1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年四月二十六日(金曜日)
午後一時開会
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委員の異動
四月十八日
辞任 補欠選任
笠井 亮君 立木 洋君
四月二十五日
辞任 補欠選任
畑 恵君 岩瀬 良三君
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出席者は左のとおり。
委員長 木庭健太郎君
理 事
笠原 潤一君
野沢 太三君
寺澤 芳男君
川橋 幸子君
委 員
岩崎 純三君
大木 浩君
武見 敬三君
成瀬 守重君
宮澤 弘君
岩瀬 良三君
田村 秀昭君
高野 博師君
照屋 寛徳君
立木 洋君
武田邦太郎君
椎名 素夫君
佐藤 道夫君
矢田部 理君
国務大臣
外 務 大 臣 池田 行彦君
政府委員
警察庁交通局長 田中 節夫君
防衛施設庁長官 諸冨 増夫君
防衛施設庁総務
部長 大野 琢也君
防衛施設庁施設
部長 小澤 毅君
外務大臣官房長 原口 幸市君
外務省総合外交
政策局長 川島 裕君
外務省アジア局
長 加藤 良三君
外務省北米局長 折田 正樹君
外務省条約局長 林 暘君
事務局側
常任委員会専門
員 大島 弘輔君
説明員
防衛庁長官官房
防衛審議官
兼防衛局防衛政
策課長 守屋 武昌君
大蔵省関税局監
視課長 友利 文男君
大蔵省銀行局銀
行課長 村木 利雄君
農林水産省畜産
局家畜生産課長 信國 卓史君
運輸省自動車交
通局技術安全部
管理課長 影山 幹雄君
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本日の会議に付した案件
○外務公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/0
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001・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨二十五日、畑恵君が委員を辞任され、その補欠として岩瀬良三君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/1
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002・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) 外務公務員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/2
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003・笠原潤一
○笠原潤一君 自民党の笠原潤一であります。
外務公務員法の一部を改正する法律案につきましては賛成をいたします。
お聞きをいたしますと、現在百六十名おられるそうでありますが、ほとんど日本国籍を有しておられるということであり、また申請中の方もおるということであります。これは私もどうも遅きに失しておるんじゃないかと思いますから、この点については大賛成をいたします。
それではお尋ねしたいと思います。
この四月に入って本当にもう慌ただしいというか、一年をこの一カ月で集約するといいますか、そういう大変多忙をきわめた、また日本にとっても非常に大きな意義のあった月だと思っています。
まず第一番にお聞きしたいと思いますが、クリントン大統領がお見えになりまして日米首脳会談が開かれたわけです。それに先立ってクリントン大統領は韓国へお見えになりまして、済州島で金泳三大統領と会談を行われました。その中において、特に2プラス2、米国それから中国、韓国、北朝鮮の四者会談、これを実現すべくお互いに合意に達したということでありますが、この点についてまず外務大臣にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/3
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004・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいま笠原委員御指摘のとおり、先般東京で行われました日米首脳会談、それに先立ちましてクリントン大統領は済州島を訪問されまして、金泳三韓国大統領との間で会談を持たれたわけでございますが、その会談におきましていわゆる四者会合というものが両大統領から提起をされた、こういうことがございました。
我が国は、直ちに橋本総理がこの四者会合の提案を支持すると、こういうことを表明されたわけでございますが、北朝鮮の状況はあのようになっております。永続的な平和の仕組みがまだできていないわけでございますし、ましてや先ごろから大変緊張が高まっておったわけでございますから、何とか早くこの四者会合が開かれ、あの地域の安定への道が開けることを我が国としても強く期待しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/4
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005・笠原潤一
○笠原潤一君 2プラス2、それは結構ですけれども、どうして日本が入らなかったのか、非常に疑問に思っていますが、その点についてコメントがあったならばお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/5
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006・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 御承知のとおり、これは朝鮮半島問題全般について協議をしようという話じゃございませんで、専ら和平、いわば休戦協定からそれを平和協定へ持っていこうという、そういうプロセスをどうするかという関係で提唱されたものと承知しております。そうなりますと、朝鮮戦争の当事者ということになりますと、これはやはり今回想定されております四者というのが妥当であると思います。もとより、我が国といたしまして、何かそういった和平プロセスに資することがあるならば、そういう役割が求められるならば、それをやらなくちゃいけないと思いますが、とりあえずはこの四者での話し合いを見守りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/6
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007・笠原潤一
○笠原潤一君 わかりました。
朝鮮戦争のときにつきましては、当時、例の田中山口県知事のああいう問題等もいろいろとあって、非常に緊迫した状況でありました。日本にとっては本当に一衣帯水の仲ですから、そういうとでいえば、本来的には日本が果たす役割というか、協力すべき役割というのは非常に大きいと思ったものですから、その点をちょっとお聞きしたかったわけであります。その点は了解いたします。
それから、今一番大きな問題は極東有事の問題です。これにつきましては、特に朝鮮半島、台湾海峡をめぐって当面どう対応をするかということです。
聞くところによると、有事に対して法制化をしたい、有事法制に踏み込んでいきたいということを検討されておるということであります。特に、クリントン大統領と橋本総理大臣との間に行われました日米安全保障共同宣言を踏まえまして、先ほど申しました朝鮮半島、台湾海峡、これに対する大変な危機もあるわけですから、そのことについての検討を固められたことにつきましてお尋ねをしたいと思います。
特に検討課題として一番問題になっているのは、有事の場合の邦人の救出です。それから、恐らくまた難民が当然出てくるでしょう。相当大量の難民をどう受け入れるかというような受け入れ体制の整備の問題。それに対して、御承知のように一九九四年十一月に自衛隊法の改正があって自衛隊機を使うことが可能になったわけです。自衛隊機の使用はもちろんそれは重要でありますが、しかし大量の難民とかいろんなことがありますと、自衛隊機とか航空機だけではとても大変なことになります。在留邦人は韓国、台湾を見てももう相当な数ですから、一挙にこれを引き揚げさせるということになれば、飛行機では限界がありますから、そういう点で自衛艦を利用したいということでありますが、現行法ではこれはできないということでありますので、その点についてお尋ねをしたいと思うんです。
まず、自衛艦の利用が果たして行われるか。当然自衛隊法の改正もまた議題になってくるでしょう。その点について防衛庁にお尋ねしたいんですが、いないですか。それでは、その問題は後にします。
それから、これは外務省も関係がありますけれども、集団的自衛権それから個別的自衛権の問題です。
これももう今大変な論議の最中です。橋本総理は集団的自衛権じゃなくて個別的自衛権と、こういうふうに言っておられますが、国連憲章すなわち国際慣習法というものが一体どう位置するか。日本国憲法との整合性がありますからね。憲法を遵守することは大変大切なことですけれども、しかしこれは欧州の場合を見ればわかるように、いかにすばらしいワイマール憲法といえども踏み入れられてしまったら大変なことですから、そういう点でいいますと当然個別的自衛権といいますか集団的自衛権、そういう問題に立ち入ってくると思うんです。
これはタブー視しておりますけれども、このタブーを破らなきゃならぬ時代も早晩というか、あるいはすぐ来るかもわかりません。それはもう御承知のように、中台のあの紛争を見ても、先般のときも外務大臣はそういう予測は不可能だということでしたけれども、当時、ミサイルをもし我が国に撃ち込まれた場合あるいは我が国の艦船に撃ち込まれた場合、ではどうするかということもあったでしょう。しかし、不測の事態というものが起きないとは絶対否定できないわけです。そういう問題もありますし、御承知のように有事に備えてどういたすかという、これは本当に重大な問題でありますので、その点、外務大臣にひとつお聞きをしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/7
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008・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 今、委員からタブー視せずにというお話がございました。それは、国民の中でいろいろ論議をされるという意味でございましたら、それはありとあらゆる事態を想定し、いろいろな議論があるというのは、これはそれをとめるわけにはまいらないと思います。しかしながら、私ども政府の立場でどうかと問われるならば、やはり我々としてどこまでは考える、そこから先は今の段階では議論をするつもりはない、こういうことは申し上げなくちゃいけないと思います。
さて、そういうことを前提といたしまして、我が国が国際法上集団的自衛権を含めまして自衛権を有することは、これは当然のことでございます。しかしながら、我が国が憲法上行使を許される自衛権というのは一体どういうものかと、こういうことにつきましては、憲法第九条その他から考えまして、個別的自衛権の範囲である、集団的自衛権は持ってはいるけれどもその行使は憲法の認めないところであるというのが従来からの歴代の政府の見解でございます。
そして、実は最近におきましては、昨年の十一月の末にいわゆる防衛計画の大綱を十九年ぶりに見直した際に、現在の政府・与党三党の間でいろいろ話をいたしまして、それを踏まえて官房長官談話で集団的自衛権等に関する従来の見解はこれは変えないということをはっきり宣言いたしました。そして現在の橋本内閣におきましてもそれを継承している、こういうことでございます。
そういったことで、私どもは今いろいろな事態に備えていろんな研究をしてまいりますけれども、それはあくまで現行憲法の枠内であることはもとよりのこと、集団的自衛権等に関する限り従来の政府解釈を前提にして考えたいと、こういうふうな姿勢でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/8
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009・笠原潤一
○笠原潤一君 この問題でありますが、今、外務大臣がおっしゃるのはそれは当然だと、私は政府見解としてはそうだと思います。
問題は、いわゆる日米物品役務相互提供協定を結ばれるということに相なるわけでありますが、平時の場合は後方支援というようなことでそれは一応いいわけですけれども、例えば緊急有事の場合にこの同じ物品の同じ額、役務を履行するために、平時の場合はいいけれども有事のときはどうなるかといって、有事は知りませんよ、平時だけですと、これで果たして通るのかどうかということを大変に憂慮しておるわけですが、この日米物品役務相互提供協定に絡んで、その点を外務大臣にちょっとお尋ねしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/9
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010・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 今回御提案しようとしておりますいわゆるACSAでございますが、これは平時、有事という角度からとらえるというよりも、要するに共同訓練の際にどうするかということ、それからあとはいわゆるPKO、それから人道面からする国際的な緊急援助でございますね、そういうときに物資あるいはサービスを相互融通しようと、そういう枠組みになっておるわけでございます。そういったことになると、これは基本的にいわゆる平時のときかなと、こういうことは言えると思いますけれども、あくまでとらえ方は今言ったような共同訓練、PKO、人道援助と、そういうふうな角度からとらえておるところでございます。
もとより、先ほどからおっしゃっております憲法あるいは集団的自衛権の関係はどうかと言われれば、今回決めましたACSAでその対象としておる分野がこれがぎりぎり認められるところであって、ほかは全部だめなんだというふうには我々は考えておりません、まだできるところはあるんだと思います。しかしながら、私どもはこれまでいろいろ日米間で話している中で、米軍がNATO諸国との間で持っている物資融通の仕組み、そういったものを日本との間でも今申しました共同訓練等の分野についてつくったらどうだろうかということで双方から話が出てまいり、そうして今回それが合意いたした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/10
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011・笠原潤一
○笠原潤一君 そういたしますと、きのう防衛事務次官が国会で答弁されたのは、有事、平時ということではないというお答えが出てきたわけですが、これに対して外務大臣の考え方も大体防衛事務次官と同じような考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/11
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012・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 防衛事務次官の記者会見だと思いますけれども、私は詳細見ておりませんけれども、これは政府の中では相談をしながら進めてきておりますので、同じことを申し上げているんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/12
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013・笠原潤一
○笠原潤一君 では、それはそれで外務大臣の見解を尊重いたしておきます。
それから大和銀行の事件ですが、実を言いますとこれが発端で住専問題処理で大変大きな問題になったわけです。大和銀行の問題というのは、日本の金融界に対する外国の大変な不信といいますか、それがとりもなおさず今度は日本の金融不安と日本の金融に対する信頼を著しく落としたわけです。今後再びこういうことが出ないように私どもはしなきゃならぬと思っています。
実はことしの一月十四日からアメリカへ行きまして、レービン・ニューヨーク銀行局長とお会いしたわけです。そのときに、住専の問題もありましたし、金融の処理の問題もあって、いろいろとお尋ねをしました。
要は、どうして大和銀行がアメリカから追放されなきゃならなかったかというのは、大和銀行がニューヨークにおいて商業活動、経済活動をいろいろやっていただくのは大変ありがたい、それはもう当然何百人か何千人かの雇用がふえてくるし、同時に非常に大きな影響がありますからアメリカにとっても好ましいけれども、あの事件が起こって、そのまま内部で包み隠した。さらに、大蔵省に報告しておったにもかかわらず、それが我が方に全然通告されなかった。まことに秘密裏にやっている。そういう秘密的なことを許していいか。結果的にあれを見過ごしてしまうとアメリカの秩序というものは崩れてしまうと。
それはそうでしょう。アメリカ人というのは、メーフラワーに乗ってやってきて、お互いにコミュニティーをつくってみんな生きてきたわけですから、そういう多様な民族が集まって一つの共同社会をつくってやってきたわけですから、そういう中でそういうことがあると根本的にアメリカの民主主義が破壊されてしまうということで、やむを得ずこれは追放に踏み切ったということです。ベアリングス社も時を同じくしてやっていたわけですね。イギリスがとったこのベアリングス社の事件に対する態度と日本の態度は大分違っておった、こういうことが非常に大きな不信の原因にもなったわけです。
そこでお尋ねしますが、一大和銀行の問題でなくて、ニューヨークの長銀の問題もあったでしょう。それで、この大和銀行のみならず海外で金融活動をやっている、例えばニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコは言うに及ばずロンドンからずっと、シンガポールもそうですけれども、日本の金融というのは世界じゅうあれしているわけです。非常に日本は金融大国ですから、いわば金融国家と言ってもいいでしょう。
そういう問題があちこちで起きたときに、日本の経済そのものが大打撃を受けるわけですから、そういうことに対するモラルの問題というか、そういうものをもっと徹底しなきゃならぬと思うんです。ややもすると、この二十年近い間、日本の、特に経済界もそうですし、我々政治の世界もそうと言っては失礼かもわかりませんが、いろんなところからモラルというものに対する認識が非常に大きく変わってきたと思うんです。
だからこそ、こういう住専問題、ノンバンク、いろんな問題が起きてくるし、もうありとあらゆる、これは何もそればかりじゃありません、報道だって、マスコミだっておかしいし、宗教界だってオウムに限らずいろんな問題が起きてきている。こんなモラルの低下というものが蔓延している。しかし、それは海外では許されぬことなんですよ、もちろん日本でも許されぬことですけれども。
それに対して大蔵省は、こういう海外で活動する金融機関、結果的には在外の支店はみんなそれなりの株式会社にして一応はその国に従属するような体制をとっておられますけれども、しかし実質は海外支店の管理監督、特に金融は大蔵省がやっていらっしゃるんですから、その点について今後の対策というか、そういうことに対する一つの反省というか、そういうものがあったらお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/13
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014・村木利雄
