1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成四年五月二十一日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
松本 英一君 三上 隆雄君
渡辺 四郎君 三重野栄子君
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出席者は左のとおり。
委員長 山本 正和君
理 事
井上 章平君
石井 一二君
種田 誠君
山田 勇君
委 員
石原健太郎君
石渡 清元君
沓掛 哲男君
坂野 重信君
青木 薪次君
三重野栄子君
三上 隆雄君
中川 嘉美君
上田耕一郎君
山田耕三郎君
事務局側
常任委員会専門
員 駒澤 一夫君
参考人
慶應義塾大学教
授 伊藤 滋君
元横手市長 千田 謙蔵君
岡山大学教授 森瀧健一郎君
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本日の会議に付した案件
○地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再
配置の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/0
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001・山本正和
○委員長(山本正和君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨二十日、渡辺四郎君及び松本英一君が委員を辞任され、その補欠として三重野栄子君及び三上隆雄君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/1
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002・山本正和
○委員長(山本正和君) 地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律案を議題とし、参考人からの意見を聴取いたします。
本日、参考人として慶応義塾大学教授伊藤滋君、元横手市長千田謙蔵君、岡山大学教授森瀧健一郎君の三名の方々に御出席を願っております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
皆様からの忌揮のない御意見を賜りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じます。
これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、最初に参考人の方々からお一人十五分程度の御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
それでは、まず伊藤参考人からお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/2
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003・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 慶応義塾大学におります伊藤でございます。
本国会で御審議中のいわゆる地方拠点都市法でございますが、私は、この法案は国土のこれからの将来の構造のあるべき姿、それから日本の都市空間の将来のあるべき姿について大変有益な法案であると思っております。まずは、ぜひこの法案について積極的に国会として御審議をいただきたいと思っております。
いわゆる地方拠点都市法は、私が伺っておりますところでは、各道県において県庁所在都市に次ぐ二番目もしくは三番目の都市について重点を置いた都市空間の整備をするというところに焦点を当てられているということでございます。
これらの二番目、三番目の都市というのを考えてみますと、御存じだと思いますが、非常に県庁所在地よりは多様な性格を持っていると思っております。私はよく高岡市、長岡市、あるいは米沢市などに仕事の関係で伺っておりますが、こういう都市に参りますと、江戸のころからの歴史のにおいというものを非常に強く感じます。場合によっては、これらの都市に住んでおられる方、仕事をされているお方の矜持というものは県庁所在都市よりも高いということもございます。こういう都市がかなり多く人口規模として第二、第三の都市に存在しているかと思います。
もう一つ大きい特徴としましては、明治以降の日本の産業、特に戦争前の日本の産業を支えてきた都市が二番目、三番目の都市にあるかと思います。例えば足利なんかもそうかと思いますし、あるいは福島で言いますと郡山なんかもそうかと思っております。
このような地方拠点都市法が重点を置きます都市というのは、かなり乱暴に整理いたしますと、文化的なにおいが非常にかつて強かった都市、それから日本の経済を特に明治以降の前半を支えてきた都市、こういう都市が現在非常に都市の力が衰退してきている、そういう状況になってきていると思います。
これらの都市に関しまして、私は率直なところを申し上げますと、急速に経済的な意味で力を回復し、非常に短い時間に若年人口をもう一回大都会から吸収するというふうには私は軽々に感じておりませんが、重要なことは、こういう既に歴史的に、あるいはかつての伝統文化、伝統技術的な大きい資産を抱えている都市に対して戦後どれぐらい日本の都市政策、国土政策が重きを置いてきたかという点について、私はかなり反省すべき点があるんではないかと思っております。
都市化社会の中で私たちは非常に大衆消費の生活になれてきているわけですが、消費生活というものを考えてみますと、その反面に、美しさとか、文化の持つ精神的な深みとか、そういうものを一体どこに置いてきたのかということがよく目につくわけでございます。
余りかた苦しいことを言わないで、これらの都市について一番何が問題かといいますと、すぐ目につくのは、例えば、駅におりまして、駅前のたたずまい、商店街のたたずまいを見ますと、いかにこの都市が音あるいは現在でも伝統文化に支えられていると申しましても、こういう駅前の大衆消費を具体的に営んでいるところの市街地の空間というのは、まことにお粗末な町が多いということです。これは多分、こういう都市づくりに対して、県庁所在都市とか、あるいはより大きい、国土庁の定義で申しますと地方中枢都市的な都市整備の方法というものを余り深く考えないでそのまま使っているというようなこともあるのではないかと思います。地方拠点都市法で考えられる二番目、三番目の都市は、県庁都市の駅前とは違う駅前市街地の空間というのがあるでございましょう
し、県庁都市の市街地とは違う住宅地空間があるのではないかと思っております。
それから、次に私が申し上げたいことは、こういう地方都市に対して、これまで皆が議論しておりましたように、例えば努力すれば人口がふえる、努力すればすべての都市で産業が栄える、こういう考え方を必ずしも私はこれから持つ必要がないんではないかと思っております。例えば、最近の建設省の資料でもおわかりだと思いますが、大都会に住むサラリーマンに対しまして、地方都市に行きたいかどうかといったときに、若者は余りそういうことに関心を持ちませんが、高齢のサラリーマンになってまいりますと、退職後は地方都市へ行って住みたい、かつて自分が出てきた故郷に戻ってそこで生活をしたいというような希望がかなり大きくなってきているということも伺っております。そういうふうに考えてまいりますと、場合によっては、都市に住む人たちの平均年齢が高くても、落ちついて町全体がゆったりとしたそういう都市があってもいいのではないかと思っております。
こういう都市は既にドイツあるいはイギリス、北欧にございます。こういう国家の地方都市に参りますと、そういう雰囲気をたたえて非常に質が整った、小さくてもぴかっと光るようなそういう都市を幾つか散見することができるわけです。あるいはそういう都市が幾つかつながったところにすばらしい道路ができまして、都市圏あるいは地域として全体が体系化されて、それが重要な地方の新しい観光産業として成り立っているという場合もございます。
そういうふうに考えてまいりますと、地方都市で整備すべきことというのは、まずは地方都市らしい形態美、空間の美しさ、そういうものも基本的に考えていく必要があるのではないか。そうなってまいりますと、都市であるといいながらも、河川の環境とか、あるいは公園の拡充とか、あるいは都市の中の森林資源のより質的な美しさを保っていくこととか、あるいは都市周辺の農村環境をよくするとか、こういうような問題が非常に私は重要になってくるかと思っております。
ドイツの都市が何ゆえに私たちに大きい魅力を持たせているかと申しますと、これは、地方都市それぞれにかつての十八世紀の領主が持っておりました森林を都市林として市街地の近くに市民の重要な緑の空間として持っておるからであります。こういう都市林があるからこそ、ドイツの都市というのは非常に美しい姿をつくり出している。振り返ってみまして、現在の地方都市に果たしてそれだけのことを我々はやってきたか、そういう点に大変大きい問題があるのではないかと思っております。
それから、次に申し上げたいことは、このように地方都市のかつての歴史的あるいは伝統技術的なそういう都市空間を大事にするということを申しましても、現在の日本の社会では、一つの都市が独立都市として自給自足的な形ではもはや存在しているわけではございません。必ずこれらの都市はより上位の都市あるいはその都市を囲む農村社会に対して非常に到達しやすい交通条件を備えているということが重要かと思っております。
農村社会につきましても、農村に対してより非常に車を運転しやすい道路が整備されれば、農村集落というのはそれ自体が非常によい住宅地として使われることもありましょうし、あるいは地方都市の住宅地が先ほどから申しましたような文化的なにおいが非常にする住宅地になれば、そこにいる人たちがその地方拠点都市から県庁所在都市あるいはより上位の都市に対してバスや鉄道で通勤することもできる。道路あるいは鉄道のより上位の都市あるいは農村社会へ向かっての整備、こういうことが大変緊急の問題でないかと思っております。
しかしながら、これらの道路について申し上げたいんですが、この道路整備はこれまでと違う道路整備であるべきではないかと思っております。日本の道路というのは多分に経済機能追求ということに焦点を置きまして、道路が周辺の景観あるいは市街地と調和するようなそういう点についてこれまで少し欠けていたところがあったんではないか。道路自体がすばらしい都市景観であり農村景観である、こういうような配慮もかなり重点を置いていくべきではないかと思っております。
第二、第三のこれらの都市というのは、県庁所在都市とは違った、江戸から明治へかけてのそれぞれの地域での中心として地域を支えていた非常に重要な大変誇り高き都市が多分にございます。こういう誇り高き都市を名実ともに、空間的にも文化的な面でも教育の面でも整備をしていくということが、この地方拠点都市法に与えられた課題ではないかと思っております。
そういう点で、単なる財源補助をすればいいとかあるいは税制のことを考えればいいとか、こういうようなこれまでの地方振興法案と違った、もう少し文化的なにおいあるいは精神的なにおいが必要だと思います。精神的というとちょっと語弊があるかもしれませんが、今、巨大都市では家族の崩壊が起きておりますし、あるいは砂つぶのような人間がいっぱい居住をしておりまして、こういう人間形成が二十一世紀の日本にどういう問題を引き起こすか。多分、非常に危険な要素を持っております。そういう点で、これらの都市に住む市民が非常に健全な家庭と健康な精神を持って生活し仕事ができる、そういう人たちが少数であっても存在するということが日本国家のために大変重要なことではないかと思っております。
以上、大体十五分で私の考えを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/3
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004・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に千田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/4
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005・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) 私は元横手市長じゃありません。前横手市長でございまして、やめたばかりのほやほやの一浪人でございます。
私は大学を出てから田舎に戻りまして、青年会長とかいろいろやりまして、三期十二年、市会議員をいたしました。三十九歳の非常に未熟者でありましたが、市長に当選しまして、五期二十年の間、市長をしました。
