1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月三十一日(金曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 柳沢 伯夫君
理事 片岡 武司君 理事 塩谷 立君
理事 渡瀬 憲明君 理事 藤村 修君
理事 松田 岩夫君 理事 山口那津男君
理事 輿石 東君 理事 五十嵐ふみひこ君
稲葉 大和君 小野 晋也君
栗原 博久君 栗原 裕康君
栗本慎一郎君 河野 洋平君
斉藤斗志二君 島村 宜伸君
石田 勝之君 坂口 力君
西 博義君 西岡 武夫君
鳩山 邦夫君 船田 元君
池田 隆一君 小林 守君
濱田 健一君 山原健二郎君
嶋崎 譲君
出席国務大臣
文 部 大 臣 奥田 幹生君
出席政府委員
文部大臣官房長 佐藤 禎一君
文部省生涯学習
局長 草原 克豪君
文部省初等中等
教育局長 遠山 耕平君
文化庁次長 小野 元之君
委員外の出席者
法務省人権擁護
局総務課長 坂井 靖君
文教委員会調査
室長 岡村 豊君
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委員の異動
五月十日
辞任 補欠選任
稲葉 大和君 大石 千八君
小野 晋也君 佐藤 孝行君
同日
辞任 補欠選任
大石 千八君 稲葉 大和君
佐藤 孝行君 小野 晋也君
同月二十二日
辞任 補欠選任
石田 勝之君 日笠 勝之君
同日
辞任 補欠選任
日笠 勝之君 石田 勝之君
同月二十四日
辞任 補欠選任
石田 勝之君 山本 幸三君
同日
辞任 補欠選任
山本 幸三君 石田 勝之君
同月三十日
辞任 補欠選任
池田 隆一君 緒方 克陽君
同日
辞任 補欠選任
緒方 克陽君 池田 隆一君
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五月二十二日
文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)(参議院送付)
四月二十五日
私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善私学助成増額に関する請願(森本晃司君紹介)(第二〇九〇号)
小・中・高校の三十五人以下学級実現・教育費父母負担の軽減と障害児教育の充実に関する請願(古賀敬章君紹介)(第二一二九号)
教育・大学予算・私大助成の大幅増額と学生・父母の経済的負担軽減に関する請願(豊田潤多郎君紹介)(第二一三〇号)
私学助成増額、行き届いた教育実現に関する請願(岡崎宏美君紹介)(第二二〇六号)
五月十日
教育費の父母負担軽減、教職員の大幅増など行き届いた教育に関する請願(吉井英勝君紹介)(第二二二七号)
高校三十五人学級実現、私学助成大幅増、障害児教育の充実に関する請願(寺前巖君紹介)(第二二二八号)
三十五人以下学級の実現、私学助成の拡充、父母負担の軽減に関する請願(藤田スミ君紹介)(第二二二九号)
小中高三十五人以下学級の早期実現と私学助成の抜本的拡充に関する請願(岩佐恵美君紹介)(第二二三〇号)
三十五人以下学級の実現、教育予算・私学助成の拡充、教職員定数増に関する請願(東中光雄君紹介)(第二二三一号)
同(中村正男君紹介)(第二二六五号)
同(藤田スミ君紹介)(第二三四九号)
私学助成の抜本的拡充とすべての学校の三十五人学級早期実現に関する請願(正森成二君紹介)(第二二三二号)
私学助成の大幅増額と小中高校三十五人学級の早期実現に関する請願(松本善明君紹介)(第二二三三号)
三十五人以下学級、教職員定数改善、私学助成の大幅増額に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第二二三四号)
小中高三十五人以下学級の早期実現、障害児教育の充実、私学助成の大幅増額に関する請願(志位和夫君紹介)(第二二三五号)
行き届いた教育に関する請願(中島武敏君紹介)(第二二三六号)
文教予算の増額・三十五人以下学級実現・教職員定数改善・障害児教育の充実等に関する請願(佐々木陸海君紹介)(第二二三七号)
小・中・高校すべての学校で三十五人以下学級の早期実現、私学助成大幅増額に関する請願(不破哲三君紹介)(第二二三八号)
障害児教育の充実、教育予算大幅増、三十五人学級実現に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二二三九号)
文教予算の増額、行き届いた教育実現に関する請願(山原健二郎君紹介)(第二二四〇号)
行き届いた教育を進めるための教育条件改善に関する請願(古堅実吉君紹介)(第二二四一号)
同(山原健二郎君紹介)(第二二六九号)
行き届いた教育の実現、教職員定数増に関する請願(不破哲三君紹介)(第二二六二号)
行き届いた教育を実現するための教育条件改善に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二二六三号)
三十五人以下学級、教職員定数改善、行き届いた教育の実現に関する請願(松本善明君紹介)(第二二六四号)
三十五人学級の早期実現と生徒急減期特別助成などの大幅増額に関する請願(正森成二君紹介)(第二二六六号)
すべての子供・生徒に行き届いた教育に関する請願(古堅実吉君紹介)(第二二六七号)
行き届いた教育の実現に関する請願(東中光雄君紹介)(第二二六八号)
三十五人以下学級の実現、教育予算の大幅増、父母負担軽減に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第二二七〇号)
三十五人以下学級の早期実現、私学助成の増額と拡充に関する請願(五島正規君紹介)(第二三五〇号)
小・中・高校三十五人学級の早期実現、急減期特別助成など私学助成の大幅増額に関する請願(五島正規君紹介)(第二三五一号)
同月十七日
聴覚障害者のため、テレビなどの字幕・手話に関する著作権法の改定に関する請願(前田武志君紹介)(第二四八四号)
同(大野由利子君紹介)(第二五二七号)
同(高木陽介君紹介)(第二五二八号)
同(古屋圭司君紹介)(第二五二九号)
同(森本晃司君紹介)(第二五三〇号)
すべての定時制・通信制高校生に対する教科書無償・夜食費の国庫補助の堅持に関する請願(坂口力君紹介)(第二五七七号)
同月二十八日
小中高三十五人以下学級の早期実現、私学助成の抜本的拡充に関する請願(山原健二郎君紹介)(第二六〇五号)
小・中・高校の三十五人以下学級実現・教育費父母負担の軽減と障害児教育の充実に関する請願(吹田愰君紹介)(第二六〇六号)
行き届いた教育の実現、教職員定数増に関する請願(山原健二郎君紹介)(第二六〇七号)
すべての定時制・通信制高校生に対する教科書無償・夜食費の国庫補助の堅持に関する請願(岩佐恵美君紹介)(第二六〇八号)
同(穀田恵二君紹介)(第二六〇九号)
同(佐々木陸海君紹介)(第二六一〇号)
同(志位和夫君紹介)(第二六一一号)
同(寺前巖君紹介)(第二六一二号)
同(中島武敏君紹介)(第二六一三号)
同(東中光雄君紹介)(第二六一四号)
同(不破哲三君紹介)(第二六一五号)
同(藤田スミ君紹介)(第二六一八号)
同(古堅実吉君紹介)(第二六一七号)
同(正森成二君紹介)(第二六一八号)
同(松本善明君紹介)(第二六一九号)
同(矢島恒夫君紹介)(第二六二〇号)
同(山原健二郎君紹介)(第二六二一号)
同(吉井英勝君紹介)(第二六二二号)
聴覚障害者のため、テレビなどの字幕・手話に関する著作権法の改定に関する請願(上原康助君紹介)(第二六四六号)
同(斉藤斗志二君紹介)(第二六四七号)
同(山花貞夫君紹介)(第二六四八号)
は本委員会に付託された。
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四月二十六日
新学習指導要領の抜本的見直しに関する陳情書(第二三八号)
第六十一回国民体育大会誘致に関する陳情書(第二三九号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)(参議院送付)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/0
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001・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。奥田文部大臣。
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文化財保護法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/1
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002・奥田幹生
○奥田国務大臣 おはようございます。
このたび、政府から提出いたしました文化財保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
文化財は、我が国の長い歴史の中で生まれ、はぐくまれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重な国民的財産であり、我が国の歴史、文化の理解のために欠くことのできないものであると同時に、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであります。
現行の指定制度は、文化財のりち重要なものを指定することにより所有者に一定の制約を課しつつも、貴重な国民的財産を守るという目的を達成しようとする制度であります。この制度は、我が国の文化行政の一翼を担うものとして、文化財保護の推進に大きな貢献をなし、広く国民の間に定着しているところであります。
しかしながら、近年、近代の多様かつ大量の文化財について、その歴史的重要性の認識が定まりつつあり、また、他方では、開発の進展、生活様式の変化等により、これら貴重な国民的財産である文化財が社会的評価を受ける間もなく、消滅の危機にさらされているという状況にあります。
国民の貴重な文化財を後世に幅広く継承していくためには、重要なものを厳選し、強い規制と手厚い保護を行う指定制度によるだけでは不十分であり、文化財の保護手法の多様化を図る必要があります。
このため、文化財保護法を改正し、指定制度を補完するものとして、届け出制と指導、助言、勧告を基本とする緩やかな保護措置を講ずる登録制度を導入するものであります。
また、この法律案におきましては、あわせて、指定都市及び中核市への権限委任並びに市町村の役割の明確化を図るとともに、規制緩和を進めることにより重要文化財等の活用の促進を図ることとしております。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
第一は、登録制度の導入についてであります。
登録制度は、建造物のうち国及び地方公共団体の指定文化財以外のものを対象とし、文化財保護審議会への諮問と答申を得て、文部大臣が文化財登録原簿に登録する制度であります。
登録される建造物は、その文化財としての価値にかんがみ保存及び活用のための措置が特に必要とされるものであり、官報で告示するとともに、所有者には通知をし、また、登録証を交付することとしております。
所有者には、滅失、毀損した場合や現状変更をしようとする場合等の届け出が必要となりますが、文化庁長官は、現状変更の届け出があった場合に、必要な指導、助言または勧告をすることができることとし、所有者の協力を得ながら適切な保存を図ろうとするものであります。
このほか、文化庁長官は、管理または修理についての技術的指導を行うことや、所有者に対して現状等の報告を求めることができることとしております。
第二は、指定都市及び中核市への権限委任及び市町村の役割の明確化についてであります。
文化庁長官が行うこととされている重要文化財の現状変更の許可等について、都道府県の教育委員会に加えて、指定都市及び中核市の教育委員会に委任することができるようにいたします。また、市町村の教育委員会に関し、文化財の保存及び活用について文部大臣または文化庁長官への意見具申や、文化財保護審議会の設置についての規定を整備するものであります。
第三は、重要文化財等の活用の促進についてであります。
重要文化財の公開について、文化庁長官の承認を受けた博物館等の施設の設置者が展覧会を主催する場合に、公開の許可を要しないものとするなど、規制緩和を進めることにより、重要文化財等の公開の促進を図ろうとするものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/2
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003・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/3
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004・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。濱田健一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/4
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005・濱田健一
○濱田(健)委員 早朝より大変御苦労さまでございます。
社会民主党の濱田健一でございます。
参議院先議として衆議院に回されてまいりました文化財保護法の一部を改正する法律案。きょうの読売新聞「編集手帳」の中に、大阪の吹田市の江戸時代の建物が、すばらしい歴史的な価値を持つものなんですけれども、何とか保存できないのかという住民の皆さん方が三万二千人の署名を集めて市役所に陳情されたらしいのですが、制度的にもなかなかそれを保存する方向性が見つからないということで、ぜひこの制度化を急いでほしい、地域の文化遺産を守るために残された時間は本当に少ないというような文章が示されております。
本日午前中、非常に短い時間ですけれども、出席の委員全員による真摯な討議の中で早急にこれを制度化していく方向で、補強的な意味をもって三十分質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず、今回の改正が二十一年ぶりのものであるということでございます。一九七五年六月十七日に参議院の文教委員会において十項目の附帯決議がつけられていると思うのですが、約二十年間たった今日、その実効性についてお尋ねをしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/5
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006・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございました昭和五十年の六月におきまして法改正をいただいたわけでございますけれども、ここで十項目の附帯決議がなされております。私どもとしては、これを十分尊重し、施策を推進してきておるわけでございますけれども、簡潔に御報告申し上げたいと思います。
まず第一点は、文化財の保護につきまして、「国民の理解協力を得るため、教育啓蒙活動を強化すること。」という点でございます。
この点につきましては、私ども文化庁といたしましては、文化財保護思想の仕組みあるいは文化財保護活動の現状、そういったものにつきまして広報や普及活動を進めておるところでございます。文化財に対する国民の皆様の理解、文化財保護の考え方の普及の徹底ということで政策を進めさせていただいているところでございます。
第二点目は、埋蔵文化財の関係でございます。
いわゆる埋蔵文化財の破壊を防ぐために、法五十七条の五に基づきます停止命令、これは、いわゆる周知の埋蔵文化財包蔵地でないところに緊急に何かが出てきた場合に停止命令をかけるという規定があるわけでございますけれども、この規定について、十分な調査を行うとともに、史跡の指定や仮指定を行うなど、埋蔵文化財の保全に万全を期すべきだという御指摘でございます。この五十七条の五の停止命令につきましては、これは大変異例な事態でございまして、開発業者の方が文化財保護について考え方が行政当局と全く違ってしまう、そしてやむを得ず停止命令をかけなければいけないという事態でございますけれども、幸い今日までこの停止命令を出すというような事態には立ち至っておりません。したがいまして、開発業者の方の協力を求めながら、発掘調査を話し合いで実施をしていくということで進めてきておるところでございます。
それから第三点目でございますが、国の機関等が行う発掘につきまして、文化庁長官が行う協議とかあるいは勧告について、その結果を公表しろという点でございます。
これは国の機関等が行います発掘についての特例でございますけれども、この点につきましても、実はこの法律の規定に基づく協議というのが行われた事例はございません。現実には、こういった事例に立ち至る前に事実上のいろんな御相談をさせていただきまして、適切な対応をさせていただいておるというのが現状でございます。
それから四番目の、埋蔵文化財について、包蔵地の地図等必要な資料を整備し、その周知徹底に努めろという点でございます。
この点につきましては、全国的に三十七万カ所のいわゆる埋蔵文化財の包蔵地が周知されております。文化庁におきましては、全国の遺跡地図を作成いたしまして、こういった包蔵地の資料の整備と、それからこれを国民の皆様に知っていただく、周知徹底に努めておるところでございます。
それから五番目の、伝統的建造物群保存地区の決定と保存についての問題でございます。この五番目の御指摘は、経費の分担を含めて、国と県、市町村が協力してこれに当たるべきだという点でございます。
