1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成元年十一月二十七日(月曜日)
午前十時二分開議
出席委員
委員長 丹羽 雄哉君
理事 伊吹 文明君 理事 高橋 辰夫君
理事 野呂 昭彦君 理事 畑 英次郎君
理事 粟山 明君 理事 池端 清一君
理事 貝沼 次郎君
稲垣 実男君 小沢 辰男君
古賀 誠君 笹川 堯君
高橋 一郎君 津島 雄二君
大原 亨君 金子 みつ君
川俣健二郎君 多賀谷真稔君
渡部 行雄君 新井 彬之君
吉井 光照君 塚田 延充君
児玉 健次君 大橋 敏雄君
出席公述人
日本労働組合総
連合会生活福祉
局長 五十嵐 清君
慶應義塾大学商
学部教授 庭田 範秋君
中央大学経済学
部教授 丸尾 直美君
日鉄溶接工業株
式会社社長 小林 清君
上智大学文学部
助教授 山崎 泰彦君
年金評論家 橋本 司郎君
委員外の出席者
社会労働委員会
調査室長 滝口 敦君
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委員の異動
十一月二十七日
辞任 補欠選任
河野 正君 多賀谷真稔君
田邊 誠君 金子 みつ君
同日
辞任 補欠選任
金子 みつ君 田邊 誠君
多賀谷真稔君 河野 正君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百十四回国会閣法第六六号)
被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案(内閣提出、第百十四回国会閣法第七七号)
平成元年度における国民年金法等の年金の額等の改定の特例に関する法律案(大出俊君外二名提出、第百十四回国会衆法第一〇号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/0
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001・丹羽雄哉
○丹羽委員長 これより会議を開きます。
第百十四回国会、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案及び第百十四回国会、大出俊君外二名提出、平成元年度における国民年金法等の年金の額等の改定の特例に関する法律案の各案について公聴会を行います。
この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。
ただいま議題となりました三法律案に対する御意見を拝聴し、各案審査の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げます。
なお、御意見を承る順序といたしましては、まず五十嵐公述人、次に庭田公述人、次に丸尾公述人の順序で、お一人およそ十五分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えをお願いいたしたいと存じます。
それでは、五十嵐公述人にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/1
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002・五十嵐清
○五十嵐公述人 おはようございます。御紹介をいただきました五十嵐と申します。
私は、この二十一日に官公労組との統一が成りました日本労働組合総連合会の立場から、私個人の意見も踏まえまして御意見を申し述べてみたいというふうに思います。
結論から申し上げますと、本委員会に継続審議をされております国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案については、私は反対の立場を表明をさせていただきます。また、平成元年度における国民年金法等の年金の額等の改定の特例に関する法律案については、賛成の立場から意見を申し述べたいというふうに思います。
まず、国民年金法等の一部を改正する法律案についてでございますけれども、この内容については、不十分ながらも給付水準の改善が行われ、さらには物価自動スライド制の導入、年金積立金自主運用の拡大、年金支払い回数の改善など、評価できる面があります。しかし一方で、保険料の大幅な引き上げ、支給開始年齢の六十五歳への引き上げなど、これらが盛り込まれておりまして、勤労者の立場から申し上げますと到底容認できるものではございません。
また、被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案については、一九九五年の公的年金一元化に向けた地ならしを目的としながらも、その内容は鉄道共済年金の財政破綻救済の何物でもありません。加えて、この中では厚生年金から多額の拠出を行うものであって、これまた我々の立場から申し上げますと到底容認できるものではないわけであります。
一方、平成元年度における国民年金法等の年金の額等の改定の特例に関する法律案については、これまでの制度の中に組み込まれているものでありまして、当然これは実施されるべきものであると考えておりますから、この法律案については賛成をするものであります。特に、この四月から消費税が実施されていることなどを考えていきますと、この物価スライドについては早急に行われるべきものであるというふうに思います。
それでは、法案に対しまして反対する理由について若干申し述べさせていただきたいと思います。
まず第一の、支給開始年齢六十五歳への繰り延べであります。
私どもは、年金の支給開始年齢と定年年齢は結合することが基本でありまして、これを踏まえて年金の支給開始年齢は設定されるべきものであると考えます。現在、我が国の企業におきまして定年年齢を六十歳以上としておりますのは六一・九%。御存じのとおり、これは労働省の雇用管理調査、八九年度の調査で明らかになっているわけであります。また、今後六十歳以上に改定することを既に決定している企業及び改定予定のある企業を含めますと、七九・三%という数字が挙がっております。しかし、この約八割近い企業が六十歳定年を予定あるいは改定を決定しているといいながらも、そこまでいきますのはまだまだ相当長い時間がかかるということを私どもは認識をしているわけであります。
一方、五十五歳以下の定年年齢の企業を見てみますと、二一・二%がいまだ五十五歳以下であります。五十五から五十九歳までで一七%でありますので、六十歳定年制に到達をしていない企業の数は三八・二%あります。ほぼ四割がまだ六十歳定年に到達をしてないという実態を厳しく認識をしていただきたいと思うわけであります。
特に、男子で六十歳の支給開始年齢になりましたのは昭和二十九年の改正であります。昭和二十九年改正から今日まで三十五年間経過をしておりますが、六十歳定年制をしいた企業は先ほど言いましたような実態にあるわけであります。さらに加えて、高齢者の雇用実態を見ますと、五十五歳以上の求人倍率はがた減りになっているのは既に先生方御存じのとおりでありまして、そう詳しく申し上げる必要はないかと思います。今日、これだけ景気がよくなりまして、人手不足だと言われながらも、依然として高齢者の雇用の実態は厳しいという現実も十分御理解をちょうだいしたいというふうに思います。
ですから、こうした実態を無視して、さらには高齢者雇用の将来のあるべきビジョンといいますか、そういうものも明らかにされない中で、財政上の不安のみをあおり立てて、支給開始年齢の繰り延べと保険料を段階的に引き上げるという内容については、私どもは到底認めるわけにはいかないというのが私の主張であります。
第二に、保険料の大幅な引き上げであります。
厚生年金では、御存じのとおり、男子が二・二%、女子では二・三五%引き上げ、そして、既に国民年金では八千円に引き上げられております。厚年の男子二・二%の引き上げは労使折半ではありますけれども、私ども連合の中で試算をした段階では、簡単に申し上げますと、標準報酬月額三十万円で年間約四万円弱の負担になるわけであります。
今年度の賃上げ五・一%の水準、そして物価、これは五月段階で試算をしたものでありますが、東京都区部の物価上昇率が当時三・三%でありました。今日若干それは低下をしておりますが、五月段階での数字を申し上げますと、保険料が二・二%引き上げられた段階で実質可処分所得はどうなるかというものを所得階層別に見たものであります。それで御紹介申し上げますと、年収四百万円で実質上昇率は二・六一%に低下をいたします。また、年収五百万円で二・三三%、年収六百万円で一・七三%と激減をする。これだけ、私どもの賃上げをかち取っても、物価の上昇、そして今回の保険料の引き上げによって実質可処分所得の上昇率が目減りをするということであります。
何よりも私どもが容認できませんのは、消費税を導入する段階で、政府の方々は高齢化社会に対応するためにということをおっしゃいました。その舌の根も乾かないうちにこの保険料の大幅な引き上げというものを打ち出されてきたわけでありまして、そういう立場から申し上げましても、どうしても私どもは納得できないというのが二つ目の理由であります。
第三に、いわゆる制度間財政調整であります。
政府は、被用者年金の一元化の中間時点における地ならし的措置というような態度を明らかにしているわけでありますけれども、私どもから申し上げますと、一元化の姿とは一体どういうものであるのか、それについてもいまだ明確ではありません。
そういう点から考えますと、今回のこの法律案の目的とするものは、財政破綻に陥った鉄道共済年金の救済以外の何物でもないというふうに私どもはとらえているわけであります。来年度以降毎年三千億円にも上る財源不足を、自助努力によって一千五百五十億円は賄うものの、残り一千四百五十億円のほとんどを厚生年金から拠出をして補てんをしようとするものでありまして、厚生年金加入者の立場から申し上げますと断じて認めるわけにはいきません。
鉄道共済年金の財政破綻問題は古くから指摘されていたものでありまして、さらには、旧国鉄時代の国の施策あるいは交通産業政策のあり方など、その政策努力の欠陥に負うところが大きいというふうに私ども考えます。ですから、その責任をあいまいにしたままで、公的制度の一つであるからといって厚生年金にその責任を押しつけることは、私どもの立場から申し上げまして、理解はできませんし我慢のならないところであります。
したがって、まず第一に求められるべきものは、国の責任を明らかにしてほしいということであります。と同時に、さらにつけ加えるならば、他人の懐に手を入れるようなことはやめていただきたいということであります。再度強調しておきたいと思いますが、この鉄道共済救済問題については国の責任というものを明確にしてほしいという要求を申し上げておきたいというふうに思います。
以上申し上げましたことから、今回提案されている政府の国民年金法等の一部を改正する法律案と被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法案は、当面対処すべき問題と中長期の課題が同時に盛り込まれているものと考えますので、内容そのものも、サラリーマンの立場からいえば、改善よりもむしろ改悪となるものが多いというふうにとらえております。
そのため、政府提案の法案は潔くここで撤回していただきまして、改めて、老後生活のよりどころであります年金制度を国民から信頼されるものとするために、広く国民の英知を集めて合意形成を図るために審議をやり直していただきたいというふうに考えるわけであります。これはもちろん国会での審議を拘束するものではございませんけれども、むしろ幅広く国民の英知を集めるというような立場から、国会以前の論議を巻き起こしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
このように、国民の信頼にこたえる年金制度を確立するため、公的年金制度の一元化に向けて、まだ時間はあるわけでございますので、給付と負担の関係、年金財政計画、一元化の具体的な姿とそのプロセス、高齢者雇用のあるべきビジョン、その具体的な施策などについて明らかにするため、私どもは、年金改革国民協議会(仮称)、こういうものを設置をしていただきまして、先ほども申し上げましたように、幅広く国民各層からの意見を聞いて、二、三年じっくり時間をかけて論議をして、そして、国民的な合意を図っていただくよう御提言を申し上げておきたいと思います。
特に、年金財政のあり方については、年金数理委員会というものをひとつ設けていただきまして、年金業務、財政収支状況、積立金の管理運用などに当たらせるよう御提案を申し上げ、よろしく御審議をいただきますようにお願いを申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/2
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003・丹羽雄哉
○丹羽委員長 ありがとうございました。
次に、庭田公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/3
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004・庭田範秋
○庭田公述人 御指名をいただきました庭田と申します。
私は、現在、年金の学理というものを研究する学者の端くれでございまして、これから述べる私の意見というのは年金学理に基づいた意見ということになるわけであります。別に政治的な配慮とかそういうようなものは一切入っておりません。
まず、五十嵐さんが述べましたように、今回の政府提案の年金改正というのには随分と被保険者あるいは一般国民にとりまして有利な点、つまり喜ばしいと言ってもよろしいような点が多々あろうかと思います。重複いたすようでございますが、年金額の特例スライド、年金の完全自動物価スライド制の導入、年金額の改善、職能型国民年金基金、地域型国民年金基金の創設、発足、それから二十歳以上の学生に国民年金当然加入、言い方をかえますと、国年強制適用、これらもことごとく被保険者には有利に作用するわけであります。
さらに加えますと、在職老齢厚生年金の支給率の刻みを現行三段階から五段階にする、これなども随分喜ぶ勤労者が多いのではないかと思います。また、年金支払い回数の増加、四回を六回にいたします。これも年金受給者はきっと喜ぶことだろうと思います。さらに申しますと、厚生年金基金及び同連合会の積立金の運用方法の拡大、自家運用の導入、こういう点もまたサラリーマンにとっては有利な点かと思います。
これら多くの有利な点を持ちながら、現在、巷間におきましてとかくの批評が出ているというのは、かかって支給開始年齢の引き上げという点であろうかと思います。まあ世間の声をよく聞きますと、定年がまだ六十歳になっていない現在、支給開始年齢を六十五歳に引き上げる、これはどういうことだ、勤労者のこの間の生活をどうしてくれる、このような言い方が多々あるわけでございますが、これは正確を欠いていると思います。
現在、定年はことごとくが六十歳になっているわけではありません。しかも現在は厚生年金の支給開始は六十歳であります。ですから、現在定年が六十歳になっていないから六十五歳は反対というのは、これは言い方の一つのあやでありまして、六十五歳になるのは、平成十年から男性は六十一歳、それから二十二年で六十五歳、女性に至りましては、十五年から六十一歳、二十七年から六十五歳、こういうわけであります。ですから、現在厚生年金は六十歳から支給されておる、こういうわけでありまして、今すぐ六十五になるがごとき印象の発言というのはやや正確を欠いているものと私は考えられます。しかも労働力の現在の状況そのほかもろもろの点を考えますと、平成二十二年のころ、女性においては二十七年のころにはかれこれ定年は六十歳になるものと、大方このように考えても必ずしも事態を誤ってとらえているということはできないのではないかと思うわけであります。
なお、六十五歳支給にいたしますと若者は損をする、こういうわけで、場合によっては若者は今後大損をして、公的年金への信頼を失うがごとき発言をいたすところもございますが、実は平成二十二年のころには大方平均寿命も五年ほど延びまして、同時に平均余命も五年ほど延びまして、現在の人が六十から受け取って亡くなるまでの年金受給期間と、平成二十二年ころの若者が受け取って亡くなるまでの総期間というのはかれこれ一致いたします。したがいまして、受け取り期間においては老若差はほとんどなくなるわけでありまして、余り損だ損だと言って歩くのも私はどうかと思うわけであります。
かつまた、六十五歳になるということが実は逆に一つのきっかけになりまして、定年延長への動きというものをさらに活発にするのではなかろうか。定年が延長されたから六十五歳にするというのも考えられますけれども、六十五歳に将来なるということを確認いたした上で定年延長の労使にわたる動き、努力というものが一段と加熱するのではなかろうか、このような逆の考え方だってまんざら理由がないわけではありませんので、この点のひとつ評価というものもあってよろしいのではないかと思うわけであります。
さらにまだいろいろございます。もし今回六十五歳になることを外してしまう、あるいは保険料の引き上げというのを抑えてしまうということになるとどういうことになるかといいますと、先般、昭和六十年の法改正で発足いたしました年金数理部会、この計算というものを実は否定することになります。ですから、年金数理部会も立ち会いまして年金の数理を正確に行った、それを否定いたしてしまいますと、何のために前回改正で年金数理部会の設置並びに独立を主張したのか、それの出した計算を否定してしまうくらいなら、もともとなぜあの段階で年金数理の厳正を求めてこれに大きな権威を与えよう、そういう動きをしたのかという点で逆行をいたしてしまいます。ですから、そういう意味において、正確な年金数理をもとにしてある程度まで諸般の事情も考慮しながら出された今回の改正案というものはやはりのむべきではなかろうか、このように私は考えるわけであります。
さらにまた、もろもろの問題が出てまいります。と申しますのは、今回、一方におきましては六十五歳案というのが出ておりながら、他方におきましては国鉄年金といいますか鉄道年金の破綻、これの救済をめぐって相当厳しい批判というものが出ております。この国鉄の年金が財政窮迫を来したのはなぜか、こう考えますと、年金数理の無視だろう、このように私は思います。片一方において、年金数理というものを軽視して財政窮迫に陥った鉄道年金のあり方を批判しながら、同時に、全く同じように今度は年金数理をもとにいたしまして算出されたもろもろの現在の改正案というものを手直しするということは、これは大変な矛盾ではなかろうか。国鉄問題を厳しく批判する人は、同時に、現在の年金の正しいあり方に向けての改正、特に数理計算に基づいて出た結論、こういうものにつきましてはこれを謙虚に尊重すべきではなかろうか、このように私は考えるわけであります。これらが年金学というものの一つの筋ではなかろうか、こう私は考えております。
ところで、今度は改正の痛い点でありますが、それは別に置いておいて、インフレスライドの特例措置その他年金給付の引き上げ、こちらの方を先にやったらどうだ、この案でございますが、これはどうも年金学者としては大変問題が多いということを言わざるを得ません。年金というのは、実は一つのお金の流れの制度であります。入ってくる方があって途中で運用をして、そして年金という形で出ていく。この間のお金の管理運用、資金の整理統合、こういったようなことを行うのが年金という制度であります。したがいまして、お金の入ってくる方はしばらくおいて、出る方だけ改善するという発想は実は年金学の中にはないわけであります。いろいろ政治的な判断その他はあろうかとは思いますが、学者の立場からいたしますと、年金は貨幣操作の一つの制度であり、組織である、こういう見地に立ちますと、入る方と出る方、その他ばらばらにして一つ一つの問題を議していくというのは、いずれは制度をゆがめるであろう、このように考えるわけであります。
そして、そのようなことと、例えば一応現在被保険者に有利に見えるような措置をとることが、果たして本当の意味で被保険者のためになるかどうかということも問題であります。と申しますのは、六十五歳にいたしませんといずれは千分の三百十五の掛金になる、こういうことであります。半分事業主が負ってくれるといたしましても、一割をはるかに超える負担というものが後代の若者の肩にかかるわけであります。そうなりますと、さすがに若者もやる気をなくしてくるでありましょう。もし若者がやる気をなくしたらどうなるか。生産性は落ちます。そして、社会に立派な品質の商品というようなものがだんだんと不足するような事態も考えられるわけであります。
ところで、年金というのは、年金証書をもとにして受け取るお金にすぎません。ですから、受給者は生産の現場におりません。したがって、物が不足したり物の値が上がって一番泣くのは年金受給者であります。そして、そういう事態は若者が働く気をなくしたときに生ずるわけであります。したがいまして、将来の若者の生産意欲をどうしても高めておかなければならない。結局はそれが老人のためにもなり、年金受給者のためにもなる。こう考えますと、やはりこの際、何がしか高齢者が譲りましても、なお年金改正は行っておくべきであろう、このように考えるわけであります。有利な点だけを拾っていって、さしあたって受給者のためになる、国民のためになるかもしれませんが、長期のことを考えますと、多分その結果泣くのは生産の現場にいない高齢者になるであろう、こう考えますと、私はやはりここは正しい年金数理のもとにはじき出された諸般の改正というものを耐えなければならない、このように考えるわけであります。
そして、もう一つ大きな問題といたしましては、被用者年金制度の財政調整というわけであります。これは当面の措置でありまして、いずれは公的年金制度一元化ということに向けまして同一給付・同一保険料率の新被用者年金制度を創設する、こういうことであります。この新被用者年金制度は、言いかえますと第二の基礎年金のようなものと性格づけることができると思います。
ところで、そうは申しますが、具体的には確かに鉄道年金の救済というようなことが大きな機能の一つになっております。ここで、どうも鉄道年金というものが過去において少し手抜かりがあった、年金再建努力において批判を受けるべき点があった、これはどうも否定のしようがないんじゃないかと思いますが、なおかつ私は、この被用者年金制度の財政調整、そして、これを通じまして将来できるであろう同一給付・同一保険料率の新被用者年金制度を第二の基礎年金と考えました場合、やむを得ざる賛成ということになるわけであります。
もともと六十年の法改正のときに基礎年金ができたわけであります。このときは、国民年金と厚生年金の間で基礎年金を通じまして財政のやりくりがなされた、こういうことであります。それに比べますと、同じ被用者年金同士の間でお金の流れがある方がまだ合理性は強いわけであります。ですから、六十年の法改正のときの基礎年金の導入、これを賛成したならば、それよりもなお合理性がある、ある程度はそれよりは強いと言われます今回の第二基礎年金とでもいわれます財政調整、具体的にはさしあたって鉄道年金とたばこ年金の救済にはなりますけれども、なおこれはやむを得ず賛成すべき項目か、このように考えるわけであります。
ただ私は、やむを得ずとこう申しましたけれども、積極的な意見もここには少しは持っております。と申しますのは、年金というのは結局はお金の流れの制度である。したがって、一番必要とされるのは信頼であります。ところで、JR年金やたばこ年金が万一破綻をして崩壊するようなことでもあったら、ただでさえ、現在若年層はとかく公的年金に疑義を持ち出している昨今、一体どうなるであろうか。恐らく連鎖全面崩壊になるであろう、このように考えるわけであります。
私は、この辺のことを例えまして、例えばJR年金、鉄道年金を助けるのは隣の火事に水をかけに行くようなものだ。確かに、隣の家が燃えたからといって、さしあたって私の家にはどうということはありません。しかしながら、隣の家のもらい火で私の家が燃えてしまうなら消しに行く以外ありません。そして、鉄道年金やたばこ年金が財政の点で行き詰まってしまうということは、実は私たちの入っている厚生年金も信頼を失って大きな被害をこうむる、こう考えますと、やむを得ず助けに行く以外ないんじゃなかろうか、こう考えるわけであります。第二基礎年金という意味においては第一基礎年金よりは合理性は強い、そして、年金全体の信頼の維持という点を考えますと、やむを得ずこの措置には賛成をせざるを得ない、こういうような意見を持っております。
そして、ここへ来るまでの間に述べましたけれども、例えば、インフレスライド特例措置で給付の改善だけはこの際とっておこう、そして、将来六十五歳はもう一度五年後に考えればよろしいのではないか、こういう案でございますけれども、とにかく老後生活に向けて我々は急いで生活設計をしなければなりません。五年後になりましてもう一度出されても、時間の余裕がない、個人的な自助努力を行う余裕のない人がいっぱい出てまいると思います。やはりここは、早目に提案をして、早目に路線を明示して、そして、至らない点は自助努力でも何でもひとつ早目に頑張ってほしい、こういうのが親切ではなかろうか、このように考えるわけであります。これが私の大方の意見でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/4
