1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年六月六日(木曜日)
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議事日程第二十二号
平成八年六月六日
午後零時三十分開議
第一 海上運送法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第二 船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止
に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内
閣提出、参議院送付)
第四 郵便振替の預り金の民間災害救援事業に
対する寄附の委託に関する法律案(内閣
提出、参議院送付)
第五 簡易生命保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
第六 植物防疫法の一部を改正する法律案(内
閣提出、参議院送付)
○本日の会議に付した案件
日程第一 海上運送法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第二 船員法及び海洋汚染及び海上災害の
防止に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
日程第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
日程第四 郵便振替の預り金の民間災害救援事
業に対する寄附の委託に関する法律案(内閣
提出、参議院送付)
日程第五 簡易生命保険法の一部を改正する法
律案(内閣提出、参議院送付)
日程第六 植物防疫法の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
塚原通商産業大臣の中小企業基本法に基づく平
成七年度年次報告及び平成八年度中小企業施
策についての発言及び質疑
午後零時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/0
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001・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
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日程第一 海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/1
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002・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第一、海上運送法の一部を改正する法律案、日程第二、船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。運輸委員長辻一彦さん。
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海上運送法の一部を改正する法律案及び同報告書
船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔辻一彦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/2
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003・辻一彦
○辻一彦君 ただいま議題となりました両法律案について、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、海上運送法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、最近における国際海上輸送に使用される日本船舶の急激な減少にかんがみ、我が国の安定的な国際海上輸送の確保を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、日本船舶の海外への譲渡及び貸し渡しの許可制を、安定的な国際海上輸送の確保上重要な一定の日本船舶、すなわち国際船舶を対象とする事前届け出制に改めること、
第二に、運輸大臣は、届け出をした者に対し、当該譲渡または貸し渡しの中止等を勧告することができることとすること、
第三に、運輸大臣は、安定的な国際海上輸送の確保を図るため、日本船舶の確保に関する調査及び研究を行うこととすること等であります。
次に、船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約、千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約及び千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約のそれぞれの附属書の改正に伴い、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、我が国の港に入港する外国船舶について、これまでの構造・設備面中心の監督に加え、船員の能力等をチェックするソフト面の監督を新たに実施すること、
第二に、我が国の旅客船の乗組員に教育訓練を義務づけること等であります。
海上運送法の一部を改正する法律案は、二月十三日本院に提出され、五月二十八日本委員会に付託となり、また、船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案は、四月十二日に参議院より送付され、五月三十日本委員会に付託されました。
