1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年三月二十七日(水曜日)
午後一時三十七分開議
出席委員
委員長 柳沢 伯夫君
理事 片岡 武司君 理事 塩谷 立君
理事 渡瀬 憲明君 理事 藤村 修君
理事 松田 岩夫君 理事 山口那津男君
理事 輿石 東君 理事 五十嵐ふみひこ君
稲葉 大和君 小野 晋也君
栗原 博久君 栗原 裕康君
栗本慎一郎君 河野 洋平君
斉藤斗志二君 島村 宜伸君
石田 勝之君 坂口 力君
西 博義君 西岡 武夫君
鳩山 邦夫君 船田 元君
池田 隆一君 五島 正規君
濱田 健一君 山原健二郎君
嶋崎 譲君
出席国務大臣
文 部 大 臣 奥田 幹生君
出席政府委員
文部大臣官房長 佐藤 禎一君
文部省高等教育
局長 雨宮 忠君
委員外の出席者
文教委員会調査
室長 岡村 豊君
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委員の異動
三月二十七日
辞任 補欠選任
小林 守君 五島 正規君
同日
辞任 補欠選任
五島 正規君 小林 守君
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三月二十六日
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二〇号)
同月二十七日
四十人以下学級の早期実現と急減期特別助成な
ど私学助成の大幅増額に関する請願(松本龍君
紹介)(第九七八号)
同(松本龍君紹介)(第一〇四一号)
同(松本龍君紹介)(第一〇八九号)
小・中・高三十五人以下学級の実現、私学助成
の抜本的改善、障害児教育の充実に関する請願
(北沢清功君紹介)(第九七九号)
行き届いた教育に関する請願(日笠勝之君紹介
)(第一〇九〇号)
三十五人学級の早期実現と生徒急減期特別助成
などの大幅増額に関する請願(日笠勝之君紹介
)(第一〇九一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/0
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001・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。奥田文部大臣。
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国立学校設置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/1
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002・奥田幹生
○奥田国務大臣 このたび、政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、国立大学の学部の設置及び短期大学部の廃止等について規定するものであります。
まず第一は、学部の設置についてであります。
これは、各大学における大学改革と教育研究体制整備の一環として、岐阜大学の教養部を改組して地域科学部を、佐賀大学の教養部及び教育学部を改組して文化教育学部をそれぞれ設置しようとするものであります。
なお、これらの学部は本年十月一日に設置し、平成九年四月から学生を受け入れることとしております。
第二は、短期大学部の廃止についてであります。
これは、看護等医療技術教育の充実を図るため、群馬大学に併設されている医療技術短期大学部を廃止して同大学の医学部に統合しようとするものであります。
なお、この医療技術短期大学部は、平成九年度から学生募集を停止し、平成十一年度限りで廃止することを予定しております。
このほか、昭和四十八年度以後に設置された国立医科大学等に係る平成八年度の職員の定員を定めることといたしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/2
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003・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/3
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004・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田岩夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/4
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005・松田岩夫
○松田委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、新進党を代表いたしまして御質問させていただきます。
今回の国立学校設置法の一部改正案)二つの大学の新しい学部の設置ということでございますが、とりわけ、極めて時宜を得た、極めて今日必要な学部の設置だなと思わさせていただきます、この岐阜大学の教養部を改組して地域科学部を設置するといった点を中心に、御意見、お考えを聞きたいと存じます。
地方分権あるいは地方自治の確立といったことが叫ばれて久しいわけでありますけれども、真にそれを進めてまいりますためには、言うまでもありません、地域の抱えます今日の課題に取り組むことのできる優秀な人材をいかにつくり上げるか、養成していくか、これが当然のことながら求められるわけであります。
また同時に、地域に関する学問というものが、正直、これまでどんなふうにあったろうか。それぞれが専門分野別にかなり分かれておりまして、地域の問題を総合的にとらえていくといったような学問というものも十分には我が国にはなかったのではないかといったようなことを思いますと、こういった地域に関する総合的な学問の確立に向けて教育研究体制を推進していくといった目的で岐阜大学に地域科学部というものを設けることにしようというのがこの法律案の趣旨であろうと理解いたします。
