1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年四月九日(火曜日)
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議事日程 第六号
平成八年四月九日
正午開議
第一 外務公務員法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 外務公務員法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出)の趣旨説明及び質疑
大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣
提出)の趣旨説明及び質疑
午後零時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/0
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001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
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日程第一 外務公務員法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/1
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002・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第一、外務公務員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長関谷勝嗣さん。
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外務公務員法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔関谷勝嗣君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/2
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003・関谷勝嗣
○関谷勝嗣君 ただいま議題となりました外務公務員法の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、近年の国際社会の緊密化、我が国の国際化等にかんがみ、外務公務員の配偶者の国籍についての規定を削除し、国籍を有しないまたは外国の国籍を有する者を配偶者とする者が外務公務員となることができるよう外務公務員法第七条を改正するものであります。
本案は、去る四月二日外務委員会に付託され、五日池田外務大臣から提案理由の説明を聴取し、同日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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004・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/4
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005・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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防衛庁設賓法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/5
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006・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣臼井日出男さん。
〔国務大臣臼井日出男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/6
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007・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 防衛庁設置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
第一に、情報本部の新設についてでございます。
防衛庁といたしましては、冷戦後の国際情勢に的確に対応するためには、高度の情報収集・分析等を総合的に実施し得る体制等の充実が必要不可欠であると考えております。他方、現在、防衛庁においては、内部部局、各幕僚監部、統合幕僚会議等に置かれているそれぞれの情報組織が独自の情報業務を行っているため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分であり、かつ、各組織が小規模であることから、能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にあります。
このため、統合幕僚会議に、防衛に関する情報の収集及び調査に係る統合幕僚会議の事務等をつかさどる組織として新たに情報本部を設置することとし、情報本部の所掌事務及び情報本部長には自衛官をもって充てることを定めるとともに、情報本部の内部組織については総理府令で定めることといたしております。
あわせて、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊から統合幕僚会議に所要の自衛官を移しかえること等を目的として、自衛官の定数を改めることといたしております。
第二に、防衛大学校の所掌事務の改正についてでございます。
自衛隊の任務の多様化、国際化に対応するためには、幹部自衛官等に対し自衛隊の任務の遂行に資するための高度の研究能力等を修得させることが極めて重要であります。このため、防衛大学校に、新たに大学院修士課程に相当する総合安全保障研究科を設置し得るよう、現行の任務のほか、防衛大学校の教育訓練を修了した者その他長官の定める者に対し、自衛隊の任務遂行に必要な社会科学に関する高度の理論及び応用についての知識並びにこれらに関する研究能力を修得させるための教育訓練を行うことを新たに所掌事務として加えることといたしております。
以上が、防衛庁設置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
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防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/7
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008・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。赤松正雄さん。
