1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成七年十一月七日(火曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 大木 正吾君
理事 久野統一郎君 理事 宮路 和明君
理事 石井 啓一君 理事 今井 宏君
理事 江田 五月君 理事 山元 勉君
理事 宇佐美 登君
相沢 英之君 唐沢俊二郎君
佐藤 信二君 鈴木 俊一君
武部 勤君 橘 康太郎君
津島 雄二君 蓮実 進君
石田幸四郎君 塚田 延充君
中井 洽君 野田 佳彦君
福島 豊君 五十嵐広三君
田口 健二君 中島 章夫君
松本 善明君 岡崎 宏美君
出席国務大臣
国 務 大 臣
(総務庁長官) 江藤 隆美君
出席政府委員
総務庁長官官房
審議官 菊池 光興君
委員外の出席者
参議院国民生
活・経済に関す
る調査会長 鶴岡 洋君
参議院議員 清水嘉与子君
参議院議員 牛嶋 正君
参議院議員 日下部禧代子君
参議院議員 聴濤 弘君
参議院議員 水野 誠一君
内閣委員会調査
室長 松下 英彦君
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委員の異動
十一月七日
辞任 補欠選任
虎島 和夫君 橘 康太郎君
弘友 和夫君 福島 豊君
同日
辞任 補欠選任
橘 康太郎君 虎島 和夫君
福島 豊君 弘友 和夫君
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十月三十一日
恩給欠格者の救済に関する請願(青山丘君紹介
)(第一号)
同(早川勝君紹介)(第二号)
同(網岡雄君紹介)(第三号)
同(青木宏之君紹介)(第二一号)
同(海部俊樹君紹介)(第二二号)
シベリア抑留者の労働証明書受け入れに関する
請願(岡崎トミ子君紹介)(第四号)
同(鹿野道彦君紹介)(第二三号)
同(牧野聖修君紹介)(第六〇号)
同(牧野聖修君紹介)(第六三号)
同(岡崎トミ子君紹介)(第九二号)
同(田口健二君紹介)(第一一四号)
人事院勧告の完全実施に関する請願(石橋大吉
君紹介)(第一〇〇号)
人事院勧告の早期完全実施に関する請願(根本
匠君紹介)(第一〇五号)
旧満州開拓青年義勇隊員に対する年金受給権の
保障に関する請願(畠山健治郎君紹介)(第一
一三号)
十一月六日
恩給欠格者の救済に関する請願(伊藤英成君紹
介)(第一五四号)
同(緒方克陽君紹介)(第一六六号)
同(赤松広隆君紹介)(第一八九号)
同(河村たかし君紹介)(第一九〇号)
同(愛野興一郎君紹介)(第二七三号)
同(河村たかし君紹介)(第二七四号)
国立試験研究機関の大幅増員に関する請願(今
村修君紹介)(第一六三号)
同(上田晃弘君紹介)(第一六四号)
同(臼井日出男君紹介)(第二七五号)
障害者に配慮した国家資格試験等の受験方法の
改善に関する請願(桜井新君紹介)(第一六五
号)
同月七日
元日本軍慰安婦等に対する個人への補償を実現
する戦後補償法の制定に関する請願(赤松広隆
君紹介)(第三五三号)
同(岡崎トミ子君紹介)(第三五四号)
同(松本善明君紹介)(第三八八号)
同(東中光雄君紹介)(第五七九号)
同(今村修君紹介)(第七五七号)
同(小森龍邦君紹介)(第七五八号)
同(五島正規君紹介)(第七五九号)
同(三野優美君紹介)(第七六〇号)
同外二件(石井紘基君紹介)(第八八九号)
恩給欠格者の救済に関する請願(愛野興一郎君
紹介)(第三五五号)
同(赤松正雄君紹介)(第五七七号)
同(渡部恒三君紹介)(第五七八号)
同(遠藤登君紹介)(第七四八号)
同(小池百合子君紹介)(第七四九号)
同(渡海紀三朗君紹介)(第七五〇号)
同外三件(中村時広君紹介)(第七五一号)
同(錦織淳君紹介)(第七五二号)
同(早川勝君紹介)(第七五三号)
同(冬柴鐵三君紹介)(第七五四号)
同(松岡滿壽男君紹介)(第七五五号)
同(大内啓伍君紹介)(第八八四号)
同(栗本慎一郎君紹介)(第八八五号)
同(鮫島宗明君紹介)(第八八六号)
同(山田宏君紹介)(第八八七号)
国立試験研究機関の大幅増員に関する請願(上
田清司君紹介)(第三八七号)
同(吉井英勝君紹介)(第七五六号)
同(栗本慎一郎君紹介)(第八八八号)
戦争犠牲者援護立法における国籍条項の撤廃に
関する請願(山崎泉君紹介)(第五七四号)
非核法の制定に関する請願(秋葉忠利君紹介)
(第五七五号)
同(金田誠一君紹介)(第五七六号)
同外一件(秋葉忠利君紹介)(第七六一号)
同(金田誠一君紹介)(第七六二号)
恩給欠格者救済に関する請願(愛野興一郎君紹
介)(第七四五号)
戦争犠牲者への補償に関する請願(田口健二君
紹介)(第七四六号)
同(山崎泉君紹介)(第七四七号)
は本委員会に付託された。
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十月二十七日
アイヌ新法の早期制定に関する陳情書
(第一
号)
恩給欠格者の救済に関する陳情書
(第二号)
公務員労働者の賃金早期決定に関する陳情書外
一件
(第三号)
ゴラン高原を中心とする自衛隊の海外派兵阻止
に関する陳情書
(第四号)
日本国憲法の恒久平和擁護に関する陳情書
(第五号)
人事院の寒冷地手当支給基準の引き下げ見直し
に関する陳情書外三件
(第
六号)
障害者に配慮した国家資格試験等の受験方法の
改善に関する陳情書
(第七号)
青少年の健全育成対策に関する陳情書外二件
(第八号)
非核法の制定に関する陳情書外五件
(第九号)
ボランティア活動の振興に関する陳情書外十五
件
(第一〇号)
元慰安婦に対する民間基金計画の見直し等に関
する陳情書
(第一一号)
十一月二日
国民の祝日として恒久平和の日制定に関する陳
情書
(第一九四号)
寒冷地手当の現行支給水準維持に関する陳情書
(第一九五号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
高齢社会対策基本法案(参議院提出、第百二十
二回国会参法第六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/0
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001・大木正吾
○大木委員長 これより会議を開きます。
第百三十二回国会、参議院提出、高齢社会対策基本法案を議題といたします。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。参議院国民生活・経済に関する調査会長鶴岡洋君。
—————————————
高齢社会対策基本法案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/1