○説明員(村木利雄君) 御説明申し上げます。
私ども、従来から金融機関に対してまして、厳正な内部事務管理体制の確立によりまして不祥事件の未然防止に最大限の努力を払うようにと、そういう必要があるという旨の通達を発出しておったわけでございますが、御指摘の大和銀行事件につきましては、いわば管理体制の基本が守られておらなかった、またその後の事件の処理についてもいろいろ不適切なことがあったと、こういうことで先生御指摘のように米国金融当局から極めて厳しい措置を受けるに至ったということはまことに遺憾でございます。
また、通報につきましても、私どもは従来の金融機関の不祥事件の処理のルールに沿って基本的にはやってきたつもりでございますけれども、相手国、特にアメリカで起こった事件だということをもっと踏まえて適切な対処をする必要があったのではないかと。その点については若干反省しておるところではございます。
先生の御指摘のように、大和銀行事件に関連しまして、我が国の銀行の海外拠点に対する監督のあり方につきましてさまざまな議論や批判があったわけでございまして、これを十分に踏まえまして、大蔵省としては昨年末に四つの柱から成る基本的な考え方を取りまとめました。
一つは、金融機関のリスク管理体制、内部管理体制の充実。当然でございます。それから、これは金融三法等の中に盛り込んでこれから御審議をお願いしようとしているわけでございますけれども、金融行政手法の抜本的見直しということで早期是正措置といったようなものを論議させていただきたいというふうなことでございます。それから三点目は、国内及び海外を通ずる金融検査の見直しということでございます。最後は、外国金融当局との一層緊密な情報交換の促進といったようなことを柱といたします報告書を取りまとめまして、現在この報告書の一つ一つにつきまして所要の手当てを講ずるべく検討を進めていると、こういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/14
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015・笠原潤一
○笠原潤一君 特にその点を重要視していただきたいと思います。大和銀行事件があって、その後に長銀の問題も起きましたからね。
私は、このデリバティブですか、金融派生商品の世界的な潮流の中で、それはもう大変なことだと思っていますよ。金融というのは、銀行は金を預かって、その預かった人の金をうまく貸して、そしてやるのが金融業務であり、それで正しい運用がなされなければなりませんけれども、それ以上にもう本当に投機的なことばかりやらなきゃならなくなってきたんですから、私はそういう点ではある程度そういう不祥事も起きる可能性がないとは言えないし、大だと思いますから、よほどこれの管理監督といいますか、そういうものを強化していかないとどこでどんな不測の事態が起こるかわかりませんので、その点は特に厳重にお願いしたい、こう思います。
それから、農林省は見えていますね。これは実は大変な問題でありまして、牛肉の輸入をめぐって日米間で大変な貿易摩擦が生じたことは御承知のとおりです。ようやく落ちついてきまして、御承知のように牛肉は自由化された。米国牛肉あるいはオーストラリアの牛肉も、海外からの牛肉が自由化されたんですが、我が県には有名な安福という牛がおるんです。これはキロ一万何千円するぐらい、本当にもう美味で、これにまさるものはないくらいすばらしいんです。
実は私もびっくりしたんだけれども、今イギリスで狂牛病が起きています。消費者というのはそういう点で敏感ですから、輸入肉に対する一種の、恐怖とは言いませんけれども何かそれがありますから、今そういう点では和牛の評価が、高いけれども和牛ならば安全だろうということですけれども、この和牛が生体輸出されていったというんですね。
私もアメリカに若いときはいたものですから、アーティフィシャル・ブリーディングのやり方を知っています。この生体を向こうへやって、その精液をどんどんやったら日本で言うサシと言われる牛肉なんかをつくるのはわけないんです、アメリカでも、オーストラリアでも。
私はシカゴのストックヤードへも行きました。これはすばらしいところでしたが、コンベンションセンターになってしまったから、その後オマハに移って、そのオマハにも行ってきました。ネブラスカから全米各地の農業を、どんな牛肉を生産するかずっと見てまいりましたが、やはりアメリカの中でもサシにやや近いものはできつつありますけれども、日本のそういうものはまだできていないんです。それがアメリカでどんどんロットフィーデングをやっていますから、幾らでもこれから大量にこの和牛と同じようなサシができてきたら、日本の畜産農家は大変困ってしまうんですよ。
これについて、一体だれがこういう生体を輸出したのか、精液に対してはそれはないという話ですから、そこら辺の流出経路といいますか、そういうものに対するのと、日本の畜産農家に与える影響は大変重要ですから、その点をちょっとお尋ねしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/15
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016・信國卓史
○説明員(信國卓史君) 和牛の生体輸出につきましては、先生御指摘のとおり最近ふえておりまして、平成五年度五頭、平成六年度三十六頭、平成七年度四十二頭という状況でございます。ただ、この生きた牛の輸出につきましては、WTO協定上これは基本的に自由化されておりまして、輸出国、輸入国両国間で取り決めましたいわゆる家畜衛生条件に合致しておる限りこれはとめることはできないという状況でございます。
現に先ほど申し上げたような牛が出たということにつきましては、これはいろんな方がございまして、やはり向こうの関心のある方に頼まれて国内で合法的に購入して輸出されたと、こういうことでございます。とは申しましても、直ちにこれが先生御指摘のとおり我が国の和牛並みのものが即座にできるかどうか、これはいろんな飼い方の問題でございますとか、飼う期間の問題とかございますので、なかなかできないだろうと。
ただ、先ほども述べましたように、実態上これを持ち出すことをとめることができないとするなら、やはり我が国が和牛の資源につきましては一番豊富に持っているわけでございますから、こういうものを他国の追随を許さないような改良を進めまして、我が国の消費者に受け入れられる牛肉をできるだけ効率的につくるということを基本として振興してまいりたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/16
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017・笠原潤一
○笠原潤一君 私は、余り時間がないからこの問題については多く触れませんけれども、私はエクステンションサービスの連中と歩きましたから、アーティフィシャル・ブリーディングで大量繁殖をやることはわけないんですよ、これは実際。それは、ここでやると時間がもう一時間ぐらいかかりますから、私自体は自分で見てやってきています、知っています。これはこの辺にして、とにかく我が県はそういうことですから、大変な問題がまた将来起きるということを心配したものですからお尋ねしたわけです。
では、時間がありませんから、先ほどの極東有事についてであります。
先ほどちょっとお尋ねしたんですが、自衛艦を使用するということを検討しているというんですが、自衛艦を使用するということになればこれは一応法改正が必要ですから、自衛隊法の改正ということになるでしょう。その点についてお尋ねしたい。
それから、かつて海部総理大臣がブッシュ大統領との会談でポーツマスへ行かれたときに、実はポーツマスの空港へおりようとしておりなかったんです。あの広い軍の滑走路、軍用飛行場ですから四千メートルの滑走路があってすばらしいけれども、日本の運輸省がわざわざチェックしに行って、なかなか難しいということで海部さんはヘリコプターで行ったんですよ、例のブッシュさんとのメーン州の会談に。ですから、有事の場合に自衛隊機を使う場合もこれは運輸省との協議が必要になるのか、空港使用、検査体制その他の問題で。
それからもう一つは、もう一度自衛艦に返りますが、自衛艦は接岸ができればいいけれども、できない場合もあるでしょう。そういうときは必ずヘリコプターを使わなきゃなりませんね。あるいはボートでやる場合もあるでしょう。救出の方法について踏み込んだことがいろいろ話し合われたんではないかと私は思うんですが、この自衛隊法の改正と、もし自衛艦を使用するということになればその点はどういうふうにお考えになっているか、お尋ねしたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/17
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018・守屋武昌
○説明員(守屋武昌君) ただいま突然参りましたので、最初の自衛艦の使用についての話というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/18
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019・笠原潤一
○笠原潤一君 極東有事で邦人救出と難民救済に対して自衛艦を利用したいという考えがあると、こう聞いておるんですが、そういう検討に踏み込んだという報道が出ておりますが、その点についてお尋ねをしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/19
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020・守屋武昌
○説明員(守屋武昌君) 今の御指摘の件でございますが、防衛庁といたしまして、邦人救出の際に自衛艦艇を使用しましてこれを行うという検討は防衛庁としては現在行っておりません。
この種の緊急事態に対しまして我が国としてどういうふうに対応するかということは、今後政府部内で検討される課題であると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/20
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021・笠原潤一
○笠原潤一君 今のところはそういう検討はしておられませんが、将来は検討に値するということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/21
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022・守屋武昌
○説明員(守屋武昌君) 政府部内の検討の中で議論になる課題であると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/22
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023・笠原潤一
○笠原潤一君 わかりました。その程度だなと思います。それ以上は踏み込んでも話すわけにはいかぬと思いますから。
そういうことで、問題はいろいろありますが、朝鮮半島の有事、台湾海峡の有事というのは本当に厳しい問題ですから、恐らくここでは言えないと思いますが、それはこの前のクリントン大統領・橋本会談の中でいろいろと話し合われたことと思います。
朝鮮半島についてはいろいろと申し上げたいけれども、この前の韓国の総選挙のときの板門店のあの緊張、一体あれは何だったろうかという気が私もしないではないわけです。中台海峡を挟んでミサイルを撃ち込んだ話も李登輝総統の選挙をにらんでやったと思うんですけれども、一連のこの生臭い話がどうも合点がいかないんです。それを一々お聞きしたいと思っても、日本にはCIAもありませんし、FBIもありませんから、調査機関は。海外ということでなかなか難しいと思います。そういう点で、一連のちょっとわけのわからないこの問題について、外務大臣、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/23
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024・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先般の首脳会談におきましても、朝鮮半島の情勢あるいは中台間の緊張の高まり、あるいは将来の問題等につきましてもいろいろ話題になりました。しかし、それは有事にどうこうという話じゃなくて、基本的にはいかにして有事なんという事態を起こさないようなことができるか、そういった観点からの話でございます。それからまた一方におきまして、いろいろな事態が起きたときに日米間で協力をしていく、そういったことの研究はしようかということは話し合われたわけでございます。そういった研究が、どういうふうな内容になり、どういうふうな方向へ進むかは、いわばすべてこれからでございます。
いずれにしましても、一方において安定した平和な国際環境をつくるという面であらゆる努力を傾注しながら、他方においていろいろな事態に対してどういうふうに対応をするか、あるいはその中でも日米間でどういうふうな協力があり得るかということはこれは研究してまいらなくちゃいけない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/24
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025・笠原潤一
○笠原潤一君 どうもありがとうございました。
以上をもちまして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/25
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026・高野博師
○高野博師君 平成会の高野でございます。外務公務員法の一部を改正する法律案につきましては基本的に賛成であります。時間があれば最後に二、三の質問をしたいと思っております。
それでは、クリントン大統領の訪日、それにかかわる日米共同宣言あるいは普天間飛行場の返還等の一連の外交上の動向についてどう評価されておられるか、それは橋本政権が掲げる創造的外交とか自立的外交の成果と言えるのかどうか、何が創造的で何が自立的であったのか、その辺を簡単にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/26
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027・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 御承知のとおり、先般の日米首脳会談におきましては、これまでに日米間にございます幅の広いまた深みのある一連の関係というものを踏まえまして、今後ともこの両国関係を増進してさらに進めていくことが、両国にとってはもとよりのこと、アジア太平洋地域あるいは国際社会全体にとっても大切であるということを確認したわけでございます。さらに、二十一世紀に向けまして両国の協力関係の方向性を示すことができたという意味で大変意義があったと思います。
そういった議論を踏まえて、具体的には二つの文書を発出したわけでございます。その中で、日米安全保障共同宣言の中では、現在の我が国あるいは我が国を取り巻く国際環境の中で日米安全保障条約を中心とするこの体制がやはり大変大切なんだということを確認し、そしてまたそれに向かってのいろいろな協力ということを合意したわけでございまして、非常に意義があったというふうに考えております。
これは、現在のいろいろな国際情勢を踏まえまして、我が国の立場を考え、我が国の判断に基づいて考えた。そして一方、米国は米国としての自国のナショナルインタレスト、あるいはこの地域で果たすべき役割も考えながら米国の判断があったと。その両者の判断が合致するところでこのような合意ができたというわけでございまして、私は我が国がこれから自国の存立をどうしていくか、また国際社会の中でどういうふうに役割を果たしていくかという自主的なまた自立的な立場からの外交活動の一つの大きなエポックメーキングな出来事であったのではないかと思っております。
しかしながら、これはゴールじゃございませんで、むしろ二十一世紀に向かっての出発点である、これからさらに努力を積み上げていかなくちゃいけない、このように認識しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/27
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028・高野博師
○高野博師君 今のお答えの中に創造的な外交とか自立的外交は余り関係ないような印象を受けます。
普天間飛行場の返還についても、アメリカ側はヘリポートを建設するとかあるいは滑走路の建設も要求していた。そういうことがわかって、実際には返還に要する費用が一兆円近くかかると言われておりまして、これは橋本外交としてはアメリカ側から譲歩をかち取ったのでは決してない、むしろアメリカ側の要求に押し切られたのではないかと、そういう印象を持っております。
日米安保体制にしても、日米軍事同盟の強化あるいは再確認である。結局はアメリカ側に依存するという形であって、自立的外交という概念からは遠いのではないか、私はそう思います。また、共同宣言の中でも日本の新しいイニシアチブや創造性は見られない。冷戦時代の発想、思考から全然抜け切っていないと私はとらえています。
これも後で触れますけれども、朝鮮半島の四者会談にも日本は入っていない。我が国の安全保障上重大な問題にかかわる朝鮮半島、この会談に日本が参画していない。これは外交上の立ちおくれではないかと、そういう印象を私は持っております。
そこで、日米共同宣言に基づく日米安保体制については中国とか韓国に警戒感がありますが、これはどのようにとらえておられるでしょうか。簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/28
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029・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいま委員の方から印象という言葉でいろいろ委員御自身のお考え、それに基づく現在の我が国外交のあり方についての、独断的とは申しませんけれども非常におしかりに近い評価をちょうだいしたわけでございます。
それを前提にしてどうこうと御答弁を申し上げるのは非常に難しいわけでございますけれども、中国あるいは韓国の今回の首脳会談あるいは日米安保共同宣言に対する見方はどうかという御質問でございますならば、御承知のとおり、中国はかねてから日米安保体制というもののこれまで出てきた経緯等はよく承知している。しかし、それは二国間の枠組みと考えておる。これがアジア太平洋にずっと広がっていくということがあるといろいろ複雑なことになるのではないかという、いわば懸念を表明しておったということはございます。
それに対しまして、私どもは、いや、そういうことではないんだと。そもそも日米安保条約というのは単に二国間の関係だけではなくて、六条もあるわけでございますから、ある程度地域の安定に資するという役割も従来からあったわけでございます。また、今回の日米首脳会談におきましても決してこれまでの安保条約を改定するなんというものじゃなくて、その枠組みは枠組みとしてきちんとそのまま存在するわけでございます。そのことが現在のこの地域の安全保障環境その他の国際社会の情勢から見ても非常に大きな役割を果たしておるということを確認したものと。
