1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和六十三年十月二十日(木曜日)
─────────────
議事日程 第八号
昭和六十三年十月二十日
午後一時開議
第一 学校教育法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
─────────────
○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
公安審査委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
日程第一 学校教育法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)
医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)
教育職員免許法等の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/0
-
001・原健三郎
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/1
-
002・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御報告いたすことがあります。
永年在職議員として表彰された元議員足立篤郎君は、去る八月十四日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
同君に対する弔詞は、議長において去る十月十五日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもつてその功労を表彰され さきに大蔵委員長農林水産委員長の要職につき また再度国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等足立篤郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
────◇─────
議員請暇の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/2
-
003・原健三郎
○議長(原健三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
野呂田芳成君から、海外旅行のため、十月二十一日から三十日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/3
-
004・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
────◇─────
公安審査委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/4
-
005・原健三郎
○議長(原健三郎君) お諮りいたします。
内閣から、
公安審査委員会委員長に川島一郎君を、
同委員に末松謙一君、中谷瑾子君及び山崎敏夫君を、
日本放送協会経営委員会委員に石井幹子君を
任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
まず、公安審査委員会委員長及び同委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/5
-
006・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
次に、日本放送協会経営委員会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/6
-
007・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
────◇─────
日程第一 学校教育法の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/7
-
008・原健三郎
○議長(原健三郎君) 日程第一、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。文教委員長中村靖君。
─────────────
学校教育法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
─────────────
〔中村靖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/8
-
009・中村靖
○中村靖君 ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、臨時教育審議会の答申を受けて、高等学校教育の多様化、弾力化等を図るためのものでありまして、その内容は、
第一に、高等学校の定時制の課程及び通信制の課程と連携できる技能教育施設の指定について、従来文部大臣が行っていた指定を都道府県の教育委員会が行うこととすること、
第二に、高等学校の定時制の課程及び通信制の課程の修業年限について、現行の四年以上を三年以上に改めること
第三に、この法律は、昭和六十四年四月一日から施行すること
であります。
本案は、さきの第百十二回国会に提出され、四月十五日に本委員会に付託となり、同月二十日、中島文部大臣から提案理由の説明を聴取した後、継続審査となったものであります。
今国会におきましては、去る十月十四日、提案理由の説明を省略し、質疑に入り、昨十九日に質疑を終了し、討論の後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/9
-
010・原健三郎
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/10
-
011・原健三郎