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002・鶴岡洋
○鶴岡参議院議員 ただいま議題となりました高齢社会対策基本法案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
本法律案は、去る六月二日、参議院国民生活に関する調査会におきまして、各会派の総意をもって起草、提出し、同五日、参議院本会議において全会一致をもって可決されたものであります。
我が国におきましては、国民のたゆまぬ努力により、かつてない経済的繁栄を築き上げるとともに、人類の願望である長寿を享受できる社会を実現しつつあります。今後、長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の形成が望まれております。そのような社会は、すべての国民が安心して暮らすことができる社会でもあります。
しかしながら、我が国の人口構造の高齢化は極めて急速に進んでおり、遠からず世界に例を見ない水準の高齢社会が到来するものと見込まれておりますが、高齢化の進展の速度に比べて国民の意識や社会のシステムの対応はおくれており、国民の間には、高齢化やみずからの高齢期に対する不安が生じております。
このような事態に対処して、国民一人一人が生涯にわたって真に幸福を享受できる社会を築き上げていくためには、雇用、年金、医療、福祉、教育、社会参加、生活環境等に係るシステムが高齢社会にふさわしいものとなるよう、不断に見直し、適切なものとしていく必要があります。
このため、あるべき社会の姿を明示するとともに、その方向に沿って、国及び地方公共団体はもとより、企業、地域社会、家庭及び個人が相互に協力しながらそれぞれの役割を積極的に果たし、社会のシステムを再構築していかなければなりません。
本法律案は、このような状況にかんがみ、高齢社会対策に関し基本理念を定めること等によって、高齢社会対策を総合的に推進し、もって経済社会の健全な発展と国民生活の安定向上を図ろうとするものであります。
次に、本法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、前文についてであります。この法律案におきましては、特に前文を設け、法制定の趣旨を明らかにしております。
第二は、基本理念についてであります。高齢社会対策は、国民が生涯にわたって就業その他の多様な社会的活動に参加する機会が確保される公正で活力ある社会、国民が生涯にわたって社会を構成する重要な一員として尊重され、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会、国民が生涯にわたって健やかで充実した生活を営むことができる豊かな社会が構築されることを基本理念として行われなければならないこととしております。
第三は、国及び地方公共団体の責務等についてであります。国は、高齢社会対策を総合的に策定及び実施する責務を有することとし、また、地方公共団体は、国と協力しつつ、当該地域の社会的、経済的状況に応じた施策を策定及び実施する責務を有することとしております。さらに、国民は、高齢化の進展に伴う経済社会の変化についての理解を深め、相互の連帯を強めるとともに、みずからの高齢期において健やかで充実した生活を営むことができることとなるよう努めることとしております。
第四は、施策の大綱についてであります。政府は、政府が推進すべき高齢社会対策の指針として、基本的かつ総合的な高齢社会対策の大綱を定めることとしております。
第五は、国会への年次報告についてであります。政府は、毎年、政府が講じた高齢社会対策の実施の状況及び高齢化の状況を考慮して講じようとする施策等に関して、国会に報告することとしております。
第六は、基本的施策についてであります。国民生活の基本となる就業及び所得、健康及び福祉、学習及び社会参加、生活環境の四つの分野について、国が講ずべき施策の基本的な方向を定めております。
第七は、高齢社会対策会議の設置についてであります。総理府に、内閣総理大臣を会長とし、関係行政機関の長のうちから内閣総理大臣が任命する委員から成る高齢社会対策会議を置き、高齢社会対策の大綱の案の作成、必要な関係行政機関相互の調整等を行うこととするなど、高齢社会対策会議に関する規定を定めております。
以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/2
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003・大木正吾
○大木委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久野統一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/3
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004・久野統一郎
○久野委員 二十一世紀まで残すところあと五年ありますが、我が国の明るい未来社会を築くためには、まず第一に、急速に進みつつある高齢化に適切に対応していくことが必要であります。我が国の人口の高齢化については、六十五歳以上の方々の占める割合が一九七〇年に高齢化社会の目安とされる七%を超え、それ以後も着実に上昇を続け、昨年には、国際的に高齢社会の目安とされる一四%を超えるに至りました。
この高齢化のスピードは、諸外国と比べて極めて早いものであります。高齢者の比率が七%から一四%に達するまでにかかった年数を見ると、フランスが百三十年、スウェーデンが八十五年、比較的短いドイツ、イギリスでも五十年を要したのに対し、我が国はわずか四半世紀で高齢社会の仲間入りをしたことになります。こうした急速な高齢化は、寝たきりのお年寄りの介護の問題一つをとっても、国民の将来の大きな不安材料となっています。
これについては、厚生省を中心に新ゴールドプ
ランが作成され、在宅介護を初めとする各種の保健福祉サービスの充実に努めるなどの取り組みがなされていますが、高齢化への対応は、介護の問題だけではなく、雇用、年金、医療、教育、社会参加、生活環境など非常に幅広い分野にわたって取り組む必要があり、これらを政府として総合的に推進していくことが不可欠であると考えます。
今般提出された高齢社会対策基本法は、このような課題に対処するために提出されたものと思いますが、改めて、なぜ高齢社会対策基本法が必要とされるに至ったか、その背景と考え方について提案者に伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/4
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005・清水嘉与子
○清水(嘉)参議院議員 お答え申し上げます。
