1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成七年十月三十一日(火曜日)
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平成七年十月三十一日
午後一時本会議
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○本日の会議に付した案件
船田元君の故議員渡辺美智雄君に対する追悼演
説
宗教法人法改正に関する諸問題を調査するため
委員四十人よりなる宗教法人に関する特別委
員会を設置するの件(議長発議)
宗教法人法の一部を改正する法律案(内閣提出
)の趣旨説明及び質疑
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
科学技術基本法案(尾身幸次君外八名提出)
午後一時二十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/0
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001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/1
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002・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御報告することがあります。
議員渡辺美智雄さんは、去る九月十五日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
渡辺美智雄さんに対する弔詞は、議長において去る十月二十三日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
〔総員起立〕
多年憲政のために尽力し 特に院議をもって
その功労を表彰された議員従二位勲一等
渡辺美智雄君は しばしば国務大臣の重任にあ
たり 内政外交に多大の貢献をされ また終始
政党政治の進展につとめられました その功績
はまことに偉大であります
衆議院は 君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞
をささげます
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故議員渡辺美智雄君に対する追悼演説発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/2
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003・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、弔意を表するため、船田元さんから発言を求められております。これを許します。船田元さん。
〔船田元君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/3
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004・船田元
○船田元君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員渡辺美智雄先生は、去る九月十五日未明、入院先の東京女子医大病院において逝去されました。
先生は数年前より体調を崩されていましたが、八月末にもテレビ出演されるなど最近まで大変お元気でおられたのです。余りにも突然で早過ぎる計報に接し、私はしばし言葉を失いました。まことに痛惜の念にたえません。
私は、ここに諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
渡辺先生は、大正十二年七月、職業軍人であったお父様の勤務先、千葉県習志野市でお生まれになりました。生後間もなくお母様を失い、栃木県那須野ケ原のおじ夫婦のもとに預けられ、その温かい愛情と那須の大自然の恵みにはぐくまれました。
長じて先生は、県立大田原中学校を経て、東京商科大学専門部を卒業されました。終戦は宇都宮の連隊で迎えられ、復員後は郷里の栃木県でリヤカーを引いて日用品の行商をされたのであります。先生は、各家庭を歩きながら、商売よりも天下国家を論じ、物価や生活を語り、これが人気を得て、次第に「インテリ行商人」と言われるようになりました。
ちょうどそのころ、シャウプ勧告が実施され、税制が大きく変わり、先生に税務相談が殺到するようになりました。これを機に先生は西那須野町に会計事務所を開くのですが、それが県政への橋渡しとなったのであります。九年間にわたる行商と税理士の仕事を通じて得た多くの知己の推薦を受け、昭和三十年四月の栃木県議会議員選挙に自由党から立候補して見事当選、政界進出の突破口を開かれたのであります。
先生は、当時の革新県政に果敢に論戦を挑み、一歩も引けをとらず、「栃木県議会に渡辺あり」と称されました。さらに、先生は国政参画への夢捨てがたく、昭和三十五年の第二十九回衆議院総選挙に栃木県第一区から立候補しましたが、善戦わずかに及ばず、苦杯をなめられました。しかし、先生は、自来三年間、捲土重来を期して、昭和三十八年の第三十回総選挙に再度立候補、見事初当選の栄に輝いたのであります。(拍手)
本院に議席を得られた先生は、主に大蔵委員会、農林水産委員会を舞台に活躍され、昭和五十一年には内閣委員長として委員会運営に重きをなすに至ったのであります。
また、自由民主党にあっては、幹事長代理、政務調査会長等の要職を歴任し、党の運営や政策決定に極めて大きな役割を果たされました。かつて、党内のタカ派議員集団青嵐会のリーダーの一人として勇名をはせたことも忘れることはできません。
一方、内閣にあっては、昭和五十一年十二月、福田内閣の厚生大臣として初入閣を果たされたのであります。そこで、先生は、最大の懸案であった医療制度の改革に敢然と立ち向かいました。一時は診療報酬引き上げをめぐって当時の武見医師会長と堂々と渡り合い、国民から喝采を浴びたのであります。このように、先生は行政の公平確保と公益重視の姿勢を貫き、政治家渡辺美智雄の存在を強く印象づけ、不動のものとされたのであります。(拍手)次いで昭和五十三年十二月、第一次大平内閣の農林水産大臣に就任されました。いわゆる総合農政派として農地の効率的な利用を実現するために数々の見直しを進められたのですが、それらが後の農地法、食糧管理法の改正として結実することになりました。
これらの改正の契機になった一つには、先生が地元の駅で、食管法違反となるため地元の米を土産物として売ることができないという声を耳にしたからだと伺っております。ここにも、常に国民の生の声や暮らしぶりに細心の注意を払い、そこから得た発想を国政の場で新たに展開していくという先生の庶民感覚を見る思いがいたします。
昭和五十五年七月、先生は鈴木内閣の大蔵大臣に就任され、二期にわたってその重責を果たされました。当時は、国鉄、米、健保のいわゆる三K赤字に象徴されるように、国の財政は極めて厳しい環境にありました。財政再建をアピールするため、みずからテレビ、ラジオに出演して国民にわかりやすく説明し、理解を求めました。二年四カ月にわたる大蔵大臣在任中には、破綻しかかった財政に見事に歯どめをかけられたのみならず、政治をお茶の間にぐっと近づけた功績を忘れてはならないでしょう。(拍手)
昭和六十年十二月から第二次中曽根内閣の通商産業大臣を務められた後、平成三年十一月には、東西冷戦終結後の国際情勢が激変する中で宮澤内閣の副総理兼外務大臣に就任され、我が国外交のかじ取りを務められました。
しかし、この在任中の平成四年五月、先生は突然体の不調を訴えられ、入院療養を余儀なくされたのであります。時あたかもPKO法案の審議の山場を迎えていたときでありまして、担当大臣としてその成立に全力を傾注されてきた先生にとって、審議に出席できなかったことはさぞ断腸の思いであったことでしょう。
しかし、その後療養に努められ、間もなく御回復、公務に復帰され、十月には天皇皇后両陛下の初の中国御訪問に首席随員として同行され、歴史的行事を成功裏のうちになし遂げられたのであります。
かくして渡辺美智雄先生は、本院議員に連続して当選すること十一回、在職三十二年一カ月の長きに及び、昭和六十三年には永年在職議員として院議をもって栄誉ある表彰を受けられました。その間、内政、外交に多大な貢献をされ、政党政治の進展に努められた功績は、まことに偉大なものがあります。
自由民主党のある重鎮は、「渡辺先生は一時代の自民党を代表する政治家」と評しましたが、私もまさに同感であります。二度にわたる自民党総裁選挙への出馬と大健闘は、立場こそ違え、心からの拍手を送りたいと思います。(拍手)一度は渡辺先生に総理大臣をやらせたかったと思う国民は決して少なくなかったと思っております。
また、先生は、本音の政治を実践され、あの栃木弁丸出しのミッチー節で、歯にきぬを着せぬ直言が売り物でした。そのわかりやすい比喩が時として脱線し、物議を醸すこともしばしばありましたが、その語り口には、我々の心をわしづかみにして放さない不思議な力を持っておりました。
実は、渡辺先生は、御自分の失言には思いのほか気にされるところがありました。かつてアメリカの黒人の破産をめぐる話で外からの風当たりが強くなったとき、先生は真剣に黒人の若者のために何か貢献をしたいと考えました。たまたま先生と私の共通のアメリカの友人の勧めもあり、テネシー州のナッシュビルにあるメハリー医科大学に、毎年十万ドルずつ五年間にわたり寄附をされました。そのおかげで毎年四人の黒人学生に奨学金が支給されることになりましたが、メハリーやアメリカ南東部の人々は、渡辺先生を思いやりを身につけた一人の日本人として今も称賛していると聞いております。(拍手)アメリカと先生の知られざる友情がそこに芽生えたのであります。
先生は、政治を志す以前から、常に努力に努力を重ねてきた、まさに苦労の人でありました。先生は、かつて選挙公報に率直な言葉で身の上を語っておられます。「両親を早く亡くしたがゆえに子供心にも人の愛を悟り、貧困だったがゆえに他人の飯を食らって人の情を知る。どうやら学校で学ぶことができて、生活のもとを授かる。もともとなきがごとき生命、無遺産、裸、はだしが私の身上。ここに社会への報恩の念が培われ、政治への活力となったのであります。」
「人間万事塞翁が馬」、「禍福はあざなえる縄のごとし」を身をもって体験されてきた先生は、人生の最期の瞬間まで、みずからに与えられた気力と体力のすべてを国民と国家にささげる決意をお持ちでありました。(拍手)同じ選挙区で戦ってきた私が、いつも渡辺先生の胸をかりるようなつもりでおりましたのも、まさにこの決意に敬意を表さずにはいられなかったからであります。志半ばにして倒れられた先生の胸中をお察しするとき、痛恨哀惜の情ひとしお深いものを覚えるのであります。
また、先生を内にあって支えてこられた奥様や御長男喜美さんを初め御遺族の皆様の心情をお察しするとき、お慰め申し上げる言葉もありません。
今や我が国をめぐる内外の諸情勢は極めて厳しいものがあります。とりわけ深刻な平成不況が長引いている今日、先生のような経済や財政に天才的な手腕を発揮するすぐれた政治家を失ったことは、ひとり自由民主党のみならず、本院にとって、また国家にとっても大きな損失であり、惜しみてもなお余りあるものがあります。(拍手)