〔赤松正雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/8
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009・赤松正雄
○赤松正雄君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま議題となりました防衛庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに防衛庁長官に質問をいたします。
さて、この法案が目指す情報本部の設置につきましては、昨年十一月二十八日に決定された新防衛計画大綱を受けて整備されるものであると思われます。しかし、この新防衛計画の大綱につきましては、さまざまな観点から疑問を指摘せざるを得ないものであります。
まず、基本的なこととして、一体、旧の防衛計画大綱と新防衛計画大綱の違いはどこにあるのか、どういう理由でどこをどう変えたのか、改めてここで明確に述べていただきたいと存じます。
もともと、クリントン・アメリカ大統領が昨年秋に日本を訪問し、そのときに安保再定義を日米間で行った上で新防衛計画大綱が発表される予定であったはずであります。ところが、クリントン訪日が延びてしまい、肝心の前提についての日米の合意がすっぽりと抜けたままで新しい大綱が発表されたというのは、大変におかしいと思う次第であります。
といいますのも、従来の大綱では限定・小規模・独力対処という方針であったのが、今回の新大綱では当初から日米共同対処でと、大いなる方針転換がなされているものと見えるからであります。こうしたことは日本独自の判断で大綱に盛り込める性格のものではなく、当然、日米双方の最高責任者の間で合意をし、各セクションで細部が煮詰められなければならないはずのものであります。それが、あいまいな村山内閣の外交・安全保障の姿勢のせいでアメリカの明確な意思表明のないまま決定をされてしまったことは、二国間の外交交渉のあり方、安全保障の方針決定の仕方として大変に問題であると指摘をしておきたいと思います。
そこで、今回のクリントン・アメリカ大統領の訪日に際し、政府はさまざまなことを改めて詰める作業をされているようでありますが、一つここではっきりさせていただきたいのは、日米安保条約における極東の範囲という問題であります。
今回交わされるであろう日米間の文書におきまして、冷戦時にはソ連の脅威に対応する意味合いが強かった日米安保体制を、アジア太平洋地域の平和と安定のために必要という文脈でとらえ直して再定義しようとされているとの観測が専らであります。日米防衛協力の適用範囲が、従来からの「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域で、韓国、台湾地域も含まれる」との極東の範囲にとどまらず、アジア太平洋地域全域から、実質的には地球的規模にまで拡大される可能性があるのではないかとの懸念があります。改めて総理に、安全保障条約における極東の範囲について明確にしていただきたいと思います。
また、橋本総理は、さきの本会議での質問に答えられる中で、「再定義」という言い方ではなく「再確認」という言葉を使いたいと述べられましたけれども、再確認という言葉は、今までどおりのことを改めて認めるというニュアンスであるはずであります。それにしては新旧の大綱における安保の位置づけが変わっており、やはり言葉遣いとしては再定義がふさわしいと思われます。
再確認という言い方をされる背景は、日米安保の質的変化を目指していながら、国民の目には従来と変わっていないのだという印象を強めようとされているのではないかと思われます。政府は、安保条約と安保体制という二つの概念で使い分けようとされている節が見られますけれども、橋本総理に、そのあたりの意図がどこにあるのか、お聞きしたいと思います。
次に、朝鮮民主主義人民共和国をめぐる問題につきましてであります。
北朝鮮は、先月二十九日、「朝鮮半島の休戦状況は限界点に達した」とする一方、去る四日には、「朝鮮半島休戦協定で定めた非武装地帯での任務を放棄する」と発表いたしました。また、朝鮮中央通信によりますと、楊最高人民会議議長の演説として、「戦争が起こるということは疑問の余地がなくなった」と伝えられています。非武装地帯の任務を放棄するということは休戦状態でなくなったことであり、極めてゆゆしき事態だと認識すべきであります。その後も不穏な動きが見られています。
こうした北朝鮮の動きに対して、韓国は直ちに非難声明を行い、北朝鮮の武装化を警戒しています。我が国政府は、こうした状況をどう見ておられるのか。危機だとの認識があるのか、それとも単なる挑発だとこの事態を楽観視されているのかどうか。それなら、どういう情報と分析でそういう結果になっているのか、基本的なお考えを伺いたいと存じます。
さらに、こうした朝鮮半島情勢あるいは台湾海峡情勢に対応して、集団的自衛権の行使という問題が安易な形で各方面で取りざたされております。そこで、私は、この集団的自衛権について改めてお伺いをしたい。
集団的自衛権の行使については、従来、憲法上、政府の判断として違憲であるとしてきました。例えば、昭和五十八年二月二十二日の予算委員会で、当時の角田法制局長官は「仮に、全く仮に、集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思います。」と述べており、当時の外務大臣、防衛庁長官も、「法制局長官の述べたとおりであります。」と答えています。また、平成二年十月二十四日の衆議院国際連合平和協力に関する特別委員会におきましても、当時の海部総理大臣が同じ趣旨の答弁をしています。
そこで、改めて、現在ただいまの時点での政府の考え方に変更がないかどうかをお聞きしたい。つまり、政府の解釈の変更によって集団的自衛権の行使ができるのか、それとも憲法の明文の改正なくしてできないのかどうか、この点について明確な答弁をいただきたいと思うのであります。
ともあれ、一週間後に予定される日米首脳会談におきまして、日米関係のさらなる強化と軍事的な対米追従とは別な問題であるとの認識に立って、日本人としての誇りに深い思いをいたした取り組みで総理はぜひ対応していただきたいことを強く要望しておきます。
さて、一国の安全保障を考える中で、情報が重要な位置を占めることは今さら言うまでもありません。今回の新防衛計画の大綱におきまして、早期警戒機能の充実が情報収集との関連の中で目指されていることは当然のことでしょう。
新大綱の記述では「常時継続的に警戒監視を行うとともに、多様な情報収集手段の保有及び能力の高い情報専門家の確保を通じ、戦略情報を含む高度の情報収集・分析等を実施し得ること。」となっています。このあたりのことが、今回の法案による情報本部の設置で十分たるものになり得るのかどうか。
例えば、防衛庁は、内部部局、各幕僚監部、統合幕僚会議等のおのおのの情報組織が独自の情報業務を行っているため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分であり、かつ、各組織が小規模であることから、能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にあるとして、現状の問題点を組織がばらばらであることのせいにしておられます。つまり、情報本部という形で一本化をすれば、ほぼ同じ人間が集まって編成し直されるだけなのに、たちどころに能力が高まるかのように主張しておられるのはいささか疑問なしとはしません。