五十年間続いてまいりました平和な社会のもと、国民のたゆまぬ努力によりまして我が国は著しい経済発展を遂げてまいりました。さらに、公衆衛生の進展、医療技術の進歩によりまして、多くの日本人が高齢社会を経験できるようになりました。
このことは、我が国が世界一早く人類の長年の夢を実現させることができたという意味で、本来歓迎されるべきことであるにもかかわりませず、我が国においては、高齢社会問題は、高齢者という名の社会的弱者がふえ、そして社会保障、医療保障の面から働く者の重荷になるととらえられ、何か暗いイメージでとらえられております。国民が高齢社会を積極的に受け入れられるような社会づくり、すなわち、国民だれもが長寿を喜び合えるような社会づくりが今後の大きな政策課題になってきております。
この政策課題を本格的な高齢社会の到来に備えて実現していくためには、社会保障の問題のみならず、就労、消費生活、住宅、教育、文化などの経済生活全般にわたる国民のニーズについて、国民の理解と協力を得ながら的確かつ迅速に対処していくことが求められております。
しかし、現在の個別分野ごとの施策体系のもとでは、高齢化に対応してそれぞれの施策の充実は図られてきてはおりますけれども、高齢社会の全体像やビジョンに乏しく、また、社会の制度相互間の有機的連携が必ずしも十分じゃございません。また、各施策の整合性がとられていないのではないかというような面も見られております。
各省相互間の役割分担に基づく各種の施策は、より効果的かつ円滑に実施されなければなりませんし、また、施策の重複も避けなければなりません。また、施策の適切な組み合わせによりましては、その政策効果をより一層発展させることも可能だと思います。各種の施策を横断的に総合化できる体制をやはり確立する必要があるというふうに感じているわけでございます。
このため、国民生活に関する調査会におきましては、あるべき高齢社会の姿を明らかにするとともに、高齢社会対策の基本的方向を示すことによってその対策を総合的に推進し、社会のシステムを高齢社会にふさわしいものへと再構築していく必要があるという認識のもとに、この法案を提案した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/5
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006・久野統一郎
○久野委員 この法案をつくるに当たりまして、三年間にわたりまして御苦労をいただきました参議院の先生方に敬意を表するものでございます。
次に、今後我が国の高齢化はさらに進むものと見られますが、我が国の高齢化率は、現在のところ欧米諸国と比較してもまだ低い方ですが、二〇〇〇年には一七%になって世界でもトップクラスになり、その後は歴史上との国も経験したことがない、四人に一人が高齢者という超高齢社会を迎えることになります。
しかも、我が国の高齢化は地域によって大きな差が見られるのが特色であり、平成六年では、高齢化率の最も高い島根県は二一・一%であるのに対し、最も低い埼玉県は九・七%となっており、この差はさらに広がっていくものと見られています。したがって、それぞれの地域の実情に合ったきめ細かい高齢社会対策が求められるところです。
こうした事態に対応していくには、これまで以上に強力に、また、きめ細かに高齢社会対策を推進しなければならないと考えられるところであります。
今般の高齢社会対策基本法の成立を受けて、政府は今後どのように高齢社会対策を充実させ、推進させていくのか、政府の基本的な姿勢を総務庁長官にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/6
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007・江藤隆美
○江藤国務大臣 まず、参議院で長い間与野党熱心な御協議をいただいて、こうした立法をいち早く参議院で成立させていただいた国民生活調査会を中心とする参議院の諸先生方の御努力に心から敬意を表したいと思います。
今お話がありましたように、去る十月一日の国勢調査の結果でどういうふうに出るかと私注意しておるのですが、おっしゃったように、もう既に二一%を超えたのが実はこれは島根県であります。一九・九%というのが高知県でありまして、二〇%に近づいておるのが山形県と鹿児島県であります。ずっと眺めてみますと、やはり経済力の弱い県がだんだんそういう高齢化が進んでおるというような気がしてなりません。
したがって、これからは、六十五歳以上の人たちが本当にこの世に生きてよかったと言われるような、そういう社会づくりをするのには、提案者からお話がありましたように、年金、医療から生活環境がら雇用の面から、いろいろ考えなければならぬことはたくさんあると思います。
ただ、今回のこの法律によりまして、内閣総理大臣を長とする今度は高齢社会対策会議を閣僚の中でつくっていただいて、国会にその一年間行った成果について御報告も申し上げるということになったわけでありますから、これから内閣を挙げてこの提案の趣旨が生かされるように各般の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/7
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008・久野統一郎
○久野委員 ただいまの政府の力強い決意を伺いました。この高齢対策基本法を軸にして、すべての国民が安心して高齢期を迎えることができるよう政府の一層の取り組みをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/8
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009・大木正吾
○大木委員長 次に、福島豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/9
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010・福島豊
○福島委員 新進党の福島豊でございます。お許しをいただきまして、御質問を何点かさせていただきたいと思っております。
我が国は、他に例を見ないスピードで高齢化が進行いたしておるわけでございます。まさに、いまだかつて経験したことのない状況に突入しつつあると言っても過言ではないというふうに私は思います。そのような中にありまして、この変化にどのように的確に対応するのか。政治の果たさなければならない役割というのは大変に重たいと私は考えております。
そのようなときに当たりまして、この高齢社会対策基本法という大変包括的な法律が提出されることの意義は私は大きいと思っております。そして、この法律がしっかりとその機能を果たしていくことを私は念願いたしております。
