1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月二十三日(木曜日)
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議事日程 第十六号
平成八年五月二十三日
午後一時開議
第一 厚生年金保険法等の一部を改正する法律
案(内閣提出)
第二 電波法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 厚生年金保険法等の一部を改正する
法律案(内閣提出)
日程第二電波法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
薬事法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
の趣旨説明及び質疑
午後一時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/0
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001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
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日程第一 厚生年金保険法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/1
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002・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第一、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生委員長和田貞夫さん。
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厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔和田貞夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/2
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003・和田貞夫
○和田貞夫君 ただいま議題となりました厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、我が国の人口が急速に高齢化する中、被用者年金制度を公平で安定したものとするために再編し、財政単位の拡大及び費用負担の公平化を図る必要から、その一環として、既に民営化されている旧公共企業体の共済組合の長期給付事業を厚生年金保険に統合するとともに、年金保険者たる共済組合が拠出金を納付する制度を創設すること等、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、旧公共企業体の共済組合の長期給付事業を厚生年金保険に統合することとし、新たに受給権が発生するものについて厚生年金保険法による年金給付を行うとともに、統合時までに受給権が発生しているものについて厚生年金保険から支給するものとすること、
第二に、これらの年金給付に要する費用に充てるための積立金の移換及び共済組合からの拠出金の納付制度の創設について定めること、
第三に、旧公共企業体を国家公務員共済制度から厚生年金保険の適用対象とするとともに、関係規定について所要の整理を行うこと、
第四に、厚生年金保険に対する積立金の移換、恩給公務員期間等に係る給付等の業務を行うため、旧公共企業体の共済組合は、大蔵大臣が指定した厚生年金基金が当該業務を行う場合を除き、なお存続するものとすること、
その他、旧公共企業体の共済組合の短期給付事業の健康保険組合への移行及び被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法の廃止等、所要の措置を講ずることであります。
本案は、去る四月二十五日の本会議において趣旨説明が行われ、同日付託となり、五月八日菅厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、十日質疑に入り、十五日に参考人からの意見聴取を行い、十七日には橋本内閣総理大臣の出席を求め質疑を行うなど十分な審査を行い、昨二十二日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/3
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004・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/4
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005・土井たか子
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 電波法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/5
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006・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第二、電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。逓信委員長中川昭一さん。