もちろん、これまで防衛庁の中において営々と情報を収集する任務についてこられた方々が、情報に対する位置づけの低さから、他の担当部局のメンバーに比べて処遇の面でいささか平等性を欠いてきたのではないかとの指摘がなされてきていることも承知しておりますけれども、ただ単にポストがふえて昇進の道がふえたということだけで、情報処理や分析についての能力が飛躍的に向上するとは思いがたいわけで、この点の認識に甘さはないかどうか、お尋ねをするものであります。
この点に関して、かつて総務庁などから行政改革の精神に反するのではないかとの横やりが突きつけられ、今日に至るまでに、この法案が日の目を見るのに際して難航する原因になったかのように指摘する向きがありますけれども、内閣としてどうそのあたりの危険性についての問題点を克服されたのかどうかをお聞きしたいと存じます。
当初、この情報本部は防衛庁長官の直轄機関にし、完全なるシビリアンコントロール下に置こうとの構想だったのが、全く新しい組織を編成することへの内外の抵抗を避けるために、統合幕僚会議の幕僚二室を発展的に解消した形で情報本部をつくり、統合幕僚会議の附属機関という位置づけにしたということのようですけれども、その点のあいまいさが後々までたならないのかどうか懸念があると私は考えますが、総理はどうお考えになるでしょうか。
例えば、この法案の具体的内容について防衛庁の説明を聞きますと、この本部の機構は、自衛隊の将官クラスが就任する本部長がトップに、副本部長は内局の審議官クラスが充てられ、さらにそのもとに技術官一人と三名の情報官が配置、また総務、計画、分析、画像、電波の五部で構成されるとのことでありますが、それぞれのポストは制服組と内局組とがバランスよく分け合うという構想のようであります。このあたり、相当に苦労を伴う布陣になりそうな気配でありますが、制服と内局の情報をめぐっての対立といった問題を引き起こさないのかどうか懸念する向きがあることに対して、お考えを聞かせていただきたいと思います。
さらに、従来から指摘されています、防衛庁から外務省に出向している自衛官で、大使館などの在外公館で情報収集などの任務についている防衛駐在官の数が少な過ぎるという点であります。現在三十二カ国一地域四十二名で、ほかのサミット参加国に比べると一けた少ないと言われてきましたが、このあたりの問題についてはどう考えておられるのか。各大使館に駐在する外務省の担当で十分で、何も防衛駐在官をふやす必要はないという考えなのかどうか、お尋ねしたいと思います。
次に、これに関連しまして、偵察衛星をめぐる問題について、現在の状況をお聞きしたい。
現在、世界で本格的な偵察衛星を保有しているのは、アメリカ、ロシア、中国の三国であるとされており、日本では、一九六九年、衆議院で宇宙開発及び利用は平和目的に限るとの国会決議がありますが、一方、八五年当時の政府は、直接殺傷力などとして使う以外で、利用が一般化している衛星を自衛隊が使うのは問題ないとの見解をもとに、民間企業の通信衛星やらアメリカやフランスの地球観測衛星などのデータを利用してきた経緯があります。さらに一歩踏み込んで、偵察衛星をみずから保有をするということについてどう考えておられるのか、現時点での考え方をお聞きしたい。
次に、阪神・淡路の大震災に際して緊急時の情報収集能力の限界が指摘されたことは、記憶に生々しいところであります。特に、初動対応のおくれを教訓に、災害情報の政府と中央省庁間のオンライン化の検討を初めとしてさまざまな施策が講ぜられてきたことと存じますけれども、現時点での大震災などによる危機管理対応策の総括をお願いしたいと考えます。
さらに、防衛大学校に一般大学には存しない総合安全保障研究科を新設する件について、若干お尋ねをしたいと思います。
新防衛計画大綱の中で、即応性の高い予備自衛官の確保ということがうたわれています。総合安全保障研究といった高度な研究機関をつくるのも当然大切なことではありますが、むしろ予備自衛官をどう確保し、どう充実した教育を実施するかが大切になってきます。この点についてどのような構想がおありかをお聞きいたします。
今回の情報本部の設置によって、大規模災害を含めて国家の安全に関してのすべての情報が集められることについて大いに期待するものではありますが、問題は、こうした情報本部で収集・分析された情報がどう的確に官邸に伝わるかということであります。もちろん、防衛庁のこの情報本部からの情報だけではなく、従来からのさまざまのルートを通じての情報を得て総理大臣は政治的決断をされるわけですが、今日まで残念ながら、日本の首相官邸は情報空白域だったと指摘され、情報官邸に達せずとかあるいは情報後進国とまで言われていることに対し、どう総理は改善に取り組もうとされているのか、お聞きしたいと存じます。
最後に、総理もごらんになったかと思いますが、私は、先日、テレビで二つの印象深い戦争に関するドキュメント番組を見ました。一つは「忘れられた戦場・アフガニスタン」であり、いま一つは「検証・湾岸戦争」であります。前者では、ソ連崩壊の遠因になった戦争が足かけ十八年間も今なお続いているという生々しい現実に接し、息をのむ思いでありました。後者では、あの湾岸戦争の勝利者はだれだったのかというサッチャー前イギリス首相の言葉が極めて印象的でありました。ともに、戦争の悲惨さと無意味さを改めて痛切に感じさせられた次第であります。
私たち日本人にとって、戦後長く続いた一国平和主義はもはや許されません。真実の世界の平和実現に向けて日本に何ができるかを今こそ全知全能を傾けて考え、世界に情報を発信していかなければならないということを強く主張いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/9
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010・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 赤松議員にお答えを申し上げます。
まず、前大綱と新しい防衛大綱の違い及びその改定理由についてのお尋ねでございます。
新防衛大綱は、国際情勢や自衛隊に期待される役割の変化等を踏まえ、今後の我が国の防衛力のあり方についての新たな指針として策定いたしたものであります。
こうした性格を踏まえ、新防衛大綱におきましては、前の大綱と異なりまして、今後の防衛力の役割として、主たる任務である「我が国の防衛」に加え、「大規模災害等各種の事態への対応」及び国際平和協力業務や安全保障対話などを通じた「より安定した安全保障環境の構築への貢献」を挙げております。また、日米安保体制について、将来に向けての日米安保体制の意義及びその信頼性の向上を図り、これを有効に機能させていくための具体的取り組みの重要性について整理して述べております。さらに、今後の防衛力の内容について見直しを行い、その合理化、効率化、コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能の充実と質的な向上を図り、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力の整備を図ることとしております。