我が横手市は、人口は少ないのでありますけれども、秋田県で二番目、三番目の町でありまして、ただいま伊藤先生から大変お褒めをいただいた文化豊かな人間らしい人がたくさん住んでいる町であります。そこの市長を二十年やりまして、二十年はちょうどいいところだということで、去年の四月三十日の任期満了とともにやめまして、現在は、地方自治の本場でありますヨーロッパということで、うちの子供が病気をしましてちょいちょいと帰ってきておりますけれども、ボンに行ったりローテンブルクに行ったり、そして地方自治及びECのことについて一生懸命勉強して、何とか新しい動きを地元に注入したいということで頑張っているものでございます。
私は、そんなわけで横手で十二年プラス二十年、三十二年の間、地方自治一筋に暮らしてきたわけでありまして、今回問題になっております地方拠点都市の活性化、東京一極集中を是正して豊かな潤いのある地方都市をつくって、そして国土の均衡ある発展に資する、そういう趣旨には大賛成でありまして、そのために三十二年間頑張ってきたというふうに御理解いただいても結構ではないかと思っております。
そういう点からこの趣旨には大賛成でありますけれども、私は前々回の国勢調査のときに、秋田県がただ一つ、しかも最初の人口減少県になりましたときに、本当に大きなショックを受けました。
私はいろいろ政策を掲げてやっているわけでありますけれども、横手市が到達すべき政策目標として、一つには、先ほど先生からぽっと出ましてびっくりしましたが、私は、「小さくてもきらりと」、小さい町でありますけれどもきらりと光るものがたくさんある、それに市民が誇りと勇気を持って自分の町をつくろうじゃないか、さらにもっときらりと光るものをたくさんつくろうじゃないかということで、「小さくてもきらりと」、こ
れを一つの政策目標として掲げてやってまいりました。
もう一つは、「秋田県のセカンドシティーをめざして」というのを掲げたわけであります。これは、秋田県が初めての、しかも唯一の人口減少県になったのにかんがみまして補強した政策目標であります。
申し上げますと、秋田県には九つの市がありまして、秋田市は三十万の人口でありますが、残りの八つの市は三万台から六万台ぐらいであります。これでは、現在の東京一極集中の政策に抗して地元を守って秋田県を立派に維持していくということは困難であります。やはりこれはセカンドシティーというものを県南、県北につくりまして、まあ、そのセカンドというのは二番目に人口を持つ町だ、こういう意味ではなくて、簡単に言えば要するに第二県都であります。県都の機能を県南、県北、あるいは大きいところはもう一つでもいいでしょうけれども、そこが県都の役目をするようなという仕事をして、お互いにそこの地域を守ることによって秋田県を維持していく、こういう政策が必要でないだろうかということであります。
我々横手市民はそれを目指して頑張り、かつそれにこたえるためにその責任、任務を果たすためにもっと頑張らなければいけないという政策目標を出したわけであります。そして営々とやってきたわけでありますから、今回この地方拠点都市地域の整備をするという法律が出ましたことは、本当に我が意を得たりというふうに思っているところであります。
しかしながら、これをちょっと拝見いたしますと、第二条に定義がありまして、そういうふうに思って見たのでありますが、新聞にも第二、第三というふうに書いてあり、伊藤先生もそうおっしゃいましたんですが、この第二条の定義を見ますと、必ずしもそれが明確になっていないので、非常に残念であります。
聞くところによりますと、県都も立候補しているやに聞いておりまして、それでは何のための地方拠点都市であろうか。それじゃテクノポリスとか新産都市をつくったあれと同じじゃないか。そういう点から、今回の地方拠点都市の整備に関するものは、明らかにこれは第二、第三、セカンドシティーを維持発展させて、そして、人口が伸びているところはいいのでありますけれども、伸びない、あるいはまた活性化していない地域についてはぜひひとつ力をみんなで与える。要するに、これは一つのCIではないだろうかという感じもします。そのことによって相当大きな皆さんの誇りが出るんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
そういう点で、第一点としましては、定義を明確化してこの法律の目指すところは地方拠点都市、第二、第三で全体を見て国として必要な都市を強化していく、そして国土の均衡ある発展を図るというところをきちっと出してもらいたいということが非常に多くの地方都市民に対する大きなインカレッジになるんじゃないか、こういうふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
二番目に、第二条の産業業務施設の定義でありますが、私がびっくりしたのは、「工場を除く。」ということがちゃんと書いてあることであります。これは恐らく、農村工業化配置法とかいろいろたくさんのものがありまして屋上屋を架す必要はないということで「工場を除く。」と書いたのでありましょうけれども、業務施設の営業所とか事務所が来ることは非常に結構でありまして、それを望むのが我々の望みでありますけれども、しかし、やっぱり工場もあった方がいいんじゃないか、働く場所があった方がいいんじゃないかというふうに私は思います。
あえて「工場を除く。」と書いたことについて、意味はわかりますけれども、果たしてそういうのが正しいだろうかどうか。法律によるいろいろの規定から、あるいは税制とかいろんなことでそういうことを書いたと思いますけれども、趣旨からしましてわざわざ書く必要があるだろうかということを感じた次第であります。
それから三番目に、大臣が基本方針を決めまして、そして最後に基本計画をつくってやるわけでありますが、私の長年の経験によりますと、この基本方針を決めて地域を指定するために相当なエネルギーを使う。これは都市間の競争もありますからやむを得ないことであります。その次に基本計画を、特に今回は広域ということにしておりまして、広域にしますと恐らくまた市町村の間にもいろいろ、必ずしも外から見たような一本化でないものもありまして、我が町、我が村という主張も出ようと思います。
こういうことの中で基本計画を明確に決める。これは知事が決めるわけでありますけれども、主務大臣と協議するわけでありますから、そこが認めるような非常に理路整然たるものをつくるにはなかなか時間がかかると思います。そういうことで、基本計画づくる間に疲れてしまいまして、まあ疲れるという言葉はおかしいのでありますが、エネルギーがなくなってしまうというか、基本計画づくりのために時間を費やしてしまうんじゃないか。
決まった途端に力がなくなるということではまたうまくありませんので、できるだけこの法律は上位構想のそういうことを主にしておるわけでありまして、あとやるのは市町村でありますけれども、そういうところの配慮をすべきでないだろうか。こういうような促進法をつくればつくるほど市町村の業務がふえて実際の仕事ができなくなるというふうになる可能性がありますので、まあ競争ですからとらなきゃいけない、それでますますエネルギーをかけるということもありますので、ぜひひとつその点も御理解のほどをお願いしたいと思います。
次に、第十七条に、農山漁村の整備を図る、そして特に「農林漁業の健全な発展との調和に配慮するものとする。」と書いています。私は、これを書いてもらったことは大変ありがたい。しかし、配慮するのはだれがするのか、非常に難しいところでありまして、これはぜひひとつ国におきまして配慮してもらいたい。所管の省庁はそれぞれの専門でありますけれども、国会議員の先生方は総合的判断をなさる政治家であります。私は、ぜひこの点を申し上げたいと思います。
一時、北海道の市長さんから三サン二テツ二タンという言葉を私は聞きました。何でしょうかと聞いたら、三サンとは水産、林産、鉱産である、二テツとは鉄道と鉄鋼で新日鉄があそこへ来ている、それから二タンとは炭鉱と減反、このタンはちょっと苦しいタンですけれども減反。つまり、北海道は第一次産業が全部やられた。北海道開基百年、先輩がクマやヒグマと森林、ジャングルの中で戦って開いた北海道が、今、百年にして人口がどんどん減っていく。町村の人たちと話したのでありますけれども、私たちは見るに無残である、ぜひ頑張りたい、涙を流して言っていました。
北海道開基百年のときに三産二鉄二タン、これが地方試練の時代であると私は考えます。地方は一生懸命それに負けまいとみんな頑張っているわけであります。
しかし、現在、私は第二の地方試練の時代に来ているんじゃないかと思います。
と申しますのは、第一に巨大スーパーの進出であります。これが大店法の改正、改悪がわかりませんけれども、そのことによって非常に入りやすくなりまして、御案内のとおりいろんなところに、秋田県でも秋田市の郊外に四万平米近い巨大スーパーができるわけであります。そして、高速道路ができますから、これは物すごく、三十分ぐらいで地方都市、拠点都市からどんどんお客さんが来ますのでありますから、地方の商店は壊滅的存在になる。こういうことになります。これで地方拠点都市ができるか。
それから、リゾート法による乱開発。これも心配でありましたけれども、バブル崩壊でなくなった。そのために地方のリゾートといいますか、レクリエーションによる地方活性化、よくやればできるのでありますが、それまた撤退、放棄の運命
にありまして、関心がなくなった。また荒れ山野が残りそうになっている、こういう状態です。
それから、今の農家、農村、農産物の自由化。
この三つのことが試練となりまして第二の地方試練の時期に来ている、こういうふうに私は考えております。
したがいまして、地方中核都市づくり、決してこれは、これを見ますと、ちょっと話がまた前後しますけれども、地方拠点都市地域を決めて、それから拠点地区を決めて、都市計画でありますけれども、拠点整備促進区域というふうにだんだんだんだん矮小化しているわけであります。そういうことで政策を一本化、集中させるということであるかもしれませんが、そういうことだけではなかなか大変でありまして、ぜひ大きな見地から、この三つの第二の試練が地方にかかってきている中で地方が負けまいと頑張るわけでありますから、ひとつ皆さんから地方のセカンドシティーに対して大きな力を与えてもらいまして、地方が元気を出して、そして活性化を図り、そして国土の均衡ある発展ができますようにお願いしたいと思います。
私はドイツのローテンブルクを見ました。あそこも人口は非常に減っているのでありますけれども、工場も誘致もしておりました。また農村は非常にきれいで、それて農業の人口、農業で働く人は減りますけれども、農村の人口を減らしたくないということで政府が補助して、セカンドハウス、民宿じゃありません、そしてそこに、時短でたくさん時間がありますから家族がみんな来て、そしてよろしくやっています。非常に農村に若い子供の声がたくさんありまして、よかったなと見てきました。
また、ドイツの場合は特にでありますけれども、百万以上の都市は三つぐらいしかなくて、みんなそれぞれが地方に割拠しているんですね。まさに地方拠点でなくて地方割拠して、それぞれそこで、先ほど伊藤先生も申されましたとおり、みんな元気に威張って、この威張ってという言い方は非常に私はいいと思いますが、威張っているんですね。我々がドイツを守っているんだ、地方を守っているんだということであります。
ぜひひとつそれらの意味で、農村地帯の自由化はともかくとして、やはり所得補償して、やっぱり農村に人がいるようなそういう新しい農山、山村、特に山村でありますが、山村地帯に住民がいられるようにある程度所得補償するような、そしてそこで国土を守っていくというような人がいますと、一次産業がありますと、地方都市、拠点都市もさらに活性化するということになるんじゃないか、こういうふうに思いますので、この法律を御審議する際に、そういう点をぜひひとつ加えて配慮してもらいまして、そしてすばらしい法律の行政執行ができますようによろしく諸省庁にお話をしていただきたい、こういうふうに思う次第であります。
趣旨には賛成であります。いろいろ気をつければ大変いい法律でありますので、ぜひこれは推進していただきたいという立場であります。
以上が私の参考意見であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/5
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006・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
次に、森瀧参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/6