それでまた、中国との関係においては決して懸念されるようなことではなくて、中国もともどもにこの地域の安定また繁栄を築き上げていく建設的なパートナーとしての役割を果たすことを期待しているんだと、こういうふうなことを説明しておりましたし、そういった趣旨のことは宣言の中にも入っているわけでございます。
それから韓国につきましては、報道ではいろんな見方があったのは事実でございますけれども、韓国の政府としては、外交部のスポークスマンの発表があったと思いますが、それではこの共同宣言を肯定的にと申しましょうか、積極的に評価しておるものと、このように理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/29
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030・高野博師
○高野博師君 先ほどの話も含めまして、この新しい安保体制が二十一世紀の方向性を決めたというか、それを展望していたと、こういうお話もありましたが、このアジア太平洋地域の安定と平和を確保するために二国間のいわば軍事同盟を強化するという形をとることは、果たして現実あるいは将来の国際情勢をかんがみた場合に適当かどうか、私は疑問だと思います。
もとよりこの日米安保体制の必要性、重要性を否定するものではありませんけれども、その位置づけに問題はないかという感じがします。すなわち、二国間の軍事同盟による脅威、あるいは有事に対応するというやり方、これはまさに冷戦時代の思考そのものではないか、私はそう思います。そして、この極東有事についての日米協力の研究に着手することとか、あるいは有事立法、集団的安全保障、集団的自衛権等についての議論が既に進んでいるということでありますが、しかし万一の場合あるいは有事の場合という、初めに有事ありきという考え方、発想というのは、冷戦時代と何ら変わっていない。
今重要なことは、有事が起こらないためにはどうしたらいいのか、何が必要なのかと。それを国際的なあるいは地域的な安全保障の枠組みの中でつくって、その中でとらえるということではないかなと私は思います。有事あるいは地域の紛争をいかにしたら予防できるか、未然に防げるかという予防外交的な努力、あるいは地域的安全保障の枠組みをつくるという、そういう努力が欠けているのではないかと、そう思います。
朝日新聞が十一日付の社説で「安保体制を発動させないための外交展開こそ、両国首脳が調整すべき課題である。中国を巻き込んだ地域安全保障の枠組みも、急がねばならない。」と、こういう論評を掲げております。私も全く同感であります。
アメリカの外交政策の基本的な考え方というのはバランス・オブ・パワーだと。絶えず脅威を見つける、そしてこの脅威を想定し、この脅威に対抗するというやり方、このアメリカの基本的な考え方というのは今でも変わっていないと、私はそうとらえております。そういう中で、アメリカの東アジア戦略に乗って、日本側がアメリカの軍事戦略に寄り添った、アメリカのペースに乗った新しい安保体制ではないかと、私はそう思っております。この共同宣言の中にも、安保条約に基づくアメリカの抑止力は日本の安全保障のよりどころとなっているということが記載されております。
大臣の御見解を伺いたいと思いますが、簡単で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/30
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031・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私どもは、現在の我が国を取り巻く環境から見まして日本と米国との間の安全保障体制というものは不可欠であると、このように考えている次第でございます。それは、決して一方的にアメリカの考え方に寄り添っておるとかそういうものではございませんで、我が国は我が国としての自主的な判断、そして決断があるわけでございますし、それからアメリカの側にも、先ほども申しましたけれども、米国のナショナルインタレストなりなんなりの観点からの考えがある、それが合致するところでこういう体制ができているんだと思います。
それからなお、集団的安全保障云々とかいろいろおっしゃいましたけれども、私ども政府は、今そんなことをどんどんやろうということを申しておるわけじゃございません。むしろそういう議論は有力野党の中にあるということは承知しておりますけれども、政府としましては、むしろ一つ一つ具体的なケースについて研究をしていこうとしているところでございます。
なお、さらにもう一点だけ申し上げますけれども、地域的な、リージョナルな安全保障の仕組みをというお話がございましたけれども、これはどうなんでございましょうか、いろいろ対話とか信頼醸成の仕組みとしてのリージョナルなものでございましたら、これは今ARFであるとかいろいろ努力もしているということは御承知のとおりでございます。もし委員が実力を備えたリージョナルな仕組みを考えておられるんだとするならば、それこそ集団的自衛権だとか、集団的安全保障とかいうこととの関係をどうするかということをお考えにならなくてはいけないんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/31
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032・高野博師
○高野博師君 この日米共同宣言も含めて、日米関係の中で日本がリーダーシップを発揮したと私は言えないんではないか、また国民に対するアカウンタビリティーというか説明する責任も欠けてはいないかなと、そういう印象を持っております。
共同宣言の中にASEAN地域フォーラム、こういうものの地域的な安全保障の対話、協力を発展させるための作業を継続するということもうたわれております。しかし、それは主たる位置づけではないと私は思っております。
四月十八日の毎日新聞の社説で「日米安保のキーワードは「信頼」である。その信頼はアジア諸国にとっても信頼を醸成するものであらねばならない。」と、こう論じております。私もそのとおりであろうと思います。
東大の鴨武彦教授が、「「信頼大国」日本への道。」という論文の中で「日米安保体制とは、日米間の信頼関係を互いに高め合うための枠組みである。したがって、集団的安全保障というより協調的安全保障という考え方に立つべきであり、軍事戦略的な面に限定せず、政治、外交、経済を含めた日米の協調の枠組み」としてとらえるべきではないかと、こういうことを言っております。私は、この協調的安全保障という考え方は非常に重要ではないかというふうに思っております。
時間がありませんので次に進みます。
朝鮮半島の問題で、先ほど2プラス2の四者会談の提案についての御質問がありましたので、これまた時間があれば質問したいと思います。
続いて、北朝鮮の米の問題について前回に引き続いて質問させていただきます。
前回幾つかの質問でも指摘しましたが、政府側は、人道的、緊急かつ特殊例外的な援助であると強調しておりまして、また北朝鮮側が米は民生消費に使用することを保証するといっている、あるいは先方赤十字が配付先一覧表を送ってきたからそのとおりであるとの答弁を繰り返しております。これでは納得できない。確かに国民の口に入ったという証拠は何にもない。むしろ、最近の軍の亡命者等の証言、そういう報道によれば、軍が食べていたあるいは軍が備蓄をしていたということがますます明らかになっているわけであります。この間の質問でも、米支援を実現するに際して加藤幹事長が一定の役割を果たしたことも明らかな事実であります。
そこで、きょうは何点かお伺いしたいと思うんですが、この米支援の予算の枠というのはどこから出ているんでしょうか。ODAでしょうか、それともODAと関係ないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/32
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033・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 北朝鮮への米支援のうち、赤十字社を通じた無償供与は、国会でも御承認をいただきました平成七年度の緊急無償予算の範囲内で実施されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/33
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034・高野博師
○高野博師君 その場合に、その予算を使う基準とかあるいは限度というのはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/34
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035・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) これは、援助の緊急性及び人道性を個別に勘案して、ケース・バイ・ケースで判断するということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/35
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036・高野博師
○高野博師君 要するに、援助の額の限度はないということですね。特に基準は設けていないということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/36
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037・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 御質問の趣旨を必ずしも正確にとらえられたかどうかわかりませんが、平成七年度の緊急無償予算の範囲内ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/37
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038・高野博師
○高野博師君 その次に、去年の三月に渡辺訪朝団に同行した加藤紘一事務所の吉田猛氏がパスポートを持っていないで出たのではないかということがこの委員会でも質問がなされて、それに対する回答は政府から何もありませんけれども、この事実関係はどうなっているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/38
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039・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 外務省から自民党にまず照会いたしましたところ、吉田氏は同氏自身の旅券によって訪朝いたしておりまして、別人の旅券を使用した事実はないとのことでございました。吉田氏がみずからの旅券により必要な手続を経て出入国したことは政府としても事実であると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/39
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040・高野博師
○高野博師君 その旅券はどういう種類の旅券でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/40
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041・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) これは実は私どものところで今詳細を把握いたしておりませんけれども、適正に交付された旅券ということであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/41
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042・高野博師
○高野博師君 旅券の発給について自民党に問い合わせるというのはおかしな話じゃないでしょか。自分のところでわからないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/42
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043・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) ただいま申し上げましたように、まず自民党にも照会いたしましたし、政府としてもその後確認いたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/43
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044・高野博師
○高野博師君 実は、吉田猛氏は北朝鮮の。パスポートを持っている、日本のパスポートも持っているという情報があります。国によって使い分けをしているという情報があります。
それで、この吉田猛氏が一般旅券で渡航したのではないという確かな情報はつかんでおりますが、一般旅券でないとすれば何の旅券で行ったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/44
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045・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 私たちは別に一般旅券でないということを確認しているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/45
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046・高野博師
○高野博師君 いや、私が確認しているんです。
これは重大な問題なわけです。それで、どういう旅券で行ったのか、ぜひ調べていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/46
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047・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先ほど来政府委員から御答弁しているとおりでございます。政府としては、通常の形態で、普通の旅券で出入国されたというふうに承知しておるわけでございます。
もし、委員におかれてそうではないという格別な情報をお持ちになっており、信憑性があるんだと、こうお考えでございましたら、むしろそういうことを明らかにしていただけますならば我々として対応のしようもあるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/47
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048・高野博師
○高野博師君 それは外務省が調べればすぐわかる話でございます。どうしてそれを明確にできないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/48
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049・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私どもとしては、今までの事後調査によってそれは適正なものであると承知しておるわけでございますから、もしそうでないとおっしゃるならば……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/49
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050・高野博師
○高野博師君 いや、適正か適正じゃないかじゃなくて、パスポートの種類を私は聞いているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/50
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051・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私として発言を許されておりますから。
そうでないとおっしゃるならば、委員の方でその情報を明らかにし、そしてできるならばそうではないという証憑というものをお示しいただければ、それにのっとって我々としての対応もできるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/51
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052・高野博師
○高野博師君 全く逆の話であります。どういうパスポートを出したかというデータについては外務省が持っているわけです、政府が。ですから、私が言っているのは、一般旅券で行ったのではないという情報があるので、もし一般旅券で行ったというのであればその証拠を見せてくれと、こう言っているわけです。
もしこれが一般旅券でないとすると、外交旅券か公用旅券しかあり得ないわけです。そうすると、外務省の人間じゃないから外交旅券はあり得ない。もし公用旅券で行ったとするならば、これは大変重大な問題だと私は思います。どうでしょうか、その辺の情報については。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/52
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053・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 今御指摘の訪朝団の渡航に当たりまして、外務省は北朝鮮側との連絡を含む訪朝団の渡航手続に何ら携わっておるわけではございませんので、詳細な事実関係につき承知し得る状況にはなかったわけでございます。
ただ、この問題が国会で指摘されることになりましたので、私どもからも法務当局等とも連絡をとった結果、要するに吉田氏がみずからの旅券により必要な手続を経て適切に出入国したことは事実であるということを確認申し上げているということを述べたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/53
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054・高野博師
○高野博師君 ですから、私が聞いているのはどういう旅券で行ったかということを聞いているわけです。それが大事な話なんです。
公用旅券で行ったとすれば、これは公務を持って行ったということになるわけです。そうすると、加藤局長が言われているように、政府関係以外の者がこの米支援について一定の役割を果たした、しかしその後は政府が責任を持ってこの援助を決めたと、こういうことが全部崩れてくるわけです。要するに、公務を持って行ったということはもう政府が彼の動向について認知していた、知っていた、あるいは公務だということで政府がこれをある意味で全部知っていたということになると、一連のこの米支援の動きというのは最初から加藤紘一幹事長事務所を中心にして政府も一体になって動いていたと、そういうことも言えるわけです。
ですから、そういう疑念を晴らすためにもどういう旅券で行ったのかということを明らかにしてもらいたい、私はそう言っているわけです。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/54