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005・丹羽雄哉
○丹羽委員長 ありがとうございました。
次に、丸尾公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/5
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006・丸尾直美
○丸尾公述人 経済政策論をやっております丸尾です。少し広い観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、今回の改正によりまして物価スライドと五年ごとの年金給付水準の実質調整を早急に行えるようにするためにとられる措置は、物価スライドの自動化も含めて大いに結構なことであると思います。ただし、五年ごとの年金の実質調整による水準の決定根拠に関しては若干の疑問があります。法案自体に書いてあるわけではないですけれども、疑問があります。
一つは、制度的基礎年金が五年前に、一九八四年度価格で五万円水準プラス物価スライド分であり、今回もし十月からの改正で五万五千円ということになりますと、一人当たり国民所得でかなりの切り下げになる。一九八四年度、昭和五十九年度で一人当たり国民所得の三〇・八%であったのが、今回の改正によりまして基礎年金は恐らく二七%前後になるわけです。これは高齢者の実質消費水準を基準にしていくとこうなるようですけれども、こういう形でだんだんやっていきますと、基礎年金の給付率は制度的なものもだんだんと下がっていくことになりますから、この際、果たしてそういう方針でいいのか、はっきりさせておくことが必要であると思います。
それから、被用者年金の場合、実質調整と物価スライドで、六十五歳四十年加入で六九%の給付率という方針は、形の上ではそれに近く維持するようでありますが、しかし、基礎年金の方が給付率が下がっていきますと、全体として六九%を維持するためには二階部分を相対的に大きくしていかなければならないということになるわけです。その調整のために標準報酬率自体がちょっと、標準報酬の現金給与に対する比率自体が下がる等々で調整がされていて、結果的にはそうなっていますけれども、どうもその辺のところが明快でないように思います。いずれにしましても、今回五年ごとの改正ですからこの機会に、法案の中でないとしましても、実質改定の方の基準——物価スライドは結構です、自動スライドで結構ですが、その実質改定の基準を明確にしていただきたいと思います。今までやっているように実質的に少しずつ切り下げていけば、政府が想定しているような保険料率にはならないと思います。これは後でちょっと申します。
それから、基礎年金の支給額に関しましては、連合の総合福祉ビジョンで出してありますように単身者の場合に二割増しにするというような案、そういうことについてももう少し考慮があっていいのではないかと思います。恐らく二割増しにしましても、実際の年金支給額の総額は六%前後の増加で済むと思います。また、仮に見直しの上で消費税を存続するということでありますれば、この際に国民年金の最低水準を上げるべきだという連合の福祉ビジョンなどの考えも参考にされていいのではないかと思います。
厚生大臣は、ここの委員会で日本の基礎年金はスウェーデンなどと比べても遜色がないといって数字を挙げておられますけれども、日本の場合は四十年加入で支給されることになる羊頭狗肉の基礎年金であり、他方の方は実際に支給される年金であるわけですから、この比較はまことに不適切であるわけです。そういうことを百も承知でそういう数字を出されるとすれば、これはちょっと問題ですし、あるいは知らないでいたらこれはまた問題であります。これからこういう比較はされないようにしていただきたいと思います。
それから、基礎的な水準を制度的水準に近づけるというやり方は、確かにさしあたり若干お金がかかりますけれども、しかし、長期的には年金は成熟していきますから、そのための支出はずっと高まっていくということではなくて、将来の年金財政にはそれほど大きな負担にはならないわけですから、十分考慮すべきではないか。
私は、さきに国会の公聴会で、消費税をどうしても見直して存続するということであれば、その見返りとして、あるいは社会契約的交換として、基礎年金の上記のような改善あるいは老人医療の公費負担比の増加、寝たきりや重度障害者の要介護老人への政策の強化などが適切ではないかと申しましたけれども、その考えをもう一度ここで繰り返させていただきます。
〔委員長退席、粟山委員長代理着席〕
それから、被用者年金の支給開始年齢の引き上げでございますが、二十一世紀に日本の人口高齢化率が二十数%、二四%近くになるということ等を考えますと、長期的には被用者年金の支給開始年齢引き上げは避けられないと私も考えています。しかし、高年者の雇用が容易でなく、有効求人倍率が全体で一・三のとき、高年者に関しましてはその十分の一程度だというような状況や、五十嵐さんのお話にもありました定年の現状等々を考えますと、少なくとも将来のビジョンをはっきりさせて、その点での不安感をなくするような、そういう制度的保障をした上で年金支給開始年齢を引き上げるということが好ましいのではないかと思います。
六十歳と六十五歳との差というのは、非常に将来の年金財政負担に大きな差をもたらすように考えられますけれども、部分年金・部分就労をうまい形で導入すれば、必ずしも六十五歳支給で部分年金・部分就労を行うのでなくても、六十歳支給で大部分の人が部分年金あるいは部分就労をするように誘導するようなうまい制度をつくれば、そして、その人たちは保険料を払うというようなことにすれば、見かけ、ちょっと考えるよりは将来の負担差はそれほど大きくないと思いますから、そういう部分年金・部分就労をいずれにしても上手に導入することが必要である。
在職老齢年金制度は一見部分年金・部分就労と似ていますけれども、数式的に書きましても、部分年金・部分就労の方は受け取る賃金プラス従前賃金と新たな賃金との差掛ける部分年金給付率という形であり、在職年金の方はまず年金があり、それに応じて場合によっては雇用調整するというような形が生じたりしますし、同一労働同一賃金、労働時間の同じ人の労働には同一賃金を払うべきだという考えとか、あるいは刻みを小さくすることによって多少は改善できるとしても、基本的な点で矛盾が残りますから、この辺の六十から六十五の間の制度に関しましては、単に刻みを小さくするということ、これ自体はそうでないよりは結構なことですけれども、それはやった方がいいと思いますけれども、それだけで解決できる問題ではない、もう少し工夫すべきではないかと思います。
そして、連合のアンケート調査によりますと、六五%以上の人が六十五歳くらいまでは働きたいと言っています。男子では七〇%以上の人が働きたいと言っているわけです。そういう人々の希望をうまく生かしてあげれば、形の上では六十歳から年金をもらえるということになりましても、事実上は六十五歳年金支給に限りなく近づけるような工夫ができるわけです。そういう方法も含めまして将来の年金支給と雇用、そのつなぎ、六十、六十五歳のつなぎの方法を考えるべきであろう。また、この財源に関しましても、年金の社会保険料の上積みになると思いますが、雇用保険の方との財源の持ち寄りということも考え得るのではないかと思います。官庁を超えた協力というのは非常に難しいとのことですけれども、しかし、片方で高年者の失業を非常に減らすということになりますれば、そういうことも十分考えていいのではないかと思います。スウェーデンの場合も、当初は高齢者の失業対策として出発して部分年金・部分就労になっていった経過もありますので、そういう点も考慮すべきではないかと思います。
それから、国民年金の二階化の方向も基本的には賛成です。保険料引き上げに関しましても、これは段階的に引き上げていくことは不可避であり、それ自体を反対するものではありません。ただ、年金支給開始年齢と保険料引き上げというものを国民に納得的に行うためには、年金の給付と負担との関係、それから今日及び将来の年金財政についてのしっかりとした納得的な見通しがあるということが必要であると思います。
確かに庭田先生おっしゃられましたように、年金数理部会で計算された計算というのは尊重さるべきであると思いますが、単純に常識的に考えましても、例えば基礎年金は一人当たり国民所得の三〇%給付する、六十五歳に全部支給するとしましても二〇二〇年に七%くらい、しかし先ほどのように基礎年金の水準というのは三〇%から既に二七になり、五年ごとに下がっていくということになりますと、これよりはるかに少なくなる。それからまた、今の日本の基礎年金制度のやり方ですと満額をもらう人がせいぜい八割程度にとどまるでしょうから、そういうことを考えますと、障害年金を入れましても基礎年金だけでは国民所得の七%をかなり下回る。
そして、被用者年金というのは、二階部分は基礎年金の一・五二四倍ですか、その程度ですし、これを受給する人は政府見通しでは基礎年金受給者の四割足らずですけれども、もっと大きく見ましても、全体総合しまして、年金の対国民所得比はせいぜい一一%か、障害年金等いろいろ全部入れましても多くても一二%ぐらいになると思います。保険料に換算して計算しましても、どうも政府が出している数字は出てこない。特に就業構造の変化等々を考慮に入れて計算しますと、あの数字は出てこないような気がします。
政府の計算した方式、あれはあれで一つの方式ですけれども、二〇二〇年の将来、ピーク時の予測をするには別の方法もあるわけでして、必ずしも絶対視する必要はないと思うのです。もう少しその点でのいろいろな専門家の意見を聞いた、納得のいく数字を出すということが、年金の将来に向かって保険料の引き上げあるいは年金の支給開始年齢を六十五歳までに上げていく、そういう問題についての国民的合意を得るためには必要ではなかろうかと思います。
今回の改正におきましても、以上のような点を、今回の法案の中にそのまま織り込むことはできないとしましても、将来そういう点についての検討をして、そういう点を考慮に入れた改正をしていくというような形の改正にしておいていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/6
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007・粟山明
○粟山委員長代理 ありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/7
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008・粟山明
○粟山委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑英次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/8
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009・畑英次郎
○畑委員 自由民主党を代表いたしまして、本日の公述人の先生方に御質問をさせていただきます。
まずもって、公述人の三先生に対しまして、本日は、それぞれ御意見を賜りまして心から御礼を申し上げる次第でございます。
先ほど庭田先生のお話を伺いながら、ざっくばらんに申し上げれば、我が意を得たりといいますか、まことに私どもの考えております基本的な認識に沿った貴重な御意見を賜ったわけでございますが、私どもの立場におきましては、とりわけ年金制度、年金問題、こういった問題につきましてはあくまでも将来に責任を持つ、これが欠くことのできない大切な要素ではないかというように考えますし、なおまた、一般的な認識としまして、働き手、若い方々が激減しつつある、幸い国民各位の御努力によって長寿社会の実現が今日大きく進みつつある、そうついう人口構造の変化という中にございまして、将来見通しに立った何らかの改善を絶えずやっていかなくてはならない、その内容は、場合と時とによりましては国民皆様方にいささか耳ざわりであり、あるいはまた、何らかの問題を含む内容があるケースもあり得る、そしてまた、今日の国民の皆さん方も、すべていいことずくめで物事が今後とも保障されるというような認識は当然持っていらっしゃらない、こういうように私は考えるわけでございます。
さような意味合いにおきまして、自民党なおまた私どもとしましては、今日ただいまやりたくはなくてもやっておかなければならないことはやっておく、こういうようなスタンスを持ってこれからも対応していかなくてはならぬというように考えるわけでございます。
そういう中にございまして、鉄道年金の問題について五十嵐公述人のお立場からいろいろ、これは救済にほかならぬ考え方ではないかというような問題もあったわけでございますが、私は、いわゆる同一給付・同一保険料という意味合いでの一元化に向かっての制度間調整である、これは言うまでもないことでございますけれども、今日現実問題そういう中にございまして、この鉄道共済年金については救済という要素、あるいは年金制度の国民的な信用といいますものをこれから先も維持していかなくてはならない、さような意味合いにおける今回の制度間調整法案といいますものは一日も早く通しまして、関係者の、とりわけ鉄道年金関係者の方々の不安を除去しなければならない、そして年金制度に対する信用をこれ以上に高からしめていかなくてはならないと考えるわけでございます。国の責任を明確にというように五十嵐公述人はおっしゃるわけでございますが、この辺のもう一歩突っ込んだ具体的なお考えをお示しいただければありがたいなと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/9
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010・五十嵐清
○五十嵐公述人 お答え申し上げます。
国の責任と申し上げましたのは、先ほども若干つけ加えて意見を申し上げましたけれども、例えば、今日の鉄道共済の実態を生じさせた原因は一体何なのかというものをもう少し明確にしていただきたいというのが一つあるわけであります。
旧国鉄時代、現役労働者がかなりの数おりました。その後、経営合理化等が進み、さらには民活化が進んで、これが必然的に年金の成熟度を高めたのは言うまでもないことであります。それは言ってみますと、私どもの立場から言いますと、共済年金といっても鉄道共済は企業年金と同じではなかったか、そういうふうに位置づけても過言ではなかったと私は思うわけであります。給付の問題でも、民間と比べますとかなり有利な条件がありました。そして、そういう中で鉄道共済の財政が悪化してきたのも皆さん御存じのとおりであります。
そのときに国の責任として何をされたのか、今日まで放置されたその責任は一体だれが果たすべきなのか。それを、今の段階になりましてどうしようもないから、厚生年金の皆さん方、公的年金の一つとしてそれぞれの年金加入者が共同して責任を分担しよう、分け合うといいますか、そういうことについて我々厚生年金加入者の立場の皆さん方は理解できない。ですから、今日まで放置しておいたその責任というのは、旧国鉄労使はもちろんでありますけれども、挙げて運輸省、大蔵省、言うなれば政府の責任というのは追及されてしかるべきじゃないかという点で申し上げておるわけであります。ですから、今日の事態を招いたことについて、努力はされたのでしょうけれども、それが国民の前に具体的に明らかにされなかった、その責任というものを明らかにしていただきたいというのが趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/10
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011・畑英次郎
○畑委員 鉄道共済年金の問題はそういうことが従来から、いろいろ危機的な状況にある、そういう中にございまして、今回具体的にも盛り込まれておるわけでございますが、関係者の方々の自助努力等々も行われる反面、清算事業団における負担等々も入っておるわけでございますから、問題は、そういうような意味合いでのバランスを考えながら今回の法案の中では対応策が入っておるというように御認識をいただいていいのではないかと考えるわけでございます。
そういう中にございまして、先ほど庭田先生からも御指摘があったわけでございますが、いわゆる二十年後、少なくとも二十年後に六十五歳にということは、ちょうど私自身もそういうような意味合いの当事者にかかわり合いがだんだん深くなってまいる年配でもあるわけでございますが、やはり生きがいといいますものは、六十五歳、高年齢になりましても働く場所があり得る、働くということによって大きくそこにできてくるのではないかなというように考えるわけでございます。
さような意味合いにおきましては、いわば雇用労働関係では、条件等々の環境整備といいますものが先に進んで、それを後追いをして定年制を、あるいはまた年金の支給開始時期をというような一つの考え方もございましょうし、あるいは同時発進的にそういうような考え方で問題を解決していく方法もこれまた一つの方法ではないかと思います。あるいはまた、今回のように、六十五歳といいますものは、考えてみますと人生五十年から八十年に既に相なっておるわけでございますから、当然そういう方向にお互いがやることが人生の生きがいという要素を高からしめる、さような意味合いでは、六十五歳論議といいますものを二十年後の問題として明確に打ち出して、それをスケジュールの中にきちっと明確に国民の皆様方にも年金関係者の方々にも御理解を賜る、こういうことはいささかも矛盾はないというように私は考えますし、今回はさらに、その中に、実施時期につきましては重ねて別の法律をもって国民のコンセンサス、合意をいただいて実施に入るという、いわば雇用条件、就業状態等々が六十五歳に向かってきちんとなされるということを確認しながら実施に移すのですよという要素が入っておる、そういうように国民の皆様方も御理解をいただけると私は考えるわけでございます。
この辺の考え方につきまして、五十嵐公述人に、再度恐れ入りますが、六十五歳、二十年後のスケジュールが明確な、いわば親切な対応というものに対して反対をされるゆえんのものを、いま少しその辺の親切なという要素の面からの見解をひとつお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/11
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012・五十嵐清
○五十嵐公述人 先ほども申し上げましたように、私どもは、支給開始年齢は六十歳を堅持してほしいという希望があるわけであります。言われるとおり、六十五歳になりますのは今から二十一年後、平成二十二年度ということでありますが、先ほども申し上げましたように、六十歳支給になりましたのは昭和二十九年度の改正でありまして、現在企業で六十歳定年制をしいておりますのはまだ六二%しかいってないわけであります。あわせて、六十五歳の支給開始年齢を目標と定め、それに沿って雇用環境を改善させていくという方法も一つあろうかと思います。
しかし、もう少し御理解をいただきたいと思いますのは、今六十過ぎまして六十五まで働ける人と働けない人、こういういわゆる職場環境の変化によりまして、肉体的な労働条件も加えますと、そういう状態にある人たちもかなりおられるということをぜひ御理解をいただきたいわけであります。ですから、一律的に六十五歳というふうに線を引かれることには私どもは反対であります。六十歳以降、六十五歳を過ぎても働ける人はおられるでしょうし、それ以上に働けない人が出てくる、そういうことをひとつ御理解いただきますならば、六十歳支給というものは堅持していただきまして、先ほど丸尾先生がお話を申し上げましたように、六十歳以降の雇用と年金の受給の問題については柔軟に対応をしていく方法があってしかるべきではないかというふうに思います。
一律的に定年制を設けることについての是非もあります。しかし、私どもは何としても六十歳を堅持させていただいて、六十前半層の雇用が整備されるならば就労所得で十分生活ができていけるわけでありまして、六十歳以降働けない人には年金を一〇〇%支給して生活を確保していく、保障する、そういう制度がベターではないかというふうに思いまして、六十五歳の支給開始年齢、今すぐではなくても、私どもは反対の立場を明らかにしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/12
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013・畑英次郎
○畑委員 今お考えが述べられたわけでありますが、逆に申し上げれば、六十五歳ということを一応国民の前に、そういう認識の中でやはり関係の分野の方々が六十五歳に向けてあらゆる努力をやっていく、そういうような国民的な合意の中でお互いが努力をやっていく、その中でございましても、今御指摘がございましたように、残念ながら就労ができないといった方々に対しての一つの対応、繰り上げ支給等々の問題もあるわけでありますから、さような意味合いで、いみじくも五十嵐公述人がおっしゃったように、弾力性といいますか柔軟性といいますか、そういうものは今度の法改正の中でも十分に盛り込まれておるというような意味合いにおいて、ひとつ御理解を願いたいがというようにも考えるわけであります。
時間が来たようでありますから、質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/13
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014・粟山明
○粟山委員長代理 次に、金子みつ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/14
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015・金子みつ
○金子(み)委員 公述人の方々には、お忙しいところありがとうございます。
私がただいまからお尋ねしたいと思っておりますことは、大変基本的な問題でございますので、時間は大変短うございますけれども、一問だけ聞かせていただきたい点がございます。この点につきまして、できればお三方にそれぞれ御意見を伺わせていただければありがたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
既に御承知のように、厚生省が今度の法案の中で、先ほど来課題になっております支給開始年齢を六十歳から六十五歳にという問題がございます。今の支給開始年齢、すなわち六十歳の支給開始年齢では後世代が耐え切れないほどの重い負担に直面するという考えを持っているわけです。そこで、二〇二〇年には厚生年金の保険料率は、現在一二・四%ですが、これが三一・五%にも達するというふうに説明もしているわけでございます。このことについて政府は、三一・五%という数字は動かしがたいものであるように言っているわけでございますが、この点について、きょうの公述人の一人でいらっしゃる丸尾先生が論文を書いていらっしゃいますのを引用させていただきたいと思うのでございます。
将来の年金財政と社会保険料率を左右する要因というのは幾つかあるというふうにおっしゃっていらっしゃいます。その一つは、将来の就業率、現在は七〇・五%ですが、殊に女性の就業率が非常に高くなるであろうということが考えられる。それから「雇用者比率(現在七五%)、雇用者のうちの社会保険加入者の比率(現在七五・三%)いかんによって、保険料率は一〜三%くらいは違ってくる。」のじゃないかというふうにおっしゃっておられます。それから「年金積立金の運用収益率と積立金残高の対年金給付率の大きさによっても、社会保険料率は違ってくる。」であろう。それに、消費税収入のことがここで取り上げられておりますけれども、「基礎年金の国庫負担比を現在の三分の一から将来二分の一に引上げれば、二〇二〇年代の厚生年金の社会保険料率が一・五%程度は低くなる。」のじゃないかというふうなことが意見として考えられているわけでございます。そこで、これらの社会保険料率を将来左右するところの要因について、あり方としては、今までもっとよく検討した上で将来の社会保険料率についてももっと国民の納得できるような方途にするべきであったのじゃないかというような御意見があるわけでございます。
このことについて私がさらにお尋ねしたいのは、こういう御意見が下地にございますが、将来の年金財政と保険料率の見通しについて、きょうの公述人の方々の御意見を承ることができればありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まず丸尾公述人から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/15
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016・丸尾直美