この点につきましても、附帯決議の趣旨をそのとおり私どもは尊重しておるところでございまして、伝統的建造物群の保存地区につきましては、保存計画の決定について、市町村が中心になるわけでございますけれども、県も国もそれぞれ補助あるいは相談に乗っていくという形で、具体的にも、国庫補助要綱に基づきまして、国、県が事業費を分担補助する形で進めさせていただいておるところでございます。
それから六番目の、民話、民謡、郷土芸能、伝統工芸等の民衆文化と、それからアイヌの民俗文化等の保護につきまして、記録保存だけでなくて特別の措置を講じろという点でございます。
最初の民話とか民謡、郷土芸能等でございますけれども、これも重要無形民俗文化財として指定をするということも進めておるわけでございまして、平成八年の二月現在で百六十九件指定をさせていただいております。それから平成七年度から民謡記録ビデオ作成事業という事業を実施をいたしておりまして、記録し、保存する事業を行っております。それから、アイヌの民俗文化の保護につきましても、昭和五十九年にアイヌの古式舞踊を重要無形民俗文化財に指定をさせていただいておりますし、北海道教育委員会が行っておりますこういったアイヌ民俗文化の事業に補助という形で対応させていただいておるところでございます。
それから七番目に、文化財の保存技術者それから埋蔵文化財の発掘調査員等の養成確保と処遇の改善に努めろという点でございます。
まず一点目の文化財保存技術者の養成確保と処遇の改善でございますが、保存を図る必要のあるものにつきまして、選定保存技術という形で選定をさせていただいております。そして、その技術を持つ人や団体を保持者、保存団体ということで認定をさせていただいております。それから、昭和五十一年度から、後継者養成のための経費ということで、保持者の方あるいは保存団体に対して補助を行わせていただいておるところでございます。それから、さまざまな専門的な知識技術を習得していただくよう国内研修等も実施をしておるところでございます。
それから、埋蔵文化財の発掘調査員等の養成確保と処遇の問題でございますけれども、地方公共団体におきます専門職員は、近年、各都道府県等の御努力で数もふえてきておるわけでございまして、昭和五十年度にはこの専門職員の数が八百九十八名であったわけでございますけれども、平成七年度には五千六百九十二名に増加をしております。体制を強化していただいておるところでございます。こういった方々に対する研修等の充実につきましても、奈良国立文化財研究所等で実施をしておるところでございます。
それから八番目に、文化財保護について、市町村の役割を明らかにして、関係職員の確保について配慮しろという点でございます。
市町村の役割の明確化という点につきましては、今回お願いしております改正法案の中におきましても、市町村の文化財の保存、活用について、国に意見具申ができる規定を置かせていただく、それから市町村の文化財保護審議会の設置についての規定も整備させていただくということで、市町村が文化財保護に果たしている役割の大きいことにかんがみまして、その明確化を図ってきているところでございます。それから、関係職員の確保につきましても、自治省に対して、地方財政措置の改善を毎年度要望してきておるところでございます。
それから九番目に、文化財保存事業に対しまして、国と地方の財源を確保し、起債の充実を図れという点でございます。
この点につきましても、文化財保存事業についての国の予算は、昭和五十年度約五十九億円だったわけでございますけれども、平成八年度は百八十六億円ということで、約三倍強にふやしていただいているところでございます。また、地方公共団体におきます財源確保のために、交付税の改善を自治省にお願いしているところでございます。
最後に、法の運用に当たりまして、関係学会や文化財保護団体、地方公共団体の意見を十分尊重しろという点でございます。
文化庁に対して行われておりますいろいろな申請等につきましては、都道府県から進達をいただいておるわけでございますけれども、文化庁はそういった都道府県等の意見を十分尊重して処分を行ってきておるところでございます。それから、発掘調査等の補助枠の拡大等の要望につきましても、必要な額について要求をしてきておるところでございます。また、伝統的建造物群の保存地区の決定等につきましても、市町村が主体になるわけでございますけれども、県の意見を尊重しつつ、国としては適切な指導、助言を行っておるところでございます。
以上十点、さまざまな点で御指摘をいただいておるわけでございますけれども、私どもといたしましては精いっぱい、この決議の具体的な中身につきまして努力をしておるということを御理解賜りたいと思うところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/6
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007・濱田健一
○濱田(健)委員 御丁寧な説明、ありがとうございました。
二十年間それぞれ努力をしていただいているということを理解をしたいと思いますし、まだ足りない部分については今回の法改正でそれを補おうという御努力がなされているものというふうに理解をします。
今話をしてくださった一九七五年の附帯決議の前文のところに「埋蔵文化財包蔵地の発掘に関する許可制の実現」というのがうたわれているわけなんですが、この許可制というのは、具体的に考えられている制度はどんなものを意図していたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/7
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008・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございました許可制の実現の問題でございますけれども、これは十項目以外に前文のところで、昭和五十年の改正の際におつけいただいておるわけでございます。
実は、この許可制につきましては、埋蔵文化財の保護について許可制にするということになりますと、問題点といたしましては、新しい規制をかぶせる、許可でございますから。一般的には禁止をしているのを解除するということでございますので、かなりな規制の強化になるという部分があるわけでございます。一方で、こういった許可制を設けるべきではないかという御指摘をいただきましたのは、埋蔵文化財の保存のために、いろいろな包蔵地があるわけでございますけれども、それに対して許可制で大きな網をかぶせていく、その趣旨としては、埋蔵文化財をきちんと守っていくための措置の一つとしてそういうことを検討しろというふうに私どもは理解をしたのでございます。
実は、昭和五十年度から以降、開発事業が非常にふえてきておるわけでございます。例えば昭和五十年は千八百六件でございましたけれども、平成六年では二万四千五百件もの工事件数があるわけでございます。私どもとしては、発掘調査の必要な場合に、事業者の方と話し合いをして、許可制という形ではなくて行政指導というような形で何とか埋蔵文化財の保存をきちんとしていかなければいけないという観点でおるわけでございます。
埋蔵文化財につきましては常に、開発との調和を図るべきだということが言われているわけでございまして、開発を推進する側と、一方で文化財の保護、両方の公益のぶつかり合いといいますか、そういったことがあるわけでございます。ここに許可制を導入するということになりますと新たに非常に厳しい規制を強化するということでございますので、その点は、大変困難でございますけれども、私どもとしては、調和を図りながら、事業者や国民の方の理解を得ながら埋蔵文化財の保護に適切な対応をしていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/8
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009・濱田健一
○濱田(健)委員 規制緩和の時代に、すべてのものを規制緩和していくということだけではなくて、規制の強化もある部分については必要だというのはだれでも認識をするところであるんですが、今の答弁からいきますと、参議院でも次長が答弁されているようですけれども、いわゆる遺跡発掘の許可制の採用については、規制緩和をという理由で否定的である。発掘体制強化による開発との調和というふうにまとめられていらっしゃるわけなんですが、やはり後世に歴史的な遺跡をしっかり残していくという観点ではもう少し論議をする必要があるのではないかというふうに思うのであります。
例えば、山梨県の高根町というところでは、専門の職員が一人しかいないために、町の教育委員会が、遺跡に係る開発工事であるのに無調査で開発を認めているというような事例も御存じだろうというふうに思いますし、福島県の郡山市では、民間事業に係る遺跡調査でかかった経費、いわゆる原因者負担金一億五千万円、これに対して、文化財保護法では事業者に調査経費を求める明確な規定がないということで、事業者が損害賠償の訴訟に出ているというような事例などがあります。
埋蔵文化財の許可などの手続や原因者負担制度の明文化がないために、地方文化財行政上の末端では非常に苦労をされているというような状況等もございます。この許可制が現実のものとして妥当かどうかというのはもう少し論議が必要だろうと思うんですけれども、やはり将来に向けては、日本国有の遺跡、史跡というものをしっかり残していくための論議だけは続けるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/9
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010・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘がございましたように、貴重な文化財が調査もされないで滅失してしまうということは何としても避けなければいけないわけでございます。私どもといたしましても、仮に事業者が何かの開発をなさる場合に発掘調査を円滑にやっていこうということで、実は現在、原因者負担ということで、話し合いによりまして、当該発掘をなさる事業者の方に文化財の重要性についてお話をして御理解をいただいた上で発掘調査をしていただいているということが現状でございます。
お話がございましたように、万が一にも調査をしないで工事をしてしまうというようなことがあってはいけないわけでございます。私どもといたしましては、こういった点を周知徹底するために、都道府県それから市町村等につきまして、こういった文化財についての専門職員をふやすようにお願いをしていくということもやっております。それから、発掘調査体制を整備充実してまいりまして、新しい機器を導入していくとか、あるいは発掘調査の経費や期間等につきましても標準的な積算といったものを検討いたしまして、事業者の方も、こういうものがあればこれくらい期間がかかる、経費もかかるというようなことがある程度わかるようなスタンダードも決めていきたいと思っております。
いずれにいたしましても、事業者や国民の皆さんの文化財についての理解と協力を得ながら施策を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
原因者負担の問題につきましても、市町村の担当者の方からは、原因者負担について法律に明記してくださればもっと仕事がやりやすいということを伺っていることも事実でございます。ただ、原因者負担につきましても、土地を持っていらっしゃる方が開発する場合に必ず法律で原因者負担を義務づけるということもこれはまた一方で規制の強化ということになってしまうわけでございまして、これも実は新たな厳しい規制が加わるということで、法改正等もさまざまな批判や反対等も予想されるわけでございます。
私どもとしては、むしろ現在の事業者側の理解と協力を得ることで文化財を保護するという基本を守りながら、そういったことについて御協力いただくようにできるだけ適切な説明をして、しかも発掘調査の期間等につきましても、開発との調和が図られるようできる限りの努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/10
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011・濱田健一
○濱田(健)委員 御検討よろしくお願いいたします。
次に行きますが、今回の改正では、いわゆる登録制度を建造物に限定して導入されようとしていらっしゃるわけなんですが、本法案の附則第六項に明文化された十年後の有形文化財登録制度の検討という部分がございます。それについて、埋蔵文化財とか古文書、考古資料、美術工芸品等々、この適用の範囲を拡大していくという論議はなされなかったのか、また、今後の展望はどういうふうにお持ちか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/11
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012・小野元之
○小野(元)政府委員 今回、登録制度を建造物に限って導入する、これをもっとほかの範囲にも広げるべきではないかという御指摘でございます。
実は私どもも、今回法案を提出させていただくに当たりましては、部内でさまざまな検討を行わせていただいたわけでございます。その際に、建造物だけに限定すべきか、あるいはそれ以外の分野についても必要性のある分野があるのではないかということを真剣に議論をさせていただいたところでございます。最終的には、当面建造物に限って登録制度の導入を行うということでお願いしているわけでございますが、その理由といたしましては、特に緊急の必要性がございます。近年の国土開発等に伴いまして、保存すべき建造物が社会的評価を受ける間もなく取り壊し等の危機を迎えておるというのが一つ現状としてあるわけでございます。
それから、私どものバックデータといたしまして、近代の建造物について、文化庁あるいは関連の学会等で約二万五千件の候補物件をきちんと把握をしておるということもございました。そういったことがございまして、当面建造物からスタートしようというふうに考えたわけでございます。
ただ、御指摘ございましたように、この登録につきまして、登録制度自体は指定制度を補完する制度で、緩やかな保護措置を講ずるという制度でございますけれども、建造物の分野以外にも、こういった法律に基づく登録にすべきかどうかということについては議論があると思うわけでございます。歴史資料でございますとか民俗文化財等につきましては、例えば文化庁でそういった台帳のようなものをつくってそこに登録することで保護の進展が図られるというような部分も実はあるわけでございまして、こういった点も含めて、今後私どもとしては検討をしてまいりたいと思うわけでございます。
今回、例えば美術工芸品等について登録にしていないわけでございますけれども、登録制度を導入することによりまして、付加価値が生ずることによりまして流動性が高くなってしまって所在がわからなくなってしまう、むしろ文化財保護に逆行することが予想される分野も実はあるわけでございまして、そういった分野等につきましては、登録制度を実施するというのは慎重な検討が必要であろうというふうに考えているわけでございます。
いずれにいたしましても、今後私どもとしては真摯に検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/12
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013・濱田健一
○濱田(健)委員 やはりさまざまな考え方があるもので、真摯に拝聴いたしました。これからも検討をしていただきたいというふうに思います。
今回の登録制度なんですが、登録文化財となった場合に、所有者は、いわゆる家屋について固定資産税の二分の一以内の軽減、地価税の軽減、日本開発銀行等の低利融資などを受けられるメリットがあるように法律には書かれておりますが、義務として、滅失や毀損等の場合、現状変更のときの届け出等が義務づけられる。現状変更する場合に、文化庁長官が必要な指導、助言または勧告することができる、管理や修理については技術指導を行う、現状等の報告を求めることができるというふうに、所有者が課せられる義務、必要性というものも数多く盛り込まれているようでございます。
これは、いわゆる町に埋もれた建造物を所有者と国が一緒になって大事に守っていこうという趣旨の中では、お互いに協力し合わなければならないということはわかるんですが、現実に所有していらっしゃる方が、そういう義務とか届け出とか報告とかというものについて面倒くさいじゃないか、もう現状のままでいいよというようなことにならないように、やはりしっかりと論議をしていく必要があると思うのです。その辺について、役所としてはどういう手だてを講じながら登録制度推進の方向に持っていくのか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/13
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014・小野元之
○小野(元)政府委員 この登録制度でございますけれども、お話ございましたように、緩やかな保護措置ということで、事前に所有者の方の同意を得た上で、私どもとしては、文部大臣が文化財保護審議会に諮った上で登録をしていくということになるわけでございます。
いずれにいたしましても、こういった建造物、現在もそこに例えば会社の本店が置かれておったり、あるいは居住者の方がそこに住んでおられるというようなこともあるわけでございまして、使いながら保存をしていただくということが、最終的には近代の建造物等については最も保存がうまくいくのではないかと思うわけでございます。