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055・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 米の支援につきましては、政府が繰り返しいろいろな場で御答弁申し上げておりますし、今も委員御自身が引用されましたけれども、初期の段階において政府当局以外の方がいろいろな一定の役割を果たされたということはあったと思います。しかしながら、ある段階からは政府が完全に事態を掌握して責任を持って対応してまいりまして、最終的な決定は政府においてやったわけでございますので、そこのところは、今、委員が御指摘のような事実が仮にあったとしても、直接それで米支援の政府の答弁の基盤が壊れたとかそれが不適当なものであるということにはつながるとは思いません。
なお、パスポートの件につきましては、先ほど来アジア局長から御答弁申し上げておりますように、外務省としては法務省とも連絡をとりながらきちんと適正な出入国の手続がとられたというふうに承知しておるわけでございまして、なお押してそこはそうではないんだとおっしゃるならば、どうぞ委員のお持ちの確実なる情報なるものをお渡しいただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/55
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056・高野博師
○高野博師君 全く逆の話であります。私は、適正か適正でないかという話をしているんじゃないんです。どういう種類の旅券を持って行ったのか。旅券を発行するのは政府ですから、政府が知らないわけはないと思いますね。ですから、そういう疑念があるのであれば明らかにしていただきたいと、そう言っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/56
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057・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 私どもが承知をしておりますところを先ほど来申し上げたところでございますが、私の感じといたしまして公用旅券ということは大変にそれは考えにくいことだと思いますが、その点は念のため確認させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/57
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058・高野博師
○高野博師君 認めにくいかどうかというのは、もう事実関係を見ればすぐわかるわけです。それを明らかにしてもらいたい、こう言っているわけです、私は。よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/58
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059・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) はい、念のため確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/59
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060・高野博師
○高野博師君 確認した後、ぜひ報告していただきたいと思います。今の件については事実関係だけまず明らかにしていただきたいというふうに思っております。
いずれにしても、この一連の米支援の動きについてはいろんな疑惑があっていろんな報道がされている。政府としては、それを一向に明らかにしていないということもあるわけです。国民の膨大な税金を使っての人道的援助は実は軍事的な援助ともとれるようなものであったとすれば、その責任は重大ではないかというふうに思います。ぜひともその事実関係を調べた上で、もし必要であれば吉田猛氏あるいは加藤幹事長を証人喚問してこの場で明らかにしてもらいたい、私はそう思います。
それで、先般、与党の訪韓団の団長の山崎拓政調会長が、過去二回の対北朝鮮米支援は成果を半分上げただけで五十点だったと思うと、こういう発言をしております。これはいわば半分は失敗だったと認めていることを意味するのではないか。四百六十億円もの膨大な金を使って五十点と、半分しか成功しなかったとすればこれは大変な責任問題であろうと思うんですが、これを大臣、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/60
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061・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいまの委員が御引用になりました山崎自由民主党政調会長の五〇%という発言は、私が理解しているところでは、たしか今回訪韓された際に韓国の政府当局との話し合いの中で出てきたんだと思います。そして、どういうコンテクストの中であったかと申しますと、韓国側から、自分たちも人道的な見地から昨年北朝鮮に米の支援をした、しかしながら日本からの支援の方が量的にも多かったりしまして、それで自分たちの支援の効果というものが薄れてしまったと、そういった話が出まして、それに対して山崎政調会長が、いろいろなことがあって、いや、自分たちの支援というのはそんなことも考えれば効果は五〇%だったかもしれないという文脈であったと。そういった意味では、ある意味では韓国側の立場に対する配慮というものもあっての御発言だったというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/61
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062・高野博師
○高野博師君 効果が薄れた薄れないという話は関係ないと思います。実際に二百万トン以上の穀物が不足しているという現状にあるわけです。幾らもらっても足りない現状であります。
また、この問題に関連しまして、先般、神戸市内の貿易会社社員が外為法違反で兵庫県警に逮捕されたと。これは、サリンなどの化学兵器の原料になる輸出が規制されている弗化ナトリウムとかあるいは弗化水素酸をそれぞれ五十キロ、これだけの量があれば約百キログラム以上のサリンができると、こう言われているんですが、それを不正輸出した疑いということになっております。それは米を北朝鮮に運ぶ船の中にあったということであります。この事実関係は政府はよく存じておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/62
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063・友利文男
○説明員(友利文男君) 神戸港及び大阪港におきまして弗化ナトリウムあるいは弗化水素酸を不正に輸出しようとした事件につきましては、現在外為法違反等によりまして調査中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/63
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064・高野博師
○高野博師君 北朝鮮に米の援助をして、北朝鮮から百隻以上の船が来ているわけです。これは氷山の一角ではないか、あるいは米支援の船を利用して相当の密輸があったおそれもないとは言えないのではないかという感じがいたします。この点についてはどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/64
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065・友利文男
○説明員(友利文男君) この弗化ナトリウムの不正輸出事件につきましては、船長託送品という形で輸出をされております。船長託送品につきまして、その支援米を運ぶ船につきまして調査をいたしましたけれども、本件以外に不正な輸出の事実は把握しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/65
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066・高野博師
○高野博師君 それでは、これも米関連ですが、先般、北朝鮮の国際部日本課姜鐘勲副課長一行が訪日されたと。これは愛知県のある団体の招待によると聞いているんですが、自民党の野中幹事長代理に第三次米支援を要請したと。その中で、野中幹事長代理は、政府間の正式のルートで話し合うべきだというふうに答えたということが報道されております。報道によれば、外務省関係者とも会談したということも言われていますが、会談したのかどうか、お教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/66
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067・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 政府としては一貫して、北朝鮮側との具体的接触について、その有無を含めてコメントをいたさないことといたしておりまして、本件についての基本的なコメントは差し控えたいと存じますけれども、御指摘のとおり、この件は民間の団体が招請したものであるということからあえて申し上げますと、政府として、外務省としての接触はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/67
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068・高野博師
○高野博師君 きのうの報道によれば五月上旬に北朝鮮の李種革アジア太平洋平和委員会の副委員長が訪日する予定ということが出ております。これは社民党と与党の招請によるもので、その目的は国交正常化交渉再開あるいは四カ国会談等も踏まえてのものだと。この四カ国会談は別にして、李種革さんが日本に来られた場合に、日本側としては韓国との関係も含めてどういうふうに対応するのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/68
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069・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいまお話しのありました李種革氏の訪日の件は、社会民社党において訪日したいという要請をお受けになって対応をどうするか、いろいろお考えになっておるというふうに承知しております。
政府として北朝鮮との関係をどうするかという点につきましては、先ほどアジア局長から申しましたように、具体的にどうこうということはコメントしないということで対応してきておるわけでございます。しかし、基本的に申しまして、北朝鮮との関係をどうするか、とりわけ正常化交渉にかかわる問題をどうするかということは、これはすぐれて外交そのものでございますから、これはあくまで政府の責任において進めるということは当然でございまして、そのことは、政府部内はもとよりのこと、与党においても御理解をちょうだいしているものと、このように承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/69
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070・高野博師
○高野博師君 時間がないので、最後に一つだけお伺いしたいと思うんです。
北朝鮮に人道的な観点から米の援助をしたということなんですが、この人道的な援助に対して何らかの見返りを要求するというのは適当でないかもしれません。しかし、人道というのであれば北朝鮮側に人道的な対応をある意味で求めてもおかしくはないのではないか、そう思います。そういう観点からすると、北朝鮮には日本人妻が相当の数いると言われておりますが、その方の大半が一度は日本に里帰りをしたい、こう言っていると。そういうことに対して、日本人妻の里帰り等を北朝鮮側に話をしてもおかしくはないのではないかと思うんですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/70
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071・加藤良三
○政府委員(加藤良三君) 政府として御指摘の日本人配偶者問題を重視しておりまして、日朝国交正常化交渉の場においても、北朝鮮に対し、一部の方の里帰りなりとも実現できないかということで強く求めてきた経緯がございます。現在交渉が中断していることもございまして、この問題の解決を北朝鮮側に働きかけることには困難が当然伴いますけれども、政府としては今後ともこの問題の解決に向けて努力していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/71
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072・高野博師
○高野博師君 時間ですので、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/72
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073・照屋寛徳
○照屋寛徳君 まず最初に外務大臣にお伺いをいたします。
四月十五日に日米特別行動委員会、いわゆるSACOの中間報告が行われました。このSACOの中間報告で、在沖米軍基地の整理、縮小について約二〇%、およそ四千七百ヘクタールの米軍基地の返還が合意をされました。私は、戦後五十年余り、膨大な米軍基地のもとでたくさんの犠牲を強いられてきた県民の一人として、沖縄の米軍基地の整理、縮小について日米両政府間で合意を見たということについては、これは百二十七万県民のこれまでの運動なり闘いなりあるいは世論の成果だと、こういうふうに評価をいたしております。
さて、冷静にこのSACOの合意内容を見てみますと、例えば普天間飛行場は五年ないし七年後に全面返還と、こういうことがマスコミで報道されたわけでありますが、しかし沖縄県民が望んでおったのは無条件の普天間飛行場の返還であって、SACOの合意内容によりますと、普天間飛行場の現有機能あるいは能力の維持が大前提になっている、しかも新たにヘリポートを新設する、そのヘリポートも三百ヘクタール以上のヘリポートだということがいろいろ報ぜられておるわけであります。
外務省は場所もまだこれから交渉をするんだというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、そういう点では決して県民は手放しで喜んでおりませんし、同時に、これで沖縄の基地問題の解決が全面的に図られた、こういうふうに政府が思っていただいたら困るというふうに私は正直に思っております。
と申し上げますのは、例えば那覇空港、これは昭和四十七年の沖縄の復帰の際に日米両政府間で民間専用にするんだと、こういう合意がなされて、二十四年たっていまだにそれが実行されていない。あるいはまた那覇軍港についても、返還が合意されて二十数年たって、移設条件つきであるがゆえにいまだにこれが実現されないという実態があるわけです。
これは何も私一人が突っ張って言っているわけじゃなくして、例えばSACOの中間報告後、地元の琉球新報社の琉球フォーラムが世論調査をやっております。これによりますと、普天間基地を含む十一施設の統合、返還などを盛り込んだSACOの中間報告を大幅な前進だというふうに評価しているのは二五・七%にすぎません。あとは、実現性に乏しいというのが三六%、それから不満だというのが約二三%。要するに六〇%近い県民が否定的な見方をしている、こういうことであります。しかも、機能が移される嘉手納町はもう既に町議会で全会一致で、これ以上の基地強化は困る、犠牲は困るということで反対をしておりますし、中部の十二市町村も広域圏で反対決議をしております。
私が非常に心配しておりますのは、この返還合意がなされたのにあたかも沖縄県民がだだをこねておると、あるいはもうこれで沖縄は終わりなんだ、こういう形で世論が形成されるのが非常に心配なわけですね。今どの自治体も移設を受け入れるところなんかありませんよ。象のおりの移設先である宜野座村も、もう既に村議会で全会一致で反対決議をしております。
そこで外務大臣にお伺いいたしますけれども、外務大臣はSACOの中間報告の内容についてどのような評価をなされておるのか。また、発表後の県民の動向、各基地を抱えている自治体の反応についてどのような御所見をお持ちなのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/73
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074・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 私は、今回の中間報告によりまして沖縄の基地の問題がすべて解決した、あるいはこれでもうおしまいだというふうには考えておりません。また、もとより沖縄県民の方々がこれで満足しておられるとは考えておりません。
ただ、まず前提として私どもとしましては、やはり日本の安全を守るためにも沖縄を含めた米軍の基地というものはこれは必要なんだという、こういう前提が一つございます。この前提をなくしてしまえば、それはいろいろなことはおっしゃれるんだと思いますけれども、私どもはやはり安保条約の目的との調和を図りつつできる限り基地問題の解決を図っていこう、こういう立場でずっと取り組んでおるわけでございます。
そして、今回の中間報告におきましては、面積におきまして現在の基地の二〇%を超すものの返還の方向を打ち出しました。これは沖縄本土復帰以来二十有余年の間に返還された面積を上回るものでございます。そしてその中には、沖縄県におきましても最も御要望の強いものの一つでございました普天間の全面返還というものが入っております。もとよりその機能を他に移すという条件はついている、そういうことはありますけれども。そういった意味で、総体として見るならば、これは与えられた前提の中で日米の共同作業により、そしてまた橋本総理またアメリカの最高指導部の大きな決断あるいはリーダーシップのもとにかなりの成果が上がったものと、その努力のほどは御了解いただけるんじゃないか、こう考えている次第でございます。
しかしながら、これから実現するのが大切だと。おっしゃるとおりでございます。そういった意味で、難しい地元の声も今いろいろ御紹介ございましたけれども、大田沖縄県知事さんは、総理からの何度かの御連絡の中で、お話し合いの中で、大変苦しいお立場ではございましょうけれども、こういった条件がついているにしてもやはり一歩前進だというふうな評価をちょうだいいたしまして、これを実現するためには沖縄県としても協力をしていこうという姿勢を示してくださっております。
これからは地元とも協力しながら、政府もこの中間報告でまとめましたものを必ず実現する、そしてさらに将来ともにいろいろ考えてまいりたいと思っておりますので、どうぞ委員におかれましてもよろしく御理解とお力添えのほどをお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/74
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075・照屋寛徳
○照屋寛徳君 外務大臣、日米安保の重要性を強調されるお立場はよくわかりますよ。しかし、その日米安保体制、安保条約のもとで犠牲を集中的に受けているのは沖縄県民なんです。そこをわかっていただかないと困るわけです。
