1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成八年五月十七日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第三十号
平成八年五月十七日
午前十時開議
第一 航空業務に関する日本国とエティオピア
連邦民主共和国との間の協定の締結について
承認を求めるの件(衆議院送付)
第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
避及び脱税の防止のための日本国とメキシコ
合衆国との間の条約の締結について承認を求
めるの件(衆議院送付)
第三 幹線道路の沿道の整備に関する法律等の
一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
第四 訪問販売等に関する法律及び通商産業省
設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、防衛庁設置法の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/0
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001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
防衛庁設置法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/1
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002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。臼井国務大臣。
〔国務大臣臼井日出男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/2
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003・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 防衛庁設置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
第一に、情報本部の新設についてでございます。
防衛庁といたしましては、冷戦後の国際情勢に的確に対応するためには、高度の情報収集・分析等を総合的に実施し得る体制等の充実が必要不可欠であると考えております。他方、現在、防衛庁においては、内部部局、各幕僚監部、統合幕僚会議等に置かれているそれぞれの情報組織が独自の情報業務を行っているため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分であり、かつ、各組織が小規模であることから、能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にあります。
このため、統合幕僚会議に、防衛に関する情報の収集及び調査に係る統合幕僚会議の事務等をつかさどる組織として新たに情報本部を設置することとし、情報本部の所掌事務及び情報本部長には自衛官をもって充てることを定めるとともに、情報本部の内部組織については総理府令で定めることといたしております。
あわせて、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊から統合幕僚会議に所要の自衛官を移しかえること等を目的として、自衛官の定数を改めることとしております。
第二に、防衛大学校の所掌事務の改正についてでございます。
自衛隊の任務の多様化、国際化に対応するためには、幹部自衛官等に対し自衛隊の任務の遂行に資するための高度の研究能力等を修得させることが極めて重要であります。このため、防衛大学校に新たに大学院修士課程に相当する総合安全保障研究科を設置し得るよう、現行の任務のほか、防衛大学校の教育訓練を終了した者その他長官の定める者に対し、自衛隊の任務遂行に必要な社会科学に関する高度の理論及び応用についての知識並びにこれらに関する研究能力を修得させるための教育訓練を行うことを新たに所掌事務として加えることとしております。
以上が防衛庁設置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/3
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004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。鈴木正孝君。
〔鈴木正孝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/4
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005・鈴木正孝
○鈴木正孝君 私は、平成会を代表し、ただいま議題となりました防衛庁設置法の一部を改正する法律案につき、総理、防衛庁長官並びに関係大臣に質問をいたします。
本題に入ります前に、今後の政局について総理の基本的な姿勢、方針をお伺いしたいと思います。
国会の会期末を約一カ月後に控え、住専処理問題や財政再建、行政改革といった懸案が山積みしたままであり、そのような中で閉会後の内閣改造構想がささやかれ始めております。
まず、住専処理問題などの懸案について、総理はどのような決意で臨まれるのかをお伺いします。
また、昨年の参議院選挙における与党三党の敗北にもかかわらず連立政権が継続しておりますが、早期に衆議院を解散し、国民に信を問うお気持ちがあるのか、総理の現在の心境をお尋ねいたします。
さて、本法律案は、冷戦後の国際情勢に的確に対応するため、高度の情報収集・分析を総合的に実施し得る体制を充実することを目的として、統合幕僚会議に情報本部を新設することなどを内容とするものであります。そこで、本法律案の内容に関する質問を行う前に、冷戦後の不透明な国際情勢について幾つかお尋ねしたいと思います。
まず、朝鮮半島情勢でありますが、先日、韓国の李国防相が来日し、防衛庁長官と防衛首脳会談を行っております。その際、同国防相から、北朝鮮の政治的不安定に対処するため、北東アジアの多国間安全保障対話の枠組みの必要性が提言されております。
現在の北朝鮮は極度の食糧難が伝えられておりますが、国民生活の状況、内政の安定度についてどう把握しているのか。また、中国、ロシアを含めた北東アジアの多国間安全保障対話の枠組み構築について我が国ができることは何かについて、外務大臣並びに防衛庁長官の見解をお伺いします。
同国防相は、ASEAN地域フォーラムの限界についても言及しているようでありますが、確かに、私も、ARFは多国間の安全保障の枠組みとしてはまだまだ不十分なものであって、二国間安全保障の補完的な役割にとどまっていると理解しております。しかし、アジアの多様性を踏まえつつ着実に前進していることも事実であり、我が国としてもその発展に寄与していくことが地域の安定にとって極めて重要であると考えます。