いずれにしても、そういう観点で所有者の方に登録についても十分な御理解をいただいて、それに対しては基本的には指導、助言、勧告という形で緩やかなお願いをしていくというのが今回の登録制度であるわけでございます。この趣旨を国民の皆様に十分御理解いただくように周知徹底を図って、私ども一応二万五千件の候補物件をリストアップしておるわけでございますけれども、緊急にその一割については登録を実施していきたいと考えておるわけでございます。
現時点での登録された場合のメリットにつきましては、固定資産税が家屋について二分の一以内の軽減、それから地価税が二分の一の軽減、あと低利融資があるわけでございますけれども「来年度予算におきましては、これにプラスをいたしまして何らかの補助ができるような制度を検討したいというふうに思うわけでございます。
そういうことで、登録のメリットという点も明らかにした上で、国民の皆様に御理解をいただきながらこの制度を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/14
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015・濱田健一
○濱田(健)委員 その辺の所有者との意見交換といいますか、理解というのが一番大事だと思うのですよ。国としてはぜひ登録していただきたいということであっても、いろいろな状況等でなかなかそういうふうにならないこともあるかと思うのですが、しっかりと論議をしていただきたいと思います。
時間がありませんので急ぎますが、いわゆる建造物の保護、維持管理等を含めて文化財をどのように守っていくかということについては、書類の上で処理する仕事もありますけれども、実際に専門家がそれに当たらなければならないという現実的な課題があると思うのです。
私の県の教育委員会の文化課の人員的な配置を見てみたのですが、文化財主事というのはいるのですけれども、もちろん社会科の先生などが入っていらっしゃると思うのですけれども、この方たちは実際に建造物についての深い造詣や知識を持っていらっしゃるのかどうかちょっとわかりません。やはり二万五千件という建造物、登録物件の調査、保護のためにはそれらをやっていく専門家というのが必要になってくるだろうというふうに思うのでありますが、各都道府県や政令都市、中核市等、なかなかいらっしゃらないように私は思うのですね。
それで、やはり大学や大学院の工学部、建築士の皆さんとか美術の方で建築に詳しい方とか、そういう皆さん方を地方の教育委員会、都道府県の教育委員会等にしっかりと採用していく方向性というものが必要じゃないのか。いわゆる文化財保護主事という制度、これらについて文部省としてはどのようなお考えを持っていらっしゃるかをお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/15
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016・小野元之
○小野(元)政府委員 文化財関係の専門職員は各都道府県でもかなりの数を置いていただいてきておりまして、都道府県全体で文化財保護の行政担当職員が平成七年五月現在で二千九百八名いらっしゃるわけでございます。ただ、その中には、御指摘ございましたように、建造物関係の専門的な方というのは非常に少のうございます。私どもの調査では六府県四十四人にとどまっております。お話ございましたように、これからこの登録制度を実施していくためには、そういった専門家の方をふやしていくということも必要だと私どもは思っております。
そういうこともございまして、文化庁といたしましても、全国各地に建造物はあるわけでございますので、そういった専門的な知識を持っている方にいろいろなお願いをいたしまして、御助言をいただいたり、あるいは現実の建造物についてお調べいただくというようなこともお願いをしていこうかと思っておるところでございます。
いずれにいたしましても、建造物を登録する場合は、当該都道府県等の意見を聞いて適切に対応しようということでございまして、私どもといたしましても、そういう専門の方に御協力いただくシステムを考えていきたいと思っておりますし、各都道府県においてもそういう必要性が恐らく出てこようと思うのでございます。そういった点について心を配って、適切な対応ができるように努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/16
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017・濱田健一
○濱田(健)委員 時間が来ましたので、最後に一点だけ質問をさせていただきたいと思います。文化財保護審議会の問題なのですが、私たちの県、鹿児島では、三年前の洪水によりまして、五つの石橋のうち二つは流失し、三つはもう取りましてしまったわけなのです。最後に取りました西田橋という橋については、国の重要文化財に指定しませんかというお話があったときに、歴史的建造物というような表現をされました。その意味は、その位置にあってこそ文化財的価値があるということをおっしゃっていたというふうに思うのですが、いわゆる治水のために別のところに移しても文化財的な価値は変わらないということで移すことに決定をしているわけでございます。文化財としての価値をしっかりとするために、ある意味でそこになければならない文化財というような位置づけはできないのかというのが一点。
それと、審議会は、いわゆる諮問行政の中で、諮問されなければこのような重大な問題について審議ができない。自分たちの方から、今鹿児島に残さなければならない歴史的なものを審議して、簡単に動かしてはいけないのだよというような論議をする制度にはならないのかどうか。
それと、審議会は公開の原則の中で行われる必要があるのではないかということを文化庁としてはどのようにお考えかをお聞きし、最後に、大臣の今回の法律改正に臨まれる、これが成立した場合に国民の貴重な財産を守っていく立場で、文部省としてこれから強力にこれを実施に移していかれる前向きなお気持ちをお聞かせいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/17
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018・小野元之
○小野(元)政府委員 最初にございました鹿児島市の具体的な橋の問題でございます。
これは確かに、御指摘ございましたように、橋も文化財でございますから基本的にはその場所で保存をしていくことが最も望ましいわけでございます。ただ、県でいろいろ御検討をいただいた場合に、洪水等の安全性の検討が行われたわけでございますけれども、安全性の観点から現地での保存が困難ということで、やむを得ず違う場所、公園等に移す、移築をするという御方針をお決めになったというふうに聞いているところでございます。
私どもといたしましては、文化財はできる限りその場所で保存をするのが最も望ましいわけでございますけれども、それ以外の要素でどうしてもやむを得ない場合には、次善の策として、公園なら公園というところで、そこできちっと保存をしていくということも一つの方法ではないかと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/18
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019・奥田幹生
○奥田国務大臣 個別の案件につきましては今次長が答弁をしましたとおりでありますけれども、一般的には諮問に応じて審議をするということだけではなくて、やはりみずから建議をするということも、私は両面を備えておるというように理解をいたしております。
それから、情報公開についてでありますけれども、去年の九月の閣議決定で、できるだけ情報公開するようにというような決定がございますので、それを尊重いたしまして、議事録の要旨は公開にしております。御理解賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/19
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020・濱田健一
○濱田(健)委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/20
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021・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次に、山口那津男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/21
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022・山口那津男
○山口(那)委員 山口那津男でございます。
文化財保護法の一部改正案につきまして、若干の質問をしたいと思います。
今回、登録制度を建造物について導入することによって緩やかな保護を図ろうとする、この目的と制度を導入したことについては大いに評価されてしかるべきだろうと思います。この制度によりまして、これまで文化財としての価値を公に認知されていなかったものが初めてそういう認知に至る、こういうことは実際に起きると考えてよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/22
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023・小野元之
○小野(元)政府委員 この登録制度の前提といたしまして、指定制度を補完する制度として登録制度をお願いしているわけでございます。現在、主として近代の建造物につきましては、いわゆる重要文化財に指定するというほどの価値といいますか、その時点での典型的な、代表的な建造物というふうに認識はされていないものもたくさんあるわけでございます。多様かつ大量にそういったものがあるわけでございますけれども、それぞれの建造物はその地域におきましては非常に重要な歴史の遺産として大事なものもたくさんあるわけでございます。私どもといたしましては、従来の指定制度には乗っかりませんけれども、この新しい登録制度という形では登録文化財にふさわしいものは全国的にも約二万五千件はあるというふうに認識をしておりまして、そういったもので緊急に措置をしていく必要があるものがその約一割というふうに認識をしておるわけでございます。
そういう形で、新しいこの登録制度によりまして、文化財保護の政策がさらに推進できるというふうに思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/23
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024・山口那津男
○山口(那)委員 この登録制度というのは、一種の文化財保護の対象になると同時に、反面また一定の制約も受ける、こういう効果がもたらされるものでありますから、ある建造物がそういう対象になったよということが世の中一般に公示されるということが必要であると私は考えます。
この登録制度がどういう面で公示の機能を果たすのか、この点、念のため伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/24
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025・小野元之
○小野(元)政府委員 この登録につきましては、国の登録でございますけれども、文化財保護審議会に文部大臣が意見を聞いて決定するわけでございます。その個別の建造物につきましては、登録されますれば官報で公告して一般の国民の方にも御周知をいただくということがございます。それ以外にも、私どもといたしましては、この法律をお認めいただきますと、この登録制度の趣旨についても幅広く周知徹底を図って、国民の皆様方の理解を得るべく努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/25
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026・山口那津男
○山口(那)委員 従来余り議論されてこなかった問題であり、かっまた議論する実益があるかどうかも怪しいところではあるのですが、一点だけ伺いたいと思います。
登録制度が官報公示等によって公示の機能を果たすということでありますが、一方、建造物であり、近代の建築物も含むということになり、そしてまた新たに文化財として認知されるに至る、こういう制度の可能性を含んでいるところからしますと、不動産登記制度という一般的な公示制度との関係というものが議論されたのかどうか。私は、公示という面からすれば一覧的なものの方が望ましいと思うのであります。例えば不動産登記簿の中にそういう文化財保護の登録がされている旨が表示されるということが考えられてもいいのかなと思います。ただ、不動産登記制度そのものの目的とはまた異なるところもございますし、その点は一考を要するところだろうと思います。
いずれにしても、この文化財保護の登録の対象が処分を予定しておりますし、また改造等も予定されているところでありますから、その点についての御検討がなされたのかどうか、あるいはなされる必要性があるとは考えていないのかどうか、この点、念のため伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/26
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027・小野元之
○小野(元)政府委員 私どもといたしましては、この登録建造物に登録された場合に、そのこと自体をいわゆる不動産登記、法務省の登記の関係で明らかにするということは考えておりません。
ただし、お話ございましたように、登録文化財であるということを国民の皆様にも知っていただいて、その価値を活用していただくということも大変重要なことだと思っておりまして、私どもとしては登録原簿の一覧というものも作成したいと思っておりますし、それから具体的な登録された建造物につきましては、補助制度等を設けまして、登録証といいますかプレートといいますか、登録された建造物であることがわかるような証票をつけていただくということで、国民の皆様にも広く知っていただく努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/27
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028・山口那津男
○山口(那)委員 その他の文化財保護については同僚委員の質問に譲りたいと思います。
続いて、養護教育についての御質問を一点申し上げたいと思います。
この養護教育については、関係者の非常な努力によりまして年々充実してきているところでありますけれども、その中で訪問教育を受けるという対象の方がいらっしゃいます。これは義務教育の課程、小中の課程ではこういう機会が保障されておりまして、そのような制度は完備しているわけであります。年々この対象者というものが減ってはきているのですが、今なお平成七年の中学在籍者というのは一千名を超える、こういう状況であります。
他方、これら障害を持たれた方に対する施設の充実とかあるいは通学等の便宜とか、そういう努力もなされてきているところでありまして、これは両々相まってこれらの教育の充実を期する、こういうことになるわけであります。
そういう努力にもかかわらず、なお一千名以上の訪問教育の対象の方が中学部でいる、小学校ではもっと多いわけでありますが、この訪問教育を受けざるを得ないという実情について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/28
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029・遠山耕平
○遠山政府委員 お答え申し上げます。
訪問教育というのは、児童生徒の心身の状態が通学に耐えないということで、家庭にいて、そして教員の派遣を受けて教育を受ける、こういう制度でございまして、通学可能な子供については小中学部についてはすべて通学しているというぐあいに私ども認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/29
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030・山口那津男
○山口(那)委員 施設に通学できない方について、例えば施設に収容して、その施設の中でずっと継続的に教育をしていく、こういうこともあり得るわけですね。しかし、それすらも許さないで、家庭にあって訪問教育を受けている、こういう実情があるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/30
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031・遠山耕平
○遠山政府委員 施設等に収容されておりまして、例えば病院などでございますが、そういうところで特別の学校、学級をつくるということは行われておりますので、そういうところにも収容されないといいますか、家庭で寝たきりになっているというような子供たちに対して訪問教育という形で学校教育を行っているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/31
