますので、肥育牛への対策がなければ、仮に子牛生産は存続しても、その子牛を肥育する者がいなくなる心配があります。不足払いを肉用子牛にとどめたのはいかなる考えに基づいたのか、お伺いいたします。
第六は、畜産農家、なかんずく規模拡大を目指した酪農、肥育農家の多くは多額の負債にあえいでいます。到底合理化や規模拡大だけでは片づかない負債問題についての対応を強く求めるものですが、いかがですか。
第七に、畜産振興事業団のあり方が問われています。私は、事業団が我が国の畜産振興に果たしてきた役割を評価しつつも、昨今輸入牛肉の売り渡し、買い入れをめぐる不祥事件の発生、関係商社の入札をめぐる談合報道等は、国民に強い批判と疑惑を与えていることを極めて遺憾とするものであります。政府の指導監督の強化、事業団業務の見直し、適正運営を求めるものでありますが、農林水産大臣の御見解を求めます。(拍手)
次に、かんきつの対策であります。
オレンジ、果汁の自由化は、国内果樹農家にとって大きな打撃であり、とりわけ国内産ジュースと輸入ジュースの競合が最も心配されるところであります。政府の打ち出した国内対策は、温州ミカン等の大幅な廃園奨励措置が中心であり、果樹農家の切望してきた加工原料果実の価格安定の法制化は見当たりません。
畜産部門で新しく肉用子牛の不足払い制度を立法化したのに対し、果汁について従来の行政措置の補完にとどめたのはなぜか。畜産、果樹の自由化に対応する政策としては、著しくバランスを欠く措置と言わねばなりません。ジュースは国内産生果実の価格安定の調整弁であり、消費拡大の最大の方策であります。我が国の果樹農業が生き残りをかけたあすへの営農意欲を、法律制度によって担保する必要があると思いますが、いかがですか。
第二に、オレンジ、果汁の輸入自由化に伴う国境調整措置としては、果樹農業振興法第五条にかかわる政省令等の整備が強く求められています。同法第五条は、外国果物の輸入が国内生産者に重大な影響を与える場合の歯どめ措置として制定されたものでありますが、施行以来既に四年になりますが、その発動の基準等についていまだに明確に示されておりません。行政の怠慢としか言いようがありません。オレンジ等自由化のこの機会に明らかに示すべきであります。
また、いわゆる十二品目問題に対する今後の対策を示していただきたいのであります。
以上、私は農畜産物の自由化、畜産二法案をめぐり若干の質問を申し上げましたが、最後に、農政に対する竹下総理の御所見をお伺いいたします。
ガット十二品目問題、今回の牛肉・かんきつ問題を通じ政府は多くの農産物の市場開放を決定し、我が国の農業は未曾有の危機に直面しておると言っても過言ではありません。しかも、最後のとりでである米にまで市場開放の波が押し寄せています。
申すまでもなく、食糧は国民生活の基礎であり、農業は国土保全、自然環境保護のために欠くことのできぬ産業であります。歴代の総理が、本院における施政方針などを通して、農村を民族の苗代と呼び、だれよりも農民を愛するとも語りかけ、所得格差の是正、食糧自給率向上を掲げてきましたが、皮肉なことに結果は逆であります。農業の近代化、国際化を訴えられましたが、顧みて、言葉ありて実りなしの思いを深くいたすものであります。
竹下総理は、「ふるさと創生」を掲げて政権の座についてやがて一年になります。農業なきふるさとは考えられませんが、国際化の潮流が根こそぎ日本の農業を押しつぶす不安の中で、何を歯どめとして農業の再建に立ち向かわれるのか、竹下総理の御所見を改めてお尋ねいたし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/12
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013・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) 田中議員にお答えをいたします。
最初の質問は、牛肉・かんきつ交渉の決着についての見解やいかに、こういうことでございます。
今回の交渉におきましては、佐藤農林水産大臣を初めといたします関係者の方々が米側と粘り強い交渉を行って、自由化までの期間、また国境措置などにつきまして米側からも相当の譲歩を得て、言ってみれば、日米間の協力と共同作業で決着したものであると考えております。
我が国といたしましては、輸入数量制限をめぐる厳しい世論、我が国の置かれております国際的立場等を考慮して、国境措置と国内対策を講ずることによって牛肉・かんきつ生産の存立を守り得るとの判断に立って決断をいたしたものであります。
次に、国内対策でお尋ねがありました。
先般の日米・日豪合意が関係農家にとり極めて厳しい試練であるということは十分認識をいたしております。今後、厳しい条件のもとで、我が国農業の存立を守ってその体質強化を図っていくとの基本的な考え方にのっとり、早急に国内措置を講ずるべく最大限の努力を傾注してまいりたい、このように考えます。
具体的には、牛肉につきましては、国内肉用牛生産の安定合理化を推進いたしますため、法律案をただいま国会に提出し、御審議を願いますとともに、当面懸念されます価格変動等に対処するための緊急措置につきましても所要の措置を講ずることとしたところでございます。
かんきつにつきましては、品質及び生産性の向上を通じまして体質強化に努めますとともに、当面の需給、価格の安定等を図るため、所要の措置を講ずることといたしておるところであります。
