1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成元年十一月十五日(水曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 大塚 雄司君
理事 粟屋 敏信君 理事 大坪健一郎君
理事 大原 一三君 理事 桜井 新君
理事 井上 普方君 理事 薮仲 義彦君
江口 一雄君 衛藤征士郎君
金子原二郎君 木部 佳昭君
古賀 誠君 佐藤 守良君
椎名 素夫君 田村 良平君
中島 衛君 穂積 良行君
大原 亨君 菅 直人君
辻 一彦君 中村 茂君
小谷 輝二君 中村 巖君
森田 景一君 安倍 基雄君
辻 第一君 中島 武敏君
出席公述人
横浜国立大学教
授 成田 頼明君
財団法人建設経
済研究所常務理
事 長谷川徳之輔君
日本大学教授 田中 啓一君
全日本民間労働
組合連合会副事
務局長 河口 博行君
社団法人全国宅
地建物取引業協
会連合会会長 中村 俊章君
上智大学経済学
部教授 岩田規久男君
出席政府委員
国土庁長官官房
長 北村廣太郎君
国土庁土地局長 藤原 良一君
委員外の出席者
土地問題等に関
する特別委員会
調査室長 若杉 公朋君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
土地基本法案(内閣提出、第百十四回国会閣法第六一号)
国土利用計画法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百十四回国会閣法第六二号)
土地基本法案(伊藤茂君外三名提出、第百十二回国会衆法第一五号)
国土利用計画法の一部を改正する法律案(大出俊君外八名提出、第百十一回国会衆法第一号)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/0
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001・大塚雄司
○大塚委員長 これより会議を開きます。
第百十四回国会、内閣提出、土地基本法案、第百十四回国会、内閣提出、国土利用計画法の一部を改正する法律案、第百十二回国会、伊藤茂君外三名提出、土地基本法案及び第百十一回国会、大出俊君外八名提出、国土利用計画法の一部を改正する法律案の各案について公聴会を行います。
この際、御出席をいただいております成田公述人、長谷川公述人、田中公述人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会の審査に資するところ大なるものがあると存じます。各公述人におかれましては、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
御意見を承る順序は、まず成田公述人、次に長谷川公述人、続いて田中公述人の順序でお願いすることといたします。なお、御意見はお一人二十分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、成田公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/1
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002・成田頼明
○成田公述人 ただいま御紹介賜りました成田でございます。現在、横浜国立大学の方で講義を担当しておりますが、私の専門は行政法でございますので、本日は主として法政策的な観点から御意見を申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。
私は、土地臨調の答申に基づきます総合土地対策要綱ができました際に、ある雑誌に寄稿いたしまして、これは閣議決定だけでは非常にもったいない、むしろ土地基本法をつくるべきである、こういう提言をいたしたことがございます。
続きまして、亡くなりました林修三先生が主宰されております土地基本法懇談会の末席を汚しまして、そこで土地基本法についての原案の審議に関与させていただきました。
そういったいきさつから申しまして、今回この土地基本法が実現するに至りましたことはまことに喜びにたえないことでございまして、基本的には大賛成でございます。野党案も提出されてございます。拝見いたしましたけれども、できれば可能なところは調整、妥協をなさいまして、ぜひ今国会でひとつ成立をお願いしたいというふうに存ずる次第でございます。
申すまでもなく、土地基本法というのは宣言的な法律でございます。したがいまして、その制定、施行によって直ちに即効的な効果が生ずるものではございません。即効的な効果はないわけでございますけれども、漢方薬のようにじわじわ効いてくる、こういう性格のものであろうというふうに思っております。しかし、長期的に見ますと、この基本法は今後の土地対策を果敢に展開していく上で極めて有効なものになるだろうというふうに信ずる次第でございます。
どういう点で有効であるか、どういう点で意義があるかということを、以下数点申し上げたいと存じます。
まず第一は、日本の土地問題、あるいはべらぼうな地価の高さというものは、世界的に大きな話題になっております。御承知のように、最近はアメリカからも構造協議の中でこの問題が提起されるというふうなことになっておりまして、非常に深刻な問題になっているわけでございます。これに対して、やはり政府が本格的にこういう問題に取り組む姿勢があるということを基本法を通じて内外に宣明する、これによって土地対策に政策上の大きなハイライトを当てていくということは非常に大きな意義があるのではないかというふうに感ずる次第でございます。かつて日本では、世界に先駆けまして公害対策基本法というものを御制定になりまして、法制面では画期的な整備をなし遂げられたという先例がございますけれども、今回も土地政策面で、この基本法を機縁としてこのことをぜひ実現していただきたいというふうに思うわけでございます。
第二点は、立法、司法、行政の三権及び地方自治体の間に、従来ともしますと土地政策、土地問題についての完全なコンセンサスがなかったのではないかというふうに思われます。これまでは、各省庁が法案をつくるにいたしましても、裁判所が具体的な土地問題をめぐる事件を扱うにいたしましても、ともすれば高い私権の壁にぶつかりまして、もう一歩突っ込んだ施策というものが必要であるのにそれをためらってきたというふうな事情があると思います。こういったためらいが今回の基本法の制定によって吹っ切られることになるのではないかというふうに感ずる次第でございます。
第三は、これは申すまでもございませんけれども、国民の一部には土地私権への過剰な執着意識というのが非常に強く残っております。世間で申します土地神話というのがまだまだ強い力を持っておりますけれども、この土地神話を崩壊させることに役立つのではないかというふうに考えております。特に日本では、公共性ということを持ち出しますと、それに対して非常に強いアレルギーがあるわけでございまして、これは戦争中の強梅発動に対する非常に暗い記憶があり、公共性というとお上の利益のために私的な利益を踏みにじるのではないか、こういう考え方がまだ強くございますけれども、こういった考え方、特に土地に対する公共性というものについてのとらまえ方がこの基本法によってかなり変わってくるのではなかろうかというふうに思われるわけでございます。
第四は、何と申しましても事業者に対しまして、土地をめぐる公共性の拘束、あるいは土地をめぐる社会的責務、こういう観念を植えつけ、これらを醸成することに役立つのではなかろうかというふうに思うのでございます。
第五に、本法の基本原則に従いまして、いわゆる各省庁の土地をめぐる縦割り行政というものを総合調整するためにも、この法律は大きな力を発揮することになるのではないかというふうに思うわけでございます。
以上、全般的な評価を数点にわたって申し上げましたけれども、次に、土地についての基本的理念について若干のお話を申し上げたいというふうに存じます。
昭和六十三年六月十五日のいわゆる土地臨調の答申並びにこれを受けました総合土地対策要綱、そこでは土地について五つの基本理念を示しております。
これはもう先生方御承知であろうかというふうに存じますけれども、第一は土地の所有には利用の責務が伴うという原則、第二には土地の利用に当たっては公共の福祉が優先するという原則、第三には土地の利用は計画的に行われなければならないという原則、第四には開発利益はその一部を社会に還元し、社会的な公平を期するという原則、第五は土地の利用と受益に応じた社会的な負担は公平に負う、こういう土地五原則というものを示したわけでございます。
この五原則は土地に関する基本認識ともいうべきものでございますけれども、今回の基本法案ではやや形を変えまして、基本的には第二条から第五条にございます四原則に要約されているわけでございます。これは必ずしも後退というべきものではございませんで、土地臨調で十分に煮詰まっていなかったような議論を基本法懇談会で再吟味いたしまして、その結果そういうふうにまとめたらいいだろうということに相なったわけでございます。
同時に、土地取引の抑制というのが一つ新しい原則として、第四条につけ加わってございます。これは、ここ数年来の地上げ等の事業者の反社会的な行動パターンに対する非常に強い批判のあらわれであると思われます。
ただし、開発利益の社会還元と、利用、受益に応じた公平な負担の原則は、これは経済界の一部の反対等もございまして、最終的にはこの法案の第五条にございますように「価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担」というややあいまいな形になってまいりました。しかし、開発利益の社会還元の問題は非常に重要な問題でございまして、ここでは第十五条の税制によってこれを行うというふうな趣旨であろうとこれを読んでございます。ただ、開発利益の社会還元の問題というのは、これはいろいろ手法的にも、どういう手法をとってやるのかということについても非常に大きな難問がございますので、これは恐らく土地基本法が通過、成立しました時点で各方面で検討が始まることになるだろうと考えられます。
しかし、いずれにいたしましても、特に欧州諸国ではつとに確立されております一般社会通念としての土地に対する公共的制約、それから土地の計画に従った利用、土地に起因する不当な利得の否認、こういったものが今回の基本法によって宣言される意味は極めて大きいのではないかと考える次第でございます。
次に、今後の施策の方向につきまして若干お話をいたしたいと存じますけれども、この法律は、本来宣言的な法律であるということは御存じのとおりでございます。この基本法が制定、施行されることによって、直接国民の権利、自由というものを制限したりあるいは新しい義務、負担をすぐに課するというものではございません。そういった意味ではこれはセルフエグゼキュートのものではないということでして、具体的な執行をするためにはさらにいろいろな法令その他の措置が必要であろうと思われます。すべては今後の立法措置等によりまして、本法の示しております四原則をいかに生かすかということが問題であるわけであります。
特に最近感じておりますけれども、土地、住宅問題に対する国民の不安というものが、表面にはまだ出ませんけれども、やはり今問題となっております政治不信の非常に大きな背後にあるのではないかと思われます。ですから、国民の政治、行政に対する不信というものを解消する意味でも、この土地、住宅問題については、これから正面から取り組んでいくということがぜひ必要であると考えます。
そういった意味で、この法律の真価が問われますのは、これからの各省庁の新政策あるいは新規立法、既存の法令の活用あるいは運用、こういうものがどういうふうになっていくかということにかかわっているのではないかと思われます。特に本法の運用に当たりましては、公共の福祉の解釈をめぐって、やはり利益の厳正な比較考量というものを十分に行うことが必要でございます。特に自然環境の保全の問題あるいは社会的弱者の保護等に十分に配慮すべきものであろうと思われるわけでありまして、土地は利用の責務を伴うと申しましても、利用計画でここは使ってはいけない、保全目的であると決められております場合には、むしろそれを利用しないという責務を逆に負うということもあり得るのではないかというふうに考えるわけでございます。
本法に基づいてこれから展開されるべき施策につきましては、一般的、抽象的に列記されてございます。特に十一条以下にその規定が示されておりますけれども、今後はやはりこの基本法の施策、体系を具体的に展開していく必要があるだろうと存じます。
そういった意味で、早急にということはなかなか難しいだろうと思われますけれども、今後の一般的な立法課題のようなことを少し申し上げたいと存じます。これは学者の抽象論であり、机上の空論であるという前提でお聞きくだすって結構でございますけれども、ひとつ若干そういうことを御指摘申し上げたいと存じます。
まず十一条絡みのこの基本法の趣旨に沿った土地利用計画のあり方でございますけれども、これは先生方御承知のように、現在では土地利用、特に国民に対して拘束的な意味を持つ規制地域、これはいろいろな法律に散在してございます。これはやはり一元化を図るということが必要なのではなかろうかというふうに思うわけでございます。土地利用計画が非常にたくさんあった場合には、これは計画がないに等しいわけでございますので、できるだけ一元化に努めていくということがぜひ必要であろうと存じます。この場合には、もちろん策定主体の問題とか住民参加等を組み入れた策定手続の整備といったことがやはり必要になってくるのではなかろうかと思われます。
それから、土地利用計画の詳細化もここでうたわれておりますけれども、これにつきましては、例えば都市計画法あるいは建築基準法等のゾーニングの制度の見直しをいたしまして、もう少しきめの細かいスポットゾーニングでありますとか上空、地下も含めた立体ゾーニングあるいは地区計画制度のより一層の改善といったことが、土地利用計画の詳細化という問題をめぐっては、大きな立法課題になり得るのではないかと思われます。
それから、土地利用計画の広い区域を対象とする広域化につきましては、現在の都市圏レベルのリージョンを対象にした土地利用計画というのは、余り顕著なものは存在いたしません。これにつきましては、将来EC型の共同決定あるいは都道府県の連合方式等によって都道府県を超える大都市圏レベルの土地利用計画というものを確立していく必要があろうかと思います。
次に、十二条絡みで土地利用計画に従った利用確保のための規制でございますけれども、これは一つは、従来はどちらかといいますと制限、禁止あるいは許可といった在来的手法を使ってまいりましたけれども、それだけではなくて、むしろ利用を積極的に義務づける手段、例えば、これは西ドイツにございますけれども、建築命令あるいは利用命令というふうな制度を導入することを今後検討してはどうだろうかと思います。
さらに、規制に伴う補償制度の再検討も必要でございまして、現在自然環境保全法等々に許可の申請をいたしまして不許可になった場合に補償するという規定がございますけれども、これは実際に余り機能してございません。そういうものの改善でありますとか社会的な拘束に対応する相手方の受忍の限度というものを確定していく、あるいは代替地補償でありますとか生活再建補償といったものを拡充していくことが必要であろうと思われます。
さらに大きな問題としては、土地利用計画に連動した収用制度の見直し、これも西ドイツでは計画収用でありますとか計画確定裁決手続というふうなものがございますけれども、こういうものを検討する必要があるだろうと思われます。
それからさらに規制絡みの話では、できれば開発許可と建築確認というものを一元化して、新しいイギリス型の計画許可制度というものを導入することも検討すべきではなかろうかというふうに思います。
さらに土地取引の規制につきましても、これも今後の課題で今回の改正より先の話でございますけれども、例えば届け出制、勧告制ということだけではなくて、届け出制、勧告制に改善命令、罰則というような制度を加えて導入するというような方式も検討に値するのではないかと思われますし、大規模な開発やその見込みで投機的な取引の対象になる可能性がある地域につきましては、先行的に規制区域による許可制を導入するというようなことも検討される必要があるのではないかというふうに存じます。
それから、罰則は今回の改正で若干引き上げられておりますけれども、悪質な違反者に対しましては、将来は、国民生活安定緊急措置法のように、売買価格と公示価格の差額の何倍かの金を課徴金として強制徴収する、こういうことも検討されてよろしいのではないかというふうに思われます。
そのほかに細かい施策等について、私いろいろ意見を持っておりますけれども、もう時間が余りございませんので、そのほか関連して検討すべき問題としましては、国公有財産の有効活用のために、行政財産、普通財産に関する法制度の見直しをする、さらに払い下げ、貸し付け等につきましては、契約方式を適正なものに改めるというようなことも必要かと存じます。
それからさらに公有地拡大のために自治体の先買いの範囲を拡大し、自治体に売った場合の税制上の優遇措置を講ずるというふうなことを検討する必要があるのではないかと思います。
さらに、木賃密集地域の整備事業あるいは住環境整備事業等の制度要綱がたくさんございますけれども、こういったものをできれば統合いたしまして、これを実施する手法を法制化する、言いかえますと、ミニ再開発あるいは修復型の再開発、こういうものを法制化していくというのも今後の課題ではなかろうかというふうに思われます。
いずれにしましても、東京圏等の地価高騰によりまして、既に数多くのひずみが生じてきております。こうした地価高騰がもたらした現に生じておる新しい諸問題、これについても熱心な対応が必要であろうというふうに思うわけでございまして、特に最近では大都市圏では住宅問題が非常に逼迫しております。御承知のように、中所得層の住宅困窮化というのが非常に大きな問題になっておりまして、従来は低所得層が住宅に困窮しているということで公営住宅法等ができておりますけれども、現在では中所得層に住宅の困窮者がふえてきている。これをどう解決するかという問題がございますし、さらに都心の空洞化による非常にいびつな市街地形成、これによるコミュニティーの破壊、あるいは公共施設の整備の用地取得のために莫大な費用が要る、こういった現に生じております地価高騰の引き起こしたひずみに対してどういうふうに対応策を考えていくのかということが、土地基本法そのものではございませんけれども、これから重要な課題であろうというふうに考える次第でございます。
時間が参りましたので、これで私の話は終わらせていただきますけれども、御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/2
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003・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
次に、長谷川公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/3
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004・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 建設経済研究所の長谷川と申します。
私は土地問題の一研究者として、消費者の視点に立ってこの問題についてコメントさせていただきたいと思います。
最初に土地基本法への期待でございますが、私はどのような形であれ、土地基本法の成立を期待いたします。素人目には実は与野党の差がわかりません。よく似た法案だと思いますし、両方の精神は一致しておると思います。ぜひ成立をさせていただきたいと思います。宣言法でありますけれども、その意義は非常に大きいと私は思います。
まず、与野党の合意によって成立することで、土地問題に関する国民的コンセンサスが確立できることだと思います。これまで、個人にも企業にも行政にもあった土地神話というような意識、端的に言えば「現金持つな、借金しろ、不動産を買い続けよ」、こういうことが金持ちになる三原則だということがもてはやされる風潮、あるいは土地を蓄財の手段にすることを称賛するという考え方を排除する絶好のチャンスだというふうに思います。この法律が、今の国民の経済力にふさわしい、本当の意味でのクォリティー・オブ・ライフ、生活の質を向上させ、よりよき住宅と任環境を確保するということに役に立ってほしいと切に思います。
私は、土地基本法というのは政策実行への第一歩であって、決して幕閉じであってはいけないと思います。これからこの精神に従って政策が出てくると思いますが、願わくば、どの制度をどう改めるのか、特に土地税制なり都市計画をどう具体的にするのかという筋道を国民の前にはっきり示してほしい。時期とかを含めて、将来、これからの筋道を明らかにしてほしいと思います。そして、住宅と住環境については具体的なプログラム、年収倍率であるとかあるいは通勤時間であるとか、そういう具体的な目標を示して、我々に信頼感を与えてほしいというふうに思います。
次に、政策実現へのプロセスについて申し上げます。
私は、今回の地価高騰の原因はいろいろあると思いますが、突き詰めれば金余りによる土地投機それから土地税制の不備、この二点に尽きるかと思います。いろいろな要素がありますが、一番大きなのはこの二つだろうと思います。したがって、今後の政策には実施に重点をつける、めり張りをつける必要があるかと思います。たくさん並べてわけがわからなくなるというのじゃ困るわけでして、どれが大事かということをプライオリティーをつけてほしいと思います。
そのときに、目標はやはり不公平の是正であり、資産格差の解消であり、そして労働価値の向上であります。こういうものを目標にしてほしい。そのためには不必要な需要の抑制と必要な供給の促進を図ることだろうと思います。
いろいろあると思いますが、短期的には不動産金融の是正であります。土地投機の行き過ぎの抑制をしてほしい。中期的には土地税制の改正であります。これは、これまでの所有することにメリットのあった税制より利用することにメリットのある税制に変えてほしいと思います。長期的には、安定した住宅宅地の供給を促進するということと、よりよい都市計画を実現するということ。この三つだろうと思います。そして、それぞれ当面、一、二年あるいは四、五年、あるいは十年という目標を立てて推進していただきたいと思います。
短期的な意味での不動産金融については、最近の報道ですと政府も日銀も非常に本腰を入れて取り組んでいる姿勢が見受けられます。しかし、いささか遅過ぎたという感じがいたします。現に、貸出残高四十四兆円という資産は、いろいろ計算してみますと、一平方メートル百万円で買うとすると四千四百ヘクタールの土地になります。ということは、これは世田谷区の民有地の面積よりも大きいわけであります。あるいは山手線の内側の民有地の七〇%くらいを占める膨大な土地であります。たとえ一千万円の単価で買ったとしても四百四十ヘクタール買えまして、これは千代田区の全民有地の一・五倍という規模であります。物すごい量の土地が買われておるわけでありまして、これを有効に利用することが最も大事でございますが、いわばそこまで土地投機が進んでしまったということを大変憂えるわけであります。しかし、これについてはかなり進展があるということで、評価したいと思います。
それから土地税制であります。
私は、土地に関しては減税は弊害であったと思います。実は、我々は長年効果が余りはっきりしないままに土地待ちへの減税をなし崩し的に重ねてきました。毎年毎年微調整的に少しずつまけてやるということを繰り返してきました。この結果が実は私たちの土地の買い方に反映しまして、これが結果として地価を上げたと思います。この結果どういうことになったかといいますと、これから土地、住宅を求める人は地価の上昇分を非常に重いローンで、二世代ローンというふうな形で孫子の代まで借金を回して買わなければなりません。そして、売ってくれた人の減税分、土地譲渡所得税を所得税で負担しなければなりません。それから、その固定資産税の減税分は今度は住民税で負担しなければなりません。土地なき人には実は今の税制というのは二重三重に不公平なわけであります。そういう意味で、私は、土地税制というものをそういう視点から見直してほしい。そして、今の土地税制が決して補完的、従的な土地政策でなくて、都市計画と連動して機能する最も強い、最強の土地政策であるということを認識してほしいと思います。
そのために、まず、長年放置されてきた不公平税制の典型である市街化区域内農地の宅地並み課税を徹底させる必要があると思います。確かに都市農業もあるいは緑地の維持も必要だと思います。しかし、一番大事なことはやはり不公平の是正であるし、それから住と住環境の確保であります。そのために、やはりそのプライオリティーを第一にすべきでありまして、緑地として残す必要もあるわけでございますが、その場合には、調整区域に逆線引きするなり生産緑地に指定するなりというはっきりした姿勢を示すべきだと思います。
それから、不公平は市街化区域内農地に限りません。実は都市内にも、企業の遊休地を含めて固定資産税上の矛盾は残っております。私は、固定資産税というのは非常に重要な課題でありますし、国家をつくるぐらいの重要な課題だと思います。しかし、長年のいわば政策からかなりゆがんでいると思いますし、そう簡単にこれは直らないと思います。しかし時間をかけてもいいのです。十年かけても構いませんので、その改正の筋道を立ててほしいと思います。評価の一元化とか税率の弾力化とかいろいろあると思いますが、少なくともそれを隠すことなく、国民的合意で改善の方向に進めていくという姿勢を示してほしいと思います。
それから、次は節税、脱税の横行でありますが、実は今我々の一番の関心事は、いかに節税するか、いかに脱税するかということであります。特にこれは土地に甚だしいわけでありまして、相続税を回避するために借金をしたり、あるいは所得税を節税するためにマンションを買ったり、そういう不必要な需要が起きております。こういう優遇税制というのは、結局土地を持っている人、節税のチャンスがある人のみに利益が行き、土地を持っていない人が不利益をこうむるという不公平な結果になっているわけであります。そして、このような税制の改正、大きいことから小さいことまでいろいろあると思いますが、少なくとも所有より利用を優先するという視点、あるいは不公平を是正するという視点、そういう視点に立って税制の見直しをしていただきたいと思います。
それから、住宅及び宅地の供給については、これは抽象論ではなくて、いつまでに、どこで、幾らで住宅を供給してくれるのかという具体的な目標を示してほしいと思います。抽象的なものでなくて、市民がわかりやすい目標を示してほしいと思います。
そして、住宅宅地の供給に当たっては、今まで宅地は、土地が少ないとか需給が逼迫するということばかり言ってきましたが、それでは市民は不安を持つばかりであります。本当は需要に対して供給はたっぷりあるということをはっきりさせてほしい。利用を促進するためには、土地は十分あるわけであります。
今住宅地は国土面積の二%しかありません。今農地が減反されております。農地の減反は、今七千七百平方キロと聞いておりますし、これが九千平方キロになると聞いておりますが、この面積だけで実は日本じゅうの宅地面積より広いわけであります。片方で日本じゅうの宅地面積以上のものが余っておって、片方で足りないということはあり得ないわけであります。ぜひ土地の有効利用を進めてほしい。
かつまた臨海部の埋立地等は、これは都市開発のためにもあるいは住宅供給のためにも絶好な種だと思います。できれば私は、工場跡地については公有地も含めて——テレポートとか臨海都市というものも大事だと思います。しかし土地が安くできているという、安い土地だということから、これを徹底的に住宅に使うというふうにしてほしい。自治体や企業が安い土地で開発利用を大きくして利益を得るというのは、少なくともそういう強い人たちはすべきではないという感じがいたします。
それから、市街化区域内農地の課税を適正化して宅地化を進めてほしい。
既成市街地については、確かに東京の容積率などの利用は徹底しておりません。もう少し高度利用を進めてほしいと思います。
それから国公有地については、実はこれを住宅価格、家賃に算入しないという、そういう仕組みが要ると思います。今まで我々はボタンのかけ違いをしまして、家賃の中に土地価格を入れるということを当然のこととしてしまいましたけれども、少なくともこういうことが実は高地価を反映させるということになっているわけでして、その辺は、土地でもうけないということを土地基本法に書いてございます。ということは、国みずから土地でもうけないという仕組みをとるべきであります。それを土地基本法に書きながら、国がもうけるという姿勢を出すのは大変遺憾だと私は思います。
それから最後に、土地情報の公開であります。
なぜ投機が生ずるかということは、我々はマーケットの実態を知らないからであります。疑心暗鬼であります。そして、土地情報というのはごく少数の者にしかわかっていない。ほとんどの人がわかっていないままに暗中模索で取引をするわけであります。かつ、土地の所有とか流動に関するデータは全く押さえられておりません。これをきちっと押さえていただきたい。
その前提として、大体今の土地登記制度は明治以来の百年間同じような登記制度をとっております。内容的には太閤検地以来何も変わっていないと思います。そういう登記制度ではなくて、台湾や韓国で徹底しているように、せっかくこれだけ技術の進んでいる時代ですから、ぜひコンピューター等を使いまして、もう少し合理的に土地の市場を明らかにしてほしいということを第一にお願いしたい。
それから、土地の税金については、実は余りにも秘密主義的過ぎます。土地の税金に関するデータをしっかり集めてしっかり解析すれば、日本の土地のマーケットはわかるわけであります。しかし、これが守秘義務という、私に言わせればわけのわからない理由でもってクローズになっているということは、市場整備として私は大変問題だと思います。確かに個人のプライバシーに触れる問題がありまして大変だと思いますが、これあたりは、資料についてもう少し実態がわかるようにぜひ公開していただきたい。そうすれば土地投機が抑制されると私は思います。
最後に、消費者の視点に立って申し上げたいと思いますが、私は、消費者はこれから賢い消費者になるべきだと思います。宣伝やチラシに踊らされて焦り買いとか恐怖買いするということはなくすべきだ。その場合に、自分の所得に見合わない高い物件には決して手を出さない、五千万、七千万、八千万を安いと思わない、高いと思え、自分の所得に見合ったものにしか手を出さないということを私は徹底すべきだと思います。そして、他人にツケを回して、人のポケットに手を突っ込んで自分の資産をふやすというようなさもしい根性を捨てることが、私は土地問題で最も大事な解決策だろうと思います。いろいろな政策があると思いますが、消費者にとって言えることは、そういう姿勢を取り戻すことでありますし、そういう姿勢を取り戻すことが、実は今回の土地基本法の大きな目的だろうと私は思います。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/4
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005・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
次に、田中公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/5
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006・田中啓一
○田中公述人 ただいま御紹介にあずかりました日本大学の田中でございます。
私は、本務校では一応財政学を担当しておりますが、ほかの東工大などでは都市計画的な面からの土地問題を勉強させていただいている者でございます。もう既に両先生から多くのことが述べられているわけでございますが、それと重複を避けながら、二、三の点について御報告をさせていただけたらと思っております。
本案に対する全般的な評価に入る前に、二、三述べさせていただけたらと思っております。
まず、我が国の地価というものは、今回の場合は実は今世紀になって三回目の狂乱地価と言われるものであろうと思っているわけでございます。私ども今回の狂乱地価を思いますと、すぐ列島改造論のときを思い出しますけれども、そうではなくして、実は明治四十年から大阪を中心とした、大都市圏を中心とした異常な地価高騰があったわけでございます。
そう考えますと、今回の場合は三回目ということでございまして、ミルはかつて、発展する国の地価は急上昇するというようなことを言ったことがございます。確かに一八二〇年ごろ、一八四〇年ごろのイギリスは都市機能の中心地であったわけであります。それから世界の経済がアメリカに移りますと、一八八〇年ごろ、そして一九二〇年ごろ、前回の大恐慌の一つの原因になった狂乱地価でございますが、アメリカもこういうような形であったわけでございます。
しかし、いずれの国もこの世紀、多くても二度の狂乱地価で終わっていたわけでありますけれども、我が国の場合、三回の狂乱地価、しかも今回の場合は史上かつてないほどの狂乱地価と言ってもいいわけでございます。ここ数年の間のいわゆる異常な地価高騰のために、私が試算いたしますと約一千兆円の水ぶくれが日本の総地価に出ているのではないかと考えるわけでございます。
