1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年三月二十六日(火曜日)
午後二時三十分開会
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委員の異動
三月十五日
辞任 補欠選任
中島 眞人君 岡野 裕君
藁科 滿治君 角田 義一君
三月十八日
辞任 補欠選任
岩永 浩美君 狩野 安君
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出席者は左のとおり。
委員長 宮崎 秀樹君
理 事
板垣 正君
矢野 哲朗君
吉田 之久君
齋藤 勁君
委 員
海老原義彦君
岡野 裕君
狩野 安君
鈴木 栄治君
村上 正邦君
依田 智治君
鈴木 正孝君
永野 茂門君
萱野 茂君
角田 義一君
笠井 亮君
聴濤 弘君
国務大臣
国 務 大 臣
(内閣官房長官) 梶山 静六君
国 務 大 臣
(総務庁長官) 中西 績介君
政府委員
宮内庁次長 森 幸男君
皇室経済主管 角田 素文君
総務庁恩給局長 石倉 寛治君
防衛施設庁施設
部長 小澤 毅君
事務局側
常任委員会専門
員 菅野 清君
説明員
宮内庁書陵部長 古居 儔治君
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本日の会議に付した案件
○皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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001・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る十五日、藁科滿治君及び中島眞人君が委員を辞任され、その補欠として角田義一君及び岡野裕君がそれぞれ選任されました。
また、去る十八日、岩永浩美君が委員を辞任され、その補欠として狩野安君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/1
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002・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。梶山内閣官房長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/2
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003・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
改正点は、内廷費の定額及び皇族費算出の基礎となる定額を改定することであります。
内廷費の定額及び皇族費算出の基礎となる定額は、皇室経済法施行法第七条及び第八条の規定により、現在それぞれ二億九千万円及び二千七百十万円となっております。これらの定額は平成二年四月に改定されたものでありますが、その後の物価の趨勢及び国家公務員給与の引き上げにかんがみ、内廷費の定額を三億二千四百万円、皇族費算出の基礎となる定額を三千五十万円にいたしたいと存じます。
以上が皇室経済法施行法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようにお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/3
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004・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/4
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005・齋藤勁
○齋藤勁君 社会民主党の齋藤勁でございます。
皇室経済法施行法の一部改正について幾つかお尋ねさせていただきたいと思います。
まず、皇室の皆様方でございますけれども、多くの国賓の接待あるいは行幸啓、外国御訪問など幅広い分野にわたりまして公的な活動をなさっておられます。さきの阪神・淡路大震災の折にもいち早く被災地をお見舞いになられ、被災者の皆さん方に優しい接し方、ともに温かい言葉をかけられまして、多くの方々を勇気づけられたことは記憶に新しいところだと思います。
まず、このような皇室の皆様方の活動でございますが、非常に幅広いものとなっていると思いますけれども、現在の活動の状況はどのようなものになっているのか、第一点目に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/5
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006・森幸男
○政府委員(森幸男君) 最近の皇室の御活動についての御質問でございますけれども、まず天皇皇后両陛下には、憲法で定められております国事行為のほか、国内における各種の式典や行事へのお出まし、各種諸施設の御視察、内外の方々とのお会い等々の御活動をなされていらっしゃいますが、特に最近におきましては、我が国の国際的地位の向上とともに、皇室の御活動につきましても外国御訪問等外国との御交際、あるいは国公賓を初めとする宮中晩さんや宮中午さん、そのほか宮中における内外のさまざまな方々とのお会い、御会食等、外国との御交際関係の活動の比重が高くなってきていると思います。
また、皇太子殿下を初め皇族の方々につきましては、それぞれの御活動状況には相違がございますけれども、それぞれのお立場から天皇陛下のこうした御活動をお助けしているところでございます。全体として申し上げますと、やはり外国御訪問や地方での公的な行事などへのお出ましなど、その御活動の範囲が拡大し、あるいは多様化してきているというところが現状かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/6
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007・齋藤勁
○齋藤勁君 ただいま答弁をいただきましたが、皇室の皆様方が国民の皆様のために本当に幅広く公的な活動をされているというふうに伺いました。そうした中で、何よりも皇室の皆様方が安心して御公務に専念していただくということが大切だというふうに思います。皇室の日常の活動、そして生活に必要な経費を賄う内廷費及び皇族費につきましても、適切に改定を行う必要があることは言うまでもないと思います。
そこで、先ほど官房長官からも改正する法律案の提出理由について伺いましたけれども、改めて今回の内廷費及び皇族費の定額改定の理由について宮内庁に確認をしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/7
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008・角田素文
○政府委員(角田素文君) 内廷費及び皇族費の定額改定につきましては、昭和四十三年十二月に開かれました皇室経済に関する懇談会において、物価の上昇及び公務員給与の改善に基づいて算出される増加見込み額が定額の一割を超える場合に実施するという基本方針が了承されまして、自来この方式により改定が行われてきているところでございます。
今回、内廷費及び皇族費の定額は平成二年度に改定が行われて以降六年間を経過しておりますが、その間、東京都区部の消費者物価の上昇率は九・六%、国家公務員の給与改善率は一五・〇八%となっておりまして、これに基づいて算出いたしました定額増加率は内廷費で一一・七%、皇族費で一二・五%となっているところでございます。
内廷費、皇族費とも定額増加率は既に平成六年度及び平成七年度と一割を超えておりますが、内廷及び宮家で雇用しております内廷職員及び宮家職員につきましては国家公務員に準じて給与改善を行い、また皇室の御日常の御生活や御活動が物価の上昇により支障のないようにするためには、平成八年度に内廷費及び皇族費の定額改定を行うことが必要であると考えておるところでございます。
さらに、今回の内廷費及び皇族費の定額改定につきましては、昨年十二月十八日に開催されました皇室経済会議、これは立法と司法の代表者から成るハイレベルな会議でございますが、そこにおいて改定が必要であると認められたところでございます。
なお、皇室経済に関する懇談会について若干申し上げますと、皇室経済法に定められていない皇室の経済に関する重要な問題につきましては、宮内庁が独自に決定するというよりも、皇室経済会議のメンバーに当時の宮内庁を所管しておられました総理府総務長官を加えた懇談会を設けまして、その懇談会で皇室の経済に関する重要な問題について議論することが適当であるとされまして、昭和四十三年十二月に皇室経済に関する懇談会が初めて開催されまして、皇族殿邸の供用基準、内廷費及び皇族費の定額改定基準等について協議がなされまして、主要な方針が決定されたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/8