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電波法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中川昭一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/6
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007・中川昭一
○中川昭一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、無線局の増加等にかんがみ、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
第一に、一部の無線局の区分について電波利用料の金額を引き下げること、
第二に、電波利用料を財源として支出すべき電波利用共益費用に係る事務の例として、電波のより能率的な利用に資する技術を用いた無線設備について技術基準を定めるために行う試験及びその結果の分析の事務を加えること等であります。
本案は、去る五月十七日本委員会に付託され、昨二十二日日野郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/7
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008・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/8
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009・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/9
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010・七条明
○七条明君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
内閣提出、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/10
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011・土井たか子
○議長(土井たか子君) 七条明さんの動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/11
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012・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
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地方公務員災害補償法の一部を改正する法律
案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/12
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013・土井たか子
○議長(土井たか子君) 地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。地方行政委員長平林鴻三さん。
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地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔平林鴻三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/13
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014・平林鴻三
○平林鴻三君 ただいま議題となりました地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、地方公務員災害補償に係る不服申し立ての迅速かつ適正な処理を図るため、労災制度との均衡を考慮して、審査請求後三カ月を経過しても地方公務員災害補償基金支部審査会の決定がないときは、支部審査会が審査請求を棄却したものとみなして、地方公務員災害補償基金審査会に対して再審査請求をすることができることとするとともに、審査会の委員を増員する等の措置を講じようとするものであります。
本案は、去る五月十七日本委員会に付託され、本日倉田自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行いました。
質疑終了後、本案に対し、日本共産党から、審査請求に係る提訴に関する修正案が提出され、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/14
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015・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/15
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016・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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薬事法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/16
