1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月十四日(火曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 吹田 愰君
理事 瓦 力君 理事 浜田 靖一君
理事 町村 信孝君 理事 佐藤 茂樹君
理事 西村 眞悟君 理事 平田 米男君
理事 田口 健二君 理事 前原 誠司君
麻生 太郎君 大野 功統君
金子 一義君 栗原 博久君
中谷 元君 中山 利生君
野田 聖子君 森 喜朗君
渡瀬 憲明君 赤松 正雄君
石井 一君 大石 正光君
長内 順一君 河合 正智君
神田 厚君 北橋 健治君
月原 茂皓君 渡辺浩一郎君
大出 俊君 小林 守君
坂上 富男君 東中 光雄君
山花 貞夫君
出席国務大臣
外 務 大 臣 池田 行彦君
国 務 大 臣
(防衛庁長官) 臼井日出男君
出席政府委員
内閣官房内閣安
全保障室長 三井 康有君
防衛庁長官官房
長 江間 清二君
防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君
防衛庁教育訓練
局長 粟 威之君
防衛庁装備局長 荒井 寿光君
防衛施設庁長官 諸冨 増夫君
防衛施設庁施設
部長 小澤 毅君
外務省北米局長 折田 正樹君
委員外の出席者
安全保障委員会
調査室長 下尾 晃正君
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委員の異動
四月十二日
辞任 補欠選任
河合 正智君 福島 豊君
同日
辞任 補欠選任
福島 豊君 河合 正智君
五月十四日
辞任 補欠選任
平泉 渉君 金子 一義君
森 喜朗君 栗原 博久君
今津 寛君 長内 順一君
米沢 隆君 北橋 健治君
五島 正規君 小林 守君
早川 勝君 坂上 富男君
同日
辞任 補欠選任
金子 一義君 平泉 渉君
栗原 博久君 森 喜朗君
長内 順一君 今津 寛君
北橋 健治君 米沢 隆君
小林 守君 五島 正規君
坂上 富男君 早川 勝君
―――――――――――――
四月十二日
リマ演習区域の指定解除に関する陳情書
(第二二八号)
は本委員会に参考送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第三〇号)
国の安全保障に関する件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/0
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001・吹田愰
○吹田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、防衛庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺浩一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/1
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002・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 私は、新進党の渡辺浩一郎でございます。
先般、四月の半ばにアメリカのクリントン大統領が訪日をされ、そこで日米安全保障に関する共同声明、共同宣言ですか、これを出されておりまして、それに基づいて、政府・与党が日本の安全保障に関していろいろな具体的な措置のための動きを始めたというふうに私はとらえております。
例えば「日米防衛協力のための指針」、通称ガイドラインだとか、あるいはまた日米物品役務相互提供協定、ACSAとか、あるいはまた有事立法、こういったもの一つ一つについて見直しをしていこうという動きがあるというふうに私は見ておりまして、それらが並行して動いている中、お互いの関連は非常に深いと思うのですけれども、私は、きょうそれらを一つ一つ順を追って質問させていただきたいというふうに思っております。
まず、先月の四月十七日に発表いたしました日米安全保障共同宣言についてお伺いいたしたいと思います。
安保の再定義が共同宣言の中でうたい込まれておりますけれども、安保の再定義をしなきゃいけない根拠をまず大所高所から長官にお伺いしたいと思いますが、ひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/2
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003・臼井日出男
○臼井国務大臣 御承知のとおり、冷戦終結後の世界情勢は、残念ながら我がアジア太平洋地域においては極めて不透明な状態が存在をしている、こういう状況には変わりはないわけでございます。
それと同時に、従来から日米安保条約というのは、単に我が国の防衛のためだけに必要であるということだけではなくて、両国関係の中核であり、また我が国の外交関係、多くの外国との外交関係を取り結ぶ基本でもあるということから考えますと、私どもの国の役割、周辺地域への安全と平和のための貢献ということを考えますと、その役割は一層重要になってきている、こういう認識のもとに改めて日米安保条約の再確認をいたしたところでございます。
この再確認をもとに、二十一世紀に向けて新しい日米関係というものをつくり出していくもとにしたい、このように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/3
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004・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 冷戦が終わって、日本を含む極東での安全保障の動きが大分変わってきたというふうに思っておるわけですけれども、そうした中、このクリントン大統領が来られた機会をとらえて、極東における日米の安全保障を強化していかなきゃいけないという認識かなというふうに私はとらえておりますけれども、そうした強化をしていかなきゃいけない理由がもう一つよく見えないと私はとらえておりまして、その辺はどういうふうにお考えなのか、長官にお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/4
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005・折田正樹
○折田政府委員 今防衛庁長官がお話しになりましたけれども、最近の国際情勢というものを見ておりますと、冷戦の終結によりまして、世界的規模の武力紛争が発生する可能性は遠のいたということ、それからアジア太平洋地域においても安全保障情勢の改善へ向けた前向きな動きが見られるということは確かでございますが、他方で、朝鮮半島におきます軍事的緊張は継続しておりますし、依然、不確実な面、不安定な面ということが残っているんだろうというふうに思います。
こういう状況を踏まえまして、最近、日本でもアメリカでもそれぞれの防衛政策の見直しが行われたというのは、委員御承知のとおりでございます。
アメリカにおきましては、冷戦後、前方展開戦力の一定の削減が行われたわけでございますけれども、一九九三年のボトムアップレビュー、それから昨年二月の東アジア戦略報告によりまして、アジア太平洋地域におけるアメリカのコミットメントを引き続き維持するという考え方が示されたわけでございます。これはアメリカの方でございますが、日本の方におきましても、効率的な防衛力の整備を旨とする新防衛計画大綱が策定されたことは、御承知のとおりだろうというふうに思います。
そういう国際情勢の動向、それから、これに対応しました日米双方の防衛政策の見直しを踏まえまして、改めて日米安保体制の重要な役割を日米双方が確認したというのが、今回の橋本総理とクリントン大統領の間で署名された共同宣言の意義であろうというふうに思うわけでございます。
私ども、日米安保体制を堅持し、そして円滑かつ効果的な運用を確保していくことが非常に重要であると考えておりまして、今日の安全保障情勢のもとで日米安保体制の信頼性を向上させていく必要があるのではないか、そして日米間の協力関係をさらに増進していく必要があるのではないかということでございます。
このような認識のもとに、過去一年間、日米両政府間で安全保障分野におきまして緊密な対話を積み重ねてきたわけでございます。その積み重ねの上に今度の日米安全保障共同宣言ができているということでございまして、その日米安保体制の信頼性向上のための措置を一つ一つとっていこうというのが趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/5
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006・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
ちょっと細かいことを伺いますけれども、昨年の十一月に新防衛計画の大綱というのが発表されておりますけれども、これは私の記憶では、たしか昨年の七月にクリントン大統領の訪日を踏まえて新防衛計画の大綱ができ上がる、こういうふうに私ども考えておりましたが、クリントン大統領の訪日がおくれてこれが逆になってしまっているのじゃないか。その辺のことの中で、今回の新防衛計画の大綱と共同宣言との整合性というのはきちっとつかまれているのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/6
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007・折田正樹
○折田政府委員 委員御指摘のように、当初は昨年の十一月にクリントン大統領が来られることになっておりまして、できればそのときに日米安保共同宣言を発出し、時を同じくして、国内で防衛計画大綱の議論が行われていたわけでございます。
私ども、これは、両者は言ってみれば表裏一体のものであるというふうに思っているわけでございますが、残念ながらクリントン大統領の訪日がずれ込んでしまったというのが事実でございますが、アジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で、日米安保条約を中核とする日米同盟関係が、今後ともこれまで同様重要な役割を果たしていくということを確認した今度の日米安保共同宣言というのは、防衛計画大綱の考え方と軌を一にしているものであるというふうに私ども思います。
防衛計画の大綱というのは、日本が日本の防衛政策として策定したものでございます。その日本の防衛政策に基づきましてアメリカ側と交渉した結果できたのが今度の共同宣言でございまして、私ども、軌を一にしているということでございまして、整合性はとれておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/7
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008・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
それでは、その前の十一月の新防衛計画の大綱では、我が国の周辺地域における平和と安全をうたっておりますけれども、共同宣言では少し言葉が変わっていて、アジア太平洋地域の平和と安全というふうに書いてあります。しかし一方、日米安保条約の第六条では、極東における国際平和及び安全というふうに書いてあるわけですね。