ここに、謹んで渡辺美智雄先生の生前の御功績をたたえ、心からの御冥福をお祈りし、思いは尽きませんが、追悼の言葉といたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/4
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005・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、暫時休憩いたします。
午後一時四十分休憩
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午後三時四十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/5
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006・土井たか子
○議長(土井たか子君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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特別委員会設置の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/6
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007・土井たか子
○議長(土井たか子君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
宗教法人法改正に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる宗教法人に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/7
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008・土井たか子
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。
ただいま議決されました特別委員会の委員は追って指名いたします。
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宗教法人法の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/8
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009・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、宗教法人法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣島村宜伸さん。
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/9
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010・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) 宗教法人法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
現行宗教法人法は、宗教団体に法人格を与え、自由でかつ自主的な活動をするための物的基礎を確保することを目的とし、憲法に定められた信教の自由と政教分離の原則にのっとり、宗教法人の自由と自主性、責任と公共性という二つの要請を基本としてその体系が組み立てられております。このような宗教法人の制度の基本は維持すべきものであります。
しかしながら、宗教法人法が昭和二十六年に制定されて以来、今日に至るまでの社会状況や宗教法人の実態の変化にかんがみ、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、これらの変化に対応するための宗教法人法の最小限の見直しが必要となってきており、宗教法人法を改正すべきとの世論も高まっているところであります。このような状況を背景に、宗教法人審議会から、去る九月二十九日に「宗教法人制度の改正について」の御報告をいただいたところであります。
今回、この宗教法人審議会の報告も踏まえ、所要の改正を行うため、この法律案を提出することとしたものであります。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
第一は、所轄庁についてであります。
複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁は文部大臣に改めることが適当と考えられることから、他の都道府県内に境内建物を備える宗教法人及び当該宗教法人を包括する宗教法人の所轄庁を文部大臣とすることとしております。
第二は、事務所備えつけ書類の見直しとその一部の写しの所轄庁への提出についてであります。
宗教法人の財産目録等の書類については、その事務所に備えつけることが現行宗教法人法においても義務づけられておりますが、今回、宗教法人が作成し、事務所に備えなければならない書類として収支計算書等を加えるとともに、これらの書類の写しを毎会計年度終了後四カ月以内に所轄庁に提出しなければならないとすることとしております。
なお、収益事業を行わない宗教法人で、一会計年度の収入の額が寡少であり文部大臣が宗教法人審議会の意見を聞いて定める額の範囲内であるものは、当分の間、収支計算書を作成しないことができることといたしております。
第三は、信者その他の利害関係人による財産目録等の閲覧についてであります。
宗教法人は、信者その他の利害関係人であって、財産目録等の事務所備えつけ書類を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでない者から請求があったときは、これを閲覧させなければならないこととしております。
第四は、宗教法人審議会の委員の増員であります。
現行の宗教法人法で十五人以内となっております定員を二十人以内とすることといたしております。
第五は、所轄庁の報告徴収及び質問についてであります。
所轄庁は、宗教法人について、裁判所に対する解散命令の請求等を行うべき事由に該当する疑いがあると認めるときは、その業務等の管理運営に関する事項に関し、報告を求め、または職員に質問させることができることとしております。
なお、この場合においては、所轄庁は、報告を求め、または職員に質問させようとすることについて、あらかじめ宗教法人審議会に諮問し、その意見を聞かなければならないこととしております。
このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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宗教法人法の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/10
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011・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。松永光さん。
〔松永光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/11
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012・松永光
○松永光君 私は、自由民主党・自由連合、日本社会党・護憲民主連合、新党さきがけを代表して、ただいま趣旨説明のありました宗教法人法の一部を改正する法律案に関して、総理及び文部大臣に質問を行いたいと存じます。
宗教は、人の心を安定させ、精神文化の向上発展に資するものであり、激動する今日の社会に生きる人々が心の安らぎを得るよすがとして極めて大切なものであると考えます。
歴史的に見ても、宗教はさまざまな活動によって社会に貢献してまいりました。また、大多数の宗教法人は、宗教の持つ社会的責任の重要性を認識され、これまで適切な運営に努力してこられたものと思います。
しかしながら、一部の宗教法人とはいえ、これまでも脱税や詐欺的商法などの事件が報道され、また宗教法人自体の売買が行われるなどという不祥事も挙げられてきておるのであります。
とりわけ、オウム真理教の事件は、宗教法人が組織的に長期にわたり反復して敢行した犯罪行為であり、その行為の残虐性において、また死亡者、負傷者合わせて、判明したものだけでも約四千名という大規模の犯罪であり、日本の犯罪史上類例を見ない凶悪犯罪であります。しかもそれが、宗教法人という立場を利用してお布施、寄附等の名目で巨額の金を集め、それを資金として敢行されたという点も軽視してはならないと思います。
オウム真理教については、昨日、東京地方裁判所において解散を命ずる決定が下されました。もとより当然の決定であり、これまでの関係方面の御努力に深く敬意を表するとともに、この解散命令が一日も早く確定をし、清算手続が適正かつ迅速に進行することを期待するものであります。
人々に安らぎを与えるはずの宗教団体がこのような重大犯罪を引き起こしたことに、国民は大きな不安と憤りを感じているのであります。坂本弁護士一家三人の拉致殺害事件は、オウムが東京都から宗教法人の認証を得て三カ月後の事件であり、その他数々の恐るべき事件も、認証を得た後、五、六年の間に挙行された犯罪であります。
そこで、多くの国民は、何ゆえにこのような団体に法人格が付与されたのか、また、この団体の活動状況について、所轄庁は最小限のことは知っておくべきであるのにほとんど知らなかったということは大きな問題ではないのかという素朴な疑問が出てきておるのであります。そこから宗教法人をめぐる現行の法制度について疑問の声が上がり、現行の宗教法人法に不十分な点があればそれを速やかに是正すべきであるとの声が強く大きく起こっておるのであります。(拍手)
法に不備、不十分な点があるとすれば、法改正によってその整備を行うことはまさに国会の責任であると考えます。(拍手)今こそ宗教法人制度のあり方を見直し、必要な改正をなし遂げ、もって多くの国民の要望と期待にこたえるべきであると考えますが、総理大臣の決意のほどをお伺いいたします。次に、この法律案を提出するまでの手続についてお伺いいたします。オウム真理教の事件をきっかけとして、文部大臣の諮問機関である宗教法人審議会では、宗教法人の運営のあり方について四月から検討を開始し、暑い夏の間にも特別委員会を開催し、精力的に論点の整理や制度上の問題点についての検討を進めてこられたのであります。委員各位の御労苦に敬意を表するものであります。
そして、九月二十九日に、審議会はそれまでの審議を取りまとめた報告を文部大臣に提出し、所轄のあり方、情報の開示のあり方、設立後の情報の把握のあり方等について制度の見直しを図るべきであるとの見解を示されました。文部省ではこの報告を参考にして改正法案を準備され、そして今審議されておる宗教法人法の一部を改正する法律案の提出となったわけでありますが、ここにきて一部から、この審議会の運営をめぐって問題があるなどという意見が出されておるわけでありますが、この際、審議会の事務局となっておる文部省からその経緯について明快な御説明をお願いしたいのであります。
次に、今回の法改正の内容について、宗教への国家統制であるとか信教の自由に対する侵害に当たるなどとの主張が一部にありますが、その点についてお尋ねいたします。
