1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成六年六月六日(月曜日)
午後零時五分開議
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○諸事日程 第十八号
平成六年六月六日
正午開議
第一 国務大臣の報告に関する件(ウルグア
イ・ラウンド交渉について)
第二 オゾン層を破壊する物質に関するモント
リオール議定書の改正の受諾について承認を
求めるの件
第三 国際電気通信連合憲章及び国際電気通信
連合条約の締結について承認を求めるの件
第四 国際電気通信連合憲章、国際電気通信連
合条約及び業務規則に係る紛争の義務的解決
に関する選択議定書の締結について承認を求
めるの件
第五 千九百九十三年の国際ココア協定の締結
について承認を求めるの件
第六 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出)
第七 高齢者、身体障害者等が円滑に利用でき
る特定建築物の建築の促進に関する法律案
(内閣提出)
第八 建築基準法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第九 消防法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
以下 議事日程のとおり
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/0
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001・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
大脇雅子君から海外旅行のため十日間、横尾和伸君から海外旅行のため八日間、それぞれ請暇の申し出がございました。
いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/1
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002・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
よって、いずれも許可することに決しました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/2
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003・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(ウルグアイ・ラウンド交渉について)
内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。羽田内閣総理大臣。
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/3
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004・羽田孜
○国務大臣(羽田孜君) ウルグアイ・ラウンドの交渉につきまして御報告を申し上げます。
四月十二日から十五日まで、ウルグアイ・ラウンド閣僚会合がモロッコのマラケシュにおきまして開催され、我が国を含む各国の代表がウルグアイ・ラウンド多角的貿易交渉の成果として作成された文書を添付した最終文書に署名し、これによりウルグアイ・ラウンド交渉は正式に終了いたしました。
交渉の成果は、最終的に世界貿易機関を設立する協定として取りまとめられ、現在、各国とも同協定の一月一日の発効を目指して鋭意国内手続を進めております。我が国といたしましても、同協定の締結につきまして国会の御承認を得た上で年内の締結を目指す所存であります。
ウルグアイ・ラウンド交渉の子細につきましては、同協定の締結について国会の御承認をいただきます際に国会の御審議を通じて御報告してまいりたいと考えておりますが、交渉の結果が我が国の国民生活全体に及ぼす影響は他の外交交渉に類を見ないものであると考えられますので、交渉の概要及び意義につきまして一言申し述べさせていただきたく存じます。
ウルグアイ・ラウンド交渉は、鉱工業品の関税引き下げのみならず、今までガット体制のもとで必ずしも十分な貿易ルールがなかった農業、あるいは新たな貿易ルールを定めるべき分野である特許権や商標権などの知的所有権、貿易に関連する投資についての政府の措置、さらには金融、運輸などのサービス貿易分野を含む交渉でありました。
最終的には百二十五の国や地域が参加して、七年以上にわたって交渉を行ったかつてない包括的かつ歴史的な一大事業であったと申し上げることができます。
この交渉が成功裏に終結しましたことは、各国がそれぞれの抱える困難を乗り越え、多角的自由貿易体制を維持し、さらに強化することについての強い意思を示したものであり、国際経済秩序に対する信頼を確保する上で極めて重要なことであったと信じます。
我々は、一九三〇年代の保護主義の台頭が世界貿易、そして世界経済の低迷を招いた苦い経験を持っております。このような経験に照らせば、今回の交渉の成否が今後の世界の自由貿易体制、ひいては世界経済の拡大と活性化にとりいかに重要な意味を持つものであったかは明らかであります。
政府は、貿易立国である我が国にとって世界経済の拡大と繁栄なくして我が国経済の繁栄もないという信念のもとに、歴代政権の努力の積み重ねを踏まえ、ウルグアイ・ラウンド交渉を成功に導くため、一貫して強い意思を持って交渉に臨んでまいりました。私自身、ウルグアイ・ラウンド交渉開始以来七年間にわたって、米、ECを初め多くの国、地域の人々と折衝し、我が国の主張について理解を訴えるべく最大限の努力を行ってきたところであります。
我が国は、農業交渉では米などの困難な問題を抱えておりましたが、将来にわたる国益を考えて厳しい決断を行い、調整案を受け入れることといたしました。これはウルグアイ・ラウンド交渉の成功のために、我が国の国際的責務であるとの観点から、まさに断腸の思いで行ったものであります。また、鉱工業品の関税引き下げ、サービス、貿易関連投資措置等の分野では終始積極的な交渉姿勢を示し、多大の成果を得ることができました。
ガット事務局による分析によりますと、ウルグアイ・ラウンド交渉による市場アクセスの改善がもたらす経済的利益は、世界全体で二〇〇五年の時点で約二千三百五十億ドルに達すると見積もられております。
交渉の妥結によって我が国が受ける利益を具体的に挙げれば、鉱工業品の市場アクセスに関しては、例えば我が国や米国、欧州連合も含め先進国間で関税率が約四割引き下げられることとなり、我が国はこのような関税引き下げの利益を受けることができます。
農業に関しては、世界の農産物貿易を大きく撹乱していた輸出補助金が総予算額及び数量ベースの双方で削減されることにより、農産物貿易の安定化が図られることとなります。
また、サービス、知的所有権、貿易関連投資措置等、従来、貿易に関するルールが設けられていなかった分野に初めて国際的かつ包括的なルールが設けられ貿易の自由化が進められるので、貿易立国である我が国としては、特に途上国を含む世界の国々がこれらのルールを尊重し、今後、次第に自由化を図っていくことにより大きな利益を受けることになります。
さらに、紛争解決手続についても、手続が強化されることにより一方的な措置の発動を抑止する効果があり、貿易環境が安定的なものになるとの利点があります。
私は、この機会に、政府が交渉をまとめるため尽力するに当たり、国の各方面より得た御理解と御協力に改めて深く感謝を申し上げます。
今後の課題として、各国とも世界貿易機関設立協定が発効するまでの間、ウルグアイ・ラウンド交渉の成果を損なうような措置をとらないようにするとともに、同協定が発効した後は、交渉の結果でき上がった国際的ルールを遵守、活用する必要があります。
また、我が国としては、新しいルールに順応していくために多くの国内努力をしていかなければなりません。特に、農業につきましては、我が国農業の将来展望を切り開いていくために政府としての万全の施策を講じていく所存であります。また、国内経済面における規制緩和を一層促進し、日本経済の一層の活性化を実現していく必要があると考えており、今後とも皆様の一層の御協力をお願い申し上げ、報告とさせていただきます。
以上であります。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/4
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005・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。大河原太一郎君。
〔大河原太一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/5
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006・大河原太一郎
○大河原太一郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま羽田総理から御報告がございましたガット・ウルグアイ・ラウンド協定について質問をいたします。
我が国の貿易と経済の今後において最も重要な意味を持つガット・ウルグアイ・ラウンド協定は、半年前、昨年十二月十五日実質合意され、七年半に及ぶ交渉の幕がおりました。その間における関係者の御苦労を多とするものでありますが、本協定の交渉の過程、合意の内容を見ますと、遺憾ながらそのような努力の積み重ねが十分生かしきれず、その成果は国益から見て問題を残し、また解釈の違いやあいまいな部分等も見られるのであります。
このため、我が党はガット・ウルグアイ・ラウンドの最終合意について全体像を速やかに国会に報告するよう要求していましたが、政府はこれを怠ったまま、羽田総理御自身、前内閣の外務大臣として四月十五日マラケシュで最終合意に署名されてまいりました。