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032・山口那津男
○山口(那)委員 そういう方々が少なからずいらっしゃる。この方々が中学を卒業した場合に、高等部の教育を受けたい、こう願う場合もあるだろうと思いますが、この方々に対しては高等部においてはどのような対応がなされているのでしょうか。
端的に聞きますと、その訪問教育ができるようになっているかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/32
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033・遠山耕平
○遠山政府委員 現在、養護学校の中学部を卒業した子供たちのうち、大体八二%が高等部へ進学している状況にございます。したがいまして、現在中学部にいる人のうち、まだ高等部が設置されていないために高等部へ進学できないという子供が一一%ちょっといる状況にございますので、高等部を設置して、高等部に通えるように子供たちに進学の機会を与えるということをまず第一に考えて、そちらを優先して、県の方に養護学校の高等部を設置するように促進を働きかけているところでございます。
現在の制度では訪問教育については高等部について制度化されておりませんので、正式な形で高等部について訪問教育は実施されておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/33
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034・山口那津男
○山口(那)委員 高等部が設置されていないところもある、設置されたところであっても訪問教育は制度化されていない、こういう実情であろうと思うのです。しかし、中学まで訪問教育を受けるべき対象であった方が、卒業をされてそれ以外の方法で教育を受けられるというように、にわかにそう転換するはずはないのでありまして、やはり中学卒業後も訪問教育を受けられる道というものが制度として存在しないのは私はおかしいのではないかと思うのですね。それらの施設やあるいは訪問教育に携わるような人を養成するという面で進んでいない現状があるということはあり得るかもしれませんけれども、制度として訪問教育の仕組みをつくっていない、これはおかしいのではないかと思うのですが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/34
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035・遠山耕平
○遠山政府委員 高等部につきましては現在義務教育ではございませんし、現在中学部に在籍をしていて、高等部がないために高等部に進学できないという子供がかなりおりますので、まず、通学できる生徒を高等部に進学させる機会をできるだけ広げていくことが最優先の課題だろうということで各都道府県に高等部の設置を促進しているところでございまして、その後で、通学できない、そういう家に寝たきりの子供たちに対して訪問教育を行うということが適当ではないかというぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/35
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036・山口那津男
○山口(那)委員 今の御答弁、二点ほどわからないところがあるのです。
まず、高等部を設置している地域にあっても、施設が整った地域にあっても、訪問教育を受けざるを得ない対象の方というのは存在するのじゃありませんか。ですから、これは制度として、訪問教育を受けられるような仕組みというのは、可能性は開いておくべきだろうと思うのですね。
それから、高等部が設置されていない地域での方々については、高等部を設置して通学の機会を広げると同時に、やはり通学不可能な方という存在があるわけでありますから、こちらについてもあわせて訪問教育の道を開く。そして、そういう方々が全国で教育の機会を保障されるように制度としてもっと道を開き、また予算的な面でも対策を考える。これがあるべき政策のあり方なのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/36
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037・遠山耕平
○遠山政府委員 おっしゃることはよくわかります。私どもも、ずっと高等部について設置にこだわって、訪問教育を絶対やらないということではございませんで、現在、高等部があれば高等部に通学できる、そういう子供たちの教育を受ける機会をまず最優先して高等部の設置を促進している、こういうことでございます。
訪問教育については、制度をつくればすぐ実施できるということではございませんで、学習指導要領を改訂する必要もございますし、それから行財政措置をあらかじめ講じておく必要がございますので、そういう準備を行う必要があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/37
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038・山口那津男
○山口(那)委員 今、訪問教育をやるなという趣旨ではないというお話でありました。そして、高等部を設置して通学の機会を与えることを優先するというお話でありますが、既に設置されたところについては訪問教育の機会を順次施していくべきじゃありませんか。先ほど、高等部が設置されているところが八割近くになる、こういうお話でした。ですから、そういう地域については訪問教育の制度をどんどん実行してしかるべきじゃありませんか。それが指導要領等制度的な準備ができていない、これは余りにも怠慢と言わざるを得ないと思います。その問題点のありかというものは賢明な文部大臣はよく御承知かと思います。
それで、私事で恐縮でありますけれども、私の母親は長い間小学校の教諭をやっておりました。普通の学校の教諭を長くやったわけでありますが、晩年、病弱学級、大きな総合病院の中に設置された病弱学級というところの担任をしたわけです。ネフローゼや白血病等難病の方々が多くて、余命幾ばくもない、そういう方もいらっしゃる。そういう子供たちを同じ教室の中で教えていくわけであります。そして、残念ながら、闘病のかいもなく亡くなっていく方を目の当たりにする。しかし、そういう子供たちに対してもやはり教育の機会を保障し、そして親たちをも巻き込んで、そのわずかな人生の充実を期するために多くの方が懸命に努力しているわけです。そうした意味では、訪問教育を待ち望む方々というのが少なからずいる。しかし、そう大勢の方ではないはずであります。ですから、これらの方々に教育の機会を保障する。そういう意味で、まず制度を開いて、そしてまた具体的に実施をしていく、こういう決断が必要なのではないかと私は思うのです。
大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/38
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039・奥田幹生
○奥田国務大臣 既に局長からお答えしましたとおり、これまでの文部省の基本的な考え方としましては、現在、中学校からの進学率が八二%余り、それがもう一割ぐらいアップになれば、そこで訪問教育を考えてみょうがなと。決して訪問教育を検討していなかったというわけではない、しかし、できるだけ進学率を上げたいというところに重点を置いてきたわけでありますけれども、早くから訪問教育を待ち望んでいるところも先生が御指摘のとおりあると思うのです。でございますから、もう一遍、この際地方の教育委員会とも、先生せっかくの御提案でございますから、どこの地域ではどの程度そういうものがあるのか、実態を把握しまして、前向きに取り組むように、まず基礎的な調査から始めてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/39
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040・山口那津男
○山口(那)委員 義務教育課程での数字というものは把握されているわけでありますから、ぜひともこれをもとにして前向きの制度を考えていただきたい。ゆめゆめ、文部省の指導要領にないから我が自治体ではやりません、こういうことであってはならないだろう、こう思いますので、ぜひ御努力を期待したい、こう思います。
さて、次に、いじめの問題について御質問したいと思います。
先ごろ文部省の側である研究機関を通じていじめのアンケート調査を行った、こう伺っております。この調査の結果、いろいろと評価があるわけでありますけれども、一つは、いじめられる対象になる子供さんたちは相当心の痛手、傷を負っている実態がある。そしてまた、先生が期待をされながら、教師、先生方がかかわっていじめを解決していくという結果に意外と結びついていない嫌いがある。それからまた、家庭における親のかかわり方というものも、意外と親の認識の方が薄かったりする場合もある。こういう結果が見てとれるようであります。
まず、この調査結果の評価、そしてこの結果を今後の対策にどう生かしていかれるおつもりか、この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/40
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041・遠山耕平
○遠山政府委員 今回のアンケート調査の結果でございますが、先生からお話がございましたように、特徴的なこととしまして、保護者や教師が子供のいじめの実態を十分に把握できていないということが明らかになっております。また、先生についても、担任が対応した結果、半数近くがいじめが解決をしたということは評価できるところでございますけれども、先生の方でもいじめに対する基本的な認識に不十分なところが見られるということは非常に残念でございます。
例えば、九割の先生がいじめは絶対許されないという認識を持っている一方で、二割くらいの先生がいじめは成長にとって必要な場合もあるというような、いじめに対して甘い認識を持っているという点は問題であろうというぐあいに考えておりまして、今後さらに指導を徹底すべきものだと考えております。
それから、家庭の関係でございますが、家庭においても保護者が子供のいじめを見過ごしがちであるということでございまして、保護者のうち、実際に子供がいじめられているのに、小中学校では約六割の親がそれを気づいていない、高校では約八割の親がそれを気づいていない、そういう実態があるようでございます。
それから、家での生活が楽しくないととらえている子供にいじめの体験が多くなる傾向があるようでございまして、保護者の方々におきましては、家庭内における対話、会話を大事にする、それから親子で触れ合う機会をふやすというようなことをお願いしたいと思っております。
それから、子供の関係、子供たち同士の関係でございますが、これは非常に流動的でございまして、いじめた子は普通のつき合いであったというのが三、四割、それから仲のよい友達であったというのが二割くらいある状況でございまして、友人関係が非常に流動的で変化しやすいということが浮かび上がっているわけでございます。
文部省としましては、専門家会議におきましてこのアンケート調査の結果を詳しく分析をして、このデータをもとにどのような対応策をとったらいいかということを今真剣に検討していただいております。この専門家会議の結論がまとまり次第、その線に沿って、文部省としては積極的な取り組みを行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/41
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042・山口那津男
○山口(那)委員 法務省に伺います。
人権擁護局において、同じく最近いじめについてアンケート調査をされました。これもかなり大がかりな調査であります。この結果をどのように評価され、そして人権擁護局としてこれからの政策にどうこれを反映させていくおつもりか、この点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/42
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043・坂井靖
○坂井説明員 お答えいたします。
今回のアンケート調査を実施した趣旨、目的をまず御説明しておきたいと思いますけれども、近時、いじめを初めとする子供の人権問題、これが大きな社会問題となっている。そこで、小学校五年生、六年生を対象としまして、現在の小学生がいじめあるいは不登校などの子供の人権にかかわる身近な問題についてどのように考えているのか、その実態を把握するために実施したものでございます。
調査結果によりますと、今までにいじめを受けたことがあると答えた児童、これが全体の四二一二%、あるいはいじめを受けても我慢していると答えた児童、これが三一%に上る、このような結果が出ておりまして、小学生の生活においていじめが深刻な問題であることが改めて明らかになったものと評価しております。
次に、法務省の取り組みでございますが、法務省では、いじめなどの子供の人権問題につきまして積極的な啓発活動を行っております。それと同時に、具体的な事案につきましては、人権相談あるいは人権侵犯事件として積極的に取り組んできたところでございます。特に本年度におきましては、「子どもの人権を守ろう」、サブタイトルを「「いじめ」しない・させない・見逃さない」、これを年間の啓発活動重点目標に定めております。同時に、子供の人権問題を専門的に取り扱う子どもの人権専門委員、この方々とともに子供の人権問題についての取り組みを強化したところでございます。
今回の調査におきまして、特にいじめが深刻な問題であるということが改めて判明したことを踏まえまして、今後とも子供の人権問題の解決に向けて、より一層積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/43
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044・山口那津男
○山口(那)委員 法務省サイドとしては、その目的に従ってぜひ頑張っていただきたいと思うわけであります。
ほぼ同時に同じような関心対象について調査がなされたということでありますので、大臣、私はこの法務省の調査結果も文部省の今後のいじめ対策に大いに参考になる部分があるだろうと思いますので、ぜひ文部省の調査の評価検討の際にも、この法務省の調査結果等も生かすようなそういう御努力を賜りたい、こうお願い申し上げます。
そこで、文部省の調査に基づいて、親子の触れ合いがいじめの解決に効果があるだろう、こういう御認識のもとに大臣は経済界の方と意見交換をされた、こう報道されております。こういうことも大いにやるべきだと私は思うわけですね。そうした中で、労働時間の短縮が親子の触れ合いを促進する、こうお考えになっているだろうと思います。そうであるならば、大いに社会全体としてそういうものを促進する中で親子の触れ合いの場を広げる。同時にまた、学校制度の中でも学校五日制度というものを、これらの観点からもっと早期に促進する必要もあるのではないかと私は思うわけですね。このいじめ問題の解決、こういう視点から労働時間の短縮あるいは学校五日制の促進というものについて、大臣のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/44
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045・奥田幹生
○奥田国務大臣 学校五日制につきましては、今中央教育審議会で将来の教育のあるべき姿、方向、こういうものを検討していただいておりまして、近く答申がいただけるようでございまして、そしてその中の大きな柱として学校五日制が入るような、そういう御論議の様子だと承っておるわけです。
時代の趨勢がそこにありますならば、やはりゆとりある教育、そして文部省としてもそれを受けて具体的に対応策を考えていかなければならぬわけでありますけれども、御承知のとおり今、月二回五日制をとっているわけですね。そこで現在の学習指導要領というのは手いっぱいの状態でございます。したがって、五日制をとりますならば、指導要領、教科書、すべて変えていかなければなりませんから、中教審から答申をいただきましても、その方の作業を教育課程審議会の方で御論議をいただかなければならぬ。これはこれで一つのルールがあるわけで作業をいたしますけれども、一方では家庭とか地域社会の受け皿づくりも大変必要だと思うわけです。
きのう、初めて日経連の会長さん初め幹部の方にお会いをいたしましたのは、四月に生涯学習審議会から答申をいただきましたその中に、非常に大事な項目がございました。家庭及び地域社会にももっともっと教育力を充実するようにという項目があったわけです。家庭の教育力の充実といいますと、わかりやすく言いますと、私はしつけだと思うんです。なるほど、考えてみますると、一日二十四時間のうち学校におりますのは三分の一以下ですね、朝八時過ぎに登校しまして、そして三時半か四時ごろに帰ってくるとしますと。やはり子供は家庭と地域社会に生きておるわけでございますから、そこでのしつけというものが非常に大事になってまいります、親それから地域社会の皆さん。