まず一点目に、複数の都道府県内で宗教活動を行う宗教法人の所轄を都道府県知事から文部大臣に改めることについてでありますが、この点について、一部に、宗教に対する国家の監督強化であり、信教の自由に対する侵害であるなどという非難があるようであります。
しかし、知事はあくまでもその都道府県内の事務をつかさどるのが仕事であり、所轄しておる宗教法人が遠く離れた土地で活動している場合、その遠隔地における活動状況を把握することにはどだい無理があるのであります。そもそも宗教は地域を越えた特質を有するものであるから、その事務も地方的な事務ではなく本来国の事務であり、それを知事に機関委任しているものであることからしても、複数県にまたがって活動しておる宗教法人の所轄を文部大臣とすることはごく当たり前の改正であります。(拍手)
知事と文部大臣との間に宗教法人の所轄庁としての権限に違いがあるのかどうか。もし、違いがない、同じ権限であるとするならば、文部大臣なら監督強化で、知事ならば監督強化にならないというのは全く理屈の通らないことであると思いますが、文部大臣の御見解を伺います。
第二に、所轄庁が宗教法人の事務所備えつけ書類の一部の提出を求めるという改正点であります。
今の宗教法人法では、一たん宗教法人として認証されれば、その後は所轄庁は宗教法人のことを何も把握できない制度と現行法はなっております。そのため、宗教法人が宗教団体としての実態をもはや備えていないというようなひどい事態になっても、所轄庁はそのことを何も知らず、知る権利も義務もないというのが実情であります。規行法では、規則変更の認証や登記変更の届け出のときのみ法人に関する情報を把握できる仕組みとなっております。規則の変更等がない限り、所轄庁には情報は全く入らない、そういう仕組みになっているわけであります。
所轄庁が、所轄しておる宗教法人について何も知らない、休眠状態であってもわからない場合があるなどということは、国民にとっても大きな驚きであると言わなければなりません。所轄庁が認証して宗教法人となった後も、せめて必要な状況の把握ができないと、所轄庁としての責任を果たすことはできないと考えられます。この点についての法律案の内容について、文部大臣からさらなる説明をしていただくとともに、それが宗教法人の宗教活動を制約したり、信教の自由を侵すものではないという点について、文部大臣の見解をしかと承りたいのであります。
第三に、情報の開示であります。
宗教法人の宗教活動の自治に対しては、行政は介入すべきでないことは当然であり、現行宗教法人法において宗教法人の自主性が尊重されておるのであります。しかし、このような宗教活動の自治は、一方で、法人活動のすべての面がいわゆる聖域であるかのような誤解を生じさせ、国民の間に一部宗教法人に対する不信感を招いていることも事実であり、まことに残念なことであると言わざるを得ません。やはり法人の財務・会計等の側面については、民主的運営や透明性を高めるという社会一般の常識を取り入れることが重要であると考えます。
個人の尊重や価値観の多様化が進んだ現代において宗教の果たす役割は大きく、宗教法人の担うべき社会的責任は重いのであります。したがって、せめて信者や一定の関係者に対しては、宗教法人がこのような社会的責任を果たしておることを積極的に示していくことも必要であると考えます。このため、宗教法人の財務関係書類等について信者等に開示することは、信者等の利便を図るのみならず、宗教法人の自治能力を一層育てていく上でも重要なものと考えますが、この点について文部大臣のお考えを承りたいと思いますし、また、悪質な情報開示要求にどのように対応されるのか、お伺いいたします。
第四に、宗教法人に対し、一定の条件のもとに報告を求め、質問をすることができる旨の改正点についてであります。
現行法では、宗教法人が著しく公共の福祉に反するような行動に出た場合などに、所轄庁は裁判所に対して解散命令を請求する権限が認められております。しかし、その権限を適切に行使するためには、まず実態を把握することが必要でありますが、その実態把握のための権限、手続については何ら現行法には規定が定められていないのであります。今回のオウム真理教の場合も、所轄庁である東京都は、解散命令の請求に当たって、必要な基礎資料はすべて検察官に頼らざるを得ないという事態に直面したのであります。
このようなことは全く法律の不備と言うほかはなく、現行法のままで放置すれば所轄庁の権限を適正に行使することが不可能となり、また、場合によっては、適正な手続が規定されていないことによって、所轄庁の恣意的な判断により権限を行使してしまう危険性もなきにしもあらずであります。
今回の制度改正で、所轄庁が、解散命令請求に当たるかどうかなどの実態を把握するために、宗教法人審議会に諮った上で、宗教法人に報告を求めたり質問をしたりすることができるようにするということは、最低限必要なことであると考えるものであります。この改正点についての大臣の御所見を承り、また、宗教活動自体には立ち入ることがないという点も明らかにしていただきたいのであります。
最後に、今回の法改正については、特定の宗教団体を念頭に置いた対策のためであるとの声が一部に聞かれます。しかし、このような指摘は全くの的外れであり、国民の宗教法人のあり方に対する批判の目をそらすものだと考えます。(拍手)宗教法人法はすべての宗教法人を対象とするものであり、特定の宗教法人を対象としたものではないことは明らかなのでありますが、この点について文部大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/12
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013・村山富市
○内閣総理大臣(村山富市君) 松永議員の質問にお答えする前に、御質問の中にもございましたが、坂本弁護士一家やあるいはまた松本サリン事件、東京の地下鉄サリン事件等で亡くなられた方々に対して、心からその冥福をお祈り申し上げたいと思いますとともに、負傷された方々や遺族の方々に対して、心からお見舞いを申し上げたいと思います。
そこで、御質問にお答え申し上げたいと思いまするが、宗教法人制度の見直しについてのお尋ねでありますが、現行宗教法人法は、宗教団体に法人格を与えることを目的とし、憲法に定められた信教の自由と政教分離の原則にのっとり、宗教団体の自由と自主性、責任と公共性という二つの要請を基本としてその体系が組み立てられておりますが、このような宗教法人制度の基本は維持しなければならないものと考えております。
しかしながら、現行の宗教法人法が昭和二十六年に制定されて以来、社会の状況や宗教法人の実態の変化によって実情に合わない面が生じており、国民からも、その見直しを図るべきなどの声が高まっておるところでございます。このため、政府の責任において、こうした国民の期待に迅速にこたえ、信教の自由と政教分離の原則を遵守することはもとよりでありますが、宗教法人法について必要最小限の改正を行う必要があると考え、今回、宗教法人法の一部を改正する法律案を提出した次第でございます。
私としては、提出をした法案について速やかに御審議をいただき、ぜひともこの国会で成立をさせていただきたいと心からお願い申し上げます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/13
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014・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) 松永議員の御質問にお答えいたします。
まず、審議会運営についての御質問ですが、宗教法人制度に関する問題は、信教の自由や政教分離の原則にもかかわる問題であり、慎重な検討が必要であります。このため、文部省としては、宗教法人制度に関し、国会等で指摘されている問題点を含めて宗教法人審議会の御意見を伺うこととし、四月二十五日、前文部大臣から審議会に検討を要請いたしました。その際、必ずしも法改正を前提とするものではないが、できる限り幅広く、かつ可能な限り精力的に審議し、早期に考え方を取りまとめてほしい旨述べているところであります。
宗教法人審議会の委員は十五名ですが、このうち十一名は宗教家であり、四名が宗教に関する学識経験者という構成になっております。審議会の会長は、宗教法人法の規定により、委員の互選で選ばれ、審議会を総理することとされており、会議の運営は会長にゆだねられているところであります。
宗教法人審議会においては、文部大臣からの要請を受けて、去る四月二十五日以来二度の審議を行った後、論点の整理を行うための特別委員会を設けることといたしました。この特別委員会は、宗教家が五名、学識経験者が三名の計八名で構成されております。
特別委員会では、所轄のあり方、情報開示のあり方、活動状況の把握のあり方の三点を優先課題とし、論点をこれらに絞って六月以来夏休み返上で精力的に審議を行ってきましたが、その間において、委員の中から強い反対があって会議が紛糾したというようなこともなく、粛々として議事が進められたのであります。
九月五日には、特別委員会でそれまで六回にわたり審議されてきた内容を整理して審議会総会に報告され、これに基づいて各項目について審議が行われました。この後、さらに二度にわたる特別委員会で検討した結果が九月二十二日の総会に報告されました。この日の総会では、もう一回審議を重ねたいとの意見があり、九月二十九日に再度審議を行った結果、報告がまとめられたものであります。
九月二十九日の総会では、一部の委員が慎重論を繰り返し述べていましたが、かなり時間が経過した時点で、会長が論点は既に出尽くしていると判断し……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/14
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015・土井たか子
○議長(土井たか子君) 静かにしてください。静かに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/15
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016・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君)(続) 会長に一任いただけないかと提案したところ、一部にはなお慎重に審議すべきだという意見もありましたが、大方の委員は一任について異論はなく、会長に一任されたものであります。したがって、最終的に会長一任に反対した委員はごく少数でありました。
会長が文部大臣に報告書を提出した際には、一任に至る経緯にも触れてコメントしており、また談話としても公表をしているのであって、委員の意見は十分考慮されていると考えております。
以上のように、宗教法人審議会の報告は、行政のルールに基づいて妥当かつ慎重に行われたものであり、一部で言われているように、この問題についてもう一度審議会を開催する必要は全くないものと考えております。(拍手)
次に、所轄庁の区分の変更についてのお尋ねですが、御指摘のとおり、都道府県知事が所轄している宗教法人が県域を越えて広域的に活動している場合、その都道府県知事が活動状況を把握することには、オウム真理教の例を見てもわかるとおり無理があります。したがって、他の公益法人と同様、複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とすることといたしております。