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009・齋藤勁
○齋藤勁君 ただいま皇室経済会議のそういった内容等について諮られたということでお伺いいたしました。
引き続きでございますけれども、定額改定の積算根拠はそれぞれの会議の中で議論をされたということを踏まえてのことだと思いますけれども、この積算根拠につきましても改めて宮内庁にお伺いさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/9
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010・角田素文
○政府委員(角田素文君) 初めに、昭和二十二年制定当時の内廷費及び皇族費がどのように定められたかについて御説明申し上げたいと思います。
昭和二十二年制定当時の内廷費の定額でございますが、八百万円でございました。この定額の大筋の考え方は、当時の内廷の経費として実際にお使いになっていた費用を基礎といたしまして、当時の物価上昇を加味し、その結果八百万円という金額が算出されたと承知いたしております。
一方、昭和二十二年の皇族費の定額でございますが、当初十五万円でございましたが、精査の結果二十万円とされたわけでございます。これは親王と親王妃から構成される代表的な親王家を念頭に置きまして、当時の実際の所要経費その他を考え合わせ、御一家が皇族として相当の品位を保ちながら御生活になれる経費を計算して算出されたものであると承知をいたしております。
先ほど申しました昭和四十三年に皇室経済に関する懇談会の基本方針が出るまでの内廷費及び皇族費の定額改定は、物価の趨勢、職員給与の改善等、経済情勢の推移その他を勘案してその都度改定が行われてきたわけでございますが、一定の基準というものがなかったため国会等から基準を設けるべきとの御指摘がございまして、これを受けて昭和四十三年十二月に皇室経済に関する懇談会が開催されまして、内廷費及び皇族費の定額改定に関する基本方針が定められたところでございます。
その改定基準に基づく内廷費及び皇族費の定額改定の積算根拠、お尋ねの点でございますが、まず物件費の部分と人件費の部分に区分いたします。そういたしまして、物件費にありましては現行の物件費の額に前回の改定時以降の東京都区部の消費者物価の上昇率九・六%でございますが、これを乗じ、また人件費にありましては現行の人件費の額に前回の改定時以降の国家公務員の給与改善率一五・〇八%を乗じまして、それぞれの増加見込み額を算出することといたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/10
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011・齋藤勁
○齋藤勁君 積算根拠、それから定額改定の理由についてお伺いいたしました。
今回の内廷費及び皇族費の定額改定でございますけれども、平成二年の改定以来実に六年ぶりの改定となっているわけでございます。四十三年のそうした一つのルールがあるわけでございますが、いずれにしろ改定を見送ってきたことは事実でございます。そういった意味では皇室の皆様方に不自由をかけたのではないかというふうに推察するわけですけれども、この点について宮内庁ではどのように考えていられるのか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/11
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012・角田素文
○政府委員(角田素文君) ただいま御説明申し上げましたように、平成六年度及び平成七年度に定額増加率が一割を超えたわけでございますが、経済情勢等諸般の事情を考慮いたしまして改定を見送ることとされたところでございます。
社会の変化とともに皇室の御活動範囲か広がっている一方、内廷職員や宮家職員の給与を国家公務員に準じて改善をしたり、物価の上昇に伴いまして御生活費が増加する等によりまして内廷費及び皇族費の全体が窮屈になってきておりまして、やりくりが難しくなっているのが実情であるというふうに拝察をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/12
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013・齋藤勁
○齋藤勁君 ただいま答弁で、やりくりが大変難しくなっている、そう拝察するということを伺いました。
冒頭お答えいただきましたように、皇室の活動は非常に広い範囲にわたって行われているわけであります。せめて皇室の方々の日常の活動や生活に必要な費用には不自由をかけないというふうにしなければならないわけであります。
この改定が何年も見送られてきましたのは昭和四十三年十二月二十六日付の皇室経済に関する懇談会了承、こういう説明もあり、私も資料等を拝見いたしました。内廷費及び皇族費については物価上昇及び公務員給与の改善に伴い算出される増加見込み額が定額の一割を超える場合に実施することとされています。この基準が現在でも用いられているからではないかと思うんですが、この方式が設けられた当時ならばいざ知らず、それでも何回か、そう六年も待たずに改定できたのかもわからないんですけれども、現在のような物価上昇率、経済状態ですと、一割に満たない額でも物価上昇となるならば非常に長い期間改定もされないというのが続くということになるわけで、そういった意味でいえば、非常に不自由をかける期間というのは長くなる可能性があろうと思います。
このように、増加率が一割を超えたら定額改定を行おうという今の改定基準でございますけれども、私は見直しをすべきではないかなというふうに実は考えているところでございます。この点について宮内庁として考えがあれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/13
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014・森幸男
○政府委員(森幸男君) 現在の改定方式につきましては、先ほど私どもの皇室経済主管から御説明申し上げたところでございますが、昭和四十三年にその方式が設定をされて以来、既に三十年近くが経過しております。一応方式としても定着したものとなっておりまして、今回もこの方式による改定をお願いいたしたところでございます。しかしながら反面で、この方式に関しましては、ただいまの先生のお話を初め先生方から御指摘がいろいろ出ていることも事実でございます。
ただ、本件は国民の象徴であられる天皇陛下を初め皇族方の御手元金の改定をどうするかという大変慎重な研究を要する事項でございます。また、皇室経済に関する懇談会という大変ハイレベルな場で決定していただいた事項でもございまして、その取り扱いにつきましては慎重を期すべきものと考えておりますが、以上のような状況も踏まえまして、今後どのような改定基準にするかということにつきましては宮内庁といたしましても中長期的視野から幅広く研究をしてまいりたい、かように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/14
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015・齋藤勁
○齋藤勁君 ぜひ積極的に研究をされていただきたいと思います。
いずれにしましても、先ほどのやりとりの中で、不自由をかけたのではないんですかということの中で、やりくりが難しくなってきていますという答弁の上で私は指摘をさせていただいているつもりでございます。
今回提案の改定につきましては、これはこれで至極当然のことだというふうに思い、必要なことだと思います。再度、今の改定基準は見直しすべきだということで、宮内庁において研究をされるよう強く要望させていただきたいと思います。
なお、内廷費でございますが、内廷における日常の費用等に充てるものであり、また皇族費は皇族としての品位保持の支出に充てるものでございます。そのために必要十分な額が支出されなきゃならないし、今後改定の基準について研究していかれる際にもぜひその点について御留意をいただきたいと思います。
ただ、そうだからといって、これらのことを理由にとりわけ皇族方の私的な領域に立ち入るような議論が時々見受けられます。例えばその使途について細かく報告を求めたりするということについては、私はプライバシーの点からも非常に問題があるんではないか、そのようなことまでする必要はないというふうに思います。この点について宮内庁のお考えを伺いたいと思います。
また、これから述べる点についてはもし御意見があれば伺いたいと思いますが、よく開かれた皇室とか皇族とかいうようなことが言われると思います。国際的に比較をされますと、イギリスの王室を例にとりまして、イギリスの王室というのは余りにも開かれ過ぎではないか、こういう議論もあるところだと思います。私どもの方の尺度と申しましょうか、国民の立場に立ってより皇室が身近であればこしたことはないと思いますが、また余りにも開かれ過ぎるということについてはよくないと思います。いずれにしましても、開かれた国民に身近な皇室としての努力が私は肝要だというふうに思います。