米国においては、ファストトラックの審議に先立ち既に議会において予備審議が開始されておりますが、我々の要請により、政府はようやく本日、本院に報告の運びとなった次第であります。いずれ承認を求めるべき重要な協定の国会に対する報告がこのようにおくれたことは、農業合意の受け入れに続く国会軽視としてまことに問題であると言わざるを得ないのであります。このような報告のおくれについて、総理の率直な反省の弁を承りたいのであります。
また、多岐にわたる今次の交渉の終局段階において、我々はその多くを官僚にゆだねた交渉に危惧を抱き、各分野を統合して政府全体としての戦略的視点に立ち閣僚ベースで交渉することを強く要望してまいりましたが、結果的には農業の分野はもちろんのこと、金融、海運等のサービス分野、知的所有権等を見ても、米、欧の利害が優先されたものと受けとめざるを得ず、我々の危惧が現実のものとなったのであります。
羽田総理、総理は前内閣において外交の最高指揮者の立場にありながら、交渉の多くを縦割りの官僚任せにしてリーダーシップの発揮が十分でなかったという批判に対し、また、米の部分開放を初め他の分野においても多くの問題を残したことについていかにお考えか、答弁を求めます。
なお、前回の東京ラウンドの際、牛場国務大臣が対外経済担当相として活躍されましたが、このラウンド交渉の反省に立ち、今後、日米包括経済協議を初めますます多岐にわたる経済外交から見て、総合的に対外経済交渉を担当する閣僚のポストを設けるべきであると思うが、あわせて所存を承りたい。
さて、今次ラウンドの最大の結論の一つは、世界貿易機構、いわゆるWTOの設立てあります。
自由貿易体制の維持発展のためには、WTOの設立とともに、今後、その機構の肥大化の防止や特定国の影響の排除等、その運営は大きな問題となります。我が国がWTOの運営にいかに参加していくか、世界の経済大国としていかに主導権を発揮していくことができるか、総理の御見解を承りたいのであります。
次に、我が国はWTOにおける新たな紛争処理方式がスーパー三〇一条の発動など一方的制裁措置に対する歯どめの効果を期待しているのに対し、これによってスーパー三〇一条の発動が必ずしも制約されることはないとの趣旨の発言が既に米国側から伝えられ、その認識にギャップがあるように思われます。
細川前総理は、昨年十二月、農業合意の受け入れ表明において、世界の自由貿易を守るためにやむなく受け入れた旨の説明をなされておりますが、WTOの自由貿易を守る機能についてこのように解釈の食い違いが出ており、果たしてWTOの設立によって米国の三〇一条の発動に足かせがかけられるのかどうか、お伺いしたいのであります。
さらに、アンチダンピングに関する措置については、パネルの権限を原案より縮小する内容が織り込まれるなど、米国の意向がかなり反映されております。鉄鋼や半導体などのダンピング提訴に苦しんだ我が国が、自由貿易の新しいルールづくりから見て当然とも言うべき主張を通し得なかったこと、特に迂回防止の規定が合意に至らず各国の恣意的運用の余地を残したことは、企業の海外投資を行う場合大きな障害となりますが、いかがお考えか、お答え願います。
また、サービス分野においても問題が残っております。金融においては継続協議となっておりますが、その成り行き次第では各国とも自由化約束の後退を余儀なくされる可能性が大であります。海運については、米国が最後まで外航海運の自由化を拒否し、基本テレコムは独仏が国営であることなどのために実質的な自由化交渉が行われず、先送り、継続交渉となっています。
オーディオビジュアルに至っては、欧州が文化政策上の保護の必要性を理由に自由化を拒否し、継続交渉の対象にもなっていません。知的所有権についても、特許につき先願主義と先発明主義の基本問題が解決せず、我が国の経済界は将来特許紛争が多発することを懸念しております。
総理、貿易立国を国是とされるなら、このような重大な問題について今後引き続き我が国の主張、立場が反映されるよう最大限努力すべきであると思いますが、総理の決意を伺います。
米、欧各国とも自由貿易主義を標榜する中でどうしても譲れない一線については守り通しました。それぞれの事情を互いに認め合って閣僚交渉の場でギブ・アンド・テークを行ったようでありますが、それに比べ我が国は一体どのような交渉を行ってこられたのか、譲歩を重ねての交渉であったのか、どうであったのでしょうか。
さらに、食糧の自給率が先進国の中で際立って低い我が国が、国民の生命、農村、国土を守るために何で主食である米を守り切れなかったのか、米の部分開放を譲歩して、そのかわり我が国は何を得たのか。農民を初め国民全体に、この際改めて御説明を願いたいのであります。
次に、農業協定についてお伺いいたします。
農業合意の中においても大きなアンバランスがあり、輸出補助金が一部の削減のまま温存され、包括関税化が採用され、例外といっても加重的な負担を伴い、輸入国である我が国にとって著しく不利なものとなりました。
このたび、国内の凶作に伴い緊急輸入の手当て、配送のおくれにより各地で米パニックが起こり、国民の皆さんは国内産米の自給の必要性を痛感されましたが、このままでいくと農業、農村は大きな打撃を受け、食糧の安定確保の懸念だけでなく後世に大きな禍根を残すことになります。
このため、食糧の安全保障に不可欠な国内生産体制の安定、改善を緊急に進める必要があります。政府は、国境措置、価格所得政策等を含めどのような対策を講じられようとしているか、お伺いいたしたい。
なお、我が党はこれらの重要課題について目下具体的な抜本対策の検討を進めており、いずれ成案を得て政府に強く要請したいと考えております。特に、関税化、自由化に伴う国境措置については万全を期する必要があります。例えば、牛肉の輸入増大に対応するため、我が党から既に議員立法として提出している法案のように、国産への影響を極力少なくするためセーフガードを設けるべきだと思いますが、総理並びに農林水産大臣のお考えを承りたいと存じます。
次に、政府は、昨年十二月の閣議了解において米のミニマムアクセス導入に伴う転作の強化を行わない旨定めておりますが、それでも農民は減反が増加するのではないかと不安を抱いております。
ミニマムアクセスにより、外米が毎年累増して減反を強化しないまま平年作が続くとしたら、六年後の平成十二年には恐らく膨大な在庫を抱えることになると思われますが、一体どのようになさるおつもりなのか、お聞かせください。
積み上がる外米を備蓄米として保管し、一たん緩急に備え、更新する場合は飼料米、海外援助米として利用する方策等を真剣に今日ただいまから検討すべきであります。当然大きな財政負担を伴いますが、二十一世紀に向けて世界人口急増等により食糧の恒常的な不足時代が予想されることに備え、食糧の安全保障のコストとして国民的コンセンサスが得られるよう努力すべきでありますが、お考えをお聞かせください。
さらに、グローバルな視点に立ち、世界人口会議やFAO等において各国の食糧の安全保障の必要性を積極的に主張し、国際的なコンセンサスづくりに努めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
なお、問題となっているミニマムアクセスの義務の範囲については、政府は我が党の要求によって統一見解を文書をもって示しました。しかし、その内容を見ると、客観的に輸入が困難な状況では輸入しなくても法的義務違反が生ずるものではないと理解しているとなっています。しかし、政府がそのように一方的に理解しているだけであって、国際的に約束されたものではないのであります。この点については、将来問題を起こさないためにも各国の了解をはっきりとっておくことが必要であります。総理と農林水産大臣の明確な答弁を求めます。
締めくくりに当たりまして確かめておきたい点がございます。
今回の最終文書の構成を見ると、世界貿易機関を設立する協定と閣僚決定、宣言の二部で構成されております。WTO設立協定については、その附属書一の中に物、サービス、知的所有権など各般にわたる十五の独立した協定が含まれております。さらに、附属書二では紛争解決について、附属書三では貿易政策検討制度、同四では複数国間貿易協定などが包含され、全体としてWTOの設立協定となっているのであります。
このような複雑多岐にわたるウルグアイ・ラウンド協定のうち、国会承認を求める部分はどの部分になるのか、もし国会承認を必要としない部分があるとすればその理由は何か、国会提出の時期を含めて羽田総理の見解を求めるものであります。
また、膨大な内容の各論審査については関係委員会に早期に提出して十分審議されるようにすべきでありますので、この点も確約願いたいのあでります。
なお、食管法の改正を初め批准に必要な国内制の整備について、どのような検討を進めていつごろ国会に提出するのか、あわせてお聞かせ願います。
最後に、いずれにいたしましても、今日までの国会論議の経緯やWTOの紛争処理体制の整備、個別分野における内容等について多くの問題が残っておりますので、本協定の国会承認等については、農政、国政に対する信頼を今後政府がどう回復されていくか、そのための抜本対策をいかに講じていくかに、すべてがかかっております。とのことを十二分に肝に銘じて対応をすべきことを強く主張して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/6
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007・羽田孜
○国務大臣(羽田孜君) 報告のおくれについてでございますけれども、政府としましては、国会にこれは御報告しなければならない、そのために準備を進めてまいりました。今般、国会の日程との折り合いがついたために報告カ行われることになった次第であります。
もっと早く報告すべきだったとの御指摘は謙虚にこれは受けとめてまいりたいと思います。ただし、国会を軽視する意図というのは毛頭なかったことは、これは御理解をいただきたいと思います。
縦割りの官僚任せにしているというととでありますけれども、ウルグアイ・ラウンド交渉におきましては、これはもう自民党内閣の時代から大河原太一郎議員ともともどもに各国を回り話しかけてきたところでありますし、また細川総理大臣ですとか外務大臣であった私自身もあらゆる機会をとらえて我が国の立場を主張してきたことでございまして、まさに閣僚みずからが第一線で国会決議の趣旨を体しながら最大限我が国の考え方を主張してきたということであります。
