1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年四月三十日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月三十日
辞任 補欠選任
浦田 勝君 林 芳正君
山本 一太君 佐藤 静雄君
阿曽田 清君 小川 勝也君
村沢 牧君 菅野 久光君
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出席者は左のとおり。
委員長 鈴木 貞敏君
理 事
青木 幹雄君
服部三男雄君
風間 昶君
常田 享詳君
谷本 巍君
委 員
井上 吉夫君
岩永 浩美君
佐藤 静雄君
林 芳正君
松村 龍二君
三浦 一水君
小川 勝也君
高橋 令則君
都築 譲君
上山 和人君
菅野 久光君
須藤美也子君
国務大臣
農林水産大臣 大原 一三君
政府委員
農林水産大臣官
房長 高木 勇樹君
農林水産省構造
改善局長 野中 和雄君
農林水産技術会
議事務局長 山本 徹君
事務局側
常任委員会専門
員 秋本 達徳君
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本日の会議に付した案件
○生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/0
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001・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、村沢牧君、山本一太君及び阿曽田清君が委員を辞任され、その補欠として菅野久光君、佐藤静雄君及び小川勝也君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/1
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002・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) 生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/2
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003・風間昶
○風間昶君 平成会の風間でございます。
早速質問に入らせていただきます。
今回の生研機構の業務内容に基礎的試験研究が加わることになりましたけれども、僕はむしろ遅過ぎたぐらいじゃないかというふうに思うわけです。学問の追求の上ではやっぱりベーシックな部分、根っこの部分をきちっとやってから枝葉をということが私は大変重要なことではないかと思います。応用研究、開発研究のために六十一年にいわゆるこの機構法が官民共同で成立いたしましたけれども、そういう意味では、基礎的な試験研究がきちっとした形でやれるということについては本当に遅過ぎたという感じがいたします。それはそうとしまして、今回の法改正の中でそれが盛り込まれたということは意義があるというふうに私は思うわけです。
試験研究の仕組みを簡単に説明していただきたい。何が今回の法改正のポイントなのかということをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/3
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004・山本徹
○政府委員(山本徹君) 現在、我が国の農林水産業の重要な課題といたしまして、国際化の進展等に対応した体質強化、農山漁村の活性化、また農林水産業からさらに新しい産業、新産業を育成していく、それから二十一世紀、人口百億人時代を控えた地球規模での食糧・環境問題の解決等々大変重要な課題がございます。
これらを解決するためには、先生御指摘のとおり、基礎研究の一日も早い強力な推進が必要でございます。このために、生研機構法を改正いたしまして、新しく国からの出資金により生研機構が国立の試験研究機関、大学等々のすぐれた研究者を幅広く結集いたしまして、基礎的な試験研究を競争的な条件のもとに行う仕組みを創設することにいたしたものでございます。
具体的な進め方といたしましては、国の試験研究機関、大学等に幅広く募集をいたしまして、その中からすぐれた独創的な研究課題を選定し、選定された課題につきましては、生研機構が中心となって基礎研究を実施される国の機関あるいは大学等と契約を結ぶわけでございますが、国の研究機関とは共同研究契約、それから大学等とは委託研究契約という契約方式で研究を行うことにいたしております。
こうした研究の実施に当たりましては、生研機構が、創造性豊かな若手研究者であり、まだ安定した職業についていないポスドクと言われる博士号を取得した方々、大勢日本にいらっしゃいますが、こういったポスドクあるいは外国のすぐれた研究者なども含めて外部の研究者を機動的に雇用して、国の試験研究機関や大学等へ派遣するという方式もとりたいと考えております。
また、この研究成果につきましては、生研機構と相手方の研究機関との共有にして幅広く国民に公開し、これを実用化に一日も早く供していただくことを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/4
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005・風間昶
○風間昶君 今のお話で、私は最も大事なのは現場の農林漁家に所得向上とやる気を起こさせるということでの基礎的試験研究ということを本来目的とすべきではなかろうかというふうに思いますが、そこのところが、お考えにはあるんでしょうけれども、きちっと述べられていないことにやや不満でございます。
それで次に、研究課題を公募するというふうに今おっしゃいましたけれども、どういった基準で課題を生研機構が選定されるおつもりなのか、それが一点。それから、国際的な科学技術競争の中でまさに早急に取り組むべき研究分野があれば、具体的に一例、二例、挙げていただきたいと思います。
この二点についてお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/5
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006・山本徹
○政府委員(山本徹君) まず、先生御指摘の点でございますが、農林水産漁家の所得の向上、またやる気を起こさせる、農林漁家の皆さんに将来の希望を持たせるということは、御指摘のとおり大変重要でございますので、新しい農産物の需要の開拓とか、農林水産業がエネルギー産業とか資源産業としても役立つような展望を持った研究開発を行っていただくことを期待いたしております。
まず、募集方針でございますが、国の研究機関、それから大学、県の研究機関あるいは民間等々、基礎研究を実施する能力のある機関に幅広く研究課題を募集いたすことにいたしまして、このためにいろいろな学会誌あるいは情報誌、あるいは募集の説明会等々幅広く実施いたしたいと思っております。
また、研究の公募に当たりまして、これは農林漁業あるいは食品産業に関する基礎研究であればいかなるものでもよろしいわけですけれども、基礎的、革新的な研究として幾つかの事例をお示しした方が募集の手がかりになると思っておりますので、そういった公募の対象となるような研究課題を具体的に幾つかお示しすることにいたしております。
その具体的な例といたしましては、制がん効果あるいは血圧安定効果、老化防止効果などの人間の健康に有益な機能を持つ高機能、高付加価値な農産物、食品の開発とか、昆虫あるいは農産物、畜産物などを活用いたしました、例えば昆虫から人工皮膚をつくるとか等々、生物系の医療資材、医薬品あるいはバイオプラスチックなどの生物系のいろいろな素材、バイオマテリアルと言っておりますけれども、そういったものの開発。あるいは大気浄化、水質浄化などの環境改善に役立つ生物、農林水産物の開発とか、それからエネルギー源としての農林水産物の活用等々、生物機能の高度利用あるいは多面的な利用のための研究を幅広くこの公募の対象として期待しておるところでございます。
もちろん、これはあくまで事例でございまして、研究課題の範囲をこういったものに限定するわけではなくて、新しい発想、今までの研究の組織ではなかなか取り組めなかったような革新技術あるいは新産業の育成に役立つような斬新な研究課題が幅広い分野の研究者の方々から応募されることを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/6
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007・風間昶
○風間昶君 わかりました。そうだとすると、かなりその周知徹底に相当きめ細かな日程、スケジュールを組まなきゃならないのではないかというふうに思うわけです。
さて、そうしますと、その間周知徹底させていただいて応募してくると。今度、応募されてきたいわゆる企業やあるいは大学、研究所からの課題が多いと思うわけですけれども、今度は応募課題の審査について、一点目は評議員会でやるのか理事会でやるのか、あるいは応募委員会か何かをつくってやるのか、どの機関で一体やられようとしているのか。それから、審査員体制と審査員の公表、これはどうされるのか。それから、大事な審査の基準。
この三点について明快にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/7
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008・山本徹
○政府委員(山本徹君) 本制度の適切な運営のためには、すぐれた研究課題をどのように選定するかというのが最も大事なポイントでございます。
このために、研究課題の募集については先ほど御説明申し上げましたように、国、大学、県の試験研究機関等々、基礎研究を実施する機関の研究者から幅広く募集するわけでございますが、この募集された課題を公平に審査して最もすぐれたものを採択する必要がございます。このために、生研機構の中に新しく選定委員会を設けることを予定いたしております。この選定委員会の委員は、高い学識経験と研究実績を持っておられる農学、それから農学のみならず医学、薬学あるいは生物学等、幅広い分野の研究者の方々の参加を得ることを予定いたしておりまして、この選定委員会で研究課題の審査、選定を行うことにいたしております。
この審査委員の方の公表でございますけれども、これはむしろ静かな環境条件の中で客観的に妥当な審査を行っていくために、外部には公表しないことといたしておりますが、この選定が終了した時点でこの審査委員会の委員の方は公表することを考えております。