だから、そういう点で、日本人は働きバチ、こう言われておりましたけれども、今先生お話しのとおり、ゆとりある労働時間、生活という時代に入ってまいりましたので、もう少しお父さん、お母さんも、特にお父さん、家庭にも心を寄せてもらいたい。心の居場所は家庭なんだという理解をしていただいて、そして子供さんと一緒に月に一回ぐらいはハイキングに出かけたり、あるいは一緒に草花を植えて育てるというようなことも非常にいいことではありませんかというようなことも、私の方から申し上げていたわけでございます。また、地域社会におきましても、いろいろとボランティア活動がこのごろ活発になってきておりますから、そういうところにもお父さん方がお休みの日には参画してもらうことも、非常にいい勉強にもなるのではないでしょうか。
それからまた、隣近所の子供が小さい子供をいじめておる、わかっておりながら知らぬふりをしておるというのは、これはいけません。やはり他人の子供さんでも、いかがわしいようなことをしておるなら、どうか遠慮なく注意をしていただきたい。そういう地域社会にならないことには、なかなかいじめの追放、克服ということはおぼつかないと思いますから、そういうことについてもよろしく御協力を賜りたい。
したがって、アピールをきのうは文書で提示をさせていただいて、それをそれぞれの参加されておりまする団体に流していただきたいということを頼んでおったわけであります。きのうが第一発でございまして、あと経団連、それから中小企業団体中央会あるいは商工会議所、こういうようなところにも、向こうさんの日程に合わせて順次お願いに回ろうかと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/45
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046・山口那津男
○山口(那)委員 時間が参りましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/46
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047・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次に、坂口力君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/47
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048・坂口力
○坂口委員 余り文化的でない人間が文化財の質問をさせていただくのはいささか気が引けるわけでございますが、理事さんからぜひおまえがやれという御指名でございまして、きょうは質問させていただくことになりました。ここに立ちましたら、我が新進党の側も藤村理事さん以外だれもおりませんで、新進党ももう少し文化に関心を持たなければいけない、こんなことでは大きくなれないなと思いながら質問に立ったような次第でございます。
さて、本論に入ります前に一、二ちょっとお聞きをしたいことがございます。これは昨日申し上げてないことでございますが、肩の凝らない話でございますので、お聞きをいただきたいと思いますし、また大臣もちょっとお聞きをいただいて、コメントがございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
今回、質問をしろということなものでございますから、実際のところはちょっと弱ったわけでございまして、それで近くにございます政府の出版物が販売されております書店に参りまして、何か文化財についての本はないかと見に行ったわけでございます。探せども、なかなか文化庁が発行されておりますところがないものでございますから、係の人に聞きまして、どこですかと言ったら、文部省の中に入っているということで、文部省の発行されておりますものの中をずっと見たのですけれども、それでもなおかつ、なかなか見当たらないわけでございます。ようやく見つけましたのが、一つは「国語に関する世論調査」というのがございまして、その結果を載せましたパンフレット、ちょっと厚いのが一つ。それからもう一つは、去年通りましたから「宗教法人必携」がございましたのと、二冊あるだけでありまして、全然文化庁から出版された本はないのですね。
ほかの各省庁はたくさん出ておるわけですね。文化庁のものは全然ない。本を出版するのが文化的とは決して私も申しません。大変文化的な方でも本は出さない人もたくさんあるわけでございますから、本を出版することだけが文化的とは申しませんけれども、文化庁は、もう少し書物として、出版物として残すべきものというのはあるのではないかな。写真に残しましたりとか、あるいは文書として残しましたりとか、いろいろなものはあるのではないのかな。あるいは、私がよく探さなかったのかもしれません。しかし、あそこにたくさんあればもっと目につくと思うのですけれども、目につかないところを見ますと、少ないのだろうと思うのですね。
これは予算が少ないから出せないのか、それとも、そう言うとしかられますけれども、余り出しても仕方がないというふうに思っておみえになるのか、本論に入ります前に、なぜそうなのかということを非常に不思議に思ったものですから、ちょっとお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/48
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049・小野元之
○小野(元)政府委員 私ども文化庁といたしましても、私どもの施策について国民の皆様に理解をいただく、あるいは都道府県や市町村の職員の方々に理解をいただくというのは大変大事なことだと思っております。
実は、私どもの出版物といたしましては、単行本ではございませんけれども、毎月「月刊文化財」というものを出させていただいておりまして、これは各博物館でございますとか美術館その他にも、教員委員会等にもお配りをしているわけでございます。それからもう一つは、「文化庁月報」というものも出してございまして、先生御指摘ございましたように、やはり今、政府として、文化庁として取り組んでいる施策について国民の皆様に御理解いただくというのは非常に重要なことだと思うのでございます。
それから、単行本といたしましては、先生ごらんいただきまして見つからなくて恐縮でございますけれども、例えば、国宝や重要文化財の建造物の目録といったようなものもつくっておりまして、こういったものがあるので国民の皆様にぜひ御運解いただこう、まだ余りぱっとしないではないかというおしかりをいただくかもしれませんけれども、施策についてはきちんと国民の皆さんに御理解いただこうと思っているのでございます。
それから、もう一つ新しい話といたしましては、文化財や文化についての情報システムを構築をいたしました。コンピューター等を通じまして、いろいろな美術館の情報でございますとか博物館の所蔵品の情報、そういったものもできるだけ公開をして、皆さん方に御理解いただこうということで努力をしておるのでございます。
たまたまお見つけいただけなくて大変残念でございますけれども、私どもとしても、そのことは大変大事だということは思っているのでございまして、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/49
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050・坂口力
○坂口委員 出していただいておりましたらそれでもいいわけでございますが、書店に参りまして思いましたのは、他のところにはたくさんの人がおりまして、本当に人を押しのけて見ないと見られないほどたくさんの人がおりますのに、文部省のところはがらっとしておるのですね。だれもそこに立ちどまっていない。ましてや、そのだれもいないところで、文化庁なる文字は目を丸くして探さないと出てこないというようなことでは、ちょっとこれは残念だ。文化ということについては大事だということはみんなわかっているけれども、あるいは文化財ということについては大事だということはわかっているけれども、関心が薄いことだけは確かだと思うのです。もう少しみんなにPRしなければいけない。他の省庁があれだけたくさんの書物を出しておみえになるわけでありますから、もう少しPRもしてもらいたいというふうに最初にお願いを申し上げておきたいと思います。
それから、これはいかぬと思いまして紀伊國屋に参りました。文化に関係しております本のところに参りましたら、ここはやはり文化にかかわる本はたくさん出ております。しかし、文化庁から出ておるものはやはりそこにもございませんでした。それ以外の文化にかかわります本は、例えば文化人類学でございますとか比較文化論でございますとか、あるいはまた言語と文化でございますとか記号と文化でございますとか、さまざまな本がたくさん出ておりまして、五、六冊ばらばらと目を通させていただいたわけでございます。
もう一つ私不思議に思いましたのは、こういう文化にかかわります本の中に言葉、言語に関する部分というのは非常に大きなウエートを占めておるわけですね。また、文字に対しても非常にたくさん取り上げられている。ところが、文化財というものの中には言葉とか文字というのは出てこないのですね。
文化財というのは一体何かな、どんなものを文化財というのかな、大変に中学生みたいなことを考えまして、三省堂の辞書を引いてみましたら、世の中が開け生活が便利になることが文化、角川書店のものを引きましたら、世の中が開け進むことと書いてある。文化財は、世の中が開け進む過程で生み出されたものと書いてある。それでは、開け進む中で生み出されたものとしては、言葉だとか文字というのは、これは大変大きなもので、大きな影響を与えたことだけは間違いないわけです。
しかし、文化財保護法を見ましても、この法律の第二条に「文化財」というのがございますが、その中に「建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書」、こういったものがございます。古文書というような形では出ておりますけれども、あるいは字でも、書いたものというのは一つの文化財としてありますが、文字そのものあるいは言葉というのは文化財に入っていない。それは消えてなくならないからかな。そうすると、なくなりそうなものが文化財になるのかな。しかし、それも定義としてはいささかおかしいなという気もするわけでございます。これは、文化庁が出しておみえになります書物が少ないことから、そんなことまで私の思いは至ったわけでございます。
例えば言葉でも、琉球語でございますとか、あるいは日本の中にもさまざまな、このまま置いておきましたらなくなりそうな言葉というのはあるのだろうと思うのですが、そうしたものは一体文化財にはならないのか。音楽というのはあるわけですね。だけれども、言葉というのはならないのか、あるいはなっているけれども私が知らないのか。これもちょっと疑問に思ったものですから、本論に入ります前にちょっとお聞きをしておきたいと思います。
そんなさまざまなことを思いましたので、大臣からも何か所感がございましたらひとつお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/50
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051・奥田幹生
○奥田国務大臣 確かに予算的に、文部省の予算といいますのは五兆七千五百億円ほどありますけれども、その中の七七・四%は義務的な経費でございますから、政策的な経費というのは非常に窮屈でございます。しかし、文部省といいますのは、教育だけではございませんで、芸術とか文化とかスポーツとか、そういう非常に幅の広い分野で仕事をしておるわけでございますから、やはり先生おっしゃっているような、そういう書物、記録というものは、これは金がないから出せませんということでは責任を果たすことにはなりませんから、やはりよその役所に負けないように、書物としても大事なことは残してまいらなければならぬ、そういうふうに基本的には考えております。
あとの質問は、次長から答弁させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/51
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052・小野元之
○小野(元)政府委員 私どもといたしましても、例えば文化庁の中に国語課がございまして、美しい日本語をきちんと残していく、あるいは新しい時代に応じた日本語というものをきちんと考えていくという施策も実は私どもの所管でもあるわけでございます。
お話ございましたように、文化財につきましては文化財保護法の第二条で定義があるわけでございます。先ほど先生もお話ございましたけれども、書跡とか典籍、古文書といったような形で過去に書き記されたものが、そのこと自体が文化財として保存をされているものはたくさんあるわけでございまして、その点はもちろん文化財の対象になっているわけでございます。それから、音楽やあるいは舞踊や、そういった言葉を伴います芸術で、民俗文化財等で邦楽等もいろいろ指定をされておるわけでございますけれども、そういったものももちろん文化財になり得ると思うのでございます。
いずれにいたしましても、先生御指摘ございました文化庁の施策を国民の皆様にもう少しきちんと御理解をいただく、あるいは文化の政策あるいは文化財、それぞれにつきまして、国で今行っておりますことを御理解をいただくとともに、そういったことについていろいろな御批判があればそれも承りまして、行政としては国民の期待に沿うべき姿を追求していかなければならないと私どもは思っておるのでございます。
いずれにいたしましても、文化とはこういうものだということで文化庁が役所として示すというのも反発があることも事実でございまして、文化自体は非常に幅広いものでございますけれども、その中で私どもとしては予算もお願いし、あるいは施策のPRといったこともきちんと行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/52
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053・坂口力
○坂口委員 皆さんが一生懸命やっておみえになることはよくわかりますけれども、研究者がいわゆる文化論などの中で一生懸命研究なさっている範囲の中で、多くの人が取り上げておりますようなところが文化財として指名する中に入っていないということについて、少し私は今疑問に思ったものですから、指摘をさせていただいたわけであります。
アイヌ語でありますとか琉球語でありますとか、そうした言葉も語られてこそ生きた言葉でありまして、そうしたことはこのまま置いておいて一体続いていくのだろうか。そうしたことは学者の皆さんに任しておいていいのだというふうに言ってしまっていいのか。文化財という立場から、それでは言葉というものは文化財の中には入らないのか。この辺のところも、文化財とは何かということについて一遍原点に返って考えていただく、あるいは整理をしていただく必要があるのではないだろうか。その辺をひとつお願いをしておきまして、本日のこの法案にかかわります具体的な問題に入らせていただきたいと思います。
先日、NHKの映像で、ある古いま院の再建をされますのに必要なくぎを一本一本つくっておみえになります方の映像がございました。何か八千本からのくぎを一本一本おつくりになってお納めになった御苦労が放映されました。古い時代に使われましたくぎを集めまして、そしてそのくぎを溶かして、もう一度そのくぎの鉄の組成を調べて、同じ組成のものをつくり上げて、そしてまた一本一本新しいくぎにそこからつくり直していく、その再建にこのくぎをふいごで吹きながらつくり上げていく、そういう映像でございまして、非常に感銘を受けて私見せていただいたわけでございます。
今回いただきました資料を拝見をいたしましても、こうした古いま院あるいはお宮さん等も入るかもしれませんけれども、保存技術の保持者あるいは団体数というのが非常に少ないわけですね。もう少し多いのかなというふうに思っておりましたけれども、いただきました資料を拝見をいたしますと、有形文化財関係では、この技術の保持者は十八人、保存団体としましては七団体ですが、ダブったのがございますから実際には五団体ということでございます。無形文化財等に関係する人も十八名、団体数で九団体、こういうことになっておりまして、非常に少ないわけでございます。
大変な御苦労の中で古いものを維持していく、修理をしていくということに努力をしておみえになる方があるわけでございますが、日本の中でこれから登録制が導入をされて、修理等をしていかなければならないものがさらにふえてくるということになれば、この技術を継続をしていく、古い技術を継承していく、そういうことに対してももう少しやはり力を入れていかないと追いつかないのではないかというふうに思いますが、この辺についてこれからどうなさるおつもりなのか、ひとつ決意を込めた御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/53
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054・小野元之
○小野(元)政府委員 お話ございましたように、和くぎといいますか、古い日本のくぎを打ち直して再利用に努めておるわけでございまして、これは何百年ももつということで、現在の洋くぎといいますか、私どもが普通打っているくぎよりもはるかに長もちがするわけでございます。そういう歴史を持った和くぎを新たに製作する場合におきましても、実はざまざまな問題があるわけでございまして、玉鋼を確保することがなかなか難しくなっておるとか、さまざまな課題が実はあるわけでございます。