今後の交渉におきましても、従来にも増して閣僚みずから先頭に立って交渉に当たるとともに、今後とも政府が一体となって対応をしていきたい法ということを申し上げます。
総合的に対外経済交渉を担当する閣僚ポストということでありますけれども、従来の経験等を目ながら、これは二重構造になってしまってはいかぬということがあります。そういう問題の中で我々としては、今度の内閣の改造に当たりましても対外経済相というような話もあったわけでありますけれども、しかし既存の機構の一層の活用ですとか、あるいは機能強化等を通じた体制の整備充実を図っていくことが重要であるというふうに考え、そのようなつもりでこれから対応をしていきたいと思います。
また、WTOの運営に日本はどのような主導権をという御指摘であります。
我が国としては、WTOの運営に当たりましては積極的に貢献していく考え方でありまして、具体的には無用な機構の肥大化を避けること、一方では、WTO事務局に対する人の派遣、そして分担金の分担などを含めましてどのような形の貢献が可能か、これはまた国会の御指摘等もいただきながら十分検討していきたいというふうに考えます。
WTOの設立によって米国の三〇一条の発動に足かせがかけられるかということでありますけれども、この機関の開設の対象事項といたしまして、紛争が生じた場合に所定の紛争解決手続を経ることなく一方的措置をとることは禁止をされております。また、ガットに比べまして、サービスあるいは知的所有権を含みます幅広い分野を対象としておりまして、また紛争解決手続の実効性、これが著しく改善されておりますことから、一方的措置の抑制機能は格段に向上しているものであろうというふうに私ども理解をいたします。
また、迂回防止規定がないのは企業の海外投資の障害となるのではないのかということでありますけれども、そもそもダンピング防止税というのは関係当局の調査に基づいてダンピング輸入の事実あるいは国内産業の損害及び両者の因果関係が認定された場合のみに賦課することができるものでありまして、そのような認定なしにダンピング防止税を賦課することはできません。
仮に、輸入国がそのような調査を行うことなく恣意的に迂回防止措置としてダンピング防止税を賦課する場合には、企業の海外投資の障害となる可能性もありますけれども、いずれにしろ、このような恣意的な措置がとられる場合には、アンチダンピング協定の規定に基づきまして、我が国として必要な対応措置というものをとるということであります。
また、金融、海運等残された問題についての御指摘でありますけれども、ラウンド交渉の結果まとまったサービスの貿易に関する一般協定、また知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定、これはこれまでガットルールのもとに置かれていなかったサービス貿易等について新たな多国間の一般的貿易関連ルールが定められるものでありまして、ラウンド交渉の成果の一つとしてその意義は高く評価されるべきものであろうというふうに考えます。
御指摘の残された問題の取り組みのうち、金融及び海運につきましては、サービス貿易に関する多角的枠組みを強化していく上で重要な意義を有しておりまして、我が国としましては今後ともこれらにつきまして国益を踏まえた一層の努力を重ねてまいる考えであります。
また、オーディオビジュアルにつきましては、関係諸外国におきまして一層の自由化が図られますよう私どもも引き続きこれは努力していく課題であろうというふうに考えております。
知的所有権については、各国制度の一層の調和に向けまして、世界知的所有権機関、いわゆるWIPO及び二国間協議などの場で我が国の主張を行っていく考えであります。
また、ECは必死に交渉してギブ・アンド・テークを行ったがというお話があったわけでありますけれども、農業交渉におきまして、包括的関税化に例外を設けるべきでないとする国が大勢を占めておったことはもうよく御案内のとおりであります。そういう中にありましてぎりぎりの調整案を我が国は最終的に受け入れたわけでございますけれども、このことがラウンド交渉の妥結、ひいては多角的自由貿易体制の維持強化に大きく寄与したことは疑いを入れないものというふうに信じます。
このラウンド交渉の結果、紛争解決手続の強化、知的所有権、サービス貿易についての新たなルール策が定められたといった我が国経済にとって大きな利益をもたらす成果も見られたものでございまして、交渉の結果、我が国の困難な事情にも配慮されたものであると同時に、全体として我が国経済に利益をもたらすものであるということを私は確信をいたします。
国内生産体制の安定、改善のための対策ということでありますけれども、我が国は今回のウルグアイ・ラウンド農業交渉におきまして、米につきまして関税化の特例措置が認められたほか、関税化の受け入れを行った農産物につきましては関税率の適切な設定を行うなど最大限の努力を払ってきたところであります。
また、今回のウルグアイ・ラウンド農業協定の実施に伴います国内対策につきましては、緊急農業農村対策本部におきまして検討の上、私自身その先頭に立って万全を期していきたい、これをはっきり申し上げたいと思います。
また、国産食糧への影響を極力少なくするためセーフガードを実施すべきという御指摘でありますけれども、関税化した品目につきましては特別なセーフガードの措置をとることが認められておりまして、輸入量が一定の水準を上回った場合には、また輸入価格が一定の水準を下回った場合には追加関税を賦課することができることになっております。また、我が国の牛肉及び豚肉の輸入につきましては、輸入数量が一定量を超えて急増した場合にはセーフガード措置をとることができることとなっております。したがって、政府といたしましては、こういった措置というものを適切に運用してまいりたい、このことを申し上げます。
ミニマムアクセスによる外米の輸入が累増する中で、減反は強化せず、平年作で平成十二年にはどれくらいの在庫になるのか、これをどうするのかということでありますけれども、この問題について在庫が十二年でどうなのかということにつきましては、これは今予測するということは非常に難しいと思います。
ということは、平年作であろうと今度入ってくる米というのは非常に安い価格で入ってくるわけです。ですから、今までのような需要拡大、需要創出効果というものは全然違ったものがあろうと思います。そういう中で、新たなものがどのように生まれてくるのかということを考えたときに、これは簡単にどのぐらい備蓄といいますか、在庫になるかということは申し上げることはできないというふうに思っております。
国産米と輸入米とを一体とした全体需給のバランスの維持が図られるよう中期的観点に立った備蓄と用途に応じた需給均衡、これを確保することができる新たな米の管理システム、こういったものも検討していかなければならないだろというふうに考えます。
また、外米の在庫を備蓄米とすることについて、食糧の安全保障のコストとしてコンセンサスを得るよう努力すべきということでありますけれども、ミニマムアクセスの導入のもとにおきましても、国民への安定供給が可能となるような新たな米管理システムの整備が求められており、現在その内容について検討を進めておるところであります。その際には、中期的観点に立った備蓄のあり方ですとか、輸入米について先ほども申し上げましたような新規需要の開発等が議論の対象になるものと考えております。
いずれにしましても、国民の主食である米の管理のあり方やこれに要する費用などにつきましては、できる限り幅広い観点から論議、検討が必要であるとの考えでございまして、このため、農政審議会を初め関係方面の御論議、御検討をいただいていきたいし、また国会での御論議もちょうだいしたいと存じます。
グローバルな視点に立ち食糧の安全保障の必要性についての御指摘でありますけれども、食糧安全保障につきましては、これまでもFAO、これを中心とした国際機関の場において議論されておるところでございます。我が国は世界最大の農産物純輸入国であるという立場から、世界の食糧需給の安定による食糧安全保障の確保には大きな関心を有しております。この議論には今後とも引き続き積極的に参加すると同時に、貢献を行っていくのが我が国の立場であろうというふうに考えております。
ミニマムアクセスの義務に関する統一見解についての御指摘でありますけれども、これは輸出国が凶作で輸出余力がないなどの客観的に輸入が困難な状況のあった場合の例外的な場合をあらかじめすべて列挙することは困難と考えられます。将来具体的なケースが生じた場合には、ケース・バイ・ケースで関係国と議論をしていく問題であろうというふうに存じます。
また、協定の部分をどのような方法で国会に対し承認を求めるかということでありますけれども、この交渉の結果、作成された法的文書のうち、世界貿易機関を設立する協定、WTOの設立の協定でありますけれども、本体及びその不可分の一部をなす附属書一から三までに含まれる諸協定につきましては、一体をなす国際約束といたしまして、その締結につきましては一括して国会の承認をいただくこととなります。
他方、附属書四に含まれる諸協定は、いずれも世界貿易機関を設立する協定本体の不可分の一部をなすものではないという中で、この中には牛肉協定ですとかあるいは国際酪農品協定など、行政府の権限の範囲内で締結し得るものがあり、これにつきましては国会の御承認を求めることにはなりませんけれども、そうでないものについては、別途、締結について国会の御承認をいただくことにいたしたいと存じます。
そして、政府といたしまして、協定の本体及び附属書一から三までに含まれる諸協定等は年内に締結することを目指して政府部内におきまして鋭意作業中でございますので、ぜひともまた御論議の上、国会で御承認をいただきたいと存じます。
また、各論の審査について関係委員会に早目に十分審議されるべしというお話でございますけれども、WTOを設立する協定の本体及び附属書一から三までに含まれます諸協定は一括して国会の承認を求めることとなりますが、各協定について関係常任委員会に報告すべしという御趣旨であれば、どんなふうに申し上げるか、これから検討してまいりたいと思います。
国内法制の整備につきまして、どう検討し、いつ国会に提出するかということでありますけれども、国内法の整備につきましては、現在どのような措置というものが必要であるのか、政府部内におきまして検討中でございます。必要な法改正につきましては、この協定の締結について国会の御承認を求める際に、あわせて国会にお諮りすることにしたいと存じております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/7