前段につきましては、プライバシーの点について細かく報告する必要はないという私自身の考え方、後段の方は開かれた皇室としての私自身の考え方でございますが、見解があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/15
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016・森幸男
○政府委員(森幸男君) 内廷費及び皇族費につきましては、皇室経済法の規定によりまして、支出されたものは御手元金となるものとし、宮内庁の経理に属する公金とはしないというふうに規定をされているところでございます。したがいまして、内廷及び宮家の皇族の方々の経済につきましてはいわゆる私経済に属することになるわけでございまして、そういう意味でそもそもその使途を公表する性格のものではないというふうに考えておりますが、このたびの法案におきますように国会審議をお願いいたします場合には、御質問がございますれば、各宮家にお願いをいたしまして物件費及び人件費の支出状況を伺い、そういうものの比率を申し上げることといたしているところでございます。
いずれにいたしましても、内廷や宮家の経済の運営自体は内廷あるいは宮家が独自に行うものでございます。御指摘のように、内廷及び宮家の方々の私的領域に立ち入ったり、あるいはそういう費用の使途について細かく報告を求めるというようなことにつきましては慎重に対応すべきものであろうというふうに考えております。
それから、先生からあわせてお話がございました開かれた皇室についてのお話でございますが、天皇陛下を初め皇室の皆様方は皇室の伝統を大切になさるとともに、一方では国民とともに歩む皇室ということを目指されまして、時代に合った天皇のあり方、皇室のあり方を常に求めておられるところでございます。
今、先生のお話の中に出てまいりました開かれた皇室という言葉、これは時々耳にするのでございますが、内容が大変あいまいなところもございまして、用いる人によってその意味は多様なものがあろうかと思います。国民と皇室とを不必要に隔てるような要因はできるだけ取り除いていくのが当然であるというふうに考えますが、同時に守るべき皇室の伝統や皇室のプライバシーを損なうようなことは避ける必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/16
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017・齋藤勁
○齋藤勁君 幾つかありがとうございました。
今回の皇室経済法施行法の一部改正につきまして、賛成する立場で基本的な事柄に絞りましていろいろ質問させていただきました。今後、内廷費及び皇族費の改定に当たりましては、本日答弁いただきましたことに十分御留意いただくことを要望し、私の質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/17
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018・笠井亮
○笠井亮君 まず、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について質問したいと思います。
天皇に関してはもちろん国民の中にもいろんな意見があり、私たちも私たちの見解を持っておりますが、現行の憲法で象徴天皇制が認められている以上、皇室として妥当な予算を支出するということについては否定するものではありません。それにしましても、今回の法案に示された額というのはいささか高過ぎるのではないかというふうに思うわけでございます。
今回の改定は内廷費と皇族費を引き上げようとするものでありますけれども、例えば内廷費について見ますと、宮内庁がこれまで説明してきたと思うんですが、これをいわば天皇の給与のようなものだとするならば、三億二千四百万円にするという額、これには全く所得税がかからないわけです。仮に国民の給与ど同じように所得税を課税すれば、国税庁の試算によりましても六億百万円にもなるということであります。これは三権の長の年俸の約十五倍、国家公務員の平均年俸にしてみれば百数十人分に相当すると思うんです。
しかも、この使途というのは、先ほど御説明ありましたけれども、御手元金ということで、つまり身の回りの私的に必要な費用だけを賄っていくということで、公的な生活に必要な経費は別個に宮廷費で賄われていると思うんです。そういう点についていささか高過ぎるじゃないかというふうに思うわけですが、官房長官、庶民感情からいってそのことについてどう思われるか、御認識を伺いたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/18
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019・角田素文
○政府委員(角田素文君) 先にちょっと事務的に、高過ぎるという御指摘に対してお答えさせていただきます。
内廷費には日常の御生活費が入るのはもちろんでございますが、例えば災害に際してのお見舞金、社会事業団体への事業御奨励のための賜金、芸術、文化、スポーツ等の御奨励のための賜金、宮中祭祀関係の経費、内廷職員の人件費も含まれておりまして、毎日の御生活とお身の回りのことだけという意味の通常の御生活費というものよりも範囲が広いものでございまして、一般の所得と同一に論すべきものではない、こういうふうに考えております。
それから、昭和二十二年に制度ができましたときに、国会審議におきまして少な過ぎるのではないか、こういう懸念が多く表明されたと承知をいたしております。その後、社会の進展に伴いまして、生活水準の向上あるいは御活動範囲の拡大といった事情がありますけれども、この点につきましては、きのうの衆議院の内閣委員会でもそういう要素が加味されていないのではないか、こういう御指摘があったところでございます。そういう御指摘があったわけでございますが、基本的にはその後物価の上昇と国家公務員給与の改善に基づいて補正が行われてきているところでありまして、決して高額過ぎることはないというふうに考えております。
それからまた、昨年十二月のフィナンシャルタイムズの記事を紹介させていただきたいと思いますけれども、日本の皇室は世界でもより倹約的な王室の一つである、日本の内廷費は実につつましやかである、日本の皇室費はスカンディナビア各王国の王室とほぼ同額である、こうした経済的な質素倹約にもかかわらず日本国皇室は大いなる威厳と神秘性を醸し出している、こういう記事があったことを紹介させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/19
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020・笠井亮
○笠井亮君 今御説明があったわけですけれども、公費については宮廷費で賄われているわけですから、そういう点でいえばどう見ても高いんじゃないかというふうに思うわけです。
しかも、次の問題としてあるんですが、その改定基準の根拠の問題ですけれども、国民の目から見て納得いくものかどうかという問題があるんじゃないかと思うんです。
一般に基準は当然あってしかるべきだと思うわけですけれども、この問題では一九六八年の改定のときに設けられた基準ということで、先ほど来ありますように、国家公務員の給与と都区部の消費者物価指数を計算の基礎とされているということなんですが、しかしもともと内廷費にしても、皇族費の場合と違って、対象になる皇族の数がふえたり減ったりしてもそれにかかわりなく一定額を丸ごと支給するというか、いわばそういうものでありますから、これが物価や給与の変動の影響は比較的少ないということは明確だと思うんです。そうしますと、今度の増額に当たっても、こういう基準だから増額するんだといっても、それで納得し得る根拠になるのかというと必ずしもならないんじゃないかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/20
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021・角田素文
○政府委員(角田素文君) 御承知のとおり、内廷費は天皇及び内廷にある皇族の日常の費用、その他内廷諸費に充てられるものでございまして、天皇陛下を初め内廷にある皇族方が皇室制度の中心として一体的に御活動になるという考え方のもとに一括して定額が定められているところでございます。
内廷費は、経済情勢等が大きく変わる場合は別といたしまして、できるだけ安定していることが望ましく、また宮中祭祀に関する経費、内廷職員の人件費等、構成員の変動にかかわりがない経費が大きな要素を占めるといったような事情から定額とされておりまして、従来から、構成員がふえたときも、また逆に減ったときもその定額は変動させない、こういう取り扱いがなされておるところでございます。
