1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成八年五月二十八日(火曜日)
―――――――――――――
議事日程 第十八号
平成八年五月二十八日
午後一時開議
第 一 医薬品副作用被害救済・研究振興調査
機構法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第 二 都市公園等整備緊急措置法の一部を改
正する法律案(内閣提出、参議院送付
)
第 三 下水道整備緊急措置法及び下水道法の
一部を改正する法律案(内閣提出、参
議院送付)
第 四 水質汚濁防止法の一部を改正する法律
案(内閣提出、参議院送付)
第 五 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の
規制に関する法律及び放射性同位元素
等による放射線障害の防止に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出
)
第 六 海洋法に関する国際連合条約及び千九
百八十二年十二月十日の海洋法に関す
る国際連合条約第十一部の実施に関す
る協定の締結について承認を求めるの
件
第 七 領海法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
第 八 海上保安庁法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第 九 海洋汚染及び海上災害の防止に関する
法律の一部を改正する法律案(内閣提
出)
第 十 排他的経済水域及び大陸棚に関する法
律案(内閣提出)
第十一 排他的経済水域における漁業等に関す
る主権的権利の行使等に関する法律案
(内閣提出)
第十二 海洋生物資源の保存及び管理に関する
法律案(内閣提出)
第十三 水産資源保護法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
安全保障委員長辞任の件
安全保障委員長の選挙
日程第一 医薬品副作用被害救済・研究振興調
査機構法の一部を改正する法律案(内閣提出
)
日程第二 都市公園等整備緊急措置法の一部を
改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第三 下水道整備緊急措置法及び下水道法
の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院
送付)
日程第四 水質汚濁防止法の一部を改正する法
律案(内閣提出、参議院送付)
日程第五 核原料物質、核燃料物質及び原子炉
の規制に関する法律及び放射性同位元素等に
よる放射線障害の防止に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出)
日程第六 海洋法に関する国際連合条約及び千
九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国
際連合条約第十一部の実施に関する協定の締
結について承認を求めるの件
日程第七領海法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
日程第八 海上保安庁法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日程第九 海洋汚染及び海上災害の防止に関す
る法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十排他的経済水域及び大陸棚に関する
法律案(内閣提出)
日程第十一 排他的経済水域における漁業等に
関する主権的権利の行使等に関する法律案
(内閣提出)
日程第十二 海洋生物資源の保存及び管理に関
する法律案(内閣提出)
日程第十三 水産資源保護法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等
に関する決議案(松前仰君外六名提出)
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間に
おける後方支援、物品又は役務の相互の提供
に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府と
の間の協定の締結について承認を求めるの件
の趣旨説明及び質疑
午後一時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/0
-
001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
――――◇―――――
安全保障委員長辞任の件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/1
-
002・土井たか子
○議長(土井たか子君) お諮りいたします。
安全保障委員長吹田愰さんから、委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/2
-
003・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。
――――◇―――――
安全保障委員長の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/3
-
004・土井たか子
○議長(土井たか子君) つきましては、これより安全保障委員長の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/4
-
005・七条明
○七条明君 安全保障委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/5
-
006・土井たか子
○議長(土井たか子君) 七条明さんの動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/6
-
007・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
議長は、安全保障委員長に松岡満壽男さんを指名いたします。
〔拍手〕
―――――――――――――
日程第一 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/7
-
008・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第一、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生委員長和田貞夫さん。
―――――――――――――
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔和田貞夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/8
-
009・和田貞夫
○和田貞夫君 ただいま議題となりました医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、保健医療分野における科学技術の高度化に伴う基礎研究の重要性の増大にかんがみ、国民の健康の保持増進に寄与する医薬品等の生産に関する技術の開発を振興するため、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に基礎研究の業務を行わせる等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の目的に、医薬品の生産等に関する技術の基礎的研究に関する業務を行うことを追加すること、
第二に、基礎的研究業務について、医薬品の生産または販売に関する技術のうち、医薬品の品質、有効性及び安全性の確保向上等国民の健康の保持増進に寄与する技術のほか、医療用具等に関する技術も対象とすること、また、業務の内容に基礎的研究の成果の普及等を追加すること、
第三に、政府の出資金及び運用利益金の充当先に基礎的研究業務を追加すること、また、機構は、厚生大臣の認可基準に従い、基礎的研究の一部を委託することができることとすることであります。
本案は、去る四月二十六日付託となり、五月二十二日菅厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/9
-
010・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/10
-
011・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
日程第二 都市公園等整備緊急措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第三 下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/11
-
012・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第二、都市公園等整備緊急措置法の一部を改正する法律案、日程第三、下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。建設委員長二見伸明さん。
―――――――――――――
都市公園等整備緊急措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔二見伸明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/12
