1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成七年十月二十日(金曜日)
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平成七年十月二十日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等
に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法
の一部を改正する法律案(内閣提出)及び災
害対策基本法の一部を改正する法律案(加藤
六月君外二十九名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/0
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001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
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002・山本有二
○山本有二君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
内閣提出、参議院送付、国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/2
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003・土井たか子
○議長(土井たか子君) 山本有二さんの動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/3
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004・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。
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国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇
等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/4
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005・土井たか子
○議長(土井たか子君) 国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。安全保障委員長神田厚さん。
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国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等
に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔神田厚君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/5
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006・神田厚
○神田厚君 ただいま議題となりました国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等に関する法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
本案は、軍備管理もしくは軍縮または人道的精神に基づき行われる活動に対する協力等の目的で、国際機関、外国政府の機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等を定めようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、防衛庁長官は、条約等に基づき、または我が国が加盟している国際機関等の要諸に応じて、これらの機関の業務に従事させるため職員を派遣することができること。ただし、防衛施設庁に所属する職員の派遣は防衛施設庁長官が行うものとすること、
第二に、派遣職員の従事する業務は、軍備管理または軍縮に関する条約その他の国際約束に基づいて行う査察その他の検証及び技術協力、人道的精神に基づいて行う医療その他の援助並びに学術に関する研究または教育等とすること、
第三に、派遣職員は、派遣期間中、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しないものとし、派遣が終了したときは職務に復帰するものとする。職務に復帰したときは、任用、給与等に関する処遇について、部内職員との均衡を失しないよう適切な配慮が加えられなければならないものとすること、
第四に、派遣職員には、派遣期間中、俸給その他の給与の百分の百以内を支給することができること、
第五に、派遣職員に対する災害補償、共済給付、退職手当等の規定の適用については、派遣先の機関の業務を公務とみなすこと、
第六に、派遣職員には、赴任の例に準じて旅費を支給することができること等であります。
本案は、参議院先議に係るもので、本日委員会に付託され、衛藤防衛庁長官から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了いたしました。
次いで、討論の後、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第でございます。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
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007・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/7
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008・土井たか子
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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災害対策基本法及び大規模地盤対策特別措置
法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び
災害対策基本法の一部を改正する法律案
(加藤六月君外二十九名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/8
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009・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案及び加藤六月さん外二十九名提出、災害対策基本法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。国務大臣池端清一さん。
〔国務大臣池端清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/9
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010・池端清一
○国務大臣(池端清一君) 災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、近年の災害発生の状況等にかんがみ、災害対策の強化を図るため、災害対策のための組織を充実し、緊急災害対策本部長等の権限を強化し、警戒区域の設定等災害応急対策のため必要な権限を災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官に付与する等、所要の措置を講ずるものでございます。
以上が、この法律案を提出する理由であります。
次に、この法律案の要旨を申し上げます。
第一に、緊急災害対策本部の設置及び組織の充実についてであります。
大規模災害時には、内閣総理大臣みずからが陣頭に立って、国の総力を挙げて災害応急対策を推進する必要があります。このため、内閣総理大臣は、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべきものではなくとも、緊急災害対策本部を設置することができることといたしております。
また、緊急災害対策本部の本部長に内閣総理大臣を、副本部長に国務大臣を、本部員にそれ以外のすべての国務大臣を充てることといたしております。
第二に、緊急災害対策本部長の権限の強化についてであります。
大規模災害が発生した場合において、初動段階から広範な行政分野にわたり各機関が連携を密にして、効果的に災害応急対策を実施することができるようにするためには、その司令塔となる緊急災害対策本部長が強力な調整力を発揮することが不可欠でございます。このため、緊急災害対策本部長が災害応急対策に関して指示を行うことができる対象に、指定行政機関の長等を加えることといたしております。