本委員会においては、五月三十日亀井運輸大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、昨六月五日質疑に入り、同日質疑を終了いたしました。
次いで、採決の結果、海上運送法の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案は全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、海上運送法の一部を改正する法律案に許し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/3
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004・土井たか子
○議長(土井たか子君) これより採決に入ります。
まず、日程第一につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/4
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005・土井たか子
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第二につき採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/5
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006・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第四 郵便振替の預り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律案 (内閣提出、参議院送付)
日程第五 簡易生命保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/6
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007・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第三、郵便貯金法の一部を改正する法律案、日程第四、郵便振替の陥り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律案、日程第五、簡易生命保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。逓信委員長中川昭一さん。
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郵便貯金法の一部を改正する法律案及び同報告書
郵便振替の預り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律案及び同報告書
簡易生命保険法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中川昭一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/7
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008・中川昭一
○中川昭一君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、郵便貯金法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、要介護者である郵便貯金の預金者の利益の増進を図るため、要介護者が預入する定期郵便貯金について、利率の特例を定めようとするものであります。
次に、郵便振替の預り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律案について申し上げます。
本案は、非常の災害に際して行われる民間の発意に基づく被災者の救援の充実に資するため、郵便振替の加入者がその口座の預かり金の寄附を郵政大臣に委託する制度を実施しようとするもの下あります。次に、簡易生命保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。本案は、近年における保険需要にかんがみ、簡易生命保険の加入者に対する保障内容の充実を図るため、主たる被保険者または配偶者たる被保険者のいずれか一方が死亡した日から年金を支払う夫婦年金保険の制度を設けようとするものであります。
三法律案は、いずれも四月十日参議院より送付され、五月三十日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。
昨五日日野郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、同日質疑を行い、採決の結果、三法律案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、郵便貯金法の一部を改正する法律案及び郵便振替の預り金の民間災害救援事業に対する寄附の委託に関する法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/8
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009・土井たか子
○議長(土井たか子君) 三案を一括して採決いたします。