-
013・二見伸明
○二見伸明君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、都市公園等整備緊急措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、都市公園等の整備の促進により都市環境の改善を図るため、平成八年度を初年度とする都市公園等整備五カ年計画を策定するとともに、同計画の対象となる一定の公園または緑地を設置する町村に対し国が無利子貸し付けを行うことができる期間を延長しようとするものであります。
次に、下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、下水道の緊急かつ計画的な整備を促進して都市環境の改善を図り、あわせて公共用水域の水質の保全に資するため、平成八年度を初年度とする下水道整備五カ年計画を策定するとともに、発生汚泥等の適正な処理に関する下水道管理者の責務を明確化し、及び下水道施設の有する空間の有効利用を図ろうとするものであります。
両法律案は、参議院先議に係るものであり、衆議院においては、いずれも去る五月二十二日本委員会に付託され、五月二十四日中尾建設大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、採決の結果、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/13
-
014・土井たか子
○議長(土井たか子君) 両案を一括して採決いたします。
両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/14
-
015・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第四 水笠汚濁防止法の一部を改正する
法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/15
-
016・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第四、水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。環境委員長杉山憲夫さん。
―――――――――――――
水質汚濁防止法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔杉山憲夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/16
-
017・杉山憲夫
○杉山憲夫君 ただいま議題となりました水質汚濁防止法の一部を改正する法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、油の流出事故による水質汚濁を防止するため、事故時の措置に関する規定の整備を行うとともに、有害物質により汚染された地下水による人の健康に係る被害を防止するため、汚染された地下水の水質浄化を図るための所要の措置を講じようとするものであります。
その主な内容は、
第一に、特定事業場の設置者及び重油その他の油を貯蔵しまたは油を含む水を処理する施設を設置する工場または事業場の設置者は、事故により、油を含む水が公共用水域に排出され、または地下に浸透した場合は、直ちに応急の措置を講ずるとともに、事故の状況等を都道府県知事に届け出なければならないこと、また、都道府県知事は、汚染の拡大を防止するため必要な措置を講ずることを命ずることができること、
第二に、都道府県知事は、特定事業場において、有害物質に該当する物質を含む水の地下への浸透があったことにより、現に人の健康に係る被害が生じまたは生ずるおそれがあると認めるときは、当該特定事業場の設置者に対し、相当の期限を定めて、地下水の水質の浄化のための措置をとることを命ずることができること等であります。
本案は、四月十二日参議院から送付され、五月十七日本委員会に付託となり、二十一日岩垂環境庁長官から提案理由の説明を聴取し、二十四日質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/17
-
018・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/18
-
019・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第五 核原料物質、核燃料物資及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/19
-
020・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第五、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。科学技術委員長井上喜一さん。
―――――――――――――
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔井上喜一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/20
-
021・井上喜一
○井上喜一君 ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、科学技術委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、海洋法に関する国際連合条約の実施に伴い必要となる放射性物質の海洋投棄に関連する所要の規定の整備を図るものであり、その主な内容は、
第一に、条約により海洋環境の保護及び保全に関する我が国の管轄権が領海を超えて排他的経済水域等にまで拡大されることに伴い、排他的経済水域等における外国船舶による放射性物質の違法な海洋投棄について罰則の整備等を行うことであります。また、放射性物質の海洋投棄の規制の適切な履行を図るため、船舶への立入検査及び船舶の船長等からの報告徴収に係る規定をあわせて整備することであります。
第二に、条約において外国船舶に対する法令の執行の手続が定められたことに伴、、違反を行った外国船舶について担保金等を提供することを条件に釈放する制度を整備することであります。
本案は、去る三月二十六日本院に提出され、五月十日の本会議において趣旨説明が行われ、同日本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、五月十四日中川国務大臣から提案理由の説明を聴取し、十六日質疑を行い、去る二十四日外務委員会、農林水産委員会及び運輸委員会との連合審査会を行った後、質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/21
-
022・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/22
-
023・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第六 海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/23
-
024・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第六、海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長関谷勝嗣さん。
―――――――――――――
海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔関谷勝嗣君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/24
-
025・関谷勝嗣
○関谷勝嗣君 ただいま議題となりました国連海洋法条約及び条約第十一部の実施協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
海洋法に関する国際約束の作成は、国際連合が最大の関心を払ってきた事項の一つであり、昭和四十八年、海洋の法的秩序に関する包括的な国際約束を作成することを目的として第三次国連海洋法会議が開始され、十年間にわたる交渉の末、昭和五十七年十二月、ジャマイカのモンテゴベイで開催された第三次国連海洋法会議最終議定書及び条約の署名会議において国連海洋法条約が採択され、我が国は、昭和五十八年二月七日に署名を行いました。本条約は、平成六年十一月十六日に効力を生じております。
本条約の採択以降、条約第十一部の規定によって設けられる深海底制度の費用対効果について疑問が提起され、多くの先進国が条約の締結に消極的な姿勢をとることとなりました。
これを受けて、条約が効果的に機能すること及び国際社会において海洋秩序が安定することを確保するためには、条約の発効前に第十一部の規定を改善して、先進諸国を含めた国際社会の大多数の国による条約への参加が可能となることが不可欠であるとの認識が広まり、平成二年から国連事務総長の主催により非公式協議が開催され、第十一部の規定を見直すための交渉が行われました。
その結果、平成六年七月二十八日、国連第四十八回総会再開会合において条約第十一部の実施協定が採択されました。我が国は、翌二十九日に開催された署名式典において批准を条件として本協定に署名し、同年十一月十一日に国連事務総長に対し協定の暫定的適用の通告を行いました。
