1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年四月十一日(木曜日)
午前十時二分開会
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委員の異動
三月二十九日
辞任 補欠選任
三浦 一水君 釜本 邦茂君
四月九日
辞任 補欠選任
釜本 邦茂君 岡野 裕君
四月十日
辞任 補欠選任
岡野 裕君 釜本 邦茂君
世耕 政隆君 依田 智治君
浜四津敏子君 長谷川 清君
四月十一日
辞任 補欠選任
井上 裕君 岡 利定君
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出席者は左のとおり。
委員長 小野 清子君
理 事
木宮 和彦君
森山 眞弓君
山下 栄一君
三重野栄子君
委 員
井上 裕君
岡 利定君
釜本 邦茂君
田沢 智治君
馳 浩君
依田 智治君
石田 美栄君
菅川 健二君
長谷川 清君
林 寛子君
上山 和人君
鈴木 和美君
阿部 幸代君
堂本 暁子君
江本 孟紀君
国務大臣
文 部 大 臣 奥田 幹生君
政府委員
文部大臣官房長 佐藤 禎一君
文部省生涯学習
局長 草原 克豪君
文部省初等中等
教育局長 遠山 耕平君
文化庁次長 小野 元之君
事務局側
常任委員会専門
員 青柳 徹君
説明員
環境庁自然保護
局野生生物課長 小林 光君
参考人
鹿児島県教育委
員会教育次長 福永 功君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/0
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001・小野清子
○委員長(小野清子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
去る三月二十九日、三浦一水君が委員を辞任され、その補欠として釜本邦茂君が選任されました。
また、昨日、世耕政隆君及び浜四津敏子君が委員を辞任され、その補欠として依田智治君及び長谷川清君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/1
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002・小野清子
○委員長(小野清子君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
文化財保護法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に鹿児島県教育委員会教育次長福永功君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/2
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003・小野清子
○委員長(小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/3
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004・小野清子
○委員長(小野清子君) 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。奥田文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/4
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005・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) おはようございます。
このたび、政府から提出いたしました文化財保護法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
文化財は、我が国の長い歴史の中で生まれ、はぐくまれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重な国民的財産であり、我が国の歴史、文化の理解のために欠くことのできないものであると同時に、将来の文化の向上発展の基礎をなすものでございます。
現行の指定制度は、文化財のうち重要なものを指定することにより所有者に一定の制約を課しつつも、貴重な国民的財産を守るという目的を達成しようとする制度であります。この制度は、我が国の文化行政の一翼を担うものとして、文化財保護の推進に大きな貢献をなし、広く国民の間に定着しているところであります。
しかしながら、近年、近代の多様かつ大量の文化財について、その歴史的重要性の認識が定まりつつあり、また他方では、開発の進展、生活様式の変化等により、これら貴重な国民的財産である文化財が社会的評価を受ける間もなく消滅の危機にさらされているという状況にございます。
国民の貴重な文化財を後世に幅広く継承していくためには、重要なものを厳選し、強い規制と手厚い保護を行う指定制度によるだけでは不十分であり、文化財の保護手法の多様化を図る必要がございます。
このため、文化財保護法を改正し、指定制度を補完するものとして、届け出制と指導、助言、勧告を基本とする緩やかな保護措置を講ずる登録制度を導入するものであります。
また、この法律案におきましては、あわせて指定都市及び中核市への権限委任並びに市町村の役割の明確化を図るとともに、規制緩和を進めることにより重要文化財等の活用の促進を図ることとしております。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
第一は、登録制度の導入についてであります。
登録制度は、建造物のうち国及び地方公共団体の指定文化財以外のものを対象とし、文化財保護審議会への諮問と答申を得て文部大臣が文化財登録原簿に登録する制度であります。
登録される建造物は、その文化財としての価値にかんがみ、保存及び活用のための措置が特に必要とされるものであり、官報で告示するとともに、所有者には通知をし、また、登録証を交付することとしております。
所有者には、滅失・き損した場合や現状変更をしようとする場合等の届け出が必要となりますが、文化庁長官は、現状変更の届け出があった場合に、必要な指導、助言または勧告をすることができることとし、所有者の協力を得ながら適切な保存を図ろうとするものであります。
このほか、文化庁長官は、管理または修理についての技術的指導を行うことや、所有者に対して現状等の報告を求めることができることとしております。
第二は、指定都市及び中核市への権限委任及び市町村の役割の明確化についてであります。
文化庁長官が行うこととされている重要文化財の現状変更の許可等について、都道府県の教育委員会に加えて、指定都市及び中核市の教育委員会に委任することができるようにいたします。また、市町村の教育委員会に関し、文化財の保存及び活用について文部大臣または文化庁長官への意見具申や文化財保護審議会の設置についての規定を整備するものであります。
第三は、重要文化財等の活用の促進についてであります。
重要文化財の公開について、文化庁長官の承認を受けた博物館等の施設の設置者が展覧会を主催する場合に、公開の許可を要しないものとするなど、規制緩和を進めることにより、重要文化財等の公開の促進を図ろうとするものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/5
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006・小野清子
○委員長(小野清子君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/6
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007・林寛子
○林寛子君 きょうは、今、大臣の趣旨説明を拝聴いたしました。
この際、委員長にも一言申し上げておきたいと思いますけれども、今、大臣の、十分御審議の上、速やかに御賛同という意味はよくわかります。けれども、国会の委員会で説明をして、その日に審議をして、その日に採決という、まことに忙しいことをするというのは、私は基本的に委員会軽視であろうと思います。
きょうは諸般の事情があってこういう事態になり、また先日、私は皆さんとともに視察をさせていただきました。現地の声も聞き、そして現地の要望もあり、いろんなことも慎重に審議をしたいと思っておりましたけれども、急遽他の国会の中の情勢によって趣旨説明、質疑、採決というまことに慌ただしい事態になるということは、今後慎まなければならない、委員会軽視の状況であるということだけは私は特に冒頭に申し上げ、そして、私どもはもっと大臣がおっしゃったような十分な審議というものを委員会において行いたい。
そういうことを、きょうだけは特例であるということをぜひ委員長にも申し上げ、委員の皆さん方にも、今後このような趣旨説明、そして質疑、採決という慌ただしいような、私ども女性にとっても、今見合いの写真を見せられて、今晩じゅうにイエスかノーかの返事をよこせというような、こういう委員会の仕組みというのは今後ぜひ注意をしていただきたいし、きょうだけは特例であるということをまず冒頭に申し上げて、これからは文教委員会としてはすべて慎重審議でやっていきたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。
大臣もぜひその点を御理解いただいて、大変時間が少のうございますし、また、急遽順序も変更して、与党さんが質問をおやめになったことは良識の一端だろうとは理解いたしますけれども、そういう意味では皆さん方に通告等々行き届いてない点もございますが、できる限り皆さん方にそういう意味で御理解をいただきながら質問を進めさせていただきたいことを冒頭に申し上げておきます。
今、今回の法案説明を大臣からいただきました。その前に、今回は久しぶりにこの文化財保護法の一部改正ということ、前回から二十年たって、前回の法案通過のときに附帯決議がつけられております。
まず、二十年の間に前回の附帯決議、どの程度皆さん方は御努力なさったのか。附帯決議に対する文化庁の施策は何をしたのか。その辺のところを、前回の法案が通ったときの附帯決議に対する皆さん方の努力があったのかなかったのかをまず冒頭に聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/7
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008・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、前回、文化財保護法の改正をお願いいたしましたとき、昭和五十年でございますけれども、附帯決議をおつけいただいておるわけでございます。その項目はかなり多岐にわたっておるわけでございまして、一応五十年の時点では十項目を参議院の文教委員会でいただいたわけでございます。
文化財の保護について、国民の理解協力を得るために教育啓蒙活動を強化しろ。それから、埋蔵文化財の破壊を防ぐために、停止命令を行う期間内において十分な調査を行う。それから、必要な場合には指定や仮指定を行えというような御指摘もございました。それから、国の機関等が行う発掘について、文化庁長官が行います協議あるいは勧告の結果等については公表に努めることという点もございます。それから、埋蔵文化財につきまして、包蔵地の地図等必要な資料を整備し、その周知徹底に努めるべしという点もございました。それから、その当時新しくお認めいただきました伝統的建造物群の保存地区の決定及び保存、これらにつきましても、国、県、市町村が協力してこれに当たれという御指摘もいただいております。さらには、アイヌの民俗芸能保護等について特別の措置を講じるべし。それから、文化財の保存技術者、埋蔵文化財の発掘調査等の要員の確保、処遇の改善。それから、文化財の保護についての市町村の役割を明らかにし、関係職員の確保について配慮しろという点もございます。それから、国、地方で文化財保存事業について財源を確保すべしという点もございました。それから、法の運用に当たりまして各方面の意見を十分尊重しろ。こういった点、十項目について附帯決議をいただいたところでございます。
私ども文化庁といたしましては、これらを踏まえましてさまざまな施策を講じておるところでございます。
まず、文化財保護の考え方について国民に協力を求めよということでは、文化財防火デーあるいは文化財保護強調週間その他でこういった文化財への国民の理解を求めておるところでございます。
それから、埋蔵文化財につきまして、これについても、包蔵地の開発事業と埋蔵文化財の保存ということが常に話題になるわけでございますけれども、こういった点につきましても事業者との発掘等につきましての十分な協議を行う。さらには国におきましても、埋蔵文化財について現在私どもが取り組んでおりますのは、埋蔵文化財の保護と開発との調和という問題でございますけれども、こういった点につきましても鋭意努力をしておるところでございます。三十七万カ所の包蔵地があるわけでございます。こういったものについても、周知を図り、調査等を行っておるところでございます。
それから、伝統的建造物群の保存地区等につきましても、国と都道府県が適切な協力関係を持ちながら保存対策調査事業等を行っておるところでございます。
さらには、民話や民謡、伝統工芸等の民衆文化の保護につきましても、それぞれ予算で私どもといたしましてもさまざまな措置をとらせていただいているところでございます。
それから、文化財の保存技術者の養成確保と処遇の改善でございますが、文化財の保護を図っていくためにはこういった技術者の養成確保というのは大変重要だと思っておるわけでございます。一つの例でございますけれども、後継者養成のための経費等につきましても補助を行っておるわけでございますし、技術者の研修等についても努力をしておるところでございます。
それから、市町村の役割の明確化という点では、今回の改正におきましても、特に文化財保護につきまして市町村の果たす役割が大きいということで、市町村の文化財保護審議会を法律に根拠規定を置かせていただきまして、その立場を明確にしていく、あるいは市町村の教育委員会が国等に対して意見具申等ができる規定を置くといったようなことも今回の改正でお願いしておるところでございます。
その他項目は多岐にわたりますけれども、私どもといたしましては、前回の附帯決議の趣旨を踏まえまして文化財保護の充実のために努力をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/8
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009・林寛子
○林寛子君 今、小野次長の私どもは多岐にわたって努力をしていますというお言葉があったんですけれども、逆らうわけではありませんが、五十年にそれだけの附帯決議がつけられた。そして今、小野次長の努力をしていますというお話ですけれども、昨年、平成七年十一月に総務庁から行政監察の指導が出ていますね。この行政監察に基づく勧告がある。私はこの行政監察の結果の勧告の報告を拝見いたしました。今、小野次長がおっしゃっているようなすべてのことに努力をしていますという結果がこの監察報告には見られない。
例えば、今、埋蔵文化財のお話を答弁なさいました。けれども、平成七年十一月の監察の勧告においては、「周知されている埋蔵文化財包蔵地は、現在、全国に三十七万か所ある」、あるいは「埋蔵文化財の保護と開発事業等との調整を適切に行うためには、都道府県又は市町村の内部において文化財保護担当部局と開発担当部局等との連絡調整ルールが設けられていることが必要である。」と。
今努力をしていらっしゃるとおっしゃいましたけれども、例えば埋蔵文化財でいえば、それぞれの開発許可あるいは農地転用等の許可及び建築確認については、連絡調整ルールだとか、そういうすべての面で不十分だと言われる点がこの監察によって勧告されているわけですね。それは、今私が冒頭に質問いたしました昭和五十年六月十七日、法案が通ったときに附帯決議がつけられて、文化庁の小野次長の細部にわたって検討し努力していますというお言葉とは似ても似つかない勧告が昨年の十一月に行われている。ですから、国会の中でつける附帯決議とかそういうものは二十年たっても、現実的に今、行政監察が行われて勧告を受けなければならないという体質は全くもって私は失礼な話だし、口だけで細部にわたって努力していますというお言葉はなかなか信じがたいと言わざるを得ない。
ですから、一方的に責めるつもりはありませんけれども、私どもは、二十年たった現在、今改めて二十年ぶりに、今の大臣の御説明にありましたように、私はこの御説明を聞いて、「文化財の保護手法の多様化を図る必要」、あるいは「届出制と指導、助言、勧告を基本とする緩やかな保護措置を講ずる登録制度を」と、こうおっしゃいますけれども、果たして二十年後、きょうの委員会での今の大臣の趣旨説明のように、すべてのものを保護し、そして新しく緩やかな制度にして登録制度を導入するんだとおっしゃいますけれども、今法案として処置することが二十年たったらこれが果たしてどうなるんだろうか。緩やかにするだけで果たしてそれらの持ち人、所有者にとってはどんなメリットがあるのか。
先日も私どもが群馬へ委員長を初め皆さん方と視察をしました。そして現地の皆さん方に、教育委員長もいらっしゃいました、御意見を聞きました。どうお思いですかと言ったら、届け出をしてどんなメリットがあるんですかと聞かれたときに返事に窮しますというお話もございました。
ですから私は、今までのもの、今までのものというのは重要文化財に指定されたもの、いわゆる指定制度と今回の登録制度の差はどういうところにあるか、まずおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/9
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010・小野元之
○政府委員(小野元之君) 先ほど先生からいろいろ御指導いただいているわけでございますけれども、今お話のございました指定制度と登録制度の基本的な違いでございますが、指定制度につきましては、文化財を厳選いたしまして、それに対してきちっと対応していく。それについてはある程度、現状変更につきましても原則禁止にして、現状変更については許可制をとる。そしてさらには、文化庁長官の命令、指示、勧告、損失補償という非常にかちっとした制度として指定制度はあるわけでございます。
これに対しまして、先ほど大臣から提案理由を御説明申し上げましたように、登録制度につきましては、現状変更については届け出制、これに対する指導、助言、勧告ということで、緩やかな手法によります保護措置を講ずるというのが今回の登録制度の基本的な考え方でございます。
この登録制度を導入いたします趣旨といたしましては、指定制度というきちっとした制度だけでございました場合には、近代の多様かつ大量の文化財が歴史的評価が定まらないうちに開発等に伴って消滅の危機を迎えておるということがございまして、文化財の保護手法の多様化を図るということとともに、指定制度を補完する制度として今回登録制度をお願いしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/10