ARFの今後の可能性と、我が国がその発展にどのように貢献できるかについて、外務大臣の認識をお伺いします。次に、総理は、去る十三日に外務省、防衛庁等の担当者を集めて、我が国に危機が起こったり起こるおそれがある場合に、政府がとるべき対策としてあらゆるケースを想定して具体的な検討を始めてほしいと指示されております。具体的な検討項目については、梶山官房長官が記者会見で、極東有事の際の在外邦人の救出、大量難民対策、沿岸警備・テロ対策のほか、米軍への後方支援策も挙げたと報道されております。私は、このような対策が必要とされる事態とは、まさしく朝鮮半島で紛争が発生したような場合であると考えるのが常識であろうと思います。総理の念頭にあったのは、具体的にどのような地域でどのような事態が発生したときについて検討せよということなのか、お伺いします。また、いつまでにどのような形で検討結果が出されるのか、今後のスケジュールをお聞かせいただきたいと思います。
この検討項目の中で、在外邦人の救出については、一昨年の自衛隊法の改正によって、自衛隊の航空機を使って邦人を救出すること、さらに外国人を同乗させて救出することが可能となりました。しかし、韓国には約七千人の在留邦人がおりますし、さらに在韓米軍の家族などを加えると、とても航空機のみによっては救出することは不可能であります。したがって、事態に有効に対処するためには、自衛隊法を早急に改正し、自衛隊の艦船の使用も可能にすることが必要であると考えますが、防衛庁長官のお考えをお伺いします。
このような我が国周辺での有事あるいは緊張時への対処を考える場合、事柄が軍事的なものであり、我が国による米軍への後方支援といっても、米軍の具体的な行動との関係において密接なものがあると思われます。すなわち、集団的自衛権の問題は避けて通れないのであります。
総理は、予算委員会における私の質問に対し、「集団自衛権の行使のように我が国の憲法上許されないという事項について、政府の見解を変えるつもりはありません」とした上で、相手方の状況、我々の方の対応を具体的に一つずつケースを整理し、それを取りまとめていくことが大事だと答弁されております。
しかし、現在の集団的自衛権についての政府解釈を前提に我が国ができることをリストアップしてみても、極めて限定的な対応しかできないことがより明らかになるだけだと思われます。そのような検討結果しか出なかった場合に、それでもよいということになるのでしょうか。それではいけないということになれば、我が国として、自国の安全を確保し、同盟国である米軍を支援するためには、どうしても集団的自衛権の問題について踏み込んで議論をしなければならないはずであります。改めて総理の御見解をお伺いします。
本来、このような我が国周辺あるいは極東における有事に際しての米軍への便宜供与については、昭和五十三年のガイドラインに基づく日米共同研究によって当然行われていなければならなかったはずであります。しかし、このガイドライン第三項に基づく共同研究は、残念ながら全く進展しなかったのであります。
私は、この研究が進展しなかった真の理由は、まさに自衛隊を憲法違反とし、日米安保条約の存在が日本を戦争に導く道と強弁してやまない政治勢力が存在し、その勢力に対して時の政府が気兼ねをしたためである、そのように承知しております。
予算委員会で答弁しているような技術的な点だけではなく、政治的な側面を含めて、なぜ研究が進まなかったのか、本当の理由を明らかにしていただきたいと思います。
去る四月十七日に発せられた日米安保共同宣言において、ガイドラインの見直しに着手することが合意され、極東有事研究についても促進することで意見の一致が見られております。この問題を含め、共同宣言が冷戦後の揺らぎかけた日米安保体制について明確な方向性を示したことについては率直に評価したいと思います。
しかし、他方で、この共同宣言が周辺諸国にどのように理解されているのかについて、私は一抹の不安を覚えるものであります。先ほども触れた韓国国防相は、日米安保体制は朝鮮半島の安定に寄与していると発言して理解を示されましたが、中国の報道等を見ると、必ずしも好意的に受けとめておらないのではないかと思われます。
今回の共同宣言について、政府はアジア太平洋諸国に対し、我が国の意図、姿勢をどのように説明しているのか、外務大臣に具体的な説明を承りたいと思います。
共同宣言に先立って日米間で締結された物品世務相互提供協定についてもお尋ねします。
この協定の対象は、日米共同訓練、PKO及び人道的な国際救援活動に限定されております。すなわち、いわゆる平時における協力に限定されていると理解されているのでありますが、平時から有事に至る間には極めて多様な緊張状態、いわゆるグレーゾーンが存在しております。また、このような緊張状態において、政治的、軍事的意図を持った訓練、共同訓練もあり得ると思います。このような場合にも適用されるものなのかどうか、外務大臣並びに防衛庁長官にお伺いします。
また、日米安保体制の本質である同盟関係を考えた場合、日本が侵略を受けた場合において、日本防衛のために戦う米軍に対し支援するという本質的な部分がこの協定には欠落しているのであります。NATO諸国と結ばれている協定と比較して不完全であると考えますが、この点に対する御意見をお伺いしたいと思います。
次に、沖縄米軍基地問題について伺います。
去る五月十一日、沖縄県収用委員会は、楚辺通信所の使用期限切れ用地の緊急使用の申請に対して不許可の決定をいたしました。このことにより、国側の不法占拠が長期間継続することが確定いたしました。また、楚辺以外の十二施設についても来年五月に使用期限切れを迎えようとしておりますが、期限内に国が使用権原を取得できるかどうか危ぶまれる状態となっております。
行政の不手際で国みずからが不法占拠を続けているという事態となったことは、当時の村山総理の、ひいては連立政権の大きな判断ミスと言わざるを得ません。しかも、いまだに有効な措置がとれないというのは、連立政権であるがゆえのものではないでしょうか。むしろ連立政権の限界と言うべき現象でありましょう。
法治国家の根幹である立法機能を預かる国会の立場から見ましても、政府みずからが、使用権原のない状態が継続することは極めて憂慮すべき事態と認める状況は、まことに看過できないゆゆしき事態と言わざるを得ません。我が国だけでなく、極東の平和と安全に寄与している日米安全保障体制の根幹にかかわる重要な問題であると考えております。今後の収用委員会での展開いかんということはわかりますが、それはそれとして、行政の最高責任者としては、いたずらに事態を放置することなく、積極的に現状の打開を図るため、関係省庁に対し特別立法を含む具体的な措置の検討を早急に指示すべきであると考えます。
さらに、政府は、話し合い解決を目指しているようにも思えますが、その具体的な見通しについてどのようにお考えになっているのか、総理にお伺いいたします。
次に、普天間飛行場等の移転経費について伺います。
沖縄米軍基地の整理・統合・縮小に関する日米合意を実現するために、関係省庁と沖縄県の調整を行うタスクフォースが先日初会合を開きました。今後、具体的な検討が進められることになると思いますが、肝心の費用負担についてはいまだ決定しておりません。政府のどの部局が費用を負担するかということにつきましては、高度の政治判断を要するものであります。先日の予算委員会におきまして、総理は、経費はどれだけかかろうと、私は少なくとも沖縄県民を見殺しにすることはできないと力強く答弁されておりますが、まさに総理御自身の御決断をいただきたいと考えております。
御存じのように、我が国の防衛力整備は、新防衛計画大綱のもと、自衛隊のリストラと防衛力の質的向上を目指して実施していこうというわけでございますが、今回の基地移転関係経費というものはそもそも想定にはなかったものであります。巨額の移転経費を防衛費の枠内で処理することになれば、我が国の着実な防衛力整備にとって重大な支障を来すことは明らかであります。