これにはいろいろな根拠があるわけでございますけれども、まず、国民総生産と総地価とを比べるのは、いろいろな問題点があり、余りにも短絡的だということもあろうと思います。しかし、我々が一生懸命働いた経済力が地価に反映するという長期的な視点から考えますと、こういう総地価と国民総生産との関連も軽視できない問題であろうと思います。御承知のとおり、アメリカは総地価はGNP、国民総生産の大体七割ぐらいあるわけでございまして、欧米でも大体一年分というのが多くの国であろうと思います。これに対しまして、我が国は戦前から大体国民総生産の二・五倍ぐらいのウエートがかかっていることがございましたので、戦前からかなり地価が高かったということも考えられるわけでございます。しかし、二・五倍ということを考えてみますと、それが適正であるかどうか、またいろいろな問題点があろうと思いますが、一応適正の水準と考えますと、今GNPが三百八十兆円前後と考えてみますと、約一千兆円で済むはずでございます。それが推定では、最近の大阪圏とかなんとかの高騰を配慮いたしますと、約二千兆円ぐらいに近づくのではないかと思います。一千兆円、実に一千兆円という巨大な水膨れが出てきてしまったわけでございまして、これがある意味では、今回の法案とは直接関係ないと思いますけれども、このままで放置しますと、次の世界恐慌の一つの大きなきっかけにもなりかねないということも懸念されるところでございます。
こういう一つの中で、狂乱地価と言われるものが地域格差と、先ほど長谷川さんの御指摘にあるような資産格差を招来させたわけでございますが、そういう中で、同時に地価高騰の弊害の国際拡散というのが現実には起きているわけでございます。私もつい一カ月ほど、海外で日本の不動産の投資の実態を見てくる機会がございましたけれども、間きしにまさるというような状況があったわけでございます。土地摩擦というのがこれからゆゆしき問題になってくるということも懸念されるところであろうと思います。
こういう中で、なぜ今回の狂乱地価を招いたのかというのにはいろいろな御指摘があろうと思いますけれども、その一つの遠因は、現憲法の中ではっきり土地条項がなかったことであるというようなことも考えているところでございます。マッカーサー憲法草案がほとんど新憲法に移行したというのは常識にもなっているようでございますけれども、憲法草案二十八条の土地の条項が消えてしまっておりまして、現行憲法二十九条の私有財産の尊重の中に入っているわけでございます。しかし、マッカーサー憲法草案二十八条を見てみますと、今日提案されております政府提案と野党四党の皆様方の御提案の精神とまさに同じといいましょうか、合致しているものであるわけであります。すなわち、土地の公共財的側面を強く打ち出しているわけでございます。そういう点ではいろいろな問題もあろうと思いますが、国民一致の、与野党一致の法案として御成立を、一国民としてもぜひお願いしたいところでございます。
こういう中で、とりわけ政府案というのは、いわば後発のメリットと申したらしかられるかもしれませんが、野党四党が一年半、既にお出しになっておりますので、そういう精神を十分生かしながら法案をつくられているような感じかいたします。さらに、抜けておりました開発利益とかあるいはまた事業者の責任の強化その他適正な土地利用の確保など、いわば相当程度カバーしているということも考えられますし、また野党の御主張のところも、解釈あるいはまた現行法の活用によって十分カバーできるのではないかと考えているところでございます。だから両案の比較というのは、本質的にはほとんど変わりはないというように私個人は理解しているところでございます。そして、私は一応財政学ということでございますので、きょうお呼びいただきましたのは多分開発利益のところの問題であろうと思います。この基本理念というところに開発利益の回収というのを入れてあるのは高く評価したいところでございます。しかし具体的には、この問題はローマ時代からある非常に古くして新しい問題でございまして、各国ともこの開発利益をどのように回収するかということで御苦労のあるところでございます。現に、最近我が国と同様に地価高騰が非常にひどかった韓国でも、急遽国会で開発利益の回収法案とかあるいは土地超過利得税というような法案を今検討中であるとお聞きしているところでございます。
こういうように各国とも非常に苦慮しているところでありますが、我が国の場合、とりわけ公平の視点とか、あるいはまた先ほど成田先生から御指摘のあったような土地神話の否定という視点からも、ぜひ開発利益の回収というのを土地基本法の中に入れていただきたいという考え方をするわけでございます。なぜなら、基本理念の具体的な一つのあらわれということが開発利益の回収項目であるという感じがいたすわけでございます。我が国のみならず、石油ショック以来の世界の不景気の中で資産格差が膨大に発生したという、世界史上の中でも珍しい事件が起きているわけでありますが、とりわけ我が国の場合、所得と資産との不公平が非常に出てしまった、特に株と土地、とりわけ土地に出てしまったのは御承知のとおりでございます。
こういう中で今現実に簡単に考えてみますと、一生懸命働いた給与所得者の一千万の所得、これはかなり高額になろうと思いますが、その人たちが所得、住民税で大体百万から百二、三十万、家族数によっても違うわけですが、負担していると思います。これがたまたま東京あたりで土地を持っておりますと、その資産が十億円ぐらいに相当する金額、あるいはまたこれが市街化農地ということになりますと、七百億から八百億円の資産にも相当する金額になるわけでございます。こういうとき、フローとストックの税をすぐに比べるのは危険かもしれませんが、このこと一つ取り上げても余りにも乖離があるというような感じがいたすわけでございます。所得と消費とのインバランスということで今御議論のある消費税が導入されたとお聞きしております。しかし、所得と資産との不公平こそ消費税にまさるとも劣らない我が国の大きな課題であるというような感じがいたすわけでございます。
それでは、具体的にこの回収をどうするのかということでは各国ともいろいろ御苦労されているわけですが、対応する場合には、税制でやる場合と税制以外の処置でやる場合があるわけでございます。
まず、政府の基本法案の中では第十四条でございますか、「社会資本の整備に関連する利益に応じた適切な負担」、こういう制度を各国とも導入しているわけでございまして、この辺は公共部門の、公共投資による地価上昇分の回収というのが本来の受益者負担という考え方であると考えているところでございますが、これは我が国でも下水道初めいろいろなところで導入されているわけでございます。あるいはまた開発負担金とか公共用地減歩とか、その他いろいろな手段があるわけでございますけれども、私は基本的には、回収の場合、開発利益の回収は税でやるべきだと考えているわけでございます。その税が、我が国の場合、とりわけ土地税制が機能してこなかったというわけでございます。それは土地の公共財という側面を税の面からある程度軽視してきた、私的財的な側面を非常に強く尊重してきた、し過ぎたということに起因しているかと考えられるわけでございますが、本来、土地税制というのは五つの機能があると考えられるわけであります。
まず第一に地価の安定機能、二番目に供給促進機能、三番目に所得再分配機能、四番目に資源最適配分機能、そして第五番目に都市整備財源確保機能、こういうのがあると思いますけれども、この五つが余り機能しなかった我が国、あるいはまたかつて高度成長期、我が国と同様に地価高騰に悩まされましたフランスとかイタリアというのも、この辺の税制が機能しなかったわけでございます。
我が国の場合、保有税、特に固定資産税、とりわけ市街化農地の問題が今俎上に上がっているわけでございますけれども、こういう一つの問題を取り上げましても、生きている間は余り土地の有効利用を促進しないような、あるいはむだにしろということでありまして、できるだけ利用しない方が素地のまま高く売れるというような税制になっているわけでございます。死んだとき初めて相続税、ある意味では世界一とも言われるぐらい高い相続税でやっと初めて土地の利用促進を考えるという、全くナンセンスといいましょうか、非常にむだな税制が、こういう点からも現行ではあると思うわけでございます。こういうわけで、必要ならば現行税制の抜本的な見直しとともに新税の導入ということも考える必要があるように思うわけでございます。
さらに、我々は都市計画と一体化した税制ということをぜひともお考えいただきたいと思います。そして、できるならば資金、金余りという、三点セットといいましょうか、三位一体といいましょうか、この三つが不備ですと、世界の地価狂乱はほとんどすべてこの三つを背景として起きているということが指摘されるわけでありまして、我が国の場合の、今世紀に三回の狂乱地価もすべてこれを背景としているわけでございます。今回の場合はとりわけこの点が非常にひどかったということも考えられるわけでございます。
そして、こういう中で我々が考えなければならないのは、一応法律をつくりながら、実際にはドゥというのがなかなかできなかったというのも考えられるわけでありまして、我々、戦後の土地政策は無策と言いますけれども、非常に多くの政策を打ち出してきた、しかしそれが効果的でなかったということがあるわけでございます。そしてまた、タイムラグもあったと思います、あるいはまた公共部門間の不整合ということも指摘されるところでございます。その中でも、やはり法律がありながら生かせなかったということも反省すべきでありまして、今度は土地基本法という精神法ができたとき、これによって本来土地基本法の考える精神というものがどう生きていくかというのが個別具体法に委任されるわけでございますけれども、それができたとき、本当に生かしていくんだということをも考えていただけたらと思うわけであります。
都市の再開発ということでは、多分三分の二の合意があればできると言いながら、実際にはごね得を助長するような形の全員一致という、それは全員一致が理想でありますけれども、そのために非常に多くの国民が逆に被害をこうむるというような、そういう点もかなりおかしなわけでございまして、それは都市計画と税制が一致するというようなところから、あるいはまたそれを支える法が一致すればこういうこともないと思うわけであります。
各国では、いろいろな問題を抱えたとき、司法が介入してこれを解決するというようなケースがかなり見られるわけでございます。例えばイタリアは、狂乱地価が我々の国と同様に高度成長期にかなり起きた国でございますけれども、それが一九七三年に土地増価税の合憲判決というのが出た結果、この地価が非常に安定してくるというようなケース、あるいはまたニューヨーク市の、評価額とは時価であるという一九七三年の最高裁判決、こういうような形で、土地問題というのが一つの大きな転換期を各国では迎えたわけでございます。
我が国はこういう、司法というよりもむしろ法律によって、その前にこの土地基本法によって、ぜひこの問題を、これまでの混乱した、しかも国際問題化した地価というものをどうか御解決をいただきたいとお願いする次第でございます。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/6
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007・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
以上をもちまして、各公述人の御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/7
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008・大塚雄司
○大塚委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穂積良行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/8
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009・穂積良行
○穂積委員 諸先生方、貴重な御意見ありがとうございました。
三先生の御意見を伺っておりまして、まず共通するところは、今回の土地基本法について積極的な評価をいただいているということ、それから、政府提案と野党案の間に多少の違いはあっても、土地についての今後の政策を推進する上で基本法を制定するという際に当たっては歩み寄れるような違いのみではないか、こういう評価をいただいているように伺いました。
そこで、私はまず田中先生がお触れになりましたが、総地価の考え方からして、現在の日本の総地価というものがGNPの二・五倍という状況に達していて、これはアメリカあるいはヨーロッパ諸国に比べて高過ぎるというような認識に立ってこの総地価をどうするかというお考え、そのもとでの地価対策をどう進めるかというそうしたマクロ的な認識の上での地価政策への御意見を今伺っておりまして、私も同様の考えを持っているものですからまずお伺いするのですが、現在の総地価といいましても、首都圏あるいは大都市圏周辺の異常とも言える地価状況について、先生のそうした基本的認識からして、これは投機的な要因に基づくこうした高地価水準というものを、将来に向けてGNPとの関係や地域それぞれの経済活動との関係から見てどの程度の水準まで落としていくといいますか、そういうことを目標にすべきか、あるいは目標として政策的にどうにかできるかできないかというあたりも含めまして、どのようにお考えかをひとつまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/9
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010・田中啓一
○田中公述人 田中でございます。
総地価ということについては、地価を果たしてあらわしているのかどうかという経済学的ないろいろな問題もあろうと思いますが、一応これは実体経済と関係なく、とりあえず推定価格ということで御理解をいただきたいと思います。そしてまた、先ほど私がちょっと言葉が不十分でございまして、多分GNPの二・五倍というのは戦前でございまして、戦前の我が国の場合二・五倍で、今日では今大体三百八十兆から三百九十兆くらいのGNPに対して約二千兆でございますから五倍ぐらいということでございます。だから、せめて戦前並みぐらいの二・五倍、すなわち今の半分ぐらいに抑えるのがとりあえず今適正であるというような感じが私はいたしております。この数年の間に一千兆円ぐらいの水膨れというのが出たわけでございますので、これをもとの、少なくとも昭和五十年代末期の水準に戻すということを考えるべきだという感じがいたすわけでございます。
そういう場合、これを急激に戻すというのは、土地を担保にしてやっておりますので、理想ではございますが現実面からいくとなかなか大きな、逆にむしろここから、世界の恐慌が我が国の総地価から始まる可能性も手段によってはあり得るわけでございますので、そう考えますと、やはり今の総地価を少なくとも上げないという形の政策がまず最低限必要であるように思います。その場合、GNPの二・五倍ということでございますので、二十一世紀、あと十年ちょっとしかないわけでありますが、年率平均三%から五%ぐらいはGNPが期待できますので、その水準をずっと維持しながら、二千兆円をやや下がるぐらいの水準で絶えずこの十数年を維持すれば戦前並みの水準に戻るというような感じがいたしているわけであります。それが現実の当面の一つの世界経済、ここまで日本の地価高騰というものが大きな要因で、日本の企業活動の活発さもある意味ではこれを支えている一つの要因にもなっておりますので、こういう無理のないといいましょうか、現実面からいくとこれが一つの妥協点だという私の私見でございますが、こう考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/10
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011・穂積良行
○穂積委員 今のお話にございましたように、とにかく経済あるいは国民のさまざまな活動の総体の反映として地価がとらえられるという考え方からしても、随分水膨れの状況で、GNPの五倍くらいになっているというお話が現実になってしまっている、それをどのようにあるべき地価水準に戻していくかということは確かに大変な話だと思います。おっしゃるように、現に形成されてしまった地価を下げていくということはかなりの経済的なきしみを呼ぶ話ですから、その辺が土地基本法に基づく今後の具体的な政策の正念場ではないかと私も思っております。ありがとうございました。
そこで、そうした地価が一番の問題、さらには成田先生、長谷川先生がお触れになりました、国民の望む良好な宅地を、本当に今後それを望んでいる国民が取得できるかということに絡む政策も含めまして、土地基本法のもとで具体的な政策を望むというのが共通した御意見だったと思います。その場合、基本法は宣言的法律として立法されているわけですけれども、その基本はやはり憲法二十九条の規定、諸先生お触れになったと思いますが、改めてこれを見るのですけれども、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」それから「私有財産は、」もちろん土地も含みますが、「正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という第二十九条の憲法の規定のもとで土地基本法の今回の条文が、これもやや、ややといいますか、まさに宣言的な規定になっておるわけですけれども、この公共の福祉というものを強調した憲法の規定の解釈、土地基本法の条文の策定、今度はそれに基づく具体的な法律の策定あるいは政策の推進ということについて、諸先生それぞれ、今のこの基本法の条文でやむを得ないとお考えか、あるいはもう少し具体的に憲法の規定を受けてはっきりさせたらどうかという御意見か、再度それぞれお一人ずつ御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/11
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012・成田頼明
○成田公述人 成田でございます。
ただいま憲法二十九条のお話が出ましたけれども、私は、憲法二十九条第二項の規定というのはワイマール憲法以来の、財産権に対する社会的拘束性を含んだ規定であるというふうに存じます。
かつて行われました農地改革、これは占領軍の権力のもとで行われたわけでございますけれども、ある意味では、市場価格と乖離した非常に安い値段で強制的に買収をするということでやったわけでございます。これは最高裁の判決では合憲であるということになっておるわけでございまして、現在の土地問題とはもちろん状況が違いますけれども、かなりのところまでやれるだろうと思っております。ですから、憲法を改正しなくても、現在の憲法二十九条第二項の「公共の福祉」、これは時代によって変わってくるわけでございますけれども、その適正な解釈でかなりのところまでいけるだろうと思います。
そういった意味では、今回の土地基本法は、憲法の二十九条第二項の規定を現代の土地問題の状況に照らして適正に解釈をした、こういうことでできているのではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/12
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013・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 むしろ私は、法律問題よりは法律の背後にある国民の意識、そういったものがこれによって醸成されるということを評価いたします。
個々の文章については私は余りよくわからないのでございますが、ただ、例えば土地の投機をしてはならないとありますけれども、実は同じ条文は台湾の平均地権にもございまして、台湾の場合には土地の投機をしたらこれはばくちと同じだということになっておりまして、処罰の対象になっております。しかし現実に処罰された人は一人もおりません。日本の食管法と同じであります。そういうぐあいに、宣言法だけではなくてもう一歩踏み込んでくれたらなというような感じはいたしますが、私は、今の程度で満足とは言いませんけれども、わかりやすい、そういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/13
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014・田中啓一
○田中公述人 私も、これを一応現実面の中ではやむを得ないといいましょうかむしろ前向きに、ぜひ現在時点でできるだけ早く成立してほしいということであります。また、事によってこれが将来変わるようなことがありましたら、それは応急に改正していけばいいことであると考えております。
そしてまた、金融の面も大きな問題がありましたが、政府案では一応事業者ということの中で入れておりますので、この点、私かねてから懸念しておったところでありますが、事業者の責任を強く打ち出しておるということで、この点も評価したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/14
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015・穂積良行
○穂積委員 もう一つの問題は開発利益の扱いですね。これも諸先生それぞれ御意見がございましたけれども、これを社会に還元するということについての税制その他のあり方ということが、まさに土地基本法のもとで具体的に行政当局が問われ、また我々政治家も今後立法の面で姿勢を問われることになるかと思うのですが、例の短期保有土地の譲渡所得についての高率の税制その他、現在の税制について皆さんそれぞれどのようにお考えか。
それともう一つ、余りお触れにならなかったように思いますが、市街化区域の農地の課税問題について、それぞれお三方、この際この二点をどのようにお考えかを具体的にお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/15
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016・成田頼明
○成田公述人 土地税制は私も必ずしも専門家ではございませんけれども、現在の土地税制全体を通じまして、それはそのときどきのいろいろな具体的な状況に応じて立てられた施策であるということで、妥当なものであろうと思うのですけれども、やはり土地税制をとりますと、当初予想していた効果とは逆の副作用が出てくるということが往々にしてございます。ですから、今後は土地税制が非常に大事になりますが、そういうものを発動する際に十分に事前に慎重なアセスメントを行って、一体どういう副作用が起こってくるだろうということまで見きわめて新しい税制を考えていくということが必要であろうかと思われます。
それから、農地の宅地並み課税につきましては、私は都市計画法のできますときから必要であると考えていたわけでございまして、その考え方は現在でも変わりございませんけれども、ただ、農地だけの課税ということになりますと、やはりかなり関係者の抵抗がございます。社会的な公平を図るためには、都市計画区域内における空地あるいは遊休地、そういうものをまず積極的に活用するということがその人たちを納得させる一つの大きな方法であろうと思いますので、農地だけの課税ではなくて、やはり遊休地、空閑地等についてもいろいろな対策をとっていく必要があろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/16
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017・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 私は、公述でも申し上げましたが、土地税制が一番問題だと思います。土地税制の個々の条文というより、むしろ我々が土地税制に持っておる意識と申しますか、脱税、節税を奨励するとは申しませんが、少なくともそういうことに向かうという我々のビヘービア、そういうことが実は土地税制の問題でありまして、土地税制がそれを逆に助長しているのではないかという感じがいたします。土地税制は中立であるべきだし、公平であるべきだということをまず第一に考えるべきだと思います。そういう意味で、個々の土地税制、いろいろ問題あると思いますけれども、そういう公平と中立ということを視点に政策を進めていただきたいと思います。
それから、宅地並み課税につきましては既に申し上げましたが、まず不公平という観点を第一にいたしてもらいたい。第二に宅地供給の促進、それから第三に緑地の保全という順序をつけて、何が一番大事かという視点を決めて政策の方向づけをしていただきたい、そういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/17
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018・田中啓一
○田中公述人 今の、現行の土地税制、長短ありまして、譲渡益について外国から比べると非常に高いというのは、私、今土地税制あるいは都市計画がまだまだ完全ではない現状ではやむを得ないと思っております。しかし、土地税制の中では、将来はむしろ逆に保有税をある程度高くいたしまして譲渡課税を安くするというような方向、そしてまた資産課税と所得課税の特に給与所得の方のバランスをとるという方向に、税改正は抜本的に改正していただきたいというふうに考えております。
二番目の市街化区域の問題でございますが、これはやはり今のままでは非常に反対でございまして、本当に農地として生かすところとそうじゃないところとはっきり分けるべき、今はもう最後のぎりぎりのところに来ているというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/18
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019・穂積良行
○穂積委員 諸先生方、ありがとうございました。
いずれにしましても、この基本法は、言うなれば憲法と具体的な諸法令による政策推進との中間にあってガイドラインを設定するというような意味かと思うのですけれども、この際、御意見をちょうだいした諸先生にもこうした法律の趣旨をひとつ御理解賜って、できればPRにも御協力いただきたいという次第でございます。
以上をもちまして、私からの質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/19
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020・大塚雄司
○大塚委員長 中村茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/20
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021・中村茂
○中村(茂)委員 中村でございます。きょうは大変御苦労さまです。
私は、野党というふうによく言うのですけれども、社会党、公明党、民社党、社民連四党で土地基本法それからそれに付随する国土利用計画法の一部改正、これを提案した提案者でもございますので、その立場からも含めて若干お聞きいたしたいというふうに思います。
先ほどそれぞれの経験、研究に基づく公述をしていただきまして、これからの私どもの政策または行政の推進の中で大変役に立つというか、参考になるというふうに理解いたしました。大変ありがとうございました。それぞれ言われましたように、基本法は宣言法でございます。若干政府案と四党案では、同じ宣言の基本的なものでありますけれども、一歩対策、政策に四党案が若干踏み込んだという内容がございます。それ以外そう大きな相違がございません。ですから、先ほどそれぞれお話ありましたように、これから皆さんの意見を十分参考にしながら、合意を求めて立派な基本法をつくりたい、こういうふうに思っております。
そこで、成田公述人からまずはお聞きをいたしたいというふうに思います。宣言法でありますけれども、この基本をなしているのは、憲法に基づく財産権は保障する、したがって所有は保障する、しかし利用権については公共の福祉のために制約していく、こういう基本的な考え方に立っておりますから、これからの土地利用計画、これが非常に重要な役目を果たすのではないか、こういうふうに私ども思っているわけであります。
そこで、先ほどのお話の中で、規制の一元化ということに含めて利用確保の義務づけというお話がございました。そして、西ドイツの例として利用命令というお話もございました。その点についてもう少し細かくお話しいただきたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/21
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022・成田頼明
○成田公述人 先ほどもお話ししましたように、現在の土地利用の具体的規制は不作為義務を課することによって利用を制限していくというのが主要な手法でございますけれども、西ドイツでは地区計画という非常に詳細な計画が前提になっておりますけれども、そこでここは住宅地であるとかここは子供の遊び場であるというふうな指定があった場合に、それを空閑地のままで放置することは許さない。具体的には、それを特定の計画で定めた目的に利用しなさい、こういう命令を発するわけです。これはその後の改正で利用命令というのはたしか落ちたと思いますけれども、建築命令ということで、建築をしないままで空地のままで放置しておく場合には地方行政庁が建築命令をかけます。建築命令に従わない場合には、最終的には収用のような形でそれを強制的に公の方に収用いたしまして、それを計画に従って利用する人に払い下げる、こういう方法をとることによって具体的にこの土地利用計画に従って利用していくという手法をとっております。
ですから、その関与の仕方は非常に厳しい関与の仕方であるわけでありますけれども、日本の場合には、一応とりあえず今度は勧告という形が国土利用計画法に入ってございます。それで当面は勧告ということになるのではないかと思いますけれども、将来、地区詳細計画等が立てられるというふうな前提がございましたならば、やはり西ドイツ流の建築命令というようなものを導入することも一考に値するのではないかと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/22
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023・中村茂
○中村(茂)委員 引き続いてもう一点お聞きいたしたいと思います。
それぞれ御三人のお話でも私どもの考え方と一致しているわけでありますけれども、土地というのは所有しているだけでは本当の価値はないんだ、利用することによって初めて価値が出てくるんだ、こういう理念を国民の中につくらない限り本質的な問題は解決できないのではないか、こういうふうに思いますが、いろいろ仕組みの中で、どうしても土地を持つことが自分の利益にもつながるし、資産の増大にもつながるという現在の状況ですから、それを一つ一つこれからの施策の中できちっとやっていかなければならないという立場に、またはそういう状態にあるのではないか、こういうふうに思います。
先ほどのお話の中で、公有地の問題で若干お話がありました。私ども、対策に少し突っ込んでおりますから、政府案よりも四党案の方は公有地の問題を大きく取り上げまして、今も公有地拡大法という法律がありますけれども、なかなか機能を果たしていない。ですから、それはもう少し機能を果たしていくようにした方がいいのじゃないか、こういうことで、これから合意の中でもう少し詰めたいと思っておりますが、その際、先ほどのお話で税制の措置も必要じゃないか、こういうお話がございましたので、そこら辺のところをもう少し細かくお話しいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/23
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024・成田頼明
○成田公述人 公有地の拡大の点でございますけれども、これは土地政策の中で土地備蓄政策と申しますか、そういう言葉は日本にはまだございませんけれども、土地備蓄政策ということが非常に必要であろうということが言われております。
私もことし六月、スウェーデンに行ってまいりましたけれども、スウェーデンの場合には既に市内の七〇%が公有地でございます。公有地を今世紀の初めからどんどん市が買うというような形で公有地拡大を進めてまいりましたけれども、これからいろいろな形で都市建設を進めていく場合に、やはり土地を持っているということが一番の強みになるわけでございます。種地があればいろいろな再開発等もひずみを起こさずに進んでいくということがございまして、やはり私は、基本法に書くかどうかは別としまして、公有地の拡大というのはぜひ必要な施策だろうというふうに思われます。