なお、所轄庁が都道府県知事から文部大臣にかわっても、宗教法人に対する所轄庁の権限の内容は全く同じであり、また、宗教法人は所轄庁がどこかにより活動が制限されるものではなく、自由にどこでも活動できるものであります。所轄庁がどこかを決める基準も、境内建物が複数の都道府県にあるかどうかであり、外形的、客観的にとらえられるものとしております。したがって、所轄庁が宗教活動に対し何ら干渉するものではなく、いわんや信教の自由を侵害するものでは全くありません。(拍手)
次に、所轄庁による情報の把握についての御質問ですが、御指摘のとおり、現行法においては、規則の変更等がない限り、所轄庁には宗教法人の実態を把握する仕組みがないわけであります。そのため、今回の法改正では、宗教法人がその目的に沿って活動していることを所轄庁が継続的に把握し、宗教法人法を適正に運用できるようにしようとするため、宗教法人が備えつけることとされている財務関係等の書類の一部を所轄庁に御提出いただくこととしております。
今回提出していただくこととする書類は、宗教法人の管理運営に関する事項を客観的に記載したものであり、所轄庁が宗教法人法の適正な運用を図る上で必要最小限の情報であります。したがって、このような法改正の目的及び提出義務を課す書類の内容に照らして、これが信教の自由の侵害となるようなものではありません。
次に、信者等への情報の開示についての御質問ですが、このたびの改正案では、信者その他の利害関係人で、宗教法人の事務所備えつけ書類等の閲覧について正当な利益があり、かつ不当な目的によるものでない者から請求があったときは、これを閲覧させなければならないこととしております。これは、信者等の一層の利便を図るとともに、御指摘のとおり、法人の民主的運営と透明性を高め、自治能力の向上を図るためのものであり、先般の宗教法人審議会の報告にも同様のことが指摘されているところであります。
次に、宗教法人に対する報告徴収及び質問についてのお尋ねですが、現行の宗教法人法は、収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求についての所轄庁の権限を規定しております。しかしながら、現行法では、所轄庁がこれらの規定の事由に該当する疑いがあると考える場合でも、これを確認する手段が規定されておりません。このため、今回の法改正では、収益事業の停止命令等の事由に該当する疑いがあると考える場合には、所轄庁は、宗教法人に報告を求め、質問することができるようにしているところであります。
この場合、所轄庁が報告を求め、質問を行うときには、あらかじめ宗教法人審議会の意見を聞いて行うこととしており、宗教団体の信教の自由を妨げることがないよう、適正な手続を踏んで行うよう規定を整備しております。
また、報告を求め、質問をする事項は、これらの規定に該当する事由があるかどうかを確認するために必要なものに限定されております。このため、宗教法人に報告を求め、質問する権限を所轄庁に認めることは、所轄庁が宗教団体の宗教上の行為に介入したり干渉したりするものではなくしたがって信教の自由を侵害するものではありません。
最後に、今回の改正案が特定の宗教団体を念頭に置いた対策ではないことの御確認についてでありますが、御指摘のとおり、宗教法人法はすべての宗教法人を対象とするものであり、特定の宗教団体を念頭に置いたものでは全くないことを、この際、明確に申し上げておきたいと存じます。
このたびの宗教法人制度の見直しは、宗教法人法が昭和二十六年に制定されて以来、社会の状況や宗教法人の活動の実態の変化によって、現行制度には実情に合わない面が生じてきているため、これに対応した必要最小限度の改正を行おうとするものであります。また、世論調査によれば、国民の間にも法改正を求める声が圧倒的であり、このような世論に迅速にこたえていくことが政府の責任であることから改正法案を提出したものであり、特定の宗教団体を対象としたものでないことは、今回の法案をごらんいただければ、どなたにでも御理解がいただけるものと確信しているところであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/16
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017・土井たか子
○議長(土井たか子君) 鳩山邦夫さん。
〔鳩山邦夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/17
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018・鳩山邦夫
○鳩山邦夫君 私は、新進党・民主会議を代表して、ただいま提案理由の説明がありました宗教法人法改正案に対し質問を行います。
およそ、世の中には完全無欠な法律など存在し得ないと思います。したがって、宗教法人法も例外ではありません。もし改正すべき点があるならば、時間をかけて大いにこれを国会で議論していくことに私たちはやぶさかではありません。しかし、宗教法人法のように憲法の最も重要な原則である信教の自由や政教分離と深くかかわっている法律が、政治的な意図や宣伝によってその法律の精神までねじ曲げられてしまうような形で論議されている現状は、まことに憂慮にたえないところがあり、まさに憲法の危機ではないか、そう考えます。(拍手)
まず第一に、一部政党の巧みな宣伝によって広まりつつある宗教法人法についての誤った認識を取り除くことが必要だと思います。
宗教法人法の不備がオウムの犯罪を可能にしたとか、オウムの犯罪をここまで野放しにしてしまったのは宗教法人法が甘かったからだとか、そういった宗教法人法の本質を全く知らないで理解できない、そんな誤った議論が横行いたしております。オウムの野放しは、宗教法人法に原因があるのではなく、政府が刑法や取り締まり法規を正しく適用しなかった、つまり犯罪事実を放置したことに問題があります。(拍手)
現に、宗教法人法には、宗教法人であるからといって何ら特別の保護を与えるような規定は一つもなく、犯罪を犯せば、個人であれ宗教法人であれ、刑法や他の法律によって規制される点については、個人も宗教法人も何の区別もありません。
宗教法人法の任務は信教の自由を保障することであって、犯罪の取り締まりとは何の関係もありません。オウムの犯罪は刑法の任務がなかなか発動されなかったゆえの問題であり、オウム事件を宗教法人法の問題にすりかえることは決して認めるわけにはまいりません。宗教法人法を改正しても、オウム事件あるいは類似事件の再発防止にはほとんど役立たないことは明らかであります。そもそも宗教法人法とはそういう法律ではないわけです。
宗教法人法の改正目的でありますが、総理は「オウム対策のために宗教法人法を改正するつもりではない。これはもう断言しておきます」と答弁されましたね。ところが、自民党の山崎政調会長は、読売新聞の紙上座談会において「再発防止が重点で、それだけと言っても過言ではない」と発言し、法改正はオウム事件の再発防止対策であると明言しています。法改正の目的について、総理と与党の幹部の政策責任者が全く反対のことを言っている。政府と与党でこのような不一致が生じているのは、そもそも法改正の目的が、本当は全く別のところにもくろみを持っているからではないのですか。どうぞ明確に総理の御答弁を求めます。
また、法改正の目的がオウム対策であるかどうか、予算委員会等での御答弁をお聞きしましたが、もう一度お答えをいただきたいと思います。
また、今回の法改正はオウム事件を契機にしたものと説明されていますが、オウムの事件の捜査等の一連の事実経過の中で、宗教法人法が障害になって捜査がうまくできなかった、そういうことがあったのかどうか、総理お答えください。
さらに、昭和二十六年の制定以来の社会の変化等に対応して必要な見直しを行うと説明されていますが、これまで現行の宗教法人法でどのように具体的な不都合があったのか、これも総理からお答えください。私の答弁はすべて総理からお願いします。文部大臣の答弁は求めません。
戦前、我が国を支配した宗教法制は、徹底した国家による宗教の保護と監督、すなわちサポートとコントロールをその基底に置くものでありました。一方、新憲法は、無条件の信教の自由を保障するとともに、これを実質的なものとするため、国及びその機関が宗教に介入しまたは関与することを排除するという趣旨の政教分離の原則を定めたのであります。
そして、宗教法人法における所轄庁は民法上の社団や財団法人に対する主務官庁のような管理監督権を一切有しないところに、際立った特徴が認められています。これは、憲法の政教分離の原則、すなわち国家権力は宗教に介入しまたは関与しないとする厳粛な原則に由来するものであることは言うまでもありません。にもかかわらず、宗教法人に報告を義務づけたり、所轄庁に質問権を認めたりすることは、信教の自由という憲法の大原則に反するのではありませんか。総理の見解を求めます。
また、総理は、今回の法改正について「政争の具とする意図は全くない」とおっしゃっていますが、一方、自民党の亀井組織広報本部長は、テレビ番組で公然と、「改正法のねらいは新進党対策だ、選挙対策だ」、こういう暴論を吐いています。また、特定の宗教団体と新進党をターゲットにして、もう一〇〇%というか一二〇%絶対にあり得ない事実関係をでっち上げて、デマ発言を続けているのでございます。そういうデマ宣伝に対しましては、新進党は本日、海部党首名で告訴の手続をとりましたことを御報告いたします。(拍手)
そうやって、選挙対策等、国民をあくまでだまし切ろうとしているのが民主主義でありましょうか。自由民主党という、民主をつけている政党ならば、そういうことはやめるべきだ。反省を求めます。
政府首脳、通産大臣にもお尋ねをいたしますが、一議員の発言だから政府は関係ない、党の正式な見解ではないなどというような責任逃れはできないと思います。現に亀井さんの名前での公式文書も出ておりますから、総理、そして自民党総裁である橋本通産大臣は、与党幹部が法改正を政争の具としている実態、選挙対策だ、新進党対策だ、そういう事態をどう受けとめられるのか、率直にお答えください。
今回の宗教法人審議会の最終報告は、委員の合意に基づいたものではないと断言したいと思います。
去る十月十七日、二十五日の両日、文部大臣に、審議会の約半数に当たる七名の委員から、審議会の手続のあり方に疑問があると審議会再開の申し入れ書が提出されました。これに対して文部大臣は、大方の意見も出尽くし、ごく一部を除いては会長一任に賛成し、会長がその報告をまとめたとしておられますが、その委員の申し入れ書によれば、大方の委員が、いいですか、逆に、大方の委員が慎重審議を重ねるよう求めたにもかかわらず、その意見が全く無視され、文化庁の事務当局案とほぼ同様の報告がまとめられたと、全く逆の主張をしているではありませんか。これは審議会としてはまことに異例で、前代来聞の報告書であると断ぜざるを得ません。(拍手)
我々は、決して宗教法人法見直し論議を避ける気はありません。静かな環境の中でとことんまでじっくりと時間をかけて議論をすべきであります。当初は二、三年かけて論議するとのことでもありました。しかしながら、政党の御都合主義により、自民党は、七月の参議院選挙の大敗北と次期総選挙への危機感から、今度は一転して法改正を急ぐよう文部省に圧力をかけてきました。こんな状態で改正案を提出させていいんでありましょうか。