こうしたことを考えれば、この種の経費については、防衛庁のみにその負担を求めるのではなく、内閣を挙げて取り組むべきものと考えます。また、沖縄県民のためにも既存の防衛費の枠外で取り扱うべきものと考えますが、総理の御決意をお伺いいたします。
この問題に関連しまして、県道一〇四号越え実弾演習の本土移転について伺います。
移転候補地として日本側から自衛隊の本土の演習場九カ所を提示して米側の検討を求め、また、去る四月下旬、防衛施設庁は、六月末までの予定で東富士演習場を含む九カ所の演習場の環境影響調査を開始したと伺っております。普天間飛行場の機能移転につきましては、岩国や嘉手納の方々に何の相談もなく頭越しに行われたことに大変大きな反発が起きたことは御存じのとおりであります。これと同様に、この実弾演習の移転先決定も地元との事前の協議が行われることなく決定されるのではないかと、移転候補地の方々は同じような不信感を抱いているようでございます。
現に、環境調査自体を自治体レベルで反対しているところがあると報道されております。地元の理解が得られるよう最大限の御努力を尽くしていただきたいと考えておりますが、総理の御所見をお伺いいたします。
次に、情報本部の設置について伺います。
情報の一元化は、防衛庁にとりまして長年の懸案でありました。二十五年前の昭和四十六年四月に四次防の原案を公表しましたが、そこには情報の一元的処理に当たる情報中枢機構の整備が掲げてありましたし、最近でも前中期防に情報本部を盛り込むかどうかといった議論があったことは記憶に新しいところであります。
今回の改正は、防衛庁の市ケ谷移転による情報棟の完成を機に防衛庁・自衛隊の情報組織を再構築して、防衛庁全体としての情報機能の充実、効率化を図るものでありまして、専守防衛を旨とする我が国の防衛にとって、情報機能の充実により、我が国の安全にかかわる情報をより正確に把握するよう努めることは当然のことであります。
また、さきの日米安保共同宣言においては、「国際情勢、とりわけアジア太平洋地域についての情報及び意見の交換を一層強化する」という文言があります。従来、情報については、能力からしても米国から日本への一方通行であったように思われますが、今後は双方向に情報が交換されるということでありましょうか。
情報本部設置の意義と今後の日米間における情報交換のあり方につきまして、総理の御所見をお伺いします。
ところで、情報本部内に人工衛星の画像情報を調査分析する組織も予定しておりますが、昨年十一月に策定されました新防衛計画大綱では、多様な情報手段の保有という文言が記述されております。これは偵察衛星の保有を意味するものでありましょうか。
御存じのように、我が国は宇宙の平和利用を旨としておりますが、この平和という意味について、政府は従来、非軍事としておりました。しかし、通信衛星の自衛隊の活用に際し、この平和という意味については、科学技術の進展に伴い、利用が一般化しているかどうかをその判断基準の一つとするということに至っております。その当時、担当者の一人として政府見解の作成に携わったことが感慨深く思い出されております。
専守防衛を旨としている我が国にとって、周辺諸国の情報を収集することは非常に重要なことであります。また、大地震や森林火災などの大規模災害時の被害状況の把握にも衛星情報は重要な役割を果たすものであります。今、日米間で研究を推進しようとしている弾道ミサイル防衛においては、民間衛星より高性能のものが必要とされています。キラー衛星のような直接殺傷・破壊を目的とするような衛星はともかくとして、偵察衛星のような非侵略的なものは保有できるという解釈に立つべきであると考えますが、総理並びに防衛庁長官の御所見をお伺いいたします。
最後に、防衛大学校の所掌事務の変更について伺います。
今回の改正は、一般大学の大学院修士課程に相当する社会科学系の総合安全保障研究科を設置し得るようにするものであります。
この総合安全保障という分野は、一般大学には見られず、研究者も少ないと思いますが、これからの日本の安全保障や危機管理にとってまことに重要な研究であることは言うまでもありません。少人数のコースのようでありますが、自衛官だけではなく、民間にも広く人材を求めて門戸を開放していくことが大切ではないかと思いますし、さらに安全保障・防衛交流の観点からも諸外国の留学生も積極的に受け入れていくべきであると考えます。
防衛庁長官の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/5
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006・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 鈴木議員にお答えを申し上げます。
まず、住専処理問題や財政再建といった懸案に取り組む決意についてであります。
先日の予算成立は住専問題の解決に向けた第一歩でありましたが、この処理を現実に進めていくためには住専処理法案の成立が不可欠であります。政府としては、一日も早く法案を成立させていただき、住専の処理、強力な債権回収など住専処理の実施に取りかかりたいと考えております。
また、財政再建への取り組みにつきましては、もはや危機的と言える財政事情のもとに、今後、財政改革に取り組み、できるだけ速やかに健全な財政体質をつくり上げていくことが緊急課題であり、国会や各種審議会の御論議等をも踏まえながら、財政改革に強力に取り組んでまいりたいと考えております。
また、政府は、行政改革を国政の最重要課題の一つと位置づけており、各般の構造改革を進めるためにも行政改革は重要な事項であり、そのために規制緩和、地方分権、特殊法人など各般の問題に積極的に取り組んでまいりました。今後ともに諸課題相互の有機的連携に配慮しながら積極的に取り組んでまいります。
衆議院の解散につきましては、さまざまな懸案を抱え、今それどころではないというのが率直な気持ちであります。
また、先日、私が指示いたしました緊急事態対応策の検討についてでありますが、私が事務当局に指示をいたしましたのは、特定の国あるいは地域を念頭に置いたものではなく、我が国に対する危機が発生いたしました場合あるいはそのおそれのある場合におきまして、我が国としてとるべきさまざまな対応について、起こり得るさまざまなケースをあらかじめ想定し、必要な対応策を具体的に十分検討するようにという指示でありました。
スケジュールにつきまして、いつまでという具体的な日限は設けておりませんが、できるだけ速やかに検討を進めさせたいと思っております。
我が国周辺における有事あるいは緊張時における対米支援、集団的自衛権についての御意見がございました。
安全保障上の各種の緊急事態に対し、我が国の対応が憲法のもとに行われることは当然でありますし、我が国が憲法上許されないとしてまいった事項につき、従来の政府の見解に何ら変化はございません。
楚辺通信所の一部土地の使用権原取得問題について御意見がございました。
この一部土地に係る緊急使用につきましては、速やかな許可がおりるよう心から期待をいたしておりましたが、五月十一日、沖縄県収用委員会が不許可とする決定をなされたことはまことに残念であります。