○丸尾公述人 私、そこに書きましたことは、一応試算によるものでして、それ自体は間違っていないと思います。そして、このたび連合が総合福祉ビジョンを出しましたけれども、それの付録の年金計算等によりましても、やはり就業構造の違い、積立金の運用収益率の違い、その他どれくらい、成熟度といいますか、完全なフル年金給付率に達するものがあるか等々、非常に関係する要因があるわけです。今の政府の計算方式ですとどうしても、それは非常に厳密な計算で長所のある計算でありますけれども、いろいろ想定しなくちゃならない。所得の伸び率、物価上昇率、年金積立率等に加えて非常に複雑な幾つかの制度が並立していますから、そういうものにさらにいろいろな想定を加えて推計するというのは非常に難しいものですから、その辺がちょっとあいまいになっているわけです。成熟時について、横断的に切った別なやり方で算定しますと、その時点の数字での影響ですけれども、今のようなことが言えるわけです。
私、そのやり方でやってちょっと考えてみたわけですけれども、このやり方というのは一種の賦課方式になっているわけですね。そして、年金積立金を残しているとしましても、厚生年金の場合政府は二〇二〇年ぐらいに一・八八倍くらいを考えていますけれども、一ないしそれくらいを考えるとする、あるいは年金自体については貯蓄的要素が必要でないとすれば一でもいいんじゃないかと思いますけれども、そういうことにして計算していきますと、賦課方式というのは積立金的要素の場合に比べて過小に出るということは考えられないわけです。積立金方式というのは将来の負担を軽くするためにやっているわけですから、その計算でやった数字が過小だということは通常考えられないわけですね。ですから、その方式でいろいろ計算してみますと、先ほど申しましたように、障害年金等を入れて基礎年金自体が国民所得の六、七%を切る、被用者年金の方は遺族年金等々、障害年金等々を入れましてもどうしましても三一・五というようなことにはならない。
特に、先ほどちょっと言いましたように、よく考案された部分就労・部分年金制度を導入して、七十歳も男性は働きたい、全体でも六五%ぐらいの働きたいという人の希望をかなえるような制度を導入して、なるべく六十五歳近くまで働いてもらうようにするとか、そういう雇用上の工夫をしていく、そして完全雇用を維持する、失業率が多いとかなり違ってきますからね。そういうことをしていきますと、政府の数字よりはかなり低くて済むのじゃないかと私は見ています。好意的に政府の数字を考えますれば、そのくらいになれば日本の貯蓄率は低くなるから少し多目にとっておいて貯金を高めようというような気持ちがあるなら別ですけれども、そうでないとしますとちょっと過大な見通しではないかと思います。ただ、人口の見通しに関しましては、若干、もうちょっと厳しくなる可能性がありますから、ここは考慮に入れなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/16
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017・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして庭田公述人、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/17
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018・庭田範秋
○庭田公述人 将来の見通しというのは取り上げる数字その他によりましていろいろ変わってまいります。ただ、だからといって余り答えが変わってもいけないわけなんですけれども、私自身の見方は丸尾さんよりはちょっと厳しいような数字になってくると思います。
まず、六十五歳、千分の三百十五、これは動かしがたいかどうか、こういうわけでございますが、私は動かしがたくなる、六十歳だったらこれに当然なるであろう、こう考えられます。例えば、言われました金利でございます。これから社会が成熟化してまいりますと、金利というのは大体落ちるのが原則であります。そして、五十九年度に厚生省が再計算したとき、いろいろ金利を計算いたしたときの基礎は、運用利回り七%ぐらいと置きましたが、今回は五・五%というように、既にもうこの数年間で金利は落ちたと言ってよろしいかと思います。今後日本がどんどん成熟化をいたして社会が発展し、それから産業も飽和状態になる、こういうことになりますと、お金余りの現象がますますひどくなって、金利は下がるであろうと私は思いますので、上がるということを余り長期的に期待して、三百十五が金利の点からもっと低くなるという考え方はどうか、こう考えております。
それから、年金が成熟化いたします。すると、本来年金というのは発足当初は積立方式で行くわけですが、その積立金というのは加入者が多くなりますとだんだん膨らんでまいります。こんなことは皆さんに御説明するのもどうかと思いますが、一応理屈の上ではそうなります。そして、そろそろ年金受給者が出だして、それがどんどんふえ出して成熟度が高まりますと、積み上がった積立金はごく自然に、ただし積み上げるスピードよりははるかに大きなスピードをもって減ってくるのが常識であります。そうしますと、積立金の額というものは限りなくふえ続けるというようなことはありませんで、ある段階で積立金の額そのものが停滞をし、場合によっては減ってまいります。そして、金利が減りますと、額掛ける金利がイコール運用利益、そしてこれが年金を支えるわけでありますが、この計算からいっても必ずしも楽観的な要素はあり得ない、こういうふうに私は考えております。
それから、女性の就労でございます。もちろん女性が、特に若い女性がたくさん就職してくれますと、給料を取って、当然年金の掛金を出してくれます。ですから、当座はこの面から積立金もふえてまいります。しかしながら、この女性もいずれは高齢になって年金を受けて、しかもうらやましいことに男性よりもはるかに長生きをされるということは、それだけ年金を食う、こういうことになるわけであります。
これが私的年金、個人年金のように保険料と年金が厳格に保険数理によって計算されているのですと、何も恐れることはございません。しかしながら、公的年金には国庫負担もあればいろいろありまして、出したものよりは多分受ける年金額の総計の方が多くなるわけであります。というと、多い分だけは食い込みます。しかもその食い込みをするのが、女性がふえることによってもっと食い込んでいきますから、女性が完全就労をいたしまして社会に進出すると、前半は年金財政にプラスの作用をいたしますが、後半はマイナスの作用をいたします。もちろん二十数年後にはマイナスの作用の方になるわけでありますから、女性がたくさん進出してくれたからといって、年金財政そのものは楽になって、千分の三百十五がもっと引き下げられるというようなことはまずないのじゃないかと思います。
〔粟山委員長代理退席、委員長着席〕
また、国庫負担が現在三分の一入っておりますが、これを二分の一程度にいたしますと、単なる計算でいいますと、現在の消費税の税率を倍ぐらいにして、それを挙げて国庫負担として年金の方に投入いたしませんと、なかなか食いとめることができない、こういう点も考えますと、やはり千分の三百十五というのが、これは上がることはあっても、めったに下がることはない。
そして上がることは、千分の三百十五以上に掛金がなるということは、掛金の面だけから見ると大変痛烈のように考えますが、仮にこれが大幅に下げられるような事態というと国民が長寿化しない、平均余命が短くなる、こういうようなわけで、日本が発展してみんなが幸福になって、ますます生活がよくなって、そしてますます長生きをすれば、千分の三百十五は上がることはあってもちょっと引き下げられないのでありますから、この辺の数字をきちんと押さえて、その上で計算をすべきではなかろうか。楽観的な要素を織り込んで千分の三百十五と六十歳を強行しても、千分の三百十五を下回るであろう、そういう期待は余りされない方がよろしいかと思います。
もともと年金財政というのは、保険料率を引き上げるか、これも二十二にすることにも相当抵抗があるわけであります。給付水準を引き下げるか、こんなことはめったなことではできるわけではありません。国庫負担の増額か、先ほど言いましたように随分大きなものになってまいります。そして最後に残るのが支給開始年齢の引き上げ、こういうことでございますから、これらの中で一番とりやすいのは支給開始年齢の引き上げであろう、こう考えます。そして、これを六十歳にしておいて千分の三百十五までいくのがいろいろの事情によって大幅に内輪になるのじゃないかというような期待は余りすべきではないのではないか、私はそう考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/18
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019・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。
それでは時間も切迫いたしましたけれども、五十嵐公述人、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/19
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020・五十嵐清
○五十嵐公述人 連合では総合福祉ビジョンというものを策定をいたしまして、その委員会の中に丸尾先生も参加をしていただきましたので丸尾先生の方からお話をいただきました。重複する点は避けたいと思います。
私どもは、六十歳支給開始年齢を維持しても、先ほど来お話がありますように三一・五%より低い保険料で十分可能だという試算をしております。時間がありませんので詳しくは申し上げませんが、今の政府が出しております三一・五%を二ないし四%ポイント程度は低くなるはずだという試算を実はしておりまして、その理由は、先ほど丸尾先生なり金子先生から指摘をされたような要件を十分加味して計算したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/20
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021・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。
時間が過ぎてしまいましたのでここでやめさせていただきますが、いろいろと御意見を承りますと、それぞれのお立場でおっしゃったことでございますので、それなりに受けとめさせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/21
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022・丹羽雄哉
○丹羽委員長 貝沼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/22
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023・貝沼次郎
○貝沼委員 本日は、三人の公述人の皆さん本当にありがとうございます。先ほどからいろいろの質問が出ておりますので、私は簡単にお尋ねをしたいと思います。
一つは、先ほどから信頼が非常に大事であるというお話がございます。ところが、今回この法案が出てくる、そしてまた、その前大改正がありました。この八六年─八九年というたったこれだけの間に数字ががらっと変わってしまったような感じがいたします。そうすると、実際国民の側から見て、しょっちゅうこんなに変わるのなら一体どうなるのだろうかという不信といいますか心配が実は出てくるわけでございます。変わること自体は別に悪いわけじゃありませんが、そういう信頼の面からこういうことがしょっちゅうあっていいのかどうか。また、こういうことが誤解をされないためにはどういうことが必要なのかという点を、庭田公述人それから丸尾公述人にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/23
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024・庭田範秋
○庭田公述人 確かに、年金のような長期制度におきまして基礎になる数字というのが大幅に変わるということは、これは問題であろうかと思います。しかしながら、私の見るところ、だからといってそんなに大幅に変わった、そのようにも言えないわけなんであります。
ただ、これだけは言えると思います。とにかく我が国の経済が依然として順調、順調でない面もあろうかと思いますが、とにかく国際的に見てはまあ順調で、そして、その反映として国民の平均余命が延びていく、こういうような数字は、これは随分活発に動いておる。そして、その結果がとにかく年金の財政に反映をいたしましてとかく計算が狂いがちでありますけれども、だからといって私は、公的年金の根幹を揺るがすまでの大きな変化というようなものは実は出ていない、そのように見ておるわけであります。したがいまして、過度に神経過敏症になるのもいけませんし、ましてや過度に神経過敏症になるような、ちょっとあおるような発言も中には世間にあるわけでありますけれども、それも余り芳しい行為ではない、このように考えております。私は、何とか耐えられる程度の数字の動きであろう、このようなものと認めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/24
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025・丸尾直美
○丸尾公述人 年金の財政計算が複雑になっていますのは、旧制度と新制度が併存し、旧制度でもいろいろな制度がありますから過渡期が非常に計算が難しいわけですね。ですから成長率の想定、賃金の上昇率の想定、利子率の、運用利回りの想定、就業構造の想定等によって、その組み合わせいかんによってかなりの数字の違いが出てくるわけですね。
ですから、そういう方式はもちろんやって、こういう場合にはこうなるというのをたくさん出すべきですけれども、想定が多いほどその組み合わせで物すごくたくさんの組み合わせが出てきますから、そういうのをやると同時に、ピーク時で一番上がってもここだけだというのをはっきりさせる必要があると思うのです。それをやるために、二〇二〇年代のピーク時はこれ以上にはなり得ないというのを私や連合は計算しているわけですね。その時点では積立金自体は給付金に対して物すごく大きいという額ではないわけですから、その利回りの大きさによるその時点での年金の保険料率への影響というのはそんなに大きいものではないわけです。
で、それをこの前一部分控え目に計算し、それから就業構造につきましても、確かに庭田先生がおっしゃられましたように、現在収入がふえていけばその人は将来年金を受け取るわけですから、就業率を高く見れば将来の年金給付率も大きくなる。しかしどう考えても、就業率から出てくる受給者の方の比率というのは、計算していきますととんでもない数字というのはあり得ないわけです。そういうのを全部組み合わせて計算していきますと、そして、先ほど言いましたように六五%か七〇%の人が適度な労働なら働きたいと言っているのですから、なるべくそういう人々をうまく誘導して働いていただいて社会保険料を払ってもらう、そして国民年金の場合には保険料をなるべく払いやすいように基礎年金の公費負担分を若干上げる、そういうこと等々をやっていきまして計算していきますと、そうしますとどうもそんなに難しい計算じゃない。ちょっと落ちついて考えれば大抵の人には理解できるという数字が出てきます。
ですから、そういう計算でこれが上限である、しかし、安全度を見込んでこれくらいに置いておく。ですから、そこまで行くと考える、そして、その他の社会保障等々全部入れていって、社会保険料の国民負担比が対国民所得比でどうなるか、あるいは勤労者家計に対して社会保険料はどうなるか、そういう数字を明確にして、そういうふうに負担が上がっていくことは事実だ、確かに高齢化につれて負担が上がっていくことは事実だけれども、しかし、経済成長率が数%で維持されれば、あるいは完全雇用が維持されれば、それだけ負担が上がっていっても勤労者の、あるいは国民の手取りの実収入は着実に上昇していくということ、その設計図をきちっと見せてあげれば、もう少し国民の不安感はなくなるだろうと思います。
今、あるところで豊かさを実感しない理由をいろいろ調査しておりますけれども、生活の質の問題、土地を含む物価高の問題に加えて、やはり老後の生活の不安というのが豊かさを実感できない一つの重要な理由となっておると思います。ですから、今言ったような将来の上限値というのをはっきり見通して、それを負担するとしても皆さんの実質所得は着実に上がっていきます、私の計算で見ますと、勤労者の実質所得の伸びは、今考えているような負担上昇を考えましても、一九七五年から八七年の勤労者の実質手取り所得の上昇率ぐらいは十分確保できるというふうに考えられます。そういうことをはっきりさせて、納得をするようになれば、ある程度の負担増加というものも国民は納得するのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/25
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026・貝沼次郎
○貝沼委員 それからもう一点、庭田公述人にお願いしたいと思いますが、学生の強制加入の問題でございます。
これは家計の負担も大変厳しくなってくる。そうすると、結果的に保険料の滞納者、それから免除を申し出る、これはたくさん出てくるわけでございます。そうすると、今の免除規定、基準では大変厳しいものがございまして、年金制度そのものを脅かす可能性もないとは言えないと思うわけでありますが、この点についてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/26
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027・庭田範秋
○庭田公述人 お答えをいたします。
もともと二十歳以上の学生、これは必ずしも大学の学生だけにとどまりません。各種学校で勉強をしているそういう学生さんも当然含まれるわけでありますが、この世代が国民年金に今任意加入である。そして、任意加入ということは、二十歳代の若者が好んで六十歳、六十五歳の将来のお金の問題に入るわけがございませんから、大方は学生諸君は無年金の状態にあります。この学生が最近はえらくアルバイトなんかに熱中いたしまして、それもだんだん格好のいい家庭教師などというのではなくて、荷物の集配みたいな相当力仕事で危険の多い仕事にアルバイトなんかで行っております。そうしまして、彼らが大きなけがでもいたしますと、無年金者ですからもちろん障害年金といったようなものが出ません。そして、それでは国民皆年金として困るから、学生の国民年金に当然加入、ある意味では強制適用、こう言ってもよろしいのでありますが、そういう形で彼らも年金に組み込もう、こういうわけであります。
この考えはまことに妥当であります。現にけがをして無年金で一生苦しむというような者もなきにしもあらずであります。同時に、彼らが二十歳から年金にかかわることで年金のモデル計算の際の四十年加入という条件も満たされるわけでありますから、この学生への適用ということは実は今回の年金改定で大きく評価されてよろしいわけであります。
ところが、それではとにかく国民年金の掛金が八千円から八千四百円にもなるときに一体彼ら学生に払えるか、こういうことになります。そしていろいろな条件が出まして、結局は親が負担するのではなかろうか、申請免除をする場合もなかなか条件がきつい、こうなっておりますが、私は一応学校におりまして、学生に接しております。昔は私の学校も随分豊かな学生が多かったのです。何か最近は東大の学生さんの方が豊かで、慶応の学生というのはどちらかというと貧乏グループになってしまったという話でありますが、とはいうものの、彼らは日々の生活はなかなか若者特有に優雅であります。したがって、学生諸君が全然負担能力がない、彼らはもうこれ以上お金はびた一文出す力もないといったような認め方は果たしてどうかな、こういうように考えます。彼らのレジャーに投入しておるお金というのは並み大抵なものではありません。
そう考えますと、私は、きついきついと数字だけ見ると大変きついが、同時に今の学生諸君のあの姿を見て、少しそれを総合勘案いたしますと、そのきつさも水で薄めることができるだろう、こういうふうには考えております。したがいまして、私は現在出ている程度の保険料の免除に関する内規といいますか規定は、まあこのくらいはしようがないだろう、そして親が負担をする、当人もアルバイトその他もなかなか派手にやってお金を全部レジャーに使うような、そういう態度を改めるためにはいい制度だ、彼らをして彼らの将来に責任を持たせよ、そういうふうに、一面でこの学生への適用と負担の問題はまあまあの線だ、私はこう思っております。
ただ、何といいましても学生は二十歳代で、そして受給は六十歳代で、この間に四十年もあるのですから、彼らに喜んで出せと言ってもこれはなかなか無理でありますので、この年金制度の意味、それから特に学生への適用の問題点の意味、メリットとかそういう点を教員たる者は極力学生諸君にpRし、教えるべき責任がある、そして、それを行いながら徐々に学生諸君をして年金を理解せしめ、年金には負担はつきものであるという考えを普及させるのが妥当ではないか、こう考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/27
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028・貝沼次郎
○貝沼委員 時間が迫ってまいりましたので五十嵐公述人にお願いいたします。
ただいまのお話ですと、まあこれぐらいの負担はいいだろうというような話でございますが、この免除基準はやはり緩和しないと大変なことになるのではないかと私は思っておるわけでございます。したがって、働く者の立場からどういうふうにお考えか、この点お願いしたいと思います。
時間がありませんのでまとめてお願いいたします。丸尾公述人にお願いしたいと思いますが、保険料の積立金の自主運用のことにつきまして、私どもはどういう判断をした方がいいのか。私の個人的な主張といたしましては、大体三分の一ぐらいは自主運用していいのではないか、こういうふうに思っておるわけでありますが、この点。
それからもう一点は、部分就労・部分年金、私どもこれを一生懸命言っておりますけれども、日本の制度をつくる場合に諸外国の制度と比べてどういう点を注意しなければならないのか、この点をお尋ねしたいと思います。では順次お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/28
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029・丸尾直美
○丸尾公述人 積立金の運用の方は、むしろ庭田先生が御専門だとは思いますが、私は保険の専門家ではありませんけれども、私の個人的な考えは、やはり一方で自主運用の枠は、おっしゃるようにもっと広げるべきであると思います。そして他方で、そうかといって、還元融資的なものが適正なものであれば、特に高齢者、福祉関係の還元融資、そちらとのバランスで、全体として一方で自主運用をすることによって還元融資の隠れた利子補給分もある程度賄って余りあるような、今のままよりはもっと自主運用によって全体としての収益が高まるようにするぐらいがいいと思います。めどとしまして、将来二〇%ないし三〇%というのは考え得るのではないかと思います。どれくらいまで可能か、ちょっと私、今のところ確たることは言えませんけれども、少なくとも今よりかなり大幅にしていくということは可能であると思います。
それから、部分就労・部分年金で日本がヨーロッパ流のやり方をするとき非常に難しいのは、やはり日本の場合には、一つは、時間単位で賃金を考えるという習慣がないわけです。全人的だから、時間を今までこれだけやったのを半分に減らすからその分の給料を半分にする、それがなかなかできないようなものですから、できるところはそのやり方でいいのでしょうけれども、できないことを考えますと、日本の実情に応じて単純な時間だけでない部分就労方式というのを考える必要があるのじゃないかと思います。
それから先ほど言いましたように、年金が補助されることによって賃金水準が低くなって、それが一般勤労者の賃金の水準に影響を与えるというようなことをヨーロッパの場合やはり心配するわけです。ですから、時間当たりの賃金をあくまで切り下げないという方針でああいうやり方が出ておるのですけれども、その精神というのはやはり尊重さるべきではないかと思います。
それから、私は長期的にはやはり年金支給開始年齢を高めていかざるを得ないと思っておるわけですけれども、もし仮に六十歳からどうしても部分年金・部分就労をやるとなりますと、そうしますと、下手をすると就労した方が損になるということも部分的に出てきますから、そこのつなぎの矛盾がないように設計するというのがかなり難しいと思いますから、相当慎重に設計する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/29
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030・五十嵐清