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017・土井たか子
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、薬事法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣菅直人さん。
〔国務大臣菅直人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/17
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018・菅直人
○国務大臣(菅直人君) ただいま議題となりました薬事法等の一部を改正する法律案にっきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
近年、科学技術の進歩により医薬品等の開発が進み、薬理作用の強い医薬品、使用方法の複雑な医薬品等が増加していることから、これによる健康被害を防止し、医薬品等の安全性を一層向上させる必要が高まっております。
特に、平成五年には、帯状疱疹の医薬品であるソリブジンとある種の抗がん剤の併用による重篤は副作用問題が発生し、治験から承認審査、市販後に至る医薬品の安全性に関する広範な問題が提起されたところであります。
また、非加熱血液製剤によるエイズウイルス感染問題を踏まえ、緊急に使用されることが必要な医薬品を迅速に供給すること等が強く求められております。
このような認識のもと、今般、治験から承認審査、市販後に至るまでの各段階にわたる総合的な医薬品安全性確保対策等を講ずるとともに、承認前の特例許可の制度を新設することとし、この法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、薬物に係る治験については、被験者の安全等を確保するため、厚生省令で定める基準の遵守を徹底させるとともに、治験に関する指導を行うこととするなど、治験の制度の改善を行うこととしております。
第二に、医薬品の承認審査、再審査及び再評価に関する資料は厚生大臣の定める基準に従って収集等が行われなければならないこととするなど、医薬品の承認審査、再審査及び再評価の制度を充実させることとしております。
第三に、医薬品等の製造業者等は、有効性及び安全性に関する事項、その他医薬品等の適正な使用のために必要な情報の収集等に努めなければなりないこととしております。
第四に、医薬品等の製造業者等は、医薬品等の副作用によるものと疑われる疾病の発生、医薬品寺の使用によるものと疑われる感染症の発生等を刈ったときは、その旨を厚生大臣に報告しなけれはならないこととしております。
第五に、医薬品等の製造業者等は、医薬品等の回収に着手したときは、その旨を厚生大臣に報告しなければならないこととしております。
第六に、薬局の業務にっき保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、薬局開設者は薬剤師である薬局の管理者の意見を尊重しなければならないこととするなど、薬局の管理者の役割を強化し、より適正な医薬分業の推進に資することとしております。
第七に、薬剤師は、患者等に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならないこととするなど、医薬品の適正な使用を推進することとしております。
第八に、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がない場合における承認前の特例許可の制度を新設することとしております。
第九に、医薬品の承認審査等に関する調査事務の一部を医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に行わせることとしております。
なお、この法律の施行期日は、平成九年四月一日としておりますが、承認前の特例許可に係る事項等については公布の日としております。
以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)
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薬事法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/18
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019・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。高市早苗さん。
〔高市早苗君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/19
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020・高市早苗
○高市早苗君 高市早苗でございます。
本日は、新進党を代表して、薬事法等の一部を改正する法律案について、橋本総理及び菅厚生大臣に質問を申し上げます。
過去に発生した数々の悲惨な薬害事件の教訓から、本改正案では、治験、承認審査、市販後対策の充実強化、医薬品回収報告の法制化、医薬品の特例的緊急許可などが盛り込まれたようであります。私は、かねてから、政府の最大の役割は、国家の主権と名誉を守ることとともに、国民の生命と財産を守ることであると信じておりますので、本法案の改正事項につきましては、当たり前過ぎるものばかりであると感じました。