この楚辺通信所の一部土地について使用権原のない状態が継続することは極めて憂慮すべき事態であり、今後、関係者の協力を得て、公告縦覧を初めとする裁決申請に係る審理などの手続が円滑かつ迅速に行われ、できる限り早期に駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原が得られるよう最大限の努力をしている最中であります。
なお、法的な整備につきまして一般論として申し上げますならば、駐留軍用地特措法に基づく手続のあり方というものは幅広く検討しておくべき課題、そのように考えております。
また、普天間飛行場の移転経費について御意見がございました。
今回発表されました特別行動委員会の中間報告に盛り込まれている措置は、こればかりではありませんが、いずれも確実に実現していくことが必要であり、去る四月十六日にもその旨の閣議決定を行いました。
経費面の問題につきましては、今後、基地の移転などの具体的内容を検討していく中であわせて議論されていくものでありますため、現段階で具体的に申し上げる状況にはありません。しかし、いずれにいたしましても、四月十六日の閣議決定の趣旨を踏まえ、経費面でも十分かつ適切な措置を講ずる必要があると考えております。
次に、県道一〇四号越え実弾射撃の事案につきましては、昨年九月の日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2におきまして、分散・実施の方向で技術的、専門的検討を進めていくことが合意されましたものを受け、現在、日米合同委員会のもとの特別作業班におきまして、複数の演習場で分散・実施する方向で鋭意検討を進めております。
この問題につきましては、米軍の運用上の要請、移転先における自衛隊の訓練などとの調和に十分留意をしながら、本年半ばごろを目途に結論を得、関係する地元自治体などに十分に御説明をし、御理解が得られるよう誠心誠意努力してまいりたいと考えております。
次に、情報本部の設置の意義及び日米間の情報交換につきましては、冷戦後の国際情勢に的確に対応していこうとする場合には、高度の情報収集・分析などを総合的に実施し得る体制などの整備を図ることは欠くことはできません。
他方、防衛庁の情報組織は、それぞれの組織が独自の情報処理、情報業務を行っておりますために、防衛庁全体としての情報処理・分析能力はこれまで必ずしも十分ではありませんでした。このため、統合幕僚会議に新たに情報本部を設置するとともに、各機関の情報組織を整理再編し、防衛庁全体としての情報機能の充実、効率化を図るものとしたものであり、政府としては、日米間におきまして、国際情勢、とりわけアジア太平洋地域についての情報の交換を一層強化してまいりたいと考えているところでありまして、情報本部の設置はこれに資するものと考えております。
最後に、偵察衛星につきましては、有力な情報収集手段の一つであると言われておりますし、各種情報機能の充実が専守防衛を旨とする我が国の防衛にとって極めて重要なことから、これに関心を有しておるところであります。
国会決議の有権解釈は、これは国会でなされるものでありますけれども、政府としては、その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用が認められると判断しております。
現在のところ、偵察衛星の保有についての構想あるいは計画はございませんけれども、今後、具体的な問題が生ずれば、それに応じて十分検討してまいりたいと考えております。
残余の御質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/6
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007・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 鈴木議員の御質問にお答えをいたします。
初めに、北朝鮮の現状についてのお尋ねでございますけれども、北朝鮮は、現在、長期にわたる経済不振が続き、食糧・エネルギー不足などの種々の困難を抱えております。特に食糧不足につきましては、昨年夏の水害の影響等によりまして一層深刻化をいたしております。
しかしながら、北朝鮮は、このような深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、依然として地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近に前方展開するとともに、即応態勢の維持に努めていることから、その動向については今後とも引き続き細心の注意を払ってまいる必要があると考えております。
次に、北東アジアの多国間安全保障対話の枠組み構築に関するお尋ねでございますが、先般の日米安全保障共同宣言におきましては、ASEAN地域フォーラムや、将来的には北東アジアに関する安全保障対話のような多国間の地域的安全保障についての対話及び協力の仕組みをさらに発展させるため、日米両国政府が共同して、また、地域内の他の国々とともに検討を進めていくことを再確認したところでございます。
防衛庁といたしましても、かかる合意を踏まえ、ASEAN地域フォーラムや北東アジア地域における民間レベルの対話である北東アジア協力ダイアローグ等、地域の安全保障対話に積極的に参加し、その発展に寄与してまいりたいと考えております。
次に、在外邦人の輸送の手段として自衛隊の艦船を活用すべきではないかとのお尋ねでございます。
自衛隊に在外邦人保護のための輸送の権限を付与するよう自衛隊法第百条の八を追加するに当たりましては、邦人等の輸送手段については、緊急事態に際しての在外邦人の輸送は極めて迅速かつ適切に行う必要があること、緊急事態に際しての在外邦人の輸送のため我が国政府が船舶をチャーターした例がないことといった点を踏まえまして、自衛隊の保有する航空機によることとし、艦船は含まないといたしたものであります。
在外邦人の輸送の手段として自衛隊の艦船を活用することにつきましては、具体的ニーズ等を踏まえて検討されるべきものと考えております。
次に、緊張状態における日米共同訓練への日米物品役務相互提供協定の適用についてのお尋ねでございますが、御指摘の緊張状態が具体的にどのような事態であるか不明であり、そのような事態においてはいかなる日米共同訓練があり得るかも明らかでないため、明確なお答えをすることは困難であります。
いずれにいたしましても、本協定は、共同訓練、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動を適用対象とするものであることから、いわゆる有事における物品、役務の相互提供は想定をいたしておりません。
次に、日米物品役務相互提供協定には日本が侵略された場合の対米支援が欠落しており不完全との御指摘でございますが、本協定につきましては、昭和六十三年の第十八回日米安全保障事務レベル協議におきまして米側から提案があったものであります。その後、自衛隊と米軍相互のニーズを精査し検討した結果、共同訓練のほか、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動を適用対象とすることで米側と意見の一致を見たところであります。
このようなことから、本協定は日米双方のニーズにこたえ得る効果的な協定であると日米間で理解をしているものであり、御指摘は当たらないものと考えております。
次に、偵察衛星の保有につきましては、防衛庁といたしましても、有力な情報収集の手段の一つである偵察衛星につきましては従来より関心を有しているところでございます。