まことに時宜を得たといいますか、あるいは遅きに失したという面もあるかもしれないほどの問題で、大変大事な学部の設置ではないかと思わさせていただくわけでありますが、御提案者の方から、その趣旨、目的、理念についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/5
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006・雨宮忠
○雨宮政府委員 今先生御指摘のように、地域の抱える諸問題、地域開発でありますとか、あるいは地域福祉の問題、あるいは地域文化をどう育てていくかというような事柄、これは、伝統的ないわゆるディシプリンごとの学問というよりも学際的な領域に属する事柄でございますけれども、先生も御指摘のように、今日までそう幅広く行われていたとは言いがたいわけでございます。
それで、これらの諸問題につきまして学問的な基礎の上に立って取り組んでいく、こういう人材を育てたいということでございまして、岐阜大学におきまして、教養部を基礎として、社会科学を中心に人文科学あるいは自然科学の知見をも取り入れまして、地域について学際的、総合的な視点から教育研究をするということで地域づくりに積極的に取り組むことのできる人材を養成いたしたい、これが岐阜大学におきます地域科学部設立の基本的な理念ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/6
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007・松田岩夫
○松田委員 そこで、その地域科学部、地域科学、恐らく概念としては、法律上もあるいは学問の分野としても初めての呼称ではないかなと思うわけでございます。
従来、地域学といいますと、例えば冗談に言うのですが、昔、アジアのことを勉強するのなら、日本で勉強するよりむしろアメリカのどこどこ大学の何学部に行けよなどと私なども言われたものでございます。そういう意味の地域学、アジアのことを勉強するとか、あるいはアメリカのことを勉強するとか、中国のことを勉強するとか、こういった意味の地域学というのは日本でもありますし、とりわけアメリカでは大変進歩しておるように私は見受けておるわけですが、こういう意味の地域学ではないわけですね、明らかに。
今度言う地域科学部、地域科学というのは、今まさに私も申し上げました、まさに雨宮局長もおっしゃったように、むしろそれぞれの地域が抱えるいろいろな課題を、社会科学はもちろん人文科学、自然科学、あらゆる分野から、総合的に、学際的にその地域にかかわる学問を体系化していこう、こういう新しい試みのようにお見受けいたすわけであります。
私は、今求められていることはそういうことだし、そういう総合的な教養、総合的な知識を持った人たちが育てられていかない限りは、本当の意味の地方分権とか地域開発というものも起こってこないという意味で、極めて大事だと思うのでございます。
今言うこの地域科学、今度新しくつくるこの地域科学というものの現状、世界も含めて。我が日本の国においては、こういう地域科学という学問がこれまでどこどこで極めて有名であったとか優秀であったとかいうことは寡聞にして聞いておりませんが、外国では多少そういう話を聞くことがあります。
冒頭申しましたような、アジア地域の勉強とかいうような意味ではない、この岐阜大学で設置しようとする地域科学部、地域科学といった学問、そもそもこれが科学として既に、あるいは学問として既にある程度の成熟を見つつあるものなのかどうか。むしろこれからそういう新しい試みに向かって、成熟に向けて、学問として研究し体系化させていこうという含みも込めての学部であるのか。まず現状いかん。
現状が、我が国においてそういう科学としての体系をまだなしていないとすれば、この岐阜大学における地域科学部というのは、ある意味で、新しい学問体系を研究や教育を通じてつくり上げていこうという試みもある、こう理解してよろしいのかどうか。
研究の現状並びに岐阜大学の地域科学部の意義といったものについて、もう一つ追加してお聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/7
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008・雨宮忠
○雨宮政府委員 すべてをつまびらかにしているわけでは必ずしもございませんけれども、例えば、国内におきまして、地域を中心的なテーマといたしまして教育研究を行っているものといたしまして、一橋大学の社会学部の地域社会研究課程というのがございます。また中央大学の経済学部の産業経済学科というところでも扱っておるわけでございますが、これは主としまして、経済学や社会学等の社会科学を中心としたものということでございまして、地域の抱えている、環境、文化、福祉等を含めた幅広い課題に対応できるだけの総合的な教育研究が行われているというものでは必ずしもないというように考えております。
また、海外におきまして、特にアメリカなどを中心といたしまして、いわゆるリージョナルサイエンスという名称のもとに、産業立地論でありますとか、あるいは地域経済論というものをベースとしながら、政治や生態学にまたがるような応用的、学際的な教育研究が幅広く大変盛んに行われているというようにも聞いておるわけでございまして、例えば、カリフォルニア大学のロサンゼルス校におきましては、国内の地域開発から第三世界の農村開発、環境問題まで、幅広くテーマを取り上げました教育研究を行っているというようにも聞いておるわけでございます。
そういうことでございまして、他の国、特にアメリカなどと比較した場合に、先生おっしゃいました二つのうちのどちらに属するか、こういうようなお尋ねでありますれば、地域科学というのは日本においてはまだ熟してはおらない、これから大いに発展させていかなければならない、そういう種類の学問分野ではなかろうかというように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/8