我々は、議院運営委員会や予算委員会の場で、審議会の実態を明らかにすべきだと主張してまいりました。約半数もの委員から審議会再開が要求され、それを受け、我々は議事録の公開を求めたのであります。にもかかわらず、政府は、審議会の議事録は非公開を前提としていると強弁していますが、公開されれば何か非常に都合の悪いことでもあるのでしょうか。総理、若干推測も含んで結構ですからお答えください。九月二十九日の「審議会等の透明化、見直し等について」の閣議決定にも反しているのではないでしょうか。この点についても総理にお伺いをいたします。
政府は、十月十七日に今回の法改正案を閣議決定していますが、通常の法案手続をとらずに、事前の事務次官会議にも諮られておりません。なぜ政府・与党はこれほどまでに性急に宗教法人法改正を急ぐのでありましょうか。何か裏に政治的な意図が隠されているのでしょうか。その経過内容を御説明いただきたい。明快な答弁を求めるものでございます。
今回の改正案で、宗教法人に対しては、いわば情報公開、情報開示を求めておきながら、宗教法人審議会の議事録については公開するのは嫌だといってこれを公開しないのは全く理解できない。「まず隗より始めよ」という言葉があるでしょう。人にこうしろと言うんだったら、自分が先にやるべきなんです。宗教法人に情報開示を求めるならば、自分たちが議事録を明らかにすることが先だと私は思います。(拍手、発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/18
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019・土井たか子
○議長(土井たか子君) 静かにお願いします。静かにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/19
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020・鳩山邦夫
○鳩山邦夫君(続) さて、オウム真理教の一連の事件を通じ、国民は政治に対し今何を求めているのか。それは、オウムのような特殊テロ組織が再び発生し、無差別殺人等のテロ犯罪を繰り返すことのないよう再発防止策を講ずることであります。そのために、まずオウム事件についてあらゆる観点から総合的な検証を徹底して行う必要があり、よって、早急に専門家等によるオウム事件検証のための調査検証機関を設置すべきであります。さらに、特別立法や現行法改正を含むオウム事件再発防止のための実効ある諸施策を一日も早く実施すべきであると考えますが、政府の具体的な対応について総理の見解を伺います。
村山総理は、オウム真理教に対する破防法の適用について当初は慎重な姿勢を見せておられましたが、法務省・公安調査庁から解散請求に向けての証拠が固まった旨の報告を受け、九月二十七日には、政治判断することではないとお述べになったのです。ところが十月三日には、態度を一変して、法務当局に対し慎重に対応するように指示する。またかわって十月五日には、政治判断を加える考えのないことを表明される。十月十一日には、弁明手続開始決定の前に行政上の指示を行うかのような発言をするに至りました。
なぜ、このように破防法に関しては、総理の御発言というのはくるくる猫の目のように変わるのでありますか。真意はどこにあるのか、明確な答弁を求めます。
公安調査庁において十分な証拠固めを終えて、後は法律の規定にのっとって手続を進めようという段階に至って、総理は一体どのような指示を出そうというのですか。具体的な答弁を求めます。
マスコミがいろいろ批判するから、あるいは社会党が反対だからといった理由で、総理がオウム真理教に対する破防法の適用に消極的になったとすれば、あなたが常々口にする、国民世論に的確に対応する、そんな政治をやるとおっしゃっているのは全くうそで、あなたが気にしているのはマスコミと社会党だけだということが明確になると思います。
昨日、東京地方裁判所がオウム真理教の解散命令を決定いたしました。これは、所轄庁である東京都と検察官からの申し立てに基づく、宗教法人法による宗教法人としての解散を命じたものでございます。ですから、この決定により行われるのは、あくまでも宗教法人の解散であって、世にも危険きわまりないオウム真理教という任意の宗教団体は、解散が命令されてもこの世に残るわけだ。
現に我が国には十八万四千の宗教法人がありますが、他に約十万の法人ではない宗教団体、任意の宗教団体が存在をしているわけで、オウム真理教を解散すれば、オウム真理教はそのいわゆる任意の宗教団体に変わるだけであります。こういうことであれば、いかに宗教法人法によって法人が解散されたとしても、国民は全く安心できないのであります。
国民にとって安心できる世の中を回復するためにはオウム真理教を根絶する必要があり、そのためには、総理、破防法をきちんと適用することなんです。破防法によってオウム真理教を徹底して取り締まることを国民は大いに期待しているのでございます。(拍手)
総理、あなたは、破防法は合憲であると明言されているのですから、法の定める手続に従うべきであり、それが国民の安全を預かる危機管理の最高責任者としてとるべき道であると思いますが、見解をお伺いしたいと思います。
最後に、オウム問題に対する政府の対応の甘さ、新進党の主張する破防法適用問題から目をそらさせるために宗教法人法改正を持ち出し、日本全国のすべての宗教団体を、いわば信教の自由とか政教分離というような点で、そういうすべての宗教団体を危機に陥れるような、そんな政府・与党の政治姿勢に私は警鐘を乱打したい。
本来ならば、いいですか、きょうは特別委員会が設置されましたよ。我々は反対しましたが、特別委員会が設置されました。しかし、本来ならば、オウム根絶、類似事件の未然防止のための特別委員会こそ設置すべきだったんではありませんか。(拍手)それを、オウム根絶のための特別委員会をつくるべきところを、これを宗教法人法の改正のための特別委員会にすりかえるというのは、もうあきれて物が言えません。
真に国民の安全と安心を確立しようとするなら、今一体何をすべきか、政府・与党の反省を促して私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/20
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021・村山富市
○内閣総理大臣(村山富市君) 鳩山議員の質問にお答えをいたします。
宗教法人法改正の目的についてのお尋ねでありますが、このたびの宗教法人法の改正は、オウム真理教事件を契機としつつも、先ほども御答弁申し上げましたが、昭和二十六年、現行法が制定されて以来の社会の変化や宗教法人の実態の変化に対応するため、必要最小限の改正を行うものでございます。
また、今回の法改正がオウム対策かどうかということについての御質問でございますが、宗教法人法は、宗教法人の規制、取り締まりのための法律ではありませんので、オウム真理教事件の再発を宗教法人法の改正のみによって防止することは困難であり、今回の改正もそのようなことを直接的な目的とするものではございません。
ただ、今回提出した改正法案が成立をすれば、宗教法人の管理運営の民主性や透明性が高まり、所轄庁も宗教法人の実態を今よりも把握できることになりますので、宗教法人の不適切な運営の防止に資するものと考えております。(拍手)
次に、オウム事件の捜査の中で、現行宗教法人法が障害になった点があったのかとのお尋ねでありますが、警察においては、捜査対象がいかなる団体であろうとも、法に触れる事案を認知すれば厳正に対処してまいりましたし、今後とも、その姿勢は堅持していくものと承知をいたしております。
次に、宗教法人法の改正の背景についてのお尋ねでありますが、宗教法人法が昭和二十六年に制定されて以降、都市化の進展、家族と地域の変化などの社会状況の変化が見られる、宗教法人の実態も変化しており、制度が実情に合わない面が生じてきておることは、皆さん御案内のとおりであります。
例えば、都道府県にまたがって広域的に活動を展開する宗教法人について、所轄庁である都道府県知事は、他の都道府県での宗教法人の活動に対して適切な対応が困難になっています。また、現行法では、収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求については所轄庁の権限が規定されておりますが、今回のオウム真理教事件でも明らかになったように、そのような事由に該当する疑いがある場合でも、所轄庁が実態を把握するための手段が規定されておりません。このような問題に対処するため、今回の法改正では必要最小限の改正を行うものでございます。(拍手)
次に、宗教法人法改正が信教の自由等を侵すことにつながらないのかとのお尋ねでありますが、政府といたしましては、宗教法人審議会の報告を尊重し、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、宗教法人制度の適正な運用を確保するため、宗教法人法について必要最小限の改正を早急に行う必要があると考え、法案を提出したものでございまして、御指摘のような信教の自由や基本的人権を侵すことにはつながらないものであると考えております。
次に、亀井議員の発言についてお尋ねでございましたが、亀井議員は、政治家としての自身の見識に基づいて発言されたものでございまして、私が云々すべき筋合いのものではございません。ただ、この改正案は、特定の宗教団体や政党を対象にすることを意図したものてはございません。
次に、宗教法人審議会の議事録公開についてのお尋ねでありますが、同審議会は、これまで中立公正な発言を確保するとの観点から非公開を前提に審議が進められてきた経緯がございます。今回の審議に関する議事録を公開することは、宗教法人のプライバシーの保護や委員との信頼関係の点からも適当でないと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。(拍手)
また、九月二十九日の閣議決定との関係でありますが、この閣議決定は、行政における政策形成の透明性の確保等を図ることを主眼としたものであります。このため、行政処分、不服審査等を審議する審議会は適用対象から除くことにいたしております。宗教法人審議会の所掌事務の中核は、行政処分である認証や不服審査等の調査審議であります。それらに関連をして、制度問題について取り扱うことができることになっておりますが、この場合におきましても、個々の宗教法人の事例に触れることがあることなどから、宗教法人審議会は審議会全体として適用の対象外とされたものでございます。
次に、宗教法人法改正案の閣議決定に至る経過内容と法改正を急ぐ理由についてのお尋ねでありますが、法案の政府案の決定に当たりましては、与党の調整を踏まえて可及的速やかに閣議決定を行うこととしているところでございます。
今回の宗教法人法改正案につきましては、十月十六日正午の事務次官会議等で趣旨及び内容の事前了解を得た上で、同日午後の与党の了承を得て、速やかに翌十七日の定例閣議において閣議決定を行うとともに、閣議後最初の事務次官会議で報告したものであり、手続上何ら問題はないと考えております。
また、本法案につきましては、多くの国民が宗教法人法の改正を求めており、このような国民の期待に迅速にこたえることが政府の使命であると考えておりますので、国会に提出をした次第でございます。(拍手)
次に、オウムのような特殊な組織によるテロ犯罪の再発防止策についてのお尋ねでありますが、オウム事件につきましては、今なお捜査当局において徹底した捜査が行われております。また同時に、関係機関において、この種事案の再発防止のための分析、対策の検討が進められております。政府としては、今回のオウム事件を踏まえ、警察等において、平素からテロ行為を行うおそれのある集団に関する的確な情報収集を行うとともに、関係省庁において、関係法令を活用し、銃器や大量殺りく用兵器として使用される可能性のある物質等の規制を強化し、武器等の根絶に努め、国民の安全の確保に万全を期してまいる所存でございます。
