1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成四年三月六日(金曜日)
午前九時四十六分開議
出席委員
委員長 伊藤 公介君
理事 木村 義雄君 理事 佐田玄一郎君
理事 中山 成彬君 理事 真鍋 光広君
理事 沢藤礼次郎君 理事 吉田 正雄君
理事 鍛冶 清君
井上 喜一君 岩屋 毅君
狩野 勝君 河村 建夫君
小坂 憲次君 小宮山重四郎君
塩谷 立君 船田 元君
村田 吉隆君 輿石 東君
佐藤 泰介君 中西 績介君
松前 仰君 山元 勉君
平田 米男君 矢追 秀彦君
山原健二郎君 高木 義明君
出席国務大臣
文 部 大 臣 鳩山 邦夫君
出席政府委員
文部大臣官房長 野崎 弘君
文部大臣官房会
計課長 泊 龍雄君
文部省生涯学習
局長 内田 弘保君
文部省初等中等
局長 坂元 弘直君
文部省教育助成
局長 遠山 敦子君
文部省高等教育
局長 前畑 安宏君
文部省高等教育
局私学部長 奥田與志清君
文部省学術国際
局長 長谷川善一君
文部省体育局長 逸見 博昌君
文化庁次長 吉田 茂君
委員外の出席者
自治省財政局交
付税課長 田村 政志君
文教委員会調査
室長 福田 昭昌君
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委員の異動
三月六日
辞任 補欠選任
米沢 隆君 高木 義明君
同日
辞任 補欠選任
高木 義明君 米沢 隆君
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三月二日
私学助成大幅増額と高校四十人以下学級の早期
実現等に関する請願外二件(田口健二君紹介)
(第三三〇号)
同外二件(田口健二君紹介)(第三六八号)
同外二件(田口健二君紹介)(第四一〇号)
同外二件(田口健二君紹介)(第四三九号)
同外二件(田口健二君紹介)(第四五三号)
私学助成の大幅増額、三十五人学級の実現に関
する請願(山中末治君紹介)(第三三一号)
私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善
及び私学助成増額に関する請願(辻第一君紹
介)(第四一一号)
小・中・高校の三十五人学級実現、私学助成大
幅拡充など教育諸条件改善に関する請願(中村
正男君紹介)(第四四〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特
別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第
八号)
文教行政の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/0
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001・伊藤公介
○伊藤委員長 これより会議を開きます。
文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/1
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002・中西績介
○中西(績)委員 大臣の所信表明、先般お聞きいたしました。まず第一点は、この一ページにございます、「我が国の将来はこ云々から始まりまして、「教育の成果に帰するものであり」、「人づくりなくして国づくりなし」、こういう表現で基本的な姿勢を示しておるわけであります。特に私はこの中で重要視しなくてはならぬのは、文教行政に課せられた重大な使命であるといった中に、個性や創造性を伸ばし、心豊かなたくましい青少年を育成をする、あるいは国民生活の充実、さらに教育、文化、学術、スポーツの振興に全力を尽くすということを言っておられます。
そこで、大臣の基本方針は、この文章上からいたしましてもうかがい知ることができるわけでありますけれども、従来からの所信表明、おおよそ同じようなことが盛られておったんですね。しかし、それを具体的に実現をするということになってまいりますと、なかなかうまくいっていないというのが現状ではないかと思っています。したがって、文章に書かれたこの点をどのようにされていくか、決意をまずお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/2
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003・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 中西先生のような大ベテランの先生には特にそういうお感じを持たれることと思いますけれども、文教委員会における文部大臣の所信表明というものは、もちろんみんなで懸命に考えて、私が最終的に草稿に断を下して読み上げる内容のものでありますが、何分、外務省は文部大臣のことをエデュケーションミニスターと簡単に紹介したがりますけれども、しかし私ども文部省としては、文部大臣とか文部省というものは、ミニスターあるいはミニストリー・オブ・エデュケーション・サイエンス・カルチャー・アンド・スポーツ、こういうふうに申し上げたい。それくらい守備範囲の広い文部省あるいは文部大臣でありますので、その幅広い事柄を、国際交流まで含めて全部十ページぐらいに書き連ねようといたしますと、これはある意味でいえば、総花的というような批判をいただいても、それに反論しにくい部分がございまして、先生のようなベテランの方々は毎年やや似たような文章だなというふうにお感じになるとしてもやむを得ない部分があるということだけは釈明をしておかなければならないかと思います。
ただ、そういう中で私なりに、とりわけ第一ページについては気を使って、「人づくりなくして国づくりなし」ということを申し上げさせていただいた。その趣旨は、もう御承知と思いますが、私は、世の中が便利になるということが、本当に人間が立派になることとかあるいは幸せになることとはダイレクトに結びつかないのではないか、そういうおそれをいろいろな場面で感じることがございまして、高速道路網、新幹線、予算委員会でも随分議論が進んでおりますが、あるいは情報化社会でボタン一つてどんな情報も入手できるというような世の中になったとしても、三十七万平方キロの北海道から沖縄までのこの日本列島の主人公たる日本人が、一億数千万と言われる日本人の心が逆に白けたものになるというのか、私の地元で言うと、台東区浅草あたりは義理と人情ということですが、そういう義理も人情もへったくれもない、大都会はジャングルですよというような、他人の幸せは一切関心がありません、自分のことだけですというような、そういう人間が日本列島に満ちあふれたとするならば、結局その国づくりは、便利な国はつくったけれども、幸せな国をつくることができなかった、そういう結果に終わってしまうでありましょう。
竹下総理が物の豊かさより心の豊かさをということを大変強調されて、そしてふるさと創生という考え方を発表されたのも、私は同じような原理原則に基づくものだろうというふうに考えておりまして、当然人づくりといっても、それは学校教育にすべてを任せるということではなくて、生涯学習社会を建設する中で、学術、文化、スポーツあるいは芸術、そういう万般にわたる教育大国づくりというのかあるいは文化大国づくりというのか、今一どきに五歩も六歩も、百歩も歩めるわけではありませんが、一歩ずつ力強く大地を踏み締め進んでいく中で、そういう国家づくりに近づけていきたいというのが私の基本的な考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/3
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004・中西績介
○中西(績)委員 大変内容的にはたくさんあるわけですから、その点の中でことし最も重要視してやろうと思っていることは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/4
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005・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 これは大変難しい御質問でございまして、とりわけ学校教育の世界を考えてみても、いわゆる義務教育の重要性という事柄は先生よく御承知のとおりでございまして、高校に目を転じてみれば、中退者十二万三千人ということ、これはとりわけ小中学校の四万八千人にわたる不登校あるいは登校拒否の問題とも絡んでまいりまして、臨教審が、一人一人の子供をもっとよく見詰めて、個性を伸ばしていくような、そういう教育をやるべきだ、とり、わけ中等教育においては多様化などというようなことを用意してやれというような、そういうことにあわせてこの中退問題とかあるいは登校拒否の問題を扱うということが大変重要だと思っております。
しかし、他面それでは初等中等教育に目を向けているばかりでいいかというと、どちらかというと、今までの文教行政がやはり義務教育あるいは初中教育中心に推移したとまでは言い切れないけれども、例えば教育改革の中でも、それは免許法の問題もあったし初任者研修の問題もあったし、先生方とも随分議論したり、やや取っ組み合いに近いこともやらせていただいたり、いろいろなことがこの文教委員会の歴史の中にもありましたけれども、そういう中で、問題意識は持ちつつも高等教育に対する配慮というのがややおろそかになってきたのかなという、そのしわ寄せがいわゆる大学の研究基盤の老朽化、狭隘化、施設がこれではだめだというような議論にもなってきておりますから、初中教育と高等教育、あるいはもちろん生涯学習から含めて、すべてに目を向けていかなくちゃならない。特に学校五日制などというテーマが出てまいりますと、これは初中教育の問題というよりも、むしろ社会教育、生涯学習というふうな側面を強く持つものですから、結局は万般に目を注いでいかなければならないというのが率直な心境です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/5
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006・中西績介
○中西(績)委員 初中教育なり高等教育、そして万般にということを言われておりますけれども、私はぜひことし鳩山文部大臣にこれだけは実現をしてほしいという一つの例を挙げたいと思います。
それは、所信表明の中の九ページの最後に「学術研究の面においては、地球環境問題など人類共通の課題の解決のために尽力しこということから始まっています。私はこの点を考えますと、地球環境というのは、今や国際的にもあるいは地球的にも人類共通の課題であると同時に、もう一つ加えていただきたいのは人権であります。あるいは平和であります。
特に、人権ということを考えないと、今の南北問題等からいたしましても、環境問題が前に進まないという状況だってあるわけであります。特に人間の尊厳性があり、人の今、暮らしの大切さというものを切り離して考えることはできないと私は思っています。したがって、私たちは現在の社会情勢を考えてみたときに、経済第一主義であり、金さえもうかれば何でもするという、細かくは説明いたしませんけれども、あるいは自衛隊さえ海外に出せば国際貢献ができるという狭い誤った考え方、こうした問題を考えてまいりますと、人類共通の課題をむしろ崩壊させる方向に向けて今の状況はあるとしか言えないような現象が余りにも多過ぎます。したがって、集金力を持つ政治ボスあるいは我々政治家の端くれを含めまして、ロッキード以来深化しつつあるこうした道徳の退廃等については、私は今こそ反省しなくちゃならぬと思う。
同時に、環境面におきましても、国際貢献とあわせましてぜひお考えいただきたいのは、学校教育の中で環境問題を重視する、教科の中にこれを取り入れるという方向は出ておりますけれども、人権問題で今まで我々言ってきたけれども、なかなかこれが解決しておらないということを考えますと、これと全く同じ内容になってくるんじゃないかということを私は感じるわけであります。したがって、ぜひこうした問題について、学校教育の中におきましても最重要課題にしていくということの考え方がおありになるかどうか、この点をお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/6
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007・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 我が国の教育は、当然憲法、教育基本法をもとにして行っているわけですから、人権という、憲法の最大の課題というのでありましょうか、これをきちんと守れるような人間を育てるということが、教育基本法第一条に言う「人格の完成」という言葉の最大の意味内容とも私は考えているわけであります。
先ほど、どんなに便利になっても、人間が心が白けて、あるいはセルフィッシュになっていったらということを申し上げましたけれども、要するに、人の心を大切にする、人の立場をよく考えるというのは、人権ということの第一歩だろうと思っておりまして、そういう意味では、基本的な人権についてきちんと教えていくということは、学校教育全般の大きな課題であると思っておりますし、もちろん社会科においては、日本国憲法というような課題の中で基本的な人権を教えていくということであろうかというふうに思っております。
もちろん、PKOというような事柄につきましては、恐らく先生と私とでは若干の政策的な信条に違いがあろうかとは思っておりますけれども、ただ私は、戦争というのは最大の人権侵害行為、人権破壊行為だと思っておりますから、例えばそういう戦争をなくすというのも、まさに基本的人権の尊重という事柄から説き起こすことができますから、憲法の言う平和主義と基本的人権尊重主義というものは、まさに同一の根っこにあるものではないか、そんなふうに考えます。
ですから、例えば日本国憲法を、ある大手出版社が出しております教科書は、よく覚えておりません、もう二十何年前のことですから。二冊に分かれておりますと、片方が統治の機構、片方は基本的人権というふうな分かれ方をしているわけですね。これは憲法の統治の機構を定めた部分と基本的人権を定めた部分というのは、これは明らかに目的、手段としての関係があるわけですね。基本的人権、人の幸せを守るというために、国会を衆参二つつくったり国会の規則をつくったりということで選挙もやるということでしょうから、そういう意味では、私自身は、基本的な人権の大切さというものは、これは統治の機構を手段化させるぐらいの、統治の機構は基本権を守るための手段である、それぐらいの人権思想を私なりには持っているつもりでございますから、学校教育の中でこれはきちっと対処していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/7
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008・中西績介
○中西(績)委員 先ほども申し上げましたように、人権問題でまだまだ多くの問題が、日本の場合には人権三流国だなどという風評があるように、多くの課題があるわけでありますから、これと同時に、もうけさえすればよろしいという思想を排除しないと、環境問題というのは私は片づかないだろうと思うのですね。やはり人の今、暮らし、こうしたものを最重要視するという、ここから出発をしないとだめだろうと思います。
またこのことは、先ほども大臣が言われましたように、不登校の問題にいたしましても、あるいはいじめの問題にしても、すべてこうしたものがかかわっておるという、こうした内容を考えますと、ぜひことしの、長く長く大臣をやられるわけじゃありませんから、この短期間の間に一つの路線を私はしいてくれということを言いたいわけでおります。もう答弁要りませんけれども、この点ぜひ重要な課題として意にとめておいていただきたいと思います。
そこで、平成四年度予算が今論議されておりますので、この問題について引き続き質問を申し上げたいと思います。
野崎官房長にお聞きしますけれども、一般会計全体に占める教育予算、平成四年度は何%になっておるのか、この点まずお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/8
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009・野崎弘
○野崎政府委員 お答え申し上げます。
一般会計全体に占めます文部省の平成四年度予算は七・三七%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/9
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010・中西績介
○中西(績)委員 これはいつものことでおりますけれども、昨年九月、野崎官房長が概算要求論議をいたしました際に、シーリングが設定されることはやむを得ない、この枠内で努力すると強調いたしまして、五兆三千百九十四億六千六百万という一般会計予算、そしてその占める比率は七・三。ですから、私がこの論議をいたしますと、必ず文部省当局は、交付税なりあるいは赤字問題解消のために返済金があるので、このように低くなるのだということを言いますけれども、実際にこの前、予算折衝をずっと皆さんが続けていく過程の中で、自治大臣が私たちにこう言ったのです。今二千五百億がなければ文部省は破産をするということを言ったんですね。私はそれはもうそのとおりだということをそのときに同意いたしました。ですから、それを乗り越えるためにはということになれば、この枠を突破しないとできないということを意味しています。そうした点でどのようにお考えなのか、予算確保の基本的な姿勢、この点をお聞きしたいと思います。局長で結構ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/10
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011・野崎弘
○野崎政府委員 今御指摘のように、確かに政府全体として厳しい財政事情の中にこのシーリング制度が設けられておるわけでございまして、私どもといたしましても、さはさりながら、その中で最大限の努力をしていかなければいけないということで、この平成四年度予算、今一般会計全体との比率で七・三七%ということをお答えいたしましたが、平成三年度ではこれが七・一九%ということでございます。
そういうようなことで、全体の比率も平成四年度は高くできた。一般会計が二・七%の増のところを文部省所管予算が五・二一%というようなことで、増加率も大変高い水準を確保できたのではないか。また人件費、物件費の推移につきましても、物件費の割合を相当高めることもできた。こういうようなことで、私どもといたしましては、シーリングの問題という、ことは確かにあるわけでございますけれども、その中で人件費、国と地方の割合、そういうものも考えながら最大限の努力をしていきたい、このように思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/11
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012・中西績介
○中西(績)委員 そこで大臣にお聞きしますけれども、予算確保の基本姿勢というのが最も重要だということは、ここ十年間私は言い続けてきたわけですが、特にシーリング枠がはまってからもうどうすることもできないというのが実態です。したがって、海部元総理、前総理ですね、あるいは文教族と言われる西岡、森各大臣、保利文部大臣、ずっと以前の大垣が全部シーリング枠を突破するように努力をする、あるいは突破しなくちゃならぬということを言い続けてきたのです、この文教委員会の場で。しかし、これは一歩たりとも前進をいたしておりません。このままでは、もう文部省予算は、硬直的あるいは構造的、大変な問題を持っておるわけですし、先ほども言いました、破産宣告を受けてもいいような中身になっておるということを考えますと、シーリング枠矛盾を追及し、そしてシーリング枠、完全に突破できなくとも、別枠にならずとも、款項目一つでも、そこを突破口にして取るという、あるいは破天荒な、みんなが驚くような何か行動を起こしてやるしかもう手がなくなってきているような感じがするわけで、す。したがって、八月までにはぜひこのことを決定をしてかからなくちゃならぬわけでありますが、大臣は、このシーリングはいたし方ない、やむを得ない、こうお考えですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/12
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013・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 私も大蔵官僚の息子でありますから、財政というものの大変さというものは全く理解していないわけではないのです。いわゆるオイルショックが二回日本を襲ったときに、日本の国としてとるべき方策は二つに一つだったんだろう。一つは、財政が悪化しないように経済成長が鈍ってもただただひたすら耐えるという道、もう一つは、財政の機動的な主導によって、いわば借金は残ってしまうけれども、将来どこかで行財政改革をやればいい、それを前提にしてとりあえずは国がうんと支出して景気をあおるという、二つに一つだったと思うわけであります。これは結果として我が国は後者を選んだ。そのために、財政的な赤字が大きく残った、特例公債も大量に発行せざるを得なかったという、そういう状況の中で、行財政改革、そして徹底した厳しい予算の見積もり、シーリングだ、概算要求基準だと、そういう経過をたどってきたわけでありましょう。これが今日までのいきさつであります。
ただ、それが文部省のように極端に人件費の大きい官庁にとってどういう結果をもたらしたかということについては、全く中西先生御指摘のとおりなわけです。歴代文部大臣がいろいろと答弁されたとおりなわけであります。現に過去二回、この国会でも、——一つは前臨時国会であったのかもしれません、一回はこの国会であったかなと記憶しておりますが、宮澤総理自身が予算委員会等の場で、やはり文部省のような人件費の極端に高い官庁ですと、文部大臣が何度も訴えているような、そういう——総理の言葉を私は記憶違いで言うといけないんですが、私なりに受け取ったのは、そういう弊害のようなものが出てきてしまいますねということをおっしゃった。少なくとも一国の総理が二度そういう問題意識を持っておるということを表明されたということは、私は大変大きな前進であるというふうに文部行政の責任者としては大いに喜んでいるところでございます。
正直に申し上げて、今野崎官房長からもいろいろ数字がありましたが、文部省の人件費の割合が高まっていることは、もう先生私以上にお詳しいですから申し上げませんが、国の一般歳出に占める文部省の人件費というのが、これが何と一〇・七二%という割合。つまり文部省というのは、国の一般歳出にはいろんな費目があるわけですが、文部省が支払っているベースアップ、別にベースアップがいかぬと言っているわけじゃありませんが、一%ベースアップすると四百億くらいお金が要るということを何度も御説明をしてきた経緯がありますが、国の一般歳出の中に占める文部省の人件費が一〇%を超えておるという、これはもちろん義務教育国庫負担制度あり、そして多くの大学病院ありというところからきているわけですが、これはやはり極めて特殊な、異常に硬直化しやすい予算の仕組みだということは、先生御理解いただけると思うわけで、だから、これを何の工夫もなしにこれからもやっていったとするならば、私が七年前の政務次官のときに、文部省予算の中での人件費の割合がどうも七〇%になっちゃったらしいよと言ったのが七年前の政務次官のときですが、それから今はもう少なくとも七八%を超えるというような段階になってきていますから、このままいったら何もなくなっちゃうわけですから、これは大いに工夫をしなければならないと思っておりますし、シーリング外しということを私が大声で言うと、会計課長が大蔵省からいじめられるかもしれませんけれども、しかし、私としてはやはり何の工夫もなしにこれから予算を組み続けるわけにはいかないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/13
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014・中西績介
○中西(績)委員 ですから、いたし方ない、やむを得ないということでなくて、そうした枠を少しでも矛盾を解消するために変えていくという、これに向けて努力をするということを、するかせぬだけ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/14
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015・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/15
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016・中西績介
○中西(績)委員 このことは、まさに教育財政そのものが大蔵の財政調整権の中でこのように抑え込まれてしまっているわけですから、ここをどうこれから論議をし、突破をしていくかということになっていくと思うのです。
人件費の多い一つの例が法務省ですね。法務省は事業費がないために、人権を最も重要視しなければならぬ法務省の看守だとか観護教官の住宅、これが昔のままのあのまだ古い古い——だからよほど留置されておる人たちの方が優遇されているという不満が物すごく多いんですよ。そのように日本の今のこうしたシーリング枠というのは、もう平気でそうした矛盾をつくり出している、醸成しているということを指摘しなくちゃならぬと思うのですよ。ですから、この点ひとつぜひ努力をしていただきたいと思います。
そこで、ますます人件費は上昇するわけでありますから、人件費は高まってまいりますが、破産状況をここから拡大をするということは必至でありますから、ぜひこの点も含めて、人件費、法務省にしても我々文部省にいたしましても、この点をどう突破するかということを考えていかなくちゃならぬと思うのです。
そのときに、ちょっとお聞きしますけれども、局長か課長になると思いますが、平成四年度給与改善費の予備費は幾ら組まれていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/16
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017・泊龍雄
○泊政府委員 お答えいたします。
来年度予算における給与改善費としては、一・五%分を各省のいわゆる人件費の中に取り込んでございます。金額にいたしますと五百六十五億円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/17
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018・中西績介
○中西(績)委員 従来はこれが五%なり組まれておったわけですから、こうした問題はやはり予備費としてちゃんと持っておかないと、今度これがまた決められると、アップしますと、財政窮迫、さらに高まってくるわけでありますから、ここら辺大臣も含んで、突破しなくちゃならぬという意味、こうした点にもあるということ。
そこでもう一つ、忘れてはならないのは、人材確保法案制定当時、三〇%割高賃金と言っておりましたけれども、現状は四十七歳から四十八歳で行政と逆転をしてしまっている。なお、手当等についても、実質が六%が今三%程度に落ち込んでしまっている、こういう状況が出ておる。わけでありますけれども、人事院に何かこうした点についての要求をいたしましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/18
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019・遠山敦子
○遠山政府委員 教員の給与改善につきましては、御存じのように、人材確保法に基づきまして、昭和四十八年から五十三年度までに一般職員に比較して優遇されるように計画的改善を図ってきたところでございます。その後の通常の人事院勧告に基づく給与改善におきましても、行政職と同じような改定を図ってきているところでございますが、人事院に対しましては、初任給の引き上げとともに、号俸の増設を図ったり、最高到達給与を引き上げるよう毎年要望しているところでございますが、さらにその改善が図られるように努力してまいりたいと思います。
それから、義務教育等教員特別手当につきましても、人事院に対して毎年度その改善を要望しているところでありまして、今後とも努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/19
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020・中西績介
○中西(績)委員 去年の人事院勧告を見ましても、管理職については手当をうんとふやしましたね。校長だとかこういうところについてふやしているでしょう。要求すれば直ちに手をつけるんですよ。ところが、こういう大多数を占めるところの教職員に対する手だてというものは、熱心にやったと言われますけれども、なかなか実現しない。これは何なのかということをもう一度私は問い直す必要があるんじゃないかと思っています。それは文部省、熱心さが足りなかったのか、あるいはこうした点について最後の締めの段階で手抜きをしておったんじゃないかという感じがするんですよ。こうしたことが今後ないということをぜひ約束してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/20
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021・遠山敦子
○遠山政府委員 先生御存じのように、教育職員の優遇措置の具体的内容は、最終的には人事院の勧告にまっということになってございます。教育職員それから行政職員について人事院勧告に基づく累次の給与改善の結果として逆転現象が生じたということがありましても、これは給与に関します専門的、中立的機関である人事院の判断に基づくところであるわけでございます。私どもとしましては、特に教育助成局としては、教員の待遇改善ということは非常に大きな仕事の柱になってございまして、毎年度人事院に対しましても強い要望を行っているところでございまして、今後ともこの努力は続けてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/21
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022・中西績介
○中西(績)委員 特に大臣の所信表明の四ページにありますように、「教育は人なりと言われるようにこ云々と言うところがあるわけですね。これを言うんだったら、これは最優先でやらなくちゃならぬところです。特に東京あるいは大阪周辺におきましては、公務員の場合、民間の賃金と較差が十数%から三〇%近くあるわけでありますから、その公務員の中でまた逆転をして、かつては三〇%上だということで人確法というものを制定したわけでしょう。我々反対したけれども、この点は強行されていったんですよ、人確法は。ところが今になったら我々指摘をしたとおりになっているんです。この点を私は銘記しなくちゃいかぬと思うのですね。これからしょっちゅう私宅この点についてどうなっておるかをお尋ねいたしますから、ぜひ努力をしてください。
次に、義務教育費国庫負担制度につきましてお聞きします。
「教職員定数の充実を図る」ということがこの五ページに示されております。そこで私はこれをずっと読みまして、全文章を読んで、「教職員定数の充実を図る」ということだけは出ておりますけれども、その後の方に「義務教育教科書無償給与制度を堅持してまいります。」というように、義務教育費国庫負担の中で特に取り上げておるのは、この文章だけになっているのです。教科書無償制度を云々ということがありますけれども、問題になりました事務職員あるいは栄養職員を含んでこうした問題等についてどのようにお考えになっておるのか。これについては特別あれほど重要だったのに今度は触れておらない。その真意は何なのか、お聞かせください。これは局長で結構です。——短くしてください、もう時間がないから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/22
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023・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 できるだけ短く答弁いたしますが、これは正直申し上げて、義務教育教科書の無償給与制度というものは、私は憲法、教育基本法上の大原則をきちんと守っているものと思いますし、また実際何千円かかるという親御さんやその家庭の負担の問題ではなくて、国がどこまで義務教育を重視しているのかの一番いいあらわれと考えておりますがゆえに、将来の租税教育の一環にもなるという観点から、これを重視していきたいと思っているのですが、実際、昨年末の予算折衝においては、先生方にも相当御支援をいただきましたが、また御支援をいただかないとこれがどこかで崩れ去るおそれというか、危機感というか、そういうものが相当あったわけで、今回は一応堅持できたということでここに書かせていただいた。
それで、事務職員、学校栄養職員の方々については、これはもうはっきりと基幹的職員、というよりももう基幹職員と位置づけていいわけでございまして、学校は、いわゆる教師たる教職員という先生方と事務の先生方と栄養の先生方、そうした方みんなで学校の先生集団を形成しておるわけで、子供から見ればみんな同じ愛情を注いでくれる先生たちということでございますので、これが何ページでも書いていいものであれば、当然事務職員、栄養職員が基幹的職員で、今何も国庫負担制度できちんとやりますということを書きたかったんですが、いわば当然のことと思って、もとよりということがどこか行と行の間に隠れている、こういうふうに読み取っていただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/23
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024・中西績介
○中西(績)委員 よくわかりました。この点は今後とも当たり前の問題としてこれから取り組んでいくということをお約束いただきましたので、安心いたしました。
そこで、義務教育費国庫負担の義務教育諸学校教職員定数についてお聞きをいたします。