今、外務大臣の御答弁にありましたように、私は一昨日、知事と一時間ばかり話をしてきました。知事も随分苦しんでおられますよ。しかし、この移設先ですね、普天間飛行場の機能の移設先あるいは新たなヘリポートの建設、あるいは象のおりの移設先、県道一〇四号線の軍事演習を廃止して本土に分散をする、非常に県民にとってつらい立場ですが。
ところで、外務大臣、この機能を移設する移設先の自治体を説得する、この移設の責任は国ですか、当然そうだと思いますが、それとも県なんですか、それを明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/75
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076・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) ただいま移設先の説得のお話だと承りましたが、移設先地となる関係自治体等の協力を得るために、当然私どもがまず努力をすべきであるというふうに考えているところでございます。
しかしながら、一方では、県及び地元の自治体、そういう方々の御協力を得ないとその話し合いというのはなかなか進まないものでございまして、ふだんからもそういう意味で県ないしは市町村、そういう方々の御協力を得ながらこういう移設の問題とか基地の取得の問題については御協力をいただきながら説得をお願いしておると、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/76
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077・照屋寛徳
○照屋寛徳君 防衛施設庁長官に重ねてお伺いいたしますが、これまで狭い沖縄には移設先といってもそう簡単に見つからないから、先ほど申し上げたように、那覇空港だって二十四年たっても日米両政府で合意したことがいまだに実行されていないんですよ。那覇軍港しかりでしょう。
知事はSACOの中間報告を受けてはっきり言っていますよ、移設先の確保、説得については国の責任だと。知事も明言しています。それをあたかも沖縄の方に責任転嫁されたら困るんですよ。それはあくまでも政府の責任であることは間違いないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/77
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078・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) 私ども、国の責任としてもちろん行うことはありますが、地元の市町村長さんとかそういう方々とお話しする際に、やはりいろいろあっせんなり仲介なりしていただくようなことは間々ございます。
例えて申し上げますと、これは既に解決した事案として、逗子に米軍の住宅をつくるような際にも相当地元で問題がございましたが、そういう際に神奈川県知事のあっせん、調停をいただきまして地元との話し合いが円満に行われたというような事例もございますので、私どもとしては、そういう意味で県の方も私どもと一緒になってそういう移設先についての説得に努力といいますか御協力をいただきたいと、こういう気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/78
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079・照屋寛徳
○照屋寛徳君 普天間飛行場の返還の条件になっております新たなヘリポートの建設は、伝えられるところによりますと、現在の嘉手納弾薬庫地区内に約三百ヘクタールのヘリポートを新規につくるんだと、こういうことが言われております。これではまるで土地転がしてはなくして基地転がしたと。しかも、古くなった普天間飛行場を返して、約一兆円とも言われる日本政府の金で、国民の血税で新たに基地を確保する、こういうことになりかねないんですね。このヘリポートというのはどこにどれぐらいの規模でつくるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/79
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080・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) 今のヘリポートの件でございますが、これは御指摘のように四月十五日のSACOの中間報告で、「今後五−七年以内に、十分な代替施設が完成した後、普天間飛行場を返還」というのが合意されております。
したがいまして、私ども、これから沖縄県のそれこそ御協力をいただきながら進めていくわけでございますが、まだ移転先地等について日米間で協議を行っている最中でございまして、具体的に施設の建設等についてきちっとした固まったものはございません。これからそういう移転先地も含めて米側と協議を重ねていく、こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/80
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081・照屋寛徳
○照屋寛徳君 「十分な代替施設」というのは、面積的にも、それから機能的にも現在の普天間飛行場に匹敵するぐらいのヘリポートの施設と、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/81
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082・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) その点につきましては、要するに「十分な代替施設が完成した後」という合意が行われておりますが、どの程度の規模であるというようなことについてはこれから日米間で協議を進めていくと、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/82
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083・照屋寛徳
○照屋寛徳君 外務大臣にお伺いいたしますが、普天間飛行場の返還のもう一つの条件に危機に際しての米軍による国内施設の緊急使用の研究が前提条件だと、こういうことをおっしゃっていますね。この場合の国内施設というのは、自衛隊の基地、民間空港、それから民間の港湾、これを指すと思われますけれども、既にSACOの中間報告の交渉の段階で、アメリカ側から緊急に使わせてもらう空港などの施設として七つともあるいは十とも言われる施設名を挙げて日本政府に要求があった、こういうことが言われておりますが、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/83
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084・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) これは中間報告に書かれているとおりでございまして、そういったことをこれから研究しようということでございますので、ただいま委員御指摘のように、これまで既に具体的に名前を挙げて向こうから要望があったということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/84
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085・照屋寛徳
○照屋寛徳君 さて、四月十七日のクリントン・橋本会談、その後に日米安全保障に関する共同宣言が発表されました。この日米共同宣言の中では、沖縄の米軍基地については、今論議をしておりますSACOの中間報告の内容について両首脳が高らかにその内容を歓迎する、評価する、こういうふうな記述にとどまっております。
さて、外務大臣、共同宣言の中で、アジア太平洋地域における十万人の前方展開兵力の維持を確認して、在日米軍兵力についても日本におけるほぼ現在の水準の兵力維持、こういう趣旨のことがうたわれておるんです。つまるところ、共同宣言では在沖米軍基地の兵力の削減については全く言及されなかった、こういうふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/85
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086・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 最初のSACOについては「SACO中間報告で示された広範な措置を歓迎した。」という記述がありまして、それに次いで「両首脳は、一九九六年十一月までに、SACOの作業を成功裡に結実させるとの確固たるコミットメントを表明した。」と。これからも努力していこう、こういう決意を表明されていることをまず申し上げておきます。
それから兵力水準の点でございますが、それは現在の安全保障環境にかんがみまして、我が国における現在程度のレベルも含めてアジア太平洋における十万という水準が必要であるという認識でございますので、削減の話はないかという御質問でございますならば、そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/86
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087・照屋寛徳
○照屋寛徳君 在沖米軍の現在の兵力の削減はないと、こういうふうに理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/87
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088・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) この宣言ではですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/88
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089・照屋寛徳
○照屋寛徳君 そういう点では、膨大な米軍基地のもとで五十年余り苦しんできた県民にとっては、今度の日米共同宣言、日米首脳会談にかけた未来への希望というのは私は非常に閉ざされた感じがして、心が痛むわけであります。
ところで、復帰後、日米両政府間で返還合意された基地で、二十四年たった現在いまだに返還が実現していないのは一体どの基地で、面積的にはどれぐらいあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/89
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090・小澤毅
○政府委員(小澤毅君) 政府としましては、安保条約の目的達成と地域住民の要望との調和を図りつつ整理、統合、縮小を進めておるわけでございますけれども、今までには第十四回、十五回、十六回の安保協関係の事案、さらには平成二年に合意されました二十三事案、さらに三事案等いろいろございます。このうち、第十五回、十六回安保協に係る事案につきましては、現在のところ全部で六十三事案ほどございますけれども、五十七事案は既にいわゆる決着済みということでございまして、六事案が未解決となっておるという状況でございます。
その具体的な施設について述べさせていただきますと、奥間レストセンターの一部、那覇港湾の全部、嘉手納弾薬庫地区の一部、牧港補給地区の一部、伊江島補助飛行場の全部、キャンプ瑞慶覧の一部ということになっております。このうち、那覇港湾施設については三事案として日米間での解決の方向が一つ決定しておりますし、またさきのSACOの中間報告でも返還への加速化ということがうたわれております。また、牧港補給地区の一部、キャンプ瑞慶覧の一部につきましても、SACOにおきまして返還の方向性についての日米間の合意ができているというところでございます。
また二十三事案につきましては、平成七年十二月二十一日までに返還済み、または所定の時期までに返還するということを日米間で合意したところでございまして、この二十三事案についてはすべていわゆる処理済みということになっておるところでございます。また、いわゆる三事案につきましても既に日米間でその解決の方向性が決定されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/90
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091・照屋寛徳
○照屋寛徳君 次に、去る二月二十二日に沖縄県の米軍海兵隊司令部前の国道で海老原鉄平君という十九歳の青年がアメリカ海軍兵ティモシー・ボビル上等兵の乗用車にぶつけられて亡くなられました。海老原君は兵庫県の出身で、沖縄の歴史、文化に魅せられて沖縄国際大学に入学をし、そして大学生活を送りながら沖縄の文化を学びたい、彫刻を沖縄で勉強したい、こういう思いを持っておったのでありますが、残念ながら、ボビル上等兵の過失でございますが、交通事故で無念の死を迎えたわけでございます。
この事件は大変多くの問題をはらんでおりまして、特に現在の地位協定十八条では、公務外の米軍人・軍属の事件、事故の場合に十分な補償が受けられない。この五十年間、一言で言いますと、やられ損というか泣き寝入りを強いられてきたのが実態でございます。と申し上げますのは、その加害米兵にほとんど資力がない、こういうことなわけですね。今回も、事もあろうに遺族に対して在沖米海軍法務部の担当者が、費用がかさむばかりだから弁護士を立てないでほしいと、こういうふうに圧力をかけたりしているわけです。それで今、海老原君の遺族は、直接の加害米兵に対して損害賠償の請求事件を提訴いたしております。総額七千八百六十一万円余り請求いたしておりますが、私はこの事故、これはやっぱり大変大きな問題をはらんでおると思います。
そこでお伺いいたしますが、ごく最近の数字で結構でございますから、米軍人・軍属の所有する車両の台数は一体どれぐらいあるのか、それから、復帰の日から今日までの米軍人・軍属による業務上過失致傷あるいは業務上過失致死事件の件数などについて詳細お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/91
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092・影山幹雄
○説明員(影山幹雄君) お答え申し上げます。
我が国におきます米軍の軍人・軍属の所有する登録車の台数でございます。私どもが把握しております一番最新のデータ、これは実はことし三月末でございますが、全国で五万五千四百六十二台、このうち沖縄県内には二万五千九百六十九台となっております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/92
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093・田中節夫
○政府委員(田中節夫君) 沖縄県におきますところの米軍人・軍属の交通事故に係ります業務上過失致死傷事件等の状況でございますが、昭和五十五年以前につきましては詳細な数字がございませんが、昭和五十六年以降平成七年末までの十五年間に発生いたしました交通事故に係ります米軍人・軍属が第一当事者、いわゆる過失が重いとされる業務上過失致死事件及び重過失致死事件は全部で二十七件でございまして、業務上過失傷害事件等は六百七十九件という報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/93
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094・照屋寛徳
○照屋寛徳君 次に、復帰後、現在までに発生した米軍人・軍属を加害者とする、被害者を日本人とする業務上過失致死傷事件での被害弁償の実態について、防衛施設庁、どういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/94
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095・大野琢也
○政府委員(大野琢也君) 御指摘の期間におきまして、那覇局が受理いたしました地位協定十八条の規定による補償請求というのは全部で約六千六百件ございます。これは警察庁の数字と大分違いますけれども、対人それから対物、全部を含んだ数字でございますので大変大きくなっております。請求者が日本人個人あるいは日本の私企業等である事案で六千六百件ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/95
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096・照屋寛徳
○照屋寛徳君 海老原君の事件で加害米兵が持ってきた見舞金が二万円、それから彼の上司が持ってきたのがわずか、わずかと言っては失礼かもしれませんが一万円。これじゃ大変ですよ。しかも、米軍人・軍属の所有している車両がほとんど任意保険に入っていない、対人の保険に。逆に、アメリカの基地内に出入りする企業や個人の通行許可証をもらうときに、私どもが基地内に調査で入るときに必ず任意保険に加入した証明書を義務づけているんですよ。
だから、非常に大きな問題ですけれども、どうなんでしょうか、政府として公務外の被害者に対しても責任を持って賠償するような制度に改めないと私は困ると思うんですが、外務大臣なり施設庁長官のお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/96
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097・諸冨増夫
○政府委員(諸冨増夫君) 今の任意保険の問題につきましては、いわゆる沖縄県との協議会の場で地元の方からのそういう御要望がございまして、私ども、米軍の方に強く申し入れて、現在米軍は、本土から参りましたいわゆる米軍の将兵に対してそういう任意保険への加入を強く働きかけるといいますか、教育課程の中に入れてそういうことを教育していくという旨の司令官の通達を出しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/97
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098・照屋寛徳
○照屋寛徳君 実態はほとんど入っていなくて、一月七日にアメリカの空軍兵士が金城ロジータさん親子三名を一瞬にしてひき殺した。これでもほとんど見舞金が払われなくて、金城さんも今提訴しているんですよ。
それで、時間がありませんので最後にお伺いいたしますが、この海老原君の事件でも、加害米兵はもう十一月には本国へ勤務がえになるんだと、こう言っています。日本の裁判所の判決で損害賠償が確定したときに、これがきちんともらえるような制度的な仕組みは保証されていますか。逃げ得では困りますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/98
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099・大野琢也
○政府委員(大野琢也君) ただいまの御質問に対しましては、確定判決が出たものの、当該米軍人等に資力がない等の理由によって被害者側から地位協定十八条の規定による補償請求が出されました場合には、当庁としては、当該案件を査定するに当たりまして我が国の司法当局が下しました判決を尊重するような査定をいたしまして、米側に報告をしているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/99