また、選定の基準でございますけれども、先ほど先生御指摘ございましたように、農林水産業の振興あるいは総生産の増大、あるいは農林水産業者が将来に希望を持てるような研究課題であるということは大変大事でございます。そういった農林水産業の振興の観点、また国民生活の向上に役立つものであるというような点が一つの重要な審査の基準でございますが、またこの課題が独創的で新規性を持ったものであるということ、それから国内的、国際的に見て十分高い水準の研究課題であること等を基準にいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/8
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009・風間昶
○風間昶君 二点目の審査員体制については農学系だけじゃなくて幅広い研究者、学者さんということでございましたけれども、何名ぐらいの単位でこの選定委員会をやられるのか。そして、幅広いというふうにおっしゃいましたけれども、もう大体当たりをつけていらっしゃると思うので、ここのところのフレームをもう少し教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/9
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010・山本徹
○政府委員(山本徹君) 委員会の構成員としては現在のところ二十名程度でどうかと思っております。この中の構成でございますけれども、構成や具体的な人員については、またこの法律が施行になって本格的に検討を進めてまいりたいと思っております。農学が中心となるとは思いますけれども、先ほど来御指摘にございますように、幅広い分野の基礎研究でございますので、医学、薬学、生物学、あるいは理工系の専門家の方々でこの選定委員会に参加していただくことが適当な方をそれぞれ若干名ずつこの委員会に参加していただくことを予定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/10
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011・風間昶
○風間昶君 それと連動するんですけれども、結局そうすると、その選定委員に選ばれた方々のジャンルがある意味ではこの研究課題になっていきそうな気がしないでもない、危惧と言われればそれまでかもしれませんけれども。
そうすると、そこのところでさまざまなまた、問題は起こらないと思いますけれども、応用的に基礎的基本研究、基礎的な試験研究ということであるならば、今度、これは共同研究であれ委託研究であれ、研究者の雇用。一方では、今まで大学なり国立研究所なりで一生懸命研究をやっていらっしゃる方々に委託研究すると、もう一方では新しい研究者、自然科学系でいわゆるドクターの資格を取っていらっしゃる方々が全国で大体三千数百名もいらっしゃるというふうにも聞いております。そうなりますと、共同研究であれ委託研究であれ、研究者の雇用について、農学系だけじゃなくて、今お話があった理学、医学、薬学などほかの学問領域の中からも選定委員を選ぶというお話でしたし、一方、その研究者の雇用についても、結局それに関係ある人材の確保をどのようにしていくのかということがあるわけで、そうするとどうしても必要なのはやっぱり周知徹底、今回のこのPRだというふうに思います。
一点、農学系だけじゃなくていわゆる薬学、医学、理学のポストドクターをどのように確保していかれるのか。もう一点、一つの課題について何人ぐらいのドクターを、そのジャンルによっては違うでしょうけれども、想定していらっしゃるのか、この二点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/11
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012・山本徹
○政府委員(山本徹君) 先生御指摘のとおり、ポスドクと言われる方々、毎年三千人余りおられます。これは非常に大ざっぱに申し上げますと、理科系が千人、それから工学系が千人、それから医学系が千人、薬学が百人、農学系が五百人ぐらいの見当でございます。こういったせっかく博士号を取ったすぐれた若手研究者、安定した就業がないわけでございますので、こういった方々が今回の応募の課題に参加していただいて、その持てる能力を十分発揮していただくことを期待いたしておるわけでございます。
この雇用の形態でございますけれども、課題が選定された場合には、中心となる研究機関、これは国の研究機関あるいは国公私立の大学等々でございますけれども、この研究機関と生研機構との契約によってこの研究を実施することになります。この研究機関に所属される研究者につきましては所属機関の身分を持ったまま、例えば助手とか助教授の身分を持たれたまま本事業に従事されることになりますので、生研機構からは原則としては給与等の支払いは行いませんが、ポスドクあるいは外国人等につきましては、これは生研機構が非常勤職員として雇用するという形をとりまして、この非常勤職員を相手方の研究機関に、国の機関あるいは大学等に派遣するという形をとります。これらの研究者の就業条件は、生研機構が労働基準監督機関の指導を受けて定める就業規則によることとしております。
さらに、これらの研究者に支払われる報酬は、生研機構が定める規定に基づきまして、同程度の経験を有しておられる研究職の公務員の報酬を下回らない水準となる見込みでございます。
なお、ポスドク等の勤務管理につきましては、生研機構が責任を持って行うことになるわけでございます。具体的には、相手先の研究機関と締結する研究契約に基づきまして、相手先研究機関において勤務状況を把握し、生研機構に定期的に報告していただく等によって行うことを考えております。
こういった形でポスドクの方々に研究に参加していただくことを考えておりますけれども、平均的に申し上げまして、一年で一億円で五年程度ぐらいかけて一課題の研究に取り組まれるということをごく標準的な姿として考えております。そういった場合に、その研究者が多分十人ぐらいのグループを組んでいただいて研究に従事していただくと思うんですけれども、その中でポスドクの雇用者、この中で四、五人、半分ぐらいはポスドクを雇用していただくという形になるかなと思っております。これはあくまでごく標準的な一つの事例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/12
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013・風間昶
○風間昶君 先の話になっちゃったんですけれども、今も御答弁いただいたように、共同研究者、委託研究者の身分の規定といいましょうか、これは非常勤で、給与も研究職の公務員給与を下回らない形での労働条件というふうに今伺いました。
問題は、これはいろんなジャンルにおいてもそうなんですけれども、特に今回の基礎的試験研究が、ある意味では日本が国際的にやや立ちおくれぎみの遺伝子を扱う研究業務等が入ってくるわけでありますから、研究の内容について生研機構がチェックするのか、あるいはどこがチェックするのかという問題。これは大変重要な問題で、要するに委託、お金は出しますよ、大もとにかくそこにいらっしゃる研究者でお願いしますよ、さらにそれが共同研究ということになりますと雇用した研究者にもお金を払ってやっていただきますよと。それはそれでいいんですけれども、問題はその研究が、さまざまな研究が実施される過程で、例えば遺伝子の問題を扱う部分については大変危険な、何といいましょうか、操作が危険という意味でなくて倫理の問題も含めて危険物質の拡散なんかも考えられるわけであります。あるいは、これは起こり得ないとは限りませんが、いわゆる研究者間のトラブル、こういったことも不測の事態として起こる可能性があるわけです。
そういう意味で、この研究の進行管理あるいは研究者の勤務管理について責任体制はどうされるのかということが、今非常にファジーな形で御答弁されましたけれども、ここをもう一点きちっと御答弁お願いしたいと思います。頼んでいるから、できてしまった、不測の事態は仕方ありません、ごめんなさいで済むのか。私はそうではないと思うんですけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/13
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014・山本徹
○政府委員(山本徹君) ポスドクを含めて、国あるいは国公私立の大学等の研究機関で十名程度のグループを組んでいただいて、三年から六年、平均的には五年程度の研究を、これは少なくない研究費でございますけれども、平均五億程度で実施していただくわけでございますから、先生御指摘のように、この進行について適切な管理をするということは大変重要なことでございます。したがいまして、この研究機関からは研究の報告については随時いただくことにいたしております。
また、生研機構の中に評価委員会というのを設けまして、これは課題の採択をするときは選定の委員会をつくるわけでございますけれども、これと採択された課題が円滑に研究が実施されているかどうかということを、これを十分審査する必要がございます。このために評価委員会を設けることを予定しておりまして、これは選考委員会と同じように非常に高い学識経験あるいは研究実績を持っておられる幅広い分野の方に参画していただくことを予定しておりまして、この委員会で研究の進行をきちんと管理し、進行状況を把握し、適切、円滑に進行されているかどうかを評価し、必要な勧告、例えば方針転換とか、さらに加速するとかというような必要な勧告等を出すことになると思っております。
また、この委員会のいわば事務局といたしまして、生研機構に職員を増員いたしまして、常時進行の管理、事務的なもろもろの掌握、研究の進行状況の掌握に努めることを予定いたしております。
また、倫理の問題とか研究機関のトラブルの問題、これも大変重要なことでございまして、およそ研究者、国民の健全な倫理観のもとに研究を実施していただくということは大変重要なことでございます。したがって、これは課題の選定あるいは進行管理の段階で十分に生研機構として、また委員会としてこれを吟味していただくということを予定いたしております。
それから、トラブルの問題でございますけれども、これ論外のことでございますけれども、もちろんこういうことも想定しておかなければならないわけでございまして、そういった事態が発生した場合には遅滞なくその研究のあり方について見直し、適切な指導をすることを予定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/14