第五次策は本年度で完了するわけでありますから、本来ならば六次策に移行すべきはずでありますけれども、来年度予算には予算化されておりません。そこで調査費を本年度予算に二千六百七十三万円を計上いたしまして、いろいろ計画をして調査をいたしておるようでありますけれども、項目別で結構ですから、簡単にその調査の中身と、それからいつごろこれが正式に集約をされて来年度へどのように発展していくのか、この点をお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/24
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025・遠山敦子
○遠山政府委員 先生御指摘のように、本年度二千六百七十三万四千円ですか、調査費がついております。これで一体何をやっているのかということでございますが、一つは児童生徒数、それから学級数、教職員数の将来推計、あるいは特殊教育、通級関係の教員の配置等を含めました実態調査を実施いたしております。
少し敷衍して申しますと、現在全小中学校に関しまして、児童生徒数、それから実学級数、標準学級数等を調べておりますし、それから担当授業時数別教職員数を調べております。その他市町村段階においては、平成四年度以降の児童生徒数、標準学級数の推計を調べておりますし、全都道府県に係るものにつきましては、平成四年度以降の教職員の定数の見込み等を調べているわけでございます。それから二番目の柱といたしましては、欧米主要国の学級編制、それから教職員定数の配置の状況等についての調査を実施しているところでございます。さらに三番目の柱といたしまして、研究指定枚方式によります指導形態、それからカリキュラムの多様化、あるいは生徒指導、進路指導体制等についての調査研究を委嘱して実施しているところでございます。
これは全国の小中学校等にかかわる悉皆的な調査でございますので大変な手間がかかっております。今鋭意やっておりますけれども、これのまとめはできるだけ急ぎましても六月いっぱいごろではなかろうかと考えております。順次、その成果を見ながら、将来の方向に向けて検討してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/25
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026・中西績介
○中西(績)委員 内容的には大変な調査のようでございますが、いち早くこの結果をおまとめいただいて、来年へ向けまして、特に概算要求、八月で締め切るわけでありますから、その時期にどう対応するかという基本的な方針を教職員定数について出さなければ、ならぬわけですね。ですから、まとまる段階である程度の中身は大体わかってくるでしょうから、結論的なものは六月といたしましても、その前段からある一定の方向性を持ってやらないと間に合わないのじゃないかということを私は危惧いたします。したがって、この点はぜひ内容的なものを含めて来年へつなぐようにしていただくよう特に要求をしておきたいと思います。
それから次に、平成四年度は教職員定数は緊急対応のみでありまして、新学習指導要領、登校拒否あるいは外国人子女の日本語教育などなど千五十四名のようでありますけれども、その正確な内容はどうなっておるのか。
それからもう一点は、前にも指摘をしたことがございますけれども、一万二千名との格差ですね。正確に何名あって、これに必要な財源はどれくらいなのか。浮いてくる財源ですね、逆に言うなら。それがわかりましたならば、本年度予算が厳しい、かつての公立学校施設整備費と同様な取り扱いになる可能性があるのじゃないか。十年以上にわたりまして五千五百億から二千三百億に削っていったでしょう。これと同様に、財政が非常に厳しいということで、今度ここに焦点を合わせて、毎年千名程度ずつしか対応せずに、三十五名学級というのは遠い将来になっていく可能性があるのじゃないかということを私は危惧いたしますから、そうならないように、先ほど言う来年度へこれをどう発展させていくかということが、来年度並びに再来年度に向けての、将来に向けての問題、義務、制第六次策、三十五人学級、それから高校第五次策、三十五人ないし四十人学級、影響されないように、ぜひ実現をしてほしいと思っていますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/26
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027・遠山敦子
○遠山政府委員 御質問の第一点でございますけれども、定数改善で緊急なものだけに対応したようであるが、その中身はいかんということでございます。
予算積算上といいますか、定数の改善措置を今回とりましたのは一千五十四人の増でございました。これに要する予算額は三十六億円を計上しているところでございますが、その中身は、校長、教諭等にかかわりますものが一千四人でございます。一つが新学習指導要領への対応ということで、個に応じた指導、多様な選択科目への対応、それから適応指導対応ということで、登校拒否等の生徒指導への対応、さらには外国人子女への日本語指導対応、通級学級についての通級指導への対応、同和加配等の中身となってございます。これらはほぼ同数のものでございます。そのほかに、養護教員の増ということで二十五人、それから学校栄養職員の増二十五人ということで、合わせて一千五十四人の増になっているわけでございます。
それから、次の御質問は、来年度におきます教職員定数の自然減の話でございましたけれども、予算案では自然減は一万一千七百人と見込んでいるところでございまして、先ほどの定数充実の中身一千五十四人の差し引きで一万人強の城となるわけでございます。これを予算額に換算いたしますと約三百六十五億でございます。ただ、御存じのように、給与改定分あるいは給与改善分の先ほどの先取りの分を加えますと、いろいろ追加費用等の措置をいたしましても、差し引きトータルでは九百四十八億円の増となっているところでございます。
今後どのように対応していくのかということでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、実態調査の結果を待って、義務教育の水準の維持向上という角度から、全体の財政状況も勘案いたしながら、私どもとしては慎重に検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/27
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028・中西績介
○中西(績)委員 わかりましたが、特に、私が最後に申し上げましたように、公立学校施設整備費と同じような状況に持っていかないように、これは必ず、先ほど言いましたように、九百四十八億ですか、この程度のものを毎年ここでうまく取り入れて、他に分配をするというようなことにならぬようにしていかぬと、三十五人学級あるいは四十人学級は実現できぬわけですから、この点だけは特にくぎを刺しておきたい。
次でありますけれども、時間がもうなくなってしまいましたので、私学問題を一つお聞きします。
世界一高い学費、もう限界まで来ておるわけですね。これは皆さんも御承知のとおりだと思いますよへそれで大学進学率が高くなればなるほど豊かさが実感できない最大の原因になってくるわけですね。ですから、昨年度一〇%シーリング、そのために、当時部長が答えましたのは、大学と高等学校でマイナスの三百三十億、したがって予算折衝では四百億以上の上積みをしないと増枠にならないという結果に陥っている、だから大変努力をしたんだということを認識してほしいということを我々にも言うわけでありますけれども、そうなればなるほど、このシーリング枠ということがまた大きな足かせになっておる、私はこう言わざるを得ないわけですね。ですから、この点を何としても荒療治をする必要があるんじゃないが、私はこう思います。したがって、一番最後に大臣に、全般的なものとあわせまして、特にこの点の決意なりなんなりをお願いしたいと思います。これは一番最後で結構ですから。
その前にもう一つ、大学の特別補助金三百四十三億になっていますが、毎年折衝の過程の中で上積みをされた分だけが大学の特別補助金に加えられまして、今こういう額になってきておるようであります。したがって、九項目中二項目は大規模校、残りの七項目は小規模あるいは短大を重視しておると言いますけれども、この点についての資料を全面的に公開をしてほしいと思います。ぜひこの点は要請をしておきます。
そこでもう一つ、時間がもうちょっとありますからお聞かせ願いますが、「高等教育の充実と改革を不断に推進する」ということが大臣の表明の中に含まれておりますけれども、後日また国立学校設置法及び国立学校特別会計法の一部を改正する法律案が論議されますので、ここでまた具体的な内容等については論議をしたいと思いますが、その前に一つだけ聞いておきたいのは、井上前文部大臣が、概算要求のときに討論をした際に、科学研究費補助金を六百五十一億、六十二億増、しかしこれは予算では六百四十六億、五十七億増、それから国立学校施設の教育研究環境特別重点整備費、これにつきましては特別施設整備として挙げられておりますけれども、百五十億と言っておりましたが、これは今回の場合二百億になっていますね。このことはある程度評価するといたしましても、いずれにしても、これは別枠から生み出した金額じゃないということですね。ですから、この点、先ほどの私学の問題と、そしてこのように努力はした、しかし結果的には、義務制小学校の三十人あるいは三十五人学級、そういうところはある程度抑えて、義務制のところで余った分をここに持ってきたとしか思えぬような結果になっておるわけです。したがって、大臣、そうした点についての決意をぜひお願いしたいと思います。
それで、その前に、芸術文化基金があるいはスポーツ基金が、子供の権利条約批准がどうなっておるか、この点だけ簡単に。担当者からお聞かせ願って、大臣の決意をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/28
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029・吉田茂
○吉田(茂)政府委員 芸術文化基金につきましては、出資金五百億、と同時に、民間からの払い込み金が二月末現在で九十五億三千万円、合わせて五百九十五億三千万円ということで今運用をいたしております。平成三年度につきましては、七百九十九件を採択いたしまして、三十二億円の助成を本年度既に決定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/29
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030・逸見博昌
○逸見政府委員 スポーツ振興基金につきましては、政府出資額が二百五十億円でございます。そのほかに広く民間からも寄附を募るということで鋭意今募金をしておるところでございますが、現在五十一社から四十一億円集まっておるという状況でございす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/30
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031・坂元弘直
○坂元政府委員 児童の権利条約につきましては、法制局を中心としまして、外務省、私ども関係各省いろいろ詰めてまいりまして、相当煮詰まった段階でございます。政府としましてはできるだけ早い段階に国会の御審議を仰ぐということで現在作業を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/31
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032・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 教育とか文化、スポーツ、学術、芸術、これらが、教育は金なりということではないですが、しかしお金がないと教育も文化もスポーツもなかなかうまくいかないという実態を考えております。そういう中で、中西先生が今御指摘のとおり、例えば児童生徒減が教育条件の改善に回らないで別の方に持っていかれるというようなことがあっては当然いけないわけだし、かつて五千八百億だか五千九百億だか正確な数字はわかりませんが、公立文教があれだけ金額があったものが、学校も随分建てかえてきたじゃないか、新しくつくってきたからいいじゃないかということで、平成三年度の予算は二千二百八十八億というようなことになっていますね。ですから、こういうような形で、とにかく予算が厳しいためにいろいろなものがどんどん食われていくというような状況から早く脱しなければならないし、先生おっしゃったとおりに、きちっとやらなければならないと思っております。
私学助成については、いつも申し上げておりますように、これは額の問題ではありませんで、いわば私学振興助成法制定以降の経常経費に対する助成割合、大学の問題をとらえてみても、これが二九・五%、三割までいくかというところまで到達しながら、現在は多分二二%台だろう。平成二年度の数字で一四・一%ぐらいだったとするならば、額は少しふえてますけれども、分母がうんと大きくなってますから二二%台だろうということを考えますと、これも何の工夫もしないでこのまま予算を組み続けていけば、日本の文部行政は私学に対して何もやっていないという批判を浴びることになりましょうし、現実にそれは私学に通うお子さん方の授業料等にはね返ってくると思いますし、何よりも怖いのは、私学の教育、研究条件が悪化をするということでございますので、一生懸命私学振興のために努力をしてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/32
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033・中西績介
○中西(績)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/33
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034・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまです。
山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/34
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035・山原健二郎
○山原委員 けさから問題になっております教育予算のシーリング枠包外せということは、恐らくもう各党一致した見解になっておると思いますし、また文部大臣の見解もそういう形で表明されております。私は、最初に大学の研究、教育の財政上の危機的な状態について意見を申し上げて、大臣の見解を伺いたいと思っております。
これは今まで本委員会でもしばしば問題として取り上げられておりますし、また私どもも昨年幾つかの大学を実態を見せていただきました。例えば節約のため飼育瓶のかわりに牛乳瓶で実験をしておる姿、また消防法違反を覚悟で廊下で実験をしたりあるいは標本を保存している実態、また図書館も雨漏りがし、また図書にビニールシートをかぶせるなど、実に深刻な実態を見ることができました。今大学では、教育研究費が足りなくてまともな研究ができがたい、研究室も狭く建物も古い、設備も貧困である、若手研究者も研究室に残らず企業に出ていく、こういう事態が起こっております。また、昨年も申し上げましたけれども、大阪大学ではあのような事故が発生するという事態ですね。このまま放置すれば、日本の大学の学術研究は深刻な後退を余儀なくされ、ひいては社会発展の基盤、経済発展の基盤を失いかねないというのが今の実態であろうと思います。
例えば、経団連なども、こうした事態について、国は将来に対する備えを怠っている、科学技術立国を標榜する我が国の足元が今崩れ始めている、こういう厳しい危機感を表明しております。また国立大学協会の第二中間報告では、財政緊縮を背景として一九八二年、すなわち十年前に始まった財政支出ゼロ、いわゆるマイナスシーリングによるものであると指摘をしております。そして日本学術会議会長、大学審議会会長、日本私立大学連盟会長ら大学財政懇談会の八氏による要望、そして経団連の要望など一様に行政改革による高等教育予算に対するシーリング枠の適用によって環境の悪化が生じたと指摘をいたしております。先ほど大臣おっしゃいましたけれども、宮澤総理も予算委員会におきまして、我が党の吉井議員に対しまして、シーリングの一番大きなデメリットが文教関係に出ていると述べております。そうであるなら、今後高等教育予算、文教予算についてはシーリングの枠外とすることを強く求めていくべきでありますが、この点について、最初に大臣の御見解を伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/35
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036・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 山原先生おっしゃることは基本的にすべて私の認識しておるところと同じでございまして、深く共感を覚えると同時に、私どもがやらなければならない仕事の厳しさと大きさを改めて認識させられる思いでございます。
正直申し上げて、シーリングの問題というものは、当然文教行政全般にわたることになるわけでありまして、先生は特に今高等教育のお話をされましたけれども、先ほどからの中西績介先生との応答でも御理解いただけますように、いわゆる初等中等教育関係、義務教育、教育環境、教育条件の改善の問題、そして先生御指摘の大学の教育、研究条件の問題、これすべてにわたっていく問題でございまして、これを放置をしていくということがどういう結果を生むかをよく理解しているだけに喫緊の大課題だととらえていかなければならないと思っております。
とりわけ、日本における大学というものは一体何であるかという議論がややおくれてスタートをいたしましたがゆえに、本格的な議論は、当然大学審議会ができて以来、臨教審がユニバーシティーカウンシル構想というものを出して、それが今の大学審議会という形に実を結んでいると私は思うわけです。今まで大学とは一体何ぞや、大学とはどうあるべきかという議論がなおざりにされてきたという事実も、また私どもは直視しなければならないのだろうか。今までどちらかというと初中教育についての議論の方が先行したがために、大学は数をふやせばいい、進学率を高めればいい、まあ質より重みたいな観点で、戦後の荒廃から立ち直っていく過程で、我が国の高等教育が見られていたということもまた事実であろうと思いますが、ここへ来て先生御指摘のようなさまざまな問題が噴き出しておりますので、大学とは何ぞやという議論を深めると同時に、大学あるいは大学院における研究基盤の整備あるいは老朽化、狭隘化問題の解決、そうしたことをきちんと処理をして、その結果として国際的にも貢献ができる、基礎科学ただ乗り論のようなものが払拭できる、そういう高等教育を目指していかなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/36
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037・山原健二郎
○山原委員 基礎の部分については、やはり認識は一緒だと思います。
ここに、大臣がおっしゃった「私学時代」、これを持ってきておるわけですけれども、その中で文教予算についておっしゃっておりますね。「今までと同じような予算編成を続けておったら、文部省が破産しますよ。日本の教育行政が破綻をするわけですよ。これを防ぐためにはどうすればいいかと言えば、当然教育という人づくりの予算は、一般のシーリングというのか、概算要求基準をかけない。」こうおっしゃっているわけですね。また「えさを与えられないタコが自分の足を食っていく。こういう方式だから、だんだん足がなくなって歩けなくなる。平成五年度予算から抜本的な改善を求めなければいかんですね。」こうおっしゃっている。私は、このことは大変重要な問題だと思いますし、そういう意味で、このシーリング枠の撤廃ということについてはほぼ一致した見解になっておると思います。ただ、文部大臣といえどもいつまでも大臣のいすにおられるわけではありませんし、他の仕事にもつかれるわけですね。こうして煮詰まった論議ができ、認識がほぼ一致したら、また大臣がかわっていって、また次に新たな認識の問題を話し合わなければならぬということを繰り返してきているんですけれども、今の情勢はもうそういう情勢ではなくて、やはり何といいましょうか、この絶好の時期に、行動を起こすというか、そういう意味でどこを突破していくかということについて話し合う必要があると思うわけでございます。本当にそういう意味で今がその大事な時期ではなかろうかと思うんです。
もう一つの問題は、さまざまな団体が提言しておりますように、先進国並みの高等教育予算を組む、とりわけ公費負担を先進国並みにすべきだという発言、提言が非常に多いんですね。この点については、大臣はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/37
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038・前畑安宏
○前畑政府委員 確かに公財政支出の教育費の対国民所得比率ということで見ますと、高等教育につきましては、日本が〇・八%、アメリカが一・五%、イギリスが一・六%、西ドイツが一・七%、こういう状況でございまして、若干見劣りはするわけでありますが、ただそれぞれの国に、おける高等教育と初等中等教育に対する公財政支出の配分のあり方という問題もあろうかと思います。公財政支出の学校教育費全体でいいますと、日本は五・二、アメリカが六・一%、イギリス六・二、西ドイツ五・三ということで、公財政支出の学校教育費全体を見ますと、それほど遜色がないところにありますが、それも当該の国で高等教育と初等中等教育にどのように公財政支出の教育費を配分するかという問題、さらにはそれぞれの国の地方税と国税の配分のあり方等々複雑に関連する問題があろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/38
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039・山原健二郎
○山原委員 先進国並みにすべきだという点ですね。高等教育に対する公財政支出を対GNP比で比較しますと、旧西ドイツが一・三四%、アメリカ、イギリスがそれぞれ一・二%。ところが日本の場合は学費あるいは病院収入を除いて計算をするとわずか〇・四九%。だから日本は基礎研究に公正な分担をすることなく、ただ乗り者であり続けてきたという国際的な批判が出ておるわけでございます。したがって、日本の教育、研究環境をせめて先進国並み、例えばアメリカ、イギリス並みに対GNP比一・二%に引き上げるとしますと約二兆円です。そういう意味では、世界第二の経済大国と言っている日本の責務というのは、この問題でも非常に大きく鮮明に、国際的に浮かび上がっておると言わなければならぬと思います。これを例えば五カ年計画で達成をするというふうに、何らかの足を踏み出さないと、幾ら認識が一致しても前に進まないわけです。やはり五カ年計画なら五カ年計画を立てて、これを改善していくということを幾らここで言い合っても前へ進まないというのが今の実情ではないかと思います。
具体的に申し上げますと、例えば老朽建物の解消問題については既に法案が出ておりますから、その法案審議の際に申し上げたいと思いますが、研究費の不足、またこの増額は大多数の教官が要求していますね。それから大学の基幹的教育、研究の経費である校費の増額に至っては、単価でわずか下一%、旅費に至っては〇%。これではやりたい研究もできないというのが大学関係者の意見であり、また実態だと思います。せめて校費、旅費、科学研究費補助金についても要望どおり倍増すべきではないかと思うのです。これは宮澤総理が議長になっている科学技術会議の十八号答申でも、政府の研究開発投資を早急に倍増するように求めると述べているのでございまして、この点での倍増を考える必要はないのかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/39
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040・長谷川善一
○長谷川政府委員 お答え申し上げます。
ただいま科学技術会議の第十八号答申のお話がございましたけれども、できるだけ早期に国の研究開発投資を倍増するようにという科学技術会議の指摘でございます。そういう御指摘以外にも、各方面の御指摘、先生もいろいろお触れになりましたけれども、近年そのような御指摘を多々いただいておるわけでございます。
科学研究費につきましては、現在御審議願っております平成四年度の予算案におきましては、御存じのとおり、例年の倍近く、五十七億円増の六百四十六億を計上いたしております。これは学術会議を初めといたしまして、もう数年前から倍増ということの非常に強い要求がございます。文部省といたしましては、この倍増というのを一つの目標といたしておりまして、できるだけ早期にそれを達成いたしたい、今後とも強く努力いたしたいと考えております。
学術関係全般の振興方策につきましては、一昨年の十二月に文部大臣から学術審議会に諮問がなされておりまして、現在いろいろな計画につきましても鋭意御検討をいただいておるわけでございまして、本年の夏には御答申がいただけるというようなことを期待いたしております。そういった学術審議会の答申なども参考にしながら、なお一層基礎研究の振興ということに取り組んでいく所存ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/40
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041・山原健二郎
○山原委員 この科研費、今度五十七億の増ということで、この努力に対してこれを全く評価しないなどということではありませんけれども、それでも六百四十六億円ですね。これは日本学術会議なども倍増を要求しておりますけれども、科研費の総額と大学の校費総額を足しましても日立一社の研究開発費に届かないというのが実態なんですね。だから大学財政懇談会が要望しているように、計画的に増額をさせていく、年次計画を定めて倍増を図っていく、そのための計画をつくる必要があるのではないかと思いますが、この点は全くお考えになっていないのかどうか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/41
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042・長谷川善一
○長谷川政府委員 お答え申し上げます。
倍増の計画というのは、何年次に幾ら、何年次に幾らというようなものであるかと思うわけでございますけれども、学術全体の振興策の一環ということで科学研究費を考えておりまして、現在の財政状況、そういったものを踏まえまして、文部省全体の予算の中で特に重点を置いて今後とも考えていきたいと思っております。全体的な計画の中で科学研究費をどういうぐあいに扱うかということにつきましても、現在審議会で御討議いただいておるところでございます。
〔委員長退席、真鍋委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/42
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043・山原健二郎
○山原委員 これは私学助成の場合も、先ほど大臣答弁の中で申しておられましたけれども、経常費の二分の一というのは、国会の附帯決議で、これは満場一致で参議院で可決しているわけですね。ところが二五%から先ほどお話のように一三%という事態です。これは全くもうこのままではどうにもならないわけでございまして、そういう意味では将来の社会発展の基盤を失うという重要な問題だと思います。だから全国の大学関係者のみならず各種団体から切実な声が上がっているわけです。
私は、この点について、時間がこれ以上ありませんけれども、私学助成などにいたしましても、これはもう八月の概算要求時期をまた迎えるわけでありますけれども、この文教委員会は、今までこういう重大な問題、しかも各党がほぼ一致できる問題については、時には小委員会を設置しまして、そして専門的に検討しまして改善をしていったという経験を幾つか持っているわけですね。例えば四十人学級の問題もその一つでありました。そういう点で、この委員会で各議員がこの問題てほぼ一致した見解で質問戦を展開されておるわけですから、これは小委員会でもつくってやらないと、このままでは前に進まない。財政上の問題を言われると一発でそこで議論がとまってしまうということになりかねないわけです。むしろ小委員会をつくるという方向、あるいはまたこの委員会で、文教予算についてはシーリング枠を外せというぐらいの決議をして、政府、大蔵省に対しても当たる必要があるのじゃないか。むしろそれは、国民的な運動を展開する必要もありますし、またその共感を得られる問題だと思うわけでございます。
委員長、かわったばかりで申しわけありませんけれども、この二つの提案をしたいのですが、委員長、あるいは理事会を開くなどして検討していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/43
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044・真鍋光広
○真鍋委員長代理 山原委員に申し上げます。後刻理事会にお諮りいたしたいと思います。よろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/44
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045・山原健二郎
○山原委員 次に、大変今深刻な先生の不足、教室に先生がいないという問題が起こっております。
私の方も少し実態をいろいろな方面から聞かせていただいたのですが、例を申し上げますと、教室に先生がいない、九十三日もおくれて配置された、一週間や十日はざらだという例が出ております。これは島根県。私の県などもそうですけれども、幾つかの県にその実例がありまして、その間とうするかというと、校長、教頭、教務主任、養護の先生などがクラスに入って自習にならないようにしたり、近くの学校から応援してもらう、こういう実態が今起こっております。また埼玉の例ですけれども、約二八%の学校で代替教員の未配置が発生する、これは朝日新聞の埼玉版。「先生不足、補充に四苦八苦」というような記事がマスコミにも出ておるわけでございます。苦心惨たんして配置されましても、そこにまたさまざまな問題が出ておりまして、例えば免許外や無免許の人まで臨時免許の乱発をしてこれにかえる。ある職業高校では、国語の免許しか持っていない臨時教員が英語を担当するとか、養護教員の免許で小学校の担任として着任させられた先生、その先生は、養護の免許しか持っていないのだから、着任を断るうと思いましたが、断ればさらに先生がいない状態が続いてしまうことになると考えると断れないのですということも言っておられます。また教師未経験の主婦の方、これは免許を持っているとなれば、経験者はもちろん未経験者まで依頼をし、ある主婦の場合は、中学校の免許しか持っていないので断ったら、子供のお守りをしてもらえばいいのでと言われ、あいた口がふさがらない気持ちだったけれども、それでも出なければならない。それから学生も教壇に立たされる。四年生であれば二種免許分の単位は取っているので、二種の教員免許を持っていると解釈して着任させる。あるいは産休に入る予定の人がもう辛抱して泣く泣く私が出ますといって教壇に立つ。また八十二歳になる経験者が講師に依頼をされて教壇に立つというような例。それから校長、教頭の本務が手につかない状態も出ておりまして、宮城県のある小学校では、音楽の代替教員を探すのに校長が二百人以上の人に依頼したが、それでも見つからなかったというようなことです。日本教育新聞には、教育委員会はダイレクトメールや広告で必死の人探しをしているというような記事も出ておりますが、こういう実態については、文部省はお調べになっているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/45
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046・遠山敦子
○遠山政府委員 今先生からるる教員の配置の問題につきましてお話がございました。幾つかの県の臨時的な教員の任用のことについてのかなり特殊な例もお引きになりながらお話しになったかと思うわけでございます。
私どもも、各都道府県の教育委員会におきまして、こういう臨時教員の任用につきましては、非常に努力をしていただいているということは存じております。しかし、必ずしも全体的に不足しているという状況にあるとは承知していないところでございます。特に先ほどお話がございました県などについても調べてみましたけれども、例えば年度の当初には一部短期間あきが生ずるということはございます。それから年度途中で欠員が生じて、中学校の場合に、理科、数学、技術などで、それに対応する教員を確保するのが難しくて、若干の時間、ごく短期に教育上のあきというものがあるかもしれませんけれども、しかし、それは影響はない期間であるということでございまして、長期にわたるようなことはないというふうに聞いているところでございます。
臨時教員の任用につきましては、各都道府県教育委員会におきまして、実態に対応して適切に行われているところであるというふうに考えておりまして、私どもといたしましては、それが的確に実施されるように、今後ともその状況を見守ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/46
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047・山原健二郎
○山原委員 その実態を正確に把握しておられるなら、その資料をこの委員会へできたら提出していただきたいと思いますし、事実の把握が不十分であれば調査していただきたいと思うのです。というのは、私はこういう資料をいっぱい持っているのです。実際にもう何日も先生がいないという状態で、校長、教頭が走り回っているという事態もあるわけでございますし、この臨時教員の不足の実態というのは、子供の教育権を守るという意味では非常に切実な問題でありますから、そういう意味で早急に対策をとっていただきたいのであります。
そこで、文部大臣も教育の営みの上でかなめの役は教師の存在だとおっしゃっているわけですから、先生がなかなか教壇に立てない、おられない、不足しているという事態は一刻も放置することの許されない問題だと思います。ことしの四月、新学期がまた始まるわけでございますけれども、そのときにこういう事態が起こらないような対策をきちんと立てるべきだと思いますが、これは大臣、どうでしょうか、やるお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/47