この三つ、つまり、我が国の周辺、アジア太平洋地域、そして極東というふうに言葉が違って、多くの人たちが質問されているかと思いますが、この辺の違いが先ほどの整合性の話とちょっと違うのではないかと思いますけれども、この言葉の違いを御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/8
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009・折田正樹
○折田政府委員 安保条約には「極東」という言葉が使われております。安保条約上の極東といいますのは、これまでも政府で御答弁申し上げているとおり、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であって、「この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域」ということで、この区域は、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺地域、韓国、台湾を含むものであることは、今まで申し上げてきているとおりでございます。
今回の日米の共同宣言というのは、安保条約の解釈だとか適用関係に手をつけるものではございません。今まで申し上げたような安保条約の制度、仕組みをもとにして日米間で話し合った結果、今度できたわけでございます。
委員御指摘のように、まず、「アジア太平洋地域」という言葉を使ってございますけれども、これは、今申し上げましたような日米安保条約の目的達成のために、この条約に基づきまして米軍に我が国の施設・区域の使用を認めているということがこの地域におきます米軍のプレゼンスを支えているという事実、そして、日米が安保を基盤として協力関係を維持しているということがアジア太平洋諸国の平和と安定に好ましい影響を与えて、結果として地域全体の安定要因として作用しているという認識を述べているわけでございまして、極東の範囲を広げたとか広げないとかいうことではなくて、現状の安保体制がそのような効果を有するということを述べたものでございます。
それからもう一つ、委員御指摘のように、「日本周辺地域」という言葉も使ってございます。この日本周辺地域というのは、昨年の防衛計画大綱で使われた言葉をそのまま使っているわけでございますけれども、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態の発生し得る日本の周辺というような意味でございまして、そういう意味で使っているということでございます。
若干紛らわしいというのは御指摘のとおりかもしれませんが、そういうような考え方で言葉を使っているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/9
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010・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 そのアジア太平洋という具体的なところは、もう地域としては出ているのでしょうか。例えば、先般、参議院で寺澤議員が同じような質問をされて、たしか首相は、あえて言えば東アジアと大洋州だというふうな答弁をされているやに聞いておりますけれども、防衛庁としては、このアジア太平洋地域というのが具体的な場所としてもう既に頭の中に入っているかどうか、その辺をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/10
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011・折田正樹
○折田政府委員 「アジア太平洋地域」という言葉は、世上いろいろなケースでよく使われると思います。その使われたときの文脈で解釈していく必要があろうかと思います。
今回の共同宣言に使われております「アジア太平洋地域」というのは、先ほど申し上げましたように、言ってみれば、日米安保条約が安定要因として作用している地域ということでございますので、厳密にどこからどこまでというふうに地理的範囲を限定すべき性格のものではないというのが我々の考え方でございます。強いて申し上げますれば、先ほど委員も御指摘のように、基本的には東アジア、太平洋の両地域を念頭には置いておりますが、今申し上げましたように、どこからどこまでということで厳密に線が引けるという性格のものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/11
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012・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。共同宣言についてはこのくらいにさせていただいて、時間もありませんので、次に進めさせていただきます。
次は、「日米防衛協力のための指針」、ガイドライン、これを、私どもの聞いている範囲内では、ことしの秋口までに何とか見直しをしていこうということに承っております。旧の大綱が五十一年にできて、それに基づいて昭和五十三年にガイドラインができているわけですね。つまり、旧の大綱ができて、それに基づいてガイドラインができているのですから、昨年の十一月に新大綱がつくられたわけですから、今回もそれに基づいてガイドラインを見直していこうということだろうと思うのです。
このガイドラインの第三項というのでしょうか、一番最後のところ、つまり、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を持っている場合云々、こういうところだけを見直しをするのか、あるいは新大綱に基づいてガイドラインを全面的に見直しをしていこうという考えなのか、その辺の意向をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/12
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013・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 「日米防衛協力のための指針」につきましては、さきの日米安保共同宣言におきまして、日米間で見直しを開始するということが合意されました。
その見直しの範囲でございますけれども、確かに現在のガイドラインは、一項、二項、三項と分かれておりまして、一項、二項についてはある程度の共同研究が進んだわけでございますけれども、三項については、率直に申し上げまして、研究の面では余り進んでいないというのが現状であります。
そういう現状を踏まえ、かつ、今御質問の中にございましたように、昨年の末に新防衛大綱が決定されたということを踏まえまして、この三項も含めまして、もちろん一項、二項も関係してくると思います、あるいは従来の一項、二項、三項にとどまるのかという問題もございますが、その辺につきましては、今後、まさに米国あるいは関係する省庁とも相談しながら検討してまいりたいと考えております。
なお、時期についての御質問がございましたけれども、これにつきましても、これからどういう範囲でどのような形でやっていくかということを検討する過程で、その日程とかタイミングというものにつきましても議論をしていきたいということで、現時点でいつまでにということを決めているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/13
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014・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 大変大事なガイドラインの見直しですので、これはある程度見通しをつけておきませんと大変ぐあいが悪いと思っております。今の話ですと、全面的な見直しをするのか、一部見直しをするのか、それから、それに伴ってその時期もまだわからないということなのです。
もう一度お伺いしますけれども、本当に部分的な見直しだけなのか、あるいは全面的に、全部徹底的に見直しをするのか、その辺の意思をはっきりと伺いたいと思います、ちょっと確認で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/14
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015・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 日米の首脳間で合意されたことでございますし、かつ、昨年決定された新防衛大綱の中でも、日米安保体制の信頼性の向上のために、日米間のこういった共同研究等について積極的にうたっておりますので、まず、我々としては、このガイドラインの見直しをどういう形で、またその対象をどうするのか、今御質問がございましたように、一部見直しなのか、全面的見直しなのか、それを米側と議論いたしませんと、一方的にこういうことを考えているということを今申し上げる段階にはない。
ただ、できれば早く米側とそういった議論を始めたいと思っておりまして、可能であれば今月中にも米側とそういったような議論を開始していきたい、そういうふうに考えておりまして、全面的といいますか、少なくとも一部の見直しといったような感じではなくて、新しい防衛大綱に基づき、新しい状況を踏まえてガイドラインを見直していきたい、一部の手直しということではないと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/15
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016・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
それでは、どこでその見直しをするかということと、それから、新たにこの見直しのための専門の機関を設けるのかどうか、その辺をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/16
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017・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 現行の指針をつくりましたときは、北米局長、防衛局長等を日本側メンバーとする防衛協力小委員会というものをつくりまして、そこでの研究協議の結果、現在のガイドラインが昭和五十三年につくられたということでございます。
したがいまして、指針の見直しに係る組織につきまして検討しなければならないと考えております。その場合、五十一年から五十三年のその策定経緯と、日米安保協議委員会の構成員がかわっております、そういった構成員とのバランスを踏まえまして、これは米側と協議したいと思っております。外務省とも協議しながらこの新しい検討体制を整備してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/17
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018・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
そのガイドラインの見直しを含めて、日米間の防衛協力の一般的な話としてちょっと御質問をさせていただきます。