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015・風間昶
○風間昶君 細かい質問で恐縮ですけれども、それじゃその共同研究については、あくまでも成果は共有にするというふうになっておりますけれども、その成果のいわば利用還元について、農業振興の観点からやっぱり適切な対応が必要だと思いますので、研究成果の情報開示はどのようにしてやられるのか、これが一点。
それからもう一点は、今、評価委員会の事務局に生研機構から出すというふうにおっしゃいましたけれども、生研機構の今回の基礎的試験研究の新たな業務ということからしますと、研究の中身から何から含めて管理上複雑化あるいは高度化するわけですけれども、生研機構の人員配置についてはどう考えるのか。
この二点お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/15
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016・山本徹
○政府委員(山本徹君) 研究成果の情報開示でございますけれども、これも基礎研究の研究成果が幅広く国民、特に農林漁業の関係者、研究者等に伝達され、これが実用研究を経て一日も早く農林水産現場で実用化されるということが大変重要でございます。このために研究の成果につきましては、学会の発表はもちろんでございますけれども、報告書やパンフレットの作成、成果発表会の開催等々を通じまして、農業関係者あるいは研究者を含めて国民の皆様方に幅広く情報提供を行ってまいりたいと思っております。
この研究成果は、国の地域農業試験場や県、民間の試験研究機関、あるいは行政機関、普及機関等々一体となってこれを評価して応用開発研究につなげ、実用化されることを期待いたしております。
それから、二点目の人員の配置でございますけれども、生研機構におきまして新しく本事業を円滑に実施するために三名の常勤職員を配置するとともに、実務経験のある者を非常勤でございますけれども嘱託として雇用いたしまして、研究課題の募集とか審査、採択、それから契約はもちろんでございますけれども、先ほど来お話ございましたようなきちんとした進行管理、また研究成果の評価を行うための事務処理、また研究者の勤務管理等を行うことにいたしておりまして、これによって新業務の適正、円滑な実施を期しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/16
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017・風間昶
○風間昶君 それでは、財政業務管理上の点について何点かお尋ねしたいと思います。
従来、生研機構に対してなされた政府出資は産業投資特別会計よりなされておったわけですけれども、今回から一般会計から出資するというふうに明記されておりますが、その最大の理由と意義をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/17
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018・山本徹
○政府委員(山本徹君) 現在の農業情勢にかんがみまして、農林水産業関係者の方々が将来希望を持って農業に取り組めるような明るい展望の持てる基礎研究に取り組んでいくということは、先生先ほど来御指摘のように、むしろ遅過ぎたぐらいの喫緊、緊急な課題でございます。
この課題に国としても適切に対応していく必要がございますけれども、これまでいろいろな研究機関への助成を行っておりました生研機構、これはこれまでは民間の研究機関に対して出資あるいは融資という形で支援をいたしております。これは御指摘のとおり、産業投資特別会計からの出資でございますが、現在の民間の研究支援業務は、基礎研究も含めますけれどもむしろ実用、応用研究が中心でございまして、これによって民間の研究機関も収益が上げられるということが期待できるものでございますから、将来、配当ということも期待できます。このために産業投資特別会計からの出資を仰いでおりましたけれども、今回は基礎研究でございまして、この研究だけでは直ちに実用化につながりがたい研究でございますので、産業投資特別会計よりは一般会計からの出資を仰ぐということが適当であると考えまして、一般会計から十九億円の出資金を活用して、生研機構が基礎的な試験研究を行う仕組みを創設いたしたものでございます。
なお、このような出資金を活用した基礎研究の推進ということは農林水産業にとって大きな課題でございますが、また日本の産業活性化、国民生活の質的な向上、あるいは国民の雇用の創出等々のためにも重要な課題であるということから、科学技術庁等を含めまして六省庁が平成八年度予算に出資金を活用した基礎研究の事業の予算をお願いいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/18
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019・風間昶
○風間昶君 今ちょっとお話があったように、要するに実用化にすぐつながりづらいということでありますから、リスクが非常に大きい、あるいはまた研究成果の活用がある期間は見込めないとしたとしても、農業分野への応用を前提としている以上、将来的に収益性があるんじゃないかと、こういう研究になってもらいたいわけでありますけれども、もしそういうふうになった場合に一般会計への利益繰り入ればどうされるのか、それが一点です。どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/19
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020・山本徹
○政府委員(山本徹君) この事業は、御指摘のとおり農林水産関係、食品関係の基礎的な試験研究を実施するものでございまして、この成果は直ちに収益に結びつく性格のものでは必ずしもございません。
仮に、この事業の成果として特許料収入等が得られた場合、特許料収入等は期待できるわけでございますけれども、これは現在、生研機構法の三十六条に基づきまして生研機構の積立金として整理しなければならないこととされております。これは生研機構の財政基盤を安定させるというふうな趣旨、意味の規定でございますけれども、したがって本事業により生じた収益を国の一般会計に繰り入れるということは予定されておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/20
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021・風間昶
○風間昶君 わかりました。税金として還元するというふうに理解していいわけですね。
それでは、生研機構法の五条では民間からも出資することができるというふうになっていますよね。「資本金は、その設立に際し政府及び政府以外の者が出資する金額」となっていますから、つまり民間からも出資が可能だということを前提にこの法律がつくられているわけですけれども、現実的には民間から出資があるのか。
もう一点、出資があった場合に出資者への払い戻しは不可だということが六条で言われております。しかし七条で、「その持分を譲り渡すことができる。」というふうになっておりますが、出資があった場合に、この譲渡した目に見えない持ち分の権利が外からわかるように、また七条二項では出資者原簿の書きかえというふうになっているわけですが、しかし規制緩和の観点からいいますと、この手続はやっぱり簡素化するべきではないかというふうに私は思うんです。例えば、有価証券化なんかについてはどう考えるのか。この二点。
現実に民間からの出資はあるのかどうか。あるいはもう一点は、出資があった場合に外から見えるような形での、出資者原簿の書きかえがありますけれども、規制緩和の点からいうと、こんな手続、面倒くさいことをしないで、例えば有価証券化を利用するというふうなことはできないのかどうか。この二点をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/21
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022・山本徹
○政府委員(山本徹君) 第一点の、民間からの出資の件でございますけれども、先生御指摘のとおり、第五条で主務大臣の認可のもとにこの基礎研究の制度の趣旨に賛同する政府以外の方からの資金を受け入れる道を開いているところでございます。しかしながら、この出資の持ち分に対して配当請求権がないこととか償還の請求権がないこと、これは解散時には残余財産の分配請求権がございますけれども、そういう業務が継続している過程での利益還元の規定はございませんし、また業務運営に対してこの出資者が一定の発言をする権利もございません。そういったこともございますので、こういった出資も期待いたしたいところでございますけれども、実際に民間から現在直ちに出資があるかどうかについては明らかではございません。
それから、規制緩和の観点からこの出資の譲渡について、これは原簿の書きかえではなくて有価証券化すべきではないかという御指摘でございます。これは大変興味ある御提案でございまして、私どもも民間の資金を活用してこういった基礎研究ができれば大変よろしいわけでございますけれども、基礎研究に限りましては収益が十分期待できないということから、やはり税金を中心に行わざるを得ないであろうと思っております。しかしながら、こういった民間の出資については、私どもこれが適切なものであれば、これは主務大臣の認可制にかからしめておりますので大変歓迎するところではございます。これの有価証券化の点でございますけれども、現在の規定では出資者の持ち分の譲渡、移転は可能でございますけれども、これは出資者原簿の記載の変更を必要としております。これは出資者の権利の保護のために必要な最小限の規定、手続でございまして、生研機構、出資者とも現在の出資の状況あるいは予想等では大きな事務の負担になるものではないと考えております。
出資について有価証券化するということは、これも非常に多数の出資者から大口に出資されるというような事態になれば大変これも現実的に興味ある御提案でございますけれども、先ほど申し上げましたように、生研機構の財政基盤を維持するという観点から、払い戻しや配当が禁止されておりまして、運営に対する参加権もないということから、現在のところは有価証券化する実益は必ずしも大きくないんではないかと思っております。