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009・松田岩夫
○松田委員 そういう意味では極めて斬新な、しかも今日極めて必要とされている、学問としてはまだ、おっしゃるように確立はしていないかもしれないが、しかし、研究対象として政策意義がまことに大きい、そういった分野についての学部を地域科学部として設置していこうという本提案はまことに画期的なものである、私はそう理解させていただくわけでございます。
そういう意味では、我が国で初めての本格的なここで言う地域科学、言葉もここで恐らく定着してくるのではないか。地域科学という学問が、この設置法を契機に、岐阜大学に地域科学部が置かれることを契機に学問の中において定着してくるのではないか。我が国にとっては全く初めての本格的な地域研究の場が設けられていく。しかも、学問としても、ここでその総合的な研究が進められていく。そういう意味で、本当にいい案を考えていただいた、私はそう思う一人であります。
さて、そういうことから申しますと、もう一つは、せっかくそういう新しい学問をつくっていこうというわけでありますから、文部省としてもぜひ今後この充実のために、まずはつくって、そしてそれからではありますけれども、我が国初の、しかも今日日本の社会が求めておる地方分権とか地方の時代といったものを担っていく人材をつくり上げていく、こういうわけでありますから、学問としても、またその学問の成果、教育され育てられていく人材の養成、両面から見て、ぜひ力強くお育てをしていっていただきたい。当然のことでありますが、申し上げておきます。
同時にまた、この岐阜大学の地域科学部、今申しましたように、まさに地域づくりに積極的に取り組んでいく人材を養成していく。全国今そのことを目指して走り出しておるわけでございます。それぞれの地域で、人材不足だということを聞くわけでございます。そういったことに当たる人材が足りないということを聞くわけでありますが、一気に大きなものというわけにもいかないからでございましょう、振りかえも含めて当面入学定員百人ということのようでございますが、今お聞きいたしましたこの目的、意義といったようなことから考えますと、せっかくおつくりいただきながら当面百人、スタートでございますからいろいろの御準備のこともありますけれども、この定員百人というのは目的的に考えますといかにも小さいなという気がいたさないではありません。どうぞひとつ、百人でまずしっかりスタートさせるということできようのところは理解をさせていただきますけれども、将来の問題として、この地域科学部の斬新さ、重大性、そういったことを思いますと、一刻も早い拡充といったことを心から願う一人であります。
そんな点について、御質問してもきょうのところはお答えがしにくいのだろうと思いますが、委員として心から強く望んでおりますが、局長、何か一言ありそうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/9
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010・雨宮忠
○雨宮政府委員 岐阜大学といたしまして、教養部を改組ということも一つの契機といたしまして新しい学部を構想したわけでございまして、大変意欲的な構想となっておるわけでございまして、この設置がお認めいただけましたならば、当然岐阜大学の新しい学部におきましても一生懸命熱意を込めて取り組むであろうというように考えてもおります。大いに期待いたしたいと思ってもおりますし、また、私どもとしても、必要な支援はしてまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/10
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011・松田岩夫
○松田委員 御質問の通告にはなかったかもしれませんが、岐阜大学だけに地域科学部というのがつくられた。学問として全く新しいスタートである。したがって教育としても全く新しいスタートであるわけでありますが、今申しましたように、この岐阜大学の定員を充実していく、教育内容を充実していく、研究内容を充実していくということと同時に、国立大学に限らず、全国の大学あるいは大学院を含めて、こういったことの問題意識、せっかくここに国立大学として一つの拠点学部もつくっていただけるわけでございますから、これを機会に、この地域科学に関する各大学問研究協力あるいは国際的な研究協力といったような広がり、意識というものは当然持っていただくべきであり、持っていただきたく思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/11
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012・雨宮忠
○雨宮政府委員 先ほどお話もございましたように、地域科学というのがまだ熟し切っていない学問分野でもございますし、また、岐阜大学が国立大学の中で地域科学部という一つの学部を看板として初めてスタートするわけでございまして、これからの、いわば発展途上と申しますか、そういう分野でございまして、この岐阜大学の頑張りというものを一つの核といたしまして、地域科学全体が教育面でもまた研究面でも発展していくということを期待いたしたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/12
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013・松田岩夫
○松田委員 質問をさらに敷衍いたしますと、この地域科学部での研究の成果、あるいは教育の結果、養成されてこられる人材というのは、日本の国内における地域開発や町おこし、村おこしといったようなことばかりではなく、まさに発展途上国における地域開発なり村おこしなりといったことにもまことに有為なる人材を育成していくことにもなるわけであります。