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/11
-
012・自見庄三郎
○自見庄三郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
社会労働委員長提出、医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/12
-
013・原健三郎
○議長(原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/13
-
014・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
─────────────
医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/14
-
015・原健三郎
○議長(原健三郎君) 医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。社会労働委員長稲垣実男君。
─────────────
医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
─────────────
〔稲垣実男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/15
-
016・稲垣実男
○稲垣実男君 ただいま議題となりました医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案について、趣旨弁明を申し上げます。
本案は、血液製剤によるエイズ患者等の救済の実施に当たり、その給付の事務を特別認可法人である医薬品副作用被害救済・研究振興基金に行わせることにより、救済業務の迅速かつ円滑な実施を期するとともに、あわせて、給付を受ける者のプライバシーの確保等に資することを目的とするもので、その主な内容は、
第一に、基金は、当分の間、従来からの業務に加え、医薬品に混入したエイズウイルスによる健康被害の迅速かつ円滑な救済を図るため、厚生大臣の認可を受けて、救済のために必要な事業を行う者から委託を受けて、医薬品副作用被害救済制度による給付に準じた給付の事業を行うことができること。
第二に、エイズ患者等の救済のために基金が行う給付については租税その他の公課を課することができないこと、その他所要の規定の整備を行うこと。
以上が本案の趣旨及び内容でありますが、本日の社会労働委員会において成案とし、全会一致をもって社会労働委員会提出の法律案と決したものであります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/16
-
017・原健三郎
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/17
-
018・原健三郎
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
────◇─────
教育職員免許法等の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/18
-
019・原健三郎
○議長(原健三郎君) この際、第百十二回国会、内閣提出、教育職員免許法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣中島源太郎君。
〔国務大臣中島源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/19
-
020・中島源太郎
○国務大臣(中島源太郎君) 教育職員免許法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
学校教育の直接の担い手である教員の活動は、人間の心身の発達にかかわるものであり、幼児、児童、生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものであります。このような教員の資質能力の向上は、その養成、採用、現職研修の各段階を通じて総合的に図られるべきことはもちろんでありますが、まず、その最初の段階である養成教育において真に教員にふさわしい人材を育成することが肝要であります。大学の養成においては、幅広い人間性、教科・教職に必要とされる基礎的、理論的内容と実践的指導力の基礎を確実に修得させる必要があると考えております。そのためには、開放制の原則に立ちつつ、教員養成課程における専門性の一層の向上を図るとともに、教職により深い学識を備えた者を招致できるようにする必要があります。
また、他方において、学校教育の多様化等に対応するため、社会的経験を積んだ教員にふさわしい者を教育界に迎え入れるようにすることも重要であり、これによって学校教育に生気と広い視野を与えることも期待されます。
今回の改正は、臨時教育審議会の答申及び教育職員養成審議会の答申を受けて、このような観点から、教員免許制度の改善を図ることを内容とするものであります。
以下、この法律案の概要について申し上げます。
第一は、普通免許状の種類の改善であります。
教職につく者に対して、教員養成課程において、教科・教職についての基礎的、理論的内容と広い教養、そして実践的指導力の基礎を確実に身につけさせるためには、学部を卒業して免許状を取得させることが必要であることから、学部卒業者に対する免許状を一種免許状とし、教員の資質能力の標準的な水準を示すものとしております。
この一種免許状を基礎として修士課程等で特定の分野を修め、その分野について高度の資質能力を備えていることを示す免許状をすべての学校種について設けることとし、これを専修免許状としております。これにより、現職の教員が修士課程等において研修することを促進し、また、修士課程等修了者が進んで教職につくことを期待しております。