第三に、現地対策本部の設置についてであります。
非常災害に際し、被災現地において機動的かつ迅速に災害応急対策の推進を図るため、緊急災害対策本部等に、本部の所管区域にあってその事務の一部を行う組織として、現地対策本部を置くことができるものといたしております。
第四に、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官への救援活動のために必要な権限の付与であります。
災害時においては、災害派遣された自衛隊の部隊等が大きな役割を果たすようになってきており、現場において、災害派遣された部隊等の自衛官が人命救助、障害物の除去等の応急措置のため必要な措置を行うことができるようにする必要があります。
このため、災害派遣された部隊等の自衛官は、市町村長等、警察官及び海上保安官がその場にいない場合に限り、人の生命または身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときに、警戒区域を設定し、当該区域への立ち入りを制限し、もしくは禁止し、または当該区域からの退去を命ずること、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときに、土地もしくは建物その他の工作物の一時使用または物件の使用もしくは収用をすること、現場の災害を受けた工作物等の除去その他必要な措置をとること、及び住民または応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができることといたしております。
第五に、新たな防災上の課題への対応であります。
阪神・淡路大震災において新たな防災上の課題として認識されました事項に対応するため、国及び地方公共団体は、自主防災組織の育成、ボランティアによる防災活動の環境の整備その他国民の自発的な防災活動の促進に関する事項、高齢者、障害者等特に配慮を要する者に対する防災上必要な措置に関する事項及び海外からの防災に関する支援の受け入れに関する事項の実施に努めなければならないものといたしております。
第六に、地方公共団体相互の応援であります。
阪神・淡路大震災に際し、地方公共団体間の応援とその前提となる事前の協力の重要性が認識されましたことから、地方公共団体は、防災上の責務を十分に果たすため、必要があるときは相互に協力するよう努めなければならないことといたしております。さらに、国及び地方公共団体は、地方公共団体の相互応援に関する協定の締結に関する事項の実施に努めなければならないものといたしております。
その他、大規模地震対策特別措置法について災害対策基本法の改正に合わせた改正を行う等、所要の改正を行うことといたしております。
以上が、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/10
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011・土井たか子
○議長(土井たか子君) 提出者加藤六月さん。
〔加藤六月君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/11
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012・加藤六月
○加藤六月君 ただいま議題となりました災害対策基本法の一部を改正する法律案につきまして、新進党・民主会議を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。
阪神・淡路大震災が発生後、はや十カ月が過ぎようとしております。しかし、いまだ二千名に上る被災者の皆さんは、今からがら逃げてこられた厳寒の被災直後から、酷暑の夏を乗り切り、プライバシーもなく、いまだに将来の展望も持てないまま、強制退去の不安におびえながら待機所生活を続けておられます。また、仮設住宅入居者あるいは親戚や友人を頼って不案内な土地で不安な日々を送っている多くの被災者は、二度とこのような悲惨な目に遭うことのないようにと願いながら、迫りくる厳しい年の暮れを迎えようとしておられます。
また、今日ただいま、奄美の方々は地震におびえておられるのであります。
今回の阪神・淡路大震災の反省は十分になされたでありましょうか。被害をこれほど大きくした最大の原因は何か。それは、村山内閣が迅速かつ的確な対応を行わなかったことであります。(拍手)初動対応が全く行われなかったため、燃え盛る火災現場に向かう消防車や救急車など、緊急車両が渋滞に巻き込まれ、身動きのとれない状況であったことは皆様よく御存じのとおりであります。国のリーダーが危機の認識を欠き、災害応急対策を大幅におくらせたことは、内外から多くの批判を浴びました。スイスの救助犬より遅かった村山さんはっとに有名であります。
それにもかかわらず、総理は御自分の責任のとり方を理解できず、初めてのことでありやむを得なかったとか、現行制度ではでき得る限りの最善の措置を講じた等々、被災者の心境を思いはかるのとは逆に、まことに無責任きわまりない答弁をされたのであります。
このような無責任な村山連立内閣に対し、我々新進党は、政治の最も基本的な役割は国民の生命と財産をいかなる危機からも守るところにあると考え、地震発生の当日、対策本部を設置し、直ちに調査団を派遣し、翌日には党首が被災地を見舞うという迅速な対応を行いました。その後、現地にも対策本部を設け、政権準備委員会の現地開催調査団による現地自治体との意見交換、全国三千三百四自治体へのアンケート調査、数次にわたる政府への提言を行うなど、被災者及び関係の県、市、町の方々の目線に合わせたきめ細かい救援・復旧・復興対策を適宜展開してまいりました。
それと並行して、我々新進党は、夏休みを返上し、プロジェクトチームを編成し、二百時間を超える熱心な討議を重ね、災害対策基本法の抜本的な見直し作業を進めてまいりました。その成果を盛り込んだこのたびの改正案は、最高のできばえであると自信を持って提示するものであります。(拍手)
それに対しまして、現行の基本法は、昭和三十四年の伊勢湾台風で大きな被害を受け、昭和三十六年に制定されたものであり、日米安保論争の真っただ中で成立したため、自民、社会の対立構造を反映し、緊急時における総理のリーダーシップの発揮や災害時における自衛隊の活用等に大きな問題を残しておったのであります。
また、その後発生した災害は、当時は予測し得なかった態様の災害が出現してまいりました。阪神・淡路大震災のように、都市の広域・過密化のため被災規模が想像を絶する大規模なものや、雲仙・普賢岳の噴火で見られるような災害の長期化などにも対応し切れておりません。
このような近年の災害の実情にかんがみ、災害対策の抜本的な見直しを図るため、非常災害対策本部、緊急災害対策本部等の組織及び権限の強化等、国の防災体制の充実を図るとともに、災害応急対策における自衛隊の活用について規定の整備を行う等の必要があるとの認識のもとで、この法律案を提出いたしました。
以下、本案の概要を申し上げます。
まず第一は、非常災害対策本部及び緊急災害対策本部の長を内閣総理大臣とし、その強力なリーダーシップのもとに、災害応急対策の迅速かつ的確な実施を図るための権限を強化したことであります。
また、災害発生後直ちに救援活動を開始できるように、非常災害対策本部の設置に関し、閣議を要しないで本部長が設置を決定できることとするとともに、緊急災害対策本部の設置を、経済統制等を伴う緊急事態の布告と切り離し、機動的に設けられるようにいたしました。
第二は、内閣総理大臣のもとに防災行政に携わる総合防災室を設置し、防災のエキスパートを配置することといたしました。災害発生時には、その職員が非常災害対策本部の中核となって、災害応急対策に関する計画の作成を初め、緊急措置についてもその実施を推進することとなります。
これに関連して、第三は、中央防災会議の所掌事務の一部を削除したことであります。
平時における防災基本計画の作成や防災の基本方針に関する総理大臣からの諮問等は残しますが、非常災害時における緊急措置の作成や非常災害対策本部の設置の諮問等に関しては、総合防災室に移行し、中央防災会議の所掌事務から削除することといたしております。
第四は、自衛隊に関してであります。
災害応急対策における唯一の自己完結型組織としての自衛隊の重要な役割にかんがみ、その権限を拡大し、それを明記するとともに、自衛隊の派遣要請に関する規定も災害対策基本法の中に位置づけ、また、現行法では知事からしか要請ができない権限を、市町村長にも一定の範囲内でみずからが要請できるようにいたしました。
第五は、新たな防災上の課題に対するきめ細かい対応であります。
一つは住民の防災意識の高揚、二つは高齢者、障害者、乳幼児等災害弱者への配慮、三つにはボランティアによる災害救助活動の支援、四つには海外からの支援受け入れ体制の整備、五つには地方公共団体の相互の応援協定、六つには火山現象等による長期的災害に対する対策、七は警戒区域設定における知事の権限の追加と国の支援であります。
以上が、この法律案の提案理由及びその趣旨であります。