そういった意味では、国有地なども余り払い下げをしないでやはり計画に従った利用に振り向けていく、こういうことがぜひ必要だろうと思うのですけれども、ただ公有地を拡大する場合には何分お金が要りますので、そのお金をどう用意するかということが一つ大きな問題でございます。これについての税制も必要だろうと思われますけれども、この点につきましては、むしろ田中公述人の方が税金の御専門家でございますので、もしよろしければ田中先生にお答えいただければというふうに存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/24
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025・中村茂
○中村(茂)委員 次に、長谷川公述人に若干お伺いしたいと思います。
大変立派な御意見で、しかもメモにしていただきまして、子細に読ましていただきました。ここで言われている問題、大筋私どもも全く賛成の点が多くあり、しかもここに言われている中身を実施するとすると相当な困難性もあるし、悩みもひとつ出てくるという問題があるわけです。
減税が、土地税制で行った場合になお弊害になってくるという御意見がここにありますけれども、私どもは土地については増減税で誘導していくという考え方を一つ持っているのですけれども、減税した分が土地の値下げにそのままイコールになれば一番いいのですが、言われているように、その減税がその人の懐へ入ったり、または土地の値下げの効果にあらわれてこないという、どうしても弊害というか、そういうものがあるものですから、こういう御意見になってくるのではないかというふうに思います。そこら辺のところを、これは一つの税の仕組みの問題ではないかというふうに思いますけれども、また後ほどの開発利益の問題のところでもそういう点が出てくるので若干申し上げたいというふうに思っています。
減税はする、しかしそれが土地の値下がりなり安定に作用すればいいけれども、なかなかできない。開発利益なら開発利益を吸収するという仕組みを考えた場合に、吸収するのはいいけれども、それが土地の値段に加算されて土地の値上げになっていくということでは、これはどうにもならないわけなんで、非常に仕組みをつくっていく場合に悩みというか問題が出てくる、そういう問題がありますから、考え方は理解できますけれども、私どもの考え方を一応申し上げておきたいというふうに思います。
そして、非常に重点を置かれている住宅及び宅地の供給、この面について特に都市部における切実な問題でありますので、書いてありますけれども、要点をひとつ二、三点に絞って、考えている点を御紹介いただければ幸いか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/25
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026・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 住宅宅地の供給は、非常に国民に信頼が得られるようなプランをつくって示してほしいということでありまして、もっと具体的に言えば、どこの場所でいつまでにどのくらいのものをつくって幾らで供給するかということを、これは非常に難しいかと思いますけれども、少なくともそういう筋道的なものを示してもらいたいと思います。
そのために私が常日ごろ考えておりますのは、例えば東京湾の臨海部の埋立地でございますが、既に二万数千ヘクタールの土地を埋められておりますし、そのうち一万ヘクタールは工業地であります。たしか公有地等もかなりの量あると思いますが、これは実は産業構造の変革によって、あるいは経済の変革によって変わっていくわけでありますが、変わり方をうまくつくっていただきたい。少なくとも私は、もともと安い土地なのですから、埋め立ての費用というのは原価はわずかなものなんでございますから、その安い土地は安い土地でなければできないものをつくってほしい。そのためには住宅それから公共施設というようなものを優先してつくって、やはり基盤的なものにしていくべきだというふうに思いますので、まずそこを宅地供給のベースにしてもらいたい。私の推計では、四、五十万戸は十分できるのじゃないかという感じがいたします。
それから、市街化区域内農地の宅地並み課税でございますが、これも一般の市民から申しますと、それを横目で見ながら二時間、三時間通うというのは非常にばかばかしい話でありまして、実にむだなエネルギーを使わされているわけであります。ここについても適正な区画整理を実施し、それから宅地並み課税の実施によってこれを宅地化していくということをしていただければ、これもかなりの量が出るだろうと思います。
さらに、都市の再開発でございますが、容積の利用等見ましても東京の町は非常にでこぼこであります。パリの町は平らと申しますか容積を非常にうまく使っております。実はこれは日照権の問題とかあるいは権利調整の問題、いろいろあると思います。しかし、このあたりもやはり国民の意識を変えて、みんなで住むのだという意識を持ちながら再開発を進めることによって、計算上は二十三区の再開発で必要なものは全部出てしまうという形になりまして、土地は決して足りなくないわけでありますので、そういう多方面の作戦をやってもらいたい。
一番大事なことは、消費者に選択の自由を与えていただきたいと思います。お金、場所等でどこに住みたいかということの選択の自由が、実は住宅だけないわけであります。ほかの商品は、衣食は何ぼでも選択できますけれども、実は住に関する選択の自由はないわけでありまして、供給と一緒に、市民に選択の自由があるという意識を与えていただきたいというふうに思います。いずれにしても、これは意思の問題でありますし、場所はあるわけでございますから、あとは意思と決意の問題だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/26
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027・中村茂
○中村(茂)委員 田中公述人にお伺いしたいと思います。
先ほど資産格差が拡大してきているのを是正する問題と、開発利益をどういうふうに吸収するかという子細な研究の成果というか考え方をお聞きいたしました。これは非常に難しい問題だというふうに思いますが、何としても実行しなければならない非常に重要な課題に今なっているのではないか。したがって、基本法の中でもそれぞれ取り上げているわけでありますけれども、ニュアンスとして政府案と四党案でこの開発利益、私どもの方は開発利益を条文の中にはっきり明記しているわけですが、政府案の方は解釈すればできるけれどもという非常に、本当に基本法的な宣言になっていまして、今もう少し詰める必要があるという段階にあるわけです。
この開発、特に国、地方公共団体がしていく場合については社会資本の中に含めて負担させるという、これは税とは全然関係がない仕組みに一つはなって、それを先ほどのお話の中で税で行うという点が、私どももこれから非常に参考にしていかなければいけない点だというふうに、一点、思っているわけであります。
先ほども申し上げましたように、せっかく開発利益というふうに言うけれども、それがもとへいって土地の値上がりになる、その分が追加されるというようなことではどんなにやっても意味がないので、本当の利益、それが資産格差に拡大してこないような仕組みで地価の値下げにどういうふうに作用させるかという非常に難しい問題があって、先ほどイタリアの例でちょっとお話がありましたけれども、私はこの中身はよくわかりませんが、そこら辺のところを含めて、資産格差拡大を是正する問題と開発利益吸収という問題について、若干お話をお聞きすれば幸いかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/27
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028・田中啓一
○田中公述人 先生から御指摘のとおり、非常に難しい問題でございます。先ほども私も、各国とも苦慮しているところだと申し上げたところでございます。しかし、税で本質的にはやろうという動きに各国ともなっているように、私自体は理解しているところでございますが、そういうときに資産格差をどのように回収するか、あらかじめ回収するわけには当然まいりませんので、これを発生した時点でやろうということでございます。
そのとき、今御指摘のイタリアの例では、御承知のとおり、日本のいわば大体四千万人近いと言われる地主と違いまして、イタリアは大地主制でございますので、土地を売らないという意識が大地主の場合も非常に強かったわけでございます。逆に言えば、買いたい一般庶民は今だから買った方がいいということでどんどん、需要供給原則からいっても最高値のところに価格が設定され、しかも譲渡課税や何か非常に高い。先生御指摘のようにいわば売り手市場でございますと、それがオンされてしまうわけでございます。そしてまた、しかもそれが最高価格が直ちに次の最低価格になってしまう、そこから地価がまた高地価に安定してしまって、そこからスタートするというような現象が絶えずイタリアでも起こりました。これがため売らなくてもかけようという形で、御承知のとおりいわば土地増価税的な発想が、これは十九世紀末ドイツで一番初め行われた税でございますが、未実現キャピタルゲイン課税という形、そして特に企業の所有する土地で十年ごとに再評価するという形でこういう税制を入れたという歴史的な経過があるわけでございます。
先ほどスウェーデンのお話も成田先生からございましたが、スウェーデンも地価高騰と公有地拡大のときに、土地増価税というものを連携でこれを拡大したということもお聞きしております。そういうような事例があり、今韓国ではそういう含み益といいましょうか、開発利益を回収する、その場合、全部上がるというよりむしろ地域的なところで上がりますので、全国平均と比べて上がっている分を増価分と見るとか、あるいは定期金利の利息以上に上がったものを増価分と見る。そのどちらかのバランスで高い方を見るとか、いろいろなやり方があるわけでございます。日本の場合、公示地価制度がまだまだ不備でございますので、直ちにこれを増価分がどれくらいかということは非常に厳しい難しい点があろうと思いますが、前向きに考えるべき将来の課題であると考えているところでございます。
先ほど御指摘にありました公有地の問題でありますが、成田先生から御指摘がありましたのですが、私はこれはやはり税の優遇措置だけではなかなか売らないということであろうと思います。ますます地価は上がる、そして公有地で整備されますと周辺地価は上がってしまいますので、売ったら損だということにもなりますので、税だけでは限界がある。やはり地価はこの周辺で上がらないのだということと同時に、一方では逆にちょっとドラスチックなことでありますけれども、そこの周辺から得た財源を逆に一定期間還元する、それでバランスをとっていく、できるだけ売る方に御協力いただくというようなことも一つの方法であると私は考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/28
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029・中村茂
○中村(茂)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/29
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030・大塚雄司
○大塚委員長 薮仲義彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/30
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031・薮仲義彦
○薮仲委員 公明党の薮仲義彦でございます。
本日は、三先生にはお忙しいところ、当委員会においでいただきまして、貴重な御意見を開陳いただきましたことを厚く御礼申し上げる次第であります。
いよいよ法案も最終段階になっておりまして、非常に重要な段階でございますので、何点かそれに反映すべく先生方の忌憚のない御意見を承りたいと思う所存でございます。
最初に三先生にお伺いしたいのは、三先生ひとしく、この基本法の精神は、保有から利用へという重要な政策のコンセプトになっておる、これが大事であるというお話でございますが、現行税制ですと固定資産税あるいは特別土地保有税等ございますけれども、これには意見がいろいろ分かれます。一番問題は、東京にだんだん人が住みにくくなってきた、固定資産税が高くてお年をとった方が住みにくくて出ていくとか、いろいろな地上げの問題等もございますけれども、私はやはり国の政策としては、どこでも人が住める、特に東京などこういう非常に文化の水準の高いところは最も快適なクォリティー・オブ・ライフを楽しめるような居住環境が確保されることが、私は政策の重要なコンセプトだと思うのです。ところが反面、そこに人が住めなくてみんな遠いところから通勤するということは日本の政治がどこか狂っているのではないか、こう私は、庶民感覚で言うならば思うわけでございます。
そうしますと、固定資産税を上げるという意見もございますけれども、そのためには何かブレーカーを入れて、先ほど成田先生も社会的弱者を守ることがこれからは重要だとおっしゃいました。そうしますと、高齢者あるいは年金生活者という社会的に弱い立場の方も東京に住めますよという、固定資産税に対する何かのブレーカーを入れて守ってあげるということをやりませんと、保有に課税しますと、保有に耐えられない方がその土地から出ていかなければならない。こういう点で我々は、固定資産税、あるいは特別土地保有税も昭和四十三年以前の土地にはきいておりませんけれども、これの改正も課題になっておりますが、いわゆる保有から利用へというときにどういう税制のあり方、それから社会的弱者をどうやって守ったらいいのか、この点を要点、三先生から最初にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/31
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032・成田頼明
○成田公述人 今の固定資産税につきましてはいろいろな評価がございまして、特に最近では土地を持っている人と持っていない人との間の格差が非常に開いているということで、特に土地を持っていない人から、固定資産税をもっと取るべきじゃないか、こういう意見が非常に強いということでございますけれども、ただ、土地増価税的なことで固定資産税がどんどん上がってまいりますと、土地が上がっても実際にはその上がった分が懐に現に現金で入ってくるわけではございません。ですから、そういった意味で税金を納めるときに非常に苦渋をするということになるわけです。そういった意味では、固定資産税につきましてはほかの税とは違うわけですけれども、弱者保護についての十分な配慮をする。弱者については税率を安くするとか、そういうことは少し考えられないだろうかということを個人的に思っておりますけれども、私は余り税制は明るい方でございませんので、この程度でお許しいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/32
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033・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 固定資産税の問題については非常に大きな問題で、住宅とか宅地の問題だけではなくていろいろの問題があると思いますので、これを改善するのは大変なことだということはよく理解しております。ただ、私が大変不思議に思うのは、政策をやるときにブラックボックスの評価でやるということが今まで続いてきました。例えば宅地は二分の一にする、さらに二百平米から四分の一にする。しかし、評価でしたらだれにもわからぬわけであります。評価はきちっとする、そのかわり税率で差をつける。政策目的を税率でもって実施するということが民主主義の上からでもとても必要ではないかという感じがします。
台湾とか韓国の税制を見ますと、たくさん持っている人には累進的に高く、少なく持っている人には安く、最小限度の住宅地については非常に低率の税率でありまして、政策を税率でもって実施するというスタンスをとることによって、先生の御指摘のような問題は少なくとも国民にわかりやすく解決されるのではないかという感じに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/33
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034・田中啓一
○田中公述人 私は、個人的には諸先生方とやや見解を異にするところでございまして、固定資産税はある意味ではまだまだ安いといいましょうか、資産に比べると安い。少なくとも、特に土地は上がった、狂乱地価があった東京圏を中心としたところが非常に評価が安いということは事実であろうと思います。これに対しまして、逆に、地価が上がらなかったところが地方財源の確保ということで非常に高くなった。むしろこちらに大きな問題があるかと思います。
そして、例えば給与所得者とか事業所得者は、今回の地価狂乱によっての固定資産税のいろいろな減免措置が事実上行われましたので、総所得の大体一%ぐらいということがほぼこの十年間続いておりますので、言われるほど現実には余り上がっていない。むしろ御指摘のとおり、いわゆる高齢者の皆さんとかそういうところが六%から、人によっては総所得のうちの一〇%近く負担になりますので、これは大きな問題でございます。これはやはりアメリカと同様、先生の御指摘のようなサーキットブレーカーシステムなんかを導入することで、私先ほどから申し上げました資産との不公平が、特に固定資産税では我が国は出ております、それが供給促進にもならないということでございますので、この辺をもうちょっと、本当の弱者なのかどうか、にせものといってはしかられますけれども、税というものは、フローだけではなくて本当のその辺の資産も含めて総合的に負担を考えるべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/34
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035・薮仲義彦
○薮仲委員 これは田中先生の御専門ということでお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中で資産の格差の是正というお話がございました。この資産の格差の是正は、一つは持つ者と持たざる者、この格差がございます。と同時に、もう一つは個人と法人の格差が最近は非常に乖離しているのではないかと私は思います。
と申しますのは、個人の場合は相続税で、相続財産は一生に一度は資産の再評価の洗礼を受けるわけです。ところが、法人というのはフローの所得がストックという形で、先生おっしゃったように一千兆ほどのフローの所得がいわゆる資産としてだんだんストックされているのじゃないか。そういう意味で、私は土地の増価税と同時に資産を再評価していくということが非常に重要なことだと思うのです。そのときに、法人に対する資産の再評価ということについて、いろいろと反論もあるかもしれませんが、しかし資産格差の是正という課税の公平の原則からいったら、資産についてはやはり再評価をし、ある程度グラウンドのレベルをゼロにしたところから、先生おっしゃるような増価税という形で三年なり五年なりにやっていく。評価の基準がはっきりしていませんから、最初資産の再評価をした方がいいのじゃないかなと思うわけでございますが、この資産の再評価については先生いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/35
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036・田中啓一
○田中公述人 資産の再評価ということがもし行われるならば第五次資産再評価に当たるかと思いますけれども、これはいろいろ御指摘のとおり、土地だけにやるのはどうかとか、株をどうするのかというほかの問題も非常に関連があろうと思います。しかし、今こういう時期では少なくとも一つの検討要項、特に監視区域や何かの指定のところとセットというような形で、法人が持っているようなところで異常な含み益が出たときには、それはある程度再評価をするということも、固定資産税とかそういう保有税が適正に機能していない限り、しかもまた事業所得と住宅用の税率が我が国みたいに同じ、外国では大体違っている国が多いわけでございますが、こういうところではやはり私個人的には少なくとも前向きに考える課題であるというようなことも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/36
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037・薮仲義彦
○薮仲委員 次の問題でございますけれども、今与党と野党と法案をすり合わせているわけでございますが、幾つかあるわけでございますが、一つは公的地価の評価に対する一元化という問題があるわけです。さっき長谷川先生から、いわゆる固定資産税あるいは相続税というのが、評価がブラックボックスになっていて我々にわからない、オープンにすべきである、これは私は非常に納得できる、説得力のあるお話だと思うのです。評価の一元化というのは、各行政官庁は自分の行政目的で長い年月その目的達成のためにやっておりますから、固定資産税あるいは相続税にしましても非常に頑として牢固として自分のとりでを守ろうとしたりしておりますけれども、やはり将来は、今おっしゃられたように評価が一番大事だと思いますので、公的な評価がきちっと一元化されるということが好ましいことだと私は思うのでございますが、この辺、長谷川先生いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/37
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038・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 私は、土地政策にとって一番のベースのプリンシプルというか、それは評価にあると思います。公平な評価ということが一番政策のベースになければいかぬと思います。台湾なり韓国の政策を見ますと、少なくとも評価については一元化するという方に進んでおります。また韓国も来年から評価の一元化というふうになるようでございます。本来そうあるべきだと思いますが、三十年来それぞれ別の道を歩んできたということがあって、なかなか統一が難しいということは理解できます。それぞれのプリンシプルがあるでしょうし、それぞれの政策目標があるから、これをいっときに一元化することは大変無理かと思いますが、少なくともそういう努力をしていくというか、あるいは目標を決めてそれに近づけていくという姿勢がないと、この問題は永久に解決できないのではないだろうかというふうに思います。
それからもう一点は、私ども、今の地価公示というのは、正直言って土地投機を容認してしまうというか、今の地価公示はやはり本来の地価には見合っていない。固定資産でいえば、負担と評価の関係でもって多分その評価が決まるわけでございましょうけれども、地価公示による公示価格がいわば土地投機に引っ張られてしまって、実際に現実的な評価でなくなってしまっているというところに非常に問題があるわけでありまして、アメリカや諸外国の評価では、土地の評価というのは収益還元というか、ポケットから出される、あるいはもうけから出される範囲で決まるんだというプリンシプルで実は評価が行われている。我が国で非常に難しいのはそこだと思います。そこのところをうまく、それこそ国民のコンセンサスで地価はこういうふうにあるべきだということになれば、そういう目標を決めれば、実は土地税制の評価と実際の評価とは一致していくべきはずだと思いますし、そうなると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/38
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039・薮仲義彦
○薮仲委員 次の問題で成田先生と長谷川先生にお伺いしたいのは、成田先生の御意見の中で、土地、住宅の不安が政治不信につながっているという御指摘がございました。土地問題イコール住宅問題と我々認識いたしておるわけでございますが、同じように長谷川先生は、いつ、どこで、幾らで住宅が取得できるのか具体的目標を出しなさいという御指摘でございました。
我が党はもともと、土地基本法もさることながら、昭和四十三年以来、住宅に対しても基本法が必要なのではないのか、日本の国の政治の中で最も立ちおくれているのは何だといえば、建設省所掌の住宅、土地が今の日本の国民の不安であり、また最も未解決の分野ではないかと思うのです。ようやく土地にメスが入ったわけでありますが、住宅に対しても、行政官庁というのはやはり後ろに法律がなければ、先ほど諸先生の御指摘のように、宣言法でもこれがきちっとできれば、公害対策基本法や教育基本法が成立したことにより関係の施策がだんだん敷衍していったように対策は充実する、実定法の中できちんと決まってくるんだというお話がございました。
そうしますと、やはり私は、土地基本法と同時に、土地というのは住宅だと思うのです。住宅に対する基本的な法律、これは何かといえば、長谷川先生御指摘の、いつ、どこで、幾らでというのは一体だれが責任を持つのか、やはり行政機関だと思うのです。国と地方自治体がきちんと責任を持つ、こういう法律がきちんとバックボーンにあれば、関係法制はきちんと制度化されて、国民の住宅水準も国と地方自治体が責任を持って行っていくことによって、土地、住宅は一体でなければならないと思います。我が党はこの住宅に対して、土地基本法と同じで基本法が必要だというスタンスにおるのでございますが、成田先生と長谷川先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/39
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040・成田頼明
○成田公述人 住宅基本法の問題につきましては、かつて住宅宅地審議会でもこれについて論議をしたことがございます。そこで、例えば居住水準とか誘導水準とか環境問題等も含めて基本を宣言したらどうかというお話でございましたけれども、御承知のように、これはいまだ実現しておりません。
そういったことで、土地基本法に対応して住宅基本法を考えるということも確かに貴重な御意見であろうというふうに思いますけれども、ただ、住宅政策の基本というのは時代によってかなり大きく変わっているのではないかと思うのですね。ついせんだって、こういうふうに地価の上昇が顕著になります前には、むしろ住宅問題というのは民間活力でやればいいんだ、公共は余り住宅問題にはくちばしを挟まない方がいい、こういった意見がたしか臨調行革路線の中ではいろいろと言われたと思うのです。ところが、そこへ参りましてから急に地価高騰が始まったということで、もう一遍公共住宅政策が表面に出てくる必要があるということになったわけですけれども、数年前と現在とでは住宅に対する基本的な施策のあり方というのは非常に違っております。対象、目的、内容等がかなり変わりますので、つくることは結構ですけれども、具体的な対策になりますと一体どこまで書けるのかなというふうな心配がちょっとあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/40
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041・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 衣食足りて礼節を知るという言葉がございますが、私は、住足りて礼節を知る、そういう時代になっているんだと思います。ただ、住宅基本法という形の法律が要るかどうかという問題は別にしまして、私たちの、国民の今の関心事というのが住宅だけではなくて住環境にもあるということだと思います。クォリティー・オブ・ライフと申しますか、そういうものを実現したいという願いというのは国民に非常に強いわけでございまして、そういう意味で、住宅だけでなくて、住宅及び住環境を含めてクォリティー・オブ・ライフをどう実現していくかという方向を示されることが国民にとっては大変望ましいことだと思います。
ただ形式的に住宅基本法が要るのか、あるいは都市計画法とかというものとどういうふうに連動するのか、諸般の問題、住宅は住宅だけであるわけではなくて、住環境、土地と一体にあるという点で、やはり総合的な方向づけが必要だと思いますが、御趣旨については私はそのとおりだと思いますし、これからぜひ政策がよりよき住宅と住環境の確保に向いてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/41
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042・薮仲義彦
○薮仲委員 最後の質問になりますけれども、これは田中先生と長谷川先生にお伺いしたいのです。
田中先生に最初にお伺いしたいのは、先ほどお話があったように、日本の経済はバブルス、こう言われますけれども、土地の値段が経企庁の資料でも一千六百兆、アメリカが四百九十七兆、日本を売ればアメリカが三つ買えるなんという話が出てまいりますけれども、まるっきりこの土地という泡の上に成り立っている日本の経済、しかもそれによって海外の土地を買いあさって対日感情を悪化させている。しかしこれは、土地の値段がもう価値はないよと、こうバブルス、泡が消えたときに大変なことにならないのかなという懸念を一面持っております。と同時に、今の金融関係というのは土地を担保にお金を貸す。土地を核として日本の経済が動いている。金融もそれに引きずられている。これをどこかで断ち切る必要があるのかな、土地神話を生んでいるのは、ある意味では大蔵省であり金融機関なのかなという極論をしたくなるほど問題意識を私は持っているわけでございます。さはさりながら、日本の経済が世界に果たす役割を考えますと、ソフトランディングさせなければならない。この点で泡をどういう形で消していったらいいのかなということが一つ。
それから、都市計画と税制一体化というお話がございました。どういう税制がいいのか、ごく簡単で結構です。
それから、開発利益の還元についてどういう税制がいいのか、これもごく簡単で結構です。
最後に、長谷川先生には、我々は土地情報の必要性というのは切実に感じております。これを一体具体的にはどうやったらとれるのか、要点だけで結構でございますのでお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/42
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043・田中啓一
○田中公述人 先ほども私述べさせていただいたとき、ソフトランディングが必要だ、現状を急激に下落させるということは、バブルを消すことは非常に難しい、というよりむしろ弊害が現状時点は非常に多いだろうという御指摘をさせていただいたところでございます。
その方法としまして、私は、GNPが上がる段階、十年間くらいは年率五%は期待できる。その水準にどうにかして税制、都市計画すべてを持っていく。それによって担税できるような負担を求めていく。そういう点では、先ほどの企業の再評価ということも一つの課題でしょうし、また市街地の農地の問題も検討要項に入ってくると考えております。
開発利益は、現行では保有税が余りにも我が国の場合それに対応しておりませんので、保有税の改正で一応考える、それで都市計画とか土地税制全体がうまくいったときに譲渡課税をむしろ逆に安くして早く供給を促進させる、そういう税制に、今までと全く発想を別にするようなことを考える必要がある。必要ならば、土地増価税的な発想、あるいはまた保有過多税というような、今韓国とか方々の国でやられている、余りたくさん土地等を持ってはならないということとか、あるいはまたその税率を人税的に上げていくというようなことも検討要項の一つになってくると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/43
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044・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 土地情報につきましては、私は一番ベーシックなものは土地登記のあり方だと思います。この点について、私は正直言って大変おくれていると思います。
例えば国土調査法も執行しておりますけれども、全体では二割もいっていないと聞いております。この辺については、ベースとなる国土調査をしっかりやる。私は、そのために一番問題は隣地の境界とか地籍の確定について、日本の今の民主主義の中ではなかなか進まないという点が問題だと思います。そこのところは、実はこれこそ強権的にきちっと政府なり自治体が仕切るというふうな姿勢を示さないとこれはできませんから、ぜひそういう仕切るということで早くその国土調査を進めて、少なくともこれだけの技術が発達した国ですから土地登記ぐらいは完全にコンピューターに入って、地籍ぐらいはちゃんとコンピューターで作図できるというふうにしてもらいたいと思います。