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007・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 岡山大学の森瀧でございます。文学部で地理学講座を担当して、地理学の中でも特に経済地理学という分野を専攻いたしておりまして、その立場から過密過疎というような問題の研究にも手を染めてまいりました。
さて、地方圏の人口減少が広がりまして、地方全体の活力が低下いたしております。その一方で東京圏では、住宅問題に非常に顕著に見られますように、過密の弊害が深刻化いたしまして、私ども地方に住む者の間では、東京に時たまやってきてぐったり疲れて帰って、まあ不謹慎でございますが、東京は人の住むところではないというようなことをよく申します。このような現実を直視いたします限り、この法律案の提案理由の中で言われました次のような目的、すなわち、地方の自立的成長の促進を図り東京一極集中を是正して国土の均衡ある発展を実現するという課題、それ自体は大変結構なものと存じます。それどころか、これは現下の我が国におきましては切実な緊急課題と申さなければならないと思います。
しかし、この法律案が通った場合にここに述べられたような目的が効果的に達成されるかどうかということになりますと、私といたしましては大きな疑問を感じざるを得ません。と申しますより、否定的な答えを出さざるを得ないのでございます。
まず、東京一極集中をこれによって果たして効果的に緩和できるのかどうかという点についての私見を申し上げます。
ここで効果的な成果を上げるためには、今さら申し上げるまでもなく、この一極集中の原因が明らかにされていなければなりません。資本や人口の東京への一極集中は、もちろんこれは今に始まったものではなくて、今ではもう二十年あるいは三十年も前のことになりました高度経済成長期に、既に極めて顕著に見られたのでございます。
この高度成長期には、重化学部門を中心として工業生産の急成長が目立ったのでございますが、従業者の数で見ますと、当時既に工業生産の現場で働く労働者の急速な増加ぶりにも増して、管理、企画、営業といった部門で働くホワイトカラーの労働者の数が大きく増加いたしました。工場と労働者の地理的分布を見ますと、高度成長期の後半には、工場の地方分散が進みまして、工場労働者の方もそれに伴って地方で増加いたしましたが、国全体といたしましては、いわゆる技術革新あるいは合理化の急進展もございまして、工業生産が伸びるほどの勢いではその現場の労働者数はふえませんでした。工業生産の地方分散が少々進みましても、国全体のいろんな職業、階層の中で従業者数のふえ方の小さい部分が分散するわけでございますから、人口全体の地方分散には大した効果を上げることができなかったわけでございます。むしろ公害の地方分散に寄与したものと言えると思います。
この工業の地方分散は、企業がみずからそこに利益を見出して進めたという面に加えまして、政府や自治体の政策努力がそれなりに功を奏して進んだという面も小さくはなかったように考えられます。特に田中内閣のころにおきまして、工場こそ大都市の過密の元凶とみなされまして、その大都市からの追い出しが進められました。こういう工場再配置は、大都市、特に首都東京の機能をいわゆる中枢管理機能に特化あるいは純化させまして、この機能を効率的に発揮させるようにしていくという都市戦略と対をなすものであったと申し上げることができるでしょう。
しかし、実はこの中枢管理機能というものの肥大化と東京への異常とも言うべき集中こそ過密の元凶であったと申さなければなりません。先ほど申し上げたホワイトカラー労働者の急増も、この中枢管理機能やそれに関連する諸部門、悪く言えばこれに寄生する諸部門が肥大化したことによるところが大きいのでございます。しかも、大企業と中央政府との関係、悪く言えば癒着関係の強まりもありまして、この肥大化した諸部門が大都市、特に東京への集中を強めていきました。
このことに関連して、一橋大学におられた坂本二郎さんが東京本社・大阪現場論を唱えられました。これは早く一九六〇年代のことでございました。それから、堺屋太一さんが本名の池口小太郎というお名前で書かれた「日本の地域構造」という本もございますが、中枢管理機能、池口さんの表現では、「経済の上部活動のウエートが増大してそれが東京に集中したことから、日本の地域構造は東京と大阪の二眼レフ構造から東京一極への集中を強めることになった」とあるわけですが、この本も高度経済成長期に書かれたものでございます。
そういうわけでありますから、東京の過密を本気で克服しよう、あるいは緩和しようというのであれば、今から二十年、三十年前でありましても、集中排除の対象とすべきであったのは、工場など
よりこの法案で言うところの産業業務施設、すなわち中枢管理機能やそれに密接に関連する諸機能を担う施設、つまりオフィスビルなのではなかったのじゃないかと思います。
時は移りまして、一九七三年の石油危機を契機といたしまして高度経済成長が挫折いたしますと、その後しばらく一極集中の勢いは弱まりましたけれども、一九八〇年代に入りますと、今度は、いわゆる国際化という要素も加わりまして高度成長期にも増してすさまじい東京一極集中が進行いたしております。そして、一九八七年に策定されました四全総におきましては、このすさまじい東京一極集中を是正するためにということで多極分散型国土の形成ということが唱道されました。
しかし、その具体化といたしましてまず打ち出されました業務核都市の整備と申しますのは、東京を取り巻く近郊の諸都市に中枢管理機能の、それも中枢性の相対的に弱い部分を分担させようというものでございます。そして、都市部に中枢管理機能の中でも財界や各企業にとって戦略的に枢要な機能に純化させようとするものにほかなりません。これでは広域の東京圏への一極集中を一層強めることにしかならないという批判が出てくるのも当然のことと申せましょう。
これに対して、今度出されました法律案は、産業業務施設すなわち大企業の中枢管理機能、情報機能、国際機能を担う施設を全国にわたって、つまり各県に一、二カ所ずつ設定された地方拠点都市地域に再配置しようとしている点で評価できるものであるかのごとくでございます。しかし、その手法といたしましては、地域振興整備公団などによるインフラ整備や税制上の優遇措置など、東京二十三区から地方拠点都市地域に移転してくる企業に何らかのインセンティブを与えようというものであります。この程度のことで東京の企業が本社機能やそれに準ずる諸機能をたやすく地方に移転させてくるとは考えられないわけでございます。
今、東京に集中している企業の本社部門やそれに準ずる諸部門は、情報化社会の中にありまして、特にフェース・ツー・フェースでしか得られない情報にかけがえのない価値を見出しているからこそ、この地価の高い混雑をきわめる東京に集中しているのでございます。
特に現代資本主義下の大企業というものは、最近はしげたバブル経済の中で如実に見られましたように、本業での利潤獲得に飽き足らずに、ともすれば投機的な利潤獲得の衝動に突き動かされやすくて、特に中枢管理部門の中にはそういう要素が多く含まれているようにうかがわれるのであります。バブルが崩壊して、投機に走りやすい部門を多く抱えた東京圏と地道に生産活動に従事している地方圏との格差が趨勢としては開いているとしても、短期的には多少とも縮小している、そういう最新の地域経済報告が出ております。そのことからもこれが逆にうかがわれるわけでございます。
国際化時代といいますが、その中でウエートを高めた企業の国際機能と言われるものにいたしましても、外国為替の操作というような一獲千金の投機的要素を多く含んでおります。そして、企業はそういう操作に習熟したスタッフを二十四時間体制で働かせるために、目の飛び出るような高家賃を負担しても都心に住まわせるわけでございます。こういう国際業務があるからこそ、いわゆるウオーターフロント再開発で生まれた一カ月の家賃百万前後というような超高層マンションの経営が成り立ち得る事例も生じたわけであります。
こういう投機的な業務においては、データ通信などで得られる定型的な情報では間に合わず、都心部の高級料亭などで得られるフェース・ツー・フェースの生きた情報が不可欠とされます。このような業務を担う諸部門が地方で提供される少々のインセンティブに引き寄せられてそこに移転するはずがないわけであります。したがって、中枢管理機能やそれに関連する諸機能を担う産業業務施設の過度集積を改めるためには、何よりもまずこういった投機的な業務の肥大化を抑制して、その首都における立地を直接規制することが肝要と考えるものであります。
地域政策においては、一般にインセンティブよりも規制の方が有効であることは、この種の政策における先進国であるイギリスの経験によっても明らかにされております。先ほど申し上げましたように、我が国におきまして工業の地方分散が一定の成功をおさめることができましたのも、首都圏や近畿圏につきまして、既成市街地における工業等の制限に関する法律というものが制定されていて、これに基づいて工業立地に対する直接規制が行われたことによるところが大きいのではないかと考えられます。
ところが、東京圏の産業業務施設の立地、つまりオフィス立地に関しまして政府がとってこられた政策を見ますと、規制どころではございませんでした。一九八七年にいわゆる中曽根民活を具体化するものとして制定されました民間都市開発特別措置法、これは都心部のオフィスビルの立地規制とは反対に、そこの低層住宅に昔から住む人々を地上げで追い立てて、巨大なオフィスビル街に変えるものでありました。今度の法案はこの特別措置法を否定するものではもちろんございません。この法律案はまた、東京一極集中を加速するこの東京臨海部副都心計画を否定するものでもございません。
以上に見てまいりましたところから、この法律案が東京一極集中の是正に寄与し得ないことは明らかであると考えるものであります。
次に、この法案が地方の活性化に寄与し得るか否かについての意見を申し上げます。
先ほど申し上げましたように、さなきだに貧しい地方自治体の懐から少なからぬものを持ち出して産業業務施設の受け皿を整備いたしましても、そこにそういう施設が進出してくる保証は全くございません。そもそも受け皿の数が多過ぎるということもございます。特に首都から遠隔の地への産業業務施設の立地は絶望に近いと言えるでありましょう。
大体、我が国の地域開発関連の公共土木事業は全体として過剰投資であります。これは私の住む岡山県でも痛感してきたところでございます。地方の活性化と称して公共土木事業をやって中央の企業を呼び込むためだけの受け皿をつくるというやり方は、もうそろそろ清算されなければならないと思います。地方の自立的成長の促進を図ると言うのなら、むしろ地域在来の既存の産業の振興をもっと積極的に図るべきでございましょう。
さっき伊藤先生がおっしゃったきらりと光る町というのは、まさにそういうものになってこそつくられるのじゃないかというふうに思います。
以上、この法律案のやり方での産業業務施設の移転による一極集中是正と地方活性化はほとんど不可能だという私の見通しを述べましたけれども、では目算どおりに移転が進めばそれでよいのかという点につきましても私は否定的見解を持っておりますが、時間の関係で割愛させていただくことといたしまして、これでもって参考意見の陳述を終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/7
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008・山本正和
○委員長(山本正和君) ありがとうございました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/8
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009・種田誠
○種田誠君 きょうは参考人のお三方の皆さん方には、大変お忙しいところ御出席いただきまして、かつまた貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。官頭、御礼申し上げます。
お三方に順次、短い時間でございますが、質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に、伊藤先生の方にお願いをしたいと思います。
今回の地方拠点都市法は全国的に大変な期待をされておりまして、この法律がまさに実効ある形で実施されていく、このことも、私たち極めて重要な立場に置かれているという視点でさらに確かなものにしたい、こういう気持ちで審議をしているところであります。
そういう中で、本法は二つの役割を持っております。一つは、地方都市の独立性のある、創意工夫のある町づくりをしていくということと、それから東京都の一極集中を是正していくということ、この二つの役割を持っているわけであります。
この二つが上手にかみ合わされば、まさに東京の過密における問題点、さらには地方のさまざまな課題、こういうのにもこたえられるという極めて有意義な有効な法律とも言えるわけであります。と同時に、逆に運用いかんによりましてはアブハチ取らずでどちらも功を奏することがない、こういう危険性もあるんではないだろうかと思うんですね。そういう視点で、この法律がアブハチ取らずになってはいかぬという気持ちを私も強く持っておるわけであります。