他方、短期大学を卒業程度とする免許状については、二種免許状としておりますが、二種免許状を有し、教員として採用された者については、その取得後、教員としてなお一層の資質能力の向上を必要とし、さらに研さんが必要でありますことから、一種免許状の取得に努めるよう努力義務を課すこととしております。
第二は、社会人として有為な人材を教員として活用するための措置を講じることであります。
その一は、社会的経験を有する者に対して授与する特別免許状を設けることであります。特別免許状は、教員の任命権者が、担任する教科についての専門的な知識または技能を有し、かつ、社会的信望等がある者を都道府県教育委員会に推薦し、その推薦に基づいて、都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格した者に対して授与される教諭の免許状であります。
その二は、教科の領域の一部に係る事項等を担任する非常勤講師については、授与権者の許可を受けて、免許状を有しない者を充てることができることとするものであります。
第三は、大学において普通免許状の授与を受けるために修得することを要する単位数の引き上げ等であります。
大学において普通免許状の授与を受けるために修得することを必要とする単位数の引き上げは、近年、学校教育において求められている教育の方法・技術、生徒指導、特別活動等の指導力の向上を図るためのものであります。また、教育実習については、その構造化と内容の改善を図るため、新たに事前及び事後指導を必修とすることとしております。
大学における単位の修得については、大学卒業後の免許状の取得を容易にするため、大学が設置する一年間の教職特別課程においても単位を修得し、免許状を取得することができるなどの措置を講じることとしております。
第四は、教育職員検定により他の種類の免許状の授与を受ける場合に必要とする最低在職年数と最低単位を定め、最低在職年数を超える在職年数がある場合にはそれに応じて逓減する単位数を定めることであります。
これは、現職の教員の自発的な研修の意欲を喚起するためのものでありますので、現行の二級普通免許状を有する者が一級普通免許状の授与を受けようとする場合に、十五年の在職年数があれば単位修得を要しないとしている特例は、廃止することといたしております。
第五は、中学校、高等学校の免許状については、免許法において定められている免許教科のほかに、文部省令で定める免許教科についても授与することができることとするものであります。
これは、近年の学校教育の内容の変化等に対応して、これらの教科を担任する教員の確保を速やかに行おうとするものでありますが、これらの文部省令を定めるに当たっては、教育職員養成審議会の意見を聞いて慎重に対処することとしております。
第六は、その他所要の規定の整備を行うことであります。
この法律は、昭和六十四年四月一日から施行することとしておりますが、大学等に対する新しい免許基準の適用は、昭和六十五年四月一日からとしております。
なお、既に授与を受けている免許状は、それぞれ新しい免許状とみなすこととするほか、以上の制度改正に伴う所要の経過措置を講じることとしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)
────◇─────
教育職員免許法等の一部を改正する法律案(第百十二回国会、内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/20
-
021・原健三郎
○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。馬場昇君。
〔馬場昇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/21
-
022・馬場昇
○馬場昇君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました教育職員免許法を改正する法律案について質疑を行います。
私は、まず、教育を語るに当たって、冒頭に竹下総理の政治倫理に対する所信を伺っておきたいと思います。
総理、子供は大人の後ろ姿を見て育つと言われております。その大人、特に国権の最高機関である国会の議員は、みずからの人格によって教育の根本にかかわっていると私は思っております。その国会議員の今日の姿は、子供たちにとってその人間形成に立派な教材となっていると思われますか。総理の率直な所信を伺います。
リクルート疑惑の関係者として、政府・与党の最高幹部やその関係者の氏名が連日テレビや新聞で報じられています。児童、生徒、学生はそれをどういう思いで見たり聞いたりしているでしょうか。子供だましではなく、総理のまじめな所感をお尋ねしておきたいと思います。(拍手)
政治家やその関係者が手もぬらさずに数百万から億以上の巨額な大金を懐にして、税金も払わない、政治資金の届け出もしない事実が明らかになっています。非公開株の譲渡があったころ、リクルート前会長の江副浩正氏は、政府税制調査会特別委員、新行革審土地対策委員、教育課程審議会委員、大学審議会委員など、数多くの政府中枢の審議会委員に任命されています。これはまさに贈収賄事件、犯罪の疑惑があります。この事件について総理はいかなる認識をお持ちか、お尋ねしておきます。
次に、総理、あなたはこの国会で好んで、李下に冠を正さず、李下に冠を正さず、すなわち疑われやすい行為はしないということを約束されました。総理、政治家の言葉というものは裏づけがあって初めて生命を得るものでございます。あなたがこの約束を守るのなら、あなたが真相究明の先頭に立つべきではないでしょうか。
宮澤大蔵大臣の例をとると、最初は株取引については知らない、次にノーコメント、次に秘書が名前を貸したと逃げ回り、資料が出ると確認できないと言い、追い詰められると自分の名義であったと認めております。総理、この逃げの一手が許されるでしょうか。関係者を国会に証人として招
致したらはっきりするではありませんか。大蔵省に対して、持っているすべての資料を明らかにして疑惑を解明せよと指示すべきではないですか。巨悪は眠らせてはいけません。総理の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