仮に有価証券化した場合でも、出資者の持ち分の譲渡がありました場合は有価証券自体の名義変更の手続、あるいはさらに出資原簿の書きかえというのは、これは出資者の権利を保護し取引を安定化させる観点から必要であると思っておりまして、したがって、この点については当面は現在のような仕組みで取り組んでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/22
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023・風間昶
○風間昶君 わかりました。ここはもうちょっとこっちも精査してまた後からお伺いしますので、よろしくお願いいたします。
次に、この研究成果が将来商業的に採算がとれる見込みがある場合には、どんどんやっぱり企業化するなり払い下げなんかも含めてやるべきだと思うんですね。
そういう意味で、六十一年につくられた民間研究促進業務というところに実用化していく可能性はあるんではないかというふうに思います。今までの民間研究促進業務、それから農業機械化促進業務、それから新しく昨年でしたか、研究開発業務、それぞれの損益計算書を見させていただいておりますけれども、この業務勘定の収支が書類上とんとんになっているわけですけれども、これはちょっと私は問題があるんでないかなというふうに思うわけです。
つまり、これからの新しい基礎的試験研究で一つの研究業務をやるとなると、どの研究が一体プラスになっているのか、あるいはマイナスになっているのか、全然わからないわけですね、これを見ますと。そういう意味では、各業務勘定の収支状況を業務勘定ごとではなくてプロジェクトごとに、研究ごとに私はしっかりとしていくべきではないかというふうに、これからまさに基礎的試験研究と民間研究、応用部分とのリンクを考えると思うわけです。
余りもう時間ありませんから、きょうはこのぐらいにしておきますけれども、業務勘定の収支状況を民間、農業機械化、研究開発、どのぐらいかかっているのか、成果がどのぐらい出ているのか、具体例を含めて簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/23
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024・山本徹
○政府委員(山本徹君) 生研機構で実施しております先生御指摘のような各事業、それぞれ民間研究につきましては十二億円余、それから農業機械化につきましては二十五億円余、それから研究開発については九億円余で実施しております。
これは、民間で取り組んで収益を上げがたいような基礎的な研究あるいは先導的な研究に取り組むということで、政府の出資、補助等を仰いで実施しているものでございますので、必ずしも投資に見合った利益が十分に上がるという性格のものではございませんけれども、これを実用化に移し、広く農林漁業者の農業経営に役立てていただこうというものでございます。このために、それぞれ損益計算書をごらんいただくと確かにそれだけではわかりにくいわけでございますけれども、毎年の研究成果につきましては広く農業関係者、研究者等に紹介するための報告書を公表させていただいております。
幾つか最近の具体的な研究成果で言いますと、民間ではここ二、三年の期間に実用化されたものを申し上げますと、近赤外線を用いた果物の糖・酸度等を評価する非破壊検査技術とか、それから農業機械で言いますと、稲、麦、大豆等に共通して利用できる大型汎用コンバイン、これはもう既に市販されております、等々がございます。また、間もなく実用化されることが期待される研究として、民間研究ではバイテクによる醸造用米の生産とか、サルモネラ菌の感染を防ぐ家畜用の免疫製剤、また機械化促進業務では田植え、防除それから追肥を同時に行える汎用水田管理機械とか、キャベツ等の野菜の収穫機、これはこれまで機械化が困難でございましたけれども、こういったもの。それから、手作業の三倍の速度で接ぎ木ができる野菜の接ぎ木機械等の開発がございます。
先生御指摘のとおり、こういった生研機構のいろいろな研究成果というのは農林漁業の現場に実用化してもらうというのが一番大事なことでございますので、御指摘のとおり、このためにわかりやすい研究成果の公表と、また出融資等を通じた実用化には一層の努力をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/24
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025・風間昶
○風間昶君 大臣、かなり技術的な議論で恐縮でありますけれども、我が国農林水産業及び農村、山村、漁村が抱える困難な状況を早急に打開するために、バイオテクノロジーの安全性や倫理面での十分な配慮のもとに今回の基礎的試験研究の強化ということが法案としてあるわけでありますから、研究開発をさらに進めていくべきで、今の議論を踏まえて、大臣、一言御見解をお聞きして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/25
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026・大原一三
○国務大臣(大原一三君) 風間委員の法案の細部にわたってのいろいろの御指摘、拝聴させていただきました。
これまでも農業関係の試験研究機関はいろいろありまして、生産性の向上等に尽くしてきたことは事実でございますけれども、何と申しましても基礎的研究の立ちおくれ、農業だけじゃなくて日本の試験研究に共通する問題点でございまして、委員、当初の導入部門で遅きに失したではないかという御指摘もございましたけれども、ようやく予算化を見まして、新しい角度からバイオ等の基礎研究を強化していく喫緊の課題に前向きで取り組むことができるようになったのではないかと思います。
各般にわたって御指摘のございました点に、十分我々も配慮しながら新しい制度の活用になお一層努めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/26
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027・風間昶
○風間昶君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/27
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028・常田享詳
○常田享詳君 平成会の常田享詳でございます。
まず最初に、生研機構法の一部改正に関する法律案についてお尋ねをしたいと思います。
このことにつきましては、昨年十一月、超党派の議員立法で科学技術創造立国を目指す科学技術基本法を制定したところでありまして、先ほど来遅きに失したという議論もございますけれども、それを踏まえて考えたときにはまことに時宜を得た取り組みではないかと評価をするものであります。
そう考えておりましたところ、一昨日の朝日新聞に、東京工業大学の橋爪教授が、「二十一世紀への提言」ということで、この科学技術創造立国について幾つかの提言をなさっておられます。それを要点だけ申し上げますと、アメリカに比べまして日本の研究費の総額は約二分の一ということでありますけれども、成果はアメリカの十分の一にも満たないということでありまして、まことに日本の研究は効率が悪過ぎるということであります。研究費を有効に生かすためには、公正な競争、すぐれた研究が報われるような評価システムが必要だという御指摘であります。あわせて、研究者にやる気を起こさせるようなアカデミックマネジメントのプロを育てる、そういったやる気を起こさせる施策が必要だと。最後に、日本人だけでいわゆるたこつぼにこもって研究するのではなくて、外国の研究者等とも一緒になって創造的な研究をさせる、いわゆる研究ポストをオープン化するなどのことをしなければ、日本の科学技術の発展はあり得ないということをおっしゃっておられます。
そういうことを踏まえまして何点かお尋ねをしたいと思います。
最初に、今回の制度は、先ほど来出ておりますように、バイオテクノロジーを中心とした基礎研究を強化するものでありますけれども、現場からはバイオテクノロジーの早期の実用化が求められているわけであります。バイオテクノロジーの研究開発の現状はどのようなものになっているのか。そして、実用化の目途はどうなのかお尋ねをいたします。
あわせて二点目に、農林水産分野の研究は、地域の自然、立地条件に即して地域の大学、県等においても幅広く実施されているわけであります。
今回の制度は、中央の大学や研究機関に隔たることなく、このような地域において行われる独創的な基礎研究も対象にすべきだと考えますが、いかがでありましょうか。
次に、今回の制度による研究についても早期に実用的な技術の開発につなげる、中山間地域等、地域振興に役立てることが重要であると考えます。そのための研究成果の普及にどのように対応していかれるのかお尋ねをいたします。
例えば、先般、代表質問でも取り上げさせていただきましたけれども、複合的なキノコの栽培等、特用林産物を経営に定着させるために地域における研究が重要でありますが、そのような実用的な技術の開発について農林水産省としてもしっかり取り組む必要があると考えますが、お考えを伺いたいと思います。
まず、この四点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/28
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029・山本徹
○政府委員(山本徹君) まず、第一点のバイオテクノロジーの研究の現状と実用化の見通しでございますけれども、バイオテクノロジーの研究の現状につきましては、まず細胞レベルと遺伝子レベルに分けた場合に、細胞レベルについては実用化の段階に達しております。
具体的には、植物で申し上げますと、イチゴの苗の六割は合成長点培養というバイテクの一種の技術で非常に品質のいいものが均質な苗として生産されておりますけれども、そういった成長点培養による園芸作物の苗の生産が実用化されております。また畜産では、受精卵移植技術が実用化されております。水産では、養殖の稚魚を圧力をかける等の処理によりましてすべて雌の稚魚をつくるとか、あるいは三倍体の稚魚をつくるということによって品質のいい養殖魚の生産に役立てております。それから加工食品等では、冷凍耐性のパンの酵母、冷凍しても生きているパンの酵母の開発に成功いたしまして、パンがどこでも手軽に焼けるようになっております。