○五十嵐公述人 学生の年金は私どもは強制適用すべきだというふうに考えます。ただ、保険料の負担の問題につきましては、親に負担をさせますと年間十万円近い負担になりますので、この点については大変問題があるというふうに考えます。もちろん個人で負担能力があるのだったらそれは負担していただいて結構でありますが、先ほど申し上げましたように、そういう親に過重な負担をさせるということについては反対でありまして、その点については免除制度なり、あるいは将来就職をして働いてそれによって収入を得た段階で、免除された期間、その支払いを滞っていた期間を払っていくという方法を組み合わせるなどして対応すべきではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/30
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031・貝沼次郎
○貝沼委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/31
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032・丹羽雄哉
○丹羽委員長 塚田延充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/32
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033・塚田延充
○塚田委員 公述人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
それでは、まず五十嵐公述人にお伺いいたしますが、先ほど、消費税の導入をも勘案するとさらに今度プラスのような形で厚生年金保険料引き上げになる、実質可処分所得が計算上マイナスになってしまう、例示されたのは四百万、五百万、六百万でございますけれども、ある程度年収が高いとそれにもかかわらず実質可処分所得はマイナスに転じないという、いわゆる分岐点みたいなものがあると思います。連合の計算によりますと、年収何百万ぐらいのところが分岐点になって、それ以下の年収の方々が消費税及び今度の年金保険料アップで実質可処分所得がマイナスに転じると計算されたのか、お示しいただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/33
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034・五十嵐清
○五十嵐公述人 先ほど申し上げましたのは、物価と保険料、それだけでしてありまして、マイナスになるということではなくして、五・一%の賃上げで、物価が三%台、そして保険料が二・二%引き上げられたときに五・一%の賃上げがどの程度目減りをするかということで出したわけであります。それを四百万、五百万、六百万という数字で出したのが先ほど紹介した数字でありまして、年収が高くなるほど物価と保険料の引き上げの影響が高いということでお示しをしたわけであります。先生の御質問のその分岐点までは計算は実はしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/34
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035・塚田延充
○塚田委員 庭田公述人の場合は年金を純学問的に、すなわちこれを数理的に追求された上での参考意見を公述されたわけで、大変参考になったわけでございます。しかしながら、それに基づく今回の各法案に対する賛成、反対の態度表明につきましては、この年金数理部会の結論を金科玉条といいましょうか、理論的に極めて正しいんだという前提に立っての御発言じゃないかと私は受けとめさせていただきました。そのような純粋理論的な中で一つだけ非常に情緒的といいましょうか、わかりやすい例示がございましたが、それは鉄道共済年金についての火事に例えての例え話であり、鉄道共済年金が万一破綻に陥った場合には年金制度全体の信頼性にもかかわるぞ、隣の火事と同じだというようなことでおもしろい例えだと思いました。
ところで、庭田公述人にお伺いいたしますが、年金数理部会において鉄道共済年金について数理的にだめになってしまうということはかなり前からわかっていたはずでございます。これについてどのような警告をどのような形で政府部内とかなんとかにきちんと出しておったのか、その辺の事情について年金数理部会の立場で御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/35
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036・庭田範秋
○庭田公述人 数理に徹底した発言のようにとらえられてはおりますけれども、数理的な面は尊重するという姿勢は私はとっておりますが、だからといって、数理だけで物事が処理できる、必ずしもそうは思っておりません。例えば、若者の年金に対する信頼とかあるいは負担が若者の勤労意欲をそぐ、そういったような問題も入れて私は説明をしたわけでございまして、数理だけが金科玉条、こう考えているわけでもないのであります。
かつまた、鉄道年金の救済の問題も情緒一方で考えたわけでもございません。これは一つの国の制度全体といたしまして、鉄道年金の窮迫状態というものが年金全体にどのような影響を及ぼすかといったようなことも考えておるわけであります。例えば、国民年金に対して進んで加入して進んで保険料を払うのが国民の義務でありますけれども、そういうようなところに国鉄年金の将来展望を見て、何だかどうも国年にお金を納めるのは嫌になったというような、そんなようなことになっても大変なことになる、こういうわけで、経済制度としてもろもろの点で影響し合うというような考えでおります。
ところで、鉄道年金が大分苦しくなるということはもう十年以上前から言われております。例えば、船後委員会なんというのが大分前にありまして、そこでもう随分検討をされました。これは審議会や何かの下部の研究会でありまして、一流の先生方が入り、私もその中には入っておりましたが、そこで鉄道の、国鉄の年金が重大事態になるということを、研究成果をつくりましてそれを当局その他には御提示しているわけであります。
ただ、鉄道の問題はそれ以上に実は臨調で民営という問題が前面に出てしまいまして、とにかく民営化するという問題がまず大きく立ちはだかってしまいまして、そこに年金の破綻の問題というのはやや二番手の問題、二番手の信用破綻の問題というような扱い方をされまして、その意味では警告はちゃんと早くから年金関係者の間では出ておりましたけれども、それが急にここのところに来て浮上して皆さんの目に映ったわけであります。それというのも、民営化問題と臨調の問題が余りに大きく取り扱われた結果であろうと思いますが、決して手を抜いて国鉄年金の財政問題の警鐘を鳴らさなかったわけではないわけであります。このようなお答えになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/36
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037・塚田延充
○塚田委員 このたびの国民年金法等の一部を改正する法律案におきましては、年金支給開始年齢を言うなれば原則六十五歳にする、そして六十歳からは部分就労・部分年金型で補おうじゃないか、こんな思想かと解釈されるわけでございます。
それに対しまして丸尾公述人は、いわば発想の転換のような、提案という形ではございませんけれども、それに近いような御説明があったようにお聞きいたしました。すなわち、原則を六十歳でいいじゃないか、そして、誘導するような形で六十五歳までは何か新しい制度か何かで、場合によっては年金保険料を払いながら受け取るとか、結果的には部分就労・部分年金に近い形かもしらぬけれども、原則を六十歳という今のものを堅持したまま六十五歳までの新しい方式を考えたらいかがかと、非常に新しい発想の転換だというふうに受けとめさせていただきました。この件につきまして、もう少々丸尾公述人から詳しい御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/37
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038・丸尾直美
○丸尾公述人 実は私は、長期的には六十五歳支給で部分就労・部分年金をという考えであったのですけれども、連合の研究会に参加させていただきましていろいろ御議論を承っているうちに、むしろ六十歳でやって、支給開始年齢を六十歳のままでも部分就労・部分年金のやり方の工夫次第では事実上余り違わないではないかというようなことをも考えるようになりましたものですから、その可能性、そういうやり方でどうなるかということを少なくとも十分検討すべきではないかというふうに考えているわけです。
ただ、先ほどもちょっと言いましたように、六十五歳支給開始年齢を基準とする場合に比べますと、六十歳支給で部分就労・部分年金をやりますと、何といいましても、年金がフルについている方の場合には就労との関係で就労のインセンティブをうまく持たせていくというのが非常に難しいものですから、その辺の設計についてまだ十分自信がありませんものですから、少なくとも今の段階では、その可能性をも含めて、支給開始年齢をいつから上げてしまうというのを決定してしまうのは少し早いのではないか。六十五歳支給で部分年金・部分就労をやる方法、六十歳からやる方法、それが実質的にどういう違いになるか。場合によっては、余り違わないのだったら六十歳からもうもらいますよというふうに安心感を持てる方が勤労者にとってはるかにいいわけですね。そういうことができればその方が好ましいと思います。
そして、勤労者の観点から見れば、保障はある、しかし、働きたい人は六十五どころかもっと後までもずっと働いて、部分的な年金を受けながらやっていける、あるいは六十五以上になればフル年金やりながらということもあるでしょうけれども、そういう両方の願いを両立させる方法があり、しかもそれが財政負担にそれほど大きな変化をもたらさないならばそれはやるべきではないか、そういう考えでありまして、実は私、今褒めていただきましたけれども、私の発想というよりも連合の方の発想に私は影響されたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/38
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039・塚田延充
○塚田委員 もう一つ丸尾公述人にお尋ねいたします。
ほかの公述人から、この年金法の改正についてはもう一度審議をやり直すべきである、そのためには年金改革のための国民協議会をつくって二、三年もんだらどうだ、しかもその際は年金数理委員会もきちっとしてやるべきである、このような提案がありました。年金問題は詰めていけばすべて数理問題になることは私も理解いたします。しかしながら、その数理計算の仕方、特にインプット段階でのいろいろな前提の置き方で数字が変わってくるわけであり、それによっていわゆる負担も給付もいろいろ動きが出てくるわけでございます。そういう意味で、ほかの公述人から出ましたいわゆる協議会の設置と年金数理委員会の設置について丸尾公述人はいかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/39
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040・丸尾直美
○丸尾公述人 確かに、年金支給開始年齢引き上げと財政計算についてまだ御納得できない層が非常に多くある現段階では、その問題につきましてはある程度方針を決めて検討をするということは好ましいことではないかと思います。
そして、確かに財政負担の問題は究極的には数理ですけれども、政策によって非常に違ってきますね。もちろん保険料率と税金とのかかわり合いは公費負担比がどうなるかによってすぐ違いますし、それから先ほど言いました就労率をどうするかということ、これは庭田先生がおっしゃられましたように長期的には給付に反映されてきますけれども、その過渡期において非常に違ってきますし、積立金の運用もそうですし、さらには国民年金の場合には保険料の徴収の仕方、それから部分年金・部分就労の工夫の仕方等々によって政策的にもかなり違ってきます。特に、失業率によっても違いますし、それからまた、負担感という点につきましては成長率の大小によって非常に違ってきますね。ですから、そういう純粋な年金数理だけで機械的にこれしかないという感じではなくて、政策的なことをも含めて、可能性を含めてもう少し納得のいく議論をされるということは非常に結構なことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/40
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041・塚田延充
○塚田委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/41
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042・丹羽雄哉
○丹羽委員長 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/42
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043・児玉健次
○児玉委員 きょうは御苦労さまでした。
最初に五十嵐公述人にお伺いしたいのですが、今は日本の特に大企業の職場などで五十歳前後から出向、配転や希望退職制、そういったもので相当深刻な雇用不安が生まれております。そういった状態と、今回の国民年金法等の改正の問題についてどうお考えかというのが一つです。
二つ目は、連合としてのお考えを伺いたいのですが、今度この六十五歳繰り延べが提起されている、そういった中で、もし高齢者の雇用が改善されれば、六十五歳年金支給開始もやむを得ないとお考えなのか。それとも将来にわたって六十歳支給を堅持すべきだとお考えでしょうか。
ちょっとそれとの関連なのですが、八五年の年金法改正のときに、法の本則に支給は六十五歳から行うという趣旨の文言が盛り込まれまして、そして附則で当分の間六十歳からの支給というふうになりました。八五年の改正のときのこの部分について、連合としては今どんなお考えなのか、それもお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/43
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044・五十嵐清
○五十嵐公述人 最後の方からお答えを申し上げます。
八五年の改正当時は労働団体四つにまだ分かれておりまして、それぞれの取り組みがあったわけであります。私自身は、本則の中で六十五歳を入れられたということについて、それ以降の年金改革闘争に大変大きな痛手をこうむっているのではないかという認識は持っております。
ですから、それと関連しまして、将来高齢者雇用が、六十五歳定年、これが全員といいますか、八割以上の企業で六十五歳定年ということになれば、その時点でやはり検討しなければならぬというふうには思いますけれども、私ども今の段階では六十歳支給というものはあくまでも堅持をしてまいりたいというふうに思います。六十五歳定年制が果たしていいのかどうなのかというのはこれからもっと論議をすべき課題ではないかというふうに私は思います。つまり一律定年制が果たしていいのかどうなのかという問題があろうかと思いますので、その点についてはもっと検討すべきだというふうに思います。
最初の御質問の出向と国民年金法の関係については、質問の趣旨がちょっと理解できませんので、恐れ入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/44
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045・児玉健次
○児玉委員 日経連がことしの二月に発表した調査があるのですが、従業員五百人以上の企業四百十社を対象にして調査しておりますが、それによりますと、定年まで勤めるのは退職者全体の二一・五%にしかすぎない。自己都合による途中退社が六〇%を占めている。それらが、公述人もよく御承知の、五十歳過ぎて会社の役員コースに乗らない部分が、例えば窓際族だとか、そして別の会社への出向を命ぜられる、そういったかなり深刻な雇用不安が現在ありますね。そして、定年まで勤め上げるのが二〇%といった状況で六十五歳支給開始といったものが出てきているわけでして、そのあたりについて御意見を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/45
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046・五十嵐清
○五十嵐公述人 先生言われるように、まだ六十歳定年になっていないところ、あるいは六十歳定年になっていてもそれまで勤められないで退職を強いられるということが多々あろうかと思います。また出向されることによって、言ってみれば標準報酬月額が低下をするという問題もありますと年金の水準も低下をされます。そういうことよりも何よりも、現在六十歳定年になっているところはまだしも、ならないところ、そして六十歳定年になってさらに六十五歳に支給開始年齢が繰り延べされるということになりますと、冒頭申し上げましたように定年年齢と支給開始年齢のギャップが生じるわけでありまして、その期間をどうやって生活を賄うのかというのが勤労者にとっては大きな課題になっているわけであります。
私ども連合の中で調査をいたしましても、やはり年金が支給されるまでの間、それは企業年金のあるところは企業年金、つまりこれはほとんどが退職金でありますが、退職金だとか貯金の切り崩し、そういうもので生活をされる。つまり、年金が支給されるまでの間はそれなりに自助努力がされておりまして、その人たちの生活を見ますと、大変きつい、苦しいというのが実態として浮き彫りになっているわけであります。ですから私どもは、その支給開始年齢と定年とのギャップ、さらには定年までの間の低賃金というものを何としても克服をしなければならないというような課題、当面は六十歳定年制の定着、そして六十歳の年金支給開始年齢の堅持というものを第一目標に掲げまして、その実現を図ってまいりたいというふうに思うところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/46
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047・児玉健次
○児玉委員 丸尾公述人にお伺いしたいのですが、先ほどの御意見の中で、基礎年金の給付率が下がっていっている問題についてお話がございましたが、そこのところをもう少し具体的にお間かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/47
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048・丸尾直美
○丸尾公述人 基礎年金は、制度が一九八六年度から出発ですけれども、いろいろな基準は八四年度、昭和五十九年度です。そのとき月五万円と決められましたが、これは一人当たり国民所得比、比率で見ますと三〇・八%なんですね。賃金に関してはどうでしたか、これはもちろん低いわけですけれども、その相対比というものはかなり重要じゃないかと私は思いますね。
ですけれども、基礎年金は物価スライドはもちろんこれから自動的にやっていきます。ただ、五年ごとの改定は、高齢者世帯の基礎的実質消費を基準にしてやっていくというやり方になっていますと、一般生活水準が高まっていきますとそういう基礎的な消費水準というのは相対的に小さくなりますから、基礎年金は今のやり方でいきますと対国民所得比でも対賃金比でもどんどん下がっていくことになりますね。既に、今度の改定で五万五千五百円になりますと、一九八九年度の一人当たり国民所得はまだ出ていませんけれども、それに対しましても恐らく二七%前後になるのではないかと思うのです。もう既に、十月ですから、それから改定で、むしろ今度は半分は九〇年度に関係します。九〇年度に対して見ますと恐らくもっと、二五、六%になってしまうわけですね。
さらに、これは五年間実質改定しないわけですから、五年間はまたずっと下がっていきますね。五年間下がっていくのはある程度仕方ないのかもしれませんけれども、そうして、年金実質改定ごとに給付率が実質下がっていくということは皆さん十分御承知の上でやっているのか、政府はそれを見込んでいるのか、それを見込んだ上での年金計算が今のようになっているのか、その辺を私ちょっとただしたかったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/48
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049・児玉健次
○児玉委員 庭田公述人にお伺いしたいのですが、先ほど先生は、六十五歳からの支給開始は日本の定年延長の刺激になる、こういうふうにおっしゃいましたが、日経連の昨年十二月に発表した「公的年金の改革について」、その一部に「六十五歳定年制で雇用問題を解決しようとすることは、本質的な解決にならない。」云々と申しまして、「六十五歳定年制の法制化または行政指導には反対である。」こういうふうに言い切っております。これを先生は是となさるか否となさるか、それが一つです。
もう一つは、先ほど年金数理部会の計算を、支給開始年齢の繰り延べなどについて反対することになれば否定することになるだろうという非常にストリクトなお話がございましたが、数理計算自身が与えられた諸条件のもとで計算をしていくものだと私は理解しております。そういった面で、先ほど基礎年金を当面二分の一にしたらどうだろうかということについて、さしたる大きな変化は出てこないという趣旨のことをおっしゃいましたが、その点をもう少し伺いたい。
それからもう一つ、選択肢として、特に厚生年金や共済年金にあっては労使の負担割合の変更の問題というのが当然現実に考えられる選択肢だと考えます。ILOのちょっと古い一九七五年から七七年の資料ですが、先生よく御承知のように、日本ではこの資料によれば二五・〇対二八・八、例えばイタリアで一三・四対六一・二、イギリスで一七・七対二九・五、随分出ておりますが、そういった要素を取り入れることについて学問的にどのようにお考えでしょうか。済みませんが端的にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/49
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050・庭田範秋
○庭田公述人 幾つかございましたので、順番にお答えをいたしていきたいと思います。
まず六十五歳ということで……。一番最初は何でしたでしょうか、三つあったと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/50
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051・児玉健次
○児玉委員 日経連が昨年の十二月に発表した「公的年金の改革について」、そこで「六十五歳定年制の法制化または行政指導には反対である。」と述べていることについて、先生は是となさるか否となさるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/51
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052・庭田範秋
○庭田公述人 私は、そういう公文書的な発言というものと同時に陰にも結構いろいろな御意見も実は聞かされたことがございます。そして、六十年の法改正のときに多くの企業家の方が言ったことは、今六十五歳にされると定年が六十歳にされてしまう、こういうようなことですね。六十年のころは長期不況でして、大変企業経営が苦しいときだったのです。だけれども、この発言はなかなか意味深長でございまして、六十五歳にすると定年六十歳にされちゃうから反対ということは、六十五歳にすれば定年は六十歳にどうやら達し得るな、こういうような予測は裏では読めるわけであります。
そして今回は、十年、十五年、二十年後に定年が六十歳になるということはほとんど不可避の事実であるという見解に立ちまして、少なくも年金審議会の答申を書くときには六十五歳案に賛成をされたというふうに私は見ておるわけなのですね。つきましては、六十五歳にすることには、大方、学識経験側といいますかそういうようなお方と、負担がより以上に強化されるよりはとにかく時間を置いて六十歳定年を実現しよう、そういうふうな道を企業側の方が選ばれたというようには私は把握をいたしております。
それから、基礎年金に国庫負担を三分の一を二分の一にいたしますと、例えば消費税なんかも今の倍ぐらいにして、それを挙げて振り込まないとなかなかできない。したがって、国庫負担をふやすということに過大の期待をかけて六十五歳を否定して、そして千分の三百十五を引き下げようというような、ちょっと楽観的と言ってはなんですけれども、希望的な見解というのはどうかと私は思います。といいますのは、希望的観測でいって、さていよいよ高齢者になって、あれは希望に過ぎたから今度はもう少しシビアにするんだなんて言われたら、そのときの方がよほど高齢者にとってはショックが大きいだろう、このように考えます。