国会決議の解釈につきましては、総理から御答弁があったとおりであります。また、防衛庁といたしましても、現在のところ偵察衛星の保有についての構想ないし計画はございませんが、今後、具体的な問題が生ずれば、それに応じて十分に検討をいたしてまいりたいと考えております。
次に、防衛大学校総合安全保障研究科についてのお尋ねでございますが、同研究科は、自衛隊の任務の多様化、国際化に対応し、幹部自衛官等に対し安全保障に係る高度の研究能力等を修得させることを目的としたものでございます。
同研究科に対する留学生や民間人の受け入れにつきましては、諸外国との信頼醸成の推進や同研究科における研究の充実等の観点から、議員の御趣旨を踏まえ、適切に検討してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/7
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008・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 鈴木議員から私には七問の御質問がございましたが、そのうち北朝鮮情勢、北東アジア地域の安保対話、それからいわゆるACSA協定に関する二間の計四問については防衛庁長官から答弁がございました。
私からは、ただ一点、北朝鮮情勢につきまして、先般十三日、十四日に済州島において日韓米の高級事務レベル会議がございまして、北朝鮮情勢についていろいろ意見の交換をいたしましたが、その場におきましても、食糧、エネルギーを初めとして経済情勢は一層困難になっているという認識で一致したところでございますし、また、金正日書記につきましては、現時点においては実効的に政府、党、軍を支配している、こういった認識でも一致したところでございます。
いずれにいたしましても、今後とも北朝鮮の動向については細心の注意を払ってまいりたい、こう考える次第でございます。
次に、ASEANリージョナルフォーラムの今後の可能性、そしてまた、我が国としての対処方針という御質問でございましたけれども、九四年に発足いたしましたARFは、この地域の安全保障に関する全般的な対話と協力の場として定着しつつある、こう考えております。そのようなとらえ方から、我が国といたしましてもこの活動に積極的に貢献していく方針でございまして、例えば、本年一月、四月にはインドネシアと共同で信頼醸成に関する実務レベルの会合を主催したところでございます。今後ともそのように取り組んでまいりたい、こう考えております。
次に、いわゆるガイドライン第三項はなぜ研究が進まないのか、本当の理由を明らかにせよ、こういう御質問でございましたけれども、この研究につきましては、やはり研究の対象が米軍の運用に直接かかわる、こういうこともございまして、非常に多岐にわたるという点がございます。そうしてまた、我が方におきましても、防衛、外務両省庁だけではなくて多数の省庁の所管事項にも関係する、極めて幅広い事項にかかわる、技術的な問題とおっしゃいましたけれども、これは決して技術的な問題だけではなくて、実質においても非常に多岐であり複雑である、幅広いということもございまして、残念ながらこれまで余り進捗していないことは事実でございます。
しかし、先般発出されました日米安保共同宣言を踏まえまして、今後このいわゆる三項関連の研究についても着実に進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
それから、日米安保共同宣言についてアジア太平洋諸国に対してどのように説明してきたかという御質問でございましたけれども、全体といたしまして、この共同宣言につきましては、日米安保体制がアジア太平洋地域の平和と繁栄にとって大変重要な役割を果たしている、こういう認識が多くの国々において理解を得ている、こう考えております。
それで、政府・外務省といたしましては、さらにその理解を深めたいということで、これまでに、この共同宣言は日米安保体制の重要な役割を改めて確認するものであるということ、あるいは二十一世紀に向けた日米協力関係の強化の方途を明らかにするものであること、三つ目にはこれは決して第三国に対して日米が共同して対抗するようなものではないという点、そして専守防衛を初めとする我が国の基本的な防衛政策あるいは安保体制の枠組みを変更するものではない、こういったことを含めまして、宣言の趣旨につきまして、各国に対し外交ルートを通じて説明してきたところでございます。中国、韓国はもとよりのことでございますが、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ等々、多数の国々に説明をしてきております。なお今後とも近隣諸国との関係には十分配慮しながら日米協力の方向を実施してまいりたい、こう考えております。
最後の質問の中で、外交ルートという話だけでなく具体的にということでございましたので、中国と韓国についてだけ申し上げたいと思いますけれども、中国につきましては、東京並びに北京においてそれぞれ、在京の大使館に対し、あるいは在北京の大使館から中国政府に対して説明いたしましたし、韓国に対しましては、東京において在京大使館に説明し、さらに私自身が四月三十日に孔魯明外務部長官と会談を持ちました際に、韓国外務部の本件に関する論評、これの発出に対してそれを多とするということを述べると同時に、この文書の趣旨についてさらに詳細に御説明申し上げたところでございます。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/8
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009・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 笠井亮君。
〔笠井亮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/9
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010・笠井亮
○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について質問いたします。
本法案によって新設される情報本部は、今日の日米安保条約のもとにおける自衛隊の役割と機能強化に関して重大な問題を持つものであります。
すなわち、まず第一に、今なぜ情報本部をつくるのかという問題です。
さきの日米安保共同宣言では、安保条約の適用範囲を事実上アジア太平洋地域にまで広げました。また、昨年秋作成された新防衛計画の大綱では、日米の共同作戦を「周辺地域」に広げ、従来の「我が国の防衛」の枠を取り払って、自衛隊に、日本への直接的な脅威や侵略の事態がなくても、アメリカが介入するアジアと世界の地域紛争にまで協力するという新たな任務を与えました。
ソ連崩壊後の今、アメリカは地球上のあらゆる地域での紛争に介入する方向を強め、そのための情報活動を重視しています。米・東アジア戦略報告で述べている日本の新しい地球的規模の役割要求に呼応して、一体政府は自衛隊の情報収集の範囲をどこまで広げるつもりなのか、総理、まず明確にしていただきたい。
今回の情報本部の新設は、自衛隊がアジア太平洋地域での紛争対処やPKO出動などに機敏に対応できる体制強化の一環として、情報機能の改革強化を図ろうとするものではありませんか。