こういった細胞レベルでは既に実用化されたものがたくさんございますけれども、今後実用化が見込まれるものの例としては、これは遺伝子組みかえ技術等が中心でございますけれども、日持ち性等を改良したバイテクによって生産された野菜や花の生産、これは三年後ぐらいに実用化されると見られております。それから、牛の肉質を早期に遺伝子で判定する、子牛の段階以前で判定する技術、これは五年程度の将来と見通されております。それから、バイオセンサーによる食品の鮮度、熟成度の判定技術、これは三年後ぐらいに実用化されると見られておりまして、特に遺伝子組みかえ関係については立ちおくれておりますので、私どもこういった技術の開発、実用化に今力を入れております。
それから、地域に即した研究は大変重要でございまして、農林水産は地域の自然条件の制約のもとにその自然条件を生かしながら行われるものでございます。したがって、地域の大学、都道府県あるいは地域の民間の試験研究機関等からも今回のお願いいたしております生研機構の基礎研究に積極的に応募していただくことを期待いたしておりまして、またその選定の基準としても、地域の農林水産業の振興に役立つかどうかというものを今回の選定の基準の一つにいたしております。
それから、中山間の振興のための実用的な研究でございますけれども、今回の生研機構の研究課題として応募されることが期待されるテーマを例示いたしておりますが、その一つの例示として老化とか成人病、がんを抑制する効果がキノコにはあると言われております。そういった成分を特定いたしまして、そういった成分を大量に含んだキノコ類をバイオテクノロジー等によって開発、改良できれば、これは中山間の活性化に大変有益でございますし、また野草類からのいろいろな薬用物質等の人間の健康に有益な有用物質の特定とかあるいは大量な生産、あるいは山菜等の品種改良とかあるいは大量生産技術の開発等々、中山間地域の振興に役立つ研究が今回の生研機構の事業に申請されることを期待いたしております。
また、国の研究機関あるいは都道府県の研究機関も連携をとりながら、こういったテーマも含めて中山間地域の活性化に役立つような研究開発に取り組んでおりますけれども、今回の基礎研究でも応用開発研究に生研機構の出融資等を利用して実用化していただいて、中山間地域の振興に役立つことを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/29
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030・常田享詳
○常田享詳君 時間が余りありませんので、農林水産大臣に質問しようと思いましたけれども、お願いをしておきます。
我が国農林水産業及び農山漁村が抱える困難な状況を早急に打開するためには、本制度による基礎研究の強化も含めて、農林水産分野の研究開発をさらに強化すべきであると考えております。どうか大臣におかれましてはその方向でさらに一層力を注いでいただきますようお願いいたします。
時間がありませんので、この際ちょっとお尋ねをしておきたいことがございます。
実は、この休みに地元に帰りましたところ、今我が県では大変な騒ぎになっております。それは、いわゆる中海・宍道湖干拓淡水化事業についてのことであります。このことにつきまして大蔵大臣、環境庁長官、そして先般二十六日には大原農林水産大臣がそれぞれ記者会見等で発表されたわけでありますけれども、この事業につきまして今後どのように進めようとしておられるのか。
島根県知事は、中海干拓事業の本庄工区については最終的に全面農地として事業を再開することを表明しているわけでありますけれども、農水省としては、現在のような減反政策が進められ、農業後継者も不足しており、干陸しても高い農地に入植する人が果たしているのかというような農業を取り巻く厳しい環境の中にあって、どう受けとめて進めようとしておられるのか。
二点目に、中海干拓事業本庄工区の取り扱いについて、今度検討すべき課題としてはどのようなものがあるのか。またこの課題についてどのように進めようとしておられるのか。
例えば、私が県議会におりましたときにも問題になったのでありますが、もし仮にこの事業が中止をされるというようなことになった場合には、地方公共団体にその負担をしてもらわなきゃ困るというようなことが過去言われておりました。ところが先般、構造改善局の方の談話では、法的根拠がなく、その場合には国と県の協議によってやることだというふうについ先日述べておられます。どちらが本当のことなのか、明らかにしていただきたいと思います。
島根県が実施した中海の水質予測についてでありますけれども、これに対して環境庁から大変厳しい指摘が出ております。環境庁長官は二十六日の参議院環境特別委員会で、いわゆる湖沼法に基づく水質の追加調査を申し入れたと、そしてこの追加調査の結果が出ない限りこの結論を出すべきではないということを述べておられますが、このことについてどのように農水省として受けとめておられるのか。
そして、大原農林水産大臣は二十六日の閣議後の記者会見で、概算要求の八月までに干陸するかしないかを決めるけれども、環境問題があるようで、地元が反対している工事はできない、もう少し地元で調整してもらわなければならないと述べておられます。
これは、九年度の概算要求の八月までには決めるけれども、環境問題があるので、また地元で反対があるのでということなんですが、この環境庁長官の発言とも合わせてみますと、概算要求の八月までに結論を出すなんということはできないんじゃないでしょうか。このあたり、どちらが農林水産大臣の本当のお気持ちなのか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/30
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031・野中和雄
○政府委員(野中和雄君) 中海干拓事業の本庄工区についての幾つかのお尋ねでございます。
この中海干拓事業の本庄工区は御承知のとおりでございますが、平成四年に島根県知事と中国四国農政局長との協議に基づきましてその取り扱いについて島根県で検討されて、その結果を踏まえて今後の事業の進め方について結論を得べく両者で協議をすることとされまして、その間の五年間、農林省としては工事を延期しているところでございます。
これを受けまして、先生お話しのとおり、本年三月二十八日に島根県知事は県議会あるいは関係の市及び町の同意も得られまして、本庄工区を全面干拓し農業利用を図るということで平成九年度より工事、これは必要な調査を含むということでございますが、を再開いたしたいということの判断を示しまして、中国四国農政局長にその旨の要請がなされたところでございます。
したがいまして、農林省、この問題についてどうするのかということでございますが、農林水産省といたしましては、平成四年の島根県知事と中国四国農政局長との協議を尊重いたしまして、現在、島根県知事からの要請の内容を十分に検討をし、協議を始めたところでございまして、この協議をする中で今後本庄工区の事業の進め方につきまして結論を得ていきたいというふうに考えているわけでございます。
これにつきましてどのような検討課題があるのかという二点目のお尋ねでございます。今後検討すべき課題といたしましては、当然この本庄工区の土地利用計画あるいは営農計画等がございますが、これにあわせまして、また県知事さんから要請に際しまして留意すべき事項として挙げられております地下水対策の問題あるいは治水・防災対策、水質・環境保全対策などといったような課題が考えられるわけでございまして、これらにつきまして両者で協議を開始したところでございますので、精力的かつ慎重に調査、検討を進めてまいりたいと思っております。
三番目の環境庁の指摘についてのお尋ねでございますが、この中海は湖沼水質保全特別措置法に規定をいたします指定湖沼でございます。こういうことから、環境庁として、島根県が行われました水質予測シミュレーションの内容等を聞き取りまして指導をされたものというふうに承知をいたしております。
この環境庁からの指摘につきましては、島根県におかれまして平成八年度で調査及び検討を行うということにされているわけでございまして、農林水産省といたしましてもこの水質に関する調査ということは必要であるというふうに考えます。
この島根県の調査、検討も十分踏まえまして、今後の事業の進め方等について検討をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
中止をした場合にどうかというようなお尋ねがございましたが、現在この事業の進め方について協議をしているわけでございますので、仮定の問題のお答えはなかなか難しいわけでございますが、事業が廃止される場合の取り扱いというようなことにつきましては、土地改良法には特段その定めがないわけでございまして、仮にそういうことになれば今後関係機関といろいろ協議をしまして、既に投資をされた額に対する今後の負担の取り扱い等々を決定していくということになると考えております。
今後の検討の時期で、八月末でどうするのかというようなことでございますが、私ども農林水産省といたしましても、現在この事業の進め方についてまさに協議をしているところでございまして、この中で水質に関する問題につきましては地元からもいろいろ御指摘もございますし、十分調査を行う必要があるというふうに考えているわけでございます。
したがいまして、この水質調査に関する検討事項等につきましても、島根県の方で調査をされると言っておりますが、これらの対処の方針あるいはこれに基づきます検討状況を聴取いたしまして慎重に検討をしていくわけでございますが、八月までというふうに申し上げておりますのは、平成九年度予算の概算要求の期限が八月末でございますので、その時期には平成九年度の要求内容を判断しなければならない、こういうことでございます。したがいまして、その時期までにおける県あるいは関係市町からの要望事項等についての検討状況も考慮に入れまして、平成九年度におきまして当省といたしましての要求内容をこの時期に決めるというようなことを申し上げているわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/31
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032・常田享詳
○常田享詳君 もう時間が過ぎましたので、要望で終わらせていただきます。
改めて委員会で聞かせていただきたいと思いますが、この問題は食糧の問題と環境の問題という大きなテーマを二つ抱えた大変悩ましい問題だと思うんですけれども、私はやはり後世に悔いを残さないためにも、大局的な見地に立って慎重に判断すべき問題だというふうに思っております。
特に、環境調査の手抜きをすることのないように、きちんとそういった点を十分やった上で判断をしていただきたいということを大臣にお願いを申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/32