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100・照屋寛徳
○照屋寛徳君 まだまだたくさん質問があったんですが、時間がございませんので、また別の機会にやらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/100
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101・立木洋
○立木洋君 大臣、今回の日米安保共同宣言が出されましてから、その一つの問題としてアジア太平洋地域という問題が問題になりました。これはもういろいろな場所で質問がなされ、また総理も大臣もお答えになっておられるので御承知だと思います。私たちが考えているのは、つまり安全保障上の意義あるいは要因、効果とのかかわりでこのアジア太平洋地域をどう見るかという問題と非常に深い関係があるというふうに考えているので、この問題についてお尋ねしているという意味なんです。ただ単に地理的にどうかというふうな意味ではなく、まず最初に事実関係からお尋ねしたいというふうに思います。
アメリカの方から、今回の日米首脳会談あるいはそれ以前に、アメリカが主張している安全保障上のアジア太平洋地域というのはどういう地域を意味するというような説明がアメリカ側から日本側にあったんでしょうか、なかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/101
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102・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 結論的に申しましてそのような議論はございませんでした。と申しますのは、要するに条約上の概念としての極東地域というのは、今回の一連の作業を通じまして何ら変化はないわけでございます。アジア太平洋地域というのは、まさに委員が今御指摘になりましたように、どういうふうな効果があるかとか、どういうふうな作用があるかとか、そういったかかわりにおいての概念でございますので。
それで、委員御高承のとおりでございますけれども、アジア太平洋地域という言葉はいろんな場でいろんなコンテクストで使われますけれども、日米間の話といたしましても、これまで歴代の総理が訪米をする、あるいは先方から来られて首脳同士で話し合うといったときには、このアジア太平洋地域という言葉は何度も使われておりますので、いわばそれはいろいろ議論しなくてももう双方に理解できるものということでございまして、今回は議論していません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/102
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103・立木洋
○立木洋君 わかりました。
では、改めて日本側から、このアジア太平洋地域というその地域的な概念は我々はこういうふうに考えているのだという説明をアメリカ側に行ったということもないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/103
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104・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先ほど申しましたような事情でございますから、お互いに説明するまでもない、聞くまでもないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/104
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105・立木洋
○立木洋君 そうしたら、アジア太平洋地域の安保上にかかわりのあるその地域的な範囲について双方で明確に確認したという事実は、これまでも存在していないし、今回の会談でも存在していないということでよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/105
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106・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) これは、米軍が日本に駐留するということが結果として平和と安定に寄与する、そういうふうな概念でございますから、事柄の性格上、それを明確に地理的に確定するということは無理でもあるし、また必要もないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/106
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107・立木洋
○立木洋君 そうすると、地理的な内容について、アジア太平洋地域がどの範囲を指すかという問題が安全保障上に重要なかかわりのある範囲であるにもかかわらず、双方で明確な確認がされていないということについては、事実上、安全保障の行動範囲、適用範囲を運用する場合に米側と違いが起こってくるという可能性はないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/107
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108・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) これは先ほどから効果とか寄与とか作用とかいう言葉を申し上げておりますけれども、そういうことでございます。
日米安全保障条約に基づいて米軍がいろいろ役割を果たす、そういった地域については条約上の規定がございますけれども、アジア太平洋地域というのはそういうものじゃなくて、そういった安全保障条約に基づいて米軍が活動する、そのことによって安定化の効果が及ぶとか、あるいはその地域の安定のために寄与するとか、そういうことでございますから、これは適用範囲が広がるとかなんとかということを心配する必要はないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/108
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109・立木洋
○立木洋君 実は、アメリカは安全保障上のアジア太平洋地域をどの地域であるかということは明確にしているんですね。どういう地域というふうに明確にされておるのか、大臣、御承知でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/109
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110・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 米国のいろいろな議会等へのレポートなどにおきまして、そういった地域概念、言葉が使われているのは承知しておりますけれども、しかしそれもきちっと地理的にどこからどこまでと確定されていることはまずないんじゃないか、言葉としてこうであると。ただ、いろいろ米軍が運用する場合に、例えば第七艦隊の担当範囲がどうだということで、その海域とか地理的なことが言われることはございますけれども、アジア太平洋地域はどこからどこまでということをきちっとやっていることはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/110
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111・立木洋
○立木洋君 どうも池田大臣は文章を正確にお読みになっていないようですね。
一九九五年二月二十七日に出されましたアメリカ国防総省国際安全保障局の東アジア太平洋の安全保障戦略の中に安全保障上の地域について明確に書かれています。
大臣がおわかりにならないようですから私が述べますが、日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイ及びマーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオ共和国、東南アジア、北東アジア及びインド洋を結ぶ海上交通路の維持ということを挙げております。そして、これは北東アジア、東南アジア、太平洋、大洋州、インド洋の各地域を含むものということになっておりますが、そういうことじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/111
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112・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) それは二月に国防省でまとめ、その後三月に議会に提出された報告だと思いますけれども、そこで米国がいろいろ考えます場合に今挙げられたように地理的に言及しているというのは承知しておりますけれども、しかしそれがどこからどこまで正確にこの地域だというふうにきちっとやっているわけではないと思います。ましてや、今回の日米安保の共同宣言あるいはそのもとになります首脳会談での話が、特定のそういった範囲を確定した概念としてのアジア太平洋地域を前提にしてつくられたり話し合われたりしたものじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/112
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113・立木洋
○立木洋君 これは安全保障上のアジア太平洋地域についてのアメリカの規定なんです、文章上の。これは後で池田さん、もう一遍お読みになっていただきたいということだけ重ねて申し上げておきます。
日本側での、先日の本会議での質問に対する答弁によりますと、あえてこの問題は問題にする必要はないかもしれないけれども、あえて言うならば東アジア、大洋州というふうに答えております。これはアメリカが出しておる、つまり国際安全保障局が出した東アジア及び太平洋の安全保障報告で決められたアジア太平洋の安保上の地域の規定とは明確に異なっております。
それで、私はこの問題も本会議でお尋ねしたんですけれども、大臣にはお尋ねしませんでしたが、外務大臣ですから外務委員会で何回もお聞きすることが可能だろうと思ったので、あえて総理だけにお尋ねしたんです。
ナイ国務次官補がこの報告書を作成したときにこう言っているんですね。日本のこれからつくる新しい防衛計画大綱がアメリカ国防総省の東アジア太平洋戦略報告書と明確に重なり合うことが成功をはかる尺度だというふうにアメリカの議会で証言をしているんです。だから、これは安全保障上の地域が日本側がこれからつくる新しい防衛計画大綱と明確に重なり合うことが非常に大切な一つだと言えると思うんです。私はこれがすべてだとは言いません。しかし、これも大切な一つだというふうに考えるべきだろう。
ですから、日本でこの新防衛大綱の内容が作成されるとき、その表現は「我が国周辺地域」という表現を使っております。それはさまざまな使い方があるということについては大臣が国会の本会議でも答弁されました。「我が国周辺地域」で日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図るというふうにされております。
ですから、事実上、アメリカがこの東アジア太平洋戦略報告書を作成するときに日本側に求められた内容、これが重なり合うことが成功のかぎだというふうに言われている点から言うならば、アメリカ側とアジア太平洋地域についての合意がやっぱりいずれかでなされているんではないかと。しかし、それがなされているということになると安全保障条約の条文の変更にまでかかわるから、それになると大変だから、内々的には合意をしているが安全保障上の文章を変えるまでには至らさないで共同宣言という首脳同士の宣言という形態をとったというふうに見る見方もあるいはできるかもしれないというふうに思うんです。これは断定はしません、私は。
そうしますと、結局、実際上、安全保障の効果、維持、要員等々を検討する場合に、安全保障上のかかわりのあるアジア太平洋地域のその地域と言われるのは、安全保障条約上の文言を変更しなくても、運用の面では事実上変更がなされてくるんではないか。ここに言われている北東アジア、東南アジア、太平洋、大洋州、インド洋、各地域を含むというふうなものまで問題に挙げられているとするならば、これは私はもう二十数年間この問題について、安保上の条約の問題について外務委員会で議論をしてきました。
この問題は、ベトナム戦争のときに極東の範囲はどうなんだと。これはもう大議論になりましたね。それから、中国が国連に参加して、そうしたら台湾省はあれは極東の範囲に入るのか入らないのか、こういう問題も大議論になりました。これは、日米間の安全保障上の問題をつかさどる上で、この問題をあいまいにすることができないということがこれまで長年にわたる日本の国会での議論の内容だったと思うんです。ですから、そういうことを考えるならば、事実上安保条約上の文言を変更しないでも、実際上に適用の範囲はアジア太平洋地域に拡大したというふうに解釈されることもでき得るんではないか。
その点は、本会議で答弁なさった大臣の答弁の最後の部分を私は非常に重視したんです。それは何か。「このような範囲というのは時々の国際環境によりまして変動し得るものでございます」とあなたは答えました。そうすると、問題は、安保条約上はいわゆる極東条項というのが依然として決められてはいるけれども、状況の変化によってどの範囲にでも安保条約の第六条等々の問題について適用が可能になり得るというような形で「このような範囲というのは時々の国際環境によりまして変動し得るものでございます」ということはこれまでの国会答弁では聞かれなかった、答弁として。私は、このアジア太平洋の地域の政府の答弁について非常に疑念を持つわけです。
この問題について明確にお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/113
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114・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 最後の部分からそれをお答えしていくのが御説明しやすいかと思います。
その時々の情勢によって変動し得るものだと申しましたのは、先ほども申しましたように、このアジア太平洋地域というのはどういう文脈で使われているかと申しますと、日米安保体制があるということがその作用としてその地域の安定に資する、寄与すると、そういう観点でございます。
わかりやすい例で申しますと、例えばその地域にあります国が、あるいはそこに住まう人々が、日米安保体制のおかげで自分たちのところは安心して暮らせるなと、こういう気持ちになる。そうなりますれば安定に資するわけでございますね。そういうところはその地域のそのときそのときのいろいろな条件によって違ってくるんだと思います。そういった意味でこの範囲は変動し得るんだと、こう申し上げております。
それから、アメリカのリポートの範囲とぴしゃりと重なることが大切だということを……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/114
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115・立木洋
○立木洋君 ぴしゃりとは私は言っていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/115
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116・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 何とおっしゃいましたか、明確にとおっしゃいましたでしょうか。要するに、ナイさんの発言で日本の考えとアメリカの考え方とがきちっと重なり合うということが大切だと、そういう……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/116
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117・立木洋
○立木洋君 地域の問題もその一つであろうと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/117
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118・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) というあれもございましたけれども、それはその地域の地図の重なる前の話ではなくて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/118
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119・立木洋
○立木洋君 私は地図とは言っていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/119
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120・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 地域の話ではなくて、むしろ基本的な安全を確保していく上での考え方が重なり合うことが大切だと、こういう趣旨だと思います。
そして、そういったことを考えます場合にも、アメリカの場合は先ほど御指摘のありましたように地域を含めてアジア太平洋と考えているということはあるかもしれません。米国の場合は、当然、あの国の果たしている役割、地位からしまして日本よりはより広範な地域に関心が及んでおるわけでございますから、そういうことはあると思います。しかし、我が国の場合にはやはり日本を中心としてアジア太平洋ということを考えますから、おのずからそういう範囲に違いはあるんだと思います。しかし、その違いがあることが日米の共同しての安全保障の体制に支障を来すということはないんだと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/120
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121・立木洋
○立木洋君 私は、ある意味でもっと厳しい言い方をするならば、そういう言い方で今まで通り抜けてきたのが日本の政府の姿勢なんですよ。これは、問題について言うならば、国家間で結ばれた条約や協定の一言一句というのは非常に正確でなければならない。田中角栄さんがソ連に行って結んだときに、ソ連側と二十八カ所もの文書の違いがありましたよ。こんなような外交をやっているというのは、言うならば世界じゅうから笑い物になるんですよ。条約あるいは協定における文書の表現、それは正確に将来をも拘束する意味を持つんです。