あらゆる危機から国民の生命と財産を守ることは、政治の最も基本的かつ重要な役割であります。近年の災害の実情、とりわけ阪神・淡路大震災の教訓を真摯に受けとめ、与野党ともに、いかにして国民を災害から守るかの政治の原点に立ち、真剣に御論議をいただきますようお願い申し上げまして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)
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災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び災害対策基本法の一部を改正する法律案
(加藤六月君外二十九名提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/12
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013・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。石井一さん。
〔石井一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/13
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014・石井一
○石井一君 質問に先立ち、本日の新聞報道によると、宝珠山防衛施設庁長官は、沖縄の基地問題に対する村山総理の政治姿勢について厳しい批判をした後に、その責任をとって昨日辞任いたしました。
私たちは、この問題に関する政府の姿勢は全くリーダーシップに欠けるものであり、今回の辞任の責任は、国家存立の基本である安全保障政策について連立内閣の矛盾を露呈した村山総理自身の政治責任が追及されるべきものであると考えます。(拍手)今回の防衛施設庁長官辞任に至る事実関係を明らかにしていただくとともに、本件についての総理の御所見をまずお伺いいたしたいと存じます。
さて、私は、ただいま趣旨説明のありました災害対策基本法の一部を改正する法律案並びに災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案につき、新進党・民主会議を代表して、質問をいたします。
死者五千五百二名、全壊家屋十万棟に及んだ阪神・淡路大震災が発生して、早くも九カ月が経過いたしました。避難所で恐怖と寒さに震えつつ生活をしていた皆さんは暑い夏を仮設住宅で過ごし、さらに、今なお二千数百名の被災者が避難所暮らしやテントでの生活を余儀なくされており、将来に対する不安を抱えたまま寒い冬を迎えようといたしております。
被害は、初期対応のおくれや相次ぐ応急対策の混乱などが影響し、その後、避難生活の疲労と無理がたたり、入院生活の後に亡くなられた方などを含めると、死者六千名を超す著しく異常かつ甚大な大災害となったのであります。
総理は、一月十七日の早朝、テレビで地震の発生を知ったとか、あるいは秘書官から知らされたとも伝えられておりますが、いずれせよ、事態の深刻さを理解できないまま、非常災害対策本部はようやく十時からの定例の閣僚会議で初めて検討され、設置されたのでありました。そして、その日の正午に開かれた政府・与党首脳連絡会議で、死者二百名以上との報告を聞いた総理が、一瞬驚きの声を発したと報道されております。そして、翌日の朝に至っても、総理と官房長官はスケジュールどおりに経済人との会食をこなすというのんきな対応ぶりでありました、
この間、地震発生から一昼夜、被災地はどのような状況に置かれていたでしょうか。生き埋めになり、倒れた家屋や瓦れきの下から救いを求めて必死に叫ぶ断末魔の声、肉親や近所の人々を助け出そうと泣き叫ぶ市民たち、燃え盛る火災現場に向かう消防車や緊急車両の渦に巻き込まれ、その混乱はまさに極限状態でありました。
この初期の段階で適切な処理がなされていれば、どれだけ多くのとうとい生命が救われていたでしょうか。実際に、この間数千名の命を失う大惨事となったのであります。地獄の果てのような姿の被災地と平穏な姿の総理官邸、その両者の対応と状況認識には余りにも大きな落差があったことは歴然たる事実であります。この惨事はまさに人災であったと言っても決して過言ではありません。
内閣総理大臣は、日本国民の生命と財産を預かる最高の責任者として、いかに情報が不足であったとはいえ、その責任は重大であります。トップの決断と指示命令が出せなかったことで、史上空前の犠牲者を出し、被害地域を極大化したにもかかわらず、被災者への謝罪の言葉が一言もなかったのはまことに残念であります。
総理は、当時、この演壇より、最善を尽くした、あるいは初めての経験であったといろいろの答弁をなされましたけれども、これほど被災者の心情を逆なでしたことはありませんでした。「人にやさしい政治」を標榜する総理が、一人間として人の心の痛みを理解されていなかったのではないかと疑いたくなる心境でありました。
私は、ここで今さら発言自体を論議するつもりはありませんが、あなた自身の責任に対する認識が十分でないと、反省も不十分となり、ひいては今回の法改正そのものが表面的なものになって、再び同じ過ちと混乱を起こすことになるのではありませんか。
そこで、今回の阪神・淡路大震災から何を反省し、学ばれたのか、そしてどのような点を改正の柱とされたのか、総理の御見解を最初にただしておきたいと存じます。
また、新進党提案者にも、法案策定に当たって特に留意された点は何であったかをお聞きいたしたいと存じます。
今回の大震災におきまして被害がこれほど大きくなった最大の原因は、国の最高責任者が危機管理に対する自覚と能力に欠け、リーダーシップを発揮し得なかったことに尽きると思います。
皮肉なことに、村山政権が発足して以来、三陸はるか沖地震、阪神・淡路大震災、伊豆東方沖地震、奄美大島近海地震、そして地下鉄サリン事件、警察庁長官狙撃テロ事件、全日空機ハイジャック事件と、相次いで自然災害や凶悪事件が続発してまいりました。これによって、残念ながら、世界に誇る我が国の安全神話は崩れ去ったのであります。そもそも、危機の認識のないところに危機管理はありません。私は、村山内閣の退陣こそが最大の危機管理であると確信するのであります。(拍手)
総理は、安全神話を崩壊させた責任と現在の日本の危機についてどのような認識をお持ちか、この際、具体的にお聞かせ願いたいと存ずるのであります。
さて、今回の災害対策基本法の改正点について、具体的に以下お伺いをいたします。
今回の改正案では、中央防災会議には非常災害対策本部の設置に関する答申以外の事務は残されておりますが、そもそも中央防災会議は、緊急時には十分に機能し得ない有名無実の形式的な会議体になるのではないかと考えられます。阪神・淡路大震災の際、実際この会議を何時に開催され、どのような緊急措置に関する計画が作成されたのでありましょうか。具体的にどう機能したのか、総理には明快な御答弁をお願いしたいと存じます。
また、今回改正における中央防災会議の位置づけにつき、国土庁長官並びに新進党提出者に御所見を伺いたいと存じます。
次に、緊急災害対策本部の設置について、両案とも、経済統制を必要とする災害緊急事態の布告を不要とし、総理を本部長とする緊急災害対策本部を機動的に設置できるようにしております。しかしながら、政府案は、緊急災害対策本部の設置要件を「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合」としており、このことによって現行の非常災害対策本部の設置要件との基準の差が不明確になりました。一体どのような場合に緊急災害対策本部を設置することになるのか、災害の規模、態様などの要件について政府の明確な基準をお示しいただきたいと存じます。
あわせて、新進党案における非常災害対策本部と緊急災害対策本部の関係についてもお伺いをいたしたいと存じます。
非常災害対策本部長を、政府案では国務大臣とし、新進党案では内閣総理大臣としておりますが、それぞれいかなる理由によるか、お答えを願いたいと存じます。
また、阪神・淡路大震災の折、非常災害対策本部長を当初の国土庁長官から地震対策担当大臣に変更した点、そして、非常災害対策本部が設置されていたにもかかわらず、全く法律に基づかない緊急対策本部を設置して急場をしのいだ点を見ても、改正後においても非常災害対策本部長が横並びの国務大臣では、縦割り行政の弊害により災害応急対策を迅速に推進することが不可能ではないかと危惧いたしますが、いかがでありましょうか。また、新進党案では、この点をどのように考えているのか。総理、国土庁長官及び新進党提出者にもお伺いをしておきたいと存じます。
緊急災害対策本部長の権限については、改正によってどのように強化され、どのような効果が期待されるのか、両案の特徴をお伺いいたします。
阪神・淡路大震災で、自衛隊については、その献身的な救助活動が高く評価される一方で、なぜ初動においてもっと早く大量に出動できなかったのかという批判も多かったわけであります。
現行の自衛隊法八十三条で、自衛隊の災害派遣の要請権限は、都道府県知事のみに与えられていて、市町村長には与えられておりません。しかし、阪神・淡路大震災のように、県庁の通信機能が麻痺し、県と自衛隊の間及び県と市の間の通信も途絶えるような場合、当然、その緊急性にかんがみ、被災の現場に最も近く、被災状況を掌握できる市町村長からも自衛隊の派遣要請ができるようにすべきであると考えますが、総理の御所見をお伺いしておきたいと存じます。