むしろ、これまで当たり前のことが行われていなかったことによって、国民の生命を守る責務が果たされていなかったことに大きな驚きを覚えました。例えば、厚生大臣は届け出のあった治験計画に関し必要な調査を行うということが改正案に明記されましたが、これはっまり、これまでは、治験計画の届け出は行わせているがチェックはほとんど行っていなかったということになるのでしょうか。それでは何のための届け出だったのでしょうか。
総理、現在の行政全般をごらんになって、ろくにチェックもしない文書の届け出によって役所のメンツだけを保っているような形骸化した届け出制度がどれくらいあるのか、また、国民の生命や安全にかかわる分野において行政の監督責任体制が不十分だと感じておられる案件はあるのかどうか、具体的に総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。
この薬事法等の改正案を最初に拝読したときにも、金融三法案を拝読したときにも、まず頭に浮かんだ言葉は、不穏当な表現ではありますが、「焼け太り」でありました。いずれも、問題を起こした役所の権限が強化され、責任のみ別組織や民間に転嫁し、責任の所在がさらにわかりにくくなる上に、役所の不透明なさじかげんの余地を残す内容になっていると感じました。
例えば、本法案では、医薬品機構に承認審査、再審査、再評価の業務を付加していますが、これは機構本来の目的を逸脱させ、審査体制を分散化させ、責任の所在をあいまいにするものだと思います。厚生大臣はこの点についてどうお感じになりますか、お聞かせください。
私は、数々の薬害事件の原因は、制度そのものよりも、製薬会社や医師や厚生省の倫理と責任の欠如、不健全な金の流れと癒着の構造にあると思います。
そして、薬害エイズ、住専、「もんじゅ」など、国家が直面した大きな問題に共通するのは、官僚による情報秘匿でございます。火種を最初に発見できる立場にいながら、情報を隠して裏で火を消そうとしたものの、消火能力がついていかず、取り返しのつかない大火事になってしまう。制度以前に官僚組織の体質が変わらなければ、今後も大問題が発生する可能性が高いと思います。減点主義と言われる役所の人事システムを漏れ聞いたりもしますが、一体何が情報隠しの原因になっているのか、総理の分析をお聞かせください。
また、業界との癒着に関しては、製薬会社への厚生官僚の天下りも問題だと思いますが、総理は今後何らかの規制を検討されますか、お聞かせください。
薬事法の改正では、倫理、金、癒着、情報秘匿といった構造的要因は解決できませんが、総曲は、これらの問題にどのようにメスを入れ、改革すべきとお考えでしょうか。
また、現在、行政サイドで火種を確認しながら、臭い物にふたをして放置してあるような問題の存在はございますでしょうか。一切そんなものは存在しないと断言していただけるのでしたら、そうおっしゃっていただいても結構ですが、もしも総理が気にかかっておられるトラブルの火種が何かございましたら、お教えください。
せんだってHIV訴訟が和解になりましたが、和解が成立した後に、存在しないと言っていた資料が大量にあることを公表するなど、原告団及び三権の一つである司法を冒涜した話であったと思います。もし仮に和解勧告が出される前に資料が公開されていれば、裁判官の判断も変わり、和解結果も変わっていたかもしれません。総理は、和解前に資料公開があった場合の和解結果への影響について、どう考えておられますか。
HIV訴訟和解並びに資料公表は、総理が任命された菅厚生大臣の誕生によるものと評価する声が大きいのですが、仮に菅さん以外の方を任命していたら厚生省の対応は別のものだったのでしょうか、あわせて総理の御見解をお伺いいたします。
厚生大臣は、和解成立後の談話の中で、「本来、国が薬事法に基づく義務や措置を講じていれば大変な状況をもたらさずに済んだ。被害を招いたことに対し心からおわびしたい」と謝罪をされています。しかし、その後の国会審議の中で、具体的に薬事法上のどのような義務や措置を怠ったのかはほとんど明らかになっておりません。
そもそもエイズウイルスが存在する非加熱製剤が、薬事法第五十六条第六号の「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」に該当するかどうかについてさえ、厚生省の見解は明確にされておりません。四月四日の参議院厚生委員会における常田享詳議員への御答弁では、「第五十六条第六号に該当するかどうか、今調査を含めて慎重に検討している」と回答を避けておられます。
四月十九日の山本拓衆議院議員の質問主意書並びにその後の再質問主意書に対する答弁書では、「厚生省は一九八五年当時、それ以前に使用された非加熱製剤の中に、個別に特定するには至らないが、エイズウイルスが存在する医薬品が含まれる場合があると認識した」と認めながらも、「個別に特定されていないから、薬事法第五十六条第六号の汚染されているおそれのある医薬品とは言えない」として、薬事法第七十条第一項の措置である回収命令を出さなかったことの正当性を主張しているのであります。
結局、厚生大臣が和解成立後にはっきりおっしゃった「本来、国が薬事法に基づく義務や措置を講じていれば」というお言葉の、国が講じなかった義務や措置とは具体的に何を指していたのでしょうか。また、薬害エイズ問題では、企業側には薬事法に違反する行為があったのかなかったのか。以上について、厚生大臣、薬務行政の最高責任者としての責任ある御答弁をお願いいたします。
過去の薬害事件における被害拡大の原因の一つは、危険情報が特定の医師と企業のもとにとどめられていたことです。