先ほど先生の方から、地方の中には県庁所在地以外の第二、第三の都市などに歴史や文化や伝統を大事にしながら戦後の産業構造の中でちょっと落ちこぼれてしまっている、活力を失ってしまっている都市があるじゃないか、こういう都市にもう一度勢いを取り戻してもらう、その取り戻すにしても、一律に若者がどうこうというようなものだけじゃなくて、場合によっては高齢者の方が落ちついて過ごせるような都市もあってもいいじゃないか、こういうふうなお話がございました。
この点について、先生の方で、じゃ具体的に地方の歴史や伝統を上手に生かしながら、今先生が述べたような、先ほど横手市長さんを経験された千田先生からもあった、きらりと光るものを持った都市にしていくということで具体的に先生が描かれている都市、それからその手法を伺わしていただきたいと思うんです。というのは、余りに国の方から言い過ぎたり関与し過ぎますと、歴史や文化や伝統というのはなかなか難しい問題も出てきます。その辺のところの手法などについてお伺いしたいと思います。それをまず冒頭にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/9
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010・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 二つ申し上げます。
一つは、産業が急速疲弊してきた地方都市で一つの興味ある試みがある例です。これはスウェーデンのマルモという都市の例でございます。マルモはコペンハーゲンから海峡を高速艇で約一時間ぐらいで渡ったところ、スウェーデンでは多分ゲーテボルグに次いで第三番目の都市かと思います。
この都市は日本の造船産業のために完全にノックアウトで造船がもうつぶれてしまったところです。しかし、そこでどういうふうにしてそのマルモの都市を再生しようかといったときに、いろんなことを考えたんですが、つい五、六年前に興味ある市政の転換をいたしました。スウェーデンのまだ元気なお年寄りの方に積極的にマルモに来ていただきたい、で、そこには必ずしも職業はないかもしれませんが、マルモという地方都市の小ささを使ってお年寄りの方が非常に毎日毎日の生活が充実した生活ができるようになっている。
スウェーデンは、御存じのように非常に手厚い社会保障をしております。この社会保障の金が国家の金としてマルモに流れてくるわけです。
具体的にこのお年寄りの生活あるいは健康上の問題を支える労働力は、若者でございます。そのために、このマルモには非常に優秀な老人のための病院ですとかあるいはデイケアセンターですとか、そういうものが、社会保障のお金が参りましてそれで建築的な設備が整ったんですが、そこに今度は若者をそういうお年寄りを支えるということで積極的にトレーニングいたしました。
お年寄りを中心にして呼んだ町に、結果として、若者がそのお年寄りを介護するという形で集まってきた。それによって医療産業の非常に小さい工場、そういうものもでき上がってきた。こういう形で、重化学工業の町から社会福祉を支える老人と若者が共存する町というふうになりまして、大変有名な実験が営まれたわけです。この結果はどういうふうになっているかわかりませんが、私の推測するところ、その試みは社会福祉の充実というところに乗っかっておりますので、それなりの進展を見ているのではないかと思っております。これは一つの例でございます。
それから第二点は、伝統と文化に支えられた町が非常につまらない形になっていをという点は、私はやはり、この伝統と文化というところをもう一回現在の日本のいい意味での産業化をするということは重要なことではないかと思っております。
卑近な例を申し上げますと、私は行っておりませんが、長崎にハウステンボスという観光施設ができたそうです。このハウステンボスは、話によりますと、オランダの町並みよりも本当にオランダらしい町並みをつくったという点で、これはもしかするとこれまでの観光施設とは違う文化的意味を持っているのではないかというような話を聞いております。
そういうふうに考えますと、例えば駅前の商店街など、これまではつまらないコンクリートの五、六階の建物で中途半端なデパートを入れたりしているわけですけれども、まずそこのところから、私は何も駅前だから高い商業施設をつくる必要はないと思うのであります。むしろ、駅前に駅前らしい緑がいっぱいある広場がありまして、その周りに二階か三階建てのかわら屋根の専門店、地元のお店屋さんがそこをきちっと囲んでいる。そういう駅前からお城の方に行く商店街の道筋は全部かわら屋根できちっと町を整えていく。そういうような施設に対しましては重点的に公共的なサポートをしていく。そういうようなことをやっていくと、それなりにそこの都市は今までと違う都市空間としての調和がある美しさというのが出てくるのではないか。
そういう試みが一体されているかといいますと、ほとんどそういう意識がないんです。最近、文化財型の町並み整備というのが出てきましたが、これは非常にいい傾向だと思います。単なる文化財ではなくて、新しくつくられた戦後の非常にみすばらしい汚い町に対しても積極的にそういうことをやっていく必要があるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/10
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011・種田誠
○種田誠君 次に、千田参考人にお伺いしたいと思います。
この法律でいわゆる基本計画をつくるのは市町村という自治体になるわけなんですけれども、今、伊藤先生からもお話がありましたような地方の創意工夫というのを織りまぜながら町をつくっていくというのが今回の法律の今までの法律と違った大きな特徴でもあるわけなんですけれども、そういうお話があると同時に、先ほど千田参考人の方からはこの基本計画をつくるだけでも大変な労力を要することになるんではないだろうか、この過程の中で疲弊するようなことがあっては困る、こういうふうな御指摘があったわけです。
そこで、まさに基本計画をどのようにつくり上げていくか、そしてこの基本計画を今度はどういう形のサポートがあれば可及的速やかに実行していけるのか、この辺のことについて長い御経験の中から御意見をいただけばと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/11
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012・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) 今、競争の時代でございまして、地方拠点都市の指定に入りますと人より大変よくなるということがありまして、競争するわけですね。そういうところで大変なエネルギーがかかるんじゃないかというふうに私は思いまして、だから、まず県庁所在地なんかはやめた方がいいんじゃないかと思います。もっと目標をはっきりしますと、まず競争がなくなって、それで必要なところを順次やっていくというふうにすればいいと思います。
それから、創意工夫ということで任せることも大切でありますけれども、その計画を上の方で、これは知事が承認することになるんですが、省庁も関係ありますから、国会の先生方に見せなきゃいけないとか何か見せなきゃいけないということで、無理に一生懸命、これが足りないとかあれが足りないということで、修正といいますか、もっともっとというようなことになりますと、大変疲れる。
だから、そこの住民、市町村が自分の命の段階で考えているとおりやらせるということが大事でありまして、創意工夫ということで求め過ぎますと疲れるんじゃないか。今の状況の中でそこの市町村が十分考えてつくると思いますから、できるだけフリーパスをする、それが私はいいと思います。余り何回も行ったり来たり、ここを直してこいとか言わない。大体、市町村がつくるときに相当コンサルタントは入れるかもしれませんが、コンサルタントなんか入れないようにさせてもらう。
それから、今度、県が行きますと、省庁の人はぱっぱっと見まして、ここはおかしいじゃないか、ここをこうした方がいいじゃないかと言う。まあ思いっきかどうか、非常に識見があって言うかもしれませんが、県庁の人にすると、言われるとそのとおり市町村にそれをやらせなければ、またその次に行ったとき、何もやってないじゃないか、こう言われるわけでありますから、まず基本原則としてフリーパス、こういうことにいたしますとこの点は疲れないんじゃないか。やらせることが大事です。
速やかになるべく競争させないで指定をして、そして計画書が立派でなくてもいいからフリーパスでやらす、そしてともかく進むことが大事であるというふうにさせるといいと思います。その中でだんだんみんなが、住民参加でうちの方はなったんだからもっと自分たちの意見をたくさん出さなきゃいけないということで、後からでもどんどん追加の方はできますから、非常に簡単な基本計画にさせて、中身を豊かにするのはゆっくり後でもいい、やりながら考える、やりながらつくるということでもいいじゃないか、こういうふうに思います。そういう点で疲れさせないようにするにはフリーパス、こういうふうに私は考えます。
それから政府の方あるいは省庁の方でサポートするやり方でありますが、今回は、例えば都市計画を二ヘクタールに下げるというようなこともありますが、ただし商業地域でないといけない。しかし、商業地域で二ヘクタールを最低として、そして将来性のある場所で、しかも現在は建造物がない、ここに書いてありますけれども、こういうところは一体どういうところなんだろうか。非常に考えなきゃいけないのですね。
これは、十八ページの都市計画法の特例、第十九条の拠点整備促進区域の規定でありますが、将来性、自然的経済的社会的条件を備えて、そして大部分が建物の敷地として利用されないで、二ヘクタール以上の規模の区域であって、そして現在は都市計画法第八条第一項第一号の商業区域内であることとありますが、横手市でどういうことを考えたらいいのか。そういう点でも、こういう規定をつくればつくるほど従前の都市計画法やいろんなことがありますから、そこを一応首尾一貫してなきゃいけない。しかし、また同時にこれからの将来性もなきゃいけない、しかも現在更地でなきゃいけないというようなことになるとなかなか難しくなるんじゃないか。
そう思いましてだんだん見ていますと、最初のあれからだんだん小さくなってきて、そして結局、開発行為、建築行為の制限等がありますけれども、ここら辺のところはできるだけ特例に準ずるということになりますけれども、余りこういうことをしますと、何か来るやつのためにやるんじゃないか、そのためのここが一番のねらいじゃないかなんて勘ぐられてもまた大変であります。
そういうふうに思いまして、やっぱり余り法律でいろいろあっちからこっちから今までのところと矛盾しないように、まあ新しいものをつくっていくというとこういうふうになると思いますけれども、そこら辺のところ、ぜひひとつ法律適用を柔軟にさせていくというふうにしないと、これは結局何もならなくなるというふうになると思います。
そういう点で、できるだけ地方のやりたいようにやらせるようにする。ここにこう非常に細かく従前の法律に抵触しないで特例を規定すると、今度、そのために特例にしたかもしれませんけれども、結果的には何か開発をするための、そういうところもあると思いますが、私の方はないと思いますけれども、そういうことのためにやったように思われても非常に心外だと思いますから、そういうところは住民の創意工夫でできるように、できるだけ地元の意思を生かして、余り細かくしないようにするということが一番大事じゃないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/12
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013・種田誠
○種田誠君 最後に、森瀧参考人に伺います。
参考人の御意見を伺っておりますと、この法案はどちらにおいても役に立たぬというような御指摘なものですから、御意見を伺うにしてもなかなか難しいんですけれども、一言、それでは参考人のお考えの中における地方の活力をつくり上げていくような、いわゆる拠点になるような都市をつくるにはどういうふうなお考えを持っておられるか、そのことだけちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/13
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014・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 特効薬というのはないわけでございまして、あるようだったらこういう地方の活力の低下というようなものはなくて済んでいるわけでございます。