もう一つは、私は土地税制の情報だと思います。私は戦前の土地税制の情報を調べてみますと、実にきちっとしているんです。それは、戦前少なくとも地租というのは、実は国政においても地方においても非常に重要な財源でした。したがって、きちっと調べなければ税は取れなかったわけであります。戦前の東京府の資料とか市の資料を読むと、実に感心するぐらいに資料ができております。戦後できなかったのは、実はこれはできないんじゃなくて、やらなかっただけだと思います。かつまた、守秘義務というような妙なものができて、どうでもいいところまで守秘義務で隠してしまったということでございますので、ぜひ戦前の土地の情報の資料をごらんになって、どこまで公開できるか、あるいはどこまで整理するか、それも大蔵省、自治省通じて全体の土地税制に伴う情報を整理して、土地のマーケットというものを我々に見せてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/44
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045・薮仲義彦
○薮仲委員 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/45
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046・大塚雄司
○大塚委員長 安倍基雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/46
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047・安倍基雄
○安倍(基)委員 どうも公述人の諸先生方、お忙しいところをいろいろありがとうございました。
既にいろいろ同僚議員が聞いておられますので、余りつけ足すこともないかと思いますけれども、最初に、今ちょうど薮仲委員が提出された、余りにもバブルというか泡になっておるという点に関連してでございます。
田中公述人のさっきのGNP対比は非常に参考になりますが、一つは私は、日本の株と同じように、きのうも委員会で言ったんですけれども、日本の株式市場というのは非常に持ち合いが多い。ですから、動く量が比較的少ない。そこに需要がどっと殺到すると、どうしても値上げが大きい。日本の土地の場合も、供給というのは非常に縛られて限られてしまっている。その一つの理由は、さっきの譲渡税が高くて保有税が安いという要素もありますけれども、供給に対して比較的需要が増幅されているという要素が非常にあると思いますね。もう一つは、要するに値上がり期待感、本来ならばそこにおける収益性で還元したものが時価であるべきものなんですけれども、それどころの騒ぎでなくなっている。そういう市場の狭隘さと、今の供給が非常に少ないところに需要が増幅されている。私も以前から時々論文を文春に出したりエコノミストに書いたりしているのでございますけれども、保有税と譲渡税のアンバランス、これに大きな原因があるんじゃないかと思うのです。諸外国における保有税と譲渡税のそういういわばバランス的な研究はあるのでございましょうか、田中公述人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/47
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048・田中啓一
○田中公述人 研究は当然のことながらあると思いますし、私の知る限りにおきましても大体保有税というのが、かなり財源では、これは適当かどうかわかりませんが、例えば世界一地価が高いと言われる東京都でございますが、平成元年度、ことしの予算で固定資産税のウエートが大体一六%ぐらい、ニューヨークはかつては七〇%ぐらいいきましたけれども、今は非常に少なくなりまして、それでもまだ半分前後、あるいはアメリカの地方の都市では大体八〇%ぐらいが平均ということでございます。それで、保有税と言われる、日本で言う固定資産税的な財産税で使われているわけであります。ロンドンは、御承知のとおり、レートだけの一〇〇%課税でございまして、譲渡税は大体欧米では長短が一年間ぐらい、企業会計原則と同様の期間が多いようです。これのためには、やはり都市計画がしっかりしておって初めて保有税をある程度高くして譲渡税を安くして供給促進が図れるということでございますが、この辺の保有税と譲渡税だけでバランスを見るというのは、ちょっと危険なような感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/48
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049・安倍基雄
○安倍(基)委員 似たような関連で、長谷川公述人もいわゆる保有税の問題を取り上げていらっしゃいましたけれども、現行の法制でいきますと、結局、保有税引き上げはすなわちメガロポリスに対する財源の集中という形になるわけです。私も、きのうもメガロポリスのことを言いますと、なかなかその方ばかり割合と攻撃してしまうのですけれども、私は、そこで税源の再配分が必要じゃないかということも言っております。メガロポリスに対する財源の集中について、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/49
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050・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 確かに今の固定資産税を見ましても、東京都の固定資産税の税収の比率というのは、税収自身の一三、四%だと思います。ところが、鹿児島ぐらいになると、三〇から四〇というぐあいになって、全体に占めるシェアが非常に違うということですね。もう一つは、個人の立場をとってみますと、東京都で納める固定資産税も、鹿児島で納める固定資産税も一人当たりにするとほぼ変わらないんですよ。ということは、地価が三十倍違うのに納税額に差がないということは、結果的に見るとどっちかが高過ぎてどっちかが低過ぎるのであります。東京都が当たり前なら鹿児島は高過ぎるし、鹿児島が当たり前なら東京が低過ぎる。やはり地域的なバランスというのを考えなければいけない。そういう土地の税金がベースにあれば、実はその上に住民税とかそういう税があってバランスがとれるはずでございますけれども、私が見るところ、戦前は少なくとも地租という土地の税金が都市をつくるベースだったはずであります。土地が地方財政のベースだったのです。それがこの三十年だんだんそのウエートが落ちてしまったというところに問題があるわけでありまして、先ほど申しました固定資産税の問題というのは、そういう大きな問題を抱えているということもありましょうし、確かにおっしゃるとおり、今のままでしたら東京都は物すごく金持ちになると思います。しかし、それは政治でもってぜひ御解決をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/50
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051・安倍基雄
○安倍(基)委員 私も書いた論文の中で、地方自治体がだんだんと法人住民税、個人住民税にウエートがいってしまって、これはメガロポリスがそうなっているわけですから、東京あたりもだんだんとそういう固定資産税の依存度が減ってくる、というのは、別のところで金が入ってくるからそれで十分でございますという話になってきているわけですね。でございますから、私も、特に土地問題との関連は、行政機構へのメスというか、その辺をうまく考えていかないと解決しないんじゃないか。
さっき冒頭で成田公述人も、いわゆる行政機構の一元化とか大都市レベルでの計画とかいうことを言われました。私、実際的に、本当にこの土地問題は、最終的には要するに国と地方自治体との財源配分、特にメガロポリスにおける扱いというものを考えていかないと解決しないんじゃないか。そういうことをきのうも言ったんですけれども、建ぺい率、容積率が、特に東京あたりは中央の三つの区ぐらいでも住居地域が、中央区とか港区とか千代田区でも住居専用が相当の部分を占めておるし、それにおける建ぺい率、容積率が非常に低いというような議論もしたんです。要するに行政機構そのものに相当メスを入れないとこの土地問題は解決しないと私も思っておりますけれども、その点、行政関係のベテランである成田公述人の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/51
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052・成田頼明
○成田公述人 土地問題が斉一的に統合されない、ばらばらであるというのは、私が申しましたように、確かに行政官庁の縦割り行政、これに大きな原因があるということも御承知のとおりでございます。ただ、一元化するという場合にいろんな問題点がございまして、現在、何らかの意味で土地に関連する行政機構、各省庁というのは非常にたくさんございます。ですから、そういうものを一つにまとめてみても巨大な組織ができるだけで、うまくいくだろうかというふうに思われます。それから、ある意味では制度よりも人ということもあるわけでして、まあ運用する人の方にも問題がある、こういうこともございます。
私は、この問題は、土地行政の一元化は結局は内閣なり地方公共団体での総合調整力、この総合調整力にやはり問題があるのではないかというふうに思うわけでして、この辺は行政改革の大きな論点であろうかというふうに思いますけれども、土地行政については、やはり矛盾した政策、不整合な政策が出ないように強力な総合調整をやっていただきたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/52
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053・安倍基雄
○安倍(基)委員 私自身も、特に今まで地方自治の名のもとに、本当に困っている地方自治体じゃなくて、メガロポリスが一種の護送船団みたいなもので、一番苦労しているところを標準にするものだから、べらぼうにメガロポリスはその上に乗って本当に金が入りたいだけ入っちゃうというシステムになっている。この辺やはり、さっき鹿児島と東京の話が出ましたけれども、何らかの機構改革とか、その辺が必要だと私は思いますね。
ちょっと話は飛ぶんですけれども、こんな話があるのですね。さっき成田公述人が私権の補償の問題をちょっと言われましたね。最近、ちょっと開発しようとするとすぐ遺跡が出てきて、文化庁あたりがそれにストップをかける。それは確かに遺跡は大事かもしれぬけれども、各地方自治体あたりで、一体開発が大事か遺跡が大事かという話でしょっちゅうもめるのですね。その辺自体も非常に総合判断がされない。つまり、文化庁としてはともかく大事だ大事だとちょっとしたところでも思う。地方自治体はそれがせっかく開発しかけたらそうなっちゃう。現実に補償されるかされないかは別として、工期そのものも一年も二年もたっちゃう。それだけでもすごいロスをこうむる。こういったような、これは縦割り行政の一つのあれかもしれませんけれども、どこかで総合判断する機能がなければいかぬ。
私は、結局、諸外国における行政単位ですね、そういう開発において要するにどの辺まで国が介入するのか、あるいは地方に任せるのかという話で、どうも私の場合には、何もかも中央で吸い上げちゃってストップをかけたりなんかする、だからそこで、もちろん文化財なんというのは大事かもしれませんけれども、それをどう判断するかという辺になってきてそこの調整が行われないままに非常なロスをこうむるという感じでございますけれども、そういった行政機構についての成田公述人の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/53
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054・成田頼明
○成田公述人 文化財の問題につきましては、御承知のような事例が非常に多発しているということは私もよく承知しております。この問題、文化財の中にも国家的なレベルのもの、あるいは都道府県レベルのもの、市町村レベルのものといろいろございまして、都道府県レベル、市町村レベルでは現在土地調整の総合的な組織などをつくりまして、その中でいろいろ協議をしながら、残すべきものは残す、開発すべきものは開発するというふうな形で調整がとられていますけれども、国の場合にはなかなかそういう総合調整が実際には難しいというふうな現状ではないかと思われます。
地方自治体の中では、御承知のように開発指導要綱でデベロッパーに文化財の調査費を負担させるというような例がありまして、これは裁判等でも最近二、三、下級審で判決が出ておりますけれども、裁判所自体も、適正な形で強制にわたらない限度であればある程度そういうデベロッパーに負担させるということもできるのではないか、こういう判断を示しておるわけでございまして、地方は地方なりにやっているというふうに思っております。ただ、やはり現状では、先生おっしゃいますように、いろいろな問題について中央は口を出し過ぎるというような問題もございますので、そこは分権化に向けていろいろ努力をしていくということが今後必要なのではないかというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/54
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055・安倍基雄
○安倍(基)委員 急な御質問ですけれども、外国の例なんというのは余りそういった話は別にあれでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/55
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056・成田頼明
○成田公述人 外国の例につきましては、私も余りいろいろな国の例を知っているわけではございませんけれども、例えば西ドイツの例で申しますと、やはり記念建築物それから自然環境、景観、そういうものはやはり都市計画の非常に重要な要素になっておりまして、都市計画を決定する際に、そういうぶつかり合う公益相互の間の適正な比較考量をしなければならないということになっております。計画でそういう非常に貴重な文化財を破壊するような計画をつくった場合には、最終的には行政裁判所に参りまして、行政裁判所は中身に入って利益の比較考量が適正に行われているかどうか、こういうことを審査する仕組みができております。
日本では、どうも裁判所に持っていきましても大体門前払いを食って中まで入って審査しないというふうなこともございますので、そこら辺の制度もやはり今後は改めていく必要があるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/56
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057・安倍基雄
○安倍(基)委員 それと、長谷川公述人、情報の公開ということを言われました。これはもろ刃の剣でございまして賛否両論あると思いますけれども、この辺は外国の例はどういうことでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/57
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058・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 私、台湾と韓国の例しか存じませんが、台湾も韓国も基本的には土地登記が全部一元化されておりまして、コンピューターセンターに土地登記が入りますと、そのまま中央に登録される仕組みになっております。ですから、どこでどのくらい土地が動いているかというのは、株と同じように本日出来高幾らというのがわかるような形になっております。なおかつ各人別に、背番号制がございますでしょうから、これで各人別にどういうふうな所有になっておるか、あるいは、家族単位でどういうふうな所有になっておるかということがきちっとわかる仕組みになっております。その是非はともかくとして、そういう仕組みになっておりまして、その上で土地政策が展開しているわけであります。
ただ、それが公開されるかされないかということについてはかなり微妙でありまして、私も担当の人にいろいろ聞いてみましたけれども、全部オープンにするということはない。しかし統計的な点については、かなり、例えば土地の所有形態がどうなっておるとか、階層別にどうなっておるとか、五%の人がどのくらいの土地を持っておるとか、市場の仕組みということがこれは今度の法案のバックデータとしてもきちっとそろっております。そういう個人のプライバシーについては公開はしないでしょうけれども、少なくとも土地のマーケットがどうなっておるかという仕組みについては、これは両国ともきちっと公表しておるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/58
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059・安倍基雄
○安倍(基)委員 それから、いわゆる公共投資の受益者の話でございます。私は論文の中で「公共事業の神話」という表題で書いたんですが、公共投資、公共投資というと非常にいいように思われるけれども、負担者と受益者とが分かれてしまうときにはかえって富の不公平を呼ぶ。つまり、サラリーマンの税金でもって公共投資をやる、その周辺の要するに土地の所有者がいわば利益を受けるという話になると、これは結局は公共投資という名のもとは富の不均衡をむしろ発生させる原因である。公共投資の神話という言葉で表現したのでございますけれども、その面からいうと、私はやはりいろいろローカル的なものはローカルが負担する、それで結局計画を立てていく。ある意味の地方分権というか、単位が広くなればなるだけみんなから集めた金がどこで使われるかわからない。国税がどっとある都道府県に集中して公共事業が行われる。日本は連邦じゃないから、連邦制の場合には州くらいの単位で還元ができるんでしょうけれども、日本の場合には全部集中的に国が大部分持ってきて、あとはみんな国に依存するというようなシステムがあるわけですね。
だから私は、土地問題あるいは公共投資問題は最終的には、ちょっと、随分大きなだんびらになるんですけれども、そういう行政機構というか、受益者と負担者が接近するという要素が——例えばニューヨークあたりは一遍あれは破産に追い込まれましたですね、何もかも自分が負担しなければいかぬ。ところが、富裕者は、お金持ちは随分郊外に行っちゃったという話があります。これはちょっと極端な例かもしれませんけれども、その辺のいわば考え方が、日本の場合には、例えば東京あたりの人口がどんどんふえて、ダムが必要なら国費でどこかダムをつくろうとか、私はこの前ちょっと言ったのは、東京都の四谷から半蔵門の間の拡幅工事に三分の二が国が負担しているとかそういうことで、私は、最近のように土地問題というのは行政の改革そのものに、特にさっきの保有税が地方税で、譲渡税は国税だ、国税の方は一生懸命取ろうとするし、保有税の方はほかの方で金が入ってくれば我慢して、つまり取らないで済むということだと思うので、もう時間もございませんから、この点についてはどなたの御意見承りましょうか、それじゃ、行政という意味で成田公述人の方に御意見お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/59
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060・成田頼明
○成田公述人 先生おっしゃいますように、地方自治にとって非常に大事な問題は、受益と負担がやはり非常に見えやすい形になっているということかと思います。現在日本の地方自治ではそうなっておりませんで、必要な財源は国から来る、地方は三割しか自主的な財源がないというふうに言われておりまして、そこら辺は、受益と負担を明確にするためにはやはり自主財源をふやしていくということがぜひ必要だろうと思うのです。
しかし他方では、先生さっき御指摘ございましたように、メガロポリスに非常に巨大な財源が集中しているということがございますので、適正な財政調整の仕組み、これが不可欠でございまして、そういうことを総合的ににらみながらこれから地方制度、特に国と地方の関係というものをどう考えていくか、これがやはり土地問題を離れても非常に大事な問題であるという認識を私もしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/60
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061・安倍基雄
○安倍(基)委員 もう時間も来たようでございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/61
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062・大塚雄司
○大塚委員長 辻第一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/62
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063・辻第一
○辻(第)委員 日本共産党の辻第一でございます。
きょうは、公述人のお三方の先生には、お忙しいところ御出席をいただいて、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
土地と住宅の問題というのは、先ほどいろいろ貴重な御意見を聞かせていただいたわけでありますが、本当に重大な緊急の課題だなということを改めて感じたわけでございます。私の奈良も、最近はもう異常な土地の高騰で、ことしは商業地は全国で一番とか、住宅地で言えば全国で三番とかというような高騰でございます。もう土地を求める人は家を求めることができないような状況にもなってまいりました。また、格差がどんどん出てきているというような問題も深刻でございます。
そういう状況であるわけでありますが、私どものこれまでの政策の経過などをちょっと申し上げたいと思うのですけれども、一九七三年六月に土地と住宅についての日本共産党の具体的構想というのを当時発表いたしました。そして、その翌年には、この構想に基づいて生活用地確保法案というのを提起されたわけでございます。そして、最近で言えば、八七年の九月でございますが、地価問題で緊急提言を出しました。それは、規制区域の適用の問題、土地融資の規制、土地転がしへの一〇〇%課税、国公有地の売却中止、公共賃貸住宅の大量建設、東京集中政策の中止、大企業への社会資本負担金などの政策を明らかにしたわけでございます。
ごく最近は、地価を抑え、ウサギ小屋から脱却できる住宅政策を実行する、こういたしまして、日本の異常地価と住宅の貧困の根本原因を、自民党政府がオフィスビルの大量建設のために土地を大企業の食い物にさせる、と同時に、公共住宅の建設を徹底してやってこなかったからだ、このようにずばりと指摘しているわけでございます。そして、問題解決のかぎとしては、国公有地と大企業保有の遊休地の住宅用地、緑地としての活用、これが一つ。もう一つは、住宅地、商業用地、農業用地を大企業の投機の種にさせない、借地・借家法の改悪や農地の宅地並み課税には反対、こういうことを含めた二番目でありますが、二つの方向を重点的に打ち出しました。
こういう立場で私どもはおるわけでありますが、そこで最初に成田先生にお尋ねをいたします。
先生は「住宅金融月報」のことしの十月号に「住宅宅地審議会宅地部会中間報告とその背景」というのを出されておるわけでありますが、その中で「公共住宅政策の再登板」というところがございますね。ちょっと引用して読ませていただきますが、
第二臨調による行政改革論議が始まって以来、住宅建設や住宅の確保については、国・地方公共団体、公団・公社等が主導的役割を果たすべき時代はもはや過ぎ去り、規制緩和、民間活力、住宅需要層の自助努力等を挺子として、もっぱら私的イニシアティブと市場メカニズムにゆだねるべきであると言う考え方が一般的風潮として強かったように思われる。国の財政再建を金科玉条とする「小さな政府論」にひきずられたものである。しかし、こうした風潮は、短期間のうちに大都市における地価の狂乱的上昇の有力な要因の一つとなり、住宅政策における公共セクターの社会国家的役割を再認誠する必要にせまられたのである。
このようにございます。
そこで、私どもは、先ほど申し上げました当面の問題解決のかぎとしては、国公有地と大企業保有の遊休地を住宅用地、緑地としての活用、こういうことを二本柱の一つにしているわけでありますが、「公共住宅政策の再登板」という先生の御主張と絡めて御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/63
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064・成田頼明
○成田公述人 最近御指摘の雑誌にそういう論文を書いたことは私も承知しております。私、自分で書いたわけでございますけれども、この問題は大企業の遊休地を活用するということもございましょうけれども、実は、本年六月に西ドイツへ参りましたときに、西ドイツもやはり公共的な住宅政策はもう終わりの時代が来たということで、今まで公共的な対策というものをほとんど行わずに来たわけです。むしろ質のよい住宅というものは民間の力で、市場のメカニズムで調達すればいいというふうに考えてきたわけですけれども、ところが、御承知の最近になりましてから東ヨーロッパ圏から非常にたくさんの人が流入してきております。これが突然火をつけまして、やはりもう一度公共住宅政策というものは表面に出なければならない、こういうことで、建設大臣もかわりましてただいま第二の、第三のと申しますか、住宅逼迫、窮迫の時代が来たということで、日本と同じようにいろんな対策をこれからやろうということになっております。特に、この問題、非常に逼迫していますのは、先ほども申しましたように東京都でございまして、現在東京都でも住宅問題の懇談会で特にさっき申しました中所得層に対する低廉な住宅を、良質な住宅をどう供給するか、こういう課題に取り組んでおりまして、その中で民間住宅の持っている例えば社宅などとも連動しながら、例えば安く借り上げてそれを安い価格で供給する都民住宅のような制度を提言しておりますけれども、やはり土地問題から生じたいろんな弊害をそういう形で東京では既に政策として実施をしているという段階でございますので、先生おっしゃいますように、これからますます公共住宅政策というものはそういった意味で特に大都市部においては大きな役割を果たすことになるだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/64
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065・辻第一
○辻(第)委員 次に、長谷川先生にお尋ねをいたします。
十月十六日の日経新聞の「土地融資、抑制へ動く」という先生の記事がございます。私、部分でございますがちょっと見せていただいたわけです。最近私ども大阪を中心に調査をしたわけですけれども、全く二年ほど前のあの東京の経験の中では、金融、これの過剰な融資、めちゃくちゃな融資、これをきちっと規制をするということが大きな問題になりまして、そのことがはっきり打ち上げられたのですね。ところが、最近の大阪の話を聞きますと、もう全く、ひどい話になりますと金融機関が土地の物件を示して、そしてこれ融資するから買わぬか、こういう話であります。具体的には先生四十四兆円とおっしゃったですかな、去年からことしになってうんとふえておりますし、殊に地方銀行が最近ふえているようですね。そういう状況が来ているわけであります。ですから、私は金融機関の過剰融資、めちゃくちゃな融資の規制というのは物すごく大事なことだと思うのですけれども、それが現実はほとんど通ってなかった、野放しになっていたというふうに私は一面で感じるわけですね。
そこで、先生はそこのところを十分に早くやるべきだ、そしてやればやれるというようなお話であったと思うのですが、その調査でありますとか、規制でありますとか、あるいは審査でありますとか、そういう点についてもう少し具体的にお教えをいただければと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/65
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066・長谷川徳之輔
○長谷川公述人 公述でも申し上げましたが、短期的には不動産金融の是正ということは土地投機の抑制の大きな要素だと思います。私もいろいろ調査いたしますと、やはりこの四、五年の土地の取引では法人間の取引が圧倒的に多いわけであります。あるいは個人から法人、法人から法人という法人介入率が非常に高うございまして、東京の都心部では九割までが法人が主体であります。法人主体ということはイコール金融機関であります。そういう点では確かに大きな要素だったと思います。
ただ、これは自由経済の中でどこまでコントロールするかというのは、私はよくわかりませんけれども、非常に大きな問題であって、やみくもに規制するだけが問題ではないと思いますし、やはり金融機関というのは節度とかあるいは全体を見通す公共性に対する洞察力とか、そういうことで実施すべきで、あえて規制というか、そういうもので強化すべきじゃない。ただ、基本的に大切なことは、やはり大きな企業としての世の中に対するリーダーとしての矜持だと思います。それに期待をしたいと思いますが、確かにノンバンクを通じて融資がふえたことは確かでありますし、それから都市銀行の融資は一時落ちましたが、逆に地方銀行がこのところ上がっているということは、次は僕の番だよということかもしれませんが、いずれにしてもそういうビヘービアがあることは否定はできませんし、それから金余り現象だということも否定できません。それから日本経済が今こういう状況であることも否定できません。しかしながら私は、そういうお金を住宅と住環境の改善に向けていくということが大事であって、土地の投機というのは逆にそれを摘んでしまうことになる。だから、金融機関もいろいろなところも、本当に大事な投資先は何かということを考えてやっていただ、きたいと思いますけれども、ただコントロールすることだけが実は解決ではないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/66
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067・辻第一
○辻(第)委員 私は、例えば金融機関の問題だけで見てみましても、そこのところにはやはり利潤の追求ということが一番大きな流れとしてだあっと走っている、そういう中でこういう不当な、過剰な融資がやられているのではないか、そのことを痛切に感じるわけでありますけれども、何としてもこの不動産融資をきちっと規制していくということは大事だなということを痛感をしているわけでございます。
次に、田中先生にお尋ねをいたします。
先ほど、戦前は土地がGNPに対して大体二・五倍、アメリカやヨーロッパに比べますと大分高いわけでありますが、最近は五倍程度になっているというようなお話がありました。先生は、そのもとの二・五倍ぐらいに何とか戻すべきではないのかというような御意見だったように思うのですが、実際に下がるのかな、今の政策の範囲で私はその辺はなかなかそのようにも思えない。もっと抜本的な、基本法の問題なんかはもちろん基本的な宣言法ですけれども、対症療法的な政策ではなしに、本当に病根に抜本的なメスを入れるということでないと、このまま高値のままでずっと行って、そして先生は今世紀は日本で三回、今世紀にはもう上がらぬかもわかりませんけれども、また次の上がるときの対応のような感じがせぬでもないわけですね。やはりそういう点で、例えば私はきのうの質問でも申し上げたのですけれども、規制区域の適用という伝家の宝刀など、もっと抜本的ななにをやる、そして先ほど申し上げましたけれども、公共賃貸住宅を大量に建設をしていただくとか、そして大企業の土地の買い占め、投機をきちっと抑えていくというようなことを本当に抜本的にやらなければ解決をしないのではないかなと思うわけであります。先生は規制区域の適用の問題はいかがお考えになっておられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/67
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068・田中啓一
○田中公述人 先生の御指摘のように、ここまで複雑化した我が国の地価問題、土地問題でございますので、抜本的なことが必要だということは全くの同意見でございます。そういう中で私は、現実面から考えますと、これ以上上げない、再び狂乱地価を起こしてはならないという前提でこれまでもいろいろ論文や何かを書かせていただきましたし、また、きょうも述べさせていただいたと思っております。
それで、御指摘の中で国公有地というのも、私がこれまで述べてきたのは、払い下げというのを基本的にはすべきじゃないという考え方を強く持っておりまして、もし払い下げをするということなら住宅地に限るということに今のところしていいのではないかと思っております。事業用や何かは民間で経済原則によって十分対応できるわけでございますので、まずそういう基本的な考え方を持っております。