御承知のとおり、内廷費は物件費に関する部分と人件費に関する部分に区分されるわけでございます。
物件費は御服装に関する経費、御用度に関する経費、お食事、御会食に関する経費、御交際に関する経費といったもので構成されるわけでございますが、これらは消費者物価により直接影響を受けるものであり、天皇陛下、内廷の皇族方は東京都区部にお住まいになっておりますので、物件費の改定につきましては東京都区部の消費者物価の上昇率を算出の根拠といたしております。
また、人件費は内廷職員の給与でございますが、この給与は国家公務員の給与改善があればそれに準じて改善を行っておりますので、人件費の改定につきましては国家公務員の給与改善率を算出の根拠といたしておりまして、いずれも合理的な根拠があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/21
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022・笠井亮
○笠井亮君 今御説明があったわけですけれども、それにしましてもどれぐらいの人数の皇族の方々にどれぐらいの費用がかかるという相関関係があれば、そういうこともまたその上に成り立つと思うんですけれども、何人いようが金額はこれというぐあいには、なかなかそういう基準というか根拠にはならないんじゃないかというように私は伺っていて思うわけであります。
今回の改正案は九〇年度以来六年ぶりだという御説明がありましたが、既に一九九四年中に増加率は定額の一割を超える状態であったけれども不況や震災などを考慮して見送ってこられたということであります。しかし一方では、二百四十兆円もの赤字国債を抱えて財政危機宣言を政府自体がしているという現在、状況は改善されているわけではありません、経済状況その他を見まして。今日の不況や経済の混乱に苦しむ国民生活の実態や感覚から見て、提案されている引き上げはいずれにしてもいささか高額であるし、今必要なのかということが問題になってくると思うわけであります。このままではなかなか国民の納得を得られないということを申し上げて、時間の関係がありますので次の質問に移りたいと思います。
関連しまして、いわゆる天皇陵、陵墓古墳の研究調査の問題について質問をしたいと思います。
宮内庁は、天皇や皇族の墓、関連施設として約九百カ所の陵墓などを管理して、うち前方後円墳で有名ないわゆる仁徳天皇陵と言われてきた大山古墳など二百四十カ所が学術的な価値の高い文化遺産でもあり、考古学の対象になっているというふうにされています。これに対して多くの考古学者らが、二十数年来、学術調査のための公開や保存を求めており、本委員会を初めとして国会でも繰り返し議論があったと思います。
しかし、宮内庁は、一九七九年に限定的な公開はするということを言われましたけれども、陵墓は皇室の生きた墓であり政の対象なので学術的な調査はなじまないという立場をとってこられて、陵基本体である墳丘への立ち入りを認めてこなかったと思うわけでありますけれども、現時点で宮内庁はこの問題についてどう考えていらっしゃるか、見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/22
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023・森幸男
○政府委員(森幸男君) 宮内庁といたしましては、陵墓は歴代の天皇及び皇族を葬る場所ということでございまして、先祖の墓として現に祭祀が行われており、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっておりますので、その維持管理に当たりましては静安と尊厳の保持に努めるとともに、一方では陵墓は貴重な文化遺産であるということから、学術研究上必要な場合には可能な範囲内でできるだけの協力を行っているところでございます。
陵墓は現に祭祀が行われているいわば生きた墓でございますことから、その中心である墳丘部への立ち入りや発掘調査等は認めておらず、今後ともこの方針については変えるつもりはありませんが、学術研究上の協力は今後とも進めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/23
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024・笠井亮
○笠井亮君 学術研究上の協力は進めていかれるということでありますけれども、どこまでやられるかということについてちょっと具体的に伺いたいんです。
昨年来、宮内庁のこの問題での姿勢に変化が見られるんじゃないかということで、学者、研究者とかマスコミからも注目が寄せられていると思うんです。
一つは、去年の十一月二十五日の奈良市のいわゆる成務天皇陵で行われた考古学の学会メンバーなどへの説明会のことであります。例年ですと陵墓補修工事に先立って一カ所だけ説明会を行うという形で限定公開されてきたわけですけれども、今回はこれまで立ち入りを禁止されていた墳丘部分について、宮内庁側が初めから見学者が足を踏み入れられるような道順を設定されていたということであります。関係者からはいわば異例の措置というふうに見られているわけですけれども、こういう形で墳丘にも踏み入るようなことを今後も認めていかれるのか、あるいは公開の範囲を拡大するおつもりがあるのか。先ほど協力されると言った中でのことですけれども、どのようにお考えか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/24
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025・古居儔治
○説明員(古居儔治君) 成務天皇陵の調査箇所の公開に際しましては、御指摘がございましたように、一部墳丘上の通路を通っていただいたことは事実でございます。これは墳丘すその見学者の通路の上の二カ所におきまして堆積土が大変軟弱で、足をとられやすい場所があったために安全が十分に確保できないということでございました。
そこで、臨特例外的に墳丘上を通っていただくことといたしたものでございまして、宮内庁としては従来の公開に対する姿勢を特に変更したというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/25
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026・笠井亮
○笠井亮君 今の御説明は伺ったわけですけれども、同時に、去年の説明会の場合は学会側の要望も入れて、それまでは各学会二名ずっと限定されていた見学の枠を三名ずつにふやすなど宮内庁側もさまざまな考慮をされているんじゃないかなというふうに思うわけですけれども、そのことを一つ申し上げておきたいんです。
もう一つ、昨年の注目点ということなんですが、阪神・淡路大震災がございまして、それで見直されている地震考古学との関係です。
陵墓の測量図で認められる墳丘の崩壊の問題、これを科学的に調査して過去の地震の規模などがわかっていけば今後の地震予知とか防災対策に役立つということで、地震学者からも立入調査の要望が出ていることは御存じのとおりだと思います。
昨年の七月十七日に、宮内庁と関係の十四の学会との例年やられている陵墓懇談会、この場で宮内庁の書陵部長が、防災対策に責任を持つ国や地方自治体から要請が出て、それが必要不可欠で緊急性があるならば真剣に対応していきたいという旨の回答をされたということでありますが、必要不可欠で緊急性があるということは、地震を考えますと、これはもう言うまでもないことになると思うわけです。そうしますと、この際、国や関係自治体からの要請というのも一つもちろんあるわけですけれども、要請をまつまでもなく、やっぱり宮内庁側としても協力を積極的に考えていくべきじゃないかというふうに思うんですけれども、この点についての御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/26
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027・古居儔治
○説明員(古居儔治君) 先ほどお話にもありましたように、あくまでも国や地方公共団体が防災に責任を持つという立場で正式に私の方に申し入れがされるということであって、しかもその調査が本当に必要不可欠かつ緊急性があるということであれば私どもは真剣に対処したいというふうにお答えをしたわけでございまして、その考え方には現在も変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/27
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028・笠井亮
○笠井亮君 人命にかかわることですので、阪神・淡路大震災の教訓も踏まえて、この点でもぜひ具体的にさらに検討をいただきたいというふうに思うわけでございます。