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048・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 山原先生が御指摘のような事柄が現実に起こっているとするならばゆゆしきことでございまして、とりわけ教育の機会均等あるいは義務教育の全国一律同一条件できちんと行うということから考えますと、そういう実態は調べられるものがありましたら、さらに調べていかなければならないと思っております。
そこで、我が国の義務教育制度につきましては、私はこれから個性を尊重していくという点あるいは多様化というような方向へ進んでいこうとする点は十二分に努力しなければならないわけでありますけれども、かといって、教育の根幹にこの義務教育制度があるということ、それがきちんと行われてきているということが我が国の今日までの発展の基盤あるいは礎を形成してきたと思うわけでありまして、今後ともその条件は変わらないだろうと思います。
ちょっと余計なことかと思いますが、先般、ある大変有力な財界人の方と話をしておって、その方が私に突然こういうことを言われた。鳩山さん、義務教育ってただなんですかと言うから、ああもちろん、教科書もただですし、公立学校ではいわゆる授業料というのは取りません、授業料というのは全くないですか、入学金もないのですか、いや、ありません、御存じなかったですか、いや、余り詳しくは知らなかったもので、それで義務教育だと小学校や中学校で子供の数が減ったりふえたりするけれども、そうすると、あふれてしまって入れないなんということは起きないのですかと言うから、そういうことが起きないように校舎もつくるわけです、だけど、子供の救ってふえたり減ったりするでしょう、どうするのですか、いや、それにも全部対応できるように校舎も先生方も準備するというのが、いわゆる日本の公教育、義務教育の仕組みなんですよ、こう申し上げたら、はあ大変なことを全国規模でやっているんですねということをおっしゃったわけです。
私、少々びっくりはしましたけれども、案外一般国民の中に、義務教育として文教行政が都道府県、市町村と協力してやってきていることの本当の姿というものを御存じない方だっているんだなということがわかったわけです。でも、そのことは同時に、義務教育を相当な努力をしてきちんとやるためには、もちろんお金もかかっているわけですが、大変な努力が要るということを示しているわけでございまして、ちょっと何か条件が整わない部分があると、先生が御指摘のような、先生がいなくなってしまうというようなことも起こり得るわけでございます。しかし、絶対そういう事態を起こさないということが我が国の義務教育の今日までやってきた最大の誇りでもありますので、御指摘の点については、よく調査できるものがあれば調査をして、そのような事態が決して起きないように、また事態の解消に努めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/48
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049・山原健二郎
○山原委員 ぜひ実態を把握していただきたいと思います。病気になっても代替の先生がなかなか見つからないので休めないとか、産休でも休むのは肩身が狭いとか、労働基準法はそんなことは許してないわけで、産休を申し出た労働者に対しては、使用者は「その者を就業させてはならない。」と労働基準法の六十五条に明記されているところです。
なぜ、この不足という問題が特にこの数年来ふえているかという問題ですけれども、これは、その背景に初任者研修実施に伴う非常勤講師の配置必要数の増大などもあるということは事実でしょう。また最大の原因は、定数内教員までも臨時教員、非常勤講師を配置するなど異常なまでに臨時教員採用を乱発してきたことにあるというふうに考えられます。こういう場当たり的な教育行政の対応が教職への展望を失わせ、近年の教員希望者の大きな減少の要因となっておるとも言われているわけでございます。
そこで、私の調べたところでは、例えば広島、私の県の高知、佐賀、隣の県の香川、京都などの実態を聞いてみますと、定数内臨時教員の採用率は、小中学校で三六%、高校では六〇%という数字が出ているわけです。障害児学校でも五五%と半数を超えているという全く異常な事態と言わなければなりません。定数法で保障されている教員は、学校運営に必要不可欠な構成員であり、正規採用で対応するのが当然のことなのでございます。昨年二月に、私はこの委員会でこの問題を取り上げましたが、地公法第二十二条に基づく臨時的任用は極めて限定された場合にだけ認められるものであって、「緊急の場合」、「臨時の職に関する場合」、「任用候補者名簿がない場合」、いずれも定数で配置が保障された教員の場合に当てはまらないものなんですね、これは。しかも、そうしなければ、さきに紹介したような教育が成り立たないような異常事態の打開はできないわけです。定数内教員の臨時的任用は厳しく制限すべきであって、現状を速やかに改善をしなければならぬと思います。
そこで、お尋ねしたいのですが、正規採用で対応すると、児童生徒急減に伴う教員定数の自然減のため、先生が将来余ってしまう。そうならないように、臨時教員に調整弁の役を果たしてもらおうという考えがあるとするならば、これはまことに重大な問題ですね。自然減によって生ずる教員の余裕を、一クラスの生徒数を減すとか、きめ細かい教育を行うための施策に振り向ければいいのでございまして、そういう意味で、先ほどから問題になっておる三十五人学級の問題、高等学校四十人以下の学級編制、そういったところへ問題を発展さすべきだと思いますが、この点についてどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/49
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050・遠山敦子
○遠山政府委員 先ほど来さまざまな例をお話でございますけれども、教員の採用におきまして期限を限って任用をする必要がある場合が幾つかあるわけでございます。
一つは、病気休暇、休職の補充あるいは長期研修の補充のように一定の期間のみ任用される場合でございますし、また年度途中で事故等によって教員が欠員となった場合で、定数上余裕があっても、選考試験の合格者が残っていないなど、正式採用することが難しい場合等あるわけでございます。
先ほど産休、育休の休暇がとりにくいとかいうようなお話もございましたけれども、育休の取得状況は九三%余でございますし、各都道府県におきましては、そういう状況に対応すべく、極めて努力をしながら適切に対応していただいていると思うわけでございます。
それで、その定数内の臨時教員につきましては、児童生徒数の減少に伴います教員定数の変動への弾力的な対応、あるいは先ほど申しましたように、採用候補者の不足などに対応するために、実情に応じて任用されているものではございます。しかし、自然減に対応するために、その分を見越して臨時教員をなくすというような形で実施されているというふうには考えていないところでございます。
それで、定数の話もございましたけれども、平成三年度は四十人学級を含みます教職員定数改善十二年計画の完成もございまして、各県では相当の定数改善があったという事情もあるわけでございます。その意味で、来年度、平成四年度以降につきましては、その円滑な実施に関しまして影響が出ないよう各都道府県において努力をいただいておるものと思うわけでございます。
定数の改善計画の話につきましては、先ほど申し上げましたけれども、今先生の御指摘のような意味での臨時教員の任用というようなことは、各都道府県において、そういう視点ではなくて、本来臨時教員を必要とする分野において採用が図られているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/50
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051・山原健二郎
○山原委員 この臨時教員の問題は本当に涙ぐましい努力がなされている実態は御承知だと思います。たくさんの本も出ていますし、経験も出ておりますから、定員内の講師として一年間にわたり正規採用の先生と何ら変わらない職務を果たして、クラスの子供からも慕われ、教員仲間からも信頼されている臨時教員はたくさんおいでになるわけです。そうして臨時教員の仕事に追われていると、今度は教員採用試験の準備がおろそかになりやすいわけですね。それでも教育委員会の要請が断れない。来年には正規の先生になりたいと思えば断れない。しかも何年も何年も繰り返し一年ごとに切られて、またつないで一年やっていく。そうしておるうちに教員採用の年齢制限、例えば二十九歳に達すると、もうあとは教師の道を断たれてしまう。何年も努力をして、子供と親しみ、また経験も積み、そして教職に対する熱意も人一倍持ちながら、こういう形でついに教職の道が断たれてしまう、こういうことがあるわけです。私はそういう意味で、この臨時教員の持っておられる熱意、努力、経験、これを全く無にして使い捨ての要員のように扱ってよいものではないと思うのです。その実績を正当に評価して、正規採用を進める対策を早急に立てるべきだと思います。私は、この点については何回かごの場所で取り上げてきましたけれども、ぜひ解決をしてもらいたい問題だと思いますので、文部省としての態度をここでお伺いしておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/51
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052・遠山敦子
○遠山政府委員 先ほど来申しておりますように、臨時教員の採用につきましては、各都道府県におきまして定数に対応する教員の任用を、まさに心血を注いで大事な仕事として取り組んでもらっていると考えております。臨時教員については、一時的な採用であって、その使い捨て的な対応というのが問題であるというお話で、定員内職員への採用というようなことを言及しておられましたけれども、この制度自体がそういう形で使われませんように、地方公務員法の中におきましても、臨時教員を優先的に本採用することにつきましては、「正式任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない。」というふうな規定もあるわけでございます。それらも勘案しながら、しかし臨時教員の方々の学校における役割というのは非常に大きいわけでございます。それら全体を勘案した上で、各都道府県の教育委員会におきまして、任用あるいはその運用につきまして、的確に行われますように、私どもも見守っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/52
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053・山原健二郎
○山原委員 地公法二十二条の問題についてはかって私はやりましたけれども、正規教員と同等の職務を果たしてきた講師の経験を正当に評価することは、地公法の任用の根本基準である能力実証主義に合致し、平等の取り扱いの原則に反するものではないと思っております。これらの点を踏まえて、相当の期間にわたり臨時教員の経験を持つ者の熱意、経験を正当に評価し、正規採用への道を大きく開くべきである、こう思います。これは本当に現場において苦心惨たんをしてやっておられる、さまざまな権利も非常に制限をされて奮闘しておられる先生方に対する文部省の態度として、ぜひ大きな道を開くように要請をしておきたいと思います。
時間の関係で次の問題に移りたいと思います。
次に、学校五日制の問題について申し上げたいと思います。
この問題は国民の間でも賛否両論がありますけれども、しかし賛成、反対両論に共通するものは、学校五日制をゆとりある教育実現につなげる条件を整えることの重要性をどなたも指摘をしております。学校五日制を国民合意のもとに実施する上で、ゆとりある学校教育への転換、地域や家庭で子供たちが生き生きと生活することを保障する条件整備が決定的に重要だと思います。このことを抜きにしてはかえって国民の反発さえ呼びかねないのが実情でございます。一さきの調査研究協力者会議の最終まとめを受けまして、ことしの九月から月一度、第二土曜日を学校休業日とすることを決めたわけでございますけれども、これを実施に移す上での行政の対応について出しておりませんね。このため各自治体でも対応がまちまちになっております。文部省の対応、対策の指針というようなものを出すつもりがあるのか、あるいは責任がある対応を示すべきだと思いますが、この点はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/53
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054・坂元弘直
○坂元政府委員 学校五日制の問題につきましては、本年の九月から、平成四年度の二学期から月一回の導入を、先般大臣の指揮のもとの省議で決めたところでございます。私どもそれに基づきまして現在作業を進めているわけですが、法令上の作業としましては、学校教育法施行規則を改正いたしまして、毎月の第二土曜日を休業日とするという指定を設けるわけでありますが、その学校教育法施行規則の改正通知を出すときに、学校五日制にどう各学校種別あるいは各学校で対応をしていただくかということについては、かなり細かく通知の中に盛りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/54
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055・山原健二郎
○山原委員 この問題を考える上で、教育課程問題が一番大事だと私は思っています。この点で、学習内容をどの子も理解できる基礎的なものに精選してほしいという声が圧倒的です。学校五日制のあるなしにかかわらず、現在でもこれは切実な問題ですね。登校拒否、不登校の問題あるいは中途退学の問題、もう次第にふえているわけですから、これはもう非常に重要な中身になっているわけでございます。
昨年十一月に放送されましたNHKの番組の「義務教育はこれでよいのか」の中で、国立教育研究所の科学研究センター長が、現在の学習指導要領について、「せいぜい、こう言うとまた問題あるけれども、三割くらいわかったらいいんじゃないですか」という発言をいたしております。「こう言うとまた問題あるけどもこと、発言内容が波紋を呼ぶことを承知の上でいわば本音を語っているわけですね。国立教育研究所といえば、文部省設置法施行規則で、教育に関する実際的、基礎的研究調査を行う機関と規定されている文部省の重要な研究機関であり、その科学教育センター長という重責にある人の本音として決して見逃すことのできない言葉だと私は思うのです。
この発言が本音を語ったものだというのは、他の調査結果からも裏づけることができます。例えば長野県の教育委員会が一昨年十二月にまとめた「児童生徒の生活・学習意欲実態調査の概要」を発表しておりますが、「ほとんどの授業がよく理解できる」という子供の割合は、小学校二四・三%、中学校一一・〇%、高校五・一%という結果で、学年が上がるにつれて急減しているのであります。
このように、現在の学習指導要領でさえ多くの子供たちにとって過大な内容となっていることは否定できない事実であると思います。これを文部省はどう認識しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/55
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056・坂元弘直
○坂元政府委員 今先生が挙げました数字につきましては、私はつまびらかじゃございませんけれども、学習指導要領は、御承知のとおり、大変大綱的で簡潔に定められております。その学習指導要領にのっとって教科書が作成されておることは御承知のとおりであります。私どもとしましては、基礎・基本を重視して、それにウエートを置いて学校で教育をしていただきたいというふうにお願いをしているわけでありますけれども、三割しかわからないという、あるいは二四%というような数字も言っておりますが、私どもとしましては、ぜひ学校現場で基礎・基本を繰り返して教えていただきたいというふうに指導しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/56
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057・山原健二郎
○山原委員 新学習指導要領では、さらに低学年から学習内容が過密にされているわけですね。例えば、かつて三年生で教えていた三けたの数を一年生でやるとか、一年生で覚えるべき漢字の数は二百三十二字にまでふえまして、二十年前子供たちの母親が学校へ行っていた世代の百二十七字に比べましてはぼ二倍になる。学校五日制の導入がなくても教育内容の精選が切実に求められていることは、今指摘したとおりですけれども、いわんや、学校五日制を段階的とはいえ実施に移すというなら、教育内容の精選はまさに避けられない課題でございます。この点で、月一回、二回の実施段階なら学習指導要領を見直さずに済まされるという考えは現実を無視したもので、つじつま合わせのための学校現場に矛盾を押しつける結果になるものと思います。新学習指導要領を白紙に戻して、ゆとりある教育の実現を目指し、学校五日制の本来的趣旨に沿って思い切った学習内容の精選をすべきである、私はこのように主張したいのでございます。
これは今坂元局長お話しになりましたけれども、局長もやはり「文教」という教育雑誌で、もう申し上げるまでもありませんけれども、「三回、四回となれば、やはり学習指導要領そのものをもう一度見直さなければ、単なる計算上のつじつま合わせだけでは済まないことになるのではないか。」と発言しておられるわけですね。そうであるならば、これは本当に学校五日制をやるという、国の基本方針として皆さんはやられるわけですから、それに伴う学習指導要領についての検討を加えるのは当然のことじゃないですか。一回、二回ならよいけれども、三回、四回ならば変えるなどというあいまいな態度で日本の教育をやられてはたまったものではない。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/57
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058・坂元弘直
○坂元政府委員 協力者会議のまとめにおきましても、学校五日制につきましては、とにかく段階的に前へ進めたらどうかという提言内答になっております。したがって、私どもとしましても、月一回を始めまして、そしてその月一回の過程の中でいろいろ保護者の方々から、あるいは学校現場の先生方からいろいろな問題点が指摘されると思います。月一回でもいろいろな問題点が指摘されるわけですから、指摘された問題をどうやってクリアしていくかということ、そしてクリアした後に月二回へ進んでいくということになろうかと思います。月一回から二回というのは、相当の期間その二回ぐらいのところで検討を加えていく、いろいろな問題が出てくると思いますので、検討を加えていく必要があろうかと思いますので、一気に三回、四回と進むわけではないわけでございます。
そういう意味で、二回から三回と進む過程の中で学習指導要領の、端的に申し上げますと標準授業時間数でありますが、標準授業時間数を見直すということも検討課題の一つになろうと思います。同時に、この協力者会議のまとめでも指摘されておりますように、仮に教育水準の問題にどうやって対応していくのかということを考えたときには、長期休業日のあり方についても十分検討すべきだという指摘もあるわけでして、私どもとしましては、学習指導要領も検討課題の一つであるけれども、幅広く検討を加えてまいりたいというふうに思っているところでございます。
それから、先ほど学習指導要領の関係で、かつては四、五年で教えていたものを低学年におろしたというふうに言っておりますが、同時に、かつては低学年で教えておったものを上に上げたというものもございます。参考までに御指摘させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/58
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059・山原健二郎
○山原委員 この平日の授業時数に土曜日に休むのを上乗せする、あるいは夏休みなどの長期休暇の削減とか、あるいは短縮授業を何とかするとかいうような、小手先ですよね。短縮授業だって子供たちにとってはどれほどうれしいかわからぬですよ。子供たちは短縮授業のときにどれほど、川へ行って友達と遊び、ここで子供たちは生き生きするんですよ。それを制限するとか、あるいは土曜休業の分をしわ寄せして他の日数へ加えていくなどということになりますと、何のための学校五日制か、学校五日制の哲学がないですよ。学校五日制を何のためにやるのかということが十分論議されていないものですから、教育課程の問題でもそうですし、それから条件整備の問題でも、一句となくわけのわからぬまま学校週五日制だけが先走りをして、中には塾の人たちが喜んでおるというようなことまで新聞に出る状態でしょう。文部省が教育の観点で学校五日制をやるというのならば、それに対する文部省としての教育的観点の方針がなければだめですよ。
だから、もうこれは大変な矛盾ですよね。きょう私はいろいろ世論調査を見ても、子供たちは賛成なんですね、多くの子供たちが。その賛成の理由は、眠りたいとか、友達と遊べるからとか、父親と一緒におれるからとかいうような、非常にさまざまな多彩な子供たちの遊びとかいうものがこの要求の中に出てくるんです。子供たちは生き生きしている。ドイツで週休二日制を労働者が要求したときのスローガンがありますね。「土曜日のパパは僕のもの」、これがドイツの労働者が週休二日制の闘いのときのスローガンです。これはそれだけのものなんです。
そういう意味で、この問題を本当に解決していくためには二つ道があります。その一つは、学習内容の精選、もう一つは、一クラスの児童生徒定数を思い切って削減をするなどきめ細かい学習指導が可能となる学級編制、教職員配置基準の改善、こういうことがやられるならば、これは成功するでしょう。しかし、それをしないで、これだけが先行していくとさまざまな世論の反発を受けることは必至だと思います。
時間がなくなってまいりましたから、障害児の子供さんたちに対するケースについて。
これは東京の立川養護学校の金澤校長がこういうふうに発言しています。学校五日制の試行に取り組んできた学校ですね。
学校という障害児にとっては全員就学によって
保障された最もすばらしい場所を行政の責任で
カットするわけですから、それに替わるすばら
しいメリットを、行政の責任で何とかめどをつ
けていただきたいというのがご父兄の最大の願
いでございます。親としては、いかに考えても
当面は学校ほどいいところはない、安心して子
どもを任せられ、子どもを伸ばし、そして親に
も生きがいを持たせてくれるのは学校である、
という強い信頼感があります。それを、親の立
場からすれば国の行政で一方的にカットされ
る、それでは原則的には困る。しかし、総論とし
ては理解できるので、対応策についてはきめ細
かくお願いしたい。これは実際に試行されておる学校の校長先生の発言でございますから、この声に対して行政は全力を挙げてこたえなければならないと思うわけでございます。
そういう意味で、最後に、一つは文部大臣に、この条件整備をし、また教科の精選をするということについてお考えを伺いたいのと、自治省においでいただいておりますが、障害児の子供たちの休みの日の対策についてどういう見解を持っておられるか、お伺いしたいのです。
〔真鍋委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/59
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060・田村政志
○田村説明員 学校五日制が導入されますと、子供さんたちは、休業日となる土曜日には家庭、それから地域社会で生活することとなるわけでございます。特にその日に保護者が家庭にいない子供さんたちやあるいはある程度施設におられる方については、学校などの施設において遊びやスポーツなどの対応が必要になると考えられるわけでございます。このため、文部省の方からの御要請に基づきまして、私どもの方は、現在審議をお願いしております平成四年度の地方交付税法改正案におきまして、学校の開放、それから指導員の配置などに必要となる経費を盛り込んでいるところでございます。
少し具体的に申しますと、幼稚園、小学校につきましては、各市町村ごとに指導員の配置、学校開放の経費、それから初めて導入されるわけでございますので、研究会の経費などを措置してございます。それから特殊教育諸学校につきましても、各県ごとに指導員の配置などの経費のほかにスクールバスの運行などのための経費を措置しておるところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/60
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061・山原健二郎
○山原委員 この積算上、障害児学校のスクールバス運行数とかいったことはほぼ確定をしておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/61
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062・田村政志
○田村説明員 お答えを申し上げます。
スクールバスにつきましても、標準的な団体で、台数で申しますと十三台ほどでございます。それを七回ほどでございます。九月以降の開始、施行ということになるものですから、それに対する経費等も措置をしてございます。
なお、指導員につきましても措置しておりまして、経費で申しますと、市町村で標準的な市で申しますと百四十九万円ほど、全国で二十三億円。それから県特殊教育諸学校の関係で申しますと、標準的な県で六百六十七万円、全国で約五億円の経費を算入しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/62
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063・山原健二郎
○山原委員 最後に、学校週五日制をやる上に当たりまして、私が申し上げた、子供たちに本当にゆとりのある教育ができるかという点の問題ですね。それから条件整備の問題について文部大臣の御見解を最後に伺いたいのですが、あとちょっと残っておりますから、最後に子供の権利条約のことについて文部省の見解を伺っておきたいのです。
もう既に百八国家が批准をしておるわけでございます。ところが日本の場合はまだそういうふうになっておりませんし、正式訳、これがいつできるのかということが一つです。そしてこの批准を大体どういう目安を置いて批准されようとしておるのか、これを伺っておきたいのであります。
この子供の権利条約というのは、本当にすばらしいものです。正式訳はまだ出ていないとはいっても、第三条、これはこの条約の精神を書いておりますけれども、子供に関するすべての決定においては、子供の「最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。」子供が一番だ、子供の利益が最善のものとして考慮されなければならないという、これはもう本当にすばらしい、ものですね。ところが、これがいまだに正式訳がなされていない、あるいは国民にも余り知らされていない。しかも、既に百八カ国が批准をしておる中で、日本は一体どうしているのかということが必ず出てくるわけでございますが、これについての見解と見通しをお伺いをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/63
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064・長谷川善一
○長谷川政府委員 お答え申し上げます。
児童の権利条約の批准につきましては、現在政府部内におきまして、内容、それから訳文につきまして、考え方の確定を目指して鋭意作業を進めておるところでございます。今国会に上程するということを目途に作業が進められておりまして、現段階におきまして正式な訳をいつ公表するかということは、申し上げることはできないわけでございます。
この権利条約につきましては、広く国際的な協力によりまして、世界じゅうの児童の権利を保障するということを目指した条約であると認識いたしておりまして、文部省といたしましても、批准に向けまして最大限の努力をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/64
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065・伊藤公介
○伊藤委員長 時間が来ましたから、簡潔に答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/65
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066・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 学校週五日制のことは、地域・家庭二日制と言いかえることもできましょう。そうした中で子供さんたちがゆとりを持つことも重要でありますし、自然体験、社会体験、生活体験、奉仕体験あるいは家庭で両親あるいは兄弟といろいろな共通の事柄に取り組んだり、あるいは会話を交わすという中で、子供の望ましい人間形成あるいは個性の伸長というものを図っていくべきという、そういった意味では学校週五日制には立派な哲学があるわけであります。
目的とするものあるいは哲学というものはあるのですが、それを具体的に実施していくためにはさまざまな条件が必要でございまして、またやってみて初めて気づく条件というものも、既に六十八校の実験校ではやっていただいてはおりますけれども、これからやってみて出てくる新たな課題、あるいは新たに国民全体から寄せられるいろいろな声というものもあろうかと思いますので、そのような形があるために段階的な導入、実施というようなやり方を考えているところでございます。ですから、まだ未知の部分もあるがゆえに段階的実施であるというふうにお考えをいただければありがたいと思っております。
学習指導要領関連については、先ほど政府委員の方からお答えを申し上げたとおりでございまして、教える内容を今後もっと精選すべしというような声もあることはよく存じておりますけれども、学習指導要領というのも一つのいわば法的安定性を要求される性質のものだろう。二年、三年ごとにくるくる変わったら、一学年進行で到達しないうちにまた新しい学習指導要領というふうにはいかない性質のものでございますので、ある程度の継続性、安定性も学習指導要領には求められていると思いますので、大体八、九年から十年に一度というような形になっております。また、だからといって学習指導要領というのは、絶対に内容を変えてはいけない不磨の大典というわけではありませんで、常に新しい要素を加えて、時代をにらんでよりよきものに変えていく責務がありますので、文部省としてはそのような観点で努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/66
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067・山原健二郎
○山原委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/67
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068・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
松前仰君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/68
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069・松前仰
○松前委員 大変時間が切迫しておりますので、私も十分な質疑ができないかもしれないけれども、初めて文教委員になりましたので、いろいろな角度から質問させていただきたい。そして、私も教育を語る資格なんというのはないと自分で思っておりますが、教育をする立場ではなくて受ける立場という方が私にとってはいろいろな問題があるということで、きょうの質問は全くそういう立場でやってみたいと思っております。
それでもう一つ、今の御質問とまたちょっと違ったことになるかもしれないのは、私が私学をずっと、かなり長い間私学で勉強してきた。たった二年間しか私は公立へ行きませんでした。全部幼稚園から大学までは私学、そして今現在も私学に多少関係している。こんなふうでございますから、ちょっと観点が違っているかもしれませんが、質問に対する大臣のいろいろな御所見をいただければ幸いと思います。
そこで、まず私は現代の教育についての問題点、一つは画一性というようなことに絞って質問させていただこうと思っております。それともう一つ、高等教育の教育機会、そういう問題。もう一つは科学技術教育の問題。もう一つは、今言われておりますサッカーくじ。その四つについて時間をうまく配分しながらやらしていただきたいと思います。
その前にちょっとお聞きしたいと思いますけれども、先ほど大臣の方から御答弁ございました義務教育の話ですけれども、義務教育、授業料は全部ただですよとおっしゃった。本当ですか、それ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/69
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070・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 いわゆる公立学校においてということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/70
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071・松前仰
○松前委員 そういうことをしっかり言っていただかないと、私どもはただでやっているわけではございませんで、それだけの私学補助をいただけるなら結構ですけれども、一生懸命努力して公立の皆さんと同じょうに勉強したい、そういうことでやっておりますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
そこで、今の教育なんですけれども、ついこの間大学の入学試験がほぼ終わったということでございますが、そこでたぐさんの人が泣いた。結局、大学の入学試験の競争、大変な競争であります。近年また物すごくなってきた。子供の数がふえたと簡単に片づけてしまえばそれまでですけれども、非常に競争が激化したということがございます。私は、これは何といいますか、異常、余りいいことではないんじゃないかという感じがするわけなんでございます。