先ほどからも御説明がございましたが、高齢社会に対する施策というのはさまざまな施策があるわけでございまして、その施策がお互いに関係している、また、連携をとりながら総体として実を上げていくということが大変に大切であるというふうに思っております。縦割り行政というふうに言われますように、とかく相互の連携がとりにくいというのが今の日本の行政の実態ではないかというふうに思うわけでございまして、その意味では、全体の連携を非常にとりやすくするような包括的な法律というのは大切だというふうに思っている次第でございます。
まず第一点の質問でございますが、我が国の高齢化、これは非常に特徴があるということでございます。これは、西ヨーロッパの国々と比較しましたときに三つ特徴があるというふうに指摘されております。
その一つは、高齢化の速度が二倍、三倍速いということでございます。また、二点目は、地域間に高齢化率の大きな格差がある。特に農村部では高齢化が速いということでございます。また、人
口一億人を超える大国で初めて超高齢社会を迎えるということが特徴であるというふうに指摘されておるわけでございます。
このような特徴は、我が国での高齢社会対策の推進に当たってさまざまなハードル、障害となっているというふうに私は思いますけれども、基本法ではこの点についてどのように考え、また、どのような対処をするというふうに考えておられるのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/10
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011・牛嶋正
○牛嶋参議院議員 我が国の高齢化の特徴は今委員が御指摘になったとおりでありまして、私も三つぐらいそれを挙げることができるのかなと思っております。
そのうちの第一番に挙げられました高齢化のスピードの問題でございますけれども、今仮に高齢化人口比率が一〇%から二〇%に倍増する期間をとって各国を比較いたしますと、スウェーデンが七十二年、ドイツが七十二年、イタリアが五十年というふうになっておりますが、我が国は一九八五年から二〇〇七年までのわずか二十二年で到達する、こういう予測が出ております。したがって、御指摘のように、西ヨーロッパの国々に比べまして二、三倍の速さで高齢化が進んでいくということになります。
我が国の高齢者人口比率の水準というのは、二〇二五年でピークに達すると言われておりますが、そのときの高齢化率は二五%が予測されております。デンマークはそのとき二三%、スウェーデンが二二%、アメリカが一九%、イギリス一九%というふうになる予測でございます。したがって、御指摘のように、海外主要国と比べまして最も高齢化が進むものというふうにみなされているわけでございます。
一方、高齢化を地域別に見てまいりますと、現在は地方圏、特に農村部で高齢化が著しいわけでございますが、将来は大都市圏でも高齢化が急速に進むものと予測されております。農家人口の高齢化人口比率は、平成二年で二〇%に既に達しております。農村部の高齢化は、我が国平均の動向に比べまして二十年先行している、こういうふうに言われております。これは恐らく、高度成長期における人口が都市に集中いたしましたときに過密過疎の問題が起こりました。もう既にそのときから、高齢化の問題は農村部で起こっていたというふうに考えられるわけでございます。
それから、高齢者の人口数でございますけれども、一九七〇年の七百三十九万人から一九九四年、昨年でございますが、千七百五十六万人、二・四倍に増加しております。そして、先ほど申しましたピークに達します二〇二五年では三千二百四十四万人、これはもうスウェーデンの人口をはるかに超える数でございます。
こういうふうなことを考えてみますと、やはり高齢化の進展に伴いまして、それに対応していくさまざまな改革は非常に、先ほども先生御指摘のありましたように、ハードルが高いというふうに見なければならないかと思います。
年金、医療、介護、雇用、貯蓄、投資、税制などの経済社会システムに、これは大きなインパクトを与えることが予想されるわけであります。ですから、我々が高齢社会に対するいろいろな政策を展開していくに当たりましてまず考えなければならないのは、このインパクトをできるだけ緩和して、そして我々が目指す高齢社会を実現していくことではないか、こういうふうに思っております。
このため、高齢化の進展に適切に対処するための施策に関しまして、基本理念を定めさせていただいております。そしてまた、国及び地方公共団体の責務等を明らかにしているわけでございます。
こういった高齢社会対策の基本となる事項を定めるに当たりまして、高齢社会対策を総合的に推進し、そして、もって経済社会の健全な発展及び国民生活の安定、向上を図っていかなければならない、こんなふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/11
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012・福島豊
○福島委員 先ほども縦割り行政であってはならないという話をいたしましたが、これは国と地方の関係においてもそれは言える、よく話し合うということが必要であるというふうに私は思っております。
先ほども、高齢化の特徴の二点目としまして、地域によってかなり差があるんだという話をいたしました。ですから、地域によって差があるということは、国が全国一律にかくかくしかじかの基準でというようなやり方ではなくて、むしろ個々の地方公共団体にある程度の自主性というものを認めて対応するということが適切であるというふうに私は感じております。
しかし現実には、例えば特別養護老人ホームも、ようやくその基準の都市部におけるものが見直されましたけれども、かつてはかくかくしかじかの基準でないとだめだということで、なかなか土地の高い都市部では建てにくかったりとか、在宅福祉サービスにしましても、例えば豪雪地帯ではまた状況も違うわけでございますし、そういうさまざまな地方によって違う状況というものをどう認めていくのかということが大切である。
今ここで、再びやはり国と地方の役割分担というものをどうするのか見直す必要があると私は思っておるわけでございますけれども、この点につきまして、基本法は国と地方の関係をどのように定めておられるのか、扱っておられるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/12
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013・牛嶋正
○牛嶋参議院議員 本法案の前文、先ほど鶴岡会長からも御説明がございましたけれども、このようにうたっております。