国会が定めた倫理綱領に、「政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」と明記してあります。総理、あなたは倫理綱領を遵守すると約束されていますが、具体的にどのようにされますか、明快にお答えください。
総理が、個人のことだ、法的に問題はないと言って疑惑を解明しなかったなら、国民の反発を買い、政治不信は増幅して、国会の権威は失墜されてしまいます。今日、総理が政治生命をかけなければならないのは、消費税ではなく、リクルート疑惑を解明して、政治倫理を確立して議会制民主主義を守ることではありませんか。(拍手)それが二十一世紀に生きる児童、生徒、学生に対する総理としての最高の教育の営みではないでしょうか。子供にもわかるように明確に答弁を求めます。
次に、総理の教育理念についてお尋ねいたします。
教育基本法に、教育の目的は、主権者国民の個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する、正義を愛する人間を育成するとあります。今日の教育の荒廃の大きな原因の一つは、教育の目的が、人格の完成ではなく、政府・自民党の国家目標や経済政策に従属させられてきたところに原因があると思うが、総理、この点の反省はありませんか。
今日、学校に受験戦争、試験地獄、教育費貧乏という言葉があります。教育は、平和な雰囲気の中で、一人一人の個性と能力を引き出し、それに豊かな花を咲かせる文化的な営みであります。総理、教育をこの原点に立ち返らせるべきと思いますが、いかがでございますか。
次に、教育予算について伺います。
我が国の教育予算は、中曽根内閣以降、下降の一途をたどり、本年度までに約〇・二%、八十億の減額になっております。一方、軍事費は、四三・一%伸びて、約一兆一千億の増となっています。教育費の一般会計予算に占める比率は現在八・〇七%ですが、戦後一貫して確保し続けてきた一〇%台に比べると、約一兆円教育予算が減額されたことになります。総理、今日の教育予算についてどう考えていられるか、お尋ねいたします。
私は、今日の世界情勢と、資源の少ない我が国が二十一世紀においても生き生きとした社会で世界に貢献できるためには、教育予算を二倍でも三倍にでも増額して、日本を軍事大国への道ではなく、教育大国にする施策に重点を変えるべきであると思いますが、総理はいかがですか、決意をお述べください。
次に、文部大臣に伺います。
リクルート疑惑の中心人物であり、国会調査にも協力せず、株の売買先を発表するより死んだ方がよいと言明しているリクルート前会長江副浩正氏を、もとの文部大臣が教育課程審議会委員、大学審議会委員に任命しています。中央教育審議会委員を任命する基準は、人格が高潔で、教育、学術、文化に広くかつ高い識見を有する者となっています。教育の中枢にかかわる委員任命にはこの基準を当然準用すべきであると思いますが、江副氏任命はどういう基準と手続で行われたか、明らかにしていただきたいと思います。
この二つの審議会は、リクルート社の就職進学事業、情報通信事業に深くかかわっています。文部省関係者が江副氏から株の譲渡を受けたお礼に、リクルートが利益を受けるポストに任命したのではないですか。文部大臣、児童、生徒、学生、父母はどういう目で見ていると思われますか、見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、天皇の御病気に対する学校行事等の自粛問題についてお伺いいたします。
天皇の御病気の一日も早い回復を願う気持ちは当然でありますが、今日、過剰な自粛のために、諸行事の中止や延期などで国民生活や学校行事や国民経済にまで影響が出ています。また、過剰自粛と、自粛や回復祈願行為が主権在民の憲法を逸脱して、天皇の政治的利用のおそれがあります。総理と文部大臣の対応をお聞かせください。
教育職員免許法の改正について伺います。
学校にすぐれた教員を確保すること、さらに、教員が資質を向上させるために絶えずみずから研修に励むことは当然であります。しかしながら、今次改正案は、第一に、今日の教育の荒廃の背景の一つに学歴社会があることは、臨教審の答申も国民もひとしく指摘しています。改正案で学歴によって免許を三段階にしていることは、学歴社会の助長になると思うが、いかがですか。
第二に、学歴と免許で教員の中に序列関係を持ち込み、差別と競争の中で学校の管理体制を強化することになるではありませんか。所信を伺います。
第三に、臨教審答申の中にも、学校が生き生きと活性化するためには、教職員相互、教職員と児童、生徒、教職員と父母との信頼関係の中で、学校に自由・自律、自己責任の原則が確立されなければならないと言っていますが、今次の免許法改正はこの原則に反していると思うが、いかがですか。
第四に、具体的に、児童、生徒、父母の間に、自分の担任は専修先生、あなたの担任は二種先生と言って、専修先生が立派で二種先生は立派でないという雰囲気を生み、父母、子供と教員の信頼関係が損なわれ、恐るべき教育上の弊害が起こると思うが、文部大臣はいかに思われますか。
第五に、戦後の教員養成は、戦前の師範学校教育の弊害の反省の上に立って、教員に広く人材を求める観点から、国公私立を問わず各大学において必要な教育課程を履修すれば教員への道が開かれた、開放制が原則になっています。
今回の改正案は、教職単位数を引き上げることによって、一般大学での履修を困難にしています。最初から教員養成の目的大学に入学した者のみしか教員になれないという、旧師範学校養成に逆戻りする危険性があると思うが、大臣はどう思われますか。
また一方では、特別免許状により非常勤、パートタイムの教職員が多くなり、正規資格教職員を減少させることにはなりませんか。大臣の所信を聞きたいと思います。