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008・加藤六月
○国務大臣(加藤六月君) 大河原議員の御質問にお答えいたします。
まず、国境措置としてのセーフガードはどうだと、こういう御質問でございました。
関税化しました品目につきましては、ウルグアイ・ラウンド農業協定におきまして特別セーフガード措置をとることが認められております。これによりまして、実施期間中に輸入量が一定の発動水準を超した場合、または輸入価格が一定の発動水準を下回った場合には追加関税を賦課することができることとなっております。
また、我が国の牛肉及び豚肉の輸入につきましては、輸入数量が一定量を超して急増した場合のセーフガードが今回の合意の一環として認められております。
政府としましては、これらの措置を適切に運用し、輸入量の急増等の事態に備えてまいりたいと考えておるところでございます。
また、ミニマムアクセスの統一見解についてのお尋ねでございましたが、先ほど総理から御答弁申し上げたとおりでございます。よろしくお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/8
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009・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 野別隆俊君。
〔野別隆俊君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/9
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010・野別隆俊
○野別隆俊君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま総理が報告されましたガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉の問題と国内対策をめぐって、総理大臣を初め関係大臣に質問を行います。
今や世界の人口は五十五億人に達し、生産される食糧はアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア等の余剰国もありますが、アフリカを初め十数カ国では飢餓住民が数億人を超すという状況にあります。
また、世界の人口は年間一億人以上の増加を続けており、十年後の西暦二〇〇四年には六十五億人に達すると推定されております。一方、世界の食糧生産農地は、環境の悪化等に伴い、毎年我が国の全農耕地に匹敵する面積が減少していると言われています。世界の食糧危機は目前に迫っており、真剣に食糧安保論や自給体制の確立が国際貢献の第一歩であると確信するものであります。
このような世界の食糧危機に対する総理の御見解を伺います。
ウルグアイ・ラウンド交渉の最終合意文書の署名が、過ぐる四月十五日、モロッコのマラケシュでの閣僚会議で行われ、日本から当時の外務大臣、現羽田総理が出席され、署名が行われましたが、これで初めて米の部分開放、乳製品などの関税化、牛肉・オレンジの関税引き下げなど、新たなラウンドの農業合意を政府として正式に受け入れたことになりました。
これから食糧管理法など関係法制度の整備や国内対策の検討が進められ、今秋予定される臨時国会で批准し、関係法制度の改正が行われ、農業関係の合意事項は来年四月から実施されることになるようでありますが、この批准については国内対策の約束が果たされることが前提であります。特に、農林関係予算は、米の備蓄対策、土地基盤の整備、中山間地対策、担い手対策、畜産対策など抜本的な対策が必要であります。
農村対策本部長として、財政措置を含めて、ガット後の国内対策について総理の御決意をお伺いいたします。
次に、食糧管理制度と減反政策についてであります。
ガット・ウルグアイ・ラウンドの米部分開放をめぐって、厳しい論戦の末、決着がつきました。次期国会で批准がされれば、平成七年度から年間三十七万九千トン、漸次増加し、六年後には七十五万八千トンの輸入米が入ることになります。今後、これによる影響は極めて大きいものがあろうと思われますが、これを受けて、国内対策としては、食管制度の改正と減反政策のあり方が大きな問題となるでありましょう。
農政審議会や地方公聴会でも、また最近の新聞報道等でも、間接統制への移行を含む食管制度の見直し、抜本改革を初め、極端な方は食管無用論も飛び出す始末であります。
このことは国民食糧の生産と消費者への需給調整、安全、安定確保の上からも重要な課題であり、軽々しく扱うべきではないと思うのであります。政府として、責任ある見解を明らかにしていただきたいのであります。
また、このような問題は、農林水産省や農政審議会の意見だけではなく、広く国民各界各層、農林関係諸団体、消費者団体等の意見や、国民を代表する国会の場で幅広い視点から、時間をかけて慎重な審議が必要だと思いますが、総理並びに農水大臣の御所見をお伺いいたします。
また、減反問題については、一律減反制や選択的減反制が取りざたされておりますが、政府としての公式見解をお伺いいたします。
次に、農業基盤の整備についてであります。
ガット対応を含め、二十一世紀の農業、農村の基盤を築くため、効率的な生産と収益性の高い新農政を展開していかなければなりません。そのためには、何といっても担い手対策、農業基盤整備が欠くことのできない最重要課題であります。総理の御見解を伺います。
また、農業の効率化を進めるためには、徹底した省力化、コストの低減、対外競争のできる足腰の強い農業づくりが重要であります。
ガット合意に臨む細川前総理は、国民に向けて、断腸の思いで米の部分開放を認めると切々と訴えられたのであります。また、我が党の全国大会にもおいでになりまして、みずから農業改革の本部長となって、必ず日本の農業は抜本的な対応を図って、対外競争にたえ得る農業を目指す、こう約束されたのであります。
私どもは、三たびにわたる輸入自由化反対の国会決議を守り、国内食糧を守る立場を貫いて闘ってまいりましたが、国際的な我が国の立場や細川総理の言動を信頼し、当日の時間ぎりぎりに苦渋の選択をしたのであります。
羽田総理も、当時は細川さんを補佐する副総理兼外務大臣として全面的に支持し取り組んでこられたものと確信します。また、農水大臣も、我が国農業の厳しい状況や基盤整備、中山間地問題、担い手対策等の重要性については十分認識をいただいていると思いますが、最も重要な土地基盤の整備が農家の先行き不安や負担増によってスムーズに進んでおりません。いま一つ、農家負担を軽減するために国の一部負担増を図って土地基盤の整備を行い、農業の安定化に道を開いてほしいのでありますが、総理、農水大臣の御所見を伺います。
次に、米の備蓄対策について伺います。
昨年の米大凶作に端を発する一連の平成米騒動は、その後やや平静を取り戻してきております。当面、政府においても米不足に備えた備蓄制度について鋭意前向きの検討がなされているものとは思いますが、昨年のように相次ぐ長雨、台風災害、冷害によって、作況指数は七四、二百二十万トンの米が不足し、外国産米を輸入するという大変な米パニックが起こり、大きな問題となりました。
農政審議会においても、生産者、消費者、農業団体等からも二百万トン程度の備蓄米が必要であると強い意見が出されているのであります。政府は、水田活性化対策として百三十万トン程度の在庫積み増しを公約しておりますが、ここで思い切って最低二百万トン程度の備蓄を目標にその実現を図るべきだと思いますが、総理並びに農水大臣にお伺いをいたします。
次は、中山間地域対策についてであります。
我が国の中山間地は、国土の六割の山を守り、農業生産の四〇%を担い、また水資源の確保、環境の保全など重要な役割を果たしております。しかしながら、中山間地は定住条件が悪化し、過疎、高齢化が一層深刻化し、後継者不足の中で集落の維持すら困難な状態にあります。数年の間に全国的に多くの集落が崩壊し、一段とその度は深まっています。昭和四十年を境に山村の人口は急激に減少し、多くの農村は半減から極端な地区は三分の一に減ずるなど全国的に山村崩壊の危機にありますが、総理、どのように受けとめておられるかお伺いをいたします。
川上が崩壊すれば川下も崩壊する、農村が崩壊すれば都市も衰退する、これは自然の法則、歴史が証明しています。
総理、今こそ中山間地の活性化は、デカップリングで農山村の環境整備、農産加工場の建設、公共事業等への雇用対策、さらに申せば、かつて竹下総理が打ち出されたふるさと創生的な思い切った中山間地に羽田型対策を打ち出す考えはないか、総理にその決意のほどをお伺いいたします。
次に、農家負債対策について。
新たに経営規模拡大を図るための田畑の購入資金として超長期、超低利資金制度の創設、かつて国や自治体が鳴り物入りで進めてまいりました農業構造改善事業の失敗、土地基盤整備事業を行った時代の大きな負債、特に既存の高金利時代の借金は農家負担に耐えがたきものが残っています。こういったものの長期低利資金への切りかえ、また利子の一部減免措置などで対応し、負債農家に対する救済対策を考えないか、大臣にこの対応をお聞きしたいのであります。
次に、森林、林業の活性化についてであります。
森林は、木材の生産と供給ばかりでなく、国土の保全、涵養、年間四十兆にも及ぶ公益的機能を果たしており、広く私たちの豊かな生活を実現していくために不可欠な要素を持っております。
特に、林業利回りは一%を切るという危機的状況の中で、近い将来の国産材時代に備えて担い手の確保は急務であります。
昭和四十年、四十四万人の山林労働者、当時は平均三十八歳、今日平成四年にはその四分の一、十一万人に減じておりまして、平均年齢は何と五十六歳、高いところでは六十歳の状態であります。このまま推移すれば、六年後の西暦二〇〇〇年には六万人を割り込み、平均年齢は六十三歳という深刻な事態になると推定されております。良好な森林の管理は望むべくもない状態が参っておりますが、一体どのようにこの対応をされていくのか、農林大臣にお伺いいたします。