本法案では、製薬企業に、治験中の副作用や感染症の厚生大臣に対する報告を義務づけておりますが、医療機関が把握した副作用情報の報告義務は、厚生大臣が必要があると認めるときに限られております。これはなぜでしょうか。また、ソリブジン事件の教訓から、製薬会社から治験担当者への前臨床試験のデータ提供の明確な法律上の義務づけが必要だと考えますが、なぜ明記されないのでしょうか。
製薬会社から国への報告は、副作用・感染症発生確認から何日以内にどんなフォームで行うのか。省令ではケースによって十五日から三十日となっているようですが、これでは遅過ぎないのか。製薬会社が報告を怠った場合の罰則はあるのか。製薬会社から副作用情報を得た厚生省はその後どんな行動をとるつもりなのか。厚生省は収集した情報を原則として公開するのかどうか。以上、厚生大臣に御答弁をお願いいたします。
不良医薬品の回収についても同様の疑問がございます。
本法案では、製薬会社が不良医薬品等の回収に着手した場合の報告を義務づけるとなっておりますが、回収着手後何日以内の報告といった期限はないのでしょうか。そして、厚生省は回収完了の事実をどのような方法でチェックするのか。回収報告遅滞や回収のおくれには行政罰をもって臨む必要はないのか。以上、厚生大臣に御答弁をお願いいたします。
また、ソリブジン事件の原因の一つは、被害者の多くが、自分自身が治験と呼ばれる新薬実験の対象となっていることを正確に知らされていなかったことにあります。切実な思いで闘病生活を送っておられる方々に、「よいお薬がありますが試してみますか」と口頭で言うだけで実験の対象になることが、人道上許されるとは思いません。それどころか、大学病院の入院患者からは「何の説明もなく新薬に切りかわった」との苦情が聞かれる始末です。
医薬品安全性確保対策検討会では、「説明書を手渡す」、「説明を受けて同意した証拠に説明文書と同意書を一体とする」など、文書によるインフォームド・コンセントが提案されていたにもかかわらず、本法案には盛り込まれておりません。現在の行政指導によるGCPでは不十分だと思いますが、今回盛り込まれなかった理由をお答えいただきたいと思います。文書にしたら同意が得られにくい、商品化がおくれるなど反対論が薬業界に強いためかと想像しますが、まさか厚生省は、この期に及んで、業界利益のみに配慮し人命と患者の人権を軽んじる姿勢をとり続けるおつもりではないでしょうね。以上、厚生大臣に明確な御答弁を望みます。
また、このたび初めて薬剤師の患者への医薬品情報提供の努力義務規定が設けられました。重複投薬や相互作用発生防止対策の実効性を高めるには、患者向けの医薬品添付文書作成、提供を義務づけるべきだと考えますが、厚生大臣はいかがお考えですか。
医療現場の声を聞きますと、薬の緊急安全性情報や使用上の注意の変更など添付文書に係る情報については、取り扱いのあるメーカー品の情報しかタイムリーに入ってこないのだそうです。添付文書に係る情報については、医薬関係者が厚生省から直接いつでも引き出せるシステムを組んでいただきたいとの要望があるのですが、御検討いただけますか。厚生大臣にお伺いいたします。
それから、現在は製薬会社が治験医療機関や担当医師を決めておりますが、薬害エイズ問題は、製薬会社と医師の不健全な結びつきを浮き彫りにいたしました。収入源として手当たり次第に治験を引き受ける無節操な医師の存在、年間莫大な数の治験を抱える医療機関の過負担も取りざたされております。
いずれにしましても、なれ合いの人間関係の中では、薬の危険性を判断する際の客観性や公正さ、担当医師の資質への懸念がございます。改革の実効性を高めるためにも、製薬会社は直接医師に治験を依頼するのではなく、各回云云を窓口として的確な治験医療機関決定や担当医師の人選を行うシステムにすべきではないかと考えるのですが、厚生大臣はどう思われますか。
最後に、承認前の特例許可についてお尋ねいたします。
「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、」ほかに適当な方法がない場合に、特例的に医薬品の輸入または製造を許可するとされておりますが、ほかに適当な方法がないことの判断は、どのような手順で、どのような人材によってなされるのでしょうか。厚生大臣に伺います。
加熱製剤承認前の八四年時点において、クリオ製剤への切りかえでも国内の血友病患者の需要量を賄えたとおっしゃる方もおられますし、そうでないという御意見もあります。例えば八四年当時の状況というのは、この法案で言うほかに適当な方法がない場合に該当するのでしょうか。あの当時にこの改正薬事法があれば加熱製剤の輸入は直ちに可能だったのでしょうか。以上、厚生大臣にお伺いいたします。
以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/20
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021・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 高市議員にお答えを申し上げます。
まず、届け出についての御意見がございました。
形骸化した届け出はどれぐらいあるかというお尋ねでありますが、私は、各種の届け出制度はそれぞれ行政上の必要に基づいて設けられているものと理解しています。しかし、もとよりこうした届け出制度は、国民負担の軽減、また行政の簡素化という観点から、不断に見直していかなければならないことは当然ですし、先般の規制緩和推進計画の改定におきましても、存在意義の乏しい届け出の廃止あるいは申請の届け出手続の電子化など届け出制度に係る合理化措置を盛り込んでまいったところでございます。
また、国民の生命や安全にかかわる分野における行政の監督責任体制について御意見がありました。