三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/9
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010・土井たか子
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第六 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/10
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011・土井たか子
○議長(土井たか子君) 日程第六、植物防疫法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。農林水産委員長松前仰さん。
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植物防疫法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔松前仰君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/11
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012・松前仰
○松前仰君 ただいま議題となりました植物防疫法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、最近における植物検疫をめぐる諸情勢の変化に対応し、国際植物検疫を的確に実施するため、所要の措置を講じようとするものであり、その主要な内容は次のとおりであります。
第一に、我が国の自然環境や農業事情を勘案して、有害動植物が侵入する可能性や侵入した場合の被害等を考慮して、国際植物検疫の対象となる有害動植物の範囲を定めることとしております。
第二に、輸入時点での検査では発見が困難であるが、輸出国の栽培地における検査では発見が容易な有害動植物にっき、輸出国の栽培地における検査を義務づけることとしております。
本案は、去る四月十二日参議院から送付され、五月二十八日本委員会に付託されました。
委員会におきましては、六月五日大原農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、同日質疑を行いました。質疑を終局し、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/12
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013・土井たか子
○議長(土井たか子君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/13
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014・土井たか子
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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国務大臣の発言(中小企業基本法に基づく平成七年度年次報告及び平成八年度中小企業施策について)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/14
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015・土井たか子
○議長(土井たか子君) 通商産業大臣から、中小企業基本法に基づく平成七年度年次報告及び平成八年度中小企業施策について発言を求められております。これを許します。通商産業大臣塚原俊平さん。
〔国務大臣塚原俊平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/15
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016・塚原俊平
○国務大臣(塚原俊平君) 中小企業基本法第八条に基づき、先般、政府が国会に提出いたしました平成七年度中小企業の動向に関する年次報告及び平成八年度において講じようとする中小企業施策の概要を御説明申し上げます。
初めに、中小企業の動向について御説明申し上げます。
第一に、平成七年度における中小企業の景気動向は、一部に持ち直しの動きが見られるものの、総じて言えば依然厳しい状況にありました。本報告書では、特に今回の景気回復局面の特徴として、中小製造業の設備投資に先行性が見られなくなっていること、その背景として、大企業を中心とする海外展開の進展やアジア地域との競争激化などの構造的要因が作用していることについて分析を行っております。
第二に、中小企業における中長期的な変化について御説明申し上げます。これまで、我が国製造業の競争力の基盤を支えてきた中小製造業において、物づくり機能や地域集積の機能に衰退の懸念が生じており、また、国際分業の一層の進展を背景として、親企業の下請企業に対する要求内容が高度化すると同時に、親、下請関係自体がより緩やかなものになるなど、我が国の下請分業構造が変化を見せ始めております。中小流通業については、商品の低価格化や競争環境の激化などの影響により、商店街の空き店舗の増加に象徴されるような厳しい状況にあります。
これらの動向を踏まえ、本年次報告は、中小企業が現下の構造変化の波を乗り越え、発展していくため、求めるべき方向と課題を示しております。