最後に、本改正案は、戦後教員養成政策の大転換でありますが、改正の経緯と背景を見れば明らかなように、政権党の政治介入による臨教審答申をもとに不当な政治支配による改正であります。憲法、教育基本法の精神に違反するものであります。また、教職員団体、大学関係者との話し合いも行われず、納得も得ていません。本改正案は、真の教育改革とは全く無縁のものであるのみか、教育荒廃に拍車をかけるものであります。
この法案の即時撤回を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/22
-
023・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) まず最初にお答えしなければならないことは、次代を担います青少年の健全育成は、政府に限らず広く国民に課せられた任務である、このように思います。今も御指摘がありましたが、子供は大人の背を見て育つ。私どもの周辺にも、確かに児童も生徒も学生もおります。そういう環境から思いますときに、今回のリクルート問題等、影響するところが大なるものがあると私自身も思います。
こういう見地から、政治家たる者は、今もおっしゃいましたように、いわば疑われやすいことはしない、こういう考え方に立ちまして、国民の信頼を損なうことがないよう不断の努力を重ねていかなければならないと思っております。そしてまた、しかし現実問題として政治活動にかかわるいろいろな問題がございます。それらの現実を踏まえつつも、清潔な政治を目指して、お互いその良心に従ってたゆまない努力を積み重ねていかなければならない、このように考えております。
さて次に、リクルート問題の全容解明等についての御意見を交えてのお尋ねでございました。
いつも委員会等で申し上げておりますように、証取法上の問題、税制上の問題、刑事上の問題、政治道義上の問題、およそ四つの側面があろうかと思っております。
したがって、まず証取法、税制上の問題については、お互いが議論して再発防止に努めなければなりません。
刑事上の問題につきましては、これはまさに刑法上の立場に立って、検察当局が適切な対応をしておるものであるというふうに考えます。
そして、私を含むお互い考えなければならないのは、道義上の問題であると思います。したがって、これの問題につきましては、これは確かに政治家というものは情報も集まりやすい立場にもございます。それだけに、そのことがよしんば純粋なる経済行為だということにあるといたしましても、やはり私どもは政治倫理綱領というものをいつも反復しながら毎日毎日対応していかなければならないものだ、このように考えておるところであります。
さて次は、教育荒廃に対する御認識が述べられました。
我が国の教育は、憲法及び教育基本法に示されております理念のもとに、私は、国民の教育に対する熱意や関係者の皆さん方のたゆみない努力によって著しい普及発展を遂げたものであるというふうに認識をいたしております。
他方、社会の急速な変化などは教育のあり方にも大きな影響を与えております。青少年の問題行動や受験競争、そうした種々の問題を抱えていることも承知しております。
したがって、このような教育の現状を踏まえながら、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい個性的で心豊かな青少年を育成すべく教育改革を着実に推進することが重要である、このような基本認識に立っておるところであります。
個性教育についてもお触れになりました。
昨年の臨時教育審議会の最終答申あるいは教育課程審議会の答申等を踏まえまして、まさに基礎・基本の指導の徹底や選択履修の幅の拡大、思考力、判断力などの能力の育成等を重視して、個性を生かす教育の充実を図るように努め、そしてその考え方に立って学習指導要領の改訂を進めてまいりたい、このように考えておるところであります。
次は、予算にお触れになりました。
文教予算は、教育改革推進等のために今日まで所要の予算を計上し、その充実に配慮してまいっております。しこうして、私は、国の一般歳出に占めるいわゆる文部省予算の割合は、大体同一水準を維持して今日に至っておると思っておるところであります。
防衛関係費につきましては、これは厳しい財政事情のもとで他の諸施策との調和を図りながら所要の経費を計上しておるところであります。
今後とも、お互いが衆知を絞って教育向上のための具体的な予算措置等についても努力すべきものであると考えます。
そして、教育大国、こういう御発言がございました。
教育は、国民一人一人の人格の完成を目指しながら、次代の国家及び社会の形成者を育成するものでありまして、まさに国づくりの基本であるという認識は等しくいたしておるつもりであります。このため、従来から国政の重要課題として各般の施策を実施してまいりましたが、今後とも、二十一世紀に向けて創造的で活力ある社会を築いていくことを期して、教育改革を引き続き推進してまいりたい、このように考えます。
最後にお触れになりました。天皇陛下の御快癒を願う国民の気持ちはとうといものであります。これは大切に受けとめていくべきものであると思います。同時に、それが過剰となって日常の経済社会生活、もとより教育活動、これらに支障を及ぼすことがあってはならない、このように考えます。そして、各界でそうした危惧が寄せられておることも事実であります。私も同じような見解を持っております。
本件はあくまでも国民一人一人の気持ちの問題でありまして、事の性格上、国民の皆さん方の自主性を尊重することはもとよりでございますが、行政府の立場から申しますならば、行政にいささかの支障もないように、粛々とこれをとり行っていくということが当然である、また半公的な、あるいは純粋な公的行事だけでもなく、やはり決められた行事を粛々と行っていく、そのような考え方でございます。(拍手)
〔国務大臣中島源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/23
-
024・中島源太郎
○国務大臣(中島源太郎君) まず最初に、江副氏に関しまして、各種審議会委員に任命した基準と手続についてお尋ねでございました。