次に、国産材の利用促進対策についてであります。
我が国の資源は、一千万ヘクタールの人工林を中心にして成熟しつつありますが、地球環境の時代にあってこの森林を適正に整備し、有効に活用していくことは我が国の世界と人類に対する使命であります。
また、守り育てた林材の有効利用を図るとともに、木の文化に支えられた国民生活の質の向上にも寄与できる来るべき国産材時代を展望し、木材の生産、加工、流通体制の整備についてどのような施策を講じようとしておられるのか、農林水産大臣の御見解を伺います。
次に、国有林の再建対策についてであります。
国有林は、御承知のとおり、森林面積の三割を占め、広大な保安林できれいな空気、水を初め鳥獣類や魚などを養い、災害防止、保健休養など多くの公益的機能を果たして、農山村地域振興にも重要な役割を果たして、大きな期待が持たれているところであります。
しかし、木材価格の低迷、そして七五%に及ぶ輸入材によって国内の自給率は二五%に低下しています。円高傾向で材価が安いのと、いまだ八割以上の森林は保育期でありまして、除間伐材では採算ベースに乗らないのが現状であります。あと数年間はいわゆる投資期間でありまして、経営の努力はなされておりますけれども、現在大変厳しい状況に置かれております。あと七、八年後には伐期に入り明るい展望が開けると思うのであります。
国有林再建について、財政対策を含めてどのように対応していかれるか、この点については大蔵大臣、農林大臣に御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/10
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011・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 野別君、時間が超過しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/11
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012・野別隆俊
○野別隆俊君(続) 次に、水産業の振興について伺います。
水産業については、二百海里問題を初め、公海漁業に対する規制が一段と強まっております。我が国の周辺の資源状況の悪化、漁村の活力低下など厳しい状況にあります。
このような中で、第九次漁港整備長期計画及び第四次沿岸漁場整備計画の取り組みや、とる漁業からつくる漁業の振興、調査研究体制の整備、担い手対策、また、特に立ちおくれております漁村の生活環境の整備の取り組み状況、水産業の振興、活力ある漁村づくりについてどのように取り組んでいかれるおつもりか、農林水産大臣にお伺いいたします。
次に、最後になりますが、捕鯨問題について伺います。
南氷洋鯨類サンクチュアリー設定に対し条約による異議申し立てを行い、科学調査継続の保障措置を速やかに講ずべきだと考えます。また、北西太平洋におけるミンククジラの科学調査を計画どおり実施すべきだと考えますが、いかが考えられておりますか、お伺いをいたします。
以上をもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/12
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013・羽田孜
○国務大臣(羽田孜君) まず、食糧危機が目前に迫っておるということで、自給体制の確立が大事であるというお話でございました。
世界の中長期的な食糧需給につきましては、開発途上国を中心とします人口増加からきます需要の増加、また、途上国の生活がだんだん上がっていくという中での需要の増加もあります。それから、地球環境問題から生ずる生産面での制約などから不透明であろうと思っておりますし、今後不安定な面があらわれてくるというふうに私自身も考えておりまして、この点については同感であります。
食糧は国民生活にとって最も基礎的な物資でございますから、国民に対する食糧の安定供給の確保というものを図っていくことは、これは国の何といっても基本であろうというふうに考えております。
このため、可能な限り効率的な生産を行うということ、あるいはみずからの国土資源を有効に活用するということ、これが大事でありますけれども、何としても安定して供給するためには、その生産に携わる人たちがやる気を持つことと、やはり誇りを持てるようなものでなければいかぬだろうというふうに考えます。そのための対応が今望まれているというふうに考えます。
また、この批准は抜本的な対策が条件と考えるがという御指摘でありますけれども、今回のラウンドの農業協定の実施に伴います国内対策につきましては、昨年暮れに閣議了解された基本方針、これに沿いまして中長期的な観点から農業政策というものを今農政審議会の中で議論をいただいております。
私ども対策本部といたしましては、この議論というものを踏まえながら、この問題に対してきちんと農業が成り立っていく方向、そして今申し上げた誇りを持って携われる方向、そして農村と関連産業、こういった問題にも目を転じながら、私どもは積極的にこの問題について進めていくということをこの機会に申し上げたいと存じます。
なお、間接統制への移行を含む抜本的改革への方向が検討されているという報道があるそうですけれども、最近、食管法の改正についてはいろいろと報道がなされておることは承知しております。そのような内容をまだ固めておるという事実はございません。
いずれにいたしましても、食管制度につきましては、生産者に対する再生産の確保と消費者への安定的な供給を図るという制度の基本的な考え方、これをしっかり持ちながら、農政審議会における論議、検討、あるいは国会また与野党における論議等を踏まえながら、私どももこの制度の改正につきましてはその考え方をまとめてまいりたいというふうに考えておるところであります。
さらに、食管法の改正がまとめられた際には、この法案の審議におきましても存分に御論議をいただきたいというふうに思っております。
また、二十一世紀の農業、農村基盤の構築のための担い手対策、あるいは土地基盤整備が農家の先行き不安から進んでいないということでありますけれども、担い手の確保、育成につきましては、これは昨年制定されております農業経営基盤強化促進法の適切な運用、これによります認定農業者への農地利用の集積あるいは法人化の推進など、それぞれの施策というものの推進を図ってまいりたいというふうに考えます。また、農業基盤整備につきましては、圃場の大区画化等の事業に重点化する等その充実を図っており、今後とも第四次の土地改良長期計画、これに沿いまして着実に推進してまいりたいと思っております。
また、農業基盤整備の農家負担の軽減を考えるようにというお話があったわけでございますけれども、土地改良事業というのは事業効果が個別農家に及ぶことから受益農家にも応分の負担を求めております。しかし、農家負担の軽減に資するために大区画圃場整備について負担金の一部に無利子資金というものを導入するなど、農業基盤整備というものが円滑に進んでいくように我々これからさらに努めていきたいというふうに申し上げます。
また、備蓄を二百万トンに、それから安全保障の観点から考えるべきだというお話でありますけれども、主食である米につきましては作柄の変動にも対応し得る安定供給というものが必要であるということでございまして、今度のいわゆる不作というものによって私どもはそのことを強く思わされました。ただ問題は、大変多くのお金を使いながら過剰米を処理したという過去の経験、これもやはり踏まえてみなければいけないというふうに思っております。
在庫保有のあり方につきましては、食管法の役割というものを十分に果たし得るよう検討していく必要があると考えておりまして、国民への安定供給を確保できるよう、中期的観点に立った備蓄を含む新たな米管理システムの整備についてさらに我々も検討していきたいというふうに存じます。
また、中山間地域の活性化につきまして御意見があったわけでありますけれども、この対策につきましては、何といっても自主性と創意工夫を生かした農林業の振興というものを基本といたしていかなければいけないというふうに思っております。
いずれにしましても、今ふるさと創生的な考え方ということでありましたけれども、農山村には自然あるいは人の触れ合いというなかなか都会では得られないものがあるわけでございますから、こういったものを生かしながら、ちょうど特定農山村法という法律ができておりますので、こういったものを積極的に活用していくこと。
それから、これは農林水産省だけではなかなかできないものでありますから、関係省庁と連絡、連携あるいは協力しながら進めていくことが必要でありまして、その中で、また就業ですとかあるいは所得機会というものの確保、あるいは生活環境の整備など定住条件なんかも整備していく必要があろうというふうに思っておりまして、今後さらに広い角度から検討を深めてまいりたいというふうに思っております。
なお、デカップリングの導入につきましては、これは本当に地域全体の活性化や定住の促進に資するのかということ、あるいはこの効果についてECの方でも実は大変な議論を呼んでおるところでありまして、日本の農業は実はさらに小さいという現実もあります。それともう一つは、就業の機会が割合と近くにあるというようなところもヨーロッパなんかと多少違うところがあろうと思っておりますけれども、いずれにしましても、こういった問題を含めまして我々としても検討してみたいというふうに考えております。
残余につきましては、また関係大臣から答弁申し上げます。(拍手)
〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/13
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014・加藤六月
○国務大臣(加藤六月君) 野別議員の御質問にお答え申し上げます。総理から大分両方の質問に対してのお答えもございましたから、なるべくダブらないようにお答えいたしたいと思います。よろしく御理解のほどお願い申し上げます。
まず、食管制度の改革、減反問題、米の備蓄水準についてのお尋ねでございますが、食管制度及び米の備蓄につきましては、先ほど総理から御答弁申し上げたとおりでございます。