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011・林寛子
○林寛子君 今、文化財のいわゆる指定制度と届け出制度の差というもので次長がいろいろ御説明になりましたけれども、私は少なくとも指定制度であれば、現状変更のときの対応というのは、指定制度は許可制度、登録制度は事前に届け出するだけ。あるいは物を輸出しようというときにも、指定制度では禁止、けれども登録制度ではこれも事前に届け出するだけ。
言っていると切りがないんですけれども、例えば管理または修理についての文化庁の命令または勧告権、そういうものに関しては、指定制度であれば修理は国宝のみということになっている。登録制度ではこれはまた勧告だけなんですね。そして、文化庁みずからによる修理や盗難防止の処置というものは、これも指定制度ではありますけれども届け出制ではない。所有者が売却する際に国が優先的に買い取る権利というものは、指定制度ではあるけれども届け出制ではない。固定資産税の免税ということでは、指定制度では家屋も敷地も非課税です。けれども、今度の届け出制では家屋についてだけは二分の一です。法人税の減免ということについても、これは指定制度では控除されるけれども登録制度においては課税は繰り延べになるだけである。地価税の免税も、指定制度であれば非課税だけれども登録制度では二分の一。
ですから、今申しましたように、視察に行っても皆さんが、今、大臣がおっしゃった、緩やかにすべてのものをすそ野を広げて重要なものを保存する、そうおっしゃいましたけれども、今言ったような指定制度と登録制度、届け出制度というものによっては、視察をしたときに果たしてどんなメリットがあるんですかと言われたときに、本当に返事に窮すると。
今申し上げたように、届け出をする登録制度を選んだときのメリットというものは、わずか家屋について固定資産税が二分の一になるだけ。例えば修理をするにも何をするにも届け出するだけで済むというけれども、届け出の面倒があるだけでメリットはない。届け出をしなさいよと言って書類を持ってこさせるだけ。そういう意味では大変私はまだこれは不十分なのではないか。これで本当に大事なものが地域の発展あるいは都市の開発によって壊されるのを防げる、そういうメリットに果たしてなるんだろうか。保障されるんだろうか。届け出するだけの手間暇がかかるだけ。それであとのメリットは果たしてあるんだろうかというのが、視察に行って地元の皆さんのお言葉も聞いたら確かに考えさせられる面だなと。
それを今後文化庁は、あるいは大臣の予算も含めて、大きな文部省も含めてのことになるんでしょうけれども、果たして今言ったようなメリットがあるんでしょうかという皆さん方の疑問に対して、今後文化庁、文部省はどのように対応しようとしているのか、伺わせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/11
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012・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) 確かに、先生がおっしゃったように、現在のところは建物固定資産税、それから地価税それぞれ半分ということを予定しておるわけでありますけれども、できるだけやっぱり指定制度に近づけたような扱いにしていきたいというような気持ちは私どもも抱いておるわけでございます。
したがいまして、十分でないことは十分よくわかっておりますので、次の予算概算要求には、平成九年度に向かいまして修理・管理面で何かお手伝いをする方法を何とか見つけていきたいということで、既に大蔵省と内々交渉を始めておるというのが実態でございます。御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/12
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013・林寛子
○林寛子君 文化庁の姿勢は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/13
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014・小野元之
○政府委員(小野元之君) お話ございましたように、この登録制度は緩やかな保護措置、緩やかな規制ということでございますが、何と申しましても明治以降の建造物で、私どもの調査でも全国各地に約二万五千件ぐらい登録の候補になる物件があるわけでございます。しかし、それぞれの建物は地域の中心になっておったりあるいは企業の本社の建物であったりということで、実は建造物につきましては、単に保護するというだけではございませんで、それを活用しながら、現在の例えば事務所なら事務所、学校なら学校としてお使いいただきながら、そしてそれを後世に伝えていくという観点があるわけでございます。したがいまして、現在お使いいただくためにはなるべく規制は緩い方がいい、しかし基本的な部分についてはきちっと守ってほしいという気持ちは一方にあるわけでございます。
そういった観点で、仮に現状変更なさるということでございましたら、三十日前にお届けをいただきまして、その届け出に対して文化庁の方で技術的な指導や助言等を行わせていただく。そういう中で、何といいましても、文化財をきちんと後世に伝えていくためには、それを持っていらっしゃる所有者の方が、自分たちの建物は立派なものだから後世に残そうと。しかし、ただ残すだけでは使えない、不便であるという点もあるわけでございますので、その点を勘案しながら、余り厳しい規制はかけないけれども、しかし基本的なところについてはいろいろお願いをしていく、そして所有者の方の御理解を得ながら貴重な建造物を後世に残していこうというのがその趣旨でございます。
先生から御指摘いただいております税制の面もさらに来年努力していかなければいけないと思っておりますし、予算の面でも、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、所有者の方が修理をされるといったようなときに何らかの形の御援助をする形も考えていかなければいけないと思うわけでございます。
いずれにいたしましても、この登録制度を今回の法改正でお認めいただきますと、これを基本にいたしまして、私どもとしては、文化財保護手法の多様化という面で指定文化財と登録文化財、それぞれのメリットを持っておるわけでございますので、その保存と活用に努力をしてまいりたいと思うところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/14
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015・林寛子
○林寛子君 御努力をしたいというそのお言葉は大変結構だと思うんですけれども、今、大臣もおっしゃいました届け出の前の所有者の同意、それから文化庁次長がおっしゃいました登録についての所有者との事前相談、所有者の意向をということを大変言葉の中ではおっしゃいました。この法律の中で、指定及び登録について今おっしゃった所有者との事前相談・同意というのは法律の中のどこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/15
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016・小野元之
○政府委員(小野元之君) 所有者の方に事前に御相談を申し上げまして、事実上の同意をいただいた上で登録をするというのが今回の私どもの基本的な考え方でございます。
実は、現行の制度でございます指定制度におきましても全く同様でございまして、私どもとしては、重要文化財として指定したいのでぜひ御理解を賜りたいということで所有者の方にお話を申し上げて、同意がとれれば文化財に指定をするという制度をとっておるわけでございます。
ただ、これらの手続につきましては、先生御指摘ございましたように法律上規定があるわけではございませんで、この点は事実上所有者の御同意をいただいた上で私どもとしては指定あるいは登録をさせていただきたいということを考えているわけでございます。したがいまして、法律上の条文としてはそれについての規定はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/16
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017・林寛子
○林寛子君 言葉では言えるんです。視察に行きまして、一カ所しか行けませんでした。けれども、所有者との法的に何の条文もここにはない、法的に配慮を行うということが。
それじゃ、ちなみにちょっと方向を変えましょう。
今回は建造物のみですけれども、例えば建築史学会等の調査で、今全国で届け出しなげればならないなと思っている物件は何件ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/17
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018・小野元之
○政府委員(小野元之君) 私どもが登録の候補として挙げておりますもの、それは文化庁の調査もございますし、建築学会あるいは建築史学会等の調査もあるわけでございますけれども、一応登録の対象になり得るものとしては約二万五千件が全国にあるというふうに理解をしております。ただ、それらのうち緊急に保護措置を講ずる必要があると思われますもの、これも目の子でございますけれども、約一割の約二千五百件については近いうちにできれば登録をさせていただきたいというふうに私どもは考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/18
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019・林寛子
○林寛子君 させていただきたいと言うけれども、文化庁が持っているわけじゃないんです。国の財産でもないんです。大抵個人なんですね。それが、今おっしゃったように目の子でという話ですけれども、建築史学会等々と文化庁と協力なさって、今の次長の話では二万五千件、そして緊急を要するものというのは早く処置をしなければあるいは整理されてしまう、地区の開発とかあるいは所有者にお金がないとか、修理が行き届かないとかいろんな理由はあるでしょう。それが今の次長の話で目の子で二万五千件の約一割、二千五百件というお話でございました。
届け出をしていただきたいという希望はあっても、所有者がそれを理解して、所有者が、結構ですよ、私は大変古いもので自分で、しかも今までの制度と違うのは、今までのものは、指定制度は使ってはいけない、今度は登録したものは、届け出をしたものは生活として使ってもいいというのが私は根本的に大きな違いだろうと思うんですね。ですから、指定制度のものは使うときには一々届け出て、使わせてください、使っていいでしょうかという許可がなければ指定制度のものは使えない。今度のものは届け出さえして登録しておけば使えるというのが今までの制度と私は一番違う点だと思っています、おっしゃらないけれども、私の感覚では。
そうすると、今おっしゃったように、全国で目の子で約二万五千、そして一割の二千五百届け出をしていただきたいというのが文化庁の希望であるとするならば、二千五百件で、今度これをオープンにして、法案が通って、全国から届け出が大体一年間に何件あると思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/19
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020・小野元之
○政府委員(小野元之君) これは、この法律をお認めいただきました後で具体的にどのように登録を進めていくかということでございますが、私どもといたしましては、もちろん事務処理の問題もあるわけでございますけれども、一応先ほど申し上げました二千五百件につきまして、毎年五百件程度登録をしていきたい、それで五年間でこの二千五百件については登録をさせていただきたいと思っているわけでございます。
ただこれは、先ほど来お話がございますように所有者の方の同意が必要でございます。私どもとしても、個別の物件を特定いたしまして、現地調査を行う、あるいは教育委員会の意見を聞くと、そんなことを行った上で具体的な手続を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/20
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021・林寛子
○林寛子君 私はどうしても引っかかるのは、法的に事前に所有者との同意あるいは相談ということがこの法律のどこにも書いてない。
それで、ただ一方的に、お話を伺いますと、一年間に五百件として、今緊急を要するという次長の話であれば、二千五百というのは五年かかりますね。そうすると、例えば一年間に約五百の人たちが本人の了解で本人のみずからの届け出をしたとします。けれども、届け出をしても、私たちが視察に行きまして、もうすぐに手をつけなければこれは保存が不可能だと思えるものも何件かありました。
そうすると、これが大事なところですね、大臣、一年間に五百件所有者の了解があって届け出たとします。けれども、その五百件の中で、今、次長が緊急を要するものは二千五百と言いましたけれども、一年間に例えばその五分の一の五百件届け出たとして、緊急を要して届け出たことによって、今おっしゃった修理等々に関しては大蔵省と内々に詰めているという大臣のお言葉でしたけれども、一年間に約五百件届けて、例えばその一割の五十件としましょう。その五十件が緊急を要して修理しなきゃいけないといっても、家屋に関しては二分の一の固定資産税の免除だけで、修理費は何もない。そうすると、届け出ただけでお金がないから修理ができない。
しかも、今までの指定制度と違うところは、毎日それを使ってもいいというものを届け出るんですから、使うたびに傷んでくるわけですね。そういうものの矛盾点というものが、今度の法案によっては救うことにはならない、大事なものを保存するということには至ってない。ただうちには大事なものがありますよ、例えばうちの亭主は大事な人なんですよと届けるだけ、だれも保障してくれない。例えが悪いですけれども、端的に言えばですよ。大事なものを届けるだけでだれも何のメリットもないんだったら、果たして法律として成り立つのかどうか。
しかも、届ける人の個人の所有者の事前相談とかそういうものが法的にどこにも書いてない。そうすると、今の建築史学会と調べたのが全国で二万五千件というのも、勝手にあれが大事なものだこれが大事なものだと本人の承諾なしに大体全国で二万五千件と言われたようなもので、例えば私の亭主は大事じゃないと思っていても人が大事だといって勝手に届けたのが二万五千件になるという、そういうことになっちゃうんですよ、法律にどこにもないから。
ですから、私は、今回の法案に関して、今拝見もしましたし大臣の御説明もございましたけれども、大臣が本来の趣旨でおっしゃいましたように、文化財のすそ野を広くするんだというお言葉と、現実にすそ野を広くして間口を広げただけでそれを保護することにはならないから、「文化財保護法の一部を改正する」という言葉に果たしてこの法案が適するかどうかという根本的な疑問があるんです。
ですから私は、本来の大臣の趣旨説明にございましたように、文化財のすそ野を広くして、日本にある財産を、今危機に面して、あるいは地方開発だとかいろんなことでそれらがあっという間になくなることを文部省及び文化庁が心配して、すそ野を広げて届け出をしてもらおうという本来の親心と現実とのギャップがこの法案では埋められないんではないかと思っているんですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/21
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022・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、所有者の方の同意を求めるということについては法律上の規定はございません。ただ、所有者の同意を法律上の要件としていないということは、所有者が登録に同意をなさらないということももちろんあり得るわけでございますので、そういった場合に制度上の規定として、現在の指定制度につきましても同じでございますけれども、法律上の同意は要件にしておりません。
その理由は、こういった文化財の保護を進めるということになりますと、所有者の方の所有権や財産権を大いに制約するという部分がどうしても保存を図っていくという点では出てくるわけでございまして、そういう意味で法律上きちんとそういった規定を置くということはなかなか難しいわけでございます。しかし一方で、その建物を後世に残していくというためには、何といいましても所有者の方がこれは大事なものだから残していこうというお気持ちを持っていただくことが非常に大事なわけでございます。
したがいまして、私どもとしては、いろんな調査でお宅の建物は非常に立派なものでございますのでぜひ登録の手続をとってほしいということをお願いいたしまして、御了解がいただければそこできちんとした形で登録をしていく。登録につきましては、現在の時点での支援措置というのはまだまだ少ないわけでございますけれども、その努力はこれからもしてまいりたい。
何といいましても、文化財を後世に残すためには、所有者の方がみずからのお立場で自主的に保護していこう、保存を図ろうというお気持ちを持っていただくことが大事なわけでございます。それについては法律上無理やりに同意しろというんではなくて、法律には規定はございませんけれども、ぜひこれは地域の文化財として立派でございますということで、今そういった地域での自分たちの町にある文化財を守ろうといったような動きもかなりあるわけでございます。そういった文化財を守ろうというお気持ちが、世論が高まっていくことと相まちましてこの制度をお認めいただきまして、一つのメリットとしては、例えば私どもの本社の建物は登録制度に乗っかって文部大臣が登録をしている立派な建物なんだということで、所有者の方に誇りを持っていただくという面もあるわけでございます。そういったもろもろ相まちまして保護の一助になるというふうに私どもは確信をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/22
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023・林寛子
○林寛子君 わかりました。
確信を持っていらっしゃるのは結構なんですけれども、私は現実的にはどうなるかということをぜひ所有者の立場に立ってもう一度、裏づけがなければ、ただ届けて、誇りだけでは生きていけないんです。