また、自衛隊法第八十三条二項のただし書きの自衛隊の自主派遣の基準について、政府内でどういう検討がなされたのか、国民にわかりやすく御答弁をいただきたいのであります。
政府案は、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官に対し、災害対策基本法の六十三条の市町村長の警戒区域設定権を、市町村長や吏員、警察官、海上保安官がその場にいない場合に限りという条件つきとはいえ、付与することといたしております。日ごろその地区住民に接する機会のない自衛官にとって、これが適する任務なのでしょうか。警戒区域が設定されたならば、その自衛官の命令を守らなかった者は罰金または拘留という罰則が伴うことを考えると、自衛官にこの六十三条の警戒区域設定権までも付与するということは、いささか疑問に感ずるのであります。総理の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
最後に、今後の復興事業の推進に関する要望を申し上げ、御質問を申し上げたいと存じます。
この九カ月、国におかれては、補正予算を初め被災地の再建に向けて数々の施策が行われてまいりましたが、被災地の立場から見ると、関係者の御努力にかかわらず、復興はいまだ道遠しの感があることも偽らざる現実であります。
神戸の町を歩いてみますと、瓦れきの山はおおむね姿を消しましたが、裸の空き地だらけで、往年の明るい町の面影はなく、大都市が死んだ砂漠の町のような様相を呈しております。公共事業の計画は徐々に進んでおりますが、民間所有の住宅やオフィスビル、マンションの建設は遅々として進まず、このままではいつ復興ができるのか、絶望的な状態にさえ置かれておるのであります。
被災自治体の財政事情も非常に厳しいものがあります。従来の法制度や財政措置だけでは地元の要請にはほど遠く、何らかの特別措置が強く求められておるところであります。
国に設置された阪神・淡路復興委員会において、次のごとき提言が行われております。すなわち、復興計画前期五カ年に「復興にとって緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づけること。」そして「国はこの復興特別事業への取組み方針を明らかにするとともに、その円滑な実施のために特段の措置を講ずること。」と提言されておりますが、今後、政府は復興事業を推進していく中で、この「特段の措置」の具体的な内容についてどのようにお進めになるか、そのお考えをお示しいただきたいと存じます。
次に、兵庫県や神戸市が策定した復興計画の中には、国立及び国の資金による各種施設の誘致を強く希望いたしておりますが、各省庁の事業として実施できるものについては、被災地の早期復興と将来展望を考えたときに特に重要と考えられますので、具体的な施設名につき御答弁をいただきたいのであります。
また、神戸の国際港湾都市としての特性を生かし、貿易の拡大と企業活動の活性化を進めるため、思い切った規制緩和措置や税制上の優遇措置を取り入れたもろもろの施策、特にエンタープライズゾーンの設置等を強く地元は期待をしておりますが、政府の御見解と前向きな御答弁を伺いたいのであります。
私は、最後に、今回の大震災によりとうとい生命を失われた六千名にも及ぶみたまに心からの御冥福をお祈りし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/14
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015・村山富市
○内閣総理大臣(村山富市君) 石井議員の質問にお答えを申し上げます。
まず、防衛施設庁長官発言に関する御質問がございましたが、今般の沖縄問題につきましては、内閣を挙げて今取り組んでいるところでございまして、ある意味では重大な時期にあると認識をいたしております。こうした状況のもとで、防衛施設庁長官が、自己の発言が不用意であり、各方面に多大の御迷惑をかけたとの理由で、任命権者である防衛庁長官に辞表を提出し、受理をされたと承知をいたしております。
いずれにいたしましても、沖縄問題につきましては、政府として誠心誠意話し合い、沖縄県の皆さんの御協力と御理解を得られるよう、問題の解決に向けて最大限の努力を払っていきたいというふうに考えているところでございます。
次に、阪神・淡路大震災、雲仙・普賢岳噴火大災害等から何を反省し学んだか、また、今回改正に留意した点は何かどの御質問でございますが、雲仙・普賢岳噴火災害においては、国土保全事業等の重要性、早期における警戒区域の設定と避難勧告の実施等、災対法を初めとする現行法に決められた各種施策を確実に実施することの重要性を再認識いたしました。
しかし、阪神・淡路大震災は戦後初めて大都市を襲った大規模災害であり、情報収集・伝達、緊急即応体制、広域連携等の面で多くの教訓を学んだところでございます。これらの教訓を今後の災害対策に生かすために、防災問題懇談会において検討をいただき、その提言内容に沿って災害対策基本法改正案をまとめ、今国会に提出したものでございますので、御理解をいただきたいと思います。
次に、災害時の危機管理についての御質問でございますが、特に大規模災害の場合には、総理大臣みずから陣頭に立って、政府が一体となって全力で災害応急対策に取り組むべきものと考えております。そのような観点から、このたびの災害対策基本法改正案におきましては、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部について、全閣僚を本部員とするとともに、本部長の権限を強化することにしておりますが、この改正により、災害時の政府の適切な緊急即応体制の整備ができるものと考えております。
次に、オウム事件や凶悪犯罪の続発に対応した危機管理認識についてお尋ねでありますが、最近のオウム事件や銃器使用犯罪の頻発は、私たちが目指す安全で安心できる社会への許しがたい挑戦であると認識をいたしております。いざというときの危機管理においてやはり重要なことは、日ごろからの治安基盤の充実だと思います。こうした観点から、今後とも、治安基盤の充実に努め、危機管理体制のさらなる強化を図り、国民の安全の確保に万全を期してまいる所存でございます。
次に、中央防災会議の機能についての御質問でございますが、阪神・淡路大震災に際しましては、私から非常災害対策本部の設置について諮問を行い、中央防災会議から直ちに妥当と認める旨の答申を得たところでございます。なお、この答申は会長専決で行っており、また緊急措置に関する計画を作成する必要もなかったため、中央防災会議の会議自体は開催してはおりません。
今回の改正案では、非常災害対策本部の設置について中央防災会議に諮問を要しないことといたしておりますので、法改正後は、中央防災会議は、平時における各省庁の防災に関する事務の総合調整を主たる任務として、発災時においても、災害緊急事態の布告についての答申や緊急措置に関する計画の作成等に引き続き重要な役割を果たすことになっております。
次に、緊急災害対策本部の設置基準についての御質問でございますが、緊急災害対策本部は、極めて大規模かつまれに見る災害が発生をし、政府が一体となって災害応急対策を推進する必要がある場合に設置するものでございます。このような要件に該当するか否かにつきましては、災害の規模、態様、応急対策の必要性等諸般の事情をしんしゃくする必要があるため、数値等による画一的な設置基準を策定することは困難であります。社会通念に照らし、具体的な状況を踏まえ、個々の災害ごとに判断すべきものでありますが、阪神・淡路大震災級の大規模災害につきましては緊急災害対策本部を設置することになると考えております。
次に、非常災害対策本部長の権限についての御質問でありますが、これまで非常災害対策本部は国土庁設置以降十数回設置してまいりましたが、基本的には災害応急対策を適切に推進してきたものと考えております。このため、今回は非常災害対策本部の体制については現行どおりとしております。ちなみに、本法案が成立した後に阪神・淡路大震災のような大規模災害が発生した場合には、緊急災害対策本部を設置し対処することとなると考えております。
次に、緊急災害対策本部長の権限についての御質問でございますが、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合におきましては、司令塔ともなる緊急災害対策本部長が強力な調整力を発揮することが不可欠でございます。そこで、政府案におきましては、緊急災害対策本部長が、現地の防災関係機関のみならず、各省庁の大臣、長官等に対しても指示することができるようにいたしまして、緊急災害対策本部長の調整権限の強化を図ることとしたものでございます。
なお、新進党案におきましては、このほかにも本部長に新たな権限を付与していると承知をいたしておりますが、効果的な応急対策の推進を図るためには、本部長たる総理大臣の国務大臣等への指示のもとで、各省庁がそれぞれ持っている機能を最大限発揮するとともに、総合的、一体的に取り組むことが適当であると考えております。
次に、市町村長からの災害派遣要請についてのお尋ねでございますが、自衛隊法第八十三条において自衛隊の災害派遣を要請する者を都道府県知事等としておりますのは、都道府県知事等が被害状況等を全般的に掌握し得る立場にあることから、消防、警察等の災害救援能力を考慮した上で、自衛隊の部隊等の派遣の要否、活動内容等を判断することが適当であるとの考えによるものでございます。