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033・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、浦田勝君が委員を辞任され、その補欠として林芳正君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/33
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034・谷本巍
○谷本巍君 遺伝子の組みかえで制がん効果の高い作物をつくるとか、人間への臓器移植が可能な家畜をつくるとか、車などの排気ガスの吸収度の高い生物をつくることができるといった夢のようなことが語られております。
確かにそういう一面があるのでありますが、遺伝子の組みかえ問題は多くの問題点があるのもこれまた事実であります。
例えば、二、三年前に昭和電工が遺伝子組みかえ体利用で開発した健康食品がアメリカで売られた際、三十八人の死者を含む一千五百人にも上る被害者を出したという例があります。また、作物になかった遺伝子導入で未知のものが生み出され、毒性というところまでいかぬにしてもアレルギーを引き起こす場合というのは非常に多いといったようなことも専門家の皆さんから指摘がされておるところであります。そのほか、殺虫効果のある成分をつくる遺伝子操作で害虫でなくミミズを殺してしまったといったような話等も私ども聞いてまいりました。それだけに、遺伝子組みかえ問題については、市民運動の側などからはやめるべきであるといった考え方も示されておるところであります。
しかし、そうかといって研究開発をやりませんと日本よりもはるかに進んでおります欧米にさらにおくれをとり、技術の面で逆に支配を受けるといったような状況が生まれてくるわけでありますから、積極的な取り組みが必要であります。問題は、生研機構のもとで安心、安全がどう確保されるかというところに問題があるのではないかと思います。
初めに伺いたいと思いますのは、審査員の構成については先ほど風間委員からの質問でお答えがありましたので、直接の利害関係者である生産者、つまり農家、それから消費者などがこれらの技術開発問題等に絡んで発言し得る場面というのを設定することができないのかどうか。最近のエイズ問題の例などを見てみますと、専門家だけでやっていくということは、大変結構なことでありますけれども、ああいう問題を引き起こす可能性だってあるわけでありますから、そういう意味で、その点そういう運用を考えることができないかということについてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/34
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035・山本徹
○政府委員(山本徹君) 先生御指摘のとおり、国民の視点に立った安全な研究であるということは大変重要なことでございます。
今回の生研機構の研究課題の公募の審査に当たりましても、これは現在すぐれた学識経験と研究実績を持った農学、医学等々の専門分野の研究者から構成することに予定いたしております。これは研究自体の審査というのが大変専門にわたる分野でございますので、これはやむを得ないことかと思っておりますけれども、先生御指摘のとおり安全あるいは安心という視点、これは研究に常に欠かすことのできない課題でございますので、研究課題の選定や、またそれ以降の研究の評価あるいは成果の公表等々の段階で十分にこういった視点を踏まえてこの研究が実施され、これは基礎研究でございますので、さらに実用化を経て具体的に農林漁業者が生産に役立てていただくということになります。
こういった研究の全段階を踏まえて、安全、安心といった点を踏まえてこれを審査、評価するように十分私ども生研機構あるいは審査委員の皆様方にもお願いしてまいりたいと思っております。
また、これは私ども国の研究機関としても十分肝に銘ずるべき点でありますので、先生御指摘の点、研究活動の面において十分に念頭に置くということを肝に銘じてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/35
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036・谷本巍
○谷本巍君 審査委員会というのは高度な専門分野の判断が必要であって、この種の技術開発というのはこれは秘密を守らなきゃならぬという問題がありますから、そこへ入れてほしいということを私は申し上げておるのではないんです。
例えば、この研究の責任主体になってくるのが生研機構でありますから、理事会ということになりますよね。生研機構の中には、もう一つ評議員会というのがありましたね。評議員会の運用などで、何といいましょうか、これはチェック機能を働かせるというのでしょうか、そういう運用というのを考えることはできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/36
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037・山本徹
○政府委員(山本徹君) 評議員や理事の方には農林水産関係の方もいらっしゃいますので、いわば専門の研究者以外の方もいらっしゃいますので、先生御指摘のとおり、そういった評議員会あるいは理事会等を通じて十分に安全、安心といった視点からの適切な業務運営が行われるように指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/37
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038・谷本巍
○谷本巍君 それから、もう一つ遺伝子組みかえ問題でお尋ねしておかなきゃならぬのが、どういう品種が開発されたかということにもよってくるのでありますけれども、農業生産の主体は御存じのように農家であります。ところが、研究成果は生研機構と開発当事者でもって共有するということになっておるのでありますが、その運用いかんによっては開発された技術というのが企業に移ってしまうということがあり得るのではないだろうか。そういう状況になった場合、例えば企業が独占的にそれを掌握した場合に、国内の生産は打ち切ってもっと労働力の安い外国でやっていこうというようなことだって企業がやらないことはないわけですよね。つまり、企業の意のままになっていくといったような問題が出てくる可能性が私はあり得ると見ておかなきゃならぬと思うのです。
でありますから、種子支配による農家支配、生産まで企業が支配するといったような状況が起こらぬようにしていくことが大事なのではないか。
特に環境保全型農業、これをこれから伸ばしていかなきゃならぬという観点に立うた場合は、そのことの持つ意味というのは非常に私は大きいと思うのです。つまり、社会的に公正に生かされていく必要があり、そのためのきちんとした措置をとることができないのかどうか、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/38
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039・山本徹
○政府委員(山本徹君) 先生御指摘のとおり、研究の成果が特定の事業者に独占されて、農林漁業が独占支配されるということは私どもも回避しなければならないと思っております。このために、むしろ生研機構が積極的に、公的機関が中心となってこの事業をやるという意味はあると思っております。
この事業による研究成果につきましては、実用化のための研究に迅速、円滑に引き継がれて農業現場に実用化されることが期待されるわけでございますので、研究成果については幅広く学会への発表はもとよりでございますけれども、報告書、パンフレットあるいは農林漁業者等への発表会等を通じて広く情報提供を行うことにいたしております。また、得られました特許権等の知的所有権の行使でございますけれども、これは生研機構が研究の相手機関、研究を実際に実施した機関と共有するとともに、国民一般に幅広く実施を許諾するということを契約上明らかにしたいと思っております。
したがって、ある特定の企業が専ら独占して行使することのないように、これを適正な対価で、利用したいと思われる事業者には幅広く公開し利用していただくということを契約上明らかにしておきたいと思っております。これを通じて農林漁業者に役に立つ研究の実用化を図ってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/39
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040・谷本巍
○谷本巍君 一テーマ当たりの研究期間というのがたしか三ないし六年と伺っていた記憶があるのでありますけれども、その中間で必ず中間評価をやるべきではないかと思います。つまり、計画に対してその経過はどうだったのか。計画どおりの結果が出てこない場合がよくあるんですよね。中間的に出てきた成果について、今度はもう一つ新しい課題をセットしていく、その研究を継続していくという場合だってあるわけでありますから、そういう意味で中間評価というのは必ずやるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
また、その際の評価の物差し、それから評価の方法はどうなのかということについてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/40
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041・山本徹
○政府委員(山本徹君) 研究活動というのは必ずしもすべて所期の成果が得られるものでないということはやむを得ない面がございますけれども、それにしても貴重な国民の税金を使って実施する研究でございますので、極力すぐれた成果が出るような課題を選定し、また適切な進行管理をする必要がございます。
このために、中間段階で適切な評価をすることを目的に、生研機構内にすぐれた見識と豊富な研究実績を持っておられる研究者等から成る評価委員会を設けまして、毎年度研究の評価をし、また研究の終了段階でも最終評価を行うことにいたしております。
その具体的な物差しといたしましては、研究目標に照らして成果がどの程度達成されたか、成果の達成度。それから、農林水産業の振興や国民生活の向上にどの程度貢献すると期待されるかという貢献の可能性、期待度。それから、場合によっては当初予期しなかったようなすぐれた成果というものも期待できるわけでございまして、そういった成果が生まれたかどうか。あるいは今後この研究を発展させる可能性があるかどうか等について、十分な評価を行ってもらうようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/41
