1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成元年十一月二十二日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
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平成元年十一月二十二日
午前十時 本会議
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第一 土地基本法案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/0
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001・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
猪木寛至君から海外旅行のため明二十三日から十日間の請暇の申し出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/1
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002・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
よって、許可することに決しました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/2
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003・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) 日程第一 土地基本法案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。石井国務大臣。
〔国務大臣石井一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/3
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004・石井一
○国務大臣(石井一君) ただいま議題となりました土地基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
東京都心部に端を発した今回の地価高騰は、国民の住宅取得を困難とし、社会資本の整備に支障を及ぼすとともに、土地を持つ者と持たざる者との資産格差を拡大し、社会的不公平感を増大させる等我が国社会経済に重大な問題を引き起こしているところであります。
政府としても、これまで各般の土地対策を講じてきているところでありますが、これらの諸問題により適切に対処するためには、昨年六月の臨時行政改革推進審議会答申に示されたとおり、国及び地方公共団体が一体となって需給両面にわたる各般の土地対策を総合的に推進するとともに、その前提として、国民各層にわたって土地についての共通の認識を確立することが不可欠であります。
本法案は、このような考え方に基づき、土地についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適正な土地利用の確保を図りつつ適正な需給関係のもとでの地価形成に資する見地から土地対策を総合的に推進し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。
次に、この法案の概要について御説明申し上げます。
第一に、土地については、公共の利害に関係する特性を有していることにかんがみ、公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課されるものである等の土地についての基本理念を定めるとともに、国及び地方公共団体は基本理念にのっとり、土地に関する施策を策定し、これを実施する責務を有する等、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明確化するなど所要の規定を定めております。
第二に、土地利用計画の策定、土地取引の規制等に関する措置、社会資本の整備に関連する利益に応じた適切な負担など土地に関する施策のうち基本となる事項を定めております。
第三に、内閣総理大臣の諮問機関として国土庁に土地政策審議会を置き、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項及び国土の利用に関する基本的な事項を調査審議するものとするなど、土地政策審議会に関する規定を定めております。