仮に市町村長から要請ができることにした場合、例えば複数の市町村にまたがった災害が発生した場合、市町村長は他の市町村の状況を含めた全般的な被災状況を掌握し得る立場にはなく、都道府県知事及び複数の市町村長からの派遣要請が錯綜し、部隊等を救援活動のために派遣するに際し的確な判断が困難となる事態が想定されますので、法改正を行うことは適当でないと考えております。
他方、災害時の混乱から、やむを得ず市町村長から直接自衛隊に対し派遣を依頼せざるを得ないような事態も否定できませんが、このような場合には、むしろ自衛隊の自主派遣を行う場合の判断材料の一つとすべきものであると思います。
そこで、去る十月五日に修正をいたしました防衛庁防災業務計画におきましては、「部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合」を、自主派遣を行う具体的な場面の例として明記したところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
次に、自衛隊の自主派遣の基準についてお尋ねでございますが、自主派遣は、要請を受けて行う災害派遣を補完する例外的な措置であります。これにつきましては、先般の阪神・淡路大震災における教訓を踏まえ、災害派遣の命令権者が自主派遣を行う場合の判断の基準とすべき事項について明らかにする必要があると考え、当該事項について、次のとおり防衛庁防災業務計画に規定したところでございます。
第一に、関係機関に対して災害情報を提供するために自衛隊が情報収集を行う必要があると認められる場合。第二に、都道府県知事等が自衛隊の災害派遣に係る要請を行うことができないと認められる場合であって、かつ、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合。例えば、通信の途絶等によりまして部隊等が都道府県知事等と連絡が不能である場合に、市町村長等から災害に関する通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められるような場合が考えられます。第三に、自衛隊が実施すべき救援活動が明確な場合であって、かつ、救援活動が人命救助に関するものであると認められることなどの場合でございます。
次に、自衛官による警戒区域の設定についての御質問でございますが、警戒区域は、「災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合」という急迫した場面において、専ら災害の現場で緊急に設定されることが想定されるものであり、警戒区域の設定に伴う立入禁止等について罰則をもって担保することが必要であるほど、住民の生命、身体の保護のために必要な措置でございます。このため、市町村長、警察官、海上保安官がいずれもその場にいない場合においてのみ、住民の生命、身体の保護に万全を期す観点から、その権限を自衛官に行使させる必要があると考えたものでございます。
次に、復興事業の推進のための政府の取り組みについてのお尋ねでございますが、政府は、阪神・淡路復興委員会の意見を踏まえ、七月二十八日に阪神・淡路地域の復興に向けての取組方針を決定し、この中で、特に復興計画の前期五カ年間において緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づけ、その円滑な実施に必要な特段の措置を講じることとしたところでございます。
この取組方針に基づきまして、平成七年度第二次補正予算におきましては、事業費一兆四千百億円、国費で七千八百億円に及ぶ復興関連事業等を盛り込むとともに、地元地方公共団体の負担の軽減を図るため、補助対象の拡大等の支援措置の充実を図ることといたしておるところでございます。こうした措置を講じることによりまして、緊急に取り組むべき復興関連事業等の円滑かつ着実な実施が図られるものと考えております。
次に、復興計画に記載されておりまする各種施設の誘致に対する取り組み並びにエンタープライズゾーンの設定についてのお尋ねでありますが、地元から、各省庁の事業として実施できる施設等といたしまして、具体的には震災復興記念公園、スーパーコンベンションセンター、観光大学等の神戸への誘致について御要望をいただいております。また、地元の経済復興を図っていくための方策として、エンタープライズゾーン構想について御要望をいただいております。
これらの事業につきましては、現在、地元におきまして、県、市、民間が連携して具体的な内容等について検討中と聞いておりますが、国といたしましては、こうした地元の検討を踏まえ、どのような支援をすべきか、またどのような支援が可能か等について検討いたしておるところでございます。決まり次第、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣池端清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/15
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016・池端清一
○国務大臣(池端清一君) 石井議員の御質問にお答えをいたします。
中央防災会議の機能についてのお尋ねがございました。
ただいま総理からも答弁がありましたので重複は避けたいと思いますが、阪神・淡路大震災に際しましては、内閣総理大臣から非常災害対策本部の設置につきまして諮問が行われました。中央防災会議から直ちに、妥当と認める、この旨の答申が出されたところでございます。なお、この答申は、会長専決でございました。したがって、中央防災会議の会議自体は開催をされておりません。
中央防災会議は、今後、この法律改正後は、平時における各省庁の防災に関する事務の総合調整を主たる任務としつつ、発災時におきましても、災害緊急事態の布告についての答申や緊急措置に関する計画の作成等に引き続き重要な役割を果たす、このように考えておりますので、どうか御理解をいただきたいと思います。
次に、非常災害対策本部長を国務大臣としているのはなぜかというお尋ねでございます。
非常災害ではありましても、阪神・淡路大震災以外につきましては、これまでも非常災害対策本部は災害応急対策を適切に進めてまいってきたところでございまして、このため、非常災害対策本部の体制につきましては現行どおりとしているところでございます。ちなみに、本法案が成立した後に阪神・淡路大震災クラスの大規模災害が発生した場合には、緊急災害対策本部を設置して対処することになると考えております。
なお、新進党案のように非常災害対策本部長も内閣総理大臣とするということは、緊急災害対策本部と組織的な違いが認められないので、必ずしも適当なものではない、このように考えておるところでございます。
以上です。(拍手)
〔高木義明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/16
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017・高木義明
○高木義明君 石井議員にお答えをいたします。
お尋ねの第一は、阪神・淡路大震災から何を学んだか、何を反省したか、そして今回の法改正に当たってはどのようなことに留意して取り組んだかでございました。
さきの阪神・淡路大震災におきましては、人命救助にとって最も重要な災害応急対策に係る国の初動態勢の不備、とりわけ内閣総理大臣のリーダーシップの欠如が露呈したことは記憶に新しいことであります。
また、昭和三十六年に制定された災害対策基本法は、当時の災害の実態や社会情勢を踏まえた内容でありまして、昨今の国土の構造あるいは経済社会の変化やこれに伴う災害の質的・量的変化に必ずしも適合してない点が多々あるところでございます。特に、自衛隊の取り扱いについては、当時一部にこれをタブー視する風潮があったことから、災害時に派遣された自衛隊の権限に関する規定は、最近に至るまで皆無と言ってもいいほどであります。
新進党案は、近年の災害の実情、とりわけ阪神・淡路大震災の教訓にかんがみ、災害対策の強化を図るため、現行の災害対策基本法を抜本的に見直したものであります。
今回の改正で留意した点は、次の三点でございます。
第一点は、緊急時におけるリーダーシップの強化であります。
新進党案では、非常災害対策本部の長を内閣総理大臣といたしました。そして、本部長の権限を強化し、その強力なリーダーシップのもとに災害応急対策の迅速かつ的確な推進を図ることとしたものであります。また、緊急災害対策本部の設置を、いわゆる経済統制を伴う災害緊急事態の布告と切り離し、機動的に設置できることとしたものであります。
第二点は、総理府及び内閣官房に総合防災室を設け、内閣総理大臣直属の防災のエキスパートを配置することにした点であります。
災害発生時には、総合防災室の職員が災害対策本部の中核となって、緊急措置に関する計画の作成を初め、災害対策の実施を推進することにいたしました。
第三点は、災害応急対策の実施における自衛隊の重要な役割にかんがみ、災害時における自衛隊の権限を明記したことであります。
また、自衛隊の派遣要請に関する規定を災害対策基本法の中に位置づけ、市町村長も一定の範囲内でみずから派遣要請ができるものといたしております。