国民一人一人が生涯にわたって真に幸福を享受できる高齢社会を築き上げていくためには、雇用、年金、医療、福祉、教育、社会参加、生活環境等に係る社会のシステムが高齢社会にふさわしいものとなるよう、不断に見直し、適切なものとしていく必要があり、そのためには、国及び地方公共団体はもとより、企業、地域社会、家庭及び個人が相互に協力しながらそれぞれの役割を積極的に果たしていくことが必要である。こういうふうにしているわけです。
今、地方公共団体の役割をおっしゃいましたけれども、私はその前に、何かこの地域社会、そしてその地域社会を構成している企業とかあるいは個人、それからいろいろな団体、こういったものの役割も重要かなというふうに思っております。
それで、さらに第四条は、高齢社会対策に関する地方公共団体の重要性にかんがみ、その立場と責務についての考え方を明らかにしております。第二条で示された基本理念にのっとり、高齢社会対策を策定、実施する責務があることを規定しているわけでございます。また地方公共団体については、高齢化率などの社会的状況や雇用などの経済的状況が地域によって差がある事情を勘案して、これらの事情に応じて施策を策定、実施することにしております。
基本法は、国が行うべき基本的施策については規定している一方、地方公共団体については具体的な施策を規定していません。これは、地方公共団体の高齢社会対策は、地域ごとにその特性に応じて行われるべきものが多く、一律に基本的施策を規定することは適当でないと考えているからでございます。ただし、地方公共団体は国の施策と関係なく施策を行うわけではございません。国が施策を行う場合において、地方公共団体が一定の役割を果たすという意味で「国と協力しつつ」という規定も設けております。
いずれにいたしましても、国がイニシアチブをとるのか、あるいは地方公共団体がイニシアチブをとるのかということではなくて、むしろ両方が協力して、そして地域社会を構成しているメンバーとも協力しながら、目指すべき高齢社会を構築していくということが基本法の本旨ではないかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/13
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014・福島豊
○福島委員 引き続き、この基本法に掲げられております基本理念につきましてお尋ねしたいと思います。
基本法におきましては、三つの基本理念、公正で活力ある社会、それから第二点目が地域社会が
自立と連帯の精神に立脚して形成される社会、三番目が豊かな社会ということを掲げてあるわけでございます。これは、いわば高齢社会に向けてのビジョンということで掲げられたんだと思いますけれども、しかしこの三つ掲げられました理念というのは、いわば成熟社会の理念ということでありまして、必ずしも高齢社会の理念としてどうなのかというふうに私は思うのです。
高齢社会という特徴がこの中にどのように反映されているのかということがいま一つ胸に響いてこないというのでしょうか、そういうふうに感じるわけでございまして、高齢社会のもっと明るいイメージというものを広げて語られなければならないんじゃないかというふうに私は思うのですけれども、この点につきましての御見解はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/14
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015・牛嶋正
○牛嶋参議院議員 合成熟社会とおっしゃいましたが、私は、高齢社会も成熟社会に含まれるものというふうに思っております。今、さらに、高齢社会に非常に明るいイメージを与えるということ、私もこれは非常に重要なことであると思いますね。
先ほど清水さんもおっしゃいましたように、せっかく人生八十年時代という長寿社会を迎えながら、もう一つ何か心から喜べない部分がある。それは、恐らく長くなった老後に対するいろいろな不安ではないかというふうに思うわけであります。この不安をできるだけ取り除いていかなければならない。
どういう不安があるのかということですが、健康に対する不安もあるでしょう、それから生活に対する不安もあるでしょう。しかし、いずれにしましても、高齢社会というのは高齢者だけの社会ではないわけでありまして、それを支える、今生産活動に従事している若い人たち、そういった者が一緒になって築いていかなければならない社会だと思うのですね。
ですから、この基本法では第二条で今おっしゃいました基本理念を言っているわけですけれども、その場合、経済社会、それから地域、個人、この三段階で結局は高齢社会というものを築いていかなければならない、こういう立場に立っております。
ですから、我々が目指す高齢社会は、経済社会、それから地域、個人というものが互いに協力して築いていかなければならない。そういうことで、高齢社会の基本法の第二条におきましては、この三つの項目でそのことを示しているわけです。
具体的には、「公正で活力ある社会」とは、従来は、六十歳までに定年制によって退職してしまうと意欲があっても就業の機会が乏しかったり、老後の時間を十分に活用できないまま過ごすという問題がありました。しかし、高齢社会において活力を確保するためには、高齢者の知識と経験を生かすことが必要であり、現役時代にも、仕事だけでなく多様な社会参加活動ができるような環境を整えることも重要であります。
そういうことを踏まえまして、第一号で、経済社会に関しましては、「国民が生涯にわたって就業その他の多様な社会的活動に参加する機会が確保される公正で活力ある社会」を掲げるものとしたわけでございます。
それから、次の第二号では、「国民が生涯にわたって社会を構成する重要な一員として尊重され、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会」としております。この「社会を構成する重要な一員として尊重」するとは、いわゆるノーマライゼーションの考え方に立つ社会を目標として掲げたものであります。
また、「自立と連帯の精神」とは、都市化によって人間関係が希薄化する一方で、高齢者福祉などの面で、ボランティアなど地域社会における活動の重要性が増してきていることを踏まえまして、自助を基調としつつも、地域社会で助け合うことが必要であることを示したものであります。いわゆる互助を示したものというふうに言えます。
第三号は、生涯生活期間の長期化により、老後を安心して過ごせるようにすることの重要性が高まってきたことから、「国民が生涯にわたって健やかで充実した生活を営むことができる豊かな社会」を掲げているところであります。