そこで、やはりたくさんの方々が高等教育を受けたいといって、それはいろんな目的が、なくて受けるなどと言って批判される人もいるけれども、しかし、高等教育をやはり受けたいということで受験をされても、はねられてしまう。そのはねられてしまうということによって非常に教育がゆがめられてきているという点も見逃すわけにはいかない。ですから、この競争というもの、受験競争、これが一体どういうところから発生したんだということを突きとめて、そして、その辺から一つ一つ改善していかないと、毎年いろいろ受験については改善をしようということで努力をなさっていらっしゃることはよくわかります。共通一次とかそういうものを採用されていることはよくわかります。しかし、それが結果的に受験競争を除くことができないということ、ある程度の競争は必要でしょうけれども、極端な、あるところは八十倍なんという競争率、こんなのはくじ引いた方がいいぐらいのところでございますけれども、そういうようなところになってしまうと、これは本当に受けたい教育が受けられなくなってしまうじゃないかというような問題がある。
私は、競争ということ、この世の中が全部競争原理になっている、そういうふうになってきている。なっているとは言いません、なってきているということ。この辺に大きな問題があるんじゃないかと思うのです。その辺の競争原理が何で起こってきたかということになれば、これは社会全体が大きな問題をはらんでいるんじゃないか。社会全体が競争中心の社会になってきているというように私は思うのですね。こういう中でもって学生が大学受験のときに大変苦労をする。ところが義務教育、高等学校教育では、たしかそういう方向では余り教わってこなかった。人格教育とかそういう方向ですね。基礎教育、そういうことでやってきた。それにもかかわらず、大学へ来るとそういう形。そして卒業すると社会に出て、これこそ大変な競争が行われ、そして貿易摩擦にまで発展してしまうということですから、これは教育そのものといいますか、教育そのものだけの問題ではない、大きな社会的な問題がある。この辺を改善しなきゃいけないと私はいつも思っておるけれども、なかなかそれがうまくいかない。政治の問題になってくるということなので、そういう認識を鳩山文部大臣はお持ちなのかどうか、そしてそれをどういうふうにお考えになっているかということをちょっとお聞きしたいと思っております。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/71
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072・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 先生のおっしゃること、基本的に同じような考え方を私も持っております。この人類の世の中というもの、あるいは自由社会という中で、一定の競争原理が働くことは必要なことも多いでありましょう。とりわけ、切磋琢磨、いい意味でのライバルというようなことで、お互いが競争することが進歩につながるという一面は当然否定すべくもないわけでありますけれども、行き過ぎた競争というものがいろいろな摩擦を生む。それは日米摩擦もそういう要素があるかどうか、私はよく検証してみたことがありませんが、人間関係の摩擦を生んだり、あるいは家庭内の摩擦を生んだり、いろいろなことが起きていくわけでありましょう。登校拒否とかあるいは高校中退十二万三千人というような、学業不適応を中心としたそのような悲しい現象も、そうした事柄と残念ながら無縁ではないだろうと思っております。
ところが、いわゆる入試というような最大の競争を議論していきますと、話はだんだん上へ上へと上っていかなければならないわけであります。そこにあるのは学歴偏重社会というのでありましょうか、銘柄ですべてを判断しようとする。だから、例えば教育等について言えば、総論的に言えば、どの日本人もみんな、入試なんていうものはとか、偏差値というのはおかしいとかと言いますが、総論賛成で各論は反対。しかしうちの子供だけは少しでも、いわゆる評判の高いというか偏差値が高いと言われている就職しやすい大学に入ってもらいたいというような、そういう現象というのがあるだろう。そうすると、親の意識、社会全体の意識、あるいはそうした学生さんを採用する企業の意識、そういうものまで全部変えていくというような大変大きな作業が必要であることは間違いありませんし、私が政務次官であったころに、松永文部大臣が当時の経済界に学歴偏重社会打破のためのお願いをいたしておるというのが私の記憶の中に残っております。とりわけ日本人は、自分の幸せとか喜びをダイレクトに求めることは、まだ余り得意でないようでございまして、肩書とか名誉とか、あるいはそういう銘柄のようなものを非常に好むというところに、私は、日本人独特のものというのか、まだ本当の先進国とは言えないような部分をかいま見ることがあるわけであります。
全く余談でございますが、私は、おしゃれというものに全く縁のない人間でございまして、いつもいいかげんなネクタイを締めておったら、女房が、もう今から五、六年前でしょうか、あなたもたまには有名ブランドのネクタイを締めないと、もう議員を十年近くやっているのに余り変なのばかりではというので、デパートから幾つか買ってきまして、エルメスという、今調べましたらきょうのはシャネルというのですが、エルメスというネクタイを女房が締めていけというので、朝それを締めて国会へ行った。私は、何だかふだんしているのと余り変わらないけれども、銘柄はエルメスという何か聞いたことのある銘柄の名前が書いてあるなと思っていたら、議員会館に入った生きに、ある同僚の議員と会って、おっ鳩山君、珍しいな、きょうはエルメス締めているじゃないか。どうしてエルメスとわかるのですかと言ったら、そんなものは君、外から模様を見れば、大体エルメスだとか何だとかいうのはわかるんだよ、こういうふうに言われて、結局その一日で同僚の国会議員七、八人から、おまえもたまにはいいものを締めるんだなということを与野党を問わず言われたわけでありまして、よくバッグだとかネクタイだとかそういうものも銘柄志向だと言われていますが、日本人というのはやはりそういうものに非常に弱い部分がある。それが大学の名前も銘柄、企業も銘柄というような、傾向を生んでいるという残念な現象の原因の一つかなと思うことがあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/72
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073・松前仰
○松前委員 大変いろいろな例を出して御答弁いただいて、大体大臣のお考えがわかりましたけれども、大変な仕事をしなければ、これは改善できないということは十分わかっていますが、ついこの間宮澤さんが、東大出の官僚ですか、国家公務員の上級職の採用者が東大に偏重している、これを五年後には五割以下にしよう。まず非常にちっぽけなところであるかもしれないけれども、これが刺激になって、だんだん官僚社会が変わっていく、そしてまた同時に銘柄主義が変わっていくというようなことになっていけばいいと思いますが、言葉だけでこう言われているのじゃ困るので、ぜひとも文部大臣にもこのことをもっと継続して、そしてまた広げていってもらいたい。そして、それが将来は受験競争とかそういうところにも影響を及ぼすことになると私は思いますので、ぜひともその点をまず要望しておきたいと思います。
競争ですね。その競争について、またその競争の場面だけ見ますと、今現在一つの分野だけの競争、画一的なところしか評価しないというようなこと、要するに分野が非常に狭いということですね。人間というものはいろいろな多面的な評価があるはずなのに、しかしほんのわずか、学力のところだけを評価をしているというようなこと、これは古い昔からの教育、そして、また先ほどお話がございましたような公立の教育の基本方針、きちっとしたものが必要であるということもございますが、そういうものを含めてずっと伝統的に来たわけです。それが今日このような、そういうところの分野だけの評価ということになってきているということなのであろうと思います。しかし、人間というのは、そういうことですべてが評価されるわけではない。つまりそれだけで評価されるわけではない、受験競争みたいなああいうところだけで。本当に勉強したいという人は、あるいは違ったところの評価をしなければいけないということもあると思うのです。ですから、大学も一生懸命令努力して、その評価の仕方、入学試験の仕方を考えておるようですが、なかなか具体的には出ませんが、大学については努力している。しかし、高等学校教育、それから下の教育ということについて、果たして教育がそういう多面的な人間評価になっているかどうかというところは、もっともっと改善しなければいけないと私は思っております。
例えば、これから国際社会に出ていくということになれば、国際的になるということになれば、これは文化についてだって日本だけの文化ではいけない。先進国では多文化教育というのがよく言われます、これは多民族の国でありますけれども。それでエスニシティーという言葉もございますね。いろいろな言葉がございます。そういう教育というもの、多様な教育、そういうものをやらなければいけない。外国人労働者が恐らくもうすぐたくさんふえてくるでしょう。そうしますと、外国人労働者の家族の教育ということも考えなければいかぬ。そういうことになりますと、これは今現在の教育の体制そのものを続けていったら、まずこれは対応し切れないだろうというようなことがもう予測されている。それにもかかわらず、文部省のいろいろな資料を見ますと、前と大体似ている。非常にいろいろ努力されて、改善を一生懸命やられていることはわかりますけれども、どうも昔の状況がちょっと進んだ程度。新しい日本の、国際社会で活躍するという、そしてまた経済において世界一というかそういうようなことになってしまった、こういう日本。世界のためにやらなければいけないという、そういう時点においては、もう少し考え方、ビジョン、哲学を持ってやっていただきたい。
そのためには、これはやはり教育のお金というのはもっとかけなければいけないよと私は思うのです。今四十人学級を一生懸命やっているけれども、しかしこれは二十五人学級の方がいいに決まっている。これは北欧などは二十五人学級、二十七人ぐらいでしたね。恐らくそのぐらい。そのくらいが一番見やすい。もっと少なくなってしまうと、今度はちょっとまた別の要素が出てくるからまずいのですけれども、どうもその辺がいい。そのいいと言われるところぐらいまではいかなければならない。そうすると、お金が全然足りないのです。だから、そういうところも含めて、さっきお話がありました突破口という、文部省としての予算を獲得する突破口という大きなビジョンと哲学を持ってやれば国民は理解してくれるし、また予算もふえるのじゃないか、私はそういうふうに思うのですが、余りしゃべっていると時間がございませんので、簡単によろしくお願いいたします、大臣。(鳩山国務大臣「どの部分についてですか」と呼ぶ)今私が申し上げましたその全部にですよ。ですけれども、教育の多様化ということと、それと教育予算の関係ということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/73
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074・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 もう先生は教育の専門家であられますから、私より、もよく事態を理解しておられることと思っております。
一つは、日本の義務教育というのが誇るべきものは、北海道から沖縄まであるいはどんな山奥の分校に通ったとしても、一定の基礎・基本の教育を、一定水準のものをきちんとどこでも受けることができるという、そうした日本の義務教育の制度、あるいはそれに大変な金もエネルギーも注いできた今日までの教育のあり方というものが、例えばですが、非常に治安のいい国家、知的水準などという表現は余り望ましくないと思いますが、しかし日本のお子さんたちや日本人の知識水準というのは非常に高いものがあるし、もちろん識字率という意味でいうと非識字率はほとんどゼロに近いというような、そういう国家をつくってきたし、あるいは勤労意欲が高くて、今日のこのような経済大国をつくったのも、そういう義務教育というのが基本にあったからだと文部省はもっと自負していいと私は思います。ただ、そのことが、同時に松前先生お話しのような画一化というような見られ方をややもすればされがちであって、実際に登校拒否の低年齢化などということを考えますと、もっと多様なものを準備していくべき時代にやっとやってきたのかなというような思いもあるわけであります。
ただ、一つだけ私は先生に特に御理解をいただきたいのは、これは文部省の考えではなくて私の私見かもしれませんが、個性というものはほっといたら一番いい方向に伸びるものではないだろうと思うわけであります。むしろ学習指導要領もあり教科書もあり義務教育もありこ定の基礎の基礎・基本は全部教えてみる。いわば四角い箱の中で全部教えてみますよ。その中に子供さんの個性というのはどこかを突き破りたがってぶち当たるだろう。それを先生が見ておって、ああこの子供はいろいろ教えてみたが、ここのところに個性の伸ばしたがっている部分があるのだなということを見定めて、それを伸ばしてやるというのが一番いい教育ではないだろうか。全く閉じ込めることなく、ただぼんと置いて、好きなことをやってごらんといったら人間はどうなってしまうかわからない存在であり、その子供の個性がどういう方向に伸びたがっているかも案外判定しにくいものではないだろうか、そんなことも考えております。
いずれにいたしましても、教育については、教育は金なりではありませんけれども、きちんとお金をかけないと、またよりすぐれた教育ができないというのも事実でございまして、先ほど先生は二十五人学級とおっしゃった。適正規模が三十八人なのか三十五人なのか三十人なのかわかりません。余り人数が少な過ぎれば、今度は集団行動とかあるいは組織という意味での勉強がおろそかになりますから、おのずから適正規模というのが求められてくると思いますが、そういう意味でいえば、四十人学級が実現をいたしたところでよく状況や現在の諸条件を観察させていただいて、そして、また新たな適正規模をいろいろな教育研究を重ねる中で探っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/74
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075・松前仰
○松前委員 大臣のお考えも私とそう変わっていないと思いますが、一つだけ、画一化教育、これは文部省が今やっているのがそういうことで、将来もそうするのじゃないかというような懸念で私は申し上げたのではなくて、これまでは、日本はやはり戦後立ち直らなければいけなかった。そしてたくさんの貧困の子供たちがいた。家庭も貧困であった。そういう人たちをどうしたら教育レベルを者とそろえるかという大きな問題があったということがございまして、公立の教育、あるところのレベルはきちっとそろえようじゃないか、これはもう当然のことでございます。ところが、今日はその一歩先、そういう人たちが一生懸命努力して、結局今日経済大国と言われるようになってしまった。なったと私は言いません、なってしまった。これはいい言葉か悪い言葉がわからないからそう言うのでありますが、そういう形になった。そうなると、国際的に貢献をしていこう、人のためにやろうじゃないかという時代になったということですから、そこで教育は一歩前進をするべきじゃないか、こういう意味で申し上げましたので、その辺だけは誤解をしていただかないようにと思っておる次第でございます。
いずれにしても、一歩前進をさせるということでございますが、教育というのはもっともっと今理想の教育のあれはすごく遠い距離がございます。それに向かって、毎年同じことをやっていてはいけないわけでありますから、どうか大臣、教育はやはり金がかかるものだという認識を持って、金だけ与えておけばいいというのではなくて、金はかかるんだ、一生懸命やっている人のために金をかけるんだという姿勢で臨んでいただきたいと申し上げておきたいと思います。
時間が大分なくなりましたのではしょってしまいますけれども、一つだけ飛ばしますが、高等教育の問題に珍らしてもらいたいと思います。
高等教育のこれから先の問題でございますけれども、高等教育と高等学校の問題、生徒数がどんどん減少していくというようなことが予想されております。このことに対して、私はどうも文部省、大臣の方もそうですけれども、余りそれに対する対応策というのが見えないのでございます。だから、私学や公立もそうですが、将来、もう少しするとつぶれる高等学校が出るんじゃないか。大学もつぶれるのがいっぱい出てくるんじゃないかというようなこと。それをただただ放置をしているような気配がどうも見受けられてしまう。何かその辺、対応策はこう考えているんだよということを教えていただきたい。新しい学部とかそういうものをつくるのはやめるとか、そういうことくらいは見えるのですが、それ以外対応策がない。非常にたくさんの子供が減るわけでございますから、それについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/75
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076・前畑安宏
○前畑政府委員 先生も既に御案内かと思いますが、私どもの大学審議会で昨年「平成五年度以降の高等教育の計画的整備について」という答申をいただいております。基本的には、大学について今後十八歳人口が減少していくときに、それを国の財政でもって入学者の減を補てんをするような方策というのはとりがたいという基本的な考え方があります。ただ、先ほど先生もお触れになりましたが、これは考え方として大きく二つに分かれるわけであります。例えば、先般日経新聞にある論文が出ておりましたが、文部省が高等教育計画というものをつくって、新しく大学をつくることを抑制するというのは極めて不当な考え方である、つくりたい人にはどんどんつくらせて自由競争をさせるべきではないかというような考え方もあります。また、ある教育関係の雑誌に載っておりました論文では、大学をつぶすというのはとんでもないことだ、絶対につぶしてはならないというような強い調子でおっしゃっておる向きもあります。
そういった両方のはざまの中で、この高等教育計画は考えられたものでありまして、今後におきましては、十八歳入口の目減りをできるだけ社会人を受け入れるとか留学生を受け入れるとか、そういった方向で、これは既に御案内のように、アメリカの先例に倣おうというわけで、パートタイム学生をたくさん受け入れることによってアメリカが対応した、そういう考え方もとっております。具体には、大変申しわけない言い方になりますが、各大学、学校法人の自助努力にまつというのが基本的に私どもとして考えておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/76
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077・松前仰
○松前委員 今の御答弁は全く教育に対する哲学が聞こえない。ただただ経営がどうだとか、そういうお話しかない。自助努力しろとかいう話でございますが、大体、今年、去年くらいですか、高校を卒業して大学に入った人の数、短大も含めて、その数と、高校卒業生でその先の高等教育を受けていない人の比率というのはどのくらいか御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/77
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078・前畑安宏
○前畑政府委員 今先生お尋ねのことにつきまして的確な数字は持ち合わせておりませんが、平成三年度の大学、短期大学の入学状況について申し上げますと、入学志願者の実数が大学では九十一万一千五百八十五人となっております。このうち入学した者が五十二万一千八百九十九人で、先ほど申し上げました志願者実数の五七・三%に当たる、このようになっております。
ちなみに、進学につきましていろいろな数字の指標があるわけでございますが、御案内のとおり、進学率と言われております数字は、最終的には入学規模、大学の数で決まるわけでございまして、一番自由度が大きいと思われますのが、いわゆる志願率と言っておりますが、現役生の志願率を見ますと、平成三年度には五〇・二%となっておりますから、高校を卒業する人の半数は大学へ行きたい、このように考えておると理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/78
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079・松前仰
○松前委員 大学へ行きたい人の数から進学した人のパーセンテージを出されたわけですけれども、私が申し上げたのは、高等学校に入って、その後高等教育を受けていない人ということで申し上げたのでございますが、これは要するに高校で終わるという人ですね。あと就職をするというような人でございます。今大学志望者、志願者というお話がございましたけれども、志願者というのは十八歳、高校卒業の時点での志願者なのでありまして、生涯教育ということを一生懸命文部省の中で書いてございます。生涯教育ということを持ち出すならば、そういう就職をした高等学校の生徒も、将来高等教育を受けるチャンスが欲しいと願っているのは当たり前だと思う。ただ、今日は、先ほど受験競争の話を出しましたが、そういう人たちは受験競争で全部払われてしまう、高等教育を受けられない。この十八歳のときに、十八歳、十九歳、二十歳のときに、すべての人生がそこで決められてしまうかのような今日の教育制度があるということ。だから、この受験競争というのは何とか解消しなければいけないと努力されているけれども、そこだけではすべては解決しないぞ。私が思うに、一九九一年で百二十二万人の人が高等教育を受けられないでいるのですよ。この人たちが将来三十幾つになっても大学へ行きたいという人がいると思う。会社へ行ってから行きたい、そういう人たちを救う手はないか。今日はほとんどないんですね。だから、そういう人たちを受け入れるとすれば、これから先の大学の収容能力、これがだんだん余裕が出てくるというならば、そういう形の教育というものを考えていく、それを制度化していくとか、そういうことも考えていかなきゃいけないんじゃないか。私はそういうふうに思うので、今子供たちが減るから何とか経営を自助努力で頑張ってくれとか補助は出せませんとか、そんなスタイルで物事を話されていたんでは、これは教育という本質に全く外れるものだと私は思うんです。私がさっき申し上げましたように、そういう社会人に出てから高等教育を受けたい人はいっぱいいる。それを生涯教育という簡単な言葉で片づけている。それからもう一つ、社会人のリカレント教育の推進。これを具体的に文部省としては、今から方針を打ち出して進めていただくということが必要じゃないかと思うわけでございますが、大臣、その辺どうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/79
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080・前畑安宏
○前畑政府委員 大臣からお答えになる前に、事実関係についてちょっと申し上げさしていただきたいと思います。
先ほど社会人の受け入れ、パートタイム学生の受け入れといったようなことを申し上げましたが、私ども既に大学審議会の答申もちょうだいをいたしまして、社会人を受け入れる、パートタイムの学生を受け入れるというための所要の規定の整備を図っております。例えば、従来は聴講生という制度がありましたが、聴講生については正規の単位は出さない、こういうことになっておりましたものを改めまして、科目登録生という仕組みをつくりまして、その科目登録生については正規の単位を出す。そして、例えば高等専門学校なり短期大学を卒業した人が社会に出て、しばらくたって科目登録生として所要の単位を取得する場合には、希望をすれば学位授与機構、これも当委員会初め国会の御理解をいただきまして学位授与——機構というものを設立さしていただきましたが、学位授与機構を通じて学士の学位を出すという仕組みをつくっております。
また、社会人を受け入れますときに、ただいま先生は高校卒のことをお話しになりましたけれども、また大学卒の人も場合によってはあろうかと思います、リカレント教育という意味で、そういう場合には、一年次へ入るんではなくて、いわゆる編入学をする。これも今までは編入学定員を大幅に設定をするということは制度上困難でありましたが、これも制度の改正を行いまして、大学が欲するならば三年次のところに大幅な編入学定員を設けるというような一ことも行ったわけであります。
したがいまして、私が自助努力ということを申し上げましておしかりをいただきましたが、制度の仕組みとしては、社会人を受け入れる、あるいはパートタイムの学生を受け入れるということについては自由度を大きく開いておりますので、それぞれの大学でもってその浄用をお考えいただければと、こういう趣旨で申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/80
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081・松前仰
○松前委員 どうも御答弁を聞いて、一生懸命やろうとされているのはよくわかるんですけれども、大学卒の人のまた再入学とか、そういうところにどうも観点が行ってしまう。私は高校卒をわざわざ強調したんでございまして、高校卒業生、これは高等教育を受けたくても振り落とされてしまう人が入学試験でたくさんおりますね。そして、そこで自分の本当にやりたいところに行かないで、ほかにやらされているということがいっぱいあるんですよ。そういうところは非常に問題があるし、またそういう人たちを何とかして救ってやって救ってやるといいますか、自分の思うような教育を受けたい、そういうことをやらせてやるということ、そしてそのこと自体が活力につながっていく、社会の活力につながっていくと私は思います。
もう一つ、その前の中学から高校へ行くところの問題もございます。このところの高校へ行けない人、これは大学へ行ける制度がございます。ちゃんとその資格が取れれば行けるんでございますけれども、そういう人たちだって結局あきらめてしまっている人は随分いる。ただ、大器晩成という人がみんなだめになっちゃう世の中は困りますよということを私は申し上げておきたいと思うんですが、大臣、この辺についてちょっと何か一言御感想を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/81
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082・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 先ほどからの先生の御高説、聞き入っておりまして、基本的に何も否定すべき部分はないと思っております。何しろ児童生徒数の急増、急減という、余りに激しい折れ線グラフができ上がっているところに問題を一層難しくしている原点があろうかと思っております。
私が政務次官を務めておりました七年ぐらい前は、まさに高校を卒業する十八歳年齢人口の急増期に当たっておりましたから、とにかく大学もどんどんふやしてもらわにゃいかぬ、恒常増をやってもらおう、臨時増募もやってもらおうということで、それは大学については八割が私学ですから、東海大学にも随分そういうお願いを文部省からさせていただいたという経緯もあろうかというふうに想像をいたすわけであります。ところが今度は急減期に差しかかっていく。当然そうなりますと、私学に、例えば学部もふやしていいですよ、定員はもっとふやしてくださいよとお願いしてきた部分を、今度はどういうふうに日本の教育のために利用していくかということに関して、全く無責任な態度を文部省がとることは許されないと思うわけでございまして、そういう中で私は、大学に直ちには進学しなかったけれども、その後やはり勉強はしておきたいというので、勉学の熱意に燃えるような方たちに、その場所で勉強していただくというのは大変すぐれた一つの方法だろうと考えております。
実は、先般、放送大学を視察いたしましたときに、ちょうどスクーリングというのかあるいは試験というのか、そういう日に当たりまして、放送大学の受講生の方々がセンターに大勢お見えになっておったわけであります。その姿を見て、これは本当に真に勉学の意志を持った方々、三十代、四十代ぐらいが多かったんでしょうか、これは真剣そのもので、本当に大人が勉強しているという感じがします。私自身の学生時代などを振り返ってみれば、まあ大人に成り切っておらない、子供がきゃっきゃはしゃぎながら学校にも大学にも行っておったなというふうに見えるわけで、あの放送大学に集まっておられる方々の熱意というものは本物だなとつくづく思いました。したがって、放送大学というのが生涯学習の一つの大きな目玉になっていることは確かでございますが、そういう需要を吸収するためにも、今後の大学の使い方、とりわけ生徒数の急減期における大学の新たな役割として考えていければいいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/82
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083・松前仰
○松前委員 生徒数が減ったからそういうことをやるということではなくて、これまでできなかったことをこういうときに、チャンスが出てきた、そういう積極的な考え方で私どもはやりたいと思っておるし、また文部省もそういう姿勢で臨んでいただきたいな、そういうふうに思うわけでございます。
時間が大分たってほかのところに行けないような形になってきましたが、一つだけ教育問題で、まあ小さな話かもしれませんが、英語教育の問題をちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、国際化時代とか世界に貢献するとか言われながら、英語教育、私どもだってたくさん何時間も学校で英語を教育されましたけれども、だめだという、こういうことがございます。大体英語教育、これは余りにも効率的じゃないし、効果が上がらない。これは何か改善しなければいけないのじゃないかと思いますが、文部省の方としては、これはどう考えておりますか。改善する方策ございますか。国際化社会に対応する英語教育ということで、どう考えているか、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/83
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084・坂元弘直
○坂元政府委員 確かに先生御指摘のとおりに、国際化の進展に対応しまして、英語のコミュニケーション能力を身につけるということは各方面から大切だというふうに指摘されております。
今度の新しい中学校、高等学校の学習指導要領、中学校は来年でございますが、高等学校は再来年からスタートいたしますが、その中におきましても、コミュニケーション能力の育成、特に聞くこと、話すことの指導の充実を図る観点からいろいろ改善を行っております。
中学校におきましては、従来三時間の英語の時間だったんですが、プラス一として一時間ふやすこともできるようにしまして、その一時間の中でコミュニケーション能力を育成する教育を行っていただきたいというふうに考えておりますし、高等学校では、新たににオーラルコミュニケーションに関する科目を設置して、このオーラルコミュニケーションの科目の中で聞くこと、話すことの育成を図っていただきたいというふうに期待しているところでございます。
さらに、先生も御承知のとおりに、ネーティブスピーカーから教育を受けるということで、いわゆるJETプログラムというものを昭和六十二年から発足さしておりまして、英語で会話のできる能力を身につけるということで、平成三年度は二千七百人招致しておりまして、来年度は三千三百人に拡充したいというふうに考えているところでございます。
さらに、さはさりながら、これらの施策はこれだけで十分だというふうに私ども考えておりません。現在、平成四年度に初中局の中に外部の関係者に集まっていただきまして、外国語教育の改善方策についての検討委員会というものを設置いたしまして、今鋭意検討していただいている最中でございます。この検討結果を待って、さらに私どもでできる施策、具体的な施策は何かということを探りまして、努力をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/84
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085・松前仰
○松前委員 検討中ということですから、その検討結果を見さしていただきたいと思います。
いずれにいたしましても、英語教育、これまでやってきたことについて評価をしている人はほとんどいないということでございますから、大幅な改善を図っていただかなければいけない。それが現場の先生方に大変なしわ寄せが行くような変な格好でまたいってしまったら困りますからね。これは本当に英語が楽しいというような雰囲気で、学校がいけるようなことでやっていただきたいなと思っておる次第でございます。
それから、科学技術教育の問題でございますが、先ほど大学の科学技術のお金の問題がございました。国際貢献をしなければいけないという日本になりましたので、その国際貢献は一体何か。半導体をつくって、電気機器をつくってもうけるということは国際貢献じゃない。先ほどお話ありましたように、これからは環境とかそういう大きな難しい問題がたくさん転がっている。それを何とか二十一世紀で克服するにはやっぱり科学技術しかない。例えば二〇五〇年、世界の人口が二倍になる。二倍になったときにエネルギーは一体どうなるのか。エネルギーは現在の三倍以上使われる計算になってまいります。そういうエネルギーを一体どうするのかということを考えると、これは原子力発電とか、そのほかCO2を出すものとかいろいろ問題があり過ぎる。だから、これは何とか別の知恵を得なければいけないということもあったりして、大変難しい分野がこれからは転がっている。ですから、この科学技術で将来の人間が、人類が生き延びていくといいますか、青い地球の上に住んでいくということになると、科学技術で何とか処理しなきゃどうしようもない事態になっている。廃棄物の問題もございます。そういう意味で、そういうお金のもうからないような科学技術について、特に文部省としては、やっぱりお金、補助を出していただくということが必要じゃないかと思います。しかも、そういう技術は大変お金のかかる技術でございます。お金がかかるんです。もうからないんです。それを学校でもって自分たちの努力でやりなさいと言ったって、これはできっこないのです。そういうことで、どうか先ほどありました科学技術の研究予算について、十分考えていただきたいと要望申し上げますが、その辺について、もうさっき答えがあったようですが、御答弁できました……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/85