先生お話ございましたように、私どもといたしましては、文化財の保護を推進していく中で、そういった保存の修理技術あるいは伝統的な技術というものをきちんと保存をしていく、そういった職人の方、宮大工の方々を大切に、後世にその技術を伝えていただかなければいけないということがあるわけでございます。
お話ございましたように、具体的な選定保存技術の認定等につきましては、先ほどお話ございました有形文化財関係で十八人、保存団体が五団体ということでございますけれども、私どもといたしましては、文化財の保護を考えていく場合に、こういった技術者の確保、後世にきちんとその技術を伝えていただくというのは大変大事なことだと思っているのでございます。
そういう関係で、そういった養成研修事業を積極的に行っていくことも必要でございますし、財団法人の文化財建造物保存技術協会、あるいは全国社寺等屋根工事技術保存会等々、そういった財団法人等にお願いいたしまして、宮大工さんや屋根ふき技能者の養成研修といったものも今進めておるわけでございます。
御指摘ございましたように、こういった方々をきちんと大切にして、そして必要不可欠な技術を後世まで残していくということは大変大事なことでございます。今回、建造物の関係で登録制度をお願いしているわけでございますけれども、文化庁といたしましては、こういった技術者の保護、それから後継者の養成といった点につきまして、全力を挙げて努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/54
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055・奥田幹生
○奥田国務大臣 私、地元は京都でありますけれども、京都の知恩院の三門をふきかえようとしましたら、奈良の大仏さんの屋根のふきかえに職人さんが全部行っておりまして、その奈良の屋根のふきかえが終わるのを待たないと知恩院の三門の屋根のふきかえができなかった。非常に職人が少なくなっておるということも一つございます。これは屋根ふきの職人でありますけれども、ほかにも、ついこの間、私は建具の組合から、だんだんと後継者がなくなる心配がありますから何とかこれを後世に伝えるような施策を国の方でも考えてもらえませんかという依頼を受けました。ほかに、仏具でありますとかいろいろなところで伝統工芸産業が衰退の危機に瀕しておるような状態でございます。
したがって、これは私案でありましたけれども、私のところの場合、たまたま前の教育長が今度市長に就任をされましたので、京都の町の中で統廃合で空き学校ができましたので、そこを利用して二つ、三つで、これは屋根の職人の後継者の育成、これは仏具、これは漆器とかあるいは製織とか、そういうような後継者保存のセンターをつくるようなことができないか、じゃ検討してみましようと、今検討してもらっているわけでございます。
国としてもそういう取り組みが必要でございましょうし、やはり文化財をたくさん抱えておる自治体においてもできるだけそういうような施策を考えて、立派な伝統産業は後世にずっと残していくような手だてを今しておく義務が我々に課せられているのじゃなかろうかな、そういう気がいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/55
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056・坂口力
○坂口委員 そうしますと、決意だけではなくて、今まで以上にそうした後継者の人たちを育てていくという体制はとれるのですね。今までよりもとれるのですね。とりたいという決意だけにとどまっているのと、決意だけではなくてもうスタートしているんだということと大分違うと思うのですね。ずっと前から決意はあるわけですけれども、決意だけではこれは進まないので、今度登録制度が導入される以上、決意だけではだめだと思うのです。これは前進できるのか、その体制にあるのかどうか、そこだけちょっと念押しさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/56
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057・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘の点、私どもも本当に大事なことだと思っておりまして、平成七年度に、例えば新しいことといたしまして、表装建具の製作、烏梅の製造、平成八年度には歳の製作、その修理、粗苧の製造、これは久留米がすりの粗苧でございますし、筬というのは織機の筬でございます。細かい技術を要するわけでございます。それから、歌舞伎の小道具の製作等新しい分野をで選定保存技術を積極的に選定をするということを一つやっております。
それから、平成八年度の予算におきましても、文化財の保存技術にかかわります中堅の技術者がより高度な専門的な知識や技術を磨けるようにということで、国内研修事業を拡充をいたしております。それからさらに、こういった選定保存技術の保持者に対する後継者養成のための補助金を実は増額いたしておりまして、従来八十万円であったところを今百十万円に拡充しておる。まだ少ないわけでございますけれども、そういう努力もしておるところでございます。
文化財保存技術者の後継者の育成のためには今後とも積極的に力を入れていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/57
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058・坂口力
○坂口委員 ぜひお願いいたします。八十万円が百十万円になったと言われますと、いささか心もとないですけれども、もう少し頑張っていただくようにお願いをしたいと思います。皆さん方に言うだけではなくて、我々も同じように頑張らなければならないことだと思いますが、ひとつ皆さん方も積極的に計画を立てていただきたいと思います。
それから、今回登録制度というのができ上がったこと、これは私も賛成でございますが、英国では、埋蔵文化財に対しましてもこの登録制度というのは適用になっております。今回建築物には適用になりましたけれども、埋蔵文化財には適用になっていないと思いますが、これはなぜ差がついたのか、なぜ建築物だけになさったのかということをお聞きしたいと思うのです。
建築物も埋蔵文化財も、例えば指定から漏れて、捨てておけば非常に破壊されていくというようなことについては同じではないかという気もするわけでありますが、なぜこの差がついたのか、あるいは、ひとまず建築物でスタートをしたけれども、これからこれは拡大をしていくのだということなのか、その辺のところも含めてひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/58
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059・小野元之
○小野(元)政府委員 基本的に登録制度は、今回は緊急性ということで建造物をまず最初にお願いしたわけでございます。先ほども申し上げておりますように、将来これを拡充することについては検討していきたいと思っておるのでございます。
お話にございました、埋蔵文化財をなぜ登録制度に乗せないのかということでございますけれども、埋蔵文化財につきましては、周知の埋蔵文化財でございますけれども、具体的にどういったものが埋蔵されているのかということが発掘調査をしていない時点ではまだわからないわけでございます。したがって、現在、埋蔵文化財があるということはわかっておりましても、そこにどういうものがあるかということは内容が判明していないわけでございまして、こういったものに対して指定をするとか登録をするということは、現在の制度上はなかなか難しい点があるわけでございます。
それからもう一つは、中身ははっきりしていないわけでございますけれども何らかの埋蔵文化財が埋もれているという土地につきましては、私どもは周知の埋蔵文化財包蔵地ということで周知を徹底しているわけでございます。仮にそこで何か工事をなさるということでございましたならば、文化庁長官に対して事前にその旨を届け出をいただく、それに対していろいろな指導をしていくということが制度としてはあるわけでございます。
埋蔵文化財につきましては、指定にしろ登録にしろ、物が明らかになって、それに対して保護のために具体的な行政行為を行うということでございますけれども、埋蔵文化財はまだ何が入っているかわかりません。しかしながら、そこが包蔵地だということで既に周知を徹底しておるわけでございまして、どちらかといいますと、埋蔵文化財の現在の制度の方が重要文化財の指定や登録といったようなものよりも保護の対象が広いということも言えるのではないかと思うのでございます。
それから、埋蔵文化財包蔵地につきましては、遺跡地図あるいは遺跡台帳といったものをつくってそのことを広めていくということで、ここに何かはわからないけれども埋蔵文化財があるのだということで周知を図っておるわけでございまして、そのこと自体が、ある意味では登録と同じような措置がとられているということも言えるのではないかと思うのでございます。
そういう観点もございまして、今回、埋蔵文化財については登録制度を直接適用するということにはしていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/59
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060・坂口力
○坂口委員 今後はどうなんですか。今後は検討するのですか、しないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/60
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061・小野元之
○小野(元)政府委員 登録の範囲の拡大といいますか、現在の法律による登録制度をそのままほかの分野に適用するのがいいかどうかということについては議論があるわけでございますけれども、例えば歴史資料でございますとか民俗文化財等については、そういった台帳に登録する、あるいはそういう立派なものがあるということを公にすることで文化財保護に役立つ部分があるわけでございますので、そういったものについては検討してまいりたいと思っております。
ただ、お話し申し上げておりますように、埋蔵文化財自体については、これを直ちに登録するということは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/61
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062・坂口力
○坂口委員 私は、十分わからないものですから、済みません、あるいは間違っていたらお許しをいただきたいと思うのです。
埋蔵文化財の場合、ここに文化財があるというので掘ります。掘りますときに、指定をされてから掘るのでしょうか。それは、掘った結果、これは指定に値するということになるのではないでしょうか。掘ったけれども、指定には値しないというものもあるはずですね。しかし、地元としては、これは残したいということだってあるのではないかという気がするのです。そのときには、やはり登録制度というのがあれば、登録制度にしてこれは残していくということだってあるのではないかという気がしますが、そこはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/62
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063・小野元之
○小野(元)政府委員 埋蔵文化財の場合、例えば工事をする場合には、そこに大事なものがあるかもしれないからということで届け出をしていただいてやるということでございますけれども、いずれにいたしましても、調査をした後で、埋蔵されているものがはっきりした時点で重要文化財の指定等を行うのが現在の制度でございます。
したがいまして、それ以前の段階で、埋蔵文化財の段階で指定をしてしまうということは現在の制度では困難であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/63
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064・坂口力
○坂口委員 私はそういうことを申し上げているのではないのです。ここに文化財があるというので発掘いたします。発掘した結果、これは重要文化財に指定できるということならそれはそれでよろしいですよ。しかし、それはできないという場合だってあるのだろうと僕は思います。発掘した結果、重要文化財に指定できないということだってあるのだろうと思うのです。しかし、地元としては、いや、専門家が言えばそれはそうだけれども、これは我々としては残しておきたいという場合だってあると思うのです。
それは建築物でも同じことで、地元の人は、これは重要文化財だ、こう思うけれども、専門家に見てもらうと重要文化財にはならない。しかし、今度は、登録制度だったらそれは登録はできるということだと僕は思うのです。同じことが埋蔵文化財についても言えるのではないかと思うのです。それを、なぜ建築物と埋蔵文化財とに差をつけられたかということを私はお聞きしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/64
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065・小野元之
○小野(元)政府委員 埋蔵文化財の場合、工事を行う場合に届け出等をいただいて、これに対して発掘調査をするわけでございますけれども、もちろん文化財の指定と申しますものは、調査をした上で立派なものが出てきたということで、それに対して指定をするということはあるわけでございます。それから出土物、出てきたものについてこれをまた重要文化財等に指定する場合ももちろんあるわけでございますけれども、いずれにしても、何が入っているかわからない段階では、具体的な行政行為といいますか、指定といったことは行わないわけでございます。出てきた場合に、それが立派なものであれば、物によりますけれども、史跡に指定される場合もありますし、重要文化財として指定する場合もあるわけでございます。
なお、これが仮に発掘調査をしたけれども何も出てこなかったということであれば、それは指定も何もしないで、工事はそのまま続けていただくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/65
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066・坂口力
○坂口委員 私の言っていることとちょっと違うのですね。
掘り起こして、そこへ出てきたと。何もなかったのじゃない、出てきた。出てきたけれども、それが重要文化財には指定されない場合だってあるだろうと思うのです。必ずしも重要文化財ということにはならないだろうと思う。しかし、地元の人としては、これは保存をしたい、こう思うときに、ほっておけばそれは壊れてしまう可能性もあるから、登録制度にはならないか、私はこう言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/66
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067・奥田幹生
○奥田国務大臣 先生の御指摘、十分理解いたしております。文化財にはいろいろ、建造物だけではございません、おっしゃるとおりの埋蔵文化財もありますし、ほかに美術工芸品もございますし、非常に範囲が広いわけでありますが、いろいろ文化庁で文献を寄せ集めて、とにかく建造物が一番保存に緊急性が高いのではなかろうかなということで集約しましたところ、推定で二万五千ぐらいあるというのですね。その中でよりすぐって、大体一割ぐらいをこの五年間ぐらいの間に、今度法改正をお願いしておる登録制度で保存していきたいな、こういうのがとりあえずの思惑でございまして、後、これが所定の成果を上げさせていただくことができましたら、他の文化財につきましても、先生の御意思を踏まえて、文化庁として取り組んでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/67
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068・坂口力
○坂口委員 では、ひとつそういうことでお願いします。妥協するのはいかがなものかというふうにちょっと思いますけれども、そこは早急に検討していただきたいというふうに思います。大臣には半分約束をしてもらったけれども、いつのことかよくわかりませんので、ひとつ早急に、ほかの分野につきましても実現できるように御努力をいただきたい。
埋蔵文化財の場合には、それこそほっておきましたら壊れてしまう可能性だってあるわけですし、きちっと保存をしておこうと思えば何らかの手当てが必要な部分もあるわけですね。ちゃんと出ていればよろしいですよ。指定が外れた場合の話を僕は言っているわけで、それはぜひお願いをしたいと思います。
それから、今度は、指定都市や中核市への権限委任というのが認められることになりました。これも時の流れとして、それはそうなのかなというふうに私も思っておりますが、これは先ほどの社民党の方の御質問にもあったかと思いますけれども、文化財であるかどうかの鑑査能力というのが要求されるわけですね。それで、そういう能力がきちっと備わったかどうかということもあり、この判定はなかなか難しい面があるのではないかというふうに思うのです。