今持っていて、私たちが視察して、こんな立派なものを今まで持っていらした。しかもこれは近代ですから、いわゆる昭和初期あるいは昭和元年前後、そういうものを、近代の建造物という指定があるわけですから、近代のものですから、まあよく残っていたなと思うものもありますけれども、大体昭和元年ごろにできたものというのはそろそろ手を入れなければ危ないものばかりと言っても過言ではない、大変失礼ですけれども。そういうものを持っていらっしゃる方は、お金のある方はとっくに手を入れていらっしゃるんです。けれども、手を入れてないものがあるから届け出制度で守ろうということであれば、やっぱりその裏づけというものは何らかのものがなければ私はいけないだろうと思います。
こんなことばっかり言っていても切りがありませんけれども、地方公共団体で登録制度を実施しているところはどことどこで、どれくらいありますか。大ざっぱで結構です、数だけでも結構、時間がありませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/23
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024・小野元之
○政府委員(小野元之君) 府や県それから区等を含めまして二十六でございます。例えば京都府、京都市その他、それから東京都の区においても登録制度を持っているところがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/24
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025・林寛子
○林寛子君 全国でまだ二十六ということなんですけれども、地方公共団体でも登録制度を導入しているといケのが少なくとも二十六あるとすれば、この地方公共団体で登録したものの税制面と、それからどのような保護をしているのかというのと、今度の政府が改正して行う登録制度とどこが違って、どう整合性を見るんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/25
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026・小野元之
○政府委員(小野元之君) 既に登録制度を実施しておられます二十六の府や市、区等でございますけれども、これにつきましては国の立場からの税制上の優遇措置というのが認められているものは今のところないわけでございます。ただ、府や市等におきまして、管理または修理等について補助をする場合が一部の府や市でございます。それから、奨励金を交付するといったようなところもございますし、全く支援措置がないというものも現在の二十六の団体についてはあるわけでございます。
今回、私ども国の方でお願いしようとしておりますものにつきましては、先ほど来お話が出ておりますように、税制上の優遇措置と低利の融資といったものがとりあえず現段階では認められておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/26
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027・林寛子
○林寛子君 私は、今のお話にありましたように、地方公共団体で全国で二十六しかないということは、数は大変少ないとはいうものの既にそういう処置をとっていらっしゃるところがあるわけですから、私はそういう意味で、地方公共団体で既に登録制度を実施しているところと、そして今回の政府によってこの法案で登録制度を導入するということのその辺の差というものはよく兼ね合っていかなきゃいけないと思います。
今の次長のお話のように、税制面でも例えば地方公共団体で特に市町村の事務費でありますとかあるいはまた地方交付税面での増額等、大蔵省と内々にという大臣のお言葉がありましたから、この制度を導入するに当たっては、指定制度までとは言いませんけれども、指定制度と登録制度という二本足にするのであれば、やっぱり指定制度が母体とすれば登録制度は手足である。それであれば、母体には保障するけれども手足には保障しないというのも私は政府としては少し配慮に欠けるのではないか。
全体で体全体だという理解、指定制度と登録制度全体で文化財の保護であるという観念に立って、冒頭に大臣がおっしゃった、これからこの登録制度に対しての何らかの財政面での処置というものをぜひ、大蔵省の裏ではなくて堂々と表に出して、委員会でもこういう指摘があった、法案と裏づけがなければ所有者のメリットは何ですかと聞かれたときに答弁に窮するようなということはぜひ考えていただきたいということを要望しておきたいと思いますけれども、大臣の今後の取り組み方の決意を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/27
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028・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) 確かに、そういう気持ちが非常に歴史を大事にする、こういうものは非常に歴史を正確に伝えるものでございますから、私は先生のお気持ちを十分体してこれから取り組んでまいりたいと思います。
それから、先ほど小野次長の答弁の中で私の地元の京都府、京都市という言葉がございました。地元で今やっておりますのは、府も京都市も両方とも文化財保護基金制度を設けまして、毎年その金利分を補助しておるという制度でありますけれども、このごろ金融機関は非常に利子が低いので物すごく困っておる。大体重要文化財が、国指定の国宝が全体の二割が京都でありまして、重文は一割が京都でございます。それ以外にも、今、次長がおっしゃっているような準重文級が相当ございまして、あれもこれも支援をしたいというのはたくさんあるんですけれども、なかなかこのごろの金利では十分手が回らないというのが実態であるということを申し添えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/28
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029・林寛子
○林寛子君 それでは、せっかくですからもう一つ伺いたいと思いますけれども、外国で、特に先進国、登録制度を導入しております。今度のこの登録制度が日本に導入されることによって、諸外国とどこが違うのかおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/29
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030・小野元之
○政府委員(小野元之君) 文化財の保護手法自体が国によって制度が違いますので、必ずしも諸外国の制度と我が国の制度が全く同じというわけではございませんけれども、奇妙に実は似ているところがあるのでございます。やっぱり諸外国におきましても指定制度があり、一方で登録制度があるということもございます。
アメリカ、イギリス、フランス、それぞれの国におきましても実は登録制度があるわけでございまして、一つの例でございますけれども、フランスの登録制度でございます。これは、地方の知事に権限が移譲されておるわけでございます。登録制度については、現状変更は届け出制でございます。そして、これは文化大臣が、現状変更がある場合に、それが適切でないという場合にはその行為を停止することができるというような規定もあるわけでございます。
イギリスにおきましても登録制度がございまして、これは国家遺産省大臣というのが登録をいたしまして、現状変更については市町村の計画当局の許可が必要だと、所有者等の行為に一定の制限が課されるという制度になっておるわけでございます。
アメリカにおきましても登録制度がございまして、これは内務長官が登録をする、そしてそれを各州に配置されました歴史保護主事が把握するというようなことになっているようでございます。
私どもの日本の登録制度も、文部大臣が登録いたしまして、現状変更については届け出制でやる、文化庁長官が必要に応じて指導、助言または勧告を行うということでございますけれども、若干アメリカ、イギリス、フランスの例と似通っている面があることも事実でございます。私どもも、今回この制度、法改正を検討するに当たりまして一応参考にしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/30
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031・林寛子
○林寛子君 今お話しのように、確かに一律にそれを申し上げることはできないと思いますけれども、私の調べたところでもアメリカ、イギリス、フランス等々、かなり日本よりも優遇されている面がございます。しかも、補助金等々、あるいは税制面、それらにおいてやはり、もっとも施行された年月がもっと前でございますから、年数がたっておりますから、フランスにおいては一九一三年でございますから、かなりの歴史をも持ってこういう制度を導入しております。
私は、おくればせながら日本でこういう制度を大臣が在任中に決意なさったということには敬意を表しますけれども、果たしてその敬意を表することが実質的に本当に文化財保護のすそ野を広げ、あるいは所有者に喜んでもらえるような法律であるということに、これから二十年後、私は生きているかどうかわかりませんけれども、最初の昭和五十年のときの法律の改正のときから見ると二十年たった今、冒頭に私が申しましたように総務庁の行政監察によってまだ勧告を受けなきゃいけない。
しかも、五十年のときの附帯決議が二十年たった現在まだ実質的には行われてないというような文化庁の姿勢というものは、私は少なくともこの法律を通す限り、今申しましたような所有者の事前相談というようなものが法律的にはどこにも書かれてない。そしてまた、国の登録文化財と地方指定の文化財との関係、先ほど申しましたように、地方公共団体で既に登録制度を導入しているところとの関係について混乱が生じないようにということもこの法律には書いてないわけですね。
ですから私は、少なくともそういう地方公共団体においても二十六の全国の地方公共団体が既に登録制度を導入しておりますから、この法律が通った後にそういう地方公共団体との混乱が生じないようにということもぜひ、この法案を読んでもどこにも書いてないものですから、それは何としても、大臣は今たまたま京都で、日本の文化財の一番たくさんあるところにお住まいでいらっしゃいますから、そこの選出の国会議員でいらっしゃいますから、ぜひ京都のような地方公共団体が既に登録制度を導入しているというようなところとのこの国の法律との整合性というものを、地域であるとかあるいは一般の所有者の民間の人たちをこの法律によって逆に圧迫するということがないようなことをぜひ心がけていただきたいということを要望しておきたいと思います。
まだまだ言いたいことがいっぱいあるんですけれども、こればっかりやっていると時間も大変ないものですから難しいんですが、この登録制度、登録を届け出た人たちの物件に対しての審査基準、線引きはどこにあるのか。そして、この行政監察の勧告にもありますように、それらを鑑査する人たちの資格、人数等々がやはり少ないんですね。
そして、この間も視察に行きましたときに、各都道府県は全部まだ私は調べ切っておりません、そちらに資料がおありになるんでしょうけれども。それぞれの二十六の、全国の都道府県で登録制度を導入している県においても、それらのものをどの基準によってその届け出を受理するのか、届け出さえすれば何でもオーケーなのか、その基準というものが明示されていない。そしてまた、届け出を受理するべきか、登録にこれは値するものであるかどうかということに関しての検査人というんですか鑑査人というんでしょうか、そういうものの不足というものをこれからどうカバーしていくのか。しかも、登録制度が今の次長の答弁の中にありましたように全国に二万五千件、緊急を要するものが二千五百あるとおっしゃるけれども、所有者がたまたまそれを了解して届け出たとしても、果たしてそれをだれがどの基準で選ぶのかというのを教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/31
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032・小野元之
○政府委員(小野元之君) この登録制度を実施するに当たりまして、御指摘ございましたように、例えば県の指定の文化財、市町村の指定の文化財、こういったものとの二重規制になってはいけないということを私どもは考えておりまして、例えば県や市町村が重要文化財として指定している物件については登録をしないという基本的な考え方を持っております。
それから、その場合の登録の基準でございますけれども、これは法律をお認めいただきますれば、私どもとしては告示の形で示したいと思っているわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、今回の建造物等についての登録の基準でございますけれども、原則として建設後五十年を経過しておるということを一つの要件にしたいと思っております。原則として五十年経過しているものであって、しかもそれぞれ次のような要件を満たすもの、その一つが国土の歴史的景観に寄与しているもの、二点目は造形の規範となっているもの、三番目が再現することが容易でないもの、こういった基本的な登録の基準を設けて、これに照らしましてそれぞれの物件が該当するかどうかということを私ども文化庁の方で判断をしてまいりたいと思っているわけでございます。
参考でございますけれども、現在の重要文化財等の指定基準があるわけでございますが、この登録文化財の基準はその指定基準とは同じではございませんけれども、指定基準を登録文化財の基準は完全に包含をしているといいますか、図で考えますと、指定基準がございまして、それより大きい輪で完全に含む形で登録の基準があるというふうな理解をしております。これについては告示で明らかにしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/32
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033・林寛子
○林寛子君 そういうことでありましたら、今のおっしゃった法案が通ればという、その基準というものも、今申し上げました地方公共団体での基準はどうなのかと、そういうこともぜひ諮っていただいて、この法案が通った後、運用が円滑に、しかも本当の文化財を保護するという観点に寄与するようにぜひ努力していただきたいと思います。
それから、同じく文化庁、ちょうどことしは国立劇場がオープンしまして三十年、しかも来年は新国立劇場のオープン、大変そういう意味では節目の年であろうと思います。
今までの文化振興財団に対する民間からの寄附、そういうものが当初の目的を達成しているのか、あるいは不自由なのか、バブルによってそれも一種の何かを受けているのか、その辺のことをちょっと御報告ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/33
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034・小野元之
○政府委員(小野元之君) お話ございました芸術文化振興基金でございますけれども、平成二年に創設いただいたところでございます。これは政府出資が五百億、当初民間の拠出が百億ということを念頭に置いてスタートしたものでございますけれども、平成七年度末の民間の拠出金の見込み額が百十二億円でございますので、基金の総額は現在六百十二億円になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/34
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035・林寛子
○林寛子君 お話だけ聞いていると大変順調にいっている。寄附金の五百億等々ございましたけれども、私は実質は違うと思うんですね。今、次長のおっしゃったものには民間の宣伝広告費も含まれていると思うんですね。実質的な寄附ではなくて、その大半、五百億の中でも実質的には五十億しか寄附金はありませんで、あとは宣伝広告費で私は支払われているものであると思います。
ですから、その金額をまともに信用しない、信用しないと言うと失礼ですけれども、実質的にその金額の使える部分というのは十分の一であって、あとは宣伝広告費等々の名目で民間からの寄附をいただいているというのが現状であろうと思います。
それはそれでいいんです。別に私はそれに文句を言うわけでもありません。ただ、今まで政府が言っているものと外国との差異を、いかに日本が貧弱であるかということを私は申し上げたかったんですけれども、時間が余りありませんのでそれには触れないことにいたします。ただ、今申し上げましたように、実質的な宣伝広告費等々で幾ら寄附をいただいたところで中身がよくなるわけではないんです。宣伝広告費でそのものがよくなるというのであればいいんですけれども、宣伝広告を幾らしたって実態がよくならなければ何にもならない。
私は、今の国立劇場ができますときに申し上げましたけれども、仏つくって魂入れずじゃないですか、建物だけつくって、国立劇団があるわけじゃなし、国立の名に所属する、専属で持つ役者もいなければ、監督一人国立が持っているわけでもない。国立劇場さえつくれば、日本の文化行政として、建物さえ、箱物さえつくればいいというのではないんじゃないですかということを文教委員会で質問して、国立劇場をつくるときにも私はそれでいいんですか、貸し小屋ですかと質問したことがございます。けれども、皆さんの努力によって、これだけ年数がたちますと国立劇場も、一般の国民の皆さん方から、あいている日はありませんかあいている日はありませんかということで申し込みが殺到しております。その点は大変私はよかったと思います。
ところで、来年にオープンする予定の新国立劇場に関して、関係者もいらしていますから、まず私は、来年の新国立劇場のことに関して、どのようなプランをお持ちなのか、ちょっと伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/35
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036・小野元之
○政府委員(小野元之君) お話ございましたように、新国立劇場でございますけれども、来年の二月に竣工を予定いたしておりまして、そして秋に開場するということで現在その準備を鋭意進めておるところでございます。工事の進捗状況は平成八年の三月末で既に八〇%を超えております。
それで、平成九年の秋の公演でございますけれども、開場記念公演といたしまして、オペラを三本、バレエを三本、現代舞踊を三本、演劇を四本ということで、例えばオペラでございますと、「タケル・TAKERU」、「ローエングリン」、「アイーダ」、こういったものを出し物といたしまして、我が国唯一の国立の劇場になる新国立劇場の存在を国民の皆様に見ていただきまして、我が国の芸術文化の振興に資したいということで、それにふさわしい公演ができるよう現在鋭意準備を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/36