陵墓古墳の問題は古代国家と民族のルーツなど歴史研究に重要な文化財であって、科学的に研究されるべき国民共有の財産だと思うんです。これを破壊から守って科学的な調査の対象にしていかなきゃいけないと私は強く思うわけでございます。
与謝野前文部大臣が昨年末の十二月三十一日、朝日新聞の「論壇」で「宮内庁は天皇陵を調査すべきだ」ということを主張されて、その最後の方だったと思うんですが、「知りえたデータを、国民の共通の知的財産とするという作業が必要だ。」というふうに提言されたと思うんです。私は、それを宮内庁だけの手でやるんじゃなくて、さらに広い専門家といいますか、学術調査のための研究者の立ち入り、公開によって一層促進するべきだと思うんですけれども、その点について御意見、御見解をいただければと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/28
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029・古居儔治
○説明員(古居儔治君) 私どもとしては、とりあえず宮内庁の手で調査をいたしたいというふうに考えております。これは実は従来からやっておりまして、その調査結果等につきましては、宮内庁書陵部で発行しております「書陵部紀要」という雑誌で公表しているわけでございます。当分そういうことをやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/29
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030・笠井亮
○笠井亮君 私も宮内庁の書陵部の中に専門の方がいらして研究もされているということを存じ上げているし、紀要の中で、その成果を学会に返す努力もされているということは存じ上げているんですけれども、やはりこの問題は、申し上げたようにもともと文化財であるということと、それからやはり地震との関係でも多面的な研究者の目で光を当てて解明をしていくということが緊急でもあり必要だというふうに思いますので、その辺いろいろまたそちらの御事情やお考えもあると思うんですけれども、いずれにしても宮内庁御自身が対応を抜本的に再検討すべきときじゃないかなと。
去年いろんな変化も出たり、新しい目で注目もされていますので、そういう点でのさらなる御検討を要請していきたいと思うわけでございます。
ぜひその辺をよろしくお願いいたします。
最後になりますけれども、私はこの際ですので沖縄の問題について官房長官に伺っておきたいと思います。
沖縄の米軍用地の強制使用裁判で福岡高裁那覇支部が国の提訴からわずか三カ月で被告の大田知事に代理署名を命じる判決を下しました。もう既にニュースでも大きく報じられておりますし、言うまでもないことでありますけれども、これは基地の重圧からの解放を求める沖縄県民の願いに反する極めて不当な判決だと私は思います。大田知事と沖縄県民の道理ある正論を前にして、実質的な審理を回避してこういう判決を出したということで重大な問題だと思うわけでございます。
そこで、官房長官に伺いたいわけですけれども、大田知事は既に裁判所の命令を拒否する意向を表明されております。緊急使用の手続をとったとしても今月の三十一日、あともうわずか数日後ということで、あの楚辺通信所の一部用地の使用期限が切れるというのはもう明白なことでありまして、使用権原が消滅するのはもう明らかになっているわけです。そして、現に今月十三日に衆議院の外務委員会で、橋本総理も質疑の中で、手続を三月三十一日までに終えることは大変困難な状況になったという形で答弁をされていると思うわけであります。官房長官、これは手続が間に合わないということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/30
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031・梶山静六
○国務大臣(梶山静六君) 委員御指摘のように、確かに三月三十一日限り現行の賃貸契約は終了して、四月一日以降はその占有につき権原がない状態になることは御承知のとおりであります。大変苦慮をいたしておりますが、過去二十年間にわたって土地所有者との間で賃貸契約に基づき適法に使用をしてまいったこと、それから当該地区を引き続き米軍へ使用提供することは安保条約上の義務であるのみならず、我が国及び極東の平和と安全のために必要であるという国の判断が一つございます。目下、駐留軍用地特別措置法に基づき土地使用の権原を得るための所定の手続として、引き続き適法に使用し続けるための努力は行っております。土地所有者に対しては賃貸料相当の全員の提供をし、土地所有者に損害を生じさせないような処置を今講じております。
というような事情を考えれば、私は、土地所有者との間で法的な紛争状態にあるとはいえ、当該土地が土地所有者に返還されていない状況につき、直ちにこれをもって違法な状態であるということには当たらないのではないのかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/31
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032・笠井亮
○笠井亮君 今御見解を伺ったわけですけれども、権原が消滅して法的根拠がなくなることは明白だと思うんです。それでも今御説明があって、安保の問題とか言われたわけですが、使用するというふうに言われるのであれば、法的な根拠は何なのかというふうな御説明がちょっとなかったと思うんですが、どういうふうな法的な根拠に基づいて使用を続けていこうとされているのか、その点についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/32
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033・小澤毅
○政府委員(小澤毅君) ただいま官房長官の方から御答弁ございましたように、いずれにしましても国と個人との賃貸借契約に基づきます使用権原についてはなくなる状況であるということは御指摘のとおりでございます。一方、国としましては、地位協定また安保条約等に基づきまして米軍に施設・区域を提供しなければならない義務というものがございます。
それやこれやをいろいろ総合的に勘案いたしますと、ただいま官房長官からお述べになったような状態になるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/33
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034・笠井亮
○笠井亮君 今お話があったわけですけれども、権原が消滅したら、これはもう速やかに所有者に返還する措置をとるのは当然だと思うわけであります。
今、管理権などということも言われたりしていますけれども、あくまでも所有者の意思を尊重して返すというためのものでありますし、しかも安保条約の優位とかということで言われているわけですけれども、国内法上の根拠がなくてどうしてそういうことができるのかということがあると思うんです。そういうふうに言われるのならば、米軍用地特措法も要らないということになるわけであります。そんなことは法治国家として許されないということになると思うんです。
いずれにしても努力されるということなんですけれども、権原が消滅することが明白なのに政府の見解を国民の前に明確に示せ得ないとすれば、これは重大な問題だと思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/34
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035・小澤毅
○政府委員(小澤毅君) ただいま官房長官からお述べ申し上げたような見解というのを念頭に置きまして、今後我々は対応していかなければならないのではないかというふうな感を抱いておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/35
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036・笠井亮
○笠井亮君 土地の所有者も返還を強く求めているわけでありまして、やはり法的根拠がない以上、直ちに返還するための措置をとるべきだと思うわけであります。それを使用権原が消滅してもなお居座っていくということになれば、これは不法占拠以外の何物でもないということにならざるを得ないと思うんです。
そこのところはやはり重大な問題でありますから、これはきちんと受けとめて、どうするかということの納得いく説明を国民に対してするということがなければいけないし、そうでなければ返すということになるんじゃないかと思うんです。そうでなければ、不法占拠を続けていくなんということになれば、法治国家としてこれは断じて許されないということになると思うわけであります。