日米安保再定義なしの新防衛大綱の決定等には二国間の外交交渉のあり方等に照らして問題があるのではないかとの御指摘でありますが、新防衛大綱は我が国の防衛力のあり方についての新たな指針を示すものでありまして、当然ながら、我が国が主体的に決定すべきものであります。他方、新防衛大綱の策定は、さまざまなレベルの日米間の協議の場におきまして、冷戦終結後の国際情勢認識、安全保障政策のあり方等についての緊密な意見交換の成果を踏まえて行ったものでありまして、御指摘は当たらないと考えております。
極東の範囲につきましては、日米安全保障条約上の「極東」は、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であり、かかる区域が大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域でありますことは、昭和三十五年の安保国会当時の政府統一見解に示されているとおりであり、この統一見解を変更したり拡大したりする考えはありません。
ただし、この統一見解でも明らかにしておりますとおり、極東の区域の安全が周辺地域に起こっ
た事情のため脅威にさらされるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんにかかるのであり、必ずしも前記の区域に限定されるわけではありません。
また、日米安保体制により支えられる米軍の存在と米国の関与の明確化がアジア太平洋地域の安定要因となっており、さらに、日米安保体制を基軸とする日米両国間の各般の分野での幅広く緊密な協力関係がこの地域全体の平和と安定にも貢献しているものと考えております。
次に、日米安保体制の再確認につきましては、日米安保体制が我が国の防衛のために必要不可欠であり、アジア太平洋地域の平和と繁栄にとって極めて重要な役割を果たしているという点は、冷戦終結前とその後で基本的に変化はなく、政府としては、引き続き日米安保体制を堅持し、その円滑かつ効果的な運用に努めていく考えであります。
他方、冷戦の終結後の安全保障情勢の変化に伴い、これに即した日米安保体制の運用を図るとともに、これに応じた形での安全保障面での日米協力関係を構築していく必要があると考えております。こうした考え方については、クリントン大統領訪日の際発出いたす予定の共同文書で明らかにする予定ではございますが、他方、日米安全保障条約の条文そのものあるいはその解釈を変える考えはありません。政府が日米安保体制の再定義ではなく再確認と申し上げておるのは、そうした意味からであります。
次に、朝鮮半島においては、一九九一年の南北国連同時加盟、一九九〇年代初頭の南北首相会談開催等、緊張緩和に資する前向きの動きはあったものの、現在、南北対話は中断しており、また、軍事境界線を挟んでの兵力対峙の状況には基本的に変化が見られないばかりか、殊に先週以来の一連の北朝鮮側の動きは、朝鮮半島の平和と安定にとり甚だ好ましからざるものであると考えます。我が方としては、北朝鮮の自制を強く求めてまいりたいと思います。
北朝鮮情勢につきましては、現在、北朝鮮は食糧あるいはエネルギー不足など種々の困難を抱えると言われます。北朝鮮情勢の把握には非常に困難な面も多々ございますけれども、今後とも、その動向には細心の注意を払っていく必要があると考えております。
次に、集団的自衛権についてのお尋ねがございました。
国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされております。我が国が国際法上このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然のことでありますが、その上で、政府は一貫して、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されないとの立場に立っております。
次に、情報本部の位置づけに関するお尋ねでありますが、冷戦後の国際情勢に的確に対応していくためには、高度の情報収集・分析等を総合的に実施し得る体制等の充実を図ることが必要であります。従来、防衛庁の情報組織は、それぞれの組織が独自の情報業務を行っておるため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分でありました。このため、国際軍事情勢等自衛隊全般を通じて必要となる情報をその事務の対象としている統合幕僚会議に新たに情報本部を設置するとともに、情報組織を整理再編し、防衛庁全体としての情報機能の充実、効率化を図ることといたしたものでございます。
偵察衛星についてのお尋ねがございましたが、偵察衛星は有力な情報収集手段の一つであると言われており、各種情報機能の充実が専守防衛を旨とする我が国の防衛にとって極めて重要なものであることから、これに関心を有しております。現在のところ、偵察衛星の保有についての構想ないし計画はありませんが、各国の利用の動向等について今後とも注意深く見守っていきたいと考えております。
次に、危機管理についてのお尋ねがございました。
阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、昨年二月二十一日の閣議におきまして、「大規模災害発生時の第一次情報収集体制の強化と内閣総理大臣等への情報連絡体制の整備に関する当面の措置について」として所要の対応を決定し、実施してまいりました。そのポイントは、内閣情報調査室を官邸への連絡窓口として二十四時間体制で迅速な情報連絡を受けること、関係省庁の幹部が官邸に参集し情報の集約を行うこと等であり、こうした措置に伴い、官邸に関係省庁からの専用回線を設置いたしましたほか、現地からのヘリの映像を直接把握できるよう所要の整備を行ってきたところであります。
また、防災基本計画を昨年七月に改定し、情報収集・連絡の対応や災害時の初動対応について具体的に明記をいたしました。さらに、本年二月二十三日には、内閣総理大臣の職務代行や各閣僚の参集場所、参集方法などについて定めた「首都直下型大規模地震発生時の内閣の初動体制について」を閣僚懇談会で申し合わせたところであります。
政府としては、これらの対応や制度により災害時の適切な緊急即応体制の整備を図ってまいりましたが、今後とも、内閣における情報収集体制の充実や中央防災無線網の拡充、地震防災情報システムの整備等、危機管理対策に一層取り組んでまいりたいと考えております。
また、官邸の情報集約機能につきましては、今お答え申し上げましたように、これまでにも種々の改善を図ってまいりました。また、去る四月一日からは、官邸別館におきまして、内閣情報調査室の要員によりまして各種情報の集約業務を試験的に実施しているところであります。今後、さらにこうした情報収集・集約面での機能を強化していきますため、専門要員による本格的な二十四時間体制の情報集約センターを設置いたしますとともに、防衛庁も含めました各省庁との情報連絡体制の一層の強化等、官邸における情報集約機能の充実に努め、各種の事態に的確に即応できる体制の整備を図ってまいりたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/10
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011・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 赤松議員にお答えを申し上げます。