将来の米の生産調整のあり方につきましては、現在、農政審議会においていろいろ御意見をいただいておる段階でありまして、安定的な米の生産と営農の安定の確保に配慮しながら、農家の意向や自主性を尊重した稲作農業の展開に向け、こうした議論を踏まえながら検討を進めてまいりたいと考えております。
次に、農家負債対策についてのお尋ねでございました。
現下の厳しい農業情勢のもとで、地域や経営部門等により個別の事例をとってみますと、負債に苦しむ農家が存在することも十分認識しておるところでございます。従来から固定化負債対策としまして、農林漁業金融公庫の再建整備資金、大家畜経営活性化資金等の融通を行ってきたところでございます。なお、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う農業施策としてさらに充実する必要があるか否かについては、今後関係者の御意見を踏まえながら検討していく必要があると考えております。
次に、林業振興策、国産材等についてでございました。
私が改めて申し上げるまでもございません。森林は緑と水の源泉であり、地球環境の保全、豊かな国民生活の実現のためにも、これを大切にして次の世代へ引き継いでいくことが大切でございます。
こうした観点に立ちまして、森林を守り育ててきた山村と林業の振興を図ることが重要な課題となっておるわけでございます。このため、流域を単位に森林整備と木材の生産、流通、加工を一体として効率的に行う仕組みとしての森林の流域管理システムの推進を基本としまして、多様な森林整備、林業の担い手の確保、国産材の低コスト安定供給体制の確立を初めとした各般の施策を総合的に展開してまいる所存でございます。
さらに、国有林野事業の再建についてのお尋ねでございました。
国有林野事業は、長期にわたる木材価格の低迷、組織、要員規模の面でなお改善途上にあることなどから、財務状況は依然として厳しい状況にあります。このような中で、国有林野事業といたしましては、その使命を十分に果たしていくために、平成三年七月に策定した国有林野事業の改善に関する計画に即しまして、事業運営の改善合理化、要員規模の適正化、組織、機構の簡素化、合理化、自己収入の確保などの自主的改善努力を尽くすとともに、所要の財源措置を講じ経営改善を推進しているところでございます。今後とも、国有林野事業の経営の健全性を確立し重要な使命を適切に果たしていくため、現行改善計画のもと、長期的視点に立って経営改善に努めてまいる所存でございます。
その次は、水産政策の拡充強化でございます。
これまた私が改めて申し上げるまでもございませんけれども、我が国水産業は、二百海里体制の定着に加え、公海漁業に対する規制の強化、我が国周辺水域の資源水準の低下、水産物輸入の増大と魚価の伸び悩み等厳しい状況下にございます。このような状況に対処しまして、栽培漁業などっくり育てる漁業や資源管理型漁業の推進を施策の柱に据えまして、先ほどもお述べになりましたが、漁港、漁村の計画的整備、新技術の開発研究、若者を中心とする担い手の養成確保等々の各般の施策を総合的に展開してまいらなければならないと考えておるところでございます。
最後に、捕鯨問題についてのお尋ねでございました。
鯨を含む海洋生物資源の持続的利用をすべきとの我が国の基本的立場は、国連海洋法条約や国連環境開発会議における合意の趣旨にも沿ったものであると考えております。したがって、南氷洋鯨類サンクチュアリーへの対応については、異議申し立て等を行うか否かを含めまして、このような我が国の基本的立場や国益を総合的に検討し、最善の結論を出してまいりたいと考えております。
また、北西太平洋のミンククジラ捕獲調査につきましては、我が国が今回初めて計画をIWCの科学委員会に提出いたしたわけでございますが、科学委員会の検討結果、IWC総会における議論の成果を踏まえ、我が国沿岸の捕鯨再開のためには捕獲調査による情報収集が不可欠であるという状況を勘案しまして結論を出していくべきものであると考えておるところでございます。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣藤井裕久君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/14
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015・藤井裕久
○国務大臣(藤井裕久君) 国有林野事業についてのお尋ねでございますが、財政当局といたしましても、事業の健全な経営を確立して今後ともその使命を十分に果たしていくため、今、農林水産大臣からも申されましたが、平成三年七月に策定いたしました国有林野事業の改善に関する計画に即して経営改善を推進してまいる所存でございます。
平成六年度予算でもそのような観点から前年対比約一四%増の四百十四億円を一般会計から繰り入れているところでございますが、今後ともこの趣旨に従って、自主的改善努力と相まって所要の財源措置を講ずることによって国有林野事業の経営改善を着実に進めてまいりたいと考えております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/15
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016・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 林紀子君。
〔林紀子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/16
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017・林紀子
○林紀子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま報告されたガット最終合意について、これに署名した羽田総理に対し強く抗議し、質問いたします。
初めに指摘しなければならない重大な問題は、この最終合意の全体を貫いている基本的特徴が各国の主権を著しく制限する内容となっていることです。
これまでのガットでは、各締結国の加入時における国内法を優先させるという、いわゆる祖父条項がありました。また、各国は各貿易分野ごとにそれぞれ自国の利益を勘案して、自国の不利益になる協定、いわゆるコードを留保できることになっていました。
ところが、今回の最終合意では、祖父条項を削除した上、コードの留保をも認めず、世界貿易機関設立や農業その他の分野別協定について一括して受諾か否かを決めるものとなっているのです。そのため、異なった条件下にある諸国がみずからの立場を主張し、適切な取り扱いを求めることができない仕組みとなっています。
これは、通常多数国間の条約批准に当たっては部分的な留保が認められていることに照らしても極めて強権的で、多国籍企業と大国の利益を優先させるものと言わなければなりません。
今回の最終合意は、このように各国の主権を著しく制限し、従来ガットが曲がりなりにも掲げてきた自由公正、平等互恵という原則を変質させるものであり、断じて容認することはできません。まず、総理の基本認識を伺います。
次に、この最終合意によって、主食である米だけでなく、乳製品など農産物の全面自由化が迫られることになり、我が国の食糧と農業の将来に重大な禍根を残すものであることを指摘しなければなりません。
クリントン・アメリカ大統領はウルグアイ・ラウンドの妥結について、アメリカ製品に対し諸外国の市場を開放させる歴史的勝利と誇示しました。こうして、我が国が世界最大の農産物輸入国となっている事態に対して反省と批判が高まり、対米追随に反対し、我が国の農業と食糧を守れという声は、農民はもとより国民の中に大きく広がっています。
国民は、この間の米不足の中で食糧自給の大切さを痛切に学びました。昨年十一月に調査した総理府の世論調査においても、米を含む食糧の自給強化を求める声は約八割にも達していることを総理も御存じのことでしょう。我が国には自国の主食である米を完全自給できる能力があります。また、多くの消費者、国民も自給率の向上を望んでいます。にもかかわらず、なぜ羽田総理は農民には減反を押しつけ、外国から大量の米を輸入するのでしょうか。どうして自給率の向上を願う国民の声を踏みにじって農産物の全面自由化を受け入れるのでしょうか。このような農業つぶしの路線は直ちに転換すべきです。総理の見解を求めるものです。
また、連立与党の政策合意は、「ウルグアイ・ラウンド合意に関する協定及び関連法案を本年中に国会に提出し、速やかに審議し成立させる。」としていますが、これは昨年七月の連立与党の総選挙での公約や八党派覚書の「コメの例外なき関税化には反対」との態度とは全く矛盾するものであることは明白です。
言うまでもなく、政党の公約違反は国民に対する重大な背信行為であり、民主政治の根本理念に背くものです。総理として、また新生党の党首として、どのような言いわけをするつもりですか。明確な答弁を求めます。
次に、今回の最終合意が我が国に及ぼす重大な影響は、米を初めとする農業の問題だけではありません。皮革・革靴製品では、関税率の大幅な引き下げで外国製品が大量に輸入されます。このため、東京の台東区や荒川区など、この産業が集中する地域を初め、従業員九人未満の零細企業が七割を占める皮革・革靴産業は、家族を含めておよそ三十万人が倒産や解雇など、深刻な事態に陥ることは必至と言わなければなりません。
また、繊維製品については、関税率の大幅引き下げと十年以内の数量制限の廃止などを約束しており、今でも深刻な状況に陥っている京都の西陣織や丹後ちりめんなど、我が国の繊維産地に壊滅的な打撃を与えることもこれまた明らかです。特に、昨年から三十人にも上る中小業者の自殺者を出している丹後地域ではまさに死活問題です。
総理、最終合意がこうした中小企業にさらに大きな犠牲を強いるという事態をどう認識されているのですか。また、中小企業の深まる不安と苦しみにどのように対処するおつもりですか。
さらに羽田総理は、当時外相であったにもかかわらず何ら具体的な行動をとらないばかりか、我が党の不破委員長が衆議院本会議で指摘したように、自民党政府の時代から何も傷つかないことはあり得ないとの立場から、今日まで輸入自由化への道を意図的に進めてきたのであり、唯々諾々と最終合意を受け入れました。ましてや、自分の腹は七年半前から固まっていたなどという総理の発言はまさに国民を欺くもので、その責任は重大ではありませんか。明確な答弁を求めます。