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037・林寛子
○林寛子君 「アーツプラン21」について、ちょっとどなたか御説明していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/37
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038・小野元之
○政府委員(小野元之君) 「アーツプラン21」ということでございますが、これは平成八年度の予算案でお願いしているものでございますけれども、三十二億円の予算を、まだ案でございますけれども、今のところお認めいただいているところでございます。
これにつきましては、先ほど先生から御指摘ございましたけれども、芸術文化振興基金、先ほど大臣もお話ございましたけれども、現在利息が非常に安くなっておりまして、こういったファンドを持って、その利息でもって運営をしていくという部分には利息が下がったことでいろんな問題があるわけでございまして、実は平成八年度予算では芸術文化振興会に対しまして約十億円の新しい補助をお認めいただいておるところでございます。
そういった観点で我が国の芸術の創造活動を支援していくということで重点的な支援もしてまいりたいということがございまして、「アーツプラン21」と銘打ちまして、先生方のお力添えもいただきまして、予算案の中にそれらの金額が入っておりますので、予算をお認めいただきましたら適正に執行をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/38
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039・林寛子
○林寛子君 今お話がありましたように、御説明を伺っておりますと、今までの芸術文化支援予算が二十二億円だったのが三十二億円になり、そして今の芸術団体の十億円ということで一挙にふえたようなふうに聞こえるんです。それは減るよりはふえた方がいいことは間違いないんですよ。けれども、この「アーツプラン21」というもので大変その筋の皆さん方、新国立劇場を使いたい、新国立劇場の設立を切望した皆さん方が大勢いらっしゃいます。新国立劇場設立までに三十年かかったんです、一つの劇場をつくるだけで。大臣、本当に申しわけないんですけれども、この新国立劇場で三十年かかっているんです。それだけ、三十年の悲願を達成するということで、それらを利用したいと願い続けた皆さん方にとっては本当に来年が待ち遠しいというのが私は現実だろうと思うんです。
ところが、今の次長の御答弁にありましたように、来年のオープンの発表されたもの、それらに対して、オープニングですから豪華にされるのは結構ですけれども、今の演目に対してオープニングの費用の予算はどれだけとっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/39
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040・小野元之
○政府委員(小野元之君) 開場記念公演、オープニングでございますけれども、これらに要する経費として、概算でございますが今のところ約二十三億円を見込んでおるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/40
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041・林寛子
○林寛子君 二十三億円でしょうか。通常五十億と言われているのは間違いでしょうか。それはすべてのことであって、あなたはどの部分に対して二十三億とおっしゃったのかはわかりませんけれども、私の手元に入っております資料によりますとこれは五十億だというんですね。しかも、御存じのとおり劇場は客席が千八百でございます。大臣も概算で頭の中で計算なさったらわかると思います。オープニングにこれだけの費用をかける。しかも、外国から糸目をつけないで人を呼んでくる。日本人にとっては、日本にいながらにして国がオープニングとして華やかにするものだからいいものが見られるというのは大変結構なことです。
ところが、後のことを考えていただきたい。国が新国立劇場のオープニングで少なくとも五十億と言われている費用をかけてオープニングをし、しかも外国からオペラの団体等々を連れてきて、演出家も外国から大物を呼んでくる。世界的な有名な人です。その人を呼んできて、その出演料が何と三億円だとも言われているんです。
私はそういうことに関して、国がするオープニングだからそれはいい。けれども、そのことによって、それが済んだ後、今まで日本国内で外人を呼んできて国民の皆さんに高度なものを見ていただきたいと言って努力をした人たちは、国がばんと値上げをしたものを呼んだら、後それらの人は圧迫されて、日本は高い金で行けるんだといって外国の皆さん方が出演料をつり上げるという、いわゆる民を圧迫するということがこの開演後、新装オープンのときだけは国が五十億もかけてやっても後は困るんではないかなという心配もされているんです。
そしてまた、この新国立劇場については総合監督というものが空席になっております。そのことも私は承知しております。けれども、それらの運営が三十年の悲願をかけて新国立劇場設立を望んだ人たちのすべての喜びに比例するのであろうか。その行事を行おうとしていることが、三十年の悲願をかけて新国立劇場ができても、オープニングだけは五十億か、次長は二十三億というお言葉ですけれども、私は五十億と聞いていますが、そういうものが果たして日本の三十年の悲願をかけて劇場の設立を望んだ人たちを逆に後で圧迫することにならないかということを私は危惧するものです。
ぜひ新国立劇場ができてみんなに喜ばれるような、これだけの費用をかけて、三十年の悲願と、しかも七百億円をかけて新国立劇場をつくったというものが、広く日本国民に受け入れられてみんなに喜ばれるというようなオープニングにしたいと思っていますので、私はその点を指摘して、本当にそれでいいのかどうかということをもう一度お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/41
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042・小野元之
○政府委員(小野元之君) 先ほどお話ございました五十億円という件でございますが、これは恐らく人件費や管理費等も含めた全体の経費が五十億でございます。したがいまして、いわゆるオープニングの公演についての経費は私が申し上げました二十三億というのが私どもとしては正確な数字だというふうに認識をいたしております。
ただ、お話ございましたように、長年の悲願でございますオペラを中心とした新しい国立劇場が平成九年にオープンするわけでございますから、先生御指摘いただきましたように、多くの人たちに喜んでいただけるものにしなければいけないというのは、もう御指摘のとおりだと思うのでございます。
私どもといたしましても、いろんな批判を各方面からいただいていることは事実でございますけれども、国民の皆様の長い間の願いでございました新しい国立劇場ができるだけ多くの方に喜んでいただけるような形でスタートできるよう最善の努力を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。そういう意味で、平成九年度の予算についても私どもとしては努力をしていかなければいけないと思っております。
お話ございましたような一部の特定の方に多くの金額を支払って全体の額をつり上げてしまうというようなこともあってはいけないと思うわけでございまして、私どもとしてはそういう事実はないと考えておるわけでございますけれども、いろんな批判もいただいていることも事実でございます。そういった批判は批判として受けとめながら、私どもとしてはできる限りの努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/42
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043・林寛子
○林寛子君 今おっしゃったように、本当にこの三十年とこれだけの費用、七百億円をかけてやったものが真に国民の文化発展のために寄与するというような劇場にぜひなってほしいという念願を込めて私は申し上げておきたいと思うんですね。
そしてまた、今お話ございましたけれども、努力していきますという言葉の裏に、来年オープンして、その翌年からは少なくとも一年間に十億ずつ赤字が出るんではないかという危惧が私はあるわけですね。そうすると、一つの劇場にこれだけの費用をかけて、七百億かけて、しかもオープニングに人件費も含めて五十億かけて、そして華々しくオープンして、国民のためにと言ったのが、翌年からは年間十億の赤字が出る。
そういうことになると、ここにも私は持っていますけれども、文化庁予算というものを昭和四十三年からずっと見ておりますが、大臣にぜひ聞いていただきたいことは、この新国立劇場をつくって、少なくとも一年間に十億の赤字が出るということになりますと、例えば芸術文化振興基金に対しての目減りがしているという今も次長のお話がありましたけれども、年間十億の赤字が出るというんだったら、少ない少ないと言われている文化庁予算の中でこの十億の補てんというものをしていくことになりますと、すぐさま私たちは頭に浮かぶのは、してくださいしてくださいと言って、次長がさっきことしの予算は十億ふえましたとおっしゃいましたけれども、民間団体への助成というものがそこで圧迫をされるんじゃないか。
そうなると、やっぱりこれは、言葉としては言いたくないんですけれども、官が栄えて民が滅びるというようなことに新国立劇場をつくったためになってしまって、真の細々と芸術文化を支えている一般の小さな劇団とか小さな楽団とか、そういうものに対する助成というものが毎年十億の赤字というものでそこから削られていくんじゃないかという心配がまた出てくるわけですね。
これが本当の心配だけに終わればいいんですけれども、少なくともそういうことがオープニングの前から危惧があるということに対しては、冒頭に私が申しましたように、仏つくって魂入れずというようなことになりかねない。国が器をつくっても何の劇団も持つわけではない。しかも一部では、何も持ってないからというのでオープニングのためにバレエ団をつくるんだ、バレエ団を募集するんだというようなことが世上でまことしやかに言われて、今さら国立の中でバレエ団を募集して何をするんですかと、オープニングだけのために民間のバレエ団から技術のいい者だけ引っこ抜いて、そして民間を圧迫することになるんじゃないかというような批判をオープニング前に世上にうわさされるようなことは、私は厳として慎むべきだと思います。
そういう意味で、新国立劇場がオープニングするということのお祝いの中で、その裏で、後のことの年間の赤字の十億と目されるものの心配と、その赤字のために、それでなくても芸術文化振興基金というものの先行きが心配されている現状において、私は果たして文化の振興を文化庁あるいは文部省がこぞってできるのかどうかということを危惧するものですから、そういうものを払拭できるような新しい門出の新国立劇場を迎えたいと思いますので、御決意のほどを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/43
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044・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) 数年前でございましたか、七、八年前でございましたか、自民党の文教部会の席で、先生が、文化国家文化国家と言うけれども、文化庁の予算はわずか五百億じゃないか、これでそういう大きなことが言えるのかどうかということを非常に御主張というか、我々に説教されたことを思い出すわけです。
確かに、これまでは物とかお金とか、そういうものが優先するような世間であったと思いますが、それを反省して、これからはやっぱり人の心を大事にしていくようなそういう社会にしていかなければならぬ。そのためには、名実ともに我が国は隅々まで文化国家、文化の社会でなければいかぬと私は思うんです。そういう意味からしますと、今の国立劇場というのはいつ行っても非常に利用されておりまして満員御礼。そういう点からいいますと、新しい劇場が来年オープンするということは非常にありがたいうれしいことであります。
ただ、今、先生が御心配になっているようなことが現に来年の秋以後起きまして、そしてせっかくこれまでそれぞれの民間団体に何がしかの応援をしてきたことがマイナスといいますか額が減るというようなことになってはこれはいけません。したがって、七百億お金をかけて立派なものをオープンさせていただくわけでありますけれども、その運営につきましても初年度から先生が御指摘になったようなことが現に起きないように文化庁で注意をしてまいりたいと思っております。
なお、この前の文化財保護法の改正から今日までさして附帯決議が生かされなかったんではないかというような御懸念も冒頭にございました。まあ、二十年後先生がここにおられてもまた同じようなおしかりをこの席で受けるということのないように、私どもも心して取り組んでまいることをお誓いさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/44
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045・林寛子
○林寛子君 きょうはまだまだ時間があると思って、私は奥田文部大臣と文化というものに対する論争を本当はしたがったんですけれども、この法案の中にまだ不備と見られる部分がたくさんあったものですから、それに時間をとられてしまって、本来の文化論を奥田文部大臣と検討するというような時間がなくなってしまって大変残念でございますけれども、これは次の一般の質疑のときにまた質問をさせていただきたいと思って、次回に譲りたいと思います。
きょう私、質問させていただきましたように、この法案が出てきますときに、その裏側にあるものというものをぜひ国民の側に立って法案をつくっていただきたい。冒頭に申しましたように、私、質疑の中で申しましたように、所有者の理解と所有者の納得というものがどこかにやられてしまうということでは、私は国民のための法律にはならないと、そういうふうにも思いますので、ぜひ委員長にもお願いをして、この法案が提出された中で、今、質疑の中で御答弁いただきまして、不備な点が多々あろうと思いますので、ぜひ何らかの形で今のこの法案の中の不備というものをこの委員会の質疑の中でぜひ委員長の御識見でもって完全な法案にさせていただくように。
附帯決議をつけたって、今、昭和五十年の前回のときの附帯決議を見たら何も実行されてないから、附帯決議なんてお飾りだなんて思うような態度ではなくて、特に文部省、文化庁におかれましては附帯決議の重みというものをぜひとっていただいて、この法律が通った後、真に国民のあるいは日本の文化財保護のために役に立つような法律として誕生することを切にお願い申し上げ、また文部省、文化庁の今後の文化行政に対する姿勢というものを改めて伺いますけれども、ぜひその心を大事にして、真に国民のために役に立つような文部省、文化庁であっていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/45
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046・小野清子
○委員長(小野清子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、井上裕君が委員を辞任され、その補欠として岡利定君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/46
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047・上山和人
○上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。
きょうは持ち時間わずか二十五分でございますので、端的に二点につきまして。一つは、建造物以外の分野においても登録を急ぐべきだという趣旨で、これは文化庁に一点。それからもう一つは、文化遺産、文化財等についての教育が初等中等教育で今どのように行われているかということについて、これは文部省に一点だけお尋ねをいたしたいと思います。
まず、最初の問題でありますけれども、文化財行政につきましては、全国的に取り組み、その進め方に差があると思いますけれども、総じて地方は文化財行政はおくれがちだと思っております。特に私の地元の鹿児島の実情を見ましても、実は奄美大島に名瀬市がございますけれども、ここはグスクとかあるいは土器、さらにはノロ祭事など、有形・無形の文化財の宝庫と言われているところであります。ところが近年、ただ一つこの地域を例にとりながら申し上げるのでございますけれども、開発の波にさらされております。そして、これは都市計画なんですけれども、区画整理事業やあるいは農業道路、農道やその他の道路工事等の影響を受けて、まさに破壊、消滅の危機にさらされております。
ところが、これらの文化財は指定文化財でないものですから、決め手になる保護策がないんです。したがって、消滅の危機に瀕しているわけでありますけれども、そういう地方の指定文化財以外の広く豊富な文化遺産をこれからどう保護するか、どう継承するかという観点で今回の法律改正は私どもといたしましては高く評価し、歓迎いたしているところであります。
そういう観点で考えますと、これは建造物からまず着手するのはわかりますけれども、むしろ建造物以外の有形・無形の文化財が、今申し上げたような開発行政やあるいは都市計画、区画整理事業、さらには道路事業等の影響を受けて、まさに破壊、消滅の危機に瀕している。こういう問題は対策を急ぐべき問題だと思うんです。
したがって、この法律が成立をして、まず建造物から登録を急ぐ、そして他の分野については調査をし、その上で実態を把握して登録を進めるんだと、それは原則的な対応としてはわかるんです。しかし、今申し上げたような実情、そういう問題を抱えている地域につきましては、建造物から先にということにこだわらないで、他の分野についてもその地域の実情に即して進めなければならないことではないかと思うんですけれども、そういうあたりの対策をどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/47
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048・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、今回、国といたしましては建造物からこの登録制度をスタートさせるということを考えたわけでございます。