説明に来ていただいている皆さん方のお話をお伺いをいたしますと、かなり文化財の取り扱いについてなれてきている。確かに、いろいろの文化財を扱うということについては、この中核市やあるいは指定都市の皆さん方はなれておみえになったかわからない。それは、事務手続等ではなれておみえになったかもわかりませんけれども、これが文化財でというふうに指定ができるかどうかということについてなれられたのかどうかということとは別の話だというふうに思うわけですね。
ですから、文化財の鑑定能力あるいは判断能力というのは、どのように養成をしていくのか。これは、ふだんから市町村を対象として、例えば研修会だとか講習会だとか、そういうことを積み重ねておやりになっているのか。いや、そういうことはなくて、それはもう各地方自治体にゆだねてあるのか。こういう資格を持っている人にこれをやらせるんだというのだったらわかりますけれども、何も資格制度というのはないのですから。それを、今までは県の段階だったのを、県から指定都市、指定都市ですからしっかりしておると言えばしっかりしていると思います。しかし、中核市にも落とす、こういうことになってきました場合に、その辺のところは一体どうなのかという心配もつきまとうわけですね。それは大丈夫なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/68
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069・小野元之
○小野(元)政府委員 今回の改正で、指定都市あるいは中核市等に対しても一定の権限を委任することをお願いをしておるわけでございます。
実は、委任すべきかどうかということを、私ども、検討する段階でも議論はしたわけでございますけれども、文化財担当の職員の数も、例えば都道府県は平均六十三名でございますが、指定都市は三十八名、中核市も二十名ということで、ある程度、専門の方が配置をされておるということが一つございます。
それから、専門の人がいても、先生おっしゃるように、そういった人たちが本当に判断力、鑑定力があるのかということでございますけれども、指定都市や中核市の教育委員会におきましては、着実にそういう専門職員をふやすとともに、その人たちの能力といいますか、できるだけ大学等でそういった専門の分野を修めた方を採用するということも行っているわけでございます。
それから、国におきましても、奈良文化財研究所に埋蔵文化財センターがあるわけでございますけれども、ここでそういった専門的な職員に対する知識や技術の向上のための現職研修にも取り組んでおるところでございまして、私どもといたしましては、文化財ができるだけ地域の方に理解をしていただいて、地方公共団体等の主体的な判断も加えながら、地域としても文化財を大事にしていくということをお考えいただくためにも、一定の権限を指定都市あるいは中核市に委任をするということで、今回お願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/69
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070・坂口力
○坂口委員 もう一つは、今回、一般市町村も意見具申ができるようになる、こういうことですね。意見具申につきましても、この意見具申をすることができると書く以上は、意見具申をしていただいたら、そのことはやはり尊重するということなんだろうというふうに思うのです。今までだって意見具申は、多分市町村からだってあったのだろうと思うのでして、それはお聞きになっていたと思うのです。それをここに、わざわざきちっと意見具申ができるということを書く以上は、今まで以上に市町村の、地方自治体の意見というものを尊重するということになるんだろうというふうに思います。
町村といえども本当に立派な専門家がお見えになることがございますし、村の中にこんな立派な人が、もったいないなと思うほど立派な人がお見えになるケースも、中にはございますけれども、しかし、平均値で言わせていただきますと、正直言って大丈夫かなという気持ちがするわけですね。
私の知る限りにおきましては、例えば教育委員会といいましても、必ずしも教育に携わった人ばかりが教育委員会に入っておみえになるわけではなくて、一般の方が入っておみえになるケースもかなりございますし、また、教育に携わった方の中にも、文化財についての知識がある方ばかりとは言いがたい場合もございます。
それで、その人たちに意見具申をしてもらって、それをどう取り上げるかということなんですが、これは、この人たちに文化財についてかなり能力がありということで、それを判断をするということにしなければならないと思うのですね、意見具申をするということですから。こうする限りは、やはりそれは尊重しなければいけないと思うのですよ。ですから、中核市や指定都市、それから一般市町村も含めまして、文化財に対する知識、それから判断能力を養うための、資格とまでは申しませんけれども、何らかの方策がやはり私は必要ではないのかなと。すべてを市町村に任せておいて、そして意見具申をしてもらったからそれに従うということで、文化財が本当に保護されるのかなという率直な疑問もあるわけです。
例えば、道路をつくりたいとか、あるいは団地をつくりたいという話等はどの市町村ともによく起こる話でございまして、文化財との絡みで市町村としても本当に悩むわけでございます。これは残さねばならないものだ、いや、これはまあいいだろうという判断というのは大変難しいことだというふうに思いますが、それを市町村にゆだねていいかということですね。地方分権の時代ですから市町村がそういうふうになっていかなければいけないというふうに私は思いますけれども、そうするためにはやはりそれだけの体制を市町村にも整えてもらうようにお願いしなければいけないと思うのですね。その辺につきましてのお考えをひとつ聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/70
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071・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、市町村の場合には財政力や人口規模等もございまして、そんなにたくさんの職員を置けないというような事情もあるわけでございます。先生お話ございましたように、法律で新しく市町村が国への意見具申ができるということになるわけでございまして、私どもといたしましては、この法律に基づいて市町村から意見が出てくれば、当然それを尊重して適切な対応をしていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。
その中で、さまざまでございますけれども、ただ、市町村の場合にも九五%以上の市町村におきまして現在文化財保護審議会が置かれております。そこには専門の方を文化財保護審議会の委員としてお願いして、そういった専門の方の御意見も当然市町村の意見としては反映されてくるであろうということは一つ言えようかと思います。ただ、それ以外にも、もちろんそういった職員の資質の向上ということも必要でございまして、これは例えば都道府県レベルでも市町村の文化財関係の職員に対して研修を行うということも行っておりますし、国におきましても、高度のもの等も奈良文研等で行っておるわけでございます。
いずれにいたしましても、今回の法改正によりまして市町村が文化財保護についての大きな役割があるのだということを十分認識をいただきまして、文化庁といたしましては、市町村に対して専門的職員をぜひ置いてほしいというお願いをするとともに、それらの方々の資質向上といったことについても十分意を用いていかなければいけないであろうというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/71
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072・坂口力
○坂口委員 ここは大事なところでございますから大臣からもきちっとした決意を一言聞いておきたいと思うのです。これはあいまいにいたしますと大変なことになると思うのです。逆の結果が生まれることもあり得ると私は思っております。よかれと思ってやったことが逆の効果を生むということだってある、これはもろ刃の剣だというふうに私は思いますので、やはりそこに対するきちっとした考え方を持って臨まなければならないだろうというふうに思いますので、大臣の所見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/72
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073・奥田幹生
○奥田国務大臣 これは非常に大事なことであります。それぞれの自治体において鑑定まできちっとできるような専門の知識を持った人があればいいのですけれども、財政力にも限りがございまして、なかなかそういう市町村ばかりではないわけであります。でございますから、やはり今先生から御指摘いただいたことと遜色のないようなことにしようといたしますと、当然のことながら当該市町村が都道府県教育委員会に、専門家に御相談いただきますとか、あるいは私のところの地元の例でいいますと、大学の考古学あるいは建築学の先生にも相談をして意見を求めるというようなこともやっておるわけであります。文部省としましても、そういうことに手落ちのないように、指導と言うと語弊がありますけれども、やはり都道府県の教育委員会の専門家あるいは大学の先生方にもよく意見を聞いて、間違いのない選択をやるような指導は十分にやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/73
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074・坂口力
○坂口委員 用意いたしました質問は大体以上でございますが、あと、参議院の方でも附帯決議がつけられたようでございます。これは理事の皆さん方にお願いをいたしまして、ぜひ衆議院でもお願いしたいというふうに思っております。今指摘させていただきましたようなこともぜひひとつ盛り込んでいただくことができれば幸いに思います。
文化庁の書籍の少ない話からさまざまな問題を提起させていただきましたが、これをもって終わりにさせていただきます。五分ばかり早く終わりますが、よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/74
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075・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次に、山原健二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/75
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076・山原健二郎
○山原委員 今回の改正ですが、私も、登録制度の導入ということ、これは大きな意義を持っておるというふうに受けとめております。
ただ、今回の法改正で登録制度の対象となるのは建造物に限られているわけですが、すそ野を広く文化財を保護していくという登録制度の有効性は、決して建造物に限られたものではないのではないかと思います。その点についての文部省の基本認識を最初に伺いたいのです。
同時に、当面建造物であるけれども、将来的には登録制度の対象を広げていく、その考えはあるというふうに私は理解したいのですが、そのように考えていいでしょうか。対象を広げるとすればどの分野を考えているのか。イギリスでは登録制度をとっていますが、埋蔵文化財も含めて適用していると聞いております。
今後できるだけ早く対象を広げていってもらいたいという要望を含めまして、今後の展望を最初に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/76
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077・小野元之
○小野(元)政府委員 今回、文化財登録制度につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、緊急性という観点から建造物の分野に限定しておるわけでございます。ただ、御指摘ございましたように、この登録制度を今後どのような分野に導入していくべきかということは、私ども真剣に考えていきたいと思っております。
ただ、その場合に、一つのメルクマールといたしまして、当該分野について、指定制度という現行の制度では必ずしも対応できない緊急に保護すべきものがあるということが一つ条件であろうと思うのでございます。
それからもう一つは、当該分野につきまして、関連の学会や文化庁等の調査によりまして保護すべき対象がある程度把握できておるということも必要であろうと思うのでございます。
それから、緩やかな保護措置を講じるという登録制度が、その分野の文化財の特色からいって有効に現在の制度を補完できるという部分も必要であろうと思うのでございます。
先ほど一つの例といたしまして、美術工芸品等について仮に登録制度ということにいたしますと、登録されたがゆえにそのものの価格が上がってしまって、それが転売されて、むしろ文化財としては保護の手法が難しくなってくるという分野もあるわけでございまして、そういった点も勘案しながら今後の拡大を考えていかなければいけないと思っておるのでございます。
いずれにいたしましても、今回お願いしておりますのは建造物でございますけれども、これ以外に、私どもとしても、歴史資料でございますとかあるいは無形の民族文化財等につきましては、この法律による登録制度が最善のものかどうかということについては議論があると思うのでございますけれども、早急に調査を行いまして、何らかの形でそういった文化財についても登録制度あるいは登録制度に準ずるような形で保護を進めていかなければいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/77
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078・山原健二郎
○山原委員 登録文化財に対する支援問題でありますが、文化庁の説明によりますと、税制上の優遇措置あるいは低利融資などというものが認められておるとされております。しかし、修理や管理に係る費用への補助は法律上規定されていません。自治体で今度の登録文化財制度を導入しているところが二十数自治体あると聞いております。その中で修理や管理に係る経費について補助制度をとっているところもある。そうなりますと、自治体の登録制度の方が手厚いという場合が生まれてくると思います。文化庁の説明ではダブリの登録はしないというふうに説明されておりますから、国の制度に登録するよりも自治体の方に登録した方がいいということにならないのでしょうか、この点を伺います。
指定文化財と同水準の補助というのは無理にしても、何らかの支援措置が必要ではないか。当面、予算補助でも登録文化財の修理、改修、管理費への補助制度を設けるべきではないか。この点について前向きの努力をしてもらいたいと思っておりますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/78
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079・奥田幹生
○奥田国務大臣 確かに、今回、登録制度の文化財は、指定制度の補助のような、そういう手厚いものではございません。しかしながら、この八月の末に来年度の予算の概算要求を行うわけでございますけれども、その際に、今先生がおっしゃるような趣旨を踏まえまして、保護、管理、指導につきましての補助でございますとか、あるいは設計監理の補助を何とか制度化できないものかということを文化庁の方では鋭意財政当局と折衝してみよう、こういう決意でおることを申し上げさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/79
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080・山原健二郎
○山原委員 登録制度を定着させる上で、都道府県にいきなり移譲するのではなくて、文化庁長官が指導、助言、勧告を行うということは必要なことかもしれません。それならば、文化庁としてそれなりの体制整備を図らなければならないのではないでしょうか。
建造物にしましても、先ほどお話がありましたように二万五千件、緊急なものが一割の二千五百件、こういうふうになっております。これを五年間ぐらいの期間をかけて進めていくという意向と聞いているわけですが、そうしますと、緊急の物件だけでも年間五百件ペースで登録業務を進めなければならないということになります。登録手続に乗せる前に所有者から同意を得る手続も必要となりますし、既に登録された文化財について現状変更の届け出があった場合は、それに対する指導、助言、勧告をしなければならない。
今でも文化財保護、文化行政に携わる文化庁職員の数は多いとは言えない状態の中で、登録文化財にかかわる仕事量が上乗せをされるわけですから、本当に文化財登録制度を円滑に運用しようと思えば、文化庁の定員措置も含めまして拡充措置がとられる必要があると思いますが、この点についてはどのような対策をお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/80