また、平成三年六月に発生した雲仙・普賢岳噴火災害は、大規模な火砕流により四十三名の犠牲者を出しました。現地では、いつ発生するか予測がつかない火砕流や降雨による土石流から人命を守るため、災害対策基本法大十三条に基づく警戒区域が設定されました。この災害はかつてない長期災害となり、一部解除されたものの、今なお四年四カ月にわたり警戒区域が設定された状況が続いております。
法に基づくこれらの設定権については、その地域の実情を把握し、より迅速に対応できる市町村長が権限を持ち責任を担うことは当然でありますけれども、立ち入りが厳しく、広範囲にわたる住宅や農地への警戒区域の設定は、長期間対象地域の生活手段を奪うことになり、多種多様な問題が提起されたのであります。
複数の市町村にまたがる広域的災害や一定期間を超えるような長期災害に対する警戒区域設定行為は、結果として市町村の行政のレベルを大きく超え、今後、市町村長の決断の足かせになるのではないかとの懸念があります。したがって、新進党は、新しく、警戒区域が二つ以上の市町村の区域にわたるときは、都道府県知事が当該区域に警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立ち入りを制限もしくは禁止し、また当該区域から退去を命ずることができるものといたしました。また、国及び都道府県は、警戒区域の設定等の応急措置を円滑に行うことができるよう、必要な助言、経費の補助を行うよう努めなければならないものといたしております。
次に、非常災害発生時の中央防災会議の位置づけについてのお尋ねでございました。
石井議員の御指摘のとおり、一刻を争う非常災害時には機動的な対応こそが肝要であるとの認識のもとで、新進党案では、中央防災会議の諮問事項から非常災害対策本部の設置、災害緊急事態の布告を外し、また、その所管事務から非常災害時に際しての緊急措置に関する計画の作成を削除いたしております。実際、非常災害対策本部の設置に当たっての中央防災会議の関与が形骸化していることは、さきの阪神・淡路大震災の例から見ても明らかであり、中央防災会議において緊急措置に関する計画が作成されたとの事実はとても見受けられません。
もっとも、緊急時における役割がなくなったからといっても、中央防災会議の意義をいささかも損なうものではございません。中央防災会議は、内閣総理大臣を会長とし、閣僚その他の行政機関の長及び学識経験者が集まって、むしろ、形骸化した緊急時の事務をそぎ落とすことによって、より実質的かつ重要な役割に専念できるものと確信をいたしております。
以上、お答えといたします。(拍手)
〔小坂憲次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/17
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018・小坂憲次
○小坂憲次君 ただいま石井議員より御質問のありました非常災害対策本部と緊急災害対策本部の関係、非常災害対策本部長の権限及び緊急災害対策本部長の権限についてお答えいたします。
今回の阪神・淡路大震災の大きな教訓として、災害発生後の機動的な即応体制をできる限り早期に立ち上げ、有効に機能させる仕組みを構築することこそが非常に重要であるという点があります。この点におきまして、政府案の取り組みは甚だ不十分と言わざるを得ません。
まず、非常災害対策本部について、その組織面及び機能面の双方において強化を図ることが極めて重要であるにもかかわらず、政府案がこの点について現地対策本部の設置関係以外全く手をつけていないことは、むしろ理解に苦しむところであります。
この点、新進党案では、非常災害対策本部を、災害発生後迅速に設置される機動的な災害対策本部としての性格の強いものとして位置づけました。そのために、非常災害対策本部の設置については閣議を不要とし、内閣総理大臣が本部長となって、その強力なリーダーシップのもと、迅速に災害応急対策を推進することを可能にしております。なお、本部長は、その災害の態様に応じて、その権限の一部または全部を副本部長に委任できることとし、機動性の維持にも配慮をいたしておるわけであります。
さらに、新進党案では、指定行政機関の長が非常災害対策本部の本部員になる道を開き、本部長の権限として指定行政機関の長に対する指示の権限を付与したりといった抜本的な強化策を講じております。
これに対し、緊急災害対策本部は、重大な災害に際して、より強力な総理のリーダーシップとより強力な権限をもって事に当たるという、まさに緊急事態における組織としての性格が強いものといたしております。ここでは、従来からの縦割り行政にどっぷりつかった発想から脱却して、より強力なリーダーシップを発揮する道を探ることが我々のすべてに求められているのであります。
このような観点から、緊急災害対策本部は、全閣僚及びその他の指定行政機関の長をもって組織され、閣議を経て設置されることとして、非常に強力な災害応急対策を実施することを可能にいたしました。
さらに、緊急災害対策本部の本部長の権限として、指定行政機関の長への指示権及び指定行政機関の長の権限の代行権を追加いたしました。緊急事態においては、このような強力な権限があることは、総合調整権や指示権をより効率的なものとすることに役立つものと考えております。
一方、非常災害対策本部と緊急災害対策本部のいずれを設置すべきかは、災害発生後すぐに決定することは実は困難であります。そこで、新進党案では、災害が発生した場合には即座に非常災害対策本部を設置し、非常災害対策本部によっては対処し得ないような重大な事態に遭遇した場合には緊急災害対策本部という強力な組織を設置することを想定して、二つの組織の関係を整理したのであります。これによって、性格の違う二つの組織を弾力的に運用できることになると思われます。
これに対して政府案はどうでありましょうか。
なるほど、法文上は、「非常災害が発生した場合」と「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合」と、言葉の上では明確に区分されているように見えます。しかし、災害が発生した場合に、短時間にこれを実際に区別することは可能でしょうか。
また、政府案では、緊急災害対策本部においても本部長の権限はさほど強力ではなく、非常災害対策本部と非常に似通ったものになっておりますから、どちらを設置するか確たる基準があるわけではありません。
さらに、政府案では、非常災害対策本部の設置にも閣議が必要でありますから、非常災害対策本部を設置するのか緊急災害対策本部を設置するのかでもめてしまって、結局、本部の設置に何時間もかかるということになりかねません。この点、政府案は、阪神・淡路大震災に際し、政府の非常災害対策本部の設置が著しくおくれた経験を全く生かしていないものとしか言いようがありません。
以上の点から、本部の組織に関しては、政府案よりも新進党案の方がはるかにすぐれたものであると自負するゆえんであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/18
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019・土井たか子
○議長(土井たか子君) 高見裕一さん。
〔高見裕一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/19
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020・高見裕一
○高見裕一君 今回提出されました災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法の一部を改正する法律案並びに災害対策基本法の一部を改正する法律案に対して、自由民主党・自由連合、日本社会党・護憲民主連合、新党さきがけを代表いたしまして、質問をさせていただきます。
阪神・淡路大震災から早くも九カ月が過ぎました。未曾有の都市型災害の発生に対して政府として現行法上可能な限りの対応をしてきたことは、被災者の方々にも認識されているところであります。しかし、今振り返って考えると、改善するべきことや今後の施策に生かしていかなければならない課題も数多くあったのではないかと思います。
私は、阪神・淡路大震災発生の一月十七日に現地で被災をし、被災地の現状をつぶさに見てきた一人の人間として、今回の災害対策基本法改正案について意見を述べ、質問をさせていただきたいと思います。
まず、今回の阪神・淡路大震災で感じたことは、緊急時の対応、特に震災の場合には、地震が起こった直後できるだけ速やかに救助活動を開始することの重要性を強く認識いたしました。
私も、被災直後から神戸の町に飛び出して人命救助などを行ってまいりましたが、個人としてできることには当然限度があり、組織的、効率的な救助・救援活動を少しでも早く行うこと、それは警察官や消防署員だけではなく、自衛隊員の早期の活動開始が非常に重要になってくると痛感したところでございます。そのためには、大規模災害の場合には、特にいち早く災害の状況や正確な情報を政府、特に首相官邸に集中して、短い時間で的確な判断を下すことができるシステムを構築することが要求されるのではないかと思います。