条約は、いずれの国も十二海里を超えない範囲で領海の幅を定める権利を有すること、沿岸国は二十四海里を超えない範囲で接続水域を設定できること、領海基線から二百海里を超えない範囲で排他的経済水域を設定できること、深海底及びその資源は人類共同の財産であること等、海洋に関する諸問題について包括的に規律しております。
実施協定は、協定及び第十一部の規定については単一の文書として一括して解釈され、かつ適用されること、協定と第十一部の規定とが抵触する場合には協定が優先すること等について規定をいたしております。
本件は、去る三月二十六日本院に提出され、五月十日本会議において趣旨の説明及びこれに対する質疑が行われた後、外務委員会に付託されました。
委員会におきましては、十四日池田外務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、二十四日農林水産委員会、運輸委員会及び科学技術委員会との連合審査会を開会した後、本委員会において直ちに採決を行いました結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/25
-
026・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/26
-
027・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。
――――◇―――――
日程第七領海法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第九 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/27
-
028・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第七、領海法の一部を改正する法律案、日程第八、海上保安庁法の一部を改正する法律案、日程第九、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。運輸委員長辻一彦さん。
領海法の一部を改正する法律案及び同報告書
海上保安庁法の一部を改正する法律案及び同報告書
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(二)に掲載〕
〔辻一彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/28
-
029・辻一彦
○辻一彦君 ただいま議題となりました三法律案について、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、領海法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、海洋法に関する国際連合条約に定めるところにより、基線として直線基線を加えるとともに、領域における通関等に関する法令に違反する行為の防止及び処罰のために必要な措置をとる水域として接続水域を設けること等の改正を行おうとするものであります。
次に、海上保安庁法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、海洋法に関する国際連合条約の締結に伴う我が国における接続水域及び排他的経済水域の設定等の海洋に係る新たな法制度の導入にかんがみ、海上保安官が犯罪の予防等の措置を機動的かつ適切に講ずることができることとするため、海上保安官が講ずる船舶の進行の停止その他の必要な措置に関する規定の整備を行おうとするものであります。
次に、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、海洋法に関する国際連合条約の実施に伴い、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の規定に違反した外国船舶について担保金等の提供を条件に釈放する制度を創設する等の改正を行おうとするものであります。
三法律案は、三月二十六日本院に提出され、五月十日本会議において趣旨説明を聴取した後、同日本委員会に付託されました。
本委員会においては、五月十四日亀井運輸大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、翌十五日質疑を行い、また、去る二十四日には外務委員会、農林水産委員会及び科学技術委員会との連合審査会を開催いたしました。連合審査会終了後、本委員会において質疑を終了し、直ちに採決いたしました結果、三法律案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本委員会において、国連海洋法条約の実施に伴う海上保安体制の整備に関する件の決議が行われましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/29
-
030・土井たか子
○議長(土井たか子君) 三案を一括して採決いたします。
三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/30
-
031・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第十 排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案(内閣提出)
日程第十一 排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律案(内閣提出)
日程第十二 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案(内閣提出)
日程第十三 水産資源保護法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/31
-
032・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第十、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案、日程第十一、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律案、日程第十二、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案、日程第十三、水産資源保護法の一部を改正する法律案、右四宏を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。農林水産委員長松前仰さん。
―――――――――――――
排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案及び同報告書
排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律案及び同報告書
海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案及び同報告書
水産資源保護法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔松前仰君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/32
-
033・松前仰
○松前仰君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
最初に、法律案の主な内容について申し上げます。
まず、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案は、国連海洋法条約に定めるところにより、排他的経済水域及び大陸棚に関する国内法制を整備しようとするものであり、
第一に、我が国が沿岸国として天然資源の探査、開発等、海洋環境の保護及び保全等に関する主権的権利等を行使する水域として排他的経済水域を設けるとともに、その範囲を定めることとしております。
第二に、我が国が沿岸国として天然資源の探査、開発等に関する主権的権利等を行使する大陸棚について、その範囲を明確化することとしております。
次に、排他的経済水域における漁業等に関すろ主権的権利の行使等に関する法律案は、国連海洋法条約に定める権利を的確に行使することにより海洋生物資源の適切な保存及び管理を図るため、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等について所要の規定を整備しようとするものであり、
第一に、排他的経済水域のうち、領海法において領海の幅が十二海里に満たない海域等を外国人の漁業等の禁止海域とし、この禁止海域以外の海域については、外国人は、農林水産大臣の許可を受けなければ漁業等を行ってはならないこととしております。
第二に、この許可は、農林水産大臣が定める漁獲量の限度の範囲内で、当該外国人の漁業が国際約束等に従って的確に行われる等の基準に該当する場合に限り行うこととしております。
次に、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律案は、国連海洋法条約の実施に伴い、排他的経済水域等における海洋生物資源の保存及び管理を図るため、漁獲量の総量に着目した資源管理に関する新たな法制度を導入しようとするものであり、
第一に、農林水産大臣は、漁獲可能量の対象となる海洋生物資源の動向、漁獲可能量、実施すべき施策等を内容とする基本計画を定めるとともに、都道府県知事は、基本計画に即して、その管理する漁業について実施すべき施策等を内容とする都道府県計画を定めることとしております。
第二に、農林水産大臣または都道府県知事は、漁獲量を漁獲可能量等の範囲内に管理するため、海洋生物資源の採捕の停止等の命令をすることができることとしております。