次に、破防法の適用についての私の言動についてお尋ねがございました。
オウム真理教が引き起こした一連の事件につきましては、犯罪史上類例を見ない極めて凶悪な犯罪であり、こうした事件を再び許すようなことは絶対にあってはならないものでございます。昨日も、東京地裁において宗教法人法に基づくオウム真理教に対する解散命令が出されましたが、今後この決定が確定されれば大きな意義があるものと考えております。
破防法の適用につきましては、国民の基本的人権に重大な関係を有し、その適用は法と証拠に基づきまして厳正かつ慎重になされるべきものでございます。また、この手続は準司法的な手続としての色彩が強いものでありますが、破防法所定の団体規制の請求が一つの行政処分である以上、その適用に当たっては、総理大臣にも行政の長としての責任があるものと考えております。
以上申し上げました私の見解は、終始一貫をして申し述べておるところでございまして、何らの変更を来したものではございません。(拍手)
次に、公安調査庁が破防法適用に向けての手続を進める段階で具体的にどのような指示を出すのかとのお尋ねであります。
破防法の適用の可否につきましては、あくまでも、先ほども申し上げましたが、法と証拠に基づいて法律的に判断されるべきものであり、その上に政治的な判断を加えるべきものではないと考えておりますが、この問題は国民の基本的人権にも重大なかかわりを持つものでございますだけに、法務当局に対しましては、その法的判断を誤ることのないように厳正かつ慎重に対処するよう意見を伝えております。そして、今後ともこの考え方で臨むつもりでございます。
次に、破防法の適用については、法と証拠に基づき、破防法所定の団体規制の適用要件に合致するか否かを厳正かつ慎重に判断すべきでございます。特に、法が団体規制の要件としている将来への危険性については、御指摘のような国の危機管理、国民の安全確保という観点から、これらについての判断は重要であると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/21
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022・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 鳩山議員からの御質問にお答えを申し上げます。
私は、亀井議員は、宗教法人法改正の必要性、政教分離の問題について亀井議員としてのみずからの信念に基づき、御自分の議論を展開されたと考えております。そして、いずれにしても、このような問題を二度と起こしてはならないという国民の願いの中に、この宗教法人法の改正問題も浮上してまいりました。
私は、この問題について、あらゆる問題を含めて国会の場で広く議論を深めていただくことが大切だと考えております。(拍手、発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/22
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023・土井たか子
○議長(土井たか子君) 静かにしてください。(発言する者あり)静かにしてください。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/23
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024・土井たか子
○議長(土井たか子君) 山原健二郎さん。
〔議長退席、副議長着席〕
〔山原健二郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/24
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025・山原健二郎
○山原健二郎君 日本共産党は、信教の自由と政教分離の原則を現在も将来にわたっても一貫して堅持することを党の綱領に明記している政党であります。私は、この立場から日本共産党を代表しまして、宗教法人法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
オウム真理教による、天人ともに許さざる未曾有の残虐かつ極悪非道の犯罪事件が繰り返されました。オウムと毅然として闘った坂本弁護士一家は、国民の願いもむなしくついに帰らぬ人となったのであります。御遺族並びに関係者の無念は察するに余りあります。この壇上をかりまして、オウム犯罪の犠牲となったすべての方々に対しまして、謹んで哀悼の意をささげるものであります。
このような事件の再発を断じて許してはなりません。まず、この点に関して総理大臣のかたい決意を伺うものであります。
この問題でまず問われるのは、行政機関並びに警察などの対応が一体どうであったかということであります。
一連のオウム事件の原点ともいえる坂本一家拉致殺人事件に対して、警察当局はつい最近まで坂本一家失踪事件として対応してまいりました。初動捜査のおくれから、遺体発見まで六年もの長い年月を費やしたのであります。去る十月二十二日の合同葬儀には二万六千人の人が会葬されたと報じられましたが、国民の悲しみと怒りがいかに深いかを如実に物語っています。
坂本都子夫人のお父さんの大山友之さんは、なぜこれが失踪事件として扱われたのか、なぜ六年もの歳月を必要としたのか、この疑問が解明されることを強く期待すると述べておるのであります。このことを予算委員会で取り上げた我が党の松本議員の質問に対しまして、野坂官房長官は、申しわけないと答弁されたのでありますが、この問題での総理自身の率直な見解を求めるものであります。
坂本事件に対して警察が素早い対応を行っていたならばサリン事件など未然に防げたはずであり、また、当初から社会的に大きな問題を抱えたオウムのような集団を宗教法人として認証しなかったら、あるいは初期の段階で認証取り消しを行っていたら、今日の事態にならなかったのではないかというのも、国民の率直な疑念であります。こうした警察当局や行政の対応のおくれ、問題点について総理の見解を伺うとともに、今後の厳正なる対処を求めるものであります。
宗教法人を隠れみのにしたオウム真理教の凶悪事件は、こうした警察や行政の怠慢を明らかにするとともに、現行宗教法人法の矛盾、不合理を浮き彫りにしました。憲法で保障された信教の自由と政治と宗教の分離という大原則を守りながら、こうした現実に即して宗教法人法を改定することは、国民の圧倒的多数の声であります。国会は、国民と宗教者の合意を得ながら冷静に審議を行い、国民の願いにこたえるべきであります。この基本的態度について、総理並びに文部大臣の見解を求めるものであります。
続いて、宗教法人法の基本的性格について伺います。
宗教法人法の基本的性格について、これをノーサポート・ノーコントロールだという論を展開している党があります。
しかし、第一に、宗教法人法は、憲法が保障する信教の自由と政教分離を前提として宗教団体に法人格を与え、これを公益法人並みに扱い、税の軽減措置などの社会的権利を与えているのであります。この点では、サポートすなわち支援を規定しているものであります。
第二に、そういう権利に伴う宗教法人側の責任として、財産目録の作成、事業収益の使途の制限などを規定し、その社会的責任を保障するための所轄庁の権限として、収益事業の停止命令、認証の取り消し、法人解散請求などを定めているものであります。認証さえ受ければ宗教法人は何をやっても自由というものではなく、社会的に守るべき一定の規範、この限りではコントロールという側面も定められているのであります。
ノーサポート・ノーコントロールという議論は、こうした法律の基本を曲解したものと言わざるを得ませんが、総理並びに文部大臣の明快な説明を求めます。
次に、今回の宗教法人法の一部を改正する法律案の内容について伺います。
法案は、複数の都道府県で宗教活動を行う法人の所轄庁を文部大臣に改めるとしています。
この宗教法人法が制定された当時は、単立の宗教法人が他の都道府県で活動することは想定されていませんでした。ところが、オウム真理教の場合に典型的にあらわれたように、都知事認証でありながら主たる活動拠点を山梨、静岡、熊本などに置いたため、山梨の住民が東京都に対してオウムの認証取り消しを求めましても、都内ではトラブルが起きていない、山梨のことはわからないといって取り合わなかったという事実さえ生まれたのであります。
所轄庁が宗教法人の必要最小限の活動状況を把握できなければ、法律に定められた所轄庁としての本来の責任を果たせないのは明白であります。こうした不合理を正す意味でも、複数の都道府県にまたがって活動を行う宗教法人の所轄を国に移すことは当然と考えます。
現行法でも、包括宗教法人である三百七十三法人が文部大臣の所轄になっています。これらの団体から、それゆえに国家統制により信教の自由が侵害されているという苦情がこれまであったのか。あったとすれば、その件数、理由などについて明らかにするとともに、資料の提出を求めるものであります。
また、現在、複数の都道府県で宗教活動を行い、文部大臣所轄となっていない宗教法人はどれだけあり、その代表例を都知事認証の団体で規模の大きい順に示していただきたい。文部大臣に答弁を求めるものであります。(拍手)
次に、信者等に対する閲覧による情報開示についてでありますが、宗教法人が公益法人並みに位置づけられ、税制上の優遇を受けている以上、一定の範囲での財務・会計の透明性確保は当然と言わなければなりません。(拍手)とりわけ宗教法人が信者らの献金、寄附などによって維持されていることを考えれば、それらの書類を信者らが閲覧できるようにすることは当然であり、宗教法人の公正な運営の確保にもつながるものではないでしょうか。
また、オウム真理教の場合、一千億円の財産を持っていると言われながらも、その使途などが全く不明で、結局はサリンの製造や武器などの製造開発に使われていました。所轄庁が少なくともこれら財務・会計書類を定期的に把握できるようにすることも、また当然のことであります。
さらに、収益事業の停止、認証の取り消し、解散命令の請求に該当する疑いがあるとき、その宗教法人に対して、業務または事業の管理運営について報告を求めるとともに、代表役員などに質問することができるようにしていることも、国民の目から見て当然のことと思います。(拍手)
国民の中には、オウムの問題にとどまらず、宗教と政治の問題についての大きな疑惑と不安があります句とりわけ政党と宗教団体の癒着の問題は、我が国の自由と民主主義の発展にとってゆるがせにできない重大問題であります。
政党と宗教団体が互いに癒着し利用し合う、そのあしき関係の問題の一番最近のあらわれとして、宗教法人法改正をめぐって田沢前法務大臣と新進党の質問者の間で、大臣がこの法案に反対する立場をとっていることを理由に、宗教団体からの二億円やみ融資問題に関する質問を取り下げるという事実上の裏取引が行われた疑惑、すなわち国会の審議権がじゅうりんされた疑惑は、放置するわけにはまいりません。
一方で特定の宗教団体から二億円の融資を受け、それをもみ消すために質問項目削除を要請し、一方は他の宗教団体の意を体して質問削除したというものであれば、まさに宗教と政治の醜悪な関係そのものではありませんか。