政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、衆議院におきまして、一、目的において適正な土地利用の確保を図りつつ、正常な需給関係と適正な地価形成を図るための土地対策を総合的に推進するものとすること、二、土地についての基本理念として公共の福祉を優先させるものとすること、三、土地利用計画策定の場合における住民等の意見を反映させるものとすること、四、適正な土地利用の確保を図るための措置を講ずるに当たって宅地供給の促進が図られるように努めるものとすること、五、公的土地評価の適正化等が図られるように努めるものとすること等を内容とする修正が行われております。
以上が本法案の趣旨であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/4
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005・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。村沢牧君。
〔村沢牧君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/5
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006・村沢牧
○村沢牧君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました土地基本法案について、総理並びに関係大臣に質問を行います。
東京一極集中に端を発した今回の異常な地価の高騰は、大阪、京都を初めとする地方の主要都市に波及し、都市勤労者の住宅取得を不可能にするとともに、社会資本の整備を困難にし、生活環境の悪化を招き、また土地を持つ者と持たざる者との資産格差を拡大させるなど、国民生活に重大な影響を与えております。
総理、今や地価の大幅引き下げによる国民生活の安定が緊急の政策課題となっております。さらに、アメリカの百倍と言われる我が国の地価水準が国際的にも問題となり、日米構造協議において土地問題の解決を迫られるという状況になっており、一日も放置できない逼迫した課題となっております。
ところで、今日のような異常な地価の高騰を招いた原因は、戦後の自民党政権が産業優先、企業優先の土地政策をとり続け、有効な地価対策を講じてこなかった土地無策によるものであることは、国民だれしも認めるところであります。
総理、今日までの地価の推移を見てまいりますと、地価が急激に値上がりした時期が、池田内閣の所得倍増計画、田中内閣の日本列島改造、中曽根内閣の民間活力導入の各時期で、まさしく自民党政府主導の地価高騰であることは今さら指摘するまでもありません。特に、今日の地価高騰については、政府が東京都心のビル需要の過大見積もりを発表して業務地の仮需要を誘発したこと、世論の反対を押し切って都心の国公有地を一般競争入札で公示価格の数倍という高値で民間に払い下げたことなどが直接の原因になっており、土地行政を麻痺させた中曽根内閣の責任は極めて大きいと言わざるを得ないのであります。
そこで、まず第一に伺いたいのは、このような国際的にも割高な、また国民生活を圧迫する異常な地価の高騰を招いた政府の責任についてであります。
歴代自民党内閣の土地対策が、急激な地価の高騰に対して後手後手に回り、いかに無力であったかは、臨時行政改革推進審議会が土地対策に関する答申の中で、「土地問題への対応に当たって、政府はもとより関係地方公共団体においても、その施策が総合性を欠き、時機を失したものがあったことなど、行政の責任は厳しく指摘されなければならない。」と述べているように、政府の審議会においても行政の責任を厳しく指摘しているところであります。今回の地価高騰についても、東京圏の地価高騰が関西圏を初めとして地方の都市に波及するまでには一年余の歳月があったにもかかわらず、その間何ら有効な施策を講ずることなく今日の結果を招いた行政の怠慢は厳しく批判をされなければなりません。
海部総理は、この点についていかなる反省の上に立って今後どのような実効ある土地対策を進めていこうとされるのか、総理の決意のほどをお伺いいたしたいのであります。
質問の第二点は、今後政府が進めていこうとする土地対策の政策目標についてであります。
提案されている土地基本法案においては、土地についての基本理念を定め、土地についての公共的制約、計画的な土地利用、投機的取引の抑制等について規定しており、土地政策の方向づけはなされておりますが、今後政府が進めていくべき土地対策の具体的な目標は明確にされておりません。とりわけ、市町村レベルでの土地利用計画の策定や住民の意思の尊重が欠落していることは問題であります。よって、今後の具体的政策目標について伺います。