初めに、情報本部の設置による能力向上についてのお尋ねでありますが、冷戦後の国際情勢に的確に対応するためには、高度の情報収集・分析等を実施し得る体制等の充実を図ることが必要不可欠でございます。他方、防衛庁の情報組織は、それぞれの組織が独自の情報業務を行っているために、防衛庁全体としての情報処理・分析が必ずしも効率的に行われず、結果としてその能力が十分発揮できないでいるところでございまして、かつ、各組織が小規模であることから、能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にあります。このため、統合幕僚会議に新たに情報本部を設置するとともに、防衛庁の情報組織を整理再編し、防衛庁全体としての情報機能の充実、効率化を図ることといたしております。
また、能力の高い情報専門家の確保については、組織規模の拡大等により基盤が整備されるものでございまして、今後、情報要員の体系的人事管理等によりまして、その育成確保に努めてまいりたいと考えております。
次に、情報本部の位置づけ、構成についてのお尋ねでありますが、情報本部は、各種情報を収集
の上、総合的に処理・分析し、国際軍事情勢等自衛隊全般を通じて必要となる情報等を作成することを基本的業務とするものでございます。他方、統合幕僚会議は、防衛に関する情報の収集及び調査などを所掌し、かかる情報をその事務の主な対象としていること等から、情報本部を同会議の情報に関する所掌事務等を処理する機関として同会議に設置することといたしたものでございます。
また、情報本部の構成については、自衛官と事務官等がともに勤務することとしているわけでございまして、相互補完により情報業務の適切な実施が確保されるものと考えておりまして、御指摘のような対立を惹起することはないものと考えております。
次に、防衛駐在官についてのお尋ねでございますが、専守防衛を旨としている我が国にあっては情報が極めて重要であるとの認識に立って、我が国防衛に資する情報収集の観点から、逐次増員をいたしてきたところでございます。現在、御指摘のとおり四十余名を派遣いたしておりますが、今後とも、引き続き国際情勢及び派遣国等の事情を総合的に勘案いたしながら、外務省等関係省庁と協議いたしながら検討いたしてまいりたいと考えております。
次に、予備自衛官についてのお尋ねでございますが、現在の予備自衛官については、所要の員数を確保し、教育訓練を実施いたしているところでございます。
新防衛大綱におきまして新たに導入することとされております即応予備自衛官については、新中期防衛力整備計画におきまして、改編する師団及び旅団の一部の部隊を即応予備自衛官を主体として編成し、また、即応予備自衛官を円滑にかつ実効のあるものとして導入するために所要の措置を講ずることといたしております。
現在、即応予備自衛官をどのように確保するべきなのか、教育訓練をどのように実施するのかという点も含めまして、具体的な施策について検討いたしているところでございます。その実現のために鋭意努力をいたしてまいる覚悟でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/11
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012・土井たか子
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
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大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/12
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013・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、大気汚染防止法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣岩垂寿喜男さん。
〔国務大臣岩垂寿喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/13
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014・岩垂寿喜男
○国務大臣(岩垂寿喜男君) ただいま議題となりました大気汚染防止法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
汚染のない清浄な大気環境の保全は、国民の健康で文化的な生活の確保を図る上で重要な課題の一つであり、環境行政に課せられた重大な責務の一つであると認識しております。このため、政府としては、公害対策基本法及び環境基本法に基づき大気環境基準を定めるとともに、大気環境基準の達成に向けて、工場、事業場からのばい煙等を対象とした対策、自動車の排出ガスを対象とした対策等、各種対策の総合的な推進に鋭意取り組んできたところであります。
しかしながら、今日、従来の取り組みに加えて新たな課題に的確に対処していくことが求められてきております。
第一は、多様な有害大気汚染物質による新たな大気汚染への対応であります。
近年の我が国の大気環境の調査結果によりますと、大気中から低濃度ではありますが発がん性等の有害性が問題とされる物質が種々検出されており、物質によってはその長期暴露による国民の健康への影響が懸念される状況に至っております。このため、既に米国等幾つかの先進国において有害大気汚染物質に係る排出抑制対策が進められていること、我が国において水質汚濁や土壌汚染の分野で発がん性物質等の有害物質対策が進められていること等も踏まえ、有害大気汚染物質の排出抑制対策を積極的に推進していくことが必要となっております。
第二は、二輪車による大気汚染への対応であります。
二輪車については、従来、自動車排出ガス規制の対象とはなっておりませんでしたが、二輪車の走行台数が極めて多く、また、自動車排出ガス規制の進展により、二輪車からの排出ガスの寄与割合が相対的に増大したことから、特にベンゼン等の有害大気汚染物質を含む炭化水素の排出量は、今や自動車全体の二割を占めるに至っております。このため、二輪車に係る排出ガスの抑制対策を積極的に進めていくことが必要となっております。
第三は、建築物の解体現場からのアスベストの飛散防止対策の徹底であります。
アスベスト対策としては、既にアスベスト製品製造工場等について法的規制措置を講じておりますが、建築物の解体等に伴うアスベストの飛散防止については、これまで主として行政指導により対応してまいりました。しかしながら、阪神・淡路大震災において被害を受けた建築物の解体等に伴うアスベストの飛散が懸念され、対策の徹底が求められたことや、アスベスト使用建築物が建設され始めて既に三十年程度が経過し、今後その建てかえのための解体等の増加が見込まれることを踏まえ、対策の一層の徹底を図ることが必要となっております。
第四は、工場、事業場における事故時の措置の充実であります。
施設の故障、破損等の事故による大気汚染等に際しては、被害の拡大を防ぐため、行政と事業者の迅速な連携が必要であるということが、阪神・淡路大震災の際に改めて得られた貴重な教訓の一つであり、この教訓を真摯に受けとめ、事故時の措置の一層の充実を図ることが必要であります。