ODA世界第一の国となって世界の人々のために大いに頑張っている我が国でありますが、実はそれぞれの地域において、とりわけ発展途上国において、これは主として経済面が多いわけでありますが、しかし、今や発展途上国といえども環境問題やあるいはコミュニティーの問題、人種の問題、あらゆる総合科学の成果をそれぞれの地域の開発や発展のために生かしていかなければならぬ状況になってきておるわけであります。地域科学部で学ばれた皆さんが国際的にも大いに頑張っていただける人たちではないか、そう思うわけでありますが、そういった意味でも、文部省としてもぜひ広い見地からこの地域科学部の育成発展にしっかり対応していっていただきたい、こう思うわけであります。
さて、若干同じ問題でありますけれども、次に移らさせていただきます。
地域のことに積極的に取り組んでいく人材の養成というその教育理念を実現するためには、ほかのことでもそうでございますけれども、大学が余りにも地域から閉ざされ過ぎているということをよく聞くわけでありますが、とりわけこの地域科学部といった学問の対象、そのための研究教育といった観点から見ますと、従来以上に、大学の中に閉じこもることなくまさに外に向かって、積極的に地域社会に出かけていって実践的に教育を行う必要があると思うわけでありますが、この点についてはどんな御配慮、どんな関心をお払いになっておられるか、お聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/13
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014・雨宮忠
○雨宮政府委員 御指摘のように、地域科学という学問研究の性格にもよるわけでございますけれども、岐阜大学の方といたしましては、やはり実践的な教育が必要であるという認識を深く持っておるわけでございます。
今の構想によりますと、すべての学生に社会活動演習という授業科目を備えまして、社会福祉施設でありますとかあるいは地元企業、地方自治体など、地域を支える事業体での体験なりあるいは実習を通じて、地域政策能力の養成を主題とする勉学のモチベーションと申しますか、そういうものを高めて、職業生活、社会生活をにらんだ大学教育を効果的に進めるための科目を設定しよう、こういうことで準備しておるところでございまして、入学初年度の長期休暇中等を利用いたしまして、一週間程度のまとまった期間を、そのような外に出かけていって実体験を踏んでくるという教育を予定しておる、こういうように聞いておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/14
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015・松田岩夫
○松田委員 大学から外へ出ていってという面を今取り上げましたが、逆にまた、県庁の職員の皆さんとか市役所の職員の皆さんとか、あるいはいろいろな各種の地域ボランティア活動あるいは地域の各種団体、いろいろあるわけでありますけれども、こういった方々が学内で授業の一環として、研究の一環として相互有機的に研究や教育が進められていくという、そういうイメージというものが必ずしもはっきり出てきていないわけであります。
私は、この地域科学部という学部の性格柄、大学の開放といったことを今までいろいろ言ってまいりましたけれども、大学の開放どころではない、まさに大学と地域社会とが本当に一体的に教育や研究を進めていく、その最もしやすい分野といいますか、また、そうすることが研究の成果を高め、教育の成果を高めていくと思うわけでございます。
そうした意味で、教師もそうでしょう、教授もそうでしょう、インストラクターといいますか指導に当たられる方々も、また教えられる側も、社会と大学がある意味で一体的になっていくようなイメージ、そんなイメージの運用で研究や教育が行われていく必要があると強く思うのでございますが、その点は同じ思いですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/15
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016・奥田幹生
○奥田国務大臣 具体的な大学なり学部の運営につきましては、それは大学の方で自主的におやりになるわけでありますけれども、文部省といたしまして非常に大きな期待を寄せておりますのは、例えば地域の代表者であります知事さんとかあるいは市長さんとか、そういう方々の意見を大学なり学部の運営の中に取り入れて生かしていただくというようなことも一つの方法でございますし、あるいは公開の講座を設けて、そして地域の希望者を受け入れて講義を広く開放するというようなことも一つの方法。
あるいは、御要請があればの話でありますけれども、例えば模範的な中小企業経営者、地域から尊敬されているような方々を講師に招いて話を聞いたり、やはりそういう地域の御要請を大学・学部の運営に生かしていっていただけるような、そういうことが望ましいのではなかろうかな。
要するに環境づくり、お世話をさせていただく文部省としてはそんなことも考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/16
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017・松田岩夫
○松田委員 大臣が仰せのとおり、大学の運営の問題ではありますけれども、特に地域科学部という、全く我が国では新しい学問分野として研究、定着させていこうという目的のために岐阜大学に新しい学部がつくられ、今日の社会の要請であります、時代の要請であります地方分権あるいは地方の時代といったものを真に確立していくために、本当に優秀な人材、優秀に限りませんが、まさに人材が求められている、そういう人材を養成していこう、そのものずばりの地域科学部がこうして岐阜大学にでき上がるわけであります。