もともと千分の三百十五、六十歳にすると今千分の二百六十ぐらい、これも実は世界一の高さであります。恐らく在職老齢年金の刻みの減額の部分、それを入れてようやく現在の世界最高水準の西独の二百四十ぐらいが何とか計算値としてはじき出せるのじゃないかというような、そういう計算を見てしまった以上、これを余りいろいろ楽観的条件に基づいて手直しをするというと、世界最高の年金負担になります。我が国としても、国民一般もとてもそんなことには耐えられないだろうというようなわけで、六十歳というのは、計算を見た上ではどうもこれはとても楽観に過ぎる、私はこういうふうに考えます。
それでは、負担割合の変更ということであります。これはいろいろの立場からいろいろの意見があります。ただ現在の、当面の段階としてはそんな大きな変更なんていうことは、この上またできるとは私は考えられないわけであります。年齢の問題もあり、料率の問題もあり、それから自主運用、その他随分多角的な改革案が盛り込まれているのに、なおかつ年金計算の根幹を揺るがすような負担割合の変更というようなものまで現在の段階で突っ込もうというのは、これは希望としてはあり得ますが、実現性という点においてはとてもそんなことはあり得ないと私は思います。
そして、このようなことをもし年金改定で突っ込む、こういたしますと、これはたとえ何でも一応協力的な姿勢を示したとされる企業側、財界側が挙げて反対になってしまいまして、年金の改正案はつぶれる。そして、そう遠くない将来に結局はもっと苛烈な案が出るのか、しからずんば高齢者が泣くような段階になってくるであろう、こういうふうに思います。これは、例えばだんだん年をとっていって働き盛りになる問題ですと、計算が狂っても少しは我慢して頑張れ、こういうことがききますが、年金改正に関しましては高齢者の生活の問題でありますから、間違えるにしても楽になる間違い方をするなら許されますが、悪くなる間違い方というのはこれはどう考えても許されません。
つまり、頑張る条件がほとんどないわけでありますから、そういう意味で私は、年金改定はどちらかというときつい数字を採用すべきである、そして余り楽観、変動的な要因を次から次へ突っ込んで制度全体のゆがみを生ずるようなことはよろしくないのじゃないか。年金問題は高齢者の問題である、くれぐれもここをお考えいただきまして、高齢者が路頭に迷ったり、そのときに異常なショックを受けるようなことがないように我々は事前に配慮しておくべきではなかろうか、このように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/52
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053・児玉健次
○児玉委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/53
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054・丹羽雄哉
○丹羽委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。
公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
この際、暫時休憩いたします。
午後零時十九分休憩
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午後一時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/54
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055・丹羽雄哉
○丹羽委員長 休憩前に引き続き公聴会を開きます。
この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。
国民年金法等の一部を改正する法律案等の三法律案に対する御意見を拝聴し、各案審査の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。
なお、御意見を承る順序といたしましては、まず小林公述人、次に山崎公述人、次に橋本公述人の順序で、お一人およそ十五分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと思います。
それでは、小林公述人にお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/55
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056・小林清
○小林公述人 私、小林でございます。今回の年金制度の改正案につきまして、これは必要な措置であると思いますので、賛成の立場から意見を申し述べます。なお、私は民間企業におりまして、厚生年金のあり方というふうな観点から意見を申し述べさせていただきたいと思います。
年金制度を取り巻きます環境の中で最も留意すべき点は、急速な高齢化社会への移行ということであります。御高承のとおり、経済の国際化が容赦なく進む一方で、我が国の平均年齢が非常に高まってまいります。欧米各国に例を見ないスピードで高齢化社会を迎えつつあるわけでございます。厚生省の将来推計人口によりましても、現在六十五歳以上者は千四百三十万人、人口比の一一・六%であるわけでありますけれども、最も高齢化が進みます二〇二〇年、平成三十二年には約三千二百万人、人口比も二三・六%というふうに見られておりまして、世界最高の高齢社会に進みつつあるわけでございます。また、停滞する出生率との関係もございまして、若年層の減少が予想されております。その結果、二十歳から六十歳までの比率は現在六五%であるわけでございますが、二〇一〇年には五三%に低下する。若手労働力不足の状況も危惧されておるところでございます。
〔委員長退席、粟山委員長代理着席〕
一方、高齢化社会の進展は医療、福祉、家庭、生活全般にわたります高齢者生活ニーズの巨大な高まりをもたらすわけでございまして、もろもろの面でこれらの対応が求められているわけでございます。現在の社会の仕組みのままではいわゆる国民負担率も将来膨大なものとなるわけでございまして、活力ある社会の一つのメルクマールとされております四〇%前半、これをはるかに上回りまして、西欧各国以上にもなる懸念すらあるわけでございます。一歩その対応を誤りますと順調な経済発展は阻害され、活力のある社会、こういうものの実現は不可能になるのではなかろうか、西欧諸国から日本病というふうなレッテルを張られるおそれすら懸念されておるような状況であると思っております。
私どもは、長期的視点と具体的なプログラムを持ちまして、後世世代のために活力ある福祉社会を建設すべきでありましょうが、なすべきことは諸般にわたると思いますけれども、公的年金制度との関係で申しますと六十歳代の雇用、この問題が最も大きいものと思うわけでございます。
若年労働力不足、しかもその中で労働時間短縮というふうな問題が進みます。そういう社会におきましては、高齢者がその特性に応じまして労働を提供することが必要に相なるわけでございます。また一方、逼迫いたします年金財政を考えますと、六十歳の前半層は、給付を受け取る側から、いわゆる担がれる層の側から保険料を納める側に、すなわち担ぐサイドに移るというふうな心組みと社会の仕組みが求められるのではないかと思います。ちなみに、現在七人の現役で一人の受給者を担いでおるわけでございますけれども、二〇二〇年にこのままの状態で推移いたしますと、二・一人の現役が一人の受給者を担ぐ、こういうふうな状況に相なると言われております。このように、高齢者雇用は対応策の第一として考えるべきであります。
しかしながら、この問題を考えるに当たりまして最も留意すべきは、従来の雇用慣行との関係の問題でございます。
冒頭申し述べましたけれども、経済の国際化が進み、ME革命あるいは技術革新、そういうものが急でございます。就業構造が大きく変わりつつありまして、これにいわゆる価値観の多様化というふうなものも相まちまして、就業形態も変わりつつございます。産業活動の活性化のため、あるいは意識の多様性に対応するため、そういう観点から、雇用の場におきましても、従来の日本的な終身雇用慣行は大きく変貌を遂げざるを得ないようなそういう実態になってきておると思うわけでございます。
その中核にありますところの定年制度に対する見直し、そういうものも当然のことながら急がれるわけでございます。いわんや高齢者は肉体、精神的に個人差が大きゅうございまして、この高齢者雇用の特性を考えますと、現在の定年制度のイメージをもちまして一律にこれを論ずるわけにはまいらない、このように思っております。雇用の場の提供あるいはこの確保の必要性と日本的定年制度を直截に結びつける、そういうことで論議することは具体的な施策の検討を混迷せしむる以外何物も生み出さないのではなかろうか、このように考えるわけでございます。高齢者雇用の場の開発を政策課題として追求し、具体的な雇用形態のあり方、条件等につきましては個別の労使がじっくり時間をかけて話し合い、新しい形を生み出すべく努力を怠ってはならない、このように考えるわけでございます。
以上の観点を踏まえまして、一つは支給開始年齢の引き上げについて意見を申し述べます。
反対論の多くは雇用不安定の問題であり、あるいはまた当面直ちに六十五歳に引き上げられるというふうな、いわば誤解もあるのではないかと思われるような昨今でございます。今回案は、高齢者雇用の促進という考え方を踏まえまして十年から二十二年、そういう長い時間をかけまして支給開始年齢を段階的に引き上げていく、そういうことをねらいとしているものでございまして、また、実際の引き上げに当たりましても高齢者雇用の実態ということから配慮すべきであるという案であるように私は思っておるわけでございまして、雇用との連係は十分図られているものというべきではなかろうか、このように思っております。
現行の六十歳支給のままでの二〇二〇年後代負担は三一・五%という推計もなされておるわけでございまして、これは将来の被保険者、すなわち企業の労と使にとりましていかにも過大である、世代間の公平性、バランスという意味合いにおきましても肯定し得ないものではなかろうかということを考えますと、究極の高齢社会であります二〇二〇年におきまして先進諸国が予想されておりますところの水準、二六%程度というふうに見られておる様子でございますけれども、それ以下にする配慮は当然必要であろう、このように思うわけでございます。
高齢化に伴う年金財政の破綻を救うためには給付水準の引き下げであるか、保険料の大幅なアップであるか、あるいは支給開始年齢の引き上げか、選択肢は非常に少ないと思うわけでございます。現行の給付水準を維持しながら、しかも後代負担を適正な範囲に抑えるためには、支給開始年齢を引き上げることはやむを得ない措置であろうと思うわけでございます。また、西欧諸国の実情から申しましても、平成二十二年度以降に六十五歳といたしますこの考え方につきましては問題はないのではなかろうか、このようにも思っております。
とは申しましても、将来その対象者となる方々につきましてはまことに大きい問題であるわけでございます。したがって、早目に将来プログラムを明確に提示いたしまして、個人的にも腹づもりをする、社会的にもその仕組みをつくる準備が要る、こういうふうな長い準備期間を置くことが必要であろうと思うわけでございまして、そういう意味合いからも今回の措置が必要である、このように思うわけでございます。
給付改善につきまして申し上げますと、公的年金の役割はその時代の生活水準や賃金水準、そういうものに見合った一定の給付を行いまして、それをいわば老後生活の主たる柱といたしまして安定感を持たす、それに加えていわゆる自助努力、私的年金等々の上積みでもちまして多様で充実感ある老後生活を実現するということであろうかと思っております。そういう意味合いから、公的年金に求められます安定感あるいは将来にわたる信頼性、そういうものを確保するためにもこの公的年金の意義づけ、さらに深めまして、今回改正において完全物価スライドあるいは財政再計算時におきます実質的改善、これを行うということは至当な策であろう、このように思っておるところでございます。
保険料の引き上げにつきまして簡単に意見を申し上げます。
その時代の生活水準なり賃金の上昇に応じて一定の年金額を保障していくためには、年金額の改正に伴いまして追加的に必要となる財源を調達しなければなりません。公的年金制度では、これを後代の現役世代に求めることとしておりまして、現役者が高齢社会を支えるという仕組みをとっておるわけでございますから、保険料の引き上げはやむを得ない措置であると言わざるを得ないと思います。しかしながら、給付と負担の関係におきまして現役世代の理解が得られる程度のものである必要があると思うわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、現行支給開始年齢のままではだめなんだということを前提にいたしまして、国際的にも将来的に許容可能な保険料率に段階的に持っていくということで、今回の見直しで二・二%の引き上げはやむを得ないのではなかろうかと思うわけでございます。
以上、支給開始年齢の引き上げなり、給付の改善なり、保険料の引き上げにつきまして意見を申し述べたわけでございますが、これらは公的年金制度を健全に維持するために相関連する問題であろうかと思っております。そういう観点から、今回改正案はやむを得ないということで賛成いたす次第でございます。
以上、厚生年金周辺の問題を意識しながら、三点につきまして賛成の意見表明をさせていただいたわけでございます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/56
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057・粟山明
○粟山委員長代理 ありがとうございました。
それでは、次に山崎公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/57
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058・山崎泰彦
○山崎公述人 年金改正につきまして意見を申し上げる機会をいただきましたこと、心からお礼申し上げます。時間の関係もありますので、提案されています三つの法律案のうち、国民年金法等の一部を改正する法律案に焦点を当てて意見を述べさせていただきます。
特に申し上げたい点は次の四点でございます。第一は、合意形成のあり方、第二は、支給開始年齢の引き上げ等の法案の内容的な問題点、第三は、福祉年金等の経過年金及び高齢障害者の年金のあり方と介護対策、第四は、財政問題に対する対応策であります。以下、順に私の意見を申し上げます。
まず、改正法案につきましては、内容以前の立案過程における問題があったように思われます。それは、十分に議論を尽くし、合意形成のための努力を行った上で提案されたものではないということであります。これは前回昭和六十年改正と比べた場合の顕著な相違であります。前回改正は昭和五十年代初頭からおよそ十年に及ぶ改革論議を経て行われました。厚生省は、各政党、関係審議会のみならず、各種団体、学識者等を含む広範な国民の意見を反映させるために、十分な機会と時間を割きました。このような合意形成のための努力は、社会連帯の制度である公的年金制度に対する国民の信頼を確保する上で極めて重要なことでありますが、今回の改正法案では、残念なことにそのような努力の跡がうかがえません。
さらに、合意形成に不可欠である情報が十分に公開されていないという問題もあります。例えば、老齢厚生年金の平均支給開始年齢が六十二歳だとか、あるいは老齢厚生年金の標準年金の加入期間が三十五年になると説明されていますが、たとえそれが事実であるにしても、それを吟味するに十分な情報は私たちには与えられていないのであります。
次に、法案の中身ですが、特に問題だと思われます支給開始年齢と学生の適用につきまして、問題点と法案にかわる私の提案を申し上げさせていただきます。
まず、支給開始年齢の引き上げの提案ですが、経過措置を設けるとともに、実施時期については別に法律で定めるとしていますが、これに連動すべき雇用対策については今後の課題とされたままであります。支給開始年齢の引き上げによる雇用の拡大効果はある程度期待できますが、有効性のある雇用対策が伴わない限り、結局は繰り上げ減額支給の一般化という結果になってしまうのではないかという懸念があります。これは厚生省の見通しでも推測されることであります。
「年金制度の課題と改正の視点」という年金局のパンフレットでは、平成三十二年度について、支給開始年齢を六十五歳に引き上げた場合と現行どおり六十歳に据え置いた場合について、老齢年金受給者数と被保険者数の比較を行っております。これによりますと、六十五歳に引き上げた場合、老齢年金受給者数は百七十万人減少します。しかし、被保険者数は五十七万人しか増加しないという見通しであります。つまり、受給者は減るが、そのうちの相当数は雇用の場が確保されないという見通しであります。
私は、現行どおり支給開始年齢を六十歳に据え置いたままで、六十五歳退職への誘導策を講ずることが当面の最善の選択肢ではないかと考えております。現行制度の問題点として指摘したいのは、現行制度には、企業サイドにも労働者サイドにも、六十歳以降の雇用及び就業に対するインセンティブがないということです。
企業サイドについて言えば、高齢者雇用に対する企業の貢献度が年金制度の上では全く評価されていないという問題があります。高齢者を雇用する企業は、保険料を負担するとともに受給者を減らすことによって年金財政に大きく貢献しているのですが、保険料率はそのような貢献度とは無関係に一律です。一般的には、中小零細企業から大企業への所得移転が生じていることになります。公的年金制度は社会連帯の制度ですが、このような企業努力に対する正当な評価なくして連帯は成り立ちません。
今直ちに着手していただきたいことは、高齢者雇用に対する企業努力の評価、すなわち企業間の費用負担の公平化を図ることを通して、企業に高齢者雇用のインセンティブを持たせることであります。具体的には、六十歳から六十五歳未満の者を対象とする特別支給の老齢厚生年金にかかわる費用負担につきまして、労災保険と同様にメリット制を導入し、高齢者雇用の貢献度に応じた保険料率に改めることであります。さらにその場合、高齢者の雇用については企業努力に負うところが大きいわけでありますから、労使の保険料の負担割合についても、使用者負担の割合を五〇%以上に高めることができるよう弾力化することが望ましいと考えております。なお、医療保険の退職者医療制度の拠出金負担につきましても同様な問題があることを指摘しておきたいと思います。
一方、労働者サイドについて見ますと、現行制度では定額部分に三十五年の頭打ちがあり、報酬比例部分についても高齢者の賃金が低いという状況からして、加入期間が三十五年を超えると年金額はほとんどふえないという問題があります。平均加入期間が三十五年になろうとしている今では、定額部分の三十五年頭打ちは高齢者の就業意欲に対してはマイナス要因になっています。三十五年頭打ちは直ちに廃止すべきではないでしょうか。
さらに、特別支給の老齢厚生年金については、受給を繰り下げて将来の年金額をふやすという選択制がないため、六十五歳末満で退職した場合、直ちに受給開始せざるを得ないという問題もあります。六十五歳以後の老齢厚生年金では繰り下げ増額受給の道が開かれているわけですから、特別支給の老齢厚生年金についても同様な措置を導入していただきたいと思います。
いずれにしても、当面、労働省サイドの対策と並行して厚生省サイドでも年金制度の活用等による高齢者雇用対策を推進することによって、高齢者就業型の活力ある福祉社会の形成のために最大限の努力をしていただきたいと願う次第であります。また、このような地道な努力をすることこそが広範な国民の理解の得られる財政対策の道でもあると考えております。
次は、学生の適用の問題です。学生の適用は皆年金を達成する上で唯一の残された課題でした。改正法案では、学生についても国民年金に強制適用とすることにより、老齢基礎年金の満額受給の道を開くとともに、障害・遺族年金の無年金を解消することとしています。保険料の負担については、下宿の学生については本人の所得によって、自宅通学の学生については親の所得によって免除、非免除の取り扱いをするという提案です。
しかし、老齢基礎年金については、現行制度でも任意加入ができますし、任意加入しない場合でも、六十歳から六十五歳までの間、任意加入することによって満額の年金を受給することは可能になっております。したがって、強制適用に踏み切る積極的な理由としては乏しいように思います。給付についての実質的な課題は障害年金対策です。私は、学生については老齢及び遺族年金と障害年金を切り離し、障害年金のみ強制適用とすることが現実的な解決策だと考えております。
また、保険料負担につきましては、下宿の学生と自宅通学の学生とで保険料の負担を区別することにも大きな問題があります。親が豊かだから下宿することができ、逆に親が貧しいため遠方から通学している学生もあります。また、親との生計維持関係を基本にしている税制や医療保険制度との整合性も欠くことになります。障害給付のみを強制適用とするとすれば保険料は恐らく月額千円程度で済むはずでありますから、親と生計維持関係のある学生についてはすべて一律に親に保険料負担を求めることとし、親の所得が乏しい場合のみ免除の扱いとすることとしてはいかがでしょうか。
その他、今回の改正に当たって全く検討されていなかった事柄で見過ごすことのできない問題があります。
一つは福祉年金等の経過年金の年金水準の問題です。昭和六十年改正によって創設された基礎年金の思想は、拠出原則を基本にしながらも、それが及びがたい部分については拠出期間と同等の価値を認めるというものでした。この思想に基づいて、老齢基礎年金については、四十年加入できない者についても二十五年から三十九年の加入で満額の老齢基礎年金を支給することとしました。また、年金制度への加入機会のなかった従来の障害福祉年金の受給者についても障害基礎年金への切りかえを行ったわけであります。ところが、老齢福祉年金を含む旧法の経過的老齢年金には基礎年金の思想は及んでいません。私は、基礎年金の思想を完結させ、旧法の経過年金についても基礎年金への切りかえによる給付改善を行うべきだと考えております。
さらに、障害年金についても問題があります。現行制度では、障害年金の対象になるのは六十五歳になるまでに発生した障害であって、六十五歳以後に発生した障害は対象になっておりません。そのため高齢で発生した寝たきり、痴呆等の障害老人に対しては年金制度としての対応は完全に欠如しています。障害という状態に着目した障害者対策の一貫性を求めたいと思います。このような基礎年金への切りかえによる経過年金の引き上げ及び障害老人に対する年金給付の改善は、年金制度のあり方として要望されるだけではありません。二十一世紀の高齢社会に向けての最大の課題となりつつある介護対策の飛躍的改善を図る上でも不可欠であります。
介護対策につきましては、在宅との均衡のとれた入院時の費用負担、在宅ケアを推進するための在宅サービスの拡充が求められていますが、そのためには老人保健制度及び福祉制度による対応にあわせて、以上のような年金給付の改善による所得の確保がどうしても必要だと考えております。従来の年金制度の枠組みを超えた検討をお願いします。
最後に、財政問題につきまして、さきに述べました年金制度による高齢者雇用対策の推進に加えて、その他の対応策を補足させていただきます。
第一点は、年金の給付水準のあり方です。法案は、前回改正で設定した水準、すなわち厚生年金について言えば現役の標準報酬の六九%水準を維持することとしています。しかし、現役世代と高齢世代との間では直接税や社会保険料負担に大きな差があり、しかも将来的には、特に社会保険料負担の格差の拡大は避けがたい状況にあります。したがって、給付水準につきましては、世代間の可処分所得あるいは消費水準の実質的均衡を図るという観点から設定する必要があります。
第二点は、国庫負担のあり方です。私の提案のうち、特に、経過年金の引き上げや高齢障害者の年金改善に要する費用につきましては国庫負担の重点的な配分を求めたいと思います。現行制度でも、経過年金や障害基礎年金につきましては手厚い国庫負担が行われていることからしても当然のことと考えます。
第三点は、厚生年金の男子の保険料の引き上げ幅についてです。法案では一二・四%から一四・六%へ一気に引き上げることとなっておりますが、女子や国民年金と同様に、毎年小刻みに引き上げる方が合意を得やすいように思います。
第四点は、高齢者対策と同様のウエートを置いて児童対策の充実を図っていただきたいということであります。
最後に申し上げたいことは、年金制度の安定した発展を図るために最も大事なことは、制度に対する国民の信頼を確保することだということであります。そのためには、議論を十分に尽くし、合意形成の努力を行う必要があります。また、年金制度による介護対策等、国民のニードの変化に柔軟に対応する姿勢も必要です。財政問題のみにとらわれない柔軟な年金政策を求めたいと思います。