次に、ライフラインの切断の問題であります。
大都市においては、ライン型の構造を築くことによって効率よくインフラを整備するということはあるのでしょうが、いざ震災が起こってみると、ライフラインが切断され、復旧にも時間がかかったこともあり、市民生活に耐えがたいほどの非常に大きな影響を及ぼしました。
今後は、耐震型の共同溝を設置するなどライフラインの強化も必要になってくるのでしょうが、少なくともポイントごとに井戸や浄化槽型のトイレなどが設置されていれば、あれほどまでに市民生活に不都合が生じることはなかったのではないかと感じており、そのような施策を今後講ずることが必要になってくると痛感しております。
さらに、今回の阪神・淡路大震災では、市民の自発的な活動の重要性が強く認識されたのではないかと思います。多くのNGOや一般市民、若い学生の方々などが自発的に被災地を訪れ、精力的に活動を展開してくれたおかげで、被災者の方々がどれほど助けられたか枚挙にいとまがありません。
しかし、ボランティアと行政との連携について言えば、改善するべき点も多々あったのではないかと思います。ふだんから行政とNGOや市民が連携する場を設けることによって、災害時にも効率的な行政とボランティアとの連携が可能となるのではないかと思います。このことは、海外のボランティア団体の受け入れについても言えるのではないでしょうか。緊急時に慌てて対応を考えるのではなく、ふだんから海外のボランティアやNGOについての情報収集を行ったり、法律の整備を行うことが肝要であると考えます。
加えて、今回の地震では、地域市民によるコミュニティーが初期の救命活動の極めて重要な一翼を担い、数多くの人命を救ったという事実があります。市民による自発的な活動と国や地方自治体による組織的な活動をうまく組み合わせることによって、初期段階での効率的な救援や災害復旧作業を行うことができ、その意味では、市民の自主的な活動と行政の連携を真剣かつ積極的に模索するべき時代に来ているのではないかと考えます。そして、多くの自治体にまたがる大規模な災害が起こった場合には、地方自治体間の連携が重要であり、現在でも東海や関東地方では積極的に行われておりますが、日本は世界的にも有数の地震発生国であることを考えれば、全国的に広域防災体制を展開する必要があるのではないでしょうか。特に、人口の集中した都市部での災害に対しては、周辺自治体との協力なしに有効な災害救助活動はできないと強く実感をしているところであります。加えて、今回の地震の後で大きな問題となったのは心のケアの問題であり、お年寄りや幼児や、とりわけ体の不自由な方々などのいわゆる弱者に対する配慮であります。どこへ行けば何をしてくれるのかなとの情報が末端まで伝わりにくいということから、どうしても弱者の方の不安が募る結果となり、それが心の問題にまで発展するケースも多々見受けられました。弱者の方でも安心して避難生活が送れるような措置をぜひとも講ずるべきですし、広報活動や相談窓口の充実、メンタルケア、医療活動等の充実も図らなければならないと痛切に感じたところであります。不幸にも今回の阪神大震災で亡くなられた五千五百人を超える方々の死をむだにしないように、災害発生時には一人でも多くの人命を救うことができるように、被災した方々が一刻も早く安心して生活できるような施策を国としても講じていかなければならないと存じます。
そこで、まず総理にお尋ねをしたいのですが、先ほど申しましたように、大災害が起こった場合には、初期の段階でのできるだけ多くの正確な情報収集とその情報の集中、集まった情報の迅速な処理と判断が要求され、そのことによって被害を最小限に食いとめることが可能になるのではないかと考えます。情報収集体制については、今回の政府案で、阪神・淡路大震災の何を教訓とし、どのような改善がなされたのか、お答えをいただきたいと存じます。
加えて、防災面における市民の自発的な活動、すなわちボランティア活動や地域コミュニティーの活動を今後どのように位置づけ、はぐくんでいこうとしているのか、さらに、そのような市民の自発的な活動と行政はどのように連携を図っていこうとしておられるのか、あわせてお答えをいただきたいと存じます。
また、政府として、五千五百人を超える犠牲者を出した阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、災害対策全般の見直しについて取り組んでいるところだと聞いております。特に、ことし三月に設置された防災問題懇談会においては、自然災害に対応した国、地方公共団体による防災体制のあり方について熱心な議論、検討が行われた結果、運用・実務面の改善を行うべき施策と法制度など制度面の改善を行うべき施策の両面にわたって詳細な提言が提出されたところであります。総理は、この提言をどのように受けとめ、今後の災害対策の取り組みのために、今回の災害対策基本法の改正案にどのような形で反映させたのかについてもお答えいただきたいと存じます。
次に、阪神・淡路大震災以降、国、地方公共団体を通じた防災体制のあり方については、国会においてもさまざまな議論がなされてきたところであります。災害対策というものは極めて多岐の分野にわたり、それらについては予算面においても積極的な対応が図られてきているところであります。そのような多様な分野にわたる災害対策については、各省庁を挙げて総合的に取り組むことが必要であると考えます。その際には、各省庁がばらばらに施策を遂行するのではなく、施策の総合調整が的確になされなければならず、総合調整機能を果たす国土庁の責任は極めて大きなものであると考えます。
もとより災害は、その一つ一つがかなり異なる性格を有するため、その予防や応急措置、復旧・復興に対するそれぞれの施策については、これまでの経験と知識の積み重ねによって不断の改善を続けるべきであると考えます。今回の阪神・淡路大震災を教訓とした災害対策の推進に当たり、当面考えられる制度的な手当てについて、特に私が先ほど申し上げた事柄について今回の災害対策基本法の改正に十分盛り込まれたものになっているのかについて、国土庁長官の見解をお伺いしたいと思います。
さらに、災害発生後の緊急即応体制のあり方についてもかなりの議論が行われてきたところでありますが、機動的な即応体制をできる限り早期に立ち上げ、有効に機能させる仕組みを構築することが災害発生時には非常に重要になってまいります。特に阪神・淡路大震災のような激甚な災害につきましては、国全体として、すなわちそれぞれの省庁の最高責任者が集い、災害対策の横断的調整がなされることが重要であり、緊急災害対策本部についてはそのような方向で大幅に組織や権限の面での改正が予定されております。
新たな緊急災害対策本部においては、本部長となる内閣総理大臣の活躍が大いに期待されることになるわけであります。しかし、今回の法改正においては、緊急災害対策本部における総理の立場はあくまでも総理府の長としての立場であり、内閣の長としての立場ではありません。確かに調整権限は強化されておりますが、緊急時における強いリーダーシップが要求されているときに、それだけの権限で十分であるかどうかについては、さきがけとしては今後とも十分に議論を深めていかなければならないものと考えます。この問題については内閣法の改正も視野に入れなければなりません。その点をも含めて、今後の総理の災害対策についての取り組みについてお伺いしたいと思います。
今回は、政府からも新進党からも災害対策基本法の改正案が提出されているところでありますが、両者ともに、雲仙・普賢岳や阪神・淡路大震災の教訓をもとに、今後の災害対策をより強化し、被害の拡大を最小限にして、機動的な災害対策を講ずることができるような改正を目指しているのだと確信いたします。
ところで、災害救助の現場における指示については、できるだけ住民の危険を減らし、救助活動などを効率的に行うためにも、現行法を強化する必要性があるという点においては政府案も新進党案も一致しているのでしょうが、現場の自衛官の権限行使の要件や内容については若干の違いが見受けられます。
例えば権限の内容については、政府案にある警戒区域の設定のかわりに、新進党案では、避難のための立ち退きの指示ができるという規定が置かれております。このような指示については、緊急性が低い場合もあると考えられますが、このような規定を置いた趣旨についてお聞かせいただきたく思います。
また、自衛隊の派遣についても、新進党案では、市町村にも派遣要請をできる権限を、都道府県知事の場合よりも要件を絞って与えております。この件についても今回の防災業務計画では詳細な規定が追加されており、自主派遣での対応も十分に可能であるとも考えられますが、あえて市町村の派遣要請を規定した意義についてもあわせて明確に、しかし簡潔に答弁をお願いいたします。
最後に、今肝心なことは、いたずらに感情的、揚げ足取り的、魔女狩り的な不もの責任者探してはなく、被災地が一日も早く復興し、市民が健全な暮らしを取り戻すよう万全の支援、手助けを国を挙げて行い、かつ、次の災害に備えていかに被害を最小限に抑え得るかを我々の人知を尽くして前向きに、国民生活と国の将来を見据えて議論することであります。
復興や災害対策を政争の具にすることなく、真摯な討議を積み重ねていただけることを被災地に住む人間の一人しとて切望しつつ、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/20