教育課程審議会、大学審議会等の委員につきましては、御存じのようにそれぞれ教育課程審議会令、また学校教育法にその任命の基準、手続が定められておるわけでございまして、江副氏につきましても当時それぞれの法令の規定に従いまして適正に任命をされた、こういうことでございます。
次に、児童、生徒、学生についてお触れでございました。
リクルート問題に限らず、日々の社会事象というものは、いろいろな意味で青少年の目に、耳に飛び込んでまいります。そういう日々の社会事象の中から、青少年が、社会におきます企業の役割あるいは責任を含めまして、大人の世界について正しいあり方を理解していただく、こういうふうに進んでいただくことを願っておるところでございます。
次に、天皇陛下の御病気と諸行事に対してお尋ねでございましたが、総理大臣からもお答えになっておりますが、私に対してさらに重ねてお尋ねでございました。
天皇陛下の御容体を気遣い、御快癒を願う国民の心境というものは十分理解できるわけでありますが、国民生活に遅滞を生ずることのないように、それぞれの主催者等の自主的な判断によりまして適切かつ粛々と諸活動が進められていくことが必要であろう、このように考えております。
以降、七項目にわたりまして、免許法に対して御質問でございました。各般にわたっておりますので、御質問を繰り返すことなく、答弁漏れのないように、できるだけ一括してお答えしたいと思います。
今回の改正は、幅広い範囲から人材を求めるとともに、教員の自発的な現職研修を助長しようというものでありまして、学歴社会を助長したり、おっしゃるように教員の序列化や管理体制の強化を意図したものではございません。
また、この措置によりまして活力ある学校教育が展開され、これまで以上に教職員と児童、生徒や保護者との間に信頼関係が高められると考えておりますし、秩序ある、生き生きとした学校運営がなされることを期待をしているところでございます。
なお、三種類の免許状についてお尋ねでございました。
これは、いずれも普通免許状である教諭の免許状でございます。したがって、担当し得る教育活動も変わるところはないわけでありまして、したがって、御指摘のように教員と児童、生徒との信頼を損なうことはありません。
次に、開放制についてお尋ねでございました。
今回の改正案は、あくまでも開放制の原則に立ちながら、教員養成課程における専門性の一層の向上を目指したものでございまして、現職研修を重視する措置を講じようとするものでありまして、御指摘のような師範学校のような教員養成を志向するものではございません。
次に、特別免許状についてでありますが、特別免許状は、学校教育の多様化に対応するという観点から、相当の社会的な経験を有する者を教育界にお迎えをするという目的の免許状でございまして、これを有する教員は非常勤の教職員でなく、教諭として勤務をしていただくのが当然であろうと思っております。
このような特別免許状は、社会的経験を有する者に担当させることが適当な教科である、そういうものについて一定の手続のもとに授与されるものでありますので、その創設によりまして、御指摘のような普通免許状を有する教員が減少するのではないかというような御心配には当たらないと思います。
最後に、この法律改正に教育関係者の同意をよく聞いておるかという趣旨の御質問でございました。
臨教審の第二次答申では、教員の資質能力の向上について種々の御提言をいただいております。その御提言を受けまして、さらに専門的見地から検討するために、教育職員養成審議会に対して諮問を行ったところでございます。その教養審におきましては、関係団体から意見を伺った上で、さらに審議状況を整理をいたしまして、広く意見を求めるために中間報告を発表していただきました。その後、さらに関係団体から意見を聴取しつつ審議をいたしまして、昨年十二月に答申をいただいたところでございます。
改正案の内容というものは、その答申のうちの法律事項に係るものについて実現を図ろうとしているところでございまして、十分教育関係者の意見を踏まえて行っているもの、このように考えております。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/24
-
025・原健三郎
○議長(原健三郎君) 藤原ひろ子君。
〔藤原ひろ子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/25
-
026・藤原ひろ子
○藤原ひろ子君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、教育職員免許法の改正案について質問いたします。
質問に先立ち、教育問題を語る上でどうしても触れなければならないことがあります。
それは、一連の教育法案の基礎になっている臨教審答申が、ただいま国政上の最大問題になっているリクルート疑惑に深くかかわっていることです。臨教審設立に最も深い中曽根前首相、森元文相にリクルートの非公開株が譲渡され、リクルートの江副氏自身も教育課程審議会と大学審議会委員になっていたのであります。まさに、今日政府が進める教育改革の根本が汚されていたという疑惑が持たれる重大問題であります。ついに検察の強制捜査まで受けるに至った疑惑の会社の責任者をこれらの委員に任命した、その非を総理は率直に認めるべきではありませんか。(拍手)
私は、リクルート疑惑の徹底解明こそが法案審議に先行してなされるべきであることを強く要求するものです。事は次代を担う子供たちの教育に関することであり、いささかのあいまいさも許されないものです。この点について、教職経験を持つ竹下総理に明確な見解を伺うものであります。
本法案は、戦後の教師養成と免許制度を抜本的に変え、戦前の師範型教師養成への回帰につながる重大な内容を持っており、断じて認めることはできません。かつての侵略戦争遂行に大きな役割を担わされたのが、師範学校で訓練を受け、教育勅語による国家主義教育の先頭に立った教師でした。戦後の教師が教え子を再び戦場に送るなという決意を固めたのは、まさにこうした体験に立つ痛苦の反省からにほかなりません。総理は、戦前の軍国主義教育についてどのように反省されるのか、お伺いいたします。(拍手)