次に、水産資源保護法の一部を改正する法律案は、国連海洋法条約の実施等に伴い、水産動物の種苗の輸入防疫措置を講じようとするものであり、特定の水産動物の種苗を輸入しようとする者は、農林水産大臣の許可を受けなければならないこととするとともに、農林水産大臣は、輸出国政府機関発行の検査証明書により伝染性疾病の病原体を広げるおそれがないと認めるときは、許可をしなければならないこととしております。
これら四法律案は、去る五月十日本会議において政府の趣旨説明及びこれに対する質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。委員会におきましては、五月十四日大原農林水産大臣から四法律案の提案理由の説明を聴取した後、翌十五日に質疑を行い、十六日には参考人から意見を聴取するとともに、二十四日関係委員会との連合審査会を開催するなど慎重な審査を行いました。連合審査会終了後、同日委員会において採決いたしましたところ、四法律案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、委員会において、国連海洋法条約の実施に伴う漁業関係法律の施行等に関する件の決議が行われましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/33
-
034・土井たか子
○議長(土井たか子君) 四案を一括して採決いたします。
四案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/34
-
035・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって四案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/35
-
036・七条明
○七条明君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
松前仰君外六名提出、国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/36
-
037・土井たか子
○議長(土井たか子君) 七条明さんの動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/37
-
038・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
―――――――――――――
国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案(松前仰君外六名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/38
-
039・土井たか子
○議長(土井たか子君) 国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案を議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。松前仰さん。
―――――――――――――
国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案
〔本号(ニ)に掲載〕
―――――――――――――
〔松前仰君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/39
-
040・松前仰
○松前仰君 ただいま議題となりました国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案につきまして、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけ、日本共産党及び自由連合を代表し、提案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
国連海洋法条約の実施に伴う漁業秩序の確立等に関する決議案
本院は、海洋の新たな秩序を構築することが海洋国家としての我が国の国益に沿うことにかんがみ、国連海洋法条約を承認し、これに関する国内法案を可決した。
国連海洋法条約の批准は、排他的経済水域及び大陸棚に対する我が国の経済的主権を承認するものであり、漁業、海底資源開発、海洋環境保護等に一大転換をもたらすものである。
しかしながら、国連海洋法条約関連法の実施に当たっては、新たな日韓・日中漁業協定の締結等外交上の課題が山積している。また、新たな海洋法秩序を維持・確立するための監視・取締り体制の整備、漁獲可能量制度の確立等国内的な課題も多い。
よって政府は、国連海洋法条約の趣旨を実現するための外交交渉に最善を尽くすとともに、適切な資源管理策を通じて漁業経営の体質強化を図り、漁業を二十一世紀にふさわしい魅力ある産業として確立するため必要な水産諸施策を積極的に展開し、もって国民生活の安定に遺憾なきを期すべきである。
右決議する。
以上であります。
国連海洋法条約は、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚といった国家の主権あるいは主権的権利を行使し得る範囲を定めるとともに、漁業、鉱物資源、海上交通、海洋環境の保全等海洋問題全般を包括的に規定するものであり、国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立に資するものであります。
また、海洋一般に依存するところの大きい海洋国家である我が国が同条約を締結することは、我が国の海洋に係る活動を一層円滑にすることとなるという見地から見て、我が国の長期的かつ総合的な国益に沿うものであり、我が国は、同条約への速やかな参加を果たし、新たな海洋秩序の構築と定着へ向けて積極的に行動すべきものと考えます。
一方、国内に目を転じますと、我が国漁業は、周辺水域における資源状況の悪化に加え、外国漁船の無秩序な操業等による生産量の減少、輸入水産物の増大等に伴う魚価の低下等による経営状況の悪化、漁業就業者の減少・高齢化など多くの困難に直面しております。
このような状況のもとで、国連海洋法条約の批准及び関連法の整備は、排他的経済水域の設定、海洋生物資源の保存・管理を義務づける等我が国漁業に大きな変革をもたらし、我が国漁業にとり一大転機となるものであります。
このため、政府は、排他的経済水域を我が国周辺水域に全面的に適用し、我が国の主権的権利を行使できるよう、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた新たな日韓・日中漁業協定の速やかな締結に向けて、交渉に最善を尽くすべきであります。
また、我が国漁業を二十一世紀にふさわしい魅力ある産業として確立するため、食料産業としての位置づけを明確にするとともに、漁獲可能量制度等による適切な資源管理等を通じた漁業経営の体質強化を図るなど、活力ある漁業・漁村の実現に向けて必要な諸施策を積極的に展開し、もって国民生活の安定に遺憾なきを期すべきであります。
さらに、排他的経済水域の全面適用と接続水域及び大陸棚に関する法制度の整備に伴い拡大することとなる我が国の管轄権を的確に行使し、漁業資源、大陸棚資源の管理等を十全に行うため、取り締まり体制の大幅な充実強化が必要であると考える次第であります。
以上、万全の体制で新たな海洋秩序の構築が図られますよう心から希望いたしまして、本決議案の趣旨説明とさせていただきます。
何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/40
-
041・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/41
-
042・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
この際、農林水産大臣及び外務大臣から発言を求められております。順次これを許します。農林水産大臣大原一三さん。
〔国務大臣大原一三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/42
-
043・大原一三
○国務大臣(大原一三君) ただいまの御決議に許しまして所信を申し上げます。
政府といたしましては、国連海洋法条約の締結に伴い、同条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることとなるよう鋭意努めてまいりますとともに、所要の施策を講ずるなど、ただいま採択されました御決議の趣旨を伏し、遺憾のないよう対処してまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/43
-
044・土井たか子
○議長(土井たか子君) 外務大臣池田行彦さん。
〔国務大臣池田行彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/44
-
045・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいまの御決議に対して所信を申し述べます。
私といたしましても、国連海洋法条約の趣旨及びただいま採択された御決議の趣旨を踏まえ、近隣諸国との間で新たな漁業関係の構築が行われるよう最善を尽くす所存であります。(拍手)
――――◇―――――
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/45
-
046・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣池田行彦さん。