御指摘の規制区域でございますけれども、確かにこの規制区域が必要な時点ということもこれまで既に起こってきたと思います。しかし、一応曲がりなりにも、ほとんど条文で対応できる監視区域というものが新たに導入されまして、この監視区域を早目早目にやっていくならば、規制区域が当初考えられていた目的というのは十分対応できる、むしろ監視区域でできないといったときの段階では十分考えるべきだと私は思いますが、監視区域の早目の動向とこの基準の低下というような、とにかく結果で後を追うのではなくて早目早目にかけていくというような形では、この規制区域と同じ目的、それでしかも私権制限をある程度緩和しながら十分同じ効果が現行の監視区域の中でできると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/68
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069・辻第一
○辻(第)委員 私も監視区域については適用をもっと早目に広く、しかも実効のある、例えば地域によって平米だけじゃなしにどの程度が対象になるのかという、何ぼ小さくても東京だと二割や四割ぐらいではだめだと思うので六割、七割にするとか、人員をうんとふやす、その予算もつける、こういうこともきのう大臣にお願いをしたわけです。
それともう一つは、先ほどちょっと触れましたけれども、今度の地価の高騰の最大の要因というのは、土地神話とか税制の問題とかいろいろあるわけでありますが、一つは政府の政策、東京一極集中とか規制の緩和とか民活とか都市の再開発、そして中曽根元総理の山手線の中は五階建てとかいうようなお話がありました。それから、私は土地はあると思うのですけれども、東京の中心部のオフィスビルのあれは過剰に計算されたというようなこともありました。そういう政策の問題ですね。そして、そういうふうにあふって、しかも、それに乗じて大企業が土地を買い占める、土地投機に走るというようなことが原因だったと思うのです。そのもとには、利潤を追求するためにはいかなる理性も知性も働かぬという大企業の仕組みがあるのではないかと思うのです。
そのようなことを言っていてもしようがないのですが、こういう投機を何としても抑えない限り解決しない。大体、これまでの国土利用計画法その他でも十分抑えるような内容のものはあったのではないかという気もするのです。それを十分適用しなかったという問題があるのですが、それ以上の投機というのですか、最近大阪府、兵庫県、愛知県に調査に行きまして、それぞれの知事さんや市長さんにお話を聞かせていただいたのですけれども、大体、土地が足らぬということではないとおっしゃるのです。それは仮需要、投機で上がっておる、それから、東京に比べての割安感というもので起こっておるというようなお話を強く感じてきたのです。
そういうことで、私はそこのところ、今度の上がった基本的なところに対するメスが特に重要だと思うのですが、成田先生、もう一言お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/69
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070・成田頼明
○成田公述人 私は、土地については前からかなり厳しい見解を持っておるわけでございまして、どっちかというと市場メカニズムよりもむしろ公共の利益を優先させた形で各般の施策をとらなければならないということを申してまいりました。今回の土地基本法でも、これは宣言法でございますので、これが出てすぐどうということはございませんで、これから具体的に効き目のある施策を展開していかなければならないということかと思われます。
そういう関係で、これからの立法の課題として、学者の机上の発言ではございますがということで先ほどいろいろなことを申し上げたわけでございますが、その中にはかなりドラスチックな意見もございます。そういうものをひとつ御検討いただきたいと思うのですが、一つ問題がございますものは、最近土地投機を招いたのは確かに大企業という話がございましたが、大企業もそうでございましょうけれども、かなり個人が資産保有というような意味で買いまくっておるという実情もございます。そういう点からいって、これは企業も含めての国民全体の意識を変えていかなければならない、意識を変えるためにはこの基本法が非常に大きな意味を持つのではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/70
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071・辻第一
○辻(第)委員 時間が参りました。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/71
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072・大塚雄司
○大塚委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。
公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)
公述人各位には、御退席をいただいて結構でございます。
午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
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午後一時三十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/72
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073・大塚雄司
○大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
この際、御出席をいただいております河口公述人、中村公述人、岩田公述人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会の審査に資するところ大なるものがあると存じます。各公述人におかれましては、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
御意見を承る順序は、まず河口公述人、次に中村公述人、続いて岩田公述人の順序でお願いすることといたします。なお、御意見はお一人二十分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、河口公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/73
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074・河口博行
○河口公述人 ただいま御紹介をいただきました、社会党推薦で公述をいたします労働組合連合の河口でございます。衆議院の土地特別委員会において公述の機会を得ましたことは、大変光栄でございます。
本日、公述に当たりまして、第百十四国会における土地特別委員会の議事録を拝見させていただきましたが、最初にその印象を申し上げさせていただきたいと思います。
一つは、質疑、討論の内容が大変真剣で、かつ的確であり、土地に関心を持つ私どもといたしましても胸にじんとくるものがあります。
二番目に、与野党を通じまして各委員の方々が土地政策について相当高い見識をお持ちであることと、また当委員会がその論議を通じまして共通の認識といいますか共通の土俵が形成されてきているような印象を受けております。相当部分で共通性があり、違う点はわずか二、三割が残されているのではなかろうかという印象でございますが、その後、今国会においても相当煮詰められている状況ではなかろうかと思います。
今日、税制及び年金と土地ということで、勤労者並びに国民生活にとって最重要な課題がかかっておりますが、事この土地に関しては、基本法を中心に共通の方向が導き出されるのではないか、こういう印象を持っておりまして、各委員の方々に高い敬意を表したいと思います。
時間の制約もございますので、結論から御意見を申し上げさせていただきたいと思います。
端的に申し上げれば、政府・与党の皆様方がぜひ野党の意見を大胆に取り上げられて、ぜひこの国会で土地基本法を成立させていただきたい、成立をぜひお願いしたいということを御期待申し上げたいと存じます。これが私の公述に当たりましての結論でございますが、その立場に立ちまして、基本法成立に当たりましての要望を二、三点申し上げたいと思います。
なぜ基本法の成立を望みますかと申し上げれば、八〇年代の最後の幕を迎えておるわけですが、ここではっきりと決着をつけて、九〇年代、年代がわりとともに土地問題の解決に政府及び国会、さらには司法機関であります裁判所も含めて考え方を変えて、国民的な解決が望まれるからであります。
そういった視点で二、三点申し上げるわけですが、第一点は、基本法の中で国民にとっての目標と申しますか、とりわけ減反で悩んでおられます農家、あるいは住宅問題で非常に苦しんでおりますサラリーマンにとりまして、なるほどよくわかる、政府及び国会はその気持ちであるということがわかるような条文あるいは文言を基本的な理念の中に挿入をいただければと思っております。僣越でございますが、野党案の中にもそれがございますが、あえて私どもの言葉で申し上げますれぼ、国土保全及び都市環境、住環境、そして宅地の供給ということを明確に出していただくということが大事ではなかろうかと思っております。
皆様方のお手元の方に今「勤労者生活モデルによる生涯収支シミュレーション」というものを提出をしております。恐縮でございますが、若干資料を御参照いただき、私どものサラリーマンの気持ちを申し上げさせていただきたいと思います。
その第一点は、一ページのところにありますように、これは労働組合が調査したものではございませんで生保業界の生保文化センターがシミュレーションしたものでございますが、八五年に団塊の世代が生涯の収支はどのようになっていくかということを出した一つのシミュレーションでございます。
御承知のとおり、サラリーマンにとりましての生活課題は、一つは老後の備え、そしてそれに関連しての住宅の確保、そして子女の教育ということが大きい課題でありますが、ここに挙げておりますように、現在の平均余命でまいりますと、定年後、公的年金が四千七百五十五万ということでございますから、現在の制度でいえばそうなっていきますが、そして、最低の生活を維持していくためには定年退職時に一千六百万の貯蓄がないと老後生活が安定した状況にならないという結論でございます。そうしますと、老後生活を先に確保いたしますとどの程度の住宅が購入できるかということを逆算したものでございますが、表2のところにございますように、年収四百五十万の人は一千百万の住宅しか買えない。あるいは五百四十万の方は一千九百万のものしか買えない。六百八十万の方は三千百万の住宅しか買えないということでありまして、老後の備えを先取りすれば住宅の購入は困難であるということであります。
それから二ページ目の方に、現在の東京都における勤労者の持ち家所有の見通しにつきまして、これは昨年の労働白書でございますが、家を持っていない人が五〇%近くおりまして、四九%のうちの四〇%の人ができれば持ちたい、持てそうもないというのが二二%、持てると思う人が一〇%弱。これが昨年の労働白書が報告している内容でございます。
それから三ページ目の方に移りまして、昨年の労働白書の中で大都市と地方の小都市における生涯収支を計算したものでございますが、三ページの方にありますのが大都市部における生涯収支でございます。これで前提になっておりますのは、ピーク時の給与が年収五百七十万で三千六百万の住宅を購入するということでありますが、これでまいりますと持ち家を購入した時点から家計収支は赤字になっていくということでございます。したがいまして、労働白書の中で指摘している点は、何らかの追加収入がなければ三千六百万程度の住宅でもサラリーマンは持ち家を持つことができないというのが結論でございます。何らかの追加収入というのは、パートタイム、親からの遺産あるいはそのほか何らかの追加収入ということでございますが、それがありましても定年時に四百万程度の貯蓄しか残らなくて老後生活の展望ができないというのが報告の内容であります。政府みずからがこの点を指摘した点が非常に大きく注目されるところでございますし、その意味するところは非常に大きいわけでございます。
それから四ページ目の方に移りまして、小都市における勤労者の生涯収支というものが出ております。これは、ピーク時の給与が五百六十三万で住宅購入価格が二千万、四十歳で取得するという現役時代の生涯収支の内容でございます。これでいきますと、最後の六十歳のところの棒グラフを見ていただいてもわかりますように、定年時に一千六百方の貯蓄が確保できて住宅も確保でき、老後もまあ最低のものは保障される、こういう内容でございます。
この収支の内容が、ある面で戦後四十年かかって労使あるいは政労使がつくり上げたサラリーマンの健全な生涯収支の内容であり、持ち家政策の内容であったと思います。しかしながら、昨今の地価の上昇によりまして、地方でもこの健全な生涯収支が崩れつつある。御承知のように、現在二千万で住宅が確保できるということは地方都市でも非常に難しい条件下にありますから、全体を通じてサラリーマンの生涯収支が非常に不安定化し赤字化しているということを、ぜひ御理解いただくとともに強調申し上げておきたいと思います。その上に立ちまして、ぜひともそういったことで、目標になります国土保全並びに都市環境及び住宅環境、宅地の供給ということを明確に打ち出していただくことが大事ではないかと思っております。
それから二番目に強調申し上げたいことは、この土地基本法が成立した以降の土地政策の実効性についてでございます。
この土地基本法を拝見いたしまして、政府及び各党の大変な御努力がにじみ出ておるのをよく感ずるわけでありますが、土地行政の一元化あるいは土地行政に関する行政組織の整備などにつきましての条文が必要であるということが野党から指摘されております。さらには、土地の適正かつ合理的な評価、いわゆる一物四価についても御指摘であります。この点につきましては、ある面で言えば、言い方を変えれば野党案は政府あるいは国土庁に対する支援条文であると言ってもいいのではないかと思います。
したがいまして、こういった点をぜひ基本法の中に盛り込んでいただくことが大事ではないか。現在、基本法の中に土地審議会は総理に意見が言えるという条文がありますが、意見が言えるだけでは土地政策の実効性についての疑問といいますか不安を感ぜざるを得ません。したがいまして、野党案の全文がそのままというのもともかくでございますが、少なくとも審議会で論議された内容が、総理に対して意見だけではなくて、ある種の勧告あるいは関係行政省庁、自治体といった関係行政機関に対しての国土庁長官としての勧告ができるという、はっきりとした勧告権を明記していくということが大事ではないかと思っております。それがないと、基本法を初め今後展開されます土地政策の実効性について疑問を持たざるを得ないわけであります。ぜひ、土地行政の一元化を初めとしまして、国土庁が審議会の審議を経て勧告をしていけるということが大事ではないかと思っております。この点につきましても、公的制約の点、土地利用計画あるいは土地税制含めまして勧告をしていくというような権限を国土庁が持つことが大事ではなかろうかと思っております。
最後に、土地利用計画につきまして地区計画等、自治体等に大きく権限をゆだねるというような趣旨のことが論議され、また野党案にも入っておりますが、この点も都市環境、生活環境をつくっていくためにぜひ必要なことでもございますので、大きく取り入れていくことが今後の土地問題を解決していく最善の策ではなかろうかと思っております。
時間の制約もございますので、一応私の方からの公述をこの程度にいたしまして、足らざるところはまた御指摘いただき、補足申し上げたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/74
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075・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
次に、中村公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/75
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076・中村俊章
○中村公述人 ただいま御紹介いただきました中村でございます。
私の場合、不動産業者という立場でございまして、特に私どもの所属する団体は中小零細業者という組織の中でのきょうの公述でございます。御参考までに申し上げますと、四十七各都道府県におきまして、知事の認可のもとに社団法人としての宅地建物取引業協会を設置いたしておりまして、これが四十七あるわけでございますが、それが社団法人全国宅地建物取引業協会連合会という連合会をつくっておりまして、これは建設大臣の認可のもとに業者の指導育成を図っているわけでございます。したがいまして、私の場合、業者として、また中小業者の立場から、基本問題についてお話を申し上げたい、こういうふうに考えるわけでございます。
現在の東京におきますところの一極集中と申しますか土地の高騰によりまして、東京都内は高値安定と申しましょうか、既に鎮静化の方向にあるわけでございますけれども、まだまだ周辺には強含みということでございまして、特に政令都市、大きな都市につきましても現在強含み、高値安定という中で推移いたしているわけでございます。
ちなみに、マンション等の比較を考えてみますと、昭和六十一年までは年収の四倍ないし五倍で購入ができたものが、六十三年には七倍ないし八倍という非常に高い価格のマンションになってきた、こういうことでございます。また、戸建てにつきましては、その倍率が十倍というふうにも言われているわけでございます。
このような事態がこのまま進みますと、住環境は大変な大きな問題を抱えますし、勤労者の居住の水準に対しましての意欲をそぐばかりではなく、持っている者と持たざる者との格差がここで非常に出てきた、これも大きな社会的な問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。また、現在言われておりますところの内需拡大の柱である住宅産業が大きな支障を来しているというのが実態ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
そういう観点から、私たち業者にとりましては、地価の高騰というのは非常に困ったものであるという考え方に立っているわけでございます。特に私どもの団体は仲介業務を主業務としてやっている関係上、地価の高騰は取引の減少につながっているということもあるわけでございまして、そういう点も、過去の日本の土地の値上がり問題等々いろいろ考えてみますと、三十七、八年ごろは戦後の住宅建設という立場にありまして、地価が三倍ないし四倍上がった、こういう時代もございますし、また四十九年ごろ、オイルショック前の列島改造論にちなみましての地価の値上がりというものは、全国的なペースの中で約三倍程度上がったという事実もございます。また、今回の五十九年ないし六十年から始まりました一極集中、東京の中央のオフィスビルから発生しました地価の高騰というものは大変大きな問題を出しました。
また私どもが考えておりますことは、オイルショック時代の地価の高騰というものは全国平均化して値上がりした。また、一億国民総不動産業、こう言われた時代も確かにその当時あったわけでございます。これは列島改造論にちなみましてのそういう呼称があったわけでございますけれども、今回の地価の高騰というものは企業総不動産業というふうに考えていいのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
と申しますのは、私たち実務面におきましてやっておりますと、企業そのものが、企業といいましても不動産業でなく他の業種から不動産業に参入というものが今回非常に目立った状況にある、こういうことでございます。本来の業務より不動産業の業務によって利益を上げるということ等も新聞紙上を一時はにぎわしたこともあるわけでございます。
そういう中にありまして、特に不動産業におきましてはいろいろな面が考えられますけれども、端的に申し上げまして、不動産業は、免許を取るのに、取引主任者という資格者がなければ業務ができないわけでございますが、昨年この取引主任者の試験に約二十八万人受験者がいた。ところがことしは三十四万人という人の受験の申し込みがあった。これはどういうことに起因するかということを随分考えてみますと、企業そのものが、銀行いわゆる普通の金融機関等々が全部社員に対して、取引主任者の資格を取れ、こういうようなこと等も行っているという実態の中での不動産業が現在あるというふうに考えるわけでございます。
そういう観点から考えまして、我々団体としましては、不動産の流通の円滑な促進というものが最も必要である、こういうふうに考えております。また、先ほど申し上げましたように、我々団体の構成員の九九%は仲介というサービスをユーザーの皆様に提供しているという立場でございます。したがいまして、地価の高騰というものは取引量の減退につながる。私ども業界としては、とにかく地価の抑制、安定そのものが我々の業務の振興にもつながるという基本的な考え方を持っているわけでございます。
したがいまして、私どもの考え方とすれば、現在の地価の高騰、いろいろな原因がございます。これは先生方も十分御承知のはずでございますし、特に一極集中から始まりました問題、現象的には買いかえ制度が非常に住宅地の高騰を生んだということでございます。例えば、これは例でございますけれども、神田あたりで二間の奥行き五間で約十坪、坪という形で表現させていただきますが、十坪が当時五千万ないし七、八千万で取引された。ところが税制上の特例でこれを買いかえなければ税金がかかるということから、世田谷の成城とか田園調布、高級住宅地に買いかえを求めた。高いほどいいんだ、こういう感覚の中に土地が購入されたというところに、この買いかえ制度の弊害も出たわけでございます。
これは一つの例であるわけでございますが、とにかく私どもとしましては、地価の安定、抑制というものはやはり供給以外にはないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、現在巷間で議論されておりますところの農地の宅地並み課税それから遊休地の活用、低・未利用地の有効利用、都市の再開発の促進等々ございますけれども、特に農地の宅地並み課税、これはある面においては非常に問題があるのではなかろうか、こういうふうにも考えているわけでございます。
今、東京圏において市街化区域の農地が三万六千ヘクタールあると言われております。大変に膨大な面積であるわけでございますけれども、果たして宅地並み課税でこの土地が出るであろうか、こういうことを考えてみますと非常に難しい問題があるのではなかろうか。と申しますのは、私たち実務面で経験いたしているわけでございますけれども、東京ないし東京周辺の農家の方々は、新築住宅に住みながら、乗用車が一軒の家に三台ある、トラックが一台ある、乗用車で耕作に行く、こういう非常にリッチな人たちでございます。そうすると、固定資産税というものが今まで平均的に見ますと六千円程度だと言われておりますけれども、これが宅地並み課税になりますと百倍つまり六十万ですか、六十万の課税で果たして農家が悲鳴を上げるだろうかと私は疑問に思うわけでございます。市街化区域の農地を所有されている方方の土地の価格というものは、宅地化すれば最低百万、高いところは三百万も四百万もしているわけであります。したがって、宅地並み課税で千平米、一反歩六十万の課税が起きた場合に一坪以下で一年間の固定資産税が納められる。このような状況下ではなかなか農地の宅地供給にはつながらないのではなかろうか、かような考え方を持っておるわけでございます。したがいまして、やはり課税標準の引き上げということも必要ではなかろうか。現在実勢価格の二〇%と言われている固定資産税の課税標準を引き上げることも必要ではなかろうか。
しかしながら、これはむちでございます。むちだけでこの農地が出るかというと、現在の農家の考え方ではなかなか難しいと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、一町歩持っていても年間六百万の固定資産税を払えば問題はない。土地神話そのものが農家にあるということであるわけでございます。したがいまして、むちとあめという形の中でいろいろな税制上の優遇措置はつくられておりますけれども、農家が一番懸念しているのは相続という問題であろう、こういうふうに私は考えているわけでございます。したがいまして、これは、いい悪いは別としまして、私の一つの考え方でございますけれども、例えば特例控除をつくりまして、三年ないし五年間、農地を転用し宅地化した場合については、その価格を将来起こり得るであろう相続税の課税価格から引きましょう、こういう具体的なあめというものが必要ではなかろうか、私はこういうことを考えているわけでございます。
いずれにしましても、遊休地、農地等を含めまして東京圏には六万五千ヘクタールの土地が介在しているわけでございます。努力次第ではこれらが出てくる、地価の抑制また値下げにも通じるのではなかろうか。土地の所有者が喜んでというわけにもいきませんけれども、出せる仕組みをつくることが一番必要ではなかろうか、こういうふうに現在考えているわけでございます。そういう観点から、今までの、大変失礼な言い方かもわかりませんけれども、土地税制の買いかえ制度にも見られるとおり、現象が起きたら、風船ではないけれども、片方を押すと片方が飛び出すというようなことなく、全般的な押さえの中で土地政策が一貫性を持たれるということが必要ではなかろうか、かような考え方でございます。したがいまして、今後の土地の供給問題それから地価安定問題につきましての今回の土地基本法には、我々としては大変な期待を持っておる。ぜひとも早期にこれが成立していただければ、こういう考え方でいるわけでございます。
とにかく、私どもの中小業者の団体としまして、また個人としましても、投機的な取引というものは、地価が高騰すれば取引が減少するんだ、こういう立場に立ちまして、我々は特に今建設省の指導によりまして、信頼産業を目指して鋭意努力をいたしております。また土地投機等につきましては、建設省通達等を踏まえながら、全国にこれを流しながら自粛という対応をいたしているところでございます。また、業者の責任につきましても、十分基本法にあるとおりのことを我々も踏まえて進めてまいりたい。こういうことでございますので、その点も御理解を賜りたいと思います。
とにかく、基本法制定につきましては、土地供給の促進及び流通の円滑化を一層促進していただくようお願いいたしたいと思います。また、余りにも行き過ぎた制約、抑制がございますと、土地の流通、住宅の流通そのものに弊害を来すおそれがございますので、その点も十分留意をしていただいた中での法律的な改正もお願いいたしたい。こういうことの考え方でいるわけでございますので、よろしく御理解を賜りますようお願い申し上げまして、終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/76
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077・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
次に、岩田公述人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/77
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078・岩田規久男
○岩田公述人 岩田でございます。
今回の土地基本法案、政府案と野党案、二つ見せていただきまして、詳細な点では恐らく相違があろうかと思いますが、大筋においてはほぼ内容が似ている。このようなことは極めて珍しい現象ではないかというふうに私は思います。そのことは、土地問題あるいは地価問題に関して、国会でもあるいは世論においてもかなりの合意が形成されつつある反映であるというふうに思います。
その中で、どのような点で政府・与党の間の合意といいますか、世論の中での合意というものがあるだろうかということを基本法案に沿って申し上げますと、土地の利用に関する公共性ということをまず第一に挙げられております。政府案でも「土地については、公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課される」というふうに述べられておりますし、野党案でも同じように「土地の利用については、公共の福祉を優先させなければならない。」という点が挙げられておるわけでありまして、この第一点が一つの合意の内容かと思います。
第二点は、計画に沿って土地というものを利用しなくてはいけないという、計画ということを非常に強調したという点で、これも両案にまたがって書かれておることでございます。
それから、第三番目が投機的な取引を抑制する。これは「抑制」は政府案の言葉ですが、一方野党案では「規制する」という、そういう意味で投機的な取引に対する抑制または規制ということが強調されておる。
この三点がほぼ内容が同じであって、合意が形成されているのではないかというふうに感じました。
私の考えとして、第一点と第二点に関しましては、すなわち公共性という問題と計画の問題というものは当然のことであって、むしろ遅過ぎた感が否めないという印象を持っておりますが、遅過ぎてもやらないよりはずっとましでありますので、その線に沿って考えていただきたいというふうに思います。
ただ、幾つかの点で懸念される問題がやはりございます。
まず、土地の利用に関して公共性というものを重んじなければいけない。あるいは公共の福祉という名によって制約が課せられるというわけです。しかし、公共性とかあるいは公共の福祉とは何かということは必ずしも明示されてはおらないわけでありまして、そういう点で問題を若干含んでいるのではないかというふうに思います。というのは、土地利用というものが公共的に制約されるという、そのままですとそれは当然のことでありますが、それでは日本において従来、公共性とか公共の福祉といったものはどのように考えられていたのだろうかということを考えてみると、幾つか問題点が出てくるのであります。
公共性というものが裁判で争われた事例としては、大阪空港の騒音の問題とか新幹線騒音、振動事件の問題、国道二十三号線における大気汚染、騒音、振動、そういう問題がございます。これらの判例では、すべてどういうふうになっているかと申しますと、多数派の利益があればそこに公共性があるという判断を下しているわけであります。つまり、たくさんの人が新幹線で旅行する、あるいはビジネスで動いて非常に利益がある、あるいは道路も空港も基本的には同じだという考えであります。
しかし、そこの沿道に住んでいる人々は、野党案の前文に「健康で文化的な生活を営む」という文言が二ページにあるわけですが、そういう文言は、そこに住んでいる沿線や沿道の住民に関しては完全に無視されている。そういう中で公共の福祉ということが言われて、それがまかり通っているという状況が日本にはあるわけであります。
そのようなところに住む人に対して損害補償をする場合には、過去の被害についてはしましょう、しかし将来はどうなるかわからないから、将来は何の処置もしない。もしも将来同じような損害が、起こっているわけですが、賠償してもらいたかったら、また訴訟を起こしなさいという形に日本ではなっているわけであります。
こういうふうに、公共性と一口に申しましても、空港や新幹線の軌道あるいは幹線道路というような一つの土地利用をとってみても、そこに優先されるべき公共の福祉というものは一体何なのか。あるいは沿道、沿線の住民と交通機関の利用者の利害とをどう調整すれば公共の福祉というものが増進するのかという点が非常になおざりにされたまま、いろいろな鉄道が敷かれ空港がつくられてきたという現状、歴史がございます。
そういうふうになりますと、先ほど言いましたように沿道、沿線の住民は健康で文化的な生活を営めないという状態が放置されている。そういう歴史的な経過がありますと、公共の福祉があれば土地利用は制約されるという問題は、簡単にはすぐそのままうのみにはできないという問題が背後に潜んでいるということが言えるかと思います。
現在のような非常に複雑な社会になりますと、公共の福祉というのは単純に多数の利益だけでは割り切れない問題がありまして、多数の利益のために犠牲になる人たちの福祉をどう考えるか。その人たちの福祉も、例えば別の政策を用意することによってその人たちの福祉もなお増進するというようなことをしなければ、完全な公共の福祉のために土地の利用を制約したことにはならないわけであります。
あるいは最近では、都市の自然をどんどん破壊していった結果、都市には自然が非常に少なくなっているという場合には、自然の環境といった問題も土地利用に関してはやはり考慮されなければならない公共の福祉の一つの要因となっているわけであります。