これまで政府は、専ら日本を守るためとして、そのための手段としての自衛隊の情報活動の必要性を強調し、それをウサギの耳になぞらえて説明してきました。ところが、今回の情報本部は、これまでの政府の説明さえ踏み越えて、日本の防衛とは無関係な事態に対応することに踏み出す重大な問題だと思いますが、いかがですか。
そこで、第二に、米軍との協力関係について具体的に尋ねます。
日米安保共同宣言によれば、「両国政府は、国際情勢、とりわけアジア太平洋地域についての情報及び意見の交換を一層強化する」としております。今回、情報本部の設置によって、一佐二名と内局一名による情報官を設置してアメリカとの連絡にも当たるということですが、それは平時有事を問わず常に自衛隊と米軍との間での情報の交換を強化しようとするということではありませんか。
今、ガイドラインの見直しということで、極東有事における日米共同研究まで始めることになりました。そうなれば、極東有事の際にも自衛隊が独自につかんだ情報を戦闘状態にある米軍に対して提供することになるのではありませんか。日本の有事と無関係な事態で、全国的な通信施設網、E2CやAWACSなどの航空機で得た情報を米軍に提供することは憲法上許されない行為と考えますが、明確な答弁を求めたいと思います。
第三に、情報本部の内容について幾つか伺います。
まず、今回の法案では、統合幕僚会議のもとに情報本部を置き、本部長には自衛官を充てるとしています。これまで政府は、シビリアンコントロールということで陸海空三自衛隊を分けて運用してきました。今回の情報本部の新設は、防衛庁の市ケ谷移転に伴う新中央指揮システム整備などの指揮能力の強化と密接にかかわり、統幕会議による陸海空三自衛隊の統合運用体制の確立を図って統幕会議の機能を強化し、ひいてはシビリアンコントロールを弱めることにつながることは明らかではありませんか。
防衛庁は、現在、アメリカから軍事衛星による画像情報の提供を受けるとともに、必要に応じてランドサットなどの民間衛星会社から衛星写真を購入しています。しかし、四月九日の衆議院本会議で橋本総理は、偵察衛星の保有に関心を有していると答弁し、これを受けて、朝鮮半島などの軍事情勢の情報収集能力を強化するためなどとして、日本独自の偵察衛星の開発・保有に向けた本格的な検討を進める動きが急浮上しております。
総理は、この偵察衛星の開発・保有を具体的に進めるのかどうか。これは一九六九年の宇宙の平和利用を定めた国会決議に反するではありませんか。明確な答弁をお願いしたい。
この情報本部は、通信・電波の傍受を行ってきた調査別室の千三百人余りをそのまま継承するだけでなく、組織の中心に据えています。これまでも自衛隊調査別室のもとにあった全国的な通信・傍受施設が米軍の三沢や沖縄楚辺の通信・傍受施設と一体となって北朝鮮や中国などの電波傍受を行っているのは隠れもない事実ですが、こうした世界的な情報活動を一層拡大強化しようとするものではないのですか。
また、国内においても、これまで各幕僚監部調査部が国民に隠れて国内の政党、労働組合、市民団体などの活動を監視してきた活動を情報本部のもとで引き続き行おうということですか。防衛庁長官の答弁を求めるものであります。
さて、橋本総理は、十三日、防衛、外務など各省庁に対して、日本に対する危機が発生したときの日本の対応について具体的ケースを想定して臨場感ある形で研究、検討してほしいという重大な指示をされました。
そこで、明確にしていただきたいのですが、具体的ケースとは、日本はもちろん極東を含むすべての有事のことですか。総理の言う臨場感ある形とはどのようなことを指すのですか。それは朝鮮半島など周辺地域での軍事的緊張や有事を想定して米軍の戦闘及び武力による威嚇を支援することを含むのではありませんか。そうだとすれば、それは集団的自衛権を前提にした対応ということになり、憲法上許されないのではありませんか。
このような周辺地域有事研究の背景には、新聞報道によれば、日米安保共同宣言に署名した直後に在日米軍から、朝鮮半島などで武力衝突が起きた場合を想定して百項目とも九百項目ともされる支援策の要請があり、その項目の中には集団的自衛権の行使に触れるものが圧倒的に多いとの防衛庁幹部の見方もあると報じられています。
アメリカから実際にそういう要望、ニーズがあって、総理の指示はそれにこたえるためのものですか、そうではないのですか。国民の前に事実を明確にお答えいただきたい。
最後に、沖縄の楚辺通信所の一部用地不法使用の問題についてお伺いします。
この間、政府は、土地の使用権限がなくなっても直ちに違法であるとは言えないとしながらも、これが無制限に長く続くと違法状態と言われるとしてまいりました。今、緊急使用の不許可の決定が出て、政府の言い分によっても違法状態になったことは明白であります。今の時点でどうお考えになるのか、総理の見解を求めます。
政府が不法占拠状態の長期化や拡大を避けるために新たな特別立法をつくるのは、我が憲法はもちろん、沖縄県民の総意を踏みにじって無法に無法を重ねるものであります。持ち主に直ちに返還すべきは当然ではありませんか。
核も基地もない沖縄という沖縄県民の願いに責任を持ってこたえるよう総理に厳しく求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/10
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011・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 笠井議員にお答えを申し上げます。
情報本部は、防衛庁のおのおのの組織が独自の情報業務を行っておりますため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が必ずしも十分ではないことなどから、高度の情報収集・分析等を総合的に実施し得る体制などの充実を図るため設置するものであります。
したがって、情報本部の設置は、防衛庁の所掌事務に変更を加えるものではなく、情報収集の範囲が広がるものではありません。
また、情報本部の新設は、自衛隊がアジア太平洋地域での紛争処理やPKO活動などに機敏に対応できる体制の強化の一環ではないか、あるいは日本の防衛とは無関係な事態に対応するものではないかとの御指摘ですが、専守防衛を旨とする我が国にとり、情勢の変化を早期に察知し機敏な意思決定を行うことが重要であることから、戦略情報を含む高度の情報収集・分析などを実施し得る体制の充実を図っているところであり、御指摘のような観点はありません。
また、自衛隊と米軍との情報交換に関するお尋ねですが、日米安保体制のもと、自衛隊と米軍の間では常に相互に必要な情報の交換を実施するのは当然であります。
今後、自衛隊と米軍の情報交換の一層の充実に努めてまいりたいと考えており、情報本部の設置はこれに資するものと考えております。
また、日米防衛協力のための指針の見直しにつきましては、我が国の周辺地域で我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合の日米協力の個別具体的な対応の内容については、今後検討を進めてまいります。
日本が有事でない際の米軍への情報提供についてのお尋ねでありますが、日米安保体制のもとにおいて、日米が平素から軍事情報を含め相互に必要な情報交換を行うことは当然でありまして、憲法上問題があるとは考えておりません。
情報本部の設置による統幕会議の機能強化とシビリアンコントロールの関係につきましては、情報本部は国際軍事情勢など自衛隊全般を通じて必要となる情報等を作成することを基本的業務としておりますが、統幕会議がかかる情報に関する業務をその事務の主たる対象としていることから、同会議に設置をいたしました。