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086・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 例えば科研費の問題とかフェローシップとかあるいは来年度予算関係でいうと、大学院博士課程の奨学金の貸与月額の増だとかあるいは私学助成の中でも一般補助でなくて特別補助という形でやっていくとか、あるいは先ほど二百億円の特別施設整備資金あるいはその関係で財務センターのこととかいろいろあるわけでございまして、高等教育関係についてはいろいろ手は打たせていただいてはおりますけれども、今先生がおっしゃったような日本の国際貢献、日本は経済の力も強い、頭もいい、そういう中で勤勉であるというような中で、科学技術で国際貢献をしていって世界から高い評価を受けるというのは、日本の国の二十一世紀はおろか二十二世紀をにらんだ戦略としては最高のものだと思うわけでありますが、そういう大きな理想に照らして考えてみますと、まあ科研費とかフェローとかいうような対応では、まだまだ不十分でございまして、先ほどの質問にもありましたように、国全体で一体研究費はどれくらい支出しているんだ、民間に比べてどうなんだというような大議論をこれからやっていかなければなりませんし、それは科学技術会議の言った研究予算の倍増というようなこととも関係をしてくるわけでございます。
また、松前先生御指摘のとおり、基礎科学というような分野が我が国は弱いと言われている。基礎科学ただ乗り論というような批判もある。ところが基礎科学ということになりますと、これは直ちに、何というんでしょうか、利益、利潤、配当が得られるものではない。ですから、例えばSSCだって、本来お金が無尽蔵にあればどんな協力でもしたいようなすばらしい企画だろうと思うんですが、SSCをやって、じゃ十年以内に何の得があるの、こういうふうによく聞かれることがあるわけですが、基礎科学というのは、そういう近視眼的な損得を計算できないからこそ基礎科学なのであって、しかし、そういうものほど大きな、信じられないような巨額の予算がかかるというようなことになるわけでございます。例えば高エネ研のBファクトリーにしても、あるいはジャパンリニアコライダー、JLCにしても、これも決して安いものではありませんし、あるいは核融合に関しても、あるいはハワイの天文台の件に関しましても、これはもうなまはんかな数字では対応できない。しかし、それをやって、いずれはそういう基礎科学あるいは科学技術で国際貢献をするという理想を私たちは掲げなければなりませんので、これまた予算の問題としてこれから大いに努力をしなければならない点と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/86
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087・松前仰
○松前委員 まあSSCにしたって、この間アメリカの人が来てお話ししましたけれども、テキサス州でしたか、何かそこの経済の活性化のためだなんて言っているから、それはだめだよと言ったんですが、そういうことじゃなくて、今の原子力発電でできてしまった放射性物質、これをもっと放射性物質じゃないものに変えるとか、そういうような基礎的な研究があるんだよということが言われるならば、これはいいと思いますけれどもね。いろんな面で大変な研究がそこに転がっています。
それにつけても、科学技術庁と文部省との研究補助、これについて現場の人たちは大変困っております。科学技術庁の方から予算を取ると文部省」からいろいろ言われたりいろんなことがある。ちゃんとこれは上の方がそうごちゃごちゃしていてもらってはやっぱり研究も進まないんだから、その辺はぜひともすっきりさしていただきたい。あんまり現場の人にしわ寄せを持っていかないようにしていただきたい。それだけは御答弁要りませんから、御要望申し上げておきます。
最後に、トトカルチョ問題でございます。
トトカルチョ問題は、あちらこちらで質問もされて、そして御答弁もいただいております。鳩山文部大臣のお考えもこの間の予算委員会での答弁で大体私もわかっておるわけでございますけれども、しかしながら、これが何だかいかにも導入されるような雰囲気がなきにしもあらず。私はこの導入ということは大変慎重に考えておりますし、慎重というのはむしろ否定的な方なんでございますけれども、大体大衆スポーツヘこういうくじが導入をされるというのは、日本では初めてなわけでございます。その辺について、こういう初めてなこと、それをこうやって導入しようという考えを文部省は持っていらっしゃるのかどうかわかりませんが、話によると文部省も大分動いているという話もございます。その辺の状況についてちょっとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/87
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088・逸見博昌
○逸見政府委員 お答えいたします。
サッカーくじの導入につきましては、一月下旬、日本体育協会、それから日本オリンピック委員会からの要請が関係各方面にございまして、現在、その関係各方面で慎重な御検討がなされていると考えております。私ども文部省におきましても、これは文教部会、文教制度調査会の合同部会の方から、文部省においても検討をしておくようにというふうな指示をいただいておりまして、現在トトカルチョとは一体どういうものか、今後どういったふうな方向でこれを、例えば子供たちに対する影響等、一体その賭博性をできるだけ少なくしていくためにはどういうことが必要であるかというふうなことについて現在勉強中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/88
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089・松前仰
○松前委員 現在検討中というのは、導入するのにはどうしたらうまくやれば導入できるかというふうな感じにも聞こえてしまいますけれども、この問題についてはいろいろな問題がある。教育の話が出ましたが、サッカーでもってくじをやって、そして、そのお金をスポーツ界の伸展のために、こう言うわけですけれども、サッカーがそういうことをやってしまうと、サッカー界というのはスポーツ界を牛耳るんじゃないかとか、そういうことになったら一体とうなっちゃうんだろうか。それで今度はスポーツ界でもってそのお金が必要というのは、いろいろ私らもヒアリングいたしましたけれども、何かいろいろ使うことがたくさんあるんだ、こういう話だけなんですね。そういうところはどうなんだという話をすると、それはそちらのスポーツ界の方で自主的にやっているんだ、こういう話であってさっぱりわからない。
大体、先ほどから話がありましたように、学校五日制ということになれば、子供たちは一日はどうしても新たな生活をしていかなきゃいかぬということになる。そうすると、そういうところが今度はスポーツというところに入っていくとなると、学校教育という関係にもなってくる。いろいろな問題が出てくるわけでございます。トトカルチョじゃなくて、入場料に上乗せしたらば一体どうしてだめなのか、プロ野球の方から少しいただいてスポーツ界の発展のためにやることはどうしてだめなのかとか、いろいろな問題があるわけでございまして、そういう点を全部クリアにしないで、ただただイギリスが九十年だか歴史がある、それからイタリアは四十五年とか、だからいいんだなんて、まるで人の、外国の猿まね、これこそ日本が今まで最も得意としてきたやり方ですね。そういうことで、外国がいいんだからこっちもいいんだといって、それで導入されてしまってはとんでもないことになる。
しかも、今日のサッカー界というのは、もう既にどこかで話が出ておりますけれども、高等学校を中心に栄えております。全国高等学校サッカー選手権大会、これは全国の高校生が血沸き肉躍るような、そういうところである。それがプロのサッカーのところに結びついていく。そしてプロまではまあ容認していいとしても、その先そこにちょこっとトトカルチョが入ってきてしまうということになると、これはすっきりしない。大体サッカー界はクラブ組織にしたいというようなことを言っているようでございますけれども、クラブじゃなくて、今はクラブ組織にするために、その選手養成は高等学校だというんだから。こういうような状況の中で、学校が今サッカーと全然切り離されていない状況でトトカルチョが入ってくるということは、やはり教育上どうでしょうかねというように私は思わざるを得ないのでございます。
資金がないのはよくわかります。資金がないのはよくわかるけれども、二百五十億円、そして四十億円集まった、二百九十億円。何かこのトトカルチョは、一千億円ぐらいスポーツ基金にしたいとか言っておりますけれども、そういうことなら何とかほかの方法はないかというふうに思いますし、もう一つは、そういうスポーツの基金が必要、スポーツに何か地域の整備をいっぱいしたいというならば、計画はどうなっているんですか。計画ぐらい私たちに見せてくれたらいいじゃないか。これだけ要るんですよということになってくれば、何とかそれは知恵を出そうじゃないかというところから物事は始まらなければいかぬじゃないかと思うのだけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/89
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090・逸見博昌
○逸見政府委員 サッカーくじを要望いたしました背景として、例えば体協、JOCでは二十一世紀に向けまして大変大きなビジョンを描いているところでございます。例えば、これはJOCでございますが、「諸外国と比べ大変整備が遅れている国際的競技施設の整備や指導者制度の確立、ジュニア対策等の推進、諸外国へのスポーツを通じた国際貢献等を行うことが急務となっており、多額の資金が必要」である、こんなふうなこと。それから体協の方でございますけれども、「今後、スポーツ振興の一層の飛躍、発展のためには、国庫補助、スポーツ振興基金等によるご支援に加え、新たな制度を創設願い、スポーツの裾野の拡大、スポーツを通じた国際交流の推進等の充実を図ることが急務となって」おるというふうなことを言っております。
こういった抽象的なことでございますが、それじゃ具体にはどんなことをしたいかということでございます。これは例えば地域住民が身近に手軽に利用、交流できるような地域スポーツ施設の充実、それからスポーツ施設におきますスポーツ指導員の配置、それから国際級の競技施設の整備、ナショナル・トレーニングセンター、教育特性に応じた特殊トレーニングセンター整備云々と、大変たくさんの項目にわたりましてこんなことを二十一世紀に向けてやりたいという希望を持っております。それから大変大まかな試算でございますけれども、生涯スポーツ社会、例えば本当にすべての国民が身近にスポーツに親しむというような状況をつくりますためには、中学校単位でそういった一つの充足したスポーツ競技施設がある、そんな状況をつくっていきたいというふうなことをいたしました場合に、中学校の数は一万校ございます。一単位で三十億かかったとしても、これで三十兆かかる。そんな大変膨大なことを二十一世紀中にはやりたいというふうなことを踏まえた計画でございます。
文部省におきまして、こういったことを現在具体に持っておるわけではございませんが、このスポーツくじ構想が明らかになっていくその段階におきまして、こういったものと同様のものを、ビジョンとしては持っておりませんが、具体に一体どれくらい必要になってくるかというふうなことについて、具体の検討を適時適切にやってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/90
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091・松前仰
○松前委員 もう時間がありません。「終了いたしました」となっていますから。これは非常に大きな問題を抱えていますね。今おっしゃったような内容じゃ全然理解できないですね。要するに、スポーツ界というものをこの際、もしこういうことを言うならば、もうちょっとすっきりした格好で見せてもらわないといけないと私は思います。サッカー・フォー・オールとかトトカルチョ・フォー・オールになっちゃ困りますから。
これで質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/91
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092・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 これは文部省令勉強しろと言うので勉強しておるわけで、私として、こんなふうなのはどうかとか、こんなふうにしたらどうだというコメントをしたことはありますが、要は、自民党と各党との間で話し合っていただいて、国民的な世論が醸成されていかなければ実現する事柄ではないと認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/92
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093・松前仰
○松前委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/93
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094・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
この際、暫時休憩いたします。
午後一時休憩
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午後二時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/94
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095・伊藤公介
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。高木義明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/95
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096・高木義明
○高木委員 私は、学校五日制並びに高等教育につきまして、時間の範囲内で質問をいたします。
まず、学校五日制でございます。私は、国民にゆとりと豊かさを実現するために、生活先進国づくりは何としても今の大きな政治課題でありまして、その中で学校五日制の早期導入につきましても賛同をするわけです。本年の九月から月一度のペースで導入することということで、政府でも平成四年度予算案で実験校をふやすなどの措置を講じております。また、昨年十二月十九日に調査研究協力者会議が示した中間まとめに引き続き、去る二月の二十日には「学校運営等の在り方について」、続いて二十六日には「青少年の学校外活動の充実について」を発表しており、この問題をいかに重視しているかという点では率直に評価をしたいと思います。
しかしながら、御承知のとおり、文部省の方でも恐らく同様と思いますけれども、学校五日制が実施されるとすれば、幾つかの問題点、心配事が存在をしております。
例えば、学校がお休みになったとして、私は子供たちが家庭や地域社会で充実した生活を過ごせればいいと期待をします。また、そもそも学校五日制の趣旨が、子供たちにゆとりのある生活環境を提供するというのも目的でしょうから、そうあらなければならないと思います。しかし現実はどうでしょうか。まず学校五日制ありきの議論が先行しているように思えてなりません。すなわち、学校五日制の理念がなおざりにされてはいないか。また、たとえ人勧どおりに週休二日制が実施され普及されたとして、特に中小企業や自営業者といった産業では、それがそのまま実現されるとは限りません。この場合、学校だけが休みになっても、むしろ両親の負担がふえてしまうという危惧さえあります。とりわけ障害児を持つ両親にとっては切実な問題と言われております。また一方では、かえって塾通いがふえるだけだという悲観的な見方もあります。現実に子供は家庭や地域社会に戻っていくわけですが、家庭も含め地域社会で子供たちをどう育てていくのか、そういう発想も必要であります。
すなわち、これまで地域社会での連帯感が希薄になってきたと言われておりますが、余裕ができた子供たちの時間を利用して地域社会の中に根づかせ、公共心とかあるいは責任感とかそういったものをはぐくむよいきっかけにしなければなりませんし、そういうことになるであろうと私は考えております。しかし、政府の報告書は、実験校の成果を踏まえ、また学校五日制のおるべき姿を示唆はしておりますけれども、どうも具体的な提案が、あるいは予算の裏づけがあるとは思えません。もちろん、実際に月一回というペースでもとりあえず導入してみて、そこで何か問題があれば順次解決をしていく、むしろ実行していきながらやるということは、机上でどうのこうのと議論をするよりもよほど実のあることかもしれません。しかし、それは事前に予想していなかった問題が生じた場合とか、あるいは予想していたけれどもさほど深刻な影響が出るとは想定していなかった場合に許されることであります。せっかくの国民の教育に対する意識改革というものを伴う画期的な制度の導入であります以上、事前に考えられる心配事や問題点は、少なくともその解決の糸口だけは、この際しっかりと対応しておくのが私は文部省、政府の責任ではないかと思います。まず、そういう立場に立ちまして、学校五日制の理念について改めてこの際お示しをしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/96
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097・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 学校五日制という考え方は、午前中にも御説明を申し上げましたように、地域・家庭二日制というふうに考えていきたい。つまり子供さんがいろいろな体験を積むということがこれからの人間形成において非常に重要であって、生活体験、社会体験、自然体験、奉仕体験、でも、私はいろいろ申し上げましたが、一番原点にあるのは本当は家庭体験というのでございましょうか、日曜日だけでなくて土曜日もたまには余裕を持って家族と一緒にいろいろなことをやる、そういう体験というものが貴重な経験の積み重ねとなって、そのお子さんの将来の人間形成に役立つだけでなくて、例えばいろいろな問題に直面をして問題解決を迫られるということが長い人生の間にはうんとあるだろう。そういうときに子供時代の土曜日、もちろん日曜日もありましょうが、そういうときに体験をしたいろいろな事柄が問題解決のエネルギーとなって生じてくることを期待したいと思っております。
これはもちろん一般の世の中の週休二日制というものと無関係ではありません。一つの時代の流れというものでありましょうが、ただ学校五日制の発想そのものは、あくまでも子供さんという、幼児、児童、生徒、そうした立場から考えていきたいと思っております。ただ、そのためには当然越えていかなければならない幾つかの条件があることはわかっておりますし、午前中の質疑にもあらわれておりましたように、やってみて初めて出てくる問題点というものもあろうか。また段階的な実施でございますから、月一遍の第二土・曜日を休日とするという形を今考えておりますけれども、各都道府県五校ずつですから四十七掛ける五イコール二百三十五校でしょうか、今度の平成四年度の二百三十五校の実験校では、当然月二回というような形で実験を進め、そこでまたどのような課題が出てくるかということを探って、これが解決できるならば、また先へいくというふうな段階的な実施方式を考えておりますのも、当然実施するための条件もいるでしょうし、新たに越えなければならない条件も登場し得ることを想定して、そのような手法を考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/97
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098・高木義明
○高木委員 今各都道府県の地方議会におきましては、二月あるいは三月議会がそれぞれに開催されておる、そういうさなかだろうと思います。そういった議会の中でも、この学校五日制をめぐる論議は大変華々しく出ております。そして、その議会の中で議論されることは、何といってもことし九月から導入されるであろうその実施について、本当に条件整備ができているのだろうか、こういう趣旨、そして、それからくる戸惑い、あるいは一部には混乱の予想さえされる問題が取り上げられております。
そういうことを考えますと、今の段階、まだ実施までの日数はありますけれども、少なくともできる限りの条件整備についてはきちっとしておくことが必要ではないか、このように私は思いますが、条件整備として少なくともこれだけはきちっとしてやりたいということ、またやっておるということについてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/98
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099・坂元弘直
○坂元政府委員 初中局で所管している部分について御説明をさせていただきます。
まず、私どもとしては、中学校、高等学校あるいは小学校の高学年ならともかくといたしまして、幼稚園児とか小学校の低学年の子供たちでございますけれども、親が週休二日で家庭にいる、そういう状況がふえてきたというものの、まだ共稼きあるいは中小企業を経営しておるというようなことで、土曜日もとても見られない、今までは午前中学校に行って安心していたけれども、土曜日が休みになって、まだ小学校に上がったばかりの子供を一人で置いておくのは心配だというような状況が予想されます。それと、午前中も議論がございました特殊教育学校、そういうこともございますので、自治省とも相談し、交付税の中で、そういう幼稚園児あるいは小学校の低学年に、その場合に学校に出てきてもらって、それの面倒を見る人の人件費、あるいはいろいろな行事をやるわけですから消耗品費等、それから学校五日制を円滑に定着し実施していくためには、何といっても家庭、地域の協力を求めなければならないわけでして、そういう意味で、学校関係者、一地域の教育委員会関係者、それから地域のボランタリーの関係者、父母などで構成する学校五日制推進委員会という委員会を隔月、一カ月置きに開催する経費などを見てもらったわけでございます。それから特殊教育学校については、これは人数を相当手厚くしなければいけないだろうということで、人数で申し上げますと、十人の人件費と、それから午前中も問題になりました、一人で登校できませんので、スクールバスの運行経費なども積算したところでございます。
そういう意味で、学校五日制になったことに伴う親御さんの心配というのは、そういう形でぎりぎりの対応ができるのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/99
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100・内田弘保
○内田政府委員 先生御指摘の学校週五日制の導入を視野に入れました私どもの青少年の学校外活動の充実に関する調査研究協力者会議でも審議のまとめをいただきまして、これには地域での子供のさまざまな活動の場や機会の提供のためのいろいろな方策が提言されているところでございます。私どもとしましては、このまとめを十分に参考にいたしまして、各家庭の理解、協力を求めるとともに、都道府県、市町村、青少年団体、PTA団体等の関係団体等の取り組みの促進についても大いに力を入れていくつもりでございます。
具体的に申しますと、平成四年度予算において、子供たちが休日等に行うさまざまな活動を振興するため、都道府県において講じられている促進策に対する補助事業といたしまして、新たに地域少年少女サークル活動促進事業というのを予算に盛り込んでおります。これは一億五千万程度でございますが、これを中核にしましてさまざまな事業を展開していただきたいと思います。と同時にまた、今初中局長から話がありました地方交付税の措置、あるいはこれまでやってきました社会教育、スポーツ、文化活動、ボランティア活動、それぞれの施策につきまして、できるだけこれを子供にシフトするといいますか、子供に重点を置くような形での展開も図っていきたいと思います。
今後とも関係施策を積極的に推進していくとともに、教育委員会、関係団体等の積極的な取り組みを要請、支援していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/100
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101・高木義明
○高木委員 事が私たちの子供たちあるいは私たちの家庭のあり方、もっと大げさに申し上げますと、日本の教育の行く末を大きく左右すると言っていいほどこの問題は重要でありまして、ただひとり政府にだけ責任と対策を押しつけるということは私は許されないと思っております。やはりみずからの責任も放棄するものではありません。そういうことで、私は以下幾つかの提言を行いながら、国としての考え方をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
まず、ボランティア活動についてでありますけれども、協力者会議でも大変な議論となっております地域社会の役割を重視する方策として、地域でのボランティア活動や地域活動の充実が重要だと思っております。社会参加と責任分担の機会、多様な選択と挑戦の機会、個性、能力を最大限に発揮できる機会、同世代、異世代間の連帯意識の回復の機会などを拡大していくことが重要であります。
そこで、私は青少年のボランティア活動を促進するための環境を整えるべきであると考えておりますが、もう少し学校教育の中でボランティアにかかわる教育を充実するとともに、実際に福祉あるいは環境美化、自然保護、国際協力といった分野での奉仕活動の実践を推進すべきではないか、このように思います。これこそが学校と地域社会を近づける大きな柱になろう、このように思います。したがって、子供たちのボランティア教育、そしてまたボランティア指導者の育成が今急がなければならない課題だと思っておりますけれども、このボランティア教育についてどう受けとめ、そしてまた充実をされていこうとしているのか、その点お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/101
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102・坂元弘直
○坂元政府委員 ボランティアにかかわる活動につきましては、学校教育では道徳や特別活動を中心にして指導しているわけでございます。学校におきまして児童生徒に勤労のとうとさ、社会に奉仕する精神を培うことは、私どもも大変重要な課題であるというふうに考えておりまして、児童生徒の発達段階に応じて、先ほど申し上げましたとおり、道徳や特活を中心に指導しているわけでございます。
具体的な例といたしまして、例えば各学校で地域の清掃活動に一週間、何曜日のいつというふうに決めて活動しているところや、それから老人ホームヘ奉仕活動に行くというさまざまな取り組みが行われているところでございます。新しい学習指導要領におきましても、社会奉仕の精神を涵養し、公共の福祉と社会の発展に尽くそうとする態度を育成することを重視しまして内容の一層の充実を図ったところでございます。
私どもさらに、子供たちを評価する場合に、読み書きそろばんという教科だけで評価するのではなくて、日ごろからその子供がボランタリー活動やいろいろな社会奉仕活動を行っている場合には、それも含めて評価をすべきだという指導を、現在教育課程の新しい学習指導要領の趣旨徹底を各県でやっておりますが、その場もかりて行っている最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/102
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103・高木義明
○高木委員 勤労青年を中心にしまして、よく高齢者の福祉施設とかあるいは障害者施設あるいは児童養護施設、こういったところに勤労奉仕に行ったりあるいはまた慰問に行ったりして、そしてみずからが今まで見なかった社会の隅々を見直して、社会連帯のために何かをしなければならないという心を取り戻した事例は少なくありません。したがって、私は、学校教育としても一そういった社会福祉施設等にどしどし見学等を行っていくことは、今の世情の中で大変意義のあることではないかと思っておりますが、そういった具体的な事例についていかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/103
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104・坂元弘直
○坂元政府委員 先ほどちょっと御説明しました程度のものしかちょっと手元にございません。全国的なそういう事例の詳細なものにつきましては、後ほどまた先生の方にお示ししたいと思いますが、いずれにしましても、私ども昭和六十三年度から奉仕等体験学習研究推進校というのを小中校全国で百四十一校指定しておりまして、その指定した指定校がどういう奉仕活動を行ってどういうような効果が生徒の教育上上がったかというのは、研究発表の冊子を文部省に届けていただきますので、私どもは、それを整理して、また各その他の学校の方にフィードバックしているということをやっております。今後ともそういう方向で奉仕活動、奉仕体験を重視する学校教育をやっていただきたいということを指導してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/104
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105・高木義明
○高木委員 次に、地域連帯の回復という意味合いから、私は地域活動の面について申し上げますけれども、これはよく言われておりますが、偏差値による輪切りや学校によって断ち切られた青少年の社会的連帯意識、こういったものを洗い直し、またはぐくんでいくために、私は地域での子供たちの活動というのが大切であろうと考えるわけであります。そういう意味で、指導者あるいはまた地域のそれぞれの町内の役員さんとかあるいはまたオーソリティーである方々の指導を受けながら子供たちを育てていくという意味で、人の問題も大切でありますけれども、やはりそういった場所の問題も忘れてはなりません。その際、その拠点としましては、公民館とか地域センターあるいは青少年センターという公共施設が考えられるわけでありますけれども、あわせて今後は企業等に対しても、やはり社会の一員と位置づけるならば、体育施設とかあるいは文化施設、こういったものの開放をも要請をしていくべきではないか、私はこう思っておりますが、その点についての働きかけに対する考え方をお願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/105
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106・内田弘保
○内田政府委員 御指摘のとおり、子供の活動に対して、地域とりわけ企業等が協力することは非常に望ましいということを考えております。特に、子供の活動の場、その充実を図る上で、企業が体育施設等の保有施設を地域に開放するというような貢献をしていただくことが極めて重要なことであろうかと思います。先ほどの協力者会議においても、このことが提言されております。企業等において保有する施設等を極力地域に開放するとの配慮を強く求めるという趣旨でございます。
文部省の調査によりますと、企業は地域社会への貢献の一環としまして、その保有している体育施設のうち約三七%を開放しているという調査がございます。これは昭和六十年の調査でございますが、文部省としては、今後とも企業が青少年を含めた地域住民の特にスポーツ活動等の振興の観点から、これらの施設の開放を一層促進していただきたいということを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/106
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107・高木義明
○高木委員 学校五日制の導入に当たって危惧される一つの有力な意見の中に、塾通いがふえるだけ、このようなものがございます。私は、塾通いと教育理念について、重要な問題をはらんでおると思っております。
最近でありますが、塾の中には、表向きには、社会の批判を恐れてかどうか知りませんが、静かではあります。しかし、内実は新たな営業機会の到来、いわゆる教育産業とも一部で呼ばれておりますが、来るべき学校五日制を想定したカリキュラムを考案中という話も聞かないではありません。この動きは、詰め込み教育を助長し、また新たな受験競争をあおる側面もある、いわゆる親の不安につけ込んだものであるとも言えます。
しかし、私はここで塾をやり玉に上げる前に、もっと考える問題があると思います。それは落ちこぽれと言われる現象に象徴されますように、今学校は、本来学校にとって基本であり、使命であるはずのわかる喜び、こういうものを十分に児童生徒に提供できなくなってしまっているんではないかということであります。このことは現在急速に進行中の公立学校離れ、私たちの周りにもその現象はよく見られます。こういった公立学校離れの元凶と言えると私は思っております。
例えば、算数を例にとりますと、昭和四十三年の学習指導要領では年間の授業時数が二百十一時間であったものが、昭和五十二年の学習指導要領の改訂で百七十五時間に減らされて以来、今日、平成元年の百七十五時間と変わっておりません。これと並行しまして、やはり詰め込み教育を排し、ゆとりある教育を実現するという名目で、各教科の内容が易しくなりました。このことでいわゆる落ちこぼれ問題は解消するはずでありましたが、実際はどうでしょうか。よく言われる言葉でありますけれども、内容は簡単になっても、それとともに授業時間が同様に減少し、それに何の手当てもしなければ、現状は変わらないのではないでしょうか。政府がどう言おうと、生徒にわからせるという観点からは何の解決策も示されなかったことになります。一般に詰め込み教育というと塾がすぐに世間の批判を浴びますが、一方、塾に対する需要が多いのは、よかれあしかれ塾が児童生徒に学校が忘れておるいわゆる子供たちにとってわかる喜びというものを提供してくれている面があるからではないか、私はこのように思っております。この点について、現状の認識はどうなのか、お尋ねをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/107
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108・坂元弘直