我が国初の地域科学部という学問あるいは学部の新設であります。私は、時代の一つのエポックをつくることになっていくことを大きく期待して、この岐阜大学地域科学部の研究教育が立派に進められますよう、文部大臣初め皆さんの一層の力強いお力添えをお願いして、岐阜大学に地域科学部を設置する件についての質問を終わります。
次いで、もう一点、学部の設置として、佐賀大学に教育学部及び教養部を改組し文化教育学部というものを設置するというのがもう一つの大きな内容になっております。この点についての理念、目的、それをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/17
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018・雨宮忠
○雨宮政府委員 佐賀大学の文化教育学部についてのお尋ねでございますが、佐賀大学におきましては、教養部と教育学部を改組して今回新たに文化教育学部を設置しよう、こういうものでございます。
御案内のように、今日、学校教育の現場におきましてさまざまな問題が発生しておるわけでございまして、これらの課題に適切に対処していくということのためには、より実践力のある、資質の高い教員の養成というのが求められておるわけでございます。また一方で、大学には、我が国社会の国際化、情報化等の進展や生涯学習社会の要請ということを踏まえて、さまざまな分野での専門能力を持った人材の養成が期待されているということでございます。
新しく構想されております文化教育学部といいますのは、このような状況を踏まえまして、今後の教員需要の減少に対処して教員養成規模の適正化を図るというのが一つございますし、また文化と教育の融合によります新しい教育研究を推進しようという両方のねらいを持ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/18
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019・松田岩夫
○松田委員 私のいただきました質問時間がもうありませんが、今回の場合、二つの大学において、岐阜大学において地域科学部、佐賀大学において文化教育学部、それぞれ設置されるわけであります。それぞれの大学におきます大学改革、教育研究体制が一層充実整備されることと期待をいたします。
とりわけ岐阜大学の地域科学部は、我が国学界の中でも全く新しい学部をつくり上げる、しかも地方分権、地方の時代を確立していかなければならぬと我々が国を挙げて考えているときに、そういうことをねらった研究教育のための学部が設けられます。佐賀大学の文化教育学部も含め、両学部がそれぞれ立派に所期のこの改正の趣旨を生かして頑張っていただくよう心から祈念して、私の質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/19
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020・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次に、山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/20
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021・山原健二郎
○山原委員 多くの大学が今一貫教育方式を採用しつつあります。今回の岐阜大学、佐賀大学の場合も、教養部を廃止しまして全学出動体制をとることになっております。しかし、これを実施に移すには随分労力が必要であるということを聞いております。
名古屋大学が自己点検・評価報告書としてまとめた「明日を拓く名古屋大学2」というのが出ておりますが、これを見ますと、教養部を廃止した後の四年一貫教育をどういう体制をとって実施しているかがかなり詳しく報告をされておりますが、相当大変な作業であることがわかります。
まず、総長を委員長として各学部等の代表で構成される全学四年一貫教育委員会、これが意思決定機関です。その下には企画を立てる計画委員会、さらには講義科目の時間割を具体的に調整するための専門委員会、こんなものが設置されます。この具体化調整が最も重要な作業の一つとなるわけですが、制約条件が多岐にわたるので、これらの作業は著しい困難を伴うものであると報告されております。
そのほかにも、科目別専門委員会、実施・運営委員会、共通教育自己評価委員会、あるいは共通教育を担当する教官会議が年二回開催されます。そして、全学部協力による全学共通教育の実施というようなぐあいで、大変重層的で総合的な企画、運営、調整が不可欠となっているわけでございます。
名古屋大学の場合は、そのために、全学共通教育のために、独立した事務機構として共通教育室を学内措置として設けているわけです。学内のやりくりで事務スタッフを配置しておりますが、定員削減のもとで事務職員が年々減らされ、大変な事態になっている、こういうことを聞いているわけでございます。
神戸大学の場合も、事務量は著しく増加するとともに複雑化しており、定員内職員だけでは対応できなくなり、やむなくパート職員を雇用しているが、これも厳しく抑制されており、学部事務の円滑な遂行に苦慮している、こういう指摘があるのですね。
だから、簡単に移行しているわけではないわけです。今回の岐阜大学の関係者からも人的保障の強い要望が寄せられておりますが、まず最初に伺いたいのは、教養部を廃止して全学部協力による一般教育あるいは全学共通教育を実施する大学に対しては、その改革を円滑に進めるための教職員スタッフの配置を特別に保障することが必要になっておるのではないかと思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/21
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022・雨宮忠