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042・谷本巍
○谷本巍君 この改正案を見てみますというと、行政は法律をつくって、実行の方は生研機構にほぼ一任というような印象を私は持つのであります。どんなものを開発するかで、農政のあり方あるいは農業のあり方だって大きく変わる場合があるんですね。遺伝子開発で新しい品種のものをどんどん開発していくようになったら農業生産を企業化することもできますよと、そういう意味なども含めて、農地法などはもう撤廃してしまった方がいいんだといったような発言だって財界筋からこれまでにもあったところであります。
ともかくも、国民の税金をつぎ込んでこの仕事をやるわけでありますし、しかもこの仕事というのは夢のようなことが実現されるということの反面、かなりの危険性を伴う場合があり得ると。しかも五年や十年で潜在する危険を確実に予知できるほど生態系は単純ではありません。
こうして見てみますと、公的機関ではあるが生研機構任せ、そして政府の方は無責任であっていいという関係には私はならぬと思うんです。やっぱり行政がきちんと責任を持って指導できるような仕組みがあってしかるべきではないか。研究活動それ自身は自由にやれるようなやり方であってほしいと思うが、全体のコントロールというのはやはり政府の責任でやっていくべきではないかと思うのだが、その点いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/42
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043・山本徹
○政府委員(山本徹君) 先生御指摘のとおり、今回の研究は国民の税金を投入して、かつ当面の喫緊の農政の課題でございます農林水産業の体質強化、あるいは農山漁村の活性化のための農林水産物の需要の拡大あるいは新事業の創出、新産業の育成等のための基礎研究を実施することといたしておるものでございます。
したがって、行政もこれの実行については責任を持って生研機構を指導監督しなければならないと考えております。もちろん、研究活動自体は研究者ができるだけ自由な環境のもとにその創造力を発揮していただくということは必要でございますけれども、この事業の適切な実施が図られるよう私どもも万全を期したいと考えておりまして、具体的には、基本的な業務運営については大臣の認可制となっております。事業計画、資金計画、あるいは業務方法書、財務諸表等は認可制になっておりますし、また、農林水産省は生研機構の行う研究業務等につきまして必要な指導、監督、命令、立入検査等を行うことができる規定がございます。
したがって、これらの規定に基づき、十分な指導監督を行いますとともに、また、日常の業務運営に当たっても十分な生研機構との連絡、協調、意見交換等を行いながら、この研究が農政に本当に役立つような研究として展開されることを私ども十分にこれから指導してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/43
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044・谷本巍
○谷本巍君 その点、特に強くお願いを申し上げたいと思います。
最後に大臣に、財政措置の問題について考え方と決意のほどを表明していただきたいのであります。
日本の場合、工業の世界でもそうですね、応用技術から製品技術になってくると立派なのでありますが、基礎的技術はまるでだめ、農業の方はもっとおくれておるというような状況でありますから、この法改正を契機に、やっぱり先進国を追いつき追い越していくというようなことが大きな課題になってくると思います。
問題は、基礎的技術でありますから時間もかかりますし、開発研究と違いストレートに利益と結びつかぬ場合が多いといったような点がありますから、民間投資は余り期待できないでしょう。ともかくも経済成長の時代にすら日本の資本はそういうことについて余り投資をしなかった。今は高度成長の時代じゃないのでありますから、政府がかなり力を入れなければ成功していかないという可能性が私は多いと思います。
ともかくも、これまでの審議の中でも明らかにされましたように人はおるわけであります。自然科学系の大学院のドクターが三千七百人という数字を伺っておりますけれども、相当たくさんおる。そして、若い力と既存の大学や既存の研究機関とをうまく結びつけて活性化した体制で研究活動をやっていけば、ともかくも一定の成果は得られるであろう。
問題は金ですよ。基礎研究の根っこのところを外国に押さえられてしまったら、日本の農業には未来はないわけであります。基礎研究のおくれを取り戻し、そして日本の環境保全型農業の展望を開いていくためにも、財政確保についての大臣の決意を表明していただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/44
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045・大原一三
○国務大臣(大原一三君) 委員るる御指摘のように、先進農業圏からバイオの農産物が入ってくるという事態もこれからだんだん多くなってくるだろうと思うんですね。そういったものをチェックする意味合いからも、この遺伝子組みかえに対する対応というのは非常に急がれておるという課題も一方であります。
また同時に、委員御指摘のように、土地条件の劣悪な我が国の農業を未来への展望を開くためには、やはり遺伝子組みかえによる生産性の拡大、自給率の拡大、どうしても日本の農業にとっては欠かせない基本的な課題の一つであろうと認識いたしております。そういう意味で、将来の農業展望の中で夢の技術でありますこの問題を早急に我々のものにする必要があると認識をいたしております。
改めて今年度予算で若干の予算が確保できたわけでございますが、委員御指摘のように、これからの課題でありますし、これを出発点といたしまして財政資金の獲得にはさらになお一層の努力をしていかなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/45
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046・谷本巍
○谷本巍君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/46
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047・須藤美也子
○須藤美也子君 質問前に、大変恐れ入りますけれども、私の限られた時間は十五分であります。
答弁はなるべくわかりやすく簡潔にお願いをいたしたいと思います。
農水省では、今後十年間を見通して新たな農林水産研究の基本目標を策定しようとしておりますが、農産物の総自由化路線の中で、国民に安全で安定的に食糧を供給するために、食糧自給率の向上に向けた課題にどのように取り組もうとしているのか、その点をまずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/47
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048・山本徹
○政府委員(山本徹君) 最近の農林水産業を取り巻く状況に対応して、私ども農林水産研究の基本目標というものを策定する作業を進めております。この中で、我が国における農林水産業の体質の強化を図り、また国内農林水産業の生産を維持拡大するということは農政の最重要課題であると考えております。
研究目標の中においても、まだ検討中でございますけれども、こういった考え方に立って、稲作について機械化直播の実用化、あるいは優良肉牛の大量生産のための受精卵移植の高度化あるいは果樹、野菜の管理・収穫作業の機械化。それから、良質、多収品種の育成等、生産現場に直結した技術の開発。それからもう一方では、バイオテクノロジー等これからの農林水産技術の飛躍的な高度化のための基礎的研究の推進を図るということを目標の中に掲げることを検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/48
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049・須藤美也子
○須藤美也子君 日本は先進国の中で食糧の自給率が最低ですね。カロリーベースでは四六%。これも去年ようやくお米が豊作で、一二〇%で四六%です。穀物では三三%。三〇%台の国というのは、砂漠の国か氷の国か日本の国しかない。ここまで深刻になっている食糧の自給率を向上させる、少なくとも七〇年代の前半の六〇%まで回復させる、これは緊急の課題ではないでしょうか。
私は、その問題について本当に本気になって取り組む姿勢を示していただきたい、このように強く要求をいたします。
次に、生研機構法律案の説明の中に「特に目立つのは、農林水産分野の基礎・応用研究における民間の占める割合の低さ」とあります。
その理由に、生物相手の研究が中心で未解明の部分が多く、リスクや費用負担が大きく、企業化まで長期間かかる。だから、ほかの分野では民間企業がどんどん入ってきておりますが、農業分野ではそういう成果がなかなか成果として出てこない。そうした中で、国や公立試験研究機関が主要な役割を果たし、国公立研究機関の蓄積は指導的役割を果たしてきたと、このように評価しています。
しかし、一方で、この大きな役割を果たしてきた国公立試験研究機関の現状はまことにお粗末だと思います。私の兄も、個人的なことを申し上げて大変恐縮ですが、山大農学部の教授をしております。この生活を見ますと、例えば学会に行くにしても自腹を切って行っているんです。研究室の研究資材は牛乳瓶でやっています。
そういう中で、国立研究機関の経常研究費は年間で、実験系がわずか百三十七万五千円。この中から光熱費あるいは庁舎管理費などが差し引かれて、実際、実験用として使用できる研究費というのは五十万か六十万程度。さらに、この中からパートを雇用します。このパートの費用もその中から出さなくちゃならない。としますと、大体この農学部では使われる資材費、その実験費は三十万から四十万、こういう実態であります。
こんな状況で研究目標を果たすことができるでしょうか。答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/49
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050・山本徹