私はすぐハードな公共施設、公共事業をやるという今までの地域開発の行き方に一般的に批判を持っておりまして、それよりは、現にある産業、現実に商工業、商店あるいは工業、もともとある農業というようなもの、ここでは町ですから特に商工業ということになりますが、そのいうものへ例えば技術開発に対して直接援助をする、あるいは共同研究機関をつくるというような、岡山県でも備前焼の、それから耐火れんがで百名な備前市にセラミックセンター、そういう機関ができましたけれども、そういうふうなことにもっとお金を使うということの方が有効ではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/14
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015・井上章平
○井上章平君 自由民主党の井上でございます。
本日は参考人の方々、大変お忙しいところ御出席いただきまして、大変貴重な御意見を承りましてまことにありがとうございました。
ただいまお三方の参考人のお話を拝聴いたしまして、二、三それぞれお伺いいたしたいと思いますが、なお、ただいま種田委員からも質問がございまして、若干重複するところがございますところはお許しいただきたいと思います。
最初に伊藤参考人にお伺いいたします。
先生からこの法案が地方発展のために大変有益な法案であって評価したいというお話があったわけでございますが、そこで先生おっしゃいました、この法律でイメージされておる都市が各県の二番、三番目の都市を想定して、その特性といいますか、歴史へ文化に根差した品格のある都市であったというお話を伺ったわけであります。しかし、残念ながら、これらの都市はいずれも今日、衰退とは言わないまでも停滞しているということは否めない事実であり、なかなか経済的ににわかに力を回復するということは困難な情勢にある、先生からそういうお話があったわけでございますが、これは私どもも同感でありまして、産業構造の変化、あるいは画一大量生産型の産業に対して手づくりの伝統的な産業文化というのがついていけなかったというようなことであったと思うわけでございます。
さて、じゃこの法律が成立しましてこれらの、ただいま先生がおっしゃいました長岡、高岡、米沢、あるいは郡山、足利といったようなこれらの都市を想定いたしまして、どうすれば活性化するのか。
この法律そのものは特効薬は何も示しておりませんで、地方の自立的な成長を促す、あるいは従来の拠点開発方式、これはいろいろ歴史があるわけでございますが、それなりに例えば新産業都市を初めその時代時代に大変効果を発揮したという点もあるわけでございますが、今日この法律をつくって、こういった地方の状況を何とか活力を取り戻して東京にすべてが集中するという現象を是正したい、国土の均衡のある発展を目指すということであるわけでございますけれども、法律は具体的なことを書くわけではありませんので、先生
がごらんになって、さてどうすればいいのか。
余り漠然とした質問ではお答えにくいと思いますが、例えば基本計画の作成に当たってどういうところに力点を置いたらいいのかというようなことについてちょっと御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/15
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016・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 最近のいろいろな研究機関、調査機関などの調査結果のお話を伺っておりますと、申し上げたいことは、参考人皆様から御発言ございましたように、東京が確かにいろんな点で病気になってきている、これは事実でございます。そのときに、こういういろいろな矛盾が起きてきたときのしわ寄せというのは、これは大企業よりも中小零細企業のところへどうしてもいく。これはもう経済の宿命でございます。
東京にも膨大な中小零細企業がございます。この中小零細企業の中にはサービス産業型のものもございますが、製造業にかかわるものもございます。あるいは最近の産業の変化はサービス産業と製造業とが一体化したそういうような形の業種も出てきております。例えば計測、物を測定する器械をつくる、あるいは火事になったときに煙を感知するセンサー、こういうものに対しては、コンピューターを駆使するような技術と職人的な技術を駆使する技術、両方がないと存在できません。
こういう中小企業、これが私は実は日本を支えていると思うんですが、この企業が東京から今脱出を図りつつあるという事実がございます。これは二つございまして、一つは工場がもはや東京で拡張できないという物理的な問題、それから二番目は就業者を確保できなくなっている、若い労働者を確保できなくなっている、こういう問題があります。今、地方の大学を出ていく連中は、若者も東京なんか行くもんかという連中が事実確実にふえております。私の周りでも、ある大企業に勤めている若者も、たまたま大企業だけれども、実は僕はもう東京に行きたくない、地方の支店なら支店でずっといく方がずっといいんだと言う。そうなってまいりますと、この中小零細企業は地方のこういう若者を育てる大学を求めて、あるいは専門学校を求めて事業所を移す、こういう例がございます。
例えば群馬県の桐生でございますが、そういうところでも、埼玉県からそういう中小企業が工場ごと本社ごと移ってしまう、そういう例がございます。
〔委員長退席、理事種田誠君着席〕
米沢などを考えますと、米沢には有名な工学部がございます。こういうところから毎年優秀な学生が出てまいりますと、そういう学生を労働力として確保するためには、東京に本社があるよりも米沢に本社があって、そこで前から大学と接触しながら、地方の企業と接触しながらやっていく、そういうことが可能になってくるんじゃないか。そういう面では東京の中でも底辺の非常に活力のある、意欲のあるそういう企業というものが私は意外どこの地方拠点都市に結びついて産業の振興ができるのではないかと思います。
それから第二点でございますが、これは高速道路体系が今までの太平洋ベルト型から肋骨型に今転換しつつあります。例えば、四国がようやっと高速道路が充実してまいりましたが、高知県から瀬戸大橋を通りまして、岡山県を通って鳥取の方へ上がっていく、こういう高速道路体係ができてまいりますと、例えば鳥取の若者が高知へ海水浴に行くとか、高知の若者、例えば高知大学の学生が鳥取大学の農学部の砂丘の研究に行くとか、こういうようなことが可能になってまいります。この肋骨型の道路というのは極めて私はこれから大きく地方振興に役に立つと思っておりまして、これによって例えば鳥取県の都市と岡山県の都市と香川県の都市と高知県の都市が縦型に結びついたときに、そこに意外と中小企業ベースの新しい産業振興とかあるいは技術者交流とか、そういうことができてくるんじゃないか。そういう点では、これからの地方拠点都市の形成には肋骨道路に期待するところが非常に大きいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/16
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017・井上章平
○井上章平君 千田参考人にお伺いをいたしたいのでございますが、千田さんは先ほどお話ございましたように、二十年間、横手の市長、秋田の典型的な地方中小都市の市長をされて、私もずっとおつき合いさせていただきましたが、悪戦苦闘の二十年間ではなかったかと推察するわけでございます。とりわけ私は河川整備のことでずっとお手伝いさせていただいたわけでございますが、市長さんとしての大変熱心な行動に心を打たれた一人でございます。
〔理事種田誠君退席、委員長着席〕
それで、ただいま参考人から御意見を伺いましたが、二点ほどちょっとお伺いいたしたいわけでございます。
一点は、参考人からもお話があったんですけれども、東京一極集中という現象が列島全体で起きておりますが、また人口減少県の中でも、県内の県都への一極集中といいますか、これはミニ集中版でございまして、同じような現象が起きつつあるということを言われておるわけであります。この地方拠点都市の今度の法律の立案に当たっても、その辺も考慮して、地方の活性化は第二、第三の都市からというのが大方のコンセンサスであろうと思うわけでございますが、この現象についてどうお考えでしょうか、また、何か打開策といいますか、是正策を例えばこの法律で期待できるかどうかというようなことについてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/17
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018・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) お答えします。
市長時代は井上さんにも大変お世話になりまして、本当にありがとうございました。
おかげさまでうちの方で「ふるさとの川モデル事業」というものが大変立派にできまして、河川改修で広げるときにできるだけその周りの土手のすばらしい大木を切らないようにということで始まった運動でありますが、「ふるさとの川モデル事業」ができたためにそういうものがちゃんと残りまして、すばらしい景観の潤いのある立派な川が河川改修とともにできました。本当に喜んでいる次第であります。こういうものがどんどんどんどん進みますと、新しい地方活性化、地方拠点都市が少しずつでき上がっていくというふうに思います。
うちの方ではそのほかにも、シェイプアップの法律、中小都市活性化法というんですか、あれで大変いろいろ町がよくなりまして、街路なんかも、御影石の破片をブロック形にしたもので歩道をつくりまして、大変ユニークな町づくりができています。
そういうことで大変喜んでいるわけでありますが、しかしながら、御質問にありましたとおり、県内における一極集中ということは事実であります。今までも秋田県でありますと、例えば何か県が施設をつくるというときに、県南と県北にやりますと二つつくらなきゃいけない、それよりいっそ秋田につくれば一つで間に合う、こういうことではないかと思いますけれども、そういう例があったのであります。そうなりますと、結局、秋田市だけは人口が増加しますけれどもその他の市は人口が減る、こういう状況になります。
東北地方を見ますと、青森県では青森市のほかに八戸と弘前、それから福島県ではいわきと会津若松、こういうふうにセカンドシティーがその地域に割拠して、そしてその地域のために非常に頑張っております。そして県当局におきましても、例えば会津若松市に県立博物館を置くとかいうような格好で配慮して、それぞれの地域がその区域の中で立派に第二県都の役目をしております。
秋田市が秋田県を全部見るというのはなかなか大変でありまして、結局、吸い上げ現象の一助になる。それよりやはり地方に、県北と県南にセカンドシティーを置いて秋田県を一体として守っていくというやり方がいいことは、人口の減少が秋田県より遅く福島県、あるいは青森県も秋田県より遅く、福島県は減らないと思いますけれども、青森県の人口の減少が秋田県より遅かったという点でも私は立証されるんじゃないか、こういうふうに思います。
そういう点から、ぜひひとつ今回の指定は県庁
所在地を外して、そして第二、第三の市にする。それもある程度決まるわけでありますから、余り人口がふえている地域を外しますと結局これは北海道、東北、山陰、九州、四国というふうになるわけでありますから、太平洋ベルト地帯なんかは後でもいいんじゃないか、こういうふうに私は思うわけでありまして、今大変苦しんでいる地方、私の言う第二の地方の試練の時期をぜひひとつ乗り越えるようにしてほしいと思います。
今までと違って地方の人たちも決して、助けてください、大変だというんじゃなくて、自分でもう一生懸命生きていくという意識が強くて頑張っていますから、こういう法律で一生懸命国の方から助けてやるというか、一緒にやろうという呼びかけがあれば、大変元気ができていくんじゃないか、こういうふうに思います。
現在、地方の活性化は、物理的な物も大事でありますけれども、やっぱり気持ちでありまして、例えば大分県の一村一品なんていうのも、例えばどこかの町で肉を食って牛の遠ぼえをしたからその町が永久に繁盛するというようなことはないわけでありますけれども、しかし、我が町だって東京に行っても全国的に自慢できるものがあるということで、そこの人たちが自分の町に誇りを持って一生懸命頑張ろう、こういう気持ちを醸成させることが一番大事です。
ですから、私は、インカレッジ政策という、ちょっと英語でうまくなかったのでありますが、ともかくみんながお互いを励まし合っていく、そういうことが政策として具体化されるということが今当面一番地方にとって大事じゃないか。そういう点から、この地方拠点都市の整備に関する法律もインカレッジである。一生懸命地方もやりますけれども、一生懸命目を地方に向けさせてインカレッジさせてもらいたい、こういうふうに思うわけでありまして、非常に私はありがたいことだと思ってます。