以上で私の公述を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/58
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059・粟山明
○粟山委員長代理 ありがとうございました。
次に、橋本公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/59
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060・橋本司郎
○橋本公述人 橋本司郎でございます。高齢化社会を控えて年金が非常に大きな曲がり角に差しかかった、こういう重要な時期に当委員会で意見を述べさせていただくことを大変光栄に思っております。
今議題になっております三つの法案について意見を申し上げるわけですが、個々の問題についてまずお話しして、それを最後に総括するという形で申し上げたいと思っておりますが、第一に年金改正の視点なんですけれども、私は、高齢化社会をにらんだ筋の通った制度の防衛のための改正を行うべき時期ではないかというふうに考えております。そういう視点から意見を申し述べたいというふうに思っております。
まず第一のポイントは、年金額の改善と保険料及び保険料率の引き上げの問題です。
年金額の改善の方式。完全自動スライド制を導入すること、それから、財政再計算に伴う国民生活の向上に合わせた給付の改善を行うこと、これには皆様当然のこととして御議論のないところだというふうに思います。ただ、その場合には給付の改善と、それに伴う、それの裏づけとなる保険料の改定というのは一つのセットになったものとして考えていかなければならないというふうに思っております。
まず第一に、国民年金の保険料のことですが、国民年金の財政は、御案内のとおり、実質的には既に賦課方式になっております。賦課方式になっているということは、毎年の年金の支払いに不都合のない程度の保険料の引き上げはやむを得ないということになると思います。それから、厚生年金の場合には若干意味合いが違うと思います。厚生年金の保険料をただいま引き上げなくても、ただいま直ちに財政問題に影響するという事柄ではない。極端な言い方をいたしますれば、厚生年金の方も賦課方式になるまで保険料の引き上げを停止することさえできないことではないというふうに思います。
ただ、将来の高い保険料、厚生省の財政再計算の結果によりますと三一・五%という高い保険料率が予想されるという時期に、今の保険料率は非常に低い、そういう軽い負担の時代であります。そして、私たちの子供たちの時代にはそれが二倍以上の負担になるということもまた明らかになっているということを考えれば、世代間の負担の公平という意味でも、無理のない程度に徐々に引き上げていくという視点はどうしても必要になるのではないか。それから、現在だけに着目して保険料を低く抑えるということはやってできないことはないわけですが、それをやれば将来に急激な保険料の引き上げが必要になり、そのときに無理が発生する可能性があるという両方のポイントから考えまして、なだらかな引き上げを徐々に行っていくというのが無理のないやり方ではないかというふうに思うわけです。
それから、次のポイントは学生の国民年金の強制適用の問題です。
実は私は、これはむしろ遅きに失したのではないかというふうに考えております。社会保険の原則は、当然のことながら強制加入、保険料の強制徴収です。保険料の強制徴収になじまない部分については、例えば、所得が非常に低いとかいう場合には政策的な配慮が当然必要になりますが、原則はあくまで強制加入、強制徴収であります。そして、学生が当然に加入する権利を持つということになるわけですから、これはどこにも無理なことがない。むしろ今まで任意加入にしておいて、その結果いろいろな不利益が発生する可能性があったということの方が問題なのであって、もし任意加入の方が自由に選択できるからより有利であるということであるならば、ほかの加入者についても全部任意加入にすべきだという議論になると思います。したがって、社会保険の原則に伴って強制加入にしていくというのが当然の事柄ではないかというふうに思います。
それから、老齢厚生年金の支給開始年齢の問題がクローズアップされております。
この問題を考えるに当たりましては、高齢化社会の年金制度をどう維持していくかという視点が必要であることは先ほど申し上げたとおりであります。そのポイントといたしましては、成熟期の負担と給付のバランスをとるということであります。日本の年金制度の構成からいいまして、成熟期に給付の総額が保険料、この保険料には積立金及び積立金の運用利子も含めたものを保険料と考えまして、その保険料と国庫負担をプラスしたもののバランスがとれればいいということになると思います。
提案されております政府案では、給付水準を現在の水準から落とさずに将来の保険料負担を抑制していこうという考え方のものであります。そういう考え方に立てば、結局年金の給付の総額を減らすには受給者の数を減らすという方法以外にはないわけで、受給者の数を減らすのには支給開始年齢をおくらせるという選択になるということであろうと思います。しかし同時に、高齢化社会では、六十歳が年金を受給するような老人であるというふうな体制のままでは、とても高齢社会を乗り切ることはできないと考えておりますので、そういう意味からも、六十歳代前半をいわゆる現役の中に取り込んでいくという視点からもこの案は妥当ではないかなというふうに思います。そして、六十五歳をもし実施しなかったらどうなるかということを考える必要があると思います。
第一には、将来三一・五%という異常に高い保険料が予想されるわけで、六十五歳を実施しないでいるならば、まず第一にはこれを認めるという立場をとるかどうかということです。ほかの施策を何もやらなければ、当然これを認めざるを得ないことになるわけですが、これは将来の若年層に対して過重な負担を残すという意味で我々は選ぶことはできない。とすれば、六十五歳以外に保険料を抑制する何らかの方策を具体的に示さなければならないだろうというふうに考えます。それをしないと、また六十五歳問題が再浮上してくるのではないか。つまり、今回見送ったとしても、五年後の法律改正のときにまた出てくるのではないかという疑念を国民はぬぐい去ることはできない。
そこで、もし六十五歳を見送るということであるならば、将来とも六十五歳はもう出てこないんだということをはっきりさせていただく必要があるのではないか。という場合には、大変難しい問題をまた抱えていかなければならない。社会福祉全般を考えますと、これからは支えられる側が非常にふえてまいります。いろんな意味で支えられる側がふえていく。しかし、支える側はそれほどふえない。ただ、女子が就業する機会がふえてまいりますので、その分が大きくなるとかいろんなことが考えて考えられないわけではありませんけれども、それにもかかわらず支えられる側が多くなっていくということは事実なので、それをできるだけ少なくしていくということもまた考えていかなければならないというふうに思うのです。そして、本当に社会福祉が必要になったときには、そこには手厚い施策を提供するという体制をとっていかなければいけないというのが基本的な視点であります。
そこで、六十五歳がもう二度と出てこないということにするのには一体どうしたらいいのか。いろんなことが考えられると思いますが、一つには、国庫負担をふやすべきだという御議論があるように伺っております。今の三分の一の国庫補助率を二分の一、やがて三分の二にせよという御意見も拝聴いたしております。しかし、それは法律上に将来ともこうするんだということをはっきり書いていただくならばいいのですが、そうではなくて、ただ六十五歳がなくなるということでは非常に不安定な状況が残ります。
もう一つ、国庫負担について、これは私の個人的な感想なんですが、国民年金の保険料との関係があります。ただいま現在で八千円、これが政府案によりますと四百円ずつふえてまいりますと、五年後には一万円の大台に乗ります。一万円の大台に乗ったときに、夫婦で二万円、それに子供が一人いれば三万円、これが、現金収入の乏しい層もあるわけですから、その層が払えるかどうかという問題がまた出てくるのではないか。
ということを考えますと、そのときには恐らくある程度の国庫負担をふやしていかなければならないという議論が当然出てくるのではないかというふうに考えられます。そして、国民年金の国庫負担をふやせば、これは当然厚生年金にもはね返ってくるわけですから、厚生年金の保険料の抑制にも役に立つことになる。ただ、その場合には将来にわたってどのくらいの国庫負担が必要になるか、つまり、年金の国庫負担のためにどのくらいの原資が必要になるのかということをはっきりさせる必要があります。そして、それを賄うのにはどんな税をどんな形で増税していくのかというふうなこともはっきりさせていかなければならないだろうというふうに思います。
そしてまた、私の考えますのには、六十五歳を実施しますと、将来の厚生年金の保険料負担が二六%ちょっとくらいで抑制されるというふうな計算と伺っておりますが、私は実は、この二六%でも恐らく高過ぎるのではないかというふうに考えます。そのころになりますれば、老人保健への拠出も相当にふえますし、医療保険の負担もふえます。その他の社会福祉サービスのニードはどんどんふえてまいります。それらへの負担もしていかなければなりません。そういったようなことを全般的に考えますと、年金の保険料だけに二六%というのは少し高過ぎるのではないかということが問題になってくるのではないかというふうに思います。そうしますと、六十五歳問題だけでは、今度提案されております六十五歳支給だけでは解決しない。それにプラス国庫負担を増額するということを将来の考えの中に入れていかないと、つまり両方をあわせて実施しないと、厚生年金の財政の安定というのはなかなか十分できないのではないかというふうに考えております。
それから、もう時間がありませんのであと一言だけ申し上げさせていただきたいのは、六十歳代前半の雇用の環境の整備が必要なことはもちろんであります。しかし、現在のような人手不足の時代でも六十歳代前半の有効求人倍率は〇・二程度であります。このような人手不足の時代でさえそうです。それはなぜかといいますと、六十歳になれば年金が出るという状況にあります。六十歳になれば厚生年金が支給されるという状況のもとで、六十歳代前半の雇用を考えるという環境は、会社側にも労働側にもありません。身体障害者の雇用促進のために企業にある程度の障害者を雇うことを義務づけてペナルティーを科すという制度はありますが、これは障害者を雇用することが、ちょっと言い方が適切でないかもしれませんが、社会正義であるという考え方が社会の中にあるからです。だからそういうことができる。ところが、六十歳から年金が支給されるという状況のもとで、六十歳代前半の雇用にはそういったような印象がありません。それでは六十歳代前半の雇用はさっぱり進まない。そこでやはり六十歳代前半は働くんだということが社会の雰囲気になって、定着していくような施策がぜひ必要であるというふうに考えております。
もうちょっと申し述べたいことがあるのですが、時間が参りましたので、一たんこれだけで終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔粟山委員長代理退席、伊吹委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/60
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061・伊吹文明
○伊吹委員長代理 橋本公述人、まことにありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/61
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062・伊吹文明
○伊吹委員長代理 それでは、これよりただいま公述をいただきました公述人の皆様に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑英次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/62
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063・畑英次郎
○畑委員 三人の公述人の先生方、きょうは大変ありがとうございます。ただいま種々貴重な御意見を拝聴させていただいたわけでございますが、やはり国民の、そしてとりわけ年金受給者のお立場の方々におきましては、先ほど御指摘がございましたように、この制度そのもののいわゆる安定感といいますか、そしてまた信頼性といいますか、そういうものを一番強く求めていらっしゃる。そういうことにこたえての今回の改正案の内容であるというように私どもは位置づけをいたしておるわけでございます。
山崎公述人にお伺いするわけでございますが、やはりさような意味合いでは、物事が行き詰まってにっちもさっちもいかなくなってというような段階でそれなりの手当てをして解決を図る、これもある意味では国民の理解が得やすい一つの手法かもしれませんが、私どもは、釈迦に説法でございますが、医療の分野におきましても、やはり病気にならないように予防的見地の段階で、その段階ではいささか耳ざわりであり、あるいはまた問題があるかもしれませんけれども、やはり大局的に備えて早目に、少なくとも先取りという要素を絶えず考えながら政策展開を図る、これが責任ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
さような意味合いの中で、御指摘もございましたが、国庫負担をふやしたらどうかというような問題もございますが、これからの長寿社会を考えますと、資金需要というものが限りなくそれぞれの分野にある。バランス感覚をもってした場合には、今回の予防的見地等々からいいましても、いわゆる六十五歳の問題、保険料の引き上げ、こういうことはやむを得ない一つの対応であると私どもは考えるわけでございますが、その点につきまして、重ねて山崎公述人のお考えをお述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/63
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064・山崎泰彦
○山崎公述人 先生のおっしゃることと基本的に違っているとは私は思わないのでございますが、ただ、早目の対応が必要だ、それから、国庫負担に余り依存しないで保険料の引き上げを図るべきだ、この点につきましては全く同感でございます。
後者の保険料負担及び国庫負担について私の考えているところを申し上げますと、やはり社会保険のよさ、つまり給付と負担との均衡を図るということでございまして、それによりまして長期的な安定化が図れる、あるいは高い拠出意欲を確保することができる、そういうメリットがあると考えております。先ほど、私が国庫負担の重点的な配分と申し上げましたのは、私が新たに提案いたしました経過年金の引き上げだとか、特に高齢障害者、寝たきりの方々に対する給付改善を年金で行うとすれば、その部分については応分のといいますか、相当な国庫負担をお願いできないだろうか。年金本体に対する国庫負担の引き上げということにつきましては、私自身も、特に将来の税制のあり方がどうなるか不透明な現状においては結論は出せないというふうに思っております。
それからもう一つ、早目の対応というところで御指摘になりました六十五歳問題でございますが、十分な経過措置を置く、したがって、平成十年度から六十一歳である。しかも法律案では、実施時期については別に法律で定めるとしているわけでございます。したがって、もうしばらく時期がある。問題は、それまでにどのような雇用の改善を図るかということでございますから、私が提案させていただきましたような、まず高齢者を雇用する企業がそれなりの相当な貢献をしているわけですから、年金制度の側でしっかりとそれを評価していただきたいということでございます。
数字を挙げますと、六十歳以上の高齢者を雇うということは、仮に一応の賃金を払う、つまり在職老齢年金の支給対象にならない程度の賃金を払って雇用するということになりますと、相当な保険料を納めていただいて、その上で月額二十万円の給付を減らすことに貢献しているわけでございます。ところが、そういう評価が年金制度で全くなされてない。幸いに労働省では、六十歳代前半の雇用確保ということで相当思い切った制度的な対応を今検討されているということでございますが、労働省だけに任せないで厚生省でもそういう思い切った手を打っていただきたい。それが早目の対応ではないだろうか。そして、六十歳支給開始としておきながら、実質的に徐々に雇用の確保を図りながら、場合によれば将来六十五歳支給へということもあり得るかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/64
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065・畑英次郎
○畑委員 今山崎先生のお言葉の端々に六十五歳という、私の立場からすれば是認論といいますか、そういう方向へ物事は考えておかなくちゃならぬということを私なりにうかがい知ることができるわけでございます。先ほど橋本先生からもお話がございましたが、今回のこういうような改正案、そしてまた世間一般で六十五という数字が出てきたことの意義といいますか、極めて大きなものがあると私は考えるわけでございまして、いみじくも御指摘がございましたが、六十五歳定年への雰囲気づくりというお言葉も先ほど橋本公述人からあったわけでございます。
今回、こういうような意味合いの中では、私自身そういう年齢を将来的に迎える立場にございまして、年金生活もさることながら、やはり働く意欲がある間は働けるという就業労働条件の環境整備を徹底してやっていただくということがよりベターである、生きがいといいますものは働く意思がある限り働ける、この辺が私ども日本人の一つの考え方ではなかろうかと私は考えるわけでございまして、そういうような意味合いの中にございまして、小林公述人にお伺いしたいわけでございます。
今申し上げましたような意味合いで、六十五歳定年というような雰囲気づくりの中で、今回の問題は小林公述人も大方原則的に賛成をいただいておるわけでございますが、職場においては、先ほど山崎先生からもお話ございましたが、労働省サイドでは高齢者雇用に対してそれなりの奨励金的な支給が行われておる。この辺の、いわゆる企業サイドの高齢者雇用に対する手当て、そういうことに対する一般の受けとめ方、肌で感じます度合い、その辺について御意見を述べていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/65
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066・小林清
○小林公述人 私、意見として申し上げました雇用の場の創出なり確保の問題は非常に重要なことでございますので、これは政労使一致して努力すべき問題である。ただ、いわゆる日本的定年制という問題が現場でどのように受けとめられておるかと申し上げますと、今基本的に六十歳ということで定年制が進んでおるわけでございます。六十までは企業にとって完全雇用の責任があるんだ、こういう受けとめ方が一つ。
それから、これは実際は企業の現場において行われることでございますけれども、定年制なるものはいわゆる終身雇用制という慣行の柱をなしておるわけでございまして、その終身雇用制は何であるかといいますと、自動昇給制というふうな給与的に裏打ちされた歴史が今までの労使関係の中にあるわけでございます。そういう日本的な雇用慣行につきましては、もろもろの面から大きく変えていかざるを得ないような現状があります。
そういうことで、この定年制ということが、今まで考えておられますような、また現在でも多く考えておられますような非常に画一的な、窮屈な定年制に縛られてしまうということでは具体的な議論が進まないのじゃないか、このように申し上げたわけでございます。現に、最近言われておりますように、労働力がかなり逼迫しております。したがいまして、例えば高齢者の雇用の問題にいたしましても、再雇用あるいは別途契約による雇用というものがかなり進んで見られるのが現状でございます。
そういう具体的な高齢者の雇用のあり方は、形なり条件なりというものにつきまして、例えば選択制の定年制度というふうなこともあり得るでございましょう。あるいは賃金の配分、そういうシェアリングに基づく賃金ダウンと引きかえに雇用の確保ということもありましょう。あるいは労働時間が非常に短目な雇用形態もあり得ましょう、そういうことにつきましては、いわゆる今までの定年制という非常に画一的、個体的な考え方から離れて、労使でいかなる雇用形式にするか、雇用条件にするか、枠組みとは別の実態問題として労使が時間をかけて合意を形成していく、これは当然現在の現場においても受けとめられる考え方であろう、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/66
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067・畑英次郎
○畑委員 最後に橋本公述人にお伺いするわけであります。
先ほどこの改正案につきまして大方御賛同いただいたわけでございますが、その中で国庫負担をふやすという問題。私の受けとめ方は、軽々にすべきではない、あるいはまた全体の将来展望の中でそういう余地があるならばそれなりの前向きの考え方も必要であろう、私はそういうふうに受けとめさせていただいたわけでございます。私どもやはり年金制度の現在の仕組みを尊重しながら、数理計算に基づいてそれなりのものを五年なら五年、あるいはまたきちっとした保険料の改定等々をやっていく、こういう姿の方が将来にわたる責任の持てる姿かたちであろうかと私は考えるわけでありますので、この国庫負担の考え方について、もう一度さらに具体的に御意見がございましたら述べていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/67
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068・橋本司郎
○橋本公述人 年金制度の安定感というのは、やはりきちんとした対応をすることにあるというふうに思います。私、公的年金はもうもらえないのではないかということを若い人によく聞かれることがあります。私はいつも答えるのですが、もらえないかもしれないよ、それはちゃんとした対応をしなければそうなる、日本ではそうならない、ちゃんとした対応をすると思うので公的年金は大丈夫だよというふうに言っております。
年金の原資には国庫負担と保険料、それしかないわけですから、保険料が限界に来れば国庫負担の支出増を願わなければならないという事態も当然考えられると思います。ただ、その場合には、年金のための国庫負担の原資が一体どのくらい必要になって、それをどういう形で国民の皆さんにお願いするのが公平で安定したやり方であるかということとセットにして考えないといけない。既に基礎年金に対する国庫負担は三兆円に近づこうとしております。これが将来七兆円近くなるだろう、今のままでいってもそうなる。それを二分の一にすれば、あるいは三分の二にすれば一体どうなるのかという将来展望をきちんとした上で、その国庫負担をどう使っていくかということをきちんと考えて設計しないといけない。ただ国庫負担があるからということだけでは、とても私は納得することはできないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/68
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069・畑英次郎
○畑委員 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/69
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070・伊吹文明
○伊吹委員長代理 次に、金子みつ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/70
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071・金子みつ
○金子(み)委員 公述人の皆様にはまことにありがとうございます。
ただいまから、大変短い時間でございますので十分なことにはならないかと思うのでございますが、また、公述していただきます皆様方も不十分な時間で残念だというお感じがおありになるかと思いますけれども、できるだけ手短に質問させていただきますので、お考えを聞かせていただければありがたい、そのように考える次第でございます。
まず、小林公述人にお尋ねさせていただきます。
保険料の引き上げの問題なのでございますけれども、今度の改革案で保険料が引き上げになるという予測になっておりますが、大変に危険性があるというふうに私自身は考えます。なぜかと申しますと、現状でも今免除されている人は一二%ございますし、滞納している人が一六%あるということでございますね。したがって、その保険料をさらに引き上げていきました場合には、脱落者はもっともっとふえるのじゃないかという心配がございます。そうしますと、先ほど来お話がございますように完納してなければ年金は受給されないということになりますと、無年金者が出てくる数がふえるのじゃないかという心配があるのでございます。