行政は、各般の分野にわたってその役割や責任を果たさなければならないものであり、今後とも的確な行政運営に努めてまいる所存です。
次に、情報秘匿についてのお尋ねでありますが、行政情報というものは以前からプライバシーとのかかわり等が論議になり、なかなか公開をされなかったという点は、議員の御指摘、私はそのとおりの部分があると思います。しかし、公正で民主的な行政運営を実現し、行政に対する国民の信頼を確保するという観点から、第三者の権利利益に係る情報等公開するのに支障がある情報を除いて広く公開するという立場から現在検討が行われております。
そして、こうした観点から、情報公開法の整備につきまして、行政改革委員会において精力的に調査、御審議をいただいておりまして、本年十二月までに意見具申をしていただくことになっております。その御意見を尊重し、情報公開法の制定に向けて積極的に取り組んでまいります。
次に、公務員の営利企業への再就職問題、これは、公務の公正な執行の確保の要請と退職後の公務員の職業選択の自由等基本的人権の尊重とをどう調和させていくかなど難しい問題があることは御承知のとおりでありますが、厚生省においても厳正に運用していると思います。これ以上の制限を加えることは公務員制度全体のあり方にもかかわる問題だと思いますが、今回のエイズ問題にかんがみ、今後の製薬企業への再就職について何らかの対応をすべきかどうか、現在、厚生省において検討しているものと承知をいたしております。
また、医薬品による被害を防止するための倫理面等の問題についてでありますが、今回の事件を深く反省しながら、こうした医薬品による被害を起こすことのないよう最大限の措置を講じていくことが重要だと思います。私の厚生大臣のときは、ちょうどスモンとキノホルムの問題があり、やはり薬事法の改正の論議がなされたときでありました。
議員から御指摘のような疑問を国民に抱かれないように、先ほど御指摘のあった情報公開の推准等薬務行政の透明化を進める必要がある、御指摘のとおりであります。このため、厚生省におきまして、広く有識者の意見も伺いながら、政策決定プロセスのあり方、情報提供のあり方等再発防止の具体策の検討を行っているところでありまして、国会における御意見も踏まえながら対処していきたいと考えております。
次に、私が気にかかっているトラブルの火種があるかというお尋ねがありました。
私は、もし行政サイドで火種を確認しながら臭い物にふたをする、そういうことで放置しているようなものがあったら、それは大変なことだと思います。院のお力添えもいただきながら、行政官一人一人が自覚を持って透明な行政が行われるよう努力をしていかなければなりません。
次に、エイズ訴訟の資料公開と和解結果との関係についてのお尋ねがございました。
資料の公開がおくれたことについては、おわびをする以外にありませんし、十分反省をしなければなりません。しかし、裁判所の所見におきまして、国に救済すべき重大な責任があると指摘をしておられ、資料公開の時期が和解結果に影響を与えたとは考えておりません。
裁判所の所見におきまして、
本件訴訟における原告らの求釈明に対し「確認できない」とされていた、エイズの実態把握に関する研究班の討議内容及び配布資料の存在等が、厚生省に設置された「血液製剤によるHIV感染に関する調査プロジェクトチーム」の調査等によってある程度明らかになるなどの事情の変化が生じているけれども、本和解勧告の前提となる当裁判所の事実認識という観点からみると、事実関係の詳細は別として、一九八三年当時の厚生省の主管課である生物製剤課長のエイズと血友病に関する認識内容及び右研究班における討議内容の概要等については、法廷における適法な証拠調べの結果に基づき、第一次肝見において認定してあるところであり、既に本和解の前提事実として折込み済みであって、右のような事情が生じたからといって、本和解の基本的な枠組みや被告国と被告製薬会社との責任割合についての当裁判所の見解を変更すべき理由は存しないというべきである。とされております。
また、与党三党合意におきまして、「被害者救済は重大な課題であるという共通認識のもと、HIV訴訟に関する早期和解を推進する。」とされておりまして、この合意のもとに、菅厚生大臣が指導力を発揮されました。歴代の厚生大臣も同様、努力をされたと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣菅直人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/21
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022・菅直人
○国務大臣(菅直人君) 高市早苗議員の御質問にお答えをいたします。
医薬品機構の業務を追加することについてのお尋ねでありますが、医薬品機構には承認審査等の業務のうちデータの照合等の定型的な調査業務を委託し、これに基づき、審査の核心となる評価、判断は厚生省がみずから行って審査の一層の高度化を図り、最終的な責任は厚生省が負うこととなっております。今回追加される承認審査業務等は、医薬品の安全性等を向上させ、副作用被害を未然に防ぐことにつながることから、医薬品機構の目的に沿ったもの、このように考えております。
エイズ訴訟の和解後に私が述べました国が講じなかった義務や措置とは何かというお尋ねでございます。
裁判所の所見において指摘されているとおり、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき責務があるにもかかわらず、例えば薬事法には緊急命令などが権限として、昭和五十四年ですか、盛り込まれたわけですけれども、こうした緊急命令の権限の行使等期待された権限を有効に使えなかった、有効に措置を講じなかった、こういった点について述べたものであります。