この問題は極めて重大な問題でありますので、また別の機会に改めて質問をさせていただくということで、きょうはこれくらいにしておきますけれども、ぜひその辺の納得いく国民に対する見解を示す、それで納得いく見解が示せないのであれば直ちに返還すべきであるということを申し上げて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/36
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037・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/37
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038・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 次に、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中西総務庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/38
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039・中西績介
○国務大臣(中西績介君) ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、最近の経済情勢等にかんがみ、恩給年額及び遺族加算額を増額することにより恩給受給者に対する処遇の改善を図ろうとするものであります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
この法律案による措置の第一点は、恩給年額の増額であります。
これは、平成七年における公務員給与の改定、消費者物価の動向その他の諸事情を総合勘案し、平成八年四月分から恩給年額を〇・七五%引き上げようとするものであります。
第二点は、遺族加算額の増額であります。
これは、遺族加算の額について、戦没者遺族等に対する処遇の改善を図るため、平成八年四月分から公務関係扶助料に係るものにあっては十三万二千六百円に、傷病者遺族特別年金に係るものにあっては八万五千五百十円にそれぞれ引き上げようとするものであります。
以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/39
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040・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/40
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041・海老原義彦
○海老原義彦君 恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、この困難な社会経済情勢のもとで、たとえ〇・七五%という小幅なものであってもベースアップを行うこととされた御当局の姿勢を高く評価するものでございます。しかしながら、恩給制度全般について見ますとまだまだ改善すべきところが非常に多々ございますので、恩給制度の改善すべき問題について若干の御質問をいたしたいと思います。
まず、恩給の意義、性格というものでございますけれども、昨年の八月二十四日、私は当委員会で当時の野坂官房長官それから江藤総務庁長官に伺いましたところ、恩給というものは社会保障制度に基づく年金と違うのであって国家補償的性格のものであるという御説明をいただいております。この点については、現総務庁長官の中西先生も同じでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/41
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042・中西績介
○国務大臣(中西績介君) 恩給の意義あるいは性格につきましては、恩給法には特別に規定をしておりません。恩給は、公務員が相当年限忠実に勤務して退職した場合、あるいは公務による傷病のため退職した場合、また公務のために死亡した場合において国が特別な関係に基づき使用者として公務員またはその遺族に給付するものでありまして、公務員の退職または死亡後における生活の支えとなるものでございます。
一般的に国家補償と申しますのは、国の政策の実施によりまして損失を受ける者に対して特に国が損失を補てんするということでありますけれども、恩給について国家補償とは、恩給公務員が永年公務に従事して老齢となり、または公務に起因して傷病にかかるか、あるいはそのために死亡した場合に、公務員またはその遺族に対して使用者たる国がその特別な関係に基づきまして一定の条件のもとに恩給を給付するという意味を持つものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/42
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043・海老原義彦
○海老原義彦君 国家補償というのはどういう意味なのかというのを次の質問として考えておったんですが、既に御説明をいただいたようでございます。
大変学理的な難しい御説明でございますが、私がいつもかみ砕いて恩給受給者の皆さんにお話ししているのは、軍人恩給というものは、青春の一番大事な時期に国のために青春をささげた、国のために忠誠を尽くして青春をささげた、このことを国としては、大変な恩でございます、これを恩に感じて、それで給付するものが恩給である。
青春をささげたというのはいろいろなことがございます。例えば、戦場においてあるいは倒れあるいは傷つき、それから生きて帰った方々だって大事な青春の時期、これからの人生の基礎を築くときを国にささげたんです。こういったことによる、今度は大臣のような難しい表現に戻れば、減損能力の補てんということになるんでしょうか、私はそういうふうに理解するわけでございまして、国家補償的というのは大臣の御説明と全く合うことになると思うんです、表現は多少違いますが。
そういった国家補償というものを考えてみますときに、一番典型的な国家補償、人の関係で考えますと、例えば公務員が災害に遭った場合、国家公務員災害補償法というもので国家補償制度があるわけでございますけれども、この公務員災害補償法の給付水準は給与スライドでございます。これに対して、恩給の改定はいわゆる総合勘案方式をとっておる。昭和六十二年から総合勘案方式でございます。
それより前は給与スライド、スライドという言葉は合わないかもしれませんけれども、毎年の改定を給与改善率に合わせていたというようなことがずっと行われてきたわけでございまして、昭和六十二年から総合勘案方式になっております。災害補償法はずっと給与スライドを、これは法定でございます、法律で定められておるので、ですから必然的に貫かれてきておる。同じ国家補償でありながら恩給制度については、あるときは給与スライドであったけれども、そのときそのときの情勢に応じて総合勘案方式でもいいじゃないかと。
総合勘案方式というのは、今やっておりますのは、聞くところによりますと、給与の上昇率を八割見る、それから物価の上昇率を二割見る、そういうようなことをやっておる。そういうことで、災害補償法の年金に比べますと、それはだんだん給付水準が下がってくるということもあるわけでございます。
昔、給与スライドでやっておったときだって、いろいろ大変な問題がございました。民間給与がどんどん上がっていく高度成長期、そういった時期に、公務員給与は追いついていくのが容易じゃない。恩給はまたそれを見て追いかけていくので大変なんだという時期がございましたけれども、何とか曲がりなりにも給与スライドをやってきたのはそれなりの理念があったからでございます。
今は、その理念が八割方残っているんですけれども、二割は物価になってしまったということ、これはまことに残念でございますが、この辺のことはどういうふうに御説明なさいますか。これは恩給局長の方がよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/43
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044・石倉寛治
○政府委員(石倉寛治君) 現在の恩給の改定方式は総合勘案方式ということでやっておるわけでございます。この方式がスタートいたしましたのは先ほどおっしゃいましたとおり六十二年なのでございますけれども、恩給の改定というものにつきましては、過去を考えますと、昭和四十八年以降、公務員給与の改定率を指標としてきた時期もございます。六十一年のいわゆる公的年金制度の改革に関連をいたしまして、恩給制度もこれとのバランスを考慮した見直しを求められるというようなことで鋭意検討した結果がこの総合勘案方式ということになったわけでございます。
したがいまして、公務員給与の改定も当然勘案をいたし、物価の動向も承知をいたし、社会経済情勢全体を総合的に勘案することが一番妥当な方式ではないかということで定着を見ているところでございます。おっしゃいますように、ある時期、給与改定とパラレルであったという時期もございましたが、それが必ずしもいい方式であったかどうかということの反省もあって今日の方式をとっているというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/44