戦後こうした教師養成のあり方が否定をされ、大学での養成と、いずれの大学でも免許状が取れるという開放制の原則が確立されたのは、当然の帰結とはいえ画期的なことでした。今求められているのは、どのような教師なのでしょうか。それは、教育の専門家として、憲法と教育基本法の精神に立脚しながら、専門的知識はもとより、子供の発達についての科学的な知見を身につけていること、人間としての尊厳を守り、科学的真理、真実に従い、自主的に考え、取り組めること、とりわけ学力問題やいじめなど、深刻な事態の解決に立ち向かい、みずからも民主的市民道徳の実践者として父母や地域の要求に積極的にこたえ、子供の教育と人権を守り抜くという、教職について高い社会的使命の自覚と情熱を持った教師です。
そうした教師づくりを進めるためには、大学での充実した教師養成、国民として、労働者としての基本的諸権利の保障、創意工夫が発揮されるような教育上の自主的権限や、自主研修に励む機会の保障、学校の自主性と民主的な学校運営の確立、受験競争の是正や四十人以下の学級の実施など、教育条件を整えることが不可欠です。総理、このような教師づくりこそ今日求められているのではありませんか。また、戦後の教師養成の原則についてどのように考えておられるのか、お答えください。
本法案が教師の資質向上に果たしてつながるのか、主要な問題について質問をいたします。
第一の問題は、普通免許状の種類を二種類から三種類に改め、大学院修士卒の専修、四年制大学卒の一種、短大卒の二種という、学歴による格差を持ち込もうとしていることです。
現行の普通免許状も一級、二級の区別はありますが、資格としては同等に扱われており、十五年以上の在職で上進できる道も開かれています。ところが、今回の三種類免許状の導入は、一九七一年の中教審答申で打ち出された校長、教頭、上級教諭、教諭、助教諭という、いわゆる五段階格差と賃金導入構想をベースにしていることは明らかです。そうではありませんか。また、二種免許状について、一種免許状の取得義務が課せられ、十五年以内に取得しなければ、四十五単位を修得しない限り上進できないことにされますが、これも教師を取得競争に駆り立てることになります。
このように、免許状三種類化は明らかに本来同等であるべき資格に三段階の格差を導入するものであって、教員の資質向上に資するどころか、逆に、本来対等、平等であるべき教師間に分断と誤った競争を持ち込み、教員相互の協力関係を困難なものにせざるを得ません。それは結局教師管理を強め、戦前の師範学校のような上命下服の体制に引き戻そうとすることになります。こうした問題が起こらないと断言できるのですか。そうだとすれば、その根拠を明らかにしていただきたい。
第二の問題は、社会人の活用を口実に、大学での教員養成の原則を崩して、特別免許状の創設や免許状なし特別非常勤講師制度の導入を図ろうとしていることです。
社会的な経験を豊かに持つ人や文化的活動を担う人が学校の教育活動に参加することは、それなりに意義があります。その場合大切なことは、上からの押しつけではなく、学校の自主的で系統的な指導計画に位置づけることであり、現行でも十分できます。ところが、臨教審で言う社会人の活用とは、今後の教育の多様化に見合うように、即席で安上がりの教師をつくろうとするものです。このような即席の教師をつくることと、大学での正規の基準を引き上げて資格取得を厳しくすることとは、全く矛盾した考えではないのですか。
しかも、現実には、免許状取得者で希望しながら就職できない人が多いことや、臨時教員を何年も続けながら正式採用にならない人が増大していることを考えるならば、特別免許状や特別非常勤講師をつくるなど、とんでもないことではありませんか。臨時教員の正規任用こそ直ちに行うべきです。これらの点について明確な答弁を求めます。
また、社会経験や専門の学識があっても、それだけで子供の教育ができるということにはなりません。例えば、大学の教授が小学生に教えることがどんなに困難なことか、まるで違うのです。それは、教育という営みが、子供の発達段階に即して知識と人格を形成していくものであるからです。
さらに、学校は教育の専門家としての教師が集団的、組織的に教育を進める場であり、教師は子供の学習による発達を保障することを職責としています。父母は、子供の教育を、専門の知識ばかりではなく、子供の人格形成にかかわる教育者としての教師に信託をしているのです。このような専門的教育と経験を経ていない社会人に教職という崇高な仕事を安易に任せることは、学校教育の使命を軽視したものと言わざるを得ません。はっきりとお答えください。(拍手)
第三の問題は、大学での免許状取得に必要な専門教育科目の修得単位数を、三から十一単位も大幅に引き上げていることです。
現行の単位数でさえ詰め込みとの批判があり、これ以上増加させられれば、時間に追われて、ゆとりを持って資格を取ることなど困難になるでしょう。大学で教師の資格を取る場合は、決められた単位だけ修得すればよいのではなく、専門の学問分野についての学術的基礎を培い、個性豊かな人間的資質を磨くことが不可欠であって、これを欠くなら、形式的に資格要件を満たせばよいという傾向や、教育系大学以外での免許取得が困難となる事態を招来しかねません。何よりも問題なのは、職業訓練的性格が濃くなり、狭い教育技術や方法の枠内に教師養成教育を閉じ込める、すなわち、かつての師範学校型養成につながることです。これらの点についてどのように考えているのか、お答えいただきたい。
さらに、この単位の増加は、大学の自主性を侵害することにもなります。どのような教職専門科目を開講するかということは、各大学が教育に関する基礎科学の研究を土台としながら、自主的に決めるべき事柄です。大学が自主的で個性的なカリキュラムを組めるように、必要な人的、物的条件を整えることこそ今日求められているのではないでしょうか。明確な答弁をお願いいたします。
以上に加えて、一年の短期養成コースである教職特別課程の設置を初め、全く安易に教師免許取得の例外措置を拡大していることなど、多くの問題を抱えています。これらは資質向上に逆行するのではありませんか。お答えください。