○坂元政府委員 大変難しい問題でございます。大都会東京なども公立学校離れということが盛んに公立関係者、私立関係者両方から言われております。
かつて、十年ぐらい前ですと、中学校へ行く段階で公立じゃなくて私学を受けるという生徒は各クラクに何名か、五名にも満たない程度の子供たちだったんですが、今は特に女の子を中心にして相当数、何十人という子供が中学校の私学を受けたいということを言う学校もあるようでございます。公立中学校はいろんな与えられた条件の中で、公立学校の先生もいろいろ苦労をしていることは間違いございません。苦労しておりますが、私どもは従来から、仮にそういう、落ちこぼれという言葉は恐縮ですが、よく教科内容についていけない子供がいたならば、補充授業をやるとかいろいろ工夫して、そういう子供がなくなるように努力していただきたいという指導はしておりますし、先般の学校五日制について提言をまとめました協力者会議の中でもやはり議論がございまして、塾の問題も、もちろんおかしな壁もたくさんあるけれども、同時に学校現場も補充授業を行うなど、それなりの努力はしなければいけないではないかという指摘がございました。あのまとめの中でも補充教室については触れられておりますけれども、いずれにしましても、学校の先生が与えられた厳しい条件の中で一生懸命やっていることは間違いないんですが、ぜひ補充教室などを含めてさらに努力をしていただきたいというふうに私どもも指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/108
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109・高木義明
○高木委員 先ほどから私が言っておりますように、国民のゆとりと豊かさを実感できるものにするためには学校五日制の早期導入は賛成であります。しかし、しつけなどは主として私たち家庭の仕事でありますし、また社会性をはぐくむ上から地域社会が主導権をとって子供たちに教えていく、そういう共有の責任を私たちは負うべきであることは当然であります。としても、やはり教えるという使命を学校が十分に果たし得ないならば、父兄はやはり自己防衛の手段として新たな塾通いに走ってしまう、このように思うのであります。ですから、将来的に学校五日制を真に実りある有意義なものにするためには、さきに述べましたように、学校、地域社会、家庭のあり方とともに、教室で行うべき学校本来の使命である学問の成果をどう後の世代に承継していくかを考える時期に来ておると私は思っております。つまり何をどの程度教えるかです。そもそも何を教えるべきかという授業内容の精選も必要であります。その意味で、科目によっては少人数化や、あるいはまたよく言われるところの習熟度別のクラス編制にするなど、クラスという意味に柔軟性を持たせるのも一つの方策だと思います。また、教師から生徒という一方方向ではない授業、つまり生徒が受け身ではなく、教師と生徒が双方向で授業に参加する方式、あるいはまた生徒が自分の考えをまとめ発表していく能力を育成するための授業を進めていくべきであり、そのためのカリキュラム上の工夫と教師の研修もあわせて充実をさせていくべきだと考えます。そういう意味で、中高一貫教育の推進等も真剣に実現に向かって取り組むべき課題ではないか、このように私は思います。
そういう意味で、国はこの学校五日制導入に伴って具体的に、先ほど私が述べております、また現状認識についてお答えがありましたけれども、子供たちにわかる授業を提供する方策としてどう考え何をしていくべきなのか、この点についてこの際改めてお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/109
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110・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 先ほどからの先生の御指摘や御心配、まことにもっともで正しいことばかりだと思っております。すなわち、この学校五日制を段階的とはいえ導入するに当たって、ある意味でいえば日本の教育の今日的な問題点とか課題、あるいは将来どのような教育を行っていったらいいのかという将来的な視点とか課題、そういうものが生涯学習社会実現を目指している現在の中にあって、いろいろな形で集中的に問題点があらわれてくる、そんな気がいたすわけで、この学校正巳制導入を契機としていろいろな課題に私たちなりに取り組んで問題の解決に当たっていきたいと思っております。
とりわけ、わかる授業ということを先ほどから先生はおっしゃっておられる。つまりこれが月一が月二になった場合に、今の学習指導要領、本当にそれだけの分を教えることができるんだろうか。ますます子供がわからないという気持ちを持つことによって、例えば登校拒否児が四万八千人が倍になるかもしれないという、先生はそういうおっしゃり方はされませんでしたけれども、例えばそういう問題点のあらわれ方というのも予想できるわけであります。そうなりますと、当然将来に向かって学習指導要領の、分量の問題についても真剣に検討しなければならないでありましょうし、これを教える場合の先生の教育力、まあ初任者研修も今既に定着はいたしておりますが、教育力の問題についても改めて議論をしなければならないのかもしれませんし、あるいは家庭とか地域の果たすべき役割というものについても改めて私たちは目を向けていかなければならない。
いずれにいたしましても、そういう諸課題はすべて文部省の所管事項内でございますから、これから数年の時間をかけて取り組んでいくことになろうとは思っておりますけれども、この間も初中局長とは、あるいは生涯学習局長とはしばしば話し合いをいたしております。というのは、五日制を導入するに当たって、我々はいろいろな意味でのお願いの行脚をしなければいけないだろう。例えば、先生がおっしゃった塾の話、これは通産省の関係の法人もあるしあるいはそれ以外の団体もある、そういう塾の方々にも真剣に我々で行脚してお願いして回ってみようじゃないか、あるいはPTAにももちろん理解を求める。先ほど地域社会と、一言で言えば地域社会ということになりますけれども、地域社会といった場合に、これは明らかに文部省のお役人さんよりも選挙というものをやっている皆さん方や我々の方がはるかに詳しいわけで、私の選挙区の東京で言うならば、私の選挙区は台東区、文京区、中央区という三つの自治体です。しかし、この三つの自治体を通じて、いわゆる地域コミュニティーたる町会あるいは町会の役員の皆様方に全部話を通さなければ、こういう問題はきめ細かな対応がとれないということは、先生方も我々も知っておるわけですから、そういうところもきちんとお願いをして歩かなくちゃいけないだろう。私が文部大臣という仕事を今させていただいて、何よりもお願いをしなければならないのは、やはり全国民というか家庭というものじゃないだろうか。先ほどの山原先生の御質問だったでしょうか、「土曜日のパパは僕のもの」何かそんなような表現がありましたが、本当にそういうような家庭の理解というものがあるかないかで、この五日制によって子供さんが体験を積めるか積めないかというのはもう決定的な違いが出てくるわけですから、まず家庭、お子さんたちの両親の理解を得るという、これはもう我々が第一にしなければならないことじゃないだろうか、そんなように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/110
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111・高木義明
○高木委員 ありがとうございました。
私は、この問題はこれで終わりますけれども、今子供たちは広い意味では学校、あるいはまた狭くなりますとクラブ活動あるいは塾、こういった中で管理された一つの子供社会というのが現実にありまして、そういう中である者はひとりぼっちになる、ある者は過当であろうと思われるそういう競争の中から逃げていく、こういう実態があるのではないかと思っております。学校五日制の本当のねらいと趣旨は、子供たちにまさしく自由時間を与える、そしてその時間の中で広範な友達づくりをさせてやる、そして友達との接触の中で自立心とか連帯意識をはぐくむ、こういうことだろうと私は思っております。そういう意味で、この学校五日制、大臣も申されましたように、本当のコミュニティー社会の中でこの理念が生き、そしてまた協力、理解があってこそ十分なものになるであろうと思っておりますので、文部省のさらに一層の取り組みをお願いしておきます。
次に、高等教育問題に入ります。
近年、特に国際国家としての日本の役割や貢献というものが問われております。この国際貢献は何も外交とか防衛といったものだけではありませんで、学問、そして基礎研究も重要な課題であろうと私は思いますしばしば、日本の企業は応用研究を重視して、商品化を前提とした応用技術だけに力を注ぎ、基礎研究は欧米の大学や研究所にただ乗りしていると一部で言われたりしておりますが、これが事実とすればまことに不名誉なことであります。このことは、文部省の高等教育の費用負担の国際比較に関する調査を見ましても、特にイギリス、フランス、ドイツではほぼ全額が公の財政支出で賄われているのに対しまして、日本では五割を切っている現状です。もちろん教育に対する考え方には各国それぞれ違いがあって当然でありますが、それでも日本の高等教育の現状が諸外国に比べて著しく低いと私は指摘をしておきたいと思います。これでは日本の科学技術の将来が心配なだけではなく、国際的な貢献という見地からしても憂慮すべきことであると私は考えております。このままではいわゆる頭脳流出の動きをとめることができませんで、例えば半導体の一部の分野であれ、せっかく世界をリードしつつあると言われる日本の科学技術の優位性も保てなくなるのではないか、こういうふうに危惧をしております。そこで、今や基礎研究は大学、応用研究は企業の役割というような硬直した姿勢をとるべきではありませんで、早急にいい意味での産学協同の発想を取り入れ、私は、この科学技術の分野に大きな力を注ぎ込むことが必要であろう、こういうふうに考えておりますけれども、この点について御所見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/111
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112・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 全くおっしゃるとおりで、異議もなく全面的に先生のお考えに賛成でございますし、またそのような方向で我々が努力をしていかなければならないと考えております。
わずか三十七万平方キロという狭い国土ではありますが、大変優秀な国民が大勢住んでいるわけでございまして、そういう我が国がこれからも国際的な貿易を続けながら生き抜いていくためには、世界から信用をされなければなりません。その国際貢献、世界から信用してもらうという観点においても、日本の科学技術が、日本の学問が、日本の基礎研究がと評価してくださる場合と、この間の委員会でも申し上げましたけれども、日本は応用することばかりが上手で、カレーうどんをつくるけれども、カレーもつくれないうどんもつくれない、カレーやうどんは全部ほかの国の基礎研究に任せておいて、その二つを合わせてカレーうどんを食っているのが日本だ、こういうふうに言われるということは非常に不名誉なことであります。まして資源小国ということになれば、知識集約型産業、いずれ科学技術立国というのが我が国の進むべき唯一の方向ということにもなろうかと考えておりますので、科学技術の世界で日本がもっともっと活躍できるように、そして先生が雄弁に指摘をされたように、日本が先端技術で引っ張っている部分がありますね、これがいわば日本の経済の力を支えているというかアクセルになっている。これが崩れたときには日本の経済も大変もろくて弱いものになってしまうかもしれないというおそれも先生同様抱いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/112
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113・高木義明
○高木委員 臨時行政改革推進審議会の第二次答申によりますと、「高等教育の多様化、弾力化」として「地方国立大学の運営改善、再編等」「大学の地方分散」の方策が示されていますが、私もその中でうたわれております、特に地域社会や地域産業との共同研究、共同活動の推進、大学と地方自治体との協議機関の設置、地域住民への生涯学習サービスの提供という方向は積極的に評価すべきであろうと思っております。まさしく私は地方の活性化はむしろ地方大学の振興にあろう、このように信じておりますけれども、この地方大学の問題について今後どのように取り組んでいかれるのか、お考えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/113
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114・前畑安宏
○前畑政府委員 今先生御指摘ありましたように、いわゆる三次行革審の第二次答申で、地方国立大学につきまして大変厳しい御指摘をちょうだいしております。なお、地方国立大学という用語は必ずしも熟しておりませんで、何をもって地方国立大学というのか必ずしも明確ではありませんが、私どもとしては、今先生御指摘ございましたように、各地域における教育、研究の中心として地域に対する幅広い貢献を期待いたしておるところであります。これは単に国立大学のみならず、公立、私立の大学を含めても同様でございます。
ただ、私どもの大学審議会の答申でもちょうだいをいたしておりますが、大学が地域社会への積極的な貢献をするというためには、何よりもまず各高等教育機関自体がすぐれた教育、研究の実績を上げ、社会的な評価を高める、それによって地域から頼りにされるということがまずもって必要ではなかろうかというふうに考えておりまして、御案内のとおり、私どもといたしましては、先般来大学審議会の答申をちょうだいいたしまして、設置基準の大綱化であるとかいろんな制度の改正を図ってまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/114
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115・高木義明
○高木委員 先般、国立長崎大学に関連をいたしまして、前畑局長が長崎に来られた折に県庁で記者会見をした。そのねらいと趣旨については定かではありませんけれども、この記者会見の中で、長崎大学はそんなに大した大学ではない、このままでは死に体だ、こういった発言がなされ、地元の関係者はひとしく大変なショックを受けておる事例が発生をいたしました。これは平成四年度予算に関連をして長崎大学の予算要求が文部省の方で事前にカットされた、こういうことから発した一連の出来事であったと私は思っておりますが、特に、いろいろな声が出ておりまして、例えば今の大学で現実に勉強をしておる学生あるいは進学を目指して日夜頑張っておられる児童生徒、そしてまた父兄、OB、そして地域住民、こういった方々が、文部省の責任ある立場の方がこういった発言をすることは極めて遺憾だという声が甚だ強いわけであります。
私は、多くの中で、これは新聞の投書でございますけれども、ちょっと紹介をします。ある主婦の投書でございます。「文部省役人のあまりにもひどい発言を知りいても立ってもいられず、初めてここに投稿します。」として、次のように述べております。「私の主人も一度入った大学をやめ、志に燃えて長大」長崎大学です。「長大に入り直した人間ですが、あの発言には相当ショックだったようです。息子たちにとってもこれからの進路が真っ暗なような不安を抱いています。一体あの暴言は、自らが旧帝大出身であり文部省に勤めるというエリート意識から来るのでしょうか?」これは疑問符であります。「旧帝大こそが真の大学であり、他の大学は十把一絡げだという考えが根強く残っている現実に失望し、これでは東大を中心とする派閥主義、日本の偏差値中心の学歴社会は改まらないだろうと憂慮する次第です。」こういうことで結んでおるわけでありますが、こういった気持ちというのが現実に地域社会の中には蔓延をしております。県議会におきましても、この種の質問に対して、県知事は、地元出身の局長のことだから、地元のことを思ったゆえにあのような発言をしたんだろうと言いながらも、やはりもう少し言葉を慎んでもらいたかった、こういうことを答えているようでございますけれども、この辺の一連のいきさつと真意について、この際明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/115
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116・前畑安宏
○前畑政府委員 私の、十一月三十日でございましたか、長崎における記者会見の発言におきまして、一部不穏当な言葉がありましたために、県民の皆様方に大変御迷惑をおかけし、また、こうして本日は国政の場で高木先生をお煩わせするようになったことは、不徳のいたすところと深く反省をいたしております。
記者会見に至った経緯は、もう先生御案内のところでございますし、時間もございますので、多くは申し上げません。私どもの概算要求の取りまとめ方につきまして、長崎大学の学長が私を含めて文部省を非難をしたということがございました。その新聞に報じられているところによりますと、必ずしも事実ではないことがありまして、そのことを私は放置をいたしておりましたが、伝え聞きますと、文部省があるいは私がそれを否定しないことは、消極的に事実を認めているのではないかというふうな様子になっていっているということがございましたので、ちょうど長崎大学商科短期大学部の三十周年だと思いますが、記念式典がございました機会に長崎へ参りまして記者会見をした、こういうふうなことが経緯でございます。
それから、これも先生御案内と思いますが、私も長崎市の出身でございまして、長崎大学の経済学部のところではいつも子供のころ遊んでおりまして、いまだに愛着を持っております。そういうことから平豊から長崎大学に関心を持っておりましたが、県民の方々が誇りにされておる長崎大学が一体現実はどうなっているのかということは、私どもとしては仕事を通じて十分承知をしておりました。そこで、学長あるいは事務局長には平生からもっと頑張ってもらわなきゃ困る、こういうことを申し上げておりましたが、せっかくの機会で記者会見でございましたので、直接に教官の方たちにも訴えたいということで長崎大学の現状批判をいたした、それが若干言葉が過激な点があったということで、県民の方々の御心配をかけた、こういうことでございます。
先ほども申し上げましたように、それぞれの地域にある大学が地域に貢献をするということは大変大事なことでありますが、そのためには何よりもまずそれぞれの大学がすぐれた教育、研究の実績を上げ、社会的な評価を高めるということが大事であります。そういう点から、私といたしましては、長崎大学にいまひとつ奮起をしていただきたい、このような趣旨で行った発言でございます。
なお、つけ加えますと、ただいま先生が御引用されました、大した大学ではないという発言は、記者会見のその場で取り消しをいたしておりますので、御理解を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/116
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117・高木義明
○高木委員 私は、事の次第はいろいろいきさつもあるのでしょうし、ある情熱に燃えられての発言かもわかりませんが、しかし、やはり文部省の方が、しかも責任ある立場にある方がそういう発言をすることそのことが、私は教育的にとって非常に問題なことではないかと思っております。したがって、私は十分に慎んでほしいし、反省をしていただきたい。
大臣、大変この問題については県民の中に心を痛めておる方がたくさんおられます。これが文部省のすることかという気持ちを持っておる方もたくさんおられます。この際、私は文部大臣にこういったいきさつについてどのように取り扱い、そしてまた所見があられれば、その点についてお尋ねをしておきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/117
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118・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 前畑局長自身から反省も込めて御答弁をいたしたとおりでございまして、国立の高等教育機関をめぐりましても、予算上大変厳しい状況にありまして、ことしはどこの国立大学が重点要望がつくだろうか、うちの方は何年ぐらい後だろうかというのは、相当なつばぜり合いが行われていると私なりに認識をいたしております。そういう中で、長崎大学の重点要望が平成四年度ベースでは認められるところとならなかったという点が若干の発言の誤解等も生むようになっていったのであろうと、先ほど局長がみずから答弁したように、私もそのように考えております。
ただ、先生も私の答弁を聞いておって御理解をいただけると思いますが、私と前畑局長というのは基本的に同じタイプでございまして、私もどっちかというと昔から言葉が暴走する方でして、売上税はエイズだとか、除名が怖くて売上税反対が叫べるかなんという物の言い方をしてはしょっちゅう怒られてきた方でございます。うまいこと玉虫色に物を言えない、そして若干感情的にも高ぶりやすいという性格をみずからも持っておりますから、よく言葉の暴走であらぬ誤解を受けることがあるわけでして、前畑局長、長いおつき合いをいたしておりますと、大体同じような傾向にあるなと思っておりまして、そういう若干の感情的な問題もあったのだろうとは思いますけれども、ふるさと長崎を思う気持ち、それは長崎大学がもっとしっかりしてもらわにゃ困るんだという、その御自身の気持ち、自身が高等教育局長という立場にあって、しかし今の状態ではまだ予算をきちんとつけてやれる段階には至らないという、そういう悔しさみたいなものが長崎大学よ奮起せよという強い表現となってあらわれて、その表現の仕方にやや不穏当な部分が出たことが新聞に大きく報道されたことではないかと思っておりますので、御本人の今答弁されたような状況をよく理解をしていただければありがたいと思いますし、私もまた局長ともよく話し合ってみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/118
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119・高木義明
○高木委員 ちょっと時間が来ましたので、多くを申し上げませんけれども、文部大臣、大臣が文部省の皆さん方、特に前畑局長のことを思われる大変人間味あふれた温かい心、それはよくわかりました。そして、また局長も長崎大学をよくしたいがための発言だということも、これも私もわかっております。しかし、誤解を与えることをしたことについては、私は厳しく反省をしてもらいたいのです。私はそれを大臣の方からお聞きをしたかったのです。大変温かい大臣の心の中はわかりましたけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/119
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120・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 みずからの例を申し上げましたように、私自身もそういう失敗を重ねてきている人間ですから、毎朝起きて自重自戒をして国会へ向かって、こちらへ参上しているわけでありまして、私も大臣就任以来既に幾つものミスを犯しているかもしれません。しかし、また前畑局長の表現が地元長崎の皆様方に非常に大きな誤解を与えたりあるいは感情的なショックを与えたりしたということについては、これは私、立場として反省を促さなければならない身でもありますから、その点は局長ともう一度よく話し合ってみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/120
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121・高木義明
○高木委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/121
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122・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまです。
佐藤泰介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/122
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123・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 私は、ますます深刻化する、また午前中の我が党の中西委員の質問に対して文部大臣も当面する重要な課題の一つとして挙げられた不登校児の問題について、二月二十七日の本委員会における宇都宮委員の不登校児の出欠にかかわっての質問に対する坂元初中局長の答弁について、もう少し具体的にお伺いをしたいと存じます。
局長は、不登校児の通っている民間施設での指導を教委と学校長が認めれば出席扱いにしても構わないと答弁されました。この中で言われた教委とは、県教委、市町村教委のいずれを指して言われたのか。また当該施設の認定に当たっては、認定か指定か、どのような手続をとられるのか、そして認定されるのか。またその際、現場の学校長はどのようにかかわるのか。そして文部省は一体その場合どのような立場に立つのか。まずこの四点についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/123
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124・坂元弘直
○坂元政府委員 教育委員会というのは、学校の設置者であります市町村教育委員会を私ども考えております。
それから、民間施設の認定とか指定の話でございますけれども、これは私ども認定したり指定したりする考えはございません。民間施設ですから、文部省の所管ではないもので、私どもとしましては、全国的に二百三十九ある民間施設をそれぞれそれが置かれておる県の教育委員会あるいは市町村の教育委員会がどういう授業を行っておる施設であるかをチェックしていただく。そのチェックしたものを持ち寄って相互に情報交換を、各教育委員会のこの種の問題の担当指導主事なり担当官が相互に情報交換をして、その名簿を持っている。そして、仮にある市町村の学校に通っておる子供がどこか県外のそういう民間施設に行きたいという場合に、仮に保護者が神奈川県に行きたい、東京にいて神奈川県の施設に行きたいという希望があったときに、県の教育委員会の担当者が、神奈川県にどういう施設があって、それは神奈川県の教育委員会から入った情報ですが、神奈川県にどういう施設があってどういう授業を行っているかということを情報として流してやる。
それから、認定とか指定とかいうのではなくてチェックをする。教育委員会が、あの民間施設はそういう不登校の子供たちを教育する、養育する場所として適当であるかどうかということをチェックするメルクマールみたいなものは、実は現在不登校等の学校不適応の生徒に学校でどういうふうに対応していくかということについて御議論をいただいておりまして、その協力者会議でも、現在そのチェックポイントを検討しております。十三日に最終報告がいただけると思っておりますが、そのチェックポイントを各県に私ども流してやって、そのチェックポイントに基づいてチェックをしていただきたいというふうにお願いをしまして、民間施設が全部チェックポイントをクリアしているか、あるいは一部クリアしてないかというのは、関係者、先ほど申し上げました各都道府県の担当官がすぐわかるような、そういう表をつくりたい。
それで、文部省はどういうふうにかかわるのかということでありますが、文部省は各県の情報交換をする場合の核になっていろいろ情報交換をする便宜を図ってやりたいというふうに考えております。(佐藤(泰)委員「現場の校長は」と呼ぶ)もちろん施設を紹介する場合には、現場の校長とも相談をしてやるのですが、出席か欠席かの判断を——現場の校長がですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/124
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125・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 違っておったら指摘をしていただきたい叱思いますが、教委と学校長が認めれば出席扱いにしてもというような答弁内容だったと思うのですよ、先日。そうすると、学校長もその認める側の一人に加わるわけでしょう、答弁趣旨からいいますと。そうすると、学校長がそこで果たす役割ということについてお尋ねしたかったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/125
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126・坂元弘直
○坂元政府委員 ちょっと私が先日は舌足らずの点があったかと思いますが、進級あるいは卒業の認定は校長先生の専権的な権限でございます。教委と学校長が認めればというのは、進級、卒業の認定をする、あるいは出席扱いにするかどうかの認定を具体的にするのは校長であります。教委が認めればというのは、ある施設に行かせる場合に、教育委員会とも相談をして、あそこなら——教育委員会はもちろん県のあれと相談するのですが、あそこなら大丈夫だと教育委員会も念を押した、そういう施設という意味で、教委と校長が認定すればというちょっと舌足らずで恐縮でした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/126
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127・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 じゃ、ちょっと確認をさせていただきますが、市町村教委がチェックポイントに基づいて認定をして、そして市町村教委が認定したものが県に集約をされて、そして文部省として一括して集約されるということでしょうか。そんな内容の答弁だったですか、今。よろしいですか、それで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/127
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128・坂元弘直
○坂元政府委員 施設をチェックする仕組みとしましては、その表をつくる仕組みとしましては、原則的にはそれは県の教育委員会にやってもらおうと思っております。
ただ、県の教育委員会限りじゃとてもできませんので、その施設が置かれておる教育委員会も協力して表をつくる。そして市町村教育委員会が、私どもが認めればというのは、ある施設に行きたい、自分のところにある施設じゃございません。ほかの市町村の施設に行きたいというときに、県の教育委員会と相談をしていろいろチェックポイントを見て、全部クリアしている、ここなら大丈夫だということを市町村教育委員会も確認をし、そして校長先生にあそこなら大丈夫だという、そういう流れでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/128
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129・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 そうすると、学校現場では、校長が独自に判断をしてその施設へということではなくて、今の手続のもとに市町村教委が学校長にここなら結構ですよと言ったときに、学校長はそれを出席として認める、こういう意味だったわけですね。ありがとうございました。
では次に、いわゆる風の子学園事件以降、不登校児が通う民間施設について全国的な調査をされたと思いますが、そうした施設について施設数、その規模、どのような指導者がどんな指導を行っているのか、それらの施設に通っている児童生徒数、多分お金もかかるだろうと思いますので、指導料も含め適所にかかわる保護者の負担はどの程度になっているのか。
以上、その四点について実態がわかりましたら御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/129
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130・坂元弘直
○坂元政府委員 風の子学園の問題が生じまして、私ども急速とにかく実態を至急把握しろということで把握させたものですから、必ずしも先生が今御要望のあったあれをすべて満たしてはおりません。実は経費などについてはまだ調べておりません。
それで施設としましては、長期宿泊型、短期合宿型、適所型、施設のスタッフによる訪問指導、家庭にいるのですけれども、その施設のスタッフが来て訪問指導をする、その他と五つのタイプに分かれておりますが、典型的に多いのは適所型でございます。それが六八%。それから宿泊型が二九・六%。訪問型が二・三%。それから施設数は三十九あるのですが、これが宿泊だか適所だか訪問だかまだ調査した段階でははっきりしてなかったというものがその残ったパーセンテージでございます、
指導の中身は、カウンセリング、教育相談、学習指導、精神修養、生活訓練、体験活動、勤労体験、自然体験等でございます。それから絵や何かをかく創作活動、自由活動として音楽、ゲーム、討論などとなっておりまして、これも実はこの段階ではまだチェックポイントというものができてなかったものですから、一応こういうような形で私どもまとめてはおりますけれども、チェックポイントを明確に協力者会議の報告をもらった後に各県に一示しまして、そのチェックポイントに沿ってチェックをしていただきたいということで、もう一回詳細な調査をいたしたいというふうに考えております。
この段階でどのぐらい通っておるかというところですが、宿泊型ですと一カ所当たり平均十一・二人。適所型、通っていろいろ相談してもらっているところは二十二・一人。やや宿泊型の方が小さな規模になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/130
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131・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 二百三十九ですね。最初二百三十九、後で三十九と言われたように思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/131