その理由といたしましては、現行の指定制度だけでは対応できない緊急に保護すべき建造物というものがたくさんあるわけでございます。それから、その分野についてのデータも非常にそろっておりますし、私どもも十分把握をしておる。それから、この登録制度が文化財保護にとって本当の意味で望ましい形で、指定制度を補完する形でうまく機能する。あるいは学会や各方面からの要望がある。そういった四つの要件を考えまして、今回はとりあえず建造物についてスタートさせることが最も望ましいという判断をしたわけでございます。
実は、検討段階におきましては、そのほかの分野についても何らかの形でできないだろうかとか、あるいはいろんな考え方が成り立ち得ないだろうかということも検討したわけでございますけれども、とりあえずきちっとした形でスタートするのは建造物からやってまいりたいと思ったところでございます。
一方で、御指摘ございましたように、地方でさまざまな開発等も進んでおりまして、地方独自のさまざまな形での文化財保護の施策ということももちろんあり得るわけでございます。先ほど来御論議が出ておりますように、地方の指定文化財というものもございますし、二十六の府や県や市で地方の登録制度もできておるわけでございます。
そういう意味で、今回の国の登録制度は地方を縛るものではございませんので、地方独自の文化財の保護施策としてそういったことを建造物以外の分野について行っていくということももちろんできるわけでございます。そういう意味で、地方の自主性といったものも尊重していかなければいけないし、地方の文化財保護行政の活性化ということも図っていかなければいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/48
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049・上山和人
○上山和人君 地方の自主性を尊重しなければならないというのは、これはもう次長がおっしゃるように大原則ですよ。しかし、中央の文化庁が地方自治体の文化財行政に介入するということと積極的な指導、助言を行うこととは別だと思うんですよね。
私は今まで具体的な文化財の取り扱いをめぐって文化庁にもいろいろ相談をしたことが何回もございます。その都度感じますのは、文化庁の姿勢としてやむを得ないことかと思いますけれども、かなり地方に御遠慮なさる。これは遠慮と言えば聞こえはいいですけれども、熱心に一生懸命に取り組んでいただくんですが、それでも地方に御遠慮があって大変消極的に対応なさるということを少し感じておりますので、介入ではなくてやっぱり積極的な指導、助言はあってしかるべきではないかと思うんです。
先ほど林先生の御質問にお答えになって、地方の登録制度の実態も御報告がありましたけれども、今私が申し上げた、例えば一つの有形・無形文化財の宝庫と言われる名瀬市の実情を先ほど御報告申し上げました。そういう地域について特に積極的な御指導をなさる必要があると私は思うんですが、その点少し具体的に、余り時間がないですが、次長、どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/49
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050・小野元之
○政府委員(小野元之君) 文化財保護行政を進めるに当たりまして市町村の役割というのが非常に大きいということは、今回の法改正の中におきましても市町村の文化財保護審議会を法律に明定するというようなことも行うわけでございます。
いずれにいたしましても、先生御指摘ございましたように、地方にございます文化財を保護しながら活用していただく、それを国民の皆さんに楽しんでいただく、学習していただくということは非常に大切なことでございまして、そういう意味におきまして、私ども文化庁は、一応各方面の専門家もいるわけでございますので、決して介入という形ではなくて、そういう指導、助言ができるような分野につきましては、私どもも地方の実態を十分勘案しながら積極的に対応させていただきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/50
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051・上山和人
○上山和人君 それで、建造物以外の分野については調査を行いデータを把握した上で登録制度を進めていくということなんですよね。建造物をまず先に、これは原則としてそういうやり方でいいと思うんですが、次長が今お答えになった範囲のこととして、建造物以外は一切登録を進めないんだ、建造物が一定程度終わるまでは、そういうかたくなな方針ではない、今申し上げるような地域の実情に即しては建造物以外のものであっても登録の対象になり得る、また積極的な指導、助言を文化庁としてやる、そういうお気持ちだと理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/51
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052・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘のとおりでございまして、今回、法律制度として行いますのは建造物でございますけれども、実は私ども、内部で相談した段階では、近代の歴史資料でございますとか、あるいは無形民俗文化財でございますとか、さまざまなもので保護が必要なものというのはあると私どもは認識をいたしております。
ただ、登録制度の今回の法律の中身におきますスキームにおきましては、建造物に対する法の規定をそれぞれ置かせていただいたわけでございますけれども、それ以外の分野につきましては、現在設けさせていただきました規定のそのままの形ではなかなか適用がしにくい面も正直言ってあるわけでございます。
ただし、登録制度と同じような効果を持つと考えられます、例えば全国の無形民俗文化財について、こういったものは推奨していこうというものを私どもが仮に考えたといたしまして、そういったものをお勧めをして、全国でそういったものに名乗り出ていただいて登録をしていくということももちろんさまざまな形であり得ると思うのでございます。
したがいまして、この法律では登録制度として建造物しかしないから、ほかの分野は一切今後それが完成するまではしないといったようなかたくななものではございませんで、文化財保護のために重要だということがございましたら、私どもとしては弾力的な対応ということも考えなければいけないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/52
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053・上山和人
○上山和人君 よくわかりましたので、ぜひそのような姿勢で対応していただきたいと思うんですが、そのためにも、この法律改正案を準備なさる段階であらかじめ関係の地方自治体やあるいは関係団体等からのヒアリングもなさったんじゃないかと思います、この法律改正案を提案なさるに当たりまして。それを私は一々もう問いませんけれども、それでもかなりあらかじめ文化庁としては趣旨を説明なさって、理解をさせられた上で提案になっていると私は理解しているんですけれども、それでもなかなか地方の理解は十分だとは言えない実情だと思っています。
そこで、この法律が成立をしたら、その後直ちに私はもう一度この法律改正の趣旨を全国的に周知せしめて、今言われるような、今地方が悩んでいる文化遺産の継承についての、あるいは保護についての問題に適切に対処して、実効を上げるように御指導、御助言をいただきたいものだと重ねてお願い申し上げますので、どうぞひとつよろしくお願い申し上げます。
それでは、次の問題は、初中局長お見えでございますけれども、私は地方の文化財行政というのは、全国どこも同じだとは思っていませんけれども、総じておくれがちだというのは申し上げたんですけれども、文化財が、文化遺産が消滅の危機に瀕しているのになぜもっと地方が立ち上がらないのか、文化財行政の担当者を含めてもどかしさを感じることが多いんですよね。
やっぱり文化認識といいますか、文化遺産なり文化財等に対する根本の認識が少し足りない。だから、そういう文化の心というのを育てていくには教育の果たす役割は当然のことながら大きいわけです。今、初等中等教育段階でどのように文化遺産あるいは文化財等について、さらには広く文化と言ってもいいでしょう、文化的なものについてどのように取り扱われているか、初中局長、少し簡潔にお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/53
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054・遠山耕平
○政府委員(遠山耕平君) お答え申し上げます。
現在の学習指導要領におきましては、各学校段階を通じまして、社会科を初めとしまして国語あるいは道徳におきまして、児童生徒に我が国の文化や伝統を尊重する心情や態度を育てること等をしております。
例として申し上げますが、小学校の社会科におきましては、全学年を通じまして身近な地域の遺跡あるいは文化財などに関心を持ちまして、その観察や調査を行うこととしております。
さらに、具体的に第三学年では、「地域の文化財に関心をもち、人々の願いについて考える」と、こんな書き方をしております。それから第四学年では、「地域の文化などに尽くした先人の具体的な事例を調べて、先人の働きや苦心を当時の人々の生活の様子や考え方、技術や道具などの面から理解できるようにする」という、こんな記述がございます。第五学年、第六学年についてもそれぞれ記述がございます。それから、中学校につきましても、社会科の歴史的分野についてやはり文化財等について記述をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/54
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055・上山和人
○上山和人君 私は、この法律改正を契機に、教育でどのように文化遺産、文化財を教えるかということについても、もう一度文部省としても、学習指導要領の見直しを含めて、指導要領の改訂期もそう遠くない時期にあるわけですので、ひとつ御検討いただきたいなと思いますのは、私が指導要領に目を通しまして感じるのは、やっぱり少し体系的といいますか、一貫性といいますか、それに欠けるという印象を持っておるんです。
これは局長、中学校の指導要領が小学校の指導要領や高校の指導要領に比べて一番この分野では整っているように思います。特に、中学校の指導要領の中では、「歴史的分野」の中でちゃんと「目標」の中に文化遺産、文化財の取り扱いが明記されております。そして、その「目標」に沿う形で「内容」の展開の記述がございます。これは学習指導要領としては整っているし、体系的にも一貫性としても中学校の指導要領は私はそんなに問題はないように思うんです。
小学校の指導要領は、全学年にわたって記述が行われているという局長のお答えがありますけれども、実は「目標」の中には明記してありませんね。これは私の把握違いですか。小学校の方は「目標」にはなくて具体的な「内容」の中にごくわずかずつ記述があるだけだと、これは学年によって多少の違いはありますけれども、思います。
高等学校の指導要領に至っては、「目標」の中にはこの問題はない。これは私の見落としがありますかね。そして、高等学校の場合は発達段階が進んでおりますから、小学校、中学校のように丁寧な記述がなくても教師の主体的な指導で消化できるという前提があるかもしれませんけれども、高校での指導要領のこの問題についての記述は非常に乏しいですね。これは、「目標」にはもちろん設定されていない、そして日本史、美術、工芸等の「内容」の展開の中にはんのわずかずつ断片的に記述をされているにすぎない。
私は、学習指導要領に記述がなければ文化遺産の継承や文化財の教育などが効果的に行われないのはまことに教育の問題としては根本の問題を感じながらも、やっぱり私は、指導要領に依存する先生たちはいないんですけれども、指導要領を参考にしながら、指導要領に沿いながら、そしてどうさらにそれに肉づけをして指導するかという観点で現場の先生たちは頑張っていますから、指導要領は根本的なものとして整備をして、文化財問題はこの法律改正を機にいたしましてもっと現場が指導しやすいものにしてほしいなと思うんですけれども、私の把握違いがあるかもしれませんけれども、局長どうですか、その点につきまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/55
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056・遠山耕平
○政府委員(遠山耕平君) 小学校については「目標」に掲げられてないじゃないかというお話でございますが、確かに三年、四年、五年につきましては「目標」の中に入っておりませんけれども、「内容」それから「内容の取扱い」のところで文化財あるいは文化について触れているわけでございます。それから、第六学年におきましては「先人の業績や優れた文化遺産について関心と理解を深めるようにし、我が国の歴史や伝統を大切にする心情を育てる。」と、こういうことで「目標」として掲げているところでございます。
それから、高等学校におきましては「目標」には掲げられてないんですけれども、これは各時代の文化がどのような特色を持つか、そういうことにつきまして系統的かつ総合的に学習するということを目標としておりますので、そういう意味でわざわざ「文化財」という言葉を出さなかったと、こういうことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/56
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057・上山和人
○上山和人君 時間がなくなっておりますけれども、今なぜ文化遺産か、文化財か、今なぜ文化かという問題、テーマなんですが、これはそれこそいろいろ議論もしたいですけれども、時間もありませんから省略をいたしますが、やっぱり非常に大事な時期に来ているんじゃないか。この法律改正案をこうして審議している、そしてこの改正案が成立をすることになるんだと私は思います。
指導要領の「目標」になくて具体的な内容展開の中に記述をするというやり方、これは分野によっては当然あると思います。でも、指導要領の「目標」の中に文化の問題、文化遺産、文化財の問題が設定されないということは、今私たちが考えている文化の意義、文化遺産、文化財の意義から考えますと、やっぱり指導要領の認識が少し今までは足りないんじゃないかと、私は少なくともそう思います。
指導要領の改訂期も迫っているわけですから、ぜひこの機会に、特に初等中等教育段階の教育でどのようにこの問題を取り扱うかということが広く国民全体に文化の心をはぐくんでいく最も基礎的なことになると思うだけに、教育での取り扱い方、この問題の取り上げ方については指導要領の改訂を含めてこれから抜本的に見直した方がいい、そのように思うものですから、重ねて初中局長に、そしてまた大臣に一言御決意を表明していただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/57
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058・遠山耕平
○政府委員(遠山耕平君) 指導要領の「目標」というのは、その教科の目標を非常に概括的に示しているものでございます。「内容」につきましては、そこでその教科で取り上げる内容を示すものでございますので、そういう点で「目標」に「文化財」という言葉がないといけないということでは必ずしもなくて、それはその目標を達成するためにその教科の内容として文化財を尊重するということが入っていれば、ある程度そういう文化財尊重の態度を育てるというような目標は十分達成できるものと思いますので、先生の御意見につきましては教育課程審議会で審議するときにまた参考にさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/58
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059・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) ちょっと横で聞いておりましても局長の答弁は抽象的で回りくどいような感じを受けたんですが、私は率直に申し上げて、今の学習指導要領、小学校は平成四年、中学校は五年からだと思います。それで、役所で聞いてみますと、大体十年間ぐらいはこれを使ってきていますよということでございました。しかし、時代は非常に急テンポで変わってきております。それから、これからの教育のあり方について審議を煩わせております中央教育審議会におきまして、六月には中間報告がいただけるようでございます。その中には学校五日制の是非についても御意見が入るようでございます。
そういうようなこともいろいろ総合的に勘案しますと、十年も待たずにこの指導要領の改訂について作業に入らなければならぬ時期が来るんじゃなかろうか。そういう時期には、今、先生がお話しになりました文化財保護、愛護のことにつきましてもよくわかるような改訂にしていくべきだと。その時分まで私はこの席に長くおるわけではありませんが、やっぱり役人はずっと続いておりますので、ひとつ申し送り事項にしてまいりたいというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/59
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060・上山和人
○上山和人君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/60
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061・阿部幸代
○阿部幸代君 初めに、在日米軍基地内の文化財の保護策について質問します。
報道によりますと、沖縄県勝連町の平敷屋原遺跡の上に米軍が気象用レーダーを建設し、同遺跡の一部が修復不可能なほど破壊されているということですが、この事実を文化庁はつかんでいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/61
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062・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございました米軍基地内の遺跡の破壊の問題でございますけれども、私どもといたしましても沖縄県教育委員会を通じましてそれらの事情について把握をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/62
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063・阿部幸代