中小製造業については、国際分業の中で今後とも競争力を維持し得る中小製造業のあり方として、市場高感度型、技術高度化型、独自性追求型の三類型を示すとともに、米国のシリコンバレーやイタリアの産地集積に関する分析を示しつつ、中小企業相互の柔軟なネットワークの発展の可能性について指摘しております。また、流通業につきましては、町づくりなどの担い手としての商店街の重要性などを指摘しております。さらに、新規創業環境の重要性を強調するとともに、新たな産業分野開拓の担い手としての中小企業の役割の大きさについても指摘しております。
以上を総括しますと、我が国経済の構造変化の中で中小企業は厳しい状況に置かれておりますが、こうしたどきこそ、我が国経済の再活性化のため、機動性にすぐれた中小企業の躍進が不可欠になっていると思われます。
政府としても、中小企業が国民経済において期待される役割を果たせるよう、中小企業の努力にこたえて、今後とも総合的な施策を展開していく決意をここに改めて明らかにする所存であります。
次に、平成七年度において講じた中小企業施策に関してでございますが、同年度においては、特に、中小企業者の創業や研究開発及びその成果の事業化の支援等の施策の着実な推進に加え、平成七年四月の緊急円高・経済対策、九月の経済対策と二度にわたる大型経済対策を実施し、景気低迷を打開することに努めました。
最後に、政府が平成八年度において講じようとする中小企業施策について御説明申し上げます。
平成八年度におきましても、政府といたしましては、中小企業の方々が経済フロンティア開拓の担い手として活躍していけるよう、特に、技術開発、新規創業等の支援、情報化の推進に努めるとともに、円滑な資金供給・信用補完の充実、小規模企業対策、中小流通業活性化対策の推進など、総合的かつきめ細かい施策を展開していくこととしております。
以上が、平成七年度中小企業の動向に関する年次報告及び平成八年度において講じようとする中小企業施策の概要であります。よろしくお願いいたします。(拍手)
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国務大臣の発言(中小企業基本法に基づく平成七年度年次報告及び平成八年度中小企業施策について)に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/16
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017・土井たか子
○議長(土井たか子君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。星野行男さん。
〔星野行男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/17
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018・星野行男
○星野行男君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま報告のございました平成七年度中小企業の動向に関する年次報告、すなわち中小企業白書につきまして、総理及び通産大臣に質問をいたします。
まず、中小企業の現状と政府の責任についてでございます。
中小企業は申し上げるまでもなく、事業所数において全体の九九%、従業者数において全体の約八割を擁し、まさに我が国の産業経済の発展と国民生活を支えてまいりました。
しかるに今、中小企業は、バブル崩壊後の長引く不況に加え、親企業のリストラや生産拠点の海外移転、海外からの部品調達や製品輸入の急増など、いわゆる産業空洞化や大競争の影響をもろに受けまして、大変な苦境に立たされております。
白書は、「今後の日本経済の再活性化を図るためには中小企業の躍進が不可欠」であるとして、「中小企業の時代—日本経済再建の担い手として」という勇ましい副題を掲げておりますが、中小企業の実態はどうでございましょうか。
白書の附帯資料によりますと、昨年の負債金額一千万円以上の企業倒産件数は、前年比七・四以増の一万五千百八件、この負債総額は九兆二千四百十一億円でございまして、このうち中小企業は、倒産件数におきまして一万四千九百七十件とその大部分を占め、負債総額も四兆六千五百六十一億円に上っており、平成二年と比較いたしまして、倒産件数で二・三倍、負債総額におきまして三倍でございます。我が国の工業出荷額も、平成三年度に比較いたしまして四十兆円も減少いたしました。
また、税務統計によりますと、国内法人企業中赤字企業は何と六二・七%でございまして、法人税を納める企業が三七%強にすぎないというまさに惨たんたる状況でございます。さらに、先行き採算の見通しが立たないために、倒産する前の廃業がふえ、廃業率が開業率を上回っているのでございます。総理、中小企業者の嘆きと怨嗟の声が聞こえませんか。
このような産業経済の落ち込みは、必然的に雇用、税収、年金財政などへの悪循環となり、完全失業者は二百三十五万人を数え、失業率は統計開始以来最悪の三%台が続いているのであります。
国税収入もかつての六十兆円から五十兆円台に落ち込み、平成八年度予算は赤字国債十二兆円を含む二十一兆円の国債を発行してようやく歳入歳出のつじつまを合わせるという財政危機を招き、企業年金も就業者の減少で破綻の危機に直面をしているのでございます。そして、多年にわたり第一位を誇ってまいりました日本経済の国際競争力は、今や十三位に転落をいたしました。これが残念ながら村山内閣一年半の総決算でございます。
そして、これは昨年の急激な円高に対する村山内閣の対策の手おくれと経済政策の失敗を示すものにほかならないのでございます。この責任は極めて重いと申し上げなければなりません。村山内閣で通産大臣をお務めになられた橋本総理は、この責任をどのように感じておられますか。また、総理は、我が国の産業の空洞化、さらに雇用や財政の空洞化をどのようにして立て直すおつもりか、まずお尋ねをいたします。