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132・坂元弘直
○坂元政府委員 先ほど民間施設の指導形態による分類のところで宿泊型が二九・六、適所型が六八・一、一訪問型が二・三と言いましたが、その際に分類上の不明というのがございまして、それが三十九あった、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/132
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133・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 では次に、今説明していただいたように、そうした民間施設は大変多種多様な形態をとっていると思うのですが、今回それらに当たって認定をして出席扱いにするということは、それらの施設を義務教育の履行の場として結果的に認めることになるのであろうと私は思います。チェックポイントの話も出ましたが、そうした場合、その設置主体や要件などの基準をどのように設定していくかがこれからの大きな問題だろうと思います。多分、協力者会議のというふうに言われましたので、今後検討されていくんだと思いますけれども、現在局長の段階でどのような認定基準を描いて先回のこの委員会で答弁をされたのか、抽象的でも結構ですので、こんなことを考えているというような点がございましたら御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/133
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134・坂元弘直
○坂元政府委員 全部を読み上げるのもあれですが、今またこれは私どもこれから検討を加えていこうという試案の試案なんですが、例えば実施主体につきましては、法人、個人は問わないが、問題行動に対して深い理解と知識または経験を有し、かつ社会的に信望を有している、そういう法人あるいは個人がやっていること。会社などもやっているところがありますが、著しく営利的なところは実施主体としては不適当であろうというようなこと。
事業運営のあり方につきましても、これまた児童の問題行動に対する相談あるいは指導を行うことを主たる目的としていること。それが従であって、ほかのことが中心的なあれで、ほんのわずかなところでそれをやるのはやはりおかしいだろうとか、それから相談、指導のあり方としてかなりの項目を挙げてありますけれども、いろいろなことに対して知識を有している者が指導を行っているとか、あるいは体罰などをやるようなところはだめだとかいうようなこと。それから相談、指導スタッフについてもチェックをしたいと思いますし、施設設備についてもチェックをいたしたいと考えております。それから家庭との関係で、常時家庭と定期的に連絡をとっている施設とかというような、かなり抽象的で恐縮でございますが、これからこれをさらに細かく省内で検討してまいりたいと思っております。
ただ、私どもの考え方として、そこの施設の行っている事業を、真の、普通の、通常の、日常学校で行っておる義務教育と全く同じだというふうには考えておりません。というのは、子供たちが学校に行けない、何とか立ち直ろうといって努力していることをそれなりに評価してやらなければいけないのじゃないか。ただ、その評価といっても、口で評価するとか言っても子供たちにとっては全然わからないわけですから、一生懸命立ち直ってまた学校に戻ろうという、そこは学校の出席扱いにしてもいいじゃないか、そういう気持ちでございます。
それから、例えば一部に、学校なんか行く必要ないうちに来なさい、そうすれば、卒業するときにちょっと学校へ行けば卒業できる、それで完全に進学塾と同じようなことをやっているような、そういうところは私どもとしては排除してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/134
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135・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 大体理解をさせていただきましたが、いずれにしても、今回の措置については、今の局長の答弁ですと違うわけですけれども、ひょっとしたらこれ学習塾も含まれるのではないかという声も既に出ているわけですよ。そういう中で、この認定基準については非常に慎重な教育的な配慮や判断が必要であろうというふうに私は思っております。
今さまざま言われましたけれども、私も、そこの指導者としては、教員の資格を持った人がその施設に、全部でなくてもある部分いるとか、あるいはカウンセリングをやるとか、いわゆる教科指導にも力が入っているとか、今家庭との連携ということを言われましたけれども、多分籍は在籍校にあるんだろうと思いますから、そこへ行くわけですので、在籍校との連携もかなり密にしていかなければいけないのではないかと考えます。私はこんな点も認定基準を考える場合に考えていただきたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/135
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136・坂元弘直
○坂元政府委員 今私長くなりますのでチェックポイントについて全部を説明しませんでしたが、学校、それから設置者である市町村の教育委員会とも十分に連絡を密にするということもチェックポイントに入れておりますし、それから専門的なカウンセリングを行うために心理学や精神医学など、それにふさわしいこれはお医者さんでなくてもいいのですが、専門的知識を持っている者とか、そういうものも詳細にチェックポイントの一つとしてカウントしたいと思っております。
いずれにしましても、先生も御指摘のとおり、かなりの、百八十度くらいの転回でございますので、相当慎重にチェックポイントを決めチェックをしていかなければいけない問題だろうと思いまして、先般、初中局内に担当官による連絡会議、これは小学校課、中学校課、高等学校課、幼稚園課という課が全部あるものですから、課長補佐クラスの検討会議を設けまして、今鋭意検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/136
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137・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 では、チェックポイントについては、今局長の答弁にありましたように、殊にこれによってこの今回の措置がいろいろな形に変わっていくと思いますので、十分な検討をお願いしておきたいと思います。
次に、局長も少し触れられましたけれども、今回の措置はあくまで不登校児の義務教育履行のための限定的な措置であって、義務教育の履行の場の拡大につながるものではないと私も思っております。
そこで、今申し上げたことを確認をさせていただくと同時に、今回の措置の中にはいわゆる学習塾は含まないということもあわせて確認をさせていただきたいと思います。この点については、大臣の方からもひとつ確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/137
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138・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 詳しい事柄については坂元局長でないとお答えができないわけですが、先ほどから先生と初中局長の質疑内容を聞いておりまして、これは我が国の義務教育制度の根幹にかかわりかねない問題であります。
ただ、午前中の質問にもお答え申し上げたように、今の教育の課題は何だ、おまえ最優先にことし取り組んでみたいと思う課題は一体何だ、こういう質問に対して、それは十も二十も言いたいんですが、確かにこの登校拒否とか高校中退というようなテーマは思いつく二つ三つの最大のテーマのうちの一つになることは間違いありませんで、そうした問題と義務教育という我が国の小学校、中学校においてとってきた、大いなるまた成果を上げてきた制度との接点の問題であるだけに大変難しい部分がありますが、その点については、やはり慎重にこれを見極めていかなければならないとつくづく思います。
かつて、教育の自由化論議というのがいろいろあった。それで教育の自由化というのは言葉で言うとすごくいいことだし、ただ個性を尊重するということですと、一〇〇%私は受け入れることができます。今回の所信表明の中には、「個に応じた教育」、一人一人の児童生徒を見詰めた教育をやりたいという希望を述べたわけですけれども、その教育の自由化論議というのは、ともすれば非常に変な方向に行くわけですね。ある政界の大先輩のところに教育論議を挑みに行ったときに、君たちば塾という問題について悩んでおるだろう、はい、そうです、塾という問題について文部省が悩まないで済む方法があるんだ、何ですか、塾をみんな学校に認めてやればいいんだ、こういうことを言われました。学校というのは校門があって校庭がなくちゃいかぬというものじゃないだろう、そんな硬直した学校という定義をするから学校対塾という問題が起きるんだ、こういう話を聞いておりまして、こういうような考え方でいくと日本の義務教育制度の根幹が揺らいでしまうと私は思うものですから、先生の御指摘の塾という言葉については、私も正直言って今度に座っておって相当過敏に反応しておったというのが事実です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/138
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139・坂元弘直
○坂元政府委員 今大臣からお話ありましたとおりに、私どもとしましては、あくまで我が国の公教育としての義務教育制度を前提とする。したがって、そういうところに通っていても、いつかは義務教育である小学校なり中学校に戻ってくるということを前提として考えておりますので、一般的に言って、学習塾というものを頭には描いておりませんで、それは排除していかざるを得ないだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/139
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140・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 ありがとうございました。大体私の考えと同じで安心をしましたが、具体化あるいは運用に当たって、今文部大臣も言われましたように、義務教育の根幹にかかわってくることもあり得ると思いますので、今そんな点をお聞きしたわけでございます。
したがって、今限定的な措置であるということですので、そうしますと、現に不登校になっている児童生徒、そして苦しんでいる児童生徒にとっては、全面的な評価はできないにしても、一定のその救済措置になり得るのではないかと私は今思っていますが、そうしたら、こうした措置を認める場合、法的な手直しなりあるいは手当てというものは一体法的に必要があるのかないのか、この点を伺いたいと思います。
同時に局長は、不登校児について、当該児の保護者は就学義務の猶予または免除を市町村教委に願い出ることが建前である、事例はないがというような答弁もしてみえますので、それとのかかわりで、この民間施設へ通う場合、これを出席にカウントする場合、法的な手当であるいは手直しというものは必要あるのかないのか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/140
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141・坂元弘直
○坂元政府委員 後段の部分からお答えいたしますが、先般の答弁は、登校拒否の子供の保護者が就学義務違反で問われるのではないかという宇都宮先生の御質問、そういう趣旨の御質問だったと思います。そこで私が答えましたのは、形式的に言いますと、就学義務を問題とするのであれば、就学義務を猶予あるいは免除することも形式的には一つの方法として考えられる、形式的にはそれをしなければいけないのだろうけれども、そうはいうものの、ここはそのとき答弁いたしませんでしたが、就学義務の猶予または免除というのは極めて限られた、もう本当に心身ともに非常に障害があって学校に行けないという子供に限定的に猶予または免除を与えておるものですから、現実にはそういう取り扱い、仮に不登校の子供の父母から申請があったとしてもなかなか実態としては認められないかなという感じはしたわけですけれども、ただ、実際にはそういう申請をした例はございません、そういう趣旨でお答えさせていただきました。
それで、法的措置を講ずるのかということでございますけれども、私ども特段の法律上の措置を考えてはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/141
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142・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 特段の法的な措置は必要ないということですが、建前のところはちょっと理解しにくかったわけですが、学校教育法二十三条では、今局長が言われたようにかなり限定的に枠を狭めているというふうに思います。と同時に、その施行規則四十二条には、就学義務の猶予または免除を願い出る場合には、その事実を証するに足る書類といいますか証明書を、第三者なり市町村教委が指定する医師の証明書を添えなければならないというふうになっておりますので、不登校児の場合は、これは恐らく不可能だと思うのですね。一体だれが不登校の理由を市町村の教育委員会に証明するか、そんな証明書を添えて願い出るということはおよそ私不可能だと思いますので、そうした不登校児がそういう猶予または免除を願い出るということは、これは建前ということは必要なのか必要でないのか意味がよくわかりませんけれども、ちょっとその建前という答弁はもうお変えになって、必要ないというふうに理解させていただいてはいけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/142
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143・坂元弘直
○坂元政府委員 正当の理由がなくして、義務教育を受けさせなければなもない父母が、その子供たちを出席させていない場合には、罰則を受けるような規定に学校教育法の系列はなっている。それを解除するために就学義務の猶予とか免除を受けるという建前になっておりますが、先生御指摘のとおり、親とすれば、登校拒否の状態が続いているけれども、一生懸命になって保護者は子女の出席を説得し、学校へ行かせてやりたい、それにもかかわらずなお行けない。その場合に、本当に明らかに、精神科の医師に診せれば、もう精神的にどうしようもないぐらい困って。おるというようなのはごくごくまれだと思います。そういう場合には、医師のあれをつけて猶予を願い出て猶予するという余地はあるかもしれませんが、一般的に言えば、それは先生さっき御指摘のとおり不可能なことだと思います。そうなりますと、親が一生懸命努力しているにもかかわらずなお行けないという場合には、正当な理由がなくて親が就学義務を果たしていない場合には罰金幾ら以下に処するという、その正当な理由がなくしてじゃなくて、親は一生懸命やっているけれどもだめだったという意味では、その罰則規定は働く余地はないだろう。そういう意味からいって就学免除なり猶予の手続はしなくてもいいだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/143
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144・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 じゃ、今答弁のあったような運用でお願いをしたいと思います。協力者会議の中間報告でも、いわゆる従来の登校拒否の見解を、特定の子ではなくてすべての子に不登校になる可能性があると言っているわけですので、不登校児の就学猶予なり免除にかかわっては、現実には起こり得ないだろうと思いますので、それが事例がないということだと思いますので、今答弁いただいたような形で今後運用をしていただければというふうに思います。
では次に、そうした不登校の児童生徒がやむなく民間の施設に頼らざるを得ない場合も私はあろうと思います。また、先ほどの説明の中にあったように、宿泊を伴うものや各県が連絡をとって県外まで通うというような場合もあろうと思います。その場合は、先ほどは費用についてはまだ調査をしてないということでございましたけれども、相当な費用が私はかかるのではないかと思います。一定の救済措置とはいえ、学校へ通うかわりにそこへ通ったことによって義務教育の出席になるわけでございますので、そうした民間施設に通う児童生徒の保護者の負担について、今後何らかの救済措置を講じていかれるような考え方は現在のところあるのかないのか、この点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/144
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145・坂元弘直
○坂元政府委員 民間施設といいましてもいろいろな形態があるわけでございますので、私どもとしては、今の段階で、国でそういう民間施設に対して財政的な援助をするという考えは持っておりません。
いずれにしましても、この制度を先ほど来説明しているような形でとにかくスタートさせてみようという、そちらの方に一慎重に検討し、スタートさせてみようという段階でございまして、財政的な援助というのは考えておりません。それは、例えば専修学校の高等課程にも、先生御承知のとおりに大学入学資格を与えております、文部大臣の認定である意味では高等学校と同じように機能しているんですが、それでも経常費助成等は行っていないというようなこともありまして、いわんや、この種のものは非常に多様な形態でございますので、ちょっと国庫補助を与えるということは難しいのではないかという気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/145
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146・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 今の答弁、大体理解をいたしますけれども、問題は、こういう生徒がふえなければ、そういうことを考えなくてもいいわけですので、そちらの方へ対策を講じていかなければ、十分な対策を講じていくことの方が重要であろうと思います。ただ、大変な費用になる場合もありますので、今後の検討課題の一つとして考えていただければな、そんなことを思います。
次に、こうした施設にさえも通えない不登校児も私は相当いるのではないかと思います。学校へも、学校外の施設へも通えない不登校児への配慮も同時に必要になるのではないかと思います。そこで、そうした不登校児への対策についてどう今考えてみえるのか、お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/146
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147・坂元弘直
○坂元政府委員 結局、最終的には、地域、家庭、それから学校が一体となっていろいろな形で本人を励ますということに私は尽きるのではないか。ただ、その場合に、例えば適応指導教室などについて、私どもも県なり市町村でつくるそういう施設に対して若干の補助金は出しておりますけれども、要するに、最終的には、先生、学校と、それから家庭、地域というところで真剣になって取り組んでいただくより王道はないのじゃないかという感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/147
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148・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 地域、家庭が中心にならざるを得ない、それはそのとおりだと思うのですけれども、現実に通えない子供や家庭にとっては、これは大変な問題だろうと思うわけです。そこにやはり温かい手を差し伸べるというのも、文部行政の一つの重要な部分ではないかと思うのです。
ちょっと伺ったところによると、訪問指導というような形があるやに聞きますが、今答弁の中になかったわけですけれども、訪問指導というものの実態といいますか、公的な負担で訪問指導が全国的にどの程度行われているのか。今家庭や地域というのは、やはり民間ボランティア等の方々の協力を得て、そうした訪問指導も行われていると思います。そんな訪問指導の問題について、簡単で結構ですので、お答え願えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/148
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149・坂元弘直
○坂元政府委員 確かに先生御指摘のとおりに、家庭訪問や電話による励まし、それから相談指導員というものを教育委員会が委嘱いたしまして、これは校長先生あるいは一般の教員をやめたばかりの、比較的やめてすぐのような人で、こういう事柄に非常に理解のある、よくわかっておるかつての先生方を相談指導員というふうに委嘱しまして、地域を回って巡回相談に応じたり、家庭訪問やなんかやったりいたしております。
それから、来年度私ども適応指導教室に予算で補助金をつけていると申しましたが、その中に、従来はそういう項目はなかったのですが、訪問指導員の経費についても補助の対象にしてやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/149
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150・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 今言われた訪問指導のさらなる拡充を強く要望をしながら、次の質問に移らせていただきます。
今回の措置によって、逆な面で、そういうところが出席に認められる、例えば保健室登校も出席に認められる、あるいは教委がやる適応指導教室も認められる、民間の塾も認められる、施設も認められるということになると、みずからの意思で意図的に不登校になっている生徒、これは不登校というより学校拒否をしている生徒も中にはあろうと私は思うわけですね。しかし、そうした生徒がふえていったのでは、今回の措置は本末転倒になるのではないかというふうに思いますので、そうしたことに対する一定の歯どめなり配慮というものも考えておかなければいけないだろうと思います。時間がなくなってまいりましたので、これは答弁いただかなくても結構ですので、その協力者会議の中で十分その点も検討なり配慮をしていただきたいと思います。
そのことを申し上げながら、次に、今回の措置によって学校基本調査の長期欠席児童生徒数は、調査の取り扱いを変更される考えがあるかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。といいますのは、これまで欠席扱いとなっていた児童生徒が施設へ通うことによって、それを出席にカウントすれば、当然長期欠席児童生徒数は統計上からは減っていくような気も私はするわけです。そうしますと、それは根本的な解決になっていないわけですので、この学校基本調査の長期欠席児童生徒数の調査の取り扱いについては今後も変更されないというような答弁をいただきたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/150
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151・坂元弘直
○坂元政府委員 確かに私ども五十日以上の不登校をカウントいたしまして、そしてそれがいわゆる私どもで言う登校拒否、不登校の子供たちの数であるというふうにしておるものですから、それを出席扱いということになりますと、全部行けばゼロになってしまうというやや矛盾した、実際にはそういう登校拒否の状況にあるにもかかわらず、そういうことになりかねませんので、学校基本調査の統計上どう扱うかという点も含めて、局内に設けました検討委員会で検討してまいりたいというふうに考えております。少なくとも、その事実、実態が何が何だかわからなくなるような、そういう統計になっては困るということを前提に検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/151
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152・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 じゃ、十分な検討をお願いしたいと思います。これまでずっと何年か、その形で統計をとってきたものですので、この措置がとられたことによってそれが変わると、統計の比較がわからなくなってしまうというような点もありますので、この調査については従来の形で調査を続けていただきたいことを要望しながら、次に、局長の方からも話が既に出ましたが、各県の教育委員会が設置をしているそうした適応指導教室等の公的な機関、そうした施設の実態について、時間もなくなってまいりましたので、こんなことを行っているということをお答え願えればというふうに思います。簡単で結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/152
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153・坂元弘直
○坂元政府委員 本年の三月現在、要するに文字どおり今現在の各県の状況でございますが、全国に百六カ所設けられておりまして、指導員はおおむね退職した教員などでございます。非常勤のカウンセラー等が指導に当たっている例が多い。それから通級生徒数は、平成二年度の調査では一教室当たり二十八人。したがって、今もこの平均二十八人が変わらないということならば、大体その百倍、二千八百人、三千人ぐらいという数字ではなかろうかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/153
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154・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 大臣、もう出かけられるのですか。(鳩山国務大臣「はい」と呼ぶ)最後に、一つ聞きたいことがございましたので、それじゃ、ちょうど時間になりましたので、最後の質問を申し上げますので、一言だけお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
不登校の問題は大変大きな課題であろうと私は思います。そして、今答弁いただいたことについては、一定の理解はさせていただきますが、それは決して不登校児への根本的な解決策ではないことは、文部省も文部大臣も十分に御承知をしてみえることと思います。私は、不登校の原因や背景は、学校、家庭、社会の問題が複雑に絡み合っているとはいえ、大きな要因は、一枚のぺーパーテストの点数によって、その人間の生涯の位置づけを決定してしまうという、文部大臣も言われましたけれども、学歴社会のひずみ、あるいは受験競争の中で学校が子供一人一人の個性を大切にする教育体制ができていない、こんなところにもあろうと思っております。今回の措置は、繰り返しになりますが、現に不登校になって苦しんでいる子供への一つの対策にはなり得ても、不登校児の根本的な解決策にはなり得ないと私は考えます。不登校は子供の心の問題だけに、根本的な解決を図るには多くの課題があろうと思います。現在の子供たちが子供らしく成長できない要因を一つ一つ取り除いてやり、中教審にも指摘されている、心の抑圧からの解放を図ってやることが極めて重要であろうと私は思います。午前中にもさまざま論議されましたが、また先ほども論議されましたが、当面している学校五日制の意義もまさにそこにあるのではないかと思いますし、偏差値重視の入試改革も必要でしょうし、また個を大切にし、生きて働く学力を子供たちが確実に身につけていくためには、中西委員の方から指摘がございましたような、適一正な学級規模や教職員の配置も欠かせない条件ではなかろうかと思います。いずれにしても、特効薬はないわけですので、さまざまな施策を幅広く講じていく中で解決を図っていかなければならないと思います。
そこで、最後に大臣に、こうした不登校児に対する今後の取り組みについて、その決意なり考え方をお伺いし、ちょうど時間が来ましたので、私の質問を終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/154
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155・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 先生の御指摘、そのとおりだと思います。
というのは、日本の義務教育制度については、私は相当大きな誇りを日本国民あるいは文部省は抱いていいのではないかと従来からも申し上げてきているわけですが、その義務教育制度の根幹を揺るがしかねない、いわゆる不登校問題というのがある。まさに社会的な病理現象の一つといっても、あるいは社会問題の一つといってもいいのかもしれません。四万八千人ということではありますが、当然これは中学校が四万人で小学校が八千人ですが、若年齢化していくとさらにふえるおそれがあるし、年間休日五十日というとり方ですから四万八千人ですけれども、三十日というオーダーでとったら、そこの線でとったら何万人になるか、大変な数になるかもしれない。これはまさに社会的な病理現象あるいは一つの大きな社会問題、これに目をつぶることは絶対に許されないわけですから、とにかくこの登校拒否という問題が起きないように、少しでも減るようにありとあらゆる対策を講じなければならない。それは教育力のある先生をつくることでもありましょうし、あるいは正直言って子供一人一人に目が行き届くような教員の配置の問題もあるかもしれないし、少しでも余裕を持たせるためには、今後の学習指導要領の問題もあるかもしれないし、学校五日制の問題もあるかもしれないし、先ほど申し上げたように、地域あるいは家庭、そうしたところに我々も懸命に働きかけなければいけない点でもあろうかと思います。
いずれにいたしましても、とにかく登校拒否という病理現象をなくすということが最大の目標でなければいけないわけで、その一つの解決の便法として、つまり義務教育というものが目指しているのは、日本全国あまわくどこにいても、少なくとも同一均一水準の教育を受けることができて、そして十五の春には、十五の春というと高校入試の結果が出るときというふうにも言えますが、十五の春には義務教育を終えて、基礎・基本とか一定の学力を身につけて、高校へ基本的に行くんでしょうか、もちろんかつては世に出ていく人も大勢おったわけでしょうが、そこに義務教育という制度の趣旨があるから、できる限りその十五歳までの間には、いわゆる学年をダブることなく卒業させてあげようという基本的な了解や考え方というものが先ほどからの先生と坂元局長との質疑応答にあらわれておるわけでありましょう。ですから、その義務教育の根幹を揺るがすような登校拒否という大問題がある中に、その解決を妙に焦るために、逆に先ほど言ったような、学習塾に通ってもいいというような形で、また義務教育の根幹を揺るがすような手段をとって失敗するなどという愚は絶対にあってはならない。まあ本丸というのは嫌な言い方かもしれませんが、問題の本質は登校拒否という現象をなくすことであると。私は認識いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/155
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156・佐藤泰介
○佐藤(泰)委員 ちょっと最後におわびをしておきたいと思います。当初時間が一時間いただけるということでしたので、遠山局長にも野崎官房長にも来ていただいておりますが、御答弁いただく機会がなかったことを、またこの次にお願いしたいというおわびをしながら、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/156
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157・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
この際、暫時休憩いたします。
午後四時二十二分休憩
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午後四時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/157
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158・伊藤公介
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。平田米男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/158
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159・平田米男
○平田(米)委員 最近カードの利用によって多重債務といいますか、多額な債務をつくって青少年が非常に苦労している、こういう話が巷間聞かれるわけでございまして、確かに最近裁判所に自己破産の申し立てをする人たちが大変ふえております。最高裁の資料によりますと、平成元年では九千百九十件あったのが、平成二年には一万一千二百七十三件、平成三年はそれ以上の勢いで伸びている、こういうことだそうでございます。私も法律事務所を持っておりますが、そこの中でも自己破産の依頼が急激に最近ふえているということを事務所の弁護士から聞き及んでおるわけでございますが、こういう問題に対しては、これまで消費者教育という観点から文部省がそれなりに取り組んでおいでになるということは理解をしておるわけでございますが、どうもその教育の内容が、悪いと申し上げているわけではありませんが、賢い消費者をつくるという視点に重点があって、すべて賢くなればいいのですが、やはり人間というのは失敗もするわけでございます。失敗したときにどうするかということの教育がどうも十分ではないのではないかということを感じます。現在の高校で使われている教科書の内容、また平成六年から始められます学習指導要領、高校の場合でございますが、その内容を見ましても、どうもそういう視点が欠けているのではないかと思うのです。