〔国務大臣池田行彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/46
-
047・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
政府は、自衛隊と米軍との間の緊密な協力を促進し、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の円滑かつ効果的な運用に寄生するため、並びに国際連合平和維持活動及び人活的な国際救援活動において自衛隊と米軍がその役割を一層効率的に果たしていくことを促進し、国際連合を中心とした国際平和のための努力に寄生するため、この協定を締結することにつき、アメリカ合衆国政府と交渉いたしました。その結果、平成八年四月十五日に東京で、私と先方モンデール駐日米国大使との間でこの協定に署名を行うに至った次第であります。
この協定は、日米共同訓練、国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要な後方支援において提供される物品または役務を自衛隊と米軍が相互主義の原則に基づいて提供する枠組みを設けるため、その提供、決済、移転の制限等の基本的な条件を定めるものであります。この協定は十年間効力を有し、その後は、いずれか一方の当事国政府が協定終了の意思を通告しない限り、順次十年間自動的に効力を延長されるものとされております。
この協定の締結は、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用及び国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するものと考えられます。
以上を御勘案の上、この協定の締結について御承認を得られますよう格別の御配慮を得たい次第でございます。(拍手)
――――◇―――――
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/47
-
048・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。岡田克也さん。
〔岡田克也君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/48
-
049・岡田克也
○岡田克也君 新進党の岡田克也です。
私は、新進党を代表して、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定、いわゆるACSAについて、橋本総理及び関係大臣に質問をいたします。
さて、本題に入る前に、最近私が非常に懸念していることがあります。このことをお話しし、総理、関係大臣に御意見を伺いたいと思います。
それは、最近の選挙制度をめぐる政治家の発言であります。
例えば土井衆議院議長は、「一度もやらずにつくり直すというのは間違っていると言う人もいるが、悪くなるものは実行しないことに意味があると言う人もいる」と発言したと伝えられております。また、村山社民党党首は、この場におられないのは大変残念でありますけれども、社民党内の中選挙区制度復活の議員立法案提出の動きに対し、「議員の身分に関することなので、党議拘束しない方がいいのではないか」と述べたと伝えられています。
私は、ここで小選挙区比例代表並立制と中選挙区制のどちらがいいかを議論するつもりはありません。このことは、既にこの国会において五年間以上をかけて議論してきたことであります。既に結論は出ているのです。
私がこの衆議院本会議場において申し上げたいことは、国会は根本的な事情の変更がないにもかかわらず、一度成立させた法律を一度も実施しないままに廃止することができるのだろうかという問題であります。形式論を言えば、もちろん可能であります。どこにもそれを禁ずる法律はありません。しかし、国会の行う討議やあるいは採決けそれほど軽いものであっていいのでしょうか。
国会は、憲法四十一条によって、国権の最高機関であり国の唯一の立法機関であるとされています。このことの意味をよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。(拍手)
法律は国民の権利を制限し、義務を課します。また、法律は国や国民の将来を左右することがあります。これほど重要な法律を成立させる権限を唯一与えられたのが国会であります。我々は国会に与えられた権限の重みを常に感じながら真剣に審議しなければなりません。そして、多数決によって決まった場合には、その法律がきちんと実施されるように努力していかなければなりません。
もしこの国会において一度成立させた法律が一度も実施することなく廃止されることになれば、
これまでの討議や審議は一体何だということになるのではないでしょうか。国会の権威、ひいては何よりも国民の政治に対する信頼は完全に失われてしまいます。そのような国会が、国民に対して法律を守れということが言えるのでしょうか。(拍手)総理、総理はみずからもこの衆議院の一員であります。総理の政治家としての見解をお伺いしたいと思います。
一般論として聞きます。国会がみずから長時間の審議を経て制定した法律を、特段の事情変更がないにもかかわらず、白紙に戻すことが果たして許されるというふうにお考えでしょうか。
次に、久保副総理にお伺いをいたします。
社会民主党は、細川政権時代の与党第一党として小選挙区比例代表並立制に賛成しました。単に賛成したというよりは、法案成立に直接の責任を負っていたのは当時の社会党の山花政治改革担当大臣であり、佐藤自治大臣だったのです。両大臣のこの本会議場における熱弁は、私もよく記憶をしております。
そこで、久保副総理にお聞きをします。副総理は、政治家として、小選挙区比例代表並立制を否定する議員立法案の提出についてどのようにお考えでしょうか。
また、村山前総理・社民党党首は「議員の身分に関することだから、社民党としてはこれをやめさせるつもりはない」としていると伝えられております。選挙制度が我々国会議員の選挙における当落に影響を及ぼすものであることは事実であります。しかし、国会においてあれほど真剣に選挙制度について議論したのは、それが我々の身分に関することだったからなのでしょうか。選挙制度と変えることが我が国の政治を変えるという理想に基づいて我々は議論をしたはずであります。
村山前総理は、総理として、みずからも区割り法案を提案し、国会で答弁し、成立させるなど、今回の選挙制度改革を推進する最高責任者の立場にあったわけであります。議員の身分に関することだとの理由で中選挙区制復帰の議員立法を黙認していると伝えられていることについて、かつて社会党書記長として政治改革を推進してこられた久保副総理の政治家としての意見をお伺いしたいと思います。(拍手)
次に、ACSAについてお伺いをいたします。
私は、この協定が必要であるとの認識に立っております。しかし、国民の間にはいろいろな意見があり得ますので、基本的な点についてお伺いしておきたいと思います。
第一に、この協定は昭和六十三年以来の懸案となっていたとされておりますが、何が原因でこれだけの時間を要したのでしょうか。また、これだけ長時間の検討を必要としたものが、今回この国会において提案が可能となった最大の理由は何でしょうか。
第二に、この協定は平時対処に限定されているのでしょうか。共同訓練など、協定の第一条第二項に定める場合であれば、有事であってもこの協定は適用されるのでしょうか。このこととの関連で、第一条第四項の「国連憲章と両立するものでなければならない」とはどのような意味でしょうか。
第三に、先般の我が党の愛知和男議員の「なぜ弾薬などが提供の対象となる物品に含まれていないのか」との質問に対し、総理は「そもそもアメリカ側に弾薬提供についての特段のニーズがなかったからだ」と答弁をされております。共同訓練の際に実弾を使用することは当然あるにもかかわらず、ニーズがなかったとのお答えは十分納得できるものではありません。また、総理は、アメリカ側のニーズがあれば弾薬を加えることは問題がないというふうにお考えなのでしょうか。御見解をお聞かせいただきたいと思います。
第四に、この協定は、日本の領土、領海、領空内だけではなく公海上における共同訓練にも適用されると考えられますが、第三国における日米の共同訓練の場合にはどうなるのでしょうか。
第五に、この協定が直接の対象としていない有事の際の日米双方の協力についてお伺いをいたします。
総理は、この点についても、「この協定の交渉に当たり、ニーズの高いものから対象とするという観点で相談した結果である」と国会答弁をされております。しかし、本当にニーズが高いのは、訓練の場合ではなくて、現実に日米安保条約が適用されるような場合であることは言うまでもありません。日米安保条約を結び、基地の提供までしながら、具体的な協力について何も決まっていないというのは理解できないことであります。日米防衛協力のための指針の見直しを初めとする有事の際の日米協力体制の構築が急がれますが、総理はいつまでに作業を終えるお考えでしょうか。第六に、有事法制についてお伺いします。私は、有事の際に自衛隊が十分に機能しないよりな事態を放置しておくことには大きな矛盾を感じます。毎年五兆円の国民の税金を防衛費として投入しながら、いざというときの体制ができていないというのはどういうことなのでしょうか。総理は「法制化の問題については、高度の政治判断によるものであり、国会における審議や国民再論の動向を踏まえて対応していくべき」と述べられています。しかし、社会党が自衛隊の必要性を認めた今、国会における審議すらできないという状況ではないはずです。また、国民世論は政治家が真剣に国民に語ることで形成されるものでもあります。総理のトップリーダーとしての指導力の発揮を求めたいと思いますが、総理の有事法制実現についての決意をお伺いしたいと思います。