今話が出ましたガイドラインの三項で、「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」と書いてありますけれども、この極東の有事ということが大事なことだと思うのです。前から言われていることかもしれませんが、もう一度確認いたします。ここでうたっている、何をもって極東の有事としているのか、具体的な定義があればお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/18
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019・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 御質問の極東有事につきましては、防衛庁といたしましては、明確に定義された概念はないと認識しております。
まず、極東ということにつきまして、先ほど北米局長からも答弁がございましたように、甲という具体的な地域指定があるわけではございません。大まかに言えば考え方はこういうことである、先ほど北米局長から答弁したとおりでございます。
しからば有事とは何かということになるわけでありますが、あえて申し上げれば、我が国周辺地域において限定的な武力紛争が生起するような事態は有事であろうと思いますけれども、それ以外はどうなのかといったような疑問に対しましては、まさに我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合ということでございまして、今それ以上の定義といいますか考え方はございません。
極東の範囲内で起こる有事というものにつきましては、そういう状況を見ながら具体的に判断をするということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/19
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020・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 言葉の定義というのは大変難しいですし、政府としては、極東有事の具体的な例というのをこれからまた新たに検討していくのがろうというふうに私はとらえております。
一方で、今御説明がありました極東有事のときに、日本としては後方支援を行っていくということになるかと思うのですが、その後方支援の具体的なことというのが私どもにはまだはっきりと目に見えてきていないと私はとらえております。政府として、後方支援というのはどういうことを考えているか、ちょっと改めて御質問させていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/20
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021・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 実は、昨日総理から、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれがある場合におきまして、我が国としてとるべき種々の対応について、起こり得るすべてのケースを想定して必要な対応策をあらかじめ具体的に十分検討しておくように、あるいは研究しておくようにという指示がございました。
我が国の安全に重大な影響を与える危機すべてについてということでございますが、当面、例えば在外邦人の救出の問題ですとか、あるいは大量の難民が発生した場合の状況ですとか、あるいは我が国の沿岸の警備に関することですとか、そういったことの関連で当然のことながら現実的には米軍に対する後方支援といったような問題が出てくるわけであります。
後方支援の議論をする前に、ある程度我々取り組んでいきたいと今考えておりますのが、最初に申し上げたその二つ三つでございまして、在日米軍に対する後方支援の問題につきましても、さらにこれから具体的にそのニーズを調べながら、また、憲法の範囲内で検討を進めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/21
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022・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 これから検討だということなので抽象的なお答えでございましたが、ここで具体的なことをちょっと御質問させていただきます。
こういう場合は極東有事の後方支援として扱うかどうかという一つの例として、例えば韓国、朝鮮半島で有事があった場合に、韓国領域内で、米軍の依頼があって、浮遊している機雷を除去するとか、あるいはまた、米海軍が攻撃されているときに、米軍と共同行動をしていた自衛艦は、集団自衛権がないのではないか、相手国をただ見ているだけなのか、この辺を具体的な例としてひとつ御検討していただきたいのですが、そういった具体的な例はもう始めているかどうか、その辺をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/22
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023・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 具体的なケースをいろいろ想定いたしまして、それに対してどういうことがとり得るのか、どういうことをしなければならないのかということをこれからまさに検討を始めようということでございますので、今ここでどういう具体的なことを検討課題に掲げているのかということについてお答えできる状況ではございません。
ただ、今御質問の中にございました機雷の問題でございますけれども、仮に、遺棄、捨てられたと見られる機雷が我が国周辺海域に流れてきた場合、浮遊してきたような場合には、これは、例えば自衛隊法九十九条に基づく機雷の除去ということは可能であろうかと思います。
もう一点の御質問につきましては、これから我々がどういつだ課題を掲げて検討していくのかということにもかかわる話でございますが、具体的な条件その他、今聞いておりまして、私正確には理解できませんでした。
いずれにいたしましても、具体的なケースをこれから一つ一つ考えて検討をしていかなければならないと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/23
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024・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 具体的な例を検討しながら、後方支援の本来のあるべき姿というものをぜひまとめていっていただきたいというふうに思います。これは大変大事なことだと思いますので、ぜひそれはお願いしたいと思います。
そして、これが後方支援に当たるかどうかわからないのですが、一つは、今回のこの法案の中にもありますけれども、情報を収集するということでまた改めて御質問したいのです。
日本は米国から軍事衛星を使った情報を得て、それで共同作業を行っているというふうにとらえておりますけれども、その軍事衛星によります情報を我が国でも独自に持っていってもいいのではないかという動きあるいは考え方があるやに伺っております。
それで、防衛庁としては、今回、この法案によりますと、情報収集を統合幕僚会議の方に一つにまとめるという動きでございますけれども、そうした後、衛星を使った情報収集を日本独自で行っていく考えがあるかどうか。この辺をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/24
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025・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 専守防衛を旨とする我が国の防衛にとりまして、各種情報機能の充実は極めて重要でございます。防衛庁といたしましても、有力な情報収集手段の一つである偵察衛星に従来より関心を有しているところでございます。
しかしながら、現時点で、防衛庁といたしまして、防衛庁独自で偵察衛星を保有するといった構想ないし計画はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/25
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026・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 ならば、他の省庁、例えばどこがあるでしょうか、環境とかあるいは地図をつくるための衛星とかと共同で衛星による情報を確保する、そういった考えは今お持ちでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/26
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027・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 現時点ではそういった構想ないし計画は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/27
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028・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 それでは、次にACSAの方に質問を移らせていただきます。
これは、米軍と自衛隊が共同訓練やあるいはPKO、そしてまた国際的な人道救援活動を行う際に必要な物品や役務を融通し合うというのが基本だろうと思うのですが、ここで言われております共同訓練というのは平時だと思うのですけれども、この辺をもう一度確認したいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/28
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029・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 御案内のとおり、今回の協定では、自衛隊と米軍の相互のニーズを精査いたしまして判断いたしました結果、対象を共同訓練、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動に絞っているところでございます。
それで、本協定は協定の中に有事とか平時とかいったような概念を使用しておりませんけれども、本協定が今御質問にございました共同訓練を含めまして国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動を適用対象とするというものでございますことから、本協定はいわゆる有事における物品・役務の相互提供は想定いたしていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/29