○阿部幸代君 この遺跡は、一九九一年に深さ約四十センチメートル、四メートル四万が試掘されたときに土器片など二百九十五点と二軒分の竪穴住居の柱跡が確認され、県の教育委員会が国指定の集落遺跡である仲原遺跡に匹敵する重要度を持つとの認識を持って保存を前提に埋め戻したものでした。この試掘場所の真上に今回鉄塔が建てられ、住民が町の教育委員会に通報したときには既に復元しようがないほど破壊されていたということです。
学術的な調査をすれば、縄文晩期、約二千五百年前とも約三千年前とも言われている縄文晩期の重要な遺物、遺構、住居跡など当時の生活が発掘される可能性があり、それが十分なされないまま破壊されたとか、米の伝播を含めた海上ルート研究の上で極めて重要な遺跡が無断で破壊されるなんて考古学上の大きな損失というふうに沖縄考古学会や考古学者が抗議の声を上げていますが、文部省は今回のこうした米軍による沖縄の遺跡破壊をどのように考えていますか。はるかな日本人の暮らしの歴史の破壊に痛みを覚えませんか。これは大臣に伺いたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/63
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064・小野元之
○政府委員(小野元之君) 米軍基地内におきます文化財の保護の問題でございますけれども、一般論でございますけれども、一般国際法上は外国軍隊には接受国の法令は適用されないという原則がございまして、したがいまして在日米軍には我が国の法令に基づく諸手続等も適用されないということがあるわけでございます。しかし一方で、日米地位協定の十六条にもございますように、米軍が我が国に駐留するに当たりましては我が国の国内法令を尊重する義務を負っているということもあるわけでございまして、文化財保護法についても同様の取り扱いになると私どもは考えているわけでございます。
そういった意味におきまして、米軍の施設の区域内におきます埋蔵文化財の取り扱いにつきましても、基地内の工事に伴いまして埋蔵文化財が発見された場合には、文化財保護法を尊重し適切な取り扱いがなされるということが望まれるところだと私どもは考えているわけでございます。
沖縄県教育委員会におきましても、この問題につきましては、今後、基地内の埋蔵文化財の取り扱いにつきまして米軍に対して申し入れを行うということも伺っておるわけでございます。
文化庁といたしましても、必要に応じまして県教委を指導するとともに、沖縄の米軍施設・区域内におきましても埋蔵文化財の適正な取り扱いがなされるよう、今後とも関係各省庁と連絡調整を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/64
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065・阿部幸代
○阿部幸代君 本来、民間の土地であろうと米軍基地内であろうと、文化財は文化財保護法にのっとって等しく保護されるべきだと思います。米軍基地内の遺跡、文化財を守るルールづくりを文化庁が早急にやるべきではないでしょうか。つまり、米軍の許容範囲内で文化財が保護されるという、そういう気まぐれではなくて、本来こうあるべきだというルールをつくるべきだと思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/65
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066・小野元之
○政府委員(小野元之君) この問題につきましては、米軍の方でもいろいろ反省の談話を出しておられたりしておるようでございますけれども、この問題につきましては沖縄県の教育委員会の方で基地内の埋蔵文化財の取り扱いにつきまして米軍に対する申し入れもしていきたいというふうに聞いておりますので、私どもとしてはそれを十分見守り、指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/66
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067・阿部幸代
○阿部幸代君 念のために聞きたいんですが、こうした米軍基地内での文化財破壊の事例はほかにもありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/67
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068・小野元之
○政府委員(小野元之君) 私どもとしてはそういった事例はほかには、現在のところ私は承知をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/68
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069・阿部幸代
○阿部幸代君 日本の文化財行政の最高の責任ある行政機関として、事実をぜひつかんでいただきたいと思います。
沖縄にはほかにも、例えば琉球王国の海外貿易品を収蔵した十五、六世紀ころの倉庫と言われる御物城の遺跡が、一九七七年に県が試掘など表面的な調査をしただけで、本格的な調査もできずに放置されて、現在、石垣が崩落して緊急に修理が必要になっているんですけれども、県が史跡に指定して保護したくても、米軍の厚い壁、米軍の建物とアスファルトの道路に阻まれている、こういう事実もあるんです。ぜひ実態を調査してほしいと思います。
最後に、米軍基地内にある貴重な遺跡、文化財を守るためにも、沖縄県民の米軍基地の整理、縮小、最終的には米軍基地をなくすこと、こういう要求は当然の要求であるということを強調して、次の質問に入りたいと思います。
法改正に関して何点か要望的質問をしたいと思います。
蔵づくりや蔵づくりを中心とした伝統的建造物群で有名な埼玉県川越市でも、文化財の登録制度の導入は大変歓迎されました。そこで出された問題ですが、川越市では一八九三年、明治二十六年に大火に見舞われています。登録文化財の対象をそのために第二次世界大戦前のものまで広げてほしいということです。広島の原爆ドームが世界遺産に推薦されたことにかんがみても、また築後五十年を目安とするという説明もあったことに照らしてみても、当然許容範囲だと確認してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/69
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070・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘のございました近代の文化遺産につきましては、私ども文化庁に協力者会議を設けさせていただきまして、平成七年の十月に報告をいただいているわけでございますけれども、私どもとしては、第二次大戦前の昭和期に建設されました建造物等につきましても登録あるいは指定の対象にするということで、現在、施策を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/70
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071・阿部幸代
○阿部幸代君 文化財保護のための支援措置についてですが、重要文化財、重要有形民族文化財、史跡、名勝、天然記念物等の家屋と敷地については、固定資産税、都市計画税は非課税となっています。これと整合性を図るために、重要伝統的建造物群保存地区、これは面になるんですね、並びに伝統的建造物群保存地区内の重要文化財以外の建物や土地についても何らかの減免をするべきだと思うんですが、どうですか。
〔委員長退席、理事森山眞弓君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/71
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072・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘の点につきましては、御指摘ございましたように重要伝統的建造物群の保存地区の土地につきましては、その建物がございます敷地でございますが、その土地につきましては、私どもも税制改正上の優遇措置を講じてほしいということで、平成五年度から平成七年度まで三年間も要望を行ってきたわけでございます。しかし、これは実は実現しなかったわけでございます。私どもといたしましては、文化財の保護を図っていくという観点で、特に土地についての固定資産税というのは金額等もかなり大きくなるわけでございますし、これがもし認められますと文化財保護行政に非常にプラスになるということもございまして、できるだけ努力をしたいと思っているわけでございますけれども、この点については関係団体等の要望等も踏まえまして、今後慎重に検討していきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/72
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073・阿部幸代
○阿部幸代君 ぜひ前向きに、建設的な検討をしていただきたいと思います。
それから、これから適用される登録文化財については固定資産税が家屋について二分の一以内の軽減が可能となりますが、軽減した市町村に対しては交付税措置はとられないというふうに伺っているんですけれども、今後、市町村への補てんとして交付税措置を講ずるようにこれも要望したいと思います。
文化財の保全にはそのための技術者の養成と確保が当然不可欠になります。登録制の導入によって保護対象がふえるところから、この問題がさらに切実になろうと思います。
川越市の例ですが、蔵づくりの泥壁の職人、左官屋さんですが、この後継者がいないことが大変深刻な問題になっています。明治二十六年の大火のときのその技術水準、これはもう既に失われてしまったというふうにも言われているんです。もともとは一軒の蔵づくりにつき一人の担当左官屋さんがいたそうで、泥の保全を、つまり一カ月に一回は泥を練って、火災時の目塗り、目張りという言葉がありますがこの場合は目塗りです、そのために備えていたそうですが、現在、川越市全体でも五人の左官屋さんしかいません。
文化庁は、文化財保存技術伝承助成とか文化財修理技術者等の国内研修を実施していますが、その対象を広げて蔵づくりの技術並びに技術者も対象として考えていただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/73
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074・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、文化財を後世にきちんと保存して残していくというためには、保存技術者を確保していくということは大変大事なことだと私どもは考えております。
〔理事森山眞弓君退席、委員長着席〕
私どもといたしましては、そういった保存技術のうちで保存の措置を講ずる必要があるというものにつきましては選定保存技術という制度をつくっておりまして、それの選定をしていくということがございます。そして、その技術を有する方を選定保存技術保持者、保存団体ということで認定をさせていただきまして、後継者の育成や研修を行っているところでございます。
具体的に、例えば文化財の建造物の保存修理の技術者の方、あるいは宮大工の方、カヤぶきの職人、そういった技能者につきましては認定をいたしております。それから、こけらぶきの技術でございますとかあるいはひわだの技術でございますとか、そういったものにつきましても研修を行いまして、そういった文化財の修理等が適切にできるように今努めておるところでございます。
今、お話ございました蔵づくり等につきましても、こういった全体の中でそういったことも含めて検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/74
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075・阿部幸代
○阿部幸代君 権限委任に関してですが、川越市の場合は市民の熱意や運動にも支えられて庁内に建築や埋蔵文化財の専門家など九人の職員から成る文化財保護課があり、審議会にも民俗学、考古学、歴史学、建築学などの専門家が十二人いて文化財保護に従事していますが、ここまで来るのに時間がかかっているわけです。指定都市や中核市にこうした専門家を中心とした体制をぜひつくっていただきたいということ、これも要望といたします。
次に、重要文化財の輸出の許可の問題です。
この「輸出」という言葉遣いがとても気になりました。広辞苑で調べてみたんですけれども、「輸出」というのは物を運び出すこと、同時に、財貨を海外に売ることと二つの意味があるんですね。今回の改正で、輸出の許可に当たって文化財保護審議会への諮問を要しないというふうに規制が緩和される。国際交流が活発になされるという趣旨を込めておられるんだと思うんですが、念のために、この輸出の許可ということは、今後、日本の文化財が海外に売り飛ばされる、投機の対象としていくようなことを意味するのではないし、その法的根拠になるものではないということを確認してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/75
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076・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、文化財保護法では、例えば四十四条では「輸出」という言葉を使っておるわけでございます。ただ、この「輸出」という部分につきましては、永久的にその文化財が海外に出てしまうということではございませんでして、ここで言っておりますのは、海外で展覧会をやる、それに外国で展示をするために日本の文化財を一時的に貸すといいますか、陳列のために一時的に国外に出すということを「輸出」と言っておるわけでございます。
そういう意味で、今回、この輸出の許可につきましては、文化庁の専門家によって当該展覧会がどういつだものかということ等を十分判断した上で、問題がない展覧会であれば、できるだけそういった日本の重要文化財を外国の方に見ていただくということも国際交流の観点で大変大事なことでございますので、そういうことにつきまして手続を簡素化するということも一つの観点で必要だということがございますので、輸出の許可につきまして審議会に諮らなくてもいいということにさせていただきたいと思っているわけでございます。
いずれにしましても、この「輸出」は一時的に展覧会に貸し出すという趣旨でございまして、永久的に売り払ってしまうという意味ではないということを申し上げておきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/76
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077・阿部幸代
○阿部幸代君 最後になりますが、今回の文化財保護法の一部改正について、文化財の登録制度の導入ということで、これは基本的に歓迎をしています。しかし、埋蔵文化財の保護策についてどうなるのかということが大変気になるわけなんです。
前回、一九七五年、昭和五十年に文化財保護法が改正されたときに、参議院の文教委員会では附帯決議が上げられています。この決議では埋蔵文化財が重視されていて、次のように指摘をしているんです。「今後、文化財保護の理念の確立、重要な埋蔵文化財包蔵地の発掘に関する許可制の実現等その根本改正に取り組まなければならない。」として、法の運用に当たっての努力事項として、二番目ですが、「埋蔵文化財の破壊を防ぐため、法第五十七条の五にもとづく停止命令期間内において、十分な調査を行うとともに、必要がある場合には、史跡の指定又は仮指定を行うなど、埋蔵文化財の保存に万全を期すること。」と、こういうふうに上げてあります。
文化財保護行政の立場として許可制の実現などが求められていると思うんです。つまり、この附帯決議の後二十年余りたつて、むしろ埋蔵文化財は危機にさらされているということが考古学者やあるいは埋蔵文化財の保護運動に従事している方から強く言われているんですね。ここで言われた許可制の実現などが求められてきているんではないかと思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/77
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078・小野元之
○政府委員(小野元之君) 許可制につきましては、御指摘のように五十年の附帯決議の中に含まれております。ただ、この許可制を仮に採用するといたしますと、実は埋蔵文化財包蔵地は全国に今三十七万カ所以上あるわけでございまして、これを一律に許可制にするということにいたしますと大変強い規制が国民の皆さんの土地等にかかるわけでございます。
そういう意味で、今、規制緩和が非常に叫ばれているわけでもございますし、許可制にするということだけで埋蔵文化財の保護をするというのではなくて、私どもとしてはむしろ、開発との調和ということをよく言われるわけでございますけれども、実は現在、埋蔵文化財の問題につきましては、もう少し早く発掘調査をしてほしいというような要望もございますし、それから、調査をしないで工事が進んでしまって大変困ったというような事例も幾つか出てきておるわけでございます。もちろん、開発と調和を適切に図っていくということは非常に大事なことでございますけれども、私どもといたしましては、何といいましても埋蔵文化財行政を適切に行うためには、地方公共団体に専門職員を配置いたしまして、そして適切な事前の調査をきちんとやっていく、そしてその上で工事が必要だということであれば、できるだけ文化財に損傷がないような形でもちろん工事をしていただかなければいけないわけでございます。
いずれにいたしましても、許可制を採用するということは大変強い規制をかけるということでございまして、規制緩和に逆行することも事実でございますので、そういう形ではなくて、むしろ現在各方面で言われています、もっと調査員をふやしてきちんとした調査をすべきだとか、あるいは速やかな調査が行われるように、ある程度のスタンダードといいますか基準を設けて各都道府県や市町村を指導する、そういった点に重点を置いて現在のところ私どもは施策を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/78
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079・阿部幸代
○阿部幸代君 事務処理の簡素化あるいは迅速化を急ぐ余り、埋蔵文化財の破壊が促進されることのないように要望して、質問を終わります。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/79
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080・堂本暁子