ぜひひとつ、まずセカンドシティーを中心にやってもらうことが、例えば秋田県とかそういう県の人口減少をとめて、そして活性化する市町村をまず二つ、あるいはその次に三つ、そういうふうにすることが今当面大事なことじゃないか、こういうふうに思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/18
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019・井上章平
○井上章平君 もう一点は、前市長さんとしてということになるんでしょうけれども、横手市がこの法律が施行されたら早速手を挙げるかどうか、あるいは何をねらうかということとをお伺いしようと思ったわけでございますけれども、ただいまお話を伺ってその辺のことはよくわかりましたので、これからもひとつこの法律を見守っていただいて、いろいろまた御指導いただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
それでは、時間もありませんので森瀧参考人にお伺いいたします。
ただいまお伺いして、この法律に一定の評価はしていただいているようでございますが、こういう形ではむしろ一極集中の弊害除去は不可能だというようなお話でございました。かつて工場の地方分散で行ったような強制力といいますか、規制が伴わなければ、こういった緩やかな誘導策ということでは効果がなかなか上がらないというように特に東京一極集中の是正についてお伺いしたわけでございます。
さりとて私どもは、この方法でも地方の自立的な行動力が伴いませんとそれは確かにおっしゃるとおりであろうと思いますが、しかしそれは、伊藤、千田両参考人もお話しいただきましたように、私は、潜在力は十分ある、それを引き出す努力さえして一定のサポートをすれば十分に効果が期待できると思うのでございますが、重ねてその点についてお伺いいたしたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/19
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020・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 地方の自立的成長の力をどうやって引き出すかということでございますが、私は、いろんな地域開発関係の法律ができて、従来も新産都市とかいろいろあったんですけれども、そういうものが大体余りいい結果を生んでないという評価を持っているんですが、もし国がその地方の振興のためにやることがあるとすれば、やらなきゃならぬだろうと思いますが、それはやっぱり、例えば総合補助金というようなどういうことに使ってもいいというお金を出して、そして自治体が住民の参加も求めて自由に振興策をやるという方が、さっき千田さんも基本計画にいろいろ注文をつけているうちにくたびれてしまうというようなことがあるとおっしゃいましたけれども、そもそもこういういろんな地域指定とかなんとかがあるからそういうことになるわけでございまして、初めから、それはもう何と名前つけてもいいですけれども、活性化総合補助金とかいうような、そういう使途を練らない補助策、助成策というものをとるのがより賢明であろうかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/20
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021・中川嘉美
○中川嘉美君 参考人の皆様には大変本日は御苦労さまでございます。
時間も制限がございますので、一問ずつお伺いをしてみたいと思いますが、伊藤参考人にまず伺います。
本法案では、指定地域の都市機能の増進を推進するということを目的の一つとしているわけですが、各地域において都市計画の専門家がむしろ不足していると聞いているわけでございます。そこで、果たしてどのように人材育成を図ったらいいものか、この辺についての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/21
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022・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 私はその問題は非常に重要だと思っております。
都市計画というのは多分に公的な領域でございますが、反面、非常に市民社会と結びついているわけでございます。お役所というのはどうしても人間の数に制限がございますし、農業関係から突然都市計画へ行けといってもなかなかうまくいかないですし、事務をやっていた方が今度道路をやるというわけにもいきません。都市の規模が小さくなりますと大変苦労されると思っております。
私は、そういう点で、いい形の市町村の都市づくりを支える民間の都市計画を業とするそういう人たちをもっと育てていくべきじゃないかと思うんです。これまではそういう仕事を大学の先生がやるというのが非常に多かった。しかし、大学の先生というのは、そんなことをやっていますともう業績が全然つくれないんです。学会とそういう仕事というのは全然別なんです。市町村の仕事をしている学校の教師というのは大学では軽べつされるなんということになっていますね。
それですから、やっぱりいいかげんな形じゃなくて、都市計画を業として正当な報酬をもらいながらちゃんとした市長さんや助役さんの評価を受けて、これは大丈夫だとか、そういう人材をもっとつくる必要があるんじゃないか。それは必ずしも建築や土木じゃなくてもいいわけです。地理の学生でも、あるいは社会学の学生でも、あるいは法律の学生でも、都市計画というのは非常に広範な領域にわたりますので、そういう人たちを都市計画という市場、これはそういう人たちが集まりますとどうしても市場になりますから、冷酷な話ですけれども、そういう市場をこれから積極的につくっていくということが実は日本の都市づくりを支えていく重要な要素であると思うんです。この点は、農村計画についても全く当てはまることでございます。
要するに、稠密な都市空間あるいは国土空間に対して、専門家として住民の意見を十分に聞きながら行政とちゃんと話を媒介していく、そういう人を早急に育てるということをぜひお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/22
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023・中川嘉美
○中川嘉美君 それでは、千田参考人に伺います。
この地方拠点都市地域の整備ということと自然環境の保全、農林業との調和を図るためにはどのようなことに留意したらいいのか。関連した御意見もございましたように思いますけれども、留意すべき点についてもうちょっと具体的にお答えをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/23
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024・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) お答え申し上げます。
私は先ほど、巨大スーパーとか、今のバブルの
問題とか、それから農産物自由化の話をしましたが、これは皆大事なことでありますけれども、具体的になりますと線引きの問題があるわけです。そういう開発をして農地が開発地になる、要するに事業用地になるわけでありますけれども、そうなると、農民がそこにいなくなるということがあるわけです。ぜひひとつそれを農民主体の開発ができないかということであります。
例えば、ドイツの話で言いましたけれども、農家の皆さんが、農地がなくなって買収で来たお金で、一番いいところに自分の家をつくって、そしてセカンドハウスをつくって観光の一翼というか観光のレクリエーションの基地に貸すというようなこともありますし、それからそういうできた施設に対して緑化をするための緑化センターを自分たちでやるとか、そういうことをいろいろと図る。
農地をつぶしたために農民がどんどんいなくなるということではうまくない。やっぱり一定の農業の人たちが生活できるようなこともその中で含めてやっていかなきゃならぬ。
確かに農地がなくなりますから農業用の農民はいなくなるわけでありますけれども、農村の農民は減らざないようにしないと地方は住民がいなくなるわけでありまして、外来者ばかりになってくるわけであります。そういう点から、そういう、例えば緑化センターとかレクリエーション用のセカンドハウスをつくってそれの基地にするとか、そういういろんなことを考えていくことが大事じゃないか。具体的になりますと、そういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/24
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025・中川嘉美
○中川嘉美君 今お答えいただいたことに関連してちょっと申し上げておきますが、私の受けた陳情の中の一つとして、今おっしゃった農村の農民がいなくならないようにということにも関連するんですが、農業をやっていらっしゃる方々の中でも、当然、転職といいますか、企業が誘致されればぜひそういうところでむしろ働きたいんだという非常に強い希望がある地域もあるということをちょっと申し上げておきたいと思います。
それから、森瀧参考人に伺います。
地方の大学におられる立場から、例えば中国地方の高校からの進学者に対して同じ中国地方の大学への入学者というのは大体七割ぐらいというふうに伺っていますが、かなりの若者というのは大体東京圏の大学へ流出してしまう、そしてそのまま東京で就職してしまう。いわゆる東京志向というものがあるわけですけれども、そういう東京志向に対抗して地域の大学の魅力というものを高めるにはどのようにしたらいいのか、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/25
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026・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 日夜考えている点なんですけれども、なかなかいい知恵が浮かばないわけです。
しかし、従来、国立大学の場合は非常に踏ん反り返っていまして、来る学生は来るんだというようなことでろくな宣伝もしないということだったのが、最近は改まってまいりまして、私は工学部じゃいざいませんけれども、例えば工学部で、いわゆる中央の大企業との連携というんじゃなくて地方の企業との共同研究のできる地域共同センターというのをつくっております。これは学生をそれて引きつけるということはできませんけれども、まあ余り知恵のあることとも言えませんけれども。
あるいは、地方の学校への説明会というのも、かつてはやらなかったのが現在はやっています。
それから私立大学は、大体新しくできましたものはその地方の特性を非常に生かすというふうになっておるようでございます。例えば高梁という小さい市がございますけれども、そこに吉備国際大学というのができて、直接その地域に根差しながら世界に目を開くというようなことを意識的に進めた大学もできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/26
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027・上田耕一郎
○上田耕一郎君 三人の参考人の方々、貴重な御意見をありがとうございました。
伊藤参考人にまずお伺いしますが、二番目、三番目の都市の歴史的伝統的都市空間を大事にしたいと。大変示唆の多い発言で私どもも共感いたしましたけれども、さて、じゃこの法案がそういうことになるのかどうか。この法案は、東京の二十三区の産業業務施設を移そうというもので、果たして誇り高い文化的精神的においを移すことになるのか壊すことになるのか、私どもは大いに疑問があるんです。
例えばここに去年の十一月の産業構造審議会の「新たな産業立地政策のあり方」という中間答申がありますけれども、これで、地方都市圏におけるオフィス立地について、結局、情報アクセス機能、業務系の人材育成機能、全国の拠点性を高めるようなメッセ機能、コンベンション機能、こういうものが不可欠だと言っているんですね。ですから、結局、果たして東京のオフィスが行くかどうか問題ですけれども、行ったとしても、オフィスビルが林立して先生のお考えになるようなことに逆行するんじゃないかという危惧があります。御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/27