このように内容が非常に複雑化しているときには、公共の福祉というものは単純多数とか、そういうことだけで割り切られて、それによって切り捨てられる人の福祉というものに十分目を向けないというおそれがあるとするならば、これは自治体の段階においての問題ですが、少し心配されるところであります。こういうふうに考えますと、公共の福祉に沿って計画をどうつくるかということが非常に重要になってくるということがわかると思います。
それでは、今まで計画というものは日本ではどうやってつくられてきたのだろうかということを考えますと、およそ計画の段階から市民あるいは住民が参加する、そういうシステムは日本にはございません。基本的には計画は住民等の不在のところでつくられて、事業段階で住民に向かって説明をする。したがって、計画は基本的には変えられないというような現状であります。したがって、計画それ自体が何か重大な修正を受けるというような歴史的な事例というものは、我々は持っていないわけであります。
公共の福祉というものを担保するには、民主主義的な計画の決定メカニズムが導入されているということが重要なことだと思います。その点では、計画への市民の参加ということをうたっている野党案の万が一歩踏み込んでいるのではないかというふうには感じております。野党案の第七条「土地利用計画」十一ページから十二ページにかけては、市町村は地区詳細計画をつくる。これは恐らく西ドイツの例などを想定されているのではないかと思いますが、その際に関係住民の意見が十分に反映されたものとするというふうに、計画段階からの住民の声の反映ということを重視しているわけであります。
ただ、この関係住民という場合にも、余りにもこれを狭く限定することにはまた問題が出てくるわけでありまして、西ドイツなどでは、都市計画の地区詳細計画のような狭いところでの計画に関しても基本的にはだれでも意見が言えるというふうになっております。あなたは関係住民じゃないから全然意見を言えないとかでなく、あるいは意見というものは公聴会とかそういうことでももちろんありますが、手紙でも意見が言えて、何らかの形で、どのようにあなたの意見が反映されたかということがかえってわかるというシステムになっております。
こういう計画をつくる場合に何といっても重要なものは、意見を聞いたり、それを計画に反映するときの市民を余りにも狭く限定しないことと、公聴会を十分に開いて計画及びその内容が徹底的に公開されるということだと思います。欧米では大体公開ということが前提で、地方の新聞に細かく公聴会の内容が出るとか、あるいはラジオでも夜放送するというようなふうにして、昼働いている人々も後でどのようなことが議論されているか十分わかり、反対の人はなぜ反対しているのか、賛成している人はなぜ賛成しているのかもわかる。そういう中で、つまり密室ではない中で議論が展開され、きょうのようなこういう機会には公述人の人数なども余り制限しないというような形で、そういうふうな民主的な手続をとって初めて、それでは公共の福祉としてはこの土地はどういうふうに利用したら一番いいのかということを広く国民の層から意見を求めて決めていくというシステムをとっているわけでありますので、そのいうシステムがないままに公共性というものが言われて、何か政府が勝手に決められてこれが公共性だということになると、非常に問題が生じてくると思います。特に日本の歴史を踏まえていくと、そういう危惧があるわけでございます。
例えば、今後市街化区域内農地を宅地化していくという場合にも、計画的な宅地化ということが非常に必要であろうと思います。そういう場合にも、ただそれが非常に狭い地域の農民とその周りに住んでいる住民だけで例えばここを保全すべき農地として残すのかあるいは宅地化するのかというようなことを決めてもらっては、それは公共の福祉を増進した計画にはならないわけであります。むしろ持ち家を持たない一般の市民の声をよく聞くとか、そのようにして関係住民というものを少し広くとらえていかないと、特に住宅、土地問題は解決しないし、狭い範囲だけでの声を聞くと、農地のままにして家は建たない方がよいという結論に達することは目に見えているのではないかと私は思います。そのような場合に、持ち家を持たない、あるいはアパートやそういうところで非常に高い家賃を払っている人たちの声が全く反映されないといったようなものには、逆に公共性というものはないのではないかと私は考えております。その点で、公共の福祉であるとか計画的に使うという場合に留意すべき点あるいは非常に心配される面を申し上げた次第であります。
それから、三番目の投機的な取引を抑制するということが両案の合意点であるし、国民的な合意も恐らく相当あるのではないかという点でありますが、政府案にしろ野党案にしろ、どうも国土利用法の活用ということを考えているような感じでありまして、もう一つの国土利用の方の改正案ですか、改正案か何か正確な名前はわかりませんが、出ておりますが、どうもそれを活用する、ということは、土地の取引の届け出制とか土地取引の規制といったものをもっと強化するという形で投機を抑制しようとしているように感ずるのであります。
しかし、こういう形で土地市場というものを全く窒息させてしまうような形では土地の供給をふやすことはできないわけでありまして、実際にずっと届け出制というのをとってきた結果、土地が何か有効に利用されて供給がふえたかというと、そういうことはございません。例えば規制の対象にならないような中古マンションが専ら人気が出て、そこが価格が上がるとか、そういったような現象がむしろ出ているわけでありまして、決して土地の供給はふえてはいないわけであります。地主としては、地価が規制されるならばしばらくの間土地は売らない、将来、規制が外されたようなときに初めて土地を売ろうというようなことを考えるわけであります。あるいは、最近では土地の融資に対して行政指導をしたり規制などをして、なるべく土地に対して融資しないようにというようなことをしているわけでありまして、これも投機を抑制するという意味があるのだと思います。しかし、このような政策をいたしますと、有効に土地を利用しようとしている企業や個人までも融資を受けられないということになりまして、こういう政策はあらゆるものを悪と見て全部一律に規制してしまうことになってしまって、えり分けといいますか、それができない制度になっているわけであります。
その背後には、恐らく投機というものの考え方が、政府案にしろ野党案にしろ、非常に狭い範囲でとらえられているという点に問題があるのではないかという気がいたします。すなわち、土地転がしのような、非常に短期で安く買って高く売るということだけを土地投機ととらえて、それさえ抑制すれば問題が解決するというような考え方が背後にはあるのではないかという気がいたしております。しかし、そうではなくて、私の考えでは、現状の地価に対して十分な地代家賃を上げていないようなものはすべて土地投機をしていると考える、むしろ広義にそこを考えるべきである。
つまりどういうことかといいますと、地代家賃を地価で割ったものが一応利回りでありますが、今土地の利回りは、投資対象としては三%を切っているような状況であります。それにもかかわらず皆さん土地を持っているのは値上がりということが頭にあるからでありまして、工場跡地があって依然として未利用であるというのも、投機をしている、すなわち値上がり待ちをしていて一番いいタイミングで土地を売ろうとか開発をしようとしているわけでありますし、東京の都区部のようなところで低層住宅に住んでいるという場合にも、あるいはビルがあるというような場合にも、土地が上がったときに売るとか、あるいはそのときに初めて上がっても頭打ちになったときに開発しようとかしているわけでありますし、市街化区域内の農地も同じようなことを考えてしておるわけでありまして、いわば地価が上がってきた戦後の歴史の中では、値上がりを期待して土地を購入したり持ち続けるという行動は全国民にはびこってしまっているわけであります。
そのような状況をつくり出しているのは、土地の全体的な税制が非常に土地保有を有利にしている、利用を促進しないようになっているというところに問題があるわけであります。したがって、投機を抑制するのには、やはり税制上で譲渡税はそれほど安くしない、現在、所得税が減税されたために最高税率二五%というふうに安くなってしまいましたが、むしろそれほど安くする必要はない。やはり値上がり益からきちんと税金を取る。しかし、そうするといわゆる凍結効果が起こって、土地を売ると税金がかかるのでだれも土地を売らなくなるということが心配されるわけですが、それを防ぐ方法は、一%程度の含み益税を導入したりあるいは土地の固定資産税を時価評価することによって、そのようないわゆる譲渡税が持つ凍結効果を防ぐことができるわけであります。
そのようにして投機が、だれにとっても土地の値上がり益というものはそれほどたくさんない、十分に得られないというような仕組みをつくれば、土地というものは初めて利回りで、すなわち地代家賃を地価で割った利回りでペイするような形で使われる。そうすると地代家賃を引き上げますから、それは土地の高度利用になっていって、利回りが上がるということは逆に土地の供給がそのようにしてふえて地価が下がる。分母の地価が下がって分子の地代家賃が上がりますから利回りが上がって、例えば定期預金よりは二、三%ぐらい上であるとか、そういう形でペイしてくる。それが正常な姿でありますが、現在では地価の値上がり益というものがなければ不動産業もデベロップも何も成り立たないというような異常な事態にあるわけでありまして、それは決して規制という、価額を窒息させるのではなくて、もうける人にはもうけさせて後から税金で取るという形の方が望ましい、土地の有効利用にはつながるのだということを申し上げて、どうも時間が延びてしまいましたようですから、終わりにしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/78
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079・大塚雄司
○大塚委員長 ありがとうございました。
以上をもちまして、各公述人の御意見の開陳は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/79
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080・大塚雄司
○大塚委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江口一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/80
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081・江口一雄
○江口委員 ただいま、それぞれ河口副事務局長さん、中村会長さんあるいは岩田教授さんの専門的な立場での御意見、大変ありがとうございました。
私も常々思っておりますことは、やはり土地が余りにも高過ぎてしまうというようなこと、そしてまた先ほど河口さんからお話がございましたように、サラリーマンが一生勤めて、そして退職金で土地と家が得られるというようなことでないと、政治も行政もうまくいっておるということにはならぬのではないかというふうに私も思っているわけでございます。
そこで、先ほど岩田教授から大変詳しくいろいろと御説明があったわけでございますが、まず財産権と公共の福祉あるいはまた公共性というものとの関係について、それぞれお三方から、どちらがどう優先をしていくのかというようなこと等についてひとつお聞きをいたしたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/81
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082・河口博行
○河口公述人 この基本法の中でも、用語として公共の制約性というような非常に難しい言葉が使われておりますが、ある面で、物によれば公共の福祉同士の衝突という形に今日なってくると思いますけれども、全体の傾向として、今日の土地問題に象徴されますような内容であれば、ただ単に多数論ということではございませんけれども、基本的な考え方を、公共の福祉を優先していく、と同時にそういったことも留意しながら優先していくということを基本的に立法府あるいは行政府そして司法府、裁判所も含めて共通の考え方を確立していって、初めてこの二つの基本的な問題が解決されていく、このように思います。現在のところはこれがやや対立する形になっておりますけれども、三者ともにこういった考え方を確立していけば、国民的にもそういったものが解決されていくというふうに考えております。
抽象的で恐縮でございますが、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/82
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083・中村俊章
○中村公述人 財産権と公共という問題につきましては、なかなか問題はあろうかと思いますけれども、今回の土地基本法の理念というものは所有より利用へ、こういう理念があるわけでございます。したがいまして、法律的な問題については私よくわかりませんけれども、今までは財産という問題が非常に前面に出ていたわけでございますけれども、基本法の中で公共重視というか、公共の福祉の優先ということがうたわれておりますので、そういう方向に行くものではなかろうか、また、そうあるべきではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/83
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084・岩田規久男
○岩田公述人 先ほど申しましたが、基本的には公共性というものが優先されるということ、これは間違いないところじゃないかと思うのです。しかし、先ほど申しましたように、実は公共性というのは単純なものではないということで、むしろ公共性というものを上から与えるのではなくて、市民参加の中で情報を公開し、すべての人が情報を共有した中で議論を闘わせて、その中で公共的な土地の利用の仕方はこうではないかというふうなプロセスが非常に大事ではないかというふうに思います。情報を公開した中で話していきますと、いわば非常に非合理的でむちゃくちゃな意見は影を潜めてまいりますし、今度は逆に、それによって生活に非常に困窮するような人の存在をすべての人がわかるようになれば、そういう弱者に対して、ではどういうふうに対策しながら多数の利益も守るか、そういうふうに議論は収束していくと私は期待しているわけであります。
ところが、従来はそういう形になっておりませんで、もう計画は先にできていて、事業の段階になって行政が説明に入る。このときには賛成派には賛成派で話す、反対派には反対派に話すということで、いわばこれが密室の政治といいますか、そういう形になっている。実際には反対派と賛成派が議論するということが非常に大事なんですが、そこの間は議論しないで、行政に対してお互いに、賛成はこういう意味で賛成だ、反対はこれだから反対だということをただ言っているというような議論の仕方というのは問題であります。ちょうど消費税に関しましても国民的な議論というのは大事で、これも何か国会議員のこの場だけで任せているというようなものではやはりだめだということで、基本的にはそれと同じでありまして、そういう仕組みというものは日本に今までないということです。
たまにあっても、非常に形式的に公聴会を開いて、公述人を制限して、時間も制限しまして、きょう一回でおしまいだ。しかも、きょうと同じでありまして、公述人は議員に対しては質問ができないというようなのも実はおかしなもので、議員とのやりとりというのも本当にあって本来は議論が進んでいき、議員との間でも公共性とは一体何かというのは収束してくるのだと思うのですが、きょうは議員の方は聞きっ放しということでは、公共性とは何かということもなかなか収束しないのじゃないかと思いますので、そういういわゆる議論の仕方あるいは仕組みを今後考えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/84
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085・江口一雄
○江口委員 そこで、今回の政府案の、土地の所有権について利用の責務が伴うということと、土地の利用に当たっては公共の福祉が優先すること、この二つについてそれぞれお三方に、現状に照らしましてこれがどの程度実施できる可能性があるのか、あるいはまたこうやれば可能ではないかというような専門家としての御意見を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/85
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086・河口博行
○河口公述人 当委員会で論議されておりますすべてのような内容になろうかと思いますけれども、午前中の公述人の中でもそういう説明があったかと思いますが、東京圏におきましても全体的には土地が相当ある、農地あるいはウオーターフロントを含めてあるということは御指摘されておるとおりでございますし、また全国的にも農地を含めまして大量に土地に余剰があるということもほぼ共通の認識であるわけでありますが、そういったものが利用されないというのには、一つは税制もございましょうし、また土地利用計画を含んだいろいろな施策もございましょうが、まず基本法を通して立法、行政、司法ともに考え方を変えていくということが基礎的なことで、それを大前提にしまして、今までその三者ともにこの問題に対して非常にナーバスであったといいますか神経質であったと思いますから、考え方をはっきり変えるということがまず第一だと思っております。それに伴って国民も変えていくということになろうと思います。その次にすべきことは、全体的には、土地を供給していくための税制も含めまして、また今の利用計画あるいは全体計画、地区計画等を含めました施策が大事である、このように考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/86
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087・中村俊章
○中村公述人 ただいまの御質問は大変難しい問題であろうかというふうに考えているわけでございますが、とにかく国民、国という問題につきましても社会的な責任の一端を担うのだという考え方に立たなければいけない、今回の土地基本法の考え方に沿った形でいかなければならないのではなかろうかと思うわけでございますが、これの具体的な方法をといいますとなかなか難しい問題である。
先ほど私ちょっと触れましたように、土地の安定というものはやはり供給以外にないであろう、供給するのについては所有者から放出させなければならない、その放出させる仕組みをはっきりした形の中で出していかないとなかなか賛同を得られないのではなかろうか、こういう考え方でおりますし、とにかく現在の所有から利用へという考え方には私たちも基本的には賛同いたしたい、これも全面的に協力いたしたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/87
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088・岩田規久男
○岩田公述人 公共の福祉というようなことが先ほどのような市民参加の中で一応一つできたとして、利用の責務のようなものをどうやって推進していくかということですが、これは二つございまして、西ドイツのようなところでは、計画がないところは開発できないという非常に厳しい計画をつくっておりますが、恐らく日本では、やっと土地基本法ということが動き出したような状況でありますからそこまでいくのはかなり難しいのではないか。今まで建築はもう自由自在ということになって、この建築の自由というのは、建築するも自由、しないも自由、どんな建築をするのも自由、ほとんどそういう自由が一応あるわけでございます。用途規制は若干ありますけれども、その中では要するに自由であるということでありましたが、そこでそういう状況では、ある利用が計画の中で決まったときに、それを促進するのには、経済的に計画に参加してそれに沿った利用をした方が得だという、悪い言葉で言えばあめですが、経済学的な言葉で言うと経済的動機づけとか経済的インセンティブというものをある程度与えるということがやはり必要かと思います。
例えば農家の宅地並み課税といったことをする場合にも、やはり農家の人がそこに残って自分たちも計画に参加できるという仕組み、その参加によって例えば賃貸住宅経営者として残る。あるいはそういう計画に参加して賃貸住宅経営をする場合には固定資産税をある期間は若干低くする。つまり、計画をするということは自分ですぐ開発するよりも時間もかかるし、人との折衝もしなければいけないわけでありますので、その期間固定資産税を安くする。あるいは計画の主体に土地を売って、自分は農業を続けたいから例えば市街化調整区域の方へ移って、そちらで農業を続けたいというような場合には譲渡税を若干安くするとか、今既に譲渡税が安いので、これ以上安くするのには問題があるのですが、むしろ少し高くしておいて、これからそういう人には安くするとかいうような経済的なインセンティブを与える。
今言った中で一つ問題なのは、賃貸住宅経営というのは現在の借地・借家法の中では非常に難しくなって、一たん貸すと戻ってこないという問題がございます。しかし、これを既存の借地・借家法からすぐ自由化の方向にいくというのはかなり難しい点があると思うのですが、新規の契約に関してはかなり借地・借家法を自由化してもいいのではないかと思います。
そういうことでもやはりどうしても懸念がある、心配があるということであれば、手始めとして定期借家権というものをつくりまして、これは欧米では一年から五年ぐらいですが、三年とか四年とか五年で契約をして、そしてその契約が切れたときに両者、家主と借家人の間でどうしても合意が得られないような場合には更新はしない自由が家主の方にあるというような形にすれば、宅地並み課税になったときに農家が賃貸住宅経営に乗り出すことを非常に容易にいたします。そうすれば賃貸住宅経営がたくさんふえますので、長期的に見ますと、そういう供給がふえますから家賃は下がってくるということで、これは新しく賃貸住宅を求める人にとっても非常に有利な政策であると思いますので、そういう経済的な誘導政策を責務を実践していく上で使うというのは一つの案かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/88
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089・江口一雄
○江口委員 ただいまいろいろな御意見が出たわけでございますが、この二点について徹底できればかなり土地については安定してくるのかなという感じかいたすわけでございます。
そこで、現実問題といたしまして今、中村会長にお尋ねしたいことは、先ほどお話にございましたように、ここで議論をしておっても実際現場へ行くとかなり違うよということがあるわけでございます。それで、当面宅地を供給するということで一番いい方法というのはどういうようなものがあるのか、あったらひとつ御示唆をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/89
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090・中村俊章
○中村公述人 この問題も具体的には大変難しいことだろうと思うわけでございます。
私たち現場で、いろいろと今までの土地の値上がりの状況の中で、いろいろな要因があるわけでございますけれども、また想像以上に目に見えない値上がりの要因が作用しておると考えているわけでございます。
したがいまして、宅地の供給という問題についての具体的な案というのは、先ほど申し上げましたように、現在一番当面の問題としては農地の宅地並み課税、遊休地の整理、国また公共関係の空地、それから未利用地というようなものをどう引き出していくかということが一番現在の供給策につながるのではなかろうか。とにかく今東京圏では六万五千平米の宅地転用可能な土地があるということでございますので、これらにつきましては、今後基本法の中で各省庁で整理していただいて、土地が有効に出る仕組みをつくっていただくことが一番先決ではなかろうか、かように考えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/90
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091・江口一雄
○江口委員 先ほど岩田先生のお話もございましたように、現実といたしましては、私は土地の値段を年間、国債の金利とかあるいはまた定期預金とかそういう政府の公的なものの値上がりの程度に抑えられるということが一番いいのではないかというふうに思っているわけでございますが、それらについてどういうような方法、先ほどもちょっと触れられておりましたが、もう一度ひとつ岩田先生にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/91
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092・岩田規久男
○岩田公述人 私も、今おっしゃったような形で、利回りで大体ペイする、デベロッパーもそれでペイするというのが一番望ましい姿だというふうに思いますが、としますと、例えば東京の都区部というのは相当の中高層化をしないとそういうことにはならないわけでありまして、中高層化をすると土地当たりの家賃収入がかなり上がってまいります。そういうようにして供給がふえますと、それだけ土地が立体的にふえたということで地価が下がってきて、そして国債の利回りとか、土地の場合には若干流動性が国債よりも低いという面もありますので若干高くても構わないと思いますが、そういうふうになってくる。
そのためにはやはり土地税制、三つありますが、すべて私は安過ぎるというふうに思っておりまして、固定資産税が現在のところ、私が試算したところでは宅地の場合、神奈川でしたけれども〇・一五%くらいで、東京はもう少し割っているのではないかというふうに言われておりますが、それを徐々に何年かかけて時価評価して、時価評価した場合には今度は一・四%は高過ぎるのではないかという気がいたします。というのは、カリフォルニアで昔、一九七七年に納税者の反乱というのがありまして、財産税をもっと安くしてくれという反乱がございまして、このときに市場価格の一%に固定資産税をしてくれということだったわけです。それまでは非常に高かったわけでありますが、一%にしましても日本で今言いますと十倍近くになるわけでありまして、〇・二%くらいですと五倍くらいになりましょうか、いずれにしても五倍とかそういうオーダーになるわけでありまして、一挙に進むということが難しいならば、まず政府がそういうことを宣言していただきまして、これから何年かかけて、これは五年がいいのか十年がいいのかちょっとありますが、かけて、そういうふうに固定資産税を時価評価に近づけていくということをいたしますと、人々はそれを五年とか十年の間で今からすぐに調整を始めます。そうしますと、都心部ではもう少し高層化が進んで、高層化をすればすなわら固定資産税を払えるわけであります。
ここで重要なのは、そういうふうに供給がふえてくると地価が下がるということですから、今皆さんが普通に考えている何億という地価のもとで一%の税金が決して固定資産税としてはかかるのではなくて、地価がかなり下がってまいりまして、その中で一%の税金ということですから、それほど税金の負担が多くなるわけではございません。
それからもう一つ、そのようにして固定資産税を上げていくと住民税を逆に減税する余地が出てまいります。現在、住民税は多少所得があれば百万円ぐらい払っている方は労働者の方でもかなりいらっしゃるという状況。しかし、固定資産税の方は何億という土地でもせいぜい十万円とか二十万円とかいうようなことでありまして、そこに大きな格差があるわけです。だれでもが、今土地を買うときに固定資産税を気にして買う人はいないと思うのですが、これはやはり固定資産税を気にして買うような世界。イギリスなどへ行きますと、この土地は幾らだと書いてあり、その下に固定資産税は幾らですとちゃんと書いてあるわけです。これは、いかに固定資産税が非常に買い手にとっても重要かということでありまして、そのかわり住民税は安くなるというふうにいたしますと、土地は有効に利用されてくるという面があって、税負担は同じだという非常にいい面があるわけであります。
それから、私は、やはり利回りと同じくらいにするためには、利回りよりは若干高いですが、国債利回りより若干高いくらいの程度に抑えるためには、キャピタルゲインというものに対して税金をもう少し強めたらいいのじゃないか。現在、個人が五年持てば最高税率が二五%になってしまったわけです。これは所得税率を下げたので、国会議員の方みんな気がついていらっしゃったのかいらっしゃらないのか私知りませんけれども、土地の譲渡税も一緒になって軽減されてしまったわけです。よく土地の譲渡税というのは売るとかかる税金だからみんな売らなくなるのでこれを緩和すればいいと言ったわけですが、今度自動的に緩和になったにもかかわらず土地の供給が出てきません。それはなぜかというと、緩和されたということはずっと緩和されたのですから、別にいつ売っても緩和された条件は変わりません。しかし、緩和されれば土地のこれから将来の値上がりからたくさんの利益が得られるわけです。ですから土地の供給が進まなくなるのですね。
昔、四十四年から四十九年までに一時緩和をして土地が非常に吐き出されて、実はそれは法人の手に入ってしまったわけですが、いずれにしても吐き出されたのは一時的に安く五%から一〇%ぐらいにして、それからだんだん上げていき、四十九年から後は総合所得課税にしますという形にしたので供給が進んだわけであります。一般に譲渡税を緩和してそれをずっと続けているというのであれば、むしろ値上がり益がいつでも得られるということで土地の供給が進まないということに気をつけなければいけないということでありまして、むしろ譲渡税を使うなら次第に上げる方向がいいということであります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/92
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093・江口一雄
○江口委員 どうも大変示唆に富むお話をありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/93
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094・大塚雄司
○大塚委員長 菅直人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/94
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095・菅直人
○菅委員 きょうは公述人の皆さん本当にありがとうございます。
まず河口公述人にお尋ねをしたいのですが、先ほど生活モデルのシミュレーションを提示いただいて、今の、特に大都市のサラリーマンにとって大変厳しい状況であるということをシミュレーションの中でもお示しをいただいたわけですけれども、連合でも毎年政策を提示されている中で、いろいろな内部の意見あるいは一般サラリーマンの意見を聴取をされていると思うのです。この宅地の供給という問題についてもう少し、何といいますか、賃上げとかいろいろありますけれども、重要性についてどんなふうな議論が行われているのか、その点についてもうちょっと敷衍をしてお話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/95
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096・河口博行
○河口公述人 シミュレーションのことがありましたから、先ほどのことだけでありますと先行きが大変暗くなるということになりますので、少し夢を持つ必要があるということで、少し前段をお話ししておきたいと思います。
この十年間の日本の勤労者の実質賃金は年率約一%でございました。実質でございますが、今後新しい成長時代を迎えますから、二%ないし二・五%くらい上がっていきますと一つの夢を描いていけるというのが一つのポイントでございます。それで所得をふやしていくということが一つでございますが、同時に、住宅を購入することを考えた場合に、中長期的な点で今具体的な政策として検討をしておりますことの一つの例でございますが、通勤の限界点で地価の相場が決まって中に拡大して上がっていくという形になっておりますから、ある面で通勤の限界点を超える点で供給を図っていくというのが一つと考えておりまして、そういった面では、東京圏でいえば外房の近くに大きい住宅団地を形成していく。そして東京から外房を経由して成田までリニアモーターカーを走らせていくということで、開発銀行等が原価計算した内容で言えば、最初の供給時点は五万から、熟成した時点でも十五万ぐらいの状況で供給が可能である、通勤は、乗っている時間が三十分、こういう形での、中長期でいえばそういった夢が展開できまして、かなりのいい住宅が四千万くらいで、一つの夢が二十一世紀にかけては実現できる、このような見方をしております。そういった面で新しい技術を使うということが一つであると思います。