次は、ウルグアイ・ラウンドについてのお尋ねがございました。
米の問題は、まさに国民の主食であって、かつ我が国農業の基幹作物であります。稲作は、今もおっしゃいましたように、地域経済や国土・自然環境の保全上、重要な役割を果たしているものと認識をいたしております。このような米の重要性にかんがみますとき、国会において決議がございます、その趣旨を体し、生産性の向上を図りながら、国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいる所存であります。
米の貿易問題については、ウルグアイ・ラウンドにおいて各国の農業問題、制度について議論を行う段階において討議をすることが適切である、このように考えております。今般の米国精米業者協会の提訴は、従来の経緯にかんがみまして、米国政府が速やかに却下することを期待し、また、働きかけをいたしておるところであります。
最後に、農政への取り組みについてお尋ねがありました。
国際化の進展のもとでの農産物の輸入自由化、厳しい需給事情や生産性の向上等を反映する観点からの米価引き下げなど厳しい情勢の中で、我が国農業は足腰の強い産業として飛躍を期すべき転機を迎えていると考えております。このため、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給を基本として、生産性向上を図りますとともに、農業所得の安定的な確保、魅力ある農業の確立に向けまして、より積極的な農政への転換を図ってまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/13
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014・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 自由化の影響を特に受けると考えられます肉用子牛の生産について新しい措置を講ずる必要が生じましたので、牛肉等に係る関税収入を特定財源といたしましてこれに対処いたそうと考えております。
それによりまして、肉用子牛の不足払い、肉用牛生産、食肉の流通の合理化等々に必要な経費に充てることにいたします。
今後牛肉の輸入量は年を追って増大していくと見込まれますので、この制度の運営に必要な財源といたしましてはこれをもって十分と見込まれます。肉用子牛等対策の実施に支障を生じない見通しでございます。(拍手)
〔国務大臣宇野宗佑君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/14
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015・宇野宗佑
○国務大臣(宇野宗佑君) 米に関しましては、総理が明確な答弁をなさいましたから、重複を避けたいと思います。
なお、そのほかのウルグアイ・ラウンドの問題に関しましては、我が国が我が国の立場を強く主張するのは当然のことでございますが、御指摘がございましたウェーバーとかあるいはECの輸出補助金等々の問題に関しましても、やはり公平性を貫くために新しいルールづくりがなされるよう、我が国といたしましては努力、対応いたしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣佐藤隆君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/15
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016・佐藤隆
○国務大臣(佐藤隆君) 田中議員の御質問にお答え申し上げます。
私に対する質問は十一点ございます。簡潔明瞭にお答え申し上げたいと思います。
まず、今後の農政の方向についてでありますが、従来から申し上げておりますように、農政審議会報告を基本とすることは議員御承知のとおりであり、その後の事態の推移を踏まえて、「国際化への対応と農業・農山村の活性化のための政策の基本方向」を取りまとめているところであります。今後は、この方向に従って努力し、守りだけではない、より積極的な農政を展開してまいる所存でございます。
十七日から行われるパリにおける国際食品見本市におきましても、北口政務次官を派遣することにさきに決定をいたしたところでございます。
次に、牛肉輸入自由化の影響等についてでございますが、今般の日米・日豪合意に基づく牛肉の輸入枠の撤廃により、国産牛肉の価格の低落は避け得ないものと見込んでおります。また、酪農経営についても少なからぬ影響が及ぶと見込んでおります。このため、所要の国境措置の確保とあわせて国内措置の実施については最大限の努力を傾注してまいる所存であり、肉用子牛の生産安定制度の創設、生産性の向上、流通の合理化など、所要の対策を積極的に展開いたしたいと考えております。
今後の牛肉の需給見通しについては、去る二月に公表した酪肉基本方針において、昭和七十年度には昭和六十年度に比較して需要量では約一・五倍程度、国内生産量は約一・二倍強と見込み、自給率を六〇%弱と見通しております。しかしながら、今後の牛肉輸入枠の撤廃に伴い、需要量はこの線をかなり上回り、自給率の低下も避けがたいと見通しております。