このようにいたしまして、できるだけ、高齢社会ではありますけれども社会を構成しているのは高齢者だけではないというふうなことから、国民が生涯にわたって健やかに、そして常にある一定の生きがいを持って生活できるような社会というふうなものを目指しているというふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/15
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016・福島豊
○福島委員 続きまして、基本法の第二章の「基本的施策」につきましてお聞きしたいと思います。
ここでは、第一点目「就業及び所得」、第二点目「健康及び福祉」、第三点目「学習及び社会参加」、第四点目としまして「生活環境」につきまして、基本的な考え方が定められておるわけでございます。しかし、そこで記述されております内容は、高齢者といいましても前期高齢者、いわゆる七十歳代前半までのまだ比較的元気なお年寄りの方がイメージとしてあるのじゃないかというふうに感じられます。
しかし、問題でありますのは後期高齢者、いわゆるオールド・オールドと言われている方々でございまして、要介護率も極めて高くなるわけでございます。また、二十一世紀の高齢化の問題で、中核となるのはこの後期高齢者の問題であるというふうに私も思っておるわけでございますが、その後期高齢者対策ということが、この四つの中でなかなか浮かび上がってこないというふうな感じを受けました。この点につきましての御見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/16
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017・日下部禧代子
○日下部参議院議員 お答えいたします。
確かに先生の御指摘のとおりだというふうに思います。これまで高齢者と申しますと、どうも保護の対象あるいはケアの対象としか見られてこなかったということがございます。しかしながら、高齢者というふうに一般的に言われる方々でも、積極的に主体的に自立して生きる個人である、その辺のところが社会の中で、高齢社会と言われてもなかなかきちんと位置づけられてこなかったという、その辺の問題に本法案は非常に視点を置いたところでございます。
それと同時にまた、年齢とか、ハンディキャップがあるかないか、そういうことによって行政の仕組みというものが、いわばばらばらに分断された形である、いわゆる縦割り行政の弊害というふうなこともございました。そういうことをとらえ直して、人間の一生、人間の生活というものをトータルにとらえようではないかというのが本法案の、皆さんで考えるスタートラインでございました。
そういう観点がまず第一にあるということを御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
したがいまして、基本法の第二条におきましては、就業その他の多様な社会活動に参加する機会が確保され、また社会を構成する重要な一員として高齢者が尊敬され、そして健やかで充実した生活を営むことができることを、国民が、これは高齢期を含んで生涯にわたってエンジョイ、享受できるということを基本理念としているところでございます。
しかしながら、議員御指摘のとおり、いわゆる後期老年層と言われていると十五歳以上の方々の問題というのは、これから非常に深刻な問題でございます。
これは平成四年の九月に出されました厚生省の人口問題研究所の中位推計でございますが、例えば一九七〇年には、七十五歳以上の総人口に占める割合というのは二・一%でございました。しかしながら一九九五年、今年でございますね、これはもう五・七%。それが二〇一〇年には一〇%に到達します。そして二〇四五年には一四・七%、そして二〇五〇年には一六・一%に到達するだろうというふうに推計されているわけでございま
す。
それと同時に、議員御指摘のように、要介護の発生率、出現率というのも、年齢とともに高まるというのも事実でございます。
これも厚生省の推計ではございますが、寝たきりになる方々の割合は、六十五歳から六十九歳では一・五%にすぎないわけでございますが、七十五歳から七十九歳になりますと五・五%というふうに、急に上昇するわけでございます。八十五歳以上になりますと二〇・五%という高率になってまいります。また、痴呆性の高齢者の場合も、七十五歳−七十九歳では一%なのに、八十五歳以上になりますと三・五%になるというふうに言われているわけでございます。
したがいまして、先ほど私が述べましたように、本当に人間として自立した、そして人間の尊厳が保たれるような生活を高齢においても確保できるというためには、きめ細かな対策というものがどうしても必要になってくるわけでございます。
したがいまして、第二章の「基本的施策」の「健康及び福祉」の十条二項、三項におきまして、
国は、高齢者の保健及び医療並びに福祉に関する多様な需要に的確に対応するため、地域における保健及び医療並びに福祉の相互の有機的な連携を図りつつ適正な保健医療サービス及び福祉サービスを総合的に提供する体制の整備を図るとともに、民間事業者が提供する保健医療サービス及び福祉サービスについて健全な育成及び活用を図るよう必要な施策を講ずるものとする。あるいはまた、国は、介護を必要とする高齢者が自立した日常生活を営むことができるようにするため、適切な介護のサービスを受けることができる基盤の整備を推進するよう必要な施策を講ずるものとする。としております。
さらに、「生活環境」の第十二条で、国は、高齢者が自立した日常生活を営むことができるようにするため、高齢者に適した住宅等の整備を促進し、高齢者のための住宅を確保する、並びに高齢者の円滑な利用に配慮された公共的施設の整備を促進する、そのような施策を講じるものというふうに取り決めまして、きめ細かな、高齢者の中でもよりお年寄り、いわゆる後期老年層と言われる方々に対処するものとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/17
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018・福島豊
○福島委員 最後に、基本法の第三章で定められております高齢社会対策会議につきましてお聞きしたいと思います。
総理のもとに置かれますこの会議、非常に大切な役割を果たすと思います。総理大臣がしっかりとリーダーシップを発揮しまして、実体のある会議を運営していただきたいと私は設置された場合には望むものでございますが、この会議の目的としましては、大綱の案の作成、それから必要な関係行政機関相互の調整、その他の重要事項の審議と対策の実施の推進、この三つの役割を担うというふうにされております。
会議設置の目的から考えますと、相互調整ということは非常に大切だというふうに私は思いますが、その相互調整といいますと、国の各省庁の間の相互調整ということがまず第一番目にあると思いますが、さらに大切なことは、先ほども国と地方の関係ということを申しましたが、国と地方公共団体の間の対策の推進に当たっての調整ということ、この役割もこの会議における大切な要素であると私は思います。