そういう意味で、私がこの問題について特に強調したいのは、例えば御承知のように地位協定の十七条、これの運用上の問題について、第一次裁判権の問題がアメリカ側にあると言われながら、本国において軍事裁判をやったということはほとんどないじゃないですか。それに対して日本はどういう態度をとったのか。申し入れもしていない。あるいは地位協定の二十四条について、この問題についての日本側がやる負担についても思いやり負担等々の問題まで拡大されて、そして実質的にはどうですか。公用のみを支出すると言われながら、アメリカ側から請求してきた私用の燃料や電気代や水道代も入っているようなものかどうかわからないものにまでアメリカの言いなりになって金を払っている。このことは折田さんが先日答弁しておられます。
そういうふうに、これを厳格に協定や条約で決められたものも守らないで、いいかげんに運用を拡大したり解釈していくというふうなことをやるならば、それはやっぱり国際的に信用のおける日本の外交姿勢とは思われなくなる。これは非常に厳格にやる必要が私はあるということを言いたいんです。
そういう意味で、今述べたこのアジア太平洋の地域の問題について、第一にアメリカ側と明確な確認がなされていないということ、これははっきりしました。そして、この問題について、適用の範囲内については運用上、時の状況によって変動し得ると。だから、これは地位協定の十七条の問題にしろ地位協定の二十四条の問題にしろ、そのときの状況によってアメリカ側の要求があればそれをさらに拡大して金をも支出することができると。そういうふうな条約や協定に対する、極めて私はきつく言うならばいいかげんとまで言いたいんです。本当に自主性を持ってやるならばそういうふうな態度をとるべきではない、自主性のある外交姿勢を私はとるべきだということを指摘したいわけですが、最後に御意見があればお聞きしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/121
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122・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 意見というよりも事実を明確に申し上げておきます。
条約や協定をきちっと正確にやらなくちゃいけない、そのとおりでございますが、私ども、今回安保条約もあるいは地位協定も何ら変更をしておりません。そのことを明確に申し上げておきます。
そして、アジア太平洋地域という概念は、先ほどから申しますように、委員しばしば条約の適用の範囲とかおっしゃいますが、適用だなんというそういう観点から申し上げているわけじゃございません。日米の強固な結びつき、そうして安全を守っていこうというそういう体制というものが作用としてその地域の安定に寄与している、そういうふうな観点からとらえているんだと申し上げているわけでございまして、条約や協定の変更を来すものでは全くないということを申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/122
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123・立木洋
○立木洋君 一言だけ。
きょう防衛庁の方に来ていただいたんですけれども、御承知のような大臣とのやりとりが非常に長くなりましたので、防衛庁の方に質問することができなくて、どうも申しわけありませんでした。次の機会にまたお願いをしたいと思います。
それから、大臣についても、これで終わったわけではありません。あなた、安心なさらないで、今後やはり理論武装をしておいてください。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/123
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124・武田邦太郎
○武田邦太郎君 また例によって平和論ですが、前の河野外務大臣のころ、余り同じような平和論をやるものだから気がとがめまして、大臣のお耳にたこができませんかと聞いたら、まだできていないということでしたけれども、池田外務大臣もお耳にたこができるようなことがあるかもしれません。私が繰り返し同じことを言うかもしれませんが、それよりも委員の先生方がもっと長いこと聞かれるわけですけれども。
二十世紀末から二十一世紀の初めにかけて、一体世界はどういうふうになるのか。今のままでずっと推移するはずはありません。仮に二十年後はどうなっているだろうかと、こういうことを考えますと、では二十年を振り返って、二十年前に我々が現状を見通し得たかというと、全く見通し得ていないわけですね。例えば、中国からインドにかけてのうつぜんたる高度経済成長などは二十年前は全く我々の頭に上っておりませんでした。
でありますから、我々は何とかして間違いのない将来展望を立てて、国の政策あるいは世界政策、国内の政策もそうでありますけれども、何とかしてそういうものを求めたい、こういうことで、ややもすると我々は目の前の事実に束縛されて先のことが見えなくなるということで、今までどれだけそういう過ちを繰り返したかわからぬくらいであります。そういう意味で、ただ先を見通すというようなことじゃなくて、歴史の法則といいますかあるいは歴史観といいますか、それもいろいろありますけれども、それを我々は選択して、それを歴史の羅針盤にしたいと思いまして、それでトインビーさんとか石原莞爾さんの歴史観を援用して申し上げたこともあります。
そういうふうな見方で見ますと、現在の地球上の国際的な政治の段階は国家連合時代と大ざっぱに言っていいと思うんです。大体第一次大戦くらいまでは国家主義全盛ですよね。それから八十年たって今日があるわけであります。真っ先に行ったのはEU、それからはっきりしたのがASEANそれからAPEC、NAFTA。ロシアも恐らく国家連合形態になっていくのではないか。南アメリカも国家連合の方向を模索するのではないか。こういうふうに考えますと、今残っているのはオリエントとアフリカだけですが、でもアフリカもどうやら国家連合形態の萌芽が見えるかと、こういう形になっておりまして、結局国家主義の方向に逆戻りすることはまず絶対にあり得ない。
それから先ほどうなるのかと言えば、やはり国家連合時代は今後永遠に続くわけはありませんから、そうとなれば、やはり世界が一つになって、トインビー氏とか石原莞爾氏が言われたように国家対立のない、世界が一体化する方向だろうと。これは現在ではちょっと空想に類する理想論のように聞こえますけれども、人類の歴史を国際政治の見地から見れば、国家主義全盛時代から国家連合時代に入って、地球上はほぼ国家連合に覆われようとしている。その先でありますから、恐らくそういうようなことがごく常識的に言っても間違いのない方向ではないだろうか。
現に我々の実生活を見ましても、情報は瞬時に世界じゅうを駆け回る。最近では若い人はインターネットを使って、もう個人的にも世界情報を駆使する。超音速の旅客機が一般化すれば、これはもう大抵のところへ世界旅行が日帰りになってしまう。こういう状況を一つの文明段階の先駆として見れば、これは一つになるということはほぼ間違いはないですね。それにもかかわらず、我々は一つになるという前途を展望しないで現状にとらわれて、後から顧みれば、我々にとっての太平洋戦争みたいに痛恨おくあたわない行動を今なお日本だけでなくて全人類がやっておるのではないかというふうな心配をするわけであります。
二十年といいましても、文明の進歩が加速しますから恐らく過去五十年、日本が戦争に負けたころから今日までぐらいの地球上の激変を今後二十年ぐらいにはやるのではないかとも言えないことはないわけです。そういう激変期を今我々は生きているわけでありますけれども、それほどの激しい変化を我々は身をもって感じません。
この前、小委員会で参考人になっておいでになった東京大学の先生が、中国と台湾の間のことを、経済は一つ、心は離れると。まことにうまいことをおっしゃって私も感心したのでありますけれども、これは眼前のことなんですね。今見れば、中国と台湾が一つになるとはまず百人が百人思いがたいでありましょうけれども、今申しましたような歴史の流れを展望すれば、台湾海峡は平和の海になることはもう間違いなし、こう断定を下してもその論理の展望に立てば間違いなしと思われます。そういう展望に立って我々は中国、台湾を見、中国、台湾の間に立ちつつあるかというと、必ずしもそうではないんですね。そういうことをひとつどういうふうにお考えか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/124
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125・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) いつもながら武田委員には高通な、また洞察力に富んだ見解をお示しいただきまして、私のような非才の者はなかなかついていけないところがあるわけでございます。
しかし、確かに現在、情報の世界はもとよりでございますが、経済面その他あらゆる人間活動におきまして国境を越えた、あるいは世界を一体にしたような面がずっと広く、また急速に進んでいるのはお説のとおりだと思います。そういった意味合いにおきましては、いわゆる国際政治の一つの単位である国家なんというものはどういうふうに変わっていくかということも当然我々は考えていかなくちゃならないことだと思います。しかし、それにいたしましても、今おっしゃいましたような世界が一つの国になる、一つになるといったことが空想から理想へ、そして現実へとなるにはまだまだ時間もかかるんじゃないかと私は思います。
それから、今、国家連合の時代に入ったと言われましたけれども、これも今例を挙げられました例えばEUなんかにつきましては、いろいろな人間活動のかなりの部分が統合されていったりしていると思いますけれども、それでもその中でのいわゆる主権国家というものが今おっしゃいましたようなせいぜい二十年ぐらいのうちに完全に消えてなくなるということが果たして確実に見通せるかどうかというと、またいろんな見方があるんだと思います。
ましてや、オリエントやアフリカでもとおっしゃいましたけれども、そういうところではやはり地理的ないろんな連携だとか共同というのは進んでいくでございましょうけれども、しかしそういった国家連合というものが中心になって世の中が動くという時代が本当にそうそう急に来るのかなと、そういう気もいたします。しかし、そういった連携が強まってくるんだということは当然頭に置きながら、そういった中で我が国は一体どういうふうな対応をするかという観点から考えてまいらなきゃいけないと思います。
そして、最後の方で中国と台湾の関係についておっしゃいました。これにつきましては、私どもの立場というのは、もう申すまでもなく両当事者の間での平和的な話し合いによって問題が解決されることを期待する、そういう立場でございます。将来一つになることが考えられないように思うけれども、そうでもないよ、実現可能性がかなりあるよという武田委員の御見解でございますね。それは、私はあながちとっぴなものだとか圧倒的な少数説であるとは思っておりません。今、台湾のように経済の発展を実現し、そして生活の向上も実現した、そして政治あるいは社会の面でもいろいろ民主的な制度が定着する等の動きがございます。
一方において、中華人民共和国はどうかと申しますと、いろんな見方はございます、人権問題その他で厳しい見方もございますけれども、少なくとも経済的には着実に伸びているというのは事実でございます。そういったものを踏まえまして、社会あるいは政治の面でもかなりの変化が進んでおるし、将来も刮目して見るべきものがあると思いますので、最後に委員のおっしゃいましたことは、私はあながち現実的なものじゃないといって退けるということはいたさないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/125
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126・武田邦太郎
○武田邦太郎君 半分くらい一致したようです。
実は河野大臣とも、日本とアメリカが対等の親友になるべきだというのが一つ、もう一つは武力では本当の平和は実現しないということが一つ、この二つは完全に一致したんですね。それから先は一致しないままおやめになりましたが、池田大臣とはもっと踏み込んで一致したいと思いますね。
例えば、日本が完全に一体化する明治維新、その前はとにかく二百何十の小国家があったわけですね。主権を持ち、人民があり、領土を持ち、税金を取り立て、軍隊を持った小国家ですね。これを今日の世界と比べるのはやや民族という問題の飛躍はありますけれども、しかしそこには非常に共通した政治発展論理があると思うんです。でありますから、明治維新ほどではないにしても政治的分裂状況がだんだん解消していくということはほぼ間違いはないと。
そこで、その方向が間違いないとすれば、例えば中国の中で中国の本土と台湾がああいうふうになったならば、ああいう空母を使って、あれは一応成功したと言えるのでしょうか。ああいうやり方よりも、日本とアメリカとが両者の間に立って、本当に平和的に航空母艦の圧力なしに、モラルと英知によって仲よくすることを説得できないのか。これもちょっと一致しないでしょうから、それはとりあえずいいでしょう。私なんかは間もなく死ぬでしょうが、大臣が生きておられる間に世界一体化を経験することは間違いないと、こう思っております。
それで、宮沢賢治氏は、東にけんかする人があれば行ってつまらぬからやめろと言いと、こういって非常に人口に膾炙しているわけですが、アメリカは一番影響力を持つ国でありますし、幸いにして五十年前と全く一変して一応仲よくなったというような格好になっておりますので、どうせやるなら二つの国がそういう平和的な国際紛争解決のトップに立つ、その中で大臣が堂々たる役割を果たされることをお願いします。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/126
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127・椎名素夫
○椎名素夫君 私も平和論なんですが、大先生のような将来に余りみんな仲よしということにはならないだろうというふうに基本的に思っておるところから始めさせていただきます。
今度の日米首脳会談というのは、まだまだ宿題がたくさん残っているけれども、私は基本的に評価すべきだと思っております。日米同盟という言葉を使いますね。しかし、昔から国際関係をどうするかという話の中で、究極的には今おっしゃったような世界国家みたいな話になるのかもしれませんけれども、その一つ手前のある程度の理想的な段階として、ウィルソンが第一次世界大戦の後唱道をして、とにかく国際関係に法秩序を持ち込もうということで国際連盟つくりましたけれども、これは失敗したと言っていいんでしょうね。それから、第二次大戦が終わって、いろいろと前の教訓に学びながらだと思うんですが、国際連合というのがまたでき上がった。
それで、日本は国際連合中心外交ということをいつも高らかにうたってきましたが、しかし実際は、平和の維持それから国防ということについて言えば、国防の基本方針というのがありますね。あれで最初のところは要するに国連だと書いてあるんですが、四条ありまして、一番おしまいのところに国連が本当に平和維持の機能を発揮できるまでは日米安保だと、こう書いてある。結局のところ、いまだに日米安保だということになって、しかもその意義をさらに強調したということからいうと、第一項めに書いてあることは五十年近くたってもまだだめだという話なんだろうと思うんですね。
現実に冷戦中は平和維持機能というのは冷凍庫に入ったような格好になっていた。そしてまた、終わってみても、依然として本当の意味での平和維持機能を世界じゅうに及ぼすということまではどうもいかない。これも、こういう国際的な全世界を覆うような平和維持のインスティチューションをつくるという考え方に対して、やっぱりそういうことではなしに、同盟関係の極めて、適切というのがあるかどうか知りませんが、いいバランスがとれた同盟関係というようなものの方が最終的には頼りになるという考え方と両方あるんだろうと思うんです。建前で国連中心主義と言っているのはいいんですが、現実にはずっと日米でやってきた。
一体これからの世界で日本の外交というのはどういうスタンスでやるということになるか。その両者のバランスをとってやっていくというようなことはよく言いますが、バランスといっても一体右足に少し重みをかけるのか左の方にかけるのかというあたりはやっぱりある程度きちっと決めておきませんと、最近の世界は実にいろんなことが日に日に起こりますから、そのたびに慌てふためいていかなきゃいかぬという話にもなるんじゃないかと思うんですが、そのあたりを大臣はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/127
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128・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 武田委員とはまた違った意味で高邁な、また非常に広範な御議論でございまして、お答えのしようがなかなか難しいのでございます。
おっしゃるとおり、過去のあれは振り返るのをもうやめにしまして、今日から将来を見ましたときに、国際連合というものの果たす役割、冷戦終結後、いっとき非常に大きな期待が持たれましたけれども、やはり果たせる役割には限界があるんだと、特に世界の平和なり安全を守っていくという面においても、そういうことが今明らかになっていると思います。
しかしながら、国連そのもの、あるいはリージョナルないろんな仕組みとの連携をとりながら、役割というものもこれを切り捨てるわけにはいかぬと思います。ただ、一方において現実的な視点に立ちますと、やはり委員御指摘のように、日米間の同盟関係のようなそれぞれの主権国家間の提携というのが大切だというのはそのとおりだと思います。
日本を考えました場合には、やはり米国との関係をどうするか、それから中国も含めてでございますけれどもアジアとの関係をどうするか、そういったところを中心にして、まずバイラテラルといいましょうか、国家同士の関係というのをしっかり固めることが私は大切だと思っています。
それは何といいましても、今いろんなあらゆる面で一つの政治的な主体としてすべての機能を持っているのは残念ながら、残念ながらというのは、理想を高く掲げる立場に立てば残念ながら国際的な機関ではなくて一応国民国家であるわけでございますから、その間の連携あるいは同盟と言ってもよろしゅうございましょう、それを大切にしなくちゃいけない。そして、特に日本とか米国とかいろんな面で大きな力あるいは影響力を持つ国の提携のぐあい、そしてそれが国連のような国際機関をどういうふうに見、それをどういうふうに支え、あるいは場合によっては軽んじていくかということが国際的な仕組みの機能というものにも大きな影響を与えていくんだと思います。
そういった意味では、私は現時点に立って将来を見据えるのならば、両方のバランスということで言うならば、まず我が国と大きなかかわりあるいは利害を共通にする国との間の協力関係というものをしっかりしていくと。しかも、その中心はやっぱりアメリカじゃないかと思います。そして、その上で日米で共同しながら国連等の役割というものを、それがふさわしい分野においてはこれまで以上に十分に働くように力を尽くしていくという言い方かなと、こんな気がしております。
お答えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/128
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129・椎名素夫
○椎名素夫君 いえ、大変結構なお答えでございます。
それで、日米、日米というと、そんな凝り固まった話じゃなしに、やっぱり多角的な安全保障の枠組みをつくってそっちの方に移るべきだというような話がよくありますですね。あれはどうなんでしょうね。今までの歴史では少なくとも余り成功した話というのはないんだろうと思うんですね。