○政府委員(山本徹君) ただいま先生御指摘になりました百三十七万五千円、これはいわゆる国の研究機関の経常研究費でございます。
この経常研究費は、科学技術庁が示します科学技術に関する経費の見積り方針の調整の基本方針というものに則して計上しておりまして、できるだけ研究の円滑な推進に支障を来さないようにその確保に努めてきたところでございます。
今の百三十七万五千円は、平成八年度の予算単価でございますけれども、前年度の平成七年度は百三十六万でございまして、一万五千円の増額となっております。それから、これは経常研究費ということで、新しく国の研究機関に採用になって入所した研究者も含めてすべての研究者一人当たりの単価ということで行くことになっております。
また、このほかに平成八年度では、さまざまな重要な研究課題をプロジェクト研究として予算要求しておりまして、品種改良とか栽培技術等々も含めて平成八年度の農林水産関係の科学技術振興費は前年度比五・二%増の八百十億余、それから特に事業費、研究費でございますけれども、研究費につきましては前年度比一〇・四%増の三百六十七億余を計上させていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/50
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051・須藤美也子
○須藤美也子君 本法案では、十九億円の政府出資により年間一課題当たり一億円弱の研究費を充てているわけでしょう。それを三年から六年間で研究成果を得ようとしているわけですよ。つまり、基礎的研究分野で研究成果を上げようとすれば三億から六億かかるんです、三年から六年であれば。さっき答弁でおっしゃった五年であれば五億円かかるわけです。必要だということなんです。もし、国公立研究機関で経常経費などで同じように研究成果を得ようとすれば、一研究室に四名の研究員がいても年間二百万円程度ですから、百年たっても二億円にしかならない。これでは目的達成のための研究成果に結びつけることは大変困難だと思うんです。しかも、これが基本なんですよ。
国公立研究機関の研究が基本であり、これまでの歴史から見ても大きな役割を果たしてきた。私は、この国公立試験研究機関の直接実験研究に使える経常研究費を当面、大変少ないんですけれども、倍増すべきだと思います。これはいかがでしょうか。そして、光熱費や図書費は別枠として必要な額を確保すべきだと考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/51
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052・山本徹
○政府委員(山本徹君) 毎年の予算要求については、私ども政府全体としてのシーリングのもとに、ルールのもとにできるだけ工夫して最大限の予算要求を行っているところでございまして、先ほど御説明申し上げましたように、平成八年度の農林水産関係の研究費も一〇・四%増となったところでございます。
今後とも、科学技術が日本の農林水産業にとって大変重要であると考えておりますので、予算の確保には努力してまいりたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/52
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053・須藤美也子
○須藤美也子君 さらに、国立研究機関の研究者、支援者はこれまで第八次にわたる定員削減の直接の対象にされまして、農水省関係の研究機関では九二年度から九五年度までの四年間に百十四人の研究職員が削減されました。定員削減によって研究者が減少し、人手不足で研究が進まない、これが現場の声なんです。基礎的研究を進める上で支障を来している。
昨年成立した科学技術基本法の第十一条では、研究開発に不可欠としている研究支援のための人材の確保及び資質の向上並びに処遇の確保、こういう法律を決めましたね。これは定員削減と相入れない矛盾したものだと思います。
大臣、来年度から第九次の定員削減計画の策定は、やめるべきではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/53
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054・大原一三
○国務大臣(大原一三君) 一方で、いわゆる行政改革は政府の現在の重要な政策課題であることは委員御承知のとおりであります。
農林水産省におきましても、試験研究機関を含む定員削減の第八次計画を進行中であります。現在、約五万七千人の農林水産省定員の中で一割強、五千八百人が研究機関に配属をされております。
そういう状況でございますので、試験研究の実質業務には支障が生じないような組織運営の合理化をなお一層進めていかなければならぬ状況にございます。そういった意味での必要な定員は、今後も確保していかなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/54
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055・須藤美也子
○須藤美也子君 私の質問時間、四十三分までとありまして、もうあとありませんので、最後に要求だけ申し上げます。
私は、やはり国公立試験研究機関の拡充を国が進めるべきだ、そのための予算の拡充と、定員の削減はやめるべきだと思っています。これこそ、生研機構法にとっても私は中心的課題になるのではないか、このように思いますので、予算をふやすことと、定員の削減はやめるように再度要求して私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/55
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056・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手をお願いします。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/56
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057・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) 全会一致と認めます。
よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、風間昶君から発言を求められておりますので、これを許します。風間君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/57
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058・風間昶
○風間昶君 私は、ただいま可決されました生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
以下、案文を朗読いたします。
生物系特定産業技術研究推進機構法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
我が国の農林水産業をめぐる情勢は、国際競争の激化、労働力の減少・高齢化等極めて厳しいものがある。一方、地球規模においても、食料、環境等の諸問題への対応が急がれている。
このため、農林水産業等の生物系特定産業分野における研究開発の促進が重要な課題となっている。
よって政府は、本法の施行に当たり、遺伝子レベルのバイオテクノロジーの多くについて我が国が欧米よりも立ち遅れている現状を踏まえ、引き続きその安全性の確保に留意しつつ、今後とも生物系特定産業分野における研究開発の強化に努めるとともに、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 研究課題の選定に当たっては、制度の目的を踏まえ、長期的視点に立って弾力的に行うこと。
二 基礎的試験研究の推進に当たっては、柔軟で独創的な発想を生かすことが重要であることから、ポストドクター等の若い研究者を積極的に活用すること。
三 基礎的試験研究の成果については、農林漁業者及び消費者の利益増進並びに国民生活の向上に役立てることを旨として、積極的かつ、迅速に応用・開発研究につなげていくこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/58
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059・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) ただいま風間君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/59
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060・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) 全会一致と認めます。
よって、風間君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、大原農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大原農林水産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/60
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061・大原一三
○国務大臣(大原一三君) ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/61
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062・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/62
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063・鈴木貞敏
○委員長(鈴木貞敏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615007X00919960430/63
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