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030・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 今のお話ですと、有事の方の想定は考えていない、ただし平時とも書いてないというお答えだったと思うのですが、よく考えてみれば、有事と平時というのが区別が本当につけられるかどうかということが最大のポイントだろうと思うのですね。このACSAの場合、どちらでもとれるような形での物品あるいは役務の提供ができるようにしてあるのではないかなと私は考えているのですが、もしもそうだとすれば、有事における物品の提供となれば、これは大変大きな問題になるかと思うのです。
その辺で、どうして今回このACSAの中で平時におけるということをちゃんと明記をしなかったのか、その辺をもう一度お伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/30
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031・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 まず一つは、平時、有事という定義自身が実はなかなか難しいわけでございます。
協定をつくるに当たりまして、これは実は七年越しの日米間の交渉の経過があったわけでございますけれども、当初から、日米、自衛隊と米軍の相互のニーズという観点で、共同訓練につきまして物品・役務の相互取り決めができないかというのが議論のスタートでございました。
したがいまして、そもそも自衛隊と米軍の相互のニーズというところからスタートして、その後のいろいろな情勢の変化を踏まえて、PKOを含む国連平和維持活動ですとか人道的な国際救援活動、こういったものもニーズがありそうだということで適用対象にしたということでございまして、意識的に平時とか有事とかという議論を避けたということではございません。
なお、我が国の安全保障に影響を与えるような重要な事態が発生した場合につきまして、国連の諸活動あるいは日米の安保協定の効率的な運用という観点等から、日本政府はこれに適切に対処するということが昨年決定いたしました新防衛大綱に示されております。
したがって、そういう場合における日米間の協力のあり方につきましては、これもまた四月の日米の首脳会議で宣言されましたいわゆる共同宣言の中にも明示されておりますので、そういう観点からの検討は、先ほど申し上げましたようないろいろな場がこれからつくられると思いますけれども、そういうところで検討してまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/31
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032・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 平時と書かなかったことは有事のこともあり得るかなというふうに私はにらんでおるのですが、特に、今御答弁いただきましたように、平時と有事というのが差がつけにくいということになりますと、これは大変大きな問題になるのじゃないかなと私は考えているのです。
日本が出してきた品物が、物品が米軍によって有事のときに使われてしまったということになった場合、これはこのACSAの本来の趣旨に反するのじゃないかというような気がするのです。その辺の歯どめというのがちゃんとあるのかどうか。平時と有事というのが差がないというのであれば、逆に裏を返せば、有事でも物は提供できるという危険性があるのじゃないかなというふうに僕は見るのです。
その辺は、共同訓練とは言っておりますけれども、共同訓練の終わった後、物品によってはそのまま米軍が使っていて、それで米軍が単独での訓練のときにもそれを使われる可能性もあるかと思うのです。その辺の歯どめというのは一体どのように考えていらっしゃるか、お答えいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/32
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033・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 いわゆるACSAは、日米間の物品・役務の相互提供、相互融通ということでございまして、現場の部隊がいろいろな物品・役務についての貸し借りをするということで、結果的に効率的な運用をしていきたいということでございます。
その場合に、現在、この協定では対象を共同訓練、国際平和協力業務あるいは国際的な人道支援といったような業務に限定しているということは、まさに現場の部隊での物品・役務の相互提供に対するニーズが共同訓練から発している、あるいは国際平和協力業務の中で発しているということによって規定されているわけでございまして、共同訓練の中でそういったニーズが発生していないのに物品を提供するということは、協定違反になろうかと思います。
共同訓練のオペレーションの中で、現場の部隊が、ある部品なりあるサービスについて現場で調達が非常に困難というときに提供をする、そのことをもってまさに対象を限定しているということでございますので、例えば部品がなくなった、今部品がない、それで共同訓練が効率的に運用できない、ちょっと部品を貸してよと言って部品をつけたとした、その部品は後で返すわけでございますが、その部品がついた装備品は、もちろん共同訓練が終わった後、別のオペレーションに出るということを妨げるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/33
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034・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 そうすると、部品が共同訓練の終わった後も使われる可能性があるということでございますね。例えば有事のときにもそれは使われる可能性がある。米軍によって戦闘状態に入ったときにも、日本が提供した物品が使われる可能性があるということになるわけですね。
あともう一つは、今、返品の話が出ましたけれども、この協定の中で見ますと、返す時期というのが大変問題だろうと思うのです。細かい話で恐縮ですが、個々のケースでもって物品の返却を検討するのか、あるいはまた、基本的に共同訓練が終わったらその時点できちっと返す、そういうふうにされるのか、その辺をちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/34
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035・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 先ほど部品について、共同訓練が終わった後、ほかのオペレーションに使われる可能性があるということを私申し上げましたが、これは、まさに部品に色をつけて、その部品をまた返せということではございません。原則は貸したものを返す、例えばテントとか、まさに貸したそのテントを返すというのが原則でございますけれども、部品のようなものをまた外して返すということは、考えてみれば合理的ではないわけでございまして、同種、同量のものを返還するというのが次の原則になるわけでございます。
いずれにいたしましても、ついた部品が、その後その装備品のオペレーションで他に出ていくことを妨げるわけではございませんけれども、同時に部品は同種、同等、同量のものを返すというのがこの仕組みでございますので、共同訓練において発生したニーズに対して現場で彼此融通をするという仕組みを御理解いただきたいと思うわけでございます。
そして、返品あるいは返還をする時期でございますけれども、現在我々が考えておりますのは、双方の事務的な効率性の確保という観点から、年度内に一括返還するといったような方向で検討を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/35
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036・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
それでは、もう時間も迫ってまいりましたので、最後に、有事立法についての御質問をさせていただきます。
この有事立法、日本が有事になった場合にどうするかということの法的整備が大変おくれているということは私どもも痛感しておりまして、これを早急に整備をしなければいけないと思っております。政府は、きのう橋本首相が有事立法についての法的な整備を検討することを指示をしたというふうに聞いておりますけれども、私は大変大事なことだろうととらえております。
この中で、まず順を追って御質問いたしますけれども、有事立法につきまして、一応、防衛庁が内閣の安全保障室へ検討の結果を報告をしなければいけないというふうになっておりますけれども、伺うところによりますと、六十三年以降この報告がまだ出ていないというふうに聞いております。これが本当なのか、あるいは防衛庁としての研究の成果をきちっと聞いていらっしゃるのかどうか、その辺のことをお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/36
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037・江間清二
○江間政府委員 有事法制の研究についてのお尋ねでございますが、もう先生御案内のことかと思いますので、詳しくは省略をいたしますけれども、五十二年から開始をいたしました有事法制の研究につきましては、これは三つの分類に分けて研究を進めたわけでございます。
まず第一分類は防衛庁所管の法令に関するもの、それから第二分類ということで他省庁所管の法令というもの、それから第三分類が所管省庁が明確でない事項に関する法令についての研究ということでやっているわけであります。
この第一分類及び第二分類につきましては、それぞれ五十六年あるいは五十九年に取りまとめをいたしまして、国会にも御報告をしたところでございます。第三分類につきましては、現在、内閣安全保障室を中心といたしまして、政府部内で検討を進めているところでございますけれども、防衛庁は、昭和六十二年以降、安全保障室の方に防衛庁における内部検討の状況について御説明をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/37
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038・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 わかりました。
それでは、防衛庁といたしまして、ともかくこの有事法制を早急に検討していただきたいと思います。
これもまた大変な大きな作業だろうと思っておるのですが、今政府としては、多々ある有事法制の中でどこに的を絞って検討していこうというふうにされているのか、もしも方針があればお聞かせ願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/38
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039・臼井日出男
○臼井国務大臣 ただいま有事法制についての御質問がございましたけれども、政府委員の方からお答えいたしましたとおり、この研究というのは、現行法制上不備な事項について問題点を洗い出すということが主でございまして、近い将来これを国会に提出する、こうした立法の準備ではないわけでございます。