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045・海老原義彦
○海老原義彦君 私は、それがいい方式か悪い方式かという問題よりも、国家補償ということからいえば、やはり国家公務員の給与に準拠するというのしかないんじゃないか。便宜いろいろな方式をとっております。それはわかります。わかりますけれども、やはり基本は給与スライドではないか。
六十二年から九年間、今度で十年目になるわけですけれども、十年間こういった総合勘案方式をとっていますと、随分給与との格差が広がってきております。恐らく一・何%、二%近くになるんじゃないかなと思っておりますけれども、一・何%、二%といったって、これは大変な額でございます。恩給費が一兆五千億ですから、その二%といえば三百億、大変な額でございます。
この三百億を節約するためにこういった方式をとらざるを得ないという流れも一つあると。それもわかります。私はよくわかりますけれども、しかしこれはどこかで直さなきゃいかぬ。一つの直し方としては、もう一度給与スライドに戻すか、それからいま一つの直し方とすれば、年金だって五年ごとに再評価しているんですから、それと同じように何年かたまった分をどこかで別の改善で入れていく、そういうような格差調整、これをやるというのも一つの案かと思います。この辺、いずれもなかなか難しいというお答えが出ることはわかっておりますけれども、しかしひとつ前向きに検討していただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/45
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046・石倉寛治
○政府委員(石倉寛治君) 先ほど申しましたように、総合勘案方式をとりましておよその定着を見ているところでございますけれども、実際にことし厚生年金その他の公的年金が、物価が下がったということで、それを食いとめるのに大変な苦労をしておられることは御承知のとおりでございます。恩給制度が総合的に勘案するという方式をとったことが結果的にそういう問題をクリアできたのではないかという側面もございますので、そういった観点から、必ずしも給与とのスライドが最善であるかということにつきましては疑問なしとはしないという現在の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/46
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047・海老原義彦
○海老原義彦君 今お話しの、他の年金は今回はアップゼロである、ところが恩給については総合勘案方式で〇・七五という少額とはいえ上がった。これは私どもも非常に高く評価しておるものでございまして、そういう一定の基準でやっていくということは非常に大事だと思うんです。
ただ惜しむらくは、その基準がどうも、八、二でいくというのがどうして出てきたのか。いろいろ当時の事情があったんでしょう。定着してそれでいっているからいいんだという見方もございます。また、役に立っている、現に今度の改善ではそれが定着しているから役に立って〇・七五%とはいえ改善できた、こういうことはございます。だけれども、反面やはり国家補償という性格からいえば、公務員給与改定にだんだんおくれていくということ、これは受給者の心情としては本当に大きな問題だということになると思うんです。
さて、時間もございませんので次の問題に入りますけれども、最低保障の改善でございます。
最低保障の改善は、これはもう何年も言い続けてきたことでございますけれども、なかなか難しい。今、御存じのとおり、長期在職者を一〇〇として、短期在職者は実在職年数によって三段階に分かれている。実際の在職年数が六年、九年、この二つで区切ると三段階になるということでございます。そうやって三段階にしていくというのはそれなりに意味のあることだと私も思いますけれども、しかし恩給が、先ほど申しましたように、公務のために青春をささげた、つまり国の活動によって国民に損失を与えたわけでございますからその、補償である、国家補償であると。そういうことからいいますと、在職中にどれほど御苦労があったかということで、同じ年数でも違うというのは恩給法の性格上当然のことだろうと思うんです。恩給法ではそのために加算年という思想を導入しております。
加算年というのは、戦務について、非常に激しい戦務についた場合には戦務甲として一月に三月足すということでございます。それから戦務乙、それに準ずる者は一月に二月足す。そのもう一段下になりますと一月に一月足す。そういうふうにして、場合によっては四倍、三倍というように年数を考えていく。これは一つの大事なルール、恩給法百二十年の歴史の中で非常に大事なルールだったろうと思うんです。
現在、軍人普通恩給、普通扶助料の大部分の受給者は最低保障の適用を受けております。最低保障では加算年というのは全く顧みられていない。
つまり、砲弾が雨あられと飛び交う中で血と汗を流しながら戦った人も、それから内地にいて単に兵営勤務をした人も同じ扱いだということでございまして、これは恩給法の本質からいってもまことに不合理だと思うんです。でありますから、この実在職年による区分というのは、それは維持しても結構ですけれども、やはり勤務の質に着目して、労苦の多いところは何か特段の配慮を講じていくというような措置を考えることはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/47
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048・石倉寛治
○政府委員(石倉寛治君) おっしゃいました対象者は短期の在職者のお話だと思います。
実は普通恩給の最低保障額という制度が設けられました基本的な原因は、長年勤務をしたにもかかわらず極めて低額の恩給しか受給できない長期在職者、つまりある時期におきましては実在職年で十二年以上ありませんと受給できなかったわけであります。しかし、その方々の実際の計算をいたしました恩給額が非常に低いということで、一般社会保障の理念も導入いたしまして最低保障というような制度を設けたわけであります。
今、先生がおっしゃいました対象の皆さん方はそうではありませんで、実在職年が十二年に満たない皆さん方をどうやって十二年にみなすかという努力の一つとして加算年をお使いになったというわけでありまして、昭和四十九年の短期在職者への導入というのは、そういう意味では理論的には極めて大きな飛躍を見たところでございます。
したがいまして、十二年以上実在職年がありながら低額であった方々とは別に、十二年に満たない皆さん方に対して、加算年でやっと十二年の期間を満たすという方々をどう処遇するかという議論だと思うわけでございます。この方々につきましては、年金の受給資格を発生するための道具として既にもう戦地加算その他の加算年を利用いたしておるわけでございますので、これにさらにその御苦労を見ろというのはなかなか理論的に難しいという問題がございます。
最低保障額の設定につきましては、実在職年による区分を設けているのはこのような経緯を踏まえてつくられているわけでございますので、この問題につきましてはなかなか難しい問題があると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/48
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049・海老原義彦
○海老原義彦君 加算年を既に使っておるというお話でございましたけれども、実はこの加算年は全く使われていない。それはどういうことかと申しますと、加算年も入れて計算しました結果、最低保障に満たない、つまり加算年は使い物にならないということで結果的には使っていないんですよ。だから最低保障をもらっておる。何のために戦地であれだけの苦労をしたかということでございます。
これは大変難しい問題になってくるので、だんだん深みにはまっていくと議論が尽きなくなります。だから、うちの団体の中で威勢のいいことを言う人たちは、俸給表がそもそもおかしいんだ、俸給を大幅に引き上げれば最低保障なんというのは要らなくなると。今の俸給が、例えば兵だったらば、一番高い長期七十で見ても年額百四十万ですね。准尉で二百八万。もう一つ上があるか、准尉は。これはちょっと特殊なやつですから、二百八万。年額でそんなものしかない。准尉といったら海軍でいえば兵曹長、鬼の兵曹長。もう大変な期間勤め上げた立派な人たちですよ。そういう人たちが二百万しかもらわなくていいのか。
今の公務員給与と合わせていく間にどこかでボタンのかけ違いがあったんです。ボタンのかけ違いを今さら直せとは申しません。私は俸給表を大幅改善しろなんということは言わぬです。ボタンのかけ違いはかけ違いでいいです。それをそのまま放置しておくためには、やはり最低保障の面で改善を図っていかなきゃならないんだと。もし俸給でやるならば、もちろん加算年も入れて、加算の多い人はどんどんふえるわけです。それができない。だから、何らかの形で最低保障に反映させるということは決しておかしいことじゃない、私はそう思うんです。これは十分御検討いただきたいと思います。