○堂本暁子君 きょう提出されました文化財保護法の一部を改正する法律案、私は三十年あるいは四十年遅かったんではないか、この法律がもし四十年前にできていれば、大正あるいは明治の建造物がもっと残っていたのではないかという気がしてなりません。
特に、私は帝国ホテルの保護運動をしておりました。ライトという世界的な建築家の第一期の非常に価値のある建物でございました。国としてはその代替地の提案とかいろいろあったんですけれども、結局壊されてしまいました。もし、この法律がもっと早くあったらという思いは大きいのですけれども、きょうこれがここで採択され、そして国会を通過することになりましたら、私は文化庁に、これからせめて残っている価値のある文化財を大いに保護して、柔軟に所有者の方とも対応していただきたいというふうに思っております。
きょうは、私は奄美に生息しておりますアマミノクロウサギについて質問をさせていただきたいと思っております。
一九六三年にアマミノクロウサギは天然記念物から特別天然記念物に格上げされております。生息地は奄美大島、徳之島のみに限られておりまして、一層一種、古いタイプのウサギで、世界的に見ても貴重な日本の固有種でございます。世界自然保護機構、これが世界じゅうの大事な種として指定しているレッドデータブックには三十年前から絶滅指標の最も高いランクでございます絶滅の危機に瀕している種として指定されています。
エディンバラ公がわざわざ日本へ来られたときは奄美大島まで足を運ばれて、アマミノクロウサギが生息している、そして実際に目にされて安心されたということですけれども、それ以後、急速に種が減っているということです。
私はたまたま一九九三年の三月二十二日に参議院の予算委員会でこのアマミノクロウサギについて質問をいたしましたところ、当時の宮澤総理大臣は、島全体にその動物がいて、大変動くものだからなかなか難しいかもしれないが、レッドデータブックにも載っているということなので、行政の方で努力をしてもらいたいと思っている。予算が要るのなら、金の方はいいのですが、むしろ調査する人の方が難しいんではないでしょうか、御指摘のある問題ですから、行政の方で力を尽くしてもらいたいと思いますというふうに総理大臣が答弁されました。それから三年の歳月がたって、今まさにそのウサギの生息地にゴルフ場の許可がおりようというようなことを大変周りの奄美に住むクロウサギを心配している方たちは危惧しておられます。
総理大臣、そして環境庁長官の答弁に従って環境庁はこういった奄美諸島の「生態系多様性地域調査」というのをつくられました。その報告を読みますと、聞き取り調査によりますと、今ゴルフ場の建設が予定されております住用村、そこにアマミノクロウサギが生息しているということが聞き込みでは言われております。ところが、そのふんの調査ですね、どれだけどこにクロウサギがふんをしたかということの表があるんですけれども、そこには一切ふんがあるように書いてございません。
環境庁に伺いたいのですが、どうして今ゴルフ場の建設が予定されている住用村、皆様にお配りしてございます「奄美大島」という資料の住用村というのはちょうど真ん中あたりにある岬でございますけれども、環境庁は、ゴルフ場がここに建設される、そのために総理大臣としては、十分に調査をしなさい、国として行政的に対応しなさいと言うにもかかわらず、なぜこの住用村の調査をなさらなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/80
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081・小林光
○説明員(小林光君) 御説明申し上げます。
今、先生御指摘の調査の件でございますけれども、島全体の貴重な野生動物を守るためにどういう調査をするかという目的で平成五年、六年、二カ年かけて実施しました。
御指摘のように、聞き取り・アンケート調査では島全体のアマミノクロウサギ等貴重な動物の生息状況が把握できたと思っております。
これと並行しまして、島内各地におけるアマミノクロウサギの生息密度というのを把握したいということで、クロウサギのふんの調査で密度を推測しようということで調査を始めました。その調査ルートは沢筋に設定したわけですけれども、全域全部びたっと調査するというわけではございませんで、かなり代表的なところを選んでやっているということでございます。したがいまして、調査のルートはゴルフ場の開発予定地の中では設定しておりません。
その理由ですけれども、当時、土地所有者でもありますゴルフ場の事業者みずからがアマミノクロウサギの専門家の協力を得まして詳細な調査を実施しているという最中でございましたので、当方の調査を重ねて行うことについては御理解が得られなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/81
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082・堂本暁子
○堂本暁子君 その所有者は岩崎産業という産業ですけれども、その岩崎産業の許可というか、が許してくれなかったゆえに環境庁はそこの調査をしなかったということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/82
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083・小林光
○説明員(小林光君) 一応、環境庁の調査目的は、先ほど御説明申し上げましたように、島全体で……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/83
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084・堂本暁子
○堂本暁子君 もういいです。今の質問にだけ答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/84
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085・小林光
○説明員(小林光君) はい。一部地域の詳細なデータは得られませんでしたけれども、島内全体の生息状況は把握できたと考えておりまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/85
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086・堂本暁子
○堂本暁子君 いや、違います。そんなことは聞いてないでしょう。時間がないから結構です。それじゃやめてください。
私が伺ったのは、岩崎産業の許可がなかったから入れなかったのかと聞いているんで、そのことだけに答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/86
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087・小林光
○説明員(小林光君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/87
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088・堂本暁子
○堂本暁子君 それでは、今、課長がおっしゃった県の方で調査をしている、この資料はすべて公開されていますか。これは環境庁に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/88
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089・小林光
○説明員(小林光君) 公開してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/89
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090・堂本暁子
○堂本暁子君 では、私どもがそれは手に入れることができますね。県の調査ですよ。今、県の方で重なってやっているから環境庁はやらなかったんだというふうにお答えになりましたけれども、その県の方がやった調査あるいは業者がやった調査、これは公開されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/90
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091・小林光
○説明員(小林光君) 誤解がございまして、訂正させていただきます。
県の調査の方につきましては、私どもはまだ入手してございません。まだ見られる状況にはなっていないということでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/91
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092・堂本暁子
○堂本暁子君 鹿児島県教育委員会から、事業者がここのところ、今の住用村というところでございますけれども、その住用村にゴルフ場をつくることは余りアマミノクロウサギに対して影響がないということの文書が文化庁に届いています。
文化財保護法の八十条、そこに「天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。」としています。
ところが、鹿児島県から保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合この限りでないということで、この件については影響が軽微なので文化庁長官の許可を必要でないという判断をされたそうですが、これはどういう根拠でそういう判断をなさったのか。鹿児島県からきょうお越しいただきまして、本当にありがとうございました。県の方からお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/92
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093・福永功
○参考人(福永功君) 同開発地域につきましては、事業者の委託を受けまして、学識経験者から成る調査検討委員会が設置をされ、その指導、助言のもとで平成五年四月から平成六年三月の間季節ごとの調査がなされました。その調査を踏まえまして、事業者は県教育委員会との協議の上、アマミノクロウサギ等に対する保存対策等を策定し、それを含めた調査報告書が県教育委員会に提出されたところでございます。
県教育委員会といたしましては、この調査報告書及び計画地の利用の変遷や事業計画書等の資料に加えまして、環境庁調査報告書の内容等を資料といたしまして、県文化財保護審議会に意見を徴しました。同審議会におきましては慎重な検討がなされ、保存対策にかかわる事項を遵守すれば天然記念物の保存に及ぼす影響は軽微であるとの結論がなされたところでございます。
このような審議会の報告を踏まえ、県教育委員会といたしましては、事業者が県教育委員会が示します天然記念物の保存を期する諸措置を講ずれば、文化財保護法第八十条第一項の規定によります文化庁長官の許可を要する行為に該当しないというふうに判断をいたしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/93
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094・堂本暁子
○堂本暁子君 一九七七年、鹿児島県教育委員会、まさにきょう次長いらしてくださっているわけですが、の報告によりますと、クロウサギは六千羽から一万羽いたということです。それが安倍晋太郎氏の資料によりますと最近ではおよそ千羽に減った。十分の一になっているわけです。
そして、日本国といたしましては、生物多様性条約を批准している国でございまして、その批准している中に、絶滅の危機に瀕している種については保存するということの国際的な約束も日本は取り交わしております。そういった中で国際的に三十年間絶滅危惧種として指定されている。しかも十分の一に減少している。
それを鹿児島県がこれだけ条件を出されているんですが、余り質問はしないことにしますけれども、鹿児島県が影響がないと思うのは、工事の関係者を啓発するパンフレットを作成する、それからごみ処理等によって犬や野猫の増加をできるだけ防止するとか、個体の営巣の確認等における教育委員会の連絡と協議による適切な措置とか、周辺地域に配慮した農薬の使用とか、竣工五年間は継続的な調査の実施と村の教育委員会への報告を行うとか、こういったことでゴルフ場をそこに設定して、千羽に減ってしまったウサギがこれ以上減らないということの保証は私はできないと思っています。
きょうは文化財のこともございますけれども、天然記念物も文化財と同じようなものなんです。そういった本当に貴重なものをぞんざいにする日本というのがどんなに経済成長で豊かな国になっても本当に豊かな国ではないという、そういう批判を国際的に今大変受けているのが日本国でございます。
文化庁に伺いますけれども、こういった指摘を県の方からお受けになって、どのような対応を今後なさる御予定でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/94
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095・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、鹿児島県教委の方から私ども文化庁に対しまして、本件のゴルフ場の開発事業につきまして、県の文化財保護審議会での検討それから環境庁の調査結果等を踏まえまして、事業者が天然記念物について適切な保護のための措置を講じるということを条件に、文化庁長官の許可を要する場合に該当しないと判断するんだけれども文化庁としてどうかということの照会がなされておるわけでございます。
私どもといたしましては、特別天然記念物にかかわることでもございますので、必要的な諮問事項ということではないわけでございますけれども、文化財保護審議会の先生方の御意見も聞き、慎重に検討したいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/95
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096・堂本暁子
○堂本暁子君 それでは、要望させていただきたいと思いますが、その専門調査会の先生方に次の資料をお渡しいただきたい。この環境庁の「生態系多様性地域調査」とこれ、二冊ございます。これですね。それから次に、IUCNのレッドデータブック、日本のレッドデータブック、国会の総理が答弁された議事録、並びに県の今公表されているはずのというふうに、環境庁がよくわからないとおっしゃったその報告書、並びにゴルフ場の開発計画、それのすべての計画書、これを全部お渡しいただきたい。そのことを、これは県への要望であると同時に、文化庁に要望したいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/96
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097・小野元之
○政府委員(小野元之君) 文化財保護審議会で御意見を私どもはお伺いするわけでございますけれども、その場合には、本件に関する必要な資料を先生方に見ていただいた上で判断していただくということが必要だというふうに考えております。
今、堂本先生からお話ございました御指摘も十分踏まえて、適切な資料により意見を伺ってまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/97
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098・堂本暁子
○堂本暁子君 よろしくお願いいたします。県の方も、それから文化庁にもよろしくお願い申し上げます。
県に伺いますけれども、岩崎産業から拒否されて、環境庁の、しかも一国の総理大臣がこれはやると言ったことに対して、一つの産業がそこの立入調査を認めない。これはその産業の持ち物なのか、それとも日本国民の何千年にわたっての、そしてこれから次の世紀に向けての私は資産だと思います。こういった日本の非常に特殊な天然記念物あるいは文化財、法隆寺を壊すということをだれがいいと言いますか、それと同じような価値のあるものに対して、その産業がゴルフ場をつくるためにそこの立入調査を許さないということは私はおかしいと思う。県はきちっとそこにお入りになって、中間に入って交渉して、これから環境庁がそこの調査を再度できるようなふうにおぜん立てをしていただくことはできないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/98
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099・福永功
○参考人(福永功君) 当該ゴルフ場建設予定地は事業者の所有地でございまして、したがいまして私有地での調査等は所有者が了承しなければ困難と思われると、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/99
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100・堂本暁子
○堂本暁子君 文化庁にもお願いしたいんですけれども、ここが私は大変日本の文化財なり天然記念物なりの弱いところだと思います。これは、国際的にこれだけ貴重だというものをこの私たちの時代にそういった形で開発するということ、それは大変問題があるのではないかと思いますので、その点も今後文化財の審議会の中できちっと検討していただいて、このケースについてもきちっとした結論を得ていただきたいというふうに要望いたします。
それから、環境庁については、何とか再度そこの地域、皆様があきらめられた地域について、そんな広い場所じゃありませんから、きちっとした調査をしていただきたい。なぜならば、県の方の調査では果たして巣穴の調査、繁殖状況が調査されているのかどうか。されてないというふうに聞いております。また、岩崎産業が必ず同行していると、こういうことでしたら、客観的に国としてどうなのかあるいは地球環境としてどうなのかという視点で結果が出るかどうかは大変疑問だというふうに思っています。
ススキのある原にも、それから海岸沿いの急傾斜にも生息しているということは地元の方がおっしゃっています。百羽近いクロウサギがいる可能性があると。こういったクロウサギの巣それから繁殖状況を調査した上で、文化財保護法上の許可対象になるか否かをこれは検討していただきたい。そのことを文化庁としてぜひお約束していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/100
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101・小野元之