本法律案は、これらの課題に的確に対処し、大気環境行政を一層推進するため、各種の規定の整備を図ろうとするものであります。
次に、本法律案の主要事項について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、有害大気汚染物質対策の推進に関する規定の整備であります。
有害大気汚染物質対策の推進に関する章を新たに一章設け、科学的知見の充実のもと、将来にわたって人の健康に係る被害の未然防止を図るという基本的な考え方を明確にし、有害大気汚染物質の排出抑制のための積極的な取り組みを事業者に求めるとともに、国及び地方公共団体においては、有害大気汚染物質による大気汚染状況の把握、健康被害のおそれの程度の評価・公表、事業者に対する情報の提供及び住民に対する知識の普及に努めるべきことを規定しております。また、その中でも、大気中の濃度の低減を急ぐべき物質については、当面、排出抑制基準を示し、より確実な排出抑制の取り組みを事業者に求めることとし、その旨附則において規定しております。
以上の仕組みについては、今後の科学的知見の充実の程度、事業者による取り組みの成果等を総合的に勘案し、健康被害の未然防止の観点からより一層の対策の充実を図るため、本法律案の施行後三年を目途として検討を加え、その結果に基づいて、制度の見直しを含め所要の措置を講ずることを規定しております。
第二に、自動車排出ガス規制の対象の拡大であります。
自動車排出ガスの定義規定を改め、自動車排出ガスに係る許容限度設定の対象に原動機付自転車すなわち百二十五cc以下の二輪車を追加することとしております。
第三に、建築物の解体等の作業に伴うアスベストの排出または飛散の防止に係る各種規定の整備であります。
建築物の解体等について作業基準を設定し、事業者に作業基準の遵守義務を課すとともに、都道府県知事は、作業基準を遵守していないと認められる事業者に対し、作業基準に従うべきことを命ずることができること等を規定しております。
第四に、事故時の措置に関する規定の整備であります。
事故により大気汚染が生じた場合における応急措置義務等の対象となる施設にばい煙発生施設を加えるとともに、事故発生時における都道府県知事への通報を事業者に求めることとしております。
以上のほか、事業者の届け出義務の緩和、罰則規定その他の規定の整備等を行うこととしております。
以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)
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大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/14
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015・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。長浜博行さん。
〔長浜博行君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/15
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016・長浜博行
○長浜博行君 国会議事堂前から千代田線でわずか一時間余りのところで、二十一年間にわたり連続して日本一水質の悪い手賀沼を抱える地域から選出をされております長浜博行でございます。
私は、新進党を代表して、そして失われた自然環境を取り戻すことがいかに困難かを実感する者の一人として、ただいま提案されました大気汚染防止法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに環境庁長官に質問いたします。
橋本総理はかねてより環境問題に御見識が深いとお聞きしております。総理は、自由民主党が野党であった平成五年十月、細川内閣のときですが、環境委員会において一委員として質問に立たれました。その真摯な姿勢は、環境のみならず崩れ行く日本をどう救うかという問題意識のもと、微力ながら日夜悪戦苦闘をしている一年生代議士の私といたしましては、素直に評価できるところでありました。
しかし、今国会冒頭の施政方針演説を拝聴しても、また昨今の総理の行政運営を拝見していても、身近なところから地球規模にわたる広範な環境問題への取り組みについて、強力な政治的リーダーシップを発揮されているようには残念ながら感じられません。
今後の日本社会を展望するとき、我々国民一人一人が環境の大きな恵みに支えられて生活が営めていることを十分に認識し、一九九二年の地球サミットの成果やその翌年の環境基本法の制定を踏まえ、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会の実現、換言するならば、環境保全を基礎とした経済社会の構築という視点に立脚して、具体的な政策展開を行う必要があると考えます。
と同時に、あえて申し上げれば、我が国憲法では、基本的人権としての環境権について明確に表現している条文はございません。先進諸国のみならず、発展途上国においても憲法に環境権を規定している国々が少なくありません。我が国においてもできるだけ早い時期にその実現を図るべきとの意見もございますが、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
あわせて、環境保全型社会の構築に向け国政全般にわたって環境意識を浸透させるためには、私が以前から委員会審議の中でも主張いたしておりますように、総理が環境庁長官を兼務をされて、厚生、商工、運輸、さらには公共事業を含む建設等々、諸行政における環境への影響に目を光らせていくべきだと考えます。総理は、環境行政を国政全般の中でどのように位置づけ、今後の取り組みを進めていかれるおつもりか、その所信をお伺いいたします。
申すまでもなく、環境を構成する要素の中でも、大気は生物の生存や人類の健康に深いかかわりがあり、きれいな大気を確保することは何にも増して重要な課題であると考えます。こうした観点から、改正法案の内容についてお伺いします。
大気汚染防止法は、私たちの生存の基盤である大気を清浄に保ち、国民の健康で文化的な生活を確保するための背骨ともいうべき極めて重要な法案であります。
我が国は、昭和三十年代から四十年代にかけての高度経済成長に伴い、硫黄酸化物やばいじんによる激甚な大気汚染が生じ、多くの人々がぜんそく等の健康被害に苦しめられた、忘れることのできない厳しい経験をいたしました。
そのような情勢を踏まえて昭和四十三年に制定された大気汚染防止法は、昭和四十五年のいわゆる公害国会における規制強化のための改正以来、四十七年の無過失損害賠償制度の導入、四十九年の硫黄酸化物にかかわる総量規制制度の導入により、これらの激甚な大気公害の改善に大きな役割を果たしてまいりました。
しかしながら、大都市地域における自動車排出ガスを主因とする窒素酸化物汚染問題、広域的な酸性雨問題など、大気汚染をめぐる問題は山積しており、とりわけ今回の法改正案に盛り込まれた有害大気汚染物質の問題は極めて重要な課題であると認識しております。