今後ともこうした研究というのは当然のことながら必要であると考えておりまして、この研究は、単に研究ということにとどまらず、その結果について法制が整備されることが望ましい、このように考えておりまして、これらの判断につきましては、国会における高度の御判断というものが必要でございます。国会の御論議あるいは国民の世論の動向等も踏まえながら検討すべきものと理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/39
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040・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 それは長官のおっしゃるとおりでございまして、ありとあらゆる日本における有事ですから、これをきちっと法制化しておくことが、ある意味では私ども国民の権利をきちっと守っていく、有事のときでも権限を守っていくことにつながるわけですから、これは大変大事なことだろうと思いますので、ぜひ早急に検討していただきたいと思うのです。
しかし、たくさんあると思うのです。俗な言葉で言えば、信号を守って戦車が進むのかとか、それからトーチカをつくるのに建築基準法を守ってやるのかとか、そういう目ん玉びっくりするようなことを一々やらなければいけないようなことでは、日本の有事というのには対応できないだろうと思うのです。
そういった数あるたくさんの有事対応の中で、これはどこかに的を絞って検討していくべきことではないかなというふうに私は考えております。もう一度お伺いをしますけれども、そういう的を絞っていないのかどうか、その辺をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/40
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041・江間清二
○江間政府委員 有事法制と申しましても、いろいろな分野があろうかと思うわけです。まず、一般論でその点を申し上げますと、我が国有事という場合に必要な法制としましては、自衛隊の行動にかかわる法制でありますとか、あるいは米軍の行動にかかわる法制、さらには、自衛隊あるいは米軍の行動に直接にはかかわらないけれども、国民の生命財産の保護等のための法制というような分野が考えられようかと思います。
先ほど来申し上げています有事法制の研究というのは、このうち自衛隊の行動にかかわる法制というものの研究を進めてきておるわけでございまして、先ほど大臣の方からも御答弁がございましたとおり、この研究はあくまで現行法制上不備な事項について問題点を整理するということでございますので、その意味では、第一分類、第二分類というものについては一応その目的を達しておるということでございます。
したがいまして、あと私どもとして進めていかなければならぬというふうに考えておりますのは、いわゆる第三分類、これは政府全体として取り組むべき性格の問題でございますので、その点について研究を促進していかなければいかぬというふうに認識をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/41
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042・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 たくさんあるその検討の中で、私個人は、まず第一に、日本の周辺で何か有事があった場合に、邦人の救出ということが大きな問題になろうと思っているのです。
これに関して、政府は、今のところ航空機の使用は可能だというふうに聞いておりますが、一方、船舶を使うということに関しては、これは私がちょうど二年前のこの安全保障委員会の中で、船舶の利用は考えられないのかという質問を申し上げたのですけれども、そのときはまだ具体的なニーズを踏まえながら慎重に対応したいという御答弁だったのですね。その後というか今回の有事法制の中で、邦人救出に対して船舶を使っていくということが検討の対象になるかどうか、その辺の判断をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/42
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043・臼井日出男
○臼井国務大臣 自衛隊に在外邦人保護のための輸送の権限を付与するような自衛隊法の改正、第百条の八を追加するに際しまして、邦人の輸送手段につきましては、緊急事態に際して在外邦人の輸送は極めて迅速かつ適切に行う必要があること、緊急事態に際しての在外邦人の輸送のため我が国政府が船舶をチャーターした例がないことといった点を踏まえまして、自衛隊の保有する航空機によることといたしました。船舶は含めないものといたしたところでございます。
今委員御指摘の、在外邦人の輸送の手段として自衛隊の船舶を活用することにつきましては、今後、具体的ニーズ等を踏まえながら検討していくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/43
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044・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 これは常識的に言ったら、船を使うことが当然だろうと私は考えておりますので、ぜひ検討項目の対象にしていただきたいというふうに思います。
それで、有事法制というのは日本有事のときの対応ですから、ともかく国民の権限を有事のときでもきちっと守るということで大変大事なことだろうと思うのです。有事のときに超法規という形で処理をするのではなくて、ふだんから法制化を進めておいて、国民に納得してもらうということが僕は大変大事なことだと思いますし、正直言いますと、ちょっと時期が遅いのじゃないかというぐらいな気がしております。
ですから、具体的なことがこれから出てくればハチの巣をつついたような大騒ぎになるかもしれませんけれども、私は、これを実務的なレベルでもって早急に検討して、また私どもにその内容をお示しいただきたいというふうに思っております。
ある意味では、極東の有事よりも日本の有事の方の法整備をすることの方が私は先だろうというふうに思っています。もちろん、それは極東有事の場合も、それから日本有事の場合も、これは全部関連をすることでありますけれども、順序からいえば、日本の有事の方を先に検討して、その後、極東の有事のあり方というのを検討してもいいのではないかというふうに私は個人的には思っておるのです、それぐらい大事なことですので。しかし、現実には日本の有事が大変おくれているということに対して、早急に細かい点の詰めをしていただきたいというふうに要望いたします。
もうほとんど時間がないので、そろそろ終わらせていただきますが、最後に一つ。今までの日米安保に対する動きとちょっと離れますけれども、先般、長官がロシアに行かれたということでございます。私から申し上げれば、大変有意義な訪問だろうというふうに考えておりまして、私は大変これを是としております。
そうした中で、報道によれば、防衛庁としては、相互の艦艇の交流ということもしたり、いろいろ次のステップをお考えのようでございますけれども、一つは、米国とロシアがちょうど一九九四年に、これはウラジオストクですか、その周辺水域で共同訓練というのですか、自然災害時の人命救助ということを念頭に置いた訓練をやっておりまして、次の年には同じような趣旨でハワイ沖のパールハーバーの周辺水域でやっているということでございます。
同じように、順序はあるでしょうけれども、我が国とロシアが、極東、ウラジオストクが当たるかどうかわかりませんが、そういうところで将来、人命救助という前提ですけれども、そういうことも含めて特に共同訓練を行っていく意思があるかどうか、お考えがあるかどうか、それをお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/44
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045・臼井日出男
○臼井国務大臣 ただいま委員お話しのとおり、先般、防衛庁長官として初めて訪ロをさせていただきまして、グラチョフ国防大臣と会談をさせていただいた次第でございます。
会談におきましては、日ロ間の安全保障分野における対話及び交流の機会を継続、さらに強化をしていく、こういうことを確認をさせていただきまして、双方の信頼感をさらに醸成していくための数多くのいろいろな措置というものの調整を進めていく、こういうことで意見が一致をいたしまして、会議の議事録というものを作成し、署名をし、これを確認させていただいた次第でございます。
この中には、透明性の拡大、これは大規模な演習の実施に関する相互通報や自衛隊及びロシア軍の規模並びに防衛政策上の基本に関する相互通報、また相互交流につきましては、ロシア国防大臣に御訪日の御招待をいたしたわけでございますが、またさらには、部隊間交流、艦艇の相互訪問、また、この機会を利用いたしました海工事故防止のための共同通信訓練等が挙げられているわけでございます。これらの措置を順次日ロ間で調整をしながら実施をしていくことが話し合いの中でもって決まったわけでございます。今後とも、こうした措置を通じまして双方の信頼感の醸成に努めてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
ただいま御指摘のございました訓練等については、まだそういったところまで踏み込んだ合意というものはなされているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/45
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046・渡辺浩一郎
○渡辺(浩)委員 ともかくロシアとの関係も、時間をかけてでも結構ですが、安全保障の面から強化をしていくという方向でぜひやっていただきたいと思います。このことは、ひいては日本の安全保障につながることだろうと思っておりますので、どうぞお願いいたします。
一時間たちましたので、日米安保の問題についての質問をさせていただきましたけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/46
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047・吹田愰
○吹田委員長 次に、東中光雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/47
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048・東中光雄
○東中委員 最初に、五月十一日に沖縄県収用委員会が楚辺通信所についての緊急使用不許可の決定をいたしました。四月一日以降使用権原がなくなって、本来ならば違法だけれども、直ちに違法とは言えないという態度を防衛庁としてはとってこられたと思うのです。緊急使用不許可の決定が出た段階では違法な状態と言わざるを得ないと思うのですが、不許可が出る前と後で、出た状態で、どういうふうに評価をされ、どういうふうにされるのかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/48
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049・臼井日出男
○臼井国務大臣 沖縄県収用委員会は、五月十一日に、楚辺通信所の一部土地に係る緊急使用につきまして不許可の決定をいたしたわけでございます。