総理は、双方が否定しているからもう追及してもしょうがないなどと、疑惑にふたをするという態度をとり続けました。この疑惑には幾つかの明白な根拠があります。総理、宗教と政治の関係にもかかわるこの疑惑に対しまして、真相解明のための積極的な対応をすべきであると思いますが、いかがですか。
宗教者や宗教団体がみずからの宗教的良心や信条に基づいて政治的社会的活動に参加するのは当然であります。しかし、宗教団体が団体として丸ごと特定の政党や政治家を支援することになると、それはその成員の政治的信条や政治活動の自由を踏みにじることになるばかりか、宗教を政治の道具に変えてしまうことにさえなると断ぜざるを得ません。(拍手)
田沢前法務大臣に巨額のやみ融資を行った宗教団体だけでなく、少なくない宗教団体が選挙の際に団体として特定政党、特定候補者を推しています。村山内閣の多くの閣僚もこういう形で宗教団体の推薦を受けている者がおります。この問題は是正すべきものと考えませんか。また、現在の日本の有力な野党が巨大な宗教団体の組織ぐるみの応援を受けていることを問題だとお考えになりませんか。(拍手)総理の見解を求めるものであります。
ことしの参議院選挙では、特定宗教団体の依頼で、安田火災や日動火災など損保業界が挙げての特定政党の票集めをしていたことが判明しております。これは、特定候補者を当選させるために直接的利害関係を利用して有権者や選挙運動者を動かした場合、利害関係利用誘導罪に当たるとした公職選挙法に抵触する疑いが持たれているのであります。
この宗教団体は、特定政党を支持し活動するために、選挙が近づくと、ほとんど政治団体と化し、宗教施設を選挙活動に使い、信者を動員しているのであります。その団体は、一度は政教分離を国民に約束しながら、教義を広めるためには政治の力が必要と、まさに政教一体の活動を強めているのであります。政党が宗教団体を選挙で利用し、一方、宗教団体は教団の利益を守るために政党を利用する、こういう政教一体の関係そのものが政教分離の民主主義的原則に反するものではありませんか。(拍手)こういう宗教法人の活動が妥当であると考えておられますか。総理の明快な見解を求めるものであります。
昨日、オウム真理教に対しまして宗教法人法による解散命令が出されましたが、これは当然のことであり、歓迎するものであります。信教の自由のみならず、思想、信条、集会と結社の自由弾圧法である憲法違反の破防法を絶対に適用することはあってはなりません。
このことを私は強く主張いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/25
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026・村山富市
○内閣総理大臣(村山富市君) 山原議員の質問にお答えを申し上げます。
オウム真理教が起こした事件の再発防止についてのお尋ねでありますが、オウム真理教が引き起こしました一連の事件につきましては、犯罪史上類を見ない極めて凶悪な犯罪であり、こうした事件を再び許すようなことは絶対にあってはならないものと考えております。
オウム事件につきましては、今もなお捜査当局において徹底した捜査が行われております。また同時に、関係機関において、この種事案の再発防止のための分析、対策等の検討が進められております。政府といたしましては、今回のオウム事件を踏まえ、警察等において、平素からテロ行為を行うおそれのある集団に関する的確な情報収集を行うとともに、関係省庁において、関係法令を活用し、銃器や大量殺りく用兵器として使用される可能性のある物質等の規制を強化し、武器等の根絶に努め、国民の安全の確保に万全を期してまいる所存でございます。
次に、坂本弁護士事件につきましては、神奈川県警察において、事件発生直後から、坂本弁護士一家が何らかの犯罪被害に遭っている可能性が極めて高いものと判断をし、百数十名から成る捜査本部を設置の上、広範な捜査を鋭意進めてきたものと報告を受けております。もとより犯罪捜査は、適正な捜査手続により、証拠に基づき、一歩一歩着実に事犯の真相解明を行うものであり、そのような捜査を積み重ねた結果、先般被疑者の検挙に至ったものと承知をいたしております。
しかしながら、一日千秋の思いでお待ちになっておられた御遺族の方々から見れば、まことに長い年月であり、その心情は察するに余りあり、衷心よりお悔やみを申し上げる次第でございます。
次に、オウム事件の問題点として、警察当局や宗教法人の認証取り消しなどの行政の対応のおくれを指摘されたところでありますが、まずオウム真理教関連事件につきましては、警察当局において、事件発生直後から所要の捜査体制のもとで証拠に基づき事実を一つ一つ積み重ねて事犯の真相解明を行ってきたところでございますが、我が国犯罪史上類を見ない凶悪な犯罪であり、かつ、組織的な証拠隠滅がなされたため捜査は困難をきわめ、長期間に及んでいることは御承知のとおりでございます。捜査当局による徹底した捜査は今もなお行われておりますが、今後、今回の捜査の教訓を踏まえ、こうした事犯に対する捜査体制の一層の整備が行われるものと考えております。
次に、宗教法人法の認証取り消しについては、認証後一年以内に限ってなし得るものであり、オウム真理教が認証を受けた平成元年八月から一年以内の時期において、認証時に宗教団体としての要件を欠いていると判明したわけではなかったので、認証の取り消しはなされなかったものと承知をいたしております。
また、厳正なる対処を求めていく私の決意でありますが、今後とも、関係行政機関が緊密な連携のもと、関係法令の規定に従い、厳正かつ適切に所要の措置がとられるよう徹底を期してまいりたいと考えておるところでございます。
次に、法案審議に必要な資料を速やかに提出すべしとの御意見でありますが、宗教法人法の改正は多くの国民の期待するところであり、この法案審議に必要な資料については可能な限り提出をしていく所存でございます。
ただ、宗教法人審議会の議事録につきましては、同審議会は、これまで中立公正な発言を確保するとの観点等から非公開を前提に審議が進められてきたところでございますが、今回の審議に関する議事録を公開することは、そういう意味におきまして、宗教法人のプライバシーの保護や委員との信頼関係の点から適当ではないと考えておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
次に、宗教法人法の基本的性格についての御質問でございますが、宗教法人法は、宗教団体の目的達成に資するため宗教団体に法人格を与えることを目的とするものでございます。そして、法人格を与えられたことに伴い、宗教法人の側としても、宗教法人の公共性に対応した公正な管理運営を確保する責務があると考えられます。そのため、宗教法人の管理運営について法律に所要の規定を置き、その適正を図ることとしているところでございます。
このように、宗教法人法は、所轄庁の認証により宗教団体に法人格を与える一方で、宗教法人の適正な管理運営を図るための所要の規定を置いているところでございます。ノーコントロール・ノーサポートというのがどのような趣旨であるのか必ずしも明確ではありませんが、国として宗教法人に対して全く関与しないという趣旨であるとするならば、宗教法人法はそのようなものではないと考えております。
次に、田沢前法務大臣の件に関する真相解明についてのお尋ねでございますが、本件につきましては、政治に対する疑惑を惹起するようなことがいささかなりともあってはならないとの考えのもとで、これまでも可能な限り事実関係を究明し、その内容を明らかにしてきたところでございます。その結果、御指摘のようないわゆる裏取引と見られる事実はなかったものと認識をいたしております。
なお、田沢前法務大臣からは、このまま閣内にとどまることによって補正予算等の国会審議等に混乱が生ずるようなことを避けたいとして辞表が提出されたものでございますから、これを受理したものでございます。
次に、宗教団体と選挙についてのお尋ねでありますが、一般論として申し上げれば、宗教団体は政治活動を禁止されておらず、政党や候補者を支援することも、公職選挙法の規定に従う限り、行うことができるものと承知をいたしております。
次に、政教分離についてのお尋ねでありますが、憲法の定める政教分離の原則は、信教の自由を実質的なものにするため、国その他の公の機関が公権行使の場面において宗教に介入をし、または関与することを排除する趣旨であって、宗教団体が政治活動をすることを排除する趣旨のものではありません。したがって、特定政党と宗教法人とがお互いに協力する事態があったとしても、そのことだけで政教分離の原則に反するものではないと思います。
なお、宗教法人につきましては、宗教活動を行うことを主たる目的とすることを要件として法人格を取得しているものでございますから、宗教法人が選挙活動を行うことを主たる目的とするようなことは宗教法人法上予定されていないと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣島村宜伸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/26
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027・島村宜伸
○国務大臣(島村宜伸君) 山原議員の御質問にお答えいたします。
まず、法案審議に必要な資料を速やかに提出すべしとの御意見ですが、宗教法人法の改正は多くの国民の期待するところであり、この法案審議に必要な資料については文部省としても可能な限り提供していく所存であります。
ただ、宗教法人審議会の審議については、これまで非公開を前提に審議が進められてきた経緯があります。これは、個々の処分に関する審査についてはもとより、制度に関する審議を行うときでも個別の宗教団体の事例に触れる場合があり、中立公正な発言を確保するため審議を公開しない方が適切と考えられるからであります。今回の審議についても、今申し上げた考え方に立ち、非公開を前提に審議を進めてきた経緯があり、プライバシーの保護や委員との信義の観点から、議事録の全面公開は差し控えたいと考えます。しかしながら、宗教法人審議会の審議状況については、国民の高い関心にこたえるため、これまで、審議会の会議終了の都度、記者クラブヘの説明を行い、情報提供には十分意を用いてきたところであります。御理解を賜りたいと存じます。
次に、宗教法人法の基本的性格はノーコントロール・ノーサポートとする議論についての御質問でございますが、宗教法人法は、宗教団体の目的達成に資するため宗教団体に法人格を与えることを目的とするものであります。そして、法人格を与えられたことに伴い、宗教法人の側としても、宗教法人の公共性に対応した公正な管理運営を確保する責務があると考えられます。そのため、宗教法人の管理運営に関しては責任役員制を設けるとともに、重要事項について信者等に知らせるための公告制度を定めております。また、収盃事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求などの所轄庁の権限が法律に規定されております。
このように、宗教法人法は、所轄庁の認証により宗教団体に法人格を与える一方で、宗教法人の適正な管理運営を図るための所要の規定を置いているところであります。ノーコントロール・ノーサポートということがどのような趣旨であるのか必ずしも明確ではありませんが、この言葉が国として宗教法人に対して全く関与しないという趣旨であるとすれば、宗教法人法はそのようなものではないのであります。