私たちは、高度な産業社会の中で、一層の利便を求めて種々の化学物質を生産や消費の場で使用していますが、それらが大気を初めとする環境に放出された後についてどれほど留意しているでしょうか。私自身にも一歳になったばかりの幼児と卒寿を迎えた祖父がおりますが、赤ちゃんからお年寄りまでだれもが呼吸する空気にどのような物質が含まれているのか正確に把握し、必要な対策を講じていくことは、現代を生きる世代の責務でございます。
海の向こう、アメリカ、ドイツ、オランダなど欧米先進諸国では、空気中に含まれる有害汚染物質について既に対策に着手しているとのことですが、公害対策先進国と自負する我が国は、この分野での対応がおくれていると言わざるを得ません。
そこで環境庁長官にお伺いをいたします。今回の改正法案はどのような認識で立案されたか、改正法案立案の趣旨と背景についてお答えください。次に、今回の改正法案の細目について質問いたします。
改正法案では、有害大気汚染物質対策として、本則において、事業者、国、地方公共団体、国民のそれぞれの責務を規定し、まず事業者の自主性による取り組みを推進することが対策の第一歩となっております。その上で、改正法附則により法施行後三年を目途として制度を見直すことを規定し、その後の状況を踏まえて一層の対策の推進を図るという考え方であると理解しています。
私は、概念的には、今後の環境行政においては、各主体の自主的、積極的な環境保全の努力を最大限引き出すことが肝要と考える立場ですが、本改正法案においては、国民の健康を守る見地から、このような方法では手ぬるいのではないか、人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質については罰則でしっかりと担保した規制的な措置を講ずる必要があるのではないかと考えます。
長官に伺います。有害大気汚染物質についてなぜ直ちに規制措置を講じないで事業者等の自主的な取り組みを推進することとしたのか、また、これで十分国民の健康が守れると考えておられるのか、御答弁を願います。
次に、二輪車の排出ガス規制についてであります。
今日、交通に起因する大気汚染は最も深刻な公害問題であります。したがって、自動車排出ガスの規制を強化していくことは極めて重要な施策と思います。他方において、既に開発が進んでおり商品化が待たれる電気自動車を初めとするいわゆ
るエコビークルにも注目が集まっています。
本改正法案は、これまで自動車排出ガス規制の対象外であった原動機付自転車を規制対象とするものですが、当然のことと思います。いや、むしろ、諸外国では、東南アジアの諸国を含め、既に二輪車排出ガス規制が実施されている現状を見るにつけ、我が国の対応は遅きに失しているのではないかという疑問すら持ちます。
長官にお伺いしますが、なぜ今まで二輪車排出ガス規制を講じてこなかったのか、また、今回の改正により、二輪車製造業者が早急に対応し、より環境に優しい二輪車を販売することができるという見通しを持っておられるのかどうか、明確にお答えを願います。
次に、アスベスト規制についてお尋ねします。
アスベストの危険性は既によく知られており、現に大気汚染防止法では、アスベスト製品を製造する工場等に対する規制措置を平成元年に導入しております。今改正法案では、建築物の解体等に伴い現場において飛散するアスベストの規制を導入することがポイントになります。国民のアスベストによる健康への影響の懸念は、阪神・淡路大震災後の建築物の解体等に伴うアスベスト汚染についての不安の声に代表されますように、非常に大きいものがあります。今回、一層のアスベスト規制の推進を図ることは一定の評価をするものですが、先ほど述べましたように、建築物の解体時のアスベスト対策がなぜ今日までおくれたか、環境庁長官、お答えください。
最後になりましたが、もはや「空気と水はただ」といった時代ではありません。現に、残念ながら、飲料や調理にはお金を出してミネラルウオーターを買ったり、水道の蛇口に浄水装置を取りつけている一般家庭の数は、ウナギ登りのありさまです。
一人一人が気配りをしながら守っていかなければならないものがあります。健康であり、環境であります。わずか一円玉一個でも、一億人が出すならば一億円という大金なります。たばこの煙はどうでしょう。御自身の喫煙習慣を是正されることはもちろんですが、昨今のテレビや新聞報道等にもありますように、他の人のたばこの煙を吸わされること、すなわち受動喫煙、強制喫煙が、肺がんや心臓病、動脈硬化、そして乳幼児へ与える影響等の誘因となることは、医学的にも証明されています。
喫煙者並びにその周辺の皆様のお体を御心配申し上げますとともに、大気汚染防止の観点から、橋本総理を初め賢明なる議員諸兄の御理解と御協力をお願いして、余り申し上げますと時には健康以上に微妙な人間関係を害することになりますので、この程度にさせていただきますが、大気汚染防止法の一部を改正する法律案の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/16
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017・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 長浜議員にお答えを申し上げます。
まず、環境権につきましては、現行憲法の上におきましても第二十五条に由来するものとして理由づけができるのではないか、そうしたことを考えてまいりましたが、これを憲法の条文に基本的人権として明確に表現しろという御意見につきましては、当然のことながら憲法改正の手続が必要になります。
憲法をめぐる議論が行われること自体は、何ら制約されるべきものでないことは言うまでもありません。しかし、環境権につきましては、現在、その内容や法的性格についてさまざまの考え方があるところでありまして、国の基本法である憲法を改正し、その条文に環境権を明定することについては、なお世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮が必要ではないかと考えております。
また、我々は、議員御指摘のように、環境の大きな恵みに支えられて健康で文化的な生活が行える、そのとおりであります。そして我が国の環境、そして地球環境というものを健全な状態に保全し将来の世代に引き継いでいくことは、我々の世代の大きな役割でもあります。我が国としても、大量生産あるいは大量消費、大量廃棄型の経済社会活動あるいは生活様式を問い直し、みずからの社会を環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会に変えていく必要があり、環境行政は今後の国政運営の中でも重要な柱の一つであります。
でありますからこそ、政府は、平成六年末、環境政策の長期的な目標や二十一世紀初頭までの施策の方向を明らかにした環境基本計画を閣議決定いたしました。そして、政府一体としての施策の展開を図ってきたところであります。今回御審議いただく大気汚染防止法の改正案を初め、今後とも、環境基本計画に基づき、人と環境の間に望ましい関係を築くための総合的施策の推進に全力を挙げていきたいと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣岩垂寿喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/17
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018・岩垂寿喜男