次に、景気の現状認識とその対策について伺います。
先ほど申し述べたとおり、産業の空洞化と長期の不況は、雇用や国家財政、そして年金財政にも著しい悪循環をもたらしているのでございまして、本格的な景気の回復と日本経済の再建は緊急の課題でございます。
ところで、現在、マクロの経済統計では確かに景気回復の兆しが見えておりますし、政府、日銀は景気は緩やかな回復基調にあると強調しておりますが、果たして本当に安心できる状態でございましょうか。パソコンや携帯電話などの好調な売れ行きに支えられた半導体及びその関連業界の好況や、リストラを完了した大企業が増益に転じてはおりますものの、全体的にはまだまだ生産も設備投資も個人消費も勢いがなく、日本経済は依然として厳しい状況にあると見なければなりません。
とりわけ、大企業のリストラや海外展開のあおりを受けた中小企業の倒産や廃業は後を絶ちません。加工組み立て産業の空洞化により、物づくり企業及び産地集積機能が衰退していることが先ほど大臣からも指摘されておりますが、これは製造業だけでなく、商店街の売り上げの減少にもつながり、地域経済全体の落ち込みになっております。私は、政府の景気に対する認識、とりわけ中小企業の現状についての見方が甘過ぎると考えます。
我が国の景気を本格的な回復軌道に乗せ、内需中心の安定成長を実現するためには、まず二十兆円とも三十兆円とも言われる需給のギャップを埋めなければなりません。そこで、今後、財政出動、すなわち真水を伴った景気対策の追加が不可欠と考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
さらに、超低金利政策で国民の預貯金の利子所得が大幅に目減りしている上、年金、介護などの老後の不安が解消されていない中で、消費税の税率を来年四月から五%へ引き上げるということは、せっかく少し上向いてまいりました個人消費の足を引っ張ることになりはしないか懸念されるところでございまして、再検討の必要があるのではないでしょうか。また、現状では、所得税、住民税の特別減税の来年度継続は当然と考えます。橋本内閣は、財政を優先するのか、国民の立場に立って景気と雇用を優先するのか、総理の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。次に、中小企業対策とその予算についてでございます。
平成八年六月六日 衆議院会議録第三十三号^
村山内閣、続く橋本内閣は、ずさんなバブル融資に狂奔した、預金者のいない住専の処理に六千八百五十億円の予算を計上いたしました。しかるに中小企業対策費は、前年度比マイナスの一千八百五十五億円でございまして、住専予算の三分の一にも足りません。倒産や金の工面に夜も寝ずに走り回り、夜逃げまで強いられている中小企業経営者がいっぱいいるというのに、余りにも冷たい話ではございませんか。
まず、橋本総理に伺います。
普通の企業が倒産しても税金が投入されることがないのに、なぜ住専にだけ税金が投入されるのでございましょうか。住専に税金が使われることに中小企業の経営者は本当に怒っています。いかなる理由で住専に税金が出て、一般の中小企業は放置されるのか、中小企業の経営者が納得できるような明確な根拠をお示し願いたい。
また、最近、政府・与党で住専への税金投入を実質的に回避する方策を検討していると報道されておりますが、これは事実かどうか。もし事実といたしますれば、むしろ素直に住専予算の非を認め、国民におわびをした上で住専予算を削除すべさであると考えますが、いかがでございましょうか。
次に、我が国の経済発展を真に支えてきたのは、勤労者のおよそ八割が働く中小企業でございます。そして、これからはその中小企業に対する政策も見方も大きく変えていかなければなりません。
すなわち、白書が分析、示唆しておりますように、中小製造業も、今後は、親企業と単なる従属関係ではなく、独自の技術や提案を持つ。パートナーの関係に変わっていくことや、アメリカのシリコンバレーのようにいろんな業種の中小企業がネットワークを形成して、経済発展の中核を担うことが予想されます。また、小回りのきく体質を生かして、市場のニーズに即時対応する市場高感度型とか、独自の製品や分野を開拓する企業がますますふえていくことでございましょう。
これは、中小企業が今までの親企業のもとでの忍従の時代から脱却して、みずからたくましい主役の時代を築くということでございまして、それが今回の白書をして、「中小企業の時代−日本経済再建の担い手として」という副題をつけしめたゆえんであろうと考えます。そして、これはぜひとも成功させなければなりません。
そこで、何点かお尋ねをいたします。
まず第一点は、ベンチャー企業に対する支援でこざいます。
産業や雇用の空洞化を埋めるためには、新しい産業を興さなければならないことは申すまでもごさいません。しかし、残念ながら、現状では廃業率が開業率を上回っております。通産大臣は、新規創業やベンチャー企業の支援にどのような施策を講じようとしておられるのか、お伺いをいたします。
第二点は、我が国の産業立地政策でございます。
今や国際化、経済のボーダーレス化が進展し、企業が国を選ぶ時代となりました。そして、製造業の生産拠点の海外移転により、戦後の我が国経済の発展を支えてきた物づくり産業が、産地の空洞化など衰退の危機にさらされております。これは、今や国内だけを念頭に置いた産業再配置政策や産業立地政策が通用しなくなったことを意味します。今後の産業立地政策にはまさに国の浮沈がかかっていると申しても過言でございません。このような状況のもとで、総理は我が国の産業立地政策をどのように進めようとしているのか、お聞かせいただきたいと存じます。
第三点は、情報通信分野の振興についてでございます。