次に、私は、先般の日米安保共同宣言に関連して質問をいたします。
この共同宣言は、今後の我が国の進むべき方向を示した極めて重要な意味を持つものであると思います。しかし、同時に、今後の日米安保体制を考えるに当たって幾つかの明確にしなければならない点があります。問題点をあいまいにしたまま、あるいは国内向けと米国向けで違う説明をしているようでは、日米安保条約に関する議論はいつまでも深まらないわけであります。
第一に、日米安保体制がアジア太平洋の平和と安定のために重要であるとの位置づけであります。
この点について、総理は「日米安保条約の目的達成のために米軍が我が国に駐留しているという事実がアジア太平洋地域諸国に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用している」と国会で答弁されています。この答弁の意味をもう少し御説明していただきたいと思います。
この答弁は、在日米軍の存在が日本の抑制に役立っているといういわゆる瓶のふた論を意味しているのでしょうか。そうでないとすると、単に米軍が存在するというだけではなく、いざというときにその米軍が機能するという最終的な期待がなければ、アジア太平洋諸国にとって安心感を与えることにはなりません。共同宣言で日米安保体制がアジア太平洋の平和と安定の基礎であると確認したのは、アジア太平洋地域における米軍の武力行使を含む広範な活動を前提にし、また、日本としても憲法の許す範囲内でこれに最大限協力していくということを意味しているものではないのでしょうか。総理のお考えを聞きたいと思います。
第二に、日米安保条約に基づくいわゆる事前協議についてお伺いをします。
安保条約第六条の極東有事の際の日本国から行われる米軍の戦闘作戦行動のための基地の使用なこについては、事前の協議が必要とされています。この事前協議を受けたときの日本国政府の基本的判断基準はどのようなものなのか、お伺いをしたいと思います。このような重要な問題について、政府の全面的な裁量によるのではなくて、基半をあらかじめ国民に示しておく必要があるとはね考えにならないのでしょうか。
第三に、米軍の在日米軍基地からの直接的な戦闘作戦行動が安保条約の適用対象である極東の外に対し行われる場合についてお伺いします。
空中給油や航空機の飛行距離が延びたことで、かなり広い範囲に対し直接戦闘作戦行動を行うことが可能になっています。極東の範囲外に日本の在日米軍基地から戦闘作戦行動を行う場合には、事前協議の対象となるのでしょうか。事前協議の対象とならないときに我が国はどう対応するのでしょうか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。
第四に、日本にある米軍基地の役割について伺います。
今や在日米軍基地は、米国にとってアジア太平洋地域の戦略拠点と言っても過言ではないと思います。昨年二月に発表されたいわゆるナイ・レポートもそのことを率直に述べております。極東地域以外のアジア太平洋地域で武力紛争が発生したときに、在日米軍基地からの戦闘機や空母などが間接的に紛争にかかわることは当然予想されろことであります。従来、政府は、このような場合は単なる移動であり、関知しないというふうにしてまいりました。このことについて総理はどう台考えでしょうか。日本国政府として、ただ単に米軍の移動を黙って受け入れているだけでいいとお考えですか。それとも、主権国家としてもう少し責任ある態度をとるべきだとお考えですか。御見解をお伺いしたいと思います。
最後に、日米安保共同宣言と中国との関係についてお伺いします。
米国のマスコミの一部には、今回の共同宣言は、米国にとって将来脅威となるであろう中国を封じ込めることを目的にしたものであるとの意見があります。これに対し中国側にも強い警戒感があります。この点について、すなわち日米安保共同宣言と中国との関係について総理のお考えをお伺いし、私の質問とさせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/49
-
050・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 岡田議員にお答えを申し上げます。
まず、国会がみずから長時間の審議を経て制定した法律を、特段の事情変更がないにかかわらず、一度も実施することなく白紙に戻すことが許されるかという一般論についてお尋ねがありました。
そうした先例は、いわゆるグリーンカードの例がございます。そして、私は一般的にこのようなことは好ましいことではないと思いますけれども、それは個々の事例ごとに判断されるべきであるというのが、このグリーンカードの例に見ての先例ではないでしょうか。
なお、小選挙区比例代表制について申し上げるなら、新制度による総選挙もまだ実施されておらない状況の中で、現時点では、この制度が正しく運用されることが重要と考えており、政府としてこれを抜本的に見直すという考えはありません。
次に、日米物品役務相互提供協定による弾薬の問題についてお尋ねがありました。
そもそも米側に弾薬の提供について特段のニーズがなかったという理由から、この協定におい7弾薬の提供を提供の対象とする物品または役務から除外した、これはお答えをしたとおりでありすす。なお、日米共同訓練において弾薬が使用されることがあるかどうかということと、米側がその提供を我が国に求めるかどうかということは、知は全く別の次元の話だと思います。
次に、我が国の周辺地域で我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合の日米間の協力の研究及び日米防衛協力のための指針の見直しにつきましては、先般の日米安保共同宣言において合意いたしたところであり、その個別具体的な協力の内容につきましてはまさに今後の検討の結果を待つ必要がありまして、具体的にいつまでに結論を出そうということが現時点において決まっているわけではありません。
次に、自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究につきましては、自衛隊法第七十六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題につき、政府部内では昭和五十二年から検討してまいっております。これまでに、防衛庁所管の法令及び他省庁所管の法令についての問題点を、昭和五十六年四月及び昭和五十九年十月にそれぞれ取りまとめて公表してまいりました。また、所管省庁が明確でない事項に関する法令につきましては、現在、内閣安全保障室を中心とする政府部内で検討を加えております。
議員のお考えとは違うようでありますが、私は、法制化の問題については、まさに国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものだと考えております。
また、日米安保体制がアジア太平洋地域の平和と安定に対し有する意義について御意見がありました。
日米安保共同宣言におきましては、日米間の安全保障面の関係が、アジア太平洋地域において害定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認いたし、政府としては、米国と協力をしながら、このように重要な日米安保体制の信頼性をさらに向上させていくため最大限の努力を払っていく決意であります。
次に、戦闘作戦行動についての事前協議を受けた場合の判断基準についてお尋ねがありました。
政府の基本的態度は、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して自主的に判断し、諾否を決定するというものであります。その我が方諾否の基準は、我が国の国益、すなわち日本の安全を確保するというものであり、その際、極東の安全なくしては我が国の安全を十分確保し得ないという認識のもとに、極東の安全に関係する事態を常に我が国自身の安全との関連において判断し、我が国の安全に直接また極めて密接な関係を有するかどうかという見地から対処する、従来から政府が御答弁申し上げているとおりであります。
次に、我が国を含む極東に対する外部からの武カ攻撃を排除するため、あるいは極東の周辺地域に起こった事情が域内の安全に対する脅威となるような状況のもとにおいて、そのような脅威に対処するため米軍がとることのある行動の範囲は必ずしも極東に局限されるわけではありませんし、かかる目的のために米軍が施設・区域を直接戦闘作戦行動の発進基地として使用することは安保条約上想定されていることでありますし、かかる施設・区域の使用は当然我が国との間の事前協議の対象となります。
また、極東以外のアジア太平洋地域における紛争に在日米軍基地の航空機や船舶が関与する場合、安保条約は施設・区域を使用する米軍の能力や任務を極東の地域内に限定しているわけではありません。在日米軍の部隊が極東以外の地域に赴き、またはかかる地域から帰投するというようないわゆる移動について、安保条約上何ら制約を課しているわけではありません。このことも従来から政府が御答弁を申し上げているとおりであります。
最後に、日米安保共同宣言と中国との関係について御質問がありました。