○国務大臣(岩垂寿喜男君) 長浜先生にお答えをいたします。
今回の改正法案の立案の趣旨と背景についてのお尋ねでございますけれども、先生御指摘のように、近年の我が国の大気環境の状況の調査結果によりますと、ベンゼン等種々の有害大気汚染物質が低濃度だけれども検出されております。そして、一部の物質については、長期間にわたってそれを摂取した場合に人の健康への影響が懸念されるに至っております。
そういう意味で、これまで大気汚染防止法に基づいて硫黄酸化物あるいは窒素酸化物を中心にした規制措置を講じてまいりましたけれども、一九九二年の地球サミットで採択されたリオ宣言や環境基本計画の趣旨に照らして、有害大気汚染物質についても、健康影響の未然防止の見地から、実施可能な対策を速やかに講じていくことが適当だと考えたわけでございます。
国際的にも、先生御指摘のように、有害大気汚染物質について各国が対応に着手しつつあること、特にアメリカなど幾つかの先進諸国においては数多くの有害大気汚染物質を対象として既に対策を推進しております。
今回の改正法案は、以上のような状況を踏まえて、我が国としても、有害大気汚染物質について、健康影響の未然防止の観点から、現時点で現実的でしかも実効のある対策が速やかに講じられるように考えまして立案したものでございます。これによって、大気環境行政の大事な第一歩が踏み出されることになるというふうに認識しておりますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
それから、有害大気汚染物質について事業者等の自主的な取り組みを促進することとしたことについてのお尋ねでございますけれども、有害大気汚染物質は、物質の性状として人の健康に有害な影響を及ぼすおそれのある物質でありますが、その健康影響に係る知見あるいは大気環境濃度、さらに発生源条件等については、必ずしも十分に情報やデータが整っているわけではございません。一層の情報収集、知見の蓄積等が必要だと考えております。
しかし、健康影響が顕在化してから取り組むのでは、これはもう後手でございますから、そうならないように科学的知見の充実を図りつつ、健康影響の未然防止の観点に立って、現時点で現実的かつ実効のある対策を速やかに講じるという立場に立ちます。したがって、現時点において有害大気汚染物質について直ちに規制措置を講ずることは必ずしも適当ではなく、将来にわたって健康影響を未然防止する見地と実施可能な対応から着手するという考え方に基づきまして、まずは排出状況について最も実際的な知識と情報及び排出抑制手段を持っている事業者による取り決めを求めることとしたものであります。
また、有害大気汚染物質の中でも、現状の大気環境の状況等から見て早急な排出抑制の取り組み
が必要と認められる物質については、附則において、排出抑制基準の設定、勧告、報告聴取による確実な排出抑制対策を講じていく所存でございます。
さらに、この改正法案の附則においては、法施行後三年を目途として制度のあり方について検討を加えまして、その結果に基づいて所要の措置を講じていくことを規定しておりますので、法施行後の新たな知見の集積、排出抑制の取り組み状況や大気環境の状況の変化等を総合的に勘案して、国民の健康影響の未然防止の見地から適切な対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
それから、今まで二輪車排出ガス規制を講じなかった理由についてというお尋ねでございますが、二輪車については、従来、大気汚染への寄与率が相対的に低かったことから排出ガスの規制の対象とするに至らなかったわけでございますが、今日では二輪車の走行台数が極めて多い、千六百万台というふうに言われておりますが、既に規制対象となっている四輪車の排出量が低減してきたことによって、相対的に二輪車による大気汚染への寄与率が増大しておる。そういう状況のもとで、特にベンゼン等の有害大気汚染物質を含む炭化水素については、二輪車による排出量が自動車全体の約二割を占めるに至っていることから、今回、二輪車を自動車排出ガス規制の対象として排出抑制対策を講ずるということにしたわけでございます。
また、今回の改正で、二輪車製造業者が早急に対応して、より環境に優しい二輪車を販売することができる見通しがあるかというお尋ねでございますが、御指摘のとおりに、米国、ドイツ、オランダ、オーストリア等の欧米諸国のほか、タイやインド等のアジア諸国においても、二輪車に係る排出ガス規制が既に実施されております。我が国の二輪車製造業者はそれら諸外国の規制に対応して車両を製造し輸出している、こういう状態でございますので十分対応できると考えております。
このような状況を踏まえまして、環境庁といたしましては、二輪車製造業者が我が国の国情に合わせた二輪車排出ガス規制に技術的に対応することは十分可能だと考えていますけれども、今後、中央環境審議会において、具体的な規制内容、規制開始時期について御審議をいただいた上で、できるだけ早期に排出ガス規制を実施してまいりたいというふうに考えております。(発言する者あり)
質問が多岐にわたっておるものですから、大変恐縮でございます。
最後でございますが、建築物の解体時のアスベスト対策についてのお尋ねでありますが、アスベストによる大気汚染の原因となる主な発生源としては、アスベスト製品等の製造工場、吹きつけアスベストが使われた建築物の解体等の現場、アスベスト廃棄物の処分過程等が挙げられますが、製造工場や廃棄物の処分過程等については、既に関係法令に基づく規制措置が講じられていることは先生御案内のとおりであります。
一方、建築物の解体等の現場については、環境庁において、昭和六十二年以降、関係省庁とも協力しつつ行政指導に基づく対策を講じてまいりましたが、さきの阪神・淡路大震災後の震災地におけるアスベスト汚染の経験にかんがみますと法的規制がやはり必要だ、それを急がなきゃならぬということを認識いたしました。特に吹きつけアスベスト使用建築物につきましては、先ほど提案理由の中でも説明をいたしましたが、建築され始めてから約三十年経過しておりまして、今後、一斉にその建てかえのための解体が始まるというふうなことが予想されます。
そういう立場に立って、有害大気汚染物質の一種であるアスベストをめぐる以上のような状況を踏まえまして、今般、有害大気汚染物質による健康影響の未然防止対策の一環として、改正法案に建築物の解体等に係るアスベストの規制措置を盛り込んだところであります。
以上で終わりますが、どうぞ早急な法案の成立に御協力をいただきますようにお願いを申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/18
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019・土井たか子
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X01519960409/19
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020・土井たか子
○議長(土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時十五分散会
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