私どもは、沖縄県収用委員会に対して、日米安全保障体制の核心である米国の駐留の必要性、我が国及び極東の平和と安全のために極めて重要な役割を果たしているものであり、その楚辺通信所というものは、日米安全保障条約及び地位協定に基づき米軍が使用を認められている施設及び区域であって、我が国はこの土地を引き続き駐留米軍に提供する義務を負っていること、そして駐留軍用地特措法に規定する緊急使用の要件を十分満たすものである、こういうことで十分お話をさせていただいたところでございます。今後、できる限り早期に駐留軍用地特措法に基づく使用権原を得ることが不可欠である、こういうふうに御説明をさせていただきました。また、楚辺通信所における任務あるいは運用、機能、性能に関する具体的な御要求もあったわけでございますので、説明させていただきました。
これらのことを進めまして、その必要性につきましては十二分にお話をしてまいったわけでございますが、今回御理解を得ることができなかったことは極めて残念でございます。今後、当庁といたしましては、関係者の御協力を得まして、公告縦覧を初めとする裁決申請に係る審理等の手続が円滑かつ迅速に行われ、速やかに裁決されるように心から期待をいたしている次第でございます。
あとの点につきましては、政府委員の方からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/49
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050・東中光雄
○東中委員 そんな時間つぶしをやられたらかなわぬです。聞いていることに答えないで、時間だけたつのは困ります。
あの決定理由を見たら、今長官が言われたようなことになってないじゃないですか。四要件がある、そのうちの三要件については全く満たしていないということは、あの理由を見ればはっきり書いています。
現実の使用の緊急性、必要性は主張はしてないし、それ自体疎明もされてない。それから、裁決遅延による使用の遅延という要件が満たされていない。それは防衛庁側の責任による申請の遅延なんだ、裁決の遅延じゃないということまで書いています。それから、著しく支障を来すという状態について具体的な説明は何もしなかった。現場に行っても示しもせぬじゃないか、こういうふうに言っています。これはそれなりの説得力がありますよ。
しかも、これは最終の決定でしょう。だから、緊急使用の許可をもらわなければぐあいの悪い状態が起こるということで申請を出したのでしょう。それの裁決権者から米軍用地特措法に基づく土地収用法百二十三条の要件がないということで却下されたのですよ。それに対してどうするのか。
法治国家ですから、国自身が必要だと思って申請を出して、そして却下された。暫定的に今直ちに違法とは言えないと言っておったけれども、それはだめだということを言われたのですよ。それに対してどうするのかということを言わなければ、これは法治国家としては許されぬことになりますよ。全国的な大新聞でも、社説でそれは返還すべきだということを言っています、当然権原がないのですから、返還するのが筋道ですから。
そのためにどうするかということを言われなきゃいかぬときに、今出している申請をなるべく早いことやってもらいたいなんて、緊急使用の申請が不許可になった、だから本申請の方を早くやってほしいなんて、公告縦覧問題で今読谷村村長が意思表示をしたばかりでしょう。現在の事態について、国民の権利ということについて、実力で防衛庁がそういうふうにやっちゃう、これは全く許されぬことだと思うのです。
そういう点について、細かいことはいいですが、大筋としてどういう姿勢で臨まれるのか、今までと同じ姿勢でそのまま続けていくということなのか、どこか変えるところがあるのかということを防衛庁長官にお伺いしたい。個々の理屈を聞いておったって、これは何ぼでも理屈というのはありますから、その姿勢、態度、方針といいますか、そういうものを防衛庁長官にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/50
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051・臼井日出男
○臼井国務大臣 従来から私どもは、委員御承知のとおり、幾つかの理由を申し上げまして、使用権原が失われた状態になりましても即違法状態ではないということを繰り返し申し上げてきたところでございます。
今回、緊急使用の申し立てが不許可になりましたことは極めて残念でございますが、私どもは、この緊急使用の申し立てが認められなかった、こういうことによっても従来どおり即違法ではないという環境には変わりがない、こういうふうに理解をいたしておりまして、先ほど私が申し上げましたとおり、裁決申請が一日も早く行われますように心から希望いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/51
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052・東中光雄
○東中委員 そういう姿勢じゃだめだということを私は強く申し上げておきたい。
というのは、直ちに違法とは言えないと言うたときには、緊急使用の申し立てもしているからということがあっていました。申し立てをしたというのは、緊急使用の許可をもらわなきゃいかぬのだという立場に立っていたのです、現に申し立てをしているのだから。ところが、それが許可しないという結論が出たら、もう条件が変わっているじゃないですか。しかし、今までどおり直ちに違法とは思わないと。これは暴力ですよ。論理じゃないです。国がそういうことを言ってはいかぬと言っているのです。
それから、この決定理由を見ますと、問題の部分は最初から金網にしてあった枢要部分と思われるところの外だったというようなことも書いています。それについての疎明も何もしなかったということを言っているのです。
県の収用委員会は、法律によって権限を与えられている最終権限者で、緊急使用について許すか許さないかを決める、その行政機関が決めたことを全く無視して、それで裁決申請の方だけやってほしいなんて、これは防衛庁の横暴あるいは法治国家の体制を否定するものだ、私はそういうふうに思います。
そういう点で、今長官の言われた姿勢というのは極めて遺憾だ。こういうことをやると軍部優先ということになってしまうのです。事柄の論理の立て方をきちっと守ってやっていかなければいかぬじゃないかということを申し上げておきたいと思います。
時間がありませんので、法案の審議をしなければいけませんので、省略してお伺いします。
今度、新防衛大綱と新中期防の関係で、戦略情報を含む高度の情報収集・分析等を総合的に実施し得る体制の充実をやる、こういうふうに書かれているのですが、戦略情報についての収集というのは、今まではそういう体制になっていなかったからそういうことをやるんだ、どうもそういうことのようです。それで、情報本部を設置して、その中に画像部をつくるというのが、これは新しい大きな機構上の、あるいは体制上の要点だと思うのです。
それで、画像部は画像情報の処理をやる、それから、人工衛星写真の解析、分析を専門に担当する部署だということですが、戦略情報の収集・分析をするために衛星を利用した衛星写真などの画像情報の分析を行う部門では、どういう衛星の画像情報をどこから取得をするのかということについてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/52
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053・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 画像部が利用する衛星という御質問でございましたので、それについてお答えいたします。
米国が打ち上げました地球観測衛星でございますランドサット、それからフランスが打ち上げた地球観測衛星でございますSPOT、そういった広く一般に提供されている画像データを利用いたしまして、これらの画像情報の処理等に関する業務を行うわけでございます。
なお、戦略情報等について高度の情報収集・分析とあるがという御質問がございましたが、戦略情報を含む情報収集その他につきましては、従来の情報組織でもこれはやっているわけでございまして、その情報活動は、今回法律の改正をお願いしている趣旨は、まさに内局あるいは各幕僚監部、統幕等でそれぞれやっていた、その非効率性を直したいということで一本の情報本部を設置するということでございまして、従来から戦略情報を含む情報収集・分析はしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/53
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054・東中光雄
○東中委員 ランドサットあるいはSPOTから情報を買うのですか。どういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/54
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055・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 購入しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/55
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056・東中光雄
○東中委員 新防衛大綱のベースになりました防衛問題懇談会の報告では、「不透明な安全保障環境に対応し得るような情報機能を充実」というのを強調して、「偵察衛星の利用も含めた各種センサーの活用をはかるべきである。」というふうに述べておったと思うのです。
結局、戦略情報の収集・分析能力を強化するために、それはアメリカやフランスから買うのもいいでしょう、商業ベースで入手した衛星写真の分析だけではなくて、自衛隊自体が自前の偵察衛星を持って独自の画像情報を収集するという方向をこの懇談会では言っているようにとれるのですが、そういうことは考えているのですか、考えていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/56
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057・臼井日出男
○臼井国務大臣 専守防衛を旨としております我が国の防衛にとりまして、各種情報機能の充実は極めて重要でございます。このことから、防衛庁といたしましても、有力な情報収集の手段の一つとして、偵察衛星に従来より関心を有しているところでございます。
現在のところ、偵察衛星の保有につきましての構想ないし計画はございません。しかしながら、各国の利用の動向につきまして今後とも注意深く見守ってまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/57
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058・東中光雄
○東中委員 この間、総理大臣も本会議で関心を有している、そういうふうに答えられました。今防衛庁長官は関心を有してきたところと言われましたけれども、具体的計画は持っていない。
導入の方向を向いているのですか。関心を持っているというだけじゃなくて、そういう方向を目指しているのですか。最近、ある新聞が次期中期防で入れる方向を決めたというようなことも報道しているようですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/58