日米安保共同宣言は、日米安保体制の重要な役割を改めて確認すると同時に、二十一世紀に向けた日米協力関係の強化の方途を明らかにするものであり、第三国に対して日米が対抗するようなことを目的としたものではありませんし、また、アジア太平洋地域の安定と繁栄のために、「日米は中国との協力をさらに深めていくことに関心を有する」とも述べております。このことを含めて、宣言の趣旨につきましては、中国に対しましても既に外交ルートで説明をし、理解を得るよう努めているところでありますし、宣言で示されました日米協力の方向を実施に移すに当たりまして、近隣諸国との関係に十分配慮してまいる所存であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣久保亘君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/50
-
051・久保亘
○国務大臣(久保亘君) 選挙制度は、議会制民主主義の基本をなすものであります。したがって、政治家はもちろん、政治家に限らず、よりよい選挙制度について研究し、その実現に努力することはあってしかるべきことかと存じます。
政党として議員立法をどう取り扱うかは、党機関の意思によるものと思います。
社民党党首の発言についてお尋ねがございましたが、今私が申し上げたような立場で発言が行われたものと理解いたしております。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/51
-
052・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 岡田議員の私に対する御質問は三つございました。
まず、本協定の提案が今国会になった理由いかん、こういう点でございまずけれども、自衛隊と米軍との間の物品・役務の相互提供のための枠組みの作成につきましては、昭和六十三年に米側から提案されました。これを受けまして、我が国政府内で検討を開始したわけでございますが、具体的には、米国が他国と既に締結している協定についていろいろ調査を進めました。また、日米間における協定締結の必要性、また国内法制や関連政策との整合性等々、種々の論点につきまして、政府の部内において、また米側との間において、検討を行ってきたところでございます。
その結果、米側並びに関係省庁との間の調整がこのほど調いまして、本年四月に、今回御審議をお願いしております日米物品役務相互提供協定という形で米側と署名するに至った次第でございます。そして、今国会に提出したわけでございます。
次に、この協定は平時対処に限定されるのか、あるいは第一条二項に定める場合であれば有事にも適用されるのか、さらに、それに関連して、第一条の四に規定している国連憲章との両立とはどういう意味か、こういう御質問でございました。
本協定に基づきまして提供される物品・役務は、日米共同訓練、国連平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要なものに限定されておりまして、戦闘行動が行われているという意味でのいわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品や役務の提供というものには適用されません。また、第一条の四の趣旨でございますが、本協定により提供した物品・役務を使用する場合には、国連憲章第二条に定める加盟国の行動の原則を含め同憲章に従う、こういうことを両政府において確認したものであります。
最後に、日米以外の第三国における共同訓練にも適用されるのかという御質問でございましたが、従来、日米共同訓練は日米以外の第三国で実施されたことはないと承知しております。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/52
-
053・土井たか子
○議長(土井たか子君) 佐藤泰介さん。
〔議長退席、副議長着席〕
〔佐藤泰介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/53
-
054・佐藤泰介
○佐藤泰介君 私は、自由民主党、新党さきがけ、社会民主党・護憲連合を代表して、日米物品役務相互提供協定そのものについて、橋本総理大臣及び関係閣僚に質問をさせていただきます。
主権国家にとって、安全保障政策ほど重要な政策はありません。しかし、安全保障と申しますと、ややもすると軍事面ばかりが強調されますが、政治、経済、文化などあらゆる分野での国際間の信頼醸成措置こそが、紛争の可能性を未然に防止するとの観点から、理想的な安全保障政策と言えます。
我が国の安全保障政策の根幹をなすものは、申し上げるまでもなく、日米安全保障条約に基づく日米協力関係であります。冷戦時代の東西対立という図式の中で生まれた日米安保体制のもと、我が国は米国と同盟を結ぶことにより経済発展を遂げることができました。
冷戦終結以後、我が国にとっての潜在的脅威が縮小する一方で、世界各地では地域紛争や民族紛争といった対立が頻発しており、この傾向は我が国周辺地域といえども例外ではありません。我が国は、国土防衛という狭い意味での、しかし根本的な安全保障を揺るぎのないものとするとともに、信頼醸成という広い意味での安全保障のあり方を模索し、その枠組みの確立を急ぐ必要があります。
このような意味において、先月行われたクリントン・アメリカ合衆国大統領と橋本内閣総理大臣との首脳会談で日米安全保障条約の再確認が行われたことに伴い、日米両国の。パートナーシップが強化され、新たに生まれ変わった日米関係が、二十一世紀に向けて我が国の平和を引き続き保障するとともに、アジア太平洋地域、さらには世界の平和と安定に貢献することを日米両国首脳が約束したことは、時宜を得たものであり、日本国憲法の理念と合致するところと評価いたします。
我が国の安全保障に焦点を絞れば、昨年の防衛大綱の改定作業の結果、日米安保体制の信頼性の向上を図り、自衛隊と米軍との協力関係を強化することがますます重要な課題となりましたが、その意味において、日米安全保障共同宣言はその重要性を改めて我が国国民に想起させました。
ただいま議題となっております日米物品役務相互提供協定は、自衛隊と米軍との協力関係を強化し、もって日米安保体制の信頼性の向上を図るための一づつ方策であり、我が国有事に備えての共同訓練のみならず、PKOや人道的な国際救援活動においても自衛隊と米軍との物品・役務の相互提供について規定しています。このことから、日米同盟は、世界の平和と安定に寄与するための総合的な安全保障の基盤であることを国際的に宣明したものと認識いたします。
そこで、まず、本協定が作成された背景及び経緯並びにその意義について、橋本総理大臣の説明を求めます。あわせて、本協定を締結することにより日米安全保障条約の運用面でいかなる効果が得られるものと考えておられるのか、総理大臣の所見をお伺いします。
本協定の適用範囲は、自衛隊と米軍との共同訓練及びPKO並びに人道的な国際救援活動とされており、素直に解釈すれば、平時に限定されているものと理解できます。しかし、米国がNATO諸国やアジア諸国との間で従来締結している同種の協定を検証してみますと、平時のみならず、有事においてもその適用を明示的に規定している場合が多く、また、平時適用が主であっても、明文規定がないことから、有事への適用を必ずしも排除したものではないと思われるものもあります。
日米両国政府間の交渉において、平時限定である旨を明示的に規定しないこととした経緯及び理由を説明していただくとともに、日米安全保障共同宣言において我が国周辺地域の有事の際の日米協力に関する研究の開始を約束したにもかかわらず、そのような事態における本協定の適用は全く想定されていないのか、政府の見解をお伺いしたいと思います。
従来実施してきた日米共同訓練は、我が国有事を想定した日米共同対処のためのものであり、我が国が保有する個別的自衛権の準備行動として国内法上も国際法上も容認されるべきものであります。しかし、軍事訓練のすべてが容認されるべきものではなく、その態様により判断されるべきものであることは、さきの台湾の総統選挙に軍事的な圧力を加えることを目的とした中国の軍事演習の例を引くまでもありません。
今後の日米共同訓練が、国連憲章においても我が国憲法においても禁じられている武力の威嚇とならないよう、また、法治国家として、我が国政府が憲法で禁じられていると解釈している集団自衛権の行使にまで法的裏づけもなく踏み込む結果とならないよう、政府は我が国の確固とした指針を持って共同訓練計画の立案に当たる必要があるものと考えます。
しかし、同時に、国際情勢の変化、国際社会における我が国の地位の向上、我が国に期待されている役割の増大、日米関係の質的変化など、あらゆる関連要因を勘案してみますと、我が国が国際貢献を行うに当たって、集団自衛権にかかわる問題が浮上してくることが時としてあります。国際の平和と安全の確保を目指し、日米協力あるいは国連協力のために我が国が行わなければならないことを整理し、憲法に従い、集団自衛権を行使しない範囲において必要な法令整備を行うために、政府と私たち国会議員との間において前向きな議論が展開されることが望ましいと考えますが、総理大臣の所見をお伺いします。
次に、本協定に基づき提供することができる物品または役務には、部品・構成品という区分に係るものとして武器が含まれておりますが、政府は、この武器提供を武器輸出三原則等によらないこととしております。また、提供先が米軍に限定され、提供された物品の使用目的及び移転の制限により、武器輸出によって国際紛争等を助長することを回避するという三原則等の基本理念は確保されるとしております。
かつて、対米武器技術供与の道を開いたときには、武器輸出三原則等によらないこととしながらも、武器そのものの対米輸出については従来どおり三原則等により対処することとしておりました。本協定を締結することにより、一定の制限のもとではありますが、武器そのものの対米輸出の道が開かれる可能性が生ずることになります。このような流れは、武器輸出三原則の形骸化につながり、やがてその基本理念さえ軽んじられる結果となることを懸念しますが、政府として武器輸出三原則を堅持していくとの明確な決意を示していただきたいと思います。