次に、保証基準価格につきまして、肉用子牛の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して、その再生産を確保することを旨として定めることといたしておりますが、具体的な算定方式については、畜産振興審議会の意見も承った上で検討したいと考えております。
なお、保証基準価格の水準については、現行肉用子牛価格安定事業における保証基準価格水準が一つの目安になるのではないかと考えております。
次に、不足払い等の財源問題でございますが、大蔵大臣が触れられました。重複を避けたいと思っております。肉用子牛等対策の実施に支障を生ずることはないと私は考えておるところでございます。
次に、不足払いの早期実施でございますが、本法律案に基づく生産者補給交付金制度が発足するまでの間においても、当面懸念される価格変動等に対処するため、生産、価格、流通等にわたる緊急対策を講じ、肉用牛生産の安定合理化を図ってまいる考えであります。
なお、本制度発足のためには、都道府県協会が存在しない都道府県における協会の設立、加入率が極めて低い乳用種子牛の加入促進等が必要であり、相当の準備期間を要することから、明年度からの施行は困難と考え、昭和六十五年度からの実施を予定しているものであります。
次に、肥育経営に対する所得保障でございますが、輸入枠の撤廃後において我が国肉用牛生産の存立を確保するためには、輸入牛肉と対抗し得る価格水準で国内牛肉を供給する必要があります。この課題を直ちに実現することは困難であるため、肥育経営の再生産が確保できるように肉用子牛価格を所要の水準にまで引き下げ、そのもとでも肉用子牛生産の存続を図り得るようこの法律案を提出したものであり、肥育経営にも十分留意しているところであります。
また、牛肉の価格安定制度は引き続き維持することとしており、その安定価格帯水準は肥育経営の再生産が確保できる水準として設定することとしているところであります。
畜産農家の負債対策でございますが、従来から各種制度資金の貸付条件の緩和、自作農維持資金の融通、個別農家に対する指導等の措置を講じております。また、本年度においては、大家畜経営体質強化資金を創設しましたが、牛肉輸入枠撤廃に対処する緊急対策として、本資金をさらに拡充することを予定しているところであります。
畜産振興事業団につきましては、各種畜産物の価格安定、加工原料乳不足払い、畜産振興のための助成等の広範な業務を行ってきておりますが、輸入牛肉売買業務をめぐって種々御批判のあることはまことに遺憾であります。
今後、昭和六十六年度からの牛肉輸入枠撤廃までの間における輸入牛肉売買業務の適正な実施はもちろん、今回の法律案によって予定される新たな業務である肉用子牛の生産者補給交付金等の交付、畜産物情報の収集、提供を含めて、畜産振興事業団の任務が円滑、適正に遂行されていくよう、綱紀の粛正はもとより、業務執行体制の整備等について、指導監督の強化に努めてまいる所存であります。
加工原料用果実の不足払いでございますが、従来から行っている通常の価格差補てんに加え、特別の価格差補てんを一定期間実施することとして予算措置を行う所存であり、立法措置を講じなくても実現可能であると考えております。
また、果樹農業については、生果を中心として生産者の採算が成り立つことが基本であり、生果の需給調整上の役割を果たしている加工原料用仕向け果実を独立した農産物として不足払い制度の対象とすることは困難と考えております。
次に、果振法第五条についてでございますが、この条項制定の経緯についてはよく承知をいたしております。この規定の発動は、外国産の果実等の輸入によって引き起こされる一定の事態について、政府に対しこれを克服するための措置を講ずべき旨を義務づけておりますが、どのような措置を講ずべきかについては政府にゆだねられているものと考えております。本法の発動については、国際条約上の義務との関連もあり、どのような場合にどのような措置を講ずるかをあらかじめ定めておくことには困難があると考えております。
最後に、いわゆる十二品目問題でございますが、いずれも地域農業を支える重要部門でありますので、各品目の需給、生産、流通、消費の実態を踏まえ、体質強化を図っていくとの基本的考え方にのっとり、農業団体の要望、現場の声等に耳を傾けながら検討を進め、去る十月十一日に対策の骨子を決定したところであります。
具体的には、生産性及び品質の向上のための産地の生産条件の整備、果汁原料用果実及び加工原料用パイナップルの価格安定対策の拡充、加工食品用等に仕向ける芋類の生産の奨励、加工用トマトの契約栽培の維持、加工工場の合理化、需要の拡大を中心に所要の措置を講じていくことといたしております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/16
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017・原健三郎
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/17
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018・原健三郎
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01219881013/18
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