○政府委員(小野元之君) 基本的な調査につきましては、環境庁さんそれから県教委の方でおやりいただいていることでございます。
私どもといたしましては、そういったことを踏まえた上で審議会に、先ほど先生からも御指摘ございましたけれども、適切な資料をお諮りした上で、審議会の先生方の意見を伺った上で判断をしたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/101
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102・堂本暁子
○堂本暁子君 それでは、そのきちっとした調査並びに文化庁の方の結論が出るまで、実態が明らかになるまではゴルフ場の開発は絶対に手をつけないということをこの際、県の方にはお約束いただきたいと思います。
それから、当委員会あるいは私自身にでも結構ですけれども、県でなさった調査資料をぜひ提出していただきたい。そして、野生生物のこれからの、クロウサギだけではなくて、これも天然記念物ですが、オカヤドカリの調査も実施されてないということですので、それについての調査も実施していただきたい、これは県の方に要望いたします。
文部大臣、きょうはもうお答えいただく時間がないと思いますけれども、文化財と同じにこれだけ世界じゅうから注目されているクロウサギの生息地の一部でございますが、そこが今まさにゴルフ場の開発がなされようとしている。そして県としては文化庁長官の許可も要らないのではないかという判断をなさっている。これは大変ゆゆしき問題であるというふうに私は思っておりますので、大臣にもよろしくお願いを申し上げたい。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/102
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103・江本孟紀
○江本孟紀君 私はこの国会に参加をしまして、私は一応スポーツ・文化の江本というふうにして活動させてもらっておりますので、文化ということについても非常に関心がございます。当然、文化財の保護ということに関しては、これは歴史を継承するといった意味からも大変重要なことだというふうに思っております。
しかし、「文化財」という言葉は非常に重い言葉だというふうに思っております。そこで「文化財」という言葉を使う場合に非常に慎重にならざるを得ない。そして、例えば文化財というものを指定する場合にも明確な基準を設けないと、これは最近ここで出ております文化財保護法の改正も含めて、この文化財の定義といいますか、非常にこの言葉を拡大解釈されてしまうようなことも出てくるのではないか。そういったことでその辺のことを質問させていただきます。
私がちょっと気になっているのは、ことしに入って、これは神奈川の方なんですけれども、いろんな新聞でこういうのが載っておりました。旧海軍東京通信隊蟹ケ谷分遣隊の地下壕を文化財としての保存をというような記事がいっぱい出ておりまして、その中に、地下壕の要するに太平洋戦争時代の戦争遺跡、こういったものを保護すべきじゃないかというようなことがいっぱい出ております。
これは「久末城法谷の自然と蟹ケ谷通信隊地下壕の保存に関する請願」というのを一部の人が川崎市議会に出しておるものなんですけれども、この中に「文化財保護法「史跡名勝天然記念物指定基準」で戦争遺跡も「文化財」にふくまれる」ということを明確に書いて、これを文化財として指定すべきだ、残すべきだというようなことを訴えているわけです。
そこで、この場所なんですけれども、この場所はかつてあの一億円が竹やぶに捨ててあったという場所なんです。御記憶にあると思いますけれども、深くは言いません。この竹やぶのあたりが大変な不法投棄の場所になっていて、急斜面で、場所はもうどうしようもないところで、ごみやヘドロがたまって、悪臭、蚊やハエがたかってどうしようもないというような場所なんですね。
それで、不法投棄のごみなども大変多いわけですから、川崎市にこれを何とかしてくれと付近の住民がそういった要請をしておるわけですけれども、そこをとりあえず埋め立てて宅地を造成したらどうかというような計画を立てたところが、そこは貴重な戦争遺跡があるので文化財としての保護をすべきだという一部の人たちの反対運動に遭ってとまどっておるというような内容が、ちょっと話はあっちこっちいきますけれども、この新聞に相当出ておるわけですね。
そこで、文化庁にお尋ねしたいんですけれども、先ほど言いましたこの市議会に提出した反対派の人たちの中に、この「史跡名勝天然記念物指定基準」で戦争遺跡も「文化財」にふくまれる」という記述を引用して苦情を言っているわけですけれども、これは拡大解釈ではないのかなというふうに私は思うわけですね。文化財に指定されるような戦跡、要するに戦争遺跡というものは何を基準にするのかということをお聞きしたいと思います。
原爆ドームという問題がありましたけれども、これもやっと昨年九月二十一日に、文化財保護審議会がドームの推薦を了承して、それを受けて文化庁が推薦、決定したという経緯があります。
しかし、そういったものとこういった文化財というもので保護しろと言っているこの川崎の件なんですけれども、この人たちが反対と言い始めるのは、どうもこれは政治的なにおいがちょっとします。逆に言えば、文化財保護という名をかりて政治的に利用するというようなこういった人たちが、例えば文化財保護という名のもとにこういう行動を起こそうという人たちがふえてくるんではないか。 一応こういう「史跡」という項目に、「史跡名勝天然記念物」という中に「戦跡」という文言を入れた以上は、明確な基準というものを示さないと、こういった問題が全国各地で必ず起きてくるんじゃないか。
大体こういったものは非常に耳ざわりなものですから、地元の全国各地の新聞あたりでぽっと出すと、不勉強な新聞記者あたりがわっと書くと、もう何かそこで計画をしているとかなんとかというような人たちも含めた行政もびびっちゃって、これは何もできなくなるというようなことで、どうもおかしくなる。
太平洋戦争というのは、我々は戦後生まれですのでそれは全くわかりませんけれども、それの残ったものといいますか戦跡はいっぱいあります、確かに。私の田舎でも空港の横には零戦か何か飛行機を入れていたコンクリートの防空壕は当然むき出しに見えていますし、そんなものは全国どこへ行ってもあるわけですね。
今問題になっている地下壕という問題からいいましても、私は前にテレビの番組で八丈島に取材に行ったことがありますが、八丈島空港の両わきに大きな山が二つあるんですけれども、この山は陸軍と海軍が同時に最後のとりでとして防空壕を掘った。山の上までずっと掘っているんですけれども、海軍の方がちょっとずさんでした、つくり方が。私は二日間にわたってそこを調査というよりも見たんですけれども、陸軍の人が標高何百メーターぐらいの頂上のところまでつくって、トーチカもすごいのがあって、きれいに今も残っておるんですね。
私は一瞬そのとき思ったんですけれども、これは観光でトンネルか何かをみんなで見物させてみるとおもしろいなと思ったんです。そういったものは、私も一例として体験をしておりますけれども、これは全国にいろんなところにあるわけですね。そこにあるものに対しては、それぞれ地元の人も含めてかかわった人たちはいろんな思いを戦跡というものに対して持つわけです。しかし、これが文化財だ文化財だと言って騒いでしまって、今度の文化財保護法の中なんかにでも組み込まれていって違う方向に行ってしまうというようなことが出てくる可能性というのは非常にあるので、文化財というものとは違う存在であるということが戦跡の中にあると思います。その点について、違う方法でもっと伝えるとか、それから戦跡について少し明確にこういったものであるというふうにお聞きしたいと思いますので、その点をきょうはお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/103
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104・小野元之
○政府委員(小野元之君) 御指摘ございましたように、文化庁におきましては、近代の文化遺産につきましても文化財としての保護を図る必要があるということで、御指摘ございました指定基準を改正したことは事実でございます。
お話にもございましたように、新しい基準におきましては、旧指定基準で「古戦場」というふうに書いてございましたものを「戦跡」というふうに改めたわけでございます。これは戦争に関する遺跡の、史跡に指定する場合の範囲を第二次大戦の終結ごろまでという考え方に基づきまして「戦跡」というふうに改めたところでございます。お話ございましたように、戦跡ということで原爆ドームを新たに平成七年度に史跡に指定したという事実はございます。
ただ、私どもといたしましては、御指摘ございました地下壕につきまして詳細は存じていないわけでございますけれども、一般論でございますけれども、国の史跡に指定するかどうかという場合でございましたならば、我が国の近代史を理解する上で欠くことのできない遺跡であって、国として保護する必要があるかどうかというのが一つの観点でございます。それからもう一つは、遺跡が歴史上の重要性をよく示しておって、学術上も価値の高いものであるかどうかと、こういった点も十分考えていかなければいけないと思うのでございます。
私どもとしては、国としてもし考えるということであれば、そういった基準に照らして考える必要があるというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/104
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105・江本孟紀
○江本孟紀君 今、私が例として取り上げた海軍の通信基地の跡なんかは新聞にこれだけ出てきておりますので、当然また問題になると思いますので、ぜひ検討していただきたい。
私は、この新聞に書かれている中をよく読みますと、地元のすぐそばの人たちはもう本当に困り果てているわけですね。それで、これを反対反対と言うのは、大体ちょっとほかのよそから来ている人が多い。そういうところもよく踏まえて、これがもし問題として出てきた場合にはぜひ検討をしていただきたいと思います。
最後に、「文化財を守る」という本を書かれた江本義理という人がいますが、これは本屋で探してきたんですけれども、私と同じ名前なんで、ただ関係は全くありません。もう四年前に亡くなられたんですけれども、文化財に対する保存とメンテということに関しては非常に以前から危機感を訴えておりました。
文化財がつくられた当時というのは、当然ですけれども、今日のような地球環境は想定を全くしてなかったわけですから、所有権の公的・私的を問わずにフォローしなくてはならないと、こういうことを思います。それで、屋外とか室内を問わず、文化財の保全についての考え方、そしてまた、それにかかわる専門家の育成や人材の活用について文化庁のお考えと、その辺について大臣にもお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/105
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106・小野元之
○政府委員(小野元之君) 貴重な文化財を適切に保存していく、そして次代に継承していくということは私どもも大変大事なことだと思うのでございます。そういう意味で、文化財が経年の変化、年月を経ることによりまして、いろんな傷みあるいは環境の悪化によります損傷といった問題、こういった問題についても処置を恒常的に実施していかなければいけないと思うわけでございます。
近年、酸性雨の問題、大気汚染等の問題でさまざまな問題が出てきておるわけでございますけれども、文化庁といたしましては、国宝、重要文化財の保存について全力を挙げて後の世代に引き継いでいくということが大切なことだと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/106
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107・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) 環境の問題と文化財との関係でありますが、環境をとらえますと、空気、水、土壌、この三つに大別されると思うんですが、今の先生のお話を聞いておりますと、非常に大気汚染の方に力点を置いての御発言だったように思います。
私が思いますのに、日本の国内の大気汚染に関する環境問題は、かなり以前の四日市ぜんそくで、あれから非常に本腰を入れて、現に国内ではまあまあの成果を私は上げていると思うんです。ただ、空気には国境がございませんので、中国大陸からかなり偏西風によってあちらの汚染された空気がこちらの方にも、これはもう前からでありましたが、黄砂があれと同じような状況で来ていると思うんですね。
それで、今、新進党に行かれました渡部恒三先生が通産大臣のときに、日本の国内で開発してもらった製鉄所なんかでの石油の硫黄の脱硫装置を、うちの国内でこういうのを開発をしたのでおたくの国でも取りつけてもらえまいかというような宣伝を兼ねての協力の要請に行かれましたけれども、それは幾らかかるのか、大体一千億、いやいやそんなだったらうちは製鉄所をたくさんつくりますよというようなことで、見向きもしてくれなかったことがございます。
それで、こちらの方を国内では大体三分の二ぐらいの安上がりのものを開発しまして、効率はちょっと悪いですが、今現に向こうでは三つそれを備えつけてくれていると思うんですけれども、まだまだ足りませんので、そういうものにおいてもこれは日本の近隣諸国に対して、特に中国に対しては、これは直接文部省の行政とは関係ありませんけれども、今後もやはり内閣として取り組んでいくべき性格のものではなかろうかなと思っております。
それで、伺いますと、確かに東大寺、それから鎌倉の大仏さん、鳥取県の方におきましてもこういう酸性雨が原因ではないかと思われるような文化財についても影響が出ておるようでございますが、これは一地域じゃなくて、もう日本国全体の問題でございますから、より環境庁とも連絡を密にして文化財を守っていく姿勢を強めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/107
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108・江本孟紀
○江本孟紀君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/108
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109・小野清子
○委員長(小野清子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/109
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110・小野清子
○委員長(小野清子君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
文化財保護法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/110
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111・小野清子
○委員長(小野清子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
山下君から発言を求められておりますので、これを許します。山下栄一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/111
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112・山下栄一
○山下栄一君 私は、ただいま可決されました文化財保護法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合、日本共産党、新党さきがけ及び自由連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
附帯決議(案)
政府及び関係者は、次の事項について特段に配慮すべきである。
一 新しく導入される登録制度については、国と地方公共団体の連携を密にしその円滑な実施を図るとともに、地方公共団体、特に市町村の負担が過重にならないよう十分に留意すること。また、登録文化財の修理等に伴う経費について、国の補助制度を検討すること。
二 登録の対象となる文化財について、建造物以外の分野についても調査、検討を進めること。
三 文化財の保存技術者、埋蔵文化財の発掘調査員等の養成確保と資質向上に努めること。
四 埋蔵文化財について、包蔵地の地図等必要な資料を整備し、その周知徹底に努めるほか、発掘調査等の円滑かつ適切な実施を図り、埋蔵文化財の保護に万全を期すること。
右決議する。
何とぞ、委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/112
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113・小野清子
○委員長(小野清子君) ただいま山下君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/113
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114・小野清子
○委員長(小野清子君) 全会一致と認めます。よって、山下君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対しまして、奥田文部大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。奥田文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/114
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115・奥田幹生
○国務大臣(奥田幹生君) ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/115
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116・小野清子
○委員長(小野清子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/116
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117・小野清子
○委員長(小野清子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615077X00619960411/117
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