二番目は、直近の問題で東京都下で考えておりますことは、まず利用者側としての勤労者と、ある面では経営者というものが協力をして農家と話し合いたいということで、現在労働組合連合と日経連とが共同研究に入っておりまして、東京農住とも研究、検討に入って、三者協力していきたい。そして例えば、先日新聞で出ましたような三大都市圏において宅地並み課税が実行されるということは私は賛成でございますが、それにプラスして住宅を利用する側と農地を供給される農家の方と三者で協議して、政府なり自治体なりの開発計画に基づいて住宅供給を図っていく、足らない点は家賃補助なり社宅なりあるいは公的な助成政策なりで当面補っていかなければならない、このように考えておりますが、一つはそういった面では農地でございます。
それからその次は、やはりウオーターフロントを含めて多くの開発計画がございますけれども、果たしてあれだけのオフィスを含めた計画が必要なのかという面から見ました場合に、下手をすると、日本特質の過剰供給、過当競争になるのではないか、このような感じさえいたしますが、そういった面でウオーターフロント等につきましても見直しを行って、良質な住宅を都心部で行うべきである、このように考えております。
それからさらに申し上げれば、JRの用地も含めまして公用地につきましての供給を、住宅を含めて供給を行う政策を考えるべきである、このように思っております。それが最初の呼び水になって動いていくというふうに思っておりまして、特に極端なことでございますが、いわゆる地震ということはいろいろ国土庁含めて御指摘でございますけれども、もし関東大震災並みの地震があった場合、この国の中枢部分あるいはビジネス街の中枢部を含めてだれが保全するのかといった場合には、保全は不可能な状況というのはだれもが予測がつくことであります。
そういったことがありますから、少なくとも都心部に公共用地を使って大量の住宅を供給していくということは必要でありますし、また、そういったものの保安用の人間が住みつくということも必要でございますから、そういった面で公共用地でまず最初に呼び水にして農地等、ウオーターフロント等見直しを行って供給していくことが直近の課題であろうと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/96
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097・菅直人
○菅委員 三人の公述人の方とも固定資産税の評価が余りにも現在、実勢の価格と離れ過ぎていることが問題だというような指摘をしていただいたわけです。
岩田先生に特にお尋ねをしたいのですが、実は野党四党の案と政府案の幾つかの違いの中で、この点が非常に具体的なところでかなりはっきり違っているわけです。野党四党が出した案では公的地価評価の一元化ということをいうわけですけれども、この間ずっと議論をしてきたのですが、特に自治省の方が固定資産税の評価というものについて独自の認定の、何といいましょうか論理を歴史的に組み立てて、なかなか頑としてそれを譲ろうとしないわけなんです。簡単に言いますと「適正な時価」という地方税法の言葉の「適正」という言葉を非常に拡大解釈をして、実勢の価格は正常な取引以外の要素がある、それを省いて計算をするとこうなるのだといいましょうか、一種の逆算なんですけれども、そういう形で自治体の財源という意味から必ずしもその実勢価格の反映ということをやらないのだ、この間ずっとその議論をやってきているわけです。
この点について、自治体の財源論というのはなかなか難しい面もありますが、先ほど住民税の減税ということもおっしゃいましたけれども、私などもそれに近い考え方を持っているのですけれども、そういう固定資産税の評価のあり方について、今自治省がこの場に必ずしもいそうにありませんが、そういう自治省の見解などについて岩田先生としてはどういうふうなお考えをお持ちか、お聞かせいただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/97
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098・岩田規久男
○岩田公述人 今自治省が、適正な価格というものは必ずしも実勢の地価ではないということから独自の価格を固定資産税について評価価格をしているということでありましたけれども、実際の地価というものがいわば適正な地価から非常に乖離するという現象が生じているというのは、実は固定資産税が安過ぎるということも一つ加担しているわけであります。つまり、固定資産税が安い場合には非常に持ち越し費用が低いので投機がやりやすくなって、非常に低度利用で例えば都区内でも持てる。ですから、低度利用にもかかわらず持てるということで、非常に価格は高いけれども固定資産税が安いために、そういう形で持ち続けるという意味で地価を引き上げている要因になっている。つまり、自治省が言う評価の仕方自体が地価を上げる要因になっているということ、有効利用を妨げることによって地価を上げる要因になっている。だから逆に、自治省が適正と考えるよりも実勢の価格は上がってしまうという、非常に自治省としては自己矛盾の論理になっているというふうに私は思います。
そのほか譲渡税も全体に非常に低くて、例えば利子の所得が今一律二〇%の税金でありまして、これがどんな所得の人でも二〇%の税金で、何も控除しない前の粗所得に対して二〇%の税金がかかるというのは、普通サラリーマンの税金に関してはないわけであります。実はこれは非常に高い税金でありますが、それに対して土地の譲渡税というのは最高税率が二五%になりましたけれども、これなどは何億という譲渡益に対するものでありまして、利子所得というのはせいぜい一千万あったって二十万とか三十万とか四十万ぐらいの利子所得なわけでありまして、非常に非合理な不公平な税金になっていて、それが非常に投機の利益を多くしている、あるいは投機をしてだれかに売らなくても相続財産として非常に有利にしているということであります。
それから、相続税は固定資産税よりももう一つ安い。路線価格がもう一つ安いということで、これは金融資産と両方見ますと、路線価格の方が、金融資産は時価ですが、相続税は、ほとんど路線価格は実際の地価の半分ぐらいになるということが、逆に土地で相続するということを有利にして土地の価格を高めている。相続税の税率が少し高過ぎて調整が大変だということであれば、税率を下げることはいいのですが、金融資産と土地との間に、つまり資産間でその評価額を人為的に変えないということが非常に重要であります。そのようにして評価の仕方というものが、逆に実際の地価を高めることによって、人々が適正だと思うよりも非常に高くしているという面があるということを理解することは非常に重要ではないかと思います。
それからもう一つ、最後に申し上げますが、現在の金余りと言われる非常に金利の低い中では、税制以外にも地価が上がったから上がる、だからまた上がるだろうという現象が生じる可能性がやはりあります。これは普通風船玉、シャボン玉が膨れるようだという意味でバブルの現象だと言っていますが、こういう現象が起きないとは限らないで、七七年ですかごろの東京ではその可能性が若干あったというふうには思います。
ですから、余り地価が熱狂的に上がる場合にはすぐそれに評価額が追随する必要はない。少し落ちついたところで追随していくということは必要かと思いますが、したがって、時価評価という場合に、何か熱狂的な地価というものは、そういうふうにして狂乱的になったときにすぐどんどん追いついていくという必要もないけれども、やはり長期的には時価評価をしていく、時価に追いついていくということが非常に重要であるというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/98
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099・菅直人
○菅委員 御存じのように、今の制度は三年おきの評価がえで、しかも、評価がえの時点がまた一年半ぐらい前のデータに基づいていますから非常におくれて、先ほど岩田先生も言われていましたが、ことしの経企庁の発表でいうと、実効税率は東京では〇・〇七%という二十分の一ぐらいの評価というのが出ておりましたが、そんな数字かなというふうに思っております。
中村公述人にお尋ねをしたいのですが、中村さんの場合は非常に実践的な立場でお話しをいただいたのですが、先ほど特に農地の相続の場合は非常に独特の農業投資価格という価格で決まっていて、たしか先日もこの委員会でやったのですが、一反が東京で八十四万という評価になっているかと思いますけれども、先ほど何か転用をした後の利用によって相続税の減免を認めるような形で転用を促進できるのじゃないかというようなことをちらっとおっしゃっていましたけれども、できればもう少し詳しくそのあたりを実践的な立場でちょっと教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/99
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100・中村俊章
○中村公述人 先ほど申し上げましたのは、宅地並み課税に対する農家の現状という立場からお話を申し上げたわけでございますけれども、なかなか先ほど申し上げましたように農家は非常にリッチである、固定資産税を宅地並みに課税しても、それこそ端的な話が一坪売れば一年分は十分あるのだ、こういうことの中でなかなか供給ができないだろう。しからば、出せる仕組みをという考え方、確かに農地の相続税につきましては減免措置、いろいろな優遇措置がございますけれども、農家というものは農地だけではなく宅地も相当持っている。その中に相続税に対する考え方というものは農家としては大変大きな比重を占めているわけでございます。
その相続税をどう減免してあげるか、これは将来の問題でございますけれども、そういう立場から今回の土地の供給があるべきではなかろうかということを考えてみますと、現在何年間の時限立法か何かで農地を転用した場合、宅地化した場合、売却した場合には、将来起こり得るであろう相続の課税の価格から現在売った価格を、全額か二分の一かこれは別としまして、それは減免しますよ、引きますよ、こういう形を農家に示したならば、私は相当効果的なものがあるのではなかろうか、こういう個人的な見解を申し上げた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/100
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101・菅直人
○菅委員 それからもう一つだけ岩田先生に、確かに譲渡益課税のことで、これは私どもも十分気をつけなければいけなかったのですが、今回の所得税の減額でかなり下がっている。私は、本来土地の譲渡益課税は所得税ないし法人税から分離をすべきじゃないか、分離課税が適切ではないかと思っておりますが、その点について見解があったらお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/101
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102・岩田規久男
○岩田公述人 今のは所得税、法人税から誠渡税は分離して、土地だけは分離するということだったと思うのですが、私も大体そういう考えでおります。つまり、土地というのは株式のキャピタルゲインとはまた違う性質を持っておりまして、株式の場合にはある程度株主が企業経営のリスクを負担するという面があるわけでありますが、土地の場合は余りそういうリスク負担ということがないわけであります。その意味で、土地のキャピタルゲインというものは資源配分上余り有効な機能を果たしていない。むしろ虫食いの、ばら打ちのスプロールなどをつくることに貢献するという方が多いわけであります。
そこで、現在ですと法人が持っている土地に関しては、土地が含み益を持ちまして、法人が売りますと税金がかかりますので、法人は売らない、売らないでおいて含み益が株式に反映してくる、そこでその株式を個人株主が売れば、現在ですと売った価格の約一%という非常に小さな税金でもって払いさえすれば、法人が持っている土地の含み益をほとんどすべて手中にできるという仕組みに実はなっているわけでありまして、こういうような仕組み、あるいは赤字法人の場合には、そういうときにこそ土地を売ってもうけても赤字であるというので税金がかからないというような非常な矛盾が生じて、土地投機がはびこる状況になっておりますので、土地は個人につき法人につき別建てにして、現在よりも少し強化する。強化をし過ぎますと、今度は逆に、土地は売ると税金がかかるので売らないという現象に対しては、大体時価評価の固定資産税を導入すれば、保有税が非常に高くなることによって今言った効果も防げる。実際にロックインエフェクトを完全に防ぐということであれば、先ほど言いました含み益税というものをかければ完全に防げるわけでありますが、なかなか新しい税金を導入することは難しいとするならば、固定資産税の時価評価と、個人、法人ともに譲渡税率は上げる。法人税などと別建てでやっていくことが非常に重要ではないか。
それからもう一つ、土地に対して個人も別建てでするという意味は総合所得課税にしないということでありまして、なぜかといいますと、総合所得課税にいたしますと土地の切り売りを促進してしまって、町づくりにとってはかえって困る、土地の有効利用を妨げるということがありますので、これも比例税率で総合所得課税から別建てにすることが望ましいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/102
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103・菅直人
○菅委員 時間が少しなくなったようですが、最後に一言だけ河口公述人に。土地の利用計画について若干お触れになろうとして最初のときにあれだったのですが、今野党案は利用計画を義務づけることを自治体を中心にやるべきだということを提示しているのですが、政府案は必ずしもそのあたりが明確でないというふうに私ども受けとめておりまして、河口公述人の場合はこの土地基本法の審議会などにも出ておられたと聞いておりますので、そういう中での議論で何か参考になることがあれば、最後にお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/103
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104・河口博行
○河口公述人 地区計画等につきましては、結論は私は導入すべきであるという考え方に立っております。また、思想的には先ほど岩田公述人がお話しのようなことが趣旨になろうと思いますが、土地基本法の審議会の中のことは各先生方にゆだねまして、私自身の経験で少しお話し申し上げたいと思っております。
私は、大阪で労働組合をしておるときに住宅生協に取り組んでおりまして、二十五万坪の団地を開発したときの責任者として参加いたしました。自治体は京都府でございましたけれども、事前協議をする過程というものは相当な問題がある。そこにおける開発負担を含めましてのいろいろな協議は非常に大きい負担になっていきます。
そこで最後に、その団地は今二千五百戸ほぼ全部住みつきまして完成をしておるわけですが、終わった感想を申し上げますと、最終時点で自治体、都道府県と市町村、それから土地を提供される方と開発業者あるいは開発資金を提供している金融機関、あるいは中央省庁も全部かかわっていきますけれども、すべての心が一つになったときに初めていい住宅の供給が可能であると思っております。最後はいろいろな指導を受けてそういうことになりましたけれども、しかしそういった整備計画等がないと不必要に時間を経過していく、双方とも不信感を持っておりますから、非常な時間を経過していくということになります。したがいまして、地区計画等についてはきちっとしていった方がいい。国としてもいいし住民としてもいいし開発者にとってもいい、このように思っております。
その後、大阪の南港におきましての一万の住宅に八百戸ほど建設に参加いたしましたが、そのときの経験で申し上げますと、地区計画が非常にしっかりしておりますから、いいものをつくって売るということだけに専念をしていくことが可能でありますから、コストが非常に下がっていくということもあります。そういった面での実体験から申しましても、地区計画というものを整備していくことが新しい都市計画あるいは住計画をしていく上で極めて重要であるということを申し添えておきたいと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/104
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105・菅直人
○菅委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/105
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106・大塚雄司
○大塚委員長 小谷輝二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/106
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107・小谷輝二
○小谷委員 先生方にはいろいろ貴重な御意見を聞かせてもらう機会ができましたことを喜んでおりますし、また先ほどはいろいろ意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
最初に河口さんにちょっとお尋ねしたいと思いますが、特に東京を中心に地価の急激な上昇によって、サラリーマンの老後の生活の構想といいますか考え方について資料もいただいたわけでございます。持てる者と持たざる者との大きな差ということで、約五〇%近い人が持ち家を持っていないということでございます。そこで、現状で、サラリーマンの皆さん方が将来自分の老後の生活、また今後の生活を含めて、みずからの生活の行き方、構想というものをどう考えていらっしゃるのか、この機会にお聞かせいただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/107
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108・河口博行
○河口公述人 先ほども少し触れましたことと重複いたしますが、このようにお考えいただいたらいかがでございましょうか。
この十年間に第二次オイルショックの危機を乗り切り、そして円高危機を乗り切って、今日スーパー経済力を日本はつくり出してまいりました。その間に、先ほど申し上げましたように、日本の平均の勤労者の実質賃上げは年率一・一%でございます。これから新しい経済の成長というものを見込んでおりますから二%以上ないし二・五%の賃上げは可能になるというふうに見ていっておりますが、それで一つは所得をふやしていくということを基本に考えております。
それから二番目に、やはり物価及び宅地というものを下げていかなければならないということが基本でございまして、シミュレーションをしていきますと、そのために少なくとも宅地の供給というものがどうしても必要要件になってくる。それから、その過程の中で持たざる者と持てる者の差というものが、若い時代に差があるものが老後に大きな差として出てくるということであります。三十代なり四十代の時点で、例えば親から一千万なりの遺産相続があった場合、あるいは援助を受けた場合、この場合は現在でも収支がとんとんになっていきます。先ほどの三千六百万という、住宅でございますが、しかし、これがないと初めからマイナスになっていく、こういうことでございますから、そこに政策的な所得再分配政策のような助成政策が必要であるというふうに私は思っております。そういった面が、ある面では西ドイツなんかの財産形成政策の中に土地政策あるいは住宅政策がかなり厳しい形で設定されておりますが、そういった助成政策というものが必要だというふうに考えております。
したがいまして、持ち家にプラス借家ということも含めまして、ある面で住宅費というものは、今一つのキーワードとして年収の五倍というふうになっておりますけれども、あえて申し上げれば、そういう言い方よりも、月収の一五%というのがあるいは生涯においても限度ではないか、このように考えております。そういった面で、所得再分配政策なり西ドイツの財産形成法に近い形の助成政策というものが持たざる者に対して必要である、このように思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/108
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109・小谷輝二
○小谷委員 今おっしゃったように、年収の五倍ぐらいが今の持ち家の条件のようですが、現状の東京都内での地価の上昇によるところの持ち家というのはかなり遠い夢ではなかろうか、このように思われます。
そこでもう一つ、地価の上昇によって私どもが非常に憂うことがございます。それは、サラリーマンので持ち家を持っている人は、それなりに都心部に住みましても、固定資産税等、地価の上昇によるところの多額な負担がかかってくる。それから持たない人は、都心に住むということになれば、かなり高い家賃負担が強いられる。こういう形で、高額な所得のある人以外、事業所得等いろいろ持っている人以外、普通のサラリーマンとしては都心に将来住むという生活設計は無理なんではなかろうか、こういうふうな一つの憂いがございます。河口さん、この点はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/109
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110・河口博行
○河口公述人 御指摘のとおりでございまして、今具体的な展望というものが事実上ない状況にございます。現状だけで先を考えると、先行きが大変不安であるといいますかグルーミーな状況にあると思っております。
立ったついでで恐縮でございますが、あえて申しますれば、都心に住宅を持っている人は、ある面で一見財産価値が上がったように見えますけれども、一面でいえば税の先取りをされているということになろうかと思っております。持たざる者はなおさらのことで、結果においては地価上昇によって勤労の価値が相対的に低下をして、先行きに対して多くの不安を持っているのが現在の勤労者の気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/110
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111・小谷輝二
○小谷委員 中村さんにちょっとお尋ねいたしますけれども、最近東京都内中心に地価が鎮静化してきたということでございますが、要するにこれは需要が減ったのか、それともほかに要因があるのか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/111
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112・中村俊章
○中村公述人 この問題は両面があるのではなかろうか、かように考えられます。高値安定というところの中で、需要者の方としてもこれ以上は買えないという立場と、もう一つの立場があるのではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/112
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113・小谷輝二
○小谷委員 地価が高くなってしまったのでこれ以上手が出せないということが一つあろうかと思います。もう一つは、先ほど御説明の中で、最近土地が動かなくなった、こういうお話がありましたが、これは一面、高くなったので売買が難しくなったということなのか、それとももう一つは、ほとんど監視区域に指定されて、価格面とかいろいろな面で投機的な土地の取引を抑制する、抑えるということも含まれて監視区域の網をかぶせられたので土地の動きが少なくなった、取引が少なくなった、こういうことなんでしょうか。そこらはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/113
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114・中村俊章
○中村公述人 確かに現在の状況を見ますと、監視区域の作用が相当影響しているということも事実でございますし、また、高値安定の中で売り主というものがもう既に売却の考え方がある人は一応一巡したというふうにも考えられるわけでございます。したがって、現在の国土法の制度そのものが地価の抑制にも相当な作用をしているということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/114
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115・小谷輝二
○小谷委員 いずれにしましても、地価対策として国土法によるところの監視区域、この指定等によって網をかぶせ、かなり高い取引については指導をし、行政上の対応をしていく。もう一つは、金融面で、土地転がし、また投機的な土地の取引を何とか抑制できるものはしていこうということ。さらに、税制面での対応。これら大きな三つの柱が一番大きな問題ではなかろうか、このようにも私ども思っておりますし、今政府もこの三つの点に重点を置いてやっておられるように思うわけであります。
現在の地価が高騰してきた今日、土地の所有者、土地を持っている人、この土地を持った人の得る利益、得ている利益というものと税負担、税制面の中でこれが余りにもかけ離れておるという点が一つは土地が投機的商品という形で扱われたというふうにも考えられる点がいささかございます。
これは、先ほども話がありましたように、固定資産税が標準税率で一・四%ぐらいになっておりますし、また実勢価格から見ましたら、地域によっては違いますけれども、〇・一%ぐらいが固定資産税ということになっておるようにも思っておるわけであります。
そこで、これから税制面において、住居用資産、これを明確にして、それはそれなりの対応が必要であろう、優遇策も必要ではなかろうか、こう思います。それから、営業用の資産、また未利用地、低利用地、このような土地を明確に分離して、そしてその地価の高騰のメリットにふさわしい都市計画税とか固定資産税とか土地保有税、これを応分の負担をすべきではなかろうか、税制面ではこれが最も必要ではないか、今直ちに行うべきではないか、こういうふうな考え方がかなり強いと思っておるわけでございます。
この点について三人の先生方に、ひとつこういう基本的な考え方、基本的な税制問題での対応ということについて御意見をお伺いしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/115
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116・岩田規久男
○岩田公述人 先ほど、土地を持っている者は都心では地価が高くなって固定資産税が上がって、それも大変、土地を持っていない人もまた大変という話でしたが、実は土地を持っている人の固定資産税は地価が上がっても調整措置がありますのでそんなに上がっていないわけでありまして、それよりもはるかに住民税の方が高い、本当の状況はそういう状況でありますが、今おっしゃったことは基本的には私も賛成であります。
つまり、日本の場合には住宅はどこへでも建てていいということになっております。専用工場地域だけが住宅を建ててはいけない、あとはどこでも建てていいということになりまして、かつ日本は商業的な、個人で商売されている方は住宅と商売とが離れていないという面があって、そこはいつでも事務所ビルも建てられるようになっているわけであります。そうなりますと、先ほどおっしゃったように事務所の生産性にはとても住居の方は勝てないので、住居は追い出されるという形になるわけであります。
その問題を解決するのには、やはり用途地域制というもので、住宅地域といいますか、住宅専用ですね、第一種、第二種が今専用になっておりますが、こういう地域をもっと都心でもふやす、足りないならばですが。そしてなおかつ、やはり都区部では中高層化していく。最低は五階くらいから、もう少し高いものもある。よく言われるのですが、パリは大体五階ぐらいが平均なのに、日本は、都区内は大体二・五階くらいしかないというような使われ方をしている。そういう意味で、今後は住み方としては、住宅専用地域というものをつくって、そこで少し中高層化していく、そこよりも外側では一戸建てなどが可能なような状況になっているという住みかえ方で、若いときは通勤が大変ですから中側に中高層で住んでいて、年をとったら盆栽でも楽しみながら外側のところに広い面積の一戸建てに住むというようなライフサイクルが一つ考えられるのではないかということで、商業地域と住宅地域を分離するということはかなり効果があるのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/116
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117・中村俊章
○中村公述人 税制面につきましては、私は専門家ではございませんので余り詳しくはわかりませんけれども、とにかく基本法に制定されているように、保有課税の強化、それからやはり供給面においては譲渡所得の緩和ということが必要ではなかろうか。同時に、都市形成を行うために、現在の東京のこれだけでも過密、また今後二十世紀には三百万もふえるであろうという人口の想定の中に、それじゃいかに宅地供給があるべきかといろいろ考えてみますと、山手線内等を考えてみますと、山手線の中で平家建て等に居住されている方は、確かに日照のある快適な生活を送りたいという個人的な見解もございますけれども、これこそ基本法に基づいたところの所有からまた福祉の観点からの利用に踏み切るべきではなかろうか。こういうふうに考えますとともに、またこれは本当に個人的な発想でございますけれども、現在のJR山手線を地下に埋め込む、こういう発想も必要ではなかろうか。その上におきまして、それじゃその費用はどうするんだといいますと、一階、二階を高速道路、住宅公団等で高速道路をつくり、その上に空中権ないし地上権、借地権等を設定しながら、緑をつくるところは緑をつくり、またオフィス、住宅と、こういうような長期的な展望も夢としてあっていいのではなかろうかなと、これこそ相当な現在の面積でございますので供給にも貢献するのではなかろうかな、こういうことを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/117
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118・河口博行
○河口公述人 先ほどのお話のような、商業地域と住居地域とを明確に区別をして税率を区別していくという考え方には基本的に賛成でございます。それにあわせまして、私どもが今提起をしておりますことは、いろいろ議論はございますけれども、現在の時点で大土地保有税を強化すべきであるという考え方に立っております。将来的には固定資産あるいは相続税等を含めた全体的な保有税の強化ということが必要でありましょうが、そこに至るステップとしては、大土地に対する保有税というものが現在適切である。それに伴って経済的な影響等についてのいろいろな議論がございますけれども、トータルとして日本経済が発展をしていくためには、また国民生活がいい方向に向かっていくためにはそれが必要であり、そのマイナス点は国民的に克服していかなければならない、このような感じでおります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/118
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119・小谷輝二
○小谷委員 時間が来ましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/119
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120・大塚雄司
○大塚委員長 安倍基雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/120
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121・安倍基雄
○安倍(基)委員 どうも公述人の諸先生方、貴重な御意見をありがとうございます。いろいろ同僚議員も今まで聞いておりますので、できるだけ重複を避けてお聞きしたいと思います。
河口公述人のシミュレーションをもとにした非常に参考になる御意見でございますけれども、私自身も、御承知かと思いますけれども、おととしエコノミストに、去年文芸春秋二月号に土地問題を書いたことがございます。基本的には保有税を強化し、むしろ譲渡の際における税を減らせ、基本的にはそうすると保有税というのは地方自治体が課して、譲渡の方は国税が課しておる、この辺の行政的な、国税の方は少しでも取ろうとするし、地方税の方は余り取ろうとしないという行政機構に最終的には絡まる問題であるということを論じておるわけでございます。