この法案を見ますと、地方公共団体からの代表ということが明らかに書かれていないわけでございますけれども、この関係行政機関の中に地方公共団体も含まれるのかどうか、この点につきましてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/18
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019・日下部禧代子
○日下部参議院議員 お答えいたします。
議員御指摘のように、高齢社会対策におきまして地方公共団体の役割というものは極めて重要でございます。
それは、まず第一に地方公共団体というのは住民の生活の現場であるというところ、そしてまた、これからさまざまなサービスが、必要なサービスが必要なときに必要な人に供給されるためにも、これはノーマライゼーション、インテグレーションという理念に基づきまして、どうしても地域ということが必要になります。また、必要なサービスが継続されなければなりません。その継続性ということ、あるいはまたフレキシビリティー、柔軟性ということ、そういうことを考えますと、どうしてもサービスの供給源が近くにある、生活者のところになければならない、そういった観点におきまして、地方公共団体の役割というものは極めて重要でございます。
しかしながら、先ほどから御議論ございましたように高齢化の割合、これは地域によって随分変わっております。私は先週大分県のある市に参りましたけれども、そこではもう高齢化率二七%を超えておりました。そのようなところもございます。そのような高齢化率の違い、あるいはまた社会的状況あるいは雇用などの経済的状況というものは、地域によってかなり差があることも事実でございます。そういうことも含めまして、地方公共団体における高齢社会対策というものは、地域の特性に応じるということが地方分権ということの理念にもかなっているというふうに考えられるところでございます。
そういったことを踏まえまして、各省庁と地方自治体というものの関連性というものは考えられねばならないというふうに考えております。そういうことのために、例えば福祉八法の改正とか地域保健法の改正というものがこれまでなされてきたところでございます。したがいまして、各省庁ごとに地方公共団体の地域の実情に応じて施策を策定するということが必要になってくると思います。
そのことを踏まえまして、この会議におきましては内閣総理大臣を長といたしまして関係各省庁の大臣が委員となって組織をされるということでございますので、地方公共団体を関係行政機関という形では予定していないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/19
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020・福島豊
○福島委員 予定時間が終わりましたので、以上で質問を終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/20
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021・大木正吾
○大木委員長 次に、松本善明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/21
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022・松本善明
○松本(善)委員 この法律案は前文で、我が国は「人類の願望である長寿を享受できる社会を実現しつつある。今後、長寿をすべての国民が喜びの中で迎え、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の形成が望まれる。そのような社会は、すべての国民が安心して暮らすことができる社会でもある。」と述べております。
この趣旨は、参議院の国民生活に関する調査会の調査報告でさらに詳しく述べられております。その第三の「高齢社会対策基本法の趣旨と施策の基本的方向」「一、社会のあるべき姿」の項で、「長寿は、人類の永年の夢の実現であり誇るべきことである。また、長期化した高齢期は、ゆとりと豊かさとこれまでの経験と知識を生かして、自らの人生を楽しむことができるもっとも充実したものでなければならない。」と述べております。これは、この法案の基本的精神にかかわるものだと思います。
先ほど提案者の答弁の中で、高齢者について重い、暗いイメージがあるというようなことが述べられましたけれども、高齢者を厄介者扱いする議論がまだまだ広く存在をするというときだけに、この規定は極めて重要であり、これは高齢者対策のみならず、教育その他政治のあらゆる分野で貫かれるべきものと考えます。この規定が織り込まれました趣旨について御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/22
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023・清水嘉与子
○清水(嘉)参議院議員 お答え申し上げます。
私ども国民生活に関する調査会におきましては、今日の高齢者の置かれている状況を多方面にわたり調査いたしました。また、福祉先進国と言われている国々の福祉政策についても視察をいた
しました。
長い間、上向きの経済成長が当たり前になっておりました我が国で、お年寄りあるいは病人、障害者など収入のない人が社会的な弱者として位置づけられてきた嫌いがございます。しかも、高齢化の進展や家族形態の変化が急激であったために、これらの変化に対応する社会のシステムが十分ではございませんで、対策も多分に恩恵的なものになっているのが現状でございます。
福祉先進国と言われている国々は、共通して、できるだけ住みなれたところで、残っている機能を少しでも生かしつつ、自己決定権が尊重されるということを原則といたしまして、一人一人の高齢者の人権が尊重されているというふうな印象を受けてまいりました。
これまでのように、定年を迎えたらもう衰えていく、余生ということではなく、実際には健やかなお年寄りが非常に多いわけでございますから、このことにも留意しなければいけないというふうに考えるところでございます。
長寿化した高齢期というのは、長時間労働からも解放され、適度に働き、社会参加のゆとりも持てる、これまでの経験と知識を生かして充実した人生を楽しむことができる最も充実した期間である、こんなふうに高齢社会を明るいイメージに変えたいというふうに考えまして、余り例のないことだったかもしれませんけれども、法律の前文に御指摘のような表現を示した次第でございます。これは、あるべき社会が高齢者に限らずすべての国民にとって自由であるということを示したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/23