シビリアンコントロールは、民主主義国家における政治の軍事に対する優先の確保を示すものであり、我が国におきましては、自衛隊については国会が自衛官の定数、組織などを法律、予算の形で議決されるほか、国の防衛に関する事務は内閣に属し、文民である内閣総理大臣、防衛庁長官のもとに管理されており、国防に関する重要事項等につきましては安全保障会議の議を経ることになっております。
統幕会議につきましても、従来からこれらの制度によるシビリアンコントロールのもとにあるわけであり、情報本部の設置によってこれらの制度が変わるものではございません。
それから、偵察衛星につきましては、先刻もお答え申し上げましたとおり、偵察衛星は有力な情報収集手段の一つであると言われており、各種情報機能の充実が専守防衛を旨とする我が国の防衛にとって極めて重要であることから、これに関心を有しております。現在のところ、偵察衛星の保有についての構想または計画はございませんが、各国の利用の動向等については今後とも注意深く見守ってまいりたいと思います。
同時に、国会決議の有権解釈は国会でなされるものでありますが、政府としては、その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星については自衛隊による利用が認められていると判断しております。
また、緊急事態対応策の検討における内容についてのお尋ねでありますが、私が事務当局に指示いたしましたのは、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態を中心とし、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれのある場合において、我が国としてとるべきさまざまな対応について、起こり得るさまざまなケースを想定し、必要な対応策をあらかじめ具体的に十分検討、研究しておこうというものであります。
「臨場感を持って」と申し上げました趣旨は、我が国に対する危機が発生した場合などにおけるその対応につきまして、一般論、抽象論ではなく、起こり得るさまざまなケースを想定し、何をなすべきなのか、何ができるのかをできるだけ具体的に十分研究、検討することが不可欠であるということであります。この検討が我が国の憲法上許されていないという事項について従来の政府の見解を前提することについては、事務当局にきちんと指示をいたしました。
また、アメリカから実際に支援策の要請があり、総理の指示はそれにこたえるためのものではないかというお尋ねでありますが、全くそういう依頼を受けておりません。
楚辺通信所の一部土地の法的問題についてのお尋ねがございました。
従来からの見解をここで繰り返すつもりはございませんが、駐留軍用地特措法に基づく所定の手続として、三月二十九日、沖縄県収用委員会に裁決申請を行いますとともに、その審理等の手続に時間を要しますので、早急に使用権限を得るため、あわせ緊急使用の申し立てを行いました。
今回、緊急使用の許可が得られなかったことは大変残念でありますけれども、政府としては、引き続き裁決申請に係る審理などが円滑かつ迅速に行われ、できるだけ早期に裁決がなされることを期待しており、こうした努力を引き続いて行っていくことには変わりがありません。
また、緊急使用が不許可とされた土地を返還すべきだということでありますが、当該土地が土地所有者に返還されていない状態につき直ちに違法であるというには当たらないと考えるという従来の評価が覆るに至るものではないと思います。
いずれにいたしましても、楚辺通信所の一部土地について使用権原のない状態が継続することは極めて憂慮すべき事態でありますし、今後、関係者の協力を得て、公告縦覧を初めとする裁決申請に係る審理などの手続が円滑かつ迅速に行われることを、そしてできる限り早く駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原が得られるように最大限の努力をしていくことが重要だと考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/11
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012・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 情報本部の設置による情報活動の範囲の拡大等についてのお尋ねでございますが、情報本部は、各種情報を収集の上、総合的に処理・分析し、国際軍事情勢等自衛隊全般について必要となる情報等を作成することを基本的業務といたしておりまして、防衛庁の情報組織を整理再編し設置されるものであります。このため、情報本部の設置は、防衛庁の所掌事務に変更を加えるものではなく、情報収集の範囲が広がるものでもございません。
また、電波情報は重要な情報源の一つであることから、従来、電波情報の収集・処理を行ってきた調査別室の業務を情報本部において実施することといたしたものであります。
政党等を監視する活動についてのお尋ねでございますが、各幕僚監部調査部は、政党、労働組合、市民団体等を監視する活動を任務としておらず、また、情報本部もこれらの活動を任務とするものではありません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/12
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013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/13
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014・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 航空業務に関する日本国とエティオピア連邦民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第二 所得に対する租税に関する二童課税の回避及び脱税の防止のための日本国とメキシコ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件
(いずれも衆議院送付)
以上両件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長木庭健太郎君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔木庭健太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/14
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015・木庭健太郎
○木庭健太郎君 ただいま議題となりました条約二件について、外務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、エティオピアとの航空協定は、我が国とエティオピアとの間に定期航空業務を開設しようとするものでありまして、そのための権利の相互許与、業務の開始及び運営についての手続、条件等を取り決めるとともに、我が国とエティオピアの指定航空企業が業務を行うことができる路線等について定めるものであります。