我が党は、土地・住宅政策の目標として、憲法が保障する健康で文化的な生活を営み得る住宅を勤労者の平均年収の五年分で取得、または月収の一五%以内の家賃で入居できることが可能となるまで地価を引き下げることを要求しています。政府の土地基本法案では、「適正な需給関係の下での地価の形成に資する」と規定し、土地対策の基本を土地の需給関係に置いておりましたが、衆議院において「正常な需給関係と適正な地価の形成を図る」と修正され、土地の需給関係の正常化と適正な地価形成の二つを目標とすることになりました。しかし、政府が相変わらず需給関係に重点を置くならば、土地需要の集中する大都市圏では地価の値下げは不可能であり、結果的に土地の暴騰や高値安定を容認することになるのであります。これでは、総理が所信表明の中で述べておられる「地価の高騰は国民から住宅確保の夢を奪って」いるという現状を打開することはできないのであります。
政府は、土地は値下がりしないという土地神話を打ち崩すためにも思い切った土地政策を実行して、地価を高騰前の水準まで引き下げ、国民の住宅確保の夢を実現することを国民に約束すべきであり、土地基本法案にもその旨を明記すべきと考えますが、総理、国土庁長官の所見を伺います。
質問の第三点は、今日の地価高騰の元凶である投機的土地取引の規制についてであります。
今日の地価高騰が、金余りを背景に金融機関の過剰な土地関連融資に支えられた土地の投機的取引によることは明らかであります。日本銀行の調査によれば、今年六月末現在の金融機関の土地関連融資残高は四十三兆六千二百億円、対前年同月比一三・二%の伸びになっており、中でも地方銀行の増加率は一八・六%と最も高い伸びを示して、過剰な土地関連融資が地方都市の地価高騰の大きな要因となっていることを裏づけておるのであります。
このような土地投機につながる金融機関の反社会的融資についての大蔵省の指導がなまぬるいと言われていることは周知のとおりでありますが、とにかくいまだに土地融資が増加していることでもわかるように、一片の通達で糊塗しようとする大蔵省の姿勢は改めるべきであります。そして実効ある措置を講ずべきであるが、いかがですか。大蔵省は各銀行ごとの土地融資額を国民に公表すべきであります。
新聞の報道によれば、幹部職員が土地転がし関連の脱税容疑で摘発された中央信託銀行は、五年間に当該職員が関係した不動産取引に一千億円を融資し、百七十億円の利益を上げていたとのことであります。このような反社会的な融資を行った企業の経営責任は厳しく追及されなければなりません。大蔵省は営業停止等の厳しい行政措置をとるべきではなかったのか、改めて大蔵大臣の金融機関に対する指導監督の方針をお伺いいたします。
質問の第四点は、国公有地、すなわち国及び公有地の活用についてであります。
土地基本法案では、「土地については、公共の福祉のため、その特性に応じた公共的制約が課される」と規定し、土地の公共性を強調しておりますが、最も強く公共的利用がなされなければならないのは国公有地であります。政府案よりも一年前に提案した野党四党案でも強調しているように、国公有地の確保拡大は基本法の原点であります。しかるに財政当局は、会計法の規定を理由に、旧国鉄用地等の国公有地の処分について一般競争入札の原則を崩そうといたしません。さきの国土利用計画法の改正に当たっても、国土法による取引規制の対象に国公有地を加えようとする国土庁と、対象とすることに反対する大蔵・運輸省の意見調整が難航し、国公有地の払い下げに当たっては適正な地価の形成に配慮する旨を規定することで落ちついた経緯があり、監視区域内での一般競争入札による売却は一応凍結されておりますが、本年二月には条件つきで競争入札の凍結が解除され、さらに最近、国鉄清算事業団の長期債務の増加を理由に、全面的に競争入札の再開を求める動きが活発となってきております。一般競争入札による国公有地売却は絶対に認めるべきでないと考えますが、総理及び大蔵大臣、自治大臣の所見を伺います。
国公有地は、土地基本法案の趣旨に沿って、公共の福祉を優先させて利用されなければなりません。勤労者の住宅取得が不可能となった大都市地域では、国公有地を勤労者のため公共賃貸住宅用地として住宅・都市整備公団、地方公共団体等に優先的に払い下げることが最も国民の希望に沿った国公有地の活用方策と考えますが、総理及び建設大臣の所見を伺いたい。
質問の第五点は、土地評価の一元化の問題についてであります。
現在、土地の価格の公的評価の制度としては、地価公示法に基づく公示価格、相続税の課税評価の基礎となる路線価格、固定資産税の課税評価となる固定資産評価額の三種類があり、これに市場の実勢価格を加えると一物四価となり、それぞれの価格が整合性なくばらばらに決められており、国民の地価評価に対する信頼性を著しく失わせる結果となっております。今後、土地基本法案に規定されている土地の価値の増加に伴う利益に応じた負担の適正化を実行していくためには、これらの土地評価制度の一元化を図り、少なくとも公的な評価については統一した基準に基づいて実施されていくことが必要不可欠であり、公的土地評価制度の一元化が土地対策の出発点であることは常識であります。衆議院において「公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」との条項が追加されましたが、なお不十分であり、野党四党案を採用して一元化を法定化すべきであります。改めて国土庁長官、大蔵大臣、自治大臣の所見を伺いたい。