○雨宮政府委員 岐阜大学におきましては、教養部を改組するということでございまして、教養部の事務組織が新しくつくられる地域科学部の事務組織に移行するような形に相なるわけでございます。したがって、岐阜大学全般の一般教育についての事務的な支援体制といたしましては、そのような形で行われるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/22
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023・山原健二郎
○山原委員 この定員削減ですが、第八次定員削減、これを見ますと職員の場合は七千九百五十九人、約八千人の職員が削減をされているわけでございます。
こういう問題を含めまして、例えば京都大学の場合ですが、この報告書を見ますと、省力化だけでは対処できず、やむを得ず非常勤職員を雇用して対応しているのが現状である。しかし、それでも教官にとっては事務業務や本来技官の行う業務に多くの時間を割くことになり、教育研究の推進に支障を来すことにもなっている。また、そのほかのところでは、教育と研究そのものに重大な支障を来すというふうに訴えております。
これを見ましても、やはり文部省が本気で大学改革を実のあるものにしようとするならば、大学における定員削減にストップをかける、私は今そういう時期を迎えておるのではないかと思います。この課題について本気で取り組む必要があるのではないかと思うのですが、文部省の見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/23
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024・佐藤禎一
○佐藤(禎)政府委員 定員削減計画でございますが、これは、現下の財政状況を考慮しながら、政府全体の定員管理を行いつつ、その中で新規の定員需要にも適切に対応する工夫でございまして、私どもといたしましては、この定員削減計画を円滑に実施することは大切な課題である、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/24
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025・山原健二郎
○山原委員 定員削減の問題については、もう前々からも出ておる問題でございまして、言うならば本気で取り組む必要があるということを最初に申し上げておきたいのであります。
それから、改革を進める上で、施設設備の不備が非常な障害となっているという状況がございます。例えば今度の佐賀大学の場合ですが、教養部の廃止に伴い教官が他学部に分属することになるが、受け入れる学部に研究室を充てるスペースがなく、混乱が起きているというふうに聞いております。これは佐賀大学の関係者からも切実な訴えとして寄せられているわけでして、こういう事態の解決についても、大学から要望が出るならば積極的に措置すべきだと思いますが、この点はどういう態度ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/25
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026・佐藤禎一
○佐藤(禎)政府委員 国立大学の施設整備でございますが、現下の厳しい財政事情があるわけでございますが、この中で大学改革の推進に即した教育研究体制の整備でありますとか、創造的な人材の養成を目指す理工系教育の推進、あるいは学術研究の推進といったような多くの課題、あるいは施設需要というものに対応してきているわけでございます。このため、緊急な課題を中心に精選をしながら、転換、再編成等の工夫も盛り込みつつ、所要の整備を行ってございます。
今回の学部改組等におきましても、こういった工夫を加えますとともに、全学的なカリキュラムの再編成ということも行われていますので、こういったものにふさわしい施設整備の充実を図っていくことは必要でございます。
個々には、それぞれの大学と御相談を申し上げまして、工夫を重ねながら必要な施設の確保というものには努めてまいりたい、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/26
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027・山原健二郎
○山原委員 一つの問題は、一般教育をできるだけ少人数で実施しようとしても教室不足が障害となっているという点がございます。教養部を改組してつくられた新学部の校舎は旧教養部施設を使うことがほとんどでございますが、全学で実施する一般教育、いわゆる全学共通教育ですが、これも旧教養部の教室を使うことが多いわけでありまして、このため、教室不足から、少人数講義を多くしようにも施設面から制約があってできない、こういう状況にあることは十分御承知と思いますが、これはどういうふうに解消していくつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/27
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028・佐藤禎一
○佐藤(禎)政府委員 ここ数年来新設をされてきております国立大学の学部は、和歌山大学のシステム工学部のように全く新しくできたものもございますが、大多数は転換、再編成によって学部を設置してきているものでございます。したがいまして、これまでの既設の建物をうまく活用しながら、必要に応じまして新築を加えるとか改築をする、あるいは、場合によりましては既存の建物に設備の更新によって対応するというようなことで工夫をしてきているところでございます。
個々には、それぞれの大学の事情をよく伺いまして対処させていただきたい、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/28
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029・山原健二郎