特に、本協定の国会提出に当たって、与党政調会議レベルで、「日本国憲法、現行法制、武器輸出三原則の基本を堅持すること」及び「武器部品が第三者に移転され、国際紛争を助長することのないようにすること」が確認されているわけでありますが、政府としてこうした確認に基づいて対応していくつもりか、あわせて見解をお伺いします。
国連が創設されて半世紀が経過した現在においても、残念ながら、国際の平和及び安全の維持のための国連の措置が十分な効力を生ずるには至っておりません。国連改革の努力は始まったばかりであります。その作業が今後いかに進められるのかを見通すことは、現時点では困難であります。
我が国は、従来、日米安全保障条約を国の安全保障の根幹に置いており、二十一世紀を見通しても、この政策を堅持せざるを得ません。したがって、今後も政府は、長期にわたり、地位協定に基づき、米軍による在日施設及び区域の安定的かつ効果的な使用を確保する義務を負うことになります。このように考えれば、国土の一%足らずの沖縄に在日米軍基地の実に七五%が集中し、沖縄はそれに伴う負担と犠牲に苦しんでいるという実槽を何としても解消する責任を政府は強く自覚すべきであります。
先月、沖縄米軍基地の整理統合・縮小に関すろ日米特別行動委員会の中間報告において、普天間飛行場を含む沖縄米軍基地面積の約二〇%の返還合意が発表されたことを評価いたします。しかし、その返還が実現したとしても、依然、沖縄への米軍基地集中という現実は変わりません。沖縄県知事が強制使用の代理署名を拒否した楚辺通信所の一部用地のほかにも、沖縄には次期契約の応否が表明されている用地が数多くあります。
このような問題を解決するためには、やはり日米両国間の協議のもと、沖縄の理解を得ることのできる抜本的な問題解決策を策定、提示することが必要なのではないでしょうか。楚辺通信所一部用地の緊急使用不許可問題に対する政府の今後の取り組み方を含めて、沖縄米軍基地のさらなる縮小問題並びにこの問題の抜本的解決に向けての総理大臣の決意をお伺いします。
最後に、アジア太平洋地域における多数国間の安全保障協力への寄与についてお尋ねします。
国家の安全保障にとって、有事に備える努力を払うことは重要な政府の責任でありますが、同じように重要な課題は、有事を起こさせない外交努力を重ねることであります。その意味において、さきの日米安全保障共同宣言において、多数国間の地域的安全保障についての対話及び協力の仕組みをさらに発展させることで合意したことは、重要な成果であると認識しているところであります。
そこで、今後、アジア太平洋及び北東アジアにおいてどのようにして多数国間の安全保障の仕組みをつくり強化していこうと考えているのか、総理大臣にお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/54
-
055・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 佐藤議員にお答えを申し上げます。
まず、本協定作成の背景、経緯、意義についてでありますが、この協定は、昭和六十三年に米国より、米国とNATO諸国等との間と同様に、我が国との間におきましても物品・役務の相互融通のための枠組みを設けることを提案してまいりましたことを受けまして、日米におけるニーズ、我が国の国内法制や関連する政策との整合性を含め、さまざまな角度から検討を行ってきた結果、今年四月、署名の運びとなったものであります。本協定の締結は、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用及び国連を中心とした国際平和のための努力に寄与するものと考えております。
また、現行法の制度のもとで、自衛隊と米側の間で行われる物品・役務の提供は極めて限定的なものにすぎません。この協定を締結することによりまして日米共同訓練のために必要な物品・役務を相互に提供するための枠組みが設けられることは、自衛隊と米軍との間の緊密な協力を促進し、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用に寄与するものと考えております。
また、我が国の国際貢献に向けた議論の必要件について御意見がありました。
我が国としては、憲法の範囲内で国際の平和と安全のため一層大きな役割を果たしていくことが、我が国の国際社会に対する責務であると考えております。また、安全保障上の各種の緊急事態に対し、対米協力措置をも含めまして必要な対応策を検討、研究しておくことは極めて重要であり、先般、事務当局に私からその旨の指示を出したばかりであります。いずれにせよ、我が国が行う各種の措置につきましては、国会の御審議を初めとする各方面の御議論等を踏まえながら、法的側面にかかわる問題も含めて研究、検討してまいりたいと考えております。
また、日米物品役務相互提供協定締結による武器輸出三原則等の形骸化の懸念についての御意見がありました。
この協定のもとで行われる武器等の提供は武器輸出三原則等によらないことといたしましたが、その場合でも、協定上、提供されました物品または役務の使用が国連憲章と両立するものでなければならないことなどが規定されておりますことから、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念は確保されていると考えております。今後とも、武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念を引き続き尊重してまいるつもりであります。
また、武器の輸出につきまして、従来から武器輸出三原則等に基づいて慎重に対処してきたところでありますが、この協定におきましても、我が国が米国に対して提供した物品または役務を我が国政府の事前同意なく米軍以外の第三者に移転を行うことの禁止等が定められておりますから、国際紛争等を助長することを回避するというその基本理念は確保されていると私は考えております。そして、政府として今後ともその基本理念を引き続き尊重してまいる決意であります。
次に、沖縄の基地問題の解決に向けての決意のお尋ねがございました。
御指摘のように、沖縄県には米軍の施設・区域が集中しております。そして、沖縄県の方々が我が国全体の安全のために担っておられる負担を日米安全保障条約の目的達成との調和を図りながら少しでも軽減していくためには、特別行動委員会の中間報告の措置を確実に実現していくことが不可欠であります。政府はこのような認識に基づいて、法制面及び経費面を含め総合的な観点からできるだけ早い検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずるために、政府が一丸となってこれに取り組む決意であります。
また、御指摘の楚辺通信所の一部の土地につきまして、使用権原のない状態が継続することは極めて憂慮すべき事態であります。今後、関係者の協力を得て、できる限り早期に駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原が得られるよう最大限の努力をしていくことが必要だと考えております。
最後に、アジア太平洋及び北東アジアにおける多国間安全保障の仕組みづくりについて御意見がありました。
御指摘のとおり、この地域の平和と安定は我が国の安全保障上極めて重要であります。そして、こうした観点から、我が国としてま、日米安保体制を堅持しながら、各国間の相互の安心感を高めるために、ASEAN地域フォーラムに積極的に取り組んでまいりました。また、北東アジアにおきましても、政治・安全保障対話の実現に努めております。現在、まず民間レベルの対話といたしまして、北東アジア協力対話の推進に努めております。これにおきましては、日、米、ロ、中国、韓国の官民の関係者が個人の資格で出席し、地域の安全保障問題を議論いたしております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/55
-
056・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 佐藤議員の私に対する御質問は、平時限定である旨を明示的に規定しなかったのは何ゆえかという点でございました。
本協定の交渉におきましては、その対象として自衛隊及び米軍双方のニーズの高いものを取り上げる、そういった観点から検討を進めてまいりました。その結果、共同訓練及び国際平和維持活動等のために必要な物品あるいは役務の提供というものを同協定に基づく提供の対象とすることで、米側と最終的に合意いたした次第でございます。したがいまして、この協定は、いわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品・役務の提供に適用されるものではありません。
また、いずれにせよ、我が国周辺地域において発生する事態で日本の平和と安全に重大な影響を与える場合における日米間の協力につきましては、今後、真剣に研究、検討してまいりたいと考えます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/56
-
057・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/57
-
058・鯨岡兵輔
○副議長(鯨岡兵輔君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十九分散会
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X02919960528/58
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。