それから、次の問題に移りますけれども、平成八年度予算で恩給受給者の社会経済等状況調査というものの調査費が一千万つきましたね。普通恩給及び普通扶助料の受給者を対象として三万六千人ぐらい調査するということのようでございますけれども、この調査はいつごろからどんな方法で実施されるのか、現段階における具体的なプランをお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/49
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050・石倉寛治
○政府委員(石倉寛治君) 御指摘の状況調査でございますけれども、これは平成八年度の予算案に新規事項として盛り込まれたものでございます。
恩給受給者社会経済等状況調査と一応仮称いたしておりまして、予算案が成立をいたしましたら実行いたすという手はずになっておるわけでございます。
これの予算案を作成いたしました基本的なねらいは、まず第一に我が国の人口の高齢化が急速に進んでまいっております。特に……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/50
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051・海老原義彦
○海老原義彦君 簡単で結構です、もう時間もございませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/51
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052・石倉寛治
○政府委員(石倉寛治君) はい。受給者が高齢化していることは極めて周知の事実でございまして、この方々の生活をめぐる諸問題への対応が問題になってまいりました。高齢者問題一般の問題が受給者に凝縮してあらわれておるわけでございます。こういった問題をもう少し精査して、これからの受給者の生活問題を考えていくよすがにしたいということで考えておるわけでございまして、基本的にまだ細かいデザインまではお示しをしかねる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/52
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053・海老原義彦
○海老原義彦君 まだ具体的なプランにまではいっていないということのようでございます。これはひとつ早急に計画を立てられて、私どももいろいろな形で協力したいと思っております。もちろん受給者の協力がなければできないことでございますし、受給者団体としてできる限りの協力をしてまいりたいと思っておりますので、ひとついいプランを立ててください。
さて、時間がないのでその他たくさんありますのを一括して、これはもうお答え要らない、要望という形でずっと申し上げていきましょう。
まず、湘桂作戦の問題がございます。湘桂作戦と申しますのは、昭和十九年に中支から南支にかけて、省で言うと湖南省、貴州省、江西、広東、この四省にまたがる広大な地域で三十六万二千人という大動員の兵力を投入しまして、日中戦争最大の作戦だと言われているんですけれども、我が軍にも一万九千三百という大変な死傷者数を出している。こんな激戦地であったにもかかわらず、先ほど申しました戦務加算が戦務乙、二月なんですね。これはどうも納得できない。
また、硫黄島も、硫黄島は生き残りが少ないんですけれども、亡くなれば公務扶助料ですから加算の問題はなくなるんですが、生き残った方にはあれもたしか戦務乙だと思いましたね。そんなような問題がいろいろございまして、この加算の問題というのはほじくり出すと本当にいろいろあるんです。
これが、あいにく恩給は非常に不幸な時期がありまして、昭和三十八年に復活してから慌てていろいろ整備をしたので、その当時、抑留加算、シベリア抑留者などの加算ですね、それから戦地外戦務であるとか沖縄であるとか若干の整備はしましたけれども、昭和十九年というと戦争末期なんで戦争中にはその整備ができなかった、それがそのままほうっておかれている部分がまだ残っている。私はこの話を二十年も前に聞いたことがあるんですけれども、もうとっくに片づいているのかと思ったらまだ残っておる。しかほど難しい問題だと思うんです。この加算の体系を整備するというのは今となってはなかなか手がつけられないんじゃないかという話も方々で聞きました。それは難しい問題でございましょうけれども、引き続き前向きの検討をお願いしたいということが一つであります。
それから、もう一つは遺族加算でございます。
これは公務扶助料が受給者に支給される。これは寡婦加算とのバランスを本来見なきゃならぬものですが、寡婦加算自体がまだ低額でございまして十五万六百円、これはもっと引き上げる必要があると思っておりますけれども、遺族加算はさらに低い十三万二千六百円で一万八千円の格差がある。これはどう考えても、何で同じような性格の加算二つを並べて片一方が少し高いのか。
昭和五十五年に改善措置ができたときのこれもボタンのかけ違いなんですね、ちょっとしたボタンのかけ違い。決して受給者に損はかけていないという御説明は聞いて納得しているんですけれども、そのとき損はなかったといっても、差がずっとそのまま残っておるということは、やっぱりだれが見ても変な感じがしますよ。これは公務扶助料受給者の心情を考慮して、遺族加算と寡婦加算と同額にする、それで両方とも引き上げていくと
いうことが大事なんじゃないかなと思います。
それからいま一つ、昨年の改正で一日症と二日症の傷疾軍人に傷病賜金が初めて支給されるようになりました。金目は少ない。少ないけれども支給できるということは、長年の懸案を解決したことを大変高く評価するわけでございますけれども、どうもその支給の方法が、金が少ないものですから、もらった人がかえって何だか恩着せがましくたった三万六千円ばかりよこしてというような感じもあるんですよ。例えば書状を添えて長年の御労苦をねぎらうとかといった措置でもとれれば、あるいは通知書の中にちょっと書くだけでもいいんじゃないかと思うんですけれども、そういうもらう人の立場に立ったお心遣いをひとつ御検討いただきたいなと思います。
以上、駆け足でございますけれども、いろいろな問題があるということを指摘いたしまして、ここで大臣の最後の御感想を伺いたいと思います。
恩給制度というのは百二十年の長い歴史、戦前完成された制度でございますけれども、戦後非常に不幸な時期があっていろいろ問題が山積してきた、こういう制度でございます。また、その問題を解決していくたびに制度が複雑になりまして、今恩給法の体系というのは何か税法の次に難しいんだと、これをわかる人はよほど勉強しなきやわからぬのだというのであります。
幸いベテランの恩給局長が大臣にお仕えしておりますから、法律を全部読まなくとも、内容はおおむねどういうことだということを把握して、ひとつ恩給改善のために一生懸命御努力いただきたいと思います。これは最後のお願いでございます。
そういう趣旨での大臣の御発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/53
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054・中西績介
○国務大臣(中西績介君) 恩給制度は、先ほども指摘されておりますように、国家補償的性格を持つ制度であるということと、それから現状大変高齢化しておるということを考え合わせてまいりますと、全般的に生活を支えておる内容でなくてはならぬということになりますので、その処遇等については十分これから勘案してまいらなくてはならぬと思っております。したがって、恩給年額の実質価値の維持をどのように図っていくかということを中心におきましてこれからも努力していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/54
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055・海老原義彦
○海老原義彦君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/55
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056・宮崎秀樹
○委員長(宮崎秀樹君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時五十七分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113614889X00319960326/56
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