これに対してフランスは、アメリカから映画、テレビ番組の制作放映などオーディオビジュアルの自由化を強硬に求められましたが、きっぱりと拒否しました。また、アメリカやECは、昨年十二月に最終合意が示されてから四月に署名するまで、自国の国益を守る立場から、既に提出した関税の国別表のうち、電子部品などの一部を撤回させたではありませんか。これと比べても、日本政府の立場は自主性を放棄した外交姿勢と断ぜざるを得ません。総理、なぜ我が国も毅然とした外交政策がとれないのですか。明確な答弁を求めます。
最終合意に羽田総理が署名しても、国会の承認を得て批准しなければ合意の効力が生じるものではありません。そもそも農業合意は国会決議にも選挙公約にも明白に反するものであり、これら諸協定案の批准は当然否定されるべきものです。議会制民主主義の根本に立ち返り、国民にその信を問わずしてこれを強行することはやめるべきではありませんか。総理の見解を求めます。
最後に、日本共産党は、米の輸入自由化にあくまで反対し、我が国の農業と食糧を守り、労働者や中小企業に犠牲を強いることがないよう、主権を尊重した平等互恵の貿易の発展のため全力を挙げて闘い抜くことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/17
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018・羽田孜
○国務大臣(羽田孜君) 入党合意・覚書の態度と矛盾するのではないかということでありますけれども、入党合意は関税化に反対ということでありました。
いずれにいたしましても、政府といたしましては、国会決議あるいは入党合意、とれの趣旨を体しまして最大限の努力をしたところであります。最終的には調停案を受け入れたわけでありますけれども、その内容は、我が国の主張というものは相当程度反映されておるものであるというふうに考えております。
また、本調停案の受け入れば、ラウンド交渉の成功のために貢献を果たすことが我が国の国際的な責務であるという観点から、これはつらい厳しい思いはありましたけれども、断腸の思いでこの態度を決定したわけであります。
また、皮革・革靴製品の問題、繊維製品についての御指摘がありました。
皮革・革靴製品等につきましては、この業界というものは社会的にも歴史的にも困難な地域の主要な業界でございまして、厳しい状況に直面していること、これは十分認識しております。交渉におきまして最大限の努力を払うとともに、関税の引き下げの影響を緩和すべく、基金規模四十八億円の基金を関係団体に設置をいたしたところであります。
繊維製品につきましては、輸入の増大及び消費の低迷に直面しております現状にかんがみまして、関税の引き下げ率を小幅にとどめるなどの配慮をされております。
いずれにいたしましても、政府としては、ラウンド合意によりまして世界の市場拡大が図られ、長期的な国内中小企業の安定的な発展に資することを期待するとともに、今後ともこれらの産業の中小企業の動向等を十分注視してまいりたいというふうに考えます。
なお、自分の腹は七年半前から固まっていたということ、ラウンドの合意に対する態度は国民を欺くものであるということでありますけれども、これは政府といいますよりは私個人も共産党の皆さんにも、この間に何回も御要請があり、私はそのときどきの状況というものを率直に皆様に申し上げてきたところでありまして、そしてしかも、私は、国会の決議というものをもとにしながら、それこそ各国の一人一人と語りながら今日までやってきた人間なんです。
七年半前に腹が固まっていたなんというものじゃありません、七年半前にそういった問題が提起されたということなんです。そして、それ以来今日まで闘ってきたということなんです。そういう中で、私は、最終的に日本だけが本当に全然傷つかないことはあり得ない、各国ともやはり苦しい問題はみんな克服しているんです。そういう中での対応であったということで、欺くとかそういった言葉は一切当たらないということを申し上げておきたいと思います。
また、オーディオビジュアルの自由化の拒否ということでありましたけれども、このラウンドの交渉というのは多角的自由貿易体制の維持強化を目指した歴史的な事業でございまして、我が国はその中で国益を守るべく最大限の努力を行ったところであります。交渉の結果は、我が国の困難な事情に配慮したものでございますと同時に、全体として我が国の経済に利益をもたらすということでありまして、我が国が毅然とした自主的な政策をとらなかったというこの指摘も当たらないところでございます。
また、農業合意に関するこの諸協定の批准というものは否定されるべきものであるという御指摘でありますけれども、我が国が農業合意への反対を理由として万が一世界貿易機関設立協定を締結しない場合には、同協定の締結がもたらす数々の利益というものは当然享受できないものというだけではなくて、多角的自由貿易体制の維持強化に対する我が国の姿勢が各国から疑問視されることになりかねません。
また、ウルグアイ・ラウンド交渉の主要参加国の一つである我が国が世界貿易機関に参加しない場合には、多角的自由貿易体制にとって極めて大きな打撃を与えることになろうというふうに考えております。そういう意味で、この協定の締結の重要性につきましてはぜひとも国民各層の皆様方の御理解をいただきたいと思っております。
ただ、私どもも農業に対しては、これからの行く先については不安あるいは不安定な思い、これは農民の皆さんがお持ちであろうということはよく理解しておりますので、こういったものに対しては、私ども農政審の答申等を受けながら、私自身が本部長として適切に対処していくことを申し上げたいと存じます。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/18
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019・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 答弁の補足があります。羽田内閣総理大臣。
〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/19
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020・羽田孜
○国務大臣(羽田孜君) 二点抜けておりましたことをおわび申し上げます。
一括受諾を決めるウルグアイ・ラウンド合意はガットの自由公正、平等互恵の原則を変質させるのではないかという御指摘であります。
この附属書の一から三までに含まれます諸協定を一括して受諾するという方式は、このラウンド交渉の参加国が交渉開始時から合意していた原則に基づくものであります。これらの諸協定を一括して受諾することによりまして、諸協定等に定める貿易ルールが可能な限り多くの国の中で適用され、貿易の自由化が進展することのみならず、WTO加盟国間の権利義務関係が均一化されまして貿易関係がより安定的なものになるというふうに考えております。ですから、ガット原則を変質させるとの御指摘はこれは全く当たらないというふうに存じます。
また、合意などの路線の変更を求めるということでありますけれども、農業交渉の調停案につきましてはこれは我が国の主張がすべて取り入れられているわけじゃございません。しかし、相当程度の配慮がなされているものでございまして、ラウンド交渉の成功あるいは世界経済の発展、自由貿易体制の維持強化によってもたらされる国民的な利益という観点からはぎりぎりの決断として受け入れることとしたものでございます。
この結果、我が国の農業は新たな国境措置のもとで厳しい環境に置かれることになりますけれども、この影響を最小限に食いとめると同時に、我が国農業の将来というものをさらに可能性のある、希望のある、そういったものに展開をしていく、そのために我々としては全力を傾注していくということを申し上げたいと存じます。
どうも失礼いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/20
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021・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これにて質疑は終了いたしました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/21
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022・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 日程第二 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件
日程第三 国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の締結について承認を求めるの件
日程第四 国際電気通信連合憲章、国際電気通信連合条約及び業務規則に係る紛争の義務的解決に関する選択議定書の締結について承認を求めるの件
日程第五 千九百九十三年の国際ココア協定の締結について承認を求めるの件
以上四件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長井上章平君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔井上章平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/22
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023・井上章平
○井上章平君 ただいま議題となりました条約四件につきまして、外務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正は、オゾン層を保護するための措置を強化する観点から、生産、消費等の規制の対象となる物質の範囲の拡大等を図ろうとするものであります。