企業側の薬事法違反についてのお尋ねですが、薬事法第五十六条第六号に該当する不良医薬品を販売していたかどうか、現在もいろいろな形で調査が続いておりまして、その調査結果を踏まえて厚生省としての対応を検討してまいりたい、このように考えております。
治験時の副作用・感染症報告についてのお尋ねですが、治験は製薬企業が責任を持って実施するものでありますので、製薬企業は医療機関から副作用等の情報を収集し、さらに厚生省に報告することを義務づけておりますが、被験者の安全性が著しく損なわれていると認められる場合には、厚生省が直接医療機関等に対し報告徴収等を行うこととしたものでございます。
次に、製薬企業から治験担当者への前臨床試験データの提供については、これは現在既に義務づけられておりまして、そういったところがら、今回の改正においても製薬企業が遵守すべき基準として厚生省令で定めていきたい、このように考えているところであります。
製薬企業から国への副作用・感染症報告についてのお尋ねですが、現在、報告期限は、未知で重篤なものについては十五日以内、それ以外のものについては三十日以内などとされており、国際的にもほぼ同様な取り扱いがされているところでございます。また、報告の形式としては、医薬品の投与量、投与期日、治癒経過など、副作用の内容を判断するために必要な事項を定めております。
必要な情報を幅広く収集する見地から、製薬企業が報告を怠った場合の罰則については個別には設けておりませんが、報告を怠った場合には業務の停止などの行政処分の対象となるもの、このように考えております。
収集された副作用情報は、中央薬事審議会において評価された上、その内容や緊急度に応じて、医薬品の使用上の注意の改定、医薬品副作用情報の提供、回収等の緊急命令などの措置を行うとともに、これらの情報についてできるだけ公開に努めてきておりまして、このように措置をしていきたいと考えております。
不良医薬品等の回収報告についてのお尋ねですが、回収着手後の報告期限につきましては、薬事法施行規則において極めて短期間の期限を設定していきたいと考えております。回収着手の報告に際しましては、回収の方法、回収予定の時期等を報告させる予定であります。さらに必要があれば、報告命令あるいは立入検査により、その事実を確認することとしております。
回収着手報告のおくれや回収のおくれにつきましては、それぞれの程度に応じ、業務の停止命令、回収命令等を行うこととしており、さらに、これらの命令に違反した場合には罰則を適用することも可能であります。
治験におけるインフォームド・コンセントの取り扱いについてのお尋ねでございます。
本法案においては、臨床試験の実施基準でありますGCPという、この実施基準の遵守の法制化を盛り込んだところであります。このGCPを厚生省令で定めるに当たりましては、今高市議員の方から御意見もありましたが、医療機関は、治験を行うに際して被験者に対して文書によるインフォームド・コンセントを確立する、そういう旨の内容をこの厚生省令に盛り込む方向で検討をしているところであります。
患者向け添付文書の作成、提供の義務づけについてのお尋ねですが、副作用被害を防止する観点から、患者への医薬品情報の提供は重要なことと考えております。このため、医薬品の患者向け説明文書のあり方について研究を現在行っておりまして、今後、患者用説明文書モデルを作成し、実用化に向けて検討を進めることとしております。
また、副作用情報など医薬品の安全性に関する情報については、現在、いろいろなコンピューターや通信技術が発展しておりますので、こうした技術の応用などによりまして医療関係者が簡便に最新の情報を入手できるようなシステムについて、今の高市議員の提案も含めて検討をさせていただきたいと考えております。
製薬企業による治験の依頼先についてのお尋ねですが、これにつきましては、先ほど述べましたGCPにより、製薬企業は治験を適切に実施し得る医療機関、医師に依頼することとされております。製薬企業が実際に依頼先を選定するに当たっては、何らかの形で外部の専門家の意見も活用すべきとの指摘もあり、議員の御意見も参考にしながら、適切な治験が実施できる仕組みを検討してまいりたい、このように考えております。
承認前の特例許可の要件についてのお尋ねですが、当該医薬品の使用以外に適当な方法がないかどうかについては厚生省において判断し、最終的には、対象となる医薬品を閣議にかけて政令で指定することにより、政府全体として判断することとしております。
仮に八四年当時に本制度があったといたしますと、クリオ製剤を例にとりますと、クリオ製剤が短期間に十分な供給量を確保できない場合や血友病の中でクリオ製剤では対応できない症例の場合は、他の適当な方法がないという考えに立って加熱血液製剤を緊急に輸入する方法も、当時この制度があれば考えられたのではないかというふうに認識をいたしているところであります。
以上、お答えとさせていただきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02719960523/22
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023・土井たか子
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
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024・土井たか子
○議長(土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時五十四分散会
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