最後に、我が国はGNPが米国に次いで世界第二位の経済大国になりながら、国民がその豊かさを生活の中で実感できない最大の原因は土地問題、特に大都市における異常な地価の高騰にあることは明らかであります。一年間の土地資産の増加額がその年のGNPを超えるという状況は、国民の勤労意欲を失わせ、正常な経済活動を阻害することは明白であります。今日の我が国の現状は、経済白書が指摘をしているように、総資産額の六六%が土地資産で占められるという水膨れの資産大国であり、不健全な体質となっております。土地対策の成否こそが日本の将来を左右すると言っても過言ではありません。これに対する総理の御所見を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/6
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007・海部俊樹
○国務大臣(海部俊樹君) 村沢議員にお答えをいたします。
今回の一連の地価高騰は、まず東京への一極集中に伴う需給の逼迫や投機的取引の存在など、各種の要因が複合的に影響して生じたものと認識しております。このため、これまでも行政機関等の移転の推進を初めとする諸機能の適正な分散を図るとともに、国土利用計画法による監視区域制度の機動的運用、不動産業・金融機関等に対する指導、税制上の措置などの対策を講じてきたところでありますが、今後とも、引き続き土地対策等を強力に推進するためには、土地の公共性に立脚した土地に対する共通認識を確立し、土地対策の実施に向けた国民の皆さんの理解と協力を得ることが重要であります。そのために、土地基本法の早期の成立を強くお願いしておるところであります。
また、土地基本法案第一条におきましては、「適正な地価の形成を図る」ことを土地対策の目標として掲げておるところであります。土地基本法を成立させていただいたならば、そこに示された基本理念と施策の展開方向に基づき、土地利用計画の充実、土地の有効利用、高度利用、それの促進、同時に土地取引規制の強化、土地税制の見直しなど、需給両面にわたる各般の施策を行うことによって適正な地価の形成に全力を挙げてまいりたいと考えております。
また、国有地の一般競争入札につきましては、昭和六十二年十月の緊急土地対策要綱を受けて、現に地価が異常に高騰しつつある地域内では、その地域の地価の異常な高騰が鎮静化するまでこれを見合わせているところであります。今後とも、同要綱の趣旨を踏まえ、国公有地の売却については適切に対処してまいる所存でおります。
また、国公有地の処分に当たっての御指摘もありましたが、昨年六月の総合土地対策要綱及び多極分散型国土形成促進法の趣旨を踏まえ、地方公共団体、住宅・都市整備公団等から公共的住宅プロジェクト用地としての要望があれば、規模、立地条件等を総合勘案して、これに対しての活用に配慮してきたところであります。
地価の高騰は、国民の住宅取得を困難とし、土地を持つ者と持たざる者との資産格差を拡大し、社会的不公平感を増大させるなど、我が国社会経済に大きな問題を引き起こしておるということは私も同様に受けとめさせていただいております。そしてその解決のためには、内政上の最重要課題の一つであると認識して取り組んできたところであり、このため土地基本法案のできる限り早期成立をお願いし、その基本理念のもとに、今後とも需給両面にわたって土地対策を強力に推進してまいりたいと考えております。
残余の問題点につきましては担当閣僚より御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣石井一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/7
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008・石井一
○国務大臣(石井一君) 村沢議員にお答えいたします。
地価を高騰前の水準に引き下げるという御指摘でございますが、これは大変難しい問題だと私は思います。しかしながら、最大の努力をするべきだと、そういうふうに認識をいたしております。
地価高騰に伴う住宅取得の困難化は内政上の最大の重要課題であり、このたび土地基本法の第一条に示されております目標に向かって、地価形成に対し各般の施策を、今後具体的な実行法を次々に打ち立て、そして実行していきたいと考えております。そこに示されております基本理念、施策の展開方向は、土地利用計画の充実、市街化区域内農地の計画的宅地化や低・未利用地の有効利用等の適正な土地の利用の促進、宅地の供給、国土利用計画法による土地取引規制の強化、税制の見直しなど需給両面にわたる各般の施策を推進し、地価の安定、適正な地価の形成に全力を挙げて努めてまいる所存であります。