次に、メキシコとの租税条約は、経済的交流、人的交流等に伴って発生する国際的な二重課税の回避を目的とするものでありまして、事業所得に対する課税基準、国際運輸業所得に対する相互免税、投資所得に対する源泉地国の限度税率、外国税額控除方式による二重課税の排除等について規定しております。
委員会におきましては、我が国空港への乗り入れ状況、日米航空交渉の現状、メキシコの経済状況、租税条約締結の背景等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終え、討論に入りましたところ、日本共産党の立木委員よりメキシコとの租税条約に反対する旨の意見が述べられました。
次いで、順次採決の結果、エティオピアとの航空協定は全会一致をもって、メキシコとの租税条約は多数をもって、それぞれ承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/15
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016・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
まず、航空業務に関する日本国とエティオピア連邦民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。
本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/16
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017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。
次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とメキシコ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。
本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/17
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018・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
よって、本件は承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/18
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019・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第三 幹線道路の沿道の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員長永田良雄君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔永田良雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/19
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020・永田良雄
○永田良雄君 ただいま議題となりました幹線道路の沿道の整備に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、道路交通騒音の著しい幹線道路の沿道について、道路交通騒音により生ずる障害の防止と適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため、道路交通騒音の減少に関する計画の策定、沿道整備計画制度の拡充、土地に関する権利の移転等を市町村の定める計画によって一体的に行う制度の創設、一定の沿道地区計画等の区域の市街地再開発事業の施行区域への追加、複数の道路に係る施設等の管理の方法の改善等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、本改正案の都市計画上の位置づけ、国道四十三号線沿線を初めとする環境基準超過地域への騒音対策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/20
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021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/21
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022・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/22
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023・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第四 訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。商工委員長沓掛哲男君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔沓掛哲男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/23
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024・沓掛哲男
○沓掛哲男君 ただいま議題となりました訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、電話勧誘によるトラブルやマルチ商法と呼ばれる連鎖販売取引による消費者被害が急増している現状に対処するため、これらの取引の適正化を図るとともに、消費者保護施策の充実、消費経済審議会の新設等の措置を講じようとするものであります。
なお、衆議院におきまして、消費経済審議会に係る施行期日を、四月一日から公布の日に変更する旨の修正が行われております。
委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、指定商品制の妥当性、連鎖販売取引の定義の明確化、消費者啓発の促進等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、六項目の附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/24
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025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/25
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026・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X01819960517/26
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