二十一世紀に向けてのリーディングインダストリーは、何といっても情報通信でございます。アメリカでは、クリントン・ゴア正副大統領コンビが情報スーパーハイウエー構想を掲げ、両三年にしてアメリカ経済の再生を実現いたしました。また、CALSによってアメリカ自動車業界が新車開発の期間を大幅に短縮し、競争力を回復したことも御案内のとおりでございます。我が国におきましても、高度情報通信基盤の整備を促進するとともに、情報関連産業分野に思い切って規制を緩和し、金融、税制、予算等の強力な支援を行うべきであると考えますが、総理の御決意のほどをお尋ね申し上げます。
このほか、中小企業対策は、町づくりと一体的に取り組む商店街活性化対策、中小企業事業承継税制の確立、抜本的な下請自立支援措置、中小企業の情報化・国際化支援など、枚挙にいとまがありません。
しかし、翻って、事業所数において全体の九九%、従業者数約八割を占め、日本経済再建の担い手とされる中小企業の予算はどうでございましょうか。平成八年度の中小企業対策費は、予算総額のわずか〇・二五%の一千八百五十五億円でございます。これでは、政府の中小企業対策は口先だけということになりませんか。また、今回の白書の意気込みが絵にかいたもちになりかねないのではございませんか。中小企業に対する政策と予算を抜本的に見直し、時代の変化に対応できるものに改める必要があるど考えますが、このことにつきまして、総理及び通産大臣の明快なる御答弁を求めます。
最後に、法人税制についてお尋ねいたします。
日本の企業が生産拠点を海外に移転する主たる理由は、我が国の生産コストが高いということであり、その一つが、実効税率四九・九八%、実質税負担率四八・九〇%と、世界一高い法人税でございます。御高承のとおり、かつての高成長、インフレの時代と違いまして、今は低成長、価格破壊の時代であり、コスト引き下げが最大の競争友件でございます。我が国企業の国際競争力を高めるとともに、産業空洞化を防ぎ、雇用を守るため、法人に対する実効税率は早急に三〇%台に引き下げるべきでございます。
聞くところによりますと、大蔵当局は、法人税の基本税率を少し下げ、課税べーズを広げて、結果的に増減税とんとんにする方針とのことでありますが、トータルとして減税にならなければ全く意味がありません。世界一高い税金を取って、優良企業をどんどん海外に追い出したら、日本は一体どうなりますか。速やかに政治の決断によりまして大幅な法人税の減税を断行すべきであると考えますが、総理の御所見を承りたいと存じます。
以上、平成七年度中小企業の動向に関する年次報告に関連をいたしまして質問をさせていただ夫ました。総理及び通産大臣の誠意ある御答弁を御期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/18
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019・橋本龍太郎
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 星野議員にお答えを申し上げます。
まず、経済政策についてのお尋ねでありましたが、政府は、昨年四月の緊急円高・経済対策を初め、九月には事業規模として史上最大の経済対策を講ずるなど、適時適切な施策の実施に努めてまいりました。これらの施策が、需要の拡大や民間活動の活性化等を通じ経済にプラスの効果を与え、最近の我が国経済に明るい動きをもたらしつっあると考えております。
我が国の産業の空洞化、さらに雇用や財政の空洞化を克服し、我が国経済の将来の展望を切り開いていくためには、昨年決定した新経済計画に沿い、大胆な構造改革を進めることが必要であると考えております。具体的には、我が国産業の高コスト構造を是正し新規産業を創造していくための規制緩和の推進、我が国産業の事業革新や積極的な新規事業創出のための環境整備、研究開発や科学技術の振興など未来への発展基盤の整備、新たな雇用の創出と労働市場の整備、財政改革の一層強力な推進等が重要であると考えております。
今後の景気対策につきましては、まず我が国経済の最近の動向を見ますと、景気は緩やかながら回復の動きを続けており、今後次第に民需中心の自律的回復に移行するものと見込んでおります。政府としては、景気の回復力を強めながらその持続性を確保し、中長期的な安定成長につなげていくために、今後とも切れ目のない適切な経済運営に努めてまいります。具体的には、現下の金融緩和の状況のもとに、規制緩和等の経済構造改革の推進や住専問題を含む不良債権問題の早期解決に強力に取り組むことが不可欠であると考えており、これらの実現に全力を挙げてまいりたいと考えております。
次に、現在、我が国の財政事情は主要先進国中最悪と言えるほどの水準となっており、このままでは経済の活力を奪い、発展を阻害するおそれがございます。また、急速な高齢化の進展への対応など財政に求められるさまざまな需要にもこたえられません。まさに財政は国民のものであり、受益者も、また負担をされるのも国民であります。財政構造改革に取り組んでいくことこそが、国民のために重要だと私は思います。また、高齢化を踏まえた税制改革につきましては、法律にのっとりこれを確実に実施することが、財政経済運営の信頼、安定につながるものと考えております。
特別減税は景気対策としての性格を持つものであり、その財源は、八年度におきましては償還財源の手当てのない特例公債により賄われておりまして、これ自体好ましいことではありませんが、いずれにしても、九年度のことは九年度予算編成の段階で判断すべきことであり、九年度の経済状況を見通せない現時点において、景気対策としての特別減税について云々することはいかがかと考えております。