そこで御意見をいただきたいことがあるのですが、この前の年金制度の大改革が行われて基礎年金制度ができましたね。あの基礎年金制度が生まれまして、そして、この部分の財源というのはかなり大きなものがあると思うのですが、これは当然国が手当てをしなければならないところだと思うのです。一つの意見でございますと、これを今問題になっております間接税の消費税で賄えば、国民年金や厚生年金の保険料は上げなくても済むはずだという御意見があるわけでございます。政府は消費税の導入の大きな理由を高齢社会への対応だというふうにも言っておりますから、そういう意味からいいましてもここに使うのがいいのじゃないかという御意見が一つございますけれども、このことについてどのようにお考えでいらっしゃいますかということが一つでございます。
いま一つは保険料の負担の件ですが、現在労使の関係では折半になっておりますね。これを、将来無年金者が出てこないようなことにするためにも負担率を変えていく。例えば労働者側四、使用者側六とか労働者側はさらに進めて三、使用者側は七というぐあいに負担率を変えていくという方法があるのじゃないかと思いますので、その二つの点をお聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/71
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072・小林清
○小林公述人 免除者あるいは脱落者、これもいわゆる国民年金サイドの問題の御指摘であろうと思うわけでございますが、これは従来から議論されておりますように、公的年金の性格につきまして国民的な認識を十分深めることによりまして、そういう脱落のないようにする以外はないのじゃなかろうか。厚生年金につきましては、仕組み上、取り漏れと申しますかそういうことはないわけでございます。
それから、先生御指摘の基礎年金についての国庫負担の問題をどう思うかということでございます。年金審議会の議論の中においてもあったわけでございますけれども、基本的な制度の枠組みといたしまして、現在国庫負担をふやす、ふやさないという議論は、全般的な国家財政云々の問題から飛びつくわけにはいかないのじゃなかろうか、もちろん将来国家財政が許せばということでございますけれども、そういう負担の軽減等につきまして国庫の負担増があることはむしろハッピーなことであろう、このように思うわけでございますが、制度としてはということで申し上げますと、それを予定してというわけにまいらないのじゃなかろうかと思います。
それから労使の折半負担の問題でございます。これは前回の改正のときも審議会の中では大きな議論があったわけでございますが、やはり年金制度は労使双方にとっての自助努力というふうな基本的性格を持っておるわけでございますから、これは折半であることが極めて妥当であろう。西欧諸国の例におきましても、確かに三、七とか四、六というふうな負担割合からスタートした諸国もあるわけでございますけれども、最近の情勢ではほとんどが折半、五、五に近くなっておるというふうなことも、私どもそういう傾向を支持するというふうなことで是認しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/72
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073・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。それでは、先に行かせていただきます。
次に、山崎先生にお願いいたします。
お尋ねしたいと思っておりますことは、今回の年金の支給開始年齢の問題でございます。今回支給開始年齢が六十歳を六十五歳に引き上げるということで大変に問題になっている、焦点になっている点でございますけれども、今、日本の企業では六十歳定年を実施しているところは五八%ぐらいだろうというふうに私どもは承知いたしております。まだ半分ちょっとぐらいというところでございますね。仮にもしこれが全企業が六十歳定年を実施する時期が来た、そういうことがあったと仮定いたしまして、それでも六十五歳までの間の問題が疑問として残るわけでございますね。六十歳定年になっても、年金支給開始は六十五歳ですから、五年間という間があきますね。ここが問題になるわけでございますが、この間の稼得保障が何もないままでは、大変に強い不安と不満とが起こってくるのは当然のことだろうというふうに思うわけでございます。
先生御承知だと思いますけれども、ILOの百六十二号の勧告では、この間の問題をどうしたらいいかというサゼスチョンがなされているわけでございますね。こういうことが一応ILOでは勧告として出されているわけでございますけれども、日本の場合は、今のような制度に改めようとするのならば、本来なら積極的な高齢者雇用計画というものが同時になければいけないというふうに思うわけでございますけれども、それが示されていないわけですね。
そういたしますと、例えばスウェーデンを初めとする北欧ですとか、あるいはフランスその他の西欧諸国が実施しておりますいわゆる部分就労・部分年金というのがございますね。そういう制度、手法がございますけれども、この手法は日本に取り入れることは可能かどうかという問題ですね。それから、もし取り入れる可能性があるとするならば、どのような形にして取り入れればできるだろうかということをお考えになっていらっしゃるかどうかということ、あるいはもし可能性がないとするならば、別の手段としてどのような手法が考えられるかということを考えていらっしゃるといたしましたら、ぜひお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/73
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074・山崎泰彦
○山崎公述人 六十から六十五歳の間の雇用の確保をどうするかという点につきまして御質問いただいたと思っております。
私が先ほど申しましたように、今考えておりますのは、六十歳以降高齢者を雇用する企業とそうでない企業との間で相当な保険料の差を設ける、これは企業間で当然なすべき公平化措置だというふうに思っております。つまり、そういった施策を年金制度で行う、さらに労働省サイドでも行う、そういった形で強力な雇用対策、しかも有効性のある雇用対策を推進することが当面最も大事なことだというふうに思っております。単なる計画ではだめだというふうに思っております。
それから、後でお話しになりました部分就労・部分年金のことでございますが、私はどうもよくわからないわけでございます。先生がどのような具体案をお示しになっているかわかりませんが、一般的には要するに短時間労働で少ないなりにもある程度の賃金を得る、そして一部年金で補足する、こういうことだと思いますが、実は今の年金制度でいいますと、短時間労働ですね、六十歳以降短時間で働いている方は、厚生年金の適用を受けていないはずでございます。
〔伊吹委員長代理退席、粟山委員長代理着席〕
例えば、週三十四時間未満というふうな人になりますとパートでございますから、これは厚生年金の適用を受けていないわけです。ですから、現実に今の日本では短時間就労する人は、部分就労でしかも部分年金ではなくて、全額年金を受けているわけです。六十から六十五歳の人で短時間労働に従事している人は、部分年金ではなくて全額年金を受けているわけです。ですから、考えようによれば、スウェーデン等よりもはるかに就労に対するインセンティブがあるというふうに私は考えています。
あと、通常の勤務をなさる方につきましては、現在の日本の厚生年金の在職老齢年金が事実上、部分就労ではないのですが、低賃金に対しては一定の年金の補足を行っている、こういう形になっているというふうに私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/74
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075・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。時間が大変に切迫しておりますので先を急ぎまして失礼いたします。
最後になりましたけれども、橋本公述人にお願いしたいと思います。実はちょっと時間がないので御回答いただくのにも無理かと思いますが、将来の年金の財政とそれから保険料率の関係のことをお尋ねしたいと思います。
政府は、御承知のように、支給開始年齢を六十五歳にしないと二〇二〇年になったときに厚生年金の保険料率が三一・五%になると言っておりますね。そして、この三一・五%は動かしがたいものだというふうな考えで物を言っているようでございます。しかし、この三一・五%というのはさまざまな要因があって、必ずしも三一・五%は動かないものではなくてさらにそれは変わる。例えば、女性の就業率が高くなるとかあるいは国庫負担のことも考えるとか、いろいろあると思うのですけれども、そういったこととか就業率は変わってくるだろう。そうすると、必ずしも三一・五%ではなくて、午前中の公述人でいらっしゃいました丸尾先生なんかの御意見ですと、一ないし三%は下げられるのではないだろうかというふうな御意見もあったのですが、その点先生どのようにお考えでいらっしゃいましょうか。大変時間が短くて恐縮でございますけれども、一言お考えを述べていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/75
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076・橋本司郎
○橋本公述人 財政再計算のデータ、大抵高位、中位、低位、三つぐらいの計算をして、普通発表されているのはその真ん中の部分なんですね。ですから、いろんなデータでいろんな予測をしていると思います。そして、おっしゃるように場合によっては女子の就業率が非常に高くなって、被保険者の数が非常にふえるというような状況になれば、あるいは保険料率は下がるかもしれません。しかし、これはすべて予測のことなので、今最も妥当と思われるデータを入れた予測ということでやっているというふうに思うのです。ですから、もし御必要ならば、その点について十分委員会で御論議いただけると大変ありがたいというふうに思います。ただ、これまでのここ数回の財政再計算の結果と、五年後に行われた再計算とずっと今まで比較してまいりますと、全部厳しい方に軌道修正になっています。今まで楽になったという状況は一回もないのです。ですから、私は三一・六%ももっと厳しくなるという状況も頭の中に入れなければいけない、むしろそっちの方を心配しながら考えていかなければいけないんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/76
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077・金子みつ
○金子(み)委員 ありがとうございました。時間になりましたので、ここで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/77
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078・粟山明
○粟山委員長代理 吉井光照君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/78
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079・吉井光照
○吉井委員 本日は、公述人の先生方には、当委員会に御出席をいただきまして貴重な御意見の開陳をいただきまして、本当にありがとうございました。
まず、小林公述人にお尋ねをしたいと思いますが、高齢者の雇用政策につきまして、六十五歳支給と連動する形で六十五歳定年制など継続雇用の確保ということが問題になっております。六十五歳支給の導入が六十五歳定年制やまた再雇用等、いわゆる高齢者雇用の拡大に貢献できるとお考えなのかどうか。先ほどからいろいろ議論もございました。六十歳定年の定着率も現在六一・九%ですか、こうしたものが果たして一〇〇%に定着できる可能性があるのかどうか、そういった点もひとつ経営者としてのお立場から御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/79
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080・小林清
○小林公述人 定年制なくして高齢者雇用が一〇〇%確保できるかどうか、こういうふうな御指摘と承ってよろしゅうございましょうか。
雇用を継続することと定年制というものとをタイトに結びつけることは、現在の定年制をめぐる議論というものがかなり長く固定的に行われておる上に立ちますと、これは非常に危険性があるだろうと私は経営におる者の立場として思っておるわけでございます。しかしながら、現実といたしまして、実際の雇用の場の提供、これは非常に重要なことでございますので、それぞれの雇用形態なり、あるいは産業特性なり、あるいは高齢者個々人の特性がそれぞれございますから、それに応じました雇用の場を、企業といたしまして定年制ということではないやり方をもちましてこれを開発することは必要であるし、また、方向といたしましても、現在そういう方向に動きつつあるということは申し上げてよろしかろうと思うわけでございます。
こういう雇用の場の開発なり、あるいはその必要性、ニーズの政策的課題なり、そういうものにつきまして政府側が大いに御努力願い、具体的な問題につきましては個別労使の中でいろいろ条件、形態、それぞれ真剣に話を詰めまして雇用の場を広げていく、そういうことが必要であろう、このように思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/80
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081・吉井光照
○吉井委員 次に、事業主のいわゆる負担の見直しですね、これについて若干お尋ねをしておきたいのですが、現在厚生年金の保険料負担が一二・四%、これが労使折半という形になっておるわけですが、今度の改正案によりますと、これが五年ごとに二・二%ずつふえていく、そして、将来の負担可能ないわゆる成熟期の保険料を二六%程度にする、こういうことになっておるわけです。将来の若年労働者のいわゆる負担増を考えた場合に、使用者の負担割合の見直し、先ほど公述人はヨーロッパ各国の負担率をいろいろお述べになりましたが、やはりこうした負担割合の見直しも考えていかなければいけない。いわゆる使用者の負担割合ですね。こういう意見も最近非常に出始めているわけですが、どのようにお考えになっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/81
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082・小林清
○小林公述人 私の意見といたしましては、企業は高齢化社会に向かいまして、このほかにももろもろの大きな負担を余儀なくされるわけでございます。労使折半の保険料、これが将来膨大なものになることは先生御指摘のとおりでございまして、いろいろ企業の活動の活性化、そういうものにつきまして、膨大な負担が非常に障害になることは申すまでもありません。したがいまして、この三一%云々ということを極力引き下げていくということは当然でございますけれども、その際にこの五〇%、五〇、五〇の折半比率をより経営側の方に、使用者側に持たせるということにつきましては、そういう総労務費が非常に膨大になりまして企業の活力を失わせるというふうなことから申しまして、従来どおり、本質どおり五〇、五〇というのが妥当であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/82
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083・吉井光照
○吉井委員 では次に、山崎公述人にお尋ねしたいと思いますが、二十一世紀に向かって、その社会保障としての年金の役割、そして位置づけ、非常に大きい漠然としたような問題かもしれませんけれども、これをどのようにお考えになっておるか。先ほど若干意見を公述されたわけですが、もう少し、御意見がありましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/83
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084・山崎泰彦
○山崎公述人 二十一世紀の社会保障としての年金の位置づけという御質問でございますが、一つ、私先ほども申し上げたことに含まれていたかと思うのですが、年金が単なる従来の年金であってはならないというふうに考えています。今保健医療、福祉の分野では、総合化あるいは統合化、一体化と言われているわけなんでございますが、今後は年金も含めて、厚生行政といいますか、社会保障行政の総合化を図らなければいけない。年金が単に保険料を納めて従来どおりの給付をするだけでなくて、例えば、私が申し上げましたような介護対策にも真剣に取り組むというふうな努力が必要だと思います。
そうすると当然、新たに介護対策に取り組むということになりますと、それに伴う費用負担の増加があるわけですが、例えば、今問題にされています医療の面で、私自身は、お年寄りの長期入院につきましては、社会的入院と言われているような方々につきましては、少なくとも生活費相当分は負担していただきたいというふうに考えているわけでございますが、その場合の負担を年金できちんと払っていただくというふうな関連のつけ方もあるわけです。
ですから、年金の財源を食うわけでございますけれども、それを通して医療費の適正化なり医療の質の向上なりあるいは在宅ケアが進むというふうな連関を考えますと、年金の負担増が、全体としては社会保障の効率化、場合によれば、上昇する費用の軽減に寄与するという効果も考えられるように思います。いずれにしましても、年金が加わって厚生行政なり社会保障行政の総合化を図らなければいけない、こういう時期に差しかかってきているように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/84
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085・吉井光照
○吉井委員 もう一点、いわゆる給付水準の適正化ということについて御意見をお伺いしたいのですが、今回の改正で政府は、現役の男子の平均標準報酬月額の六九%程度、将来においてもこの水準は確保していきたい、このように言っているわけですが、先生はこの適正水準についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、ちょっとその点をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/85
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086・山崎泰彦
○山崎公述人 適正水準といいますのは、実は標準報酬月額の六九%というのは余り根拠のない数字じゃないかなというふうに私は思っております。先ほども申し上げましたように、高齢世代と現役世代とは租税、社会保険料負担が違うわけでございますから、やはりよく言われます手取りと手取りの比較あるいは消費水準の実質的なバランスをとるという考え方にしていかないと、今のままでは、この六九%という水準の設定の仕方のままでは給付水準が非常に過剰なものになっていく。将来に向かってはそういう可能性を残しているというふうに思います。ただ、そう言いますと給付水準の切り下げかと言われかねないのですが、そうではなくて、本当に高齢世代と若齢世代の実質的な消費水準の均衡を図るという観点を入れませんと、若い世代に対して非常に重い負担をいずれにしても求めることになりますから、その重い負担についての合意は得られないのだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/86
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087・吉井光照
○吉井委員 それでは最後に、橋本公述人にお尋ねをいたしますが、将来におけるいわゆる公的年金と個人年金の役割についてでございますが、御承知のように昭和二十年から二十六年生まれのいわゆる団塊の世代が現在一千百万人、この人たちが六十五歳に達する二十一世紀初頭にはいわゆる超高齢化社会が到来するわけでございます。そこで、この人たちが考えておることは、将来東京あたりでマイホームを持つことはもう夢の中の夢である、負担だけは着実にふえ続けて、そして年金も余り期待できないのではないか、こういう考えが非常に強いようでございます。そのため、個人年金によるところの自己防衛策、これをとっているのが現状ではないかと思います。こうした公的年金に対する信頼を回復するには、所得保障としての公的年金が個々人の生活設計にどの程度の役割を担うべきであるか、また個人年金の役割はどうあるべきなのか、ここらの点についてひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/87
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088・橋本司郎
○橋本公述人 個人年金と公的年金との関係ですが、公的年金はあくまでこれからの社会における老後の生活を賄う中心になるものであろうというふうに思います。今後ともそうなければならないというふうに思います。そして、個人年金というのはこれを補完するものだ。つまり、公的年金だけで豊かな生活ができるというような給付はもうできないということはわかっておりますので、山崎先生もおっしゃったように、場合によるとある程度絞っていかなければならぬかもしれないというふうな状況であります。ですから、個人年金はそれを補うものだというふうに考えていくべきではないか。個人年金をしっかりさせれば公的年金は要らない、そういう関係には決してならないというふうに思います。また、そういうふうにすべきではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/88
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089・吉井光照
○吉井委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/89
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090・粟山明
○粟山委員長代理 塚田延充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/90
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091・塚田延充
○塚田委員 本日は、各公述人の皆さん方本当に御苦労さまでございます。時間の制約から十分なお話を聞けなくて残念な面もございました。その中で、時間の制約から割愛されたと思いますが、公的年金の制度間調整の問題でございます。
特に、これは鉄道共済年金及びたばこ共済年金に対しまして財政調整を行わなければいけないというような趣旨の法律になっております。これにつきまして、各公述人からそれぞれ簡単に御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/91
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092・小林清
○小林公述人 公的年金各制度間におきまして給付なり負担なり、そういう両面にわたります公平性を確保していくこと、これは今後の産業構造の転換であるとか就業構造の変化であるとか、そういうことを考えましたときに非常に大事なことであろうというふうに思つております。,
そういうことから、今後、年金制度全般としての公平、信頼感を確保するために今回の制度間調整が、前回基礎年金の導入などの改正が行われたわけでございますが、それを踏まえまして公的年金一元化に向けての措置である、このように理解しておるところであります。現在、日本鉄道共済の問題が現実に解決を迫られておる問題として存在しておりまして、この点につきましても公的年金に対する全般的な信頼感を損なわないような措置が必要であるし、今回の費用負担の調整につきましては現実妥当な線であろう、このように考えております。