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024・松本善明
○松本(善)委員 この高齢社会対策基本法の性格についてでありますが、これは狭い意味での高齢者対策、いわゆる高齢になった人に対する対策ではなくて、人口構造の高齢化した高齢社会対策の基本法として制定されようとしていることが特徴だというふうに受け取れます。そういうふうにとっていいのかどうか。この法案の基本性格にかかわる問題でありますので、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/24
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025・聴濤弘
○聴濤参議院議員 本法案は、ただいま御指摘がありましたように高齢者、すなわちお年寄り対策ということだけではなくて、高齢化の進展に対して社会全体が適切に対応していく、そのために社会のいろいろな現在存在しますシステムを再構築し、そして高齢社会における国民生活全体の安定と向上を図ろうというためのものでございます。委員御指摘のとおりでございます。
このため、第九条から第十二条にわたりまして、国民生活の基本となる就業と所得、それから健康と福祉、学習と社会参加及び生活環境、この四つの分野のシステムについて具体的な施策を講ずるということを明らかにし、その際にどういう基本的な考えてこれに臨まなければならないかという点を明らかにしております。
また、施策の実施に当たっては、総合的な推進体制を整備すること、それから国と地方公共団体の責任を明確にするということも明らかにされております。同時に、企業、地域社会、それから家族、個人、これがそれぞれ協力し合って、それぞれの役割を積極的に果たしていく必要があるであろうということも、この法案で明らかにされております。
このような観点から高齢社会の対策を総合的に進めていこうというのが本法案の趣旨でございまして、そういう観点から提出をしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/25
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026・松本善明
○松本(善)委員 高齢社会対策を進める上で、高齢者はもちろん国民各層の意見を重視して、絶えず国民の声を取り入れることが必要だと思いますが、この点ほどのように考えられ、またこの法案ではそのための何らかの保障があるのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/26
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027・水野誠一
○水野参議院議員 お答えをいたします。
急激な人口構造の変化は、とりわけ高齢化の進行は、年金、保険、医療、福祉などの社会保障の問題のみならず、就労あるいは消費生活、居住環境、教育、文化など経済社会全般に大きな影響を与えるということは、もう既に各委員からお答えをしたとおりでございます。このため、高齢社会対策を適正に実施していくためには、高度化、多様化する国民のニーズに的確にこたえ得る制度の整備が肝要であるということも御指摘のとおりだと思います。
そこで、本法律案におきましては、第十四条に「国は、高齢社会対策の適正な策定及び実施に資するため、国民の意見を国の施策に反映させるための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。」との規定を設けております。
具体的に申し上げますれば、既存の審議会のメンバーの中に高齢者御自身あるいは女性の関係団体等の代表を入れることや、あるいは個別の施策について公聴会を開催することなどが考えられるのではないかと思います。また、さらにつけ加えますれば、今日、実際に福祉活動に携わっておりますNPOなどの市民グループの活躍が大変目覚ましい時代になってきております。これらの団体は、第一線の現場での経験を持っているわけでありますので、こうした現場の声をくみ上げるシステム、これもあわせて考えていく必要があるのではないかというふうに理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/27
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028・松本善明
○松本(善)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/28
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029・大木正吾
○大木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/29
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030・大木正吾
○大木委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
第百三十二回国会、参議院提出、高齢社会対策基本法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/30
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031・大木正吾
○大木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/31
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032・大木正吾
○大木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕 —————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/32
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033・大木正吾
○大木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113404889X00319951107/33
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