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081・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、建造物の登録制度、新たに法案をお認めいただけますればスタートするわけでございますが、この事務につきましては、私どもの文化財保護部の建造物課を中心に登録の事務、それから登録したものの保存、活用の事務というのを行ってまいりたいと思うわけでございます。
ただ、お話にもございましたように、登録すべき建造物でございますけれども、全国に広範に存在をいたしております。その種類も、住居、オフィスビル、文化施設、倉庫、橋、ダム、トンネル等々、多種多様にわたっておるわけでございます。
私どもといたしましては、今後こういったものについて今回の登録制度を円滑に適用していくためには、外部の学識経験者の方の協力を得る、全国的にそういった形での外部の学識経験者の協力を得るということが一つ必要ではないかと思っておるのでございます。それとともに、厳しい行政改革の時代ではございますけれども、必要に応じまして、事務処理体制につきましても制度の適切な運用が図れるように努力をしていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/81
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082・山原健二郎
○山原委員 さらに、今回の法改正によりまして、都道府県教育委員会に移譲される文化庁長官の権限が、さらに指定都市、中核市にまで移譲されることになるわけですが、それだけに指定都市、中核市の文化財保護行政の責任が重くなることは事実です。それに見合った行政体制になっているかが問われると思います。
文化庁の調べによりますと、先ほども話がありましたけれども、指定都市の中でも、埋蔵文化財の専門職員は一人しかいない、あるいは中核市で見ますと、埋蔵文化財専門職員もその他の文化財関係専門職員も一人も配置されていないところもあるわけで、体制にかなりのアンバランスが見られるわけでありますが、これで移譲された権限を適正に行使することができるかという懸念の声も起こるのは当然でございます。文化庁としてこの点をどう援助されるつもりか、伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/82
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083・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、今回の法改正でお願いしておりますのは、地方公共団体に対する地方分権といいますか、地方公共団体自身が文化財の保護にもっともっと取り組んでいただく必要が出てくるわけでございます。お話ございましたように、地方公共団体におきます文化財保護行政を適切に行っていただくというためには、従来にも増して組織、体制の充実ということも大切になってくるわけでございます。
私どもといたしましては、従来から地方公共団体の組織等についての経費につきましては、地方財政措置で自治省に対してお願いをしておるわけでございますけれども、今回法改正を行って新たな経由の事務等もふえるわけでございますので、そういったことを十分勘案しながら地方財政当局に対して文化庁としてもお願いをしていきたいということが一つございます。
それからもう一つは、この法律の説明、趣旨徹底等の段階におきましても、各県や各市の段階におきましてそれぞれの立場で文化財保護の事務処理体制の充実ということを図っていただくようお願いをしていくということも大切だろうと思うのでございます。
いずれにいたしましても、そういう努力を重ねる中で今回の登録制度が円滑に実施できますよう努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/83
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084・山原健二郎
○山原委員 最後に、埋蔵文化財の問題について伺います。
ちょうど二十一年前にこの委員会で文化財保護法の改正が行われたときは、たしか小委員会もつくりまして、調査も行い参考人も呼ぶというような、かなり時間をかけた論議が行われたことを覚えておりますが、あのときに日本共産党としましても文化財保護法改正大綱をまとめました。その中で、埋蔵文化財について、周知の地域というあいまいな概念ではなくて、許可地域と届け出地域という形に制度化して許可制を導入することを提言したのであります。このことは当時の論議でも大きな課題となりました。なぜ二十一年前に大きな宿題とされた点が法改正として今回は提起されないのかという疑問を持っておるわけでございます。
当時の参議院の附帯決議でも、「重要な埋蔵文化財包蔵地の発掘に関する許可制の実現等その根本改正に取り組まなければならない。」と各党の合意で決議された経緯があるわけでございます。したがって、この点はあいまいにすることなく重要な課題としてこの改正に当たってもはっきりと位置づけてもらいたい、こういうふうに思っておりますが、この点についての見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/84
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085・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、昭和五十年の時点でこの許可制についての附帯決議があるわけでございます。実は、この点私どもいろいろ検討したわけでございますけれども、全国に三十七万カ所今所在しておるわけでございまして、仮にそれぞれの工事について届け出でなく、原則禁止で許可ということにした場合、土地利用に対する大変強い規制を新たにつくるということになることは必至だと思うのでございます。そういう意味で、大変国民の皆さんあるいは事業者の方々等の反発を招くということも予想されるわけでございます。
それからもう一つは、埋蔵文化財の場合に、中にどういったものがあるか、重要なものかどうかということがわからないわけでございまして、その時点で、発掘してみないとわからないにもかかわらず特定のものについては許可をするというのも、大変制度としては難しい面があるわけでございます。仮に許可制にいたしますと、その許可を得るということで恐らくは時間的な問題も出てくると思うのでございます。三十七万カ所もあるわけでございまして、仮に許可制にしたために開発が非常におくれたということが方々で出てくれば、大きな社会問題にもなりかねないということがあるわけでございます。昭和五十年度以降開発事業の急速な増加があるわけでございますけれども、新しく規制を強化するというのではなくて、規制緩和の中で、現在の届け出制のもとで発掘調査を迅速に行うべきだという声も非常に強いわけでございます。
いずれにいたしましても、所有者あるいは開発事業者の方々に十分文化財についての御理解をいただく、そのためにそれぞれの文化財当局の方からお願いをいたしまして、御理解をいただいた上で実際の発掘調査を行うことが今行われているわけでございまして、私どもとしては、直ちに許可制にするということは非常に問題があろうというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/85
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086・山原健二郎
○山原委員 この埋蔵文化財の保護をめぐっては、今お話がありましたが、困難なことはわかっておりますけれども発掘調査の費用負担の問題もあります。また、開発業者と行政側とのトラブルも相次いでおります。結局、法令の上で明確になっていないことが大きな要因となっておるのではないかと思います。
現在の原因者負担の原則を柱とした発掘調査費用負担の運用上のルールを法令上のルールとして明文化すべきではないかという声があるわけでございますが、この点について最後に伺いたいのです。
また、地方分権推進委員会、政府機関の中間報告がことしの三月二十九日に出ておりますね。この中にもこういうふうに出ているのです。八十三ページですが、「市町村の位置づけ、発掘調査費用の原因者負担等、国・地方公共団体・事業者間の役割分担、費用負担区分の明確化など、法制度の整備が必要ではないか。」というふうにこの中にも出ているわけでございまして、政府機関としても一定の関心を持っていることが証明されておると思います。
そういう中で、この明文化の問題、これは今大変必要なことではなかろうかと思いますが、この点についての文部省の見解を伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/86
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087・小野元之
○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、この原因者負担について現在指導で行っているのはなかなか相手方に周知が困難であるということで、主として市町村の埋蔵文化財の担当者の方々から、法律に書いてほしい、そうすればきちんとなって、事業者の方に今のようなお願いをするということでなくて法律上義務づけることの方がより円滑に進むではないだろうかという御意見があることは、私ども十分承知をいたしております。地方分権の委員会等でもそのような御指摘はいただいておるわけでございます。
ただ、一方では、開発事業者あるいは国民の皆さんという観点からまいりますと、現在は話し合いで、指示や指導によりまして協力をいただいておるわけでございますけれども、こういったことを法律上の義務づけをするということになりますと、国民の皆様に大変強い規制をかぶせる、ある意味では規制緩和に逆行する部分があるわけでございます。そういう観点で、大変強い反発や批判等も予想されると私どもは思っているのでございます。
確かに法律に書いた方がより明確になることは間違いないわけでございますけれども、一方で、法律で国民に義務づけるということになりますと、それは本当に厳しい規制をかぶせるということで、それが結果的に本当に埋蔵文化財行政にとっていいのだろうかということについてはさまざまな議論があると私どもは思うのでございます。
むしろ、現在の指示、指導に対して事業者の方に協力いただく。何といいましても、文化財を保護するためには、所有者の方や事業者の方が文化財保護をみずからしなければいけないというお気持ちになっていただくことが大切だと思うのでございます。そういう意味で、私どもとしては、指導によって事業者に御協力いただくという現在のシステムの方がより円滑な埋蔵文化財行政につながるのではないかというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/87
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088・山原健二郎
○山原委員 最後に、文部大臣に、二十一年ぶりの文化財保護法の改正に当たりまして、これからさらにどういうお考えでこの問題に文化財保護の立場で対処されるか、お伺いして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/88
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089・奥田幹生
○奥田国務大臣 文化財の保護につきましては、ただ政府だけでなしに、地方自治体におきましても、それからそれぞれの地域の住民におかれても、やはり自分たちの手で保護していこう、大切なものだ、そういう機運が非常に最近高まってきておるように私は思っております。そういう御意見を文化庁といたしましても十分に踏まえまして、積極的に保護につきましての姿勢を貫いてまいりたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/89
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090・山原健二郎
○山原委員 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/90
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091・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/91
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092・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、文化財保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/92
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093・柳沢伯夫
○柳沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/93
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094・柳沢伯夫
○柳沢委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、片岡武司君外三名から、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合及び新党さきがけの四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。藤村修君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/94
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095・藤村修
○藤村委員 提出者を代表して、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
文化財保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び関係者は、次の事項について特段に配慮すべきである。
一 登録制度について、その円滑な実施が図られるよう、登録建造物の修理に対する補助等、支援措置の充実に努めること。また、建造物以外の文化財についても、保護手法の多様化によりそれらの保護の充実を図るため、調査、検討を進めること。
二 文化財の保存活用の充実を図るため、地方公共団体における文化財保護の体制の整備が図られるよう配慮すること。また、国民が文化財に親しめる機会を拡充するため、情報システムの整備、博物館の充実やボランティア活動の奨励・支援に努めること。
三 埋蔵文化財について、発掘調査員の養成確保と資質向上に努めること。また、発掘調査等の円滑かつ適切な実施を図り、埋蔵文化財の保護に万全を期すること。
以上でございます。
その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。
何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/95
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096・柳沢伯夫
○柳沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/96
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097・柳沢伯夫
○柳沢委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。奥田文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/97
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098・奥田幹生
○奥田国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意いたしまして対処をいたしてまいります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/98
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099・柳沢伯夫
○柳沢委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/99
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100・柳沢伯夫
○柳沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/100
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101・柳沢伯夫
○柳沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十九分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605077X00819960531/101
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