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028・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) どうもお役所の書き方というのは非常にステロタイプ化しておりまして、国語の素養がこのごろ非常に未熟になっております。使う単語が限られております。メッセというと、どこでもメッセです。コンベンションといえばコンベンション。コンベンションというのは要するに集会所なんですね。日本語で集会所といえば、大きい集会所もありますし小さい集会所もある。それから、オフィスというのは事務所なんですね。日本語にしますと途端にそのイメージが豊かになってくる。
中小企業が埼玉県や神奈川県から仮に米沢へ行きますと、ガラス張り窓のつまらないこういうビルじゃなくて、屋根がわらのある民家風の建物の中でも十分にその機能を発揮でき、商売も成り立つ。ですから、そういう点から考えますと、もちろん団地型オフィスというのが必要なところもあるかもしれませんが、場合によっては、昔からある職人町の隣にもしかして空き地があったら、そこのところに屋根がわらの三階か四階建ての事務所をつくって、そこに横浜や川口から来る元気な中小企業の人たちが立地するということになれば、それなりのイメージが出てくるんじゃないか。
集会所というのも、木造の集会所があっていいわけです。最近は国産材愛用のための、大景観のこういうコンクリートのつまらない建物ではなくて、非常にいい建物をつくっている。そういう集会所で小規模の国際展示をやればいいわけですし、集会をやればいい。そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/28
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029・上田耕一郎
○上田耕一郎君 千田参考人にお伺いします。
市長時代のキャッチフレーズは、きょうもおっしゃっていましたように、「小さくてもきらりと」というふうに伺っているんですけれども、今度の法案は、地域指定や基本計画決定で議会の関与も住民参加も決められていないんですね。ですから、本当に住民参加による町づくり、計画づくりができるのかどうか。一部事務組合で計画策定ということになると、ますます市民から隔絶されることになるので、この法案がもし実施された場合、本当に地域の自主的な計画づくりをどうやればいいのか。御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/29
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030・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) お答えします。
法律ですべてができるということではないのでありまして、計画等は一応は市役所の役人が書くかもしれません。でありますけれども、実際に動かすには、現在は市民が参加しないことにはできないわけであります。
例えば、区画整理がここの大きな手法になっておりますけれども、区画整理をするために住民が自分の意見を出して、自分たちの本当に信頼する施行者であるか、そして自分の意見が十分に酌み取られ繰り入れられるかということを非常に厳重にやるわけであります。でないと、今は反対もできますし、判こを押さなければこれは移転もできませんし、それで一人の人が移転補償の契約書に判こを押さなければそこら辺は全部動けないわけであります。
したがいまして、区画整理を立派に遂行するた
めにはどうしても民主的でなければいけないし、そしてそのためには市民の参加が必要である。でありますから、よくできているところはそういうふうになっているんです。できないところは恐らく民主的に行われない、そしてまた市民参加で行われていないということでありまして、区画整理をするから、あるいはこれをするから、すべて民主的でない、市民参加ができないということではないんです。
でありますから、問題は、先ほどから何回も言いましたとおり、現下の体制の中で地方は非常に困っている、その困っている地方に元気をつけるという意味で賛成でありまして、後のことは私たちに任せて、そして今、市町村は民主的に市民参加をやっていますから、たくさん見ていますけれども、民主的にやっている市町村はどんどんよくなりまして、そうでない昔のやり方をしている市町村はやっぱりだめなんです。先進的な市町村と従来型の市町村との差がどんどんできている。こういう時代でありますから、地方をぜひ信頼して、まず、政府といいますか中央は地方を元気づけて、後は私たちに任せてください、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/30
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031・上田耕一郎
○上田耕一郎君 森瀧参考人にお伺いします。
東京の一極集中是正でインセンティブよりも規制が大事だという点は私どもも賛成で、山崎建設大臣は、前回、私の質問に対して、太陽か北風がという話があるが太陽の暖かみて来てもらうんだとおっしゃいましたけれども、果たしてうまくいくかどうか。
私は森瀧参考人の御意見に賛成なんですが、森瀧さんには、これまでの国の地域開発政策で地方に一体何がもたらされたのか、地方の自立的成長のために一体何が必要なのか。割愛されたという部分もあったかと思いますけれども、御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/31
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032・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 従来の政策を振り返ってみて、そして今度の法案がその反省の上に立っているかどうかということでありますが、それがどうも不十分であるというふうに見ておるわけです。
例えば、私は岡山にいますからどうしても水島ということを考えます。あれは新産業都市建設促進法でできた工業地域でありますが、できたところは公害という問題がもちろん起こっていますけれども、その後背地の広い農村が他のところにも増して中国産地吉備高原の中でも最も過疎が進んでおるというような事態がもたらされているわけです。
それで今度の場合も、千田さんがおっしゃるように、元気をつけるということで、そこから後は自主的にというふうにいけばよろしいんですけれども、競争をやっているうちに、まあ水島も競争で持ってきたところなんですけれども、かえって地域がああいう結果にならないだろうか。それが従来の反省の上にきちっと立っていればそういうことはないと思いますけれども、そんな点について憂慮を持つものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/32
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033・山田耕三郎
○山田耕三郎君 参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見を承りまして、私たちの参考の資にさせていただきたいと思っております。
短い時間ですが、端的にお尋ねを申し上げます。
伊藤参考人さんは、この法律について大変有益な法律と御指摘されました。千田参考人さんは大賛成と仰せられました。森瀧先生は、趣旨はまことに結構だとおっしゃいました。けれども、お三人さんとも、大体においてこの実現性に対して若干の疑問を投げかけられておられます。私も全くそのとおりでございます。
そこで、お尋ねですけれども、昭和六十年の首都改造計画では、東京の一極集中構造を是正するために神奈川、千葉、埼玉、茨城南部及び多摩地区などに自立都市圏を建設、そこに東京都心部にある業務機能や政府機関の一部を分散させる対策が打ち出されましたけれども、一向に進展が見られませんでした。私は、この案はかなり現実性の高い案だと思っております。ですけれども、それすら満足に進まないわけですから、ましてや全国的に人口、産業が果たして分散をしていくのでしょうか、このように思っております。
こういったことに対して、今申し上げました計画が進行しなかったのは何が原因か、だったら今度のこの法律を実効あるものにしていくためには何が必要だというようなところを、端的な表現でお教えをいただければと思います。
伊藤先生から順番にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/33
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034・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 具体的に申し上げますと、私は大学というのは、特に小さい規模の私立大学は非常にこういう地方拠点都市に役に立つと思います。
と申しますのは、私は山形の東北芸術工科大学というところにかかわっているんですが、入学式に行きましたら、四百人の若者が山形の一隅に集まっておるわけです。これは、四年間ですと千六百人です。この千六百人の若者が山形市に集まること自体、あとは教育しなくてもほっぽっておくだけでも山形市は変わっちゃうんじゃないかと思うんです。
ですから、そういうことを考えますと、大学をつくるということは、単に大学経営だけではなくて、若者を一定期間きちっとその国土の地方都市に集まってもらってその地方都市に習熟するという、そういうチャンスをもっと与えるべきではないかと思います。国立大学は全然私は信用しておりません。むしろ、私立大学が非常に意欲的にいろいろやっております。そういう点で、私立大学が元気に地方拠点都市に定着できるように、そしてそれに対するきちっとした補助をやっていただくということが私は重要な地方拠点都市法の側面ではないかと思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/34
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035・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) 私も大学のことを考えていましたけれども、この地方拠点都市が法律でうまくいくかどうかということは、挙げて地方の人たちが力が出るかどうか、活性化ができるかということにかかっておりますのでありますから、先ほどから申し上げておりますとおり、国はできるだけ地方の意欲を尊重してその人たちに任せるということが一番基本だと思います。そういうことによって元気を出して、そしていろいろな、これは事業所を呼んでくるのはなかなか大変かもしれませんけれども、まず自分たちが自分の町の機能をよくするということによって次第に来るのではないか、こういうふうに思います。
連れてくる方はまたそちらの方で努力をしなきゃいけませんけれども、自分たちの町づくりをまずよくやるということが一番基本になるのじゃないか、こういうふうに思いますから、この計画をつくりましたら、とやかく言わないで、そしてその計画については大いにひとつ協力をしてやらせるということがこの成功の秘訣ではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/35
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036・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 私は、かつては日本の農業は日本全体の産業在発展させるための肥やしみたいにされてきたのですけれども、現在は肥やしになる活力も失っているという感想を持っているんですが、これはやはり、農産物の輸入の自由化というようなことを早々にやらないで、この活力を保つということが一つ。
それから、特に地方都市でありますが、ちょうど少品種大量生産から多品種少量生産へという産業構造の転換というのはそういう地方の産業を興す一つのチャンスになるわけでございまして、そういうところに技術的な援助をちゃんとやる、そして地方の産業が、今、高速道路ができておりまして大企業の中での地域間分業というのが進んでいるんですが、それは大企業でそういうことをやるのはやむを得ないとして、地域の中での産業連関がずたずたになっているので、これを回復するというための商工業行政というのをもっと推進していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/36