次に、今回の住専処理策における財政支出についてのお尋ねでありますが、今回の処理策によって住専は整理されるのでありまして、また住専の借り手に対する救済でもないことは御承知のとおりであります。民間の債権債務関係は、本来、民間当事者間で解決を図るべきものでありますが、住専につきましては、関係する多数の金融機関の利害関係が極めて錯綜していること等から、当事者の意欲と努力だけでは解決を図り得ない状態となっておりました。今回の住専処理策は、関係金融機関による最大限の負担を前提としながら、国民の皆様の預金を守るとともに、景気回復を確実なものとするものであります。
いわゆる新たな寄与についてお触れになりましたが、今回の新たな寄与の問題は、さまざまな意見交換が行われている段階であると承知をしております。いずれにせよ、財政支出を関係金融機関の負担によって直接的に肩がわりしようという話ではなく、現行の政府のスキームそのものはお認めをいただきました上で、関係金融機関等がさらに何らかの寄与をすることにより結果的に国民の負担を軽減していくものである、そう理解をいたしております。したがって、住専予算の削除といったことは考えておりません。
今後の産業立地政策につきましては、近時の経済のグローバル化の進展、高コスト構造の顕在化などにより、地域の産業集積の崩壊が懸念されているところであり、国際的にも魅力ある事業活動環境の実現を図ることが不可欠であります。このような認識のもとに、産業集積の活性化や新たな形成を図りますために、交通、産業用地等のインフラの整備、地域における新規事業創出及び事業革新のための支援などを総合的に進めてまいる所存であります。
次に、高度情報通信社会の推進についての御意見をいただきました。我が国の高度情報通信社会の推進に向けた取り組みは、御指摘のとおり、政府を挙げて取り組む
平成八年六月六日 衆議院会議録第三十三号べき施策であると認識しており、高度情報通信社会推進本部におきまして、昨年二月に高度情報通信社会推進に向けた基本方針を策定したところであります。情報通信高度化施策の重要性にかんがみ、今後とも関連施策の推進に努めてまいりたいと考えております。
次に、中小企業に対する政策と予算を抜本的に見直すべきというお尋ねをいただきました。
我が国の経済構造変化の中におきまして、中小企業が極めて厳しい状況にあることは御指摘のとおりであります。白書では、同時に、こうした環境の変化が中小企業に新たな発展の機会を与えるものとも指摘をいたしております。
私は、日本経済の再活性化のためには、機動性にすぐれた中小企業の躍進が不可欠だとの認識のもとに、中小企業の自主的努力を支援すべく、総合的な中小企業施策の推進に努めてまいります。
最後に、法人税についての御意見がございました。法人課税の検討に当たりましては、政府税制調査会の平成八年度の税制改正に関する答申におきまして、「中長期的には消費税率の引上げによって法人課税の実質的な負担を軽減すべきではないかとの意見もあったが、基本的には、課税ベースを拡大しっっ税率を引き下げるという方向に沿って検討することが適当であると考える。」とされたところであります。
具体的な法人課税の見直しにつきましては、政府税制調査会で今まさに精力的に御審議いただいているところでありますが、いずれにいたしましても、税制調査会の答申の趣旨に沿って検討を進めていくことが必要であると考えておりまして、平成九年度改正において法人税のネット減税を行うことはなかなか難しい問題があると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣塚原俊平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/19
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020・塚原俊平
○国務大臣(塚原俊平君) ベンチャー企業の支援についてのお尋ねですが、通産省といたしましては、これまで、店頭特則市場の創設とかストックオプション制度の導入あるいは技術開発に対する助成制度の拡充等、資金面、人材面、技術面の各方面で支援を行ってまいりました。今後はこれらの施策を着実に実施いたしますとともに、特に資金面については、エンゼルと呼ばれる個人投資家や年金基金等、豊富な民間資金が新規事業分野に円滑に投入されていくような環境の整備を図っていくことが重要であるというふうに認識をいたしております。また、次に、中小企業に対する政策と予算を見直すべきとのお尋ねでございますが、意欲ある中小企業が先行きに明るい見通しを持って、現下の敵しい構造変化の波を積極的に乗り切っていける八年度中小企業施策についての発言に対する星野ように、中小創造法の改正を中心に、技術開発とか新規創業等構造改革型の支援策の強化、中小企業金融の円滑化等経営基盤の安定強化に努めているところであります。当省といたしましては、今後とも経済状況の変化に的確に対応して、新たな政策課題に積極的に対応してまいる所存でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/20
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021・土井たか子
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/21
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022・土井たか子
○議長(土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時十七分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113605254X03319960606/22
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