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059・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 まさに関心を有しておりまして、それが将来どういうことになるかわかりませんが、現時点では、その計画なり構想なりはございませんし、また計画なり構想をつくるような作業をしているというわけではございません。
ただ、専守防衛ということでございますと、特に冷戦終えん後のアジア太平洋地域の不透明性、不確実性ということを考えますと、早期の情報収集、的確な情報収集、また効率的な情報分析というものは大変重要でございまして、そのために画像情報というのはかなり有力な情報であるという認識をしておりますので、御質問の点につきまして、我々として大変関心を有しているということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/59
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060・東中光雄
○東中委員 一九六九年五月九日の衆議院本会議における宇宙の平和利用の国会決議の点からいいまして、自衛隊が偵察衛星を持つというふうなことは決議上は許されない、私たちはそう考えております。関心は持っておるけれども構想はないと。しかし、そういう方向に行くべきじゃないということを申し上げておきたいと思います。
時間がありませんので、最後に一点お伺いします。
電波部が今度設置されます。調別、自衛隊陸上幕僚監部調査部別室の組織と活動をそっくりそのまま引き継ぐような格好になっていると思うのですが、通信所は六カ所、三分遣隊もそのまま引き継ぐということですが、防衛庁は、九六年度予算で、調別の喜界島通信所に新たな通信傍受施設、いわゆる象のおりの建設調査費約四千万円を計上しておりますが、地元で非常に強い反対を受けています。調別の六カ所の通信所と三つの分遣隊は、分担してロシア、北朝鮮、中国などの情報収集に当たっています。
象のおりは、自衛隊の施設として北海道の東千歳と鳥取県の美保の両通信所にあります。米軍は三沢通信所と沖縄の楚辺通信所を持っています。今新たに喜界島に象のおりを設置する理由は一体何なのか。ここに設置をして、そしてどこの国の情報収集、電波傍受を強化しようとしているのか、その点をお聞きし、そういうことはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/60
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061・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 喜界島通信所は、我が国上空に飛来する各種電波の収集を任務とする通信所の一つでございますが、開設されたのが昭和三十七年でございまして、既に三十年経過しております。したがいまして、アンテナ等の施設が老朽化あるいは旧式化しているということで、これを更新、近代化したいということでございます。
このため、現通信所の近傍に用地約三十ヘクタールを取得いたしまして、高性能円形アンテナ施設を導入することを計画しているところでございます。この高性能円形アンテナ施設につきましては、現通信所施設を更新、近代化する必要があること、我が国の地理的条件等から日本の南西部に整備する必要があること、それから、地元からの誘致要望もあるといったようなこと等を考えまして、設置場所として喜界島が適当であるということで、御質問にもございましたように、調査費を計上して今その取得のための作業を進めているというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/61
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062・東中光雄
○東中委員 時間ですから、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/62
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063・吹田愰
○吹田委員長 次に、山花貞夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/63
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064・山花貞夫
○山花委員 クリントン大統領来日前の委員会におきまして、ACSAの問題について質問をいたしました。冷戦後の安全保障問題について正面から議論を尽くすべきである、こういう立場から外務大臣中心にお話を伺ったわけですが、今振り返りますと、内容についてほとんど明らかにされることなく、私の気持ちとしては、半分ぐらいはだまされたのではないかというぐらいの気持ちを持っています。できる限りの範囲で情報を明らかにして真剣なディベートを尽くすべきである、こういう観点からきょうは引き続いて若干御質問させていただきます。
ACSAの問題については外務省の担当ということになると思いますから、防衛庁長官には、今回の十五日の閣議決定及びその後の防衛庁長官の談話が出ておりますので、これを踏まえてお伺いをしたいと思います。
まず冒頭、ACSA締結に関して官房長官の談話が出されておりますけれども、この談話につきましては、もちろん長官としては当然のもの、異論はない、こういうようにお考えですか、念のために伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/64
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065・臼井日出男
○臼井国務大臣 今委員お話しの官房長官談話につきましては、私どもも了解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/65
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066・山花貞夫
○山花委員 一項、二項、三項とありまして、三項の部分におきまして「平成七年十一月二十八日の内閣官房長官談話で述べたとおり、」として、「基本理念を維持していく」こうしているわけであります。平成七年十一月二十八日の官房長官談話は、野坂官房長官当時のものでありまして、大事な三つのポイントについてかなり詳細に談話で触れております。
きょうも議論となりました幾つかの問題点にかかわりますけれども、一つは、「集団的自衛権の行使のように我が国の憲法上許されないとされている事項について、従来の政府見解に何ら変更がないことは当然であります。」第二番目に、「ここでいう「我が国周辺地域における平和と安定を確保し」との表現により、日米安全保障条約にいう「極東」の範囲の解釈に関する政府統一見解を変更するようなものではありません。」第三番目に、「武器輸出三原則等に関しては、装備・技術面での幅広い相互交流の充実による日米安全保障体制の効果的運用との調和を図りつつ、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念を維持していく所存であります。」こうなっておりますけれども、こうした三つの問題点の見解についても長官は同じ意見である、こう伺ってよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/66
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067・臼井日出男
○臼井国務大臣 ただいまお話しの集団自衛権、武器輸出三原則等の政府見解でございますが、私といたしましても、そうした見解に基づいて今後判断をいたしてまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/67
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068・山花貞夫
○山花委員 関連して伺いたいと思います。
実は、ここで引用しておりますのは、野坂官房長官のときの談話なのです。実は、対米武器輸出禁止三原則についての例外を官房長官談話として出したものは、八三年一月十四日の後藤田官房長官当時の談話でございます。
本来ならば、対米武器輸出三原則にかかわるものですから、後藤田談話が引用されてもよかったのではなかろうか、こう私は思っていますが、なぜこの後藤田談話については引用されなかったのか。当然前提として踏まえておるのか、それとも後藤田談話についてはもう既に廃棄したといいますか、見解が違ったということなのか、いずれであるかについて長官の認識を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/68
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069・荒井寿光
○荒井政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、後藤田官房長官のときの対米武器技術供与の実施に関するアメリカとの交換公文の概要の際の談話、これは武器技術供与の関係の談話でございます。その後、昨年、新しい防衛大綱を策定するというときに、全体として平成七年十一月二十八日に新しく内閣官房長官談話が出たわけでございまして、今回、四月十五日に官房長官が談話を出されるに当たっては、最近時点、新しい防衛大綱を策定するときに官房長官が談話を出された、それを受けて出されたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/69
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070・山花貞夫
○山花委員 答弁の趣旨は必ずしも明確でありませんでしたけれども、最近の事態ということを踏まえたものであって、従来の官房長官談話についてはこれを否定したものではない、こういう趣旨だとお伺いしておきたいと思います。
ということを前提としてこれから議論に参加していきたいと思うのですが、前回の委員会において、ACSAにつきましては、憲法七十三条三号による国会の承認の問題、当然これは法案として出して議論をいただく、外務大臣、そういうふうに答弁をされました。
条約については外務省の担当だと思いますけれども、防衛庁としては、既にそうした条約内容について検討を行ったかどうか、あるいはいつごろ法案について国会提出ということを予定しておるか、この点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/70
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071・秋山昌廣
○秋山(昌)政府委員 日米物品役務相互提供協定に関連する法案といたしましては、自衛隊法の一部を改正する法律案ということで既に防衛庁でも検討し、これを国会の方に出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/71
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072・山花貞夫