最後に、文部大臣所轄の宗教法人から、文部省所轄ゆえに国家統制により信教の自由が侵害されたという苦情があったか、また、都道府県所轄の法人で複数の都道府県にわたり宗教活動を行う宗教法人の数はどれだけあるか、さらに、東京都知事所轄で代表的な法人名について示せとの御質問でありますが、宗教法人法は憲法の定める信教の自由、政教分離の原則にのっとって制定されており、これに基づく所轄庁の事務の執行もまたこの原則に従って行われることは当然であります。
宗教法人の所轄庁には文部大臣と各都道府県知事がありますが、宗教法人法上両者の権限に違いはありません。したがって、お尋ねのように、文部大臣の所轄する宗教法人が文部大臣所轄ゆえに国家統制を受け、信教の自由を侵害されたという苦情などは聞いたことがありません。
また、都道府県知事所轄で、複数の都道府県にわたり宗教活動を行っている宗教法人の数については、現行法では宗教法人の宗教活動の状況を把握できないため正確な数を申し上げることは困難ですが、他の都道府県に境内建物を備えており、法改正により文部大臣所轄となると見込まれる宗教法人の数は、現時点ではおおよそ数百程度と推測いたしております。
なお、複数の都道府県で宗教活動を行い、文部大臣所轄となっていない法人で、その代表例を都知事認証の団体で規模の大きい順に示せとのお尋ねですが、現在、宗教法人の規模については正確な把握はできておりませんので、お答えできかねることを御理解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/27
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028・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/28
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029・山本有二
○山本有二君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
内閣提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/29
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030・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 山本有二君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/30
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031・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。
—————————————
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内
閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/31
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032・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。大蔵委員長久間章生君。租税特別措置法の一部を改正する法律案及び同
報告書
〔本号末尾に掲載〕
—————————————
〔久間章生君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/32
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033・久間章生
○久間章生君 ただいま議題となりました法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における社会経済情勢にかんがみ、株式市場の活性化の観点から、上場会社等による利益をもってする株式の消却の促進を図るため、上場会社等が株式の利益消却を行った場合のみなし配当について、特例措置を講じようとするものであります。
以下、その主な内容を申し上げます。
まず、上場会社等が利益をもってする株式の消却を行った場合には、その消却された株式に対応する資本の金額のうち消却されなかった株式に対応する部分の金額については、みなし配当課税を行わないこととしております。なお、法人株主については、受取配当として申告することを選択できるものとしております。
次に、公開買い付けによる株式の消却に応じた個人株主が交付を受ける金銭の額のうち資本等の金額に対応する金額を超える部分の金額については、みなし配当課税を行わず、株式の譲渡による所得として課税することとしております。
これらの措置につきましては、この法律の施行の日から平成十一年三月三十一日までの間に、利益をもってする株式の消却を行った場合について適用することとしております。
本案は、去る十月二十五日武村大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、直ちに質疑に入り、同日質疑を終局いたしました。次いで、本日採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/33
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034・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/34
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035・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/35
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036・山本有二
○山本有二君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
尾身幸次君外八名提出、科学技術基本法案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/36
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037・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 山本有二君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/37
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038・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。
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科学技術基本法案(尾身幸次君外八名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/38
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039・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 科学技術基本法案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。科学技術委員長野呂昭彦君。
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科学技術基本法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔野呂昭彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/39
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040・野呂昭彦
○野呂昭彦君 ただいま議題となりました科学技術基本法案につきまして、科学技術委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、資源に乏しく、急速な高齢化を迎える我が国が、経済の国際化の進展の中で、引き続き経済社会の発展と国民福祉の向上を図るとともに、世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献するためには、科学技術水準の向上を図ることが重要であり、このため、科学技術の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとするもので、
第一に、「人文科学のみに係るもの」を除く科学技術を対象としております。
第二に、科学技術の振興は、研究者等の創造性の発揮を旨として、人間の生活、社会及び自然との調和を図りつつ積極的に行われなければならないことを定めるとともに、その振興に当たっての留意事項を定めております。
第三に、科学技術の振興に関する国及び地方公共団体の責務を規定するとともに、その施策の実施に当たっては、国及び地方公共団体が基礎研究の推進に果たすべき役割の重要性、大学における研究の特性に配慮しなければならないことを定めております。
第四に、政府は、科学技術振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術会議の議を経て科学技術基本計画を策定しなければならないこととしております。
第五に、国は、多様な研究開発の均衡のとれた推進、研究者等の確保、研究施設の整備、研究開発に係る情報化の促進・交流の促進・資金の効果的使用、研究開発の成果の公開、民間の努力の助長、国際的な交流の推進、科学技術に関する学習の振興等に必要な施策を講ずるものとしております。
その他、所要の規定を整備しております。
本案は、十月二十七日提出され、昨三十日本委員会に付託されました。
委員会におきましては、本三十一日提出者を代表して尾身幸次君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、質疑終局の後、日本共産党の吉井英勝君から修正案が提出され、採決の結果、修正案は否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/40
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041・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/41
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042・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/42
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043・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113405254X01019951031/43
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