OSCEですか、前はCSCEと言ったあのあたりがよかったと、こういう話ですが、ああいったくさんの国が集まって、そして安全保障の問題を話し合おうというときには、全員がとにかくいざこざを起こすのはもう絶対やめようじゃないかというようなことに基礎的な合意がないとなかなかうまくいかないだろうと思うんです。それがどうもアジアではまだないような気がするんです。しかし、やれと言う方は随分たくさんおられますけれども、もしアジアで多角的な安全保障の枠組みというのができるとしたら、どういう条件になると一体できるんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/129
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130・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) それが文字どおり日本も含めてアジアの諸国の抱えている悩みでもあるんだと思います。
多角的なシステムがどうかという、それの有効性云々ということでございますけれども、ヨーロッパの場合には、例えばNATOなんというのは今アジアで言われているような多角的な枠組みというものとは質的にも全く違うと思いますね、もっと実力を備えたもっとがっちりしたものでございますから。
今アジアで考えられているのは、例えばASEAN地域フォーラムのようにまず対話の場ということでございますから、これは今もう大分回を深めてまいりましたから大分姿が出てこなくちゃいけないのでございますけれども、今の段階では、お互いに話をして、情報を交換し対話をしている中で無用なお互いの猜疑心だとか誤解というものを避けていると、そして信頼関係がつくり上げられていると。現段階ではまだそこにとどまっているんじゃないかと思いますですね。この枠組みが主体になってここの平和を維持するために何か積極的な役割を果たせるという段階にはまだ至っていないんだと思います。でき得るならばそういうふうな役割を果たせるような日が来ることを期待しますけれども、今の段階ではそんなところじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/130
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131・椎名素夫
○椎名素夫君 どこかにやっぱり力がないとこういうのはうまくいかないというのが一つあると思うんですが、さっき言いましたようなことで言うと、我々が今、何も差し迫った脅威と言っているわけじゃないけれども、ある場合には差し迫るのかな、朝鮮半島なんというのがありまして、それからもう一つ挙げられるのは台湾海峡というのがありますね。
例えば台湾海峡の例をとってみると、あそこで軍事紛争が起こるのは困るとみんな言っているわけです。ですから、リージョナルフォーラムあたりでも話ができないかとみんな内心思っているんだけれども、中国が、あれは国内問題であって、あなた方が口出すことじゃないというようなことで、一番肝心な、危ないかもしれないところの話ができないということが続くと、会議というのは結構楽しいものですからいいですけれども、何遍も会って話をして、ああ、いい会議だった、また来年やろうというようなことはあっても、なかなかそこのところがうまくいかない。そのあたりを日本は一体どういうふうに考えればいいんでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/131
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132・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) おっしゃるとおりに対話はあるけれども、具体的、積極的な役割は確かになかなか出てこないと思います。ウィーン会議以上に会議は踊る、されど、そういう感じがあるのでございます。
それにいたしましても、先ほど申しましたように、まず対話をしている中で誤解とかあるいは猜疑心を避けると、そういうことを通じての信頼関係の醸成というのはこれは着実に進んでいると思いますので、そういった中からもう少しきちんとした仕組みというものができないだろうか。それは多国間の仕組みとして実力を持つなんということはちょっと近い将来考えられません、そういうことはできないわけでございますけれども、そういった場でいろいろ話をしている中で、もし何か危ないことがあったら相互に通報していくとか予防措置をとっていくといったような仕組みなんということも考えられないではないでありましょうという気がするわけでございます。
そしてなお、例えば台湾海峡の話なんかで国内問題と言われるから話ができないと。それは確かにあるんですけれども、しかし、そういったことがやはりこういったフォーラムなんかでだんだん取り上げられるような雰囲気が出てくることを期待したいと思います。
現実に私も、これはそういう多国間じゃありません、文字どおり中国の外務大臣と話をする場合にも、国内問題と言われましたから、それはそうかもしれないけれども、しかしあそこがこれまでかなり長期間にわたって安定しておったということが、あそこの関係が穏やかであったということが日本も含めて周りの世界の平和につながっておったんだと、それの裏返しというのでやはり国際的な関心を持たざるを得ないんですよということを率直に申し上げたわけでございますけれども、そういったこともできるようなフォーラムがだんだんできてくればいいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/132
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133・椎名素夫
○椎名素夫君 時間がなくなってしまったのでこれでやめます。またそのうち続きをやらせてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/133
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134・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 済みません。生徒のできが悪いものですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/134
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135・佐藤道夫
○佐藤道夫君 最後になりました。私から二、三尋ねさせてください。今まで高通な議論が続いた後で、瑣末な当面の技術的な問題で大変恐縮ですけれども、しばらくおつき合いください。
実は、私、四月二十二日に行われました与野党の党首会談での橋本総理の発言を最初に取り上げさせてください。
あそこで橋本総理は、当面の極東有事問題の扱いに関連いたしまして、憲法の枠内での研究を地道に続けていきたい、憲法論議をする考えはないし、すべきでないということを発言したようでございます。
一体に、政治、行政、外交あるいは経済、法律等の討論をする場合に、枠をはめるとかタブーを設けるというのはこれは古いタイプの考え方だろうと思うんです。五五年体制下においては憲法問題に触れるのが大変なタブーのようになっておりました。考えてみれば、橋本さんは五五年体制下で育ってきた政治家ですから、憲法問題と言うと何かもう身構えてしまう、身震いがしてきてこれはさわらない方がいいと、こういう思いがあるのかもしれません。
憲法の九十九条、御案内と思いますけれども、公務員の憲法の遵守、擁護義務を定めております。あの規定を実は五五年体制下で大変に活用されまして、公務員である国務大臣が憲法改正について考えたり発言したりするのは憲法違反であるというような議論がありまして、哀れ、首になった大臣もいたようでございます。しかしいずれにしろ、もう時代が変わってそういうことではなくなってきたわけです。
民主主義というのは、だれでもが自由にもう問題があればどんどん発言していくと、それが本当の民主主義だろうと思うんです。こういう御時世下に、何か恐る恐るおっかなびっくり憲法に枠をはめてチャックをしてしまって、その内側で議論していこうというこそくな態度はとるべきではないというふうに私は思います。
今の外務大臣は当選回数は大分多いようですけれども、当然二十一世紀を見越して政治を指導していく方だと思います。こういう今の総理の考え方についてどうお考えになるのか、それとまた御自分の憲法論議についての基本的な姿勢を示していただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/135
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136・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) ただいま佐藤委員のおっしゃいましたことに異論を唱えるつもりはございません。
ただ、橋本総理の憲法の枠内で考える、あるいは憲法問題、例えば集団的自衛権の問題等について今論議をする必要はないという発言も意味するところはこういうことであると私は考えます。つまり、国民の間であるいは政治の場で広くいろいろな論議が行われることは、それは何ら問題があるわけでもないし、とめなくちゃいけないという話でもない。
しかし、現在の政府、橋本政権としてどう考えるかといった場合に、これは今、現在の憲法をどうこうしようということは考えないのはもとより、集団的自衛権についての解釈であるとか、あるいは先ほど来御議論がございましたけれども極東の範囲についてのこれまでの考え方というものを変えようとは思わない、そういった基本的なことは変えようとは思わない。変えなくてもまだ現在の情勢下で我が国の安全を守っていく、とりわけ米国との間の協力関係をきちんとしていく上でやれることは大分あるし、そしてやらなくてはいけないことは相当あると。
だから、そういった個別具体論を研究し、また必要な対応をしていくといった場合には、むしろこの政権として変えるつもりのない大枠の話には触れないで考えた方が物事が進みやすい、そういうふうな趣旨での御発言だろうと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/136
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137・佐藤道夫
○佐藤道夫君 いみじくも今集団的自衛権のお話が出ましたが、この政府見解が出たのは実はもう二十年、三十年以上前だろうと思います。東西冷戦のころで、しかも国内的には自民党、社会党の二大政党の対立時代、保守か革新かという時代の話で、もうこういう二十一世紀を間近に控えて、いつまでもこういう見解にしがみついていていいんだろうか。こういう日米関係の新しい時代が生まれようとするときにこそみんな胸襟を開いて新しい時代を見据えて議論をしていく、そういう方向がまた非常に望ましいんじゃないかと。
総理というのは一国の政治を率いていくわけですから、その総理大臣が憲法についてどういう考えを持っているのか、改めるべき点があるとすれば率直に彼の口から述べられてもいいと思うんですよ。それが議論の手がかりでまた国民も政治に関心を持ってくる一つのきっかけになるんじゃないかという気もしておるわけです。
それはそれといたしまして、次に自衛権の話に入りたいと思います。
自衛権というのは、考えてみればこれは国家の存立の基本的な権利だと考えてもいいわけです。憲法によって与えられたり、憲法によって奪われたり、憲法によって制限をかぶせられたりするようなものじゃないんだろうと私は思っております。
極めて卑近な言葉ですけれども、憲法は国をつくった神様じゃないんです。我々がつくったペーパー、紙なわけですからね。そのペーパーにこだわっていつまでも議論が進展していかないというのは非常におかしいという気がいたします。
例えとして適切かどうかわかりませんけれども、個人の基本的人権というのはこれは法律で与えられたものではなくて天賦の権利だというふうに言われております。その中の一つの正当防衛権、襲われた場合に自分の身を守るというのは、これは別に刑法で与えられた権利じゃないのであって、人間が生きていく上に当然必要なことなんです。
自分一人で身を守れないときには隣の人に、だれかに襲われたらちょっと助けてくれよというふうに話をしておくと、付近に乱暴者がいっぱいいるとして。隣の人もわかったわかったと、おれが襲われたらかわりにおまえが助けに来てくれよということでお互い約束をし合って、そしてだれか暴漢が襲ってきた場合にはそれっということで二人で身を守るために助け合うと。一人で守れば正当防衛で、二人で守ると法律違反で正当防衛としては認めないと、こんな理論はあり得ないわけですからね。憲法とか法律とかそれの前の状態としての権利、それが私は防衛権だろうと、自衛権だろうとこういうふうに考えるわけです。
ですから、自衛権に何か二色ありまして、個別的自衛権はこれはいい、しかし集団的自衛権は憲法上は認められないと。国際法上は認めるんだというふうな何か解釈のようですから、だから自然法的な権利としては認めておられるようですけれども憲法上は認められないと、こう二十年来おっしゃってきておるんだが、今の憲法九条のどこにそんなことが書いてあるんですかと聞きたいくらいです。
法律というのは、まあ三歳の童子は無理にしましても、中学生ぐらいになったら読んでわかるようなものでなければこれは立派な法律と言えないんですよ。私は何回も法律をつくったことがあるのでよく知っておりますけれどもね。我々がつくるときはなるべく難しくつくろうとするんです、なるべくわからないようにですな。しかし、それではいけないので、やっぱり中学生が見てもわかるような形であって初めて本当の法律だろうと思うんです。
そういう目で見ますと、今の憲法九条には、集団的自衛権が違憲だなんていうことをどこから読んでくるのかと。これは外務委員会でこういう議論をするのがいいのか悪いのか、いずれ機会を改めて総理あるいは内閣法制局長官の見解も聞いてみたいと思っておるんです。いずれにしても、もう率直にお互い胸襟を開いて議論をする時代、時期に来ているんじゃないかという気がしてしようがないんです。
外務大臣は宮澤派だというふうに承っておりますけれども、宮澤さんが四月十九日の産経新聞に寄稿されております。この中で大事なところを読み上げてみまするけれども、「集団的自衛権(の行使)は違憲だという答弁は、社会党が言うから防衛線を固く敷いてきた。集団的自衛とはどういう行為を言うのか。いままでの解釈を変えるのではなく、何がどうして違憲なのかを、これから検討しないといけない。」と。彼は頭がいい人ですからこういう持って回った言い方をしておりますけれども、率直に言いますともう集団的自衛権が違憲だという時代ではないんじゃないかということを問題提起しておるんですね、彼が。
それやこれやで、こういうことにつきまして、国務大臣である外務大臣の御見解をちょっと御披露していただければありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/137
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138・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) もう法律の神様でございます佐藤委員にその面であれこれ申し上げようと思いません。
それから、宮澤喜一先生のお話がございましたけれども、この席にお身内の方もおいでになりますので言いにくい面もあるわけでございますけれども、宮澤先生もそういったいろいろなお考えをお持ちになりながら、しかし御自身が総理として政権をお預かりになっている立場のときには、やはり現実にその時代はどういうふうにやっていくのが最も適当であるかということで対処されたわけだと思います。そういった御経験もお踏まえになりながら、現時点にあって、そういう日本の将来を考えながらの御発言だというふうに考えております。
橋本政権におきましても、またその中の内閣の一員でございます私にいたしましても、いろいろな思いはございますけれども、現在置かれた立場においてその責めを果たしていくと、こういった観点から考えました場合には、やはり先ほど申しましたような大枠は動かさないという前提で実質的に事を運んでまいりたいと、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/138
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139・佐藤道夫
○佐藤道夫君 わかりました。
政治というものは大変なまた御苦労もあるわけで、そうストレートに物を言えないことも私もよく承知しておりますが、やはりもう建前と本音を使い分ける時代ではないんだろうと思うんです。だれでもがわかるような理論を述べて理解していただいて、その理論に沿って政治をしていく、行政をしていくと。
この前もちょっと私取り上げましたけれども、地位協定十七条五項(c)をあのままにしておいて運用の方で賄っていこうという本音と建前を使い分ける行政、これが実は頭のいい大人の証拠なんだと、こういうふうに我々は今まで言われてきたわけですけれども、これはしょせんはごまかしなわけです。やはり新しい時代に備えて、地位協定はちょっと問題だといえばそれを敢然とアメリカにぶつけてお互い協議をして改正していくという方向で考えていきたい、そういうところから新しい日米関係も生まれてくるのかなと、こういう感じがしております。
私はゴッドの方じゃなくてペーパーの方でございますから。
以上でございまして、答弁は結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/139
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140・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) この際、池田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。池田外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/140
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141・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 先ほど高野委員の御質疑の際に吉田猛氏の旅券の問題についてのお話がございました。その後、事実関係を調べましたところ、御指摘の吉田猛氏に公用旅券を発給したという事実はございませんでした。
以上、御報告させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/141
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142・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
外務公務員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/142
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143・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113613968X00819960426/143
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144・木庭健太郎
○委員長(木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十三分散会
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