○山花委員 その内容についてなんですけれども、実はきょうも議論がありました。平時、有事の関係についてですけれども、きょう午前中、渡辺委員の質疑をお伺いしておりますと、この点について従来から七年越しの議論をしてきたのだけれども、あいまいであって定義としては難しい、こういうお返事がございました。私は、渡辺委員も言ったとおり、やはり平時、有事については明確にすべきではなかろうか、こういうように考えながら伺っておったところです。
実はこの点について、外務省の説明では、十九カ国、二つの機関でNATOを中心としたACSAが締結されていると説明を伺っているわけですけれども、内容について、他との比較を考えますと、こういうようなあいまいな格好のものはあるのでしょうか。私は、どうもまだ勉強不足かもしれませんけれども、私が検討した限りでは、その点についてかなり配慮をした条文になっているという気がいたします。
例えば西ドイツなどの協定を見てみますと、第三条で、本協定が平時のみならず、危機的状態、戦時に際しても適用される、こういうような規定のされ方がしております。韓国の例などを見ますと、戦時受け入れ国支援協定というものを締結しながら、ACSA一般についても平和時のみならず、いわゆる有事においても、兵たん支援に関する要求を互いに満たすことに合意する、こういうようにはっきりと書かれているわけであります。
概念があいまいだったら大体協定はできないのじゃなかろうか。これから個別ケースについて検討するということでしたけれども、協定を結ぶとするならば、個別ケースについても検討した上で協定ができるものじゃないだろうか。何もわからないうちに協定を結んで、後はこれから国会の承認が終わったならば検討させてもらいますということではいけないと思いますけれども、防衛庁に対して、この点について見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/72
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073・折田正樹
○折田政府委員 協定自身の中に平時とか有事とかいう言葉が入っていないのはそのとおりでございますが、非常にあいまいな形で適用が決まっているということではございませんで、この協定に基づき提供される物品・役務は、日米共同訓練、国連平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要なものに限定されているところでございます。
今委員が御指摘になりましたドイツのケース、それから韓国のケースについては、今私が申し上げたような日米間の協定にあるような限定はないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/73
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074・山花貞夫
○山花委員 条文としては、平時、有事について申し上げたような条文になっていると私は承知をしておりますが、あいまいじゃないのだとおっしゃっていますけれども、あいまいだからこの平時、有事について明確でない。二十五日の記者会見で、極東有事にも適用がある、こういう格好で村田事務次官の発言があったり、この点についての研究を進める、こういうような官房長官のその後の発言もございます。
この辺があいまいだからこそ、こうしたあいまいな議論が進んでいくのではなかろうか。従来から、次官通達等を含めてこの点をすべてあいまいなままにして運用あるいは運用についての指針というようなものをつくって、それによって事を進めているということがあったのではなかろうかと思います。進めると、当然集団安保の関係その他議論が正面から出てくるところでありまして、冷戦後の日本の安全保障を考える場合には、そうした議論について正面から取り組むべきである、あいまいで過ごすということについては問題があるのではなかろうか、こういうことを指摘して、これからの議論に臨んでいきたいと思っております。
時間が参りましたので、以上で質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/74
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075・吹田愰
○吹田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/75
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076・吹田愰
○吹田委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。東中光雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/76
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077・東中光雄
○東中委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法改正案に反対の討論を行います。
本法案は、新防衛大綱、日米安保宣言によって、日米安保体制と自衛隊の任務と役割を我が国の防衛からさらにアジア太平洋地域の平和と安定に拡大し、違憲の集団的自衛権の行使に踏み込む危険な路線を打ち出すもとで、アジア太平洋地域の紛争対処やPKO出動などに対応するために自衛隊の情報機能を拡充強化するものであり、断じて許されません。
新設される情報本部は、戦略情報を含む高度の情報収集・分析体制をつくるために画像部を設け、衛星画像の解析体制を強化し、また多様な情報収集手段と称して自衛隊が自前の偵察衛星を持つ道を開くものであります。これは宇宙の平和利用に関する国会決議に反するものだと思います。
また、情報本部は、陸幕調査別室が行ってきた中国、北朝鮮、ロシアなどの電波傍受・諜報活動を電波部として引き継ぐもので、全国六カ所の通信所と三つの分遣隊の組織、機能はそのまま維持し、さらに喜界島への象のおり新設を進めるなど、外国の電波傍受・諜報活動を一層強化しようとすることは極めて重大だと思います。
以上を指摘して、反対の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/77
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078・吹田愰
○吹田委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/78
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079・吹田愰
○吹田委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/79
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080・吹田愰
○吹田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/80
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081・吹田愰
○吹田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/81
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082・吹田愰
○吹田委員長 次に、国の安全保障に関する件について調査を進めます。
日米首脳会談及び特別行動委員会の中間報告に関する報告について外務大臣から説明を聴取いたします。池田外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/82
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083・池田行彦
○池田国務大臣 本日は、先般の日米首脳会談について安全保障面を中心として御報告申し上げるとともに、右に先立ち発表いたしました特別行動委員会中間報告についてもあわせて御報告いたします。
四月十七日に橋本総理とクリントン大統領との間で行われた日米首脳会談では、両国及び世界にとっての日米関係の重要性を再確認し、さらに二十一世紀に向けた両国の協力関係の方向性を示すことができました。また、その議論を踏まえ、「日米両国民へのメッセージ」及び「日米安全保障共同宣言」の二つの文書に合意し、これらを発表いたしました。
日米安保共同宣言においては、我が国の安全、アジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で、日米安保体制がこれまで同様重要な役割を果たしていくことを確認し、また、この宣言が将来に向けての両国の協力の出発点であることをうたいとげました。
また、「日米両国民へのメッセージ」においては、両国が共有する民主主義や自由などの価値の重要性について述べるとともに、地域問題への両国の協力、国連改革や軍縮に向けての協力、経済関係などに触れております。
一方、首脳会談に先立って、十四、十五の両日、私と臼井防衛庁長官は、ペリー国防長官、モンデール駐日大使との間で日米安全保障協議委員会を開催し、沖縄における米軍施設・区域の問題に関し、特別行動委員会が取りまとめた中間報告を了承し、発表いたしました。
この中間報告に含まれる措置は、普天間飛行場の全面返還を含め、現在沖縄にある米軍施設・区域の面積を二〇%以上縮小するものであり、これは、沖縄の施政権の返還以来今日までの二十四年間に返還された総面積を上回るものであります。また、嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機騒音規制措置が確認されたほか、嘉手納飛行場について、海軍駐機場の移設及び遮音壁の設置が合意され、さらに普天間飛行場について、夜間飛行訓練の制限が合意されるなど、地位協定の運用の改善措置についても発表されました。
これを受けて、十七日の首脳会談においては、この中間報告で取りまとめられた措置を的確に実施していくことが重要であること、また十一月までに特別行動委員会の作業を精力的に進めていくことを確認したところであります。
なお、日米首脳会談においては、以上のような安全保障面での成果のほかに、経済問題について、橋本総理より我が国政府の経済構造の改革に向けての努力を説明するとともに、コモン・アジェンダと呼ばれる地球規模の課題にかかわる日米協力に、新たに六つの分野を追加することなどに合意しました。また、両首脳は、中国、朝鮮半島、ロシア、旧ユーゴスラビア、中東和平、国連改革などのさまざまな国際問題についても意見を交換しました。
今回の首脳会談を通じ、日米安保体制が我が国の安全及び世界の平和、自由、繁栄にとって重要であることが確認され、二十一世紀に向けた同盟関係の意義が明確に示されたものと考えます。
政府といたしましては、この協力関係をさらに進めるため、今後とも努力してまいる所存でございますので、本委員会委員各位の一層の御協力をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/83
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084・吹田愰
○吹田委員長 以上で説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113603815X00619960514/84
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