ただ、率直に申しまして、厚生年金のサイドにおきまして、鉄道共済が今日のような事態に立ち至りました原因なり、あるいは日本鉄道共済自身の自助努力がいかほどであっただろうか、そういうところが十分理解されていない、あるいはわかりにくい点も多々あった時期がございまして、十分納得できないという雰囲気があったことも事実でございます。したがいまして、今回の調整措置によりまして、結果的に支援するサイドに回ります保険者の納得が今後とも得られますように、日本鉄道共済自身の自助努力が今後とも十分行われることが最も大切なことではないであろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/92
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093・山崎泰彦
○山崎公述人 基本的には、前回の改正で基礎年金という形で一階部分の調整をしたわけです。これはよく言われていますように、産業構造の変化によって成熟度が異なる、その影響を断ち切る、こういう趣旨でございます。したがって、二階部分についても同様なことが言えるわけで、基本的には制度間調整は避けられないといいますか、公平化措置として行われなければいけないというふうに私は考えております。
ただ、一階部分の基礎年金と若干合意が得がたい部分があるとすれば、基礎年金については給付を完全に統一したわけでございます。ところが、今回の二階の調整というのは、将来に向かっての中間段階の調整だ、暫定的な措置だというふうに理解しておりますが、給付はそのままで、厚生年金の老齢厚生年金相当部分について調整を行うという、相当部分なんというのは一般の人にはなかなかわからないわけでございます。しかも共済は、JR等につきましては相当厳しい措置をとっておりますが、一般的に共済は三階部分を持っているわけでございます。できるなら早目に給付についてもきちっとした制度間の調整といいますか、統一を行った上で費用負担の調整を行うというのがわかりやすい、理解の得やすいやり方ではないかなと思います。
それから、JR等の自助努力ということがよく言われるのですが、私は非常に不思議に思っているのは、例えば厚生年金、国民年金につきましては、こちらの国会で給付も負担もお決めになるわけです。ところが共済につきましては、給付は国会でお決めになって、掛金については組合が自主的にお決めになるということでございまして、そういう意味では、JRの過去を振り返ってみますと、どうも自助努力が足りないといいますか、これは国の責任というよりも事業主、組合も含めた責任があるように私は考えております。厚生年金、国民年金と同じように給付を国会でお決めになるのなら、掛金についても最低限のものはお決めになって、あと厚生年金を上回る部分については組合が自主的にお決めになる、これが本来のあり方ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/93
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094・橋本司郎
○橋本公述人 国鉄問題ではここ十年以上かかずらわってまいりましたので、状況はよくわかりますけれども、今度の制度間調整法は、年金一元化へのステップという意味でまあよかろうということなのですが、年金一元化がなぜ必要なのかということになりますと、厚生年金サイドから見れば全く意味不明である。要するに、結果論からいってもあるいは原因からいっても共済を助けるためではないか、なぜそれが必要なのか、これは厚生年金サイドから見れば、とても理解できることではないと思うのですね。
しかし、現実の問題としていろいろな問題が起こってきてしまっています。それは国の責任だという言い方がされ、場合によると満鉄以来のというふうな非常に誤ったことさえ言われておる。満鉄の問題なんというのは、はるか昔に全部解決が済んでしまっていることですから、それを今さら言ってみたって話にも何にもならない、非常に間違ったことです。こういうふうな程度の認識が一般です。
非常に粗っぽい言い方なんですけれども、私の感じとしては、とにかく公的年金の一つをつぶすことはできない。来年の恐らく二回目の支払いから不能になると思いますので、それを放置することはできない。ということになりますと、今度の制度間調整法は、年金一元化という旗印によってやっと理論づけをした非常に無理な制度である。しかし、皆さんがそれでいいとおっしゃるなら、それならそれでもいいではないか。これをもう一度根っこの理論にさかのぼって議論を始めたら全部瓦解してしまうという程度の、非常に難しいバランスの上に立っている。国鉄労使の責任というのも、先ほどお話も出ましたけれども、いろいろなことがありますので、そういうことを今さら一つずつ言っていったらこれはどうにもならぬ。まあ御賢察をお願いしたいというのが率直な気持ちであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/94
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095・塚田延充
○塚田委員 率直な御見解、ありがとうございました。
次に、給付水準でございますけれども、現役の標準報酬月額の六九%を今後とも維持していくという目標のもとにすべて議論が進められております。これにつきまして、この六九%という数字が妥当なのかどうか、どう考えたらよろしいのか、行き過ぎなのか、それとももっと厚くすべきか。この件につきまして小林公述人と橋本公述人の御意見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/95
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096・小林清
○小林公述人 正直申しまして、前回改正時代からこの議論はあったわけでございまして、もう少し切り下げることが可能であるならばやるべきではなかろうか、そういう問題意識は個人といたしましては持っておるわけでございます。
ただ現実、支給水準というものを今後の生活水準なりあるいは賃金水準との絡みで一定に、安定的に保つというのが公的年金の役割であるということに照らしますならば、現実ある、しかもこの前落とした水準にしたわけでございますから、これをさらに切り下げるということは現実的な解決ではなかろうな、こういう感じを私は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/96
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097・橋本司郎
○橋本公述人 年金水準が高過ぎるかどうか、あるいは低過ぎるかどうかということだと思うんです。今厚生年金の平均が月額で約十三万円ぐらいになっていると思いますが、これは西ドイツの年金と比べても決して劣るものではないという水準であると思います。ただ問題なのは、平均十三万円で将来的には十九万円程度ということになりますが、その場合でも、多い人はもっと多い、少ない人は少ない。例えば厚生年金の加入期間が短いと、一定のルールで計算される年金は非常に低いものになってしまうという事情もあるので、一概に六九%がどうかということはなかなか難しいのではないか。
ただ、将来的に考えますと、はっきり言いまして二十何%はどうしても避けられないという高保険料になる、それから、老人保健への拠出も含めまして、医療保険の保険料の負担も非常に高くなる、若年労働者の年金保険料、健康保険の保険料及び税、これを考えますと、今の六九%のままでは、将来的には私は率直に言って難しいのではないかという印象を持っております。ただ具体的に、どういう引き下げ方をしたらいいのかというところまでは、まだ目下のところはっきりした答えを持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/97
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098・塚田延充
○塚田委員 政府側では、保険料の負担率を二六%に抑えたいんだという考え方で今度の法案を提案してまいりましたが、この二六%でも負担としては高いんだという御意見もあるようでございます。これにつきまして、小林公述人と山崎公述人の御意見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/98
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099・小林清
○小林公述人 確かに若い人たちのよく議論すること、先生おっしゃるように少し過大ではなかろうかという議論があることも事実でございます。しかしながら、まさに高齢化社会の問題はそこにあるわけでございまして、やはり後代の若い人たちに我慢できる、納得できる線とぎりぎりのところは何であろうかということになりますと、やはり一つの基準というものが片一方になければいかぬだろう、その基準は、先進諸国を現在の日本型に引き直しました場合の二四、五%というのが一つの基準になるであろう、そういうところで、長い時間をかけてそこへ持っていくんだから、ひとつそれぞれ心の準備をし、納得できる方向で受けとめていただきたい、こういうことではなかろうか、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/99
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100・山崎泰彦
○山崎公述人 六十五歳に引き上げたとして二六・一%という数字が出ておりますが、恐らく次の財政再計算をすると、六十五歳に引き上げてもまた三〇%近くなるという可能性が非常に強いと思います。これは先ほど橋本先生がおっしゃったように、いつも悪い方に悪い方に結果として出ているということなんです。
基本的に出生率が低下した。我々の親は四、五人子供を産んでいた、我々は二人も産まないわけです。ですから、子供の数が、一世帯当たりで考えても、一夫婦当たりで考えても、半分に落ちているわけでございますから、そういう意味では家族扶養を社会化したのが年金制度であるというふうに考えますと、負担が二倍かもう少し上がるのは、これはどのようなやり方をとっても避けられないことだろうと思うわけです。だから、本当の意味での年金制度の長期的な安定を図るということであれば、子供を産みたい人が安心して産め、しかも子供が健やかに成長できるような社会をつくることに今から全力を挙げないと、高齢化、高齢化と言っているだけでは解決できない、そのような感じがしております。
それからもう一点は、将来いずれにしても負担率は上がるわけですけれども、私は、負担というのは給付との見合いで考えるべきだというふうに思っています。厚生年金の保険料率は三十年前は三%でした。それが今一二・四%で、今度一四・六%という提案がされているわけです。四倍を超えて五倍近くなろうとしているわけです。年金制度はつぶれていませんし、経済の活力は損なわれていないわけです。
それはなぜかといいますと、我々の親が相当な年金を受け、ある程度経済的には恵まれた生活をしているわけです。そういう年金制度の成熟というものが若い世代の年金意識を高め、したがって、拠出意欲を高めてきたというふうに考えております。過去三十年間に五倍近く保険料が上がってきた、しかも、だれも負担はしたくないのですが、ある程度許容してきた、このことを考えますと、今後ますます年金制度は成熟するわけでございます。年金の給付費が上昇するということは、それだけ社会に年金を受けている人がふえるわけでございます。そういう年金の成熟化の中で、ある程度、負担増というものも次第に許容されてくるのではないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/100
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101・塚田延充
○塚田委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/101
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102・粟山明
○粟山委員長代理 児玉健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/102
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103・児玉健次
○児玉委員 どうもきょうはありがとうございます。
最初に小林公述人にお伺いしたいのですが、公述人は日鉄溶接工業株式会社を経営していらっしゃるというふうに承るのですが、先ほど、雇用慣行との関係、終身雇用制の問題などについて最初にお話がございました。十月二十四日に日経連が出した高齢化問題研究委員会中間報告、その中で雇用延長が無理だと思われる業種についての指摘がありまして、精密、微細加工、組み立て検査、車両組み立て、そして乗務員、こういうふうに列挙されております。
先日私、新日鉄に行きまして、現場の労働者から、六十五歳の繰り延べどころでなく、逆に五十五歳に引き下げてほしいんだというふうな声も聞いてまいったのですが、職種によっての雇用期間の実態、そういったものを事実上無視して六十五歳支給繰り延べというふうに一律にしていくと、この後、非常な疲労と集中力と精神的なさまざまなストレスが集まる職種についていえば、若い労働者が就労しにくくなるんじゃないかという感じさえするわけです。そのあたりについての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/103
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104・小林清
○小林公述人 日経連の報告につきましてはつぶさに承知しておらないわけでございますが、傾向といたしまして、確かに、若年者のときと同様な体力と意欲と技量が必要とされる職種につきまして、高齢者それぞれが非常に個別の差があるわけでございますから、それをそのまま、同じ職種に同じような形態で雇用せしめるということにつきましては、若干無理だと思われる業種があるということは事実ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
いわゆる定年制ということを私非常に気を使いながら申し上げておりますのは、現在、学説あるいは一般の意見は別にいたしまして、日本の労働慣行の中に定年制即従来そのままの延長である的なあれが非常に強いものですから、雇用を新しく切りかえるとか、あるいは就労条件を変更するとか、そういうことに関して弾力性が乏しいわけでございます。そういうことをケアして、雇用の確保即定年制の問題ではない社会が高齢者の労働の社会ではなかろうかという意味合いで申し上げておるわけでございます。
後段御指摘のありました、若い労働者がなかなか行きたがらない職種だってあるのじゃないか、こういうことにつきましては、これはもう、そういう職種あるいは企業のイメージを高めて若い人たちに理解してもらうような対策を、これは何も企業の問題だけじゃないと思います、労使が努力する以外に解決する道はないのじゃなかろうか、このように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/104
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105・児玉健次
○児玉委員 山崎先生にお伺いしたいのですが、先ほど年金の支給開始年齢とそれに連動する雇用政策の問題について御意見を伺いました。ここがやはり非常に重要なところだ、そう思います。そして、企業の側からと労働者の側からの六十五歳雇用に向けてのインセンティブの問題についてもお話があったわけです。
日本全体を大きくまとめて、そして、先ほどからお話が出ている、六十歳定年制の六一・七%云々、そしていまだに五十五歳以下が二一%ちょっとある、それも私は重要だと思うのですが、都道府県別の雇用状況の推移、六一・九%云々の資料とはサンプリングのとり方が違う資料を労働省が持っております。ことしの六月のものなんですが、六十歳以上定年を定める企業の割合が全国で一番低いのは青森県で、いまだに三九・三%、そして秋田四二・三%、山形四二・九%、そういったぐあいで、五〇%以下のところが八道県ございます。こういったところを全国と一視同仁にして議論するのは著しく実態から離れていくと思うのです。そういうところに対する特別な政策的な激励といいますか誘導といいますか、そういった点について先生はどんな御意見をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/105
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106・山崎泰彦
○山崎公述人 高齢者の雇用状況について著しい地域差がある、これについてどのような意見を持っているかということですが、今まで考えたことがありませんけれども、確かに御指摘のような事実があるんだろうと思います。
ただ、私の知り得る範囲では、農村地帯というのは、例えば、六十歳定年であっても五十五歳でやめることを希望する人が割といる、兼業農家の方が非常に多くてというふうな事実も一方に若干あるのかな。ただ、基本的には雇用の場がないということだろうと思うのですが、それに対してどうしたらいいかということは、私自身は特に年金制度でということになりますといいアイデアを持ち合わせておりません。恐らく労働省がやっている施策の中でかなりそういった対応が行われているのではないかという感じは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/106
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107・児玉健次
○児玉委員 突然の御質問で大変失礼でした。
労働省は、きめ細かな対策をすると言いましても、どんなきめ細かな対策なのかを明らかにできないような状況です。基本的には、日本の経済の集中の度合いといいますか、その点で著しい格差が生まれていて、そういったところが、六十歳定年制、そしてそれを六十五歳に引き上げていく議論の中で全く後景に退けられてしまう、それを私は危惧しております。
もう一つ先生にお伺いしたいのですが、大学生、大学院生、各種学校の学生などの国民年金への強制加入の問題です。
先ほど先生の言葉の中に、経済的に困難があるがゆえに下宿することができず遠距離通学を強いられている学生もいる。そういう学生は自宅通学ですから、言ってみれば免除制度の適用にはならない。そして、豊かであるがゆえに大学のすぐそばに親から別居している学生は免除の制度を受けるというあたりの御指摘というのは、私どもが一番この問題で痛感している点です。それで、この学生、大学院生等に対する特別な免除制度のあるべき姿について、ちょうど大学でいつも学生を扱っていらっしゃる、そういう立場からどんな御意見をお持ちなのか、その点伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/107
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108・山崎泰彦
○山崎公述人 学生だからといって、特に特別な免除制度を設けるというのはどうかなというふうに私は思っております。といいますのは、大学進学率が高まってきているとはいえ、やはり半分以上は高校なり中学を卒業して働いている方たちでございますから、そういった方たちとの公平性というものも一方で考えなければならないというふうに思います。今の制度のもとでは、例えば、年金制度の隣の医療保険制度におきましては、親元を離れていても生計維持関係を基本にして、親の健康保険に所属し、遠隔地証明を持って東京で医療を受けているわけです。つまり、基本的には親と生活維持関係があるということで、親の保険料で子の医療が提供されている、こういうことでございますから、年金もそうすべきだ。下宿、自宅通学ということで区別するのはおかしいのではないかというふうに思っています。
ただ問題は、年金をきちっとつけなければいけないという趣旨でございます。その場合に、老齢基礎年金についてはそれほど問題はない。問題は障害年金でございます。これは大学でも非常に困っておりまして、現在では私の大学ですと、サークルなどでは自主的に民間保険に入っている。それから、私は社会福祉学科でソーシャルワーカーの養成をしているわけですが、親の了解を得て、一年生に入ったときから四年分の障害保険に加入させております。それは、ボランティアだとかあるいは社会福祉施設での実習が相当長期にありますから、そういう場での事故というものを非常に懸念しております。
大学人として申し上げますと、障害年金だけは何としてもつけていただきたい。障害年金だけということになりますと、それに要する保険料は、先ほども申し上げましたように、私の試算では恐らく月額千円程度でございますから、千円程度であれば、学生について免除制度をどうこうという議論は特にしなくても十分に一律な、今の国民年金の一般被保険者と同じような形で保険料の徴収ができるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/108
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109・児玉健次
○児玉委員 重ねてお伺いしたいのですが、障害年金のみ加入とする。一つの御意見として非常に興味深く伺ったのですが、そもそもこの問題が出てくる基本的な問題として、日本の年金加入年月が四十年という非常に長い期間に設定されている。そこの部分からある意味では出てきた要素が強いんじゃないかとも考えるわけです。フルペンションは四十年だ。そうすると、いや応なしに二十歳から始めなければ間に合わないところがありますね。その辺についてのかなり根源的なメスの入れ方が必要だと私どもは考えておりますが、そのあたりはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/109
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110・山崎泰彦
○山崎公述人 今のお話は老齢年金についてのお話だと思います。二十から六十まで、普通生涯働く期間に一致しているわけで、これは資格期間ではございません。資格期間は二十五年で、ただし最高の年金額が出るのは四十年だということでございます。
ただ、学生の場合、どうしても卒業が二十二とか三になります。その点の御指摘だと思いますが、現在の制度では、既にその点についての対応策は考えられておりまして、六十歳以降任意加入することによって、例えば二年、三年加入漏れがある部分については埋めることができる。そういう余地を残しておりますから、問題は老齢よりも障害だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/110
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111・児玉健次
○児玉委員 最後に、遅くなって大変失礼でしたが、橋本公述人にお伺いしたいのです。
先ほど年金制度における任意加入の問題について非常に興味のある御発言がございましたが、今度の年金改悪法案の中で国民年金基金、とりわけ職能型の部分ですね。そこを橋本先生は全体としてどのように位置づけていらっしゃるか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/111
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112・橋本司郎
○橋本公述人 いわば私的年金の一種だというふうに考えればいいのではないかと思います。現在でも生命保険会社その他で私的年金をやっているわけで、年金の構成の仕方としてはそれと余り変わりないようなものになると思います。
ただ、私ちょっと気になっておりますのは、今でも本体の保険料も払えないという人たちにとっては高ねの花であるという点です。しかし、これは厚生年金にも厚生年金基金があります。それから税制適格年金もあります。中小企業ではそれらがなかなか得られないというふうな事情もあります。努力できる者に努力の場を開くということ自体は、僕は悪いことではないと思うのですけれども、これはもう社会保障の部分ではなくて自助努力の部分であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/112
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113・児玉健次
○児玉委員 終わります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/113
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114・粟山明
○粟山委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
これにて公聴会は終了いたしました。
次回は、来る二十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604423X00119891127/114
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