次に、いわゆる一物四価の御指摘でございますが、これも非常に説得力のある御意見でございます。ただ、過去の経緯等を考えまして、直ちにこれを行うことにいろいろの問題点も指摘されておるところでございます。地価公示を初めとする公的土地評価に対する国民の信頼を高めることが重要であることにかんがみ、新しく衆議院の審議におきまして十六条を追加したところでございます。この点はまだ不足だと言われますので、今後十分参議院で御審議を願いたいと考えております。
なお、先般閣議決定された総合土地対策要綱においても、相続税評価、固定資産税評価について、その性格を考慮し、地価公示との関係に十分配慮しつつ、その均衡化、適正化を推進するということを指摘いたしております。今後とも、関係省庁において鋭意この方向に沿ってその推進が図られるように努力いたしてまいりたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/8
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009・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 村沢議員から私に対する御指摘は五点であります。
その第一点につきまして、まず御答弁を申し上げます。
金融機関の土地関連融資につきましては、従来からさまざまな手法を講じて対応を努力してまいりました。そこで、先般、最近の地価動向などにかんがみまして、国土庁において国土利用計画法上の監視区域制度に係る指導を強化されましたことに平仄を合わせ、大蔵省におきましても、従来の指導の趣旨をさらに徹底させるという観点から、新たな通達の発出を含みます一連の措置を講じてまいりました。
その内容は、通達を発出しまして、投機的土地取引などに係る融資を厳に排除するという従来の趣旨をさらに徹底させるだけでなく、いわゆるノンバンクたる貸金業者一般に対する金融機関の融資についても、その資金が投機的土地取引などに利用されることのないよう、資金用途につきまして十分な審査を行うような指導をした点が第一点であります。また、地価の高騰地域などを主たる対象とした特別ヒアリングの実施、金融機関によるノンバンク融資の実態把握を目的とした事務連絡の発出、金融機関のノンバンク融資の実態についてのヒアリングの実施、金融検査の活用、ノンバンクの不動産融資の適正化に関する自主的措置についての当局からの要請、こうした措置をとってまいりました。
大蔵省の立場からいたしますと、一方では住宅あるいは民活関連など内需拡大の見地から積極的に対応すべき土地取引もございます。これに対する円滑な資金供給を確保すると同時に、投機的な土地取引などに対する融資を排除していくためには、現在実施しております特別ヒアリングなどを充実していくことにより実効を上げていくのが最善の方途と考えており、これから先もそうした方針で厳に努力をしてまいりたいと思います。
また、二点目におきます御指摘は、各金融機関ごとの土地融資額を公表というお話でございました。
しかし、行政を進めていく上での必要性に応じて、各金融機関ごとのそれぞれの計数は徴しているところでありますけれども、個別金融機関ごとの計数を明らかにいたしますことは、信用秩序の維持などの観点から問題があるので差し控えさせていただきたいと思います。
また、金融機関の土地関連融資につきましては、金融機関の公共性に照らして、かねてからその厳正な業務運営について指導に努めてまいりました。今後とも、引き続き特別ヒアリングの機動的、効果的実施や検査の活用などを通じ、投機的土地取引などに係る不適切な融資が厳に排除されるよう強力に指導していく覚悟であります。
また、金融機関の役職員が各種法令などを遵守していくことは当然でありまして、大蔵省としては、今後とも金融機関の役職員が各種法令などを遵守し、適切な業務の遂行が確保されるよう引き続き指導を行ってまいりたいと考えております。
また、一般競争入札による国有地売却の再開は絶対に認めるべきでないという御指摘でありますが、私どもは、この点に関しましては、以下申し上げるように考えております。
国有地及び国鉄清算事業団用地の売却につきましては、昭和六十二年十月の緊急土地対策要綱を受け、現に地価が異常に高騰しつつある地域内では、公用、公共用に供する場合などを除きまして、その地域の異常な高騰が鎮静化するまでこれを見合わせてまいりました。その後、国鉄清算事業団用地などにつきましては、本年二月の土地対策関係閣僚会議における申し合わせによりまして、地価対策と用地処分の促進の必要性を総合的に勘案しながら、具体的事例に即して関係省庁間で緊密な連絡、情報交換を行い、周辺地域の地価の動向などに照らし、地価に悪影響を与えないと判断されるものにつき慎重に順次一般競争入札による処分を実施することといたしておるわけであります。
そこで、私から議員に申し上げるのは大変失礼かと存じますけれども、私は、国鉄改革関連法案の審議に当たりまして、当時運輸大臣として本院においてもしばしば御指摘を受けました。