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037・山田耕三郎
○山田耕三郎君 こんな問題にかかわっておられましたら、伊藤先生と森瀧先生にお願いをいたしたいのですが、こういった意見がございまし
た。
国民がどこに住みたいかあるいは働きたいか、それが選択でき各種々の魅力ある都市は確かに必要だと思います。その代表としてただいまでは東京があると思うのですけれども、そこであえて分散をさせなければならない理由はなぜなんでしょうか。本当に分散させねばならない本質的な問題があるのでしょうか。例えば、土地利用でスプロール現象が起きていると言われますが、二十三区の指定容積率の充足率は四二%しかありません。これは土地の有効活用がなされていないというわけでして、再開発すれば受け入れの余力は十分にあるわけなのです。そこにオフィスか住宅か商業施設を建てていくかはともかくとして、インフラが追いつかないほど過度の集積となっているのでしょうか。
こういうような疑問を提起しておられる御意見を承りましたが、先生方はこれに対してどう考えておいでになりますか、お教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/37
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038・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 空間的な形で東京をもう少し使えるかという問題については、私は意見を差し控えますが、それは可能でもあるし難しいことでもあるということです。
問題は、東京に集まったあるいは東京に集まった人口集積を見ている地方の人たちが、二十一世紀に向かって自分の生活の多様性を考え始めているんじゃないかと思います。ですから、これは企業の中でも単なる上方志向だけではなくて水平型の形で自分の職業を選び、あるいは自分の人生設計を考えるという人たちも出てきております。あるいは地方における比較的健全な家庭の中における子女教育というのも、これも東京について必ずしも肯定的じゃないということもあります。
そういうふうに、国民全体の持っている生活の多様化が、結果としては私は東京に対する否定が増加し地方に対する希望というのを起こしているのではないかと思っております。これは単に若者だけではなくて、高齢者の問題についても極めて同じようなことが言えるのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/38
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039・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 私がかねてからその点について考えておりますのは、職業選択の自由と居住地選択の自由とが一応法律では認められておりますけれども、事実上それを両方満たせるようなところがない、これを全国どこへ行っても満たせるような地域構造をつくるということが国土政策の究極的な目標ではないかということであります。
それで、東京について言いますと、つまり東京は多様な職業選択の余地はあります。そして、企業にとってはそれこそさっきおっしゃったようにまだ過密でないという面があるのは確かだと思います。しかし、住民にとっては過密であることはもう明らかであります。この住民にとっての過密と企業にとっての過密とが一致しないというところに分散の必要性というものがあるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/39
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040・山田勇
○山田勇君 民社党の山田でございます。
三参考人には大変御苦労さまでございます。私が最終の質疑者でございます。三参考人の先生方にまとめて質問を申し上げたいと思います。
伊藤先生は参考陳述の中で、都市空間の美しさ、道路の美しさ、空間の美しさ、ドイツ森林の文化都市の美しさ、非常に都市というものに対してロマンを持っておられる先生、美しい心を持った先生だなというふうに拝聴をいたしておりました。そこで、偶然ですが、この次に来ます都市計画法を勉強するために先生の著書を、私、先日買ってまいりまして、「最適都市を考える」という中のいろんなディスカッションの中で言われております。そういう中で、この法案に先生は大変御賛同いただいているんですが、先生、この法案の中でもし不備があるとすればどの点が一番不備だろうか、この点だけ改正してもらいたいということがあるとすれば、何でしょうか。
千田参考人には、この伊藤先生の著書の中にも書いてあります、いわゆる農村空間を大切にする、農村というものを非常に力を入れて述べておられるんですが、僕はこの法案が適用されるには農村地帯といいますか地域も当然開発の中に入ってくると思うんで、今後、農村がどうあるべきか、この拠点都市整備法案の中でどうあっていくべきかということを御経験の上から御答弁をいただきたいと思います。
森瀧先生には、先ほど来御意見を聞いておりますと、公共事業投資が過剰投資である、もっと地場産業にそういうお金を回したらどうかということでございますが、この法案は御承知のとおり六省庁にまたがっての法案でございまして、その中にはもちろん商工も入ってございますので、先生は、いわゆる活性化整備資金とか活性化基金だとかというふうにして地場産業に対して補助金というものを与えていけばいいというような御意見を述べておられましたが、その点についての先生の御意見、公共事業というものだけではなく、そういう補助金制度の中で地場産業にインパクトを与えていけばもっといいんではないかという御意見というふうに拝聴しましたが、逆に森瀧先生にはこの法案の一番いいところをひとつ御答弁いただければ幸いでございます。
じゃ、伊藤先生からよろしくお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/40
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041・伊藤滋
○参考人(伊藤滋君) 私が一番欠けておりますと思いますのは、やはり日本の歴史、風土に対する思い入れというのがないんじゃないか。この歴史、風土というのは単なる地形ではございません。そこには、ある文化、その文化にはぐくまれた新しい教養人というのが都市の中に出てくるべきだ。そういう面は実体化できないんですけれども、日本のこれからの将来に非常に重要だと思うんです。
これは四日ほど前にOECDの「世界の都市の危機を考える」というところで、都市空間をよくするということと一緒に人間の都市で住むべきマナー、礼儀作法、そういうものを一体ヨーロッパの都市は教えてきたのか、産業革命の後にかつての教養主義的ないろんな美しい都市をつくる運動が二十世紀初頭にあったんですが、それにかわる二十一世紀に向かっての日本型の都市あるいは巨大都市に対しての文化の深い、そういう都市空間をつくる運動というのがないではないか、そういう議論がございました。
そういう点で、砂粒のような人間ではなくて、日本の風土に合った、少し湿っぽくて、情緒性もあって、家族を大事にして、隣近所ともある程度じっと我慢してつき合えるような、そういう都市空間をつくれればいい。しかし、都市というのは閉鎖的ではございませんから、広がります。農村社会の非常に悪い面というのは余りにもそういう点が凝縮して煮こごってしまうということで、そういうことはよくないんですが、その辺のバランスをうまくつかんでいくような、そういう雰囲気をつくり上げるような都市づくりというのはあるんじゃないかと思っておりまして、それはやはり人口が十万ぐらいの都市だとできそうだなという希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/41
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042・千田謙蔵
○参考人(千田謙蔵君) ただいまの質問にお答え申し上げます。
十七条に、その調和を図るべきだ、配慮すべきだということがありまして、私はないよりはいいというふうに思いますけれども、ぜひこの法律で農村計画も追加して一緒に基本計画の中に入れるということをしてもらいたいと思います。
都市は、特に地方都市は農村がなくては生きていけません。それは単に緑とか、それから空気がうまいとかということではなくて、やっぱり農村からでき上がったのが町でありまして、絶対に農家、農村がない町ということはないわけでありまして、そういう点から、農村がどんどんなくなって町だけができてくるということはあり得ないわけであります。
したがいまして、今の状態の中で農家が生きていくのは大変でありますから、いろいろ所得補償方式というものを、米価は下がるかもしれない、あるいは自由化があるかもしれない、しかし一定
の農業を守るためには最低のというか、ミニマムな生活をできるために所得補償をすべきです。外国でやっておりますけれども、そういうことを私は要求したいんであります。
特に山間部はそうでありますけれども、それができなくても、少なくともこの地方拠点都市の計画の中に農村計画、例えば工場、事業所が来たら農家から一人採るとか、あるいはつぶれた農地を変えるために緑化センターをつくったときにそれに補助をするとか、それを助長するとか、あるいは美しい風土のところに工場や都会が大きくなれば人口は多くなるわけですから、その人たちのレクリエーションのための農村の観光施設、例えば先ほど申し上げました民泊の施設を農家に経営させるとか、そういうようないろんな方法をぜひひとつこの際出してもらいたい、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/42
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043・森瀧健一郎
○参考人(森瀧健一郎君) 今の御質問で、いいところということでありますが、まず一つは趣旨でございます。地方の自立的成長、非常に明白な自立的ということが従来は言われなかった。中身を見ますと、残念ながら自立的成長とは反するわけでありますが。
それからもう一つ、これは従来の地域開発の反省が見られるとすると、最後のところで、これが国や地方公共団体の努力義務規定にとどまっているところがちょっと残念なんですが、国土利用計画法に言う地価についての監視区域を指定して地価が上がらないようにしろと言っている点、これは従来も、そういうところに指定されたりしますと何もしなくても必ず地価が上がるというようなことがございました。従来の開発政策についての反省があるとすれば、そういうところかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/43
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044・山本正和
○委員長(山本正和君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/44
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045・山本正和
○委員長(山本正和君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。
地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律案について、商工委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することとし、さらに今後他の関係委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合は、これを受諾することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/45
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046・山本正和
○委員長(山本正和君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/46
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047・山本正和
○委員長(山本正和君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時一分散会
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112314149X00619920521/47
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