クレジットカードを使い過ぎて困った人たちの相談を受けておりますクレジットサラ金カード一一〇番、これは有志の弁護士さんがやっておいでになるようでございますが、そういう相談を受けつけた弁護士さんの話によりますと、無理心中まで考えだというような事例もたくさんある、そういう話をされておいでになります、無理心中、一家心中ということでございますが。私も、十数年前はサラ金問題で多くの被害者が出たときに、やはり同様なところまで精神的に追い詰められた人たちを多数見てまいりました。確かに賢い消費者をつくるということは必要でございますけれども、その先まで考えた教育をしなければならないのではないかというふうに思うのです。そもそも一般の人たちは破産などということは知りません。よく相談に見えますと、破産しますともう子供は学校におられなくなるのじゃないですか、会社もやめなければいけないのじゃないですか、だから私は夜逃げをします、こういうようなことをおっしゃる人も、これは少数じゃなくて随分おいでになるわけでございます。破産をしますと、着ているものも、おはし、お茶わんまでなくなってしまう、そういう思い込みをしておいでになる方もたくさんみえるわけです。
私は今消費者教育の観点から申し上げておるわけでございますが、どうも日本の教育の中で、世の中に出てからいろいろな法律問題に遭遇をする。クレジットで多額な債務をつくってしまって困る。これは一つの法律問題でございます。しかし法律問題というのはもっとたくさんございます、人生の中では。まず就職をします。これは雇用契約であります。そして結婚をする。婚姻契約になりますね。そして新居は買ったりあるいは借りたりする。売買契約あるいは賃貸借契約。そのためにはローンを組んだりします。これは消費貸借契約あるいは担保の設定をする。そして子供が生まれる。子供との法律関係はどうなるのかほとんどわからない。また中には交通事故に遭うかもしれません。そのときに加害者あるいは被害者としてどのような責任あるいは権利を持つのか皆目わからない。今の学校教育の中で、法的に問題に遭遇したときの基礎的知識さえないのです。
端的な例は、例えば契約をします。契約をするときに契約書に署名だけすみ、自分で自分の名前を書く。署名だけをした場合に、その契約書は有効ですかと聞きますと、皆さんほとんどの方は有効じゃないとおっしゃいます。なぜか。印鑑を押さなければだめだと言うわけです。しかし法律上は署名さえあれば印鑑は不要でございます。契約は有効に成立している。こういう全く初歩的なことさえ国民は学校で学ばないで実社会に出る。そして法律関係の真っただ中で、何も知らないうちに生活を送らなければならないという実態がございます。
これまでは家族もおじいちゃん、おばあちゃん、一緒に住んでいるということもありました。あるいは地域にはいろいろ物事を親切に教えてくれる人もありました。しかしもう核家族化が進んで随分になります。私たちは地域とか家族の中で、そういう生活の知恵、そこに包含されている法律知識を教えられる環境を失ってしまったわけです。そしていざ問題が起きたときに慌てふためいてしまう。弁護士をやっていて思いましたのは、何でこんな初歩的な知識を持っていないのだろう、ほんの初歩的な知識を持っていればこんな大変なことにならなかったのに。保証人なんかも、絶対迷惑をかけませんからと言われて私はなりました、だから何で私が責任を負わなければならないんですか、こうおっしゃいます。これがほとんどの保証人の第一声でございます。
私は、もっと教育の中で生活に密着した法律知識、私は名づけて生活法学と申し上げたいと思うんですが、そういうことをきちっと教えていかなければいけないんではないか。第一歩として消費者教育をされました、私はそうとらえたいと思います。しかし、失敗した例、自己破産をかけるとか、あるいは調停の申し立てをして裁判所に間に入ってもらって話し合いをする、こういうような知識は全く今の教育の中では教えられるチャンスはありません。また、そういう利便だけを考えるのではなくて、実生活の利便だけ考えるのではなくて、私はもう一つの視点から考えますと、やはり世の中に出ていろいろな人間関係の中、そういう中で法律的な責任をきちっと負う、明確にそれがわかっている、わかった上できちっと対応していく、これは市民として社会人として最低の条件ではないかと思うんです。それがなければ、私たちの市民社会というのは成立しないんじゃないかと思います。
消費者教育に当たっては、バランスのとれた質の高い、民主的な社会形成に参加する能力を培うんだ、そのために消費者教育をやりますというふうに言われております。しかし、法的な責任をきちっと負う、権利と義務というものをしっかり理解をしない限り——日本は法治国家でございます。法律によって運営されている国であり、社会であり、人間関係なわけです。それだけであっては私は決してならないと思いますが、しかし最低限度として、またそれがなければいけないわけでございます。それに対する正しい知識を教える教育というものが、義務教育あるいは高等学校の教育の中で必要ではないかというふうに私は思うわけでございますが、その点、大臣、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/159
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160・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 いろいろと教えていただくばかりでございまして、先生の今の御質問の趣旨を承りながら、私なりに大変いい勉強をいたしましたし、いわゆる賢い消費者というような事柄を中心に今まで同様の質問に対しては御答弁を申し上げ続けてまいりましたけれども、そのような用意された答弁では、先生のおっしゃる趣旨にはとてもかなわぬという思いもいたしますし、正直言ってぐうの音も出ないというような面持ちにも今ややなっておりまして、これからの教育という人づくりの仕事をしていく中で、先生から御指摘があったような事柄をどのように具現化していくか、考えてみなければいけないなとつくづく思いました。
例えば、現実の世の中が非常に厳しいものであって、契約社会であるから実際に気をつけなければいけない点が多いというようなことは、もちろん消費者教育の中で教えているとは思うんですけれども、しかし、いわば自由主義社会というものがお互い助け合いながらも、そういう経済行為、法律行為の上では完全な個人責任主義であるというようなことを厳しく教えているかどうかというようなこと。よく交通安全教育について問われることがございます。もちろん小学生、中学生に対しては、横断歩道を渡りましょう、信号をよく見てみんなで一緒に渡りましょうとかいろいろ教えて。いくわけでありまして、平成四年からの小学校の新学習指導要領に基づく保健の教科書にも、そうしたことは載っているわけですが、例えば高校生になればバイクに乗れるわけですね。逆に事故を起こしてしまうかもしれませんね。ですから、そういった点では加害者になり得る可能性というものもきちんと教えるようにしているようではありますけれども、先生のお話を承っておりますと、そういう部分だって本当はもっと厳しく教えなければいけないのではないかと思い直す気持ちもございます。
第三代の文部大臣榎本武揚さんは大変な理想主義で、えぞ共和国初代大統領になられた方でありますが、また同時に、いわゆる実学の大変な大家として、後に明治政府に認められて、五稜郭で敗退をしながらもあれだけの大官僚、大政治家になっていった方でございまして、いつの時代にも実学というものが無視されてはいけない、世の中に生きていくためにきちんと身につけておかなければならないポイントが数多くある、そんなことを先生の御質問の中から学び取らせていただいた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/160
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161・平田米男
○平田(米)委員 大変率直に、また前向きな御答弁をいただきまして心強い限りでございます。ぜひともこのような教育の実現をしていただきたいというふうに思います。それがまた、大臣が所信表明でおっしゃっておいでになる「社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図る」ということにもなっていくのではないかというふうに思う次第であります。
あと、時間がございませんが、先日新聞報道によりますと、文部省がエイズ予防に対して積極的に取り組むという姿勢を表明されたというふうに報道されました。私は、これまでの文部省の姿勢から見ますと、非常に積極的な対応をしておいでになるというふうにある意味では感銘を受けました。今エイズは数は少ないと言われておりますけれども、しかし最近は異性間交渉によってエイズが広がっていると言われております。異性間交渉によるエイズの蔓延は一気に広がる可能性がございます。そういう意味で、前もって教育の中できちっとした対応をする、これは極めて重要ではないかというふうに考えていたところでございます。
これまで教師に対しては、それなりの教材等を提供しておいでになったということでございますけれども、今回高校生に対してパンフレット等を提供する、この内容についてはまだ御検討をされるということでございますけれども、大変結構なことだと思います。ただ、厚生省の統計によりますと、最近未成年者の妊娠の数というのが非常にふえているようでございます。妊娠数はわかりませんので人工堕胎の数しかわからないのですけれども、毎年一〇%ぐらいの伸びを示している。これは二十歳以下ということでございますので、どのくらいの年齢がふえているかということは統計上はよくわかりません。しかし、私たちが巷間伺うところによりますと、それはどんどん低年齢化している。高校どころじゃなくて、中学、いや下手をすれば小学生ということまで言われる状況になっておるようでございます。そういう意味から、高校生を対象にするだけではなくて、もっと低年齢まで考える必要があるのではないかというふうに私は思います。これは中学、小学生まで考えるべきではないかと思うわけであります。
それからもう一つは、エイズ教育というのは、やはり性教育の一部として考えていかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。まだまだ日本の性教育というのは極めて不適切だと言われているわけでありますが、エイズ教育に対して力を入れられるということでございますが、性教育との関係をどのようにお考えになるか。
この二点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/161
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162・逸見博昌
○逸見政府委員 お答えいたします。
学校におきますエイズの指導、これは感染症としてのエイズを正しく認識させることによりまして、まずエイズを予防するということが大切であると思います。それとともに、エイズ感染者に対する偏見等を除きまして人権尊重の精神を育てる、こういったことが重要であるというふうに思っております。
先生先ほど御指摘のとおり、私ども、これまでは教師用の指導の資料というものだけはあったわけでございますが、新たに高校生用の教材の作成ということに踏み切るところでございます。この秋を目途に作成する予定でございますが、エイズが感染症であることから、性の問題も含めた人間の生き方としての指導も極めて大切であると思っておるところでございます。したがいまして、単にエイズに関する科学的知識を与えるということにとどまりませず、人間尊重、男女平等の精神に基づいた生き方をみずから身につけることを目標にして行われます性に関する指導、これとの連携が極めて重要であると考えておるところでございまして、エイズ教育におきます発達段階に応じました性に関する指導、これとの連携を十分に図りながら指導するよう現場に対する指導を強めてまいりたいと思います。
御案内のとおり、高等学校につきましては、こういった教材をつくるわけでございますが、小中学校の児童生徒に対しましては、教師用の指導の資料、これをもとに教師が適時適切に必要に応じて指導するように指導するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/162
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163・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 私がつけ加えるべきではないかとは思いますが、先生御指摘のとおり、エイズというものに対処するのはなまはんかなことではできない、並み大抵のことでは目的は達せられないのではないかという、これは正直言って大きな恐怖心のようなものを私自身感じております。しかし、こういう恐怖心はある意味で大事にしなければいけないと思うわけでございまして、地球上にある種の、一定の種類の生き物がふえ過ぎると疫病がはやって、その種が大量に死滅するという原理は、脊椎動物であろうと、あるいは無脊椎動物であろうと、どの生き物の世界にもほとんど妥当しているわけでございまして、ひょっとして人類がふえ過ぎたときに、こういうエイズのようなものが起きたのではないかという、いわば神の見えざる手による調節機能のようなものである可能性を否定できないだろう、私はそう思うときに、エイズに関して言えば、とにかく大胆に先手先手でいかざるを得ない。
先生御指摘のとおり、それは交通安全教育とか公害関係の教育とか、先ほどの消費者教育とかいろいろあるけれども、まさにこのエイズ予防教育などというものを、新たなジャンル、新たな分野をつくらなければならないということは大変残念なことでありますが、それが実態だ。先手先手でいかなくてはならないわけですから、先生がおっしゃるような低年齢化の問題だって、あるいは小学校でも一応今度教科書があって模型を使って教育をというのが性教育の話であるとするならば、そういうような低年齢層の方々にも、それは今体育局長が答弁いたしましたように、教師用の指導書はありますけれども、具体的にもっとパンフレットを配って指導しなくちゃならぬとか、そういうような事態が絶対来ないとは言えない。そういう危機感を感じたら、どんなところまででも先手を打って、これを食いとめるというふうに考えたいと思って。います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/163
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164・平田米男
○平田(米)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/164
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165・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
鍛冶清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/165
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166・鍛冶清
○鍛冶委員 持ち時間が限られておりますので、私も、御質問はもう当局に内容を説明しなくても御存じのことでありますので一簡単に質問申し上げ、また答弁の方もひとつ簡略に要点をお願いいたしたいと最初にお願いを申し上げておきます。
学校五日制の問題、それから私どもが感性教育というものを今回提案いたしましたが、その問題、それから単位制高校の問題、時間があればここに的を絞って御質問申し上げたいと思います。
最初に学校五日制ですが、これは今までさまざまな議論がありましたので、要点を申し上げますが、これは段階的に展開していく、実施していくということ、これは当局もその思いで実施されているようでございますけれども、これは具体的にはどういうスケジュールで段階的に、どういう展望の中でやっていくのか、はっきりしておりましたらお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/166
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167・坂元弘直
○坂元政府委員 月一回から段階的に入る、そしてその過程の中で出された問題点をクリアしながら前進する、そういう報告書に基づいて、私どももそういう考え方で踏み切ったわけでございますので、何年たったら月二回になり、さらにその後どのぐらいで月三回になるのか、あるいは四回になるのかという見通しは、今の段階では、この前もどなたか委員の先生に私からお答えしたことがありますけれども、ちょっとスケジュールは立てにくい。それだけはっきりスケジュールを立てる自信が私どもの方にないということでございまして、私どもは、とにかく一歩一歩クリアしながら前進をしていくという姿勢で、この問題に取り組んでまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/167
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168・鍛冶清
○鍛冶委員 それはそれなりの立場というのはわからぬでもありませんけれども、やはりこういう重大な教育改革、どなたもおっしゃっておりますように、百二十年間やってきた学校六日制を五日制に切りかえるという重大な改革でもありますし、またいろいろ意味の深い、本当の意味でのこれは大変な改革ですから、それもやむを得ないのかなとは思いますものの、また受ける側から言えば、実施する方、現場で言えば父母を含めて、むしろそういったものがある程度はっきりしておった方が体制も整えやすいし、気持ちも切りかえをやることができやすいのではないか。ですから、余り長くなって、四日になるのはいつになるかわかりませんということも無責任だと思いますし、それかといって余り早くやれば理解は得にくいということもありましょう。非常に難しいとは思いますが、私は、ある程度めどを定めて、そしてそれをスケジュール的に発表するということがあっていいのではないか。それは多少変更するということは、これはもうやむを得ない場面もあると思いますけれども、やはりそういうことをしてあげることが、むしろ周囲の人たちがそれに対する対応、腹構え、切りかえができる、こういうふうに思いますが、その点を含めてもう一度御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/168
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169・坂元弘直
○坂元政府委員 中間報告を出した後に協力者会議で関係団体から意見をいろいろ聞きました。そのときに三つばかりの関係団体から、やはり御指摘のように、スケジュールをはっきりしてくれた方が我々は安心だ、その中にPTAの団体もございまして、PTAの方の団体は、むしろゆっくりしたスケジュールを示せば安心なんだ、そういうような希望でスケジュールを示してもらいたいという御意見がございましたが、同じことを言って本当に恐縮でございますが、私どもとしては、ゆっくりというスケジュールもよくわからないし、そうかといって非常に早いスケジュールというのも大変見通しが立たない。とにかく一歩一歩前へ進めていく、今の段階ではそういうようなことで御勘弁いただければありがたいというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/169
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170・鍛冶清
○鍛冶委員 これは強く要望として申し上げておきますが、ぜひ今私が申し上げたような形での御検討をいただいて、なるべく早い機会にそういうことのめどがつけば発表はしていただきたいというふうにお願いをいたしておきます。
それで、今実質的に九月から一回休みになるということがもう周知徹底されて、私も地元に帰りましたり、または同僚の議員なんかにまたこっちに上ってきたときに会いますと、必ず各地元で、学校五日制が始まる、それで父母の皆さんが強烈な関心を持っていらっしゃるらしくて、どこへ行ってもそのことが今話題として出てきて、私のところにもしょっちゅうどうだどうだという話が党内でもあるわけです。私自身もあります。
そういう意味で、それが賛成という方向の話が強ければ、それはそれなりに私もある程度安心もするんですが、むしろ内容が不安なまま、わからないままに反対だ、こういうことをされては困るという意見の方がどちらかというと非常に強く出てきておる。それが私は非常に心配でございまして、これはむしろ私は条件はつけながらも五日制を推進すべきであるということをかたく信じておりますし、そうしなければならぬと思っておりますけれども、これは理解を得るということが現時点では何物にも優先して大切ではないか。これは先ほど大臣も答弁されておりましたけれども、意識改革、父母の皆さん、それから地域の皆さん、これはもう国民の皆さんすべてかもわかりません。この意識改革を本当にするということが最も今のところ大切であるというふうに思います。したがって、これに対していろんなことが考えられるわけですが、これは文部省だけでなく、国を挙げてこの意識改革なりPRなり、理解のためのいろんな施策というものはどしどしやっていかなければならぬと思いますが、具体的にそのことについてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/170
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171・坂元弘直
○坂元政府委員 私どもも全くそのとおりだと考えております。父母の皆さん方の御理解を得なければなかなか前へ進めないだろう。そこで、私ども文部省でいろいろPR、文部広報とか文部時報とか印刷物を発行しておりますが、これで五日制を取り上げて大々的にキャンペーンするということはもとよりでありますが、それ以外に、今政府広報が総理府で予算を一括計上しておりますが、総理府に今相談しておりまして、総理府の持っておる政府広報に関する経費でテレビなり新聞なりあるいは週刊誌なりに、この学校五日制の問題についてPRすることをぜひやるようにしてもらいたいということで、今総理府と相談している最中でございます。
それから、PTAの幹部の関係者の方々には、この間も会談を持ちましたが、そのときも幹部の方々はよくわかっておるんですが、下部の父母の方々が今先生がおっしゃったようなことで心配しているということを聞きましたので、ぜひPTAの総会とか、あるいは単に全国の総会じゃなくても結構である、県レベルのPTAの総会みたいなのがあったならば、時間さえいただければ文部省から必ずだれか行って御説明するから、その点もよろしくお取り計らい願いたいというふうにお願いしましたが、先生御指摘のとおり、私どもPR活動といいますか、学校五日制の意義につきましては、あらゆる機会を通じて努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/171
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172・鍛冶清
○鍛冶委員 もちろん私どもも真剣にこれは取り組んでまいりたいと思いますが、もう徹底的にひとつ今からそのキャンペーン等、PR等をお願いいたしたいと思います。これも要望申し上げておきます。
さらに、これに関してもう一つだけ。土曜日が休みになった場合に、僕は行政サイドで、これも国を挙げて今のキャンペーンの中で、休みになった土曜日を家庭・地域の日と定めて徹底的に取り組む必要があるんじゃないかと思いますが、こういう形でキャンペーンをするという方向で考えるべきではないかと思いますが、これについていかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/172
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173・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 具体的には政府委員からお答えをいたしますが、先ほどからの御質疑の中にも申し上げましたように、学校週五日制というものを地域・家庭二日制というふうに読みかえていきたい。具体的に申し上げて、公明党の皆様方の方が文部省よりも早くその言葉を使われたとするならば、著作権上問題があるかもしれませんが、ほぼ時を同じくして私どもも地域・家庭二日制ということを考えておりまして、そのためには、それを定着させるためには、ありとあらゆる方々に文部省として、私もあるいは初中局長も生涯局長もみんなでお願い行脚をしなければいけないのではないだろうか、そんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/173
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174・鍛冶清
○鍛冶委員 じゃ、次に行きまして、感性教育ということですが、感性教育というのは一般にも使われたりしておりますが、政党として明確に打ち出したのはうちかなと思っておりますけれども、この感性教育、これは私どもは情操教育やら道徳教育、それからいろんな生徒指導の問題、それから福祉教育、健康教育、こういったものを含めて感性教育ということで言っておるわけですが、これがこれから非常に必要ではないかと思っております。
というのは、やはり物質的には豊かになりましたが、子供の皆さんはどうも心の豊かさというのがなくなってきておる、こういう意味で私たちは感性教育を確立すべきであるという提案をしているわけですが、その一環として、生と死のことを教える教育というものを充実する必要があるんではないか。特に最近は臓器移植など生命にかかわるような問題が重要な課題として話題となり、またいろいろ言われているわけですけれども、さらにはヒューマニズムや人間の尊重、生命のとうとさといったものをしっかり教える、倫理を含めた生と死の教育というものをうんと充実すべきであると思っておりますが、この点についてお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/174
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175・坂元弘直
○坂元政府委員 学校教育におきまして生命を尊重する態度を児童生徒に身につけさせることは、先生御指摘のとおり大変重要な課題だというふうに考えております。
昭和六十三年三月に、道徳教育指導資料として「生命を尊ぶ心を育てる指導」というものを作成いたしまして、これを全国の小中学校に配付し、生命を尊重する心、生と死を見詰める心を育てることなどの指導の充実を図ったところでございます。新しい学習指導要領におきましても、生命に対する畏敬の念を培うことを目標に加えまして、そのことに改めて留意したところでございますが、高等学校の倫理でも、同じように人間の尊厳と生命への畏敬を教えることとしておりまして、それとの関連で、学習指導要領の解説書の中で、私どもとしましては、バイオテクノロジーの発達に伴って人工的な生殖や臓器移植が可能になり、生と死の概念が問い直されるようになってきたことなども必ず扱うことというふうに示したところでございます。
これからも児童生徒の発達段階に応じて、この問題について学校で適切に指導していくよう、私どもも指導してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/175
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176・鍛冶清
○鍛冶委員 これはもうぜひお願いをしたいと思うのですね。
一口話にありますが、今の子供たちはカブトムシが死んだら電池が切れたと言う話が一口話で伝わっておりますけれども、やはりこれも生命というものがわからないために起こってくる一つの大きな間違った理解であるし、私はどこでしたか旅行しましたときに、ちょうど夏のときで、子供が鳴いているセミの羽をわざわざちぎって、それをバットではっとたたいているというのを見かけたことがありますけれども、ぞっとするような思いでございました。
それから、もう一つ私の思い出の中であるのは、うちのおじいちゃんですが、実は私の目の前で元気なおじいちゃんがばたっと倒れて、そして人工呼吸したんですが、そのまま体がずんずん冷えていくという死ぬ瞬間に立ち会ったことがあるんです。これは私の若いときでございましたけれども、非常にやはりその後の人生を生きていく上での一つの大きなショックでもありましたし、いろんなものを考えるのに、やはり深みが加わってきたかなというように、私自身もそういう体験しておりますが、この生と死というものが今現在は家庭からむしろ離れて、子供のいないところの病院とかで死ぬとか、それから生きるとか生まれるとかいうふうなことが行われておって、これがないところに物質的な豊かさということが伴ってきて、この弊害がむしろ出てきているというふうにも思います。したがって、この生と死の教育というものについては十分に配慮して、ひとつ今後取り組みをお願いいたしたいと思います。
最後の問題になりますが、単位制高校教育の展開で御質問申し上げたいのですが、今単位制高校というのが大分取り入れられるようにはなってきましたし、文部省もその方向のようですが、高校における履修形態はもう思い切って——まあ現行の学年制、学級編制は必要な範囲で維持する必要がある、こういうふうには私たちは思っておりますが、基本的には単位制をもととして履修するという制度に改めた方がいいんではないかと思っております。この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/176
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177・坂元弘直
○坂元政府委員 単位制の利点ということにつきましては、先生もう十分御承知でございますので、御説明を省かせていただきますが、現在御承知のとおり、定時制と通信制課程については単位制高校をとることが認められております。それで、この定時制、通信制課程における今既に設置されておる単位制高校は、勤労青年などから非常に歓迎されて、大変活用されているところでございます。
先般の中央教育審議会の答申でも、全日制課程においても単位制高校を導入すべきだということを言っておりますので、現在の単位制高校の問題に限らず、全日制高校にも単位制高校を導入するというような問題。それから職業学科と普通学科と分かれておる現在の高等学校の学科構成を、二つを総合したような総合学科制度をも提案しておりますので、そういう点。あるいは単位互換が可能になるように、近所の高等学校同士で単位互換をして、行ったり来たりある程度交流ができる、そういうふうなやわらかい施策もとるべきだという御指摘を受けておりますので、これらを含めまして、現在高等学校教育の改革のための会議というのを初中局に置いておりまして、そこの会議の場で検討願っているところでございまして、結論が出たものから順次実施していきたい。単位制高校の問題についても間もなく結論が出るのではないかというふうに私ども考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/177
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178・鍛冶清
○鍛冶委員 感性教育の問題、単位制高校の問題、これは具体的に内容に踏み込んでいろいろまた議論してみる必要があると思っておりますが、きょうは持ち時間も終わりましたので、これで終わらせていただきます。あとこれから機会がありましたらこの問題についてはぜひやりとりしてみたい、こういうふうに思っております。
きょうは学校五日制を含めて御要望が多かったわけですが、ひとつぜひとも大臣を中心に当局でお取り組みをいただいて、いい流れができますよ一つに御要望申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/178
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179・伊藤公介
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/179
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180・伊藤公介
○伊藤委員長 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。鳩山文部大臣。
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義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特
別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/180
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181・鳩山邦夫
○鳩山国務大臣 このたび政府から提出いたしました義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、義務教育費国庫負担金の対象としている経費のうち、共済費追加費用及び退職年金・退職一時金に係る経費について、国庫負担の割合を段階的に引き下げた後、国庫負担の対象外とすることについて規定しているものであります。
これは、共済費追加費用等の経費の性質にかんがみ、かつ、最近における財政状況等を踏まえて、現在暫定的に三分の一とされている共済費追加費用及び退職年金・退職一時金の国庫負担の割合を、平成四年度においては九分の二、平成五年度においては九分の一とし、平成六年度に国庫負担の対象外としようとするものであります。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/181
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182・伊藤公介
○伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時三十五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112305077X00319920306/182
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