河口公述人に最初にお聞きしたいのでございますけれども、連合が地価増価税というか、消費税の代替財源として一時期論議が出まして、私ども、この二年間の代替財源にこの問題を議論していると大き過ぎる、ちょっと待ちましょう、しかし、恒久的には検討すべきではないかというスタンスでございますけれども、いわゆる大土地所有税になりますか、地価増価税になりますか、その考え方についてと、もう一つは、相続税についてどうお考えか。私は、どちらかというと保有といわば譲渡、譲渡の中には相続も含みますけれども、それをならしていくのがいいのではないかという考えもあるのでございますけれども、連合としては相続税についてのスタンスはどうであるかという二点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/121
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122・河口博行
○河口公述人 この保有税については、連合としての考え方は先ほど申し上げましたとおりでございまして、現在時点から中長期政策といたしましても、大土地といいますか保有税というものは必要であるというふうに考えております。また、それで、幾つかの基本的な行政についての課題がありますけれども乗り切っていけるというふうに見ております。それは当然企業を含んでのことでございます。
相続税についての、これは連合のことというよりも私の個人的な考え方の方が強くなろうかと思いますが、ある面では基本的にはスタート時点は同じという考え方に立って、私は相続税の強化は必要だと思っておりますけれども、ただし、今日の高齢化時代を迎えておる現状の中から、相続と高齢化の対応についての工夫というものが必要であるというように考えております。
少しお答えにならないかと思いますが、足らない点はまた再質問を御指摘いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/122
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123・安倍基雄
○安倍(基)委員 その高齢化と相続との関係というのは、例えば親の面倒を見る者に対して社会保障なんか比較的相続を権利を与えて、それなりのいわば減免ではないけれどもそう重くしないという意味を念頭に置いたような考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/123
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124・河口博行
○河口公述人 考え方なり発想としてはそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/124
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125・安倍基雄
○安倍(基)委員 中村公述人にお伺いしたいと思います。
私はこの委員会でも議論したのですけれども、やはり地価の基礎には、単に監視区域をどうのこうのというのは、これは簡単に言えばばんそうこうを張るだけだ、その基礎には需給がある、需給の中でちょっと今まで余りみんなが問題としないのは建ぺい率と容積率だ。その決め方が、例えばニューヨークのケースなんか非常に弾力的な形で相当の容積率を認めている。日本の場合には何か地方自治体が持ち出してわあわあ言ったものだから、それを建設省が最後に認可するという非常に硬直的な要素がある。この辺をひとつ考えるべきじゃないかということを私としては考えています。もう一つ市街化調整区域の問題、この二つでよほどの供給増があるのではないかという気がいたしますけれども、その辺はどうお考えでございましょうか。
それから、さっきちらっとお話が出ましたけれども、相当大手の企業がいろいろ不動産業務に乗り出してきているというお話がございました。この点に関して、例えばそういう連中との共存というか線引きというか、そういったことを期待なさった御発言であったのか、よく商店の場合に大店法というのがございますけれども、そういう意味のことを御要望なさった意味の御発言であるのかどうか。最初の点と二番目の点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/125
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126・中村俊章
○中村公述人 建ぺい率、それから容積率の増加という問題につきましては、やはり現在のような限られた空間の中でよりよく住宅難を解消するためにはこういう問題もぜひとも必要であろうというふうに考えております。
特にことしは東京都内においては、都議会でもう既に容積率、建ぺい率等も決定されたように考えておりますけれども、これらにつきましては私は賛成という立場をとりたいと思いますし、また、調整地域に住宅地可能な地域が結構あるわけでございます。しかし、これは五ヘクタールですか現在その調整地域の開発の可能面積が引き下がっておりますけれども、地方自治体がこのアクセス問題等の関連の中で調整地域の開発の許可がなかなかおりないというのが現状でございます。
それから、先ほど企業そのものが今回不動産業に参入いたしたということにつきまして申し上げましたのは、結局大手不動産業者といいますか、これは業者としては当然不動産業に参入はいたしているわけでございますけれども、不動産業種でない業種がこれに今回参入してきたということは、本来の業務以外に相当土地におきまして利益を上げているということも我々見聞いたしているわけでございます。
先般、私、中国地方の裏日本で、ある都市で昼食をとりながらビルから外を見ますと、約一万坪くらいあいているわけでございます。造成工事をやっている。そういうことで地元の業者に、あれは何ですかと聞きましたら、あれは工場が移転した跡です、こういうお話がございました。それで、どのくらいするのですかと言いましたら、地元では三・三平米当たり三十五万円程度である、こういう話が出た。ところが大阪の企業がこれを七十万円で買収した。こういうことを聞きまして私もびっくりしまして、びっくりすると同時に地元の人も本当に驚いた顔をしまして、何で地元で三十五万で売れないものが大阪の企業が来たら倍の値段で買うのであろうか、こういう話が出たわけでございます。その例に見ますとおり、じゃ、それを何に使うのだろうかといろいろお話を聞きましたところが、それは不動産業種ではないのですけれども、スーパーをつくり、あと残ったところへ高層住宅をつくり、賃貸、また分譲等をやる、こういうふうに聞いている。こういう状況の中から企業参入によって地価の高騰にも多少の影響を与えたのではなかろうか、こういう認識のもとに先ほどお話し申し上げた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/126
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127・安倍基雄
○安倍(基)委員 それとの関連ですけれども、商業地域と住居地域との分離でございますね、これはさっき岩田公述人から、地元の意見を聞けという話がございました。もちろんこの公共性の問題ということを書くことについて岩田公述人は別に反対ではないと思いますけれども、ただ、公共性の概念が明確ではないということを言われました。例えば、先祖伝来のところから追い出されるというような話が時々出るのですけれども、これが東京のど真ん中になってきますと、彼らの利益と、一時間、二時間かかって中心街に来る利益とを勘案しますと、これはむしろ後者の方が気の毒だ。ある東京の区で、都会のど真ん中にみんなが行ける老人ホームができたと大喜びしているということを言っていますが、結局それは、ある意味からいうと、ほかの周辺の犠牲においてなされているわけですね。でございますから、この市民参加というのは、非常に上手にやらないと本当に地域エゴになる。ところが、確かに岩田公述人が言われましたように、頭上で計画を立てられちゃうという要素もある。それを足して二で割ったようなことが必要なのじゃないかと思います。
さっき西独の例を言われましたけれども、では西独では例えばどういう主体が、コミュニティーの単位がそういったことをやっているのか、実際上うまくいっているのかどうか。その辺の、公共性のいわば住民参加の中身をちょっと御説明願えませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/127
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128・岩田規久男
○岩田公述人 西ドイツの例というのは、むしろ私よりも本当はきょうの朝の成田先生が一番お詳しかったのじゃないかと思いますが、基本的にはいろいろな計画があるわけで、一番下に市町村がつくる地区詳細計画というのがございまして、それは、先ほども申しましたように、どの市民も参加できるということ、基本的には制限しないという形になっております。
それをつくるときに、市民が初めに何か図案を持ってきてつくるということはやはりございませんで、基本的には、まず日本で市町村に当たる一番最初の自治体が、地区レベル的ですから、比較的狭い範囲で詳細に図を書いてまず示す、それに対して閲覧の時期があって、いろいろな意見を言う、公聴会も開くというふうにして、だんだんどういう計画が一番いいかということを、すべて情報を流していって、時間をかけて決めていく、そういう基本的なやり方であります。
しかし、それだけではなく、実はやはり上位の計画がございますね。エネルギーの問題とかさまざまあります。今度は必ず上位の計画と衝突する場合がありますので、そういう問題のときにはやはり上位の計画との調整を機関で行って、その結果を住民に知らせて、住民が納得するとかしないとか、そういう議論をかなり闘わせるわけでありまして、基本的にはそういうやり方をとっておるわけであります。
日本に関しまして、先ほどお話にあった、一番最初に私、なるべく住宅と商業地域などは分離をするということが原則としていいのではないかと申しましたが、現行は非常に混在しておりまして、そういう中でいきなり分離ということはやはりなかなか難しい点があろうかと思います。
そういう点で、それでは日本型のコミュニティーを保存しながらある程度開発をしていくにはどうしたらいいかということで、例えばただ固定資産税を上げていった場合に、住民税の減税と組み合わせればそれほど負担はないのですが、年金生活者といったものは住民税の減税の恩恵を受けないわけでございまして、固定資産税の増税だけであるというと、その人はそこから出ていかなければならない。あるいはもう一つ、やはりそこに住むということを前提にその計画を立てるということが、住みたい人は住み続けるということであるならば、やはりそれは最初は自治体が基本になってその地域をまとめて、統合すべき敷地は統合するというようなことで、ある程度中高層化していただく。
それで、私は一戸建てで庭つきじゃないとどうしてもだめだというような老人の方の場合には、一世代くらいは待つ、しかし、次の世代くらいからは敷地統合していって、少し共同住宅を建てていただいて、上の方はマンション経営で貸す、それで税金を払っていく、それで自分はちゃんと、マンションは二階が一番風通しがいいそうですので、その辺に住んでいく。余り御老人ですとそういうことももう嫌だと言うかもしれませんが、中高年齢くらいの方ですと、なるべくならそのくらいの対応はしていただきたい。げた履きマンションじゃありませんが、下の方で商業を営むといったような形もあり得るかと思いますので、そういう方法をとればコミュニティーも崩壊せずにいくのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/128
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129・安倍基雄
○安倍(基)委員 私も本委員会で議論したのですけれども、例えばパリなんていうのは一階にいろいろな商店街がある。その上にマンションとかオフィスがある。そういう形で高層化していくべきじゃないかと思いますが、さっき商業地域と住宅地域の分離という意味で、例えば麹町とかあの辺の人々の意見を余り強く見ますと、千代田、中央、港で調べたら、私の論文に出ていますけれども、相当の部分が住宅地域だ。建ぺい率は大したことはない。低い。ちょっと建設大臣に聞きましたら日照権とかなんとか言いましたから、おかしいじゃないかという議論もしたのですが、商業地域と住宅地域の分離というのも、そこの地区だけのエゴに任しておくと絶対動きはしない。ですから、やはり順番に上位のところに持っていって、そこでほかの人の意見も聞くという形じゃないと、地域エゴが横行する可能性がある。でございますから、そういった都心部をどのくらい住宅地域にするのか、あるいは商業地域にするのかというのは、ある程度上のレベルで決めていかないと、まさに地域エゴが横行するような気がします。
その面で、さっき商業地域と住宅地域との分離という話をされましたけれども、中村公述人はちょっと御賛成みたいな感じがございましたが、それについては私の考えているような見解でよろしいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/129
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130・中村俊章
○中村公述人 商業地域と住宅地域の分離というのは、私自身の考え方からいえば非常に問題があろうかと思うわけでございます。そういう面におきまして、今回の土地基本法の理念というものが所有から利用へ、したがってコミュニティー、皆様の御意見を聞きながら持っていくことも、現在の世の中から考えますと非常に必要であろうと思いますけれども、やはりこういう地域的な決定といったものは、ある程度基本的な問題を提示しながら持っていかないと、住民パワーだけの問題といいましょうか、意見だけではなかなかうまく作用しないのではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/130
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131・安倍基雄
○安倍(基)委員 もう時間も少ないのでございますが、最後に一つ借地・借家法の改正問題があります。これについて、改正すべきじゃないという議論と、いやむしろ大勢の土地利用の効率からいえば少し日本は借りている人間のエゴを強め過ぎるのじゃないかという議論もある。この点、中村公述人は、実情として借地・借家法の改正問題についてどういうぐあいに考えていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/131
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132・中村俊章
○中村公述人 今度改正されるであろう今考えられている借地。借家法、私も余りよく存じ上げておりませんけれども、いろいろな議論の中では、余り今までの借地・借家法からかけ離れた問題にはならないであろうという意見が非常に強いわけでございます。しかし、借家法におきましても借地法におきましても、この年限というものが今後どういうふうに作用するのだろうかなと考えますし、また、現在は借地というものを、住宅供給に対して借地権でこれを譲渡するということは、新しい面においては余り例を見ない。今の状況では、貸す以上は売ったと同じだという感覚が現在の法律、借家法ではあるわけでございますので、その点の整合性が今後どういうふうに進められるかということについては、私もまだよく意見を持ち合わせておりませんので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/132
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133・安倍基雄
○安倍(基)委員 時間もございませんからこれで切り上げますけれども、借地・借家法については岩田公述人の意見はわかっておりますし、私の論文にも書いてございますので、読んでいただきたいと思います。
では終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/133
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134・大塚雄司
○大塚委員長 辻第一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/134
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135・辻第一
○辻(第)委員 公述人の皆さん、本日はお忙しい中どうもありがとうございます。共産党の辻第一と申します。
まず最初に河口さんからお尋ねをしたいと思います。
先ほど貴重なお考え方、また資料をいただきました。その中で、昭和六十三年の労働白書「東京の勤労者の持家所有の見通し」というものを見せていただいたのですけれども、持ち家を持っていらっしゃらない方が半数ですね。そして「できれば持ちたい」という方が四〇・二%、しかし「持てそうにない」という方が二二・三%、「持てると思う」人が九・八%、こういうことであります。「できれば持ちたい」という方がやはり持っていらっしゃらない方の大多数のお考えだということがこれでよくわかるわけでありますが、しかし先ほどお話がありましたように、年収の七倍、八倍という状況になってきておるようでございます。
そうなりますと、実際もう持てない、持てそうにないということがそのままここにあらわれていると思うのですが、そうしますと持てるようになる、持ちたいという人の御要望が大体満たされるというような見通しはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/135
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136・河口博行
○河口公述人 東京、首都圏につきましては、現在の平均的な勤労者の所得で申し上げれば、持てそうにないというよりも事実上持てないというふうに理解をした方が正確であると思っております。
全国的には、あえて申し上げれば、事土地に関しては、今、東京圏国と従来の日本圏国といいますか地方圏国という二つの国ができているのと同じような状況になっていると思っております。そういった面で、地方圏国といいますか地方においては、現在でも地価が上昇しつつありますが、基本法を初め的確な土地政策が行われてストップしていけば、健全な生涯収支及び持ち家は十分に可能であると考えておりまして、できるだけそういった土地政策初め総合的な施策が国レベル、地方レベル、さらには企業レベルにおきましても必要である。加えて所得格差が今非常に拡大しておりますし、資産格差が拡大しておりますから、そういった面での住宅を含めての資産格差を初めとする是正政策というものが必要であるし、そういったものがあれば全国的には可能性が出てくる。
東京圏について申し上げれば、先ほど来申し上げたような状況でございますけれども、やはり国及び企業がその点については負担をして解決していく。それでも中小企業を初めとする足らない点については、国及び公共住宅等の供給等を行って補完していかないと、この問題というのは解決しないと思っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/136
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137・辻第一
○辻(第)委員 私は、現状の中では、やはり大量の公共住宅を建設をしていくということが土地の問題、住宅の問題を解決をする大きな柱ではないのか、このように思っておるわけでございます。そういう点で、朝も申し上げていたのですけれども、国公有地あるいは大企業の低・未利用地、こういうところを活用して、本当に安くて住みよい公共住宅の大量建設ということが本当に大事だなと思っておるわけでございます。今、河口公述人も、公共住宅の建設というお話がありましたが、そういう点が大事だなと思うわけでございます。
そこで、中村公述人にお尋ねをしたいと思います。先ほど民社党の先生からもお尋ねがあったんですが、これまでは全国を平均して一億総不動産業者というような状態だった。三十七年、三十八年あるいは四十九年のときはそうだった。しかし最近は企業が総不動産業というような状態だというふうにお話がありました。大体どの程度に企業がふえておるのか、その辺のところはいかがでしょうか。
それから、企業が総不動産業というような状況の中で、企業が非常な地価の高騰を一層進めたというような状況があるようなお話を聞いたわけでありますが、もう少しお話をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/137
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138・中村俊章
○中村公述人 先ほどオイルショック前の値上がり状況につきましては、当時三割程度の値上がりがした、これについては通称一億不動産業、こういうように当時言われたわけでありますが、今回の値上がりについては、あえて私が先ほど申し上げましたように企業が相当参入している、これは不動産業種でない企業が参入している、こういうことを申し上げたわけでございます。
その事例としまして、先ほど中国地方の日本海沿岸のある都市におきまして、一万坪三十五万で地元で売るべく考えだったらば、これを大阪の企業が七十万で買った、こういうことに端的に見えますとおり、普通の企業そのものが不動産部をつくり、端的なといいましょうか、今は余りないわけでございますが、税制上の超短期重課と申しましょうかそういう状況の中で土地転がしやなんかできないわけでございますけれども、企業そのものが一時は、その税制前はそういうことが非常に多くあったということを私も実際に見聞しておるということでございますし、一年前ぐらいは免許業者が十万ちょっとだったと思うのですけれども、ことしの三月三十一日現在では免許業者が十二万七千、こういうふうにふえている。こういう実態の中でいろいろな業種が免許をとっているということもはっきりいたしております。データ的には、今私、手元に持っておりませんけれども、企業そのものが不動産業になりつつあったなという考え方を今回持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/138
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139・辻第一
○辻(第)委員 もう一度中村公述人にお尋ねをいたします。
民間の賃貸住宅の家賃の値上がりというのは、東京圏ではどんなぐあいになっているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/139
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140・中村俊章
○中村公述人 現在の推移は、やはり地価の高騰に比例しまして、比例だけで上がるわけじゃございませんけれども、余りむちゃな家賃の値上がりというのはとまっております。と申しますのは、供給が相当ふえてきておるということでございます。いろいろな意味におきまして農家、一般の企業そのもの、また普通の人たちがアパート、マンションを提供いたしておりますので、東京二十三区内においてはやや供給が過剰ぎみではなかろうか。こういう中にありまして、そう値上がりはない。したがって、駅から十五分以上歩くような場所は空き家が相当ふえておるというのが実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/140
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141・辻第一
○辻(第)委員 岩田公述人にお尋ねをいたします。
土地の利用計画、これは私も非常に大事なことだというふうに思っておるわけであります。この利用計画、地区計画、それには先生先ほどお話ありましたように住民が参加をする、そうして住民合意の中で、しかも情報が十分公開をされるということが本当に大事なことだと思います。私も国会の中で、少しずつですが、そういう話を何回も申し上げてきたわけでありますが、現実は非常にそういう状況とほど遠いという状況でございます。
先ほど西ドイツのお話ですかあったように思うのですが、大体ヨーロッパ諸国、アメリカでもそういう利用計画、地区計画は住民参加が得られ、また情報の公開ということが十分やられているということでしょうか。その辺をもう少しお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/141
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142・岩田規久男
○岩田公述人 西ドイツのお話はしましたので、私がアメリカに滞在したときの例を挙げたいというふうに思うのです。
アメリカでは御承知のとおり、住民が提案してイニシアチブをとって、自分で案件を提案して投票にかけるというシステムまで用意されているわけであります。そして、自分たちの中から市の重要な役職につくということも市民ができるわけでありまして、そういう意味で、もともと国のつくり方自体が、アメリカは自治から出発しているという点で、日本人にはそこまでするのかという点があって、そこまですると日本では動きがとれなくなるのではないかというふうに危惧されるかと思うのです。しかし、それで結構動いているのは、やはりそういうシステムの中で皆が情報を共有していて、どうすればいいかということを非常によく議論をするわけであります。議論になかなか参加できない昼間働いているサラリーマンにとっては、先ほども申しましたように、地方紙が非常に詳しい公聴会の様子などを知らせるとか、専らそういうことを専門にやっているラジオもありますし、あるいは自分たちでラジオの電波を買いまして、そういう環境問題とか都市問題とか、いろいろな問題に関して情報を常に与えている。そういう放送局を市民団体が持っているということもあって、そういう意味で非常に進んでいる。
むしろ日本とは逆で、日本は新聞でも何でも全国レベルですから、日本人は全国的なレベルの問題は非常によく知っているけれども、地域の問題は全然知らない。昼間働いているサラリーマンは地域に何が起こっているか全然知らないというような状況ですが、アメリカは逆に、極端ですけれども、地域のことはよく知っているけれども連邦政治は何にも知らないという、そういった極端さがちょっとあります。
私は両方必要だと思いますが、そういう意味で、自分の地域で何が起こっているかということにもっと関心を持つ。そのためには、今言った行政全体の仕組み、町をつくる計画には計画をつくる段階から市民が参加できる。しかも先ほどおっしやったように、地域エゴに陥らないために、ある程度広い市民参加ということを考えなければいけないというようなことをしていけば、大分日本の計画制度も変わるんじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/142
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143・辻第一
○辻(第)委員 もう一度岩田先生にお尋ねをしたいのですが、今そういうことを実際に日本でやっていくということは案外早く可能なんでしょうか。これまでの日本人の考え方や慣習というものがいろいろあろうかと思いますけれども、私はこれまで政府に、やれやれと地元の具体的な例を含めて何度も申し上げているわけでありますが、現実はなかなか大変なことのようであります。その辺はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/143
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144・岩田規久男
○岩田公述人 伝統的には、日本にはそういう市民参加ということを、例えば事業段階はまだしも、計画段階からしたら何も進まないのではないかというのが行政に根強いのではないかと思います。
ですが、そういうことに計画の段階から参加していく。参加するということは、決定権を持っているわけではなくて、意見を反映して、かなり議論をしていって、行政もそういう意見を無視したような、例えば弱者を全然考えないような計画をつくるとか、そういうことはできなくなっていくというシステムを考えているわけです。しかし、そういうことは今まではできていないわけですが、今後、例えば町をつくっていくためにはそうならざるを得ないということは、建設省などでもかなり浸透してきつつあると思うのです。
そういう意味で、地区計画などがあるわけですから、地区計画はそういう市民参加型を取り入れていくわけです。ただ、そういう計画が進まないのは、一方に、計画がなくても勝手に自分で家を建てたり開発ができるということがあるために、そういうものが利用されないでいるわけです。今後は、そういうふうにしていく中で市民も、自分もやはり責任を持つ。参加する権利もあるけれども責任もとる。そういう市民がだんだん育っていくのではないか。そうして、そういう決め方をしないと、消費税に見られるように、最終的には廃案に持っていかされるという経験をこれからしてくるわけなんです。ですから、私はそういう意味での民主主義というものは、そう悲観したものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/144
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145・辻第一
○辻(第)委員 中村公述人にもう一度お尋ねをいたします。
宅地並み課税の問題が非常にクローズアップされてきているわけでありますが、私どもは、都市農業を守る、また緑を守るということで、長期営農継続農地の制度をもっと続けてくださいということを申し上げておるわけです。先ほど少しお話がありました。私も、地元や東京の農協の幹部の方とお会いをしていろいろ聞かせていただいたのですが、この長期営農継続農地制度をやめて宅地並み課税をやりましても、本当にごく一部分だけを、虫食い状態みたいですか、わずかだけ売れば後はやっていけるわけですね。税金の影響はそんなに響かない。ですから、実態としてはうまくいかないというようなお話も聞いてきたわけです。宅地並み課税だけではうまく農地が宅地にはならないと私は思うのですが、その点少しお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/145
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146・中村俊章
○中村公述人 基本的には、やはり宅地供給という意味から考えてみますと、市街化農地が東京圏で三万六千ヘクタールある、これは当然供給されるべきであるし、また供給されることによって住宅難も解消できるのではないか。基本的には私どもはやはり宅地並み課税をすべきであるという考え方は持っておりますけれども、先ほど申し上げましたのは、ただ単なる宅地並み課税で土地が供給されるかというと非常に難しい問題がある、こう申し上げたわけでございます。
その理由は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、とにかく現在の農家というものはリッチである。農家は新築住宅に住み、自動車を三台ぐらい持ち、現在の農地の固定資産税が反歩六千円ぐらい、これが百倍の六十万になっても、一坪売れば、これは例えの話ですけれども、一年間の固定資産税が払える。そういう中にありまして、土地神話と申しましょうか、そういう信奉をしておる農家としてはなかなか出てこないのではなかろうか、こういう考え方を持っているわけでございます。しかしながら、もし十年の営農という形を農家がとられるのならば逆線引きをしてはっきりさせるべきである、私はこういう考え方を持っているわけでございまして、やはりここで土地基本法の趣旨である所有から利用へという考え方を農家も持っていただくべきではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/146
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147・辻第一
○辻(第)委員 時間が来ました。終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/147
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148・大塚雄司
○大塚委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)
公述人各位には、御退席をいただいて結構でございます。
これにて公聴会は終了いたしました。
次回は、明十六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111604855X00119891115/148
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