○山原委員 大学側から施設設備整備計画がまとまって要求されるならば、これに対して適切に対応していくということが文部省としても求められると思いますので、この点十分、こういう要求に対して対応できる体制をとってもらいたいと思います。この点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/29
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030・佐藤禎一
○佐藤(禎)政府委員 これは例年のことでございますが、国立大学の予算は、それぞれ大学の中で御検討くださいまして、文部省に対して所要の予算の請求がございます。その中で、大学の中での意見の統一を行った後の御要求の姿をいただくわけでございますので、これをちょうだいをいたしまして、しかしながら現下の状況がございますので要求をいただいたもの全部に対応することはできないわけでございますが、それぞれには個々に御相談をさせていただきたい、このように思ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/30
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031・山原健二郎
○山原委員 時間の制約がありますので十分実態を報告することはできませんけれども、ぜひ努力を要請したいと思います。
最後に、教職員の宿舎の整備の問題でございます。
文部省の方からいただいた資料を見ますと、建築後三十年以上たった宿舎が現在一割強残っているというふうに報告をされております。私は、実は近くに高知大学があるのですけれども、前々から高知大学の宿舎の問題、これはもう大変な事態でして、三十数年経過をしまして相当な傷みとなっているのです。しかも非常に狭くて、家族向け宿舎ですけれども、一階が四畳半一間、二階が三畳と四畳半、ここに一家四人が生活をするという大変な状態にあります。押し入れを細工して部屋を広げたり、庭にプレハブを建てたりしてスペースを確保したり、そんな苦労をしているわけですが、雨漏りはする、強い雨風が吹けば雨が壁から漏れてくるというような事態、いつ見ても何遍も訪ねるのが嫌なような状態でありますけれども、これはここの大学に限らない問題だと思います。
これは、学者、研究者を遇するには余りにも劣悪な環境でございまして、これなどはともかく改善をすべきだというふうに思うわけでございます。また、その要求も出ておると思いますので、これに対して適切な措置をぜひともとっていただきたいということを申し上げたいのですが、この点、お答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/31
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032・佐藤禎一
○佐藤(禎)政府委員 国立大学等の教職員の宿舎の確保ないしは居住環境を保つということにつきましては、大切な課題であると私ども考えておるところでございます。
これは、予算要求と別の手続で大蔵省に対しまして公務員宿舎の設置要求等も行っていくわけでございまして、私どもは、木造宿舎その他の老朽化、狭隘化が著しいものについては、老朽の度合い等を考慮しながら建てかえの要求あるいはその改善に努めてきているところでございます。過去五カ年間におきまして、国立大学等の私どもの省庁別老朽宿舎の建てかえは六百七十四戸という実績を持っておりますけれども、先ほど御指摘いただきましたように、なお経年著しいものが相当数残ってございますので、今後とも努力を重ねていきたい、こういうふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/32
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033・山原健二郎
○山原委員 この点は前々から言われておって、この委員会でこういうふうな形で取り上げたことは初めてのようでありますけれども、本当に切実な要求ですね。トイレなども昔のままのくみ取り式、これでは今の時代に即応できる学者の取り扱いではないと思いますので、この点ぜひとも的確な対処をしていただきますように要請をいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/33
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034・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/34
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035・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/35
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036・柳沢伯夫
○柳沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/36
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037・柳沢伯夫
○柳沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/37
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038・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時二十七分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00619960327/38
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