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021・村山富市
○内閣総理大臣(村山富市君) 高見議員の質問にお答えを申し上げたいと思いますが、阪神・淡路大震災を受けた被災現場においてみずから救援活動に専念をされた、その経験に立った貴重な御意見を今拝聴させていただきました。
御質問にお答え申し上げたいと思いますが、今回の改正案におきましては、情報収集に関する阪神・淡路大震災のどの部分が教訓となり、どのような改善がなされたかとの質問でございますが、阪神・淡路大震災においては、発災直後に被害の規模を迅速に把握するための正確な情報の収集・伝達が地元地方公共団体等の被災などにより必ずしも十分でなかったことから、初期における正確な情報の収集体制の整備を進めることとしたところでございます。
今回の改正案では、市町村、都道府県、指定公共機関の代表者または指定行政機関の長は、非常災害の規模の把握のため必要な情報の収集に特に意を用いなければならない旨規定したものでございます。また、市町村が都道府県に被害の状況等の報告を行うことができない場合には、内閣総理大臣に直接報告することとしたものでございます。
次に、防災面における市民の自発的な活動の位置づけ及び行政との連携についての御質問でございますが、大規模な災害時における応急活動及び復旧活動を迅速かつ的確に実施していく上において、被災地におけるさまざまなニーズに対応する国民の自発的な活動は極めて重要であると位置づけており、活動環境の整備等によりその促進を図ることが必要でございます。
今回の改正案においては、国及び地方公共団体は、自主防災組織の育成、ボランティアによる防災活動の環境の整備、その他国民の自発的な防災活動の促進等の実施に努めなければならない旨規定したものでございます。
次に、防災問題懇談会の提言をどのように受けとめ、今回の改正案にどのような形で反映させたのかという御質問でございますが、防災問題懇談会においては、国、地方公共団体における防災体制のあり方について検討が行われ、去る九月十一日、提言が提出されたところでございます。この提言は、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、自由に幅広い見地から精力的な御議論を積み重ねてこられた結果であり、特に災害応急対策を中心に貴重な御示唆をいただいたものと受けとめております。特に、法制度など制度面で改善を行うべき施策として指摘された国の災害対応体制のあり方や、地方公共団体相互の広域応援体制のあり方等については、基本的に今回の改正案に盛り込んだところでございますので、御理解を賜りたいと思います。
次に、災害発生時における内閣総理大臣のリーダーシップの発揮に関する御質問でございますが、緊急災害対策本部の本部長の権限につきましては、新たに指定行政機関の長に対し指示を行うことができることとしたところでございまして、これにより、緊急災害対策本部を設置しなければならないような著しく異常かつ激甚な非常災害の場合にも、災害応急対策をより的確かつ迅速に実
施できることとなったと考えております。御指摘の内閣法の改正につきましては、種々の観点から議論をしなければならない課題でございますが、今回は災害発生時における総理としてのリーダーシップの発揮に必要な改正を行うものでございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣他端清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/21
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022・池端清一
○国務大臣(池端清一君) 高見議員に一点お答えを申し上げます。
阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた今後の災害対策につきましては、去る七月に、従来までございました防災基本計画を全面的、抜本的に見直しを行いまして、具体的かつ実践的な新しい計画を策定いたしたところでございます。
なお、今回の改正は、ただいま総理からもお答えありましたように、防災問題懇談会の提言を受けまして、第一に緊急災害対策本部の設置要件を緩和するとともに、本部員に全閣僚を充てることといたしております。第二に緊急災害対策本部長の権限の強化でございますし、第三に現地対策本部の設置、第四に災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官への権限の付与、第五に新たな防災上の課題への対応、第六に地方公共団体相互の応援等について規定をいたしております。当面考えられる制度的な手当てについてはすべて盛り込んだ、こういうふうに考えております。
以上であります。(拍手)
〔佐藤茂樹君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/22
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023・佐藤茂樹
○佐藤茂樹君 ただいまの高見議員の御質問に対しまして、新進党案の提出者を代表して、簡潔にお答えさせていただきます。
まず、御質問の第一は、自衛官による避難のための立ち退きの指示を規定した趣旨についてでございましたが、新進党案は緊急事態または切迫した事態において、国民の生命、身体、財産を災害から守るために、災害派遣された自衛官が災害現場においてその持てる能力を十分に発揮できるようにすることを最大の眼目として、権限の規定を整備したものでございます。
避難のための立ち退きの指示は緊急性が低いとの高見議員の御指摘は当たらないと思います。自衛官による避難のための立ち退きの指示は、警察官による指示と同じく、災害が発生し、または発生するおそれがある場合において、まさに急を要すると認めるときに行われるものであります。このような場合における自衛官の権限が認められないのでは、自衛官がその能力を十分に発揮できるとは到底言いがたく、この点についての規定を欠く政府案は、全く理解に苦しむものであります。(拍手)
御質問の第二点目として、市町村長による自衛隊への災害派遣の要請を規定した意義についてのお尋ねがございましたが、これについてお答え申し上げます。
この規定は、まず第一に、阪神・淡路大震災で被災した地域の市町村長の強い要望により規定したものであります。阪神・淡路大震災のように、県庁の通信機能が麻痺し、県と自衛隊の間及び県と市町村の間の通信も途絶するような場合、当然、その緊急性にかんがみ、被災の現場に最も近く、被災状況のわかる市町村長からも自衛隊の派遣要請ができるようにすべきであると考えます。
また、第二には、この規定は、本院の地方分権に関する特別委員会での参考人質疑においても、同様な災害で被災した釧路市長、奥尻町長も強く主張していた点でございます。
このように、市町村長が災害応急対策の実施に第一義的な責任を負う立場にあることを考えれば、市町村長に対して災害派遣を要請する道を全く閉ざすべきではありません。
防衛庁は、防災業務計画を修正し、自主派遣ができる場合の一つとして、通信の途絶等により知事との連絡が不能である場合に、市町村長から通報を受け、直ちに救援の措置をとる必要があると認められる場合を挙げております。かかる場合に自主派遣ができるのであれば、被害の状況をだれよりも的確に把握している市町村長の要請に基づく災害派遣を規定することに、何ら問題があろうとは思えません。
災害発生時においては一刻も早い救助・救援活動が必要となることは、さきの阪神・淡路大震災の例をまつまでもなく明らかなことであります。そして、災害時における自衛官の活動に対する国民の期待は、かつてないほど高まってきているところであります。新進党案は、市町村長の強い要望と国民の期待を受けて、自衛隊の一刻も早い救助・救援活動を可能にするため、市町村長の災害派遣の要請を規定したものであります。
以上、御答弁申し上げたところでございますが、私どもは、この法案を提出するに当たり、阪神・淡路大震災を教訓として、二度とあのような初動のおくれ、リーダーシップの欠如による大惨事を起こしてはならないという観点から、我が国の災害対策を抜本的に見直し、検討してきたものであります。
何とぞ新進党の立法趣旨をお酌み取りいただきまして、新進党案のすぐれた点につきまして与党の皆様方の御高配を賜りますようにお願い申し上げ、答弁を終わらせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/23
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024・土井たか子
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X00819951020/24
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025・土井たか子
○議長(土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十三分散会
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