その一つは、かつて国鉄の用地が随意契約によって売却された結果生じた不明朗な事態に対する御指摘でありました。そして、国民の財産である国鉄の用地というものが売却される場合、国民の目に疑惑の残らないような明らかな姿でこれを行えという御指摘はしばしば受けたところであります。そしてその中で、一方では地価の問題から随意契約を御主張いただいた委員も確かにおられたわけでありますが、他方、地方自治体に随意契約で売却をいたしました用地が、地方自治体に登記を変えて数日後に民間業者に転売された事例等も本院で提示をされ、御論議があったことを私は今思い起こしております。
それだけに、国有地というものが国民の財産であります限り、これがいやしくも国民から誤解を生ずることのないような公開入札によって措置されることが原則であると、私はそう考えております。
また、土地の評価の問題についての御議論でありますが、相続税における土地の評価に当たりましては、従来から地価公示価格との均衡を保つように努めてきているところでありますが、相続税評価額が財産課税のためのものであるところから、納税のために売り急いだとしても、評価額がその売買価格を上回ったりするような事態がないようにかた目の評価をいたしておるところでありまして、地価公示価格の七〇%程度を目途としてまいりました。
地価公示価格は、一般の土地取引について取引価格の指標を与えること、また公共用地取得の補償基準とすることを目的として定められておるものでありますとともに、その公示地が都市計画区域に限定をされ、その地点数も約一万七千地点にすぎないということから、相続税評価の活用に当たりましておのずから限界があると考えられます。
また、固定資産税の評価額につきましても、相続税とはまたその課税の目的が全く異なりまして、その評価は三年に一度の評価でありますため、毎年改定をされます相続税評価額とに開差が生じているのが現状であります。
以上申し上げましたように、相続税評価と地価公示及び固定資産税評価の間には、それぞれの目的、性格が異なり、評価方法にも相当の隔たりがありますので、この評価の一元化を直ちに行うということにつきましてはなかなか容易ではございません。しかしながら、相続税評価と他の公的土地評価相互間の関連につきましては、今後とも均衡と適正化を図るように検討してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣原田昇左右君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/9
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010・原田昇左右
○国務大臣(原田昇左右君) 村沢議員の御質問は、国公有地については住都公団等において公共賃貸住宅の用地として活用すべきではないか、こういうことでございましたが、私は、国公有地の有効・高度利用は、大都市地域におきます土地・住宅対策上極めて重要な課題と認識しております。このため、昨年六月の総合土地対策要綱に基づき、大都市地域に所在します国公有地の規模、立地条件等を勘案し、住宅建設適地につきましては、公共的住宅プロジェクトの用地として積極的に活用するよう努めてまいる所存であります。(拍手)
〔国務大臣渡部恒三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/10
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011・渡部恒三
○国務大臣(渡部恒三君) お尋ねの地方公共団体の公有地の一般競争入札については、昭和六十二年十月の緊急土地対策要綱を受け、国有地に準じて、現に地価が異常に高騰しつつある地域内では、その地域の地価の異常な高騰が鎮静化するまでこれを見合わせるよう要請しておるところであります。今後とも、同要綱の趣旨を踏まえ適切に対処してまいりたいと存じます。
次に、土地の公的評価の一元化につきましては、地価公示価格は現実の売買の指標であるのに対し、固定資産税の評価額は継続的にその資産を保有することを前提に毎年税負担を求める基準となるものであり、評価の目的や性格を異にするものから、これを一元化することはできないと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/11
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012・土屋義彦
○議長(土屋義彦君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/111615254X00819891122/12
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