次に、国際電気通信連合の憲章及び条約並びに紛争の義務的解決に関する選択議定書は、現行の一九八二年の国際電気通信条約及び選択追加議定書にかわるものでありまして、憲章等の恒久文書化に伴う規定の整備、連合の組織の改革等を図るとともに、憲章等の解釈、適用に関する紛争の義務的仲裁の手続について定めるものであります。
次に、千九百九十三年の国際ココア協定は、千九百八十六年の国際ココア協定にかわるものでありまして、これまで採用していた緩衝在庫制度を廃止し、ココアの生産管理制度及び消費振興策等を採用することにより、世界のココア市場の安定に寄与しようとするものであります。
委員会における質疑の詳細は、会議録によって御承知おき願います。
質疑を終え、採決の結果、四件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/23
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024・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これより四件を一括して採決いたします。
四件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/24
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025・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 総員起立と認めます。
よって、四件は全会一致をもって承認することに決しました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/25
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026・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 日程第六 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長浦田勝君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔浦田勝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/26
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027・浦田勝
○浦田勝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化に対処して、特定農産加工業の経営改善を引き続き促進するため、特定農産加工業経営改善臨時措置法の有効期間を五年間延長し、所要の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、農産加工品の輸入増大に伴う農産加工業への影響と対策、食品産業の振興策と予算の確保、外国産加工原料の輸入増加に対処するための国産原料農産物の供給体制の強化、新政策における食品産業の位置づけ、食品の日付表示のあり方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、四項目にわたる附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/27
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028・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/28
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029・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/29
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030・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 日程第七 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定健筆物の建築の促進に関する法律案
日程第八 建築基準法の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員長前田勲男君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔前田勲男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/30
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031・前田勲男
○前田勲男君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律案は、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物建築の促進を図るため、病院、劇場等の不特定多数の者が利用する建築物について、出入り口、廊下等の施設を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするため、建築主の努力義務、建築主の判断の基準となるべき事項の策定及び都道府県知事による指導等、さらに高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築をしようとする者に対する支援措置等所要の措置を講じようとするものであります。
次に、建築基準法の一部を改正する法律案は、近年の既成市街地等における土地の有効利用に対する要請の高まりや住宅建築に関する技術開発の進展等にかんがみ、住宅の地階の容積に関する規制の合理化を行う等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、高齢者、身体障害者への対応を図るべき建築物の範囲、将来的義務づけの是非、地下室つき住宅普及のための方策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、順次採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両法律案に対し、それぞれ附帯決議を付することに決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/31
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032・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これより両案を一括して採決いたします。
両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/32
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033・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 総員起立と認めます。
よって、両案は全会一致をもって可決されました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/33
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034・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 日程第九 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長岩本久人君。
―――――――――――――
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔岩本久人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/34
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035・岩本久人
○岩本久人君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、消防作業に従事した者に係る災害補償に関し、現在、応急消火義務者として補償の対象とはされていない出火した建築物等の関係者であっても、マンションや雑居ビル等の場合においては、火災が発生した部分の関係者以外の者については、新たに補償の対象とするとともに、危険物取扱者試験及び消防設備士試験の都道府県知事による受験資格の認定制度を廃止し、かわって受験資格を認める場合を自治省令で定めること等を主な内容といたしております。
委員会におきましては、政府より趣旨説明を聴取した後、補償範囲拡大の具体的内容、消防職員の勤務条件等の改善、補償対象者の認定のあり方等の諸問題について質疑が行われました。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/35
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036・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/36
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037・原文兵衛
○議長(原文兵衛君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/112915254X01919940606/37
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