まさに今回の法案は、戦後の憲法と教育基本法に基づいた民主的な教師養成と免許制度を抜本的に改悪をし、初任者研修制度と並んで、教師の国家統制を一段と強化する反動的なものにほかなりません。日本共産党・革新共同は、本法案の撤回を断固要求をし、民主的な原則に立った教師養成の充実、国民のための教育の実現に向けて全力を挙げるとともに、今日の国会に課せられた最大課題であるリクルート等疑惑の全容解明と、公約違反の消費税法案阻止のために闘う決意を表明をして、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/26
-
027・竹下登
○内閣総理大臣(竹下登君) まず、臨教審そのものは、昭和五十九年八月にできましてから、まさに国民各界各層からの広い意見を求めて、社会の変化や文化の進展に対応する教育の実現を期して、三年間にわたって精力的な審議が行われて、四次にわたる答申を提出して、昨年八月その任務を終了したものであります。これらの答申に示された改革提言は、今後の教育改革の基本方針を示した貴重なものである、これをまず高く評価するものであります。このたびの法案は、今次教育改革を進める上で極めて重要なものであるという考えの上に立っております。
なお、リクルート問題につきましては、先ほどお答えいたしましたように、証取法上の問題、税制上の問題、刑事上の問題、政治道義そのものの問題、そうした側面がございますが、私自身を含め、国民の不信につながることのないよう一層身を引き締めて対応すべき課題であると思っております。
さて、現行の教員養成の問題等についてお触れになりました。
現行の教員養成制度におきましては、いわゆる開放制の制度をとって、大学において教員養成を行ってきておる、そのとおりであります。大学においては、日本国憲法、教育基本法、これらに従いまして教員として必要な教科・教職に関する科目などを履修させ、教員にふさわしい人材を養成してきておる、このように考えておるところでございます。したがって、今後とも、いわゆる開放制の問題については、これは考え方を引き続き持っておるということは申すまでもないことであります。
また、私の教職経験についてお触れになりましたが、先輩、同僚の師範学校卒業の先生方には今でも尊敬しておる先生がたくさんいらっしゃいます。(拍手)
〔国務大臣中島源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/27
-
028・中島源太郎
○国務大臣(中島源太郎君) 藤原議員から、これも七項目に大別できる御質問をいただいておりますので、一々質問部分は繰り返しません。大要をお答えをいたしたいと存じます。
今回の改正案は、免許状の種類を三種類とすることによりまして、幅広い範囲から人材を求めたい、こういうことでございます。したがって、免許状の三種類化は、四十六年の中央教育審議会答申の教員の処遇改善に対する提言、これを念頭に置いたものではございません。また、御指摘のような上命下服の教師管理を強めるものではもちろんございません。
次に、社会人活用と免許基準についてでございますが、今回の改正案では、免許基準の引き上げ等によりまして、養成教育において教員としての専門性の向上を図るとともに、特別免許状の創設等によりまして学校教育への社会人の活用を進めることとしておるわけであります。教職に広く人材を求めることは、教育界の活性化を促しますし、教員の資質能力の向上につながるものと考えておるわけでございます。
また、臨時教員についてお尋ねでございますが、臨時教員の任用につきましては、各教育委員会におきまして、産休あるいは育児休業や欠員の補充、教職員定数の変動への弾力的対応等、それぞれの実情に応じまして行っているものでありまして、文部省としては、各都道府県におきますその実情に応じた人事管理上の適切な運用、判断に期待を申し上げたい、こう考えます。
次に、社会人の活用が学校教育の使命を軽視してはいないかということでありますが、学校教育の多様化に対応いたしまして、一般社会でその分野の専門的知識、技能等を身につけた者を充てることは有意義であることはもちろんでありまして、教育界の活性化を図ることができる、そういうことを考慮した措置でございます。
次に、免許基準に関してお尋ねでございます。
今回の改正案では、開放制の原則をもちろん維持しながら、学校教育の実際に即した専門的知識や実践的な指導力を養うため、免許状の取得のために修得すべき単位数を引き上げたわけでございます。この単位数の引き上げは、一般大学とかかわりの大きい中学校あるいは高等学校教諭の一種免許状の場合は比較的少ない部分であります。一般大学においても十分対応が可能でありますし、御指摘のようなことにはならないと考えております。
また、大学が自主的、個性的なカリキュラムを組めるような条件の整備を図ることはもちろん大切でございますが、しかし、学校教育の状況に応じて教員の専門性を高めることも、これまた極めて重要であると考えております。
最後に、教職特別課程と資質向上についてお尋ねでございました。
改正案では、教職特別課程の設置あるいは特別免許状の創設等の改善を図っておりますが、再三申し上げますように、これらはいずれもすぐれた社会人等を学校教育へ登用するための措置でございます。例えば教職特別課程の設置につきましても、文部大臣の認定を受けることといたしますなど、一定の手続要件を設けているところでございまして、御指摘のような問題はないと考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/28
-
029・原健三郎
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/29
-
030・原健三郎
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111305254X01319881020/30
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。